IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アピックス メディカル コーポレーションの特許一覧

特表2023-519109医療処置中に脂肪組織と筋肉組織との間を検知および識別するための装置、システムならびに方法
<>
  • 特表-医療処置中に脂肪組織と筋肉組織との間を検知および識別するための装置、システムならびに方法 図1A
  • 特表-医療処置中に脂肪組織と筋肉組織との間を検知および識別するための装置、システムならびに方法 図1B
  • 特表-医療処置中に脂肪組織と筋肉組織との間を検知および識別するための装置、システムならびに方法 図2
  • 特表-医療処置中に脂肪組織と筋肉組織との間を検知および識別するための装置、システムならびに方法 図3
  • 特表-医療処置中に脂肪組織と筋肉組織との間を検知および識別するための装置、システムならびに方法 図4
  • 特表-医療処置中に脂肪組織と筋肉組織との間を検知および識別するための装置、システムならびに方法 図5
  • 特表-医療処置中に脂肪組織と筋肉組織との間を検知および識別するための装置、システムならびに方法 図6
  • 特表-医療処置中に脂肪組織と筋肉組織との間を検知および識別するための装置、システムならびに方法 図7
  • 特表-医療処置中に脂肪組織と筋肉組織との間を検知および識別するための装置、システムならびに方法 図8
  • 特表-医療処置中に脂肪組織と筋肉組織との間を検知および識別するための装置、システムならびに方法 図9
  • 特表-医療処置中に脂肪組織と筋肉組織との間を検知および識別するための装置、システムならびに方法 図10
  • 特表-医療処置中に脂肪組織と筋肉組織との間を検知および識別するための装置、システムならびに方法 図11
  • 特表-医療処置中に脂肪組織と筋肉組織との間を検知および識別するための装置、システムならびに方法 図12
  • 特表-医療処置中に脂肪組織と筋肉組織との間を検知および識別するための装置、システムならびに方法 図13
  • 特表-医療処置中に脂肪組織と筋肉組織との間を検知および識別するための装置、システムならびに方法 図14
  • 特表-医療処置中に脂肪組織と筋肉組織との間を検知および識別するための装置、システムならびに方法 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】医療処置中に脂肪組織と筋肉組織との間を検知および識別するための装置、システムならびに方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0537 20210101AFI20230428BHJP
   A61B 17/00 20060101ALI20230428BHJP
   A61B 5/0538 20210101ALI20230428BHJP
   A61B 5/01 20060101ALI20230428BHJP
   A61B 8/14 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
A61B5/0537 100
A61B17/00
A61B5/0538
A61B5/01 250
A61B8/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549464
(86)(22)【出願日】2021-02-17
(85)【翻訳文提出日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 US2021018281
(87)【国際公開番号】W WO2021167920
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】62/978,225
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】519175592
【氏名又は名称】アピックス メディカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】ショーン ディー. ローマン
(72)【発明者】
【氏名】フレドリック ヨンソン
(72)【発明者】
【氏名】ニコライ ディミトロフ シルフ
(72)【発明者】
【氏名】アミン エラクチャビ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー ゴリチェク
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクトル トモフ トモフ
【テーマコード(参考)】
4C117
4C127
4C160
4C601
【Fターム(参考)】
4C117XA01
4C117XB01
4C117XD26
4C117XE20
4C117XE23
4C117XJ48
4C127AA06
4C127HH11
4C127LL08
4C160MM32
4C601DD02
4C601EE16
4C601FF02
(57)【要約】
本開示は、脂肪移植手術中に脂肪移植カニューレまたはプローブの遠位部分が配置されているのが脂肪組織内なのか筋肉組織内なのかを検知および識別するための装置、システムならびに方法に関する。本開示の一態様において、第1および第2の電極を含む脂肪移植カニューレまたはプローブが提供される。各電極は、例えば電気外科発電機内に配置された回路に接続される。脂肪移植手術中、電極は、患者組織と接触している。回路は、各電極から受信した信号に基づいて、脂肪移植カニューレの遠位部分が配置されているのが脂肪組織内なのか筋肉組織内なのかを判定するように構成される。脂肪移植カニューレが筋肉組織内に配置されていると回路が判定した場合、処理後の脂肪が患者の筋肉組織内に注入されないことを確保するために、脂肪移植カニューレを操作する外科医に注意が喚起される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近端部と遠端部とを有し、前記近端部と前記遠端部との間に延びる第1の流路を含む基部であり、前記近端部が、圧力制御装置の出力を受け入れるように構成された開口部を含む、前記基部と、
前記基部の前記遠端部に接続された近端部と、少なくとも1つの孔を含む遠端部とを含むシャフトであり、前記第1の流路と連通する第2の流路として機能する中空内部を含む、前記シャフトと、
前記シャフトに関連付けられ、インピーダンス検出回路に接続された少なくとも2つの電極と、
前記少なくとも2つの電極間のインピーダンスを特定し、前記シャフトの前記遠端部が脂肪組織内にあるまたは筋肉組織内にあることの指示を生成する前記インピーダンス検出回路と、
を備える、脂肪移植プローブ。
【請求項2】
前記インピーダンス検出回路は、
一次巻線と二次巻線とを有する変圧器であって、前記二次巻線に前記少なくとも2つの電極が接続されている、前記変圧器と、
前記一次巻線の1つの脚部に接続された電圧制御交流電源と、
前記1つの脚部の電圧を検知し、前記検知された電圧に基づいて前記少なくとも2つの電極間の前記インピーダンスを特定するために、前記一次巻線の前記1つの脚部に接続された少なくとも1つのプロセッサと、
を含む、
請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記インピーダンス検出回路は、前記シャフトの前記遠端部が脂肪組織内にあるまたは筋肉組織内にあることの前記指示を提供するインタフェースモジュールをさらに含む、
請求項1に記載のプローブ。
【請求項4】
前記インタフェースモジュールは、前記基部上に配置される、
請求項3に記載のプローブ。
【請求項5】
前記インピーダンス検出回路は、無線周波数ノイズを抑制するために、前記第2の巻線と前記少なくとも2つの電極との間に配置されたローパスフィルタをさらに含む、
請求項2に記載のプローブ。
【請求項6】
前記インピーダンス検出回路が前記インピーダンスが第1の所定の設定点を下回ると判定した場合、前記シャフトの前記遠端部が筋肉組織内に配置されている、
請求項1に記載のプローブ。
【請求項7】
前記インピーダンス検出回路が前記インピーダンスが第2の所定の設定点を上回ると判定した場合、前記シャフトの前記遠端部が脂肪組織内に配置されている、
請求項6に記載のプローブ。
【請求項8】
前記少なくとも1つのプロセッサに接続される通信モジュールをさらに備え、前記通信モジュールは、前記指示を少なくとも1つの他の装置に通信する、
請求項2に記載のプローブ。
【請求項9】
前記少なくとも2つの電極のうちの第1の電極は、前記シャフトの前記遠端部に配置され、第2の電極は、リターンパッド電極である、
請求項1に記載のプローブ。
【請求項10】
前記シャフトは、導電性材料から構成され、前記シャフトの少なくとも一部分を絶縁性シースが覆い、前記シャフトの露出部分が前記第1の電極を形成する、
請求項9に記載のプローブ。
【請求項11】
前記シャフトは、導電性材料から構成され、前記シャフトの少なくとも一部分を絶縁性シースが覆い、前記シャフトの露出部分が第1の電極を形成し、第2の電極が前記シース上に配置される、
請求項1に記載のプローブ。
【請求項12】
前記少なくとも2つの電極は、前記シャフト上の選択された位置に配置され、第1の電極は、第2の電極から所定の距離に配置される、
請求項1に記載のプローブ。
【請求項13】
前記少なくとも2つの電極の導電性ワイヤを電源に接続するためのコネクタをさらに備え、前記コネクタは、前記プローブに関連するパラメータを記憶するように構成された少なくとも1つのメモリを含む、
請求項1に記載のプローブ。
【請求項14】
前記少なくとも2つの電極の導電性ワイヤを電源に接続するためのコネクタをさらに備え、前記インピーダンス検出回路の少なくとも一部は、前記コネクタ内に配置される、
請求項1に記載のプローブ。
【請求項15】
前記少なくとも2つの電極は、前記シャフトに取り外し可能に結合されたコネクタ上に配置される、
請求項1に記載のプローブ。
【請求項16】
電力を供給するように構成された電気外科発電機と、
前記電気外科発電機に接続されたプローブであって、
近端部と遠端部とを有し、前記近端部と前記遠端部との間に延びる第1の流路を含む基部であり、前記近端部が、圧力制御装置の出力を受け入れるように構成された開口部を含む、前記基部と、
前記基部の前記遠端部に接続された近端部と、少なくとも1つの孔を含む遠端部とを含むシャフトであり、前記第1の流路と連通する第2の流路として機能する中空内部を含む前記シャフトと、
前記シャフトに関連付けられ、インピーダンス検出回路に接続された少なくとも2つの電極と、
前記少なくとも2つの電極間のインピーダンスを特定し、前記シャフトの前記遠端部が脂肪組織内にあるまたは筋肉組織内にあることの指示を生成する前記インピーダンス検出回路と、
を含む前記プローブと、
を備える、脂肪移植システム。
【請求項17】
前記インピーダンス検出回路は、前記発電機内に配置される、
請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記圧力制御装置は、前記第1の流路と、前記第2の流路と、前記少なくとも1つの孔とを介して、患者の脂肪組織の層に処理後の脂肪を供給する、
請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記圧力制御装置は、シリンジおよび/またはポンプの少なくとも一方である、
請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記インピーダンス検出回路は、
一次巻線と二次巻線とを有する変圧器であって、前記少なくとも2つの電極が前記二次巻線に接続されている、前記変圧器と、
前記一次巻線の1つの脚部に接続された電圧制御交流電源と、
前記1つの脚部の電圧を検知し、前記検知された電圧に基づいて前記少なくとも2つの電極間の前記インピーダンスを特定するために、前記一次巻線の前記1つの脚部に接続された少なくとも1つのプロセッサと、
を含む、
請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記インピーダンス検出回路は、前記シャフトの前記遠端部が脂肪組織内にあるまたは筋肉組織内にあることの前記指示を提供するインタフェースモジュールをさらに含む、
請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記指示を表示するように構成されたインタフェースモジュールに接続されたディスプレイモジュールをさらに備え、前記ディスプレイモジュールは、前記電気外科発電機のハウジングの表面に配置される、
請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記電気外科発電機は、プラズマ発生器に接続され、前記プラズマ発生器に電気外科用無線周波数信号を供給するようにさらに構成される、
請求項20に記載のシステム。
【請求項24】
前記電圧制御交流電源の出力の周波数は、前記電気外科用無線周波数信号の周波数とは異なるように選択される、
請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記インピーダンス検出回路は、前記少なくとも1つのプロセッサに接続された通信モジュールをさらに備え、前記少なくとも1つのプロセッサが前記シャフトの前記遠端部が筋肉組織内にあると判定した場合に、前記通信モジュールが前記圧力制御装置に制御信号を通信する、
請求項18に記載のシステム。
【請求項26】
前記少なくとも2つの電極の導電性ワイヤを前記電気外科発電機に連結するためのコネクタをさらに備え、前記コネクタは、前記プローブに関連するパラメータを記憶し、前記パラメータを前記電気外科発電機の少なくとも1つのプロセッサに送信するように構成された少なくとも1つのメモリを含む、
請求項16に記載のシステム。
【請求項27】
近端部と遠端部とを有し、前記近端部と前記遠端部との間に延びる第1の流路を含む基部であり、前記近端部が、圧力制御装置の出力を受け入れるように構成された開口部を含む、前記基部と、
前記基部の前記遠端部に接続された近端部と、少なくとも1つの孔を含む遠端部とを含むシャフトであり、前記第1の流路と連通する第2の流路として機能する中空内部を含む、前記シャフトと、
前記シャフトに関連付けられ、検出回路に接続された少なくとも2つのセンサと、
前記少なくとも2つのセンサの検知されたパラメータに基づいて、前記シャフトの前記遠端部が脂肪組織内にあるのか筋肉組織内にあるのかを判定する前記検出回路と、
を備える、脂肪移植プローブ。
【請求項28】
前記少なくとも2つのセンサは、音響エミッタ及び音響レシーバを含み、前記音響エミッタは、前記音響レシーバから所定の距離に配置され、
前記検出回路は、前記音響エミッタによって発信された信号の減衰を特定し、前記減衰された信号に基づいて前記シャフトの前記遠端部が脂肪組織内にあるのか筋肉組織内にあるのかを判定するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含む、
請求項27に記載のプローブ。
【請求項29】
前記音響エミッタによって発信された前記信号が、所定の周波数および/または所定の振幅の少なくとも一方を有する、
請求項28に記載のプローブ。
【請求項30】
前記少なくとも2つのセンサは、音響エミッタ及び音響レシーバを含み、前記音響エミッタが、前記音響レシーバから所定の距離に配置され、
前記検出回路は、前記音響エミッタによって前記音響レシーバ宛に発信された信号の飛行時間を特定し、前記信号の速度に基づいて前記シャフトの前記遠端部が脂肪組織内にあるのか筋肉組織内にあるのかを判定するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含む、
請求項27に記載のプローブ。
【請求項31】
前記少なくとも2つのセンサは、加熱素子と温度センサとを含み、前記加熱素子が前記熱センサから所定の距離に配置され、
前記検出回路は、前記加熱素子と熱センサ間の組織の熱容量を特定し、前記特定した熱容量に基づいて前記シャフトの前記遠端部が脂肪組織内にあるのか筋肉組織内にあるのかを判定するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含む、
請求項27に記載のプローブ。
【請求項32】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記加熱素子によって所定の熱パルスが放出される前と後に前記温度センサによって検知された温度の差を測定することによって前記熱容量を特定する、
請求項31に記載のプローブ。
【請求項33】
前記少なくとも2つのセンサは、前記シャフトに取り外し可能に結合されたコネクタ上に配置される、
請求項28に記載のプローブ。
【請求項34】
医療処置を実施するための方法であって、
脂肪移植カニューレの遠端部を皮下組織面に挿入するステップと、
前記脂肪移植カニューレの前記遠端部の近くに位置する組織の少なくとも1つの特性をモニタリングするステップと、
前記モニタリングされた少なくとも1つの特性に基づいて、前記脂肪移植カニューレの前記遠端部が配置されているのが脂肪組織内であるか筋肉組織内であるかを判定するステップと、
前記遠端部が脂肪組織内にあるまたは筋肉組織内にあることの指示を生成するステップと、
を含む方法。
【請求項35】
前記脂肪移植カニューレの前記遠端部が脂肪組織内に配置されている場合、前記脂肪組織内への処理後の脂肪の注入に移行するために、注意喚起を生成するステップをさらに含む、
請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記脂肪移植カニューレの前記遠端部が脂肪組織内に配置されている場合、前記脂肪移植カニューレを介した前記脂肪組織内への処理後の脂肪の注入に移行するために、処理後脂肪圧力制御装置に信号を送信するステップをさらに含む、
請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記脂肪移植カニューレの前記遠端部が筋肉組織内に配置されている場合、前記脂肪移植カニューレに処理後の脂肪の供給を停止するために、前記処理後脂肪圧力制御装置に信号を送信するステップをさらに含む、
請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記脂肪移植カニューレの前記遠端部が筋肉組織内に配置されている場合、前記脂肪移植カニューレの前記遠端部が筋肉組織内に配置されていることの注意喚起を生成するステップをさらに含む、
請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記少なくとも1つの特性が、電気インピーダンス、音響インピーダンスおよび/または熱容量のうちの少なくとも1つを含む、
請求項34に記載の方法。
【請求項40】
患者の脂肪層から脂肪を採取するステップと、前記患者に移植するために前記脂肪を処理するステップとをさらに含む、
請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記処理後の脂肪を前記脂肪組織に注入した後に組織の引き締め処置を実施するステップをさらに含む、
請求項40に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年2月18日に出願された、名称を「DEVICES,SYSTEMS AND METHODS FOR SENSING AND DISCERNING BETWEEN FAT AND MUSCLE TISSUE DURING MEDICAL PROCEDURES」とする米国仮特許出願第62/978,225号の優先権を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、脂肪移植およびカニューレに関し、より詳細には、脂肪移植等の医療処置中に脂肪と筋肉組織との間を検知および識別するための装置、システムならびに方法に関する。
【背景技術】
【0003】
脂肪吸引された脂肪組織を脂肪移植するプロセスは、美容手術の分野において大いに有望である。脂肪吸引された脂肪の移植は、体積欠陥を回復させ、頬、胸または臀部に見られ得る身体輪郭の異常を改善する方法としてますます認識されている。加えて、脂肪吸引によって慎重に採取された組織は、組織を再生でき、かつ、瘢痕、放射線損傷、さらには老化に関連するいくつかの状態を改善できる幹細胞が豊富であることが指摘されている。
【0004】
一般に、脂肪移植手術は、脂肪組織または脂肪を含む組織層に脂肪吸引カニューレを挿入することを含む。脂肪吸引カニューレは、脂肪吸引カニューレが挿入された領域から脂肪を採取または吸引するように構成された制御可能な圧力機構(例えば、シリンジ、流体ポンプ等)に接続される。採取された脂肪は、(例えば、制御可能な圧力機構に接続されたバッグ等に)回収される。採取された脂肪は、次いで、注入または移植に適した形態の脂肪組織または移植片を生成するために、(例えば、遠心分離、濾過、および/または他の技術により)処理される。処理後の脂肪移植片は、その後、脂肪移植カニューレまたはプローブを使用して、患者の対象脂肪組織層または領域(例えば、臀部、胸など)に注入または移植される。
【0005】
脂肪移植は、大いに有望であるが、現時点ではリスクがないわけではない。多数の死亡をもたらした1つのリスクは、脂肪移植カニューレの遠位部分が脂肪層よりも奥の皮下組織と筋肉に挿入され、処理後の脂肪が脂肪層ではなく筋肉層に注入される場合である(3200症例中1症例の発生率)。臀部脂肪移植術等の手術中に、殿筋内の大血管に脂肪を注入すると、脂肪塞栓症を引き起こす可能性があり、患者の死亡につながり得る。
【0006】
したがって、現在、脂肪移植の分野では、脂肪移植手術中に外科医が処理後の脂肪を注入しているときに、使用中の脂肪移植カニューレが筋肉層に配置または挿入されないことを確保する方法を外科医に提供するという、満たされていないニーズがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、脂肪移植手術中に脂肪移植カニューレまたはプローブの遠位部分が配置されているのが脂肪組織内なのか筋肉組織内なのかを検知および識別するための装置、システムならびに方法に関する。
【0008】
本開示の一態様において、第1および第2の電極を含む脂肪移植カニューレまたはプローブが提供される。各電極は、例えば電気外科発電機内に配置された回路に接続される。脂肪移植手術中、電極は、患者組織と接触している。回路は、各電極から受信した信号に基づいて、脂肪移植カニューレの遠位部分が配置されているのが脂肪組織内なのか筋肉組織内なのかを判定するように構成される。脂肪移植カニューレが筋肉組織内に配置されていると回路が判定した場合、処理後の脂肪が患者の筋肉組織内に注入されないことを確保するために、脂肪移植カニューレを操作する外科医に注意が喚起される。このようにして、処理後の脂肪を患者の筋肉組織内に注入することに関連する脂肪塞栓および他の危険が回避される。
【0009】
本開示の一態様により、近端部と遠端部とを有し、近端部と遠端部との間に延びる第1の流路を含む基部であり、近端部が、圧力制御装置の出力を受け入れるように構成された開口部を含む、基部と、基部の遠端部に接続された近端部と、少なくとも1つの孔を含む遠端部とを含むシャフトであり、第1の流路と連通する第2の流路として機能する中空内部を含む、シャフトと、シャフトに関連付けられ、インピーダンス検出回路に接続された少なくとも2つの電極と、少なくとも2つの電極間のインピーダンスを特定し、シャフトの遠端部が脂肪組織内にあるまたは筋肉組織内にあることの指示を生成するインピーダンス検出回路と、を備える、脂肪移植プローブが提供される。
【0010】
別の態様では、インピーダンス検出回路が、一次巻線と二次巻線とを有する変圧器であって、二次巻線に少なくとも2つの電極が接続されている、変圧器と、一次巻線の1つの脚部に接続された電圧制御交流電源と、1つの脚部の電圧を検知し、検知された電圧に基づいて少なくとも2つの電極間のインピーダンスを特定するために、一次巻線の1つの脚部に接続された少なくとも1つのプロセッサと、を含む。
【0011】
さらに別の態様では、インピーダンス検出回路は、シャフトの遠端部が脂肪組織内にあるまたは筋肉組織内にあることの指示を提供するインタフェースモジュールをさらに含む。
【0012】
一態様では、インタフェースモジュールは、基部上に配置される。
【0013】
別の態様では、インピーダンス検出回路は、無線周波数ノイズを抑制するために、第2の巻線と少なくとも2つの電極との間に配置されたローパスフィルタをさらに含む。
【0014】
さらに別の態様では、インピーダンス検出回路は、インピーダンスが第1の所定の設定点を下回ると判定した場合、シャフトの遠端部が筋肉組織内に配置されている。
【0015】
別の態様では、インピーダンス検出回路は、インピーダンスが第2の所定の設定点を上回ると判定した場合、シャフトの遠端部が脂肪組織内に配置されている。
【0016】
さらに別の態様では、プローブは、少なくとも1つのプロセッサに接続される通信モジュールをさらに備え、通信モジュールは、指示を少なくとも1つの他の装置に通信する。
【0017】
一態様では、少なくとも2つの電極のうちの第1の電極は、シャフトの遠端部に配置され、第2の電極は、リターンパッド電極である。
【0018】
別の態様では、シャフトは、導電性材料から構成され、シャフトの少なくとも一部分を絶縁性シースが覆い、シャフトの露出部分が第1の電極を形成する。
【0019】
さらに別の態様では、シャフトは、導電性材料から構成され、シャフトの少なくとも一部分を絶縁性シースが覆い、シャフトの露出部分が第1の電極を形成し、第2の電極がシース上に配置される。
【0020】
別の態様では、少なくとも2つの電極は、シャフト上の選択された位置に配置され、第1の電極は、第2の電極から所定の距離に配置される。
【0021】
一態様では、プローブは、少なくとも2つの電極の導電性ワイヤを電源に接続するためのコネクタをさらに備え、コネクタは、プローブに関連するパラメータを記憶するように構成された少なくとも1つのメモリを含む。
【0022】
別の態様では、プローブは、少なくとも2つの電極の導電性ワイヤを電源に接続するためのコネクタをさらに備え、インピーダンス検出回路の少なくとも一部は、コネクタ内に配置される。
【0023】
さらに別の態様では、少なくとも2つの電極は、シャフトに取り外し可能に結合されたコネクタ上に配置される。
【0024】
本開示の別の態様により、電力を供給するように構成された電気外科発電機と、電気外科発電機に接続されたプローブであって、近端部と遠端部とを有し、近端部と遠端部との間に延びる第1の流路を含む基部であり、近端部が、圧力制御装置の出力を受け入れるように構成された開口部を含む、基部と、基部の遠端部に接続された近端部と、少なくとも1つの孔を含む遠端部とを含むシャフトであり、第1の流路と連通する第2の流路として機能する中空内部を含むシャフトと、シャフトに関連付けられ、インピーダンス検出回路に接続された少なくとも2つの電極と、を含むプローブと、少なくとも2つの電極間のインピーダンスを特定し、シャフトの遠端部が脂肪組織内にあるまたは筋肉組織内にあることの指示を生成するインピーダンス検出回路と、を備える、脂肪移植システムが提供される。
【0025】
一態様では、インピーダンス検出回路は、発電機内に配置される。
【0026】
別の態様では、圧力制御装置は、第1の流路と、第2の流路と、少なくとも1つの孔とを介して、患者の脂肪組織の層に処理後の脂肪を供給する。圧力制御装置は、シリンジおよび/またはポンプの少なくとも一方であり得る。
【0027】
一態様では、ディスプレイモジュールは、指示を表示するように構成されたインタフェースモジュールに接続され、ディスプレイモジュールは、電気外科発電機のハウジングの表面に配置される。
【0028】
別の態様では、電気外科発電機は、プラズマ発生器に接続され、プラズマ発生器に電気外科用無線周波数信号を供給するようにさらに構成される。
【0029】
一態様では、電圧制御交流電源の出力の周波数は、電気外科用無線周波数信号の周波数とは異なるように選択される。
【0030】
別の態様では、インピーダンス検出回路は、少なくとも1つのプロセッサに接続された通信モジュールをさらに備え、少なくとも1つのプロセッサが、シャフトの遠端部が筋肉組織内にあると判定した場合に、通信モジュールあ、圧力制御装置に制御信号を通信する。
【0031】
さらに別の態様では、プローブは、少なくとも2つの電極の導電性ワイヤを電気外科発電機に接続するためのコネクタをさらに備え、コネクタは、プローブに関連するパラメータを記憶し、パラメータを電気外科発電機の少なくとも1つのプロセッサに送信するように構成された少なくとも1つのメモリを含む。
【0032】
本開示の別の態様により、近端部と遠端部とを有し、近端部と遠端部との間に延びる第1の流路を含む基部であり、近端部が、圧力制御装置の出力を受け入れるように構成された開口部を含む、基部と、基部の遠端部に接続された近端部と、少なくとも1つの孔を含む遠端部とを含むシャフトであり、第1の流路と連通する第2の流路として機能する中空内部を含む、シャフトと、シャフトに関連付けられ、検出回路に接続された少なくとも2つのセンサと、少なくとも2つのセンサの検知されたパラメータに基づいて、シャフトの遠端部が脂肪組織内にあるのか筋肉組織内にあるのかを判定する検出回路とを備える、脂肪移植プローブが提供される。
【0033】
一態様では、少なくとも2つのセンサは、音響エミッタおよび音響レシーバを含み、音響エミッタは、音響レシーバから所定の距離に配置され、検出回路は、音響エミッタによって発信された信号の減衰を特定し、減衰された信号に基づいてシャフトの遠端部が脂肪組織内にあるのか筋肉組織内にあるのかを判定するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含む。
【0034】
別の態様では、音響エミッタによって発信された信号は、所定の周波数および/または所定の振幅の少なくとも一方を有する。
【0035】
さらに別の態様では、少なくとも2つのセンサは、音響エミッタおよび音響レシーバを含み、音響エミッタは、音響レシーバから所定の距離に配置され、検出回路は、音響エミッタによって音響レシーバ宛に発信された信号の飛行時間を特定し、信号の速度に基づいてシャフトの遠端部が脂肪組織内にあるのか筋肉組織内にあるのかを判定するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含む。
【0036】
さらに別の態様では、少なくとも2つのセンサは、加熱素子と温度センサとを含み、加熱素子は、熱センサから所定の距離に配置され、検出回路は、加熱素子と熱センサ間の組織の熱容量を特定し、特定した熱容量に基づいてシャフトの遠端部が脂肪組織内にあるのか筋肉組織内にあるのかを判定するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含む。
【0037】
一態様では、少なくとも1つのプロセッサは、加熱素子によって所定の熱パルスが放出される前と後に温度センサによって検知された温度の差を測定することによって熱容量を特定する。
【0038】
本開示の別の態様より、医療処置を実施するための方法であって、脂肪移植カニューレの遠端部を皮下組織面に挿入するステップと、脂肪移植カニューレの遠端部に近くに位置する組織の少なくとも1つの特性をモニタリングするステップと、モニタリングされた少なくとも1つの特性に基づいて、脂肪移植カニューレの遠端部が配置されているのが脂肪組織内であるか筋肉組織内であるかを判定するステップと、遠端部が脂肪組織内にあるまたは筋肉組織内にあることの指示を生成するステップと、を含む方法が提供される。
【0039】
一態様では、脂肪移植カニューレの遠端部が脂肪組織内に配置されている場合、脂肪組織内への処理後の脂肪の注入に移行するために、注意喚起が生成される。
【0040】
別の態様では、脂肪移植カニューレの遠端部が脂肪組織内に配置されている場合、脂肪移植カニューレを介した脂肪組織内への処理後の脂肪の注入に移行するために、処理後脂肪圧力制御装置に信号が送信される。
【0041】
さらに別の態様では、脂肪移植カニューレの遠端部が筋肉組織内に配置されている場合、脂肪移植カニューレに処理後の脂肪の供給を停止するために、処理後脂肪圧力制御装置に信号が送信される。
【0042】
別の態様では、脂肪移植カニューレの遠端部が筋肉組織内に配置されている場合、脂肪移植カニューレの遠端部が筋肉組織内に配置されていることの注意喚起が生成される。
【0043】
さらに別の態様では、少なくとも1つの特性は、電気インピーダンス、音響インピーダンスおよび/または熱容量のうちの少なくとも1つを含む。
【図面の簡単な説明】
【0044】
本開示の上記及び他の態様、特徴、及び利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明に照らしてより明らかになるであろう。
【0045】
図1A】本開示の実施形態による脂肪移植システムの図である。
図1B】本開示の実施形態による図1Aの脂肪移植システムの電気外科発電機の正面図である。
図2】本開示の実施形態による図1Aの脂肪移植システムの電気手術器の回路のブロック図である。
図3】本開示の実施形態による別の脂肪移植システムの図である。
図4】本開示の実施形態による別の脂肪移植システムの図である。
図5】本開示の実施形態による別の脂肪移植システムの図である。
図6】本開示の実施形態による別の脂肪移植システムの図である。
図7】本開示の実施形態による別の脂肪移植システムの図である。
図8】本開示の実施形態による別の脂肪移植システムの図である。
図9】本開示の実施形態による別の脂肪移植システムの図である。
図10】本開示の実施形態による別の脂肪移植システムの図である。
図11】本開示の実施形態による別の脂肪移植システムの図である。
図12】本開示の実施形態による脂肪移植カニューレのコネクタの図である。
図13】本開示の実施形態による別の脂肪移植システムの図である。
図14】本開示の実施形態による方法のフローチャートである。
図15】本開示の実施形態による方法の別のフローチャートである。
【0046】
図面は、本開示の概念を説明するためのものであり、必ずしも本開示を説明するための唯一の可能な構成ではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について説明する。以下の説明では、本開示を不必要に曖昧にしないために、周知の機能または構造については詳細に説明しない。図面および以下の説明において、用語「近位」は、従来通り、例えば、器具、機器、アプリケータ、ハンドピース、鉗子、プローブ等の装置の、ユーザに近い方の端部を指し、用語「遠位」は、ユーザから遠い方の端部を指す。本明細書では、「接続された」という語句は、1つ以上の中間構成要素に直接接続されているか、または、1つ以上の中間構成要素を介して間接的に接続されていることを意味すると定義される。そのような中間構成要素は、ハードウェア基部の構成要素とソフトウェア基部の構成要素の両方を含み得る。
【0048】
本開示は、脂肪移植手術中に脂肪移植カニューレまたはプローブの遠位部分が配置されているのが脂肪組織内なのか筋肉組織内なのかを検知および識別するための装置、システムならびに方法に向けられている。本開示の一実施形態では、第1および第2の電極を含む脂肪移植カニューレまたはプローブが提供される。各電極は、例えば電気外科発電機内に配置された回路に接続される。脂肪移植手術中、電極は、患者組織と接触している。回路は、各電極から受信した信号に基づいて、脂肪移植カニューレの遠位部分が配置されているのが脂肪組織内なのか筋肉組織内なのかを判定するように構成される。脂肪移植カニューレが筋肉組織内に配置されていると回路が判定した場合、処理後の脂肪が患者の筋肉組織内に注入されないことを確保するために、脂肪移植カニューレを操作する外科医に注意が喚起される。このようにして、処理後の脂肪を患者の筋肉組織内に注入することに関連する脂肪塞栓および他の危険が回避される。
【0049】
図1Aを参照すると、本開示の一実施形態による脂肪移植システム10が示されている。システム10は、電気外科発電機またはエネルギ源50と、処理後脂肪圧力制御装置12と、脂肪移植カニューレまたはプローブ20とを含む。
【0050】
カニューレ20は、ハブまたは基部24と、シャフトまたは管状部分27とを含み、シャフト27は、流路として機能する中空内部を含む。シャフト27は、基部24に接続され、そこから遠く離れるように延びている。基部24は、近端部25と遠端部26を含む。シャフト27は、(基部24の遠端部26に接続された)近端部21と、遠端部または先端22とを含む。遠端部22は、1つ以上の孔28を含む。図1Aは、シャフト27の遠端部22に配置された孔28を示しているが、カニューレ20は、シャフト27上の様々な位置に配置されかつ様々な方向に向けられた任意の数の孔で構成され得ることを理解されたい。
【0051】
基部24の近端部25は、圧力制御装置(例えば、シリンジ、ポンプまたは他の圧力制御装置)12を受け入れるための開口部(不図示)を含み、近端部25は、この圧力制御装置に接続され得る。基部24の近端部25の開口部は、シャフト27内の流路と接続された(すなわち、連通する)流路を表出させる。脂肪移植カニューレ20を使用する前に、脂肪または脂肪組織層に脂肪吸引カニューレ(不図示)が配置または挿入され、脂肪組織から脂肪を吸引または採取するために脂肪吸引カニューレが使用される。採取された脂肪は、脂肪吸引カニューレに接続された回収装置(例えば、バッグ)に回収され、脂肪移植手術で使用される移植片に精製(purifyまたはrefine)するために処理される。その後、脂肪移植カニューレ20を使用して、移植片を所望の脂肪組織層または面に注入する。脂肪移植手術中、シャフト27の遠位部分が所望の脂肪組織層または平面内に挿入され、圧力制御装置12が、処理後の脂肪移植片を、基部24を介しシャフト27を通って孔28から脂肪組織層内に注入または移植されるように圧送する。
【0052】
図1Aに示すように、基部24は(例えば、近端部25を介して)、電気外科発電機またはユニット(ESU)50に複数の導体を含むケーブル30を介して任意選択的に接続され得る。一実施形態では、ESU50は、プラズマ発生装置または機器と一緒に使用するように構成される。ESU50は、電気外科的処置(例えば、皮膚の引き締めまたは他の処置)中にプラズマ発生機器に電気外科用エネルギおよび/またはガスを供給するように構成される。図1Bに、本開示の実施形態によるESU50の正面図が示されている。一実施形態では、ESU50は、単一のハウジング1055に収容された高周波電気外科発電機1051およびガス流量コントローラ1053を含み得る。ESU50は、コマンド/データをESU50に入力しかつデータを表示するための、例えばタッチスクリーン等の入出力セクション1059を含むフロントパネル面1057を含み得る。フロントパネル1057は、対応するインジケータ1063を備えた様々なレベル制御部1061をさらに含み得る。さらに、ESU50は、オン/オフスイッチ1067、戻り電極レセプタクル1069、モノポーラ・フットスイッチング・レセプタクル1071、モノポーラ・ハンドスイッチング・レセプタクル1073、および、バイポーラ・ハンドスイッチング・レセプタクル1075を含み得るレセプタクルセクション1065を含み得る。ガス流量コントローラ1053は、ガスA入力レセプタクル1079およびガスB入力レセプタクル1081をさらに含み得るガスレセプタクル部1077を含む。ガス流量コントローラ1053は、切替スイッチまたは入力1085とディスプレイ1087とを含むユーザインタフェース部1083をさらに含み得る。切替スイッチまたは入力1085は、入力されるガスの種類の選択、入力されるガス混合物、入力されるガス混合物の組成および/または割合、ハンドピースまたはアプリケータに適用されるガスの流量等の選択を可能にする。図1Bは、単一のハウジング1055内に収容された高周波電気外科発電機1061およびガス流量コントローラ1053を示しているが、ガス流量コントローラ1053は、有線および/または無線のインタフェースを介してESU50と接続する別個の外部装置として提供されてもよいことを理解されたい。
【0053】
一実施形態では、ESU50は、組織インピーダンスを検出するための回路60を含む。脂肪移植手術中、カニューレ20の遠端部22が配置されているのが組織の脂肪層なのか組織の筋肉層なのかを判定するために、回路60が使用され得る。このようにして、ESU50とカニューレ20を使用することによって、筋肉層への脂肪注入に関連する危険性が回避され得る。
【0054】
例えば、図2を参照すると、本開示の一実施形態による回路60が示されている。回路60は、電圧制御交流電源101と、絶縁変圧器102と、ローパスフィルタ103と、増幅器またはスケーリングコンポーネント105と、アナログデジタル変換器(ADC)106と、少なくとも1つのプロセッサ(例えば、1つ以上のCPUおよび/またはFPGA)107と、ディスプレイおよびアラームモジュール108とを含む。回路60において、電流源101は、変圧器102の一次側巻線110に接続され、変圧器102の一次側巻線110と二次側巻線との間の所定の巻数比(例えば、1:1)で変圧器102を制御する。変圧器102の一次側110は、変圧器102の一次側電圧を増幅または拡大する増幅器105にさらに接続される。増幅された電圧は、ADC106によってアナログ信号からデジタルストリームに変換され、次いでデジタルストリームがプロセッサ107に供給される。プロセッサ107によって受信されたデジタルストリームに基づいて、プロセッサ107は、モジュール108を使用して、値を表示し、1つ以上の表示ランプを起動し、および/またはアラームを起動し得る。モジュール108がプロセッサ107を介して制御可能な1つ以上のディスプレイ、表示ランプおよび/またはスピーカを含み得ることを理解されたい。モジュール108の任意のディスプレイ、ランプおよびスピーカは、ESU50のハウジング1055の表面に配置され得る。さらに、モジュール108は、タッチスクリーン1059に表示される値、指示および/または警告を送信し得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、変圧器102の二次側巻線は、特定のタイプの無線周波数(RF)ノイズを抑制するように構成されたローパスフィルタ(LPF)103に接続される。例えば、LPF103は、ESU50がプラズマアプリケータを備えた電気外科発電機として使用される場合に使用され得る。ESU50がカニューレ20と共に使用される場合、LPFは、バイパス(例えば、代替電路が変圧器102を組織104に接続し得る)または除去され得る。LPF103は、患者組織104にさらに接続されるリード線または電極112、114に接続される。以下で、より詳細に説明するように、いくつかの実施形態では、カニューレ20は、回路60と共に使用される電極112、114等の1つ以上の電極を含み得る。
【0056】
電源101によって供給される電流が電極112、114を使用して組織104に供給されると、変圧器102の一次側110の電圧が変更される。組織104は、組織インピーダンスZを備え、プロセッサ107は、変圧器102の一次側110の電圧に基づいてこの組織インピーダンスZを特定するように構成されている。組織インピーダンスZが高い場合、変圧器102の一次側巻線110両端の電圧も高く、組織インピーダンスZが低い場合、電圧も低い。言い換えれば、一次側110の電圧は、組織インピーダンスZに関連付けられる。一次側電圧は、以下の式によって定義される。式中、Ivccsは、電源101から供給される定電流である。
Vpri=Ivccs×Z (1)
【0057】
プロセッサ107は、デジタルストリーム(すなわち、変圧器102の一次側110の電圧を示唆)を使用して、組織インピーダンスZを特定するように構成される。プロセッサ107は、プロセッサ107に接続されたメモリに格納されたルックアップテーブルを使用して組織インピーダンスを特定することもでき、ルックアップテーブルは、変圧器102の一次側110で検知された電圧をインピーダンスに関連付ける値を含む。ルックアップテーブルの値は、回路60および使用されるカニューレ20に対して較正されることを理解されたい。くつかの実施形態では、プロセッサ107は、上記の式(1)を含む1つ以上の式を使用して、変圧器102の一次側110の電圧に基づいてインピーダンスを以下のように特定する。
Z=Vpri/Ivccs (2)
例えば、変圧器102の一次側110の電圧と電流及び変圧器102の一次側110と二次側との間の既知の巻数比を使用して、変圧器102の二次側の電圧と電流、ひいては組織104の組織インピーダンスZを特定し得る。
【0058】
組織インピーダンスは、変圧器102の一次側110の測定電圧の非線形関数である。一般に、システム10は、8つの異なるインピーダンス値で較正され、測定電圧の読取値がキュービック補間関数に使用される。キュービック補間は、ルックアップテーブル係数として表され、ルックアップテーブル係数は、次に、このインピーダンスでの電圧読取値に基づいて、負荷インピーダンスの値を定義するためにプロセッサ107の計算で使用される。
【0059】
例示的なルックアップテーブルは、以下のように生成される。較正値UとUi+1との間のインピーダンスZの式は、以下によって与えられる。
Z=Z+A.(U-U+B.(U-U+C.(U-U+D. (3)
式中、A、B、C、Dは、補間係数、UにおけるZインピーダンス、U<Ui+1
プロセスの第1のステップは、上記の式(3)の補間係数(A、B、CおよびD)を特定することである。このプロセスでは、約30ペアの対応する電圧(U)とインピーダンス(Z)が測定される。電圧(U)およびインピーダンス(Z)の対応ペアは、既知のインピーダンスZを発電機回路60に印加し、対応する電圧Uの値を測定することによって確立される。このステップでは、30個の既知のZ値に対応する30個のU値が生成される。この多数の対応ペアのデータを用いて、補間係数(A、B、CおよびD)について式(3)を解き、A、B、CおよびDがどうなっていくのか確かめることができる。ルックアップテーブルを作成するプロセスを説明する目的で、表1に電圧UとインピーダンスZのペアを示す。表1の値は、実際の値ではなく、単に例示を目的とするものであることを理解されたい。
【表1】
上記の表1の値を使用して、30の方程式が生成される。例えば、Zi+1=Z+A(Ui+1-U)3+B(Ui+1-U)2+C(Ui+1-U)1+D、または、上記の数字を使用して
20=10+A(20)3+B(20)2+C(20)1+D
30=20+A(20)3+B(20)2+C(20)1+D
40=30+A(20)3+B(20)2+C(20)1+D
50=40+A(20)3+B(20)2+C(20)1+D
以下同様である。これにより、上記のような30の異なる式が得られる。これら30の式を使用して、補間係数A、B、C、Dを解くことができる。この例のために、補間係数が次の通りであると仮定する:A=20.0、B=24.5、C=30.2およびD=15.6。
【0060】
次に、発電機および/または回路60が較正される。各発電機について少なくとも8つの較正点が使用される。この例のために、発電機は、80オーム、180オーム、280オーム、380オーム、480オーム、580オーム、680オームおよび780オームという既知のインピーダンス(Z)を使用して較正されると仮定する。次いで、較正中の既知のインピーダンスZの各々に対応する電圧値Uを測定できる。例えば、較正の結果、以下の表2示すように、測定電圧Uに対する既知インピーダンスZのペアを生成し得る。
【表2】
これらの較正値を用いて、上記式(3)を確立された補間係数と共に使用して、表2に示す較正値の間にある発生する電圧に対応するインピーダンスを計算することができる。これらの計算の結果を使用して、表2の較正電圧間に発生するすべての電圧に対する対応するインピーダンスを含むルックアップテーブルを確立することができる。ある実施形態では、電圧値の範囲に対するルックアップテーブルが構築され得る。例えば、ルックアップテーブルは、20ボルト~21ボルトの間の電圧、21ボルト~22ボルトの間の電圧等に対して提供され得る。ルックアップテーブル内の数値の個数は、数値間に必要な分解能の量に基づいて確立される。
【0061】
使用中、次いで変圧器102の一次側110の電圧の実際の測定値に基づいてインピーダンスが特定される。実際の電圧測定値を使用して、適切なルックアップテーブル内のインピーダンスを突き止める。次に、以下で詳細に説明するように、特定されたインピーダンスを使用して、カニューレの遠端部が配置されているのが脂肪組織内なのか筋肉組織内なのかを判定する。
【0062】
インピーダンスが所定の閾値を下回る(又は上回る)とプロセッサ107によって判定された場合、プロセッサ107は、警告および特定されたインピーダンスを含む通知をモジュール108を介して表示し、および/または、プロセッサ107は、可聴アラームおよび/または1つ以上の表示ランプを起動させ得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、プロセッサ107は、デジタルストリームに基づいて1つ以上の電気的特性を特定し得る。例えば、プロセッサ107は、電圧および電流を特定し得る。次いで、プロセッサ107は、電圧と電流との間の位相シフトを特定し、組織104のインピーダンスZの抵抗RおよびリアクタンスXを特定し得る。例えば、
Z=Urms/Irms・riφ、R=Urms/Irms・cosφ、X=Urms/Irms・sinφ、 (4)
式中、Urmsは、測定された電圧、Irmsは、測定された電流、iは、虚数、φは、電圧と電流の間の位相シフト、Rは、抵抗、Xは、リアクタンスである。
プロセッサ107によって、測定電圧の波形および測定電流の波形の各々のゼロ交差を特定し、差を特定することによって、電圧と電流との間の位相シフトが特定され得ることを理解されたい。次に、以下に説明するように、特定されたインピーダンスを使用して、シャフト27の遠端部22が配置されている組織のタイプを判定し得る。
【0064】
一実施形態では、回路60は、所定の範囲、例えば10オーム~2520オームの間、の組織インピーダンスを認識するために使用され得る。回路60を含むESU50は、シャフト27の遠端部22が筋肉組織(例えば、420オーム未満のインピーダンス)に位置するか脂肪組織(例えば、1000オーム超のインピーダンス)に位置するかを認識するために、臀部脂肪移植中にカニューレ20と共に使用され得る。一実施形態では、プロセッサ107は、モジュール108の緑色の表示ランプを点灯させて、カニューレ20のシャフト27の遠端部22が脂肪組織内に配置されていることを示すように構成される。プロセッサ107は、モジュール108の赤色の表示ランプを点灯させて、モジュール108のスピーカを使用してアラームを鳴らして、カニューレ20のシャフト27の遠端部22が筋組織内に配置されていることを示すようにさらに構成される。以下で、より詳細に説明するように、他の実施形態では、プロセッサ107は、1つ以上の信号を送信して、カニューレ20等のカニューレ内/上に配置された表示ランプおよび/またはアラームをオンまたはオフにして、シャフト27の遠端部22が配置されているのが脂肪組織内か筋肉組織内かを示し得る。
【0065】
一実施形態では、回路60は、カニューレ20の電極に印加されるワット数の低い(例えば、1ワット未満)RF信号でインピーダンスモニタリングを実行する。一実施形態では、電源101の出力に関連する電流のピーク値は、10mAを超えないように選択される。電源101の出力の周波数は、本明細書に記載のインピーダンスモニタリングのために電源101の出力と同時に発電機50によって生成され得る、発電機50内の(例えば、プラズマ発生器またはアプリケータに電気外科用エネルギを供給するための)他の交流信号の周波数と十分に異なる(例えば、一致せず、十分に遠い)ように選択されることを理解されたい。例えば、発電機50は、電気外科手術および/またはプラズマ生成における発電機50の使用に関連する以下の信号および周波数を含み得る:搬送周波数(例えば、プラズマアプリケータを使用して患者に印加される発電機50のRF出力)、変調周波数(例えば、スイッチモード電源等の電源用の制御信号)、および、NEM(中性電極モニタリング)信号の回復に関連する周波数。電源101の出力の周波数が発電機50によって生成される他の信号に近すぎる(例えば、所定の範囲内にある)場合、かなりの量のノイズが生成され、回路60を使用して得られる測定値を損なうことがある。
【0066】
いくつかの実施形態では、電源101の出力が、神経筋刺激から十分に遠くなるように20kHz超であり得る。いくつかの実施形態では、電源101の出力が、20kHz~50kHzの範囲内であり得る変調周波数から十分に遠くなるように、50kHz超であり得る。いくつかの実施形態では、電源101の出力が、発電機50内の信号(RF出力又は搬送周波数)の最高ノイズイントロデューサ(noise introducer)から十分に遠くなるように、100kHz未満であり得る。一実施形態では、電源101の出力の選択周波数が、NEMの回復に関連する周波数(例えば、62.5kHz)およびRF出力または搬送周波数(例えば、100kHz)から十分に遠くなるように、100kHzである。一実施形態では、電源101の出力の選択周波数が、実質的に80~100kHzの範囲内である。上述の周波数値は、単なる例示であり、本開示の範囲から逸脱することなく他の値を使用することができることを理解されたい。いずれの場合でも、回路60の測定精度を維持し、ノイズ導入を低減するために、電源101の出力の周波数は、発電機50の信号によって生成されたすべての関連周波数から十分に離されるように選択される。
【0067】
一実施形態では、LPF103は、発電機50の信号の周波数によって回路60に導入されたノイズの一部をフィルタリングするように構成される。
【0068】
一実施形態では、脂肪移植手術中にシャフト27の遠端部22が筋肉組織内に位置するとプロセッサ107が判定した場合に、基部24を介したシャフト27への処理後の脂肪の圧送または注入を停止させるためにプロセッサ107が圧力制御装置12に信号を送信するように、プロセッサ107が通信モジュール109を介して圧力制御装置12に通信可能に接続される。このようにして、脂肪移植手術中に処理後の脂肪が筋肉組織内に注入されることが防止される。
【0069】
プロセッサ107と圧力制御装置12が通信モジュール109を介して有線および/または無線接続によって通信可能に接続され得ることを理解されたい。有線接続は、有線配線、例えば、パラレルまたはシリアルケーブル、RS232、RS485、USBケーブル、ファイアワイヤ(1394接続)ケーブル、イーサネット、および、適切な通信ポート構成を含み得るが、これらに限定されない。無線接続は、Bluetooth(商標)相互接続性、赤外線接続性、一般にWi-Fiまたは802.11.X(xは送信のタイプを示す)と呼ばれるコンピュータデジタル信号放送および受信を含む無線送信接続性、衛星送信または任意の他のタイプの通信プロトコル、スペクトラム拡散900MHzまたは他の周波数を含むデータを無線送信するために現存するまたは開発される通信アーキテクチャまたはシステム、Zigbee、および/または、任意のメッシュ対応無線通信を含むが、これらに限定されない様々な無線プロトコルのいずれかに基づいて機能し得る。
【0070】
以下に説明するように、カニューレ20は、モノポーラまたはバイポーラ配置のアクティブ電極とリターン電極で構成することができ、回路60は、いずれかの配置で使用され得る。
【0071】
本開示の実施形態による様々なカニューレが以下に説明されることを理解されたい。以下に説明する各カニューレでは、別途記載のない限り、図1Aに示すカニューレ20の対応する構成要素と同様の番号が付された各カニューレの構成要素は、上述の方法および特徴で構成されており、簡潔にするために以下では繰り返し説明しない場合がある。
【0072】
図3を参照すると、本開示の一実施形態による、ESU50に接続されたモノポーラ電極配置を有するカニューレ220が示されている。カニューレ220は、近端部221と、遠端部222と、孔228とを有するシャフト227を含む。シャフト227は、導電性材料で構成される。絶縁性シース229は、導電性シャフト227の遠位部分212が露出してシャフト227の端部222に第1のアクティブ電極を形成するように、シャフト227の外側を覆って配置される。基部224内で、シャフト227の近端部221が導電性ワイヤ231の端部に接続され、導電性ワイヤ231の反対側の端部は、ESU50の回路60に接続される。図3に示すシステムは、導電性ワイヤ232を介してESU50の回路60に接続された接地パッドまたはリターン電極214をさらに含む。例えば、一実施形態では、電極212は、ワイヤ231を介してモノポーラポート1073に接続され、リターン電極214は、ワイヤ232を介してリターン電極ポート1069に接続される。
【0073】
電極212、214は、ワイヤ231、232を介して、図2に示す変圧器102の二次側巻線に接続される。したがって、脂肪移植手術中にカニューレ220の端部212が皮下組織面に配置されると、回路60から受信された電圧信号が、カニューレ220の端部212が配置された組織面を介して電極212、214に印加され得る。上述したように、プロセッサ107は、変圧器102の一次側巻線110から受信された信号に基づいて、患者組織のインピーダンスを特定するように構成される。プロセッサ107は、上述したように、特定されたインピーダンスに基づいて、シャフト227の端部212が配置されているのが脂肪組織内なのか筋肉組織内なのかを判定するように構成される。
【0074】
図2では、露出されて電極212を形成するシャフト207の端部222が示されているが、本開示の他の実施形態では、電極212の位置を変更するために、端部222の代わりにシャフト207の他の部分が露出されてもよいことを理解されたい。
【0075】
カニューレ220は、バイポーラ配置に適合され得ることを理解されたい。例えば、図4を参照すると、本開示の一実施形態による、ESU50と共に使用するためのバイポーラ配置で構成されたカニューレ320が示されている。カニューレ312は、絶縁シース329によって覆われかつアクティブ電極を形成する露出した先端312を含む、導電性シャフト327を含む。リターン電極314が絶縁シース329の上に配置され(したがって、電極312から電気的に絶縁されている)、導電性ワイヤ332を介して回路60に接続される。一実施形態では、ワイヤ332がシース329の上に配置されて絶縁される。別の実施形態では、ワイヤ332は、シャフト327と接触せずにシース329に埋め込まれる。いずれの場合も、電極314は、リターン電極を形成する。電極312、322間の組織の特定されたインピーダンスを使用して、遠端部322が配置されているのが脂肪組織内なのか筋肉組織内なのかをプロセッサ107が判定できるように、電極312、314は、回路60の変圧器102の二次側巻線に接続される。一実施形態では、ワイヤ331、332は、図1Bに示すように、ESU50のバイポーラポート1075と嵌合するように構成されたコネクタに接続され得る。
【0076】
一実施形態では、上述のシャフト227、327は、非導電性または絶縁性の材料で作られてもよく、各カニューレ220、320のアクティブ電極212、312およびリターン電極214、314は、シャフト227、327の選択された位置に配置され得る。例えば、図5を参照すると、本開示による、非導電性シャフト427と電極412、414とを含むESU50と共に使用するためのカニューレ420のバイポーラ構成が示されている。この実施形態では、アクティブ電極412およびリターン電極414は、電極412が電極414に対して離れて配置された状態で、孔428から離れてシャフト427外側の周囲に配置される。電極412、428の各々は、シャフト427外側の周囲を巻くリングとして構成されてもよい。電極412は、ワイヤ431を介してESU50の回路60に接続され、電極414は、ワイヤ432を介してESU50の回路60に接続される。いくつかの実施形態では、ワイヤ412、414は、シャフト427の外側に配置され得る。他の実施形態では、ワイヤ412、414は、シャフト427の壁またはシャフト427の内部に埋め込まれ得る。回路60のプロセッサ107は、端部422が配置されているのが脂肪組織内なのか筋肉組織内なのかを上述の方法で判定し得る。
【0077】
電極412、414は、シャフト427に沿って様々な位置に配置され得ることを理解されたい。例えば、図6を参照すると、本開示による、ESU50と共に使用するためのカニューレ520が示されている。カニューレ520は、非導電性のシャフト527と電極512、514とを含む。電極512、514は、シャフト527の外側に配置され、電極512、514が遠端部522からほぼ同じ距離に配置された状態でシャフト527の周りで離間されている。電極512は、導電性ワイヤ531を介して回路60に接続され、電極514は、導電性ワイヤ532を介して回路60に接続される。回路60のプロセッサ107は、端部522が配置されているのが脂肪組織内なのか筋肉組織内なのかを上述の方法で判定し得る。
【0078】
上述したカニューレのいずれもが、導電性ワイヤおよび電極をESU50および回路60に接続するためのコネクタを含み得ることを理解されたい。一実施形態では、コネクタは、カニューレに関連するパラメータを記憶するように構成されたワンワイヤチップまたはメモリを含み得る。該メモリは、ESU50が第1の動作モードまたは第2の動作モードに入ることを可能にするためにプロセッサ107によって読み取られ得る。
【0079】
例えば、図7を参照すると、コネクタ550とケーブル560とを含むカニューレ520が示されている。ケーブル560は、ワイヤ531、532の一部を含み、コネクタ550を基部524に接続する。コネクタ550は、カニューレに関連する情報またはパラメータ(例えば、カニューレのモデルまたはタイプおよび任意の他の関連パラメータ)を記憶するように構成された少なくとも1つのメモリまたはワンワイヤチップ552を含む。コネクタ550は、ESU50のポートまたはレセプタクル62、例えば図1Bに示されるモノポーラポート1073またはバイポーラポート1075、に受け入れられるように構成される。コネクタ550は、少なくとも3つのピン(prong)を含んでおり、コネクタ550がESU50のレセプタクル62に接続されると、第1のピン554がワイヤ532を回路60の変圧器102に接続し、第2のピン556がメモリ552をプロセッサ107に接続し、第3ピンがワイヤ521を回路60の変圧器102に接続する。プロセッサ107は、ESU50を第1のモードに入らせるためにメモリ552上のパラメータを読み取るように構成され、ESU50は、回路60を使用してインピーダンス測定デバイスとして機能する。プラズマアプリケータがESU50に接続されると、プロセッサ107は、メモリ552を検出せず、したがってESU50は、第2のモードに入り、ESU50は、プラズマアプリケータに電気外科用エネルギ(いくつかの実施形態では、不活性ガス)を供給するための電気外科発電機として機能する。
【0080】
プロセッサ107によって読み取られ得る様々なタイプの情報がメモリ552に記憶され得ることを理解されたい。例えば、メモリ552は、電極512、514に印加されるエネルギに関する情報および/またはESU50および回路60が適切に機能して、カニューレ520と共に使用されるときに正確な判定を行うことを可能にする他の較正情報を含み得る。他の実施形態では、メモリ552は、読出し/書込み機能を有することができ、メモリ552は、カニューレが何回使用されたかを記憶して、その情報をプロセッサ107に供給し得る。
【0081】
上述したカニューレのいずれも、回路60のディスプレイ/アラームモジュール108を含むように構成され得ることを理解されたい。例えば、図8を参照すると、カニューレ520と同様に構成されたカニューレ620が示されている。カニューレ620は、ケーブル660とコネクタ650とを含み、ケーブル660は、カニューレ620の構成要素をESU50に電気的に接続するための複数の導電性ワイヤ(ワイヤ632、631を含む)を含む。コネクタ650は、ESU50のレセプタクル62に受け入れられるように構成される。カニューレ620は、少なくとも第1および第2の表示ランプ662、664と、少なくとも1つのアラームまたはスピーカ666とを含むモジュール660をさらに含む。モジュール660は、ケーブル660内の1つ以上の導体を介して回路60のプロセッサ107に接続され、いくつかの実施形態では、ESU50内の他の構成要素に接続される。プロセッサ107は、モジュール660内の各構成要素を制御するように構成される。遠端部622が脂肪組織内に配置されているとプロセッサ107が判定すると、表示ランプ662が点灯されて得る(例えば、緑色光)。遠端部622が筋肉組織内に配置されているとプロセッサ107が判定すると、移植手術を中断すること、および/または、患者組織からエンドシャフト627を引き抜くことをユーザに指示するために、表示ランプ664が点灯され(例えば、赤色光)、スピーカ666が起動されて警報音が発生され得る。この実施形態では、回路60は、モジュール108を取り外すように変更され得ることを理解されたい。
【0082】
上述したカニューレのいずれもが、回路60を含むように構成され得ることを理解されたい。例えば、図9を参照すると、本開示によるカニューレ520と同様に構成されたカニューレ720が示されている。カニューレ720は、回路60と同じ構成要素で構成された回路80を含むコネクタ750を含む。コネクタ750は、カニューレ720をエネルギ源70に接続するために、エネルギ源70のレセプタクル72に受け入れられるように構成される。エネルギ源70は、ESU50等のESUであってもよいし、任意の他のタイプのエネルギ源であってもよい。電源70は、ワイヤ731、732を介して回路80および電極712、714にエネルギを供給するように構成される。カニューレ720は、コネクタ750をカニューレ720に接続するためのケーブル760を含み、ワイヤ731、732は、ケーブル760内に部分的に配置される。この実施形態では、回路80は、回路60と同様に機能して、カニューレ720が電極712、714に近接する組織のインピーダンスをモニタリングし、遠端部722が配置されているのが脂肪組織内なのか筋肉組織内なのかを判定することを可能にする。図示されていないが、回路80は、カニューレ720の基部724に配置され得る。さらに、回路80をエネルギ源70に配置して独立型システムを作成し、電気外科発電機の必要性をなくすことができる。
【0083】
本開示の別の実施形態では、脂肪移植手術中にカニューレの遠端部が配置されているが脂肪組織内なのか筋肉組織内なのかを判定するために、電気インピーダンスではなく音響インピーダンスが使用され得ることを理解されたい。例えば、図10を参照すると、遠端部822に近接してシャフト827に沿って互いに所定の距離だけ離れて配置された音響トランスデューサ812、814を含むカニューレ820が示されている。トランスデューサの一方、例えば812は、少なくとも1つのプロセッサから受信した制御信号に応答して、所定の周波数および振幅または強度を有する音波を放出するように構成された音響エミッタとして動作または構成され得る。トランスデューサの他方、例えば814は、音波を受信し、音波を音波の特性(すなわち、周波数および振幅または強度)を示す電気信号に変換するように構成された音響レシーバとして動作または構成され得る。音波から変換された電気信号は、少なくとも1つのプロセッサに供給され得る。
【0084】
一実施形態では、カニューレ820は、トランスデューサ812、814(例えば、アナログデジタル変換器、増幅器等)を動作させるための少なくとも1つのプロセッサおよび他の構成要素を含む回路880を含む。回路880は、導電性ワイヤ831を介してトランスデューサ812に接続され、導電性ワイヤ832を介してトランスデューサ814に接続される。カニューレ820は、コネクタ850とケーブル860とを含み、ケーブル860は、1つ以上の導電性ワイヤを含む。回路880は、ケーブル860内の少なくとも1つの導電性ワイヤに接続される。コネクタ850は、回路880およびトランスデューサ812、814に電力を供給するためにエネルギ源(例えば、ESU50、エネルギ源70等)に受け入れられるように構成される。
【0085】
一実施形態では、回路880のプロセッサは、シャフト827の遠端部822が皮下組織面に挿入されると、所定の周波数および所定の振幅または強度を有する1つ以上の音波を放出するようにエミッタ812を制御するように構成される。音波は、レシーバ814によって受信され、電気信号に変換され、処理のために回路880のプロセッサに供給される。遠端部822が配置されている組織面内の異なる物質(例えば、血液、脂肪、筋肉等)を音波が通過すると、エミッタ812によって放出された音波は、減衰される。音波が伝播中の任意の時点で筋肉組織を通過する場合、音波(すなわち、音波の強度または振幅)は、音波が脂肪組織のみを通過する場合とは異なって減衰される。回路880内のプロセッサは、エミッタ812とレシーバ814との間の距離、放出された音波の強度、および、受信された音波の強度を知って、エミッタ812によって放出された音波がその伝播中に筋肉組織を通過したかどうかを判定するように構成される。例えば、特定の点、すなわち音波がエミッタを出る点、で振幅Aを有する音波を考える。その点から距離zだけ移動した後、すなわち、レシーバがエミッタから距離zだけ離れて配置された後、音波の振幅A(z)は、次のようになる。
A(z)=A-αZ (5)
式中、αは、メートル当たりのネーパ(Np/m)の周波数依存振幅減衰係数である。生体組織の減衰係数は、周波数によって異なり、通常dB/(cm×MHz)で報告される。NpとdBとの間の換算は、1Np≒8.686dBである。減衰係数(1MHzでのdB/cm)の値の例は、脂肪で0.61、筋肉で0.7~1.4である。上述したように、回路880のプロセッサは、エミッタ812とレシーバ814との間の距離z、放出された音波の振幅A、および、受信された音波の振幅A(z)を知って、音波が通過したのが脂肪組織内なのか筋肉組織内なのかを判定するように構成される。
【0086】
いくつかの実施形態では、プロセッサ107は、脂肪と筋肉等の異なる軟組織タイプ間で異なるように、トランスデューサ812、814と共に使用するために設計および較正された1つ以上の数式を実行する。回路880内のプロセッサは、該プロセッサが減衰に基づいて、エミッタ812によって放射されレシーバ814によって受信された音波が筋肉組織を通過したと判定すると、ユーザに(例えば、1つ以上の表示ランプおよび/または警報音を介して)注意喚起を行うように構成される。
【0087】
別の実施形態では、回路880内のプロセッサは、トランスデューサ812、814間を移動する波の減衰を使用するのではなく、音波の飛行時間(すなわち、音波がエミッタ812からレシーバ814に移動するのにかかる時間)をモニタリングするように構成される。飛行時間とトランスデューサ812、814間の既知の距離とを使用して、回路880内のプロセッサは、以下の式を使用して音波の速度を特定するように構成される。
c=z/t (6)
ここで、cは、材料中の音波の速度(メートル/秒)であり、zは、トランスデューサ812,814間の距離(メートル)であり、tは、飛行時間(秒)である。m/sでの音速の例示的な値は、脂肪では1450~1460、筋肉では1550~1600である。音波の速度は、音波が通過する材料密度の関数であるため、音波の速度に基づいて、プロセッサは、音波が筋肉組織を通過したか、または、脂肪組織のみを通過したかを判定するように構成される。回路880内のプロセッサは、該プロセッサが、音波の速度に基づいて、エミッタ812によって放出されてレシーバ814によって受信された音波が筋肉組織を通過したと判定した場合、例えば、音波の速度が1550~1600m/sの範囲内である場合、プローブの遠端部が筋肉組織内に配置されていることをユーザに(例えば、1つ以上の表示ランプおよび/または警報音を介して)注意喚起を行うように構成される。
【0088】
本開示の別の実施形態では、脂肪移植手術中にカニューレの遠端部が配置されているのが脂肪組織内なのか筋肉組織内なのかを判定するために、異なる軟組織タイプの熱エネルギ伝播および熱容量が使用され得ることを理解されたい。例えば、図11を参照すると、各々がシャフト927の遠位部分に配置された加熱素子912と温度センサ914とを含むカニューレ920が示されている。素子912がワイヤ931を介し、センサ914がワイヤ932を介して、回路980に接続される。回路980は、ケーブル960およびコネクタ950を介して、電力を受け取るためのエネルギ源(ESU50など)に接続される。回路980は、素子912およびセンサ914(例えば、アナログデジタル変換器、増幅器等)を作動するための少なくとも1つのプロセッサ及び他の構成要素を含む回路980を含む。
【0089】
軟組織タイプの熱容量は、互いに異なり、すなわち、同じ質量の組織に同じ量のエネルギが印加されても、熱容量が異なる場合は、各質量の温度上昇は、異なる。例えば、脂肪の熱容量は、血液および筋肉よりもはるかに低い。コントローラ980のプロセッサは、脂肪と筋肉との間の熱容量の違いを使用して、端部922が皮下組織面に配置されたときにセンサ914からの読取値に基づいて脂肪と筋肉とを区別する。以下の式を使用して、異なる熱容量を有する組織の温度上昇を計算することができる。
△T=Q/(C×m) (7)
式中、ΔTは、ケルビン(K)単位の温度上昇であり、Qは、ジュール(J)単位の適用熱エネルギであり、mは、キログラム(kg)単位の質量であり、Cは、J/(K×kg)単位の熱容量である。軟部組織の熱容量の例示的な値は、脂肪では2348J/(K×kg)、筋肉では3421J/(K×kg)の平均値で変化する。脂肪移植手術中にシャフト927の遠端部922が皮下組織面に配置されると、回路980のプロセッサは、加熱素子912に、シャフト927の端部922に隣接する組織を介して所定量のエネルギを有する熱パルスを送信させるように構成される。センサ914は、素子912が熱パルスを出力する前と後に、端部922に隣接して配置された組織の1つ以上の温度読取値を供給するように構成される。熱パルスが出力される前と後に端部922に隣接する組織のセンサ914によって測定された温度変化は、回路980内のプロセッサによって特定され、端部922が配置されているのが脂肪組織内なのか筋肉組織内なのかを判定するために使用される。例えば、端部922に隣接する組織の温度上昇が第1の範囲内にある場合、プロセッサは、端部922が脂肪に配置されていると判定し、端部922に隣接する組織の温度上昇が第2の範囲内にある場合、プロセッサは、端部922が筋肉に配置されていると判定し得る。熱容量範囲を決定するための上記の式に加え、第1および第2の範囲が実験によって決定されてもよく、また、これらの範囲は、カニューレのサイズ/形状によって変化し得ることを理解されたい。回路980内のプロセッサは、該プロセッサがシャフト927の遠端部922が筋肉組織内に配置されていると判定した場合、ユーザに(例えば、1つ以上の表示ランプおよび/または警報音を介して)注意喚起を行うように構成される。
【0090】
本開示の別の実施形態では、本開示の一実施形態による1つ以上の電極を含むコネクタを使用して、既存の脂肪移植カニューレ(例えば、筋肉/脂肪組織の識別機能を有しない)に筋肉/脂肪組織識別能力を追加し得る。例えば、図12を参照すると、筋肉/脂肪組織識別機能を含まない脂肪移植カニューレ1220が示されている。カニューレ1220は、端部1225、1226を備えた基部またはハンドル1224と、端部1221、1222を備えたシャフト1227と、孔1228とを含む。一実施形態では、本開示は、連結機構(例えば、クランプ、接着剤および/または固定部材等)を介してシャフト1227の一部(例えば、遠位部分)に結合されるように構成されたコネクタ1300、例えばシース、を提供する。コネクタ1300は、シャフト1227に取り外し可能に結合されてもよく、すなわち、コネクタ1300は、1回使用後に処分されるが、プローブ/カニューレは、新しいコネクタ1330と共に再利用され得ることを理解されたい。コネクタ1300は、本開示の他の実施形態に関して上述したように、カニューレ1220の端部1222に隣接する組織の少なくとも1つの特性(例えば、電気特性、音響特性、熱特性)を検知するように構成され得る電極1312、1314を含む。各電極1312、1314は、対応する導電性ワイヤ1331、1332を介してESU50の回路60に接続され、検知された少なくとも1つの特性を示す信号を回路60のプロセッサ107に供給し、カニューレ1220の先端1222が配置されているのが筋肉組織なのか脂肪組織なのかを上述の方法で判定する。このようにして、コネクタ1300は、カニューレ1200に本明細書に記載の筋肉/脂肪組織識別機能を追加できる。
【0091】
コネクタ1300をバイポーラ配置での使用に適したものにする2つの電極1312、1314を含むコネクタ1300が示されているが、本開示の他の実施形態では、コネクタ1300が単一の電極1312(例えば、アクティブ電極)を含むことができ、(例えば、上記の図3に関連して説明したように)モノポーラ配置で使用するためにリターン電極またはパッドが使用され得ることを理解されたい。別の実施形態では、電極1312、1314は、コネクタ1300なしでシャフト1127上に個別に配置され得る。この実施形態では、電極1312、1314は、シャフト1227の遠端部1222上を摺動することができ、ユーザが所望するように配置できるリング電極を含み得る。リング電極は、限定はしないが、接着剤を含む任意の既知の手段によってシャフト1227上の定位置にセットされ得る。次いで、各リング電極は、ワイヤ1331、1132を介して回路60に接続され得る。さらに、ワイヤ1331、1332は、ESU50の適切なポート、例えばモノポーラポート1073、バイポーラポート1075等、と嵌合するように構成された第2のコネクタ、すなわちコネクタ550、650、705と同様のコネクタ、に接続され得る。さらに、コネクタ1300および/または電極1312、1314(コネクタ1300と共に使用されない場合)は、例えば、電源および回路60がESU50を必要としないスタンドアロン装置である場合、ESU50の代わりに上述したように他の電源に接続され得ることを理解されたい。
【0092】
本開示の別の実施形態では、カニューレまたはプローブは、処理後の脂肪を患者の脂肪組織の層に挿入するための2つ以上の孔を含み得ることを理解されたい。例えば、図13を参照すると、3つの孔1428-1、1428-2および1428-3を含むカニューレ1420が示されている。3つの孔が示されているが、本開示は、シャフト1427の様々な位置に配置される少なくとも1つ以上の孔を想定するものであることを理解されたい。各孔1428は、例えば、第1のセンサ1412、例えば、センサ1412-1、1412-2、1412-3、および、第2のセンサ1414、例えば、1414-1、1414-2、1414-3、に関連付けられている。一実施形態では、センサ1412、1414の各々は、対応する孔1428の両側に配置される。次いで、第1のセンサ1412および第2のセンサ1414は、対応する孔1428が配置されているのが脂肪組織内なのか筋肉組織内なのかを判定するために回路1480に使用され得る。
【0093】
一実施形態では、カニューレ1420は、センサ1412、1414(例えば、アナログデジタル変換器、増幅器等)を動作させるための少なくとも1つのプロセッサおよび他の構成要素を含む回路1480を含む。回路1480は、少なくとも1つの導電性ワイヤ1431を介してセンサ1412に接続され、少なくとも1つの導電性ワイヤ1432を介してセンサ1414に接続される。各センサは、単芯または多芯ワイヤを介して回路1480に個別に接続され得ることを理解されたい。他の実施形態に関連して上述したように、回路1480は、カニューレ1420の基部1424、ESU50またはスタンドアロン装置に配置され得る。
【0094】
センサ1412、1414は、回路1480による脂肪組織と筋肉組織との識別を可能にできる任意のセンサを含むことができ、また、電極、音響トランスミッタ、音響レシーバ、加熱素子、温度センサ等を含む上述の任意のセンサを含むことができるが、これらに限定されない。回路1480は、電気インピーダンス、音響インピーダンス、熱容量等によるものを含む上述の方法の少なくともいずれかによって、孔1428が配置されているのが脂肪組織内なのか筋肉組織内なのかを識別または判定し得る。
【0095】
カニューレ1420は、コネクタ1450とケーブル1460とを含み、ケーブル1460は、1つ以上の導電性ワイヤを含む。回路1480は、ケーブル1460内の少なくとも1つの導電性ワイヤに接続される。コネクタ1450は、回路1480およびセンサ1412、1414に電力を供給するためにエネルギ源(例えば、ESU50、エネルギ源70等)に受け入れられるように構成される。
【0096】
一実施形態では、各孔は、ドア1491と、ドア1491を開閉するためのアクチュエータ(不図示)とを含み得る。各ドア1491は、回路1480によって個別に制御可能であってもよい。回路1480は、特定の孔に関連付けられたセンサが使用されて、特定の孔が筋肉組織内に配置されていると判定した場合、それぞれのドア1491を閉じることができる。回路1480が、特定の孔が脂肪組織内に配置されていると判定した場合、回路1480は、処理後の脂肪がこの孔を通って流れることができるように、対応するドア1491を開くことができる。例えば、図13を参照すると、回路1480は、センサ1412-1、1414-1、1412-3、1414-3によってそれぞれ検知された特性に基づいて、孔1428-1および孔1428-3が脂肪組織内に配置されていると判定し得る。さらに、回路1480は、センサ1412-2、1414-2によって検知された特性に基づいて、孔1428-2が筋肉組織内に配置されていると判定し得る。図13に示す例では、回路1480は、処理後の脂肪が孔1428-2から筋肉組織内に流れ込むことを妨げるためにドア1491を閉じることができるが、孔1428-1および1428-3に関連付けられたドアは開いたままで、処理後の脂肪は引き続きそこから流出できる。
【0097】
図14を参照すると、本開示の一実施形態による、脂肪移植を行うために筋肉および/または脂肪を識別するカニューレを使用する方法1000が示されている。図14の方法1000は、上述の脂肪移植カニューレのいずれかを使用して実行され得ることを理解されたい。ステップ1002において、脂肪吸引中に脂肪を採取するために、脂肪組織面の脂肪中に脂肪吸引カニューレの遠端部を配置する。ステップ1004において、採取された脂肪を脂肪移植に使用するために加工または処理する。ステップ1006において、処理後の脂肪を注入するために、脂肪カニューレ(例えば、上記のカニューレのいずれか)の遠端部を皮下組織面に挿入する。プロセッサ(例えば回路60、80等の回路内にある)は、ステップ1010において、カニューレの遠端部に隣接する組織に関連する少なくとも1つの特性(例えば、電気インピーダンス、音響インピーダンス、熱容量等)に基づいて、脂肪移植カニューレの遠端部が配置されているのが脂肪組織内なのか筋肉組織内なのかを判定するように構成されている。
【0098】
脂肪移植カニューレの遠端部が脂肪組織中に配置されているとプロセッサが判定した場合、(例えば、上述のように、表示ランプ、および/または、カニューレおよび/またはカニューレが接続されている発電機を介して)ユーザに注意喚起が行われ、ステップ1012において、脂肪移植カニューレのユーザは、脂肪移植片の注入に移行できる。その後、脂肪移植カニューレの遠端部が筋肉組織内に配置されないことを確保するために、組織に関連する少なくとも1つの特性を脂肪注入が終了するまでモニタリングするために、ステップ1008と1010が繰り返し実行される。あるいは、ステップ1010において、脂肪移植カニューレの遠端部が筋肉組織内に配置されているとプロセッサによって判定された場合、ステップ1014において、脂肪移植カニューレの遠端部が筋肉内に配置されていることをユーザに(例えば、上述のように、表示ランプ、および/または、脂肪移植カニューレおよび/またはカニューレが接続されている装置の回路から発せられる警報音を介して)注意喚起が行われる。このようにして、ユーザは、遠端部が配置されている筋肉組織への脂肪注入の開始しない、または、その継続を停止する。いくつかの実施形態では、ステップ1014において、プロセッサは、処理後の脂肪がカニューレを通って筋肉組織内に注入されるのを停止または阻止するために、脂肪移植カニューレに接続された圧力制御装置に1つ以上の信号を送信する。
【0099】
方法1000は、身体整形手術中に上述のESU50(例えば、回路60を含む)を使用して実行され得ることを理解されたい。
【0100】
例えば、図15を参照すると、本開示の一実施形態による、脂肪/筋肉識別カニューレ(例えば、ESU50と共に使用するための上記のカニューレのいずれか)、ESU50、および、プラズマアプリケータを使用して身体整形手術を実施するための方法1100が示されている。ステップ1102において、脂肪吸引カニューレ(すなわち、上記のカニューレのいずれか)の遠端部を脂肪または脂肪組織面内に配置して、脂肪吸引中に脂肪を採取する。ステップ1104において、採取された脂肪を、脂肪移植に使用するために加工または処理する。ステップ1106において、ESU50に接続され、脂肪と筋肉とを識別するように構成された脂肪移植カニューレ(すなわち、上記のカニューレのいずれか)の遠端部を方法1000のステップ1006~1014に従って皮下組織面に挿入して脂肪移植を実施するために使用する。いくつかの実施形態では、脂肪移植手術中にカニューレの遠端部が配置されているのが脂肪組織内なのか筋肉組織内なのかを判定するために、ESU50の回路60が使用され得る。あるいは、カニューレの遠端部が配置されているのが脂肪組織内なのか筋肉組織内なのかを判定するために、カニューレ内の回路が使用され得る。脂肪移植が完了した後、ステップ1108において、プラズマアプリケータが電気外科用エネルギを受け取るためにESU50に接続され、プラズマアプリケータは、ステップ1106で脂肪が注入または移植された組織領域の上の皮膚表面に対して皮膚の引き締め処置を実施するために使用される。ステップ1102~1108は、1回の処置中に実行されてもよいし、あるいは、特定のステップが、異なる時間にまたは別個の処置として実行されてもよいことを理解されたい。例えば、ステップ1102および1104は、脂肪を採取し、後で移植するために脂肪を加工または処理するために実行されてもよい。後続の処置中に、ステップ1106に記載されているように、処理後の脂肪を患者に移植してもよい。さらに、ステップ1108に関連して説明したように、皮膚の引き締め処置は、脂肪移植手術が行われた後の後続の処置として実施されてもよい。
【0101】
上記の実施形態は、脂肪移植に使用するための装置およびシステムを記載しているが、本開示の他の実施形態では、上記の装置およびシステムが、ユーザによって皮下組織内に盲目的に配置される任意のカニューレまたは装置と共に使用するために実装され得ることを理解されたい。例えば、上記の装置およびシステムは、脂肪吸引カニューレおよび(例えば、浸潤麻酔を配置するために使用される)浸潤カニューレのために、それらが適切な位置にあるということをユーザに示すために実装できる。
【0102】
図示および記載された様々な特徴は、交換可能であり、すなわち、一実施形態に示された特徴が別の実施形態に組み込まれ得ることを理解されたい。
【0103】
本開示は、その特定の好ましい実施形態を参照して図示および説明されてきたが、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更を行うことができることが当業者には理解されよう。
【0104】
さらに、上記の本文は、多数の実施形態の詳細な説明を記載しているが、本発明の法的範囲は、本特許の最後に記載された特許請求の範囲の文言によって定義されることを理解されたい。詳細な説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、すべての可能な実施形態を説明するものではなく、すべての可能な実施形態を説明することは不可能ではないにしても実際的ではない。本特許の出願日後に開発された現在の技術または技術のいずれかを使用して、多数の代替実施形態を実施することができ、これらは依然として特許請求の範囲内に含まれる。
【0105】
「本明細書で使用される場合、用語「______」は、...を意味するようにここに定義される」という文または同様の文を使用して本特許で明示的に用語が定義されていない限り、その用語の意味を、明示的または黙示的に、その平易な意味または通常の意味を超えて制限する意図はないということ、また、そのような用語は、本特許の任意のセクションでなされた任意の記述(特許請求の範囲の文言を除く)に基づいて範囲が限定されると解釈されるべきではないということも理解されたい。本特許の最後の特許請求の範囲に記載されている任意の用語が単一の意味と一致する方法で本特許において言及される限りにおいて、そのような言及は読者を混乱させないように明確にするためにのみ行われるものであり、そのような特許請求の範囲の用語が、暗示または他の方法で、その単一の意味に限定されることは意図しない。最後に、いずれの構造も記載せずに「手段」という単語と機能を列挙することによって構成要素(claim element)が定義されない限り、構成要素の範囲は、35U.S.C.§112の第6段落の適用に基づいて解釈されることを意図しない。

図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】