(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-08
(54)【発明の名称】免疫抑制癌の処置
(51)【国際特許分類】
A61K 47/62 20170101AFI20230426BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230426BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230426BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230426BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20230426BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230426BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20230426BHJP
A61K 47/56 20170101ALI20230426BHJP
A61K 47/59 20170101ALI20230426BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230426BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230426BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20230426BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230426BHJP
A61K 33/00 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
A61K47/62
A61P37/04
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P35/04
A61K45/00
A61K47/69
A61K47/56
A61K47/59
A61K47/68
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K38/19
A61K35/17
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K39/395 G
A61K39/395 U
A61K33/00 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559317
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(85)【翻訳文提出日】2022-10-27
(86)【国際出願番号】 EP2021058146
(87)【国際公開番号】W WO2021191464
(87)【国際公開日】2021-09-30
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511115734
【氏名又は名称】インスティテュート デ メディシナ モレキュラー ジョアオ ロボ アントゥネス
【氏名又は名称原語表記】Instituto de Medicina Molecular Joao Lobo Antunes
【住所又は居所原語表記】Faculdade de Medicina, Universidade de Lisboa, Avenida professor Egas Moniz,1649-028 Lisbon,Portuguese Republic
(71)【出願人】
【識別番号】522380619
【氏名又は名称】ファクルダーデ デ メディシナ ダ ウニベルシダーデ デ リスボア
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラバオ アルピアルサ ソウサ デ アルメイダ カルロス ディオゴ
(72)【発明者】
【氏名】ロペス ベルナルデス ゴンサロ ジョゼ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC07
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA19
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4C084ZC751
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4C085CC03
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4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA08
4C086HA09
4C086HA10
4C086HA11
4C086HA21
4C086HA28
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZB02
4C086ZB09
4C086ZB26
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087CA04
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA13
4C087ZB03
4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明は、種々の態様及び実施形態において、がん処置において免疫調節効果(たとえば、免疫チェックポイント分子の発現及び抑制性マクロファージのレベルの減少)を及ぼすためにCO放出分子(たとえば、腫瘍選択的リガンドと一酸化炭素(CO)を放出することができる基とを含む複合体)を用いることを伴う。これは、腫瘍組織における免疫抑制を減らすことができ、また、たとえば免疫抑制癌の処置またはがん免疫療法と組み合わせたがんの処置において有用である可能性がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍免疫抑制を低減する方法であって、
1つ以上の一酸化炭素放出基と腫瘍選択的リガンドとを含む複合体をそれを必要としている個体に投与し、任意選択でがん免疫療法を投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
がん免疫療法を投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記がんは免疫抑制癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記免疫抑制癌は、免疫チェックポイントタンパク質介在のT細胞機能の阻害を特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記免疫チェックポイントタンパク質はCTLA-4である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記免疫チェックポイントタンパク質はPD-1である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記免疫抑制癌は、前記個体の腫瘍組織内のT細胞抑制細胞の存在を特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記T細胞抑制細胞は、腫瘍関連マクロファージ(TAM)である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記一酸化炭素放出基は金属カルボニル基である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記金属カルボニル基は、モノ、ジ、トリ、テトラ、またはペンタカルボニル金属基である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記一酸化炭素放出基は、ルテニウム、モリブデン、コバルト、レニウム、及び鉄から選択される金属原子を含む請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記金属原子はルテニウムまたはモリブデンである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記複合体は、化学式リガンド-[金属(CO)n1]n
2を有し、n
1は1~5であり、n
2は1~30である、請求項9~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記一酸化炭素放出基はルテニウムカルボニル基である、請求項9~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記複合体は、化学式リガンド-[Ru(CO)
2]nを有し、nは1~16である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記一酸化炭素放出基はRu
II(CO)
2である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記複合体は2つ以上の一酸化炭素放出基を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記複合体は、前記一酸化炭素放出基をカプセル化するナノ粒子であり、前記腫瘍選択的リガンドは前記ナノ粒子の表面に結合されている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ナノ粒子は、ポリマーまたは無機コアまたはシェルを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ナノ粒子は、PEGを含むブロックコポリマーを含む、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記ナノ粒子はPEGブロックコポリマーを含み、腫瘍選択的リガンドが前記PEG末端に結合されている、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記腫瘍選択的リガンドは、バイオポリマー、合成ポリマー、ペプチド、アプタマー、または小分子である、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記腫瘍選択的リガンドはタンパク質である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記腫瘍選択的リガンドは血漿タンパク質である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記腫瘍選択的リガンドは、抗体、アルブミン、グロブリン、リポタンパク質、またはトランスフェリンである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記腫瘍選択的リガンドは、血清アルブミンまたはその断片である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記血漿タンパク質はヒト血清アルブミンである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記腫瘍選択的リガンドは、抗体またはその抗原結合部分を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記抗体またはその抗原結合部分は腫瘍抗原に特異的に結合する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記抗体またはその抗原結合部分はPD-1またはCTLA4に特異的に結合する、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記一酸化炭素放出基は、前記タンパク質内のヒスチジン残基に付与共有結合によって付着している、請求項23~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記複合体は、前記タンパク質を1つ以上の金属カルボニル基を含むCO放出分子と反応させて、前記タンパク質の1つ以上のヒスチジン残基を前記金属カルボニル基によって金属化することによって生成される請求項23~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記複合体は、前記タンパク質をCORM-3と反応させて、前記タンパク質の1つ以上のヒスチジン残基をルテニウムジカルボニル基によって金属化することによって生成される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記がんは、固形癌、たとえば肉腫、癌腫、またはリンパ腫である請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記がんは、皮膚癌、黒色腫、膀胱癌、脳腫瘍、乳癌、子宮癌、口腔癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、肝臓癌、頭頸部癌、食道癌、膵臓癌、腎臓癌、副腎癌、胃癌、精巣癌、前記胆嚢及び胆道の癌、甲状腺癌、胸腺癌、及び骨肉腫である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記がんは原発腫瘍である、請求項34または請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記がんは転移性である、請求項34または請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記複合体を、週に1回か2回または月に1回か2回、投与する請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記複合体を少なくとも4週間の間、投与する、請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記CO放出複合体を静脈内投与する、請求項1~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
複合体をがん免疫療法と組み合わせて前記個体に投与する、請求項1~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記がん免疫療法は、免疫チェックポイント阻害剤療法、サイトカイン療法、免疫共刺激療法、及び養子細胞療法から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記がん免疫療法は、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、及び抗PD-L1抗体から選択される免疫チェックポイント阻害剤である、請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
前記免疫チェックポイント阻害剤は、イピリムマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、及びアベルマブである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記がん免疫療法は、任意選択でCD28アゴニストまたはOX40アゴニストである免疫共刺激療法である、請求項41または請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記がん免疫療法は養子細胞療法である、請求項41または請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記がん免疫療法はT細胞養子細胞療法である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記がん免疫療法はキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法である、請求項46または請求項47に記載の方法。
【請求項49】
治療レジメンは、免疫療法レジメンを開始する前、1~4週間の間、前記複合体を投与することを含む、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記治療レジメンは、がん免疫療法レジメンが終了した後に1週間以上または1ヶ月以上、前記複合体を投与することを含む、請求項1~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記複合体及び免疫療法を、併用療法を含むレジメンにおいて投与する、請求項1~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記患者は以前は、任意選択でチェックポイント阻害剤療法である免疫療法に対して、無反応であったか、部分的にのみ反応していたか、または耐性になっていた請求項1~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記患者はCTLA-4またはPD-1遮断療法に抵抗性である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
免疫抑制癌の処置方法、がんの処置方法、または請求項1~53のいずれか1項に記載の腫瘍免疫抑制を低減する処置方法で用いる1つ以上の一酸化炭素放出基及び腫瘍選択的リガンドを含む、複合体。
【請求項55】
免疫抑制癌の処置方法、がんの処置方法、または請求項1~53のいずれか1項に記載の腫瘍免疫抑制を低減する処置方法で用いる薬物の製造における腫瘍選択的リガンドに付着した1つ以上の一酸化炭素放出基を含む、複合体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は免疫抑制癌の処置に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは世界的に死亡の主な原因の1つであり、罹患率は時間とともに体系的に増加している[1]。がん研究の進歩によって、腫瘍発生に対する宿主保護に対して免疫系が果たす役割についての我々の理解が広がった。免疫系は、外来生物または成分に由来する極めて多量の抗原を認識できるだけでなく、腫瘍細胞も標的とする[2]。しかし、がん細胞は、免疫細胞を介した認識及び破壊を覆して回避する免疫回避の多くのメカニズムを有している。腫瘍免疫のメカニズムを目標にすることで、臨床試験において有望な結果をもたらしている新規な治療アプローチの開発につながった。免疫療法は、免疫系を利用して腫瘍細胞を特異的に標的とするがん処置における有望なアプローチである[2~4]。しかし、免疫療法はすべてのがん患者において効果的なわけではなく、完全または永続的な臨床反応が得られないことが多い[5、6]。したがって、抗腫瘍免疫応答を促進する新しい戦術が望まれている。
【0003】
一酸化炭素(CO)は、いくつかのがんモデルにおいて有用な特性を有することが観察されているいくつかの多面的効果を伴うガス状メディエーターである[7~10]。しかし、これらの観察は一貫して観察されてはおらず、いくつかのモデルではCOは腫瘍増殖または進行にも関連付けられている[65]。さらに、COの毒性性質は、COを標的組織に、正確かつ制御された方法で、生物学的に適切な用量で送達しなくてはいけないことを意味する。しかしながら、これらの研究の大部分はがん細胞におけるその直接効果に焦点を当てているため、がん免疫におけるCOの役割は事実上分かっていない。
【0004】
高濃度のCOにさらすと著しく有毒であるため、COの外因性送達は厳密に制御して非常に低い用量で与えなければならない。より高い治療用量の全身投与のためにCO放出分子またはCORMが開発された。種々の疾患モデルにおいてCORMがテストされた[7~10]。免疫系に対する及び腫瘍増殖におけるCOの効果の背後にある分子機構は、完全には理解されていない。CORMには、組織または細胞の選択性がなく、潜在的にCOを循環で放出する場合があり、タンパク質または抗体キャリアと結合すると、特定組織へのより制御された送達が可能になる場合がある。たとえば、光CORMは市販のマウス抗体と以前に結合した[11]。しかし、その潜在的な抗癌効果はがん細胞において直接研究されたのみであり、免疫細胞との共培養またはインビボでは研究されていない。
【0005】
免疫抑制癌に対する新しい改善された特定の処置が求められており、ならびに腫瘍を処置するためのCOの効果的な送達をもたらす組成が求められている。
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、CO放出分子(たとえば、腫瘍選択的リガンドと一酸化炭素(CO)を放出することができる基とを含む複合体)が、免疫調節効果(たとえば、免疫チェックポイント分子の発現及び抑制性マクロファージのレベルの減少)を及ぼすことを予想外に見出した。これは、腫瘍組織における免疫抑制を減らすことができ、たとえば、免疫抑制癌の処置またはがん免疫療法と組み合わせたがんの処置において有用である可能性がある。
【0007】
本発明の第1の態様によって、免疫抑制癌を処置するかまたは腫瘍免疫抑制を低減する方法であって、腫瘍選択的リガンドに付着した一酸化炭素(CO)放出基を含む複合体をそれを必要としている個体に投与することを含む方法が提供される。
【0008】
本発明の第2の態様によって、がん患者を処置する方法であって、一酸化炭素放出基及び腫瘍選択的リガンドを含む複合体を投与することと、がん免疫療法を投与することと、を含む方法が提供される。
【0009】
本発明の第3の態様によって、免疫抑制癌を処置するかもしくは腫瘍免疫抑制を低減する方法またはがんを処置する方法(たとえば、第1または第2の態様の方法)で用いる腫瘍選択的リガンドに共有結合した一酸化炭素放出基を含む複合体が提供される。
【0010】
本発明の第4の態様によって、免疫抑制癌を処置するかもしくは腫瘍免疫抑制を低減する方法またはがん免疫療法と組み合わせてがんを処置する方法(たとえば、第1または第2の態様の方法)で用いる薬物の製造における腫瘍選択的リガンドに共有結合した一酸化炭素放出基を含む複合体の使用が提供される。
【0011】
一酸化炭素放出基は、カルボニル金属錯体、たとえばモノ、ジ、トリ、テトラまたはペンタカルボニル金属錯体、たとえばモノ、ジ、トリ、テトラ、またはペンタカルボニルルテニウム錯体であってもよい。たとえば、一酸化炭素放出基は化学式M(CO)2の錯体であってもよい。ここで、Mは金属原子、たとえばRu、Mo、またはFeである。いくつかの実施形態では、MはRuである。
【0012】
第1の~第4の態様のいくつかの実施形態では、腫瘍選択的リガンドは血清アルブミン、好ましくはヒト血清アルブミンである。
【0013】
第1の~第4の態様のいくつかの実施形態では、複合体は化学式リガンド-[金属(CO)n1]n2を有していてもよい。ここで、n1は1~5であり、n2は1~30である。
【0014】
たとえば、複合体は化学式HSA-[Ru(CO)2]nを有していてもよい。ここで、HSAはヒト血清アルブミンであり、nは1~16である。
【0015】
第1の~第4の態様のいくつかの実施形態では、複合体は、一酸化炭素放出基をカプセル化するナノ粒子または微小粒子であり、腫瘍選択的リガンドはナノ粒子の表面に結合されている。
【0016】
第1の~第4の態様のいくつかの実施形態では、複合体をがん免疫療法(たとえば免疫チェックポイント阻害剤、たとえばPD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、またはCTLA-4阻害剤である)と組み合わせて個体に投与してもよい。いくつかの実施形態では、複合体を細胞療法(たとえば、養子T細胞療法またはCAR-T療法)と組み合わせて個体に投与してもよい。さらに他の実施形態では、複合体を細胞傷害性化学療法と組み合わせて個体に投与する。
【0017】
本発明の他の態様及び実施形態について以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】a及びbは、(a)結合戦略の概略図、(b)ネイティブrHSA(リコンブミン)及びrHSA-CORM(リコンブミン-Ru(CO)2)の質量スペクトルを示す図である。
【
図2】a及びbは、骨髄由来マクロファージ細胞(BMDM)及び結腸直腸がん細胞(CT26)におけるCO放出を示す図である。(a)COP-1の微視的画像及び平均蛍光強度(MFI)、BMDM細胞内でCOP-1付与後、0、30、及び60分。(b)(a)と同じだがCT26細胞内である。細胞は以前に、1μMのrHSA-CORMまたはrHSA-DMSOによって30分間培養した。垂直方向の破線は、細胞へのCOP-1付加のタイミングを表す。
【
図3】マウス内でのCO生体内分布、及びrHSA-CORMの静脈注射後の循環30分間におけるカルボキシヘモグロビン(CO-Hb)レベルを示す図である。
【
図4-1】COがCT26及びMC38腫瘍の生存期間を延ばし、腫瘍増殖を弱めることを示す図である。(a)実験の概略図。(b)rHSA-CORM処置(rHSA-CORM、n=8)または対照処置(rHSA-DMSO、n=8)後のCT26(結腸癌)腫瘍の生存曲線及び腫瘍増殖。(c)13日目における腫瘍及び鼡径リンパ節(iLN)。
【
図4-2】COがCT26及びMC38腫瘍の生存期間を延ばし、腫瘍増殖を弱めることを示す図である。(d)rHSA-CORMまたは対照を伴う処置後のMC38細胞を伴う結腸がんモデルにおける腫瘍重量。プリズム8を用いて統計分析を行った。特に断らない限り、統計的検定に対して、P値が0.05未満であるとき、有意であると考えられる。腫瘍増殖結果を有意である場合に(95%信頼区間)、一元配置分散分析によって分析した。担癌マウスの生存期間の比較を、ログランクマンテルコックス検定(95%信頼区間)を用いて行った。
【
図5】COが免疫不全マウスにおける生存期間にも腫瘍増殖にも影響しないこと(適切で機能する免疫系なしで)を示す図である。毎日のrHSA-CORM処置後のNSGマウスの全生存期間及びCT26腫瘍体積を示す(rHSA-CORM、n=6;rHSA-DMSO、n=6)。
【
図6】aは、CO処置されたマウスが、腫瘍浸潤T細胞における免疫チェックポイントマーカーCTLA-4及びPD-1の発現の減少を示すことを示す。bは、TNFα及びIFNγを発現する細胞の存在量の増加を示す。(CORM、n=4;rHSA-DMSO、n=4)。
【
図7-1】aは、腫瘍内の異なるサイトカイン及びケモカインの産生にCOが影響することを示す図である。IL-20の産生は、CO処置によって完全に抑止されているように見える。rHSA-CORM処置(rHSA-CORM、n=3;rHSA-DMSO、n=3)後の腫瘍におけるサイトカイン(左)及びケモカイン(右)のタンパク質定量化。
【
図7-2】bは、担癌BALB/cマウスにおけるCD4及びCD8枯渇後の腫瘍サイズを示す図である。cは、αPD-1、αCTLA-4、及びrHSA-CORM間での併用療法による生存を示す図である(n=8)。
【
図7-3】dは、cからの生存マウスにおけるCT26再チャレンジ(ナイーブ、n=8;ICB、n=1;COMBO、n=4)の概略図及び腫瘍増殖曲線を示す図である。
【
図8】CO処置によって腫瘍における単球及びTAMの存在量が減ることを示す図である(rHSA-CORM、n=4;rHSA-DMSO、n=4)。
【
図9-1】マクロファージの枯渇がCT26腫瘍におけるCO処置の効果を模倣することを示す図である(rHSA-CORM、n=4;rHSA-DMSO、n=4;rHSA-CORM+Clod Lip、n=4;rHSA-DMSO+Clod Lip、n=4)。概略図(a)、腫瘍体積(b)、マクロファージ枯渇を示すフローサイトメトリープロット(c)、DC及びTAMレベル(d)を示す。(e)は、マクロファージにおけるKi-67発現とIL-20の産生とを示す。
【
図9-2】マクロファージの枯渇がCT26腫瘍におけるCO処置の効果を模倣することを示す図である(rHSA-CORM、n=4;rHSA-DMSO、n=4;rHSA-CORM+Clod Lip、n=4;rHSA-DMSO+Clod Lip、n=4)。(e)は、マクロファージにおけるKi-67発現とIL-20の産生とを示す。
【
図10】a~hは、rHSA-CORM処置が骨髄由来マクロファージの生存能力及び分極に影響を与えることを示す図である。(a)実験の概略図。(b)単球マクロファージ分化の2日目及び6日目におけるBMDMのFACSプロット(rHSA-CORM、n=3;rHSA-DMSO、n=3)。(c)マクロファージ分化後の細胞の絶対数(6日目)。(d)(b)から得られた単球(Mono)、移行単球(Mono/Mφ)、及びマクロファージ(Mφ)の相対存在量。(e)分化の2日目及び6日目におけるマクロファージのKi-67染色。(f)分化の2日目及び6日目におけるマクロファージ内の生存染色及びアネキシンV。(g)rHSA-CORMまたはrHSA-DMSO(CTRL)条件での分極後のBMDMの細胞生存能力。(h)それらの個々の特定マーカーによる各分極状態のFACSプロット。
【
図11】a、bは、細胞生存能力は単球からマクロファージへの移行中に影響を受け、マクロファージ分化後ではないことを示す図であり、その理由は、細胞は移行後ではなく移行中に複合体がある場合にのみ死ぬためであることを示す図である。
【
図12】a~cは、種々の組織に対するrHSA-CORM及びrHSA-DMSO処置したマウスに対する毒性学の結果を示す図である。dは、rHSA-CORMは転移を刺激しなかったことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、CO放出複合体が、CTLA-4及びPD-1発現を下方制御し、腫瘍関連マクロファージ(TAM)のレベルを下げることによって、腫瘍における免疫抑制を軽減するという発見に部分的に基づいている。したがって、腫瘍選択的CORM(たとえば、CORM複合体)は、がん(たとえば、免疫抑制癌)の処置において(任意選択で、他のがん免疫療法とともに)有用であり得る。
【0020】
本明細書で説明するCO放出複合体は、腫瘍選択的リガンドに結合された一酸化炭素放出基を含む。
【0021】
一酸化炭素放出基は、インビボ投与後に一酸化炭素(CO)を放出することができる化学部分である。
【0022】
いくつかの実施形態では、一酸化炭素放出基は、たとえば、共有結合または他の結合によって、金属原子などの別の原子に配位結合されるかまたは化学的に結合された1つ以上のCO基を含んでいてもよい。投与後に、他の原子へのCO基の結合が破壊されて、CO基が放出される。たとえば、一酸化炭素放出基を含む複合体を水溶液に入れたときに、COが自発的に放出されてもよい。複合体によるCOの放出によって、個体中の腫瘍の部位におけるCOのレベルが増加して、本明細書で説明するように免疫調節効果を及ぼす。
【0023】
好適なCO放出基としては、1つ以上のCO部分が金属原子に配位結合された金属カルボニル錯体が挙げられる。好適な金属カルボニル錯体としては、モノ、ジ、トリ、テトラ、またはペンタカルボニル金属錯体が挙げられる。たとえば、化学式M(CO)n1の錯体。ここで、Mは金属原子であり、n1は1、2、3、4、または5、好ましくは2または3である。
【0024】
好適な金属としては、鉄、モリブデン、コバルト、レニウム、及びルテニウムを挙げてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、金属はルテニウムである。たとえば、CO放出基は、化学式RuII(CO)2のルテニウムジカルボニル基であってもよい。
【0026】
典型的なCO放出基及び分子は、米国特許第7,964,220号、米国特許第9,023,402号、米国特許第9,062,089号、及び米国特許第9,163,044号に開示されている。これらは、その全体において参照により本明細書に組み込まれている。
【0027】
他の好ましい実施形態では、たとえば、US9,163,044に記載されるように、CO放出基としてはモリブデン金属原子が挙げられる。このような実施形態では、CO放出基には、Mo金属原子から放出可能な3つのCO部分が含まれる。
【0028】
本明細書で説明するCO放出複合体では、腫瘍選択的リガンドは、CO放出基またはCO放出基を含む粒子に直接または間接的に結合されている。腫瘍選択的リガンドは、インビボで投与されたときに腫瘍内に選択的に蓄積するかまたはCO放出基(複数可)を蓄積させる分子である。すなわち、がんを伴う個体に投与後の腫瘍選択的リガンドの濃度は、個体の非腫瘍組織と比べて腫瘍組織内の方が大きい。
【0029】
いくつかの実施形態では、複合体は化学式リガンド-[金属(CO)n1]n2を有し、ここでn1は1~5であり、n2は1~30である。
【0030】
腫瘍選択的リガンドによって、CO放出複合体は個体内の腫瘍組織を選択的に標的とするかまたは腫瘍組織内に蓄積することができる。腫瘍選択的リガンドは循環において安定である。さらに、複合体の腫瘍選択的リガンドは腫瘍組織内に選択的に蓄積する。すなわち、非腫瘍組織と比べて腫瘍組織内での濃度の増加を示す。腫瘍組織内に腫瘍選択的リガンドが蓄積すると、CORMは、非腫瘍組織(すなわち、腫瘍選択的リガンドが蓄積しない非癌組織)と比べて腫瘍組織内で選択的に作用して、たとえば、腫瘍組織内でCOを放出し、免疫調節効果(たとえば、抗免疫抑制効果)を及ぼすことができる。このように、CO放出は腫瘍組織を標的とし、CO-Hbの基底レベルを著しく変化させることはしない。
【0031】
腫瘍選択的リガンドは腫瘍にCO放出基を標的とする。腫瘍選択的リガンドに結合されたCO放出基は、非結合CO放出分子と比べて個体の腫瘍組織内での蓄積の増加を示し得る。すなわち、腫瘍選択的リガンドに結合されたCO放出基の腫瘍組織内での濃度は、非結合CO放出分子と比べて増加し得る。これにより、腫瘍組織内でのCO放出複合体によるCOの選択的な放出が可能になり、放出されたCOが腫瘍組織内に蓄積する。
【0032】
好適な腫瘍選択的リガンドとしては、ナノ粒子、ペプチド、タンパク質、ポリマー(バイオポリマー、たとえばポリサッカライドまたは合成ポリマー、たとえばポリエチレングリコール)、アプタマー、または小分子が挙げられる。
【0033】
いくつかの好ましい実施形態では、腫瘍選択的リガンドは、好ましくは血漿タンパク質、好ましくはヒトの血漿タンパク質である。血漿タンパク質は血清中に見出されるタンパク質である。好適な血漿タンパク質としては、抗体、アルブミン、グロブリン、たとえばガンマグロブリン及びアルファ-2マクログロブリン、フィブリノゲン、リポタンパク質、トランスフェリン、制御因子、たとえばホルモン、及び凝固因子、たとえばプロトロンビンを挙げてもよい。他の腫瘍選択的リガンドとしては、大きな流体力学半径を提供して錯体の循環半減期を増加させ、腎臓ろ過を回避するアミノ酸配列が挙げられる。たとえば、エラスチン様ペプチド(ELP)(米国特許第8,334,257号を参照。この文献は参照により本明細書に組み込まれている)及び非構造化ポリマー、たとえば、US7,855,279に記載されたもの(なおこの文献はその全体において参照により本明細書に組み込まれている)である。
【0034】
好ましくは、腫瘍選択的リガンドは血清アルブミンであってもよい。血清アルブミン(ALB;遺伝子ID:213)は人血中で最も豊富なタンパク質である。血清アルブミンは、血漿の膠質浸透圧を調節して、血清中の広範囲の内因性分子に対する運搬体タンパク質として働く。血清アルブミンは、血管外漏出と新生児Fc受容体(FCRN)のターゲティングとに起因して及び/または血管透過性滞留性亢進(EPR)効果に起因して、腫瘍組織内に蓄積する。放射性標識アルブミン誘導体の注射用量の20%が24時間後にラット皮下腫瘍内に蓄積することが以前に示されている。[64]。したがって、いくつかの実施形態では、腫瘍選択的リガンドはヒト血清アルブミンである。ヒト血清アルブミンは、NCBIデータベースエントリNP_000468.1もしくはSEQ ID NO:1の参照アミノ酸配列を有し得るか、またはこれらのうちのいずれか1つの変異体であり得て、NM_000477.7またはその変異体の参照ヌクレオチド配列によってエンコードされ得る。ヒト血清アルブミンは腫瘍微小環境への指向性を有する場合があり、薬物の血清半減期を増やす場合がある[12]。
【0035】
いくつかの実施形態では、アルブミンアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1によって規定される参照アルブミン配列と、少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である。種々の実施形態では、アルブミンアミノ酸配列は、新生児Fc受容体(FcRn)、たとえばヒトFcRnに結合する。アルブミンアミノ酸配列は野生型HSAの変異体であり得る(たとえば、SEQ ID NO:1によって表されるような)。種々の実施形態では、変異体は、SEQ ID NO:1に関して、1から20まで、または1から10までのアミノ酸の欠失、置換、または挿入を有し得る。いくつかの実施形態では、アルブミンアミノ酸配列は任意の哺乳類アルブミンアミノ酸配列である。
【0036】
いくつかの実施形態では、アルブミンアミノ酸配列またはドメインは、SEQ ID NO:1によって表されるように、全長アルブミンの断片である。用語「断片」は、アルブミンとの関連で用いるときは、対応する非結合のCO放出基または錯体と比べて、それが結合されるCO放出基またはそれを含む錯体の半減期を延ばす全長アルブミンまたはその変異体の任意の断片を指す。キャリアとして機能するその能力を拡張するアルブミン配列に対する種々の変更が知られており、このような変更は本発明とともに用いることができる。アルブミンアミノ酸配列に対する典型的な変更は、US8,748,380、US10,233,228、及びUS10,501,524に記載されている。これらの文献はそれぞれその全体において参照により本明細書に組み込まれている。
【0037】
参照アルブミン配列の変異体は、参照アミノ酸配列と少なくとも50%の配列同一性を、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも約80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を共有し得る。たとえば、本明細書で説明するタンパク質の変異体は、参照アミノ酸配列と少なくとも50%の配列同一性を、参照アミノ酸配列と少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも約80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0038】
配列同一性は一般に、アルゴリズムGAP(Wisconsin GCG package,Accelerys Inc,San Diego USA)を参照して規定される。GAPは、Needleman&Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アライメントアルゴリズムを用いて、一致の数を最大にしギャップの数を最小限にする2つの完全な配列を並べる。全般的に、ギャップ生成ペナルティ=12及びギャップ延長ペナルティ=4のデフォルトパラメータが用いられる。GAPを用いることが好ましい場合があるが、他のアルゴリズムを用いてもよい。たとえば、BLASTまたはBLAST2.0(Altschulら(1990)J.Mol.Biol215:405~410の方法を用いる)、FASTA(Pearson and Lipman(1988)PNAS USA85:2444~2448の類似法を用いる)、または局地的相同性スミスウォーターマンアルゴリズム(Smith及びWaterman(1981)J.Mol Biol.147:195~197)、またはAltschulら(1990)上記のプログラムTBLASTN(全般的にデフォルトパラメータを用いる)である。詳細には、psi-BLASTアルゴリズムを用いてもよい(Nucl.Acids Res.(1997)253389~3402)。これらのアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WIにおけるGAP、BESTFIT、PASTA、及びFASTA)のコンピュータ化された実施態様が利用可能であり、公表されたコンピュータソフトウェアを用いてもよい。たとえば、ClustalOmega(Soding,J 2005,Bioinformatics21,951~960)、T-coffee(Notredameら2000,J.Mol.Biol(2000)302,205~217)、Kalign(Lassmann及びSonnhammer2005,BMC Bioinformatics,6(298))、Genomequest(商標)ソフトウェア(Gene-IT,Worcester MA USA)及びMAFFT(Katoh及びStandley2013,Molecular Biology and Evolution,30(4)772~780ソフトウェア。このようなソフトウェアを用いるとき、デフォルトパラメータ(たとえば、ギャップペナルティ及び延長ペナルティに対するもの)を用いることが好ましい。パーセント配列同一性及び配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの好ましい例は、BLAST及びBLAST2.0アルゴリズム(Altschulら、NucAcids Res.25:3389~3402(1977)及びAltschulら、J.Mol.Biol.215:403~410(1990)に、それぞれ記載されている)である。
【0039】
配列比較を好ましくは、本明細書に記載した関連する配列の全長にわたって行う。
【0040】
好適な腫瘍選択的リガンドタンパク質(たとえば、ヒト血清アルブミン)を、標準的な組換え型技術を用いて生成してもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、腫瘍選択的リガンドは抗体、またはその抗原結合部分である。抗体分子は、抗体抗原結合部位を含むポリペプチドまたはタンパク質である。この用語は、天然または部分的もしくは全体的に合成的に生成されたかどうかにかかわらず、任意の免疫グロブリンを包含する。抗体分子は天然源からの精製によって単離または取得することができ、あるいは、遺伝子組換えによって、または化学合成によって得ることができ、非天然アミノ酸を含み得る。
【0042】
腫瘍選択的リガンドとして用いるのに適した抗体には、全抗体及びその断片が含まれていてもよい。全抗体の断片は、抗原を結合する機能を実行することができる。断片を結合する例は以下のとおりである。(i)VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなるFab断片;(ii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iii)単一抗体のVL及びVHドメインからなるFv断片;(iv)シングルドメイン抗体(sdAb)(ナノボディ(Nb)とも言われる)(Wardら(1989)Nature341,544~546;McCaffertyら、(1990)Nature,348,552~554;Holtら(2003)Trends in Biotechnology21,484~490)(モノマーVHドメインまたはモノマーVLドメインのいずれかからなる);(v)単離されたCDR領域;(vi)F(ab’)2断片、2つの結合されたFab断片を含む二価の断片(vii)単鎖Fv分子(scFv)、VHドメイン及びVLドメインは、2つのドメインを結合させて抗原結合部位を形成するペプチドリンカーによって結合される(Birdら(1988)Science,242,423~426;Hustonら(1988)PNAS USA,85,5879~5883);(viii)二重特異性単鎖Fvダイマ-(PCT/US92/09965)、及び(ix)「ダイアボディ」、遺伝子融合によって構成される多価または多特異的断片(WO94/13804;Holligerら(1993a)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA90 6444~6448)。
【0043】
Fv、scFv、ダイアボディ、sdAb、及び他の抗体分子を、ジスルフィド架橋の組み込み(たとえば、VH及びVLドメインを結合する)によって安定させてもよい。(Reiterら(1996)、Nature Biotech,14,1239~1245)CH3ドメインに結合したscFvを含むミニボディを形成してもよい(Huら(1996)、Cancer Res.、56(13):3055~61)。断片を結合する他の例は、Fab’(重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端にいくつかの残留物が付加されている点でFab断片とは異なり、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む)、及びFab’-SH(定常ドメインのシステイン残留物(複数可)が遊離チオール基を有する断片Fab’)である。
【0044】
本明細書で説明する使用に適した抗体は、腫瘍抗原と特異的に結合してもよい。
【0045】
他の標的結合リガンド及び抗体ミメティックを腫瘍選択的リガンドとして用いてもよく、当該技術分野で知られている。これらには以下が含まれる。シングルドメイン抗体、組換え重鎖抗体(VHH)、単鎖抗体(scFv)、サメ重鎖抗体(VNAR)、マイクロプロテイン(たとえばシステインノットタンパク質、ノッチン)、DARPin、テトラネクチン、アフィボディ;トランスボディ、アンチカリン、アドネクチン、アフィリン、マイクロボディ、フィロマー、ストラドボディ、マキシボディ、エビボディ、フィノマー、アルマジロリピートタンパク質、クニッツドメイン、アビマー、アトリマー、プロボディ、免疫ボディ、トリオマブ、トロイボディ、ペップボディ、ワクチボディ、ユニボディ、及びデュオボディ。このようなリガンドは以下の参考文献に説明されている。米国特許または特許公報第US7,417,130、US2004/132094、US5,831,012、US2004/023334、US7,250,297、US6,818,418、US2004/209243、US7,838,629、US7,186,524、US6,004,746、US5,475,096、US2004/146938、US2004/157209、US6,994,982、US6,794,144、US2010/239633、US7,803,907、US2010/119446、及び/またはUS7,166,697。なお、これらの文献の内容はその全体において参照により本明細書に組み込まれている。
【0046】
いくつかの実施形態では、腫瘍選択的リガンドはナノ粒子の表面に結合していてもよい。ナノ粒子はさらに、CO放出基をカプセル化(またはその表面に存在)していてもよい。いくつかの実施形態では、CO放出基は生分解性ナノ材料に結合していてもよい。典型的なナノ粒子にはポリマーナノ粒子が含まれ、これにはPEGによるブロックコポリマーが含まれていてもよい。たとえば、PEG鎖の末端は、腫瘍選択的リガンド及び/またはCO放出基に対する官能基結合を有していてもよい。典型的なポリマーナノ粒子形式には、WO2017/100597及びUS2018/0339024に記載されたものが含まれる。なおこれらの文献は、その全体において参照により本明細書に組み込まれている。典型的なナノ粒子としては以下を挙げてもよい。ポリマー、たとえばポリ(乳酸グリコール酸)(PLGA)、ポリ(ベータアミノエステル)(PBAE)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ-3ヒドロキシブチレート(P3HB)、及びポリ(ヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシバレレート)(それらの組み合わせを含む)、またPEGによる前述のいずれかのブロックコポリマーが挙げられる。他の実施形態では、一酸化炭素放出基(複数可)は、無機材料に結合されるかまたは無機材料によってカプセル化される。CORMSに対するナノ材料送達戦略について説明されている[66]。
【0047】
1つ以上の抗原(すなわち、腫瘍抗原)の発現によって、個体中の正常な体細胞からがん細胞を区別し得る。個体中の正常な体細胞は、1つ以上の抗原を発現しない場合があるか、または異なる組織内で及び/または異なる発生段階において異なる方法(たとえば、より低いレベル)でそれらを発現する場合がある。したがって、腫瘍抗原を用いて、キメラペプチド交換タンパク質をがん細胞に特異的に標的化してもよい。がん細胞によって発現される好適な腫瘍抗原としては、たとえば、癌生殖細胞遺伝子によってエンコードされる癌精巣(CT)抗原を挙げてもよい。たとえば、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A5、MAGE-A6、MAGE-A7、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A11、MAGE-A12、ゲージ-I、ゲージ-2、ゲージ-3、ゲージ-4、ゲージ-5、ゲージ-6、ゲージ-7、ゲージ-8、BAGE-I、RAGE-1、LB33/MUM-1、PRAME、NAG、MAGE-Xp2(MAGE-B2)、MAGE-Xp3(MAGE-B3)、MAGE-Xp4(MAGE-B4)、MAGE-C1/CT7、MAGE-C2、NY-ESO-I、LAGE-I、SSX-I、SSX-2(HOM-MEL-40)、SSX-3、SSX-4、SSX-5、SCP-I、及びXAGE、ならびにその免疫原性断片(Simpsonら、Nature Rev(2005)5、615~625、Gureら、Clin Cancer Res(2005)11、8055~8062;Velazquezら、Cancer Immun(2007)7、11;Andradeら、Cancer Immun(2008)8、2;Tinguelyら、Cancer Science(2008);Napoletanoら、Am J of Obstet Gyn(2008)198、99e91~97)。
【0048】
いくつかの好ましい実施形態では、本明細書で説明する使用に適した抗体は、免疫チェックポイントタンパク質(たとえば、PD-1またはCTLA4)に特異的に結合してもよい。
【0049】
腫瘍選択的リガンドとしての使用に適した小分子には、小さな化学分子(たとえば、分子量が900ダルトン以下の非ポリマー有機化合物)が含まれる。好ましい実施形態では、腫瘍選択的リガンドとしての使用に適した小分子は、分子量が900ダルトン以下であってもよく、腫瘍組織内に選択的に蓄積してもよい。好適な小分子リガンドにはアセタゾラミドが含まれる。アセタゾラミドは、炭酸脱水酵素IX(CAIX)(腫瘍組織内で優先的に発現する)に選択的に結合する。
【0050】
いくつかの実施形態では、CO放出基は腫瘍選択的リガンドに結合している。結合は共有結合であってもよく、すなわち、CO放出基及び腫瘍選択的リガンドを共有結合(たとえば、付与共有結合または配位結合)によって直接結合してもよい。
【0051】
結合に対して任意の好適な化学反応を用いてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、腫瘍選択的リガンド上に存在する基は、CO放出基に直接結合できてもよい。たとえば、腫瘍選択的リガンドがペプチドまたはタンパク質であるとき、腫瘍選択的リガンド上のアミノ酸残基が、CO放出複合体を形成するためにCO放出基に直接結合してもよい。他の実施形態では、リンカーを用いてCO放出基を腫瘍選択的リガンドに結合してもよく、それによって、リンカーはCO放出基及び腫瘍選択的リガンドの両方と共有結合を形成して、CO放出複合体を形成する。
【0053】
いくつかの実施形態では、CO放出基は、CO放出分子(CORM)を腫瘍選択的リガンドと反応させることによって、腫瘍選択的リガンドに結合してもよい。CORMには、CO放出基(たとえば、金属カルボニル錯体)が含まれていてもよい。CO放出分子(CORM)の金属原子を腫瘍選択的リガンドと反応させることによって、CORMのCO放出基をリガンドに結合してもよい。たとえば、金属原子は、腫瘍選択的リガンドのアミノ酸残基(たとえば、腫瘍選択的リガンドタンパク質におけるヒスチジン、システイン、リシン、またはメチオニン残基)と共有結合を形成してもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、金属化反応を用いてもよい。腫瘍選択的リガンドをCO放出分子(CORM)の金属原子によって金属化することによって、CORMのCO放出基をリガンドに結合してもよい。金属化反応は、金属原子と腫瘍選択的リガンド上のヒスチジン残基との間であってもよい。たとえば、金属原子がヒスチジン残基のイミダゾール基と共有結合を形成して、CO放出基をリガンドに結合してもよい。
【0055】
金属原子は遷移金属であってもよい。いくつかの実施形態では、金属化反応は、ルテニウムカルボニル錯体(たとえば、Ru(CO)2錯体)を含むCORMのルテニウム原子と、腫瘍選択的リガンドタンパク質上に存在するヒスチジンとの間である。好適なCORMにはCORM-3が含まれる。たとえば、ルテニウムカルボニル錯体を含むCORMのルテニウム原子は、ヒト血清アルブミン内の1つ以上のヒスチジン残基と共有結合してもよい。好ましくは、金属化反応は、[RuCl(κ2-H2NCH2CO2)(CO)3]錯体(すなわちCORM-3)とヒト血清アルブミン上に存在するヒスチジンとの間である。
【0056】
他の実施形態では、リンカーを用いて、CO放出基を腫瘍選択的リガンドに結合する。
【0057】
たとえば、CO放出分子は、金属カルボニル錯体であるCO放出基を含んでいてもよく、リンカーは、金属カルボニル錯体を配位結合するのに適した第1の反応性部分と、腫瘍選択的リガンドと共有結合を形成するのに適した第2の反応性部分とを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、リンカーはPEGリンカーである。
【0058】
第1の反応性部分は、たとえば、金属リガンド(たとえば、モノ-、トリ、またはテトラデンテート金属リガンド)であってもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、第2の反応性部分は、たとえば、腫瘍選択的リガンド上のチオール基との結合(すなわち、チオール結合)に適したチオール反応性部分であってもよい。チオール反応性部分は、チオール基との共有結合を形成するのに適した任意の基であってもよく、このような基には、ハロアセチル基、マレイミド、アジリジン、カルボニルアクリル基、ハロピリダジンジオン、ビニルスルホン、ジスルフィド、及びチオールが含まれる。これらの実施形態のうちのいくつかでは、腫瘍選択的リガンドはタンパク質であり、チオール基はアミノ酸残基(たとえば、システイン)である。
【0060】
他の実施形態では、第2の反応性部分は、腫瘍選択的リガンド上のクリックハンドルとのクリック反応を受けるのに適したクリック反応性部分であってもよい。クリック反応性部分は、腫瘍選択的リガンド上の対応するクリックハンドルとのクリック反応を受けるのに適した任意の基であってもよい。好適なクリック反応の組み合わせとしては、以下が挙げられる。銅(I)触媒によるアジドアルキン付加環化反応(CuAAC);歪み促進型アジドアルキン付加環化(SPAAC);歪み促進型アルキンニトロン付加環化(SPANC);アルケン及びアジド[3+2]付加環化;及びアルケンテトラジン逆電子要求ディールスアルダー。これらの実施形態のうちのいくつかでは、腫瘍選択的リガンドはタンパク質であり、これらの実施形態では、好適なクリックハンドルにはアジド及びアルキン(歪みアルキン及び線形アルキンを含む)が含まれる。このような好適なクリックハンドルを、突然変異誘発によって(たとえば、クリックハンドルを含む非天然アミノ酸残基の導入によって)腫瘍選択的リガンドタンパク質に導入してもよい。アミノ酸を含む典型的なクリックハンドルとしては、アジドアラニン、アジドフェニルアラニン、プロパルギルグリシン、プロパルギルアラニン、プロピニルプロリンが挙げられる。代替的に、クリックハンドルを含む基を、腫瘍選択的リガンドタンパク質上のアミノ酸に結合してもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、リンカーを最初にCORMに配位結合し、そして、配位結合されたCORMを腫瘍選択的リガンドに(たとえば、チオール結合またはクリック反応によって)結合する。他の実施形態では、リンカーを最初に腫瘍選択的リガンドに(たとえば、チオール結合またはクリック反応によって)結合し、そして、CORMをリンカー腫瘍選択的リガンド複合体によって配位結合する。
【0062】
いくつかの実施形態では、CO放出複合体には複数のCO放出基が含まれていてもよい。たとえば、CO放出複合体には、2~約20のCO放出基、たとえば約5~約20、または約10~約20、または約2~約10、または約2~約5のCO放出基が含まれていてもよい。CO放出複合体には、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、またはそれ以上のCO放出基が含まれていてもよい。
【0063】
CO放出基を同じ腫瘍選択的リガンドに結合してもよい。たとえば、2つ以上のCO放出基を腫瘍選択的リガンドに結合してもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、CO放出複合体には、ヒト血清アルブミンであって、その1つ以上のヒスチジン残基にCO放出基が結合されたヒト血清アルブミンが含まれていてもよい。たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、またはそれ以上のCO放出基が、たとえば付与共有結合によって、ヒト血清アルブミンのヒスチジン残基に結合していてもよい。いくつかの実施形態では、8~約16のCO放出基がヒト血清アルブミンに結合されている。
【0065】
本明細書で説明するCO放出複合体を、任意の好都合な方法によって生成してもよい。当該技術分野において好適な方法が利用可能である(たとえば[11]を参照)。たとえば、CO放出複合体を、ヒト血清アルブミンを二酸化炭素放出分子(CORM)と反応させることによって生成してもよい。CORMの例としては、遷移金属CORM、光CORM、酵素トリガー(ET)CORM、及び有機CORMが挙げられる。遷移金属CORMは、主に鉄、モリブデン、ルテニウム、コバルト、及びレニウム上に基づく遷移金属錯体である。Ru(グリシネート)Cl(CO)3(CORM3)は、遷移金属CORMの例である。
【0066】
たとえば、CO放出複合体を、ヒト血清アルブミンをCORMと反応させることによって生成してもよい。好ましい実施形態では、CO放出複合体を、ヒト血清アルブミンをRu(グリシネート)Cl(CO)3(CORM3)と反応させて生成して、ヒト血清アルブミンの1つ以上のヒスチジン残基がルテニウムジカルボニル基によって金属化されるようにしてもよい。
【0067】
好適な反応条件が、当該技術分野において良く知られており、たとえば、ヒト血清アルブミンを、生理的pH(たとえば、pH7.4)のPBS中で約1時間、室温で約50当量のCORM-3によって処置することである。
【0068】
本明細書で説明するCO放出複合体を単独で個体に投与することは可能であるが、化合物を医薬組成物または製剤で示すことが好ましい。医薬組成物としては、本明細書で説明するCO放出複合体に加えて、1つ以上の薬学的に許容されるキャリア、補助剤、賦形剤、希釈剤、充填剤、緩衝剤、安定剤、保存料、潤滑剤、または当業者に良く知られた他の材料を挙げてもよい。このような材料は、無毒でなければならず、活性化合物の有効性を妨げてはならない。キャリアまたは他の材料の正確な性質は、投与経路(後述するように、ボーラス、浸出、注射または任意の他の好適な経路による場合がある)に依存する。好適な材料は無菌でパイロジェンフリーであり、好適な等張性及び安定性を伴っている。例としては、無菌生理食塩水(たとえば0.9%NaCl)、水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、またはそれらの組み合わせが挙げられる。組成にはさらに、補助物質(たとえば、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤など)が含まれていてもよい。
【0069】
好適なキャリア、添加剤などを、標準的な医薬品テキスト(たとえば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18版、Mack Publishing Company,Easton,Pa.、1990)に見出すことができる。
【0070】
用語「薬学的に許容される」は、本明細書で用いる場合、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴うことなく対象者(たとえば、ヒト)の組織と接触して使用するのに適しており、妥当な利益/リスク比と見合っている化合物、材料、組成、及び/または剤形に関する。また各キャリア、添加剤などは、製剤の他の成分と共存できるという意味で「許容可能」でなければならない。
【0071】
製剤は単位剤形で示し得るため好都合であり、薬学の技術分野で良く知られた任意の方法によって調製してもよい。このような方法には、活性化合物を、1つ以上の副成分を構成するキャリアと会合させるステップが含まれる。全般的に、製剤は、活性化合物を、液体キャリアもしくは微粉固体キャリアまたは両方と均一かつ緊密に会合させ、そして必要に応じて生成物を成形することによって調製される。
【0072】
製剤は、液体、溶液、懸濁液、エマルション、エリキシル剤、シロップ剤、錠剤、薬用ドロップ、粒剤、粉末、カプ細胞、カシェ剤、ピル、アンプル、座薬、ペッサリー、軟膏、ゲル、ペースト、クリーム、スプレー、ミスト、発泡体、ローション、オイル、ボーラス、舐剤、またはエアロゾルの形態であってもよい。
【0073】
本明細書で説明するCO放出複合体、またはCO放出複合体を含む医薬組成物を、全身/末梢または非経口を含む所望の作用の部位かどうかの任意の好都合な投与経路によって、たとえば、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、動脈内、腫瘍内、心臓内、髄腔内、脊髄内の、嚢内、被膜下、眼窩内、腹腔内、気管内、表皮下、関節内、クモ膜下、及び胸骨内を含む注射によって、デポーのインプラントによって、たとえば、皮下または筋肉内で、対象者に投与してもよい。投与は好ましくは、静脈内、または所望の作用の部位において(たとえば、腫瘍内の注射)である。多くの適応症(たとえば、結腸直腸癌)に対して静脈内が好ましいが、いくつかの適応症(たとえば、膠芽腫または膀胱癌)に対しては、所望の作用の部位での投与が好ましい場合がある。
【0074】
本明細書で説明する化合物を含む医薬組成物は、意図する投与経路に適した投与単位処方で処方してもよい。
【0075】
非経口的投与(たとえば、皮膚、皮下、筋肉内、静脈内、及び皮内などの注射による)に適した製剤には、以下が含まれる。抗酸化剤、緩衝剤、保存料、安定剤、静菌薬、及び溶質であって、製剤を意図したレシピエントの血液と等張にする溶質を含み得る水溶性及び非水性の等張、パイロジェンフリー、無菌注射液;ならびに懸濁化剤及び増粘剤、及びリポソームまたは他の微粒子系であって、化合物を血液成分または1つ以上の臓器に標的化するようにデザインされたものを含み得る水溶性及び非水性無菌懸濁液。このような製剤内で用いるための好適な等張溶媒の例としては、塩化ナトリウム注射液、リンゲル溶液、または乳酸リンゲル注射液が挙げられる。通常は、溶液中の活性化合物の濃度は、約1ng/ml~約10g/ml、たとえば、約10ng/ml~約1g/mlである。製剤は、単位用量または複数用量の密閉容器(たとえば、アンプル及びバイアル瓶)で与えてもよく、使用直前に無菌液体キャリア(たとえば、注射用水)を加えるだけでよいフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存してもよい。即席の注射液及び懸濁液を滅菌粉末、粒剤、及び錠剤から調製してもよい。製剤は、活性化合物をマクロファージまたは脂肪組織に標的化するようにデザインされるリポソームまたは他の微粒子系の形態であってもよい。
【0076】
任意選択で、他の治療薬または予防薬が医薬組成物または製剤内に含まれていてもよい。
【0077】
本明細書で説明するCO放出複合体は、たとえば、腫瘍組織における免疫チェックポイントタンパク質の発現及び/または腫瘍関連マクロファージ(TAM)の量を低減することによって、腫瘍組織における免疫抑制を減少させるのに有用であり得る。たとえば、CO放出複合体は、免疫抑制癌の処置及び/またはがん免疫療法の増強に有用であり得る。
【0078】
がんは悪性がん細胞の異常増殖を特徴とする。免疫抑制癌は、個体の免疫系が腫瘍組織内で、すなわち腫瘍及びその微小環境内(たとえば、血液及びリンパ管、細胞外マトリックス、宿主細胞、たとえば線維芽細胞、神経内分泌(NE)細胞、脂肪細胞、及び免疫炎症細胞、ならびに腫瘍を囲む分泌因子)で抑制されるがんである。この免疫抑制は、がん細胞に対する宿主の免疫応答を減らすかまたは阻止する。
【0079】
免疫抑制癌は、腫瘍内でのがん細胞に対する免疫応答を抑制するか、減らすか、または阻止する腫瘍を特徴とし得る。たとえば、腫瘍の微小環境は免疫抑制及びT細胞抑制タンパク質である場合があり、及び/または免疫応答を抑制するT細胞抑制細胞が腫瘍微小環境内に存在する場合がある。
【0080】
いくつかの実施形態では、腫瘍による免疫応答の抑制はT細胞の阻害に起因する場合があり、すなわち腫瘍及び/またはその微小環境内のT細胞が活性の低下を示す場合がある。
【0081】
T細胞の阻害は、1つ以上の免疫チェックポイントタンパク質(たとえば、PD-1及びCTLA-4)によって媒介される場合がある。免疫チェックポイントタンパク質は免疫系の制御因子であり、自己免疫寛容(免疫系が細胞を無差別に攻撃するのを防ぐ)に対して不可欠である。しかし、悪性細胞による免疫チェックポイントタンパク質の発現によって、抗腫瘍免疫が調節不全になり、がん細胞の増殖及び拡大が促進される[13]。
【0082】
免疫抑制癌は、免疫チェックポイントタンパク質の発現、または非がん細胞と比べて免疫チェックポイントタンパク質の発現または活性のレベルの増加を特徴とし得る。チェックポイントタンパク質の発現レベルまたは活性は、当該技術分野で知られている良く知られた方法(たとえば、質量分析法、フローサイトメトリー、qPCR、及びRNAシーケンシング)によって決定され得る。
【0083】
免疫チェックポイントタンパク質にはPD-1が含まれ得る。プログラム細胞死タンパク質1(遺伝子ID5133;PD-1またはCD279(分化279のクラスタ)としても知られる)は、T細胞の表面上に見られるT細胞抑制タンパク質である。PD-1の役割は、免疫系を下方制御することによって免疫系の応答を調整し、T細胞活性を抑制することによって自己免疫寛容を促進することである。しかし、これは免疫系ががん細胞を死滅させることを妨げる場合がある。PD-1は、NCBIデータベースエントリNP_005009.2の参照アミノ酸配列を有する場合があり、NCBIデータベースエントリNM_005018.3の参照ヌクレオチド配列によってエンコードされる場合がある。
【0084】
T細胞上のPD-1と、免疫抑制腫瘍のがん細胞上(ならびに樹状細胞及びマクロファージ上)のそのリガンドPD-L1またはPD-L2との相互作用によって、T細胞の活性を抑制する可能性があり、がん細胞が宿主免疫応答を回避することを可能にする可能性がある。本明細書で説明するCO放出複合体を用いてT細胞上のPD-1の発現を減少させることによって、PD-1/PD-L1及び/またはPD-1/PD-L2相互作用を減少させるかまたは抑制する場合があり、その結果、がん細胞による宿主免疫系の回避を防ぐかまたは減少させる場合がある。
【0085】
必要に応じて、PD-1定量化を、任意の好都合な方法(たとえば、ARIOLシステムを用いる、各単離されたT細胞または腫瘍細胞に対するピクセルあたりの平均蛍光強度の免疫蛍光検出[61])によって、フローサイトメトリーによって、またはウェスタンブロットによって行ってもよい。
【0086】
免疫チェックポイントタンパク質にはCTLA-4が含まれ得る。細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(遺伝子ID番号:1493;CTLA4、CTLA-4、またはCD152(分化152のクラスタ)としても知られる)は、免疫チェックポイントとして機能し免疫応答を下方制御するT細胞抑制タンパク質である。CTLA-4は制御性T細胞内で構成的に発現され、活性化後に従来のT細胞内で上方制御される。がん(たとえば、免疫抑制癌)内でのCTLA-4の上方制御によって、免疫系ががん細胞を死滅させることが妨げられ得る。CTLA-4は、NCBIデータベースエントリNP_005205.2の参照アミノ酸配列を有する場合があり、NCBIデータベースエントリNM_005214.5の参照ヌクレオチド配列によってエンコードされる場合がある。
【0087】
T細胞上のCTLA-4とがん細胞上のそのリガンドCD80及びCD86との相互作用によって、T細胞活性の阻害が生じ、がん細胞が宿主免疫応答を回避する場合がある。本明細書で説明するCO放出複合体を用いてT細胞上のCTLA-4の発現を減少させることによって、CTLA-4/リガンド相互作用を減少させるかまたは妨げる場合があり、その結果、T細胞の阻害及びがん細胞による宿主免疫系の回避を防ぐかまたは減少させる場合がある。
【0088】
必要に応じて、CTLA-4定量化を、任意の好都合な方法(たとえば、ARIOLシステムを用いる、各単離されたT細胞または腫瘍細胞に対するピクセルあたりの平均蛍光強度の免疫蛍光検出[61])によって、フローサイトメトリーによって、またはウェスタンブロットによって行ってもよい。
【0089】
他の実施形態では、免疫抑制癌は、T細胞抑制細胞(たとえば、腫瘍関連マクロファージ(TAM)及び/またはTAM前駆体)の存在、または非がん細胞と比べてTAM及び/またはTAM前駆体の数の増加を特徴とし得る。
【0090】
腫瘍微小環境におけるT細胞抑制細胞(たとえば、制御性T細胞、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、及びそれらの前駆体)の存在は、T細胞阻害及び免疫抑制を引き起こすかまたはこれらに寄与する場合がある。たとえば、腫瘍関連マクロファージ(TAM)は腫瘍微小環境に住み、一般にM2マクロファージ様表現型を示す。TAMは、抗腫瘍免疫応答を抑制し、制御性T細胞の持続的な蓄積及び脈管構造の調節不全(ケモカイン及びアミノ酸分解酵素(たとえば、アルギナーゼ1及びインドールアミン2,3ジオキシゲナーゼ(IDO))の発現に起因する)[13]などの機能を伴う腫瘍発生を促進する。個体中の腫瘍の微小環境におけるTAMの蓄積は、がん治療への耐性及び臨床予後不良に関連している。
【0091】
個体中の腫瘍の微小環境におけるTAMの蓄積は、T細胞活性の阻害及び腫瘍に対する免疫応答の抑制に至る場合がある。本明細書で説明するCO放出複合体を用いて腫瘍の微小環境におけるTAMSの量を減少させることによって、T細胞の阻害及びがん細胞による宿主免疫系の回避を妨げるかまたは減らす場合がある。
【0092】
免疫抑制癌は任意のがんタイプであってもよい。たとえば、固形癌、たとえば、肉腫、癌、及びリンパ腫、たとえば、皮膚癌、黒色腫、膀胱癌、脳腫瘍、乳癌、子宮癌、口腔癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、肝臓癌、頭頸部癌、食道癌、膵臓癌、腎臓癌、副腎癌、胃癌、精巣癌、胆嚢及び胆道の癌、甲状腺癌、胸腺癌、及び骨肉腫である。
【0093】
免疫抑制癌には、以下のうちのいずれか1つ以上を含めることができる。急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、肛門癌、膀胱癌、血液癌、骨肉腫、脳腫瘍、乳癌、女性生殖器系の癌、男性生殖器系の癌、中枢神経系リンパ腫、子宮頸癌、小児横紋筋肉腫、小児肉腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、結腸及び直腸癌、結腸癌、子宮内膜癌、子宮内膜肉腫、食道癌、眼癌、胆嚢癌、胃癌、胃腸管癌、ヘアリー細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞癌、ホジキン病、下咽頭癌、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、白血病、白血病、肝臓癌、肺癌、悪性繊維性組織球腫、悪性胸腺腫、黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄腫、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経系癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、副甲状腺の癌、陰茎癌、咽頭癌、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍、原発性CNSリンパ腫、前立腺癌、直腸癌、呼吸器系、網膜芽細胞腫、唾液腺癌、皮膚癌、小腸癌、軟部組織肉腫、胃癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、泌尿器系癌、子宮肉腫、膣癌、血管系、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、及びウィルムス腫瘍。
【0094】
がんは特定のタイプであってもよい。がんのタイプの例としては以下が挙げられる。星状細胞腫、がん(たとえば腺癌、肝細胞癌、髄様癌、乳頭状癌、扁平上皮細胞癌)、神経膠腫、リンパ腫、髄芽細胞腫、黒色腫、骨髄腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、肉腫(たとえば血管肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫)。
【0095】
いくつかの実施形態では、がんは原発腫瘍であるかまたは転移性がんである。「転移」は、がんが身体内の原発部位から他の場所へ広がることをを指す。がん細胞は、原発腫瘍から離れて、リンパ管及び血管内に侵入し、血流を通って循環して、身体中の他の場所にある正常組織内の離れた病巣において増殖する(転移する)ことができる。転移は局所的または遠隔的である可能性がある。種々の実施形態では、原発性または転移性がんは、黒色腫、肺癌、腎臓癌、前立腺癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、膵臓癌、卵巣癌、尿路上皮癌、胃癌、頭頸部癌、膠芽腫、頭頸部扁平上皮細胞癌(HNSCC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC)、膀胱癌、及び前立腺癌(たとえば、ホルモン抵抗性)である。いくつかの実施形態では、がんは進行性、局所進行性、または転移性がんである。いくつかの実施形態では、がんは転移性黒色腫であり、再発性であり得る。いくつかの実施形態では、転移性黒色腫はステージIIIまたはIVである。転移は局所または遠隔であり得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、免疫抑制癌は、免疫チェックポイント阻害剤による処置に対する承認を受けたがんタイプ、たとえばCTLA-4阻害剤及び/またはPD-1阻害剤による処置に対する承認を受けたがんタイプであってもよい(たとえば、[20]~[60]を参照)。いくつかの好ましい実施形態では、免疫抑制癌としては、黒色腫、扁平上皮細胞癌、結腸直腸癌、肺癌、たとえば、非小細胞肺癌(NSCLC)、腎臓癌、及び尿路上皮癌を挙げてもよい。
【0097】
免疫抑制腫瘍は、腫瘍遺伝子変位量(TMB)の増加([52~55])及び/または他のがんと比べた腫瘍浸潤リンパ球([56、57])の数の増加を特徴とし得る。
【0098】
免疫抑制癌は、標準的な診断基準を用いる個体において特定し得る。このような臨床基準の例は、医学の教科書(たとえば、Harrison’s Principles of Internal Medicine,15版、Fauci ASら編集、McGraw-Hill,New York,2001)において見ることができる。
【0099】
用語「処置」は、状態を処置するという文脈で本明細書で用いる場合、全般的に、何らかの所望の治療効果(たとえば、状態の進行の抑制)が実現される処置及び療法に関し、進行速度の低下、進行速度の停止及び状態の回復、ならびに状態の治癒を含む。種々の実施形態では、処置は、全生存期間の増加、無憎悪生存期間の増加、または安定した疾患もしくは腫瘍退縮、または無がんの指定となる可能性がある。
【0100】
個体は、免疫抑制癌を有すると以前に特定されているか、または免疫抑制癌を発症するリスクがある場合がある。他の実施形態では、方法は、患者が投与前に免疫抑制癌を有するかまたは発症するリスクがあると特定することを含み得る。
【0101】
前述した処置に適した個体は、哺乳動物、たとえば、げっ歯動物(たとえば、モルモット、ハムスター、ラット、マウス)、ネズミ科(たとえば、マウス)、イヌ科動物(たとえば、犬)、ネコ科動物(たとえば猫)、ウマ(たとえば馬)、霊長類、サル(たとえば、モンキーまたはエイプ)、モンキー(たとえば、マーモセット、ヒヒ)、エイプ(たとえば、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、テナガザル)、またはヒトであってもよい。いくつかの好ましい実施形態では、個体はヒトである。他の好ましい実施形態では、非ヒト哺乳動物、特に、ヒト(たとえば、マウス、霊長類、ブタ、イヌ科動物、またはウサギ科の動物)における治療有効性を実証するためのモデルとして従来、用いられている哺乳動物を用いてもよい。
【0102】
処置はヒトであれ動物であれ(たとえば、獣医応用における)、何らかの所望の治療効果が実現される任意の処置及び療法であってもよい。所望の処置効果は、たとえば、状態の進行の抑制または遅延であり、たとえば、進行速度の低下、進行速度の停止、状態の回復、状態の治癒または寛解(部分的であれ全体であれ)、状態の1つ以上の症状及び/もしくは徴候の予防、遅延、軽減、もしくは停止、または処置がない場合に予想されるもの以上に対象者または患者の生存期間を延長することである。
【0103】
予防措置としての処置(すなわち、予防法)も含まれる。たとえば、免疫抑制癌の発生または再発を受けやすいかまたはそのリスクがある個体を、本明細書で説明するように処置してもよい。このような処置によって、個体中のがんの発生または再発を防ぐかまたは遅らせる場合がある。詳細には、処置には、がん増殖の抑制(完全ながんの寛解を含む)及び/またはがんの転移の抑制が含まれ得る。がん増殖は全般的に、より発達した形態へのがん内の変化を示す多くの指標のいずれか1つを指す。したがって、がん増殖の抑制を測定するための指標には、がん細胞生存の低下、腫瘍体積またはモルフォロジーの減少(たとえば、コンピュータトモグラフィ(CT)、超音波検査、または他の画像化法を用いて決定される)、腫瘍増殖の遅延、腫瘍血管系の破壊、遅延型過敏皮膚試験の性能向上、がん細胞の細胞溶解活性の増加、及び腫瘍特異的抗原のレベルの低下が含まれる。
【0104】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明する処置に適した個体は、最初のがん処置の後に微小残存病変(MRD)を有し得る。
【0105】
本明細書で説明するCO放出複合体を、治療有効量で、本明細書で説明するように投与してもよい。用語「治療有効量」は、本明細書で用いる場合、活性化合物、または活性化合物を含む組み合わせ、材料、組成、または剤形の量であって、何らかの所望の治療効果を生成するのに効果的であり、妥当な利益/リスク比と見合っている量に関する。
【0106】
本明細書で説明するCO放出複合体の適切な用量は個体ごとに変わり得る。最適用量を決定することには全般的に、投与の任意のリスクまたは有害な副作用に対する治療効果のレベルのバランシングが伴う。選択した用量レベルは、種々の要因に依存する。たとえば、限定することなく、投与経路、投与の時間、活性化合物、組み合わせて用いる他の薬物、化合物、及び/または材料の排泄速度、ならびに個体の年齢、性別、体重、状態、全体的な健康、及び既往歴である。活性化合物の量及び投与経路は最終的には医師の裁量であるが、全般的に、用量は、実質的な有害または有毒な副作用を引き起こすことなく、活性化合物の治療剤血漿濃度を実現するためのものである。
【0107】
全般的に、活性化合物の好適な用量は、一日あたり対象者のキログラム体重あたり約100μg~約400mg、好ましくは、一日あたり対象者のキログラム体重あたり200μg~約200mgの範囲である。活性化合物が塩、エステル、プロドラッグなどの場合、投与量は親化合物に基づいて計算するため、用いるべき実際の重量は比例して増加する。
【0108】
インビボ投与を、1回の投与量で、連続的に、または断続的に(たとえば、適切な間隔で分割した用量で)行うことができる。
【0109】
投与の最も有効な手段及び用量を決定する方法は、当該技術分野において良く知られており、治療に対して用いる製剤、治療の目的、処置している標的細胞、及び処置している対象者とともに変わる。単一または複数の投与を、医師が選択している用量レベル及びパターンで行うことができる。
【0110】
本明細書で説明するCO放出複合体を含む化合物の複数の用量を投与してもよく、たとえば2、3、4、5、または5を超える用量を投与してもよい。本明細書で説明するCO放出複合体を含む化合物の投与を、持続した期間、続けてもよい。たとえば、本明細書で説明するCO放出複合体を含む化合物による処置を、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも1ヶ月、または少なくとも2ヶ月、または少なくとも3ヶ月の間、続けてもよい。本明細書で説明するCO放出複合体を含む化合物による処置を、免疫抑制を減らすのに必要な限り続けてもよい。いくつかの実施形態では、CO放出複合体を週に1回か2回または月に1回か2回、投与する(たとえば、2~12ヶ月または2~8ヶ月の間)。いくつかの実施形態では、CO放出複合体を静脈内投与する。
【0111】
本明細書で説明するCO放出複合体を含む化合物を、単独でまたは他の処置と組み合わせて、個々の状況に依存して同時にまたは順次に、投与してもよい。たとえば、本明細書で説明するCO放出複合体を含む化合物を、1つ以上のさらなる活性化合物と組み合わせて投与してもよい。
【0112】
本明細書で説明するCO放出複合体を含む化合物を、1つ以上の他のがん治療、たとえば、免疫療法(たとえばチェックポイント阻害剤療法、T細胞共刺激療法、またはサイトカイン療法)、細胞療法、細胞傷害性化学療法、または放射線療法と組み合わせて投与してもよい。
【0113】
たとえば、CORM複合体を、サイトカイン療法、T細胞共刺激療法、または免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与してもよい。サイトカイン療法はがん患者の免疫系を活性化させる。インターフェロンアルファ(IFNα)が、完全切除した高リスク黒色腫患者及びいくつかの抵抗性悪性腫瘍の補助療法に対して承認されている。高用量インターロイキン-2(IL-2)が、転移性腎臓細胞癌及び黒色腫の処置に対して承認されている。免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントタンパク質(たとえば、CTLA-4及びPD-1)のリガンド結合または活性を抑制する分子または化合物である。好適な免疫チェックポイント阻害剤としては以下が挙げられる。抗CTLA-4抗体、たとえばイピリムマブ(BMS)、及びトレメリムマブ(AZ);抗PD-1抗体、たとえばニボルマブ(BMS)、及びペムブロリズマブ(Merck);及び抗PD-L1抗体、たとえばデュルバルマブ(AZ)、アテゾリズマブ(Genentech/Roche)、及びアベルマブ(Merck Kga/Pfizer)。T細胞共刺激療法には、たとえば、CD28に対するアゴニストまたはOX40アゴニストを含めることができる。
【0114】
治療薬をさらなる治療薬と組み合わせて用いるとき、化合物を任意の好都合な経路によって順次にまたは同時に投与してもよい。治療薬を、同じ疾患に対して活性なさらなる治療薬と組み合わせて用いるとき、組み合わせにおける各薬剤の用量は、治療薬を単独で用いる場合とは異なっていてもよい。適切な用量は、当業者であれば容易に理解する。
【0115】
本明細書で説明するように、治療薬の投与は、処置の過程の全体を通して、1回の投与量で、連続的に、または断続的に(たとえば、適切な間隔で分割した用量で)行うことができる。投与の最も有効な手段及び用量を決定する方法は、当業者に良く知られており、治療に対して用いる製剤、治療の目的、処置している標的細胞、及び処置している対象者とともに変わる。単一または複数の投与を、処置する医師が選択している用量レベル及びパターンで行うことができる。
【0116】
種々の実施形態では、複合体をがん免疫療法によるレジメンとして投与する。種々の実施形態では、複合体を、がん免疫療法レジメンの前、の間、及び/または後に、患者に投与する。たとえば、がん免疫療法は、免疫チェックポイント分子(たとえば、B7-H3、B7-H4、BTLA、CD160、CTLA4、KIR、LAG3、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM3、LAG3、及びTIGITから選択される分子)をブロックする抗体またはその抗原結合部分であってもよい。いくつかの実施形態では、がん免疫療法は、免疫共刺激分子(たとえば、4-1BB、CD27、CD28、CD40、CD137、GITR、ICOS、OX40、TMIGD2、及びTNFRSF25から選択される分子)のアゴニストを含む。いくつかの実施形態では、がん免疫療法はTLR9アゴニストである。実施形態、アゴニストは、抗体もしくはその抗原結合部分(二重特異性抗体を含む)または小分子である。典型的な薬剤としては、イピリムマブ、ペムブロリズマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ、及びピディリズマブが挙げられる。
【0117】
いくつかの実施形態では、がん免疫療法は養子細胞療法である。これには、T細胞養子細胞療法(腫瘍抗原を認識して結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する組換え型T細胞を含む)を含めることができる。いくつかの実施形態では、CAR-TはCD19に標的化される。
【0118】
他の実施形態では、免疫療法には骨髄移植または造血幹細胞の投与が含まれる。
【0119】
種々の実施形態では、複合体は、抗PD1、抗PDL1、及び/または抗CTLA4抗体のレジメンとともにがん患者に投与される。
【0120】
種々の実施形態では、治療レジメンには、免疫療法レジメン(たとえば、免疫チェックポイント阻害剤療法または養子細胞療法)の開始前の1~4週間の間、複合体を投与して、がん免疫療法に対して患者を状態調整することが含まれる。さらに他の実施形態では、治療レジメンには、がん免疫療法レジメンの終了後に1週間以上または1ヶ月以上の間、複合体を投与して、有効性及び/または効果の持続時間を改善することが含まれる。いくつかの実施形態では、複合体及び免疫療法を、併用療法を含むレジメンにおいて投与する。
【0121】
種々の実施形態では、患者は以前に、チェックポイント阻害剤療法(たとえば、抗CTLA-4、抗PD-1、または抗PD-L1、及び/または抗PD-L2薬剤)に対して、無反応であったか、部分的にのみ反応していたか、または耐性になっていた。たとえば、患者は、このような免疫チェックポイント阻害剤療法、または本明細書で説明する他の免疫療法の以前のレジメンを受けた場合があるが、前記治療に対して無反応であったか、または部分的にのみ反応していた。このような抵抗性患者は、任意選択で、本明細書で説明するような別の免疫療法とともに、CO放出基複合体から利益を得ることができる。
【0122】
本発明の他の態様及び実施形態によって、用語「含む」を用語「~からなる」と置き換えた前述した態様及び実施形態と、用語「含む」を用語「本質的に~からなる」と置き換えた前述した態様及び実施形態とが提供される。
【0123】
当然のことながら、本出願は、文脈上別の意味が求められる場合を除き、前述した上記態様及び実施形態のうちのいずれかの相互のすべての組み合わせを開示する。同様に、本出願は、文脈上別の意味が求められる場合を除き、開示する好ましい特徴部及び/または任意的な特徴部のすべての組み合わせを、単独でまたは他の態様のうちのいずれかとともに開示する。
【0124】
前述の実施形態の変更、さらなる実施形態及びその変更は、本開示を読めば当業者にとって明らかであり、したがって、それらは本発明の範囲内である。
【0125】
本明細書で述べたすべての文献及び配列データベースエントリは、すべての目的に対してその全体において参照により本明細書に組み込まれている。
【0126】
「及び/または」は、本明細書で用いる場合、2つの指定した特徴部またはコンポーネントのそれぞれの特定の開示であると解釈すべきであり、他方の有無にかかわらない。たとえば「A及び/またはB」は、まるで本明細書においてそれぞれを別個に述べたかのように、(i)A、(ii)B、及び(iii)A及びBのそれぞれの特定の開示であると解釈すべきである。
【0127】
本明細書で用いる場合、用語「約」は、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、関連する数の±10%を意味する。
【0128】
実験
ガス状メディエーターは、複数の生理学的役割を伴う小分子であり、免疫細胞に有益な手がかりを伝えることができる。この実験的な研究では、人工的なアルブミン金属タンパク質(rHSA-CORM)が、腫瘍に、それが進行を抑える場合に、著しい量のCOを特異的に送達できることを示す。その場で、COは、免疫チェックポイント分子の発現と免疫回避を促進する腫瘍関連マクロファージの数とを減少させ、抗腫瘍免疫応答の生成を開放する。特に、rHSA-CORM及び免疫チェックポイント阻害薬(ICB)が相乗作用して腫瘍を取り除き、免疫記憶を促す。これらの結果、CORM及びそのタンパク質複合体の、がん治療における処置レジメンとしての可能性が強調される。
【0129】
免疫療法(免疫系を利用して腫瘍細胞を特異的に標的にする処置戦略)は、種々のタイプのがんに対する治療の標準になることによって、がん患者に対する見通しを完全に変えた。しかし、過去数十年にわたってなされた大きな成果にもかかわらず、がん細胞は免疫認識及び破壊よりも上手に立ち回るため、免疫療法はすべての患者に効果的というわけではない。[5]。そのため、抗腫瘍免疫応答を促進する上での新しい戦術が求められている。COは、免疫調節から細胞保護作用まで及ぶ生物学的機能を伴う低分子量ガスである。環境に自然に存在し、その生理活性を変換する特定のタンパク質内に存在する遷移金属と選択的に反応する。CO生物学に関する以前の研究では主に、インビトロでのその直接的な効果に焦点を当てていた。がん免疫におけるCOの役割は実質的に分かっていない。高濃度のCOにさらすことは著しく有毒であるために、デケージングシステムたとえばCO放出分子(CORM)によって、より高い治療用量が安全に提供される。しかし、CORMには組織または細胞選択性がなく、したがって特定組織へのより制御された送達を可能にするキャリアが必要である。本明細書では、CORM(たとえば、CORM-3)の抗腫瘍可能性を、組換え型ヒト血清アルブミン(rHSA)の腫瘍標的化能力と結合して[14]、単一薬剤にする治療戦略について説明する。インビボがんモデルを用いて、rHSA-CORM処置が、腫瘍の増殖を弱めること及び免疫依存的にマウスの全生存期間を延ばすことに効果的であることを観察し、抗がん免疫療法剤としてのその有望さが示された。重要なことに、CO処置されたマウスは、免疫チェックポイントマーカーであるCTLA-4及びPD-1の発現の減少と、免疫抑制を促進する腫瘍関連マクロファージ(TAM)の頻度の減少とを示した。ICBとの併用療法によって、完全な腫瘍退縮及び免疫記憶が可能になった。注目すべきことに、これらの結果は、現時点で実施されている治療の有効性をCORMの投与によって高めることで、がんにおける免疫回避を逆転させられることを示している。
【0130】
材料及び方法
結合及び精製
pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で組換え型ヒト血清アルブミン(rHSA)を50当量のCORM-3(Sigma)と、室温で1時間反応させることで、液体クロマトグラフィーMS(LC-MS)によって検出されるrHSAの金属化の成功に対応する単一ピークが形成された。
【0131】
腫瘍の動物研究及び細胞単離
0日目に、5×105CT26細胞(結腸癌)を、BALB/c(またはNSG)マウスの腹部に、ダルベッコ改変イーグル培地とマトリゲル(Corning)との50μlの1:1混合物により、皮下注射した。C57BL/cマウスにおいて、1x106MC38(結腸腺癌)細胞を代わりに用いて、同じプロトコルを適用した。腫瘍体積が約100mm3に達したら、rHSA-CORM及びrHSA-DMSOを、50μlPBSでの腫瘍内(i.t.)注射(30mgkg-1)によって毎日投与した。腫瘍体積が1cm3に達したときに、マウスを安楽死させた。
【0132】
異所性腫瘍の誘発後に、BALB/cマウスを、分析まで、CO複合体によって毎日処置した。13日目に、腫瘍を切除して、刻んで、温浸することを、コラゲナーゼI、コラゲナーゼIV(Worthington)、及びDNaseI(Roche)の混合物を振とう器内で20分間、250r.p.m.、37℃で用いて行った。温浸後に、サンプルを100μm細胞ろ過器に通した。そしてそれを、冷却した完全RPMI1640培地に10mMのHEPES緩衝剤、1mMのピルビン酸ナトリウム、50μMの2-メルカプトエタノール、100U/mLのペニシリン、及び100μg/mlのストレプトマイシンを補充し、1%の非必須アミノ酸(NEAA)、1%のGluTAMAX補助剤、及び10%の加熱不活性化FBS(HI FBS)を補足したものの中で、再懸濁した。細胞を、2%のFBS及び1mMのEDTAを伴うPBS内で再懸濁して、CD45-APCに対して室温で15分間、染色した後、MojoSort(商標)マウス抗APCナノビーズ(BioLegend)によって室温で15分間、染色した。染色及びサンプルを室温に維持して、好中球破壊を防いだ。3サイクルの正の選択を磁気スタンドを用いて行って、フローサイトメトリー解析用の種々のマーカーを評価するために細胞を染色した。
【0133】
COレベル判定
Vreman及び共同研究者によって説明される方法を用いて[18]、組織及び血液内でのCOレベルを測定した。CO放出を、骨髄由来マクロファージ細胞(BMDM)及び結腸直腸がん細胞(CT26)内で評価した。マウス内のCO生体内分布と循環におけるカルボキシヘモグロビン(CO-Hb)レベルとを、3mgkg1のrHSA-CORM-3またはrHSAを単独で静脈注射した後に、30分間、評価した。
【0134】
CT26細胞及びBMDMにおけるCO放出のライブ画像化
前述した方法に続いて、CO放出の読み取りとして共焦点顕微鏡を用いたCOP-1の検出を行った[9]。簡単に言えば、40X水対物レンズ及び開口数1.3のZeissLSM880焦点レーザポイント走査型顕微鏡用いて、画像を得た。COP-1を488nmアルゴンレーザを用いて励起して、蛍光が波長範囲500~550nmで検出された。1.5x104CT26細胞またはBMDMを、実験の2日前に、200uLの8チャンバー#1.0ボロシリケートカバーガラス(Lab-Tek)プレートにおいて播種した。細胞を、1.5μMのrHSA-CORMまたはrHSA-DMSOのいずれかで30分間培養し、取得前にPBSによって3回洗浄した。顕微鏡で1μMのCOP-1を添加する前後に対照画像を撮影した。プローブを加えた後に5分ごとに最大で60分間画像を撮影した。細胞がz軸に沿って完全に画像化されることを確実にするために、画像取得をZスタックにおいて行った。取得は37℃の下で5%CO2で行った。
【0135】
腫瘍サイズ及び生存分析
腫瘍サイズを、次の式:体積=長さ×幅×幅×0.5を用いてデジタルキャリパーによって毎日測定した。マウスを接種後にモニタリングして、生存率を計算した。腫瘍増殖の結果を、有意である場合(95%信頼区間)に、一元配置分散分析によって分析した。担癌マウスの生存期間の比較を、ログランクマンテルコックス検定(95%信頼区間)を用いて行った。
【0136】
質量分析
20μLのBSA及びBSARuII(CO)2サンプルを、マイクロバイオスピン6カラム(Bio-Rad)を用いて、200mMの酢酸アンモニウム緩衝剤(pH7)に緩衝液交換した。質量スペクトルを、高質量Q-TOFタイプの装置XevoG2-S(Waters,Manchester,UK)上で得た。質量分析実験を、キャピラリ電圧1500V、コーン電圧200V、及びソースオフセット電圧150Vで行った。スペクトルをMassLynxV4.1(Waters)を用いて処理した。
【0137】
細胞の培養
CT26細胞(ATCC)を、加湿培養器内で37℃、5%のCO2下で日常的に増殖させて、週に2度、コンフルエンスに達する前に、TrypLEExpressを用いて分割した。CT26細胞を、DMEM培地に10%の加熱不活性化FBS、1%のグルタマックス、1%のピルビン酸ナトリウム、10mMのHEPES、10mMのNEAA、200ユニット/mLのペニシリン、及び200μg/mLのストレプトマイシンを補充したものの上で増殖させた。特に明記しない限り、すべての試薬は、Gibco,Life Technologies(USA)から購入した。
【0138】
免疫応答の評価
全細胞を、Charles Riverから輸入した8~14週齢のBALB/cマウスの腫瘍から採取した。切除した腫瘍を刻んで、温浸することを、コラゲナーゼI、コラゲナーゼIV(Worthington)及びDnaseI(Roche)の混合物を振とう器内で20分間、250rpm、37℃で用いて行った。温浸後に、サンプルを100μm細胞ろ過器に通した。そしてそれを、冷却した完全RPMI1640培地に10mMのHEPES緩衝剤、1mMのピルビン酸ナトリウム、50μMの2-メルカプトエタノール、100U/mLペニシリン、及び100μgの/mlストレプトマイシンを補充し、1%の非必須アミノ酸(NEAA)、1%のGluTAMAX補助剤、及び10%の加熱不活性化FBS(HI FBS)を補足したものの中で、再懸濁した。細胞を、2%のFBS及び1mMのEDTAを伴うPBS内で再懸濁して、細胞外マーカーに対して45分間、4℃で染色した。そして細胞懸濁液を固定し、透過処理して、ThermoFisher ScientificからのeBioscience Foxp3転写因子染色緩衝剤セットを用いて、細胞内マーカーに対して染色した。サンプルを、BD FACSDivaソフトウェアを備えたBD LSRFortessaフローサイトメータにおいて分析し、データをフロージョーv.10ソフトウェアにおいて分析した。結腸癌実験において用いた抗体(BioLegend)は以下のとおりであった。CD45-BV510(30-F11)、CD3-BV711(17A2)、CD49b-FITC(DX5)、CD4-BV605(RM4-5)、CD8-PECy7(53-6.7)、CD152-PECy7(CTLA-4、UC10-4B9)、CD279-PE(PD-1、29F1A12)、TNFα-PE(MP6-XT22)、IFNγ-PerCP/Cy5.5(XMG1.2)、I-A/I-E-PE(MHC-II、M5/114.15.2)、F4/80-PECy7(BM8)、Ly6G-BV605(1A8)、Ly6C-FITC(HK1.4)、CD11c-BV711(N418)、TER119-APC、CD19-APC(6D5)、Ki-67-BV605(16A8)、CD274-BV421(B7-H1、PD-L1、10F9G2)、CD206-PerCP/Cy5.5(C068C2)。用いた抗体(eBioscience)は、iNOS-PE(CXNFT)及びICAM-1-FITC(YN1/1.7.4)であった。Fixable Viability Dye eFluoreFluor780(eBioscience)を用いて死細胞を除外した。動物は、Direcao Geral de Veterinaria and Instituto de Medicina Molecular Joao Lobo Antunes倫理委員会によって承認されたプロトコルに従って維持した。
【0139】
マクロファージ枯渇分析
インビボでのCT26腫瘍誘発の前述したプロトコルに従って、マクロファージ枯渇を、600μg/kgの抗CCR2抗体(MC-21)の毎日の静脈注射と、クロドロネートリポソームの週2回の静脈注射とによって行い、マクロファージの枯渇に対して、CT26細胞の皮下注射後の9日目に開始している。16日目にマウスを屠殺し、細胞を単離して、フローサイトメトリーを通して評価した。フローサイトメトリー分析は前述したように行った。
【0140】
骨髄由来マクロファージ(BMDM)培養システム
BM細胞を、8週齢のC57BL/cマウスの大腿骨から単離して、6ウェルプレートに入れた。6ウェルプレートは、800μのLRPMI1640培地(ウェルあたり)に、10%の加熱不活性化FBS(HIFBS)、10mMのHEPES緩衝剤、1mMのピルビン酸ナトリウム、20U/mLのペニシリン、及び20μg/mlのストレプトマイシンが補充され、1%のGluTAMAXが補足されたものを収容している。さらに、M-CSF産生L929線維芽細胞の上清200μLを各ウェルに添加した。細胞を、準全マクロファージ分化のために、37℃及び5%CO2の加湿培養器内で6日間、維持した。rHSA-CORMまたはrHSA-DMSO複合体を、播種から24h後に添加し、3日目にウェルあたり250μLのL929上澄みとともに再び添加した。6日目に、細胞を2mMのEDTAを伴うPBS内で約10分、培養して、引っかくことによって機械的に取り除き、12のウェルプレートにおいて再播種した。マクロファージ分極を、BMDMを24h、以下の条件で培養することによって実現した。M0:20%のL929(または10ng/mLのM-CSF)、M1:10ng/mLのLPS+10ng/mLのIFNγ、M2a:10ng/mLのIL-4+10ng/mLのIL-13、M2c:10ng/mLのIL-10+0.5ng/mLのTGF-β。細胞を、前述のようにプレートから採取し、BD Fortessa装置においてフローサイトメトリーによって分析した。
【0141】
結果
質量分析
結合戦略の概略図と、ネイティブrHSA(リコンブミン)及びrHSA-CORM(リコンブミン-Ru(CO)2)の質量スペクトルとを、
図1a及び1bにそれぞれ示す。
【0142】
CO放出及び分布
COがCT26細胞内の複合体から効果的に放出されたか否かを判定するために、COP-1という名前のCO感受性色素を用いたライブ画像化を通してCOレベルを遮蔽した[67]。予想どおり、COは時間とともに腫瘍細胞内に蓄積することができた(
図2b)。さらに、COは、ヘモグロビンに対する親和性が酸素よりも高く、組織の酸素化を防ぎ得るため、カルボキシヘモグロビン(CO-Hb)の血中含有量を推定して、マウスにおける潜在的なCO中毒を評価した。rHSA-CORMの静脈内投与によるCO-Hb種の形成の何らかの増加は観察されず、組織内の毒性の何らかの所与の徴候も検出されなかった(
図3の左、
図12a~c)。
図3にCO生体内分布を示す。さらに、処置による鼡径リンパ節(iLN)に隣接する腫瘍において何らかの膨潤が観察された。これは、その部位における免疫細胞動員の増加を意味する可能性がある(
図4c)。rHSA-CORM処置マウスの臓器において腫瘍細胞が検出されなかったため、種々の組織における組織学的スコアによって、転移がiLN腫脹の根底にある可能性も除外された(
図12d)。
図2aに、BMDMにおけるCO放出も示す。
【0143】
腫瘍サイズ及び生存
CO処置が、腫瘍増殖を弱めること及びマウスの全生存期間を延ばすことに効果的であることが示された。
図4aに実験の概略図を示す。
図4bは、rHSA-DMSO処置と比べたときに、rHSA-CORMによる処置の結果として生存が著しく改善されることを、明らかに示している(p=0.0034)。また
図4bは、CT26腫瘍の増殖が、rHSA-DMSO処置と比べたときに、rHSA-CORMによって遅くなっていることを示している。このことはさらに
図4cに示されている。
図4cでは、13日目において、rHSA-CORM処置された腫瘍がrHSA-DMSO処置された腫瘍よりもかなり小さい。
図4dに腫瘍重量を図式的に示す。
図4cではまた、13日目における鼡径リンパ節(iLN)が、rHSA-DMSO処置と比べたときに、rHSA-CORMによる処置後の方が大きかったことも示している。これは、rHSA-CORM処置されたマウスの方が、より強い免疫応答を腫瘍細胞に対して開始したことを示唆し得る。
【0144】
rHSA-CORMは、C57BL/cマウスにおけるMC38細胞を用いた結腸癌の別のマウスモデルにおいても同様に有効であった。
【0145】
COを介した効果が実際に免疫系に依存しているか否かを評価するために、免疫不全マウス(NSG)おいて同じ腫瘍を誘発した。処置群間のわずかな違いもCT26細胞内の直接的な細胞毒性も観察できなかったため(
図5)、COを介した抗腫瘍効果は免疫依存性であると結論づけられた。
図5に示すように、免疫不全NSGマウスにおけるrHSA-CORM及びrHSA-DMSO処置の間で、腫瘍サイズ、生存、または細胞生存能力に有意差はない。これは、CORM複合体処置が免疫抑制癌に対して最も適切であることを示唆している。
【0146】
炎症反応及び免疫応答の分析
図6a、bに、CO処置されたマウスが、腫瘍浸潤T細胞における免疫チェックポイントマーカーCTLA-4及びPD-1の発現の減少を示したこと(
図6a)、またCO処置によって、TNFα及びIFNγを発現している細胞の存在量が増加すること(
図6b)を示す。これは、CTLA-4及びPD-1が両方ともT細胞作用を抑制するため、CO処置が、T細胞応答の低下を特徴とする免疫抑制癌において効果的である可能性があることを示している。
【0147】
図7aに、COが腫瘍内の種々のサイトカイン及びケモカインの産生に影響することを示す。特に、CO処置はIL-20のレベルの劇的な減少を示した。(A)rHSA-CORM処置後の腫瘍におけるサイトカイン(左)及びケモカイン(右)のタンパク質定量化(rHSA-CORM、n=3;rHSA-DMSO、n=3)。
【0148】
図6a、bに示すように、腫瘍浸潤リンパ球の存在量に差はないにもかかわらず、CTLA-4及びPD-1(抑制及び消耗のマーカー)の発現がT細胞において減少したことが観察され、一方で、腫瘍抑制TNFα及びIFNγ産生CD8及びNK細胞の増加が処置後に観察された。このような結果は、免疫応答が強すぎるのを防ぐチェックポイントタンパク質の発現をCOがどのように減らすことができるのかを明らかにしている。これらの効果がどの種類のT細胞サブセットに依存するのかを判定するために、枯渇抗体を用いてCD4及びCD8T細胞をインビボで取り除いた。CD4 T細胞はCO処置にとって冗長であるが、CD8 T細胞が枯渇するとrHSA-CORMの効果が逆転することが観察された。これは、COを介した効果はCD8依存性であることを示唆している(
図7b)。さらに、COがICMの発現にわずかに影響したため、ICBはrHSA-CORM処置と相乗効果を示し、抗腫瘍応答がさらに増強されると仮定された。実際には、ICB単独よりも併用治療(COMBO)を受けたマウスの方が多くの腫瘍が退縮したため、生存数が改善された(
図7c)。マウスが腫瘍を完全に取り除いた後で、反対側の側腹部において同じ腫瘍細胞を再チャレンジした。際だったことに、ICB及びrHSA-CORMを用いて以前に処置したマウスは、腫瘍を発症しなかった(
図7d)。
【0149】
COに対するマクロファージ応答
骨髄コンパートメント、特に腫瘍関連マクロファージ及び単球におけるCOを介した効果を評価した。MHC-II+細胞(たとえば、マクロファージ)は、T細胞に抗原を示す役割を有する。しかし、腫瘍の状況では、TAMはT細胞を活性化するのではなくT細胞を抑制するように歪むため、これらのマクロファージはがん処置において有害となる[2]。TAMは、T細胞抗腫瘍免疫を抑制して腫瘍発生を促進する。
【0150】
図8に、CO処置によって腫瘍における単球及びTAMの存在量が減ることを示す(rHSA-CORM、n=4;rHSA-DMSO、n=4)。興味深いことに、CO処置によって好中球の存在量が増加することも観察された。これは、可能性として免疫性能の改善を示している(
図8)。さらに、
図9a~dに、マクロファージの枯渇がCT26腫瘍におけるCO処置の効果を模倣することを示す(rHSA-CORM、n=4;rHSA-DMSO、n=4;rHSA-CORM+Clod Lip、n=4;rHSA-DMSO+Clod Lip、n=4)。これらのマクロファージは、Ki-67発現の減少が示すように、増殖性がより低く(
図9e)、クロドロネートリポソームを用いた枯渇は、腫瘍の増殖を妨げるCOの同類を模倣した(
図9b)。この結果、CO処置が、T細胞応答の低下を特徴とする免疫抑制癌の処置に対して有用であることを示すさらなる証拠が得られる。
【0151】
またCO処置後の腫瘍におけるIL-20産生の完全な抑止も見られた(
図7a及び9e)。IL-20は、がんの進行に関連するIL-10ファミリーからの炎症誘発性サイトカインであり、単球及びマクロファージはその主な産生者である。したがって、COを介した抗がん効果はマクロファージの枯渇に依存し得る。
【0152】
この考え方に従って、COがマクロファージの恒常性に関与しているか否かを判定しようとした。絶対細胞数の減少の原因がマクロファージ増殖またはアポトーシスにおける効果に起因するのか否かを判定するために、細胞をKi-67及びアネキシンVに対してそれぞれマーキングした。以前にインビボで観察されたものとは反対に、マクロファージの増殖において違いは観察されなかった(
図10e)。さらに、rHSA-CORMに対してアポトーシスの減少が観察された。これは、アネキシンV及び生存性色素(
図10f)の併用染色に見られるように、COを介した細胞数の減少と一致しない。したがって、COは、この濃度ではマクロファージではなく、分化前の前駆体の生存能力に影響する可能性がある。
【0153】
マクロファージを骨髄(骨髄由来のマクロファージ、「BMDM」)からインビトロで分化して、rHSA-CORMまたはrHSA-DMSOによって培養した(
図10a)。rHSA-CORM加える前に単球を定着させて分化を開始させたときに、総細胞数の違いにもかかわらず、単球からマクロファージへの分化に関して違いは生じなかった(
図10b-d)。したがって、COは、このような低濃度(1μM)ではマクロファージではなく、分化前の前駆体の生存能力に影響し得ると考えた。
【0154】
分化したBMDMの細胞毒性アッセイによって、マクロファージは単球よりも耐性の閾値が高く、80μMのGI50を示すことが示されている。これに対し、5または10μM程度に低い濃度を用いると、化合物をBM細胞と同時に加えた場合に、培養においてほぼ完全な細胞死となった(
図11a)。したがって、COはマクロファージ分化を損なわず、むしろBM前駆体の生存能力を弱めて、マクロファージの数の減少を引き起こすように見える。さらに、COは、M1、M2a、及びM2c系統マーカーの発現を減少させることによってマクロファージ分極に影響した(
図10h)。しかし、これらの効果は、分極にとっては二次的であり、マクロファージの生存能力の減少が原因である場合がある。
【0155】
まとめると、これらの結果は、COが、腫瘍増殖を弱めること及び免疫依存的にマウスの全生存期間を延ばすことに効果的であることを示しており、免疫抑制癌の処置としてのその有望さを示している。現時点で利用可能な免疫療法戦略は、がんに対して常に効果的なわけではなく、処置の最初に取り組んでも再発することがある。COは、免疫チェックポイント阻害剤の効果を再現し得るだけでなく、腫瘍の免疫抑制的な環境を助長する細胞を枯渇させ得る新しい多目的抗がん剤として出現している。その結果、COは従来の処置に代わる優れた治療法として存在し得る。
【0156】
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配列
SEQ ID NO:1(ヒト血清アルブミン)
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【配列表】
【国際調査報告】