(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】長寿命触媒による酸化的エステル化の方法及び触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/52 20060101AFI20230428BHJP
C07C 69/54 20060101ALI20230428BHJP
C07C 67/22 20060101ALI20230428BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230428BHJP
【FI】
B01J23/52 Z
C07C69/54 Z
C07C67/22
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022551544
(86)(22)【出願日】2021-03-15
(85)【翻訳文提出日】2022-09-20
(86)【国際出願番号】 US2021022283
(87)【国際公開番号】W WO2021188403
(87)【国際公開日】2021-09-23
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リンバッハ、カーク ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】フリック、クリストファー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】リー、ウェンシェン
(72)【発明者】
【氏名】サスマン、ヴィクター ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】クラプチェトフ、ドミトリー エー.
(72)【発明者】
【氏名】ヘロン、ジェフリー エー.
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC10A
4G169BC10B
4G169BC32A
4G169BC33A
4G169BC33B
4G169BC50A
4G169BC50B
4G169BC69A
4G169BD05A
4G169BD05B
4G169CB17
4G169CB75
4G169DA06
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EC27
4G169FC08
4H006AA02
4H006BA05
4H006BA06
4H006BA10
4H006BA55
4H006KA17
4H039CA66
4H039CE90
(57)【要約】
貴金属粒子と、チタン含有粒子と、を含む触媒。貴金属粒子及びチタン含有粒子は、担体の外表面に配置される。貴金属粒子の総重量のうち、少なくとも20重量%が、少なくとも1つのチタン含有粒子と隣接する。貴金属粒子の平均直径は15nm未満であり、触媒の平均直径は、少なくとも200ミクロンである。触媒を用いて、メタクロレイン及びメタノールからメタクリル酸メチルを調製する方法も開示される。
【選択図】
図2C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属粒子と、チタン含有粒子と、を含む触媒であって、前記貴金属粒子及び前記チタン含有粒子は、担体の外表面に配置され、前記貴金属粒子の総重量のうち、少なくとも20重量%が、少なくとも1つのチタン含有粒子と隣接し、前記貴金属粒子の平均直径は15nm未満であり、前記触媒の平均直径は、少なくとも200ミクロンである、触媒。
【請求項2】
前記貴金属粒子は、金及びパラジウムから選択される、少なくとも1つの貴金属を含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記貴金属粒子は金を含む、請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
前記チタン含有粒子は酸化チタンを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項5】
前記担体はシリカを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項6】
前記貴金属粒子の総重量のうち、少なくとも25重量%が、平均直径15nm未満の貴金属粒子の単粒子又は弱凝集体として存在する、請求項1~5のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項7】
前記貴金属粒子の総重量のうち、少なくとも40重量%が、平均直径15nm未満の貴金属粒子の弱凝集体の単粒子として存在する、請求項6に記載の触媒。
【請求項8】
前記貴金属粒子の総重量のうち、少なくとも40重量%が、少なくとも1つのチタン含有粒子に隣接する、請求項1~7のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項9】
前記チタン含有粒子の平均直径は、前記貴金属粒子の平均直径の5倍未満である、請求項1~8のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項10】
前記貴金属粒子は金を含み、1000時間の酸化的エステル化反応における触媒の使用の後、前記貴金属粒子の総重量のうち、少なくとも25重量%の平均直径が15nm未満である、請求項1~9のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項11】
メタクロレイン及びメタノールからメタクリル酸メチルを調製するための方法であって、請求項1~10のいずれか一項に記載の触媒の存在下で、メタクロレイン、メタノール、及び酸素を含む混合物を反応器内で接触させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタクロレイン及びメタノールからメタクリル酸メチルを調製するための触媒及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒の外側領域内で濃縮された貴金属を有する不均一触媒が知られている。例えば、メタクリル酸メチルの製造に使用するための米国特許第6,228,800号を参照されたい。
【0003】
国際公開第2019/057458号には、触媒粒子の存在下で液相において不均一触媒反応により、アルデヒド類からカルボン酸エステルを調製する方法が開示されている。触媒粒子は、0.1重量%~3重量%の金と、25重量%~99.8重量%のTiO2と、0重量%~50重量%の酸化シリコンと、0重量%~25重量%のAl2O3と、0重量%~25重量%の、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属及び/又はジルコニウムのうちの少なくとも1つの酸化物と、0重量%~20重量%の、酸化鉄、酸化亜鉛、及び酸化コバルトからなる群から選択される少なくとも1つの酸化物と、0重量%~5重量%の少なくとも1つの更なる成分と、からなる。触媒は、好ましくは、金及びTiO2を主として、又は、それらのみで構成される。
【0004】
しかしながら、より長期間にわたって効果及び活性を発揮する、メタクリル酸メチルを製造するための改善された触媒及び方法に対する需要がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一形態は、貴金属粒子と、チタン含有粒子と、を含む触媒であって、貴金属粒子及びチタン含有粒子は、担体の外表面に配置され、貴金属粒子の総重量のうち、少なくとも20重量%が、少なくとも1つのチタン含有粒子と隣接し、貴金属粒子の平均直径は15nm未満であり、触媒の平均直径は、少なくとも200ミクロンである、触媒に関する。
【0006】
本発明の別の形態は、メタクロレイン及びメタノールからメタクリル酸メチルを調製する方法に関し、この方法は、触媒の存在下で、メタクロレイン、メタノール、及び酸素を含む混合物を反応器内で接触させることを含む。触媒は、貴金属粒子と、チタン含有粒子と、を含み、貴金属粒子及びチタン含有粒子は、担体の外表面に配置され、貴金属粒子の総重量のうち、少なくとも20重量%が、少なくとも1つのチタン含有粒子と隣接し、貴金属粒子の平均直径は15nm未満であり、触媒の平均直径は、少なくとも200ミクロンである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】本発明の実施形態に係る触媒を、異なる倍率で示す走査TEM画像である。
【
図1B】本発明の実施形態に係る触媒を、異なる倍率で示す走査TEM画像である。
【
図2A】本発明の実施形態に係る触媒を、異なる倍率で示す走査TEM画像である。
【
図2B】本発明の実施形態に係る触媒を、異なる倍率で示す走査TEM画像である。
【
図2C】本発明の実施形態に係る触媒を、異なる倍率で示す走査TEM画像である。
【
図3】本発明の実施形態に係る触媒のSEM画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
別途記載のない限り、すべての組成比率は重量パーセント(重量%)であり、すべての温度は℃である。別途記載のない限り、平均は、算術平均である。ここで定義されるように、「貴金属」は、金、プラチナ、イリジウム、オスミウム、銀、パラジウム、ロジウム、ルテニウムのうちのいずれかである。2つ以上の貴金属が触媒に存在し得、その場合、制限がすべての貴金属の合計に適用される。「触媒中心」は、触媒粒子の重心、つまり、すべての座標方向のすべての点の平均位置である。直径は、触媒の中心を通過する任意の直線寸法であり、平均直径は、すべての可能な直径の算術平均である。アスペクト比は、最長の直径と最短の直径との比率である。特に記載のない限り、粒子の平均直径は、触媒が調製された後かつ触媒が使用される前の粒子の平均直径のことを指す。エイジド触媒とは、使用歴のある触媒のことである。
【0009】
本発明の触媒は、触媒粒子を形成するための担体の外表面に配置される、貴金属粒子及びチタン含有粒子を含む。
【0010】
貴金属粒子及びチタン含有粒子は、好ましくは、担体の外表面にて分散される。理論に束縛されるものではないが、粒子表面に共有結合的に結合していない粒子は、粒子表面周辺で移動し得ると考えられている。貴金属粒子の活性は、粒子の大きさに基づいて、大きく変化し得る。例えば、金粒子の場合、その粒子の大きさが大きくなるにつれ、触媒としての活性が低くなる。粒子が移動すると、貴金属粒子が凝集することが考えられ、これにより、活性が失われ得る。発明者らは、貴金属粒子をチタン含有粒子中に分散させることにより、触媒活性が失われることを驚くほど最小限に押さえ、長持ちする触媒を提供することができることを見出した。
【0011】
好ましくは、貴金属粒子の総重量のうち、少なくとも20重量%がチタン含有粒子に隣接する。換言すれば、貴金属粒子の総重量のうち、少なくとも20重量%が、物理的にチタン含有粒子と接触している。より好ましくは、貴金属粒子の総重量のうち、少なくとも30重量%が、チタン含有粒子に隣接する。更により好ましくは、貴金属粒子の総重量のうち、少なくとも40重量%がチタン含有粒子に隣接し、また更により好ましくは、貴金属粒子の総重量のうち、少なくとも50重量%がチタン含有粒子に隣接する。
【0012】
貴金属含有粒子の平均直径は、15nm未満、好ましくは、12nm未満、より好ましくは、10nm未満、更により好ましくは、8nm未満である。
【0013】
好ましくは、貴金属は金又はパラジウムであり、より好ましくは、貴金属は金を含む、又は、金からなる。好ましくは、貴金属は、貴金属の総量に対して、少なくとも75重量%の金を含む。より好ましくは、貴金属は、貴金属の総量に対して、少なくとも85重量%の金を含む。
【0014】
チタン含有粒子は、チタン元素又は酸化チタンTiOxを含み得る。好ましくは、チタン含有粒子は酸化チタンを含む。
【0015】
チタン含有粒子の平均直径は、好ましくは、貴金属粒子の平均直径の5倍未満、より好ましくは、貴金属粒子の平均直径の4倍未満、更により好ましくは、貴金属粒子の平均直径の3倍未満、更により好ましくは、貴金属粒子の平均直径の2倍未満、更により好ましくは、貴金属粒子の平均直径の1.5倍未満である。
【0016】
チタン含有粒子の量に対する貴金属粒子の重量は、1:1~1:20の範囲であり得る。好ましくは、貴金属粒子のチタン含有粒子に対する重量比は、1:2~1:15、より好ましくは、1:3~1:10、更により好ましくは、1:3~1:6の範囲である。
【0017】
好ましくは、担体は、酸化的エステル化反応器内での長期間の使用に耐えうる、耐火酸化物の粒子である。長期間の使用に耐えうる材料であれば、使用時の破砕や粉砕を回避することができる。例えば、酸化チタン(TiOx)は、酸に対する耐性に優れた担体であるが、表面積が大きくなると、機械的に弱くなる場合がある。
【0018】
好ましくは、担体は、γ-、δ-、若しくはθ-アルミナ、シリカ、マグネシア、ジルコニア、ハフニア、バナジア、酸化ニオブ、酸化タンタル、セリア、イットリア、酸化ランタン、又はこれらの組み合わせの粒子である。好ましくは、担体は、γ-、δ-、又はθ-アルミナ、シリカ、及びマグネシアを含むか、それらからなるか、若しくは、それらから実質的になる。より好ましくは、担体はシリカを含むか、それからなるか、若しくは、それから実質的になる。ここで担体の説明に用いる表現として、「から実質的になる」は、担体の機械的強度を低下させ得る材料の存在を排除する。あるいは、「から実質的になる」は、担体が、担体の総重量に対して、記載の材料を少なくとも95重量%含んでいることを意味する。
【0019】
好ましくは、担体は、10m2/g超、好ましくは30m2/g超、好ましくは50m2/g超、好ましくは100m2/g超、好ましくは120m2/g超の表面積を有する。
【0020】
好ましくは、触媒粒子のアスペクト比は、10:1以下、好ましくは、5:1以下、更に好ましくは、3:1以下である。触媒粒子の好ましい形状としては、これらに限定されないが、球、円柱、直方体、輪、多葉形状(例えば、クローバー断面)、複数の穴及び「ワゴンホイール」を有する形状、好ましくは球が挙げられる。不規則な形状も使用され得る。
【0021】
好ましくは、貴金属粒子及びチタン含有粒子の少なくとも90重量%は、触媒体積(すなわち、平均触媒粒子の体積)の外側70%、好ましくは触媒体積の外側60%、好ましくは外側50%、好ましくは外側40%、好ましくは外側35%、好ましくは外側30%、好ましくは外側25%である。好ましくは、任意の粒子形状の外部体積は、外部表面に垂直な線に沿って測定された、その内部表面からその外部表面(触媒粒子の表面)まで一定の距離を有する体積に対して計算される。例えば、球形粒子の場合、体積の外側x%は球形シェルであり、その外表面は粒子の表面であり、その体積は球全体の体積のx%である。好ましくは、貴金属粒子及びチタン含有粒子の少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも97重量%、好ましくは少なくとも99重量%は、触媒の外部体積にある。好ましくは、貴金属粒子及びチタン含有粒子の少なくとも90重量%(好ましくは少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも97重量%、好ましくは少なくとも99重量%)は、触媒直径の30%以下、好ましくは25%以下、好ましくは20%以下、好ましくは15%以下、好ましくは10%以下、好ましくは8%以下の表面からの距離内にある。表面からの距離は、表面に垂直な線に沿って測定される。好ましくは、貴金属粒子及びチタン含有粒子は、担体粒子上に卵殻構造を形成する。卵殻層は、500ミクロン以下、好ましくは、250以下、より好ましくは、100ミクロン以下の厚みを有していてもよい。
【0022】
好ましくは、触媒粒子の平均直径は、少なくとも60ミクロン、好ましくは少なくとも100ミクロン、好ましくは少なくとも200ミクロン、好ましくは少なくとも300ミクロン、好ましくは少なくとも400ミクロン、好ましくは少なくとも500ミクロン、好ましくは少なくとも600ミクロン、好ましくは少なくとも700ミクロン、好ましくは少なくとも800ミクロンであり、好ましくは30mm以下、好ましくは20mm以下、好ましくは10mm以下、好ましくは5mm以下、好ましくは4mm以下である。担体の平均直径及び最終的な触媒粒子の平均直径には、大幅な違いはない。
【0023】
好ましくは、貴金属及び担体の百分率としての貴金属の量は、0.2~5重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも0.8重量%、好ましくは少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも1.2重量%であり、好ましくは4重量%以下、好ましくは3重量%以下、好ましくは2.5重量%以下である。
【0024】
少なくとも一実施形態によれば、貴金属粒子は金を含み、チタン含有粒子は酸化チタンを含み、担体はシリカである。
【0025】
好ましくは、本発明の触媒は、酸化的エステル化反応触媒として使用される際、長期間にわたって高い活性を維持する。好ましくは、触媒は、100時間の使用、より好ましくは、500時間の使用、更により好ましくは、1,000時間の使用、また更により好ましくは、5,000時間の使用、それ以上により好ましくは、10,000時間の使用を経た後も、初期活性の少なくとも75%を維持する。あるいは、触媒は、以下の実施例において記載するシミュレーション方法を実施した際、100時間のシミュレーション使用、より好ましくは、500のシミュレーション使用、更により好ましくは、1,000時間のシミュレーション使用、また更により好ましくは、5,000時間のシミュレーション使用、それ以上により好ましくは、10,000時間のシミュレーション使用を経た後も、初期活性の少なくとも75%を維持する。より好ましくは、触媒は、実際の使用あるいはシミュレーション使用において、100時間、500時間、1,000時間、5,000時間、又は10,000時間を越えても、初期活性の少なくとも80%を維持する。更により好ましくは、触媒は、実際の使用あるいはシミュレーション使用において、100時間、500時間、1,000時間、5,000時間、又は10,000時間を越えても、初期活性の少なくとも85%を維持する。また更により好ましくは、触媒は、実際の使用あるいはシミュレーション使用において、100時間、500時間、1,000時間、5,000時間、又は10,000時間を越えても、初期活性の少なくとも90%を維持する。また更により好ましくは、触媒は、実際の使用あるいはシミュレーション使用において、100時間、500時間、1,000時間、5,000時間、又は10,000時間を越えても、初期活性の少なくとも95%を維持する。ここに記載される活性は、以下の実施例に説明する通り、時間-触媒のkgあたりのMMAのモル数で表される時空収率(space time yield、STY)として定義される。
【0026】
好ましくは、触媒は、担体の存在下で金属塩の水溶液から貴金属及びチタンを沈殿させることにより生成される。好ましい一実施形態では、触媒は、好適な貴金属前駆体塩及びチタン塩の水溶液を多孔性無機酸化物に添加して細孔を溶液で充填し、次いで水を乾燥により除去する初期湿潤技法によって製造される。次いで、得られた材料は、焼成、還元、又は貴金属塩及びチタン塩を金属若しくは金属酸化物に分解するための当業者に既知の他の前処理により完成触媒に変換される。好ましくは、少なくとも1つのヒドロキシル又はカルボン酸置換基を含むC2~C18チオールが、溶液中に存在する。好ましくは、少なくとも1つのヒドロキシル又はカルボン酸置換基を含むC2~C18チオールは、2~12個、好ましくは2~8個、好ましくは3~6個の炭素原子を有する。好ましくは、チオール化合物は、合計で4つ以下、好ましくは3つ以下、好ましくは2つ以下のヒドロキシル及びカルボン酸基を含む。好ましくは、チオール化合物は、2個以下、好ましくは1個以下のチオール基を有する。チオール化合物がカルボン酸置換基を含む場合、それらは酸形態、共役塩基形態、又はこれらの混合物で存在し得る。特に好ましいチオール化合物には、チオリンゴ酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、2-メルカプトエタノール、及び1-チオグリセロールが含まれ、それらの共役塩基も含まれる。
【0027】
本発明の一実施形態では、触媒は、析出沈殿により生成され、ここで、多孔質無機酸化物が好適な貴金属前駆体塩及びチタン塩を含有する水溶液に浸漬され、次いで、それらの塩は、溶液のpHを調整することにより無機酸化物の表面と相互作用される。次いで、得られた処理済み固体を(例えば濾過により)回収し、次いで、貴金属塩及びチタン塩を金属又は金属酸化物に分解するための当業者に知られている、焼成、還元、又は他の前処理によって完成触媒に転化される。
【0028】
好ましくは、メタクリル酸メチル(methyl methacrylate、MMA)を製造するためのプロセスは、酸化的エステル化反応器(oxidative esterification reactor、OER)内で実施される。触媒粒子は、スラリー又は触媒床、好ましくは触媒床内に存在し得る。触媒床内の触媒粒子は、典型的には、固体壁及びスクリーン又は触媒担体グリッドによって適所に保持される。いくつかの構成では、スクリーン又はグリッドは、触媒床の両端にあり、固体壁は、側面(複数可)にあるが、いくつかの構成では、触媒床は、完全にスクリーンで囲まれ得る。触媒床の好ましい形状は、円柱、直方体、及び円柱シェルを含み、好ましくは、円柱である。OERは、メタクロレイン、メタノール、及びMMAを含む液相と、酸素を含む気相と、を更に含む。液相は、副生成物、例えば、メタクロレインジメチルアセタール(methacrolein dimethyl acetal、MDA)及びイソ酪酸メチル(methyl isobutyrate、MIB)を更に含み得る。好ましくは、液相の温度は、40~120℃であり、好ましくは少なくとも50℃、好ましくは少なくとも60℃であり、好ましくは110℃以下、好ましくは100℃以下である。好ましくは、触媒床は0~2,000psig(101kPa~14MPa)、好ましくは2,000kPa以下、好ましくは1,500kPa以下の圧力にある。
【0029】
OERは、典型的には、メタクリル酸及び未反応のメタノールと共にMMAを生成する。好ましくは、メタノール及びメタクロレインを、メタノール:メタクロレインのモル比を1:10~100:1、好ましくは、1:2~20:1、好ましくは、1:1~10:1として、反応器に投入する。好ましくは、触媒床は、触媒の上方及び/又は下方に不活性材料を更に含む。好ましい不活性材料としては、例えば、アルミナ、粘土、ガラス、炭化ケイ素、及び石英が挙げられる。好ましくは、不活性材料は、触媒の平均直径と同等あるいはそれ以上の平均直径を有しており、好ましくは、20mm以下である。好ましくは、反応生成物をメタノール回収蒸留塔に投入し、これにより、メタノール及びメタクロレインを多量に含む塔頂流(overhead stream)が生成される。好ましくは、塔頂流は、OERに戻され、再利用される。メタノール回収蒸留塔からの塔底流(bottoms stream)は、MMA、MDA、メタクリル酸、塩、及び水を含む。本発明の一実施形態では、MDAは、MMA、MDA、メタクリル酸、塩、及び水を含む媒体中で加水分解される。MDAは、メタノール回収蒸留塔からの塔底流中で、加水分解され得る。塔底流は、MMA、MDA、メタクリル酸、塩、及び水を含む。別の実施形態では、MDAは、メタノール回収塔からの塔底流から分離された有機相中で加水分解される。MDAの加水分解に十分な水が存在することを確実にするために、有機相に水を添加する必要があり得る。これらの量は、有機相の組成から容易に決定され得る。MDA加水分解反応器の生成物は、相分離され、有機相は、1つ以上の蒸留塔を通過して、MMA生成物並びに軽質及び/又は重質の副生成物を生成する。別の実施形態では、加水分解は、蒸留塔自体の中で実施することができる。
【0030】
好ましい一実施形態は、リサイクルループ内に冷却能力を備えたリサイクル反応器である。好ましい別の実施形態は、反応器間の冷却及び混合能力を備えた一連の反応器である。
【0031】
好ましくは、反応器出口の酸素濃度は、少なくとも0.5モル%、好ましくは、少なくとも2モル%、好ましくは、少なくとも3モル%であり、好ましくは7モル%以下、好ましくは6.5モル%以下、好ましくは6モル%以下である。
【0032】
酸化的エステル化のための固定床反応器の好ましい一実施形態は、トリクル床反応器であり、これは触媒の固定床を含有し、気体及び液体供給物の両方を下向き方向に反応器に通す。トリクルフロー中では、気相は連続流体相である。したがって、固定床の上方の反応器の上部にあるゾーンは、それらのそれぞれの蒸気圧で窒素、酸素、及び揮発性液体成分の蒸気相混合物で充填されることになる。典型的な動作温度及び圧力(50~90℃及び60~300psig(400~2,000kPa)では、ガス供給が空気である場合、この蒸気混合物は、可燃性エンベロープ内部にある。したがって、点火源のみが爆燃を開始するのに必要とされ、それにより、一次格納容器の損失、並びに近傍の物理的なインフラストラクチャ及び人員に損害を与える可能性がある。プロセスの安全性の考慮事項に対処するために、可燃性ヘッドスペース雰囲気を回避しながらトリクル床反応器を動作させるための手段は、蒸気ヘッドスペース内の酸素濃度が限界酸素濃度(limiting oxygen concentration、LOC)を下回ることを確実にするために十分に低い酸素モル画分を含有する気体供給での動作である。
【0033】
懸念される燃料混合物、温度、及び圧力には、LOCの知識が必要である。LOCが温度及び圧力の増加と共に減少するので、メタノールが他の2つの重要な燃料(メタクロレイン及びメタクリル酸メチル)よりも低いLOCを与えることを考えると、保守的な設計は、最高の期待動作温度及び圧力でLOC未満の組成を確実にする供給酸素と窒素との比率を選択する。例えば、最大100℃及び275psig(2MPa)で動作する反応器の場合、窒素中の供給酸素濃度は7.4モル%を超えてはならない。
【実施例】
【0034】
実施例1
単一パス固定床気泡塔反応器動作:
20重量%メタクロレイン、200ppm抑制剤、及び残りがメタノールからなる供給物を、40g/時間の速度で、ホウケイ酸ガラスビーズの短い前部を含む3/8インチ(9.5mm)ステンレス鋼管状反応器に供給し、続いて5gの触媒を供給した。触媒1を利用した。窒素中に8%の酸素を含有するガスも、通気孔内に4.5%O2を得るのに十分な速度で反応器に供給した。反応器は、60℃及び160psig(400kPa)で動作した。反応器の生成物は気液分離器に送られ、蒸気は液戻りを有する凝縮器に送られ、非凝縮性ガスは通気孔に進んだ。結果を以下の表に記載する。触媒1及び触媒8について、この様式で行った。
【0035】
触媒1の調製:
触媒1を、出発材料として20gのFuji Silysia Chemical,Ltd.製CARiACT Q-10シリカ担体を使用し、かつその担体材料にチタンを添加した初期湿潤技法によって調製した。具体的には、10.5gのチタンイソプロポキシドを3gの氷酢酸と共に回転装置内の触媒に添加し、溶液の担体材料への均一な分散を確実にした。添加時の溶液は40℃であった。その後、修飾された担体材料を、わずかな真空下で、60℃で4時間乾燥させ、その後、5℃/分で周囲温度から125℃まで上昇させて1時間保持し、その後、5℃/分で最大250℃まで上昇させて1時間保持し、その後、5℃/分で350℃まで上昇させて1時間保持し、最後に5℃/分で450℃まで上昇させて4時間保持することによって、周囲圧力下、空気中で焼成した。その後、40℃で10gの脱イオン水中0.83gの金チオ硫酸ナトリウムを利用する初期湿潤技法によって、金を担体に添加した。結果として生じた触媒を乾燥させ、上記と同じ加熱プロファイルを使用して空気中で焼成した。触媒のエネルギー分散分光法(energy-dispersive spectroscopy、EDS)を装備した走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)を用いた分析により、Ti及びAuの両方の卵殻析出が存在し、Tiが析出した場所にのみAuが優先的に存在することが明確に示される。Ti及びAu卵殻の厚さが約50ミクロン以下であることが分かった。直径1mmの触媒の外側50ミクロンに10モル%の推定配合で、チタンの局部配合がTi/(Ti+Si)として最大40モル%と推定される。
【0036】
実施例2
バッチリサイクル固定床気泡塔反応器動作:
10重量%のメタクロレイン、200ppmの抑制剤、及び残りがメタノールを含む150gの供給溶液を調製し、ガス解放容器として機能する300mLのParr(登録商標)反応器に入れた。容器の液体を約20℃の温度で維持した。液体供給物を、ガス解放容器から垂直に配向された固定床反応器の底部内に7mL/分でポンプ注入した。空気と窒素ガスを混合して7.8モル%の酸素を得て、液体供給物と混合した後に固定床反応器に入れた。固定床反応器は、外部加熱器を使用して60℃で維持したジャケット付き1/4インチ(6.4mm)ステンレス鋼管であった。反応器自体に2mmのガラスビーズを装填して管の約18インチ(45.7cm)を充填し、次いで触媒を充填した。反応器の上部の残りの空隙は、3mmのガラスビーズで充填した。反応器の上部から出る液体及びガスは凝縮器に送られ、非凝縮性ガスが通気される一方で、液体はガス解放容器に戻ってリサイクルされた。触媒2、並びに以下の実施例3、4、5、7、及び8からの触媒をこの様式で行った。
【0037】
触媒2の調製:
触媒2を、4.1gの金チオ硫酸ナトリウムを100gの水中に溶解して水溶液にし、次いで100gのFuji Silysia Chemical,Ltd.製CARiACT Q-20シリカ担体材料上に置いた、初期湿潤によって調製した。試料を120℃で1時間乾燥させた後、400℃で4時間焼成した。
【0038】
実施例3
触媒3の調製:
触媒3を以下の工程によって調製した。最初に、51.7gのチタンイソプロポキシド及び28.5gの氷酢酸からなるチタン前駆体原液を混合し、周囲温度で撹拌した。その後、担体材料を、27.9gの上記のチタン原液を20gのFuji Silysia Chemical,Ltd.製CARiACT Q-10シリカ担体材料に含浸させて、その初期湿潤点にすることによって調製した。その後、試料を125℃で1時間乾燥させた後、異なる温度設定毎に5℃/分の上昇速度で、250℃で1時間、350℃で1時間、450℃で一晩焼成した。金の堆積を、0.4gの金チオ硫酸ナトリウム及び16gの脱イオン水を含有する溶液を10gの上記の担体材料に含浸させて、その初期湿潤点にすることによって達成した。その後、試料を120℃で1時間乾燥させた後、400℃で4時間焼成した。触媒のエネルギー分散分光法(EDS)を装備した走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた分析により、Ti及びAuの両方の卵殻堆積が存在し、Tiが堆積した場所にのみAuが優先的に存在することが明確に示される。Ti及びAu卵殻の厚さが約300ミクロン以下であることが分かった。
【0039】
実施例4
触媒4の調製:
触媒4を以下の工程によって調製した。最初に、担体材料を、チタンイソプロポキシドを10gのFuji Silysia Chemical,Ltd.製CARiACT Q-10シリカ担体材料に含浸させて、その初期湿潤点にすることによって調製した。その後、試料を125℃で1時間乾燥させた後、異なる温度設定毎に5℃/分の上昇速度で、250℃で1時間、350℃で1時間、450℃で1時間、550度で12時間焼成した。金の堆積を、0.25gの金チオ硫酸ナトリウム及び9gの脱イオン水を含有する溶液を6gの上記の担体材料に含浸させて、その初期湿潤点にすることによって達成した。その後、試料を120℃で1時間乾燥させた後、400℃で4時間焼成した。
【0040】
実施例5
触媒5の調製:
触媒5を以下の工程によって調製した。最初に、担体材料を、硝酸マグネシウム六水和物を10gのFuji Silysia Chemical,Ltd.製CARiACT Q-10シリカ担体材料に含浸させて、その初期湿潤点にすることによって調製した。その後、試料を120℃で1時間乾燥させた後、異なる温度設定毎に5℃/分の上昇速度で、450℃で4時間焼成した。8.5gのチタンイソプロポキシド及び1.5gの酢酸を混合してチタン前駆体溶液を得て、その後、3.1gのチタン前駆体溶液を上記の焼成Mg-SiO2に含浸させた。その後、試料を120℃で1時間乾燥させた後、異なる温度設定毎に5℃/分の上昇速度で、550℃で6時間焼成した。金の堆積を、0.3gの金チオ硫酸ナトリウム及び8gの脱イオン水を含有する溶液を8gの上記の担体材料に含浸させて、その初期湿潤点にすることによって達成した。その後、試料を120℃で1時間乾燥させた後、400℃で4時間焼成した。結果として生じた試料は、Siに合計4.7重量%のMg及び4重量%のTiを含有し、1.5重量%のAuがその材料に配合された。卵殻析出が存在するかを判定するにあたっては、この試料を評価しなかった。
【0041】
【表1】
*STYは、触媒のkg-時間あたりのMMAのモル数で表される触媒の時空収率である。STYは、触媒活性の尺度である。正規化MMA選択率は、メタクロレイン反応物に由来する生成物のうちのMMA%である。
【0042】
未使用(fresh)触媒及びエイジド触媒の比較:
実施例6
パイロットプラント動作とその後の単一パス固定床気泡塔反応器動作:
エイジング処理の第1段階では、触媒6に対し、パイロットプラント動作にて2,000時間使用した。反応器は、上昇流式気泡塔再利用モードで動作する、断熱性を有する固定床反応器とした。垂直に整列された反応器の底部に、空気及び液体供給物を供給した。反応器は、外径2インチ(5.1cm)及び内径1.624インチ(4.1cm)×長さ108インチ(2.7m)の絶縁された316SS管とした。液体を、反応器の底部に、3/8インチ(9.5mm)の線まで入れ、気体を、1/8インチ(3.2mm)の線まで底部に導入した。希釈液を反応器供給物に供給するため、生成物を再利用し、これにより、断熱的温度上昇を抑える。一連の4本のジャケット付き316SS管(外径1インチ(2.5cm)の外管を有する、外径3/8インチ(9.5mm)の内管)にわたって、液体供給物を所望の設定点まで予熱する。ジャケット付き部分のそれぞれは、5フィート(1.5m)の長さを有する。反応器生成物は、気液分離容器に送られ、気液分離容器は、被覆され、冷却水で冷却される。分離容器を冷却し、不必要な均一化化学反応を最小限に抑える。容器内の温度は、一連の動作において、典型的な動作条件下で、23℃~28℃で変化した。気液分離槽は、3体のインペラを用いて、100rpmで撹拌された。分離槽を出た生成物は、分離システムに送り出される前に、0.1μmの研磨フィルタを通過する。OER生成試料が研磨フィルタ後に回収され、供給試料が供給物混合槽から回収される。典型的な動作条件は、入口温度が50℃あるいはその付近であること、280psig(2MPa)であること、抑制剤及び残りのメタノールも含む供給物において、メタクロレインが40重量%であること、そしてメタクロレインからMMAへの変換が50%であること、とした。合計で1,900gの触媒を、反応器内で使用した。空気も、通気孔内に5%O2を得るのに十分な速度で反応器に供給した。
【0043】
パイロットプラントでの2,000時間の動作の後、触媒が除去され、5gの触媒が単一パス固定床気泡塔反応器に投入された。20重量%メタクロレイン、200ppm抑制剤、及び残りがメタノールからなる供給物を、20g/時間の速度で、ホウケイ酸ガラスビーズの短い前部を含む3/8インチ(9.5mm)ステンレス鋼管状反応器に供給し、続いて5gの触媒を供給した。窒素中に8%の酸素を含有するガスも、通気孔内に5%O2を得るのに十分な速度で反応器に供給した。反応器を65℃及び160psig(1MPa)で動作させた。反応器の生成物は気液分離器に送られ、蒸気は液戻りを有する凝縮器に送られ、非凝縮性ガスは通気孔に進んだ。反応器は11か月以上動作し続けた。
【0044】
触媒6の調製:
触媒は、チタニアが最初に添加された、2mmのCariact Q10(シリカ)球上のAuであった。触媒はClariant製のものとした。金属配合量はNAA-ICPで測定され、Auが1.32+/-0.01重量%、Tiが7.1+/-0.1重量%であった。触媒分析には、透過型電子顕微鏡(transmission electron microscope、TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、及びエネルギー分散分光法(EDS)が含まれた。未使用触媒に関する結果によれば、未使用金ナノ粒子の平均サイズは、2.8+/-1.3nmであったことが分かる。パイロットプラント及び実験室規模反応器のエイジド触媒に関する結果によれば、2,000時間におよぶパイロットプラントでの一連の動作の終了時に、平均ナノ粒子サイズは、6.0+/-2.3nmにまで成長していたことが分かる。触媒6の結果を、以下の表2に示す。
【0045】
【表2】
*STYは、触媒のkg-時間あたりのMMAのモル数で表される触媒の時空収率である。STYは、触媒活性の尺度である。正規化MMA選択率は、メタクロレイン反応物に由来する生成物のうちのMMA%である。
【0046】
実施例7
触媒7 未使用触媒の調製及び走査TEM分析:
0.39gの金チオ硫酸ナトリウムが13.5gの脱イオン水に溶解した溶液を調製し、30分撹拌した。この溶液を、Tiをドープした10gのCARiACT Q-10シリカに塗布する。CARiACT Q-10シリカは、6.6重量%のTiを含み、クラリアント社によって製作されたものである。含浸させた材料を120℃で1時間乾燥させ、その後、箱型炉において、450℃(5℃/分で上昇)の温度で、毎時50リットルの気流で焼成し、最終的な触媒を生成した。触媒を走査TEMで分析した。
【0047】
図1A及び
図1Bから分かるように、金粒子の境界に、約4.1nmの大きさのTiOx粒子が認められた。金粒子は、走査TEM画像において、明度の高い点として視認されるが、その平均直径は10nm未満である。
【0048】
触媒7 GAMAエイジド触媒の調製及び走査TEM分析
金の凝集作用及び移動の評価(Gold Agglomeration and Movement Assessment、GAMA)によるエイジング処理を利用し、走査TEM分析用に調製した上記の未使用触媒を、急速にエイジングした。これにより、パイロットプラントでのエイジングと類似した条件下で触媒が不活性となるかを検証した。
【0049】
GAMA試験装置は、容量45mLのテフロン加工されたSS Acid Digestion Vessel(1,800psi(12,410kPa)の圧力で評価)で構成される。4重量%のMAA及び6重量%のH2Oを含む30mLのメタノール溶液の入った容器に、3gの触媒を投入する。容器を200℃で10日間、ボックスオーブンに入れておいた。
【0050】
GAMAエイジングの結果と未使用触媒の結果とを比較し、以下の表3に示す。未使用触媒の平均金粒子サイズは約4.1nmであった。GAMAエイジド触媒において、平均金粒子のサイズは5.1nmであった。GAMAエイジド触媒の走査TEM画像を
図2A、
図2B、及び
図2Cに示す。
【0051】
【表3】
*STYは、触媒のkg-時間あたりのMMAのモル数で表される触媒の時空収率である。STYは、触媒活性の尺度である。正規化MMA選択率は、メタクロレイン反応物に由来する生成物のうちのMMA%である。
【0052】
触媒7のSEM分析
SEM撮像を利用して、金ナノ粒子の移動を観察した。金-硫黄含有塩の焼成に伴い、金粒子が触媒表面に形成された(
図3(a))。表面に形成されると、ナノ粒子が移動を始めた(
図3(b))。金粒子は、最終的には触媒で濾し取られる硫黄堆積物から離れるように移動し、金粒子がチタン粒子に達すると(
図3(c))、チタニアに定着し始める。
【0053】
実施例8(比較例)
未使用触媒8の活性を、実施例2で最初に述べたバッチリサイクル固定床気泡塔反応器にて、測定した。この測定に続いて、触媒は、GAMAエイジングされた。触媒7の場合と同様、GAMA試験装置は、容量45mLのテフロン加工されたSS Acid Digestion Vesselから構成され、ここに3gの触媒が、4重量%のMAA及び6重量%のH2Oを含む30mLのメタノール溶液と共に投入された。容器を200℃で10日間、箱型オーブンに入れておいた。その後、GAMAエイジド触媒の活性が、実施例1で上述した単一パス固定床気泡塔反応器で測定される。未使用触媒8の平均金ナノ粒子サイズは、走査TEMによって、4.0nmと推定された。GAMAエイジド触媒の平均金ナノ粒子サイズは、走査TEMによって、10.3nmと推定された。触媒8の結果を、以下の表4に示す。
【0054】
触媒8の調製:
触媒を、4.1gの金チオ硫酸ナトリウムを100gの水中に溶解して水溶液にし、次いで100gのFuji Silysia Chemical,Ltd.製CARiACT Q-20Cシリカ担体材料上に置いた、初期湿潤によって調製した。試料を120℃で1時間乾燥させた後、400℃で4時間焼成した。
【0055】
【表4】
*STYは、触媒のkg-時間あたりのMMAのモル数で表される触媒の時空収率である。STYは、触媒活性の尺度である。正規化MMA選択率は、メタクロレイン反応物に由来する生成物のうちのMMA%である。
【0056】
粉砕強度:
触媒又は触媒担体粒子の機械的強度を、粒子を機械的破壊点まで破砕することによって直接測定した。破壊強度試験を、Mecmesin M100ECを使用して行った。単一の粒子をプラットフォーム上に置き、負荷がピーク値に達して材料が破損するまで、上部プランジャーを粒子に押し付けた。ピーク負荷を、Shimpo FGE-100Xゲージを使用して記録した。この試験を25個の個別の粒子で繰り返して、任意の材料の破砕強度の統計的平均を得た。結果を以下の表5に示す。
【0057】
【国際調査報告】