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特表2023-519167偏向可能な又は偏向不可能な侵襲性医療機器の遠位端のロール角度を求めること
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】偏向可能な又は偏向不可能な侵襲性医療機器の遠位端のロール角度を求めること
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/24 20060101AFI20230428BHJP
   A61B 34/20 20160101ALI20230428BHJP
【FI】
A61B17/24
A61B34/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554326
(86)(22)【出願日】2021-03-03
(85)【翻訳文提出日】2022-09-20
(86)【国際出願番号】 IB2021051758
(87)【国際公開番号】W WO2021181209
(87)【国際公開日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】16/812,928
(32)【優先日】2020-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ゴバリ・アサフ
(72)【発明者】
【氏名】グリナー・バディム
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160MM03
4C160MM06
4C160MM08
(57)【要約】
システムは、医療機器と、位置センサと、プロセッサとを含む。医療機器は、ハンドル及びヘッドを含み、ヘッドは、患者の器官に挿入するように構成されており、かつ医療機器の長手方向軸に関して回転非対称である特徴部を有している。位置センサは、ヘッド上に配置されており、かつ外部から印加された磁場に応答して信号を生成するように構成されている。プロセッサは、ヘッド上の位置センサによって生成された信号を受信することと、受信した信号に基づいて、ヘッドの回転非対称の特徴部のロール角度を推定することと、を行うように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
医療機器であって、ハンドル及びヘッドを備え、前記ヘッドは、患者の器官に挿入するように構成されており、かつ前記医療機器の長手方向軸に関して回転非対称である特徴部を有する、医療機器と、
位置センサであって、前記ヘッド上に配置されており、かつ外部から印加された磁場に応答して信号を生成するように構成されている、位置センサと、
プロセッサであって、
前記ヘッド上の前記位置センサによって生成された前記信号を受信することと、
前記受信した信号に基づいて、前記ヘッドの前記回転非対称の特徴部のロール角度を推定することと、を行うように構成されている、プロセッサと、を備える、システム。
【請求項2】
前記位置センサが、前記ヘッドの前記回転非対称の特徴部に対して所与の回転角度で方向付けられた軸を有する少なくともコイルを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記回転非対称の特徴部が、医療ツールを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記医療ツールが、耳鼻咽喉(ENT)シェーバを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記医療ツールが、ENT吸引ツールを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記医療ツールが、ENTマイクロブライダを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記回転非対称の特徴部が、前記医療ツールの開口部を含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項8】
前記医療ツールが、前記長手方向軸に対して屈曲している、請求項3に記載のシステム。
【請求項9】
前記位置センサが、回路基板上に印刷された単軸センサ(SAS)である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記位置センサが、回路基板上に印刷された二軸センサ(DAS)である、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記器官の近くに前記磁場を送信するように構成された少なくとも1つの磁場放射器を含む位置パッドを更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
ディスプレイを更に備え、前記プロセッサが、
前記受信した信号に応答して前記ヘッドの場所を追跡することと、
前記ディスプレイに、前記器官の少なくとも一部の表現と、身体内の前記ヘッドの少なくとも一部の表現とを含む画像をレンダリングすることと、を行うように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、医療機器に関し、特に、患者の器官内の侵襲的機器の追跡に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の器官内の医療機器を追跡するための技術が、特許文献において以前に提案された。例えば、米国特許出願公開第2018/0280049号は、使い捨て可能な耳鼻咽喉(Ear-Nose-Throat、ENT)ツールと、再使用可能ハンドルと、プロセッサと、を含む、医療用デバイスを記載している。ENTツールは、患者のENT器官内で医療処置を実行するように構成されている。再使用可能ハンドルは、使い捨て可能なENTツールを保持して制御するように構成されており、かつ再使用可能ハンドルの第1の位置を示す1つ又は2つ以上の位置信号を生成するように構成される位置センサを含む。プロセッサは、位置センサから位置信号を受信し、位置信号に基づいて、患者のENT器官内の使い捨て可能なENTツールの第2の位置を推定するように構成されている。
【0003】
別の例として、米国特許第6,272,371号は、可撓性の細長いプローブを含み、この可撓性の細長いプローブが、対象の身体の中へ挿入するための可撓性の細長いプローブの遠位端に隣接する遠位部分を有する、侵襲的プローブ装置を記載している。遠位部分は、そこに力が加わると所定の湾曲の形態をとる。第1及び第2のセンサが、遠位端に対して既知の位置でプローブの遠位部分に固定され、そのセンサは、プローブの屈曲に応じた信号を生成する。信号処理回路は、少なくとも第1のセンサの位置及び配向座標を見つけ、かつプローブの遠位部分の長さに沿った複数の点の場所を判定するために、屈曲部に応じた信号を受信して処理する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態は、医療機器と、位置センサと、プロセッサとを含むシステムを提供する。医療機器は、ハンドル及びヘッドを含み、ヘッドは、患者の器官に挿入するように構成されており、かつ医療機器の長手方向軸に関して回転非対称である特徴部を有している。位置センサは、ヘッド上に配置されており、かつ外部から印加された磁場に応答して信号を生成するように構成されている。プロセッサは、ヘッド上の位置センサによって生成された信号を受信することと、受信した信号に基づいて、ヘッドの回転非対称の特徴部のロール角度を推定することと、を行うように構成されている。
【0005】
いくつかの実施形態では、位置センサは、ヘッドの回転非対称の特徴部に対して所与の回転角度で方向付けられた軸を有する少なくともコイルを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、回転非対称の特徴部は、医療ツールを含む。
【0007】
一実施形態では、医療ツールは、耳鼻咽喉(ENT)シェーバを含む。別の実施形態では、医療ツールは、ENT吸引ツールを含む。更に別の実施形態では、医療ツールは、ENTマイクロブライダ(microbrider)を含む。更なる実施形態では、回転非対称の特徴部は、医療ツールの開口部を含む。追加の実施形態では、医療ツールは、長手方向軸に対して屈曲している。
【0008】
いくつかの実施形態では、位置センサは、回路基板上に印刷された単軸センサ(single axis sensor、SAS)である。
【0009】
いくつかの実施形態では、位置センサは、回路基板上に印刷された二軸センサ(dual axis sensor、DAS)である。
【0010】
一実施形態では、システムは、器官の近くに磁場を送信するように構成された少なくとも1つの磁場放射器を含む位置パッドを更に含む。
【0011】
別の実施形態では、システムは、ディスプレイを更に含み、プロセッサは、(a)受信した信号に応答してヘッドの場所を追跡することと、(b)ディスプレイに、器官の少なくとも一部の表現と、身体内のヘッドの少なくとも一部の表現とを含む画像をレンダリングすることと、を行うように構成されている。
【0012】
更に、本発明の別の実施形態によれば、ハンドル及びヘッドを含む医療機器を患者の器官に挿入することを含む方法が提供され、ヘッドは、医療機器の長手方向軸に関して回転非対称である特徴部を有する。ヘッド上に配置された位置センサを使用して、外部から印加された磁場に応答して信号が生成される。ヘッド上の位置センサによって生成された信号が受信され、受信した信号に基づいて、ヘッドの回転非対称の特徴部のロール角度が推定される。
【0013】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による、耳鼻咽喉(ENT)機器追跡システの概略描写図である。
図2】本発明の一実施形態による、図1において使用される耳鼻咽喉(ENT)機器、及びENT機器の挿入された交換式ヘッドを有する副鼻腔の表現の概略図である。
図3】本発明の一実施形態による、図2の耳鼻咽喉(ENT)機器のハンドル及び交換式ヘッドの概略図である。
図4】本発明の一実施形態による、それぞれがヘッドの遠位端上に配置された磁気センサを備える、図2の耳鼻咽喉(ENT)器具の交換式ヘッドの概略図である。
図5】本発明の一実施形態による、患者の頭部内で図4の耳鼻咽喉(ENT)機器のヘッドのロール角度を追跡するための方法及びアルゴリズムを概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
概論
侵襲的医療処置によっては、患者の器官内の医療機器の遠位端の回転の向きを追跡する必要がある場合がある。医療機器は、複数の交換式ヘッドを有するハンドルを含むことができ、交換式ヘッドは、剛性かつ直線状である場合、剛性で湾曲部分(例えば、湾曲した遠位縁部)を有する場合、又は偏向可能な遠位縁部を有する場合がある。更に、直線状のヘッドであっても、回転非対称である特徴部又は構成要素を含んでもよい。回転非対称な形状の交換式ヘッド、例えば、ヘッドに対して好ましい回転の向きで配置されたツールを含むものなどは、異なる治療機能を実行するように、及び/又は空洞を含む異なる器官にアクセスするように構成されている。したがって、器官内で使用して、例えば組織を切断するために、医師は、器官の標的組織に対するツールの回転の向き知っている必要がある。
【0016】
更に、一部の医療機器は、交換可能な剛性ヘッドが多くの回転位置のうちの1つにおいてハンドルに挿入されることを可能にし得る。加えて又は代わりに、一部の医療機器は、挿入されたヘッドが複数の位置に回転するのを可能にし得る。これらの選択肢は、標的組織に対するツール(例えば、切断ツール)の実際の回転の向きについての医師の疑念を更に増加させ得る。
【0017】
別の実施例として、耳鼻咽喉(ENT)機器の剛性ヘッドは、それらの遠位端に、所与の回転の向きでヘッド上に配置されて患者の副鼻腔内の組織を除去するために使用される、回転非対称に整列した電気的切断要素(例えば、部分的に覆われた回転刃又は回転バーなど)を備えていてもよい。この場合もやはり、医師は、このタスクを実行するために、電気切断要素のヘッドが標的組織に面するようにヘッドを正確に回転させる方法を知っている必要がある。
【0018】
以下に記載される本発明の実施形態は、器官内の医療機器のヘッドの長手方向軸に関する、ツールなどの回転非対称の特徴部のロール角度を正確に追跡することを可能にする。開示された技術は、標的組織を治療する際に、ヘッドの遠位端に配置されたツールを医師が正確に操作する(例えば、患者の副鼻腔内のENTシェーバ又はENT吸引装置を正確に操作する)ことを可能にする。医療機器のヘッドは、交換可能であってもよく、又は固定されていてもよい。
【0019】
開示された実施形態は、機器のヘッドに結合された、磁気位置センサなどの位置センサを提供し、この位置センサは、外部から印加された磁場に応答して、ヘッドの構成要素の回転の向き示すためにヘッドの回転の向き(すなわち、ロール角度)をユーザに示すことができる。構成要素の例としては、前述の切断ツールが挙げられ、又は別の例として、潅注ポートを備える屈曲した遠位縁部が挙げられる。
【0020】
いくつかの実施形態では、磁気追跡システムを使用することにより、プロセッサは、磁気センサからの信号を使用して遠位端のロール角度を決定する。
【0021】
一実施形態では、開示された磁気センサは、単軸センサ(SAS)であり、そのコイルの軸は、(例えば、切断ツールの)特徴部の回転の向きに対して所与の回転角度で整列され、器官内部の特徴部(例えば、切断ツール)のロール角度を、例えば、レンダリングされた解剖学的構造に対して追跡する。
【0022】
別の実施形態では、センサは、例えば、それぞれの特徴部の位置、方向、及びロール角度を追跡することができる2つの直交する巻線コイルを備える、二軸センサ(DAS)である。DASは、回転の向き特徴部に対して所与の回転角度で整列されたそのコイルのうちの1つの軸を有する。
【0023】
SAS又はDASは、ヘッドに取り付けるためにプリント回路基板(printed circuit board、PCB)上に印刷されていてもよい。
【0024】
上記のように、SASを使用することにより、器官の少なくとも一部の表現と、器官内の医療機器の挿入された交換式ヘッドの遠位端の表現とを含む画像を、挿入された交換式ヘッドの遠位端の追跡されたロール角度に応答してディスプレイ上にレンダリングすることができる。DASを使用することにより、挿入された交換式ヘッドの遠位端の追跡された位置、方向、及びロール角度に対応する表現をディスプレイ上にレンダリングすることができる。
【0025】
遠位端の正確な回転情報を提供することにより、遠位端において所与の回転の向きで配置された特徴部(例えば、回転非対称な形状の遠位吸引開口、又はブレードなどのツール)を、侵襲的処置でより効果的かつ安全に使用することができる。
【0026】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、耳鼻咽喉(ENT)機器追跡システム20の概略描写図である。システム20が典型的に使用される医療処置は、副鼻腔、及び鼻腔を介してアクセスすることができるアデノイド又は耳管の管などの他のENT組織に対する、侵襲的及び/又は調査的処置を含む。しかしながら、システムは、必要な変更を加えて、患者22の他の人体器官(脳など)を治療するために更に使用され得る。
【0027】
図示の実施形態では、磁場放射アセンブリ24は、例えば患者が座っている(又は横たわっている)椅子25(又はベッド)にアセンブリ24を固定することによって、患者22の頭部の後ろ及び/又は周りに位置付けられている。図示された実施例における磁場放射アセンブリ24は、馬蹄形のフレーム内に固定された5つの磁場放射器26を含み、フレームは、磁場放射器26が患者22の頭部を囲むように患者22の下又は周りに位置付けられている。あるいは、より少数の又はより多数の放射器26が、様々な異なる構成で使用されてもよい。磁場放射器26は、患者22の頭部が位置する領域30内にそれぞれの周波数で交流磁場を放射するように構成されている。
【0028】
交流磁場は、磁気位置センサ32及び磁気位置センサ36内に信号を誘導する。位置センサ32は、ENT機器28の遠位端34の位置、方向、及びロール角度を追跡するために、ENT器具28上に配置されて示されている。位置センサ36は、患者22の頭部の位置を追跡し、磁場放射アセンブリ24に対する患者の頭部の動きを補償するために、患者22上に(例えば、患者22の額に)配置されて示されている。単なる例として、ENT器具28は、吸引ツール、マイクロデブリッダ、又はシェーバのうちのいずれか1つ以上を含むことができる。
【0029】
ENT器具28の遠位端34及び患者22の頭部は、プロセッサ38上で動作する追跡サブシステムを使用して追跡される。位置センサ32は、図4により詳細に説明される少なくとも1つのコイルを含む。患者22の副鼻腔内のENT器具28の遠位端34のロール角度を決定するために、位置センサ32は、センサ32の少なくとも1つのコイルの軸が、上述のように、ロール角度が追跡されるべき遠位端の物理的特徴部又は構成要素(例えば、遠位端の上に配置された切断ツール)に対して所与の回転の向きで配置された状態で、ENT器具28に固定される。
【0030】
患者に挿入された磁場放射器26などのエンティティを追跡するために磁場放射器を使用するシステムは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2016/0007842号に記載されている。更に、Carto(登録商標)システム(Biosense Webster(Irvine,California)製)は、磁場の照射を受けた領域内にあるコイルの場所及び向きを求めるために、本明細書に記載されているシステムと同様の追跡システムを使用する。
【0031】
いくつかの実施形態では、医療機器28は、ロボットアーム40の動きを制御し、ENT機器28を操作するように構成された複数のロボット関節を含むロボットアーム40に取り付けられ、ロボットアーム40によって保持される。他の実施形態では、ENT機器28は、医師54によって保持され、操作される。ロボットアーム40は、一般に、それ自体のロボット座標系を有する。ロボット座標系は、磁場放射器26の磁気座標系と位置合わせされるか、又はその逆である。ロボット座標系と磁気座標系との位置合わせは、例えば、ロボットアーム40、又はロボットアーム40に取り付けられたENT機器28を、磁場放射器26にとって既知である1つ又は2つ以上の場所に、例えば、磁場放射アセンブリ24上の場所に移動させることによって実行することができる。ロボット座標系と磁気座標系との位置合わせが実行されると、ロボットアーム40を正しく操作するために、磁気座標系内の場所をロボット座標系に変換することができる。
【0032】
プロセッサ38は、1つ以上のメモリと通信する処理ユニットを含む。典型的には、要素は、ケーブルによってプロセッサ38に接続されることができる。代わりに又は加えて、要素は、プロセッサ38に無線で連結されてもよい。プロセッサ38は、コンソール50に取り付けられてもよく、このコンソールは、通常はキーパッド、及び/又はマウス又はトラックボールなどのポインティングデバイスを含む動作制御装置51を備えている。コンソール50はまた、ENT機器28の近位端52などのシステム20の他の要素にも接続している。医師54は、処置を実行しつつ、動作制御装置51を使用してプロセッサ38と対話し、プロセッサ38は、システム20によって生成された結果をディスプレイ56上に提示することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、医療処置を実施する前に、患者22のCT画像が取得されている。CT画像は、その後の検索のためにプロセッサ38によってメモリ(図示せず)内に記憶される。図1では、ディスプレイ56は、以前のCTスキャン(又は他の適切なスキャン)の様々なビュー59を表示し、この表示は、医師54が副鼻腔内でENT機器28を誘導するための補助として使用されることができる。ディスプレイ画面56はまた、ENT機器28のカメラ(図示せず)によって捕捉された画像61も示す。図2により詳細に説明されるように、CT画像は、ENT機器28の表現がディスプレイ56上でCT画像と共に表示され得るように、磁気座標系と位置合わせされ得る。
【0034】
実際には、プロセッサ38のこれらの機能の一部又はすべては、組み合わせて単一の物理的構成要素とするか、あるいは、複数の物理的構成要素を使用して具現化され得る。これらの物理的構成要素は、ハードワイヤード装置若しくはプログラマブル装置、又はこれら2つの組み合わせを備え得る。いくつかの実施形態では、プロセッサの機能のうちの少なくとも一部は、好適なソフトウェアの制御下でプログラム可能なプロセッサによって実行されてもよい。このソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子的形態で装置にダウンロードされてもよい。加えて又は代わりに、このソフトウェアは、光学的、磁気的、又は電子的記憶媒体などの非一時的コンピュータ可読媒体に記憶されていてもよい。
【0035】
偏向可能な又は偏向不可能な侵襲性医療機器の遠位端のロール角度を求めること
図2は、本発明の一実施形態による、図1において使用された耳鼻咽喉(ENT)機器28、及びENT機器28の交換式ヘッド64が挿入されている副鼻腔の表現の概略図である。ENT機器28は、複数の様々な剛性の交換式ヘッド64が個別に可逆的に挿入可能であるハンドル62を含む。図2は、ハンドル62に挿入された交換式ヘッド64のうちの1つを示す。交換式ヘッド64の他の実施例は、以下に記載される図3に示されている。図2に示されるENT機器28は、灌注管又は排液管66を更に含む。
【0036】
図2には、ENTツールに位置センサが追加される前のENT機器28が示されている。実際に、いくつかの実施形態では、図4で詳細に説明されるように、ENT機器28は、位置センサなしで販売されて、ENT機器28の適切な位置に位置センサが追加される、既製の医療機器で具現化されてもよい。例えば、位置センサなしで入手可能なBien Air(登録商標)S120ハンドピース及び交換式の再利用可能なブレードを、以下で説明されるENT機器28を提供するように適合させてもよい。他の実施形態では、ENT機器28は、一体型の位置センサを備えた専用の医療機器として具現化されてもよい。
【0037】
図2の挿入図35は、図1のプロセッサ38システム20によってレンダリングされた、副鼻腔の表現148及び挿入された交換式ヘッド64の表現150の画像146の概略図を示す。プロセッサ38は、副鼻腔の少なくとも一部の表現148と、交換式ヘッド64の遠位端の追跡された場所、方向、及びロール角度に対応する、副鼻腔内のENT機器28の挿入された交換式ヘッド64の少なくとも一部の表現150とを含む画像146を、ディスプレイ56(図1)上にレンダリングするように構成されている。交換式ヘッド64は剛性であるため、挿入された交換式ヘッド64の表現150は、挿入された交換式ヘッド64の単一点の座標、及び識別された挿入された交換式ヘッド64の既知の形状に基づいてレンダリングされることができる。切断要素78などの処置具もまた、表現150上のインジケータ152を使用して示されることができる。
【0038】
図3は、本発明の一実施形態による、図2の耳鼻咽喉(ENT)機器28のハンドル62及び交換式ヘッド64の概略図である。交換式ヘッド64は、図3には位置センサなしで示されている。交換式ヘッド64は、ヘッド形状及び機能性に関して互いに異なる。
【0039】
各交換式ヘッド64は、ハンドル62のソケット70に挿入されるプラスチックの近位端68を含む。ハンドル62のソケット70は、様々な剛性の交換式ヘッド64を挿入するための複数の回転位置を含む。例えば、S120ハンドピースでは、再利用可能なブレードは、8つの異なる回転位置に挿入され得る。いくつかの実施形態では、交換式ヘッド64は、ソケット70内の単一の回転位置にのみ挿入されてもよい。
【0040】
ハンドル62は、異なる剛性の交換式ヘッド64を回転させるための複数の回転位置を含む。したがって、交換式ヘッド64のうちの1つがソケット70に挿入されると、挿入された交換式ヘッド64は、回転調節コグホイール72を使用して複数の回転位置に回転され得る。他の実施形態では、挿入された交換式ヘッド64は、別の位置に回転することができない。
【0041】
図3の実施例では、交換式ヘッド64のそれぞれは、遠位端76を有する細長いシャフト74で具現化されており、細長いシャフト74の遠位端76に少なくとも1つの切断要素78又は遠位開口部79を含み、開口部79はその回転に関して非対称に形成されている。遠位開口部79は、例えば、ツールを回転させて標的組織に面するようにした後に周囲組織に付随的損傷を与えるのを防止するために、所与の方位角の範囲のみにわたってシェーバを露出させるために使用され得る。切断要素(複数可)78には、シェービングバー(shaving bur)(例えば、表面の粗い円筒形状若しくはボール形状の要素)、細長いシャフト74内の回転シェービングブレード、又は任意のその他の好適な切断要素が含まれ得る。
【0042】
上記に述べた種類のENT機器の更なる態様は、本特許出願の譲受人に譲渡され、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2019年4月4日出願の米国特許出願第16/375,485号、発明の名称「Medical Instrument Identification」に見出すことができる。
【0043】
図4は、本発明の一実施形態による、それぞれがヘッドの遠位端76上に配置された磁気センサ82を備える、図2の耳鼻咽喉(ENT)機器28の交換式ヘッド64の概略図である。
【0044】
センサ82は、典型的には、PCB上の印刷コイルとして形成される。中でも、PCBセンサを使用することの利点は、(a)PCBセンサは、金属干渉から悪影響を受けないこと、(b)PCBセンサは、非常に正確な向きでヘッド上に配置されることができること、及び(c)PCBセンサは、巻線コイルではないが、標準的な印刷コイルであるので、各PCBは実質的に同じ磁気感受性を有すること、である。したがって、上記の利点に基づいて、PCBセンサは一般的に較正を必要とせず、したがって、一般的に過剰に嵩高であるためヘッド上に置くことのできないコントローラ(例えば、EEPROM)を必要としない。
【0045】
上述したように、各交換式ヘッド64は、交換式ヘッド64の細長いシャフト74の遠位端76でその上に配置された位置センサ82を含む。位置センサ82は、細長いシャフト74及び切断要素(複数可)78から電気的に絶縁されている。ヘッド位置センサ82から延在するワイヤは、例えば、粘着テープ75を使用することによって細長いシャフト74に固定される。
【0046】
図4では、各交換式ヘッド64のセンサ82は、少なくとも1つのコイルを含んでおり、コイルの軸84は、物理的特徴部のロール角度を追跡するために、遠位端76の物理的特徴部に対する所与の回転角度αと位置合わせされる。示されている一実施形態では、角度αは、y-z平面(長手方向のz軸81及び横方向のy軸85によって画定される)内にある屈曲した遠位端に対して定義される。図から分かるように、方向84は、x軸83及びy軸85によって画定される横方向のx-y平面上に投影86を有し、所与の回転角度αは、投影86とy-z平面との間に定義される。
【0047】
別の実施形態では、角度αは、例えば、電気シェーバを正確に回転させて標的組織に直接対向させるために追跡される、回転非対称に配置された遠位開口部79の回転の向きに対して定義される。
【0048】
各交換式ヘッド64のセンサ82は、交換式ヘッド64の場所、方向、及びロール角度を検出するために使用することができる二軸センサ(例えば、互いに直交して整列されるか又は少なくとも非平行に整列される2つのコイルを備える)を含むことができる。ヘッド位置センサ82は、1つ又は2つのプリント回路基板上に印刷されていてもよい。例えば、2つのコイルが、コイルのそれぞれが他方のコイルと直交するように、細長いシャフト74の遠位端76に接続された1つ又は2つのプリント回路基板上に印刷されていてもよい。コイルをプリント回路基板上に印刷することにより、巻線コイルを使用するよりもコンパクトでより標準的なセンサが得られる。コイルは、電気絶縁材料でコーティングされてもよい。
【0049】
細長いシャフト74の少なくとも一部は、細長いシャフト74を身体部分に挿入する前に、プラスチック製の生体適合性スリーブ内に配置されていてもよい。いくつかの実施形態では、スリーブは、細長いシャフト74を、プラスチックの近位端68からセンサ82まで、またセンサ82を含めて被覆することができる。
【0050】
図5は、本発明の一実施形態による、患者の頭部内で図4の耳鼻咽喉(ENT)機器28のヘッド64のロール角度を追跡するための方法及びアルゴリズムを概略的に示すフローチャート90である。このプロセスは、ヘッド挿入ステップ92において、医師54が交換式ヘッド64のうちの1つを機器62に挿入することで始まる。
【0051】
医師54が、ENT機器28の遠位端を、交流磁場が存在する領域30に至らせると、プロセッサ38は、追跡ステップ94において、センサ82によって生成された信号を使用して、ENT機器28の遠位端76の少なくともロール角度を追跡することを開始する。検知されたロール角度は、最大5又は10%のロール角度精度など、所与の許容誤差まで正確であり得る。
【0052】
挿入ステップ96において、医師54は、遠位端76がいくつかの最初に好ましいロール角度にある状態で、機器のヘッドを副鼻腔に挿入する。
【0053】
決定ステップ98で、プロセッサ38は、遠位端が回転整列されたロール角度が許容可能であるかどうかを医師54に尋ねる質問をディスプレイ56にレンダリングする。医師54は、プロセッサ38によって受信される応答を、動作制御装置51を介して提供する。医師が否定的な応答を返した場合、医師は、挿入された交換式ヘッド64を新しい回転位置に回転させ(ブロック100)、方法はステップ94に戻る。交換式ヘッド64をハンドル62に対して自由に回転させることができる場合、回転角度が承認されるまで、医師は、ヘッド64の(例えば、遠位端76の)ロール角度が許容可能であるかどうかを評価しながら、挿入された交換式ヘッド64を連続的に回転させることができる。
【0054】
次に、医師は、ツール操縦ステップ102において、遠位端上に配置されたツールを更に操縦し(例えば、回転させて方向を合わせ)、これにより、ツールは、ツールの追跡されたロール角度を使用して、副鼻腔内の標的組織に対して正しく方向付けられる。
【0055】
最後に、治療ステップ104で、医師は、例えば、標的組織に面するようにツール首尾良く整列させたら、組織をシェービングするなどの必要な治療を実施する。
【0056】
本開示の解決手段の様々な特徴が、明確性のために別個の実施形態の文脈において記載されているが、これらはまた、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことを理解されたい。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈において記載されている解決手段の様々な特徴は、別々にまたは任意の好適な部分的組み合わせで提供されてもよい。
【0057】
上述の実施形態は、例として引用されており、本発明は、上記の明細書に具体的に図示および記載されたものに限定されない。むしろ本発明の範囲は、上記の明細書で説明される様々な特徴の組み合わせ及びその部分的組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、従来技術において開示されていないそれらの変形例および修正例を含むものである。
【0058】
〔実施の態様〕
(1) システムであって、
医療機器であって、ハンドル及びヘッドを備え、前記ヘッドは、患者の器官に挿入するように構成されており、かつ前記医療機器の長手方向軸に関して回転非対称である特徴部を有する、医療機器と、
位置センサであって、前記ヘッド上に配置されており、かつ外部から印加された磁場に応答して信号を生成するように構成されている、位置センサと、
プロセッサであって、
前記ヘッド上の前記位置センサによって生成された前記信号を受信することと、
前記受信した信号に基づいて、前記ヘッドの前記回転非対称の特徴部のロール角度を推定することと、を行うように構成されている、プロセッサと、を備える、システム。
(2) 前記位置センサが、前記ヘッドの前記回転非対称の特徴部に対して所与の回転角度で方向付けられた軸を有する少なくともコイルを備える、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記回転非対称の特徴部が、医療ツールを含む、実施態様1に記載のシステム。
(4) 前記医療ツールが、耳鼻咽喉(ENT)シェーバを含む、実施態様1に記載のシステム。
(5) 前記医療ツールが、ENT吸引ツールを含む、実施態様1に記載のシステム。
【0059】
(6) 前記医療ツールが、ENTマイクロブライダ(ENT microbrider)を含む、実施態様1に記載のシステム。
(7) 前記回転非対称の特徴部が、前記医療ツールの開口部を含む、実施態様3に記載のシステム。
(8) 前記医療ツールが、前記長手方向軸に対して屈曲している、実施態様3に記載のシステム。
(9) 前記位置センサが、回路基板上に印刷された単軸センサ(SAS)である、実施態様1に記載のシステム。
(10) 前記位置センサが、回路基板上に印刷された二軸センサ(DAS)である、実施態様1に記載のシステム。
【0060】
(11) 前記器官の近くに前記磁場を送信するように構成された少なくとも1つの磁場放射器を含む位置パッドを更に備える、実施態様1に記載のシステム。
(12) ディスプレイを更に備え、前記プロセッサが、
前記受信した信号に応答して前記ヘッドの場所を追跡することと、
前記ディスプレイに、前記器官の少なくとも一部の表現と、身体内の前記ヘッドの少なくとも一部の表現とを含む画像をレンダリングすることと、を行うように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(13) 方法であって、
ハンドル及びヘッドを備える医療機器を患者の器官に挿入することであって、前記ヘッドは、前記医療機器の長手方向軸に関して回転非対称である特徴部を有する、挿入することと、
前記ヘッド上に配置された位置センサを使用して、外部から印加された磁場に応答して信号を生成することと、
前記ヘッド上の前記位置センサによって生成された前記信号を受信することと、
前記受信した信号に基づいて、前記ヘッドの前記回転非対称の特徴部のロール角度を推定することと、を含む、方法。
(14) 前記位置センサが、前記ヘッドの前記回転非対称の特徴部に対して所与の回転角度で方向付けられた軸を有する少なくともコイルを備える、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記回転非対称の特徴部が、医療ツールを含む、実施態様13に記載の方法。
【0061】
(16) 前記医療ツールが、耳鼻咽喉(ENT)シェーバを含む、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記医療ツールが、ENT吸引ツールを含む、実施態様15に記載の方法。
(18) 前記医療ツールが、ENTマイクロブライダを含む、実施態様15に記載の方法。
(19) 前記回転非対称の特徴部が、前記医療ツールの開口部を含む、実施態様15に記載の方法。
(20) 前記医療ツールが、前記長手方向軸に対して屈曲している、実施態様15に記載の方法。
【0062】
(21) 前記位置センサが、回路基板上に印刷された単軸センサ(SAS)である、実施態様13に記載の方法。
(22) 前記位置センサが、回路基板上に印刷された二軸センサ(DAS)である、実施態様13に記載の方法。
(23) 少なくとも1つの磁場放射器を含む位置パッドを使用して、前記器官の近くに前記磁場を送信することを更に含む、実施態様13に記載の方法。
(24) 前記受信した信号に応答して前記ヘッドの場所を追跡することと、
ディスプレイに、前記器官の少なくとも一部の表現と、身体内の前記ヘッドの少なくとも一部の表現とを含む画像をレンダリングすることと、を更に含む、実施態様13に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】