(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】ミスフォールドSOD1アッセイ
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20230428BHJP
G01N 33/536 20060101ALI20230428BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
G01N33/53 D
G01N33/536 C
G01N33/536 D
G01N33/543 541A
G01N33/536 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556007
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(85)【翻訳文提出日】2022-09-15
(86)【国際出願番号】 EP2021056933
(87)【国際公開番号】W WO2021185961
(87)【国際公開日】2021-09-23
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522367090
【氏名又は名称】アーエルエス ファルマ アクチェン ゲゼルシャフト
(71)【出願人】
【識別番号】521195467
【氏名又は名称】ニューリミューン エイジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー マルセル
(72)【発明者】
【氏名】ザルツマン ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】グリム ヤン
(57)【要約】
対象の体液、特に脳脊髄液中のミスフォールドSOD1をアッセイするための新規な高感度方法が提供される。この方法は、SOD1の独特なエピトープ及び対応する抗SOD1抗体を利用する新規な高感度イムノアッセイに基づく。加えて、イムノアッセイの構成要素を含むキットが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の体液を含むサンプル中のミスフォールドSOD1をアッセイする方法であって、前記体液を、捕捉抗体としての、配列番号11に示されるアミノ酸配列73-GGPKDEERHVGD-84内のSOD1のエピトープに結合する第1の抗SOD1抗体及び検出抗体としての、ヒトSOD1
aa 50-150のエピトープに結合する第2の抗SOD1抗体と接触させることを含む方法。
【請求項2】
前記体液は、脳脊髄液(CSF)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ミスフォールドSOD1の存在は、前記対象における筋萎縮性側索硬化症(ALS)を示す、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
対象におけるALSを診断する方法であって、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法の工程を含み、対照と比較した前記サンプル中のミスフォールドSOD1の存在又は増加したレベルは、前記対象におけるALSを示す、方法。
【請求項5】
ALSは、家族性ALS(fALS)である、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
ALSは、孤発性ALS(sALS)である、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の抗体は、モノクローナル抗体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の抗体は、モノクローナル抗体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の抗体は、その可変領域、すなわち結合ドメインにおいて、
(i)可変重鎖(V
H)及び可変軽鎖(V
L)の6つのCDRであって、
(a)VH-CDR1は、配列番号3のアミノ酸配列又はその改変体を含み、前記改変体は、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、
(b)VH-CDR2は、配列番号4のアミノ酸配列又はその改変体を含み、前記改変体は、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、
(c)VH-CDR3は、配列番号5のアミノ酸配列又はその改変体を含み、前記改変体は、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、
(d)VL-CDR1は、配列番号8のアミノ酸配列又はその改変体を含み、前記改変体は、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、
(e)VL-CDR2は、配列番号9のアミノ酸配列又はその改変体を含み、前記改変体は、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、及び
(f)VL-CDR3は、配列番号10のアミノ酸配列又はその改変体を含み、前記改変体は、1つ又は2つのアミノ酸置換を含む、6つのCDR;並びに/又は
(ii)VH鎖及びVL鎖であって、
(a)前記VH鎖は、配列番号1又は2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、及び
(b)前記VL鎖は、配列番号6又は7に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、VH鎖及びVL鎖
を含むことによって特徴付けられる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の抗体は、配列番号14に示されるアミノ酸配列121-HEKADDLGKGGNEES-135内のSOD1のエピトープに結合し、且つその可変領域、すなわち結合ドメインにおいて、
(i)V
H及びV
L鎖の6つのCDRであって、
(a)VH-CDR1は、配列番号16のアミノ酸配列又はその改変体を含み、前記改変体は、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、
(b)VH-CDR2は、配列番号17のアミノ酸配列又はその改変体を含み、前記改変体は、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、
(c)VH-CDR3は、配列番号18のアミノ酸配列又はその改変体を含み、前記改変体は、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、
(d)VL-CDR1は、配列番号20のアミノ酸配列又はその改変体を含み、前記改変体は、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、
(e)VL-CDR2は、配列番号21のアミノ酸配列又はその改変体を含み、前記改変体は、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、及び
(f)VL-CDR3は、配列番号22のアミノ酸配列又はその改変体を含み、前記改変体は、1つ又は2つのアミノ酸置換を含む、6つのCDR;並びに/又は
(ii)VH鎖及びVL鎖であって、
(a)前記VH鎖は、配列番号15に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み;及び
(b)前記VL鎖は、配列番号19に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、VH鎖及びVL鎖
を含むことによって特徴付けられる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の抗SOD1抗体は、検出可能な標識にコンジュゲートされる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記検出可能な標識は、酵素、放射性同位体、蛍光化合物、化学発光化合物、生物発光化合物、タグ、フラグ、リガンド及び重金属からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の抗SOD1抗体は、リガンドにコンジュゲートされ、前記方法は、リガンド結合タグによる標識工程を含み、前記方法は、以下の工程:
(i)ウェルに前記第1の抗SOD1抗体がスポットされているマイクロプレートを提供する工程;及び
(ii)前記体液を含む前記サンプルを前記ウェルに添加し、続いてインキュベートし、それにより、前記第1の抗SOD1抗体による、前記体液中に存在するミスフォールドSOD1の捕捉を可能にする工程であって、好ましくは、インキュベーションは、600rpmに設定されたプレートシェーカー上で室温において2時間にわたって行われる、工程;及び
(iii)リガンドにコンジュゲートされている前記第2の抗SOD1抗体を添加し、且つインキュベートし、それにより、前記捕捉されたミスフォールドSOD1への前記第2の抗SOD1抗体の結合を可能にする工程であって、好ましくは、インキュベーションは、600rpmに設定されたプレートシェーカー上で室温において30分間にわたって行われる、工程;及び
(iv)リガンド結合タグ及び検出可能な標識を含むコンジュゲートを添加し、且つインキュベートする工程であって、好ましくは、インキュベーションは、600rpmに設定されたプレートシェーカー上で室温において30分間にわたって行われる、工程;及び
(v)発色又は化学発光基質溶液を添加する工程;及び
(vi)シグナルを画像化する工程;任意選択的に、
(vii)ミスフォールドSOD1のアッセイされたレベルを参照標準及び/又は対照と比較する工程であって、好ましくは、前記参照標準及び/又は前記対照は、前記サンプルと同じマイクロプレートに添加される、工程
を含み、任意選択的に、前記方法は、シングルプレックスイムノアッセイである、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
(i)前記マイクロプレートは、96ウェルプレートであり、
(ii)前記体液は、脳脊髄液(CSF)であり;
(iii)前記リガンドは、ビオチン又はビオチン類似体若しくはその誘導体であり;
(iv)前記リガンド結合タグは、ストレプトアビジン又はその機能的類似体若しくは誘導体であり、前記検出可能な標識は、発色又は化学発光基質の変換を触媒することができる酵素であり、好ましくは、前記酵素は、西洋ワサビペルオキシダーゼであり;
(v)前記基質は、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)又はルミノール基質であり;
(vi)画像化は、Cirascan(商標)画像化システムによって行われ;
(vii)洗浄工程は、少なくとも工程(ii)、(iii)及び/又は(iv)後に行われ;及び/又は
(viii)前記マイクロプレートは、蓋、好ましくはインキュベーション工程中に流体で満たされた流体吸収マトリックスを有する蓋で覆われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
≦20.32pg/mLのミスフォールドSOD1の定量下限(LLOQ)を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
単一分子アレイ(Simoa(商標))を利用し、
好ましくは、
(i)捕捉ビーズの表面に前記第1の抗SOD1抗体を付着させる工程;及び
(ii)(a)前記体液を含む前記サンプルを添加し、且つ前記サンプルと共に前記ビーズをインキュベートし、それにより、前記第1の抗SOD1抗体によって媒介される前記ビーズによる、前記体液中に存在するミスフォールドSOD1の捕捉を可能にする工程;及び
(ii)(b)リガンドにコンジュゲートされている前記第2の抗SOD1抗体を添加し、且つインキュベートし、それにより、前記ビーズ上の前記捕捉されたミスフォールドSOD1への前記第2の抗SOD1抗体の結合を可能にする工程;及び
(ii)(c)リガンド結合タグ及び検出可能な標識を含むコンジュゲートを添加し、且つインキュベートする工程;又は
(II)(A)前記体液を含む前記サンプルを添加し、リガンドにコンジュゲートされている前記第2の抗SOD1抗体を添加し、且つ前記サンプル及び前記第2の抗体と共に前記ビーズをインキュベートし、それにより、前記第1の抗SOD1抗体によって媒介される前記ビーズによる、前記体液中に存在するミスフォールドSOD1の捕捉と、前記ビーズ上の前記捕捉されたミスフォールドSOD1への前記第2の抗SOD1抗体の結合とを可能にする工程;及び
(II)(B)前記リガンド結合タグ及び検出可能な標識を含むコンジュゲートを添加し、且つインキュベートする工程;及び
(iii)発色/蛍光基質溶液中に前記ビーズを再懸濁させる工程;及び
(iv)1ウェル当たり1つ以下のビーズを保持するように構成されたフェムトリットルサイズのウェルのアレイに工程(iii)の前記ビーズを装填する工程;及び
(v)前記フェムトリットルサイズのウェル内に前記個々のビーズを密封する工程;及び
(vi)シグナルを画像化する工程;任意選択的に、
(vii)ミスフォールドSOD1のアッセイされたレベルを参照標準及び/又は対照と比較する工程
を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
(i)前記ビーズは、常磁性ビーズであり、且つ/又は約2.7μMの直径を有し;
(ii)(a)前記体液は、CSFであり、及び/又はインキュベーション時間は、30分であり;
(ii)(b)前記リガンドは、ビオチン又はビオチン類似体若しくはその誘導体であり、及び/又はインキュベーション時間は、5分であり;
(ii)(c)前記リガンド結合タグは、ストレプトアビジン又はその機能的類似体若しくは誘導体であり、前記検出可能な標識は、発色/蛍光基質を変換することができる酵素であり、好ましくは、前記酵素は、β-ガラクトシダーゼであり、及び/又はインキュベーション時間は、5分であり;
(II)(A)前記体液は、CSFであり、前記リガンドは、ビオチン又はビオチン類似体若しくはその誘導体であり、及び/又はインキュベーション時間は、35分であり;
(ii)(B)前記リガンド結合タグは、ストレプトアビジン又はその機能的類似体若しくは誘導体であり、前記検出可能な標識は、発色/蛍光基質を変換することができる酵素であり、好ましくは、前記酵素は、β-ガラクトシダーゼであり、及び/又はインキュベーション時間は、5分であり;
(iii)前記蛍光基質は、レゾルフィンβ-D-ガラクトピラノシド(RGP)であり;
(v)前記密封は、油で行われ;
(vi)前記画像化は、Simoa(商標)光学システムによって行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ミスフォールドSOD1をアッセイするための、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法における、補足抗体としての、配列番号11に示されるアミノ酸配列73-GGPKDEERHVGD-84内のSOD1のエピトープに結合する抗SOD1抗体及び/又は検出抗体としての、ヒトSOD1
aa 50-150のエピトープに結合する抗SOD1抗体の使用。
【請求項19】
前記捕捉抗体は、請求項9に記載の通りに特徴付けられ、及び/又は前記検出抗体は、請求項10に記載の通りに特徴付けられる、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
請求項1~17のいずれか一項に記載の方法に従い、ALSに罹患しているか又はALSを発症する危険性があると診断されている患者の症状の治療又は改善における使用のための治療剤であって、好ましくは、前記患者は、sALSに罹患しているか又はsALSを発症する危険性があると診断されており、好ましくは、前記患者は、対照と比較した場合、検出可能な量のミスフォールドSOD1及び/又は増加したレベルのミスフォールドSOD1を有するとアッセイされている、治療剤。
【請求項21】
対象の体液を含むサンプル中のミスフォールドSOD1をアッセイするために、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法を実施するように適合されたキットであって、少なくとも、
(i)配列番号11に示されるアミノ酸配列73-GGPKDEERHVGD-84内のSOD1のエピトープに結合する第1のモノクローナル抗SOD1抗体;及び
(ii)検出抗体としての、ヒトSOD1
aa 50-150のエピトープに結合する第2のモノクローナル抗SOD1抗体を含む検出試薬であって、前記第2の抗SOD抗体は、検出可能な標識にコンジュゲートされ、好ましくは、前記検出可能な標識は、酵素、放射性同位体、蛍光化合物、化学発光化合物、生物発光化合物、タグ、フラグ、リガンド及び重金属からなる群から選択される、検出試薬;並びに任意選択的に、
(iii)検出可能標識結合タグ及び検出可能な標識を含むコンジュゲートであって、好ましくは、前記検出可能標識結合タグは、リガンド結合タグであり、前記検出可能な標識は、発色、化学発光又は蛍光基質の変換を触媒することができる酵素である、コンジュゲート;
(iv)発色、化学発光又は蛍光基質溶液;
(v)ミスフォールドSOD1の較正されたイムノアッセイ標準又は対照;
(vi)マイクロプレート、緩衝液、希釈剤、基質及び/又は溶液の推奨並びに請求項1~17のいずれか一項に記載のアッセイを実施する方法の説明書;及び/又は
(vii)洗浄及びアッセイ/サンプル希釈緩衝液
を含むキット。
【請求項22】
(i)前記第1の抗体は、マイクロプレート、好ましくは蓋を含む96ウェルマイクロプレートのウェルに予めスポットされ、好ましくは、前記第1の抗体は、請求項9に記載の通りに特徴付けられ;
(ii)前記検出可能な標識は、リガンド、好ましくはビオチン又はビオチン類似体若しくはその誘導体であり;
(iii)前記リガンド結合タグは、ストレプトアビジン又はその機能的類似体若しくは誘導体であり、及び前記検出可能な標識は、発色又は化学発光基質の変換を触媒することができる酵素であり、好ましくは、前記検出可能な標識は、西洋ワサビペルオキシダーゼであり;
(v)前記基質溶液は、発色又は化学発光基質溶液であり、好ましくは、前記基質は、TMB又はルミノール基質であり;及び/又は
(vi)前記標準は、200ng/mL~3pg/mLのミスフォールドSOD1の段階希釈を含む、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
(i)捕捉抗体としての、請求項9に記載の通りに特徴付けられる第1のモノクローナル抗SOD1抗体がウェルに予めスポットされているマイクロプレート、好ましくは蓋を含む96ウェルマイクロプレート;
(ii)検出抗体としての第2のビオチン化抗SOD1抗体;
(iii)ストレプトアビジン-HRP試薬;
(v)TMB又はルミノールを含む基質溶液;
(vi)ミスフォールドSOD1の較正されたイムノアッセイ標準又は対照;及び
(vii)洗浄及びアッセイ/サンプル希釈緩衝液
を含む、請求項21又は22に記載のキット。
【請求項24】
(i)前記第1のモノクローナル抗SOD1抗体は、捕捉試薬に含まれ、好ましくは、前記第1の抗体は、請求項9に記載の通りに特徴付けられ;
(ii)前記検出可能な標識は、リガンド、好ましくはビオチン又はビオチン類似体若しくはその誘導体であり;
(iii)前記リガンド結合タグは、ストレプトアビジン又はその機能的類似体若しくは誘導体であり、及び前記検出可能な標識は、発色/蛍光基質を変換することができる酵素であり、好ましくは、前記検出可能な標識は、β-ガラクトシダーゼであり;
(iv)前記基質溶液は、発色又は蛍光基質溶液であり、好ましくは、前記基質は、レゾルフィンβ-D-ガラクトピラノシド(RGP)であり;及び/又は
(v)前記標準は、約1000ng/mLから8点検量線への4倍段階希釈による0.244ng/mLまで、10ng/mLから8点検量線への2倍段階希釈による0.020ng/mLまで、50ng/mLから12点検量線への2倍段階希釈による0.012ng/mLまで及び/又は約66.66667ng/mLから12点検量線への3倍段階希釈による0.00339ng/mLまでの、ミスフォールドSOD1の段階希釈を含み、任意選択的に、
前記キットは、補足ビーズ、好ましくは2.7μMの直径を有する常磁性ビーズをさらに含む、請求項21に記載のキット。
【請求項25】
(i)捕捉抗体としての、請求項9に記載の通りに特徴付けられる第1のモノクローナル抗SOD1抗体を含む捕捉試薬;
(ii)検出抗体としての第2のビオチン化抗SOD1抗体;
(iii)ストレプトアビジン-β-ガラクトシダーゼ(SβG)試薬;
(iv)RGPを含む基質溶液;
(v)ミスフォールドSOD1の較正されたイムノアッセイ標準又は対照;
(vi)洗浄及びアッセイ/サンプル希釈緩衝液;及び
(vii)約2.7μMの直径を有する常磁性捕捉ビーズ
含む、請求項21又は24に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、対象の体液、特に脳脊髄液(CSF)中のミスフォールドSOD1(mSOD1)をアッセイする新規な高感度方法に関し、且つmSOD1のための高感度イムノアッセイ及びそのようなアッセイにおける使用のためのキットを提供する。
【背景技術】
【0002】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、効果的な治療を伴わない高度に不均一な疾患である。これは、ALSの原因がほとんど不明であり、症例の約90%が孤発性(sALS)である一方、約10%のみが家族性ALS(fALS)であるためでもある。1990年代以降の集中研究は、運動ニューロンの変性に関与する機構を解明することを目指してきた。これらの研究は、ALSが、いくつかの全身パラメータの組み合わせによって駆動される複雑な疾患であることを示唆している。現在まで、30個までの遺伝子がALSの単一遺伝子性原因として記載されており、最も頻度の高いものは、C9orf72、SOD1、FUS及びTARDBP/TDP43であり;総説については、Vijayakumar et al.,Front.Neurol.10(2019):400.doi:10.3389/fneur.2019.00400を参照されたい。遺伝的連鎖、したがって遺伝子マーカーは、fALSに対する感受性の予測及び相関の決定のために実行可能であり得るが、sALSの評価及び薬物開発は、早期診断を促進し、標的の結合を実証し、疾患進行をモニターし、且つ/又は治療の有効性を評価するための代理エンドポイントとして役立ち得るバイオマーカーの欠如によって妨げられている。流体ベースのバイオマーカーは、これらの問題に対処する可能性がある。理想的なバイオマーカーは、ALSを対照(適切な疾患模倣物及び他の神経疾患)集団と区別するための高い特異性及び感度を示し、個々の患者内の疾患進行をモニターするべきである。ALSバイオマーカーの探索において、脳脊髄液、血清及び血漿を使用して著しい進歩がなされており、尿及び唾液バイオマーカーは、依然として開発の初期段階にある。これらのバイオマーカー候補のいくつかは、患者の層別化、疾患経過(速い進行対遅い進行)及び重症度の予測における使用を実証しているか、又は前臨床及び臨床適用において使用されている。しかしながら、ALSバイオマーカーの発見は、過去10年間で著しい進歩を見せてきたが、バイオマーカーを検証し、それらを診療所に移すことは、依然としてより困難であり;総説Vu and Bowser,Neurotherapeutics 14(2017),119-134を参照されたい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
この技術的問題に対する解決策は、特許請求の範囲において特徴付けられ、以下の説明においてさらに開示される実施形態によって提供される。
【0004】
本発明は、概して、SOD1の特異的エピトープに対する捕捉抗体として抗SOD1抗体を含むイムノアッセイを用いて、対象由来の体液中のミスフォールドSOD1(mSOD1)の存在及びレベルをそれぞれ決定する新規な高感度方法に関する。添付の実施例及び図に例示されるように、本発明の方法によるmSOD1の検出又は対照サンプルと比較したmSOD1の増加したレベルのアッセイは、ALSを示す。より具体的には、本発明のアッセイは、sALSを有する患者を高度な確実性で同定することが可能であり、これは、これまでほとんど可能ではなかった。
【0005】
本発明は、SOD1の特異的エピトープ及びそれに対する治療的抗SOD1抗体が、ALSに罹患していると疑われるか又はALSを発症する危険性がある対象及びALS患者からの体液のサンプル中のmSOD1の検出においてそれぞれ特に診断的価値もあり、fALS及びsALSを検出及び/又は区別する可能性があるという予想外の発見に基づく。
【0006】
ヒトCu/Znスーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)は、32kDaのホモ二量体金属酵素であり、染色体21上の遺伝子座を有し、主に真核細胞の細胞質ゾル、核及びペルオキシソームに局在するが、ミトコンドリア膜間腔にも局在する。それは、触媒銅イオン及び構造亜鉛イオンを結合する活性部位を含む。SOD1の機能的役割は、スーパーオキシドラジカルの二酸素及び過酸化水素への不均化を触媒する抗酸化酵素として作用し、そのようにしてスーパーオキシドの定常状態濃度及び細胞への酸化ストレスを低下させることである(Fridovich,Science 201(1978),875-879)。
【0007】
SOD1をコードする遺伝子における突然変異は、家族性筋萎縮性側索硬化症(fALS)症例の約20%を占め、孤発性ALS(sALS)症例のごく一部を占める(Rosen et al.,Nature 362(1993),59-62;Chio et al.,Neurology 70(2008),533-537;Kwon et al.,Neurobiol.Aging 33(2012),e1017-1023)。ALSは、随意筋、具体的には脊髄、脳幹及び運動皮質における運動ニューロンを制御する原因となるニューロンを攻撃する、急速に進行し、常に致命的な神経疾患である(Bruijn et al.,Annu.Rev.Neurosci.27(2004),723-749)。SOD1における突然変異がどのようにALSをもたらすかのメカニズムは、完全には理解されていないが、SOD1の突然変異誘発性ミスフォールディングが、運動ニューロンの変性を引き起こす毒性と関連する、毒性機能獲得メカニズムについての証拠がある(Julien,Cell 104(2001),581-591)。
【0008】
しかしながら、野生型(wt)SOD1のミスフォールディングは、sALS症例の大部分と関連するとも考えられている(Bosco et al.,Nature Neuroscience 13(2010),1396-1403)。野生型SOD1は、サブユニット二量体化、残基Cys57及びCys146間のサブユニット内ジスルフィド結合の構築並びに銅及び亜鉛の配位などの大規模な翻訳後修飾の対象である。これらのプロセスの破壊は、全てwt SOD1を凝集させることが示されており(Durazo et al.,J.Biol.Chem.277(2009),15923-15931;Estevez et al.,Science 286(1999),2498-2500;Rakhit et al.,J.Biol.Chem.279(2004),15499-15504;Lindberg et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(2004),15893-15898)、したがって自然発生的ALS形態の可能な病原性モデルを提供する。wt SOD1の異常な変化は、アルツハイマー病(AD)及びパーキンソン病(PD)などの他の神経変性疾患においても報告されている。
【0009】
SOD1は、潜在的なバイオマーカーとして考えられてきたが、相反する結果が報告されている。例えば、Jacobsson et al.,Brain 124(2001),1461-1466は、D90A及び他のSOD1突然変異を有するALS患者並びにそのような突然変異を有さない患者からのCSF中のSOD1の量、活性及び分子形態を決定し、それらは、37の神経学的対照、54の孤発性ALS症例及び12の家族性ALS症例並びにD90A突然変異についてホモ接合性の10症例の間でSOD1のタンパク質及び酵素活性の量における差異を見出さなかった。同様に、上記のVu and Bowser,(2017)に要約されるように、別の研究は、ALSを有する患者と神経疾患対照との間のCSF SOD1レベルを測定し、群間の有意差を見出すことができず、SOD1 CSFレベルがALSの診断バイオマーカーではないことを示した。加えて、mSOD1種の異なる配列セグメントと反応する抗体を用いたELISAアッセイによるALS患者及び対照からのCSFの分析後の研究は、ALS患者と対照との間で有意差を示さなかった(Zetterstroem et al.,J.Neurochem.117(2011),91-99)。著者らは、CNSの間質中のmSOD1の推定濃度が、モデル系におけるかなりの細胞毒性に必要とされる濃度よりも1000倍低いと仮定した。したがって、Zetterstroem et al.は、これらの結果がALSにおける細胞外mSOD1の直接的な細胞毒性の役割に対して反論し、したがって、CSFにおけるmSOD1が、酵素に突然変異を有する及び有さない患者におけるALSのバイオマーカーとして使用することができないと結論付けた。
【0010】
最近、Tokuda et al.(Tokuda et al.Molecular Neurodegeneration(2019)14:42 https://doi.org/10.1186/s13024-019-0341-5)は、sALSの脳脊髄液中のミスフォールド野生型SOD1についてのELISAアッセイを記載した。しかしながら、使用された捕捉抗体、G93A突然変異を有する組換えSOD1を使用することによって生成されたモノクローナル抗体である抗体C4F6は、変性G93Aに対して強い免疫反応性を示すが、他のhSOD1突然変異体に対する反応性が遥かに低く、変性WT hSOD1に対する反応性が非常に低いことが報告された。さらに、C4F6抗体は、A4V fALS症例からの脊髄組織を染色するが、sALS症例では染色しないことが記載されており;Ayers et al.Acta Neuropathologica Communications 2014,2:55 Page 2 of 13 http://www.actaneurocomms.org/content/2/1/55による抗体C4F6の特徴付けを参照されたい。したがって、Tokuda et al.(2019)に記載されている抗体C4F6及びELISAアッセイが、信頼性があり、診療所への展開に適しているかどうかは、依然として示されていない。
【0011】
対照的に、本発明の範囲内で行われた偏りのない実験は、mSOD1に対する全て高いが、異なる結合親和性を有し、異なるエピトープをカバーする、異なる盲検化抗mSOD1抗体のサブセットの中で、他の候補ではなく、NI-204.B及びNI-204.Oと称される2つの抗体のみが組織、細胞及び体液サンプル中のmSOD1を確実に検出することが見出されたが、他の候補のいくつかが、従来のELISAアッセイで決定して、変性、酸化及び組換えSOD1についてかなり低いEC50値を示し、したがってmSOD1についてのイムノアッセイでの捕捉抗体として使用するための第1の選択肢であることを明らかにした。
【0012】
抗体プローブのデコーディングは、NI-204.B及びNI-204.Oが、配列番号11に示されるアミノ酸配列73-GGPKDEERHVGD-84内でSOD1の類似のエピトープを共有することを明らかにした。本発明による検出のためのイムノアッセイを調査する場合、抗体NI-204.B及びNI-204.Oがそれぞれ捕捉抗体としての役割を果たすサンドイッチELISAを確立することができ、抗体NI-204.B及びNI-204.Oについて実施例に例示されるALS患者からのCSFサンプル中のmSOD1を確実に検出することが見出された。原則として、適切な捕捉抗体を同定するためのプレアッセイ及びその後のイムノアッセイは、Gill et al.,Sci.Rep.9(2019),6724,https://doi.org/10.1038/s41598-019-43164-zに記載されたmSOD1についてのアッセイに基づき、例えば実施例に示されるCSFなどの体液中のmSOD1の検出のために追加の修正と共に「方法」セクションを参照されたい。
【0013】
特に、Tokuda et al.(2019)で使用されている抗体C4F6とは対照的に、抗体NI-204.B及びNI-204.Oによって認識されるエピトープは、必ずしも突然変異SOD1タンパク質と関連せず、A4V fALS患者だけでなく、sALS及びC9ORF72ヘキサヌクレオチド反復伸長又は未知の遺伝子突然変異を保有するfALS患者由来の脊髄組織上で認識され;Maier et al.,Sci.Transl.Med.10,eaah3924(2018)5を参照されたい。
【0014】
したがって、本発明のアッセイは、いずれにしても機能する場合、Tokuda el al.(2019)に記載されているELISAアッセイよりも広い範囲のALS患者に適用可能であると期待することが合理的である。
【0015】
したがって、本発明は、概して、イムノアッセイを用いてヒト対象の体液中のmSOD1をアッセイする新規な方法に関する。特に、前記イムノアッセイは、ELISAアッセイであり、体液、好ましくはCSFを、捕捉抗体としての第1の抗SOD1抗体及び検出抗体としての第2の抗SOD1抗体と接触させる。
【0016】
この革新的なアッセイは、患者の体液中の、バイオマーカーとして役立つmSOD1をアッセイすることにより、fALS及びsALSの両方が診断できるため、特に興味深い。これは、fALSの発生の大部分が遺伝子マーカーによって決定され得るが、sALSを有する患者の同定が遥かに困難であるため、重要である。したがって、新規イムノアッセイを用いて、ALS、特に孤発性ALSを有する患者を、抗SOD1抗体による且つ/又はALS及びその症状の治療にそれぞれ現在使用されている他の薬物による治療のために同定及び選択することができる。
【0017】
本発明のアッセイは、体液中、好ましくはCSF中のmSOD1のレベルの薬力学的変化をモニターするために使用することもでき、これは、ALSを有する患者の治療又は症状の改善に有用な治療剤の用量最適化を促進し得る。候補治療薬の臨床試験において低濃度のmSOD1の正確且つ精密な定量を可能にするのに十分な高い感度を有するアッセイは、ALS研究努力に有益であろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】ALS患者由来の体液のサンプル中のmSOD1の検出。CSF中のmSOD1の定量測定には、シングルプレックスサンドイッチELISAであるAushon BioSystems製のCiraplex(商標)Human Ultrasensitive mSOD1 1-plexイムノアッセイキットを用いた。10人のfALS患者(
図1A)、6人のsALS患者(
図1B)及び10人の非神経学的対照参加者(
図1C)からのサンプルを分析した。その結果を棒グラフに示す(
図1D及びE);
*p<0.05(misSOD1陽性/陰性症例のカイ二乗検定;又はKruskal-Wallis/Dunnの多重比較検定)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、対象の体液中のmSOD1を検出するための新規な高感度イムノアッセイに関し、このアッセイは、mSOD1凝集体上に配置されたエピトープを特異的に認識する抗体を使用し、このアッセイは、健康なボランティアから、ALSに罹患しているか又はALSを発症する危険性がある対象を識別することもできる。より具体的には、本発明は、特許請求の範囲で特徴付けられ、本明細書に開示され、且つ以下の実施例及び図にさらに示される実施形態に関する。
【0020】
特に明記しない限り、本明細書で使用される用語は、2000年に改訂され、2003年に再刷されたOxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology,Oxford University Press,1997、ISBN 0 19 850673 2;2006年に出版された第2版、ISBN 0-19-852917-1 978-0-19852917-0に提供される定義を付与される。
【0021】
本明細書全体で使用される、mSOD1を「アッセイする」という用語は、mSOD1の存在/量/レベル/濃度を決定又は測定することと、mSOD1及び関連する発現を定量することとを含む。
【0022】
さらに、特に明記しない限り、本発明を特徴付けるために本明細書で使用される用語及び表現は、国際公開第2012/080518 A1号パンフレット、特に10~30ページの「I.定義」のサブセクションに提供される定義を付与され、その開示内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。同じことは、抗体などについて国際公開第2012/080518 A1号パンフレットに開示されている一般的な実施形態にも当てはまる。
【0023】
当技術分野で知られているように、異なる神経変性疾患、例えばALS、アルツハイマー病(AD)、ALS/パーキンソニズム-認知症複合体(ALS-PDC)、ダウン症候群及びパーキンソン病(PD)は、mSOD1の発生を示すか又はmSOD1に関連する。したがって、mSOD1の存在又は上昇したレベルは、前記疾患を示し得る。さらに、上述のように、SOD1をコードする遺伝子における突然変異は、ミスフォールディングを引き起こす可能性があり、fALS症例の約20%及びsALS症例のわずかな割合を占めるが、wt SOD1のミスフォールディングもsALS症例と関連する。したがって、mSOD1の存在又は上昇したレベルは、ALSを示す。
【0024】
したがって、本発明の方法は、ALS、AD、ALS-PDC、ダウン症候群又はPDを診断するための方法として使用することができ、この方法は、診断される対象のサンプル中のmSOD1をアッセイすることを含み、それぞれサンプル中のmSOD1の存在は、前記対象における上述の疾患を示し、対照と比較したサンプル中のmSOD1の増加したレベルは、前記対象における上述の疾患を示す。好ましい実施形態では、本発明の方法で診断される疾患は、ALSである。
【0025】
SOD1のミスフォールディングは、fALSを有する患者及びsALSを有する患者において観察されており、mSOD1は、本発明の方法において使用される抗体によって検出され得るため、前記方法は、fALS及びsALSを有する患者を診断するために使用され得る。
【0026】
診断される対象は、疾患について無症候性又は発症前であり得る。
【0027】
本発明の方法は、患者の体液のサンプル中のmSOD1をスクリーニングすることを含む。本発明のアッセイで分析されるサンプルは、病理学的にmSOD1を含むことが疑われる任意の体液、例えば血液、CSF又は尿サンプルであり得る。好ましい実施形態では、サンプルは、全血溶解物又はCSF、好ましくはCSFである。
【0028】
本発明の方法は、体液を第1の抗SOD1抗体と接触させることを含むイムノアッセイを適用し、この第1の抗SOD1抗体は、捕捉抗体として使用される。実験の過程中、2つの抗体が本発明の方法に適していることが同定され、両方とも配列番号11に示されるアミノ酸配列73-GGPKDEERHVGD-84内のSOD1のエピトープに結合する。これらの2つの抗体は、NI-204.B及びNI-204.Oと命名される。上述のように、NI-204.Bは、国際公開第2012/080518 A1号パンフレットの配列番号51に示されるアミノ酸配列73-GGPKDEERHVG-83を含むSOD1のエピトープに結合する、国際公開第2012/080518 A1号パンフレットに開示された抗体NI-204.12G7であることが判明した。NI-204.Oは、アミノ酸配列76-KDEERHVGD-84(配列番号13)を含むSOD1のエピトープに結合する。
【0029】
原則として、捕捉抗体は、エピトープ73-GGPKDEERHVGD-84(配列番号11)、好ましくはアミノ酸配列73-GGPKDEERHVG-83(配列番号12)を含むエピトープ及び/又はアミノ酸配列76-KDEERHVGD-84(配列番号13)を含むエピトープを認識する任意の抗体又は抗体形式であり得る。原則として、そのような抗体は、ポリクローナル若しくはモノクローナル抗体を産生するために一般的に使用されるマウス、ウサギ、ヤギ若しくは他の動物において又はFv、Fab若しくは完全IgGライブラリーをスクリーニングすることにより、対応する抗原に対して産生され得る。好ましくは、捕捉抗体は、モノクローナル抗体であるか又はモノクローナル抗体に由来する。
【0030】
本発明の特定の好ましい実施形態において、捕捉抗体は、ヒト抗体NI-204.12G7に由来し、その可変領域、すなわち結合ドメイン中において、国際公開第2012/080518 A1号パンフレットの
図1Bに示されるアミノ酸配列を有する可変重鎖(V
H)及び可変軽鎖(V
L)の相補性決定領域(CDR)を含むことによって特徴付けられるか、又はCDRの1つ以上は、そのアミノ酸配列において、CDR2及びCDR3の場合には国際公開第2012/080518 A1号パンフレットの
図1Bに示されるものと1つ、2つ、3つ又はさらにはそれを超えるアミノ酸が異なり得、捕捉抗体は、国際公開第2012/080518 A1号パンフレットの実施例に示される抗SOD1抗体NI-204.12G7と実質的に同じ又は同一の免疫学的特徴を示す。CDRの位置は、
図1Bに示され、国際公開第2012/080518 A1号パンフレットの
図1の凡例で説明される。対応するヌクレオチド配列は、国際公開第2012/080518 A1号パンフレットの54ページの表IIに示されている。さらに又は代わりに、フレームワーク領域又は完全V
H及び/若しくはV
L鎖は、国際公開第2012/080518 A1号パンフレットの
図1Bに示されるフレームワーク領域と80%同一であり、好ましくは国際公開第2012/080518 A1号パンフレットの
図1Bに示されるフレームワーク領域並びにV
H及び/又はV
L鎖とそれぞれ85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である。さらに、抗体NI-204.Bのクローニング及び発現は、国際公開第2012/080518 A1号パンフレットの84~88ページの「材料及び方法」のセクションに記載されているように実施されており、したがって、この方法は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
特に好ましい実施形態では、捕捉抗体は、国際公開第2012/080518 A1号パンフレットの
図1Bに示されるV
H及び/又はV
L鎖によって特徴付けられる。
【0032】
したがって、捕捉抗体は、好ましくは、
(i)VH相補性決定領域(CDR)1、2及び3を含む可変重鎖(VH)並びに/又はVL CDR1、2及び3を含む可変軽鎖(VL)であって、
(a)VH-CDR1は、配列番号3のアミノ酸配列又はその改変体を含み、改変体は、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、
(b)VH-CDR2は、配列番号4のアミノ酸配列又はその改変体を含み、改変体は、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、
(c)VH-CDR3は、配列番号5のアミノ酸配列又はその改変体を含み、改変体は、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、
(d)VL-CDR1は、配列番号8のアミノ酸配列又はその改変体を含み、改変体は、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、
(e)VL-CDR2は、配列番号9のアミノ酸配列又はその改変体を含み、改変体は、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、及び
(f)VL-CDR3は、配列番号10のアミノ酸配列又はその改変体を含み、改変体は、1つ又は2つのアミノ酸置換を含む、可変重鎖(VH)及び/又は可変軽鎖(VL);並びに/又は
(ii)VH鎖及び/又はVL鎖であって、
(a)VH鎖は、配列番号1又は2に示されるアミノ酸配列又はその改変体を含み、改変体は、1つ以上のアミノ酸置換を含み;及び
(b)VL鎖は、配列番号6又は7に示されるアミノ酸配列又はその改変体を含み、改変体は、1つ以上のアミノ酸置換を含む、VH鎖及び/又はVL鎖;
を含み、好ましくは、VH及びVL鎖アミノ酸配列は、それぞれ配列番号1又は2及び6又は7と少なくとも90%同一である。
【0033】
原則として、捕捉抗体は、例えば、キメラ抗体、一本鎖抗体、Fab断片、二重特異性抗体、融合抗体、標識抗体又はそれらのいずれか1つの類似体を含むエピトープを認識する任意の形式であり得る。そのような改変体を生成するための対応する方法は、当業者に知られており、例えばHarlow and Lane“Antibodies,A Laboratory Manual”,CSH Press,Cold Spring Harbor(1988)First edition;Second edition by Edward A.Greenfield,Dana-Farber Cancer Institute(著作権)2014、ISBN 978-1-936113-81-1に記載されている。例えば、Fab及びF(ab’)2断片は、組換えにより又はパパイン(Fab断片を産生するため)若しくはペプシン(F(ab’)2断片を生成するため)などの酵素を用いて、免疫グロブリン分子のタンパク質分解性切断により産生され得る。F(ab’)2断片は、可変領域、軽鎖定常領域及び重鎖のCH1ドメインを含む。そのような断片は、例えば、免疫グロブリンの免疫特異的部分を放射性同位体などの試薬に結合させることを含む免疫診断手順において使用するのに十分である。好ましくは、捕捉抗体はIgG形式を有し、すなわち完全IgG抗体である。ヒト又はマウス定常ドメインを有する完全ヒトIgG1抗体の組換え発現は、国際公開第2012/080518 A1号パンフレットの実施例に記載されているように実質的に行うことができる。
【0034】
典型的には、本発明の方法は、検出抗体としての第2の抗体の使用をさらに含む。この抗体は、捕捉抗体73-GGPKDEERHVGD-84(配列番号11)のエピトープと異なるエピトープでmSOD1に結合する任意の抗SOD1抗体、例えば市販の抗体、例えばポリクローナルウサギ抗ヒトSOD1(Abcam ab52950)、ポリクローナルビオチン化ヤギ抗ウサギIgG(Jackson Immuno.111-065-144)と組み合わせたウサギモノクローナル抗ヒトSOD1(Abcam ab79390)、例えばGill et al.(2019)、前出参照又は国際公開第2012/080518 A1号パンフレットに開示されているか、若しくはTokuda el al.(2019)に記載の表3に列挙されている抗SOD1抗体であり得る。
【0035】
一実施形態では、検出抗体は、市販されており(Abcam ab185125)、合成SOD1aa 50-150ペプチドに対して生成されたウサギモノクローナル抗体[EPR1726]であり、BSA及びアジドフリーである。抗体ab185125は、ab79390の無担体バージョンであり、蛍光色素、金属同位体、オリゴヌクレオチド及び酵素を含む抗体標識における使用のために設計されている。予備的エピトープ分析により、抗体EPR1726は、NI-204.12G7のエピトープの直前のNI-204.12G7エピトープと同じループにあるエピトープ、すなわちヒトSOD1のおよそアミノ酸(61弱)65~75に結合することが示唆されている。したがって、好ましくは、本発明の方法において使用するための検出抗体は、抗体EPR1726のものと類似の結合特性を示す抗体、すなわちヒトSOD1のアミノ酸50~150内、特にヒトSOD1のアミノ酸(61)65~75に結合する均等なモノクローナル抗体である。当業者は、そのような均等な抗体に到達する方法及び手段をよく知っており;例えば、Harlow and Lane(1988)及びGreenfield(2014),Antibodies:A Laboratory Manual、前出を参照されたい。
【0036】
したがって、好ましくは、検出抗体は、第1の抗体と異なり、捕捉抗体と異なるエピトープに結合する。したがって、第2の抗体として、mSOD1への結合について第1の抗体と競合しない抗体が使用される。原則として、検出抗体は、mSOD1を認識する任意の形式であり得、第2の抗体は、モノクローナル抗体である。
【0037】
これに関連して、本発明に従って実施された実験中、NI-204.Gと命名された異なる盲検化抗mSOD1抗体のサブセットの1つの候補が捕捉抗体として適切ではないが、NI-204.Gが抗体NI-204.Bの存在下でmSOD1に結合することができるため、適切な第2の抗体として、すなわち検出抗体として役立ち得ることが判明した。抗体プローブをデコードすることにより、NI-204.Gは、国際公開第2012/080518 A1号パンフレットの配列番号55に示されるアミノ酸配列121-HEKADDLGKGGNEES-135を含むSOD1のエピトープに結合する、国際公開第2012/080518 A1号パンフレットに開示された抗体NI-204.12G3に対応することが明らかになった。したがって、一実施形態では、検出抗体は、エピトープ121-HEKADDLGKGGNEES-135(配列番号14)を認識し、捕捉抗体について記載されるような任意の供給源及び抗体形式のものであり得る。好ましくは、検出抗体は、ヒト抗体NI-204.12G3に由来し、その可変領域、すなわち結合領域において、国際公開第2012/080518 A1号パンフレットの
図1Hに示されるアミノ酸配列を有するV
H及びV
L鎖のCDRを含むことによって特徴付けられるか、又はCDRの1つ以上は、そのアミノ酸配列において、CDR2及びCDR3の場合には国際公開第2012/080518 A1号パンフレットの
図1Hに示されるものと1つ、2つ、3つ又はそれを超えるアミノ酸が異なり得、捕捉抗体は、国際公開第2012/080518 A1号パンフレットの実施例に示される抗SOD1抗体NI-204.12G3と実質的に同じ又は同一の免疫学的特徴を示す。CDRの位置は、国際公開第2012/080518 A1号パンフレットの
図1Hに示され、
図1の凡例で説明されている。さらに又は代わりに、フレームワーク領域又は完全V
H及び/又はV
L鎖は、国際公開第2012/080518 A1号パンフレットの
図1Hに示されるフレームワーク領域並びにV
H及び/又はV
L鎖とそれぞれ80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である。
【0038】
しかしながら、上述のように、異なる抗SOD1抗体、特にそれぞれ抗体Abcam ab185125、Abcam ab79390及びNI-204.12G3によって認識される実質的に同じエピトープ及びアミノ酸領域、好ましくはSOD1aa 100-150内のエピトープを認識する抗体も検出抗体として有用であり得る。典型的には、本発明のアッセイに従って使用するためのそのような検出抗体は、本発明のサンドイッチELISA形式において、SOD1の結合について抗体Abcam ab185125、Abcam ab79390及び/又はNI-204.12G3と競合する。
【0039】
好ましくは、検出抗体は、IgG形式を有し、すなわち完全IgG抗体である。ヒト又はマウス定常ドメインを有する完全ヒトIgG1抗体の組換え発現は、国際公開第2012/080518 A1号パンフレットの実施例に記載されているように実質的に行うことができる。
【0040】
本発明のmSOD1アッセイの一実施形態では、検出抗体は、
(i)VH相補性決定領域(CDR)1、2及び3を含む可変重鎖(VH)並びに/又はVL CDR1、2及び3を含む可変軽鎖(VL)であって、
(a)VH-CDR1は、配列番号16のアミノ酸配列又はその改変体を含み、改変体は、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、
(b)VH-CDR2は、配列番号17のアミノ酸配列又はその改変体を含み、改変体は、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、
(c)VH-CDR3は、配列番号18のアミノ酸配列又はその改変体を含み、改変体は、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、
(d)VL-CDR1は、配列番号20のアミノ酸配列又はその改変体を含み、改変体は、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、
(e)VL-CDR2は、配列番号21のアミノ酸配列又はその改変体を含み、改変体は、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、及び
(f)VL-CDR3は、配列番号22のアミノ酸配列又はその改変体を含み、改変体は、1つ又は2つのアミノ酸置換を含む、可変重鎖(VH)及び/又は可変軽鎖(VL);並びに/又は
(ii)VH鎖及び/又はVL鎖であって、
(a)VH鎖は、配列番号15に示されるアミノ酸配列又はその改変体を含み、改変体は、1つ以上のアミノ酸置換を含み;及び
(b)VL鎖は、配列番号19に示されるアミノ酸配列又はその改変体を含み、改変体は、1つ以上のアミノ酸置換を含む、VH鎖及び/又はVL鎖
を含み、好ましくは、VH及びVL鎖アミノ酸配列は、それぞれ配列番号15及び19と少なくとも90%同一である。
【0041】
本発明の方法の好ましい実施形態において、第2の抗体又はその断片は、検出可能な標識(例えば、蛍光、化学発光、放射性、酵素、核磁気、重金属、タグ、フラグなど)を含み;例えば、一般的な技術については、Antibodies A Laboratory Manual 2nd edition,2014 by Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,USA;動的細胞画像化のための蛍光標識戦略における進歩については、Dean and Palmer,Nat.Chem.Biol.10(2014),512-523;並びに抗体-薬物コンジュゲート及び抗体模倣物のための酵素ベースの標識戦略については、Falck and Mueller,Antibodies 7(2018),4;doi:10.3390/antib7010004を参照されたい。
【0042】
標識は、直接検出することができる標識、例えば蛍光標識(物理化学的レポーター)であるか、又は標識は、直接検出可能な標識を含むリガンド結合パートナーによって結合されるリガンド、例えばビオチンであり得る。
【0043】
本発明の方法の好ましい実施形態では、第2の抗体は、リガンド結合パートナー、すなわち非共有結合性タンパク質-リガンド相互作用を形成するリガンド結合タグに結合することができるリガンドにコンジュゲートされる。
【0044】
本発明によれば、リガンドは、当業者に公知の部分であり、親和性タグ、例えばHis-タグ、マルトース結合タンパク質(MBP)-タグ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)-タグ、キチン結合ドメイン又はチオレドキシン、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、FLAG-ペプチド、Arg-タグ、Hat-タグ、c-myc-タグ、S-タグ又はストレプトアビジン結合タグ、例えばTwin-Strep-タグ(登録商標)など、及びビオチンを含む。概要は、例えば、Terpe,Appl.Microbiol.Biotechnol.60(2003),523-533に提供されており、そのアミノ酸配列を含む例示的なタグは、Terpe(2003)の表2に列挙されており、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
好ましい実施形態では、リガンドは、ビオチン又はビオチン類似体若しくはその誘導体であるか又はそれらを含み、すなわち、本発明の方法で使用される第2の抗体は、ビオチン化される。抗体のビオチン化は、当技術分野で一般に公知であり、市販のキットが利用可能であり、当業者がビオチン化抗体を生成することを可能にする。
【0046】
したがって、本発明の方法は、上述のリガンドに適合するリガンド結合パートナーを用いた標識工程を含む。これらのリガンド結合パートナーも当技術分野で公知であり、例えばTerpe,Appl Microbiol Biotechnol 60(2003),523-533に要約されている。
【0047】
好ましい実施形態では、リガンド結合パートナーは、それぞれのビオチン又は誘導体に結合するストレプトアビジン、アビジン、ストレプトアビジン類似体又はアビジン類似体である。リガンド結合パートナーは、上記に特定した検出可能な標識であり得る検出可能な標識をさらに含むコンジュゲートに含まれる。好ましくは、コンジュゲートに含まれる検出可能な標識は、発色/蛍光又は化学発光標識、すなわち発色/蛍光/化学発光基質の変換を触媒することができる酵素である。好ましい実施形態では、検出可能な標識は、西洋ワサビペルオキシダーゼ又はβ-ガラクトシダーゼである。したがって、コンジュゲートは、ストレプトアビジン-HRPコンジュゲート又はストレプトアビジン-β-ガラクトシダーゼ(SβG)コンジュゲートである。これらの酵素は、適切な基質溶液が添加されるとシグナルを生成する。HRPの場合、発色基質3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)又は2,2’-アジノ-ジ-[3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸](ABTS)が使用されるか、又はルミノール若しくは化学発光基質として基質を含むルミノールが使用され、β-ガラクトシダーゼの場合、レゾルフィンβ-D-ガラクトピラノシド(RGP)が使用される。
【0048】
本発明の方法は、好ましくは、1つの標的のみが検出されることを意味するシングルプレックスアッセイを含む。本発明の方法において、mSOD1は、単一の標的として検出される。しかしながら、アッセイは、マルチプレックスアッセイとして設計することもできる。
【0049】
したがって、本発明の方法は、少なくとも以下の工程を含む:対象のサンプル中のmSOD1を、表面に付着された第1の抗SOD1抗体で捕捉する工程、mSOD1への結合を可能にする検出可能な標識を含む第2の抗SOD1抗体を添加する工程、標識のシグナルを検出する工程及び標識のシグナルを対照と比較する工程。
【0050】
一実施形態では、本方法は、以下の工程を含み;実施例1も参照されたい:まず、上述の第1の抗SOD1抗体をスポットしたマイクロプレートを提供する。このようなプレートは、Aushon BioSystemsによって製造することができ、市販されている。さらに、マイクロアレイイムノアッセイの設計は、一般に、Kusnezow et al.,Mol.Cell Proteomics 5(2006),1681-1696に要約されている。好ましくは、このプレートは、96ウェルプレートである。
【0051】
さらなる工程は、体液を含むサンプルをマイクロプレートのウェルに添加する工程を含む。体液は、上述したような任意の体液であり得るが、好ましくはCSFである。体液は、さらに修飾することもでき、例えば精製して、望ましくない成分又はイムノアッセイを妨害する可能性のある成分を取り除くことができる。サンプルは、抗体-抗原複合体の形成を可能にし、すなわちサンプル中に存在する場合、mSOD1への第1の抗SOD1抗体の結合を可能にする条件下においてウェル中でインキュベートされる。適切な条件の特定は、実際のアッセイと同時に又は予め陽性対照を試験して正確なパラメータを調整することによって行うことができる。陽性対照は、精製mSOD1又はmSOD1関連ALSを有する患者のサンプルのいずれかであり得る。好ましい実施形態では、インキュベーションは、好ましくは、600rpmに設定されたプレートシェーカー上で室温において2時間にわたって行われる。好ましい実施形態では、未結合成分を除去するために後にプレートを洗浄する。
【0052】
次の工程は、サンプルへの第2の抗SOD1抗体の添加を含み、ここで、第2の抗体は、リガンドにコンジュゲートされる。第2の抗SOD1抗体は、上記の抗体又は結合断片、好ましくはそれぞれmSOD1の異なる結合部位及びmSOD1の異なるエピトープに結合する抗体であり得る。上述したように、リガンドは、直接検出することができる標識、例えば蛍光標識であるか、又はリガンドは、直接検出可能な標識を含むリガンド結合パートナーによって結合される標識を含む。好ましい実施形態では、第2の抗体は、ビオチン化され、すなわちビオチン又はビオチン類似体若しくはその誘導体にコンジュゲートされる。
【0053】
混合物を、さらなる抗体-抗原複合体の形成を可能にする、すなわちサンプル中に存在する場合、mSOD1への第2の抗SOD1抗体の結合を可能にする条件下においてウェル中でインキュベートする。条件は、両方の抗体、すなわち第1及び第2の抗体がmSOD1に結合できるように選択されなければならない。上述したように、適切な条件は、陽性対照で試験することができる。好ましい実施形態では、インキュベーションは、好ましくは、600rpmに設定されたプレートシェーカー上で室温において30分間にわたって行われる。好ましい実施形態では、プレートは、過剰な検出抗体を除去するために後に洗浄される。
【0054】
サンプル及び第2の抗体を、第1の抗体で被覆されたマイクロプレートに同時に添加することもでき、インキュベーションを実施して、第1の抗SOD1抗体のmSOD1及び第2の抗SOD1抗体のmSOD1への結合を可能にすることができる。
【0055】
第2の抗体が検出可能な標識、例えば蛍光標識又は酵素で直接標識される場合、適切な基質溶液が添加される。
【0056】
間接標識が適用される場合、リガンド結合パートナー及び検出可能な標識を含むコンジュゲートが添加される。コンジュゲートとのサンプルのインキュベーションは、好ましくは、600rpmに設定されたプレートシェーカー上で好ましくは室温においてさらに30分間実施される。コンジュゲートに含まれるリガンド結合パートナーは、例えば、ストレプトアビジン若しくはアビジン又はその機能的類似体若しくは誘導体であり得る。好ましい実施形態では、リガンド結合パートナーは、ストレプトアビジン又はその機能的類似体若しくは誘導体である。コンジュゲートに含まれる検出可能な標識は、上述したような任意の検出可能な標識であり得るが、好ましくは発色/蛍光又は化学発光基質の変換を触媒することができる酵素である。より好ましくは、酵素は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)である。したがって、コンジュゲートは、ストレプトアビジン-HRP試薬である。好ましくは、洗浄工程が実施され、その後、適切な基質溶液、好ましくは発色又は化学発光基質溶液が添加される。好ましい実施形態では、TMB、ルミノール又は基質を含むルミノールが使用される。
【0057】
混合物に由来するシグナルが画像化される。原則として、特に、高感度で蛍光又は化学発光シグナルを検出及び測定することができる全ての市販の画像化システムを使用することができる。好ましくは、画像化は、Cirascan(商標)画像化システムを用いて行われる。
【0058】
各ウェルからのシグナルを検出及び測定し、対照と比較する。好ましくは、対照は、同じマイクロプレート内の別個のウェルでアッセイされる。
【0059】
対照は、参照標準、すなわちmSOD1であり得る。代わりに又はさらに、第2の対照として、神経変性疾患を有さない対照対象のサンプルが使用され、サンプル中のmSOD1のレベルと対照との差は、診断される対象が神経変性疾患を有することを示す。特に、前記対照サンプルと比較したサンプル中のmSOD1の高いレベルは、疾患、特にALSを示す。好ましくは、診断される対象及び対照対象は、年齢が一致する。
【0060】
一実施形態では、標準は、200ng/mL~3pg/mLのミスフォールドSOD1の段階希釈を含む。
【0061】
一実施形態では、マイクロプレートは、蓋、好ましくはインキュベーション工程中のサンプルの蒸発を回避するために、流体で充填された流体吸収マトリックスを有する蓋で覆われる。上述の洗浄工程は、表面への第1の抗体の結合、mSOD1への第1及び第2の抗体の結合並びに第2の抗体へのコンジュゲートの結合を破壊しない任意の適切な緩衝液を用いて行うことができる。好ましくは、洗浄は、実施例に記載されるように、キットに提供されるAushon Biosciencesの洗浄緩衝液を用いて実施される。上述のように、インキュベーションは、mSOD1への抗体の結合及び第2の抗体のリガンドへのコンジュゲートの結合を可能にするために、アッセイの異なる工程間で実施される。当然のことながら、抗体及びコンジュゲートの結合が保証される限り、異なるインキュベーション時間を選択することができる。
【0062】
別の実施形態では、本発明の方法は、デジタルELISAとしても知られる単一分子アレイ(Single Molecule Arrays)(Simoa(商標))を使用する。このアプローチでは、標的タンパク質を抗体被覆常磁性ビーズ上に捕捉し、捕捉されたタンパク質を酵素標識で標識し、単一ビーズを単離し、酵素基質の存在下でフェムトリットルウェルのアレイ中に密封する。密封工程は、酵素-基質反応の蛍光生成物を約40fLの体積に閉じ込め、30秒以内に、単一の酵素によって生成された蛍光を、白色光励起源を用いた非冷却CCDカメラ上で検出することができ;本明細書に引用した参考文献、例えばRissin et al.,Measurement of single protein molecules using digital ELISA.In:Wild,D.(Ed.),The Immunoassay Handbook:Theory and Applications of Ligand Binding,ELISA and Related Techniques,4th ed.Elsevier,Oxford,UK及びRivnak et al.,A fully-automated,six-plex single molecule immunoassay for measuring cytokines in blood,J.Immunol.Methods,2015;424:20を含むQuanterix Whitepaper 6.0(2015)を参照されたい。例えば、捕捉ビーズ、好ましくは約2.7μMの直径を有する常磁性ビーズであって、その表面に上記で定義した第1の抗体又はその結合断片が付着している常磁性ビーズを本発明の方法に使用することができ;実施例3を参照されたい。このようなビーズの使用により、単一分子レベルでのmSOD1の検出が可能となる。上記で定義した体液を含むサンプルを捕捉ビーズに添加し、インキュベーションを行い、体液中に存在する場合、第1の抗SOD1抗体によって媒介されるビーズによるmSOD1の捕捉を可能にする。上述のように、インキュベーション条件は、変化し得、最適条件は陽性対照で試験され得る。好ましくは、インキュベーション時間は、30分である。その後、上記で定義したリガンドにコンジュゲートされている第2の抗SOD1抗体を添加し、インキュベーションを行い、ビーズ上の捕捉されたミスフォールドSOD1への第2の抗SOD1抗体の結合を可能にする。好ましくは、インキュベーションは、5分間にわたって行われる。代わりに、サンプル及び第2の抗体を捕捉ビーズに添加し、インキュベーションを行い、第1の抗SOD1抗体によって媒介されるビーズによる体液中に存在するミスフォールドSOD1の捕捉及びビーズ上の捕捉されたミスフォールドSOD1への第2の抗SOD1抗体の結合を可能にするという点で上記の2つの工程を組み合わせることができる。インキュベーション時間は、好ましくは、両方の工程を組み合わせる場合、好ましくは35分に増加される。第2の抗体が検出可能な標識で直接的に標識されないが、リガンドで標識される場合、リガンド結合パートナー及び検出可能な標識を含む上記で定義されたコンジュゲートが添加され、好ましくは、リガンド結合パートナーは、ストレプトアビジン又はその機能的類似体若しくは誘導体であり、検出可能な標識は、発色又は蛍光基質を発生させることができる酵素であり、好ましくは、酵素は、β-ガラクトシダーゼである。インキュベーションは、好ましくは、5分間にわたって行われる。また、上述のように、ビーズが再懸濁される、上記に定義した蛍光基質溶液が添加される。好ましくは、基質は、レゾルフィンβ-D-ガラクトピラノシド(RGP)である。次の工程では、ビーズが1ウェル当たり1つ以下のビーズを保持するように構成されたマイクロプレートのフェムトリットルサイズのウェルに装填される。好ましくは、ウェルは、約4.25μmの幅及び約3.25μmの深さを有する。好ましくは油によるウェルの密封及び蛍光シグナルの画像化が行われる。原則として、高感度でシグナルを検出する全ての市販の画像化システムを使用することができる。このアッセイは、市販のQuanterixからのSimoa(登録商標)アッセイに基づき、したがって試薬及びSimoa(商標)光学システムが前記イムノアッセイに使用される。既に上述したように、洗浄工程は、アッセイの異なる工程間で実施され得る。
【0063】
したがって、本発明の方法の一実施形態では、第2の抗SOD1抗体は、リガンドにコンジュゲートされ、方法は、リガンド結合タグを用いた標識工程を含み、好ましくは、方法は、単一分子アレイ(Simoa(商標))アッセイを使用し、任意選択的に、以下の工程の1つ以上、好ましくは全部を含む:
(i)捕捉ビーズの表面に第1の抗SOD1抗体を付着させる工程であって、好ましくは、ビーズは、常磁性ビーズであり、且つ/又は約2.7μMの直径を有する、工程;及び
(ii)(a)体液、好ましくはCSFを含むサンプルを添加し、且つサンプルと共にビーズをインキュベートし、それにより、第1の抗SOD1抗体によって媒介されるビーズによる、体液中に存在するミスフォールドSOD1の捕捉を可能にする工程であって、好ましくは、インキュベーション時間は、30分である、工程;及び
(ii)(b)リガンド、好ましくはビオチン又はビオチン類似体若しくはその誘導体にコンジュゲートされている第2の抗SOD1抗体を添加し、且つインキュベートし、それにより、ビーズ上の捕捉されたミスフォールドSOD1への第2の抗SOD1抗体の結合を可能にする工程であって、好ましくは、インキュベーション時間は、5分である、工程;及び
(ii)(c)リガンド結合タグ、好ましくはストレプトアビジン又はその機能的類似体若しくは誘導体と、検出可能な標識、好ましくは発色基質又は蛍光分子を発生させることができる酵素とを含むコンジュゲートを添加することであって、好ましくは、酵素は、β-ガラクトシダーゼ(ストレプトアビジン-β-ガラクトシダーゼ(SβG)コンジュゲート)である、添加することと、インキュベートすることであって、好ましくは、インキュベーション時間は、5分である、インキュベートすることとを行う工程;又は
(II)(A)体液、好ましくはCSFを含むサンプルを添加し、リガンド、好ましくはビオチン又はビオチン類似体又はその誘導体にコンジュゲートされている第2の抗SOD1抗体を添加し、且つサンプル及び第2の抗体と共にビーズのインキュベートし、それにより、第1の抗SOD1抗体によって媒介されるビーズによる、体液中に存在するミスフォールドSOD1の捕捉と、ビーズ上の捕捉されたミスフォールドSOD1への第2の抗SOD1抗体の結合とを可能にする工程であって、好ましくは、インキュベーション時間は、35分である、工程;及び
(II)(B)リガンド結合タグ、好ましくはストレプトアビジン又はその機能的類似体若しくは誘導体及び検出可能な標識、好ましくは発色基質又は蛍光分子を発生させることができる酵素を含むコンジュゲートを添加することであって、好ましくは、酵素は、β-ガラクトシダーゼ(ストレプトアビジン-β-ガラクトシダーゼ(SβG)コンジュゲート)である、添加することと、インキュベートすることであって、好ましくは、インキュベーション時間は、5分である、インキュベートすることとを行う工程;及び
(iii)蛍光基質溶液中にビーズを再懸濁させる工程であって、好ましくは、蛍光基質は、レゾルフィンβ-D-ガラクトピラノシド(RGP)である、工程;及び
(iv)1ウェル当たり1つ以下のビーズを保持するように構成されたフェムトリットルサイズのウェルのアレイに工程(iii)のビーズを装填する工程;及び
(v)フェムトリットルサイズのウェル内に個々のビーズを密封する工程であって、好ましくは、密封は、油で行われる、工程;及び
(vi)蛍光シグナルを画像化する工程であって、好ましくは、画像化は、Simoa(商標)光学システムによって行われる、工程;任意選択的に、
(vii)アッセイされたミスフォールドSOD1のレベルを参照標準及び/又は対照と比較する工程。
【0064】
工程(ii)(a)、(ii)(b)及び(ii)(c)は、「3段階アプローチ」を指し、工程(II)(a)及び(II)(b)は、「2段階アプローチ」を指す。
【0065】
上述のように、対照は、参照標準、すなわちmSOD1であり得る。代わりに又はさらに、神経変性疾患を有さない対照対象のサンプルが第2の対照として使用され、サンプル中のmSOD1のレベルと対照との差は、診断される対象が神経変性疾患を有することを示す。特に、前記対照サンプルと比較したサンプル中のmSOD1の高いレベルは、疾患、特にALSを示す。好ましくは、診断される対象及び対照対象は、年齢が一致する。
【0066】
一実施形態において、標準は、約1000ng/mLから8点検量線への4倍段階希釈による0.244ng/mLまで、10ng/mLから8点検量線への2倍段階希釈による0.020ng/mLまで、50ng/mLから12点検量線への2倍段階希釈による0.012ng/mLまで及び/又は約66.66667ng/mLから12点検量線への3倍段階希釈による0.00339ng/mLまでの、ミスフォールドSOD1の段階希釈を含む。
【0067】
本発明による方法は、対象のCSF中の最小量のmSOD1の検出を可能にする高い感度である。高い感度は、特に、第1の捕捉抗体として本発明の方法で使用される抗体に起因し得る。アッセイに応じて、mSOD1は、許容される精度で6~7pg/mLまで検出することができる。Aushon BioSystemsの試薬及び機器を用いたアッセイに関して、10.16pg/mL~7404.41pg/mLのmSOD1範囲内でより精密な結果が得られ、1:2のMRD(最小必要希釈)後に20.32~14814.82pg/mLの報告可能な範囲をもたらした。Quanterixからの試薬及び機器を用いたアッセイに関して、アッセイは、2×アッセイバックグラウンド法に基づいて、6pg/mL~32pg/mLの範囲のLLOD及び58pg/mL~132pg/mLの範囲のLLOQを有することが示されており、LLODは、実施例3に記載されるように使用される捕捉抗体に応じてそれぞれ10.8~13.6pg/mLの範囲である。
【0068】
したがって、本発明の方法は、好ましくは、約≦20.32pg/mLのmSOD1についての定量下限(LLOQ)及び約7pg/mLの検出下限(LLOD)又は約58pg/mLのLLOQ及び約6若しくは10pg/mLのLLODを有する。
【0069】
本発明の方法に従って使用され得るさらなる単一分子感知プラットフォームは、当業者に公知であり、低バックグラウンドノイズ蛍光顕微鏡法並びにプラズモン及び電気ナノトランスデューサなど開発中であり;総説については、例えば、Macchia et al.,Analytical and Bioanalytical Chemistry 412(2020),5005-5014を参照されたい。
【0070】
アクセス可能な流体をアッセイする能力及び複数の研究において確認されるバイオマーカーを有することの要望を考慮すると、これは、当然のことながら、任意の所与の患者における疾患進行の全体像を得るため及び本発明のイムノアッセイをALSの他のバイオマーカー候補分子の評価と組み合わせるための有用なアプローチであろう。例えば、前出のVijayakumar et al.(2019)は、その表2に列挙したものからバイオマーカー候補分子を組み合わせることを示唆している(全てニューロン生存を反映するシスタチンC、pNFH及びNFL、炎症誘発マーカーとしてのMCP1、それぞれ筋肉起源及び神経筋接合部を反映するMiR 206及び133b並びに代謝異常のいくつかの指標、例えばホモシステイン、グルタミン酸塩又はコレステロール)。好ましくは、本発明のイムノアッセイは、前出のVu and Bowser(2017)に開示されている表1~5に列挙されているALSについての1つ以上のバイオマーカー、流体ベースのバイオマーカーの評価と組み合わされる。したがって、本発明のイムノアッセイは、診断目的及び予後又は予測用途のための異種マルチバイオマーカーパネルの開発を促進することができる。
【0071】
本発明は、本発明の方法に従ってALSに罹患しているか又はALSを発症する危険性があると診断された患者の症状の治療又は改善に使用するための治療剤も包含する。好ましい実施形態では、患者は、検出可能な量のmSOD1を有するとアッセイされている。好ましくは、患者は、対照と比較した場合、mSOD1の増加したレベルを示す。対照は、好ましくは、診断される患者に年齢が一致する健康な対象であり得る。
【0072】
患者は、好ましい実施形態において、少なくとも5pg/mLより高い、好ましくは6又は7pg/mLより高い、より好ましくは10pg/mLより高い、より好ましくは20pg/mLより高い、最も好ましくは20.32pg/mL又は58pg/mLより高いmSOD1のレベルを有する。
【0073】
一実施形態において、治療剤は、抗SOD1抗体、好ましくは国際公開第2012/080518 A1号パンフレットに開示された抗体、好ましくは抗体NI-204.12G7又は国際公開第2016/120810号パンフレットに開示された抗体である。別の実施形態では、治療剤は、SOD1のレベルを低下させる薬剤、例えばピリメタミン(Lange et al.Ann.Neurol.81(2017),837-848)、遺伝子サイレンシングに使用される薬剤、例えばモルホリノオリゴヌクレオチド(MO)又はラパマイシンのような非特異的治療のための薬剤である。治療剤は、遺伝子治療アプローチに使用される薬剤であり得る。好ましい実施形態では、治療剤は、Rilutek(リルゾール)又はRadicava(エダバロン(edavarone))であり、これらは、両方ともALSの治療のために米国食品医薬品局によって承認されている。さらに、治療剤は、ALSの特定の症状のいくつかを目的とする薬剤、例えば鎮痛剤又は筋弛緩剤であり得る。したがって、治療剤は、好ましくは、痙攣を緩和するのに役立ち得るバクロフェン(Gablofen、Kemstro、Lioresal)又はジアゼパム(Diastat、Valium)である。嚥下困難による口腔内の唾液の貯留もALSの症状であり、本発明による治療剤である異なる薬剤で治療することができる。好ましくは、治療剤は、Elavil(アミトリプチリン)、トリヘキシフェニジル、Scopaderm(スコポラミンパッチ)又はRobinul(グリコピロレート)である。
【0074】
本発明は、本発明の方法を実施するように適合されたキットも包含する。したがって、キットは、本発明の方法を実施するために必要とされる構成要素、好ましくは本発明の方法の好ましい実施形態の構成要素を含む。
【0075】
一実施形態では、キットは、好ましくは、実施例1及び2に例示されるAushon BiosystemsからのCiraplex(商標)Ultrasensitive immunoassayなどのシングルプレックスサンドイッチELISAを使用する本発明の方法での使用に適しており、好ましくは上記で定義した蓋を含む、上記で定義したように第1の抗SOD1抗体がウェルに予めスポットされているマイクロプレートを少なくとも含む。キットは、上記で定義した第2の抗SOD1抗体を含む検出試薬をさらに含む。加えて又は代わりに、キットは、上記で定義したリガンド結合パートナー及び検出可能な標識を含むコンジュゲート、好ましくは発色若しくは化学発光基質の変換を触媒することができる酵素、適切な基質溶液、mSOD1の較正されたイムノアッセイ標準若しくは対照、緩衝液、希釈剤、基質及び/若しくは溶液の推奨、並びに本発明のアッセイを実施する方法の説明書、並びに/又は本発明の方法を妨害せず、抗体がそれらの活性形態を保つことを可能にする免疫ベースの診断アッセイに適切な洗浄及びアッセイ/サンプル希釈緩衝液を含む。
【0076】
別の実施形態では、キットは、好ましくは、実施例3に例示されるようなSimoa(商標)アッセイを使用する本発明の方法での使用に適しており、上記に定義した第1の抗SOD1抗体を含む捕捉試薬と、上記に定義した第2の抗SOD1抗体を含む検出試薬とを含む。任意選択的な実施形態では、キットは、ビーズ及び適切なフェムトリットルサイズのマイクロプレートを含む。加えて又は代わりに、キットは、上記で定義したリガンド結合パートナー及び検出可能な標識、好ましくは蛍光基質の変換を触媒することができる酵素を含むコンジュゲート、適切な基質溶液、mSOD1の較正されたイムノアッセイ標準若しくは対照、マイクロプレート、緩衝液、希釈剤、基質及び/若しくは溶液の推奨、並びに本発明のアッセイを実施する方法の説明書、並びに/又は本発明の方法を妨害せず、抗体がそれらの活性形態を保つことを可能にする免疫ベースの診断アッセイに適切な洗浄及びアッセイ/サンプル希釈緩衝液を含む。
【0077】
本明細書の本文を通していくつかの文献が引用される。引用された全ての参考文献(背景セクション及び製造業者の仕様、説明書などを含む、本出願全体を通して引用された文献参照、発行された特許、公開特許出願を含む)の内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれるが;引用されたいかなる文献も本発明に関して実際に先行技術であることを認めるものではない。
【0078】
以下の特定の実施例を参照することにより、より詳細な理解を得ることができ、これらの実施例は、例示のみを目的として本明細書に提供され、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0079】
実施例1:mSOD1に特異的なイムノアッセイの確立及び検証
CSF中のmSOD1の定量測定のために、シングルプレックスサンドイッチELISAであるAushon BioSystems製のCiraplex(商標)Human Ultrasensitive mSOD1 1-plexイムノアッセイキットを用いた。
【0080】
試験の原理:
96ウェルマイクロプレートの各ウェルは、ヒトSOD1のアミノ酸配列73-GGPKDEERHVGD-84(配列番号11)内のエピトープ、特にアミノ酸配列73-GGPKDEERHVG-83(配列番号12)を含むエピトープにおいてmSOD1を特異的に認識し、目的のサンプルからmSOD1を捕捉するモノクローナル抗体である捕捉抗体NI-204.Bを用いて、Aushon BioSystemsによって予めスポットされている。結合していないタンパク質を洗い流した後、Abcamからab185125又はab79390として入手可能なビオチン化SOD1ウサギモノクローナル検出抗体EPR1726を添加し、これをmSOD1上の二次部位に結合させた(この場合、ab185125を使用した)。過剰な検出抗体を除去した後、ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼ(SA-HRP)を添加した。HRPは、基質と反応して、Cirascan(商標)画像化システムによって検出される発光シグナルを生成する酵素である。生成されるシグナルの強度は、標準又は目的のサンプル中の各タンパク質の量に正比例する。強度は、積分密度値(IDV)で表され、SoftMax Proにエクスポートされ、ここで、重み付けされた5パラメータアルゴリズムは、対応する標準曲線から補間された結果を使用して未知のサンプルを逆計算するために使用される。
【0081】
特に、アッセイは、以下のように行った:-70℃で保存した20μg/mL mSOD1(安定化剤(stabilzyme)/プロテアーゼ阻害剤カクテルで希釈したmSOD1溶液)の原液を解凍した。さらに、全てのアッセイ構成要素を冷蔵庫/冷凍庫から取り出し、使用前に室温で30~60分間保管した。1×洗浄緩衝液は、ボトル全体(50mL)を1200mLの脱イオン水に添加することによって調製した。
【0082】
インキュベーション工程中、96ウェルマイクロプレートの上にMicroClime(登録商標)Lidを配置した。使用前にそれを脱イオン(DI)水で満たした。このために、蓋を充填材料から取り外し、充填トラフ(蓋の縁の周りの溝)及び角が上を向くように配置した。シリンジ又はマルチチャネルピペットを用いて、4mLのDI水を、蓋の長い縁部の上部の充填トラフにゆっくりと分注した。これを、長い縁部の底部の充填トラフに繰り返し、その結果、蓋は、合計8mLのDI水を含有した。キムワイプを使用して、トラフから過剰な水を除去した。インキュベーション工程の準備ができたら、蓋を裏返し、96ウェルマイクロプレートの上に置いた。
【0083】
標準はストックを解凍し、サンプル希釈剤で1:100に希釈することによって調製した。1:100標準をサンプル希釈剤でさらに1:3に希釈して、トップ標準を受け取った。トップ標準をさらに1:3に希釈して、合計11の非ゼロ標準を得た。ゼロ標準は、標準希釈剤のみであった。サンプル及び対照をサンプル希釈液で3倍に希釈した。
【0084】
mSOD1-マイクロプレートをパウチから取り出し、Immuno Wash 12手動洗浄器を使用して、≧300μLの1×洗浄緩衝液で6回洗浄した。その後、プレートを吸収紙上で確実にパットドライした。標準50μL、希釈した対照及び希釈したサンプルを複製した適切なウェルに添加し、プレートをMicroClime(登録商標)Lidで覆い、600rpmに設定したプレートシェーカー上で2時間室温においてインキュベートした。プレートを、Immuno Wash 12手動洗浄器を使用して、≧300μLの1×洗浄緩衝液で4回洗浄した。その後、プレートを吸収紙上で確実にパットドライした。各ウェルに、IgGスパイクしたビオチン化抗体試薬50μLを添加し、そのプレートをMicroClime(登録商標)Lidで覆い、600rpmに設定したプレートシェーカー上で30分間室温においてインキュベートした。その後、プレートを、Immuno Wash 12手動洗浄機を使用して≧300μLの1×洗浄緩衝液で4回洗浄し、吸収紙上でパットドライした。50μLのストレプトアビジン-HRP試薬を各ウェルに添加し、プレートをMicroClime(登録商標)Lidで覆い、600rpmに設定したプレートシェーカー上で30分間室温においてインキュベートした。その後、プレートを、Immuno Wash 12手動洗浄機を使用して≧300μLの1×洗浄緩衝液で4回洗浄し、吸収紙上でパットドライした。
【0085】
SuperSignal(登録商標)基質溶液を調製したが、使用前15分以下であり、好ましくは最後の洗浄工程の直前であった。50μLの混合SuperSignal(登録商標)基質溶液を各ウェルに添加し、プレートをAushon Cirascan Imaging System上で2~4分以内に読み取り、それにより各プレートの短時間及び長時間の露光時間を記録した。Cirasoftからの積分密度値(IDV)を転送し、SoftMax Pro Protocolを介して処理し、重み付き5パラメータロジスティック曲線適合を用いて結果を定量した。
【0086】
このアッセイを使用して、mSOD1は、許容可能な精度で7.01pg/mL及び6pg/mLに定量化することができた。10.16pg/mL~7404.41pg/mLのmSOD1範囲内でさらにより精密な結果を得ることができ、CSFサンプルの1:2 MRD(最小必要希釈)後に20.32~14814.82pg/mLの報告可能な範囲をもたらした。したがって、アッセイは、mSOD1の定量下限(LLOQ)が約≦20.32pg/mLであり、検出下限(LLOD)が約7pg/mLである。
【0087】
実施例2:fALS及びsALS患者からのCSFサンプル中のmSOD1の検出
上述のアッセイパラメータを用いて、CSFサンプルを分析した。特に、異なるSOD1突然変異を有する10人のfALS患者、6人のsALS患者及び10人の非神経学的対照(NNC)参加者のCSFサンプルをmSOD1についてスクリーニングした。
図1A、B及びCを参照されたい。これらの対照参加者は、神経学的障害を有さないが、他の疾患を有し得る。
図1D及びEに示すように、大部分のfALS及びsALS患者のCSF中にmSOD1が検出され、すなわち、fALS及びsALS患者のCSF中に検出されたmSOD1の量は、対照患者のCSF中のmSDO1の量よりも多かった。
【0088】
実施例3:mSOD1に特異的な単一分子アレイ(Simoa(商標))アッセイの確立及び検証
この実験では、対象の体液中のmSOD1の測定は、Simoa(商標)アッセイ及び捕捉抗体として抗体NI-204.Bを使用した。上記で説明したように、3段階アプローチ(30分捕捉、5分検出、5分酵素コンジュゲート)及びQuanterix Homebrew Kitを適用することにより、Simoa(商標)アッセイを行った。サンプル容量は、100μlであった。捕捉及び検出抗体並びにミスフォールドSODの抗原ストック(667g/mL)を試薬調製前に4℃で保存した。検出抗体は、市販されている(Abcam ab185125)。CSFサンプルは、分析まで-80℃に保った。
【0089】
まず、常磁性ビーズ(直径2.7μm)の表面を第1の抗mSOD1抗体(捕捉抗体)で被覆した。ビーズは、典型的には、約250,000個の付着部位を含む。特に、捕捉抗体を標準的なQuanterix Homebrewアッセイプロトコルに従って処理した。捕捉抗体を、0.7mg/mLの抗体濃度及び0.5mg/mLのEDCで標準的な2段階1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)カップリング化学を用いて磁気ビーズにコンジュゲートした。
【0090】
第2の抗mSOD1抗体(検出抗体)を、標準的なQuanterix Homebrewビオチン化プロトコルを用いて60倍のモル過剰でビオチン化した。
【0091】
捕捉ビーズをHomebrew Kitの標準ビーズ希釈剤で希釈し、4×106ビーズ/mLをサンプル液に添加して、標的分子よりも多くのビーズが存在するようにした。インキュベーションを30分間にわたって行った。それにより、サンプル中に存在するミスフォールドSOD1は、捕捉ビーズによって捕捉される。CSFサンプルをGeneric Homebrew Sample Diluentで2倍に希釈した。次いで、ビーズを洗浄して非特異的に結合したタンパク質を除去し、続いて0.1μg/mLのビオチン化検出抗体を捕捉ビーズと混合した。検出抗体の希釈には、Generic Homebrew Detector Diluentを使用した。この混合物を5分間インキュベートし、ビーズ上の捕捉されたmSOD1への検出抗体の結合を可能にした。
【0092】
第2の洗浄工程に続いて、ストレプトアビジン-β-ガラクトシダーゼ(SβG)のコンジュゲート(Homebrew KitのSβG希釈剤で希釈)300pMを捕捉ビーズと混合し、5分間インキュベートした。SβGはビオチン化検出抗体に結合し、捕捉されたミスフォールドSOD1の酵素標識をもたらす。このようにして、単一のタンパク質分子を捕捉した各ビーズを酵素で標識する。分子を捕捉しないビーズは、標識を含まないままである。
【0093】
3回目の洗浄後、捕捉ビーズをレゾルフィンβ-D-ガラクトピラノシド(RGP)基質溶液に再懸濁し、Simoa Discに移した。これは、1ウェル当たり1つ以下のビーズを保持するようにサイズ設定された216,000フェムトリットルサイズのウェル(幅4.25μm、深さ3.25μm)のアレイである。その後、ウェルを油で密封し、画像化する。
【0094】
ミスフォールドSOD1が捕捉及び標識されている場合、β-ガラクトシダーゼは、RGP基質を加水分解して蛍光生成物にし、これが測定のためのシグナルを提供する。単一標識のミスフォールドSOD1分子は、Simoa光学システム(Simoa HD-1 Analyzer(機器ID:2710000020及び2710000004 STD RUO;ソフトウェアバージョン1.5))によって検出及び計数されるのに十分な蛍光シグナルを30秒でもたらす。
【0095】
試験サンプル中のタンパク質濃度は、ビーズを含むウェルの総数に対して、ビーズ及び蛍光生成物の両方を含むウェルの数を計数することによって決定される。Simoa(商標)アッセイは、総アナログシグナルを使用することによるのではなく、濃度をデジタル的に決定することを可能にするため、単一の免疫複合体を検出するこのアプローチは、デジタルELISAと呼ばれている。低いミスフォールドSOD1濃度では、正のシグナルを有するアレイ中のビーズ含有ウェルのパーセンテージは、サンプル中に存在するミスフォールドSOD1の量に比例する。より高い標的濃度では、ビーズ含有ウェルの大部分が1つ以上の標識された標的分子を有する場合、総蛍光シグナルは、サンプル中に存在するミスフォールドSOD1の量に比例する。未知のサンプル中のミスフォールドSOD1の濃度は、標準曲線から補間される。
【0096】
中間mSOD1ストックから作製された、1μg/mLから開始する段階希釈による検量線を生成することにより、mSOD1を用いた較正を行った(667μg/mLストックから6.7μg/mLへの100倍希釈)。希釈は、Generic Homebrew Calibrator Diluent Aを用いて行い、4パラメータロジスティック曲線適合データ削減方法(4PLC、1/y2加重)を用いた。このアッセイは、2×アッセイバックグラウンド法に基づいて、6pg/mL~32pg/mLのLLOD範囲(平均LLOD:15.7pg/mL)及び58pg/mL~132pg/mLのLLOQ範囲を有する。
【0097】
さらなる試験において、ヒトSOD1のアミノ酸配列73-GGPKDEERHVGD-84(配列番号11)内のエピトープでmSOD1を特異的に認識する捕捉抗体としての別のモノクローナル抗体、すなわちアミノ酸配列76-KDEERHVGD-84(配列番号13)を含むエピトープを認識する抗体NI-204.Oを用いて、Simoa(商標)アッセイを用いて対象の体液中のmSOD1を測定した。Simoa(商標)アッセイは、原則として上述のように実施したが、試薬の濃度は、異なっていた。特に、常磁性ビーズへの捕捉抗体のコンジュゲーションを0.5mg/mLの抗体濃度で実施し;1,500,000捕捉ビーズ/mLをサンプル溶液に添加し;検出抗体を60倍のモル過剰でビオチン化し;0.75μg/mLのビオチン化検出抗体をアッセイに使用し;75pM SβGを標識に使用し;CSFサンプルをGeneric Homebrew Sample Diluentで4倍に希釈した。このアッセイは、10.8~13.6pg/mLのLLOD範囲を有する。
【配列表】
【国際調査報告】