(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】ガラス物品のメタライズ方法
(51)【国際特許分類】
C03C 17/40 20060101AFI20230428BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20230428BHJP
B32B 17/06 20060101ALI20230428BHJP
B32B 15/04 20060101ALI20230428BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20230428BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20230428BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20230428BHJP
H05K 1/09 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
C03C17/40
C23C26/00 B
B32B17/06
B32B15/04 B
H01B13/00 503A
H01B5/14 B
H05K1/03 610B
H05K1/09 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540892
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-09-01
(86)【国際出願番号】 US2020064409
(87)【国際公開番号】W WO2021141720
(87)【国際公開日】2021-07-15
(32)【優先日】2020-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,フィリップ サイモン
(72)【発明者】
【氏名】カヌンゴ,マンダキーニ
(72)【発明者】
【氏名】マズンダー,プランティック
【テーマコード(参考)】
4E351
4F100
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4K044
【Fターム(参考)】
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4K044CA53
(57)【要約】
ガラス物品の製造方法は、二酸化ケイ素と酸化アルミニウムとを含むガラス基板上に第1の金属の第1の層を形成するステップと、第1の金属の第1の層を設けたガラス基板に第1の熱処理を行うステップと、第1の金属の第1の層上に第2の金属の第2の層を形成するステップと、第2の金属の第2の層に第2の熱処理を行うステップと、を含む。第1の熱処理および第2の熱処理によって、第1の金属と、第2の金属と、ガラス基板のアルミニウム、酸化アルミニウム、ケイ素、および二酸化ケイ素のうち少なくとも1つとの混和を誘発して、第1の金属と、第2の金属と、酸化アルミニウムと、二酸化ケイ素とを含む金属領域を形成する。第1の金属は銀とすることができる。第2の金属は銅とすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化ケイ素と酸化アルミニウムとを含むガラス基板上に第1の金属の第1の層を形成するステップと、
前記第1の金属の前記第1の層を設けた前記ガラス基板に第1の熱処理を行うステップと、
前記第1の金属の前記第1の層上に第2の金属の第2の層を形成するステップと、
前記第2の金属の前記第2の層に第2の熱処理を行うステップと、を含むガラス物品の製造方法であって、
前記第1の熱処理および前記第2の熱処理によって、前記第1の金属と、前記第2の金属と、前記ガラス基板のアルミニウム、酸化アルミニウム、ケイ素、および二酸化ケイ素のうち少なくとも1つとの混和を誘発して、前記第1の金属と、前記第2の金属と、酸化アルミニウムと、二酸化ケイ素とを含む金属領域を形成する、方法。
【請求項2】
前記ガラス基板が、第1の面と、第2の面と、少なくとも1つのビアとを有しており、前記第1の面および前記第2の面は、前記ガラス基板の概ね反対方向に面している主面であり、前記少なくとも1つのビアは、前記第1の面から前記第2の面まで延在する側壁面によって画定されて、前記ガラス基板を貫通しており、
前記第1の金属の前記第1の層が、前記側壁面上に形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガラス基板が、アルカリ土類アルミノホウケイ酸基板、アルカリアルミノケイ酸ガラス基板、または、アルカリアルミノホウケイ酸ガラス基板である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の金属が、銀、パラジウム、白金、ルテニウム、ニッケル、コバルト、および金のうちの1つ以上を含み、
前記第2の金属が銅を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の熱処理が、前記第1の金属の前記第1の層を設けた前記ガラス基板を325℃以上の温度に45分以上の時間にわたってさらすステップを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、
前記第1の金属の前記第1の層を形成した後かつ前記第1の金属の前記第1の層上に前記第2の金属の前記第2の層を形成する前に、前記第1の層が、(a)所定の導電率を下回る導電率、または(b)所定の抵抗率を上回る抵抗率、のいずれかを有していることを判定するステップと、
前記第1の金属の前記第1の層上に中間金属の中間層を無電解めっきで形成するステップと、をさらに含み、
前記第1の金属の前記第1の層上に第2の金属の第2の層を形成するステップが、前記中間金属の前記中間層上に前記第2の金属の前記第2の層を形成するステップを含み、
前記第1の熱処理および前記第2の熱処理によって、前記第1の金属と、前記中間金属と、前記第2の金属と、前記ガラス基板のアルミニウム、酸化アルミニウム、ケイ素、および二酸化ケイ素のうち少なくとも1つとの混和を誘発して、前記第1の金属と、前記第2の金属と、酸化アルミニウムと、二酸化ケイ素とを含む金属領域を形成する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
(重量百分率での)主成分として二酸化ケイ素と酸化アルミニウムとを含むガラス基板と、
第1の金属と、第2の金属と、二酸化ケイ素と、酸化アルミニウムとを含む金属領域と、を備えるガラス物品であって、
前記金属領域は、
前記第2の金属を(重量百分率での)主成分として含む部分領域αと、
前記第1の金属を(重量百分率での)主成分として含み、前記第2の金属を二酸化ケイ素よりも多く含み、前記第2の金属を酸化アルミニウムよりも多く含む部分領域βと、
前記第1の金属を(重量百分率での)主成分として含み、二酸化ケイ素を前記第2の金属よりも多く含み、酸化アルミニウムを前記第2の金属よりも多く含む部分領域γと、
を有しており、
前記部分領域α、前記部分領域β、および前記部分領域γのうち、前記部分領域γが前記ガラス基板に最も近接した領域であり、前記部分領域αが前記ガラス基板から最も離間した領域である、ガラス物品。
【請求項8】
前記ガラス基板と前記部分領域γとの間に、(重量百分率での)主成分として二酸化ケイ素を含み、酸化アルミニウムよりも前記第1の金属を多く含む過渡領域をさらに有している、請求項7に記載のガラス物品。
【請求項9】
前記ガラス基板から前記部分領域αにわたって、酸化アルミニウムが切れ目なく存在している、請求項7または8に記載のガラス物品。
【請求項10】
前記ガラス物品は、第1の面と、第2の面と、前記第1の面と前記第2の面の間の厚さと、前記第1の面で開口するとともに前記厚さの少なくとも一部を貫通して前記第2の面に向かって延在する少なくとも1つのビアと、を含むインターポーザであり、
前記ビアの各々は、該ビアの中心軸を中心に配置される前記金属領域で完全にメタライズされている、請求項7~9のいずれか1項に記載のガラス物品。
【請求項11】
前記第1の金属が本質的に銀からなり、
前記第2の金属が銅を含む、請求項7~10のいずれか1項に記載のガラス物品。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、2020年1月6日を出願日とする米国仮特許出願62/957562号の米国特許法第119条(e)に基づく優先権の利益を主張するものであり、そのすべての内容は参照することによって本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0002】
半導体の実装技術は、過去数年間にわたって大きな進化を遂げてきた。初期の頃は、より複雑な半導体回路を実装する(そしてこれにより、所定のパッケージ内でより高い機能と性能を実現する)ための取り組みは、パッケージ内で半導体チップを2次元に大きくする方向で進められてきた。しかし、実際問題として、横方向への2次元拡張を無限に行うことはできない。最終的には、電源・信号配線の複雑性、電力損失の問題、性能の問題、製造歩留まりの問題などの点で、設計に支障をきたしてしまうためである。
【0003】
これを受けて、半導体チップを垂直方向に拡張する取り組みが行われている。そのような取り組みとして、いわゆる2.5次元(2.5D)集積や3次元(3D)集積と呼ばれるものがある。これらの実装技術では、単一のパッケージ内で2つ以上の半導体チップを相互接続するために、インターポーザが用いられる。本明細書において、「インターポーザ(interposer)」という用語は、2つ以上の電子デバイス間の電気的接続を拡張または補完する任意の構造を広く指す。インターポーザの主な機能は、2つ以上の半導体チップの端子ハイピッチ化を可能とし、かつ、半導体チップ自体を貫通するビアの必要性を回避しながら、半導体チップの相互接続を実現することにある。この技術においては、半導体チップを通常の配置から反転させて、チップ基板を上、チップ面を下にした向きで配置する工程が含まれる。チップにはマイクロバンプ端子が(ハイピッチで)設けられ、インターポーザの上面にある対応する端子に接続される。インターポーザの反対側の面である下面は、適切な端子(通常は、C4(Controlled Collapse Chip Connection)ジョイント)を介して、パッケージ基板(通常は、有機基板)に接続される。インターポーザには貫通ビアが設けられており、インターポーザの上面にある半導体チップの端子をインターポーザの下面にあるパッケージ基板の端子に電気的に接続することができる。
【0004】
従来、インターポーザのベース基板は、シリコンが一般的であった。このようなインターポーザでは、メタライズ加工したビアを、基板を貫通するように設けて、インターポーザの互いに反対側の面の間を電気信号が行き来できるようにするためのインターポーザを貫通する経路としている。しかし、シリコン製のインターポーザは、半導体チップの垂直集積を実現するための将来性と実用性を兼ね備えた技術ではあるものの、問題もあった。特に、シリコンインターポーザと有機パッケージ基板との熱膨張係数(CTE)が一致しないなど、集積スタック内部でのCTEの不一致の点で問題を抱えていた。このような望ましくないCTEの不一致が存在している場合、半導体チップとシリコンインターポーザの間の接続不良や、シリコンインターポーザとパッケージ基板の間の接続不良が生じる恐れがある。また、シリコンインターポーザは比較的高価である上、シリコンの半導体特性上、誘電損失が大きいという問題もあった。
【0005】
また、有機インターポーザ(例えば、FR4(Flame Retardant 4))の導入も始まっている。しかし、有機インターポーザは、寸法安定性の面で問題がある。
【0006】
一方、ガラスをインターポーザのベース基板として使用すれば、シリコンや有機インターポーザが抱える問題の多くを解決できると考えられる。ガラスは、優れた寸法安定性や、調整可能(可変)な熱膨張係数(「CTE」)、高周波での低電気損失、高い熱安定性を備え、かつ、大きな板厚やパネルサイズで成形することができるため、電気信号の伝送の点で非常に有利な基板材料である。
【0007】
しかし、これにも、ガラス基板のビアをメタライズして導電経路を設けることに難航してきたという問題がある。一部の導電性金属(特に銅)が、ガラスの主平面やビアの側壁面などとの付着性が悪いためである。理論に束縛されるものではないが、導電性金属とガラスとの接合が弱いのは、金属同士を結び付けている結合の種類とガラスを形成している結合の種類が異なるためではないかと推測される。ガラスは、簡単に言うと、(二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ホウ素などの)共有結合でできた酸化物分子のネットワークである。一方、金属は、静止したカチオン性の原子核の格子の中を自由に動き回る電子の「海」からなる。このように、ガラスの結合メカニズムは金属の結合メカニズムと根本的に異なっており、それが金属とガラスの付着性を制限している。なお、この問題は、金属を接合するガラス表面の粗面化によって軽減することができる。粗面化により、金属とガラスとの機械的な係合状態を作ることができるためである。しかし、ガラスの粗面化によってさらに別の問題が生じる恐れがあるため、この手法も理想的なものではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、インターポーザとしての使用が想定されるガラス基板のビアをメタライズするという課題、および、ガラス基板に金属を付着させるという一般的な課題を解決するための新しい手法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、上記の課題を解決するものである。具体的には、(a)二酸化ケイ素に加えて酸化アルミニウムを含む組成のガラス基板を選択するステップと、(b)ガラス基板の所望の表面上(ビアの側壁面上など)に、銀などの第1の金属の第1の層を成膜するステップと、(c)第1の層を設けたガラス基板を熱処理するステップと、(d)銅などの第2の金属の第2の層を第1の層の上に成膜するステップ(第2の金属でビアの残りの空隙を充填してビアを完全にメタライズするステップなど)と、(e)第2の層を設けたガラス基板を再び熱処理するステップと、を行うことによって解決する。これらの熱処理ステップによって、第1の金属と、第2の金属と、ガラス基板由来のアルミニウム(または酸化アルミニウム)およびケイ素(または二酸化ケイ素)とを混和させて、第1の金属と、第2の金属と、酸化アルミニウムと、二酸化ケイ素とを含む金属領域を有するガラス物品(例えば、インターポーザ)を形成する。金属領域は、主成分としての第1の金属と第2の金属のほか、酸化アルミニウムと二酸化ケイ素も含む。このように第1の金属、第2の金属、酸化アルミニウム、および二酸化ケイ素が金属領域において実質的に混和していることにより、第1の金属および第2の金属をガラス基板に強力に付着させる。理論に束縛されるものではないが、酸化アルミニウムと二酸化ケイ素が金属領域全体に混和されていることにより、金属領域とガラス基板を含むガラス物品全体が共有結合した状態になると考えられる。
【0010】
本開示の第1の態様によれば、ガラス物品の製造方法は、二酸化ケイ素と酸化アルミニウムとを含むガラス基板上に第1の金属の第1の層を形成するステップと、第1の金属の第1の層を設けたガラス基板に第1の熱処理を行うステップと、第1の金属の第1の層上に第2の金属の第2の層を形成するステップと、第2の金属の第2の層に第2の熱処理を行うステップと、を含む。そして、第1の熱処理および第2の熱処理によって、第1の金属と、第2の金属と、ガラス基板のアルミニウム、酸化アルミニウム、ケイ素、および二酸化ケイ素のうち少なくとも1つとの混和を誘発して、第1の金属と、第2の金属と、酸化アルミニウムと、二酸化ケイ素とを含む金属領域を形成する。
【0011】
いくつかの実施形態では、ガラス基板が、第1の面と、第2の面と、少なくとも1つのビアとを有しており、第1の面および第2の面は、ガラス基板の概ね反対方向に面している主面であり、少なくとも1つのビアは、第1の面から第2の面まで延在する側壁面によって画定されて、ガラス基板を貫通している。いくつかの実施形態では、第1の金属の第1の層が、側壁面上に形成される。
【0012】
いくつかの実施形態では、ガラス基板が、アルカリ土類アルミノホウケイ酸基板、アルカリアルミノケイ酸ガラス基板、または、アルカリアルミノホウケイ酸ガラス基板である。いくつかの実施形態では、ガラス基板が、無アルカリアルミノホウケイ酸ガラス基板である。いくつかの実施形態では、ガラス基板は、表面を粗面化する処理が施されていない。
【0013】
いくつかの実施形態では、ガラス基板が、6~15モル%のAl2O3を(酸化物基準で)含む組成物を有する。いくつかの実施形態では、ガラス基板が、64.0~71.0モル%のSiO2、9.0~12.0モル%のAl2O3、7.0~12.0モル%のB2O3、1.0~3.0モル%のMgO、6.0~11.5モル%のCaO、0~2.0モル%のSrO、0~0.1モル%のBaO、および、少なくとも0.01モル%のSnO2を(酸化物基準で)含む組成物を有しており、Al2O3のモル%を[Al2O3]とし、MgO、CaO、SrOおよびBaOのモル%の合計をΣ[RO]とすると、1.00≦Σ[RO]/[Al2O3]≦1.25である。
【0014】
いくつかの実施形態では、第1の金属が本質的に銀からなる。いくつかの実施形態では、第1の金属が、銀、パラジウム、白金、ルテニウム、ニッケル、コバルト、および金のうちの1つ以上を含んでいる。
【0015】
いくつかの実施形態では、ガラス基板上に第1の金属の第1の層を形成するステップが、ガラス基板を第1の金属のナノ粒子懸濁液でスピンコーティングするステップを含む。いくつかの実施形態では、ガラス基板上に第1の金属の第1の層を形成するステップが、無電解めっきするステップを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、第1の熱処理が、第1の金属の第1の層を設けたガラス基板を325℃以上の温度にさらすステップを含む。いくつかの実施形態では、第1の熱処理が、第1の金属の第1の層を設けたガラス基板を325℃~425℃の温度にさらすステップを含む。いくつかの実施形態では、第1の熱処理が、第1の金属の第1の層を設けたガラス基板を325℃以上の温度に45分以上の時間にわたってさらすステップを含む。いくつかの実施形態では、第1の熱処理が、第1の金属の第1の層を設けたガラス基板を325℃以上の温度に45分~75分の時間にわたってさらすステップを含む。いくつかの実施形態では、第1の熱処理が、第1の金属の第1の層を設けたガラス基板を325℃~425℃の温度に45分~75分の時間にわたってさらすステップを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、本方法が、第1の金属の第1の層を形成した後かつ第1の層上に第2の金属の第2の層を形成する前に、第1の層が、(a)所定の導電率を下回る導電率、または(b)所定の抵抗率を上回る抵抗率、のいずれかを有していることを判定するステップと、第1の層上に中間金属の中間層を無電解めっきで形成するステップと、をさらに含む。このような実施形態では、第1の金属の第1の層上に第2の金属の第2の層を形成するステップが、中間金属の中間層上に第2の金属の第2の層を形成するステップを含む。このような実施形態では、第1の熱処理および第2の熱処理によって、第1の金属と、中間金属と、第2の金属と、ガラス基板のアルミニウム、酸化アルミニウム、ケイ素、および二酸化ケイ素のうち少なくとも1つとの混和を誘発して、第1の金属と、第2の金属と、酸化アルミニウムと、二酸化ケイ素とを含む金属領域を形成する。
【0018】
いくつかの実施形態では、第1の金属の第1の層上に第2の金属の第2の層を形成するステップは、第1の層上に第2の金属の第2の層を電気めっきで形成するステップを含む。いくつかの実施形態では、第2の熱処理は、第2の金属の第2の層を設けたガラス基板を少なくとも300℃の温度に少なくとも20分の時間にわたってさらすステップを含む。いくつかの実施形態では、第2の熱処理は、第2の金属の第2の層を設けたガラス基板を300℃~400℃の温度に少なくとも20分の時間にわたってさらすステップを含む。
【0019】
本開示の第2の態様によれば、ガラスインターポーザの製造方法は、二酸化ケイ素と酸化アルミニウムとを含むガラス基板の1つ以上のビアの側壁面上に第1の金属の第1の層を形成するステップと、第1の金属の第1の層を設けたガラス基板に第1の熱処理を行うステップと、第1の金属の第1の層上に第2の金属の第2の層を電気めっきで形成して、1つ以上のビアを完全にメタライズするステップと、第2の金属の第2の層に第2の熱処理を行うステップと、を含む。そして、第1の熱処理および第2の熱処理によって、第1の金属と、第2の金属と、ガラス基板のアルミニウム、酸化アルミニウム、ケイ素、および二酸化ケイ素のうち少なくとも1つとの混和を誘発して、第1の金属と、第2の金属と、酸化アルミニウムと、二酸化ケイ素とを含む金属領域を形成する。いくつかの実施形態では、第1の金属が本質的に銀からなり、第2の金属が銅を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、第1の熱処理が、第1の金属の第1の層を設けたガラス基板を325℃以上の温度に45分以上の時間にわたってさらすステップを含む。いくつかの実施形態では、第1の熱処理が、第1の金属の第1の層を設けたガラス基板を325℃以上の温度に45分~75分の時間にわたってさらすステップを含む。いくつかの実施形態では、第2の熱処理は、第2の金属の第2の層を設けたガラス基板を少なくとも300℃の温度に少なくとも20分の時間にわたってさらすステップを含む。いくつかの実施形態では、第2の熱処理は、第2の金属の第2の層を設けたガラス基板を300℃~400℃の温度の温度に少なくとも20分の時間にわたってさらすステップを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、ガラス基板が、64.0~71.0モル%のSiO2、9.0~12.0モル%のAl2O3、7.0~12.0モル%のB2O3、1.0~3.0モル%のMgO、6.0~11.5モル%のCaO、0~2.0モル%のSrO、0~0.1モル%のBaO、および、少なくとも0.01モル%のSnO2を(酸化物基準で)含む組成物を有しており、Al2O3のモル%を[Al2O3]とし、MgO、CaO、SrOおよびBaOのモル%の合計をΣ[RO]とすると、1.00≦Σ[RO]/[Al2O3]≦1.25であり、ガラス基板が、20×10-7~50×10-7/℃の熱膨張係数(CTE)を有している。
【0022】
本開示の第2の態様によれば、ガラス物品は、(a)(重量百分率での)主成分として二酸化ケイ素と酸化アルミニウムとを含むガラス基板と、(b)第1の金属と、第2の金属と、二酸化ケイ素と、酸化アルミニウムとを含む金属領域と、を備え、金属領域は、(i)第2の金属を(重量百分率での)主成分として含む部分領域αと、(ii)第1の金属を(重量百分率での)主成分として含み、第2の金属を二酸化ケイ素よりも多く含み、第2の金属を酸化アルミニウムよりも多く含む部分領域βと、(iii)第1の金属を重量百分率での主成分として含み、二酸化ケイ素を第2の金属よりも多く含み、酸化アルミニウムを第2の金属よりも多く含む部分領域γと、を有している。部分領域α、部分領域β、および部分領域γのうち、部分領域γがガラス基板に最も近接した領域であり、部分領域αがガラス基板から最も離間した領域である。いくつかの実施形態では、第1の金属が本質的に銀からなり、第2の金属が銅を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、ガラス基板と部分領域γとの間に、重量百分率での主成分として二酸化ケイ素を含み、酸化アルミニウムよりも第1の金属を多く含む過渡領域をさらに有している。いくつかの実施形態では、ガラス基板から部分領域αにわたって、酸化アルミニウムが切れ目なく存在している。
【0024】
いくつかの実施形態では、ガラス物品は、第1の面と、第2の面と、第1の面と第2の面の間の厚さと、第1の面で開口するとともに厚さの少なくとも一部を貫通して第2の面に向かって延在する少なくとも1つのビアと、を含むインターポーザであり、ビアの各々は、その中心軸を中心に配置される金属領域で完全にメタライズされている。
【0025】
以下の詳細な説明において、さらなる特徴および利点を記載する。下記のさらなる特徴および利点は、当業者であれば、ある程度はその説明からただちに理解するであろうし、あるいは、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、および添付の図面を含む本明細書に記載の実施形態を実施することによって理解するであろう。
【0026】
上述の概略的な説明および以下の詳細な説明はいずれも、例示的なものに過ぎず、特許請求の範囲に記載の性質および特徴を理解するための概観または枠組みを提供することを意図するものであることを理解されたい。また、添付の図面は、さらなる理解のために添付するものであり、本明細書に組み込まれ、その一部をなすものとする。図面は、1つ以上の実施形態を例示的に示すものであり、以下の詳細な説明と併せて、種々の実施形態の原理および作用を説明するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】インターポーザに加工される前のガラス基板の透視図であり、厚さによって第2の面から隔てられた第1の面と、主面である第1の面に開口するとともにガラス基板の厚さ方向に延在する複数のビアとを示す図
【
図2】
図1のII-II線断面立面図であり、一部のビアがガラス基板の厚さを完全に貫通して延在し、第1の面と第2の面の両面に開放している様子と、各ビアを画定する側壁面とを示す図
【
図3】
図1のガラス基板などのガラス基板からガラス物品を製造する方法を示すフローチャート
【
図4】
図3に示す方法における、第1の金属の第1の層をガラス基板上(特に、ビアの側壁面上)に形成するステップを行った後の状態を示す、
図2のIV領域の立面図
【
図5】
図3に示す方法における、第1の金属の第1の層上に中間金属の中間層を無電解めっきで形成するステップを行った後の状態を示す、
図4と同様の図
【
図6】
図3に示す方法における、第1の金属の第1の層上に第2の金属の第2の層を形成するステップを行った後の状態を示す、
図5と同様の図
【
図7】
図3に示す方法における、中間金属の中間層上に第2の金属の第2の層を形成するステップを行った後の状態を示す、
図5と同様の図
【
図8】
図3に示す方法における、第2の層に熱処理を行うステップを行った後の、第1の金属と、第2の金属と、中間層を追加した場合には中間金属と、酸化アルミニウムと、二酸化ケイ素とを含む金属領域を有するガラス物品が得られた状態を示す、
図6および
図7と同様の図
【
図9】
図3に示す方法で製造したガラス物品内の個々の化学元素の相対的な重量百分率をガラス物品内の位置の関数として示すグラフであり、(i)二酸化ケイ素と酸化アルミニウムを主成分として含むガラス基板と、(ii)第2の金属を(重量百分率での)主成分として含む、金属領域の部分領域αと、(iii)第1の金属を(重量百分率での)主成分として含み、第2の金属を二酸化ケイ素よりも多く含み、第2の金属を酸化アルミニウムよりも多く含む、金属領域の部分領域βと、(iv)第1の金属を重量百分率での主成分として含み、二酸化ケイ素を第2の金属よりも多く含み、酸化アルミニウムを第2の金属よりも多く含む、金属領域の部分領域γと、を説明する図
【
図10】
図3に示す方法に従って製造したガラス物品の一例を示す写真であり、テープ引き剥がし試験でガラス基板からの金属の剥離が全く認められず、金属領域がガラス基板に良好に接合していることを示す図
【
図11】
図3に示す方法に従って製造したガラス物品の一例を示す写真であり、テープ引き剥がし試験でガラス基板からの金属の剥離が全く認められず、金属領域がガラス基板に良好に接合していることを示す図
【
図12】
図3に示す方法に従って製造したガラス物品の一例を示す写真であり、テープ引き剥がし試験でガラス基板からの金属の剥離が全く認められず、金属領域がガラス基板に良好に接合していることを示す図
【
図13】第1の金属の第1の層に熱処理を行うステップを省略した点を除いて
図3に示す方法に従って製造したガラス物品の比較例を示す写真であり、テープ引き剥がし試験でガラス基板から大きな金属の剥離が認められ、成膜された第1の金属の第1の層および第2の金属の第2の層のガラス基板への接合が不十分であったことを示す図
【
図14】酸化アルミニウムを含まないガラス基板を使用した点を除いて
図3に示す方法に従って製造したガラス物品の比較例を示す写真であり、テープ引き剥がし試験でガラス基板から大きな金属の剥離が認められ、成膜された第1の金属の第1の層および第2の金属の第2の層のガラス基板への接合が不十分であったことを示す図
【
図15】第1の金属の第1の層に熱処理を行うステップを省略した点を除いて
図3に示す方法に従って製造したガラス物品の比較例を示す写真であり、テープ引き剥がし試験でガラス基板から大きな金属の剥離が認められ、成膜された第1の金属の第1の層および第2の金属の第2の層のガラス基板への接合が不十分であったことを示す図
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、添付の図面に例示される本開示の好ましい実施形態について詳細に説明する。図面全体を通して、同一又は類似の箇所は、可能な限り同一の参照番号を用いて示す。
【0029】
ガラス基板
ここで
図1を参照すると、インターポーザの形態のガラス基板100が図示されている。ガラス基板100は、第1の面102と第2の面104とを有している。第1の面102および第2の面104は、ガラス基板100の主面である。第1の面102と第2の面104は、少なくとも略平行であり、概ね反対方向に面している。
【0030】
理由については後述するが、本開示のガラス基板100は、酸化アルミニウム(Al2O3)などの金属酸化物のガラスネットワーク形成物質を含む組成を有している。いくつかの実施形態では、ガラス基板100は、アルカリ土類アルミノホウケイ酸基板、アルカリアルミノケイ酸ガラス基板、アルカリアルミノホウケイ酸ガラス基板、または、アルカリ土類アルミノホウケイ酸ガラス基板である。他の実施形態では、ガラス基板100は、無アルカリアルミノホウケイ酸ガラス基板または無アルカリアルミノケイ酸ガラス基板などの無アルカリガラスである。「無アルカリ(alkali-free)」とは、ガラス基板100が、有意量のアルカリ金属を意図的には含有せず、ガラス基板100がアルカリ金属を含有することがあったとしても、それは不純物として存在する状態を指す。いくつかの実施形態では、ガラス基板100は、6~15モル%のAl2O3および60~78モル%のSiO2を(酸化物基準で)含む組成物を有する。
【0031】
例えば、いくつかの実施形態では、ガラス基板100は、64.0~71.0モル%のSiO2、9.0~12.0モル%のAl2O3、7.0~12.0モル%のB2O3、1.0~3.0モル%のMgO、6.0~11.5モル%のCaO、0~2.0モル%のSrO、0~0.1モル%のBaO、および、少なくとも0.01モル%のSnO2を(酸化物基準で)含み、Al2O3のモル%を[Al2O3]とし、MgO、CaO、SrOおよびBaOのモル%の合計をΣ[RO]とすると、1.00≦Σ[RO]/[Al2O3]≦1.25である。そのような実施形態では、ガラス基板100は、20×10-7~50×10-7/℃、例えば28×10-7/℃~34×10-7/℃、例えば約31.7×10-7/℃の熱膨張係数(CTE)を有することができる。「CTE」、「熱膨張係数」などの用語は、物体の温度変化による大きさの変化を指す。CTEは、一定圧力下での温度変化1度あたりの寸法変化の割合を示し、この場合の寸法は、例えば体積、面積または長さなどを指す。
【0032】
いくつかの実施形態では、ガラス基板100は、61~75モル%のSiO2、7~15モル%のAl2O3、0~12モル%のB2O3、9~21モル%のNa2O、0~4モル%のK2O、0~7モル%のMgO、および0~3モル%のCaOを(酸化物基準で)含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、ガラス基板100は、60~70モル%のSiO2、6~14モル%のAl2O3、0~15モル%のB2O3、0~15モル%のLi2O、0~20モル%のNa2O、0~10モル%のK2O、0~8モル%のMgO、0~10モル%のCaO、0~5モル%のZrO2、0~1モル%のSnO2、0~1モル%のCeO2、50ppm未満のAs2O3、および50ppm未満のSb2O3を(酸化物基準で)含み、12モル%≦Li2O+Na2O+K2O≦20モル%および0モル%≦MgO+CaO≦10モル%である。
【0034】
いくつかの実施形態では、ガラス基板100は、64~68モル%のSiO2、12~16モル%のNa2O、8~12モル%のAl2O3、0~3モル%のB2O3、2~5モル%のK2O、4~6モル%のMgO、および0~5モル%のCaOを(酸化物基準で)含み、66モル%≦SiO2+B2O3+CaO≦69モル%、Na2O+K2O+B2O3+MgO+CaO+SrO>10モル%、5モル%≦MgO+CaO+SrO≦8モル%、(Na2O+B2O3)-Al2O3≦2モル%、2モル%≦Na2O-Al2O3≦6モル%、および4モル%≦(Na2O+K2O)-Al2O3≦10モル%である。
【0035】
いくつかの実施形態では、ガラス基板100は、66~78モル%のSiO2、4~11モル%のAl2O3、4~11モル%のB2O3、0~2モル%のLi2O、4~12モル%のNa2O、0~2モル%のK2O、0~2モル%のZnO、0~5モル%のMgO、0~2モル%のCaO、0~5モル%のSrO、0~2モル%のBaO、および0~2モル%のSnO2を(酸化物基準で)含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、ガラス基板100は、69.49モル%のSiO2、8.45%のAl2O3、14.01%のNa2O、1.16%のK2O、0.185%のSnO2、0.507%のCaO、6.2%のMgO、0.01%のZrO2、および0.008%のFe2O3を(酸化物基準で)含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、ガラス基板100の製造は、フュージョンプロセスでガラス板を作製し、これを所望の形状に切断してガラス基板100とするガラス製造システムによって行われる。フュージョンプロセスにより、例えば、全体厚さムラ(total thickness variation:TTV)が1.0μm未満のガラス基板100などの、作製時点で均一な厚さを有するガラス基板100が形成される。したがって、ガラス基板100をインターポーザとして使用する前に、研磨などの仕上げ工程が不要となる場合がある。なお、フュージョンプロセスで得られるガラス基板100の厚さが大きすぎる場合には、エッチングや研磨などの任意の公知の手段により、ガラス基板100の厚さを薄くすることができる。さらに他の実施形態では、ガラス基板100を、フュージョンプロセスとは異なるプロセスで製造し、その後、研磨またはエッチングで所望の厚さとする。ガラス基板100の製造後、ガラス基板100にアニール処理を施して、ガラス基板100中の残留応力を低減することもできる。
【0038】
ガラス基板100は、第1の面102から第2の面104まで延びる厚さ106を有している。いくつかの実施形態では、厚さ106は25μm~約1mmの範囲内である。ただし、この範囲より薄い厚さ106や厚い厚さ106も考えられる。例えば、本明細書に記載の実施形態では、ガラス基板100の厚さ106は、約50μm、約100μm、約200μm、約300μm、約400μm、約500μm、約600μm、約700μm、約800μm、約900μm、約1mmであり、さらに、50μm~300μmの範囲内など、これらの値を用いた任意の範囲のものである。いくつかの実施形態では、厚さ106は、50μm~100μmの範囲内である。ガラス基板100は、任意の所望の形状を有することができる。いくつかの実施形態では、ガラス基板100は、円形の形状を有している。そのような実施形態では、ガラス基板100の直径を、200mm~300mmの範囲内とすることができる。他の実施形態では、ガラス基板100は、正方形または長方形の形状を有している。
【0039】
ここでさらに
図2も参照すると、ガラス基板100は、1つ以上のビア108をさらに有している。いくつかの実施形態では、ガラス基板100は、複数のビア108を有している。いくつかの実施形態では、1つ以上のビア108の一部またはすべては、第1の面102から第2の面104までガラス基板100の厚さ106を貫通して延在する。本明細書において、このようなビア108を、「貫通ビア(through via)」と呼ぶ場合がある。他の実施形態では、1つ以上のビア108の一部またはすべてが、第1の面102で開口するが、厚さ106を完全に貫通して第2の面104まで達するように延在するのではなく、厚さ106の一部のみを貫通して延在する。本明細書において、このようなビア108を、「ブラインドビア(blind via)」と呼ぶ場合がある。いくつかの実施形態では、ガラス基板100は、貫通ビアとブラインドビアの両方を複数有している。ガラス基板100の各ビア108は、側壁面110によって画定される。
【0040】
各ビア108は、直径112を有している。図では、各ビア108の直径112が同一であるように示しているが、必ずしもその必要はない。すなわち、1つのガラス基板100内でビア108の直径112が異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、直径112は、5μm~150μmの範囲内である。図示の実施形態などのいくつかの実施形態では、ビア108は、くびれ114のある砂時計型の形状を有している。くびれ114の位置のビア108の直径112は、ガラス基板100の第1の面102および第2の面104の位置のビア108の直径112よりも小さい。この砂時計型の形状は、後述する電気めっきを行うのに適した形状であり得る。他の実施形態では、ビア108は、実質的に円筒形または実質的に円錐形の形状を有している。
【0041】
各ビア108は、中心軸116を有している。あるビア108の中心軸116は、隣接するビア108の中心軸116からある距離だけ離間しており、その距離をピッチ118と呼ぶ。ピッチ118は、所望の用途に応じた任意の値であってよく、例えば、約10μm、約25μm、約50μm、約100μm、約250μm、約500μm、約1000μm、約2000μm、またはこれらの値のうちのいずれか2つの値の間の任意の値もしくは範囲(両端点を含む範囲)などである約10μm~約2000μmとすることができるが、これらに限定されない。例えば、ピッチ118は、10μm~100μm、25μm~500μm、10μm~1000μm、または250μm~2000μmの範囲内とすることができる。1つのガラス基板100上で、ピッチ118は、異なっていてもよいし、一定であってもよい。ピッチ118は、例えば、1平方ミリメートル当たりのビア108の数が1個~20個となるように設定することができる。なお、単位面積当たりのビアの数は、インターポーザの設計や用途によって異なる。いくつかの実施形態では、ビア108は、ガラス基板100全体にわたってパターン形成されている。他の実施形態では、ビア108によるパターンは形成されない。
【0042】
ビア108の形成技術としては様々なものがあり、その1つを使用して、ガラス基板100内にビア108が形成される。例えば、ビア108は、ドリルによる機械加工、エッチング、レーザアブレーション、レーザ援用プロセス、レーザ損傷形成・エッチング加工、アブレシブブラスト処理、アブレシブウォータージェット加工、高密度電子熱エネルギー加工などの任意の適切な形成技術によって形成することできる。レーザ損傷形成・エッチング加工では、まず、レーザを使用して、ガラス基板100に損傷路を形成する。これにより、この損傷路に沿ったガラス基板100の加工が可能となる。次に、ガラス基板100にエッチング液を塗布する。エッチング液によって、ガラス基板100の板厚が薄くなる。このとき、損傷路では、ガラス基板100のエッチング速度が速くなるため、損傷路が選択的にエッチングされて、ガラス基板100を貫通するビア108が開口する。
【0043】
ガラス基板100のメタライズ方法200
ここで、
図3~
図8を参照すると、本明細書に記載の新規な方法200に従って、ガラス基板100の1つ以上のビア108をメタライズする。なお、本明細書では、方法200を、インターポーザとして用いるガラス基板100に関連させて、ビア108をメタライズするための方法として説明するが、方法200は、ガラス基板100に金属を付着させることに関するものであり、それがいかなる目的であってもよいことが意図されており、第1の面102、第2の面104、および/またはガラス基板100を貫通するその他の開口やガラス基板100に設けられるその他の開口などの、ビア108の側壁面110以外の表面のメタライズに関するものでもあることを理解されたい。インターポーザとして用いるガラス基板100に適用する場合には、背景技術の欄で述べたように、ビア108をメタライズすることによって、インターポーザを貫通する導電経路が得られ、この導電経路によって電気信号が第1の面102から第2の面104に送られる。
【0044】
第1の金属の第1の層120を形成
ステップ202において、方法200は、ガラス基板100上に第1の金属の第1の層120を形成するステップを含む(特に
図4を参照)。いくつかの実施形態では、第1の金属の第1の層120で、ガラス基板100の全体または実質的に全体を覆うことができる。いくつかの実施形態では、第1の金属の第1の層120は、5nm~約10000nmの範囲内の厚さ124を有するナノ層である。
【0045】
あるいは、第1の金属の第1の層120を、第1の面102の一部、第2の面104の一部、ビア108の側壁面110の一部もしくは全体、またはそれらの組み合わせなど、ガラス基板100の一部を覆うようにパターニングすることもできる。いくつかの実施形態では、第1の金属は、銀、パラジウム、白金、ルテニウム、ニッケル、コバルト、および金のうちの1つ以上を含んでいる。いくつかの実施形態では、第1の金属は、銀であるか、または本質的に銀からなる。いくつかの実施形態では、第1の金属の第1の層120は、ビア108の側壁面110上に形成される。いくつかの実施形態では、第1の金属の第1の層120は、銀であるか、または本質的に銀からなり、方法200のステップ202は、第1の金属(例えば、銀)の第1の層120をガラス基板100のビア108の側壁面110上に形成するステップを含む。パターニングは、ガラス基板100に第1の金属の第1の層120を成膜する際に、ガラス基板100の一部の領域を保護テープ(blocking tape)やフォトレジストなどで選択的にマスキングすることによって行うことができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、ガラス基板100上に第1の金属の第1の層120を形成するステップが、ガラス基板100を第1の金属のナノ粒子懸濁液に接触させるステップを含む。ナノ粒子懸濁液の調製は、ナノ粒子を液体キャリアに分散させることによって行われる。液体キャリアは水又は液体溶媒とすることができる。液体溶媒キャリアは、単一溶媒、混合溶媒、または非溶媒成分を含む溶媒(単一溶媒または混合溶媒)とすることができる。使用可能な例示的な溶媒としては、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール、エーテル、ケトンなどの物質、またはそれらの混合物、例えば、2-プロパノール(イソプロパノール、IPA、またはイソプロピルアルコールとも呼ばれる)、テトラヒドロフラン(THF)、エタノール、クロロホルム、アセトン、ブタノール、オクタノール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンおよびこれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
「ナノ粒子(nanoparticle)」という用語は、最短軸に沿った平均粒径(または断面寸法)が約1nm~約10000nmの粒子(成分)を指す。当然ながら、ナノ粒子の大きさ(粒度)は、粒度分布として表され得る。さらに、いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、異なる粒度または粒子分布、つまり1つ以上の粒度または粒子分布を有していてもよい。したがって、ある特定の粒度が、個々の粒子の粒度分布に関する平均粒径を示す場合がある。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の平均粒径は、約5nm~約10000nm、約5nm~約7500nm、約5nm~約5000nm、約5nm~約2500nm、約5nm~約2000nm、約5nm~約1500nm、約5nm~約1250nm、約5nm~約1000nm、約5nm~約750nm、約5nm~約500nm、約5nm~約250nm、約5nm~約200nm、約5nm~約150nm、約5nm~約125nm、約5nm~約100nm、約5nm~約75nm、約5nm~約50nm、約5nm~約25nm、および約5nm~約20nmであり、例えば、約5nm、10nm、20nm、25nm、50nm、75nm、100nm、125nm、150nm、175nm、200nm、250nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、750nm、800nm、900nm、1000nm、1250nm、1500nm、2000nm、2500nm、5000nm、7500nm、または10000nmである。ナノ粒子の粒度は、動的光散乱法や透過型電子顕微鏡(transmission electron microscope:TEM)など、様々な方法で測定することができる。例えば、当技術分野では理解されているように、粒度分布は、一般に、数百の異なるナノ粒子からなる試料をTEM像解析することによって求められる。
【0048】
ナノ粒子は、任意の外形および表面形状を有することができる。ナノ粒子の構造および幾何学的形状は多種多様であり、本開示は、特定の幾何学的形状および/または構造に限定されることを意図するものではない。本明細書に記載のいくつかの実施形態は、複数のナノ粒子を含んでおり、個々のナノ粒子またはナノ粒子群は、他のナノ粒子と同一の構造および/または幾何学的形状を有していてもよく、もしくは他のナノ粒子とは異なる構造および/または幾何学的形状を有していてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、球状、長円形状、多面体状、フレーク状であってよく、または結晶型の構造をとってもよい。いくつかの実施形態では、ナノ粒子表面は、平滑面、粗面、秩序表面、非秩序表面、またはパターン化表面とすることができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、第1の金属のナノ粒子は、銀ナノ粒子である。いくつかの実施形態では、銀ナノ粒子は、10nm~13nmの平均粒径を有し、20重量%の濃度でシクロヘキサン中に分散させたもの(Cerion,LLC(米国ニューヨーク州ロチェスター)から市販)である。なお、銅ナノ粒子でも試みたが、ガラス基板100との接合が不十分となることが判明した。
【0050】
ガラス基板100をナノ粒子懸濁液と接触させる前に、任意選択的に、ナノ粒子懸濁液の超音波処理を行う。これにより、液体キャリア全体にわたってナノ粒子の分散が促進される。例えば、ナノ粒子懸濁液の超音波処理は、約30分などの15分~45分の範囲内の時間にわたって行うことができる。
【0051】
ガラス基板100を第1の金属のナノ粒子懸濁液に接触させることにより、第1の金属の第1の層120を、第1の金属のナノ粒子の単分子層未満膜、単分子層、または多分子層で構成することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、ガラス基板100を第1の金属のナノ粒子懸濁液に接触させるステップが、ガラス基板100をナノ粒子懸濁液でスピンコーティングするステップを含んでいる。スピンコーティングは、ガラス基板100上に所望の第1の金属の第1の層120を形成するのに適切であることが確認された任意の速度と任意の時間で行うことができる。例えば、ガラス基板100を1000~5000rpm(例えば、1000、2000、3000、4000、または5000rpm)で約30秒、または30秒未満、または30秒超の時間にわたり回転させながら、第1の金属のナノ粒子懸濁液をガラス基板100上に沈着させることができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、ガラス基板100を第1の金属のナノ粒子懸濁液に接触させるステップが、ガラス基板100を第1の金属のナノ粒子懸濁液でディップコーティングすること、またはガラス基板100を第1の金属のナノ粒子懸濁液でスプレーコーティングすることを含んでいる。ディップコーティングは、ガラス基板100上に第1の金属の第1の層120を形成するのに適切な引上げ速度(プルレート(pull rate)と呼ばれることもある)(例えば、毎分30~35mmの速度)で行うことができる。
【0054】
他の実施形態では、ガラス基板100上に第1の金属の第1の層120を形成するステップが、ガラス基板100上に第1の金属の第1の層120を無電解めっきするステップを含む。無電解めっきでは、化学還元剤によって、アニオンと第1の金属のカチオンとのイオン性化合物を元素形態の第1の金属に還元する。一般的な無電解めっき処理では、(a)第1の金属のカチオンを含むイオン性化合物のめっき液と、(b)還元剤と、(c)pH調整剤と、(d)イオン性化合物を可溶化する錯化剤と、(e)めっき液の安定性とめっき速度とを制御するための特殊添加剤、などを使用する。そして、これらの溶液を、触媒活性表面を有するガラス基板100上に堆積する。この触媒活性表面によって、イオン性化合物の還元が触媒され、これにより、ガラス基板100の接触面(すなわち、第1の面102、第2の面104、および/またはビア108の側壁面110)上に元素形態の第1の金属が析出する。また、ガラス基板100の(1つ以上の)表面に析出した第1の金属は自己触媒性であり、したがって、析出した第1の金属が、第1の金属の反応と析出をさらに触媒し、それは所望の厚さ124の第1の金属の第1の層120が得られるまで続けられる。
【0055】
上述の通り、無電解めっき処理では、第1の金属のカチオンのイオン性化合物と溶媒とを含むめっき液を使用する。好適なイオン性化合物としては、例えば、硝酸銀、硫酸銀、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、塩化白金、シアン化金などが挙げられる。通常、イオン性化合物は、めっき液重量を基準にして約0.001~約10重量%の範囲の濃度でめっき液中に存在する。溶媒は、イオン性化合物に適したものであれば、水系溶媒であっても、有機液体溶媒であってもよい。そのような有機液体溶媒としては、例えば、アルコール類、エーテル類、ケトン類、アルカン類などを挙げることができる。
【0056】
上述の通り、無電解めっき処理では、還元剤、pH調整剤および錯化剤を使用する。還元剤は、ガラス基板100上に存在する第1の金属のカチオンを還元するものである。還元剤の具体例としては、NaBH4、KBH4、NaH2PO2、ヒドラジン、ホルマリン、多糖類(例えば、グルコース)などが挙げられる。pH調整剤は、めっき液のpHを調整するものであり、酸性化合物であっても塩基性化合物であってもよい。錯化剤は、アルカリ性溶液中での水酸化物の沈殿を防ぎ、遊離金属カチオンの濃度を制御することにより、イオン性化合物の分解を防ぎ、めっき速度を調整する働きがある。錯化剤の具体例としては、アンモニア溶液、酢酸、グアニル酸、酒石酸、キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA))、有機アミン化合物などが挙げられる。
【0057】
いくつかの実施形態では、めっき液の温度は30℃~50℃であり、例えば、約40℃である。いくつかの実施形態では、ガラス基板100の無電解めっき処理は、20秒~5分の時間、例えば、約30秒間行われる。いくつかの実施形態では、無電解めっきなどによって成膜される第1の金属の第1の層120の厚さ124は、10nm~100nm、例えば、約50nmである。
【0058】
さらに他の実施形態では、ガラス基板100上に第1の金属の第1の層120を形成するステップが、ラングミュア-ブロジェット(Langmuir-Blodgett)法による成膜、エレクトロスプレーイオン化、ナノ粒子直接沈着、蒸着、化学蒸着、真空濾過、フレーム溶射、エレクトロスプレー、スプレー堆積、電着、スクリーン印刷、近接昇華、ナノインプリントリソグラフィ、イン・サイチュ(in situ)成長、マイクロ波を援用する化学気相成長、レーザアブレーション、アーク放電、または化学エッチングを含む。
【0059】
第1の金属の第1の層120に第1の熱処理を実施
ステップ204において、方法200は、第1の金属の第1の層120を設けたガラス基板100に第1の熱処理を行うステップをさらに含む。本明細書において、第1の熱処理ステップ204は、ガラス基板100上に成膜された第1の金属の第1の層120を「焼結(sintering)」するステップと呼ぶことができる。以下でさらに詳しく説明するように、ステップ204によって、第1の層120由来の第1の金属と、ガラス基板100由来のアルミニウム、酸化アルミニウム、ケイ素、および二酸化ケイ素のうち少なくとも1つとが混和して、第1の金属の第1の層120とガラス基板100との間に明確な境界がない状態になると考えられる。
【0060】
第1の金属が酸化しやすい金属である場合には、ステップ204を不活性雰囲気(例えば、窒素ガス雰囲気)中で行うことができ、または、ステップ204を不活性雰囲気中で行わない場合には、続いて還元雰囲気(例えば、水素ガス雰囲気)中で熱処理を行って、酸化された第1の金属を元素形態に戻すことができる。第1の金属が酸化されると、(後述する)方法200の後段の(1つ以上の)金属の成膜の妨げとなる恐れがある。第1の金属が銀の場合には、酸化しにくい。
【0061】
いくつかの実施形態では、第1の熱処理ステップ204は、第1の金属の第1の層120を設けたガラス基板100を325℃以上の温度にさらすステップを含む。いくつかの実施形態では、第1の熱処理ステップ204は、第1の金属の第1の層120を設けたガラス基板100を325℃以上の温度に45分以上の時間にわたってさらすステップを含む。いくつかの実施形態では、第1の熱処理ステップ204は、第1の金属の第1の層120を設けたガラス基板100を325℃以上の温度に45分~75分の時間にわたってさらすステップを含む。いくつかの実施形態では、第1の熱処理ステップ204は、第1の金属の第1の層120を設けたガラス基板100を325℃~425℃の温度にさらすステップを含む。いくつかの実施形態では、第1の熱処理ステップ204は、第1の金属の第1の層120を設けたガラス基板100を325℃~425℃の温度に45分~75分の時間にわたってさらすステップを含む。いくつかの実施形態では、最初はガラス基板100を325℃未満の温度(例えば、室温など)下に置いて、その後、特定の昇温速度(例えば、毎分0.5℃~毎分10℃の範囲内の昇温速度)で325℃以上の所望の温度まで上昇する温度にさらす。他の実施形態では、第1の金属の第1の層120を設けたガラス基板100を、第1の熱処理ステップ204を実施可能な範囲内の所定温度に設定された予熱炉に直接投入する。このステップ204は、第1の金属の第1の層120を設けたガラス基板100を、縦型炉、管状炉、および高速熱アニール装置(rapid thermal annealer:RTA)内に投入したり、加熱板上に載置したりすることなどによって行うことができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、第1の熱処理ステップ204は、第1の金属の第1の層120を設けたガラス基板100を、第1の時間にわたって325℃~375℃の第1の温度にさらし、その後、第1の時間よりも長い第2の時間にわたって375℃~425℃の第2の温度にさらすステップを含む。第1の時間は、1分~5分の範囲内とすることができる。第2の時間は、第1の時間と第2の時間との合計が45分~75分となるように設定することができる。例えば、第1の金属の第1の層120を設けたガラス基板100を、最初に第1の温度である350℃に2分間さらし、その後、第2の温度である400℃に60分間さらすことができる。なお、第1の金属の第1の層120を設けたガラス基板100を、1分~5分の範囲内の第1の時間にわたって第1の温度にさらすことは行うが、その後に、当該ガラス基板100を第2の時間にわたって第2の温度にさらすことを行わない場合には、第1の金属の第1の層120のガラス基板100への付着性が不十分となる結果となった。
【0063】
第1の層が十分な導電率を有しているか否かの判定
ステップ206において、方法200は、第1の金属の第1の層120が、(a)所定の導電率を下回る導電率、または(b)所定の抵抗率を上回る抵抗率を有しているかを判定するステップを任意選択的に含む。このステップ206のポイントは、(例えば、インターポーザ用のガラス基板100のビア108を完全にメタライズするためなどの目的で)第1の層120上に第2の金属の第2の層128を電気めっきで形成することが可能か否かを判定することにある。抵抗率の測定は、Fluke87V(Fluke Corporation社、米国ワシントン州エバレット)などのマルチメータや、NAGY Messsysteme GmbH社(独国ガウフェルデン)製などの非接触式表面抵抗測定器を用いて測定することができる。なお、導電率は抵抗率の逆数である。第1の熱処理ステップ204によって、第1の金属とケイ素(または二酸化ケイ素)および/またはアルミニウム(または酸化アルミニウム)との混和が生じているため、第1の層120の導電率が、第1の金属の導電率に比べて低下している可能性がある。ここで、所定の導電率は、方法200の後続のステップにおいて、後述するように第2の金属の第2の層128を電気めっきで形成することを可能にする導電率であり、よって、第2の層128の第2の金属にどの金属を選択するかによって、所定の導電率は異なる。第2の層128の第2の金属として使用される代表的な(1つ以上の)金属の場合、所定の導電率(抵抗率)は、100Ω/□のシート抵抗に相関した値となる。
【0064】
第1の層120が、(a)所定の導電率を下回る導電率、または(b)所定の抵抗率を上回る抵抗率のいずれかを有していると判定した場合、方法200は、ステップ208において、第1の金属の第1の層120上に中間金属の中間層126を無電解めっきで形成するステップをさらに含む(特に
図5を参照)。いくつかの実施形態では、中間層126の中間金属は、銅であるか、または本質的に銅からなる。いくつかの実施形態では、中間金属は、銀、金、コバルト、コバルト-リン、銅、ニッケル、およびニッケル-リンのうちの1つ以上を含んでいる。無電解めっきについては、上記で詳しく説明した通りである。第1の層120を中間金属の中間層126で被覆することにより、第1の層120が十分な導電率を有していない(抵抗率が高すぎる)場合でも、この後続けて、第2の金属の第2の層128を電気めっきで中間層126上に形成することが可能となる。いくつかの実施形態では、中間層126は、10nm~100nmの範囲内の厚さ127を有している。いくつかの実施形態では、ステップ206を省略して、つまり、第1の層120の導電率または抵抗率に関係なく、ステップ208を実行して中間層126を追加する。
【0065】
第1の層120上に第2の金属の第2の層128を形成
ステップ210において、方法200は、第1の層120上に第2の金属の第2の層128を形成するステップをさらに含む(特に
図6を参照)。ステップ210は、ステップ206の後に実行されるか、または、第1の層120の導電率が、第2の金属の第2の層128を電気めっきで形成するには不十分であると判定された場合に、ステップ208の後に実行される。ガラス基板100をインターポーザ用途で製造するいくつかの実施形態では、第2の金属の第2の層128によって、ビア108の残りの開口部分が充填される。したがって、このとき、ビア108は、金属で完全にメタライズされた(すなわち、完全に充填された)状態となる。いくつかの実施形態では、第2の金属は、銅、銀、アルミニウム、チタン、金、白金、ニッケル、タングステン、鉛、マンガン、およびマグネシウムのうちの1つ以上である。いくつかの実施形態では、第2の金属は、銅とマンガンの合金である。いくつかの実施形態では、第2の金属は銅であり、(第1の層120の)第1の金属は銀である。いくつかの実施形態では、第2の金属は銅マンガン合金であり、第1の金属は銀である。いくつかの実施形態では、方法200のステップ210は、銀の第1の層120上に第2の金属としての銅の第2の層128を電気めっきで形成して、1つ以上のビア108を完全にメタライズするステップを含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、第1の層120上に第2の金属の第2の層128を形成するステップは、第1の層120上に第2の金属の第2の層128を電気めっきで形成するステップを含む。ステップ206で、第1の層120が十分な導電率を有している(または、抵抗率が高すぎない)と判定された場合、ステップ210において、第2の金属の第2の層128を第1の層120上に直接電気めっきで形成する。ステップ206において、第1の層120の導電率が不十分である、または抵抗率が高すぎると判定されて、中間金属の中間層126が第1の金属の第1の層120上に設けられた場合には、ステップ210において、第2の金属の第2の層128を中間金属の中間層126上に電気めっきで形成(特に
図7を参照)し、これにより、第2の金属の第2の層128を第1の層120の上に電気めっきで形成する。ただし、この場合、第1の層120と電気めっきで形成された第2の金属の第2の層128との間に中間金属の中間層126が介在する。
【0067】
電気めっき工程では、アニオンと、第2の層128を形成したい第2の金属のカチオンとを有するイオン性化合物を含有するめっき液中にガラス物品122を投入して、電流が印加される。これにより、元素形態の第2の金属が、第1の金属の第1の層120上、または場合によっては中間金属の中間層126上に付着し、第2の金属の第2の層128が形成される。析出させる第2の金属のカチオンを含有するイオン性化合物が有するアニオンとしては、硫酸アニオン、硝酸アニオン、塩化物アニオンなどが挙げられる。イオン性化合物の一例としては、硫酸銅が挙げられる。めっき液の一例としては、硫酸銅五水和物(CuSO4・5H2O)とピロリン酸カリウム(K4P2O7)とクエン酸とを蒸留水に溶解させた溶液が挙げられる。めっき液の他の例として、硫酸銅五水和物(CuSO4・5H2O)と硫酸マンガン一水和物(MnSO4・H2O)と酒石酸ナトリウムカリウム四水和物(ロッシェル塩)とホルムアルデヒドとを含む溶液も挙げられる。いくつかの実施形態では、めっき液中のイオン性化合物の濃度は、0.001M(モル/L)以上である。なお、めっき液中には、ガラス物品122の他に、任意の導電性材料から作製された電極も入れられる。いくつかの実施形態では、めっき液の温度は10℃~50℃であり、例えば、室温または40℃である。
【0068】
そして、第1の層120(および、存在する場合は中間層126)が設けられたガラス基板100と電極との間に電流、電圧、またはそれらの組み合わせを印加して、第1の層120(および、存在する場合は中間層126)が設けられたガラス基板100に負の定電流を供給する。いくつかの実施形態では、約0.001mA/cm2~約1A/cm2の電流密度範囲、かつ、約-0.001V~約-20Vの電圧範囲で供給される。これにより、第2の層128となる第2の金属のカチオンは、第1の層120の上(場合によっては、中間層126の上)で元素形態に還元される。この還元反応の速度を制御するのが電流密度である。したがって、印加する電流を増減させることで、成膜速度を増減させることができる。ただし、印加する電流が大きすぎると、成膜される層が多孔質で空隙の多いものとなってしまい、小さすぎると工程が実用に耐えないほど長時間化してしまう恐れがあることに留意されたい。そして、第1の層120(または、存在する場合は中間層126)上に所望の第2の金属の第2の層128が設けられると、電流を停止し、ガラス基板100をめっき液から取り出して、第2の層128が設けられたガラス基板100を脱イオン水で洗浄することができる。任意選択的に、第2の層128が設けられたガラス基板100の上に窒素流を流すなどして、第2の層128が設けられたガラス基板100を乾燥させることもできる。
【0069】
他の実施形態では、第1の層120上に第2の金属の第2の層128を形成するステップが、無電解めっき、化学気相成長(chemical vapor deposition:CVD)、または、スパッタリング、熱蒸着、および電子ビーム蒸着などの物理気相成長(physical vapor deposition:PVD)を行うことを含む。CVD工程は、アスペクト比が20までの比較的小さなサイズ(直径112が3~5μm)のビア108には適しているが、ビア108がより大きい場合やより深い場合には適さない場合がある。一方、原子層堆積(atomic layer deposition:ALD)は、高アスペクト比のビア108を充填することができる方法である。
【0070】
ガラス基板100からインターポーザを製造するいくつかの実施形態では、第2の金属の第2の層128によって、ビア108の残りの開口部分が充填される。第2の層128を電気めっきで重ねる場合、ガラス基板100をめっき液中に入れて、すべてのビア108をめっき液で満たした状態とする。そして、第1の層120(または、存在する場合は中間層126)上に第2の金属の第2の層128を成膜し、成膜を重ねて膜厚を大きくする。これを、ビア108が密閉されるまで行い、その結果、ビア108が完全にメタライズされる。ビア108が砂時計型の形状をとるいくつかの実施形態では、狭窄したくびれ114によって、金属の「橋」が架かり、導電性の第2の金属はこの「橋」にまず堆積する。第2の金属は、この橋の両側への堆積を繰り返し、最終的に、第2の層128が形成されてビア108が充填される。この「橋」には、ビア108が第2の金属で充填される前に第2の金属が第1の面102または第2の面104の近傍に堆積して閉塞を起こし、ビア108の内部を隔絶させてしまうことを防ぐ役割がある。このようなビア108内部の隔絶が生じると、ビア108内に空隙が形成されてしまうことになる。第2の金属の第2の層128がガラス基板100のビア108に充填されると、電流を停止し、ガラス基板100をめっき液から取り出す。
【0071】
第2の層128を設けたガラス物品122に第2の熱処理を実施
ステップ212において、方法200は、第2の金属の第2の層128を設けたガラス基板100に第2の熱処理を行うステップをさらに含む。第1の熱処理ステップ204および第2の熱処理ステップ212によって、第1の金属と、第2の金属と、ガラス基板100のアルミニウム、酸化アルミニウム、ケイ素、および二酸化ケイ素のうち少なくとも1つとの混和を誘発して、第1の金属と、第2の金属と、酸化アルミニウムと、二酸化ケイ素とを含む金属領域132(
図8参照)を有するガラス物品122を形成する。金属領域132は、第1の層120由来の第1の金属と、第2の層128由来の第2の金属と、中間層126由来の中間金属(ただし、使用される場合)と、アルミニウム(または酸化アルミニウム)およびケイ素(または二酸化ケイ素)などのガラス基板100由来の追加成分と、を含む。換言すれば、ステップ204で、第1の層120由来の第1の金属と、ガラス基板100由来のアルミニウム(または酸化アルミニウム)およびケイ素(または二酸化ケイ素)とが混ざり合うと考えられる。さらに、ステップ212で、第2の層128由来の第2の金属と、第1の層120由来の第1の金属と、中間層126由来の中間金属(ただし、存在する場合)と、ガラス基板100由来のアルミニウム(または酸化アルミニウム)およびケイ素(または二酸化ケイ素)とが混ざり合うと考えられる。したがって、金属領域132は、第1の層120由来の第1の金属と、第2の層128由来の第2の金属と、中間層126由来の中間金属(ただし、存在する場合)とを含み、さらにアルミニウムと、ケイ素と、酸素とを含む。アルミニウムおよびケイ素の少なくとも一部は、金属領域132において酸化物相を形成する。酸化物相には、酸化アルミニウムと二酸化ケイ素とが含まれる。酸化物相の酸素は、ステップ204とステップ212の実行中に、ガラス基板100から拡散(移動)してくるか、または周囲の環境(例えば、空気)から金属領域132に入り込むことができる。そして、酸素の供給源が何であれ、いずれにしても結果として、酸化アルミニウムと二酸化ケイ素を含む金属領域132が形成される。理論に束縛されることは望まないが、金属領域132に酸化アルミニウムおよび/または二酸化ケイ素が存在することで、成膜された第1の金属、第2の金属、および中間金属(ただし、使用される場合)のガラス基板100への付着性が高まると考えられる。
【0072】
いくつかの実施形態では、第2の熱処理は、第2の金属の第2の層128を設けたガラス基板100を少なくとも300℃の温度に少なくとも20分の時間にわたってさらすステップを含む。いくつかの実施形態では、第2の熱処理は、第2の金属の第2の層128を設けたガラス基板100を300℃~400℃の温度に少なくとも20分の時間にわたってさらすステップを含む。いくつかの実施形態では、第2の熱処理は、第2の金属の第2の層128を設けたガラス基板100を300℃~400℃などの300℃~ガラス基板100の歪点の温度、例えば325℃~375℃の温度に、少なくとも20分の時間、例えば20分~8時間の時間にわたってさらすステップを含む。ガラス基板100がインターポーザであるいくつかの実施形態では、ステップ212は、ガラスインターポーザを300℃~400℃などの300℃~ガラス基板100の歪点の温度、例えば325℃~375℃の温度に、少なくとも20分の時間にわたってさらすステップを含む。
【0073】
ステップ212の1つの目的は、上述したように、第1の金属と、第2の金属と、中間金属(ただし、存在する場合)と、ガラス基板100由来のケイ素(または二酸化ケイ素)およびアルミニウム(または酸化アルミニウム)と、を混和させることである。300℃未満の温度でもその目的は果たせるかもしれないが、そのような温度では時間がかかりすぎて、商用目的に適さないと考えられる。つまり、300℃未満の温度でステップ212を実行することによって、上述の混和は得られるかもしれないが、おそらく時間がかかりすぎて商用に耐えないであろう。また、ステップ212の温度が400℃以下であれば、ほとんどのガラス基板100に適合する。ステップ212のもう1つの目的は、ガラス基板100内に発生した応力を除去することである。例えば、インターポーザとしての使用が想定されるガラス基板100にレーザ加工でビア108を形成することによって、ガラス基板100内に熱応力が発生する場合がある。しかし、ビア108をメタライズした後にガラス基板100をアニールすることにより、存在の恐れがある残留応力を除去することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、第2の層128を設けたガラス基板100を、加熱装置に室温で投入し、その後、加熱装置内の温度を所定速度で、300℃~400℃の温度(または、ガラス基板100に適合し、かつ、この処理に費やすことのできる時間に見合った温度であれば、これを上回る温度または下回る温度でもよい)へと上昇させる。例えば、所定速度は、毎分1℃~毎分11℃の範囲内とすることができる。そして、加熱装置内の温度は、上記の時間だけ維持される。上記の時間の経過後、加熱装置内の温度を、ガラス基板100の熱割れを起こさない任意の速度、例えば、毎分0.6℃~毎分2.0℃の範囲内の速度で室温まで下げる。このステップ212に適した加熱装置として、例えば、アニール炉、アニールオーブン(例えば、Thermal Product Solutions社(米国ペンシルベニア州ニューコロンビア)から入手可能なBlue Mブランドの製品)、強制通風炉(例えば、Fisher Scientific社(米国マサチューセッツ州ウォルサム)製のFisher Isotemp Programmable Forced-Draft furnace)が挙げられる。なお、第2の層128を設けたガラス基板100のアニールは、窒素中で行うことができる。
【0075】
ガラス基板100のバルク組成物と金属領域132とを有するガラス物品122
ここで
図9を参照すると、上述したように、ステップ212において、上記の時間にわたって、第1の金属と第2の金属を付着させたガラス基板100を高温にさらすことにより、第1の金属と、第2の金属と、中間金属(ただし、使用される場合)と、ケイ素(または二酸化ケイ素)およびアルミニウム(または酸化アルミニウム)などのガラス基板100を構成する成分と、が実質的に混和される。この点については特に
図9に示している。
図9は、方法200に従って作られたガラス物品122の一例について、その組成がガラス物品122内の位置の関数として変化する様子を示している。ガラス基板100は、上述したように、重量百分率での主成分として二酸化ケイ素と酸化アルミニウムとを含む。ただし、二酸化ケイ素と酸化アルミニウムはいずれも、ガラス基板100内の位置が金属領域132に近づくにつれてその重量百分率が低下することに留意されたい。
図9のx軸における時間0は、金属領域132が外界環境に対して露出する面である、平面ガラス物品122の主面を示していると捉えることができる。また、
図9のx軸における時間0は、メタライズされたビア108の中心軸116を示していると捉えることもでき、その場合、x軸に沿った時間の増加は、中心軸116から側方にその分離間した位置を示していると考えることができる。また、スパッタリングで成膜しているため、x軸は、スパッタリング時間という時間単位を示すものでもあることに注意されたい。このスパッタリング時間が長いほど、試料に対して行う組成測定の深度は大きくなる。したがって、グラフに示す時間は、ガラス物品122内の深度を示すものでもある。ただし、スパッタリングの速度は材料によって異なるため、時間の値を単純に深度に換算できるものではない。
【0076】
金属領域132は、第1の金属(この具体例では、Ag)と第2の金属(この具体例ではCuおよびMn)とを含んでいる。また、金属領域132は、二酸化ケイ素と酸化アルミニウムとをさらに含んでいる。いくつかの実施形態では、酸化アルミニウムは、金属領域132全体にわたって切れ目なく存在している。金属領域132内には、第2の金属を(重量百分率での)主成分として含む部分領域αが存在する。すなわち、(i)第1の金属よりも第2の金属の方が部分領域αにおける重量百分率が高く、(ii)二酸化ケイ素よりも第2の金属の方が部分領域αにおける重量百分率が高く、(iii)酸化アルミニウムよりも第2の金属の方が部分領域αにおける重量百分率が高い。
【0077】
さらに、金属領域132内には、第1の金属を(重量百分率での)主成分として含み、第2の金属を二酸化ケイ素よりも多く含み、第2の金属を酸化アルミニウムよりも多く含む部分領域βが存在する。部分領域βにおいては、(i)第2の金属よりも第1の金属の方が重量百分率が高く、(ii)二酸化ケイ素よりも第1の金属の方が重量百分率が高く、(iii)酸化アルミニウムよりも第1の金属の方が重量百分率が高い。また、二酸化ケイ素の重量百分率よりも第2の金属の重量百分率の方が高い。酸化アルミニウムの重量百分率よりも第2の金属の重量百分率の方が高い。
【0078】
さらに、金属領域132内には、第1の金属を、重量百分率での主成分として含み、二酸化ケイ素を第2の金属よりも多く含み、酸化アルミニウムを第2の金属よりも多く含む部分領域γが存在する。部分領域γにおいては、(i)第2の金属よりも第1の金属の方が重量百分率が高く、(ii)二酸化ケイ素よりも第1の金属の方が重量百分率が高く、(iii)酸化アルミニウムよりも第1の金属の方が重量百分率が高い。また、第2の金属の重量百分率よりも二酸化ケイ素の重量百分率の方が高い。第2の金属の重量百分率よりも酸化アルミニウムの重量百分率の方が高い。
【0079】
シリコン(または二酸化ケイ素)とアルミニウム(または酸化アルミニウム)とは、第1の金属と第2の金属を接合させる熱処理ステップ204、212の実行中に、ガラス基板100から金属領域132に移動する。第1の層120由来の第1の金属の一部は、第2の熱処理ステップ212の実行中に、第2の層128由来の第2の金属の一部と接合するように移動し、部分領域αを形成する。第2の層128由来の第2の金属の一部は、第2の熱処理ステップ212の実行中に、第1の層120由来の第1の金属の一部と接合するように移動し、部分領域βおよび部分領域γを形成する。
【0080】
方法200が中間金属の中間層126を追加するステップ208を含むいくつかの実施形態では、金属領域132が中間金属をさらに含むことができる。
【0081】
部分領域α、部分領域β、および部分領域γのうち、部分領域γがガラス基板100に最も近接した領域であり、部分領域αがガラス基板100から最も離間した領域である。
【0082】
いくつかの実施形態では、ガラス物品122は、ガラス基板100と金属領域132との間に配置される過渡領域134をさらに有している。過渡領域134は、重量百分率での主成分として二酸化ケイ素を含むが、酸化アルミニウムよりも第1の金属を多く含む。いくつかの実施形態では、過渡領域134は、ガラス基板100のバルク部と金属領域132の部分領域γとの間に配置される。
【0083】
ガラス物品122がインターポーザであるいくつかの実施形態では、ビア108は完全にメタライズされて、ビア108が金属領域132を有している。第2の金属を主成分として含む部分領域αは、各ビア108の中心軸116を中心に拡がっている。ビア108が金属領域132で充填されて完全にメタライズされると、ガラス物品122の第1の面102と第2の面104の上に配置される各電気部品の電気配線をビア108によって電気的に接続することができる。
【0084】
このように、第1の金属と、第2の金属と、中間金属(ただし、存在する場合)と、ケイ素(または二酸化ケイ素)およびアルミニウム(または酸化アルミニウム)などのガラス基板100を構成する成分と、が実質的に混和することにより、(金属領域132が形成され、それにより)第2の金属がガラス基板100に強く接合する。方法200では、付加的処理であろうと除去的処理であろうと、第2の金属を付着させるガラス基板100表面の「粗面化」を行う必要はないが、この点を考慮すると驚くべき接合強度が得られる。通常の場合には、このような粗面化ステップによって、ガラス基板100の対象面の表面粗さを高める工程が行われる。表面粗さを高めることで、金属が物理的に接合できる構造的特性を表面に持たせるためである。一方、方法200ではこのような粗面化ステップの必要がなく、費用対効果がより高い。いくつかの実施形態では、第1の金属の第1の層120を付着させるガラス基板100の(1つ以上の)表面の表面粗さ(Ra)は、1~3nmである。
【実施例】
【0085】
実施例1
実施例1では、まず、ガラス基板100を選択した。選択したガラス基板100は、コーニング社(Corning Incorporated)(米国ニューヨーク州コーニング)より入手可能なEagle XG(登録商標)であった。このガラス基板100は、無アルカリアルミノホウケイ酸ガラス基板であり、その主成分は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどであった。より具体的には、ガラス基板100は、64.0~71.0モル%のSiO2、9.0~12.0モル%のAl2O3、7.0~12.0モル%のB2O3、1.0~3.0モル%のMgO、6.0~11.5モル%のCaO、0~2.0モル%のSrO、0~0.1モル%のBaO、および、少なくとも0.01モル%のSnO2を(酸化物基準で)含み、Al2O3のモル%を[Al2O3]とし、MgO、CaO、SrOおよびBaOのモル%の合計をΣ[RO]とすると、1.00≦Σ[RO]/[Al2O3]≦1.25であった。また、ガラス基板100は、実質的に平行かつ平坦な第1の面102と第2の面104とを有していた。なお、ガラス基板100にはビア108を設けなかった。
【0086】
銀ナノ粒子懸濁液を入手し、第1の金属としての銀の第1の層120を形成した。この懸濁液は、10nm~13nmの平均粒径を有する銀ナノ粒子を、20重量%の濃度でシクロヘキサン中に分散させたものであった。そして、この銀ナノ粒子懸濁液に対して30分間の超音波処理を行った。超音波処理によって、銀ナノ粒子の凝集を解き、液体キャリア全体への銀ナノ粒子の分散が向上した。
【0087】
次に、方法200のステップ202を実行し、ガラス基板100の第1の面102上に第1の金属としての銀の第1の層120を形成した。より具体的には、ガラス基板100を銀ナノ粒子懸濁液に接触させた。具体的には、ガラス基板100をナノ粒子懸濁液でスピンコーティングすることにより、ガラス基板100上に第1の金属としての銀の第1の層120を形成した。ガラス基板100の回転速度は1000rpmであった。
【0088】
次に、方法200のステップ204である第1の熱処理を行った。より詳細には、第1の金属としての銀の第1の層120を設けたガラス基板100を、350℃の温度を有する加熱板上に2分間載置した。続いて、第1の金属としての銀の第1の層120を設けたガラス基板100を、350℃の空気温度を有する炉に投入した。そして、炉の空気温度を1分間に1℃ずつ400℃まで上昇させた。第1の金属としての銀の第1の層120を設けたガラス基板100は、炉の中に1時間置いた。
【0089】
次に、方法200のステップ206を行った。より詳細には、Fluke87Aマルチメータで第1の層120のシート抵抗を測定した。シート抵抗は0.7Ω/□であった。この値から、第1の層120の抵抗率は、後続のステップ210に従って第2の金属の第2の層128を電気めっきで形成できないほど高くはない(すなわち、第1の層120が十分な導電率を有している)と判定された。
【0090】
次に、方法200のステップ210を行い、第1の金属としての銀の第1の層120の上に、第2の金属としての銅マンガン合金の第2の層128を形成した。より詳細には、硫酸銅と硫酸マンガン(濃度1M(モル/L))を脱イオン水に溶解しためっき液を調製した。そして、第1の金属としての銀の第1の層120を設けたガラス基板100をめっき液に入れて、銅板を電極にして電気めっきを行った。このとき、50mAの電流を1時間印加した。これにより、膜厚2.5μmの第2の金属としての銅の合金の第2の層128を、電気めっきで第1の層120上に形成した。
【0091】
次に、方法200のステップ212である第2の熱処理を行った。より詳細には、第1の金属としての銀の第1の層120と、第2の金属としての銅マンガン合金の第2の層128と、を設けたガラス基板100に対して、真空オーブンでアニール処理を行った。まず、ガラス基板100を、室温環境を持つ真空オーブンに投入した。次に、ガラス基板100をさらす温度である、真空オーブンの庫内温度を、室温から350℃まで、1分間に5℃ずつ上昇させた。次に、ガラス基板100を350℃の温度に30分間さらした。次に、ガラス基板100を毎分5℃の速度で室温まで冷却した。
【0092】
第1の金属としての銀の第1の層120と、第2の金属としての銅マンガン合金の第2の層128と、を設けたガラス基板100の第2の熱処理(ステップ212)によって、
図9に関連させて上述したようなガラス物品122が得られた。得られたガラス物品122においては、第1の金属としての銀と、第2の金属としての銅およびマンガンと、いずれも酸化物の形態で存在するガラス基板100由来のケイ素およびアルミニウムとが、実質的に混和した状態で金属領域132全体に拡がっていた。詳細には、ガラス基板100は二酸化ケイ素と酸化アルミニウムを主成分とするが、二酸化ケイ素と酸化アルミニウムはいずれも、ガラス基板100内の位置が金属領域132に近づくにつれてその相対量が減少していた。また、金属領域132の部分領域βおよび部分領域γの主成分は、第1の層120由来の銀であった。ガラス基板100と金属領域132の間には、二酸化ケイ素を主成分とするが、酸化アルミニウムよりも第1の層120由来の銀を多く含む過渡領域134が存在していた。
【0093】
金属領域132の部分領域βおよび部分領域γは、第1の層120由来の銀を主成分としているが、第2の層128から移動してきた銅およびマンガンも全域に含んでいた。また、部分領域βおよび部分領域γにおいて、二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの相対量は、部分領域αに近づくにつれて総じて減少していた。部分領域γでは、二酸化ケイ素の重量百分率と酸化アルミニウムの重量百分率がいずれも、第2の層128由来の銅およびマンガンの重量百分率を上回っていた。
【0094】
金属領域132の部分領域αは、第2の層128由来の銅とマンガンを主成分として含んでいた。金属領域132の部分領域αでは、第2の層128由来の銅およびマンガンの重量百分率は、二酸化ケイ素の重量百分率よりも高く、かつ、酸化アルミニウムの重量百分率よりも高かった。酸化アルミニウムが部分領域αに存在しているということは、第1の熱処理ステップ204および第2の熱処理ステップ212の実行中に、アルミニウムまたは酸化アルミニウムがガラス基板100から部分領域αにまで移動したことを意味するため、驚くべきことである。さらに、部分領域αは、第1の層120由来の銀も含んでいた。
【0095】
第1の層120由来の銀がガラスのネットワーク構造に入り込んだと思われる過渡領域134が生成されたこと、そして、金属領域132の全域にアルミニウムまたは酸化アルミニウムが移動したことにより、金属領域132とガラス基板100との間に強い接合が得られ、第2の金属として銅およびマンガンを含む金属領域132を、第1の層120として付着させた銀、そしてガラス基板100に強く接合させることができた。
【0096】
ここで、
図10を参照すると、得られたガラス物品122に対して、ASTM規格D3359-09「テープ試験による付着性測定の標準試験法(Standard Test Methods for Measuring Adhesion by Tape Test)」に従ってクロスハッチテープ試験を行い、ガラス基板100に対する金属領域132の接合性(付着性)を試験した。テープ試験は以下の手順で行った。まず、金属領域132に縦横それぞれ11本の切り傷をつけて格子模様を作った。次に、この格子模様の上に感圧接着テープを貼付した。その後、テープを引き剥がした。そして、剥離物の量と種類をASTM規格文書の記述や図と比較した。テープの引き剥がしにより、ガラス物品122から剥離した金属領域132は0%であった。ASTM規格で「5B」に相当する試験結果であった。これは、銀(第1の層120として付着させた金属)と銅およびマンガン(第2の層128として付着させた金属)とがガラス基板100に高いレベルで接合していることを示すものである。
【0097】
実施例2
実施例2では、まず、ガラス基板100を選択した。実施例2においても、選択したガラス基板100は、コーニング社(米国ニューヨーク州コーニング)より入手可能な「Eagle XG」であり、その他の点でも実施例2のガラス基板100は、実施例1のガラス基板100と同様であった。そして、実施例2のガラス基板100を、ステップ210を除いて、実施例1のガラス基板100と同様の方法200で処理した。実施例2のステップ210では、硫酸銅(濃度1M(モル/L))を脱イオン水に溶解した非酸性めっき液を調製した。銅のめっき液は、硫酸をさらに含むこともできるが、ステップ210に関しては不要であることが判明している。そして、第1の金属としての銀の第1の層120を設けたガラス基板100をめっき液に入れて、銅板を電極にして電気めっきを行った。このとき、50mAの電流を1時間印加した。これにより、膜厚2.5μmの第2の金属としての銅の第2の層128を、電気めっきで銀の第1の層120上に形成した。
【0098】
ここで、
図11を参照すると、得られたガラス物品122に対して、ASTM規格D3359-09「テープ試験による付着性測定の標準試験法」に従って同様のクロスハッチテープ試験を行った。テープの引き剥がしにより、ガラス物品122から剥離した金属領域132は0%であった。ASTM規格で「5B」に相当する試験結果であった。これは、銀(第1の層120として付着させた金属)と銅(第2の層128として付着させた金属)とがガラス基板100に高いレベルで接合していることを示すものである。
【0099】
実施例3
実施例3では、ガラス基板100として、コーニング社(米国ニューヨーク州コーニング)製のLotus NXTを使用した。このガラス基板100は、ネットワーク形成物質として酸化アルミニウムを含む、アルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラス基板100であった。その他の点では、実施例3のガラス基板100は、実施例2のガラス基板100と同様の方法200で処理した。
【0100】
ここで、
図12を参照すると、得られたガラス物品122に対して、ASTM規格D3359-09「テープ試験による付着性測定の標準試験法」に従って同様のクロスハッチテープ試験を行った。テープの引き剥がしにより、ガラス物品122から剥離した金属領域132は0%であった。ASTM規格で「5B」に相当する試験結果であった。これは、銀(第1の層120として付着させた金属)と銅(第2の層128として付着させた金属)とがガラス基板100に高いレベルで接合していることを示すものである。
【0101】
比較例1
本比較例1においては、ガラス基板100として、実施例2と同様のコーニング社(米国ニューヨーク州コーニング)より入手可能な「Eagle XG」を使用した。比較例1のガラス基板100は、第1の金属としての銀の第1の層120を設けたガラス基板100に第1の熱処理ステップ204を省略した点を除いて、実施例2の方法200と同様のステップで処理した。
【0102】
ここで、
図13を参照すると、その他のステップを実行して得られたガラス物品122に対して、ASTM規格D3359-09「テープ試験による付着性測定の標準試験法」に従って同様のクロスハッチテープ試験を行った。テープの引き剥がしにより、ガラス基板100からかなりの割合の金属領域132が剥離し、ガラス基板100への銅および銀の接合が不十分であったことが示された。そして、接合性(付着性)が不十分であったということは、第1の金属の第1の層120を設けたガラス基板100対する第1の熱処理ステップ204が、方法200において、第2の金属の第2の層128をガラス基板100に強く接合するために重要なステップであることを示している。
【0103】
比較例2
本比較例2では、ガラス基板100として高純度溶融シリカを使用した。高純度溶融シリカは、ネットワーク形成物質としての酸化アルミニウムを含んでいない。その結果、高純度溶融シリカの軟化温度は比較的高い。比較例2のガラス基板100は、実施例2の方法200と同様のステップで処理した。唯一の違いは、ガラス基板100として、「Eagle XG」(酸化アルミニウムを含む)の代わりに、高純度溶融シリカを使用したことであった。
【0104】
ここで、
図14を参照すると、その他のステップを実行してガラス基板100上に付着させた金属層に対して、ASTM規格D3359-09「テープ試験による付着性測定の標準試験法」に従って同様のクロスハッチテープ試験を行った。テープの引き剥がしにより、ガラス基板100からかなりの割合の付着金属が剥離し、ガラス基板100への金属の接合が不十分であったことが示された。そして、接合性(付着性)が不十分であったということは、第2の金属の第2の層128をガラス基板100に強く接合するためには、ガラス基板100の組成中に酸化アルミニウムが存在することが重要であることを示している。
【0105】
比較例3
本比較例3においては、ガラス基板100として、実施例3と同様のコーニング社(米国ニューヨーク州コーニング)より入手可能なLotus NXTを使用した。比較例3のガラス基板100は、第1の金属の第1の層120を設けたガラス基板100に第1の熱処理ステップ204を省略した点を除いて、実施例2および実施例3の方法200と同様のステップで処理した。
【0106】
ここで、
図15を参照すると、その他のステップを実行してガラス基板100上に付着させた金属層に対して、ASTM規格D3359-09「テープ試験による付着性測定の標準試験法」に従って同様のクロスハッチテープ試験を行った。テープの引き剥がしにより、ガラス基板100からかなりの割合の付着金属が剥離し、ガラス基板100への金属の接合が不十分であったことが示された。そして、接合性(付着性)が不十分であったということは、第1の金属の第1の層120を設けたガラス基板100対する第1の熱処理ステップ204が、方法200において、第2の金属の第2の層128をガラス基板100に強く接合するために重要なステップであることを示している。
【0107】
本説明の態様1は、
二酸化ケイ素と酸化アルミニウムとを含むガラス基板上に第1の金属の第1の層を形成するステップと、
第1の金属の第1の層を設けたガラス基板に第1の熱処理を行うステップと、
第1の金属の第1の層上に第2の金属の第2の層を形成するステップと、
第2の金属の第2の層に第2の熱処理を行うステップと、を含むガラス物品の製造方法であって、
第1の熱処理および第2の熱処理によって、第1の金属と、第2の金属と、ガラス基板のアルミニウム、酸化アルミニウム、ケイ素、および二酸化ケイ素のうち少なくとも1つとの混和を誘発して、第1の金属と、第2の金属と、酸化アルミニウムと、二酸化ケイ素とを含む金属領域を形成する、方法である。
【0108】
本説明の態様2は、
ガラス基板が、第1の面と、第2の面と、少なくとも1つのビアとを有しており、第1の面および第2の面は、ガラス基板の概ね反対方向に面している主面であり、少なくとも1つのビアは、第1の面から第2の面まで延在する側壁面によって画定されて、ガラス基板を貫通しており、
第1の金属の第1の層が、側壁面上に形成される、態様1に記載の方法である。
【0109】
本説明の態様3は、
ガラス基板が、アルカリ土類アルミノホウケイ酸基板、アルカリアルミノケイ酸ガラス基板、または、アルカリアルミノホウケイ酸ガラス基板である、態様1または2に記載の方法である。
【0110】
本説明の態様4は、
ガラス基板が、無アルカリアルミノホウケイ酸ガラス基板である、態様1または2に記載の方法である。
【0111】
本説明の態様5は、
ガラス基板は、表面を粗面化する処理が施されていない、態様1~4のいずれか1つに記載の方法である。
【0112】
本説明の態様6は、
ガラス基板が、6~15モル%のAl2O3を(酸化物基準で)含む組成物を有する、態様1~5のいずれか1つに記載の方法である。
【0113】
本説明の態様7は、
ガラス基板が、64.0~71.0モル%のSiO2、9.0~12.0モル%のAl2O3、7.0~12.0モル%のB2O3、1.0~3.0モル%のMgO、6.0~11.5モル%のCaO、0~2.0モル%のSrO、0~0.1モル%のBaO、および、少なくとも0.01モル%のSnO2を(酸化物基準で)含む組成物を有しており、
Al2O3のモル%を[Al2O3]とし、MgO、CaO、SrOおよびBaOのモル%の合計をΣ[RO]とすると、1.00≦Σ[RO]/[Al2O3]≦1.25である、態様1~5のいずれか1つに記載の方法である。
【0114】
本説明の態様8は、
第1の金属が本質的に銀からなる、態様1~7のいずれか1つに記載の方法である。
【0115】
本説明の態様9は、
第1の金属が、銀、パラジウム、白金、ルテニウム、ニッケル、コバルト、および金のうちの1つ以上を含んでいる、態様1~7のいずれか1つに記載の方法である。
【0116】
本説明の態様10は、
ガラス基板上に第1の金属の第1の層を形成するステップが、ガラス基板を第1の金属のナノ粒子懸濁液でスピンコーティングするステップを含む、態様1~9のいずれか1つに記載の方法である。
【0117】
本説明の態様11は、
ガラス基板上に第1の金属の第1の層を形成するステップが、無電解めっきするステップを含む、態様1~9のいずれか1つに記載の方法である。
【0118】
本説明の態様12は、
第1の熱処理が、第1の金属の第1の層を設けたガラス基板を325℃以上の温度にさらすステップを含む、態様1~11のいずれか1つに記載の方法である。
【0119】
本説明の態様13は、
第1の熱処理が、第1の金属の第1の層を設けたガラス基板を325℃~425℃の温度にさらすステップを含む、態様1~11のいずれか1つに記載の方法である。
【0120】
本説明の態様14は、
第1の熱処理が、第1の金属の第1の層を設けたガラス基板を325℃以上の温度に45分以上の時間にわたってさらすステップを含む、態様1~11のいずれか1つに記載の方法である。
【0121】
本説明の態様15は、
第1の熱処理が、第1の金属の第1の層を設けたガラス基板を325℃以上の温度に45分~75分の時間にわたってさらすステップを含む、態様1~11のいずれか1つに記載の方法である。
【0122】
本説明の態様16は、
第1の熱処理が、第1の金属の第1の層を設けたガラス基板を325℃~425℃の温度に45分~75分の時間にわたってさらすステップを含む、態様1~11のいずれか1つに記載の方法である。
【0123】
本説明の態様17は、
態様1~16のいずれか1つに記載の方法が、
第1の金属の第1の層を形成した後かつ第1の金属の第1の層上に第2の金属の第2の層を形成する前に、第1の層が、(a)所定の導電率を下回る導電率、または(b)所定の抵抗率を上回る抵抗率、のいずれかを有していることを判定するステップと、
第1の金属の第1の層上に中間金属の中間層を無電解めっきで形成するステップと、をさらに含み、
第1の金属の第1の層上に第2の金属の第2の層を形成するステップが、中間金属の中間層上に第2の金属の第2の層を形成するステップを含み、
第1の熱処理および第2の熱処理によって、第1の金属と、中間金属と、第2の金属と、ガラス基板のアルミニウム、酸化アルミニウム、ケイ素、および二酸化ケイ素のうち少なくとも1つとの混和を誘発して、第1の金属と、第2の金属と、酸化アルミニウムと、二酸化ケイ素とを含む金属領域を形成する。
【0124】
本説明の態様18は、
第1の金属の第1の層上に第2の金属の第2の層を形成するステップは、第1の層上に第2の金属の第2の層を電気めっきで形成するステップを含む、態様1~17のいずれか1つに記載の方法である。
【0125】
本説明の態様19は、
第2の熱処理は、第2の金属の第2の層を設けたガラス基板を少なくとも300℃の温度に少なくとも20分の時間にわたってさらすステップを含む、態様1~18のいずれか1つに記載の方法である。
【0126】
本説明の態様20は、
第2の熱処理は、第2の金属の第2の層を設けたガラス基板を300℃~400℃の温度に少なくとも20分の時間にわたってさらすステップを含む、態様1~18のいずれか1つに記載の方法である。
【0127】
本説明の態様21は、
二酸化ケイ素と酸化アルミニウムとを含むガラス基板の1つ以上のビアの側壁面上に第1の金属の第1の層を形成するステップと、
第1の金属の第1の層を設けたガラス基板に第1の熱処理を行うステップと、
第1の金属の第1の層上に第2の金属の第2の層を電気めっきで形成して、1つ以上のビアを完全にメタライズするステップと、
第2の金属の第2の層に第2の熱処理を行うステップと、を含むガラスインターポーザの製造方法であって、
第1の熱処理および第2の熱処理によって、第1の金属と、第2の金属と、ガラス基板のアルミニウム、酸化アルミニウム、ケイ素、および二酸化ケイ素のうち少なくとも1つとの混和を誘発して、第1の金属と、第2の金属と、酸化アルミニウムと、二酸化ケイ素とを含む金属領域を形成する、方法である。
【0128】
本説明の態様22は、
第1の金属が本質的に銀からなり、
第2の金属が銅を含む、態様21に記載の方法である。
【0129】
本説明の態様23は、
第1の熱処理が、第1の金属の第1の層を設けたガラス基板を325℃以上の温度に45分以上の時間にわたってさらすステップを含む、態様21または22に記載の方法である。
【0130】
本説明の態様24は、
第1の熱処理が、第1の金属の第1の層を設けたガラス基板を325℃以上の温度に45分~75分の時間にわたってさらすステップを含む、態様21または22に記載の方法である。
【0131】
本説明の態様25は、
第1の熱処理が、第1の金属の第1の層を設けたガラス基板を325℃~425℃の温度に45分~75分の時間にわたってさらすステップを含む、態様21または22に記載の方法である。
【0132】
本説明の態様26は、
第2の熱処理は、第2の金属の第2の層を設けたガラス基板を少なくとも300℃の温度に少なくとも20分の時間にわたってさらすステップを含む、態様21~25のいずれか1つに記載の方法である。
【0133】
本説明の態様27は、
第2の熱処理は、第2の金属の第2の層を設けたガラス基板を300℃~400℃の温度に少なくとも20分の時間にわたってさらすステップを含む、態様21~25のいずれか1つに記載の方法である。
【0134】
本説明の態様28は、
ガラス基板が、64.0~71.0モル%のSiO2、9.0~12.0モル%のAl2O3、7.0~12.0モル%のB2O3、1.0~3.0モル%のMgO、6.0~11.5モル%のCaO、0~2.0モル%のSrO、0~0.1モル%のBaO、および、少なくとも0.01モル%のSnO2を(酸化物基準で)含む組成物を有しており、
Al2O3のモル%を[Al2O3]とし、MgO、CaO、SrOおよびBaOのモル%の合計をΣ[RO]とすると、1.00≦Σ[RO]/[Al2O3]≦1.25であり、
ガラス基板が、20×10-7~50×10-7/℃の熱膨張係数(CTE)を有している、態様21~27のいずれか1つに記載の方法である。
【0135】
本説明の態様29は、
(重量百分率での)主成分として二酸化ケイ素と酸化アルミニウムとを含むガラス基板と、
第1の金属と、第2の金属と、二酸化ケイ素と、酸化アルミニウムとを含む金属領域と、を備えるガラス物品であって、
金属領域は、
第2の金属を(重量百分率での)主成分として含む部分領域αと、
第1の金属を(重量百分率での)主成分として含み、第2の金属を二酸化ケイ素よりも多く含み、第2の金属を酸化アルミニウムよりも多く含む部分領域βと、
第1の金属を(重量百分率での)主成分として含み、二酸化ケイ素を第2の金属よりも多く含み、酸化アルミニウムを第2の金属よりも多く含む部分領域γと、
を有しており、
部分領域α、部分領域β、および部分領域γのうち、部分領域γがガラス基板に最も近接した領域であり、部分領域αがガラス基板から最も離間した領域である、ガラス物品である。
【0136】
本説明の態様30は、
ガラス基板と部分領域γとの間に、(重量百分率での)主成分として二酸化ケイ素を含み、酸化アルミニウムよりも第1の金属を多く含む過渡領域をさらに有している、態様29に記載のガラス物品である。
【0137】
本説明の態様31は、
ガラス基板から部分領域αにわたって、酸化アルミニウムが切れ目なく存在している、態様29または30に記載のガラス物品である。
【0138】
本説明の態様32は、
ガラス物品は、第1の面と、第2の面と、第1の面と第2の面の間の厚さと、第1の面で開口するとともに厚さの少なくとも一部を貫通して第2の面に向かって延在する少なくとも1つのビアと、を含むインターポーザであり、
ビアの各々は、該ビアの中心軸を中心に配置される金属領域で完全にメタライズされている、態様29~31のいずれか1つに記載のガラス物品である。
【0139】
本説明の態様33は、
第1の金属が本質的に銀からなり、
第2の金属が銅を含む、態様29~32のいずれか1つに記載のガラス物品である。
【0140】
当業者であれば、特許請求の趣旨及び範囲から逸脱しない範囲で、種々の変形及び変更を行うことができることは明らかであろう。
【0141】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0142】
実施形態1
二酸化ケイ素と酸化アルミニウムとを含むガラス基板上に第1の金属の第1の層を形成するステップと、
前記第1の金属の前記第1の層を設けた前記ガラス基板に第1の熱処理を行うステップと、
前記第1の金属の前記第1の層上に第2の金属の第2の層を形成するステップと、
前記第2の金属の前記第2の層に第2の熱処理を行うステップと、を含むガラス物品の製造方法であって、
前記第1の熱処理および前記第2の熱処理によって、前記第1の金属と、前記第2の金属と、前記ガラス基板のアルミニウム、酸化アルミニウム、ケイ素、および二酸化ケイ素のうち少なくとも1つとの混和を誘発して、前記第1の金属と、前記第2の金属と、酸化アルミニウムと、二酸化ケイ素とを含む金属領域を形成する、方法。
【0143】
実施形態2
前記ガラス基板が、第1の面と、第2の面と、少なくとも1つのビアとを有しており、前記第1の面および前記第2の面は、前記ガラス基板の概ね反対方向に面している主面であり、前記少なくとも1つのビアは、前記第1の面から前記第2の面まで延在する側壁面によって画定されて、前記ガラス基板を貫通しており、
前記第1の金属の前記第1の層が、前記側壁面上に形成される、実施形態1に記載の方法。
【0144】
実施形態3
前記ガラス基板が、アルカリ土類アルミノホウケイ酸基板、アルカリアルミノケイ酸ガラス基板、または、アルカリアルミノホウケイ酸ガラス基板である、実施形態1または2に記載の方法。
【0145】
実施形態4
前記ガラス基板が、無アルカリアルミノホウケイ酸ガラス基板である、実施形態1または2に記載の方法。
【0146】
実施形態5
前記ガラス基板は、表面を粗面化する処理が施されていない、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0147】
実施形態6
前記ガラス基板が、6~15モル%のAl2O3を(酸化物基準で)含む組成物を有する、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0148】
実施形態7
前記ガラス基板が、64.0~71.0モル%のSiO2、9.0~12.0モル%のAl2O3、7.0~12.0モル%のB2O3、1.0~3.0モル%のMgO、6.0~11.5モル%のCaO、0~2.0モル%のSrO、0~0.1モル%のBaO、および、少なくとも0.01モル%のSnO2を(酸化物基準で)含む組成物を有しており、
Al2O3のモル%を[Al2O3]とし、MgO、CaO、SrOおよびBaOのモル%の合計をΣ[RO]とすると、1.00≦Σ[RO]/[Al2O3]≦1.25である、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0149】
実施形態8
前記第1の金属が本質的に銀からなる、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0150】
実施形態9
前記第1の金属が、銀、パラジウム、白金、ルテニウム、ニッケル、コバルト、および金のうちの1つ以上を含んでいる、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0151】
実施形態10
前記ガラス基板上に第1の金属の第1の層を形成するステップが、前記ガラス基板を前記第1の金属のナノ粒子懸濁液でスピンコーティングするステップを含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0152】
実施形態11
前記ガラス基板上に第1の金属の第1の層を形成するステップが、無電解めっきするステップを含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0153】
実施形態12
前記第1の熱処理が、前記第1の金属の前記第1の層を設けた前記ガラス基板を325℃以上の温度にさらすステップを含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0154】
実施形態13
前記第1の熱処理が、前記第1の金属の前記第1の層を設けた前記ガラス基板を325℃以上の温度に45分以上の時間にわたってさらすステップを含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0155】
実施形態14
前記第1の熱処理が、前記第1の金属の前記第1の層を設けた前記ガラス基板を325℃以上の温度に45分~75分の時間にわたってさらすステップを含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0156】
実施形態15
前記方法が、
前記第1の金属の前記第1の層を形成した後かつ前記第1の金属の前記第1の層上に前記第2の金属の前記第2の層を形成する前に、前記第1の層が、(a)所定の導電率を下回る導電率、または(b)所定の抵抗率を上回る抵抗率、のいずれかを有していることを判定するステップと、
前記第1の金属の前記第1の層上に中間金属の中間層を無電解めっきで形成するステップと、をさらに含み、
前記第1の金属の前記第1の層上に第2の金属の第2の層を形成するステップが、前記中間金属の前記中間層上に前記第2の金属の前記第2の層を形成するステップを含み、
前記第1の熱処理および前記第2の熱処理によって、前記第1の金属と、前記中間金属と、前記第2の金属と、前記ガラス基板のアルミニウム、酸化アルミニウム、ケイ素、および二酸化ケイ素のうち少なくとも1つとの混和を誘発して、前記第1の金属と、前記第2の金属と、酸化アルミニウムと、二酸化ケイ素とを含む金属領域を形成する、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0157】
実施形態16
前記第1の金属の前記第1の層上に第2の金属の第2の層を形成するステップは、前記第1の層上に前記第2の金属の前記第2の層を電気めっきで形成するステップを含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0158】
実施形態17
前記第2の熱処理は、前記第2の金属の前記第2の層を設けた前記ガラス基板を少なくとも300℃の温度に少なくとも20分の時間にわたってさらすステップを含む、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0159】
実施形態18
二酸化ケイ素と酸化アルミニウムとを含むガラス基板の1つ以上のビアの側壁面上に第1の金属の第1の層を形成するステップと、
前記第1の金属の前記第1の層を設けた前記ガラス基板に第1の熱処理を行うステップと、
前記第1の金属の前記第1の層上に第2の金属の第2の層を電気めっきで形成して、前記1つ以上のビアを完全にメタライズするステップと、
前記第2の金属の前記第2の層に第2の熱処理を行うステップと、を含むガラスインターポーザの製造方法であって、
前記第1の熱処理および前記第2の熱処理によって、前記第1の金属と、前記第2の金属と、前記ガラス基板のアルミニウム、酸化アルミニウム、ケイ素、および二酸化ケイ素のうち少なくとも1つとの混和を誘発して、前記第1の金属と、前記第2の金属と、酸化アルミニウムと、二酸化ケイ素とを含む金属領域を形成する、方法。
【0160】
実施形態19
前記第1の金属が本質的に銀からなり、
前記第2の金属が銅を含む、実施形態18に記載の方法。
【0161】
実施形態20
前記第1の熱処理が、前記第1の金属の前記第1の層を設けた前記ガラス基板を325℃以上の温度に45分以上の時間にわたってさらすステップを含む、実施形態18または19に記載の方法。
【0162】
実施形態21
前記第2の熱処理は、前記第2の金属の前記第2の層を設けた前記ガラス基板を少なくとも300℃の温度に少なくとも20分の時間にわたってさらすステップを含む、実施形態18~20のいずれか1つに記載の方法。
【0163】
実施形態22
前記ガラス基板が、64.0~71.0モル%のSiO2、9.0~12.0モル%のAl2O3、7.0~12.0モル%のB2O3、1.0~3.0モル%のMgO、6.0~11.5モル%のCaO、0~2.0モル%のSrO、0~0.1モル%のBaO、および、少なくとも0.01モル%のSnO2を(酸化物基準で)含む組成物を有しており、
Al2O3のモル%を[Al2O3]とし、MgO、CaO、SrOおよびBaOのモル%の合計をΣ[RO]とすると、1.00≦Σ[RO]/[Al2O3]≦1.25であり、
前記ガラス基板が、20×10-7~50×10-7/℃の熱膨張係数(CTE)を有している、実施形態18~21のいずれか1つに記載の方法。
【0164】
実施形態23
(重量百分率での)主成分として二酸化ケイ素と酸化アルミニウムとを含むガラス基板と、
第1の金属と、第2の金属と、二酸化ケイ素と、酸化アルミニウムとを含む金属領域と、を備えるガラス物品であって、
前記金属領域は、
前記第2の金属を(重量百分率での)主成分として含む部分領域αと、
前記第1の金属を(重量百分率での)主成分として含み、前記第2の金属を二酸化ケイ素よりも多く含み、前記第2の金属を酸化アルミニウムよりも多く含む部分領域βと、
前記第1の金属を(重量百分率での)主成分として含み、二酸化ケイ素を前記第2の金属よりも多く含み、酸化アルミニウムを前記第2の金属よりも多く含む部分領域γと、
を有しており、
前記部分領域α、前記部分領域β、および前記部分領域γのうち、前記部分領域γが前記ガラス基板に最も近接した領域であり、前記部分領域αが前記ガラス基板から最も離間した領域である、ガラス物品。
【0165】
実施形態24
前記ガラス基板と前記部分領域γとの間に、(重量百分率での)主成分として二酸化ケイ素を含み、酸化アルミニウムよりも前記第1の金属を多く含む過渡領域をさらに有している、実施形態23に記載のガラス物品。
【0166】
実施形態25
前記ガラス基板から前記部分領域αにわたって、酸化アルミニウムが切れ目なく存在している、実施形態23または24に記載のガラス物品。
【0167】
実施形態26
前記ガラス物品は、第1の面と、第2の面と、前記第1の面と前記第2の面の間の厚さと、前記第1の面で開口するとともに前記厚さの少なくとも一部を貫通して前記第2の面に向かって延在する少なくとも1つのビアと、を含むインターポーザであり、
前記ビアの各々は、該ビアの中心軸を中心に配置される前記金属領域で完全にメタライズされている、実施形態23~25のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0168】
実施形態27
前記第1の金属が本質的に銀からなり、
前記第2の金属が銅を含む、実施形態23~26のいずれか1つに記載のガラス物品。
【符号の説明】
【0169】
100 ガラス基板
102 第1の面
104 第2の面
108 ビア
110 側壁面
114 くびれ
120 第1の層
122 ガラス物品
126 中間層
128 第2の層
132 金属領域
134 過渡領域
【国際調査報告】