(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】交替圧マットおよび患者ベッド並びに動作方法
(51)【国際特許分類】
A61G 7/057 20060101AFI20230428BHJP
【FI】
A61G7/057
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022555999
(86)(22)【出願日】2021-03-08
(85)【翻訳文提出日】2022-11-11
(86)【国際出願番号】 DE2021100237
(87)【国際公開番号】W WO2021185409
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】102020107182.5
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522366990
【氏名又は名称】ノクビ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Nocubi AG
【住所又は居所原語表記】Hauptstrasse 15 8274 Taegerwilen Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】スパレク・マルクス
【テーマコード(参考)】
4C040
【Fターム(参考)】
4C040AA01
4C040CC07
4C040DD05
(57)【要約】
本発明は、交替圧マット(1)、そのような交替圧マット(1)を有した患者ベッド(50)並びにそのような交替圧マット(1)を動作させる方法に関する。この場合、複数のサポート部材(2)が設けられている。本発明によればさらに、横方向(Q)において互いに向かい合うように配置され且つ長手方向(L)に延在する二つのガイド(3a,3b)を有するガイド構造が設けられている。これらのガイド(3a,3b)内には、サポート部材(2)が、両側の端部(2a,2b)において移動可能に支持されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサポート部材(2)を有した交替圧マット(1)において、
横方向(Q)において互いに向かい合うように配置され且つ長手方向(L)に延在する少なくとも二つのガイド(3a,3b)を有し、前記ガイド内には、前記サポート部材(2)が、両側の端部(2a,2b)において移動可能に支持されているガイド構造を備えていることを特徴とする交替圧マット。
【請求項2】
前記サポート部材(2)は、それぞれサポートローラ(4)を備え、当該サポートローラは、前記横方向(Q)に平行に向けられた回転軸線の周りに自由に回転できるように支承されていることを特徴とする請求項1に記載の交替圧マット(1)。
【請求項3】
前記サポート部材(2)のそれぞれは、前記ガイド(3a,3b)それぞれにおける移動可能な支持のために、両側の前記端部(2a,2b)にそれぞれコロ(8)を備え、当該コロは、前記横方向(Q)に平行に向けられた回転軸線の周りに自由に回転できるように支承されていることを特徴とする請求項1または2に記載の交替圧マット(1)。
【請求項4】
隣り合ういずれの二つのサポート部材(2)も、それら両方の両側の前記端部(2a,2b)においてそれぞれ連結子(7)によって互いに可動に連結されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の交替圧マット(1)。
【請求項5】
前記サポート部材(2)間の連結に予荷重をかけるように構成された予荷重装置(18)を備えていることを特徴とする請求項3に記載の交替圧マット(1)。
【請求項6】
両方の前記ガイド(3a,3b)のそれぞれが複数のガイド子(10)を備え、それらのうち少なくとも一部は、互いに可動に配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の交替圧マット(1)。
【請求項7】
両方の前記ガイド(3a,3b)のそれぞれの前記ガイド子(10)のうちの少なくとも一部が弾性的に支持されていることを特徴とする請求項6に記載の交替圧マット。
【請求項8】
前記ガイド構造は、複数の弾発部材(11)を備え、これらの弾発部材が、それぞれ前記ガイド子(10)の一つを支え、前記弾発部材(11)は、それぞれ第一の取付け構造(12a)を備え、前記ガイド子(10)のうちの少なくとも一部は、それぞれ第二の取付け構造(12b)を備え、これらを用いて、前記弾発部材(11)は、それぞれ第二の取付け構造(12b)を備える前記ガイド子(10)のうちの前記少なくとも一部に、壊さずに取り外せるように取り付けられていることを特徴とする請求項6または7に記載の交替圧マット(1)。
【請求項9】
前記ガイド構造は、前記サポート部材(2)が周回移動できるように往路部(5a)と復路部(5b)を備えていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の交替圧マット(1)。
【請求項10】
前記サポート部材(2)の上に配置された可撓性のサポート部材カバーであって、可撓性の敷物と、当該可撓性の敷物と前記サポート部材(2)との間に配置される保護シートとにより、複数部分で形成されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の交替圧マット(1)。
【請求項11】
手動でも操作可能とされ且つ前記サポート部材(2)を前記長手方向(L)に移動させるように構成されたモータ駆動装置を備えていることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の交替圧マット(1)。
【請求項12】
前記サポート部材(2)を少なくとも二つの異なる動作モードで移動させるように構成されている制御装置を備えていることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の交替圧マット(1)。
【請求項13】
前記サポート部材(2)をモータで駆動して移動させることができない場合に、アラーム信号を出力させるように構成されている制御装置を備えていることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の交替圧マット(1)。
【請求項14】
フレーム(51)と、当該フレームにより支えられた請求項1から13のいずれか一項に記載の交替圧マット(1)とを有する患者ベッド(50)。
【請求項15】
特に請求項1から14のいずれか一項に記載の交替圧マット(1)を動作させる方法であって、横方向(Q)において互いに向かい合うように配置され且つ長手方向(L)に延在する少なくとも二つのガイド構造のガイド(3a,3b)内で複数のサポート部材(2)を移動させ、前記ガイド内には、前記サポート部材(2)が、両側の端部(2a,2b)において移動可能に支持されている方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交替圧マット、そのような交替圧マットを有する患者ベッド並びにそのような交替圧マットを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
寝たきりの患者を自宅で看護するおよび/または専門的に看護する場合、患者の床ずれ(いわゆる褥瘡)の問題が起きる可能性がある。この場合、皮膚の血行を妨げる長時間の圧迫により、皮膚とその下にある組織とが局所的に損傷を来すことになる。
【0003】
この問題と向き合うために、いわゆる褥瘡マットレス(抗褥瘡マットレスとも呼ばれる)が知られているが、このマットレスは、例えば、患者を載せる面積をより大きくする、或いは圧力分布がより均一な横臥位置にすることで、載せたときの最大圧を減らそうというものである。これに代えて或いはこれに加えて、これらのマットレスは、交替圧システムを備えていることも可能で、このシステムにより、体の部位は、持続的な血行障害を回避するために交互に負荷が加えられたり軽減されたりすることができる。これらの交替圧システムは、通常は複数の空気室を有し、それらに狙い通りに空気を送り込むことができたり、或いはそれらの中の空気圧を調整できたりする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、公知の抗褥瘡システムに代わるものを提供することである。特に、本発明の課題は、褥瘡予防および/または症状の手当てをさらに改善し、特に、それらの効能を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、独立請求項に係る交替圧マットおよびそのような交替圧マットを有する患者ベッド並びにそのような交替圧マットを動作させる方法により解決される。
【0006】
本発明の第一の態様による、特に褥瘡予防のための交替圧マットは、長手方向に沿って並べて配置された複数のサポート部材を備えている。本発明により、交替圧マットはさらに、横方向において互いに向かい合うように配置され且つ長手方向に延在する二つのガイドを有するガイド構造を備えている。これらのガイド内には、サポート部材が、両側の端部(両端部)において移動可能に支持されている。
【0007】
本発明の意味における移動可能な支持とは、特に、サポート部材を長手方向に沿って、つまり長手方向に順方向および/または長手方向と逆方向に移動させることができる、特に並進移動させることができることと理解してよい。
【0008】
本発明の一態様は、サポート部材を有する交替圧マットを設けるというアプローチに基づいており、そのサポート部材は、好ましくも交替圧マットの寝台面を定め、二つのガイドからなるガイド構造により、長手方向に沿って、例えば交替圧マットの上に横たわる患者の下をくぐらせるように移動させることができる。換言すれば、好ましくは横方向に延在するサポート部材が、患者に対して相対的に移動するときに、例えば患者の下を転がって行くか或いは滑って行くことができるように設けることができる。これにより、載せたときの圧力を継続的に或いは少なくとも間欠的に変化させることが可能になる。こうして、床ずれを効果的に抑えることができるか或いは既に褥瘡が生じているのであれば、その症状の悪化を防ぐか少なくとも遅らせることができる。
【0009】
サポート部材はここで、患者を支えるように構成されていることが好ましい。各サポート部材は、好ましい態様において、その互いに向かい合う二つの端部で、長手方向と交差して延びる横方向において互いに向かい合うように配置された両方のガイド内に移動可能に支持されている。これにより、患者の体重をガイドに受け止めさせることができる。ここで、ガイドは、サポート部材が長手方向に移動できるおよび/または長手方向と逆方向に移動できるように長手方向に延在していることが好ましい。
【0010】
サポート部材のこの移動に伴い、載せる箇所が患者の体に沿って略継続的に或いは少なくとも間欠的に変化するので、血行障害を回避できるか或いはそうでなくても少なくとも軽減できるようになるだけでなく、皮膚の血行、特に静脈の働きを促進することができるようになる。特に、血管をさすってのばすことさえできる。この血行促進は、血栓症に対しても効果をもたらすことができる。換言すれば、交替圧マットはまた、血栓症予防とリンパドレナージの改善をもさらに可能にする。
【0011】
基本的に、サポート部材の直径並びに個々のサポート部材の間隔、特に長手方向に沿った間隔は、患者の身長および/または患者の体重に応じて互いに相対的に選択することができる。これらサポート部材の直径並びにこれらサポート部材の間隔は、心地よく体重が支えられるように選ばれるが、同時に、十分に皮膚面の負荷がすっかり軽減されて、それにより血が巡るように選ばれることが好ましい。これらの効果は、例えば、長手方向に長さが2cmから20cm、好ましくは5cmから10cm、特に6cmのサポート部材直径を用いることで得ることができ、サポート部材間隔は、5cmから45cm、好ましくは、10cmから25cm、特に約15cmとすることができる。
【0012】
既に上で示したように、交替圧マットは、“すのこ”として使用されて、その上に褥瘡のおそれがある患者を寝かせることができる。しかしながら、然るべき寸法にした交替圧マットを、例えば、車椅子、肘掛け椅子、カーシート、およびそれらに類するものの少なくともいずれかの上のシートパッド若しくは“シートクッション”として用いることも考えられる。これに代えて或いはこれに加えて、そのような交替圧マットは、例えば長時間続くオペの際に、脚および/または体の他の部位の十分な血行を確保するなどのために脚マットまたは全身用のマットとしても使用することができる。
【0013】
以下に、本発明の好ましい実施形態とその発展形を説明するが、それらは、それぞれ明示的に除外されない限り、互いに自在に組み合わせることができるし、以下に説明する本発明の態様とも組み合わせることができる。
【0014】
好ましい実施形態において、サポート部材は、それぞれサポートローラを備え、当該サポートローラは、横方向に平行に向けられた回転軸線の周りに自由に回転できるように支承されている。サポートローラが自由に回転するとは、ここでは特に、サポートローラが、他の動き、例えば並進的な移動、特に長手方向の移動および/または長手方向と逆方向の移動とは無関係に自由に回転できることと理解してよい。自由に回転できるように支承されたサポートローラは、サポートローラにより支えられた患者の下をくぐらせるようにサポート部材が移動するときに回転できる。換言すれば、サポートローラは、長手方向に移動するときおよび/または長手方向と逆方向に移動するとき、例えば、患者に接しながら或いはサポート部材カバーに接しながら転がることができる。この転がり運動により、患者の体に沿って載置点を略継続的に或いは少なくとも間欠的に変化させることが可能となる。同時に、サポート部材は、転がり運動により僅かな力で患者の下をくぐらせるように動かすことができる。
【0015】
サポートローラの直径はここで、患者の身長および/または患者の体重に応じて選択されていることが好ましい。サポートローラの直径は、例えば、2cmから20cmの間、好ましくは5cmから10cmの間、特に約6cmにあるのでもよい。これにより患者を心地よく支えることができるようになり、そのとき同時に、隣り合う二つのサポートローラ間の広い体表面は、すっかり負荷が軽減され、その結果血を巡らせることができるようになる。
【0016】
或いは、サポート部材は、患者の下を滑らせてくぐらせるように構成されている滑走子をそれぞれ備えていてもよい。滑走子はここで、それぞれ滑り面を備えていることが好ましい。少なくとも、滑り面は、摩擦係数が低い材料を備えることができ、例えばテフロン(登録商標)製にすることができる。サポートローラを用いた変形例に比べて、交替圧マットをかなり簡易且つ丈夫に構成することができる。
【0017】
さらに他の好ましい実施形態において、サポート部材のそれぞれは、ガイドそれぞれにおける移動可能な支持のために、両側の端部にそれぞれコロ(転)を備えている。それぞれのコロはここで、好ましい態様において、特にサポートローラに対して、横方向に平行に向けられた回転軸線の周りに自由に回転できるように支承されている。換言すれば、コロは、それぞれサポートローラと同軸に配置することができるが、サポートローラとは無関係に回転することができる。特に、サポート部材がそれぞれ軸部材を備え、その軸部材が、サポートローラのための座部としておよび/または特に外側に位置するように配置された二つのコロとして形成されていることも考えられる。ガイドとコロはここで、一つのコロがガイドの一つにより支えられ、ガイド内、例えば走行面上で転がることができるように形成されている。これにより、サポート部材が移動する際に生じる摩擦を著しく低減させることができる。特に、ガイド内のサポート部材は、コロを用いることで、少なくとも略摩擦なしに支持することができる。これにより、ガイドに対して若しくはサポートローラにより支えられた患者に対して、サポート部材を相対的に移動させるのに必要なパワー若しくは力を低減することが可能である。
【0018】
或いは、サポート部材は、互いに向かい合うように配置された両方のガイドにおけるすべり支持用に構成されていてもよい。この目的のために、サポート部材は、その両側の二つの端部に滑走部を備えることができる。この滑走部は、好ましくは、摩擦係数の低い材料、例えばテフロン(登録商標)を備えている。コロを用いた上述の変形例に比べて、サポート部材は、より簡単に製造可能となり、丈夫か若しくは故障し難い。
【0019】
ガイド内でサポート部材をとりわけ確実にガイドすることを可能にするために、ガイドは、コロまたは滑走部を少なくとも部分的に中に収めることができる。両方のガイドのそれぞれは、例えばサポート部材がガイドから飛び出すリスクを少なくとも低減するために、特に、長手方向に延在する細長い棒状のガイド子に少なくとも部分的に溝状におよび/または凹部により形成されていてもよい。これにより、動作信頼性をさらに高めることができる。
【0020】
さらに他の好ましい実施形態において、隣り合う、特に並べて配置されたいずれの二つのサポート部材も、それら両方の両端部においてそれぞれ連結子によって互いに可動に連結され、特に動作が連係するように連結されおよび/またはチェーン式に連結されている。換言すれば、隣り合う二つのサポート部材を連結するために、これらサポート部材の互いに向かい合う両方の端部における部分にそれぞれ連結子を設けることができる。連結子により、サポート部材は、特にチェーンのように連結することができ或いはチェーンを形成することができる。これにより、サポート部材間で(駆動)力、例えば、ガイドに沿ってサポート部材を移動させるための力を伝達することができる。
【0021】
連結子はここで、一方のサポートローラまたは滑走子と、他方のコロとの間にそれぞれ配置されていることが好ましい。連結子は、例えば、軸部材上に挿嵌されているか或いは挿嵌されるのでもよい。これにより、例えばガイド内で引っ掛かったり噛んだりすることで連結子がサポート部材の長手方向の移動および/または長手方向と逆方向の移動を妨げるのを回避することができる。
【0022】
さらに他の好ましい実施形態において、隣り合ういずれの二つのサポート部材も、互いに弾性的に連結されている。この目的のために、隣り合うサポート部材は、例えば、バネ連結子により互いに連結されていてもよい。特に、先に述べた連結子は、弾性的に、つまり、例えばバネ連結子として形成されていてもよい。サポート部材を弾性的に連結することで、例えば、頭の部分および/または脚の部分を立ち上げるときか、或いは、弾性的に形成されたガイド又は少なくとも弾性的に支持されたガイドのためにサポート部材が沈み込むときかの少なくともいずれかにおいて、交替圧マットの長さの変化を補償したり或いは少なくともサポート部材の走行路の長さにおける変化を補償したりすることが可能になる。
【0023】
さらに他の好ましい実施形態において、交替圧マットは、サポート部材間の連結に予荷重をかけるか或いは少なくともサポート部材間の予荷重を維持するように構成された予荷重装置を備えている。予荷重装置は、この目的のために、ガイド構造の第一の部分、例えばドライバホイールを、ガイド構造の他の第二の部分に対して相対的に、特に長手方向に移動可能に支持することができる。特に、予荷重装置は、移動可能に支持された第一の部分を、ガイド構造の第二の部分に対して相対的に長手方向に又は長手方向と逆方向に予荷重の加わった状態にする、つまり、ガイド構造の第二の部分から長手方向に又は長手方向と逆方向に押し離すように形成されていてもよい。これにより、例えば、長手方向におけるサポート部材の特に均一な間隔を得ることが可能になる。
【0024】
予荷重装置はここで、予荷重手段を中に収めたシリンダを備えていてもよい。この予荷重手段は、シリンダに対して移動可能に支持された予荷重ロッドをシリンダから押し出すように構成されていることが好ましい。予荷重手段は、例えば、予荷重下にある予荷重部材として、特に圧縮バネとして形成されていてもよく、好ましくはそのバネが、シリンダ内に配置された予荷重ロッドの端部とシリンダ底部との間で予荷重を加えられている。或いは、予荷重手段が加圧下にあるガスであり、このガスが、この例では好ましくはピストン型に形成された予荷重ロッドを押すことも考えられる。
【0025】
予荷重ロッドは、予荷重手段によって生成された予荷重がサポート部材間の連結に伝わるように、特に交替圧マットの頭側の端部または脚側の端部におけるガイド構造の第一の部分若しくはサポート部材(複数)のうちの少なくとも一部に結合されていることが好ましい。
【0026】
さらに他の好ましい実施形態において、両方のガイドのそれぞれが複数のガイド子を備え、それらのうち少なくとも一部は、特に長手方向に沿って、互いに可動に配置されている。一つのガイドの複数のガイド子は、例えば、互いに可動に連結されていてもよく、特に、隣り合う二つのガイド子を横方向に平行なチルト軸線の周りに互いに傾斜させることができるように互いに可動に連結されていてもよい。換言すれば、両方のガイドの少なくとも一部若しくは一区間が変形可能に若しくは変容可能に形成されていてもよく、それにより、互いに向かい合うように配置された両方のガイドによりガイドされるサポート部材が、長手方向に沿ってだけでなく、少なくとも僅かながらそれに垂直な方へも、特に、長手方向に沿って並べて配置されたサポート部材によって定まる交替圧マットの寝台面に対して垂直な方へも向きを変えることができるようになる。これにより、寝心地を向上させることができる。特に、患者の体に均一な圧力負荷がかかるようにすることができ、その結果、褥瘡のリスクをさらに低減することができる。
【0027】
さらに他の好ましい実施形態において、両方のガイドのそれぞれのガイド子(複数)のうちの少なくとも一部は、それぞれ一本の走行軌道によって互いに連結されている。両方の走行軌道のそれぞれは、好ましくは、例えば5mm厚の帯材として形成されており、サポート部材のコロが転がることのできる走行面を備えている。この種の走行軌道は、ガイド構造に一定の形状安定性を授けると同時に、サポート部材が、それらの両端部において、特にコロにおいて、二つのガイド子間の移行部において継ぎ目の無い移動を行なえるようにする。
【0028】
このとき、長手方向におよび/または長手方向と逆方向にサポート部材が移動する際の摩擦をさらに低減するために、走行軌道は、テフロン(登録商標)から形成されているか、或いは、交替圧マットの脚側の端部から交替圧マットの頭側の端部まで延在しているかの少なくともいずれかとすることができる。
【0029】
さらに他の好ましい実施形態において、両方のガイドのそれぞれのガイド子(複数)のうちの少なくとも一部が弾性的に支持されている。例えば、ガイド子(複数)のうちの少なくとも一部は、ガイドによりガイドされたサポート部材が寝台面に対して垂直な方へ向きを変えることができるように支持されていてもよい。これにより、患者にとっての寝心地をさらに向上させることができる。特に、患者の体に均一な圧力負荷がかかるようにすることができる。
【0030】
さらに他の好ましい実施形態において、ガイド構造は、複数の弾発部材を備え、これらの弾発部材が、それぞれガイド子の一つを支える。この目的のために、交替圧マットは、特に、好ましくはフレーム様に形成された硬い支持架台を備え、この支持架台が、ガイド構造の少なくとも一部、特に、両方のガイドのそれぞれのガイド子(複数)のうちの弾性的に支持された一部を担持する。弾発部材はここで、ガイド子(複数)のうちの弾性的に支持された一部と、支持架台との間に配置されていることが好ましい。これにより、互いに向かい合うように配置された両方のガイドの変形可能性若しくは変容可能性を簡単な方法で得ることができる。
【0031】
このとき、支持架台は、ガイド構造の他の部分、特に、復路部の硬く形成されたガイドによって形成されていることが考えられる。換言すれば、弾発部材は、往路部の個々のガイド子を復路部に対して弾性的に支持することができる。
【0032】
さらに他の好ましい実施形態において、弾発部材は、それぞれ第一の取付け構造を備え、ガイド子(複数)のうちの少なくとも一部は、それぞれ第二の取付け構造を備えている。好ましい態様において、第一および第二の取付け構造を用いて、弾発部材は、それぞれ第二の取付け構造を備えるガイド子(複数)のうちの少なくとも一部に、壊さずに、特に工具を用いずに取り外せるように取り付けられている。これにより、弾発部材は、必要があれば、例えば、壊れたとき或いは少なくとも使い古された兆候があるときなどに、交換することができる。患者に合わせて硬さがオーダーメードされた弾発部材を選択し、それを用いてガイド子を弾性的に支持することで、ガイド子と、それに伴いサポート部材とが、寝台面に対して垂直な方へ過度に向きを変えたり或いは不十分にしか向きを変えなかったりするのを回避することも考えられる。
【0033】
第一および第二の取付け構造はここで、弾発部材が形状結合によりガイド子に取り付け可能となるように形成されていることが好ましい。この目的のために、第一および第二の取付け構造は、特に、互いに相補的に形成されていてもよい。第一の取付け構造は、例えば、凹部または湾入部を備えることができ、その中に、第二の取付け構造の凸部または膨出部若しくは突出部が係合することができる。これにより、個々のまたは全ての弾発部材を簡単に交換することができる。
【0034】
さらに他の好ましい実施形態において、ガイド構造は、サポート部材が周回移動できるように往路部と復路部を備えている。換言すれば、こうしてサポート部材の一部が、往路部によって長手方向に、例えば、交替圧マットの頭の部分に向かって移動できる一方、サポート部材の他の一部が、復路部によって長手方向と逆方向に、例えば、交替圧マットの脚側の端部に向かって移動可能とされている。往路部と復路部により、特に、サポート部材の移動方向を途中で変更しなくても、交替圧マットを継続的に動かすことが可能になる。特に、患者を支えるローラ部材は、例えば、脚の血管を胴体に向けてさすってのばす効果が得られるように、長手方向において患者の下をくぐらせるように移動させ続けることができる。これにより、血栓症のリスクを低減できる。
【0035】
さらに他の好ましい実施形態において、交替圧マットは、サポート部材の上に配置され、特に広げてピンと張られる(張設される)可撓性のサポート部材カバーを備えている。好ましくは、サポート部材カバーは、サポートローラ(複数)のうちの少なくとも一部が、長手方向および/または長手方向と逆方向に移動する際に、サポート部材カバーに当たりながら転がることができるように配置されている。サポート部材カバーの少なくとも一部は、この目的のために、例えば、ガイド構造に、特に、個々のガイド子に取り付けられていてもよい。この取り付けは、取り外せないことが好ましい。しかし、この取り付けを、工具を用いずに、例えばスナップを用いて取り外せるように作ることも考えられる。
【0036】
ガイド構造に取り付ける代わりに或いは取り付けることに加えて、交替圧マット、特にガイド構造を収容するように構成されている患者ベッドのフレームまたは支持架台にサポート部材カバーを取り付けるようにすることも考えられる。サポート部材カバーにより、サポートローラによって支えられた患者の寝心地を向上させることができる。さらに、サポート部材カバーを用いると、移動可能なサポート部材へのアクセスが妨げられるか或いは少なくともアクセスが難くされているので、動作上の安全性も高めることができる。
【0037】
好ましくは、サポート部材カバーは、少なくとも区分的に防水性および/または防汚性を有するように形成されている。サポート部材カバーは、例えば、防水シート的なプラスチック層を備えていてもよい。これにより、サポート部材カバーによって定められる寝台面から簡単に汚れを取り除くことができる。こうして、このようなサポート部材カバーにより、衛生的な規準を満たすことも可能になる。
【0038】
さらに他の好ましい実施形態において、サポート部材カバーは、可撓性の敷物と、この可撓性の敷物とサポート部材との間に配置される保護シートとにより、複数部分で形成されている。ここで、保護シートは、好ましくは、サポート部材の上に載り、つまり、保護シートは、サポートローラまたは滑走子に接触しており、この保護シートが防水性および/または防汚性に形成されていてもよい。保護シートは、例えば、液体、物体および/または身体部分がサポート部材若しくはガイド構造の領域に入り込むのを効率的かつ確実に防止することができるように、好ましくは、ガイド構造に、或いは、患者ベッドのフレームに、または支持架台に、取り外せないように或いは工具を用いずに取り外せるように取り付けられている。
【0039】
一方、可撓性の敷物は、患者ベッドのフレームに、または支持架台に、またはガイド構造に、必要があれば保護シートにも、壊さずに、特に工具を用いずに取り外せるように取り付けられていてよい。或いは、敷物は全く取り付けられておらず、固定もされずに単に保護シート上に載っているだけということも考えられる。これにより、敷物は、例えば、衛生上の理由などから、それほど手間をかけずに交換することができる。可撓性の敷物は、例えば、薄いマットレスとして形成することができ、このマットレスが、サポート部材により得られた圧力分布を帳消しにすることなく、一方ではサポートローラまたは滑走子のクッションとなるようにおよび/または他方では湿気を吸収するように形成されている。
【0040】
さらに他の好ましい実施形態において、ガイド構造は、ガイド構造の第一の区間とガイド構造の第二の区間との間に配置されていて第一の区間のガイドを第二の区間のガイドに対して互いに旋回可能に支承するヒンジ部材を備えている。これにより、ガイド構造の第一の区間を第二の区間に対して立ち上げることができる。ヒンジ部材は、例えば、立ち上げることができる頭の部分または脚の部分を区分けすることができる。第一の区間のガイドを第二の区間のガイドに対して旋回することにより、一つには患者の肺の負担を軽減することができる。他には、これにより患者の介護を楽にすることもできる。
【0041】
ここで、ヒンジ部材は、第一の区間のガイドを第二の区間のガイドに対して40°まで旋回できるように構成されていることが好ましい。
【0042】
さらに他の好ましい実施形態において、交替圧マットは、長手方向におよび/または長手方向と逆方向にサポート部材を移動させるように構成されたモータ駆動装置を備えている。モータ駆動装置は、例えば原動機として、特に電気モータとして形成されていてもよい。これにより、サポート部材を自動的に、特に継続的に移動させることが実現できる。
【0043】
さらに他の好ましい実施形態において、交替圧マットは、長手方向におよび/または長手方向と逆方向にサポート部材を移動させるように構成された手動で操作可能な駆動装置を備えている。交替圧マットはここで、特に、モータでも動作可能であり手動でも操作可能な駆動装置を備えていてもよい。駆動装置は、例えば、手動駆動装置、例えばクランクの形態のものを使えるか、そのような装置に結合することができる。これにより、例えば技術的な故障や停電の際といった非常時にも、変化する圧力分布を維持し続けるために、サポート部材の移動を確保することが可能になる。
【0044】
さらに他の好ましい実施形態において、ガイド構造は、特に駆動装置と動作が連係するように連結された、駆動軸上に回転不能に着座した少なくとも二つのドライバホイールを備え、これらドライバホイールが、軸の回転によってサポート部材を区間的に連行するように構成されている。ドライバホイールは、例えば、歯車式に形成されていてもよいしおよび/または凹部若しくは歯を備えて、そこにサポート部材、特にサポートローラ若しくは滑走子および/またはコロが係合できるのでもよい。ドライバホイールが回転する際に、凹部若しくは歯に配置されたサポート部材をこれにより連行することができる。この動きは、好ましくは、隣り合うサポート部材間の弾性的な連結若しくは連結子を介して、並進運動として全てのサポート部材に伝達可能である。従って、そのようなドライバホイールを用いることで、サポート部材の移動を容易に達成することができる。
【0045】
そのようなドライバホイール若しくは駆動軸はここで、好ましい態様では、交替圧マットの頭側の端部および/または脚側の端部に配置されている。ドライバホイールは、特に、ガイド構造の往路部と復路部の間に配置され、往路部のガイドから復路部のガイドにサポート部材を移行させるように構成することができる。これにより、サポート部材の確実な周回が可能になる。
【0046】
さらに他の好ましい実施形態において、交替圧マットは、例えば、モータによる駆動装置を適切に制御することにより、サポート部材を少なくとも二つの異なる動作モードで移動させるように構成されている制御装置を備えている。一つの動作モードでは、サポート部材は、例えば、周回するように移動させることができる一方、サポート部材は、第二の動作モードでは、往ったり来たりさせることができる。これに代えて或いはこれに加えて、サポート部材は、一つの動作モードでは、継続的に移動させることができる一方、サポート部材は、他の動作モードでは、間欠的に移動させることができる。これにより、交替圧マットは、例えば、褥瘡のひどさが異なる患者に対して或いは不自由さの度合が異なる患者に対して柔軟に使用することができる。加えて、これにより交替圧マットの動作の効率を高めることも可能になる。というのも、例えば、褥瘡のなりやすさがそれほど顕著でもない患者では、エネルギーを節約できるからである。
【0047】
これに代えて或いはこれに加えて、制御装置は、制御装置にリンクされた外部の端末装置から制御命令を受信するように構成されていてもよい。例えば、スマートフォンまたはタブレットで実行できるように作られ、交替圧マットの制御、特に、モータによる駆動装置の制御を可能にするように設けられているアプリケーション、つまりソフトウェアモジュールが考えられる。
【0048】
制御装置および/またはこのアプリケーションは、交替圧マットの動作、特に、動作モード若しくはその流れを文書化するようにも構成されていてよい。これにより、褥瘡予防のための対策に関する概要をいつでも取得することができる。
【0049】
さらに他の好ましい実施形態において、交替圧マットは、サポート部材をモータで駆動して移動させることができない場合に、特に供給電源に依らないでアラーム信号を出力させるように構成されている制御装置を備えている。ここで、供給電源に依らないでというのは、特に、電源網を通じたエネルギー供給が不十分な場合でも、制御装置がその機能を維持するのに適していることと理解してよい。この目的のために、交替圧マット、特に制御装置は、例えば電池形態のエネルギー貯蔵部を備えている。これにより、必要があれば、例えば、停電または故障の場合に、手動で操作可能な駆動装置を用いる等して動作を維持する用意ができるので、動作上の信頼性をさらに高めることができる。
【0050】
特に褥瘡予防のための本発明の第二の態様による患者ベッドは、フレームと、このフレームにより支えられた本発明の第一の態様による交替圧マットを備えている。
【0051】
交替圧マットはここで、壊さずに、特に工具を用いずにフレームに取り外し可能に連結するように構成されている。例えば、交替圧マットは、ラッチ機構若しくはクリップ機構を備え、それを用いて、交替圧マットをフレームに取付け可能若しくはフレームにマウント可能とされ、特にスナップ嵌め若しくはクリップ留めすることができる。これにより、交替圧マットは、必要があれば従来の患者ベッドにも使用することができる。特に、従来の患者ベッドに、褥瘡予防のための交替圧マットを装備若しくは後付けすることができる。同時に、交替圧マットは、必要があれば、再び素早く取り除くこともできる。
【0052】
特に褥瘡予防のための本発明の第三の態様による交替圧マットを動作させる方法の場合、横方向において互いに向かい合うように配置され且つ長手方向に延在する少なくとも二つのガイド構造のガイド内で、特に長手方向に沿って並べて配置された複数のサポート部材を移動させ、ガイド内には、サポート部材が、両側の端部において、特に長手方向および/または長手方向と逆方向に移動可能に支持されている。
【0053】
サポート部材はここで、モータによる駆動装置を用いておよび/または手動で、例えば手動で操作可能な駆動装置を用いて、移動させることができる。移動の制御は、モータ駆動装置を然るべく制御できる制御装置によって行われることが好ましい。特に、例えばサポート部材の周回運動、サポート部材の往復動、サポート部材の継続的な移動および/またはサポート部材の間欠的な移動など、様々な動作モードが考えられる。
【0054】
本発明の好ましい実施形態のこれまでの説明は、多くの特徴を含み、それらは、個々の従属請求項に部分的にいくつかにまとめて示されている。しかしながら、これらの特徴は、個別に捉えることもできるし、さらに他の意味のある組み合わせにまとめることもできる。特に、これらの特徴は、それぞれ個別に且つ適切な任意の組み合わせで、本発明の第一の態様による交替圧マット、本発明の第二の態様による患者ベッド並びに本発明の第三の態様による方法との組み合わせが可能である。
【0055】
上述の本発明の特性、特徴および長所並びにこれらがいかにして得られるかの態様を図と関連させながら本発明の実施例の以下の記載において詳細に説明する。図において、本発明の同一または対応する要素には一貫して同一の符号を用いる。分かり易くするために、構成要素がいくつも存在する場合は、一つだけ符号を付している。実施例は、本発明の説明に役立つが、そこに記載された特徴部の組み合わせに本発明を限定するものではないし、機能的な特徴に関しても限定するものではない。加えて、実施例の適切な特徴は、明らかに単独で捉えることができるし、いずれの請求項の一つとも組み合わせることができる。
【0056】
少なくとも部分的に概略して以下に図示する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図2】交替圧マットの脚の部分の領域における
図1の一部を復路部無しで示す図である。
【
図3】交替圧マットの頭の部分の領域における
図1の一部を示す図である。
【
図4】ガイド構造の一部の例を断面で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、長手方向Lに沿って並べて配置された複数のサポート部材2を有した褥瘡予防のための交替圧マット1の一例を示す。交替圧マット1は、互いに向かい合うように配置された二つのガイド3a,3bを有するガイド構造を備え、サポート部材2は、その互いに向かい合う両方の端部2a,2bにおいて両方のガイド3a,3b内に移動可能に支持されている。換言すれば、ガイド3a,3bとサポート部材2は、サポート部材2がガイド3a,3bによって長手方向Lにまたは長手方向Lと逆方向に移動することができるように形成されている。
【0059】
図示された例では、サポート部材2のそれぞれがサポートローラ4を備え、そのサポートローラが、長手方向Lと交差する方向に向けられた、つまり横方向Qに平行に延在する回転軸線の周りに自由に回転できるように支承されている。サポートローラ4の回転軸線は、例えば、
図1では見えない軸部材の長手方向軸線により定められていてもよく、その軸部材の上にサポートローラ4を例えば挿嵌するか若しくは被嵌することができる。
【0060】
しかしながら、サポートローラ4の代わりに、患者の下側を滑らせてくぐらせるように形成された滑走子(図示せず)を設けることも考えられる。そのような滑走子は、すべり易くするため若しくは滑り摩擦を少なくとも低減するために、例えば、滑り面を備えることができるかおよび/または楕円形の断面を有することができる。
【0061】
交替圧マット1は、
図1に示されているように一種のすのこを形成し、その上に褥瘡になりやすい患者、例えば、少なくとも一部が麻痺している患者若しくはその他の動けない患者を横たわらせることができる。サポート部材2を移動可能に支持しているので、この格子の“細板”は、場所が不動に或いは静的に配置されているのではなく、場所的に可変に或いは動的に配置されている。このサポート部材2の可動性により、横たえられた患者に場所が変化する圧力負荷がかかるようにでき、それにより、(持続的な)局所的血行障害と、その結果として壊死にまで至る局所的な組織の損傷が効率的且つ確実に阻止され得る。
【0062】
このような交替圧マットは、
図1に示されているもの以外に、他にも例えば、座布団またはレッグレストとして使用することもできる。
【0063】
図1に示される実施例では、サポート部材2のサポートローラ4は、患者を支えるように構成され、サポート部材2もまた、例えば、各サポート部材2の両方の端部2a,2bをガイド3a,3b内に着座させることによってガイド構造に担持される。サポート部材2が長手方向Lに移動するときには、サポートローラ4は、その自由な回転支持により、患者の下側を転がることができる。換言すれば、サポートローラ4により、サポート部材2は、サポートローラ4により支えられた患者に対して移動することができるようになる。このとき、患者は、交替圧マット1若しくはガイド構造に対して決まった位置に留まり続けることが必要である。
【0064】
この目的のために、可撓性のサポート部材カバー(図示せず)が設けられていてもよく、これにより、交替圧マット1の動作上の安全性および/または患者の快適さを同時に高めることができる。サポート部材カバーはここで、好ましくは、サポートローラ4の上に張設され、例えば、ガイド3a,3bに取り付けられていることで、サポートローラ4が、サポートローラ4に接する側、つまりサポート部材カバー下側を転がることができるようになっている。このようにして位置が動かないように固定されるサポート部材カバーは、こうして、サポート部材2の間隙に物体や体の一部が入り込むこと以外に、サポートローラ2により支えられてサポート部材カバー上に横たわった患者がサポート部材2の移動時に一緒に動くのを防ぐことができる。
【0065】
図1に示される例では、ガイド構造は、往路部5aと復路部5bを備え、往路部5aと復路部5bは、上下に、つまり積み重ねて配置されていることで、交替圧マット1のすのこ状の構成が得られる。しかし、基本的には、往路部、復路部5a,5bの互いに対する他の配置も考えられる。
【0066】
往路部5aも復路部5bもいずれも、それぞれ互いに向かい合うように配置された二つのガイド3a,3bを備えている。往路部および復路部5a,5bを用いることで、サポート部材2は、周回しながら移動できる、つまり、閉じた軌道上を移動できる。例えば、サポート部材2は、往路部5aによって、長手方向Lに、例えば、交替圧マット1の脚の部分6bから交替圧マット1の頭の部分6aまで移動することができる一方、サポート部材2は、復路部5bによって、長手方向Lと逆方向に、頭の部分6aから脚の部分6bに戻るように搬送することができる。これにより、例えば血栓症のリスクを軽減するために、例えば、患者の脚の血管を胴体に向けてさすってのばし続けることが実現できる。
【0067】
ガイド3a,3bはここで、弾性的若しくは段発的に支持されている複数のガイド子10を備えていることが好ましい。この目的のために、ガイド構造は、ガイド子10のうちの少なくとも一部を支える複数の弾発部材11も備えている。この場合、例えば、
図1に示されているように、それぞれ弾発部材11がガイド子10の一つを弾性的に支持することができる。ガイド子10を弾性的に支持することにより、隣り合わせに配置されたガイド子10は、少なくともわずかながら互いに対しても動けるように支持されている。
【0068】
弾発部材11を用いることで、ガイド子10のうちの少なくとも一部、特に往路部5a若しくは往路部5aのガイド子10が、ガイド子10のうちの他の一部、特に復路部5b若しくは復路部5bのガイド子10に対して動けるように支持することもできる。ここで、弾発部材11は、特に、往路部5aを、好ましくは硬く形成されて支持架台をなす復路部5bに弾性的に連結若しくは結合することができる。往路部5aと復路部5bの間の結合により、交替圧マット1上で患者を心地よく支持することができるようになる。
【0069】
図2は、交替圧マットの脚の部分の領域における
図1の一部を復路部無しで示している。これにより、特に、互いに向かい合う端部に配置されている連結子7によるサポート部材2のチェーン状の連結が見て取れる(
図2では、両側にある二つの端部の一つの端部2aだけがそれぞれ見えている。)。これにより、ガイド3a内を移動することができるサポート部材2の鎖が形成される。
【0070】
ここで、連結子7のそれぞれは、サポートローラ4とコロ8の間に配置されている。連結子7および/またはコロ8は、必要があればサポートローラ4もまた、それぞれ、例えば、締まり嵌めによって、一つの軸部材9上に挿嵌されているか若しくは被嵌されているのでもよい。
【0071】
コロ8を用いることで、サポート部材2は、好ましい態様でガイド3a内に移動可能に支持されている。
サポート部材2を特に確実にガイドできるようにするために、ガイド3aは、コロ8を収容するための溝状の凹部若しくはノッチを備えていてもよい。
【0072】
代替的な実施形態では、サポート部材2は、コロ8の代わりに、ガイド内を滑るように構成された滑走部(図示せず)を備えている。
【0073】
連結子7により、サポート部材2は、互いに対して動けるように配置されている。これにより、例えば、(図示しない)復路部により長手方向Lと逆方向に移動させられたサポート部材2が、交替圧マットの脚の部分6bのところで往路部5aへと向きを変えることが可能である。
【0074】
図2において明らかに見て取れるように、ガイド子10のうちの少なくとも一部は、それぞれ、第一の取付け構造12aを備えるとともに、弾発部材11のうちの少なくとも一部は、第二の取付け構造12bを備え、これらを用いることで、弾発部材11がガイド子10に、特に、壊さずにおよび/または工具を用いずに取り外せるように取り付け可能とされている。第一の取付け構造12aは、この目的のために、それぞれ少なくとも一つの凹部若しくは湾入部13aを備え、その中に、対応する、特に相補的な、第二の取付け構造12bの突出部若しくは膨出部13bが係合することができる。
【0075】
図3は、交替圧マットの頭の部分6aの領域における
図1の一部を示す図である。頭の部分6aは、立ち上げ可能に形成されている。この目的のために、ガイド構造は、例えば各ガイド3aにそれぞれ少なくとも一つ、ヒンジ部材14を備えている。ヒンジ部材14のそれぞれはここで、好ましくは、隣り合う二つのガイド子10の間に配置され、隣り合う二つのガイド子10を互いに対して傾斜させることができるように構成されている。そのようなヒンジ部材14を用いることで、頭の部分6aは、例えば40°まで立ち上げることができる。
【0076】
図4は、ガイド構造の一部の例を断面で示している。ガイド構造は、往路部5aと復路部5bとを備え、往路部5aおよび復路部5bの両方がそれぞれガイド3aを有し、これらを用いることで、交替圧マットのサポート部材(
図1乃至3参照)が移動時にガイド可能とされている。往路部5aはここで、弾発部材11を用いて復路部5bに連結されている。これにより、往路部5aのガイド3aが弾性的に支持されているとともに、それに伴ってガイドによりガイドされるサポート部材も弾性的に支持されている。
【0077】
ガイド3aは、サポート部材の一つの端部、特にコロをそれぞれ少なくとも部分的に収容して移動可能に支持するように構成されている。ガイドは、この目的のために凹部15若しくはノッチを備え、その中にサポート部材の端部、特にコロを係合させることができる。
【0078】
図示した例では、往路部5aのガイド3aの凹部15内に、走行面16が設けられており、その上を例えばサポート部材のコロが転がることができる。走行面16はここで、ガイド3aの複数のガイド子(
図1乃至3参照)を連結することができる帯状の走行軌道17により形成される。走行軌道17を形成するバンドはここで、好ましくは、走行面16が凹部15の側方の面と面一になるようにガイド3aに挿入されている。サポート部材が移動する際のすべり摩擦若しくは転がり摩擦を低減するために、走行軌道17は、例えばテフロン(登録商標)のような低摩擦材料から製造されていてもよい。
【0079】
図示されたガイド構造は、患者ベッドとともに、特に患者ベッドのフレームとともに用いられるように構成されていることが好ましい。この目的のために、復路部5bは、ラッチ機構若しくはクリップ機構24を備え、これを用いることで、ガイド構造と、それに伴いさらに交替圧マットとが患者ベッド若しくはそのフレームに取付け可能若しくはマウント可能とされている。交替圧マットは、こうして、例えば、一つ若しくは複数のピン24aの逆鉤24bを解放するようにクリップ機構24のピン24aを押し下げるか或いは曲げることで、壊さずにおよび/または工具を用いずに患者ベッド若しくはそのフレームから再び取り外すことができる。
【0080】
図5は、交替圧マットのサポート部材2間の連結子7を用いた(特に、弾性的な)連結に予荷重をかけるための予荷重装置18の一例を示す。予荷重装置18は、ドライバ軸20上に着座して回転時に少なくとも区間的にサポート部材2を連行するように構成されたドライバホイール19と、シリンダ22内で移動可能に支持されている予荷重ロッド21とを備えている。予荷重ロッド21は、シリンダ22とは反対側の予荷重ロッド21の端部においてドライバ軸20に連結されている。
【0081】
ドライバ軸20は、例えば、予荷重ロッド21上またはその中に、例えば眼若しくはアイレットの中に回転可能に支承されていてもよい。この場合、ドライバホイール19は、ドライバ軸20上に回転不能に着座している。ここで、ドライバ軸20が駆動装置(図示せず)と動作が連係するように連結され、その結果、ドライバホイール19が例えばモータによって駆動可能となり且つそれによりサポート部材2が移動可能となることも考えられる。ドライバ軸20はここで、駆動軸と呼ぶこともできる。
【0082】
或いは、ドライバ軸20は、予荷重ロッド21に回転不能に取り付けられていてもよい。この場合、ドライバホイール19は、ドライバ軸20に接して若しくはその上に回転可能に支承されている。
【0083】
ガイド構造のガイド(
図1乃至3参照)に対して、特に交替圧マットの支持架台に対して位置が動かないように配置されているシリンダ22内には、予荷重下にある予荷重手段23が設けられ、これがシリンダ22内にある予荷重ロッド21の端部に向かって押圧力を加えている。図示された例では、予荷重手段23は、弾発部材として、特に圧縮バネとして形成されている。しかしながら、予荷重手段23は、加圧下にあるガスとされていてもよい。
【0084】
ドライバホイール19は、好ましい態様において、ガイド構造の第一の部分を形成し、この第一の部分が、ガイド構造の第二の部分に対して予荷重装置18により移動可能に支持されている。ガイド構造の第二の部分はここで、例えば、ガイド構造のガイドによって形成されていてもよい。
【0085】
図6は、フレーム51と交替圧マット1とを備えた患者ベッド50の一例を示している。交替圧マット1とフレーム51は、交替圧マット1、特に、互いに向かい合うように配置された二つのガイド3a,3bを有するガイド構造が、フレーム51によって少なくとも部分的に収容されているように形成されている。交替圧マット1はここで、ラッチ機構若しくはクリップ機構を備え、これらの機構を用いることで、交替圧マット1は、フレーム51に、壊さずにおよび/または工具を用いずに取り外せるように取り付けることができる(
図4参照)。
【符号の説明】
【0086】
1 交替圧マット
2 サポート部材
2a,2b 端部
3a,3b ガイド
4 サポートローラ
5a,5b 往路部,復路部
6a,6b 頭の部分,脚の部分
7 連結子
8 コロ
9 軸部材
10 ガイド子
11 弾発部材
12a,12b 第一,第二取付け構造
13a 湾入部
13b 膨出部
14 ヒンジ部材
15 凹部
16 走行面
17 走行軌道
18 予荷重装置
19 ドライバホイール
20 ドライバ軸
21 予荷重ロッド
22 シリンダ
23 予荷重手段
24 クリップ機構
24a ピン
24b 逆鉤
50 患者ベッド
51 フレーム
L 長手方向
Q 横方向
【国際調査報告】