(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-09
(54)【発明の名称】多光路光電容積脈波測定装置を用いて生物学的指標及び血管形状を測定するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1455 20060101AFI20230427BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20230427BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
A61B5/1455
A61B5/0245 Z
A61B5/02 310A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022555101
(86)(22)【出願日】2021-04-11
(85)【翻訳文提出日】2022-09-12
(86)【国際出願番号】 US2021026763
(87)【国際公開番号】W WO2022220784
(87)【国際公開日】2022-10-20
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519350432
【氏名又は名称】アリオ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】アファナシエフ, アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】ミラー, フォレスト
(72)【発明者】
【氏名】オノレ, フランシス
(72)【発明者】
【氏名】フランネリー, アンソニー
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA12
4C017AC26
4C017BB12
4C017BC11
4C038KK00
4C038KK01
4C038KL05
4C038KL07
4C038KX02
4C038KY01
(57)【要約】
血管上の皮膚の一部の領域に貼り付けるように構成される可撓性基板のパッチを用いて血流指標を監視するためのシステム及び方法。パッチは、行列を形成するように基板上に配置される複数の光源と、LEDの行と実質的に平行に基板上に配置される光検出器の行を含む。パッチは、各光源を駆動し、光検出器の1つに強度信号を入力するように構成される光信号インタフェースを含む。強度信号は、各光路に対応するAC/DC成分比を決定するために用いられる。AC/DC成分比は、各光路について計算され、RoR値を決定するために用いられる。少なくとも1つのRoR値の部分集合が、生物学的指標又は血管断面積を決定するために用いられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性基板のパッチ、複数の発光ダイオード(LED)及びC個の光検出器(PD)の行、光信号インターフェース、並びに処理システムを備え、
前記可撓性基板のパッチは、血管上の皮膚の一部の領域に貼り付けるように構成され、
前記複数の発光ダイオード(LED)は、R×C行列を形成し、
前記C個の光検出器(PD)の行は、LEDのR個の行に対して実質的に平行となるように前記基板上に配置され、
前記LEDのR個の行は、各光検出器と実質的に同軸であるC列を形成するように延在し、
前記光信号インターフェースは、前記基板上に設けられ、各LEDをオン期間中に駆動し、行r=1~R、列c=1~CにあるLEDと光信号を受信する前記光検出器によって形成される光路OP
rcの強度測定値を受信する前記光検出器の1つにおいて、前記オン期間中に前記光信号を入力するように構成され、
前記処理システムは、前記処理システムにより実行されるプログラム命令を格納するためのメモリを備え、
交流成分I
rc,ACと直流成分I
rc,DCを、各光路OP
rcに対して一定期間にわたり測定した複数の強度測定値I
rcの関数として決定し、
各光路に対してAC/DC成分比:R
r,c=I
rc,AC/I
rc,DCを決定し、
第一の複数の選択されたAC/DC成分比を第二の複数の選択されたAC/DC成分比で除すことによって、複数のratio-of-ratio(RoR)を決定し、
少なくも1つの前記RoR値の部分集合を用いて、生物学的指標を決定する、
システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、
前記処理システムは、前記複数のRoRを決定するように構成され、
前記複数のRoRは、AC/DC成分比の各行におけるAC/DC成分比を、前記光検出器の行に最も近いLEDの行に対する前記光路に対応するAC/DC成分比の行における前記AC/DC成分比で除すことによって決定される、
システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、
前記処理システムは前記複数のRoRを決定するように構成され、
前記複数のRoRは、光検出器の行に最も近いLEDの行に係る前記光路に対応するAC/DC成分比の1行におけるAC/DC成分比をそれ自体で除し、
第2行から始まる各行のAC/DC成分比を、次に続くAC/DC成分比の行で除すことにより決定される、
システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、
前記複数のLEDは、複数の赤外光を放射する赤外(IR)LEDであり、
前記処理システムの前記メモリは、前記処理システムによって実行されるプログラム命令を含み、
前記生物学的指標を決定するために少なくとも1つの前記RoR値の部分集合を用いる際、前記生物学的指標はヘマトクリット濃度Hctであり、
前記ヘマトクリット濃度Hctは、Hct=F(RoR')を用いて決定され、
Fは、基準ヘマトクリット測定システムを用いて測定される複数の基準RoR値から決定される基準ヘマトクリット濃度に基づき、RoR値の範囲をヘマトクリット濃度の値の範囲に相関させ、
RoR'は、少なくとも1つのRoR値の部分集合である、
システム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムであって、
前記RoR値の部分集合は、LEDの中心列に対応するRoR値を含む、
システム。
【請求項6】
請求項4に記載のシステムであって、
前記RoR'値は、前記R×C個のLEDの全てに対応するRoR値の集合を含む、
システム。
【請求項7】
請求項4に記載のシステムであって、
前記RoR'値は、前記R×C個のLEDの全てに対応するRoR値の集合を含み、
前記処理システムは、前記伝達関数に従って前記RoR'値の表面フィッティングをするように構成される、
システム。
【請求項8】
請求項4に記載のシステムであって、
前記伝達関数Fは、前記ヘマトクリット濃度を決定するために2次多項式を前記RoR'値にフィッティングする、
システム。
【請求項9】
請求項8に記載のシステムであって、
強度測定前に、前記伝達関数FはHct=aR
2+bR+cを用いて決定され、
変数a、b、及びcは、既知のHctの値を決定するために基準値R=RoRから決定される、
システム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムであって、
前記複数のLEDは、前記赤外領域にある第1の波長で発光する複数の赤外(IR)LEDであり、
前記システムは、さらに赤色領域にある第2の波長で発光する複数の赤色LEDを備え、
前記複数の赤色LEDの各々は、前記R×C行列にある前記複数のIRLEDの各々に隣接するように前記基板上に配置され、
前記光信号インターフェースは、独立したIR及び赤色光路であるOP
IR,rcとOP
red,rcを形成するように、IRLEDと赤色LEDをそれぞれ独立に駆動するように構成され、
前記処理システムは、
前記光路OP
red,rcに対応する複数の赤色強度測定値と、前記光路OP
IR,rcに対応する複数のIR強度測定値I
IR,rcを、複数の各波長における各光路の強度測定値を受信する期間にわたって受信し、
赤色AC成分I
red,rc,AC及び赤色DC成分I
red,rc,DCを、前記期間にわたり各赤色光路OP
red,rcに係る前記複数の強度測定値I
rcの関数として決定し、
IRのAC成分I
IR,rc,AC及びIRのDC成分I
IR,rc,DCを、前記期間にわたり各IR光路OP
IR,rcに係る前記複数の強度測定値I
rcの関数として決定し、
赤色AC/DC成分比:R
red,r,c=I
red,rc,ac/I
red,rc,dcを各赤色光路について決定し、
IRのAC/DC成分比:R
IR,r,c=I
IR,rc,ac/I
IR,rc,dcを各IR光路について決定し、
各赤色又はIRのAC/DC成分比のどちらかの各々を、IR又は赤色のAC/DC成分比のどちらかの各々で、全ての前記赤色及びIRのAC/DC成分比が取り込まれるまで除すことにより、複数の合成RoRを決定し、
第1の複数の選択された合成RoRを第2の複数の選択された合成RoRで除すことにより、複数のRoR値を決定し、
生物学的指標を決定するために少なくとも1つの前記RoRの部分集合を用いることにより、酸素飽和指標を測定するように構成される、
システム。
【請求項11】
請求項11に記載のシステムであって、
前記少なくとも1つのRoR値の部分集合は、前記酸素飽和SpO
2を、
SpO
2=F(RoR')
に従って決定するために用いられ、
Fは、基準酸素飽和測定システムを用いて測定される前記少なくとも1つのRoR値の部分集合から決定される基準酸素飽和濃度に基づき、RoR値の範囲を酸素飽和の範囲に相関させる伝達関数である、
システム。
【請求項12】
請求項12に記載のシステムであって、
前記伝達関数Fは、前記酸素飽和濃度を決定するために、2次多項式を前記RoR'値にフィッティングさせる、
システム。
【請求項13】
請求項13に記載のシステムであって、
強度測定前に、前記伝達関数FはSpO
2=aR
2+bR+cを用いて決定され、
変数a,b,及びcは、SpO
2の既知の値を決定するために基準値R=RoRから決定される、
システム。
【請求項14】
請求項1に記載のシステムであって、
前記パッチは、前記基板上に搭載される通信インターフェースを含み、
前記複数の強度を、1つ以上のネットワーク化計算機器を動作させる前記処理システムに伝達するように構成される、
システム。
【請求項15】
請求項1に記載のシステムであって、
前記パッチは、前記パッチの基板上に搭載される処理システムと、
ネットワーク上で生物学的指標を通信するように構成される通信インターフェースを含む、
システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
近年、医療診断業界では、患者を遠隔で監視する医療従事者を支援するように構成される、携帯型、さらには装着型の診断装置の開発に多大な努力が払われている。このような遠隔監視は、理想的には、トレンドラインデータなど他の方法では得られないデータを医療従事者に提供し、患者が診療所、研究所、その他の検査センターに出向く回数を減らすものである。この目的は、全世界を掌握したCOVID-19の大流行に直面したこの1年で、より一層重要なものとなった。COVID-19の大流行は、医療インフラに負荷をかけた。ウイルスの急速な拡大により、病院は限界点を超えた。過密状態、スタッフの過労、資源不足により、医療システムはCOVID-19の患者だけでなく、他の種類の治療を必要とする患者にも対応することが困難になった。
【0002】
このような状況は、慢性疾患を持つ患者など、弱い立場の患者層にとって特に困難なものである。弱い立場の患者層は、COVIDに感染した場合、症状が重篤化するリスクが最も高くなる。また、これらの患者は、慢性疾患を監視、治療、管理するためにケア提供者のもとを頻繁に訪れなければならない。例えば、透析患者は現在でも週に3回透析に通う必要があり、糖尿病、心不全、貧血など管理すべき併存疾患が多いため、非常に高いリスクを抱えている。
【0003】
病院から自宅へのケアの移行を可能にするために、多くの遠隔医療サービスが利用されている。しかし、今日の遠隔医療は、臨床医に客観的データではなく、主観的なデータへのアクセスしか提供していない。弱い立場の人々にとって、彼/彼女らが遭遇する最も重要な問題について、診療所での検査を自宅で再現したり、補足したりする方法は現在のところ存在しない。ほとんどの場合、(診断テストと対照的な)予後スクリーニングツールがあれば、クリニックでの検査負担を補い軽減するのに十分であろう。正確な家庭用スクリーニングシステムは、患者と医師の診療所での検査負担と曝露リスクを減らすことになる。自動化された在宅スクリーニングを用いることで、在宅スクリーニングで検出された重大な変化によって示唆された場合にのみ、臨床検査が行われるように指示することが可能である。
【0004】
非侵襲的な遠隔モニタリングが有効な重要な指標には、ヘモグロビン及びヘマトクリット(Hb/Hct)が含まれる。透析患者は、改善された非侵襲的なモニタリングが有効な患者タイプの一例である。多くの透析患者は、通常、毎月採血を行い、Hb/Hct値を検査している。これらの患者は、透析治療と並行して、貧血を管理するためにエリスロポエチン(EPO)を服用していることが多い。このような患者のHb/Hct値は、必要に応じてEPOの投与量や透析量を調整することができるように、注意深くモニターする必要がある。過剰透析の結果は深刻で、患者は低血圧になり、入院や死亡に至ることもある。
【0005】
採血の頻度が少ないため、医師は、患者が投与量の調節を必要とする時期を判断するために、患者による症状の自己申告及び/又は透析センタースタッフの判断を頼りにしている。透析プロセスにおいて重要な役割を果たすこれらの情報を客観的に評価する方法がないことが、透析患者の入院率や死亡率が高い原因となっている。
【0006】
毎月の採血を補い、より頻繁にHb/Hct値を評価し、臨床医に潜在的な問題を警告することが望ましいと思われる。このため、毎月の採血を補い、毎週クリニックで検査を行うために、多くのHb/Hct測定装置が採用されるようになった。これらのHb/Hct監視装置は誤差が大きいものの、採血と比較して使用が容易であるため、Hb/Hctのトレンドライン化を可能とし、それにより更に臨床的洞察を提供する。
【0007】
現在利用可能なHb/Hct監視ツールは重大となり得る誤差を示す傾向があり、患者が採血のために検査センターへ行く必要性に取って代わることは出来ていない。より正確なHb/Hctの監視が可能になればより正確なトレンドライン化が可能になり、透析患者だけでなく他の疾患を持つ患者にとっても、その病院訪問の必要性を削減できる可能性がある。
【発明の概要】
【0008】
上記を考慮し、複数の光源及び光検出器からの複数の光路を用いて血流指標を監視するためのシステム及び方法が提供される。一例では、可撓性基板のパッチは、血管上の皮膚の一部に貼り付けられるように構成される。複数の発光ダイオード(LED)はR×C行列を形成するように基板上に配置され、C個の光検出器(PD)の1行は、各光検出器に実質的に同軸であるC個の列を形成するように延在するLEDのR個の行に対して実質的に平行となるように、基板上に配置される。光信号インターフェースは基板上に搭載され、各LEDをオン期間中に駆動し、オン期間中に光検出器の1つで光信号を入力するように構成される。強度測定値は、行r=1~R、列c=1~CにあるLEDと光信号を受信する光検出器によって形成される光路OPrcについて受信される。処理システムは、処理システムにより実行されるプログラム命令を格納するメモリを備え、
(a)光路OPrcに対応する複数の強度測定値を、各光路の複数の強度測定値を受信する期間にわたって受信し、
(b)交流成分Irc,ACと直流成分Irc,DCを、各光路OPrcに対して一定期間にわたり測定した複数の強度測定値Ircの関数として決定し、
(c)各光路に対してAC/DC成分比:Rr,c=Irc,AC/Irc,DCを決定し、
(d)第一の複数の選択されたAC/DC成分比を第二の複数の選択されたAC/DC成分比で除すことによって、複数のratio-of-ratio(RoR)を決定し、
(e)少なくも1つのRoR値の部分集合を用いて、生物学的指標を決定するように構成される。
【0009】
一形態において、前記複数のLEDは、赤外光を放射する複数の赤外(IR)LEDである。前記処理システムのメモリは、前記生物学的指標を決定するために少なくとも1つの前記RoRの部分集合を用いる際に前記処理システムによって実行されるプログラム命令を含み、前記生物学的指標はヘマトクリット濃度Hctであり、Hct=F(RoR')を用いて決定される。ここで、Fは、基準ヘマトクリット測定システムを用いて測定される複数の基準RoRの値から決定される基準ヘマトクリット濃度に基づき、RoR値の範囲をヘマトクリット濃度の範囲に相関させる伝達関数であり、RoR'は少なくとも1つのRoR値の部分集合である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、生物学的指標を決定するシステムの実施例を示すブロック図である。
【0011】
【
図2A】
図2Aは、生物学的指標を測定するための複数の光路を生成するように構成されるパッチの実施例である。
【0012】
【
図2B】
図2Bは、生物学的指標を測定するための例示的なパッチ上に配置される例示的なシステムの概略図である。
【0013】
【
図2C】
図2Cは、生物学的指標を測定するための複数の光路を生成するように構成されるパッチの別の実施例である。
【0014】
【
図3】
図3は、血管上にパッチを貼り複数の光路を生成した例を示す模式的な側断面図である。
【0015】
【
図4A】
図4Aは、血管を実質的に中心とし、複数の光路を生成するパッチの一例を示す正面断面図である。
【0016】
【
図4B】
図4Bは、パッチの中心が血管の中心からずれた、複数の光路を生成する血管上のパッチの一例を示す正面断面図である。
【0017】
【
図5A】
図5Aは、例示的なパッチ上に形成される複数の光路の一例を示す上面模式図である。
【0018】
【
図5B】
図5Bは、
図5Aにおける複数の光路に対するAC/DC比の決定の一例を示すフロー図である。
【0019】
【
図5C】
図5Cは、ratio-of-ratio(RoR)を決定するための代替スキームを示すRoR値の表である。
【0020】
【
図6】
図6は、例示的なPPGグリッド中の光検出器に対するLEDの位置に対してプロットされるRoR値のグラフの例である。
【0021】
【
図7A】
図7Aは、例示的なパッチ上に2つの波長で形成される複数の光路の別の例示的な上面模式図と、2つの異なる波長でAC/DC成分比を決定するための別の例示的な方法の動作を示すフロー図である。
【0022】
【
図7B】
図7Bは、2つの波長における複数の光路に対するRoR決定方法の例を示すフロー図およびマトリックスである。
【0023】
【
図7C】
図7Cは、2つの波長における複数の光路に対するRoR決定方法の例を示すフロー図およびマトリックスである。
【0024】
【
図7D】
図7Dは、2つの波長における複数の光路に対するRoR決定方法の例を示すフロー図およびマトリックスである。
【0025】
【
図8A】
図8Aは、血管の幾何学的特性を決定するための、または血管内の血流に対する血液指標を測定するための基準曲線関係を生成する方法の一例の動作を示すフローチャートである。
【0026】
【
図8B】
図8Bは、ピークのRoRに対するRoRの百分率と、血管半径に対する百分率として表されるチャネル中心までのチャネル距離との間の曲線関係を示す複数の曲線グラフと、パッチの複数のチャネルについて決定されたRoRのプロットの一例である。
【0027】
【
図8C】
図8Cは、血管断面積の決定に使用され得るRoR値の行列の2つの例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、生物学的指標及び下にある血管の断面積を測定するためのシステム及び方法について説明する。例示的な実施形態では、システムは、血管上の皮膚の一部の領域に貼り付けられるように構成されるパッチを含む。このパッチは、複数の発光ダイオード(LED)と複数の光検出器を含む。LEDは、C個の光検出器の各々がR行の列と平行に配置されるように、R行×C列の格子に配置されてもよい。LEDと光検出器の行列は、LEDからの光がLEDと光検出器の間に、血管と実質的に交差する光路を形成するように、血管上の領域を覆うように配置される。
【0029】
LEDは、測定される生物学的指標に対応する任意の適切な波長で発光してもよい。例えば、ヘマトクリットは、赤外(IR)光を使用して測定されてもよい。例えば、酸素飽和度などの測定値は、赤色光及び赤外光からの光学的測定値を用いて測定されてもよい。LEDの波長は、測定される指標に対する光と組織の特性の相互作用に基づいて選択されてもよい。例えば、血液を通して測定されるIR信号の強度は、赤血球中のヘモグロビンとの相互作用の関数であるので、IR光はHctを測定するために選択される。本開示は、ヘマトクリット(Hct)、ヘモグロビン(Hgb)、及び酸素飽和度(SpO2)の測定に焦点を当てている。しかしながら、以下に説明する例示的な技術を用いて、類似した波長の光を用いて他の指標が測定されてもよい。
【0030】
例示的な実施形態では、システムは、ratio-of-ratioと呼ばれるフォトプレスチモグラフィー(PPG)パラメータに伝達関数を適応することによってHctを計算するように構成される。ratio-of-ratio、すなわちRoRは、それ自体がレシオメトリックである2つの値の比を指す。2つのLED-フォトダイオードの組の各々について(ここで、赤外LEDは同じフォトダイオードから異なる距離に配置されている)、信号の振幅の比率を信号のDC値で割る。このAC/DC値は、PPGセンサの用途に応じて、拡散反射率または灌流指数と呼ばれる。
【0031】
例示的な実施形態では、パッチは、行及び列を有し、光源の行に対して実質的に平行な光検出器の行から延在する、アレイに配置される複数の光源を用いて、PPG測定を行うように構成されてもよい。各光源は、各光検出器と光路を形成してもよい。各光路について、AC/DC値、又は灌流指数が決定されてもよい。複数のチャネルは、PPGグリッドの複数の光検出器に対応するように画定されてもよい。
【0032】
光の検出器として光検出器を用い、 光源として発光ダイオード(LED)を用いたPPGグリッドを以下に説明するが、光源又は光検出器を特定のデバイスに限定する意図はない。任意の例示的なPPGグリッドのLEDは、任意の適切な波長のLEDを含んでもよく、波長は、測定される生物学的指標に応じても良い。複数の波長を有するLEDがPPGグリッドで用いられてもよく、これもまた、測定される生物学的指標に依存してもよい。
【0033】
以下に説明するPPGグリッドは、1行に並んだ3つの光検出器と、光検出器に対して実質的に平行に延在する5行のLEDを含む。しかし、PPGグリッドは、任意の適切な数の光検出器および任意の適切な数のLEDを用いて実装されてもよい。光検出器及びLEDの数並びに構成要素間の間隔は、所望の複雑さの度合い、想定される血管の幾何学的形状、血管のおおよその深さ、及び他の要素などの要因に依存し得る。一般に、PPGグリッドの幾何学的形状は、ターゲットとなる血管内を流れる血液に対する光信号の最大相互作用が得られるように構成されてもよい。
【0034】
複数のRoRは、1つのLEDに対する光路のAC/DC値を別のLEDに対する光路のAC/DC値で除すことによって計算されてもよい。いくつかの例において、各々の近接したLEDに対応する光路のAC/DC値は、次に続くLEDに対応する光路のAC/DC値で除されてもよい。いくつかの例において、選択されたLEDに対応する光路についてのAC/DC値は基準として用いられてもよく、各LEDに対応するRoRを決定する際に用いられてもよい。
【0035】
一般に、RoRは、Hct、Hgb、SpO
2、その他(例えば血管の幾何学的指標を含む)などの血液指標を決定する際に分析上の利点をもたらすことができる方法で決定されてもよい。Hct及びSpO
2を決定するためにPPGグリッド及びPPGグリッドから計算されるRoRを使用する例は、
図5A~5D、6A~6B、7A~7Bを参照して以下に説明される。血管形状を決定するためにRoRを使用する例は、
図8A及び
図8Bを参照して以下に説明される。
【0036】
いくつかの例示的な実施形態において、RoRは、各光検出器に対応するLEDの列における光路について決定されてもよい。列のRoRは、例えば、血液指標を決定するために使用するRoRの最適な列を決定するために分析されてもよい。別の例では、RoRの列で決定される複数のRoRは、血液指標を決定するために用いられてもよい。1つの列または複数の列における複数のRoRは、選択された血液指標の伝達関数に従って曲線フィッティングがなされてもよい。別の例では、複数のRoRは、伝達関数に表面フィッティングがなされてもよい。
【0037】
各チャネルのRoRの値は、血管上のLEDの各列の位置に依存し得ることに留意されたい。血管上の皮膚にパッチを配置しても、必ずしも血管と任意のチャネルが正確に位置合わせされるとは限らない。各チャネルに形成される光路は、血管に対して部分的にしか収束しない可能性がある。RoR値は、所望の血液指標を決定するための最適な列を決定するために用いてもよい。一例では、LEDの最適な列は、最も高いRoR値(又は複数の最も高いRoR値)を有する列として特定してもよい。別の例では、列のRoRは、測定されたピークRoRと比較されてもよく、最も高いRoR(又は複数のRoR)の百分率を有する列からのRoR値(又は複数のRoR値)を、血液指標を決定する際に用いてもよい。
【0038】
最適な単一のRoRであるRoR'は決定され、式[Hct]=f(RoR')に従ってHct濃度を決定する伝達関数において用いられてもよい。伝達関数は、血管との光路の収束の数学的構築の分析から導出されてもよい。一例では、伝達関数は、RoR'パラメータに対する2次多項式:Hct=aR2+bR+cにフィッティングする。ここで、変数a、b、及びcは、Hctの既知の値を決定するためにR=RoRの基準値を曲線フィッティングすることによって決定される。所望のヘマトクリット濃度の範囲にわたる任意の非線形性に対応するために、異なるRoRに対してルックアップテーブルを用いることで、さらなる改善を図ることができる。
【0039】
いくつかの例において、Hctは、複数のRoR値を用いて決定されてもよい。例えば、RoR値の最適列は、[Hct]=f(RoR|最適列)のように表される伝達関数において用いられてもよい。この例では、最適列とみなされる列のRoR値は、既知の回帰分析技術を用いて決定される多変数曲線関数にフィッティングされてもよい。他の例では、Hctは、[Hct]=f(全RoR値)を用いて決定されてもよい。RoR値の集合は、回帰分析技術を用いて関数にフィッティングさせてもよい。他の例では、伝達関数は、表面フィッティング技術を使用してもよい。
【0040】
上記は、例示的な実施形態において、Hct値がどのように決定され得るかを示す。同様の技術は、他の血液指標を決定するために実装されてもよい。例えば、酸素飽和度の決定に関して、RoRを組み込んだ同様の分析がなされてもよいが、2つの波長を用いる。例示的な実装は、
図6A~6Cを参照してより詳細に説明される。
【0041】
PPG装置での強度測定値からのRoRの計算はまた、光信号で照会されている血管の断面積を決定するために用いられてもよい。例示的な実施形態において、RoRは、パッチによって測定される光路の列にわたって決定されてもよい。RoRの最適な行が特定されてもよく、その値は、基準RoRと血管の中心からの距離の比の百分率との間の曲線的関係と比較されてもよい。血管の幾何学的特性を決定するためのRoRの行の使用例は、
図7を参照して以下に説明される。
【0042】
図1を参照すると、血流指標を監視するためのシステム100は、ターゲット血管103の上の皮膚101の領域上に取り付けられるパッチ102を含む。パッチ102は、パッチ上に配置されるLED及び光検出器を用いて光信号を測定するように構成されてもよい。光信号、一般に強度値は、生の強度信号としてPPGデータ処理システム106に伝達されてもよい。いくつかの実施形態では、生体指標を得るためのデータ処理の一部または全ては、パッチ102上で実行されてもよい。ノイズキャンセル、フィルタリング、SNR低減などのいくつかの信号処理は、パッチ102上で実行され、生の強度としてPPGデータ処理システム106に伝達されてもよい。
【0043】
パッチ102は、診療所または検査センターから遠隔に位置する患者によって使用されるように構成されてもよいことに留意されたい。すなわち、PPGデータ処理システム106に、または測定結果を受け取るように構成される場所にデータ転送が行われるとき、患者は自宅にいてもよい。このようなデータ転送は、PPGデータ処理システム106にデータを転送し、その結果を必要とする医師、または医療関係者にデータを転送するために、WiFi、セルラー通信インフラ、または他の任意の適切な通信媒体を用いてもよい。
【0044】
例示的な実施形態において、PPGデータ処理システム106はクラウドサービスとして動作する。データ中継器104は、パッチ102とPPGデータ処理システム106との間のデータ転送を媒介するように用いられてもよい。データ中継器104は、例えば、スマートフォンアプリとして動作してもよく、クラウドサービスとして動作し得るPPGデータ処理システム106に通信するために、データのレポートをフォーマットしてもよい。データ中継器104は、一般に、特別に構成されるブリッジ型ネットワーク構成要素、または生の強度信号を受信し、生の強度信号をPPGデータ処理システム106に伝達するように構成される任意の他の適切なネットワーク構成要素であってもよい。
【0045】
図1のデータ中継器104は、スマートフォンのように携帯可能であってもよいし、パッチ102を装着している患者が頻繁に訪れる部屋に配置されるように意図されてもよいことに留意されたい。データ中継器104は、パッチ102と実質的に同位置にあるときにオンデマンド接続を確立し、接続中にパッチ102とPPGデータ処理システム106の間でデータを通信するように構成されてもよい。
【0046】
図2Aを参照すると、パッチ102は、血管103上の皮膚101の領域に取り付けるように構成される可撓性基板112として実装されてもよい。この基板は、その上に組み込まれる電子部品を支持することができる任意の適切な材料で作られてもよい。一方の表面は皮膚に付着するように処理されてもよく、また、光がLEDから皮膚に向かって基板から放射されることを可能にするポートと、光が皮膚から光検出器に入射することを可能にする追加のポートを含んでもよい。パッチ102は、R×C行列を形成するように基板上に配置される複数のLED130a~oと、基板上に配置されるC個の光検出器120a~cからなる行を含む。このC個の光検出器120a~cからなる行は、R個のLEDの行に対して実質的に平行であり、これらのLEDは、光検出器120の各々に対して実質的に同軸であるC個の列を形成するように延在する。
【0047】
光信号インターフェース(
図2Aでは、アナログフロントエンド(AFE)として示されている)126は、基板112に取り付けられ、オン期間の間、各LED130を駆動し、そのオン期間の間、行r=1~R、列c=1~Cの位置にあるLED130と光信号を受け取る光検出器120とによって形成される光路OP
rcについての強度測定値を受信する光検出器120の1つに光信号を入力するように構成される。そのオン期間の時間は、1つの光路から単一の強度を得るのに十分である。各LED130は、光検出器120とともに少なくとも1つの光路を形成する。1つの例示的な実施形態では、列中の各LED130の間に複数の光路が形成され、それらの各々が光検出器120の1つから延在する。各列のLED130の各々に対する複数の光路は、光検出器120の各々に対する光路のチャネルを形成する。
【0048】
システム100は、生物学的指標及び血管103の断面積を決定する処理システムによって実行するためのプログラム命令を格納するためのメモリを備える処理システムを含む。プロセッサ124は、強度から生物学的指標を決定する処理システムの一部として、他の機能を実行してもよい。プロセッサ124は、LED130の作動及び光検出器120からの強度の読み取りを制御するためにパッチ102上に設けられてもよい。プロセッサ124は、生の強度を読み取るための光路の生成を制御してもよく、信号処理機能を実行してもよく、強度から生物学的指標を得るための追加の機能を実行するために生の強度をPPG処理システム106に伝達してもよい。いくつかの実施形態において、プロセッサ124はまた、生物学的指標を決定する機能を実行するように構成されてもよい。パッチ上のプロセッサ124が生物学的指標を決定する機能を実行する程度は、パッチ102に搭載されるプロセッサの処理能力及び電力性能、並びにパッチ102上に収容可能なメモリの量に依存する。パッチ102は電池によって電力供給されてもよい。電池は電荷を失い、再充電またはパッチの廃棄および交換が必要になるであろう。
【0049】
図2Aのパッチ102は、電池によって電力供給されてもよい。以下の説明で明確にするために、プロセッサ124は、生物学的特性及び血管103の断面積を決定する処理システムの一部として(PPGデータ処理システム106と共に)実装されてもよい。例示的な実施形態において、パッチ102上のプロセッサ124は、光強度の測定を制御し、生物学的指標を計算するための追加ステップの実行のために、生の強度をPPGデータ処理システム106に伝達する。
【0050】
例示的な実施形態において、クラウドベースのサービスであってもよいPPG処理システム106は、各光路に対応する複数の強度測定値を受信するために、一定期間にわたり、光路OPrcに対応する複数の強度測定値Ircを受信する。強度がPPG処理システム106によって受信される期間は、複数回の心拍が血管を通じて血液を送り出すのに十分であってもよい。処理システム106は、心拍により血管103内を血液が流れる際の強度の変化を検出するように、各光路に対する生の強度を経時的に分析する。
【0051】
PPG処理システム106は、その期間にわたり、AC成分I
rc,AC及びDC成分I
rc,DCを、各光路OP
rcに対する複数の強度測定値I
rcの関数として決定してもよい。強度測定値は、心臓が血液を送り出す際に生成される任意の心電図(ECG)信号と対応するように解析されてもよい。ECG信号との対応は、強度の経時変化から判断され、心拍による予想される強度変化のパターンと比較されてもよい。AC/DC成分の算出については、以下、
図5A及び
図5Bを参照し、より詳細に説明される。
【0052】
一度各光路のAC成分及びDC成分が決定されると、AC/DC成分比:Rr,c=Irc,AC/Irc,DCが各光路に対して決定されてもよい。AC/DC成分比は、次に、第1の複数の選択されたAC/DC成分比を、第2の複数の選択されたAC/DC成分比で除すことによって、複数のratio-of-ratio(RoR)の値を決定するために用いられてもよい。第1の複数の選択されたAC/DC成分比および第2の複数の選択されたAC/DC成分比は、光測定値を得るために最適な信号を1つ又は複数有する光路を示す可能性があるRoR値を生成するように選択されてもよい。選択されたRoR値は、以下に説明するように、血液指標及び/又は血管の幾何学的特性を決定するために用いられてもよい。
【0053】
図2Aに示されるパッチ102は、行数R=5、列数C=3のLEDを含む。任意の特定の実施形態における行の数R及び列の数Cは、それぞれ任意の適切な数であってよく、照会される血管の一般的なおおよその寸法に依存してもよい。同様に、チャネル間の距離、又はLED及び光検出器の列は、照会される血管の一般的なおおよその寸法に依存してもよい。
【0054】
図2Bは、生物学的指標を測定するための例示的なパッチ102上に配置される例示的なシステムの概略図である。パッチ102の例示的な実施形態は、動きを検出するための加速度計、心拍数を検出するための収音器、ECGをとるための単一リードセンサなど、他の機能を実行するための追加の構成要素を含んでもよいことに留意されたい。
図2Bの例示的な実施形態は、プロセッサ124、記憶素子(メモリ)130、通信インタフェース140、光信号インタフェース126、複数のLED130、及び複数の光検出器120を含む。
【0055】
プロセッサ126は、任意の適切な処理要素であってもよい。例示的な実施形態において、プロセッサ126は、励起パターンに従って、光信号の読み取りおよびLEDの作動を制御する。プロセッサ126は、次に、光信号、すなわち生の強度値を、通信インターフェース140を介してPPGデータ処理システム106に伝達する。通信インターフェース140は、例えば、Bluetooth(登録商標)、Bluetooth(登録商標) low energy(BLE(登録商標))、WiFi信号、または他の適切な代替物など、任意の適切な無線インターフェースであってもよい。無線インターフェースは、例えば、セルラー通信システム、またはインターネットに接続されるWiFiを介するなど、PPGデータ処理システム106と直接通信するように構成されてもよい。例示的な実施形態では、パッチ102上の無線インターフェースは、データ中継器104を介してPPGデータ処理システム106と通信する(
図1)。データ中継器104は、例えばBLE(登録商標)を介するなど、パッチ上の通信インターフェース140とデータ中継器104との間でより複雑でないインターフェース接続を可能にし、それによってパッチ102の電力需要を減少させる。次に、データ中継器104は、クラウドサーバ上のPPGデータ処理システム106、またはセルラーネットワーク、インターネットに接続されるWiFiインターフェース、または任意の他の適切なネットワークインフラを使用する他の適切なネットワーク構成要素に接続されてもよい。
【0056】
プロセッサ124は、メモリ130に格納される命令を実行する。メモリ130はまた、光検出器120から収集される生データ、及びプロセッサ124が実行するようにプログラムされている任意の信号処理から生じるデータを格納するために用いられてもよい。処理されたデータは、生の強度信号としてPPGデータ処理システム106に伝達されてもよい。
【0057】
プロセッサ124は、パッチ102に埋め込まれるバス150上で動作してもよい。光信号インターフェース126は、I/Oデバイスとしてバス150に接続されてもよい。光信号インターフェース126は、1つ又は複数ののLED130をオン期間の間、作動してオン状態にする制御回路を含んでもよい。同じオン期間の間、光信号インターフェース126上の制御回路は、選択された光検出器120から光強度値に対応する電流の信号を受信する。光信号インターフェース126は、LEDを選択して作動し、LED130の作動を引き起こし、選択回路を制御するように構成されるクロック信号及びタイミング回路を用いて、光検出器を選択してそこから入力を受けてもよい。例示的な実施形態では、選択回路は、必要なオン期間のために選択されたLEDを作動するために電力信号を出力するデマルチプレクサを選択することによってデマルチプレクサアレイ138を制御するように構成されるLED制御器134を含んでもよい。同じオン期間の間、光検出器制御器136は、選択された経路に接続される光検出器から電流の信号を受信するための経路を選択する。
【0058】
プロセッサ124は、プログラム制御を通じて、各光検出器とR×C個のLEDの各々との間に形成される光路に対応するC個の光検出器の各々から電流信号を受信するまで、オン期間のシーケンスを通じてLED及び光検出器を選択してもよい。R×C個のLEDがオンとなっている間のシーケンス中に、C個の光検出器とR×C個のLEDに対応する各光路に対して強度が測定されてもよい。R×C個のLEDがオンとなっている間のシーケンスは、少なくとも 1 つの心拍をカバーするのに十分な期間にわたって各光路に対応する生の強度を収集するために、より長い期間にわたって繰り返されてもよい。さらに、パッチ120とPPGデータ処理システム106(またはデータ中継器104)との間の接続が有効である間、生の強度が連続的に収集されてもよい。強度値は、心拍の心周期に対応して変化する、血管を通る体積流量に応じて変化する。
【0059】
生の強度値は、PPGデータ処理システム106によって受信され、データを解釈し、所望の指標を導出するために処理される。強度値のさらなる処理は、
図5A~5B及び6A~6Cを参照して上述されている。
【0060】
図2Cは、基板212上に形成され、生物学的指標を測定するための複数の光路を生成するように構成されるパッチ200の別の例示的な実施形態の模式図である。
図2Cのパッチ200は、2つ以上の波長に関係し得る生物学的指標を決定するように構成される。例示的な実施形態では、
図2Aの例示的なパッチ102は、ヘマトクリット濃度と、IR光との組織相互作用から決定され得る任意の他の指標を測定するためにIR光を放出するLEDを用いて動作するように構成されてもよい。
図2Cのパッチ200は、複数のIRLED230a~oと、各々がIRLEDの対応する1つに隣接する複数の赤色LED232a~oとを含んでもよい。赤色LED232a~o及びIRLED230a~oは、好ましくは、異なる波長で実質的に収束する光路を生成するように、赤色LEDがIRLEDと同位置にあるとみなされ得るように互いに十分に近接される。
【0061】
パッチ200はまた、R×C個のIRLED及びR×C個の赤色LEDからIR及び赤色光を受信するように構成されるC個の光検出器220を含む。代替の実施形態では、パッチ200は、IRLEDから主にIR光を受信するように構成されるC個のIR光検出器と、赤色LEDから主に赤色光を受信するように構成されるC個の赤色光検出器とを含んでもよい。
図2Cのパッチ200は、本開示に記載されているように、IRLED230からのIR光路を用いてHct濃度を決定し、IRLEDからのIR光路及び赤色LED232からの赤色光路を用いてSpO
2を決定するように構成されてもよい。
【0062】
パッチ200は、プロセッサ224と、光信号インターフェース226と、メモリ(図示せず)と、通信インターフェース(図示せず)とを含む。光信号インターフェース226は、PD-IRLEDの組によって生成されるIR光路、及びPD-赤色LEDの組によって生成される赤色光路から生の強度値を受信するように構成されてもよい。光信号インターフェース226は、
図2A及び
図2Bを参照して上述したパッチ102について生成されるPD-LED光路について、上述したように、各光路のオン期間を用いて動作してもよい。
【0063】
図3は、血管303上にあり、複数の光路350を生成するパッチ302の一例を示す模式的な側断面図である。パッチ302は、実質的に同じ距離d
rだけ離れて配置される5つのLED330a~eを有する列に沿って整列される光検出器320を示すように断面が描かれている。パッチ302は、血管303の上の皮膚301に適用されることが示されている。各LED330が作動されると、LED330は光検出器320と光路350を形成する。
【0064】
各光路は、各LEDから放射され、光検出器320によって受光される光350として図示されている。各LEDから放射される光350は、LEDから実質的に全方位に分布してもよいし、実質的に光検出器320に向かうように分布してもよい。光路350は、光検出器320に到達する光であって、他の方向に分散される光ではないため、実質的にバナナ型のパターンで描かれている。
図3に示すように、光路350aは、LED330aが皮下組織を透過するように発光し、光検出器320で受光される際に形成される。光路350bは、LED330bが皮下組織を透過するように発光し、光検出器320で受光される際に形成される。光路350cは、LED330cが皮下組織を透過するように発光し、光検出器320で受光される際に形成される。光路350dは、LED330dが皮下組織を透過するように発光し、光検出器320で受光される際に形成される。光路350eは、LED330eが皮下組織を透過するように発光し、光検出器320で受光される際に形成される。
【0065】
図3の各光路350は、光検出器320で読み取られる強度が個々の光路に対応するように、順番に、一度に1つの光路が照射されてもよい。光路350のシーケンスは、LED330a~eの任意の列に沿って照会される。LEDの各列は、光路のチャネルと呼ばれてもよい。
【0066】
図3の例は、5行のLED330a~eを有するパッチ302を示している。例示的な実施形態において、LED330a及び光検出器320から生成される光路350aは、光検出器からより遠くに位置するLED330b~eから生成される光路よりも高い強度を有していてもよい。また、光路350aが延在する深さは、5つの光路350のうちで最も浅い。光検出器320と最も遠いLED330eとの間の光路350eは、血管303に向かって最も深く、そしてある程度の深さのところまで延在している。最も正確な測定値は、血管と最も重なる光路から得られる可能性がある。任意の実施形態について、LEDのR×C行列とC個の光検出器は、異なる断面積の血管を照会するために設けられてもよい。より小さな血管は、R×C個の光路の部分集合で照会されてもよい。さらに、より大きなLED行列と光検出器は、より大きな血管を照会するためにパッチ上に配置されてもよいが、より小さな血管を照会するために、より大きな行列の部分集合を用いるように構成されてもよい。
【0067】
いくつかの実施形態において、光路のチャネルは、任意の光検出器と光路を形成する他の列にあるLEDを含んでもよいことに留意されたい。本明細書で説明する実施形態においては、光路のチャネルは、任意の光検出器と整列した任意の列のLEDを備える。
【0068】
図4Aは、複数の光路410a~c、412a~c、及び414a~cを生成する、血管403の上に実質的に中心を置くパッチ402の一例の正面断面模式図である。この断面図は、LED(図示せず)からの光を光路を通じて受け取る、実質的に同じ距離dcだけ離間した3つの光検出器を描写している。
図4Aは、血管断面を正面から見たときの、光路410a~c、412a~c、及び414a~cの正面断面図である。光路410a~c、412a~c、414a~cは、血管403の断面と重なりを有する実質的に円形の断面としてチャネル410、412、414を形成する。光路410、412、414は、光検出器によって感知されるLEDから放出される光によって形成され、他の場所に向けられた光ではない。血管403の断面と最も重なる断面を有するチャネルは、血管403内を流れる血液と最も相互作用する信号経路を表す。このような光路は、血液から任意の生物学的指標を決定するために、最も正確な測定値を提供し得る。
【0069】
使用中、パッチ402は、パッチ402から光学データを収集するために、システムを構成する前に、医療従事者によって皮膚上に配置されることがある。パッチ402の配置の目的は、チャネルの大部分の断面積が血管403の断面に重なるようにすることである。通常、この最適配置は、2つの最も外側にある光検出器間の長さの中心C1が、2つの最も外側にある光検出器間の線に垂直な線l2に沿って、血管の中心C2と一致するときに達成される。最適な配置は常に可能であるとは限らず、
図4Bに示すように、パッチ402はしばしば、血管の中心c2が誤差距離の分だけオフセットされるように配置されてもよい。血管の中心と光検出器の行の中心間の整列に対するオフセットに関係なく、指標測定値を得るための最適な光路又は複数の最適な光路を決定するために、以下に説明するさらなる分析が実行されてもよい。
【0070】
図5Aは、R=5かつC=3の15個のLED(LED
rc)とC=3の光検出器(PD
c)との間に複数の光路OP
rcを有するパッチ502の一例を示す上面概略図である。パッチ502は、この例では、ヘマトクリット濃度(Hct)について血管501を照会するように、血管501上に配置されている。
【0071】
例示的な実施形態では、光路OP
rcは、LEDの1つであるLED
rcの作動、およびLED
rcと同じ列の光検出器PD
rcへの入力によって形成される。光路OP
rcは、
図5Bにおいてオン状態で描かれているが、光路は、ある期間中のオン期間中に1つずつ形成(すなわちオン状態に)されてもよい。
【0072】
図5Bを参照すると、パッチ502は、各光路OP
rcが形成されると、光検出器PD
cを介して505で生の強度信号を受信する。生の強度信号は、ノイズ除去、圧縮、フィルタリングまたは他の信号処理技術を用いてさらに処理されてもよい。次に、生の強度値は、520において、AC成分及びDC成分を計算するために用いられる。
【0073】
AC成分は、Irc,AC=f(Irc)を用いて決定されてもよい。ここで、f(Imr)は、特定の実装に対して実験的に決定され得る1次または高次のバンドパスフィルタである。例示的な実施形態では、PPG信号を処理するために有限インパルス応答(FIR)バンドパスフィルタを用いても良い。FIRフィルタの特定のパラメータは、健康な被験者であっても3倍ほど変動し得る患者の心拍数にかかわらず同じ波形特徴を維持するように、検出された各データ記録の心拍数に基づいて調整されてもよい。この処理済みの波形は、個々の心拍波形を特定するための自己相関アルゴリズムを用いて解析することができる。波形のAC成分は、これらの心拍波形の平均振幅として計算することができる。
【0074】
DC成分は、ある期間にわたって収集されるn個のサンプルに対する平均I
rcとして、
【数1】
を用いて決定されてもよい。AC成分及びDC成分は、少なくとも1つの心拍を包含するのに十分な長さを持つ期間にわたって、各光路からの強度値に対して計算されてもよい。この期間は、任意の所望の時間だけ繰り返すことができるサイクルを構成してもよい。例示的な実施形態では、パッチ502は、パッチ502を装着している患者の動きを示す信号を伝達する加速度計を含む。動きの信号は、動きによって値が影響を受ける可能性がある任意のAC及びDC成分を特定するために、AC及びDC成分と時系列で比較されてもよい。動きによって影響を受けたAC成分およびDC成分は、廃棄されるか、または他の方法で適宜処理されてもよい。
【0075】
520でAC成分およびDC成分が決定されると、AC/DC成分比R
rcが530で各光路に対して決定される。AC成分のDC成分に対する比は、LEDのR×C行列に対応する行列として、
図5Bにおいて540で示される。各列は、各光検出器に関連する列に対応する。AC成分のDC成分に対する比の最も上の行は、光検出器の行に最も近いLEDの行によって形成される光路に対応する。
【0076】
図5Bの行列540に示されるように複数のAC/DC成分比が決定されると、AC/DC成分比は、光路を介して受信される信号をさらに分析する枠組みを提供するために、互いに、または基準となるAC/DC成分比によってさらに除されてもよい。
図5Cは、さらなる分析に使用され得る代替的なRoRの定式化を示す。
図5Cの550において、
図5Bの行列540における各行のAC/DC成分比は、
図5Bの行列540におけるAC/DC成分比の1行目のAC/DC成分比によって除される。
図5Cの560において、各近接LEDに対応する光路のAC/DC成分比は、最近接LEDに対応する光路に対応する1行目の後の、次に続くLEDに対応する光路のAC/DC成分比により除される。最近接LEDに対応する光路について決定されるRoRは、AC/DC成分比をそれ自体で除した値であり、それぞれ1、すなわち100%となる。
【0077】
図5Cの行列550及び560は、RoRがどのように決定され得るかの2つの例に過ぎない。RoRを決定する他の方法が実施されてもよく、RoRを決定する最適な方法は、グリッドの寸法(行および列の数)、構成要素間の距離(d
rおよびd
c)、照会されている血管のおおよその寸法、PPGグリッド内のLEDの波長、および他の要素に依存し得る。
【0078】
例示的な実施形態では、RoRの配列は、上述の伝達関数で用いるために決定されてもよい。伝達関数は、回帰分析技術を用いて、既知の血液指標を有する血管から測定される基準RoRから導出されてもよい。
図6は、例示的なPPGグリッド上のLED及び光検出器の位置に対応するRoR値の2つのプロットを示している。
【0079】
図6を参照すると、第1のプロット600は、2次元平面上のLEDの位置に対応するようにプロットされる縦軸のRoR値を示している。二次元平面は、一方の軸に列の間隔を有し、他方の軸にLEDの光検出器(PD)に対する間隔を有する。第1のプロット600では、光検出器の行に最も近いLEDの行が、基準として選択される。第1のプロット600にプロットされるRoR値は、例えば、
図5Cの行列550において上述したRoRを決定する方法を用いて決定されてもよい。
【0080】
第1のプロット600に対応するデータは、RoRの部分集合に対して構成される伝達関数において使用するためにRoRの部分集合を選択するように分析されてもよい。例えば、伝達関数は、最適な列であると決定されるRoRの列におけるRoRに基づいて、Hct濃度などの血液指標を決定するように構成されてもよい。第1のプロット600に図示される例に基づいて、伝達関数は、最適な列において最大5つのRoR値を使用するように構成されるであろう。他の実施形態では、伝達関数は、LED及び光検出器の行列の寸法(R×C)及び実装に望まれる複雑さの程度に応じて、異なる数のRoR値を入力として有してもよい。
【0081】
RoR値はまた、最適性を決定するために分析されてもよい。例えば、
図5Bを参照して上述した技術を用いて決定されるRoR値は、Hctを決定するために使用する最適な、1つ以上の光路を決定するために分析されてもよい。一つの例示的な実施形態では、RoR値の最大値は、Hctを決定するのに最適な光路の列に対応するとみなされてもよい。別の例では、RoR値は、伝達関数で使用するAC/DC成分比を選択するのに最適な光路を決定するために使用されてもよい。このような例では、最適な光路は、最も高いRoR値を有する光路に対応してもよい。
【0082】
また、伝達関数は、PPGグリッドのすべてのRoR値を使用するように構成されてもよい。RoR値は、例えば、離散値として伝達関数で用いられてもよい。また、伝達関数は、RoR値の集合の表面フィッティングに対応してもよい。
図6の第2のプロット602は、例示的なPPGグリッド上のLEDの位置および光検出器に対する表面としてプロットされるRoR値を示している。第2のプロット602は、RoR値によって定義される表面を、基準データによって定義される表面にフィッティングさせる伝達関数を伴う可能性のあるデータモデルを図示している。したがって、伝達関数は、RoR値の集合全体ではなく、この表面を定義する係数を入力として取ることができ、伝達関数の複雑さを軽減し得る。RoR値と共に使用される伝達関数は、計算の複雑さ、基準測定システムに対して測定される性能、測定データの品質重み付けの使用可能性、および選択された技術が異なるPPGグリッドに適応されやすいかどうかに応じて選択されてもよい。
【0083】
図5A、
図5B及び
図6を参照した上記の説明は、単一の波長で発光する複数の光源と光検出器を有するPPGグリッドによる光学測定から得られるRoR値の計算及び使用を説明するものである。
Hct測定の際、IR信号はIR光と赤血球中のヘモグロビンとの相互作用の関数であるため、波長はスペクトルのIR領域にあってもよい。他の血液指標は、組織と他の波長の光との相互作用に基づいて決定されてもよい。他の血液指標については、複数の波長の光を用いて測定がなされてもよい。
【0084】
上記の分析アプローチは、2つ以上の波長を用いる他の血液指標について取り入れてもよい。例えば、SpO
2のような血液指標を決定するために、2つの波長で測定される光による比率分析が用いられてもよい。
図7Aは、例示的なパッチ上に2つの波長で形成される複数の光路の他の例の上面概略図と、2つの異なる波長でAC/DC成分比を決定するための他の例示的な方法の動作を示すフロー図である。
図7B~7Dは、2つの波長における複数の光路のRoRを決定するための方法の例を示すフロー図と行列である。
図7A~7Dを参照して説明した例は、例えば、SpO
2を決定する際に用いられてもよい。
【0085】
図7Aに示すように、パッチ702は、光検出器の行と、各光検出器から列状に延在する複数のLED対の行とを含んでもよく、各LED対はIRLED及び赤色LEDを含む。パッチ702は、
図2Cのパッチ202の一例であってもよい。赤色LEDからの生の強度値705及びIRLEDからの生の強度値707は、
図5A及び5Bを参照して上述した方法と同様の方法で、少なくとも1つの心周期にまたがる期間中のオン期間で受信されてもよい。各赤色LEDに対応する各光路からの赤色強度値705は、710で赤色AC成分及び赤色DC成分を計算するために用いられてもよい。各IRLEDに対応する各光路からのIR強度値707は、712において、IRのAC成分およびIRのDC成分を計算するために用いられてもよい。AC成分およびDC成分は、
図5Aを参照して上述した方法と同様の方法で計算されてもよい。714において、赤色AC/DC成分比は、赤色LEDの各々に対応する光路のAC値およびDC値から決定されてもよい。716において、IRのAC/DC成分比は、IRLEDの各々に対応する光路のAC値およびDC値から決定されてもよい。
【0086】
図7Bを参照すると、720における赤色AC/DC成分比は、722における比の集合を得るために、各赤色光路について決定されてもよい。730におけるIRのAC/DC成分比は、732における比の集合を導出するために、各赤色光路について決定されてもよい。
図7Cを参照すると、赤色AC/DC成分比721およびIRのAC/DC成分比731は、740に示されるように合成RoRを得るために除されてもよい。740における合成RoRは、赤色LED用のAC/DC成分比をIRLED用のAC/DC成分比で除した比である。
【0087】
合成RoRは、解析のためのRoR値を決定するために用いられてもよい。合成RoRの第1行の合成RoRは、合成RoRの第1行をそれ自体で除すことによって基準として用いられてもよく、光検出器からさらに位置付けられる各LEDの組に対応する合成RoRの各行は、750に示すように、第1行の合成RoRによって除されてもよい。
図7Dを参照すると、RoR値の他の例示的な集合は、上述のように合成RoRの第1行を基準として使用し、760で示すように合成RoRのさらなる各行を、合成RoRの次に近い行で除すことによって決定されてもよい。750又は760のRoRは、
図5A及び5Bを参照して上述した方法と同様の方法で、伝達関数に使用するRoR値を選択するための分析に用いられてもよい。
【0088】
図5A~5C、6及び7A~7Dを参照して上述したRoR分析は、HctやSpO
2などの生体指標をより正確に決定することを都合よく可能にする。例示的な実施形態では、RoR分析はまた、照会されている血管の幾何学的特性に関連する情報を決定するために使用されてもよい。
【0089】
血管上の患者に取り付けられるパッチ上に配置されるLED及び光検出器の行列から受信される光信号を分析することによって血液指標を決定するシステム及び方法の例示的な実施形態は、
図1~7Bを参照して上述されている。光検出器で受信される光学的測定値は、行列内のLED及び光検出器によって形成される光路に対応するAC/DC成分比の行列を生成するために用いられる。RoR分析は、Hct、SpO
2などの血液指標を提供するための伝達関数に曲線フィッティングされてもよい。伝達関数は、上述のように、血液指標レベルが既知である分析を実行するために、LED及び光検出器の行列を血管上に配置することによって構築されてもよい。次に、伝達関数は、パッチ上のLED及び光検出器の行列から受信した光学的測定値からのRoR分析に基づいて、血液指標を決定するために用いられてもよい。
【0090】
LED及び光検出器の行列の例示的な実施形態はまた、より正確な血液指標のためだけでなく、血管の幾何学的特性に関連する情報を得るために、行を跨いだRoR分析に使用されてもよい。
図8Aは、基準曲線関係を生成し、血管の幾何学的特性を決定するために基準曲線関係に対してRoRの集合を分析する方法の一例の動作を説明するフローチャートである。例示的な実施形態において、RoRの集合の分析はまた、血管における血流の血液指標を測定するために用いられてもよい。
【0091】
基準曲線関係の生成は、(
図1中の)パッチ102の校正又は構成ステップとして実行されてもよい。基準曲線関係は、異なる寸法の血管を照会する際に受信した光学的測定値のRoRデータを曲線フィッティングするための選択肢を提供する。信号と血液組織との間のより高い相互作用に対応する結果を保証することによって、血液指標の測定精度が向上する。
【0092】
図8Aのステップ802において、複数の基準曲線関係がパッチ102(
図1)に対して生成されてもよい。このステップは、複数のパッチは又は単一のパッチの構成ステップとして、配置前に実行されてもよい。例示的な実施形態では、パッチは、異なる寸法の血管をそれぞれ有する複数の血管から光学的測定値を収集することによって構成されてもよい。構成中、パッチは、LED及び光検出器の行列の中心列が、血管の断面積の中心を通る想像上の線の真上に位置するように配置されてもよい。血管上のパッチのセンタリング、及び血管の直径の決定は、例えば、光学データの収集中又は実質的に同時に、イメージング技術を用いて成し遂げられてもよい。基準曲線関係を生成するための光学的測定は、任意の適切な構成を用いて実施されてもよい。
【0093】
上述のように、基準曲線関係は、光学的測定値を主に光子と血液との間の相互作用として処理することを可能にする。
図3を参照すると、光路350のIR信号は、主にIRエネルギーと赤血球中のヘモグロビンとの相互作用の関数である。血管に近接している場合、各光学チャネルの結果としての信号は、光路と血管の断面積の重なりの関数である。この関係は次のように表すことができる。
【0094】
【0095】
ここで、krcは光検出器PDcとLEDrc間の光路に対するスケーリング定数であり、
【0096】
Rrcは光検出器PDcとLEDrcのAC/DC比である。
【0097】
血管の形状を決定する際の各光路のスケーリング定数は、形状や深さによる強度の違いに対してチャネル応答を正規化するためのものである。血管の形状と深さは、血管半径の外側から移動しながら血管断面積のスライスを取ることによって近似することができる。各光学チャネルのRoRは、光学チャネルと血管の重なり量に対応する大きさを持つべきである。光路が血管と完全に重なっている場合、その光路のRoRの大きさは、RoRのピーク値に近づく。光路が血管領域を横切るにつれて、光路が血管に重なる部分は少なくなる。この関係を利用し、血管幅が共線チャネルの間隔に対して変化する(すなわち、血管を横断する)ときの光チャネルについて予想されるRoRを計算すると、
図8Bを参照して以下に説明するように複数の曲線を生成することができる。
【0098】
図8Bのグラフ830には、光幅径に対する血管径の異なる比率にそれぞれ対応する8つの基準曲線関係、すなわち基準曲線(曲線1~曲線8)が描かれている。すなわち、各基準曲線は、光路の面積と血管の面積との相関関係を表している。基準曲線の上方では、3つの受光素子850a、850b、850cが、グラフ上に重畳される3つの光路OP1、OP2、OP3の終点を示している。光検出器850は、互いに距離dc(
図4A及び
図4Bを参照)をあけて配置されている。距離dcは、パッチ上の光検出器間の距離に相当する。
【0099】
図8Bのグラフ830は、RoRのピーク値に対するRoRの百分率832に対応する縦軸を有する。
図8Bのグラフ830の横軸は、血管中心からの直径の百分率834である。曲線は、ピークに対するRoRの百分率の値と、血管中心からの距離に対する各光路の中心の位置834とを、血管径の百分率に基づき相関させる。
【0100】
RoRのピーク値は、LEDアレイの中心列の光路が血管の断面と完全に重なるように位置合わせされる際の測定値について計算されるRoR値であってもよい。基準曲線(曲線1~曲線8)は、血管と整列した中心列を有するアレイから取得した測定値を用いてプロットされてもよい。各曲線にプロットされるRoR値は、一行に並んだLEDによって形成される光路に対応してもよい。RoR値は、LEDの行における各光路のAC/DC成分比を、所定の行における中心列からのLEDによって形成される光路のAC/DC成分比によって除すことによって決定されてもよい。
【0101】
図8Bのグラフ830は、
図8Bに示される曲線に対応するデータ要素及び関係を備えるデータ構造としてメモリに格納されてもよいことに留意されたい。本開示で提供される説明に従って光学的測定値を処理するためのアルゴリズムが開発され、グラフのプロットに頼ることなくシステムに組み込まれてもよい。機械学習、ルックアップテーブル、及び他の技術を組み込んでもよいアルゴリズムは、例えば、パッチ120(
図1)からの光学的測定値を本明細書に記載のように処理するために、システム100(
図1)の一部としてメモリに格納されるソフトウェアプログラムとして実装されてもよい。
【0102】
図8Bの曲線を生成する際、光学測定値が受信され、上述したように光路を処理する。光学測定値は、各光路のAC/DC成分比を決定するために用いられる。中央列にあるLED(各行r=1~5にあるR
r2)の光路は、中央の列が血管に対して整列するときに、RoR値を定義する。中央列の光路のAC/DC成分は、AC/DC成分のピーク値である。ピークに対する百分率RoR値は100%となる。従って、
図8Bの曲線1~曲線8の各々について、ピークに対する百分率RoR値は100%である。
【0103】
図8Aのステップ804において、
図3~
図8Bを参照して上述した基準曲線の構築によって構成される(
図1中の)パッチ102は、血管形状及び/又は血液指標を決定するために血管上に位置決めされてもよい。光学的測定値は、
図5A~5Cを参照して上述したように、各光路についてAC/DC成分比を決定するために用いられる可能性がある強度値として、上述したように受信されてもよい。例えば、ステップ806において、強度測定値は、(
図1中の)パッチ102上のLED及び光検出器のR×C行列によって形成される光路について受信されてもよい。生の強度値は、ステップ808において、AC成分及びDC成分、次いでAC/DC成分比を決定するために用いられてもよい。
【0104】
グラフ830の曲線は、光路が血管の中心から遠ざかるにつれて生じるRoR値の変化を追跡している。血管の中心におけるRoR値は、そのピーク値にあるであろう。光路が中心から離れるように配置されると、光路の断面はほとんど血管と交差しなくなるため、RoR値は減少する。
図8Bに示すように、2つの外側にある光検出器850a及び850cに対応する光路OP1及びOP3は、領域860及び870によって示されるように、血管833と部分的にしか交差しない。第1の基準曲線である曲線1は、グラフ800について測定される最大の血管に対応する。血管の面積が大きいことによって光路の重なりがより遅い速度で減少可能となるので、光路が血管の中心から遠ざかるにつれて、RoR値はよりゆっくりと減少する。したがって、曲線1は、8本の曲線の中で最も平坦となる。図示の例では、曲線1は、光路幅の163%の直径を有する血管に対応する。第2の曲線である曲線2、およびそれに続く各曲線は、光路が血管の中心から遠ざかるにつれて、より早く落ち込む。血管径の光路幅に対する比は、
図8Bの右側の凡例に示すように、各曲線に対応する。
【0105】
ステップ810において、光路のAC/DC成分比は、行をまたぐRoRの表を計算するために用いられる。以下の説明では、光学測定値は、
図8CのRoRテーブル880に示されるように、RoRの集合を生成するために処理される。ステップ808で生成されてもよい、
図5Aの540における表と同様のAC/DC成分の表が、
図8CのRoRの表880を生成するために処理されてもよい。
図8Cのテーブル880は、上述したように、光路の行列の3列のAC/DC成分比(
図5Bの540)を中央列のAC/DC成分比(
図5Bの540のR
r2個の成分)で除すことによって決定されるRoR値を含む。
【0106】
ステップ810において、
図8CのRoRの表880は、中央列のAC/DC成分を除数として使用し行にわたって計算されるRoRのシートであることに留意されたい。代わりに、AC/DC成分の表は、既知の血管径及び血液指標値を用いて構成中に決定されるピーク基準値で除されてもよい。ピーク基準AC/DC成分を除数として用いると、
図8CのRoRの表890になる。
【0107】
図8Aのステップ812において、
図8CのRoR値の表880は最適な行を決定するために分析されてもよく、最適な行は最も高い値を有する行に対応してもよい。最適な行を決定するために代わりとなる方法が用いられてもよいことに留意されたい。例えば、すべての行の加重平均が、各列について決定されてもよい。3つの加重平均RoR値は、
図8Bのグラフ830と共に使用されてもよい。
【0108】
3つのRoRの値は、
図8Bのグラフ830にプロットされてもよい。
図8Bに点840、842、844として示される点は、3つの光検出器820a~cと整列して位置する各光路OP1、OP2、OP3の中心部に対応する。ステップ814において、3つの点の位置は、各光路と中心列の間の距離と相関してもよい。ステップ816において、RoR曲線関係が3つの点に対して特定される。3つのRoR値840、842、844は、曲線845(値840、842、844を通る破線曲線)に対して、グラフ830にプロットされる基準曲線(曲線1~曲線8)のうちの1つと整列又は一致し得る曲線関係でフィッティングされてもよい。ステップ818で、RoRの曲線関係は、基準曲線の1つに一致させてもよい。
【0109】
実装中に、中心RoR値842が、血管833の中心に対応する曲線ピークと一致しない場合があることに留意されたい。これは、
図8BのH-オフセットで示されるように、最も外側の光検出器間の線の中心点が血管の中心と一致しないように光検出器が配置されていないことを示すであろう。曲線845のピーク847は、基準曲線(曲線1~曲線8)のピーク(ピークに対するRoRが1100%のところ)より高くてもよく、グラフ830においてV-オフセットとして指定されている。プロットされる点を横や下にずらすことで、曲線845を曲線の1つ又は2つの曲線の間に合わせられる可能性がある。
【0110】
3つの点840、842、844が整列する曲線は、
図8Bの凡例に示すように、パーセントで表される光路に対する血管径の比に対応する。中心列の光検出器が曲線の中心と一致するように3つの点840、842、844をシフトしたときの光検出器850と3点840、842、844との整列により、血管の中心から既知の距離dc(例えば
図4において)の位置に外側点840及び844が配置される。この既知の距離dc(例えば
図4において)は、外側の点が横軸と整列する場所と比較されてもよく、百分率である。
【0111】
決定ブロック820において、計算されるデータ(RoRの表880又は890)と、曲線の1つからの基準曲線関係とのデータマッチングは、血管の幾何学的特性を決定するか又は血液指標を決定するために用いられてもよい。
【0112】
一旦RoR点840、842、844が横軸上に配置されると、光路径が決定されてもよい。さらに、一旦点840、842、844が曲線の1つに関連付けられると、光路幅に対する血管径の比は、血管径を決定するのに用いられてもよく、血管の断面積を決定するのに用いられてもよい。
【0113】
ステップ828において、
図8Bは、LED-PD行列によって照会される血管の断面積を決定するために、曲線(曲線1~曲線8)と、RoR値に対する曲線フィッティングであるデータとの整合を用いることを説明している。このようにして、LED行列内のLED-PDの組によって形成される光路に対応するRoR値と、照会される血管の直径を横切る光路の中心との間の曲線関係は、血管の断面積を決定するために用いられてもよい。比較は、LED-PD行列について測定されるRoR値を曲線フィッティングし、異なる血管径を有する血管についての基準測定値を用いてプロットされ得る複数の基準曲線関係に対して曲線をプロットすることによって、上述したように達成される。RoR曲線関係と複数の基準曲線関係との比較はまた、ルックアップテーブルの使用、アルゴリズム曲線フィッティングの実行、機械学習、又はそれらの任意の組合せにより実施されてもよい。
【0114】
ステップ822から826において、
図8A及び8Bを参照して説明した分析は、選択された血液指標を測定するために用いられてもよい。一例を説明すると、一度RoR値の集合が曲線フィッティングされ基準曲線(曲線1~曲線8)の1つと整合すると、ステップ822でV―オフセットを決定するために、測定曲線のRoRピーク値が(100%の位置にある)基準曲線ピークと比較されてもよい。ステップ824で、
図5Bの表540(例)からのAC/DC成分は、中心列ベースのRoRを生成するために処理されてもよい。例示的な実施形態では、中心列ベースのRoRは、表550または表560のいずれかであってよく、血液指標ための伝達関数と共に用いられるように構成されてもよい。この例では、Hct濃度の伝達関数は、ステップ826で[Hct]=f(RoR_center_col)として定義されてもよく、LED-PD行列は、中心列が照会される血管と整列するように位置決めされる。RoR測定に使用されるLED-PD行列が血管と整合しない場合、測定されたRoR値を曲線フィッティングした結果のRoRピーク値は、100%より大きい可能性がある。この場合、RoRピーク値は、x>100%となり、RoR中心列の100%を超過する。この百分率は比較され、[Hct]=f(x×RoR_center_col)のような伝達関数中で用いられてもよい。
【0115】
図8Aを参照して説明される例は、Hct濃度の決定に関するものであることに留意されたい。同様の解決策は、他の血液指標を決定するために用いられてもよい。
【実施例】
【0116】
上記の観点から、血液指標の監視及び/又は血管の幾何学的特性を決定するためのシステム及び方法は、以下のものを含む。
【0117】
実施例1:
血流指標監視システムであって、
可撓性基板のパッチ、複数の発光ダイオード(LED)及びC個の光検出器(PD)の行、光信号インターフェース、並びに処理システムを備え、
前記可撓性基板のパッチは、血管上の皮膚の一部の領域に貼り付けるように構成され、
前記複数の発光ダイオード(LED)は、R×C行列を形成し、
前記C個の光検出器(PD)の行は、LEDのR個の行に対して実質的に平行となるように前記基板上に配置され、
前記LEDのR個の行は、各光検出器と実質的に同軸であるC個の列を形成するように延在し、
前記光信号インターフェースは、前記基板上に設けられ、各LEDをオン期間中に駆動し、行r=1~R、列c=1~CにあるLEDと光信号を受信する前記光検出器によって形成される光路OPrcの強度測定値を受信する前記光検出器の1つにおいて、前記オン期間中に前記光信号を入力するように構成され、
前記処理システムは、前記処理システムにより実行されるプログラム命令を格納するためのメモリを備え、
交流成分Irc,ACと直流成分Irc,DCを、各光路OPrcに対して一定期間にわたり測定した複数の強度測定値Ircの関数として決定し、
各光路に対してAC/DC成分比:Rr,c=Irc,AC/Irc,DCを決定し、
第一の複数の選択されたAC/DC成分比を第二の複数の選択されたAC/DC成分比で除すことによって、複数のratio-of-ratio(RoR)を決定し、 少なくも1つのRoRの部分集合を用いて、生物学的指標を決定する、
システム。
【0118】
実施例2:
実施例1に記載のシステムであって、
前記処理システムは、前記複数のRoRを決定するように構成され、
前記複数のRoRは、AC/DC成分比の各行におけるAC/DC成分比を、前記光検出器の行に最も近いLEDの行に係る前記光路に対応するAC/DC成分比の行におけるAC/DC成分比で除すことによって決定される、
システム。
【0119】
実施例3:
実施例1に記載のシステムであって、
前記処理システムは、前記複数のRoRを決定するように構成され、
前記複数のRoRは、
前記光検出器の行に最も近いLEDの光路に対応するAC/DC成分比の行におけるAC/DC成分比を、それ自体で除し、
第2行から始まる各行のAC/DC成分比を、次に続くAC/DC成分比におけるAC/DC成分比で除すことによって決定される、
システム。
【0120】
実施例4:
実施例1に記載のシステムであって、
前記複数のLEDは、赤外光を放射する複数の赤外(IR)LEDであり、
前記処理システムの前記メモリは、前記処理システムにより実行されるプログラム命令を含み、
前記処理システムは、前記生物学的指標を決定するために少なくとも1つの前記RoR値の部分集合を用いる際、Hct=F(RoR')を用いて前記生物学的指標であるヘマトクリット濃度Hctを決定し、
Fは、基準ヘマトクリット測定システムを用いて測定される複数の基準RoRから決定される基準ヘマトクリット濃度に基づいてRoR値の範囲をヘマトクリット濃度の範囲に相関させる伝達関数であり、
RoR'は少なくとも1つのRoR値の部分集合である、
システム。
【0121】
実施例5:
実施例4に記載のシステムであって、
前記RoR値の部分集合がLEDの1つの行に対応するRoR値を含む、
システム。
【0122】
実施例6:
実施例4に記載のシステムであって、
前記RoR値の部分集合が最大RoR値を特定することによって選択されるRoR値を含む、
システム。
【0123】
実施例7:
実施例4に記載のシステムであって、
前記RoR'値が前記R×C個のLEDの全てに対応するRoR値の集合を含む、
システム。
【0124】
実施例8:
実施例4に記載のシステムであって、
前記RoR'値は前記R×C個のLEDの全てに対応するRoR値の集合を含み、前記処理システムは伝達関数に従ってRoR'値を表面フィッティングするように構成される、
システム。
【0125】
実施例9:
実施例4に記載のシステムであって、
前記伝達関数Fは、前記ヘマトクリット濃度を決定するために2次多項式を前記RoR'にフィッティングする、
システム。
【0126】
実施例10:
実施例8に記載のシステムであって、
強度測定前に、前記伝達関数FはHct=aR2+bR+cを用いて決定され、
変数a、b、及びcは、Hctの既知の値を決定するために基準値R=RoRより決定される、システム。
【0127】
実施例11:
実施例1に記載のシステムであって、
前記複数のLEDは、前記赤外領域にある第1の波長で発光する複数の赤外(IR)LEDであり、
前記システムは、さらに赤色領域にある第2の波長で発光する複数の赤色LEDを備え、
前記複数の赤色LEDの各々は、前記R×C行列にある前記複数のIRLEDの各々に隣接するように前記基板上に配置され、
前記光信号インターフェースは、独立したIR及び赤色光路であるOPIR,rcとOPred,r,cを形成するように、IRLEDと赤色LEDをそれぞれ独立に駆動するように構成され、
前記処理システムは、
前記光路OPred,r,cに対応する複数の赤色強度測定値と、前記光路OPIR,rcに対応する複数のIR強度測定値IIR,rcを、複数の各波長における各光路の強度測定値を受信する期間にわたって受信し、
赤色AC成分Ired,rc,AC及び赤色DC成分Ired,rc,DCを、前記期間にわたり各赤色光路OPred,rcに係る前記複数の強度測定値Ircの関数として決定し、
IRのAC成分IIR,rc,AC及びIRのDC成分IIR,rc,DCを、前記期間にわたり各IR光路OPIR,rcに係る前記複数の強度測定値Ircの関数として決定し、
赤色AC/DC成分比:Rred,r,c=Ired,rc,ac/Ired,rc,dcを各赤色光路について決定し、
IRのAC/DC成分比:RIR,r,c=IIR,rc,ac/IIR,rc,dcを各IR光路について決定し、
各赤色又はIRのAC/DC成分比のどちらかの各々を、IR又は赤色のAC/DC成分比のどちらかの各々で、全ての前記赤色及びIRのAC/DC成分比が取り込まれるまで除すことにより、複数の合成RoRを決定し、
第1の複数の選択された合成RoRを第2の複数の選択された合成RoRで除すことにより、複数のRoR値を決定し、
生物学的指標を決定するために少なくとも1つの前記RoRの部分集合を用いることにより、酸素飽和指標を測定するように構成される、
システム。
【0128】
実施例12:
実施例11に記載のシステムであって、
前記少なくとも1つのRoR値の部分集合は、SpO2=F(RoR')に従って前記酸素酸素飽和度SpO2を決定するために用いられ、
Fは、基準酸素飽和測定システムを用いて測定されるRoR値の少なくとも1つの部分集合から決定される基準酸素飽和濃度に基づき、RoR値の範囲を酸素飽和値の範囲に相関させる伝達関数である、
システム。
【0129】
実施例13:
実施例12に記載のシステムであって、
前記伝達関数Fは、前記酸素飽和濃度を決定するために、2次多項式を前記RoR'値にフィッティングさせる、
システム。
【0130】
実施例14:
実施例13に記載のシステムであって、
強度測定前に、前記伝達関数Fは、式SpO2=aR2+bR+cを用いて決定され、
変数a、b、cは、SpO2の既知の値を決定するために、基準値R=RoRから決定される、
システム。
【0131】
実施例15:
実施例1に記載のシステムであって、
前記パッチは前記基板上に搭載される通信インターフェースを含み、
前記複数の強度測定値を1つ以上のネットワーク化された計算機上で動作する前記処理システムと通信するように構成される、
システム。
【0132】
実施例16:
実施例1に記載のシステムであって、
前記パッチは、前記パッチの前記基板上に搭載される前記処理と、ネットワーク上で生物学的指標を通信するよう構成される通信インターフェースとを含む、
システム。
【0133】
実施例17:
血管の幾何学的特性を決定するためのシステムであって、
可撓性基板のパッチ、複数の発光ダイオード(LED)及びC個の光検出器(PD)の行、光信号インターフェース、並びに処理システムを備え、
前記可撓性基板のパッチは、血管上の皮膚の一部の領域に貼り付けるように構成され、
前記複数の発光ダイオード(LED)は、R×C行列を形成し、
前記C個の光検出器(PD)の行は、LEDのR個の行に対して実質的に平行となるように前記基板上に配置され、
前記LEDのR個の行は、各光検出器に実質的に同軸であるC列を形成するように延在し、
前記光信号インターフェースは、前記基板上に設けられ、各LEDをオン期間中に駆動し、行r=1~R、列c=1~CにあるLEDと光信号を受信する前記光検出器によって形成される光路OPrcの強度測定値を受信する前記光検出器の1つにおいて、前記オン期間中に前記光信号を入力するように構成され、
前記処理システムは、前記処理システムにより実行されるプログラム命令を格納するためのメモリを備え、
AC成分Irc,AC及びDC成分Irc,DCを、ある期間にわたって各光路OPrcについて受信される複数の強度測定値Ircの関数として決定し、
AC/DC成分比Rr,c=Irc,AC/Irc,DCを各光路について決定し、
各行における各AC/DC成分比を、前記AC/DC成分比の少なくとも1行が複数のRoRに取り込まれるまで、高い基準AC/DC成分比で除すことによって、前記複数のRoRを決定し、
大部分が前記血管と交差する光路の1行に対応するRoRの最適な行を特定し、
前記最適な行における各RoRを、前記対応するRoRの前記光路と中心列の間の距離に対して相関させ、
前記最適なRoRの行についてのRoR曲線関係を特定し、
前記RoR曲線関係を、既知の血管径を有する基準血管に対応する基準曲線関係と比較し、
前記基準曲線関係は、AC/DC成分比(基準RoR)の基準AC/DC成分比のピーク値に対する百分率の値を含み、
それぞれの値は、前記基準血管の中心と、基準RoRの各値に対応する基準光路の基準光路中心の間の距離に対応し、
前記基準光路は、前記基準曲線関係の決定のために強度値が測定される際、前記R×C行列の中心列が前記基準血管上で中心となるように位置合わせされるように配置される前記R×C行列によって形成され、
前記基準曲線関係の前記既知の血管径から前記血管の断面積を決定する、
システム。
【0134】
実施例18:
実施例17に記載のシステムであって、
前記最適な行の特定は、各列におけるRoR値の加重平均の計算と、前記RoRの加重平均を前記最適な行における前記RoRとして使用することを含む、
システム。
【0135】
実施例19:
実施例17に記載のシステムであって、
前記RoR曲線関係と前記複数の基準曲線関係を比較する際、前記RoR曲線関係と前記基準曲線関係の間のオフセットを決定し、
前記オフセットは、前記R×C行列の前記中心列と、前記基準曲線関係におけるピークの位置によって示される前記血管の前記中心との間の距離に対応する、
システム。
【0136】
実施例20:
実施例17に記載のシステムであって、
前記基準曲線関係は、各々が既知の血管径を有する基準血管に対応する複数の基準曲線関係の1つであり、
各基準曲線関係は、基準AC/DC成分比のピーク値に対するAC/DC成分比の基準百分率の値(基準RoR)を備え、
各々の値は、前記基準血管の中心と、基準RoRの各々の値に対応する基準光路の基準光路中心との間の距離に対応し、
前記基準光路は、前記複数の基準曲線関係の決定のために強度が測定される際、前記R×C行列の中心列が各々の基準血管上で中心に位置合わせされるような前記R×C行列によって形成され、
前記プロセッサは、前記複数の基準曲線関係を格納するように構成される、
システム。
【0137】
実施例21:
実施例17に記載のシステムであって、
記複数のRoRを決定する際、前記高い基準AC/DC成分比が前記基準AC/DC成分比のピーク値である、
システム。
【0138】
実施例22:
実施例17に記載のシステムであって、
記RoR曲線関係と前記基準曲線関係の前記比較は、ルックアップテーブルの使用、アルゴリズム曲線フィッティングの実行、機械学習、またはそれらの任意の組み合わせを含む、
システム。
【0139】
実施例23:
血流指標を監視するためのシステムであって、
可撓性基板のパッチ、複数の発光ダイオード(LED)及びC個の光検出器(PD)の行、光信号インターフェース、並びに処理システムを備え、
前記可撓性基板のパッチは、血管上の皮膚の一部の領域に貼り付けるように構成され、
前記複数の発光ダイオード(LED)は、R×C行列を形成し、
前記C個の光検出器(PD)の行は、LEDのR個の行に対して実質的に平行となるように前記基板上に配置され、
前記LEDのR個の行は、各光検出器に実質的に同軸であるC列を形成するように延在し、
前記光信号インターフェースは、前記基板上に設けられ、各LEDをオン期間中に駆動し、行r=1~R、列c=1~CにあるLEDと光信号を受信する前記光検出器によって形成される光路OPrcの強度測定値を受信する前記光検出器の1つにおいて、前記オン期間中に前記光信号を入力するように構成され、
前記処理システムは、前記処理システムにより実行されるプログラム命令を格納するためのメモリを備え、
AC成分Irc,AC及びDC成分Irc,DCを、ある期間にわたって各光路OPrcについて受信される複数の強度測定値Ircの関数として決定し、
AC/DC成分比Rr,c=Irc,AC/Irc,DCを各光路について決定し、
各行における各AC/DC成分比を、前記AC/DC成分比の少なくとも1行が第1の複数のRoRに取り込まれるまで、高い基準AC/DC成分比で除すことによって、前記第1の複数のRoRを決定し、
大部分が前記血管と交差する光路の1行に対応するRoRの最適な行を特定し、
前記最適な行における各RoRを、前記対応するRoRの前記光路と中心列の間の距離に対して相関させ、
前記最適なRoRの行についてのRoR曲線関係を特定し、
前記RoR曲線関係を、既知の血管径を有する基準血管に対応する基準曲線関係と比較し、
前記基準曲線関係は、AC/DC成分比(基準RoR)の基準AC/DC成分比のピーク値に対する百分率の値を含み、
それぞれの値は、前記基準血管の中心と、基準RoRの各値に対応する基準光路の基準光路中心の間の距離に対応し、
前記基準光路は、前記基準曲線関係の決定のために強度値が測定される際、前記R×C行列の中心列が前記基準血管上で中心となるように位置合わせされるように配置される前記R×C行列によって形成され、
前記基準曲線関係のRoRピークと、前記基準曲線関係の前記基準ピークの間のオフセットを決定し、
前記基準曲線関係の基準RoRピーク上の前記RoR曲線関係のRoRピークを特定し、前記基準AC/DC成分比に対する前記RoR曲線関係の前記ピークのRoRの百分率としてRoR相関因子を決定し、
各行における各AC/DC成分比を、第2の複数のRoRの中心列に係るRoRを決定するための他の行における前記AC/DC成分比で除すことにより、前記第2の複数のRoRを決定し、
前記RoR相関因子は、血液指標を決定するための伝達関数において、前記第2の複数のRoRの前記中心列に係る前記RoRとともに用いられる、
システム。
【0140】
実施例24:
実施例23に記載のシステムであって、
前記基準曲線関係は、各々が既知の血管径を有する基準血管に対応する複数の曲線関係の1つであり、
各々の基準曲線関係は、基準AC/DC成分比のピークに対するAC/DC成分比の基準百分率(基準RoR)の値を含み、
各々の値は、前記基準血管中心と、基準RoRの各々の値に対応する基準光路の基準光路中心との間の距離に対応し、
前記基準光路は、強度が前記複数の基準曲線関係を決定するために測定される際、前記R×C行列の中心列が各基準血管上で中心にくるように位置合わせされるような前記R×C行列によって形成され、
前記プロセッサは、前記複数の基準曲線関係を格納するように構成されている、
システム。
【0141】
実施例25:
実施例23に記載のシステムであって、
前記複数のRoRを決定する際、前記高い基準AC/DC成分比が前記基準AC/DC成分比のピークである、
システム。
【0142】
実施例26:
実施例23に記載のシステムであって、
前記AC/DC成分比は、各行の中心列における前記光路に係るものである、
システム。
【0143】
実施例27:
実施例23に記載のシステムであって、
前記RoR曲線関係の前記基準曲線関係との前記比較は、ルックアップテーブルの使用、アルゴリズム曲線フィッティングの実行、機械学習、又はそれらの任意の組み合わせを含む、
システム。
【0144】
実施例28:
血流指標を監視するための方法であって、
シーケンス中のオン期間中、R×C個の発光ダイオード(LED)のうち少なくとも1つを駆動する工程と、
各々がオン期間の間にC個の光検出器のうち少なくとも1つから複数の強度測定値を受信する工程と、
前記期間にわたり、AC成分Irc,AC及びDC成分Irc,DCを、各光路OPrcに係る前記複数の強度測定値Ircの関数として決定する工程と、
各光路についてAC/DC成分比:Rrc=Irc,AC/Irc,DCを決定する工程と、
第1の複数の選択されたAC/DC成分比を第2の複数の選択されたAC/DC成分比で除すことにより、複数のRoR値を決定する工程と、
生物学的指標を決定するために前記RoR値の部分集合の少なくとも1つを利用する工程を含み、
前記R×C個のLEDは、血管上に配置されるパッチの基板にあるC個の列とR個の行に沿って配置され、
前記LEDと光検出器の各々は、前記オン期間中に動作し光路を形成し、
前記C個の光検出器は、前記R個のLEDの行に平行である光検出器の行に沿って配置され、
各々の光検出器は、前記光検出器から延在する前記C個のLEDの列を定義する、
方法。
【0145】
実施例29:
実施例28に記載の方法であって、
前記複数のLEDは、前記IR領域の波長で発光する複数の赤外(IR)LEDであり、
前記方法は、
ヘマトクリット濃度Hct決定するために、少なくとも1つの前記RoRの部分集合を用いる際、Hct=F(RoR')を用いて決定される前記生物学的指標であるヘマトクリット濃度Hctを決定する工程を含み、
Fは、基準ヘマトクリット測定システムを用いて測定される複数の基準RoRから決定される基準ヘマトクリット濃度に基づき、RoR値の範囲をヘマトクリット濃度の値の範囲に相関させる伝達関数であり、
RoR'は少なくとも1つのRoR値の部分集合である、
方法。
【0146】
実施例30:
実施例29に記載の方法であって、
前記伝達関数Fは、前記ヘマトクリット濃度を決定するために2次多項式を前記RoR'値にフィッティングさせる、
方法。
【0147】
実施例31:
実施例30に記載の方法であって、
強度測定前に、式Hct=aR2+bR+cを用いて前記伝達関数Fを決定する工程を含み、
変数a、b、及びcは、Hctの既知の値を決定するためにR=RoRの基準値から決定される、
方法。
【0148】
実施例32:
実施例28に記載の方法であって、
前記複数のLEDは、第1の前記赤外領域の波長で発光する複数の赤外(IR)LEDであり、
前記システムは第2の前記赤色の波長で発光する複数のLEDをさらに含み、
前記複数のLEDの各々は、前記R×C行列の前記複数のIRLEDの各々に隣接するように前記基板上に配置され、
前記光信号インターフェースは、独立したIR光路OPIR,r,c及び赤色光路OPred,r,cを形成するように、IRLEDと赤色LEDの各々を独立して駆動するように構成されており、
前記方法は、さらに、酸素飽和指標を測定する工程を含み、
各波長の光路についての複数の強度測定値を受信する期間にわたり、前記光路OPIR,rcに対応する複数の赤色強度測定値Ired,rc及び複数のIR強度測定値IIR,rcを受信し、
赤色AC成分Ired,rc,AC及び赤色DC成分Ired,rc,DCを、前記期間にわたり、各光路OPred,rcに係る前記複数の強度測定値の関数として決定し、
IRのAC成分IIR,rc,AC及びIRのDC成分IIR,rc,DCを、前記期間にわたり、各光路OPIR,rcに係る前記複数の強度測定値の関数として決定し、
各光路について、赤色AC/DC成分比:Rred,r,c=Ired,rc/Ired,rc,DCを決定し、
各光路について、IRのAC/DC成分比:RIR,rc,AC=IIR,rc,AC/IIR,rc,DCを決定し、
全ての前記赤色及びIRのAC/DC成分比が取り込まれるまで、赤色またはIRのAC/DC成分比のいずれかの各々を、赤色またはIRのAC/DC成分比のいずれかの各々を、赤色またはIRのAC/DC成分比のいずれかの各々で除すことによって、複数の合成RoRを決定し、
第1の複数の選択された合成RoRを第2の複数の選択された合成RoRで除すことによって、複数のRoR値を決定し、
生物学的指標を決定するために少なくとも1つのRoR値の部分集合を用いることにより、酸素飽和指標が測定される、
方法。
【0149】
実施例33:
実施例28に記載の方法であって、
前記少なくとも1つのRoR値の部分集合は、前記酸素飽和指標SpO2を、
SpO2=F(RoR')
に従って決定するために用いられ、
Fは、基準酸素飽和測定システムを用いて測定されるRoR値の少なくとも1つの部分集合から決定される基準酸素飽和濃度に基づき、RoR値の範囲を酸素飽和の範囲に相関させる伝達関数である、
方法。
【0150】
実施例34:
実施例33に記載の方法であって、
前記伝達関数Fは、前記酸素飽和濃度を決定するために、2次多項式を前記RoR'値にフィッティングさせる、
方法。
【0151】
実施例35:
実施例33に記載の方法であって、
SpO2=aR2+bR+cを用いて前記伝達関数Fを決定する工程を含み、
変数a、b、及びcは、SpO2の既知の値R=RoRの基準値を用いて決定される、
方法。
【0152】
実施例36:
血管の幾何学的特性を決定するための方法であって、
シーケンス中のオン期間の間、血管上に配置されるパッチの基板上にあるR個の行とC個の列に沿って配置される、R×C個の発光ダイオード(LED)の少なくとも1つを駆動する工程と、
各々のオン期間の間、C個の光検出器の少なくとも1つから複数の強度測定値を受信する工程と、
ある期間にわたり、各光路OPrcについて受信される複数の強度測定値の関数として、AC成分Irc,ACとDC成分Irc,DCを決定する工程と、
各光路について、AC/DC成分比:Rr,c=Irc,AC/Irc,DCを決定する工程と、
前記AC/DC成分比の少なくとも1行が前記複数のRoRに取り込まれるまで、各行のAC/DC成分比を高い基準AC/DC成分比で除すことにより、複数のRoRを決定する工程と、
大部分が前記血管と交差する光路の1行に対応するRoRの最適な1行を特定する工程と、
前記最適な行における各RoRを、前記対応するRoRの前記光路と中心行の間の距離に相関させる工程と、
前記最適なRoRの行について、RoR曲線関係を特定する工程と、
前記RoR曲線関係を、既知の血管径を有する基準血管に対応する基準曲線関係と比較する工程と、
前記基準曲線関係の前記既知の血管径から前記血管の断面積を決定する工程を含み、
前記LEDと光検出器の各々は、前記オン期間中に光路を形成し、
前記C個の光検出器は、前記LEDのR個の行に平行な光検出器の行に沿って配置され、前記光検出器の各々から延在する前記C個のLEDの列を定義し、
前記基準曲線関係は、基準AC/DC成分比のピークに対するAC/DC成分比(基準RoR)の百分率の値を含み、
各値は、前記基準血管の中心と基準RoRの各値に対応する基準光路の基準光路中心との間の距離に対応し、
前記基準光路は、前記基準関係の決定のために強度が測定される際、前記R×C行列の中心列が前記基準血管上の中心にくるように位置合わせされるように、前記R×C行列によって形成される、
方法。
【0153】
実施例37:
実施例36に記載の方法であって、
前記最適な行を特定する工程は、各列のRoRの加重平均の計算する工程と、前記最適な行における前記RoRとして前記加重平均RoR値を用いる工程を含む、
方法。
【0154】
実施例38:
実施例36に記載の方法であって、
前記RoR曲線関係を前記複数の基準曲線関係と比較する際、前記RoR曲線歓喜会と前記基準曲線関係の間のオフセットを決定し、
前記オフセットは、前記R×C行列の前記中心列と、前記基準曲線関係におけるピーク位置によって示される前記血管の前記中心との間の距離に対応する、
方法。
【0155】
実施例39:
実施例36に記載の方法であって、
前記基準曲線関係は、各々が既知の血管径を有する基準血管に対応する複数の曲線関係の1つであり、
各基準曲線関係は、基準AC/DC成分比のピークに対する基準AC/DC成分比の百分率(基準RoR)の値を含み、
各値は、前記基準血管の中心と、基準RoRの各値に対応する基準光路の基準光路中心との間の距離に対応し、
前記基準光路は、前記複数の基準曲線関係を決定するために強度が測定される際、前記R×C行列の中心列が各基準血管上の中心となるように位置合わせされるように、前記R×C行列によって形成され、
前記方法は、更に前記複数の基準曲線関係を格納する、
方法。
【0156】
実施例40:
実施例37に記載の方法であって、
前記複数のRoRを決定する際、前記高い基準AC/DC成分比は前記基準AC/DC成分比のピーク値である、実施例37に記載の方法。
【0157】
実施例41:
実施例37に記載の方法であって、
前記RoR曲線関係の前記基準曲線関係との前記比較は、ルックアップテーブルの使用、アルゴリズム曲線フィッティングの実行、機械学習、又はそれらの任意の組み合わせを含む、
方法。
【0158】
実施例42:
血流指標を監視するための方法であって、
シーケンス中のオン期間の間、血管上に配置されるパッチの基板のC個の列とR個の行に沿って配置されるR×C個の発光ダイオード(LED)の少なくとも1つを駆動する工程と、
各々がオン期間の間、C個の光検出器の少なくとも1つから、複数の強度測定値を受信する工程と、
AC成分Irc,ACとDC成分Irc,DCを、ある期間にわたり各光路OPrcについて受信される複数の強度測定値Ircの関数として決定する工程と、
各光路について、AC/DC成分比:Rr,c=Irc,AC/Irc,DCを決定する工程と、
AC/DC成分比の少なくとも1つの行が第1の複数のRoRに取り込まれるまで、各行における各AC/DC成分比を、高い基準AC/DC成分比で除すことにより、第1の複数のRoRを決定する工程と、
大部分が前記血管と交差する光路の行に対応する最適なRoRの行を特定する工程と、
各前記最適な行における各RoRを、前記対応するRoRの前記光路と中心列との間の距離に相関させる工程と、
前記最適なRoRの行についてのRoR曲線関係を特定する工程と、
前記RoR曲線関係を、既知の血管径を有する基準血管に対応する基準曲線関係と比較する工程と、
前記RoR曲線関係のRoRピークと前記基準曲線関係の前記基準ピークとの間のオフセットを決定する工程と、
前記基準曲線関係の基準RoRピークの上にある前記RoR曲線関係のピークRoRを特定し、前記基準AC/DC成分比のピークに対する前記RoR曲線関係の前記ピークRoRの百分率としてRoR修正因子を決定する工程と、
第2の複数のRoRの中心列についてRoRを決定するために、各行における各AC/DC成分比を、他の行におけるAC/DC成分比で除すことにより第2の複数のRoRを決定する工程と
を含み、
前記LEDと光検出器の各々は、オン期間の間、光路を形成し、
前記C個の光検出器は、前記R個のLEDの行に平行な光検出器の行に沿って配置され、
各光検出器は、前記光検出器から延在するLEDのC個の列を定義し、
前記基準曲線関係は、ピークの基準AC/DC成分比に対するAC/DC成分比の百分率(基準RoR)の値を備え、
各値は、前記基準血管の中心と、基準RoRの各値に対応する基準光路の基準光路中心との間の距離に対応し、
前記基準光路は、前記基準曲線関係の決定のために強度が測定される際、前記R×C行列の中心列が前記基準血管上の中心にくるように位置合わせされるように、前記R×C行列によって形成され、
前記RoR修正因子は、血液指標を決定するための伝達関数において、前記第2の複数のRoRの中心列に係るRoRとともに用いられる、
システム。
【0159】
実施例43:
実施例42に記載のシステムであって、
前記最適な行を特定する工程は、各列におけるRoRの加重平均を計算する工程と、前記最適な行におけるRoRとして前記加重平均RoRを用いる工程を含む、
システム。
【0160】
実施例44:
実施例42に記載の方法であって、
前記基準曲線関係は、各々が既知の血管径を有する基準血管に対応する複数の曲線関係の1つであり、
各基準曲線関係は、基準AC/DC成分比のピーク値に対する基準AC/DC成分比の百分率(基準RoR)の値を含み、
各値は、前記基準血管の中心と、基準RoRの各値に対応する基準光路の基準光路中心との間の距離に対応し、
前記基準光路は、前記複数の基準曲線関係の決定のために強度が測定される際、前記R×C行列の中心列が各基準血管上で中心が合うように位置合わせされるように、前記R×C行列によって形成され、
前記方法は、さらに前記複数の基準曲線関係を格納する工程を含む、
方法。
【0161】
実施例45:
実施例42に記載の方法であって、
前記複数のRoRを決定する際、前記高い基準AC/DC成分比は、前記基準AC/DC成分比のピーク値である、
方法。
【0162】
実施例46:
実施例42に記載の方法であって、
前記光路に係る前記AC/DC成分比は、各行に係る中心列にある、
方法。
【0163】
実施例47:
実施例42に記載の方法であって、
前記RoR曲線関係の前記基準曲線関係との前記比較は、ルックアップテーブルの使用、アルゴリズム曲線フィッティングの実行、機械学習、又はそれらの任意の組み合わせを含む、
方法。
【0164】
本明細書で提供される開示は、特徴を、その好ましい例示的な実施形態の観点で説明する。多数の他の実施形態、修正及び変形形態は、添付の請求項の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本開示の検討を基に、当業者によって実施されるであろう。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性基板のパッチ、複数の発光ダイオード(LED)及びC個の光検出器(PD)の行、光信号インターフェース、並びに処理システムを備え、
前記可撓性基板のパッチは、血管上の皮膚の一部の領域に貼り付けるように構成され、
前記複数の発光ダイオード(LED)は、R×C行列を形成し、
前記C個の光検出器(PD)の行は、LEDのR個の行に対して実質的に平行となるように前記基板上に配置され、
前記LEDのR個の行は、各光検出器と実質的に同軸であるC列を形成するように延在し、
前記光信号インターフェースは、前記基板上に設けられ、各LEDをオン期間中に駆動し、行r=1~R、列c=1~CにあるLEDと光信号を受信する前記光検出器によって形成される光路OP
rcの強度測定値を受信する前記光検出器の1つにおいて、前記オン期間中に前記光信号を入力するように構成され、
前記処理システムは、前記処理システムにより実行されるプログラム命令を格納するためのメモリを備え、
交流成分I
rc,ACと直流成分I
rc,DCを、各光路OP
rcに対して一定期間にわたり測定した複数の強度測定値I
rcの関数として決定し、
各光路に対してAC/DC成分比:R
r,c=I
rc,AC/I
rc,DCを決定し、
第一の複数の選択されたAC/DC成分比を第二の複数の選択されたAC/DC成分比で除すことによって、複数のratio-of-ratio(RoR)を決定し、
少なくも1つの前記RoR値の部分集合を用いて、生物学的指標を決定
し、
前記処理システムは、前記複数のRoRを決定するように構成され、
前記複数のRoRは、AC/DC成分比の各行におけるAC/DC成分比を、前記光検出器の行に最も近いLEDの行に対する前記光路に対応するAC/DC成分比の行における前記AC/DC成分比で除すことによって決定される、
システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、
前記処理システムは前記複数のRoRを決定するように構成され、
前記複数のRoRは、光検出器の行に最も近いLEDの行に係る前記光路に対応するAC/DC成分比の1行におけるAC/DC成分比をそれ自体で除し、
第2行から始まる各行のAC/DC成分比を、次に続くAC/DC成分比の行で除すことにより決定される、
システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、
前記複数のLEDは、複数の赤外光を放射する赤外(IR)LEDであり、
前記処理システムの前記メモリは、前記処理システムによって実行されるプログラム命令を含み、
前記生物学的指標を決定するために少なくとも1つの前記RoR値の部分集合を用いる際、前記生物学的指標はヘマトクリット濃度Hctであり、
前記ヘマトクリット濃度Hctは、Hct=F(RoR')を用いて決定され、
Fは、基準ヘマトクリット測定システムを用いて測定される複数の基準RoR値から決定される基準ヘマトクリット濃度に基づき、RoR値の範囲をヘマトクリット濃度の値の範囲に相関させ、
RoR'は、少なくとも1つのRoR値の部分集合である、
システム。
【請求項4】
請求項
3に記載のシステムであって、
前記RoR値の部分集合は、LEDの中心列に対応するRoR値を含む、
システム。
【請求項5】
請求項
3に記載のシステムであって、
前記RoR'値は、前記R×C個のLEDの全てに対応するRoR値の集合を含む、
システム。
【請求項6】
請求項
3に記載のシステムであって、
前記RoR'値は、前記R×C個のLEDの全てに対応するRoR値の集合を含み、
前記処理システムは、前記伝達関数に従って前記RoR'値の表面フィッティングをするように構成される、
システム。
【請求項7】
請求項
3に記載のシステムであって、
前記伝達関数Fは、前記ヘマトクリット濃度を決定するために2次多項式を前記RoR'値にフィッティングする、
システム。
【請求項8】
請求項
7に記載のシステムであって、
強度測定前に、前記伝達関数FはHct=aR
2+bR+cを用いて決定され、
変数a、b、及びcは、既知のHctの値を決定するために基準値R=RoRから決定される、
システム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムであって、
前記複数のLEDは、前記赤外領域にある第1の波長で発光する複数の赤外(IR)LEDであり、
前記システムは、さらに赤色領域にある第2の波長で発光する複数の赤色LEDを備え、
前記複数の赤色LEDの各々は、前記R×C行列にある前記複数のIRLEDの各々に隣接するように前記基板上に配置され、
前記光信号インターフェースは、独立したIR及び赤色光路であるOP
IR,rcとOP
red,rcを形成するように、IRLEDと赤色LEDをそれぞれ独立に駆動するように構成され、
前記処理システムは、
前記光路OP
red,rcに対応する複数の赤色強度測定値と、前記光路OP
IR,rcに対応する複数のIR強度測定値I
IR,rcを、複数の各波長における各光路の強度測定値を受信する期間にわたって受信し、
赤色AC成分I
red,rc,AC及び赤色DC成分I
red,rc,DCを、前記期間にわたり各赤色光路OP
red,rcに係る前記複数の強度測定値I
rcの関数として決定し、
IRのAC成分I
IR,rc,AC及びIRのDC成分I
IR,rc,DCを、前記期間にわたり各IR光路OP
IR,rcに係る前記複数の強度測定値I
rcの関数として決定し、
赤色AC/DC成分比:R
red,r,c=I
red,rc,ac/I
red,rc,dcを各赤色光路について決定し、
IRのAC/DC成分比:R
IR,r,c=I
IR,rc,ac/I
IR,rc,dcを各IR光路について決定し、
各赤色又はIRのAC/DC成分比のどちらかの各々を、IR又は赤色のAC/DC成分比のどちらかの各々で、全ての前記赤色及びIRのAC/DC成分比が取り込まれるまで除すことにより、複数の合成RoRを決定し、
第1の複数の選択された合成RoRを第2の複数の選択された合成RoRで除すことにより、複数のRoR値を決定し、
生物学的指標を決定するために少なくとも1つの前記RoRの部分集合を用いることにより、酸素飽和指標を測定するように構成される、
システム。
【請求項10】
請求項
9に記載のシステムであって、
前記少なくとも1つのRoR値の部分集合は、前記酸素飽和SpO
2を、
SpO
2=F(RoR')
に従って決定するために用いられ、
Fは、基準酸素飽和測定システムを用いて測定される前記少なくとも1つのRoR値の部分集合から決定される基準酸素飽和濃度に基づき、RoR値の範囲を酸素飽和の範囲に相関させる伝達関数である、
システム。
【請求項11】
請求項
10に記載のシステムであって、
前記伝達関数Fは、前記酸素飽和濃度を決定するために、2次多項式を前記RoR'値にフィッティングさせる、
システム。
【請求項12】
請求項
11に記載のシステムであって、
強度測定前に、前記伝達関数FはSpO
2=aR
2+bR+cを用いて決定され、
変数a,b,及びcは、SpO
2の既知の値を決定するために基準値R=RoRから決定される、
システム。
【請求項13】
請求項1に記載のシステムであって、
前記パッチは、前記基板上に搭載される通信インターフェースを含み、
前記複数の強度を、1つ以上のネットワーク化計算機器を動作させる前記処理システムに伝達するように構成される、
システム。
【請求項14】
請求項1に記載のシステムであって、
前記パッチは、前記パッチの基板上に搭載される処理システムと、
ネットワーク上で生物学的指標を通信するように構成される通信インターフェースを含む、
システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】