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特表2023-519199トレプロスチニルプロドラッグの医薬製剤及びその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】トレプロスチニルプロドラッグの医薬製剤及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/192 20060101AFI20230428BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20230428BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230428BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20230428BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20230428BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20230428BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230428BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230428BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20230428BHJP
   A61K 31/216 20060101ALN20230428BHJP
【FI】
A61K31/192
A61K47/54
A61K47/10
A61K47/06
A61K9/12
A61K47/24
A61K47/14
A61P11/00
A61P9/12
A61K31/216
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556050
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 US2021024077
(87)【国際公開番号】W WO2021195328
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】62/994,596
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513204012
【氏名又は名称】インスメッド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】マリニン,ウラジミール
(72)【発明者】
【氏名】プラウント,アダム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA24
4C076CC42
4C076DD08
4C076DD09
4C076DD35
4C076DD37
4C076DD38
4C076EE23
4C076EE59
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA28
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA33
4C206NA10
4C206NA15
4C206ZA42
4C206ZA59
(57)【要約】
本開示は、トレプロスチニルプロドラッグの医薬製剤と、その調製方法と、定量吸入器を用いた吸入による肺高血圧症(例えば、肺動脈性肺高血圧症)、門脈肺高血圧症、及び肺線維症の処置におけるその使用方法とを提供する。製剤は、(a)トレプロスチニルプロドラッグ、例えば、トレプロスチニルアルキルエステル又はアミド、(b)ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル又は少なくとも1つのポリエチレングリコール-脂質(PEG化脂質)、(c)ポリエチレングリコール(PEG)及びプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1つの界面活性剤、(d)少なくとも1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤、並びに(e)少なくとも1つのアルコール共溶媒を含むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式(Ia):
【化1】
(式中、RはOであり;Rはドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル又はオクタデシルであり;且つnは0~5の整数である)
の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩と、
(b)ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル又は少なくとも1つのポリエチレングリコール-脂質(PEG化脂質)と、
(c)ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール、又はこれらの組合せから選択される界面活性剤と、
(d)少なくとも1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤と、
(e)少なくとも1つのアルコール共溶媒と
を含む医薬製剤。
【請求項2】
前記(a)が式(Ia)の化合物又はその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
前記nが0又は1である、請求項1又は2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
前記nが0である、請求項1又は2に記載の医薬製剤。
【請求項5】
前記nが1である、請求項1又は2に記載の医薬製剤。
【請求項6】
(a)式(Ib):
【化2】
(式中、nは0であり、RはNH又はOであり、且つRは直鎖C~C18アルキルである)
の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩と、
(b)ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル又は少なくとも1つのポリエチレングリコール-脂質(PEG化脂質)と、
(c)PEG、プロピレングリコール、又はこれらの組合せから選択される界面活性剤と、
(d)少なくとも1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤と、
(e)少なくとも1つのアルコール共溶媒と
を含む医薬製剤。
【請求項7】
前記(a)が式(Ib)の化合物又はその薬学的に許容される塩である、請求項6に記載の医薬製剤。
【請求項8】
前記RがNHである、請求項6又は7に記載の医薬製剤。
【請求項9】
前記RがOである、請求項6又は7に記載の医薬製剤。
【請求項10】
が、直鎖ヘプチル、直鎖オクチル、直鎖ノニル、直鎖デシル、直鎖ウンデシル、直鎖ドデシル、直鎖トリデシル、直鎖テトラデシル、直鎖ペンタデシル、直鎖ヘキサデシル、直鎖ヘプタデシル又は直鎖オクタデシル(octadectyl)である、請求項6~9のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項11】
前記式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩が、約0.5~約3mg/mLの濃度で存在する、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項12】
前記式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はその薬学的に許容される塩が、約0.5~約3mg/mLの濃度で存在する、請求項11に記載の医薬製剤。
【請求項13】
前記ポリオキシエチレン(20)セチルエーテルが、約0.25~約0.75mg/mLの濃度で存在する、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項14】
前記ポリオキシエチレン(20)セチルエーテルが、約0.5mg/mLの濃度で存在する、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項15】
前記少なくとも1つのPEG化脂質が1つのPEG化脂質である、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項16】
前記少なくとも1つのPEG化脂質が、DSPE(ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン)-PEG2000、DSG(ジステルアロイルグリセロール)-PEG2000、及びDPG(ジホスファチジルグリセロール)-PEG2000からなる群から選択される1つのPEG化脂質である、請求項15に記載の医薬製剤。
【請求項17】
前記少なくとも1つのPEG化脂質が、DSPE-PEG2000、DSG-PEG2000、及びDPG-PEG2000のうちの2つ又は3つの組合せからなる、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項18】
前記少なくとも1つのPEG化脂質が、約0.2~約3mg/mLの濃度で存在する、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項19】
前記界面活性剤が、PEG400、PEG1000、及びプロピレングリコールからなる群から選択される1つの界面活性剤である、請求項1~18のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項20】
前記界面活性剤が、PEG400、PEG1000、及びプロピレングリコールのうちの2つ又は3つの組合せからなる、請求項1~18のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項21】
前記界面活性剤が、約0.75~約6mg/mLの濃度で存在する、請求項1~20のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項22】
前記少なくとも1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤が1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤である、請求項1~21のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項23】
前記少なくとも1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤が、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA134a)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロ-n-プロパン(HFA227ea)、及び1,1-ジフルオロエタン(HFA152a)からなる群から選択される1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤である、請求項22に記載の医薬製剤。
【請求項24】
前記少なくとも1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤が、HFA134a、HFA227ea、及びHFA152aのうちの2つ又は3つの組合せからなる、請求項1~21のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項25】
前記少なくとも1つのアルコール共溶媒が1つのアルコール共溶媒である、請求項1~24のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項26】
前記少なくとも1つのアルコール共溶媒が、エタノール及びイソプロピルアルコールからなる群から選択される1つのアルコール共溶媒である、請求項25に記載の医薬製剤。
【請求項27】
前記少なくとも1つのアルコール共溶媒が、エタノール及びイソプロピルアルコールの組合せである、請求項1~24のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項28】
前記少なくとも1つのアルコール共溶媒が、前記医薬製剤の全重量に基づいて約3%~約10%(w/w)の濃度で存在する、請求項1~27のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項29】
(a)約0.5~約3mg/mLの濃度の、式(II):
【化3】
(式中、Rは、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、又はオクタデシルである)
の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩と、
(b)約0.25~約0.75mg/mLの濃度のポリオキシエチレン(20)セチルエーテル、又は約0.2~約3mg/mLの濃度の、DSPE-PEG2000、DSG-PEG2000、及びDPG-PEG2000からなる群から選択される少なくとも1つのPEG化脂質と、
(c)約0.75~約6mg/mLの濃度の、PEG400、PEG1000、プロピレングリコール、又はこれらの組合せから選択される界面活性剤と、
(d)HFA134a、HFA227ea、及びHFA152aからなる群から選択される少なくとも1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤と、
(e)前記医薬製剤の全重量に基づいて約3%~約10%(w/w)の濃度の、エタノール及びイソプロピルアルコールからなる群から選択される少なくとも1つのアルコール共溶媒と
を含む医薬製剤。
【請求項30】
前記(a)が、式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩である、請求項29に記載の医薬製剤。
【請求項31】
前記ポリオキシエチレン(20)セチルエーテルが、約0.5mg/mLの濃度で存在する、請求項29又は30に記載の医薬製剤。
【請求項32】
(a)約0.5~約3mg/mLの濃度の、式(II):
【化4】
(式中、Rは、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、又はオクタデシルである)
の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩と、
(b)約0.25~約0.75mg/mLの濃度のポリオキシエチレン(20)セチルエーテル、又は約0.2~約3mg/mLの濃度の、DSPE-PEG2000、DSG-PEG2000、及びDPG-PEG2000からなる群から選択される少なくとも1つのPEG化脂質と、
(c)約0.75~約6mg/mLの濃度の、PEG400、PEG1000、プロピレングリコール、又はこれらの組合せから選択される界面活性剤と、
(d)HFA134a、HFA227ea、及びHFA152aからなる群から選択される少なくとも1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤と、
(e)前記医薬製剤の全重量に基づいて約3%~約10%(w/w)の濃度の、エタノール及びイソプロピルアルコールからなる群から選択される少なくとも1つのアルコール共溶媒と
からなる医薬製剤。
【請求項33】
前記(a)が、式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩である、請求項32に記載の医薬製剤。
【請求項34】
前記ポリオキシエチレン(20)セチルエーテルが、約0.5mg/mLの濃度で存在する、請求項32又は33に記載の医薬製剤。
【請求項35】
前記少なくとも1つのPEG化脂質が、DSPE-PEG2000、DSG-PEG2000、及びDPG-PEG2000からなる群から選択される1つのPEG化脂質である、請求項29~34のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項36】
前記少なくとも1つのPEG化脂質が、DSPE-PEG2000、DSG-PEG2000、及びDPG-PEG2000のうちの2つ又は3つの組合せからなる、請求項29~34のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項37】
前記界面活性剤が、PEG400、PEG1000、及びプロピレングリコールからなる群から選択される1つの界面活性剤である、請求項29~36のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項38】
前記界面活性剤が、PEG400、PEG1000、及びプロピレングリコールのうちの2つ又は3つの組合せからなる、請求項29~36のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項39】
前記少なくとも1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤が、HFA134a、HFA227ea、及びHFA152aからなる群から選択される1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤である、請求項29~38のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項40】
前記少なくとも1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤が、HFA134a、HFA227ea、及びHFA152aのうちの2つ又は3つの組合せからなる、請求項29~38のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項41】
前記少なくとも1つのアルコール共溶媒が、エタノール及びイソプロピルアルコールからなる群から選択される1つのアルコール共溶媒である、請求項29~40のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項42】
前記少なくとも1つのアルコール共溶媒が、エタノール及びイソプロピルアルコールの組合せである、請求項29~40のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項43】
前記式(Ia)、(Ib)、若しくは(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩が、前記医薬製剤中に約0.5~約1mg/mLで存在する、請求項1~42のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項44】
前記式(Ia)、(Ib)、若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩が、前記医薬製剤中に約0.5~約1mg/mLで存在する、請求項43に記載の医薬製剤。
【請求項45】
前記式(Ia)、(Ib)、若しくは(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩が、前記医薬製剤中に約1mg/mLで存在する、請求項43に記載の医薬製剤。
【請求項46】
前記式(Ia)、(Ib)、若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩が、前記医薬製剤中に約1mg/mLで存在する、請求項45に記載の医薬製剤。
【請求項47】
前記少なくとも1つのPEG化脂質が、前記医薬製剤中に約0.2~約3mg/mLで存在するDSPE-PEG2000である、請求項1~16、18~35、及び37~46のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項48】
前記DSPE-PEG2000が、前記医薬製剤中に約0.25~約0.75mg/mLで存在する、請求項47に記載の医薬製剤。
【請求項49】
前記DSPE-PEG2000が、前記医薬製剤中に約0.5mg/mLで存在する、請求項47又は48に記載の医薬製剤。
【請求項50】
前記少なくとも1つのPEG化脂質が、前記医薬製剤中に約0.2~約0.5mg/mLで存在するDSG-PEG2000である、請求項1~16、18~35、及び37~46のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項51】
前記DSG-PEG2000が、前記医薬製剤中に約0.25mg/mLで存在する、請求項50に記載の医薬製剤。
【請求項52】
前記少なくとも1つのPEG化脂質が、前記医薬製剤中に約0.2~約0.5mg/mLで存在するDPG-PEG2000である、請求項1~16、18~35、及び37~46のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項53】
前記DPG-PEG2000が、前記医薬製剤中に約0.25mg/mLで存在する、請求項52に記載の医薬製剤。
【請求項54】
前記少なくとも1つの界面活性剤が、前記医薬製剤中に約0.75~約6mg/mLで存在するPEG400である、請求項1~19、21~37、及び39~53のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項55】
前記PEG400が、前記医薬製剤中に約1.5~約3mg/mLで存在する、請求項54に記載の医薬製剤。
【請求項56】
前記PEG400が、前記医薬製剤中に約3mg/mLで存在する、請求項54又は55に記載の医薬製剤。
【請求項57】
前記少なくとも1つの界面活性剤が、前記医薬製剤中に約0.75~約3mg/mLで存在するPEG1000である、請求項1~19、21~37、及び39~53のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項58】
前記PEG1000が、前記医薬製剤中に約3mg/mLで存在する、請求項57に記載の医薬製剤。
【請求項59】
前記少なくとも1つの界面活性剤が、前記医薬製剤中に約0.75~約3mg/mLで存在するプロピレングリコールである、請求項1~19、21~37、及び39~53のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項60】
前記プロピレングリコールが、前記医薬製剤中に約1.5mg/mLで存在する、請求項59に記載の医薬製剤。
【請求項61】
前記少なくとも1つのアルコール共溶媒が、前記医薬製剤の全重量に基づいて前記医薬製剤中に約3%~約10%(w/w)で存在するエタノールである、請求項1~26、28~41、及び43~60のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項62】
前記エタノールが、前記医薬製剤の全重量に基づいて前記医薬製剤中に約3%~約5%(w/w)で存在する、請求項61に記載の医薬製剤。
【請求項63】
前記少なくとも1つのアルコール共溶媒が、前記医薬製剤の全重量に基づいて前記医薬製剤中に約5%~約10%(w/w)で存在するイソプロピルアルコールである、請求項1~26、28~41、及び43~60のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項64】
前記イソプロピルアルコールが、前記医薬製剤の全重量に基づいて前記医薬製剤中に約10%(w/w)で存在する、請求項63に記載の医薬製剤。
【請求項65】
前記少なくとも1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤がHFA134aである、請求項1~23、25~39、及び41~64のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項66】
前記少なくとも1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤がHFA227eaである、請求項1~23、25~39、及び41~64のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項67】
前記少なくとも1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤がHFA152aである、請求項1~23、25~39、及び41~64のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項68】
前記Rが、直鎖ドデシル、直鎖トリデシル、直鎖テトラデシル、直鎖ペンタデシル、直鎖ヘキサデシル、直鎖ヘプタデシル又は直鎖オクタデシルである、請求項1~67のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項69】
前記Rが直鎖ドデシルである、請求項1~68のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項70】
前記Rが直鎖トリデシルである、請求項1~68のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項71】
前記Rが直鎖テトラデシルである、請求項1~68のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項72】
前記Rが直鎖ペンタデシルである、請求項1~68のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項73】
前記Rが直鎖ヘキサデシルである、請求項1~68のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項74】
前記式(Ia)若しくは(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩が、式(III):
【化5】
の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩である、請求項73に記載の医薬製剤。
【請求項75】
前記式(Ia)若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩が、式(III)の化合物又はその薬学的に許容される塩である、請求項74に記載の医薬製剤。
【請求項76】
前記式(Ia)若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩が、式(III)の化合物である、請求項74又は75に記載の医薬製剤。
【請求項77】
前記Rが直鎖ヘプタデシルである、請求項1~68のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項78】
前記Rが直鎖オクタデシルである、請求項1~68のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項79】
前記(b)がポリオキシエチレン(20)セチルエーテルである、請求項1~78のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項80】
前記(b)が少なくとも1つのポリエチレングリコール-脂質(PEG化脂質)である、請求項1~78のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項81】
前記Rが直鎖ヘキサデシルであり、前記式(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩が、式(III):
【化6】
の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩であり、前記医薬製剤が、1mg/mLの前記式(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩と、0.5mg/mLのDSPE-PEG2000と、3mg/mLのPEG400と、前記医薬製剤の全重量に基づいて10%(w/w)のイソプロピルアルコールと、HFA134aとを含む、請求項29に記載の医薬製剤。
【請求項82】
前記Rが直鎖ヘキサデシルであり、前記式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩が、式(III)の化合物又はその薬学的に許容される塩であり、前記医薬製剤が、1mg/mLの前記式(III)の化合物又はその薬学的に許容される塩と、0.5mg/mLのDSPE-PEG2000と、3mg/mLのPEG400と、前記医薬製剤の全重量に基づいて10%(w/w)のイソプロピルアルコールと、HFA134aとを含む、請求項81に記載の医薬製剤。
【請求項83】
前記Rが直鎖ヘキサデシルであり、前記式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩が式(III)の化合物であり、前記医薬製剤が、1mg/mLの前記式(III)の化合物と、0.5mg/mLのDSPE-PEG2000と、3mg/mLのPEG400と、前記医薬製剤の全重量に基づいて10%(w/w)のイソプロピルアルコールと、HFA134aとを含む、請求項81又は82に記載の医薬製剤。
【請求項84】
前記Rが直鎖ヘキサデシルであり、前記式(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩が、式(III):
【化7】
の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩であり、前記医薬製剤が、1mg/mLの前記式(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩と、0.5mg/mLのDSPE-PEG2000と、3mg/mLのPEG400と、前記医薬製剤の全重量に基づいて10%(w/w)のイソプロピルアルコールと、HFA134aとからなる、請求項32に記載の医薬製剤。
【請求項85】
前記Rが直鎖ヘキサデシルであり、前記式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩が、式(III)の化合物又はその薬学的に許容される塩であり、前記医薬製剤が、1mg/mLの前記式(III)の化合物又はその薬学的に許容される塩と、0.5mg/mLのDSPE-PEG2000と、3mg/mLのPEG400と、前記医薬製剤の全重量に基づいて10%(w/w)のイソプロピルアルコールと、HFA134aとからなる、請求項84に記載の医薬製剤。
【請求項86】
前記Rが直鎖ヘキサデシルであり、前記式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩が式(III)の化合物であり、前記医薬製剤が、1mg/mLの前記式(III)の化合物と、0.5mg/mLのDSPE-PEG2000と、3mg/mLのPEG400と、前記医薬製剤の全重量に基づいて10%(w/w)のイソプロピルアルコールと、HFA134aとからなる、請求項84又は85に記載の医薬製剤。
【請求項87】
前記医薬製剤がエアロゾルの形態である、請求項1~86のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項88】
前記エアロゾルが、次世代インパクター(NGI)で測定したときに、約1~約3μmの空気動力学的質量中央径(MMAD)を有する、請求項87に記載の医薬製剤。
【請求項89】
前記エアロゾルが、NGIで測定したときに、約1~約2μmのMMADを有する、請求項87に記載の医薬製剤。
【請求項90】
前記エアロゾルが、NGIで測定したときに、約1.5μmのMMADを有する、請求項87に記載の医薬製剤。
【請求項91】
前記エアロゾルが、NGIで測定したときに、約5%~約40%の咽頭沈着を有する、請求項87~90のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項92】
前記エアロゾルが、NGIで測定したときに、約10%~約30%の咽頭沈着を有する、請求項87~90のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項93】
前記エアロゾルが、NGIで測定したときに、約10%~約25%の咽頭沈着を有する、請求項87~90のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項94】
前記エアロゾルが、NGIで測定したときに、約15%~約25%の咽頭沈着を有する、請求項87~90のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項95】
前記エアロゾルが、NGIで測定したときに、約15%~約20%の咽頭沈着を有する、請求項87~90のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項96】
前記エアロゾルが、NGIで測定したときに、約50%~約95%の微粒子画分(FPF)を有する、請求項87~95のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項97】
前記エアロゾルが、NGIで測定したときに、約60%~約85%のFPFを有する、請求項87~95のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項98】
前記エアロゾルが、NGIで測定したときに、約70%~約85%のFPFを有する、請求項87~95のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項99】
前記エアロゾルが、NGIで測定したときに、約75%~約85%のFPFを有する、請求項87~95のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項100】
前記エアロゾルが、NGIで測定したときに、約70%~約80%のFPFを有する、請求項87~95のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項101】
定量バルブと、請求項1~100のいずれか一項に記載の医薬製剤とを含むキャニスタ。
【請求項102】
陽極酸化、ラッカー被覆、及び/又はプラスチック被覆されたアルミニウム缶を含む、請求項101に記載のキャニスタ。
【請求項103】
前記アルミニウム缶がフルオロカーボンポリマーで被覆された、請求項102に記載のキャニスタ。
【請求項104】
前記フルオロカーボンポリマーが、フッ素化エチレンプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、又はこれらの組合せから選択される、請求項103に記載のキャニスタ。
【請求項105】
適切なチャネリングデバイス内にはめ込まれた、請求項101~104のいずれか一項に記載のキャニスタを含む定量吸入器(MDI)。
【請求項106】
前記チャネリングデバイスが、直径約0.1~約0.3mmのアクチュエータオリフィスを有するマウスピースアクチュエータを含む、請求項105に記載のMDI。
【請求項107】
前記式(Ia)、(Ib)、(II)、若しくは(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩の約30~約70μgの放出用量を有するように構成された、請求項105又は106に記載のMDI。
【請求項108】
前記式(Ia)、(Ib)、(II)、若しくは(III)の化合物、又はその薬学的に許容される塩の約30~約70μgの放出用量を有するように構成された、請求項107に記載のMDI。
【請求項109】
前記式(Ia)、(Ib)、(II)、又は(III)の化合物の約30~約70μgの放出用量を有するように構成された、請求項108に記載のMDI。
【請求項110】
前記式(Ia)、(Ib)、(II)、若しくは(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩の約40~約60μgの放出用量を有するように構成された、請求項105又は106に記載のMDI。
【請求項111】
前記式(Ia)、(Ib)、(II)、若しくは(III)の化合物、又はその薬学的に許容される塩の約40~約60μgの放出用量を有するように構成された、請求項110に記載のMDI。
【請求項112】
前記式(Ia)、(Ib)、(II)、又は(III)の化合物の約40~約60μgの放出用量を有するように構成された、請求項111に記載のMDI。
【請求項113】
前記MDIが、NGIで測定したときに約1~約3μmのMMADを有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項105~112のいずれか一項に記載のMDI。
【請求項114】
前記MDIが、NGIで測定したときに約1~約2μmのMMADを有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項105~112のいずれか一項に記載のMDI。
【請求項115】
前記MDIが、NGIで測定したときに約1.5μmのMMADを有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項105~112のいずれか一項に記載のMDI。
【請求項116】
前記MDIが、NGIで測定したときに約5%~約40%の咽頭沈着を有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項105~115のいずれか一項に記載のMDI。
【請求項117】
前記MDIが、NGIで測定したときに約10%~約30%の咽頭沈着を有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項105~115のいずれか一項に記載のMDI。
【請求項118】
前記MDIが、NGIで測定したときに約10%~約25%の咽頭沈着を有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項105~115のいずれか一項に記載のMDI。
【請求項119】
前記MDIが、NGIで測定したときに約15%~約25%の咽頭沈着を有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項105~115のいずれか一項に記載のMDI。
【請求項120】
前記MDIが、NGIで測定したときに約15%~約20%の咽頭沈着を有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項105~115のいずれか一項に記載のMDI。
【請求項121】
前記MDIが、NGIで測定したときに約50%~約95%の微粒子画分(FPF)を有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項105~120のいずれか一項に記載のMDI。
【請求項122】
前記MDIが、NGIで測定したときに約60%~約85%のFPFを有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項105~120のいずれか一項に記載のMDI。
【請求項123】
前記MDIが、NGIで測定したときに約70%~約85%のFPFを有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項105~120のいずれか一項に記載のMDI。
【請求項124】
前記MDIが、NGIで測定したときに約75%~約85%のFPFを有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項105~120のいずれか一項に記載のMDI。
【請求項125】
前記MDIが、NGIで測定したときに約70%~約80%のFPFを有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項105~120のいずれか一項に記載のMDI。
【請求項126】
前記MDIが、NGIで測定したときに約10~約40μgの微粒子用量(FPD)を有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項105~125のいずれか一項に記載のMDI。
【請求項127】
前記MDIが、NGIで測定したときに約15~約40μgのFPDを有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項105~125のいずれか一項に記載のMDI。
【請求項128】
前記MDIが、NGIで測定したときに約20~約40μgのFPDを有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項105~125のいずれか一項に記載のMDI。
【請求項129】
前記MDIが、NGIで測定したときに約30~約40μgのFPDを有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項105~125のいずれか一項に記載のMDI。
【請求項130】
前記MDIが、NGIで測定したときに約30~約35μgのFPDを有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項105~125のいずれか一項に記載のMDI。
【請求項131】
それを必要としている患者において肺高血圧症を処置するための方法であって、定量吸入器を用いた吸入により、有効量の請求項1~100のいずれか一項に記載の医薬製剤を前記患者の肺に投与することを含む方法。
【請求項132】
前記肺高血圧症が肺動脈性肺高血圧症である、請求項131に記載の方法。
【請求項133】
前記肺動脈性肺高血圧症が、ニューヨーク心臓協会(NYHA)により特徴付けられるクラスIの肺動脈性肺高血圧症である、請求項132に記載の方法。
【請求項134】
前記肺動脈性肺高血圧症が、NYHAにより特徴付けられるクラスIIの肺動脈性肺高血圧症である、請求項132に記載の方法。
【請求項135】
前記肺動脈性肺高血圧症が、NYHAにより特徴付けられるクラスIIIの肺動脈性肺高血圧症である、請求項132に記載の方法。
【請求項136】
前記肺動脈性肺高血圧症が、NYHAにより特徴付けられるクラスIVの肺動脈性肺高血圧症である、請求項132に記載の方法。
【請求項137】
前記肺高血圧症が、世界保健機関(WHO)により特徴付けられる第1群の肺高血圧症である、請求項131に記載の方法。
【請求項138】
前記肺高血圧症が、WHOにより特徴付けられる第2群の肺高血圧症である、請求項131に記載の方法。
【請求項139】
前記肺高血圧症が、WHOにより特徴付けられる第3群の肺高血圧症である、請求項131に記載の方法。
【請求項140】
前記肺高血圧症が、WHOにより特徴付けられる第4群の肺高血圧症である、請求項131に記載の方法。
【請求項141】
前記肺高血圧症が、WHOにより特徴付けられる第5群の肺高血圧症である、請求項131に記載の方法。
【請求項142】
それを必要としている患者において門脈肺高血圧症又は肺線維症を処置するための方法であって、定量吸入器を用いた吸入により、有効量の請求項1~100のいずれか一項に記載の医薬製剤を前記患者の肺に投与することを含む方法。
【請求項143】
前記投与が、1日1回、1日2回、又は1日3回の投薬で行われる、請求項131~142のいずれか一項に記載の方法。
【請求項144】
前記投与が、前記医薬製剤をエアロゾル化することと、エアロゾル化医薬製剤を吸入によって前記患者の肺に投与することとを含む、請求項131~143のいずれか一項に記載の方法。
【請求項145】
前記エアロゾル化医薬製剤が、NGIで測定したときに約1~約3μmのMMADを有する、請求項144に記載の方法。
【請求項146】
前記エアロゾル化医薬製剤が、NGIで測定したときに約1~約2μmのMMADを有する、請求項144に記載の方法。
【請求項147】
前記エアロゾル化医薬製剤が、NGIで測定したときに約1.5μmのMMADを有する、請求項144に記載の方法。
【請求項148】
前記エアロゾル化医薬製剤が、NGIで測定したときに約5%~約40%の咽頭沈着を有する、請求項144~147のいずれか一項に記載の方法。
【請求項149】
前記エアロゾル化医薬製剤が、NGIで測定したときに約10%~約30%の咽頭沈着を有する、請求項144~147のいずれか一項に記載の方法。
【請求項150】
前記エアロゾル化医薬製剤が、NGIで測定したときに約10%~約25%の咽頭沈着を有する、請求項144~147のいずれか一項に記載の方法。
【請求項151】
前記エアロゾル化医薬製剤が、NGIで測定したときに約15%~約25%の咽頭沈着を有する、請求項144~147のいずれか一項に記載の方法。
【請求項152】
前記エアロゾル化医薬製剤が、NGIで測定したときに約15%~約20%の咽頭沈着を有する、請求項144~147のいずれか一項に記載の方法。
【請求項153】
前記エアロゾル化医薬製剤が、NGIで測定したときに約50%~約95%のFPFを有する、請求項144~152のいずれか一項に記載の方法。
【請求項154】
前記エアロゾル化医薬製剤が、NGIで測定したときに約60%~約85%のFPFを有する、請求項144~152のいずれか一項に記載の方法。
【請求項155】
前記エアロゾル化医薬製剤が、NGIで測定したときに約70%~約85%のFPFを有する、請求項144~152のいずれか一項に記載の方法。
【請求項156】
前記エアロゾル化医薬製剤が、NGIで測定したときに約75%~約85%のFPFを有する、請求項144~152のいずれか一項に記載の方法。
【請求項157】
前記エアロゾル化医薬製剤が、NGIで測定したときに約70%~約80%のFPFを有する、請求項144~152のいずれか一項に記載の方法。
【請求項158】
肺高血圧症、門脈肺高血圧症、又は肺線維症を処置するためのシステムであって、請求項1~100のいずれか一項に記載の医薬製剤と、MDIとを含むシステム。
【請求項159】
前記MDIが、直径約0.1~約0.3mmのアクチュエータオリフィスを有するマウスピースアクチュエータを含む、請求項158に記載のシステム。
【請求項160】
前記MDIが、前記式(Ia)、(Ib)、(II)、若しくは(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩の約30~約70μgの放出用量を有するように構成された、請求項158又は159に記載のシステム。
【請求項161】
前記MDIが、前記式(Ia)、(Ib)、(II)、若しくは(III)の化合物、又はその薬学的に許容される塩の約30~約70μgの放出用量を有するように構成された、請求項160に記載のシステム。
【請求項162】
前記MDIが、前記式(Ia)、(Ib)、(II)、又は(III)の化合物の約30~約70μgの放出用量を有するように構成された、請求項160又は161に記載のシステム。
【請求項163】
前記MDIが、前記式(Ia)、(Ib)、(II)、若しくは(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩の約40~約60μgの放出用量を有するように構成された、請求項158又は159に記載のシステム。
【請求項164】
前記MDIが、前記式(Ia)、(Ib)、(II)、若しくは(III)の化合物、又はその薬学的に許容される塩の約40~約60μgの放出用量を有するように構成された、請求項163に記載のシステム。
【請求項165】
前記MDIが、前記式(Ia)、(Ib)、(II)、又は(III)の化合物の約40~約60μgの放出用量を有するように構成された、請求項163又は164に記載のシステム。
【請求項166】
前記MDIが、NGIで測定したときに約1~約3μmのMMADを有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項158~165のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項167】
前記MDIが、NGIで測定したときに約1~約2μmのMMADを有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項158~165のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項168】
前記MDIが、NGIで測定したときに約1.5μmのMMADを有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項158~165のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項169】
前記MDIが、NGIで測定したときに約5%~約40%の咽頭沈着を有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項158~168のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項170】
前記MDIが、NGIで測定したときに約10%~約30%の咽頭沈着を有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項158~168のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項171】
前記MDIが、NGIで測定したときに約10%~約25%の咽頭沈着を有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項158~168のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項172】
前記MDIが、NGIで測定したときに約15%~約25%の咽頭沈着を有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項158~168のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項173】
前記MDIが、NGIで測定したときに約15%~約20%の咽頭沈着を有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項158~168のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項174】
前記MDIが、NGIで測定したときに約50%~約95%のFPFを有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項158~173のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項175】
前記MDIが、NGIで測定したときに約60%~約85%のFPFを有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項158~173のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項176】
前記MDIが、NGIで測定したときに約70%~約85%のFPFを有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項158~173のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項177】
前記MDIが、NGIで測定したときに約75%~約85%のFPFを有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項158~173のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項178】
前記MDIが、NGIで測定したときに約70%~約80%のFPFを有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項158~173のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項179】
前記MDIが、NGIで測定したときに約10~約40μgの微粒子用量(FPD)を有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項158~178のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項180】
前記MDIが、NGIで測定したときに約15~約40μgのFPDを有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項158~178のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項181】
前記MDIが、NGIで測定したときに約20~約40μgのFPDを有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項158~178のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項182】
前記MDIが、NGIで測定したときに約30~約40μgのFPDを有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項158~178のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項183】
前記MDIが、NGIで測定したときに約30~約35μgのFPDを有する前記医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成された、請求項158~178のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
[0001] 本出願は、2020年3月25日に出願された米国仮特許出願第62/994,596号からの優先権を主張するものであり、その開示は参照によってその全体が本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
[0002] 肺高血圧症(PH)は、肺血管系の異常に高い血圧と特徴付けられる。これは、心不全につながる進行性の致死的疾患であり、肺動脈、肺静脈、又は肺毛細血管で起こり得る。症候的に、患者は、息切れ、眩暈、失神、及び他の症状を経験し、これらは全て労作により悪化する。複数の原因が存在し、原因不明で特発性のこともあり、他の系での高血圧症、例えば、患者が門脈圧亢進症及び肺高血圧症の両方を有する門脈肺高血圧症をもたらすこともある。
【0003】
[0003] 肺高血圧症は、世界保健機関(WHO)によって5つの群に分類されている。第1群は肺動脈性肺高血圧症(PAH)と呼ばれ、原因不明(特発性)のPAH、遺伝性PAH(すなわち、家族性PAH又はFPAH)、薬物又は毒素により引き起こされるPAH、並びに結合組織疾患、HIV感染症、肝疾患、及び先天性心疾患などの状態により引き起こされるPAHが含まれる。第2群の肺高血圧症は、左心疾患に関連する肺高血圧症と特徴付けられる。第3群の肺高血圧症は、慢性閉塞性肺疾患及び間質性肺疾患などの肺疾患に関連するPH、並びに睡眠関連呼吸障害(例えば、睡眠時無呼吸)に関連するPHと特徴付けられる。第4群のPHは、慢性の血栓性及び/又は塞栓性疾患に起因するPH、例えば、肺内の血餅又は血液凝固障害により引き起こされるPHである。第5群には、他の障害又は状態、例えば、血液障害(例えば、真性赤血球増加症、本態性血小板血症)、全身性障害(例えば、サルコイドーシス、血管炎)、及び代謝障害(例えば、甲状腺疾患、糖原病)により引き起こされるPHが含まれる。
【0004】
[0004] 世界中で約200,000人が肺動脈性肺高血圧症(PAH)を患っており、これらのうち約30,000~40,000人の患者が米国に存在する。PAH患者は肺動脈の収縮を経験し、これにより肺動脈圧が高くなり、心臓が血液を肺に送り出すことが困難になる。患者は息切れ及び疲労に苦しんでおり、多くの場合、身体活動を行う能力が著しく制限される。
【0005】
[0005] ニューヨーク心臓協会(NYHA)は、疾患の重症度を評価するために、PAH患者を4つの機能分類に分けている。NYHAにより分類されるクラスIのPAH患者は、通常の身体活動により、過度の呼吸困難若しくは疲労、胸痛又は失神寸前状態(near syncope)が生じないので、身体活動の制限を受けない。NYHAにより分類されるクラスIIのPAH患者は、身体活動にわずかな制限を受ける。これらの患者は、安静時は快適であるが、通常の身体活動により、過度の呼吸困難若しくは疲労、胸痛又は失神寸前状態が生じる。NYHAにより分類されるクラスIIIのPAH患者は、身体活動の著しい制限を受ける。安静時は快適であるが、クラスIIIのPAH患者は、通常よりも少ない身体活動の結果として、過度の呼吸困難若しくは疲労、胸痛又は失神寸前状態を経験する。NYHAにより分類されるクラスIVのPAH患者は、症状なしにいかなる身体活動も行うことができない。クラスIVのPAH患者は、安静時に呼吸困難及び/又は疲労を経験する可能性もあり、いかなる身体活動によっても不快感が増大する。クラスIVのPAH患者では、右心不全の徴候が見られることが多い。
【0006】
[0006] PAH患者は、エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)、ホスホジエステラーゼ5型(PDE-5)阻害薬、グアニル酸シクラーゼ刺激薬、プロスタノイド(例えば、プロスタサイクリン)、又はこれらの組合せにより処置される。ERAには、アブリセンタン(abrisentan)(Letairis(登録商標))、シタクセンタン、ボセンタン(Tracleer(登録商標))、及びマシテンタン(Opsumit(登録商標))が含まれる。PAHの処置に適応されるPDE-5阻害薬には、シルデナフィル(Revatio(登録商標))及びタダラフィル(Adcirca(登録商標))が含まれる。PAHの処置に適応されるプロスタノイドには、イロプロスト、エポプロセントール(epoprosentol)及びトレプロスチニル(Remodulin(登録商標)、Tyvaso(登録商標))が含まれる。承認された1つのグアニル酸シクラーゼ刺激薬は、リオシグアト(Adempas(登録商標))である。さらに、患者は、上記の化合物の組合せによって処置されることが多い。
【0007】
[0007] 門脈肺高血圧症(PPH)は門脈圧亢進症及び肺高血圧症の共存によって定義され、肝疾患の重篤な合併症である。門脈肺高血圧症の診断は、血行動態基準:(1)門脈圧亢進症及び/又は肝疾患(臨床診断-腹水/静脈瘤/脾腫)、(2)安静時平均肺動脈圧>25mmHg、(3)肺血管抵抗>240ダイン秒/cm、(4)肺動脈閉塞圧<15mmHg又は経肺圧較差(transpulmonary gradient)>12mmHgに基づく。PPHは肝疾患の重篤な合併症であり、肝硬変を患っている患者の0.25~4%に見られる。今日、PPHは、肝移植対象者の4~6%に併存している。
【0008】
[0008] 肺線維症は、肺組織に瘢痕が形成され、重篤な呼吸障害をもたらす呼吸器疾患である。瘢痕の形成、すなわち過剰な線維性結合組織の蓄積により、壁が肥厚し、血液中の酸素供給の低下が起こる。結果として、肺線維症患者は、絶え間ない息切れに苦しんでいる。一部の患者では、疾患の特定の原因を診断することができるが、他の患者では、推定原因を決定することができず、特発性肺線維症と呼ばれる状態である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
[0009] 本開示は、肺高血圧症(PH)(肺動脈性肺高血圧症(PAH)を含む)、門脈肺高血圧症(PPH)、及び肺線維症を処置するために、経肺投与に有用なトレプロスチニルプロドラッグの医薬製剤を提供する。本医薬製剤は、定量吸入器(MDI)で使用するのに適している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
[0010] 本出願は、定量吸入器(MDI)を用いた吸入による投与に適した医薬製剤、本医薬製剤の調製方法、及び治療におけるその使用に関する。
【0011】
[0011] 一態様において、本出願は、定量吸入器(MDI)を用いた吸入による投与に適した医薬製剤を提供する。一実施形態では、医薬製剤は、(a)式(I):
【化1】
(式中、RはNH、O又はSであり;Rは直鎖若しくは分枝状C~C18アルキル、直鎖C~C18アルケニル若しくは分枝状C~C18アルケニル、アリール、アリール-C~C18アルキル、アミノ酸又はペプチドであり;且つnは0~5の整数である)
の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩と、
(b)ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル又は少なくとも1つのポリエチレングリコール-脂質(PEG化脂質)と、
(c)ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール、又はこれらの組合せから選択される界面活性剤と、
(d)少なくとも1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤と、
(e)少なくとも1つのアルコール共溶媒と
を含む。
【0012】
[0012] 一実施形態では、式(I)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩は、式(Ia):
【化2】
(式中、RはOであり;Rは、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル又はオクタデシルであり;且つnは0~5の整数である)
の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩である。一実施形態では、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩は、式(Ia)の化合物又はその薬学的に許容される塩である。別の実施形態では、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩は、式(Ia)の化合物である。いくつかの実施形態において、nは0又は1である。一実施形態では、nは0である。別の実施形態では、nは1である。
【0013】
[0013] 別の実施形態では、式(I)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩は、式(Ib):
【化3】
(式中、nは0であり、RはNH又はOであり、且つRは直鎖C~C18アルキルである)
の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩である。一実施形態では、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩は、式(Ib)の化合物又はその薬学的に許容される塩である。別の実施形態では、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩は、式(Ib)の化合物である。一実施形態では、RはNHである。別の実施形態では、RはOである。いくつかの実施形態において、Rは、直鎖ヘプチル、直鎖オクチル、直鎖ノニル、直鎖デシル、直鎖ウンデシル、直鎖ドデシル、直鎖トリデシル、直鎖テトラデシル、直鎖ペンタデシル、直鎖ヘキサデシル、直鎖ヘプタデシル又は直鎖オクタデシル(octadectyl)である。
【0014】
[0014] 一実施形態では、式(I)、(Ia)、若しくは(Ib)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー若しくは薬学的に許容される塩は、約0.5~約3mg/mLの濃度で存在する。
【0015】
[0015] 一実施形態では、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテルは、約0.25~約0.75mg/mL、例えば、約0.5mg/mLの濃度で存在する。
【0016】
[0016] 一実施形態では、少なくとも1つのPEG化脂質は、1つのPEG化脂質である。1つのPEG化脂質は、DSPE(ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン)-PEG2000、DSG(ジステルアロイルグリセロール)-PEG2000、及びDPG(ジホスファチジルグリセロール)-PEG2000からなる群から選択され得る。別の実施形態では、少なくとも1つのPEG化脂質は、DSPE-PEG2000、DSG-PEG2000、及びDPG-PEG2000のうちの2つ又は3つの組合せからなる。
【0017】
[0017] 一実施形態では、少なくとも1つのPEG化脂質は、約0.2~約3mg/mLの濃度で存在する。
【0018】
[0018] 一実施形態では、界面活性剤は、PEG400、PEG1000、及びプロピレングリコールからなる群から選択される1つの界面活性剤である。別の実施形態では、界面活性剤は、PEG400、PEG1000、及びプロピレングリコールのうちの2つ又は3つの組合せからなる。
【0019】
[0019] 一実施形態では、界面活性剤は、約0.75~約6mg/mLの濃度で存在する。
【0020】
[0020] 一実施形態では、少なくとも1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤は、1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤である。1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤は、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA134a)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロ-n-プロパン(HFA227ea)、及び1,1-ジフルオロエタン(HFA152a)からなる群から選択され得る。別の実施形態では、少なくとも1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤は、HFA134a、HFA227ea、及びHFA152aのうちの2つ又は3つの組合せからなる。
【0021】
[0021] 一実施形態では、少なくとも1つのアルコール共溶媒は、1つのアルコール共溶媒である。1つのアルコール共溶媒は、エタノール及びイソプロピルアルコールからなる群から選択され得る。別の実施形態では、少なくとも1つのアルコール共溶媒は、エタノール及びイソプロピルアルコールの組合せである。
【0022】
[0022] 一実施形態では、少なくとも1つのアルコール共溶媒は、医薬製剤の全重量に基づいて約3%~約10%(w/w)の濃度で存在する。
【0023】
[0023] 別の態様では、本出願は、定量吸入器(MDI)を用いた吸入による投与に適した医薬製剤を提供する。医薬製剤は、(a)約0.5~約3mg/mLの濃度の、式(II):
【化4】
(式中、Rは、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、又はオクタデシルである)
の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩と、
(b)約0.25~約0.75mg/mLの濃度のポリオキシエチレン(20)セチルエーテル、又は約0.2~約3mg/mLの濃度の、DSPE-PEG2000、DSG-PEG2000、及びDPG-PEG2000からなる群から選択される少なくとも1つのPEG化脂質と、
(c)約0.75~約6mg/mLの濃度の、PEG400、PEG1000、プロピレングリコール、又はこれらの組合せから選択される界面活性剤と、
(d)HFA134a、HFA227ea、及びHFA152aからなる群から選択される少なくとも1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤と、
(e)医薬製剤の全重量に基づいて約3%~約10%(w/w)の濃度の、エタノール及びイソプロピルアルコールからなる群から選択される少なくとも1つのアルコール共溶媒と
を含む、又はそれらからなる。
【0024】
[0024] 一実施形態では、(a)は、式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩である。別の実施形態では、(a)は、式(II)の化合物である。
【0025】
[0025] 一実施形態では、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテルは、約0.5mg/mLの濃度で存在する。
【0026】
[0026] 一実施形態では、少なくとも1つのPEG化脂質は、DSPE-PEG2000、DSG-PEG2000、及びDPG-PEG2000からなる群から選択される1つのPEG化脂質である。別の実施形態では、少なくとも1つのPEG化脂質は、DSPE-PEG2000、DSG-PEG2000、及びDPG-PEG2000のうちの2つ又は3つの組合せからなる。
【0027】
[0027] 一実施形態では、界面活性剤は、PEG400、PEG1000、及びプロピレングリコールからなる群から選択されるものである。別の実施形態では、界面活性剤は、PEG400、PEG1000、及びプロピレングリコールのうちの2つ又は3つの組合せからなる。
【0028】
[0028] 一実施形態では、少なくとも1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤は、HFA134a、HFA227ea、及びHFA152aからなる群から選択される1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤である。別の実施形態では、少なくとも1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤は、HFA134a、HFA227ea、及びHFA152aのうちの2つ又は3つの組合せからなる。
【0029】
[0029] 一実施形態では、少なくとも1つのアルコール共溶媒は、エタノール及びイソプロピルアルコールからなる群から選択される1つのアルコール共溶媒である。別の実施形態では、少なくとも1つのアルコール共溶媒は、エタノール及びイソプロピルアルコールの組合せである。
【0030】
[0030] 上記の態様全ての医薬製剤の一実施形態において、式(I)、(Ia)、(Ib)、若しくは(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩は、医薬製剤中に約0.5~約1mg/mL、又は約1mg/mLで存在する。
【0031】
[0031] 上記の態様全ての医薬製剤の一実施形態において、少なくとも1つのPEG化脂質は、医薬製剤中に約0.2~約3mg/mL、約0.25~約0.75mg/mL、又は約0.5mg/mLで存在するDSPE-PEG2000である。
【0032】
[0032] 上記の態様全ての医薬製剤の一実施形態において、少なくとも1つのPEG化脂質は、医薬製剤中に約0.2~約0.5mg/mL、又は約0.25で存在するDSG-PEG2000である。
【0033】
[0033] 上記の態様全ての医薬製剤の一実施形態において、少なくとも1つのPEG化脂質は、医薬製剤中に約0.2~約0.5mg/mL、又は約0.25mg/mLで存在するDPG-PEG2000である。
【0034】
[0034] 上記の態様全ての医薬製剤の一実施形態において、少なくとも1つの界面活性剤は、医薬製剤中に約0.75~約6mg/mL、約1.5~約3mg/mL、又は約3mg/mLで存在するPEG400である。
【0035】
[0035] 上記の態様全ての医薬製剤の一実施形態において、少なくとも1つの界面活性剤は、医薬製剤中に約0.75~約3mg/mL、又は約3mg/mLで存在するPEG1000である。
【0036】
[0036] 上記の態様全ての医薬製剤の一実施形態において、少なくとも1つの界面活性剤は、医薬製剤中に約0.75~約3mg/mL、又は約1.5mg/mLで存在するプロピレングリコールである。
【0037】
[0037] 上記の態様全ての医薬製剤の一実施形態において、少なくとも1つのアルコール共溶媒は、医薬製剤の全重量に基づいて医薬製剤中に約3%~約10%(w/w)、又は約3%~約5%(w/w)で存在するエタノールである。
【0038】
[0038] 上記の態様全ての医薬製剤の一実施形態において、少なくとも1つのアルコール共溶媒は、医薬製剤の全重量に基づいて医薬製剤中に約5%~約10%(w/w)、又は約10%(w/w)で存在するイソプロピルアルコールである。
【0039】
[0039] 上記の態様全ての医薬製剤の一実施形態において、少なくとも1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤は、HFA134aである。別の実施形態では、少なくとも1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤は、HFA227eaである。さらに別の実施形態では、少なくとも1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤は、HFA152aである。
【0040】
[0040] 上記の態様全ての医薬製剤の一実施形態において、式(I)、(Ia)、(Ib)、若しくは(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩中のRは、直鎖ドデシル、直鎖トリデシル、直鎖テトラデシル、直鎖ペンタデシル、直鎖ヘキサデシル、直鎖ヘプタデシル又は直鎖オクタデシルである。別の実施形態では、式(I)、(Ia)、(Ib)、若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩中のRは、直鎖ドデシル、直鎖トリデシル、直鎖テトラデシル、直鎖ペンタデシル、直鎖ヘキサデシル、直鎖ヘプタデシル又は直鎖オクタデシルである。別の実施形態では、式(I)、(Ia)、(Ib)、又は(II)の化合物中のRは、直鎖ドデシル、直鎖トリデシル、直鎖テトラデシル、直鎖ペンタデシル、直鎖ヘキサデシル、直鎖ヘプタデシル又は直鎖オクタデシルである。
【0041】
[0041] 上記の態様全ての医薬製剤の一実施形態において、式(I)、(Ia)、(Ib)、若しくは(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩中のRは、直鎖ドデシルである。別の実施形態では、式(I)、(Ia)、(Ib)、若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩中のRは、直鎖ドデシルである。別の実施形態では、式(I)、(Ia)、(Ib)、又は(II)の化合物中のRは、直鎖ドデシルである。
【0042】
[0042] 上記の態様全ての医薬製剤の一実施形態において、式(I)、(Ia)、(Ib)、若しくは(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩中のRは、直鎖トリデシルである。別の実施形態では、式(I)、(Ia)、(Ib)、若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩中のRは、直鎖トリデシルである。別の実施形態では、式(I)、(Ia)、(Ib)、又は(II)の化合物中のRは、直鎖トリデシルである。
【0043】
[0043] 上記の態様全ての医薬製剤の一実施形態において、式(I)、(Ia)、(Ib)、若しくは(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩のRは、直鎖テトラデシルである。別の実施形態では、式(I)、(Ia)、(Ib)、若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩中のRは、直鎖テトラデシルである。別の実施形態では、式(I)、(Ia)、(Ib)、又は(II)の化合物のRは、直鎖テトラデシルである。
【0044】
[0044] 上記の態様全ての医薬製剤の一実施形態において、式(I)、(Ia)、(Ib)、若しくは(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩中のRは、直鎖ペンタデシルである。別の実施形態では、式(I)、(Ia)、(Ib)、若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩中のRは、直鎖ペンタデシルである。別の実施形態では、式(I)、(Ia)、(Ib)、又は(II)の化合物中のRは、直鎖ペンタデシルである。
【0045】
[0045] 上記の態様全ての医薬製剤の一実施形態において、式(I)、(Ia)、(Ib)、若しくは(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩中のRは、直鎖ヘキサデシルである。別の実施形態では、式(I)、(Ia)、(Ib)、若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩中のRは、直鎖ヘキサデシルである。別の実施形態では、式(I)、(Ia)、(Ib)、又は(II)の化合物中のRは、直鎖ヘキサデシルである。別の実施形態では、式(I)、(Ia)、若しくは(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩は、式(III):
【化5】
の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩である。一実施形態では、式(I)、(Ia)、若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩は、式(III)の化合物又はその薬学的に許容される塩である。さらなる実施形態では、式(I)、(Ia)、若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩は、式(III)の化合物である。
【0046】
[0046] 上記の態様全ての医薬製剤の一実施形態において、式(I)、(Ia)、(Ib)、若しくは(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩中のRは、直鎖ヘプタデシルである。別の実施形態では、式(I)、(Ia)、(Ib)、若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩中のRは、直鎖ヘプタデシルである。別の実施形態では、式(I)、(Ia)、(Ib)、又は(II)の化合物中のRは、直鎖ヘプタデシルである。
【0047】
[0047] 上記の態様全ての医薬製剤の一実施形態において、式(I)、(Ia)、(Ib)、若しくは(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩中のRは、直鎖オクタデシルである。別の実施形態では、式(I)、(Ia)、(Ib)、若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩中のRは、直鎖オクタデシルである。別の実施形態では、式(I)、(Ia)、(Ib)、又は(II)の化合物中のRは、直鎖オクタデシルである。
【0048】
[0048] 上記の態様全ての医薬製剤の一実施形態において、(b)は、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテルである。上記の態様全ての医薬製剤の別の実施形態において、(b)は、少なくとも1つのポリエチレングリコール-脂質(PEG化脂質)である。
【0049】
[0049] 一実施形態では、医薬製剤は、1mg/mLの式(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩と、0.5mg/mLのDSPE-PEG2000と、3mg/mLのPEG400と、医薬製剤の全重量に基づいて10%(w/w)のイソプロピルアルコールと、HFA134aとを含む。
【0050】
[0050] 別の実施形態では、医薬製剤は、1mg/mLの式(III)の化合物又はその薬学的に許容される塩と、0.5mg/mLのDSPE-PEG2000と、3mg/mLのPEG400と、医薬製剤の全重量に基づいて10%(w/w)のイソプロピルアルコールと、HFA134aとを含む。別の実施形態では、医薬製剤は、1mg/mLの式(III)の化合物と、0.5mg/mLのDSPE-PEG2000と、3mg/mLのPEG400と、医薬製剤の全重量に基づいて10%(w/w)のイソプロピルアルコールと、HFA134aとを含む。
【0051】
[0051] 一実施形態では、医薬製剤は、1mg/mLの式(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩と、0.5mg/mLのDSPE-PEG2000と、3mg/mLのPEG400と、医薬製剤の全重量に基づいて10%(w/w)のイソプロピルアルコールと、HFA134aとからなる。別の実施形態では、医薬製剤は、1mg/mLの式(III)の化合物又はその薬学的に許容される塩と、0.5mg/mLのDSPE-PEG2000と、3mg/mLのPEG400と、医薬製剤の全重量に基づいて10%(w/w)のイソプロピルアルコールと、HFA134aとからなる。別の実施形態では、医薬製剤は、1mg/mLの式(III)の化合物と、0.5mg/mLのDSPE-PEG2000と、3mg/mLのPEG400と、医薬製剤の全重量に基づいて10%(w/w)のイソプロピルアルコールと、HFA134aとからなる。
【0052】
[0052] 上記の態様全ての医薬製剤の一実施形態において、医薬製剤はエアロゾルの形態である。いくつかの実施形態において、エアロゾルは、次世代インパクター(NGI)で測定したときに、約1~約3μm、約1~約2μm、又は約1.5μmの空気動力学的質量中央径(MMAD)を有する。いくつかの実施形態において、エアロゾルは、NGIで測定したときに、約5%~約40%、約10%~約30%、約10%~約25%、約15%~約25%、又は約15%~約20%の咽頭沈着(throat deposition)を有する。いくつかの実施形態において、エアロゾルは、NGIで測定したときに、約50%~約95%、約60%~約85%、約70%~約85%、約75%~約85%、又は約70%~約80%の微粒子画分(fine particle fraction)(FPF)を有する。
【0053】
[0053] さらに別の態様では、本出願は、定量バルブと、本明細書で提供される医薬製剤とを含むキャニスタを提供する。
【0054】
[0054] さらに別の態様では、本出願は、適切なチャネリングデバイス内にはめ込まれた、本明細書で提供されるキャニスタを含む定量吸入器(MDI)を提供する。
【0055】
[0055] さらに別の態様では、本出願は、それを必要としている患者において肺高血圧症を処置するための方法を提供する。本方法は、定量吸入器を用いた吸入により、有効量の本明細書で提供される医薬製剤を患者の肺に投与することを含む。
【0056】
[0056] 一実施形態では、肺高血圧症は肺動脈性肺高血圧症である。
【0057】
[0057] 一実施形態では、肺動脈性肺高血圧症は、ニューヨーク心臓協会(NYHA)により特徴付けられるクラスIの肺動脈性肺高血圧症である。別の実施形態では、肺動脈性肺高血圧症は、NYHAにより特徴付けられるクラスIIの肺動脈性肺高血圧症である。さらに別の実施形態では、肺動脈性肺高血圧症は、NYHAにより特徴付けられるクラスIIIの肺動脈性肺高血圧症である。さらに別の実施形態では、肺動脈性肺高血圧症は、NYHAにより特徴付けられるクラスIVの肺動脈性肺高血圧症である。
【0058】
[0058] 一実施形態では、肺高血圧症は、世界保健機関(WHO)により特徴付けられる第1群の肺高血圧症である。別の実施形態では、肺高血圧症は、WHOにより特徴付けられる第2群の肺高血圧症である。さらに別の実施形態では、肺高血圧症は、WHOにより特徴付けられる第3群の肺高血圧症である。さらに別の実施形態では、肺高血圧症は、WHOにより特徴付けられる第4群の肺高血圧症である。さらに別の実施形態では、肺高血圧症は、WHOにより特徴付けられる第5群の肺高血圧症である。
【0059】
[0059] さらに別の態様では、本出願は、それを必要としている患者において門脈肺高血圧症又は肺線維症を処置するための方法を提供する。本方法は、定量吸入器を用いた吸入により、有効量の本明細書で提供される医薬製剤を患者の肺に投与することを含む。
【0060】
[0060] さらに別の態様では、本出願は、肺高血圧症、門脈肺高血圧症、又は肺線維症を処置するためのシステムを提供する。本システムは、本明細書で提供される医薬製剤と、本明細書で提供されるMDIとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図面の簡単な説明
図1】[0061]噴霧INS1009(1.0mM)、C16TR-乾燥粉末(C16TR、DSPE-PEG2000、マンニトール、及びロイシンを1.5:0.75:70:30の重量比で含む)、及びC16TR-MDI-W(高用量)の間の、肺C16TR当量薬物動態の比較を示すグラフである。
図2】[0062]噴霧INS1009(1.0mM)、C16TR-乾燥粉末(C16TR、DSPE-PEG2000、マンニトール、及びロイシンを1.5:0.75:70:30の重量比で含む)、及びC16TR-MDI-W(高用量)の間の、血漿TRE薬物動態の比較を示すグラフである。
図3】[0063]イソプロピルアルコール(IPA)の存在下でのC16TRから2C3TRへのエステル交換反応を示す概略図である。
図4A】[0064]アクチュエータ構成に関連する放出用量(emitted dose)に基づいてC16TR-MDI-W製剤によるC16TR分布を示すグラフである。
図4B】[0065]0.12、0.2、及び0.3mmのノズル直径を用いるC16TR-MDI-W製剤について異なるNGIステージにおけるトレプロスチニルパルミチル(C16TR)の平均質量沈着を示すグラフである。
図5】[0066]C16TR-MDI-W製剤を含有するバルブアップ及びバルブダウンキャニスタについての、放出用量対作動回数のグラフ表示である。
図6A】[0067]使用による用量(dose through use)研究-バルブアップからのC16TR-MDI-W製剤のAPSD%C16TR分布を示すグラフである。
図6B】[0068]使用による用量研究-バルブアップからのC16TR-MDI-W製剤のAPSD性能を示すグラフである。各データセットにおいて、4本のバーは左から右にそれぞれ、最初、中間、最後、及び平均値を表す。
図7A】[0069]使用による用量研究-バルブダウンからのC16TR-MDI-W製剤のAPSD%C16TR分布を示すグラフである。
図7B】[0070]使用による用量研究-バルブダウンからのC16TR-MDI-W製剤のAPSD性能を示すグラフである。各データセットにおいて、4本のバーは左から右にそれぞれ、最初、中間、最後、及び平均値を表す。
図8】[0071]MDI-XとMDI-WとのAPSD比較を示すグラフであり、各NGIステージの各データセットにおいて、左側のバーはMDI-Xを表し、右側のバーはMDI-Wを表す。
図9】[0072]噴霧INS1009(1.0mM)、C16TR-MDI-W(高用量)、及びC16TR-MDI-W(低用量)の間の、肺C16TR当量薬物動態の比較を示すグラフである。
図10】[0073]噴霧INS1009(1.0mM)、C16TR-MDI-W(高用量)、及びC16TR-MDI-W(低用量)の間の、血漿TRE薬物動態の比較を示すグラフである。
図11】[0074]噴霧INS1009(1.0mM)及びC16TR-MDI-Xの間の、肺C16TR当量薬物動態の比較を示すグラフである。
図12】[0075]噴霧INS1009(1.0mM)及びC16TR-MDI-Xの間の、血漿TRE薬物動態の比較を示すグラフである。
図13】[0076]115μg/kgの送達用量のC16TR-MDI-Wに曝露されたラットにおいて、低酸素負荷に対するΔRVPP応答を示すグラフである。値は、平均±SEM(n=3)である。ΔRVPP:右心室脈圧の上昇。-1日目は、薬物前のベースライン値を表す。0日目は、薬物曝露後を表す。「」は、-1日目のベースラインと比較したときに、P<0.05を示す。
図14】[0077]111μg/kgの送達用量のC16TR-MDI-Xに曝露されたラットにおける低酸素負荷に対するΔRVPP応答を示すグラフである。値は、平均±SEM(n=3)である。ΔRVPP:右心室脈圧の上昇。-1日目は、薬物前のベースライン値を表す。0日目は、薬物曝露後を表す。「」は、-1日目のベースラインと比較したときに、P<0.05を示す。
図15】[0078]MDI-TRE研究のための咳の数対TRE送達用量のプロットである。
図16】[0079]MDI-TRE研究のための咳の数対TRE送達用量の拡大プロットである。
図17】[0080]C16TR-MDI-L又はC16TR-MDI-Wの吸入後のモルモットにおける咳の数対C16TR送達用量のプロットである。
図18】[0081]C16TR-MDI-L又はC16TR-MDI-Wの吸入後のモルモットにおける咳の数対肺C16TR当量のプロットである。
図19】[0082]C16TR-MDI-L、C16TR-MDI-W、C16TR-DP1(C16TR、DSPE-PEG2000、マンニトール、及びロイシンを1.5:0.75:70:30の重量比で含む)、又はC16TR-DP2(C16TR、DSPE-PEG2000、トレハロース、及びロイシンを1.5:0.75:70:30の重量比で含む)の吸入後のモルモットにおける咳の数対C16TR送達用量のプロットである。
図20】[0083]C16TR-MDI-L、C16TR-MDI-W、C16TR-DP1(C16TR、DSPE-PEG2000、マンニトール、及びロイシンを1.5:0.75:70:30の重量比で含む)、又はC16TR-DP2(C16TR、DSPE-PEG2000、トレハロース、及びロイシンを1.5:0.75:70:30の重量比で含む)の吸入後のモルモットにおける咳の数対肺C16TR当量のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0062】
発明の詳細な説明
[0084] 本明細書で使用される「アルキル」という用語は、アルキル鎖長がある範囲の数で示される直鎖アルキルと、鎖中に分枝点が存在し、鎖中の炭素の総数がある範囲の数で示される分枝状アルキルとの両方を指す。例示的な実施形態では、「アルキル」は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16個の炭素を含有する、上記で定義されるアルキル鎖(すなわち、C~C16アルキル)を指す。一実施形態では、本明細書で提供されるMDI製剤のトレプロスチニルアルキルエステルは、14、15、16、17又は18個の炭素を有する直鎖アルキルである。さらなる実施形態では、直鎖アルキルは直鎖ヘキサデシルである。
【0063】
[0085] 「薬学的に許容される塩」という用語は、無機又は有機塩基及び無機又は有機酸を含む、薬学的に許容される無毒の塩基又は酸から調製される塩を指す。塩の性質は、薬学的に許容される限り重要ではない。薬学的に許容される適切な酸付加塩は、無機酸又は有機酸から調製され得る。例示的な薬学的塩は、Stahl,P.H.,Wermuth,C.G.,Eds.Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties, Selection and Use;Verlag Helvetica Chimica Acta/Wiley-VCH:Zurich,2002に開示されており、その内容は、参照によってその全体が本明細書に援用される。無機酸の特定の非限定的な例は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸及びリン酸である。適切な有機酸には、限定はされないが、カルボン酸及びスルホン酸を含有する脂肪酸、脂環式酸、芳香族酸、アリール脂肪酸、及びヘテロシクリル酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、メシル酸、ステアリン酸、サリチル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、トルエンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、スルファニル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、アルギン(algenic)酸、3-ヒドロキシ酪酸、ガラクタル酸又はガラクツロン酸が含まれる。本明細書に開示される遊離酸含有化合物の薬学的に許容される適切な塩には、限定はされないが、金属塩及び有機塩が含まれる。例示的な金属塩としては、適切なアルカリ金属(Ia族)塩、アルカリ土類金属(IIa族)塩、及び他の生理学的に許容される金属が挙げられるが、これらに限定されない。このような塩は、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム及び亜鉛から作ることができる。例示的な有機塩は、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び第4級アンモニウム塩、例えば、トロメタミン、ジエチルアミン、テトラ-N-メチルアンモニウム、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)及びプロカインから作ることができる。
【0064】
[0086] 本明細書を通して、特定の量に対して数値の範囲が提供される。これらの範囲は、その中の全ての部分範囲を含むと理解されるべきである。したがって、「50~80」という範囲は、その中の全ての可能な範囲(例えば、51~79、52~78、53~77、54~76、55~75、60~70など)を含む。さらに、所与の範囲内の全ての値は、それにより包含される範囲の端点であってもよい(例えば、範囲50~80は、55~80、50~75などの端点を含む範囲を含む)。
【0065】
[0087] 「処置すること」という用語は、(1)状況、障害又は状態を患っているか或いはその素因を有している可能性があるが、その状況、障害又は状態の臨床症状又は無症候性(subclinical)症状をまだ経験又は呈示していない対象において発症するその状況、障害又は状態の臨床症状の出現を予防するか又は遅延させること;(2)状況、障害又は状態を阻害すること(例えば、疾患の発症、又はその少なくとも1つの臨床症状若しくは無症候性症状の維持療法の場合にはその再発を抑止するか、低減するか、又は遅延させること);及び/又は(3)状態を緩和すること(例えば、状況、障害若しくは状態、又はその臨床症状若しくは無症候性症状の少なくとも1つの退行を引き起こすこと)を含むことができる。一実施形態では、「処置すること」は、状況、障害又は状態を阻害すること(例えば、疾患の発症、又はその少なくとも1つの臨床症状若しくは無症候性症状の維持療法の場合にはその再発を抑止するか、低減するか、又は遅延させること)を指す。別の実施形態では、「処置すること」は、状態を緩和すること(例えば、状況、障害若しくは状態、又はその臨床症状若しくは無症候性症状の少なくとも1つの退行を引き起こすことによる)を指す。処置される対象にとっての利益は、処置前の同じ対象の状況又は状態と比較して、或いは未処置対照の対象の状況又は状態と比較して統計的に有意なものであるか、或いは利益は、少なくとも対象又は医師に認知できるものである。
【0066】
[0088] 「有効量」は、所望の治療応答をもたらすのに十分な、本開示の医薬製剤の量を意味する。有効量の医薬製剤は、単回用量又は複数回用量で投与することができる。
【0067】
[0089] 本明細書には、定量吸入器(MDI)を用いた吸入による投与に適した医薬製剤が開示される。また本出願は、医薬製剤の調製のための方法、及び治療におけるその使用も開示する。一態様において、本開示は、例えば、肺高血圧症(例えば、肺動脈性肺高血圧症)、門脈肺高血圧症、又は肺線維症を、それを必要としている患者において処置するために使用され得るトレプロスチニルプロドラッグの医薬製剤を提供する。一実施形態では、医薬製剤は、(a)式(I):
【化6】
(式中、Rは、NH、O又はSであり;Rは、直鎖若しくは分枝状C~C18アルキル、直鎖C~C18アルケニル若しくは分枝状C~C18アルケニル、アリール、アリール-C~C18アルキル、アミノ酸又はペプチドであり;且つnは0~5の整数である)
の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩と、(b)ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル又は少なくとも1つのポリエチレングリコール-脂質(PEG化脂質)と、(c)ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール、又はこれらの組合せから選択される界面活性剤と、(d)少なくとも1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤と、(e)少なくとも1つのアルコール共溶媒とを含む。一実施形態では、(a)は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩である。さらなる実施形態では、(a)は、式(I)の化合物である。式(I)の化合物及びその薬学的に許容される塩は、参照によってその全体が本明細書中に援用される国際公開第2015/061720号に開示されるトレプロスチニルプロドラッグである。
【0068】
[0090] 一実施形態では、式(I)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩は、式(Ia):
【化7】
(式中、RはOであり;Rは、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル又はオクタデシルであり;且つnは0~5の整数である)
の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩である。一実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、式(Ia)の化合物又はその薬学的に許容される塩であり、すなわち、(a)は、医薬製剤中の式(Ia)の化合物又はその薬学的に許容される塩である。別の実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は式(Ia)の化合物であり、すなわち、(a)は、医薬製剤中の式(Ia)の化合物である。一実施形態では、nは0又は1である。別の実施形態では、nは0である。別の実施形態では、RはOであり;Rは、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル又はオクタデシルであり、且つnは1であり、それにより、式(Ia)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩は、式(II):
【化8】
の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩によって表すことができる。一実施形態では、式(Ia)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、医薬製剤中の式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩である。別の実施形態では、式(Ia)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、式(II)の化合物である。
【0069】
[0091] 式(I)、(Ia)、若しくは(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩の一実施形態において、Rは、直鎖C14~C18アルキルである。さらなる実施形態では、式(I)、(Ia)、若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩中のRは、直鎖C14~C18アルキルである。さらなる実施形態では、式(I)、(Ia)、又は(II)の化合物中のRは、直鎖C14~C18アルキルである。
【0070】
[0092] 式(I)、(Ia)、若しくは(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩の別の実施形態において、Rはドデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖ドデシルである。一実施形態では、式(I)、(Ia)、若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩中のRは、直鎖ドデシルである。別の実施形態では、式(I)、(Ia)、又は(II)の化合物中のRは、直鎖ドデシルである。
【0071】
[0093] 式(I)、(Ia)、若しくは(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩の別の実施形態において、Rはトリデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖トリデシルである。一実施形態では、式(I)、(Ia)、若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩中のRは、直鎖トリデシルである。別の実施形態では、式(I)、(Ia)、又は(II)の化合物中のRは、直鎖トリデシルである。
【0072】
[0094] 式(I)、(Ia)、若しくは(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩の別の実施形態において、Rはテトラデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖テトラデシルである。一実施形態では、式(I)、(Ia)、若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩中のRは、直鎖テトラデシルである。別の実施形態では、式(I)、(Ia)、又は(II)の化合物中のRは、直鎖テトラデシルである。
【0073】
[0095] 式(I)、(Ia)、若しくは(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩の別の実施形態において、Rはペンタデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖ペンタデシルである。一実施形態では、式(I)、(Ia)、若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩中のRは、直鎖ペンタデシルである。別の実施形態では、式(I)、(Ia)、又は(II)の化合物中のRは、直鎖ペンタデシルである。
【0074】
[0096] 式(I)、(Ia)、若しくは(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩の別の実施形態において、Rはヘプタデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖ヘプタデシルである。一実施形態では、式(I)、(Ia)、若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩中のRは、直鎖ヘプタデシルである。別の実施形態では、式(I)、(Ia)、又は(II)の化合物中のRは、直鎖ヘプタデシルである。
【0075】
[0097] 式(I)、(Ia)、若しくは(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩の別の実施形態において、Rはオクタデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖オクタデシルである。一実施形態では、式(I)、(Ia)、若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩中のRは、直鎖オクタデシルである。別の実施形態では、式(I)、(Ia)、又は(II)の化合物中のRは、直鎖オクタデシルである。
【0076】
[0098] 式(I)若しくは(Ia)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩の別の実施形態において、Rはヘキサデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖ヘキサデシルである。一実施形態では、式(I)又は(Ia)の化合物、又はその薬学的に許容される塩中のRは、直鎖ヘキサデシルである。別の実施形態では、式(I)又は(Ia)の化合物中のRは、直鎖ヘキサデシルである。
【0077】
[0099] 式(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩の別の実施形態において、Rはヘキサデシルである。さらなる実施形態では、ヘキサデシルは直鎖ヘキサデシルであり、それにより、式(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩は、式(III):
【化9】
の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩である。一実施形態では、式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、式(III)の化合物又はその薬学的に許容される塩である。さらなる実施形態では、式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、式(III)の化合物である。
【0078】
[00100] 式(III)の化合物は、本明細書では、C16TR又はトレプロスチニルパルミチルとも称される。一実施形態では、式(I)、(Ia)、若しくは(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩は、式(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩であり、すなわち、(a)は、医薬製剤中の式(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩である。別の実施形態では、式(I)、(Ia)、若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩は、式(III)の化合物又はその薬学的に許容される塩であり、すなわち、(a)は、医薬製剤中の式(III)の化合物又はその薬学的に許容される塩である。別の実施形態では、式(I)、(Ia)、若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩は式(III)の化合物であり、すなわち、(a)は、医薬製剤中の式(III)の化合物である。
【0079】
[00101] 別の実施形態では、式(I)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩は、式(Ib):
【化10】
(式中、RはNH又はOであり、Rは直鎖C~C18アルキルであり、且つnは0である)
の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩である。一実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、式(Ib)の化合物又はその薬学的に許容される塩であり、すなわち、(a)は、医薬製剤中の式(Ib)の化合物又はその薬学的に許容される塩である。別の実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は式(Ib)の化合物であり、すなわち、(a)は、医薬製剤中の式(Ib)の化合物である。いくつかの実施形態において、Rは、直鎖ヘプチル、直鎖オクチル、直鎖ノニル、直鎖デシル、直鎖ウンデシル、直鎖ドデシル、直鎖トリデシル、直鎖テトラデシル、直鎖ペンタデシル、直鎖ヘキサデシル、直鎖ヘプタデシル又は直鎖オクタデシル(octadectyl)である。一実施形態では、RはNHである。別の実施形態では、RはOである。
【0080】
[00102] 式(I)の化合物のさらに別の実施形態では、RはOであり、Rは直鎖C14~C18アルキルであり、且つnは1である。さらなる実施形態では、Rは直鎖ヘキサデシルである。
【0081】
[00103] いくつかの実施形態において、式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)、若しくは(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩は、医薬製剤中に約0.5~約3mg/mL、約0.5~約1mg/mL、約0.5mg/mL、又は約1mg/mLの濃度で存在する。一実施形態では、式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)、若しくは(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩は、医薬製剤中に約0.5~約3mg/mLの濃度で存在する。別の実施形態では、式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)、若しくは(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩は、医薬製剤中に約0.5~約1mg/mLの濃度で存在する。さらに別の実施形態では、式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)、若しくは(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩は、医薬製剤中に約0.5mg/mLの濃度で存在する。さらに別の実施形態では、式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)、若しくは(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩は、医薬製剤中に約1mg/mLの濃度で存在する。いくつかの実施形態において、式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)、若しくは(III)の化合物、又はその薬学的に許容される塩は、上述の濃度又は濃度範囲のそれぞれで医薬製剤中に存在する。いくつかの実施形態において、式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)、又は(III)の化合物は、上述の濃度又は濃度範囲のそれぞれで医薬製剤中に存在する。
【0082】
[00104] 一実施形態では、医薬製剤は、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(例えば、商品名Brij(登録商標)58で販売)を含む。ポリオキシエチレン(20)セチルエーテルは、医薬製剤中に約0.25~約0.75mg/mL又は約0.5mg/mLの濃度で存在し得る。一実施形態では、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテルは、医薬製剤中に約0.5mg/mLの濃度で存在する。
【0083】
[00105] PEGは、ポリエチレンオキシド(PEO)又はポリオキシエチレン(POE)としても知られているポリエチレングリコールを指す。PEGはエチレンオキシドの重合によって調製され、100g/molから10,000,000g/molまでの広範囲の分子量にわたって市販されている。PEGの名前に含まれる数字は、その平均分子量を示す。例えば、PEG400は約400g/molの平均分子量を有するPEGを示し、PEG1000は約1000g/molの平均分子量を有するPEGを示す。PEGは脂質に共有結合されて、PEG化脂質を形成し得る。
【0084】
[00106] 一実施形態では、本開示の医薬製剤は1つ又は複数のPEG化脂質を含み、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテルを含まない。一実施形態では、医薬製剤は、ただ1つのPEG化脂質を含む。別の実施形態では、医薬製剤は、2つ以上のPEG化脂質を含む。いくつかの実施形態において、医薬製剤中のPEG化脂質のPEGは、500~10,000g/mol、1000~5000g/molの範囲、又は約2000g/molの平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、医薬製剤中の1つ又は複数のPEG化脂質は、PEG化ホスファチジルコリン(例えば、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、及びジステアロイルホスファチジルコリン)、PEG化ホスファチジルグリセロール(例えば、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジラウロイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、及びジステアロイルホスファチジルグリセロール)、PEG化ホスファチジルエタノールアミン(例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、及びジステアロイルホスファチジルエタノールアミン)、PEG化ホスファチジルセリン、PEG化ホスファチジルイノシトール、及びPEG化ホスファチジン酸などのPEG化リン脂質である。他の実施形態では、医薬製剤中の1つ又は複数のPEG化脂質には、DSPE(ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン)-PEG2000、DSG(ジステルアロイルグリセロール)-PEG2000、DPG(ジホスファチジルグリセロール)-PEG2000、DMPE(ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン)-PEG2000、DMG(ジミリストイルグリセロール)-PEG2000、コレステリル化PEG2000、STR(ステアリル)-PEG2000、又はこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、医薬製剤中の1つ又は複数のPEG化脂質は、DSPE-PEG2000、DSG-PEG2000、DPG-PEG2000、及びこれらの組合せから選択される。DSPE-PEG2000、DSG-PEG2000、又はDPG-PEG2000は、2000g/molの平均PEG分子量を有する分枝状又は非分枝状PEG分子を含み得る。いくつかの実施形態において、1つ又は複数のPEG化脂質、例えば、DSPE-PEG2000、DSG-PEG2000、DPG-PEG2000、又はこれらのうちの2つ若しくは3つの組合せは、約0.2~約3mg/mL、約0.25~約0.75mg/mL、約0.2~約0.5mg/mL;約0.5mg/mL、又は約0.25mg/mLの濃度で医薬製剤中に存在する。
【0085】
[00107] 一実施形態では、医薬製剤は、DSPE-PEG2000、DSG-PEG2000、及びDPG-PEG2000から選択されるただ1つのPEG化脂質を含む。別の実施形態では、医薬製剤は、上述のPEG化脂質のうちの2つ又は3つの組合せ、すなわち、DSPE-PEG2000+DSG-PEG2000、DSPE-PEG2000+DPG-PEG2000、DSG-PEG2000+DPG-PEG2000、又はDSPE-PEG2000+DSG-PEG2000+DPG-PEG2000を含む。
【0086】
[00108] 一実施形態では、少なくとも1つのPEG化脂質は、約0.2~約3mg/mLで存在するDSPE-PEG2000である。別の実施形態では、少なくとも1つのPEG化脂質は、約0.25~約0.75mg/mLで存在するDSPE-PEG2000である。別の実施形態では、少なくとも1つのPEG化脂質は、約0.5mg/mLで存在するDSPE-PEG2000である。
【0087】
[00109] 一実施形態では、少なくとも1つのPEG化脂質は、約0.2~約0.5mg/mLで存在するDSG-PEG2000である。別の実施形態では、少なくとも1つのPEG化脂質は、約0.25mg/mLで存在するDSG-PEG2000である。
【0088】
[00110] 一実施形態では、医薬製剤中の少なくとも1つのPEG化脂質は、約0.2~約0.5mg/mLで存在するDPG-PEG2000である。別の実施形態では、少なくとも1つのPEG化脂質は、約0.25mg/mLで存在するDPG-PEG2000である。
【0089】
[00111] 本明細書で提供される医薬製剤は、1つ又は複数の界面活性剤を含む。例示的な界面活性剤としては、100~1500、200~1000、又は300~500g/molの範囲の平均分子量を有するプロピレングリコール及びポリエチレングリコール(PEG)、例えば、PEG200、PEG400、又はPEG1000が挙げられるが、これらに限定されない。本出願において、界面活性剤としてPEGが使用される場合、PEGは、上記のPEG化脂質とは別の成分である。いくつかの実施形態において、医薬製剤は、PEG400、PEG1000、プロピレングリコール、又はこれらの組合せから選択される界面活性剤を含む。他の実施形態では、医薬製剤は、PEG400、PEG1000、及びプロピレングリコールからなる群から選択されるただ1つの界面活性剤を含む。さらに他の実施形態では、医薬製剤は、上述の界面活性剤のうちの2つ又は3つの組合せ、すなわち、PEG400+PEG1000、PEG400+プロピレングリコール、PEG1000+プロピレングリコール、又はPEG400+PEG1000+プロピレングリコールを含む。
【0090】
[00112] いくつかの実施形態において、1つ又は複数の界面活性剤、例えば、PEG400、PEG1000、プロピレングリコール、又はこれらの2つ若しくは3つの組合せは、約0.75~約6mg/mL;約0.75~約3mg/mL、約1.5~約3mg/mL;約3mg/mL、又は約1.5mg/mLの濃度で医薬製剤中に存在する。
【0091】
[00113] いくつかの実施形態において、本明細書に記載される製剤の1つにPEG400を組み込むと、製剤中で使用される他の賦形剤に関係なく、NGIで測定したときに、例えば約1~約5μm、又は約1.5~約3μmのMMADが得られ、そして定量吸入器(MDI)により肺へ送達したときに、製剤の好ましい薬物動態性能が得られ、例えば、実施例に示されるように投薬の24時間後により少ないC16TRが肺組織に残る。一実施形態では、医薬製剤中の界面活性剤は、医薬製剤中に約0.75~約6mg/mLで存在するPEG400である。別の実施形態では、界面活性剤は、医薬製剤中に約1.5~約3mg/mLで存在するPEG400である。さらに別の実施形態では、界面活性剤は、医薬製剤中に約3mg/mLで存在するPEG400である。
【0092】
[00114] 一実施形態では、医薬製剤中の界面活性剤は、医薬製剤中に約0.75~約3mg/mLで存在するPEG1000である。別の実施形態では、界面活性剤は、医薬製剤中に約1.5mg/mLで存在するPEG1000である。さらに別の実施形態では、界面活性剤は、医薬製剤中に約3mg/mLで存在するPEG1000である。
【0093】
[00115] 一実施形態では、医薬製剤中の界面活性剤は、医薬製剤中に約0.75~約3mg/mLで存在するプロピレングリコールである。別の実施形態では、界面活性剤は、医薬製剤中に約1.5mg/mLで存在するプロピレングリコールである。さらに別の実施形態では、界面活性剤は、医薬製剤中に約3mg/mLで存在するプロピレングリコールである。
【0094】
[00116] 本明細書で提供される医薬製剤は、1つ又は複数のアルコール共溶媒を含む。一実施形態では、医薬製剤は、ただ1つのアルコール共溶媒を含む。別の実施形態では、医薬製剤は、2つ以上のアルコール共溶媒、例えば、複数のアルコール共溶媒の混合物を含む。例示的なアルコール共溶媒としては、エタノール及びイソプロピルアルコールが挙げられる。一実施形態では、医薬製剤は、エタノール及びイソプロピルアルコールからなる群から選択されるただ1つのアルコール共溶媒を含む。別の実施形態では、医薬製剤は、アルコール共溶媒としてエタノール及びイソプロピルアルコールの組合せ又は混合物を含む。
【0095】
[00117] いくつかの実施形態において、1つ又は複数のアルコール共溶媒、例えば、エタノール(EtOH)、イソプロピルアルコール(IPA)、又はエタノール及びイソプロピルアルコールの混合物は、医薬製剤の全重量に基づいて、約3%~約10%(w/w)、約5%~約10%(w/w)、約3%~約5%(w/w)、約3%(w/w)、約5%(w/w)、約7%(w/w)、約9%(w/w)、又は約10%(w/w)の濃度で存在する。
【0096】
[00118] EtOHは、MDI製剤の業界標準のアルコール共溶媒である。高濃度のEtOHはエアロゾル性能の低下をもたらす可能性があり、咽頭沈着が著しく多くなり得る。一実施形態では、医薬製剤中の少なくとも1つのアルコール共溶媒は、医薬製剤の全重量に基づいて約3%~約10%(w/w)で存在するエタノールである。別の実施形態では、医薬製剤中の少なくとも1つのアルコール共溶媒は、医薬製剤の全重量に基づいて約3%~約5%(w/w)で存在するエタノールである。
【0097】
[00119] イソプロピルアルコール(IPA)は、本明細書に記載される実施形態において、共溶媒として使用され得る。一実施形態では、医薬製剤中の少なくとも1つのアルコール共溶媒は、医薬製剤の全重量に基づいて約5%~約10%(w/w)で存在するイソプロピルアルコールである。別の実施形態では、医薬製剤中の少なくとも1つのアルコール共溶媒は、医薬製剤の全重量に基づいて約10%(w/w)で存在するイソプロピルアルコールである。別の実施形態では、医薬製剤中の少なくとも1つのアルコール共溶媒は、医薬製剤の全重量に基づいて約7%(w/w)で存在するイソプロピルアルコールである。
【0098】
[00120] 本発明の医薬製剤は、1つ又は複数のヒドロフルオロアルカン噴射剤を含む。一実施形態では、医薬製剤は、ただ1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤を含む。別の実施形態では、医薬製剤は、2つ以上のヒドロフルオロアルカン噴射剤、例えば、複数のヒドロフルオロアルカン噴射剤の混合物を含む。本明細書での使用に適している例示的なヒドロフルオロアルカン噴射剤としては、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA134a)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA227ea)、及び1,1-ジフルオロエタン(HFA152a)が挙げられる。いくつかの実施形態において、医薬製剤は、HFA134a、HFA227ea、及びHFA152aからなる群から選択されるただ1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤を含む。一実施形態では、医薬製剤は、HFA134aであるただ1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤を含む。別の実施形態では、医薬製剤は、HFA227eaであるただ1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤を含む。さらに別の実施形態では、医薬製剤は、HFA152aであるただ1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤を含む。さらに別の実施形態では、医薬製剤は、噴射剤としてHFA134a及びHFA227eaの混合物を含む。さらに別の実施形態では、医薬製剤は、噴射剤としてHFA134a及びHFA152aの組合せ又は混合物を含む。さらに別の実施形態では、医薬製剤は、噴射剤としてHFA227ea及びHFA152aの組合せ又は混合物を含む。さらに別の実施形態では、医薬製剤は、噴射剤としてHFA134a、HFA227ea、及びHFA152aの組合せ又は混合物を含む。
【0099】
[00121] 一実施形態では、医薬製剤は、1mg/mLの式(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩、0.5mg/mLのDSPE-PEG2000、3mg/mLのPEG400、医薬製剤の全重量に基づいて10%(w/w)のイソプロピルアルコール、及びHFA134aを含む。さらなる実施形態では、医薬製剤は、1mg/mLの式(III)の化合物又はその薬学的に許容される塩、0.5mg/mLのDSPE-PEG2000、3mg/mLのPEG400、医薬製剤の全重量に基づいて10%(w/w)のイソプロピルアルコール、及びHFA134aを含む。さらなる実施形態では、医薬製剤は、1mg/mLの式(III)の化合物、0.5mg/mLのDSPE-PEG2000、3mg/mLのPEG400、医薬製剤の全重量に基づいて10%(w/w)のイソプロピルアルコール、及びHFA134aを含む。
【0100】
[00122] 空気動力学的質量中央径(MMAD)は、所与のエアロゾル中の質量の50%が空気動力学的中央径(MAD)よりも小さい粒子に関連し、質量の50%がMADよりも大きい粒子に関連する、空気動力学的直径の値である。MMADは、インパクター測定、例えば、Andersenカスケードインパクター(ACI)又は次世代インパクター(NGI)によって決定することができる。いくつかの実施形態において、医薬製剤は、例えば定量吸入器(MDI)の作動によって発生され得るエアロゾルの形態である。本明細書に記載される製剤のエアロゾルは、一実施形態において、次世代インパクター(NGI)で測定したときに約1~約3μm、約1~約2μm、又は約1.5μmのMMADを有する粒子を含む。
【0101】
[00123] 咽頭沈着は、カスケードインパクターの咽頭ステージで沈着する薬物の量であり、百分率で表される。いくつかの実施形態において、医薬製剤は、NGIで測定したときに約5%~約40%、約10%~約30%、約10%~約25%、約15%~約25%、又は約15%~約20%の咽頭沈着を有するエアロゾルの形態である。エアロゾルは、例えば、MDIの作動によって発生され得る。
【0102】
[00124] 「微粒子画分」又は「FPF」は、カスケード衝突で測定したときに直径5μm未満の粒径を有するエアロゾルの画分を指す。FPFは、通常、百分率で表される。FPFは、患者の肺内に沈着するエアロゾルの画分と相関することが実証されている。いくつかの実施形態において、医薬製剤は、NGIで測定したときに約50%~約95%、約60%~約85%、約70%~約85%、約75%~約85%、又は約70%~約80%のFPFを有する粒子を含むエアロゾルの形態である。本明細書に記載される製剤のエアロゾルは、例えば、MDIの作動によって発生され得る。
【0103】
[00125] 別の態様では、本発明は、(a)約0.5~約3mg/mL、約0.5~約1mg/mL、約0.5mg/mL、又は約1mg/mLの濃度の、式(II):
【化11】
(式中、Rは、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、又はオクタデシルである)
の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩と、
(b)約0.25~約0.75mg/mL若しくは約0.5mg/mLの濃度のポリオキシエチレン(20)セチルエーテル、又は約0.2~約3mg/mL、約0.25~約0.75mg/mL、約0.2~約0.5mg/mL、約0.5mg/mL、若しくは約0.25mg/mLの濃度の、DSPE-PEG2000、DSG-PEG2000、及びDPG-PEG2000からなる群から選択される少なくとも1つのPEG化脂質と、
(c)約0.75~約6mg/mL、約0.75~約3mg/mL、約1.5~約3mg/mL、約3mg/mL、又は約1.5mg/mLの濃度の、PEG400、PEG1000、プロピレングリコール、又はこれらの組合せから選択される界面活性剤と、
(d)HFA134a、HFA227ea、及びHFA152aからなる群から選択される少なくとも1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤と、
(e)医薬製剤の全重量に基づいて約3%~約10%(w/w)、約5%~約10%(w/w)、約3%~約5%(w/w)、約3%(w/w)、約5%(w/w)、約7%(w/w)、約9%(w/w)、又は約10%(w/w)の濃度の、エタノール及びイソプロピルアルコールからなる群から選択される少なくとも1つのアルコール共溶媒と
を含む、又はそれらからなる医薬製剤を提供する。
【0104】
[00126] 本明細書に記載される製剤の一実施形態において、(a)は、式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩である。さらなる実施形態では、(a)は、式(II)の化合物である。
【0105】
[00127] 一実施形態では、式(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩は、約0.5~約3mg/mLの濃度で存在する。別の実施形態では、式(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩は、約0.5~約1mg/mLの濃度で存在する。別の実施形態では、式(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩は、約1mg/mLの濃度で存在する。いくつかの実施形態において、式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、上述の濃度又は濃度範囲のそれぞれで医薬製剤中に存在する。いくつかの実施形態において、式(II)の化合物は、上述の濃度又は濃度範囲のそれぞれで医薬製剤中に存在する。
【0106】
[00128] 一実施形態では、Rは、式(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩においてドデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖ドデシルである。一実施形態では、式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩中のRは、直鎖ドデシルである。別の実施形態では、式(II)の化合物中のRは、直鎖ドデシルである。
【0107】
[00129] 一実施形態では、Rは、式(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩においてトリデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖トリデシルである。一実施形態では、式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩中のRは、直鎖トリデシルである。別の実施形態では、式(II)の化合物中のRは、直鎖トリデシルである。
【0108】
[00130] 一実施形態では、Rは、式(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩においてテトラデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖テトラデシルである。一実施形態では、式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩中のRは、直鎖テトラデシルである。別の実施形態では、式(II)の化合物中のRは、直鎖テトラデシルである。
【0109】
[00131] 一実施形態では、Rは、式(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩においてペンタデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖ペンタデシルである。一実施形態では、式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩中のRは、直鎖ペンタデシルである。別の実施形態では、式(II)の化合物中のRは、直鎖ペンタデシルである。
【0110】
[00132] 一実施形態では、Rは、式(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩においてヘキサデシルである。さらなる実施形態では、ヘキサデシルは直鎖ヘキサデシルであり、すなわち、式(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩は、式(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩である。一実施形態では、式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、式(III)の化合物又はその薬学的に許容される塩である。別の実施形態では、式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、式(III)の化合物である。
【0111】
[00133] 別の実施形態では、Rは、式(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩においてヘプタデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖ヘプタデシルである。一実施形態では、式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩中のRは、直鎖ヘプタデシルである。別の実施形態では、式(II)の化合物中のRは、直鎖ヘプタデシルである。
【0112】
[00134] 別の実施形態では、Rは、式(II)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩においてオクタデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖オクタデシルである。一実施形態では、式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩中のRは、直鎖オクタデシルである。別の実施形態では、式(II)の化合物中のRは、直鎖オクタデシルである。
【0113】
[00135] 一実施形態では、(b)は、約0.25~約0.75mg/mLの濃度のポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(商品名Brij(登録商標)58で販売)である。別の実施形態では、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテルは、約0.5mg/mLの濃度で存在する。
【0114】
[00136] 一実施形態では、(b)は、約0.2~約3mg/mLの濃度の、DSPE-PEG2000、DSG-PEG2000、及びDPG-PEG2000からなる群から選択される少なくとも1つのPEG化脂質である。別の実施形態では、少なくとも1つのPEG化脂質は、約0.2~約0.5mg/mLの濃度で存在する。別の実施形態では、少なくとも1つのPEG化脂質は、約0.25~約0.75mg/mLの濃度で存在する。別の実施形態では、少なくとも1つのPEG化脂質は、約0.5mg/mLの濃度で存在する。別の実施形態では、少なくとも1つのPEG化脂質は、約0.25mg/mLの濃度で存在する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのPEG化脂質は、DSPE-PEG2000、DSG-PEG2000、及びDPG-PEG2000からなる群から選択される1つのPEG化脂質である。他の実施形態では、少なくとも1つのPEG化脂質は、DSPE-PEG2000、DSG-PEG2000、及びDPG-PEG2000のうちの2つ又は3つの組合せからなる。
【0115】
[00137] 一実施形態では、界面活性剤は、約0.75~約6mg/mLの濃度で存在する。別の実施形態では、界面活性剤は、約1.5~約3mg/mLの濃度で存在する。別の実施形態では、界面活性剤は、約3mg/mLの濃度で存在する。別の実施形態では、界面活性剤は、約1.5mg/mLの濃度で存在する。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、PEG400、PEG1000、及びプロピレングリコールからなる群から選択される1つの界面活性剤である。他の実施形態では、界面活性剤は、PEG400、PEG1000、及びプロピレングリコールのうちの2つ又は3つの組合せからなる。
【0116】
[00138] 一実施形態では、少なくとも1つのアルコール共溶媒は、医薬製剤の全重量に基づいて約3%~約10%(w/w)の濃度で存在する。別の実施形態では、少なくとも1つのアルコール共溶媒は、医薬製剤の全重量に基づいて約5%~約10%(w/w)の濃度で存在する。別の実施形態では、少なくとも1つのアルコール共溶媒は、医薬製剤の全重量に基づいて約3%~約5%(w/w)の濃度で存在する。別の実施形態では、少なくとも1つのアルコール共溶媒は、医薬製剤の全重量に基づいて約10%(w/w)の濃度で存在する。別の実施形態では、少なくとも1つのアルコール共溶媒は、医薬製剤の全重量に基づいて約9%(w/w)の濃度で存在する。別の実施形態では、少なくとも1つのアルコール共溶媒は、医薬製剤の全重量に基づいて約7%(w/w)の濃度で存在する。別の実施形態では、少なくとも1つのアルコール共溶媒は、医薬製剤の全重量に基づいて約5%(w/w)の濃度で存在する。別の実施形態では、少なくとも1つのアルコール共溶媒は、医薬製剤の全重量に基づいて約3%(w/w)の濃度で存在する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのアルコール共溶媒は、エタノール及びイソプロピルアルコールからなる群から選択される1つのアルコール共溶媒である。他の実施形態では、少なくとも1つのアルコール共溶媒は、エタノール及びイソプロピルアルコールの組合せ又は混合物である。
【0117】
[00139] 一実施形態では、医薬製剤は、DSPE-PEG2000、DSG-PEG2000、及びDPG-PEG2000からなる群から選択されるただ1つのPEG化脂質を含む。一実施形態では、ただ1つのPEG化脂質は、約0.2~約3mg/mLの濃度で存在する。別の実施形態では、ただ1つのPEG化脂質は、約0.2~約0.5mg/mLの濃度で存在する。別の実施形態では、ただ1つのPEG化脂質は、約0.25~約0.75mg/mLの濃度で存在する。別の実施形態では、ただ1つのPEG化脂質は、約0.5mg/mLの濃度で存在する。別の実施形態では、ただ1つのPEG化脂質は、約0.25mg/mLの濃度で存在する。一実施形態では、ただ1つのPEG化脂質は、DSPE-PEG2000である。
【0118】
[00140] 一実施形態では、医薬製剤は、PEG400、PEG1000、及びプロピレングリコールからなる群から選択されるただ1つの界面活性剤を含む。一実施形態では、ただ1つの界面活性剤は、約0.75~約6mg/mLの濃度で存在する。別の実施形態では、ただ1つの界面活性剤は、約1.5~約3mg/mLの濃度で存在する。別の実施形態では、ただ1つの界面活性剤は、約3mg/mLの濃度で存在する。別の実施形態では、ただ1つの界面活性剤は、約1.5mg/mLの濃度で存在する。一実施形態では、ただ1つの界面活性剤は、PEG400である。
【0119】
[00141] 一実施形態では、医薬製剤は、HFA134a、HFA227ea、及びHFA152aからなる群から選択されるただ1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤を含む。一実施形態では、ただ1つのヒドロフルオロアルカン噴射剤は、HFA134aである。別の実施形態では、医薬製剤は2つ以上のヒドロフルオロアルカン噴射剤を含み、HFA134a、HFA227ea、及びHFA152aのうちの2つ又は3つの組合せからなる。
【0120】
[00142] 一実施形態では、医薬製剤は、エタノール及びイソプロピルアルコールからなる群から選択されるただ1つのアルコール共溶媒を含む。一実施形態では、ただ1つのアルコール共溶媒は、医薬製剤の全重量に基づいて約3%~約10%(w/w)の濃度で存在する。別の実施形態では、ただ1つのアルコール共溶媒は、医薬製剤の全重量に基づいて約5%~約10%(w/w)の濃度で存在する。別の実施形態では、ただ1つのアルコール共溶媒は、医薬製剤の全重量に基づいて約3%~約5%(w/w)の濃度で存在する。別の実施形態では、ただ1つのアルコール共溶媒は、医薬製剤の全重量に基づいて約10%(w/w)の濃度で存在する。別の実施形態では、ただ1つのアルコール共溶媒は、医薬製剤の全重量に基づいて約9%(w/w)の濃度で存在する。別の実施形態では、ただ1つのアルコール共溶媒は、医薬製剤の全重量に基づいて約7%(w/w)の濃度で存在する。別の実施形態では、ただ1つのアルコール共溶媒は、医薬製剤の全重量に基づいて約5%(w/w)の濃度で存在する。別の実施形態では、ただ1つのアルコール共溶媒は、医薬製剤の全重量に基づいて約3%(w/w)の濃度で存在する。一実施形態では、ただ1つのアルコール共溶媒は、イソプロピルアルコールである。
【0121】
[00143] 一実施形態では、医薬製剤は、1mg/mLの式(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩、0.5mg/mLのDSPE-PEG2000、3mg/mLのPEG400、医薬製剤の全重量に基づいて10%(w/w)のイソプロピルアルコール、及びHFA134aから本質的になる。さらなる実施形態では、医薬製剤は、1mg/mLの式(III)の化合物又はその薬学的に許容される塩、0.5mg/mLのDSPE-PEG2000、3mg/mLのPEG400、医薬製剤の全重量に基づいて10%(w/w)のイソプロピルアルコール、及びHFA134aから本質的になる。さらなる実施形態では、医薬製剤は、1mg/mLの式(III)の化合物、0.5mg/mLのDSPE-PEG2000、3mg/mLのPEG400、医薬製剤の全重量に基づいて10%(w/w)のイソプロピルアルコール、及びHFA134aから本質的になる。
【0122】
[00144] 別の実施形態では、医薬製剤は、1mg/mLの式(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩、0.5mg/mLのDSPE-PEG2000、3mg/mLのPEG400、医薬製剤の全重量に基づいて10%(w/w)のイソプロピルアルコール、及びHFA134aからなる。さらなる実施形態では、医薬製剤は、1mg/mLの式(III)の化合物又はその薬学的に許容される塩、0.5mg/mLのDSPE-PEG2000、3mg/mLのPEG400、医薬製剤の全重量に基づいて10%(w/w)のイソプロピルアルコール、及びHFA134aからなる。さらなる実施形態では、医薬製剤は、1mg/mLの式(III)の化合物、0.5mg/mLのDSPE-PEG2000、3mg/mLのPEG400、医薬製剤の全重量に基づいて10%(w/w)のイソプロピルアルコール、及びHFA134aからなる。
【0123】
[00145] 本開示の医薬製剤は、式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)、若しくは(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩の溶液又は懸濁液の形態で存在することができ、経肺投与、すなわち、例えば定量吸入器(MDI)を用いることにより、吸入による対象又は患者の肺への送達に適している。アルコール共溶媒は、本明細書に開示される量で製剤中の噴射剤と混和性である。ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル、PEG化脂質、及び界面活性剤は、製剤を安定化すると共に、MDIのバルブ構成要素を潤滑化するのに役立つ。一実施形態では、本開示の医薬製剤は、まず液化ヒドロフルオロアルカン噴射剤中に式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)、若しくは(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩の粉末を溶解又は分散させた後、他の成分、例えば、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル、又は1つ若しくは複数のPEG化脂質、1つ又は複数の界面活性剤、及び上記の1つ又は複数のアルコール共溶媒を添加することによって調製される。別の実施形態では、本開示の医薬製剤は、式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)、若しくは(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩の粉末を、液化ヒドロフルオロアルカン噴射剤及び他の成分の混合物中に直接溶解又は分散させることによって調製される。次に、製剤は、定量バルブを備えたエアロゾル容器に充填され、MDIにより分配され得る。キャニスタは一般に、プラスチック若しくはプラスチック被覆ガラスボトル、又は金属缶、例えば、任意選択的に陽極酸化、ラッカー被覆、及び/又はプラスチック被覆され得るアルミニウム缶などなどの、HFA噴射剤の蒸気圧に耐えることができる容器を含む。容器は、定量バルブで閉じられる。一実施形態では、キャニスタは、参照によってその全体が本明細書中に援用される国際公開第96/32151号に記載されるように、フルオロカーボンポリマー、例えば、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はポリエーテルスルホン(PES)及びPTFEのコポリマーで被覆される。一実施形態では、被覆のためのフルオロカーボンポリマーはFEPである。別の実施形態では、被覆のためのフルオロカーボンポリマーはPTFEである。別の実施形態では、キャニスタは、FEP及びPTFEの両方で被覆される。
【0124】
[00146] 定量バルブは、作動ごとに一定量の製剤を送達するように設計されており、バルブを介した噴射剤の漏出を防止するためにガスケットを含む。ガスケットは、低密度ポリエチレン、クロロブチル、黒色及び白色ブタジエン-アクリロニトリルゴム、ブチルゴム、ネオプレン、EPDM(参照によってその全体が本明細書中に援用される国際公開第95/02651号に記載されるようなエチレンプロピレンジエンモノマーのポリマー)、並びにTPE(参照によってその全体が本明細書中に援用される国際公開第92/11190号に記載されるような熱可塑性エラストマー)などの任意の適切なエラストマー材料を含み得る。適切なバルブは、エアロゾル業界において周知の製造業者、例えば、AptarGroup,U.S.,Valois,France(例えば、DF10、DF30、DF31、及びDF60)、Bespak plc,UK(例えば、BK300、BK356、及びBK357)、及び3M-Neotechnic Ltd,UK(例えば、Spraymiser(商標)から市販されている。
【0125】
[00147] 一実施形態における本開示の医薬製剤は、以下の方法によって調製され、まとめてキャニスタに充填される。最初に、定量バルブをアルミニウム缶に圧着して、空のキャニスタを形成する。次に、式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)、若しくは(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩をチャージ容器に添加し、アルコール共溶媒、界面活性剤、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル又はPEG化脂質、及び液化噴射剤の混合物を、チャージ容器を介して製造容器内に圧力充填する。次に、医薬製剤のアリコートを、定量バルブを介してキャニスタ内に充填する。通常、薬学的使用のために調製されるバッチでは、充填された各キャニスタは重量が検査され、バッチ番号でコードされ、放出試験の前に貯蔵用のトレイにパッキングされる。代替のプロセスでは、液化製剤のアリコートは、製剤が蒸発しないように十分に低温の条件下でオープンキャニスタに添加され、次に定量バルブがキャニスタに圧着される。代替のプロセスでは、アルコール共溶媒、界面活性剤、及びポリオキシエチレン(20)セチルエーテル又はPEG化脂質中に溶解された式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)、若しくは(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩のアリコートが空のキャニスタに分注され、定量バルブが圧着され、次にHFA噴射剤がバルブを介してキャニスタに充填される。
【0126】
[00148] 一実施形態では、充填された各キャニスタは適切なチャネリングデバイス内にはめ込まれて、定量吸入器を形成する。適切なチャネリングデバイスは、例えば、充填されたキャニスタから定量バルブを介して患者の鼻又は口へ医薬製剤が送達され得る、バルブアクチュエータ及び円柱状又は錐体状通路、例えば、マウスピースアクチュエータを含む。一実施形態におけるバルブ軸は、膨張チャンバに通じるオリフィスを有するノズルブロック内に位置する。膨張チャンバは、マウスピース内に延在する出口オリフィスを有する。約0.1~約0.5mm、約0.2~約0.4mm、約0.1~約0.3mm、又は約0.2~約0.3mmの範囲のアクチュエータ(出口)オリフィス直径が、医薬製剤のエアロゾルの望ましいFPF及び少ない咽頭沈着をもたらすのに適している。
【0127】
[00149] 一実施形態では、本開示の医薬製剤は、定量吸入器(MDI)を用いることにより、吸入によって対象又は患者の肺へ送達される。MDIは医薬製剤を含有するキャニスタを含み、液化噴射剤を利用して、医薬製剤を含有する液滴をエアロゾルとして対象又は患者の呼吸器へ排出する。
【0128】
[00150] 本明細書で提供される医薬製剤を送達するのに適した例示的なMDIとしては、以下の段落に記載されるデバイスと、米国特許第6,170,717号、同第6,405,727号、同第3,565,070号、同第6,328,035号、同第5,544,647号、及び同第6,155,251号、欧州特許第0147028B1号、CA2298448号、並びに国際特許出願公報の国際公開第1992/009232号、国際公開第2003/053501号、国際公開第2004/041339号、国際公開第2004/041340号、国際公開第2001/049350号、及び国際公開第2004/082633号(これらのそれぞれは、参照によってその全体が本明細書中に援用される)に記載されるMDIとが挙げられる。
【0129】
[00151] Autohaler(登録商標)(3M)は呼吸によって作動されるMDIであり、したがって、薬剤のエアロゾルを吸入するために手-呼吸の調整を必要としない。参照によってその全体が本明細書中に援用される米国特許第6,120,752号を参照されたい。
【0130】
[00152] Asmair(登録商標)(Bang and Olufsen Medicom AS)は、統合された用量カウントデバイス及び補助発射メカニズムを特徴とするMDIであり、患者の使用を容易にする。
【0131】
[00153] Easi-Breathe(登録商標)(Ivax)は、呼吸で作動される定量吸入器である。国際公開第2001/093933号、及び米国特許第5,447,150号(これらのそれぞれは、参照によってその全体が本明細書中に援用される)を参照されたい。
【0132】
[00154] Tempo(商標)(MAP Pharma)は、標準的なエアロゾルキャニスタ及び定量バルブを使用する小型MDIである。このMDIは、エアロゾルフロー制御チャンバ及び同期トリガーメカニズムを提供する。米国特許第6,095,141号、同第6,026,808号、及び同第6,367,471号(これらのそれぞれは、参照によってその全体が本明細書中に援用される)を参照されたい。
【0133】
[00155] Xcelovent(商標)(Meridica)は、用量カウンタを特徴とする、呼吸で操作されるMDIである。参照によってその全体が本明細書中に援用される国際公開第1998/052634号を参照されたい。
【0134】
[00156] K-Haler(登録商標)(Clinical Designs)は、呼吸で作動されるMDIである。デバイスが使用されると、用量はねじれた管内へ作動される。ねじれた管は呼吸で操作されるレバーによってまっすぐになり、用量が放出される。
【0135】
[00157] MD Turbo(商標)(Respirics)は、呼吸で作動される吸入器である。
【0136】
[00158] Spacehaler(商標)(Celltech Mediva)は、小型の低速スプレー加圧式MDIである。
【0137】
[00159] H&T Presspart and Cohero Healthにより開発されたeMDI(商標)は、最初に商品化された、完全に埋込及び接続された定量吸入器である。埋込センサー、機械的又は電子的用量カウント及びディスプレイにより、デバイスは、薬剤の使用に関するデータを追跡及び記録し、モバイル又はウェブアプリを介してそれを患者及び医師と共有することができる。結果として、患者は薬剤使用及び警告に関してリアルタイムの更新を受け取り、医師は、デバイスにより提供される完全で客観的なデータに基づいて処置計画を立てることができる。
【0138】
[00160] 医薬製剤が充填されたキャニスタ、及び本明細書に記載される充填されたキャニスタを含む定量吸入器は、本開示のさらなる態様を構成する。放出用量は、吸入器デバイスから放出される医薬品有効成分の量と定義される。一実施形態では、MDIは、式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)、若しくは(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩の約30~約70μgの放出用量を有するように構成される。さらなる実施形態では、MDIは、式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)、若しくは(III)の化合物、又はその薬学的に許容される塩の約30~約70μgの放出用量を有するように構成される。さらなる実施形態では、MDIは、式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)、又は(III)の化合物の約30~約70μgの放出用量を有するように構成される。別の実施形態では、MDIは、式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)、若しくは(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩の約40~約60μgの放出用量を有するように構成される。さらなる実施形態では、MDIは、式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)、若しくは(III)の化合物、又はその薬学的に許容される塩の約40~約60μgの放出用量を有するように構成される。さらなる実施形態では、MDIは、式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)、又は(III)の化合物の約40~約60μgの放出用量を有するように構成される。
【0139】
[00161] 一実施形態では、MDIは、次世代インパクター(NGI)で測定したときに、約1~約3μmの空気動力学的質量中央径(MMAD)を有する医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成される。別の実施形態では、MDIは、NGIで測定したときに、約1~約2μmのMMADを有する医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成される。別の実施形態では、MDIは、NGIで測定したときに、約1.5μmのMMADを有する医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成される。
【0140】
[00162] 一実施形態では、MDIは、NGIで測定したときに、約5%~約40%の咽頭沈着を有する医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成される。別の実施形態では、MDIは、NGIで測定したときに、約10%~約30%の咽頭沈着を有する医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成される。別の実施形態では、MDIは、NGIで測定したときに、約10%~約25%の咽頭沈着を有する医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成される。別の実施形態では、MDIは、NGIで測定したときに、約15%~約25%の咽頭沈着を有する医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成される。別の実施形態では、MDIは、NGIで測定したときに、約15%~約20%の咽頭沈着を有する医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成される。
【0141】
[00163] 一実施形態では、MDIは、NGIで測定したときに、約50%~約95%の微粒子画分(FPF)を有する医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成される。別の実施形態では、MDIは、NGIで測定したときに、約60%~約85%のFPFを有する医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成される。別の実施形態では、MDIは、NGIで測定したときに、約70%~約85%のFPFを有する医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成される。別の実施形態では、MDIは、NGIで測定したときに、約75%~約85%のFPFを有する医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成される。別の実施形態では、MDIは、NGIで測定したときに、約70%~約80%のFPFを有する医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成される。
【0142】
[00164] 「微粒子用量(fine particle dose)」又は「FPD」は、呼吸可能な範囲内にある公称用量又は一定用量の全質量又は画分のいずれかの用量を指す。呼吸可能な範囲内にある用量はインビトロで測定され、カスケードインパクターの咽頭ステージを越えて沈着する用量、すなわち、30l/分の流速で操作される次世代インパクター内のフィルタを通ってステージ3で送達される用量の合計である。一実施形態では、MDIは、NGIで測定したときに、約10~約40μgのFPDを有する医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成される。別の実施形態では、MDIは、NGIで測定したときに、約15~約40μgのFPDを有する医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成される。別の実施形態では、MDIは、NGIで測定したときに、約20~約40μgのFPDを有する医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成される。別の実施形態では、MDIは、NGIで測定したときに、約30~約40μgのFPDを有する医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成される。別の実施形態では、MDIは、NGIで測定したときに、約30~約35μgのFPDを有する医薬製剤のエアロゾルを生じるように構成される。
【0143】
[00165] 別の態様では、本開示は、それを必要としている患者において肺高血圧症(PH)を処置するための方法を提供する。本方法は、MDIを用いた吸入により、有効量の本明細書に開示される医薬製剤、すなわち、式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)若しくは(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩を含む医薬製剤を患者の肺に投与することを含む。一実施形態では、医薬製剤は、式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)若しくは(III)の化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む。別の実施形態では、医薬製剤は、式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)又は(III)の化合物を含む。一実施形態では、投与は、MDIを用いることにより医薬製剤をエアロゾル化し、エアロゾル化医薬製剤を吸入によって患者の肺に投与することを含む。いくつかの実施形態において、エアロゾル化医薬製剤は、NGIで測定したときに、約1~約3μm、約1~約2μm、又は約1.5μmのMMADを有する粒子を含む。いくつかの実施形態において、エアロゾル化医薬製剤は、NGIで測定したときに、約5%~約40%、約10%~約30%、約10%~約25%、約15%~約25%、又は約15%~約20%の咽頭沈着を有する。いくつかの実施形態において、エアロゾル化医薬製剤は、NGIで測定したときに、約50%~約95%、約60%~約85%、約70%~約85%、約75%~約85%、又は約70%~約80%のFPFを有する粒子を含む。
【0144】
[00166] 世界保健機関(WHO)は、PHを5つの群に分類している。第1群のPHは、肺動脈性肺高血圧症(PAH)、特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)、家族性肺動脈性肺高血圧症(FPAH)、及び他の疾患に関連する肺動脈性肺高血圧症(APAH)を含む。例えば、膠原病性脈管疾患(例えば、強皮症)、体循環と肺循環の間の先天的シャント、門脈圧亢進症及び/又はHIV感染症に関連する肺動脈性肺高血圧症は、第1群のPHに含まれる。第2群のPHは、左心疾患、例えば、心房若しくは心室疾患、又は弁膜疾患(例えば、僧帽弁狭窄)に関連する肺高血圧症を含む。第3群の肺高血圧症は、肺疾患、例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺疾患(ILD)、及び/又は低酸素血症に関連する肺高血圧症と特徴付けられる。第4群の肺高血圧症は、慢性の血栓性及び/又は塞栓性疾患に起因する肺高血圧症である。第4群のPHは、慢性血栓塞栓性肺高血圧症とも称される。第4群のPH患者は、血餅に起因して血管の遮断又は狭窄を経験する。第5群のPHは「種々雑多な」分類であり、血液障害(例えば、真性赤血球増加症、本態性血小板血症)、全身性障害(例えば、サルコイドーシス、血管炎)及び/又は代謝障害(例えば、甲状腺疾患、糖原病)により引き起こされるPHが含まれる。
【0145】
[00167] 本明細書で提供される方法は、WHOにより特徴付けられる第1群(すなわち、肺動脈性肺高血圧症又はPAH)、第2群、第3群、第4群又は第5群のPH患者を処置するために使用することができる。本方法の一実施形態において、処置される肺高血圧症は、慢性血栓塞栓性肺高血圧症である。
【0146】
[00168] 本方法の別の実施形態において、処置される肺高血圧症は、肺動脈性肺高血圧症(PAH)である。いくつかの実施形態において、処置されるPAHは、ニューヨーク心臓協会(NYHA)により特徴付けられるクラスIのPAH、クラスIIのPAH、クラスIIIのPAH、又はクラスIVのPAHである。
【0147】
[00169] 一実施形態では、PAHは、NYHAにより特徴付けられるクラスIのPAHである。
【0148】
[00170] 別の実施形態では、PAHは、NYHAにより特徴付けられるクラスIIのPAHである。
【0149】
[00171] さらに別の実施形態では、PAHは、NYHAにより特徴付けられるクラスIIIのPAHである。
【0150】
[00172] さらに別の実施形態では、PAHは、NYHAにより特徴付けられるクラスIVのPAHである。
【0151】
[00173] 別の態様では、本開示は、それを必要としている患者において門脈肺高血圧症(PPH)を処置するための方法を提供する。本方法は、MDIを用いた吸入により、有効量の本明細書に開示される医薬製剤、すなわち、式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)若しくは(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩を含む医薬製剤を患者の肺に投与することを含む。一実施形態では、医薬製剤は、式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)若しくは(III)の化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む。別の実施形態では、医薬製剤は、式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)又は(III)の化合物を含む。一実施形態では、投与は、MDIを用いることにより医薬製剤をエアロゾル化し、エアロゾル化医薬製剤を吸入によって患者の肺に投与することを含む。いくつかの実施形態において、エアロゾル化医薬製剤は、NGIで測定したときに、約1~約3μm、約1~約2μm、又は約1.5μmのMMADを有する粒子を含む。いくつかの実施形態において、エアロゾル化医薬製剤は、NGIで測定したときに、約5%~約40%、約10%~約30%、約10%~約25%、約15%~約25%、又は約15%~約20%の咽頭沈着を有する。いくつかの実施形態において、エアロゾル化医薬製剤は、NGIで測定したときに、約50%~約95%、約60%~約85%、約70%~約85%、約75%~約85%、又は約70%~約80%のFPFを有する粒子を含む。
【0152】
[00174] いくつかの実施形態において、開示される方法により処置されるPH、PAH、又はPPH患者は、以下の治療応答のうちの1つ又は複数を示す:(1)肺血管抵抗係数(PVRI)の処置前の値からの低下、(2)平均肺動脈圧の処置前の値からの低下、(3)低酸素血症スコアの処置前の値からの上昇、(4)酸素化指数の処置前の値からの低下、(5)処置前と比較した右心機能の改善、及び(6)処置前と比較した運動能力の改善(例えば、6分間歩行試験で測定したとき)。
【0153】
[00175] 開示される方法の一実施形態では、PH、PAH、又はPPH患者は、医薬製剤を1日1回投与される。開示される方法の別の実施形態では、PH、PAH、又はPPH患者は、医薬製剤を1日2回投与される。開示される方法の別の実施形態では、PH、PAH、又はPPH患者は、医薬製剤を1日3回投与される。開示される方法のさらに別の実施形態では、PH、PAH、又はPPH患者は、医薬製剤を1日4回以上投与される。一実施形態では、投与は、食物と共に行われる。一実施形態では、各投与は、MDIからの1~5用量(パフ)、例えば、1用量(1パフ)、2用量(2パフ)、3用量(3パフ)、4用量(4パフ)又は5用量(5パフ)を含む。MDIは上記のものの1つであり得る。
【0154】
[00176] さらに別の態様では、本開示は、それを必要としている患者において肺線維症を処置するための方法を提供する。本方法は、定量吸入器を用いた吸入により、有効量の本明細書に開示される医薬製剤、すなわち、式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)若しくは(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩を含む医薬製剤を患者の肺に投与することを含む。一実施形態では、医薬製剤は、式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)若しくは(III)の化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む。別の実施形態では、医薬製剤は、式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)又は(III)の化合物を含む。一実施形態では、投与は、MDIにより医薬製剤をエアロゾル化し、エアロゾル化医薬製剤を吸入によって患者の肺に投与することを含む。いくつかの実施形態において、エアロゾル化医薬製剤は、NGIで測定したときに、約1~約3μm、約1~約2μm、又は約1.5μmのMMADを有する粒子を含む。いくつかの実施形態において、エアロゾル化医薬製剤は、NGIで測定したときに、約5%~約40%、約10%~約30%、約10%~約25%、約15%~約25%、又は約15%~約20%の咽頭沈着を有する。いくつかの実施形態において、エアロゾル化医薬製剤は、NGIで測定したときに、約50%~約95%、約60%~約85%、約70%~約85%、約75%~約85%、又は約70%~約80%のFPFを有する粒子を含む。患者は、一実施形態において、医薬製剤を1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回以上投与される。一実施形態では、投与は、食物と共に行われる。一実施形態では、各投与は、MDIからの1~5用量(パフ)、例えば、1用量(1パフ)、2用量(2パフ)、3用量(3パフ)、4用量(4パフ)又は5用量(5パフ)を含む。MDIは上記のものの1つであり得る。
【0155】
[00177] さらに別の態様では、本開示は、肺高血圧症、門脈肺高血圧症、又は肺線維症を処置するためのシステムを提供する。本システムは、本明細書に開示される医薬製剤、すなわち、式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)若しくは(III)の化合物、又はそのエナンチオマー、ジアステレオマー、若しくは薬学的に許容される塩を含む医薬製剤と、MDIとを含む。一実施形態では、医薬製剤は、式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)若しくは(III)の化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む。別の実施形態では、医薬製剤は、式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)又は(III)の化合物を含む。MDIは、前述のものの1つであり得る。
【実施例
【0156】
実施例
[00178] 本発明は、以下の実施例を参照することによってさらに説明される。しかしながら、これらの実施例は上記の実施形態と同様に説明のためのものであり、決して本発明の範囲を限定すると解釈されてはならないことに注意すべきである。
【0157】
材料
[00179] 定量バルブ:Aptar DF 316/50 RCU CS20 ARGENT
【0158】
[00180] MDIキャニスタ
a.Presspartプレーン(非被覆)アルミニウムキャニスタ(C0128-000、19mLプレーン)
b.Kimble chase PVC被覆セラムボトル、20mL、20mm;部品番号9610000023)
【0159】
[00181] アクチュエータ:Presspartアクチュエータ
a.OD/JL=0.30/0.7、部品番号NM200DIS ΦT3,16A ΦS0,3 JL0,7 BL/AZ AN(S)
b.OD/JL=0.27/0.5、部品番号NM120DC ΦT3,16A(N3)ΦS0,27 JL0,5 BL/296C
c.OD/JL=0.25/0.5、部品番号NM120DC ΦT3,16A(N3)ΦS0,25 JL0,5 BL/296C
d.OD/JL=0.20/0.5、部品番号NM120DC ΦT3,16A(N3)ΦS0,2 JL0,5 BL/296C
【0160】
[00182] 噴射剤:
a.HFA134a、CAS番号811-97-2
Mexichem Fluor-Zephex 134a
Daikin-Solkane 134a
b.HFA227ea、CAS番号431-89-0
Mexichem Fluor-Zephex 227ea
Daikin Solkane 227ea、CAS番号431-89-0
c.HFA152a、CAS番号75-37-6
Chemours HP-152
【0161】
医薬品有効成分(API)
[00183] トレプロスチニルパルミチル(C16TR)
【化12】
【0162】
[00184] ドデシルトレプロスチニル(C12TR);製造業者:Insmed
【化13】
【0163】
賦形剤
[00185] Brij(登録商標)58;製造業者:Sigma Aldrich;製品番号:P-5884
【化14】
【0164】
[00186] DSPE-PEG2000(代替名:DSPE-P2K);製造業者:NOF America;製品番号:DSPE-020CN
【化15】
【0165】
[00187] MSPE-PEG2000(代替名:MSPE-P2K);製造業者:NOF America;製品番号:MSPE-020CN
【0166】
共溶媒
[00188] イソプロパノール;製造業者:Fisher;製品番号:A464-4;分析評価=>99.9%;HO=<0.2%;CAS:67-63-0
【0167】
[00189] 無水エタノール;製造業者:Fisher;製品番号:BP2818-4;分析評価=>99.5%;HO=<0.2%;CAS:64-17-5
【0168】
実施例1-ラットにおいて吸入されたC16TR-MDI製剤に関する薬物動態学的評価
[00190] トレプロスチニルプロドラッグのヘキサデシルトレプロスチニル(トレプロスチニルパルミチル又はC16TRとも称される)は、長時間作用性肺血管拡張薬である。C16TRは、これまで、噴霧による吸入送達のために脂質ナノ粒子に配合されている。噴霧C16TR製剤(INS1009と呼ばれる)は、PBS中に懸濁された45:45:10のモル比のC16TR並びに賦形剤スクアラン及びDSPE-PEG2000を含有する(参照によってその全体が本明細書中に援用されるCorboz et al.,J Pharmacol Exp Ther.363:348-357 (2017)を参照)。肺血管拡張は、肺内のTREの局所活性との関連性がより大きく、血漿中のTREのレベルとの関連性はより小さい(参照によってその全体が本明細書中に援用されるChapman RW et al.,Pulm.Pharmacol.Ther.49:104-111 (2018)を参照)。血漿中のTREの濃度が低いと、全身血圧の低下などの潜在的な全身性の有害事象が最小限になり得る。この実施例は、C16TRの定量吸入器(MDI)製剤(C16TR-MDI)の開発と、ノーズオンリー(nose-only)吸入によりラットへ送達したときのそのPKプロファイルについてのこれらの製剤のうちの18の製剤の、噴霧INS1009及びC16TR乾燥粉末製剤と並行した評価とを説明する。この実施例で使用されるC16TR乾燥粉末製剤は、C16TR、DSPE-PEG2000、マンニトール、及びロイシンを1.5:0.75:70:30の重量比で含む。
【0169】
方法及び材料
1.C16TR-MDI製剤の調製
[00191] 適切なサイズのガラス器具中で固体成分(C16TR及びPEG化脂質、例えば、DSPE-PEG2000)を混ぜ合わせ、適切な量の界面活性剤、例えば、PEG400を添加し、次に所望のアルコール共溶媒(例えば、EtOH又はイソプロピルアルコール(IPA))により容量まで希釈することにより、適切な濃度の各賦形剤を含有する単一の原料を調製した。次に、溶液が均一になるまで、通常は約10分間、40℃及び約125rpmに設定した保温振とう器上に溶液を置いた。
【0170】
[00192] 次に、適切な量の原料を添加し、バルブを適所に圧着し、Pamasol Lab-2016手動充填ステーションを用いてヒドロフルオロアルカン(HFA)噴射剤を添加することにより、MDIキャニスタを充填した。バルブ製造業者の仕様に基づいて圧着高さを設定した(Aptar DF 316/50 RCU CS20 ARGENTバルブの場合、5.71mm)。圧着高さは、Socoge International Crimper-Control(モデルΦ20:743-03-143)を用いて測定した。缶組成を計算するために製造プロセスを通して質量測定を行った。質量測定に基づいて、全ての濃度計算を行った。原料組成は、各成分についてmg/gで報告した。任意の成分の添加前及び添加前後、圧着後、並びに噴射剤の添加後にキャニスタを秤量することにより、正確な缶組成を計算した。個々の成分の密度を使用して単位換算を行い、本明細書では、mg/gではなくmg/mLで濃度を報告した。表1は、調製したC16TR-MDI製剤の標的組成を要約する。
【0171】
【表1】
【0172】
2.ノーズオンリー吸入、血液及び肺のサンプリング
[00193] MDI送達のために修正された吸入タワーを用いて、ラットにおけるノーズオンリー吸入研究を実施した。各研究について、研究の前後にキャニスタの重量を測定し、作動期間を記録した。
【0173】
[00194] 投薬開始時の体重が300g~350gの間であるCharles River Laboratories(St Constant,Quebec,Canada)からのオスのスプラーグドーリーラットを研究で使用した。研究の当日、12アニマルノーズオンリー吸入チャンバ(12-animal nose-only inhalation chamber)の出口ポートに接続された拘束管(restraining tube)にラットを入れた。11匹のラットのコホートを使用し、フィルタを1つの残りの出口ポートに接続し、そこからノーズオンリーチャンバ内のエアロゾル濃度を測定した。空気を20L/分の流速でチャンバ内に循環させた。真空ポンプをフィルタに接続し、2.0又は3.0L/分のいずれかの真空流量に設定し、製剤のエアロゾル化開始の5分後に開始し、1、2、又は3分後に終了させた。すなわち、フィルタサンプリング時間は、製剤濃度及び使用されたキャニスタの数に応じて1、2、又は3分であった。帯電エアロゾル検出器(CAD)を備えたHPLCにより測定されるC16TRについてフィルタサンプルを分析した。
【0174】
[00195] 製剤への曝露の後、血液については0.5、2、4、6、12及び24時間、肺については0.5、6、12及び24時間の時点で、各ラットから血液及び肺組織サンプルを採取した。0.5時間の時点を、投薬直後(IPD)サンプリング時間と定義した。血液サンプルから血漿を分離し、肺組織を均質化して、HPLC MS/MSによってTRE及びC16TRの濃度を測定した。肺中のC16TR及びTREの濃度は、それらの絶対値で表されるか、又は単一の値に結合されて、C16TR当量値(C16TReq)で表される。TREからC16TRのモル当量への換算は、1.575の係数によるTRE濃度の乗算を含んでおり、これは、それぞれ614.9及び390.5g/molであるC16TR及びTREの分子量に基づく。
【0175】
3.薬物動態学的分析
[00196] Microsoft ExcelのアドインプログラムであるPKSolverプログラムを用いて、血漿及び肺薬物動態の分析を実施した。「血管外入力後のノンコンパートメント解析(Non-Compartmental Analysis after Extravascular Input)」のモジュールを使用して、表2に示されるいくつかのPKパラメータを計算した。
【0176】
【表2】
【0177】
4.送達用量の計算
[00197] 送達される吸入用量は、参照によってその全体が本明細書中に援用されるAlexander DJ et al.,Inhal.Tox.20:1179-1189(2008)によって既に記載されたように、エアロゾル薬物濃度、曝露期間、毎分呼吸量、沈着画分及び体重の関係を用いて計算した。
【0178】
結果
1.送達用量
[00198] 最低送達用量はMDI-Nで観察され(2.86μg/kg)、最高送達用量はMDI-Tで観察された(501.2μg/kg)。送達用量の相違は、部分的に、異なるMDI製剤間でのチャンバ効率及びエアロゾル性能の違いに起因し得る。
【0179】
2.肺薬物動態
[00199] 吸入された18のC16TR-MDI製剤のそれぞれは、噴霧INS1009で見られたものと同等の排除動態学により、24時間にわたって肺のC16TR及びTREにおける一次指数関数的減衰を実証した。肺C16TReqのCmax及びAUC0-inf値は、MDI-Tで最高であり、MDI-Sで最低であったが、フィルタデータから定量化された送達用量は、異なるMDI製剤間で大きく異なっていた。試験したC16TR-MDI製剤のそれぞれについて、Tmaxは同一であった。製剤MDI-Wの場合、肺C16TReqは、62.2ug/kgで投与されたときに8.01時間、115ug/kgで投与されたときに11.29時間の計算半減期を有する。
【0180】
3.血漿薬物動態
[00200] 吸入された18のC16TR-MDI製剤のそれぞれは、噴霧INS1009で見られたものと同等の排除動態学により、24時間にわたって血漿TREにおける一次指数関数的減衰を実証した。興味深いことに、これらの製剤の計算された血漿T1/2は、MDI-M-リピートの最低1.76時間からMDI-Sの最高12.51時間まで異なる。製剤MDI-Wの場合、血漿TREは、62.2μg/kgで投与されたときに8.47時間、115μg/kgで投与されたときに7.13時間の計算半減期を有する。血漿Tmaxは、3つの製剤(MDI-E、MDI-G、及びMDI-J)を除く全てについて、0.5時間で非常に一貫していた。MDI-E、MDI-G、及びMDI-Jは、2.0時間のTmax値を有した。この実施例の結果は、C16TR-MDI製剤のそれぞれが、投与の直後(0.5時間)に最高レベルのC16TR及びTREが肺で見出される噴霧INS1009と同様のPKプロファイルを示し、24時間にわたる指数関数的減衰と、約8時間の半減期とを有することを示す。C16TR-MDI-T、C16TR-MDI-H、C16TR-MDI-W(高用量)は投与の直後に肺において比較的高レベルのC16TR及びTREを有したが、C16TR-MDI-H(57.3μg/kg)及びC16TR-MDI-W高用量(115.0μg/kg)と比較して、遥かに高い吸入用量のC16TR-MDI-Tが与えられた(501.2μg/kg)。これらの化合物は、投与の24時間後に肺において高レベルのC16TR及びTREの両方を維持した。これらの化合物は全て、投与の直後及び24時間の採取期間中の両方で、血漿中に比較的低レベルのTREを有した。18のC16TR-MDI製剤のうち、C16TR-MDI-Tは、血漿中の低TRE濃度と共に、投与の直後に肺中のC16TRの最高レベルの1つを有する。これは、血漿中の高TREレベルで発生し得る全身血圧の低下などの有害事象を制限するために重要であり得る。肺の用量は、MDIキャニスタ組成及び吸入タワーの送達効率の違いに起因して、製剤間で著しく異なっていた。
【0181】
[00201] 図1及び図2に示されるように、噴霧INS1009及びC16TR乾燥粉末製剤と比較すると、C16TR-MDI製剤のPKプロファイルは、肺及び血漿の測定値について同等であると思われる。付加的に、MDI-K及びMDI-LのPKは、噴霧INS1009のものと非常に類似している(MDI-Kでは勾配=-0.115、MDI-Lでは-0.119、及び噴霧INS1009では-0.1413)。MDI-Wと比較して、MDI-K及びMDI-Lは低濃度(0.5mg/mLのC16TR)で配合され、アルコール共溶媒としてエタノールを使用する。したがって、MDI-Wは、化学的安定性(共溶媒としてIPAを使用)、物理的安定性(10%w/wのアルコール共溶媒)、インビボ性能(以下の実施例で議論されるPK並びに効力及び咳データ)に関して、バランスの取れた特徴を有すると思われる。興味深いことに、異なる製剤について、肺C16TReq:血漿TRE Cmax比に有意差があると思われる。通常、噴霧INS1009の肺/血漿Cmax比は約800であるが、C16TR乾燥粉末製剤の比は約1,600~13,000である。C16TR-MDI-Wの場合、我々は、低用量(62.2μg/kg)で送達されたときに約4,100、高用量(115μg/kg)で送達されたときに約4,800の中間の肺/血漿Cmax比を観察した。これは、噴霧INS1009からC16TR乾燥粉末製剤、C16TR MDI製剤へ移行するにつれて徐々に低下する全身曝露を示す。
【0182】
実施例2-C16TR-MDI-W製剤の物理的安定性の評価
[00202] C16TRは、全ての市販の噴射剤(HFA134a、HFA227ea、及びHFA152a)に溶解せず、アルコール共溶媒の使用を必要とする。MDIと共に使用するため、及び望ましいインビボ性能のためにDSPE-PEG2000及びPEG400が配合される場合、製剤は、約10%のアルコール共溶媒を必要とした。このように高レベルのアルコール共溶媒は、化学的安定性及びエアロゾル性能の低下をもたらし得る。C16TR-MDI-W製剤の場合のように、エタノール(業界標準の共溶媒)をイソプロピルアルコール(新規の賦形剤)へ切り換えると、化学的安定性の予想外の改善が観察された。さらに、C16TR-MDI-W製剤の長期的な物理的不安定性の兆候は観察されなかった。製剤は15℃で24時間後に透明な溶液のように見えた。製剤は、5℃で4時間後に濁った溶液のように見えたが、室温で30分以内に透明になった。製剤は-20℃では濁った溶液のように見えたが、室温で30分以内に透明化された。製剤は、-58℃で貯蔵すると濁った溶液になったが、室温で約24時間後に透明になった。
【0183】
実施例3-C16TR-MDI-U及びC16TR-MDI-W製剤の3カ月加速安定性研究
[00203] C16TR-MDI-U及びC16TR-MDI-W製剤、並びにC16TRを含まないこれらのそれぞれの対照製剤に、周囲湿度条件下、40℃で3カ月加速安定性研究を受けさせた。この研究には、溶解度を評価するためのガラス缶の目視観察と、化学的安定性アッセイとが含まれた。化学的安定性研究のために、HPLC法を使用した。サンプル及び対照製剤の詳細な組成は、以下の表3に示される。
【0184】
【表3】
【0185】
[00204] DSPE-PEG2000の主な分解物は、ステアロイル鎖の1つが切断されたときに形成されるMSPE-PEG2000であった。図3に示されるように、C16TRのIPAとのエステル交換反応が観察された。
【0186】
[00205] この加速安定性研究の過程において、沈殿の兆候は観察されなかった。各ガラスキャニスタは、無色透明の均一な溶液として存在した。
【0187】
[00206] 40℃で3カ月間にわたるMDI-Uの化学的安定性研究の結果は、表4に示される。TRE(トレプロスチニル酸)は検出されなかった。しかしながら、我々は、C16TRとIPAの間のエステル交換反応の副生成物である2C3TRの増加を観察した。全ピーク面積に関して、サンプル中で検出されるC16TRの量は減少し、Brij(登録商標)58の量は一定のままであった。全分解については、T0では非常に低レベルが存在しており、1Mの時点で最高レベルが観察され、2M及び3Mサンプルは中間であった。
【0188】
【表4】
【0189】
[00207] 我々は、40℃で3カ月間にわたってMDI-U対照サンプルについて同様の安定性パターンを観察した(表5)。我々は、未知のピーク(そのうちの多くは、Brij(登録商標)58の分解に起因し得る)の増加によって整合されるBrij(登録商標)58の減少を観察した。興味深いことに、1Mの時点で最高レベルの分解が観察された。2M及び3Mの時点では、分解は、約5%で安定するようであった(CADピーク面積に基づく)。
【0190】
【表5】
【0191】
[00208] 40℃で3カ月間にわたるMDI-Wの化学的安定性は、MDI-Uのものと同等である(表6)。TRE(トレプロスチニル酸)は検出されなかった。また我々は、C16TRとIPAの間のエステル交換反応の副生成物である2C3TRの増加も観察した。全ピーク面積に関して、サンプル中で検出されるC16TRの量は変動し、全ピーク面積に関して正及び負の両方の変化が異なる時点で観察された。しかしながら、2C3TRの量が増加していたので、C16TRの量は減少しているに違いない。DSPE-PEG2000は製剤中で最も安定性の低い成分であり、最初のDSPE-PEG2000のほぼ10%がMSPE-PEG2000加水分解生成物に分解した。また我々は、他の未確認の分解生成物の着実な増加も観察した。
【0192】
【表6】
【0193】
[00209] 我々は、40℃で3カ月間にわたってMDI-W対照サンプルについて同様の安定性パターンを観察した(表7)。我々は、一部分はMSPE-PEG2000の増加、そして一部分は未知のピークの増加によって整合される、DSPE-PEG2000の減少を観察した。DSPE-PEG2000がMSPE-PEG2000及び他の成分に分解するかどうか、或いはDSPE-PEG2000がまずMSPE-PEG2000に分解し、次にMSPE-PEG2000が他の化合物に分解し続けるかどうかは不明である。
【0194】
【表7】
【0195】
実施例4-C16TR-MDI-W製剤のAPSDに対するハードウェア構成の効果
[00210] 各アクチュエータがエアロゾル性能にどのように影響するかを観察するために、様々なオリフィス直径及びジェット長さを有する4つの異なるMDIアクチュエータをMDI-WにおいてNGIにより試験した。50μlの定量バルブ及びプレーン19mLキャニスタ(この研究の期間中使用される)を用いて3つのMDIキャニスタを作製した。製造上のばらつきを回避するために、各サイズに対してただ1つのアクチュエータを使用した。Presspartアクチュエータのサイズはそれぞれ、0.3/0.7、0.27/0.5、0.25/0.5及び0.2/0.5のオリフィス直径(ミリメートル)及びジェット長さ(ミリメートル)であった。
【0196】
[00211] アクチュエータオリフィス直径は、最初の0.3/0.7のアクチュエータサイズよりも小さくなるように選択した。MDI-Wの空気動力学的粒径分布(APSD)の特徴付けに対する様々なアクチュエータサイズの効果は、表8に示される。
【0197】
【表8】
【0198】
[00212] 結果は、オリフィス直径が減少するにつれて、MMADが全体的に減少することを示す。.30/.7対.20/.5及び.27/.5対.20/.5のアクチュエータサイズの間には有意差がある。オリフィス直径が減少すると、微粒子画分(FPF)は著しく増大する。オリフィス直径が減少すると、微粒子用量(FPD)は著しく増大する。オリフィス直径が減少すると、咽頭沈着は減少し、より好ましい分布が作られる。図4A及び4Bを参照されたい。図4Bは、0.12mmのオリフィス直径が、NGIステージ3~7において最高の沈着を有することを示す。全体として、オリフィス直径を減少させると、好ましく重要な結果が得られ、適切なアクチュエータを使用することにより、C16TRの優れた送達を達成することができる。
【0199】
実施例5-C16TR-MDI-W製剤のエアロゾル性能及び「使用による用量(dose through use)」測定
方法
1.空気動力学的粒径分布(APSD)-次世代インパクター(NGI)
[00213] Presspart MDIアクチュエータを使用し、23℃及び50%RHの制御された温度及び湿度条件下、30L/分の体積流量で次世代インパクターを用いてC16TR-MDI-W製剤中のC16TRの空気動力学的粒径分布(APSD)を実施した。各NGI構成要素に沈着したC16TR質量をHPLC/CADにより測定して、送達用量(DD)、MMAD、咽頭沈着、FPF、及びFPDを計算した。
【0200】
2.「使用による用量」研究プロトコル
[00214] 実験のために全部で6つのキャニスタを用いた。実験期間全体を通して、6つのうちの3つのキャニスタはバルブを上向きに配置し、3つのキャニスタはバルブを下方に配置した。キャニスタは全て、濃縮原料を空の缶に添加し、次に定量バルブで缶を圧着し、そして噴射剤を缶に添加する、2段階充填プロセスを用いて調製した。この研究のために、PressPart 19mLプレーンアルミニウムキャニスタ(Presspart、C0128-000)と共に、Aptar DF 316/50 RCU CS20 ARGENTバルブを使用した。研究では、用量カウンタを備えたPressPartアクチュエータ(0.2mmのID/0.5mmのJL)も使用された。
【0201】
3.使用による用量-放出用量アッセイ(EDA)
[00215] 用量均一性サンプリング装置(DUSA)を用いてC16TR-MDI-W製剤の送達された全質量の定量化のための放出用量アッセイ(EDA)を実施した。サンプル採取ユニットは、DUSA管、25mmのガラス繊維フィルタ(Pall Life Sciences、部品番号61630)、及び28.3L/分以上の体積流量で真空に引くことができる真空ポンプを備えていた。Presspartアクチュエータ(0.3mmのオリフィス直径/0.7mmのジェット高さ)を用いてキャニスタを2回作動させ、採取管内に20mLのHO中75%のIPAを添加し、フィルタを破壊するように激しく振とうさせることにより、サンプルを採取し、最後に、0.45μmのフィルタを有する1mLシリンジ(Whatman、カタログ番号10463050)ユニットを用いて、サンプルをろ過した。各NGI構成要素に沈着したC16TR-MDI製剤中のC16TRの定量化は、C8カラムにおいて高速液体クロマトグラフィ(HPLC)及び帯電エアロゾル検出器(CAD)を用いて、0.4μg/mL~25μg/mLの公称範囲にわたって、標準濃度の対数に対するC16TRのピーク面積の対数の内部7点線形対数-対数検量線の計算によって達成した。
【0202】
4.「使用による用量」-残留材料分析
[00216] MDIキャニスタの内壁における薬物沈着は、接着又は吸着のために起こる可能性があり、製剤成分の分解により影響され得る。内壁における薬物の損失は、放出用量のばらつきをもたらし得る。薬物沈着分析のために、キャニスタを乾燥するまで作動させ(すなわち、追加の作動により材料は放出されなかった)、InnovaSystems AC-2自動缶カッターを用いてバルブを切断した。残りの蓋のないアルミニウム缶を周囲条件で2時間乾燥させた。次に、缶を目視で観察して、沈着した薬物の存在を確認し、記録のために写真を撮った。その後、キャニスタ全体を3mLのHO中75%のIPAで強く洗浄(ボルテックス)し、最後に、HPLCを用いてサンプルを分析した。
【0203】
結果
[00217] C16TR-MDI-W製剤の「使用による用量」研究結果は、図5、6A、6B、7A、及び7B、並びに表9及び10に示されるように、バルブアップ及びバルブダウンキャニスタの両方が再現可能な結果をもたらしたことを示す。要約すると、バルブアップキャニスタは270回作動され、平均放出質量は、57.33mg±0.58mgであった。同時に、バルブダウンキャニスタは269回作動され、平均放出質量は、57.00mg±1.00mgであった。キャニスタの全てについて、実験の終わりに向かって放出質量のわずかな減少が観察された(最初=58.67mg±1.24mg;最後=55.39mg±0.75mg)。伝統的なMDI試験ガイドラインに従って、放出質量は、初期値から±20%を超えてドリフトしない。上記の結果は、C16TR-MDI-Wが許容可能な「使用による用量」放出質量を有すること、そしてC16TR-MDI-W製剤が現在のバルブと適合性であることを示す。この試験では、アルコール共溶媒としてIPAを使用するMDI製剤と組み合わせたときに、定量バルブは適切な用量を明確に測定及び送達できることも決定された。
【0204】
【表9】
【0205】
【表10】
【0206】
[00218] NGI使用するAPSDの結果は、C16TR-MDI-W製剤のエアロゾル性能が経時的に同等であったことを示す。バルブアップキャニスタの場合、MMADは約1.45(±0.05)μmであり、咽頭沈着は約18.36(±2.80)であり、微粒子画分(FPF)は約78.13(±3.10)である。3つの別々の試験(最初、中間及び最後)のAPSDの概要はわずかな統計的差異を有するが、3つのデータが近接しているため、全体的な結果は満足できるものである。「バルブアップ」キャニスタの放出用量の計算は全て、製剤強度及び作動体積に基づく理論値の80%以上である。図6A及び6B並びに表9のデータを参照されたい。
【0207】
[00219] バルブダウンキャニスタの場合、MMADは約1.49(±0.03)μmであり、咽頭沈着は約19.93(±1.32)であり、微粒子画分(FPF)は約76.0(±0.9)である。3つの別々の試験(最初、中間及び最後)のAPSDの概要は、統計的差異を有さない。全体的に、最初、中間及び最後の結果について同様の結果が観察された。「バルブアップ」キャニスタの放出用量の計算は全て、製剤強度及び作動体積に基づく理論値の85%以上である。図7A及び7B並びに表10のデータを参照されたい。
【0208】
[00220] 残留材料分析は、キャニスタ壁がきれいであり、壁の内側に沈着薬物が見られないことを示した。しかしながら、キャニスタを75%のHO中のIPAで洗浄し、HPLCにおいて分析した。HPLCデータにより、微量のC16TR(17μg±33.4)及びDSPE-P2K(4.80μg±20.18)の存在が示唆されが、これは、切り開かれる前に製剤が十分に放出されなかったためであり得る。
【0209】
[00221] この実施例の結果は、放出質量測定、エアロゾル性能、及びキャニスタ壁の薬物沈着に関して、C16TR-MDI-W製剤が安定した製剤であったことを実証する。放出質量が初期値から±20%を超えてドリフトしてはならないというMDI試験ガイドラインを考慮して、この実施例からの結果は、C16TR-MDI-W製剤が許容可能な「使用による用量」放出質量を有すること、そして製剤が現在のバルブと適合性であることを示す。また結果は、定量バルブが、アルコール共溶媒としてIPAを使用するMDI-W製剤の適切な用量を測定及び送達するのに適していたことも示す。さらに、NGIデータにより、MMADはバルブアップ及びバルブダウンキャニスタについてそれぞれ約1.45(±0.05)μm及び1.49(±0.03)μmであり、それに応じて微粒子画分(FPF)は約78.13%(±3.10)及び76.0%(±0.9)であることが明らかになる。同時に、バルブアップ及びバルブダウンキャニスタの両方の放出用量/送達用量は、ラベルクレーム(Label claim)の約80%以上であった。これらのAPSD結果は全て、満足できるものであった。最後にキャニスタ壁の薬物沈着を分析すると、きれいなキャニスタ壁が観察され、沈着薬物は見られなかった。これは、プレーンアルミニウムキャニスタの内側で製剤が安定であったことを示す。
【0210】
実施例6-製剤性能に対するDSPE-PEG2000の効果
[00222] 薬物性能に対するDSPE-PEG2000の分解の影響を評価するために、我々は、インビトロ及びインビボ試験の両方を用いて、人工的に分解されたサンプルの製剤MDI-Xを調製及び研究した(以下の実施例7を参照)。結果は、各試験においてMDI-XがMDI-Wと同等に機能することを示し、DSPE-PEG2000の分解が重要でないことが示唆される。
【0211】
[00223] 同一試験条件下でMDI-XとMDI-Wとの間でAPSDデータを比較すると、2つの製剤について同等のエアロゾル性能が示される(表11及び図8)。MMAD、GSD、咽頭沈着、及びFPFは、2つの製剤間で同等であると思われる。このデータは、我々の溶解度データ及び我々のインビボ性能データ(以下の実施例7に示される)の両方と一致しており、2つの製剤が同等であることが示唆される。まとめると、MDI-Xに関する全てのデータは、DSPE-PEG2000のMSPE-PEG2000及びステアリン酸への分解が、インビトロ又はインビボでの製剤の性能に影響を与えないという点で許容可能であることを示唆する。
【0212】
【表11】
【0213】
実施例7-C16TR-MDI-W及びC16TR-MDI-X製剤のインビボ性能研究
[00224] この実施例では、ラットにおける低送達用量(62.2μg/kg体重)及び高送達用量(115μg/kg体重)のC16TR-MDI-W製剤並びにC16TR-MDI-X製剤の肺及び血漿薬物動態を調査し、噴霧INS1009の肺及び血漿薬物動態と比較した。遠隔測定される低酸素負荷ラットにおけるC16TR-MDI-W及びC16TR-MDI-X製剤の肺血管拡張効果も評価した。
【0214】
方法
1.肺及び血漿薬物動態研究
[00225] 肺及び血漿薬物動態研究のために、ラットにおけるノーズオンリー吸入及び血液と肺のサンプリング、薬物動態学的分析、並びに送達用量計算は、実施例1に記載されるように実施した。
【0215】
2.肺血管拡張効力研究
[00226] 吸入された低酸素ガス混合物への曝露により誘発される右心室脈圧(RVPP)の上昇の阻害を測定するために右心室に埋め込まれた遠隔測定プローブが装備されたラットにおいて、C16TR-MDI-W及びC16TR-MDI-X製剤の肺血管拡張効力を決定した。
【0216】
[00227] 特に、RVPP及び平均全身動脈血圧(mSAP)を測定するために右心室及び下行大動脈に遠隔測定プローブが埋め込まれたオスのスプラーグドーリーラットにおいて、実験を実施した。これらの心血管パラメータは、低酸素空気(10%O/バランスN)へ10分間曝露し、正常酸素空気を呼吸するように戻した後、正常酸素空気(21%O/バランスN)を呼吸しながら測定した。薬物曝露の前、並びに吸入被験物質への曝露の1、6、12及び24時間後に、低酸素負荷によるRVPPの上昇(低酸素によるΔRVPP)を測定した。
【0217】
[00228] MDI送達のために修正された吸入タワーを用いて、ラットにおけるノーズオンリー吸入研究を実施した。11匹のラットのコホートを使用し、フィルタを1つの残りの出口ポートに接続し、そこからノーズオンリーチャンバ内のエアロゾル濃度を測定した。空気を20L/分の流速でチャンバ内に循環させた。真空ポンプをフィルタに接続し、2.0又は3.0L/分のいずれかの真空流量に設定し、薬物のエアロゾル化開始の5分後に開始し、1、2、又は3分後に終了させた。すなわち、フィルタサンプリング時間は、製剤濃度及び使用されたキャニスタの数に応じて1、2、又は3分であった。CADを備えたHPLCにより測定されるC16TRについてフィルタサンプルを分析した。
【0218】
結果
[00229] C16TR-MDI-W製剤の薬物動態学的結果は、図9及び10に示される。図9の結果は、C16TR-MDI-W製剤によるC16TRの肺クリアランスが、勾配により示されるように噴霧INS1009よりも遅いことを示す。図10の結果は、C16TR-MDI-W製剤による血漿TREレベルが、12~24時間は0.1ng/mLを超えたままであり、一貫して低下しているという点で許容可能であることを示す。
【0219】
[00230] C16TR-MDI-X製剤の薬物動態学的結果は、図11及び12に示される。図11の結果は、C16TR-MDI-X製剤によるC16TRの肺クリアランスが、勾配により示されるように噴霧INS1009よりも遅いが、C16TR-MDI-W製剤よりも速いことを示す。図12の結果は、C16TR-MDI-X製剤による血漿TREが、12~24時間は0.1ng/mLを超えたままであり、一貫して低下しているという点で、噴霧INS1009と比較して優れていることを示す。
【0220】
[00231] 吸入される低酸素へのラットの曝露は、個々の研究に応じて、正常酸素の値と比べてRVPPを約10~20mmHg上昇させた。低酸素負荷の最後に、RVPPは数分以内に直ちに低下し、10分以内に低酸素前の値に戻った。薬物曝露の24時間後までの様々な時点での低酸素によるΔRVPPと、薬物曝露の前に得られた2~3回の決定からの合計値とを比較することにより、薬物効果を決定した。115μg/kgの送達用量のC16TR-MDI-Wに曝露すると、低酸素に起因するΔRVPPが減少し、6時間で統計的に有意な(p<0.05)阻害が観察された(図13)が、24時間以内に、RVPPは、薬物曝露前に観察されたベースライン値に戻る傾向があった。C16TR-MDI-Xへの曝露でも同様の結果が得られ、111μg/kgの吸入用量は、低酸素に起因するΔRVPPを低減し、6時間で統計的に有意な(p<0.05)阻害が観察された(図14)。興味深いことに、この場合、RVPPは、薬物曝露前に観察されたベースライン値に戻る傾向がなかった。C16TR-MDI-W及びC16TR-MDI-Xの送達用量は、吸入された薬物の濃度、曝露期間、体重、毎分呼吸量及び1.0の沈着画分に基づいた。参照によってその全体が本明細書中に援用されるAlexander et al.,Inhal.Toxicol.20:1179-1189(2008)を参照されたい。
【0221】
[00232] まとめると、この実施例の結果は、C16TR-MDI-W及びC16TR-MDI-Xの両方が、MDIによる製剤の吸入後に低酸素負荷ラットの肺動脈圧を低下させるのに効果的であること、そしてDSPE-PEG2000の分解がインビボ性能に影響を与えないことを示す。
【0222】
実施例8-C16TR-MDI-W及びC16TR-MDI-X製剤の溶解時粒径の研究
[00233] この実施例では、我々は、C16TR-MDI-W及びC16TR-MDI-X製剤が、水性媒体中に溶解したときにナノ粒子を形成するかどうかを調査した。この目的のために、MDI-W及びMDI-Xのサンプルを調製し、Mobiusによりナノ粒径分布を決定した。特に、MDI製剤を水性環境中に作動させ、次に、Mobius動的光散乱機器を用いる粒径分析のために希釈した。
【0223】
[00234] 表12に示されるように、C16TR-MDI-W及びC16TR-MDI-X製剤は、溶解時にほぼ同じサイズのナノ粒子を形成した。
【0224】
【表12】
【0225】
実施例9-モルモットにおける咳及び換気についてのC16TR-MDI製剤の評価
[00235] この実施例では、意識のあるモルモットにおいて、咳、換気の変化、及びPenh(気管支収縮中に通常見られる呼吸パターンの変化の無次元指数)の変化を生じる効果について、C16TR-MDI製剤を評価した。
【0226】
方法
[00236] オスHartleyモルモットにおいて実験を実施した。3日間の順化期間の後、確立された技術を用いて、換気(一回換気量、呼吸数及び毎分呼吸量)、Penh、及び咳を測定するために、モルモットを全身プレチスモグラフに入れた(Corboz et al.,J Pharmacol Exp Ther 363:1-10(2017);Chong BTY et al.,J.Pharmacol.Toxicol.Methods 39,163-168(1998);Lomask M.,Exp.and Toxicol.Pathol.57,13-20(2006)を参照、これらのそれぞれは、参照によってその全体が本明細書中に援用される)。大きい吸気とその後の大きい呼気を示すプレチスモグラフ記録から咳を測定し、手動観察、ビデオ記録及び咳音により確認した。換気、Penh及び咳データは、プレチスモグラフによって循環された加湿空気を呼吸しながら15分のベースライン期間中に測定した。次に、MDI-L、MDI-W、MDI-TRE、及びこれらのそれぞれの媒体対照を含む被験物質を定量吸入器により15分間送達した後、エアロゾル化合物を投与してから120分間の観察期間を置いた。被験物質への曝露の前、最中、及び後に、換気、Penh及び咳を測定した。
【0227】
[00237] プレチスモグラフの入口から送達系を2L/分の流速で供給した。全実験期間中、1.6L/分の真空バイアス流を維持し、さらに0.5L/分の真空を、サンプル吸入分析のためにフィルタを介して接続した。研究の全期間中、すなわち135分間、フィルタサンプリングを維持したが、10分又は15分の曝露時間を使用して、ノーズオンリーチャンバ内の薬物のエアロゾル濃度を計算した(参照によってその全体が本明細書中に援用されるAlexander DJ et al.,Inhal.Tox.20:1179-1189(2008)を参照)。C16TR濃度についてフィルタサンプルを分析し、データを送達用量計算に使用した。研究の最後に、モルモットを安楽死させ、血液(血漿)、肺、気管、喉頭及び気管分岐部+気管支を採取して、これらのサンプル中のC16TR及びTRE濃度を測定した;MDI-TRE又は媒体対照で処置したモルモットからは組織サンプルを採取しなかった。
【0228】
結果
[00238] MDI-TREの曝露は、極めて低い用量では耐容性であったが、より高い用量では重大な咳を引き起こした。咳の数対TRE送達用量のプロットは図15及び16に示される。咳応答を生じない最も高い送達用量、すなわち「咳なし」送達用量を特定するために、咳が観察されなくなるまで用量を減らした。我々のデータに基づいて、モルモットにおいて咳を引き起こさない最高送達用量は、0.293μg/kgであった。このデータにより、モルモットの咳応答は、MDIで送達されるトレプロスチニル酸の曝露に対して極めて敏感であることが確認された。エラーバーは標準偏差を表す;各点は、1日分の実験から収集されたデータを表す。
【0229】
[00239] イソプロピルアルコール(IPA)又はIPA及び賦形剤(DSPE-PEG2000及びPEG400)のいずれかを含有する媒体対照の曝露は十分に耐容性であり、モルモットにおいて咳応答を生じなかった。
【0230】
[00240] MDI-L及びMDI-Wの曝露は十分に耐容性であり、死亡をもたらさなかった。咳の数対C16TR送達用量のプロットは、図17に示される。咳応答の回避に関して、MDI-Lは、高用量レベルにおいても咳が観察されなかったという点で、より良い製剤であると思われる。MDI-Lの各結果は単一のモルモットから得られたことに注意されたい。エラーバーは標準偏差を表す;各点は、1日分の実験から収集されたデータを表す。C16TR送達用量は、フィルタデータに基づいて計算した。
【0231】
[00241] データを調べる別の方法は、個々のデータ点をプロットし、x軸を生物分析中に測定された実際の肺C16TR当量レベルに変更することである。この分析により、データに関する異なる視点が得られた(図18)。フィルタデータと、投薬の2時間後に肺で測定されたC16TR当量の量との間には、いくらかの相違がある。
【0232】
[00242] C16TRのMDI-L、MDI-W、及び2つの乾燥粉末製剤(C16TR-DP1及びC16TR-DP2)に対する咳応答の比較により、同等の結果が得られた(図19)。C16TR-DP1は、C16TR、DSPE-PEG2000、マンニトール、及びロイシンを1.5:0.75:70:30の重量比で含む。C16TR-DP2は、C16TR、DSPE-PEG2000、トレハロース、及びロイシンを1.5:0.75:70:30の重量比で含む。C16TR送達用量と、観察された咳の平均数との間には、直線的な相関関係があった。結果は、MDI-Wの「咳なし」送達用量が、C16TR-DP1及びC16TR-DP2製剤よりも高い可能性のあることを示し得る。上記の分析と同様に、生物分析中に測定された肺C16TR当量レベルに対して咳の数をプロットすることにより、種々の製剤及び投与経路を比較することができる(図20)。この分析により、データに関してわずかに異なる視点が得られるが、同じ結論に達する。
【0233】
[00243] 要約すると、MDI-TRE及びMDI-Wの両方で咳が観察されたが、MDI-L又は媒体対照では観察されなかった。動物は、MDIにより送達されるトレプロスチニル酸に対してきわめて敏感であると思われ、比較的低い送達用量でも大量の咳が観察される。MDI-Wの「咳なし」送達用量(11.5μg/kg)は、C16TR-DP1(4.7μg/kg)及びC16TR-DP2(2.3μg/kg)で観察されたよりも高く、モルモットは、乾燥粉末吸入器よりもMDIにより送達されるC16TRに対して、耐容性が良い可能性のあることが示唆される。しかしながら、測定された肺C16TReqレベルを比較すると、MDI-Wの咳なしレベルは313ng/gであり、C16TR乾燥粉末製剤について前に観察されたレベルと同様であった。
【0234】
[00244] 記載された発明はその特定の実施形態を参照して記載されたが、本発明の真の趣旨及び範囲から逸脱することなく、種々の変化がなされ、等価物が代用され得ることは当業者により理解されるべきである。さらに、特定の状況、材料、組成物、プロセス、プロセスステップ(単数又は複数)を記載される本発明の客観的な趣旨及び範囲に適合させるために、多数の修正を行うことができる。このような修正は全て、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。
【0235】
[00245] 本明細書で参照される特許、特許出願、特許出願公開、雑誌記事及びプロトコルは、全ての目的のために参照によってその全体が援用される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【国際調査報告】