IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッドの特許一覧

特表2023-519064精製FCC又はFCC/アルキレーションユニットを介したポリエチレンへの廃プラスチックのサーキュラーエコノミー
<>
  • 特表-精製FCC又はFCC/アルキレーションユニットを介したポリエチレンへの廃プラスチックのサーキュラーエコノミー 図1
  • 特表-精製FCC又はFCC/アルキレーションユニットを介したポリエチレンへの廃プラスチックのサーキュラーエコノミー 図2
  • 特表-精製FCC又はFCC/アルキレーションユニットを介したポリエチレンへの廃プラスチックのサーキュラーエコノミー 図3
  • 特表-精製FCC又はFCC/アルキレーションユニットを介したポリエチレンへの廃プラスチックのサーキュラーエコノミー 図4
  • 特表-精製FCC又はFCC/アルキレーションユニットを介したポリエチレンへの廃プラスチックのサーキュラーエコノミー 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】精製FCC又はFCC/アルキレーションユニットを介したポリエチレンへの廃プラスチックのサーキュラーエコノミー
(51)【国際特許分類】
   C10G 1/10 20060101AFI20230428BHJP
   C10G 11/18 20060101ALI20230428BHJP
   C10G 9/36 20060101ALI20230428BHJP
   C10G 50/00 20060101ALI20230428BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20230428BHJP
   C07C 4/04 20060101ALI20230428BHJP
   C08F 210/02 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
C10G1/10
C10G11/18
C10G9/36
C10G50/00
C07C11/04
C07C4/04
C08F210/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538703
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(85)【翻訳文提出日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 US2020066822
(87)【国際公開番号】W WO2021201932
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】63/002,053
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/002,020
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティムケン、へ - キョン
(72)【発明者】
【氏名】マッコード、キャメロン
【テーマコード(参考)】
4H006
4H129
4J100
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB46
4H006AC26
4H006BD84
4H129AA01
4H129CA22
4H129DA03
4H129DA04
4H129DA13
4H129FA02
4H129GA03
4H129NA20
4H129NA21
4H129NA43
4J100AA02P
(57)【要約】
提供されるのは、一実施形態では、廃プラスチックをポリエチレン重合のためのリサイクルに変換するための連続プロセスである。このプロセスは、ポリエチレン及び/又はポリプロピレンを含む廃プラスチックを選択し、廃プラスチックを熱分解反応器に通して、ポリオレフィン廃棄物の少なくとも一部を熱的に分解し、熱分解された流出物を生成することを含む。熱分解された流出物は、オフガス、熱分解油及び任意選択でワックス(ナフサ/ディーゼル及び重質留分を含む)、並びにチャーに分離される。熱分解油は、精製FCCユニットに通され、そこから液化石油ガスCオレフィン/パラフィン混合物留分及びCオレフィン/パラフィン混合物留分が回収される。一実施形態では、熱分解油は、最初にFCC供給原料前処理装置に通される。液化石油ガスCオレフィン/パラフィン混合物留分は、エチレン製造用にスチームクラッカーに通される。Cオレフィン/パラフィン混合物留分は、精製アルキレーションユニットに通され、そこからエチレンを製造するスチームクラッカーのためのn-ブタン及びナフサ供給原料が回収される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチックを、ポリエチレン重合のためのリサイクルに変換するための連続プロセスであって、
(a) ポリエチレン及び/又はポリプロピレンを含む廃プラスチックを選択する工程、
(b) (a)からの前記廃プラスチックを、熱分解反応器に通して、ポリオレフィン廃棄物の少なくとも一部を熱的に分解し、熱分解された流出物を生成する工程、
(c) 前記熱分解された流出物を、オフガス、チャー、並びに熱分解油及び任意選択で熱分解ワックス(ナフサ/ディーゼル留分及び重質留分を含む)に分離する工程、
(d) 前記熱分解油及びワックスを、精製FCCユニットに通す工程、
(e) 前記FCCユニットから、液化石油ガスCオレフィン/パラフィン混合物留分を回収する工程、
(f) 前記液化石油ガスCオレフィン/パラフィン混合物留分を、エチレン製造用にスチームクラッカーに通す工程、
を含む、上記プロセス。
【請求項2】
熱分解油及びワックスが、最初に、精製FCCユニットの前にFCC供給原料前処理ユニットに通される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ブタン及びブテンを含む液化石油ガスCオレフィン/パラフィン混合物留分が、FCCユニットから回収され、精製アルキレーションユニットに通される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
アルキレートガソリン留分及びn-ブタン留分が、アルキレーションユニットから回収され、エチレンを製造するためにスチームクラッカーに通される、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
ガソリン及び重質留分を、精製FCCユニットから回収する、請求項3に記載のプロセス。
【請求項6】
アルキレートガソリン留分を、精製アルキレーションユニットから回収する、請求項3に記載のプロセス。
【請求項7】
(f)で製造したエチレンを、その後、重合する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
ポリエチレン生成物が、重合されたエチレンから調製される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
精製FCCユニットから回収されたガソリンを、アルキレーションユニットから回収されたアルキレートガソリン留分の少なくとも一部と組み合わせる、請求項5に記載のプロセス。
【請求項10】
前記FCC及びアルキレーションユニットによって生成されるガソリンの量が、リサイクルされた熱分解油で増加する、請求項5に記載のプロセス。
【請求項11】
少なくともいくつかの汚染物質が、工程(c)の回収された熱分解油から除去され、それが、当該油が(d)のFCCユニットに通される前に行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
(a)で選択された廃プラスチックが、プラスチック分類グループ2、4、及び/又は5からのものである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
廃プラスチックを、ポリエチレン重合のためのリサイクルに変換するための連続プロセスであって、
(a) ポリエチレン及び/又はポリプロピレンを含む廃プラスチックを選択する工程、
(b) (a)からの前記廃プラスチックを、熱分解反応器に通して、ポリオレフィン廃棄物の少なくとも一部を熱的に分解し、熱分解された流出物を生成する工程、
(c) 前記熱分解された流出物を、オフガス、チャー、及び熱分解油(ナフサ/ディーゼル留分及び重質留分を含む)に分離する工程、
(d) 前記熱分解油を、精製FCCユニットに通す工程、
(e) FCCユニットから、ブタン及びブテンを含む液化石油ガスCオレフィン/パラフィン混合物留分を回収する工程、
(f) 液化石油ガスCオレフィン/パラフィン混合物留分を、アルキレーションユニットに通す工程、
(g) アルキレーションユニットから、n-ブタン及びナフサ留分の一部を回収する工程、
(h) 前記n-ブタン及びナフサ留分の一部を、エチレン製造用にスチームクラッカーに通す工程、
を含む、上記プロセス。
【請求項14】
ガソリン及び重質留分を、精製FCCユニットから回収する、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
アルキレートガソリン留分を、精製アルキレーションユニットから回収する、請求項13に記載のプロセス。
【請求項16】
精製FCCユニットから回収されたガソリンを、アルキレーションユニットから回収されたアルキレートガソリン留分と組み合わせる、請求項14に記載のプロセス。
【請求項17】
少なくともいくつかの汚染物質が、工程(c)の回収された熱分解油から除去され、それが、当該油が(d)のFCCユニットに通される前に行われる、請求項13に記載のプロセス。
【請求項18】
(a)で選択された廃プラスチックが、プラスチック分類グループ2、4、及び/又は5からのものである、請求項13に記載のプロセス。
【請求項19】
前記FCC及びアルキレーションユニットによって生成されるガソリンの量が、リサイクルされた熱分解油で増加する、請求項16に記載のプロセス。
【請求項20】
(h)で製造したエチレンを、その後、重合する、請求項13に記載のプロセス。
【請求項21】
ポリエチレン生成物が、重合されたエチレンから調製される、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
FCCユニットからCオレフィン/パラフィン混合物留分を収集し、当該留分をエチレン製造用にスチームクラッカーに通すことをさらに含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項23】
廃プラスチックを、ポリエチレン重合のためのリサイクルに変換するための連続プロセスであって、
(a) ポリエチレン及び/又はポリプロピレンを含む廃プラスチックを選択する工程、
(b) (a)からの前記廃プラスチックを、熱分解反応器に通して、ポリオレフィン廃棄物の少なくとも一部を熱的に分解し、熱分解された流出物を生成する工程、
(c) 前記熱分解された流出物を、オフガス、チャー、及び熱分解油(ナフサ/ディーゼル留分及び重質留分を含む)に分離する工程、
(d) (c)からの熱分解油を、精製FCCユニットに通す工程、
(e) 前記FCCユニットから、液化石油ガスCオレフィン/パラフィン混合物留分を回収する工程、
(f) 前記Cパラフィン及びCオレフィンを、異なる留分に分離する工程、
(h) 前記Cパラフィン留分を、エチレン製造用にスチームクラッカーに通す工程、
を含む、上記プロセス。
【請求項24】
廃プラスチックを、ポリエチレン重合のためのリサイクルに変換するための連続プロセスであって、
(a) ポリエチレン及び/又はポリプロピレンを含む廃プラスチックを選択する工程、
(b) (a)からの前記廃プラスチックを、熱分解反応器に通して、ポリオレフィン廃棄物の少なくとも一部を熱的に分解し、熱分解された流出物を生成する工程、
(c) 前記熱分解された流出物を、オフガス、チャー、並びに熱分解油及び任意選択で熱分解ワックス(ナフサ/ディーゼル留分及び重質留分を含む)に分離する工程、
(d) (c)からの熱分解油及びワックスを、精製FCC供給原料前処理ユニットに通す工程、
(e) 前記FCC供給原料前処理ユニットから、重質留分を回収し、それを精製FCCユニットに通す工程、
(f) 前記FCCユニットから、液化石油ガスCオレフィン/パラフィン混合物留分を回収する工程、
(g) 前記C混合物を、エチレン製造用にスチームクラッカーに通す工程、
を含む、上記プロセス。
【請求項25】
ガソリン、C流、及び重質留分を、精製FCCユニットから回収する、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
精製FCCユニットから回収されたガソリンが、ガソリンブレンドプールに送られる、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
精製FCCユニットから回収された重質留分及びC流が、清浄なガソリン及びディーゼルにアップグレードするために、精製ユニットに送られる、請求項25に記載のプロセス。
【請求項28】
硫黄、窒素、リン、シリカ、ジエン、及び金属汚染物質が、FCC供給原料前処理ユニットによって、工程(c)の回収された熱分解油から除去され、それが、当該油及びワックスが(e)のFCCユニットに通される前に行われる、請求項24に記載のプロセス。
【請求項29】
(a)で選択された廃プラスチックが、プラスチック分類グループ2、4、及び/又は5からのものである、請求項24に記載のプロセス。
【請求項30】
(h)で製造したエチレンを、その後、重合する、請求項24に記載のプロセス。
【請求項31】
前記FCCユニットによって生成されるガソリンの量が、リサイクルされた熱分解油で増加する、請求項25に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
世界はプラスチック生産の非常に急速な成長を目の当たりしてきた。PlasticsEurope Market Research Groupによると、世界のプラスチック生産量は、2016年に3億3500万トン、2017年に3億4800万トン、2018年に3億5900万トンであった。マッキンゼー・アンド・カンパニーによると、世界のプラスチック廃棄物量は、2016年に年間約2億6000万トンと推定され、現在の軌道が続く場合、2030年までに年間4億6000万トンになると予測されている。
【背景技術】
【0002】
使い捨てプラスチック廃棄物は、ますます重要な環境問題になっている。現時点では、ポリエチレンやポリプロピレンの廃プラスチックを付加価値のある化学製品や燃料製品にリサイクルするための選択肢はほとんどないようである。現在、少量のポリエチレンとポリプロピレンのみが、ケミカルリサイクルを介してリサイクルされ、このリサイクルされて清浄化されたポリマーペレットは、熱分解ユニットで熱分解され、燃料(ナフサ、ディーゼル)、スチームクラッカー供給原料、又はスラックワックスが生成される。
【0003】
廃プラスチックを炭化水素潤滑剤に変換するプロセスが知られている。例えば、米国特許第3,845,157号は、廃ポリオレフィン又は未使用のポリオレフィンを分解して、エチレン/オレフィンコポリマーなどのガス状生成物を形成し、これらをさらに処理して合成炭化水素潤滑剤を製造することを開示している。米国特許第4,642,401号は、粉砕されたポリオレフィン廃棄物を150~500℃の温度及び20~300バールの圧力で加熱して、液体炭化水素を製造することを開示している。米国特許第5,849,964号は、廃プラスチック材料を揮発性相と液相に解重合するプロセスを開示している。揮発性相は、気相と凝縮物に分離される。液相、凝縮物及び気相は、標準的な精製技術を用いて液体燃料成分に精製される。米国特許第6,143,940号は、廃プラスチックを重質ワックス組成物に変換するための手順を開示している。米国特許第6,150,577号は、廃プラスチックを潤滑油に変換するプロセスを開示している。欧州特許出願公開第0620264号は、廃ポリオレフィン又は未使用のポリオレフィンから潤滑油を製造するプロセスであって、廃棄物を流動床内で熱的に分解することにより、ワックス状生成物を形成し、任意選択で水素化処理を使用し、次いで触媒的に異性化及び分留して潤滑油を回収するプロセスを開示している。
【0004】
廃プラスチックを潤滑油に変換するためのプロセスに関する他の文書には、米国特許第6,288,296号、第6,774,272号、第6,822,126号、第7,834,226号、第8,088,961号、第8,404,912号及び第8,696,994号、並びに米国特許出願公開第2019/0161683号、第2016/0362609号、及び第2016/0264885号が含まれる。前述の特許文書は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0005】
熱分解を介したケミカルリサイクルの現在の方法では、プラスチック業界に大きな影響を与えることはできない。現在の熱分解操作では、品質に乏しい燃料成分(ナフサ及びディーゼル範囲の製品)が生成されるが、その量は十分少ないので、これらの生成物を燃料供給にブレンドすることができる。しかし、環境問題に対処するため、非常に大量の廃ポリエチレンと廃ポリプロピレンをリサイクルするためには、このような単純なブレンドを続けることはできない。熱分解ユニットから生成されたままの生成物は、品質があまりに乏しすぎるので、輸送用燃料に大量にブレンド(例えば、5~20vol%ブレンド)することはできない。
【0006】
使い捨てプラスチックを工業的に大量にリサイクルして環境への影響を減らすためには、より堅牢なプロセスが必要である。この改善されたプロセスでは、廃ポリエチレン及び廃ポリプロピレンプラスチックの「サーキュラーエコノミー(循環経済)」が確立されるべきであり、使用済みの廃プラスチックが、ポリマーや高価値の副生成物の出発原料として効果的にリサイクルされる必要がある。
【発明の概要】
【0007】
提供されるのは、廃プラスチックをポリエチレン重合のためのリサイクルに変換するための連続プロセスである。このプロセスは、ポリエチレン及び/又はポリプロピレンを含む廃プラスチックを選択することを含む。次いで、これらの廃プラスチックを熱分解反応器(pyrolysis reactor)に通して、ポリオレフィン廃棄物の少なくとも一部を熱的に分解し(thermally crack)、熱分解された流出物(pyrolyzed effluent)を生成する。熱分解された流出物は、オフガス、熱分解油及び任意選択で熱分解ワックス(ナフサ/ディーゼル及び重質留分を含む)、並びにチャーに分離される。
【0008】
このプロセスを石油精製(oil refinery)に組み込むことは、本プロセスの重要な側面であり、ポリエチレンなどの使い捨て廃プラスチックで、サーキュラーエコノミーを実現することができる。このように、熱分解油及びワックス(熱分解ユニットからの液体留分全体)は、精製FCCユニットに通され、そこから液化石油オレフィン流を回収することができる。これらの液化石油オレフィン流は、エチレン製造用のスチームクラッカー、又は精製アルキレーションユニット(そこからアルキレートガソリン及びnC留分を回収する)に直接通すことができる。この留分nCは、次いで、エチレン製造用にスチームクラッカーに通される。
【0009】
一実施形態では、熱分解油及びワックス(熱分解ユニットからの液体留分全体)は、精製FCC供給原料前処理ユニットに通される。このユニットは、FCCユニットの触媒性能を損なう硫黄、窒素、リン、シリカ、ジエン、及び金属の除去に効果的である。また、このユニットは芳香族化合物を水素化し、FCCユニットの液体収率を向上させる。前処理ユニットからの前処理された炭化水素は、蒸留され、LPG、ナフサ、及び重質留分を生成する。重質留分は、C、C、FCCガソリン及び重質留分をさらに生成するために、FCCユニットに送られる。分離セクションから、プロパン及びプロピレンを含む清浄なCLPG留分が収集される。このC流は、スチームクラッカーに適した供給原料である。C流は、スチームクラッカー蒸留セクションに供給され、プロパンとプロピレンに分離される。次いで、プロパンが、スチームクラッカーに供給され、純粋なエチレンに変換される。
【0010】
精製所(refinery)は、一般に、精製ユニット(refinery units)を通って流れる独自の炭化水素の供給を有している。廃プラスチックの熱分解から生成され、精製ユニットへと流れる、熱分解油及びワックスの流れの体積は、精製ユニットへの流れ全体(総流量)の任意の実用的又は収容可能な体積%(vol%)を構成することができる。一般に、廃プラスチックの熱分解から生成される熱分解油及びワックスの流量は、実際的な理由から、総流量(すなわち、精製流量と熱分解流量)の最大約50vol%とすることができる。一実施形態では、熱分解油及びワックスの流量は、総流量の最大約20vol%の量である。
【0011】
別の実施形態では、ポリエチレンを含む廃プラスチックを、ポリエチレン重合のためのリサイクルに変換するための連続プロセスが提供される。このプロセスは、ポリエチレン及びポリプロピレンを含む廃プラスチックを選択し、次いで、廃プラスチックを熱分解反応器に通して、ポリオレフィン廃棄物の少なくとも一部を熱的に分解し、熱分解された流出物を生成することを含む。熱分解された流出物は、オフガス、熱分解油(ナフサ/ディーゼル留分及び重質留分を含む)、並びにチャーに分離される。熱分解油(熱分解ユニットからの液体及びワックス留分全体)は、精製FCCユニットに通される。FCCユニットは、熱分解油中の汚染物質を除去し、FCC炭化水素生成物に変換する。FCC生成物は、FCCユニット分離セクションに送られ、オフガス、C、C、FCCガソリン及び重質留分が生成される。分離セクションから、プロパン及びプロピレンを含む清浄なC液化石油ガス(LPG)留分が収集される。このC流は、スチームクラッカーに適した供給原料である。C流は、スチームクラッカー蒸留セクションに供給され、プロパンとプロピレンに分離される。次いで、プロパンが、スチームクラッカー反応器に供給され、純粋なエチレンに変換される。
【0012】
回収されたCLPG留分は、ブタン及びブテンを含み、アルキレーションユニットに送られ、n-ブタン及びアルキレートを生成する。これらの流れは、直鎖状パラフィンに富み、エチレンを生成するためのスチームクラッカーのための非常に良好なナフサ供給源である。
【0013】
FCCガソリンは、ガソリンブレンドプールに送られる。アルキレーションユニットから回収されたアルキレートガソリンの一部は、FCCガソリン留分と組み合わせる/ブレンドすることができる。FCCユニット蒸留からの炭化水素の重質部分は、清浄なガソリン及びディーゼルにアップグレードするために、適切な精製ユニットに送られる。
【0014】
別の実施形態では、FCCユニットに通す前に、熱分解油及びワックス(熱分解ユニットからの液体留分全体)は、精製FCC供給原料前処理ユニットに通される。このユニットは、FCCの触媒性能を損なう硫黄、窒素、リン、シリカ、ジエン、及び金属の除去に効果的である。また、このユニットは芳香族化合物を水素化し、FCCユニットの液体収率を向上させる。このユニットからの前処理された炭化水素は、蒸留され、LPG、ナフサ、及び重質留分を生成する。重質留分は、C、C、FCCガソリン及び重質留分をさらに生成するために、FCCユニットに送られる。分離セクションから、プロパン及びプロピレンを含む清浄なCLPG留分が収集される。このC流は、Cパラフィン留分とCオレフィン留分に分離される。これは、エチレンクラッカーにおける蒸留塔を使用することによって達成できる。Cプロパン流は、スチームクラッカー蒸留セクションに供給され、さらに純粋なエチレンに変換される。
【0015】
とりわけ他の要因の中でも、精製操作(refinery operation)を追加することにより、廃熱分解油(waste pyrolysis oil)及び廃熱分解ワックスを、ガソリン及びディーゼルなどの高価値製品にアップグレードできることがわかっている。また、精製操作を追加することにより、廃熱分解油から、清浄なナフサ(C-C)又はC若しくはCを効率的かつ効果的に生成し、究極のポリエチレンポリマーの生産ができることがわかっている。リサイクルされたプラスチックから、未使用のポリマーと同等の製品品質を備えたポリエチレン製品に至るプロセス全体において、プラスの経済性が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、廃プラスチックを熱分解して燃料又はワックスを生成する現在のプラクティスを示している(基本ケース)。
【0017】
図2図2は、本プロセスに従って、廃プラスチックのサーキュラーエコノミー(循環経済)を確立するための本プロセスを示している。
【0018】
図3図3は、FCC供給原料前処理装置を用い、本プロセスに従って、廃プラスチックのサーキュラーエコノミー(循環経済)を確立するための本プロセスを示している。
【0019】
図4図4は、本プロセスに従って、廃プラスチックのサーキュラーエコノミー(循環経済)を確立するための本プロセスを示しており、このプロセスは、アルキレーションユニットを含む。
【0020】
図5図5は、廃プラスチックのリサイクルに関するプラスチックのタイプ分類を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本プロセスでは、廃ポリエチレン及び/又は廃ポリプロピレンを、未使用ポリエチレン(virgin polyethylene)にリサイクルする方法が提供され、別個の工業プロセスを組み合わせることによって、サーキュラーエコノミー(循環経済)を確立する。ポリエチレンとポリプロピレンポリマーの大部分は、使い捨てプラスチックに使用され、使用後に廃棄される。この使い捨てプラスチック廃棄物は、ますます重要な環境問題になってきている。現時点では、ポリエチレンやポリプロピレンの廃プラスチックを付加価値のある化学物質や燃料製品にリサイクルするための選択肢はほとんどないようである。現在、少量のポリエチレン/ポリプロピレンのみがケミカルリサイクルを介してリサイクルされ、このリサイクルされて清浄化されたポリマーペレットは、熱分解ユニットで熱分解され、燃料(ナフサ、ディーゼル)、スチームクラッカー供給原料、又はスラックワックスが生成される。
【0022】
エチレンは、最も生産されている石油化学の基礎的要素(building block)である。エチレンは、スチームクラッキングを介して年間数億トン生産される。スチームクラッカーは、ガス状原料(エタン、プロパン及び/又はブタン)又は液体原料(ナフサ又はガスオイル)のいずれかを使用する。スチームクラッキングは、最高850℃の非常に高い温度で行われる非触媒的分解プロセスである。
【0023】
ポリエチレンは、さまざまな消費者向け製品や工業製品に広く使用されている。ポリエチレンは、最も一般的なプラスチックであり、年間1億トン以上のポリエチレン樹脂が生産されている。その主な用途は、包装(ポリ袋、プラスチックフィルム、ジオメンブレン、ボトルなどの容器)である。ポリエチレンは、以下の3つの主要な形態で生産され、これらは同じ化学式(Cであるが、分子構造が異なっている:高密度ポリエチレン(HDPE、約0.940~0.965g/m-3)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、約0.915~0.940g/cm-3)、低密度ポリエチレン(LDPE、<0.930g/cm-3)。HDPEは、分岐度が低くて側鎖が短いのに対して、LDPEは、分岐度が非常に高くて側鎖が長い。LLDPEは、実質的に直鎖状のポリマーで、かなりの数の短い分岐を有し、通常、エチレンと短鎖アルファオレフィンとの共重合によって作られる。
【0024】
低密度ポリエチレン(LDPE)は、150~300℃、及び1,000~3,000気圧の非常に高い圧力で、ラジカル重合によって生成される。このプロセスでは、少量の酸素及び/又は有機過酸化物開始剤を用いて、平均ポリマー分子あたり約4,000~40,000の炭素原子を有し、多くの分岐を有するポリマーを生成する。高密度ポリエチレン(HDPE)は、比較的低い圧力(10~80気圧)、及び80~150℃の温度で、触媒の存在下で生成される。チーグラー・ナッタ有機金属触媒(アルミニウムアルキルを有する塩化チタン(III))とフィリップス型触媒(シリカに担持した酸化クロム(IV))が典型的には使用され、ループ反応器を用いたスラリープロセス、又は流動床反応器を用いた気相プロセスを介して、この製造が行われる。水素がエチレンに混合されて、ポリマーの鎖長を制御する。直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の製造条件は、エチレンと短鎖アルファオレフィン(1-ブテン又は1-ヘキセン)との共重合を除いて、HDPEの製造条件と同様である。
【0025】
今日、上述した非効率性のため、使用済みポリエチレン製品のごく一部のみがリサイクルの取り組みのために収集されている。
【0026】
図1は、今日の業界で一般的に行われている廃プラスチック燃料又はワックスの熱分解の図を示している。上述したように、一般的に、ポリエチレンとポリプロピレンの廃棄物は、一緒に選別される(1)。洗浄されたポリエチレン/ポリプロピレン廃棄物2は、熱分解ユニット3において、オフガス4及び熱分解油(液体生成物)に変換される。熱分解ユニットからのオフガス4は、熱分解ユニットを操作するための燃料として使用される。熱分解ユニット内の蒸留ユニットは、熱分解油を分離してナフサ及びディーゼル5製品を製造し、これらを燃料市場に販売する。重質熱分解油留分6は、燃料収量を最大化するために熱分解ユニット3に再循環される。チャー7は、熱分解ユニット3から除去される。重質留分6は、長鎖の直鎖状炭化水素に富み、非常にワックス状である(すなわち、周囲温度まで冷却するとパラフィン系ワックスを形成する)。ワックスは、重質留分6から分離して、ワックス市場に販売することができる。
【0027】
本プロセスは、廃ポリマーの熱分解生成物流を石油精製操作(oil refinery operation)に統合することにより、熱分解されたポリエチレン及び/又はポリプロピレンの廃プラスチックを大量に変換する。得られたプロセスは、ポリマーの原料(ナフサ又はC-C若しくはC、エチレンクラッカー用のみ)、並びに高品質のガソリン及びディーゼル燃料を生成する。
【0028】
一般に、本プロセスは、ポリエチレンプラントのためのサーキュラーエコノミー(循環経済)を提供する。ポリエチレンは、純粋なエチレンの重合を介して製造される。清浄なエチレンは、スチームクラッカーを使用して製造することができる。ナフサ又はC若しくはCのいずれかの流れを、スチームクラッカーに供給することができる。次いで、エチレンを重合して、ポリエチレンを生成する。
【0029】
廃熱分解油を高価値製品(ガソリン及びディーゼル)にアップグレードするための、並びに、究極のポリエチレンポリマーの生産のためのスチームクラッカー用の清浄なLPG及びナフサを生産するための、精製操作を追加することによって、リサイクルされたプラスチックから、未使用のポリマーと同等の品質を備えたポリエチレン製品に至るプロセス全体において、プラスの経済性を生み出すことができる。
【0030】
熱分解ユニットは、カルシウム、マグネシウム、塩化物、窒素、硫黄、ジエン、及び重質成分などの汚染物質を含む低品質の製品を製造し、これらの製品は、輸送用燃料のブレンドのために大量に使用することができない。これらの製品を精製ユニットに通すことにより、汚染物質を前処理ユニットで捕捉し、それらの悪影響を軽減できることがわかっている。燃料成分は、化学変換プロセスを備えた適切な精製ユニットでさらにアップグレードすることができ、統合プロセスによって製造される最終的な輸送用燃料は、より高品質で、燃料の品質要件を満たすことができる。本プロセスでは、ワックスを、貴重なガソリン及びディーゼルにアップグレードする。統合プロセスは、エチレン生成及びポリエチレン製造用のスチームクラッカー原料として、はるかに清浄なナフサ流を生成する。これらの仕様通りの大量生産により、実現可能なリサイクルプラスチックの「サーキュラーエコノミー」が可能になる。
【0031】
精製操作において出入りするカーボンは「透明」(“transparent”)であり、これは、廃プラスチックからのすべての分子が、ポリオレフィンプラントに循環して戻り、正確なオレフィン製品になるとは限らないことを意味するが、それにもかかわらず、精製所に出入りする正味の「グリーン」カーボン(“green”carbon)がポジティブであるため、「クレジット(credit)」と見なされる。これらの統合プロセスにより、ポリエチレンプラントに必要な未使用供給原料の量は大幅に削減されることになる。
【0032】
図2図3、及び図4は、効果的なポリエチレン生産のために、精製操作をリサイクルと統合した本統合プロセスを示している。図2図3、及び図4では、混合廃プラスチックは、一緒に選別される(21)。洗浄された廃プラスチック22は、熱分解ユニット23において、オフガス24と熱分解油(液体生成物)と任意選択でワックス(周囲温度で固体生成物)とに変換される。熱分解ユニットからのオフガス24は、熱分解ユニット23を操作するための燃料として使用することができる。熱分解油は、一般に、熱分解ユニット23内のオンサイト蒸留ユニットで、ナフサ/ディーゼル留分25と重質留分26に分離される。熱分解工程の完了後、チャー27は、熱分解ユニット23から除去される。
【0033】
熱分解ユニットは、廃プラスチック収集サイトの近くに配置することができ、このサイトは、精製所から離れた場所、精製所の近く、又は精製所内にあることができる。熱分解ユニットが精製所から離れた場所にある場合、熱分解油(ナフサ/ディーゼル及び重質油)は、トラック、はしけ、鉄道車両、又はパイプラインによって精製所に移送することができる。しかしながら、熱分解ユニットは、廃プラスチック収集サイト内又は精製所内にあることが好ましい。
【0034】
本プロセスの好ましい出発材料は、主にポリエチレンとポリプロピレンを含む選別された廃プラスチックである(プラスチックリサイクル分類タイプ2、4、及び5)。事前に選別された廃プラスチックは、洗浄され、細断又はペレット化されて、熱分解ユニットに供給され、熱分解される。図5は、廃プラスチックのリサイクルに関するプラスチックのタイプ分類を示している。分類タイプ2、4、及び5は、それぞれ高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、及びポリプロピレンである。ポリエチレンとポリプロピレンの廃プラスチックは、任意の組合せで使用することができる。本プロセスでは、少なくともいくらかのポリエチレンの廃プラスチックを使用することが好ましい。
【0035】
N、Cl、Sなどの汚染物質を最小限に抑えるには、廃プラスチックを適切に選別することが非常に重要である。ポリエチレンテレフタレート(プラスチックリサイクル分類タイプ1)、ポリ塩化ビニル(プラスチックリサイクル分類タイプ3)及びその他のポリマー(プラスチックリサイクル分類タイプ7)を含むプラスチック廃棄物は、5%未満、好ましくは1%未満、最も好ましくは0.1%未満に選別される必要がある。本プロセスは、適度な量のポリスチレンを許容できる(プラスチックリサイクル分類タイプ6)。廃ポリスチレンは、30%未満、好ましくは20%未満、最も好ましくは5%未満に選別される必要がある。
【0036】
廃プラスチックを洗浄すると、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムなどの金属汚染物質、及び他の廃棄物源からの非金属汚染物質が除去される。非金属汚染物質には、シリカなどの周期表第IV族からの汚染物質、リンや窒素化合物などの第V族からの汚染物質、硫黄化合物などの第VI族からの汚染物質、及び、フッ化物、塩化物、ヨウ化物などの第VII族からのハロゲン化物汚染物質が含まれる。残留金属、非金属汚染物質、及びハロゲン化物は、50ppm未満、優先的には30ppm未満、最も優先的には5ppm未満まで除去する必要がある。
【0037】
洗浄によって金属、非金属汚染物質、及びハロゲン化物不純物が適切に除去されない場合は、別のガード床を使用して金属及び非金属汚染物質を除去することができる。
【0038】
熱分解は、プラスチック材料原料を、熱分解ゾーン内において熱分解条件で接触させることによって行われ、そこでは、供給原料の少なくとも一部が分解され、それにより、主にオレフィン及びパラフィンを含む熱分解ゾーン流出物が形成される。熱分解条件は、約400℃~約700℃、好ましくは約450℃~約650℃の温度を含む。従来の熱分解技術は、大気圧を超える圧力での操作条件を教示している(例えば、米国特許第4,642,401号を参照)。さらに、圧力を下方に調整することにより、所望の生成物の収率を制御できることがわかっている(例えば、米国特許第6,150,577号を参照)。したがって、そのような制御が望まれるいくつかの実施形態では、熱分解圧力は大気圧未満である。
【0039】
図2は、熱分解油全体(ナフサ/ディーゼル留分及び重質留分)が流動接触分解(FCC)ユニット28に送られる本統合プロセスの一例を示している。
【0040】
ナフサ/ディーゼル留分は、供給品質に応じて、FCC反応器又は蒸留塔のいずれかに供給される。流動接触分解(fluid catalytic cracking:FCC)プロセスは、他の精製操作から回収された常圧軽油、減圧軽油、常圧残油及び重質分を、高オクタン価ガソリン、軽燃料油、重燃料油、オレフィンリッチ軽質ガス(LPG)及びコークスに変換するために、精製業界で広く使用されている。FCCは、高活性ゼオライト触媒を使用して、ライザー内の950~990°Fの反応器温度で、数分以下の短い接触時間で重質炭化水素分子を分解する。オレフィン(プロピレン、ブチレン)を含むLPG流は、通常、アルキレートガソリンを製造するため、又は化学製品の製造に使用するためにアップグレードされる。従来のFCCユニットが使用される。
【0041】
精製所は、一般に、精製ユニットを通って流れる独自の炭化水素の供給を有している。廃プラスチックの熱分解から生成され、精製ユニット(ここではFCCユニット)へと流れる熱分解油及びワックスの流れの体積は、精製ユニットへの流れ全体(総流量)の任意の実用的又は収容可能な体積%(vol%)を構成することができる。一般に、廃プラスチックの熱分解から生成される熱分解油及びワックス留分の流量は、実際的な理由から、総流量(すなわち、精製流量と熱分解流量)の最大約50vol%とすることができる。一実施形態では、熱分解油の流量は、総流量の最大約20vol%の量である。別の実施形態では、熱分解油及びワックスの流量は、総流量の最大約10vol%の量である。約20vol%は、精製所への影響において非常に実用的な量であると同時に、優れた結果を提供し、収容可能な量であることがわかっている。もちろん、熱分解から生成される熱分解油及びワックスの量は、精製ユニットに通される留分が、流量の所望の体積%を提供するように制御することができる。
【0042】
FCCユニットで石油由来の油と組み合わされた熱分解液体油及びワックスを分解すると、液化石油ガス(LPG)オレフィン流31及び32、並びにガソリン29及び重質留分30が生成される。C オフガス33も生成される。
【0043】
LPGオレフィン流31は、プロパン及びプロピレンを含むC液化石油ガス(LPG)留分である。このC流は、スチームクラッカーに適した供給原料である。C流31は、スチームクラッカー34の蒸留セクションに供給され、プロパンとプロピレンに分離される。次いで、プロパンが、スチームクラッカー34の反応器に供給され、そこでC流が最終的に純粋なエチレンに変換され、次いでこのエチレンが重合される(40)。次いで、ポリエチレンを使用して、ポリエチレン生成物41を生成することができる。
【0044】
FCCガソリン29は、ガソリンブレンドプールに送ることができる。FCCユニット28から回収された重質部分30は、清浄なガソリン及びディーゼル39にアップグレードするために、適切な精製ユニット38に送られる。C流32は、ガソリンブレンドプールに送られるか、又はさらに清浄なガソリンにアップグレードされる。
【0045】
図3は、熱分解油全体(ナフサ/ディーゼル留分及び重質留分)が、FCCユニットの前に、流動接触分解(FCC)ユニット28に送られる本統合プロセスを示している。FCC供給原料前処理装置は、典型的には、固定床反応器内でバイメタル(NiMo又はCoMo)アルミナ触媒を使用して、660~780°Fの反応器温度及び1,000~2,000psiの圧力でHガス流を用いて供給原料を水素化する。精製FCC供給原料前処理ユニットは、FCCユニットの触媒性能を損なう硫黄、窒素、リン、シリカ、ジエン、及び金属の除去に効果的である。また、このユニットは芳香族化合物を水素化し、FCCユニットの液体収率を向上させる。
【0046】
供給原料前処理ユニットからの前処理された炭化水素は、蒸留され、LPG、ナフサ、及び重質留分を生成する。重質留分は、C(31)、C(32)、FCCガソリン(33)及び重質留分(30)をさらに生成するために、FCCユニット(29)に送られる。供給原料前処理ユニットからのC流及びナフサは、精製所内の他のアップグレードプロセスに渡すことができる。
【0047】
FCCユニット29の分離セクションから、プロパン及びプロピレンを含む清浄なCLPG留分31が収集される。このC流は、スチームクラッカーに適した供給原料である。C流は、スチームクラッカー36の蒸留セクションに供給され、プロパンとプロピレンに分離される。次いで、プロパンが、スチームクラッカーに供給され、純粋なエチレンに変換される。次いで、エチレンが、エチレン重合ユニット40で重合される。次いで、ポリエチレンを使用して、消費者向け製品41を製造することができる。
【0048】
FCC精製ユニットから回収されたCオレフィン流32は、さまざまなアップグレードプロセス34に渡して、清浄なガソリン又はディーゼル35を生成することができる。重質留分30も同様に、さまざまなアップグレードプロセス34に渡して、より清浄なガソリン及びディーゼル35を生成することができる。FCC精製ユニット29から収集されたFCCガソリン33は、精製所で生成された清浄なガソリンと共にプールすることができる。
【0049】
図4は、熱分解油全体(ナフサ/ディーゼル留分及び重質留分)が、流動接触分解(FCC)ユニット28に送られ、次いでアルキレーションユニット35に送られる本統合プロセスを示している。
【0050】
図2と同様に、FCCユニットで石油由来の油と組み合わされた熱分解液体油及びワックスを分解すると、液化石油ガス(LPG)オレフィン流31及び32、並びにガソリン29及び重質留分30が生成される。C オフガス33も生成される。
【0051】
LPGオレフィン流31は、プロパン及びプロピレンを含むC液化石油ガス(LPG)留分である。このC流は、スチームクラッカーに適した供給原料である。C流31は、スチームクラッカー34に供給される。スチームクラッカー34において、C流が純粋なエチレンに変換され、次いでこのエチレンが重合される(40)。次いで、ポリエチレンを使用して、ポリエチレン生成物41を生成することができる。
【0052】
LPGオレフィン流32は、ブタン及びブテンを含むC液化石油ガス(LPG)留分である。この留分は、精製アルキレーションユニット35に送ることができる。
【0053】
アルキレーションプロセスは、軽質オレフィン(プロピレン、ブチレン、典型的にはFCCユニットから)をイソブタンと組み合わせて、高度に分岐したパラフィン系燃料であるアルキレートガソリンを生成する。アルキレートガソリンは、クリーン燃焼、高オクタン価、低硫黄、低RVPのガソリンブレンド成分であり、オレフィン系化合物又は芳香族化合物を含まないため、非常に望ましいガソリンブレンド成分である。従来のアルキレーションプロセスでは、30~60°Fの反応器温度で機能する硫酸触媒、又は90~95°Fの反応器温度で機能するフッ化水素酸触媒のいずれかを使用する。従来のアルキレーションプロセスを使用することができる。
【0054】
本プロセスにおいて、n-ブタン36を含むアルキレート留分は、アルキレーションユニット35から回収される。この留分は、直鎖状パラフィンに富み、エチレンを生成するためのスチームクラッカー34のための非常に良好なナフサ供給源である。したがって、このn-ブタン原料36は、スチームクラッカー34に通され、エチレンを生成し、次いでこのエチレンが重合される(40)。次いで、ポリエチレンを使用して、消費者向け製品41を生成することができる。
【0055】
FCCガソリン29は、ガソリンブレンドプールに送ることができる。アルキレーションユニットから回収されたアルキレート(アルキレートガソリン)の一部は、FCCガソリン留分と組み合わせる/ブレンドすることができる。FCCユニット28から回収された重質部分30は、清浄なガソリン及びディーゼル39にアップグレードするために、適切な精製ユニット38に送られる。
【0056】
スチームクラッカー及びエチレン重合ユニットは、原料(プロパン、ブタン、ナフサ、プロパン/プロピレン混合物)をパイプラインを介して移送できるように、精製所の近くに配置することが好ましい。精製所から離れた場所にある石油化学プラントの場合、原料は、トラック、はしけ、鉄道車両、又はパイプラインを介して配送することができる。
【0057】
サーキュラーエコノミーと効果的かつ効率的なリサイクルキャンペーンのメリットは、本統合プロセスによって実現される。
【0058】
以下の例は、本プロセスとその利点をさらに説明するために提供される。これらの例は、例示を目的としたものであり、限定することを意図したものではない。
【実施例
【0059】
[例1] 商業的供給源からの熱分解油及びワックスの特性
【0060】
熱分解油とワックスの試料を商業的供給源から入手した。それらの特性を表1に要約する。これらの熱分解試料は、主にポリエチレンとポリプロピレンを含む廃プラスチックから、ガスや触媒を添加せずに、約400~600℃、大気圧近くで熱分解反応器内での熱分解を介して調製した。熱分解ユニットは、典型的には、ガス、液体油製品、任意選択でワックス製品、及びチャーを生成する。熱分解ユニットの、熱的に分解された炭化水素を含むオーバーヘッドガス流を冷却し、凝縮物を、熱分解油(周囲温度で液体)及び/又は熱分解ワックス(周囲温度で固体)として収集した。熱分解油は、熱分解ユニットの主な製品である。熱分解ユニットによっては、熱分解油に加えて、別の製品として熱分解ワックスを生成するものもある。
【表1】
【0061】
比重測定にはASTM D4052法を用いた。シミュレートされた沸点分布曲線は、ASTM D2887法を用いて得た。炭素及び水素のCarlo-Erba分析は、ASTM D5291法に基づいて行った。臭素数の測定は、ASTM D1159法に基づいて行った。炭化水素タイプの分析は、高分解能磁気質量分析計を使用し、磁石を40~500ダルトンまでスキャンして行った。総硫黄は、ASTM D2622法に従ってXRFを使用して決定した。窒素は、修正ASTM D5762法により、化学発光検出を使用して決定した。総塩化物含有量は、修正ASTM 7359法により、燃焼イオンクロマトグラフィー機器を使用して測定した。ナフサ及び留出物の沸騰範囲の酸素含有量は、29~500のm/Z範囲の電子イオン化検出器を備えたGC/MS測定によるGCを使用して推定した。油中の微量金属及び非金属元素は、誘導結合プラズマ原子発光分析(ICP-AES)を使用して決定した。
【0062】
主にポリエチレン及びポリプロピレン廃棄物から供給される選別されたプラスチックの工業的熱分解プロセスでは、熱分解油又は熱分解ワックスの場合のように、比重が0.7~0.9の範囲で、沸点範囲が18~1100°Fの高品質の炭化水素流を生成した。
【0063】
熱分解生成物は、主に炭素及び水素から構成されるかなり純粋な炭化水素である。炭素に対する水素のモル比は、1.7~2.0近くまで変化する。臭素数は14~60の範囲にあり、これは、オレフィンと芳香族化合物に起因して、不飽和の程度がさまざまであることを示している。芳香族含有量は5~23体積%の範囲にあり、熱分解条件がより厳しいユニットほどより多くの芳香族化合物を生成する。熱分解ユニットのプロセス条件に応じて、熱分解生成物は、20vol%半ばから50vol%半ばの範囲のパラフィン含有量を示す。熱分解生成物には、かなりの量のオレフィンが含まれている。試料A及び試料Bは、より高い熱分解温度及び/又はより長い滞留時間などのより厳しい条件下で生成された熱分解油であり、芳香族成分が多くてパラフィン成分が少なく、その結果、H/Cモル比が約1.7で、臭素数が50~60と高い。試料C及び試料Dは、それほど厳しくない条件で生成され、それらの熱分解油はよりパラフィン性であり、その結果、H/Cモル比は2.0に近く、臭素数は約40になる。試料E(熱分解ワックス)は、ほとんどがパラフィン系の飽和炭化水素であり、(分岐炭化水素とは対照的に)かなりの量の直鎖炭化水素が含まれており、臭素数はわずか14である。
【0064】
以下の例2~例5は、輸送用燃料としての廃プラスチック熱分解油の評価を示している。
【0065】
[例2] 輸送用燃料として評価するための熱分解油の分留
【0066】
試料Dを蒸留して、炭化水素の複数の留分、すなわち、ガソリン(350°F)留分、ジェット(350~572°F)留分、ディーゼル(572~700°F)留分、及び重質(700°F)留分を生成した。表2は、蒸留生成物の各留分の沸点分布と不純物分布をまとめたものである。
【表2】
【0067】
[例3] ガソリン燃料用の熱分解油の留分の評価
【0068】
試料F(ガソリン燃料の沸点範囲の熱分解油の留分)について、ガソリン燃料としての使用可能性を評価した。試料Fの炭素数の範囲は、ガソリン燃料に典型的なC5~C12である。
【0069】
熱分解油はオレフィン性であるため、酸化安定性(ASTM D525)とガム形成傾向(ASTM D381)を、調査すべき最も重要な特性として特定した。リサーチ・オクタン価(RON)とモーター・オクタン価(MON)も、エンジン性能のための重要な特性である。RONの値とMONの値は、炭化水素の詳細なGC分析から推定した。
【表3】
【0070】
試料F(ガソリン燃料の沸点範囲の熱分解油の留分)は、品質に乏しいため、自動車用ガソリン燃料として単独で使用することはできない。熱分解油からのガソリン留分は、1440分を超える目標安定性と比較して、試料Fがわずか90分後に不合格となるという点で、非常に低い酸化安定性を示した。熱分解ガソリンは、洗浄ガム(wash gum)の目標である4mg/100mLを超えており、ガムの形成傾向が激しいことを示している。熱分解ガソリンは、参照ガソリンと比較して、オクタン価が低くなっている。プレミアム無鉛ガソリンを参照ガソリンとして使用した。
【0071】
我々はまた、限られた量の熱分解ガソリンの留分を参照ガソリンにブレンドする可能性についても検討した。我々の研究では、燃料特性の目標を達成しながら、試料Fの最大15体積%を精製ガソリンにブレンドできる可能性があることが示された。熱分解ガソリン製品を精製燃料と統合することにより、製品全体の品質を維持することができる。
【0072】
これらの結果は、熱分解油の生成されたままのガソリン留分には、ガソリン燃料としての有用性に限界があることを示している。熱分解油のこのガソリン留分を、ガソリン燃料特性の目標を満たす炭化水素に変換するには、精製ユニットでのアップグレードが好ましい。
【0073】
[例4] ジェット燃料用の熱分解油の留分の評価
【0074】
試料G(ジェット燃料の沸点範囲の熱分解油の留分)について、ジェット燃料としての使用可能性を評価した。試料Gの炭素数の範囲は、ジェット燃料に典型的なC9~C18である。
【0075】
熱分解油はオレフィン性であるため、ジェット燃料の熱酸化試験(D3241)が、最も重要な試験と見なされた。熱分解油のジェット留分そのままである試料Gは、酸化安定性がわずか36分しかなく、純粋な熱分解ジェット留分は、ジェット燃料として使用するには不適切であることを示している。
【0076】
我々は、熱分解ジェット留分(試料G)を、精製所で製造されたジェット燃料に5体積%ブレンドしたものを調製した。このブレンドは、表4に示すように、ジェット燃料の酸化試験において依然として不合格であった。
【表4】
【0077】
これらの結果は、熱分解油の生成されたままのジェット留分はジェット燃料には完全に不適切であることを示しており、熱分解油のこのジェット留分を、ジェット燃料の特性目標を満たす炭化水素に変換するには、精製ユニットでのアップグレードが必要であることを示している。
【0078】
[例5] ディーゼル燃料用の熱分解油の留分の評価
【0079】
試料H(ディーゼル燃料の沸点範囲の熱分解油の留分)について、ディーゼル燃料としての使用可能性を評価した。試料Hの炭素数の範囲は、ディーゼル燃料に典型的なC14~C24である。
【0080】
試料Hには、かなりの量の直鎖(normal)炭化水素が含まれている。直鎖炭化水素は、ワックス状の特性を示す傾向があるため、流動点(ASTM D5950-14)や曇り点(ASTM D5773)などの低温流動特性が最も重要な試験と見なされた。
【0081】
我々は、試料Hを、精製所で製造されたディーゼル燃料に、10体積%及び20体積%ブレンドした2つのブレンドを調製した。しかし、これらのブレンドは両方とも、流動点が-17.8℃(0°F)未満という目標流動点において、依然として不合格であった。
【表5】
【0082】
これらの結果は、熱分解油そのままでは、ディーゼル燃料には完全に不適切であることを示しており、熱分解油のディーゼル留分を、ディーゼル燃料の特性目標を満たす炭化水素に変換するには、精製ユニットでのアップグレードが必要であることを示している。
【0083】
[例6] FCCユニット又はFCC前処理ユニットへの熱分解生成物の共処理
【0084】
表1の結果は、主にポリエチレン及びポリプロピレンの廃棄物から供給される選別されたプラスチックの工業用熱分解プロセスにより、主に炭素及び水素から構成される高品質の熱分解油又は熱分解ワックスが生成されることを示している。良好な選別と効率的な熱分解ユニットの操作により、窒素と硫黄の不純物は十分に低いレベルにあるため、最新の精製所は、有害な影響を与えることなく、熱分解原料の処理ユニットへの共供給(cofeeding)を処理することができる。
【0085】
しかし、一部の熱分解油又はワックスには、依然として大量の金属(Ca、Fe、Mg)及びその他の非金属(P、Si、Cl、O)が含まれている場合があり、精製所の変換ユニットの性能に悪影響を及ぼす可能性がある。熱分解の場合、不純物レベルの高い生成物は、FCCユニットの前にFCC供給原料処理装置に優先的に供給されるため、その前処理装置によって不純物の大部分が効果的に除去される。
【0086】
図2に示すように熱分解原料全体をFCCユニットに供給するか、そのFCCユニットの前にFCC前処理ユニットに供給することにより、熱分解油及びワックスは、オフガス、LPGパラフィン及びオレフィン、FCCガソリン並びに重質炭化水素成分に変換される。FCCガソリンは、貴重なガソリンのブレンド成分である。重質留分、軽質サイクル油(LCO)及び重質サイクル油(HCO)は、ジェット水素化処理ユニット、ディーゼル水素化処理ユニット、水素化分解ユニット及び/又はコーカーユニットを含む後続の変換ユニットでさらに変換され、満足のいく製品特性を備えたより多くのガソリン、ジェット、及びディーゼル燃料が製造される。LPGパラフィン及びオレフィンは、アルキレーションユニットでさらに処理されるか、あるいはリサイクル成分を含む石油化学製品の製造に部分的に使用される。
【0087】
以下の例7は、FCC供給原料前処理装置が熱分解生成物中の不純物をどのように低減することができるかを示している。不純物の低減により、FCC触媒の寿命を延ばし、FCC触媒の消費量を低減することができる。
【0088】
[例7] 不純物除去のための熱分解生成物の水素化処理
【0089】
不純物除去のための廃プラスチック熱分解生成物の水素化処理の有効性を研究するために、試料E(熱分解プロセスからの粗製ワックス)を、NiMo/アルミナ触媒を含む連続固定床ユニットで、反応器温度600°F、圧力600psigで水素化した。触媒床体積に対して1.0hr-1の液体供給流量及び2500scf/bblのH/炭化水素流量を使用して、水素化生成物(試料J)を生成した。結果を以下の表6に要約する。
【表6】
【0090】
熱分解ワックス(試料E)の水素化により、優れた品質の水素化ワックス(試料J)が生成された。すべての微量不純物は水素化プロセスによって完全に除去されており、試料Jには、FCC触媒に害を及ぼす可能性のある測定可能な不純物は含まれていない。この例は、主にポリエチレンとポリプロピレンを含む廃プラスチックから高品質の純粋なパラフィン系炭化水素を効果的に製造できること、及び温和な水素化が廃プラスチック由来の油及びワックスを精製するための非常に効果的な方法であることを示している。
【0091】
以下の例8及び例9は、精製変換ユニット(例としてFCCユニットを使用)において、廃プラスチック熱分解生成物を、高品質の輸送用燃料に変換することを実証している。
【0092】
[例8] FCCにおける熱分解油の変換
【0093】
廃プラスチックの熱分解油のFCCへの共処理(coprocessing)の影響を研究するために、試料Aと試料Cを用いて、一連の実験室試験を実施した。減圧軽油(VGO)は、FCCの典型的な供給原料である。VGOを用いた熱分解油の20体積%ブレンドと、純粋な熱分解油のFCC性能を、純粋なVGO供給原料のFCC性能と比較した。
【0094】
FCC実験は、Kayser Technology Inc.製のModel C ACE(advanced cracking evaluation:高度な分解評価)ユニットで行い、精製所からの再生平衡触媒(Ecat)を用いた。反応器は、流動化ガスとしてNを使用する固定流動反応器であった。接触分解実験は、大気圧及び900°Fの反応器温度で実施した。触媒の量を変えることにより、触媒/油の比率を5~8の間で変化させた。ガス生成物を収集し、FID検出器付きGCを備えた精製ガス分析ユニット(RGA)を使用して分析した。使用済み触媒のその場再生は、1300°Fの空気の存在下で行い、再生煙道ガスをLECOに通して、コークス収率を決定した。液体生成物を秤量し、GCで、シミュレートされた蒸留(D2887)とC 組成分析を行った。物質収支により、コークス、乾燥ガス成分、LPG成分、ガソリン(C5、~430°F)、軽質サイクル油(LCO、430~650°F)及び重質サイクル油(HCO、650°F)の収率を決定した。結果を以下の表に要約する。
【表7】
【0095】
表7の結果は、熱分解油の最大20体積%の共供給がFCCユニットの性能にごくわずかな変化をもたらすだけであることを示しており、最大20%の熱分解油の共処理が容易に実行可能であることを示している。試料A又は試料Cの20体積%のブレンドにより、コークスとドライガスの収量がごくわずかに減少し、ガソリンの収量がわずかに増加し、LCOとHCOがわずかに減少した。これらは、ほとんどの状況で良好である。熱分解油はパラフィン系であるため、試料A又は試料Cの20%ブレンドにより、オクタン価が約3~5低下した。精製所の運用上の柔軟性により、これらのオクタン価のマイナス分は、ブレンド又は供給位置の調整で補うことができる。
【0096】
FCCユニットは、熱分解油を燃料範囲の炭化水素を分解し、不純物を減らし、n-パラフィンをイソパラフィンに異性化する。これらすべての化学的性質により、熱分解油とワックスの燃料特性が向上する。熱分解油を、FCCプロセスユニットを通してゼオライト触媒とともに共供給することにより、燃料範囲内の酸素及び窒素不純物は、窒素(N)が約300~1400ppmから約30ppmに、酸素(O)が約250~540ppmから約60~80ppmに、大幅に減少した。これらすべての共供給生成物の炭化水素組成は、典型的なFCCガソリンの範囲内に十分収まっている。
【0097】
100%熱分解油のFCC操作では、オクタン価の大幅なマイナス分(マイナス分は約13~14)を示した。これは、純粋な100%熱分解油の処理よりも、熱分解油の共処理が好ましいことを示している。
【0098】
[例9] FCCにおける熱分解ワックスの共処理
【0099】
廃プラスチックの熱分解ワックスのFCCへの共処理(coprocessing)の影響を研究するために、試料EとVGOを用いて、一連の実験室試験を実施した。例8と同様に、VGOを用いた熱分解ワックスの20%ブレンドと、純粋な熱分解ワックスのFCC性能を、純粋なVGO供給原料のFCC性能と比較した。結果を以下の表8に要約する。
【表8】
【0100】
表8の結果は、熱分解ワックスの最大20体積%の共供給がFCCユニットの性能にごくわずかな変化をもたらすだけであることを示しており、最大20%の熱分解ワックスの共処理が容易に実行可能であることを示している。試料Eの20体積%のブレンドにより、コークスと乾燥ガスの収量はほとんど変化せず、LPGオレフィンの収量が著しく増加し、ガソリンの収量がごくわずかに増加し、LCOとHCOがわずかに減少した。これらは、ほとんどの状況で良好である。熱分解油ワックスはパラフィン系であるため、試料Eの20%ブレンドにより、オクタン価がわずかに1.5低下した。精製所のブレンドの柔軟性により、このオクタン価のマイナス分は、わずかなブレンドの調整で簡単に補うことができる。
【0101】
100%熱分解ワックスのFCC操作では、変換率が大幅に増加し、オクタン価のマイナス分(マイナス分は6)を示した。これは、100%熱分解ワックスの処理よりも、熱分解ワックスの共処理が好ましいことを示している。
【0102】
[例10] FCCユニットからのLPGオレフィン(廃プラスチック熱分解生成物と共処理したもの)の精製アルキレーションユニットへの供給
【0103】
例8及び例9に示すように、FCCユニットへの熱分解油及び/又はワックスの共供給により、リサイクル成分を含むかなりの量のC-Cオレフィンが生成される。図4に示すように、リサイクルされたオレフィンを含む、C流のみ又はC-C流は、FCCライトエンド回収ユニットから分離され、アルキレーションユニットに供給される。別の実施形態では、それらをガソリンプールにブレンドすることができる。アルキレーション反応器でのLPGオレフィンとイソブタンの反応により、リサイクル成分を含むプロパン、ブタン、及びアルキレートガソリンが生成される。アルキレートガソリン及びブタンは、貴重なガソリンのブレンド成分である。アルキレーションユニットからの清浄なブタン流及びナフサ流は、スチームクラッカーのための貴重な原料である。
【0104】
[例11] エチレン製造のためのスチームクラッカーへのリサイクルされたCLPG流の供給と、それに続くポリエチレン樹脂及びポリエチレンの消費者向け製品の製造
【0105】
すべてのLPGオレフィン流をアルキレーションユニットに送る代わりに、図2に示すように、熱分解生成物をFCCユニットに共供給することを介して生成された、プロパン及びプロピレンを含むCLPG流を分離し、スチームクラッカーに供給して、リサイクル成分を含むエチレンを生成することができる。あるいは、アルキレーションプラントからのn-ブタン流及び/又はナフサ流のみをスチームクラッカーに供給して、エチレンを生成することができる。次いで、エチレンは、重合ユニットへと処理され、リサイクルポリエチレン/ポリプロピレン由来の材料を含むポリエチレン樹脂が生成される。新しく生成されたポリエチレンは、完全に未使用の石油資源から作られた未使用のポリエチレンと見分けがつかないほどの高品質を有している。このリサイクルされた材料を含むポリエチレン樹脂を、さらに処理して、消費者向け製品のニーズに合うさまざまなポリエチレン製品を製造する。これらのポリエチレンの消費者向け製品は、化学的にリサイクルされた循環型ポリマーを含んでいるが、それらの製品の品質は、完全に未使用のポリエチレンポリマーから作られたものと見分けがつかない。これらの化学的にリサイクルされたポリマー製品は、未使用のポリマーから作られたポリマー製品よりも品質が劣る機械的にリサイクルされたポリマー製品とは異なる。
【0106】
前述の例は、熱分解を介したケミカルリサイクルと、それに続く効率的な統合を介した精製所での熱分解生成物の共供給によって、大量のポリエチレン及びポリプロピレン由来の廃プラスチックをリサイクルする新しい効果的な方法を明確に示している。
この統合により、高品質の燃料及び循環型ポリマーの製造が可能になる。
【0107】
本開示で使用される場合、「含む(comprises)」又は「含む(comprising)」という単語は、オープンエンドの移行語として意図され、指示された要素を包含することを意味するが、必ずしも他の指示されない要素を除外するものではない。「本質的に・・・からなる(consists essentially of)」又は「本質的に・・・からなる(consisting essentially of)」という句は、構成にとって本質的に重要な他の要素を除外することを意味することが意図されている。「からなる(consisting of)」又は「からなる(consists of)」という句は、微量の不純物のみを除いて、記載されている要素以外のすべてを除外することを意味する移行句として意図されている。
【0108】
本明細書で参照されるすべての特許及び刊行物は、本明細書と矛盾しない範囲で参照により本明細書に組み込まれる。上記の実施形態の特定の上記の構造、機能、及び操作は、本発明を実施するために必要ではなく、単に例示的な実施形態又は複数の実施形態を完全にするために説明に含まれることが理解されよう。さらに、上記の参照された特許及び刊行物に記載されている特定の構造、機能、及び操作は、本発明と組み合わせて実施することができるが、それらはその実施に必須ではないことが理解されよう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲から実際に逸脱することなく、具体的に説明されるように実施され得ることが理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】