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特表2023-519174装置要素を連結するための方法およびそのような要素を有する関連装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】装置要素を連結するための方法およびそのような要素を有する関連装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20230428BHJP
【FI】
A61B17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554379
(86)(22)【出願日】2021-03-09
(85)【翻訳文提出日】2022-10-28
(86)【国際出願番号】 US2021021501
(87)【国際公開番号】W WO2021183511
(87)【国際公開日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】62/987,604
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ガフニー、ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】スミス、ポール
(72)【発明者】
【氏名】スカッティ、ジェームズ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ、レイチェル マリー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KL03
4C160MM32
4C160NN01
(57)【要約】
第1医療装置要素を第2医療装置構素に連結する方法であって、第1医療装置要素の断面寸法を縮径することによって、第1医療装置要素を自然状態から変更状態に変更する工程と、変更状態の第1医療装置要素の第1部分を第2医療装置要素の第1開口部の中に嵌め込む工程とを備え、第1医療装置要素は、第2医療装置要素の第1開口部内に配置されない第2部分を含み、第1医療装置要素の第2部分が自然状態に復帰することを可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1医療装置要素の断面寸法を縮径することによって、第1医療装置要素を自然状態から変更状態に変更する工程と、
変更状態にある第1医療装置要素の第1部分を第2医療装置要素の第1開口部に嵌め込む工程であって、第1医療装置要素は第2医療装置要素の第1開口部内に配置されない第2部分を含む、変更状態にある第1医療装置要素の第1部分を第2医療装置要素の第1開口部に嵌め込む工程と
第1医療装置要素の前記第2部分を自然状態に復帰させる工程と
を備える、第1医療機器要素を第2医療機器要素に連結するための方法。
【請求項2】
前記嵌め込む工程後に、前記第1医療装置要素の前記第1部分の断面寸法を前記第1開口部の寸法まで増大させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記変更する工程は、前記医療装置要素に対して前記断面寸法の方向に対して直交する方向に力を付与する工程を含み、前記復帰させる工程は、力を取り除く工程を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記自然状態において、前記第1医療装置要素は、前記第1開口部に入ることが寸法上制限されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第1医療機器要素はワイヤである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ワイヤはニチノールを備える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記変更する工程は、前記ワイヤの直径が前記第1開口部の幅以下になるように前記ワイヤを伸長させる工程を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2医療装置要素は円盤状であり、前記第1開口部は、前記第2医療装置要素の外縁から点まで前記外縁の径方向内方に延びるスロットを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1医療機器要素はワイヤであり、前記嵌め込む工程は前記スロットを介して前記ワイヤ上で前記第2医療機器要素を摺動させることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2医療機器要素は第2開口部を含み、前記方法は変更状態の前記第1医療機器要素の第3部分を前記第2開口部に嵌め込むことをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1医療装置要素の第3部分を前記第2医療装置要素の前記第1開口部に嵌め込むことをさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ループ、第1ストランド、および第2ストランドを画定するニチノールワイヤであって、第1ストランドおよび第2ストランドはそれぞれ、前記ループの近位側に延びる、前記ニチノールワイヤと、
前記第1ストランドおよび前記第2ストランドに連結された受け入れ要素と
を備え、
前記受け入れ要素は第1開口部を含み、前記第1ストランドの一部は前記第1開口部を通って延在し、
前記第1ストランドの前記一部の直径は、前記第1ストランドの残りの部分の直径よりも小さい、医療装置。
【請求項13】
前記第2ストランドの一部は前記第1開口部を通って延び、前記第2ストランドの前記一部の直径は前記第2ストランドの残りの部分の直径よりも小さい、請求項12に記載の医療装置。
【請求項14】
前記受け入れ要素は、第2開口部をさらに含み、前記第2ストランドの一部は、前記第2開口部内に延び、前記第2ストランドの該一部の直径は、第2ストランドの残りの部分の直径よりも小さい、請求項13に記載の医療装置。
【請求項15】
前記第1ストランドの前記一部の直径は、ループを画定するニチノールワイヤの部分の直径よりも小さい、請求項12~14のいずれか一項に記載の医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置要素を別の装置要素に連結することに関する。本発明の例は、ニチノールワイヤを別の要素、例えば、治療器具または診断器具などの、異なる材料で形成される、医療装置の別の要素に連結する方法に関する。本発明の別例は、本明細書に記載された方法によって連結された要素を含む器具または医療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ニチノールは、高い可撓性、形状回復性、耐キンク性、高い疲労強度、耐腐食性、および耐熱性を与える超弾性特性を有する。したがって、ニチノールは医療装置や器具、特にワイヤ形状を有する医療装置や器具の理想的な素材である。ニチノール部品を含む医療装置は、ニチノール部品を医療装置の別の構成要素に接着すること、溶接すること、圧着すること、および/またはかしめることによって組み立て得る。しかし、これらの方法は、ニチノールの硬質酸化物外層のために困難な場合があり、接合処理中および接合後の結合/連結が制限される。ニチノールをステンレス鋼に溶接またははんだ付けするために、充填材料が必要になる場合があるが、これは一般に、結合内に脆弱点を作る。また、ニチノールの形状回復特性を与えるニチノールの熱特性を低下させる可能性もある。
【発明の概要】
【0003】
一例によれば、第1医療装置要素を第2医療装置要素に連結するための方法は、第1医療装置の断面寸法を縮径することによって、第1医療装置要素を自然状態から変更状態に変更する工程と、変更状態の第1医療装置要素の第1部分を第2医療装置要素の第1開口部に嵌め込む工程であって、第1医療装置要素が第2医療装置要素の第1開口部内に配置されない第2部分を含む、変更状態の第1医療装置要素の第1部分を第2医療装置要素の第1開口部に嵌め込む工程と、第1医療装置要素の第2部分を自然状態に回復可能にする工程とを含む。
【0004】
別例では、方法は、嵌め込む工程の後に、第1医療装置要素の第1部分の断面寸法を上記開口部の寸法まで増大させる工程をさらに含み得る。
別例では、上記変更する工程は、断面寸法の方向を横断する方向に医療機器要素に力を付与することを含み、上記可能にする工程は力を取り除く工程を含む。自然状態において、第1医療装置要素は、第1開口部に入らないように寸法上制限され得る。第1医療装置要素はワイヤであり得る。ワイヤはニチノールを含有し得る。上記変更する工程は、ワイヤの直径が第1開口部の幅以下になるようにワイヤを伸長する工程を含み得る。第2医療装置要素は円盤状であり得、第1開口部は、第2医療装置要素の外縁から半径方向内方の点まで延びるスロットを含み得る。
【0005】
別例では、第1医療装置要素はワイヤであり得、嵌め込む工程は、スロットを介してワイヤ上で第2医療装置要素を摺動する工程を含み得る。第2医療機器要素は第2開口部を含み得、方法は、変更状態の第1医療機器要素の第3の部分を第2開口部に嵌め込むことをさらに含み得る。
【0006】
別例では、方法は、第1医療装置要素の第3部分を第2医療装置要素の第1開口部の中に嵌め込む工程をさらに含み得る。
別例では、第1医療装置要素が第2医療装置要素に対して回動することがないように、第1医療装置要素を第2医療装置要素に連結し得る。第1医療装置要素は、医療装置のエンドエフェクタを駆動するための駆動要素であり得る。単一ワイヤは駆動要素およびエンドエフェクタを含み得、エンドエフェクタはスネアループを含み得る。単一ワイヤはニチノールを含有し得、単一ワイヤの2つの部分は第2医療装置要素内に嵌め込まれ得る。
【0007】
別例によれば、医療装置は、ループ、第1ストランド、および第2ストランドを画定するニチノールワイヤを含み得、第1ストランドおよび第2ストランドはそれぞれ、ループの近位側に延在し、第1ストランド及び第2ストランドに連結された受け入れ要素を含み得、受け入れ要素は第1開口部を備え、第1ストランドの一部は第1開口部内に延び、第1ストランドの一部の直径は第1ストランドの残りの部分の直径よりも小さい。第2ストランドの一部は、第1開口部内に延び、第2ストランドの一部の直径は、第2ストランドの残りの部分の直径よりも小さい。受け入れ要素は、第2開口部をさらに含み得、第2ストランドの一部は、第2開口部内に延び、第2ストランドの一部の直径は、第2ストランドの残りの部分の直径よりも小さい。第1ストランドの一部の直径は、ループを画定するニチノールワイヤの部分の直径より小さくてもよい。
【0008】
別例によれば、医療装置はシャフト、シャフトの近位部分に接続されたハンドル、ハンドルからシャフトまで延びるニチノールワイヤ、および受け入れ要素を備え得、受け入れ要素はハンドル、またはシャフト内に配置され、ニチノールワイヤの一部は受け入れ要素の中を通過して延在し得、ニチノールワイヤの一部の直径は、ニチノールワイヤの残りの部分の直径よりも小さい。
【0009】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、様々な例示的な実施形態を示しており、説明とともに開示された実施形態の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】一実施形態に係る未変更状態のニチノールワイヤを示す側面図。
図1B】一実施形態に係る受け具を示す正面図。
図2A】伸長状態の図1Aのニチノールワイヤを示す側面図。
図2B図2Aの伸長状態のニチノールワイヤを含む図1Bの受け具を示す正面図。
図2C図2Bの受け具とニチノールワイヤを示す上面図。
図2D図2Bの受け具とニチノールワイヤを示す斜視図。
図3A】一実施形態に係る医療装置を示す斜視図。
図3B】線3B-3Bに沿って、図3Aの装置の受け具を示す断面図。
図3C】別の実施形態係る医療装置を示す斜視図。
図3D】線3D-3Dに沿って、図3Cの装置の受け具を示す断面図。
図4】一実施形態に係る医療装置を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで、本発明の態様を詳細に参照し、その例を添付の図面に示す。可能な限り、全ての図面に亘って同一または類似の参照番号を使用して同一または類似の部品に言及する。「遠位」という用語は、被験者(例えば、患者)の体内に装置を導入するときに、使用者から最も離れた部分を指す。対照的に、「近位」という用語は、装置を被検者の体内に配置したとき使用者に最も近い部分を指す。
【0012】
上記一般的な説明と以下の詳細な説明の双方は、例示的かつ説明的なものに過ぎず、特許請求される特徴を限定するものではない。本明細書で使用される場合、用語「備える」、「含有する」、「有する」、「含む」、またはそれらの他の変化形は、要素のリストを備える処理、方法、物品、または装置が、それらの要素のみを含むのではなく、明示的にリストされていない別の要素、またはそのような処理、方法、物品、または装置に固有の別の要素が含まれる場合がある。本発明では、例えば、「約」、「実質的に」、「一般的に」、および「およそ」などの相対的な用語は、記載された値または特性における±10%の可能な変動を示すために使用される。
【0013】
本発明の態様は、当技術分野における制限の1つ以上を解決することができる。しかし、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義されており、特定の問題を解決する能力ではない。本発明は、装置要素を他の要素に連結するための方法、およびこの方法によって連結された要素を含む医療装置/機器に関する。例示的な実施形態では、装置要素はワイヤであり、たとえば超弾性特性を有するニッケルチタン合金であるニチノールを含有するワイヤである。しかしながら、本発明は、ニチノールを含むワイヤに限定されない。装置要素、例えば本発明に係る方法および装置の使用に適するワイヤは、力が付与されると伸長/延長し、力が除去されると元の伸長されていない形態に復帰することができる任意の材料を含み得る。この明細書の全体に亘って、実施形態はニチノールからなるワイヤに言及する。しかし、本明細書で言及された任意の材料および別の適切な材料が、本発明の実施形態に係る方法および装置で使用されてもよい。
【0014】
本明細書に記載の例示的実施形態では、別の装置要素に連結するように変更される要素はワイヤである。一の方向に伸長し、別の方向に短縮することができる別の要素を、本発明の実施形態に係る装置および方法で使用することができる。
【0015】
例示的な実施形態によれば、ニチノール要素を変更して、受け具を介して他の材料および要素に連結し得る。したがって、以下でさらに詳細に説明する方法では、充填剤または接着剤を使用したり、または熱暴露を行ったりすることなく、ニチノール成分を他の材料に連結することができる。そのような受け具は、ニチノールを含有する様々な医療装置または機器、例えば内視鏡、エンドエフェクタを有する器具などに実装され得る。
【0016】
図1A~2Dを参照して、ニチノールワイヤ100を受け具200に連結/固定する方法の例を説明する。ニチノールワイヤ100は直径Dを有する。直径Dは特に限定されず、約0.02インチ(約0.51ミリメートル)から0.04インチ(約1.02ミリメートル)の範囲、例えば約0.029インチ(約0.74ミリメートル)であり得る。ニチノールワイヤ100は、円形の断面を有するが、特にこれに限定されない。直径Dは、受け具200の開口部210の幅Wよりも大きい。受け具200は円盤状をなし、例えばステンレス鋼などの任意の適切な材料である。受け具200は、ワイヤ100とは異なる材料で形成される。開口部210は、全長にわたって幅Wを有するスロット215に連通する。幅Wは、ワイヤ100の直径Dより小さくあるべきであるが、特に限定されず、例えば、約0.028インチ(約0.71ミリメートル)であり得る。スロット215は、外面から終点220まで延び、終点220は、円盤状の受け具200の中心点またはその周囲に位置し得る。終点220は、ニチノールワイヤ100の断面形状に対応するように、成形され得る。しかしながら、ニチノールワイヤ100は、力が付与されていない未変更状態では、図1Bのワイヤ100の外周囲を表す点線の輪郭によって示されるように、受け具200の中に適合しない。
【0017】
ニチノールワイヤ100を受け具200に連結するために、ニチノールワイヤ100は、受け具200の開口部210およびスロット215に適合するように、任意の適切な方法によって変更され得る。例えば、ニチノールワイヤ100は伸長されて、図2Aに示すように、直径D’を有する縮径されたニチノールワイヤ100’を形成する。ニチノールワイヤ100がニチノールワイヤ100’まで縮径される程度は、ニチノールワイヤ100’が受け具200の開口部210の幅W以下である直径D’を有する限り、特に限定されない。例えば、直径D’は、約0.02インチ(約0.51ミリメートル)から0.04インチ(約1.02ミリメートル)の範囲、例えば約0.028インチ(約0.71ミリメートル)であり、幅Wに等しい、または0.028インチ(約0.71ミリメートル)未満である。さらに、ニチノールワイヤ100は、任意の適切な方法で変更/伸張され得る。例えば、ニチノールワイヤ100の一端または両端は、油圧プレスまたは任意の他の適切な引っ張り固定具に固定され得る。次に、油圧プレスまたは引っ張り固定具を使用して、ニチノールワイヤ100を超弾性的に伸長させることによって引き延ばし得る。ニチノールワイヤ100は、ニチノールワイヤ100が破断点に達するに先立ち、上記程度まで伸長され得る。
【0018】
伸長されたニチノールワイヤ100’は直径D’を有するため、伸長されたニチノール100’は、その後、開口部210(図2A~2Bに示す)を介して、受け具200内に嵌め込まれ得る/挿入され得る。ニチノールの形状回復特性により、ニチノールワイヤ100’は元の寸法、例えば直径Dに回復する前に、開口部210およびスロット215内に嵌め込まれ/摺動される。したがって、ニチノールワイヤ100’は、直径D’を維持しつつ、受け具200に連結され得る。ニチノールワイヤ100’が受け具200に取り付けられる方法は、特に限定されない。例えば、ニチノールワイヤ100’がスロット215の終点220に到達するまで、受け具200を、開口部210を介してニチノールワイヤ100’上を摺動させてもよい。さらに、受け具200は、1つのニチノール要素、例えば、単一のニチノールワイヤを受け入れることに限定されず、複数のニチノールワイヤを受け入れるように構成され得る。例えば、スロット215内に複数のニチノールワイヤを積み重ねることができ、および/または受け具200は、受け具200の周囲に放射状に配置された複数の開口部およびスロットを含み得る。受け具200の開口部210は、スロットに特に限定されない。開口部210は、ワイヤ100’を受け入れることができる任意の適切な開口部であってよい。例えば、受け具200の開口部210は、スロットの代わりに、ワイヤ100’が伸長した状態で通され得る貫通孔であってもよい。
【0019】
ニチノールワイヤ100’が受け具200に取り付けられると、ニチノールワイヤ100’に付与された力は取り除かれて、ニチノールワイヤ100’は弛緩状態に移し得る。これにより、スロット215内に嵌め込まれていないニチノールワイヤ100’の部分を、元の寸法、例えば直径Dに復帰させることができる。スロット215内に嵌め込まれたニチノールワイヤ100’の部分は、幅Wに対応する直径にまで拡張する。例えば、直径D’が幅Wよりも小さい場合、ニチノールワイヤ100’のスロット215内に嵌め込まれた部分は、幅Wを満たすように拡張し得る。その結果、ニチノールワイヤ100’は受け具200のスロット215内に確実にはめ込まれる。例示的な実施形態では、受け具200は、ニチノール100’に対して回動できないように、ニチノールワイヤ100’に連結され得る。ニチノールワイヤ100’の残りの部分は、その形状回復特性によって元の直径D、例えば約0.029インチ(約0.74ミリメートル)に復帰する。その結果、受け具200は、ワイヤ100’と受け具200の間の締まり嵌めのために、ニチノールワイヤ100’の長手軸線に沿った移動は抑制される。
【0020】
上記のように、変更されて別の装置要素に連結される装置要素は、ワイヤであることに限定されない。装置要素は、要素が開口部210を介して受け具200に嵌め込まれることを妨げる第1形態と、開口部210に嵌め込まれるように変更された第2形態とを有する任意の適切な形状または形態であってよい。
【0021】
同様に、受け具200は円盤形状に限定されず、開口部210およびスロット215は、図面に示すものに限定されない。受け具200は任意の適切な材料および形態/形状であり得る。開口部210およびスロット215は、装置要素をその第2変更形態で受け入れるように構成されている限り、任意の適切な幅および形状であってよい。いくつかの例では、受け具200は、異なる形状および/または寸法を有する複数の開口部およびスロットを含み得る。さらに、上記のように、第1形態から第2形態への装置要素の変更は、伸長に限定されない。装置要素は、開口部210に適合するように任意の適切な方法で変更されてよい。
【0022】
上記方法は、例えばニチノール部品などの装置要素を、医療装置または医療装置の受け具などの他の医療装置要素に連結するために使用され得る。図3A図4を参照して、そのような医療装置および装置の例を以下に説明する。
【0023】
図3Aは、駆動要素51およびエンドエフェクタ54に使用される単一のニチノールワイヤ100’’を含む医療装置50を示す。ワイヤ100’’は、別の医療装置要素、例えばハンドル(図示せず)から遠位方向に延びる。駆動要素51は、エンドエフェクタ54の近位側をなす。駆動要素51は、任意の適切な方法で装置の近位端のハンドル(図示せず)に連結され得る。駆動要素51およびエンドエフェクタ54は、要素51の長手軸線に沿って線状に移動し得る。要素51およびエンドエフェクタ54の双方は、装置のシース(図示せず)内を通って延在し得る。エンドエフェクタ54のループは、エンドエフェクタ54がシース(図示せず)に出入りすることによって開閉し得る。
【0024】
ニチノールワイヤ100’’は、ワイヤ、ケーブル、またはリボンの形状であり、受け具61に適応する任意の適切な断面形状または寸法で形成される。エンドエフェクタ54の近位側にあるワイヤ100’’の部分は、駆動要素51の第1ストランド52である。駆動要素51の遠位側のニチノールワイヤ100’’の部分は、エンドエフェクタ54、例えば平面内の遠位ループを画定する。エンドエフェクタ54の寸法および形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、涙滴形などであり得る。エンドエフェクタ54の最遠位端は、先端55を含み得る。先端55は遠位突出部であり得、それによって外傷性遠位端を形成する。しかしながら、先端55は、エンドエフェクタ54において特に限定されず、必要でもない。いくつかの他の実施形態では、エンドエフェクタ54は、非外傷性遠位端を有し得る。
【0025】
ニチノールワイヤ100’’の遠位部分は、それ自体にループ状をなして向きを変えることによってエンドエフェクタ54のループを形成する。エンドエフェクタ54を形成するワイヤ100’’の部分の遠位側にあるワイヤ100’’の残りの部分は、直線状に延びて第2ストランド53を形成する。第1ストランド52、第2ストランド53は互いに平行をなして、ともにループ54に対して近位側をなす。第2ストランド53の長さは特に限定されない。ストランド52,53は、受け具60の開口部に対応して、互いに接触して、または任意の適切な距離だけ間隔をあけて配置され得る。
【0026】
引き続き図3A~3Bを参照すると、医療機器50は、受け具60をさらに含む。受け具60は、例えばステンレス鋼などの任意の適切な材料で形成され得る。受け具60は、開口部61を含む環状/リング状要素である。しかしながら、受け具60は、リングであることに特に限定されず、上記のように任意の適切な形状および/または寸法であってよい。受け具60は完全な閉鎖リングである。しかしながら、別の例示的な実施形態では、受け具60は、その環状構造に切れ目を含む部分的リングであってもよい。切れ目は、受け具60がストランド52,53を受け入れて保持することを可能にする任意の適切な距離であり得る。開口部61は、例えば円形、長方形などの任意の適切な形状であり得、ストランド52,53の断面形状に適合する形状であり得る。開口部61は、ストランド52,53の直径を合わせた総直径よりも小さい幅または直径を有するべきであるが、特に限定されない。別の例示的な実施形態では、受け具60は、対応するストランド52,53用に2つの別個の開口部を有し得る。そのような実施形態では、両方の開口部は、ストランド52,53の各直径よりも小さい直径を有し得る。
【0027】
ニチノールワイヤ100’’のストランド52,53は、上記連結方法によって受け具60に連結される。ストランド52,53は、未変更状態、例えば、第1形態では、開口部61の幅/直径よりも大きい、総幅/直径を有する。ストランド52,53は、第2形態に変更され、例えば伸長/縮径されて、受け具60に連結される。図3Bに示すように、ストランド52,53は、それらが開口部61内に収まるように縮径される。いくつかの例では、ストランド52,53は伸長されて、開口部61の中に順次または同時に挿入される。別例では、ニチノールワイヤ100’’は、遠位ループ54を形成する前に伸長されているため、ストランド52,53は、受け具61に連結されるときにすでに縮径/伸長状態にある。実施される方法にかかわらず第2形態への変更は、装置要素、例えばストランド52,53の断面寸法の縮小を伴う。
【0028】
ストランド52,53を縮径した後、受け具60は、開口部61を介して、縮径されたストランド52,53(またはループ54を形成する前に縮径されたニチノールワイヤ100’’)の上に取り付けられる。受け具60がストランド52,53上に取り付けられる方法は、特に限定されない。いくつかの例では、受け具60は、駆動要素51が別の装置要素、例えばハンドル(図示せず)に連結される前に、縮径されたストランド52,53の上に取り付けられる。別例では、受け具60は、エンドエフェクタ54のループを形成する前に、縮径されたニチノールワイヤ100’’の上に取り付けられる。続いて、エンドエフェクタ54の形成中または形成後に、ニチノールワイヤ100’’(第2ストランド53を形成する)のループ状に向きを変える部分を開口部61内に摺動させることができる。受け具60が部分的リングである場合の別の例示的な実施形態では、受け具60は、部分的リングの切れ目を介して、縮径されたストランド52,53上に滑り込ませることができる。受け具60は、上記の例を超えて、様々な別の方法でストランド52,53上に装着され得る。
【0029】
ストランド52,53上に受け具60を取り付けた後、ストランド52,53が弛緩状態に移行し得るように、ストランド52,53に付与された力が取り除かれ得る。これにより、開口部61内に取り付けられたストランド52,53の部分が、開口部61によって許容される程度まで拡張することが可能になる。しかしながら、ストランド52,53の嵌合部分は、開口部61の空間的制約のために、それらの元の直径まで拡張されない。一方、開口部61内に嵌め込まれないストランド52,53の残りの部分は、ニチノールワイヤ100’’の形状回復特性により、元の寸法、例えば直径に復帰する。したがって、受け具60は、ストランド52,53と受け具200との間の締まり嵌めにより、ストランド52,53の長手方向軸線に沿って移動することが抑制され得る。
【0030】
図3C~3Dは、受け具60’が受け具60と異なることを除いて、図3A~3Bに示すものと同様の装置を示す。受け具60’は、2つの開口部61’,62を含む。開口部61’,62は、それぞれ第1および第2ストランド52,53を受け入れるように構成される。したがって、開口部61’は、開口部62の真下に配置され得る。開口部61’,62は、ストランド52,53との間の距離に従って間隔をあけて配置される。開口部61’は、第1ストランド52を受け入れるクランプ状の開口部である。開口部61’は、第1ストランド52に適応する任意の適切な形状であり得る。開口部61’は、未変更であるときにおける第1ストランド52の幅/直径以下である任意の適切な幅であり得る。開口部62は、第2ストランド53を受け入れる。開口部62は、受け具60の構造内にあり、長手方向に延びる。したがって、開口部61’とは異なり、開口部62は完全に囲まれた開口部である。開口部62は、第2ストランド53に適応する任意の適切な形状であり得る。開口部62は、未変更状態であるときにおける第2ストランド53の幅/直径よりも小さい任意の適切な幅/直径であり得る。
【0031】
ニチノールワイヤ100’’のストランド52,53も、上記の連結方法を介して受け具60’に連結される。例えば、第2ストランド53は変更され、例えば伸長/縮径されるため、開口部62を介して受け具60’を第2ストランド53上に摺動させ得る。受け具60’は、遠位ループ54の近位側にある限り、第2ストランド53の任意の部分に取り付けられる。開口部61’の幅が第1ストランド52の幅/直径よりも小さいいくつかの例では、第1ストランド52がクランプ状の開口部61’内に嵌め込まれ得るように、第1ストランド52も変更、例えば伸長/縮径される。開口部61’の幅が第1ストランド52の幅/直径と等しい、またはほぼ等しい他の例では、未変更状態の第1ストランド52は、任意の適切な方法によってクランプ状の開口部61’内に嵌め込まれる。
【0032】
図4は、上記の方法によって受け具などの他の医療機器要素に連結されるニチノール部品を含む、内視鏡などの医療機器の一例を示す。内視鏡10は、可撓性シャフト20、内視鏡10の遠位端にある先端30、および可撓性シャフト20と先端30との間に配置されてそれらを接続する関節ジョイント50を含む。内視鏡10を駆動または制御するためのハンドル40または別の装置、および内視鏡10に関連する任意のツールまたは装置は、可撓性シャフト20の近位端に接続される。
【0033】
医療処置に適するニチノール操縦ワイヤ48,49などの複数の駆動要素は、ハンドル40から遠位側に延び得る。ワイヤ48,49は、上記連結方法によって、医療装置要素、例えば複数の受け具45,47,25、および27などによって支持されるとともに固定され得る。したがって、ワイヤ48,49は、ワイヤと受け具との間の締り嵌めによって、受け具45,47,25、および27に確実に嵌め込むことができる。近位側受け具45,47は、ハンドル40内の適切な位置に配置される。受け具45,47を配置する方法、例えば成形、接着などは、特に限定されない。受け具45,47は、上記受け具のいずれか、またはその変形であり得る。遠位側受け具25,27は、シャフト20内に配置される。追加的に又は代替的に、遠位側受け具25,27は、先端30または関節ジョイント50内の任意の適切な場所に配置され得る。受け具25,27を配置する方法、例えば成形、接着などは、特に限定されない。受け具25,27は、上記受け具のいずれか、またはその変形であってもよい。
【0034】
ニチノールワイヤ48,49は、関節ジョイント50の複数の方向の関節運動を制御する第1駆動装置42、第2駆動装置43に対して間接的に連結され得る。装置42,43は、例えば、それらの軸線を中心として回動してニチノール操縦ワイヤ48,49を押したり引いたりする回動可能なノブであってもよい。
【0035】
代替的にまたは追加的に、使用者は、ハンドル40とは独立して操縦ワイヤ48,49を操作し得る。操縦ワイヤ48,49の遠位端は、可撓性シャフト20の中を通って延び、関節ジョイント50および/または先端30で終わる。例えば、1つ以上の操縦ワイヤ48,49を関節ジョイント50に連結するとともに、1つ以上の他の操縦ワイヤ48,49を先端30に取り付けることができる。操縦ワイヤ48,49の駆動により、関節ジョイント50、先端30、および/またはエンドエフェクタ(図示せず)などの先端30に取り付けられた要素を制御し得る。さらに、1つ以上の電気ケーブル(図示せず)は内視鏡10の近位端から先端30まで延びて、先端30上の撮像装置、照明装置、および/または他の電気装置に電気制御を行うとともに、処理したり、ディスプレイ上に表示したりするために、撮像信号を先端30から近位方向に送達し得る。ハンドル40は、器具、流体、または他の物質を患者から導入および/または除去するためのポート44,46を含んでもよい。ポート44は、器具の導入に使用されてもよい。ポート46は、流体吸引を導入するため、および/または電子部品の配線するためにアンビリカス(umbilicus)に接続され得る。
【0036】
当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、開示されたステープル留め機構に対して様々な修正および変形を行うことができることが理解できる。例えば、カプラ、アクチュエータ、およびステープラの構成は、任意の医療装置に適合するように変更することができ、本明細書に記載の例に限定されない。本発明の他の実施形態は、明細書および本明細書に開示された発明の実施を考慮すれば、当業者には明らかであろう。明細書および実施例は、例示としてのみ考慮されるべきであり、本発明の範囲および趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示されることが意図されている。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
【国際調査報告】