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特表2023-519037高エネルギー可視光フィルタとして遷移金属錯体を含有する眼科用デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】高エネルギー可視光フィルタとして遷移金属錯体を含有する眼科用デバイス
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20230428BHJP
   G02C 7/00 20060101ALI20230428BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
G02C7/04
G02C7/00
G02C7/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569085
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(85)【翻訳文提出日】2021-11-19
(86)【国際出願番号】 IB2021052003
(87)【国際公開番号】W WO2021186296
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】62/991,255
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/169,875
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510294139
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【住所又は居所原語表記】7500 Centurion Parkway, Jacksonville, FL 32256, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ペグラム・ステファン・シー
(72)【発明者】
【氏名】シンハ・ドーラ
(72)【発明者】
【氏名】マハデバン・シブクマル
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BA01
2H006BB01
2H006BB03
2H006BB05
2H006BB06
2H006BB07
2H006BE05
(57)【要約】
眼科用デバイス並びにそれらの調製方法及び使用方法が記載される。眼科用デバイスは、遷移金属と錯化した少なくとも1つの複素環配位子を含み、この眼科用デバイスは、(a)眼科用デバイスを作製するために好適な1つ又は2つ以上のモノマーと、(b)複素環配位子含有モノマーと、を含む反応性混合物の重合反応生成物であり、眼科用デバイスが、400nmで90パーセント以下の透過率を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属と錯化した少なくとも1つの複素環配位子を含む眼科用デバイスであって、前記眼科用デバイスが、
(a)前記眼科用デバイスを作製するために好適な1つ又は2つ以上のモノマーと、
(b)複素環配位子含有モノマーと、を含む反応性混合物の重合反応生成物であり、
前記眼科用デバイスが、400nmで90パーセント以下の透過率を有する、眼科用デバイス。
【請求項2】
400nmでの透過率が、60パーセント以下である、請求項1に記載の眼科用デバイス。
【請求項3】
380~420nmで85パーセント以下の平均透過率を有する、請求項1~2のいずれか一項に記載の眼科用デバイス。
【請求項4】
450nmで少なくとも30パーセントの透過率を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の眼科用デバイス。
【請求項5】
前記遷移金属が、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12族の遷移金属のうちの1つ又は2つ以上から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の眼科用デバイス。
【請求項6】
前記遷移金属が、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、金、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の眼科用デバイス。
【請求項7】
前記遷移金属が、銅、鉄、亜鉛、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の眼科用デバイス。
【請求項8】
前記眼科用デバイスを作製するために好適な前記モノマーが、親水性成分、疎水性成分、シリコーン含有成分、及びこれらの2つ以上の混合物から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の眼科用デバイス。
【請求項9】
前記複素環配位子含有モノマーが、式I、II、III、IV、V、又はVIの下部構造を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の眼科用デバイス。
【化1】
【請求項10】
前記複素環配位子含有モノマーが、式VIIのものであり、
【化2】
式中、Rが、H又はハロであり、R及びRが、独立して、H、アルキル、又は-Y-Pであり、Yが、連結基であり、Pが、重合性基であり、少なくとも1つの置換基が、-Y-Pである、請求項1~9のいずれか一項に記載の眼科用デバイス。
【請求項11】
が、H又はクロロである、請求項10に記載の眼科用デバイス。
【請求項12】
が、Hであり、Rが、-Y-Pgである、請求項10~11のいずれか一項に記載の眼科用デバイス。
【請求項13】
前記複素環配位子含有モノマーが、2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリルイルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール又は3-(2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェネチルメタクリレートである、請求項1~12のいずれか一項に記載の眼科用デバイス。
【請求項14】
眼内レンズ又はソフトコンタクトレンズである、請求項1~13のいずれか一項に記載の眼科用デバイス。
【請求項15】
従来の(非シリコーン)ヒドロゲル又はシリコーンヒドロゲルである、請求項1~14のいずれか一項に記載の眼科用デバイス。
【請求項16】
有機のみの高エネルギー可視光吸収化合物が無い、請求項1~15のいずれか一項に記載の眼科用デバイス。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の眼科用デバイスを製造するための方法であって、前記方法は、
(a)少なくとも1つの複素環配位子を含有する重合反応生成物を提供することであって、前記重合反応生成物が、(i)前記眼科用デバイスを作製するために好適な1つ又は2つ以上のモノマーと、(ii)1つ又は2つ以上の複素環配位子含有モノマーと、を含む反応性混合物から形成されている、提供することと、
(b)遷移金属と前記複素環配位子との間で錯体を形成する条件下で、前記重合反応生成物を前記遷移金属と接触させることと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年3月18日出願された米国仮特許出願第62/991,255号の優先権を主張する、2021年2月8日に出願された米国特許出願第17/169,875号の優先権を主張するものであり、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、遷移金属と錯化した複素環配位子を含有する眼科用デバイス、並びにそれらの調製方法及び使用方法に関する。眼科用デバイスは、高エネルギー可視光の透過を制限する。
【背景技術】
【0003】
UV光及び高エネルギー可視光などの太陽からの高エネルギー光は、細胞損傷に関与することが知られている。波長が280nm未満の放射線の大部分は、地球の大気によって吸収されるが、280~400nmの範囲の波長を有する光子は、角膜の変性変化、並びに加齢関連白内障及び黄斑変性症を含むいくつかの眼障害に関連している。(Statement on Ocular Ultraviolet Radiation Hazards in Sunlight,American Optometric Association,November 10,1993を参照)。ヒト角膜は、最大320nmの波長の放射線をいくらか吸収する(30%透過)(Doutch,J.J.,Quantock,A.J.,Joyce,N.C.,Meek,K.M,Biophys.J,2012,102,1258-1264)が、320~400nmの範囲の波長の放射線から眼の後方を保護することにおいては役に立たない。
【0004】
コンタクトレンズ規格は、紫外線波長の上側を380nmに規定している。米国検眼協会によって規定された現行のクラスIのUV吸収基準は、280~315nmの放射線(UV B)の>99%及び316~380nmの放射線(UV A)の>90%が、コンタクトレンズによって吸収されることを求めている。この基準は、角膜の保護(<1%のUV B透過率)に効果的に対処するが、網膜損傷に関連するより低エネルギー紫外線(>380かつ<400nm)(Ham,W.T,Mueller,H.A.,Sliney,D.H.Nature 1976;260(5547):153-5)にも高エネルギー可視放射線にもほとんど注意が払われていない。
【0005】
高エネルギー可視(High energy-visible、HEV)光線は、視覚的な不快感又は概日リズムの乱れを引き起こす場合がある。例えば、コンピュータ及び電子デバイススクリーン、フラットスクリーンテレビ、エネルギー効率の高いライト、及びLEDライトは、HEV光を発することが知られている。このようなHEV光源への長期曝露は、眼精疲労を引き起こす場合がある。夜間にHEV光を発するデバイスを見ることも、自然な概日リズムを乱して、例えば、睡眠不足につながることが推測される。
【0006】
眼に達する前に高エネルギー光線を吸収することは、眼科分野において望ましい目標であり続けている。しかしながら、特定の波長範囲が吸収される程度も重要である。例えば、UV A及びUV Bの範囲では、できるだけ多くの放射線を吸収することが望ましい場合がある。一方、HEV光は可視スペクトルの一部を形成するので、HEV光を完全に吸収すると視力に悪影響を及ぼし得る。したがって、HEV光では、部分吸収がより望ましい場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高エネルギー放射線の望ましくない波長の標的吸収を提供し、機能的生成物に容易に加工可能な材料が必要とされている。高エネルギー放射線を吸収又は減衰させる技術は、眼科用デバイスにおいて使用されるとき、角膜、並びに眼環境における内部細胞を、劣化、疲労、及び/又は概日リズムの乱れから保護するのに役立ち得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、約450nmより長い可視光波長で実質的に透過(例えば、80%透過を超える)しながら、高エネルギー可視(HEV)光、及び任意選択でUV光をフィルタリングする、コンタクトレンズ及び眼内レンズなどの眼科用デバイスに関する。
【0009】
したがって、一態様では、本発明は、眼科用デバイスを提供する。眼科用デバイスは、遷移金属と錯化した少なくとも1つの複素環配位子を含み、眼科用デバイスは、(a)眼科用デバイスを作製するために好適な1つ又は2つ以上のモノマーと、(b)複素環配位子含有モノマーと、を含む反応性混合物の重合反応生成物であり、眼科用デバイスが、400nmで90パーセント以下の透過率を有する。
【0010】
本発明は、眼科用デバイスを作製するための方法を更に提供する。方法は、(a)少なくとも1つの複素環配位子を含有する重合反応生成物を提供することであって、重合反応生成物が、(i)眼科用デバイスを作製するために好適な1つ又は2つ以上のモノマーと、(ii)1つ又は2つ以上の複素環配位子含有モノマーと、を含む反応性混合物から形成されている、提供することと、(b)遷移金属と複素環配位子との間で錯体を形成する条件下で、重合反応生成物を遷移金属と接触させることと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1A及び1BのコンタクトレンズのUV-VIS透過スペクトルを示す。
図2】実施例2A~2FのコンタクトレンズのUV-VIS透過スペクトルを示す
図3】実施例3に記載されるNorblocと錯化された遷移金属のUV-VIS透過スペクトルを示す。
図4】実施例4A~4DのコンタクトレンズのUV-VIS透過スペクトルを示す。
図5】実施例5A~5FのコンタクトレンズのUV-VIS透過スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、以下の説明に記載されている構造又はプロセス工程の詳細に限定されるものではないことを理解されたい。本発明は他の実施形態が可能であり、本明細書に記載の教示を用いた様々な方法によって実行又は実施することが可能である。
【0013】
本開示において使用される用語に関しては、以下の定義が提供される。
【0014】
別段の定めがある場合を除き、本明細書で用いられるすべての科学技術用語は、本発明が属する当技術分野における当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。ポリマーの定義は、Compendium of Polymer Terminology and Nomenclature,IUPAC Recommendations 2008,edited by:Richard G.Jones,Jaroslav Kahovec,Robert Stepto,Edward S.Wilks,Michael Hess,Tatsuki Kitayama,and W.Val Metanomskiに開示される定義に一致する。本明細書において言及される刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献はすべて、参照により本明細書に組み込まれる。
【0015】
本明細書で使用するとき、「(メタ)」という用語は、任意選択のメチル置換を意味する。したがって、「(メタ)アクリレート」などの用語は、メタクリレート及びアクリレートの両方を意味する。
【0016】
どこに化学構造が記載されていようと、構造における置換基について開示された選択肢を任意の組み合わせで組み合わせてもよいことを理解すべきである。したがって、構造が置換基R及びR**を含有しており、これらがそれぞれ3つの可能性のある基のリストを含んでいる場合、9とおりの組み合わせが開示される。特性の組み合わせについても同じことが当てはまる。
【0017】
一般式[***における「n」などの下付き文字が、ポリマーの化学式における繰り返し単位の数を表示するために使用されるとき、式は、高分子の数平均分子量を表すと解釈すべきである。
【0018】
「個体」という用語は、ヒト及び脊椎動物を含む。
【0019】
「眼科用デバイス」という用語は、眼若しくは眼の任意の一部(眼の表面を含む)の中又は上に存在する任意のデバイスを指す。これらのデバイスは、光学補正、外見向上、視力強化、治療効果(例えば、包帯として)、若しくは医薬成分及び栄養補助成分などの活性成分の供給、又は前述の任意の組み合わせを提供することができる。眼科用デバイスの例としては、限定されるものではないが、レンズ、光学及び眼挿入物(限定されるものではないが、涙点プラグを含む)などが挙げられる。「レンズ」は、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ、ハイブリッドコンタクトレンズ、眼内レンズ、及びオーバーレイレンズを含む。眼科用デバイスは、コンタクトレンズを含み得る。
【0020】
「コンタクトレンズ」という用語は、個体の眼の角膜上に置くことができる眼科用デバイスを指す。コンタクトレンズは、創傷治癒、薬剤若しくは栄養補助剤の送達、診断的評価若しくはモニタリング、紫外線吸収、可視光若しくはグレアの低減、又はこれらの任意の組み合わせを含む、矯正的、美容的、又は治療的な利益をもたらし得る。コンタクトレンズは、当技術分野で既知の任意の適切な材料であり得、ソフトレンズ、ハードレンズ、又は弾性率、含水率、光透過、若しくはこれらの組み合わせなどの、異なる物理、機械、若しくは光学特性を有する少なくとも2つの別個の部分を含有するハイブリッドレンズであり得る。
【0021】
本発明の眼科用デバイスは、シリコーンハイドロゲル又は従来のハイドロゲルから構成されてよい。シリコーンヒドロゲルは、典型的には、硬化されたデバイス内で互いに共有結合した、少なくとも1つの親水性モノマー及び少なくとも1つのシリコーン含有成分を含有する。
【0022】
「標的巨大分子」は、モノマー、マクロマー、プレポリマー、架橋剤、開始剤、添加剤、希釈剤などを含む反応性モノマー混合物から合成されている巨大分子を意味する。
【0023】
「重合性化合物」という用語は、1つ又は2つ以上の重合性基を含有する化合物を意味する。この用語は、例えば、モノマー、マクロマー、オリゴマー、プレポリマー、架橋剤などを包含する。
【0024】
「重合性基」は、フリーラジカル及び/又はカチオン重合、例えばラジカル重合開始条件に供されたときに重合することができる炭素-炭素二重結合などの、連鎖成長重合を起こすことができる基である。フリーラジカル反応性基の非限定的な例としては、(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、O-ビニルカルバメート、O-ビニルカーボネート、及び他のビニル基が挙げられる。好ましくは、フリーラジカル重合性基は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、及びスチリル官能基、並びに前述のうちの任意の混合物を含む。より好ましくは、フリーラジカル重合性基は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、及びこれらの混合物を含む。重合性基は、非置換であってもよく、又は置換されていてもよい。例えば、(メタ)アクリルアミド中の窒素原子は、水素に結合されてもよく、又は水素は、アルキル若しくはシクロアルキル(それ自体が更に置換されてもよい)で置換されてもよい。
【0025】
限定されるものではないが、バルク、溶液、懸濁液、及びエマルジョンを含む、任意の種類のフリーラジカル重合、並びに、安定性フリーラジカル重合、窒素酸化物媒介リビング重合、原子移動ラジカル重合、可逆的付加開裂連鎖移動重合、有機テルル媒介リビングラジカル重合などの、制御ラジカル重合法のいずれかを使用することができる。
【0026】
「モノマー」は、連鎖成長重合、特にフリーラジカル重合を受け、それによって標的巨大分子の化学構造内に繰り返し単位を作り出すことができる単官能性分子である。いくつかのモノマーは、架橋剤として作用することができる二官能性不純物を有する。「親水性モノマー」はまた、5重量パーセントの濃度にて25℃で、脱イオン水を用いて混合したときに、透明な単相溶液が得られるモノマーである。「親水性成分」は、5重量パーセントの濃度にて25℃で、脱イオン水を用いて混合したときに、透明な単相溶液が得られる、モノマー、マクロマー、プレポリマー、開始剤、架橋剤、添加剤、又はポリマーである。「疎水性成分」は、25℃で脱イオン水中でわずかに可溶性又は不溶性であるモノマー、マクロマー、プレポリマー、開始剤、架橋剤、添加剤、又はポリマーである。
【0027】
「巨大分子」は、1500を超える数平均分子量を有する有機化合物であり、反応性であっても、非反応性であってもよい。
【0028】
「マクロモノマー」又は「マクロマー」は、連鎖成長重合、特にフリーラジカル重合を受け、それによって標的巨大分子の化学構造内に繰り返し単位を作り出すことができる1つの基を有する巨大分子である。一般的に、マクロマーの化学構造は、標的高分子の化学構造とは異なり、すなわち、マクロマーのペンダント基の繰り返し単位は、標的高分子又はその主鎖の繰り返し単位とは異なる。モノマーとマクロマーとの間の差は、ペンダント基の化学構造、分子量、及び分子量分布のうちの1つに過ぎない。結果として、かつ本明細書で使用するとき、特許文献は、約1,500ダルトン以下の比較的低い分子量を有する重合性化合物としてモノマーを定義することがあり、これは、本質的にいくつかのマクロマーを含む。具体的には、モノメタクリルオキシプロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(分子量=500~1500g/mol)(mPDMS)及びモノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピル)-プロピルエーテル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(分子量=500~1500g/mol)(OH-mPDMS)は、モノマー又はマクロマーと称され得る。更に、特許文献は、1つ又は2つ以上の重合性基を有するものとしてマクロマーを定義することがあり、マクロマーの一般的な定義を本質的に拡大してプレポリマーを含む。結果として、かつ本明細書で使用するとき、二官能性及び多官能性マクロマー、プレポリマー、及び架橋剤は、互換的に使用され得る。
【0029】
「シリコーン含有成分」は、通常は、シロキシ基、シロキサン基、カルボシロキサン基、及びこれらの混合物の形態で、少なくとも1つのケイ素-酸素結合を有する、反応性混合物中のモノマー、マクロマー、プレポリマー、架橋剤、開始剤、添加剤、又はポリマーである。
【0030】
本発明において有用なシリコーン含有成分の例は、米国特許第3,808,178号、同第4,120,570号、同第4,136,250号、同第4,153,641号、同第4,740,533号、同第5,034,461号、同第5,070,215号、同第5,244,981号、同第5,314,960号、同第5,331,067号、同第5,371,147号、同第5,760,100号、同第5,849,811号、同第5,962,548号、同第5,965,631号、同第5,998,498号、同第6,367,929号、同第6,822,016号、同第6,943,203号、同第6,951,894号、同第7,052,131号、同第7,247,692号、同第7,396,890号、同第7,461,937号、同第7,468,398号、同第7,538,146号、同第7,553,880号、同第7,572,841号、同第7,666,921号、同第7,691,916号、同第7,786,185号、同第7,825,170号、同第7,915,323号、同第7,994,356号、同第8,022,158号、同第8,163,206号、同第8,273,802号、同第8,399,538号、同第8,415,404号、同第8,420,711号、同第8,450,387号、同第8,487,058号、同第8,568,626号、同第8,937,110号、同第8,937,111号、同第8,940,812号、同第8,980,972号、同第9,056,878号、同第9,125,808号、同第9,140,825号、同第9,156,934号、同第9,170,349号、同第9,217,813号、同第9,244,196号、同第9,244,197号、同第9,260,544号、同第9,297,928号、同第9,297,929号、及び欧州特許第080539号に見出すことができる。これらの特許は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
「ポリマー」は、重合中に使用されるモノマーの繰り返し単位で構成される標的巨大分子である。
【0032】
「ホモポリマー」は、1つのモノマーから作製したポリマーであり、「コポリマー」は、2つ又は3つ以上のモノマーから作製したポリマーであり、「ターポリマー」は、3つのモノマーから作製したポリマーである。「ブロックコポリマー」は、組成上異なるブロック又はセグメントから成る。ジブロックコポリマーは、2つのブロックを有する。トリブロックコポリマーは、3つのブロックを有する。「くし形又はグラフトコポリマー」は、少なくとも1つのマクロマーから作製される。
【0033】
「繰り返し単位」は、特定のモノマー又はマクロマーの重合に対応する、ポリマー内の原子の最小の基である。
【0034】
「開始剤」は、続いてモノマーと反応してフリーラジカル重合反応を開始することができるラジカルに分解可能である分子である。熱開始剤は、温度に応じて特定の速度で分解し、典型例は、1,1’-アゾビスイソブチロニトリル及び4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)などのアゾ化合物、ベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジクミルペルオキシド、及びラウロイルペルオキシドなどのペルオキシド、過酢酸及び過硫酸カリウムなどの過酸、並びに様々な酸化還元系である。光開始剤は、光化学プロセスにより分解し、典型例は、ベンジル、ベンゾイン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、カンファーキノン、及びこれらの混合物の誘導体、並びに様々なモノアシル及びビスアシルホスフィンオキシド、並びにこれらの組み合わせである。
【0035】
「架橋剤」は、分子上の2つ又は3つ以上の位置でフリーラジカル重合を受け、それによって分岐点及びポリマーネットワークを作り出すことができる、二官能性又は多官能性モノマー又はマクロマーである。一般的な例は、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド、トリアリルシアヌレートなどである。
【0036】
「プレポリマー」は、更に反応を受けてポリマーを形成可能な、残存している重合性基を含有するモノマーの反応生成物である。
【0037】
「ポリマーネットワーク」は、膨潤し得るが溶媒に溶解できない架橋巨大分子である。「ヒドロゲル」は、典型的には少なくとも10重量パーセントの水を吸収しながら、水又は水溶液中で膨潤するポリマーネットワークである。「シリコーンヒドロゲル」は、少なくとも1つの親水性成分とともに少なくとも1つのシリコーン含有成分から作製されるヒドロゲルである。親水性成分はまた、非反応性ポリマーを含んでもよい。
【0038】
「従来のヒドロゲル」は、いかなるシロキシ、シロキサン、又はカルボシロキサン基も有しない成分から作製されたポリマーネットワークを指す。従来のヒドロゲルは、親水性モノマーを含む反応性混合物から調製される。例としては、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(hydroxyethyl methacrylate、「HEMA」)、N-ビニルピロリドン(vinyl pyrrolidone、「NVP」)、N,N-ジメチルアクリルアミド(dimethylacrylamide、「DMA」)、又は酢酸ビニルが挙げられる。米国特許第4,436,887号、同第4,495,313号、同第4,889,664号、同第5,006,622号、同第5,039459号、同第5,236,969号、同第5,270,418号、同第5,298,533号、同第5,824,719号、同第6,420,453号、同第6,423,761号、同第6,767,979号、同第7,934,830号、同第8,138,290号、及び同第8,389,597号は、従来のヒドロゲルの形成を開示している。従来のヒドロゲルはまた、ポリビニルアルコールから形成されてもよい。従来のヒドロゲルレンズはコーティングを含んでもよく、コーティングは、基質と同じ又は異なる材料であってもよい。従来のヒドロゲルとしては、ポリビニルピロリドンなどの添加剤、及びホスホリルコリン、メタクリル酸などの重合性誘導体を含むコモノマーを含んでもよい。市販の従来のヒドロゲルとしては、エタフィルコン(etafilcon)、ゲンフィルコン(genfilcon)、ヒラフィルコン(hilafilcon)、レネフィルコン(lenefilcon)、ネソフィルコン(nesofilcon)、オマフィルコン(omafilcon)、ポリマコン(polymacon)、及びビフィルコン(vifilcon)(それらの変形のすべてを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
「シリコーンヒドロゲル」は、少なくとも1つの親水性成分及び少なくとも1つのシリコーン含有成分から作製されるポリマーネットワークを指す。反応性混合物中に存在してもよい親水性成分の好適な族の例としては、(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、N-ビニルイミド、N-ビニルウレア、O-ビニルカルバメート、O-ビニルカーボネート、他の親水性ビニル化合物、及びこれらの混合物が挙げられる。シリコーン含有成分は周知であり、特許文献に広く記載されている。例えば、シリコーン含有成分は、少なくとも1つの重合性基(例えば、(メタ)アクリレート、スチリル、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、O-ビニルカルバメート、O-ビニルカーボネート、ビニル基、又は前述の混合物)、少なくとも1つのシロキサン基、及び重合性基をシロキサン基に接続する1つ又は2つ以上の連結基(化学結合であり得る)を含んでよい。シリコーン含有成分は、例えば、1~220個のシロキサン反復単位を含有してもよい。シリコーン含有成分はまた、少なくとも1つのフッ素原子も含有し得る。シリコーンヒドロゲルレンズはコーティングを含んでもよく、コーティングは、基質と同じ又は異なる材料であってもよい。
【0040】
シリコーンヒドロゲルの例としては、アクアフィルコン(acquafilcon)、アスモフィルコン(asmofilcon)、バラフィルコン(balafilcon)、コムフィルコン(comfilcon)、デレフィルコン(delefilcon)、エンフィルコン(enfilcon)、ファンフィルコン(fanfilcon)、フォルモフィルコン(formofilcon)、ガリーフィルコン(galyfilcon)、ロトラフィルコン(lotrafilcon)、ナラフィルコン(narafilcon)、リオフィルコン(riofilcon)、サムフィルコン(samfilcon)、セノフィルコン(senofilcon)、ソモフィルコン(somofilcon)、及びステンフィルコン(stenfilcon)(これらの変形のすべてを含む)に加えて、米国特許第4,659,782号、同第4,659,783号、同第5,244,981号、同第5,314,960号、同第5,331,067号、同第5,371,147号、同第5,998,498号、同第6,087,415号、同第5,760,100号、同第5,776,999号、同第5,789,461号、同第5,849,811号、同第5,965,631号、同第6,367,929号、同第6,822,016号、同第6,867,245号、同第6,943,203号、同第7,247,692号、同第7,249,848号、同第7,553,880号、同第7,666,921号、同第7,786,185号、同第7,956,131号、同第8,022,158号、同第8,273,802号、同第8,399,538号、同第8,470,906号、同第8,450,387号、同第8,487,058号、同第8,507,577号、同第8,637,621号、同第8,703,891号、同第8,937,110号、同第8,937,111号、同第8,940,812号、同第9,056,878号、同第9,057,821号、同第9,125,808号、同第9,140,825号、同第9156,934号、同第9,170,349号、同第9,244,196号、同第9,244,197号、同第9,260,544号、同第9,297,928号、同第9,297,929号、並びに国際公開第03/22321号、同第2008/061992号、及び米国特許出願公開第2010/0048847号で調製されるようなシリコーンヒドロゲルが挙げられる。これらの特許は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0041】
「相互貫入ポリマーネットワーク」は、分子スケールで少なくとも部分的に交絡しているが、互いに共有結合しておらず、制動化学結合なしに分離することができない、2つ又は3つ以上のネットワークを含む。「半貫入ポリマーネットワーク」は、1つ又は2つ以上のネットワークと、少なくとも1つのネットワークと少なくとも1つのポリマーとの間の分子レベルで何らかの混合によって特徴付けられる1つ又は2つ以上のポリマーと、を含む。異なるポリマーの混合物は、「ポリマーブレンド」である。半貫入ネットワークは、技術的にはポリマーブレンドであるが、場合によっては、ポリマーは、容易に除去することができないように絡まっている。
【0042】
「反応性混合物」及び「反応性モノマー混合物」という用語は、一緒に混合され、重合条件にさらされたときに、本発明のポリマーネットワークに加えて、それから作製される眼科用デバイス、及びコンタクトレンズを形成する成分(反応性及び非反応性の両方)の混合物を指す。反応性モノマー混合物は、モノマー、マクロマー、プレポリマー、架橋剤、及び開始剤などの反応性成分、湿潤剤、ポリマー、染料などの添加剤、UV吸収剤、顔料、染料、及び光互変化合物などの光吸収化合物(これらはいずれも反応性又は非反応性であってよいが、得られるコンタクトレンズ、並びに医薬化合物及び栄養補助化合物内に保持されることが可能である)、及び任意の希釈剤を含んでいてよい。作製される眼科用デバイス及びその使用目的に基づき、多様な添加剤が添加され得ることが理解されるであろう。反応性混合物の成分の濃度は、希釈剤を除いて、反応性混合物中のすべての成分の重量百分率として表される。希釈剤が使用される場合、それらの濃度は、反応性混合物中のすべての成分及び希釈剤の量に基づき重量百分率として表される。
【0043】
「反応性成分」は、共有結合、水素結合、静電相互作用、相互貫入ポリマーネットワークの形成、又は任意の他の手段により、得られるヒドロゲルのポリマーネットワークの化学構造の一部となる、反応性混合物の成分である。
【0044】
「シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ」という用語は、少なくとも1つのシリコーン含有化合物から作製されたヒドロゲルコンタクトレンズを指す。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは全般的に、従来のヒドロゲルと比較して増加した酸素透過係数を有する。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、それらの含水量及びポリマー含有量の両方を機能させて酸素を眼に送る。
【0045】
「多官能性」という用語は、2つ又は3つ以上の重合性基を有する成分を指す。「単官能性」という用語は、1つの重合性基を有する成分を指す。
【0046】
「ハロゲン」又は「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を指す。
【0047】
「アルキル」は、指定された数の炭素原子を含有する任意選択で置換された直鎖又は分岐鎖アルキル基を指す。数が指定されていない場合、アルキル(アルキル上の任意選択の置換基を含む)は、1~16個の炭素原子を含有していてよい。好ましくは、アルキル基は、1~10個の炭素原子、あるいは1~8個の炭素原子、あるいは1~6個の炭素原子、あるいは1~4個の炭素原子を含有する。アルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ-、sec-及びtert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、3-エチルブチルなどが挙げられる。アルキル上の置換基の例としては、ヒドロキシ、アミノ、アミド、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、カルボニル、アルコキシ、チオアルキル、カルバメート、カーボネート、ハロゲン、フェニル、ベンジル、及びこれらの組み合わせから独立して選択される1つ、2つ、又は3つの基が挙げられる。「アルキレン」は、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCH(CH)CH-、及び-CHCHCHCH-などの、二価アルキル基を意味する。
【0048】
「ハロアルキル」は、1つ又は2つ以上のハロゲン原子で置換された上で定義されるアルキル基を指し、各ハロゲンは、独立して、F、Cl、Br、又はIである。好ましいハロゲンは、Fである。好ましいハロアルキル基は、1~6個の炭素、より好ましくは1~4個の炭素、更により好ましくは1~2個の炭素を含有する。「ハロアルキル」は、-CF-又は-CFCF-などのペルハロアルキル基を含む。「ハロアルキレン」は、-CHCF-などの二価ハロアルキル基を意味する。
【0049】
「シクロアルキル」は、指定された数の環炭素原子を含有する任意選択で置換された環状炭化水素を指す。数が示されていない場合、シクロアルキルは、3~12個の環炭素原子を含有してもよい。
【0050】
好ましくは、C~Cシクロアルキル基、C~Cシクロアルキル、より好ましくはC~Cシクロアルキル、更により好ましくはC~Cシクロアルキルである。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが挙げられる。シクロアルキル上の置換基の例としては、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、アミド、オキサ、カルボニル、アルコキシ、チオアルキル、アミド、カルバメート、カーボネート、ハロ、フェニル、ベンジル、及びこれらの組み合わせから独立して選択される1つ、2つ、又は3つの基が挙げられる。「シクロアルキレン」は、1,2-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレン、又は1,4-シクロヘキシレンなどの二価シクロアルキル基を意味する。
【0051】
「ヘテロシクロアルキル」は、少なくとも1つの環炭素が、窒素、酸素、及び硫黄から選択されるヘテロ原子で置換されている、上で定義されるシクロアルキル環又は環系を指す。ヘテロシクロアルキル環は、任意選択で、他のヘテロシクロアルキル環及び/又は非芳香族炭化水素環及び/又はフェニル環に縮合しているか、又は他の方法で結合される。好ましいヘテロシクロアルキル基は、5~7員を有する。より好ましいヘテロシクロアルキル基は、5又は6員を有する。ヘテロシクロアルキレンは、二価ヘテロシクロアルキル基を意味する。
【0052】
「アリール」は、少なくとも1つの芳香環を含有する、任意選択で置換された芳香族炭化水素環系を指す。アリール基は、示された数の環炭素原子を含有する。数が示されていない場合、アリールは、6~14個の環炭素原子を含有してもよい。芳香環は、任意選択で、他の芳香族炭化水素環又は非芳香族炭化水素環に縮合していてもよく、又は他の方法で結合されてもよい。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、及びビフェニルが挙げられる。アリール基の好ましい例としては、フェニルが挙げられる。アリール上の置換基の例としては、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、アミド、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、カルボニル、アルコキシ、チオアルキル、カルバメート、カーボネート、ハロ、フェニル、ベンジル、及びこれらの組み合わせから独立して選択される1つ、2つ、又は3つの基が挙げられる。「アリーレン」は、二価アリール基、例えば1,2-フェニレン、1,3-フェニレン、又は1,4-フェニレンを意味する。
【0053】
「ヘテロアリール」は、上で定義したように、少なくとも1つの環炭素原子が、窒素、酸素、及び硫黄から選択されるヘテロ原子で置換されているアリール環又は環系を指す。ヘテロアリール環は、1つ又は2つ以上のヘテロアリール環、芳香族若しくは非芳香族炭化水素環、又はヘテロシクロアルキル環に縮合していてもよく、又は別の方法で結合されてもよい。ヘテロアリール基の例としては、ピリジル、フリル、及びチエニルが挙げられる。「ヘテロアリーレン」は、二価ヘテロアリール基を意味する。
【0054】
「アルコキシ」は、酸素架橋を介して親分子部分に結合しているアルキル基を指す。アルコキシ基の例としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、及びイソプロポキシが挙げられる。「チオアルキル」は、硫黄架橋を介して親分子に結合しているアルキル基を意味する。チオアルキル基の例としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、及びイソプロピルチオが挙げられる。「アリールオキシ」は、酸素架橋を介して親分子部分に結合しているアリール基を指す。例としては、フェノキシが挙げられる。「環状アルコキシ」は、酸素架橋を介して親部分に結合しているシクロアルキル基を意味する。
【0055】
「アルキルアミン」は、-NH架橋を介して親分子部分に結合しているアルキル基を指す。アルキレンアミンは、-CHCHNH-などの二価アルキルアミン基を意味する。
【0056】
「シロキサニル」は、少なくとも1つのSi-O-Si結合を有する構造を指す。したがって、例えば、シロキサニル基は、少なくとも1つのSi-O-Si基(すなわち、シロキサン基)を有する基を意味し、シロキサニル化合物は、少なくとも1つのSi-O-Si基を有する化合物を意味する。「シロキサニル」は、モノマー(例えば、Si-O-Si)並びにオリゴマー/ポリマー構造(例えば、-[Si-O]-(式中、nは2又は3以上である))を包含する。シロキサニル基中の各ケイ素原子は、それらの原子価を満たすために、独立して選択されるR基(式中、Rは、式Aの選択肢(b)~(i)で定義されるとおりである)で置換されている。
【0057】
「シリル」は、式RSi-の構造を指し、「シロキシ」は、式RSi-O-の構造を指し、式中、シリル又はシロキシ中の各Rは、トリメチルシロキシ、C~Cアルキル(好ましくはC~Cアルキル、より好ましくはエチル又はメチル)、及びC~Cシクロアルキルから独立して選択される。
【0058】
「アルキレンオキシ」は、一般式-(アルキレン-O-)-又は-(O-アルキレン)-の基を指し、式中、アルキレンは、上で定義したとおりであり、pは、1~200、又は1~100、又は1~50、又は1~25、又は1~20、又は1~10であり、各アルキレンは、独立して、ヒドロキシル、ハロ(例えば、フルオロ)、アミノ、アミド、エーテル、カルボニル、カルボキシル、及びこれらの組み合わせから独立して選択される1つ又は2つ以上の基で任意選択で置換されている。pが1より大きい場合、各アルキレンは、同じであっても異なっていてもよく、アルキレンオキシは、ブロック又はランダム構成であってもよい。アルキレンオキシが分子中に末端基を形成するとき、アルキレンオキシの末端は、例えば、ヒドロキシ又はアルコキシ(例えば、HO-[CHCHO]-又はCHO-[CHCHO]-)であってもよい。アルキレンオキシの例としては、ポリエチレンオキシ、ポリプロピレンオキシ、ポリブチレンオキシ、及びポリ(エチレンオキシ-コ-プロピレンオキシ)が挙げられる。
【0059】
「オキサアルキレン」は、1つ又は2つ以上の非隣接CH基が、-CHCHOCH(CH)CH-などの酸素原子で置換されている、上で定義されるアルキレン基を指す。「チアアルキレン」は、1つ又は2つ以上の非隣接CH基が、-CHCHSCH(CH)CH-などの硫黄原子で置換されている、上で定義されるアルキレン基を指す。
【0060】
「連結基」という用語は、重合性基を親分子に連結させる部分を指す。連結基は、当該連結基が一部である化合物に適合し、化合物の重合を不必要に妨害せず、重合条件、並びに最終生成物の加工及び保管の条件下で安定である任意の部分であってよい。例えば、連結基は、結合であってもよく、又は1つ又は2つ以上のアルキレン、ハロアルキレン、アミド、アミン、アルキレンアミン、カルバメート、エステル(-CO-)、アリーレン、ヘテロアリーレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アルキレンオキシ、オキサアルキレン、チアアルキレン、ハロアルキレンオキシ(1つ又は2つ以上のハロ基で置換されたアルキレンオキシ、例えば、-OCF-、-OCFCF-、-OCFCH-)、シロキサニル、アルキレンシロキサニル、又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。連結基は、1つ又は2つ以上の置換基で任意選択で置換されてもよい。好適な置換基としては、アルキル、ハロ(例えば、フルオロ)、ヒドロキシル、HO-アルキレンオキシ、MeO-アルキレンオキシ、シロキサニル、シロキシ、シロキシ-アルキレンオキシ-、シロキシ-アルキレン-アルキレンオキシ-(1つを超えるアルキレンオキシ基が存在してもよく、アルキレン及びアルキレンオキシ中の各メチレンは、独立して、ヒドロキシルで任意選択で置換されている)、エーテル、アミン、カルボニル、カルバメート、及びこれらの組み合わせから独立して選択されるものを挙げることができる。連結基はまた、(メタ)アクリレートなどの重合性基で置換されてもよい(連結基が連結している重合性基に加えて)。
【0061】
好ましい連結基としては、アルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン(例えば、フェニレン)、ヘテロアリーレン、オキサアルキレン、アルキレン-アミド-アルキレン、アルキレン-アミン-アルキレン、又は前述の基のいずれかの組み合わせが挙げられる。好ましい連結基としては、C~Cアルキレン(好ましくはエチレン又はプロピレンなどのC~Cアルキレン)、C~Cオキサアルキレン(好ましくはC~Cオキサアルキレン)、C~Cアルキレン-アミド-C~Cアルキレン、及びC~Cアルキレン-アミン-C~Cアルキレンも含み、これらのそれぞれは、ヒドロキシル及びシロキシから独立して選択される1つ又は2つの基で任意選択で置換されている。好ましい連結基としては、カルボキシレート、アミド、C~Cアルキレン-カルボキシレート-C~Cアルキレン、又はC~Cアルキレン-アミドC~Cアルキレンが更に挙げられる。
【0062】
連結基が部分(例えば、アルキレン-シクロアルキレン)の組み合わせから成る場合、部分は任意の順序で存在してもよい。これにかかわらず、列記する順序は、連結基が結合している末端重合性基から始まって、部分が化合物中に現れる好ましい順序を表す。
【0063】
「高エネルギー可視光吸収」又は「HEV光吸収」という用語は、例えば380~450nmの範囲の高エネルギー可視光の1つ又は2つ以上の波長を吸収する材料を指す。ある材料が光を吸収する能力は、そのUV/Vis透過スペクトルを測定することによって判定することができる。特定の波長で吸収を示さない材料は、その波長で実質的に100パーセントの透過率を示す。逆に、特定の波長で完全に吸収する材料は、その波長で実質的に0%の透過率を示す。本明細書で使用されるとき、材料の透過の量が、特定の波長範囲にわたる百分率として示される場合、材料は、その範囲内のすべての波長(範囲を定義する数値を含む)においてその透過パーセントを示すことを理解されたい。一方、平均透過率が示されている場合、これは、指定された波長範囲にわたって、ナノメートルでの各整数波長で測定された透過パーセントを平均化することによって計算され得る。本発明の目的のために、400~450nmの波長範囲にわたって80パーセントを超える透過率を有する材料は、HEV光吸収材料ではない。
【0064】
高エネルギー可視光吸収材料は、例えば、無機材料、有機材料、有機金属材料若しくは配位錯体(配位子と遷移金属との間の錯体など)、又はこれらの組み合わせであり得る。本明細書で使用される「有機のみの高エネルギー可視光吸収化合物」という用語は、遷移金属に結合していない、又は遷移金属と錯化しない有機材料を意味する。「有機のみの高エネルギー可視光吸収化合物が無い」と示されている眼科用デバイスは、眼科用デバイスが作製される反応性混合物が、0.2重量パーセント未満、好ましくは0.1重量パーセント未満、より好ましくは0.01重量パーセント未満の有機のみの高エネルギー可視光吸収化合物を含有することを意味する。反応性混合物は、有機のみの高エネルギー可視光吸収化合物を含有しなくてもよい(0パーセント)。
【0065】
「任意選択で置換された」は、部分が1つ又は2つ以上の任意選択の置換基を含有し得ることを意味する。「任意選択の置換基」という用語は、基礎にある水素原子が置換基によって任意選択で置換されることを意味する。置換部位において立体的に実用的であり、合成的に実現可能な任意の置換基が使用され得る。好適な任意選択の置換基の同定は、当業者の能力の範囲内である。「任意選択の置換基」の例としては、限定するものではないが、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cチオアルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、NR、ベンジル、SOH、SONa、又は-Y-Pが挙げられ、式中、R及びRは、独立してH又はC~Cアルキルであり、Yは連結基であり、Pは重合性基である。前述の置換基は、任意選択の置換基(これは、別途指示がない限り、好ましくは、更に置換されていない)で任意選択で置換されてもよい。例えば、アルキルは、ハロによって置換されてもよい(例えば、CFをもたらす)。
【0066】
「下部構造」とは、(原子がその他の原子又は基に結合し得る)任意のその他の原子による1つ又は2つ以上の水素原子の置換を介して、その化学構造に由来する任意の示された化学構造及び任意の化合物を意味する。置換は、例えば、独立して選択される任意選択の置換基を有する1つ又は2つ以上、好ましくは1又は2、より好ましくは1個の水素原子であってもよい。「下部構造」の定義に包含されるのは、下部構造体が、(例えば、1つ又は2つ以上の重合性基を含有する)モノマー、ポリマー、又は巨大分子などの、より大きな化合物の断片を形成する材料である。
【0067】
別途記載のない限り、比率、百分率、部などは重量による。
【0068】
別途記載のない限り、例えば、「2~10」のような数字範囲は、その範囲を定義する数字(例えば、2及び10)を含む。
【0069】
上記のように、本発明は、遷移金属と錯化し、400nmで90パーセント以下の透過率を有する少なくとも1つの複素環配位子を含む眼科用デバイスを提供する。眼科用デバイスは、(a)眼科用デバイスを作製するために好適な1つ又は2つ以上のモノマー(本明細書では重合性化合物を形成するデバイス又は重合性化合物を形成するヒドロゲルとも呼ばれる)と、(b)複素環配位子含有モノマーと、を含む反応性混合物の重合反応生成物である。
【0070】
複素環配位子含有モノマーは、式I、II、III、IV、V、又はVIの下部構造を有し得る。
【0071】
【化1】
モノマーの下部構造として、式I~VIの下部構造を有する材料は、下部構造中の1つ又は2つ以上の水素の置換を通して、少なくとも1つの重合性基(連結基を介して材料に結合され得る)も含有する。
【0072】
複素環配位子含有モノマーは、式VIIの化合物であり得る。
【0073】
【化2】
式中、Rは、H又はハロであり、R及びRは、独立して、H、アルキル、又は-Y-Pであり、Yは、連結基であり、Pは、重合性基であり、少なくとも1つの置換基は、-Y-Pである。
【0074】
好ましくは、式VII中のRは、H又はClである。より好ましくは、Rは、Hである。好ましくは、Rは、Hであり、Rは、-Y-Pgである。例示的なY基としては、アルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、オキサアルキレン、アルキレン-アミド-アルキレン、アルキレン-アミン-アルキレン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。例示的なPgとしては、スチリル、ビニルカーボネート、ビニルエーテル、ビニルカルバメート、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、(メタ)アクリレート、又は(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0075】
特に好ましい複素環配位子含有モノマーは、2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリルイルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール又は3-(2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェネチルメタクリレート(Norbloc)である。
【0076】
本発明の眼科用デバイスは、反応性混合物の重合反応生成物を含み、反応性混合物は、上述のように複素環配位子含有モノマーと、所望の眼科用デバイスを作製するために好適な1つ又は2つ以上のモノマーとを含む。重合後、得られた眼科用デバイスは、その構造の一部として複素環配位子を含む。本発明によれば、眼科用デバイス内の複素環配位子は、遷移金属と錯化する。
【0077】
遷移金属は、例えば、重合前に反応性混合物中に複素環配位子-遷移金属錯体を提供すること、又は重合反応生成物を遷移金属と接触させることを含む、眼科用デバイスの製造の任意の段階で複素環配位子と錯化され得る。後者のアプローチは、重合反応生成物に遷移金属を導入するための単純な方法を提供するので、好ましい。例えば、プロセスは、重合反応生成物(複素環配位子を含有する)を遷移金属イオンを含有する溶液と接触させることを単に含み得る。このアプローチは、実施例によって実証されている。
【0078】
周期表の4、5、6、7、8、9、10、11、又は12族からの金属(チタンから亜鉛まで始めた基)を含む様々な遷移金属が使用され得る。例示的な金属としては、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、金、又はこれらの組み合わせが挙げられる。更なる例示的な金属としては、銅、鉄、亜鉛、又はこれらの組み合わせが挙げられる。特に好ましいのは、銅である。金属は、溶液中のイオン(例えば、銅(II)イオン)として用いられ得る。
【0079】
眼科用デバイスにおける複素環配位子の遷移金属との錯化が、配位子のUV可視透過スペクトルを変化、例えば、赤方偏移させることが見出された。結果として、遷移金属が存在しない場合には、HEV光を有意に吸収しない配位子は、配位子を遷移金属と錯化することによってそのように行うことができる。本発明の眼科用デバイスは、非錯化配位子を含有するデバイスと比較して、少なくとも約50パーセント、又は少なくとも約60パーセント、又は少なくとも約70パーセント、又は少なくとも約90パーセントの遷移金属との複素環配位子の錯化後、400nmでの透過光の低減を示し得る。380~420nmでの平均透過率の低減は、非錯化配位子を含有するデバイスと比較して、少なくとも約50パーセント、又は少なくとも約60パーセント、又は少なくとも約70パーセント、又は少なくとも約90パーセントであり得る。パーセント低減の計算は、以下の実施例1で実証されている。
【0080】
説明されるように、本発明の眼科用デバイスは、可視スペクトルの青色領域における光の様々な波長の透過を制限する。例えば、眼科用デバイスは、90パーセント以下、あるいは85パーセント以下、あるいは50パーセント以下、あるいは35パーセント以下、あるいは15パーセント以下、あるいは10パーセント以下、あるいは5パーセント以下、あるいは1パーセント以下の400nmでの透過率を有し得る。
【0081】
眼科用デバイスは、75パーセント以下、あるいは60パーセント以下、あるいは45パーセント以下、あるいは35パーセント以下、あるいは10パーセント以下の380~420nmの範囲における平均透過率を有し得る。
【0082】
眼科用デバイスは、少なくとも30パーセント、又は少なくとも50パーセント、又は少なくとも80パーセントの450nmへの透過率を有し得る。
【0083】
本発明の眼科用デバイスは、コンタクトレンズ、好ましくはソフトヒドロゲルコンタクトレンズであり得る。前述の透過波長及び百分率は、様々な厚さのレンズ上で測定され得る。例えば、中心厚さは、70~300マイクロメートル、又は80~230マイクロメートル、又は80~110マイクロメートル、又は90~110マイクロメートルであり得る。デバイス内のHEV吸収成分の濃度は、前述の透過特性を達成するように調整され得る。例えば、反応性混合物中の複素環配位子含有モノマーの濃度は、希釈剤を除く反応性混合物中のすべての成分の重量パーセントに基づいて、少なくとも0.01パーセント、又は少なくとも0.1パーセント、又は少なくとも1パーセント、又は少なくとも2パーセント、かつ最大10パーセント又は最大5パーセントの範囲であり得る。典型的な濃度は、1~5パーセントの範囲内であり得る。
【0084】
本発明の眼科用デバイスが作製される反応性混合物は、上記の複素環配位子含有モノマーに加えて、所望の眼科用デバイスを作製するために好適な1つ又は2つ以上のモノマー、並びに任意選択の成分を含む。したがって、反応性混合物は、例えば、親水性成分、疎水性成分、シリコーン含有成分、ポリアミドなどの湿潤剤、架橋剤、並びに希釈剤及び開始剤などの更なる成分を含有し得る。
【0085】
親水性成分
親水性モノマーの好適なファミリーの例としては、(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、N-ビニルイミド、N-ビニル尿素、O-ビニルカルバメート、O-ビニルカーボネート、他の親水性ビニル化合物、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0086】
親水性(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドモノマーの非限定的な例としては、アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、2-アミノエチル(メタ)アクリレート、3-アミノプロピル(メタ)アクリレート、2-アミノプロピル(メタ)アクリレート、N-2-アミノエチル(メタ)アクリルアミド)、N-3-アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-2-アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス-2-アミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス-3-アミノプロピル(メタ)アクリルアミド)、N,N-ビス-2-アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリセロールメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0087】
親水性モノマーはまた、アニオン性、カチオン性、双性イオン性、ベタイン、及びこれらの混合物など、イオン性であってもよい。このような荷電モノマーの非限定的な例としては、(メタ)アクリル酸、N-[(エテニルオキシ)カルボニル]-β-アラニン(VINAL)、3-アクリルアミドプロパン酸(ACA1)、5-アクリルアミドプロパン酸(ACA2)、3-アクリルアミド-3-メチルブタン酸(AMBA)、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリド(Q塩又はMETAC)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、1-プロパンアミニウム、N-(2-カルボキシエチル)-N,N-ジメチル-3-[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)アミノ]-、分子内塩(CBT)、1-プロパンアミニウム、N,N-ジメチル-N-[3-[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)アミノ]プロピル]-3-スルホ-、分子内塩(SBT)、3,5-ジオキサ-8-アザ-4-ホスファウンデカ-10-エン-1-アミニウム、4-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチル-9-オキソ-、分子内塩、4-オキシド(9CI)(PBT)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、3-(ジメチル(4-ビニルベンジル)アンモニオ)プロパン-1-スルホネート(DMVBAPS)、3-((3-アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(AMPDAPS)、3-((3-メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(MAMPDAPS)、3-((3-(アクリロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(APDAPS)、及びメタクリロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(MAPDAPS)が挙げられる。
【0088】
親水性N-ビニルラクタムモノマー及びN-ビニルアミドモノマーの非限定的な例としては、N-ビニルピロリドン(NVP)、N-ビニル-2-ピペリドン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-3-メチル-2-カプロラクタム、N-ビニル-3-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-4-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-4-メチル-2-カプロラクタム、N-ビニル-3-エチル-2-ピロリドン、N-ビニル-4,5-ジメチル-2-ピロリドン、N-ビニルアセトアミド(NVA)、N-ビニル-N-メチルアセトアミド(VMA)、N-ビニル-N-エチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルホルムアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニル-N-メチルプロピオンアミド、N-ビニル-N-メチル-2-メチルプロピオンアミド、N-ビニル-2-メチルプロピオンアミド、N-ビニル-N,N’-ジメチル尿素、1-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-メチル-5-メチレン-2-ピロリドン、5-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-エチル-5-メチレン-2-ピロリドン、N-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、5-エチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-N-プロピル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-N-プロピル-5-メチレン-2-ピロリドン、1-イソプロピル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-イソプロピル-5-メチレン-2-ピロリドン、N-ビニル-N-エチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルホルムアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルイソプロピルアミド、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルイミダゾール、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0089】
親水性O-ビニルカルバメートモノマー及びO-ビニルカーボネートモノマーの非限定的な例としては、N-2-ヒドロキシエチルビニルカルバメート及びN-カルボキシ-β-アラニンN-ビニルエステルが挙げられる。親水性ビニルカーボネートモノマー又はビニルカルバメートモノマーの更なる例は、米国特許第5,070,215号に開示されている。親水性オキサゾロンモノマーは、米国特許第4,910,277号に開示されている。
【0090】
他の親水性ビニル化合物としては、エチレングリコールビニルエーテル(EGVE)、ジ(エチレングリコール)ビニルエーテル(DEGVE)、アリルアルコール、及び2-エチルオキサゾリンが挙げられる。
【0091】
親水性モノマーはまた、(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルアミドなどの重合性部分を有する、直鎖若しくは分岐鎖ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、又はエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの統計的ランダム若しくはブロックコポリマーのマクロマー又はプレポリマーであってもよい。これらのポリエーテルのマクロマーは、1つの重合性基を有し、プレポリマーは、2つ又は3つ以上の重合性基を有し得る。
【0092】
本発明の好ましい親水性モノマーは、DMA、NVP、HEMA、VMA、NVA、及びこれらの混合物である。好ましい親水性モノマーとしては、DMA及びHEMAの混合物が挙げられる。他の好適な親水性モノマーは、当業者には明らかとなるであろう。
【0093】
概して、反応性モノマー混合物中に存在し得る親水性モノマーの量に関して、特に制限はない。親水性モノマーの量は、含水量、透明性、湿潤性、タンパク質取り込みなどを含む、得られるヒドロゲルの所望の特性に基づいて選択され得る。湿潤性は、接触角によって測定され得、望ましい接触角は、約100°未満、約80°未満、及び約60°未満である。親水性モノマーは、反応性モノマー混合物中の反応性成分の総重量に基づき、例えば、約0.1~約100重量パーセントの範囲、あるいは約1~約80重量パーセントの範囲、あるいは約5~約65重量パーセントの範囲、あるいは約40~約60重量パーセントの範囲、あるいは約55~約60重量パーセントの範囲の量で存在し得る。
【0094】
シリコーン含有成分
本発明での使用に好適なシリコーン含有成分は、1つ又は2つ以上の重合性化合物を含み、各化合物は、独立して、少なくとも1つの重合性基、少なくとも1つのシロキサン基、及び重合性基をシロキサン基に接続する1つ又は2つ以上の連結基を含む。シリコーン含有成分は、例えば、下記に定義される基などの1~220個のシロキサン繰り返し単位を含有してもよい。シリコーン含有成分はまた、少なくとも1つのフッ素原子も含有し得る。
【0095】
シリコーン含有成分は、上で定義された1つ又は2つ以上の重合性基、1つ又は2つ以上の任意選択で繰り返しシロキサン単位、及び重合性基をシロキサン単位に接続する1つ又は2つ以上の連結基を含み得る。シリコーン含有成分は、独立して、(メタ)アクリレート、スチリル、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、O-ビニルカルバメート、O-ビニルカーボネート、ビニル基、又はこれらの混合物である1つ又は2つ以上の重合性基、1つ又は2つ以上の任意選択で繰り返しシロキサン単位、及び重合性基をシロキサン単位に接続する1つ又は2つ以上の連結基を含み得る。
【0096】
シリコーン含有成分は、独立して、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、スチリル、又は前述の混合物である1つ又は2つ以上の重合性基、1つ又は2つ以上の任意選択で繰り返しシロキサン単位、及び重合性基をシロキサン単位に接続する1つ又は2つ以上の連結基を含み得る。
【0097】
シリコーン含有成分は、独立して、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、又は前述の混合物である1つ又は2つ以上の重合性基、1つ又は2つ以上の任意選択で繰り返しシロキサン単位、及び重合性基をシロキサン単位に接続する1つ又は2つ以上の連結基を含み得る。
【0098】
式A.シリコーン含有成分は、式Aの1つ又は2つ以上の重合性化合物を含んでもよく、
【0099】
【化3】
式中、
少なくとも1つのRは、式R-Lの基であり、Rは、重合性基であり、Lは、連結基であり、残りのRは、それぞれ独立して、
(a)R-L-、
(b)1つ又は2つ以上のヒドロキシ、アミノ、アミド、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、カルボニル、アルコキシ、アミド、カルバメート、カーボネート、ハロ、フェニル、ベンジル、又はこれらの組み合わせで任意選択で置換されているC~C16アルキル、
(c)1つ又は2つ以上のアルキル、ヒドロキシ、アミノ、アミド、オキサ、カルボニル、アルコキシ、アミド、カルバメート、カーボネート、ハロ、フェニル、ベンジル、又はこれらの組み合わせで任意選択で置換されているC~C12シクロアルキル、
(d)1つ又は2つ以上のアルキル、ヒドロキシ、アミノ、アミド、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、カルボニル、アルコキシ、アミド、カルバメート、カーボネート、ハロ、フェニル、ベンジル、又はこれらの組み合わせで任意選択で置換されているC~C14アリール基、
(e)ハロ、
(f)アルコキシ、環状アルコキシ、又はアリールオキシ、
(g)シロキシ、
(h)ポリエチレンオキシアルキル、ポリプロピレンオキシアルキル、又はポリ(エチレンオキシ-コ-プロピレンオキシアルキル)などのアルキレンオキシ-アルキル又はアルコキシ-アルキレンオキシ-アルキル、あるいは
(i)アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、アルコキシ、アミド、カルバメート、ハロ又はこれらの組み合わせで任意選択で置換されている1~100個のシロキサン繰り返し単位を含む一価シロキサン鎖であり、
nは、0~500、又は0~200、又は0~100、又は0~20であり、nが0以外であるとき、nが表示値と同等のモードを有する分布であることが理解される。nが2以上であるとき、SiO単位は、同じ又は異なるR置換基を担持してもよく、異なるR置換基が存在する場合、n基は、ランダム又はブロック構成であってもよい。
【0100】
式Aにおいて、3つのRは、それぞれ重合性基を含んでもよく、代替的に2つのRは、それぞれ重合性基を含んでもよく、又は代替的に1つのRは、重合性基を含んでもよい。
【0101】
本発明での使用に好適なシリコーン含有成分の例としては、限定するものではないが、表Aに列挙される化合物が挙げられる。表Aの化合物がポリシロキサン基を含有する場合、このような化合物におけるSiO繰り返し単位の数は、別途記載のない限り、好ましくは3~100、より好ましくは3~40、又は更により好ましくは3~20である。
【0102】
【表1-1】
【0103】
【表1-2】
【0104】
好適なシリコーン含有成分の更なる非限定的な例は、表Bに列挙されている。別途記載のない限り、適用可能であるj2は、好ましくは1~100、より好ましくは3~40、又は更により好ましくは3~15である。j1又はj2を含有する化合物において、j1とj2の合計は、好ましくは2~100、より好ましくは3~40、又は更により好ましくは3~15である。
【0105】
【表2-1】
【0106】
【表2-2】
【0107】
シリコーン含有成分の混合物を使用してもよい。例として、好適な混合物としては、4個及び15個のSiO繰り返し単位を含有するOH-mPDMSの混合物などの、異なる分子量を有するモノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピルオキシ)-プロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(OH-MPDMS)の混合物;異なる分子量を有するOH-mPDMS(例えば、4個及び15個の繰り返しSiO繰り返し単位を含有する)と、ビス-3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシプロピルポリジメチルシロキサン(ac-PDMS)などのシリコーン系架橋剤との混合物;2-ヒドロキシ-3-[3-メチル-3,3-ジ(トリメチルシロキシ)シリルプロポキシ]-プロピルメタクリレート(SiMAA)と、mPDMS1000などのモノ-メタクリルオキシプロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(mPDMS)との混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0108】
本発明で使用するシリコーン含有成分は、約400~約4000ダルトンの平均分子量を有し得る。
【0109】
シリコーン含有成分は、反応性混合物(希釈剤を除く)の、すべての反応性成分に基づいて、最大約95重量%、又は約10~約80重量%、又は約20~約70重量%の量で存在し得る。
【0110】
ポリアミド
反応性混合物は、少なくとも1つのポリアミドを含んでいてよい。本明細書で使用するとき、「ポリアミド」という用語は、アミド基を含有する繰り返し単位を含むポリマー及びコポリマーを指す。ポリアミドは、環状アミド基、非環状アミド基、及びこれらの組み合わせを含み得、当業者に既知の任意のポリアミドであってもよい。非環状ポリアミドは、ペンダント非環状アミド基を含み、ヒドロキシル基との会合が可能である。環状ポリアミドは、環状アミド基を含み、ヒドロキシル基との会合が可能である。
【0111】
好適な非環状ポリアミドの例としては、式G及びG1の繰り返し単位を含むポリマー及びコポリマーが挙げられ、
【0112】
【化4】
式中、Xは、直接結合、-(CO)-、又は-(CONHR44)-であり、R44は、C~Cアルキル基であり、R40は、H、直鎖若しくは分岐鎖の置換又は非置換C~Cアルキル基から選択され、R41は、H、直鎖若しくは分岐鎖の置換又は非置換C~Cアルキル基、最大2個の炭素原子を有するアミノ基、最大4個の炭素原子を有するアミド基、及び最大2個の炭素基を有するアルコキシ基から選択され、R42は、H、直鎖若しくは分岐鎖の置換若しくは非置換C~Cアルキル基、又はメチル、エトキシ、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシメチルから選択され、R43は、H、直鎖若しくは分岐鎖の置換若しくは非置換C~Cアルキル基、又はメチル、エトキシ、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシメチルから選択され、R40及びR41の炭素原子の数は合計で、7、6、5、4、3、又はそれ以下を含む、8以下であり、R42及びR43の炭素原子の数は合計で、7、6、5、4、3、又はそれ以下を含む、8以下である。R40及びR41の炭素原子の数は、合計で6以下又は4以下であってよい。R42及びR43の炭素原子の数は、合計で6以下であってよい。本明細書で使用するとき、置換アルキル基は、アミン基、アミド基、エーテル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、若しくはカルボキシル基、又はこれらの組み合わせで置換されているアルキル基を含む。
【0113】
40及びR41は、独立して、H、置換又は非置換C~Cアルキル基から選択され得る。Xは、直接結合であってもよく、R40及びR41は、独立して、H、置換又は非置換C~Cアルキル基から選択され得る。R42及びR43は、独立して、H、置換又は非置換C~Cアルキル基、メチル、エトキシ、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシメチルから選択され得る。
【0114】
本発明の非環状ポリアミドは、式G若しくは式G1の繰り返し単位の大部分を含み得るか、又は非環状ポリアミドは、少なくとも約70モルパーセント、及び少なくとも80モルパーセントなど、式G若しくは式G1の繰り返し単位の少なくとも50モルパーセントを含み得る。式G及び式G1の繰り返し単位の具体的な例としては、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-N-メチルプロピオンアミド、N-ビニル-N-メチル-2-メチルプロピオンアミド、N-ビニル-2-メチル-プロピオンアミド、N-ビニル-N,N’-ジメチル尿素、N,N-ジメチルアクリルアミド、メタクリルアミド、並びに式G2及びG3の非環状アミド由来の繰り返し単位が挙げられる。
【0115】
【化5】
【0116】
環状ポリアミドを形成するために使用され得る好適な環状アミドの例としては、α-ラクタム、β-ラクタム、γ-ラクタム、δ-ラクタム、及びε-ラクタムが挙げられる。好適な環状ポリアミドの例としては、式G4の繰り返し単位を含むポリマー及びコポリマー
【0117】
【化6】
式中、R45は、水素原子又はメチル基であり、fは、1~10の数であり、Xは、直接結合、-(CO)-、又は-(CONHR46)-であり、R46は、C~Cアルキル基である。式G4において、fは、8以下であり得、7、6、5、4、3、2、又は1を含む。式G4において、fは、5、4、3、2、又は1を含む、6以下であり得る。式G4において、fは、2、3、4、5、6、7、又は8を含む、2~8であり得る。式G4において、fは、2又は3であり得る。Xが直接結合のとき、fは、2であり得る。かかる事例において、環状ポリアミドは、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone、PVP)であり得る。
【0118】
本発明の環状ポリアミドは、式G4の繰り返し単位の50モルパーセント以上を含んでもよく、又は環状ポリアミドは、少なくとも70モルパーセント、及び少なくとも80モルパーセントなど、式G4の繰り返し単位の少なくとも50モルパーセントを含んでもよい。
【0119】
ポリアミドはまた、環状アミド及び非環状アミドの両方の繰り返し単位を含むコポリマーであってもよい。追加の繰り返し単位は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、他の親水性モノマー、及びシロキサン置換(メタ)アクリレートから選択されるモノマーから形成され得る。好適な親水性モノマーとして列挙されるモノマーのいずれも、追加の繰り返し単位を形成するためにコモノマーとして使用され得る。ポリアミドを形成するために使用され得る追加のモノマーの具体的な例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、アクリロニトリル、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなど、並びにこれらの混合物が挙げられる。イオン性モノマーも含まれ得る。イオン性モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、N-[(エテニルオキシ)カルボニル]-β-アラニン(VINAL、CAS#148969-96-4)、3-アクリルアミドプロパン酸(ACA1)、5-アクリルアミドペンタン酸(ACA2)、3-アクリルアミド-3-メチルブタン酸(AMBA)、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリド(Q塩又はMETAC)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、1-プロパンアミニウム、N-(2-カルボキシエチル)-N,N-ジメチル-3-[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)アミノ]-、分子内塩(CBT、カルボキシベタイン、CAS 79704-35-1)、1-プロパンアミニウム、N,N-ジメチル-N-[3-[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)アミノ]プロピル]-3-スルホ-、分子内塩(SBT、スルホベタイン、CAS 80293-60-3)、3,5-ジオキサ-8-アザ-4-ホスファウンデカ-10-エン-1-アミニウム、4-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチル-9-オキソ-、分子内塩、4-オキシド(9CI)(PBT、ホスホベタイン、CAS 163674-35-9、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、3-(ジメチル(4-ビニルベンジル)アンモニオ)プロパン-1-スルホネート(DMVBAPS)、3-((3-アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(AMPDAPS)、3-((3-メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(MAMPDAPS)、3-((3-(アクリロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(APDAPS)、メタクリロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(MAPDAPS)が挙げられる。
【0120】
反応性モノマー混合物は、非環状ポリアミド及び環状ポリアミドの両方又はそれらのコポリマーを含んでもよい。非環状ポリアミドは、本明細書に説明される非環状ポリアミド又はこれらのコポリマーのいずれかであり得、環状ポリアミドは、本明細書に説明される環状ポリアミド又はこれらのコポリマーのいずれかであり得る。ポリアミドは、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルメチルアセトアミド(polyvinylmethyacetamide)(PVMA)、ポリジメチルアクリルアミド(PDMA)、ポリビニルアセトアミド(PNVA)、ポリ(ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド)、ポリアクリルアミド、並びにこれらのコポリマー及び混合物の群から選択され得る。ポリアミドは、PVP(例えば、PVP K90)とPVMA(例えば、約570KDaのMを有する)の混合物であってよい。
【0121】
反応性混合物中のすべてのポリアミドの総量は、あらゆる場合において、反応性モノマー混合物の反応性成分の総重量に基づいて、1重量パーセント~約15重量パーセントの範囲内、及び約5重量パーセント~約15重量パーセントの範囲内など、1重量パーセント~約35重量パーセントの範囲内であり得る。
【0122】
理論に束縛されるものではないが、シリコーンヒドロゲルとともに使用されるとき、ポリアミドは内部湿潤剤として機能する。本発明のポリアミドは、非重合性であってもよく、この場合、半相互貫入ネットワークとしてシリコーンヒドロゲル内に組み込まれる。ポリアミドは、シリコーンヒドロゲル内に封入されるか、又は物理的に保持される。代替的に、本発明のポリアミドは、例えば、ポリアミドマクロマー又はプレポリマーとして重合性であり得、この場合、シリコーンヒドロゲル内に共有結合的に組み込まれる。重合性及び非重合性のポリアミドの混合物もまた使用され得る。
【0123】
ポリアミドが反応性モノマー混合物内に組み込まれているとき、ポリアミドは、少なくとも100,000ダルトン、約150,000超、約150,000~約2,000,000ダルトン、約300,000ダルトン~約1,800,000ダルトンの重量平均分子量を有し得る。反応性モノマー混合物と相溶性である場合、高分子量ポリアミドを使用することができる。
【0124】
架橋剤
概して、架橋モノマー、多官能性マクロマー、及びプレポリマーとも称される1つ又は2つ以上の架橋剤を反応性混合物に添加することが望ましい。架橋剤は、二官能性架橋剤、三官能性架橋剤、四官能性架橋剤、及びこれらの混合物から選択されてもよく、これにはシリコーン含有架橋剤及び非シリコーン含有架橋剤が含まれる。非シリコーン含有架橋剤としては、エチレングリコールジメタクリレート(ethylene glycol dimethacrylate、EGDMA)、テトラエチレングリコールジメタクリレート(tetraethylene glycol dimethacrylate、TEGDMA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(trimethylolpropane trimethacrylate、TMPTMA)、トリアリルシアヌレート(triallyl cyanurate、TAC)、グリセロールトリメタクリレート、メタクリルオキシエチルビニルカーボネート(methacryloxyethyl vinylcarbonate、HEMAVc)、アリルメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド(methylene bisacrylamide、MBA)、及びポリエチレングリコールジメタクリレートが挙げられ、ポリエチレングリコールは、最大約5000ダルトンの分子量を有する。架橋剤は、通常の量、例えば、反応性配合物100グラム当たり約0.000415~約0.0156モルで反応性混合物中に用いられる。代替的に、親水性モノマー及び/又はシリコーン含有成分が分子設計により、又は不純物のために多官能性である場合、反応性混合物への架橋剤の添加は、任意選択である。架橋剤として作用することができ、存在する場合に反応性混合物への追加の架橋剤の添加を必要としない親水性モノマー及びマクロマーの例としては、(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドでエンドキャップされたポリエーテルが挙げられる。他の架橋剤は当業者に既知となり、本発明のシリコーンヒドロゲルを作製するために使用され得る。
【0125】
配合物中の他の反応性成分のうちの1つ又は2つ以上と同様の反応性を有する架橋剤を選択することが望ましい場合がある。場合によっては、得られるシリコーンヒドロゲルのいくらかの物理的、機械的、又は生物学的特性を制御するために、異なる反応性を有する架橋剤の混合物を選択することが望ましい場合がある。シリコーンヒドロゲルの構造及び形態は、使用される希釈剤及び硬化条件によっても影響を受け得る。
【0126】
弾性率を更に増加させ、引張強度を維持するために、マクロマー、架橋剤、及びプレポリマーを含む、多官能性シリコーン含有成分も含まれ得る。シリコーン含有架橋剤は、単独で、又は他の架橋剤と組み合わせて使用され得る。架橋剤として作用することができ、存在する場合には、反応性混合物への架橋モノマーの添加を必要としないシリコーン含有成分の例としては、α,ω-ビスメタクリルオキシプロピルポリジメチルシロキサンが挙げられる。別の例は、ビス-3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシプロピルポリジメチルシロキサン(ac-PDMS)である。
【0127】
硬い化学構造、及びフリーラジカル重合を起こす重合性基を有する架橋剤もまた使用され得る。好適な硬い構造の非限定的な例としては、1,4-フェニレンジアクリレート、1,4-フェニレンジメタクリレート、2,2-ビス(4-メタクリルオキシフェニル)-プロパン、2,2-ビス[4-(2-アクリルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、及び4-ビニルベンジルメタクリレート、並びにこれらの組み合わせなど、フェニル及びベンジル環を含む架橋剤が挙げられる。硬い架橋剤は、全反応性成分の総重量に基づき、約0.5~約15、又は約2~10、3~7の量で含まれ得る。本発明のシリコーンヒドロゲルの物理的及び機械的特性は、反応性混合物中の成分を調整することによって特定の用途に最適化され得る。
【0128】
シリコーン架橋剤の非限定的な例としては、表Bに示される多官能性化合物などの、上記の多官能性シリコーン含有成分も挙げられる。
【0129】
更なる構成成分
反応性混合物は、希釈剤、開始剤、UV吸収剤、可視光吸収剤、光互変化合物、医薬品、栄養補助剤、抗菌物質、着色剤、顔料、共重合性染料、非重合性染料、離型剤、及びこれらの組み合わせなどであるがこれらに限定されない、追加成分を含有し得る。
【0130】
シリコーンヒドロゲル反応性混合物用の好適な希釈剤の種類には、2~20個の炭素原子を有するアルコール、一級アミンから誘導される10~20個の炭素原子を有するアミド、及び8~20個の炭素原子を有するカルボン酸が挙げられる。希釈剤は、一級、二級及び三級アルコールであり得る。
【0131】
概して、反応性成分は、希釈剤中で混合して、反応性混合物を形成する。好適な希釈剤は、当技術分野において既知である。シリコーンヒドロゲルについて、好適な希釈剤は、国際公開第03/022321号及び米国特許第6020445号に開示されており、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。シリコーンヒドロゲル反応性混合物用の好適な希釈剤の種類には、2~20個の炭素を有するアルコール、一級アミンから誘導される10~20個の炭素原子を有するアミド、及び8~20個の炭素原子を有するカルボン酸が挙げられる。一級及び三級アルコールが使用され得る。好ましい種類には、5~20個の炭素を有するアルコール及び10~20個の炭素原子を有するカルボン酸が挙げられる。用され得る具体的な希釈剤には、1-エトキシ-2-プロパノール、ジイソプロピルアミノエタノール、イソプロパノール、3,7-ジメチル-3-オクタノール、1-デカノール、1-ドデカノール、1-オクタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-オクタノール、3-メチル-3-ペンタノール、tert-アミルアルコール、tert-ブタノール、2-ブタノール、1-ブタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-プロパノール、1-プロパノール、エタノール、2-エチル-1-ブタノール、(3-アセトキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)-プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、1-tert-ブトキシ-2-プロパノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、tert-ブトキシエタノール、2-オクチル-1-ドデカノール、デカン酸、オクタン酸、ドデカン酸、2-(ジイソプロピルアミノ)エタノール、これらの混合物などが挙げられる。アミド希釈剤の例としては、N,N-ジメチルプロピオンアミド及びジメチルアセトアミドが挙げられる。
【0132】
好ましい希釈剤には、3,7-ジメチル-3-オクタノール、1-ドデカノール、1-デカノール、1-オクタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-オクタノール、3-メチル-3-ペンタノール、2-ペンタノール、t-アミルアルコール、tert-ブタノール、2-ブタノール、1-ブタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、エタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、2-オクチル-1-ドデカノール、デカン酸、オクタン酸、ドデカン酸、これらの混合物などが挙げられる。
【0133】
より好ましい希釈剤には、3,7-ジメチル-3-オクタノール、1-ドデカノール、1-デカノール、1-オクタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-オクタノール、1-ドデカノール、3-メチル-3-ペンタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、t-アミルアルコール、tert-ブタノール、2-ブタノール、1-ブタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、2-オクチル-1-ドデカノール、これらの混合物などが挙げられる。希釈剤が存在する場合、概して、希釈剤の存在量に関して特定の制限はない。希釈剤を使用するとき、希釈剤は、(反応性配合物及び非反応性配合物を含む)反応性混合物の総重量に基づいて、約5~約50重量パーセントの範囲及び約15~約40重量パーセントの範囲など、約2~約70重量パーセントの範囲の量で存在し得る。希釈剤の混合物を使用してもよい。
【0134】
重合開始剤は、反応性混合物中で使用してもよい。重合開始剤としては、例えば、ラウリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、イソ-プロピルパーカーボネート、アゾビスイソブチロニトリルなどの、中程度の高温でフリーラジカルを発生させるもの、並びに芳香族α-ヒドロキシケトン、アルコキシオキシベンゾイン、アセトフェノン、アシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、及び三級アミン+ジケトン、これらの混合物などの光開始剤系のうちの少なくとも1つを挙げることができる。光開始剤の具体例としては、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4-4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド(DMBAPO)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(Irgacure 819)、2,4,6-トリメチルベンジルジフェニルホス-フィンオキシド及び2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾインメチルエステル、並びにカンファーキノンとエチル4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエートとの組み合わせがある。
【0135】
市販の(IGM Resins B.V.(The Netherlands)製の)可視光開始剤系としては、Irgacure(登録商標)819、Irgacure(登録商標)1700、Irgacure(登録商標)1800、Irgacure(登録商標)819、Irgacure(登録商標)1850、及びLucrin(登録商標)TPO開始剤が挙げられる。市販の(IGM Resins B.V.製の)UV光開始剤としては、Darocur(登録商標)1173及びDarocur(登録商標)2959が挙げられる。使用され得るこれらの及び他の光反応開始剤は、Volume III,Photoinitiators for Free Radical Cationic&Anionic Photopolymerization,2nd Edition by J.V.Crivello&K.Dietliker;edited by G.Bradley;John Wiley and Sons;New York;1998に開示されている。開始剤は、反応性混合物の光重合を開始するのに有効な量、例えば、反応性モノマー混合物の100部当たり約0.1~約2重量部で、反応性混合物中で使用される。反応性混合物の重合は、使用する重合開始剤に応じて熱又は可視光若しくは紫外光又は他の手段を適切に選択して使用して開始することができる。代替的に、開始は、光開始剤なしで電子ビームを使用して実施され得る。しかしながら、光開始剤が使用されるとき、好ましい開始剤は、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(Irgacure(登録商標)819)、又は1-ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトンとビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4-4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド(DMBAPO)との組み合わせなどの、ビスアシルホスフィンオキシドである。
【0136】
本発明の眼科用デバイスを作製するための反応性混合物は、複素環配位子含有モノマーに加えて、上記の重合性化合物及び任意選択の成分のいずれかを含み得る。
【0137】
好ましい反応性混合物は、複素環配位子含有モノマーと、親水性成分と、を含み得る。
【0138】
好ましい反応性混合物は、複素環配位子含有モノマーと、DMA、NVP、HEMA、VMA、NVA、メタクリル酸、及びこれらの混合物から選択される親水性成分と、を含み得る。HEMA及びメタクリル酸の混合物が好ましい。
【0139】
好ましい反応性混合物は、複素環配位子含有モノマーと、親水性成分と、シリコーン含有成分と、を含み得る。
【0140】
好ましい反応性混合物は、複素環配位子含有モノマーと、親水性成分と、Aの化合物を含むシリコーン含有成分と、を含み得る。
【0141】
好ましい反応性混合物は、複素環配位子含有モノマーと、DMA、NVP、HEMA、VMA、NVA、及びこれらの混合物から選択される親水性成分と、式Aの化合物などのシリコーン含有成分と、内部湿潤剤と、含み得る。
【0142】
好ましい反応性混合物は、複素環配位子含有モノマーと、DMA、HEMA、及びこれらの混合物から選択される親水性成分と、2-ヒドロキシ-3-[3-メチル-3,3-ジ(トリメチルシロキシ)シリルプロポキシ]-プロピルメタクリレート(SiMAA)、モノ-メタクリルオキシプロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(mPDMS)、モノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピル)-プロピルエーテル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(OH-mPDMS)、及びこれらの混合物から選択されるシリコーン含有成分と、湿潤剤(好ましくはPVP又はPVMA)と、を含み得る。親水性成分については、DMA及びHEMAの混合物が好ましい。シリコーン含有成分については、SiMAA及びmPDMSの混合物が好ましい。
【0143】
好ましい反応性混合物は、複素環配位子含有モノマーと、DMA及びHEMAの混合物を含む親水性成分と、2~20個の繰り返し単位を有するOH-mPDMSの混合物(好ましくは4個及び15個の繰り返し単位の混合物)を含むシリコーン含有成分と、を含み得る。好ましくは、反応性混合物は、ac-PDMSなどのシリコーン含有架橋剤を更に含む。また好ましくは、反応性混合物は、湿潤剤(好ましくはDMA、PVP、PVMA、又はこれらの混合物)を含有する。
【0144】
好ましい反応性混合物は、複素環配位子含有モノマーと、約1~約15重量%の少なくとも1つのポリアミド(例えば、非環状ポリアミド、環状ポリアミド、又はこれらの混合物)と、4~8個のシロキサン繰り返し単位を有する少なくとも1つの第1の単官能性ヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)(例えば、OH-mPDMS(式中、nは4~8であり、好ましくはnは4である))と、10~200個、又は10~100個、又は10~50個、又は10~20個のシロキサン繰り返し単位を有する単官能性ヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)である少なくとも1つの第2のヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)(例えば、OH-mPDMS(式中、nは10~200、又は10~100、又は10~50、又は10~20であり、好ましくはnは15である)と、約5~約35重量%の少なくとも1つの親水性モノマーと、任意選択で、10~200個又は10~100個のシロキサン繰り返し単位を有する多官能性ヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)(例えば、ac-PDMS)と、を含み得る。好ましくは、第1の単官能性ヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)及び第2のヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)は、0.4~1.3又は0.4~1.0の第1の単官能性ヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)の重量パーセントの第2のヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)の重量パーセントに対する比を提供するような濃度で存在する。
【0145】
前述の反応性混合物は、1つ又は2つ以上の開始剤、内部湿潤剤、架橋剤、他のUV又はHEV吸収剤、及び希釈剤などであるが、これらに限定されない任意選択の成分を含有していてもよい。
【0146】
ヒドロゲルの硬化及びレンズの製造
反応性混合物は、振とう又は撹拌などの当技術分野で既知の方法のいずれかによって形成され、既知の方法によるポリマー物品又はデバイスの形成に使用され得る。反応性成分は、反応性混合物を形成するために、希釈剤をしようするか又は使用しないかのいずれかで一緒に混合される。
【0147】
例えば、眼科用デバイスは、反応性成分及び任意選択で希釈剤を重合開始剤と混合し、適切な条件で硬化させて、後で旋盤加工、切削などによって適切な形状に成形され得る生成物を形成することによって調製することができる。代替的に、反応性混合物は、成形型に入れた後に硬化させ、適切な物品にすることができる。
【0148】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズなどの成形眼科用デバイスを作製する方法は、反応性モノマー混合物を調製することと、反応性モノマー混合物を第1の成形型に移すことと、第2の成形型を、反応性モノマー混合物で充填された第1の成形型の上に配置することと、フリーラジカル共重合によって反応性モノマー混合物を硬化させて、コンタクトレンズの形状でシリコーンヒドロゲルを形成することと、を含み得る。
【0149】
反応性混合物は、回転成形及び静的成形を含む、コンタクトレンズの作製において、反応性混合物を成形するための任意の既知のプロセスを介して硬化されてもよい。回転成形方法は、米国特許第3,408,429号及び同第3,660,545号に開示され、静的成形方法は、米国特許第4,113,224号及び同第4,197,266号に開示されている。本発明のコンタクトレンズは、シリコーンヒドロゲルの直接成型により形成してもよく、これは経済的であり、含水レンズの最終形状を正確に制御できる。この方法では、反応性混合物は、所望の最終シリコーンヒドロゲルの形状を有する成形型内に配置され、反応性混合物は、モノマーが重合する条件に供され、それによって所望の最終生成物のおよその形状のポリマーを生成する。
【0150】
硬化後、レンズを抽出に供して、未反応成分を除去し、レンズをレンズ成形型から取り外してもよい。抽出は、アルコールなどの有機溶媒など、従来の抽出流体を使用して行われてもよいし、又は水溶液を使用して抽出してもよい。
【0151】
水溶液は、水を含む溶液である。本発明の水溶液は、少なくとも約20重量パーセントの水、又は少なくとも約50重量パーセントの水、又は少なくとも約70重量パーセントの水、又は少なくとも約95重量パーセントの水を含み得る。水溶液はまた、無機塩又は離型剤、湿潤剤、スリップ剤、医薬成分及び栄養補助剤、これらの組み合わせなどの追加の水溶性配合物を含んでもよい。離型剤は、化合物又は化合物の混合物であり、これは、水と組み合わせると、離型剤を含まない水溶液を使用してコンタクトレンズを取り外すのに必要な時間と比較した場合、成形型からコンタクトレンズを取り外すのに必要な時間が減少する。水溶液は、精製、再利用又は特別な廃棄処理などの特別な取り扱いを必要としない場合がある。
【0152】
抽出は、例えば、水溶液中にこのレンズを浸漬すること、又は水溶液の流れにレンズをさらすことを介して行なうことができる。抽出はまた、例えば、水溶液を加熱することと、水溶液を撹拌することと、水溶液の離型剤の濃度を、レンズの離型が生じるのに十分なレベルにまで増大させることと、レンズの機械的撹拌又は超音波撹拌と、少なくとも1種の濾過助剤又は抽出助剤を水溶液に取り入れて、未反応成分をレンズから適切に除去することを容易にするのに十分な濃度にすることと、のうちの1つ又は2つ以上を含むことができる。熱、振動又はその両方の追加の有無にかかわらず、前述は、バッチプロセス又は連続プロセスで行われてもよい。
【0153】
浸出及び離型を促進するために、物理的撹拌の適用が望ましい場合がある。例えば、レンズが付着しているレンズ成形型部分は、水溶液中で振動させるか又は前後運動させることができる。他の方法には、超音波を水溶液に通すことが含まれてもよい。
【0154】
レンズは、限定されないが高圧蒸気処理などの既知の手段により殺菌してもよい。
【0155】
上記のように、好ましい眼科用デバイスはコンタクトレンズであり、より好ましくはソフトヒドロゲルコンタクトレンズである。本明細書に記載の透過波長及び百分率は、例えば、実施例に記載される方法を使用して、様々な厚さのレンズ上で測定され得る。例として、ソフトコンタクトレンズにおける透過スペクトルを測定するための好ましい中心厚さは、80~100マイクロメートル、又は90~100マイクロメートル、又は90~95マイクロメートルであり得る。典型的には、例えば、4nmの器具スリット幅を使用して、レンズの中心で測定を行ってよい。様々な濃度のHEV吸収材料を使用して、上記の透過特性を達成することができる。例えば、濃度は、希釈剤を除く反応性混合物中のすべての成分の重量パーセントに基づいて、少なくとも1パーセント、又は少なくとも2パーセント、かつ最大10パーセント又は最大5パーセントの範囲であってよい。典型的な濃度は、3~5パーセントの範囲であり得る。
【0156】
本発明によるシリコーンヒドロゲル眼科用デバイス(例えば、コンタクトレンズ)は、好ましくは、以下の特性を示す。すべての値の前には「約」が付き、このデバイスは、列挙する性質の任意の組み合わせを有することができる。特性は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許付与前公開第2018/0037690号に記載されているように、当業者に既知の方法によって決定することができる。
【0157】
水濃度%:少なくとも20%、又は少なくとも25%かつ最大80%、又は最大70%
ヘイズ:30%以下、又は10%以下
前進動的接触角(Wilhelmyプレート法):100°以下、又は80°以下、又は50°以下
引張係数(psi):150以下、135以下、120以下、又は80~135
酸素透過係数(Dk、バーラー(barrer)):少なくとも60バーラー、又は少なくとも80、又は少なくとも100、又は少なくとも150、又は少なくとも200
破断伸び:少なくとも100
イオン性シリコーンヒドロゲルに関しては、(前述したものに加えて)以下の性質もまた好ましい場合がある:
リゾチーム取り込み(μg/レンズ):少なくとも100、又は少なくとも150、又は少なくとも500、又は少なくとも700
ポリクオタニウム1(PQ1)取り込み(%):15以下、又は10以下、又は5以下。
【0158】
ここで、本発明のいくつかの実施形態を、以下の実施例にて詳細に記述する。
【実施例
【0159】
溶液中の化合物の紫外線可視スペクトルは、Perkin Elmer Lambda 45又はAgilent Cary 6000i UV/VIS走査型分光計で測定した。使用前に、機器を少なくとも30分間熱平衡化させた。Perkin Elmer機器では、スキャン範囲は200-800nmであり、走査速度は、毎分960nmであり、スリット幅は4nmであり、モードは透過又は吸光度に設定し、ベースライン補正を選択した。Cary機器では、走査範囲は200~800nmであり、走査速度は600nm/分であり、スリット幅は2nmであり、モードは透過又は吸光度であり、ベースライン補正を選択した。自動ゼロ関数を使用してサンプルを分析する前に、ベースライン補正を行った。
【0160】
請求された組成物から部分的に形成されたコンタクトレンズの紫外線可視スペクトルは、包装溶液を使用し、Perkin Elmer Lambda 45 UV/VIS又はAgilent Cary 6000i UV/VIS走査型分光計で測定した。使用前に、機器を少なくとも30分間熱平衡化させた。Perkin Elmer機器では、スキャン範囲は200-800nmであり、走査速度は、毎分960nmであり、スリット幅は4nmであり、モードを透過に設定し、ベースライン補正を選択した。ベースライン補正は、プラスチック2ピース型レンズホルダー及び同じ溶媒が入っているキュベットを使用して実施した。これらの2ピース型コンタクトレンズホルダーは、入射光ビームが横断する位置にサンプルを石英キュベット内に保持するように設計した。参照キュベットはまた、2ピース型ホルダーも収容していた。サンプルの厚さが一定であることを確実にするために、すべてのレンズを同一の成形型を使用して作製した。コンタクトレンズの中心厚さは、電子式厚さ計を使用して測定した。報告された中心厚さ及び透過パーセントスペクトルは、3つの個々のレンズデータを平均化することによって得られる。特定の波長範囲(例えば、可視380~780nm、HEV380~420nm、UV-A315~380nm、及びUV-B280~315nm)にわたる平均透過パーセントは、所望の波長範囲にわたってナノメートル単位の各整数波長で測定された透過パーセントを平均化することによって計算された。
【0161】
キュベットの外面が完全に清潔で乾燥し、キュベット内に気泡が存在しないことを確実にすることが重要である。参照キュベット及びそのレンズホルダーが一定のままであり、すべてのサンプルが同じサンプルキュベット及びそのレンズホルダーを使用するときに、測定の再現性が改善され、キュベットの両方が器具に適切に挿入されることを確実にする。
【0162】
レンズの湿潤性は、較正済みKruss K100表面張力計を室温(23±4℃)で使用し、界面活性剤非含有のホウ酸塩緩衝生理食塩水をプローブ溶液として使用する修正Wilhelmyプレート法により測定した。すべての設備は、きれいであり乾燥していなければならず、試験中、機器周辺での振動は最小限でなければならない。湿潤性は通常、前進接触角(Kruss DCA)として報告される。表面張力計は湿度発生器を備えており、温度及び湿度ゲージが表面張力計のチャンバー内に配置された。相対湿度は70±5%に維持した。実験は、感度が高いてんびんによって湿潤による試料に対する力を測定しながら、既知の周囲長のレンズ試料を既知の表面張力の包装溶液内に浸漬することによって行った。レンズ上の包装溶液の前進接触角(adv.)は、試料浸漬中に収集した力データから決定されている。後退接触角(rec.)は、同様に、試料を液体から取り出している間の力データから決定されている。ウィルヘルミープレート法は、以下の式、Fg=γρcosθ-Βに基づき、式中、F=液体とレンズとの間の湿潤力(mg)、g=重力加速度(980.665cm/sec)、γ=プローブ液体の表面張力(dyne/cm)、ρ=液体/レンズメニスカスのコンタクトレンズの周囲長(cm)、θ=動的接触角(度)、及びB=浮力(mg)である。Bは、浸漬のゼロ深さではゼロである。通常、試験片はコンタクトレンズの中央領域から切断された。各片は幅約5mm、長さ14mmであり、プラスチックのピンセットを使用して金属クリップに取り付け、金属ワイヤーフックで突き刺し、包装溶液中で少なくとも3時間平衡した。次いで、各試料は、4回循環させ、結果を平均して、レンズの前進接触角及び後進接触角を得た。典型的な測定速度は12mm/分であった。データ収集及び分析中、試料は、金属クリップを接触させることなく、包装溶液中に完全に浸漬し続けた。5つの個々のレンズからの値を平均して、実験レンズの報告されている前進及び後退接触角を得た。
【0163】
コンタクトレンズの機械的特性を、ロードセル及び空気圧グリップコントロールを備えたInstron model 1122又は5542の引張試験機を使用して測定した。マイナス1の屈折レンズ(球面)は、その中央の均一厚さプロファイルのため、好ましいレンズ幾何学形状である。0.522インチの長さ、0.276インチの「耳」幅、及び0.213インチの「首」幅を有する、-1.00の屈折率のレンズから切断されたドッグボーン形状の試料は、グリップ内に載置され、毎分2インチの一定の歪み速度で、破断するまで引き伸ばされた。ドッグボーン試料の中心厚さは、試験前に、電子式厚さ計を使用して測定された。試料の初期ゲージ長さ(L)及び破断時の試料長さ(L)は、測定された。各組成物の少なくとも5個の試料を測定し、平均値を使用して、破断までのパーセント伸長を計算した。パーセント伸長=[(L-L)/L]×100。引張係数(modulus、M)を、応力-歪み曲線の初期直線部分の傾きとして計算し、弾性率の単位は、平方インチ当たりポンド又はpsiである。引張強度(tensile strength、TS)をピーク荷重及び元の断面積から計算した。引張強度=ピーク荷重を元の断面積で除算したものであり、引張強度の単位は、psiである。靭性は、破断するためのエネルギー及び試料の元の体積から計算された。靭性=破断するためのエネルギーを試料の元の体積で割る。靱性の単位は、in-lbs/inである。破断伸び(elongation to break、ETB)もまた、破断時のひずみのパーセントとして記録した。機械的特性の標準偏差は、計算され、括弧内のデータ表に列挙された。
【0164】
以下の略語は、実施例及び図面を通して使用され、以下の意味を有する。
セノフィルコン(senofilcon)Aコンタクトレンズ:約2重量パーセントのNorbloc、球面-3.0屈折を含有する市販のAcuvue(登録商標)Oasys(登録商標)ブランドのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ
エタフィルコン(etafilcon)Aコンタクトレンズ:約1重量パーセントのNorbloc、球面-3.0屈折を含有する市販のAcuvue(登録商標)Moist(登録商標)従来のヒドロゲルコンタクトレンズ
Norbloc:2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリルイルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール又は3-(2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェネチルメタクリレート
【0165】
【化7】
UV-VIS:紫外線-可視
HEV:高エネルギー可視
nm:ナノメートル
mM:ミリモル
mmol:ミリモル
包装溶液配合表:18.52グラム(300mmol)のホウ酸、3.7グラム(9.7mmol)のホウ酸ナトリウム十水和物、及び28グラム(197mmol)の硫酸ナトリウムを、2リットルのメスフラスコを満たすのに十分な脱イオン水に溶解させた。
【0166】
(実施例1)
30個のセノフィルコン(senofilcon)Aコンタクトレンズ(1A)は、包装溶液中に2mMの塩化銅(II)溶液を収容するジャーに入れられ、ジャーローラー上で約30分回転された。レンズの色は、5分以内に黄褐色になった。レンズは、脱イオン水中で、続いて包装溶液ですすがれた。次いで、レンズ(1B)は、欠陥について検査され、包装溶液とともにバイアル瓶に包装され、121℃で約30分間オートクレーブ処理することによって滅菌された。次いで、UV-VIS透過スペクトル及び機械的特性は、レンズ1A及び1Bについて測定された。表1は、レンズ1A及び1Bの透過特性を纏める。図1は、レンズ1A及び1Bの透過スペクトルを示す。表2は、レンズ1A及び1Bの機械的特性を纏める。
【0167】
図1及び表1は、銅(II)イオンとNorblocのペンダントベンゾトリアゾール基との間の錯化の結果としての、レンズ1Bにおける380~420nmの範囲における400nm及び約61%での約64%の透過率の有意な低減を示す。透過率の低減パーセントは、例えば、以下のように、34.7/95.5=0.36が、(1-0.36)(100%)=64%の透過光の低減として表され得る、テストレンズ対コントロールレンズの400nmでの分数である、と計算され得る。UV-A及びUV-B領域の両方における透過率も、同様に更に低減された。表2は、銅(II)イオンとNorblocのペンダントベンゾトリアゾール基との間の錯化による機械的特性の有意な変化が存在しなかったことを示す。
【0168】
【表3】
【0169】
【表4】
【0170】
(実施例2)
2mMの塩化銅(II)を含有する包装溶液中に懸濁されたセノフィルコン(senofilcon)Aコンタクトレンズは、90℃のオーブンに入れられ、レンズは、0,5,10,20,30及び50分後に除去された(それぞれレンズ2A~2F)。除去されたレンズは、脱イオン水中で、次いで、スペクトルが得られる前に包装溶液中ですすがれた。異なる時点でのレンズのUV-VIS透過スペクトルは、測定した。図2は、UV-VIS透過スペクトルの時間シーケンスを示す。表3は、レンズ2A~2Fの透過特性を纏める。
【0171】
図2及び表3の両方は、銅(II)イオンとNorblocのペンダントベンゾトリアゾール基との間の錯化が、実験条件下の約10分間で平衡に達したことを実証する。その時までに、HEV、UV-A、及びUV-Bだけでなく、可視範囲全体にわたる透過率が有意に低減した。
【0172】
【表5】
【0173】
(実施例3)
酢酸銀、塩化銅(II)、硫酸鉄(III)、ヨウ化亜鉛、硝酸クロム(III)、及びNorbloc(3A)のメタノール中の0.2mM溶液は、調製された。各金属イオンについて、2.5mLの塩溶液は、Norblocに対する金属イオンの1:2モル比に供給するために、5.0mLのNorbloc溶液と混合された。異なる混合物は、以下のように、酢酸銀混合物(3B)、塩化銅(II)混合物(3C)、ヨウ化鉄(III)混合物(3D)、ヨウ化亜鉛混合物(3E)、クロム(III)硝酸塩混合物(3F)、とラベル付けされた。得られた溶液は、周囲温度で少なくとも12時間(一晩)静置した。次いで、これらの混合物3A~3FのUV-VIS透過スペクトルは、得られた。図3は、UV-VIS透過スペクトルが、溶液中に存在する遷移金属イオンの種類とともにどのように変化するかを示す。表4は、混合物3A~3FのUV-VIS透過特性を纏める。
【0174】
【表6】
【0175】
これらの溶液の結果は、銅(II)、鉄(III)、及びクロム(III)が、Norblocの透過率を赤方偏移するのに最も有効であることを示す。更に、実施例1~3間の比較によって、ベンゾトリアゾール基がポリマー網状組織又はヒドロゲル(実施例1~2におけるような)中のペンダント基として結合しているときに、銅(II)イオンとベンゾトリアゾール基との間の錯化は、強化されているように見え、透過スペクトルにおけるより有意な変化が結果としてもたらせる。
【0176】
(実施例4)
セノフィルコン(senofilcon)A(4A)及びエタフィルコン(etafilcon)(4C)コンタクトレンズは、黄銅(黄銅は、銅と亜鉛の合金であり、溶液中で腐食することが期待され、それによって銅イオン及び亜鉛イオンの両方を生成する)の小片がある包装溶液中に入れられた。少なくとも3日後、黄褐色のレンズは、除去され、黄銅が暴露されたセノフィルコン(senofilcon)A(4B)及び黄銅が暴露されたエタフィルコン(etafilcon)A(4D)としてラベル付けされた。図4は、銅イオン及び亜鉛イオン、すなわちレンズ4A~4Dへの曝露前後のコンタクトレンズのUV-VIS透過スペクトルを示す。表5は、レンズ4A~4DのUV-VIS透過特性を纏める。測定された透過スペクトルは、黄銅の小片の表面積及びその腐食速度の変動に起因する曝露時間に依存し得ることに留意されたい。
【0177】
図4及び表5は、黄銅曝露されたレンズにおける透過率の有意な低減を示す。黄銅曝露されたセノフィルコン(senofilcon)レンズについては、400nmで92%の低減、及びHEV範囲において90%の低減があった。黄銅曝露されたエタフィルコン(etafilcon)レンズについては、400nmで73%の低減、及びHEV範囲において70%の低減があった。
【0178】
【表7】
【0179】
(実施例5)
セノフィルコン(senofilcon)Aコンタクトレンズは、様々な濃度の塩化銅(II)を有する包装溶液中に再包装された。Norblocに対する銅(II)イオンのモル比は、変化された。レンズは、以下のように、Norblocに対する銅(II)イオンのモル比が、0に等しい(5A)(すなわち、包装溶液に添加される銅イオンはない)、1に等しい(5B)、2に等しい(5C)、3に等しい(5D)、4に等しい(5E)、5に等しい(5F)レンズ、と標識された。図5は、コンタクトレンズのUV-VIS透過スペクトルが、Norblocに対する銅(II)イオンのモル比でどのように変化するかを示す。表6は、レンズ5A~5FのUV-VIS透過特性を纏める。
【0180】
図5及び表6に示すように、銅(II)錯化レンズの透過スペクトルは、Norblocに対する銅(II)イオンのモル比を増加させる連続赤方偏移を示した。これらのデータは、銅(II)濃度が増加するにつれて、より多くの錯化に対する平衡シフトと一致し、それによって透過スペクトルが変化する。
【0181】
【表8】
【0182】
〔実施の態様〕
(1) 遷移金属と錯化した少なくとも1つの複素環配位子を含む眼科用デバイスであって、前記眼科用デバイスが、
(a)前記眼科用デバイスを作製するために好適な1つ又は2つ以上のモノマーと、
(b)複素環配位子含有モノマーと、を含む反応性混合物の重合反応生成物であり、
前記眼科用デバイスが、400nmで90パーセント以下の透過率を有する、眼科用デバイス。
(2) 400nmでの透過率が、60パーセント以下である、実施態様1に記載の眼科用デバイス。
(3) 380~420nmで85パーセント以下の平均透過率を有する、実施態様1~2のいずれかに記載の眼科用デバイス。
(4) 450nmで少なくとも30パーセントの透過率を有する、実施態様1~3のいずれかに記載の眼科用デバイス。
(5) 前記遷移金属が、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12族の遷移金属のうちの1つ又は2つ以上から選択される、実施態様1~4のいずれかに記載の眼科用デバイス。
【0183】
(6) 前記遷移金属が、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、金、及びこれらの組み合わせから選択される、実施態様1~5のいずれかに記載の眼科用デバイス。
(7) 前記遷移金属が、銅、鉄、亜鉛、及びこれらの組み合わせから選択される、実施態様1~6のいずれかに記載の眼科用デバイス。
(8) 前記眼科用デバイスを作製するために好適な前記モノマーが、親水性成分、疎水性成分、シリコーン含有成分、及びこれらの2つ以上の混合物から選択される、実施態様1~7のいずれかに記載の眼科用デバイス。
(9) 前記複素環配位子含有モノマーが、式I、II、III、IV、V、又はVIの下部構造を有する、実施態様1~8のいずれかに記載の眼科用デバイス。
【0184】
【化8】
(10) 前記複素環配位子含有モノマーが、式VIIのものであり、
【0185】
【化9】
式中、Rが、H又はハロであり、R及びRが、独立して、H、アルキル、又は-Y-Pであり、Yが、連結基であり、Pが、重合性基であり、少なくとも1つの置換基が、-Y-Pである、実施態様1~9のいずれかに記載の眼科用デバイス。
【0186】
(11) Rが、H又はクロロである、実施態様10に記載の眼科用デバイス。
(12) Rが、Hであり、Rが、-Y-Pgである、実施態様10~11のいずれかに記載の眼科用デバイス。
(13) 前記複素環配位子含有モノマーが、2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリルイルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール又は3-(2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェネチルメタクリレートである、実施態様1~12のいずれかに記載の眼科用デバイス。
(14) 眼内レンズ又はソフトコンタクトレンズである、実施態様1~13のいずれかに記載の眼科用デバイス。
(15) 従来の(非シリコーン)ヒドロゲル又はシリコーンヒドロゲルである、実施態様1~14のいずれかに記載の眼科用デバイス。
【0187】
(16) 有機のみの高エネルギー可視光吸収化合物が無い、実施態様1~15のいずれかに記載の眼科用デバイス。
(17) 実施態様1~16のいずれかに記載の眼科用デバイスを製造するための方法であって、前記方法は、
(a)少なくとも1つの複素環配位子を含有する重合反応生成物を提供することであって、前記重合反応生成物が、(i)前記眼科用デバイスを作製するために好適な1つ又は2つ以上のモノマーと、(ii)1つ又は2つ以上の複素環配位子含有モノマーと、を含む反応性混合物から形成されている、提供することと、
(b)遷移金属と前記複素環配位子との間で錯体を形成する条件下で、前記重合反応生成物を前記遷移金属と接触させることと、を含む、方法。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】