(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】H2S希釈が改善されたガソリンエンジン排気ガス処理のための多領域TWC触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/63 20060101AFI20230428BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20230428BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20230428BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 217
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022527816
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(85)【翻訳文提出日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 GB2021050687
(87)【国際公開番号】W WO2021198643
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】アーミテージ、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】パウエル、アレクシス
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA17
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4G169EB12Y
4G169EE09
4G169FC08
(57)【要約】
ガソリンエンジンからの排気ガスを処理するための触媒物品であって、入口端部、出口端部を含み、軸方向長さLを有する、基材と;入口端部で始まり、軸方向長さL未満にわたって延びている第1の触媒領域であって、第1のPGM成分と、第1の無機酸化物とを含む、第1の触媒領域と;出口端部から始まる第2の触媒領域であって、第2のPGM成分と、第2の酸素貯蔵能(OSC)材料と、第2の無機酸化物とを含む、第2の触媒領域と;を含み、第1の触媒領域が、セリアを実質的に含まず、第1のPGM成分が、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、又はそれらの組み合わせである、ガソリンエンジンの排気ガス処理用触媒を対象とする。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガソリンエンジンからの排気ガスを処理するための触媒物品であって、
軸方向長さLを有する、入口端部、出口端部を備える基材と、
前記入口端部で始まり、前記軸方向長さL未満にわたって延びている第1の触媒領域であって、第1の白金族金属(PGM)成分と、第1の無機酸化物とを含む、第1の触媒領域と;
前記出口端部から始まる第2の触媒領域であって、第2のPGM成分と、第2の酸素貯蔵能(OSC)材料と、第2の無機酸化物とを含む、第2の触媒領域と;を含み、
前記第1の触媒領域が、実質的にセリアを含まず、
前記第1のPGM成分が、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、又はそれらの組み合わせである、触媒物品。
【請求項2】
前記第1の触媒領域が、前記軸方向長さLの1~50パーセントにわたって延びている、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項3】
前記第2の触媒領域が、前記軸方向長さLの50~100パーセントにわたって延びている、請求項1又は2に記載の触媒物品。
【請求項4】
前記第2の触媒領域及び前記第1の触媒領域の全長が、前記軸方向長さLに等しい、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項5】
前記第2の触媒領域及び前記第1の触媒領域の全長が、前記軸方向長さL未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項6】
前記第1のPGM成分が、Pdである、請求項1~5のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項7】
前記第1の触媒領域が、0.1~150g/ft
3のパラジウムを含む、請求項6に記載の触媒物品。
【請求項8】
前記第1の無機酸化物が、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、シリカ、ランタン、ネオジム、プラセオジム、イットリウム酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項9】
前記第2のPGMが、Pd、Pt、Rh、又はそれらの組み合わせである、請求項1~8のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項10】
前記第2のOSC材料が、酸化セリウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項11】
前記第1の触媒領域が、モレキュラーシーブを実質的に含まない、請求項1~10のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項12】
第3の触媒領域を更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項13】
前記出口端部から始まり、前記軸方向長さL未満にわたって延びる第4の触媒領域を更に含み、前記第4の触媒領域が、第4のPGM成分及び第4の無機酸化物を含み、前記第4の触媒領域が、セリアを実質的に含まず、前記第4のPGM成分が、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、又はそれらの組み合わせである、請求項1~12のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項14】
前記第1の触媒領域の100%が、前記第2の触媒領域及び/又は前記第3の触媒領域によって覆われていない、請求項1~13のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の触媒物品を含む、燃焼排気ガスの流れを処理するための排出物処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンエンジンからの排気ガス排出物を処理するのに有用な触媒物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンエンジンでは、炭化水素(hydrocarbon、HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(「NOx」)を含む様々な汚染物質を含有する排気ガスが生成される。排気ガス触媒的転化触媒を含む排出量制御システムは、大気に排出されるこれらの汚染物質の量を低減するために広く利用されている。ガソリンエンジンの排気処理に通常使用される触媒は、TWC(three way catalyst)(三元触媒)である。TWCにより、次の3つの主な役割、すなわち、(1)COの酸化、(2)未燃HCの酸化、及び(3)NOxの還元を行う。
【0003】
H2S希釈は、標準TWCに導入できる追加の特徴である。典型的には、Mn及びNiなどの添加物は、H2S排出物を希釈するために歴史的に使用されてきたが、Mnは、三元触媒の主要な性能に有害であることが示され、Niは、その関連する毒性のために多くの地理的領域において実現可能な選択肢ではない。本発明は、H2S排出物を低減しながら、有害な効果を有する添加剤を使用する必要性を否定する。
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様は、ガソリンエンジンの排気ガス処理用触媒であって、入口端部、出口端部を含み、軸方向長さLを有する、基材と;入口端部で始まり、軸方向長さL未満にわたって延びている第1の触媒領域であって、第1の白金族金属(PGM)成分と、第1の無機酸化物とを含む、第1の触媒領域と;出口端部から始まる第2の触媒領域であって、第2のPGM成分と、第2の酸素貯蔵能(OSC)材料と、第2の無機酸化物とを含む、第2の触媒領域と;を含み、第1の触媒領域が、セリアを実質的に含まず、第1のPGM成分が、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、又はそれらの組み合わせである、ガソリンエンジンの排気ガス処理用触媒を対象とする。
【0005】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の触媒物品を使用する、NOx、CO、及びHCを含有する、ガソリンエンジンから排出された車両排気ガスの処理方法を対象とする。
【0006】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の触媒物品を使用する、ガソリンエンジンから排出された車両排気ガスからのH2Sを処理する方法を対象とする。
【0007】
本開示の別の態様は、システムを通じて排気ガスを移送するための導管とともに本明細書に記載される触媒物品を含む、車両排気ガス処理用システムを対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1a】第1の触媒領域が入口端部から延び、第2の触媒領域が出口端部から延び、第2の触媒領域及び第1の触媒領域の全長が軸方向長さLと等しい、第1の構成を示す。
【
図1b】第1の触媒領域が入口端部から延び、第2の触媒領域が軸方向長さLの100%にわたって延びる、
図1aの変形を示す。
【
図2a】第1の触媒領域が入口端部から延び、第2の触媒領域が出口端部から延び、第3の触媒領域が出口端部から延びる、第2の構成を示す。
【
図2b】第1の触媒領域が入口端部から延び、第2の触媒領域が軸方向長さLの100%にわたって延び、第3の触媒領域が軸方向長さLの100%にわたって延びる、
図2aの変形を示す。
【
図3a】第2の触媒領域が出口端部から延び、第3の触媒領域が入口端部から延び、第1の触媒領域が入口端部から延び、かつ第3の触媒領域を少なくとも部分的に覆う、第3の構成を示す。
【
図3b】第2の触媒領域が出口端部から延び、第3の触媒領域が出口端部から延び、第1の触媒領域が入口端部から延びる、
図3aの変形を示す。
【
図4a】第2の触媒領域が軸方向長さLの100%にわたって延び、第1の触媒領域が入口端部から延び、かつ第2の触媒領域を部分的に覆い、第4の触媒領域が出口端部から延び、かつ第2の触媒領域を部分的に覆う、第4の構成を示す。
【
図4b】第2及び第3の触媒領域がどちらも軸方向長さLの100%にわたって延び、第1の触媒領域が入口端部から延び、かつ第3の触媒領域を部分的に覆い、第4の触媒領域が出口端部から延び、かつ第3の触媒領域を部分的に覆う、
図4aの変形を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、ガソリンエンジン及び他の機関によって生成された排気ガスの触媒的処理、並びに関連する触媒及びシステムを対象とする。より具体的には、本発明者らは、第1の触媒領域をTWC配合物に組み込むことによって、本発明による触媒物品が、H2S希釈の改善を示したことを発見した。
【0010】
本開示の一態様は、ガソリンエンジンの排気ガス処理用触媒であって、入口端部、出口端部を含み、軸方向長さLを有する、基材と;入口端部で始まり、軸方向長さL未満にわたって延びている第1の触媒領域であって、第1の白金族金属(PGM)成分と、第1の無機酸化物とを含む、第1の触媒領域と;出口端部から始まる第2の触媒領域であって、第2のPGM成分と、第2の酸素貯蔵能(OSC)材料と、第2の無機酸化物とを含む、第2の触媒領域と;を含み、第1の触媒領域が、セリアを実質的に含まず、第1のPGM成分が、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、又はそれらの組み合わせである、ガソリンエンジンの排気ガス処理用触媒を対象とする。
【0011】
本発明者らは驚くべきことに、これらの触媒をこのようにコーティングすることで、触媒を別々に又は従来のコーティング方法で使用しても達成されない、より良好な触媒性能を示すことを見出した。
【0012】
第1の触媒領域
第1の触媒領域は、軸方向長さLの1~50パーセントにわたって延び得る。好ましくは、第1の触媒領域は、軸方向長さLの10~40パーセント、より好ましくは25~35パーセントにわたって延び得る。
【0013】
好ましくは、第1のPGM成分は、Pdである。第1の触媒領域は、0.1~150g/ft3の、好ましくは、10~100g/ft3の、より好ましくは、20~60g/ft3のPdを含むことができる。
【0014】
第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、0.5~2.5g/in3、好ましくは、0.8~2.0g/in3であり得る。
【0015】
第1の触媒領域は、本質的にセリアを含まなくてもよく、又はセリアを含まない。
【0016】
第1の無機酸化物は、好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物である。第1の無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、マグネシア、シリカ、ジルコニア、バリウム酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。特に好ましくは、第1の無機酸化物は、アルミナ、ランタン-アルミナ、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。特に好ましい第1の無機酸化物の1つは、アルミナ又はランタン-アルミナ複合酸化物である。
【0017】
第1の触媒領域は、第1のアルカリ又はアルカリ土類金属成分を更に含み得る。
【0018】
第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、好ましくはバリウム及び/又はストロンチウム、並びにこれらの混合酸化物又は複合酸化物である。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、第1の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%の量で担持されている。
【0019】
第1のアルカリ又は第1のアルカリ土類金属はバリウムであることが更により好ましい。バリウムは、存在する場合、第1の触媒領域の総重量に基づいて、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%の量で担持されている。
【0020】
また、第1のアルカリ又はアルカリ土類金属は、バリウム及びストロンチウムの混合酸化物又は複合酸化物であることが好ましい。好ましくは、バリウム及びストロンチウムの混合酸化物又は複合酸化物は、第1の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%の量で存在する。第1のアルカリ又はアルカリ土類金属は、バリウム及びストロンチウムの複合酸化物であることがより好ましい。
【0021】
好ましくはバリウム又はストロンチウムは、BaCO3又はSrCO3として存在する。このような材料は、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、初期湿潤含浸又は噴霧乾燥によって実施することができる。
【0022】
第1の触媒領域は、マンガン、ネオジム又はカルシウムを更に含んでもよい。好ましくは、存在する場合、マンガン、ネオジム、又はカルシウムは、0.1~15重量%、より好ましくは1~10重量%の量で担持される。
【0023】
いくつかの実施形態では、第1の触媒領域は、Ba及びSr、Ba及びMn、Ba及びNd、又はBa及びCaを更に含んでもよい。更なる実施形態では、第1の触媒領域は、Ba及びSr、Ba及びMn、又はBa及びNdを更に含んでもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1の触媒領域は、モレキュラーシーブを実質的に含まず、好ましくは、モレキュラーシーブを本質的に含まない。
【0025】
第2の触媒領域
第2の触媒領域は、軸方向長さLの50~100パーセントにわたって延び得る。好ましくは、第2の触媒領域は、軸方向長さLの60~100パーセント、より好ましくは70~100パーセントにわたって延び得る。
【0026】
第2のPGM成分は、Pd、Pt、Rh又はこれらの組み合わせであることができる。いくつかの実施形態では、第2のPGM成分は、Pd、Rh又はPd及びRhである。
【0027】
第2のOSC材料は、好ましくは、酸化セリウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される。より好ましくは、第2のOSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物を含む。更に、第2のOSC材料は、ランタン、ネオジム、プラセオジム、イットリウムなどのドーパントの1つ以上を更に含んでもよい。セリア-ジルコニア混合酸化物は、少なくとも50:50、好ましくは60:40超、より好ましくは80:20超のジルコニア対セリアのモル比を有し得る。
【0028】
第2のOSC材料(例えば、セリア-ジルコニア混合酸化物)は、第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量に基づいて、10~90重量%、好ましくは25~75重量%、より好ましくは30~60重量%であり得る。
【0029】
第2の無機酸化物は、好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物である。第2の無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、マグネシア、シリカ、セリア、バリウム酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。特に好ましくは、第2の無機酸化物は、アルミナ、ランタン-アルミナ、セリア、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。特に好ましい第2の無機酸化物の1つは、アルミナ又はランタン-アルミナ複合酸化物である。
【0030】
第2のOSC材料と第2の無機酸化物とは、10:1以下、好ましくは8:1又は5:1以下、より好ましくは4:1又は3:1以下、最も好ましくは2:1以下の重量比を有してもよい。
【0031】
代替的に、第2のOSC材料と第2の無機酸化物とは、10:1~1:10、好ましくは8:1~1:8又は5:1~1:5、より好ましくは4:1~1:4又は3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2の重量比を有することができる。
【0032】
第2の触媒領域における第2のOSC材料担持量は、1.5g/in3未満であり得る。いくつかの実施形態では、第2の触媒領域における第2のOSC材料担持量は、1.2g/in3、1.0g/in3、0.9g/in3、0.8g/in3、又は0.7g/in3以下である。
【0033】
第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、3.5g/in3未満、好ましくは、3.0g/in3未満、2.5g/in3、又は1.5g/in3であり得る。
【0034】
第2の触媒領域は、第2のアルカリ又はアルカリ土類金属成分を更に含み得る。
【0035】
第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、好ましくはバリウム、ストロンチウム、これらの混合酸化物又は複合酸化物である。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、第2の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%のバリウム又はストロンチウムの量である。
【0036】
第2のアルカリ又はアルカリ土類金属はストロンチウムであることが更により好ましい。ストロンチウムは、存在する場合、第2の触媒領域の総重量に基づいて、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%の量で存在する。
【0037】
また、第2のアルカリ又はアルカリ土類金属は、バリウム及びストロンチウムの混合酸化物又は複合酸化物であることが好ましい。好ましくは、バリウム及びストロンチウムの混合酸化物又は複合酸化物は、第2の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%の量で存在する。第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、バリウム及びストロンチウムの複合酸化物であることがより好ましい。
【0038】
好ましくは、バリウム又はストロンチウムはBaCO3又はSrCO3として存在する。このような材料は、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、初期湿潤含浸又は噴霧乾燥によって実施することができる。
【0039】
第3の触媒領域
触媒物品は、第3の触媒領域を更に含んでもよい。第3の触媒領域は、軸方向長さLの50~100パーセントにわたって延び得る。好ましくは、第3の触媒領域は、軸方向長さLの60~100パーセント、より好ましくは70~100パーセントにわたって延び得る。
【0040】
第3の触媒領域は、第3のPGM成分を含み得る。第3のPGM成分は、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、第3のPGM成分は、Pd、Rh、又はPd及びRhである。
【0041】
第3の触媒領域は、第3のOSC材料、第3のアルカリ若しくはアルカリ土類金属成分、及び/又は第3の無機酸化物を更に含むことができる。
【0042】
第3のOSC材料は、好ましくは、酸化セリウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される。好ましくは、第3のOSC材料は、セリア-ジルコニウム混合酸化物と、ランタン、ネオジム、イットリウム、プラセオジムなどのドーパントのうちの1つ以上とを含む。加えて、第3のOSC材料は、第3のロジウム成分の担体材料として機能し得る。
【0043】
セリア-ジルコニア混合酸化物は、少なくとも50:50、好ましくは、60:40超、より好ましくは、80:20超のジルコニア対セリアのモル比を有し得る。
【0044】
第3のOSC材料は、第3の触媒領域の総ウォッシュコート担持量に基づいて、10~90重量%、好ましくは、25~75重量%、より好ましくは、35~65重量%であり得る。。
【0045】
第3の触媒領域における第3のOSC材料担持量は、2g/in3未満であり得る。いくつかの実施形態では、第3の触媒領域における第3のOSC材料担持量は、1.5g/in3以下、1.2g/in3以下、1.0g/in3以下、又は0.5g/in3以下である。
【0046】
第3の無機酸化物は、好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物である。第3の無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、セリア、マグネシア、シリカ、ランタン、ジルコニウム、ネオジム、プラセオジムの酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。特に好ましくは、第3の無機酸化物は、アルミナ、ランタン/アルミナ複合酸化物、又はジルコニウム/アルミナ複合酸化物である。特に好ましい第3の無機酸化物の1つは、ランタン/アルミナ複合酸化物又はジルコニウム/アルミナ複合酸化物である。
【0047】
第3の無機酸化物は、好ましくは、80m2/g超のフレッシュ比表面積、0.1~4mL/gの範囲の細孔容積を有する。100m2/g超の比表面積を有する高比表面積の無機酸化物、例えば高比表面積アルミナが特に好ましい。他の好ましい第3の無機酸化物としては、ランタン/アルミナ複合酸化物が挙げられ、これは、所望によりジルコニウム含有成分、例えば、ジルコニアを更に含む。このような場合、ジルコニウムは、例えばコーティングとして、ランタン/アルミナ複合酸化物の表面上に存在してもよい。
【0048】
第3のOSC材料と第3の無機酸化物とは、少なくとも1:1、好ましくは少なくとも2:1、より好ましくは少なくとも3:1の重量比を有してもよい。
【0049】
あるいは、第3のOSC材料と第3の無機酸化物とは、10:1~1:10、好ましくは、8:1~1:8又は5:1~1:5、より好ましくは、4:1~1:4又は3:1~1:3の重量比を有することができる。
【0050】
第3の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、3.5g/in3未満、好ましくは、3.0g/in3又は2g/in3未満、より好ましくは、1.5g/in3又は1.0g/in3未満であり得る。
【0051】
第4の触媒領域
触媒物品は、出口端部で始まり、軸方向長さL未満にわたって延びている第4の触媒領域を更に含んでもよく、第4の触媒領域は、第4のPGM成分及び第4の無機酸化物を含み、第4の触媒領域は、セリアを実質的に含まず、第4のPGM成分は、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、又はそれらの組み合わせである。
【0052】
第4の触媒領域は、軸方向長さLの1~50パーセントにわたって延び得る。好ましくは、第4の触媒領域は、軸方向長さLの10~40パーセント、より好ましくは25~35パーセントにわたって延び得る。
【0053】
好ましくは、第4のPGM成分はPdである。第4の触媒領域は、0.1~150g/ft3の、好ましくは、10~100g/ft3の、より好ましくは、20~60g/ft3のPdを含むことができる。
【0054】
第4の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、0.5~2.5g/in3、好ましくは、0.8~2.0g/in3であり得る。
【0055】
第4の触媒領域は、本質的にセリアを含まなくてもよく、又はセリアを含まない。
【0056】
第4の無機酸化物は、好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物である。第4の無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、マグネシア、シリカ、ジルコニア、バリウム酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。特に好ましくは、第4の無機酸化物は、アルミナ、ランタン-アルミナ、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。特に好ましい第4の無機酸化物の1つは、アルミナ又はランタン-アルミナ複合酸化物である。
【0057】
第4の触媒領域は、第4のアルカリ又はアルカリ土類金属成分を更に含み得る。
【0058】
第4のアルカリ又はアルカリ土類金属は、好ましくはバリウム及び/又はストロンチウム、並びにこれらの混合酸化物又は複合酸化物である。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、第4の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%のバリウム又はストロンチウムの量で担持されている。
【0059】
第4のアルカリ又はアルカリ土類金属はバリウムであることが更により好ましい。バリウムは、存在する場合、第4の触媒領域の総重量に基づいて、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%の量で担持されている。
【0060】
また、第4のアルカリ又はアルカリ土類金属は、バリウム及びストロンチウムの混合酸化物又は複合酸化物であることが好ましい。好ましくは、バリウム及びストロンチウムの混合酸化物又は複合酸化物は、第4の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%の量で存在する。第4のアルカリ又はアルカリ土類金属は、バリウム及びストロンチウムの複合酸化物であることがより好ましい。
【0061】
好ましくはバリウム又はストロンチウムは、BaCO3又はSrCO3として存在する。このような材料は、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、初期湿潤含浸又は噴霧乾燥によって実施することができる。
【0062】
第4の触媒領域は、マンガン、ネオジム又はカルシウムを更に含んでもよい。好ましくは、存在する場合、マンガン、ネオジム、又はカルシウムは、0.1~15重量%、より好ましくは1~10重量%の量で担持される。
【0063】
いくつかの実施形態では、第4の触媒領域は、Ba及びSr、Ba及びMn、Ba及びNd、又はBa及びCaを更に含んでもよい。更なる実施形態では、第4の触媒領域は、Ba及びSr、Ba及びMn、又はBa及びNdを更に含んでもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、第4の触媒領域は、モレキュラーシーブを実質的に含まず、好ましくは、モレキュラーシーブを本質的に含まない。
【0065】
本発明の触媒物品は、当業者に知られている更なる成分を含んでもよい。例えば、本発明の組成物は、少なくとも1つのバインダー及び/又は少なくとも1つの界面活性剤を更に含んでもよい。バインダーが存在する場合、分散性アルミナバインダーが好ましい。
【0066】
第1の触媒領域、第2の触媒領域、第3の触媒領域、及び/又は第4の触媒領域の構成
第2の触媒領域は、軸方向長さLの1~50パーセントにわたって第1の触媒領域と重なることができる(例えば、
図1b、
図2b、
図3a、
図4a、及び
図4b参照)。あるいは、第2の触媒領域及び第1の触媒領域の全長は、軸方向長さLに等しくてもよい。また別の代替例では、第2の触媒領域及び第1の触媒領域の全長は、軸方向長さL未満、例えば、軸方向長さLの95%、90%、80%、又は70%以下であり得る。
【0067】
本発明の一態様では、第1の触媒領域、第2の触媒領域、第3の触媒領域、及び/又は第4の触媒領域を含む触媒物品の様々な構成は、以下のように調製することができる。
【0068】
図1aは、第1の触媒領域が入口端部から延び、第2の触媒領域が出口端部から延び、第2の触媒領域及び第1の触媒領域の全長が軸方向長さLと等しい、第1の構成を示す。
【0069】
第1の構成では、好ましくは、第1の触媒領域は、軸方向長さLの5~50パーセント又は10~50パーセント、より好ましくは、軸方向長さLの20~50パーセント、更により好ましくは、軸方向長さLの25~40パーセントにわたって延びることができる。
【0070】
図1bは、第1の触媒領域が入口端部から延び、第2の触媒領域が軸方向長さLの100%にわたって延びる、第1の構成の変形を示す。
【0071】
図2aは、第1の触媒領域が入口端部から延び、第2の触媒領域が出口端部から延び、第3の触媒領域が出口端部から延びる、第2の構成を示す。
【0072】
いくつかの実施形態では、第1の触媒領域と第2/第3の触媒領域との間に重なりはない。他の実施形態では、最大30%の重なりがあり得る。
【0073】
図2bは、第1の触媒領域が入口端部から延び、第2の触媒領域が軸方向長さLの100%にわたって延び、第3の触媒領域が軸方向長さLの100%にわたって延びる、第2の構成の変形を示す。
【0074】
図3aは、第2の触媒領域が出口端部から延び、第3の触媒領域が入口端部から延び、第1の触媒領域が入口端部から延び、かつ第3の触媒領域を少なくとも部分的に覆う、第3の構成を示す。
【0075】
図3bは、第2の触媒領域が出口端部から延び、第3の触媒領域が出口端部から延び、第1の触媒領域が入口端部から延びる、第3の構成の変形を示す。
【0076】
図4aは、第2の触媒領域が軸方向長さLの100%にわたって延び、第1の触媒領域が入口端部から延び、かつ第2の触媒領域を部分的に覆い、第4の触媒領域が出口端部から延び、かつ第2の触媒領域を部分的に覆う、第4の構成を示す。
【0077】
図4bは、第2及び第3の触媒領域がどちらも軸方向長さLの100%にわたって延び、第1の触媒領域が入口端部から延び、かつ第3の触媒領域を部分的に覆い、第4の触媒領域が出口端部から延び、かつ第3の触媒領域を部分的に覆う、第4の構成の変形を示す。
【0078】
基材
基材は、好ましくは、第1の面と第2の面とを有し、それらの間に長手方向が画定される、フロースルーモノリス基材である。フロースルーモノリス基材は、第1の面と第2の面との間に延びている、複数のチャネルを有する。複数のチャネルは、長手方向に延びており、複数の内側表面(例えば、各チャネルを画定するウォールの表面)を提供する。複数のチャネルの各々は、第1の面にある開口部と、第2の面にある開口部と、を有する。誤解を回避するために、フロースルーモノリス基材はウォールフローフィルタではない。
【0079】
第1の面は、典型的には基材の入口端部にあり、第2の面は基材の出口端部にある。
【0080】
チャネルは一定の幅のものであってもよく、各複数のチャネルは、均一なチャネル幅を有してもよい。
【0081】
好ましくは、長手方向に直交する平面内で、モノリス基材は、1平方インチ当たり300~900のチャネル、好ましくは400~800のチャネルを有する。例えば、第1の面上において、開いている第1のチャネルと閉じている第2のチャネルとの密度は、1平方インチ当たり600~700チャネルである。チャネルは、矩形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、又は他の多角形形状である断面を有してもよい。
【0082】
モノリス基材は、触媒材料を保持するための担体として作用する。モノリス基材を形成するのに好適な材料としては、コーディエライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカマグネシア若しくはケイ酸ジルコニウムなどのセラミック様材料、又は多孔質の耐火金属が挙げられる。多孔質モノリス基材の製造におけるそのような材料及びそれらの使用は、当該技術分野において周知である。
【0083】
本明細書に記載のフロースルーモノリス基材は、単一構成要素(すなわち、単一のれんが状塊)であることに留意されたい。それにもかかわらず、排出物処理システムを形成する場合、使用される基材は、複数のチャネルを一緒に接着することによって形成されてもよく、又は本明細書に記載のように複数のより小さい基材を一緒に接着することによって形成されてもよい。このような技術は、排出物処理システムの好適なケーシング及び構成とともに、当該技術分野において公知である。
【0084】
本発明の触媒物品がセラミック基材を含む実施形態では、セラミック基材は、任意の好適な耐火材料、例えば、アルミナ、シリカ、セリア、ジルコニア、マグネシア、ゼオライト、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩及びメタロアルミノケイ酸塩(コーディエライト及びスポジュメンなど)、又はこれらのいずれか2つ以上の混合物若しくは混合酸化物で作製されていてもよい。コーディエライト、マグネシウムアルミノケイ酸塩、及び炭化ケイ素が、特に好ましい。
【0085】
本発明の触媒物品が金属基材を含む実施形態では、金属基材は、任意の好適な金属、特にチタン及びステンレス鋼などの耐熱性金属及び金属合金、並びに鉄、ニッケル、クロム、及び/又はアルミニウムを他の微量金属に加えて含有するフェライト合金で作製されていてもよい。
【0086】
いくつかの実施形態では、第1の触媒領域は、基材上に直接担持/堆積され得る。特定の実施形態では、第2の触媒領域は、基材上に直接担持/堆積され得る。他の実施形態では、第3の触媒領域は、基材上に直接担持/堆積されている。
【0087】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の触媒物品を使用する、NOx、CO、及びHCを含有する、ガソリンエンジンから排出された車両排気ガスの処理方法を対象とする。
【0088】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の触媒物品を使用する、ガソリンエンジンから排出された車両排気ガスからのH2Sを処理する方法を対象とする。
【0089】
本開示の別の態様は、システムを通じて排気ガスを移送するための導管とともに本明細書に記載される触媒物品を含む、車両排気ガス処理用システムを対象とする。
【0090】
定義
本明細書で使用される場合、「領域」という用語は、典型的にはウォッシュコートを乾燥及び/又は焼成することによって得られる基材上の場所を指す。「領域」は、例えば、「層」又は「ゾーン」として基材上に配置又は担持され得る。基材上の場所又は配置は、概ね、基材にウォッシュコートを適用するプロセス中に制御される。「領域」は、典型的には、明確な境界又は縁部を有する(すなわち、従来の分析技術を使用して、一方の領域を別の領域から区別することが可能である)。
【0091】
典型的には、「領域」は、実質的に均一な長さを有する。この文脈における「実質的に均一な長さ」への言及は、その平均値から10%を超えた逸脱(例えば、最大長と最小長との差)をしない長さ、好ましくはその平均値から5%を超えた逸脱をしない長さ、より好ましくはその平均値から1%を超えた逸脱をしない長さを指す。
【0092】
各「領域」は、実質的に均一な組成を有する(すなわち、領域の1つの部分とその領域の別の部分とを比較する場合、ウォッシュコートの組成に実質的な差がない)ことが好ましい。この文脈における実質的に均一な組成は、領域の1つの部分を領域の別の部分と比較する場合に、組成の差が5%以下、通常は2.5%以下、最も通常的には1%以下である材料(例えば、領域)のものを指す。
【0093】
本明細書で使用される場合、「ゾーン」という用語は、基材の全長の75%以下の長さなど、基材の全長未満の長さを有する領域を指す。「ゾーン」は、典型的には、基材の全長の少なくとも5%(例えば5%以上)の長さ(すなわち、実質的に均一な長さ)を有する。
【0094】
基材の全長は、その入口端部とその出口端部と(例えば、基材の両端部)の間の距離である。
【0095】
本明細書で使用される「基材の入口端部に配置されているゾーン」への任意の言及は、基材上に配置又は担持されているゾーンであって、基材の入口端部までの方が、基材の出口端部までよりも近い、ゾーンを指す。したがって、ゾーンの中点(すなわち、その長さの半分での点)は、基材の入口端部までの方が基材の出口端部までよりも近い。同様に、本明細書で使用される「基材の出口端部に配置されているゾーン」への任意の言及は、基材上に配置又は担持されているゾーンであって、基材の出口端部までの方が基材の入口端部までよりも近い、ゾーンを指す。したがって、ゾーンの中点(すなわち、その長さの半分での点)は、基材の出口端部までの方が基材の入口端部までよりも近い。
【0096】
基材がウォールフローフィルタである場合、概して、「基材の入口端部に配置されているゾーン」への任意の言及は、基材上に配置又は担持されているゾーンであって、
(a)基材の入口チャネルの入口端部(例えば、開いている端部)までの方が入口チャネルの閉じた端部(例えば、遮断された端部又は塞がれた端部)までよりも近い、ゾーン、及び/又は
(b)基材の出口チャネルの閉じた端部(例えば、遮断された端部又は塞がれた端部)までの方が出口チャネルの出口端部(例えば開いている端部)までよりも近い、ゾーンを指す。
【0097】
したがって、ゾーンの中点(すなわちその半分の長さでの点)は、(a)基材の入口チャネルの入口端部までの方が入口チャネルの閉じた端部までよりも近く、及び/又は(b)基材の出口チャネルの閉じた端部までの方が出口チャネルの出口端部までよりも近い。
【0098】
同様に、基材がウォールフローフィルタである場合、「基材の出口端部に配置されているゾーン」への任意の言及は、基材上に配置又は担持されているゾーンであって、
(a)基材の出口チャネルの出口端部(例えば、開いている端部)までの方が出口チャネルの閉じた端部(例えば、遮断された端部又は塞がれた端部)までよりも近い、ゾーン、及び/又は
(b)基材の入口チャネルの閉じた端部(例えば、遮断された端部又は塞がれた端部)までの方が入口チャネルの入口端部(例えば開いている端部)までよりも近い、ゾーンを指す。
【0099】
したがって、ゾーンの中点(すなわちその半分の長さでの点)は、(a)基材の出口チャネルの出口端部までの方が出口チャネルの閉じた端部までよりも近い、及び/又は(b)基材の入口チャネルの閉じた端部までの方が入口チャネルの入口端部までよりも近い。
【0100】
ウォッシュコートがウォールフローフィルタのウォールに存在する(すなわち、ゾーンがウォール内のものである)場合、ゾーンは(a)と(b)との両方を満たし得る。
【0101】
用語「ウォッシュコート」は、当該技術分野において公知であり、通常、触媒の製造中の基材に適用される接着性コーティングを指す。
【0102】
本明細書で使用される場合、頭字語「PGM」は、「白金族金属」を指す。用語「白金族金属」は、概ね、Ru、Rh、Pd、Os、Ir及びPtからなる群から選択される金属、好ましくはRu、Rh、Pd、Ir及びPtからなる群から選択される金属を指す。概ね、用語「PGM」は、好ましくは、Rh、Pt、及びPdからなる群から選択される金属を指す。
【0103】
本明細書で使用される場合、「混合酸化物」という用語は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、単相にての酸化物の混合物を指す。本明細書で使用される場合、「複合酸化物」という用語は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、1つを超える相を有する酸化物の組成物を指す。
【0104】
本明細書で使用される場合、「本質的になる」という表現は、特定の材料又は工程、及び、例えば微量不純物を含み、並びにその特徴の基本特性に実質的に影響を及ぼさない任意の他の材料又は工程を含む、特徴の範囲を制限する。「から本質的になる」という表現は、「からなる」という表現を包含する。
【0105】
材料に関して本明細書で使用される場合、「実質的に含まない」という表現は、典型的には、領域、層、又はゾーンの内容物との関連において、材料が少量、例えば、5重量%以下、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下であることを意味する。「実質的に含まない」という表現は、「含まない」という表現を包含する。
【0106】
材料に関して本明細書で使用される場合、「本質的に含まない」という表現は、典型的には、領域、層、又はゾーンの内容物との関連において、材料が微量、例えば1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.1%重量%以下であることを意味する。「本質的に含まない」という表現は、「含まない」という表現を包含する。
【0107】
本明細書で使用される場合、重量%として表されるドーパントの量、特に総量に対する任意の言及は、担体材料又はその耐火金属酸化物の重量を指す。
【0108】
本明細書で使用する場合、「担持量」という用語は、金属重量基準でのg/ft3の単位の測定値を指す。
【0109】
以下の実施例は、単に本発明を例示するものである。当業者は、本発明の趣旨及び特許請求の範囲内にある多くの変形例を認識するであろう。
【0110】
以下の特定の実施形態のリストは、前述の説明を置き換えるか、又は取って代わるのではなく、補完することを意図している。
【0111】
実施形態1:ガソリンエンジンからの排気ガスを処理するための触媒物品であって、
軸方向長さLを有する、入口端部、出口端部を備える基材と、
入口端部で始まり、軸方向長さL未満にわたって延びている第1の触媒領域であって、第1のPGM成分と、第1の無機酸化物とを含む、第1の触媒領域と;
出口端部から始まる第2の触媒領域であって、第2のPGM成分と、第2の酸素貯蔵能(OSC)材料と、第2の無機酸化物とを含む、第2の触媒領域と;を含み、
第1の触媒領域が、実質的にセリアを含まず、
第1のPGM成分が、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、又はそれらの組み合わせである、触媒物品。
【0112】
実施形態2:第1の触媒領域が、軸方向長さLの1~50パーセントにわたって延びている、実施形態1に記載の触媒物品。
【0113】
実施形態3:第2の触媒領域が、軸方向長さLの50~100パーセントにわたって延びている、実施形態1又は実施形態2に記載の触媒物品。
【0114】
実施形態4:第2の触媒領域が、軸方向長さLの1~50パーセントにわたって、第1の触媒領域と重なっている、実施形態1~3のいずれか一項に記載の触媒物品。
【0115】
実施形態5:第2の触媒領域及び第1の触媒領域の全長が、軸方向長さLに等しい、実施形態1~3のいずれか一項に記載の触媒物品。
【0116】
実施形態6:第2の触媒領域及び第1の触媒領域の全長が、軸方向長さL未満である、実施形態1~3のいずれか一項に記載の触媒物品。
【0117】
実施形態7:第1のPGM成分が、Pdである、実施形態1~6のいずれか一項に記載の触媒物品。
【0118】
実施形態8:第1の触媒領域が、0.1~150g/ft3のパラジウムを含む、実施形態7に記載の触媒物品。
【0119】
実施形態9:第1の触媒領域が、本質的にセリアを含まない、実施形態1~8のいずれか一項に記載の触媒物品。
【0120】
実施形態10:第1の無機酸化物が、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、シリカ、ランタン、ネオジム、プラセオジム、イットリウム酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される、実施形態1~9のいずれか一項に記載の触媒物品。
【0121】
実施形態11:第1の無機酸化物が、アルミナ、ランタナ/アルミナ複合酸化物、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である、実施形態10に記載の触媒物品。
【0122】
実施形態12:第2のPGMが、Pd、Pt、Rh、又はそれらの組み合わせである、実施形態1~11のいずれか一項に記載の触媒物品。
【0123】
実施形態13:第2のOSC材料が、酸化セリウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の触媒物品。
【0124】
実施形態14:第2のOSC材料が、セリア-ジルコニア混合酸化物を含む、実施形態13に記載の触媒物品。
【0125】
実施形態15:第2の無機酸化物が、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、シリカ、ランタン、ネオジム、プラセオジム、イットリウム酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される、実施形態1~14のいずれか一項に記載の触媒物品。
【0126】
実施形態16:第2の無機酸化物が、アルミナ、ランタナ/アルミナ複合酸化物、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である、実施形態15に記載の触媒物品。
【0127】
実施形態17:第3の触媒領域を更に含む、実施形態1~16のいずれか一項に記載の触媒物品。
【0128】
実施形態18:第3の触媒領域が、第3のPGM成分を含む、実施形態17に記載の触媒物品。
【0129】
実施形態19:第3のPGM成分が、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施形態18に記載の触媒物品。
【0130】
実施形態20:第3の触媒領域が、第3のOSC材料を更に含む、実施形態17~19のいずれか一項に記載の触媒物品。
【0131】
実施形態21:第3のOSC材料が、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される、実施形態20に記載の触媒物品。
【0132】
実施形態22:第3の無機酸化物を更に含む、実施形態17~21のいずれか一項に記載の触媒物品。
【0133】
実施形態23:第3の無機酸化物が、アルミナ、マグネシア、シリカ、ジルコニア、ランタン、セリウム、ネオジム、プラセオジム、イットリウム酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される、実施形態22に記載の触媒物品。
【0134】
実施形態24:第3の触媒領域が、軸方向長さLにわたって延在する、実施形態17~23のいずれか一項に記載の触媒物品。
【0135】
実施形態25:第3の触媒領域が、軸方向長さL未満にわたって延在する、実施形態17~23のいずれか一項に記載の触媒物品。
【0136】
実施形態26:出口端部で始まり、軸方向長さL未満にわたって延びている第4の触媒領域を更に含み、第4の触媒領域が、第4のPGM成分及び第4の無機酸化物を含み、第4の触媒領域は、セリアを実質的に含まず、第4のPGM成分は、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、又はそれらの組み合わせである、実施形態1~25のいずれか一項に記載の触媒物品。
【0137】
実施形態27:基材が、フロースルーモノリスである、実施形態1~26のいずれか一項に記載の触媒物品。
【0138】
実施形態28:第1の触媒領域が、基材上に直接担持/堆積されている、実施形態1~27のいずれか一項に記載の触媒物品。
【0139】
実施形態29:第2の触媒領域が、基材上に直接担持/堆積されている、実施形態1~28のいずれか一項に記載の触媒物品。
【0140】
実施形態30:第1の触媒領域の100%が、第2の触媒領域及び/又は第3の触媒領域によって覆われていない、実施形態1~29のいずれか一項に記載の触媒物品。
【0141】
実施形態31:実施形態1~30のいずれか一項に記載の触媒物品を含む、燃焼排気ガスの流れを処理するための排出物処理システム。
【0142】
実施形態32:内燃機関からの排気ガスを処理する方法であって、排気ガスを、実施形態1~31のいずれか一項に記載の触媒物品と接触させることを含む、方法。
【実施例】
【0143】
材料
全ての材料は市販されており、別途記載のない限り、既知の供給元から入手した。
【0144】
比較触媒A
比較触媒Aは、単層構造を有する市販の三元(Pd-Rh)触媒である。ウォッシュコートは、CeZr混合酸化物上に担持されているPd及びRh、La安定化アルミナ、並びにBaプロモータからなる。ウォッシュコート担持量は約3.0g/in3で、Pd担持量は27g/ft3、Rh担持量は3g/ft3、Ba担持量は250g/ft3であった。標準的なコーティング手順を使用して、基材の長さの50%を目標コーティング深さとして、セラミック基材(400cpsi、壁厚4mil)の入口面及び出口面から、このウォッシュコートをコーティングし、90℃で乾燥させ、500℃で45分間焼成した。
【0145】
ウォッシュコートは、0.68g/in3のセリア担持量を有する。
【0146】
比較触媒B
比較触媒Bは、75g/ft3 Mnも含有したことを除いて、比較触媒Aと同様の手順によって調製された。
【0147】
触媒C
第1の触媒領域:
第1の触媒領域は、第1のLa安定化アルミナ、並びにBa及びSrプロモータのウォッシュコート上に担持されたPdからなる。第1の触媒領域のウォッシュコート担持量は約1.7g/in3であり、Pd担持量は27g/ft3であり、Ba担持量は400g/ft3であり、Sr担持量は250g/ft3であった。
【0148】
標準的なコーティング手順を使用して、基材の長さの30%を目標コーティング深さとして、上記第1の触媒領域を含むセラミック基材の入口面から、このウォッシュコートをコーティングし、90℃で乾燥させた。
【0149】
第2の触媒領域:
第2の触媒領域は、CeZr混合酸化物、La安定化アルミナ、及びBaプロモータのウォッシュコート上に担持されたPd及びRhからなる。第2の触媒領域のウォッシュコート担持量は約3.0g/in3で、Pd担持量は27g/ft3、Rh担持量は3g/ft3、Ba担持量は250g/ft3であった。
【0150】
標準的なコーティング手順を使用して、基材の長さの70%を目標コーティング深さとして、セラミック基材(400cpsi、壁厚4mil)の出口面から、このウォッシュコートをコーティングし、90℃で乾燥させ、500℃で45分間焼成した。
【0151】
触媒D
触媒Dは、第2の触媒領域が基材の100%を目標コーティング深さとしてコーティングされたことを除いて、触媒Cと同様の手順にしたがって調製された。(例えば、
図1b参照)。また、コーティング順序は、第2の触媒領域、続いて第1の触媒領域である。
【0152】
触媒E
第1の触媒領域:
第1の触媒領域は、第1のLa安定化アルミナ、並びにBa及びSrプロモータのウォッシュコート上に担持されたPdからなる。第1の触媒領域のウォッシュコート担持量は約0.85g/in3であり、Pd担持量は27g/ft3であり、Ba担持量は400g/ft3であり、Sr担持量は250g/ft3であった。
【0153】
標準的なコーティング手順を使用して、基材の長さの30%を目標コーティング深さとして、上記第1の触媒領域を含むセラミック基材の入口面から、このウォッシュコートをコーティングし、90℃で乾燥させた。
【0154】
第2の触媒領域:
第2の触媒領域は、CeZr混合酸化物、第2のLa安定化アルミナ、及びBaプロモータのウォッシュコート上に担持されたPd及びRhからなる。第2の触媒領域のウォッシュコート担持量は約3.0g/in3で、Pd担持量は27g/ft3、Rh担持量3g/ft3、Ba担持量250g/ft3であった。
【0155】
標準的なコーティング手順を使用して、基材の長さの100%を目標コーティング深さとして、セラミック基材(400cpsi、壁厚4mil)の出口面から、このウォッシュコートをコーティングし、90℃で乾燥させ、500℃で45分間焼成した。
【0156】
第4の触媒領域
第4の触媒領域は、第4のLa安定化アルミナ、並びにBa及びSrプロモータのウォッシュコート上に担持されたPdからなる。第4の触媒領域のウォッシュコート担持量は約0.85g/in3であり、Pd担持量は27g/ft3であり、Ba担持量は400g/ft3であり、Sr担持量は250g/ft3であった。
【0157】
コーティング順序は、第2の触媒領域、第1の触媒領域、次いで第4の触媒領域である。
【0158】
実施例1:H2S希釈
コアサンプルは、比較触媒A及びB並びに触媒C~Eの各々から採取した。
【0159】
合成ガスベンチ試験を使用して、触媒活性を求めた。表1の入口ガス混合物を使用して、シミュレート触媒活性試験(SCAT)ガス装置でコアの試験を行った。試験は、50,000h-1の空間速度(SV)にて、以下に示す条件の5サイクルからなっていた。サイクル2~5からの脱硫ステップ中のピーク排出の平均を記録した(表2)。
【0160】
500℃にてコアのプレコンディショニングを行った。試験は被毒ステップで開始し(ガスミックス1)、次いで、コアを650℃まで加熱し(ガスミックス2)、ここで脱硫化が起こった(ガスミックス3)。次いで、コアをN2下で500℃まで冷却した。
【0161】
【0162】
【0163】
示されるように、上記の表2の本発明の触媒C~Eは、比較触媒A及びBと比較して、H2S希釈の大幅な改善を示す。
【国際調査報告】