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特表2023-519017シリンダ停止及び高出力密度(HPD)ブレーキエンジン環境における単一アクチュエータバルブのシーケンス制御
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  • 特表-シリンダ停止及び高出力密度(HPD)ブレーキエンジン環境における単一アクチュエータバルブのシーケンス制御 図1
  • 特表-シリンダ停止及び高出力密度(HPD)ブレーキエンジン環境における単一アクチュエータバルブのシーケンス制御 図2
  • 特表-シリンダ停止及び高出力密度(HPD)ブレーキエンジン環境における単一アクチュエータバルブのシーケンス制御 図3
  • 特表-シリンダ停止及び高出力密度(HPD)ブレーキエンジン環境における単一アクチュエータバルブのシーケンス制御 図4
  • 特表-シリンダ停止及び高出力密度(HPD)ブレーキエンジン環境における単一アクチュエータバルブのシーケンス制御 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-09
(54)【発明の名称】シリンダ停止及び高出力密度(HPD)ブレーキエンジン環境における単一アクチュエータバルブのシーケンス制御
(51)【国際特許分類】
   F01L 13/06 20060101AFI20230427BHJP
【FI】
F01L13/06 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559308
(86)(22)【出願日】2021-04-02
(85)【翻訳文提出日】2022-09-28
(86)【国際出願番号】 IB2021052761
(87)【国際公開番号】W WO2021198992
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】63/004,623
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505413266
【氏名又は名称】ジェイコブス ビークル システムズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グロン、ジュニア、ジー. マイケル
(72)【発明者】
【氏名】バルトラッキ、ジャスティン ディー.
【テーマコード(参考)】
3G018
【Fターム(参考)】
3G018AA05
3G018AB09
3G018AB17
3G018BA21
3G018CA12
3G018DA17
3G018DA28
3G018EA10
3G018FA11
3G018GA12
(57)【要約】
内燃機関におけるバルブ運動を制御するためのシステム及び関連の方法は、ソレノイド制御バルブにパルス状に通電するパルス構成要素を提供し、制御バルブを共通の吸気及び排気主イベント停止機構の対になったセットに連通させる油圧ネットワークに一時的な圧力変化を引き起こし、主イベント停止機構は、それぞれバルブブリッジに設けることができる。圧力変化は、主吸気イベント運動の停止を回避しつつ、排気バルブの主イベント運動の油圧停止をもたらし、それによって吸気主イベントバルブ運動を保護し、追加のブレーキ又は他の動作のための吸気主イベント運動の使用をサポートする。このシステム及び方法は、高出力密度(HPD)エンジンブレーキと組み合わせたシリンダ停止(CDA)を使用するエンジン環境に特に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのシリンダを有する内燃機関におけるシリンダ停止及び高出力密度(HPD)エンジンブレーキを促進するためにバルブ運動を制御するためのシステムであって、前記システムは、
前記少なくとも1つのシリンダに関連付けられたバルブセットであって、少なくとも1つの吸気バルブ及び少なくとも1つの排気バルブを含むバルブセットと、
前記少なくとも1つの吸気バルブ及び前記少なくとも1つの排気バルブにおいて主イベント運動を形成するように構成された主イベント運動システムと、
前記排気バルブのうちの少なくとも1つに運動を追加することによって、エンジンブレーキ動作中にエンジンブレーキ運動を形成するように構成されたエンジンブレーキシステムと、
前記少なくとも1つの吸気バルブ及び前記少なくとも1つの排気バルブに関連付けられたそれぞれの停止機構を含み、その主イベント運動を選択的に停止させる停止システムであって、制御バルブと、前記制御バルブと前記停止機構との間に油圧連通を提供する少なくとも1つの油圧リンクとを更に含む停止システムと、を備え、
前記停止システムは、前記制御バルブに通電するように適合されたパルス構成要素を更に含み、それにより、エンジンサイクル中に前記少なくとも1つの油圧リンクに油圧の変動を、主排気イベント運動がそれ以外でも発生する場合には、前記少なくとも1つの油圧リンクの前記油圧が前記少なくとも1つの排気バルブと関連付けられた前記停止機構を作動させるのに十分であり、主排気イベント運動が停止されるように引き起こし、主吸気イベント運動が発生する場合には、前記少なくとも1つの油圧リンクの前記油圧が前記少なくとも1つの吸気バルブに関連付けられた前記停止機構を作動させるのに不十分であるように引き起こす、システム。
【請求項2】
前記パルス構成要素は、前記制御バルブのパルス動作を提供するように適合されたエンジン制御ユニットである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記排気停止機構は、停止回避ウィンドウによって特徴付けられており、前記パルス構成要素は、十分な持続時間のパルス、又は適切な時間に開始されるパルスを提供するように構成されており、それにより、前記排気停止機構の油圧が、前記停止回避ウィンドウ全体を通して上昇したレベルに維持される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの吸気バルブの前記主吸気イベント運動は、前記シリンダ内の追加の制動力を促進する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記エンジンブレーキシステムは、前記内燃機関の各サイクルごとに、少なくとも2つの圧縮解放イベントを形成するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記主イベント運動システムは、少なくとも2つのバルブブリッジを備え、前記停止機構は、前記少なくとも2つのバルブブリッジ上の折り畳み機構を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記エンジンブレーキシステムは、前記排気バルブのうちの少なくとも1つに関連付けられた専用ブレーキロッカーを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記エンジンブレーキシステムは、前記少なくとも1つのバルブセットの1つ以上のバルブに制動運動を形成するために、油圧流体の流量を制御するように配置されたブレーキソレノイドバルブを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記停止システムは、前記エンジンからの動力需要に応じて、前記少なくとも1つのシリンダのうちの1つ以上において前記吸気停止機構を選択的に停止させるように適合されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記パルス構成要素は、前記エンジンの速度に基づいて、前記パルス持続時間又はタイミングを調整するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
少なくとも1つのシリンダを有する内燃機関におけるシリンダ停止及び高出力密度(HPD)エンジンブレーキを促進するためにバルブ運動を制御する方法であって、システムが、前記少なくとも1つのシリンダの各々に関連付けられたバルブセットであって、前記バルブセットの各々が、少なくとも1つの吸気バルブ及び少なくとも1つの排気バルブを含むバルブセットと、
前記バルブセットの各々において主イベント運動を形成するための主イベント運動システムと、
前記排気バルブのうちの少なくとも1つに運動を追加することによって、エンジンブレーキ動作中にエンジンブレーキバルブ運動を形成するためのエンジンブレーキシステムと、少なくとも1つのバルブセットの前記吸気バルブ及び排気バルブの主イベント運動を選択的に停止するためのデアクティベータを含むシリンダ停止システムと、
主排気イベント運動がそれ以外に発生する場合、及び主吸気イベント運動が停止されない場合には、主排気イベント運動が停止されるように前記デアクティベータを制御するように適合された停止コントローラと、を有し、前記方法は、
前記バルブセットのうちの少なくとも1つのために前記ブレーキシステムにおけるブレーキ動作を開始することと、
前記シリンダ停止システムにおいてシリンダ停止動作を開始することであって、前記シリンダ停止動作は、前記少なくとも1つのバルブセットの少なくとも1つの吸気バルブ及び少なくとも1つの排気バルブの主イベント運動を停止させようとする、開始することと、
前記少なくとも1つの排気バルブの主イベント運動が停止され、一方、前記少なくとも1つの吸気バルブの主イベント運動は停止されないように、前記デアクティベータコントロ-ラにより制御バルブをパルシングすることと、を含む、方法。
【請求項12】
前記内燃機関の各サイクルごとに少なくとも2つの圧縮解放イベントを提供することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの吸気バルブの前記主イベント運動は、前記ブレーキ動作において実行される圧縮解放ブレーキイベントを促進する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つのシリンダを有する内燃機関におけるシリンダ停止及び高出力密度(HPD)エンジンブレーキを促進するためにバルブ運動を制御するためのシステムであって、前記システムは、
前記少なくとも1つのシリンダに関連付けられたバルブセットであって、少なくとも1つの吸気バルブ及び少なくとも1つの排気バルブを含むバルブセットと、
前記少なくとも1つの吸気バルブ及び前記少なくとも1つの排気バルブにおいて主イベント運動を形成するように構成された主イベント運動システムと、
前記排気バルブのうちの少なくとも1つに運動を追加することによって、エンジンブレーキ動作中にエンジンブレーキ運動を形成するように構成されたエンジンブレーキシステムと、
前記少なくとも1つの吸気バルブ及び前記少なくとも1つの排気バルブに関連付けられたそれぞれのデアクティベータを含み、その主イベント運動を選択的に停止させるための停止システムであって、デアクティベータコントローラと、前記デアクティベータコントローラと前記デアクティベータとの間に通信を提供するように適合された少なくとも1つの通信リンクとを更に含む停止システムと、を備え、
前記停止システムは、停止信号を前記デアクティベータに提供するように適合されたパルス構成要素を更に含み、それにより、所与のエンジンサイクルごとに、前記少なくとも1つの排気バルブに関連付けられた前記デアクティベータが停止され、一方、前記少なくとも1つの吸気バルブに関連付けられた前記デアクティベータは停止されない、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権及び関連出願)
本出願は、2020年4月3日に出願された「RAPID SEQUENCING OF PAIRED INTAKE AND EXHAUST VALVES WITH ONE ACTUATOR」と題する米国仮出願第63/004,623号に対する優先権を主張し、その主題は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、概して、内燃機関のバルブ作動システムに関し、特に、対の吸気バルブ及び排気バルブの迅速なシーケンスを制御するためのシステム及び方法に関する。開示されたシステム及び方法は、シリンダ停止と高出力密度(high-power density、HPD)エンジンブレーキとを組み合わせたエンジン環境におけるバルブ運動のシーケンス制御に特に好適であり得る。開示されたシステム及び方法はまた、共通の単一アクチュエータ、例えば単一の高速ソレノイドバルブにより、対の吸気及び排気バルブを制御するのに特に好適であり得る。
【背景技術】
【0003】
公知のバルブ作動システムは、補助ロッカーアーム及び補助作動運動源(例えば、専用補助カム)を利用して、主イベントバルブ運動に追加される運動である補助バルブ運動を提供することができる補助バルブ作動システムを含む。主イベントバルブ運動とは、関連するシリンダにおいて典型的な4ストロークエンジンサイクルで正の動力形成(すなわち、制御された吸気、圧縮、燃焼、及び排気ストローク)を促進する典型的な吸気及び排気バルブ運動を指す。例えば、そのような補助バルブ作動システム及び関連するバルブ運動は、圧縮解放(compression-release、CR)エンジンブレーキ、又は限定されないが、後期吸気バルブ閉鎖(late intake valve closing、LIVC)、早期排気バルブ開口(early exhaust valve opening、EEVO)、早期吸気バルブ閉鎖(early intake valve closing、EIVC)、及び/又は後期吸気バルブ開口(late intake valve opening、LIVO)などの多数の補助バルブイベント若しくは可変主イベントタイミング可変バルブ時間イベント(しばしば可変バルブ作動又はvariable valve actuation、VVAと称される)のいずれかを提供することができる。
【0004】
様々な形式のCRエンジンブレーキが当該技術分野で公知である。一般的に、CRエンジンブレーキは、1つ以上のエンジンシリンダが、実質的に空気圧縮機として作用するように作動され、それによって車両の駆動トレインを介して車両遅延動力を提供するときに発生する。いわゆる2ストローク又は高出力密度(HPD)圧縮解放エンジンブレーキは、エンジンの各サイクルごとに2つのCRイベントを提供し、これは、エンジンの各サイクルごとに単一のCRイベントのみが提供される従来のCRシステムと比較して、増大された遅延動力を提供する。HPDブレーキシステムのいくつかのバージョンでは、HPDエンジンブレーキを実行する補助バルブ作動運動を優先して、主バルブ作動運動が「失われる」(エンジンバルブに伝達されない)ようにする必要がある。
【0005】
当技術分野で更に知られているように、バルブ作動システムは、内燃機関のシリンダを停止させるように構成することができる。典型的には、シリンダ停止(cylinder deactivation、CDA)を実現するシステムは、吸気バルブ及び排気バルブを任意のバルブ作動運動源から分離することを可能にし、それによって吸気バルブ及び排気バルブのバルブ動作を維持する機構を含む。多くの場合、そのようなCDAシステムが油圧で作動される限りにおいて、1つ以上のアクチュエータ(例えば、高速ソレノイド)を使用して、CDA機構への油圧流体の適用を制御することができる。主吸気及び排気バルブイベントの分離を必要とする共通の特徴を考慮すると、2ストロークHPD CRエンジンブレーキ及びCDAの両方を提供するシステムが容易に想到され得る。
【0006】
しかしながら、CDAと他の形式のCRエンジンブレーキとの両立は、容易に達成されない。2ストロークHPDを使用すると、シリンダの非アクティブ化メカニズム(デアクティベータとも呼ばれる)により、メインの吸気バルブイベント及び排気バルブイベントが排除され、吸気及び排気ブレーキロッカーアームが2つの吸気イベント、2つのCRイベント、及び2つのブレーキガス再循環(brake gas recirculation、BGR)イベントをカム回転(エンジンサイクル)ごとに提供できるようになる。いわゆる1.5ストロークHPDでは、主排気イベントが停止される。しかしながら、主吸気バルブイベントは、停止されず、第2のCRイベントをサポートするために追加の吸気リフトイベントは提供されない。通常の吸気は、第1のCRに対して提供され、第2の圧縮解放イベントで使用されるガスは、吸気マニホールドから空気を引き出すことなく、排気マニホールドガスの再循環によってのみ生成される。そのような1.5ストロークHPDバルブ作動運動の例を図1に示す。図示されるように、通常の主排気バルブ作動バルブ運動は失われ(そうでなければこれは、典型的には、図示の例では約180~300度のクランク角度で発生する)、2つのCRイベント120及び2つのBGRイベント122、124を含む補助バルブ作動運動によって置き換えられる。更に図示されるように、主排気イベントとは異なり、主吸気バルブイベント134は失われないが、代わりに、第1のCRイベント120(図示の例では0度のクランク角度を中心とする)にガスを提供するように動作する。
【0007】
1.5ストロークHPDエンジンブレーキ中に主吸気イベントを継続する必要性を考慮すると、排気及び吸気メインイベントの両方を停止することになるCDAメカニズムに頼ることは実行可能ではない。この制限を克服するために、各セットに対して別個のアクチュエータを用意することによって、吸気バルブ及び排気バルブの各セットを独立して制御することが可能である。例えば、6気筒エンジンでは、これは12個の別個のアクチュエータ、すなわち吸気バルブのための6つのアクチュエータ、及び排気バルブのための6つのアクチュエータを必要とする。したがって、CDA動作中、12個すべてのアクチュエータが作動して、吸気及び排気バルブのすべてのセットを停止させる。更に、1.5ストロークHPDの間、排気バルブのための6つのアクチュエータは、排気バルブを停止させるように作動されるが、吸気バルブのための6つのアクチュエータは、主バルブイベントに従って吸気バルブの動作を依然として可能にするように作動される。この構成は、機能することができるが、別個のアクチュエータを提供することによって生じるコスト及び必要空間、並びにシステムの複雑性の増加は、法外なものとなろう。
【0008】
したがって、上記の欠点を伴わずに協働的なバルブ作動運動源を実現するシステム及び関連する方法は、当該技術分野の進歩を意味することになる。
【発明の概要】
【0009】
本開示の態様は、シリンダ停止並びに高出力密度(HPD)エンジンブレーキを使用するエンジン環境に特に適したバルブ運動を制御するためのシステムを提供する。パルス構成要素は、制御バルブにパルス状に通電して、油圧通路内に一時的な圧力増加を生じさせ、1つ以上のシリンダの少なくとも1つの排気バルブにおける主イベント運動を停止させ、一方、主吸気イベント運動の停止はバイパスして、それによって吸気主イベント運動を維持し、エンジンブレーキがシリンダ停止と組み合わされて実行される場合に、ブレーキ(すなわち、1.5ストロークHPDブレーキ)動作におけるそのような運動の使用をバイパスするために提供することができる。パルス構成要素は、制御バルブにパルス通電を提供するように適合されたエンジン制御ユニットにより実現することができる。
【0010】
本開示の一態様によれば、少なくとも1つのシリンダを有する内燃機関におけるシリンダ停止及び高出力密度(HPD)エンジンブレーキを促進するためのバルブ運動を制御するためのシステムは、少なくとも1つのシリンダに関連付けられたバルブセットであって、少なくとも1つの吸気バルブ及び少なくとも1つの排気バルブを備えるバルブセットと、少なくとも1つの吸気バルブ及び少なくとも1つの排気バルブにおいて主イベント運動を形成するように構成された主イベント運動システムと、排気バルブのうちの少なくとも1つに運動を追加することによって、エンジンブレーキ動作中にエンジンブレーキ運動を形成するように構成されたエンジンブレーキシステムと、少なくとも1つの吸気バルブ及び少なくとも1つの排気バルブに関連付けられたそれぞれの停止機構を含み、その主イベント運動を選択的に停止させる停止システムであって、制御バルブと、その制御バルブと停止機構との間に油圧連通を提供する少なくとも1つの油圧リンクとを更に含む停止システムと、を備え、停止システムは、制御バルブに通電するように適合されたパルス構成要素を更に含み、それにより、エンジンサイクル中に少なくとも1つの油圧リンクに油圧の変動を、主排気イベント運動がそれ以外でも発生する場合には、少なくとも1つの油圧リンクの油圧が少なくとも1つの排気バルブと関連付けられた停止機構を作動させるのに十分であり、主排気イベント運動が停止されるように引き起こし、主吸気イベント運動が発生する場合には、少なくとも1つの油圧リンクの油圧が少なくとも1つの吸気バルブに関連付けられた停止機構を作動させるのに不十分であるように引き起こす。
【0011】
更なる態様によれば、パルス構成要素は、制御バルブのパルス動作を提供するように適合されたエンジン制御ユニットであり得る。更なる態様によれば、吸気停止機構は、停止回避ウィンドウによって特徴付けられており、パルス構成要素は、十分な持続時間、又は適切な時間に開始されるパルスを提供するように構成されており、それにより、排気停止機構の油圧は、停止回避ウィンドウ全体を通して上昇したレベルに維持される。更なる態様によれば、少なくとも1つの吸気バルブの主吸気イベント運動は、シリンダ内の追加の制動力を促進する。更なる態様によれば、エンジンブレーキシステムは、内燃機関の各サイクルごとに、少なくとも2つの圧縮解放イベントを形成するように構成されている。更なる態様によれば、主イベント運動システムは、少なくとも2つのバルブブリッジを備え、停止機構は、少なくとも2つのバルブブリッジ上の折り畳み機構を含む。更なる態様によれば、エンジンブレーキシステムは、排気バルブのうちの少なくとも1つに関連付けられた専用ブレーキロッカーを備える。更なる態様によれば、エンジンブレーキシステムは、少なくとも1つのバルブセットの1つ以上のバルブに制動運動を形成するために、油圧流体の流量を制御するように配置されたブレーキソレノイドバルブを備える。更なる態様によれば、停止システムは、エンジンからの動力需要に応じて、少なくとも1つのシリンダのうちの1つ以上において吸気停止機構を選択的に停止させるように適合されている。更なる態様によれば、パルス構成要素は、エンジンの速度に基づいてパルス持続時間又はタイミングを調整するように構成されている。
【0012】
本開示の更なる態様によれば、少なくとも1つのシリンダを有する内燃機関におけるシリンダ停止及び高出力密度(HPD)エンジンブレーキを促進するためのバルブ運動を制御する方法であって、システムが、少なくとも1つのシリンダの各々に関連付けられたバルブセットであって、バルブセットの各々が、少なくとも1つの吸気バルブ及び少なくとも1つの排気バルブを含むバルブセットと、バルブセットの各々において主イベント運動を形成するための主イベント運動システムと、排気バルブのうちの少なくとも1つに運動を追加することによって、エンジンブレーキ動作中にエンジンブレーキバルブ運動を形成するためのエンジンブレーキシステムと、少なくとも1つのバルブセットの吸気及び排気バルブの主イベント運動を選択的に停止するためのシリンダ停止システムと、制御バルブに通電するように適合されたパルス構成要素であって、それによってエンジンサイクル中に少なくとも1つの油圧リンクに油圧の変化を、主排気イベント運動がそれ以外でも発生する場合には、少なくとも1つの油圧リンクにおける油圧が少なくとも1つの排気バルブに関連付けられた停止機構を作動させるのに十分であり、主排気イベント運動が停止されるように引き起こし、主吸気イベント運動が発生する場合には、少なくとも1つの油圧リンクにおける油圧が少なくとも1つの吸気バルブに関連付けられた停止機構を作動させるには不十分であるように引き起こすパルス構成要素と、を有し、この方法は、バルブセットのうちの少なくとも1つのためにブレーキシステムにおけるブレーキ動作を開始することと、シリンダ停止システムにおいてシリンダ停止動作を開始することであって、シリンダ停止動作は、少なくとも1つのバルブセットの少なくとも1つの吸気バルブ及び少なくとも1つの排気バルブの主イベント運動を停止させようとする、開始することと、少なくとも1つの排気バルブの主イベント運動が停止され、一方、少なくとも1つの吸気バルブの主イベント運動は停止されないように、パルス構成要素により制御バルブをパルシングすることと、を含む、方法。
【0013】
更なる態様によれば、バルブ運動を制御する方法は、内燃機関の各サイクルごとに少なくとも2つの圧縮解放イベントを提供することを更に含み得る。更なる態様によれば、バルブ運動を制御する方法は、ブレーキ動作において実行される圧縮解放ブレーキイベントを促進する少なくとも1つの吸気バルブの主イベント運動を含み得る。
【0014】
更なる態様によれば、少なくとも1つのシリンダを有する内燃機関におけるシリンダ停止及び高出力密度(HPD)エンジンブレーキを促進するためにバルブ運動を制御するためのシステムは、少なくとも1つのシリンダに関連付けられたバルブセットであって、少なくとも1つの吸気バルブ及び少なくとも1つの排気バルブを備えるバルブセットと、少なくとも1つの吸気バルブ及び少なくとも1つの排気バルブにおいて主イベント運動を形成するように構成された主イベント運動システムと、排気バルブのうちの少なくとも1つに運動を追加することによって、エンジンブレーキ動作中にエンジンブレーキ運動を形成するように構成されたエンジンブレーキシステムと、少なくとも1つの吸気バルブ及び少なくとも1つの排気バルブに関連付けられたそれぞれのデアクティベータを含み、その主イベント運動を選択的に停止させるための停止システムであって、デアクティベータコントローラと、そのデアクティベータコントローラとデアクティベータとの間に通信を提供するように適合された少なくとも1つの通信リンクとを更に含む停止システムと、を備え、停止システムは、停止信号をデアクティベータに提供するように適合されたパルス構成要素を更に含み、それにより、所与のエンジンサイクルごとに、少なくとも1つの排気バルブに関連付けられたデアクティベータが停止され、一方、少なくとも1つの吸気バルブに関連付けられたデアクティベータは停止されない。
【0015】
本開示に記載される特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている。これらの特徴及び付随する利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を考慮することから明らかになるであろう。ここで、単なる例として、同様の参照番号が同様の要素を表す添付の図面を参照して、1つ以上の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】1.5ストロークHPDエンジンブレーキを提供するための従来技術のバルブ作動シーケンスにおいてクランクシャフト角度の関数としてバルブリフトを示すグラフである。
図2】本開示による一実施形態による例示的なシステム及びアクチュエータシーケンス制御方法及び技術の概略図である。
図3】本開示による第2の実施形態によるシステム及びアクチュエータシーケンス制御技術及び方法を示す概略図である。
図4】本開示の一態様によるシーケンス制御システム、方法、及び技術のグラフである。
図5】本開示の態様を実現するのに適した例示的な停止機構又はデアクティベータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一般的に、本開示は、上記の欠点に対処する。特に、本開示による内燃機関は、2ストロークHPDエンジンブレーキを実現するバルブ作動運動、並びに吸気バルブ及び排気バルブの作動を停止することができるシリンダ停止システムを提供することができる圧縮解放ブレーキシステムを備える。CRブレーキシステム及びCDAシステムを作動させる際に、本開示は、例えば、1.5ストロークHPDエンジンブレーキを提供することが望まれる場合、(CDAシステムが動作しているにもかかわらず)吸気バルブ作動の停止を防止することを更に提供する。この目的のために、アクチュエータの数及び/又は配置及び適合が異なる様々なシステム構成が本明細書に記載されている。そのようなシステムを作動させ、かかるアクチュエータの動作を同期させるための方法も本明細書に記載される。
【0018】
本明細書に記載の実施形態は、そうでなければ必要とされるアクチュエータの数を低減しつつ、CDA及びブレーキ構成要素の動作を促進するための技術、システム、及び方法を提供する。そのようなシステム及び方法は、単一のアクチュエータを使用して、対の吸気及び排気主イベントの作動/停止を制御することを可能にする。具体的には、本開示は、対の吸気及び排気バルブセットの作動を迅速にシーケンス制御するための配置及び適合を説明し、したがってこのシーケンスがエンジン動作(例えば、クランクシャフト回転位置/角度)に対して正しくタイミングが取られている場合、単一のアクチュエータが、どのバルブ(吸気又は排気)をアクティブのままとするか、及びエンジンサイクルの一部を選択的に管理することができる。説明された実施形態では、アクチュエータ(すなわち、高速ソレノイド制御バルブ)は、所定のエンジンクランクシャフト回転位置又は角度で排気バルブを停止させて、排気バルブの停止を達成し、しかし吸気バルブの停止は防止(すなわち、作動を維持)するように制御することができる。このプロセスは、エンジンサイクルごとに繰り返され、アクチュエータは、1.5ストロークHPDエンジンブレーキが望まれる場合、所望の排気バルブの停止/吸気バルブの作動を継続的に提供するために、所定のエンジンクランク位置に制御される。
【0019】
本開示による実施形態は、図2図5を参照して例示される。図5は、図2図4に概略的に示されるシステムを更に理解するのに有用である、米国特許第9,790,824号に記載されているものなどのバルブ作動システム構成要素の例示的な重要な特徴の関連する顕著な詳細を示す。これらの図において、いくつかの構成要素が省略されており(機能ブロックとして例示されている)、又は全体的なシステムの重要な態様の説明を明確にするために、省略されている。米国特許第9,790,824号の開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
図2図3、及び図5に示されるように、バルブセットは、各シリンダに関連付けることができ、各バルブセットは、吸気バルブブリッジ216によって作動される一対の吸気バルブ210、212、及び排気バルブブリッジ256によって作動される一対の排気バルブ250、252を含み得る。吸気バルブ210、212は、カム(図5の330によって概略的に表される)を含み得る運動源から運動を受け入れる主吸気ロッカー218によって駆動される吸気バルブブリッジ216を備え得る吸気バルブ作動システム214によって作動される。理解されるように、図は3気筒エンジン環境を示しており、異なるエンジンシリンダ上の同様の構成要素を示すために小数点を使用する。したがって、追加の吸気バルブセット(図2及び図3を明確にするためにバルブは省略されているが)は、吸気バルブブリッジ216.1及び216.2に関連付けられ、追加の排気バルブセットは、排気バルブブリッジ256.1及び256.2に関連付けられている。吸気バルブブリッジ216は、吸気バルブブリッジ216を停止させるための、その中に一体化された折り畳み又は停止機構204を含み得る。補助吸気ロッカー220(図5)は、吸気バルブブリッジピン222を介して吸気バルブ212のうちの1つに補助運動を提供することのできる補助運動源又はカム340(図5)によって駆動することができ、吸気バルブブリッジピンは吸気バルブブリッジ216とは独立して運動することができる。ロッカーシャフト(図2及び図3の290)に取り付けることのできる補助ロッカーアーム220は、補助運動源340からの補助動力を、吸気バルブブリッジ216のブリッジピン222、及び吸気バルブ212のうちの1つに伝達することができる。しかしながら、1.5ストロークのHPDシステムでは、吸気補助運動構成要素は不要であり、したがって除去することができる。本明細書において「デアクティベータ」とも呼ばれ得る停止機構は、内側プランジャ310(図5)を含み得、これ204は、油圧下で下方に変位され、一対のウェッジ要素312の後退を可能にし、次いで、ブリッジ216に対する及びブリッジ216内での外側プランジャ314の下向きの運動を可能にする。
【0021】
説明したように、図2及び図3の各々は、3気筒エンジン環境に関連する構成要素を示す。しかしながら、実際には、図示された構成要素は、より多くの又はより少ない数のシリンダに適用することができ、又は本明細書に記載される構成要素は、図示されていないより多くのシリンダを制御するために複製することができることが理解される。したがって例えば、3気筒が本実施例に示されているが、いわゆる直列6気筒エンジンとともに使用するためのシステムは、例示されたシステムを、単に3気筒の第2のセットに複製することによって達成され得る。
【0022】
理解されるように、図5は、構成要素を吸気バルブトレインのコンテクストにおいて示しているが、同様の配置及び構成要素を、図中、高い位置に示されている排気バルブトレイン構成要素に使用することができる。排気バルブは、排気バルブブリッジ256を備え得る排気バルブ作動システム254によって作動することができ、排気バルブブリッジは、カムなどの主排気運動源から運動を受け取る主排気ロッカー258によって駆動することができる。排気バルブブリッジ256は、排気バルブブリッジ256を停止させるために、その中に一体化された折り畳み又は停止機構202を含み得る。カムによって駆動することができる補助排気ロッカー206は、排気バルブブリッジピン262を介して排気バルブ252のうちの1つに補助(ブレーキ)運動を提供することができ、排気バルブブリッジピンは排気バルブブリッジ256とは独立して運動することができる。エンジンブレーキロッカーアーム206は、ブレーキロッカーアーム206が(図示例のブリッジピン262を介して)排気バルブに圧縮解放バルブ作動運動を提供することができるように、排気バルブ252に関連して各シリンダに設けられた専用ロッカーアームであってもよい。本開示全体を通して、各ブレーキロッカーアーム206は、HPDエンジンブレーキバルブ作動運動、すなわち2つのCRイベント及び1つ以上の追加のイベントを提供することができる補助作動運動源(図5に示されるカム340に類似する)に関連付けられ得ることが想定される。
【0023】
理解され、以下で更に詳細に説明されるように、吸気バルブブリッジ216及び排気バルブブリッジ256の停止機構204、202がそれぞれ停止されない場合(すなわち、油圧流体がそれぞれ停止機構204及び202に提供されない場合)、吸気バルブ作動システム214及び排気バルブ作動システム254は、少なくとも部分的に、吸気バルブ210、212及び排気バルブ250、252に主イベント運動(すなわち、正の動力モード)を促進する主イベント運動システムとして機能し得る。停止機構204、202が停止されると(すなわち、適切な圧力の油圧流体及び/又は流れが停止機構に供給される場合)、吸気バルブ作動システム214及び排気バルブ作動システム254は、補助運動をそれぞれの吸気バルブ及び排気バルブに伝達するように機能することができ、又はシリンダ停止の場合には、バルブに運動を伝達しないことができる。
【0024】
本開示から容易に理解されるように、吸気バルブ作動システム214及び排気バルブ作動システム254の動作の制御は、1つ以上の高速制御ソレノイドバルブ、及び様々なバルブトレイン構成要素内の油圧リンク又は通路のネットワークを介して実現することができ、制御バルブが吸気及び排気バルブ作動システム214、254を制御することができる油圧ネットワーク又は回路を提供することができる。本開示の図全体を通して、太い実線で示される油圧リンク又は通路は、そのような線によって示される油圧通路に、下流の構成要素を作動させるのに十分な圧力及び/又は流量の油圧流体がチャージされている状態を表し、これは、油圧通路又はリンクを介した「オン」信号の通信とみなすことができ、一方、アウトライン又は細い平行線で示される油圧リンク又は通路は、そのような線によって示される油圧通路に、下流の構成要素を動作させるのに十分な圧力及び/又は流量の油圧流体がチャージされていない状態を表し、これは、油圧通路又はリンクを介した「オフ」信号の通信とみなすことができる、という取り決めが採用されている。
【0025】
点線のアウトライン290により表されるロッカーシャフトは、バルブ作動システムの様々な構成要素を作動させるための油圧リンク又は回路を構成することのできる複数の油圧通路を収容することができる。エンジンブレーキシステムは、圧力/流量が一定の油圧供給通路292から作動流体を受け取るように配置及び適合され得るエンジンブレーキソレノイドバルブ270を含むことができ、油圧供給通路は、ロッカーシャフトに設けることができ、上流ポンプ(図示せず)から油圧流体を供給することができる。本開示の態様によれば、ブレーキロッカーアーム206、206.1、及び206.2の動作は、単一のブレーキアクチュエータ又はソレノイドバルブ270により制御することができる。ブレーキソレノイドバルブ270は、高速ソレノイドバルブとすることができ、エンジン制御ユニット(engine control unit、ECU)420からの電子信号に基づいて、ブレーキ油圧リンク又は通路294内の油圧流体の流量を制御することができる。通路294は、例えば、これから分岐して、ブレーキロッカーアーム206などの下流のバルブトレイン構成要素に設けられた流体通路を通して油圧的に通信することができ、ブリッジピン262を介してブレーキ排気バルブ252にブレーキ運動を提供する。ブレーキ運動を促進する油圧通路及び制御構成要素の詳細は、図5に記載されているものと同様であってもよく、更に米国特許第9,790,824号にある。本開示から理解されるように、エンジンブレーキシステムは、複数のシリンダにエンジンブレーキの制御を含むことができ、それぞれがブレーキロッカー206.1及び206.2などのそれぞれのブレーキバルブトレイン構成要素を有し、それぞれがロッカーシャフト290内のブレーキ油圧通路294と通信し、それぞれがブレーキ油圧通路294内の流量及び/又は圧力の形態でブレーキ制御信号を受信し、その流量及び/又は圧力は、ブレーキソレノイドバルブ270によって制御することができる。
【0026】
したがって、専用エンジンブレーキロッカーアーム206、206.1、及び206.2は、ブレーキロッカーアーム206が(図示例のブリッジピンを介して)排気バルブに圧縮解放バルブ作動運動を提供することができるように、排気バルブに関連して各シリンダに設けられている。本開示全体を通して、各ブレーキロッカーアーム206は、2ストロークHPDエンジンブレーキバルブ作動運動、すなわち2つのCRイベント及び1つ以上の追加の空気供給イベントを提供することができる補助作動運動源(すなわち、図5の340に類似する)に関連付けられ得ることが想定される。
【0027】
1つ以上のシリンダのシリンダ停止は、シリンダ停止システムにより制御することができ、これは、複数のCDAソレノイドバルブ280、280.1、及び280.2を含むことができ、それぞれがロッカーシャフト290内の油圧供給通路292から油圧流体を受け入れるよう配置及び適合されている。CDAソレノイドバルブ280、280.1及び280.2は、高速ソレノイドバルブとすることができ、エンジン制御ユニット420からの電子信号に基づき、指定されたCDA油圧リンク又は通路296、296.1及び296.2のそれぞれにおける油圧流体の流量を制御することができ、これらはそれぞれ各シリンダごとのバルブセットのための、吸気バルブブリッジ216、216.1及び216.1、及びそれぞれの排気バルブブリッジ256、256.1及び256.2などのそれぞれのバルブトレイン構成要素、並びにそれぞれの折り畳み又は停止機構204、204.1及び204.2及び202、202.1及び202.2と通信する。したがって、CDAソレノイドバルブ280、280.1及び280.2は、各シリンダに対するそれぞれ対の停止機構の作動及び停止を制御することができ、CDAソレノイドバルブの各々は、それぞれ対のバルブセットに共通であり、各シリンダのために、それぞれの吸気及び排気バルブブリッジと協働する。
【0028】
図2に示すように、CDAソレノイド280、280.1及び280.2は通電され、HPDブレーキソレノイド270には通電されない。この状態では、ブレーキロッカーアーム206は、それに適用されるブレーキ作動運動をいずれも失う(すなわち、圧縮解放エンジンブレーキなし)ように制御される。結果として、通電されたCDAソレノイドバルブ280、280.1、280.2は、油圧流体が停止機構202、204の各々に流れることを可能にし、それによって、吸気及び排気バルブのすべてが停止され、シリンダが停止される(すなわち、正の動力が形成されない)ようにそれらをロック解除する。
【0029】
図2に示すように、シリンダ停止は、CDAソレノイドの3つすべて又は1つ以上が通電され、HPDブレーキソレノイドには通電されない場合に提供することができる。この状態では、ブレーキロッカーアーム206は、それに適用されるブレーキ作動運動をいずれも失う(すなわち、圧縮解放エンジンブレーキなし)ように制御される。結果として、通電されたCDAソレノイド280、280.1及び280.2は、それぞれの停止機構、202、204、202.1、204.1、204.1及び204.2のそれぞれに油圧流体を流すことができ、それによって、それぞれのシリンダに対して吸気及び排気バルブのすべてが停止されるようにそれらをロック解除する。本開示から理解されるように、図2は、図示された3つすべてのCDAソレノイドが同時に作動していることを示しているが、これは必須ではない。すなわち、すべてのCDAソレノイドよりも少数のいくつかのCDAソレノイドを通電して、より低いレベルのシリンダ停止を提供することができる。このようにして、シリンダ停止のレベルは、例えば、クランクシャフト速度、エンジン動作温度、マニホールド圧力、又は他のパラメータなどの検知されたエンジンパラメータ、並びにエンジン制御ユニット420への、及びそれからの適切な信号に基づいて動的に制御することができる。
【0030】
当業者であれば、吸気及び/又は排気バルブ作動運動を停止することができる他の機構が当該技術分野において公知であり、本開示はこれに関して限定されないことを理解するであろう。本開示に記載の実施例の文脈において、停止機構202、204は、油圧流体がそれに供給されないときに「ロック」状態を有するように構成することができ、その結果、バルブ作動運動は、停止機構を通して対応するエンジンバルブに伝達される。一方、停止機構202、204は、油圧流体がそれに提供されるときに、「ロック解除」構成を有することができ、その結果、そのバルブ作動運動は停止機構を通して対応するエンジンバルブに伝達されない。すなわち作動運動が失われ、対応するエンジンバルブ及び関連する運動が停止される。しかしながら、当業者は、停止機構202、204のロック状態及びロック解除状態の制御を入れ替えることができるように、例示的な構成を修正することができることを理解するであろう。この後者の場合、停止機構202、204に油圧流体(又は油圧/流量)を提供することにより、停止機構202、204をロック状態にすることができ、その逆も可能である。しかし、そのような追加の適応は、例えば、対処する必要があり得るエンジンを始動することを伴う課題を提示することがある。
【0031】
本開示の態様によれば、シリンダ停止システムは、主吸気イベントバルブ運動を維持し、したがってシリンダ停止が効果的である場合でもHPDブレーキの利点を達成する能力を備えることができる。この目的のために、シリンダ停止システムは、パルス構成要素400(図2及び図3)の形態でECU420の一部として実装されるデアクティベータコントローラを含むことができる。このパルス構成要素は、CDAソレノイド制御バルブ280、280.1及び280.2のうちの1つ以上にパルス状に通電することができる。パルス構成要素400は、電子制御信号を電気リンクを介してCDAソレノイドバルブ280、280.1及び280.2の各々に通信するエンジン制御ユニット420を使用して実現することができる。ECU420は、命令を表す情報を記憶するためのメモリ、並びに記憶された命令を実行するための処理デバイスを含むプロセッサベースの制御ユニットとすることができ。ECU420は、適切なインターフェースを通して、集合的に430で表される1つ以上のエンジンセンサから信号を受信することができる。センサ430は、クランクシャフト又はカムシャフト回転位置、クランクシャフト又はカムシャフト回転速度、及び他のパラメータを含む、様々なエンジンパラメータのための、又はそれに関連するセンサを含み得る。
【0032】
本開示の態様によれば、HPDエンジンブレーキが呼び出されることが望まれる場合、(図3に示すように)HPD制動ソレノイド270を通電することに加えて、CDAソレノイド280、280.1及び280.2のうちの1つ以上に、パルス信号422、422.1、及び422.2によって表されるようパルス状に通電して、デアクティベータコントローラ/パルス構成要素400によって主イベント吸気バルブ運動を維持し、しかし、主イベント排気バルブ運動は、所与のエンジンサイクルごとに1つ以上のシリンダ及び関連する吸気/排気バルブ対に対して停止することができる。一般的に、CDAソレノイド(すなわち、280)のパルス制御は、吸気及び排気の停止機構(すなわち、204、202)と通信する関連する油圧リンク又は通路(すなわち、296)内の急速な一時的な圧力上昇又は「スパイク」となり得る。この一時的な圧力スパイクは、排気主イベント運動の停止が生じるように適切にサイズ決定及びタイミング決定することができ(排気主イベント運動が失われる)、一方、吸気主イベント運動の停止は生じない(吸気主イベント運動は維持される)。したがって、主イベント吸気バルブ運動は、HPDブレーキをサポートするためにエンジンサイクルで使用することができる。
【0033】
図4は、本開示の態様に関連する例示的なシステムにおけるエンジンクランクシャフト回転位置の関数としてのパルスタイミング及びバルブ運動のグラフ表示である。図4はまた、エンジンクランクシャフト回転位置の関数として例示的な圧力変動を示す。図4は、単一のシリンダについてシーケンス制御を示す。同様のシーケンス制御が追加のシリンダのために実施され得ることが理解されよう。CDAソレノイド280は、406で始まる時間ウィンドウの間に、パルス構成要素400からの制御パルスにより通電することができ、この時間ウィンドウは、例えば、吸気バルブ主イベント402の中点(すなわち最大リフト量)に対応するエンジンクランクシャフト回転位置に近接してもよく、次の排気バルブ主イベント運動404の開始前の408で終了する。CDAソレノイド280のパルス化された作動は、点線490によって表される圧力上昇を、CDAソレノイドバルブ280を対の停止機構202、204に連通する油圧ネットワーク(すなわち、通路296を含む)内に生じさせることができる。
【0034】
停止機構202、204(図2図3及び図5)の構造、及び他のバルブトレイン構成要素(ロッカー、カム、及びバルブスプリング)とのそれらの相互作用のため、停止機構が圧力変化に予測不能に反応し得る状態にある可能性がある場合、特定の時間ウィンドウ(又はクランクシャフト位置)の間は、ソレノイド制御バルブの通電又は非通電を回避することがシステムの実現において好ましい場合がある。このようなウィンドウは、本開示の目的のために、「回避ウィンドウ」と呼ばれる。すなわち、油圧が停止機構の予測不能な動作をもたらすほど低くない時点でパルスを開始することが好ましい場合がある。例えば、吸気停止回避ウィンドウ440は、吸気停止機構204(図2及び図3)の停止の試み(又は再作動)を回避すべきウィンドウ又はゾーンを表すことができ、排気停止回避ウィンドウ450は、排気停止機構の停止の試みが回避されるウィンドウ又はゾーンを表すことができる。これらの回避ゾーンは、油圧が停止機構の折り畳み又は再ロックを確実に予測できないまで低くなり得るため、停止を開始する(すなわち、ソレノイド制御バルブを通電するか、又は非通電にする)ことが望ましくない領域を表す。これらの回避ウィンドウ又はゾーンはまた、エンジン速度及び応答時間の関数としてシフトすることができる。本開示から理解されるように、吸気メインイベント402の開始時に通電することが、吸気運動が開始しており、吸気停止機構の停止/折り畳みが発生し得ないため、安全である。制御パルス406の開始は、上述のように、吸気主イベントのピーク時にあってもよい。しかしながら、吸気主イベントバルブリフトの一部分、すなわち開始412からリフトピークまでの部分を損失することがあるが、そうでなければ動作を制御するのに役立ち得る。したがって、制御パルスのタイミング及び持続時間の制御において回避ウィンドウを考慮することができる特定のシステム構成について最適化を行うことができる。例えば、通電は、ウィンドウ440の右側ではどこでも行うことができ、吸気停止は発生しない。同様に、通電はウィンドウ450の左側まで行ってもよく、排気停止は依然として発生することがある。440の右側と450の左側との間の通電は、吸気を停止しないが、排気を停止する。ウィンドウ450の中で通電すると、排気は折り畳むことも折り畳まれないこともあり、450の右側を作動させると、排気は折り畳まれない。これらの範囲は、最適な動作を提供するために、ECU内の適切な制御ルーチン/アルゴリズムで考慮することができる。
【0035】
破線曲線490によって図4に示されるように、パルスウィンドウ406、408内でCDAソレノイドバルブのうちの1つ以上をパルス状に通電すると、停止機構202、204と連通する油圧リンク又は通路(すなわち図2の296)の流体供給圧力に対応する圧力の階段状の上昇をもたらし、この例では、クランクシャフト位置の約490度から約540度まで急速に上昇し、クランクシャフトが690度を経て約190度まで(図4の線図の左部分)回転を継続して、排気主イベントの開始410を過ぎるまで上昇したままであり、そしてクランクシャフト回転位置の約190から250度で急速に低下する。圧力上昇の大きさは、停止機構を作動させるために必要な油圧閾値を超える大きさである。このような油圧流体供給圧力の上昇が主排気イベント404の開始410に近接する時点に存在するため、排気停止機構202は、主排気イベントが失われるようにロック解除される。一方、吸気主要イベントの開始412が発生する時点で、油圧流体供給圧力のスパイクは、停止機構を作動させるために必要な閾値を十分に低下しており、吸気失活機構204のロックを確実にし、それにより吸気主イベントが伝達される。理解されるように、任意の追加のCDA制御バルブ(すなわち、280.1及び280.2)のパルス制御は、それらの追加の制御バルブ/シリンダに関連付けられた排気及び吸気主イベントに対して同じパルスシーケンス制御が生じるように、クランクシャフト回転位置の関数として適切にシフトされる。
【0036】
上述の吸気停止回避ウィンドウ440及び排気停止回避ウィンドウ450に関して、圧力変動490は、これらのウィンドウの各々が発生(又は経過)している間は継続して、及び安全マージン内で上昇したレベルに圧力が維持されるような圧力変動であることが、本開示から理解されるであろう。したがって、確実な作動及び非作動を達成することができ、停止機構動作が予測不可能である(すなわち、不十分な油圧から)事態を回避することができる。
【0037】
したがって、CDA制御バルブ280の制御されたパルスを利用することにより、すなわち排気及び吸気主イベント運動の開始との適切な同期化により、吸気主イベントバルブ運動の停止をスキップ又はバイパスすることができ、一方、排気主イベント運動の停止は維持される。結果として、HPDエンジンブレーキを達成するのに有用な吸気バルブ主イベント運動を維持し、エンジン環境においてシリンダ停止特徴と組み合わせて実現することができる。本開示から理解されるように、単一のCDA制御バルブは、そのような環境において吸気バルブ及び排気バルブの両方の適切な制御を達成するために使用することができる。例えば、上記の技術は、3気筒に対してCDA及びHPDエンジンブレーキ動作を提供するために、全部で4つのアクチュエータ(3つのCDA制御バルブ及び1つのブレーキ制御バルブ)しか必要としないという利点を有する。例えば、6気筒環境では、8つのアクチュエーしか必要ない。
【0038】
したがって、CDA制御バルブのパルス状の動作は、少なくとも1つのエンジンサイクル中に少なくとも1つの油圧リンクに油圧の変動を引き起こすことができ、それにより、主排気イベントの運動がそれ以外でも発生する場合、少なくとも1つの油圧リンクにおける油圧は、少なくとも1つの排気バルブに関連付けられた停止機構を作動させるのに十分であり、主排気イベント運動が停止され、主吸気イベント運動が発生する場合には、少なくとも1つの油圧リンクにおける油圧は、少なくとも1つの吸気バルブに関連する停止機構を動作させるのに不十分である。
【0039】
当業者によって本開示から理解されるように、制御システムは、上記の例において様々な制御構成要素への油圧通路を介した油圧リンケージ及び通信を使用して示されているが、本開示によって企図される他の実現は、「ワイヤ」実装による制御を含むことができ、ここでは、上記の油圧リンクが電子信号担体(ワイヤ又は導体)に置き換えられ、電磁アクチュエータなどの適切な制御構成要素が、例えば停止機構のうちの1つ以上に局所的に又は協働して設けられる。より具体的には、図5に示される内側プランジャ310などの停止構成要素は、バルブブリッジ216上又はその近くに配置された電磁アクチュエータにより作動される機械的リンケージと適合することができる。同様に、他のバルブトレイン構成要素上に位置する他の停止/折り畳み機構は、ワイヤ/導体を介して直接ECUと通信する電磁構成要素により作動することができる。そのような有線システムは、上述の油圧リンク/ネットワークよりも改善された応答性(すなわち、より少ない信号遅延)の利点を有し得る。
【0040】
本実現は、特定の例示的な実施形態を参照して説明されてきたが、特許請求の範囲に記載されているような本発明のより広範な趣旨及び範囲を逸脱することなく、様々な修正及び変更がこれらの実施形態に行われ得ることが明らかであろう。したがって、明細書及び図面は、限定的ではなく例示的なものであるとみなされるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】