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特表2023-518969中和アミノ酸エステル及びグリセリドを含有する組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-09
(54)【発明の名称】中和アミノ酸エステル及びグリセリドを含有する組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20230427BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230427BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20230427BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20230427BHJP
   A61K 8/362 20060101ALI20230427BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20230427BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20230427BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20230427BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/37
A61K8/39
A61K8/365
A61K8/362
A61Q5/12
A61Q19/10
A61Q1/14
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558055
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(85)【翻訳文提出日】2022-11-22
(86)【国際出願番号】 US2021024225
(87)【国際公開番号】W WO2021195424
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】63/000,988
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591066100
【氏名又は名称】ステパン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー,デニス・エス
(72)【発明者】
【氏名】ブティカス,レナータ・エイ
(72)【発明者】
【氏名】フォーンス,ジェームス・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ,パトリック・シェーン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AB151
4C083AB281
4C083AB332
4C083AB351
4C083AC072
4C083AC081
4C083AC091
4C083AC101
4C083AC111
4C083AC121
4C083AC151
4C083AC231
4C083AC241
4C083AC251
4C083AC291
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC371
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC441
4C083AC581
4C083AC582
4C083AC641
4C083AC791
4C083AC862
4C083AD282
4C083BB48
4C083CC03
4C083CC23
4C083CC31
4C083CC33
4C083EE28
(57)【要約】
組成物活性成分として、少なくとも1つの中和アミノ酸エステルとグリセリド成分との相乗作用性混合物を含む組成物が開示される。混合物は、35重量%~85重量%の中和アミノ酸エステル、及び15重量%~65重量%の、選択されたモノグリセリド、ジグリセリド、又はこれらの組み合わせを含むグリセリド成分を含む。組成物は、ヘアケア用に、さらには洗浄組成物、ファブリック用柔軟剤組成物、及びスキンケア組成物などの他の用途にも有用である。ヘアケア製剤に製剤される場合、組成物は、中和アミノ酸エステル又はグリセリドのいずれか単独の場合よりも良好なウェットコーミング性を提供する。また、中和アミノ酸エステルと選択されたグリセリドとの混合物を含む最終用途組成物も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
前記組成物の30重量%~100重量%の混合物であって、
(a)前記混合物の35重量%~85重量%の量の、ブラシカL-イソロイシンエシレート、ロイシンイソステアリルエステルエシレート、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される中和アミノ酸エステルと、
(b)前記混合物の15重量%~65重量%の量のグリセリド成分であって、モノグリセリド、ジグリセリド、又はこれらの組み合わせ、及び所望に応じて、前記グリセリド成分の重量に基づいて50重量%までのトリグリセリド、を含むが、但し、前記グリセリド成分中の唯一のグリセリドがモノグリセリドである場合、そのモノグリセリドは、10個超の炭素原子の脂肪酸カルボキシレート基を有することが条件である、グリセリド成分と、
を含む、混合物、並びに
所望に応じて、前記組成物の0~70重量%の1又は複数の溶媒、
を含む、組成物。
【請求項2】
前記アミノ酸のアミン基が、エタンスルホン酸、塩酸、硫酸、リン酸、乳酸、クエン酸、マレイン酸、アジピン酸、ホウ酸、グルタミン酸、グリコール酸、酢酸、アスコルビン酸、尿酸、シュウ酸、アスパラギン酸、酪酸、ラウリン酸、グリシン、ギ酸、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される酸によって中和されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記グリセリド成分が、8~32個の炭素原子の炭素鎖長を有するモノグリセリドとジグリセリドとの組み合わせを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記モノグリセリド及びジグリセリドが、16~22個の炭素原子の炭素鎖長を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記グリセリド成分中の前記モノグリセリド及びジグリセリドの前記炭素鎖の少なくとも50%が、少なくとも1つの二重結合を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記モノグリセリド及びジグリセリドが、前記グリセリド成分中に3:1~1:3の比で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
モノグリセリドのジグリセリドに対する前記比が、1:1である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記中和アミノ酸エステルが、前記混合物の約50重量%~約60重量%を成し、前記グリセリド成分が、前記混合物の約40重量%~約50重量%を成す、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記中和アミノ酸エステルが、前記混合物の約55重量%~57重量%を成し、前記グリセリド成分が、前記混合物の約43重量%~45重量%を成す、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記溶媒が、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリコールエーテル、グリセリン、ソルビタンエステル、乳酸、アルキルラクチルラクテート、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、ジメチルアジペート、オレイルアルコール、1,2-イソプロピリジングリセロール、ベンジルアルコール、ジメチルラウラミドミリスタミド、N-ブチルラクテート、トリメチルシトレート、ジメチルラクチド、ラウレス-2ラクチド、1,2-ブチレンカーボネート、共役リノール酸、イソソルビドジメチルエーテル、プロピレンカーボネート、C6~C18メチルエステル、シトレート、C12~15アルキルベンゾエート、又はこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
製剤であって、
(a)請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物を含む、0.01重量%~約50重量%の組成物活性成分、
(b)所望に応じて、1又は複数の追加成分、及び
(c)前記製剤を100%に合わせるための希釈剤、
を含む、製剤。
【請求項12】
ヘアコンディショナー、ヘアリペア組成物、パーソナルクレンジング製品、ファブリック用柔軟剤、ファブリック用コンディショナー、ハード面クリーナー、又はスキンケア組成物である、請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
毛髪トレスに適用された場合、約50グラム力(gmf)以下のウェットコーミングDia-Stron最大ピーク負荷を与える、請求項11又は12に記載の製剤。
【請求項14】
ヘアケア組成物であって、
(a)約0.01重量%~約50重量%の組成物活性成分であって、前記組成物活性成分は、混合物であって、(i)前記混合物の35重量%~85重量%の量の、ブラシカL-イソロイシンエシレート、ロイシンイソステアリルエステルエシレート、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される中和アミノ酸エステルと、(ii)前記混合物の15重量%~65重量%の量のグリセリド成分であって、モノグリセリド、ジグリセリド、又はこれらの組み合わせ、及び所望に応じて、前記グリセリド成分の重量に基づいて50重量%までのトリグリセリド、を含むが、但し、前記グリセリド成分中の唯一のグリセリドがモノグリセリドである場合、そのモノグリセリドは、10個超の炭素原子の脂肪酸カルボキシレート基を有することが条件である、グリセリド成分との、混合物、を含む、組成物活性成分、
(b)所望に応じて、1又は複数の追加成分、及び
(c)前記製剤を100%に合わせるための希釈剤、
を含む、ヘアケア組成物。
【請求項15】
前記アミノ酸のアミン基が、エタンスルホン酸、塩酸、硫酸、リン酸、乳酸、クエン酸、マレイン酸、アジピン酸、ホウ酸、グルタミン酸、グリコール酸、酢酸、アスコルビン酸、尿酸、シュウ酸、アスパラギン酸、酪酸、ラウリン酸、グリシン、ギ酸、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される酸によって中和されている、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記グリセリド成分が、8~32個の炭素原子の炭素鎖長を有するモノグリセリドとジグリセリドとの組み合わせを含む、請求項14又は15に記載の組成物。
【請求項17】
前記モノグリセリド及びジグリセリドが、16~22個の炭素原子の炭素鎖長を有する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記グリセリド成分中の前記モノグリセリド及びジグリセリドの前記炭素鎖の少なくとも50%が、少なくとも1つの二重結合を有する、請求項14~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記モノグリセリド及びジグリセリドが、前記グリセリド成分中に3:1~1:3の比で存在する、請求項14~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
モノグリセリドのジグリセリドに対する前記比が、1:1である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記中和アミノ酸エステルが、前記混合物の約50重量%~約60重量%を成し、前記グリセリド成分が、前記混合物の約40重量%~約50重量%を成す、請求項14~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記中和アミノ酸エステルが、前記混合物の約55重量%~約57重量%を成し、前記グリセリド成分が、前記混合物の約43重量%~約45重量%を成す、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物活性成分が、溶媒をさらに含む、請求項14~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記溶媒が、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリコールエーテル、グリセリン、ソルビタンエステル、乳酸、アルキルラクチルラクテート、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、ジメチルアジペート、オレイルアルコール、1,2-イソプロピリジングリセロール、ベンジルアルコール、ジメチルラウラミドミリスタミド、N-ブチルラクテート、トリメチルシトレート、ジメチルラクチド、ラウレス-2ラクチド、1,2-ブチレンカーボネート、共役リノール酸、イソソルビドジメチルエーテル、プロピレンカーボネート、C6~C18メチルエステル、シトレート、C12~15アルキルベンゾエート、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物活性成分中の前記溶媒の量が、約1重量%~約70重量%である、請求項23又は24に記載の組成物。
【請求項26】
前記ヘアケア組成物が、毛髪トレスに適用された場合、約50グラム力(gmf)以下のウェットコーミングDia-Stron最大ピーク負荷を与える、請求項14~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記希釈剤が、水、溶媒、又はこれらの組み合わせを含む、請求項14~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物活性成分が、前記組成物中に、前記組成物の0.01重量%~約12重量%の量で存在する、請求項14~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物活性成分の前記量が、前記組成物の約0.1重量%~約5重量%である、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
ウェットコーミングDia-Stronプロセスによって測定した場合に、同じ量の組成物活性成分を含有するが前記グリセリド成分は含まない類似の組成物と比較して、より良好なウェットコーミング性を提供する、請求項14~29のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術は、コンディショニング、柔軟性付与、及び/又は洗浄の特性を提供するのに有用である、組成物活性成分として中和アミノ酸エステル及びグリセリドを含む組成物に関する。組成物は、ヘアケア用に、さらには洗浄組成物、ファブリック用柔軟剤組成物、及びスキンケア組成物などの他の用途に用いられ得る。特に、本発明の技術は、中和アミノ酸エステル又はグリセリドのいずれか単独よりも良好なウェット及びドライコーミング性を提供する少なくとも1つの中和アミノ酸エステルと選択されたグリセリドとの相乗作用性混合物を含む組成物に関する。本発明の技術はまた、中和アミノ酸エステルとグリセリドとの混合物を含む最終用途組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルケア産業では、化石燃料ではなく植物又は動物由来の再生可能資源に基づく原料成分で組成物を製剤する傾向となってきている。そのような原料成分は、再生可能資源及び/又は持続可能資源に由来することから、「グリーンである」又は「自然である」と見なされる。その結果、それらは、特に石油由来溶媒も必要とすることなく製造された場合、化石燃料に由来する原料成分よりも環境にやさしいものである。
【0003】
再生可能資源由来の天然原料成分の例は、非極性側鎖を有する中性アミノ酸を長鎖脂肪族アルコールと反応させた反応生成物から得られる中和アミノ酸エステルである。米国特許第8,105,569号には、そのような中和アミノ酸エステルが記載されている。中和アミノ酸エステルは、カチオン性であり、したがって、従来から好ましくない環境プロファイルを有するものである塩化ベヘントリモニウム(BTAC)及び塩化セントリモニウム(CETAC)などの従来のカチオン性ヘアコンディショニング剤に置き換えることができる可能性がある。
【0004】
中和アミノ酸エステルの1つの欠点は、それが、4級アンモニウム化合物及びアミドアミンなどのヘアケア組成物に典型的に用いられる他のカチオン性成分よりも高価なカチオン性原料成分であることである。加えて、許容可能な性能を実現するためには、従来のカチオン性活性剤と比較して中和アミノ酸エステルの量を増加させることが、多くの場合必要とされる。既にコストのより高い原料成分をより多く使用することは、製造がより高価である製品をもたらす結果となる。したがって、再生可能資源由来であるが、より低いコストで、及び従来のカチオン性活性剤に用いられる使用レベルと同等の使用レベルで許容可能な性能をもたらすこともできる組成物活性成分を有することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
本発明の技術は、少なくとも1つの中和アミノ酸エステルとグリセリド成分との相乗作用性混合物を含む組成物に関し、グリセリド成分は、モノグリセリド、ジグリセリド、又はこれらの混合物、及び所望に応じて、グリセリドの総重量に基づいて0~50重量%のトリグリセリドを含む。驚くべきことに、特定のグリセリドを中和アミノ酸エステルと組み合わせることで、中和アミノ酸エステルのウェットコーミング特性を改善することができることが見出された。
【0006】
1つの態様では、本発明の技術は、組成物であって、
組成物の30重量%~100重量%の混合物であって、
(a)混合物の35重量%~85重量%の量の、ブラシカL-イソロイシンエシレート、ロイシンイソステアリルエステルエシレート、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される中和アミノ酸エステルと、
(b)混合物の15重量%~65重量%の量のグリセリド成分であって、モノグリセリド、ジグリセリド、又はこれらの組み合わせ、及び所望に応じて、グリセリド成分の重量に基づいて0~50重量%のトリグリセリド、を含むが、但し、グリセリド成分中の唯一のグリセリドがモノグリセリドである場合、そのモノグリセリドは、10個超の炭素原子の脂肪酸カルボキシレート基を有することが条件である、グリセリド成分と、
を含む、混合物、並びに
所望に応じて、組成物の0~70重量%の1又は複数の溶媒、
を含む、組成物、に関する。
【0007】
別の態様では、本発明の技術は、組成物であって、
(a)組成物の0.01重量%~約50重量%の組成物活性成分であって、組成物活性成分は、混合物であって、(i)混合物の35重量%~85重量%の量の、ブラシカL-イソロイシンエシレート、ロイシンイソステアリルエステルエシレート、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される中和アミノ酸エステルと、(ii)混合物の15重量%~65重量%の量のグリセリド成分であって、モノグリセリド、ジグリセリド、又はこれらの組み合わせ、及び所望に応じて、グリセリド成分の重量に基づいて0~50重量%のトリグリセリド、を含むが、但し、グリセリド成分中の唯一のグリセリドがモノグリセリドである場合、そのモノグリセリドは、10個超の炭素原子の脂肪酸カルボキシレート基を有することが条件である、グリセリド成分との、混合物、を含む、組成物活性成分、
(b)所望に応じて、1又は複数の追加成分、並びに
(c)製剤を100%に合わせるための希釈剤、
を含む、組成物に関する。1つの実施形態では、製剤は、ヘアコンディショニング組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の技術の組成物は、再生可能資源由来であり、費用効果が高く、同等の使用レベルでの中和アミノ酸エステル又はグリセリドのいずれか単独よりも良好であるコンディショニング、柔軟性付与、又は洗浄の性能を提供する活性成分の相乗作用性混合物を一緒に提供する、特定の中和アミノ酸エステルと特定のグリセリドとの混合物を含む。
【0009】
本発明の技術の中和アミノ酸エステルは、(i)非極性側鎖を有し、アミン基が酸で中和されているアミノ酸の、(ii)長鎖脂肪族アルコールによるエステル化によって得られる。本発明の技術のアミノ酸エステルは、式(I)の構造によって表すことができ、
【0010】
【化1】
【0011】
式中、Rは、分岐鎖であっても又は直鎖であってもよい、1~10個の炭素原子の、別の選択肢として2~6個の炭素原子のアルキル基を表す。Rは、直鎖であっても又は分岐鎖であってもよく、飽和であっても又は不飽和であってもよい炭素鎖を表す。炭素鎖は、8~50個の炭素原子を、別の選択肢として8~32個の炭素原子を、別の選択肢として8~24個の炭素原子を有し得る。エステルを形成するためのアミノ酸としては、中性であるいずれのアミノ酸も挙げられる。特定のアミノ酸としては、L-アラニン、L-バリン、L-ロイシン、及びL-イソロイシンが挙げられる。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、L-イソロイシン又はL-ロイシンである。
【0012】
中和アミノ酸エステルを得るためには、アミノ酸のアミン基を、酸で中和し、長鎖脂肪族アルコールと反応させる。適切な脂肪族アルコールは、直鎖であっても又は分岐鎖であってもよく、加えて、飽和であっても及び/又は不飽和であってもよい。脂肪族アルコールが、約10~約50個の、別の選択肢として約24~約32個の炭素原子を含有することが好ましい場合がある。いくつかの実施形態では、約12~約22個の炭素原子を含有する直鎖及び/又は分岐鎖の脂肪族アルコールが好ましい場合がある。適切な脂肪族アルコールの例としては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール、又はこれらの混合物若しくは組み合わせが挙げられる。好ましくは、脂肪族アルコールは、非石油源に由来する。
【0013】
アミノ酸エステルのアミン基は、そのカチオン性挙動を促進するために、酸によって完全に又は部分的に中和され得る。有機酸及び無機酸を含むいかなる酸が用いられてもよい。適切な酸としては、限定されないが、鉱酸、アミノ酸、塩酸、リン酸、硫酸、ホウ酸、及び硝酸が挙げられる。適切な有機酸は、クエン酸、エタンスルホン酸、酢酸、ギ酸、又はシュウ酸であってよい。適切なアミノ酸としては、グルタミン酸及びアスパラギン酸が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、酸は、エタンスルホン酸である。好ましい中和アミノ酸エステルは、ブラシシルL-イソロイシンエシレート又はロイシンイソステアリルエステルエシレートである。ブラシシルL-イソロイシンエシレートは、ブラシカアルコールのL-イソロイシンエシレートによるエステル化から誘導され得る。L-イソロイシンエシレートは、イソロイシンのアミン基をエタンスルホン酸と反応させることによって調製され得る。ブラシカアルコールは、植物のアブラナ属(Brassica)から得られる高エルカ酸ナタネ(HEAR)油の分解、及びそれ続く水素化から誘導される脂肪族アルコールである。ブラシカアルコールは、主としてステアリルアルコール、アラキジルアルコール、及びべヘニルアルコールから成り、少量の低及び高アルキル鎖長のアルコールを含む。本発明の技術の中和アミノ酸エステルは、本技術分野で一般的に知られる方法によって合成され得る。
【0014】
中和アミノ酸エステルに加えて、本発明の技術の組成物は、グリセリド成分を含む。グリセリド成分は、モノグリセリド、ジグリセリド、又はこれらの混合物を含み得る。所望に応じて、トリグリセリドも、グリセリド成分中に含まれてよい。グリセリド成分中のトリグリセリドの量は、グリセリド成分の総重量に基づいて、0~約50重量%、別の選択肢として0~約40重量%、別の選択肢として0~約30重量%、別の選択肢として1重量%~約50重量%、別の選択肢として約1重量%~約40重量%、約1重量%~約30重量%、約1重量%~約20重量%、又は約1重量%~約10重量%の範囲内であり得る。モノグリセリド、ジグリセリド、若しくはトリグリセリド、又はこれらの組み合わせは、約8~約32個の炭素原子を有する飽和脂肪酸カルボキシレート基、不飽和脂肪酸カルボキシレート基、又は不飽和脂肪酸カルボキシレート基と飽和脂肪酸カルボキシレート基との混合を含む。しかし、グリセリド成分が、モノグリセリドのみを、又は主としてモノグリセリドを含む場合、モノグリセリドの脂肪酸カルボキシレート基は、10個超の炭素原子を有するべきである。いくつかの実施形態では、脂肪酸基は、少なくとも50重量%の、別の選択肢として少なくとも60重量%の、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する不飽和脂肪酸基を含む。いくつかの実施形態では、脂肪酸基は、オレイン酸由来である。いくつかの実施形態では、グリセリド成分は、モノグリセリドとジグリセリドとの混合物である。混合物中におけるモノグリセリドのジグリセリドに対する比は、約1:3~3:1であり得るが、いくつかの実施形態では、約1:1のモノグリセリド対ジグリセリド比が好ましい。中和アミノ酸エステル活性成分とグリセリド成分との混合物は、中和アミノ酸エステル活性成分とグリセリド成分との合わせた重量に基づいて、約35重量%~85重量%、別の選択肢として約40重量%~約80重量%、別の選択肢として約45重量%~約70重量%、別の選択肢として約50重量%~約60重量%の中和アミノ酸エステル、及び約15重量%~約65重量%、別の選択肢として約20重量%~約40重量%、別の選択肢として約30重量%~約55重量%、別の選択肢として約40重量%~約50重量%のグリセリド成分を含む。いくつかの実施形態では、中和アミノ酸エステル活性成分とグリセリド成分との混合物は、中和アミノ酸エステル活性成分とグリセリド成分との合わせた重量に基づいて、約55重量%~57重量%の中和アミノ酸エステル活性成分を含み、グリセリド成分は、約43重量%~45重量%を成す。
【0015】
中和アミノ酸エステルとグリセリドとの混合物は、活性成分として単独で用いられてよく、又は特定の溶媒で希釈されて希釈中和アミノ酸エステル/グリセリド組成物が形成されてもよい。いくつかの実施形態では、溶媒は、パーソナルケアに適する溶媒である。中和アミノ酸エステル/グリセリド混合物を希釈するための溶媒の例としては、限定されないが、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリコールエーテル、グリセリン、ソルビタンエステル、乳酸、アルキルラクチルラクテート、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、ジメチルアジペート、オレイルアルコール、1,2-イソプロピリジングリセロール、ベンジルアルコール、ジメチルラウラミドミリスタミド、N-ブチルラクテート、トリメチルシトレート、ジメチルラクチド、ラウレス-2ラクチド(laureth-2 lactide)、1,2-ブチレンカーボネート、共役リノール酸、イソソルビドジメチルエーテル、プロピレンカーボネート、C6~C18メチルエステル、シトレート、C12~15アルキルベンゾエート、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0016】
グリセリドは、いくつかの組成物では溶媒としても用いられ得るが、本発明の技術の組成物中のいずれのグリセリドも、グリセリドとしてのみ見なされ、溶媒として見なされるべきでも、又は溶媒系の一部として見なされるべきでもない。この定義は、グリセリドが組成物の製造プロセス中のどの時点で添加されるかにかかわらず適用される。グリセリドとしては、限定されるものではないが、グリセリルエステル、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、グリセロールモノオレエート、植物油、ヒマワリ油、ホホバ油、ボリジ油、モリンガ油、アルガン油、又はダイコン種子油が挙げられる。
【0017】
用いられる場合、溶媒の量は、約1重量%~約70重量%、別の選択肢として約5重量%~約70重量%、別の選択肢として約10重量%~約60重量%、別の選択肢として約10重量%~約50重量%、別の選択肢として約10重量%~約40重量%、別の選択肢として約10重量%~約30重量%の範囲内であってよく、中和アミノ酸エステル/グリセリドの混合物の量は、組成物の約30重量%~99重量%、別の選択肢として約30重量%~約95重量%、別の選択肢として約40重量%~約90重量%、別の選択肢として約50重量%~約90重量%、別の選択肢として約60重量%~約90重量%、別の選択肢として約70重量%~約90重量%の範囲内であってよい。いくつかの実施形態では、溶媒の量は、約1重量%~約50重量%であり、中和アミノ酸エステル活性成分とグリセリドとの混合物の量は、約50重量%~約99重量%である。
【0018】
希釈中和アミノ酸エステル/グリセリド組成物は、まず中和アミノ酸エステルをグリセリド成分と混合して混合物を形成し、続いて混合物を溶媒で希釈して希釈組成物を形成することによって製造することができる。別の選択肢として、中和アミノ酸エステル及びグリセリドを別々に溶媒と組み合わせて、希釈組成物を形成することもできる。
【0019】
本発明の技術の中和アミノ酸エステルとグリセリド成分との混合物を含む組成物は、有利には、ヘアコンディショナー及びヘアリペア組成物を含むがこれらに限定されないヘアケア組成物に製剤することができる。組成物は、他の最終用途製品に製剤することも可能であり、限定されるものではないが、ファブリック用柔軟剤、ファブリック用コンディショナー、ハード面クリーナー、及びスキンケア組成物などである。製品製剤は、製品製剤の約0.01重量%~約50重量%、別の選択肢として製品製剤の約0.05重量%~約25重量%、別の選択肢として約0.1重量%~約12重量%、別の選択肢として約0.01重量%~約10重量%、別の選択肢として約0.1重量%~約5重量%、別の選択肢として約0.5重量%~約5重量%、別の選択肢として約1重量%~約5重量%、別の選択肢として約1重量%~約4重量%の量で中和アミノ酸エステル活性成分とグリセリド成分との混合物を含んでよい。
【0020】
製品製剤は、用途に適する他の所望に応じて含まれていてよい原料成分を含有していてもよく、界面活性剤又は他の添加剤、及び水などの希釈剤、などである。界面活性剤の例としては、非イオン性、カチオン性、及び両性界面活性剤、又はこれらの組み合わせが挙げられる。非イオン性界面活性剤の例としては、限定されるものではないが、脂肪族アルコールアルコキシレート、ポリアルキレングリコール、モノ及び/又はジアルキルスルホスクシネート、脂肪酸イセチオネート、脂肪酸サルコシネート、脂肪酸グルタメート、エーテルカルボン酸、アルキルオリゴグルコシド、及びこれらの組み合わせが挙げられる。カチオン性の例としては、限定されるものではないが、BTAC、CETAC、及びポリクォータニウム、又はこれらの組み合わせが挙げられる。両性界面活性剤の例としては、限定されるものではないが、ベタイン、アミドプロピルベタイン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。他の考慮される成分としては、ステアラミドプロピルジメチルアミン(SAPDMA)などの長鎖アミドアミンが挙げられる。製品製剤中の界面活性剤の量は、製品製剤の約0.01重量%~約20重量%の範囲内であってよい。
【0021】
添加剤の例としては、レオロジー改質剤、皮膚軟化薬、スキンコンディショニング剤、乳化剤/懸濁剤、増粘剤、香料、着色剤、乳白剤、ハーブエキス、ビタミン、ビルダー、酵素、保存剤、抗菌剤、pH調節剤、又はこれらの組み合わせが挙げられる。そのような添加剤の特定の例としては、限定されるものではないが、シリコーン、シロキサン、鉱油、天然若しくは合成ワックス、ポリグリセロールアルキルエステル、グリコールエステル、脂肪酸とイソプロパノールを例とする低炭素数アルコールとのエステル、安息香酸エステル、クエン酸、コハク酸、リン酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ビタミンA、ビタミンE、若しくはパントテン酸などのビタミン、4級化グアー、セルロース若しくは4級化セルロース、又は上記のいずれかの組み合わせが挙げられる。製品製剤中の添加剤の合計は、製品製剤の約0.01重量%~約20重量%の範囲内であってよい。
【0022】
中和アミノ酸エステルとグリセリド成分との混合物を含む本発明の技術の組成物は、いくつかの有益性を提供する。中和アミノ酸エステル及びグリセリド成分はいずれも、天然源から誘導することができ、したがって、石油源から誘導される成分よりも環境にやさしい。組成物を含むヘアコンディショニング製剤は、同等の使用レベルにおいて、選択されたグリセリド成分なしで中和アミノ酸エステルを含む製剤と比較して、より良好なウェットコーミング特性を提供する。グリセリド成分は中和アミノ酸エステルよりも安価な原料成分であることから、中和アミノ酸エステルとグリセリド成分との混合物は、グリセリド成分なしで中和アミノ酸エステルを含む製剤と比較して、より低いコストで同等又はより良好な性能特性を提供することができる。ヘアコンディショニング製剤はまた、CETACを含む製剤と比較しても、より良好なウェットヘアコーミング特性を提供する。しかし、CETACとは異なり、中和アミノ酸エステルとグリセリド成分との混合物は、生分解性であり、CETACと比較して改善された環境プロファイル及びより低い毒性を提供する。
【0023】
本発明の技術の中和アミノ酸エステルとグリセリド成分との混合物を含むヘアコンディショニング組成物は、ヘアコンディショニング効果を得るのに適する量で毛髪に適用されてよい。毛髪に適用されるコンディショニング活性成分としての混合物の適切な量は、乾いた毛髪に対して測定した場合、約0.001重量%~約5重量%、別の選択肢として約0.001重量%~約2重量%、別の選択肢として約0.002重量%~約1.5重量%、別の選択肢として約0.025重量%~約0.5重量%、別の選択肢として約0.025重量%~約0.25重量%の範囲内であってよい。ヘアコンディショニング組成物は、約80グラム力(gmf)以下、別の選択肢として約70gmf以下、別の選択肢として約30~約50gmfなどの約50gmf以下のウェットコーミングDia-Stron最大ピーク負荷を与える。
【0024】
実施例
本発明で述べる技術及びその利点は、以下の例を参照することによってより良く理解される。これらの例は、本発明の技術の具体的な実施形態を記載するために提供される。本発明者らは、これらの例を提供することによって本発明の技術の範囲及び趣旨を限定するものではない。
【0025】
以下の試験方法を、本発明の技術の組成物の特性及び性能を特定するために用いる。
【0026】
ウェット及びドライコーミング性のためのDia-Stron法
1.毛髪トレスを30秒間リンスする。
2.0.5mLのVO5(登録商標)ボリュームシャンプー(ノンコンディショニングシャンプー)を適用する。
3.毛髪トレス全体に広げる。
4.空気乾燥させる。
5.毛髪トレスを30秒間リンスする。
6.0.5mLの試験コンディショナーを適用する。
7.毛髪トレス全体に広げる。
8.毛髪トレスをDia-Stron MT1775装置に固定し、「ウェットコーミング」手順を作動させる。
9.工程8をさらに9回繰り返す。
10.工程1~9をさらに2つの毛髪トレスに対して繰り返す。
11.毛髪トレスを空気乾燥させる。
12.毛髪トレスをDia-Stron MT1775装置に固定し、「ドライコーミング」手順を作動させる。
13.工程12を、1つの毛髪トレスに対してさらに9回繰り返す。
14.工程12~13をさらに2つの毛髪トレスに対して繰り返す。
【0027】
例1
ブラシシルL-イソロイシンエシレートは、Burgoに対する米国特許第8,105,569号の実施例1の手順に従って調製した。この実施例1の手順は、参照により本明細書に援用される。反応生成物をRXN1と命名し、NMRによって、54.7重量%のブラシシルL-イソロイシンエシレート(「BISL」)であると測定された。
【0028】
例2:ヘアコンディショニング組成物の製造
少なくとも1つの中和アミノ酸エステルとグリセリドとの組み合わせを含む本発明の技術に従うカチオン性活性成分を、以下に示す一般手順に従ってヘアコンディショニング組成物に製剤した。ヘアコンディショニング組成物は、比較カチオン性ヘアコンディショニング成分を用いても製剤した。表1は、ヘアコンディショニング組成物を製造するために用いた一般配合を示す。
【0029】
【表1】
【0030】
一般手順
1.水を投入し、混合を開始する。
2.Natrosol 250 HHR CSを振りかけて投入する。
3.25%の水酸化ナトリウムを用いて、目標をpH8~9としてpHを調節する。透明となるまで混合する(30~40分間)。
4.70~75℃に加熱する。
5.コンディショニング成分を添加し、均質となるまで混合する。
6.セチルアルコールを添加し、30分間混合する。
7.混合しながら45℃に冷却する。
8.小ビーカー中において、塩化カリウムを水に溶解する。バッチに添加する。
9.50%のクエン酸を用いて、pHを3.5~4に調節する。
10.室温に冷却する。
11.Kathon CGを添加する。
【0031】
以下の例で用いたヘアコンディショニング製剤は、表1の配合及び一般手順に従って製造した。以下の表中の量は、重量%に基づいている。BTACは、塩化ベヘントリモニウムを意味し、CETACは、塩化セトリモニウムを意味し(AMMONYX(登録商標)CETAC-30、Stepan Company,Northfield,Illinoisより)、GMOは、DREWMULSE(登録商標)GMOを意味し、モノグリセリルオレエート及びジグリセリルオレエートを約1:1の比で含むグリセロールオレエートであり、NEOBEE(登録商標)M-5 COSMETIC又はM-5は、カプリル/カプリントリグリセリドを意味し、STEPAN-MILD(登録商標)GCC又はGCCは、主としてカプリル/カプリンモノグリセリドであるカプリル/カプリングリセリドを意味し、これらはすべて、Stepan Company,Northfield,Illinoisからのものである。ヘアコンディショニング組成物の各々を、Dia-Stron MTT175装置及びウェットコーミング手順を用いて、ウェットコーミング能力について評価した。
【0032】
例3:比較コンディショニング活性成分
比較ヘアコンディショニング製剤を、コンディショニング活性成分としてBTAC又はCETACを用いて、表1の一般配合に従って製造し、用いたコンディショニング活性成分の量を表2に示す。製剤を、ウェットコーミング能力について評価し、結果を表2に提示する。
【0033】
【表2】
【0034】
結果から、一般的に用いられるコンディショニング活性成分、すなわちBTAC及びCETACは、典型的な配合中に2%の活性成分で用いた場合、それぞれ、約20gmf及び70gmfのDia-Stron最大ピーク負荷の結果を呈することが分かる。
【0035】
例4:本発明の相乗作用性コンディショニング剤
ヘアコンディショニング製剤を製造して、グリセリドを中和アミノ酸エステルと組み合わせることが、コンディショニング剤として中和アミノ酸エステル単独又はグリセリド単独を含有する製剤と比較して、ヘアケア製剤のウェットコーミング特性を改善することができるかどうかを評価した。ヘアコンディショニング製剤を、表1の配合を用い、並びにコンディショニング剤として例1の反応生成物であるブラシシルL-イソロイシンエシレート(RXN1)単独、コンディショニング剤としてGMO単独、及びコンディショニング剤としてRXN1とGMOとの混合物を用いて製造した。各製剤で用いたコンディショニング剤の量を表3に示す。ヘアコンディショニング製剤の各々を、Dia-Stronウェットコーミング手順を用いて、ウェットコーミング能力について評価した。結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
この例は、活性成分全体のより低い量において(1.37重量%)、BISLとGMOとの混合物は、いずれかの成分単独の場合よりも良好なヘアコンディショニング性を付与することを示している。この例では、活性成分混合物中に、56.2%のBISL(0.77/1.37×100=56.2%)及び43.8%のGMO(0.6/1.37×100=43.8%)が存在する。
【0038】
これらの結果は、グリセリドを中和アミノ酸エステルと組み合わせることが、中和アミノ酸エステル単独又はグリセリド単独のいずれかと比較した場合に、ヘアコンディショニング組成物に対して改善された特性を付与する相乗作用性混合物を提供することを実証するものである。グリセリドが中和アミノ酸エステルよりも安価な原料成分であることも理解されるであろう。したがって、グリセリドと中和アミノ酸エステルとの混合物は、カチオン性活性成分のウェットコーミング特性を改善するだけでなく、ヘアケア組成物中のカチオン性活性成分のコストも低減する。例はまた、表3の結果を表2の結果と比較して、中和アミノ酸エステルとグリセリドとの組み合わせが、コンディショニング活性成分としてより低い量の中和アミノ酸エステル/グリセリド混合物を用いた場合であっても、一般的なカチオン性コンディショニング活性成分であるCETACよりも良好なヘアコンディショニング性を提供することができることも示している。
【0039】
例5:比較製剤
この例では、異なるヘアコンディショニング製剤を製造して、モノ及びジグリセリド成分(GMO)を他の一般的なグリセリドコンディショニング剤に置き換えることの効果を評価した。ヘアコンディショニング製剤を、表1の配合を用いて製造し、各製剤で用いたコンディショニング剤の種類及び量を以下の表4に示す。ヘアコンディショニング製剤の各々を、Dia-Stron MTT175装置及びウェットコーミング手順を用いて、ウェットコーミング能力について評価した。結果を表4に示す。
【0040】
【表4】
【0041】
この例は、グリセリドのアルキル鎖長が短すぎる場合、例えばC8~C10モノグリセリド(GCC)又はC8~C10トリグリセリド(Neobee(登録商標)M-5 cosmetic)、又は充分なモノ及びジグリセリドが存在しない場合(オリーブオイルの場合のように)、BISL/グリセリド系によるコンディショニングが良好ではないこと(すなわち、最大ピーク負荷が95gmf超である)を実証するものである。
【0042】
表3からの結果を表4の結果と比較した場合、これらの結果は、理論に束縛されるものではないが、グリセリド成分中に存在するモノ及びジグリセリドの量が、ウェットコーミング特性に影響を与え得ることを示唆している。これらの結果はまた、グリセリド成分中の炭素鎖分布及び/又は不飽和が、グリセリド/中和アミノ酸エステル混合物のウェットコーミング性能に影響を与え得ることも示唆している。
【0043】
ここでは、本発明の技術を、本発明が属する技術分野の当業者が本発明の技術を実践可能となるように、充分で明確かつ簡潔な言葉で記載している。上述の内容は、本発明の技術の好ましい実施形態を記載するものであること、及び添付の請求項に示される本発明の技術の趣旨又は範囲から逸脱することなく、そこに改変が成されてもよいことは理解されたい。さらに、例は、網羅的ではなく、請求項の範囲内に含まれるいくつかの実施形態を例示するために提供される。
【国際調査報告】