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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】トリマーライン供給の制御
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/90 20060101AFI20230428BHJP
【FI】
A01D34/90 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552236
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(85)【翻訳文提出日】2022-08-29
(86)【国際出願番号】 EP2021058398
(87)【国際公開番号】W WO2021198319
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】2050367-8
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(31)【優先権主張番号】2050579-8
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511268591
【氏名又は名称】ハスクバーナ・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】クルベリ、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンデション、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】グルンドベリ、ヨアキム
【テーマコード(参考)】
2B083
【Fターム(参考)】
2B083AA02
2B083BA02
2B083CA03
2B083CA12
2B083CB06
2B083DA03
2B083GA02
2B083HA19
2B083HA26
2B083HA52
(57)【要約】
本開示は、トリマーヘッド(1)に関する。トリマーヘッド(1)は、トリマーラインスプール(13)に接続可能である回転可能なハウジング(12)であって、トリマーラインスプール(13)を回転可能に支持するハウジング(12)と、トリマーラインスプール(13)をロック力(F)でハウジング(12)にロックするロック機構(14)と、を備える。ロック機構(14)は、トリマーヘッド(1)の回転速度を上昇させて動作速度よりも高くしたときに、ロックからアンロック位置に移動するよう配置されている。上昇させた回転速度によりリリース力(F)はロック力(F)よりも大きくなる。アンロック位置において、ロック機構(14)は、トリマーラインスプール(13)が移動可能であり、トリマーラインスプール(13)の周りに巻かれたトリマーライン(3)が解放されるとともにトリマーヘッド(1)の回転によって生じる遠心力(F)によって引き出されることで、トリマーライン(3)の供給が可能となるよう、トリマーラインスプール(13)をハウジング(12)から解放する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリマーラインスプール(13)に接続可能である回転可能なハウジング(12)であって、前記トリマーラインスプール(13)を回転可能に支持するハウジング(12)と、前記トリマーラインスプール(13)をロック力(F)で前記ハウジング(12)にロックするロック機構(14)と、を備えるトリマーヘッド(1)であって、
前記ロック機構(14)は、前記トリマーヘッド(1)の回転速度を上昇させて動作速度よりも高くしたときに、ロック位置からアンロック位置に移動するよう配置されており、上昇させた前記回転速度によりリリース力(F)は前記ロック力(F)よりも大きくなり、
前記アンロック位置にある前記ロック機構(114)は、前記トリマーラインスプール(13)が前記ハウジング(12)に対して回転可能であり、前記トリマーラインスプール(13)の周りに巻かれたトリマーライン(3)が解放されるとともに前記トリマーヘッド(1)の回転によって生じる遠心力(F)によって引き出されることで、前記トリマーライン(3)の供給が可能となるよう、前記トリマーラインスプール(13)を前記ハウジング(12)から解放する、トリマーヘッド(1)。
【請求項2】
前記ロック機構(14)はばね式ロック機構であり、上昇速度により、前記ロック機構(14)の重心がずれることで、前記リリース力(F)は、前記ばね式ロック機構(14)の前記ロック力(F)よりも大きくなる、請求項1に記載のトリマーヘッド(1)。
【請求項3】
前記ロック機構(14)は、前記トリマーヘッド(1)の前記回転速度が低下して前記動作速度よりも低くなった場合に、前記アンロック位置から前記ロック位置に戻るよう配置され、前記リリース力(F)は減少して前記ロック力(F)よりも小さくなる、請求項1または2に記載のトリマーヘッド(1)。
【請求項4】
前記ロック機構(14)は回動ロックラッチ(18)を備えるとともに、前記トリマーラインスプール(13)は1つ以上のストップ(16)を備え、前記回動ロックラッチ(18)は、前記ロック位置で1つ以上の前記ストップ(16)の1つと係合するよう配置される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のトリマーヘッド(1)。
【請求項5】
前記トリマーラインスプール(13)は、1つ以上のリリースストップ(17)をさらに備え、前記回動ロックラッチ(18)は、前記ロック機構(14)が前記アンロック位置に移動したときに、1つ以上の前記リリースストップ(17)のうちの1つと係合するよう配置される、請求項4に記載のトリマーヘッド(1)。
【請求項6】
前記トリマーヘッド(1)は前記ハウジング(12)に配置されたボタン(32)を備え、前記ボタン(32)は、前記ボタン(32)が押されると前記ロック機構(14)を前記アンロック位置に移動するよう操作可能に前記ロック機構(14)に対して接続されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のトリマーヘッド(1)。
【請求項7】
前記ロック機構(14)は、前記ハウジング(12)に対する前記トリマーラインスプール(13)の1つの回転方向(r2)への手動回転を可能にする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のトリマーヘッド(1)。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のトリマーヘッド(1)を備えるトリマー(10)であって、前記トリマー(10)は、前記トリマーヘッド(1)を回転するよう駆動する駆動手段をさらに備え、前記トリマー(10)は、前記トリマーヘッド(1)の前記回転速度を上昇させて前記動作速度よりも高くすることにより、前記トリマーラインスプール(13)を前記ハウジング(12)に対して移動させるよう構成される、トリマー(10)。
【請求項9】
前記トリマー(10)は、前記トリマーヘッド(1)の前記回転速度を低下させて前記動作速度よりも低くすることで、前記ロック機構(14)を前記アンロック位置から、前記トリマーラインスプール(13)を前記ハウジング(12)にロックする前記ロック位置に移動させるよう構成される、請求項8に記載のトリマー(10)。
【請求項10】
前記トリマー(10)は、前記トリマーヘッド(1)の前記回転速度が前記動作速度よりも低くなるまで、前記トリマーヘッド(1)の前記回転速度の低下および上昇を交互に繰り返すことによって、前記トリマーヘッド(1)の前記回転速度を低下させるよう構成される、請求項9に記載のトリマー(10)。
【請求項11】
前記トリマー(10)は、前記回転速度が最大回転速度に達すると、前記トリマーヘッド(1)の前記回転速度を低下させるよう構成される、請求項9または10に記載のトリマー(10)。
【請求項12】
前記トリマー(10)は、前記回転速度が上昇してから所定時間後に、前記トリマーヘッド(1)の前記回転速度を低下させるよう構成される、請求項9または10に記載のトリマー(10)。
【請求項13】
前記トリマー(10)は電動トリマー(10)であるとともに、前記駆動手段(2、4)は電源(4)および電動モータ(2)を備える、請求項8乃至12のいずれか一項に記載のトリマー(10)。
【請求項14】
トリマーヘッド(1)を備えるトリマー(10)においてトリマーライン(3)の供給を制御する方法(600)であって、前記トリマーヘッド(1)は、回転可能なハウジング(12)と、前記ハウジング(12)に回転可能に支持されたトリマーラインスプール(13)と、前記トリマーラインスプール(13)をロックするロック機構(14)とを備え、前記方法(600)は、
前記トリマーヘッド(1)の回転速度を上昇させて動作速度より高くする工程(620)を備え、上昇させた前記回転速度で、前記ロック機構(14)はロック位置からアンロック位置に移動し、前記トリマーラインスプール(13)の周りに巻かれたトリマーライン(3)が解放されるとともに前記トリマーヘッド(1)の回転によって生じる遠心力(F)によって引き出されることで、前記トリマーライン(3)の供給が可能となる、方法(600)。
【請求項15】
前記方法(600)は、
前記トリマーヘッド(1)の前記回転速度を低下させて前記動作速度よりも低くする工程(640)をさらに備えることで、前記ロック機構(14)は前記アンロック位置から前記ロック位置に移動する、請求項14に記載の方法(600)。
【請求項16】
前記方法(600)は、前記トリマーヘッド(1)の前記回転速度が前記動作速度よりも低くなるまで、前記トリマーヘッド(1)の前記回転速度の低下および上昇を交互に繰り返すことによって、前記トリマーヘッド(1)の前記回転速度を低下させる工程(640)をさらに備える、請求項15に記載の方法(600)。
【請求項17】
前記方法(600)は、前記回転速度が最大回転速度に達すると、前記トリマーヘッド(1)の前記回転速度を低下させる工程(640)をさらに備える、請求項15または16に記載の方法(600)。
【請求項18】
前記方法(600)は、前記回転速度が上昇してから所定時間後に、前記トリマーヘッド(1)の前記回転速度を低下させる工程(640)をさらに備える、請求項15または16に記載の方法(600)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にトリマーに関する。特に、本開示に記載される様々な実施形態は、トリマーラインの供給を制御する方法、トリマーヘッド、およびトリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
トリマーは、回転する線または複数の線を使用して草や地被植物を刈り取る道具である。このようなトリマーは、ストリングトリマー、ライントリマー、またはストリマーとしても知られる。線が草や他の成長物に当たる際に、草は線により刈り取られる。草とトリマーラインとの間のこの物理的相互作用によってトリマーラインは摩耗し、時間の経過とともに、トリマーラインは通常は短くなる。均一な刈取操作を提供するには、より多くのトリマーラインを供給する必要がある。
【0003】
従来、押しボタンはトリマーヘッドの裏側に配置されている。作業者がより多くのトリマーラインを供給したい場合、作業者はトリマーヘッドを地面に押し当てることで、押しボタンを押す。これにより、トリマーラインが供給される。ただし、押しボタンがトリマーヘッドから突き出ているため、この配置はトリマーヘッドの刈取高さを増加させるので、精密で正確な手入れには適していない。さらに、押し当てる動作により、草の中に不要な円形のマークが形成されかねない。そのため、ボタンの押下、手動の起動、完全に自動の供給等、トリマーラインの供給を開始する他の方法が開発されてきた。ボタンの押下による供給では、トリマーヘッドを地面に押し当てる代わりに、ボタンを押すことでトリマーライン供給を行う。これらのトリマーは通常、一方向回転で動作する、つまりトリマーヘッドは一方向に回転する。二方向回転トリマーを制御するため、これらのトリマーヘッドはさらに開発されてきた。ただし、このようなトリマーヘッドは複雑であり、多くの部品を備える。トリマーヘッドは摩耗や傷が生じやすい部分であるため、できるだけ簡素で頑丈であることが望ましい。
【0004】
したがって、二方向回転トリマーでも機能する、トリマーラインを供給する改善された方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、上記に鑑み、本開示において記載される態様および実施形態の一般的な目的は、頑丈で、少ない部品を含みつつ、二方向回転トリマーで機能する、トリマーラインを供給する改善された方法を備えた解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この一般的な目的は、添付の独立請求項に記載される。有利な実施形態は、添付の従属請求項に記載される。
第1の態様によれば、トリマーヘッドが提供される。トリマーヘッドは、トリマーラインスプールに接続可能である回転可能なハウジングであって、トリマーラインスプールを回転可能に支持するハウジングと、トリマーラインスプールをロック力でハウジングにロックするロック機構と、を備える。ロック機構は、トリマーヘッドの回転速度を上昇させて動作速度よりも高くしたときに、ロック位置からアンロック位置に移動するよう配置されている。上昇させた回転速度によりリリース力はロック力よりも大きくなる。アンロック位置にあるロック機構は、トリマーラインスプールがハウジングに対して回転可能であり、トリマーラインスプールの周りに巻かれたトリマーラインが解放されるとともにトリマーヘッドの回転によって生じる遠心力によって引き出されることで、トリマーラインの供給が可能となるよう、トリマーラインスプールをハウジングから解放する。
【0007】
いくつかの実施形態では、ロック機構はばね式ロック機構である。上昇速度により、ロック機構の重心がずれることで、リリース力は、ばね式ロック機構のロック力よりも大きくなる。
【0008】
いくつかの実施形態では、ロック機構は、トリマーヘッドの回転速度が低下して動作速度よりも低くなった場合に、アンロック位置からロック位置に戻るよう配置され、リリース力は減少してロック力よりも小さくなる。
【0009】
いくつかの実施形態では、ロック機構は回動ロックラッチを備えるとともに、トリマーラインスプールは1つ以上のストップを備える。回動ロックラッチは、ロック位置で1つ以上のストップの1つと係合するよう配置される。1つの実施形態では、トリマーラインスプールは、1つ以上のリリースストップをさらに備えてよい。回動ロックラッチは、ロック機構がアンロック位置に移動したときに、1つ以上のリリースストップのうちの1つと係合するよう配置されてよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、トリマーヘッドはハウジングに配置されたボタンを備える。ボタンは、ボタンが押されるとロック機構をアンロック位置に移動するよう操作可能にロック機構に対して接続されている。このようにして、ユーザは、ボタンを押してトリマーヘッドからトリマーラインを引き出すことにより、トリマーラインの手動供給を行うことができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、ロック機構は、ハウジングに対するトリマーラインスプールの1つの回転方向への手動回転を可能にする。これにより、トリマーヘッドを取り外す(dissemble)必要なく、トリマーラインをトリマーヘッドに装填できるトリマーヘッドが提供される。
【0012】
いくつかの実施形態では、トリマーヘッドは、ハウジングに配置されたグリップを備える。これにより、トリマーラインをトリマーヘッドに装填する作業が容易になる。
いくつかの実施形態では、トリマーヘッドは、トリマーヘッドの裏側に凹部を備える。グリップは凹部の内側に配置される。これにより、トリマーヘッドの動作中にグリップが物にぶつかりにくい、ユーザに使いやすいトリマーヘッドが提供される。さらに、グリップは、トリマーヘッドの刈取高さを増加させなくてもよい。
【0013】
第2の態様によれば、第1の態様によるトリマーヘッドを備えるトリマーが提供される。トリマーは、トリマーヘッドを回転するよう駆動する駆動手段をさらに備える。トリマーは、トリマーヘッドの回転速度を上昇させて動作速度よりも高くすることにより、トリマーラインスプールをハウジングに対して回転させるよう配置される。
【0014】
いくつかの実施形態では、トリマーヘッドの回転速度は、起動動作に応じて上昇する。
いくつかの実施形態では、トリマーは、トリマーヘッドの回転速度を低下させて動作速度よりも低くすることで、ロック機構をアンロック位置から、トリマーラインスプールをハウジングにロックするロック位置に移動させるよう配置される。トリマーは、トリマーヘッドの回転速度が動作速度よりも低くなるまで、トリマーヘッドの回転速度の低下および上昇を交互に繰り返すことによって、トリマーヘッドの回転速度を低下させるよう配置されてもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、トリマーは、回転速度が最大回転速度に達すると、トリマーヘッドの回転速度を低下させるよう配置される。他の実施形態では、トリマーは、回転速度が上昇してから所定時間後に、トリマーヘッドの回転速度を低下させるよう配置される。
【0016】
いくつかの実施形態では、トリマーは電動トリマーであるとともに、駆動手段は電源および電動モータを備える。他の実施形態では、トリマーは内燃機関駆動のトリマーであり、駆動手段は燃料タンク、エンジンを含み、ギアアセンブリをさらに備えてもよい。
【0017】
第3の態様によれば、トリマーヘッドを備えるトリマーにおいてトリマーラインの供給を制御する方法が提供される。トリマーヘッドは、回転可能なハウジングと、ハウジングに回転可能に支持されたトリマーラインスプールと、トリマーラインスプールをロックするロック機構とを備える。方法は、トリマーヘッドの回転速度を上昇させて動作速度より高くする工程を備え、上昇させた回転速度で、ロック機構はロック位置からアンロック位置に移動し、トリマーラインスプールの周りに巻かれたトリマーラインが解放されるとともにトリマーヘッドの回転によって生じる遠心力によって引き出されることで、トリマーラインの供給が可能となる。
【0018】
いくつかの実施形態では、回転速度は起動動作に応じて上昇する。
いくつかの実施形態では、方法は、トリマーヘッドの回転速度を低下させて動作速度よりも低くする工程をさらに備えることで、ロック機構はアンロック位置からロック位置に移動する、1つの実施形態では、方法は、トリマーヘッドの回転速度が動作速度よりも低くなるまで、トリマーヘッドの回転速度の低下および上昇を交互に繰り返すことによって、トリマーヘッドの回転速度を低下させる工程を備える。
【0019】
いくつかの実施形態では、方法は、回転速度が最大回転速度に達すると、トリマーヘッドの回転速度を低下させる工程をさらに備える。他の実施形態では、方法は、回転速度が上昇してから所定時間後に、トリマーヘッドの回転速度を低下させる工程をさらに備える。
【0020】
上記の実施形態のいくつかは、本開示で上記において検討した欠点を解消または少なくとも軽減する。本明細書で提案する実施形態は、二方向回転トリマーでも機能する、トリマーラインの改善された供給を提供する、少ない部品で頑丈かつ簡素なトリマーヘッドを提供する。
【0021】
開示された実施形態の他の特徴および利点は、以下の詳細な開示、添付の従属請求項、ならびに図面から明らかになるであろう。一般に、請求項で使用される全ての用語は、本明細書で別途明確に定義されていない限り、技術分野における通常の意味に従って解釈されるべきである。「要素、装置、部品、手段、工程等」への全ての言及は、別段で明記されていない限り、要素、装置、部品、手段、工程等の1つ以上の例を指すものとして非限定的に解釈される。本明細書に開示される方法の工程は、別段で明記されていない限り、開示される通りの順序で実行されなくてもよい。
【0022】
これらおよび他の態様、特徴および利点は、添付の図面を参照にして、様々な実施形態の以下の説明において明らかかつ解説されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】トリマーの概略図。
図2】トリマーヘッドの概略図。
図3】1つの実施形態によるロック機構を備えたトリマーヘッドの概略図。
図4a】1つの実施形態によるロック機構を備えたトリマーラインスプールの概略図。
図4b】トリマーヘッドのハウジングに取り付けられたときの、図4aによるトリマーラインスプールおよびロック機構の概略図。
図5a】一実施形態による、供給ラインシーケンス中のロック機構に対するスプールの回転を示す概略図。
図5b】一実施形態による、供給ラインシーケンスの時間グラフ。
図6】一実施形態による方法のフローチャート。
図7】本開示のいくつかのさらなる実施形態によるトリマーヘッドの概略図。
図8a図7に示される実施形態による、トリマーヘッドのハウジングの一部の概略図。
図8b】トリマーヘッドの回転軸に向かう方向にボタンが押された場合の、図8aに示されるハウジングの部分の概略図。
図9図7乃至図8bを参照して説明される実施形態による、トリマーヘッドのロック機構を備えたトリマーラインスプールの概略図。
図10】トリマーラインスプールがトリマーヘッドの回転軸と一致する視点から示された場合の、図9に示される実施形態によるロック機構を備えたトリマーラインスプールの概略図。
図11図7乃至図10を参照して説明された実施形態によるトリマーヘッドの裏側の斜視図。
図12図11に示されるトリマーヘッドの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の特定の実施形態を示す添付の図面を参照して、開示される実施形態を以下により詳細に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具体化され得るので、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が網羅的かつ充分であるので、本発明の範囲が当業者に完全に伝わるように例として記載される。詳細の説明において、同じ符号は同じ要素を指す。
【0025】
その態様の1つにおいて、本明細書に記載される開示は、トリマー10に関する。図1は、そのようなトリマー10の概略を示す。図1のトリマー10はストリングトリマーであり、たとえば、庭、公園、および植生のあるその他の場所において草や地被植物を刈り取る、または手入れするために使用され得る。トリマー10は、本開示の別の態様によるトリマーヘッド1を備える。トリマーヘッド1は回転刈取装置であり、トリマーヘッド1から径方向に延在するトリマーライン3を備えてよい。トリマーライン3は、任意の数の方向に延在してよいが、バランスのとれた配置が好ましい。通常、2本のトリマーライン3を使用して、互いに反対方向に延在するよう配置される。
【0026】
図2は、本開示によるトリマーヘッド1の概略を示す。図2に示されるように、トリマーヘッド1は、ハウジング12を備える。ハウジング12は、ハウジング12によって回転可能に支持されるトリマーラインスプール13に接続可能である。したがって、トリマー10が使用されている場合は、トリマーヘッド1のハウジング12は、トリマーラインスプール13に接続されている。トリマー10が使用されていない場合は、トリマーラインスプール13は、必ずしもハウジング12に接続されていなくてもよいが、接続されていてもよい。トリマーラインスプール13は、例えば、捩りばね等のばねを介して、ハウジング12に接続されてよい。トリマーラインスプール13は、図4bに明示されるように、ハウジング12の内側または内部でハウジング12に接続可能であるため、図2には示されていない。トリマーライン3は、トリマーヘッドハウジング12の穴または開口11を通って延在する。図4aに明示されるように、トリマーライン3はトリマーラインスプール13の周りに巻かれている。
【0027】
トリマーヘッド1は、トリマーラインスプール13をハウジング12にロックするロック機構14をさらに備える。トリマーラインスプール13は、保持力Fを有するロック機構14によってハウジング12にロックされる。図3は、ハウジング12に対する保持力Fおよびロック機構14を示す。トリマーラインスプール13がハウジング12にロックされると、トリマーラインスプール13はハウジング12に対して回転しない。ロック位置では、トリマーラインスプール13は、ハウジング12と共に回転する。
【0028】
図4aは、ロック機構14に対するトリマーラインスプール13の斜視図であり、加えられた保持力Fを示す。ロック機構14は、トリマーヘッド1の回転速度が上がり動作速度よりも高いときに、ロック位置からアンロック位置に移動するよう配置される。動作速度は、トリマーヘッド1が一般的な動作をする速度、すなわち、トリマーヘッド1が草または地被植物を刈り取るために使用され得る速度である。動作速度は、ある範囲の速度を含んでよい。これらの実施形態では、回転速度は、上昇して最大動作速度よりも、例えば最大動作速度の1.1から1.3倍程度に高くなる。一例として、最大動作速度は、約5500rpm(毎分回転数)であってよい。上昇速度は、約6500から7000rpmの範囲であってよい。しかしながら、速度の範囲は、ロック機構14をロック位置からアンロック位置に移動させる回転速度が、動作速度よりも著しく高いので異なるのであれば、例示された範囲より低くても高くてもよいことが理解される。
【0029】
回転速度が上昇により、リリース力Fがロック力Fよりも大きくなる。したがって、回転速度が上昇すると、ロック力Fよりも大きいリリース力Fがロック機構14に加えられる。次に、ロック機構14は、ロック位置からアンロック位置に強制的に移動される。アンロック位置では、ロック機構14は、トリマーラインスプール13がハウジング12に対して回転可能であるように、トリマーラインスプール13をハウジング12から解放する。次に、トリマーラインスプール13の周りに巻かれたトリマーライン3は解放されるとともに、トリマーヘッド1の回転によって生じる遠心力Fにより引き出される。これにより、トリマーライン3の供給が可能になる。トリマーライン3の供給長さは、ハウジング12とトリマーラインスプール13との間の相対回転に相当する。したがって、トリマーヘッド1の回転速度が上がり動作速度よりも高いと、トリマーライン3が供給される。
【0030】
回転速度を上昇させて動作速度よりも高くすることによりトリマーライン3が供給されるトリマーヘッド1を設けることで、動作速度範囲がライン供給速度範囲から分離される。これにより、トリマーライン3が誤って供給されないことを確実にする。トリマーライン3は、回転速度が上がったときにのみ供給される。これは、モータが動作速度よりも高くブーストされたときに起こる。したがって、誤った供給はなくなるか、少なくとも削減される。さらに、設けられたトリマーライン供給機構の設けられた構造により、二方向回転トリマーでライン供給機構を使用することも可能である。
【0031】
一実施形態によれば、図3、4aおよび4bにも示されているように、ロック機構14は、ばね式ロック機構14であってよい。上昇速度により、ロック機構14の重心がずれることで、リリース力Fを、ばね式ロック機構14のロック力Fよりも大きくすることができる。リリース力Fがロック力Fより大きくなると、ロック機構14はロック位置からアンロック位置に移動する。
【0032】
図4aおよび図4bに示されるように、一実施形態によるばね式ロック機構14は、ばね19およびベースプレート15を備える。図4aおよび図4bに示される実施形態によれば、ばねは一種のコイルばねである。さらなる実施形態によれば、ばね式ロック機構14は、板ばね等の別の種類のばねを備えてよい。ベースプレート15には、溝付きの貫通孔が設けられている。溝付きの穴により、回転速度を上げた場合に重心がずれるにしたがって、ばね式機構のベースプレート15が移動する。ベースプレート15の動きはリリース力Fを増大させ、前述のように、リリース力Fがロック力Fよりも大きくなると、トリマーラインスプール13はハウジング12から解放される。トリマーラインスプール13が解放されると、トリマーライン3の供給が可能になる。ばね式ロック機構14を設けることにより、トリマーライン供給機構は、少ない部品を使用して達成される。これにより、トリマーヘッド1が頑丈になり、二方向回転トリマーでの使用にも適している。
【0033】
いくつかの実施形態では、図5aに示されるように、ロック機構14は回動ロックラッチ18を備えてよく、トリマーラインスプール13は1つ以上のストップ16を備えてよい。回動ロックラッチ18は、ロック位置にある1つ以上のストップ16、16’のうちの1つと係合するよう配置されてよい。したがって、ロック機構14がロック位置A、A’にあるとき、回動ラッチ18は1つ以上のストップ16、16’のうちの1つに係止し得る。
【0034】
いくつかの実施形態によれば、トリマーラインスプール13は、1つ以上のリリースストップ17をさらに備えてよい。回動ロックラッチ18は、ロック機構14がアンロック位置に移動したときに、1つ以上のリリースストップ17のうちの1つと係合するよう配置されてよい。したがって、ロック機構14がロック位置からアンロック位置に移動すると、回動ロックラッチ18は、ストップ16、16’のうちの1つに係止する位置から、1つ以上のリリースストップ17のうちの1つと強制的に係合される。
【0035】
これらの実施形態によれば、トリマーラインスプール13は、ハウジング12に対して、ストップ16とリリースストップ17との間の距離Bによって定義される程度まで回転し得る。したがって、ストップ16とリリースストップ17の配置、およびそれらの間の距離によって、ハウジング12に対するトリミングラインスプール13の回転量を制御することができる。ハウジング12に対するトリミングラインスプール13の回転量Bは、ロック機構14がロック位置とアンロック位置との間を回転するたびに供給されるトリマーライン3の量を示す。図5aは、6つのストップ16、16’および6つのリリースストップ17を有するトリマーラインスプール13を図示する。しかしながら、トリマーラインスプール13は、それよりも多いまたは少ないストップ16、16’、17を有してよいことが理解される。ストップが多いほど、供給されるトリマーライン3が短くなる。ストップが少ないほど、供給されるトリマーライン3が長くなる。しかしながら、ストップ16、16’、17が少ないと、ユーザはトリマーラインスプール13のより突然のストップを感じる可能性があるので、供給するトリマーライン3の長さと操作の円滑さとの間で設計上の折り合いがつけられてよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、ロック機構14は、トリマーヘッド1の回転速度が低下して動作速度よりも低くなった場合に、アンロック位置からロック位置A’に戻るよう配置されてよい。いくつかの実施形態によれば、ロック位置に戻る動きは、ロックラッチ18がリリースストップ17に係止することから始まる。トリマーヘッド1の回転速度が低下して動作速度よりも低くなると、リリース力Fが減少してロック力Fよりも小さくなるので、ロックラッチ18は、図5aでA’と示された位置である次のストップ16’に戻って係止する。これについては、トリマー10に関連して以下でより詳細に説明する。
【0037】
上記で説明したように、態様の1つにおいて、本明細書に提示される開示は、図1に示されるトリマー10に関する。トリマー10は、上記の実施形態のいずれかによるトリマーヘッド1を備える。トリマー10は、トリマーヘッド1を回転するよう駆動する駆動手段2、4をさらに備える。トリマー10は、トリマーヘッド1の回転速度を上昇させて動作速度よりも高くすることにより、トリマーラインスプール13をトリマーヘッド1のハウジング12に対して回転させるよう配置される。これにより、トリマーライン3が供給される。
【0038】
一つの例示的な実施形態では、トリマー10は電動トリマーである。次に、駆動手段は、トリマーヘッド1を回転させるよう配置された電動モータ2に電力を供給するバッテリまたはグリッドコネクタなどの電源4を備えてよい。別の例示的な実施形態では、トリマー10は、内燃機関駆動のトリマーである。また、駆動手段は、ギアアセンブリ2を介してトリマーヘッド1を駆動するにエンジン4に燃料を供給する燃料タンクを備えてよい。本明細書の説明は電動トリマーを中心とするが、本明細書の開示は、内燃機関駆動のトリマーに対しても適用され得ることに留意されたい。例えば、動作速度の上昇は、以下でさらに詳細に説明するように、増加した電力を与えてモータの回転速度を上昇させることによって、ならびに燃料噴射を増加しておよび/またはエンジンのスロットルの開口度を上げてエンジンの回転数を上げることによって達成されてよい。
【0039】
トリマー10は、電源4およびトリマーヘッド1を配置することができる1つ以上のハンドル5およびポール6をさらに備えてよい。トリマー10は、トリムガードまたはシールド7をさらに備えてよい。速度制御、開始ボタン、および/または自動トリマーライン供給を開始するボタンなどの1つまたは複数のボタンを含むユーザ制御は、1つ以上のハンドル5に隣接して(またはその上に)配置されてよい。ボタンは、コントロールパネル8に配置されてよい。制御は、いくつか例を挙げると、電力レベルの変更、回転方向の変更等の他の制御の中から、デッドマンスイッチ(dead-man’s-hand switch)(グリップ5を握っている間、作業者の手のひらによって押される)、スロットル制御スイッチ28(作業者の指によって作動される)を含んでよい。コントロールパネル8はまた、トリマー10の状態を示すLED(発光ダイオード)などの視覚的インジケータを含んでもよい。
【0040】
トリマー10は、二方向トリマーであってよい。トリマーは、回転刈取装置の回転のために、駆動手段の回転方向を時計回り方向と反時計回り方向との間で変更してよい。あるいは、トリマー10は一方向トリマーであってよい。
【0041】
図5a、図5b、および図6を参照して、本開示による方法およびトリマー10について説明する。図5bは、トリマーライン3の供給を制御するときのモータ2の回転速度の時間グラフを示す。図6は、図5bの制御を実行する方法600に対応するフローチャートを示す。
【0042】
図5bに示すように、本開示によるトリマー10は、最初にモータ2の角速度を上昇させて、動作速度で回転するよう構成される。動作速度は、トリマー10のトリマーヘッド1が動作することができる回転速度であり、草および地被植物を刈り取るまたは手入れするために使用される。動作速度は、いくつかの実施形態によれば、速度の範囲を含み得る。動作速度が速度の範囲を含む場合、動作速度に対応する最大動作速度であってよい。一実施形態によれば、最大動作速度は5500rpmであってよい。またこの最大動作速度は、図5bにおいて点線で示されている。
【0043】
トリマー10が動作速度で動作すると、モータ2は、トリマーヘッド1の回転速度をさらに上昇させることができる。トリマーヘッド1の回転速度は、方法600のステップ620において、上昇されて動作速度よりも高くなる。これは、例えば、方法600のステップ610における起動動作の受信に応じて、すなわち、起動動作の受信610に応じて発生してよい。回転速度は、起動動作に応じて上昇する。起動動作は、例えば、トリマーライン3を供給するためにコマンドを発する作業者によって生じてよい。コマンドは、コントロールパネル8のボタン、スイッチ、またはレバーを介して与えられてよい。回転速度の上昇に伴い、ロック機構14はロック位置からアンロック位置に移動する。
【0044】
例示的な実施形態では、ロック機構14がロック位置から移動すると、ロックラッチ18は、ストップ16(図5aの位置A)からアンロック位置(図5aの領域B)まで径方向外側に移動する。ロック機構14がアンロック位置にあるとき、トリマーラインスプール13が解放されるとともに、トリマーラインスプール13の周りに巻かれたトリマーライン3は、トリマーヘッド1の回転によって生じる遠心力Fによって引き出されることで、方法600のステップ630においてトリマーライン3の供給が可能になる。トリマーライン3の供給は、トリマーラインスプール13がハウジング12に対して回転するときに発生するが、これは、ロックラッチ18がストップ16、16’、およびリリースストップ17に接していないときに発生することにより、ロック機構14は、トリマーラインスプール13をハウジング12にロックしない。
【0045】
いくつかの実施形態では、トリマー10は、方法600のステップ640において、トリマーヘッド1の回転速度を動作速度よりも低下させることによって、ロック機構14をアンロック位置からロック位置に移動するよう構成されてよい。速度の低下は、図5bの領域Cに対応する。図5bに示すように、回転速度は5500rpmでの動作速度を示す線よりも低下する。さらに、動作速度が速度の範囲である場合、回転速度は、動作速度よりも低くなるか、または少なくとも動作速度のより低い範囲内になるように低下する。回転速度が低下して動作速度よりも低くなるように能動的にブレーキをかけることにより、ロック機構14はアンロック位置から次のロック位置A’に戻るので、そこでロックラッチ18が次のストップ16’に係止することを確実にし得るとともに、ロック機構14がアンロック位置に固定されないことを確実にし得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、トリマー10は、方法600のステップ640において、トリマーヘッド1の回転速度を動作速度よりも低下させることによって、ロック機構14を、ロックラッチ18がリリースストップ17に係止しているリリースストップ位置Dから、ロックラッチ18がストップ16、16’に係止しているロック位置A、A’に移動するよう構成されてよい。速度の低下は、図5bの領域Cに対応する。図5bに示すように、回転速度は5500rpmでの動作速度を示す線よりも低くなるよう低下する。回転速度が低下すると、ロックラッチはリリースストップ位置Dから径方向内側に移動する。さらに、動作速度が速度の範囲である場合、回転速度は、動作速度よりも低くなるか、または少なくとも動作速度のより低い範囲内になるように低下する。回転速度が低下して動作速度よりも低くなるように能動的にブレーキをかけることにより、ロックラッチ18はリリースストップ位置Dから次のロック位置A’に戻るので、リリースストップ位置Dとストップ位置A’との間の距離Cに対応した制御された長さのトリマーラインを供給することを確実にし得る。この方法を内側と外側とのストップ位置を備えたトリマーヘッドに組み合わせることにより、各起動中に供給されるトリマーラインの長さを非常に正確に制御することが達成され得る。
【0047】
回転速度を低下させるステップ640は、異なる方法で実行されてもよい。一実施形態によれば、トリマー10は、例えば回転速度がある所定の値に達するまで、またはある期間、回転速度を動作速度よりも低く連続的に低下させるよう構成されてよい。あるいは、トリマー10は、トリマーヘッド10の回転速度が動作速度よりも低くなるまで、トリマーヘッド1の回転速度の低下および上昇を交互に繰り返すことによって、回転速度を低下させるよう構成されてよい。回転速度の低下および上昇を交互に繰り返すことにより、トリマーヘッド1は、回転速度を変化することで移動または振動し得るので、ロック機構14がリリースストップ位置および/またはアンロック位置から内側のロック位置A’に移動しやすくなる。回転速度を低下させるためにどの方法が使用されるかに関わらず、回転速度が上昇してから所定時間後に、または回転速度が最大回転速度、すなわち、トリマー10にとって可能な限り最大の回転速度に達すると、回転速度は低下してよい。例えば、一実施形態では、回転速度が上昇し始めてから例えば0.1から0.5秒後に、回転速度が低下する。あるいは、回転速度が、例えば6000から7000rpmの値を有し得る最大許容回転速度に達すると、回転速度が低下する。例えば、電動モータにより駆動するトリマーに関しては、国際標準であるIEC 62841-1 SCFは、最大許容回転速度を最大動作回転速度の130%に制限している。
【0048】
回転速度が低下して動作速度よりも低くなった後、草または地被植物を刈り取るトリマー10を作業者が使用し続けられるよう、方法600のステップ650において、トリマー10は、動作速度に達するまで回転速度を再び上昇させるよう構成されてもよい。回転速度を上昇させて動作速度よりも高くし、回転速度を低下させて動作速度よりも低くし、その後再び回転速度を上昇させて動作速度に到達するプロセスの全体、すなわち、図5bの時間グラフに示すシーケンスは、約0.3から1.0秒かけてよい。このように、トリマーラインの供給を制御するために提供される解決策は、円滑かつ迅速である。
【0049】
さらに、提供されるトリマー10および提供される方法600によって、少ない部品を用いる簡素だが頑丈な構造で、トリマーヘッド1内でトリマーライン3の供給を制御することが可能である。提供されるトリマー10、トリマーヘッド1、および方法600は、二方向回転でも機能する。さらに、本開示は、動作速度を超える速度においてトリマーライン3が供給される解決策を提供するので、誤ったライン供給が回避される。トリマー10は、誤って回転速度を上昇させて動作速度よりも高くすることはない。これは、意図して速度を上昇させようとする場合にのみ起こる。したがって、本開示は、自動遠隔トリマーライン3供給のための安全な解決策を提供する。
【0050】
図7は、本開示のいくつかのさらなる実施形態によるトリマーヘッド1の概略を示す。図7に示される実施形態によるトリマーヘッド1は、図1乃至図6を参照して説明したトリマーヘッド1と同じ特徴、機能、および利点を備えるが、いくつかの相違点について以下に説明する。さらに、図5a、図5b、および図6を参照して説明した方法600は、図7に示される実施形態によるトリマーヘッド1を使用して実行されてよい。
【0051】
図7に示される実施形態によるトリマーヘッド1は、以下に説明するように、トリマーヘッド1のハウジング12に配置されたボタン32を押すことによって、トリマーライン3の手動供給が可能である。さらに、以下で説明されるように、図7に示される実施形態によるトリマーヘッド1は、トリマーヘッド1を取り外す(dissemble)必要なく、トリマーライン3をトリマーヘッド1に迅速かつ簡単に装填することが可能である。
【0052】
図8aは、図7に示される実施形態によるトリマーヘッド1のハウジング12の一部の概略を示す。図8aは、トリマーヘッド1のばね式ロック機構14を示す。図1乃至図5aを参照して説明した実施形態と同様に、これらの実施形態によるばね式ロック機構14は、ばね19、ベースプレート15、およびロックラッチ18を備える。図8aに示される実施形態によれば、ばね19は一種の板ばねである。さらなる実施形態によれば、図8bに示される実施形態によるトリマーヘッド1は、図1乃至図5aを参照して説明したトリマーヘッド1の実施形態のようにコイルばねを備えてもよい。
【0053】
さらに、図8aに示される実施形態によれば、ロックラッチ18とベースプレート15との間の接続に遊びがあるので、ベースプレート15を動かすことなく、トリマーヘッド1の回転軸axに向かってトリマーヘッド1の径方向にロックラッチ18を移動させることができる。トリマーヘッド1の動作中、トリマーヘッド1は、回転軸axの周りを回転するよう構成される。さらに、図7および8aに示される実施形態によれば、ボタン32は、操作可能にロックラッチ18に対して接続される。図8aでは、ボタン32が押されていない状態のばね式ロック機構14が示されている。
【0054】
図8bは、トリマーヘッド1の回転軸axに向かう方向にボタン32が押された場合の、図8aに示されるハウジング12の部分の概略を示す。図8bに示すように、その結果として、ロックラッチ18は、回転軸axに向かう方向に移動する。ロックラッチ18とベースプレート15との間の遊びにより、ユーザは、ボタン32を押すときにばね19によってロック機構14に加えられるロック力Fを克服する必要がない。したがって、ボタン32を押すと、ロックラッチ18が図8bに示すアンロック位置に移動することにより、ロック機構14がロック位置からアンロック位置に移動する。
【0055】
以下では、別段の指示がない限り、図7乃至図8bを同時に参照する。ユーザは、例えば、ボタン32を押してロック機構14をアンロック位置に移動させ、トリマーヘッド1の開口11からトリマーライン3を引き出して手動で供給し得る。例として、ユーザは、トリマーライン3が短すぎて、トリマーヘッド1の回転によってトリマーライン3を引き出すのに十分な運動量が得られない場合に、トリマーライン3の手動供給を実行してよい。
【0056】
図9は、図7乃至図8bを参照して説明される実施形態による、トリマーヘッド1のロック機構14を備えたトリマーラインスプール13の概略を示す。以下では、別段の指示がない限り、図7乃至図9を同時に参照する。ロック機構14は、図1乃至図5aを参照して説明したトリマーヘッド1の実施形態によれば、ロック位置にあるときにトリマーラインスプール13をハウジング12にロックするよう構成される。しかし、これらの実施形態によれば、トリマーラインスプール13は、2つの回転方向のうちの1つのみで回転自在にハウジング12に固定される。すなわち、図9に示すように、トリマーラインスプール13の各ストップ16は、ストップ16の片側に傾斜面36、ストップの反対側に停止面38を備えている。ストップ16の傾斜面36は、以下に記載するように、ハウジング12とトリマーラインスプール13との間の回転軸axを中心とする相対回転により、ロックラッチ18をアンロック位置に変位させる。
【0057】
図10は、トリマーラインスプール13がトリマーヘッド1の回転軸axと一致する視点から示された場合の、図9に示される実施形態によるロック機構14を備えたトリマーラインスプール13の概略を示す。以下では、別段の指示がない限り、図7乃至図10を同時に参照する。ロックラッチ18を含むロック機構14の構成要素は、トリマーヘッド1のハウジング12に取り付けられる。図10では、ロックラッチ18はロック位置に示され、トリマーラインスプール13のストップ16のうちの1つの停止面38に当接するものとして示されている。ロックラッチ18とストップ16の停止面38との間の当接接触によって、図10に示される第1回転方向r1では、ハウジング12に対してトリマーラインスプール13が回転しない。同様に、ロックラッチ18とストップ16の停止面38との間の当接接触によって、図10に示される第2回転方向r2では、トリマーラインスプール13に対してハウジング12が回転しない。第2回転方向r2は、第1回転方向r1と反対である。
【0058】
しかしながら、トリマーラインスプール13のストップ16の傾斜面36は、傾斜面36とロックラッチ18との間の当接接触によってロックラッチ18がアンロック位置に変位するよう構成される。図10では、トリマーヘッド1の動作原理、およびロック機構14とトリマーヘッド1のストップ16との間の相互作用の理解を容易にするために、ロックラッチ18’が破線で模式的に示されている。上記から理解されるように、トリマーラインスプール13は、ハウジング12に対して、図10に示す第2回転方向r2に自在に回転する。同様に、ハウジング12は、トリマーラインスプール13に対して、図10に示す第1回転方向r1に自在に回転するので、以下に説明するように、トリマーラインスプール13へのトリマーラインの装填を容易にする。
【0059】
図11は、図7乃至図10を参照して説明された実施形態によるトリマーヘッド1の裏側の斜視図である。図11に明示されるように、トリマーヘッド1のトリマーラインスプール13にはグリップ40が設けられている。図示の実施形態によれば、グリップ40は、ノブとして形成され、トリマーヘッド1の裏側で凹部42の内側に配置される。しかしながら、いくつかのさらなる実施形態によれば、グリップ40はまた、トリマーヘッド1から突出してもよい。グリップ40は、トリマーラインスプール13と一体であってもよいし、トリマーラインスプール13に取り付けられた別個の部品であってもよい。グリップ40は、以下に説明するように、トリマーラインの装填をさらに容易にする。
【0060】
図12は、図11に示されるトリマーヘッド1の断面を示す。図12において、断面は、トリマーヘッド1の回転軸axを含む平面に沿う。以下では、別段の指示がない限り、図7乃至図12を同時に参照する。これらの実施形態によるトリマーヘッド1の特徴により、ユーザは、トリマーヘッド1を取り外す(dissemble)必要なく、ハウジング12の開口11にトリマーライン3を挿入するとともに、トリマーラインスプール13の貫通孔44に通すだけで、トリマーライン3をトリマーラインスプール13に装填することが可能である。次に、ユーザは、トリマーラインスプール13およびハウジング12を手動で互いに対して回転させて、トリマーライン3をトリマーラインスプール13に供給し得る。このようにして、ユーザは、トリマーラインスプール13とハウジング12との間で手動の相対回転を実行してよい。上記から理解されるように、ユーザは、トリマーヘッド1のハウジング12をトリマーラインスプール13に対して図10および図12に示す第1回転方向r1に回転させることで、トリマーラインスプール13をトリマーライン3で巻いてよい。当然ながら別の方法として、ユーザは、トリマーヘッド1のトリマーラインスプール13をハウジング12に対して図10に示す第2回転方向r2に回転させることで、トリマーラインスプール13をトリマーライン3で巻いてもよい。
【0061】
ユーザは、ハウジング12に対してトリマーラインスプール13を回転させるときに、グリップ40を使用するとともに、ハウジング12の周りをつかんでよい。グリップ40は、トリマーヘッド1の裏側で凹部42の内側に配置されるので、グリップ40の部分はトリマーヘッド1から突出しない。このように、トリマーヘッド1の動作中、グリップ40は物にぶつかりにくい。さらに、グリップ40は、トリマーヘッド1の刈取高さを増加させなくてもよい。しかしながら、上記のように、いくつかのさらなる実施形態によれば、グリップ40はまた、トリマーヘッド1から突出してもよい。
【0062】
図12に示すように、トリマーラインスプール13の貫通孔44は、多数の非直線部分44’を含む。非直線部分44’は、屈曲部分または湾曲部分とも呼ばれ得る。非直線部分44’は、トリマーヘッド1のさらなる構成要素および配置のための空間を提供することができる。しかしながら、さらなる実施形態によれば、トリマーラインスプール13の貫通孔44は、貫通孔44の全長にわたり直線であってもよい。
【0063】
トリマーラインスプール13へのトリマーライン3の上述の装填手順において、ユーザは、トリマーライン3をトリマーラインスプール13の貫通孔44の開口に挿入する前に、ハウジング12の開口11を貫通孔44の開口と位置合わせをしなければならない場合がある。しかしながら、これは簡単な方法で行うことができる。その理由は、ハウジング12は、上で説明したようにトリマーラインスプール13に対して第1回転方向r1に自在に回転するとともに、トリマーラインスプール13は、ハウジング12に対して第2回転方向r2に自在に回転するからである。トリマーヘッド1は、ハウジング12の開口11がトリマーラインスプール13の貫通孔44の開口と位置合わせをされる、トリマーラインスプール13とハウジング12との間の1つまたは複数の回転位置を示す、1つまたは複数の記号、矢印、テキストなどの1つまたは複数のマークを備えてよい。
【0064】
以下では、図10を参照して説明する。ハウジング12がトリマーラインスプール13に対して第1回転方向r1に1回転する間に、ロックラッチ18はトリマーラインスプール13の全てのストップ16に到達しながら、ストップ16の傾斜面36との相互作用によりロック位置とアンロック位置との間で変位する。しかし、ハウジング12がトリマーラインスプール13に対して第2回転方向r2に回転すると、ロックラッチ18は、ハウジング12がトリマーラインスプール13に対して第2回転方向r2にそれ以上回転するのを防止する、ストップ16のうちの1つの停止面38に到達する。したがって、図7乃至図12に示す実施形態によるトリマーヘッド1のロックラッチ18とストップ16との間の相互作用は、ハウジング12に対してトリマーラインスプール13が1つの回転方向への回転することのみを可能にする、いわゆるラチェット機構として機能する。
【0065】
以上のことから分かるように、トリマーヘッド1は、トリマーラインスプール13がハウジング12に対して第2回転方向r2に回転すると、トリマーラインスプール13にトリマーライン3が送り込まれるとともに、トリマーラインスプール13がハウジング12に対して第1回転方向r1に相対回転すると、トリマーラインスプール13からトリマーライン3が送り出されるよう構成されている。
【0066】
図7乃至図12に示される実施形態によれば、ロックラッチ18は回動ロックラッチ18である。すなわち、これらの実施形態においても、ロックラッチ18は枢動軸の周りに枢動可能に配置される。ロックラッチ18は、ばねによってロック位置に向けて付勢されてよい。
【0067】
図10に示すように、ベースプレートは、ロックラッチ18の部分48に当接するよう構成された当接面46を備える。動作中、トリマーヘッド1の回転速度が動作速度よりも上昇することにより、リリース力Fがロック力Fよりも大きくなると、ベースプレート15の動きは、ベースプレート15の当接面46とロックラッチ18の部分48との間の当接接触によって、アンロック位置に向かうロックラッチ18の動きに変換される。このようにして、ロック機構14は、図1乃至図6を参照して説明したように、アンロック位置に移動が可能になる。しかし、本明細書の記載から理解されるように、ボタン32を押すことによって、またはトリマーラインスプール13のストップ16の傾斜面36によって、ロックラッチ18がアンロック位置に向かって変位すると、ベースプレート15を動かすことなくロックラッチ18がアンロック位置に向かって自在に動くように、ベースプレート15の当接面46とロックラッチ18の部分48との間の当接接触が解除される。図7乃至図12に示される実施形態によるトリマーヘッド1は、複数のリリースストップ17を備える。リリースストップ17は、図1乃至図6を参照して説明したトリマーヘッド1のリリースストップ17と同様の特徴および機能を有する。
【0068】
前述の説明および関連する図面に提示された開示の恩恵を受ける当業者は、説明された実施形態の変更および他の変形を思いつくであろう。したがって、実施形態は、本開示に記載された特定の例示的な実施形態に限定されないとともに、変更および他の変形が本開示の範囲内に含まれるよう意図されていることが理解される。例えば、ロック機構は、ロックラッチが外側のストップにロック位置で係止する状態で、ストップとリリースストップの位置が変わるよう構成されてよい。この場合、トリマーヘッドの回転速度を上昇させて動作速度よりも高くすることにより、ロックラッチの動きはアンロック位置まで内側に移動する。
【0069】
また、遠心力によってロックラッチがストップとリリースストップとの間で垂直に移動するようロック機構を設計することも可能である。
さらに、本明細書で特定の用語が使用された場合があったとしても、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用されているとともに、限定を目的としては使用されていない。したがって、当業者は、添付の特許請求の範囲内に依然として含まれる、記載された実施形態に対する複数の変形を認識するであろう。本明細書で使用された用語「備える」または「含む」は、他の要素または工程の存在を排除するものではない。さらに、個々の特徴が異なる請求項に含まれ得るとしても、これらは有利に組み合わされ得ることが可能であるとともに、異なる請求項を含むことは、特徴の組み合わせが実行可能ではないおよび/または有利ではないことを意味しない。さらに、単数であったとしても複数を除外しない。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7
図8a
図8b
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】