(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-08
(54)【発明の名称】粘度安定性が向上した導電性ペースト用銀粉末及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 9/24 20060101AFI20230426BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20230426BHJP
B22F 1/10 20220101ALI20230426BHJP
B22F 1/102 20220101ALI20230426BHJP
B22F 9/00 20060101ALI20230426BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20230426BHJP
B22F 1/12 20220101ALI20230426BHJP
【FI】
B22F9/24 E
B22F1/00 K
B22F1/10
B22F1/102
B22F9/00 B
H01B1/22 A
B22F9/24 F
B22F1/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558510
(86)(22)【出願日】2020-12-29
(85)【翻訳文提出日】2022-11-25
(86)【国際出願番号】 KR2020019268
(87)【国際公開番号】W WO2021194061
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0036248
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522378801
【氏名又は名称】エルエス-ニッコー コパー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LS-NIKKO COPPER INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】ジン ウミン
(72)【発明者】
【氏名】イ チャングン
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
5G301
【Fターム(参考)】
4K017AA03
4K017AA06
4K017AA08
4K017BA02
4K017CA07
4K017DA01
4K017DA07
4K017EJ01
4K017FB01
4K017FB11
4K018AA02
4K018BA01
4K018BB04
4K018BC29
4K018BD04
4K018KA33
5G301DA03
5G301DA42
5G301DD01
5G301DD02
5G301DE01
(57)【要約】
本発明は、銀イオンを含む銀塩を製造した後、銀イオンを還元して銀粒子を析出させる銀粉末製造段階と、前記析出した銀粒子を含む水溶液又はスラリーから銀粒子を分離し、洗浄及び乾燥させて銀粉末を回収する銀粉末回収段階と、前記回収された銀粉末にpH調整剤を投入してpHを調整した後、コーティング剤を投入してコーティングする銀粉末コーティング段階と、を含む、銀粉末の製造方法であって、銀粉末のコーティング工程でpH調整剤を用いてpHを調整することにより、導電性ペーストに用いられる場合、時間による粘度増感率が少なくて粘度安定性に優れた導電性ペーストを提供することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀イオンを含む銀塩を製造した後、銀イオンを還元して銀粒子を析出させる銀粉末製造段階と、
前記析出した銀粒子を含む水溶液又はスラリーから銀粒子を分離し、洗浄及び乾燥させて銀粉末を回収する銀粉末回収段階と、
前記回収された銀粉末にpH調整剤を投入してpHを調整した後、コーティング剤を投入してコーティングする銀粉末コーティング段階と、を含む、銀粉末の製造方法。
【請求項2】
前記銀粉末コーティング段階は、
前記回収された銀粉末を純水に投入し、撹拌した後、pH調整剤を投入し、撹拌して銀粉末溶液のpHを調整するpH調整段階と、
前記pH調整された銀粉末溶液にコーティング剤を投入してコーティングするコーティング段階と、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の銀粉末の製造方法。
【請求項3】
前記pH調整段階は、
前記回収された銀粉末100重量部に対して200~400重量部の純水に投入して5~15分間撹拌した後、前記pH調整剤を添加し、5~15分間撹拌してpHを8~12に調整する段階であることを特徴とする、請求項2に記載の銀粉末の製造方法。
【請求項4】
前記pH調整段階は、前記pH調整剤として、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(2-Amino-2-Methyl-1-propanol)、トリエタノールアミン(Triethanolamine)及び水酸化アンモニウム(Ammonium Hydroxide)よりなる群から選択される少なくとも1種を含む段階であることを特徴とする、請求項2に記載の銀粉末の製造方法。
【請求項5】
前記コーティング剤は、脂肪酸又はその塩を含み、
前記脂肪酸は、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、リノール酸、ラウリン酸及びリノール酸よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1に記載の銀粉末の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法によって製造された銀粉末であって、
前記銀粉末は、比表面積(m
2/g)に対するコーティング剤の化学結合量(%)で表されるパラメータ値が0.3以下であることを特徴とする、銀粉末。
【請求項7】
請求項1に記載の方法によって製造された銀粉末を含む金属粉末と、
溶剤及び有機バインダーを含む有機ビヒクルと、を含む、導電性ペースト。
【請求項8】
請求項1に記載の方法によって製造された銀粉末を含む金属粉末と、
ガラスフリットと、
溶剤及び有機バインダーを含む有機ビヒクルと、を含む、太陽電池電極形成用導電性ペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペースト用銀粉末及びその製造方法に係り、より詳細には、太陽電池用電極や積層コンデンサーの内部電極、回路基板の導体パターンなど、電子部品における電極を形成させるための導電性ペーストの粘度安定性を向上させる銀粉末及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性金属ペーストは、塗膜形成が可能な塗布適性を有し、乾燥した塗膜に電気が流れるペーストであって、樹脂系バインダーと溶媒からなるビヒクル中に導電性フィラー(金属フィラー)を分散させた流動性組成物であり、電気回路の形成やセラミックコンデンサーの外部電極の形成などに広く用いられている。
【0003】
特に、銀ペースト(Silver Paste)は、複合系導電性ペーストの中で最も化学的に安定し、導電性に優れるため、導電性接着及びコーティング用や微細回路形成などの様々な分野におけるその応用範囲が相当広い。PCB(Printed Circuit Board)等の信頼性を特に重要視する電子部品において、銀ペーストの用途は、STH(Silver Through Hole)用、接着又はコーティング剤などとして多様に用いられている。
【0004】
一方、太陽電池(solar cell)は、半導体基材に光が入射すると、電気が発生する光起電効果(photovoltaic effect)を用いて電力を得る装置であって、通常、p型シリコンなどからなる半導体基材の前面(front、太陽光が照射される面)に負極電極が形成され、背面に正極電極が形成された構造を持つ。太陽電池電極は、基材上に電極形成用導電性ペースト組成物をスクリーン印刷(print)し、焼成して形成され、前記電極形成用導電性ペースト組成物は、導電性粉末、ガラスフリット(frit)、有機溶媒及びセルロース樹脂バインダーを含む導電性有機媒体からなる。
【0005】
前記導電性ペーストの粘度が経時的に変化すると、印刷性の変動が発生するため、印刷の際に適正な膜厚や形状が得られなくなり、品質が安定した電極等を製造することができなくなるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2016-0016612号(2016年2月15日)
【特許文献2】韓国登録特許第10-1775760号(2017年8月31日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる問題点を解決するためのもので、その目的は、導電性ペーストの粘度安定性を向上させる銀粉末及びその製造方法を提供することにある。
しかし、本発明の目的は、上述した目的に限定されず、上述していない他の目的は、以降の記載から当業者に明確に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、銀イオンを含む銀塩を製造した後、銀イオンを還元して銀粒子を析出させる銀粉末製造段階と、前記析出した銀粒子を含む水溶液又はスラリーから銀粒子を分離し、洗浄及び乾燥させて銀粉末を回収する銀粉末回収段階と、前記回収された銀粉末にpH調整剤を投入してpHを調整した後、コーティング剤を投入してコーティングする銀粉末コーティング段階と、を含む、銀粉末の製造方法を提供する。
【0009】
また、前記銀粉末コーティング段階は、前記回収された銀粉末を純水に投入し、撹拌した後、pH調整剤を投入し、撹拌して銀粉末溶液のpHを調整するpH調整段階と、前記pH調整された銀粉末溶液にコーティング剤を投入してコーティングするコーティング段階と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、前記pH調整段階は、前記回収された銀粉末100重量部に対して200~400重量部の純水に投入して5~15分間撹拌した後、前記pH調整剤を添加し、5~15分間撹拌してpHを8~12に調整する段階であることを特徴とする。
【0011】
また、前記pH調整段階は、前記pH調整剤として、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(2-Amino-2-Methyl-1-propanol)、トリエタノールアミン(Triethanolamine)及び水酸化アンモニウム(Ammonium Hydroxide)よりなる群から選択される少なくとも1種を含む段階であることを特徴とする。
【0012】
また、前記コーティング剤は、脂肪酸又はその塩を含み、前記脂肪酸は、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、リノール酸、ラウリン酸及びリノール酸よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記の方法によって製造された銀粉末であって、前記銀粉末は、比表面積(m2/g)に対するコーティング剤の化学結合量(%)で表されるパラメータ値が0.3以下であることを特徴とする、銀粉末を提供する。
【0014】
また、本発明は、上記の方法によって製造された銀粉末を含む金属粉末と、溶剤及び有機バインダーを含む有機ビヒクルと、を含む、導電性ペーストを提供する。
【0015】
また、本発明は、上記の方法によって製造された銀粉末を含む金属粉末と、ガラスフリットと、溶剤及び有機バインダーを含む有機ビヒクルと、を含む、太陽電池電極形成用導電性ペーストを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、特に太陽電池の前面電極形成用導電性ペーストに用いられる銀粉末であって、銀粉末のコーティング工程においてpH調整剤を用いてpHを調整することにより、導電性ペーストに使用される場合、時間経過による粘度増減率が少ないため、粘度安定性に優れた導電性ペーストを提供することができる。
【0017】
また、前記銀粉末を含む導電性ペーストを用いて電極を製造する場合、時間経過による印刷性の変動を最小限に抑えて、印刷の際に適正な膜厚や形状を得ることができるため、品質が安定した電極などを製造することができるという効果を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】銀粉末の有機物含有量の分析方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明を詳細に説明する前に、本明細書で使用された用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、添付する特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定しようとするものではないことを理解すべきである。本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、他に記載がない限り、技術的に通常の技術を有する者に一般的に理解されるのと同じ意味を持つ。
【0020】
本明細書及び請求の範囲全般にわたって、別段の断りがない限り、包含(comprise、comprises、comprising)という用語は、言及された物、段階、一群の物、及び一群の段階を含むことを意味し、任意の他の物、段階、一群の物又は一群の段階を排除する意味で使用されたものではない。
【0021】
一方、本発明の様々な実施形態は、明確な反対の指摘がない限り、それ以外のいずれの他の実施形態と組み合わせられることができる。特に好ましい又は有利であると指し示す如何なる特徴も、好ましい又は有利であると指し示したそれ以外のいずれの特徴と組み合わせられることができる。以下、添付図面を参照して本発明の実施形態及びこれによる効果を説明する。
【0022】
本発明は、生成された銀粉末のコーティング工程でpH調整剤を用いてpHを調整することにより得られる、銀粉末を含む導電性ペーストの粘度安定性を改善して、前記銀粉末を含む導電性ペーストを用いて電極を製造する場合、時間経過による印刷性の変動を最小限に抑えて、印刷の際に適正な膜厚や形状を得ることができるため、品質の安定した電極などを製造することができるという効果を提供する。
【0023】
本発明の一実施形態による銀粉末の製造方法は、銀粉末製造段階(S1)、銀粉末回収段階(S2)及び銀粉末コーティング段階(S3)を含んで構成される。以下、各段階について具体的に説明する。
本発明の一実施形態による銀粉末製造段階(S1)は、銀塩製造段階(S11)及び銀塩還元段階(S12)を含む。
【0024】
本発明の一実施形態による銀塩製造段階(S11)は、インゴット状、粒状、顆粒状の銀(Silver、Ag)を酸処理して、銀イオン(Ag+)を含む銀塩(Silver salt)溶液を製造する段階であって、本段階を経て銀塩溶液を直接製造して銀粉末を製造することができるが、市販の硝酸銀(AgNO3)、銀塩錯体又は銀中間体溶液を用いて後続の段階を行うことができる。
【0025】
本発明の一実施形態による銀塩還元段階(S12)は、銀塩溶液に還元剤及びアンモニアを添加して銀イオンを還元して銀粒子(silver particle)を析出させる段階であって、銀イオン、アンモニア及び硝酸を含む第1反応液、及び還元剤を含む第2反応液を製造する反応液製造段階(S121)と、第1反応液と第2反応液とを反応させて銀粉末を得る析出段階(S122)と、を含む。
【0026】
本発明の一実施形態による反応液製造段階(S121)は、銀イオンを含む銀塩溶液にアンモニア及び硝酸を添加し、撹拌して溶解させることにより第1反応液を製造する。
【0027】
前記銀イオンは、銀カチオンの形で含まれる物質であれば限定されない。一例として、硝酸銀(AgNO3)、銀塩錯体又は銀中間体であり得る。好ましくは、硝酸銀(AgNO3)を使用することが良い。以下、銀イオンを500g/Lの濃度で含む硝酸銀(AgNO3)を用いることを一例として説明する。
【0028】
アンモニア(NH3)は、水溶液の形で使用されることができ、25%アンモニア水溶液を使用する場合、硝酸銀(AgNO3)100重量部に対して100~150重量部で添加する。アンモニア水溶液が100重量部未満で添加される場合、反応pHが低いため、銀イオンが全て還元されないか、或いは均一な粒子分布を形成させるのに問題があり、150重量部を超えて添加される場合、製造された銀粉末中の有機物含有量があまり高くなるという問題点がある。好ましくは、硝酸銀(AgNO3)100重量部に対して、25%アンモニア水溶液を120~140重量部で添加するのがよい。前記アンモニアは、その誘導体を含む。
【0029】
硝酸(HNO3)は、水溶液の形で使用されることができ、60%硝酸水溶液を使用する場合、硝酸銀(AgNO3)100重量部に対して40~120重量部で添加する。硝酸(HNO3)が40重量部未満で添加される場合には、銀粉末のサイズ(size)を調節するのに困難があり、硝酸(HNO3)が120重量部を超えて添加される場合には、有機物含有量が大きく増加するという問題点がある。好ましくは、硝酸銀(AgNO3)100重量部に対して、60%硝酸水溶液を80~100重量部で添加するのがよい。前記硝酸は、その誘導体を含む。
【0030】
銀イオン、アンモニア及び硝酸を含む第1反応液は、水などの溶剤に銀イオン、アンモニア水溶液及び硝酸水溶液を添加し、攪拌して溶解させることにより、水溶液の状態に製造されることができ、さらにスラリー状に製造されることができる。
本発明の一実施形態による反応液製造段階(S121)は、還元剤を含む第2反応液を製造する。
【0031】
前記還元剤は、アスコルビン酸、アルカノールアミン、ヒドロキノン、ヒドラジン及びホルマリンよりなる群から選択される1種以上であり、これらの中からヒドロキノンを好ましく選択することができる。還元剤の含有量は、第1反応液に含まれる硝酸銀(AgNO3)100重量部に対して10~20重量部で含まれることが好ましい。10重量部未満を使用する場合には、銀イオンが全て還元されないおそれがあり、20重量部を超えて使用する場合には、有機物含有量が増加する問題がある。好ましくは、硝酸銀100重量部に対して還元剤を14~16重量部使用して第2反応液を製造することが好ましい。
還元剤を含む第2反応液は、水などの溶媒に還元剤を添加し、攪拌して溶解させることにより、水溶液の状態に製造されることができる。
【0032】
本発明の一実施形態による析出段階(S122)は、第1反応液と第2反応液とを反応させて銀粉末を得る段階あって、反応液製造段階(S121)によって製造された第1反応液を攪拌する状態で第2反応液をゆっくり滴加するか或いは一括添加して反応させることができる。好ましくは、一括添加した後、さらに5分~10分間撹拌して混合液中で粒子を成長させることが、短時間内に還元反応が一括終了して粒子同士の凝集を防止し、分散性を高めることができてよい。
【0033】
一方、本発明の実施形態では、反応後に生成される有機物を除去するために、苛性ソーダなどのアルカリ洗浄溶液を硝酸銀(AgNO3)100重量部に対して80~160重量部で添加し、5~20分間撹拌する段階をさらに含むことができる。
【0034】
本発明の一実施形態による銀粉末回収段階(S2)は、銀粉末製造段階(S1)を経て銀粒子析出反応を完了した後、水溶液又はスラリー内に分散している銀粉末を濾過などを用いて分離し、洗浄及び乾燥する段階である。
【0035】
本発明による銀粉末の製造方法は、1回反応の際に約100kg以上反応させる量産工程に好適に適用される方法である。これに対し、従来の遠心分離方式の場合は、分離がきちんとできず、完全に分離するためには装備の大きさが大きくなるか或いは分離時間が長くなるため経済性が低下し、分離された銀粉末の水分含有量が高いため再び回収することが困難であって、量産工程に適さないので、本発明では、フィルタープレス(filter press)を用いて大量に生産された銀粉末を回収する。
【0036】
本発明の一実施形態による銀粉末回収段階(S2)は、前記銀粉末製造段階(S1)で析出した銀粒子を含むスラリー(slurry)状の混合液をフィルタープレスチャンバー内に投入し、スクイージングを介して濾液を分離してケーキ(cake)状の銀粉末を得る(スクイージング段階(S21))。その後、ケーキ状の銀粉末を純水などの洗浄液を用いて洗浄する(洗浄段階(S22))。ここに圧縮空気を流入させて含水率を調節しながら乾燥させることにより、銀粉末を回収する(乾燥段階(S23))。
【0037】
前記スクイージング段階(S21)は、製造された銀粉末を含むスラリー状の混合液をフィルタープレスチャンバー内に投入し、スクイージングを介して濾液を分離してケーキ状の銀粉末を得る段階であって、さらに好ましくは、投入されるスラリーはチャンバーの濾布で濾液を除去してケーキ状にする。
【0038】
前記洗浄段階(S22)は、濾過されたケーキ状の銀粉末に純水などの洗浄液を用いて洗浄する段階であって、さらに好ましくは、洗浄後に排出される廃液の導電率が50μScm以下になるまで洗浄することがよい。
前記スクイージング段階(S21)と前記洗浄段階(S22)は、繰り返し行われることができる。
【0039】
前記乾燥工程(S23)は、前記洗浄された銀粉末に圧縮空気を流入させて含水率を調節しながら乾燥させる段階であって、さらに好ましくは、圧縮空気を40分~80分間流入させて含水率が10%~20%となるまで乾燥させて銀粉末を回収するのが良い。
【0040】
本発明による銀粉末コーティング段階(S3)では、前記回収された銀粉末にpH調整剤を投入してpHを調整した後(pH調整段階(S31))、コーティング剤を投入してコーティング(コーティング段階(S32))することにより製造される銀粉末の粘度安定性を向上させることができる。
【0041】
前記pH調整段階(S31)は、前記回収された銀粉末にpH調整剤を投入して前記コーティング段階(S32)で最適なコーティングのためにpHを調整する段階であって、前記回収された銀粉末を純水に投入して攪拌した後、pH調整剤を投入し、攪拌する段階である。
【0042】
前記pH調整剤は、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(2-Amino-2-Methyl-1-propanol)、トリエタノールアミン(Triethanolamine)及び水酸化アンモニウム(Ammonium Hydroxide)よりなる群から選択される少なくとも1種であり、好ましくは、水酸化アンモニウム(Ammonium Hydroxide)を用いてpHを調整することが、後述する導電性ペーストの粘度安定性面でよい。
【0043】
前記pH調整段階(S31)は、前記回収された銀粉末100重量部に対して200~400重量部の純水に投入して5~15分間撹拌した後、前記pH調整剤を添加し、5~15分間撹拌してpHを8~12に調整する。上述のようにpHを調整して塩基性溶液に製造する場合、コーティング剤がよく解離して粉末に化学的に上手く結合することができ、これにより製造された粉末は、表面がよくコーティングされて分散安定性に優れる。しかも、化学的に結合するコーティングされる粉末の比表面積に応じて結合することができる量のみが存在する。これに対し、酸性溶液に製造する場合、コーティング剤が解離していない状態で粉末の表面に吸着されて溶剤又は他の条件によって除去できるので、銀粉末の表面がそのまま露出するので、粉末の粉末安定性が悪くなるという問題点がある。好ましくは、前記pH調整剤を用いてpHが10以上となるように調整することが好ましい。
【0044】
前記コーティング段階(S32)は、前記pH調整された銀粉末溶液にコーティング剤を投入してコーティングする段階であって、コーティング剤は、脂肪酸又はその塩を含むコーティング剤を用いる。
【0045】
前記脂肪酸としては、特に限定されないが、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、リノール酸、ラウリン酸及びリノール酸よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0046】
コーティング剤は、溶剤としてエタノール溶液を用いて濃度10%のコーティング溶液にして添加されることができ、前記還元された銀粉末250重量部に対して、前記コーティング剤は2~8重量部で添加される。前記コーティング剤が2重量部未満で添加されると、銀粉末の凝集抑制性やコーティング剤の吸着性が低下するという問題があり、前記コーティング剤が8重量部を超えて添加されると、銀粉末に吸着される量があまり多くなるため、銀粉末を含む導電性ペーストを用いて形成された配線層や電極などの導電性が十分に得られないという問題がある。好ましくは、前記還元された銀粉末250重量部に対してコーティング剤を5~8重量部で添加するのがよい。
【0047】
前記コーティング段階(S32)は、前記還元された銀粉末溶液に前記コーティング剤を投入し、10~30分間撹拌してコーティング剤をコーティングする。本発明によるコーティング段階は、酸化銀が還元された銀粉末にコーティングを施すため、還元段階を経ない場合に比べて、コーティング剤が銀粉末に吸着される量が増加する。
【0048】
前記pH調整段階(S31)の後、前記コーティング段階(S32)の前に洗浄段階をさらに含んでも、得られる銀粉末を含む導電性ペーストの粘度安定性が向上するが、pH調整段階(S31)後に洗浄せずにコーティング段階(S32)を行って得られる銀粉末を含む導電性ペーストの粘度安定性にさらに優れるという効果を提供する。
【0049】
その後、遠心分離を用いて銀粉末を回収し、洗浄して最終の銀粉末を得る。本発明による方法で製造された銀粉末は、後述する実験例に示すように、比表面積(m2/g)に対するコーティング剤の化学結合量(%)で表されるパラメータ値が0.3以下と低い特徴を有する。
【0050】
本発明では、分当たり10℃ずつ昇温させた条件下でTG/DTAを確認して化学結合量を区分するが、コーティング量が多い場合、物理吸着量と化学結合量がオーバーラップして化学結合量に物理吸着量が含まれて現れる。これにより、pHが低い条件でも高い化学結合量を示すので、粉末の比表面積に対するコーティング剤の化学結合量(%)で表されるパラメータ値が0.3を超え、この場合、ペーストの分散安定性及び経時的変化が低減する。すなわち、物理吸着量は、比表面積に関係なく増加し続ける値であって、粉末の比表面積に対するコーティング剤の化学結合量(%)で表されるパラメータ値が0.3を超える場合、コーティング剤の物理吸着量が増加してペーストの分散安定性が悪くなるといえる。
また、本発明は、本発明の一実施形態によって製造される銀粉末を含む導電性ペーストを提供する。導電性ペーストは、金属粉末及び有機ビヒクルを含む。
【0051】
前記金属粉末としては、本発明の一実施形態によって製造される銀粉末を使用する。金属粉末の含有量は、印刷の際に形成される電極の厚さ及び電極の線抵抗を考慮すると、導電性ペースト組成物の総重量に対して85~95重量%で含まれることが好ましい。
【0052】
前記有機ビヒクルは、溶剤に有機バインダーが5~15重量%で混合されたものであって、導電性ペースト組成物の総重量に対して5~15重量%で含まれることが好ましい。
【0053】
前記有機バインダーは、セルロースエステル系化合物として、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレートなどを例示することができ、セルロースエーテル化合物としては、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースなどを例示することができ、アクリル系化合物としては、ポリアクリルアミド、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレートなどを例示することができ、ビニル系としては、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコールなどを例示することができる。前記有機バインダーは、少なくとも1種選択されて使用されることができる。
【0054】
組成物の希釈のために使用される溶剤としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、ベンジルアルコール、テルピネオール(Terpineol)などのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセチルアセトンなどのケトン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルセロソルブ、ジグリム、ブチルカルビトールなどのエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、炭酸ジエチル、TXIB(1-イソプロピル-2,2-ジメチルトリメチレンジイソブチレート)、酢酸カルビトール、酢酸ブチルカルビトールなどのエステル類;ジメチルスルホキシド、スルホランなどのスルホキシド及びスルホン類;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1,2-トリクロロエタンなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、o-キシレン、p-キシレン、m-キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族類などよりなる化合物の中から少なくとも1種選択されて使用されることが好ましい。
また、太陽電池電極形成用に使用される場合、本発明による導電性ペーストは、金属粉末、ガラスフリット及び有機ビヒクルを含んで構成される。
【0055】
前記金属粉末としては、本発明の一実施形態によって製造された銀粉末を使用する。金属粉末の含有量は、印刷の際に形成される電極の厚さ及び電極の線抵抗を考慮すると、導電性ペースト組成物の総重量に対して85~95重量%であることが好ましい。
【0056】
前記ガラスフリットの組成や粒径、形状において特に制限はない。有鉛ガラスフリットだけでなく、無鉛ガラスフリットも使用可能である。好ましくは、ガラスフリットの成分及び含有量として、酸化物換算基準で、PbOは5~29mol%、TeO2は20~34mol%、Bi2O3は3~20mol%、SiO2は20mol%以下、B2O3は10mol%以下、アルカリ金属(Li、Na、K等)及びアルカリ土類金属(Ca、Mg等)は10~20mol%を含有することがよい。前記各成分の有機的含有量の組み合わせによって、電極線幅の増加を防ぎ、高い面抵抗で優れた接触抵抗を示すようにすることができ、優れた短絡電流特性を示すようにすることができる。
【0057】
ガラスフリットの平均粒径は、限定されないが、0.5~10μmの範囲内の粒径を有することができ、平均粒径の異なる多種の粒子を混合して使用することもできる。好ましくは、少なくとも1種のガラスフリットは、平均粒径(D50)2μm以上10μm以下のものを使用するのがよい。これにより、焼成時の反応性が優秀になり、特に高温でn層のダメージを最小限に抑えることができ、付着力が改善され、開放電圧(Voc)を優秀にすることができる。また、焼成の際に電極の線幅が増加することを低減することができる。
【0058】
さらに、ガラスフリットの含有量は、導電性ペースト組成物の総重量に対して1~5重量%であることが好ましいが、1重量%未満の場合には、不完全焼成が行われて電気比抵抗が高くなるおそれがあり、5重量%を超える場合には、銀粉末の焼成体内にガラス成分が多くなって電気比抵抗がやはり高くなるおそれがある。
【0059】
前記有機ビヒクルは、限定されないが、有機バインダーや溶剤などが含まれてもよい。場合によっては、溶剤は省略可能である。有機ビヒクルは、限定されないが、導電性ペースト組成物の総重量に対して1~10重量%で含まれることが好ましい。
【0060】
有機ビヒクルは、金属粉末とガラスフリットなどが均一に混合された状態を維持する特性が要求され、例えばスクリーン印刷によって導電性ペーストが基材に塗布されるときに、導電性ペーストを均質にして、印刷パターンのぼけ及び流れを抑制し、さらにスクリーンプレートからの導電性ペーストの吐出性及び板分離性を向上させる特性が求められる。
【0061】
有機ビヒクルに含まれる有機バインダーは、限定されないが、セルロースエステル系化合物として、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレートなどを例示することができ、セルロースエーテル化合物としては、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースなどを例示することができ、アクリル系化合物としては、ポリアクリルアミド、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレートなどを例示することができ、ビニル系としては、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコールなどを例示することができる。前記有機バインダーは、少なくとも1種選択されて使用されることができる。
【0062】
組成物の希釈に使用される溶剤としては、α-テルピネオール、テキサノール、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、シクロヘキサン、ヘキサン、トルエン、ベンジルアルコール、ジオキサン、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどよりなる化合物の中から少なくとも1種選択されて使用されるのがよい。
【0063】
本発明による導電性ペースト組成物は、必要に応じて、通常知られている添加剤、例えば、分散剤、可塑剤、粘度調整剤、界面活性剤、酸化剤、金属酸化物、金属有機化合物などをさらに含むことができる。
【0064】
本発明による導電性ペーストは、24時間経過後の粘度増感率が±12%以下であり、48時間経過後の粘度増感率が±17%以下であって、優れた粘度安定性を有することを後述の実施例及び実験例で確認することができる。
【0065】
また、本発明は、前記導電性ペーストを基材上に塗布し、乾燥及び焼成することを特徴とする太陽電池の電極形成方法、及び前記方法によって製造された太陽電池電極を提供する。本発明の太陽電池の電極形成方法において、前記特性の銀粉末を含む導電性ペーストを用いることを除いて、基材、印刷、乾燥及び焼成は、一般に太陽電池の製造に用いられる方法が使用できるのは言うまでもない。一例として、基材はシリコンウェーハであり得る。
【実施例】
【0066】
実施例及び比較例-銀粉末の製造
(1)実施例1
常温の純水6.6kgに銀500g/L濃度の硝酸銀1.28kg、アンモニア(濃度25%)1.57kg及び硝酸(濃度60%)1.26kgを入れ、攪拌して溶解させることにより、第1水溶液を調製した。一方、常温の純水10kgにヒドロキノン0.2kgを入れ、攪拌して溶解させることにより、第2水溶液を調製した。次いで、第1水溶液を撹拌した状態とし、この第1水溶液に第2水溶液を一括添加し、添加終了後からさらに5分間撹拌して混合液中で粒子を成長させた。反応後に生成される有機物を除去するために、苛性ソーダを0.8kg入れ、10分間撹拌した。
【0067】
フィルタープレス(filter press)を用いて混合液中の銀粉末を回収し、純水をさらに流して廃液の導電率が50μScm以下となるようにする。その後、圧縮空気を1時間流して含水率が約10~20%となるまで乾燥させて銀粉末を回収した。
【0068】
前記回収した銀粉末250gを純水750gに入れ、ホモミキサー(Homo-mixer)で10分攪拌した後、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(2-Amino-2-Methyl-1-propanol)(90%)4.7gを投入し、10分攪拌した後、10%ステアリン酸エタノール溶液を7.5g入れ、20分間コーティングを行った。その後、遠心分離で回収し、導電率が50μScm以下となるように洗浄を行って銀粉末を得た。
得られた銀粉末を80℃で12時間乾燥させた後、フードミキサーで粉砕し、ジェットミル(Jet-mill)で解砕して最終銀粉末を得た。
【0069】
(2)実施例2
常温の純水6.6kgに銀500g/L濃度の硝酸銀1.28kg、アンモニア(濃度25%)1.57kg及び硝酸(濃度60%)1.26kgを入れ、攪拌して溶解させることにより、第1水溶液を調製した。一方、常温の純水10kgにヒドロキノン0.2kgを入れ、攪拌して溶解させることにより、第2水溶液を調製した。次いで、第1水溶液を撹拌した状態とし、この第1水溶液に第2水溶液を一括添加し、添加終了後からさらに5分間撹拌して混合液中で粒子を成長させた。反応後に生成される有機物を除去するために、苛性ソーダを0.8kg入れ、10分間撹拌した。
【0070】
フィルタープレス(filter press)を用いて混合液中の銀粉末を回収し、純水をさらに流して廃液の導電率が50μScm以下となるようにする。その後、圧縮空気を1時間流して含水率が約10~20%となるまで乾燥させて銀粉末を回収した。
【0071】
前記回収した銀粉末250gを純水750gに入れ、ホモミキサー(Homo-mixer)で10分攪拌した後、トリエタノールアミン(Triethanolamine)(98%)50gを投入し、10分攪拌した後、10%ステアリン酸エタノール溶液を7.5g入れ、20分間コーティングを行った。その後、遠心分離で回収し、導電率が50μScm以下となるように洗浄を行って銀粉末を得た。
得られた銀粉末を80℃で12時間乾燥させた後、フードミキサーで粉砕し、ジェットミル(Jet-mill)で解砕して最終銀粉末を得た。
【0072】
(3)実施例3
常温の純水6.6kgに銀500g/L濃度の硝酸銀1.28kg、アンモニア(濃度25%)1.57kg及び硝酸(濃度60%)1.26kgを入れ、攪拌して溶解させることにより、第1水溶液を調製した。一方、常温の純水10kgにヒドロキノン0.2kgを入れ、撹拌して溶解させることにより、第2水溶液を調製した。次いで、第1水溶液を撹拌した状態とし、この第1水溶液に第2水溶液を一括添加し、添加終了後からさらに5分間撹拌して混合液中で粒子を成長させた。反応後に生成される有機物を除去するために、苛性ソーダを0.8kg入れて10分間撹拌した。
【0073】
フィルタープレスを用いて混合液中の銀粉末を回収し、純水をさらに流して廃液の導電率が50μScm以下となるようにする。その後、圧縮空気を1時間流して含水率が約10~20%となるまで乾燥させて銀粉末を回収した。
【0074】
前記回収した銀粉末250gを純水750gに入れ、ホモミキサー(Homo-mixer)で10分攪拌した後、水酸化アンモニウム(Ammonium Hydroxide)(25%)0.23gを投入し、10分攪拌した後、10%ステアリン酸エタノール溶液を7.5g入れて20分間コーティングを行った。その後、遠心分離で回収し、導電率が50μScm以下となるように洗浄を行って銀粉末を得た。
得られた銀粉末を80℃で12時間乾燥させた後、フードミキサーで粉砕し、ジェットミルで解砕して最終銀粉末を得た。
【0075】
(4)実施例4
常温の純水6.6kgに銀500g/L濃度の硝酸銀1.28kg、アンモニア(濃度25%)1.57kg及び硝酸(濃度60%)1.26kgを入れ、攪拌して溶解させることにより、第1水溶液を調製した。一方、常温の純水10kgにヒドロキノン0.2kgを入れ、攪拌して溶解させることにより、第2水溶液を調製した。次いで、第1水溶液を撹拌した状態とし、この第1水溶液に第2水溶液を一括添加し、添加終了後からさらに5分間撹拌して混合液中で粒子を成長させた。反応後に生成される有機物を除去するために、苛性ソーダを0.8kg入れて10分間撹拌した。
【0076】
フィルタープレスを用いて混合液中の銀粉末を回収し、純水をさらに流して廃液の導電率が50μScm以下となるようにする。その後、圧縮空気を1時間流して含水率が約10~20%となるまで乾燥させて銀粉末を回収した。
【0077】
前記回収した銀粉末250gを純水750gに入れ、ホモミキサー(Homo-mixer)で10分攪拌した後、水酸化アンモニウム(25%)0.46gを投入し、10分攪拌した後、10%ステアリン酸エタノール溶液を7.5g入れ、20分間コーティングを行った。その後、遠心分離で回収し、導電率が50μScm以下となるように洗浄を行って銀粉末を得た。
得られた銀粉末を80℃で12時間乾燥させた後、フードミキサーで粉砕し、ジェットミルで解砕して最終銀粉末を得た。
【0078】
(5)実施例5
常温の純水6.6kgに銀500g/L濃度の硝酸銀1.28kg、アンモニア(濃度25%)1.57kg及び硝酸(濃度60%)1.26kgを入れ、攪拌して溶解させることにより、第1水溶液を調製した。一方、常温の純水10kgにヒドロキノン0.2kgを入れ、攪拌して溶解させることにより、第2水溶液を調製した。次いで、第1水溶液を撹拌した状態とし、この第1水溶液に第2水溶液を一括添加し、添加終了後からさらに5分間撹拌して混合液中で粒子を成長させた。反応後に生成される有機物を除去するために、苛性ソーダを0.8kg入れて10分間撹拌した。
【0079】
フィルタープレスを用いて混合液中の銀粉末を回収し、純水をさらに流して廃液の導電率が50μScm以下となるようにする。その後、圧縮空気を1時間流して含水率が約10~20%となるまで乾燥させて銀粉末を回収した。
【0080】
前記回収した銀粉末250gを純水750gに入れ、ホモミキサーで10分攪拌した後、水酸化アンモニウム(25%)4.6gを投入し、10分攪拌した後、10%ステアリン酸エタノール溶液を7.5g入れ、20分間コーティングを行った。その後、遠心分離で回収し、導電率が50μScm以下となるように洗浄を行って銀粉末を得た。
得られた銀粉末を80℃で12時間乾燥させた後、フードミキサーで粉砕し、ジェットミルで解砕して最終銀粉末を得た。
【0081】
(6)比較例1
常温の純水6.6kgに銀500g/L濃度の硝酸銀1.28kg、アンモニア(濃度25%)1.57kg及び硝酸(濃度60%)1.26kgを入れ、攪拌して溶解させることにより、第1水溶液を調製した。一方、常温の純水10kgにヒドロキノン0.2kgを入れ、攪拌して溶解させることにより、第2水溶液を調製した。次いで、第1水溶液を撹拌した状態とし、この第1水溶液に第2水溶液を一括添加し、添加終了後からさらに5分間撹拌して混合液中で粒子を成長させた。その後、撹拌を止め、混合液中の粒子を沈降させた後、混合液の上澄み液を捨て、混合液を遠心分離機を用いて濾過し、濾材を純水で洗浄し、乾燥させることにより、銀粉末を回収した。
【0082】
前記回収した銀粉末250gを純水750gに入れ、ホモミキサー(Homo-mixer)で10分撹拌した後、10%ステアリン酸エタノール溶液を7.5g入れ、20分間コーティングを行った。その後、遠心分離で回収し、導電率が50μScm以下となるように洗浄を行って銀粉末を得た。
得られた銀粉末を80℃で12時間乾燥させた後、フードミキサーで粉砕し、ジェットミル(Jet-mill)で解砕して最終銀粉末を得た。
【0083】
【0084】
実験例(1)-比表面積、粒度分布及び有機物含有量の分析
前記実施例及び比較例で製造された銀粉末に対して100℃で1時間水分を除去した後、比表面積測定装置(BELSORP mini-II、ベルジャパン社製)を用いて窒素吸着による比表面積を分析した。その結果(BET)を下記表2に示す。
【0085】
レーザー回折法による粒度分布は、銀粉末50mgをエタノール30mlに添加し、超音波洗浄機に3分間分散させた後、粒度分布測定装置(S3500、マイクロトラック社製)を用いて測定し、その結果(D10、D50、D90)を下記表2に示す。
【0086】
TA instrument社のSDT650を用いて、空気中、昇温速度10℃/minで常温~500℃の範囲でTG/DTA分析を行って有機物含有量を測定した。
図1に示すように、100℃からDTAグラフの発熱開始温度までの重さ減量を表面処理剤の物理吸着量として、DTAグラフの発熱開始温度から発熱ピーク温度までの重さ減少量を表面処理剤の化学結合量(Chemical-IGL)として測定し、その結果(C-IGL)を下記表2に示す。
【0087】
【0088】
前記表2に示すように、pHを8以上に調整した後にコーティングした場合は、pHを調整していない状態でコーティングした場合に比べて、粒度分布や比表面積は類似するが、コーティング剤の化学結合量(C-IGL)は減少した。
銀粉末の比表面積に対するコーティング剤の化学結合量(C-IGL/BET)が実施例の場合に0.3以下であることを確認することができる。
【0089】
製造例-導電性ペーストの製造
ETHOCELTM Std200エチルセルロース(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー製)7.7重量%とジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(大井化金株式会社製)92.3重量%とが混合されたバインダー10gと、実施例及び比較例によって製造された銀粉末90gを自転公転式真空攪拌脱泡装置で混合した後、三本ロールを用いて導電性ペーストを製造した。
【0090】
実験例(2)-粘度経時変化分析
得られた導電性ペーストに対して、ブルックフィールド社製の粘度計であるDV2T(デジタル粘度計)によって25℃、30RPMでの粘度を測定した。このとき、Small sample adapterとNo.14 spindleを使用した。
【0091】
粘度経時変化を分析するために、前記導電性ペースト製造直後の粘度を測定し、50℃のオーブンで24時間、48時間保管した以後の粘度をそれぞれ測定した。
【0092】
【0093】
上記の結果より、実施例1~5による導電性ペーストは、24時間経過後の粘度増感率が±12%以下であり、48時間経過後の粘度増感率が±17%以下であることを確認することができる。特に、pH調整剤として、水酸化アンモニウムを用いてpHを11以上に調整した実施例5による導電性ペーストは、24時間経過後の粘度増感率が±2%であり、48時間経過後の粘度増感率が±3%であって、最も優れた粘度安定性を確保することができることが分かる。
【0094】
比較例1の場合、導電性ペーストの24時間経過後の粘度増感率が±15%であり、48時間経過後の粘度増感率が±21%であって、粘度安定性の確保が難しいことを確認することができる。
【0095】
上述した各実施例で例示された特徴、構造、効果などは、実施例の属する分野における通常の知識を有する者によって他の実施例に対しても組み合わせ又は変形して実施可能である。したがって、それらの組み合わせ及び変形に関連する内容は、本発明の範囲に含まれると解釈されるべきである。
【国際調査報告】