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特表2023-518970安定性の向上を有する修飾オリゴヌクレオチドの合成
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-09
(54)【発明の名称】安定性の向上を有する修飾オリゴヌクレオチドの合成
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20230427BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558064
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(85)【翻訳文提出日】2022-11-24
(86)【国際出願番号】 US2021024425
(87)【国際公開番号】W WO2021195533
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】63/000,328
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505220170
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ マサチューセッツ
【氏名又は名称原語表記】University of Massachusetts
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】コボロバ,アナスタシア
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ロイク モーリス ルネ ジャン
(72)【発明者】
【氏名】山田 建
(57)【要約】
本開示は、新規修飾オリゴヌクレオチドの合成に関する。新規ホスホロアミダイトの合成も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5’末端、3’末端、及び式Iの少なくとも1つの修飾されたサブユニット間連結を含む修飾オリゴヌクレオチド:
【化1】
(式中、
Bは、塩基対部分であり;
Wは、OまたはO(CHであり、nは、1~10であり;
Xは、H、OH、OR、F、SH、SR、NR 及びC1-6-アルコキシからなる群から選択され;
Yは、O、OH、OR、OR、NH、NH、NR 、BH、S、R、及びSHからなる群から選択され;
Zは、OまたはO(CHであり、nは、1~10であり;
は、アルキル、アリルまたはアリールであり;
は、アルキル、アリルまたはアリールである)。
【請求項2】
Zが、O(CHであり、nが1であり、WがOであり、YがOである、請求項1に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
【請求項3】
Zが、Oであり、WがO(CHであり、nが、1であり、Yが、Oである、請求項1に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
【請求項4】
Zが、O(CHであり、nが1であり、WがOであり、YがOである、請求項1に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
【請求項5】
Zが、O(CHであり、nが1であり、Wが、O(CHであり、YがOである、請求項1に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
【請求項6】
Zが、O(CHであり、nが1ではなく、Wが、O(CHであり、YがOである、請求項1に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
【請求項7】
前記塩基対部分Bが、アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルからなる群から選択される、請求項1に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
【請求項8】
5’末端、3’末端、及び式IIの少なくとも1つの修飾されたサブユニット間連結を含む修飾オリゴヌクレオチド:
【化2】
(式中、
Bは、塩基対部分であり;
Xは、H、OH、OR、F、SH、SR、NR 及びC1-6-アルコキシからなる群から選択され;
Yは、O、OH、OR、OR、NH、NH、NR 、BH、S、R、及びSHからなる群から選択され;
は、アルキル、アリルまたはアリールであり;
は、アルキル、アリルまたはアリールである)。
【請求項9】
YがOである、請求項7に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
【請求項10】
前記塩基対部分Bが、アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルからなる群から選択される、請求項7に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
【請求項11】
5’末端、3’末端、及び式IIIの少なくとも1つの修飾されたサブユニット間連結を含む修飾オリゴヌクレオチド:
【化3】
(式中、
Bは、塩基対部分であり;
Rは、アルキル、アリルまたはアリールである)。
【請求項12】
前記塩基対部分Bが、アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルからなる群から選択される、請求項10に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
【請求項13】
5’末端、3’末端、及び式IVの少なくとも1つの修飾されたサブユニット間連結を含む修飾オリゴヌクレオチド:
【化4】
(式中、
Bは、塩基対部分であり;
Rは、アルキル、アリルまたはアリールである)。
【請求項14】
前記塩基対部分Bが、アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルからなる群から選択される、請求項12に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
【請求項15】
5’末端、3’末端、及び式Vの少なくとも1つの修飾されたサブユニット間連結を含む修飾オリゴヌクレオチド:
【化5】
(式中、
Bは、塩基対部分であり;
Rは、アルキル、アリルまたはアリールである)。
【請求項16】
前記塩基対部分Bが、アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルからなる群から選択される、請求項14に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
【請求項17】
5’末端、3’末端、及び式VIの少なくとも1つの修飾されたサブユニット間連結を含む修飾オリゴヌクレオチド:
【化6】
(式中、
Bは、塩基対部分であり;
Rは、アルキル、アリルまたはアリールである)。
【請求項18】
前記塩基対部分Bが、アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルからなる群から選択される、請求項16に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
【請求項19】
式(VII)のホスホロアミダイト誘導体:
【化7】
(式中、
Bは、塩基対部分であり;
Xは、H、OH、OR、F、SH、SR、NR 、MOE、アルキル、アリル、アリール、及びC1-6-アルコキシからなる群から選択され;
Zは、OまたはOCHであり;
Rは、OMeまたはOCE(シアノエチル)であり:
は、アルキル、アリルまたはアリールであり;
は、アルキル、アリルまたはアリールである)。
【請求項20】
前記塩基対部分Bが、アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルからなる群から選択される、式(VII)のホスホロアミダイト誘導体。
【請求項21】
式(VIII)のホスホロアミダイト誘導体:
【化8】
(式中、
Bは、塩基対部分であり;
Xは、H、OH、OR、F、SH、SR、NR 、MOE、アルキル、アリル、アリール、及びC1-6-アルコキシからなる群から選択され;
は、アルキル、アリルまたはアリールであり;
は、アルキル、アリルまたはアリールである)。
【請求項22】
前記塩基対部分Bが、アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルからなる群から選択される、式(VIII)のホスホロアミダイト誘導体。
【請求項23】
式(IX)のホスホロアミダイト誘導体:
【化9】
(式中、
Bは、塩基対部分であり;
Xは、H、OH、OR、F、SH、SR、NR 、MOE、アルキル、アリル、アリール、及びC1-6-アルコキシからなる群から選択され;
は、アルキル、アリルまたはアリールであり;
は、アルキル、アリルまたはアリールである)。
【請求項24】
前記塩基対部分Bが、アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルからなる群から選択される、式(IX)のホスホロアミダイト誘導体。
【請求項25】
5’末端、3’末端及び少なくとも1つの修飾サブユニット間連結を含む修飾オリゴヌクレオチドを合成するための方法であって、
(a)固体支持体に結合した5’-保護基を有するヌクレオシドを提供することと;
(b)前記保護基を除去することと;
(c)前記脱保護されたヌクレオシドを式(VII)のホスホロアミダイト誘導体と組み合わせて、亜リン酸トリエステルを形成することと;
【化10】
(d)前記亜リン酸トリエステルをキャッピングすることと;
(e)前記亜リン酸トリエステルを酸化することと;
(f)追加のホスホロアミダイトを使用して、ステップ(b)から(e)を繰り返すことと;
(g)前記固体支持体から切断することと、を含む、前記方法。
【請求項26】
式(VII)のホスホロアミダイト誘導体をヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドの5’末端にカップリングするための方法であって、
【化11】
前記式(VII)のホスホロアミダイト誘導体を、芳香族複素環酸を含む有機溶媒中で前記ヌクレオシドまたは前記オリゴヌクレオチドに付加することを含む、前記方法。
【請求項27】
exNAホスホロアミダイトを合成するための方法であって:
(a)3’-保護基を有するヌクレオシドを提供することと;
(b)前記ヌクレオシドの5’-ヒドロキシル基を酸化して5’-アルデヒド基にすることと;
(c)Wittigオレフィン化により、ヌクレオシドの5’-アルデヒド基を5’-ビニル基に変換することと;
(d)前記5’-ビニル基に対してヒドロホウ素化/酸化を行って、6’-ヒドロキシル基を産生することと;
(e)6’-ヒドロキシル基をDMTr基で保護することと;
(f)前記ヌクレオシドの前記3’-保護基を除去することと;
(g)3’-ヒドロキシル基をホスフィチル化して、3’-ホスホロアミダイトを産生することと、を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月26日に出願した米国仮出願第63/000,328号の利益を主張するものであり、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、国立衛生研究所により付与された助成金番号NS104022及びOD020012の下、政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明においてある権利を有する。
【0003】
発明の分野
本開示は、新規修飾オリゴヌクレオチド及び新規ホスホロアミダイトの合成に関する。
【背景技術】
【0004】
現在、複雑な治療用RNAで使用される最も一般的な代謝的に安定した骨格修飾は、ホスホロチオエート(PS)修飾である。ペプチド核酸(PNA)及びホスホロジアミデートモルホリノオリゴヌクレオチド(PMO)などの他の利用可能な骨格修飾の代替手段は、立体遮断アンチセンスオリゴヌクレオチドとして十分に機能するが、これらの修飾は、多くの有望なRNAベースの治療戦略では許容されない。これらの戦略には、siRNA、miRNA、RNaseH依存アンチセンスオリゴヌクレオチド、及びアプタマーベースの治療法が含まれる。この耐性の低さは、「機能的」RNA-タンパク質複合体を形成する際にRNA構造を厳密に認識するArgonauteタンパク質(siRNA/miRNA)及びRNaseHなどの生物学的機構にPNA及びPMOが耐えられないことが原因である。
【0005】
最も一般的なRNAベースの治療戦略のうちの1つは、代謝的に安定したPS修飾RNAまたはPS/PO修飾キメラオリゴヌクレオチドの使用である。しかし、この戦略における重大な欠点は、in vivoにおける様々なタンパク質へのRNAの非特異的結合による毒性である。別の欠点は、PS修飾、さらにはPS/PO修飾RNAが内因性ヌクレアーゼによって分解されることである。したがって、薬物の有効性を損なうことなく、より高い代謝安定性を提供もたらす追加の骨格修飾が、RNA治療の分野で緊急に必要とされている。
【0006】
合成の利用可能性も、治療用オリゴヌクレオチドの開発における重要な要素である。他の様々な修飾骨格(例えば、ボラノホスフェート、ホスホロアミデートなど)が報告されているが、それらの多くは、特定の合成手順を必要とし、従来のホスホロアミダイトオリゴヌクレオチド合成サイクルと常に適合性があるものではない。このため、PS/PO骨格を他の糖修飾骨格と混合することと同様に、これらの修飾を有するキメラ骨格を自由に合成/設計することは困難である。この合成が困難であることにより、機能的な治療用オリゴヌクレオチドの設計パターンを相加的に多様化することが制限される。したがって、合成が容易で、現在検証済みの化学修飾と互換性のある新しい化学ツールを有することは、この分野においては、需要が高い。
【0007】
1つ以上の炭素鎖が骨格構造に挿入される、新たな種類の骨格修飾が本明細書で提供される。本明細書において提供される骨格修飾は、RNAの構造に深刻な影響を有することは予想されず、したがって、様々なRNA結合生物学的機構との適合性を提供することができる。さらに、これらの修飾は、タンパク質への有毒な非特異的結合を示すことは予想されないため、幅広い治療用RNAに組み込むことができる。
【発明の概要】
【0008】
一態様では、本開示は、5’末端、3’末端、及び式Iの少なくとも1つの修飾サブユニット間連結を含む修飾オリゴヌクレオチドを提供する:
【化1】
(式中、
Bは、塩基対部分であり;
Wは、OまたはO(CHであり、nは、1~10であり;
Xは、H、OH、OR、F、SH、SR、NR 及びC1-6-アルコキシからなる群から選択され;
Yは、O、OH、OR、OR、NH、NH、NR 、BH、S、R、及びSHからなる群から選択され;
Zは、OまたはO(CHであり;
は、アルキル、アリルまたはアリールであり;
は、アルキル、アリルまたはアリールである)。
【0009】
式Iの実施形態では、Zは、O(CHであり、nは、1であり、Wは、Oであり、Yは、Oである。
【0010】
式Iの実施形態では、Zは、Oであり、Wは、O(CHであり、nは、1であり、Yは、Oである。
【0011】
式Iの実施形態では、Zは、O(CHであり、nは、1であり、Wは、Oであり、Yは、Oである。
【0012】
式Iの実施形態では、Zは、O(CHであり、nは、1であり、Wは、O(CHであり、Yは、Oである。
【0013】
式Iの実施形態では、Zは、O(CHであり、nは、1ではなく、Wは、O(CHであり、Yは、Oである。
【0014】
式Iの実施形態では、塩基対部分Bは、アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルからなる群から選択される。
【0015】
別の態様では、本開示は、5’末端、3’末端、及び式IIの少なくとも1つの修飾サブユニット間連結を含む修飾オリゴヌクレオチドを提供する:
【化2】
(式中、
Bは、塩基対部分であり;
Xは、H、OH、OR、F、SH、SR、NR 及びC1-6-アルコキシからなる群から選択され;
Yは、O、OH、OR、OR、NH、NH、NR 、BH、S、R、及びSHからなる群から選択され;
は、アルキル、アリルまたはアリールであり;
は、アルキル、アリルまたはアリールである)。
【0016】
式IIの一実施形態では、Yは、Oである。
【0017】
式IIの実施形態では、塩基対部分Bは、アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルからなる群から選択される。
【0018】
別の態様では、本開示は、5’末端、3’末端、及び式IIIの少なくとも1つの修飾サブユニット間連結を含む修飾オリゴヌクレオチドを提供する:
【化3】
(式中、
Bは、塩基対部分であり;
Rは、アルキル、アリルまたはアリールである)。
【0019】
式IIIの一実施形態では、Yは、Oである。
【0020】
式IIIの実施形態では、塩基対部分Bは、アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルからなる群から選択される。
【0021】
別の態様では、本開示は、5’末端、3’末端、及び式IVの少なくとも1つの修飾サブユニット間連結を含む修飾オリゴヌクレオチドを提供する:
【化4】
(式中、
Bは、塩基対部分であり;
Rは、アルキル、アリルまたはアリールである)。
【0022】
式IVの実施形態では、塩基対部分Bは、アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルからなる群から選択される。
【0023】
別の態様では、本開示は、5’末端、3’末端、及び式Vの少なくとも1つの修飾サブユニット間連結を含む修飾オリゴヌクレオチドを提供する:
【化5】
(式中、
Bは、塩基対部分であり;
Rは、アルキル、アリルまたはアリールである)。
【0024】
式Vの実施形態では、塩基対部分Bは、アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルからなる群から選択される。
【0025】
別の態様では、本開示は、5’末端、3’末端、及び式VIの少なくとも1つの修飾サブユニット間連結を含む修飾オリゴヌクレオチドを提供する:
【化6】
(式中、
Bは、塩基対部分であり;
Rは、アルキル、アリルまたはアリールである)。
【0026】
式VIの実施形態では、塩基対部分Bは、アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルからなる群から選択される。
【0027】
別の態様では、本開示は、式(VII)のホスホロアミダイト誘導体を提供する:
【化7】
(式中、
Bは、塩基対部分であり;
Xは、H、OH、OR、F、SH、SR、NR 、MOE、アルキル、アリル、アリール、及びC1-6-アルコキシからなる群から選択され;
Zは、OまたはOCHであり;
Rは、OMeまたはOCE(シアノエチル)であり:
は、アルキル、アリルまたはアリールであり;
は、アルキル、アリルまたはアリールである)。
【0028】
式VIIの実施形態では、塩基対部分Bは、アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルからなる群から選択される。
【0029】
別の態様では、本開示は、式(VIII)のホスホロアミダイト誘導体を提供する:
【化8】
(式中、
Bは、塩基対部分であり;
Xは、H、OH、OR、F、SH、SR、NR 、MOE、アルキル、アリル、アリール、及びC1-6-アルコキシからなる群から選択され;
は、アルキル、アリルまたはアリールであり;
は、アルキル、アリルまたはアリールである)。
【0030】
式(VIII)の実施形態では、塩基対部分Bは、アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルからなる群から選択される。
【0031】
別の態様では、本開示は、式(IX)のホスホロアミダイト誘導体を提供する:
【化9】
(式中、
Bは、塩基対部分であり;
Xは、H、OH、OR、F、SH、SR、NR 、MOE、アルキル、アリル、アリール、及びC1-6-アルコキシからなる群から選択され;
は、アルキル、アリルまたはアリールであり;
は、アルキル、アリルまたはアリールである)。
【0032】
式(IX)の実施形態では、塩基対部分Bは、アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルからなる群から選択される。
【0033】
別の態様では、本開示は、5’末端、3’末端、及び少なくとも1つの修飾サブユニット間連結を含む修飾オリゴヌクレオチドを合成するための方法を提供し、本方法は、
(a)固体支持体に結合した5’-保護基を有するヌクレオシドを提供することと;
(b)保護基を除去することと;
(c)脱保護されたヌクレオシドを式(VII)のホスホロアミダイト誘導体と組み合わせて、亜リン酸トリエステルを形成することと;
【化10】
(d)亜リン酸トリエステルをキャッピングすることと;
(e)亜リン酸トリエステルを酸化することと;
(f)追加のホスホロアミダイトを使用して、ステップ(b)から(e)を繰り返すことと;
(g)固体支持体から切断することと、を含む。
【0034】
別の態様では、本開示は、式(VII)のホスホロアミダイト誘導体をヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドの5’端にカップリングするための方法を提供し、
【化11】
本方法は、式(VII)のホスホロアミダイト誘導体を、芳香族複素環酸を含む有機溶媒中でヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドに付加することを含む。
【0035】
別の態様では、本開示は、以下を提供する。exNAホスホロアミダイトを合成するための方法であって:本方法は、
(a)3’-保護基を有するヌクレオシドを提供することと;
(b)ヌクレオシドの5’-ヒドロキシル基を酸化して5’-アルデヒド基にすることと;
(c)Wittigオレフィン化により、ヌクレオシドの5’-アルデヒド基を5’-ビニル基に変換することと;
(d)5’-ビニル基に対してヒドロホウ素化/酸化を行って、6’-ヒドロキシル基を産生することと;
(e)6’-ヒドロキシル基をDMTr基で保護することと;
(f)ヌクレオシドの3’-保護基を除去することと;
(g)3’-ヒドロキシル基をホスフィチル化して、3’-ホスホロアミダイトを産生することと、を含む。
【0036】
本開示の上記及び他の特徴及び利点は、添付図面と併せることにより、例示的実施形態の詳細な説明から、より完全に理解されるであろう。本特許または出願書類は、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含む本特許または特許出願公開の複写は、要請かつ必要な料金の支払により特許庁より提供される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本明細書で提供される修飾サブユニット間リンカーを要約している図である。
図2】2’-OMe-exNAホスホロアミダイト9aの合成を提供する図である。
図3】2’-F-exNAホスホロアミダイト9aの合成を提供する図である。
図4】exNA-Cホスホロアミダイトの合成を提供する図である。
図5】exNA-G及びexNA-Aホスホロアミダイトの合成を提供する図である。
図6】5’-3’-ビス-メチレン-exNAホスホロアミダイトの合成を提供する図である。
図7】exNA-リボ-ウリジンホスホロアミダイトの合成を提供する図である。
図8】exNA-リボ-シトシンホスホロアミダイトの合成を提供する図である。
図9】exNA-リボグアノシンまたはexNA-リボ-アデニンホスホロアミダイトの合成を提供する図である。
図10】ホスホロアミダイトモノマーの合成を提供する図である。
図11】糖修飾ヌクレオチドのexNA変換のための普遍的なスキームを提供する図である。
図12】exNA骨格を組み込んだオリゴヌクレオチドの合成を提供する図である。
図13】合成されたexNA修飾RNAヌクレオチドのチャートを提供する図である。
図14】様々な位置にサブユニット間連結を有するexNAを含有するsiRNA二本鎖による標的mRNAのin vitroサイレンシングの有効性の結果を示す図である。
図15】exNA及びホスホロチオエートサブユニット間連結の数の増加に伴うオリゴヌクレオチドの3’エキソヌクレアーゼ安定性の増大を示すモデルを提供する図である。
図16】3’-エキソヌクレアーゼ安定性試験の結果を示す図である。各オリゴヌクレオチド(17.5mM)を、10mM Tris-HCl(pH8.0)、2mM MgCl、及び蛇毒ホスホジエステラーゼI(20mU/mL)を含むバッファで、37℃でインキュベートした。
図17】ホスホジエステル(PO)及びホスホロチオエート(PS)含有オリゴヌクレオチドを有するポリウリジル配列との関連における、ex-NAサブユニット間連結の3’-エキソヌクレアーゼ安定性試験の結果を示す図である。オリゴヌクレオチドは、1、2、3、4、または5つのex-NAサブユニット間連結で試験した。
図18】5’-リン酸依存性5’-エキソヌクレアーゼ安定性試験の結果を示す図である。各オリゴヌクレオチド2.5μM(50pmol)を、RNaseフリー水または3.3ユニットのTerminator(商標)(EpiCentre)エキソヌクレアーゼと共に、バッファA(EpiCentre、Terminator(商標)酵素と共に提供)で37℃でインキュベートした。
図19】5’リン酸非依存性5’エキソヌクレアーゼ安定性試験からの結果を示す図である。各オリゴヌクレオチド(10μM)を、RNaseフリー水または0.25U/mLウシ脾臓ホスホジエステラーゼII(BSP)を含む30mM NaOAc(pH6.0)バッファで、37℃でインキュベートした。
図20A】1つ以上のアンチセンス鎖3’末端exNAサブユニット間連結を含むいくつかのsiRNA二本鎖のin vitroサイレンシング活性を示す結果を示す図である。1つ、2つ、3つ、または4つの3’末端exNAサブユニット間連結を含むアンチセンス鎖を、用量反応曲線で使用した。
図20B】1つ以上のアンチセンス鎖3’末端exNAサブユニット間連結を含むいくつかのsiRNA二本鎖のin vitroサイレンシング活性を示す結果を示す図である。exNAサブユニット間連結を含まないsiRNA二本鎖対照と比較した効力変化率も決定した。
図21A】1つ以上のアンチセンス鎖3’末端exNAサブユニット間連結を含むいくつかのsiRNA二本鎖のin vivoサイレンシング活性を示す結果を示す図である。siRNA二本鎖は、ApoE mRNAを標的とするDi-siRNAフォーマットであった。各siRNA二本鎖をマウスにICV注射により5nmolで投与し、1ヶ月後にApoE mRNAレベルを測定した。ApoE mRNAレベルは、以下の脳領域で測定した:内側皮質。
図21B】1つ以上のアンチセンス鎖3’末端exNAサブユニット間連結を含むいくつかのsiRNA二本鎖のin vivoサイレンシング活性を示す結果を示す図である。siRNA二本鎖は、ApoE mRNAを標的とするDi-siRNAフォーマットであった。各siRNA二本鎖をマウスにICV注射により5nmolで投与し、1ヶ月後にApoE mRNAレベルを測定した。ApoE mRNAレベルは、以下の脳領域で測定した:線条体。
図21C】1つ以上のアンチセンス鎖3’末端exNAサブユニット間連結を含むいくつかのsiRNA二本鎖のin vivoサイレンシング活性を示す結果を示す図である。siRNA二本鎖は、ApoE mRNAを標的とするDi-siRNAフォーマットであった。各siRNA二本鎖をマウスにICV注射により5nmolで投与し、1ヶ月後にApoE mRNAレベルを測定した。ApoE mRNAレベルは、以下の脳領域で測定した:海馬。
図21D】1つ以上のアンチセンス鎖3’末端exNAサブユニット間連結を含むいくつかのsiRNA二本鎖のin vivoサイレンシング活性を示す結果を示す図である。siRNA二本鎖は、ApoE mRNAを標的とするDi-siRNAフォーマットであった。各siRNA二本鎖をマウスにICV注射により5nmolで投与し、1ヶ月後にApoE mRNAレベルを測定した。ApoE mRNAレベルは、以下の脳領域で測定した:視床。
図21E】1つ以上のアンチセンス鎖3’末端exNAサブユニット間連結を含むいくつかのsiRNA二本鎖のin vivoサイレンシング活性を示す結果を示す図である。siRNA二本鎖は、ApoE mRNAを標的とするDi-siRNAフォーマットであった。各siRNA二本鎖をマウスにICV注射により5nmolで投与し、1ヶ月後にApoE mRNAレベルを測定した。ApoE mRNAレベルは、以下の脳領域で測定した:小脳。
図22】1つ以上のアンチセンス鎖3’末端exNAサブユニット間連結を含むいくつかのsiRNA二本鎖のin vivoサイレンシング活性を示す結果を示す図である。siRNA二本鎖は、Htt mRNAを標的とした。各siRNA二本鎖は、マウスへのICV注射により約60μgで投与され、2ヶ月後にHtt mRNAレベルを測定した。Htt mRNAレベルは、以下の脳領域で測定した:内側皮質(A)、線条体(B)、海馬(C)、前頭皮質(D)、及び視床(E)。X軸に沿った数字1~5は、実施例14に示すsiRNAの化学修飾パターンに対応する。
図23】1つ以上のアンチセンス鎖3’末端exNAサブユニット間連結を含むいくつかのsiRNA二本鎖のin vivoサイレンシング活性を示す結果を示す図である。siRNA二本鎖は、Htt mRNAを標的とした。各siRNA二本鎖は、マウスへのICV注射により約60μgで投与され、2ヶ月後にHttタンパク質レベルを測定した。Httタンパク質レベルは、次の脳領域内で測定した:内側皮質(A)、線条体(B)、海馬(C)、前頭皮質(D)、及び視床(E)。X軸に沿った数字1~5は、実施例14に示すsiRNAの化学修飾パターンに対応する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
新規修飾オリゴヌクレオチド及びそれらの合成が提供される。新規ホスホロアミダイト及びそれらの合成も提供される。
【0039】
別段の指定がない限り、本明細書に記載の細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学及びタンパク質ならびに核酸化学及びハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法は、当技術分野で周知であり、一般的に使用されているものである。別段の指定がない限り、本明細書で提供される方法及び技術は、当技術分野で周知の従来の方法に従って、また別段の指定がない限り、本明細書全体で引用及び議論される様々な一般的及びより具体的な参考文献に記載されているとおりに実施される。酵素反応及び精製技術は、製造業者の仕様書に従って、または当該技術分野において一般的に達成されるように、本明細書に記載されるように実行される。本明細書に記載の分析化学、合成有機化学及び薬学・医薬化学に関連して用いられる用語、並びに実験室での手順及び技術は、当分野において周知であり、一般的に用いられるものである。化学合成、化学分析、医薬の調製、製剤化、及び送達、及び患者の治療には標準的技術が用いられる。
【0040】
本明細書で特に定義しない限り、本明細書で使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。潜在的なあらゆるあいまいさがある場合は、ここで提供される定義があらゆる辞書または外部の定義よりも優先される。別段文脈によって要求されない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。「または(or)」の使用は、別途記述されない限り、「及び/または(and/or)」を意味する。「含む(including)」という用語、ならびに「含む(include)」及び「含まれる(included)」等の他の形態の使用は、限定的ではない。
【0041】
本開示がより容易に理解され得るように、特定の用語を最初に定義する。
【0042】
「ヌクレオシド」という用語は、リボースまたはデオキシリボース糖に共有結合により連結したプリンまたはピリミジン塩基を有する分子を指す。例示的ヌクレオシドとしては、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジン、及びチミジンが挙げられる。さらなる例示的ヌクレオシドとしては、イノシン、1-メチルイノシン、プシュードウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、リボチミジン、2N-メチルグアノシン及び2,2N,N-ジメチルグアノシン(「希少」ヌクレオシドとも呼ばれる)が挙げられる。「ヌクレオチド」という用語は、エステル連結内で糖部分に結合された1つ以上のリン酸基を有するヌクレオシドを指す。例示的ヌクレオチドとしては、ヌクレオシド一リン酸、二リン酸、及び三リン酸が挙げられる。「ポリヌクレオチド」及び「核酸分子」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、5’及び3’炭素原子間のホスホジエステルまたはホスホロチオエート連結によって一緒に結合されたヌクレオチドのポリマーを指す。
【0043】
「RNA」または「RNA分子」または「リボ核酸分子」という用語は、リボヌクレオチドのポリマー(例えば、2、3、4、5、10、15、20、25、30、またはそれ以上のリボヌクレオチド)を指す。「DNA」または「DNA分子」または「デオキシリボ核酸分子」という用語は、デオキシリボヌクレオチドのポリマーを指す。DNA及びRNAは、自然に合成され得る(例えば、それぞれDNAの複製またはDNAの転写によって)。RNAは、転写後に修飾され得る。DNA及びRNAも化学的に合成され得る。DNA及びRNAは、一本鎖(すなわち、それぞれssRNA及びssDNA)または多重鎖(例えば、二本鎖、すなわち、それぞれdsRNA及びdsDNA)であり得る。「mRNA」または「メッセンジャーRNA」は、1つ以上のポリペプチド鎖のアミノ酸配列を特定する一本鎖RNAである。この情報は、リボソームがmRNAに結合するときに、タンパク質合成中に変換される。
【0044】
本明細書で使用される用語「低分子干渉RNA」(「siRNA」)(当技術分野では「短鎖干渉RNA」とも呼ばれる)は、約10~50のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)を含むRNA(またはRNA類似体)を指し、RNA干渉を指示または媒介できる。好ましくは、siRNAは、約15~30のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体、より好ましくは、約16~25のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)、さらにより好ましくは、約18~23のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)、さらにより好ましくは約19~22のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)(例えば、19、20、21または22のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体)を含む。「短い」siRNAという用語は、約21ヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)、例えば、19、20、21または22ヌクレオチドを含むsiRNAを指す。「長い」siRNAという用語は、約24~25ヌクレオチド、例えば、23、24、25または26ヌクレオチドを含むsiRNAを指す。短いsiRNAは、場合によっては、短いsiRNAがRNAiを媒介する能力を保持するという条件で、19未満のヌクレオチド、例えば、16、17または18ヌクレオチドを含み得る。同様に、長いsiRNAは、場合によっては、より長いsiRNAが、短いsiRNAへのさらなるプロセシング、例えば酵素プロセシングなく、RNAiを媒介する能力を保持するという条件で、26を超えるヌクレオチドを含み得る。
【0045】
「ヌクレオチド類似体」または「改変ヌクレオチド」または「修飾ヌクレオチド」という用語は、天然に存在しないリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドなど、非標準ヌクレオチドを指す。例示的ヌクレオチド類似体は、ヌクレオチドの特定の化学的性質を改変させるが、その意図された機能を実行するヌクレオチド類似体の能力を保持するように、任意の位置で修飾される。誘導体化され得るヌクレオチドの位置の例としては、5位、例えば、5-(2-アミノ)プロピルウリジン、5-ブロモウリジン、5-プロピンウリジン、5-プロペニルウリジン;6位、例えば6-(2-アミノ)プロピルウリジン;アデノシン及び/またはグアノシンの8位、例えば、8-ブロモグアノシン、8-クロログアノシン、8-フルオログアノシンが挙げられる。また、ヌクレオチド類似体としては、デアザヌクレオチド、例えば、7-デアザ-アデノシン;O-及びN-修飾(例えば、アルキル化、例えばN6-メチルアデノシン、または当技術分野で知られているもの)ヌクレオチド;及び他の複素環修飾ヌクレオチド類似体、例えば、Herdewijn,Antisense Nucleic Acid Drug Dev.,2000 Aug.10(4):297-310に記載のものが挙げられる。
【0046】
ヌクレオチド類似体はまた、ヌクレオチドの糖部分への修飾を含み得る。例えば、2’OH基は、H、OR、R、F、Cl、Br、I、SH、SR、NH、NHR、NR、またはCOORから選択される基によって置換されてもよく、ここでRは、置換または非置換のC~Cアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールなどである。他の考えられる修飾は、米国特許第5,858,988号及び同第6,291,438号に記載されているものが挙げられる。
【0047】
ヌクレオチドのリン酸基はまた、例えば、リン酸基の酸素の1つ以上を硫黄(例えば、ホスホロチオエート)で置換することによって、またはヌクレオチドがその意図された機能を実行できるように、他の置換を行うことによって、修飾され得る。例えば、Eckstein,Antisense Nucleic Acid Drug Dev.2000 Apr.10(2):117-21,Rusckowski et al.Antisense Nucleic Acid Drug Dev.2000 Oct.10(5):333-45,Stein,Antisense Nucleic Acid Drug Dev.2001 Oct.11(5):317-25,Vorobjev et al.Antisense Nucleic Acid Drug Dev.2001 Apr.11(2):77-85、及び米国特許第5,684,143号に記載されている。上で参照した特定の修飾(例えば、リン酸基修飾)は、好ましくは、例えば、in vivoまたはin vitroで類似体を含むポリヌクレオチドの加水分解速度を低下させる。
【0048】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチド及び/またはヌクレオチド類似体の短いポリマーを指す。「RNA類似体」という用語は、対応する未改変または未修飾のRNAと比較して、少なくとも1つの改変または修飾されたヌクレオチドを有するが、対応する未改変または未修飾のRNAと同じまたは類似の性質または機能を保持するポリヌクレオチド(例えば、化学的に合成されたポリヌクレオチド)を指す。上述のとおり、オリゴヌクレオチドは、ホスホジエステル連結を有するRNA分子と比較して、結果としてRNA類似体の加水分解速度を低下させる連結により連結され得る。例えば、類似体のヌクレオチドは、メチレンジオール、エチレンジオール、オキシメチルチオ、オキシエチルチオ、オキシカルボニルオキシ、ホスホロジアミデート、ホスホロアミデート、及び/またはホスホロチオエート連結を含み得る。好ましいRNA類似体には、糖及び/または骨格修飾リボヌクレオチド及び/またはデオキシリボヌクレオチドが含まれる。そのような改変または修飾は、RNAの末端(複数可)または内部(RNAの1つ以上のヌクレオチド)などへの非ヌクレオチド物質の付加をさらに含むことができる。RNA類似体は、RNA干渉を媒介する能力を有する天然のRNAと十分に類似していることのみを必要とする。
【0049】
本明細書で使用される「RNA干渉」(「RNAi」)という用語は、RNAの選択的な細胞内分解を指す。RNAiは、細胞内で自然に発生し、外来RNA(例えば、ウイルスRNAなど)を除去する。天然のRNAiは、遊離dsRNAから切断された断片を介して進行し、分解メカニズムを他の同様のRNA配列に向ける。あるいは、例えば標的遺伝子の発現をサイレンシングするために、ヒトの手によって、RNAiを開始させ得る。
【0050】
「標的特異的RNA干渉(RNAi)を指示するために、標的mRNA配列に十分に相補的な配列」である鎖を有するRNAi剤、例えば、RNAサイレンシング剤は、その鎖が、RNAi機構またはプロセスによる標的mRNAの破壊を引き起こすのに十分な配列を有することを意味する。
【0051】
本明細書で使用される「単離RNA」(例えば、「単離siRNA」または「単離siRNA前駆体」)は、組換え技術によって産生された場合は、実質的に他の細胞材料または培養培地を含まないRNA分子を指し、化学合成された場合は、実質的に化学前駆体または他の化学物質を含まない。
【0052】
本明細書で使用される「RNAサイレンシング」という用語は、RNA分子によって媒介される配列特異的調節機構(例えば、RNA干渉(RNAi)、転写遺伝子サイレンシング(TGS)、転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)、クエルリング、共抑制、及び翻訳抑制)の一群を指し、これらは、対応するタンパク質コード遺伝子の発現の阻害または「サイレンシング」をもたらす。RNAサイレンシングは、植物、動物、及び菌類など、多くの種類の生物で観察されている。
【0053】
「識別的RNAサイレンシング」という用語は、例えば、両方のポリヌクレオチド配列が同じ細胞中に存在する場合、RNA分子が「第1」または「標的」ポリヌクレオチド配列の発現を実質的に阻害する一方で、「第2」または「非標的」ポリヌクレオチド配列の発現を実質的に阻害しない能力を指す。特定の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、標的遺伝子に対応し、非標的ポリヌクレオチド配列は、非標的遺伝子に対応する。他の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、標的対立遺伝子に対応し、非標的ポリヌクレオチド配列は、非標的対立遺伝子に対応する。特定の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、標的遺伝子の調節領域(例えば、プロモーターまたはエンハンサーエレメント)をコードするDNA配列である。他の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、標的遺伝子によってコードされる標的mRNAである。
【0054】
「in vitro」という用語は、例えば精製された試薬または抽出物、例えば細胞抽出物を含む、その技術分野で認識されている意味を有する。「in vivo」という用語はまた、例えば、生きている細胞、例えば、不死化細胞、一次細胞、細胞株、及び/または生物内の細胞を含む、当業者によって認識されている意味を有する。
【0055】
本明細書で使用される場合、「導入遺伝子」という用語は、人工的に細胞に挿入され、細胞から発生する生物のゲノムの一部となる任意の核酸分子を指す。そのような導入遺伝子は、トランスジェニック生物に対して部分的または完全に異種(すなわち、外来)である遺伝子を含み得るか、または生物の内因性遺伝子に相同である遺伝子を表し得る。「導入遺伝子」はまた、トランスジェニック生物、例えば、動物中に発現する、1つ以上の操作されたRNA前駆体をコードする、1つ以上の選択された核酸配列、例えば、DNAを含む核酸分子を意味し、これは、一部または完全にトランスジェニック動物と異種である、すなわち外来性であるか、またはトランスジェニック動物の内因性遺伝子と相同であるが、天然遺伝子とは異なる場所で、動物のゲノムに挿入されるように設計されている。導入遺伝子は、選択された核酸配列の発現に必要な1つ以上のプロモーター及び任意の他のDNA、例えば、イントロンを含み、すべてが、選択された配列に作動可能に連結され、エンハンサー配列を含んでもよい。
【0056】
疾患または障害に「関与する」遺伝子には、遺伝子、その正常または異常な発現または機能が、疾患もしくは障害、または疾患もしくは障害の少なくとも1つの症状に影響を及ぼすまたはこれらを引き起こす遺伝子が含まれる。
【0057】
本明細書で使用される「機能獲得型変異」という用語は、遺伝子によってコードされるタンパク質(すなわち、変異タンパク質)が、通常はそのタンパク質(すなわち、野生型タンパク質)に関連しない機能を獲得し、疾患または障害を引き起こすか、またはそれらの一因となる、遺伝子における任意の変異を指す。機能獲得型変異は、コードされたタンパク質の機能の変化を引き起こす、遺伝子中のヌクレオチド(複数可)の欠失、付加、または置換であり得る。一実施形態では、機能獲得型変異は、変異タンパク質の機能を変化させるか、または他のタンパク質との相互作用を引き起こす。別の実施形態では、機能獲得型変異は、例えば、改変変異タンパク質と正常野生型タンパク質との相互作用によって、正常な野生型タンパク質の減少または除去を引き起こす。
【0058】
本明細書で使用される「標的遺伝子」という用語は、その発現が実質的に阻害されるか、または「サイレンシング」される遺伝子である。このサイレンシングは、例えば、標的遺伝子のmRNAの切断または標的遺伝子の翻訳抑制によるRNAのサイレンシングによって達成することができる。「非標的遺伝子」という用語は、その発現が実質的にサイレンシングを受けない遺伝子である。一実施形態では、標的遺伝子及び非標的遺伝子のポリヌクレオチド配列(例えば、標的遺伝子及び非標的遺伝子によってコードされるmRNA)は、1つ以上のヌクレオチドが異なり得る。別の実施形態では、標的及び非標的遺伝子は、1つ以上の多型(例えば、一塩基多型またはSNP)によって異なり得る。別の実施形態では、標的及び非標的遺伝子は、100%未満の配列同一性を共有できる。別の実施形態では、非標的遺伝子は、標的遺伝子の相同体(例えばオルソログまたはパラログ)であってもよい。
【0059】
「標的対立遺伝子」は、その発現が選択的に阻害または「サイレンシング」される対立遺伝子(例えば、SNP対立遺伝子)である。このサイレンシングは、RNAサイレンシングによって、例えば、siRNAによって標的遺伝子または標的対立遺伝子のmRNAを切断することによって達成することができる。「非標的対立遺伝子」という用語は、発現が実質的にサイレンシングを受けない対立遺伝子である。特定の実施形態では、標的対立遺伝子及び非標的対立遺伝子は、同じ標的遺伝子に対応することができる。他の実施形態では、標的対立遺伝子は、標的遺伝子に対応するか、または関連しており、非標的対立遺伝子は、非標的遺伝子に対応するか、または関連している。一実施形態では、標的対立遺伝子及び非標的対立遺伝子のポリヌクレオチド配列は、1つ以上のヌクレオチドが異なり得る。別の実施形態では、標的対立遺伝子及び非標的対立遺伝子は、1つ以上の対立遺伝子多型(例えば、1つ以上のSNP)が異なり得る。別の実施形態では、標的対立遺伝子及び非標的対立遺伝子は、100%未満の配列同一性を共有できる。
【0060】
本明細書で使用される「多型」という用語は、異なる源または対象(しかし、同じ生物)からの同じ遺伝子配列を比較する場合に同定または検出される遺伝子配列中の変形(例えば、1つ以上の欠失、挿入、または置換)を指す。例えば、異なる対象からの同じ遺伝子配列を比較する場合、多型を同定することができる。このような多型の同定は、当技術分野では日常的であり、その方法論は、例えば、乳がんの点変異を検出するために使用されるものと類似している。同定は、例えば、対象のリンパ球から抽出されたDNAから行うことができ、その後多型領域に対する特異的プライマーを使用して、多型領域を増幅することができる。あるいは、同じ遺伝子の2つの対立遺伝子を比較する場合に、多型を同定できる。特定の実施形態では、多型は、一塩基多型(SNP)である。
【0061】
生物内の同じ遺伝子の2つの対立遺伝子間の配列の変形は、本明細書では「対立遺伝子多型」と呼ばれる。特定の実施形態では、対立遺伝子多型は、SNP対立遺伝子に対応する。例えば、対立遺伝子多型は、SNPの2つの対立遺伝子間の単一ヌクレオチド変形を含み得る。多型は、コード領域内のヌクレオチドにあり得るが、遺伝暗号の縮重により、アミノ酸配列の変化はコードされない。あるいは、多型配列は、特定の位置において異なるアミノ酸をコードできるが、アミノ酸の変化は、タンパク質の機能に影響しない。多型領域は、遺伝子の非コード領域にも見られる。例示的な実施形態では、多型は、遺伝子のコード領域または遺伝子の非翻訳領域(例えば、5’UTRまたは3’UTR)に見出される。
【0062】
本明細書で使用される「対立遺伝子頻度」という用語は、個体集団中の単一遺伝子座における対立遺伝子(例えば、SNP対立遺伝子)の相対頻度の尺度(例えば、割合またはパーセンテージ)である。例えば、個体の集団が、体細胞のそれぞれ内に特定の染色体遺伝子座(及びその遺伝子座を占める遺伝子)のn遺伝子座を保有する場合、対立遺伝子の対立遺伝子頻度は、集団中に対立遺伝子が占める遺伝子座の割合またはパーセンテージである。特定の実施形態では、対立遺伝子(例えば、SNP対立遺伝子)の対立遺伝子頻度は、サンプル集団中において、少なくとも10%(例えば、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%またはそれ以上)である。
【0063】
本明細書で使用される場合、「サンプル集団」という用語は、統計的に有意な数の個体を含む個体の集団を指す。例えば、サンプル集団は、50人、75人、100人、200人、500人、1000人、またはそれ以上の個体を含み得る。特定の実施形態では、サンプル集団は、少なくとも共通の疾患表現型(例えば、機能獲得型障害)または変異(例えば、機能獲得型変異)を共有する個体を含み得る。
【0064】
本明細書で使用する場合、「ヘテロ接合性」という用語は、特定の遺伝子座(例えば、SNP)においてヘテロ接合性である(例えば、2つ以上の異なる対立遺伝子を含む)、任意のある集団内の個体の割合を指す。ヘテロ接合性は、当業者に周知の方法を用いて、サンプル集団について計算し得る。
【0065】
「細胞または生物における遺伝子の機能を検査する」という語句は、そこから生じる発現、活性、機能または表現型を検査または研究することを指す。
【0066】
本明細書で使用される「RNAサイレンシング剤」という用語は、標的遺伝子の発現を阻害または「サイレンシング」することができるRNAを指す。特定の実施形態では、RNAサイレンシング剤は、転写後のサイレンシング機構により、mRNA分子の完全なプロセシング(例えば、完全な翻訳及び/または発現)を防ぐことができる。RNAサイレンシング剤としては、小さい(<50b.p.)、非コードRNA分子、例えば、対合した鎖を含むRNA二本鎖、ならびにそのような小さい非コードRNAを生成することができる前駆体RNAが挙げられる。例示的なRNAサイレンシング剤としては、siRNA、miRNA、siRNA様二本鎖、アンチセンスオリゴヌクレオチド、GAPMER分子、及び二重機能オリゴヌクレオチド、ならびにそれらの前駆体が挙げられる。一実施形態では、RNAサイレンシング剤は、RNA干渉を誘導することができる。別の実施形態では、RNAサイレンシング剤は、翻訳抑制を媒介することができる。
【0067】
本明細書で使用される場合、「希少ヌクレオチド」という用語は、低頻度で生じる天然のヌクレオチド、例えば、低頻度で生じる天然のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、例えば、グアノシン、アデノシン、シトシン、またはウリジンではない天然のリボヌクレオチドを指す。希少ヌクレオチドの例としては、これらに限定されないが、イノシン、1-メチルイノシン、シュードウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、リボチミジン、2N-メチルグアノシン及び2,2N,N-ジメチルグアノシンが挙げられる。
【0068】
「操作された」という用語は、操作されたRNA前駆体または操作された核酸分子のように、前駆体または分子の核酸配列のすべてまたは一部が、作成されるかまたはヒトによって選択されるという点で、前駆体または分子が自然界に見出されないことを示す。一旦作成されるかまたは選択されると、配列は、細胞内の機構によって複製、翻訳、転写、または他の方法でプロセシングされる。したがって、操作された核酸分子を含む導入遺伝子から細胞内で産生されたRNA前駆体は、操作されたRNA前駆体である。
【0069】
本明細書で使用される用語「マイクロRNA」(「miRNA」)は、当技術分野において「一時的低分子RNA(small temporal RNA)」(「stRNA」)も指し、(例えば、ウイルス、哺乳動物、または植物のゲノムによって)遺伝的にコードされ、RNAサイレンシングを指示または媒介することができる小さい(例えば、10~50ヌクレオチド)RNAを指す。「miRNA障害」は、miRNAの異常な発現または活性を特徴とする疾患または障害を指すものとする。
【0070】
本明細書で使用される場合、用語「二重官能性オリゴヌクレオチド」は、式T-L-μを有するRNAサイレンシング剤を指し、式中、Tは、mRNA標的化部分であり、Lは、連結部分であり、μは、miRNA動員部分である。本明細書で使用される場合、用語「mRNA標的化部分」、「標的化部分」、「mRNA標的化部分」または「標的化部分」は、十分なサイズ及びサイレンシングのために選択または標的化されたmRNAの部分または領域(すなわち、その部分は、標的mRNAを捕捉するのに十分な配列を有する)に対して十分な相補性を有する二重機能性オリゴヌクレオチドのドメイン、部分または領域を指す。本明細書で使用される「連結部分(linking moiety)」または「連結部分(linking portion)」という用語は、mRNAを共有結合により接合させるまたは連結するRNAサイレンシング剤のドメイン、部分または領域を指す。
【0071】
本明細書で使用される場合、RNAサイレンシング剤、例えばsiRNAまたはRNAサイレンシング剤の「アンチセンス鎖」という用語は、サイレンシングのために標的化された遺伝子のmRNAの約10~50ヌクレオチド、例えば約15~30ヌクレオチド、16~25、18~23または19~22ヌクレオチドのセクションに実質的に相補的な鎖を指す。アンチセンス鎖または第1の鎖は、標的特異的サイレンシングを指示するために、所望の標的mRNA配列に対して十分に相補的である、例えば、RNAiの機構またはプロセス(RNAi干渉)によって所望の標的mRNAの破壊を引き起こすのに十分に相補的である、または所望の標的mRNAの翻訳抑制を引き起こすのに十分に相補的である配列を有する。
【0072】
RNAサイレンシング剤、例えばsiRNAまたはRNAサイレンシング剤の「センス鎖」または「第2の鎖」という用語は、アンチセンス鎖または第1の鎖に相補的な鎖を指す。アンチセンス鎖及びセンス鎖はまた、第1の鎖または第2の鎖と称することができ、第1の鎖または第2の鎖は、標的配列に対して相補性を有し、それぞれの第2の鎖または第1の鎖は、第1の鎖または第2の鎖に対して相補性を有する。miRNA二本鎖中間体またはsiRNA様二本鎖には、サイレンシングの標的とされる遺伝子のmRNAの約10~50のヌクレオチドのセクションに十分な相補性を有するmiRNA鎖、及びmiRNA鎖と二本鎖を形成するのに十分な相補性を有するmiRNA*鎖が含まれる。
【0073】
本明細書で使用される用語「ガイド鎖」は、RISC複合体に入り、標的mRNAの切断を指示する、RNAサイレンシング剤の鎖、例えば、siRNA二本鎖またはsiRNA配列のアンチセンス鎖を指す。
【0074】
本明細書で使用される「非対称性」という用語は、RNAサイレンシング剤の二重鎖領域(例えば、shRNAのステム)の非対称性におけるように、RNAサイレンシング剤の末端間の結合強度または塩基対強度が不均等(例えば、第1の鎖またはステム部分上の末端ヌクレオチドと、対向する第2の鎖またはステム部分上の末端ヌクレオチドとの間)であることを指す。これにより、二本鎖の一方の鎖の5’末端が、相補鎖の5’末端よりも一過性の不対合状態、例えば一本鎖の状態にある頻度が高くなる。この構造上の違いにより、二重鎖の一方の鎖が、RISC複合体に優先的に組み込まれることが決定する。5’末端が相補鎖とあまり強固に対合していない鎖は、優先的にRISCに組み込まれ、RNAiを媒介するであろう。
【0075】
本明細書で使用される「結合強度」または「塩基対強度」という用語は、主に、H結合、ファンデルワールス相互作用などによるオリゴヌクレオチド二本鎖(例えば、siRNA二本鎖)の対抗する鎖上のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)の対間、及びこれらのヌクレオチド(又はヌクレオチド類似体)間の相互作用の強度を指す。
【0076】
本明細書で使用される「5’末端」は、アンチセンス鎖の5’末端のように、5’末端ヌクレオチド、例えば、アンチセンス鎖の5’末端の1~約5ヌクレオチドの間を指す。本明細書で使用される「3’末端」は、センス鎖の3’末端のように、相補的なアンチセンス鎖の5’末端のヌクレオチドに相補的な領域、例えば、1~約5ヌクレオチドの領域を指す。
【0077】
本明細書で使用される「不安定化ヌクレオチド」という用語は、塩基対が従来の塩基対(すなわち、ワトソン-クリック塩基対)よりも結合強度が低くなるように、第2のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体と塩基対を形成することができる第1のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体を指す。特定の実施形態では、不安定化ヌクレオチドは、第2のヌクレオチドとミスマッチ塩基対を形成することができる。他の実施形態では、不安定化ヌクレオチドは、第2のヌクレオチドとゆらぎ塩基対を形成することができる。さらに他の実施形態では、不安定化ヌクレオチドは、第2のヌクレオチドと曖昧な塩基対を形成することができる。
【0078】
本明細書で使用される「塩基対」という用語は、オリゴヌクレオチド二重鎖(例えば、RNAサイレンシング剤の鎖及び標的mRNA配列によって形成される二重鎖)の対向する鎖上のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)の対間の、主に、ヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)間のH結合、ファンデルワールス相互作用などによる相互作用を指す。本明細書で使用される「結合強度」または「塩基対強度」という用語は、塩基対の強度を指す。
【0079】
本明細書で使用される用語「ミスマッチ塩基対」は、例えば、正常な相補的なG:C、A:T、A:U塩基対ではない、非相補的または非ワトソンクリック塩基対からなる塩基対を指す。本明細書で使用される用語「曖昧な塩基対」(非識別塩基対としても知られる)は、ユニバーサルヌクレオチドによって形成される塩基対を指す。
【0080】
本明細書で使用される「ユニバーサルヌクレオチド(universal nucleotide)」(「中性ヌクレオチド」としても知られる)という用語は、塩基対を形成するときの相補的なポリヌクレオチド上で塩基間を有意に識別しない塩基(「ユニバーサル塩基」または「中性塩基」)を有するヌクレオチド(例えば、ある特定の不安定化ヌクレオチド)を含む。ユニバーサルヌクレオチドは、主に疎水性分子であり、スタッキング相互作用により逆平行二本鎖核酸(例えば、二本鎖DNAまたはRNA)に効率よくパックすることができる。ユニバーサルヌクレオチドの塩基部分は、典型的には、窒素含有芳香族複素環部分を含む。
【0081】
本明細書で使用される「十分な相補性」または「十分な程度の相補性」という用語は、RNAサイレンシング剤が、それぞれ、所望の標的に結合する、及び標的mRNAのRNAサイレンシングを誘発するのに十分な配列を(例えば、アンチセンス鎖、mRNA標的化部分またはmiRNA動員部分中に)有することを意味する。
【0082】
本明細書で使用される「翻訳抑制」という用語は、mRNA翻訳の選択的阻害を指す。自然な翻訳抑制は、shRNA前駆体から切断されたmiRNAを介して進行する。RNAi及び翻訳抑制の両方が、RISCによって媒介される。RNAi及び翻訳抑制の両方が自然に発生するか、例えば、標的遺伝子の発現をサイレンシングするためにヒトの手によって開始され得る。
【0083】
本明細書で使用するところの「アルコキシ」なる用語は、-O-アルキル基を指す(アルキルは本明細書で定義するとおりである)。アルコキシとしては、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、t-ブトキシなどが挙げられる。一実施形態では、C1~C6アルコキシ基が本明細書で提供される。
【0084】
本明細書で使用されるとき、「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、単独でまたは別の置換基の一部として、別途定めのない限り、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子、好ましくは、フッ素、塩素、または臭素、より好ましくは、フッ素または塩素を意味する。
【0085】
本明細書で使用される「ヒドロキシ」という用語は、単独でまたは別の置換基の一部として、特に明記がない限り、式-OHを有するアルコール部分を意味する。
【0086】
本明細書で使用される「exNA」という用語は、3’位、5’位、またはその両方に1つ以上の追加のCH2基を含むサブユニット間連結を含む「伸長核酸」を指す。
【0087】
リンカーの調製には、様々な化学基の保護及び脱保護を伴い得る。保護及び脱保護の必要性、及び適切な保護基の選択は、当業者によって容易に決定され得る。保護基の化学は、例えば、Greene,et al.,Protective Groups in Organic Synthesis,4d.Ed.,Wiley&Sons,2007に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の保護基ならびに形成及び切断方法の調整は、様々な置換基を考慮して必要に応じて調整することができる。
【0088】
本開示の様々な方法論は、値、レベル、特徴、特性、性質などを、本明細書では交換可能に「適切な対照」と呼ばれる「好適な対照」と比較することを含むステップを含む。「好適な対照」または「適切な対照」は、比較目的に有用な、当業者によく知られている任意の対照または標準である。一実施形態では、「好適な対照」または「適切な対照」は、本明細書に記載のとおり、RNAi方法論を実施する前に決定された値、レベル、特徴、特性、性質などである。例えば、転写速度、mRNAレベル、翻訳速度、タンパク質レベル、生物学的活性、細胞の特徴または性質、遺伝子型、表現型などは、本開示のRNAサイレンシング剤を細胞または生物に導入する前に決定することができる。別の実施形態では、「好適な対照」または「適切な対照」は、細胞または生物、例えば対照または例えば、正常な形質を呈する正常な細胞もしくは生物において、決定された値、レベル、特徴、特性、性質などである。さらに別の実施形態では、「好適な対照」または「適切な対照」は、事前定義された値、レベル、特徴、特性、性質などである。
【0089】
特に定義されない限り、本明細書で用いる全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の方法及び材料が、本開示の実施または試験において使用され得るものの、適切な方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によってその全体が組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含めて本明細書が優先する。加えて、材料、方法、及び実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0090】
本開示の様々な態様は、以下のサブセクションでさらに詳細に説明される。
【0091】
I.新規修飾オリゴヌクレオチド合成
ここでは、新規骨格修飾である伸長核酸(exNA)により修飾されたオリゴヌクレオチドの合成手順のポートフォリオについて説明する。この骨格の化学修飾により、オリゴヌクレオチドの代謝安定性が大幅に向上する。化学修飾は、骨格の5’位、3’位、またはその両方に挿入された1つ以上の炭素原子または鎖を含む。この構造調節は、オリゴ骨格上に非標準的なストレッチ/柔軟構造を形成し、オリゴヌクレオチドを様々なヌクレアーゼによる切断から保護する。
【0092】
新規exNA修飾は、siRNA足場において、広く適合性がある。exNA-PS骨格の組み合わせにより、siRNAの有効性を損なうことなく、以下に示すように、代謝安定性の大幅な向上(未修飾オリゴと比較して、10~50桁)が可能になる(例えば、5’-[exNA-PS]4-3’修飾は、siRNAの有効性に対して、負の影響を誘導しないが、大幅に高いエキソヌクレアーゼ安定性を誘導する)。したがって、この代謝的に安定化するexNA修飾は、in vivoでの治療用オリゴヌクレオチド候補の性能を大幅にかつ確固として改善させる。
【0093】
この開示では、exNA修飾オリゴヌクレオチドの合成プロトコルが記載されている。重要なことに、exNA モノマーホスホロアミダイト合成は、市販のヌクレオシドから実現でき、exNA修飾オリゴヌクレオチドは、自動オリゴ合成装置で従来のオリゴヌクレオチド固相合成手順を使用して作製できる。
【0094】
この合成手順は、次の注目すべき利点を提供する。例えば、通常のヌクレオシドから「exNAフォーマット」への変換は、多くの多様な修飾ヌクレオシドに適用可能である。したがって、これにより、化学合成の適合性を備えた、より多くの種類の修飾オリゴヌクレオチドを合成及び創出する可能性が広がる。第二に、オリゴヌクレオチド合成サイクル中に別の特定の合成手順を行う必要がない。これは、特にexNAホスホロアミダイトのボトルを容易にマシンに追加できる自動合成装置を使用する場合、これらのオリゴの使いやすさにおいて大きい利点である。第三に、exNAホスホロアミダイト及びオリゴは、従来の脱保護条件と適合するので、特定のオリゴヌクレオチド脱保護条件は不要である。ここでも、この点は、合成の容易さ及び自動合成装置の使用において有益である。第四に、exNA及び臨床的に検証された修飾ヌクレオチド(例えば、2’-OMe、2’-F、ホスホロチオエート、様々なリガンドコンジュゲート、脂質コンジュゲートなど)の両方を有するミックスマーオリゴヌクレオチドを合成することが可能である。
【0095】
一態様では、本開示は、5’末端、3’末端、及び式Iの少なくとも1つの修飾サブユニット間連結を含む修飾オリゴヌクレオチドを提供する:
【化12】
(式中、
Bは、塩基対部分であり;
Wは、OまたはO(CHであり、nは、1~10であり;
Xは、H、OH、OR、F、SH、SR、NR 及びC1-6-アルコキシからなる群から選択され;
Yは、O、OH、OR、OR、NH、NH、NR 、BH、S、R、及びSHからなる群から選択され;
Zは、OまたはO(CHであり;
は、アルキル、アリルまたはアリールであり;
は、アルキル、アリルまたはアリールである)。
【0096】
式Iの実施形態では、Zは、O(CHであり、nは、1であり、Wは、Oであり、Yは、Oである。
【0097】
式Iの実施形態では、Zは、Oであり、Wは、O(CHであり、nは、1であり、Yは、Oである。
【0098】
式Iの実施形態では、Zは、O(CHであり、nは、1であり、Wは、Oであり、Yは、Oである。
【0099】
式Iの実施形態では、Zは、O(CHであり、nは、1であり、Wは、O(CHであり、Yは、Oである。
【0100】
式Iの実施形態では、Zは、O(CHであり、nは、1ではなく、Wは、O(CHであり、Yは、Oである。
【0101】
式Iの実施形態では、塩基対部分Bは、アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルからなる群から選択される。
【0102】
別の態様では、本開示は、5’末端、3’末端、及び式IIの少なくとも1つの修飾サブユニット間連結を含む修飾オリゴヌクレオチドを提供する:
【化13】
(式中、
Bは、塩基対部分であり;
Xは、H、OH、OR、F、SH、SR、NR 及びC1-6-アルコキシからなる群から選択され;
Yは、O、OH、OR、OR、NH、NH、NR 、BH、S、R、及びSHからなる群から選択され;
は、アルキル、アリルまたはアリールであり;
は、アルキル、アリルまたはアリールである)。
【0103】
式IIの一実施形態では、Yは、Oである。
【0104】
式IIの実施形態では、塩基対部分Bは、アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルからなる群から選択される。
【0105】
別の態様では、本開示は、式IIIの5’末端、3’末端、及び少なくとも1つの修飾サブユニット間連結を含む修飾オリゴヌクレオチドを提供する:
【化14】
(式中、
Bは、塩基対部分であり;
Rは、アルキル、アリルまたはアリールである)。
【0106】
式IIIの一実施形態では、Yは、Oである。
【0107】
式IIIの実施形態では、塩基対部分Bは、アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルからなる群から選択される。
【0108】
別の態様では、本開示は、5’末端、3’末端、及び式IVの少なくとも1つの修飾サブユニット間連結を含む修飾オリゴヌクレオチドを提供する:
【化15】
(式中、
Bは、塩基対部分であり;
Rは、アルキル、アリルまたはアリールである)。
【0109】
式IVの実施形態では、塩基対部分Bは、アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルからなる群から選択される。
【0110】
別の態様では、本開示は、5’末端、3’末端、及び式Vの少なくとも1つの修飾サブユニット間連結を含む修飾オリゴヌクレオチドを提供する:
【化16】
(式中、
Bは、塩基対部分であり;
Rは、アルキル、アリルまたはアリールである)。
【0111】
式Vの実施形態では、塩基対部分Bは、アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルからなる群から選択される。
【0112】
別の態様では、本開示は、5’末端、3’末端、及び式VIの少なくとも1つの修飾サブユニット間連結を含む修飾オリゴヌクレオチドを提供する:
【化17】
(式中、
Bは、塩基対部分であり;
Rは、アルキル、アリルまたはアリールである)。
【0113】
式VIの実施形態では、塩基対部分Bは、アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルからなる群から選択される。
【0114】
別の態様では、本開示は、5’末端、3’末端、及び少なくとも1つの修飾サブユニット間連結を含む修飾オリゴヌクレオチドを合成するための方法を提供し、本方法は、
(a)固体支持体に結合した5’-保護基を有するヌクレオシドを提供することと;
(b)保護基を除去することと;
(c)脱保護されたヌクレオシドを式(VII)のホスホロアミダイト誘導体と組み合わせて、亜リン酸トリエステルを形成することと;
【0115】
【化18】
(d)亜リン酸トリエステルをキャッピングすることと;
(e)亜リン酸トリエステルを酸化することと;
(f)追加のホスホロアミダイトを使用して、ステップ(b)から(e)を繰り返すことと;
(g)固体支持体から切断することと、を含む。
【0116】
II.新規ホスホロアミダイト誘導体の合成
ここでは、新規骨格修飾である伸長核酸(exNA)で修飾されたオリゴヌクレオチドを作製するために使用される新規ホスホロアミダイト誘導体の合成手順のコレクションについて説明する。図11に示すとおり、この修飾は、非常に汎用性が高く、多くの既存のヌクレオシドと組み合わせて、向上された安定性を有するオリゴヌクレオチドの多様性を大幅に高めることができる。この態様では、本開示は、式(VII)のホスホロアミダイト誘導体を提供する:
【化19】
(式中、
Bは、塩基対部分であり;
Xは、H、OH、OR、F、SH、SR、NR 、MOE、アルキル、アリル、アリール、及びC1-6-アルコキシからなる群から選択され;
Zは、OまたはOCHであり;
Rは、OMeまたはOCE(シアノエチル)であり:
は、アルキル、アリルまたはアリールであり;
は、アルキル、アリルまたはアリールである)。
【0117】
式VIIの実施形態では、塩基対部分Bは、アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルからなる群から選択される。
【0118】
別の態様では、本開示は、式(VIII)のホスホロアミダイト誘導体を提供する:
【化20】
(式中、
Bは、塩基対部分であり;
Xは、H、OH、OR、F、SH、SR、NR 、MOE、アルキル、アリル、アリール、及びC1-6-アルコキシからなる群から選択され;
は、アルキル、アリルまたはアリールであり;
は、アルキル、アリルまたはアリールである)。
【0119】
式(VIII)の実施形態では、塩基対部分Bは、アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルからなる群から選択される。
【0120】
別の態様では、本開示は、式(IX)のホスホロアミダイト誘導体を提供する:
【化21】
(式中、
Bは、塩基対部分であり;
Xは、H、OH、OR、F、SH、SR、NR 、MOE、アルキル、アリル、アリール、及びC1-6-アルコキシからなる群から選択され;
は、アルキル、アリルまたはアリールであり;
は、アルキル、アリルまたはアリールである)。
【0121】
式(IX)の実施形態では、塩基対部分Bは、アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルからなる群から選択される。
【0122】
別の態様では、本開示は、式(VII)のホスホロアミダイト誘導体をヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドの5’端にカップリングするための方法を提供し、
【化22】
本方法は、式(VII)のホスホロアミダイト誘導体を、芳香族複素環酸を含む有機溶媒中でヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドに付加することを含む。
【0123】
別の態様では、本開示は、以下を含むexNAホスホスホロアミダイトを合成する方法を提供する:
(a)3’-保護基を有するヌクレオシドを提供することと;
(b)ヌクレオシドの5’-ヒドロキシル基を酸化して5’-アルデヒド基にすることと;
(c)Wittigオレフィン化により、ヌクレオシドの5’-アルデヒド基を5’-ビニル基に変換することと;
(d)5’-ビニル基に対してヒドロホウ素化/酸化を行って、6’-ヒドロキシル基を産生することと;
(e)6’-ヒドロキシル基をDMTr基で保護することと;
(f)ヌクレオシドの3’-保護基を除去することと;
(g)3’-ヒドロキシル基をホスフィチル化して、3’-ホスホロアミダイトを産生することと、を含む。
【0124】
III.siRNAの設計
いくつかの実施形態では、siRNAは、以下のように設計される。最初に、標的遺伝子の一部が同定される。これらの部位におけるmRNAの切断は、対応するタンパク質の翻訳が不要になるものである。センス鎖は、標的配列に基づいて設計した。特定の実施形態では、その部分(及び対応するセンス鎖)は、約15~25ヌクレオチド、例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25ヌクレオチドを含む。しかし、当業者であれば、15ヌクレオチド未満の長さまたは25ヌクレオチドを超える長さを有するsiRNAも、RNAiを媒介するように機能し得ることを理解するであろう。したがって、そのような長さのsiRNAもまた、RNAiを媒介する能力を保持する限り、本開示の範囲内である。より長いRNAi剤が、特定の哺乳動物細胞でインターフェロンまたはPKR応答を誘発することが実証されているが、これは望ましくない場合がある。一態様では、本開示のRNAi剤は、PKR応答を誘発しない(すなわち、十分に短い長さのものである)。しかし、より長いRNAi剤は、例えば、PKR応答を生じさせることができない細胞型、または代替手段によってPKR応答が下方制御または抑制されている状況では有用であり得る。
【0125】
センス鎖配列は、標的配列が本質的に鎖の中央にあるように設計する。標的配列を中心からずれた位置に移動させることにより、場合によっては、siRNAによる切断の効率が低下し得る。しかし、こうした組成物、すなわち効率の低い組成物は、野生型mRNAのオフサイレンシングが検出された場合に使用するのに望ましいかもしれない。
【0126】
アンチセンス鎖は、日常的に、センス鎖と同じ長さであり、相補的ヌクレオチドを含む。一実施形態では、鎖は、完全に相補的である。すなわち、鎖は、アラインまたはアニーリングさせたときに、平滑末端となる。別の実施形態では、鎖は、1、2、3、4、5、6、または7ヌクレオチドオーバーハングが、生成されるようにアラインまたはアニールされる。すなわちセンス鎖の3’末端が、アンチセンス鎖の5’末端よりも1、2、3、4、5、6、または7ヌクレオチド伸長している、及び/またはアンチセンス鎖の3’末端が、センス鎖の5’末端よりも1、2、3、4、5、6、または7ヌクレオチド伸長している。オーバーハングは、標的遺伝子配列(またはその相補体)に対応するヌクレオチドを含む(またはからなる)ことができる。あるいは、オーバーハングは、デオキシリボヌクレオチド、例えばdT、またはヌクレオチド類似体、または他の好適な非ヌクレオチド物質を含む(またはそれらからなる)ことができる。
【0127】
RISCへのアンチセンス鎖の侵入を容易にする(したがって、標的の切断及びサイレンシングの効率を上昇させるまたは改善する)ために、センス鎖の5’末端とアンチセンス鎖の3’末端との間の塩基対強度を改変(低下または減少)させ得る。これらは、以下に詳細に記載され、米国特許第7,459,547号、第7,772,203号及び第7,732,593号、表題「Methods and Compositions for Controlling Efficacy of RNA Silencing」、(2003年6月2日出願)及び米国特許第8,309,704号、7,750,144号、第8,304,530号、第8,329,892号及び第8,309,705号表題「Methods and Compositions for Enhancing the Efficacy and Specificity of RNAi」(2003年6月2日出願)、これらの内容全体がこの参照によりその組み込まれる。一実施形態では、第1の鎖またはアンチセンス鎖の5’末端と第2の鎖またはセンス鎖の3’末端との間のG:C塩基対が、第1の鎖またはアンチセンス鎖の3’末端と第2の鎖またはセンス鎖の5’末端との間よりも少ないため、塩基対強度は低い。別の実施形態では、塩基対強度は、第1の鎖またはアンチセンス鎖の5’末端と第2の鎖またはセンス鎖の3’末端との間の少なくとも1つのミスマッチ塩基対により小さい。特定の例示的な実施形態では、ミスマッチ塩基対は、以下からなる群から選択される:G:A、C:A、C:U、G:G、A:A、C:C及びU:U。別の実施形態では、塩基対強度は、第1またはアンチセンス鎖の5’末端と第2またはセンス鎖の3’末端との間の少なくとも1つのゆらぎ塩基対、例えば、G:Uにより低い。別の実施形態では、塩基対強度は、希少ヌクレオチド、例えばイノシン(I)を含む少なくとも1つの塩基対により低い。特定の例示的な実施形態では、塩基対は、I:A、I:U及びI:Cからなる群から選択される。さらに別の実施形態では、塩基対強度は、修飾ヌクレオチドを含む少なくとも1つの塩基対により低い。特定の例示的な実施形態では、修飾ヌクレオチドは、2-アミノ-G、2-アミノ-A、2,6-ジアミノ-G、及び2,6-ジアミノ-Aからなる群から選択される。
【0128】
目的の標的配列を標的とするのに好適であるsiRNAの設計は、以下に詳細に記載する。siRNAは、標的遺伝子中に見られる任意の他の標的配列について、上記の例示的な教示に従って設計することができる。さらに、この技術は、例えば疾患を引き起こさない標的配列など、任意の他の標的配列を標的とすることに適用可能である。
【0129】
siRNAがmRNA(例えば、目的の標的遺伝子から発現するmRNA)を破壊する有効性を検証するために、キイロショウジョウバエをベースにしたin vitro mRNA発現系において、siRNAをcDNA(例えば、目的の標的遺伝子に対応するcDNA)と共にインキュベートすることができる。32Pで放射性標識された、新しく合成されたmRNA(例えば、標的mRNA)は、アガロースゲル上でオートラジオグラフィーで検出される。切断されたmRNAの存在は、mRNAヌクレアーゼ活性を示す。好適な対照には、siRNAの省略が含まれる。あるいは、選択されたsiRNAと同じヌクレオチド組成を有するが、適切な標的遺伝子に対して有意な配列相補性を有さない対照siRNAが選択される。こうした陰性対照は、選択したsiRNAのヌクレオチド配列をランダムにスクランブルすることによって設計できる。相同性検索を実行して、陰性対照が、適切なゲノム内の任意の他の遺伝子との相同性を欠いていることが確認できる。さらに、陰性対照siRNAは、1つ以上の塩基ミスマッチを配列に導入することによって設計できる。最適なmRNA特異性及び最大mRNA切断をもたらすsiRNA-mRNA相補部位が選択される。
【0130】
IV.RNAi剤
本開示は、例えば上記のように設計されたsiRNA分子を含む。本開示のsiRNA分子は、化学的に合成することができ、またはDNA鋳型からin vitroで、または例えばshRNAからin vivoで転写することができ、または組換えヒトDICER酵素を使用して、in vitroで転写されたdsRNA鋳型を切断して、20、21、または23bpの二本鎖RNA媒介RNAiのプールにする。siRNA分子は、当技術分野で知られている任意の方法を使用して、設計することができる。
【0131】
一態様では、RNAi剤が干渉リボ核酸、例えば上記のsiRNAまたはshRNAである代わりに、RNAi剤は、干渉リボ核酸、例えば上記のshRNAをコードすることができる。換言すれば、RNAi剤は、干渉リボ核酸の転写鋳型となり得る。したがって、本開示のRNAi剤はまた、小さいヘアピンRNA(shRNA)、及びshRNAを発現するように操作された発現構築物を含み得る。shRNAの転写は、ポリメラーゼIII(pol III)プロモーターで開始され、4-5-チミン転写終結部位の2位で終結すると考えられている。発現時に、shRNAは、折り畳まれて、3’UUオーバーハングを有するステムループ構造になると考えられ、その後、これらのshRNAの末端がプロセシングされ、shRNAが、約21~23ヌクレオチドのsiRNA様分子に変換される(Brummelkamp et al.,2002;Lee et al.,2002,上記;Miyagishi et al.,2002;Paddison et al.,2002,上記;Paul et al.,2002,上記;Sui et al.,2002上記;Yu et al.,2002,上記。shRNAの設計及び使用に関するさらなる情報は、インターネットの次のアドレスで確認できる:katandin.cshl.org:9331/RNAi/docs/BseRI-BamHI_Strategy.pdf and katandin.cshl.org:9331/RNAi/docs/Web_version_of_PCR_strategy1.pdf)。
【0132】
本開示の発現構築物としては、適切な発現系での使用に好適である任意の構築物が挙げられ、当技術分野において知られているとおり、これらに限定されないが、レトロウイルスベクター、線形発現カセット、プラスミド、及びウイルスまたはウイルス由来のベクターが挙げられる。そのような発現構築物は、1つ以上の誘導性プロモーター、RNA Pol IIIプロモーター系、例えば、U6 snRNAプロモーターもしくはH1 RNAポリメラーゼIIIプロモーター、または当技術分野で知られている他のプロモーターを挙げることができる。構築物は、siRNAの一方または両方の鎖を含むことができる。両方の鎖を発現する発現構築物はまた、両方の鎖を連結するループ構造を含むことができ、または各鎖は、同じ構築物内の別々のプロモーターから別々に転写することができる。各鎖は、別々の発現構築物から転写できる(Tuschl,T.,2002,上記)。
【0133】
合成siRNAは、カチオン性リポソームトランスフェクション及びエレクトロポレーションなど、当技術分野で知られている方法によって細胞に送達することができる。標的遺伝子の長期的な抑制を得るため、及び特定の状況下での送達を容易にするために、1つ以上のsiRNAを組換えDNA構築物から細胞内で発現させることができる。組換えDNA構築物から細胞内でsiRNA二本鎖を発現させて、細胞内でより長期の標的遺伝子抑制を可能にするためのそのような方法は、機能的な二本鎖siRNAを発現することができる哺乳動物Pol IIIプロモーター系(例えば、H1またはU6/snRNAプロモーター系(Tuschl,T.,2002,上記)など、当該分野で既知である(Bagella et al.,1998;Lee et al.,2002,上記;Miyagishi et al.,2002,上記;Paul et al.,2002,上記;Yu et al.,2002,上記;Sui et al.,2002,上記)。RNA Pol IIIによる転写終結は、DNA鋳型内の一連の4つの連続するT残基で生じ、これにより、siRNA転写産物を特定の配列で終結させる機構がもたらされる。siRNAは、5’-3’及び3’-5’方向で標的遺伝子の配列に相補的であり、siRNAの2本の鎖は、同じ構築物または別々の構築物内で発現し得る。H1またはU6 snRNAプロモーターによって駆動され、細胞内で発現するヘアピンsiRNAは、標的遺伝子の発現を阻害することができる(Bagella et al.,1998;Lee et al.,2002,上記;Miyagishi et al.,2002,上記;Paul et al.,2002,上記;Yu et al.,2002),上記;Sui et al.,2002,上記)。T7プロモーターの制御下にあるsiRNA 配列を含む構築物は、T7 RNAポリメラーゼを発現するベクターと共に細胞に同時トランスフェクトされたときに、機能的なsiRNAも作成される(Jacque et al.,2002,上記)。単一の構築物は、同じ遺伝子または複数の遺伝子を標的とする標的遺伝子の複数の領域など、siRNAをコードする複数の配列を含んでもよく、また、例えば、別のPolIIIプロモーター部位によって駆動され得る。
【0134】
動物細胞は、マイクロRNA(miRNA)と呼ばれる約22ヌクレオチドの一連の非コードRNAを発現する。これは、動物の発育中に転写後または翻訳レベルで遺伝子発現を調節できる。miRNAの共通の特徴の1つは、おそらくRNase III型酵素であるDicer、またはその相同体によって、約70ヌクレオチドの前駆体RNAステムループからすべてが切り出されることである。miRNA前駆体のステム配列を標的mRNAに相補的な配列で置換することにより、操作された前駆体を発現するベクター構築物を使用して、siRNAを産生し、哺乳動物細胞内の特定のmRNA標的に対してRNAiを開始できる(Zeng et al.,上記,2002)。ポリメラーゼIIIプロモーターを含むDNAベクターによって発現したときに、マイクロRNA設計ヘアピンは、遺伝子発現のサイレンシングを行うことができる(McManus et al.,2002,上記)。多型を標的とするマイクロRNAは、siRNA媒介遺伝子サイレンシングがない場合、変異タンパク質の翻訳をブロックするのにも有用であり得る。このような用途は、例えば、設計されたsiRNAが、野生型タンパク質のオフターゲット サイレンシングを引き起こした状況において、有用であり得る。
【0135】
ウイルス媒介性送達機構は、siRNAの発現を介して、例えば、RNA Pol II プロモーター転写制御下で、siRNAを保有する組換えアデノウイルスを生成することによって、標的とした遺伝子の特異的サイレンシングを誘導するためにも使用できる(Xia et al.,2002,上記)。これらの組換えアデノウイルスによるHeLa細胞の感染により、内因性標的遺伝子の発現が減少し得る。siRNAの標的遺伝子を発現するトランスジェニックマウスへ組換えアデノウイルスベクターを注入することにより、標的遺伝子発現のin vivo減少がもたらされる。同上。動物モデルでは、全胚エレクトロポレーションにより、合成siRNAを移植後のマウス胚に効率的に送達できる(Calegari et al.,2002)。成体マウスでは、siRNAの効率的な送達は、「高圧」送達技術、大量のsiRNA含有溶液を動物の尾静脈から急速に(5秒以内に)注入することにより達成できる(Liu et al.,1999,上記;McCaffrey et al.,2002,上記;Lewis et al.,2002。ナノ粒子及びリポソームを使用して、siRNAを動物に送達することもできる。特定の例示的な実施形態では、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)及びそれらの関連ベクターを使用して、1つ以上のsiRNAを細胞、例えば神経細胞(例えば脳細胞)に送達することができる(米国特許出願第2014/0296486号、同第2010/0186103号、同第2008/0269149号、同第2006/0078542号、及び同第2005/0220766号)。
【0136】
本開示の核酸組成物は、当技術分野において公知である非修飾siRNA及び修飾siRNA、例えば、架橋siRNA誘導体または例えばそれらの3’末端または5’末端に連結した非ヌクレオチド部分を有する誘導体など、を両方とも含む。このようにsiRNA誘導体を修飾することにより、対応するsiRNAと比較して、細胞への取込みを改善する、または得られたsiRNA誘導体の細胞標的活性を向上させることができ、siRNA誘導体を細胞内で追跡する、または対応するsiRNAと比較して、siRNA誘導体の安定性を改善するのに有用である。
【0137】
本明細書に記載のとおり、細胞または生物全体に導入された操作されたRNA前駆体により、所望のsiRNA分子の産生がもたらされる。次いで、そのようなsiRNA分子は、RNAi経路の内因性タンパク質成分と会合して、特定のmRNA配列に結合し、切断及び破壊のための標的とする。このようにして、操作されたRNA前駆体から生成されたsiRNAによって標的とされるmRNAは、細胞または生物から枯渇し、これにより、細胞または生物中のそのmRNAによってコードされるタンパク質の濃度の低下となる。RNA前駆体は、典型的には、dsRNAの1つの鎖を個別にコードするか、またはRNAヘアピンループ構造の全ヌクレオチド配列をコードするかのいずれかである核酸分子である。
【0138】
本開示の核酸組成物は、コンジュゲートしていなくてもよく、またはナノ粒子などの別の部分にコンジュゲートしてもよく、これにより、組成物の性質、例えば、吸収、有効性、バイオアベイラビリティ及び/または半減期などの薬物動態パラメータを向上させる。コンジュゲーションは、例えば、本技術で知られている方法、以下の方法を用いて、達成することができる;Lambert et al.,Drug Deliv.Rev.:47(1),99-112(2001)(ポリアルキルシアノアクリレート(PACA)ナノ粒子に付加された核酸について記載);Fattal et al.,J.Control Release 53(1-3):137-43(1998)(ナノ粒子に結合した核酸について記載);Schwab et al.,Ann.Oncol.5 Suppl.4:55-8(1994)(インターカレーション剤、疎水性基、ポリカチオンまたはPACAナノ粒子と連結した核酸について記載);及びGodard et al.,Eur.J.Biochem.232(2):404-10(1995)(ナノ粒子に連結した核酸について記載)。
【0139】
本開示の核酸分子は、当技術分野で知られている任意の方法を使用して標識することもできる。例えば、核酸組成物は、フルオロフォア、例えば、Cy3、フルオレセイン、またはローダミンで標識することができる。標識は、キット、例えば、SILENCER(商標)siRNA標識キット(Ambion)を使用して行うことができる。さらに、siRNAは、例えば、H、32Pまたは別の適切な同位体を使用して、放射標識させ得る。
【0140】
さらに、RNAiは、少なくとも1つの一本鎖RNA中間体を介して進行すると考えられているため、当業者であれば、ss-siRNA(例えば、ds-siRNAのアンチセンス鎖)も、本明細書に記載のとおり、(例えば、化学合成のために)設計され、生成され(例えば、酵素的に生成され)るか、または(例えば、ベクターまたはプラスミドから)発現され、特許請求される方法論に従って利用され得ることを理解するであろう。さらに、無脊椎動物では、RNAiは、RNAiのエフェクターとして作用する長いdsRNA(例えば、約100~1000ヌクレオチド長のdsRNA、好ましくは、約200~500、例えば、約250、300、350、400または450ヌクレオチド長など)によって効果的に誘発され得る (Brondani et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2001 Dec.4;98(25):14428-33.Epub 2001 Nov.27.)
【0141】
V.RNAサイレンシング剤
一実施形態では、本開示は、新規RNAサイレンシング剤(例えば、siRNA及びshRNA)、RNAサイレンシング剤を作製する方法、及び標的遺伝子のRNAサイレンシングのために、改善されたRNAサイレンシング剤(またはその一部)を使用するための方法(例えば、研究及び/または治療方法)を提供する。RNAサイレンシング剤は、アンチセンス鎖(またはその一部)を含み、アンチセンス鎖は、RNA媒介サイレンシング機構(例えば、RNAi)を媒介するためにヘテロ接合型一塩基多型に十分な相補性を有する。
【0142】
特定の実施形態では、以下の特性のうちの1つまたは任意の組み合わせを有するsiRNA化合物が提供される:(1)完全に化学的に安定化している(すなわち、未修飾の2’-OH残基がない);(2)非対称;(3)11~16塩基対の二重鎖;及び(4)一本鎖、部分的または完全にホスホロチオ化された5~8塩基のテール。ホスホロチオエート修飾の数は、異なる実施形態では全部で6から17まで変動する。特定の実施形態では、siRNAは、8つの総ホスホロチオエート修飾及び少なくとも1つのexNAヌクレオチド間連結を含む。特定の実施形態では、siRNAは、4つの総ホスホロチオエート修飾及び少なくとも1つのexNAヌクレオチド間連結を有するアンチセンス鎖を含む。
【0143】
特定の実施形態では、本明細書に記載のsiRNA化合物は、コレステロール、DHA、フェニルトロパン、コルチゾール、ビタミンA、ビタミンD、GalNac、及びガングリオジドを含むがこれらに限定されない、様々な標的化剤にコンジュゲートすることができる。コレステロール修飾型は、広範囲の細胞型(例えば、HeLa、ニューロン、肝細胞、栄養芽層)において、以前に使用された化学的安定化パターン(例えば、ピリミジンではなくすべてのプリンが修飾されている)と比較して、in vitroにおいて有効性が5~10倍改善したことを示した。
【0144】
上記及び本明細書に記載の構造特性を有する本開示の特定の化合物は、「hsiRNA-ASP」(高度安定化パターンを特徴とする疎水的に修飾された低分子干渉RNA)と称され得る。さらに、このhsiRNA-ASPパターンは、脳、脊髄から、肝臓、胎盤、腎臓、脾臓、及び他のいくつかの組織への送達を介して劇的に改善された分布を示し、治療的介入に利用できるようになった。
【0145】
肝臓では、hsiRNA-ASPは、内皮細胞及びクッパー細胞に特異的に送達されるが、肝細胞には送達されないため、この化学修飾パターンは競合技術よりも、GalNacコンジュゲートと相補的になる。
【0146】
本開示の化合物は、以下の態様及び実施形態で説明することができる。
【0147】
第1の態様では、少なくとも16の連続ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドが本明細書に提供され、上記オリゴヌクレオチドは、5’末端、3’末端を有し、かつ標的に対して相補性である、ここで:(1)オリゴヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチド及び2’-フルオロ-リボヌクレオチドを交互に含む;(2)5’末端から2位及び14位のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではない;(3)ヌクレオチドは、図1に示すとおり修飾連結を介して接続される。
【0148】
a)siRNA分子の設計
本開示のsiRNA分子は、センス鎖及び相補的なアンチセンス鎖からなる二本鎖である。一実施形態では、siRNA分子は、約10~50以上のヌクレオチド長を有する、すなわち、各鎖は、10~50のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)を含む。別の実施形態では、siRNA分子は、各鎖中に約15~30、例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30のヌクレオチド長を有する。ここで、鎖のうちの1つは、標的領域に十分に相補的である。一態様では、鎖は、アラインしない(すなわち、対向する鎖中に、相補的な塩基が生じない)鎖の末端に、少なくとも1、2、または3の塩基が存在するように配列される。これにより、鎖がアニールされるときに、二重鎖の一端または両端で、1、2、または3残基のオーバーハングが発生するようになる。別の態様では、siRNA分子は、約10~50以上のヌクレオチド長を有する、すなわち、各鎖は、10~50のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)を含む。さらに別の態様では、siRNA分子は、約15~30、例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または各鎖に30個のヌクレオチドを有し、鎖の一方は標的配列に実質的に相補的であり、他方の鎖は第1の鎖と同一または実質的に同一である。
【0149】
通常、siRNAは、当技術分野において公知である任意の方法を使用して、例えば、以下のプロトコルを使用して設計することができる:
【0150】
2.siRNAのセンス鎖は、選択した標的部位の配列に基づいて設計される。一実施形態では、センス鎖は、約19~25ヌクレオチド、例えば、19、20、21、22、23、24または25ヌクレオチドを含む。別の実施形態では、センス鎖は、21、22または23ヌクレオチドを含む。しかし、当業者であれば、19ヌクレオチド未満の長さまたは25ヌクレオチドを超える長さを有するsiRNAも、RNAiを媒介するように機能し得ることを理解するであろう。したがって、そのような長さのsiRNAもまた、RNAiを媒介する能力を保持する限り、本開示の範囲内である。より長いRNAサイレンシング剤が、特定の哺乳動物細胞でインターフェロンまたはプロテインキナーゼR(PKR)応答を誘発することが実証されているが、これは望ましくない場合がある。一態様では、本開示のRNAサイレンシング剤は、PKR応答を誘発しない(すなわち、十分に短い長さのものである)。しかし、より長いRNAサイレンシング剤は、例えば、PKR応答を生じさせることができない細胞型、または代替手段によって、PKR応答が下方制御または抑制されている状況では有用であり得る。
【0151】
本明細書に記載のsiRNA分子は、siRNAがRNAiを媒介できるように、標的配列との十分な相補性を有する。一般に、ヌクレオチド配列を含むsiRNAは、標的遺伝子のRISC媒介切断をもたらすために、標的遺伝子の標的配列部分と十分に同一である。したがって、一実施形態では、siRNAのセンス鎖は、標的の一部と十分に同一の配列を有するように設計される。例えば、センス鎖は、標的部位に対して100%の同一性を有し得る。しかし、100%同一である必要はない。センス鎖と標的RNA配列との間で、80%を超える同一性、例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはさらには100%の同一性が一実施形態で使用される。本開示は、RNAiの効率及び特異性を高めるために、特定の配列の変形を許容できるという利点を有する。一実施形態では、センス鎖は、野生型対立遺伝子と突然変異対立遺伝子との間で少なくとも1つの塩基対が異なる標的領域などの標的領域と4、3、2、1、または0個のミスマッチヌクレオチドを有する。例えば、標的領域は、機能獲得型変異を含み、他の鎖は、第1の鎖と同一であるかまたは実質的に同一である。さらに、1または2ヌクレオチドの小さい挿入または欠失を有するsiRNA配列も、RNAiの媒介に有効であり得る。あるいは、ヌクレオチド類似体の置換または挿入を有するsiRNA配列は、阻害に有効であり得る。
【0152】
配列同一性は、当技術分野で知られている配列比較及びアラインメントアルゴリズムによって決定され得る。2つの核酸配列(または2つのアミノ酸配列)の同一性パーセントを決定するために、最適な比較のために配列をアラインさせる(例えば、最適なアラインのために第1の配列または第2の配列にギャップを導入することができる)。次いで、対応するヌクレオチド(またはアミノ酸)位置のヌクレオチド(またはアミノ酸残基)を比較する。第1の配列内の位置が、第2の配列内の対応する位置と同じ残基で占有されている場合、分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、その配列が共有する同一位置の数に対応し(すなわち、%相同性=同一位置の数/位置の総数x100)、任意により、導入されたギャップの数及び/または導入されたギャップの長さのスコアにペナルティを付与する。
【0153】
配列の比較及び2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。一実施形態では、アラインメントは、十分な同一性を有するアラインされた配列の特定の部分において生成され、低い程度の同一性を有する部分では生成されない(すなわち、局所的アラインメント)。配列の比較に利用される局所アラインメントアルゴリズムの1つの非限定的な例は、Karlin and Altschul(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-68、改訂Karlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-77のアルゴリズムである。かかるアルゴリズムは、BLASTプログラム(version 2.0)、Altschul,et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-10に組み込まれる。
【0154】
別の実施形態では、アラインメントは、適切なギャップを導入することによって最適化され、パーセント同一性は、アラインされた配列の長さ(すなわち、ギャップのあるアラインメント)にわたって決定される。比較目的のためのギャップアライメントを得るために、Gapped BLASTを、Altschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402に記載のとおり使用できる。別の実施形態では、適切なギャップを導入することによってアラインメントを最適化し、アラインされた配列の全長においてパーセント同一性を決定する(すなわち、グローバルアラインメント)。配列のグローバル比較に利用される数学的アルゴリズムの1つの非限定的な例は、Myers及びMillerのアルゴリズム、CABIOS(1989)である。このようなアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120重量残基テーブル、12のギャップ長ペナルティ、及び4のギャップペナルティを使用することができる。
【0155】
3.siRNAのアンチセンス鎖またはガイド鎖は、日常的に、センス鎖と同じ長さであり、相補的ヌクレオチドを含む。一実施形態では、ガイド鎖及びセンス鎖は、完全に相補的である。すなわち、鎖は、アラインまたはアニーリングされたときに、平滑末端化される。別の実施形態では、siRNAの鎖は、1~7(例えば、2、3、4、5、6または7)、または1~4の3’オーバーハング、例えば、2、3、または4ヌクレオチドを有するように、対合させ得る。オーバーハングは、標的遺伝子配列(またはその相補体)に対応するヌクレオチドを含む(またはからなる)ことができる。あるいは、オーバーハングは、デオキシリボヌクレオチド、例えばdT、またはヌクレオチド類似体、または他の好適な非ヌクレオチド物質を含む(またはそれらからなる)ことができる。したがって、別の実施形態では、核酸分子は、TTなどの2ヌクレオチドの3’オーバーハングを有し得る。オーバーハングヌクレオチドは、RNAまたはDNAのいずれかであり得る。上記のとおり、変異体:野生型のミスマッチがプリン:プリンのミスマッチである標的領域を選択することが望ましい。
【0156】
4.当技術分野で知られている任意の方法を使用して、潜在的な標的を適切なゲノムデータベース(ヒト、マウス、ラットなど)と比較することができ、他のコード配列と有意な相同性を有する任意の標的配列が不要になり得る。このような配列相同性検索の方法の1つは、BLASTとして知られており、National Center for Biotechnology InformationのWebサイトで入手できる。
【0157】
5.評価基準を満たす1つ以上の配列を選択する。
【0158】
siRNAの設計及び使用に関する一般的な情報は、The Max-Plank-Institut fur Biophysikalische ChemieのWebサイトで入手可能な「The siRNA User Guide」に見ることができる。
【0159】
あるいは、siRNAは、標的配列とハイブリダイズできる(例えば、400mM NaCl、40mM PIPES pH6.4、1mMEDTAと、50℃または70℃、12~16時間ハイブリダイズし、その後洗浄する)ヌクレオチド配列(またはオリゴヌクレオチド配列)として機能的に定義され得る。追加のハイブリダイゼーション条件には、1xSSCで70℃または1xSSCで50℃、50%ホルムアミドでのハイブリダイゼーション、その後0.3xSSC、70℃での洗浄、または4xSSCで70℃または4xSSCで50℃、50%ホルムアミドでのハイブリダイゼーション、その後1xSSCで67℃での洗浄が含まれる。長さが50塩基対未満であることが予測されるハイブリッドのハイブリダイゼーション温度は、ハイブリッドの融解温度(T)より5~10℃低いものとする。ここで、Tは、次式に従って決定される。長さが18塩基対未満のハイブリッドの場合、T(℃)=2(A+T塩基数#)+4(G+C塩基数#)。長さが18~49塩基対のハイブリッドの場合、T(℃)=81.5+16.6(log10[Na])+0.41(%G+C)-(600/N)(式中、Nは、ハイブリッド中の塩基数であり、[Na]は、ハイブリダイゼーションバッファ中のナトリウムイオンの濃度である(1xSSCの[Na]=0.165M)。ポリヌクレオチドハイブリダイゼーションのストリンジェンシー条件の追加の例は、Sambrook,J.,E.F.Fritsch,and T.Maniatis,1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,chapters 9 and 11、及びCurrent Protocols in Molecular Biology,1995,F.M.Ausubel et al.,eds.,John Wiley&Sons,Inc.,sections 2.10及び6.3-6.4に記載され、これらは、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0160】
陰性対照siRNAは、選択されたsiRNAと同じヌクレオチド組成物を有するものとするが、適切なゲノムとの有意な配列相補性はない。そのような陰性対照は、選択されたsiRNAのヌクレオチド配列をランダムにスクランブルすることによって設計され得る。相同性検索を実施して、陰性対照が、適切なゲノム内の任意の他の遺伝子との相同性を欠いていることを確認できる。さらに、陰性対照siRNAは、1つ以上の塩基ミスマッチを配列に導入することによって設計できる。
【0161】
6.siRNAが標的mRNA(例えば、野生型または変異体mRNA)を破壊することによる有効性を検証するために、キイロショウジョウバエをベースにしたin vitro mRNA発現系において、siRNAを標的cDNAと共にインキュベートさせ得る。32Pで放射性標識された、新しく合成された標的mRNAは、アガロースゲル上でオートラジオグラフィーにより検出される。切断された標的mRNAの存在は、mRNAヌクレアーゼ活性を示す。好適な対照には、siRNAの省略及び非標的cDNAの使用が含まれる。あるいは、選択されたsiRNAと同じヌクレオチド組成を有するが、適切な標的遺伝子に対して有意な配列相補性を有さない対照siRNAが選択される。そのような陰性対照は、選択されたsiRNAのヌクレオチド配列をランダムにスクランブルすることによって設計できる。相同性検索を実施して、陰性対照が、適切なゲノム内の任意の他の遺伝子との相同性を欠いていることを確認できる。さらに、陰性対照siRNAは、1つ以上の塩基ミスマッチを配列に導入することによって設計できる。
【0162】
siRNAは、上記の標的配列のいずれかを標的とするように設計され得る。siRNAは、標的配列のサイレンシングを媒介するために標的配列と十分に相補的であるアンチセンス鎖を含む。特定の実施形態では、RNAサイレンシング剤は、siRNAである。
【0163】
特定の実施形態では、siRNAは、図1に示される連結を含むセンス鎖、または図1に示される連結を含むアンチセンス鎖を含む。
【0164】
最適なmRNA特異性及び最大mRNA切断をもたらすsiRNA-mRNA相補部位が選択される。
【0165】
b)siRNA様分子
本開示のsiRNA様分子は、RNAiまたは翻訳抑制による遺伝子サイレンシングを指示するために、mRNAの標的配列に「十分に相補的」である配列を有する(すなわち、配列を有する鎖を有する)。siRNA様分子は、siRNA分子と同じ方法で設計されるが、センス鎖と標的RNA間の配列同一性の程度は、miRNAとその標的間で観察されるものに近似する。一般に、miRNA配列と対応する標的遺伝子配列との間の配列同一性の程度が低下したときに、RNAiではなく翻訳抑制によって転写後の遺伝子サイレンシングが媒介される傾向が上昇する。したがって、標的遺伝子の翻訳抑制による転写後遺伝子サイレンシングが所望される別の実施形態では、miRNA配列は、標的遺伝子配列と部分的な相補性を有する。特定の実施形態では、miRNA配列は、標的mRNA内(例えば、標的mRNAの3’UTR内)に分散した1つ以上の短い配列(相補部位)との部分的な相補性を有する(Hutvagner and Zamore,Science,2002;Zeng et al.,Mol.Cell,2002;Zeng et al.,RNA,2003;Doench et al.,Genes&Dev.,2003)。翻訳抑制の機構は協調的であるため、特定の実施形態では、複数の相補性部位(例えば、2、3、4、5、または6)を標的とし得る。
【0166】
RNAiまたは翻訳抑制を媒介するsiRNA様二本鎖の能力は、標的遺伝子配列と相補部位におけるサイレンシング剤のヌクレオチド配列との間の非同一ヌクレオチドの分布によって予測され得る。翻訳抑制による遺伝子サイレンシングが所望される一実施形態では、miRNAガイド鎖及び標的mRNAによって形成される二重鎖が、中央の「バルジ」を含むように、少なくとも1つの同一でないヌクレオチドが相補性部位の中央部分に存在する(Doench J G et al.,Genes&Dev.,2003)。別の実施形態では、2、3、4、5、または6の連続したまたは連続していない非同一ヌクレオチドが導入される。非同一ヌクレオチドは、ゆらぎ塩基対(例えば、G:U)またはミスマッチ塩基対(G:A、C:A、C:U、G:G、A:A、C:C、U:U)を形成するように選択され得る。さらなる実施形態では、「バルジ」は、miRNA分子の5’末端から12位及び13位のヌクレオチドを中心とする。
【0167】
c)ショートヘアピンRNA(shRNA)分子
特定の特徴的な実施形態では、本開示は、高選択性を有する標的配列のRNAサイレンシングを媒介することができるshRNAを提供する。siRNAとは対照的に、shRNAは、マイクロRNA(miRNA)の天然の前駆体を模倣し、遺伝子サイレンシング経路の最上部に入る。このため、shRNAは、天然遺伝子サイレンシング経路全体を介して供給されることにより、遺伝子サイレンシングをより効率的に媒介すると考えられている。
【0168】
miRNAは、約22ヌクレオチドの非コードRNAであり、植物及び動物の発育中に、転写後または翻訳レベルで遺伝子発現を調節できる。miRNAの共通の特徴の1つは、おそらくRNase III型酵素であるDicer、またはその相同体によって、pre-miRNAと称される約70ヌクレオチドの前駆体RNAステムループから切り出されることである。天然に存在するmiRNA前駆体(pre-miRNA)は、一般に相補的な2つの部分を含む二本鎖ステムを形成する一本鎖と、ステムの2つの部分を接続するループとを有する。典型的なpre-miRNAでは、ステムは、1つ以上のバルジ、例えば、ステムの一部内に単一のヌクレオチド「ループ」を作成する余分なヌクレオチド、及び/またはステムの2つの部分の相互のハイブリダイゼーション内にギャップを作る1つ以上の不対ヌクレオチドを含む。本開示のショートヘアピンRNAまたは操作されたRNA前駆体は、これらの天然に存在するpre-miRNAに基づく人工構築物であるが、所望のRNAサイレンシング剤(例えば、本開示のsiRNA)を送達するように操作されている。pre-miRNAのステム配列を標的mRNAに相補的な配列に置換することにより、shRNAが形成される。shRNAは、細胞の遺伝子サイレンシング経路全体によってプロセシングし、それによってRNAiを効率的に媒介する。
【0169】
shRNA分子の必要なエレメントは、アニーリングまたはハイブリダイズして二重鎖または二本鎖ステム部分を形成するのに十分な相補性を有する、第1の部分及び第2の部分を含む。2つの部分は、完全にまたは完璧に相補的である必要はない。第1及び第2の「ステム」部分は、shRNAの他の部分にアニーリングまたはハイブリダイズするには十分でない配列相補性を有する配列を有する部分によって結合される。この後者の部分は、shRNA分子内の「ループ」部分と呼ばれる。shRNA分子は、プロセシングされて、siRNAが生成される。shRNAは、1つ以上のバルジ、すなわち、ステムの一部中に小さいヌクレオチド「ループ」、例えば1、2、または3ヌクレオチドループを作成する余分のヌクレオチドも含むことができる。ステム部分は、同じ長さであることができ、または一部は、例えば、1~5ヌクレオチドのオーバーハングを含むことができる。オーバーハングヌクレオチドは、例えば、ウラシル(U)、例えばすべてのUを含み得る。このようなUは、転写の終結をシグナル伝達するshRNAコードDNA内のチミジン(T)によって特にコードされる。
【0170】
本開示のshRNA(または操作された前駆体RNA)では、二重鎖ステムの一部は、標的配列に相補的(またはアンチセンス)な核酸配列である。好ましくは、shRNAのステム部分の一方の鎖は、標的RNA(例えば、mRNA)配列に対して十分に相補的(例えば、アンチセンス)であり、RNA干渉(RNAi)を介して標的RNAの分解または切断を媒介する。したがって、操作されたRNA前駆体は、2つの部分を有する二重ステムと、2つのステム部分を結合するループとを含む。アンチセンス部分は、ステムの5’または3’末端にあり得る。shRNAのステム部分は、好ましくは、約15~約50ヌクレオチド長である。好ましくは、2つのステム部分は、約18または19から約21、22、23、24、25、30、35、37、38、39、または40、またはそれ以上のヌクレオチド長である。好ましい実施形態では、ステム部分の長さは、21ヌクレオチド以上であるものとする。哺乳動物細胞で使用する場合、ステム部分の長さは、インターフェロン経路のような非特異的応答の誘発を避けるために、約30ヌクレオチド未満であるものとする。非哺乳類細胞では、ステムは、30ヌクレオチドを超えてもよい。実際、ステムには、標的mRNAに相補的なはるかに大きいセクション(最大でmRNA全体、及びmRNA全体を含む)が含まれる場合がある。実際、ステム部分には、標的mRNAに相補的なはるかに大きいセクション(最大でmRNA全体、及びmRNA全体を含む)が含まれる場合がある。
【0171】
二重ステムの2つの部分は、ハイブリダイズして二重ステムを形成するのに十分に相補的である必要がある。したがって、2つの部分は、完全にまたは完璧に相補的であり得るが、そうである必要はない。さらに、2つのステム部分は、同じ長さであり得るか、または1つの部分が、1、2、3、または4ヌクレオチドのオーバーハングを含み得る。オーバーハングヌクレオチドは、例えば、ウラシル(U)、例えばすべてのUを含み得る。shRNAまたは操作されたRNA前駆体内のループは、ループ配列を修飾して、対合ヌクレオチドの数を増減させる、またはループ配列のすべてもしくは一部をテトラループまたは他のループ配列に置き換えることにより、天然のpre-miRNA配列とは異なり得る。したがって、shRNAまたは操作されたRNA前駆体中のループは、2、3、4、5、6、7、8、9、またはそれ以上、例えば、15または20またはそれ以上のヌクレオチド長であり得る。
【0172】
shRNAまたは操作されたRNA前駆体内のループは、ループ配列を修飾して、対合ヌクレオチドの数を増減させる、またはループ配列のすべてもしくは一部をテトラループまたは他のループ配列に置き換えることにより、天然のpre-miRNA配列とは異なり得る。したがって、shRNA内のループ部分は、約2~約20ヌクレオチド長、すなわち、約2、3、4、5、6、7、8、9、またはそれ以上、例えば、15または20ヌクレオチド、またはそれ以上のヌクレオチド長であり得る。好ましいループは、「テトラループ」配列からなるか、または「テトラループ」配列を含む。例示的テトラループ配列としては、これらに限定されないが、配列GNRA(式中、Nが任意のヌクレオチドであり、Rがプリンヌクレオチドである)、GGGG、及びUUUUである。
【0173】
特定の実施形態では、本開示のshRNAは、上述の所望のsiRNA分子の配列を含む。他の実施形態では、shRNAのアンチセンス部分の配列は、本質的に上記のとおり、または一般に、標的RNA内から、例えば、翻訳開始点の上流または下流の100~200または300ヌクレオチドの領域から、18、19、20、21ヌクレオチド、またはそれより長い配列を選択することによって設計することができる。一般に、配列は、5’UTR(非翻訳領域)、コード配列、または3’UTRなど、標的RNA(例えば、mRNA)の任意の部分から選択することができる。この配列は、任意により、隣接する2つのAAヌクレオチドを含む標的遺伝子の領域の直後に続くことができる。ヌクレオチド配列の最後の2つのヌクレオチドは、UUになるように選択することができる。この約21のヌクレオチド配列を使用して、shRNAの二本鎖ステムの一部を作製する。この配列は、野生型pre-miRNA配列のステム部分を、例えば酵素的に置換することができるか、または合成される完全な配列に含まれる。例えば、ステムループ操作RNA前駆体全体をコードする、または前駆体の二本鎖ステムに挿入される部分のみをコードするDNAオリゴヌクレオチドを合成すること、及び制限酵素を使用して、例えば、野生型pre-miRNAから、操作RNA前駆体構築物を構築することができる。
【0174】
操作されたRNA前駆体は、二重鎖ステム中にin vivoで産生されることが望まれるsiRNAまたはsiRNA様二重鎖の21~22程度のヌクレオチド配列を含む。したがって、操作されたRNA前駆体のステム部分は、発現が減少されるかまたは阻害される遺伝子のエクソン部分の配列に対応する少なくとも18または19のヌクレオチド対を含む。ステムのこの領域に隣接する2つの3’ヌクレオチドは、操作されたRNA前駆体からのsiRNAの産生を最大化するように、ならびにin vivo及びin vitroにおいて、RNAiによる翻訳抑制または破壊のために対応するmRNAを標的とする際に、結果として得られるsiRNAの有効性を最大化するように選択される。
【0175】
特定の実施形態では、本開示のshRNAは、miRNA配列、任意により末端修飾miRNA配列を含み、RISCへの侵入を増強する。miRNA配列は、任意の天然に存在するmiRNAの配列と類似であるかまたは同一であり得る(例えば、The miRNA Registry;Griffiths-Jones S,Nuc.Acids Res.,2004)。現在までに1,000を超える天然のmiRNAが同定されており、それらを合わせるとゲノム内のすべての予測遺伝子のうち約1%を含むと考えられる。多くの天然のmiRNAは、pre-mRNAのイントロン中で共にクラスター化されており、相同性ベースの検索(Pasquinelli et al.,2000;Lagos-Quintana et al.,2001;Lau et al.,2001;Lee and Ambros,2001)、または候補miRNA遺伝子が、pri-mRNAのステムループ構造を形成する能力を予測するコンピューターアルゴリズム(例えば、MiRScan、MiRSeeker)(Grad et al.,Mol.Cell.,2003;Lim et al.al.,Genes Dev.,2003;Lim et al.,Science,2003;Lai E C et al.,Genome Bio.,2003)を用いて、in silicoで特定できる。オンラインレジストリは、公開されているすべてのmiRNA配列の検索可能なデータベースを提供する(The miRNA Registry、Sanger Institute website;Griffiths-Jones S,Nuc.Acids Res.,2004)。例示的な天然miRNAとしては、lin-4、let-7、miR-10、mirR-15、miR-16、miR-168、miR-175、miR-196及びそれらの相同体、ならびにヒト由来及び特定のモデル生物、例えば、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、カエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)、ゼブラフィッシュ(zebrafish)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thalania)、ハツカネズミ(Mus musculus)、及びドブネズミ(Rattus norvegicus)(PCT国際公開番号WO03/029459に記載)の他の天然miRNAが挙げられる。
【0176】
天然に存在するmiRNAは、in vivoで内因性遺伝子によって発現され、Dicerまたは他のRNAsesによってヘアピンまたはステムループ前駆体(pre-miRNA またはpri-miRNA)からプロセシングされる(Lagos-Quintana et al.,Science,2001;Lau et al.,Science,2001;Lee and Ambros,Science,2001;Lagos-Quintana et al.,Curr.Biol.,2002;Mourelatos et al.,Genes Dev.,2002;Reinhart et al.,Science,2002;Ambros et al.,Curr.Biol.,2003;Brennecke et al.,2003;Lagos-Quintana et al.,RNA,2003;Lim et al.,Genes Dev.,2003;Lim et al.,Science,2003)。miRNAは、二本鎖二重鎖としてin vivoで一過性に存在することができるが、遺伝子サイレンシングを指示するために、1本の鎖のみ、RISC複合体に取り込まれる。特定のmiRNA、例えば植物miRNAは、それらの標的mRNAに対して完全なまたはほぼ完全な相補性を有するため、標的mRNAを直接切断する。他のmiRNAは、標的mRNAに対して完全ではない相補性を有するため、標的mRNAの翻訳を直接抑制する。miRNAとその標的mRNAとの相補性の程度によって、その作用機序が決定すると考えられている。例えば、miRNAとその標的mRNAとの間の完全またはほぼ完全な相補性は、切断機構を予測するものであり(Yekta et al.,Science,2004)、一方で、完全でない相補性は、翻訳抑制機構を予測するものである。特定の実施形態では、miRNA配列は、その異常な発現またはその活性がmiRNA障害と相関している、天然に存在するmiRNA配列のものである。
【0177】
d)二重機能性オリゴヌクレオチド繋留因子
他の実施形態では、本開示のRNAサイレンシング剤は、miRNAの細胞間動員に有用な二重機能性オリゴヌクレオチド繋留因子を含む。動物細胞は、転写後または翻訳レベルで遺伝子発現を調節できる約22ヌクレオチドの非コードRNAである一連のmiRNAを発現する。二重機能性オリゴヌクレオチド繋留因子は、RISCに結合したmiRNAを結合し、それを標的mRNAに動員することにより、例えば動脈硬化プロセスに関与する遺伝子の発現を抑制することができる。オリゴヌクレオチド繋留因子の使用は、特定の遺伝子の発現を抑制する既存の技術よりもいくつかの利点を提供する。第一に、本明細書に記載の方法では、内因性分子(多くの場合、豊富に存在する)、miRNAがRNAサイレンシングを媒介することが可能になる。したがって、本明細書に記載の方法により、RNAサイレンシングを媒介するために外来分子(例えば、siRNA)を導入する必要がなくなる。第2に、RNAサイレンシング剤及び特に連結部分(例えば、オリゴヌクレオチド、例えば、2’-O-メチルオリゴヌクレオチド)を安定させ、ヌクレアーゼ活性に対して耐性にすることができる。結果として、本開示の繋留因子は、直接送達する用に設計することができ、細胞内で所望の剤を作製するように設計された前駆体分子またはプラスミドの間接送達(例えば、ウイルス)が必要なくなる。第3に、繋留因子及びそれぞれの部分は、特定のmRNA部位及び特定のmiRNAに適合するように設計できる。設計は、細胞及び遺伝子産物に特異的であり得る。第四に、本明細書に開示される方法では、mRNAが無傷のままであり、これにより、当業者は、細胞自身の機構を使用して、短いパルスでタンパク質合成を遮断することが可能になる。その結果、これらのRNAサイレンシングの方法は、高度に調節可能である。
【0178】
本開示の二重機能性オリゴヌクレオチド繋留因子(「繋留因子」)は、miRNA(例えば、内因性細胞miRNA)を標的mRNAに動員して、目的の遺伝子の調節を誘導するように設計される。特定の実施形態では、繋留因子は、式T-L-を有し、式中、Tは、mRNA標的化部分、Lは連結部分、は、miRNA動員部分である。任意の1つ以上の部分が、二本鎖であり得る。しかしながら、好ましくは、各部分は一本鎖である。
【0179】
繋留因子内の部分は、式T-L-μに示すとおり、配置されるか、または連結され得る(5’から3’方向)(すなわち、連結部分の5’末端に連結された標的化部分の3’末端及びmiRNA動員部分の5’末端に連結された連結部分の3’末端)。あるいは、これらの部分は、次のとおり、繋留因子内に配置または連結することができる:μ-T-L(すなわち、miRNAの動員部分の3’末端は、連結部分の5’末端に連結し、連結部分の3’末端は、標的化部分の5’末端に連結する)。
【0180】
上記のmRNA標的化部分は、特定の標的mRNAを捕捉することができる。本開示によれば、標的mRNAの発現は望ましくないため、mRNAの翻訳抑制が望まれる。mRNA標的化部分は、標的mRNAに効果的に結合するのに十分なサイズであるものとする。標的化部分の長さは、標的mRNAの長さ、及び標的mRNAと標的化部分との間の相補性の程度に部分的に依存して、大きく変動する。様々な実施形態では、標的化部分は、約200未満、100、50、30、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、または5ヌクレオチド長である。特定の実施形態では、標的化部分は、約15~約25ヌクレオチド長である。
【0181】
上述のとおり、miRNA動員部分は、miRNAと会合することができる。本開示によれば、miRNAは、標的mRNAを抑制することができる任意のmiRNAであり得る。哺乳動物は、250を超える内因性miRNAを有することが報告されている(Lagos-Quintana et al.(2002)Current Biol.12:735-739;Lagos-Quintana et al.(2001)Science 294:858-862;and Lim et al.(2003)Science 299:1540)。様々な実施形態では、miRNAは、当技術分野で認識されている任意のmiRNAであり得る。
【0182】
連結部分は、標的化部分の活性が維持されるように標的化部分を連結することができる任意の剤である。連結部分は、好ましくは、標的化剤がそれぞれの標的と十分に相互作用できるように、十分な数のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド部分である。連結部分は、細胞のmRNAまたはmiRNA配列との配列相同性をほとんどまたはまったく有しない。例示的な連結部分としては、1つ以上の2’-O-メチルヌクレオチド、例えば、2’-β-メチルアデノシン、2’-O-メチルチミジン、2’-O-メチルグアノシンまたは2’-O-メチルウリジンが挙げられる。
【0183】
e)遺伝子サイレンシングオリゴヌクレオチド
特定の例示的な実施形態では、遺伝子発現(すなわち、標的遺伝子発現)は、標的遺伝子発現を効果的に阻害または減少させるために、2つ以上の接近可能な3’末端の存在が可能になるそれらの5’末端を介して連結された2つ以上の一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドベースの化合物を使用して、調節することができる。このような連結オリゴヌクレオチドは、遺伝子サイレンシングオリゴヌクレオチド(GSO)としても知られている(例えば、Idera Pharmaceuticals, Incに譲渡された米国特許第8,431,544号を参照されたい。これは、参照により、すべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる)。本明細書では、式(I)によるサブユニット間連結を含む新規で改善されたGSO及びその実施形態が提供される。
【0184】
GSOの5’末端での連結は、他のオリゴヌクレオチド連結とは独立しており、5’、3’、または2’ヒドロキシル基を介して直接的に、または非ヌクレオチドリンカーまたはヌクレオシドを介して、ヌクレオシドの2’または3’ヒドロキシル位置のいずれかを使用して、間接的であり得る。連結はまた、5’末端ヌクレオチドの機能化された糖または核酸塩基を利用し得る。
【0185】
GSOは、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、または非ヌクレオシドリンカーを介して、それらの5’-5’末端でコンジュゲートされた2つの同一または異なる配列を含むことができる。そのような化合物は、遺伝子産物のアンチセンスの下方制御のために目的のmRNA標的の特定の部分に相補的である15~27ヌクレオチドを含み得る。同一の配列を含むGSOは、ワトソン-クリック水素結合相互作用を介して特定のmRNAに結合し、タンパク質の発現を阻害することができる。異なる配列を含むGSOは、1つ以上のmRNA標的の2つ以上の異なる領域に結合し、タンパク質発現を阻害することができる。このような化合物は、標的mRNAに相補的なヘテロヌクレオチド配列で構成され、ワトソン-クリック水素結合により安定した二重鎖構造を形成する。特定の条件下で、2つの遊離3’末端(5’-5’付着アンチセンス)を含むGSOは、単一の遊離3’末端または遊離3’末端を含まないものよりも強力な遺伝子発現阻害剤となり得る。
【0186】
いくつかの実施形態では、非ヌクレオチドリンカーは、グリセロールまたは式HO-(CH-CH(OH)-(CH-OHのグリセロール相同体であり、式中、o及びpは、独立して1~約6、1~約4、または1~約3の整数である。いくつかの他の実施形態では、非ヌクレオチドリンカーは、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパンの誘導体である。いくつかのそのような誘導体は、式HO--(CH--C(O)NH--CH--CH(OH)--CH--NHC(O)--(CH--OHを有し、式中、mは、0~約10、0~約6、2~約6、または2~約4の整数である。
【0187】
いくつかの非ヌクレオチドリンカーでは、3つ以上のGSO成分の付着が可能になる。例えば、非ヌクレオチドリンカーグリセロールは、GSO成分が共有結合により付着され得る3つのヒドロキシル基を有する。したがって、本開示のいくつかのオリゴヌクレオチドベースの化合物は、ヌクレオチドまたは非ヌクレオチドリンカーに連結された2つ以上のオリゴヌクレオチドを含む。本開示によるそのようなオリゴヌクレオチドは、「分岐している」と呼ばれる。
【0188】
特定の実施形態では、GSOは、少なくとも14ヌクレオチド長である。特定の例示的な実施形態では、GSOは、15~40ヌクレオチド長または20~30ヌクレオチド長である。したがって、GSOの成分オリゴヌクレオチドは、独立して、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40ヌクレオチド長であり得る。
【0189】
これらのオリゴヌクレオチドは、ホスホロアミダートまたはH-ホスホネート化学などの当技術分野で認められた方法によって調製することができ、これらは、手動または自動合成装置によって実施できる。これらのオリゴヌクレオチドは、mRNAにハイブリダイズする能力を損なうことなく、複数の方法で修飾することもできる。そのような修飾は、1つのヌクレオチドの5’末端と別のヌクレオチドの3’末端の間でのアルキルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、リン酸エステル、アルキルホスホノチオエート、ホスホルアミデート、カルバメート、カーボネート、ホスフェートヒドロキシル、アセトアミデート、またはカルボキシメチルエステル、またはこれら及び他のヌクレオチド間連結の組合せであるオリゴヌクレオチドの少なくとも1つのヌクレオチド間連結を含み得、ここで、5’ヌクレオチドのホスホジエステル連結が、任意の数の化学基で置換されている。
【0190】
VI.修飾されたRNAサイレンシング剤
本開示の特定の態様では、上記の本開示のオリゴヌクレオチド、siRNA、及びRNAサイレンシング剤(またはその任意の部分)は、剤の活性がさらに改善されるように修飾され得る。例えば、上記セクションIIに記載のRNAサイレンシング剤は、以下に記載の修飾のいずれかで修飾され得る。修飾は、部分的に、標的識別をさらに向上させるため、剤の安定性を向上させるため(例えば、分解を防止するため)、細胞取り込みを促進するため、標的効率を向上させるため、結合(例えば、標的への)の有効性を改善するため、剤に対する患者の耐性を改善するため、及び/または毒性を軽減するために、作用し得る。
【0191】
1)標的識別を向上させるための修飾
特定の実施形態では、本開示のオリゴヌクレオチド、siRNA、及びRNAサイレンシング剤は、単一ヌクレオチド標的識別を向上させるために、不安定化ヌクレオチドで置換され得る(米国出願第11/698,689号、2007年1月25日に出願、米国仮出願第60/762,225号、2006年1月25日に出願を参照されたい。これらは、両方とも参照により本明細書に組み込まれる)。そのような修飾は、標的mRNA(例えば、機能獲得型変異mRNA)に対するRNAサイレンシング剤の特異性に目に見える影響を与えることなく、非標的mRNA(例えば、野生型mRNA)に対するRNAサイレンシング剤の特異性を無効にするのに十分であり得る。
【0192】
好ましい実施形態では、本開示のRNAサイレンシング剤は、そのアンチセンス鎖に少なくとも1つのユニバーサルヌクレオチドを導入することによって修飾される。ユニバーサルヌクレオチドは、4つの従来のヌクレオチド塩基(例えば、A、G、C、U)のいずれかと無差別に塩基対形成できる塩基部分を含む。ユニバーサルヌクレオチドは、RNA二重鎖の安定性、またはRNAサイレンシング剤のガイド鎖と標的mRNAによって形成される二重鎖の安定性に比較的小さい効果のみを有するために好ましい。例示的なユニバーサルヌクレオチドとしては、デオキシイノシン(例えば、2’-デオキシイノシン)、7-デアザ-2’-デオキシイノシン、2’-アザ-2’-デオキシイノシン、PNA-イノシン、モルホリノ-イノシン、LNA-イノシン、ホスホルアミデート-イノシン、2’-O-メトキシエチル-イノシン、及び2’-OMe-イノシンからなる群から選択されるイノシン塩基部分またはイノシン類似塩基部分を有するものが挙げられる。特に好ましい実施形態では、ユニバーサルヌクレオチドは、イノシン残基またはその天然類似体である。
【0193】
特定の実施形態では、本開示のRNAサイレンシング剤は、特異性決定ヌクレオチド(すなわち、疾患関連多型を認識するヌクレオチド)から5ヌクレオチド以内に少なくとも1つの不安定化ヌクレオチドを導入することによって修飾される。例えば、不安定化ヌクレオチドは、特異性決定ヌクレオチドから5、4、3、2、または1ヌクレオチド以内の位置に導入され得る。例示的な実施形態では、不安定化ヌクレオチドは、特異性決定ヌクレオチドから3ヌクレオチド離れた位置に(すなわち、不安定化ヌクレオチドと特異性決定ヌクレオチドとの間に2つの安定化ヌクレオチドが存在するように)導入される。2つの鎖または鎖部分を有するRNAサイレンシング剤(例えば、siRNA及びshRNA)では、特異性決定ヌクレオチドを含まない鎖または鎖部分内に不安定化ヌクレオチドを導入することができる。好ましい実施形態では、不安定化ヌクレオチドは、特異性決定ヌクレオチドを含む同じ鎖または鎖部分に導入される。
【0194】
2)有効性及び特異性を高めるための修飾
特定の実施形態では、本開示のオリゴヌクレオチド、siRNA、及びRNAサイレンシング剤は、非対称設計規則に従って、RNAiを媒介する際の有効性及び特異性を容易に高めるように改変され得る(米国特許第8,309,704号、第7,750,144号、第8,304,530号、第8,329,892号及び第8,309,705号を参照されたい)。このような改変により、siRNAのアンチセンス鎖(例えば、本開示の方法を用いて設計されたsiRNA、又はshRNAから産生されたsiRNA)のRISCへの侵入をセンス鎖に有利に進めることが容易になる。これにより、アンチセンス鎖は、標的mRNAの切断または翻訳抑制を優先的に誘導し、したがって、標的の切断及びサイレンシングの効率を増大または改善するようになる。好ましくは、RNAサイレンシング剤の非対称性は、RNAサイレンシング剤のアンチセンス鎖3’末端(AS3’)とセンス鎖5’末端(S’5)との間の結合強度または塩基対強度に対して、RNAサイレンシング剤のアンチセンス鎖5’末端(AS5’)とセンス鎖3’末端(S3’)との間の塩基対強度を低下させることによって向上される。
【0195】
一実施形態では、本開示のRNAサイレンシング剤の非対称性は、第1またはアンチセンス鎖の5’末端とセンス鎖部分の3’末端との間のG:C塩基対が、第1またはアンチセンス鎖の3’末端とセンス鎖部分の5’末端との間のG:C塩基対よりも少なくなるように、向上され得る。別の実施形態では、本開示のRNAサイレンシング剤の非対称性は、第1またはアンチセンス鎖の5’末端とセンス鎖部分の3’末端との間に少なくとも1つのミスマッチ塩基対が存在するように向上され得る。好ましくは、ミスマッチ塩基対は、以下からなる群から選択される:G:A、C:A、C:U、G:G、A:A、C:C及びU:U。別の実施形態では、本開示のRNAサイレンシング剤の非対称性は、少なくとも1つのゆらぎ塩基対、例えば、G:Uが、第1またはアンチセンス鎖の5’末端とセンス鎖部分の3’末端との間に存在するように向上され得る。別の実施形態では、本開示のRNAサイレンシング剤の非対称性は、希少ヌクレオチド、例えばイノシン(I)を含む少なくとも1つの塩基対が存在するように向上され得る。好ましくは、塩基対は、I:A、I:U、及びI:Cからなる群から選択される。さらに別の実施形態では、本開示のRNAサイレンシング剤の非対称性は、修飾ヌクレオチドを含む少なくとも1つの塩基対が存在するように、向上され得る。好ましい実施形態では、修飾ヌクレオチドは、2-アミノ-G、2-アミノ-A、2,6-ジアミノ-G、及び2,6-ジアミノ-Aからなる群から選択される。
【0196】
3)安定性の向上を有するRNAサイレンシング剤
本開示のRNAサイレンシング剤は、血清中または細胞培養用の成長培地中での安定性を改善するために修飾させ得る。安定性を向上させるために、3’-残基を分解に対して安定化させてよく、特に、アデノシンまたはグアノシンヌクレオチドなどのプリンヌクレオチドからなるように選択され得る。あるいは、修飾類似体によるピリミジンヌクレオチドの置換、例えば、2’-デオキシチミジンによるウリジンの置換は許容され、RNA干渉の効率に影響を与えない。
【0197】
一態様では、本開示は、第1及び第2の鎖を含むRNAサイレンシング剤を特徴とし、第2の鎖及び/または第1の鎖は、対応する非修飾RNAサイレンシング剤と比較して、in vivo安定性が向上するように、内部ヌクレオチドを修飾ヌクレオチドで置換することによって、修飾される。本明細書で定義されるように、「内部」ヌクレオチドは、核酸分子、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの5’末端または3’末端以外の任意の位置に存在するものである。内部ヌクレオチドは、一本鎖分子内にあっても、二本鎖もしくは二本鎖分子の鎖内にあってもよい。一実施形態では、センス鎖及び/またはアンチセンス鎖は、少なくとも1つの内部ヌクレオチドの置換によって修飾される。別の実施形態では、センス鎖及び/またはアンチセンス鎖は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、またはそれ以上の内部ヌクレオチドによって修飾される。別の実施形態では、センス鎖及び/またはアンチセンス鎖は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上の内部ヌクレオチドによって修飾される。さらに別の実施形態では、センス鎖及び/またはアンチセンス鎖は、内部ヌクレオチドのすべての置換によって修飾される。
【0198】
一態様では、本開示は、少なくとも80%が化学修飾されたRNAサイレンシング剤を特徴とする。本開示の好ましい実施形態では、RNAサイレンシング剤は、完全に化学修飾されていてよく、すなわち、ヌクレオチドの100%が化学修飾されている。
【0199】
本開示の好ましい実施形態では、RNAサイレンシング剤は、少なくとも1つの修飾ヌクレオチド類似体を含み得る。ヌクレオチド類似体は、標的特異的サイレンシング活性、例えばRNAi媒介活性または翻訳抑制活性が、実質的に影響を受けない位置、例えばsiRNA分子の5’末端及び/または3’末端にある領域に配置され得る。特に、修飾ヌクレオチド類似体を組み込むことによって、末端を安定化させ得る。
【0200】
例示的なヌクレオチド類似体としては、糖-及び/または骨格修飾リボヌクレオチド(すなわち、リン酸糖骨格への修飾を含む)。例えば、天然RNAのホスホジエステル連結は、窒素または硫黄ヘテロ原子の少なくとも1つを含むように修飾され得る。例示的な骨格修飾リボヌクレオチドでは、隣接するリボヌクレオチドに結合するリン酸エステル基は、例えばホスホチオエート基の修飾基によって置換される。例示的な糖修飾リボヌクレオチドでは、2’OH-基は、H、OR、R、ハロ、SH、SR、NH、NHR、NRまたはONから選択される基で置き換えられ、式中、Rは、C-Cアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、ハロはF、Cl、BrまたはIである。
【0201】
特定の実施形態では、修飾は、2’-フルオロ、2’-アミノ、及び/または2’-チオ修飾である。特に好ましい修飾としては、2’-フルオロ-シチジン、2’-フルオロ-ウリジン、2’-フルオロ-アデノシン、2’-フルオロ-グアノシン、2’-アミノ-シチジン、2’-アミノ-ウリジン、2’-アミノ-アデノシン、2’-アミノ-グアノシン、2,6-ジアミノプリン、4-チオ-ウリジン、及び/または5-アミノ-アリル-ウリジンが挙げられる。特定の実施形態では、2’-フルオロリボヌクレオチドは、すべてのウリジン及びシチジンである。追加の例示的な修飾としては、5-ブロモ-ウリジン、5-ヨード-ウリジン、5-メチル-シチジン、リボ-チミジン、2-アミノプリン、2’-アミノ-ブチリル-ピレン-ウリジン、5-フルオロ-シチジン、及び5-フルオロウリジンが挙げられる。2’-デオキシ-ヌクレオチド及び2’-Omeヌクレオチドも、本開示の修飾RNAサイレンシング部分内で使用することができる。追加の修飾残基としては、デオキシ脱塩基、イノシン、N3-メチル-ウリジン、N6,N6-ジメチル-アデノシン、シュードウリジン、プリンリボヌクレオシド、及びリバビリンが挙げられる。特に好ましい実施形態では、連結部分が2’-O-メチルオリゴヌクレオチドであるように、2’部分がメチル基である。
【0202】
例示的実施形態では、本開示のRNAサイレンシング剤は、ロックド核酸(LNA)を含む。LNAは、ヌクレアーゼ活性に抵抗する(高度に安定である)糖修飾ヌクレオチドを含み、mRNAについて単一ヌクレオチド識別を有する(Elmen et al.,Nucleic Acids Res.,(2005),33(1):439-447;Braasch et al.(2003)Biochemistry 42:7967-7975,Petersen et al.(2003)Trends Biotechnol 21:74-81)。これらの分子は、2’-デオキシ-2’’-フルオロウリジンなど、修飾が可能な2’-O、4’-C-エチレン架橋核酸を有する。さらに、LNAは、糖部分を3’-エンドコンフォメーションに拘束することによってオリゴヌクレオチドの特異性を増大し、それによって塩基対合形成のためにヌクレオチドを事前に組織化し、オリゴヌクレオチドの融解温度を1塩基あたり10℃ほど上昇させる。
【0203】
別の例示的な実施形態では、本開示のRNAサイレンシング剤は、ペプチド核酸(PNA)を含む。PNAは、ヌクレオチドの糖-リン酸部分が、ポリアミド骨格を形成できる中性の2-アミノエチルグリシン部分で置換され、ヌクレアーゼ消化に対して高い抵抗性があり、分子に対して、改善された結合特異性を付与する修飾ヌクレオチドを含む(Nielsen,et al.,Science,(2001),254:1497-1500)。
【0204】
天然に存在する核酸塩基の代わりに、少なくとも1つの天然に存在しない核酸塩基を含有する核酸塩基修飾リボヌクレオチド、すなわちリボヌクレオチドも好ましい。アデノシンデアミナーゼの活性を遮断するために、塩基を修飾することができる。修飾核酸塩基の例としては、これらに限定されないが、5位で修飾されたウリジン及び/またはシチジン、例えば、5-(2-アミノ)プロピルウリジン、5-ブロモウリジン;8位で修飾されたアデノシン及び/またはグアノシン、例えば8-ブロモグアノシン;デアザヌクレオチド、例えば、7-デアザ-アデノシン;O-及びN-アルキル化ヌクレオチド、例えばN6-メチルアデノシンが挙げられ、好適である。上記の修飾を組み合わせてもよいことに留意されたい。
【0205】
他の実施形態では、架橋を使用して、RNAサイレンシング剤の薬物動態を変化させ、例えば、身体内での半減期を延長することができる。したがって、本開示は、核酸の2つの相補鎖を有するRNAサイレンシング剤を含み、2つの鎖は、架橋されている。また、本開示は、他の部分(例えば、ペプチドなどの非核酸部分)または有機化合物(例えば、染料)などに対して、(例えば、その3’末端において)コンジュゲートされているまたはコンジュゲートされていないRNAサイレンシング剤を含む。このようにsiRNA誘導体を修飾することにより、対応するsiRNAと比較して、細胞への取込みを改善する、または得られたsiRNA誘導体の細胞標的活性を向上させることができ、siRNA誘導体を細胞内で追跡する、または対応するsiRNAと比較して、siRNA誘導体の安定性を改善するのに有用である。
【0206】
他の例示的な修飾としては、以下が挙げられる:(a)2’の修飾、例えば、センスまたはアンチセンス鎖における、特にセンス鎖における、U上の2’OMe部分の提供、または、3’オーバーハング中、例えば、3’末端での2’OMe部分の提供(3’末端は、分子の3’原子または最大3’部分、例えば、文脈によって示されるように、最も3’のPまたは2’の位置を意味する);(b)リン酸骨格における、例えばOのSによる置換による骨格の修飾、例えば、特にアンチセンス鎖におけるUまたはAまたは両方へのホスホロチオエート修飾の提供;例えば、OのSによる置換による;(c)UのC5アミノリンカーでの置換;(d)AのGによる置換(配列変化は、好ましくは、アンチセンス鎖ではなくセンス鎖に配置される);及び(d)2’、6’、7’、または8’位での修飾。例示的な実施形態は、これらの修飾の1つ以上がセンス上に存在するが、アンチセンス鎖には存在しない実施形態、またはアンチセンス鎖が、そのような修飾をほとんど有さない実施形態である。さらに他の例示的な修飾としては、3’オーバーハング中、例えば3’末端におけるメチル化Pの使用;2’修飾の組み合わせ、例えば2’OMe部分の提供と骨格の修飾、例えばOのSによる置換、例えばホスホロチオエート修飾の提供、または3’オーバーハング中、例えば3’末端でのメチル化Pの使用;3’アルキルによる修飾;3’オーバーハング中、例えば3’末端での脱塩基ピロリドンによる修飾;ナプロキセン、イブプロフェン、または3’末端での分解を阻害する他の部分による修飾が挙げられる。
【0207】
4)細胞取り込みを増強させるための修飾
他の実施形態では、RNAサイレンシング剤は、例えば、標的細胞(例えば、神経細胞)による細胞取り込みを増強するために、化学部分で修飾され得る。したがって、本開示は、他の部分(例えば、ペプチドなどの非核酸部分)または有機化合物(例えば、染料)などに対して、(例えば、その3’末端において)コンジュゲートされているまたはコンジュゲートされていないRNAサイレンシング剤を含む。コンジュゲーションは、例えば、本技術で知られている方法、以下の方法を用いて、達成することができる;Lambert et al.,Drug Deliv.Rev.:47(1),99-112(2001)(ポリアルキルシアノアクリレート(PACA)ナノ粒子に付加された核酸について記載);Fattal et al.,J.Control Release 53(1-3):137-43(1998)(ナノ粒子に結合した核酸について記載);Schwab et al.,Ann.Oncol.5 Suppl.4:55-8(1994)(インターカレーション剤、疎水性基、ポリカチオンまたはPACAナノ粒子と連結した核酸について記載);及びGodard et al.,Eur.J.Biochem.232(2):404-10(1995)(ナノ粒子に連結した核酸について記載)。
【0208】
特定の実施形態では、開示のRNAサイレンシング剤は、親油性部分にコンジュゲートされる。一実施形態では、親油性部分は、カチオン基を含むリガンドである。別の実施形態では、親油性部分は、siRNAの一方または両方の鎖に付着している。例示的な実施形態では、親油性部分は、siRNAのセンス鎖の一端に付着している。別の例示的な実施形態では、親油性部分は、センス鎖の3’末端に付着している。特定の実施形態では、親油性部分は、コレステロール、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンA、葉酸、またはカチオン色素(例えば、Cy3)からなる群から選択される。例示的な実施形態では、親油性部分は、コレステロールである。他の親油性部分としては、コール酸、アダマンタン酢酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチル、またはフェノキサジンが挙げられる。
【0209】
5)繋留リガンド
他の実体は、本開示のRNAサイレンシング剤に繋留することができる。例えば、エンドサイトーシス依存性機序または非依存性機序による、安定性、標的核酸とのハイブリダイゼーション熱力学、特定の組織または細胞型へのターゲティング、または細胞透過性を改善するために、例えば、RNAサイレンシング剤に繋留されているリガンド。リガンド及び関連する修飾は、配列の特異性を高め、その結果、オフサイトターゲティングを減少させることもできる。繋留因子リガンドは、インターカレーターとして機能できる1つ以上の修飾塩基または糖を含むことができる。これらは、好ましくは、RNAサイレンシング剤/標的二重鎖のバルジ内などの内部領域内に位置する。インターカレーターは、芳香族、例えば、多環式芳香族または複素環式芳香族化合物であり得る。多環式インターカレーターは、スタッキング能力を有し得、2つ、3つ、または4つの縮合環を有する系を含むことができる。本明細書に記載のユニバーサル塩基は、リガンドに含めることができる。一実施形態では、リガンドは、標的核酸の切断による標的遺伝子の阻害に寄与する切断基を含むことができる。切断基は、例えば、ブレオマイシン(例えば、ブレオマイシン-A5、ブレオマイシン-A2、またはブレオマイシン-B2)、ピレン、フェナントロリン(例えば、O-フェナントロリン)、ポリアミン、トリペプチド(例えば、lys-tyr-lysトリペプチド)、または金属イオンキレート基であり得る。金属イオンキレート基としては、例えば、Lu(III)またはEU(III)大環状錯体、Zn(II)2,9-ジメチルフェナントロリン誘導体、Cu(II)テルピリジン、またはアクリジンを挙げることができ、これらは、Lu(III)などの遊離金属イオンによるバルジ部位での標的RNAの選択的切断を促進することができる。いくつかの実施形態では、ペプチドリガンドは、例えばバルジ領域で、標的RNAの切断を促進するためにRNAサイレンシング剤に繋留することができる。例えば、1,8-ジメチル-1,3,6,8,10,13-ヘキサアザシクロテトラデカン(サイクラム)は、標的RNA切断を促進するために(例えば、アミノ酸誘導体によって)ペプチドにコンジュゲートすることができる。繋留リガンドは、アミノグリコシドリガンドであり得、これは、RNAサイレンシング剤に改善されたハイブリダイゼーション特性または改善された配列特異性を持たせることができる。例示的なアミノグリコシドとしては、グリコシル化ポリリジン、ガラクトシル化ポリリジン、ネオマイシンB、トブラマイシン、カナマイシンA、及びアミノグリコシドのアクリジンコンジュゲート、例えば、Neo-N-アクリジン、Neo-S-アクリジン、Neo-C-アクリジン、Tobra-N-アクリジン、及びKanaA-N-アクリジンが挙げられる。アクリジン類似体の使用により、配列の特異性を高めることができる。例えば、ネオマイシンBは、DNAと比較して、RNAに対して高い親和性を有するが、配列特異性は低くなる。アクリジン類似体であるネオ-5-アクリジンは、HIV Rev-応答エレメント(RRE)に対する親和性が高くなる。いくつかの実施形態では、アミノグリコシドリガンドのグアニジン類似体(グアニジノグリコシド)は、RNAサイレンシング剤に繋留されている。グアニジノグリコシド内では、アミノ酸上のアミン基がグアニジン基に交換されている。グアニジン類似体が付着することにより、RNAサイレンシング剤の細胞透過性が増大し得る。繋留リガンドは、オリゴヌクレオチド剤の細胞取り込みを増大することができるポリアルギニンペプチド、ペプトイドまたはペプチド模倣体であり得る。
【0210】
例示的なリガンドは、直接、または介在繋留因子を介して間接的に、リガンドコンジュゲート担体に好ましくは供給結合によりカップリングされる。例示的実施形態では、リガンドは、介在繋留因子を介して担体に付着している。例示的実施形態では、リガンドにより、それが組み込まれるRNAサイレンシング剤の分布、標的化または寿命が変化する。例示的実施形態では、リガンドは、そのようなリガンドが存在しない種と比較して、選択された標的、例えば、分子、細胞または細胞型、コンパートメント、例えば、細胞または器官コンパートメント、身体の組織、器官または領域に対して、例えば、より高い親和性を提供する。
【0211】
例示的なリガンドは、輸送、ハイブリダイゼーション、及び特異性特性を改善することができ、結果として得られる天然のまたは修飾されたRNAサイレンシング剤、または本明細書に記載のモノマーの任意の組み合わせを含むポリマー分子及び/または天然または修飾リボヌクレオチドのヌクレアーゼ耐性も改善し得る。リガンドは、一般に、例えば、取り込みを増大するための治療修飾因子、例えば、分布を監視するための診断用化合物またはレポーター基;架橋剤;ヌクレアーゼ耐性付与部分;及び天然または異常な核酸塩基を含むことができる。一般的な例としては、親油性物質、脂質、ステロイド(例えば、ウバオール、ヘシゲニン(hecigenin)、ジオスゲニン)、テルペン(例えば、トリテルペン、例えば、サルササポゲニン、フリーデリン、エピフリーデラノール誘導体化リトコール酸)、ビタミン(例えば、葉酸、ビタミンA、ビオチン、ピリドキサール)、炭水化物、タンパク質、タンパク質結合剤、インテグリン標的分子、ポリカチオン、ペプチド、ポリアミン、及びペプチド模倣物が挙げられる。リガンドとしては、天然に存在する物質(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、低密度リポタンパク質(LDL)、またはグロブリン);炭水化物(例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリンまたはヒアルロン酸);アミノ酸、または脂質を挙げることができる。リガンドはまた、組換え分子または合成分子、例えば、合成ポリマー、例えば、合成ポリアミノ酸であってもよい。ポリアミノ酸の例としては、ポリリジン(PLL)であるポリアミノ酸、ポリL-アスパラギン酸、ポリL-グルタミン酸、スチレン-無水マレイン酸コポリマー、ポリ(L-ラクチド-コ-グリコール化)コポリマー、ジビニルエーテル-無水マレインコポリマー、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドコポリマー(HMPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2-エチルアクリル酸)、N-イソプロピルアクリルアミドポリマー、またはポリホスファジンが挙げられる。ポリアミンの例としては、ポリエチレンイミン、ポリリジン(PLL)、スペルミン、スペルミジン、ポリアミン、シュードペプチド-ポリアミン、ペプチド模倣ポリアミン、デンドリマーポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、カチオン性脂質、カチオン性ポルフィリン、ポリアミンの四級塩、またはアルファらせんペプチドが挙げられる。
【0212】
リガンドはまた、腎臓細胞などの特定の細胞型に結合する標的基、例えば細胞または組織標的剤、例えばレクチン、糖タンパク質、脂質またはタンパク質、例えば抗体を挙げることができる。標的基はまた、甲状腺刺激ホルモン、メラノトロピン、レクチン、糖タンパク質、サーファクタントプロテインA、ムチン炭水化物、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチルガラクトサミン、N-アセチルグルコサミン、多価マンノース、多価フコース、グリコシル化ポリアミノ酸、多価ガラクトース、トランスフェリン、ビスホスホネート、ポリグルタミン酸塩、ポリアスパラギン酸塩、脂質、コレステロール、ステロイド、胆汁酸、葉酸塩、ビタミンB12、ビオチン、またはRGDペプチドまたはRGDペプチド模倣体であり得る。リガンドの他の例としては、色素、インターカレーション剤(例えば、アクリジン及び置換アクリジン)、架橋剤(例えば、ソラレン、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サフィリン)、多環式芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン、フェナントロリン、ピレン)、lys-tyr-lys トリペプチド、アミノグリコシド、グアニジウムアミノグリコシド、人工エンドヌクレアーゼ(例えば、EDTA)、親油性分子、例えば、コレステロール(及びそのチオ類似体)、コール酸、コラン酸、リトコール酸、アダマンタン酢酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、グリセロール(例えば、エステル(例えば、モノ、ビス、またはトリス脂肪酸エステル、例えば、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19またはC20脂肪酸)及びそのエーテル、例えば、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、またはC20アルキル;例えば、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセロール、1,3-ビス-O(オクタデシル)グリセロール)、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミット酸、ステアリン酸(例えば、ジステアリン酸グリセリル)、オレイン酸、ミリスチン酸、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチル、またはフェノキサジン)及びペプチドコンジュゲート(例えば、アンテナペディアペプチド、Tatペプチド)、アルキル化剤、リン酸塩、アミノ、メルカプト、PEG(例えば、PEG-40Kなど)、MPEG、[MPEG]、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射性標識マーカー、酵素、ハプテン(例えば、ビオチン)、輸送/吸収促進剤(例えば、アスピリン、ナプロキセン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ(例えば、イミダゾール、ビスイミダゾール、ヒスタミン、イミダゾールクラスター、アクリジン-イミダゾールコンジュゲート、テトラアザマクロ環のEu3+錯体)、ジニトロフェニル、HRPまたはAPが挙げられる。
【0213】
リガンドは、糖タンパク質などのタンパク質、またはコリガンドに対して特異的親和性を有する分子などのペプチド、またはがん細胞、内皮細胞、または骨細胞などの特定の細胞型に結合する抗体などの抗体であり得る。リガンドとしては、ホルモン及びホルモン受容体を挙げることもできる。それらはまた、非ペプチド種、例えば、脂質、レクチン、炭水化物、ビタミン、補因子、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン多価マンノース、または多価フコースを含むことができる。リガンドは、例えば、リポ多糖、p38 MAPキナーゼのアクチベーター、またはNF-kBのアクチベーターであり得る。
【0214】
リガンドは、例えば、細胞の細胞骨格を破壊することにより、例えば、細胞の微小管、マイクロフィラメント、及び/または中間フィラメントを破壊することにより、細胞へのRNAサイレンシング剤の取り込みを増加させることができる物質、例えば薬物であり得る。薬物は、例えば、タクソン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、サイトカラシン、ノコダゾール、japlakinolide、ラトランキュリンA、ファロイジン、スウィンホリドA、インダノシン、またはミオセルビン(myoservin)であり得る。リガンドは、例えば、炎症反応を活性化することにより、細胞へのRNAサイレンシング剤の取り込みを増加させることができる。そのような効果を有する例示的なリガンドとしては、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、インターロイキン-1ベータ、またはガンマインターフェロンが挙げられる。一態様では、リガンドは、脂質または脂質系分子である。かかる脂質または脂質系分子は、好ましくは、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)に結合する。HSA結合リガンドでは、標的組織、例えば身体の非腎臓標的組織へのコンジュゲートの分布が可能になる。例えば、標的組織は、肝臓の実質細胞などの肝臓であり得る。HSAに結合することができる他の分子もまたリガンドとして使用することができる。例えば、ナプロキセンまたはアスピリンを使用することができる。脂質または脂質系リガンドは、(a)コンジュゲートの耐分解性を向上させること、(b)標的細胞または細胞膜への標的化または輸送を増加させること、及び/または(c)血清タンパク質、例えば、HSAへの結合を調節するために使用することができる。脂質系リガンドは、コンジュゲートの標的組織への結合を調節、例えば、制御するために使用することができる。例えば、より強固にHSAに結合する脂質または脂質系リガンドは、腎臓を標的とする可能性が低く、それ故、体内から排出される可能性が低い。HSAにあまり強固に結合しない脂質または脂質系リガンドは、コンジュゲートを腎臓に標的化するために使用することができる。好ましい実施形態では、脂質系リガンドは、HSAに結合する。脂質系リガンドは、コンジュゲートが好ましくは腎臓以外の組織に分布するように、十分な親和性でHSAに結合することができる。しかし、HSA-リガンド結合を逆転させることができないほど親和性は強くないことが好ましい。別の好ましい実施形態では、脂質系リガンドは、HSAに弱く結合するか、全く結合しないため、本コンジュゲートは、好ましくは、腎臓に分布する。脂質系リガンドの代わりに、またはそれに加えて、腎臓細胞を標的とする他の部分もまた使用することができる。
【0215】
別の態様では、リガンドは、標的細胞、例えば、増殖性細胞によって取り込まれる部分、例えば、ビタミンである。これらは、望ましくない細胞増殖、例えば、悪性または非悪性型の、例えば、がん細胞を特徴とする障害の治療に特に有用である。代表的なビタミンとしては、ビタミンA、E、及びKが挙げられる。他のビタミンの例としては、ビタミンB、例えば葉酸、B12、リボフラビン、ビオチン、ピリドキサール、または他のビタミンもしくはがん細胞によって取り込まれる栄養素が挙げられる。同様に含まれるのは、HSA及び低密度リポタンパク質(LDL)である。
【0216】
別の態様では、リガンドは、好ましくは、らせん細胞透過剤などの細胞透過剤である。好ましくは、薬剤は、両親媒性である。例示的な薬剤は、tatまたはantennopediaなどのペプチドである。該薬剤がペプチドの場合、それはペプチジル模倣、逆転異性体、非ペプチドまたはシュードペプチド結合、及びD-アミノ酸の使用を含め、修飾されていてもよい。らせん剤は、親油性相及び疎油性相を有することが好ましい、アルファらせん剤であることが好ましい。
【0217】
リガンドは、ペプチドまたはペプチド模倣体であり得る。ペプチド模倣体(本明細書ではオリゴペプチド模倣体とも呼ばれる)とは、天然のペプチドと同様の一定の三次元構造に折りたたむことが可能な分子である。オリゴヌクレオチド剤へのペプチド及びペプチド模倣体の付着は、細胞の認識及び吸収を向上させることなどによって、RNAサイレンシング剤の薬物動態分布に影響を与えることができる。ペプチドまたはペプチド模倣体部分は、約5~50アミノ酸長、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50アミノ酸長であり得る。ペプチドまたはペプチド模倣体は、例えば、細胞透過性ペプチド、カチオン性ペプチド、両親媒性ペプチド、または疎水性ペプチド(例えば、主にTyr、Trp、またはPheからなる)であり得る。ペプチド部分は、デンドリマーペプチド、拘束ペプチド、または架橋ペプチドであり得る。ペプチド部分は、L-ペプチドまたはD-ペプチドであり得る。別の代替では、ペプチド部分は、疎水性膜トランスロケーション配列(MTS)を含むことができる。ペプチドまたはペプチド模倣体は、ファージ提示ライブラリ、または1ビーズ1化合物(OBOC)コンビナトリアルライブラリから同定されたペプチドなどのランダムなDNA配列によってコードされ得る(Lam et al.,Nature 354:82-84,1991)。例示的な実施形態では、組み込まれたモノマーユニットを介してRNAサイレンシング剤に繋留されたペプチドまたはペプチド模倣体は、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)-ペプチドまたはRGDミミックなどの細胞標的ペプチドである。あるペプチド部分は、長さが約5アミノ酸から約40アミノ酸に及び得る。ペプチド部分は、例えば、安定性を増大させるまたは配座性を指示するなどの構造修飾を有することができる。以下に記載されるに構造修飾のいずれかを使用することができる。
【0218】
6)分岐オリゴヌクレオチド
オリゴヌクレオチドの少なくとも1つが式(I)の実施形態によるサブユニット間連結を含む場合、2つ以上のオリゴヌクレオチドは、リンカー、スペーサー及び分岐点から独立して選択される1つ以上の部分によって互いに結合されて、分岐化合物を形成し得る。例えば、分岐化合物は、上に示した型の2つ以上のRNAサイレンシング剤を含有することができ、これにより、分岐構造を有する新しい型のRNAサイレンシング剤となる。代表的な実施形態では、オリゴヌクレオチドは、それぞれ、アンチセンス鎖(またはその一部)を含み、アンチセンス鎖は、RNA媒介サイレンシング機構(例えば、RNAi)を媒介するためにヘテロ接合型一塩基多型に十分な相補性を有する。
【0219】
例示的な実施形態では、分岐化合物は、リンカーを介して付着させた2~8のRNAサイレンシング剤を有し得る。リンカーは、疎水性であってもよい。典型的な実施形態では、本願の分岐オリゴヌクレオチドは、2~3のオリゴヌクレオチドを有する。一実施形態では、オリゴヌクレオチドは、独立して、実質的な化学的安定化を有する(例えば、構成塩基の少なくとも40%が化学修飾されている)。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、完全な化学的安定化を有する(すなわち、すべての構成塩基が化学修飾されている)。いくつかの実施形態では、分岐オリゴヌクレオチドは、それぞれのテールが独立して2~20のヌクレオチドを有する1つ以上の一本鎖ホスホロチオエートテールを含む。非限定的な実施形態では、各一本鎖テールは、8~10のヌクレオチドを有する。
【0220】
特定の実施形態では、分岐化合物は、3つの特性を特徴とする:(1)分岐構造、(2)完全な代謝安定化、及び(3)ホスホロチオエートリンカーを含む一本鎖テールが存在すること。例示的実施形態では、分岐オリゴヌクレオチドは、2つまたは3つの分岐を有する。分岐構造の全体的なサイズの増加は、取り込みの増加を促進する。また、活性に関する特定の理論に拘束されるものではないが、複数の隣接する分岐(例えば、2つまたは3つ)は、各分岐が協調して作用することができ、したがって、内在化、転送、及び放出の速度を劇的に向上させると考えらる。
【0221】
分岐化合物は、構造的に多様な様々な実施形態で提供される。いくつかの実施形態では、分岐点で付着している核酸は、一本鎖であり、miRNA阻害剤、ギャップマー、ミックスマー、SSO、PMO、またはPNAを含む。これらの一本鎖は、3’末端または5’末端に付着させ得る。siRNAと一本鎖オリゴヌクレオチドとの組み合わせも、二重機能に使用できる。別の実施形態では、ギャップマー、ミックスマー、miRNA阻害剤、SSO、PMO、及びPNAに相補的な短い核酸を使用して、これらの活性一本鎖核酸を運び、分布及び細胞内在化を増強する。短い二重鎖領域は、分岐構造を細胞内に取り込む時に、急速に解離させるために、低い溶融温度(T約37℃)を有する。
【0222】
「ジ-siRNA」化合物、すなわち、2つのsiRNA及びリンカーを有する分岐オリゴヌクレオチドは、化学的に多様なコンジュゲートを含み得る。コンジュゲート生理活性リガンドは、細胞特異性を向上させ、膜結合、内在化、及び血清タンパク質結合を促進するために使用されてもよい。コンジュゲーションに使用される生理活性部分の例としては、DHAg2、DHA、GalNAc、及びコレステロールが挙げられる。これらの部分は、接続リンカーまたはスペーサーを介してDi-siRNAに付着するか、別の遊離siRNA末端に付着した追加のリンカーまたはスペーサーを介して付加することができる。
【0223】
特定の理論に縛られるものではないが、分岐構造が存在することにより、同じ化学組成の非分岐化合物と比較して、脳内の組織保持レベルが100倍を超えて改善されることが見出されており、これは、細胞の保持及び分布の新しい機構を示唆するものである。分岐オリゴヌクレオチドは、脊髄及び脳全体に予想外に均一に分布している。さらに、分岐オリゴヌクレオチドは、様々な組織への予想外に効率的な全身送達、及び非常に高レベルの組織蓄積を呈する。
【0224】
分岐オリゴヌクレオチドは、ASO、miRNA、miRNA阻害剤、スプライススイッチング、PMO、PNAなど、様々な治療用核酸を含んでもよい。いくつかの実施形態では、分岐オリゴヌクレオチドは、コンジュゲートされた疎水性部分をさらに含み、in vitro及びin vivoにおいて、前例のないサイレンシング及び有効性を呈する。
【0225】
リンカー
分岐オリゴヌクレオチド化合物の一実施形態では、各リンカーは、エチレングリコール鎖、アルキル鎖、ペプチド、RNA、DNA、ホスフェート、ホスホネート、ホスホルアミデート、エステル、アミド、トリアゾール、及びそれらの組み合わせから独立して選択され;ここで、リンカーの任意の炭素原子または酸素原子は、任意により窒素原子で置換されているか、ヒドロキシル置換基を保有しているか、またはオキソ置換基を保有している。一実施形態では、各リンカーは、エチレングリコール鎖である。別の実施形態では、各リンカーは、アルキル鎖である。別の実施形態では、各リンカーは、ペプチドである。別の実施形態では、各リンカーは、RNAである。別の実施形態では、各リンカーは、DNAである。別の実施形態では、各リンカーは、ホスフェートである。別の実施形態では、各リンカーは、ホスホネートである。別の実施形態では、各リンカーは、ホスホルアミデートである。別の実施形態では、各リンカーは、エステルである。別の実施形態では、各リンカーは、アミドである。別の実施形態では、各リンカーは、トリアゾールである。VI.
【0226】
別の態様では、本明細書において、式(1)の分岐オリゴヌクレオチド化合物が提供される:
【化23】
式中、Lは、エチレングリコール鎖、アルキル鎖、ペプチド、RNA、DNA、ホスフェート、ホスホネート、ホスホルアミデート、エステル、アミド、トリアゾール、及びそれらの組み合わせから選択され、式(1)は、任意により、さらに1つ以上の分岐点Bp、及び1つ以上のスペーサーSを含み;ここで、Bpは、出現ごとに、独立して、出現時に、多価有機種またはその誘導体であり、Sは、出現ごとに、独立して、エチレングリコール鎖、アルキル鎖、ペプチド、RNA、DNA、ホスフェート、ホスホネート、ホスホルアミデート、エステル、アミド、トリアゾール、及びそれらの組み合わせから選択される。Nは、センス鎖及びアンチセンス鎖を含むRNA二重鎖であり、センス鎖及びアンチセンス鎖は、それぞれ独立して1つまたは複数の化学修飾を含み、nは、2、3、4、5、6、7または8である。一実施形態では、少なくとも1つのNは、式(I)の修飾されたサブユニット間連結を含む。
【0227】
一実施形態では、式(1)の化合物は、表1の式(1-1)~(1-9)から選択される構造を有する。
【表1】
【0228】
一実施形態では、式(1)の化合物は、式(1-1)である。別の実施形態では、式(1)の化合物は、式(1-2)である。別の実施形態では、式(1)の化合物は、式(1-3)である。別の実施形態では、式(1)の化合物は、式(1-4)である。別の実施形態では、式(1)の化合物は、式(1-5)である。別の実施形態では、式(1)の化合物は、式(1-6)である。別の実施形態では、式(1)の化合物は、式(1-7)である。別の実施形態では、式(1)の化合物は、式(1-8)である。別の実施形態では、式(1)の化合物は、式(1-9)である。
【0229】
式(1)の化合物の実施形態では、各リンカーは、エチレングリコール鎖、アルキル鎖、ペプチド、RNA、DNA、ホスフェート、ホスホネート、ホスホルアミデート、エステル、アミド、トリアゾール、及びそれらの組み合わせから独立して選択され;ここで、リンカーの任意の炭素原子または酸素原子は、任意により窒素原子で置換されているか、ヒドロキシル置換基を保有しているか、またはオキソ置換基を保有している。式(1)の化合物の一実施形態では、各リンカーは、エチレングリコール鎖である。別の実施形態では、各リンカーは、アルキル鎖である。式(1)の化合物の別の実施形態では、各リンカーは、ペプチドである。式(1)の化合物の別の実施形態では、各リンカーは、RNAである。式(1)の化合物の別の実施形態では、各リンカーは、DNAである。式(1)の化合物の別の実施形態では、各リンカーは、ホスフェートである。別の実施形態では、各リンカーは、ホスホネートである。式(1)の化合物の別の実施形態では、各リンカーは、ホスホルアミデートである。式(1)の化合物の別の実施形態では、各リンカーは、エステルである。式(1)の化合物の別の実施形態では、各リンカーは、アミドである。式(1)の化合物の別の実施形態では、各リンカーは、トリアゾールである。
【0230】
式(1)の化合物の一実施形態では、Bpは、多価有機種である。式(1)の化合物の別の実施形態では、Bpは、多価有機種の誘導体である。式(1)の化合物の一実施形態では、Bpは、トリオールまたはテトロール誘導体である。別の実施形態では、Bpは、トリまたはテトラカルボン酸誘導体である。別の実施形態では、Bpは、アミン誘導体である。別の実施形態では、Bpは、トリまたはテトラアミン誘導体である。別の実施形態では、Bpは、アミノ酸誘導体である。
【0231】
多価有機種は、炭素及び3つ以上の原子価を含む部分(すなわち、上記で定義したS、LまたはNなどの部分との付着点)である。多価有機種の非限定的な例としては、トリオール(例えば、グリセロール、フロログルシノールなど)、テトロール(例えば、リボース、ペンタエリスリトール、1,2,3,5-テトラヒドロキシベンゼンなど)、トリカルボン酸(例えば、クエン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸、トリメシン酸など)、テトラカルボン酸(例えば、エチレンジアミン四酢酸、ピロメリット酸など)、第三級アミン(例えば、トリプロパルギルアミン、トリエタノールアミンなど)、トリアミン(例えば、ジエチレントリアミンなど)、テトラミン、及びヒドロキシル、チオール、アミノ及び/またはカルボキシル部分の組み合わせを含む種(例えば、リジン、セリン、システインなどのアミノ酸)が挙げられる。
【0232】
式(1)の化合物の実施形態では、各核酸は、1つ以上の化学修飾ヌクレオチドを含む。式(1)の化合物の実施形態では、各核酸は、化学修飾ヌクレオチドからなる。式(1)の化合物の特定の実施形態では、各核酸の95%超、90%超、85%超、80%超、75%超、70%超、65%超、60%超、55%超または50%超は、化学修飾ヌクレオチドを含む。
【0233】
一実施形態では、各アンチセンス鎖は独立して、表2の群から選択される5’末端基Rを含む。
【表2】
【0234】
一実施形態では、Rは、Rである。別の実施形態では、Rは、Rである。別の実施形態では、Rは、Rである。別の実施形態では、Rは、Rである。別の実施形態では、Rは、Rである。別の実施形態では、Rは、Rである。別の実施形態では、Rは、Rである。別の実施形態では、Rは、Rである。
【0235】
式(2)の構造
ある実施形態では、式(1)の化合物は、式(2)の構造:
【化24】
(式中、Xは、出現ごとに独立して、アデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、及びそれらの化学修飾誘導体から選択され、Yは、出現ごとに独立して、アデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、及びそれらの化学修飾誘導体から選択され;-は、ホスホジエステルヌクレオシド間結合を表し;=は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を表し;及び---は、発現ごとに個別に、塩基対相互作用またはミスマッチを表す)。さらに、ヌクレオシド間連結のうちの少なくとも1つは、式(I)の修飾されたサブユニット間連結で置換され得る。
【0236】
特定の実施形態では、式(2)の構造は、ミスマッチを含まない。一実施形態では、式(2)の構造は、1つのミスマッチを含む。別の実施形態では、式(2)の化合物は、2つのミスマッチを含む。別の実施形態では、式(2)の化合物は、3つのミスマッチを含む。別の実施形態では、式(2)の化合物は、4つのミスマッチを含む。一実施形態では、各核酸は、化学修飾ヌクレオチドからなる。
【0237】
特定の実施形態では、式(2)の構造のX’の95%超、90%超、85%超、80%超、75%超、70%超、65%超、60%超、55%超、または50%超は、化学修飾ヌクレオチドである。他の実施形態では、式(2)の構造のX’の95%超、90%超、85%超、80%超、75%超、70%超、65%超、60%超、55%超、または50%超は、化学修飾ヌクレオチドである。
【0238】
式(3)の構造
ある実施形態では、式(1)の化合物は、式(3)の構造を有する:
【化25】
ここで、X(下線)は、出現ごとに独立して、2’-デオキシ-2’-フルオロ修飾を含むヌクレオチドであり;Xは、出現ごとに独立して、2’-O-メチル修飾を含むヌクレオチドであり;Y(下線)は、出現ごとに独立して、2’-デオキシ-2’-フルオロ修飾を含むヌクレオチドであり;Yは、出現ごとに独立して、2’-O-メチル修飾を含むヌクレオチドである。
【0239】
一実施形態では、Xは、2’-デオキシ-2’-フルオロ修飾アデノシン、グアノシン、ウリジンまたはシチジンからなる群から選択される。一実施形態では、Xは、2’-O-メチル修飾アデノシン、グアノシン、ウリジンまたはシチジンからなる群から選択される。一実施形態では、Yは、2’-デオキシ-2’-フルオロ修飾アデノシン、グアノシン、ウリジンまたはシチジンからなる群から選択される。一実施形態では、Yは、2’-O-メチル修飾アデノシン、グアノシン、ウリジンまたはシチジンからなる群から選択される。
【0240】
特定の実施形態では、式(3)の構造は、ミスマッチを含まない。一実施形態では、式(3)の構造は、1つのミスマッチを含む。別の実施形態では、式(3)の化合物は、2つのミスマッチを含む。別の実施形態では、式(3)の化合物は、3つのミスマッチを含む。別の実施形態では、式(3)の化合物は、4つのミスマッチを含む。
【0241】
式(4)の構造
ある実施形態では、式(1)の化合物は、式(4)の構造を有する:
【化26】
(式中、Xは、出現ごとに独立して、アデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、及びそれらの化学修飾誘導体から選択され、Yは、出現ごとに独立して、アデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、及びそれらの化学修飾誘導体から選択され;-は、ホスホジエステルヌクレオシド間結合を表し;=は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を表し;及び---は、発現ごとに個別に、塩基対相互作用またはミスマッチを表す)。また、ヌクレオシド間連結のうちの少なくとも1つは、式(I)の修飾されたサブユニット間連結で置換され得る。
【0242】
特定の実施形態では、式(4)の構造は、ミスマッチを含まない。一実施形態では、式(4)の構造は、1つのミスマッチを含む。別の実施形態では、式(4)の化合物は、2つのミスマッチを含む。別の実施形態では、式(4)の化合物は、3つのミスマッチを含む。別の実施形態では、式(4)の化合物は、4つのミスマッチを含む。一実施形態では、各核酸は、化学修飾ヌクレオチドからなる。
【0243】
特定の実施形態では、式(2)の構造のX’の95%超、90%超、85%超、80%超、75%超、70%超、65%超、60%超、55%超、または50%超は、化学修飾ヌクレオチドである。他の実施形態では、式(2)の構造のX’の95%超、90%超、85%超、80%超、75%超、70%超、65%超、60%超、55%超、または50%超は、化学修飾ヌクレオチドである。
【0244】
式(5)の構造
いくつかの実施形態では、式(1)の化合物は、式(5)の構造を有する:
【化27】
ここで、X(下線)は、出現ごとに独立して、2’-デオキシ-2’-フルオロ修飾を含むヌクレオチドであり;Xは、出現ごとに独立して、2’-O-メチル修飾を含むヌクレオチドであり;Y(下線)は、出現ごとに独立して、2’-デオキシ-2’-フルオロ修飾を含むヌクレオチドであり;Yは、出現ごとに独立して、2’-O-メチル修飾を含むヌクレオチドである。
【0245】
特定の実施形態では、Xは、2’-デオキシ-2’-フルオロ修飾アデノシン、グアノシン、ウリジンまたはシチジンからなる群から選択される。一実施形態では、Xは、2’-O-メチル修飾アデノシン、グアノシン、ウリジンまたはシチジンからなる群から選択される。一実施形態では、Yは、2’-デオキシ-2’-フルオロ修飾アデノシン、グアノシン、ウリジンまたはシチジンからなる群から選択される。一実施形態では、Yは、2’-O-メチル修飾アデノシン、グアノシン、ウリジンまたはシチジンからなる群から選択される。
【0246】
特定の実施形態では、式(5)の構造は、ミスマッチを含まない。一実施形態では、式(6)の構造は、1つのミスマッチを含む。別の実施形態では、式(5)の化合物は、2つのミスマッチを含む。別の実施形態では、式(5)の化合物は、3つのミスマッチを含む。別の実施形態では、式(V)の化合物は、4つのミスマッチを含む。
【0247】
可変リンカー
式(1)の化合物の実施形態では、Lは、構造L1を有する。
【化28】
【0248】
L1の実施形態では、Rは、Rであり、nは、2である。
【0249】
式(II)の構造の実施形態では、Lは、構造L1を有する。式(III)の構造の実施形態では、Lは、構造L1を有する。式(IV)の構造の実施形態では、Lは、構造L1を有する。式(V)の構造の実施形態では、Lは、構造L1を有する。式(VI)の構造の実施形態では、Lは、構造L1を有する。式(VII)の構造の実施形態では、Lは、構造L1を有する。
【0250】
式(1)の化合物の実施形態では、Lは、構造L2を有する。
【化29】
【0251】
L2の一実施形態において、Rは、Rであり、nは、2である。式(2)の構造の一実施形態では、Lは、構造L2を有する。式(3)の構造の実施形態では、Lは、構造L2を有する。式(4)の構造の実施形態では、Lは、構造L2を有する。式(5)の構造の実施形態では、Lは、構造L2を有する。
【0252】
送達系
別の態様では、式(6)の構造を有する治療用核酸のための送達系が本明細書に提供される:
【化30】
式中、Lは、エチレングリコール鎖、アルキル鎖、ペプチド、RNA、DNA、ホスフェート、ホスホネート、ホスホルアミデート、エステル、アミド、トリアゾール、及びそれらの組み合わせから選択され、式(6)は、任意により、さらに1つ以上の分岐点Bp、及び1つ以上のスペーサーSを含み;ここで、Bpは、出現ごとに、独立して、出現時に、多価有機種またはその誘導体であり、Sは、出現ごとに、独立して、エチレングリコール鎖、アルキル鎖、ペプチド、RNA、DNA、ホスフェート、ホスホネート、ホスホルアミデート、エステル、アミド、トリアゾール、及びそれらの組み合わせから選択される。各cNAは、独立して、1つ以上の化学的修飾を含むキャリア核酸であり、nは、2、3、4、5、6、7または8である。一実施形態では、少なくとも1つのcNAは、式(I)の修飾されたサブユニット間連結を含む。
【0253】
送達系の一実施形態では、Lは、エチレングリコール鎖である。送達系の別の実施形態では、Lは、アルキル鎖である。送達系の別の実施形態では、Lは、ペプチドである。送達系の別の実施形態では、Lは、RNAである。送達系の別の実施形態では、Lは、DNAである。送達系の別の実施形態では、Lは、ホスフェートである。送達系の別の実施形態では、Lは、ホスホネートである。送達系の別の実施形態では、Lは、ホスホルアミデートである。送達系の別の実施形態では、Lは、エステルである。送達系の別の実施形態では、Lは、アミドである。送達系の別の実施形態では、Lは、トリアゾールである。
【0254】
送達系の一実施形態では、Sは、エチレングリコール鎖である。別の実施形態では、Sは、アルキル鎖である。送達系の別の実施形態では、Sは、ペプチドである。別の実施形態では、Sは、RNAである。送達系の別の実施形態では、Sは、DNAである。送達系の別の実施形態では、Sは、ホスフェートである。送達系の別の実施形態では、Sは、ホスホネートである。送達系の別の実施形態では、Sは、ホスホルアミデートである。送達系の別の実施形態では、Sは、エステルである。別の実施形態では、Sは、アミドである。別の実施形態では、Sは、トリアゾールである。
【0255】
送達系の一実施形態では、nは2である。送達系の別の実施形態では、nは3である。送達系の別の実施形態では、nは4である。送達系の別の実施形態では、nは5である。送達系の別の実施形態では、nは6である。送達系の別の実施形態では、nは7である。送達系の別の実施形態では、nは8である。
【0256】
特定の実施形態では、各cNAは、95%超、90%超、85%超、80%超、75%超、70%超、65%超、60%超、55%超、または50%超の化学修飾ヌクレオチドを含む。
【0257】
一実施形態では、式(6)の化合物は、表3の式(6-1)~(6-9)から選択される構造を有する。
【表3】
【0258】
ある実施形態では、式(6)の化合物は、式(6-1)の構造である。ある実施形態では、式(6)の化合物は、式(6-2)の構造である。ある実施形態では、式(6)の化合物は、式(6-3)の構造である。ある実施形態では、式(6)の化合物は、式(6-4)の構造である。ある実施形態では、式(6)の化合物は、式(6-5)の構造である。ある実施形態では、式(6)の化合物は、式(6-6)の構造である。ある実施形態では、式(6)の化合物は、式(6-7)の構造である。ある実施形態では、式(6)の化合物は、式(6-8)の構造である。ある実施形態では、式(6)の化合物は、式(6-9)の構造である。
【0259】
一実施形態では、式(6)(例えば、式(6-1)~(6-9)など)の化合物は、各cNAが、独立して、少なくとも15の連続ヌクレオチドを含む。一実施形態では、各cNAは、独立して、化学修飾ヌクレオチドからなる。
【0260】
一実施形態では、各NAは、少なくとも1つのcNAにハイブリダイズする。一実施形態では、少なくとも1つのNAは、式(I)の修飾されたサブユニット間連結を含む。特定の実施形態では、本開示の化合物は、以下の特性を特徴とする:(1)2つ以上の分岐オリゴヌクレオチド、例えば、3’末端及び5’末端の数が等しくない;(2)実質的に化学的に安定化している、例えば、40%超、最適には100%のオリゴヌクレオチドが、化学修飾されている(例えば、RNAが不在であり、任意によりDNAが不在である);(3)少なくとも3つ、任意により5~20のホスホロチオエート結合を含むホスホロチオエート単一オリゴヌクレオチド。
【0261】
VII.核酸、ベクター宿主細胞、及び分岐オリゴヌクレオチド化合物を導入する方法
本開示のRNAサイレンシング剤は、細胞(例えば、神経細胞)に(すなわち、細胞内に)直接導入することができる。または細胞外から空洞、間隙、生物の循環に導入される、経口的に導入される、または核酸を含む溶液に細胞もしくは生物を浸すことによって導入され得る。血管または血管外循環、血液またはリンパ系、及び脳脊髄液は、核酸が導入され得る部位である。
【0262】
本開示のRNAサイレンシング剤は、核酸を含む溶液の注入、核酸によって覆われた粒子による衝撃、核酸の溶液への細胞または生物の浸漬、または核酸の存在下での細胞膜のエレクトロポレーションなど、当技術分野において知られている核酸送達法を使用して、導入され得る。核酸を細胞に導入するための当技術分野で公知の他の方法、例えば脂質媒介担体輸送、化学媒介輸送、及びリン酸カルシウムなどのカチオン性リポソームトランスフェクションなどを使用してもよい。核酸は、以下の活性のうちの1つ以上を行う他の成分と共に導入され得る:細胞による核酸の取り込みを増強する、さもなければ標的遺伝子の阻害を増加させる。
【0263】
核酸を導入する物理的方法としては、RNAを含む溶液の注入、RNAで覆われた粒子による衝撃、RNAの溶液への細胞または生物の浸漬、またはRNAの存在下での細胞膜のエレクトロポレーションが挙げられる。ウイルス粒子にパッケージ化されたウイルス構築物は、細胞への発現構築物の効率的な導入、及び発現構築物によってコードされるRNAの転写の両方を達成する。核酸を細胞に導入するための当技術分野で公知の他の方法、例えば脂質媒介担体輸送、化学媒介輸送、例えば、リン酸カルシウムなどを使用してもよい。したがって、RNAは、以下の活性のうちの1つ以上を行う成分と共に導入され得る:細胞によるRNA取り込みの増強、一本鎖のアニーリングの阻害、一本鎖の安定化、またはさもなければ標的遺伝子の阻害の増加。
【0264】
RNAは、細胞に(すなわち、細胞内に)直接導入することができる。または細胞外から空洞、間隙、生物の循環に導入される、経口的に導入される、またはRNAを含む溶液に細胞もしくは生物を浸すことによって導入され得る。血管または血管外循環、血液またはリンパ系、及び脳脊髄液は、RNAが導入され得る部位である。
【0265】
標的遺伝子を有する細胞は、生殖系列または体細胞、全能性または多能性、分裂または非分裂、柔組織または上皮、不死化または形質転換などに由来し得る。細胞は、幹細胞または分化細胞であり得る。分化する細胞型としては、脂肪細胞、線維芽細胞、筋細胞、心筋細胞、内皮細胞、ニューロン、グリア細胞、血液細胞、巨核球、リンパ球、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞、白血球、顆粒球、ケラチノサイト、軟骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、肝細胞、及び内分泌腺または外分泌腺の細胞が挙げられる。
【0266】
特定の標的遺伝子及び送達される二本鎖RNA材料の用量に応じて、このプロセスは、標的遺伝子の部分的または完全な機能喪失をもたらし得る。少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%、またはそれ以上の標的細胞における遺伝子発現の減少または喪失が典型的である。遺伝子発現の阻害とは、標的遺伝子からのタンパク質及び/またはmRNA産物のレベルの欠如(または観察可能な減少)を指す。特異性とは、細胞の他の遺伝子に明らかな影響を与えることなく、標的遺伝子を阻害する能力を指す。阻害の結果は、細胞または生物の外部特性を調べることによって(以下の実施例に示されているとおり)、または生化学的手法、例えば、RNA溶液ハイブリダイゼーション、ヌクレアーゼ保護、ノーザンハイブリダイゼーション、逆転写、マイクロアレイによる遺伝子発現モニタリング、抗体結合、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ウェスタンブロッティング、ラジオイムノアッセイ(RIA)、他のイムノアッセイ、及び蛍光活性化セルソーティング(FACS)によって確認することができる。
【0267】
細胞株または生物全体におけるRNA媒介阻害の場合、タンパク質産物が容易にアッセイされるレポーターまたは薬剤耐性遺伝子を使用することによって、遺伝子発現は、簡便にアッセイされる。このようなレポーター遺伝子としては、アセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)、アルカリホスファターゼ(AP)、ベータガラクトシダーゼ(LacZ)、ベータグルコロニダーゼ(GUS)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、ルシフェラーゼ(Luc)、ノパリンシンターゼ(NOS)、オクトピンシンターゼ(OCS)、及びそれらの誘導体が挙げられる。アンピシリン、ブレオマイシン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン(gentarnycin)、ハイグロマイシン、カナマイシン、リンコマイシン、メトトレキサート、ホスフィノスリシン、ピューロマイシン、及びテトラサイクリンに対する耐性を付与する複数の選択マーカーが利用可能である。アッセイに応じて、遺伝子発現量の定量化により、本開示により治療されていない細胞と比較して、10%、33%、50%、90%、95%または99%を超える阻害度を判定することができる。注入された材料の用量が少なく、RNAi剤の投与後の時間が長い場合には、細胞のより少ない割合(例えば、標的細胞の少なくとも10%、20%、50%、75%、90%、または95%)で阻害され得る。細胞内の遺伝子発現の定量化は、標的mRNAの蓄積または標的タンパク質の翻訳のレベルで、同様の量の阻害を示し得る。一例として、細胞内の遺伝子産物の量を評価することにより、阻害の効率を判定してもよい。mRNAは、阻害性二本鎖RNAに使用される領域外にヌクレオチド配列を有するハイブリダイゼーションプローブにより検出され得るか、または翻訳されたポリペプチドが、その領域のポリペプチド配列に対して産生された抗体で検出され得る。
【0268】
RNAは、細胞当たり少なくとも1コピーの送達が可能になる量で導入され得る。高用量の材料(例えば、少なくとも5、10、100、500または1000コピー/細胞)は、より効果的な阻害をもたらし得、低用量は、特定の用途にも有用であり得る。
【0269】
例示的態様では、本開示のRNAi剤(例えば、目的の標的配列を標的とするsiRNA)の有効性は、細胞、特に、ニューロン(例えば、線条体または皮質のニューロンクローンライン及び/または初代ニューロン)中の細胞において、変異型mRNA(例えば、標的mRNA及び/または標的タンパク質の産生)を特異的に分解する能力について、試験する。また、細胞ベースの検証アッセイに好適であるのは、他の容易にトランスフェクト可能な細胞、例えばHeLa細胞またはCOS細胞である。細胞は、ヒトの野生型または変異体cDNA(例えば、ヒトの野生型または変異体の標的cDNA)でトランスフェクトされる。標準的なsiRNA、修飾siRNA、またはUループ型mRNAからsiRNAを生成できるベクターを同時トランスフェクトする。標的mRNA及び/または標的タンパク質の選択的減少を測定する。標的mRNAまたはタンパク質の減少は、RNAi剤の非存在下または標的mRNAを標的としないRNAi剤の存在下での標的mRNAまたはタンパク質のレベルと比較することができる。外因的に導入されたmRNAまたはタンパク質(または内因性のmRNAまたはタンパク質)は、比較目的でアッセイできる。標準的なトランスフェクション技術に対してある程度耐性があることが知られている神経細胞を利用する場合、受動的取り込みによって、RNAi剤(例えば、siRNA)を導入することが望ましい場合がある。
【0270】
組換えアデノ随伴ウイルス及びベクター
特定の例示的な実施形態では、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)及びそれらの関連ベクターを使用して、1つ以上のsiRNAを細胞、例えば神経細胞(例えば脳細胞)に送達することができる。AAVは、カプシドタンパク質の配列によって決定される血清型に基づいて感染効率が異なるが、多くの異なる細胞型に感染できる。いくつかのネイティブAAV血清型が特定されており、血清型1~9が、組換えAAVに最も一般的に使用されている。AAV-2は、最もよく研究され、公開されている血清型である。AAV-DJ系としては、血清型AAV-DJ及びAAV-DJ/8が挙げられる。これらの血清型は、複数のAAV血清型のDNAシャッフリングによって作成され、in vitro(AAV-DJ)及びin vivo(AAV-DJ/8)において、様々な細胞及び組織中に改善された形質導入効率を有するハイブリッドキャプシドを含むAAVを産生する。
【0271】
特定の実施形態では、組換えアデノ随伴ウイルス7(rAAV7)、RAAV9及びrAAV10、または他の好適なrAAVの血管内送達によって、広範な中枢神経系(CNS)の送達を達成することができる(Zhang et al.(2011)Mol.Ther.19(8):1440-8.doi:10.1038/mt.2011.98.Epub 2011 May24)。rAAV及びそれらに関連するベクターは、当技術分野で周知であり、米国特許出願第2014/0296486号、同第2010/0186103号、同第2008/0269149号、同第2006/0078542号及び同第2005/0220766号に記載され、そのそれぞれは、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0272】
rAAVは、当技術分野で知られている任意の適切な方法に従って、組成物中で対象に送達され得る。rAAVは、生理学的に適合する担体(すなわち、組成物)に懸濁することができ、対象、すなわち、ヒト、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ヒツジ、ウサギ、ウマ、ウシ、ヤギ、ブタ、モルモット、ハムスター、ニワトリ、シチメンチョウ、非ヒト霊長類(例えば、マカク)などの宿主動物に投与してもよい。ある特定の実施形態では、動物は、非ヒト宿主動物である。
【0273】
哺乳動物対象への1つ以上のrAAVの送達は、例えば、筋肉内注射によって、または哺乳動物対象の血流への投与によって行うことができる。血流への投与は、静脈、動脈、または任意の他の血管導管への注射によるものであり得る。特定の実施形態では、1つ以上のrAAVは、外科技術において周知の技法である単離された四肢灌流によって血流に投与され、この方法は、当業者がrAAVビリオンの投与前に全身循環から四肢を単離することが本質的に可能になる。米国特許第6,177,403号に記載されている単離肢灌流技術の変形はまた、筋細胞または組織への形質導入を潜在的に増強するために、単離された四肢の脈管構造にビリオンを投与するために当業者によって使用され得る。さらに、場合によっては、対象の中枢神経系(CNS)にビリオンを送達することが望ましい場合がある。「CNS」とは、脊椎動物の脳及び脊髄のすべての細胞及び組織を意味する。したがって、この用語には、これらに限定されないが、神経細胞、グリア細胞、星状細胞、脳脊髄液(CSF)、間質腔、骨、軟骨などが挙げられる。組換えAAVは、針、カテーテル、または関連する装置を用いて、定位注射など、当技術分野で知られている神経外科技術を使用して、例えば心室領域、ならびに線条体(例えば、線条体の尾状核または被殻)、脊髄及び神経筋接合部、または小脳小葉への注射によって、CNSまたは脳に直接送達され得る(例えば、Stein et al.,J Virol 73:3424-3429,1999;Davidson et al.,PNAS 97:3428-3432,2000;Davidson et al.,Nat.Genet.3:219-223,1993;及びAlisky and Davidson,Hum.Gene Ther.11:2315-2329,2000)。
【0274】
本開示の組成物は、rAAVを単独で、または1つ以上の他のウイルスと組み合わせて含み得る(例えば、1つ以上の異なる導入遺伝子を有する第2のrAAVコード化)。特定の実施形態では、組成物は、それぞれが1つ以上の異なる導入遺伝子を有する、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の異なるrAAVを含む。
【0275】
rAAVの有効量は、動物を標的感染させ、所望の組織を標的にするのに十分な量である。いくつかの実施形態では、rAAVの有効量は、安定した体細胞トランスジェニック動物モデルを作製するのに十分な量である。有効量は主に、対象の種、年齢、体重、健康状態、及び標的とする組織などの要因に依存し、したがって動物及び組織によって異なり得る。例えば、1つ以上のrAAVの有効量は、一般に、約10~1016のゲノムコピーを含む約1ml~約100mlの溶液の範囲である。場合によっては、約1011~1012のrAAVゲノムコピーの投与量が適切である。特定の実施形態では、1012のrAAVゲノムコピーが、心臓、肝臓、及び膵臓組織を標的とするのに有効である。場合によっては、安定したトランスジェニック動物は、rAAVの複数回投与によって産生される。
【0276】
いくつかの実施形態では、rAAV組成物は、特に高rAAV濃度が存在する場合(例えば、約1013ゲノムコピー/mL以上)、組成物中のAAV粒子の凝集を減少させるために、製剤化される。rAAVの凝集を減少させるための方法は、当技術分野で周知であり、例えば、界面活性剤の添加、pH調整、塩濃度調整などが挙げられる(例えば、Wright et al.(2005)Molecular Therapy 12:171-178,その内容は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0277】
「組換えAAV(rAAV)ベクター」は、少なくとも、導入遺伝子及びその調節配列、ならびに5’及び3’AAV逆方向末端反復(ITR)を含む。キャプシドタンパク質にパッケージされ、選択された標的細胞に送達されるのは、この組換えAAVベクターである。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、ベクター配列とは異種の核酸配列であり、この配列は、目的のポリペプチド、タンパク質、機能的RNA分子(例えば、siRNA)または他の遺伝子産物をコードする。核酸コード配列は、標的組織の細胞中における導入遺伝子の転写、翻訳、及び/または発現を可能にする様式で調節成分に作動可能に連結される。
【0278】
ベクターのAAV配列は、典型的には、シス作用性5’及び3’逆方向末端反復(ITR)配列を含む(例えば、B.J.Carter,「Handbook of Parvoviruses」ed.,P.Tijsser,CRC Press,pp.155 168(1990)を参照されたい)。ITR配列は、通常、約145塩基対長である。特定の実施形態では、実質的に、ITRをコードする配列全体が分子内で使用されるが、これらの配列のある程度の軽微な修飾は許容される。これらのITR配列を修飾できることは、当業者の範囲内である(例えば、テキスト、Sambrook et al,「Molecular Cloning.A Laboratory Manual」,2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1989);及びK.Fisher et al.,J Virol.,70:520 532(1996)を参照されたい)。本開示で使用されるそのような分子の例は、導入遺伝子を含む「シス作用性」プラスミドであり、選択された導入遺伝子配列及び関連する調節エレメントが、5’及び3’AAV ITR配列に隣接している。AAV ITR配列は、本明細書にさらに記載される哺乳動物AAVタイプなど、任意の既知のAAVから得ることができる。
【0279】
VIII.治療方法
本明細書で使用される「治療」または「治療すること」は、患者への治療剤(例えば、RNA剤またはベクターもしくはそれをコードする導入遺伝子)の適用もしくは投与、または患者から単離された組織もしくは細胞株への治療剤の適用もしくは投与として定義され、患者は、その疾患もしくは障害、その疾患もしくは障害の症状または疾患もしくは障害の素因を有し、疾患もしくは障害、疾患もしくは障害の症状、または疾患の素因を治療する、治癒させる、軽減させる、緩和させる、変更させる、修復させる、回復させる、改善させるまたは影響を与えるために行う。
【0280】
一態様では、本開示は、対象に治療剤(例えば、RNAi剤またはベクターまたはそれをコードする導入遺伝子)を投与することによって、対象において上記の疾患または障害を予防する方法を提供する。疾患のリスクがある対象は、例えば、本明細書に記載の診断アッセイまたは予後アッセイのいずれかまたは組み合わせによって同定することができる。予防剤の投与は、疾患または障害に特徴的な症状が現れる前に行うことができ、これにより、その疾患または障害を予防するか、あるいはその進行を遅らせるようになる。
【0281】
本開示の別の態様は、対象を治療的に処置する方法、すなわち、疾患または障害の症状の発症を変化させる方法に関する。
【0282】
治療の予防法及び治療法の両方に関して、そのような治療は、ファーマコゲノミクスの分野から得られた知識に基づいて、特別に調整または修正され得る。本明細書で使用される「ファーマコゲノミクス」は、遺伝子配列決定、統計遺伝学、及び遺伝子発現分析などのゲノミクス技術を、臨床開発中及び市販中の薬物に適用することを指す。より具体的には、この用語は、患者の遺伝子が薬物に対する応答(例えば、患者の「薬物反応表現型」または「薬物反応遺伝子型」)を決定する方法についての研究を指す。したがって、本開示の別の態様は、個体の薬物応答遺伝子型に従って、本開示の標的遺伝子分子または標的遺伝子調節因子のいずれかを用いて、個体の予防的または治療的処置を調整する方法を提供する。ファーマコゲノミクスにより、臨床医または医師は、処置から最も恩恵を受ける患者に予防的または治療的処置を標的にすること、及び有毒な薬物関連の副作用を経験する患者の処置を回避することが可能になる。
【0283】
治療剤は、適切な動物モデルで試験され得る。例えば、本明細書に記載のRNAi剤(またはそれをコードする発現ベクターまたは導入遺伝子)を動物モデルで使用して、RNAi剤による処置の有効性、毒性、または副作用を決定することができる。あるいは、治療剤を動物モデルで使用して、そのような剤の作用機序を決定することができる。例えば、薬剤を動物モデルで使用して、そのような薬剤による処置の有効性、毒性、または副作用を決定することができる。あるいは、薬剤を動物モデルで使用して、そのような薬剤の作用機序を決定することができる。
【0284】
本開示のRNAサイレンシング剤を含有する医薬組成物は、神経変性疾患を有する、または神経変性疾患を発症するリスクがあると診断された任意の患者に投与することができる。一実施形態では、患者は神経学的障害を有すると診断され、それ以外は一般的に健康である。例えば、患者は末期症状ではなく、診断後少なくとも2年、3年、5年、またはそれ以上生存する可能性が高い。患者は、診断直後に治療を受けることができ、またはパーキンソン病患者における運動症状の日内変動(motor fluctuation)及びジスキネジア(dyskinesis)など、患者がより衰弱する症状を経験するまで治療を遅延させることもできる。別の実施形態では、患者は疾患の進行段階に達していない。
【0285】
神経細胞への取り込みを向上させるために修飾されたRNAサイレンシング剤は、約1.4mg/kg体重未満、または10、5、2、1、0.5、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001、0.0005、0.0001、0.00005または0.00001mg/kg体重未満の単位用量、及び200nmole/kg体重未満のRNA剤(例えば、約4.4×1016コピー)、または1500nmole/kg体重未満、750、300、150、75、15、7.5、1.5、0.75、0.15、0.075、0.015、0.0075、0.0015、0.00075、0.00015nmole/kg体重の単位用量のRNAサイレンシング剤を投与することができる。単位用量は、例えば、注射(例えば、静脈内または筋肉内、くも膜下腔内、または直接脳内へ)、吸入用量、または局所適用によって投与することができる。特に好ましい投与量は、2mg/kg体重未満、1または0.1mg/kg体重である。
【0286】
器官への直接的な(例えば、脳への直接的な)RNAサイレンシング剤の送達は、約0.00001mg~約3mg/器官、または好ましくは約0.0001~0.001mg/器官、約0.03~3.0mg/器官、約0.1~3.0mg/目または約0.3~3.0mg/器官程度の投与量であり得る。投与量は、神経変性疾患または障害、例えばADまたはALSを治療または予防するのに有効な量であり得る。一実施形態では、単位用量は、1日1回未満の頻度で、例えば、2、4、8または30日未満ごとに投与される。別の実施形態では、単位用量は、一定の頻度で投与されない(例えば、定期的な頻度ではない)。例えば、単位用量を1回投与することができる。一実施形態では、有効用量は、他の従来の治療様式で投与される。
【0287】
一実施形態では、対象は、初回用量及び1回以上の維持用量のRNAサイレンシング剤を投与される。1回以上の維持用量は、一般に初期用量よりも少なく、例えば、初期用量の半分である。維持レジメンは、0.01μg~1.4mg/kg体重/日、例えば、10、1、0.1、0.01、0.001、または0.00001mg/kg体重/日の範囲の1種以上の用量で、対象を治療することを含むことができる。維持用量は、好ましくは、5日、10日、または30日未満で投与される。さらに、治療レジメンは、特定の疾患の性質、その重症度、及び患者の全身状態に応じて変化する期間、継続し得る。好ましい実施形態では、投与量は、1日1回以下、例えば、24時間以内、36、48時間、またはそれ以上に1回以内、例えば、5日または8日に1回以内送達され得る。治療後、患者は、患者の状態の変化及び病状の症状の緩和について監視され得る。化合物の投与量は、患者が現在の投与量レベルに有意に反応しない場合に増量してよく、または病状の症状の軽減が観察された場合、病状が消失した場合、または望ましくない副作用が観察された場合に減量してよい。
【0288】
有効用量は、特定の状況下で所望されるか、または適切であると考えられる場合、単回用量または2回以上の用量で投与することができる。繰り返しまたは頻繁な注入を容易にすることが望ましい場合は、ポンプ、半永久ステント(例えば、静脈内、腹腔内、大槽内または嚢内)などの送達デバイス、またはリザーバの埋め込みが推奨され得る。一実施形態では、医薬組成物は、複数のRNAサイレンシング剤種を含む。別の実施形態では、RNAサイレンシング剤種は、天然に存在する標的配列に関して別の種と重複せず隣接しない配列を有する。別の実施形態では、複数のRNAサイレンシング剤種は、異なる天然に存在する標的遺伝子に特異的である。別の実施形態では、RNAサイレンシング剤は、対立遺伝子特異的である。別の実施形態では、複数のRNAサイレンシング剤種は、2つ以上の標的配列(例えば、2、3、4、5、6、またはそれ以上の標的配列)を標的とする。
【0289】
治療の奏功後、疾患状態の再発を予防するために、患者に維持療法を受けさせることが望ましい場合があり、ここで、開示の化合物は、0.01μg~100g/kg体重の範囲の維持用量で投与される(米国特許第6,107,094号を参照されたい)。
【0290】
RNAサイレンシング剤組成物の濃度は、障害の治療または予防に有効であるか、またはヒトにおいて生理学的状態を調節するのに十分な量である。投与されるRNAサイレンシング剤の濃度または量は、剤について決定されたパラメータ及び投与方法、例えば、鼻、頬、または肺に依存する。例えば、鼻用製剤は、鼻腔の刺激または灼熱感を避けるために、いくつかの成分の濃度をはるかに低くする必要がある傾向にある。好適な経鼻製剤を提供するために、経口製剤を10~100倍まで希釈することが望ましい場合がある。
【0291】
特定の要因は、対象を効果的に治療するために必要な投与量に影響を与える可能性があり、これらの要因としては、疾患または障害の重症度、以前の治療、対象の全身健康状態及び/または年齢、及び存在する他の疾患が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、治療有効量のRNAサイレンシング剤による対象の治療は、単一の治療を含むことができ、または好ましくは、一連の治療を含むことができる。治療のためのRNAサイレンシング剤の有効投与量は、特定の治療の過程で増加または減少し得ることも理解されるであろう。本明細書に記載の診断アッセイの結果から、投与量の変化が生じ、明らかになる可能性がある。例えば、対象は、RNAサイレンシング剤組成物を投与後に監視することができる。モニターからの情報に基づいて、追加量のRNAサイレンシング剤組成物を投与することができる。
【0292】
投薬は、処置される疾患の状態の重症度及び応答性に依存し、一連の治療は、数日~数ヵ月間、または治癒が達成されるまで、または病態の減少が達成されるまで継続する。最適な投薬スケジュールは、患者の体内での薬物蓄積の測定値から計算することができる。当業者であれば、最適な用量、投与方法、及び繰返し数を容易に決定することができる。最適用量は、個々のオリゴマーの相対的効力に応じて様々に異なる場合があり、一般的に、in vitro及びin vivo動物モデルにおいて有効であることが認められているEC50に基づいて推定することができる。いくつかの実施形態では、動物モデルには、ヒト遺伝子、例えば、神経細胞で発現するRNAなどの標的RNAを産生する遺伝子を発現するトランスジェニック動物が含まれる。トランスジェニック動物は、対応する内在性RNAが欠損し得る。別の実施形態では、試験用の組成物は、動物モデル中の標的RNAとヒト中の標的RNAとの間で保存されている配列に対して、少なくとも内部領域で相補的であるRNAサイレンシング剤を含む。
【0293】
IX.医薬組成物及び投与方法
本開示は、以下に記載の予防的及び/又は治療的治療のための上記剤の使用に関する。したがって、本願の調節因子(例えば、RNAサイレンシング剤を含む分岐オリゴヌクレオチド)は、投与に好適である医薬組成物に組み込むことができる。そのような組成物は、典型的には、核酸分子、タンパク質、抗体、または分岐オリゴヌクレオチド化合物及び薬学的に許容される担体を含む。本明細書において「薬学的に許容される担体」という用語は、薬剤投与に適合する任意の及びすべての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌及び抗真菌剤、等張性及び吸収遅延剤などを含むことを意図する。薬学的活性物質のためのそのような培地及び剤の使用は、当技術分野で周知である。任意の従来の培地または剤が活性化合物と不適合である場合を除いて、組成物におけるそれらの使用が企図される。補足的活性化合物を組成物に組み込むこともできる。
【0294】
本開示の医薬組成物は、その意図される投与経路に適合するように製剤化される。投与経路の例としては、非経口、例えば静脈内、皮内、皮下、腹腔内、筋肉内、経口(例えば吸入)、経皮(局所)、及び経粘膜投与が挙げられる。特定の例示的な実施形態では、本開示の医薬組成物は、これらに限定されないが、線条体内(IS)投与、脳・脳室内(ICV)投与及び髄腔内(IT)投与(例えば、ポンプ、注入などを介して)などの投与経路によって、脳脊髄液(CSF)に送達される。非経口、皮内、または皮下適用に使用される溶液または懸濁液としては、以下の構成要素を挙げることができる:無菌希釈剤、例えば、注射用水、食塩液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;緩衝液、例えば、酢酸、クエン酸、またはリン酸、ならびに浸透圧調整用薬剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整できる。非経口用調製物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器、または複数の用量バイアルに密閉することができる。
【0295】
注射用途に好適な医薬組成物には、注入可能な滅菌溶液または滅菌分散液を即時調製するための滅菌水溶液(水溶性の場合)または滅菌分散液及び滅菌粉末が含まれる。静脈内、IS、ICV、及び/またはIT投与の場合、好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,N.J.)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、組成物は、滅菌でなければならず、容易な注射可能性が存在する程度に流体でなければならない。これはまた、製造及び貯蔵の条件下で安定であるべきであり、細菌または真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されねばならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、及びそれらの好適な混合物を含有する、溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用によって、分散の場合には必要とされる粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって達成され得る。多くの場合、等張剤、例えば、砂糖、ポリアルコール(マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム等)を組成物中に含むことが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含むことによって、もたらすことができる。
【0296】
滅菌注射液は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて、上に列挙された成分のうちの1つまたはその組み合わせを有する適切な溶媒中に組み込み、続いて濾過滅菌することによって、調製することができる。一般に、分散液は、活性化合物を、基本的な分散媒及び上で列挙されたものからの必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことによって、調製される。無菌注射用溶液の調製のための無菌粉末の場合、その調製の好ましい方法は、予め無菌濾過した溶液から有効成分と任意の所望の追加成分とを合わせた粉末が得られる、真空乾燥及び凍結乾燥である。
【0297】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または食用担体を含む。ゼラチンカプセルに封入すること、圧縮して錠剤にすることが可能である。経口治療投与の目的において、活性化合物は、賦形剤とともに組み込み、錠剤、トローチ、またはカプセルの形態で使用することができる。経口用組成物はまた、洗口剤として使用するための流体担体を使用して調製することもでき、流体担体中の化合物は、経口により適用され、すすがれ、吐き出されるか、または飲み込まれる。薬学的に適合する結合剤及び/またはアジュバント材料を組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸薬、カプセル、トローチなどは、以下の成分のいずれか、または類似の性質を有する化合物を含むことができる:結合剤(例えば、微結晶セルロース、トラガカントゴム、またはゼラチン)、賦形剤(例えば、デンプンまたはラクトース)、分散剤(例えば、アルギン酸、Primogel、またはトウモロコシデンプン)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはSterote)、流動化剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素)、甘味剤(例えば、スクロースまたはサッカリン)、または香味剤(例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香味料)。
【0298】
吸入による投与の場合、化合物は、適切な噴射剤、例えば二酸化炭素などのガスを含む加圧容器またはディスペンサー、またはネブライザーからエアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0299】
全身投与は、経粘膜または経皮手段によるものでもあり得る。経粘膜または経皮投与の場合、透過されるバリアに適した浸透剤が製剤中に使用される。このような浸透剤は、当技術分野で一般的に知られており、例えば、経粘膜投与の場合、洗浄剤、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、点鼻スプレーまたは坐剤を使用して行うことができる。経皮投与のために、活性化合物は、当技術分野で一般的に知られているように、軟膏剤、軟膏、ゲル、またはクリームに処方される。
【0300】
化合物はまた、坐剤(例えば、ココアバター及び他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含む)または直腸送達用の保持浣腸の形態で調製することができる。
【0301】
RNAサイレンシング剤は、当技術で知られている方法を用いて、トランスフェクションまたは感染によって投与することもできる。これらの方法は、これに限定されないが、以下に記載の方法などが挙げられる;McCaffrey et al.(2002),Nature,418(6893),38-9(hydrodynamic transfection);Xia et al.(2002),Nature Biotechnol.,20(10),1006-10(viral-mediated delivery);またはPutnam(1996),Am.J.Health Syst.Pharm.53(2),151-160,erratum at Am.J.Health Syst.Pharm.53(3),325(1996)。
【0302】
RNAサイレンシング剤は、DNAワクチンなどの核酸剤の投与に好適である任意の方法によって投与することもできる。これらの方法としては、遺伝子銃、バイオインジェクター、皮膚パッチ、及び米国特許第6,194,389号に開示の微粒子DNAワクチン技術などのニードルフリー法、米国特許第6,168,587号に開示の粉状ワクチンを用いた哺乳動物の経皮的ニードルフリーワクチン接種が挙げられる。また、とりわけ、Hamajima et al.(1998),Clin.Immunol.Immunopathol.,88(2),205-10. Liposomesなどに記載(例えば、米国特許第6,472,375号に記載)の鼻腔内送達が可能であり、またマイクロカプセル化も使用できる。生分解性の標的化可能な微粒子送達システムも使用できる(例えば、米国特許第6,471,996号に記載のもの)。
【0303】
一実施形態では、活性化合物は、身体からの急速な排泄から化合物を保護する担体(例えば、インプラント及びマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤)とともに調製される。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルソエステル、及びポリ乳酸等の生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤を調製するための方法は、当業者には明らかであろう。これらの材料は、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手可能である。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体で感染細胞を標的とするリポソームを含む)も、薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、当業者に知られている方法、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されている方法に従って調製され得る。
【0304】
投与の容易性及び投薬量の均一性のために、経口または非経口組成物を単位剤形で処方することがとりわけ有利である。本明細書で使用される単位剤形は、対象を治療するための単位の投薬(unitary dosages)として適した、物理的に別々の単位を指し、各単位は、必要とされる医薬担体に関連して所望の治療効果をもたらすように算出された、既定量の活性化合物を含有する。本開示の単位剤形の仕様は、活性化合物の固有の特徴及び達成されるべき特定の治療効果、ならびに個体における治療のためにかかる活性化合物を調合する技術分野の本質的な制限によって決定付けられ、またそれに直接依存する。
【0305】
そのような化合物の毒性及び治療有効性は、細胞培養物または実験動物で標準薬学的手順により、例えば、LD50(集団の50%致死用量)及びED50(集団の50%に治療上有効な用量)を決定するために、決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比は、治療指数であり、それは、LD50/ED50比として表すことができる。大きい治療指数を示す化合物が好ましい。有毒な副作用を示す化合物を使用し得るが、非感染細胞への潜在的な損傷を最小限に抑え、それによって副作用を減少させるために、そのような化合物を患部組織の部位に向ける送達システムを設計するように留意する必要がある。
【0306】
細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータは、ヒトで使用するための用量範囲を明確に述べる際に使用できる。そのような化合物の投与量は、好ましくは、毒性がほとんどまたは全くないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投薬量は、採用された剤形及び使用される投与経路に依存して、この範囲内で変化する可能性がある。本開示の方法で使用される任意の化合物について、治療有効用量は、最初に細胞培養アッセイから推定することができる。用量は、細胞培養で決定されるEC50(すなわち、最大応答の半分を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように、動物モデルで処方され得る。このような情報は、ヒトでの有用な用量をより正確に決定するために使用できる。血漿中のレベルは、例えば高速液体クロマトグラフィによって測定することができる。
【0307】
医薬組成物は、任意の投与説明書と共に、容器、パック、またはディスペンサー内に含めることができる。
【0308】
本明細書で定義されるように、RNAサイレンシング剤の治療有効量(すなわち、有効投与量)は、選択されるRNAサイレンシング剤に依存する。例えば、shRNAをコードするプラスミドが選択される場合、約1μg~1000mgの範囲の単回用量が投与され得る。いくつかの実施形態では、10、30、100または1000μgが投与され得る。いくつかの実施形態では、1~5gの組成物が投与され得る。組成物は、1日に1回以上~1週間に1回以上、例えば、1日おきに投与することができる。当業者であれば、特定の要因は、対象を効果的に治療するために必要な投与量及びタイミングに影響を与える可能性があり、これらの要因としては、疾患または障害の重症度、以前の治療、対象の全身健康状態及び/または年齢、及び存在する他の疾患が挙げられるが、これらに限定されないことを理解するであろう。さらに、治療有効量のタンパク質、ポリペプチドまたは抗体による対象の治療は、単一の治療を含むことができ、または好ましくは、一連の治療を含むことができる。
【0309】
本開示の核酸分子は、例えば、ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、発現カセット、またはプラスミドウイルスベクターなどの発現構築物中に、例えば、これに限定されないが、上記のXia et al.,(2002)に記載されたものなど、本技術で知られている方法を用いて挿入することができる。発現構築物は、例えば、吸入、経口、静脈内注射、局所投与(米国特許第5,328,470号を参照)または定位注射(例えば、Chen et al.(1994),Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91,3054-3057)を参照)によって対象に送達することができる。送達ベクターの薬学的調製物は、許容可能な希釈剤中のベクターを含むことができ、または送達ビヒクルが埋め込まれた徐放性マトリックスを含むことができる。あるいは、完全な送達ベクターが組換え細胞、例えばレトロウイルスベクターから無傷で産生され得る場合、薬学的調製物は、遺伝子送達系を産生する1つ以上の細胞を含み得る。
【0310】
本開示の核酸分子はまた、小ヘアピンRNA(shRNA)、及びshRNAを発現するように操作された発現構築物を含み得る。shRNAの転写は、ポリメラーゼIII(pol III)プロモーターで開始され、4-5-チミン転写終結部位の2位で終結すると考えられている。発現時に、shRNAは、3’UUオーバーハングを有するステムループ構造に折り畳まれると考えられている。その後、これらのshRNAの末端がプロセシングされ、これにより、shRNAが約21ヌクレオチドのsiRNA様分子に変換される。Brummelkamp et al.(2002),Science,296,550-553;Lee et al,(2002).上記;Miyagishi and Taira(2002),Nature Biotechnol.,20,497-500;Paddison et al.(2002),上記;Paul(2002),上記;Sui(2002)上記;Yu et al.(2002),上記。
【0311】
発現構築物は、適切な発現系での使用に好適な任意の構築物であってもよく、これらに限定されないが、当技術分野で知られている、レトロウイルスベクター、線形発現カセット、プラスミド、及びウイルスまたはウイルス由来のベクターが挙げられる。こうした発現構築物は、1つ以上の誘導性プロモーター、RNA Pol IIIプロモーター系、例えば、U6 snRNAプロモーターまたはH1 RNAポリメラーゼIIIプロモーター、または当技術分野で公知の他のプロモーターを含み得る。構築物は、siRNAの一方または両方の鎖を含むことができる。両方の鎖を発現する発現構築物はまた、両方の鎖を連結するループ構造を含むことができ、または各鎖は、同じ構築物内の別々のプロモーターから別々に転写することができる。各鎖は、別の発現構築物から転写することもできる(Tuschl(2002)、上記)。
【0312】
特定の例示的実施形態では、本開示のRNAサイレンシング剤を含む組成物は、様々な経路によって対象の神経系に送達され得る。例示的経路としては、髄腔内、実質(例えば、脳内)、鼻、及び眼への送達が挙げられる。組成物はまた、例えば、静脈内、皮下または筋肉内注射によって、全身的に送達することができ、これは、末梢神経細胞にRNAサイレンシング剤を投与するのに特に有用である。好ましい送達経路は、脳へ、例えば、脳室もしくは脳の視床下部へ、または脳の外側領域もしくは背側領域へ直接行う。神経細胞送達のためのRNAサイレンシング剤は、投与に好適である医薬組成物に組み込むことができる。
【0313】
例えば、組成物は、1つ以上の種のRNAサイレンシング剤及び薬学的に許容される担体を含むことができる。本開示の医薬組成物は、局所または全身治療が望まれるか否か、及び治療される領域に応じて、複数の方法で投与され得る。投与は、局所(眼、鼻腔内、経皮など)、経口、または非経口であってよい。非経口投与としては、静脈内点滴、皮下、腹腔内または筋肉内注射、髄腔内、または脳室内(例えば、脳・脳室内)投与が挙げられる。特定の例示的な実施形態では、本開示のRNAサイレンシング剤は、本明細書に記載の様々な好適な組成物及び方法を用いて、血液脳関門(BBB)で送達される。
【0314】
送達経路は、患者の障害に依存し得る。例えば、神経変性疾患と診断された対象は、本開示のRNAサイレンシング剤を脳(例えば、大脳基底核の淡蒼球または線条体、及び線条体の中型有棘ニューロンの近く)に直接投与することができる。本開示のRNAサイレンシング剤に加えて、患者には、第2の治療法、例えば緩和治療法及び/または疾患特異的治療法を施すことができる。第2の治療法は、例えば、対症療法(例えば、症状を緩和するため)、神経保護(例えば、疾患の進行を遅延または停止させるため)、または回復(例えば、疾患プロセスの逆転させるため)であり得る。他の治療法としては、心理療法、理学療法、言語療法、コミュニケーション及び記憶の補助、社会的支援サービス、ならびに食事のアドバイスを挙げることができる。
【0315】
RNAサイレンシング剤は、脳の神経細胞に送達することができる。組成物が血液脳関門を通過する必要のない送達方法を利用することができる。例えば、本開示のRNAサイレンシング剤を含有する医薬組成物は、疾患が影響を及ぼす細胞を含有する領域に直接注射することによって患者に送達することができる。例えば、医薬組成物は、脳への直接注射によって送達することができる。注射は、脳の特定の領域(例えば、黒質、皮質、海馬、線条体、または淡蒼球)への定位注射によるものであり得る。RNAサイレンシング剤は、中枢神経系の複数の領域に(例えば、脳の複数の領域に、及び/または脊髄に)送達することができる。RNAサイレンシング剤は、脳のびまん性領域に送達することができる(例えば、脳の皮質へのびまん性送達)。
【0316】
一実施形態では、RNAサイレンシング剤は、組織、例えば、脳、例えば、脳の黒質、皮質、海馬、線条体または淡蒼球に移植された一端を有するカニューレまたは他の送達デバイスによって送達され得る。カニューレは、RNAサイレンシング剤のリザーバに接続できる。流れまたは送達は、ポンプ、例えば浸透圧ポンプまたはミニポンプ、例えばAlzetポンプ(Durect、Cupertino、CA)によって媒介され得る。一実施形態では、ポンプ及びリザーバは、組織から離れた領域、例えば腹部に移植され、送達は、ポンプまたはリザーバから放出部位に通じる導管によって行われる。脳へ送達するためのデバイスは、例えば、米国特許第6,093,180号及び第5,814,014号に記載されている。
【0317】
本開示のRNAサイレンシング剤は、血液脳関門を通過できるようにさらに修飾することができる。例えば、RNAサイレンシング剤は、薬剤が関門を通過できるようにすることができる分子にコンジュゲートできる。そのような修飾されたRNAサイレンシング剤は、例えば、脳室内または筋肉内注射、または肺送達などの任意の所望の方法によって投与することができる。
【0318】
特定の実施形態では、エキソソームは、本開示のRNAサイレンシング剤を送達するために使用される。エキソソームは、BBBを通過し、全身注射後にsiRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、化学療法剤、及びタンパク質をニューロンに特異的に送達することができる(Alvarez-Erviti L,Seow Y,Yin H,Betts C,Lakhal S,Wood MJ.(2011). Delivery of siRNA to the mouse brain by systemic injection of targeted exosomes.Nat Biotechnol.2011 Apr;29(4):341-5.doi:10.1038/nbt.1807;El-Andaloussi S、Lee Y、Lakhal-Littleton S、Li J、Seow Y、Gardiner C、Alvarez-Erviti L、Sargent IL、Wood MJ.(2011).Exosome-mediated delivery of siRNA in vitro and in vivo.Nat Protoc.2012 Dec;7(12):2112-26.doi:10.1038/nprot.2012.131;EL Andaloussi S,Mager I,Breakefield XO,Wood MJ.(2013).Extracellular vesicles: biology and emerging therapeutic opportunities.Nat Rev Drug Discov.2013 May;12(5):347-57.doi:10.1038/nrd3978;El Andaloussi S,Lakhal S,Mager I,Wood MJ.(2013).Exosomes for targeted siRNA delivery across biological barriers.Adv Drug Deliv Rev. 2013 Mar;65(3):391-7.doi:10.1016/j.addr.2012.08.008)。
【0319】
特定の実施形態では、1つ以上の親油性分子を使用して、BBBを通過して本開示のRNAサイレンシング剤を送達できるようにする(Alvarez-Ervit(2011))。次いで、RNAサイレンシング剤は、例えば見せかけの親油性の酵素分解によって活性化され、薬物を放出して、その活性形態にする。
【0320】
特定の実施形態では、1つ以上の受容体媒介透過処理化合物を使用して、BBBの透過性を増大させて、本開示のRNAサイレンシング剤の送達を可能にすることができる。これらの薬物は、血液の浸透圧を上昇させて内皮細胞間の密着結合を緩めることにより、BBBの透過性を一時的に増大させる((El-Andaloussi(2012)))。密着結合を緩めることにより、RNAサイレンシング剤の通常の静脈内注射を行うことができる。
【0321】
特定の実施形態では、ナノ粒子ベースの送達システムを使用して、BBBを横切って本開示のRNAサイレンシング剤を送達する。本明細書で使用される場合、「ナノ粒子」は、薬物または遺伝子担体として広く研究されている、典型的には固体で生分解性のコロイド系である高分子ナノ粒子を指す(S.P.Egusquiaguirre,M.Igartua,R.M.Hernandez,and J.L.Pedraz,「Nanoparticle delivery systems for cancer therapy:advances in clinical and preclinical research」、Clinical and Translational Oncology,vol.14,no.2,pp.83-93,2012)。ポリマーナノ粒子は、天然ポリマー及び合成ポリマーの2つの主要なカテゴリに分類される。siRNA送達のための天然ポリマーとしては、シクロデキストリン、キトサン、及びアテロコラーゲンが挙げられるが、これらに限定されない(Y.Wang,Z.Li,Y.Han,L.H.Liang,and A.Ji,「Nanoparticle-based delivery system for application of siRNA in vivo,」Current Drug Metabolism,vol.11,no.2,pp.182-196,2010)。合成ポリマーとしては、これらに限定されないが、集中的に研究されているポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(dl-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、及びデンドリマーが挙げられる(X.Yuan,S.Naguib,and Z.Wu,「Recent advances of siRNA delivery by nanoparticles」Expert Opinion on Drug Delivery,vol.8,no.4,pp.521-536,2011)。ナノ粒子及び他の好適な送達系の評論については、Jong-Min Lee,Tae-Jong Yoon,and Young-Seok Cho,「Recent Developments in Nanoparticle-Based siRNA Delivery for Cancer Therapy」BioMed Research International,vol.2013,Article ID 782041,10 pages,2013.doi:10.1155/2013/782041を参照されたい(その全体が参照により組み込まれる)。
【0322】
本開示のRNAサイレンシング剤は、例えば網膜症などの網膜障害を治療するために、眼に投与することができる。例えば、医薬組成物は、眼の表面または近くの組織、例えば眼瞼の内側に適用することができる。それらは、局所的に、例えば噴霧により、点滴で、洗眼剤として、または軟膏剤として適用することができる。軟膏剤または滴下可能な液体は、アプリケータまたは点眼器などの当技術分野で知られている眼送達システムによって送達され得る。このような組成物は、粘膜擬似物質(mucomimetics)、例えば、ヒアルロン酸、硫酸コンドロイチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはポリ(ビニルアルコール)、防腐剤、例えば、ソルビン酸、EDTAまたは塩化ベンジルクロニウム、及び通常の量の希釈剤及び/または担体を含むことができる。医薬組成物は、眼の内部に投与することもでき、選択された領域または構造に医薬組成物を導入できる針または他の送達デバイスによって導入することができる。RNAサイレンシング剤を含有する組成物は、眼用パッチを介して適用することもできる。
【0323】
一般に、本開示のRNAサイレンシング剤は、任意の適切な方法によって投与することができる。本明細書で使用される場合、局所送達は、身体体の任意の表面、例えば、目、粘膜、体腔の表面、または任意の内部表面などへのRNAサイレンシング剤の直接適用を指すことができる。局所投与用の製剤としては、経皮パッチ、軟膏剤、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、スプレー、及び液体が挙げられ得る。従来の薬学的担体、水性、粉末または油性基剤、増粘剤などが必要または望ましい場合がある。局所投与はまた、RNAサイレンシング剤を対象の表皮または真皮、またはその特定の層、または下にある組織に選択的に送達する手段として使用することもできる。
【0324】
髄腔内または脳室内(例えば、脳・脳室内)投与のための組成物は、緩衝剤、希釈剤及び他の好適な添加剤も含み得る滅菌水溶液を含み得る。髄腔内または脳室内投与のための組成物は、好ましくは、トランスフェクション試薬または追加の親油性部分を、例えばRNAサイレンシング剤に付着した親油性部分以外に含まない。
【0325】
非経口投与用の製剤としては、緩衝液、希釈剤、及び他の好適な添加剤も含み得る滅菌水溶液を含む場合がある。脳室内注射は、例えばリザーバに取り付けられた脳室内カテーテルによって促進され得る。静脈内使用の場合、溶質の総濃度を制御して調製物を等張にする必要がある。
【0326】
本開示のRNAサイレンシング剤は、肺送達によって対象に投与することができる。肺送達組成物は、分散液中の組成物が肺に到達し、肺胞領域から直接血液循環に容易に吸収されるように、分散液の吸入によって送達することができる。肺送達は、肺の疾患を治療するための全身送達及び局所送達の両方に効果的であり得る。一実施形態では、肺送達によって投与されるRNAサイレンシング剤は、血液脳関門を通過できるように修飾されている。
【0327】
肺送達は、噴霧化、エアロゾル化、ミセル、及び乾燥粉末ベースの製剤の使用など、様々なアプローチによって実現され得る。送達は、液体ネブライザー、エアロゾルベースの吸入器、及び乾燥粉末分散デバイスを用いて実現可能である。定量デバイスが好ましい。噴霧器または吸入器を使用する利点の1つは、デバイスが独立型であるため、汚染の可能性が最小限に抑えられることである。乾燥粉末分散デバイスは、例えば、乾燥粉末として容易に配合できる薬物を送達する。RNAサイレンシング剤組成物は、凍結乾燥粉末または噴霧乾燥粉末として、単独で、または好適な粉末担体と組み合わせて、安定して保存させ得る。吸入のための組成物の送達は、タイマー、用量カウンター、時間測定デバイス、またはデバイスに組み込まれた場合に用量追跡、コンプライアンスモニタリング、及び/またはエアロゾル薬剤の投与中に患者への投与を可能にする時間表示器を備えることができる投薬タイミング要素によって仲介することができる。
【0328】
担体として有用である医薬品賦形剤の種類としては、ヒト血清アルブミン(HSA)などの安定剤、炭水化物、アミノ酸、ポリペプチドなどの増量剤、pH調整剤または緩衝剤;塩化ナトリウムなどの塩;などが挙げられる。これらの担体は、結晶または非晶質の形態であってもよく、またはその2つの混合物であってもよい。
【0329】
特に価値のある増量剤としては、適合する炭水化物、ポリペプチド、アミノ酸、またはそれらの組み合わせが含まれる。好適な炭水化物としては、単糖類、例えば、ガラクトース、D-マンノース、ソルボースなど;二糖類、例えば、ラクトース、トレハロースなど;シクロデキストリン、例えば、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン;多糖類、例えば、ラフィノース、マルトデキストリン、デキストランなど;アルジトール、例えば、マンニトール、キシリトールなどが挙げられる。炭水化物の好ましい群には、ラクトース、トレハロース、ラフィノース、マルトデキストリン、及びマンニトールが含まれる。好適なポリペプチドには、アスパルテームが含まれる。アミノ酸には、アラニン及びグリシンが含まれ、グリシンが好ましい。
【0330】
好適なpH調整剤または緩衝剤には、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウムなどの有機酸及び塩基から調製される有機塩が含まれる。クエン酸ナトリウムが好ましい。
【0331】
本開示のRNAサイレンシング剤は、経口及び経鼻送達によって投与することができる。例えば、これらの膜を介して投与された薬物は、迅速な作用開始を有し、治療的血漿レベルをもたらし、肝臓代謝の初回通過効果を回避し、かつ敵対的胃腸(GI)環境への薬物の曝露を回避する。追加の利点としては、膜部位への容易なアクセスが挙げられるため、薬物の適用、局所化、及び除去を容易に行うことができる。一実施形態では、経口または経鼻送達によって投与されるRNAサイレンシング剤は、血液脳関門を通過できるように修飾されている。
【0332】
一実施形態では、RNAサイレンシング剤を含む組成物の単位用量または測定用量が、埋め込みデバイスによって分配される。デバイスは、対象者内のパラメータを監視するセンサーを備えることができる。例えば、デバイスは、浸透圧ポンプなどのポンプ、及び任意に関連する電子機器を備えることができる。
【0333】
RNAサイレンシング剤は、ウイルスの天然キャプシドまたは化学的または酵素的に産生された人工キャプシドまたはそれに由来する構造にパッケージ化することができる。
【0334】
本明細書に開示された実施形態の範囲から逸脱することなく、好適な均等物を使用して、本明細書に記載された方法の他の好適な修正及び適合を行うことができることは、当業者には容易に明らかであろう。これまで特定の実施形態を詳細に記載してきたが、以下の実施例を参照することにより、同じことがより明確に理解されるであろう。これは説明の目的でのみ含まれ、制限することを意図するものではない。
【0335】
実施例1.2’-OMe-exNAホスホロアミダイトの合成
化合物5aの合成
図2に従って、以下の合成を完了させた。化合物3a(2.94g、7.89mmol)を含むCH3CN(80mL)無水溶液にIBX(5.53g、19.7mmol)を添加して、85℃で2時間撹拌した。混合物を氷浴で冷却後、溶液中の沈殿物を、セライトを通して濾別した。集めた溶離液を蒸発させ、アルゴン雰囲気下で無水CHCNと3回共蒸発させ、白色泡状物として得られた化合物4aをさらに精製することなく使用した。別のフラスコに、臭化メチルトリフェニルホスホニウム(8.47g、23.7mmol)を含む無水THF(80mL)溶液にtert-BuOK(2.57g、22.9mmol)を0℃で添加し、0℃で30分間撹拌した。この溶液に、化合物4aの無水THF溶液(80mL)を0℃で滴下(10分)し、室温で7時間撹拌した。過剰のTHFを蒸発させた後、得られた混合物を過剰の酢酸エチルに溶解し、NHCl飽和水溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させた。得られた物質を最小量のCHClに溶解し、0℃で激しく撹拌しながら過剰のジエチルエーテル溶液に滴下した。溶液中の沈殿物を、セライトを通して濾別し、溶離液を蒸発させた。得られた粗物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル、9:1から1:2)によって精製して、化合物5aを白色泡状物として得た(2段階で、2.19g、75%)。H NMR (500 MHz, CDCl) δ 9.55 (br-s, 1H), 7.38 (d, 1H, J = 8.2 Hz), 5.89 (ddd, 1H, J = 17.1, 10.6, 6.6 Hz), 5.82 (d, 1H, J = 2.0 Hz), 5.77 (dd, 1H, J = 8.1, 1.5 Hz), 5.44 (dt, 1H, J = 17.2, 1.2 Hz), 5.34 (dt, 1H, J = 10.5, 1.1 Hz), 4.43-4.40 (m, 1H), 3.90 (dd, 1H, J = 7.7, 5.1 Hz), 3.71 (dd, 1H, J = 5.0, 2.0 Hz), 3.55 (s, 3H), 0.89 (s, 9H), 0.09 (s, 3H), 0.07 (s, 3H);13C NMR (125 MHz, CDCl) δ 163.4, 150.0, 139.7, 134.4, 119.2, 102.4, 89.7, 84.0, 83.5, 74.5, 58.7, 25.7, 18.2, -4.6, -4.7;HRMS (ESI) 、C1729Si [M + H]に対する計算値m/z 369.1840, 実測値 m/z 369.1838.
【0336】
化合物6aの合成
化合物5a(7.29g、19.8mmol)を含む無水THF溶液(158.3mL)を、0.5M 9-BBN/THF溶液(237.4mL、118.7mmol)に0℃で10分間滴下した。混合物を室温で6時間撹拌後、溶液を氷冷し、メタノール(65.4mL)を添加し、泡立ちがなくなるまで撹拌した。次いで、激しく撹拌しながら、HO(98.4mL)を10分間滴下して、中間体化合物の沈殿を回避した。0℃で、NaBO・4HO(15.7g、102.0mmol)を一度に添加し、室温で一晩撹拌した。過剰THFを蒸発させた後、得られた粗混合物を過剰の酢酸エチルに溶解し、NHCl飽和水溶液で繰り返し洗浄した。有機層を蒸発させた後、得られた物質をTHF(450mL)及びHO(450mL)に溶解した。この溶液に、NaBO・4HO(15.7g,102.0mmol)を室温で一度に添加し、次いで室温で一晩撹拌した。過剰のTHFを蒸発させた後、混合物に酢酸エチルを加え抽出した。得られた有機層を繰り返しNHCl飽和水溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させた。得られた粗物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル、7:3から0:10)によって精製して、化合物6aを白色泡状物として得た(2段階で、4.73g、62%)。H NMR (500 MHz, CDCl) δ 9.21(br-s, 1H), 7.35 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 5.78-5.76 (m, 2H), 4.14-4.10 (m, 1H), 3.92-3.79 (m, 4H), 3.75 (dd, 1H, J = 5.2, 2.3 Hz), 2.06-2.00 (m, 1H), 1.90-1.82 (m, 1H), 0.91 (s, 9H), 0.11 (s, 3H), 0.10 (s, 3H);13C NMR (125 MHz, CDCl) δ 163.1, 149.9, 140.0, 102.6, 90.1, 83.0, 82.0, 74.5, 60.3, 58.4, 35.5, 25.7, 18.1, -4.6, -4.9;HRMS (ESI)、C1731Si [M + H]に対する計算値 m/z 387.1946, 実測値 m/z 187.1944.
【0337】
化合物8aの合成
化合物6a(9.46g,24.5mmol)を含む無水ピリジン溶液(240mL)にDMTrCl(9.95g、29.4mmol)を添加し、室温で2時間撹拌した。反応混合物をMeOH(20mL)でクエンチした後、過剰のピリジンを蒸発させ、得られた物質を過剰の酢酸エチルに溶解した。有機溶液をNaHCO飽和水溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させ、次いでトルエンと共蒸発させてピリジン残留物を除去した。化合物7を含有するこの粗混合物をTHF(330mL)に溶解し、1.0M TBAF-THF溶液(36.7mL,36.7mmol)を添加し、室温で1時間撹拌した。過剰のTHFを蒸発させ、CHClと共蒸発させた後、粗物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製して、化合物8a(2段階で、13.15g、93%)を得た。H NMR (500 MHz, CDCl) δ 8.91 (br-s, 1H), 7.43-7.21 (m, 2H), 7.32-7.14 (m, 8H), 6.83-6.82 (m, 1H), 5.80 (d, 1H, J = 1.8 Hz), 5.69 (d, 1H, J = 8.2 Hz), 4.02-3.98 (m, 1H), 3.85 (dd, 1H, J = 6.7, 6.7 Hz), 3.79 (s, 6H), 3.72 (dd, 1H, J = 5.5, 1.9 Hz), 3.34-3.25 (m, 2H), 2.91 (br-s, 1H), 2.11-2.04 (m, 1H), 1.95-1.89 (m, 1H);13C NMR (125 MHz, CDCl) δ 163.2, 163.1, 158.4, 149.9, 114.8, 139.1, 136.1, 136.0, 129.92, 129.90, 128.0, 127.8, 126.8, 113.1, 102.5, 88.1, 86.6, 83.5, 81.3, 73.2, 60.1, 58.8, 55.2, 53.4, 33.4;HRMS (ESI) 、C3234Na [M + Na]に対する計算値 m/z 597.2203,実測値m/z 597.2153.
【0338】
化合物9aの合成
化合物8a(9.57g,16.65mmol)を、無水CHCNとの共蒸発を繰り返すことにより無水にし、次いで無水CHCl(150mL)に溶解した。この溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(7.6mL、62.4mmol)及び2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルクロロホスホロアミダイト(4.85mL、25.0mmol)を0℃で添加した。室温で4時間撹拌後、反応混合物にCHCl(200mL)、次いでNaHCO飽和水溶液(350mL)を添加した。有機層をNaHCO飽和水溶液で繰り返し洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させた。得られた粗物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(1%TEA-ヘキサン-酢酸エチル、80:20~30:70)により精製して、ホスフィチル化試薬残留物の不純物を含む化合物9aを得た。不純物を除去するために、得られた物質をEtO-酢酸エチル(1:1、v/v、400mL)に溶解し、次いでNaHCO飽和水溶液により、繰り返し洗浄して、化合物9aを白色固体として得た(11.12g、86%)。31P NMR (202 MHz, CDCl) δ 150.0, 149.9;HRMS (ESI)、C4152P [M + H]に対する計算値 m/z 775.3486, 実測値m/z 775.3414.
【0339】
実施例2.2’-F-exNAホスホロアミダイトの合成
化合物5bの合成
図3に従って、以下の合成を完了させた。化合物3b(10.8g、30.0mmol)を含む無水CHCN溶液(300mL)にIBX(21.0g、75.0mmol)を添加して、85℃で2時間撹拌した。混合物を氷浴で冷却後、溶液中の沈殿物を、セライトを通して濾別した。集めた溶離液を蒸発させ、アルゴン雰囲気下で無水CHCNと3回共蒸発させ、白色泡状物として得られた化合物4bをさらに精製することなく使用した。別のフラスコで、tert-BuOK(7.30g、65.1mmol)を含む無水THF(250mL)溶液に臭化メチルトリフェニルホスホニウム(24.0g、68.1mmol)を0℃で一度に添加し、0℃で1時間撹拌した。この溶液に、化合物4aの無水THF溶液(150mL)を0℃で滴下(10分)し、室温で一晩撹拌した。過剰のTHFを蒸発させた後、得られた混合物を過剰の酢酸エチルに溶解し、NHCl飽和水溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させた。得られた物質を最小量のCHClに溶解し、0℃で激しく撹拌しながら過剰のジエチルエーテル溶液に滴下した。溶液中の沈殿物を、セライトを通して濾別し、溶離液を蒸発させた。得られた粗物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル、8:2から6:4)によって精製して、化合物5bを白色泡状物として得た(2段階で、7.12g、67%)。H NMR (500 MHz, CDCl) δ 11.4 (br-s, 1H), 7.65 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 5.93 (ddd, 1H, J = 17.5, 10.4, 7.5 Hz), 5.82 (dd, 1H, JHF = 22.2 Hz, JHH= 1.3 Hz), 5.65 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 5.42-5.38 (m, 1H), 5.33-5.31 (m, 1H), 5.15 (ddd, 1H, JHF = 53.4 Hz, JHH= 4.6, 1.2 Hz), 4.27 (ddd, 1H, JHF = 20.6 Hz, JHH = 8.4, 4.9 Hz), 4.18 (dd, 1H, J = 7.7, 7.7 Hz), 0.88 (s, 9H), 0.08 (s, 3H), 0.07 (s, 3H);13C NMR (125 MHz, CDCl) δ 170.8, 183.7, 150.7, 142.5, 135.3, 120.2, 102.4, 92.9 (d, JCF = 186.2 Hz), 90.2 (d, JCF = 36.4 Hz), 83.4, 73.8 (d, JCF = 15.5 Hz), 60.2, 26.0, 21.2, 18.2, 14.6, -4.4, -4.5;19F NMR (470 MHz, DMSO-d6) δ -198.3 (ddd, J = 53.8, 20.8, 20.8 Hz).
【0340】
化合物7bの合成
化合物5b(10.15g、28.5mmol)を含む無水THF溶液(228mL)を、0.5M 9-BBN/THF溶液(342mL、171mmol)に0℃で20分間滴下した。混合物を室温で4時間撹拌後、溶液を氷冷し、メタノール(131mL)を添加し、泡立ちがなくなるまで撹拌した。次いで、激しく撹拌しながら、HO(197mL)を15分間滴下して、中間体化合物の沈殿を回避した。0℃で、NaBO・4HO(21.9g、142.5mmol)を一度に添加し、室温で一晩撹拌した。過剰THFを蒸発させた後、得られた粗混合物を過剰の酢酸エチルに溶解し、NHCl飽和水溶液で繰り返し洗浄した。有機層を蒸発させた後、得られた物質をTHF(450mL)及びHO(450mL)に溶解した。この溶液に、NaBO・4H O(21.9g,142.5mmol)を室温で一度に添加し、次いで室温で一晩撹拌した。過剰のTHFを蒸発させた後、混合物に酢酸エチルを加え抽出した。得られた有機層を繰り返しNHCl飽和水溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させた。得られた粗物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(CHCl/メタノール,100:0から93:7)によって精製し、化合物6bをシロップとして得た(2.44g、試薬不純物を含む);HRMS (ESI)C1628FNSi [M + H]に対する計算値m/z 375.1746, 実測値m/z 375.1746.試薬不純物を含むこの化合物6bを、アルゴン雰囲気下で無水ピリジンとの共蒸発を繰り返すことにより無水にし、次いで無水ピリジン(64mL)に溶解した。この溶液に、DMTrCl(2.64g、7.79mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。メタノール(5mL)を添加して反応をクエンチ後、反応混合物を酢酸エチル(300mL)で希釈し、NaHCO3飽和水溶液で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させ、トルエンとの共蒸発を3回行って、残留ピリジンを除去した。得られた粗物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル、2:8から4:6)によって精製して、化合物7bを白色固体として得た(2段階で、2.25g、12%)。H NMR (500 MHz, CDCN) δ 9.16 (br-s, 1H), 7.43-7.42 (m, 2H), 7.31-7.28 (m, 8H), 6.86-6.85 (m, 4H), 5.75 (dd, 1H, JHF = 20.0 Hz, JHH = 1.9 Hz), 5.59 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 4.96 (ddd, JHF = 53.3 Hz, JHH = 4.6, 1.8 Hz), 4.06-3.98 (m, 2H), 3.76 (s, 6H), 3.19 (dd, 2H, J = 7.4, 5.6 Hz), 2.09-2.02 (m, 1H), 1.89-1.82 (m, 1H), 0.91 (s, 9H), 0.10 (s, 3H), 0.09 (s, 3H);13C NMR (125 MHz, CDCN) δ 163.9, 159.6, 151.1, 146.4, 141.9, 137.31, 137.26, 130.92, 130.89, 128.9, 128.8, 127.8, 114.0, 102.9, 93.7 (d, JCF = 188.0 Hz), 90.6 (d, J = 36.4 Hz), 87.0, 80.7, 74.6 (d, J = 15.4 Hz), 60.9, 55.9, 33.8, 26.1, 18.7, -4.5, -4.8;19F NMR (470 MHz, CDCN) δ -201.4 (ddd, J = 53.7, 19.1, 19.1 Hz);HRMS (ESI)、C3745FNNa [M + Na]に対する計算値 m/z 699.2872, 実測値m/z 699.2866.
【0341】
化合物8bの合成
化合物7a(2.24g、3.30mmol)をTHF(36.0mL)に溶解し、1.0M TBAF-THF溶液(4.0mL、4.0mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。過剰のTHFを蒸発させ、CHClと共蒸発後、粗物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィ[CHCl(1%TEA)-メタノール100:0から95:5]によって精製して、化合物8b(1.51g、81%)を得た。H NMR (500 MHz, CDCl) δ 9.20 (br-s, 1H), 7.45-7.43 (m, 2H), 7.32-7.13 (m, 8H), 6.87-6.85 (m, 4H), 5.77 (dd, 1H, JHF = 20.1 Hz, JHH = 1.5 Hz), 5.60 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 4.98 (ddd, JHF= 51.0 Hz, JHH = 4.6, 1.6 Hz), 4.04-3.92 (m, 2H), 3.76 (s, 6H), 3.23-3.17 (m, 2H), 2.20 (br-s, 1H), 2.11-2.06 (m, 1H), 1.91-1.87 (m, 1H);13C NMR (125 MHz, CDCN) δ 164.1, 159.7, 151.2, 146.4 141.7, 139.0, 137.33, 137.29, 131,00, 130.97, 129.3, 129.0, 128.9, 127.8, 126.3, 114.1, 103.0, 94.7 (d, J = 184.4 Hz), 90.3 (d, J = 35.4 Hz), 87.2, 80.5, 73.9 (d, J = 16.4 Hz), 61.0, 56.0, 33.9;19F NMR (470 MHz, CDCN) δ -201.8 (ddd, J = 53.7, 20.8, 20.8 Hz).
【0342】
化合物9bの合成
化合物8(1.5g,2.67mmol)を、無水CHCNとの共蒸発を繰り返すことにより無水にし、次いで無水CHCl(30mL)に溶解した。この溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(1.76mL、10.1mmol)及び2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルクロロホスホロアミダイト(0.90mL、4.01mmol)を0℃で添加した。室温で2時間撹拌後、反応混合物にCHCl(70mL)、次いでNaHCO飽和水溶液(100mL)を添加した。有機層をNaHCO飽和水溶液で繰り返し洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させた。得られた粗物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(1%TEA-ヘキサン-酢酸エチル、80:20~20:80)により精製して、ホスフィチル化試薬残留物の不純物を含む化合物9aを得た。不純物を除去するために、得られた物質をEtO(100mL)に溶解し、次いでNaHCO飽和水溶液によって繰り返し洗浄し、化合物9bを白色固体(1.47g、64%)として得た。31P NMR (202 MHz, CDCl) δ 150.4 (d, J = 9.0 Hz), 149.9 (d, J = 10.0 Hz);19F NMR (470 MHz, CDCN) δ -198.61, -198.63, -198.66, -198.68, -198.70, -198.73, -198.75, -198.77, -198.79, -198.82, -198.84, -199.04, -199.06, -199.08, -199.10, -199.12, -199.14, -199.15, -199.17, -199.20, -199.21, -199.24, -199.26.
【0343】
実施例3.exNA-Cホスホロアミダイトの合成
図4に従って、出発物質は、最初にシチジン誘導体に変換され(Kaura,M.et al.J.Org.Chem.2014,79,6256-6268)、得られたシトシン塩基の4-アミノ基は、アセチルなどのアシル保護基によって保護される。3’-O-TBDMSの脱保護後、得られた3’-ヒドロキシル基は、3’-O-ホスホロアミダイトに変換される。各ステップは、最初にクエンチして抽出し、その後シリカゲルカラムクロマトグラフィによって精製する。
【0344】
実施例4.exNA-G及びexNA-Aホスホロアミダイトの合成
図5に従って、3’-O-TBDMSで保護された出発物質は、まずIBXを使用して酸化してアルデヒドにし、次に臭化メチルトリフェニルホスホニウム及びtert-BuOKを含む無水THF溶液を使用して、Wittigオレフィン化に適用し、ビニル置換ヌクレオシド誘導体を生成する。このビニル基は、9-BBNと反応してホウ素化中間体を形成し、過ホウ酸ナトリウムによる酸化に進み、6’-ヒドロキシル基を有するexNA構造を生成する。このヒドロキシル基は、最初にDMTr基によって保護され、シリカゲルカラム精製なく、0.1M TBAF-THF溶液により3’-O-TBDMS基の脱保護を行う。得られた6’-O-DMTrヌクレオシド誘導体は、ホスフィチル化され、ホスホロアミダイトが生成される。6’-O-トリチル化ステップを除いて、最初にクエンチして抽出し、その後シリカゲルカラムクロマトグラフィによって精製する。
【0345】
実施例5.5’-3’-ビス-メチレン-exNAホスホロアミダイトの合成
図6に従って、Nap保護されたヒドロキシメチル基を有する出発物質の1級ヒドロキシル基(Betkekar,V.V.et al.Org.Lett.2012,14,1,198-201)は、最初にTBDPS基によって選択的に保護され、その後二級アルコールの脱酸素化が行われる(Prakash,T.P.et al.Nucleic Acids Res.2015,43,2993-3011)。次に、0.1M TBAF-THF溶液中で脱保護し、塩化ベンゾイルを含むピリジンを使用してベンゾイル化することにより、TBDPS基をベンゾイル(Bz)保護基に切り替える。次に糖のイソプロピリデン保護基を脱保護して、1,2-ビス-アセチル化糖を生成し、次いでウラシルの従来のBSA/TMSOTf媒介グリコシル化を行って、ウリジンヌクレオシド誘導体を有するようにする。3’-ヒドロキシメチル基のNap保護基は、DDQによって脱保護される。6’-O-Bz-3’-ヒドロキシメチル基を有する得られた物質は、2’-O-アセチル保護を有する6’-O-DMTr-3’-TBDMS保護ヒドロキシメチル化合物に変換される。TBDMS基の脱保護後、3’-ヒドロキシメチル基がホスフィチル化され、5’-3’-bis-exNA-ホスホロアミダイトが得られる。各ステップは、最初にクエンチして抽出し、その後シリカゲルカラムクロマトグラフィによって精製する。
【0346】
実施例6.exNA-リボ-ウリジンホスホロアミダイトの合成
図7に従って、以下の合成を完了させた。化合物2(15.4g、54.1mmol)を含む無水CHCN溶液(520mL)にIBX(30.3g、108.2mmol)を添加して、85℃で2時間撹拌した。混合物を氷浴で冷却後、溶液中の沈殿物を、セライトを通して濾別した。集めた溶離液を蒸発させ、アルゴン雰囲気下で無水CHCNと3回共蒸発させ、白色泡状物として得られた化合物3をさらに精製することなく使用した。別のフラスコで、tert-BuOK(13.2g、117.4mmol)を含む無水THF(500mL)溶液に臭化メチルトリフェニルホスホニウム(43.3g、121.2mmol)を0℃で一度に添加し、0℃で1時間撹拌した。この溶液に、化合物3の無水THF溶液(150mL)を0℃で滴下(10分)し、室温で4時間撹拌した。過剰のTHFを蒸発させた後、得られた混合物を過剰の酢酸エチルに溶解し、NHCl飽和水溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させた。得られた物質を最小量のCHClに溶解し、0℃で激しく撹拌しながら過剰のジエチルエーテル溶液に滴下した。溶液中の沈殿物を、セライトを通して濾別し、溶離液を蒸発させた。得られた粗物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル、8:2~3:7)によって精製して、トリフェニルホスフィンオキシドの不純物を含む化合物4を得た。この粗物質の3/4を、無水CHCNとの共蒸発を繰り返すことにより無水にし、次いで無水THF(200mL)に溶解した。この溶液に、0.5M9-BBN/THF(300mL、150.0mmol)を10分間滴下し、室温で一晩撹拌した。TLCにより出発物質の消失を確認後、溶液を氷冷し、メタノール(200mL)を10分間かけて滴下した。泡立ちが止まった後、HO(300mL)を滴下し、次いでNaBO・4H2O(19.2g、125.0mmol)を一度に加えた。溶液を室温で一晩撹拌した。過剰THFを蒸発させた後、得られた粗混合物を過剰の酢酸エチルに溶解し、NHCl飽和水溶液で繰り返し洗浄した。有機層を蒸発させた後、得られた物質をTHF(400mL)及びHO(400mL)に溶解した。この溶液に、NaBO・4HO(19.2g,125.0mmol)を室温で一度に添加し、次いで室温で一晩撹拌した。過剰のTHFを蒸発させた後、混合物に酢酸エチルを加え抽出した。得られた有機層を繰り返しNHCl飽和水溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させた。得られた粗物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(CHCl-メタノール、100:0から93:7)によって精製し、試薬残留物の不純物を含む化合物5を生成した。この得られた物質にTFA溶液[TFA(85mL)及びH2O(9.2mL)]を加え、0℃で1時間撹拌した。蒸発、トルエンとの共蒸発を4回行った後、粗物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(CHCl-MeOH、100:0から90:10)によって精製して、化合物6(3段階で760mg、12%)を得た。H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 11.4 (br-s, 1H), 7.58 (d, 1H, J = 5.0 Hz), 5.71 (d, 1H, J = 5.0 Hz), 5.64 (dd, 1H, J = 8.0, 2.2 Hz), 5.34 (d, 1H, J = 5.2 Hz), 5.09 (d, 1H, J = 4.7 Hz), 4.51 (br-s, 1H), 4.06, (dd, 1H, J = 9.8, 4.9 Hz), 3.80-3.78 (m, 1H), 3.53-3.45 (m, 2H), 1.84-1.70 (m, 2H);13C NMR (125 MHz, DMSO-d6) δ 163.5, 151.1, 141.6, 102.5, 89.0, 80.9, 73.5, 73.2, 58.0, 46.2, 36.8, 9.1;HRMS (ESI)、C1014Na [M + Na]に対する計算値 m/z 281.0744,実測値m/z 281.0730.
【0347】
化合物7の合成
化合物6(760mg、2.94mmol)に無水ピリジン(30mL)を加え、次いでDMTr-Cl(1.3g、3.82mmol)を加えた。2時間撹拌後、反応混合物を最初にCHClで抽出し、NaHCO飽和水溶液で抽出し、有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させ、共蒸発させてピリジンを除去した。得られた粗物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(CHCl-MeOH 100:0~95:5)によって精製して、化合物7(1.70g、定量的)を得た。HRMS (ESI) 、C3132Na [M + Na]に対する計算値 m/z 583.2051,実測値 m/z 583.2025.
【0348】
化合物8の合成
化合物7(2.35g、4.19mmol)を含む無水ピリジン溶液(21mL)に、イミダゾール(576.1mg、8.46mmol)及びTBDMSCl(1.10g、7.33mmol)を添加し、次いで室温で2時間撹拌した。この反応混合物に、CHCl(150mL)、次いでNaHCO飽和水溶液(150mL)を添加した。有機層をNaHCO飽和水溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させ、次いでトルエンと共蒸発させてピリジン残留物を除去した。化合物8を含む得られた粗物質、3’-O-TBDMS保護化合物、5’-3’-O-ビス-TBDMS保護化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィによって分離し[CH2Cl2(1%TEA)-アセトン100から:0から85:15]、純粋化合物8(780mg、28%)を得た。H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 11.4 (br-s, 1H), 7.53-7.52 (m, 2H), 7.39-7.22 (m, 8H), 6.89-6.88 (m, 4H), 5.72 (d, 1H, J = 5.0 Hz), 5.62 (d, 1H, J = 8.1, 2.0 Hz), 5.00 (d, 1H, J = 6.0 Hz), 4.19 (dd, 1H, J = 5.1, 5.1 Hz), 3.92 (ddd, 1H, J = 8.8, 8.8, 4.5 Hz), 3.78-3.73 (m, 7H), 3.07-3.03 (m, 2H), 2.05-1.83 (m, 2H), 0.83 (s, 9H), 0.05 (s, 3H), 0.01 (s, 3H);13C NMR (125 MHz, DMSO-d) δ 162.9, 158.0, 150.5, 145.1, 140.7, 135.8, 130.1, 129.4, 128.7, 128.3, 128.1, 127.1, 125.8, 113.6, 102.5, 88.8, 86.0, 81.5, 74.9, 73.4, 60.6, 55.5, 33.8, 26.1, 25.1, 18.4;HRMS (ESI) 、C3746Na [M + Na]に対する計算値 m/z 697.2916,実測値m/z 697.2867.
【0349】
化合物9の合成
化合物8(780g,1.16mmol)を、無水CHCNとの共蒸発を繰り返すことにより無水にし、次いで無水CHCl(12mL)に溶解した。この溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.53mL、4.34mmol)及び2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルクロロホスホロアミダイト(0.34mL、1.73mmol)を0℃で添加した。室温で4時間撹拌後、反応混合物にCHCl(90mL)、次いでNaHCO飽和水溶液(100mL)を添加した。有機層をNaHCO飽和水溶液で繰り返し洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させた。得られた粗物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(1%TEA-ヘキサン-酢酸エチル、80:20から50:50)によって精製し、化合物9(825.9mg、82%)を得た。31P NMR (202 MHz, CDCl) δ 149.6, 149.1.
【0350】
実施例7.exNA-リボ-シトシンホスホロアミダイトの合成
ビニル置換ウリジン誘導体を保持している出発物質は、最初にシチジンに変換され(Kaura,M.et al.J.Org.Chem.2014,79,6256-6268)、得られたシトシン塩基の4-アミノ基は、アセチルなどのアシル保護基によって保護される。2’-3’-O-イソプロピリデンの脱保護後、6’-ヒドロキシル基は、DMTrによって保護され、その後TBDMSによって保護される。シリカゲルカラム分離2’-O-TBDMS保護化合物をホスフィチル化して、3’-O-ホスホロアミダイトを得る。各ステップは、最初にクエンチして抽出し、その後シリカゲルカラムクロマトグラフィによって精製する。
【0351】
実施例8.exNA-リボグアノシンまたはexNA-リボ-アデニンホスホロアミダイトの合成
図9に従って、2’-3’-O-ビス-TBDMSで保護された出発物質は、まずIBXを使用して酸化してアルデヒドにし、次に臭化メチルトリフェニルホスホニウム及びtert-BuOKを含む無水THF溶液を使用して、Wittigオレフィン化に適用し、ビニル置換ヌクレオシド誘導体を生成する。このビニル基は、9-BBNと反応してホウ素化中間体を形成し、過ホウ酸ナトリウムによる酸化に進み、6’-ヒドロキシル基を有するexNA構造を生成する。このヒドロキシル基は、最初にDMTr基によって保護され、その後TBDMSによって保護される。シリカゲルカラム分離2’-O-TBDMS保護化合物をホスフィチル化して、3’-O-ホスホロアミダイトを得る。各ステップは、最初にクエンチして抽出し、続いてシリカゲルカラムクロマトグラフィによって精製する。シリカゲルカラムによる精製なく、0.1M TBAF-THF溶液により3’-O-TBDMS基の脱保護を行う。得られた6’-O-DMTrヌクレオシド誘導体は、ホスフィチル化され、ホスホロアミダイトが生成される。各ステップは、最初にクエンチして抽出し、その後シリカゲルカラムクロマトグラフィによって精製する。
【0352】
実施例9.exNA-リボ-ウリジンホスホロアミダイトの合成
図10に従って、5’-O-DMTrで保護されている出発物質は、最初にTBDMSによって保護され、次に5’-O-脱トリチル化される。得られた化合物は、次にIBXを使用して酸化してアルデヒドにし、臭化メチルトリフェニルホスホニウム及びtert-BuOKを含む無水THF溶液を使用して、Wittigオレフィン化に適用し、ビニル置換ヌクレオシド誘導体を生成する。このビニル基は、9-BBNと反応してホウ素化中間体を形成し、過ホウ酸ナトリウムによる酸化に進み、6’-ヒドロキシル基を有するexNA構造を生成する。このヒドロキシル基は、最初にDMTr基によって保護され、シリカゲルカラム精製なく、0.1M TBAF-THF溶液により3’-O-TBDMS基の脱保護を行う。得られた6’-O-DMTrヌクレオシド誘導体は、ホスフィチル化され、メチル保護ホスホロアミダイトが生成される。各ステップは、最初の3’-O-TBDMS保護ステップを除いて、最初にクエンチして抽出し、その後シリカゲルカラムクロマトグラフィによって精製する。
【0353】
実施例10.exNA骨格を組み込んだオリゴヌクレオチドの合成
図12に従って、5’末端、3’末端及び少なくとも1つの修飾サブユニット間連結を含む修飾オリゴヌクレオチドを合成する方法が実施されている。本方法は、(a)固体支持体に結合した5’-保護基を有するヌクレオシドを提供することと;(b)保護基を除去することと;(c)脱保護されたヌクレオシドを式(VII)のホスホロアミダイト誘導体と組み合わせて、亜リン酸トリエステルを形成することと;
【化31】
(VII)
(d)亜リン酸トリエステルをキャッピングすることと;(e)亜リン酸トリエステルを酸化することと;(f)追加のホスホロアミダイトを使用して、ステップ(b)から(e)を繰り返すことと;(g)固体支持体から切断することと、を含む。
【0354】
1つ以上のexNAサブユニット間連結を有する上記の方法によって合成されたいくつかのオリゴヌクレオチドの例を図13に示す。exNA-サブユニット間連結は、5’-メチレン-exNA-ウリジン及び2’-OHである。
【0355】
実施例11exNAサブユニット間連結を含むsiRNA二本鎖による標的mRNAのin vitroサイレンシングの有効性
ex-NAサブユニット間連結をオリゴヌクレオチドウォーキング実験に使用し、アンチセンス鎖及びセンス鎖の各サブユニット間連結をex-NAサブユニット間連結で修飾した。ex-NAサブユニット間連結は、次のいずれかであった(ex_mU):5’-メチレン-exNA-ウリジンと2’-OMeまたは(ex_fU)5’-メチレン-exNA-ウリジンと2’-フルオロ-ex-ウリジン。以下の表4~10は、この実施例で使用されるアンチセンス鎖及びセンス鎖、ならびにアンチセンス鎖及びセンス鎖の異なる組み合わせによって形成される二本鎖を示す。ex-NA含有オリゴヌクレオチドを生成するための新規合成スキームもまた、図12に示すとおり使用した。
【表4-1】
【表4-2】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【0356】
上記のsiRNA二本鎖をin vitro mRNAサイレンシング実験で使用して、相対的なサイレンシングの有効性を決定した。実験の詳細を以下に説明する。
【0357】
In vitroスクリーニング。
【0358】
1.5μM siRNAは、受動的に細胞に送達させた。細胞を、96ウェル細胞培養プレートの8,000細胞/ウェルで、6%FBSを含むダルベッコ変法イーグル培地にプレーティングした。siRNAをOptiMEM(Carlsbad,CA;31985-088)中の最終濃度の2倍に希釈し、50μLの希釈siRNAを50μL細胞に加えて、3%FBS最終濃度にした。細胞を37℃及び5%COで72時間インキュベートした。
【0359】
標的mRNAの定量分析。
QuantiGene 2.0アッセイキット(Affymetrix、QS0011)を使用して、細胞からmRNAを定量化した。細胞を、1部の溶解混合物(Affymetrix、13228)、2部のH2O、及び0.167μg/μLのプロテイナーゼK(Affymetrix、QS0103)で構成される250μLの希釈溶解混合物に、55℃で30分間溶解させた。細胞溶解物を完全に混合し、各溶解物40μLを、プロテイナーゼKを含まない希釈溶解混合物40μL及び希釈プローブセット20μLの入った捕捉プレートのウェルに加えた。ヒトHTT及びヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)(Affymetrix;#SA-50339、SA-10030)のプローブセットを希釈し、製造描写の推奨プロトコルに従って使用した。データセットは、HPRTに対して正規化した。
【0360】
細胞処理:レポーターアッセイ。
【0361】
HeLa細胞は、1%pen/strep及び10%熱不活性化FBSを含むGibco DMEM(参照#11965-092)で増殖させ維持した。処理の3日前に、2枚の10cmディッシュに2x10のHeLa細胞をプレーティングした。翌日、DMEMをGibco OptiMEM(参照#31985-070)に交換し、製造業者のプロトコルに従って、Invitrogen Lipofectamine3000(参照#L3000-015)を使用して、6μgのレポータープラスミドを細胞に添加した。細胞をOptiMEM/lipofectamineに一晩放置して、レポータープラスミドのトランスフェクションを最大にした。翌日、siRNAをOpti-MEMで希釈し、各レポータープラスミドについて、96ウェルの白色壁透明底組織培養プレートに3回ずつ加えた。前夜にレポータープラスミドでトランスフェクトしたHeLa細胞を、6%熱不活化FBS(pen/strepなし)を含むDMEMに0.15x10細胞/mLで再懸濁し、siRNAを含むプレートに加えた。
【0362】
Dual-Luciferase Assay System Pack(Promega ref.#E1960)の1xPassive Lysis Bufferで72時間処理(100%コンフルエント)後、細胞を溶解した。溶解後、ルシフェラーゼアッセイ試薬II(Promega ref.#E1960)50μlを添加後に発光を読み取り、50μL/ウェルのStop and Glow reagent(Promega参照#E1960)を添加して2回目の読み取りを行った。吸光度は、未処理対照に対して正規化し、対数スケールでグラフ化した。
【0363】
図14に示すように、試験したsiRNA二本鎖はすべて、標的HTT mRNAを効果的にサイレンシングした。さらに、多数のsiRNA二本鎖が、標的mRNA及び対照二本鎖siRNAをサイレンシングした。このデータは、オリゴヌクレオチド鎖に組み込まれたex-NAヌクレオチド間連結の最初の例となる。
【0364】
実施例12 exNAサブユニット間連結を含むsiRNA二本鎖のヌクレアーゼ安定性
ex-NAサブユニット間連結は、オリゴヌクレオチドのヌクレアーゼ安定性を増大させるのに有用であるという仮説が立てられた。この効果は、ex-NAサブユニット間連結単独で、またはホスホロチオエートサブユニット間連結と組み合わせて観察され得る。さらに、オリゴヌクレオチド中の複数の連続するex-NAサブユニット間連結は、単一のex-NAサブユニット間連結よりも安定性に対して大きい影響を有し得る。安定性を増大させ得る2つの主要な方法がある;1)ex-NAの局所骨格構造の異常により、ヌクレアーゼ切断の動力学を低下させる、2)多重に伸長した骨格によりヌクレアーゼの結合親和性を低下させる(3’-末端領域)(図15)。この効果を実証するために、1つ以上のex-NAサブユニット間連結を含むオリゴヌクレオチドを使用したいくつかのヌクレアーゼアッセイを行った。
【0365】
3’エキソヌクレアーゼ安定性試験。
【0366】
3’末端に異なる数のex-NAサブユニット間連結を有するオリゴヌクレオチドを、3’エキソヌクレアーゼ安定性試験で試験した。濃度17.5mMのオリゴヌクレオチドex-21、ex-22、ex-23、ex-24、AS-0、及びAS-2(上記の表4及び表6に記載)を、10mM Tris-HCl(pH8.0)、2mM MgCl、及び蛇毒ホスホジエステラーゼI(20mU/mL)を含む緩衝液中で37℃でインキュベートした。図16に示すとおり、ホスホロチオエートサブユニット間連結(ex-24)を有する複数のex-NAサブユニット間連結は、臨床的に承認されたsiRNA薬に見られるものと同じホスホロチオエート含有量を有するAS-2と比較して、3’-エキソヌクレアーゼの安定性を大幅に改善した。さらに、3’末端での1つのex-NAサブユニット間連結でさえ、安定性を大幅に改善した(ex-21)。3’-エキソヌクレアーゼは、血清中で優勢であるため、3’ex-NAサブユニット間連結は、治療用オリゴヌクレオチドに有用である。
【0367】
ホスホジエステル(PO)及びホスホロチオエート(PS)を含むオリゴヌクレオチドを含むポリウリジル配列のコンテキストで、ex-NAサブユニット間連結を使用して、追加の3’エキソヌクレアーゼ試験を実施した。オリゴヌクレオチドは、1、2、3、4、または5つのex-NAサブユニット間連結で試験した。以下の表11は、この試験で使用したポリヌクレオチドを列挙する。図17に示すとおり、単一のex-NAサブユニット間連結の存在でさえ、オリゴヌクレオチドの安定性を大幅に改善した。これは、POオリゴヌクレオチド及びPSオリゴヌクレオチドの両方で実証された。さらに、5つのex-NAサブユニット間連結を有するPO含有オリゴヌクレオチドは、ex-NAサブユニット間連結を有しないPS含有オリゴヌクレオチド(PS対照)と比較して、同様のヌクレアーゼ安定性を達成した。この結果は、ex-NAサブユニット間連結を使用することにより、PS含有サブユニット間連結の数が減少し、それによってPS含有オリゴヌクレオチドに関連する毒性が低下する可能性があることを示している。
【表11】
【0368】
オリゴヌクレオチドに使用されるフルオレセイン標識「FAM」は、3’エキソヌクレアーゼ活性に影響を有さず、安定性試験において、切断を監視するために使用した。
【0369】
5’エキソヌクレアーゼ安定性試験。
【0370】
5’末端にex-NAサブユニット間連結を有するオリゴヌクレオチドを、2つの異なる5’エキソヌクレアーゼ安定性試験で試験した。
【0371】
最初の試験は、5’-リン酸依存性5’-エキソヌクレアーゼ安定性試験であった。この試験で使用したオリゴヌクレオチドを以下の表12に示す。オリゴヌクレオチドを2.5μM(50pmol)で使用し、RNaseフリー水で、または3.3ユニットのTerminator(商標)(EpiCentre)エキソヌクレアーゼと共に37℃のバッファA(EpiCentre、Terminator(商標)酵素と共に提供)でインキュベートした。図18に示すとおり、5’末端における単一のex-NAサブユニット間連結(ON2)は、5’ホスホジエステル結合を含むON1と比較して、5’-エキソヌクレアーゼの安定性を大幅に改善した。重要なことに、ON2にはホスホロチオエートサブユニット間連結が含まれていない。このデータは、5’末端において単一であるex-NAサブユニット間連結が、5’末端において複数あるホスホロチオエートサブユニット間連結(ON3)と同程度に、安定性を向上させることを示している。治療用オリゴヌクレオチド中でのホスホロチオエート含有量が過剰である場合に毒性となり得る。5’ex-NAサブユニット間連結を使用することにより、オリゴヌクレオチドの安定性を改善するメカニズムがもたらされる一方で、ホスホロチオエートの含有量は減少する。
【0372】
第2の5’-エキソヌクレアーゼ安定性試験は、5’-リン酸非依存性5’ーエキソヌクレアーゼ安定性試験であった。この試験で使用したオリゴヌクレオチドを以下の表13に示す。オリゴヌクレオチドを10μMで使用し、RNaseフリー水または0.25U/mLウシ脾臓ホスホジエステラーゼII(BSP)を含む30mM NaOAc(pH6.0)バッファと共に37℃でインキュベートした。図19に示すとおり、5’末端の単一のex-NAサブユニット間連結(ON4)は、複数の5’ホスホロチオエート連結を含むON5と比較して同様の5’-エキソヌクレアーゼ安定性を有する。このデータは、5’末端において単一であるex-NAサブユニット間連結が、5’末端において複数あるホスホロチオエートサブユニット間連結(ON5)と同程度に、安定性を向上させることを示している。治療用オリゴヌクレオチド中でのホスホロチオエート含有量が過剰である場合に毒性となり得る。5’ex-NAサブユニット間連結を使用することにより、オリゴヌクレオチドの安定性を改善するメカニズムがもたらされる一方で、ホスホロチオエートの含有量は減少する。
【表12】
【表13】
【0373】
実施例13 1つ以上のアンチセンス鎖3’末端exNAサブユニット間連結を含むsiRNA二本鎖の活性
1つ以上のアンチセンス鎖3’末端exNAサブユニット間連結を含むいくつかのsiRNA二本鎖のin vitroサイレンシング活性を試験した。1つ、2つ、3つ、または4つの3’末端exNAサブユニット間連結を含むアンチセンス鎖を、図20Aに示すとおり、用量反応曲線で使用した。exNAサブユニット間連結を含まないsiRNA二本鎖対照と比較した効力変化率も決定した(図20B)。データは、1、2、3、または4つの3’末端exNAサブユニット間連結を含むアンチセンス鎖を含むsiRNA二本鎖が、exNAサブユニット間連結を有しないアンチセンス鎖を含むsiRNA二本鎖よりも高いサイレンシングの有効性を保有することを示している。
【0374】
実施例14 1つ以上のアンチセンス鎖3’末端exNAサブユニット間連結を含むsiRNA二本鎖のin vivo活性
1つ以上のアンチセンス鎖3’末端exNAサブユニット間連結を含むいくつかのsiRNA二本鎖のin vivoサイレンシング活性を試験した。上述のとおり、siRNA二本鎖は、Di-siRNAフォーマットであった。配列及び化学修飾パターンを以下の表14に示す。各siRNAは、ApoE mRNAを標的とする。各Di-siRNA 5nmolをマウスにICV注射で投与し、1ヶ月後にApoE mRNAを定量した。図21A図21Eに示すとおり、exNAサブユニット間連結含有siRNAは、いくつかの脳領域(内側皮質、線条体、海馬、視床、及び小脳)においてApoEをサイレンシングすることができた。低ホスホロチオエート(PS)含有量を含むsiRNA二本鎖のサイレンシングの有効性は、exNAサブユニット間連結を含めることでほぼ維持されたかまたは改善された。
【表14】
【0375】
Htt mRNAを標的とするDi-sRNA二本鎖を用いて、追加のin vivoサイレンシング活性実験を行った。採用した化学修飾パターンを以下に列挙する。野生型雄マウスを約60μgのsiRNAで2ヶ月間処理後、いくつかの脳領域(内側皮質、線条体、海馬、視床、及び前頭皮質)におけるHtt mRNA及びタンパク質レベルの定量化を行った。1つまたは2つのexNAヌクレオチド間連結を含むアンチセンス鎖を有するsiRNA二本鎖は、exNAヌクレオチド間連結を有しないsiRNA二本鎖と比較して、Htt mRNA(図22A図22E)及びタンパク質(図23A図23E)発現の同等またはそれ以上のサイレンシングを示した。ホスホロチオエート修飾よりも高いヌクレアーゼ耐性をもたらすexNAヌクレオチド間連結により、ヌクレアーゼ耐性またはサイレンシングの有効性を犠牲にすることなく、毒性ホスホロチオエート修飾を減少させることができる。
図22図23で使用される化学修飾パターンは、以下のとおりである:
1-High PS:
アンチセンス鎖(5’から3’):
VP(mX)#(fX)#(mX)(fX)(fX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)#(mX)#(fX)#(mX)#(mX)#(mX)#(fX)#(mX)
センス鎖 (5’から3’):
(mX)#(mX)#(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(mX)(mX)(fX)#(mX)#(mX)
2-Low PS fm:
アンチセンス鎖 (5’から3’):
VP(mX)#(fX)#(mX)(fX)(fX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(mX)(mX)#(fX)#(mX)
センス鎖 (5’から3’):
(mX)#(mX)#(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(mX)(mX)(fX)#(mX)#(mX)
3-Low PS mf:
アンチセンス鎖 (5’から3’):
VP(mX)#(fX)#(mX)(fX)(fX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(mX)(mX)#(mX)#(fX)
センス鎖(5’から3’):
(mX)#(mX)#(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(mX)(mX)(fX)#(mX)#(mX)
4-Low PS mf 2 exNA:
アンチセンス鎖 (5’から3’):
VP(mX)#(fX)#(mX)(fX)(fX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(mX)(mX)#(ex-mX)#(ex-fX)
センス鎖(5’から3’):
(mX)#(mX)#(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(mX)(mX)(fX)#(mX)#(mX)
5-Low PS mf 1 exNA:
アンチセンス鎖 (5’から3’):
VP(mX)#(fX)#(mX)(fX)(fX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(mX)(mX)#(mX)#(ex-fX)
センス鎖(5’から3’):
(mX)#(mX)#(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(fX)(mX)(mX)(mX)(fX)#(mX)#(mX)
上記の5つの化学修飾パターンの場合、「VP」は、5’ビニルホスホネートに対応する;「mX」は、2’-O-メチル修飾を有する任意のヌクレオチド(A、U、G、またはC)に対応する;「fX」は、2’-フルオロ修飾を有する任意のヌクレオチド(A、U、G、またはC)に対応する;「#」は、ホスホロチオエート修飾に対応する;「ex-mX」は、2’-O-メチル修飾及びexNAヌクレオチド間連結を有する任意のヌクレオチド(A、U、G、またはC)に対応する;「ex-fX」は、2’-フルオロ修飾及びexNAヌクレオチド間連結を有する任意のヌクレオチド(A、U、G、またはC)に対応する。
【0376】
参照による援用
本出願全体において引用され得るすべての引用文献(文献参照、特許、特許出願、及びウェブサイトなど)の内容は、本明細書に記載されている引用文献と同様に、いかなる目的のためにもその全体が、参照により明示的に組み込まれる。本開示は、特に明記されない限り、従来技術として周知の免疫学、分子生物学、及び細胞生物学の手法を使用する。
【0377】
本開示はまた、分子生物学及び薬物送達の分野において周知である手法全体を参照により組み込む。これらの手法としては、これらに限定されないが、次の刊行物に記載されている手法が挙げられる:
Atwell et al.J.Mol.Biol.1997,270:26-35;
Ausubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley &Sons,NY(1993);
Ausubel,F.M.et al.eds.,Short Protocols In Molecular Biology(4th Ed.1999)John Wiley&Sons,NY.(ISBN 0-471-32938-X);
CONTROLLED DRUG BIOAVAILABILITY,DRUG PRODUCT DESIGN AND PERFORMANCE,SMOLEN AND BALL(EDS.),WILEY,NEW YORK(1984);
Giege,R.and Ducruix,A.Barrett,Crystallization of Nucleic Acids and Proteins,a Practical Approach,2nd ea.,pp.20 1-16,Oxford University Press,New York,New York,(1999);
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Winnacker, E.L. FROM GENES TO CLONES: INTRODUCTION TO GENE TECHNOLOGY (1987) VCH Publishers, NY (translated by Horst Ibelgaufts). 634 pp. (ISBN 0-89573-614-4).
【0378】
均等物
本開示は、その精神または本質的特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化され得る。したがって、前述の実施形態は、本開示を限定するものではなく、あらゆる点において例示的であると見なされるべきである。したがって、本開示の範囲は、前述の説明によってではなく添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び均等の範囲内に入るすべての変更は、本明細書に含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B
図21A
図21B
図21C
図21D
図21E
図22
図23
【配列表】
2023518970000001.app
【国際調査報告】