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特表2023-518930GPC3 CAR-T細胞組成物、並びにそれを作製する方法及び使用する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-09
(54)【発明の名称】GPC3 CAR-T細胞組成物、並びにそれを作製する方法及び使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230427BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230427BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20230427BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230427BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230427BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20230427BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20230427BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230427BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230427BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230427BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230427BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230427BHJP
   A61K 50/00 20060101ALI20230427BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230427BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230427BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230427BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230427BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N5/10 ZNA
C12N5/078
C12N5/0783
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
C12N15/867 Z
A61K35/17
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61P1/16
A61K45/00
A61K50/00 100
A61K48/00
A61K39/395 D
C12N15/12
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022555955
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(85)【翻訳文提出日】2022-10-26
(86)【国際出願番号】 IB2021052294
(87)【国際公開番号】W WO2021186397
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】62/991,493
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/004,827
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/043,237
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519001408
【氏名又は名称】ユーティレックス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】クォン ビョウン エス.
(72)【発明者】
【氏名】キム グァンヒ
(72)【発明者】
【氏名】チュン ジウォン
(72)【発明者】
【氏名】チャン ユン ギョン
(72)【発明者】
【氏名】イ ボ-リム
(72)【発明者】
【氏名】リー ジュンユン
(72)【発明者】
【氏名】リー スンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イム ソ-ヌ
(72)【発明者】
【氏名】チェ ジンギョン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ヒュンテ
(72)【発明者】
【氏名】リー ヒェ ミ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA92X
4B065AA92Y
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA12
4C084AA13
4C084AA19
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA751
4C084ZB092
4C084ZB211
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC411
4C084ZC412
4C084ZC712
4C085AA13
4C085EE03
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087CA04
4C087CA12
4C087MA02
4C087NA14
4C087ZA75
4C087ZB21
4C087ZB26
4C087ZC41
(57)【要約】
キメラ受容体を含む、GPC3に指向しているCAR-T組成物、及びGPC3に対する操作された免疫細胞が、本明細書で提供される。本開示はまた、ベクター、組成物、並びに、GPC3抗原結合分子及び操作された免疫細胞を使用する治療方法を提供する。本明細書で提供されるGPC3 CAR組成物は、特定のがんの治療に使用することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体(CAR)を含む免疫細胞であって、
前記CARが、グリピカン-3(GPC3)に特異的に結合する細胞外抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含む、
免疫細胞。
【請求項2】
前記CARが、単一ポリペプチドである、請求項1に記載の免疫細胞。
【請求項3】
前記CARが、2つのポリペプチドで構成される、請求項1に記載の免疫細胞。
【請求項4】
前記細胞外抗原結合ドメインが、
配列番号1を含むCDR1、配列番号2を含むCDR2、及び配列番号3を含むCDR3を含む、軽鎖可変ドメイン、並びに
配列番号4を含むCDR1、配列番号5を含むCDR2、及び配列番号6を含むCDR3を含む、重鎖可変ドメイン
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項5】
前記軽鎖可変ドメインが、配列番号10に対して少なくとも80%同一である配列を含む、請求項4に記載の免疫細胞。
【請求項6】
前記軽鎖可変ドメインが、配列番号10に対して少なくとも90%同一である配列を含む、請求項5に記載の免疫細胞。
【請求項7】
前記軽鎖可変ドメインが、配列番号10に対して少なくとも96%同一である配列を含む、請求項6に記載の免疫細胞。
【請求項8】
前記重鎖可変ドメインが、配列番号8に対して少なくとも80%同一である配列を含む、請求項4~7のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項9】
前記重鎖可変ドメインが、配列番号8に対して少なくとも90%同一である配列を含む、請求項8に記載の免疫細胞。
【請求項10】
前記重鎖可変ドメインが、配列番号8に対して少なくとも96%同一である配列を含む、請求項9に記載の免疫細胞。
【請求項11】
前記抗原結合ドメインが、ヒト化されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項12】
前記抗原結合ドメインが、ヒトである、請求項1~11のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項13】
前記抗原結合ドメインが、scFvである、請求項1~12のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項14】
前記膜貫通ドメインが、4-1BB/CD137、活性化NK細胞受容体、免疫グロブリンタンパク質、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD100(SEMA4D)、CD103、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD247、CD27、CD276(B7-H3)、CD28、CD29、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD3ゼータ、CD30、CD4、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD69、CD7、CD84、CD8、CD8アルファ、CD8ベータ、CD96(Tactile)、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CDS、CEACAM1、CRT AM、サイトカイン受容体、DAP-10、DNAM1(CD226)、Fcガンマ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、Igアルファ(CD79a)、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、インテグリン、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGB1、KIRDS2、LAT、LFA-1、CD83と特異的に結合するリガンド、LIGHT、LTBR、Ly9(CD229)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、MHCクラス1分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX-40、PAG/Cbp、プログラム死-1(PD-1)、PSGL1、SELPLG(CD162)、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、SLAM(SLAMF1)、SLAMF4(CD244)、SLAMF6(NTB-A)、SLAMF7、SLP-76、TNF受容体タンパク質、TNFR2、TNFSF14、Tollリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1、及びVLA-6からなる群から選択されるタンパク質から選択される膜貫通ドメインを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項15】
前記膜貫通ドメインが、CD8アルファ由来の膜貫通ドメインである、請求項14に記載の免疫細胞。
【請求項16】
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、4-1BB/CD137、活性化NK細胞受容体、免疫グロブリンタンパク質、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD100(SEMA4D)、CD103、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD247、CD27、CD276(B7-H3)、CD28、CD29、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD3ゼータ、CD30、CD4、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD69、CD7、CD84、CD8、CD8アルファ、CD8ベータ、CD96(Tactile)、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CDS、CEACAM1、CRTAM、サイトカイン受容体、DAP-10、DNAM1(CD226)、Fcガンマ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、Igアルファ(CD79a)、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、インテグリン、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGB1、KIRDS2、LAT、CD83と特異的に結合するリガンド、LIGHT、LTBR、Ly9(CD229)、Ly108、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、MHCクラス1分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX-40、PAG/Cbp、プログラム死-1(PD-1)、PSGL1、SELPLG(CD162)、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、SLAM(SLAMF1)、SLAMF4(CD244)、SLAMF6(NTB-A)、SLAMF7、SLP-76、TNF受容体タンパク質、TNFR2、TNFSF14、Tollリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1、及びVLA-6、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるタンパク質由来の細胞内シグナル伝達ドメインを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項17】
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、4-1BB及びCD3ゼータ由来である、請求項16に記載の免疫細胞。
【請求項18】
前記キメラ抗原受容体が、追加の抗原結合ドメインを更に含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項19】
前記追加の抗原結合ドメインが、scFvである、請求項18に記載の免疫細胞。
【請求項20】
ヒト免疫細胞である、請求項1~19のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項21】
前記ヒト免疫細胞が、自己ヒト免疫細胞である、請求項20に記載の免疫細胞。
【請求項22】
前記ヒト免疫細胞が、同種異系ヒト免疫細胞である、請求項20に記載の免疫細胞。
【請求項23】
T細胞である、請求項1~22のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項24】
NK細胞である、請求項1~22のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか一項に記載の免疫細胞と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項26】
請求項25に記載の薬学的組成物を含む、キット。
【請求項27】
グリピカン-3関連がんを有する対象を治療する方法であって、前記対象に、請求項1~24のいずれか一項に記載の免疫細胞又は請求項25に記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項28】
キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸であって、
前記CARが、グリピカン-3(GPC3)に特異的に結合する細胞外抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含む、
核酸。
【請求項29】
前記CARが、単一ポリペプチドである、請求項28に記載の核酸。
【請求項30】
前記CARが、2つのポリペプチドで構成される、請求項28に記載の核酸。
【請求項31】
前記細胞外抗原結合ドメインが、
配列番号1を含むCDR1、配列番号2を含むCDR2、及び配列番号3を含むCDR3を含む、軽鎖可変ドメイン、並びに
配列番号4を含むCDR1、配列番号5を含むCDR2、及び配列番号6を含むCDR3を含む、重鎖可変ドメイン
を含む、請求項28~30のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項32】
前記軽鎖可変ドメインが、配列番号10に対して少なくとも80%同一である配列を含む、請求項31に記載の核酸。
【請求項33】
前記軽鎖可変ドメインが、配列番号10に対して少なくとも90%同一である配列を含む、請求項32に記載の核酸。
【請求項34】
前記軽鎖可変ドメインが、配列番号10に対して少なくとも96%同一である配列を含む、請求項33に記載の核酸。
【請求項35】
前記重鎖可変ドメインが、配列番号8に対して少なくとも80%同一である配列を含む、請求項31~34のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項36】
前記重鎖可変ドメインが、配列番号8に対して少なくとも90%同一である配列を含む、請求項35に記載の核酸。
【請求項37】
前記重鎖可変ドメインが、配列番号8に対して少なくとも96%同一である配列を含む、請求項36に記載の核酸。
【請求項38】
前記抗原結合ドメインが、ヒト化されている、請求項28~37のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項39】
前記抗原結合ドメインが、ヒトである、請求項28~38のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項40】
前記抗原結合ドメインが、scFvである、請求項28~39のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項41】
前記膜貫通ドメインが、4-1BB/CD137、活性化NK細胞受容体、免疫グロブリンタンパク質、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD100(SEMA4D)、CD103、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD247、CD27、CD276(B7-H3)、CD28、CD29、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD3ゼータ、CD30、CD4、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD69、CD7、CD84、CD8、CD8アルファ、CD8ベータ、CD96(Tactile)、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CDS、CEACAM1、CRT AM、サイトカイン受容体、DAP-10、DNAM1(CD226)、Fcガンマ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、Igアルファ(CD79a)、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、インテグリン、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGB1、KIRDS2、LAT、LFA-1、CD83と特異的に結合するリガンド、LIGHT、LTBR、Ly9(CD229)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、MHCクラス1分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX-40、PAG/Cbp、プログラム死-1(PD-1)、PSGL1、SELPLG(CD162)、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、SLAM(SLAMF1)、SLAMF4(CD244)、SLAMF6(NTB-A)、SLAMF7、SLP-76、TNF受容体タンパク質、TNFR2、TNFSF14、Tollリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1、及びVLA-6からなる群から選択されるタンパク質から選択される膜貫通ドメインである、請求項28~40のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項42】
前記膜貫通ドメインが、CD8アルファ由来の膜貫通ドメインである、請求項41に記載の核酸。
【請求項43】
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、4-1BB/CD137、活性化NK細胞受容体、免疫グロブリンタンパク質、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD100(SEMA4D)、CD103、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD247、CD27、CD276(B7-H3)、CD28、CD29、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD3ゼータ、CD30、CD4、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD69、CD7、CD84、CD8、CD8アルファ、CD8ベータ、CD96(Tactile)、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CDS、CEACAM1、CRTAM、サイトカイン受容体、DAP-10、DNAM1(CD226)、Fcガンマ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、Igアルファ(CD79a)、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、インテグリン、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGB1、KIRDS2、LAT、CD83と特異的に結合するリガンド、LIGHT、LTBR、Ly9(CD229)、Ly108、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、MHCクラス1分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX-40、PAG/Cbp、プログラム死-1(PD-1)、PSGL1、SELPLG(CD162)、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、SLAM(SLAMF1)、SLAMF4(CD244)、SLAMF6(NTB-A)、SLAMF7、SLP-76、TNF受容体タンパク質、TNFR2、TNFSF14、Tollリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1、及びVLA-6、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるタンパク質由来の細胞内シグナル伝達ドメインを含む、請求項28~42のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項44】
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、4-1BB及びCD3ゼータ由来である、請求項43に記載の核酸。
【請求項45】
前記キメラ抗原受容体が、追加の抗原結合ドメインを更に含む、請求項28~44のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項46】
前記追加の抗原結合ドメインが、scFvである、請求項45に記載の核酸。
【請求項47】
請求項28~46のいずれか一項に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項48】
前記核酸に作動可能に連結されたプロモーターを更に含む、請求項47に記載のベクター。
【請求項49】
前記プロモーターが、構成的プロモーターである、請求項48に記載のベクター。
【請求項50】
前記プロモーターが、誘導性プロモーターである、請求項48に記載のベクター。
【請求項51】
ウイルスベクターである、請求項47~50のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項52】
前記ウイルスベクターが、レンチウイルスベクターである、請求項51に記載のベクター。
【請求項53】
請求項28~46のいずれか一項に記載の核酸又は請求項47~52のいずれか一項に記載のベクターを、免疫細胞に導入する工程であって、それによって、操作された免疫細胞を産生する、工程
を含む、操作された免疫細胞を産生する方法。
【請求項54】
前記導入する工程の後に、前記操作された免疫細胞を培養する工程を更に含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記免疫細胞が、T細胞である、請求項53又は54に記載の方法。
【請求項56】
前記免疫細胞が、NK細胞である、請求項53又は54に記載の方法。
【請求項57】
前記導入する工程の前に、対象から前記免疫細胞を得る工程を更に含む、請求項53~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記操作された免疫細胞を前記対象に投与する工程を更に含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記対象が、グリピカン-3関連がんを有すると診断されているか、又は特定されている、請求項57又は58に記載の方法。
【請求項60】
請求項53~57のいずれか一項に記載の方法によって産生される、操作された免疫細胞。
【請求項61】
請求項60に記載の操作された免疫細胞と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項62】
対象においてグリピカン-3関連がんを治療する方法であって、前記対象に、請求項60に記載の操作された免疫細胞又は請求項61に記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項63】
前記グリピカン-3関連がんが、肝臓がんである、請求項27又は62に記載の方法。
【請求項64】
前記対象が、電離放射線、化学療法剤、治療抗体、及びチェックポイント阻害剤からなる群から選択される1つ以上の追加の抗がん療法を以前に投与されている、請求項27、62、及び63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記対象が、電離放射線、化学療法剤、治療抗体、及びチェックポイント阻害剤からなる群から選択される1つ以上の追加の抗がん療法を更に投与される、請求項27、62、及び63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記対象が、前記グリピカン-3関連がんを有すると特定されているか、又は診断されている、請求項27及び62~65のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月18日に出願された米国仮特許出願第62/991,493号、2020年4月3日に出願された米国仮特許出願第63/004,827号、及び2020年6月24日に出願された米国仮特許出願第63/043,237号に対する優先権を主張し、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
がんは、依然として世界の主要な死因の1つである。近年の統計では、世界の人口の13%が、がんで亡くなっていると報告されている。International Agency for Research on Cancer(IARC)の推計によれば、2012年には、世界中で1410万人の新たながん症例、及び820万人のがんによる死亡が存在した。2030年までに、世界的な負担は、人口増加及び高齢化、喫煙、不健康な食事及び身体不活動等のリスク因子への曝露に起因して、2170万人の新たながん症例、及び1300万人のがんによる死亡に増加すると予想されている。更に、がん治療のための疼痛及び医療費は、がん患者及びその家族の両方にとって、生活の質の低下を引き起こす。
【0003】
キメラ抗原受容体(CAR-T)で操作されたT細胞は、がん等の疾患を治療することについて、大きな治療可能性を有する。CAR-T治療薬は、T細胞に強力な標的親和性及びシグナル伝達機能を付与する。しかしながら、CAR-T療法の素晴らしい有効性は、サイトカイン放出症候群(CRS)等の深刻な副作用を伴うことが多い。したがって、副作用を低減したCAR-T治療薬及び戦略を開発するという満たされていない必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0004】
概要
キメラ抗原受容体(CAR)を含む免疫細胞であって、CARが、グリピカン-3(GPC3)に特異的に結合する細胞外抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含む、免疫細胞が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、CARは、単一ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、CARは、2つのポリペプチドで構成される。
【0005】
いくつかの実施形態において、細胞外抗原結合ドメインは、配列番号1を含むCDR1、配列番号2を含むCDR2、及び配列番号3を含むCDR3を含む、軽鎖可変ドメイン、並びに配列番号4を含むCDR1、配列番号5を含むCDR2、及び配列番号6を含むCDR3を含む、重鎖可変ドメインを含む。いくつかの実施形態において、軽鎖可変ドメインは、配列番号10に対して少なくとも80%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、軽鎖可変ドメインは、配列番号10に対して少なくとも90%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、軽鎖可変ドメインは、配列番号10に対して少なくとも96%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号8に対して少なくとも80%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号8に対して少なくとも90%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号8に対して少なくとも96%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインは、ヒト化されている。いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインは、ヒトである。いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインは、scFvである。
【0006】
いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインは、4-1BB/CD137、活性化NK細胞受容体、免疫グロブリンタンパク質、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD100(SEMA4D)、CD103、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD247、CD27、CD276(B7-H3)、CD28、CD29、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD3ゼータ、CD30、CD4、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD69、CD7、CD84、CD8、CD8アルファ、CD8ベータ、CD96(Tactile)、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CDS、CEACAM1、CRT AM、サイトカイン受容体、DAP-10、DNAM1(CD226)、Fcガンマ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、Igアルファ(CD79a)、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、インテグリン、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGB1、KIRDS2、LAT、LFA-1、CD83と特異的に結合するリガンド、LIGHT、LTBR、Ly9(CD229)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、MHCクラス1分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX-40、PAG/Cbp、プログラム死-1(PD-1)、PSGL1、SELPLG(CD162)、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、SLAM(SLAMF1)、SLAMF4(CD244)、SLAMF6(NTB-A)、SLAMF7、SLP-76、TNF受容体タンパク質、TNFR2、TNFSF14、Tollリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1、及びVLA-6からなる群から選択されるタンパク質から選択される膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインは、CD8アルファ由来の膜貫通ドメインである。
【0007】
いくつかの実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BB/CD137、活性化NK細胞受容体、免疫グロブリンタンパク質、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD100(SEMA4D)、CD103、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD247、CD27、CD276(B7-H3)、CD28、CD29、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD3ゼータ、CD30、CD4、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD69、CD7、CD84、CD8、CD8アルファ、CD8ベータ、CD96(Tactile)、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CDS、CEACAM1、CRTAM、サイトカイン受容体、DAP-10、DNAM1(CD226)、Fcガンマ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、Igアルファ(CD79a)、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、インテグリン、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGB1、KIRDS2、LAT、CD83と特異的に結合するリガンド、LIGHT、LTBR、Ly9(CD229)、Ly108、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、MHCクラス1分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX-40、PAG/Cbp、プログラム死-1(PD-1)、PSGL1、SELPLG(CD162)、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、SLAM(SLAMF1)、SLAMF4(CD244)、SLAMF6(NTB-A)、SLAMF7、SLP-76、TNF受容体タンパク質、TNFR2、TNFSF14、Tollリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1、及びVLA-6、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるタンパク質由来の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BB及びCD3ゼータ由来である。
【0008】
いくつかの実施形態において、キメラ抗原受容体は、追加の抗原結合ドメインを更に含む。いくつかの実施形態において、追加の抗原結合ドメインは、scFvである。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、ヒト免疫細胞である。いくつかの実施形態において、ヒト免疫細胞は、自己ヒト免疫細胞である。いくつかの実施形態において、ヒト免疫細胞は、同種異系ヒト免疫細胞である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、T細胞である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、NK細胞である。
【0009】
本明細書に記載の免疫細胞のいずれかと、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物が、本明細書で提供される。薬学的組成物を含むキットであって、薬学的組成物が、本明細書に記載の薬学的組成物のいずれかである、キットが、本明細書で提供される。
【0010】
グリピカン-3関連がんを有する対象を治療する方法であって、対象に、本明細書に記載の免疫細胞又は薬学的組成物のいずれかを投与する工程を含む方法が、本明細書で提供される。
【0011】
キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸であって、CARが、グリピカン-3(GPC3)に特異的に結合する細胞外抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含む、核酸が、本明細書で提供される。
【0012】
いくつかの実施形態において、CARは、単一ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、CARは、2つのポリペプチドで構成される。
【0013】
いくつかの実施形態において、細胞外抗原結合ドメインは、配列番号1を含むCDR1、配列番号2を含むCDR2、及び配列番号3を含むCDR3を含む、軽鎖可変ドメイン、並びに配列番号4を含むCDR1、配列番号5を含むCDR2、及び配列番号6を含むCDR3を含む、重鎖可変ドメインを含む。いくつかの実施形態において、軽鎖可変ドメインは、配列番号10に対して少なくとも80%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、軽鎖可変ドメインは、配列番号10に対して少なくとも90%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、軽鎖可変ドメインは、配列番号10に対して少なくとも96%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号8に対して少なくとも80%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号8に対して少なくとも90%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号8に対して少なくとも96%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインは、ヒト化されている。いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインは、ヒトである。いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインは、scFvである。
【0014】
いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインは、4-1BB/CD137、活性化NK細胞受容体、免疫グロブリンタンパク質、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD100(SEMA4D)、CD103、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD247、CD27、CD276(B7-H3)、CD28、CD29、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD3ゼータ、CD30、CD4、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD69、CD7、CD84、CD8、CD8アルファ、CD8ベータ、CD96(Tactile)、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CDS、CEACAM1、CRT AM、サイトカイン受容体、DAP-10、DNAM1(CD226)、Fcガンマ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、Igアルファ(CD79a)、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、インテグリン、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGB1、KIRDS2、LAT、LFA-1、CD83と特異的に結合するリガンド、LIGHT、LTBR、Ly9(CD229)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、MHCクラス1分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX-40、PAG/Cbp、プログラム死-1(PD-1)、PSGL1、SELPLG(CD162)、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、SLAM(SLAMF1)、SLAMF4(CD244)、SLAMF6(NTB-A)、SLAMF7、SLP-76、TNF受容体タンパク質、TNFR2、TNFSF14、Tollリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1、及びVLA-6からなる群から選択されるタンパク質から選択される膜貫通ドメインである。いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインは、CD8アルファ由来の膜貫通ドメインである。
【0015】
いくつかの実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BB/CD137、活性化NK細胞受容体、免疫グロブリンタンパク質、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD100(SEMA4D)、CD103、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD247、CD27、CD276(B7-H3)、CD28、CD29、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD3ゼータ、CD30、CD4、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD69、CD7、CD84、CD8、CD8アルファ、CD8ベータ、CD96(Tactile)、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CDS、CEACAM1、CRTAM、サイトカイン受容体、DAP-10、DNAM1(CD226)、Fcガンマ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、Igアルファ(CD79a)、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、インテグリン、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGB1、KIRDS2、LAT、CD83と特異的に結合するリガンド、LIGHT、LTBR、Ly9(CD229)、Ly108、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、MHCクラス1分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX-40、PAG/Cbp、プログラム死-1(PD-1)、PSGL1、SELPLG(CD162)、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、SLAM(SLAMF1)、SLAMF4(CD244)、SLAMF6(NTB-A)、SLAMF7、SLP-76、TNF受容体タンパク質、TNFR2、TNFSF14、Tollリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1、及びVLA-6、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるタンパク質由来の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BB及びCD3ゼータ由来である。
【0016】
いくつかの実施形態において、キメラ抗原受容体は、追加の抗原結合ドメインを更に含む。いくつかの実施形態において、追加の抗原結合ドメインは、scFvである。
【0017】
本明細書に記載の核酸のいずれかを含むベクターが、本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、ベクターは、核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む。いくつかの実施形態において、プロモーターは、構成的プロモーターである。いくつかの実施形態において、プロモーターは、誘導性プロモーターである。いくつかの実施形態において、ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。
【0018】
操作された免疫細胞を産生する方法が本明細書で提供され、本方法は、本明細書に記載の免疫細胞又はベクターに、本明細書に記載の核酸のいずれかを導入する工程であって、それによって、操作された免疫細胞を産生する、工程を含む。いくつかの実施形態において、導入する工程の後に、操作された免疫細胞を培養する。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、T細胞である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、NK細胞である。いくつかの実施形態において、導入する工程の前に、対象から免疫細胞を得る。いくつかの実施形態において、方法は、操作された免疫細胞を対象に投与する工程を更に含む。いくつかの実施形態において、対象は、グリピカン-3関連がんを有すると診断されているか、又は特定されている。
【0019】
本明細書に記載の方法のいずれかによって産生される、操作された免疫細胞が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、本明細書に記載の操作された免疫細胞のいずれかと、薬学的に許容される担体とを含む。
【0020】
対象においてグリピカン-3関連がんを治療する方法であって、操作された免疫細胞又は薬学的組成物を投与する工程を含む方法が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、グリピカン-3関連がんは、肝臓がんである。いくつかの実施形態において、対象は、電離放射線、化学療法剤、治療抗体、及びチェックポイント阻害剤からなる群から選択される1つ以上の追加の抗がん療法を以前に投与されている。いくつかの実施形態において、電離放射線、化学療法剤、治療抗体、及びチェックポイント阻害剤からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、対象は、グリピカン-3関連がんを有すると特定されているか、又は診断されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】scFv組換え発現ベクターの構造を示す。
図2】muGC33及びhuGC33抗体を用いたSDS-PAGE結果を示す。
図3】huGC33抗体及びmuGC33抗体のELISA力価グラフを示す。
図4】huGC33抗体のELISA力価グラフを示す。
図5】クローニング後のpELPS4-huGC33 VL-VH及びpELPS4-huGC33 VH-VLの両方についての酵素マッピングの結果を示す。
図6A】総増殖倍率によって比較した、細胞培養12日目の各CAR-T細胞、未処置、切断型muGC33、muGC33、huGC33 VHVL、及びhuGC33 VLVHについての細胞成長を示すグラフである。
図6B】4日目~12日目までの各CAR-T細胞、未処置、切断型muGC33、muGC33、huGC33 VHVL、及びhuGC33 VLVHについての細胞生存率を比較する棒グラフである。
図7A】6日目の未処置、切断型muGC33、muGC33、huGC33 VHVL、及びhuGC33 VLVH CAR-T細胞のFACS分析からの結果を示す。
図7B】9日目の未処置、切断型muGC33、muGC33、huGC33 VHVL、及びhuGC33 VLVH CAR-T細胞のFACS分析からの結果を示す。
図7C】12日目の未処置、切断型muGC33、muGC33、huGC33 VHVL、及びhuGC33 VLVH CAR-T細胞のFACS分析からの結果を示す。
図8】未処置、切断型muGC33、muGC33、huGC33 VHVL、及びhuGC33 VLVH CAR-T細胞についての細胞傷害性アッセイからの結果を比較するグラフであり、エフェクター(E):標的(T)細胞の比率(E:T)は、10:1、3:1、1:1、又は0.3:1であってもよい。結果は、muGC33、huGC33 VHVL、及びhuGC33 VLVH CAR-T細胞が、同様にインビトロ死滅活性を示し、未処置細胞が、インビトロ死滅活性を示さなかったことを示す。
図9】肝臓がん細胞におけるGPC3の発現を示し、GPC3発現は、細胞株HepG2、Hep3B、Huh-7、及びSK-Hep-1において測定された。結果は、GPC3が、HepG2、Hep3B、及びHuh-7細胞株において発現されたが、SK-Hep-1細胞株においては発現されなかったことを示す。
図10A】Huh-7細胞株からのFACS分析からの結果を示す。
図10B】ルシフェラーゼ-GFPの発現を示すHuh-7細胞株からのルシフェラーゼアッセイからの結果を示す。
図11】GPC3 CAR-T細胞注射後の動物モデルにおける腫瘍成長を示すグラフのセットである。結果は、huGC33 VHVLを受けたマウスの20%が、注射時の後に腫瘍成長を示し、一方で、huGC33 VLVHを受けたマウスの40%が、注射時の後に腫瘍成長を示したことを示す。
図12】GPC3 CAR-T細胞注射の注射後の時間経過に伴う動物の血液におけるGPC3 CAR-T細胞数の変化を示すグラフである。結果は、血液における総CAR-T細胞の数が、注射時から14日後にピークに達したことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
本開示は、GPC3抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR-T)で操作されたT細胞、並びにそれらを作製する方法及び使用する方法を記載する。
【0023】
定義:
約:「約」という用語は、本明細書で値に関連して使用される場合、参照される値の状況で類似している値を指す。一般に、その状況に精通している当業者は、その状況において、「約」によって包含される、関連する分散の程度を認識するであろう。例えば、いくつかの実施形態において、「約」という用語は、参照値の25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以内、又はそれ未満の範囲の値を包含し得る。
【0024】
投与:本明細書で使用される場合、「投与」という用語は、典型的には、組成物である薬剤、又は組成物に含まれる薬剤の送達を達成するための、対象又は系への組成物の投与を指す。当業者は、適切な状況において、対象、例えば、ヒトへの投与に利用され得る様々な経路を認識するであろう。例えば、いくつかの実施形態において、投与は、眼投与、経口投与、非経口投与、局所投与等であり得る。いくつかの特定の実施形態において、投与は、気管支投与(例えば、気管支内点滴注入による)、口腔投与、経皮投与(例えば、真皮、皮内(intradermal)、皮内(interdermal)、経皮等に対して局所投与のうちの1つ以上であり得るか又はそれらを含み得る)、経腸投与、動脈内投与、皮内(intradermal)投与、胃内投与、髄内投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、腹腔内投与、くも膜下腔内投与、静脈内投与、脳室内投与、特定の器官内(例えば、肝内)投与、粘膜投与、鼻腔投与、経口投与、直腸投与、皮下投与、舌下投与、局所投与、気管支投与(例えば、気管支内点滴注入による)、膣投与、硝子体投与等であり得る。いくつかの実施形態において、投与は、単回用量のみを伴ってもよい。いくつかの実施形態において、投与は、固定回数の用量の適用を伴ってもよい。いくつかの実施形態において、投与は、断続的である投薬(例えば、時間的に分離された複数回の用量)、及び/又は周期的な投薬(例えば、共通の期間によって分離された個別の用量)を伴ってもよい。いくつかの実施形態において、投与は、少なくとも選択された期間にわたる連続投薬(例えば、灌流)を伴ってもよい。
【0025】
親和性:当該技術分野で知られているように、「親和性」は、特定のリガンドがそのパートナーに結合する緊密度の尺度である。親和性は、異なる方式で測定することができる。いくつかの実施形態において、親和性は、定量アッセイによって測定される。いくつかのそのような実施形態において、結合パートナー濃度は、生理学的条件を模倣するように、リガンド濃度が過剰になるように固定され得る。代替的に、又は追加的に、いくつかの実施形態において、結合パートナー濃度及び/又はリガンド濃度を変化させてもよい。いくつかのそのような実施形態において、親和性は、同等の条件(例えば、濃度)下で参照と比較され得る。
【0026】
抗体剤:本明細書で使用される場合、「抗体剤」という用語は、特定の抗原に特異的に結合する薬剤を指す。いくつかの実施形態において、この用語は、特異的結合を付与するのに十分な免疫グロブリン構造要素を含む任意のポリペプチド又はポリペプチド複合体を包含する。例示的な抗体剤としては、限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、及びそれらの断片が挙げられる。いくつかの実施形態において、抗体剤は、当該技術分野で既知であるように、ヒト化、霊長類化、キメラ等である1つ以上の配列要素を含んでもよい。多くの実施形態において、「抗体剤」という用語は、代替的な提示において抗体構造及び機能的特徴を利用するための当該技術分野で既知の、又は開発された構築物又は形式のうちの1つ以上を指すために使用される。例えば、実施形態である本発明に従って利用される抗体剤は、限定されないが、インタクトなIgA、IgG、IgE又はIgM抗体;二重又は多重特異性抗体(例えば、Zybodies(登録商標)等);Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fd’断片、Fd断片等の抗体断片、及び単離されたCDR又はそのセット;一本鎖Fv;ポリペプチド-Fc融合物;単一ドメイン抗体(例えば、IgNAR等のサメ単一ドメイン抗体、又はその断片);ラクダ抗体;マスクされた抗体(例えば、Probodies(登録商標));mall odular mmunoharmaceuticals(「SMIPs(商標)」);一本鎖又はタンデムダイアボディ(TandAb(登録商標));VHH;Anticalins(登録商標);Nanobodies(登録商標)ミニボディ;BiTE(登録商標);アンキリン反復タンパク質、又はDARPIN(登録商標);Avimers(登録商標);DART;TCR様抗体;Adnectins(登録商標);Affilins(登録商標);Trans-bodies(登録商標);Affibodies(登録商標);TrimerX(登録商標);MicroProteins;Fynomers(登録商標)、Centyrins(登録商標)、及びKALBITOR(登録商標)から選択される形式のものである。いくつかの実施形態において、抗体剤は、天然で産生される場合に有し得る共有結合修飾(例えば、グリカンの接続)を欠いていてもよい。いくつかの実施形態において、抗体剤は、共有結合修飾(例えば、グリカン、ペイロード[例えば、検出可能な部分、治療部分、触媒部分等]、又は他のペンダント基[例えば、ポリエチレングリコール等]を含有し得る。多くの実施形態において、抗体剤は、アミノ酸配列が相補性決定領域(CDR)として当業者によって認識される1つ以上の構造要素を含むポリペプチドであるか、又はそれを含む。いくつかの実施形態において、抗体剤は、アミノ酸配列が参照抗体において見出されるものと実質的に同一である少なくとも1つのCDR(例えば、少なくとも1つの重鎖CDR及び/又は少なくとも1つの軽鎖CDR)を含むポリペプチドであるか、又はそれを含む。いくつかの実施形態において、含まれるCDRは、参照CDRと比較して、配列において同一であるか、又は1~5個のアミノ酸置換を含有するかのいずれかであるという点において、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態において、含まれるCDRは、参照CDRと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を示すという点で、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態において、含まれるCDRは、参照CDRと少なくとも96%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を示すという点で、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態において、含まれるCDRは、含まれるCDR内の少なくとも1つのアミノ酸が、参照CDRと比較して、欠失、付加、又は置換されるが、含まれるCDRは、それ以外の点で参照CDRのアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有するという点で、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態において、含まれるCDRは、含まれるCDR内の1~5個のアミノ酸が、参照CDRと比較して、欠失、付加、又は置換されるが、含まれるCDRは、それ以外の点で参照CDRのアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有するという点で、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態において、含まれるCDRは、含まれるCDR内の少なくとも1つのアミノ酸が、参照CDRと比較して置換されるが、含まれるCDRは、それ以外の点で参照CDRのアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有するという点で、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態において、含まれるCDRは、含まれるCDR内の1~5個のアミノ酸が、参照CDRと比較して欠失、付加、又は置換されるが、含まれるCDRは、それ以外の点で参照CDRのアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有するという点で、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態において、抗体剤は、アミノ酸配列が免疫グロブリン可変ドメインとして当業者によって認識される構造要素を含むポリペプチドであるか、又はそれを含む。いくつかの実施形態において、抗体剤は、免疫グロブリン結合ドメインに対して相同であるか、又は大部分が相同である結合ドメインを有するポリペプチドタンパク質である。いくつかの実施形態において、抗体剤は、キメラ抗原受容体(CAR)の少なくとも一部分であるか、又はキメラ抗原受容体(CAR)の少なくとも一部分を含む。
【0027】
抗原:「抗原」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体剤に結合する薬剤を指す。いくつかの実施形態において、抗原は、抗体剤に結合し、生物において特定の生理学的応答を誘導してもよく、又は誘導しなくてもよい。一般に、抗原は、例えば、小分子、核酸、ポリペプチド、炭水化物、脂質、ポリマー(生物学的ポリマー[例えば、核酸及び/又はアミノ酸ポリマー]、並びに生物学的ポリマー以外のポリマー[例えば、核酸又はアミノ酸ポリマー以外のポリマー]を含む)等の任意の化学実体(entity)であり得るか、又はそれらを含み得る。いくつかの実施形態において、抗原は、ポリペプチドであるか、又はポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、抗原は、グリカンであるか、又はグリカンを含む。当業者は、一般に、抗原が、単離された形態又は純粋な形態で提供されてもよく、又は代替的に、粗形態で(例えば、他の材料と共に、例えば、細胞抽出物等の抽出物若しくは抗原含有源の他の比較的粗な調製物)で提供されてもよいことを認識するであろう。いくつかの特定の実施形態において、抗原は、細胞の状況で存在する(例えば、抗原は、細胞の表面上で発現されるか、又は細胞内で発現される)。いくつかの実施形態において、抗原は、組換え抗原である。
【0028】
抗原結合ドメイン:本明細書で使用される場合、標的部分又は実体に特異的に結合する抗体剤又はその一部分を指す。典型的には、抗原結合ドメインとその標的との間の相互作用は、非共有結合である。いくつかの実施形態において、標的部分又は実体は、例えば、炭水化物、脂質、核酸、金属、ポリペプチド、又は小分子を含む、任意の化学的クラスのものであり得る。いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインは、ポリペプチド(又はその複合体)であってもよく、又はポリペプチド(又はその複合体)を含んでもよい。いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインは、融合ポリペプチドの一部である。いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインは、キメラ抗原受容体(CAR)の一部である。
【0029】
~と関連する:2つの事象又は実体は、一方の存在、レベル、及び/又は形態が他方の存在、レベル、及び/又は形態と相関関係にある場合、その用語が本明細書で使用されるときには、互いに「関連して」いる。例えば、特定の実体(例えば、ポリペプチド、遺伝子シグネチャ、代謝産物、微生物等)は、その存在、レベル及び/又は形態が(例えば、関連する集団全体にわたって)特定の疾患、障害、若しくは状態の発生率及び/又はかかりやすさと相関関係にある場合、その特定の疾患、障害、若しくは状態と関連すると考えられる。いくつかの実施形態において、2つ以上の実体は、それらが直接的又は間接的に相互作用する場合、互いに物理的に「関連して」おり、その結果、それらは互いに物理的に近接するか、及び/又は互いに物理的に近接したままである。いくつかの実施形態において、互いに物理的に関連する2つ以上の実体は、互いに共有結合している。いくつかの実施形態において、互いに物理的に関連する2つ以上の実体は、互いに共有結合していないが、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、磁気、及びそれらの組み合わせによって非共有結合的に関連している。
【0030】
結合:「結合」という用語は、本明細書で使用される場合、典型的には、2つ以上の実体の間又はそれらの中の非共有結合による会合を指すことが理解されるであろう。「直接」結合は、実体又は部分の間の物理的接触を伴い、間接結合は、1つ以上の中間実体との物理的接触による物理的相互作用を伴う。2つ以上の実体間の結合は、典型的には、(担体実体と、及び/又は生体系若しくは細胞において共有結合的に、又は他の方法で関連しつつ)相互作用する実体又は部分が単離した状態で、又はより複雑な系の状況で研究される場合を含め、様々な状況のいずれかで評価することができる。
【0031】
がん:「がん」、「悪性腫瘍」、「新生物」、「腫瘍」、及び「がん腫」という用語は、相対的に異常な成長、制御不能な成長、及び/又は自律的な成長を示し、その結果、細胞増殖の制御の顕著な消失を特徴とする異常な成長表現型を示す細胞を指すために本明細書で使用される。いくつかの実施形態において、腫瘍は、前がん性(例えば、良性)、悪性、転移前、転移性、及び/又は非転移性である細胞であってもよく、あるいはそれを含んでもよい。本開示は、その教示が特に関連し得る特定のがんを具体的に特定する。いくつかの実施形態において、関連するがんは、固形腫瘍であることを特徴としていてもよい。いくつかの実施形態において、関連するがんは、血液腫瘍であることを特徴としていてもよい。一般に、当該技術分野において既知の異なる種類のがんの例としては、例えば、白血病、リンパ腫(ホジキン及び非ホジキン)、骨髄腫及び骨髄増殖性障害を含む造血がん;肉腫、黒色腫、腺腫、固形組織のがん腫、口腔、咽喉、喉頭、及び肺の扁平上皮細胞がん腫、肝臓がん、前立腺、子宮頸部、膀胱、子宮、及び子宮内膜がん等の泌尿生殖器のがん、及び腎臓細胞がん腫、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、皮膚若しくは眼内黒色腫、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、頭頸部がん、乳がん、胃腸がん、及び神経系のがん、パピローマ等の良性病変等が挙げられる。
【0032】
CDR:本明細書で使用される場合、抗体剤の可変領域内の相補性決定領域を指す。重鎖及び軽鎖の可変領域の各々に3つのCDRが存在し、可変領域の各々について、CDR1、CDR2及びCDR3と称される。「CDRのセット」又は「CDRセット」は、抗原に結合することができる単一可変領域で生じる3個又は6個のCDR、又は抗原に結合することができる同族重鎖及び軽鎖可変領域のCDRのグループを指す。CDR境界を画定するために、当該技術分野において、特定のシステムが確立されてきた(例えば、Kabat、Chothia等)。当業者は、これらのシステムの間及び中の差を認識し、特許請求される発明を理解し、実施するのに必要な程度まで、CDR境界を理解することができる。
【0033】
化学療法剤:「化学療法剤」という用語は、本明細書で使用されており、例えば具体的には、望ましくない細胞増殖と関連する1つ以上の疾患、障害、又は状態を治療する際に使用するための利用及び/又は推奨される薬剤を含め、1つ以上のアポトーシス促進剤、細胞増殖抑制剤、及び/又は細胞傷害性薬剤を指す、当該技術分野において理解されている意味を有する。多くの実施形態において、化学療法剤は、がんの治療に有用である。いくつかの実施形態において、化学療法剤は、1つ以上のアルキル化剤、1つ以上のアントラサイクリン、1つ以上の細胞骨格撹乱物質(タキサン、マイタンシン及びその類似体等の微小管標的化剤)、1つ以上のエポチロン、1つ以上のヒストンデアセチラーゼ阻害剤HDAC)、1つ以上のトポイソメラーゼ阻害剤(例えば、トポイソメラーゼI及び/又はトポイソメラーゼIIの阻害剤)、1つ以上のキナーゼ阻害剤、1つ以上のヌクレオチド類似体又はヌクレオチド前駆類似体、1つ以上のペプチド抗生物質、1つ以上の白金系薬剤、1つ以上のレチノイド、1つ以上のビンカアルカロイド、及び/又は以下のうちの1つ以上の類似体(すなわち、関連する抗増殖活性を共有する)であり得るか、又はそれらを含み得る。いくつかの特定の実施形態において、化学療法剤は、アクチノマイシン、オールトランスレチノイン酸、アウリスタチン、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、クルクミン、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エポチロン、エトポシド、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イマチニブ、イリノテカン、マイタンシン及び/又はその類似体(例えば、DM1)メクロレタミン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、マイタンシノイド、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、テニポシド、チオグアニン、トポテカン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上であり得るか、又はそれらを含み得る。いくつかの実施形態において、化学療法剤は、抗体-薬物コンジュゲートの状況で利用され得る。いくつかの実施形態において、化学療法剤は、hLL1-ドキソルビシン、hRS7-SN-38、hMN-14-SN-38、hLL2-SN-38、hA20-SN-38、hPAM4-SN-38、hLL1-SN-38、hRS7-Pro-2-P-Dox、hMN-14-Pro-2-P-Dox、hLL2-Pro-2-P-Dox、hA20-Pro-2-P-Dox、hPAM4-Pro-2-P-Dox、hLL1-Pro-2-P-Dox、P4/D10-ドキソルビシン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ブレンツキシマブベドチン、トラスツズマブエムタンシン、イノツズマブオゾガマイシン、グレンバツムマブベドチン、SAR3419、SAR566658、BIIB015、BT062、SGN-75、SGN-CD19A、AMG-172、AMG-595、BAY-94-9343、ASG-5ME、ASG-22ME、ASG-16M8F、MDX-1203、MLN-0264、抗PSMA ADC、RG-7450、RG-7458、RG-7593、RG-7596、RG-7598、RG-7599、RG-7600、RG-7636、ABT-414、IMGN-853、IMGN-529、ボルセツズマブマホドチン、及びロルボツズマブメルタンシンからなる群から選択される抗体-薬物コンジュゲート中に見出されるものである。
【0034】
操作された:一般に、「操作された」という用語は、人の手によって操作されているという態様を指す。例えば、ポリペプチド配列が人の手によって操作される場合、ポリペプチドは「操作された」とみなされる。例えば、本発明のいくつかの実施形態において、操作されたポリペプチドは、人の手によって参照ポリペプチド配列に導入された1つ以上のアミノ酸変異、欠失、及び/又は挿入を含む配列を含む。いくつかの実施形態において、操作されたポリペプチドは、人の手によって1つ以上の追加のポリペプチドに融合されている(すなわち、共有結合された)ポリペプチドを含み、インビボで天然には生じない融合ポリペプチドを形成する。これと比較して、細胞又は生物は、その遺伝子情報が変えられる(例えば、以前は存在しなかった新しい遺伝子材料が、例えば、形質転換、交配、体細胞ハイブリダイゼーション、トランスフェクション、形質導入、又は他の機構によって導入されているか、又は以前から存在した遺伝子材料が、例えば、置換若しくは欠失変異によって、又は交配プロトコルによって変えられるか、又は除去される)ように操作されている場合、「操作された」とみなされる。一般的な方法であり、当業者に理解されるように、操作されたポリペプチド又は細胞の誘導体及び/又は子孫は、実際の操作が以前の実体に対して行われた場合であっても、典型的には、「操作された」と称される。
【0035】
インビトロ:本明細書で使用される「インビトロ」という用語は、多細胞生物内ではなく、人工環境、例えば、試験管又は反応容器内、細胞培養物内等で生じる事象を指す。
【0036】
インビボ:本明細書で使用される場合、ヒト及び非ヒト動物等の多細胞生物内で生じる事象を指す。細胞ベースの系の状況において、この用語は、(例えば、インビトロ系とは対照的に)生細胞内で生じる事象を指すために使用され得る。
【0037】
単離された:本明細書で使用される場合、(1)それが最初に産生されたときに(天然で、及び/若しくは実験的な環境で)関連していた構成要素の少なくともいくつかから分離されている、並びに/又は(2)人の手で設計、生産、調製、及び/若しくは製造された物質及び/若しくは実体を指す。単離された物質及び/又は実体は、それらが最初に関連していた他の構成要素の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約99%より多くから分離されてもよい。いくつかの実施形態において、単離された薬剤は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約99%を超えて、純粋である。本明細書で使用される場合、物質は、他の構成要素を実質的に含まない場合、「純粋」である。いくつかの実施形態において、当業者に理解されるように、例えば1つ以上の担体又は賦形剤(例えば、緩衝液、溶媒、水等)の特定の他の構成要素と合わせた後に、物質は、依然として「単離された」、又は「純粋」であるとさえみなされてもよく、このような実施形態において、物質の単離率又は純度は、このような担体又は賦形剤を含むことなく計算される。一例を挙げると、いくつかの実施形態において、天然に存在するポリペプチド又はポリヌクレオチド等の生物学的ポリマーは、a)その由来又は誘導体化の起源が、天然状態でのその天然の状態に付随する構成要素の一部又は全てと関連していないという理由で、b)天然で産生する種と同じ種の他のポリペプチド又は核酸を実質的に含まない、c)天然で産生する種のものではない細胞又は他の発現系からの構成要素によって発現するか、又はそれと他の方法で関連する場合に、「単離された」とみなされる。したがって、例えば、いくつかの実施形態において、化学的に合成されるか、又はそれを天然で産生するものとは異なる細胞系で合成されるポリペプチドは、「単離された」ポリペプチドであるとみなされる。代替的に、又は追加的に、いくつかの実施形態において、1つ以上の精製技術を受けているポリペプチドは、a)天然で関連するもの、及び/又はb)最初に産生されたときに関連していたものとは他の構成要素から分離されている程度まで、「単離された」ポリペプチドであるとみなされ得る。
【0038】
作動可能に連結された:本明細書で使用される場合、記載された複数の構成要素が、それらが意図された様式で機能することを可能にする関係にある並置状態を指す。機能的要素に「作動可能に連結された」制御要素は、制御要素に適合した条件下で機能的要素の発現及び/又は活性が達成されるような方式で、関連している。いくつかの実施形態において、「作動可能に連結された」制御要素は、目的のコード要素と連続している(例えば、共有結合している)。いくつかの実施形態において、制御要素は、目的の機能的要素に対してトランスで作用するか、又はそれ以外の方法で目的の機能的要素において作用する。
【0039】
薬学的組成物:本明細書で使用される場合、「薬学的組成物」という用語は、活性薬剤が1つ以上の薬学的に許容される担体と共に製剤化されている組成物を指す。いくつかの実施形態において、組成物は、ヒト又は動物対象への投与に好適である。いくつかの実施形態において、活性薬剤は、関連する集団に投与されたときに所定の治療効果を達成する統計的に有意な確率を示す治療レジメンにおける投与に適した単位用量の量で存在する。
【0040】
ポリペプチド:「ポリペプチド」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、少なくとも3つのアミノ酸のポリマーの当該技術分野で認識される意味を有する。当業者は、「ポリペプチド」という用語が、本明細書に列挙される完全な配列を有するポリペプチドだけでなく、そのような完全なポリペプチドの機能的断片(すなわち、少なくとも1つの活性を保持する断片)を表すポリペプチドも包含するように十分に一般的であることが意図されることを認識するであろう。更に、当業者は、タンパク質配列が、一般に、活性を破壊することなくいくつかの置換を許容することを理解している。したがって、活性を保持し、かつ、同じクラスの別のポリペプチドと少なくとも約30~40%、多くは約50%、60%、70%、又は80%より高い全体的な配列同一性を共有し、更に通常は、かなり同一性の高い、多くは1つ以上の高度に保存された領域内の90%より高い、又は更に95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性の、少なくとも1つの領域を含み、通常は少なくとも3~4個、多くは最大20個以上のアミノ酸を包含する、任意のポリペプチドが、本明細書で使用される「ポリペプチド」という関連する用語内に包含される。ポリペプチドは、L-アミノ酸、D-アミノ酸、又はそれらの両方を含有していてもよく、当該技術分野で既知の様々なアミノ酸修飾又は類似体のいずれかを含有していてもよい。有用な修飾としては、例えば、末端アセチル化、アミド化、メチル化等が挙げられる。いくつかの実施形態において、タンパク質は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、合成アミノ酸、及びそれらの組み合わせを含み得る。「ペプチド」という用語は、一般に、約100個未満のアミノ酸、約50個未満のアミノ酸、20個未満のアミノ酸、又は10個未満のアミノ酸の長さを有するポリペプチドを指すために使用される。いくつかの実施形態において、タンパク質は、抗体剤、抗体断片、その生物学的に活性な部分、及び/又はその特徴的な部分である。
【0041】
予防する、又は予防:疾患、障害、及び/又は状態の発生に関連して使用される場合に、本明細書で使用される場合、その疾患、障害、及び/又は状態が進行するリスクを低減すること、並びに/あるいはその疾患、障害、及び/又は状態の1つ以上の特徴又は症状の発症及び/又は重症度を遅らせることを指す。いくつかの実施形態において、予防は、ある薬剤が、疾患、障害、又は状態の1つ以上の症状の進行、頻度、及び/又は強度の統計的に有意な減少が、その疾患、障害、又は状態にかかりやすい集団で観察される場合に、特定の疾患、障害、又は状態を「予防する」とみなされるように、集団に基づいて評価される。
【0042】
組換え:本明細書で使用される場合、組換え手段によって、設計され、操作され、調製され、発現され、作製され、製造され、及び/又は単離されるポリペプチド、例えば、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現されたポリペプチド;組換えコンビナトリアルヒトポリペプチドライブラリーから単離されたポリペプチド;トランスジェニックである動物(例えば、マウス、ウサギ、ヒツジ、魚等)から単離されたか、又はポリペプチド又はその1つ以上の構成要素、部分、要素、若しくはドメインをコードするか、及び/又は発現を指示する遺伝子又は複数の遺伝子、又は遺伝子構成要素を発現するようにその他の方法で操作されているポリペプチド;並びに/あるいは選択された核酸配列要素を互いにスプライシング又はライゲーションすること、選択された配列要素を化学的に合成すること、及び/又はポリペプチド又はその1つ以上の構成要素、部分、要素、若しくはドメインをコードするか、及び/又は発現を指示する核酸を他の方法で生成することによる任意の他の手段によって調製され、発現され、作製され、又は単離されたポリペプチドを指すことを意図している。いくつかの実施形態において、かかる選択された配列要素のうちの1つ以上は、天然で見出される。いくつかの実施形態において、かかる選択された配列要素のうちの1つ以上は、インシリコで設計される。いくつかの実施形態において、1つ以上のかかる選択された配列要素は、既知の配列要素の変異誘発(例えば、インビボ又はインビトロ)、例えば、目的の供給源生物(例えば、ヒト、マウス等)の生殖細胞系等の天然又は合成供給源から生じる。
【0043】
特異的結合:本明細書で使用される場合、「特異的結合」という用語は、結合が生じる環境で、可能性がある結合パートナーを区別する能力を指す。他の潜在的な標的が存在するときに1つの特定の標的と相互作用する結合剤は、それが相互作用する標的に「特異的に結合する」と言われる。いくつかの実施形態において、特異的結合は、結合剤とそのパートナーとの間の関連度を検出又は決定することによって評価される。いくつかの実施形態において、特異的結合は、結合剤-パートナー複合体の解離の程度を検出又は決定することによって評価される。いくつかの実施形態において、特異的結合は、結合剤がそのパートナーと別の実体との間の代替的相互作用を競合する能力を検出又は決定することによって評価される。いくつかの実施形態において、特異的結合は、ある濃度範囲にわたってそのような検出又は決定を行うことによって評価される。
【0044】
対象:本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、生物、典型的には哺乳動物(例えば、出生前ヒト形態を含むいくつかの実施形態において、ヒト)を指す。いくつかの実施形態において、対象は、関連する疾患、障害、又は状態を患っている。いくつかの実施形態において、対象は、疾患、障害、又は状態にかかりやすい。いくつかの実施形態において、対象は、疾患、障害、又は状態の1つ以上の症状又は特徴を呈する。いくつかの実施形態において、対象は、疾患、障害、又は状態の任意の症状又は特徴を呈しない。いくつかの実施形態において、対象は、疾患、障害、又は状態に対するかかりやすさ、又はそのリスクに特徴的な1つ以上の特徴を有する人物である。いくつかの実施形態において、対象は患者である。いくつかの実施形態において、対象は、診断及び/又は療法が投与される個体、及び/又は投与されている個体である。
【0045】
治療剤:本明細書で使用される場合、「治療剤」という語句は、一般に、生物に投与されると所望の薬理学的効果を誘発する任意の薬剤を指す。いくつかの実施形態において、薬剤は、適切な集団全体にわたって統計的に有意な効果を示す場合、治療剤とみなされる。いくつかの実施形態において、適切な集団は、モデル生物の集団であってもよい。いくつかの実施形態において、適切な集団は、特定の年齢群、性別、遺伝的背景、既存の臨床状態等の様々な基準によって定義され得る。いくつかの実施形態において、治療剤は、疾患、障害、及び/又は状態の1つ以上の症状又は特徴を緩和し、改善し、和らげ、抑制し、予防し、その発症を遅らせ、その重症度を低減し、及び/又はその発生を低減するために使用することができる物質である。いくつかの実施形態において、「治療剤」は、ヒトへの投与のために上市され得る前に、政府機関によって既に承認されているか、又は承認される必要がある薬剤である。いくつかの実施形態において、「治療剤」は、ヒトへの投与のために医薬処方が必要とされる薬剤である。
【0046】
治療有効量:本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、疾患、障害、及び/又は状態を患っているか、又はそれらにかかりやすい集団に、治療投薬レジメンに従って投与された場合に、その疾患、障害、及び/又は状態を治療するのに十分な量を意味する。いくつかの実施形態において、治療有効量は、疾患、障害、及び/又は状態の1つ以上の症状の発生及び/又は重症度を低減し、その1つ以上の特徴を安定させ、及び/又はその発症を遅らせる量である。当業者は、「治療有効量」という用語が、実際には、特定の個体において達成される成功した治療を必要としないことを認識するであろう。むしろ、治療有効量は、かなりの数の対象において、かかる治療を必要とする患者に投与された場合に、特定の所望の薬理学的応答を提供する量であってもよい。例えば、いくつかの実施形態において、「治療有効量」という用語は、本発明の療法の状況でそれを必要とする個体に投与された場合に、その個体において生じるがんを支持するプロセスを遮断し、安定させ、減衰させ、若しくは逆行させるか、又はその個体におけるがんを抑制するプロセスを増強させるか、又は増加させる量を指す。がん治療の状況において、「治療有効量」は、がんと診断された個体に投与された場合に、その個体においてがんの更なる進行を予防するか、安定させるか、抑制するか、又は低減する量である。本明細書に記載される組成物の特に好ましい「治療有効量」は、(療法的治療において)膵臓がん腫等の悪性腫瘍の進行を逆行させるか、又は悪性腫瘍の寛解を達成するか、又は延長するのに役立つ。個体においてがんを治療するために個体に投与される治療有効量は、寛解を促進するか、又は転移を抑制するために投与される治療有効量と同じであってもよく、又は異なっていてもよい。ほとんどのがん療法と同様に、本明細書に記載の治療方法は、がんの「治癒」として解釈されるべきではなく、それに制限されるべきではなく、又はそれ以外の方法で限定されるべきではなく、むしろ、治療方法は、がんを「治療する」ための、すなわち、がんを有する個体の健康に望ましい変化又は有益な変化をもたらすための、記載の組成物の使用を対象とする。そのような利点は、腫瘍学の分野における当業者のヘルスケア提供者によって認識されており、限定されないが、患者の状態の安定化、腫瘍サイズの減少(腫瘍退縮)、生命機能の改善(例えば、がん性組織又は器官の機能の改善)、更なる転移の減少又は抑制、日和見感染の減少、生存可能性の増加、疼痛の減少、運動機能の改善、認知機能の改善、エネルギー感覚の改善(活力、不調軽減)、健康な感覚の改善、正常な食欲の回復、健康的な体重増加の回復、並びにそれらの組み合わせを含む。これに加えて、(例えば、本明細書に記載される治療の結果としての)個体における特定の腫瘍の退縮は、(例えば、治療の過程にわたって)膵臓腺がん等の腫瘍の部位からがん細胞の試料を採取し、がん細胞を代謝マーカー及びシグナル伝達マーカーのレベルについて試験して、がん細胞の状態をモニタリングし、分子レベルで、がん細胞の悪性度の低い表現型への退縮を検証することによって評価されてもよい。例えば、本発明の方法を用いることによって誘導される腫瘍退縮は、上で考察された血管新生促進マーカーのいずれかの減少、本明細書に記載される抗血管新生マーカーの増加、がんと診断された個体において異常な活性を示す代謝経路、細胞間シグナル伝達経路、又は細胞内シグナル伝達経路の正常化(すなわち、がんを患っていない正常な個体において見出される状態への変化)を見出すことによって示されるであろう。当業者は、いくつかの実施形態において、治療有効量が単回用量で製剤化及び/又は投与され得ることを認識するであろう。いくつかの実施形態において、治療有効量は、例えば、投薬レジメンの一部として、複数回用量で製剤化及び/又は投与され得る。
【0047】
バリアント:分子、例えば、核酸、タンパク質、又は小分子の状況で本明細書で使用される場合、「バリアント」という用語は、参照分子との顕著な構造同一性を示すが、例えば、参照実体と比較して1つ以上の化学部分の存在若しくは不在、又はそのレベルにおいて参照分子と構造的に異なる分子を指す。いくつかの実施形態において、バリアントはまた、その参照分子と機能的に異なる。一般に、特定の分子が参照分子の「バリアント」であると適切に考えられるかどうかは、参照分子との構造同一性の程度に基づいている。当業者には認識されるであろうが、任意の生物学的又は化学的基準分子は、特定の特徴的な構造要素を有する。バリアントは、定義によれば、1つ以上のそのような特徴的な構造要素を共有するが、少なくとも1つの態様において、参照分子とは異なる、別個の分子である。いくつかの例を挙げると、ポリペプチドは、線形又は三次元空間において互いに対して指定位置を有する、及び/又は特定の構造モチーフ及び/又は生物学的機能に寄与する複数のアミノ酸で構成される特徴的な配列要素を有してもよく、核酸は、線形又は三次元空間において別のアミノ酸に対して指定位置を有する複数のヌクレオチド残基で構成される特徴的な配列要素を有してもよい。いくつかの実施形態において、バリアントポリペプチド又は核酸は、アミノ酸又はヌクレオチド配列の1つ以上の違いの結果として、参照ポリペプチド又は核酸とは異なってもよい。いくつかの実施形態において、バリアントポリペプチド又は核酸は、参照ポリペプチド又は核酸と、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、又は99%の全体的な配列同一性を示す。いくつかの実施形態において、バリアントポリペプチド又は核酸は、参照ポリペプチド又は核酸と、少なくとも1つの特徴的な配列要素を共有しない。いくつかの実施形態において、参照ポリペプチド又は核酸は、1つ以上の生物学的活性を有する。いくつかの実施形態において、バリアントポリペプチド又は核酸は、参照ポリペプチド又は核酸の生物学的活性のうちの1つ以上を共有する。
【0048】
ベクター:本明細書で使用される場合、それと連結している別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。ベクターの1つの種類は、「プラスミド」であり、プラスミドは、その中に追加のDNAセグメントがライゲーションされ得る環状二本鎖DNAループを指す。別の種類のベクターは、ウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントは、ウイルスゲノムにライゲーションされ得る。特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞(例えば、細菌の複製起源を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクター)での自律的な複製が可能である。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込むことができ、それによって宿主ゲノムと共に複製される。更に、特定のベクターは、それらと作動可能に連結している遺伝子の発現を指示することができる。そのようなベクターは、本明細書において「発現ベクター」と称される。標準的な技術は、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、並びに組織培養及び形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)のために使用され得る。酵素反応及び精製技術は、製造業者の仕様に従って、又は当該技術分野で一般的に達成されるように、又は本明細書に記載されるように実施され得る。前述の技術及び手順は、一般に、当該技術分野で周知の従来の方法に従って、並びに本明細書全体を通して引用され、考察される様々な一般的及びより具体的な参考文献に記載されるように、実施され得る。例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれるSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989))を参照されたい。
【0049】
操作された免疫細胞
本明細書で使用される場合、「免疫細胞」は、リンパ球(例えば、T細胞、B細胞、及びNK細胞)、好中球、並びに単球/マクロファージに分類することができる免疫系の細胞を指す。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、T細胞である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、NK細胞である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、操作された免疫細胞であり、操作された免疫細胞とは、天然に存在しないタンパク質(例えば、キメラ抗原受容体)を発現するように、又は外因性核酸を含むように遺伝的に改変されている免疫細胞を意味する。
【0050】
免疫細胞(例えば、T細胞)は、1つ、又は1つより多い様式で改変されてもよい。免疫細胞(例えば、T細胞)は、1つ以上の種類の細胞の表面上に存在する抗原のための受容体である少なくとも1つの非天然分子を発現し得る。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、天然には見られない少なくとも1つの合成分子を含むか、又はこれを発現するように操作されるため、天然には見られない免疫細胞(例えば、T細胞)を含む。特定の実施形態において、免疫細胞(例えば、T細胞)は、グリピカン-3(GPC3)等の特異的腫瘍抗原を標的とするCARを含む、少なくとも1つのキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように操作される。特定の実施形態において、免疫細胞は、T細胞、例えば、CD4T細胞、CD8T細胞、Treg細胞、Th1 T細胞、Th2 T細胞、Th17 T細胞、非特異的T細胞、又は上述のいずれかの組み合わせを含むT細胞の集団であってもよい。キメラ抗原受容体(CAR T細胞)で操作された免疫細胞(例えば、T細胞)は、がんを治療することについて、大きな治療可能性を有する。CARを用いた場合、受容体は、抗原を認識し、結合すると、免疫細胞を活性化して、その抗原を発現する細胞を死滅させるようにプログラムすることができる。したがって、腫瘍細胞上で発現される抗原に対するCARを発現する免疫細胞は、腫瘍細胞を標的とし、死滅させることができる。例えば、血液悪性腫瘍に対する、CD19を標的とするCARを形質導入したT細胞(CD19-CART細胞)の最近の臨床試験は、CAR T技術の強力な効果を示すものであった。(Kochenderfer,J.N.et al.(2010)Blood 116:4099-4102、Porter,D.L.,et al.(2011)N.Engl.J.Med.365:725-733、Grupp,S.A.et al.(2013)N.Engl.J.Med.368:1509-1518、Kochenderfer,J.N.et al.(2015)J.Clin.Oncol.33:540-549、Brown,C.E.et al.(2016)N.Engl.J.Med.375:2561-2569)。CAR Tの臨床的成功は、少なくとも一部には、CARの融合構造に起因し、これは、高親和性抗原結合ドメインを複数のシグナル伝達ドメインと人工的に組み合わせることによって行われる(Maus,M.V.et al.(2014)Blood 123:2625-2635、van der Stegen,S.J.et al.(2015)Nat.Rev.Drug Discov.14:499-509)。
【0051】
CARは、細胞外抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含む。いくつかの実施形態において、細胞外抗原結合ドメインは、腫瘍関連抗原を認識することができる一本鎖可変断片(scFv)を含み、膜貫通ドメインは、CD8及びCD28等の分子由来の膜貫通ドメインを使用し、細胞外シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(例えば、CD3ζ)及び共刺激シグナル伝達分子の細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、CD28、CD137及びCD137(4-1BB))を使用する。
【0052】
本明細書で使用される場合、「一本鎖可変断片、scFv」とは、リンカーによって接続された重鎖可変ドメイン(VH)と軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む組換えタンパク質として定義される抗体の断片であって、抗原結合部位が形成されるように2つのドメインを一緒に会合させたものを指す。
【0053】
いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインは、4-1BB/CD137、活性化NK細胞受容体、免疫グロブリンタンパク質、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD100(SEMA4D)、CD103、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD247、CD27、CD276(B7-H3)、CD28、CD29、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD3ゼータ、CD30、CD4、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD69、CD7、CD84、CD8、CD8アルファ、CD8ベータ、CD96(Tactile)、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CDS、CEACAM1、CRT AM、サイトカイン受容体、DAP-10、DNAM1(CD226)、Fcガンマ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、Igアルファ(CD79a)、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、インテグリン、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGB1、KIRDS2、LAT、LFA-1、CD83と特異的に結合するリガンド、LIGHT、LTBR、Ly9(CD229)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、MHCクラス1分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX-40、PAG/Cbp、プログラム死-1(PD-1)、PSGL1、SELPLG(CD162)、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、SLAM(SLAMF1)、SLAMF4(CD244)、SLAMF6(NTB-A)、SLAMF7、SLP-76、TNF受容体タンパク質、TNFR2、TNFSF14、Tollリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1、及びVLA-6から選択されるタンパク質由来の膜貫通ドメインである。
【0054】
いくつかの実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BB/CD137、活性化NK細胞受容体、免疫グロブリンタンパク質、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD100(SEMA4D)、CD103、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD247、CD27、CD276(B7-H3)、CD28、CD29、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD3ゼータ、CD30、CD4、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD69、CD7、CD84、CD8、CD8アルファ、CD8ベータ、CD96(Tactile)、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CDS、CEACAM1、CRTAM、サイトカイン受容体、DAP-10、DNAM1(CD226)、Fcガンマ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、Igアルファ(CD79a)、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、インテグリン、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGB1、KIRDS2、LAT、CD83と特異的に結合するリガンド、LIGHT、LTBR、Ly9(CD229)、Ly108、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、MHCクラス1分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX-40、PAG/Cbp、プログラム死-1(PD-1)、PSGL1、SELPLG(CD162)、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、SLAM(SLAMF1)、SLAMF4(CD244)、SLAMF6(NTB-A)、SLAMF7、SLP-76、TNF受容体タンパク質、TNFR2、TNFSF14、Tollリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1、及びVLA-6、又はそれらの任意の組み合わせから選択されるタンパク質由来の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0055】
いくつかの実施形態において、キメラ抗原受容体は、追加の抗原結合ドメインを更に含む。いくつかの実施形態において、追加の抗原結合ドメインは、scFvである。
【0056】
免疫細胞(例えば、T細胞)は、当該技術分野で知られる任意の供給源に由来し得る。例えば、免疫(例えば、T)細胞は、インビトロで造血幹細胞集団から分化させることができるか、又は免疫(例えば、T)細胞は、対象から得ることができる。T細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄、リンパ節組織、脊髄血液、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸膜滲出液、脾臓組織、又は腫瘍から得ることができる。これに加えて、免疫(例えば、T)細胞は、当該技術分野で利用可能な1つ以上の免疫細胞株に由来し得る。いくつかの実施形態において、T細胞は、FICOLL(商標)分離及び/又はアフェレーシス等の当業者に既知の任意の数の技術を使用して、対象から収集された血液から得ることができる。T細胞療法のためにT細胞を単離する更なる方法は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許公開第2013/0287748号に開示されている。他の非限定的な例は、国際出願第PCT/US2015/014520号(WO2015/120096として公開)及び国際出願第PCT/US2016/057983号(WO2017/070395として公開)に見出すことができ、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0057】
いくつかの実施形態において、免疫細胞は、自己T細胞である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、患者ではない対象から得られる。いくつかの実施形態において、治療方法で使用するためのT細胞は、同系である(ドナー及びレシピエントは異なるが、一卵性双生児である)。いくつかの実施形態において、治療方法で使用するためのT細胞は、レシピエント対象と同種異系(同じ種であるが、異なるドナー由来)である。いくつかの実施形態において、T細胞は、(自己幹細胞療法、すなわちASCTのための)自己幹細胞である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、非自己T細胞である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、健康なドナーから得られる。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、がん又は腫瘍に罹患している患者から得られる。
【0058】
T細胞は、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように操作され得る。いくつかの実施形態において、CAR-T細胞は、細胞外一本鎖可変断片(scFv)を発現するように操作され得る。いくつかの実施形態において、CARは、共刺激ドメインが別個のポリペプチド鎖として発現するように操作される。例示的なCAR-T細胞療法及び構築物は、米国特許公開第2013/0287748号、同第2014/0227237号、同第2014/0099309号、及び同第2014/0050708号に記載されており、これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0059】
GPC3
グリピカン-3(GPC3)は、ヒトにおいてGPC3遺伝子によってコードされる細胞表面タンパク質であり、高頻度の新生物性肝細胞において再発現される腫瘍胎児抗原である。GPC3は、胎児肝臓において高度に発現し、正常な成人肝組織では発現しないが、その発現は、肝細胞がん腫において再活性化し、肝臓がんの進行と密接な関連を有しており、GPC3発現の検出率は、肝臓がんの初期段階中に比較的高く、肝臓がんの進行と共に増加する。更に、GPC3は、黒色腫、卵巣明細胞がん腫、卵黄嚢腫瘍、神経芽細胞腫及び他の腫瘍等の腫瘍においても発現される。肝細胞がん腫、黒色腫及び他の腫瘍におけるその特異的に高い発現を考慮すると、GPC3は、有用な免疫組織化学診断検査及び潜在的なバイオマーカーとして出現してきた。
【0060】
GPC3は、器官形成における細胞接着における細胞外マトリックスとして、又は細胞成長因子の受容体として機能するプロテオグリカンファミリーのメンバーである。GPC3のタンパク質コアは、N末端サブユニット及びC末端サブユニットの2つのサブユニットを含む。グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーは、GPC3のカルボキシル(C)末端側に位置する560位のセリンに付加される。GPIアンカーは、細胞膜脂質への共有結合を介して細胞表面上にGPC3を局在化させる役割を果たす。また、GPC3の495位のセリン及び509位のセリンは、ヘパラン硫酸鎖(HS鎖)で修飾され、HS鎖は、Wntシグナル、FGFシグナル、及びBMPシグナル伝達経路等の複数の成長シグナル伝達経路を調節することが知られている。関与する成長シグナル伝達経路は、がんの種類ごとに異なることが知られている。例えば、肝細胞がん腫(HCC)において、Wntシグナル経路の刺激によって、細胞が成長する。
【0061】
GPC3 CAR
本開示は、少なくとも一部には、GPC3 CARポリペプチドを提供する。本明細書で使用される場合、「キメラ抗原受容体(CAR)」は、天然に存在せず、特定の抗原に対して特異性を有する免疫エフェクター細胞を提供することができる受容体を指す。いくつかの実施形態において、CARは、T細胞にモノクローナル抗体剤の特異性を送達するために使用される受容体を指す。一般に、CARは、細胞外結合ドメイン(エクトドメイン)と、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメイン(エンドドメイン)とを含む。いくつかの実施形態において、CARの細胞外結合ドメインは、抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインは、抗体剤であるか、又は抗体剤を含む。いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインは、GPC3に特異的に結合する抗体剤であるか、又はそれを含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、キメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドは、i)配列番号1を含む軽鎖CDR1、配列番号2を含む軽鎖CDR2、及び配列番号3を含む軽鎖CDR3を含む、軽鎖可変ドメイン、並びに配列番号4を含む重鎖CDR1、配列番号5を含む重鎖CDR2、及び配列番号6を含む重鎖CDR3を含む、重鎖可変ドメインを含む、細胞外抗原結合ドメインと、ii)膜貫通ドメインと、iii)細胞内シグナル伝達ドメインとを含み、抗原が抗体剤に結合すると、T細胞活性化が起こる。
【0063】
【表1】
【0064】
いくつかの実施形態において、CARポリペプチドは、i)配列番号10に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を含む軽鎖可変ドメイン、及び配列番号8に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を含む重鎖可変ドメインを含む、細胞外抗原結合ドメインと、ii)膜貫通ドメインと、iii)細胞内シグナル伝達ドメインとを含み、抗原が抗体剤に結合すると、T細胞活性化が起こる。
【0065】
いくつかの実施形態において、CARポリペプチドは、i)配列番号10を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号8を含む重鎖可変ドメインを含む、細胞外抗原結合ドメインと、ii)膜貫通ドメインと、iii)細胞内シグナル伝達ドメインとを含み、抗原が抗体剤に結合すると、T細胞活性化が起こる。
【0066】
【表2】
【0067】
核酸
本明細書で使用される場合、「核酸」は、ヌクレオチドのポリマーを含む任意の化合物及び/又は物質を含むために使用される。いくつかの実施形態において、ヌクレオチドのポリマーは、ポリヌクレオチドと称される。例示的な核酸又はポリヌクレオチドには、リボ核酸(RNA)及び/又はデオキシリボ核酸(DNA)が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0068】
いくつかの実施形態において、核酸構築物は、GPC3 CARをコードする領域を含む。いくつかの実施形態において、CARポリペプチドは、i)配列番号9に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を含む核酸によってコードされる軽鎖可変ドメイン、及び配列番号7に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を含む核酸によってコードされる重鎖可変ドメインを含む細胞外抗原結合ドメインと、ii)膜貫通ドメインと、iii)細胞内シグナル伝達ドメインとを含み、抗原が抗体剤に結合すると、T細胞活性化が起こる。
【0069】
いくつかの実施形態において、CARポリペプチドは、i)配列番号9を含む核酸によってコードされる軽鎖可変ドメイン、及び配列番号7を含む核酸によってコードされる重鎖可変ドメインを含む、細胞外抗原結合ドメインと、ii)膜貫通ドメインと、iii)細胞内シグナル伝達ドメインとを含み、抗原が抗体剤に結合すると、T細胞活性化が起こる。
【0070】
いくつかの実施形態において、核酸構築物は、当該技術分野において知られている方法によって発現ベクター又はウイルスベクターに挿入されてもよく、核酸分子は、発現制御配列に作動可能に連結されてもよい。発現ベクターの非限定的な例として、プラスミドベクター、トランスポゾンベクター、コスミドベクター、並びにウイルスベクター(例えば、任意のアデノウイルスベクター(AV)、サイトメガロウイルス(CMV)ベクター、シミアンウイルス(SV40)ベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レンチウイルスベクター、及びレトロウイルスベクター)が挙げられる。いくつかの実施形態において、発現ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。
【0071】
レンチウイルスベクターは、レンチウイルスに由来する。レンチウイルスベクターは、レトロウイルスのサブクラスである一本鎖RNAレンチウイルスに基づく。これらは、中程度の範囲のクローニング能力と安定した遺伝子発現の利点を合わせたものであり、これらにより、ニューロンを含む分裂細胞及び非分裂細胞に形質導入を行うことができる。感染すると、レンチウイルスゲノムは、導入遺伝子を宿主ゲノムに組み込み、長期的な遺伝子発現を促進する。HIVベースのベクター等のレンチウイルスベクターは、遺伝子送達に使用されるレトロウイルスベクターの例示的なものである。他のレトロウイルスとは異なり、HIVベースのベクターは、非分裂細胞にパッセンジャー遺伝子を組み込むことが知られており、したがって、持続的な形態の疾患の治療に有用であり得る。
【0072】
追加の配列を、そのようなクローニング及び/又は発現配列に付加して、クローニング及び/又は発現におけるそれらの機能を最適化し、ポリヌクレオチドの単離を支援し、又は細胞内へのポリヌクレオチドの導入を改善することができる。クローニングベクター、発現ベクター、アダプター、及びリンカーの使用は、当該技術分野で周知である。
【0073】
いくつかの実施形態において、核酸分子は、適切な細胞に導入されたときに本開示のGPC3 CARを発現することができるベクターに挿入される。いくつかの実施形態において、適切な細胞は、T細胞である。
【0074】
GPC3 CAR-T細胞の産生
GPC3 CARを含む免疫細胞を産生するための方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、CARがその中に導入される免疫細胞は、ヒト免疫細胞である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、自己ヒト免疫細胞である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、同種異系ヒト免疫細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、CD4T細胞(ヘルパーT細胞、T細胞)、CD8T細胞(細胞傷害性T細胞、CTL)、メモリーT細胞、調節性T細胞(Treg細胞)、アポトーシスT細胞であるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、NK細胞である。
【0075】
いくつかの実施形態において、本開示は、操作された免疫細胞を産生する方法であって、免疫細胞に、(i)GPC3抗原結合ドメインを含む、GPC3 CARをコードする核酸を、又は(ii)GPC3抗原結合ドメインを含む、GPC3 CARをコードするベクターを、導入する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、本開示の操作された免疫細胞を産生する方法は、少なくとも5日間、7日間、9日間、10日間、11日間、又は12日間にわたって、操作された免疫細胞をインビトロで培養する工程を更に含む。
【0076】
いくつかの実施形態において、本開示は、本開示の自己の操作された免疫細胞を調製する方法であって、対象由来の免疫細胞に対するGPC3抗原結合ドメインの結合の分析を提供するか、又は得る工程と、結合が閾値未満である場合、対象由来の免疫細胞を、GPC3抗原結合ドメインを含むCARを発現するように操作する工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、本開示の自己の操作された免疫細胞を産生する方法は、少なくとも5日間、7日間、9日間、10日間、11日間、又は12日間にわたって、自己の操作された免疫細胞をインビトロで培養する工程を更に含む。
【0077】
免疫細胞においてCARを発現するための当該技術分野で既知の任意の方法を、本開示の状況で使用することができる。例えば、線状ポリヌクレオチド、イオン性又は両親媒性化合物が結合しているポリヌクレオチド、プラスミド、又はウイルスベクター等の、当該技術分野で既知の発現のための様々な核酸ベクターが存在するが、本開示はこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、免疫細胞におけるCAR発現のためのベクターは、自律的に複製するプラスミド又はウイルス又はその誘導体であり得るか、又はそれを含み得る。ウイルスベクターには、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター等が含まれ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、レトロウイルスベクターであるレンチウイルスベクターを使用することができる。いくつかの実施形態において、ベクターは、非プラスミド及び非ウイルス化合物、例えば、リポソームである。
【0078】
本開示は、本明細書に記載の方法によって生成されるGPC3 CAR-T細胞が(例えば、がんの治療のために)治療上有用であり得るという認識を包含する。
【0079】
治療用途
グリピカン-3関連がんを有する対象を治療する方法であって、対象に、GPC3 CARを含む免疫細胞を含むか、又は送達する組成物を投与する工程を含む方法が、本明細書で提供される。
【0080】
「グリピカン-3関連がん」は、その表面上にグリピカン-3が存在するがん細胞を特徴とするがんである。GPC3は、膜に結合したヘパラン硫酸プロテオグリカンであり、肝細胞がん腫のおよそ70%~80%で過剰発現するが、健康な組織では一般に発現しない。これに加えて、GPC3過剰発現は、いくつかの腫瘍において、最も顕著には、肝細胞がん腫、肝芽腫、生殖細胞腫瘍(例えば、卵黄嚢腫瘍、絨毛がん)、ウィルムス腫瘍、胃がん腫、非小細胞肺がん、及び甲状腺がん)において見出される。
【0081】
がんは、体内の異常な細胞の制御不能な成長を特徴とする広範な疾患群を指すことができる。調節されない細胞分裂及び成長は、隣接組織に浸潤する悪性腫瘍の形成を引き起こし、また、リンパ系又は血流を介して身体の遠位部分に転移する場合もある。がん又はがん組織は、腫瘍を含み得る。
【0082】
本開示の方法による治療に好適ながんとしては、限定されないが、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸がん、子宮内膜がん、食道がん、卵管がん、胆嚢がん、胃腸がん、頭頸部がん、血液がん、喉頭がん、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、黒色腫、中皮腫、卵巣がん、原発性腹膜がん、唾液腺がん、肉腫、胃がん、甲状腺がん、膵臓がん、及び前立腺がんが挙げられ得る。いくつかの実施形態において、本開示の方法による治療のためのがんとしては、限定されないが、がん腫、リンパ腫(例えば、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫)、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が挙げられ得、挙げられてもよい。いくつかの実施形態において、がんとしては、扁平上皮細胞がん腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺がん、肺の扁平上皮細胞がん腫、腹膜がん、肝細胞がん腫、胃がん、膵臓がん、神経膠腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、肝細胞がん腫、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜又は子宮がん、唾液がん腫、腎臓がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝臓がん腫、白血病及び他のリンパ増殖性障害、並びに様々な種類の頭頸部がんが挙げられてもよい。
【0083】
いくつかの実施形態において、がんは、胎児性腫瘍(ウィルムス腫瘍、肝芽腫、ラブドイド、神経芽腫)、生殖細胞腫瘍(卵黄嚢腫瘍、未熟奇形腫、及び胎児性がん腫)、がん腫(肝細胞がん腫及び肺扁平上皮細胞がん腫)、肉腫(悪性ラブドイド腫瘍及びRMS)、又は悪性黒色腫であり得る。いくつかの実施形態において、グリピカン-3関連がんは、肝臓がんである。
【0084】
免疫細胞(例えば、CAR-T細胞)は、それを必要とする患者に治療有効量で投与され得る。例えば、免疫細胞(例えば、CAR-T細胞)の治療有効量は、少なくとも約10個の細胞、少なくとも約10個の細胞、少なくとも約10個の細胞、少なくとも約10個の細胞、少なくとも約10個の細胞、少なくとも約10個、又は少なくとも約1010個であり得る。いくつかの実施形態において、T細胞の治療有効量は、約10個の細胞、約10個の細胞、約10個の細胞、約10個の細胞、約10個の細胞、約10個の細胞、又は約1010個の細胞である。いくつかの実施形態において、T細胞の治療有効量は、約0.1×10~約2×1010個のT細胞(例えば、約0.1×10~約2×1010個のT細胞、約0.2×10~約2×1010個のT細胞、約0.4×10~約2×1010個のT細胞、約0.6×10~約2×1010個のT細胞、約0.8×10~約2×1010個のT細胞、約1.0×10~約2×1010個のT細胞、約2.0×10~約2×1010個のT細胞、約3.0×10~約2×1010個のT細胞、約4.0×10~約2×1010個のT細胞、約5.0×10~約2×1010個のT細胞、約6.0×10~約2×1010個のT細胞、約7.0×10~約2×1010個のT細胞、約8.0×10~約2×1010個のT細胞、約9.0×10~約2×1010個のT細胞、約1.0×10~約2×1010個のT細胞、約2.0×10~約2×1010個のT細胞、約3.0×10~約2×1010個のT細胞、約4.0×10~約2×1010個のT細胞、約5.0×10~約2×1010個のT細胞、約6.0×10~約2×1010個のT細胞、約7.0×10~約2×1010個のT細胞、約8.0×10~約2×1010個のT細胞、約9.0×10~約2×1010個のT細胞、約1.0×10~約2×1010個のT細胞、約2.0×10~約2×1010個のT細胞、約3.0×10~約2×1010個のT細胞、約4.0×10~約2×1010個のT細胞、約5.0×10~約2×1010個のT細胞、約6.0×10~約2×1010個のT細胞、約7.0×10~約2×1010個のT細胞、約8.0×10~約2×1010個のT細胞、約9.0×10~約2×1010個のT細胞、約1.0×10~約2×1010個のT細胞、約2.0×10~約2×1010個のT細胞、約3.0×10~約2×1010個のT細胞、約4.0×10~約2×1010個のT細胞、約5.0×10~約2×1010個のT細胞、約6.0×10~約2×1010個のT細胞、約7.0×10~約2×1010個のT細胞、約8.0×10~約2×1010個のT細胞、約9.0×10~約2×1010個のT細胞、又は約1.0×1010~約2×1010個のT細胞である。いくつかの実施形態において、T細胞の治療有効量は、約0.4×10個、約0.5×10個、約0.6×10個、約0.7×10個、約0.8×10個、約0.9×10個、約1.0×10個、約1.1×10個、約1.2×10個、約1.3×10個、約1.4×10個、約1.5×10個、約1.6×10個、約1.7×10個、約1.8×10個、約1.9×10個、又は約2.0×10個のT細胞である。
【0085】
いくつかの実施形態において、CAR-T細胞の治療有効量は、約2×10個の細胞/kg、約3×10個の細胞/kg、約4×10個の細胞/kg、約5×10個の細胞/kg、約6×10個の細胞/kg、約7×10個の細胞/kg、約8×10個の細胞/kg、約9×10個の細胞/kg、約1×10個の細胞/kg、約2×10個の細胞/kg、約3×10個の細胞/kg、約4×10個の細胞/kg、約5×10個の細胞/kg、約6×10個の細胞/kg、約7×10個の細胞/kg、約8×10個の細胞/kg、又は約9×10個の細胞/kgである。いくつかの実施形態において、免疫細胞(例えば、CAR-T細胞)の治療有効量は、体重1kg当たり約1×10~約2×10個のT細胞から、最大約1×1010個のT細胞の最大用量までである。いくつかの実施形態において、T細胞の治療有効量は、体重1kg当たり約1×10個又は約2×10個のT細胞から、最大約1×1010個のT細胞の最大用量までである。
【0086】
細胞の数は、組成物が、その中に含まれる細胞の種類として意図される最終的な使用に依存するであろう。例えば、いくつかの実施形態において、GPC3 CARを含むT細胞の集団は、かかる細胞を10%より多く、15%より多く、20%より多く、25%より多く、30%より多く、35%より多く、40%より多く、45%より多く、50%より多く、55%より多く、60%より多く、65%より多く、70%より多く、75%より多く、80%より多く、85%より多く、又は90%より多く含む。いくつかの実施形態において、GPC3 CARを含むT細胞の集団は、かかるT細胞を約10%~約90%、約10%~約80%、約10%~約70%、約10%~60%、約10%~約50%、約10%~約40%、約10%~約30%、約10%~約20%、約10%~約15%、約15%~約90%、約15%~約80%、約15%~約70%、約15%~約60%、約15%~約50%、約15%~約40%、約15%~約30%、約15%~約20%、約20%~約90%、約20%~約80%、約20%~約70%、約20%~約60%、約20%~約50%、約20%~約40%、約20%~約30%、約30%~約90%、約30%~約80%、約30%~約70%、約30%~約60%、約30%~約50%、約30%~約40%、約40%~約90%、約40%~約80%、約40%~約70%、約40%~約60%、約40%~約50%、約50%~約90%、約50%~約80%、約50%~約70%、約50%~約60%、約60%~約90%、約60%~約80%、約60%~約70%、約70%~約90%、約70%~約80%、又は約80%~約90%含む。いくつかの実施形態において、投与のためのT細胞の集団は、1リットル以下の体積中にある。いくつかの実施形態において、投与のためのT細胞は、500ml未満、250ml未満、又は100ml以下の体積中にある。いくつかの実施形態において、所望のT細胞の密度は、典型的には、10個の細胞/mlより大きく、一般に10個の細胞/mlより大きく、一般に10個の細胞/ml以上である。臨床的に関連する数の免疫細胞は、累積的に10個の細胞、10個の細胞、10個の細胞、1010個の細胞、1011個の細胞、又は1012個の細胞と等しいか、又はこれらを超える複数の注入に割り当てることができる。
【0087】
いくつかの実施形態において、組成物は、患者に非経口投与されてもよい。いくつかの実施形態において、GPC3 CARを含むT細胞を含むか、又は送達する組成物は、1回又は複数回の投与で患者に非経口投与されてもよい。いくつかの実施形態において、GPC3 CARを含むT細胞を含むか、又は送達する組成物は、患者に、1日に1回、2~7日に1回、1週間に1回、2週間に1回、1ヶ月に1回、3ヶ月に1回、又は6ヶ月に1回、非経口投与されてもよい。
【0088】
いくつかの実施形態において、本開示は、免疫応答を誘導することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、対象に、GPC3 CARを含むT細胞を含むか、又は送達する組成物を投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、GPC3 CARを含むT細胞は、自己T細胞である。いくつかの実施形態において、本開示は、免疫応答を誘導することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、対象に、GPC3 CARをコードする核酸及び/又はベクターを含むT細胞を含むか、又は送達する組成物を投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、GPC3 CARをコードする核酸及び/又はベクターを含むT細胞は、自己T細胞である。いくつかの実施形態において、対象は、がんを有しているか、又はがんが進行するリスクにある。
【0089】
いくつかの実施形態において、本開示は、免疫応答を増強することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、対象に、GPC3 CARを含むT細胞を含むか、又は送達する組成物を投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、GPC3 CARを含むT細胞は、自己T細胞である。いくつかの実施形態において、本開示は、免疫応答を増強することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、対象に、GPC3 CARをコードする核酸及び/又はベクターを含むT細胞を含むか、又は送達する組成物を投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、GPC3 CARをコードする核酸及び/又はベクターを含むT細胞は、自己T細胞である。いくつかの実施形態において、対象は、がんを有しているか、又はがんが進行するリスクにある。
【0090】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物及び方法による治療に好適な疾患は、がん若しくは悪性腫瘍、又は前がん状態等の増殖性疾患から選択される。いくつかの実施形態において、疾患は、GPC3の発現と関連する。いくつかの実施形態において、本開示の組成物及び方法による治療に好適な疾患は、がんである。いくつかの実施形態において、がんは、GPC3抗原を発現する。いくつかの実施形態において、がん細胞は、対象由来の非がん細胞と比較して、GPC3抗原の発現が増加している。いくつかの実施形態において、GPC3発現レベルは、がんを有する対象において、増加し得る。いくつかの実施形態において、GPC3発現レベルは、健康な対象において、検出不可能な場合がある。
【0091】
薬学的組成物
いくつかの実施形態において、本開示は、GPC3 CARを含むT細胞と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態において、GPC3 CARを含むT細胞は、自己T細胞である。いくつかの実施形態において、本開示は、GPC3 CARをコードする核酸及び/又はベクターを含むT細胞と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態において、GPC3 CARをコードする核酸及び/又はベクターを含むT細胞は、自己T細胞である。本開示の組成物は、本明細書に開示される方法によって得られる、GPC3 CARを含むT細胞、及び/又はGPC3 CARをコードする核酸を含む薬学的組成物を含む。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、緩衝液、希釈剤、可溶化剤、乳化剤、防腐剤、アジュバント、賦形剤、又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態において、組成物は、所望な場合に、1つ以上の追加の治療活性物質も含有し得る。
【0092】
いくつかの実施形態において、本開示のT細胞は、まず、T細胞をその培地から採取し、次いで、治療有効量で、投与に好適な培地及び容器系(「薬学的に許容される」担体)において細胞を洗浄し、濃縮することによって製剤化される。好適な注入媒体は、任意の等張媒体製剤、典型的には生理食塩水、Normosol R(Abbott)又はPlasma-Lyte A(Baxter)であってもよいが、5%デキストロース水溶液、又はリンゲル乳酸溶液も利用可能である。注入媒体には、ヒト血清アルブミンを補充することができる。
【0093】
いくつかの実施形態において、組成物は、非経口投与のために製剤化される。例えば、本明細書で提供される薬学的組成物は、滅菌注射可能な形態(例えば、皮下注射、肝動脈注入、又は静脈内注入に好適な形態)で提供され得る。例えば、いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、注射に好適な液体剤形で提供される。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、粉末(例えば、凍結乾燥及び/又は滅菌されたもの)として提供され、任意で高減圧下で、注射の前に水性希釈剤(例えば、水、緩衝液、食塩水等)で再構成され得る。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、水、塩化ナトリウム溶液、酢酸ナトリウム溶液、ベンジルアルコール溶液、リン酸緩衝食塩水等で、希釈及び/又は再構成される。いくつかの実施形態において、粉末は、水性希釈剤と穏やかに混合されなければならない(例えば、振とうされない)。
【0094】
いくつかの実施形態において、本開示のGPC3 CAR、及び/又はGPC3 CARをコードする核酸を含むT細胞は、薬学的に許容される非経口ビヒクルと共に製剤化される。そのようなビヒクルの例は、水、生理食塩水、リンゲル溶液、デキストロース溶液、及び1~10%ヒト血清アルブミンである。リポソーム及び固定油等の非水ビヒクルも使用することができる。ビヒクル又は凍結乾燥した粉末は、等張性を維持する添加剤(例えば、塩化ナトリウム、マンニトール)及び化学安定性を維持する添加剤(例えば、緩衝剤及び防腐剤)を含有し得る。いくつかの実施形態において、製剤は、既知の技術又は好適な技術によって滅菌される。薬学的組成物は、薬学的に許容される賦形剤を追加で含んでもよく、薬学的に許容される賦形剤は、本明細書で使用される場合、所望の特定の剤形に適するように、任意の及び全ての溶媒、分散媒体、希釈剤、又は他の液体ビヒクル、分散剤又は懸濁助剤、表面活性薬剤、等張剤、増粘剤又は乳化剤、防腐剤、固体結合剤、潤滑剤等を含む。Remington’s The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,A.R.Gennaro(Lippincott,Williams&Wilkins,Baltimore,MD,2006)は、薬学的組成物を製剤化する際に使用される様々な賦形剤、及びその調製のための既知の技術を開示している。任意の従来の賦形剤媒体が、例えば任意の望ましくない生物学的効果を生成することによって、又は他の様式で薬学的組成物の任意の他の構成要素と有害な様式で相互作用することによって、ある物質又はその誘導体と適合しない場合を除き、その使用は、本開示の範囲内であると企図される。
【0095】
いくつかの実施形態において、本開示のGPC3 CAR、及び/又はGPC3 CARをコードする核酸を含むT細胞の集団を含む組成物は、安定に製剤化される。いくつかの実施形態において、本開示のGPC3 CAR、及び/又はGPC3 CARをコードする核酸を含むT細胞の集団の安定な製剤は、生理食塩水又は選択された塩を含むリン酸緩衝液、及び防腐剤を含有する保存された溶液及び製剤、並びに薬学的用途又は獣医学用途に好適な多用途の保存された製剤を含み得る。保存された製剤は、少なくとも1つの既知の防腐剤を含有するか、又は任意で、少なくとも1つのフェノール、m-クレゾール、pクレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、フェニル水銀亜硝酸塩、フェノキシエタノール、ホルムアルデヒド、クロロブタノール、塩化マグネシウム(例えば、六水和物)、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム及びチメロサール、又は水性希釈剤中のそれらの混合物からなる群から選択される。例えば、0.001~5%、又はその中の任意の範囲若しくは値、例えば、限定されないが、0.001、0.003、0.005、0.009、0.01、0.02、0.03、0.05、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.3、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、又はその中の任意の範囲若しくは値等、任意の好適な濃度又は混合物を、当該技術分野で既知のように使用することができる。非限定的な例としては、防腐剤を含まない、0.1~2%のm-クレゾール(例えば、0.2、0.3、0.4、0.5、0.9、1.0%)、0.1~3%のベンジルアルコール(例えば、0.5、0.9、1.1、1.5、1.9、2.0、2.5%)、0.001~0.5%のチメロサール(例えば、0.005、0.01)、0.001~2.0%のフェノール(例えば、0.05、0.25、0.28、0.5、0.9、1.0%)、0.0005~1.0%のアルキルパラベン(例えば、0.00075、0.0009、0.001、0.002、0.005、0.0075、0.009、0.01、0.02、0.05、0.075、0.09、0.1、0.2、0.3、0.5、0.75、0.9、1.0%)等が挙げられる。
【0096】
いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、冷蔵及び/又は凍結され得る形態で提供される。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、冷蔵及び/又は凍結することができない形態で提供される。いくつかの実施形態において、再構成された溶液及び/又は液体剤形は、再構成後の特定の期間(例えば、2時間、12時間、24時間、2日、5日、7日、10日、2週間、1ヶ月、2ヶ月、又はそれより長く)保存され得る。いくつかの実施形態において、抗体剤を含む組成物を指定された時間よりも長く保存すると、抗体剤の分解が起こる。液体剤形及び/又は再構成された溶液は、投与前に粒子状物質及び/又は変色を含む場合がある。いくつかの実施形態において、溶液は、変色しているか、若しくは濁っている場合、及び/又は濾過後に粒子状物質が残っている場合に使用すべきではない。医薬品の製剤化及び/又は製造における概論は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 21st ed.,Lippincott Williams&Wilkins,2005に見出され得る。
【0097】
いくつかの実施形態において、本開示のGPC3 CAR、及び/又はGPC3 CARをコードする核酸を含むT細胞を含む薬学的組成物は、保存又は投与のための容器、例えば、バイアル、シリンジ(例えば、IVシリンジ)又はバッグ(例えば、IVバッグ)に含まれていてもよい。本開示による薬学的組成物は、単一単位用量として、及び/又は複数回の単一単位用量として、バルクで調製、包装、及び/又は販売され得る。本明細書で使用される場合、「単位用量」は、所定量の活性成分を含む、薬学的組成物の個々の量である。活性成分の量は、一般に、対象に投与される活性成分の投薬量、及び/又はそのような投薬量の簡便な一部分、例えば、そのような投薬量の2分の1又は3分の1に等しい。
【0098】
キット
本開示は更に、本明細書に記載の少なくとも1つのGPC3 CAR、及び/又はGPC3 CARをコードする核酸で満たされた1つ以上の容器を含むキットを提供する。キットは、例えば、治療方法、診断方法、細胞増殖及び/又は単離方法等を含む、任意の適用可能な方法で使用されてもよい。任意で、かかる容器と関連するのは、薬剤又は生物学的製品の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって規定された形態での通知であってもよく、この通知は、(a)ヒト投与のための製造、使用又は販売の機関による承認、(b)使用のための指示、又はその両方を反映している。
【0099】
いくつかの実施形態において、キットは、検出(例えば、GPC3 CAR、及び/又はGPC3 CARをコードする核酸の検出)のための1つ以上の試薬を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、キットは、検出可能な形態(例えば、検出可能な部分又は実体と共有結合的に関連する)でGPC3 CAR、及び/又はGPC3 CARをコードする核酸を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される1つ以上のGPC3 CAR、及び/又はGPC3 CARをコードする核酸は、対象の治療のために使用されるキットに含まれてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるGPC3 CAR、及び/又はGPC3 CARをコードする核酸は、GPC3 CARを発現する自己T細胞を調製するために使用されるキットに含まれてもよい。
【0100】
いくつかの実施形態において、キットは、1個、2個、3個、4個以上のGPC3抗体剤を提供してもよく、各々が、CAR構築物へのクローニングに好適である。いくつかの実施形態において、キットは、対象から特定又は単離されたT細胞又はGPC3のためのGPC3抗体剤及び/又はGPC3 CAR及び/又はGPC3 CAR T細胞の結合親和性をアッセイするための他の試薬を提供してもよい。いくつかの実施形態において、キットは、対象のT細胞のための抗体剤及び/又はGPC3 CAR及び/又はGPC3 CAR T細胞の機能的アビディティをアッセイするための他の試薬を提供してもよい。
【実施例
【0101】
本開示は、特許請求の範囲に記載される本開示の範囲を限定するものではない以下の実施例において更に説明される。
【0102】
実施例1 マウスGC33(muGC33)のヒト化
muGC33 VHのヒト化
ヒト化抗GC33抗体(huGC33)を生成するために、マウス抗GPC3抗体(muGC33)に類似する配列を含むヒトVHフレームワークを使用して、重鎖可変領域(VH)の相補性決定領域(CDR)をヒトフレームワークにグラフトした。残基VH48、VH67、VH69、VH71、VH73、VH78、及びVH93を逆変異させて、huGC33 VHを生成した。
【0103】
muGC33 VLのヒト化
ヒト化抗GC33抗体(huGC33)を生成するために、マウス抗GPC3抗体(muGC33)に類似する配列を含むヒトVLフレームワークを使用して、軽鎖可変領域(VL)の相補性決定領域(CDR)をヒトフレームワークにグラフトした。残基VL36及びVL46を逆変異させてhuGC33 VLを生成した。
【0104】
設計されたヒト化抗体huGC33は、scFv形態で産生された。具体的には、抗体huGC33 scFvを、哺乳動物細胞発現ベクターであるpOptiVEC(Invitrogen)プラスミド中、VL-(GS)-VHのscFv形態で調製し、Flag及び6×Hisタグをc末端にコンジュゲートして遺伝子を調製した(図1)。Expi293発現系(Invitrogen)を使用して、遺伝子を導入したプラスミドをscFv形態で発現させ、AktaPure精製機(GE healthcare)及びHisTrapカラム(GE healthcare)を使用して精製した。抗体をブロット試料緩衝液に添加し、70℃で10分間インキュベートして、SDS-PAGEによる分析のための試料を産生した。試料を試行に供した後、最終ゲルをChemidoc(Bio-Rad)により分析した(図2)。
【0105】
抗原組換えヒトグリピカン3タンパク質(GPC3)に対するmuGC33及びhuGC33の結合親和性を分析するために、GPC3を5×ELISAコーティング緩衝液中で希釈し、96ウェル免疫プレート中でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。各ウェルをブロック溶液で処理し、PBST溶液で洗浄した。次いで、抗体muGC33及びhuGC33を各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄した後、二次抗体(Monoclonal ANTI-FLAG M2-Peroxidase(HRP))を各ウェルに添加した。結合親和性を測定し、波長450nmでマイクロプレートリーダーを使用して定量化した(図3)。次いで、ELISAを繰り返して、huGC33 scFvの結合親和性EC50値を計算した。プログラムPrismグラフパッドを使用して、結合親和性EC50値を1.401e-009として計算した(図4)。
【0106】
実施例2 レンチウイルストランスファープラスミド
ヒト化抗GC33抗体剤の一本鎖可変断片(scFv)形態をコードするDNA構築物(図1)は、VL領域及びVH領域を接続することによって生成された。配列は、当該技術分野で既知の標準的なDNAクローニング技術を使用して、VH-VL配向又はVL-VH配向を含むように設計されている。本明細書で使用したレンチウイルストランスファープラスミドを表3に示し、huGC33 VL-VH及びhuGC33 VH-VLの両方の核酸配列を表4に示す。
【0107】
【表3】
【0108】
【表4】
【0109】
レンチウイルスベクター構築物pELPS4-MVRL2H2-euBBZを、BamHI及びNheI酵素で消化し、pELPS4 huGC33 VH-VL及びpELPS4-huGC33 VL-VHをベクター構築物に挿入した。DNA断片精製結果を図5に示す。レンチウイルスについても、形質導入単位(TU/mL)を測定し、表5に示した。
【0110】
【表5】
【0111】
実施例3 インビトロでのhuGC33-VHVL、huGC33-VLVH CAR-T
末梢血単核細胞(PBMC)を、1LのOpTmizer(商標)T-Cell Expansion Basal Medium、25mLのOpTmizer(商標)T-Cell Expansion Supplement、50mLのCTS(商標)Immune Cell SR、10mLのPen-Strep(10,000U/mL)、及び10mLのCTS(商標)GlutaMAX(商標)-I Supplementを含む細胞培養培地で培養し、細胞密度を1×10個の細胞/mLに調整し、CO5%及び37℃での培養中に、IL-2(400IU/mL)を添加した。
【0112】
次いで、レンチウイルスベクターを用いて免疫細胞に形質導入を行い、細胞成長及び増殖を、細胞培養の5日目~12日目まで測定した。次に、細胞を12日目に採取し、更なる分析のために使用した。
【0113】
huGC33-VHVL及びhuGC33-VLVH CAR-T構築物をインビトロで比較した。細胞培養12日目の各CAR-T細胞の細胞成長を、総増殖倍率によって比較する。結果は、未処置細胞が、297.0倍の増殖倍率を示し、切断型muGC33 VHVL細胞が、255.0倍の増殖倍率を示し、muGC33 VHVL細胞が、192.0倍の増殖倍率を示し、huGC33 VLVH細胞が、190.6倍の増殖倍率を示し、huGC33 VHVL細胞が、137.8倍の増殖倍率を示したことを示す(図6A)。4日目~12日目までの細胞増殖及び細胞生存率を比較し、CAR-T細胞の各群の細胞生存率は、いつ細胞が採取及び測定されたかに応じて異なるが、結果は、CAR-T細胞の全ての群において、84%を超える生存率を示し(図6B)、フローサイトメトリーを使用して、細胞培養の6日目、9日目、及び12日目に、CAR発現を分析した(図7A~7C)。更に、Huh-7細胞株(GPC3陽性細胞株)を使用して標的細胞を採取し、CAR-T細胞をエフェクター細胞として使用して、LDHベースの細胞傷害性アッセイを行った。細胞を、エフェクター(E):標的(T)=10:1のE:T比率で、96ウェルのU字底プレート中でインキュベートし、Cyto Tox96試薬と共に30分間インキュベートし、波長490nmでのマイクロプレートリーダーを使用して、細胞傷害性を測定し、定量化した。(図8)。
【0114】
実施例4 肝臓がん細胞におけるGPC3の発現
肝臓がん動物モデルを開発するために、ルシフェラーゼを発現する安定な細胞株を生成した。GPC3を発現する3つの肝臓がん細胞株、及びGPC3を発現しなかった1つの肝臓がん細胞を選択した。4つの細胞株HepG2、Hep3B、Huh-7、及びSK-Hep-1を使用して、GPC3発現を決定した。結果は、SK-Hep-1が、GPC3発現を示さなかったが、一方で、HepG2、Hep3B、及びHuh-7が、約20~30%のGPC3発現を示したことを示す(図9)。
【0115】
実施例5 ルシフェラーゼを発現する細胞株を開発する
実施例4のGPC3を発現するHuh-7細胞株を使用して、ルシフェラーゼ-GFPを発現する細胞株を開発した。レンチウイルスベクターを用いて細胞に形質導入を行い、形質導入効率をGFP発現によって決定した(図10A)。次いで、ピューロマイシンを使用して、ルシフェラーゼ-GFP遺伝子を形質導入した細胞を選択的に単離し、ルシフェラーゼ機能試験を行った。結果は、細胞数が約50%減少した場合、RLUも約50%減少したことを示す(図10B)。これらの結果を、肝臓がん動物モデルの開発に使用した。
【0116】
実施例6 インビボでのGPC3 VH-VL CAR-T細胞及びGPC3 VL-VH CAR-T細胞
実施例4の3つの細胞株を使用して、がん細胞を、NSGマウスに注射し(1×10個の細胞/頭部又は2×10個の細胞/頭部)、時間経過に伴う肝臓腫瘍の成長を観察した。結果は、Huh-7_Luc-GFP細胞を注射したマウスが、最短期間にわたって腫瘍の成長を示したことを示す。
【0117】
Huh-7_Luc-GFP細胞を、NSGマウスに注射し(2×10個の細胞/頭部)、腫瘍のサイズが、150~200mmに達した後、GPC3 VH-VL CAR-T細胞及びGPC3 VL-VH CAR-T細胞を注射した。いかなる注射も受けなかった対照群の全てのマウスは、注射時から25日後に死亡したが、一方で、GPC3 CAR-T細胞の注射を受けた群のマウスは、注射から25日後に生存していた。GPC3 VH-VL CAR-T細胞の0.5×10個の細胞/頭部の注射は、腫瘍サイズの増加を示し、次いで、注射から7日後に減少を示し、一方で、GPC3 VL-VH CAR-T細胞の0.5×10個の細胞/頭部の注射は、腫瘍サイズの増加を示し、次いで、注射から7~10日後に減少を示した。0.25×10個の細胞/頭部の注射は、GPC3 VH-VL群のマウスの20%が、腫瘍サイズの増加を示し、一方で、GPC3 VL-VH群のマウスの40%が、腫瘍サイズの増加を示したことを示す(図11)。
【0118】
GPC3 CAR-T注射後10週間の観察は、GPC3 VL-VH CAR-T細胞(0.25×10個の細胞/頭部)の注射を受けたマウスの群が、注射から21日後に60%の生存を示し、GPC3 VH-VL CAR-T細胞(0.25×10個の細胞/頭部)の注射を受けた群が、注射から28日後に80%の生存を示したことを示した。GPC3 VL-VH CAR-T細胞(0.5×10個の細胞/頭部)を受けたマウスの群が、注射から56日後に80%の生存を示し、GPC3 VH-VL CAR-T細胞(0.5×10個の細胞/頭部)を受けた群が、注射から66日後に80%の生存を示した。
【0119】
マウスの血液分析は、注射から14日後に血液におけるCAR-T細胞の数がピークに達し、2つの群間で結果が類似していることを示した(図12)。
【0120】
これらの結果は、より高い生存率を示しつつ、腫瘍サイズを減少させることにおいて、GPC3 VH-VL CAR-T細胞が、GPC3 VL-VH CAR-T細胞よりも効果的であったことを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
【配列表】
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【国際調査報告】