(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-09
(54)【発明の名称】RNAを送達するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/107 20060101AFI20230427BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20230427BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230427BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230427BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230427BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230427BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20230427BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20230427BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230427BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20230427BHJP
A61K 47/52 20170101ALI20230427BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20230427BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20230427BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20230427BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230427BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230427BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230427BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20230427BHJP
A61K 31/70 20060101ALI20230427BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20230427BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20230427BHJP
A61K 35/68 20060101ALI20230427BHJP
A61K 39/02 20060101ALI20230427BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20230427BHJP
A61K 39/002 20060101ALI20230427BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20230427BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230427BHJP
A61K 49/10 20060101ALI20230427BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230427BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230427BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230427BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230427BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20230427BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230427BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20230427BHJP
A61K 39/215 20060101ALI20230427BHJP
A61K 39/29 20060101ALI20230427BHJP
A61K 39/21 20060101ALI20230427BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230427BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
A61K9/107
A61K47/44
A61K47/02
A61K47/18
A61K47/22
A61K47/26
A61K47/24
A61K47/06
A61K47/12
A61K47/20
A61K47/52
A61K47/54
A61K31/7105
A61K31/711
A61K48/00
A61K35/76
A61K45/00
A61K38/02
A61K31/70
A61K35/12
A61K35/74 Z
A61K35/68
A61K39/02
A61K39/12
A61K39/002
A61K39/00 Z
A61K39/395 E
A61K39/395 D
A61K39/395 T
A61K39/395 S
A61K39/395 R
A61K39/395 Q
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61K49/10
A61P35/00
A61P37/02
A61P31/04
A61P31/12
A61P33/00
A61P31/14
A61P31/18
A61K39/215
A61K39/29
A61K39/21
A61P1/16
A61P11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558088
(86)(22)【出願日】2021-02-22
(85)【翻訳文提出日】2022-11-16
(86)【国際出願番号】 US2021019103
(87)【国際公開番号】W WO2021194672
(87)【国際公開日】2021-09-30
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522375693
【氏名又は名称】エイチディーティー バイオ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】カンダール, アミット
(72)【発明者】
【氏名】リード, スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ダシー, マルコルム
(72)【発明者】
【氏名】エラスムス, ジェシー
(72)【発明者】
【氏名】カーター, ダリック
(72)【発明者】
【氏名】ベルべ, ブライアン ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076AA95
4C076CC06
4C076CC07
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC27
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4C076CC34
4C076CC35
4C076CC41
4C076DD01
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4C076DD21
4C076DD26
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4C087ZC55
(57)【要約】
本開示は、ナノエマルジョン組成物ならびに核酸などの生物活性剤を対象に送達するためにそれを製造して使用する方法を提供する。ナノエマルジョン組成物は、イメージングならびに核酸の送達を可能にする脂質ナノ粒子中の無機ナノ粒子に基づく疎水性コアを含む。処置およびワクチン接種のためにこれらの粒子を使用する方法も提供される。本開示は、RNAに結合し、処置を必要とする対象にRNAを送達する無機化合物系のナノ粒子を提供する。この系は、1)RNAが単独で与えられる場合、またはナノ構造脂質担体などの他の担体技術を使用する場合よりもはるかに効率的にRNAが送達される、2)ナノ粒子が、RNAを安定化し、RNAを分解から保護するカチオン性脂質を含有する、3)ナノ粒子が、体内の粒子の画像化および追跡を可能にするレポーター要素を有する、という多くの利点を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のナノエマルジョン粒子を含むナノエマルジョン組成物であって、各ナノエマルジョン粒子が、
液体油と1または複数の無機ナノ粒子との混合物を含む疎水性コアと、
1または複数の脂質と、
必要に応じて、1または複数の界面活性剤と、を含むナノエマルジョン組成物。
【請求項2】
前記各ナノエマルジョン粒子が、
液体油と、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物、金属ホスフェート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1または複数の無機ナノ粒子との混合物を含む疎水性コアと、
カチオン性脂質と、
疎水性界面活性剤と、
親水性界面活性剤と、を含む、
請求項1に記載のナノエマルジョン組成物。
【請求項3】
前記ナノエマルジョン粒子が、
約0.2%から約40%w/vの液体油と、
約0.001%から約10%w/vの無機固体ナノ粒子と、
約0.2%から約10%w/vのカチオン性脂質と、
約0.25%から約5%w/vの疎水性界面活性剤と、
約0.5%w/vから約10%w/vの親水性界面活性剤と、を含む、
請求項2に記載のナノエマルジョン組成物。
【請求項4】
前記カチオン性脂質が、1,2-ジオレオイルオキシ-3-(トリメチルアンモニウム)プロパン(DOTAP)、3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール(DCコレステロール)、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDA)、1,2-ジミリストイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DMTAP)、ジパルミトイル(C16:0)トリメチルアンモニウムプロパン(DPTAP)、ジステアロイルトリメチルアンモニウムプロパン(DSTAP)、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N,N-ジオレオイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DOEPC)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DODAP)、および、1,2-ジリノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,1’-((2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチル)アザンジイル)ビス(ドデカン-2-オール)(C12-200)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載のナノエマルジョン組成物。
【請求項5】
前記疎水性界面活性剤がソルビタンエステルであり、前記親水性界面活性剤がポリオキシエチレンソルビタンエステルである、請求項2に記載のナノエマルジョン組成物。
【請求項6】
前記各ナノエマルジョン粒子が、
ホスフェート末端脂質、リン末端界面活性剤、カルボキシレート末端界面活性剤、サルフェート末端界面活性剤、またはアミン末端界面活性剤で必要に応じてコーティングされた少なくとも1つの金属酸化物ナノ粒子を含有する1または複数の無機ナノ粒子と、天然または合成スクアレンを含有する液体油との混合物を含む疎水性コアと、
前記カチオン性脂質DOTAPと、
ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエートおよびソルビタントリオレエートからなる群から選択されるソルビタンエステルを含む疎水性界面活性剤と、
ポリソルベートを含む親水性界面活性剤と、を含む、請求項2に記載のナノエマルジョン組成物。
【請求項7】
前記各ナノエマルジョン粒子が、
ホスフェート末端脂質、リン末端界面活性剤、カルボキシレート末端界面活性剤、サルフェート末端界面活性剤、またはアミン末端界面活性剤で必要に応じてコーティングされた少なくとも1つの金属水酸化物ナノ粒子またはオキシ水酸化物ナノ粒子を含有する1または複数の無機ナノ粒子と、天然または合成スクアレンを含有する液体油との混合物を含む疎水性コアと、
前記カチオン性脂質DOTAPと、
ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエートおよびソルビタントリオレエートからなる群から選択されるソルビタンエステルを含む疎水性界面活性剤と、
ポリソルベートを含む親水性界面活性剤と、を含む、請求項2に記載のナノエマルジョン組成物。
【請求項8】
前記ナノエマルジョン粒子が、動的光散乱によって測定される、約40nmから約80nmの範囲のz平均流体力学的直径を有し、平均多分散性指数が約0.2から約0.4の範囲である、請求項2に記載のナノエマルジョン組成物。
【請求項9】
ナノエマルジョン組成物であって、
(i)複数のナノエマルジョン粒子であって、各ナノエマルジョン粒子が、
液体油と1または複数の無機ナノ粒子との混合物を含む疎水性コアと、
1または複数の脂質と、
必要に応じて、1または複数の界面活性剤とを含む、複数のナノエマルジョン粒子と、
(ii)前記ナノエマルジョン粒子と複合化された生物活性剤と、を含むナノエマルジョン組成物。
【請求項10】
前記生物活性剤がRNAまたはDNAである、請求項9に記載のナノエマルジョン組成物。
【請求項11】
前記生物活性剤が、mRNA、腫瘍溶解性ウイルスRNA、レプリコンRNA、または非コードRNAである、請求項10に記載のナノエマルジョン組成物。
【請求項12】
前記生物活性剤が、抗原または抗原に対する抗体をコードするRNAであり、前記抗原が、細菌感染/疾患、ウイルス感染/疾患、原虫疾患、非伝染性疾患、癌または自己免疫疾患に由来する、請求項10に記載のナノエマルジョン組成物。
【請求項13】
前記抗原がRNAウイルスに由来する、請求項10に記載のナノエマルジョン組成物。
【請求項14】
前記RNAウイルスが、肝炎ウイルス、コロナウイルス、蚊媒介ウイルスおよびHIVウイルスからなる群から選択される、請求項13に記載のナノエマルジョン組成物。
【請求項15】
窒素とリン酸(N:P)のモル比によって特徴付けられる、前記ナノエマルジョン粒子と前記生物活性剤のモル比が、約1:1から約150:1の範囲である、請求項10に記載のナノエマルジョン組成物。
【請求項16】
前記生物活性剤がアジュバントである、請求項9に記載のナノエマルジョン組成物。
【請求項17】
前記生物活性剤が、TLRアゴニスト、RIG-Iアゴニスト、サポニン、ペプチド、タンパク質、炭水化物、炭水化物ポリマー、コンジュゲート炭水化物、全ウイルス粒子、ウイルス様粒子、ウイルス断片、細胞断片、またはそれらの組み合わせである、請求項10に記載のナノエマルジョン組成物。
【請求項18】
請求項9に記載のナノエマルジョン組成物と、薬学的に許容され得る担体とを含む医薬組成物。
【請求項19】
請求項9に記載のナノエマルジョン組成物と、必要に応じて1または複数のワクチンアジュバントとを含むワクチン送達系であって、前記生物活性剤が抗原または抗原をコードする核酸分子である、ワクチン送達系。
【請求項20】
生物活性剤を対象に送達するための方法であって、
請求項9に記載のナノエマルジョン組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項21】
対象において免疫応答を生じさせるための方法であって、
治療有効量の請求項9に記載のナノエマルジョン組成物と、必要に応じてアジュバントとを前記対象に投与することであって、前記生物活性剤が抗原または抗原をコードする核酸分子であること、を含む方法。
【請求項22】
対象の疾患を処置または予防する方法であって、
治療有効量の請求項9に記載のナノエマルジョン組成物と、必要に応じて薬学的に許容され得る担体とを対象に投与することを含む方法。
【請求項23】
対象における生物活性剤送達を画像化および/または追跡する方法であって、
請求項9に記載のナノエマルジョン組成物を前記対象に投与することであって、前記無機ナノ粒子が磁気共鳴画像法によって検出可能な材料を含有すること、および、
前記磁気共鳴画像法を用いて前記ナノエマルジョン組成物を検出すること、を含む方法。
【請求項24】
前記無機ナノ粒子が、酸化鉄、グルコン酸鉄、および/または硫酸鉄から形成される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ナノエマルジョン組成物を製造する方法であって、
(a)1または複数の無機ナノ粒子と、液体油と、1または複数の脂質と、必要に応じて疎水性界面活性剤とを混合し、それによって油相混合物を形成すること、および
(b)前記油相混合物を、必要に応じて親水性界面活性剤を含有する水溶液と混合して、ナノエマルジョン粒子を形成すること、および
(c)必要に応じて、前記ナノエマルジョン粒子を生物活性剤を含有する水溶液と混合し、それにより前記生物活性剤を前記ナノエマルジョン粒子と複合体化することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年3月23日に出願された米国仮出願第62/993,307号および2020年7月21日に出願された米国仮出願第63/054,754号に基づく優先権を主張し、これらは両方ともその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、RNAの送達に関する。より詳細には、本発明は、粒子内部の無機レポーターの使用によって画像化される能力を併せて有する薬学的に許容され得るナノ粒子によるRNAのナノ粒子媒介送達に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
RNAワクチンおよび治療薬は、ワクチン学および遺伝子治療において関心が高まっている分野である。ワクチンプラットフォームの基礎としての核酸コード化抗原の使用には、精製は比較的合理化されており、RNA構築物は、DNA合成技術と、これに続くRNA転写およびキャッピングを用いて数日で構築することができる、という多くの利点がある。これにより、新たな病原体の脅威への迅速な応答、広まっている新しい株に適応するための製造の戦略変更、または様々な疾患に対する治療的介入の個別化が可能になる。これらのワクチンおよび治療法は非常に有望であるが、場合によっては、ヒト試験において完全な有効性を欠いており(タンパク質ワクチンのように)、適応免疫応答を誘導する能力を増強するための方法が必要とされる場合がある。
【0004】
いくつかのアプローチが試験され、開発中であるが、さらなる改良された核酸ワクチンおよび治療薬が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
端的に言えば、本開示は、RNAに結合し、処置を必要とする対象にRNAを送達する無機化合物系のナノ粒子を提供する。この系は、1)RNAが単独で与えられる場合、またはナノ構造脂質担体などの他の担体技術を使用する場合よりもはるかに効率的にRNAが送達される、2)ナノ粒子が、RNAを安定化し、RNAを分解から保護するカチオン性脂質を含有する、3)ナノ粒子が、体内の粒子の画像化および追跡を可能にするレポーター要素を有する、という多くの利点を有する。
【0006】
本発明の一態様は、複数のナノエマルジョン粒子を含むナノエマルジョン組成物に関する。各ナノエマルジョン粒子は、
液体油と1または複数の無機ナノ粒子との混合物を含む疎水性コアと、
1または複数の脂質(カチオン性脂質など)と、
必要に応じて、1または複数の界面活性剤と、を含む。
【0007】
本発明の一態様は、(i)複数のナノエマルジョン粒子と、(ii)ナノエマルジョン粒子と複合体化した生物活性剤とを含むナノエマルジョン組成物に関する。各ナノエマルジョン粒子は、
液体油と1または複数の無機ナノ粒子との混合物を含む疎水性コアと、
1または複数の脂質(カチオン性脂質など)と、
必要に応じて、1または複数の界面活性剤と、含む。
【0008】
本発明の別の態様は、本明細書に記載のナノエマルジョン粒子および生物活性剤を含むナノエマルジョン組成物と、必要に応じて、薬学的に許容され得る担体または賦形剤と、を含む医薬組成物に関する。
【0009】
本発明の別の態様は、本明細書に記載のナノエマルジョン粒子および生物活性剤を含むナノエマルジョン組成物と、必要に応じて1または複数のワクチンアジュバントとを含むワクチン送達系であって、生物活性剤が抗原または抗原をコードする核酸分子である、ワクチン送達系に関する。
【0010】
本発明の別の態様は、生物活性剤を対象に送達するための方法であって、本明細書に記載のナノエマルジョン粒子および生物活性剤を含むナノエマルジョン組成物を対象に投与することを含む、方法に関する。
【0011】
本発明の別の態様は、対象において免疫応答を生じさせるための方法であって、本明細書に記載のナノエマルジョン粒子および生物活性剤を含むナノエマルジョン組成物と、必要に応じてアジュバントとを対象に投与することであって、生物活性剤が抗原または抗原をコードする核酸分子であること、を含む方法に関する。
【0012】
本発明の別の態様は、対象の感染症または疾患を処置または予防する方法であって、治療有効量の本明細書に記載のナノエマルジョン粒子および生物活性剤を含むナノエマルジョン組成物と、必要に応じて薬学的に許容され得る担体とを対象に投与することを含む方法に関する。
【0013】
本発明の別の態様は、対象における生物活性剤送達を画像化および/または追跡する方法であって、
本明細書に記載のナノエマルジョン粒子および生物活性剤を含むナノエマルジョン組成物を対象に投与することであって、無機ナノ粒子が磁気共鳴画像法によって検出可能な材料を含有すること、および、
磁気共鳴画像法を用いて前記ナノエマルジョン組成物を検出すること、を含む方法に関する。
【0014】
本発明の別の態様は、ナノエマルジョン組成物を製造する方法であって、
(a)1または複数の無機ナノ粒子と、液体油と、1または複数の脂質(カチオン性脂質など)と、必要に応じて疎水性界面活性剤とを混合し、それによって油相混合物を形成すること、および
(b)油相混合物を、必要に応じて親水性界面活性剤を含有する水溶液と混合して、ナノエマルジョン粒子を形成すること、および
(c)必要に応じて、ナノエマルジョン粒子を生物活性剤を含有する水溶液と混合し、それにより生物活性剤をナノエマルジョン粒子と複合体化することを含む、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1A~
図1Cは、様々な温度における3つの例示的な脂質無機ナノ粒子(LION)製剤の粒径および安定性を時間の関数として示す。
図1Aは、実施例1で生成された79-004と表示されたLIONを示す。
図1Bは、実施例1で製造された79-006-Aと表示されたLIONを示す。
図1Cは、実施例1で製造された79-006-Bと表示されたLIONを示す。
【0016】
【
図2】
図2は、裸の(製剤化されていない)RNAと比較して、15の窒素:リン酸(N:P)比でRNA分子と複合体化した例示的なLION製剤(実施例1で調製した、それぞれ79-004、79-006-A、79-006-Bおよび79-011と表示されるLION)のゲル電気泳動を示し、RNaseの作用からRNAを保護するLION製剤の能力を示している。
【0017】
【
図3-1】
図3Aは、LION製剤(実施例1で調製した、79-004と表示されるLION)を用いて製剤化されたrepRNAコードSEAPを筋肉内注射したC57BL/6マウスにおける長期間にわたるタンパク質発現を示す。
図3Bは、様々なSPIOサイズ(実施例1で調製した、それぞれ79-004、79-006-Aおよび79-006-Bと表示されるLION)を有する様々なLION製剤を用いて製剤化されたrepRNAコードSEAPを注射後数日間筋肉内注射したC57BL/6マウスにおけるタンパク質発現を示す。
図3Cは、LION製剤または対照としてのナノ構造脂質担体(NLC)を用いて製剤化されたrepRNAコードSEAPを筋肉内注射したC57BL/6マウスにおける、注射後数日間にわたるタンパク質発現を示す。
図3Dは、400ng/μlおよび40ng/μlのRNA複合体濃度でLION製剤を用いて製剤化されたrepRNAコードSEAPを筋肉内注射したC57BL/6マウスにおける、注射後数日にわたるタンパク質発現をそれぞれ示す。
図3Eは、LION製剤を(それぞれ0.5μg、2.5μgおよび12.5μg)用いて製剤化されたrepRNAコードSEAPを筋肉内注射したC57BL/6マウスにおけるタンパク質発現をN:P比の関数として示す。データを平均およびSEとして表示する。
【0018】
【
図4-1】
図4Aは、LION/repRNA複合体から(10、1、および0.1μgのsrRNAの投与量レベルで)発現された抗原が、C57BL/6マウスにおいてSARS-CoV-2の受容体結合ドメインに対する免疫応答を誘導したことを示す。
図4Bは、SPIOサイズが異なる様々なLION製剤(LION-10、LION-15、LION-25、LION-5)を用いて製剤化されたRepSARS-CoV2Sを筋肉内注射したC57BL/6マウスの血清中の、抗Spike酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定された抗S IgG濃度の結果を示す。データを平均およびSEとして表示し、1つの群につきn=5である。
図4Cは、様々なLION製剤を用いて、混合方向(RNAへのLIONの混合対LIONへのRNAの混合)および希釈剤(スクロース(Suc)使用対デキストロース(Dex)使用の1:200の希釈)を変えることによって製剤化されたRepSARS-CoV2Sを筋肉内注射したC57BL/6マウスの、筋肉内注射後14日目(各群の最初のバー)または21日目(各群の2番目のバー)における血清中の、抗SpikeELISAによって決定された抗S IgG濃度の結果を示す。データを平均およびSEとして表示し、1つの群につきn=5である。
【0019】
【0020】
【
図6-1】
図6Aは、動物のLION-抗体配列RNA複合体誘導ZIKV-117抗体を示す。免疫化の7日後に動物から採血した。
図6Bおよび
図6Cは、生理食塩水(
図6B)またはLIONを用いて製剤化されたBG505 SOSIP.664三量体をコードするrepRNA(
図6C)で筋肉内経路によって免疫化された成体雌妊娠ウサギの抗BG505 SOSIP.664IgG抗体の大きさおよび動態を示す。
図6Dおよび
図6Eは、生理食塩水(
図6D)またはLIONを用いて製剤化されたZIKV prM-E抗原をコードするrepRNA(
図6E)を筋肉内経路によって免疫化した成体雌妊娠ウサギの抗ZIKV E IgG抗体の大きさおよび動態を示す。1週目付近の網掛け領域は、ウサギが飼育された期間を示す。6週目と7週目の間の網掛け領域は、仔が送達された期間を示す。矢印は免疫化時点(0、4および11週目)を示す。
図6Fおよび
図6Gは、雌ウサギから仔ウサギへの抗SOSIP IgGの子宮内移行の評価の結果を示す。
図6Fは、送達時の仔ウサギにおける抗SOSIP IgG応答を示す。1つの処置群あたりそれぞれ同腹仔由来の最低2匹の仔ウサギを安楽死させて、子宮内抗体移入を評価した。
図6Gは、雌ウサギの抗体レベルと対応する仔ウサギとの間の正の相関(ピアソンr=0.94)を示すXYプロットを示す。
図6Hおよび
図6Iは、既存の母体抗体との関連におけるワクチン誘導性応答を示す。仔ウサギの血清抗SOSIP IgGレベルを、追加免疫の4週間後(仔を離乳した3週間後)に収集した。生理食塩水を投与されていない雌ウサギ由来の仔ウサギまたはLION+RNA-prM/Eを投与されている雌ウサギ由来の仔ウサギは、BG505 SOSIP.664に対する既存の母体抗体について陰性(-)としてグループ分けされる。LION+RNA-SOSIPまたはAddaVaxアジュバント添加組換えBG505 SOSIP.664を投与された雌ウサギ由来の仔ウサギは、BG505 SOSIP.664に対する既存の母体抗体について陽性(+)としてグループ分けされる。log10変換データに対して、通常の一元配置ANOVAおよびテューキーの多重比較検定を行った(ns=有意ではない)。
【0021】
【
図7】
図7は、インビトロでのrepRNA-CoV2Sのキャラクタリゼーションを示す。
図7Aは、c末端v5エピトープタグに融合したSARS-CoV-2単離体Wuhan-Hu-1(GenBank:MN908947.3)の21,536から25,384の位置に対応するS1ドメイン、S2ドメイン、膜貫通(TM)ドメインおよび細胞質(CD)ドメインを含むコドン最適化された全長スパイク(S)オープンリーディングフレームを、ベネズエラウマ脳炎ウイルスのTC-83株の4つの非構造タンパク質(nsP1-4)遺伝子をコードするアルファウイルスレプリコンにクローニングしたことを示す。
図7Bおよび
図7Cは、抗v5免疫蛍光法(
図7B)およびウエスタンブロット(
図7C)による、BHK細胞へのrepRNA-COV2Sのトランスフェクションの24時間後の細胞の分析結果を、免疫検出のために回復期のヒト血清または抗v5のいずれかを使用して示す。組換えSARS-CoV2スパイクタンパク質(rCoV2-Spike)およびrepRNA-GFPをそれぞれ陽性対照および陰性対照として使用した。
図7Bおよび
図7Cのデータは、2つの独立した実験の代表である。
【0022】
【
図8-1】
図8A~
図8Eは、repRNAの例示的な脂質無機ナノ粒子(LION)製剤を示す。
図8Aは、repRNAと混合した後の例示的なLIONおよびそのワクチン複合体の形成のグラフィック描写である。
図8Bは、4℃、25℃および42℃で貯蔵した後の、動的光散乱(DLS)によって測定したLION粒径の時間発展を示すグラフである。
図8Cは、LIONとrepRNAとを混合した後のサイズ分布のシフトによって複合体が形成されたことの裏付けを示すグラフである。
図8Dは、濃縮されたRNaseチャレンジ後の、LIONから抽出されたrepRNAの三連調製物のゲル電気泳動分析を示し、RNAseチャレンジ後の、用量が一致した裸のRNAの三連調製物と比較した実質的な保護を示す。
図8Eは、フェノール-クロロホルム処理によって抽出されたrepRNAのゲル電気泳動を示す。
図8Fは、複合体の粒径を示す。
図8B、
図8E、および
図8Fのデータは単一の実験から得られたものであるが、
図8Cおよび
図8Dのデータは3つの独立した実験の代表である。
図8B、
図8D、および
図8Fのデータは、3回のテクニカルレプリケートの平均±s.d.として示されている。
【0023】
【
図9-1】
図9A~
図9Fは、LION/repRNA-CoV2S複合体が、C57BL/6マウスにおいてTh1偏向抗体および中和抗体を誘導したことを示す。6~8週齢のC57BL/6マウス(n=5/群)に、10、1、または0.1μgのLION/repRNA-CoV2Sを筋肉内経路を介して投与した。初回免疫(prime immunization)の14日後、血清を採取した。
図9Aは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって測定された、C57BL/6マウスの血清中の抗S IgG濃度の結果を示す。
図9Bは、シュードウイルス(SARS-CoV-2 Wuhan-Hu-1シュードタイプ)中和アッセイによって測定した、C57BL/6マウスの血清中の50%阻害濃度(IC50)を示す。
図9Cおよび
図9Dは、ELISAによって求めた、C57BL/6マウスの血清中の抗S IgG1およびIgG2c濃度(
図9C)ならびにIgG2c:IgG1濃度比(
図9D)を示す。28日目に、マウスにブースター免疫を投与し、12日後に脾臓および肺を採取した。
図9Eおよび
図9Fは、Sタンパク質を包含し、11のアミノ酸が重複する15量体からなる10ペプチドプールで18時間刺激した後の、酵素結合免疫吸収スポット(ELISpot)によって測定した、脾臓細胞(
図9E)および肺細胞(
図9F)におけるIFN-γ応答の結果を示す。
図9A、
図9C、および
図9Dのデータは、3つの独立した実験の代表であるが、
図9B、
図9E、および
図9Fのデータは、単一の実験から得られたものであった。全てのデータは、個々の値ならびに平均±s.d.として表される(テューキーの多重比較検定を用いた一元配置ANOVAによって決定される場合、*p<0.05)。
【0024】
【
図10】
図10は、LION/repRNA-CoV2S複合体が高齢BALB/CマウスにおいてTh1偏向抗体を誘導したことを示す。2、8、または17月齢のBALB/Cマウス(n-5/群)に、筋肉内経路を介して10または1μgのLION/repRNA-CoV2Sを投与した。初回免疫の14日後、血清を採取した。
図10A、
図10Bおよび
図10Cは、ELISAによって求めた、高齢BALB/Cマウスの血清中の抗S IgG濃度(
図10A)、IgG1濃度およびIgG2a濃度(
図10B)、ならびにIgG2a:IgG1濃度比(
図10C)の結果を示す。17、8、および2ヶ月齢のBALB/Cのデータは単一の実験からのものであり、2ヶ月齢のBALB/Cのデータを第2の実験で再現した。全てのデータは、個々の値ならびに平均±s.d.として表される(17月齢動物と8月齢または2月齢動物のいずれかとの間のテューキーの多重比較試験を用いた一元配置ANOVAによって決定される場合、*p<0.05)。
【0025】
【
図11-1】
図11A~
図11Dは、単回用量のLION/repRNA-CoV2S複合体が、アカゲザルにおいて中和抗体応答を誘導したことを示す。
図11Aは、ピグテールマカクに250μg(n=3)または50μg(n=2)のrepRNA-CoV2-S複合体を筋肉内経路を介してワクチン接種し、10、14、28、および42日目に血液を採取した投与計画を示し、50μgの群は28日目に追加免疫ワクチン接種を受け、14日後に血液を採取した。
図11Bは、免疫前の採血によって確立されたベースラインに対して、免疫後の試料に対して行われた血清抗S IgG ELISAの結果を示す。
図11Cは、免疫前の採血によって確立されたベースラインに対する、シュードウイルス(SARS-CoV-2 Wuhan-Hu-1シュードタイプ)中和アッセイによって測定された各試料の平均50%阻害濃度(IC50)の結果を示す。
図11Dは、確認されたCOVID-19患者から採取した7人の回復期のヒト試料から得た血清と一緒に、28日目および42日目に、SARS-CoV2/WA/2020分離株に対する80%プラーク減少中和抗体価(PRNT
80)を測定したことを示す。実験は1回行った。
図11Bおよび
図11Cの各線は、個々の各動物を表す。
図11Dのデータは、個々の値ならびに平均±s.d.として報告されている(14日目および28日目に250μgの群を比較するスチューデントのt検定によって決定される場合、*p<0.05)。マン・ホイットニーU検定によって測定した場合、42日目の5匹全ての動物の平均PRNT
80力価と7人の回復期のヒトの血清中の力価との間に有意差(ns)はなかった。
【0026】
【
図12】
図12は、LION製剤を用いて製剤化されたrepRNA-SARS-CoV2Sを(それぞれ250μgおよび10μg用量レベルで)筋肉内注射したウサギにおける抗スパイクIgGレベルを示す。ウサギを筋肉内注射後に一定時間ごとに採血し、抗Spike ELISAによってIgG濃度をアッセイすることによってタンパク質発現を調べた。各点は、個々の動物から得られたデータを表す。データを平均およびSEMとして表示し、1つの群につきn=4である。
【0027】
【
図13】
図13Aは、LION製剤と複合体化した2.5μgのrepRNA-RSVを筋肉内注射したC57Bl/6マウスおよびBALB/cマウスにおける抗FIgGレベルを示す。
図13Bは、LION製剤と複合体化した2.5μgのrepRNA-RSVを筋肉内注射したC57Bl/6マウスおよびBALB/cマウスにおける抗G(A2)IgGレベルを示す。筋肉内注射の28日後に血液を採取し、血清を調製し、ELISAによって評価した。括弧内にレプリコン番号(645または646)を示す。各点は個々の動物から得られたデータを表し、ひげは最小値から最大値を表し、ボックスは四分位範囲を表し、水平バーは中央値を表す。
【0028】
【
図14】
図14A~
図14Bは、RNaseチャレンジからの保護をもたらしたLION製剤へのPAMPの結合を示す。
図14Aは、RNAゲル上で泳動し、遊離RNAについて評価した、様々なN:P複合体化比(それぞれ0.04、0.2、1、5、および25)でのPAMP-LION複合体のゲル電気泳動分析を示す。
図14Bは、裸のPAMP(製剤化されていないPAMP)と比較した、RNase Aによるチャレンジ後のPAMP-LION複合体のゲル電気泳動分析を示す。RNAをLIONから抽出し、アガロースゲルに流してRNA分解を評価した。
【0029】
【
図15】
図15は、PAMP-LION複合体による、上清中のSEAP活性およびルシフェラーゼ活性によってそれぞれ測定されたIFN-βプロモーターおよびIFIT2の活性化をN:P比の関数として示す。破線は、PAMP単独の活性化レベルを表す。
【0030】
【
図16-1】
図16Aおよび
図16Bは、製剤化されていないRNAと比較した、上清中のSEAP活性およびルシフェラーゼ活性によってそれぞれ測定された、PAMP-LION製剤またはRiboxxim-LION製剤によるIFN-βプロモーター(
図16A)およびIFIT2(
図16B)の活性化を示す。破線は、培地対照ウェルのOD
635読み取り値を表す。
図16Cは、製剤化されていないRiboxximと比較した、Riboxxim-LION製剤によるIFIT2の活性化を、Riboxxim用量レベルの関数として示す。
図16Dは、ナイーブ対照と比較した処置マウスの鼻腔における自然免疫遺伝子の用量依存的誘導を示す。
図16Eは、処置マウスの肺における自然免疫遺伝子の活性化を示す。
図16Fは、PAMP:LION製剤を3日間連続して鼻腔内投与した場合、マウスが体重を維持したことを示す。
【0031】
【
図17】
図17は、SPIO(Fe-LION)またはTOPO被覆オキシ水酸化アルミニウムナノ粒子(Al-LION)をLION製剤のコアとして使用した、nLucをコードするレプリコンRNAとの例示的RNA:LION複合体からのインビトロタンパク質発現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細な説明
本開示は、RNAの担体としての脂質無機ナノ粒子(LION)の使用を提供する。具体的には、緩衝液中の荷電コーティングを有する脂質マトリックス中の固体無機コアが開示される。これらのナノ粒子の使用には、RNAを粒子に依存することなく複合体化することができ、粒子を、例えば、MRIまたは他のイメージング技術に使用可能な磁気信号を有するように設計することができる、という多くの利点がある。RNAは粒子によって保護され、それらは、細胞または生物に与えられたときに保護されたRNAから抗原を含む多数の種類のタンパク質の発現を駆動する。
【0033】
本発明の別の態様は、複数のナノエマルジョン粒子を含むナノエマルジョン組成物に関する。各各ナノエマルジョン粒子は、
液体油と1または複数の無機ナノ粒子との混合物を含む疎水性コアと、
1または複数の脂質(例えば、カチオン性脂質)と、
必要に応じて、1または複数の界面活性剤と、を含む。
【0034】
本発明の別の態様は、(i)複数のナノエマルジョン粒子と、(ii)ナノエマルジョン粒子と複合体化した生物活性剤とを含むナノエマルジョン組成物に関する。各ナノエマルジョン粒子は、
液体油と1または複数の無機ナノ粒子との混合物を含む疎水性コアと、
1または複数の脂質(例えば、カチオン性脂質)と、
必要に応じて、1または複数の界面活性剤と、を含む。
ナノエマルジョン粒子
【0035】
ナノエマルジョン粒子は、液体油と1または複数の無機固体ナノ粒子との混合物を含む疎水性コアを有する。ナノエマルジョン粒子は、本明細書では脂質無機ナノ粒子(LION)とも呼ばれ得る。
【0036】
液体油は、1または複数の無機ナノ粒子と混合されて疎水性コアを形成する。液体油は、典型的には代謝可能である。適切な液体油は、植物油、動物油、または合成的に調製された油であり得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、液体油は魚油である。いくつかの実施形態では、液体油は、天然または合成テルペノイドである。
【0038】
いくつかの実施形態では、液体油は、スクアレン、トリグリセリド(カプリン酸/カプリル酸トリグリセリドまたはミリスチン酸トリグリセリドなど)、ビタミンE、ラウロイルポリオキシルグリセリド、モノアシルグリセロール、大豆レシチン、ヒマワリ油、大豆油、オリーブ油、ブドウ種子油、またはそれらの組み合わせである。一実施形態では、液体油は、スクアレン、トリグリセリド(カプリン酸/カプリル酸トリグリセリドまたはミリスチン酸トリグリセリドなど)、ビタミンE、ラウロイルポリオキシルグリセリド、モノアシルグリセロール、大豆レシチン、またはそれらの組み合わせである。一実施形態では、液体油は、スクアレン、トリグリセリド(カプリン酸/カプリル酸トリグリセリドまたはミリスチン酸トリグリセリドなど)、ヒマワリ油、大豆油、オリーブ油、ブドウ種子油、またはそれらの組み合わせである。
【0039】
いくつかの実施形態では、液体油は、スクアレン(天然または合成のいずれか)であり、必要に応じて、上記の液体油のいずれかと組み合わせてもよい。
【0040】
無機ナノ粒子は、1または複数の同じまたは異なる金属(遷移金属を含む任意の金属)から、例えば、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物および金属リン酸塩から形成され得る。例としては、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化鉄(Fe3O4、Fe2O3、FeO、またはそれらの組み合わせ)、酸化アルミニウム(Al2O3)、オキシ水酸化アルミニウム(AlO(OH))、ヒドロキシリン酸アルミニウム(Al(OH)x(PO4)y)、リン酸カルシウム(Ca3(PO4)2)、カルシウムヒドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)、グルコン酸鉄または硫酸鉄が挙げられる。
【0041】
いくつかの実施形態では、無機固体ナノ粒子は、遷移金属酸化物などの金属酸化物である。一実施形態では、無機固体ナノ粒子は、酸化鉄、例えばマグネタイト(Fe3O4)、マグヘマイト(γ-Fe2O3)、ウスタイト(FeO)、ヘマタイト(α-Fe2O3)、またはそれらの組み合わせである。
【0042】
いくつかの実施形態では、無機固体ナノ粒子は、水酸化アルミニウムまたはオキシ水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物である。
【0043】
無機固体ナノ粒子は、体内で得られたナノエマルジョン粒子を画像化および追跡することを可能にするために、画像化方法によって検出可能なレポーター要素を含有し得る。例えば、無機固体ナノ粒子は、常磁性、超常磁性、フェリ磁性または強磁性化合物などの磁気共鳴画像法(MRI)によって検出可能なレポーター要素を含有し得る。MRI検出可能な例示的な無機固体ナノ粒子材料は、酸化鉄、グルコン酸鉄および硫酸鉄である。
【0044】
無機固体ナノ粒子は、典型的には、約3nmから約50nmの範囲の平均直径(数加重平均直径)を有する。例えば、無機固体ナノ粒子は、約5nm、約10nm、約15nm、約20nm、約25nm、約30nm、約35nm、約40nm、約45nm、または約50nmの平均直径を有し得る。
【0045】
無機固体ナノ粒子は、液体油と混合する前に表面修飾されていてもよい。例えば、無機固体ナノ粒子の表面が親水性である場合、無機固体ナノ粒子を疎水性分子(または界面活性剤)でコーティングして、ナノエマルジョン粒子の「油」相中の液体油との無機固体ナノ粒子の混和性を促進することができる。ホスフェート末端脂質(例えば、ホスファチジル化脂質)、リン末端界面活性剤、カルボキシレート末端界面活性剤、サルフェート末端界面活性剤またはアミン末端界面活性剤を無機固体ナノ粒子の表面修飾に使用することができる。典型的なホスフェート末端脂質またはリン末端界面活性剤は、トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)またはジステアリルホスファチジン酸(DSPA)である。典型的なサルフェート末端界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が挙げられるが、これに限定されない。典型的なカルボキシレート末端界面活性剤としては、オレイン酸が挙げられる。典型的なアミン末端界面活性剤としては、オレイルアミンが挙げられる。
【0046】
一実施形態では、無機固体ナノ粒子は、酸化鉄などの金属酸化物であり、オレイン酸、オレイルアミン、SDS、DSPA、またはTOPOなどの界面活性剤を使用して無機固体ナノ粒子をコーティングした後、液体油と混合して疎水性コアを形成する。
【0047】
一実施形態では、無機固体ナノ粒子は、水酸化アルミニウムまたはオキシ水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物であり、オレイン酸、オレイルアミン、SDS、TOPOまたはDSPAなどのホスフェート末端脂質または界面活性剤を使用して無機固体ナノ粒子をコーティングした後、液体油と混合して疎水性コアを形成する。
【0048】
ナノエマルジョン粒子を形成するために使用される脂質は、カチオン性脂質、アニオン性脂質、中性脂質、またはそれらの混合物であり得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、使用される脂質はカチオン性脂質である。例えば、負に荷電した生物活性剤(DNAまたはRNAなど)との好ましい相互作用を有することができる正に荷電した脂質をナノエマルジョン組成物に使用することができる。好適なカチオン性脂質として、1,2-ジオレオイルオキシ-3-(トリメチルアンモニウム)プロパン(DOTAP)、3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール(DCコレステロール)、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDA)、1,2-ジミリストイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DMTAP)、ジパルミトイル(C16:0)トリメチルアンモニウムプロパン(DPTAP)、ジステアロイルトリメチルアンモニウムプロパン(DSTAP)、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N,N-ジオレオイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DOEPC)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DODAP)、および、1,2-ジリノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,1’-((2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチル)アザンジイル)ビス(ドデカン-2-オール)(C12-200)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。典型的なカチオン性脂質は、DOTAPである。
【0050】
適切な脂質の他の例としては、ホスファチジルコリン(PC)、例えば、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルコリン(POPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DMPC)など、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、例えば、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DSPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)など、ホスファチジルグリセロール(PG)、および上記の脂質のいずれかのPEG化バージョンを含むPEG化脂質(例えば、DSPE-PEG)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
ナノエマルジョン粒子は、疎水性界面活性剤または親水性界面活性剤であり得る、1または複数の界面活性剤をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、ナノエマルジョン粒子は、疎水性界面活性剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、ナノエマルジョン粒子は、親水性界面活性剤をさらに含む。一実施形態では、ナノエマルジョン粒子は、疎水性界面活性剤および親水性界面活性剤をさらに含む。
【0052】
適切な疎水性界面活性剤としては、10またはそれ未満、例えば、5またはそれ未満、1から5、または4から5の親水性-親油性バランス(HLB)値を有するものが挙げられる。例示的な疎水性界面活性剤は、ソルビタンエステル(ソルビタンモノエステルまたはソルビタントリメスターなど)である。例えば、疎水性界面活性剤は、1から5または4から5のHLB値を有するソルビタンエステルであり得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、疎水性界面活性剤は、ソルビタンモノエステルまたはソルビタントリエステルである。例示的なソルビタンモノエステルとしては、ソルビタンモノステアレートおよびソルビタンモノオレエートが挙げられる。例示的なソルビタントリエステルとしては、ソルビタントリステアレートおよびソルビタントリオレエートが挙げられる。
【0054】
適切な親水性界面活性剤としては、これらのポリエチレンオキシド系界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(ポリソルベート)が挙げられる。いくつかの実施形態では、親水性界面活性剤はポリソルベートである。例示的なポリソルベートは、ポリソルベート80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、またはTween(登録商標)80)、ポリソルベート60(モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、またはTween(登録商標)60)、ポリソルベート40(ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテートまたはTween(登録商標)40)およびポリソルベート20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、またはTween(登録商標)20)である。一実施形態では、親水性界面活性剤はポリソルベート80である。
【0055】
ナノエマルジョン粒子は、約0.1:1から約20:1、約0.5:1から約12:1、約0.5:1から約9:1、約0.5:1から約5:1、約0.5:1から約3:1、または約0.5:1から約1:1の範囲の油と界面活性剤のモル比を有することができる。
【0056】
ナノエマルジョン粒子は、約0.1:1から約2:1、約0.2:1から約1.5:1、約0.3:1から約1:1、約0.5:1から約1:1、または約0.6:1から約1:1の範囲の親水性界面活性剤と脂質(例えば、カチオン性脂質)の比を有することができる。
【0057】
ナノエマルジョン粒子は、約0.1:1から約5:1、約0.2:1から約3:1、約0.3:1から約2:1、約0.5:1から約2:1、または約1:1から約2:1の範囲の疎水性界面活性剤と脂質(例えば、カチオン性脂質)の比を有することができる。
【0058】
ナノエマルジョン粒子は、約0.2%から約40%w/vの液体油、約0.001%から約10%w/vの無機固体ナノ粒子、約0.2%から約10%w/vの脂質(例えば、カチオン性脂質)、約0.25%から約5%w/vの疎水性界面活性剤(例えば、ソルビタンエステル)、および約0.5%から約10%w/vの親水性界面活性剤を含むことができる。
【0059】
ある特定の実施形態では、ナノエマルジョン粒子は、
ホスフェート末端脂質、リン末端界面活性剤、カルボキシレート末端界面活性剤、サルフェート末端界面活性剤、またはアミン末端界面活性剤で必要に応じてコーティングされた少なくとも1つの金属酸化物ナノ粒子を含有する1または複数の無機ナノ粒子と、天然または合成スクアレンを含有する液体油との混合物を含む疎水性コアと、
カチオン性脂質DOTAPと、
ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエートおよびソルビタントリオレエートからなる群から選択されるソルビタンエステルを含む疎水性界面活性剤と、
ポリソルベートを含む親水性界面活性剤と、を含む。
【0060】
一実施形態では、ナノエマルジョン粒子は、
酸化鉄ナノ粒子を含有する1または複数の無機ナノ粒子と天然または合成スクアレンを含有する液体油と混合物を含む疎水性コアと、
カチオン性脂質DOTAPと、ソルビタンモノステアレートを含む疎水性界面活性剤と、
ポリソルベート80を含む親水性界面活性剤と、
を含む。
【0061】
このLION組成物において、LION粒子は、約0.2%w/vから約40%w/vのスクアレン、約0.001%w/vから約10%w/vの酸化鉄ナノ粒子、約0.2%w/vから約10%w/vのDOTAP、約0.25%w/vから約5%w/vのソルビタンモノステアレート、および約0.5%w/vから約10%w/vのポリソルベート80を含むことができる。
【0062】
一実施形態では、LION粒子は、約2%w/vから約6%w/vのスクアレン、約0.01%w/vから約1%w/vの酸化鉄ナノ粒子、約0.2%w/vから約1%w/vのDOTAP、約0.25%w/vから約1%w/vのソルビタンモノステアレート、および約0.5%w/vから約5%w/vのポリソルベート80を含む。
【0063】
特定の実施形態では、ナノエマルジョン粒子は、
ホスフェート末端脂質、リン末端界面活性剤、カルボキシレート末端界面活性剤、サルフェート末端界面活性剤、またはアミン末端界面活性剤で必要に応じてコーティングされた少なくとも1つの金属水酸化物またはオキシ水酸化物ナノ粒子を含有する1または複数の無機ナノ粒子と、天然または合成スクアレンを含有する液体油との混合物を含む疎水性コアと、DOTAPを含むカチオン性脂質と、
ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエートおよびソルビタントリオレエートからなる群から選択されるソルビタンエステルを含む疎水性界面活性剤と、
ポリソルベートを含む親水性界面活性剤と、
を含む。
【0064】
一実施形態では、ナノエマルジョン粒子は、
必要に応じてTOPOでコーティングされた、水酸化アルミニウムまたはオキシ水酸化アルミニウムナノ粒子を含有する1または複数の無機ナノ粒子と、天然または合成スクアレンを含有する液体油との混合物を含む疎水性コアと、
カチオン性脂質DOTAPと、ソルビタンモノステアレートを含む疎水性界面活性剤と、
ポリソルベート80を含む親水性界面活性剤と、
を含む。
【0065】
このLION組成物において、LION粒子は、約0.2%w/vから約40%w/vのスクアレン、約0.001%w/vから約10%w/vの水酸化アルミニウムまたはオキシ水酸化アルミニウムナノ粒子、約0.2%w/vから約10%w/vのDOTAP、約0.25%w/vから約5%w/vのソルビタンモノステアレート、および約0.5%w/vから約10%w/vのポリソルベート80を含むことができる。
【0066】
一実施形態では、LION粒子は、約2%w/vから約6%w/vのスクアレン、約0.01%w/vから約1%w/vの水酸化アルミニウムまたはオキシ水酸化アルミニウムナノ粒子、約0.2%w/vから約1%w/vのDOTAP、約0.25%w/vから約1%w/vのソルビタンモノステアレート、および約0.5%w/vから約5%w/vのポリソルベート80を含む。
【0067】
ナノ粒子およびナノエマルジョンは文献に記載されており、この用語は本明細書では1000ナノメートル未満のサイズを有する粒子を指すために使用される。
【0068】
ナノエマルジョン粒子(LION)は、典型的には、約20nmから約200nmの範囲の平均直径(動的光散乱によって測定されるz平均流体力学的直径)を有する。いくつかの実施形態では、LION粒子のz平均直径は、約20nmから約150nm、約20nmから約100nm、約20nmから約80nm、約20nmから約60nmの範囲である。いくつかの実施形態では、LION粒子のz平均直径は、約40nmから約200nm、約40nmから約150nm、約40nmから約100nm、約40nmから約90nm、約40nmから約80nm、または約40nmから約60nmの範囲である。一実施形態では、LION粒子のz平均直径は、約40nmから約80nmである。一実施形態では、LION粒子のz平均直径は、約40nmから約60nmである。
【0069】
ナノエマルジョン粒子(LION)の平均多分散指数(PDI)は、約0.1から約0.5の範囲であり得る。例えば、LION粒子の平均PDIは、約0.2から約0.5、約0.1から約0.4、約0.2から約0.4、約0.2から約0.3、または約0.1から約0.3の範囲であり得る。
LION-生物活性剤複合体
【0070】
ナノエマルジョン組成物は、ナノエマルジョン粒子(LION)と会合/複合体化した生物活性剤をさらに含有することができる。生物活性剤は、非共有結合相互作用を介して、または可逆的共有結合相互作用を介してナノエマルジョン粒子と会合/複合体化され得る。
【0071】
生物活性剤は、タンパク質またはタンパク質をコードする生物活性剤であり得る。例えば、生物活性剤は、タンパク質抗原またはタンパク質抗原をコードする生物活性剤であり得る。抗原は、感染性病原体および/または感染症、癌、もしくは自己免疫疾患に関連するエピトープ、生体分子、細胞もしくは組織に由来するか、またはそれらと免疫学的に交差反応性であり得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、生物活性剤は、RNAまたはDNAなどの核酸である。自然免疫応答を調節するRNA、タンパク質または抗原をコードするRNA、サイレンシングRNA、マイクロRNA、tRNA、自己複製RNAなどの様々なRNAを送達のためにLION粒子と会合することができる。
【0073】
一実施形態では、生物活性剤は、mRNAである。一実施形態では、生物活性剤は、腫瘍溶解性ウイルスRNAである。一実施形態では、生物活性剤は、レプリコンRNAである。
[0100] 特定の実施形態では、生物活性剤は、抗原または抗体をコードするRNAである。抗原は、細菌性疾患、ウイルス性疾患、原虫性疾患、非伝染性疾患、癌、または自己免疫疾患に由来し得る。特定の実施形態では、抗原は、RNAウイルス、例えば、肝炎ウイルス、コロナウイルス、蚊媒介ウイルス(例えば、ベネズエラウマ脳炎(VEE)ウイルス、またはZIKVウイルスなどのフラビウイルス)、またはHIVウイルスに由来する。特定の実施形態では、抗原は、MERSウイルスおよびSARSウイルス(SARS-CoV-2など)からなる群より選択されるコロナウイルスに由来する。
【0074】
特定の実施形態では、生物活性剤は、非コードRNAである。
【0075】
生物活性剤は、アジュバントでもあり得る。好適なアジュバントとして、TLRアゴニスト、RIG-Iアゴニスト、サポニン、ペプチド、タンパク質、炭水化物、炭水化物ポリマー、コンジュゲート炭水化物、全ウイルス粒子、ウイルス様粒子、ウイルス断片、細胞断片、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0076】
特定の実施形態では、アジュバントは、TLRアゴニストまたはRIG-Iアゴニストである。例示的なTLRアゴニストとしては、TLR2、TLR3、TLR4、TLR7、TLR8またはTLR9アゴニストが挙げられる。典型的なTLRアゴニストは、RIBOXXOL、ポリ(LC)またはHiltonol(登録商標)などのTLR3アゴニストである。
【0077】
特定の実施形態では、生物活性剤は、二本鎖RNAである。
【0078】
特定の実施形態では、生物活性剤は、免疫刺激薬であるRNAである。免疫刺激薬は、TLR3アゴニスト(例えば、TLR2、TLR3、TLR4、TLR7、TLR8またはTLR9アゴニスト)またはRIG-Iアゴニスト(例えば、PAMP)であり得る。典型的なTLRアゴニストは、RIBOXXOL、ポリ(LC)またはHiltonol(登録商標)などのTLR3アゴニストである。
【0079】
抗原としてのRNAの送達の代替として、またはそれに加えて、組み合わせを使用することができ、例えば、自然免疫応答を刺激するRNA、または腫瘍溶解性ウイルスもしくは生弱毒化ウイルスを発現するRNAと組み合わせたRNA抗原を使用することができる。
【0080】
特定の実施形態では、ナノエマルジョン組成物中の生物活性剤は、RNAにコードされた抗原と、自然免疫応答を刺激することができるか、または腫瘍溶解性ウイルスもしくは生弱毒化ウイルスを発現することができる別のRNAとの組み合わせを含むことができる。あるいは、RNAコード抗原を含有するナノエマルジョン組成物は、自然免疫応答を刺激することができるか、または腫瘍溶解性ウイルスもしくは弱毒生ウイルスを発現することができる別のRNAを含有する製剤と組み合わせることができる。
【0081】
ナノエマルジョン組成物において、(i)ナノエマルジョン粒子(LION)と(ii)生物活性剤のモル比は、窒素とリン酸のモル比によって特徴付けることができ、そのモル比は、約0.01:1から約1000:1、例えば、約0.2:1から約500:1、約0.5:1から約150:1、約1:1から約150:1、約1:1から約125:1、約1:1から約100:1、約1:1から約50:1、約1:1から約50:1、約5:1から約50:1、約5:1から約25:1、または約10:1から約20:1の範囲であり得る。ナノエマルジョン粒子(LION)と生物活性剤のモル比は、生物活性剤の送達効率を増加させ、生物活性剤担持ナノエマルジョン組成物が抗原に対する免疫応答を誘発する能力を増加させ、生物活性剤担持ナノエマルジョン組成物が対象において抗原に対する抗体力価の産生を誘発する能力を増加させるように選択することができる。特定の実施形態では、窒素とリン酸(N:P)のモル比によって特徴付けられる、ナノエマルジョン粒子(LION)と生物活性剤のモル比は、約1:1から約150:1、約5:1から約25:1、または約10:1から約20:1の範囲である。一実施形態では、ナノエマルジョン組成物のN:Pモル比は約15:1である。
【0082】
生物活性剤と複合体化することにより、ナノエマルジョン組成物は生物活性剤を細胞に送達することができる。細胞は、必要とする対象に存在し得る。例えば、生物活性剤がタンパク質抗原であるか、またはタンパク質抗原をコードする場合、生物活性剤を担持するナノエマルジョン組成物は、抗原に対する免疫応答を対象において誘発することができる。ナノエマルジョン組成物は、対象において抗原に対する抗体価を誘発することによって、例えば、対象において中和抗体価を誘導することによって、それをなすことができる。
【0083】
一実施形態では、LIONを含有するナノエマルジョン組成物は、有効量で対象に投与された場合、生物活性剤がLIONなしで対象に投与された場合に誘発される免疫応答と同じか、またはそれを超える抗原に対する免疫応答を誘発することができる。
【0084】
理論に束縛されるものではないが、ナノエマルジョン組成物中の疎水性界面活性剤は、ナノエマルジョン組成物が生物活性剤を細胞に送達する能力を増加させるか、または生物活性剤を担持するナノエマルジョン組成物が抗原に対する対象における免疫応答を誘発する能力を増加させるのに寄与し得る(生物活性剤がタンパク質抗原であるか、またはタンパク質抗原をコードする場合)。例えば、ナノエマルジョン組成物中の疎水性界面活性剤は、生物活性剤を担持するナノエマルジョン組成物の能力の増加に寄与し得る。
【0085】
一実施形態では、疎水性界面活性剤はソルビタンエステルであり、同じナノエマルジョン組成物であるが、ソルビタンエステル疎水性界面活性剤を含まないものと比較して、ナノエマルジョン組成物が生物活性剤を細胞(または対象)に送達する能力を増加させるのに十分な量で存在する。
【0086】
一実施形態では、疎水性界面活性剤はソルビタンエステルであり、同じナノエマルジョン組成物であるが、ソルビタンエステル疎水性界面活性剤を含まないものと比較して、生物活性剤を担持するナノエマルジョン組成物が抗原に対する免疫応答を誘発する能力を増加させるのに十分な量で存在する。
【0087】
一実施形態では、疎水性界面活性剤はソルビタンエステルであり、対象に有効量を投与した場合、ナノエマルジョン組成物は、同じナノエマルジョン組成物(ただしソルビタンエステル疎水性界面活性剤を含まない)を対象に投与した場合に誘導される抗体力価よりも高いレベルで抗原に対する抗体力価を誘導する。
【0088】
一実施形態では、疎水性界面活性剤はソルビタンエステルであり、対象に有効量を投与した場合、ナノエマルジョン組成物は、同じナノエマルジョン組成物(ただしソルビタンエステル疎水性界面活性剤を含まない)を対象に投与した場合に誘導される中和抗体力価よりも高いレベルで対象において中和抗体力価を誘導する。
ナノエマルジョン組成物の調製
【0089】
本発明の別の態様は、ナノエマルジョン組成物を製造する方法であって、
(a)1または複数の無機ナノ粒子と、液体油と、1または複数の脂質(例えば、カチオン性脂質)と、必要に応じて疎水性界面活性剤とを混合し、それによって油相混合物を形成すること、および
(b)油相混合物を、必要に応じて親水性界面活性剤を含有する水溶液と混合して、ナノエマルジョン粒子を形成すること
を含む方法に関する。
【0090】
方法は、工程(c)ナノエマルジョン粒子を生物活性剤を含有する水溶液と混合し、それにより生物活性剤をナノエマルジョン粒子と複合体化することをさらに含むことができる。
【0091】
生物活性剤は、非共有結合相互作用を介して、または可逆的共有結合相互作用を介してナノエマルジョン粒子と会合/複合体化され得る。
【0092】
ナノエマルジョン粒子を含むナノエマルジョン組成物に関する本発明の態様およびナノエマルジョン粒子と生物活性剤とを含むナノエマルジョン組成物に関する本発明の態様において上述した、ナノエマルジョン組成物、ナノエマルジョン粒子(液体油、無機ナノ粒子、カチオン性脂質などの脂質、疎水性界面活性剤、および親水性界面活性剤を含む)および生物活性剤に関する全ての上記記載および全ての実施形態は、本発明のこの態様に適用可能である。
【0093】
得られたナノエマルジョン組成物は、希釈形態または濃縮形態で調製することができる。
【0094】
特定の実施形態では、ナノエマルジョン組成物は、(任意の適切な緩衝液によって)約1から約200倍、例えば、約1から約100倍、約2から約50倍、約2から約30倍、約2から約20倍、約2から約10倍、約2から約5倍に希釈してもよい。一実施形態では、ナノエマルジョン組成物を2倍に希釈する。
【0095】
特定の実施形態では、ナノエマルジョン組成物は、約1から約100倍、例えば、約2から約50倍、約2から約30倍、約2から約20倍、約2から約10倍、約2から約5倍に濃縮してもよい。
【0096】
ナノエマルジョン組成物は、少なくとも約100μg/mlの生物活性剤(例えば、RNAまたはDNAなどの核酸)の負荷容量を有することができる。
【0097】
ナノエマルジョン組成物中の生物活性剤(例えば、RNAまたはDNAなどの核酸)の投与量レベルは、約0.001μg/mlから約1000μg/ml、例えば、約0.002μg/mlから約500μg/ml、約1μg/mlから約500μg/ml、約2μg/mlから約400μg/ml、約40μg/mlから約400μg/ml、または約10μg/mlから約250μg/mlの範囲であり得る。
ナノエマルジョン組成物の使用
【0098】
本発明の様々な態様はまた、例えば、医薬組成物の形、ワクチン送達系の形、生物活性剤を細胞または対象に送達し、対象において免疫応答を生じさせ、必要とする対象を処置する形、といった形での、ナノエマルジョン粒子および生物活性剤を含むナノエマルジョン組成物の使用に関する。
【0099】
一態様では、本発明は、本明細書に記載のナノエマルジョン粒子および生物活性剤を含むナノエマルジョン組成物を含む医薬組成物を提供する。必要に応じて、本医薬組成物は、薬学的に許容され得る担体または賦形剤を含むことができる。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る担体または賦形剤」という用語は、薬学的投与に適合する溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。
【0100】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載のナノエマルジョン粒子および生物活性剤、ならびに必要に応じて1または複数のワクチンアジュバントを含むナノエマルジョン組成物を含むワクチン送達系であって、生物活性剤が抗原または抗原をコードする核酸分子であるワクチン送達系を提供する。
【0101】
ナノエマルジョン粒子を含むナノエマルジョン組成物に関する本発明の態様、ナノエマルジョン粒子および生物活性剤を含むナノエマルジョン組成物に関する本発明の態様、ならびにナノエマルジョン組成物を製造する方法に関する本発明の態様における、ナノエマルジョン組成物、ナノエマルジョン粒子(液体油、無機ナノ粒子、カチオン性脂質などの脂質、疎水性界面活性剤、および親水性界面活性剤を含む)、生物活性剤、および上記のナノエマルジョン組成物の調製に関する全ての上記記載および全ての実施形態は、医薬組成物およびワクチン送達系に関する本発明のこれら2つの態様に適用可能である。
【0102】
医薬組成物およびワクチン送達系は、経口投与、または静脈内、筋肉内、皮内、皮下、眼内、鼻腔内、肺(例えば、吸入による)腹腔内、もしくは直腸内投与などの非経口投与を含む様々な投与経路用に製剤化することができる。
【0103】
一実施形態では、送達経路は(例えば、肺に至る)肺送達であり、これは噴霧製剤、エアロゾル製剤、ミセル製剤または乾燥粉末製剤の使用などの異なるアプローチによって達成することができる。一実施形態では、医薬組成物またはワクチン送達系は、液体ネブライザー、エアロゾルベースの吸入器、および/または乾燥粉末分散装置で投与されるように製剤化される。
【0104】
本発明の一態様は、生物活性剤を細胞に送達する方法であって、本明細書に記載のナノエマルジョン粒子および生物活性剤を含むナノエマルジョン組成物と細胞を接触させることを含む、方法に関する。
【0105】
本発明の一態様は、生物活性剤を対象に送達する方法であって、本明細書に記載のナノエマルジョン粒子および生物活性剤を含むナノエマルジョン組成物を対象に投与することを含む、方法に関する。
【0106】
ナノエマルジョン粒子を含むナノエマルジョン組成物に関する本発明の態様、ナノエマルジョン粒子および生物活性剤を含むナノエマルジョン組成物に関する本発明の態様、ならびにナノエマルジョン組成物を製造する方法に関する本発明の態様における、ナノエマルジョン組成物、ナノエマルジョン粒子(液体油、無機ナノ粒子、カチオン性脂質などの脂質、疎水性界面活性剤、および親水性界面活性剤を含む)、生物活性剤、および上記のナノエマルジョン組成物の調製に関する全ての上記記載および全ての実施形態は、生物活性剤を送達する方法に関する本発明のこれら2つの態様に適用可能である。
【0107】
本明細書に記載されるように、ナノエマルジョン粒子による生物活性剤の細胞または対象への送達の能力および効率は、ナノエマルジョン粒子の成分を調整すること、ナノエマルジョン粒子(LION)と生物活性剤のモル比を選択すること、および/または生物活性剤の投与量を選択することによって制御することができる。
【0108】
本発明の一態様は、対象において免疫応答を生じさせるための方法であって、本明細書に記載のナノエマルジョン粒子および生物活性剤、ならびに必要に応じてアジュバントを含むナノエマルジョン組成物を対象に投与することであって、生物活性剤が抗原または抗原をコードする核酸分子である、投与することを含む、方法に関する。
【0109】
本発明の一態様は、対象において免疫応答を生じさせる方法であって、
(a)治療有効量のタンパク質抗原をコードする腫瘍溶解性ウイルスを対象に投与すること、および
(b)本明細書に記載のナノエマルジョン粒子および生物活性剤、ならびに必要に応じてアジュバントを含む治療有効量のナノエマルジョン組成物を対象に投与することであって、生物活性剤がタンパク質抗原またはタンパク質抗原をコードする核酸分子である、ナノエマルジョン組成物を対象に投与すること、を含む方法。
【0110】
ナノエマルジョン粒子を含むナノエマルジョン組成物に関する、ナノエマルジョン粒子と生物活性剤とを含むナノエマルジョン組成物に関し、ナノエマルジョン組成物を製造する方法に関し、医薬組成物に関し、かつ、ワクチン送達系に関する本発明の態様において、上記のナノエマルジョン組成物、ナノエマルジョン粒子(液体油、無機ナノ粒子、カチオン性脂質などの脂質、疎水性界面活性剤、および親水性界面活性剤を含む)、生物活性剤、ナノエマルジョン組成物の調製、医薬組成物、およびワクチン送達系に関する全ての上記説明および全ての実施形態は、免疫応答を生じさせる方法に関する本発明のこれら2つの態様に適用可能である。
【0111】
これらの方法における投与経路は、医薬組成物およびワクチン送達系を投与するための上記の投与経路と同じである。
【0112】
(a)工程の投与と(b)工程の投与は同時に行うことができる。あるいは、(a)工程の投与および(b)工程の投与は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも6週間、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、または少なくとも1年の間隔で行うことができる。
【0113】
本発明の一態様はまた、対象の感染または疾患を処置または予防する方法であって、本明細書に記載のナノエマルジョン粒子および生物活性剤と、必要に応じて薬学的に許容され得る担体とを含む治療有効量のナノエマルジョン組成物を対象に投与することを含む方法に関する。
【0114】
ナノエマルジョン粒子を含むナノエマルジョン組成物に関する、ナノエマルジョン粒子と生物活性剤とを含むナノエマルジョン組成物に関し、ナノエマルジョン組成物を製造する方法に関し、医薬組成物に関し、かつ、ワクチン送達系に関する本発明の態様において、上記のナノエマルジョン組成物、ナノエマルジョン粒子(液体油、無機ナノ粒子、カチオン性脂質などの脂質、疎水性界面活性剤、および親水性界面活性剤を含む)、生物活性剤、ナノエマルジョン組成物の調製、医薬組成物、およびワクチン送達系に関する全ての上記説明および全ての実施形態は、感染症または疾患を処置または予防する方法に関する本発明のこの態様に適用可能である。
【0115】
これらの方法における投与経路は、医薬組成物およびワクチン送達系を投与するための上記の投与経路と同じである。
【0116】
処置される感染症または疾患は、細菌感染/疾患、ウイルス感染/疾患、原虫疾患、非伝染性疾患、癌、または自己免疫疾患であり得る。いくつかの実施形態では、感染症/疾患は、RNAウイルスによって引き起こされるウイルス感染症/疾患である。RNAウイルスは、肝炎ウイルス、コロナウイルス、蚊媒介ウイルス(例えば、ベネズエラウマ脳炎(VEE)ウイルス、またはZIKVウイルスなどのフラビウイルス)、またはHIVであり得る。これらの疾患を予防または処置するために、ナノエマルジョン組成物中の生物活性剤は、コロナウイルスのゲノムに由来する抗原または抗原をコードする核酸分子であり得る。
【0117】
特定の実施形態では、RNAウイルスは、MERSウイルスおよびSARSウイルスからなる群から選択されるコロナウイルスである。一実施形態では、SARSウイルスはSARS-CoV-2である。
【0118】
いくつかの実施形態では、本方法は、対象におけるコロナウイルス(SARS-CoV-2、「COVID-19」など)を処置または予防することに関し、本方法は、
ナノエマルジョン粒子および生物活性剤、ならびに必要に応じてアジュバントを含む治療有効量のナノエマルジョン組成物を対象に投与することであって、生物活性剤が、先天性アゴニストであるRNA、またはコロナウイルスのゲノム(例えば、SARS-CoV-2ゲノム)に由来する抗原もしくは抗原をコードする核酸分子である、投与すること、を含む。
【0119】
特定の実施形態では、生物活性剤は、先天性アゴニストであるRNAである。一実施形態では、RNAは、PAMPなどのRIG-Iアゴニストである。一実施形態では、RNAは、RIBOXXOL、ポリ(LC)、またはHiltonol(登録商標)などのTLR3アゴニストである。
【0120】
特定の実施形態では、生物活性剤は、コロナウイルスゲノム(例えば、SARS-CoV-2ゲノム)に由来する抗原をコードするRNAである。一実施形態では、RNAは自己複製する。一実施形態では、RNAはスパイク「S」タンパク質の全部または一部をコードする。
【0121】
上記のように、無機固体ナノ粒子は、イメージング法によって検出可能なレポーター要素を含有する場合、得られたナノエマルジョン粒子は、ナノエマルジョン粒子が体内に投与された後に画像化および追跡することができる。例えば、無機固体ナノ粒子は、常磁性、超常磁性、フェリ磁性または強磁性化合物などの磁気共鳴画像法(MRI)によって検出可能なレポーター要素を含有し得る。
【0122】
したがって、本発明の一態様はまた、対象における生物活性剤の送達を画像化および/または追跡する方法であって、
本明細書に記載のナノエマルジョン粒子および生物活性剤を含むナノエマルジョン組成物を対象に投与することであって、無機ナノ粒子が磁気共鳴画像法によって検出可能な材料を含有する、投与すること、
および
磁気共鳴画像法を用いてナノエマルジョン組成物を検出すること、を含む方法に関する。
【0123】
一実施形態では、MRI検出可能な無機固体ナノ粒子材料は、酸化鉄、グルコン酸鉄および硫酸鉄である。
【0124】
ナノエマルジョン粒子を含むナノエマルジョン組成物に関する、ナノエマルジョン粒子と生物活性剤とを含むナノエマルジョン組成物に関し、ナノエマルジョン組成物を製造する方法に関し、医薬組成物に関し、かつ、ワクチン送達系に関する本発明の態様において、上記のナノエマルジョン組成物、ナノエマルジョン粒子(液体油、無機ナノ粒子、カチオン性脂質などの脂質、疎水性界面活性剤、および親水性界面活性剤を含む)、生物活性剤、ナノエマルジョン組成物の調製、医薬組成物、およびワクチン送達系に関する全ての上記説明および全ての実施形態は、生物活性剤の送達を画像化および/または追跡する方法に関する本発明のこの態様に適用可能である。
【0125】
ナノエマルジョン組成物のイメージングアプリケーションは、対象におけるナノエマルジョン組成物(LION粒子)による生物活性剤の送達をリアルタイムで追跡することを可能にするので、非常に有用である。したがって、LIONは治療を送達することができるだけでなく、画像化によって疾患および処置を自己報告/追跡することもできる。
【0126】
本発明は、本明細書において広範かつ一般的に記載されている。一般的な開示に含まれるより狭義の種および亜属の群も各々、本発明の一部を形成する。これは、削除された材料が本明細書に具体的に記載されているか否かにかかわらず、属から任意の主題を除外するという但し書きまたは否定的限定を伴う本発明の一般的な説明を含む。矛盾する場合には、用語の説明を含む本明細書が優先する。さらに、すべての材料、方法、および実施例は例示であり、限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0127】
実施例
以下の実施例は、例示のみを目的としており、いかなる形でも本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
実施例1、施例で使用した一般的な製造技術および材料
材料
【0128】
脂質-無機ナノ粒子(LION)の製造には、以下の材料を使用した。クロロホルム中25mgFe/mlの、様々な平均直径(5、10、15、20、25および30nm)の酸化鉄ナノ粒子を、Ocean Nanotech(サンディエゴ、カリフォルニア州)から購入した。スクアレンおよびSpan(登録商標)60(ソルビタンモノステアレート)を、Millipore Sigmaから購入した。Tween(登録商標)80(ポリエチレングリコールソルビタンモノオレエート)およびクエン酸ナトリウム二水和物を、Fisher Chemicalから購入した。カチオン性脂質の塩化物塩1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAPクロリド)を、Corden Pharmaから購入した。超純水(18.2 MOhm-cmの抵抗率)をMilli-Q浄水システム(Millipore Sigma)から入手した。
79-004と表示された脂質無機ナノ粒子(LION)の製造
【0129】
これらのLIONは、37.5mg/mlのスクアレン、37mg/mlのSpan(登録商標)60、37mg/mlのTween(登録商標)80、30mg/mlのDOTAPクロリド、0.1mg/mlの10nm酸化鉄ナノ粒子および10mMのクエン酸ナトリウム二水和物を含む。LIONは、以下の手順を用いて作製した。
【0130】
クロロホルム中の10nmの数加重平均直径を有する酸化鉄ナノ粒子(25mgFe/ml)から0.4mlを200mlビーカーに添加した。クロロホルムを換気フード内で蒸発させ、酸化鉄ナノ粒子の乾燥コーティングを残した。酸化鉄ナノ粒子に、3.7グラムのSpan(登録商標)60、3.75グラムのスクアレン、および3グラムのDOTAPクロリドを添加して、「油」相を調製した。油相を、60℃に予熱した水浴中で30分間超音波処理した。別に、1リットルガラス瓶中で、Milli-Q水で調製した1,000mlの10mMのクエン酸ナトリウム二水和物溶液に39グラムのTween(登録商標)80を添加することによって「水」相を調製した。水相を30分間撹拌して、Tween(登録商標)80を完全に溶解させた。Tween(登録商標)80の完全溶解後、96mlの水相を200mlビーカーに移し、60℃に予熱した水浴中でインキュベートした。加熱された油相に、予熱された水相96mlを添加した。混合物を、ミルク状の外観を有する均質なコロイドが生成されるまで、VWR(登録商標)200ホモジナイザー(VWR International)を使用して直ちに乳化した。続いて、20,000psiでLM10マイクロフルイダイザーのY型相互作用チャンバに流体を通すことによってコロイドを処理した。流体を、動的光散乱(Malvern Zetasizer Nano S)によって測定されるz平均流体力学的直径が、0.2の多分散指数で54nmになるまで通した。マイクロ流動化したLION試料を、200nmの孔径のポリエーテルスルホン(PES)シリンジフィルターで最終濾過した。
79-006-Aと表示された脂質無機ナノ粒子(LION)の製造
【0131】
これらのLIONは、37.5mg/mlのスクアレン、37mg/mlのSpan(登録商標)60、37mg/mlのTween(登録商標)80、30mg/mlのDOTAPクロリド、0.2mg/mlの15nm酸化鉄ナノ粒子および10mMのクエン酸ナトリウム二水和物を含む。LIONは、以下の手順を用いて作製した。
【0132】
クロロホルム中の15nmの数加重平均直径を有する酸化鉄ナノ粒子(25mgFe/ml)から0.8mlを200mlビーカーに添加した。クロロホルムを換気フード内で蒸発させ、酸化鉄ナノ粒子の乾燥コーティングを残した。酸化鉄ナノ粒子に、3.7グラムのSpan(登録商標)60、3.75グラムのスクアレン、および3グラムのDOTAPクロリドを添加して、「油」相を調製した。油相を、60℃に予熱した水浴中で30分間超音波処理した。別に、1リットルガラス瓶中で、Milli-Q水で調製した1,000mlの10mMのクエン酸ナトリウム二水和物溶液に39グラムのTween(登録商標)80を添加することによって「水」相を調製した。水相を30分間撹拌して、Tween(登録商標)80を完全に溶解させた。Tween(登録商標)80の完全溶解後、96mlの水相を200mlビーカーに移し、60℃に予熱した水浴中でインキュベートした。加熱された油相に、予熱された水相96mlを添加した。混合物を、ミルク状の外観を有する均質なコロイドが生成されるまで、VWR(登録商標)200ホモジナイザー(VWR International)を使用して直ちに乳化した。続いて、20,000psiでLM10マイクロフルイダイザーのY型相互作用チャンバに流体を通すことによってコロイドを処理した。流体を、動的光散乱(Malvern Zetasizer Nano S)によって測定されるz平均流体力学的直径が、0.2の多分散指数で52nmになるまで通した。マイクロ流動化したLION試料を、200nmの孔径のポリエーテルスルホン(PES)シリンジフィルターで最終濾過した。
79-006-Bと表示された脂質無機ナノ粒子(LION)の製造
【0133】
これらのLIONは、37.5mg/mlのスクアレン、37mg/mlのSpan(登録商標)60、37mg/mlのTween(登録商標)80、30mg/mlのDOTAPクロリド、0.2mg/mlの5nm酸化鉄ナノ粒子および10mMのクエン酸ナトリウム二水和物を含む。LIONは、以下の手順を用いて作製した。
【0134】
クロロホルム中の5nmの数加重平均直径を有する酸化鉄ナノ粒子(25mgFe/ml)から0.8mlを200mlビーカーに添加した。クロロホルムを換気フード内で蒸発させ、酸化鉄ナノ粒子の乾燥コーティングを残した。酸化鉄ナノ粒子に、3.7グラムのSpan(登録商標)60、3.75グラムのスクアレン、および3グラムのDOTAPクロリドを添加して、「油」相を調製した。油相を、60℃に予熱した水浴中で30分間超音波処理した。別に、1リットルガラス瓶中で、Milli-Q水で調製した1,000mlの10mMのクエン酸ナトリウム二水和物溶液に39グラムのTween(登録商標)80を添加することによって「水」相を調製した。水相を30分間撹拌して、Tween(登録商標)80を完全に溶解させた。Tween(登録商標)80の完全溶解後、96mlの水相を200mlビーカーに移し、60℃に予熱した水浴中でインキュベートした。加熱された油相に、予熱された水相96mlを添加した。混合物を、ミルク状の外観を有する均質なコロイドが生成されるまで、VWR(登録商標)200ホモジナイザー(VWR International)を使用して直ちに乳化した。続いて、20,000psiでLM10マイクロフルイダイザーのY型相互作用チャンバに流体を通すことによってコロイドを処理した。流体を、動的光散乱(Malvern Zetasizer Nano S)によって測定されるz平均流体力学的直径が、0.2の多分散指数で59nmになるまで通した。マイクロ流動化したLION試料を、200nmの孔径のポリエーテルスルホン(PES)シリンジフィルターで最終濾過した。
79-011と表示された脂質無機ナノ粒子(LION)の製造
【0135】
これらのLIONは、9.4mg/mlのスクアレン、9.3mg/mlのSpan(登録商標)60、9.3mg/mlのTween(登録商標)80、7.5mg/mlのDOTAPクロリド、0.05mg/mlの25nm酸化鉄ナノ粒子および10mMのクエン酸ナトリウム二水和物を含む。LIONは、以下の手順を用いて作製した。
【0136】
クロロホルム中の25nmの数加重平均直径を有する酸化鉄ナノ粒子(25mgFe/ml)から0.2mlを200mlビーカーに添加した。クロロホルムを換気フード内で蒸発させ、酸化鉄ナノ粒子の乾燥コーティングを残した。酸化鉄ナノ粒子に、0.93グラムのSpan(登録商標)60、0.94グラムのスクアレン、および0.75グラムのDOTAPクロリドを添加して、「油」相を調製した。油相を、60℃に予熱した水浴中で30分間超音波処理した。別に、1リットルガラス瓶中で、Milli-Q水で調製した1,000mlの10mMのクエン酸ナトリウム二水和物溶液に10グラムのTween(登録商標)80を添加することによって「水」相を調製した。水相を30分間撹拌して、Tween(登録商標)80を完全に溶解させた。Tween(登録商標)80の完全溶解後、99mlの水相を200mlビーカーに移し、60℃に予熱した水浴中でインキュベートした。加熱された油相に、予熱された水相96mlを添加した。混合物を、ミルク状の外観を有する均質なコロイドが生成されるまで、VWR(登録商標)200ホモジナイザー(VWR International)を使用して直ちに乳化した。続いて、20,000psiでLM10マイクロフルイダイザーのY型相互作用チャンバに流体を通すことによってコロイドを処理した。流体を、動的光散乱(Malvern Zetasizer Nano S)によって測定されるz平均流体力学的直径が、0.2の多分散指数で60nmになるまで通した。マイクロ流動化したLION試料を、200nmの孔径のポリエーテルスルホン(PES)シリンジフィルターで最終濾過した。
79-014-Aと表示された脂質無機ナノ粒子(LION)の製造
【0137】
これらのLIONは、9.4mg/mlのスクアレン、0.63mg/mlのDynasan(登録商標)114(トリミリスチン)、9.3mg/mlのSpan(登録商標)60、9.3mg/mlのTween(登録商標)80、7.5mg/mlのDOTAPクロリド、0.05mg/mlの15nm酸化鉄ナノ粒子および10mMのクエン酸ナトリウム二水和物を含む。LIONは、以下の手順を用いて作製した。
【0138】
クロロホルム中の15nmの数加重平均直径を有する酸化鉄ナノ粒子(25mgFe/ml)から0.2mlを200mlビーカーに添加した。クロロホルムを換気フード内で蒸発させ、酸化鉄ナノ粒子の乾燥コーティングを残した。酸化鉄ナノ粒子に、0.93グラムのSpan(登録商標)60、0.94グラムのスクアレン、0.063グラムのDynasan(登録商標)114、および0.75グラムのDOTAPクロリドを添加して、「油」相を調製した。油相を、60℃に予熱した水浴中で30分間超音波処理した。別に、1リットルガラス瓶中で、Milli-Q水で調製した1,000mlの10mMのクエン酸ナトリウム二水和物溶液に10グラムのTween(登録商標)80を添加することによって「水」相を調製した。水相を30分間撹拌して、Tween(登録商標)80を完全に溶解させた。Tween(登録商標)80の完全溶解後、96mlの水相を200mlビーカーに移し、60℃に予熱した水浴中でインキュベートした。加熱された油相に、予熱された水相99mlを添加した。混合物を、ミルク状の外観を有する均質なコロイドが生成されるまで、VWR(登録商標)200ホモジナイザー(VWR International)を使用して直ちに乳化した。続いて、20,000psiでLM10マイクロフルイダイザーのY型相互作用チャンバに流体を通すことによってコロイドを処理した。流体を、動的光散乱(Malvern Zetasizer Nano S)によって測定されるz平均流体力学的直径が、0.2の多分散指数で60nmになるまで通した。マイクロ流動化したLION試料を、200nmの孔径のポリエーテルスルホン(PES)シリンジフィルターで最終濾過した。
実施例2、LION製剤の安定性
LION製剤は熱安定性である。
【0139】
様々な製剤(実施例1で調製した、それぞれ79-004、79-006-Aおよび79-006-Bと表示されるLION)を指示された温度の安定性チャンバに入れた。安定性は、動的光散乱を用いた粒径測定によって求めた。結果は、LION製剤が4、25および42℃で保存した場合に安定なコロイドを形成したことを示す。
図1A~
図1Cに示されているように、LION製剤中の粒子は、様々な温度範囲で、かつ経時的に優れた安定性を示す。
LION製剤はRNAをRNaseから保護する。
【0140】
この実施例は、LION製剤がRNAをリボヌクレアーゼ(RNase)の触媒分解から保護することを示す。RNaseチャレンジからの保護をゲル電気泳動によってキャラクライズした。RNA分子を、所定の窒素:リン酸(N:P)比で混合することによってLION製剤と複合体化させた。様々なLION製剤をRNAに結合させ、複合体をRNaseに曝露した。
【0141】
100μlの裸の(製剤化されていない)RNA、または15のN:PでLION製剤(実施例1で調製した、それぞれ79-004、79-006-A、79-006-Bおよび79-011と表示されるLION)と複合体化したRNAを、10mg/Lに希釈したRNase A溶液(Thermo Scientific、EN053L)と共に室温で30分間インキュベートした。30分後、1mg/mlに希釈したプロテイナーゼK溶液(Thermo Scientific、EO0491)を添加し、すべての試料を10分間にわたって55℃に加熱した。RNAを抽出するために、0.12mlのフェノール:クロロホルム溶液(Invitrogen、15593-031)をすべての試料に添加し、試料を15秒間ボルテックスし、13,300rpmで15分間遠心分離した。20μlの上清を抽出し、PCRチューブに移し、20μlのグリオキサール負荷色素(Invitrogen、AM8551)を各チューブに添加した。すべての試料を50℃で20分間加熱した。250ngのRNAを含有する試料を、ゲル電気泳動箱中のNorthern Max Gly Gel Prepランニングバッファー(アンビオン、AM8678)に浸漬した1%アガロースゲルのウェルにロードした。ゲルを120Vで45分間流し、ゲル記録システムで画像化した。この結果を表2に示す。
【0142】
図2は、裸の(製剤化されていない)RNAと比較して、15の窒素:リン酸(N:P)比でRNA分子と複合体化した例示的なLION製剤(実施例1で調製した、それぞれ79-004、79-006-A、79-006-Bおよび79-011と表示されるLION)のゲル電気泳動を示している。
図2は、RNaseの作用に対してLION製剤によって保護されたRNAの安定性を示す。
図2に示すように、RNaseで処理した裸のRNA(LION製剤と複合体を形成していない)は完全に破壊されたが、全てのLION製剤は複合体を形成しているRNAを保護した。
実施例3、タンパク質発現のためのLION製剤の使用-分泌胚性アルカリホスファターゼ「SEAP」発現
【0143】
この実施例は、LION製剤が高レベルの分泌胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)発現を駆動することを示す。目的のタンパク質をコードするメッセンジャーRNA分子をLION製剤と複合体化させ、これを生物の細胞の細胞質に送達した。メッセンジャーRNAは、細胞内翻訳を受け、目的のタンパク質を産生した。弱毒化複製アルファウイルスであるベネズエラウマ脳炎(VEE)ウイルス、TC-83のサブゲノムを、VEE構造タンパク質の代わりに分泌胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)を用いることによって改変した。
【0144】
SEAPをコードする修飾レプリコンRNA(RNA-SEAP)1μgを、79-004(10nm、実施例1)と表示されたLION製剤と、15のN:Pで複合体化させ、C57BL/6マウス(n=3)に筋肉内投与した(50μl)。マウスから一定時間ごとに採血し、-1(注射前)、3、5、7、9、11、13、15および20日目にSEAPのマウス血清をアッセイすることによってタンパク質発現を調べた。注射後の数日間にわたるマウスにおけるSEAP発現の結果を
図3Aに示す。
【0145】
図3Aは、メッセンジャーRNAと複合体化したLION製剤が、長期間(注射後20日間)にわたって、ロバストなレベルの分泌タンパク質を発現し得ることを示す。
コア無機粒子のサイズの影響
【0146】
RepRNAをコードするSEAP(1μg)を、79-004、79-006-A、または79-006-Bと表示されたLION製剤(様々なSPIOサイズを有する、実施例1を参照)と15のN:P比で複合体化し、C57BL/6マウス(n=3/製剤)に筋肉内投与(50μl)した。マウスから一定時間ごとに採血し、4、6、8、11、13、15および20日目にSEAPのマウス血清をアッセイすることによってタンパク質発現を調べた。注射後の数日間にわたるマウスにおけるSEAP発現の結果を
図3Bに示す。対数変換データを、二元配置ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって分析した。
【0147】
図3Bは、様々な平均直径を有するコア無機SPIOナノ粒子を有するLION製剤がすべて、長期間にわたってインビボで同様のロバストなレベルのタンパク質発現を誘導するように機能し、それらの製剤間でSEAP発現に統計的有意差がなかったことを示す。したがって、SPIO粒子の直径は、LION製剤がrepRNA分子を送達する能力およびrepRNA分子からのタンパク質発現レベルに影響を与えないように見受けられた。
LION送達対NLC送達
【0148】
改変されたrepRNAをコードするSEAP(RNA-SEAP)(1μg)を、79-004と表示されたLION製剤(10nm、実施例1)、または対照としてのナノ構造脂質担体(NLC)と、15のN:Pで複合体化させた。得られたRNA-LION製剤をC57BL/6マウス(n=3)に筋肉内投与した(50μl)。マウスから一定時間ごとに採血し、マウス血清をSEAPについてアッセイすることによってタンパク質発現を調べた。注射後の数日間にわたるマウスにおけるSEAP発現の結果を
図3Cに示す。
【0149】
対照は、乳化時に半結晶性コアを形成する固体脂質(グリセリルトリミリステートダイナサン)および液体油(スクアレン)の混合物であるナノ構造脂質担体(NLC)である。その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Erasmusら’’A Nanostructured Lipid Carrier for Delivery of a Replicating Viral RNA Provides Single,Low-Dose Protection against Zika,’’Mol.Ther.26(10):2507-22(2018)のNLCに関するより詳細な説明を参照されたい。
【0150】
図3Cに示されるように、LION製剤と複合体化されたrepRNAをコードするSEAPは、NLCと複合体化されたrepRNAをコードするSEAPと比較して、各時点においてより高いSEAP発現レベルをもたらした。このことは、NLCと比較して、LION製剤がrepRNA分子のより良好な送達ビヒクルとして機能したことを示している。また、
図3Cに示すように、SEAP発現は8日目頃にピークに達し、21日目までに対照NLC群についてはベースラインに戻り、LION群については0.5logのベースラインに戻った。
RNA複合体化濃度の影響
【0151】
RepRNAをコードするSEAPを、15のN:P比でLION製剤(実施例1の79-006Aと同様の15nm)と、複合体化濃度を変化させながら、複合体化させた。得られたRNA-LION製剤をC57BL/6マウスに筋肉内投与した(n=5/製剤)。筋肉内注射後、一定時間ごとにマウスから採血し、マウス血清をアッセイすることによってタンパク質発現を調べた。注射後の数日間にわたるマウスにおけるSEAP発現の結果を
図3Dに示す。
【0152】
RNA複合体の濃度は、LION/repRNA複合体のサイズに影響を与えた。10倍高いrepRNA濃度(400ng/μl対40ng/μl)を有するLION/repRNA複合体は、約41%大きいLION/repRNA-SEAP複合体および24%広いサイズ分布をもたらした。
【0153】
図3Dに示すように、400ng/μl対40ng/μlの濃度を有するLION/repRNA複合体について、(マン・ホイットニー検定を使用して)各時点での平均SEAP濃度に有意差はなく、複合体濃度がrepRNA送達およびタンパク質発現に実質的な影響を及ぼさなかったことが示唆された。いずれのrepRNA濃度(400ng/μl対40ng/μl)についても、LION/repRNA-SEAP製剤で免疫したマウスの血清中のSEAP発現濃度は、筋肉内注射後7日目にピークに達し、21日目までにバックグラウンドレベルに戻った。
N:PおよびRNA用量の影響
【0154】
RepRNAをコードするSEAP(それぞれ0.5μg、2.5μgおよび12.5μgで)を、様々なN:P比でLION製剤(実施例1の79-006Aと同様、15nm)と複合体化させた。得られたRNA-LION製剤をC57BL/6マウスに筋肉内投与した(n=4/製剤)。筋肉内注射の7日後にマウスから採血し、マウス血清をアッセイすることによってタンパク質発現を調べた。N:P比の関数としてのマウスにおけるSEAP発現の結果を
図3Eに示す。
【0155】
図3Eは、LION製剤化repRNAの生物活性に対するN:P比およびRNA用量の影響を示す。
実施例4、ワクチン送達のためのLION製剤の使用
【0156】
この実施例は、LION複合体化RNAから発現される抗原が高度に免疫原性であり、抗体を誘導することを示す。ワクチン抗原をコードするRNA分子をLION製剤と複合体化し、これを生物の細胞の細胞質に送達した。RNAは細胞内翻訳を受け、ワクチン抗原を産生した。生物は、抗原に対する抗体を産生することによって免疫応答を開始した。
【0157】
スパイク「S」タンパク質全長の形態をコードする自己複製「sr」RNA調製物をLIONと混合し、製剤化した。マウスを、10、1および0.1μgのsrRNAの投与量レベルで製剤化された試験品を用いて、筋肉内に1回免疫した。免疫後14日目に、動物から採血し、血清を調製し、使用するまで-20℃でアリコートに保存した。ポリクローナルIgG標準を使用して、切断型受容体結合ドメイン(RBD)タンパク質断片に対する抗原特異的IgG濃度を測定した。結果を
図4Aに示す。
図4Aに見られるように、様々な用量のRNA(それぞれ10、1、および0.1μg)でLION/repRNA製剤から発現された抗原はすべて、SARS-CoV-2の受容体結合ドメインに対して強くロバスト免疫応答を誘導した。非常に低濃度のRNA(0.1μg)であってもロバストな力価が見られた。
コア無機粒子のサイズの影響;LION送達対NLC送達
【0158】
SPIOのサイズが異なる様々なLION製剤(それぞれ、LION-10、LION-15、LION-25、LION-5)または対照としてのナノ構造脂質担体(NLC)と複合体化したRepSARS-CoV2S RNAを、C57BL/6マウスの筋肉内に投与した。LION-10、LION-15、LION-25、およびLION-5と表示された製剤は、それぞれ79-004、79-006-A、79-006-B、79-011、79-014-Aと表示されたLION組成物に対応する(下記の表1を参照され、併せて実施例1も参照されたい)。筋肉内注射後、一定時間ごとにマウスから採血し、抗スパイク(抗S)酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によってIgG濃度をアッセイすることによってタンパク質発現を調べた。注射後数週間にわたるC57BL/6マウスの血清中の抗S IgG濃度の結果を
図4Bに示す。
【0159】
図4Bは、異なる平均直径を有するコア無機SPIOナノ粒子を含むLION製剤がすべて、抗原の生物学的活性を保持するように作用し、長期間にわたってインビボでロバストなレベルの免疫応答を誘導したことを示す。さらに、LION製剤と複合体化した全てのRepSARS-CoV2S RNAは、対照NLCと複合体化したものよりも大きな応答を生じた。
混合方向および希釈の影響
【0160】
混合方向(LIONをRNAに混合する対RNAをLIONに混合する)および希釈剤(スクロース(Suc)を使用した1:200希釈対デキストロース(Dex)を使用した1:200希釈)を変えることによって調製した様々なLION製剤と複合体化したRepSARS-CoV2S RNAを、C57BL/6マウスに筋肉内投与した。筋肉内注射後14日目(各群について最初のバー)または21日目(各群について2番目のバー)にマウスから採血し、抗SpikeELISAによってIgG濃度をアッセイすることによってタンパク質発現を調べた。結果を
図4Cに示す。
【0161】
図4Cに示すように、混合の方向(LIONをRNAに混合するか、またはRNAをLIONに混合するかにかかわらず)は、抗原の生物学的活性およびRNAを送達するLION製剤の能力に影響を及ぼさなかった。さらに、LION-RNA製剤の希釈剤(デキストロースまたはスクロース)を変えることは、抗原の生物学的活性に影響を及ぼさなかった。
実施例5、LION製剤のイメージング
【0162】
この実施例は、LION製剤がMRIイメージングのためのシグナルを放出することができることを示す。RNA分子に複合体化した、または分子とナノ粒子表面にコンジュゲートした、もしくは脂質コアにカプセル化された分子とコンジュゲートしたLION製剤を生物に投与した。その後、生物をイメージング機器に入れ、電磁波に曝露すると、LIONナノ粒子はコントラストを高める働きをした。結果を
図5A~
図5Bに示す。
【0163】
図5A~
図5Bは、LION製剤中の鉄濃度の関数としての緩和時間T1(
図5A)およびT2(
図5B)の増加を示す。
図5A~
図5Bで特定されるLION製剤の組成は、LION組成物中の酸化鉄の濃度が図中のX軸に基づいて変化したことを除いて、実施例1に従って、それぞれ79-004、79-006-A、79-006-B、79-011、79-014-A(以下の表1を参照)と表示されたLION組成物のそれぞれに対応する。
【0164】
図5は、LION粒子79-004、79-006-A、79-006-B、79-011および79-014-Aを使用した磁気共鳴画像法(MRI)におけるT1およびT2コントラストの両方を向上させる能力をまとめたものである。r1、r2緩和度およびr2/r1比を表1にまとめる。
【表1】
表1様々なコア直径を有する鉄酸化物コアを含有するLION製剤のMR緩和度(r1およびr2)およびr2/r1比
実施例6、抗体発現のためのLION製剤の使用
【0165】
この実施例は、抗体がLION複合体RNAから発現され得ることを示す。抗体をコードするRNA分子をLION製剤と複合体化し、生物の細胞の細胞質に送達した。メッセンジャーRNAは、細胞内翻訳を受け、抗体を産生した。
ジカウイルスを標的とするモノクローナル抗体をコードするレプリコンRNAを含むLION製剤
【0166】
図6Aは、LION製剤のSPIOサイズが異なる、LION/抗体配列RNA(40μgRNA)製剤(それぞれ、LION-10、LION-15、LION-25、LION-5)で動物を免疫した後に産生されるジカウイルスを認識するヒトモノクローナル抗体(ZIKV-117)のロバストなレベルを示す。免疫化の7日後に動物から採血した。結果は、LION製剤を使用して生体内で抗体を産生することができることを示している。抗体配列RNAを用いて製剤化されたナノ構造脂質担体(NLC)を対照として使用した。
図6Aに示すように、LION製剤と複合体化した抗体配列RNAは、NLCと複合体化した抗体配列RNAと比較して、各SIPOサイズでより高い全レベルのZIKV-117発現をもたらした。このことは、NLCと比較して、LION製剤が抗体配列RNAのより良好な送達ビヒクルとして機能したことを示している。
ウサギモデルにおける母体免疫化のためのHIVおよびZIKVワクチン候補を含むLION製剤
【0167】
図6Bおよび
図6Cは、生理食塩水(
図6B)またはLIONを用いて製剤化されたBG505 SOSIP.664三量体をコードするrepRNA(
図6C)で筋肉内経路によって免疫化された成体雌妊娠ウサギの抗BG505 SOSIP.664IgG抗体の大きさおよび動態を示す。
図6Dおよび
図6Eは、生理食塩水(
図6D)またはLIONを用いて製剤化されたZIKV prM-E抗原をコードするrepRNA(
図6E)を筋肉内経路によって免疫化した成体雌妊娠ウサギの抗ZIKV E IgG抗体の大きさおよび動態を示す。1週目付近の網掛け領域は、ウサギが飼育された期間を示す。6週目と7週目の間の網掛け領域は、仔が送達された期間を示す。矢印は免疫化時点(0、4および11週目)を示す。結果は、LION/repRNA製剤から発現された抗原が強力かつロバストな免疫応答を誘導し、LION/repRNA製剤の両方について強いレベルの抗体を産生したことを示している。
【0168】
図6Fおよび
図6Gは、雌ウサギ(雌のウサギ)から仔ウサギ(ウサギの乳児)への抗SOSIP IgGの子宮内移行の評価の結果を示す。
図6Fは、送達時の仔ウサギにおける抗SOSIP IgG応答を示す。1つの処置群あたりそれぞれ同腹仔由来の最低2匹の仔ウサギを安楽死させて、子宮内抗体移入を評価した。
図6Gは、雌ウサギの抗体レベルと対応する仔ウサギとの間の正の相関(ピアソンr=0.94)を示すXYプロットを示す。これらの図は、飼育雌ウサギから仔ウサギへの抗体の物質移動を示している。
【0169】
図6Hおよび
図6Iは、既存の母体抗体との関連におけるワクチン誘導性応答を示す。仔ウサギの血清抗SOSIP IgGレベルを、追加免疫の4週間後(仔を離乳した3週間後)に収集した。生理食塩水を投与されていない雌ウサギ由来の仔ウサギまたはLION+RNA-prM/Eを投与されている雌ウサギ由来の仔ウサギは、BG505 SOSIP.664に対する既存の母体抗体について陰性(-)としてグループ分けされる。LION+RNA-SOSIPまたはAddaVaxアジュバント添加組換えBG505 SOSIP.664を投与された雌ウサギ由来の仔ウサギは、BG505 SOSIP.664に対する既存の母体抗体について陽性(+)としてグループ分けされる。データは、既存の抗体は抗体のワクチン媒介誘導に有意な影響を及ぼさず、仔ウサギ内の受動的に移入された抗体は仔ウサギ内の抗体のワクチン媒介誘導に悪影響を及ぼさなかったことを示す。
実施例7、非ヒト霊長類におけるワクチン送達のためのLION製剤の使用-単回用量複製RNAワクチンは非ヒト霊長類においてSARS-CoV-2に対する中和抗体を誘導する
【0170】
この実施例は、ワクチンの安定性、送達および免疫原性を増強するように設計された新規脂質無機ナノ粒子(LION)を用いて製剤化されたRNAレプリコンを含む安定で高度に免疫原性のワクチン候補であるrepRNA-CoV2Sの開発を説明するものである。
ワクチンの設計、調製、およびキャラクタリゼーション
【0171】
重度の急性呼吸器症候群コロナウイルス2(COVID-19)の感染によって引き起こされるコロナウイルス感染症2019(SARS-CoV-2)は、世界的なパンデミックと宣言されている。コロナウイルスは、大きなゲノム、ならびに4つの主要な構造タンパク質であるスパイク(S)、エンベロープ、膜およびヌクレオカプシドに対するオープンリーディングフレームを有する、エンベロープされた一本鎖ポジティブセンスRNAウイルスである。Sタンパク質は、肺胞の上皮細胞などの様々な細胞型の表面でコロナウイルスのアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)への結合を媒介する。関連するSARS-CoVに対して開発された実験ワクチンのほとんどが、ロバストな中和応答を誘導することを目的として、Sタンパク質またはその受容体結合ドメイン(RBD)を組み込んだことから、保護は、Sタンパク質に対する中和抗体によって媒介され得る。以前の報告では、ヒト中和抗体がSARS-CoVおよび中東呼吸器症候群(MERS)-CoVでチャレンジしたマウスを保護したことが示されており、SARS-CoV-2に対する保護が抗S抗体を介して媒介され得ることが示唆されている。さらに、2型Tヘルパー(Th2)応答を駆動するSARSワクチンは、SARS-CoVによるチャレンジ後の肺免疫病理の増強に関連している一方で、1型Tヘルパー(Th1)偏向免疫応答を有するものは、免疫病理の非存在下での保護の増強に関連している。したがって、有効なCOVID-19ワクチンは、SARS-CoV-2特異的中和抗体を含むTh1偏向免疫応答を誘導する必要があり得る。
【0172】
核酸ワクチンは、標的抗原の遺伝子配列のみを必要とし、病原体培養(不活化または生弱毒化ワクチン)またはスケールされた組換えタンパク質産物への依存を排除する、迅速なワクチン設計のための理想的なモダリティとして台頭してきている。さらに、核酸ワクチンは、ウイルスベクターワクチンの免疫原性を弱め得る既存の免疫を回避することができる。脂質ナノ粒子(LNP)を用いて製剤化されたメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンおよびエレクトロポレーションによって送達されたDNAワクチンを用いて臨床試験が開始された。しかしながら、mRNAワクチンおよびDNAワクチンは、不活性化ワクチンおよび組換えサブユニットタンパク質ワクチンと同様に、典型的には、有効になるために長期間にわたる複数回の投与を必要とするので、単回の免疫化後にヒトにおいて保護の有効性を誘導することができない可能性がある。
【0173】
ウイルス由来レプリコンRNA(repRNA)ワクチンは、1989年に最初に報告され、ウイルス様RNA粒子(VRP)、インビトロ転写(IVT)RNA、およびプラスミドDNAの形態で送達されている。repRNAでは、ウイルスRNAポリメラーゼ複合体(最も一般的にはアルファウイルス属由来)をコードするオープンリーディングフレームは手付かずであるが、構造タンパク質遺伝子は抗原コード遺伝子で置き換えられる。従来のmRNAワクチンは、入ってくるRNA分子から直接翻訳されるが、細胞へのrepRNAの導入は、抗原コードRNAの継続的な生合成を開始し、体液性および細胞性免疫応答を有意に増強する発現および持続時間の劇的な増加をもたらす。さらに、repRNAワクチンは、ウイルス感知ストレス因子がトリガーされ、Toll様受容体およびレチノイン酸誘導性遺伝子(RIG)-Iを介して自然経路が活性化されて、インターフェロン、炎症誘発性因子および抗原提示細胞の走化性を産生し、抗原クロスプライミングを促進するという点で、アルファウイルス感染を模倣する。結果として、repRNAはそれ自体のアジュバントとして作用し、通常、複数回かつ1,000倍高い用量を必要とする従来のmRNAと比較して、単回用量後により強い免疫応答を誘発する。
【0174】
したがって、repRNAワクチンは、COVID-19のようなパンデミックの大流行を止めるためのワクチン候補として選ばれたが、これは、repRNAワクチンが、ある程度の研究実績があり、多くの場合、効果的であるために1回の投与しか必要とせず、より少ない回数かつより少ない用量で迅速に保護レベルの免疫を誘導すると同時に、大規模な製造における負荷を軽減する可能性を有し得るからである。
【0175】
図7Aに示すように、全長S(repRNA-CoV2S)を含むSARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質由来の配列を組み込んだrepRNAを生成した。c末端v5エピトープタグに融合したSARS-CoV-2単離体Wuhan-Hu-1(GenBank:MN908947.3)の21,536から25,384の位置に対応するS1ドメイン、S2ドメイン、膜貫通(TM)ドメインおよび細胞質(CD)ドメインを含むコドン最適化された全長スパイク(S)オープンリーディングフレームを、ベネズエラウマ脳炎ウイルスのTC-83株の4つの非構造タンパク質(nsP1-4)遺伝子をコードするアルファウイルスレプリコンにクローニングした。RNA転写およびキャッピングの後、repRNA-COV2SをBHK細胞にトランスフェクトした。24時間後、陽性対照および陰性対照として組換えSARS-CoV2スパイクタンパク質(rCoV2-Spike)およびrepRNA-GFPをそれぞれ使用して、免疫検出のために回復期のヒト血清または抗v5のいずれかを使用して、抗v5免疫蛍光法およびウエスタンブロットによって細胞を分析した。
図7Bおよび
図7Cの結果は、BHK細胞におけるv5タグ付きSタンパク質の効率的な発現を示す。
図7Cはまた、COVID-19の発症の29日後に回収された回復期の血清を免疫検出試薬として利用して、天然のSARS-CoV-2の免疫血清と反応するBHK細胞におけるSタンパク質の内因性発現を示す。
LIONを用いたrepRNA-CoV2Sの製剤化
【0176】
次に、repRNA-CoV2Sを、ワクチンの安定性およびワクチンの細胞内送達を増強するように設計された例示的な脂質無機ナノ粒子(LION)を用いて製剤化した。LION/repRNA-CoV2S製剤が抗体およびT細胞応答を迅速に生成する能力をマウスにおいて評価した。
【0177】
LION組成物を調製するための一般的な製造法および材料は、実施例1に開示されたものに従った。例示的なLIONは、疎水性油相に埋め込まれた15nmの超常磁性酸化鉄(Fe
3O
4)ナノ粒子(SPIO)を有する非常に安定したカチオン性スクアレンエマルジョンである。
図8Aは、LIONをrepRNAと混合した後の例示的なLIONおよびそのワクチン複合体の形成の簡単なグラフィック描写である。スクアレンはワクチンアジュバントである。SPIOナノ粒子は、MRI造影剤および静脈内鉄補充療法における臨床用途を有しており、SPIOの独特の非線形磁気特性によって、画像化、標的化および治療用途の範囲におけるそれらの新規な用途も可能になった。LIONはまた、カチオン性脂質1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)も含んでおり、これによって、1:1(v/v)混合工程によって混ぜ合せた場合に、RNA分子との静電的会合が可能になった。実施例1に示すように、本実施例のLIONは、動的光散乱法(DLS)により測定された強度加重平均径が52nm(PDI=0.2)である。
図8Bに示すように、LION製剤は、4℃および25℃で保存した場合、少なくとも3ヶ月間コロイド安定性であった。
【0178】
LIONをrepRNAと混合すると、LIONの表面上のアニオン性repRNA分子とカチオン性DOTAP分子との間の静電的会合が即時複合体形成を促進する。粒径がDLSによって検出される90nmの強度加重平均直径へ増大したことによって、LION-repRNA複合体の形成が確認された(
図8Cを参照のこと)。
図8Dに示されるように、濃縮されたRNaseチャレンジ後のフェノール-クロロホルム処理によって抽出されたLION製剤化repRNA分子のゲル電気泳動分析は、製剤化されていないrepRNA(裸)と比較して、RNase触媒分解からの実質的な保護を示した。製剤化されたワクチンの短期安定性を評価するために、4℃および25℃で混合および貯蔵した1、4および7日後に、フェノール-クロロホルム処理によって抽出されたrepRNAのゲル電気泳動および複合体の粒径によって決定される、repRNAの完全性および複合体の安定性を評価した。
図8Eおよび
図8Fに示すように、LIONはすべての時点でrepRNA分子の最大の完全性を維持し(
図8E)、複合体はそのサイズを維持し(
図8F)、製剤化されたワクチン複合体が混合後少なくとも1週間安定であることを示した。
マウスにおけるLION/repRNA-CoV2Sの送達
【0179】
LION/repRNA-CoV2S複合体をマウスに投与した。6~8週齢のC57BL/6マウス(n=5/群)に、10、1、または0.1μgのLION/repRNA-CoV2Sを筋肉内経路を介して投与した。初回免疫の14日後、血清を採取した。
図9Aに示されるように、10μgまたは1μgのLION/repRNA-CoV2SによるC57BL/6マウスの単回筋肉内免疫化は、免疫後14日までに100%のセロコンバージョンおよびロバストな抗S IgGレベルを誘導し、平均結合力価はそれぞれ200および109μg/mlであり、0.1μg用量では部分的なセロコンバージョン(2/5)を誘導した。
図9Bに示されるように、10μgおよび1μgの初回のみの用量はいずれも中和抗体を誘導し、シュードウイルス中和アッセイ(SARS-CoV-2 Wuhan-Hu-1シュードタイプ)によって測定した場合に、平均50%阻害濃度(IC50)がそれぞれ1:643および1:226であった。IgG1と比較した場合、有意に高いIgG2c応答によって示されるように(
図9Cを参照のこと)、全ての用量がTh1偏向免疫応答を誘導する一方で、より高いIgG2c:IgG1比によって示されるように(
図9Dを参照のこと)、より高い用量がさらに多くのTh1偏向応答を誘導する傾向があった。
【0180】
SARSおよびMERSで、特に抗体応答およびメモリーB細胞応答の存在が減少する際に見られるように、T細胞が保護に寄与する可能性のある役割を考慮して、LION/repRNA-CoV2Sに対するT細胞応答もマウスにおいて評価した。28日目に、この同じマウスコホートに2回目の免疫化を行った。12日後、脾臓および肺を採取し、Sタンパク質の重複する15merペプチドライブラリーで刺激し、IFN-γ応答を酵素結合免疫吸収スポット(ELISpot)アッセイによって測定した。
図9Eに示されるように、10、1および0.1μgの初回/ブーストを受けたマウスは、ロバストな脾臓T細胞応答を示し、平均IFN-γスポット/106細胞はそれぞれ、1698、650および801であった。ロバストなT細胞応答も肺で検出され、群間で類似しており、平均IFN-γスポット/106細胞がそれぞれ756、784および777であった(
図9Fを参照のこと)。
【0181】
高齢者はCOVID-19に対して最も脆弱であるが、この集団の免疫老化は有効なワクチン接種に対する障壁をもたらす。免疫原性に対する免疫老化の影響を評価するために、2、8、または17月齢のBALB/Cマウス(n-5/群)に、筋肉内経路を介して10または1μgのLION/repRNA-CoV2Sを投与した。初回免疫から14日後に血清を採取し、抗S IgG濃度を測定した。
図10Aに示すように、2月齢および8月齢のマウスと比較した場合、17月齢のマウスにおいていずれの用量でも有意に低い抗体力価が観察され、最も免疫老化した集団では、十分な免疫を誘導するためにより高い用量および/または追加のブースター用量が必要とされ得ることが示唆された。2月齢マウスと8月齢マウスとの間で差は見られなかった。BALB/Cマウスはワクチン接種後により多くのTh2免疫偏向応答を発現する傾向があるが、LION/repRNA-CoV2Sは、BALB/Cマウスのすべての年齢群において1を超えるIgG2a:IgG1の比を誘導し(
図10Bおよび
図10Cを参照のこと)、Th1偏向免疫応答を示した。重篤で生命を脅かすCOVID-19が、Tヘルパー応答のタイプに関係なく、高齢個体においてより一般的であることが見受けられ、重篤なSARSが不十分なTh1応答を伴うTh2抗体プロファイルへの偏向に関連することを考えると、LION/repRNA-CoV2Sが、8月齢および2月齢のマウスにおいて、Th2偏向BALB/c株においてさえ、強いTh1偏向応答を誘導する能力は、このワクチン複合体の安全性および免疫原性に関して肯定的な徴候を示した。
非ヒト霊長類におけるLION/repRNA-CoV2Sの送達
【0182】
マウスにおいてLION/repRNA-CoV2S複合体でロバストな免疫原性を達成した後、ワクチン接種に対する免疫応答においてヒトによりよく似ている非ヒト霊長類モデルにおいてワクチン複合体が強い免疫応答を誘導することができるかどうかを調べるために、豚テールマカク(Macaca nemestrina)の免疫化を行った。
【0183】
図11Aに示す投与計画では、3匹のマカクにLION/repRNA-CoV2S複合体を、0週目に250μgの単回用量で筋肉内経路を介して投与し、2匹のマカクに50μgの初回用量を0週目に投与し、4週目に追加用量を筋肉内経路を介して投与した。ワクチンの安全性および免疫原性をモニタリングするために、ワクチン接種後10、14、28、および42日目に血液を採取した。50μg群は28日目に追加免疫ワクチン接種を受け、14日後に血液を採取した。初回ワクチン接種後42日まで、動物において、ワクチン注射部位の反応も有害反応も見られなかった。
【0184】
図11Bに示されるように、初回免疫後10、14、28および42日目に採取した血清の、免疫前採血によって確立されたベースラインに対するELISA分析は、単回の250μg用量で免疫化された3匹のマカクすべてが10日目という早い時期に血清転換され、抗S IgG濃度は、これらの3匹の動物において42日目までに48、51および61μg/mlに増加し続けることを示した。50μgのrepRNA-CoV2Sを受けたマカクはいずれも、単回投与後に血清転換したが、この同じ時点での250μg群における7、20および45μg/mlと比較して、抗S IgG濃度で有意に低い抗体応答を発現し、28日目までに1および0.5μg/mlであった(
図11Bを参照のこと)。しかしながら、ブースター免疫化の14日後、50μg群は、この時点で250μgの初回のみの群と同様のレベルの抗S IgG濃度(18および37μg/ml)を発現した(48、51、61μg/ml)(
図11Bを参照のこと)。さらに、
図11Cに示されるように、3匹のマカクから得た血清は、インビトロで細胞のただ1回の250μg用量の中和シュードウイルス(SARS-CoV-2 Wuhan-Hu-1シュードタイプ)形質導入により免疫化され、28日目までに相互IC50力価が1:38、1:20および1:47で、42日目までにレベルが1:472、1:108および1:149まで増加したのに対して、50μg群は、ブースター免疫化後にのみ、同様のロバストなIC50力価を達成し、42日目までに1:218および1:358のシュードウイルスIC50力価に達した。
【0185】
ワクチン接種の28日後および42日後に採取した血清を、80%プラーク減少中和試験(PRNT80)によって野生型SARS-CoV-2/WA/2020の中和についてさらに分析し、自然感染の15~64日後に採取した回復期のヒトから得た血清の中和力価と比較した。
図11Dに示されるように、50μgおよび250μgのLION/repRNA-CoV2Sによる単一の免疫化は、28日目までにそれぞれ1:32および1:66の平均PRNT80力価を誘導した。42日目までに、平均PRNT80力価は、50μg群ではブースター免疫後に1:176に、初回のみの250μg群では1:211に有意に増加した。5匹全てのマカクが、7人の回復期のヒトにおいて測定された力価と同じ範囲内のPRNT80力価を発現し(1:20未満から1:1280、発症後15から64日に採取)、5匹全てのワクチン接種マカク(1:197)と回復期のヒト(1:518)との間で平均中和力価に有意差はなかった(P=0.27、
図11D)。最近、血清中和力価は、SARS-CoV-2を50%組織培養感染量(TCID50)を中和したIC50力価として測定され、不活化SARS-CoV-2ワクチンによるワクチン接種後に再感染またはチャレンジしたアカゲザルで報告された。前者の報告では、1:8という低いIC50力価が再感染からの保護に関連していたが、後者では、1:50という低いIC50力価がウイルス量の減少および肺病変からの保護に関連していた。これらのデータは、LION/repRNA-CoV2ワクチンによる250μgの初回のみの免疫化または50μgの初回/ブースト免疫化が、非ヒト霊長類を感染および疾患から保護するのに十分な中和抗体のレベルを誘導することができることを示唆している。
【0186】
様々な感染症および癌に対するRepRNAワクチンは、臨床試験において安全かつ強力であることが示されており、LIONなどの有効な合成製剤と共に使用される場合、repRNAの無細胞かつ潜在的に高度にスケーラブルな製造プロセスは、mRNAを超えるさらなる利点を示した。ワクチンはストックすることができ、必要に応じて現場で組み合わせることができるので、2バイアルのアプローチは、RNAをカプセル化するLNP製剤を超える有意な製造および流通の利点を提供するであろう。さらに、LION/repRNA-CoV-2複合体は、マウスにおいて強いS特異的T細胞応答を誘導した。ヒトが関連するSARS-CoVに自然感染した後、中和抗体およびメモリーB細胞応答は、一部の個体では短命(約3年)であるが、メモリーT細胞は少なくとも6年持続することが報告されており(53)、このことは、長期応答における、特にロバストなメモリーB細胞応答を欠く個体におけるT細胞の潜在的な役割を示唆している。さらに、関連するSARS-CoVおよびMERS-CoVに対する抗ST細胞応答は、それぞれ、SARS-CoVまたはMERS-CoVに感染した正常マウスおよび老齢マウスのウイルスクリアランスに寄与する。
【0187】
要するに、これらの結果は、LION/repRNA-CoV2S複合体がSARS-CoV-2感染からの迅速な免疫保護を誘導する大きな可能性を示している。SARS-CoV-2感染に対して若齢集団と高齢集団の両方でロバストな免疫を1回の注射で誘導することができるスケーラブルなワクチンを広く流通させることによって、パンデミックの即時かつ効果的な封じ込めが実現するであろう。重要なことに、本ワクチンは、若齢マウスおよび高齢マウスの両方におけるTh1偏向抗体およびT細胞応答、改善された回復に関連する属性、ならびに、SARS-CoV感染患者におけるより軽度の疾患転帰を誘導する。非ヒト霊長類における単回用量投与は、SARS-CoV-2を強力に中和する抗体応答を誘発した。これらのデータは、SARS-CoV-2感染から保護するためのワクチンとしてのLION/repRNA-CoV2S複合体の可能性を裏付けている。
実施例8、ウサギにおけるワクチン送達のためのLION製剤の使用
【0188】
動物:8匹のニュージーランド白ウサギ(Oryctolagus cuniculus)(雄4匹および雌4匹)を、それぞれ雄2匹および雌2匹の2つの群に分けた。第1群には高用量LION-RNA製剤(LION製剤を含む250μgのrepRNA)を注射し、第2群には低用量LION-RNA製剤(LION製剤を含む10μgのrepRNA)を注射した。
【0189】
ワクチンの調製:LION担体およびrepRNA-CoV2Sを、10mMのクエン酸ナトリウムおよび20%スクロース緩衝液中、15の窒素対リン酸モル比で複合体化し、2週間間隔で3回の0.5mL筋肉内投与量で試験動物に送達した。
【0190】
ELISA:捕捉抗原として組換えSARS-CoV-2Sを使用するELISAによって抗原特異的IgG応答を検出した。ELISAプレート(Nunc,ロチェスター、ニューヨーク州)を1μg/mL抗原または精製ポリクローナルIgGの段階希釈でコーティングして、0.1MのPBS緩衝液中で標準曲線を作成し、0.2%BSA-PBSでブロックした。次いで、連続した順序で、PBS/Tween(登録商標)中で洗浄した後、段階希釈した血清試料、抗ウサギIgG-HRP(サウザン・バイオテック、アラバマ州バーミンガム)およびTMBペルオキシダーゼ基質をプレートに添加し、続いてHClでクエンチした。プレートを405nmで分析した(ELX808、Bio-Tek Instruments Inc、ウィノースキ、バーモント州)。各血清希釈点からの吸光度値を使用して力価を計算した。
【0191】
図12は、LION製剤を用いて製剤化されたrepRNA-SARS-CoV2Sを(それぞれ250μgおよび10μg用量レベルで)筋肉内注射したウサギにおける抗スパイクIgGレベルを示す。実施例に示すように、動物は注射されたワクチンに対する免疫応答を迅速に開始した。4週目には、いずれの用量レベルでも抗体力価はほぼプラトーに達し、6週目または8週目には有意に増加しなかった。
実施例9、ワクチン送達のためのLION製剤の使用-RSVワクチン
【0192】
LION製剤と複合体化したRSV repRNA(2.5μg)を、C57Bl/6マウスおよびBALB/cマウスに筋肉内投与した。筋肉内注射の28日後にマウス血液を採取し、ELISAによって抗FIgG濃度をアッセイすることによってタンパク質発現を調べた。C57Bl/6マウスおよびBALB/cマウスの血清中の抗FIgGレベルの結果を
図13Aに示す。
図13Aに示すように、C57BL/6マウスおよびBALB/cマウスのいずれにおいても、レプリコン646によってRVSGタンパク質特異的応答が誘導された。
【0193】
LION製剤と複合体化したRSV repRNA(2.5μg)を、C57Bl/6マウスおよびBALB/cマウスに筋肉内投与した。筋肉内注射の28日後にマウス血液を採取し、ELISAによって抗G(A2)IgG濃度をアッセイすることによってタンパク質発現を調べた。C57Bl/6マウスおよびBALB/cマウスの血清中の抗G(A2)IgGレベルの結果を
図13Bに示す。
図13Bに示すように、RVSGA2株タンパク質特異的応答は、BALB/cマウスにおいてのみレプリコン645によって誘導された。
実施例10、免疫調節RNAの送達のためのLION製剤の使用
LION製剤は、RNaseから免疫調節RNA PAMPを保護する
【0194】
RIG-IアゴニストであるPAMPを、例示的なLION製剤(実施例1の79-006Aと同様の15nm)を用いて製剤化した。LION組成物を調製するための一般的な製造法および材料は、実施例1に開示されたものに従った。
【0195】
図14A~
図14Bは、RNaseチャレンジからの保護をもたらしたLION製剤へのPAMPの結合を示す。
図14Aは、RNAゲル上で泳動し、遊離RNAについて評価した、様々なN:P複合体化比(それぞれ0.04、0.2、1、5、および25)でのPAMP-LION複合体のゲル電気泳動分析を示す。
図14Aに示すように、1、5および25のN:P比のPAMP-LION製剤には遊離RNAは存在しなかった。
図14Bは、裸のPAMP(製剤化されていないPAMP)と比較した、RNase Aによるチャレンジ後のPAMP-LION複合体のゲル電気泳動分析を示す。RNAをLIONから抽出し、アガロースゲルに流してRNA分解を評価した。この結果は、LIONへのPAMPの複合体化が、製剤化されていないRNA(裸)と比較して、RNase触媒分解からRNAを保護したことを示す。
LIONによって送達されるRIG-IアゴニストであるPAMPの免疫刺激
【0196】
この実施例は、PAMP-LION複合体をA549-Dual細胞に添加した場合の、LION製剤によって送達されるRIG-IアゴニストであるPAMPの免疫刺激を示す。A549-二重細胞は、SEAPの発現を駆動するIFN-βプロモーターおよびルシフェラーゼの発現を駆動するIFIT2プロモーターという2つのレポーター構築物を含む。
【0197】
PAMPを様々なN:P複合体化比(0.5、1.5、4.5、13.5、40.5、121.5)でLION製剤を用いて製剤化し、3.7ngのPAMP/LIONをA549-Dual細胞に添加した。
図15は、PAMP-LION複合体による、上清中のSEAP活性およびルシフェラーゼ活性によってそれぞれ測定されたIFN-βプロモーターおよびIFIT2の活性化をN:P比の関数として示す。結果は、IFN-βプロモーターおよびIFIT2プロモーターの両方について、全てのN:P比でPAMP-LION製剤によって送達されたRIG-IアゴニストであるPAMPの自然免疫刺激を示すが、4.5~40.5のN:P比が、IFN-βプロモーターに対してより良好な免疫刺激をもたらすように見受けられた。
LIONによって送達されるRIG-IアゴニストおよびTLR3アゴニストの免疫刺激
【0198】
この実施例は、RNA-LION複合体をA549-Dual細胞に添加した場合の、LION製剤によって送達されるRIG-IアゴニストであるPAMPおよびTLR3アゴニストであるRiboxximの免疫刺激を例示する。
【0199】
製剤化されていない(裸の対照)または8のN:P比でLION製剤を用いて製剤化された、PAMP(RIG-Iアゴニスト)またはRiboxxim(TLR3アゴニスト)を、A549-Dual細胞に添加した。
図16Aおよび
図16Bは、製剤化されていないRNAと比較した、上清中のSEAP活性およびルシフェラーゼ活性によってそれぞれ測定された、PAMP-LION製剤またはRiboxxim-LION製剤によるIFN-βプロモーター(
図16A)およびIFIT2(
図16B)の活性化を示す。結果は、自然免疫活性化を誘導するために働いたLION製剤と複合体化することによって送達されるRIG-IアゴニストであるPAMPおよびTLR3アゴニストであるRiboxximの両方の自然免疫刺激を示し、それらの製剤化されていないネイキッドコントロールと比較して、ロバストなレベルのレポータータンパク質発現を誘発する。
【0200】
図16Cは、製剤化されていないRiboxximと比較した、Riboxxim-LION製剤によるIFIT2の活性化を、Riboxxim用量レベルの関数として示す。結果は、試験した全ての用量レベルで、Riboxximと複合体化したLION製剤は、その製剤化されていない裸の対照と比較して、より高いレベルのIFIT2活性化を誘導したが、より高い用量レベルのRiboxxim-LION製剤は、より強いIFIT2活性化を誘導したことを示す。
【0201】
この実施例は、PAMP-LION複合体をC57BL/6マウスの鼻腔内に送達した場合の、LION製剤によって送達されたRIG-IアゴニストであるPAMPの免疫刺激を示す。PAMPを8のN:P比でLION製剤を用いて製剤化し、0.2、1、または5μgのPAMP/LIONをC57BL/6マウスの鼻孔に送達した。8時間後、マウスの鼻腔および肺を取り出し、直ちに凍結し、次いでRNAを抽出し、様々な標的遺伝子についてPCRに供した。
【0202】
図16Dは、ナイーブ対照と比較した処置マウスの鼻腔における自然免疫遺伝子の用量依存的誘導を示す。
図16Eは、処置マウスの肺における自然免疫遺伝子の活性化を示す。
図16Fは、PAMP:LION製剤を3日間連続して鼻腔内投与した場合、マウスが体重を維持したことを示す。
【0203】
これらの結果は、LIONが鼻腔内接種による生物活性PAMPの送達を支援したことを示しており、全ての試験用量レベルで、PAMPと複合体化したLION製剤は、製剤をマウスの鼻腔内に送達した場合、鼻腔および肺におけるタンパク質発現を上方制御した。
実施例11、108-011と表示された水酸化アルミニウムコアを有する脂質無機ナノ粒子(LION)の製造
[01100]
これらのLIONは、37.5mg/mlのスクアレン、37mg/mlのSpan(登録商標)60、37mg/mlのTween(登録商標)80、30mg/mlのDOTAPクロリド、1mg Al/mlの標的濃度のTOPO被覆Al(OOH)(Alhydrogel(登録商標)2%)粒子、および10mMのクエン酸ナトリウム二水和物を含む。LION粒子は、以下の手順で作製した。
【0204】
50ml遠心管に、10mlのAlhydrogel(登録商標)を加え、300rpmで3分間遠心分離した。上澄み水を除去し、等量のメタノールと交換した。粒子を再び300rpmで3分間遠心分離し、メタノール上清を除去し、等量のメタノールと交換した。この手順をさらに2回繰り返して、残留水を除去し、Alhydrogel(登録商標)粒子をメタノール10ml中に再懸濁させた。メタノールに分散したAlhydrogel(登録商標)のゼータ電位は+11.5mVであった。この分散液に250mg/mlのトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)を1ml添加し、混合物を37℃および毎分250回転に維持したオービタルシェーカー中に一晩放置した。これは、リガンド交換反応によってAlhydrogel(登録商標)の表面にTOPOの層をコーティングするために行った。分散液中の過剰なTOPOをメタノールで洗浄することによって除去した。TOPO被覆Al(OOH)粒子のゼータ電位は+5mVであると記録された。ゼータ電位の低下は、TOPOによるAlhydrogel(登録商標)の表面修飾が成功したことを示している。このプロセスは、Alhydrogel(登録商標)の親水性表面を疎水性に変換し、ひいてはLIONの「油」相におけるAlhydrogel(登録商標)の混和性を促進するために行われた。TOPO被覆Al(OOH)分散液中のメタノールを、摂氏55度で45分間、換気フード内で蒸発させて、TOPO-Al(OOH)粒子の乾燥コートを残した。乾燥したTOPO-Al(OOH)粒子に、3.7グラムのSpan(登録商標)60、3.75グラムのスクアレンおよび3.0グラムのDOTAPクロリドを添加して、「油」相を調製した。油相を、65℃に予熱した水浴中で45分間超音波処理した。
【0205】
別に、1リットルガラス瓶中で、Milli-Q水で調製した500mlの10mMのクエン酸ナトリウム二水和物溶液に19.5グラムのTween(登録商標)80を添加することによって「水」相を調製した。水相を30分間撹拌して、Tween(登録商標)80を完全に溶解させた。Tween(登録商標)80の完全溶解後、92mlの水相を200mlビーカーに移し、65℃に予熱した水浴中でインキュベートした。
【0206】
加熱された油相に、予熱された水相92mlを添加した。混合物を、ミルク状の外観を有する均質なコロイドが生成されるまで、VWR(登録商標)200ホモジナイザー(VWR International)を使用して直ちに乳化した。続いて、30,000psiでM110-PマイクロフルイダイザーのY型相互作用チャンバに流体を通すことによってコロイドを処理した。流体を、動的光散乱(Malvern Zetasizer Ultra)によって測定したz平均流体力学的直径が0.24の多分散指数で61.9nmになるまで17回通した。マイクロ流動化したLION試料を、200nmの孔径のポリエーテルスルホン(PES)シリンジフィルターで最終濾過した。
【0207】
表2は、アルファウイルス由来レプリコンRNA分子と複合体化する前後に得られたAlum-LIONナノ粒子のサイズおよびPDIをまとめたものである。以下の表3は、得られたAlum-LIONナノ粒子の特徴をまとめたものである。
【表2】
【表3】
実施例12、例示的なLION製剤によるRNA送達
【0208】
サブゲノム中にnLuc配列を含むVEEレプリコンRNAを6.4ng/μLに希釈し、氷上で30分間15のN:P比でLIONと複合体化させた。2種類のLION製剤、すなわち、一方は、15nmの酸化鉄(Fe3O4)ナノ粒子(SPIO)をコアとして有するもの(実施例1に従って調製した79-006Aと同様)、他方は、TOPO被覆オキシ水酸化アルミニウムナノ粒子をコアとして有するもの(実施例11に従って調製)を使用した。
【0209】
RNA:LION複合体を緩衝液(10%スクロース、5mMクエン酸ナトリウム)で1:10に希釈し、50μL(16ng RNA)を、150μLのOptimem中のA549-Dual cells(Invivogen)を含む96ウェルプレートのウェルに添加した。細胞を4時間トランスフェクトし、培地を完全ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(10%ウシ胎児血清、L-グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシンを含有)と交換し、5%CO2で、37℃で一晩インキュベートした。翌日、培地を除去し、Nano-Gloルシフェラーゼアッセイシステム(Promega)を製造者の説明書に従って使用してnLuc発現を評価した。Spectramax i3プレートリーダー(Molecular Devices)を使用してプレートを読み取った。
【0210】
図17は、SPIO(Fe-LION)またはTOPO被覆オキシ水酸化アルミニウムナノ粒子(Al-LION)をLION製剤のコアとして使用して、nLucをコードするレプリコンRNAとのRNA:LION複合体から得られたインビトロタンパク質発現を示す。この図は、RNAをLION製剤と複合体化した場合に、酸化鉄ナノ粒子またはオキシ水酸化アルミニウムナノ粒子のいずれかをコアとして含むLION製剤がいずれもnLucレプリコンのインビトロ送達に成功したことを示している。
【0211】
特許文献および非特許文献を含む本明細書に開示される全ての文献は、それぞれが個別に組み込まれているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0212】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図するものではないことを理解されたい。本明細書で具体的に定義されない限り、本明細書で使用される用語は、関連技術で知られているその従来の意味を与えられるべきであることをさらに理解されたい。
【0213】
本明細書を通して「一実施形態」または「実施形態」およびその変形への言及は、その実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれ、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すとは限らないことを意味する。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1または複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。略語「e.g.」は、非限定的な例を示すために本明細書で使用され、用語「例えば」と同義である。
【0214】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、複数の指示対象、すなわち1または複数のものを含み、名詞に続く文字「s」は、内容および文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、その名詞の複数形および単数形の両方を示す。また、接続詞「および(and)」および「または(or)」は、一般に、「および/または(and/or)」を含む最も広い意味で使用され、これは、内容および文脈が場合により包括性または排他性を明確に示さない限り、関連する項目またはアイデアのすべてを含む実施形態、および関連する項目またはアイデアのすべてよりも少ないものを含む1または複数の他の代替実施形態を包含することを意図することに留意されたい。
【0215】
さらに、本発明の特徴または態様がマーカッシュ群を単位として記載される場合、本発明は、マーカッシュ群の任意の個々のメンバーおよびメンバーの任意のサブグループを包含し、それによってマーカッシュ群の任意の個々のメンバーおよびメンバーの任意のサブグループの観点から記載されることも意図され、出願人は、マーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーの任意のサブグループを具体的に指すように出願書類または特許請求の範囲を修正する権利を有する。
【0216】
値の範囲が本明細書で示される場合、文脈上明確に指示されない限り、その範囲の上限と下限との間の下限の単位の10分の1までの各介在値、およびその記載された範囲内の任意の他の記載値または介在値が本発明に含まれることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立して、より小さい範囲に含まれてもよく、記載された範囲内の任意の具体的に除外された限界を条件として、本発明に包含される。記載された範囲が限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界の一方または両方を除外した範囲も本発明に含まれる。例えば、本明細書に示される任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比の範囲、または整数範囲は、特に明記しない限り、記載された範囲内の任意の整数の値、および適切な場合はその分数(整数の1/10および100分の1など)を含むと理解されるべきである。また、ポリマーサブユニット、サイズまたは厚さなどの任意の物理的特徴に関する本明細書に記載された任意の数の範囲は、特に明記しない限り、記載された範囲内の任意の整数を含むと理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、特に明記しない限り、示された範囲、値、または構造の±20%を意味する。
【国際調査報告】