IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニュートリバート エルエルシーの特許一覧

特表2023-518973抗炎症性および成長促進活性を有するデスアセチルグルコサミンムラミルジペプチドの親油性エナンチオマー
<>
  • 特表-抗炎症性および成長促進活性を有するデスアセチルグルコサミンムラミルジペプチドの親油性エナンチオマー 図1
  • 特表-抗炎症性および成長促進活性を有するデスアセチルグルコサミンムラミルジペプチドの親油性エナンチオマー 図2
  • 特表-抗炎症性および成長促進活性を有するデスアセチルグルコサミンムラミルジペプチドの親油性エナンチオマー 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-09
(54)【発明の名称】抗炎症性および成長促進活性を有するデスアセチルグルコサミンムラミルジペプチドの親油性エナンチオマー
(51)【国際特許分類】
   C07K 5/06 20060101AFI20230427BHJP
   A23K 20/147 20160101ALI20230427BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230427BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230427BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230427BHJP
   A61K 38/06 20060101ALI20230427BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20230427BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
C07K5/06
A23K20/147
A61P1/04
A61P31/04
A61P3/00
A61K38/06
A61K38/43
A61P37/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558084
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(85)【翻訳文提出日】2022-11-18
(86)【国際出願番号】 US2021024142
(87)【国際公開番号】W WO2021195372
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】63/000,364
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522375660
【氏名又は名称】ニュートリバート エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ナレ, ホーラス ディストン ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】カルテンベック, バーンハート
【テーマコード(参考)】
2B150
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
2B150AA05
2B150AB10
2B150DC23
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA15
4C084DC01
4C084MA02
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZA681
4C084ZA682
4C084ZB072
4C084ZB351
4C084ZB352
4C084ZC211
4C084ZC212
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA11
4H045EA20
4H045EA60
4H045FA10
(57)【要約】
有効量の、ムラミルジペプチド(MDP)のN-アセチルグルコサミン部分を含まない親油性ムラミルジペプチド(MDP)誘導体(すなわち、デスムラミルジペプチド)の鏡像分子(エナンチオマー)を含む組成物を投与することによって、脊椎動物において炎症を低減し、動物において成長および飼料転換を促進する組成物および方法。本発明の分野は、親油性ムラミルジペプチドエナンチオマー組成物ならびにヒトを含む動物において炎症を低減する、成長を促進する、および飼料転換(feed conversion)を増強するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式:
【化9】
のオリゴペプチドまたはその薬学的に受容可能な酸もしくは塩であって、ここで:
は、置換されているかもしくは置換されていないアルキルまたは置換されているかもしくは置換されていないアリールであり;
、R、R、およびRは、H、置換されているかもしくは置換されていないアルキルおよび置換されているかもしくは置換されていないアリールから各々独立して選択され;
Xは、OまたはNRであり、ここでRは、水素、置換されているかもしくは置換されていないアルキル、または置換されているかもしくは置換されていないアリールである、
オリゴペプチドまたはその薬学的に受容可能な酸もしくは塩。
【請求項2】
Xは、Oである、請求項1に記載のオリゴペプチド。
【請求項3】
は、C-C18直線状アルキルまたはアミノ酸である、請求項1に記載のオリゴペプチド。
【請求項4】
前記オリゴペプチドは、以下の構造:
【化10】
を有する、請求項1に記載のオリゴペプチド。
【請求項5】
前記オリゴペプチドは、以下の構造:
【化11】
を有し、ここで
は、置換されているかもしくは置換されていないアルキルまたは置換されているかもしくは置換されていないアリールであり;
Yは、OまたはNRであり、ここでRは、水素、置換されているかもしくは置換されていないアルキル、または置換されているかもしくは置換されていないアリールである、
請求項1に記載のオリゴペプチド。
【請求項6】
前記オリゴペプチドは、L-ラクテート-D-アラニン-L-グルタミン-ヘキサデシルエステルである、請求項1に記載のオリゴペプチド。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の少なくとも1種のオリゴペプチドおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の少なくとも1種のオリゴペプチドおよび動物飼料を含む、組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種のオリゴペプチドは、約0.01mg/kg~5mg/kgの量で前記組成物に存在する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物は、動物の食事において使用される添加剤をさらに含む、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】
前記添加剤は、酵素、プロバイオティクス、プレバイオティクス、抗酸化剤、抗菌成長促進物質、着色剤、またはこれらの組み合わせを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
ヒトにおいて腸の炎症を低減するための方法であって、前記方法は、
請求項7に記載の薬学的組成物を、腸の炎症を有するヒトに投与する工程を包含し、ここで前記投与は、前記腸の炎症を低減する、
方法。
【請求項13】
腸の炎症と関連する疾患または状態を有するヒトを選択する工程をさらに包含する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
腸の炎症と関連する前記疾患または状態は、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、クローン病、潰瘍性大腸炎、または細菌感染症を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
動物において成長を促進するための方法であって、前記方法は、
請求項1~6のいずれかに記載のオリゴペプチドを動物に投与する工程を包含し、ここで前記投与は、前記動物の成長を増強する、
方法。
【請求項16】
動物において成長を促進するための方法であって、前記方法は、
請求項8~11のいずれかに記載の組成物を動物に投与する工程を包含し、ここで前記投与は、前記動物の成長を増強する、
方法。
【請求項17】
動物において飼料転換を増強するための方法であって、前記方法は、
請求項1~6のいずれかに記載のオリゴペプチドを動物に投与する工程を包含し、ここで前記投与は、前記動物の飼料転換を増強する、
方法。
【請求項18】
動物において飼料転換を増強するための方法であって、前記方法は、
請求項8~11のいずれかに記載の組成物を動物に投与する工程を包含し、ここで前記投与は、前記動物において飼料転換を増強する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権出願への相互参照
本出願は、2020年3月26日出願の米国仮特許出願第63/000,364号、発明の名称「Lipophilic Enantiomers of Desacetylglucosamine Muramyl Dipeptide with Anti-Inflammatory and Growth Promoting Activity」(その内容全体が、本明細書に参考として援用される)の利益を主張する。
【0002】
分野
本発明の分野は、親油性ムラミルジペプチドエナンチオマー組成物ならびにヒトを含む動物において炎症を低減する、成長を促進する、および飼料転換(feed conversion)を増強するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
ムラミルジペプチド(MDP)は、全ての細菌性ペプチドグリカン(PGN)において保存される最小の構造である。それは、L-アラニンおよびD-γ-グルタメートまたはD-イソグルタミンにペプチド結合で連結されたN-アセチルムラミン酸(N-アセチルグルコサミンおよびD-乳酸のエーテル)からなる(MacDonald 2005)。
【0004】
PGNは、長きにわたって炎症応答を促進することは公知であった。PGNのMDP部分構成要素は、炎症を誘発するために必要とされる最小の化学構造であることが見出された。MDPはまた、フロイント完全アジュバント(マイコバクテリア抽出物のエマルジョン)のアジュバント活性に必要とされる(MacDonald 2005)。アジュバントとして、MDPは、ワクチン抗原と一緒に注射される場合に、ワクチンの有効性をブーストするために使用される強い免疫反応を促進する。
【0005】
腸管外の炎症を刺激すると同時に、MDPは、腸管において抗炎症効果を有し、実験的に誘導された大腸炎からマウスを防御する(Watanabe 2008; Watanabe 2014)。
【0006】
MDPの腸の抗炎症特性は、治療適用の機会を提供する(Strober 2013)。しかし、MDPは、親水性であり、腎排出を介して循環から急速に除去され、従って、感染に対する非特異的抵抗性またはアジュバント活性を媒介するために、高用量の反復投与を必要とする(Fogler 1985)。
【0007】
これらの不都合な薬物動態および重篤な副作用によって、これらの欠点を補正するためにMDPの多くの化学的改変が駆り立てられた。これらの中で最も成功したものは、MDPの効力および半減期の両方を増大させるMDPの脂質改変であった(Parant 1980; Matsumoto 1983; Fogler 1985)。
【0008】
共有結合的脂質MDP結合体は、従って、改善された経口バイオアベイラビリティー、増強された腫瘍標的化および治療効力、低減した毒性、ならびにリポソームのような送達キャリアへの増強された薬物負荷を含むいくつかの利点を示した(Fidler 1987; Irby 2017)。
【0009】
驚くべきことに、完全なムラミルジペプチド分子は、親油性結合体化MDPに伴う生物学的活性に必要とされない。N-アセチルムラミン酸なしのL-アラニン-D-イソグルタミンジペプチドMDP部分すら、親油性部分に共有結合的に結合体化した場合、MDPの免疫調節活性を保持する。例えば、Gobec(2016)は、N-アセチルムラミルを、アシル-グリシン-L-アラニン-D-グルタメートMDPアナログにおけるアシル部分で成功裡に置き換えている。Penney(1999)は、オクタデシルL-アラニン-D-イソグルタミンにおいてムラミル部分を完全に除去し、これは強い免疫調節活性をなお保持している。
【0010】
さらに、Penney(1999)およびGobec(2016)はともに、D-イソグルタミンが、親油性デスムラミルジペプチドにおいて、機能の喪失なしに、D-グルタミンまたはD-グルタメートで置き換えられ得ることを示している。
【0011】
動物において増強された成長は、時間単位あたりの質量での成長または栄養の単位あたりの質量での成長のいずれかによって測定される;後者は、ときおり、飼料転換といわれる。いずれかの手段による成長の促進は、ヒトおよび他の動物による消費のための動物性タンパク質の生産において経済的に有用である。なぜならそれは、体重における等しい増加を得るために必要とされる時間または飼料の量を低減するからである。
【0012】
阻害用量未満で与えられる抗生物質は、成長促進物質(growth promoter)として、農業生産動物における成長を増強するために長きにわたって使用されてきた。それらはおそらく、腸管内の炎症を抑制する腸内細菌(ポストバイオティクス)由来の構成要素(MDPを含む)を放出することによって機能する。この機序は、何兆もの腸内生息細菌に対する損傷性応答から動物を防御するように進化してきた可能性が最も高い。
【0013】
成長促進物質としての抗生物質の使用によって細菌の抗生物質耐性が幅広く誘導されていることに起因して、成長促進物質としての抗生物質に取って代わるものが、非常に望まれている。Nalle and Kaltenboeckは、無症候性の腸の炎症の、従って、身体全体の全身性炎症状態の低減におそらく起因して、強力な親油性MDPアナログの低用量経口投与が、動物において成長速度および飼料転換を改善することを教示する(Nalle 2017)。
【0014】
多工程の化学合成によるN-アセチルムラミン酸MDP中間体の生成は、困難であり、親油性MDPアナログを、家畜において成長促進物質として使用するには高価すぎるものにしている。このことから、免疫調節性の親油性デスムラミルジペプチドは、動物において抗生物質に依らない(non-antibiotic)成長促進の有力な候補になっている。
【0015】
Sidwell(1995)およびPenney(1999)は、オクタデシルD-アラニン-L-グルタミン、すなわち、親油性オクタデシルL-アラニン-D-グルタミンデスムラミルジペプチドの立体化学的鏡像分子(エナンチオマー)が、オクタデシルL-アラニン-D-グルタミンよりさらに強い免疫調節因子であることを示す。
【0016】
直感に反するが、Zhou(2002)は、天然のレセプター結合L-ペプチドのエナンチオマーの鏡像D-ペプチドが、天然のペプチドと同程度か、またはそれよりさらに強く、同族レセプターを結合することを示す。さらに、このようなD-ペプチドエナンチオマーは、生物学的に非常に活性である。なぜならそれらは、それらのL-対応物より遙かに安定であり、天然に分解する酵素が存在しないことに起因して、分解に対して耐性があるからである。
【0017】
同族レセプターへのエナンチオマーペプチドの結合、およびこのような天然に存在しないペプチドの増大した安定性は、オクタデシルD-アラニン-L-グルタミンデスムラミルジペプチド(BCH-527)の強い生物学的効果を説明する。このジペプチドはまた、N-アセチルムラミン酸の異方性の環式炭水化物部分の複雑な合成を回避し、従って、動物において成長促進物質として使用するための有望な費用効果的MDPアナログ候補である。
【0018】
親油性デスムラミルMDPエナンチオマーとして、オクタデシルD-アラニン-L-グルタミンデスムラミルジペプチドは、2つの欠点を有する: i)それは、ムラミン酸のN-アセチルグルコサミン部分をジペプチドに連結するN-アセチルムラミン酸の乳酸部分を欠いており(Jeanloz 1970)、従って、その同族レセプターへの結合強度をいくらか失い得る; ii)それは、細胞膜挿入(細胞標的化)、膜内輸送(intra-membrane transport)、および細胞内放出には最適とはいえない高融点のオクタデシル脂肪族脂質を含み(Spector 1985; van Meer 2008)、従って、オクタデシルD-アラニン-L-グルタミンの活性なジペプチド構成要素を細胞内に放出する、ジペプチドと脂質との間のエステル結合の細胞内エステラーゼ切断には不都合である(Hatfield 2016)。
【0019】
よって、親油性デスムラミルMDPエナンチオマーの免疫調節活性を最大化する化合物が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
要旨
L-ラクテート-D-アラニン-L-グルタミン部分を含むMDPのオリゴペプチドアナログ(本明細書においてオリゴペプチドまたは化合物ともいわれる)が、本明細書で記載される。いくらかの場合には、上記アナログは、MDPのN-アセチルグルコサミン部分を含まない。本明細書で記載されるオリゴペプチドは、以下の式:
【化1】
またはその薬学的に受容可能な酸もしくは塩を有し得、ここでRは、置換されているかもしくは置換されていないアルキルまたは置換されているかもしくは置換されていないアリールであり;R、R、R、およびRは、H、置換されているかもしくは置換されていないアルキルおよび置換されているかもしくは置換されていないアリールから各々独立して選択され;Xは、OまたはNRであり、ここでRは、水素、置換されているかもしくは置換されていないアルキル、または置換されているかもしくは置換されていないアリールである。必要に応じて、Xは、Oである。必要に応じて、Rは、C-C18直線状アルキルまたはアミノ酸である。いくらかの場合には、上記オリゴペプチドは、以下の構造:
【化2】
のうちの一方を有する。
【0021】
いくらかの場合には、上記オリゴペプチドは、以下の構造:
【化3】
のうちの一方を有し、ここでRは、置換されているかもしくは置換されていないアルキルまたは置換されているかもしくは置換されていないアリールであり;Yは、OまたはNRであり、ここでRは、水素、置換されているかもしくは置換されていないアルキル、または置換されているかもしくは置換されていないアリールである。必要に応じて、上記オリゴペプチドは、L-ラクテート-D-アラニン-L-グルタミン-ヘキサデシルエステルである。
【0022】
本明細書で記載されるとおりの化合物を含む組成物がまた、本明細書で記載される。必要に応じて、上記組成物は、少なくとも1種の本明細書で記載されるオリゴペプチドおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物である。いくらかの場合には、上記組成物は、少なくとも1種の本明細書で記載されるオリゴペプチドおよび動物飼料を含む。上記少なくとも1種のオリゴペプチドは、約0.01mg/kg~5mg/kgの量で上記組成物に存在し得る。必要に応じて、上記組成物は、動物の食事において使用される添加剤(例えば、酵素、プロバイオティクス、プレバイオティクス、抗酸化剤、抗菌成長促進物質(antibiotic growth promoter)、着色剤、またはこれらの組み合わせ)をさらに含む。
【0023】
ヒトにおいて腸の炎症を低減するための方法が本明細書でさらに記載され、上記方法は、本明細書で記載されるとおりの薬学的組成物を腸の炎症を有するヒトに投与する工程であって、ここで上記投与は、腸の炎症を低減する。上記方法は、腸の炎症と関連する疾患または状態(例えば、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、クローン病、潰瘍性大腸炎、または細菌感染症)を有するヒトを選択する工程をさらに包含し得る。動物において成長を促進するための方法がまた、本明細書で提供され、ここで上記方法は、本明細書で記載されるとおりの化合物または組成物を投与する工程を包含し、ここで上記投与は、上記動物の成長を増強する。動物において飼料転換を増強するための方法がまた、本明細書で提供され、ここで上記方法は、本明細書で記載されるとおりの化合物または組成物を投与する工程を包含し、ここで上記投与は、上記動物において飼料転換を増強する。
【0024】
1またはこれより多くの実施形態の詳細は、図面および以下の説明に示される。他の特徴、目的、および利点は、説明および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、L-ラクテート-D-アラニン-L-グルタミンパルミチルエステル(ラクテート-ジペプチド-パルミチルエステル、LDPP)の合成を示す模式図である。
図2図2は、ブロイラー鶏においてL-ラクテート-D-アラニン-L-グルタミンパルミチルエステル(LDPP)の成長促進効果の評価を示す棒グラフを含む。(A)実験用食事を、21日目の開始から、44日目の終了まで(24日間の一定時間)与えた。(B)一定時間に対するニワトリ1羽あたりの体重増加。示されるデータは、平均±95% 信頼区間(95% CI)である。(C)一定時間にニワトリ一羽あたりで消費した全飼料、平均±95% CI。(D)全消費飼料を各群の一定時間に対する全ニワトリの全重量増加で除算することによって決定した場合の飼料転換率。エラーバーは、個々の囲いの計算した飼料転換の25~75パーセンタイルを示す。(E)非処置コントロールと同じ体重増加(1,653g 一定体重増加)に必要とされる飼料に対する時間のモデル化。(F)一定体重増加に対するニワトリ一羽あたりの体重増加、平均±95% CI。(G)一定体重増加に対してニワトリ一羽あたりで消費した全飼料、平均±95% CI。(H)各処置群の一定体重増加あたりの飼料転換率。罹患率および死亡率は、群間で有意に異ならなかった。処置群間の関連する差異は、破線の括弧および対応するp値によって示される。
図3図3は、仔ブタ(nursery pig)におけるL-ラクテート-D-アラニン-L-グルタミンパルミチルエステル(LDPP)の成長促進効果の評価を示す棒グラフを含む。(A)実験用食事を、0日目の開始から、42日目の終了まで(42日間の一定時間)与えた。(B)一定時間に対するブタ一頭あたりの体重増加。示されるデータは、平均±95% 信頼区間(95% CI)である。(C)一定時間にブタ一頭あたりで消費した全飼料、平均±95% CI。(D)全消費飼料を各群の一定時間に対する全ブタの全重量増加で除算することによって決定した場合の飼料転換率。エラーバーは、個々の囲いの計算した飼料転換の25~75パーセンタイルを示す。(E)非処置コントロールと同じ体重増加(22.076kg 一定体重増加)に必要とされる飼料に対する時間のモデル化。(F)一定体重増加に対するブタ一頭あたりの体重増加、平均±95% CI。(G)一定体重増加に対してブタ一頭あたりで消費した全飼料、平均±95% CI。(H)各処置群の一定体重増加あたりの飼料転換率。罹患率および死亡率は、群間で有意に異ならなかった。処置群間の有意差は、太字のp値によって示される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
詳細な説明
デスアセチルグルコサミンムラミルジペプチド(MDP)の親油性エナンチオマー(例えば、L-ラクテート-D-アラニン-L-グルタミン-ヘキサデシルエステル)を含む組成物が、本明細書で提供される。この化合物は、i)さらなる鏡像のl-ラクテート部分を介してジペプチドを大きくすることによって、同族細胞内レセプターへの結合強度を改善し;ii)低融点のヘキサデシル(パルミチル)脂肪族脂質によって提供される増大した膜流動性を介して、細胞内標的化および活性ジペプチド放出を最大化する。
【0027】
ヒトまたは動物に投与される場合、MDPの親油性エナンチオマーを含む組成物は、炎症を低減し、成長を促進し、飼料転換を改善する。従って、ヒトおよび動物において炎症を低減するための方法、および動物において成長を促進し、飼料転換を増強するための方法が提供される。上記方法によれば、MDPの親油性エナンチオマーは、その薬学的に受容可能な酸もしくは付加塩、薬学的キャリアまたは動物飼料と組み合わされる。次いで、これは、炎症における所望される低減、成長の促進または飼料転換の改善を達成するために十分な量で、上記動物またはヒトに投与される。
【0028】
I. 化合物
デスアセチルグルコサミンムラミルジペプチド(MDP)のオリゴペプチドアナログが、本明細書で記載される。上記アナログは、有機脂質分子に結合したL-ラクテート-D-アラニン-L-グルタミン部分、およびその任意の薬学的に受容可能な酸または塩を含み得る。いくらかの場合には、上記アナログは、MDPのN-アセチルグルコサミン部分を含まない。
【0029】
いくらかの場合には、本明細書で記載される化合物は、式I:
【化4】
を含み、ここで:
【0030】
式Iにおいて、Rは、置換されているかもしくは置換されていないアルキルまたは置換されているかもしくは置換されていないアリールである。必要に応じて、Rは、C-C18直線状アルキルである。必要に応じて、Rは、アミノ酸、例えば、リジン基(D-リジンまたはL-リジン)である。
【0031】
また式Iにおいて、R、R、R、およびRは、H、置換されているかもしくは置換されていないアルキルおよび置換されているかもしくは置換されていないアリールから各々独立して選択される。
【0032】
さらに、式Iにおいて、Xは、OまたはNRであり、ここでRは、水素、置換されているかもしくは置換されていないアルキル、または置換されているかもしくは置換されていないアリールである。
【0033】
必要に応じて、式Iの化合物は、構造I-A:
【化5】
に従う化合物を含み得る。
【0034】
構造I-Aにおいて、Rは、式Iについて上記のとおりに定義される。
【0035】
必要に応じて、式Iの化合物は、構造I-B:
【化6】
に従う化合物を含み得る。
【0036】
構造I-Bにおいて、Rは、式Iについて上記のとおりに定義される。
【0037】
必要に応じて、式Iの化合物は、構造I-Cまたは構造I-D:
【化7】
に従う化合物を含み得る。
【0038】
構造I-Cおよび構造I-Dにおいて、Rは、置換されているかもしくは置換されていないアルキルまたは置換されているかもしくは置換されていないアリールである。また、構造I-Cおよび構造I-Dにおいて、Yは、OまたはNRであり、ここでRは、水素、置換されているかもしくは置換されていないアルキル、または置換されているかもしくは置換されていないアリールである。
【0039】
上記アルキルは、直鎖アルキルまたは分枝鎖アルキルであり得る。いくらかの場合には、上記直鎖アルキルは、C-C18アルキル(例えば、C-C17アルキルまたはC-C16アルキル)であり得る。適切なアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、またはオクタデシルが挙げられる。いくらかの場合には、上記オリゴペプチドは、L-ラクテート-D-アラニン-L-グルタミン-ヘキサデシルエステルであり、L-ラクテート-D-アラニン-L-グルタミンパルミチルエステル(ラクテート-ジペプチド-パルミチルエステル、LDPP)またはヘキサデシル(2S)-5-アミノ-2-[[(2R)-2-[[(2S)-2-ヒドロキシプロパノイル]アミノ]プロパノイル]アミノ]-5-オキソ-ペンタノエートとも本明細書においていわれる。
【0040】
必要に応じて、上記アリール基は、フェニル基を含む。必要に応じて、上記アリール基は、さらなる縮合環、例えば、ナフタレン、アントラセン、およびピレンを含み得る。上記アリールおよびヘテロアリール基は、別段注記されなければ、その環の任意の位置で結合され得る。
【0041】
本明細書で使用されるアルキルおよびアリール基は、置換されているかもしくは置換されていない可能性がある。本明細書で使用される場合、用語置換されたとは、アルキルまたはアリール基の主鎖に結合された位置への官能基の付加、例えば、これらの分子のうちの1つによる水素の置換を含む。置換基の例としては、ヒドロキシ、ハロゲン(例えば、F、Br、Cl、またはI)、およびカルボキシル基が挙げられるが、これらに限定されない。逆に、本明細書で使用される場合、用語置換されていないとは、上記アルキルまたはアリール基が、水素の完全な全数(full complement)を有することを示す。すなわち、その飽和レベルと、置換なしで釣り合っている(例えば、直線状のヘキサデシル(-(CH15-CH))
【0042】
II.化合物を作製する方法
本明細書で記載される化合物は、種々の方法で調製され得る。上記化合物は、種々の合成法を使用して合成され得る。これらの方法のうちの少なくともいくつかは、合成有機化学の分野で公知である。本明細書で記載される化合物は、容易に入手可能な出発物質から調製され得る。最適な反応条件は、使用される特定の反応物または溶媒に伴って変動し得るが、このような条件は、当業者によって決定され得る。
【0043】
式Iおよび本明細書で記載される化合物に対するバリエーションは、各化合物に関して記載されるとおりの種々の成分の付加、削除(subtraction)、または移動を含む。同様に、1個またはこれより多くのキラル中心が分子の中に存在する場合、全ての考えられるキラル改変体が含まれる。さらに、化合物合成は、種々の化学基の保護または脱保護を含み得る。保護および脱保護の使用、ならびに適切な保護基の選択は、当業者によって決定され得る。保護基の化学的性質は、例えば、Wuts, Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis, 第5版, Wiley & Sons, 2014(これはその全体において本明細書に参考として援用される)見出され得る。
【0044】
本明細書で記載される化合物を生成する反応は、溶媒中で行われ得、これは、有機合成の当業者によって選択され得る。溶媒は、上記反応が行われる条件、すなわち、温度および圧力下で、出発物質(反応物)、中間体、または生成物と実質的に非反応性であり得る。反応は、1種の溶媒または1種より多くの溶媒の混合物中で行われ得る。生成物または中間体の形成は、当該分野で公知の任意の適切な方法に従ってモニターされ得る。例えば、生成物の形成は、分光光度的手段(例えば、核磁気共鳴分光法(例えば、H-NMRまたは13C-NMR)、赤外線分光光度法(IR)、分光光度法(例えば、UV-可視)、もしくは質量分析法(MS)によって、またはクロマトグラフィー(例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)もしくは薄層クロマトグラフィー(TLC))によってモニターされ得る。
【0045】
本明細書で記載されるとおりの化合物を合成するための例示的な方法は、例証によってLDPPの合成を示す、実施例1の中で提供される。
【0046】
III.製剤
また、本明細書に記載されるとおりの式Iの化合物(例えば、MDPの少なくとも1種のオリゴペプチドアナログ)およびキャリアを含む組成物が、本明細書で記載される。必要に応じて、上記組成物は、L-ラクテート-D-アラニン-L-グルタミンパルミチルエステル(LDPP)およびキャリアを含む。
【0047】
いくらかの場合には、上記組成物は、本明細書に記載されるとおりの式Iの化合物(例えば、LDPPのような)および動物飼料を含む。トウモロコシ、モロコシ、コムギ、オオムギ、オート麦、大豆粉(soybean meal)、魚粉(fish meal)、および/またはホエイのうちの1またはこれより多くを含む動物飼料を含め、任意の適切な動物飼料が使用され得る。必要に応じて、式Iの化合物は、約0.01mg/kg~5mg/kg(例えば、0.05mg/kg~4.5mg/kg、0.1mg/kg~4mg/kg、0.15mg/kg~3.5mg/kgまたは0.2mg/kg~3mg/kg)の量で上記組成物に含まれ得る。いくつかの例では、式Iの化合物(例えば、LDPP)は、0.01mg/kg、0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.15mg/kg、0.2mg/kg、0.25mg/kg、0.3mg/kg、0.35mg/kg、0.4mg/kg、0.45mg/kg、0.5mg/kg、0.55mg/kg、0.6mg/kg、0.65mg/kg、0.7mg/kg、0.75mg/kg、0.8mg/kg、0.85mg/kg、0.9mg/kg、0.95mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kg、2.0mg/kg、2.5mg/kg、3.0mg/kg、3.5mg/kg、4.0mg/kg、4.5mg/kg、または5.0mg/kgの量で、動物飼料を含む組成物に含まれ得る。上記動物飼料組成物は、動物の食事において使用される添加剤(酵素、プロバイオティクス、プレバイオティクス、抗酸化剤、抗菌成長促進物質、および着色剤を含む)をさらに含み得る。
【0048】
本明細書で記載される組成物は、経口、非経口、吸入スプレー、局所、直腸、鼻、口内、膣、または移植されたレザバでの投与のために適切であり得る。用語、非経口的とは、本明細書で使用される場合、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、肝臓内、病変内および頭蓋内の注射または注入技術を含む。必要に応じて、本明細書で記載される組成物は、経口的に、局所的に、鼻内に、静脈内に、皮下に、皮内に、経皮的に、粘膜内に、筋肉内に、吸入スプレーによって、直腸に、鼻に、舌下に、口内に、膣に、または移植されたレザバを介して投与され得る。
【0049】
本明細書で記載される化合物またはその誘導体は、薬学的組成物中で提供され得る。いくらかの場合には、上記組成物は、式Iの化合物および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物である。意図される投与様式に依存して、上記薬学的組成物は、固体、半固体または液体の投与形態(例えば、錠剤、坐剤、丸剤、カプセル剤、散剤、液体、または懸濁剤のような)に、好ましくは、正確な投与量の単一投与のために適した単位投与形態にあり得る。上記組成物は、治療上有効な量の本明細書で記載される化合物またはその誘導体を、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて含み、さらに、他の医学的薬剤、薬剤、キャリア、または希釈剤を含み得る。薬学的に受容可能なとは、生物学的にも他の点でも所望されないものではない物質であって、許容されない生物学的効果を引き起こすことも、その物質が含まれる薬学的組成物の他の成分と有害な様式で相互作用もしない、選択された化合物とともに、個体に投与され得る物質を意味する。
【0050】
上記組成物は、本明細書で記載される化合物のうちの1種またはこれより多くおよび薬学的に受容可能なキャリアを含み得る。本明細書で使用される場合、用語キャリアは、任意の賦形剤、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定化剤、可溶化剤、脂質、安定化剤、または薬学的製剤における使用に関して当該分野で周知の他の物質を包含する。組成物における使用のためのキャリアの選択は、上記組成物の意図される投与経路に依存する。薬学的に受容可能なキャリアおよびこれらの物質を含む製剤の調製は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Adeboye Adejare編, 第23版, Academic Press (2021)に記載される。生理学的に受容可能なキャリアの例としては、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液のような緩衝液、および他の有機酸を有する緩衝液;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン);モノサッカリド、ジサッカリド、および他の炭水化物(グルコース、マンノースまたはデキストランを含む);キレート化剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);ならびに/あるいは非イオン性界面活性剤(例えば、TWEEN(登録商標)(ICI, Inc.; Bridgewater, New Jersey)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICS(登録商標)(BASF; Florham Park, NJ))が挙げられる。
【0051】
非経口的注射に適切な本明細書で記載される化合物またはその誘導体を含む組成物は、生理学的に受容可能な無菌の水性または非水性液剤、分散物、懸濁剤またはエマルジョン、および無菌の注射用液剤もしくは分散物へ再構成するための無菌の散剤を含み得る。適切な水性および非水性のキャリア、希釈剤、溶媒もしくはビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールなど)、それらの適切な混合物、植物性油(例えば、オリーブ油)および注射用の有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散物の場合には、必要とされる粒度の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。
【0052】
これらの組成物はまた、佐剤(例えば、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤(dispensing agent))を含み得る。微生物活動の防止は、種々の抗細菌剤、および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸など)によって促進され得る。等張化剤(isotonic agent)、例えば、糖、塩化ナトリウムなどがまた、含められ得る。注射可能な薬学的形態の長期間の吸収は、吸収を遅延させる作用物質(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)の使用によってもたらされ得る。
【0053】
本明細書で記載される化合物またはその誘導体の経口投与のための固体投与形態としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、および顆粒剤が挙げられる。このような固体投与形態では、本明細書で記載される化合物またはその誘導体は、少なくとも1種の不活性な慣習的な賦形剤(またはキャリア)(例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二ナトリウム)と、または(a)充填剤または増量剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸)、(b)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、およびアカシア)、(c)保湿剤(humectant)(例えば、グリセロール)、(d)崩壊剤(例えば、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定の複合シリケート、および炭酸ナトリウム)、(e)溶解遅延剤(solution retarder)(例えば、パラフィン)、(f)吸収促進剤(例えば、4級アンモニウム化合物)、(g)湿潤剤(例えば、セチルアルコール、およびモノステアリン酸グリセロール)、(h)吸着剤(例えば、カオリンおよびベントナイト)、ならびに(i)滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、またはこれらの混合物)と混合される。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合には、上記投与形態はまた、緩衝化剤を含み得る。
【0054】
類似のタイプの固体組成物はまた、充填剤として、ラクトースもしくは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を使用して、軟質および硬質充填ゼラチンカプセルにおいて使用され得る。
【0055】
固体投与形態(例えば、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒剤)は、コーティングおよびシェル(例えば、腸溶性コーティングおよび当該分野で公知の他のもの)とともに調製され得る。それらは、不透明化剤(opacifying agent)を含み得、遅延した様式で腸管のある特定の部分において活性化合物(複数可)を放出するような組成物であり得る。使用され得る埋め込み組成物の例は、ポリマー物質およびワックスである。活性化合物はまた、微小被包形態(適切であれば)において、上述の賦形剤のうちの1種またはこれより多くとともに存在し得る。
【0056】
本明細書で記載される化合物またはその誘導体の経口投与または静脈内投与のための液体投与形態は、薬学的に受容可能なエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤が挙げられる。活性化合物に加えて、液体投与形態は、当該分野で一般に使用される不活性希釈剤(例えば、水または他の溶媒)、可溶化剤、および乳化剤(例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル)、またはこれらの物質の混合物などを含み得る。
【0057】
このような不活性希釈剤の他に、上記組成物はまた、さらなる作用物質(例えば、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、甘味剤、矯味矯臭剤、芳香剤)を含み得る。
【0058】
懸濁剤は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド(aluminum metahydroxide)、ベントナイト、寒天およびトラガカント、またはこれらの物質の混合物など、さらなる作用物質を含み得る。
【0059】
上記のように、本明細書で記載される1またはこれより多くの化合物は、ネブライザとともに提供され得、これは、気体中に、実質的に均一なサイズの非常に微細な液体粒子を生成する機器である。本明細書で記載される1またはこれより多くの化合物を含む液体は、ミストの形態において約5mmまたはこれより小さい直径の液滴として分散され得る。その小さな液滴は、ネブライザの出口チューブを通って、空気または酸素の流れによって運ばれ得る。その得られたミストは。患者の呼吸器へと浸透し得る。
【0060】
本明細書で記載される化合物の送達のために有用なさらなる吸入剤としては、口内スプレー(intra-oral spray)、ミスト、定量吸入器および乾燥散剤生成器が挙げられる(Gonda, J. Pharm. Sci. 89:940-945, 2000(これは、少なくとも、その中で教示される吸入送達法についてはその全体において本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。例えば、滑沢剤、キャリア、または噴霧体ありまたはなしで、本明細書で記載されるとおりの1種またはこれより多くの化合物を含む散剤組成物は、患者に投与され得る。散剤形態における上記1種またはこれより多くの化合物の送達は、吸入によって散剤の薬学的組成物を投与するために従来のデバイスで行われ得る。
【0061】
直腸投与のための本明細書で記載される化合物またはその誘導体の組成物は、必要に応じて、坐剤である。これは、上記化合物と適切な非刺激性賦形剤またはキャリア、例えば、カカオ脂、ポリエチレングリコールまたは坐剤用ワックス(これらは、通常の温度で固体であるが、体温で液体であり、従って、直腸腔または膣腔中で融解し、活性構成要素を放出する)とを混合することによって調製され得る。
【0062】
本明細書で記載される化合物またはその誘導体の局所投与のための投与形態としては、軟膏剤、散剤、スプレー、および吸入剤が挙げられる。本明細書で記載される化合物またはその誘導体は、無菌条件下で、必要とされ得る場合には、生理学的に受容可能なキャリアおよび任意の保存剤、緩衝液、または噴霧体と混合される。眼用製剤、軟膏剤、散剤、および液剤はまた、上記組成物の範囲内であるとして企図される。
【0063】
上で注記されるように、上記組成物は、本明細書で記載される化合物またはその薬学的に受容可能な塩のうちの1またはこれより多くを含み得る。本明細書で使用される場合、用語薬学的に受容可能な塩とは、妥当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答などを伴わずに被験体の組織と接触した状態における使用に適した、合理的な利益/リスク比と釣り合った、それらの意図される使用に関して有効な、可能である場合には、本明細書で記載される化合物の双性イオン形態である、本明細書で記載される化合物またはその誘導体のそれらの塩をいう。用語塩とは、本明細書で記載される化合物の比較的非毒性の無機および有機性の酸付加塩をいう。これらの塩は、化合物の単離および精製の間に、またはその遊離塩基形態にある精製化合物と適切な有機性または無機性の酸とを別個に反応させ、そのようにして形成された塩を単離することによって、インサイチュで調製され得る。代表的な塩としては、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチレート(naphthylate)、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、メタンスルホン酸塩、およびラウリルスルホン酸塩(laurylsulphonate)などが挙げられる。これらは、アルカリ金属およびアルカリ土類金属(例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど)、ならびに非毒性のアンモニウム、4級アンモニウム、およびアミンカチオン(アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなどが挙げられるが、これらに限定されない)に基づくカチオンを含み得る(S.M. Bargeら, J. Pharm. Sci. (1977) 66, 1(これは、少なくとも本明細書で教示される組成物に関して、その全体において本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。
【0064】
本明細書で記載される化合物および組成物またはその薬学的に受容可能な塩の投与は、障害を処置するための有効な期間にわたって、治療上有効な量の、本明細書で記載される化合物および組成物または本明細書で記載されるとおりのその薬学的に受容可能な塩を使用して行われ得る。本明細書で記載される化合物および組成物または本明細書で記載されるとおりのその薬学的に受容可能な塩の有効量は、当業者によって決定され得、約0.01×(BW/20)3/4 μg~10,000×BW/20)3/4 μg/日の間の量で、被験体に上記活性化合物を送達する用量における動物またはヒトの例示的な投与を含む(ここでBWは、被験体の体重(グラム単位)である)。この量は、単一用量でまたは個々の分割用量の形態で(例えば、1~4回/日)投与され得る。
【0065】
当業者は、任意の特定の被験体に関する具体的な用量レベルおよび投薬頻度が、変動し得、種々の要因(使用される具体的化合物の活性、その化合物の代謝安定性および作用の長さ、被験体の種、年齢、体重、全身的な健康状態、性別および食事、投与の様式および時間、排出速度、薬物の組み合わせ、ならびに特定の状態の重篤度が挙げられる)に依存することを理解する。
【0066】
製剤において使用されるべき正確な用量は、投与経路、および疾患または障害の重篤度にも依存し、医師の判断および各被験体の状況に応じて決定されるべきである。有効用量は、インビトロまたは動物モデル試験系から得られる用量-応答曲線から外挿され得る。さらに、投与経路に依存して、当業者は、被験体の細胞、組織および/または器官における所望の応答レベルのための血漿濃度を生じる用量を決定する方法を知っている。
【0067】
IV.使用方法
有効量の、本明細書で記載される化合物もしくは薬学的組成物、またはその薬学的に受容可能な塩のうちの1またはこれより多くを被験体に投与する工程を包含する方法が、本明細書で提供される。表現「有効量」は、方法における化合物の量を記載するために使用される場合、所望の薬理学的効果または他の効果を達成する化合物の量、例えば、増強された成長または飼料転換を生じる量をいう。
【0068】
動物において成長を促進するための方法が、動物において飼料転換を増強するための方法とともに、本明細書で提供される。上記方法は、本明細書で記載されるとおりの化合物または組成物を動物に投与する工程を包含する。上記投与は、コントロール(本明細書で記載されるとおりの化合物または組成物を投与しない動物)と比較して、上記動物の成長を増強し得るおよび/または上記動物の飼料転換を増強し得る。
【0069】
本明細書で記載される化合物および組成物またはその薬学的に受容可能な塩は、腸の炎症と関連する疾患または状態を処置および/または防止するために有用である。よって、ヒトにおいて腸の炎症を低減するための方法が本明細書で提供され、上記方法は、本明細書で記載されるとおりの組成物(例えば、本明細書で記載されるとおりの薬学的組成物)を、腸の炎症を有するヒトに投与する工程を包含し、ここで上記投与は、腸の炎症を低減する。必要に応じて、上記ヒトは、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、クローン病、潰瘍性大腸炎、または細菌感染症(例えば、Clostridium difficile感染症)を有するかまたは発生させるリスクにある。上記方法は、腸の炎症と関連する疾患または状態(例えば、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、クローン病、潰瘍性大腸炎、または細菌感染症)を有するヒトを選択する工程をさらに包含し得る。
【0070】
本明細書で記載される方法は、ヒト(小児集団および老齢の集団が挙げられるが、これらに限定されない)においておよび動物(例えば、獣医学的適用)において、本明細書で記載される疾患および状態を処置するために有用である。
【0071】
V.キット
動物において成長を促進するためのキットがまた、動物において飼料転換を増強するための方法とともに、本明細書で提供される。キットは、本明細書で記載される化合物または組成物のうちのいずれかを含み得る。例えば、キットは、式Iの化合物を含み得る。キットは、1種またはこれより多くのさらなる作用物質(例えば、動物飼料および/または動物飼料サプリメント)をさらに含み得る。キットは、本明細書で記載される化合物または組成物のうちのいずれかの経口製剤を含み得る。キットは、上記キットの使用のための指示(例えば、被験体を処置するための指示)、容器、上記化合物もしくは組成物を投与するための手段、ならびに/またはキャリアをさらに含み得る。
【0072】
被験体において腸の炎症と関連する疾患または状態を処置または防止するためのキットがまた、本明細書で提供される。キットは、本明細書で記載される化合物または組成物のうちのいずれかを含み得る。例えば、キットは、式Iの化合物を含み得る。キットは、1種またはこれより多くのさらなる薬剤(例えば、抗炎症剤)をさらに含み得る。キットは、本明細書で記載される化合物または組成物のうちのいずれかの経口製剤を含み得る。キットは、上記キットの使用のための指示(例えば、被験体を処置するための指示)、容器、上記化合物もしくは組成物を投与するための手段、ならびに/またはキャリアをさらに含み得る。
【0073】
本明細書で使用される場合、用語処置、処置する、または処置することは、疾患または状態の1またはこれより多くの症状を低減する方法に言及する。従って、本開示の方法において、処置は、上記疾患または状態の1またはこれより多くの症状の重篤度の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の低減に言及し得る。例えば、疾患を処置するための方法は、コントロールと比較して、被験体において上記疾患の1またはこれより多くの症状または徴候の10%の低減が存在する場合に、処置であると考えられる。本明細書で使用される場合、コントロールとは、処置されていない条件をいう。従って、上記低減は、ネイティブのまたはコントロールレベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、または10%~100%の間にある任意のパーセントの低減であり得る。処置は、必ずしも、上記疾患、状態、または上記疾患もしくは状態の症状の治癒または完全な除去に言及しないことが理解される。
【0074】
本明細書で使用される場合、用語、疾患または障害を防止する、防止すること、および防止は、被験体が上記疾患または障害の1またはこれより多くの症状を示し始める前にまたはほぼ同時に行われる、上記疾患または障害の1またはこれより多くの症状を阻害するかまたはその発生をもしくは重篤度を遅らせる行為(例えば、組成物または治療剤の投与)をいう。
【0075】
本明細書で使用される場合、減少させる、低減する、または阻害することへの言及は、コントロールレベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはこれより大きな変化を含む。このような用語は、完全な排除を含み得るが、必ず含むわけではない。
【0076】
全体を通じて使用される場合、被験体は、個体を意味する。好ましくは、上記被験体は、哺乳動物(例えば、霊長類、およびより好ましくは、ヒト)である。非ヒト霊長類は、同様に被験体である。用語被験体は、飼い慣らされた動物(例えば、ネコ、イヌなど)、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、家禽(ニワトリ、シチメンチョウ、ハト、ガチョウなど)、および実験動物(例えば、フェレット、チンチラ、マウス、ウサギ、ラット、アレチネズミ、モルモットなど)を含む。従って、獣医学的な使用および医学的製剤が、本明細書で企図される。非ヒト被験体はまた、本開示において動物といわれる。
【0077】
本出願全体を通じて、種々の刊行物が言及される。これらの刊行物のそれらの全体における開示は、本出願に参考として援用される。
【0078】
以下の実施例は、本発明をさらに例証するために役立つが、同時に、そのいかなる限定をも構成しない。逆に、本明細書中の説明を読んで理解した後、本発明の趣旨から逸脱することなく、当業者に示唆され得るその種々の実施形態、改変および均等物に依拠する必要があり得ることは、明確に理解されるべきである。
【実施例
【0079】
実施例1:L-ラクテート-D-アラニン-L-グルタミンパルミチルエステル(LDPP)の合成
L-ラクテート-D-アラニン-L-グルタミンパルミチルエステル(LDPP)を、以下に詳述されかつ図1に示される方法に従って合成した。
【0080】
tert-ブチルオキシカルボニル(BOC)L-グルタミンのヘキサデシルエステルを、工程aにおいて、テトラヒドロフラン中、ジシクロヘキシルカルボジイミドの存在下で、BOC-グルタミン(1)と1-ヘキサデカノール(2)とのエステル化反応によって調製して、ヘキサデシルBOC-L-グルタミン(3)を得た。そのBOC保護基を、工程bにおいて、塩化メチレン中に溶解した中間体(3)を塩化水素ガスで処理することによって除去して、ヘキサデシルL-グルタミンの塩酸塩(4)を得た。中間体(4)を、N,N-ジメチルホルムアミド中に溶解し、N,N-ジイソプロピルエチルアミンを添加し、続いて、BOC D-アラニン(5)およびカップリング剤、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)を添加して、工程cにおいてBOC保護したヘキサデシルジペプチド6を得た。中間体6を、カラムクロマトグラフィーによって精製し、上記BOC基を、工程dにおいてその生成物を塩化水素ガスで処理することによって除去して、ヘキサデシルジペプチド7を得た。N,N-ジイソプロピルエチルアミンおよび2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(ヘキサフルオロホスフェートベンゾトリアゾールテトラメチルウロニウム、HBTU)の存在下で、N,N-ジメチルホルムアミド中に溶解した中間体(7)に、L-乳酸リチウム(8)を添加し、工程eにより、最終生成物、L-ラクテート-D-アラニン-L-グルタミンヘキサデシルエステル(9)を得た。その白色のL-ラクテート-D-アラニン-L-グルタミンパルミチルエステルは、MW 513.72 g/molを有し、H-核磁気共鳴分析によって決定される場合、98%を超えて純粋であった。
【0081】
実施例2:ニワトリにおける成長速度および飼料転換に対するLDPPの影響
この実験の目的は、0.2mg/kg 飼料のL-ラクテート-D-アラニン-L-グルタミンパルミチルエステル(LDPP)での飼料の追加補充が、ブロイラー鶏において成長速度を増大させるおよび/または飼料転換を改善するか否か、すなわち、ブロイラー鶏をより速く成長させることによって成長を促進するおよび/または体重の同じ増加量に対してより少ない飼料しか要求しないか否かを評価することであった。二次的な目的は、LDPPの効果と、バシトラシン(産業標準の成長促進抗生物質)の効果とを比較することであった。
【0082】
実験デザイン
孵化したばかりの雌性Ross 708ブロイラー鶏を、1つの群れとして、使用済床材を敷いた床飼い(floor pen)で21日間飼育した。全てのニワトリは、この時間の間に、80% 推奨粗タンパク質で、抗コクシジウムサプリメントを含まない、砕いた非処置の標準的Aviagen 708スターターおよび育成用飼料(grower feed)を与えた。3週間後、そのニワトリを、新しい床材を敷いて、25羽のニワトリの、38の複製の床飼いへとグループ分けした。ニワトリに、21日目から44日目の終了まで、24日間、100% タンパク質および0.0125% アンプロリウム抗コクシジウム含有の、標準の砕いたフィニッシャー(finisher)Aviagen 708仕上げ用飼料を与えた。飼料および水は、その試験中を通して自由に摂取できるようにした。13の囲いの各々を、非処置コントロール(サプリメントなしの飼料)およびLDPP処置(0.2mg LDPP/kg 飼料)に割り当て、12の囲いを、バシトラシン処置(50mg バシトラシン/kg 飼料)へと割り当てた。実験単位は、個々のニワトリというよりむしろ囲いである。囲いのニワトリの重量を、21日目および44日目に決定した。仕上げ用飼料摂取を記録し、44日目に残留飼料を決定し、実験を終了した。
【0083】
統計分析
飼料供給実験の完全な24日間の継続期間の一定時間分析のために、各処置群の全体の(真の)飼料転換を、全消費飼料を各実験群の全ての囲いの全重量増加によって除算することによって決定した。
【0084】
一定体重増加分析のために、バシトラシン処置およびLDPP処置群の飼料を与えた時間を、非処置コントロール群の体重増加に適合するようにモデル化した。標準的雌性Ross 708ブロイラーの体重および体重増加が非常に近く適合していることに基づいて、実験最終日44日目に、ニワトリあたりの体重増加を、21~44日目の囲いの体重増加/囲いあたりの生存しているニワトリの割合0.04781として計算した。各処置群の平均体重増加を、コントロール群と適合する体重増加を生じる単一の端数の日(single fractional day)が見出されるまで、処置の全ての囲いの計算した44日目の体重増加の同じ割合を繰り返し差し引くことによって、コントロール平均に対して調節した。同様に、44日目のニワトリあたりの飼料消費を、21~44日目の囲いの飼料摂取/囲いあたりの生存しているニワトリの割合0.05867として計算した。次いで、処置群あたりの平均飼料摂取を、各囲いからの先に見出された毎日の飼料摂取画分(fractional daily feed uptake)を差し引くことによって計算した。
【0085】
体重増加および飼料消費データを、一元配置ANOVAおよび多重比較のためのTukey Honest True Difference補正によって分析した。飼料転換率における群差を、ノンパラメトリックMann Whitney U検定によって、囲いのFCRデータから評価した。
【0086】
結果および結論
LDPP(0.2mg/kg 飼料で追加補充)は、非処置コントロールニワトリの1,653g体重増加と比較して、LDPP処置ニワトリの体重増加を4.4%、1,725gへと増大させることによって、ブロイラー鶏の成長速度を有意に改善する。これは、コントロールと比較して、LDPP処置ニワトリの非常に有意なほぼ1日速い成長を生じた(23.13日 対 24日)。LDPP処置ニワトリ 対 非処置ニワトリの飼料転換率は、一定時間において1.818から1.805へと改善され、一定体重増加では1.7%、1.787へとより強く改善される。LDPPの成長促進効果は、バシトラシン(産業標準の成長促進抗生物質)のものより有意に強く、一定体重増加において1.827の有意により高い飼料転換率を示した。その結果を、図2に示す。
【0087】
実施例3:ブタにおける成長速度および飼料転換に対するLDPPの影響
この実験の目的は、0.2mg/kg 飼料のL-ラクテート-D-アラニン-L-グルタミンパルミチルエステル(LDPP)での飼料の追加補充が、離乳したての仔ブタにおいて成長速度を増大させるおよび/または飼料転換を改善するか否かを評価することであった。
【0088】
実験デザイン
雄性のブタ(去勢済み(barrow))を、この研究に使用した。ブタを、約3ヶ月齢で離乳させ、養豚場(nursery)へと移し、24の養豚場の囲いへと、1つの囲いあたり4頭のブタで無作為に割り当てた。2つの食事処置のうちの1つ、非処置コントロール(サプリメントなしの飼料)またはLDPP処置(0.2mg LDPP/kg 飼料)を、各囲いに割り当て、その結果、4頭のブタの12個の囲いを使用して、各食事の効果を評価した。処置化合物のプレミックスを、0.1%で混合食に添加し、これをペレットにした。フェーズ1の食事を、離乳後0日目からおよそ8日目まで6ポンド/ブタにおいて与えた。離乳後8日目に、ブタを、12ポンド/ブタのフェーズ2の食事に切り替え、これをおよそ18日目に終了させた。フェーズ2の食事がいったん消費されたら、ブタを、フェーズ3の食事に切り替え、42日目の試験終了まで維持した。抗生物質はいかなる食事にも添加しなかった。2012 NRC仕様に基づいて、全ての栄養要件を満たすかまたは超えるように食事を配合した。ブタは、食事および水を自由に摂取した。ブタを、実験の0日目および42日目に個々に体重測定した。囲いあたりの飼料摂取を、秤量期間の間にモニターした。個々のブタの重量を得たが、囲いが、実験単位であった。42日目に試験を終了し、非処置ブタを食物連鎖の中で保持したが、処置ブタは安楽死させた。
【0089】
統計分析
囲いのデータを、ブタの頭数で除算することによって、個々のブタのデータへと変換した。ブタを安楽死させた3つの囲いに関しては、時間分率(time-fractional)のブタの頭数を使用した。体重増加および計算した飼料消費データを、ペアワイズT検定によって分析した。各処置の全体の(真の)飼料転換を、全消費飼料を各処置の全ての囲いの全重量増加で除算することによって決定した。飼料転換における処置の差を、囲いの飼料転換データのノンパラメトリックMann Whitney U検定によって統計的に評価した。
【0090】
一定体重増加分析のために、LDPP処置群の飼料を与えた時間を、非処置コントロール群の体重増加に適合するようにモデル化した。毎日の体重および体重増加を、0日目の体重と42日目の体重との間の線形補間によってモデル化した。LDPP処置群の平均体重増加を、その計算した42日目および41日目の体重増加を差し引き、次いで、コントロール群と適合する体重増加を生じる単一の端数の日が見出されるまで、LDPP処置の全ての囲いの計算された40日目の体重増加の同じ割合を繰り返し差し引くことによって、コントロール平均に調節した。補間された毎日の体重データから、先ず、毎日の飼料消費を、体重の5%として計算した。次いで、これらの毎日の飼料摂取の合計を、各囲いの実際の秤量した飼料摂取によって除算し、毎日の飼料摂取にこの割合を乗算したところ、囲いあたりの正確に秤量した飼料摂取に達した。これらの計算した毎日の飼料摂取を使用して、LDPP処置群の飼料を与えた変化した時間による飼料取り込みを計算した。次いで、LDPP処置群の平均飼料摂取を、各囲いに関して、先に見出された42日目および41日目、ならびに40日目の飼料摂取画分を差し引くことによって計算した。
【0091】
体重増加および飼料消費データを、一元配置ANOVAおよびスチューデントのT検定によって分析した。飼料転換率における差を、ノンパラメトリックMann Whitney U検定によって、囲いのFCRデータから評価した。
【0092】
結果および結論
LDPP(0.2mg/kg 飼料で追加補充)は、非処置の仔ブタの22.076kg 体重増加と比較して、LDPP処置ブタの体重増加を、7.9%、23.826kgへと増大させることによって、仔ブタの成長速度を有意に改善する。これは、コントロールと比較して、LDPP処置ブタの非常に有意な2.1日速い成長を生じた(39.921日 対 42日)。LDPP処置ブタ 対 非処置ブタの飼料転換率は、一定時間において3.8%、1.479から1.423へと改善され、一定体重増加において5.5%、1.396へとより強く改善される。その結果を図3に示す。
【0093】
本明細書で引用される全ての参考文献は、それらの全体において参考として援用される。
【化8-1】
【化8-2】
【化8-3】
【0094】
1またはこれより多くの例証的な実施形態は、図面を参照しながら記載されてきたが、形態および詳細における種々の変更が、以下の特許請求の範囲によって規定されるとおりの発明の概念の趣旨および範囲から逸脱することなく、それら実施形態の中で行われ得ることは、当業者によって理解される。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-11-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式:
【化9】

のオリゴペプチドまたはその薬学的に受容可能な酸もしくは塩であって、ここで:
は、置換されているかもしくは置換されていないアルキルまたは置換されているかもしくは置換されていないアリールであり;
、R、R、およびRは、H、置換されているかもしくは置換されていないアルキルおよび置換されているかもしくは置換されていないアリールから各々独立して選択され;
Xは、OまたはNRであり、ここでRは、水素、置換されているかもしくは置換されていないアルキル、または置換されているかもしくは置換されていないアリールである、
オリゴペプチドまたはその薬学的に受容可能な酸もしくは塩。
【請求項2】
Xは、Oである、請求項1に記載のオリゴペプチドまたはその薬学的に受容可能な酸もしくは塩
【請求項3】
は、C-C18直線状アルキルまたはアミノ酸である、請求項1に記載のオリゴペプチドまたはその薬学的に受容可能な酸もしくは塩
【請求項4】
前記オリゴペプチドは、以下の構造:
【化10】

を有する、請求項1に記載のオリゴペプチドまたはその薬学的に受容可能な酸もしくは塩
【請求項5】
前記オリゴペプチドは、以下の構造:
【化11】

を有し、ここで
は、置換されているかもしくは置換されていないアルキルまたは置換されているかもしくは置換されていないアリールであり;
Yは、OまたはNRであり、ここでRは、水素、置換されているかもしくは置換されていないアルキル、または置換されているかもしくは置換されていないアリールである、
請求項1に記載のオリゴペプチドまたはその薬学的に受容可能な酸もしくは塩
【請求項6】
前記オリゴペプチドは、L-ラクテート-D-アラニン-L-グルタミン-ヘキサデシルエステルである、請求項1に記載のオリゴペプチドまたはその薬学的に受容可能な酸もしくは塩
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の少なくとも1種のオリゴペプチドまたはその薬学的に受容可能な酸もしくは塩、および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の少なくとも1種のオリゴペプチドまたはその薬学的に受容可能な酸もしくは塩、および動物飼料を含む、組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種のオリゴペプチドまたはその薬学的に受容可能な酸もしくは塩は、約0.01mg/kg~5mg/kgの量で前記組成物に存在する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物は、動物の食事において使用される添加剤をさらに含む、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】
前記添加剤は、酵素、プロバイオティクス、プレバイオティクス、抗酸化剤、抗菌成長促進物質、着色剤、またはこれらの組み合わせを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
ヒトにおいて腸の炎症を低減する方において使用するための、請求項7に記載の薬学的組成物であって、前記方法は、
前記薬学的組成物を、腸の炎症を有するヒトに投与する工程を包含し、ここで前記投与は、前記腸の炎症を低減する、
薬学的組成物
【請求項13】
前記方法が、腸の炎症と関連する疾患または状態を有するヒトを選択する工程をさらに包含する、請求項12に記載の薬学的組成物
【請求項14】
腸の炎症と関連する前記疾患または状態は、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、クローン病、潰瘍性大腸炎、または細菌感染症を含む、請求項13に記載の薬学的組成物
【請求項15】
動物において成長を促進するための請求項1~6のいずれかに記載のオリゴペプチドまたはその薬学的に受容可能な酸もしくは塩を含む組成物であって、動物に投与されることを特徴とし、ここで前記投与は、前記動物の成長を増強する、
組成物
【請求項16】
動物において成長を促進するための請求項8~11のいずれかに記載の組成物であって、動物に投与されることを特徴とし、ここで前記投与は、前記動物の成長を増強する、
組成物
【請求項17】
動物において飼料転換を増強するための請求項1~6のいずれかに記載のオリゴペプチドまたはその薬学的に受容可能な酸もしくは塩を含む組成物であって、動物に投与されることを特徴とし、ここで前記投与は、前記動物の飼料転換を増強する、
組成物
【請求項18】
動物において飼料転換を増強するための請求項8~11のいずれかに記載の組成物であって、動物に投与されることを特徴とし、ここで前記投与は、前記動物において飼料転換を増強する、
組成物
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0094
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0094】
1またはこれより多くの例証的な実施形態は、図面を参照しながら記載されてきたが、形態および詳細における種々の変更が、以下の特許請求の範囲によって規定されるとおりの発明の概念の趣旨および範囲から逸脱することなく、それら実施形態の中で行われ得ることは、当業者によって理解される。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
以下の式:
【化9】

のオリゴペプチドまたはその薬学的に受容可能な酸もしくは塩であって、ここで:
は、置換されているかもしくは置換されていないアルキルまたは置換されているかもしくは置換されていないアリールであり;
、R 、R 、およびR は、H、置換されているかもしくは置換されていないアルキルおよび置換されているかもしくは置換されていないアリールから各々独立して選択され;
Xは、OまたはNR であり、ここでR は、水素、置換されているかもしくは置換されていないアルキル、または置換されているかもしくは置換されていないアリールである、
オリゴペプチドまたはその薬学的に受容可能な酸もしくは塩。
(項目2)
Xは、Oである、項目1に記載のオリゴペプチド。
(項目3)
は、C -C 18 直線状アルキルまたはアミノ酸である、項目1に記載のオリゴペプチド。
(項目4)
前記オリゴペプチドは、以下の構造:
【化10】

を有する、項目1に記載のオリゴペプチド。
(項目5)
前記オリゴペプチドは、以下の構造:
【化11】

を有し、ここで
は、置換されているかもしくは置換されていないアルキルまたは置換されているかもしくは置換されていないアリールであり;
Yは、OまたはNR であり、ここでR は、水素、置換されているかもしくは置換されていないアルキル、または置換されているかもしくは置換されていないアリールである、
項目1に記載のオリゴペプチド。
(項目6)
前記オリゴペプチドは、L-ラクテート-D-アラニン-L-グルタミン-ヘキサデシルエステルである、項目1に記載のオリゴペプチド。
(項目7)
項目1~6のいずれか1項に記載の少なくとも1種のオリゴペプチドおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
(項目8)
項目1~6のいずれか1項に記載の少なくとも1種のオリゴペプチドおよび動物飼料を含む、組成物。
(項目9)
前記少なくとも1種のオリゴペプチドは、約0.01mg/kg~5mg/kgの量で前記組成物に存在する、項目8に記載の組成物。
(項目10)
前記組成物は、動物の食事において使用される添加剤をさらに含む、項目8または9に記載の組成物。
(項目11)
前記添加剤は、酵素、プロバイオティクス、プレバイオティクス、抗酸化剤、抗菌成長促進物質、着色剤、またはこれらの組み合わせを含む、項目10に記載の組成物。
(項目12)
ヒトにおいて腸の炎症を低減するための方法であって、前記方法は、
項目7に記載の薬学的組成物を、腸の炎症を有するヒトに投与する工程を包含し、ここで前記投与は、前記腸の炎症を低減する、
方法。
(項目13)
腸の炎症と関連する疾患または状態を有するヒトを選択する工程をさらに包含する、項目12に記載の方法。
(項目14)
腸の炎症と関連する前記疾患または状態は、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、クローン病、潰瘍性大腸炎、または細菌感染症を含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
動物において成長を促進するための方法であって、前記方法は、
項目1~6のいずれかに記載のオリゴペプチドを動物に投与する工程を包含し、ここで前記投与は、前記動物の成長を増強する、
方法。
(項目16)
動物において成長を促進するための方法であって、前記方法は、
項目8~11のいずれかに記載の組成物を動物に投与する工程を包含し、ここで前記投与は、前記動物の成長を増強する、
方法。
(項目17)
動物において飼料転換を増強するための方法であって、前記方法は、
項目1~6のいずれかに記載のオリゴペプチドを動物に投与する工程を包含し、ここで前記投与は、前記動物の飼料転換を増強する、
方法。
(項目18)
動物において飼料転換を増強するための方法であって、前記方法は、
項目8~11のいずれかに記載の組成物を動物に投与する工程を包含し、ここで前記投与は、前記動物において飼料転換を増強する、
方法。
【国際調査報告】