(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】PCSK9のアンタゴニスト
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20230428BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20230428BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20230428BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/713
A61P3/06
A61P43/00 105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552336
(86)(22)【出願日】2021-03-15
(85)【翻訳文提出日】2022-10-25
(86)【国際出願番号】 EP2021056540
(87)【国際公開番号】W WO2021185765
(87)【国際公開日】2021-09-23
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521548168
【氏名又は名称】アルゴノート アールエヌエー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】カーン,マイケル
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB21
4C086ZC33
4C086ZC41
(57)【要約】
本開示は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖RNA分子を含み、かつ分子のセンスまたはアンチセンスのいずれかのRNA部分の3’末端に共有結合した一本鎖DNA分子をさらに含む、核酸であって、二本鎖阻害性RNAが、高コレステロール血症および心血管疾患などの高コレステロール血症に関連する疾患の治療において、プロタンパク質転換酵素サブチリシン・ケキシン9型(PCSK9)を標的とする、核酸に関する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸分子であって、
ヒトPCSK9ヌクレオチド配列またはその多型配列バリアントの少なくとも一部のセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む、二本鎖阻害性リボ核酸(RNA)分子を含む、第1の部分と、
一本鎖デオキシリボ核酸(DNA)分子を含む、第2の部分であって、前記一本鎖DNA分子の5’末端が、前記二本鎖阻害性RNA分子の前記センス鎖の3’末端に共有結合しているか、または前記一本鎖DNA分子の前記5’末端が、前記二本鎖阻害性RNA分子の前記アンチセンス鎖の3’に共有結合しており、前記一本鎖DNA分子が、ヌクレオチド配列を含み、前記ヌクレオチド配列が、その長さの少なくとも一部にわたって、前記一本鎖DNAの一部への相補的塩基対形成によってアニーリングされて、二本鎖ステムドメインおよび一本鎖ループドメインを含む二本鎖DNA構造を形成するように適合されている、第2の部分と、を含む、核酸分子。
【請求項2】
前記一本鎖DNA分子の前記5’末端が、前記二本鎖阻害性RNA分子の前記センス鎖の前記3’末端に共有結合している、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
前記一本鎖DNA分子の前記5’末端が、前記二本鎖阻害性RNA分子の前記アンチセンス鎖の前記3’末端に共有結合している、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項4】
前記ループ部分が、ヌクレオチド配列GNAまたはGNNAを含む領域を含み、各Nが、独立して、グアニン(G)、チミジン(T)、アデニン(A)、またはシトシン(C)を表す、請求項1~3のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項5】
前記ループドメインが、ヌクレオチド配列GCGAAGCを含む、請求項4に記載の核酸分子。
【請求項6】
前記一本鎖DNA分子が、ヌクレオチド配列TCACCTCATCCCGCGAAGC(配列番号133)を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項7】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、18~29ヌクレオチド塩基対長であり、より好ましくは、19~23ヌクレオチド塩基対長である、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項8】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号134に示されるセンスヌクレオチド配列の18~29個の隣接するヌクレオチドを含むか、またはそれからなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項9】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号134に示される前記センスヌクレオチド配列の21個の隣接するヌクレオチド塩基対を含むか、またはそれからなる、請求項8に記載の核酸分子。
【請求項10】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号8、1、2、3、4、5、6、7、9、または10からなる群から選択されるセンスヌクレオチド配列を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項11】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号18、11、12、13、14、15、16、17、19、または20からなる群から選択されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項12】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、および76からなる群から選択されるセンスヌクレオチド配列を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項13】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、および132からなる群から選択されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項14】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号8を含むセンス鎖、および配列番号18を含むアンチセンス鎖を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項15】
前記一本鎖DNA分子が、配列番号8を含むセンス鎖に共有結合している、請求項14に記載の核酸分子。
【請求項16】
前記一本鎖DNA分子が、配列番号18を含むアンチセンス鎖に共有結合している、請求項14に記載の核酸分子。
【請求項17】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号9を含むセンス鎖、および配列番号19を含むアンチセンス鎖を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項18】
前記一本鎖DNA分子が、配列番号9を含むセンス鎖に共有結合している、請求項17に記載の核酸分子。
【請求項19】
前記一本鎖DNA分子が、配列番号19を含むアンチセンス鎖に共有結合している、請求項17に記載の核酸分子。
【請求項20】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号10を含むセンス鎖、および配列番号20を含むアンチセンス鎖を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項21】
前記一本鎖DNA分子が、配列番号10を含むセンス鎖に共有結合している、請求項20に記載の核酸分子。
【請求項22】
前記一本鎖DNA分子が、配列番号20を含むアンチセンス鎖に共有結合している、請求項20に記載の核酸分子。
【請求項23】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号135を含むセンス鎖、および配列番号136を含むアンチセンス鎖を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項24】
N-アセチルガラクトサミンが、前記核酸分子のDNA部分に、前記DNA部分の末端の3’末端を介して結合している、請求項1~23のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項25】
N-アセチルガラクトサミンが、前記阻害性RNAのアンチセンス部分または前記阻害性RNAのセンス部分のいずれかに結合している、請求項1~23のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項26】
N-アセチルガラクトサミンが、以下の構造を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の核酸分子。
【化1】
【請求項27】
少なくとも1つの、請求項1~26のいずれか一項に記載の核酸分子を含む、医薬組成物であって、医薬担体および/または賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項28】
前記組成物が、少なくとも1つのさらなる異なる治療剤を含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記さらなる治療剤が、スタチンである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
高コレステロール血症もしくは高コレステロール血症に関連する疾患を有するかまたはその素因がある対象の治療または予防における使用のための、請求項1~29のいずれか一項に記載の核酸分子または医薬組成物。
【請求項31】
高コレステロール血症が、家族性高コレステロール血症である、請求項30に記載の使用による核酸分子または医薬組成物。
【請求項32】
家族性高コレステロール血症が、PCSK9発現のレベルの上昇に関連している、請求項30または31に記載の使用による核酸分子または医薬組成物。
【請求項33】
前記対象が、スタチン療法に耐性である、請求項30~32のいずれか一項に記載の使用による核酸分子または医薬組成物。
【請求項34】
高コレステロール血症に関連する前記疾患が、卒中予防、高脂血症、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、冠動脈心疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患、高血圧、代謝症候群、II型糖尿病、非アルコール性脂肪酸肝疾患、および非アルコール性脂肪性肝炎からなる群から選択される、請求項30~33のいずれか一項に記載の使用による核酸分子または医薬組成物。
【請求項35】
高コレステロール血症を有するかまたはその素因がある対象を治療するための方法であって、有効用量の請求項1~29のいずれか一項に記載の核酸または医薬組成物を投与し、それによって高コレステロール血症もしくは高コレステロール血症に関連する疾患を治療または予防することを含む、方法。
【請求項36】
前記高コレステロール血症が、家族性高コレステロール血症である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
家族性高コレステロール血症が、PCSK9発現のレベルの上昇に関連している、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記対象が、スタチン療法に耐性である、請求項35~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
高コレステロール血症に関連する前記疾患が、卒中予防、高脂血症、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、冠動脈心疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患、高血圧、代謝症候群、II型糖尿病、非アルコール性脂肪酸肝疾患、および非アルコール性脂肪性肝炎からなる群から選択される、請求項35~38のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖RNA分子を含み、分子のセンスまたはアンチセンスのいずれかのRNA部分の3’末端に共有結合した一本鎖DNA分子をさらに含む、核酸であって、二本鎖阻害性RNAが、プロタンパク質転換酵素サブチリシン・ケキシン9型(PCSK9)を標的とする、核酸;当該核酸分子を含む、医薬組成物;ならびにPCSK9のレベルの増加に関連する疾患、例えば、高コレステロール血症および心血管疾患の治療のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高コレステロール血症に関連する心血管疾患、例えば、虚血性心血管疾患は、一般的な状態であり、心疾患ならびに高い死亡頻度および罹病率をもたらし、かつ貧弱な食事、肥満、または遺伝性機能障害性遺伝子の帰結であり得る。例えば、PSCK9は、家族性高コレステロール血症に関連している。コレステロールは、動物細胞における膜新生のために必須である。水溶性を欠くことは、コレステロールがリポタンパク質に付随して身体の至るところに輸送されることを意味する。アポリポタンパク質は、リン脂質、コレステロール、および脂質リポタンパク質と一緒に形成され、これは、血流を介した身体の様々な部分へのコレステロールなどの脂質の輸送を促進する。リポタンパク質はサイズに従って分類され、HDL(高密度リポタンパク質)、LDL(低密度リポタンパク質)、IDL(中間密度リポタンパク質)、VLDL(超低密度リポタンパク質)、およびULDL(超低比重リポタンパク質)リポタンパク質を形成し得る。
【0003】
リポタンパク質はその循環を通して組成を変化させ、様々な比率のアポリポタンパク質A(ApoA)、B(ApoB)、C(ApoC)、D(ApoD)またはE(ApoE)、トリグリセリド、コレステロールおよびリン脂質を含む。ApoBは、ULDLおよびLDLの主要なアポリポタンパク質であり、2つのアイソフォーム、apoB-48およびapoB-100を有する。両方のApoBアイソフォームは、1つの単一遺伝子によってコードされ、短い方のApoB-48遺伝子は、終止コドンの作製をもたらす残基2180でのApoB-100転写物のRNA編集の後に生成される。ApoB-100は、LDLの主要な構造タンパク質であり、細胞受容体のリガンドとして作用し、これは、例えばコレステロールの細胞中への輸送を可能にする。
【0004】
家族性高コレステロール血症は、希少疾患であり、血中のLDLコレステロール(LDL-C)のレベルの上昇から生じる。この疾患は、常染色体優性障害であり、ヘテロ接合状態(350~550mg/dL LDL-C)およびホモ接合状態(650~1000mg/dL LDL-C)の両方がLDL-Cの上昇をもたらす。家族性高コレステロール血症のヘテロ接合型は、人口のおよそ1:500である。ホモ接合状態はずっと稀であり、約1:1,000,000である。LDL-Cの正常レベルは、130mg/dLの領域にある。
【0005】
高コレステロール血症は、小児患者において特に急性であり、これは、早期に診断されない場合、冠動脈心疾患の加速および早死をもたらし得る。早期に診断および治療される場合、小児は正常な平均余命を有し得る。成人では、高いLDL-C(変異または他の要因のいずれかによる)は、アテローム性動脈硬化症のリスクの増加と直接的に関連し、これは、冠動脈疾患、卒中または腎臓の問題を導き得る。LDL-Cのレベルを低下させることが、アテローム性動脈硬化症および関連する状態のリスクを低下させることは既知である。LDL-Cレベルは、HMG-CoAレダクターゼを阻害することによってコレステロールのデノボ合成をブロックするスタチンの投与によって最初に低下され得る。いくらかの対象は、スタチンをエゼチミブ、コレスチポールまたはニコチン酸などの他の治療剤と組み合わせる併用療法の恩恵を受け得る。しかしながら、HMG-CoAレダクターゼの発現および合成は、スタチン阻害に応答して順応し、経時的に増加し、従って、有益な効果は、スタチン抵抗性が確立された後は、一時的または限定的に過ぎない。
【0006】
それゆえ、LDL-Cの上昇による心血管疾患を制御するために、単独で、または既存の治療アプローチとの組み合わせで使用することができる代替療法を特定することが所望されている。
【0007】
遺伝子機能を特異的に除去する技術は、低分子阻害性または干渉RNA(siRNA)とも称される二本鎖阻害性RNAの細胞中への導入を介するものであり、これは、siRNA分子に含まれる配列に相補的なmRNAの破壊をもたらす。siRNA分子は、互いにアニーリングして、二本鎖RNA分子を形成する、RNAの2つの相補鎖(センス鎖およびアンチセンス鎖)を含む。siRNA分子は、排他的ではないが典型的には、除去しようとする遺伝子のエキソンに由来する。多くの生物は、siRNAの形成を導くカスケードを活性化することによって、二本鎖RNAの存在に応答する。二本鎖RNAの存在は、二本鎖RNAを、リボヌクレオタンパク質複合体の部分になるより小さなフラグメント(siRNA、約21~29ヌクレオチド長)にプロセシングするRNaseIIIを含むタンパク質複合体を活性化する。siRNAは、RNase複合体がsiRNAのアンチセンス鎖に相補的なmRNAを切断し、それによってmRNAの破壊をもたらすための、ガイドとして作用する。
【0008】
PCSK9は、高コレステロール血症、心血管疾患、および関連する状態の治療における治療的介入のための既知の標的である。例えば、国際公開2008/011431は、PCSK9発現を標的とする短干渉核酸の使用、ならびに高脂血症、高コレステロール血症、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、および高血圧などの疾患および状態の治療におけるそれらの使用を開示している。さらに、国際公開2012/058693は、PCSK9発現に関連する病状の治療においてPCSK9遺伝子発現をサイレンシングするように設計されたsiRNAを同様に開示している。PCSK9発現の阻害に関する他の開示としては、米国特許公開12/478,452、国際公開2009/134487、および国際公開2007/134487が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開2008/011431
【特許文献2】国際公開2012/058693
【特許文献3】米国特許公開12/478,452
【特許文献4】国際公開2009/134487
【特許文献5】国際公開2007/134487
【0010】
本開示は、センスまたはアンチセンスのいずれかの阻害性RNAの3’末端に結合された短いDNA部分を含めることによって修飾され、ヘアピン構造を形成し、PCSK9をコードするヌクレオチド配列を参照して設計される二本鎖阻害性RNAを含む核酸分子に関する。米国特許8,067,572(これは、参照によりその全体が組み込まれる)は、当該核酸分子の例を開示している。二本鎖阻害性RNAは、専らまたは主に天然ヌクレオチドを使用し、従来技術の二本鎖RNA分子が薬力学および薬物動態を向上させるために典型的に利用する修飾ヌクレオチドまたは糖を必要としない。
【0011】
開示される二本鎖阻害性RNAは、潜在的により少ない副作用でPCSK9をサイレンシングする活性を有する。
【発明の概要】
【0012】
本発明の一態様によれば、核酸分子であって、
ヒトPCSK9ヌクレオチド配列の少なくとも一部のセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む、二本鎖阻害性リボ核酸(RNA)分子を含む、第1の部分と、
一本鎖デオキシリボ核酸(DNA)分子を含む、第2の部分であって、当該一本鎖DNA分子の5’末端が、二本鎖阻害性RNA分子のセンス鎖の3’末端に共有結合しているか、または一本鎖DNA分子の5’末端が、二本鎖阻害性RNA分子のアンチセンス鎖の3’に共有結合しており、当該一本鎖DNA分子が、ヌクレオチド配列を含み、このヌクレオチド配列が、その長さの少なくとも一部にわたって、当該一本鎖DNAの一部への相補的塩基対形成によってアニーリングされて、二本鎖ステムドメインおよび一本鎖ループドメインを含む二本鎖DNA構造を形成するように適合されている、第2の部分と、を含む、核酸分子が提供される。
【0013】
本発明の一態様によれば、核酸分子であって、
ヒトPCSK9ヌクレオチド配列またはその多型配列バリアントの少なくとも一部のセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む、二本鎖阻害性リボ核酸(RNA)分子を含む、第1の部分と、
一本鎖デオキシリボ核酸(DNA)分子を含む、第2の部分であって、当該一本鎖DNA分子の5’末端が、二本鎖阻害性RNA分子のセンス鎖の3’末端に共有結合しているか、または一本鎖DNA分子の5’末端が、二本鎖阻害性RNA分子のアンチセンス鎖の3’に共有結合しており、当該一本鎖DNA分子が、ヌクレオチド配列を含み、このヌクレオチド配列が、その長さの少なくとも一部にわたって、当該一本鎖DNAの一部への相補的塩基対形成によってアニーリングされて、二本鎖ステムドメインおよび一本鎖ループドメインを含む二本鎖DNA構造を形成するように適合されている、第2の部分と、を含む、核酸分子が提供される。
【0014】
「多型配列バリアント」は、1個、2個、3個以上のヌクレオチドによって異なる配列である。好ましくは、当該二本鎖阻害性RNA分子は、天然ヌクレオチド塩基を含む。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、当該一本鎖DNA分子の5’末端は、二本鎖阻害性RNA分子のセンス鎖の3’末端に共有結合している。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、当該一本鎖DNA分子の5’末端は、二本鎖阻害性RNA分子のアンチセンス鎖の3’末端に共有結合している。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、当該ループドメインは、ヌクレオチド配列GNAまたはGNNAを含む領域を含み、各Nは、独立して、グアニン(G)、チミジン(T)、アデニン(A)、またはシトシン(C)を表す。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、当該ループドメインは、GおよびCヌクレオチド塩基を含む。
【0019】
本発明の代替的な実施形態では、当該ループドメインは、ヌクレオチド配列GCGAAGCを含む。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、当該一本鎖DNA分子は、ヌクレオチド配列TCACCTCATCCCGCGAAGC(配列番号133)を含む。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、10~40ヌクレオチド塩基対長である。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、18~29ヌクレオチド塩基対長である。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、19~23ヌクレオチド塩基対長である。
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、21ヌクレオチド塩基対長である。
【0024】
抑制性RNA分子は、化学修飾を必要としない天然ヌクレオチド塩基を含む。さらに、本発明のいくつかの実施形態では、crook DNA分子は、当該二本鎖阻害性RNAのセンス鎖の3’末端に結合されており、アンチセンス鎖は、任意選択的に、少なくとも2ヌクレオチドの塩基オーバーハング配列を備えている。2ヌクレオチドのオーバーハング配列は、標的、例えば、PCSK9によってコードされるヌクレオチドに対応し得るか、または非コードである。2ヌクレオチドのオーバーハングは、任意の配列および任意の順序の2つのヌクレオチド、例えば、UU、AA、UA、AU、GG、CC、GC、CG、UG、GU、UC、CUであり得る。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、本明細書に開示されるようにRNAサイレンシングのインビトロ細胞培養法で測定される場合、PCSK9 mRNA発現の少なくとも70%の阻害を有する。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、当該インビトロ細胞培養法は、HEPG2細胞におけるPCSK9発現のサイレンシングである。
【0027】
好ましくは、当該二本鎖阻害性RNA分子は、PCSK9 mRNA発現の少なくとも70%、80%、85%、または90%の阻害を有する。
【0028】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号134に示されるセンスヌクレオチド配列の18~29個の隣接するヌクレオチドを含むか、またはそれからなる。
【0029】
好ましくは、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号134に示されるセンスヌクレオチド配列の21個の隣接するヌクレオチド塩基対を含むか、またはそれからなる。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号8、1、2、3、4、5、6、7、9、または10からなる群から選択されるセンスヌクレオチド配列を含む。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号18、11、12、13、14、15、16、17、19、または20からなる群から選択されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む。
【0032】
本発明の代替的な好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、および76からなる群から選択されるセンスヌクレオチド配列を含む。
【0033】
本発明の代替的な好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、および132からなる群から選択されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号8を含むセンス鎖、および配列番号18を含むアンチセンス鎖を含む。
【0035】
本発明の好ましい実施形態では、当該一本鎖DNA分子は、配列番号8を含むセンス鎖に共有結合している。
【0036】
本発明の代替的な好ましい実施形態では、当該一本鎖DNA分子は、配列番号18を含むアンチセンス鎖に共有結合している。
【0037】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号9を含むセンス鎖、および配列番号19を含むアンチセンス鎖を含む。
【0038】
本発明の好ましい実施形態では、当該一本鎖DNA分子は、配列番号9を含むセンス鎖に共有結合している。
【0039】
本発明の代替的な好ましい実施形態では、当該一本鎖DNA分子は、配列番号19を含むアンチセンス鎖に共有結合している。
【0040】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号10を含むセンス鎖、および配列番号20を含むアンチセンス鎖を含む。
【0041】
本発明の好ましい実施形態では、当該一本鎖DNA分子は、配列番号10を含むセンス鎖に共有結合している。
【0042】
本発明の代替的な好ましい実施形態では、当該一本鎖DNA分子は、配列番号20を含むアンチセンス鎖に共有結合している。
【0043】
本発明の好ましい実施形態では、当該二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号135を含むセンス鎖、および配列番号136を含むアンチセンス鎖を含む。
【0044】
米国特許10,851、3777および米国特許公開2018/104360(これらの各々は、参照によりそれらの全体が組み込まれる)は、PCSK9を標的とするsiRNAを開示している。配列番号135および配列番号136は、具体的に特許請求されており、非天然ヌクレオチド塩基を使用して広範囲に修飾されている。このsiRNAは、「インクリシラン」と称される。本開示は、特許請求された核酸分子のDNA部分をいずれかの配列に提供して、天然ヌクレオチド塩基を使用する代替的なsiRNAを提供することによって、配列番号135および136を適合させている。
【0045】
本発明の好ましい実施形態では、当該核酸分子は、N-アセチルガラクトサミンに共有結合している。
【0046】
本発明の好ましい実施形態では、N-アセチルガラクトサミンは、DNA部分の末端3’末端を介して、当該核酸分子のDNA部分に直接的または間接的に結合している。
【0047】
本発明の好ましい実施形態では、N-アセチルガラクトサミンは、切断可能リンカー、例えば、チオール含有切断可能リンカーを介して、当該核酸分子のDNA部分に間接的に結合している。
【0048】
リガンドをオリゴヌクレオチドに結合する化学は、当該技術分野で既知である。例えば、N-アセチルガラクトサミンなどのリガンドの、オリゴヌクレオチドへの結合は、Johannes Winkler,Ther.Deliv.(2013)4(7),791-809(これは、参照によりその全体が組み込まれる)に記載されており、以下の表1を参照されたい。
【0049】
【0050】
表1.A:活性エステルを介して形成されるアミド結合 B:ピリジルジチオール活性化リガンドを介して形成されるジスルフィド結合 C:チオール-マレイミドカップリング D:アジドとアルキンとの間の銅触媒クリック化学カップリング E:ジベンゾ-シクロオクチンとアジドとの間の銅フリークリック化学カップリング。
【0051】
さらに、N-アセチルガラクトサミンなどのリガンドをオリゴヌクレオチドに結合するための代替的なカップリング化学が、Yashveer Singh,Pierre Murat,Eric Defrancq,Chem.Soc.Rev.,2010,39,2054-2070(これは、参照によりその全体が組み込まれる)に開示されており、以下の表2を参照されたい。
【0052】
【0053】
【0054】
本発明のさらなる代替的な実施形態では、N-アセチルガラクトサミンは、当該阻害性RNAのアンチセンス部分または当該阻害性RNAのセンス部分のいずれかに結合している。
【0055】
本発明の好ましい実施形態では、当該核酸分子は、以下の構造を含む分子に共有結合している。
【0056】
【0057】
本発明の代替的な好ましい実施形態では、当該核酸分子は、N-アセチルガラクトサミン4-サルフェートを含む分子に共有結合している。
【0058】
本発明のさらなる態様によれば、少なくとも1つの本発明による核酸分子を含む医薬組成物が提供される。
【0059】
本発明の好ましい実施形態では、当該組成物は、医薬担体および/または賦形剤をさらに含む。
【0060】
本発明の好ましい実施形態では、当該医薬組成物は、少なくとも1つのさらなる異なる治療剤を含む。投与されるときに、本発明の組成物は、薬学的に許容される調製物で投与される。そのような調製物は、通常、薬学的に許容される濃度の塩、緩衝剤、防腐剤、適合性担体、および任意選択的にコレステロール低下剤などの他の治療剤を含有し得、これは、本発明による核酸分子と別々に、または組み合わせが適合性である場合は併用調製物で投与され得る。
【0061】
本発明による核酸と他の異なる治療剤との組み合わせは、同時の、連続的な、または時間的に分離した投薬量として投与される。
【0062】
本発明の治療薬は、注射を含む任意の従来の経路によって、または経時的な漸進的注入によって投与され得る。投与は、例えば、経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、腔内、皮下、経皮または経上皮であり得る。
【0063】
本発明の組成物は、有効量で投与される。「有効量」は、単独で、またはさらなる用量と一緒に、所望の応答をもたらす組成物の量である。心血管疾患などの疾患を治療する場合、所望の応答は、疾患の進行の阻害または逆転である。これは、一時的に疾患の進行を遅延させることのみを含み得るが、より好ましくは、持続的に疾患の進行を停止することを含む。これは、通常の方法によってモニタリングされ得る。
【0064】
そのような量は、もちろん、治療される特定の状態、状態の重症度、年齢、健康状態、サイズおよび体重を含む個々の患者のパラメーター、治療の期間、同時治療の性質(ある場合)、特定の投与経路、および医療従事者の知識および専門知識内の同様の要因に依存する。これらの要因は当業者に周知であり、日常的な実験だけで対処され得る。一般に、個々の成分またはその組み合わせの最大用量、すなわち、健全な医学的判断に従った最も高い安全な用量を使用することが好ましい。しかしながら、患者が、医学的理由、心理的理由または実質的に任意の他の理由で、より低い用量または許容用量を主張し得ることが当業者によって理解される。
【0065】
前述の方法において使用される医薬組成物は、好ましくは無菌であり、患者への投与に好適な重量または容量の単位で所望の応答をもたらすために有効な量の本発明による核酸分子を含有する。応答は、例えば、心血管疾患の退行および疾患症状の減少などを決定することによって測定され得る。
【0066】
対象に投与される本発明による核酸分子の用量は、様々なパラメーターに従って、特に使用される投与様式および対象の状態に従って選択され得る。他の要因には、所望される治療期間が含まれる。対象における応答が、適用される最初の用量で不十分である場合、より高い用量(または異なるより局所化された送達経路による有効により高い用量)が、患者の許容性が許す程度まで用いられ得る。本発明による核酸の検出方法が、治療を必要とする対象のために適切な投薬量の決定を容易にすることは明らかである。
【0067】
一般に、1nM~1μMの本明細書に開示される核酸分子の用量が、標準的な手順に従って一般に処方および投与される。好ましくは、用量は、1nM~500nM、5nM~200nM、10nM~100nMの範囲であり得る。組成物の投与のための他のプロトコルは当業者に既知であり、ここで、用量、注射スケジュール、注射部位、投与様式などは前述から変動する。ヒト以外の哺乳動物への組成物の投与(例えば、試験目的または獣医治療目的のため)は、上記と実質的に同じ条件下で実施される。本明細書で使用される場合、対象は、哺乳動物、好ましくはヒトであり、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコまたは齧歯動物を含む。
【0068】
投与されるときに、本発明の医薬調製物は、薬学的に許容される量で、薬学的に許容される組成物で適用される。「薬学的に許容される」という用語は、活性成分の生物学的活性の有効性を妨げない非毒性材料を意味する。そのような調製物は、通常、塩、緩衝剤、防腐剤、適合性担体、および任意選択的に他の治療剤、例えばスタチンを含有し得る。医薬において使用されるときに、塩は薬学的に許容されるものであるべきであるが、薬学的に許容されない塩は、その薬学的に許容される塩を調製するために好都合に使用され得、本発明の範囲から除外されない。そのような薬理学的および薬学的に許容される塩には以下の酸、塩酸、臭化水素酸塩、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸などから調製されるものが含まれるが、これらに限定されない。また、薬学的に許容される塩は、ナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩などのアルカリ金属またはアルカリ土類塩として調製され得る。
【0069】
組成物は、所望であれば、薬学的に許容される担体と組み合わされ得る。本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という用語は、ヒトへの投与に好適である1つ以上の適合性の固体もしくは液体の充填剤、希釈剤、またはカプセル化物質を意味する。この文脈での「薬学的に許容される担体」という用語は、例えば、溶解性および/または安定性を促進するために、それとともに活性成分が組み合わされる、天然または合成の、有機または無機の成分を示す。医薬組成物の成分はまた、所望の薬学的有効性を実質的に損なう相互作用が存在しないような方法で、本発明の分子と、かつ互いに、混合されることができる。
【0070】
医薬組成物は、塩の酢酸、塩のクエン酸、塩のホウ酸、塩のリン酸を含む好適な緩衝剤を含有し得る。医薬組成物はまた、任意選択的に、好適な防腐剤を含有し得る。
【0071】
医薬組成物は、単位剤形で好都合に提供され得、薬学技術分野で周知の方法のいずれかによって調製され得る。すべての方法は、活性剤を、1つ以上の副成分を構成する担体と合わせるステップを含む。一般に、組成物は、活性化合物を、液体担体、微細に分割された固体担体、またはその両方と均一かつ密接に合わせ、次いで、必要に応じて、生成物を成形することによって調製される。経口投与に好適な組成物は、各々が所定量の活性化合物を含有する、カプセル、錠剤、トローチなどの個別の単位として提供され得る。
【0072】
非経口投与に好適な組成物は、核酸の無菌の水性または非水性の調製物を好都合に含み、これは、好ましくは、レシピエントの血液と等張である。この調製物は、好適な分散または湿潤剤および懸濁剤を使用する既知の方法に従って処方され得る。無菌の注射用調製物はまた、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌の注射用の溶液または懸濁液(例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液として)であり得る。用いられ得る許容される溶媒には、水、リンゲル液、および等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の固定油は、溶媒または懸濁媒質として従来用いられている。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の刺激の少ない固定油が用いられ得る。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は、注射剤の調製において使用され得る。経口、皮下、静脈内、筋肉内などの投与に好適な担体製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PAにおいて見出され得る。
【0073】
本発明の好ましい実施形態では、当該さらなる治療剤は、スタチンである。
【0074】
スタチンは、LDL-Cの上昇を有する対象におけるコレステロールレベルを制御するために一般的に使用されている。スタチンは、罹患しやすい対象および心血管疾患を有する対象の予防および治療において有効である。スタチンの典型的な投薬量は5~80mgの領域にあるが、これは、高LDL-Cを患う対象のために必要とされる所望されるLDL-C低下のレベルおよびスタチンに依存する。しかしながら、スタチンの標的であるHMG-CoAレダクターゼの発現および合成は、スタチン投与に応答して順応し、したがって、スタチン療法の有益な効果は、スタチン抵抗性が確立された後は、一時的または限定的に過ぎない。
【0075】
好ましくは、当該スタチンは、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピトバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシンバスタチンからなる群から選択される。
【0076】
本発明の好ましい実施形態では、当該さらなる治療剤は、エゼチミブである。任意選択的に、エゼチミブは、少なくとも1つのスタチン、例えばシンバスタチンと組み合わされる。
【0077】
本発明の代替的な好ましい実施形態では、当該さらなる治療剤は、フィブラート、ニコチン酸、コレスチラミンからなる群から選択される。
【0078】
本発明のさらなる代替的な好ましい実施形態では、当該さらなる治療剤は、治療抗体、例えば、エボロクマブ、ボコシズマブまたはアリロクマブである。
【0079】
本発明のさらなる態様によれば、高コレステロール血症もしくは高コレステロール血症に関連する疾患を有するかまたはその素因がある対象の治療または予防における使用のための、本発明による核酸分子または本発明による医薬組成物が提供される。
【0080】
本発明の好ましい実施形態では、当該対象は、小児対象である。
【0081】
小児対象には、新生児(0~28日齢)、乳児(1~24月齢)、幼児(2~6歳)、思春期前(7~14歳)および思春期(14~18歳)の若年者が含まれる。
【0082】
本発明の代替的な好ましい実施形態では、当該対象は、成人対象である。
【0083】
本発明の好ましい実施形態では、高コレステロール血症は、家族性高コレステロール血症である。
【0084】
本発明の好ましい実施形態では、家族性高コレステロール血症は、PCSK9発現のレベルの上昇に関連している。
【0085】
本発明の好ましい実施形態では、当該対象は、スタチン療法に対して抵抗性である。
【0086】
本発明の好ましい実施形態では、高コレステロール血症に関連する当該疾患は、卒中予防、高脂血症、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、冠動脈心疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患、高血圧、代謝症候群、II型糖尿病、非アルコール性脂肪酸肝疾患、および非アルコール性脂肪性肝炎からなる群から選択される。
【0087】
本発明のさらなる態様によれば、高コレステロール血症を有するかまたはその素因がある対象を治療するための方法であって、有効用量の本発明による核酸または医薬組成物を投与し、それによって高コレステロール血症もしくは高コレステロール血症に関連する疾患を治療または予防することを含む、方法が提供される。
【0088】
本発明の好ましい方法では、当該対象は、小児対象である。
【0089】
本発明の代替的な好ましい方法では、当該対象は、成人対象である。
【0090】
本発明の好ましい方法では、高コレステロール血症は、家族性高コレステロール血症である。
【0091】
本発明の好ましい方法では、家族性高コレステロール血症は、プロタンパク質転換酵素サブチリシン・ケキシン9型(PCSK9)発現のレベルの上昇に関連している。
【0092】
本発明の好ましい方法では、当該対象は、スタチン療法に対して抵抗性である。
【0093】
本発明の好ましい方法では、高コレステロール血症に関連する当該疾患は、卒中予防、高脂血症、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、冠動脈心疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患、高血圧、代謝症候群、II型糖尿病、非アルコール性脂肪酸肝疾患、および非アルコール性脂肪性肝炎からなる群から選択される。
【0094】
本発明のさらなる態様によれば、PCSK9の上昇に関連する高コレステロール血症のための診断方法および治療レジメンであって、
i)高コレステロール血症を有する疑いがあるかまたは有している対象から生物学的サンプルを取得することと、
ii)サンプルを、PSCK9ポリペプチドに特異的な抗体または抗体フラグメントと接触させることと、
iii)当該生物学的サンプルにおける当該PCSK9およびLDL-Cの濃度を決定することと、
iv)LDL-C濃度が350mg/dL超である場合に、本発明による核酸分子または医薬組成物を投与することと、を含む、診断方法および治療レジメンが提供される。
【0095】
典型的には、家族性高コレステロール血症疾患において、LDL-Cのレベルは、選択された変異についてヘテロ接合性である対象において350~550mg/dLであり、ホモ接合変異を保有する対象において650~1000mg/dLである。LDL-Cの正常レベルは、130mg/dLの領域にある。
【0096】
本明細書の説明および特許請求の範囲の全体を通して、「含む(comprise)」および「含有する(contain)」という単語、ならびにこれらの単語の変形、例えば「含む(comprising)」および「含む(comprises)」は、「含むがこれらに限定されない」ことを意味し、他の部分、添加物、成分、整数またはステップを除外することを意図しない(除外しない)。
【0097】
本明細書の説明および特許請求の範囲の全体を通して、別段文脈上の必要がない限り、単数形は複数形を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、別段文脈上の必要がない限り、明細書は、単数形だけでなく複数形も考慮していると理解すべきである。
【0098】
本発明の態様、実施形態または実施例に関連して記載される特徴、整数、特性、化合物、化学部分または基は、それと非適合性でない限り、本明細書に記載される任意の他の態様、実施形態または例に適用可能であると理解すべきである。
【0099】
ここで、本発明の実施形態を、単に例示として、かつ以下の図を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【
図1】対照と比較した、GalNAcコンジュゲートCrook抗マウスApoB siRNAのインビボ活性を示すグラフである。(a)5匹の成体雄性野生型C57BL/6マウスからの血漿ApoBレベル(マイクログラム/ml)を、GalNAcコンジュゲートApoB Crook siRNAの皮下投与の96時間後に測定し(1つの処置群)、生理食塩水を投与した対照処置群と比較した。統計分析を、両側の対応のあるT検定アルゴリズムを使用して適用した。結果は、対照と比較して、GalNAcコンジュゲートCrook siRNAで処置したマウスにおける平均血漿ApoBレベルの実質的な低下を示す。しかしながら、おそらくは小さなサンプルサイズ、および対照動物の間のApoBレベルの変動に起因して、有意性には至らない(p=0.08)。
図1(b)5匹の成体雄性野生型C57BL/6マウスからの血漿ApoBレベル(マイクログラム/ml)を、GalNAcコンジュゲートApoB Crook siRNAの皮下投与の96時間後に測定し(1つの処置群)、siRNA構築物非コンジュゲート(GalNAcなし)ApoB Crook siRNAを投与した対照処置群と比較した。統計分析を、両側の対応のあるT検定アルゴリズムを使用して適用した。結果は、Crookを有する対照非コンジュゲートsiRNAと比較した場合、このGalNAcコンジュゲートCrook siRNA処置群における血漿ApoBレベルの高度に有意な低下を示す(P=0.00435832)。
【
図2a-1】表1に列挙する20個のカスタムデュプレックスCrook PCSK9 siRNA(PC1~C20)のインビトロスクリーニングを示す。データのグラフ表示は、各crook siRNAセンスとアンチセンスとの対についてのHepG2細胞におけるPCSK9 mRNA発現の相対的なノックダウンを示す。PC1~C10(センス鎖)、PC11~20(アンチセンス鎖)。各crook siRNA分子を、アッセイ開発段階において特定した条件を使用して、5つの用量(100nM、25nM、6.25nM、1.56nM、および0.39nM)でHepG2細胞中に(4連で)リバーストランスフェクトした。トランスフェクションの72時間後に、細胞を溶解し、PCSK9 mRNAレベルをデュプレックスRT-qPCRによって決定した。各濃度での各siRNAについてPCSK9のノックダウン(相対定量、RQ)を計算するために、発現を、最初にハウスキーピング参照遺伝子GAPDH mRNA発現に正規化し、次いで、対応するネガティブ(NEG)対照(crookセンスまたはアンチセンス)の5つの用量にわたる平均PCSK9発現に正規化した。
図2(a)Crook siRNA(PC1(配列番号1)+PC11(配列番号11)、PC2(配列番号2)+PC12(配列番号12)+、PC3(配列番号3)+PC13(配列番号13)、PC4(配列番号4)+PC14(配列番号14));
図2(b)PC5+PC15(配列番号5+15)、PC6+PC16(配列番号6+16)、PC7+PC17(配列番号7+17)、PC8+PC18(配列番号8+18);
図2(c)(PC9+PC19(配列番号9+19)、PC10+PC20(配列番号10+20)。
【
図3】それぞれ、6.25nmまたは25nMのセンス(PC1~10)またはアンチセンス(PC11~20)の、最適濃度でのcrook siRNAのHepG2細胞におけるPCSK9ノックダウンの概要を提示する。
【0101】
材料および方法
PCSK9 siRNAインビトロスクリーニングリバーストランスフェクションおよびRT-qPCRプロトコル
1.HepG2リバーストランスフェクション
■Horizon Discoveryによって合成されたカスタムデュプレックスsiRNAを、UltraPure DNaseおよびRNase不含水中に再懸濁して、10μMのストック溶液を生成した。
■ストックsiRNAを、4×384ウェルアッセイプレート(Greiner#781092)中に分注した。各アッセイプレート上に、10個のカスタムsiRNAおよび3個の対照(POS PCSK9、NEGセンス、およびNEGアンチセンス)を分注して、100nMのアッセイプレートにおける最高最終濃度からの5点4倍希釈系列を生成した。ON-TARGETplus非標的化およびPCSK9 siRNA対照を分注して、25nMの最終濃度とした。
■Lipofectamine RNAiMAX(ThermoFisher)をOptimem培地中で希釈した後、ウェル当たり10μLのLipfectamine RNAiMAX:OptiMEM溶液をアッセイプレートに添加した。ウェル当たりのRNAiMAXの最終容量は0.08μLであった。
■脂質-siRNAミックスを、室温で30分間インキュベートした。
■HepG2細胞をアッセイ培地(MEM GlutaMAX(GIBCO)10%FBS 1%Pen/Strep)中で希釈した後、4,000個のHepG2細胞を40μLの容量でアッセイプレートの各ウェル中に播種した。4連の技術的複製物をアッセイ条件ごとに播種した。
■プレートを、細胞の評価の前に、加湿雰囲気中、37℃、5%CO2で、72時間インキュベートした。
【0102】
2.PCSK9/GAPDHデュプレックスRT-qPCR
■トランスフェクションの72時間後に、細胞を、Cells-to-CT 1-step TaqMan Kit(Invitrogen 4391851C)を使用して、RT-qPCR読み出しのために処理した。簡単に説明すると、細胞を50μlの冷PBSで洗浄し、次いでDNase Iを含有する20μlの溶解溶液中で溶解した。5分後に、溶解を、2μlのSTOP溶液を2分間添加することによって停止した。
■RT-qPCR分析のために、ウェル当たり3μlの溶解物を、384ウェルPCRプレート中にテンプレートとして11μlのRT-qPCR反応容量中で分注した。
■RT-qPCRを、GAPDH(VIC #4448486)およびApoB(FAM #4351368)用のTaqManプローブとともに、ThermoFisher TaqMan Fast Virus1-Step Master Mix(#4444434)を使用して実施した。
■RT-qPCRを、QuantStudio 6サーモサイクリング装置(Applied BioSystems)を使用して実施した。
相対定量を、ΔΔCT法を使用して決定し、ここで、GAPDHを内部対照として使用し、発現の変化を参照サンプル(NEGセンスまたはNEGアンチセンスのいずれかのsiRNA処理細胞)に正規化した。
【0103】
ヒトPBMC刺激アッセイ(Judge et al.2005、2006)
ヒトPBMCアッセイを使用して、サイトカインストームを誘発する様々なsiRNA構築物の可能性を特定する。健康なドナーからの一次PBMC(ATCC(登録商標)PCS-800-011(商標))を、96ウェルマイクロプレートに2×105細胞/ウェルの密度で播種し、10%FBS、2mMグルタミン、100U/mlのペニシリン、および100μg/mlのストレプトマイシンを含む、200μLのRPMI 1640培地中で3連で培養する。siRNAを、異なる濃度(0.39~100nMの範囲)で細胞に添加する。処理群には、1)二本鎖siRNA、2)センス上の二本鎖siRNA-crook、3)アンチセンス上の二本鎖siRNA-crook、4)二本鎖免疫刺激性siRNA、5)センス上の二本鎖免疫刺激性siRNA-crook、6)アンチセンス上の二本鎖免疫刺激性siRNA-crook、7)ビヒクル、8)未処理対照、および9)20~100ng/mLの濃度のリポ多糖(LPS)が含まれる。処理を追加した後、細胞を、加湿した37℃、5%CO2のインキュベーター内で16~24時間インキュベートする。培地を1.5mLの遠心分離管内に回収し、最高速度で5分間遠心分離する。上清を新しいチューブ内に収集し、ELISAによるサイトカイン分析のために処理するか、または-20℃で保存する。
【0104】
【0105】
サイトカインELISA
サイトカインを、製造元の指示に従ってELISAキットを使用して定量化する。以下のELISAキット:ヒトIFN-α(Invitrogen、カタログ番号BMS216)、ヒトIFN-γ(Invitrogen、カタログ番号EHIFNG)、ヒトIFN-β(Invitrogen、カタログ番号414101)、ヒトIL-6(Invitrogen、カタログ番号BMS213HS)、およびTNF-α(Invitrogen、カタログ番号KHC3011)を使用して、細胞培地中のサイトカイン濃度を検出する。ELISAプレートリーダーを使用して、570nmの波長での吸光度を測定する。
【0106】
細胞生存率についてのMTTアッセイ(Abcam、MTTアッセイキットab211091)
MTTアッセイを使用して、初代PBMCおよびHepG2細胞の処理後の細胞生存率を決定する。細胞を、100μlの培地を含む96ウェルマイクロプレートに、2×105細胞/ウェルの濃度で播種する。細胞を、様々な濃度のsiRNA構築物または適切な対照で処理し、37℃および5%CO2で16~48時間培養する。処理後、マイクロプレートを、マイクロプレート適合性遠心分離機で、1,000gで5分間遠心分離し、培地を注意深く除去する。50μLの無血清培地および50μLのMTT試薬を、各ウェルに添加する。バックグラウンド対照ウェルは、50μLのMTT試薬+50μLの細胞培地(細胞なし)を含有する。プレートを37℃で3時間インキュベートする。インキュベーション後、150μLのMTT溶媒を各ウェルに添加する。プレートをホイルで包み、オービタルシェーカで15分間インキュベートする。吸光度を590nmで読み取る。吸光度の量は、細胞数に比例する。
【0107】
プロテオームプロファイラーヒトサイトカインアレイキット(R&D system、ARY005B)
サイトカインアレイは、siRNA構築物または適切な対照で処理されたHepG2細胞およびPBMCにおいて、選択されたヒトサイトカインおよびケモカインを同時に測定するために実施される。このアッセイは、膜ベースの抗体アレイを使用して、36のヒトサイトカイン、ケモカイン、および急性期タンパク質を同時に検出する。処理後、HepG2およびPBMCの培地を収集し、遠心分離して粒子を除去する。アッセイには、200~700μLの範囲の細胞培養上清を使用する。サイトカインを、製造元の指示に従って検出する。簡単に説明すると、異なる抗体でスポットされたニトロセルロース膜を、ブロックバッファとして使用する2.0mLのアレイバッファとともにロッキングプラットフォーム上で1時間インキュベートする。各サンプルは、0.5mLのアレイバッファおよび15μLの再構成ヒトサイトカインアレイ検出抗体カクテルを添加した後、室温で1時間インキュベートすることによって調製する。膜を、サンプル/抗体混合物とともに2~8℃で一晩インキュベートした後、洗浄する。2mLの希釈ストレプトアビジン-HRPを膜に添加し、室温で30分間インキュベートする。サイトカインを可視化するために、膜を、1mLの調製済みChemi Reagent Mixとともに1分間インキュベートし、オートラジオグラフィーフィルムカセット内に1~10分間置く。各サイトカインについてのスポット強度を、ImageJからのドットブロットアナライザで定量化し、ピクセル強度として表す。スポット強度を、MTTアッセイを使用して計算した細胞数に正規化する。異なるアレイ上のシグナルを比較して、サンプル間のサイトカインレベルにおける相対変化を決定する。
【0108】
血清中の安定性アッセイ
3’-DNAミニヘアピン(Crook)は、インビトロでsiRNA構築物にヌクレアーゼ耐性を付与し、その耐性には二本鎖RNA構造が必要であることが実証されている(Allison and Milner,2014)。安定性アッセイでは、PCSK9を標的とする等量のsiRNA-crookおよび未修飾siRNAを、HepG2細胞にトランスフェクトする前に、5%血清含有または血清不含培地中で、37℃で16時間プレインキュベートする(HepG2トランスフェクションを参照)。次いで、両方のsiRNAの効率を、qPCRを使用して試験し、標的遺伝子の発現レベルを定量化する(PCRプロトコルを参照されたい)。
【0109】
マウスにおけるインビボsiRNA活性。
PCSK9またはApoB Crook-siRNAの非コンジュゲートおよびGalNAcコンジュゲートバージョンを、IVおよび/またはSC経路により投与して、相対的な血漿および組織曝露を調査した。用量選択のための理論的根拠は、科学文献において公開された以下の情報に基づいた。
GalNAcコンジュゲートsiRNAを、2.0mg/kgまたは5mg/kgで皮下投与し、これは、遺伝子サイレンシングの必要とされるレベルをもたらすことが予想され、ここで、構造的に関連するsiRNAのED80は、2.5mg/kgであると報告されている(Soutschek et al.,2004)。これらの構造的に関連するsiRNAは、マウスにおいて25mg/kg(単回投与)まで許容された(Soutschek et al.,2004)。
【0110】
siRNAの非コンジュゲートバージョンを、50mg/kgで静脈内投与する。SC用量と比較して10倍のIVでのこの増加は、非コンジュゲートsiRNAの肝臓の標的化における有効性がより低いことに起因する。さらに、SC投与と比較して、IVの後に肝臓においてより低いレベルのRNAが測定されることが、Soutschek et al(2004)によって報告されている。皮下デポからのsiRNAのより遅い放出は、受容体-リガンド相互作用の可能性を増加させる曝露の延長、および組織中へのより大きな取り込みを導くと記述されている。類似の関連するsiRNAは、連続する3日間のIV投与で50mg/kgまでマウスによってよく許容されている(Nair et al.2014)。予防措置として、残りの動物に投薬する前に、15分の観察期間を第1の動物のIV投薬の間に置いて、試験物質が何らかの有害作用を引き起こすかどうかを決定する。
【0111】
マウスは、試験物質の安全性試験において毒物種のうちの1つとして使用することから選択された種である。マウスはまた、Crook-siRNA調製物の治療標的(PCSK9またはApoB)に関してヒトと非常に類似した代謝生理を保有している。この種において生成されたデータのヒトに対する意義を評価のために規制当局に許容される利用可能なかなりの量の公開されたデータが存在する。
【0112】
動物
健康な雄性動物を提供するのに十分な数のC57BL/6マウスを、承認された供給元から取得した。動物は、投薬時に20~30gの目標体重範囲にある。マウスに、尾部マーキングによって一意的に番号付けする。番号をランダムに割り当てる。ケージを、研究番号および動物番号を含む情報を与えるカードによってコード化する。研究部屋を、部屋番号および研究番号を含む情報を与えるカードによって特定する。受け取り時に、すべての動物を、不健康の外部兆候について検査した。不健康な動物は研究から除外した。動物を、最低5日の期間、気候順化させた。実行可能な場合、研究の科学的完全性を損なうことなしに、動物をできるだけ取り扱った。投薬開始前に福祉監査を実施して、研究のためのそれらの適合性を確実にした。
【0113】
マウスを、45~65%の相対湿度で、20~24℃の温度に恒温維持された部屋の中に維持し、毎日蛍光灯(名目上12時間)に曝露した。温度および相対湿度を毎日記録する。施設は、1時間当たり最低15回の換気を行うように設計する。代謝ケージ中または手術からの回復時を除いて、マウスを、好適な寝床を含む好適な固体床ケージ内に、性別に従ってケージ当たり5匹まで収容した。
【0114】
ケージは、「Code of Practice for the Housing and Care of Animals Bred,Supplied or Used for Scientific Purposes」(Home Office,London,2014)に従うものである。動物の環境および福祉の両方を向上させるために、それらに木製Aspenチューブロックおよびポリカーボネートトンネルを提供した。供給元は、使用したブロックの各バッチについて分析証明書を提供した。すべての動物に、5LF2 EU Rodent Diet 14%を自由給餌する。食餌の供給元は、使用した各バッチについて特定の混入物およびいくつかの栄養素の濃度の分析を提供した。すべての動物に、ケージに取り付けられたボトルから水道水を自由に飲水させた。水道水供給の定期的な分析を行う。
【0115】
本研究の一部として生きた動物に対して実施されるすべての手順は、United Kingdom National Law,the Animals(Scientific Procedures)Act 1986の規定に従う。
【0116】
すべての動物を、それらが健康であることを確実にするために、作業日の開始時と終了時に検査した。不健康の顕著な兆候を示すすべての動物を隔離した。瀕死の動物または関連する内務省認可によって課せられた重症度限界を超える危険にある動物を屠殺した。
【0117】
Crook GalNAcコンジュゲート合成
肝細胞を標的とするsiRNAのGalNAc成分は、C10スペーサを備えた3アンテナGalNAcクラスターであり、アミノプロパンジオールベースのリンカーを介して、siRNAのセンス鎖またはアンチセンス鎖の3’末端にコンジュゲートする(Sharma et.al Bioconjugate Chem(2018)29:2478-2488に記載)。Crook siRNA分子の場合、センス鎖のGalNAcコンジュゲートは、デオキシリボヌクレオチド末端で発生し、アンチセンスでは、リボヌクレオチド末端で発生する。
【0118】
GalNAcコンジュゲートsiRNAは、Nair et al J Amer Chem Soc(2014)136:16958-16961に記載されているように、GalNAcクラスター誘導体化制御細孔ガラス支持体を用いた固相法に基づくプロトコルを使用して調製する。
最終的なGalNAcコンジュゲートの構造:
【0119】
【0120】
製剤の調製
試験物質を0.9%生理食塩水中で希釈して、それぞれ、PCSK9またはApoB Crook-siRNA GalNAc非コンジュゲートおよびコンジュゲートの静脈内および皮下用量のための25mg/mLおよび0.6mg/mLの濃度を提供した。試験物質が完全に溶解するまで、必要に応じて製剤を穏やかにボルテックスした。得られた製剤を目視検査のみによって評価し、それに従って分類した。
(1)清澄溶液
(2)濁った懸濁液、可視粒子なし
(3)可視粒子
使用後、製剤を名目上2~8℃で冷蔵保存した。
【0121】
投薬の詳細
ApoB
各動物に、ApoB Crook-siRNA GalNAc非コンジュゲートの単回静脈内用量、またはApoB Crook-siRNA GalNAcコンジュゲートの単回皮下用量のいずれかを与えた。静脈内用量を、2mL/kgの容量で外側尾静脈内にボーラスとして投与した。皮下用量を、5mL/kgの容量で皮下空間内に投与した。
【0122】
PCSK9
PCSK9について、各動物にGalNAcコンジュゲートPCSK9 crook-siRNAの単回皮下用量を与え、2つの時点(96時間および14日間)でモニタリングして、PCSK9サイレンシングを決定する。サンプルは、結論として尾部出血または心臓穿刺のいずれかを介して取得する。
【0123】
PCSK9 crook-siRNAの各々について
10匹のマウス SC GalNAcコンジュゲートPCSK9 crook-siRNA 2mg/kg
10匹のマウス SC GalNAcコンジュゲートPCSK9 crook-siRNA 5mg/kg
10匹のマウス SC GalNAcコンジュゲート crook未修飾インクリシラン配列(配列番号135/136)
10匹のマウス SC 生理食塩水対照
【0124】
体重
最低限でも、体重を、到着の翌日および用量投与の前日に記録した。必要に応じて、追加の決定を行った。
【0125】
サンプル保存
サンプルを、必要に応じて、以下:研究番号、サンプルタイプ、用量群、動物番号/Debraコード、(名目上)サンプリング時間、保存条件を含む情報によって一意的にラベル付けした。サンプルを-50℃未満で保存した。
【0126】
血液サンプリング
一連の血液サンプル(名目上100μL、体重に依存)を、以下の時点:投薬後0、48、および96時間、または14日間で、尾部切り込みによって収集した。動物を、ペントバルビタールナトリウムを使用して終末的に麻酔し、最終サンプル(名目上0.5mL)を心臓穿刺によって収集した。
【0127】
血液サンプルをK2EDTAマイクロキャピラリーチューブ(尾部切り込み)またはK2EDTA血液チューブ(心臓穿刺)に収集し、処理するまで氷上に置いた。血液を遠心分離して(1500g、10分、4℃)、分析のための血漿を得た。バルク血漿を、等容量の2つのアリコートに分けた。残存血液細胞を廃棄した。血液サンプル収集についての許容される時間範囲を、以下の表にまとめる。実際のサンプリング時間を、すべてのマトリックスについて記録した。
【0128】
【0129】
予定した収集時間が許容される範囲外である場合、実際の血液収集時間を、任意のその後のPK分析において含めるために報告した。
【0130】
動物の運命
動物を、終末血液サンプリングの前にペントバルビタールナトリウムの腹腔内注射を介して麻酔し、灌流および放血によって屠殺した。
【0131】
全身灌流を実施し、すべての動物をヘパリン処理生理食塩水溶液で4ml/分の速度で5分間フラッシュした(約20mLの総フラッシュ)。死亡を、呼吸、心拍および血流の不在によって確認した。動物の死骸を組織収集のために保持した。
【0132】
組織収集
肝臓を、すべての動物から取り出し、事前秤量したチューブ中に入れた。組織サンプルを、UltraTurraxホモジナイゼーションプローブを使用して、1部の組織に対して5部のRNAlaterを用いてホモジナイズした。以下の組織を、PCSK9またはApoB処置群の動物から切除し、事前秤量したポット中に入れた。
・脾臓
・脳
・心臓
・肺葉
・皮膚(鼠径部、約25mm2)
【0133】
収集後、組織の外表面をPBSでリンスし、ティッシュを使用してそっと軽くたたいて乾燥させた。組織を、秤量するまで最初に湿潤氷上に置き、次いで組織を保存前にドライアイス上で瞬間凍結させた。組織を-50℃未満(名目上-80℃)で保存する。
【0134】
イムノアッセイおよびサンプル分析
血漿PCSK9またはApoBレベルは、Elabscience Biotechnology Inc.から市販のマウスPCSK9またはApoB検出キットを使用して、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を介して測定した。血漿サンプルは、分析前は-80℃で保存し、氷上で解凍して、13,000rpmで5分間遠心分離した後、アリコートをアッセイバッファで希釈し、ELISAプレートに適用した。PCSK9またはApoBアッセイキットは、OD450で測定される比色測定読み出しをもたらすサンドイッチELISAを使用する。特定の時点(0時間、96時間、および14日間)での各動物からのサンプルを2連でアッセイし、測定値を、キットとともに供給される標準曲線試薬に基づいて、血漿1ml当たりのPCSK9またはApoBのマイクログラムとして記録した。すべてのデータポイントを、変動係数20%未満で測定した。GalNAcコンジュゲートPCSK9またはApoB Crook siRNAの投与後の指定された時点後の血漿PCSK9またはApoBレベルを、対照治療群と比較した。統計分析を、両側の対応のあるT検定アルゴリズムを使用して適用した。
【0135】
さらに、血中脂質プロファイルを、標準的なアッセイを使用してApoB、総コレステロール、HDL、トリグリセリドのレベルを測定することによって得た。
【実施例】
【0136】
実施例1
対照siRNA構築物と比較した、GalNAcコンジュゲートCrook ApoB siRNAのインビボ活性。各処置群の5匹のマウスからの血漿ApoBレベル(マイクログラム/ml)を使用して、平均ApoB値+/-標準誤差(SEM)を計算した。GalNAcコンジュゲートCrook siRNAのSC投与後96時間後の血漿ApoBレベルを、対照(i)ビヒクル生理食塩水、または(ii)Crookを有する非コンジュゲートsiRNAのいずれかを与えたマウスにおけるレベルと比較した。統計分析を、両側の対応のあるT検定アルゴリズムを使用して適用した。
【0137】
図1(a)を参照して、GalNAcコンジュゲートApoB Crook siRNAでの処置の96時間後のマウスの血漿ApoBレベル(マイクログラム/ml)を、生理食塩水を投与した対照処置群と比較した。統計分析を、両側の対応のあるT検定アルゴリズムを使用して適用した。結果は、対照と比較して、GalNAcコンジュゲートCrook siRNAで処置したマウスにおける平均血漿ApoBレベルの実質的な低下を示す。しかしながら、おそらく小さなサンプルサイズ、および対照動物の間のApoBレベルの変動に起因して、有意性には至らない(p=0.08)。
【0138】
図1(b)を参照して、GalNAcコンジュゲートApoB Crook siRNAの投与の96時間後に測定した血漿ApoBレベル(マイクログラム/ml)を、siRNA構築物非コンジュゲート(GalNAcなし)ApoB Crook siRNAで処置した対照群と比較した。統計分析を、両側の対応のあるT検定アルゴリズムを使用して適用した。結果は、Crookを有する対照非コンジュゲートsiRNAと比較した場合、このGalNAcコンジュゲートCrook siRNA処置群における血漿ApoBレベルの高度に有意な低下を示す(P=0.00435832)。
【0139】
実施例2
図2a~cは、インビトロでの20個のPCSK9 crook-siRNAの相対的なサイレンシング活性を比較する。HepG2細胞を、アッセイ開発段階において特定した条件を使用して、siRNA対照と一緒に20個のカスタムcrook siRNA(10個のセンスsiRNAおよび10個のアンチセンスsiRNA)のライブラリーを用いてリバーストランスフェクトした。5点用量範囲(100nM、25nM、6.25nM、1.56nM、0.39nM)を使用し、siRNA濃度ごとに4回反復した。
【0140】
トランスフェクションの72時間後、PCSK9 mRNAレベルをデュプレックスRT-qPCRで定量化し、ハウスキーピング参照遺伝子GAPDHに正規化し、次いで、対応するネガティブ(NEG)crook siRNA対照(センスまたはアンチセンス)の5つの用量にわたるPCSK9の平均発現に正規化した。
【0141】
ほとんどのsiRNAは、PCSK9 mRNAの減少を誘発するが、効率は様々である。
図2a~cを参照されたい。PCSK9 mRNAレベルは、高いsiRNA濃度で増加する傾向がある(センスの場合は6.25nM超、およびアンチセンスの場合は25nM超)。最適濃度は、センスsiRNAの場合は6.25nM、およびアンチセンスsiRNAの場合は25nMである。
図3を参照されたい。
【0142】
結論として、4つのcrook siRNAは、最適濃度で80%超の効率を有する(センスsiRNA PC8、PC9、PC10、およびアンチセンスsiRNA PC18)。以下の表4を参照されたい。
【0143】
表4 センスとアンチセンスとの対合。各行の核酸分子、例えば、配列番号1および11は、相補的であり、ハイブリダイズして二本鎖RNAを形成する。対は、センス配列またはアンチセンス配列のいずれかにクルック配列を含むことができる。したがって、センスとアンチセンスとの各組み合わせは、2つの異なる核酸分子、例えば、i)センス配列がcrookを含むか、またはii)アンチセンス配列がcrookを含む、配列番号1および11を形成する。
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
参考文献
Nair,J.K.,Willoughby,J.L.,Chan,A.,Charisse,K.,Alam,M.R.,Wang,Q.,Hoekstra,M.,Kandasamy,P.,Kel’in,A.V.,Milstein,S.and Taneja,N.,2014.Multivalent N-acetylgalactosamine-conjugated siRNA localizes in hepatocytes and elicits robust RNAi-mediated gene silencing.Journal of the American Chemical Society,136(49),pp.16958-16961.
Soutschek,J.,Akinc,A.,Bramlage,B.,Charisse,K.,Constien,R.,Donoghue,M.,Elbashir,S.,Geick,A.,Hadwiger,P.,Harborth,J.and John,M.,2004.Therapeutic silencing of an endogenous gene by systemic administration of modified siRNAs.Nature,432(7014),p.173.
AD Judge,V Sood,JR Shaw,D Fang,K McClintock,I MacLachlan.Sequence-dependent stimulation of the mammalian innate immune response by synthetic siRNA.Nat Biotechnol 2005.23(4):457-62.
AD Judge,G Bola,A Lee,I MacLachlan.Design of noninflammatory synthetic siRNA mediating potent gene silencing in vivo.Mol Ther 2006.13(3):494-505.
SJ Allison,J Milner.RNA Interference by Single-and double-stranded siRNA with a DNA extension containing a 3’nuclease-resistant mini-hairpin structure.Mol Ther Nucleic Acids 2014.7;2(1):e141.
【手続補正書】
【提出日】2022-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】