(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】多峰性分布の球状フィラーを含む熱界面材料
(51)【国際特許分類】
C09K 5/14 20060101AFI20230428BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20230428BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20230428BHJP
【FI】
C09K5/14 E ZAB
H01M10/625
H01M10/613
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552295
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(85)【翻訳文提出日】2022-08-30
(86)【国際出願番号】 US2021023873
(87)【国際公開番号】W WO2021195204
(87)【国際公開日】2021-09-30
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519415100
【氏名又は名称】ディディピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ヒレスハイム、ニーナ
(72)【発明者】
【氏名】グルンダー、セルジオ
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】キュスター、ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ、ソフィー
(72)【発明者】
【氏名】コッホ、フェリックス
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031KK01
(57)【要約】
本明細書では、熱硬化性バインダー成分と、球形且つ熱伝導性のフィラーの混合物とを含む熱界面材料、及びその電池駆動車における使用が開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)高分子バインダー成分と、
b)約85~95重量%の球形且つ熱伝導性のフィラーの混合物と、
を含む熱界面材料組成物であって、
前記組成物の総重量が合計100重量%であり、
球形且つ熱伝導性のフィラーの前記混合物が、それらの合計重量を基準として、i)球形であり約0.1~20μmの範囲の粒度分布D
50を有する第1の熱伝導性フィラー約15~40重量%と、ii)球形であり約40~150μmの範囲の粒度分布D
50を有する第2の熱伝導性フィラー約50~80重量%とを含む、熱界面材料組成物。
【請求項2】
前記組成物の総重量を基準として約1~10重量%の前記高分子バインダー成分を含む、請求項1に記載の熱界面材料組成物。
【請求項3】
前記第1及び第2の熱伝導性フィラーがAl
2O
3、Al、Mg(OH)
2、MgO
2、SiO
2、窒化ホウ素、及びこれらの混合物からなる群から独立して選択される、請求項1に記載の熱界面材料組成物。
【請求項4】
前記第1及び第2の熱伝導性フィラーがAl
2O
3粒子である、請求項3に記載の熱界面材料組成物。
【請求項5】
前記第1の熱伝導性フィラーが約0.5~15μmの範囲の粒度分布D
50を有し、前記第2の熱伝導性フィラーが約40~120μmの範囲の粒度分布D
50を有する、請求項1に記載の熱界面材料組成物。
【請求項6】
前記第2の熱伝導性フィラーが約40~90μmの範囲の粒度分布D
50を有する、請求項5に記載の熱界面材料組成物。
【請求項7】
前記組成物の総重量を基準として、約18~38重量%の前記第1の熱伝導性フィラーと、約50~78重量%の前記第2の熱伝導性フィラーとを含む、請求項1に記載の熱界面材料組成物。
【請求項8】
前記組成物の総重量を基準として、約20~35重量%の前記第1の熱伝導性フィラーと、約53~75重量%の前記第2の熱伝導性フィラーとを含む、請求項7に記載の熱界面材料組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の熱界面材料組成物を含む物品。
【請求項10】
1つ以上の電池セルと冷却ユニットとから形成される電池モジュールを更に含み、前記電池モジュールが、前記熱界面材料組成物を介して前記冷却ユニットに接続される、請求項10に記載の物品。
【請求項11】
a)高分子バインダー成分と、b)約85~95重量%の熱伝導性フィラーと、を含む熱界面材料組成物であって、前記組成物の総重量が合計100重量%であり、前記熱伝導性フィラーが、その合計重量を基準として、i)球形又は非球形であり約0.1~2μmの範囲の粒度分布D
50を有する第1の熱伝導性フィラー約0.5~10重量%と、ii)球形であり約3~10μmの範囲の粒度分布D
50を有する第2の熱伝導性フィラー約10~35重量%と、iii)球形であり約40~150μmの範囲の粒度分布D
50を有する第3の熱伝導性フィラー約50~80重量%とを含む、熱界面材料組成物。
【請求項12】
前記第1の熱伝導性フィラーi)が、約0.5~5μm、より好ましくは0.6~2μmの範囲の粒度分布D
50を有する、請求項11に記載の熱界面材料。
【請求項13】
前記第2の熱伝導性フィラーii)が、約3~10μm、好ましくは3~6μmの範囲の粒度分布D
50を有する、請求項11又は12に記載の熱界面材料。
【請求項14】
前記第3の熱伝導性フィラーiii)が、約40~150μm、好ましくは50~100μm、より好ましくは55~85μmの範囲の粒度分布D
50を有する、請求項11、12、又は13に記載の熱界面材料。
【請求項15】
前記組成物の総重量を基準として約1~10重量%の高分子バインダー成分を含む、請求項11~14のいずれか一項に記載の熱界面材料組成物。
【請求項16】
前記第1、第2、及び第3の熱伝導性フィラーが、Al
2O
3、水酸化アルミニウム、Mg(OH)
2、MgO
2、SiO
2、ZnO、TiO
2、窒化ホウ素、及びこれらの混合物からなる群から独立して選択される、請求項11~15のいずれか一項に記載の熱界面材料組成物。
【請求項17】
前記第1の伝導性フィラーが水酸化アルミニウムであり、前記第2及び第3の熱伝導性フィラーがAl
2O
3粒子である、請求項11~16のいずれか一項に記載の熱界面材料組成物。
【請求項18】
前記第1の導電性フィラーi)が、前記組成物の総重量を基準として1~7重量%、好ましくは2~5重量%で存在する、請求項11~17のいずれか一項に記載の熱界面材料組成物。
【請求項19】
前記第2の導電性フィラーii)が、前記組成物の総重量を基準として10~30重量%、好ましくは12~28重量%で存在する、請求項11~18のいずれか一項に記載の熱界面材料組成物。
【請求項20】
前記第3の導電性フィラーiii)が、前記組成物の総重量を基準として50~75重量%、好ましくは50~68重量%で存在する、請求項11~19のいずれか一項に記載の熱界面材料組成物。
【請求項21】
粒度分布D
50が、懸濁媒体として水を使用して、ISO13320に従ってレーザー回折により測定される、請求項1~8又は11~20のいずれか一項に記載の熱界面材料。
【請求項22】
前記球状粒子が、400~5500×の倍率、好ましくは5000×の倍率の走査型電子顕微鏡下で球状に見える粒子である、請求項1~8又は11~21のいずれか一項に記載の熱界面材料。
【請求項23】
前記球形粒子が1~1.2、好ましくは1~1.1のアスペクト比を有する、請求項1~8又は11~22のいずれか一項に記載の熱界面材料。
【請求項24】
1つ以上の電池セルと冷却ユニットとから形成される電池モジュールであって、請求項1~8又は11~23のいずれか一項に記載の熱界面材料組成物を介して前記冷却ユニットに接続される電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱界面材料及び電池式自動車におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の移動手段と比較して、電池式自動車は、軽量であることや低減されたCO2排出量などの大きな利点を有している。しかしながら、技術を確実に最適に使用するためには、依然として多くの技術的問題を克服する必要がある。例えば、業界で現在行われている取り組みの1つは、高エネルギー密度の電池を開発することによって電池式自動車の走行距離を伸ばすことである。そしてこれは、高エネルギー密度電池のためのより優れた熱管理システムを開発する必要性につながる。
【0003】
電池式自動車では、電池セル又はモジュールは熱界面材料(TIM)によって冷却ユニットに熱的に接続される。そのようなTIMは、典型的には熱伝導性フィラーが充填されたポリマー系材料から形成される。高い熱伝導率を有するTIMを得るための1つの方法は、高い充填量の熱伝導性フィラーを配合することである。しかしながら、フィラーの充填量が多いと、TIMの粘度が高くなりすぎて役に立たなくなる場合もある。したがって、熱伝導率が高く、且つ粘度が低いTIMの開発が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様では、本発明は、a)高分子バインダー成分と、b)約85~95重量%の球形且つ熱伝導性のフィラーの混合物と、を含む熱界面材料組成物であって、組成物の総重量が合計100重量%であり、球形且つ熱伝導性のフィラーの混合物が、それらの合計重量を基準として、i)球形であり約0.1~20μmの範囲の粒度分布D50を有する第1の熱伝導性フィラー約15~40重量%と、ii)球形であり約40~150μmの範囲の粒度分布D50を有する第2の熱伝導性フィラー約50~80重量%とを含む、熱界面材料組成物を提供する。
【0005】
第2の態様では、本発明は、a)高分子バインダー成分と、b)約85~95重量%の熱伝導性フィラーと、を含む熱界面材料組成物であって、組成物の総重量が合計100重量%であり、熱伝導性フィラーが、その合計重量を基準として、i)球形又は非球形であり約0.1~2μmの範囲の粒度分布D50を有する第1の熱伝導性フィラー約0.5~10重量%と、ii)球形であり約3~10μmの範囲の粒度分布D50を有する第2の熱伝導性フィラー約10~35重量%と、iii)球形であり約40~150μmの範囲の粒度分布D50を有する第3の熱伝導性フィラー約50~80重量%とを含む、熱界面材料組成物を提供する。
【0006】
熱界面材料組成物の一実施形態では、組成物は、組成物の総重量を基準として約1~10重量%の高分子バインダー成分を含む。
【0007】
熱界面材料組成物のさらなる実施形態では、第1、第2、及び第3の熱伝導性フィラーは、Al2O3、Al、Mg(OH)2、MgO2、SiO2、窒化ホウ素、及びこれらの混合物からなる群から独立して選択される。本発明の第2の態様では、第1の球形又は非球形の熱伝導性フィラーi)は、Al2O3、Al、TiO2、ZnO、Mg(OH)2、MgO2、SiO2、窒化ホウ素、Al(OH)3(水酸化アルミニウム)、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0008】
熱界面材料組成物の更に別の実施形態では、第1、第2及び第3の熱伝導性フィラーはAl2O3粒子である。
【0009】
第2の態様の別の実施形態では、第1の熱伝導性フィラーi)は、Al2O3、水酸化アルミニウム、及びこれらの混合物から選択される。
【0010】
第2の態様の好ましい実施形態では、第1の熱伝導性フィラーi)は、Al2O3、水酸化アルミニウム、及びこれらの混合物から選択され、第2の熱伝導性フィラーii)はAl2O3である。
【0011】
第2の態様の別の好ましい実施形態では、第1の熱伝導性フィラーi)は、Al2O3、水酸化アルミニウム、及びこれらの混合物から選択され、第2の熱伝導性フィラーii)はAl2O3であり、第3の熱伝導性フィラーiii)はAl2O3である。
【0012】
第1の態様の熱界面材料組成物の更に別の実施形態では、第1の熱伝導性フィラーは、約0.5~15μmの範囲の粒度分布D50を有し、第2の熱伝導性フィラーは、約40~120μmの範囲の粒度分布D50を有する。
【0013】
第2の態様の熱界面材料組成物の更に別の実施形態では、第1の熱伝導性フィラーi)は、約0.5~15μm、より好ましくは0.6~2μmの範囲の粒度分布D50を有する。
【0014】
第2の態様の熱界面材料組成物の更に別の実施形態では、第2の熱伝導性フィラーii)は、約3~10μm、好ましくは3~6μmの範囲の粒度分布D50を有する。
【0015】
第2の態様の熱界面材料組成物の更に別の実施形態では、第3の熱伝導性フィラーiii)は、約40~150μm、好ましくは50~100μm、より好ましくは55~85μmの範囲の粒度分布D50を有する。
【0016】
第1の態様の熱界面材料組成物の更に別の実施形態では、第2の熱伝導性フィラーは、約40~90μmの範囲の粒度分布D50を有する。
【0017】
第1の態様の熱界面材料組成物の更に別の実施形態では、組成物は、組成物の総重量を基準として約18~38重量%の第1の熱伝導性フィラーと約50~78重量%の第2の熱伝導性フィラーとを含む。
【0018】
第1の態様の熱界面材料組成物の更に別の実施形態では、組成物は、組成物の総重量を基準として約20~35重量%の第1の熱伝導性フィラーと約53~75重量%の第2の熱伝導性フィラーとを含む。
【0019】
第2の態様の熱界面材料組成物の更に別の実施形態では、組成物は、組成物の総重量を基準として約1~7重量%、より好ましくは2~5重量%の第1の熱伝導性フィラーを含む。
【0020】
第2の態様の熱界面材料組成物の更に別の実施形態では、組成物は、組成物の総重量を基準として約10~30重量%、より好ましくは12~28重量%の第2の熱伝導性フィラーを含む。
【0021】
第2の態様の熱界面材料組成物の更に別の実施形態では、組成物は、組成物の総重量を基準として約50~75重量%、より好ましくは50~68重量%の第3の熱伝導性フィラーを含む。
【0022】
第2の態様の熱界面材料組成物の更に別の実施形態では、組成物は、組成物の総重量を基準として約2~5重量%の第1の熱伝導性フィラーと、12~28重量%の第2の熱伝導性フィラーと、50~68重量%の第3の熱伝導性フィラーとを含む。
【0023】
第2の態様の熱界面材料組成物の更に別の実施形態では、組成物は、組成物の総重量を基準として約7重量%の第1の熱伝導性フィラーと、26重量%の第2の熱伝導性フィラーと、60重量%の第3の熱伝導性フィラーとを含む。
【0024】
第2の態様の熱界面材料組成物の更に別の実施形態では、第1の熱伝導性フィラーi)は、非球形且つ約0.1~2μmの範囲の粒度分布D50を有するAl2O3であり、第2の熱伝導性フィラーii)は、球形且つ約3~10μmの範囲の粒度分布D50を有するAl2O3であり、第3の熱伝導性フィラーiii)は、球形且つ約40~150μmの範囲の粒度分布D50を有するAl2O3である。
【0025】
第2の態様の熱界面材料の更に別の実施形態では、第1の熱伝導性フィラーi)は、非球形且つ約0.1~2μmの範囲の粒度分布D50を有する水酸化アルミニウム[Al(OH)3]であり、第2の熱伝導性フィラーii)は、球形且つ約3~10μmの粒度分布D50を有するAl2O3であり、第3の熱伝導性フィラーiii)は、球形且つ約40~150μmの粒度分布D50を有するAl2O3である。
【0026】
第2の態様の熱界面材料の更に別の実施形態では、第1の熱伝導性フィラーi)は、0.5~10重量%で存在し、非球形且つ約0.1~2μmの範囲の粒度分布D50を有するAl2O3であり、第2の熱伝導性フィラーii)は、10~35重量%で存在し、球形且つ約3~10μmの粒度分布D50を有するAl2O3であり、第3の熱伝導性フィラーiii)は、50~80重量%で存在し、球形且つ約40~150μmの粒度分布D50を有するAl2O3である。
【0027】
第2の態様の熱界面材料の更に別の実施形態では、第1の熱伝導性フィラーi)は、0.5~10重量%で存在し、非球形且つ約0.1~2μmの範囲の粒度分布D50を有する水酸化アルミニウム[Al(OH)3]であり、第2の熱伝導性フィラーii)は、10~35重量%で存在し、球形且つ約3~10μmの粒度分布D50を有するAl2O3であり、第3の熱伝導性フィラーiii)は、50~80重量%で存在し、球形且つ約40~150μmの粒度分布D50を有するAl2O3である。
【0028】
第2の態様の熱界面材料の更に別の実施形態では、第1の熱伝導性フィラーi)は、0.5~10重量%で存在し、非球形且つ約0.5~1.5μmの範囲の粒度分布D50を有するAl2O3であり、第2の熱伝導性フィラーii)は、10~35重量%で存在し、球形且つ約3~7μmの粒度分布D50を有するAl2O3であり、第3の熱伝導性フィラーiii)は、50~80重量%で存在し、球形且つ約50~90μmの粒度分布D50を有するAl2O3である。
【0029】
第2の態様の熱界面材料の更に別の実施形態では、第1の熱伝導性フィラーi)は、0.5~10重量%で存在し、非球形且つ約1~2μmの範囲の粒度分布D50を有する水酸化アルミニウム[Al(OH)3]であり、第2の熱伝導性フィラーii)は、10~35重量%で存在し、球形且つ約3~7μmの粒度分布D50を有するAl2O3であり、第3の熱伝導性フィラーiii)は、50~80重量%で存在し、球形且つ約50~90μmの粒度分布D50を有するAl2O3である。
【0030】
本明細書では、上述した熱界面材料組成物を含む物品が更に提供される。
【0031】
物品の一実施形態では、物品は、1つ以上の電池セルと冷却ユニットとから形成される電池モジュールを更に含み、電池モジュールは、熱界面材料組成物を介して冷却ユニットに接続される。
【発明を実施するための形態】
【0032】
第1の態様によれば、高分子バインダー成分と、TIM組成物の総重量を基準として約85~95重量%の球形の熱伝導性フィラーの混合物とを含む熱界面材料(TIM)が本明細書において開示される。また、球形の熱伝導性フィラーの混合物は、合計重量を基準として、約0.1~20μmの範囲の粒度分布D50を有する第1の球形の熱伝導性フィラー約15~40重量%と、約40~150μmの範囲の粒度分布D50を有する第2の球形の熱伝導性フィラー約50~80重量%とを含む。
【0033】
本明細書では、第2の態様によれば、a)高分子バインダー成分と、b)約85~95重量%の熱伝導性フィラーと、を含む熱界面材料組成物であって、組成物の総重量が合計100重量%であり、熱伝導性フィラーが、その合計重量を基準として、i)球形又は非球形であり約0.1~2μmの範囲の粒度分布D50を有する第1の熱伝導性フィラー約0.5~10重量%と、ii)球形であり約3~10μmの範囲の粒度分布D50を有する第2の熱伝導性フィラー約10~35重量%と、iii)球形であり約40~150μmの範囲の粒度分布D50を有する第3の熱伝導性フィラー約50~80重量%とを含む、熱界面材料組成物も開示される。
【0034】
高分子バインダー成分は、任意の適切なポリマー材料から形成することができる。一実施形態では、高分子バインダー成分はエラストマー系材料から形成される。本明細書で使用されるエラストマー系材料の例としては、限定するものではないが、ポリウレタン、尿素、エポキシ、アクリレート、シリコーン、シラン変性ポリマー(SMP)が挙げられる。一実施形態では、高分子バインダー成分はポリウレタンから形成される。
【0035】
本開示によれば、高分子バインダー成分は、TIM組成物の総重量を基準として1~10重量%又は約2~7重量%のレベルでTIM組成物中に存在し得る。
【0036】
「球形」又は「球状」という用語は、本明細書では、等方性の形状、すなわち一般的にいえば広がり(粒子サイズ)がどの方向でもほぼ同じである形状を指すために使用される。特に、粒子が等方性であるためには、粒子の凸包の幾何学的中心と交差する弦の最大長と最小長の比率が、最も小さい等方性の正多面体、すなわち四面体の比を超えないことが必要である。
【0037】
粒子の形状は、走査型電子顕微鏡下での検査によって評価することができる。球状粒子は、400~5500×の倍率、好ましくは5000×の倍率の走査型電子顕微鏡下で球状に見えるものである。好ましくは、粒子は、1~1.2、好ましくは1~1.1のアスペクト比も有する。
【0038】
粒子の形状は、多くの場合、粒子の長径/粒子の厚さで表されるアスペクト比によって定義される。いくつかの実施形態では、球形又は球状のフィラーのアスペクト比は、約1~3、又は約1~2、より好ましくは1~1.2の範囲である。
【0039】
「熱伝導性フィラー」という用語は、純粋な形態で、ASTM5470に従って測定される熱伝導率が2W/mKを超えるフィラー材料を指すことが意図されている。
【0040】
更に、粒度分布のメジアン径又はメジアン値としても知られる粒度分布D50は、累積分布の50%における粒径の値である。例えば、D50=10μmである場合、サンプル中の粒子の50体積%が10μmより大きい平均直径を有し、粒子の50体積%が10μmより小さい平均直径を有する。粒子の1つのグループの粒度分布D50は、例えば懸濁媒体として水若しくはアセトンを使用するASTM B822-10又はASTM B822-20に従う光散乱法を使用して、又は例えば懸濁媒体として水若しくはアセトンを使用するASTM B822-10若しくはASTM B822-20若しくはISO13320に従うレーザー回折法を使用して、決定することができる。好ましくは、ISO13320によるレーザー回折が使用され、懸濁媒体として水が使用される。
【0041】
本明細書で使用される球形の熱伝導性フィラーは、Al2O3、Al、Mg(OH)2、MgO2、SiO2、窒化ホウ素を含むがこれらに限定されない任意の適切な材料から形成することができる。第1の態様では、球形の熱伝導性フィラーの混合物は、異なる粒度分布を有する少なくとも2つのグループのフィラーから構成される。すなわち、約0.1~20μm又は約0.5~15μmの範囲の粒度分布D50を有する第1の球形の熱伝導性フィラーと、約40~150μm、約40~120μm、又は約40~90μmの範囲の粒度分布D50を有する第2の球形の熱伝導性フィラーである。球形の熱伝導性フィラーの合計重量を基準として、第1の球形の熱伝導性フィラーは、約15~40重量%、又は約18~38重量%、又は約20~35重量%のレベルで存在することができ、第2の球形の熱伝導性フィラーは、約50~80重量%、又は約50~78重量%、又は約53~75重量%のレベルで存在することができる。第1及び第2のフィラーは、同じ又は異なる熱伝導性材料から形成され得る。また、第1及び第2のフィラーのそれぞれは、1種又は2種以上の材料から構成されていてもよい。更に、球形の熱伝導性フィラーの混合物は、第1及び第2の球形の熱伝導性フィラーとは異なる粒度分布D50を有する球形の熱伝導性フィラーの追加のグループを更に含み得る。一実施形態では、球形の熱伝導性フィラーの混合物は、球形のAl2O3粒子である。
【0042】
本明細書で使用される球形の熱伝導性フィラーは、Al2O3、Al、Mg(OH)2、MgO2、SiO2、窒化ホウ素を含むがこれらに限定されない任意の適切な材料から形成することができる。第2の態様では、球形及び非球形の熱伝導性フィラーの混合物は、異なる粒度分布を有する少なくとも3つのグループのフィラーから構成される。すなわち、i)約0.1~2μmの範囲の粒度分布D50を有する第1の球形又は非球形の熱伝導性フィラーと、ii)球形であり約3~10μmの範囲の粒度分布D50を有する第2の熱伝導性フィラーと、iii)球形であり約40~150μmの範囲の粒度分布D50を有する第3の熱伝導性フィラーである。第1、第2、及び第3のフィラーは、同じ又は異なる熱伝導性材料から形成され得る。また、第1、第2、及び第3のフィラーのそれぞれは、1種又は2種以上の材料から構成されていてもよい。更に、球形又は非球形の熱伝導性フィラーの混合物は、第1及び第2の球形の熱伝導性フィラーとは異なる粒度分布D50有する球形の熱伝導性フィラーの追加のグループを更に含み得る。一実施形態では、球形の熱伝導性フィラーの混合物は、球状のAl2O3粒子である。
【0043】
更に、球形の熱伝導性フィラーは、例えば脂肪酸、シラン、ジルコニウム系カップリング剤、チタネートカップリング剤、カルボキシレートなどで表面処理されていてもよい。
【0044】
球形の熱伝導性フィラーの混合物は、TIM組成物の総重量を基準として約85~95重量%のレベルでTIM組成物中に存在し得る。
【0045】
更に、本明細書に開示されるTIM組成物は、触媒、可塑剤、安定剤、接着促進剤、フィラー、着色剤などの他の適切な添加剤を任意選択的に更に含み得る。そのような任意選択的な添加剤は、TIMの総重量を基準として最大約10重量%、又は最大約8重量%、又は最大約5重量%のレベルで存在し得る。
【0046】
以下の実施例で示されるように、球形の熱伝導性フィラーの混合物(約0.1~20μmの範囲の粒度分布を有するもの15~40重量%と、約40~150μmの範囲の粒度分布を有するもの50~80重量%)を添加すると、粘度が低く導電率が高いTIMが得られる。
【0047】
以下の実施例で示されるように、本発明の第2の態様によれば、約0.1~2μmの範囲の粒度分布D50を有する球形及び非球形の熱伝導性フィラーの混合物を添加すると、粘度が低く導電率が高いTIMが得られる。
【0048】
本明細書では、電池パックシステムであって、その中の冷却ユニット又はプレートが上述したTIMを介して電池モジュール(1つ以上の電池セルから形成される)に結合されており、その結果熱をそれらの間で伝導することができる、電池パックシステムが更に開示される。一実施形態では、電池パックシステムは電池式自動車で使用されるものである。
【実施例】
【0049】
材料
・アミン-1 三官能性ポリエーテルアミン
・アミン-2 二官能性ポリエーテルアミン
・可塑剤 メチル化菜種油;
・安定剤 商品名CalofortTMSVとしてKeyser&Mackayから入手した沈降炭酸カルシウム;
・触媒 Evonikから商品名DabcoTMLV33として入手した、67%ジプロピレングリコール中に溶解した33%トリエチレンジアミン;
・アクリレート Sartomerから入手したエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート;
・STP Covestroから商品名DesmosealTMS XP2636として入手した脂肪族シラン末端ウレタンプレポリマー;
・プレポリマー 芳香族トルエンジイソシアネート(TDI)ベースのポリイソシアネートプレポリマーとカルダノールとの反応生成物;
・着色剤 商品名Araldit DW 0134GruenとしてHuntsmanから入手した着色ペースト;
・Al2O3-s-1 粒度分布D50が0.7μmである粒子20重量%と、粒度分布D50が5.9μmである粒子10重量%と、粒度分布D50が79μmである粒子70重量%とから構成され、アスペクト比が1.2未満である三峰性(trimodulus)球状Al2O3粒子;
・Al2O3-p-1 粒度分布D50が0.7μmである粒子20重量%と、粒度分布D50が5.9μmである粒子10重量%と、粒度分布D50が79μmである粒子70重量%とから構成され、アスペクト比が1.2超である三峰性(trimodulus)非球状Al2O3粒子;
・ATH-1 粒度分布D50が10μm未満である粒子と、粒度分布D50が50μm超である粒子とから構成され、アスペクト比が1.2超である二峰性分布の非球状三水酸化アルミニウム;
・ATH-2 粒度分布D50が2μmでありアスペクト比が1.2超である、単峰性(monomodulus)の三水酸化アルミニウム(非球状);
・ATH-3 粒度分布D50が50μmでありアスペクト比が1.2超である、単峰性(monomodulus)の三水酸化アルミニウム(非球状);
・ATH-4 粒度分布D50が1.5μmでありアスペクト比が1.2超である、単峰性(monomodulus)の三水酸化アルミニウム(非球状);
・Al2O3-p-2 粒度分布D50が5μmでありアスペクト比が1.2超である、単峰性(monomodulus)の非球状Al2O3粒子;
・Al2O3-p-3 粒度分布D50が70μmでありアスペクト比が1.2超である、単峰性(monomodulus)の非球状Al2O3粒子;
・Al2O3-p-4 粒度分布D50が0.8μmでありアスペクト比が1.2超である、非球状Al2O3粒子;
・Al2O3-s-2 粒度分布D50が5μmでありアスペクト比が1.2未満である、単峰性(monomodulus)の球状Al2O3粒子;
・Al2O3-s-3 粒度分布D50が70μmでありアスペクト比が1.2未満である、単峰性(monomodulus)の球状Al2O3粒子;
・Al-s Eckhartから入手した、粒度分布D50が14μmでありアスペクト比が1.2未満である、単峰性(monomodulus)の球状Al粒子;
・TiO2 Kronos International Inc.から入手した二酸化チタン粒子;
・Al2O3-s-4 粒度分布D50が0.7μmでありアスペクト比が1.2未満である、単峰性(monomodulus)の球状Al2O3粒子;
・Al-p-1 粒度分布D50が8μmでありアスペクト比が1.2超である、単峰性(monomodulus)の非球状Al粒子;
・Al-p-2 粒度分布D50が80μmでありアスペクト比が1.2超である、単峰性(monomodulus)の非球状Al粒子;
【0050】
粒度分布は、水を懸濁媒体として使用して、ISO13320に従ってレーザー回折によって測定した。
【0051】
粒子形状は、走査型電子顕微鏡下での検査によって評価した。球状粒子は、5000×の倍率の走査型電子顕微鏡で球形に見え、且つアスペクト比が1.2未満であるものである。
【0052】
比較例CE1~CE8並びに実施例E1~E7、E8及びE9
CE1~CE8並びにE1~E7、E8及びE9のそれぞれにおいて、パートA及びパートBは、表1に列挙した成分(第1の液体成分、次いで固体成分)を混合することによって別々に調製した。パートAとパートBの粘度(Anton-Paar NMC 202レオメーターを使用)と熱伝導率(ASTM5470による)を測定し、表1にまとめた。その後、Speedmixerを20秒間使用してパートAとパートBを1:1の体積比で混合し、最終的な熱界面材料(TIM)を得た。また、TIMの熱伝導率を測定し、表1にまとめた。
【0053】
ここで示されるように、球形の熱伝導性フィラーの混合物(約0.1~20μmの範囲の粒度分布を有するもの15~40重量%と、約40~150μmの範囲の粒度分布を有するもの50~80重量%)を添加すると、粘度が低く導電率が高いTIMが得られた。
【0054】
実施例E8及びE9は、本発明の第2の態様の実施例であり、i)球形又は非球形であり約0.1~2μmの範囲の粒度分布D50を有する第1の熱伝導性フィラー[Al2O3-p-4、D50 0.8μm(Ex8)、ATH-4、D50 1.5μm(Ex.9)]と、ii)球形であり約3~10μmの範囲の粒度分布D50を有する第2の熱伝導性フィラー(Al2O3-s-2、D50 5μm)と、iii)球形であり約40~150μmの範囲の粒度分布D50を有する第3の熱伝導性フィラー(Al2O3-s-3、D50 70μm)とを含む。
【0055】
【0056】
【国際調査報告】