(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】酸素吸蔵能材料
(51)【国際特許分類】
B01J 20/06 20060101AFI20230428BHJP
B01J 23/89 20060101ALI20230428BHJP
B01J 23/656 20060101ALI20230428BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20230428BHJP
C01G 25/02 20060101ALI20230428BHJP
C01G 49/00 20060101ALI20230428BHJP
C01G 45/02 20060101ALI20230428BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20230428BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
B01J20/06 B
B01J23/89 A ZAB
B01J23/656 A
B01J35/04 301L
C01G25/02
C01G49/00 D
C01G45/02
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022527820
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(85)【翻訳文提出日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 GB2021050688
(87)【国際公開番号】W WO2021198644
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 真之
(72)【発明者】
【氏名】長岡 修平
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G002
4G048
4G066
4G169
【Fターム(参考)】
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3G091AB08
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4G169EC28
4G169EE06
4G169EE09
(57)【要約】
混合酸化物を含む改善された酸素吸蔵能材料が開示される。排気流中の排出物を除去するための改善された酸素吸蔵能材料を使用する触媒、システム、及び方法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合酸化物を含む酸素吸蔵能材料であって、前記混合酸化物は、約10重量%~約80重量%の量のセリアと、約10重量%~約80重量%の量のジルコニアと、約0.05重量%~約1.0重量%の量の遷移金属酸化物と、を含み、前記遷移金属は、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、及びこれらの混合物からなる群から選択される、酸素吸蔵能材料。
【請求項2】
前記遷移金属は、マンガン、鉄、銅、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の酸素吸蔵能材料。
【請求項3】
前記遷移金属は、鉄である、請求項1に記載の酸素吸蔵能材料。
【請求項4】
前記遷移金属酸化物は、約0.1重量%~約0.8重量%の量である、請求項1に記載の酸素吸蔵能材料。
【請求項5】
前記遷移金属酸化物は、約0.2重量%~約0.6重量%の量である、請求項1に記載の酸素吸蔵能材料。
【請求項6】
前記混合酸化物は、ドーパントを含む、請求項1に記載の酸素吸蔵能材料。
【請求項7】
前記ドーパントは、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化イッテルビウム、酸化プラセオジム、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載の酸素吸蔵能材料。
【請求項8】
XRDによって決定されるパイロクロア相を含む、請求項1に記載の酸素吸蔵能材料。
【請求項9】
白金族金属(PGM)成分と、請求項1に記載のOSC材料と、を含む、触媒組成物。
【請求項10】
前記遷移金属は、マンガン、鉄、銅、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項9に記載の触媒組成物。
【請求項11】
前記遷移金属は、鉄である、請求項9に記載の触媒組成物。
【請求項12】
前記遷移金属酸化物は、約0.1重量%~約0.8重量%の量である、請求項9に記載の触媒組成物。
【請求項13】
前記遷移金属酸化物は、約0.2重量%~約0.6重量%の量である、請求項9に記載の触媒組成物。
【請求項14】
無機酸化物担体を更に含む、請求項9に記載の触媒組成物。
【請求項15】
前記無機酸化物担体は、アルミナである、請求項14に記載の触媒組成物。
【請求項16】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属を更に含む、請求項9に記載の触媒組成物。
【請求項17】
BaCO
3を更に含む、請求項9に記載の触媒組成物。
【請求項18】
排気ガスを処理するための触媒物品であって、
基材と、
前記基材上の第1の触媒領域と、を含み、
前記第1の触媒領域は、第1のPGM成分と、請求項1に記載の酸素吸蔵能材料と、を含む、触媒物品。
【請求項19】
前記遷移金属は、マンガン、鉄、銅、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項18に記載の触媒物品。
【請求項20】
前記遷移金属は、鉄である、請求項18に記載の触媒物品。
【請求項21】
前記遷移金属酸化物は、約0.1重量%~約0.8重量%の量である、請求項18に記載の触媒物品。
【請求項22】
前記遷移金属酸化物は、約0.2重量%~約0.6重量%の量である、請求項18に記載の触媒物品。
【請求項23】
前記第1の触媒領域は、第1の無機酸化物担体を含む、請求項18に記載の触媒物品。
【請求項24】
前記第1の無機酸化物担体は、アルミナである、請求項23に記載の触媒物品。
【請求項25】
前記第1の触媒領域は、BaCO
3を含む、請求項18に記載の触媒物品。
【請求項26】
第2の触媒領域を更に含む、請求項18に記載の触媒物品。
【請求項27】
請求項18に記載の触媒物品を備える、燃焼排気ガスの流れを処理するための排出物処理システム。
【請求項28】
内燃機関からの排気ガスを処理する方法であって、前記排気ガスを、請求項18に記載の触媒物品と接触させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された酸素吸蔵能材料、並びに排出物処理のための触媒組成物、システム、及び方法における酸素吸蔵能材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
三元触媒(three-way catalyst、TWC)は、ガス流における炭化水素及び一酸化炭素の酸化並びに窒素酸化物の還元などの、酸化反応及び還元反応の両方を同時に触媒することができる。TWC触媒には、自動車、トラック、及び他のガソリン燃料エンジンなどの内燃機関からの排気ガスの処理を含む、多くの分野で有用性が見出されている。
【0003】
TWC触媒は、一般に、酸素吸蔵能(oxygen storage capacity、OSC)材料を含む。ほとんどのOSC材料は、CeO2及びZrO2の混合酸化物又は複合酸化物に基づく(国際公開第2008113445(A1)号、米国特許第7,943,104号)。これらのOSC材料では、CeO2は、典型的な触媒動作中に空気/燃料比の局所的な変動から触媒を緩衝するために用いられる。CeO2は、迅速かつ再現性ある様式で、酸素欠乏過渡状態下ではその構造から活性酸素を放出し、酸素富化条件下では気相からの吸着によって酸素を再生することによって、その緩衝を達成する。酸素の高利用可能性は、三元触媒の酸化還元反応を促進するために重要である。
【0004】
セリア-ジルコニア混合酸化物系OSC材料の合成、改良、及び最適化に関する広範な研究が行われてきた。例えば、排出制御用途のためにより低い原子価のイオンでドープされたセリア-ジルコニアの使用が調査されており、Catalysis Today 327(2019)90-115を参照されたい。
【0005】
当技術分野では、排出物処理においてより効果的な触媒材料が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示の一態様は、混合酸化物を含む酸素吸蔵能材料であって、混合酸化物は、約10~約80重量パーセント(重量%)の量のセリアと、約10~約80重量%の量のジルコニアと、約0.05~約1.0重量%の量の遷移金属酸化物と、を含み、遷移金属は、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、及びこれらの混合物からなる群から選択される、酸素吸蔵能材料、に関する。
【0007】
本開示の別の態様は、白金族金属成分と、混合酸化物を含むOSC材料と、を含む触媒組成物に関する。
【0008】
本開示の別の態様は、排気ガスを処理するための触媒物品であって、基材と、基材上の第1の触媒領域と、を含み、第1の触媒領域は、第1のPGM成分と、第1のOSC材料と、を含む、触媒物品、に関する。特定の一実施形態では、第1のOSC材料は、約10~約80重量%の量のセリアと、約10~約80重量%の量のジルコニアと、約0.05~約1.5重量%の量の遷移金属酸化物と、を含む混合酸化物であり、遷移金属は、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0009】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の触媒物品を使用する、NOx、CO、及び炭化水素(「HC」)を含有する車両排気ガスを処理するための方法に関する。
【0010】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の触媒物品を備える、排気ガスを処理するためのシステムに関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】酸化還元エージング後のOSC材料A、B、F、及びGのXRDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の一態様は、混合酸化物を含む酸素吸蔵能材料であって、混合酸化物は、約10~約80重量%の量のセリアと、約10~約80重量%の量のジルコニアと、約0.05~約1.0重量%の量の遷移金属酸化物と、を含み、遷移金属は、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、及びこれらの混合物からなる群から選択される、酸素吸蔵能材料、に関する。
【0013】
「酸素吸蔵能」とは、リーン条件で酸素を吸蔵し、リッチ条件で酸素を放出するために、触媒において酸素吸蔵能材料として使用される材料の能力を指す。
【0014】
TWCの最適な使用は、空気/燃料比が14.56に等しいλ=1付近である。これらの値を超えると、排気ガスは、当該リーンであり、CO及びHCは、二酸化炭素及び水に触媒的に酸化される。この値を下回ると、排気ガスは、当該リッチであり、主に、NOxは、例えば、還元剤としてCOを使用して窒素(N2)に還元される。
【0015】
本明細書で使用される場合、「混合酸化物」という用語は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、単相にての酸化物の混合物を指す。
【0016】
好ましくは、混合酸化物中のCeカチオン及びZrカチオンは、原子的に十分に混合される。例えば、XRDを使用して、混合酸化物中のパイロクロアの存在を検出することができる。好ましくは、混合酸化物は、XRDによって決定されるパイロクロアを含む。
【0017】
好ましくは、混合酸化物中の遷移金属は、マンガン、鉄、銅、及びこれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、遷移金属は、鉄である。
【0018】
混合酸化物中に存在する遷移金属酸化物の量は、好ましくは約0.1~約1.0重量%、より好ましくは約0.1~約0.8重量%、最も好ましくは約0.2~約0.6重量%の量である。
【0019】
混合酸化物は、酸化プラセオジム、酸化ランタン、酸化イットリウム、及びこれらの混合物からなる群から選択されるドーパントを含み得る。ドーパントの量は、典型的には、約1.0~約10重量%である。
【0020】
混合酸化物は、共ゲル化、共沈、プラズマ噴霧、火炎噴霧熱分解などの技術によって形成することができる。例えば、水溶液が、セリウムの塩(例えば、硝酸塩)、ジルコニウムの塩(例えば、硝酸塩)、並びにマンガン、鉄、銅、及びこれらの混合物の塩(例えば、硝酸塩)からなる群から選択される少なくとも1つの塩を含む、共沈法を使用することができる。加えて、プラセオジムの塩、ランタンの塩(例えば、硝酸塩)、及びイットリウムの塩(例えば、硝酸塩)を、混合酸化物を形成する際に使用してもよい。共沈から形成された混合酸化物を、例えば、ろ過によって単離し、洗浄し、乾燥し、焼成し、次いでボールミルなどの粉砕機を使用して粉砕して、混合酸化物粉末を得ることができる。
【0021】
本開示の別の態様は、白金族金属(platinum group metal、PGM)成分と、混合酸化物を含むOSC材料と、を含む触媒組成物に関する。頭字語「PGM」は、「platinum group metal(白金族金属)」を指す。「白金族金属」という用語は、概ね、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、及びPtからなる群から選択される金属、好ましくはRu、Rh、Pd、Ir、及びPtからなる群から選択される金属を指す。いくつかの実施形態では、「PGM」という用語は、好ましくは、Rh、Pt、及びPdからなる群から選択される金属を指す。いくつかの他の実施形態では、PGM成分は、Pd又はRhである。更なる実施形態では、PGM成分は、Pdである。
【0022】
触媒組成物中のPGM成分の量は、0.01~20重量%、好ましくは0.05~10重量%、より好ましくは0.2~5.0重量%であり得る。
【0023】
触媒組成物は、無機酸化物担体を更に含み得る。無機酸化物担体は、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物であり得る。無機酸化物担体は、好ましくは、ガソリンエンジンの排気に伴う温度などの高温で、化学的及び物理的安定性を示す、耐火性酸化物である。無機酸化物担体は、アルミナ、シリカ、チタニア、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択することができる。より好ましくは、無機酸化物担体は、アルミナである。無機酸化物担体は、PGM成分のための担材として使用することができる。
【0024】
無機酸化物担体は、好ましくは、80m2/g超の新生比表面積、約0.1~約4mL/gの範囲の細孔容積を有する。100m2/g超の比表面積を有する高比表面積の無機酸化物担体、例えば、高比表面積アルミナが特に好ましい。
【0025】
無機酸化物担体は、ドーパントでドープすることができる。ドーパントは、La、Sr、Si、Ba、Y、Pr、Nd、Ce、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。好ましくは、ドーパントは、La、Ba、又はCeである。最も好ましくは、ドーパントは、Laである。無機酸化物担体中のドーパント含有量は、約5~約30重量%、好ましくは約8~約25重量%、より好ましくは約10~約20重量%であり得る。
【0026】
OSC材料と無機酸化物担体とは、約10:1~約1:10、好ましくは約8:1~約1:8、又は約5:1~約1:5、より好ましくは約4:1~約1:4又は約3:1~約1:3、最も好ましくは約2:1~約1:2の重量比を有することができる。
【0027】
触媒組成物は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含んでもよい。いくつかの実施形態では、アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、OSC材料上に堆積されてもよい。あるいは、又は加えて、アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、無機酸化物担体上に堆積されてもよい。すなわち、いくつかの実施形態では、アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、OSC材料と無機酸化物担体との両方の上に堆積されてもよい、すなわち、その上に存在してもよい。
【0028】
好ましくは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、無機酸化物担体上に担持/堆積されている。無機酸化物担体に接触していることに加えて、又はそれに代えて、アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、OSC材料及びPGM成分に接触していてもよい。
【0029】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、好ましくはバリウム又はストロンチウムである。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、触媒組成物の総重量に基づいて、約0.1~約15重量%、より好ましくは約3~約10重量%の量で存在する。
【0030】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、より好ましくはバリウムである。好ましくは、バリウムは、触媒組成物の総重量に基づいて、約0.1~約15重量%、より好ましくは約3~約10重量%の量で存在する。
【0031】
好ましくは、バリウムは、BaCO3複合材料として存在する。このような材料は、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、初期湿式含浸又は噴霧乾燥によって予備形成することができる。
【0032】
本発明のOSC材料を含む触媒組成物は、実施例5及び6に示すように、同様のセリア-ジルコニア混合酸化物OSC材料を含有する触媒組成物よりも著しく改善された性能をもたらす。
【0033】
本開示の別の態様は、排気ガスを処理するための触媒物品であって、基材と、基材上の第1の触媒領域と、を含み、第1の触媒領域は、第1のPGM成分と、第1のOSC材料と、を含む、触媒物品、に関する。
【0034】
第1のPGM成分は、Pd、Rh、又はPtであり得る。いくつかの実施形態では、第1のPGM成分は、Pd又はRhである。他の実施形態では、第1のPGM成分は、Pdである。更に別の更なる実施形態では、第1の触媒領域は、パラジウム以外のPGMを実質的に含まない。
【0035】
第1の触媒領域は、最大350g/ft3の第1のPGM成分を含み得る。好ましくは、第1の触媒領域は、約10~約300g/ft3、より好ましくは約25~約150g/ft3の第1のPGM成分を含み得る。
【0036】
第1の触媒領域は、第1の無機酸化物担体を含んでもよい。第1の無機酸化物担体は、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物であり得る。第1の無機酸化物担体は、好ましくは、ガソリンエンジンの排気に伴う温度などの高温で、化学的及び物理的安定性を示す耐火金属酸化物である。第1の無機酸化物担体は、アルミナ、シリカ、チタニア、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択することができる。より好ましくは、第1の無機酸化物担体は、アルミナである。第1の無機酸化物担体は、第1のPGM成分のための担材であり得る。
【0037】
第1の無機酸化物担体は、好ましくは、80m2/g超の新生比表面積、約0.1~約4mL/gの範囲の細孔容積を有する。約100m2/g超の比表面積を有する高比表面積の無機酸化物、例えば、高比表面積アルミナが特に好ましい。
【0038】
第1の無機酸化物担体は、ドーパントでドープすることができる。ドーパントは、La、Sr、Si、Ba、Y、Pr、Nd、及びCeからなる群から選択することができる。好ましくは、ドーパントは、La、Ba、又はCeであり得る。より好ましくは、ドーパントは、Laである。第1の無機酸化物担体中のドーパント含有量は、約10~約30重量%、好ましくは約10~約25重量%、より好ましくは約10~約20重量%であり得る。
【0039】
第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、約0.1~約5g/in3であり得る。好ましくは、第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、約0.5~約3.5g/in3であり、最も好ましくは、第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、約1~約2.5g/in3である。
【0040】
第1のOSC材料は、好ましくは、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される。より好ましくは、第1のOSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物を含む。セリア-ジルコニア混合酸化物は、La、Nd、Y、Prなどのいくつかのドーパントを更に含むことができる。
【0041】
特定の一実施形態では、第1のOSC材料は、約10~約80重量%の量のセリアと、約10~約80重量%の量のジルコニアと、約0.05~約1.5重量%の量の遷移金属酸化物と、を含む混合酸化物であり、遷移金属は、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、及びこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、第1のOSC材料中の混合酸化物中の遷移金属は、マンガン、鉄、銅、及びこれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、遷移金属は、鉄である。第1のOSC材料中の混合酸化物中に存在する遷移金属酸化物の量は、好ましくは、約0.1~約1.0重量%、より好ましくは混合酸化物に対して約0.1~約0.8重量%、最も好ましくは約0.2~約0.6重量%の量である。
【0042】
第1のOSC材料中の混合酸化物は、酸化プラセオジム、酸化ランタン、及び酸化イットリウム、並びにこれらの混合物からなる群から選択されるドーパントを含んでもよい。ドーパントの量は、典型的には、混合酸化物に対して約1.0~約10重量%である。
【0043】
第1のOSC材料は、第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量に基づいて、約10~約90重量%、好ましくは約25~約75重量%、より好ましくは約35~約65重量%であり得る。
【0044】
第1の触媒領域における第1のOSC材料担持量は、約1.5g/in3未満であり得る。いくつかの実施形態では、第1の触媒領域中の第1のOSC材料担持量は、例えば、1.2g/in3、1.0g/in3、0.9g/in3、0.8g/in3、0.7g/in3、又は0.6g/in3以下である。
【0045】
第1のOSC材料と第1の無機酸化物担体とは、10:1以下、好ましくは8:1又は5:1以下、より好ましくは4:1又は3:1以下、最も好ましくは2:1以下の重量比を有することができる。
【0046】
あるいは、第1のOSC材料と第1の無機酸化物担体とは、10:1~1:10、好ましくは8:1~1:8又は5:1~1:5、より好ましくは4:1~1:4又は3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2の重量比を有することができる。
【0047】
第1の触媒領域は、第1のアルカリ金属成分又はアルカリ土類金属成分を更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第1のOSC材料上に堆積されてもよい。あるいは、又は加えて、第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第1の無機酸化物担体上に堆積されてもよい。すなわち、いくつかの実施形態では、第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第1のOSC材料と第1の無機酸化物担体との両方の上に堆積されてもよく、すなわち、それらの上に存在してもよい。
【0048】
好ましくは、第1のアルカリ金属又は第1のアルカリ土類金属は、第1の無機酸化物担体上に担持/堆積されている。第1の無機酸化物担体に接触していることに加えて、又はそれに代えて、第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第1のOSC材料及び第1のPGM成分に接触していてもよい。
【0049】
第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、好ましくはバリウム又はストロンチウムである。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量に基づいて、約0.1~約15重量パーセント、より好ましくは約3~約10重量パーセントの量で存在する。
【0050】
第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、より好ましくはバリウムである。好ましくは、バリウムは、第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量に基づいて、約0.1~約15重量%、より好ましくは約3~約10重量%の量で存在する。
【0051】
好ましくは、バリウムはBaCO3複合材料として存在する。このような材料は、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、初期湿潤含浸又は噴霧乾燥によって実施することができる。
【0052】
触媒物品は、第2の触媒領域を更に含むことができる。第2の触媒領域は、第2のPGM成分、第2の酸素吸蔵能材料、第2のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属成分、及び/又は第2の無機酸化物を含むことができる。
【0053】
第2のPGM成分は、パラジウム、白金、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、第1のPGM成分がRhであるとき、第2のPGM成分は、Pdであり得る。他の実施形態では、第1のPGM成分がPdであるとき、第2のPGM成分は、Rhであり得る。
【0054】
第2の触媒領域は、最大約350g/ft3の第2のPGM成分を含み得る。好ましくは、第2の触媒領域は、約10~約300g/ft3、より好ましくは約25~約150g/ft3の第2のPGM成分を含み得る。
【0055】
第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、約0.1~約5g/in3であり得る。好ましくは、第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、約0.5~約3.5g/in3である。より好ましくは、第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、約1~約2.5g/in3である。
【0056】
第2の無機酸化物担体は、好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物である。第2の無機酸化物担体は、好ましくは、アルミナ、マグネシア、ランタナ、シリカ、ネオジム、プラセオジム、酸化イットリウム、チタニア、ニオビア、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化タングステン、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。より好ましくは、第2の無機酸化物担体は、アルミナ、マグネシア、シリカ、ランタン、ネオジム、プラセオジム、酸化イットリウム、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。特に好ましくは、第2の無機酸化物担体は、アルミナ、ランタン/アルミナ複合酸化物、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。1つの特に好ましい第2の無機酸化物担体は、ランタン/アルミナ複合酸化物である。第2の無機酸化物担体は、第2のPGM成分のための担体材料、及び/又は第2のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のための担体材料であってもよい。
【0057】
第2の無機酸化物担体は、好ましくは、80m2/g超の新生比表面積、約0.1~約4mL/gの範囲の細孔容積を有する。100m2/g超の比表面積を有する高比表面積の無機酸化物担体、例えば、高比表面積アルミナが特に好ましい。他の好ましい第2の無機酸化物担体としては、ランタン/アルミナ複合酸化物が挙げられ、これは、任意選択で、セリウム含有成分、例えば、セリアを更に含む。このような場合、セリアは、例えば、コーティングとして、ランタン/アルミナ複合酸化物の表面上に存在してもよい。
【0058】
あるいは、第2の無機酸化物担体はまた、第1の無機酸化物担体と同じ特徴を有し得る。
【0059】
第2のOSC材料は、好ましくは、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される。より好ましくは、第2のOSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物を含む。セリア-ジルコニア混合酸化物は、La、Nd、Y、Prなどのいくつかのドーパントを更に含むことができる。セリア-ジルコニア混合酸化物は、少なくとも50:50、好ましくは60:40より高い、より好ましくは75:25より高い、ジルコニア対セリアのモル比を有することができる。加えて、第2のOSC材料は、第2のPGM成分の担材として機能してもよい。いくつかの実施形態では、第2のPGM成分は、第2のOSC材料及び第2の無機酸化物担体上に堆積されている。
【0060】
特定の一実施形態では、第2のOSC材料は、約10~約80重量%の量のセリアと、約10~約80重量%の量のジルコニアと、約0.05~約1.5重量%の量の遷移金属酸化物と、を含む混合酸化物であり、遷移金属は、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、及びこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、混合酸化物中の遷移金属酸化物は、マンガン、鉄、銅、及びこれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、遷移金属は、鉄である。第2のOSC材料の金属酸化物中に存在する遷移金属酸化物の量は、好ましくは、約0.1~約1.0重量%、より好ましくは混合酸化物に対して約0.1~約0.8重量%、最も好ましくは約0.2~約0.6重量%の量である。第2のOSC材料の混合酸化物は、酸化プラセオジム、酸化ランタン、及び酸化イットリウム、並びにこれらの混合物からなる群から選択されるドーパントを含んでもよい。ドーパントの量は、典型的には、混合酸化物に対して約1.0~約10重量%である。
【0061】
第2のOSC材料は、第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量に基づいて、約10~約90重量%、好ましくは約25~約75重量%、より好ましくは約35~約65重量%であり得る。
【0062】
第2の触媒領域中の第2のOSC材料担持量は、約1.5g/in3未満であり得る。いくつかの実施形態では、第2の触媒領域中の第2のOSC材料担持量は、例えば、1.2g/in3、1.0g/in3、0.9g/in3、0.8g/in3、0.7g/in3、又は0.6g/in3以下である。
【0063】
第2のOSC材料と第2の無機酸化物担体とは、10:1以下、好ましくは8:1又は5:1以下、より好ましくは4:1又は3:1以下、最も好ましくは2:1以下の重量比を有することができる。
【0064】
あるいは、第2のOSC材料と第2の無機酸化物担体とは、10:1~1:10、好ましくは8:1~1:8又は5:1~1:5、より好ましくは4:1~1:4又は3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2の重量比を有することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第2のOSC材料上に堆積されてもよい。あるいは、又は加えて、第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第2の無機酸化物上に堆積されてもよい。すなわち、いくつかの実施形態では、第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第2のOSC材料と第2の無機酸化物担体との両方の上に堆積されてもよい、すなわち、その上に存在してもよい。
【0066】
好ましくは、第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第2の無機酸化物担体上に担持/堆積されている。第2の無機酸化物に接触していることに加えて、又はそれに代えて、第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第2のOSC材料及び第2のPGM成分に接触していてもよい。
【0067】
第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、好ましくはバリウム又はストロンチウムである。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量に基づいて、約0.1~約15重量パーセント、より好ましくは約3~約10重量パーセントの量で存在する。
【0068】
第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、より好ましくはバリウムである。好ましくは、バリウムは、第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量に基づいて、約0.1~約15重量%、より好ましくは約3~約10重量%の量で存在する。
【0069】
好ましくは、バリウムはBaCO3複合材料として存在する。このような材料は、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、初期湿潤含浸又は噴霧乾燥によって実施することができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、第1のPGM成分と第2のPGM成分とは、約60:1~約1:60の重量比を有する。好ましくは、第1のPGM成分と第2のPGM成分とは、30:1~1:30の重量比を有する。より好ましくは、第1のPGM成分と第2のPGM成分とは、20:1~1:20の重量比を有する。最も好ましくは、第1のPGM成分と第2のPGM成分とは、15:1~1:15の重量比を有する。
【0071】
好ましくは、基材は、フロースルーモノリス又はウォールフローガソリン微粒子フィルタである。より好ましくは、基材は、フロースルーモノリスである。
【0072】
フロースルーモノリス基材は、第1の面と第2の面とを有し、それらの間に長手方向が画定される。フロースルーモノリス基材は、第1の面と第2の面との間に延びている、複数のチャネルを有する。複数のチャネルは、長手方向に延びており、複数の内側表面(例えば、各チャネルを画定するウォールの表面)を提供する。複数のチャネルの各々は、第1の面にある開口部と、第2の面にある開口部と、を有する。誤解を回避するために、フロースルーモノリス基材はウォールフローフィルタではない。
【0073】
第1の面は、典型的には基材の入口端部にあり、第2の面は基材の出口端部にある。
【0074】
チャネルは一定の幅のものであってもよく、各複数のチャネルは、均一なチャネル幅を有してもよい。
【0075】
好ましくは、長手方向に直交する平面内で、モノリス基材は、1平方インチ当たり100~900チャネル、好ましくは300~750チャネルを有する。例えば、第1の面上において、開いている第1のチャネル及び閉じている第2のチャネルの密度は、1平方インチ当たり300~750チャネルである。チャネルは、矩形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、又は他の多角形形状である断面を有してもよい。
【0076】
モノリス基材は、触媒材料を保持するための担体として作用する。モノリス基材を形成するのに好適な材料としては、コーディエライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカマグネシア若しくはケイ酸ジルコニウムなどのセラミック様材料、又は多孔質の耐火金属が挙げられる。多孔質モノリス基材の製造におけるそのような材料及びそれらの使用は、当該技術分野において周知である。
【0077】
本明細書に記載のフロースルーモノリス基材は、単一構成要素(すなわち、単一のブリック)であることに留意されたい。それにもかかわらず、排出物処理システムを形成する場合、使用されるモノリスは、複数のチャネルを一緒に接着することによって形成されてもよく、又は本明細書に記載のように複数のより小さいモノリスを一緒に接着することによって形成されてもよい。このような技術は、排出物処理システムの好適なケーシング及び構成とともに、当該技術分野において周知である。
【0078】
本発明の触媒物品がセラミック基材を含む実施形態では、セラミック基材は、任意の好適な耐火材料、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、マグネシア、ゼオライト、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩及びメタロアルミノケイ酸塩(コーディエライト及びスポジュメンなど)、又はこれらのいずれか2つ以上の混合物若しくは混合酸化物で作製されていてもよい。コーディエライト、マグネシウムアルミノケイ酸塩、及び炭化ケイ素が、特に好ましい。
【0079】
本発明の触媒物品が金属基材を含む実施形態では、金属基材は、任意の好適な金属、特にチタン及びステンレス鋼などの耐熱性金属及び金属合金、並びに鉄、ニッケル、クロム、及び/又はアルミニウムを他の微量金属に加えて含有するフェライト合金で作製されていてもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、第1の触媒領域は、基材上に直接担持/堆積されている。更なる実施形態では、第2の触媒領域は、第1の触媒領域上に担持/堆積されている。
【0081】
他の実施形態では、第2の触媒領域は、基材上に直接担持/堆積されている。更なる実施形態では、第1の触媒領域は、第2の触媒領域上に担持/堆積されている。
【0082】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の触媒物品を使用する、NOx、CO、及びHCを含有する車両排気ガスを処理するための方法に関する。
【0083】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の触媒物品を備える、排気ガスを処理するためのシステムに関する。
【0084】
定義
用語「ウォッシュコート」は、当該技術分野において周知であり、通常は触媒物品の製造中に基材に塗布される接着性コーティングを指す。
【0085】
本明細書で使用される場合、「混合酸化物」という用語は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、単相にての酸化物の混合物を指す。
【0086】
本明細書で使用される場合、「複合酸化物」という用語は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、2つ以上の相を有する酸化物の組成物を指す。
【0087】
材料に関して本明細書で使用される場合、「実質的に含まない」という表現は、典型的には、領域、層、又はゾーンの内容物との関連において、材料が、約5重量%未満、好ましくは約2重量%未満、より好ましくは約1重量%未満などの少量であることを意味する。「実質的に含まない」という表現は、「含まない」という表現を包含する。
【0088】
材料に関して本明細書で使用される場合、「本質的に含まない」という表現は、典型的には、領域、層、又はゾーンの内容物との関連において、材料が、約1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは約0.1重量%未満などの痕跡量であることを意味する。「本質的に含まない」という表現は、「含まない」という表現を包含する。
【0089】
本明細書で使用する場合、「担持量」という用語は、金属重量基準でのg/ft3の単位の測定値を指す。
【0090】
以下の実施例は、単に本発明を例示するものである。当業者は、本発明の趣旨及び特許請求の範囲内にある多くの変形例を認識するであろう。
【0091】
実施例1:混合酸化物OSC材料
混合酸化物OSC材料は、セリウム、ジルコニウム、及び他の希土類のカチオンと、存在する場合、鉄、マンガン、又は銅のカチオンと、を含む金属塩を含有する溶液の共沈によって調製した。混合酸化物を550℃で2時間焼成した。これらの混合酸化物の特性分析を、表1に示す。REOは、希土類金属酸化物(複数可)を指す。
【0092】
【0093】
実施例2:混合酸化物OSC材料の還元効率
OSC材料A、B、F、Gの還元効率を、表2に示す。
【0094】
【0095】
実施例3:混合酸化物OSC材料のエージング試験
1000℃で4時間の水熱酸化還元エージング試験を、以下の表3に示される組成を有する酸化性雰囲気ガス及び還元性雰囲気ガス下でOSC材料A、B、C、D、E、F、及びGに対して実施した。試料を3分間隔で交互に酸化性雰囲気及び還元性雰囲気に曝露した。
【0096】
【0097】
表4は、1000℃で4時間エージングした後の混合酸化物A~E及びHのBET比表面積を示す。試料E(2.0重量%のFe2O3)は、試料B、C、及びDと比較して、エージング後の比表面積の劇的な減少を示した。
【0098】
【0099】
図1に示すように、XRDから、パイロクロア形成がOSC材料B及びGについて顕著であり、OSC材料Fについてごくわずかであるが、一方でOSC材料Aは、酸化還元エージング後にパイロクロア相を含有しないことが明らかである。
【0100】
実施例4:触媒調製及びモデルガスOSC試験
以下の表5の触媒1~4は、OSC材料A、B、F、及びGを用いて調製された単層構造を有する三元触媒である。触媒層は、OSC材料上に担持されたPd、La安定化アルミナ、及びBaプロモーター(4重量%)を含む。ウォッシュコートは、国際公開第1999/47260号に記載されている技術を使用して、寸法25.4×50.0mm、400セル/平方インチ、及び壁厚1000分の4インチ(0.10mm)のNGK製フロースルーハニカム基材上にコーティングされた。ウォッシュコート担持量は、約2.0g/in3であり、Pd担持量は、100g/ft3であった。
【0101】
【0102】
モデルガスOSC試験は、触媒を500℃で処理しながら0.5%O2ガス(残部N2)で前処理した後に実施した。次いで、100、150、200、250、300、350、400、450、及び500℃でのCOの濃度の測定を、60000/hの空間速度で2分ごとにリーンガス組成(1%CO、残部N2)とリッチガス組成(0.5%O2、残部N2)との間で切り替えることによって実施した。触媒1~4の測定された酸素吸蔵能を表5に示す。
【0103】
実施例5:触媒調製及び性能試験
触媒5(比較例)
触媒5は、二重層構造を有する三元(Pd-Rh)触媒である。底層は、実施例1のOSC材料Aに担持されたPd、第1のLa安定化アルミナ、及びBaプロモーターを含む。底層のウォッシュコート担持量は、約1.7g/in3であり、Pd担持量は、140g/ft3であった。上層は、第2のLa安定化アルミナ上に担持されたRhを含むウォッシュコートである。上層のウォッシュコート担持量は、約0.6g/in3であり、Rh担持量は、24g/ft3であった。比較触媒5の総ウォッシュコート担持量は、約2.3g/in3であった。
【0104】
触媒6
触媒6は、二重層構造を有する三元(Pd-Rh)触媒である。底層は、実施例1のOSC材料Bに担持されたPd、第1のLa安定化アルミナ、及びBaプロモーターを含むウォッシュコートである。底層のウォッシュコート担持量は、約1.7g/in3であり、Pd担持量は、140g/ft3であった。上層は、第2のLa安定化アルミナ上に担持されたRhを含むウォッシュコートである。上層のウォッシュコート担持量は、約0.6g/in3であり、Rh担持量は、24g/ft3であった。触媒6の総ウォッシュコート担持量は、約2.3g/in3であった。
【0105】
比較触媒5及び触媒6を、燃料カットエージングサイクルで30時間、約950℃のピーク温度でベンチエージングした。ガソリンエンジンを用いたOSC試験を、様々な流量で実施した。バッグ排出物分析による触媒性能を表6に示す。
【0106】
【0107】
表6に示すように、触媒6は、比較触媒5と比較して、改善されたOSC性能を示した。
【0108】
1.5リットルエンジンを有する商用車両で、車両排出を行った。排出物は、触媒後の位置で測定した。表7は、バッグ排出分析による触媒性能を示す。
【0109】
【0110】
表7に示すように、触媒6は、比較触媒5と比較して、総炭化水素(「THC」)、CO、及びNOxの同様な排出量を示した。
【0111】
実施例6:触媒調製及び性能試験
触媒7(比較例)
比較触媒7は、2つの近位連結ブリックを備えた三元(Pd-Rh)触媒セットである。第1のブリックは、二重層構造である。底層は、実施例1のOSC材料Hに担持されたPd、第1のLa安定化アルミナ、及びBaプロモーターを含む。底層のウォッシュコート担持量は、約1.6g/in3であり、Pd担持量は、140g/ft3であった。上層は、第2のOSC及びLa安定化アルミナ上に担持されたRhを含むウォッシュコートである。上層のウォッシュコート担持量は、約1.0g/in3であり、Rh担持量は、24g/ft3であった。比較触媒7の第1のブリックの総ウォッシュコート担持量は、約2.6g/in3であった。
【0112】
第2のブリックは、二重層構造である。底層は、第3のOSC及びLa安定化アルミナ上に担持されたPd、並びにBaプロモーターを含む。底層のウォッシュコート担持量は、約1.8g/in3であり、Pd担持量は、34g/ft3であった。上層は、第4のOSC及びLa安定化アルミナ上に担持されたRhを含むウォッシュコートである。上層のウォッシュコート担持量は、約2.0g/in3であり、Rh担持量は、6g/ft3であった。比較触媒7の第2のブリックの総ウォッシュコート担持量は、約3.8g/in3であった。
【0113】
触媒8
触媒8は、2つの近位連結ブリックを有する三元(Pd-Rh)触媒セットである。第1のブリックは、二重層構造である。底層は、実施例1のOSC材料Bに担持されたPd、第1のLa安定化アルミナ、及びBaプロモーターを含む。底層のウォッシュコート担持量は、約1.6g/in3であり、Pd担持量は、140g/ft3であった。上層は、第2のOSC及びLa安定化アルミナ上に担持されたRhを含むウォッシュコートである。上層のウォッシュコート担持量は、約1.0g/in3であり、Rh担持量は、24g/ft3であった。触媒8の第1のブリックの総ウォッシュコート担持量は、約2.6g/in3であった。
【0114】
第2のブリックは、二重層構造である。底層は、第3のOSC及びLa安定化アルミナ上に担持されたPd、並びにBaプロモーターを含む。底層のウォッシュコート担持量は、約1.8g/in3であり、Pd担持量は、34g/ft3であった。上層は、第4のOSC及びLa安定化アルミナ上に担持されたRhを含むウォッシュコートである。上層のウォッシュコート担持量は、約2.0g/in3であり、Rh担持量は、6g/ft3であった。触媒8の第2のブリックの総ウォッシュコート担持量は、約3.8g/in3であった。
【0115】
1.5リットルエンジンを有する商用車両で、車両排出を行った。排出物は、触媒後の位置で測定した。表8は、バッグ排出物分析による触媒性能を示す。
【0116】
【0117】
表8に示すように、触媒8は、比較触媒7と比較して、総炭化水素(「THC」)、CO、及びNOxの低減された排出量を示した。
【国際調査報告】