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特表2023-519056ガソリンエンジン排気ガス処理のための新規スズ含有触媒
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】ガソリンエンジン排気ガス処理のための新規スズ含有触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20230428BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20230428BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20230428BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022531036
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(85)【翻訳文提出日】2022-07-08
(86)【国際出願番号】 GB2021050745
(87)【国際公開番号】W WO2021198650
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】202010240337.5
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】63/009,606
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(71)【出願人】
【識別番号】520176441
【氏名又は名称】ジョンソン マッセイ (シャンハイ) ケミカルズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】チー、ホンユイ
(72)【発明者】
【氏名】藏重 亘
(72)【発明者】
【氏名】長岡 修平
(72)【発明者】
【氏名】チアオ、トンション
(72)【発明者】
【氏名】シャン、チョウ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、シアオルイ
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB03
3G091AB08
3G091BA03
3G091GA06
3G091GA16
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3G091GB06W
3G091GB07
4D148AA06
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4G169BA02A
4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BA06A
4G169BB04A
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC16A
4G169BC16B
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4G169BC22B
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4G169BC42A
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4G169BC43B
4G169BC44A
4G169BC51A
4G169BC51B
4G169BC71A
4G169BC71B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BC75A
4G169BC75B
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4G169CA09
4G169DA06
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4G169EA18
4G169EC28
4G169EC29
4G169ED06
4G169EE06
4G169FB23
4G169FC08
(57)【要約】
三元触媒物品、及び内燃機関のための排気システムにおけるその使用が開示される。排気ガスを処理するための触媒物品であって、軸方向長さLを有する入口端部及び出口端部を含む、基材と、第1の白金族金属(PGM)成分及び第1のPGM担体材料を含む、第1の触媒領域であって、最大5重量%のSnを含む、第1の触媒領域と、を含む、触媒物品。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金族金属(PGM)成分及びPGM担体材料を含む、触媒組成物であって、最大5重量%のSnを含む、触媒組成物。
【請求項2】
前記PGM成分が、白金、パラジウム、ロジウム、又はこれらの組み合わせである、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記PGM成分が、白金である、請求項1又は2に記載の触媒組成物。
【請求項4】
前記PGM成分が、白金及びロジウム;パラジウム及びロジウム;又は、白金、パラジウム、及びロジウムである、請求項1又は2に記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記PGM担体材料が、酸素吸蔵能(OSC)材料、無機酸化物、又はこれらの組み合わせである、請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項6】
前記OSC材料が、酸化セリウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、又はこれらの組み合わせを含む、請求項5に記載の触媒組成物。
【請求項7】
前記無機酸化物が、アルミナ、マグネシア、シリカ、ジルコニア、ランタン、ネオジム、プラセオジム、イットリウム酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される、請求項5又は6に記載の触媒組成物。
【請求項8】
三元触媒(TWC)である、請求項1~7のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項9】
排気ガスを処理するための触媒物品であって、
軸方向長さLを有する入口端部及び出口端部を含む、基材と、
第1の白金族金属(PGM)成分及び第1のPGM担体材料を含む、第1の触媒領域であって、最大5重量%のSnを含む、第1の触媒領域と、を含む、触媒物品。
【請求項10】
前記第1のPGM成分が、白金、パラジウム、ロジウム、又はこれらの組み合わせである、請求項9に記載の触媒物品。
【請求項11】
前記第1のPGM成分が、白金である、請求項9又は10に記載の触媒物品。
【請求項12】
前記第1のPGM成分が、白金及びロジウム;パラジウム及びロジウム;又は、白金、パラジウム、及びロジウムである、請求項9又は10に記載の触媒物品。
【請求項13】
前記第1のPGM担体材料が、第1の酸素吸蔵能(OSC)材料、第1の無機酸化物、又はこれらの組み合わせである、請求項1~12のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項14】
前記第1のOSC材料が、酸化セリウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、又はこれらの組み合わせである、請求項13に記載の触媒物品。
【請求項15】
前記第1の無機酸化物が、アルミナ、マグネシア、シリカ、ジルコニア、ランタン、ネオジム、プラセオジム、イットリウム酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される、請求項13又は14に記載の触媒物品。
【請求項16】
三元触媒(TWC)である、請求項9~15のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項17】
第2の触媒領域を更に含む、請求項9~16のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項18】
前記第2の触媒領域が、第2のPGM成分を含む、請求項17に記載の触媒物品。
【請求項19】
前記第2のPGM成分が、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項18に記載の触媒物品。
【請求項20】
前記第2の触媒領域が、第2のOSC材料を更に含む、請求項17~19のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項21】
前記第2のOSC材料が、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、又はこれらの組み合わせである、請求項20に記載の触媒物品。
【請求項22】
第2の無機酸化物を更に含む、請求項17~21のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項23】
前記第2の無機酸化物が、アルミナ、マグネシア、シリカ、ジルコニア、ランタン、セリウム、ネオジム、プラセオジム、イットリウム酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される、請求項22に記載の触媒物品。
【請求項24】
前記第2の触媒領域が、最大5重量%のSnを含む、請求項20~23のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項25】
前記第1の触媒領域が、前記軸方向長さLにわたって延在する、請求項9~24のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項26】
前記第2の触媒領域が、前記軸方向長さLにわたって延在する、請求項17~25のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項27】
前記第1の触媒領域が、前記基材上に直接担持/堆積されている、請求項25又は26に記載の触媒物品。
【請求項28】
前記第2の触媒領域が、前記基材上に直接担持/堆積されている、請求項25又は26に記載の触媒物品。
【請求項29】
前記第1の触媒領域が、前記軸方向長さL未満にわたって延在する、請求項9~24のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項30】
前記第2の触媒領域が、前記軸方向長さL未満にわたって延在する、請求項17~25のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項31】
前記第1の触媒領域が、前記基材上に直接担持/堆積されている、請求項29又は30に記載の触媒物品。
【請求項32】
前記第2の触媒領域が、前記基材上に直接担持/堆積されている、請求項29又は30に記載の触媒物品。
【請求項33】
第3の触媒領域を更に含む、請求項9~32のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項34】
前記第3の触媒領域が、第3のPGM成分を含む、請求項33に記載の触媒物品。
【請求項35】
前記第3のPGM成分が、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項34に記載の触媒物品。
【請求項36】
前記第3の触媒領域が、第3のOSC材料を更に含む、請求項33~35のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項37】
前記第3のOSC材料が、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、又はこれらの組み合わせである、請求項36に記載の触媒物品。
【請求項38】
前記第3の触媒領域が、最大5重量%のSnを含む、請求項36又は37に記載の触媒物品。
【請求項39】
第3の無機酸化物を更に含む、請求項33~38のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項40】
前記第3の無機酸化物が、アルミナ、マグネシア、シリカ、ジルコニア、ランタン、セリウム、ネオジム、プラセオジム、イットリウム酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される、請求項39に記載の触媒物品。
【請求項41】
前記第3の触媒領域が、前記軸方向長さLにわたって延在する、請求項33~40のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項42】
前記第3の触媒領域が、前記軸方向長さL未満にわたって延在する、請求項33~40のいずれか一項に記載の触媒物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンエンジンからの排気ガス排出物を処理するのに有用な触媒物品に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関では、炭化水素(hydrocarbon、HC)、一酸化炭素(carbon monoxide、CO)、及び窒素酸化物(nitrogen oxide、「NO」)を含む様々な汚染物質を含有する排気ガスが生成される。排気ガス触媒的転化触媒を含む排出量制御システムは、大気に排出されるこれらの汚染物質の量を低減するために広く利用されている。ガソリンエンジンの排気処理に通常使用される触媒は、TWC(three way catalyst)(三元触媒)である。TWCにより、次の3つの主な役割、すなわち、(1)COの酸化、(2)未燃HCの酸化、及び(3)NOの還元を行う。
【0003】
TWC技術の進歩にもかかわらず、コールドスタート段階における性能を同時に改善し、より良好なライトオフ(light off)性能を与え、並びに、ホットトランジェント段階で、幅広いPd及び/又はPt用途で、より良好なOSC性能を与える、特定のエンジンプラットフォームのための改善された触媒コンバータが依然として必要とされている。本発明は、とりわけこれらの問題を解決するものである。
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様は、白金族金属(platinum group metal、PGM)成分及びPGM担体材料を含む、触媒組成物であって、最大5重量%のSnを含む、触媒組成物を対象とする。
【0005】
本開示の別の態様は、排気ガスを処理するための触媒物品であって、軸方向長さLを有する入口端部及び出口端部を含む、基材と、第1の白金族金属(PGM)成分及び第1のPGM担体材料を含む、第1の触媒領域であって、最大5重量%のSnを含む、第1の触媒領域と、を含む、触媒物品を対象とする。
【0006】
本発明はまた、本発明の三元触媒成分を含む、内燃機関のための排気システムも包含する。
【0007】
本発明はまた、内燃機関からの排気ガスの処理、特にガソリンエンジンからの排気ガスの処理も包含する。本方法は、排気ガスを本発明の三元触媒成分と接触させること、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】基材の軸方向長さLに対して100%の長さを有する第1の触媒領域(単一層)を含有する、本発明による一実施形態を示す。
図2a】第1の触媒領域が、底部層として、軸方向長さLの100%に延在し、第2の触媒領域が、上部層として、軸方向長さLの100%に延在する、本発明による一実施形態を示す。
図2b図2aの変形例を図示する。
図3a】第1の触媒領域が、入口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第2の触媒領域が、出口端部から軸方向長さLの100%未満に延在する、本発明による一実施形態を示す。第2及び第1の触媒領域の全長は、軸方向長さL以下である。
図3b図3aの変形例を図示する。
図3c】第1の触媒領域が、入口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第2の触媒領域が、出口端部から軸方向長さLの100%未満に延在する、本発明による一実施形態を示す。第2及び第1の触媒領域の全長は、軸方向長さLよりも大きい。
図3d図3cの変形例を図示する。
図4a】第1の触媒領域が、入口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第2の触媒領域が、出口端部から軸方向長さLの100%未満に延在する、本発明による一実施形態を示す。第2及び第1の触媒領域の全長は、軸方向長さL以下である。第3の触媒領域は、軸方向長さLの100%に延在し、上部層として第1及び第2の触媒領域に重なる。
図4b図4aの変形例を図示する。
図4c】第3の触媒領域が、底部層として、軸方向長さLの100%に延在する、本発明による一実施形態を示す。第1の触媒領域は、入口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第2の触媒領域が、出口端部から軸方向長さLの100%未満に延在する、本発明による一実施形態を示す。第2及び第1の触媒領域の全長は、軸方向長さL以下である。
図4d図4cの変形例を図示する。
図5a】第1の触媒領域が、入口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第2の触媒領域が、出口端部から軸方向長さLの100%未満に延在する、本発明による一実施形態を示す。第2及び第1の触媒領域の全長は、軸方向長さL未満であるか、軸方向長さLに等しいか、又は軸方向長さLより大きい可能性がある。第3の触媒領域は、入口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第4の触媒領域は、出口端部から軸方向長さLの100%未満に延在する。第3及び第4の触媒領域の全長は、軸方向長さL未満であるか、軸方向長さLに等しいか、又は軸方向長さLより大きい可能性がある。第1及び第2の触媒領域は、底部層を構成し、第3及び第4の触媒領域は、上部層を構成する。
図5b図5aの変形例を図示する。
図5c図5aの変形例を図示する。
図5d図5aの変形例を図示する。
図6a】第1の触媒領域が、底部層として、軸方向長さLの100%に延在し、第2の触媒領域が、中間層として、軸方向長さLの100%に延在し、第3の触媒領域が、上部層として、軸方向長さLの100%に延在する、本発明による一実施形態を示す。
図6b図6aの変形例を図示する。
図6c図6aの変形例を図示する。
図7a】第1の触媒領域が、入口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第2の触媒領域が、出口端部から軸方向長さLの100%未満に延在する、本発明による一実施形態を示す。第2の及び第1の触媒領域の全長は、軸方向長さLよりも大きい。第3の触媒領域は、軸方向長さLの100%に延在し、上部層として第1及び第2の触媒領域に重なる。
図7b図7aの変形例を図示する。
図7c図7aの変形例を図示する。
図7d図7aの変形例を図示する。
図7e図7aの変形例を図示する。
図7f図7aの変形例を図示する。
図7g】第1の触媒領域が、入口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第2の触媒領域が、出口端部から軸方向長さLの100%未満に延在する、本発明による一実施形態を示す。第2及び第1の触媒領域の全長は、軸方向長さL未満であるか、軸方向長さLに等しいか、又は軸方向長さLより大きい可能性がある。第3の触媒領域は、入口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第1及び/又は第2の触媒領域に少なくとも部分的に重なる。
図7h図7gの変形例を図示する。
図7i図7gの変形例を図示する。
図7j】第1の触媒領域が、入口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第2の触媒領域が、出口端部から軸方向長さLの100%未満に延在する、本発明による一実施形態を示す。第2及び第1の触媒領域の全長は、軸方向長さL未満であるか、軸方向長さLに等しいか、又は軸方向長さLより大きい可能性がある。第3の触媒領域は、出口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第2及び/又は第1の触媒領域に少なくとも部分的に重なる。
図7k図7jの変形例を図示する。
図7l図7jの変形例を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、ガソリンエンジン及び他のエンジンによって生成されるものなどの燃焼排気ガスの触媒処理、並びに関連する触媒組成物、触媒物品、及びシステムを対象とする。より具体的には、本発明は、車両排気システムにおけるNO、CO、及びHCの同時処理に関する。TWCの熱耐久性を改善するための技術開発のほとんどは、熱エージング後のOSC材料の比表面積(specific surface area、SSA)を増加させることに焦点が当てられているが、本発明者らは、驚くべきことに、Snドーピングによって促進される広範囲の温度でのOSC機能の強化が、TWCの改善された熱耐久性とその結果としての排出量制御性能に大きな影響を与えることを発見した。本発明者らは、ライトオフ及びOSC試験の下でのTWCの潜在的性能、並びにいくつかの排出量制御試験下での実質的性能が、本発明で改善されたことを発見した。本発明のプロセスはまた、触媒のコストを低減する。
【0010】
本開示の一態様は、白金族金属(PGM)成分及びPGM担体材料を含む、触媒組成物を対象とし、触媒組成物は、最大5重量%のSnを含む。
【0011】
本発明者らは、徹底した研究を通して、少量のスズ(Sn)をTWC触媒組成物に組み込むことによって、これらの新規組成物が優れた触媒特性を示すことを発見した(例えば、本発明に記載されるスズ含有触媒を使用することによって、車両試験中に、すべての排出量(THC/NMHC、CO、及びNO排出量)を、大幅に減少させることができた。更に、TWC触媒組成物にスズが導入されると、ハッシュエージング後、PGMの分散及び安定化も改善される)。
【0012】
本出願全体を通して、「Snの重量%」は、SnOに基づいて計算される。
【0013】
PGM成分は、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、PGM成分は、Pd、Rh、又はこれらの混合物であり得る。他の実施形態では、PGM成分は、白金であり得る。更に他の実施形態では、PGM成分は、白金及びロジウム;パラジウム及びロジウム;又は、白金、パラジウム、及びロジウムであり得る。
【0014】
PGM担体材料は、酸素吸蔵能(oxygen storage capacity、OSC)材料、無機酸化物、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0015】
OSC材料は、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、又はこれらの組み合わせであり得る。より好ましくは、OSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、又はこれらの組み合わせを含む。セリア-ジルコニア混合酸化物は、ランタン、ネオジム、プラセオジム、酸化イットリウム、などのドーパントを更に含むことができる。加えて、OSC材料は、PGM成分のための担体材料として機能し得る。いくつかの実施形態では、OSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物を含む。
【0016】
無機酸化物は、好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物である。無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、マグネシア、シリカ、ジルコニア、バリウム酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。特に好ましくは、無機酸化物は、アルミナ、ランタン-アルミナ、ジルコニア、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。1つの特に好ましい無機酸化物は、アルミナ又はランタン-アルミナである。
【0017】
OSC材料及び無機酸化物は、10:1以下、好ましくは、8:1又は5:1以下、より好ましくは、4:1又は3:1以下、最も好ましくは、2:1以下の重量比を有することができる。
【0018】
あるいは、OSC材料と無機酸化物とは、10:1~1:10、好ましくは、8:1~1:8又は5:1~1:5、より好ましくは4:1~1:4又は3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2の重量比を有することができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、OSC材料及び無機酸化物は、2:1以下の重量比を有することができる。更なる実施形態では、OSC材料及び無機酸化物は、10:1以下の重量比を有することができる。別の更なる実施形態では、OSC材料及び無機酸化物は、20:1以上又は30:1以上の重量比を有することができる。更に別の更なる実施形態では、OSC材料及び無機酸化物は、40:1以上又は50:1以上の重量比を有することができる。
【0020】
触媒組成物は、アルカリ又はアルカリ性土類金属を更に含み得る。
【0021】
アルカリ又はアルカリ性土類金属は、好ましくはバリウム、又はストロンチウム、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物である。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、触媒組成物の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%のバリウム又はストロンチウムの量で充填されている。
【0022】
好ましくはバリウム又はストロンチウムは、BaCO又はSrCOとして存在する。このような材料は、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、初期湿潤含浸又は噴霧乾燥によって実施することができる。
【0023】
スズ(Sn)は、様々な方法で、触媒組成物に組み込まれ得る。いくつかの実施形態では、Snは、ドーパントとして、OSC材料に組み込まれ得、OSC材料は、OSC材料の総重量に基づいて、最大5重量%のSn、好ましくは、最大4重量%のSn、より好ましくは、最大3重量%のSn、更により好ましくは、最大2重量%のSnを含み得る。あるいは、OSC材料は、OSC材料の総重量に基づいて、0.1~5重量%のSn、好ましくは、0.1~4重量%のSn、より好ましくは、0.1~3重量%のSn、更により好ましくは、0.1~2.5重量%のSnを含み得る。他の実施形態では、Snは、ドーパントとして無機酸化物に組み込まれ得、無機酸化物は、無機酸化物の総重量に基づいて、最大5重量%のSn、好ましくは、最大4重量%のSn、より好ましくは、最大3重量%のSn、更により好ましくは、最大2重量%のSnを含み得る。あるいは、無機酸化物は、無機酸化物の総重量に基づいて、0.1~5重量%のSn、好ましくは、0.2~4重量%のSn、より好ましくは、0.3~3重量%のSn、更により好ましくは、0.4~2重量%のSnを含み得る。更に他の実施形態では、Snは、単純な物理的混合物として、触媒組成物に組み込まれ得る。例えば、Snは、OSC材料及び/又は無機酸化物と物理的にブレンドされるように、SnOとして組み込まれ、触媒組成物は、触媒組成物の総重量に基づいて、最大5重量%のSn、好ましくは、最大4重量%のSn、より好ましくは、最大3重量%のSn、更により好ましくは、最大2重量%のSnを含み得る。あるいは、触媒組成物は、触媒組成物の総重量に基づいて、0.1~5重量%のSn、好ましくは、0.2~4重量%のSn、より好ましくは、0.3~3重量%のSn、更により好ましくは、0.4~2重量%のSnを含み得る。他の実施形態では、Snは、OSC材料フレームワークに組み込まれ得る。他の実施形態では、Snは、OSC材料フレームワークに組み込まれ得(例えば、Snが、形成されるOSC固溶体材料の結晶格子にドープされ)、OSC材料フレームワークは、最大5重量%のSn、好ましくは、最大4重量%のSn、より好ましくは、最大3重量%のSn、更により好ましくは、最大2重量%のSnを含み得る。あるいは、OSC材料は、OSC材料の総重量に基づいて、0.1~5重量%のSn、好ましくは、0.1~4重量%のSn、より好ましくは、0.1~3重量%のSn、更により好ましくは、0.1~2.5重量%のSnを含み得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、触媒組成物は、触媒組成物の総重量に基づいて、最大5重量%のSn、好ましくは、最大3重量%のSn、より好ましくは、最大2重量%のSn、最も好ましくは、最大1重量%又は0.5重量%のSnを含み得る。あるいは、触媒組成物は、触媒組成物の総重量に基づいて、0.1~5重量%のSn、好ましくは、0.1~4重量%のSn、より好ましくは、0.2~3重量%のSn、更により好ましくは、更により好ましくは、0.4~1.5重量%のSnを含み得る。
【0025】
以下の実施例に明示されるように、この態様における触媒組成物は、ガソリンエンジンによって生成された排気ガスを処理するためのTWC触媒として適用することができる。
【0026】
本開示の別の態様は、排気ガスを処理するための触媒物品であって、軸方向長さLを有する入口端部及び出口端部を含む、基材と、第1の白金族金属(PGM)成分及び第1のPGM担体材料を含む、第1の触媒領域であって、最大5重量%のSnを含む、第1の触媒領域と、を含む。
【0027】
第1の触媒領域
第1のPGM成分は、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、第1のPGM成分は、Pd、Rh、又はこれらの混合物であり得る。他の実施形態では、第1のPGM成分は、白金であり得る。更に他の実施形態では、第1のPGM成分は、白金及びロジウム;パラジウム及びロジウム;又は、白金、パラジウム、及びロジウムであり得る。更なる実施形態では、第1のPGM成分は、白金及びロジウム;又は、白金、パラジウム、及びロジウムであり得る。
【0028】
第1のPGM担体材料は、第1の酸素吸蔵能(OSC)材料、第1の無機酸化物、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0029】
第1のOSC材料は、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、又はこれらの組み合わせであり得る。より好ましくは、第1のOSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、又はこれらの組み合わせを含む。セリア-ジルコニア混合酸化物は、ランタン、ネオジム、プラセオジム、イットリウム酸化物などのドーパントを、更に含むことができる。第1のOSC材料は、第1のPGM成分のための担体材料として(例えば、第1のPGM担体材料として)機能し得る。いくつかの実施形態では、第1のOSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物を含む。
【0030】
第1の無機酸化物は、好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物である。第1の無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、マグネシア、シリカ、ジルコニア、バリウム酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。特に好ましくは、第1の無機酸化物は、アルミナ、ランタン-アルミナ、ジルコニア、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。1つの特に好ましい第1の無機酸化物は、アルミナ又はランタン-アルミナである。
【0031】
第1のOSC材料及び第1の無機酸化物は、10:1以下、好ましくは、8:1又は5:1以下、より好ましくは、4:1又は3:1以下、最も好ましくは、2:1以下の重量比を有することができる。
【0032】
あるいは、第1のOSC材料と第1の無機酸化物とは、10:1~1:10、好ましくは、8:1~1:8又は5:1~1:5、より好ましくは4:1~1:4又は3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2の重量比を有することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、第1のOSC材料及び第1の無機酸化物は、2:1以下の重量比を有することができる。更なる実施形態では、第1のOSC材料及び第1の無機酸化物は、10:1以下の重量比を有することができる。別の更なる実施形態では、第1のOSC材料及び第1の無機酸化物は、20:1以上又は30:1以上の重量比を有することができる。更に別の更なる実施形態では、第1のOSC材料及び第1の無機酸化物は、40:1以上又は50:1以上の重量比を有することができる。
【0034】
第1の触媒領域は、第1のアルカリ又はアルカリ性土類金属を更に含んでもよい。
【0035】
第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、好ましくはバリウム又はストロンチウム、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物である。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、第1の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%のバリウム又はストロンチウムの量で充填されている。
【0036】
好ましくはバリウム又はストロンチウムは、BaCO又はSrCOとして存在する。このような材料は、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、初期湿潤含浸又は噴霧乾燥によって実施することができる。
【0037】
スズ(Sn)は、様々な方法で、第1の触媒領域に組み込まれ得る。いくつかの実施形態では、Snは、ドーパントとして、第1のOSC材料に組み込まれ得、第1のOSC材料は、第1のOSC材料の総重量に基づいて、最大5重量%のSn、好ましくは、最大4重量%のSn、より好ましくは、最大3重量%のSn、更により好ましくは、最大2重量%のSnを含み得る。あるいは、第1のOSC材料は、第1のOSC材料の総重量に基づいて、0.1~5重量%のSn、好ましくは、0.1~4重量%のSn、より好ましくは、0.1~3重量%のSn、更により好ましくは、0.1~2.5重量%のSnを含み得る。他の実施形態では、Snは、ドーパントとして、第1の無機酸化物に組み込まれ得、第1の無機酸化物は、第1の無機酸化物の総重量に基づいて、最大5重量%のSn、好ましくは、最大4重量%のSn、より好ましくは、最大3重量%のSn、更により好ましくは、最大2重量%のSnを含み得る。あるいは、第1の無機酸化物は、第1の無機酸化物の総重量に基づいて、0.1~5重量%のSn、好ましくは、0.2~4重量%のSn、より好ましくは、0.3~3重量%のSn、更により好ましくは、0.4~2重量%のSnを含み得る。更に他の実施形態では、Snは、単純な物理的混合物(例えば、物理的ブレンド)として、第1の触媒領域に組み込まれ得る。例えば、Snは、第1のOSC材料及び/又は第1の無機酸化物と物理的にブレンドされるように、SnOとして組み込まれ得、第1の触媒領域は、第1の触媒領域の総重量に基づいて、最大5重量%のSn、好ましくは、最大4重量%のSn、より好ましくは、最大3重量%のSn、更により好ましくは、最大2重量%のSnを含み得る。あるいは、第1の触媒領域は、第1の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~5重量%のSn、好ましくは、0.2~4重量%のSn、より好ましくは、0.3~3重量%のSn、更により好ましくは、0.4~2重量%のSnを含み得る。他の実施形態では、Snは、第1のOSC材料フレームワークに組み込まれ得(例えば、Snが、形成されるOSC固溶体材料の結晶格子にドープされる)、第1のOSC材料フレームワークは、最大5重量%のSn、好ましくは、最大4重量%のSn、より好ましくは、最大3重量%のSn、更により好ましくは、最大2重量%のSnを含み得る。あるいは、OSC材料は、第1のOSC材料の総重量に基づいて、0.1~5重量%のSn、好ましくは、0.1~4重量%のSn、より好ましくは、0.1~3重量%のSn、更により好ましくは、0.1~2.5重量%のSnを含み得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、第1の触媒領域は、第1の触媒領域の総重量に基づいて、最大5重量%のSn、好ましくは、最大3重量%のSn、より好ましくは、最大2重量%のSn、最も好ましくは、最大1.5重量%又は1重量%のSnを含み得る。あるいは、第1の触媒領域は、第1の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~5重量%のSn、好ましくは、0.2~4重量%のSn、より好ましくは、0.3~3重量%のSn、更により好ましくは、0.4~1.5重量%のSnを含み得る。
【0039】
以下の実施例に明示されるように、この態様における触媒物品は、ガソリンエンジンによって生成された排気ガスを処理するためのTWC触媒として適用することができる。
【0040】
第1の触媒領域は、軸方向長さLの100パーセントにわたって延在することができる(例えば、図1図2a、図2b、及び図6a~図6cを参照されたい)。いくつかの実施形態では、第1の触媒領域は、軸方向長さLの20~99%、30~90%、又は40~80%にわたって延在することができる。代替的に、第1の触媒領域は、軸方向長さLの30~70パーセントにわたって延在することができる。好ましくは、軸方向長さLの40~60パーセント、より好ましくは、45~55パーセントにわたって延在することができる(例えば、図3a~図5d及び図7a~図7lを参照されたい)。
【0041】
第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、3.5g/in未満、好ましくは、3.0g/in又は2.5g/in未満であり得る。第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、0.5~3.5g/in、好ましくは、0.6~3g/in又は0.7~2.5g/inであり得る。
【0042】
第2の触媒領域
触媒物品は、第2の触媒領域を更に含み得る。
【0043】
第2の触媒領域は、第2のPGM成分、第2の酸素吸蔵能(OSC)材料、第2のアルカリ若しくはアルカリ性土類金属成分、及び/又は第2の無機酸化物を更に含むことができる。
【0044】
第2のPGM成分は、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、第2のPGM成分は、Pd、Rh、又はこれらの混合物であり得る。
【0045】
第2のOSC材料は、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、又はこれらの組み合わせであり得る。より好ましくは、第2のOSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、又はこれらの組み合わせを含む。加えて、第2のOSC材料は、ランタン、ネオジム、プラセオジム、イットリウムなどのようなドーパントのうちの1つ以上を更に含み得る。更に、第2のOSC材料は、第2のPGM成分に対する担体材料としての機能を有し得る。いくつかの実施形態では、第2のOSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物を含む。
【0046】
セリア-ジルコニア混合酸化物は、少なくとも50:50、好ましくは、60:40超、より好ましくは、70:30超のジルコニア対セリアの重量比を有することができる。あるいは、セリア-ジルコニア混合酸化物はまた、50:50未満、好ましくは、40:60未満、より好ましくは、30:70未満のセリア対ジルコニアの重量比を有することができる。
【0047】
第2のOSC材料(例えば、セリア-ジルコニア混合酸化物)は、第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量に基づいて、10~90重量%、好ましくは、25~75重量%、より好ましくは、30~60重量%であり得る。
【0048】
第2の触媒領域における第2のOSC材料担持量は、2g/in未満であり得る。いくつかの実施形態では、第2の触媒領域における第2のOSC材料担持量は、1.5g/in、1.2g/in、1g/in、0.8g/in、又は0.7g/in以下である。
【0049】
第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、好ましくはバリウム、ストロンチウム、これらの混合酸化物又は複合酸化物である。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、第2の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%のバリウム又はストロンチウムの量である。
【0050】
第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属はストロンチウムであることが更により好ましい。ストロンチウムは、存在する場合、第2の触媒領域の総重量に基づいて、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%の量で存在する。
【0051】
また、第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、バリウム及びストロンチウムの混合酸化物又は複合酸化物であることが好ましい。好ましくは、バリウム及びストロンチウムの混合酸化物又は複合酸化物は、第2の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%の量で存在する。第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、バリウム及びストロンチウムの複合酸化物であることがより好ましい。
【0052】
好ましくは、バリウム又はストロンチウムはBaCO又はSrCOとして存在する。このような材料は、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、初期湿潤含浸又は噴霧乾燥によって実施することができる。
【0053】
第2の無機酸化物は、好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物である。第2の無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、マグネシア、シリカ、ジルコニア、バリウム酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。特に好ましくは、第2の無機酸化物は、アルミナ、ランタン-アルミナ、ジルコニア、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。1つの特に好ましい第2の無機酸化物は、アルミナ又はランタン-アルミナである。
【0054】
第2のOSC材料と第2の無機酸化物とは、10:1以下、好ましくは、8:1又は5:1以下、より好ましくは、4:1又は3:1以下、最も好ましくは、2:1以下の重量比を有することができる。
【0055】
あるいは、第2のOSC材料と第2の無機酸化物とは、10:1~1:10、好ましくは、8:1~1:8又は5:1~1:5、より好ましくは4:1~1:4又は3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2の重量比を有することができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、第2のOSC材料及び第2の無機酸化物は、2:1以上の重量比を有することができる。更なる実施形態では、第2のOSC材料及び第2の無機酸化物は、10:1以上の重量比を有することができる。別の更なる実施形態では、第2のOSC材料及び第2の無機酸化物は、20:1以上又は30:1以上の重量比を有することができる。更に別の更なる実施形態では、第2のOSC材料及び第2の無機酸化物は、40:1以上又は50:1以上の重量比を有することができる。
【0057】
第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、3.5g/in未満、好ましくは、3.0g/in又は2.5g/in未満であり得る。第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、0.5~3.5g/in、好ましくは、0.6~3g/in又は0.7~2.5g/inであり得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、第2の触媒領域は、最大5重量%のSnを含み得る。
【0059】
スズ(Sn)は、様々な方法で、第2の触媒領域に組み込まれ得る。いくつかの実施形態では、Snは、ドーパントとして、第2のOSC材料に組み込まれ得、第2のOSC材料は、第2のOSC材料の総重量に基づいて、最大5重量%のSn、好ましくは、最大4重量%のSn、より好ましくは、最大3重量%のSn、更により好ましくは、最大2重量%のSnを含み得る。あるいは、第2のOSC材料は、第2のOSC材料の総重量に基づいて、0.1~5重量%のSn、好ましくは、0.2~4重量%のSn、より好ましくは、0.3~3重量%のSn、更により好ましくは、0.4~2重量%のSnを含み得る。他の実施形態では、Snは、ドーパントとして、第2の無機酸化物に組み込まれ得、第2の無機酸化物は、第2の無機酸化物の総重量に基づいて、最大5重量%のSn、好ましくは、最大4重量%のSn、より好ましくは、最大3重量%のSn、更により好ましくは、最大2重量%のSnを含み得る。あるいは、第2の無機酸化物は、第2の無機酸化物の総重量に基づいて、0.1~5重量%のSn、好ましくは、0.2~4重量%のSn、より好ましくは、0.3~3重量%のSn、更により好ましくは、0.4~2重量%のSnを含み得る。更に他の実施形態では、Snは、単純な物理的混合物(例えば、例えば、物理的ブレンド)として、第2の触媒領域に組み込まれ得る。例えば、Snは、第2のOSC材料及び/又は第2の無機酸化物と物理的にブレンドされるように、SnOとして組み込まれ得、第2の触媒領域は、第2の触媒領域の総重量に基づいて、最大5重量%のSn、好ましくは、最大4重量%のSn、より好ましくは、最大3重量%のSn、更により好ましくは、最大2重量%のSnを含み得る。あるいは、第2の触媒領域は、第2の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~5重量%のSn、好ましくは、0.2~4重量%のSn、より好ましくは、0.3~3重量%のSn、更により好ましくは、0.4~1.5重量%のSnを含み得る。他の実施形態では、Snは、第2のOSC材料フレームワークに組み込まれ得(例えば、Snが、形成されるOSC固溶体材料の結晶格子にドープされ)、第2のOSC材料フレームワークは、第2のOSC材料の総重量に基づいて、最大5重量%のSn、好ましくは、最大4重量%のSn、より好ましくは、最大3重量%のSn、更により好ましくは、最大2重量%のSnを含み得る。あるいは、第2のOSC材料は、第2のOSC材料の総重量に基づいて、0.1~5重量%のSn、好ましくは、0.1~4重量%のSn、より好ましくは、0.1~3重量%のSn、更により好ましくは、0.1~2.5重量%のSnを含み得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、第2の触媒領域は、第2の触媒領域の総重量に基づいて、最大4重量%のSn、好ましくは、最大3重量%のSn、より好ましくは、最大2重量%のSn、最も好ましくは、最大1.5重量%又は1重量%のSnを含み得る。あるいは、第2の触媒領域は、第2の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~5重量%のSn、好ましくは、0.2~4重量%のSn、より好ましくは、0.3~3重量%のSn、更により好ましくは、0.4~1.5重量%のSnを含み得る。
【0061】
第2の触媒領域は、軸方向長さLの100パーセントにわたって延在することができる(例えば、図2a、図2b、及び図6a~図6cを参照されたい)。
【0062】
第2の触媒領域は、軸方向長さLの30~70パーセントにわたって延在することができる。好ましくは、軸方向長さLの40~60パーセント、より好ましくは、45~55パーセントにわたって延在することができ、最も好ましくは、第2の領域及び第1の領域の全長は、軸方向長さL以上である(例えば、図3a~図5d及び図7a~図7lを参照されたい)。
【0063】
第2の触媒領域は、第1の触媒領域と、軸方向長さLの0.1~99パーセントにわたって重複し得る(例えば、図3c及び図3dを参照されたい。第1の触媒領域は、第2の触媒領域を被覆し得、又は第2の触媒領域は、第1の触媒領域を被覆し得る)。代替的に、第2の触媒領域及び第1の触媒領域の全長は、軸方向長さLに等しくてもよい(例えば、図3a及び図3bを参照されたい)。更に別の代替例では、第2の触媒領域及び第1の触媒領域の全長は、軸方向長さL未満、例えば、軸方向長さLの95%、90%、80%、又は70%以下であり得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、第1の触媒領域は、基材上に直接担持/堆積され得る。特定の実施形態では、第2の触媒領域は、基材上に直接担持/堆積され得る。
【0065】
第3の触媒領域
触媒物品は、第3の触媒領域を更に含むことができる。
【0066】
第3の触媒領域は、第3のPGM成分、第3の酸素吸蔵能(OSC)材料、第3のアルカリ若しくはアルカリ性土類金属成分、及び/又は第3の無機酸化物を更に含むことができる。
【0067】
第3のPGM成分は、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、第3のPGM成分は、Pd、Rh、又はこれらの混合物であり得る。
【0068】
第3のOSC材料は、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、又はこれらの組み合わせであり得る。より好ましくは、第3のOSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、又はこれらの組み合わせを含む。加えて、第3のOSC材料は、ランタン、ネオジム、プラセオジム、イットリウムなどのようなドーパントのうちの1つ以上を更に含み得る。更に、第3のOSC材料は、第3のPGM成分に対する担体材料としての機能を有し得る。いくつかの実施形態では、第3のOSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物を含む。
【0069】
セリア-ジルコニア混合酸化物は、少なくとも50:50、好ましくは、60:40超、より好ましくは、75:25超のジルコニア対セリアの重量比を有することができる。あるいは、セリア-ジルコニア混合酸化物はまた、50:50未満、好ましくは、40:60未満、より好ましくは、25:75未満のセリア対ジルコニアの重量比を有することができる。
【0070】
第3のOSC材料(例えば、セリア-ジルコニア混合酸化物)は、第3の触媒領域の総ウォッシュコート担持量に基づいて、10~90重量%、好ましくは、25~75重量%、より好ましくは、30~60重量%であり得る。
【0071】
第3の触媒領域における第3のOSC材料担持量は、1.5g/in未満であり得る。いくつかの実施形態では、第2の触媒領域における第3のOSC材料担持量は、1.2g/in、1.0g/in、0.9g/in、0.8g/in、又は0.7g/in以下である。
【0072】
第3の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、3.5g/in未満、好ましくは、3.0g/in、2.5g/in、又は2g/inであり得る。
【0073】
第3のアルカリ又はアルカリ性土類金属は、好ましくはバリウム、ストロンチウム、これらの混合酸化物又は複合酸化物である。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、第3の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%のバリウム又はストロンチウムの量である。
【0074】
第3のアルカリ又はアルカリ性土類金属は、ストロンチウムであることが更により好ましい。ストロンチウムは、存在する場合、第3の触媒領域の総重量に基づいて、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%の量で存在する。
【0075】
また、第3のアルカリ又はアルカリ性土類金属は、バリウム及びストロンチウムの混合酸化物又は複合酸化物であることが好ましい。好ましくは、バリウム及びストロンチウムの混合酸化物又は複合酸化物は、第3の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%の量で存在する。第3のアルカリ又はアルカリ性土類金属は、バリウム及びストロンチウムの複合酸化物であることがより好ましい。
【0076】
好ましくは、バリウム又はストロンチウムはBaCO又はSrCOとして存在する。このような材料は、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、初期湿潤含浸又は噴霧乾燥によって実施することができる。
【0077】
第3の無機酸化物は、好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物である。第3の無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、マグネシア、シリカ、ジルコニア、バリウム酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。特に好ましくは、第3の無機酸化物は、アルミナ、ランタン-アルミナ、ジルコニア、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。1つの特に好ましい第3の無機酸化物は、アルミナ又はランタン-アルミナである。
【0078】
第3のOSC材料と第3の無機酸化物とは、10:1以下、好ましくは、8:1又は5:1以下、より好ましくは、4:1又は3:1以下、最も好ましくは、2:1以下の重量比を有することができる。
【0079】
あるいは、第3のOSC材料と第3の無機酸化物とは、10:1~1:10、好ましくは、8:1~1:8又は5:1~1:5、より好ましくは4:1~1:4又は3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2の重量比を有することができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、第3のOSC材料及び第3の無機酸化物は、2:1以上の重量比を有することができる。更なる実施形態では、第3のOSC材料及び第3の無機酸化物は、10:1以上の重量比を有することができる。別の更なる実施形態では、第3のOSC材料及び第3の無機酸化物は、20:1以上又は30:1以上の重量比を有することができる。更に別の更なる実施形態では、第3のOSC材料及び第3の無機酸化物は、40:1以上又は50:1以上の重量比を有することができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、第3の触媒領域は、最大5重量%のSnを含み得る。
【0082】
スズ(Sn)は、様々な方法で、第3の触媒領域に組み込まれ得る。いくつかの実施形態では、Snは、ドーパントとして、第3のOSC材料に組み込まれ得、第3のOSC材料は、第3のOSC材料の総重量に基づいて、最大5重量%のSn、好ましくは、最大4重量%のSn、より好ましくは、最大3重量%のSn、更により好ましくは、最大2重量%のSnを含み得る。あるいは、第3のOSC材料は、第3のOSC材料の総重量に基づいて、0.1~5重量%のSn、好ましくは、0.2~4重量%のSn、より好ましくは、0.3~3重量%のSn、更により好ましくは、0.4~2重量%のSnを含み得る。他の実施形態では、Snは、ドーパントとして、第3の無機酸化物に組み込まれ得、第3の無機酸化物は、第3の無機酸化物の総重量に基づいて、最大5重量%のSn、好ましくは、最大4重量%のSn、より好ましくは、最大3重量%のSn、更により好ましくは、最大2重量%のSnを含み得る。あるいは、第3の無機酸化物は、第3の無機酸化物の総重量に基づいて、0.1~5重量%のSn、好ましくは、0.2~4重量%のSn、より好ましくは、0.3~3重量%のSn、更により好ましくは、0.4~2重量%のSnを含み得る。更に他の実施形態では、Snは、単純な物理的混合物(例えば、物理的ブレンド)として、第3の触媒領域に組み込まれ得る。例えば、Snは、第3のOSC材料及び/又は第3の無機酸化物と物理的にブレンドされるように、SnOとして組み込まれ得、第3の触媒領域は、第3の触媒領域の総重量に基づいて、最大5重量%のSn、好ましくは、最大4重量%のSn、より好ましくは、最大3重量%のSn、更により好ましくは、最大2重量%のSnを含み得る。あるいは、第3の触媒領域は、第3の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~5重量%のSn、好ましくは、0.2~4重量%のSn、より好ましくは、0.3~3重量%のSn、更により好ましくは、0.4~1.5重量%のSnを含み得る。他の実施形態では、Snは、第3のOSC材料フレームワークに組み込まれ得(例えば、Snが、形成されるOSC固溶体材料の結晶格子にドープされ)、第3のOSC材料フレームワークは、最大5重量%のSn、好ましくは、最大4重量%のSn、より好ましくは、最大3重量%のSn、更により好ましくは、最大2重量%のSnを含み得る。あるいは、第3のOSC材料は、第3のOSC材料の総重量に基づいて、0.1~5重量%のSn、好ましくは、0.1~4重量%のSn、より好ましくは、0.1~3重量%のSn、更により好ましくは、0.1~2.5重量%のSnを含み得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、第3の触媒領域は、第3の触媒領域の総重量に基づいて、最大5重量%のSn、好ましくは、最大3重量%のSn、より好ましくは、最大2重量%のSn又は最大1重量%のSnを含み得る。あるいは、第3の触媒領域は、第3の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~5重量%のSn、好ましくは、0.2~4重量%のSn、より好ましくは、0.3~3重量%のSn、更により好ましくは、0.4~1.5重量%のSnを含み得る。
【0084】
第3の触媒領域は、軸方向長さLの100パーセントにわたって延在することができる(例えば、図4a~図4d及び図6a~図6cを参照されたい)。
【0085】
第3の触媒領域は、軸方向長さL未満、例えば、軸方向長さLの95%、90%、80%、又は70%以下であり得る(例えば、図5a~図5d及び図7g~図7lを参照されたい)。
【0086】
第2の触媒領域は、第1の触媒領域と、軸方向長さLの0.1~99パーセントにわたって重複し得る(例えば、図7a~図7lを参照されたい)、第1の触媒領域は、第2の触媒領域に積層し得、又は第2の触媒領域は、第1の触媒領域に積層し得る)。代替的に、第2又は第1の領域のいずれかは、軸方向長さLの30~70パーセントにわたって延在することができる。好ましくは、軸方向長さLの40~60パーセント、より好ましくは、45~55パーセントにわたって延在することができ、最も好ましくは、第2及び第1の領域の全長は、軸方向長さL以下である(例えば、図4a~図4dを参照されたい)。
【0087】
第4の触媒領域
触媒物品は、第4の触媒領域を更に含み得る。
【0088】
第4の触媒領域は、第4のPGM成分、第4の酸素吸蔵能(OSC)材料、第4のアルカリ若しくはアルカリ性土類金属成分、及び/又は第4の無機酸化物を更に含むことができる。
【0089】
第4のPGM成分は、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、第4のPGM成分は、Pd、Rh、又はこれらの混合物であり得る。
【0090】
第4の触媒領域は、第3の触媒領域と同じ又は同様の組成物を有し得る。
【0091】
第4の触媒領域は、軸方向長さL未満、例えば、軸方向長さLの95%、90%、80%、又は70%以下であり得る。
【0092】
代替的に、第4又は第3の触媒領域のいずれかは、軸方向長さLの30~70パーセントにわたって延在することができる。好ましくは、軸方向長さLの40~60パーセント、より好ましくは、45~55パーセントにわたって延在することができ、最も好ましくは、第4及び第3の触媒領域の全長は、軸方向長さL以上である(例えば、図5a~図5dを参照されたい)。
【0093】
本発明の触媒物品は、当業者に知られている更なる成分を含んでもよい。例えば、本発明の組成物は、少なくとも1つのバインダー及び/又は少なくとも1つの界面活性剤を更に含んでもよい。バインダーが存在する場合、分散性アルミナバインダーが好ましい。
【0094】
基材
好ましくは、基材は、フロースルーモノリスである。あるいは、基材は、ウォールフローフィルタであり得る。
【0095】
フロースルーモノリス基材は、第1の面と第2の面とを有し、それらの間に長手方向が画定される。フロースルーモノリス基材は、第1の面と第2の面との間に延びている、複数のチャネルを有する。複数のチャネルは、長手方向に延びており、複数の内側表面(例えば、各チャネルを画定するウォールの表面)を提供する。複数のチャネルの各々は、第1の面にある開口部と、第2の面にある開口部と、を有する。誤解を回避するために、フロースルーモノリス基材はウォールフローフィルタではない。
【0096】
第1の面は、典型的には基材の入口端部にあり、第2の面は基材の出口端部にある。
【0097】
チャネルは一定の幅のものであってもよく、各複数のチャネルは、均一なチャネル幅を有してもよい。
【0098】
好ましくは、長手方向に直交する平面内で、モノリス基材は、1平方インチ当たり300~900のチャネル、好ましくは400~800のチャネルを有する。例えば、第1の面上において、開いている第1のチャネルと閉じている第2のチャネルとの密度は、1平方インチ当たり600~700チャネルである。チャネルは、矩形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、又は他の多角形形状である断面を有してもよい。
【0099】
モノリス基材は、触媒材料を保持するための担体として作用する。モノリス基材を形成するのに好適な材料としては、コーディエライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカマグネシア若しくはケイ酸ジルコニウムなどのセラミック様材料、又は多孔質の耐火金属が挙げられる。多孔質モノリス基材の製造におけるそのような材料及びそれらの使用は、当該技術分野において周知である。
【0100】
本明細書に記載のフロースルーモノリス基材は、単一構成要素(すなわち、単一のれんが状塊)であることに留意されたい。それにもかかわらず、排出物処理システムを形成する場合、使用される基材は、複数のチャネルを一緒に接着することによって形成されてもよく、又は本明細書に記載のように複数のより小さい基材を一緒に接着することによって形成されてもよい。このような技術は、排出物処理システムの好適なケーシング及び構成とともに、当該技術分野において公知である。
【0101】
本発明の触媒物品がセラミック基材を含む実施形態では、セラミック基材は、任意の好適な耐火材料、例えば、アルミナ、シリカ、セリア、ジルコニア、マグネシア、ゼオライト、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩及びメタロアルミノケイ酸塩(コージライト及びスポジュメンなど)、又はこれらのいずれか2つ以上の混合物若しくは混合酸化物で作製されていてもよい。コーディエライト、マグネシウムアルミノケイ酸塩、及び炭化ケイ素が、特に好ましい。
【0102】
本発明の触媒物品が金属基材を含む実施形態では、金属基材は、任意の好適な金属、特にチタン及びステンレス鋼などの耐熱性金属及び金属合金、並びに鉄、ニッケル、クロム、及び/又はアルミニウムを他の微量金属に加えて含有するフェライト合金で作製されていてもよい。
【0103】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の触媒物品を使用する、NO、CO、及びHCを含有する、車両排気ガスの処理方法を対象とする。この方法に従って作製されたTWCを備えた触媒コンバータは、従来のTWC(同じPGM担持量を有する)と比較して改善された触媒特性を示し、またコールドスタート段階で特に改善された性能、及びより良好なTHCライトオフ性能も示す(例えば、実施例2~実施例4及び実施例6~実施例7、並びに表3~表5及び表7~表9を参照されたい)。
【0104】
本開示の別の態様は、システムを通じて排気ガスを移送するための導管とともに本明細書に記載される触媒物品を含む、車両排気ガス処理用システムを対象とする。
【0105】
定義
本明細書で使用される場合、「領域」という用語は、典型的にはウォッシュコートを乾燥及び/又は焼成することによって得られる基材上の場所を指す。「領域」は、例えば、「層」又は「ゾーン」として基材上に配置又は担持され得る。基材上の場所又は配置は、概ね、基材にウォッシュコートを適用するプロセス中に制御される。「領域」は、典型的には、明確な境界又は縁部を有する(すなわち、従来の分析技術を使用して、一方の領域を別の領域から区別することが可能である)。
【0106】
典型的には、「領域」は、実質的に均一な長さを有する。この文脈における「実質的に均一な長さ」への言及は、その平均値から10%を超えた逸脱(例えば、最大長と最小長との差)をしない長さ、好ましくはその平均値から5%を超えた逸脱をしない長さ、より好ましくはその平均値から1%を超えた逸脱をしない長さを指す。
【0107】
各「領域」は、実質的に均一な組成を有する(すなわち、領域のある部分とその領域の別の部分とを比較する場合、ウォッシュコートの組成に実質的な差がない)ことが好ましい。この文脈における実質的に均一な組成物とは、領域のある部分を領域の別の部分と比較する場合に、組成の差が、5%以下、通常は2.5%以下、最も一般的には1%以下である材料(例えば、領域)を指す。
【0108】
本明細書で使用される場合、「ゾーン」という用語は、基材の全長の75%以下の長さなど、基材の全長未満の長さを有する領域を指す。「ゾーン」は、典型的には、基材の全長の少なくとも5%(例えば、5%以上)の長さ(すなわち、実質的に均一な長さ)を有する。
【0109】
基材の全長は、その入口端部とその出口端部と(例えば、基材の両端部)の間の距離である。
【0110】
本明細書で使用される「基材の入口端部に配置されているゾーン」への任意の言及は、基材上に配置又は担持されているゾーンであって、基材の入口端部までの方が、基材の出口端部までよりも近い、ゾーンを指す。したがって、ゾーンの中点(すなわち、その長さの半分での点)は、基材の入口端部までの方が基材の出口端部までよりも近い。同様に、本明細書で使用される「基材の出口端部に配置されているゾーン」への任意の言及は、基材上に配置又は担持されているゾーンであって、基材の出口端部までの方が基材の入口端部までよりも近い、ゾーンを指す。したがって、ゾーンの中点(すなわち、その長さの半分での点)は、基材の出口端部までの方が基材の入口端部までよりも近い。
【0111】
基材がウォールフローフィルタである場合、概して、「基材の入口端部に配置されているゾーン」への任意の言及は、基材上に配置又は担持されているゾーンであって、
(a)基材の入口チャネルの入口端部(例えば、開いている端部)までの方が入口チャネルの閉じた端部(例えば、遮断された端部又は塞がれた端部)までよりも近い、ゾーン、及び/又は
(b)基材の出口チャネルの閉じた端部(例えば、遮断された端部又は塞がれた端部)までの方が出口チャネルの出口端部(例えば、開いている端部)までよりも近い、ゾーンを指す。
【0112】
したがって、ゾーンの中点(すなわちその半分の長さでの点)は、(a)基材の入口チャネルの入口端部までの方が入口チャネルの閉じた端部までよりも近く、及び/又は(b)基材の出口チャネルの閉じた端部までの方が出口チャネルの出口端部までよりも近い。
【0113】
同様に、基材がウォールフローフィルタである場合、「基材の出口端部に配置されているゾーン」への任意の言及は、基材上に配置又は担持されているゾーンであって、
(a)基材の出口チャネルの出口端部(例えば、開いている端部)までの方が出口チャネルの閉じた端部(例えば、遮断された端部又は塞がれた端部)までよりも近い、ゾーン、及び/又は
(b)基材の入口チャネルの閉じた端部(例えば、遮断された端部又は塞がれた端部)までの方が入口チャネルの入口端部(例えば、開いている端部)までよりも近い、ゾーンを指す。
【0114】
したがって、ゾーンの中点(すなわちその半分の長さでの点)は、(a)基材の出口チャネルの出口端部までの方が出口チャネルの閉じた端部までよりも近い、及び/又は(b)基材の入口チャネルの閉じた端部までの方が入口チャネルの入口端部までよりも近い。
【0115】
ウォッシュコートがウォールフローフィルタのウォールに存在する(すなわち、ゾーンがウォール内のものである)場合、ゾーンは(a)と(b)との両方を満たし得る。
【0116】
「ウォッシュコート」という用語は、当該技術分野において公知であり、通常、触媒の製造中の基材に適用される接着性コーティングを指す。
【0117】
本明細書で使用される場合、頭字語「PGM」は、「白金族金属」を指す。「白金族金属」という用語は、概ね、Ru、Rh、Pd、Os、Ir及びPtからなる群から選択される金属、好ましくはRu、Rh、Pd、Ir及びPtからなる群から選択される金属を指す。概ね、「PGM」という用語は、好ましくは、Rh、Pt、及びPdからなる群から選択される金属を指す。
【0118】
本明細書で使用される場合、「混合酸化物」という用語は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、単相にての酸化物の混合物を指す。本明細書で使用される場合、「複合酸化物」という用語は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、2つ以上の相を有する酸化物の組成物を指す。
【0119】
本明細書で使用される場合、「本質的になる」という表現は、特定の材料又は工程、及び、例えば微量不純物を含み、並びにその特徴の基本特性に実質的に影響を及ぼさない任意の他の材料又は工程を含む、特徴の範囲を制限する。「から本質的になる」という表現は、「からなる」という表現を包含する。
【0120】
材料に関して本明細書で使用される場合、「実質的に含まない」という表現は、典型的には、領域、層、又はゾーンの内容物との関連において、材料が少量、例えば、5重量%以下、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下であることを意味する。「実質的に含まない」という表現は、「含まない」という表現を包含する。
【0121】
材料に関して本明細書で使用される場合、「本質的に含まない」という表現は、典型的には、領域、層、又はゾーンの内容との関連において、材料が微量、例えば1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.1%重量%以下であることを意味する。「本質的に含まない」という表現は、「含まない」という表現を包含する。
【0122】
本明細書で使用される場合、重量%として表されるドーパントの量、特に総量に対する任意の言及は、担体材料又はその耐火金属酸化物の重量を指す。
【0123】
本明細書で使用する場合、「担持量」という用語は、金属重量基準でのg/ftの単位の測定値を指す。
【0124】
以下の実施例は、単に本発明を例示するものである。当業者は、本発明の趣旨及び特許請求の範囲内にある多くの変形例を認識するであろう。
【実施例
【0125】
実施例1-SnドーピングによるOSC性能の改善
OSC1~6
6つのOSC材料:表1のOSC1~6は、希土類酸化物で安定化されたCe/Zr混合酸化物材料上に溶解Sn溶液を含浸させ、その後、500℃で焼成することによって調製した。
【0126】
SnドープされたCe/Zr混合酸化物材料のOSC性能は、熱重量分析を使用して、酸素放出に由来する、Hの還元条件下で完全に酸化された材料の重量損失を測定することによって特定された。放出された酸素分子の量(mol)は、1000℃で4時間酸化還元エージングした後、200℃のより低い温度及び600℃のより高い温度での重量損失によって計算された。0.1%~1.5%のSn含有量の範囲で、OSC性能の有意な改善を得た。
【0127】
【表1】
【0128】
実施例2-触媒性能の改善
比較触媒1
比較触媒1は、コージェライト基材上のコーティングされた触媒であり、表1に記載されるように、3重量%のPd及び5重量%のBaからなり、Laで安定化されたアルミナとOSC1との混合物上に担持され、総ウォッシュコート担持量が2.0g/inである。
【0129】
触媒2
触媒2は、コージェライト基材上のコーティングされた触媒であり、表1に記載されるように、3重量%のPdからなり、La安定化アルミナとOSC5との混合物上に担持され、触媒2組成物の総重量に基づいて0.8重量%のSn担持量を有し、総ウォッシュコート担持量が2.0g/inである。
【0130】
触媒性能試験は、以下の条件下で、表2に示される組成を有する模擬排気ガスを使用して、比較触媒1及び比較触媒2に対して実施した。
【0131】
触媒性能試験では、HC及びCO成分の各々の50%が変換される温度を、T50として評価した。50%が変換される温度が低くなっていることは、排気ガス浄化触媒としての性能がより良好になっていることを意味する。
【0132】
触媒性能試験では、ガス流量を100,000/時間の空間速度で設定し、温度を、25℃/分の加熱速度で100℃から400℃まで上昇させ、触媒を通過した後のガス組成を分析し、変換率を測定した。
【0133】
【表2】
【0134】
【表3】
【0135】
上記の表3に示されるように、HC及びCOに対する50%の変換時の温度は、比較触媒1と比較して、触媒2では、それぞれ13℃及び22℃低い。
【0136】
実施例3:合成触媒活性試験におけるライトオフ性能及びOSC試験
比較触媒A:
第1の触媒領域:
第1の触媒領域は、CeZr混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、Laで安定化されたアルミナ、及びBaプロモーターのウォッシュコート上に担持されたPtからなる。第1の触媒領域のウォッシュコート担持量は、約1.8g/inであり、Pt担持量は、42g/ftであった。
【0137】
次いで、標準的なコーティング手順を使用して、基材の長さの80%を目標とするコーティングの深さで、セラミック基材の入口面から、このウォッシュコートをコーティングし(600cpsi、壁厚4.3ミリ)、100℃で乾燥させた。
【0138】
第2の触媒領域:
第2の触媒領域は、CeZr混合酸化物及びLa安定化アルミナのウォッシュコート上に担持されたRhからなる。第2の触媒領域のウォッシュコート担持量は、約1.3g/inであり、Rh担持量は8g/ftであった。
【0139】
次いで、標準的なコーティング手順を使用して、基材の長さの80%を目標とするコーティングの深さで、上記第1の触媒領域を含むセラミック基材の出口面から、この第2のウォッシュコートをコーティングし、100℃で乾燥させ、500℃で45分間焼成した。
【0140】
触媒B:
触媒Bは、第1の触媒領域において、第1の触媒領域の総重量に基づいて、0.7重量%のSn担持量で、2重量%のSnがアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物上に担持されたことを除いて、比較触媒Aと同様の手順に従って調製される。
【0141】
触媒B及び比較触媒Aを、合成触媒活性試験(Synthetic Catalyst Activity Test、SCAT)デバイスで、別々に試験した。ライトオフ性能は、10体積%のHO+14体積%のCO+333ppmのC+167ppmのC+1.5体積%のCO+0.5体積%のHO+1.15体積%のO+1000ppmのNO(Nによるバランス)のガスフローで試験され(空間速度は60000h-1)で、温度勾配は30℃/分である。THC、CO、及びNOの変換は、供給ガスの濃度と、触媒の出口でのガスの濃度とを比較することから計算された。OSCは、10体積%のHO+14体積%のCO+333ppmのC+167ppmのC+0.5体積%のCO+0.5体積%のHO+0.5体積%のO+1000ppmのNO(Nによるバランス)のガスフロー中で(空間速度は60000h-1であった)、450℃で試験された。比較触媒A及び触媒Bは、2体積%のO+10体積%のHO(Nによるバランス)の5L/分の流量で、1050℃で6時間水熱エージングした。
【0142】
未使用の及びエージングした触媒B並びに比較触媒AのHC、CO、及びNOのT50のライトオフ温度及びOSCを、表4に示す。データは、驚くべきことに、本発明の未使用の触媒Bが、比較触媒Aと比較して、CO、HC、NOについて、それぞれ約17℃、10.5℃、及び6℃低いT50(T50は、転化率が50%に達したときの温度である)という、著しく改善されたライトオフ性能をもたらすことを示している。一方、触媒BのOSCは、未使用の状態及びエージングした状態の両方で、比較触媒AのOSCよりも高い。
【0143】
【表4】
【0144】
実施例4:合成触媒活性試験におけるライトオフ性能試験
比較触媒C:
第1の触媒領域:
第1の触媒領域は、CeZr混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、及びLaで安定化されたアルミナのウォッシュコート上に担持されたPtからなる。第1の触媒領域のウォッシュコート担持量は、約2.0g/inであり、Pt担持量は、74g/ftであった。
【0145】
次いで、標準的なコーティング手順を使用して、基材の長さの50%を目標とするコーティングの深さで、セラミック基材の入口面から、このウォッシュコートをコーティングし(600cpsi、壁厚2.5ミリ)、100℃で乾燥させた。
【0146】
第2の触媒領域:
第2の触媒領域は、CeZr混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、及びLaで安定化されたアルミナのウォッシュコート上に担持されたPtからなる。第2の触媒領域のウォッシュコート担持量は、約2.0g/inであり、Pt担持量は24g/ftであった。
【0147】
次いで、標準的なコーティング手順を使用して、基材の長さの50%を目標とするコーティングの深さで、上記第1の触媒領域を含むセラミック基材の出口面から、この第2のウォッシュコートをコーティングし、100℃で乾燥させ、500℃で45分間焼成した。
【0148】
第3の触媒領域:
第3の触媒領域はCeZr混合酸化物及びLa安定化アルミナのウォッシュコート上に担持されたRhからなる。第3の触媒領域のウォッシュコート担持量は、約1.5g/inであり、Rh担持量は6g/ftであった。
【0149】
次いで、標準的なコーティング手順を用いて、基材の長さの100%を目標コーティング深さとして、上記第1及び第2の触媒領域を含有するセラミック基材の出口面から、第3のウォッシュコートをコーティングし、100℃で乾燥させ、500℃で45分間焼成した。
【0150】
触媒D:
触媒Dは、第1及び第2の触媒領域において、第1の触媒領域又は第2の触媒領域のいずれかの重量に基づいて、0.75重量%のSn担持量で、2重量%のSnがアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物上に担持されたことを除いて、比較触媒Cと同様の手順に従って調製される。
【0151】
触媒D及び比較触媒Cを、合成触媒活性試験(SCAT)デバイスで、別々に試験した。ライトオフ性能は、10体積%のHO+14体積%のCO+333ppmのC+167ppmのC+1.5体積%のCO+0.5体積%のHO+1.15体積%のO+1000ppmのNO(Nによるバランス)のガスフロー中で試験され(空間速度は60000h-1であった)、温度勾配は30℃/分である。THC、CO、及びNOの変換は、供給ガスの濃度と、触媒の出口でのガスの濃度とを比較することから計算された。触媒D及び比較触媒Cは、2体積%のO+10体積%のHO(Nによるバランス)の5L/分の流量で、1050℃で6時間水熱エージングした。
【0152】
未使用の及びエージングした触媒D並びに比較触媒CのHC、CO、及びNOのT50のライトオフ温度を、表5に示す。データは、未使用の状態及びエージングした状態の両方で、比較触媒Cと比較して、本発明の触媒Dによって、著しく改善されたライトオフ性能が示されることを示す。触媒DのCO、HC、及びNOのT50は、未使用の状態下、並びに19℃、16.5℃、及び14.5℃でエージングした状態下で、それぞれ、17.5℃、11℃、及び9℃だけ低下した。
【0153】
【表5】
【0154】
実施例5:Pt分散の特性評価
比較触媒E:
第1の触媒領域:
第1の触媒領域は、CeZr混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、及びLaで安定化されたアルミナのウォッシュコート上に担持されたPtからなる。第1の触媒領域のウォッシュコート担持量は、約2.0g/inであり、Pt担持量は、74g/ftであった。
【0155】
次いで、標準的なコーティング手順を使用して、基材の長さの100%を目標とするコーティングの深さで、セラミック基材の出口面から、このウォッシュコートをコーティングし(600cpsi、壁厚2.5ミリ)、100℃で乾燥させ、500℃で45分間焼成した。
【0156】
触媒F:
触媒Fは、第1の触媒領域において、第1の触媒領域の重量に基づいて、0.75重量%のSn担持量で、2重量%のSnがアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物上に担持されたことを除いて、比較触媒Eと同様の手順に従って調製された。
【0157】
触媒F及び比較触媒EのPt分散度を、50℃でのCOパルス化学吸着測定によって、別々に試験した。触媒を、COパルスの前に、300℃で10分間、Hガスで前処理した。1:1のCO:Pt比を使用して、分散度を推定した。COパルス化学吸着試験の前に、触媒F及び比較触媒Eを、2体積%のO+10体積%のHO(Nによるバランス)の5L/分の流量で、1050℃で6時間水熱エージングした。Pt分散度の結果を表6に示す。データは、水熱エージング後の比較触媒Eにおいて、触媒Fが約6倍のPt分散度を有することを示す。
【0158】
【表6】
【0159】
実施例6:車両試験の手順及び結果
比較触媒G:
第1の触媒領域:
第1の触媒領域は、CeZr混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、及びLaで安定化されたアルミナのウォッシュコート上に担持されたPtからなる。第1の触媒領域のウォッシュコート担持量は、約2.5g/inであり、Pt担持量は、74g/ftであった。
【0160】
次いで、標準的なコーティング手順を使用して、基材の長さの50%を目標とするコーティングの深さで、セラミック基材の入口面から、このウォッシュコートをコーティングし(600cpsi、壁厚2.5ミリ)、100℃で乾燥させた。
【0161】
第2の触媒領域:
第2の触媒領域は、CeZr混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、及びLaで安定化されたアルミナのウォッシュコート上に担持されたPtからなる。第2の触媒領域のウォッシュコート担持量は、約2.5g/inであり、Pt担持量は24g/ftであった。
【0162】
次いで、標準的なコーティング手順を使用して、基材の長さの50%を目標とするコーティングの深さで、上記第1の触媒領域を含むセラミック基材の出口面から、この第2のウォッシュコートをコーティングし、100℃で乾燥させ、500℃で45分間焼成した。
【0163】
第3の触媒領域:
第3の触媒領域はCeZr混合酸化物及びLa安定化アルミナのウォッシュコート上に担持されたRhからなる。第3の触媒領域のウォッシュコート担持量は、約1.5g/inであり、Rh担持量は6g/ftであった。
【0164】
次いで、標準的なコーティング手順を用いて、基材の長さの100%を目標コーティング深さとして、上記第1及び第2の触媒領域を含有するセラミック基材の出口面から、第3のウォッシュコートをコーティングし、100℃で乾燥させ、500℃で45分間焼成した。
【0165】
触媒H:
触媒Hは、第1及び第2の触媒領域において、第1の触媒領域又は第2の触媒領域のいずれかの総重量に基づいて、0.75重量%のSn担持量で、2重量%のSnがアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物上に担持されたことを除いて、比較触媒Gと同様の手順に従って調製される。
【0166】
触媒G及び比較触媒Hのベンチエージングした試料を、国際調和排出ガス・燃費試験法(WLTP)を用いて、1.5リットルのエンジンの車両で試験した。ベンチエージングは、触媒のピークベッド温度が約980℃、4モードのエージングサイクルで、同じ200時間の運転で、6.1Lのエンジンで行った。ベンチエージングした部品に関する車両排気希釈バッグデータの結果を、表7に示す。本発明の触媒Hは、比較触媒Gと比較して、THC及びNOの排出量制御に対する優れた活性を示す(例えば、THC及びNOの性能が、それぞれ、約27%及び46%改善された)。
【0167】
【表7】
【0168】
実施例7:車両試験の手順及び結果
触媒G及び比較触媒Hのベンチエージングした試料を、国際調和排出ガス・燃費試験法(Worldwide Light Duty Testing Procedure、WLTP)を用いて、1.5リットルのエンジンの車両で試験した。ベンチエージングは、触媒のピークベッド温度が約980℃、4モードのエージングサイクルで、同じ200時間の運転で、6.1Lのエンジンで行われる。ベンチエージングした部品に関する車両排気希釈バッグデータの結果を、表8に示す。本発明の触媒Hは、比較触媒Gと比較して、THC、CO、及びNOの排出量制御に対する優れた活性を示した(例えば、THC、CO、及びNOの性能が、それぞれ、約57%、20%、及び64%改善された)。
【0169】
【表8】
【0170】
実施例8:エンジン試験におけるライトオフ性能試験
比較触媒I:
第1の触媒領域:
第1の触媒領域は、CeZr混合酸化物及びLa安定化アルミナのウォッシュコート上に担持されたPtからなる。第1の触媒領域のウォッシュコート担持量は、約2.3g/inであり、Pt担持量は、49g/ftであった。
【0171】
次いで、標準的なコーティング手順を使用して、基材の長さの100%を目標とするコーティングの深さで、セラミック基材の出口面から、このウォッシュコートをコーティングし(600cpsi、壁厚2.5ミリ)、100℃で乾燥させ、500℃で45分間焼成した。
【0172】
触媒J:
触媒Jは、第1の触媒領域において、第1の触媒領域の総重量に基づいて、約1重量%のSn担持量で、SnO粉末が、物理的ブレンドによって、ウォッシュコートに直接添加されたことを除いて、比較触媒Iと同様の手順に従って調製された。
【0173】
ベンチエージングした触媒J及び比較触媒Iを、ガソリンエンジンに対して別々に試験した。ライトオフ性能は、排気ガス流量が80kg/時、温度勾配が30℃/分、空燃比(Air and Fuel Ratio、AFR)のラムダが14.45の典型的な条件である。THC及びCOの転化率は、供給ガスの濃度及び触媒の出口におけるガスの濃度を比較することで計算した。エンジンのライトオフ試験の前に、触媒H及び比較触媒Gを、200時間ベンチエージングした。ベンチエージングは、触媒のピークベッド温度が約950℃、4モードのエージングサイクルで、同じ200時間の運転で、6.1Lのエンジンで行われる。
【0174】
触媒J及び比較触媒Iの、HC及びCOのT10(T10は、転化率が10%に達したときの温度である)を、表9に示す。データは、触媒Jが、HC及びCOの有意な改善されたライトオフ性能を示したことを示す。比較触媒Iと比較して、触媒JのT10が、約40℃低下した。
【0175】
【表9】

図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図5c
図5d
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図7c
図7d
図7e
図7f
図7g
図7h
図7i
図7j
図7k
図7l
【手続補正書】
【提出日】2022-10-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金族金属(PGM)成分及びPGM担体材料を含む、触媒組成物であって、最大5重量%のSnを含む、触媒組成物。
【請求項2】
前記PGM成分が、白金、パラジウム、ロジウム、又はこれらの組み合わせである、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記PGM担体材料が、酸素吸蔵能(OSC)材料、無機酸化物、又はこれらの組み合わせである、請求項1又は2に記載の触媒組成物。
【請求項4】
排気ガスを処理するための触媒物品であって、
軸方向長さLを有する入口端部及び出口端部を含む、基材と、
第1の白金族金属(PGM)成分及び第1のPGM担体材料を含む、第1の触媒領域であって、最大5重量%のSnを含む、第1の触媒領域と、を含む、触媒物品。
【請求項5】
前記第1のPGM成分が、白金、パラジウム、ロジウム、又はこれらの組み合わせである、請求項4に記載の触媒物品。
【請求項6】
前記第1のPGM担体材料が、第1の酸素吸蔵能(OSC)材料、第1の無機酸化物、又はこれらの組み合わせである、請求項4又は5に記載の触媒物品。
【請求項7】
第2の触媒領域を更に含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項8】
前記第1の触媒領域が、前記軸方向長さLにわたって延在する、請求項4~7のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項9】
前記第2の触媒領域が、前記軸方向長さLにわたって延在する、請求項7又は8に記載の触媒物品。
【請求項10】
前記第1の触媒領域が、前記基材上に直接担持/堆積されている、請求項8又は9に記載の触媒物品。
【請求項11】
前記第2の触媒領域が、前記基材上に直接担持/堆積されている、請求項8又は9に記載の触媒物品。
【請求項12】
前記第1の触媒領域が、前記軸方向長さL未満にわたって延在する、請求項4~7のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項13】
前記第2の触媒領域が、前記軸方向長さL未満にわたって延在する、請求項7又は8に記載の触媒物品。
【請求項14】
前記第1の触媒領域が、前記基材上に直接担持/堆積されている、請求項12又は13に記載の触媒物品。
【請求項15】
前記第2の触媒領域が、前記基材上に直接担持/堆積されている、請求項12又は13に記載の触媒物品。
【請求項16】
第3の触媒領域を更に含む、請求項4~15のいずれか一項に記載の触媒物品。

【国際調査報告】