IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インベンテイオ・アクテイエンゲゼルシヤフトの特許一覧

<>
  • 特表-乗客輸送設備用手すり殺菌装置 図1
  • 特表-乗客輸送設備用手すり殺菌装置 図2
  • 特表-乗客輸送設備用手すり殺菌装置 図3
  • 特表-乗客輸送設備用手すり殺菌装置 図4
  • 特表-乗客輸送設備用手すり殺菌装置 図5
  • 特表-乗客輸送設備用手すり殺菌装置 図6
  • 特表-乗客輸送設備用手すり殺菌装置 図7
  • 特表-乗客輸送設備用手すり殺菌装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】乗客輸送設備用手すり殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20230428BHJP
   B66B 31/02 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
A61L2/10
B66B31/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557775
(86)(22)【出願日】2021-03-09
(85)【翻訳文提出日】2022-10-24
(86)【国際出願番号】 EP2021055915
(87)【国際公開番号】W WO2021190915
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】20165562.8
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040729
【氏名又は名称】インベンテイオ・アクテイエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】INVENTIO AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バーゲンライトナー,ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】クレーバイン,ゲルハルト
(72)【発明者】
【氏名】ベルガー,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】シュッツ,リヒャルト
(72)【発明者】
【氏名】ヘーベルレ,ウルリヒ
【テーマコード(参考)】
3F321
4C058
【Fターム(参考)】
3F321HA23
3F321HA25
3F321HA31
4C058AA24
4C058BB06
4C058BB10
4C058KK02
4C058KK22
(57)【要約】
本発明は、乗客輸送設備(1)の手すり(17)用の手すり殺菌装置(41)に関する。手すり殺菌装置(41)は、その光円錐(45)の領域で殺菌電磁放射線を放出することができる複数の発光ダイオード(43)を有する。手すり殺菌装置(43)の貫通セグメント(57)は、少なくとも2つのセクタ(61、62、63)に分割され、セクタ(61、62、63)に配置された平面(71、72、73)を有するキャリア(49)を有する。発光ダイオード(43)は、平面(71、72、73)に従って配向されるようにキャリア(49)上に配置される。セクタの1つには、貫通セグメント(57)の長手方向延長部と平行に、100°~160°の角度(α)で互いに傾斜するように配置された2つの平面(72、73)がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手すり殺菌装置(41)であって、少なくとも1つのハウジング(51)と、光円錐主軸線(47)を有する複数の発光ダイオード(43)とを備え、発光ダイオード(43)は、その光円錐(45)の領域内で殺菌電磁放射線を放出することができ、ハウジング(51)は、乗客輸送設備(1)の連続した手すり(17)用の入口側(53)と入口側(53)の反対側にある出口側(55)とを有し、
・少なくとも2つのセクタ(61、62、63)に分割される手すり(17)用の貫通セグメント(57)は、入口側(53)と出口側(55)との間のハウジング(51)内に存在し、
・セクタ(61、62、63)は、貫通セグメント(57)の長手方向延長部に前後に並べて配置され、
・少なくとも1つの発光ダイオード(43)は、第1のセクタ(61)内に配置され、その光円錐主軸線(47)は、第1の平面(71)に対して略垂直に配向され、
・少なくとも2つの発光ダイオード(43)は第2のセクタ(62)に配置され、少なくとも1つの発光ダイオード(43)の光円錐主軸線(47)は、第2の平面(72)に対して略垂直に配向され、少なくとも1つの発光ダイオード(43)の光円錐主軸線(47)は第3の平面(73)に対して略垂直に配向され、
第2の平面(72)及び第3の平面(73)は、貫通セグメント(57)の長手方向延長部と平行に、かつ100°~160°の角度(α)で互いに傾斜するように配置され、手すり殺菌装置(41)は、少なくとも1つの案内ローラ(83)を有し、案内ローラ(83)によって、乗客輸送設備(1)の手すり(17)は、発光ダイオード(43)に対して所定の位置で貫通セグメント(57)内のハウジング(51)を通って案内可能であることを特徴とする、手すり殺菌装置(41)。
【請求項2】
少なくとも1つの案内ローラ(83)は、入口側(53)及び/又は出口側(55)に配置される、請求項1に記載の手すり殺菌装置(41)。
【請求項3】
少なくとも1つの案内ローラ(83)は、ハウジング(51)の内部に配置される、請求項1又は2に記載の手すり殺菌装置(41)。
【請求項4】
第1の平面(71)に対する第2の平面(72)の傾斜(β)は、第1の平面(71)に対する第3の平面(73)の傾斜(γ)と同じである、請求項1~3のいずれか一項に記載の手すり殺菌装置(41)。
【請求項5】
貫通セグメント(57)内に第3のセクタ(63)が画定され、セクタ内に少なくとも1つの発光ダイオード(43)が配置され、光円錐主軸線(47)は第4の平面(74)に対して垂直に配向され、第2のセクタ(62)は第1のセクタと第3のセクタ(63)との間に配置され、第4の平面(74)は第1の平面(71)と平行に配置される、請求項1~4のいずれか一項に記載の手すり殺菌装置(41)。
【請求項6】
少なくとも3つの発光ダイオード(43)が各平面(71、72、73、74)に配置され、それらの光円錐主軸線(47)は各平面(71、72、73、74)において互いに平行に配向される、請求項1~5のいずれか一項に記載の手すり殺菌装置(41)。
【請求項7】
存在する場合、5つの発光ダイオード(43)が第1の平面(71)に配置され、3つの発光ダイオード(43)がそれぞれ第2の平面及び第3の平面(72、73)に配置され、4つの発光ダイオード(43)が第4の平面(74)に配置される、請求項6に記載の手すり殺菌装置(41)。
【請求項8】
ハウジング(51)は、2つの部分で設計されており、U字形の主ハウジング部分(77)と、主ハウジング部分(77)の開放側にまたがるカバー(79)とを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の手すり殺菌装置(41)。
【請求項9】
前記手すり殺菌装置はキャリア(49)を備え、キャリア(49)が手すり殺菌装置(41)の意図された設置位置に対して貫通セグメント(57)の下方のハウジング(51)内に配置され、キャリア(49)上に存在する全ての平面(71、72、73、74)が形成され、発光ダイオード(43)は前記平面(71、72、73、74)に固定される、請求項1~8のいずれか一項に記載の手すり殺菌装置(41)。
【請求項10】
貫通セグメント(57)に向けられ、放射線を反射するように意図された少なくとも1つの反射器(81)がハウジング(51)内に配置される、請求項1~9のいずれか一項に記載の手すり殺菌装置(41)。
【請求項11】
案内ローラ(83)の回転軸線(85)は、第1の平面(71)と平行に、かつ貫通セグメント(57)に垂直に配置される、請求項1~10のいずれか一項に記載の手すり殺菌装置(41)。
【請求項12】
案内ローラ(83)のトレッド外形(87)は、案内される手すり(17)の外面外形(89)に対応する、請求項1~11のいずれか一項に記載の手すり殺菌装置(41)。
【請求項13】
互いに傾斜した第2と第3の平面(72、73)の角度(α)は、発光ダイオード(43)の殺菌電磁放射線のスペクトル組成及び手すり(17)の材料表面に一致させられる、請求項1~12のいずれか一項に記載の手すり殺菌装置(41)。
【請求項14】
エスカレータ又は動く歩道として設計された乗客輸送設備(1)であって、少なくとも1つの循環式手すり(17)を具備する少なくとも1つの欄干(15)を備え、乗客輸送設備(1)は、各循環式手すり(17)に対して、請求項1~13のいずれか一項に記載の少なくとも1つの手すり殺菌装置(41)を有することを特徴とする、乗客輸送設備(1)。
【請求項15】
欄干(15)が手すり(17)の戻り走行部は乗客輸送設備(1)のユーザには隠されるように案内される欄干基部(13)を備え、手すり殺菌装置(41)が欄干(15)の欄干基部(13)内に設置される、請求項14に記載の乗客輸送設備(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのハウジングと、殺菌性電磁放射線を放出することができる複数の発光ダイオードとを備える手すり殺菌装置、少なくとも1つの手すり殺菌装置を有する乗客輸送設備、及び手すり殺菌装置を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道として設計された乗客輸送設備は、通常、ユーザが立つことができるコンベヤベルトと同じ速度で移動する循環式手すりを有する。これにより、ユーザは、移動しながら手すりをしっかり掴むことができる。手すりのうち、ユーザが掴むことができる手すりの領域を先行走行部と呼び、乗客輸送設備のユーザには隠され、輸送方向に対して戻される領域を戻り走行部と呼ぶ。ユーザの手が手すりの表面に接触すると、細菌、病原菌、及びウイルスが手すりに付着する。このようにして付着した病原体は、手すり上で増殖し、後続のユーザに感染する可能性がある。したがって、このような乗客輸送設備の手すりは、公共空間内で感染症が伝染する可能性のある、不衛生な場所を象徴することとなる。
【0003】
国際公開第2019/164256号は、従来技術による手すり殺菌装置を開示している。ここでは、発光ダイオードを用いて手すりに紫外線を照射する。この殺菌電磁放射線は、ウイルスや細菌のデオキシリボ核酸を破壊するので、この手すり殺菌装置の出口側から手すりの表面上で微生物の著しい減少を検出することができる。
【0004】
例えば、特開平8-188369号公報は、更に徹底した殺菌を可能にするために、洗浄された手すりの表面がUVランプからの放射線によって殺菌されることができるように、回転ブラシによる広範な前洗浄及び殺菌流体による洗浄システムを提供する。しかしながら、このような手すり殺菌装置は非常に高価であり、特に、液体を必要とするため運転コストが高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2019/164256号
【特許文献2】特開平8-188369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、費用効果が高く簡単な手すり殺菌装置によって、手すり上の病原体を、より一層確実に無害化することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、少なくとも1つのハウジングと複数の発光ダイオードとを備える手すり殺菌装置によって達成され、発光ダイオードはそれぞれ、発光ダイオードの光円錐の向きを表す光円錐主軸線を有する。発光ダイオードは、その光円錐の領域で殺菌電磁放射線を放出することができる。ハウジングは、乗客輸送設備の連続手すりの入口側と、入口側の反対側の出口側とを有する。手すりの貫通セグメントは、少なくとも2つのセクタに分割され、入口側と出口側との間の手すり殺菌装置のハウジング内に存在する。これらのセクタは、貫通セグメントの長手方向延長部において前後に並べて配置される。少なくとも1つの発光ダイオードが第1のセクタに配置され、その光円錐主軸線は第1の平面に対して実質的に直角に配向される。更に、少なくとも2つの発光ダイオードが第2のセクタに配置され、少なくとも1つの発光ダイオードの光円錐主軸線は第2の平面に対して実質的に直角に配向され、少なくとも1つの発光ダイオードの光円錐主軸線は第3の平面に対して実質的に直角に配向される。また、第2の平面と第3の平面は、貫通セグメントの長手方向延長部と平行に、かつ100°~160°の角度で互いに傾斜するように配置される。第1の平面は、手すりに対して、主にユーザが接触する表面が前記平面の発光ダイオードによって可能な限り直接的に照射されるように配置されることが好ましい。殺菌すべき表面と発光ダイオードとの間の距離が可能な限り一定であることを保証するために、したがって一定の殺菌品質を達成するために、手すり殺菌装置は少なくとも1つの案内ローラを有し、この案内ローラによって乗客輸送設備の手すりを、貫通セグメント内のハウジングを通して規定の位置に案内することができる。
【0008】
研究によると、致命的な電磁放射線にもかかわらず、微生物はある一定の確率で生存することが分かっている。これは、特に、殺菌すべき手すりの表面仕上げと清浄度に依存する。亀裂、隙間、切り欠き、穴などによって、ならびに汚れ粒子を付着させることによって、微生物が生存できる区域は遮蔽されることがある。特開平8-188369号公報に開示されているように、回転ブラシによる機械的な前洗浄や手すり表面の洗浄によってもこの区域に到達することはできるが、洗浄及び殺菌の品質は、このような手すり殺菌装置の定期的で確実なメンテナンスに大きく依存する。
【0009】
本発明は、これとは異なるアプローチを取っており、貫通セグメントを適切な方法でセクタに分割し、前記セクタ内に異なる角度で配置された発光ダイオードが取り付けられた平面を使用することによって、汚れ粒子で覆われ、かつ亀裂や穴を有する手すり表面に対して、ほぼ完全に、かつ照射時間にわたって十分に照射することを達成している。その結果、メンテナンス集約的で高価な前洗浄を省くことができる。少なくとも2つの平面を互いに100°~160°の鈍角に配置するのが特に適していることが分かっている。例えば、220nm~285nmの波長を有する紫外線は、殺菌電磁放射線として非常に効率的であることが証明されている。このことは、少なくとも1つの案内ローラによる手すりの有効な案内によって支えられており、その結果、発光ダイオードを通過する手すりの表面は、発光ダイオードに対して貫通セグメント内の同じ位置に常に案内されることになる。
【0010】
手すり殺菌装置の一実施形態では、少なくとも1つの案内ローラが入口側及び/又は出口側に配置される。適切な数の案内ローラは、実質的に、貫通セグメントの長さと手すりの剛性に依存する。
【0011】
手すり殺菌装置の更なる実施形態では、少なくとも1つの案内ローラをハウジングの内側、したがって貫通セグメント内に配置することもできる。もちろん、これらの配置の組合せも可能であり、例えば、入口側と出口側にそれぞれ1つずつ案内ローラが配置され、前記両側の間のハウジング内に1つ又は複数の案内ローラが配置されることも可能である。
【0012】
セクタへの分割には他にも有益な点がある。手すりの表面は、電磁放射線の波長、表面への入射角、及び手すりの材料特性に応じて、放射線を受けて加熱される。多くのウイルスは熱に弱く、ほとんどが70℃を超える温度で不活性化されるので、ある程度の加熱が望ましい。セクタに分割された貫通セグメントにより、手すりの表面は順次加熱されることができ、殺菌放射線効果に加えて、手すり材料が過度に加熱されて経年劣化がより速く進むこともなく、より高い温度をより長い時間にわたって維持することができる。個々のセクタの制御によって、貫通セグメント全体で所望の温度プロファイルを実現することができる。電磁波に同調される金属粒子、銀イオンなどの粒子は、場合により、手すりの材料、特にその表面に更に埋め込むことができ、これら粒子は、放射線により更に加熱され、より長い時間にわたって熱を放出する。
【0013】
手すり殺菌装置の更なる実施形態では、第1の平面に対する第2の平面の傾斜は、第1の平面に対する第3の平面の傾斜と同じである。このようにして、手すりの幅にわたって同じになるような対称的な照射を実現することができる。非対称の手すり断面の場合、第1の平面に対する第2の平面と第3の平面の非対称な配置も適切となり得る。
【0014】
手すり殺菌装置の更なる実施形態では、第3のセクタを貫通セグメント内に画定することができ、セクタ内に少なくとも1つの発光ダイオードが配置され、その光円錐主軸は第4の平面に対して直角に配向される。この場合、第2のセクタは、第1のセクタと第3のセクタとの間に配置され、第4の平面は、第1の平面と平行に配置される。その結果、ユーザが特に集中的に接触する表面は、手すり殺菌装置を離れる前に、再度、照射されることができる。
【0015】
手すり殺菌装置の更なる実施形態では、少なくとも3つの発光ダイオードを各平面に配置することができ、光円錐主軸は各平面において互いに略平行に配向される。この場合、「略平行」とは、平面内の光円錐主軸が平行から最大3°空間的にずれる可能性があることを意味する。これは、光円錐が重なる場合に更に一層効率的な照射に関連して、かなり意図的である場合がある。例えば、第1の平面に5つの発光ダイオード、第2と第3の平面にそれぞれ3つの発光ダイオードを有する上述のタイプの手すり殺菌装置によって、低消費エネルギーで非常に良好な結果が達成された。4つの発光ダイオードが配置された第4の平面を配置することにより、わずかに消費エネルギーが増加するだけで、優れた殺菌性能を達成することができた。
【0016】
手すり殺菌装置の更なる実施形態では、ハウジングは2つの部分で設計され、前記ハウジングは、U字形の主ハウジング部分と、主ハウジング部分の開放側にまたがるカバーとを有する。この分割により、手すりが経年により交換されなければならない場合に、手すりをハウジング内に挿入することが容易になる。更に、ハウジングの貫通セグメントをより容易に清掃することができ、不良の発光ダイオードをより容易に交換することができる。
【0017】
更なる実施形態では、手すり殺菌装置はキャリアを備え、キャリアは、手すり殺菌装置の意図された設置位置に対して、貫通セグメントの下方のハウジング内に配置される。全ての既存の平面をこのキャリア上に形成することができ、発光ダイオードは前記平面に固定される。これにより、互いに対する平面の配置が固定される。発光ダイオードは、任意選択的に、平面上に配置された1つ又は複数のプリント回路基板に固定される。発光ダイオードから熱を放散するために、プリント回路基板及び/又はキャリアはヒートシンクを有することができる。
【0018】
手すり殺菌装置の更なる実施形態では、少なくとも1つの反射器がハウジング内に配置され、反射器は貫通セグメントに向けられ、かつ放射線を反射するように意図される。その結果、殺菌性能を更に高めるために、手すり表面によって反射された電磁放射線、又は手すりを越えてハウジングの内部に当たる電磁放射線を手すりに向けることができる。反射器の洗浄を簡単にするために、反射器をハウジングの上述のカバーに固定できることが好ましい。
【0019】
既に述べたように、複数のセクタへの分割、及びこれらの異なる配置の平面での分割は、手すりの表面に可能な限り広範囲に照射することが意図されている。したがって、手すりの表面が常に平面から等距離で貫通セグメントを通って移動する場合も有効である。
【0020】
乗客輸送設備用の手すりは、通常、断面がC字形であり、最も接触が多く、したがって最も汚染される領域は、広い後面部分である。前記広い後面部分は、好ましくは案内ローラによって支持され、前記ダイオードの光円錐主軸線を、この領域に対して可能な限り直角に向けることによって、第1の平面上に配置された発光ダイオードによって可能な限り直接照射される。これを達成するために、案内ローラの回転軸は、第1の平面と平行に、かつ貫通セグメントと直角に配置されることが好ましい。
【0021】
更に、案内ローラのトレッド輪郭は、案内される手すりの外面輪郭に対応することができる。結果として、手すりは、より正確に位置決めされてハウジング内を通って案内されるだけでなく、電磁放射線が手すりとトレッド輪郭との間の狭い隙間を通ってハウジングからほとんど逃げることができないため、相応に適合した輪郭を有する案内ローラは、放射線防護としても機能することとなる。
【0022】
手すり殺菌装置の更なる実施形態では、相互に傾斜した第2及び第3の平面の角度を、殺菌電磁放射線のスペクトル組成及び手すり表面の材料組成に一致させることができる。特に、これらの要因に依存する電磁放射線による手すりの表面の加熱も考慮に入れなければならない。適切な角度は、所望の照射を考慮して既知の方法で計算することができ、又は実験的に決定することができる。
【0023】
上述の手すり殺菌装置の実施形態の変形例は、エスカレータ又は動く歩道として設計された乗客輸送設備で使用することができる。これらは、少なくとも1つの全周手すりを備える、少なくとも1つの欄干を有する。前述のタイプの乗客輸送設備は、通常、2つの欄干を有し、それぞれが周方向に配置された手すりを有し、これらは乗客輸送設備のコンベヤベルトの両側に配置される。本発明によれば、上述の実施形態の1つによる少なくとも1つの手すり殺菌装置は、乗客輸送設備の各循環式手すりに設けられる。
【0024】
乗客輸送設備は、手すりの戻り走行部が乗客輸送設備のユーザには隠される欄干基部を有する欄干を備えることができる。殺菌電磁放射線からユーザを最も良好に保護するために、手すり殺菌装置を欄干の欄干基部に設置することができる。結果として、ハウジングがあらゆる種類の生物に有害なこの放射線から環境を遮蔽するだけでなく、欄干基部のケーシングも第2の障壁として機能する。
【0025】
また、セクタへ分割することで、乗客輸送設備の使用場所や使用プロファイルに適合した、様々な動作モードで手すり殺菌装置を動作させることができる。この目的のために、手すり殺菌装置を制御する方法は、乗客輸送設備のコントローラに実装されることができる。乗客輸送設備は、手すりを駆動するための駆動モータと、駆動モータを制御するための駆動コントローラとを有する。手すり殺菌装置の殺菌効果は、手すりのスループット速度にも依存するため、個々のセクタの発光ダイオードは、駆動コントローラから駆動モータへの速度信号に従ってセクタごとに制御することができる。
【0026】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して以下に説明されるが、図面も説明も本発明を限定するものとして解釈されることを意図するものではない。更に、同一又は同一の効果を有する要素については、同一参照符号を用いる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】エスカレータとして設計され、手すり殺菌装置を有する乗客輸送設備の簡略図である。
図2図1の乗客輸送設備を通る線A-Aに沿った断面図である。
図3図1及び図2に示す手すり殺菌装置の側面図である。
図4図1図3の手すり殺菌装置の平面図である。
図5】乗客輸送設備の手すりの案内部分を有する、図1図4に示す手すり殺菌装置の立体図である。
図6図1図5の手すり殺菌装置に配置され、発光ダイオードを備えたキャリアの立体図である。
図7図1図6に示す手すり殺菌装置の図4に示すB-B線に沿った断面図である。
図8図1図7に示す手すり殺菌装置において、入口側と出口側に案内ローラを設けた場合の展開の可能性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、フレームワークとして設計された支持構造体11を有する乗客輸送設備1の簡略図を示す。エスカレータとして設計された乗客輸送設備1は、建物5の下層階E1と上層階E2とを接続する。乗客輸送設備1は、アクセス領域3を介して再び出入りすることができる。循環式ステップベルト9は、支持構造体11内に配置され、このステップベルトは、上層階E2及び下層階E1で偏向され、したがって先行部分と戻り部分とを有する。概要説明のため、戻り部分の詳細な表現、ならびにフレーム、案内レール、及びレールブロックの詳細な表現は省略されている。乗客輸送設備1はまた、ステップベルト9の各長手方向側面に沿って延びる2つの欄干15を有し、図1では、観察面において手前に配置された欄干15のみが見える。手すり17は、各欄干15上で循環するように配置され、手すりの戻り走行部は欄干基部13内に案内されるこの欄干基部13は、欄干15を支持構造体11に接続する。言い換えると、手すり17の戻り走行部は、乗客輸送設備1のユーザには隠され、欄干基部13内に案内される。
【0029】
更に、乗客輸送設備1は、各循環式手すり17に対して少なくとも1つの手すり殺菌装置41を有する。前記装置はまた、欄干15の欄干基部13に設置され、したがって乗客輸送設備1のユーザには隠される。
【0030】
図2は、図1による乗客輸送設備1のA-A線に沿った断面を示す。この断面では、ステップベルト9の先行部分と戻り部分の両方が見える。ステップベルト9は、支持構造体11内の案内レール23上を案内される。ステップベルト9の先行部分の左右には欄干15と欄干基部13とが配置されており、先行部分は、乗客輸送設備1が意図したように設置されたとき、最上部に配置される。クランプ装置29は、外装パネル25、27によって隠された欄干基部13内に設けられ、個々の欄干パネル33のクランプ受けとして機能する。この場合、欄干パネル33は、クランプ装置29の少なくとも一方において、その下端部で静止した状態でクランプされる。クランプ装置29は、支持構造体11上の欄干基部13内の乗客輸送設備1の長手方向延長部に沿って配置される。クランプ装置29の下方には、欄干15上を循環するように配置された各手すり17用の手すり殺菌装置41が設けられており、この手すり殺菌装置は、光円錐領域内で殺菌電磁放射線を放出することができる発光ダイオード43を備える。
【0031】
手すり17の戻り走行も欄干基部13内で案内されるため、欄干基部13内に手すり殺菌装置41を配置し、そこで前記手すり殺菌装置を通る戻り走行部を案内することが効果的である。これにより、いかなる状況下でも有害な電磁放射線は、乗客輸送設備1のユーザに到達し得ないことが保証されることができる。
【0032】
図3図7は全て、図1及び図2に既に示されている同一の手すり殺菌装置41、又はその少なくとも一部を示す。そこで、以下、これらの図をまとめて説明する。より正確には、図3は手すり殺菌装置41の側面図、図4はその平面図、図5はその立体図、図6は手すり殺菌装置41に配置されたキャリア49の立体図、図7図4に示すB-B線に沿った手すり殺菌装置41の断面図である。
【0033】
これらの図3図7に示す手すり殺菌装置41は、ハウジング51と、複数の発光ダイオード43とを備える。設計により、発光ダイオード43は光円錐45を有し、前記発光ダイオードは、その光円錐45の領域内で殺菌電磁放射線を放出することができる。光円錐45の空間的配向は、光円錐45の回転対称軸線でもある光円錐主軸線47によって表される。図示の光円錐45は、端面と見なすことができる円形の輪郭を有することにも留意されたい。しかしながら、この輪郭は端面ではなく、むしろ光円錐をより良好に視覚化できるようにするために、任意の円錐高さにおける光円錐断面であることは明らかであり、したがって電磁放射の伝播の制限とはならない。
【0034】
ハウジング51は、乗客輸送設備1の連続した手すり17用の入口側53と、入口側53の反対側の出口側55とを有する。論理的には、入口側53と出口側55の指定は、手すり17の移動方向Xに依存し、前記移動方向に応じて変化する。ハウジング51には、入口側53と出口側55との間に手すり17用の貫通セグメント57がある。この貫通セグメント57は、少なくとも2つのセクタに分割される。図3図7の特定の実施形態では、貫通セグメント57は、3つのセクタ61、62、63に分割される。セクタ61、62、63は、貫通セグメント57の長手方向延長部において前後に並べて配置され、互いに区別できるように設計される。セクタ61、62、63の境界は、必ずしも図4に示す断面平面B-Bなどの直交する断面に基づく必要はないことにも留意されたい。図4において、第1のセクタ61と第2のセクタ62との間の二点鎖線のセクタ境界65が一例として挙げられ、この境界は、そこに配置された発光ダイオード43に合わせている。
【0035】
少なくとも1つの発光ダイオード43は、その光円錐主軸47が第1の平面71に対して略垂直に第1のセクタ61に配置される。特定の実施形態では、合計5つの発光ダイオードが第1のセクタ61に配置され、その光円錐主軸線47は第1の平面71に対して略垂直に、したがって互いに略平行に配置される。
【0036】
少なくとも2つの発光ダイオード43は、前記発光ダイオード43の少なくとも1つの光円錐主軸線47が第2の平面72に対して略垂直に、かつ前記発光ダイオード43の少なくとも1つの光円錐主軸線47が第3の平面73に対して略垂直に配向されるように、第2のセクタ62に配置される。特定の実施形態では、合計6つの発光ダイオード43が第2のセクタ62に配置され、前記発光ダイオード43のうちの3つの光円錐主軸線47は、第2の平面71に対して略垂直に、又は互いに略平行に配置され、前記発光ダイオード43のうちの他の3つの光円錐主軸線47は、第3の平面73に対して略垂直に、又は互いに略平行に配置される。更に、第2の平面72と第3の平面73は、貫通セグメント57の長手方向延長部と平行に、かつ角度α(図7を参照)で互いに傾斜するように配置される。100°~160°の鈍角αでは、手すり殺菌装置41の殺菌効果によって特に良好な結果を達成することができた。特に、互いに傾斜した第2と第3の平面72、73の角度αは、殺菌電磁放射線のスペクトル組成及び手すり17の材料表面に一致させることができる。
【0037】
また、案内される手すり17が案内ローラ85によって支持されるように、ハウジング51内には2つの案内ローラ85が配置される。結果として、平面71、72、73上に配置された発光ダイオード43によって、前記ダイオードの光円錐主軸線を手すり17の表面に対して可能な限り垂直に向けることによって、手すり17の表面は、可能な限り直接照射されることになる。これを達成するために、案内ローラ85の回転軸は、第1の平面71と平行に、かつ貫通セグメント57と垂直に配置されることが好ましい。
【0038】
図7はまた、第2の平面72及び第3の平面73に配置された発光ダイオード43によって、アンダーカットクラック35や汚れ粒子37の縁部39などの問題領域への照射がどのように改善され得るかを示す。
【0039】
少なくとも1つの発光ダイオード43は、貫通セグメント57の第3のセクタ63に配置され、その光円錐主軸線47は、第4の平面74に対して略垂直に配向される。特定の実施形態では、合計4つの発光ダイオード43が第3のセクタ63に配置され、その光円錐主軸線47は、第4の平面74に対して略垂直に、又は互いにりゃk宇平行に配置される。この場合、第2のセクタ62は、第1のセクタ61と第3のセクタ63との間に配置され、第4の平面74は、第1の平面71と平行に配置される。
【0040】
製造上又は意図的な理由により、平行から最大3°というわずかな偏差が起こり得るため、したがって、光円錐主軸線47の配置は、「略」垂直又は平行である。特に、図7から分かるように、第1の平面71に対する第2の平面72の傾きβは、第1の平面71に対する第3の平面73の傾きγと同じとすることができる。
【0041】
手すり殺菌装置41のハウジング51は、2つの部分に分けて設計される。前記ハウジングは、U字形の主ハウジング部77と、主ハウジング部77の開放側にまたがるカバー79とを有する。結果として、ハウジング51内に配置された発光ダイオード43をより容易に交換することができ、貫通セグメント57をより良好に洗浄することができる。更に、手すり17が交換される場合、発光ダイオード43を損傷するリスクがなく、より簡単に、手すり殺菌装置41から取り外したり、その貫通セグメント57に挿入したりすることが可能である。
【0042】
既に上述した通り、手すり殺菌装置41はキャリア49(特に、図6を参照)を備えることができ、キャリア49は、乗客輸送設備1における手すり殺菌装置41の意図された設置位置に対して貫通セグメント57の下方のハウジング51内に配置される。本実施形態では、キャリア49は、主ハウジング部77に固定される。存在する全ての平面71、72、73、74は、このキャリア49上に形成されるのが好ましい。発光ダイオード43は、前記平面に固定される。これに関連して、発光ダイオード43がキャリア49に直接固定されるか、又は、例えば、各平面71、72、73、74用の発光ダイオード43が取り付けられた回路基板59があり、この回路基板が割り当てられた関連する平面71、72、73、74に固定されるかは重要でない。
【0043】
更に、貫通セグメント57に向けられ、かつ発光ダイオード43によって放出された放射線を反射するように意図された少なくとも1つの反射器81(図3図7ではっきり見える)は、ハウジング51内に配置されることができる。本実施形態では、反射器81は、カバー79に固定される。
【0044】
既に述べたように、複数のセクタ61、62、63への分割、及びこれらの異なる配置の平面71、72、73、74での分割は、手すり17の表面に可能な限り広範囲に照射することが意図されている。したがって、前記表面又は手すり17が平面71、72、73、74から等しい距離で貫通セグメント57を通って常に案内される場合、効果的である。
【0045】
したがって、図8に示すように、少なくとも1つの案内ローラ83は、手すり殺菌装置41の入口側53と出口側55とに配置されることができる。前記案内ローラ83により、乗客輸送設備1の手すり17が貫通セグメント57内のハウジング51を通って所定の位置に案内されることが可能になる。
【0046】
図8に示すように、乗客輸送設備1用の手すり17は、通常、断面がC字形であり、最も接触が多く、したがって最も汚染される領域は、その幅広後面部分31である。前記幅広後面部分は、好ましくは案内ローラ83によって支持され、前記ダイオードの光円錐主軸線47を後面部分31に対して可能な限り垂直に向けることによって、第1の平面71上に配置された発光ダイオード43によって可能な限り直接照射される。これを達成するために、案内ローラ83の回転軸85は、第1の平面71と平行に、かつ貫通セグメント57と直角に配置される。
【0047】
更に、案内ローラ83のトレッド輪郭87は、案内される手すり17の外面輪郭89に対応することができる。結果として、手すり17は、より正確に位置決めされてハウジング51内を通って案内されるだけでなく、相応に適合したトレッド輪郭87を有する案内ローラ83は、電磁放射線が手すり17とトレッド輪郭87との間の狭い隙間を通ってハウジング51からほとんど逃げることができないため、放射線防護としても機能する。
【0048】
発光ダイオード43が放出する殺菌電磁放射線は紫外光範囲内にあるため、手すり殺菌装置41の正しい動作を視認することは困難であり、前記手すり殺菌装置が欄干基部13に設置されてユーザから見えない場合には、もちろん視認できない。したがって、手すり殺菌装置41の動作状態を表示するために、適切な表示装置91を設けることができ、この装置を、例えば、アクセス領域3(図1参照)に、ユーザが動作状態をはっきりと見えるように配置することができる。
【0049】
図1に示すように、ステップベルト9及び手すり17は、駆動ユニット7によって駆動される。駆動ユニット7は、乗客輸送設備1の駆動コントローラ19によって制御される駆動モータ21を含む。駆動コントローラ19によって生成され、かつ駆動モータ21を相応に制御するためにコンバータ(図示せず)に送られる速度信号であるので、手すり17の現在の速度を、駆動コントローラ19において、いつでも入手可能である。ここで、駆動コントローラ19は、手すり殺菌装置41を動作させるように構成されることができる。特に、発光ダイオード43のエネルギー消費及び常に最適な殺菌効果を維持しながら手すり17の材料に対する殺菌電磁放射線の損傷効果を最小限に抑えるために、駆動コントローラ19からの速度信号に従って、個々のセクタ61、62、63の発光ダイオード43を制御することができる。
【0050】
図1図8は、エスカレータとして設計され、互いに垂直方向に離隔した床E1、E2を接続するように意図された乗客輸送設備1に基づいて、本発明の異なる側面を示しているが、説明された手すり殺菌装置41及び対応する方法ステップは、斜めに配置された動く歩道又は水平に配置された動く歩道にも使用できることは明らかである。更に、少なくとも1つの平面71、72、73を有する更なるセクタ61、62、63を、第1のセクタ61の上流及び/又は第3のセクタ63の下流に配置することができる。もちろん、手すり17ごとに、欄干基部13内に複数の手すり殺菌装置47を前後に並べて配置することもできる。
【0051】
最後に、「備える(comprising)」、「有する(having)」などの用語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、「1つ(a)」又は「1つ(an)」などの用語は、複数を排除するものではないことに留意されたい。更に、上記の実施形態のうちの1つを参照して説明された特徴又はステップはまた、上記の他の実施形態の他の特徴又はステップと組み合わせて使用されてもよいことに留意されたい。特許請求の範囲における参照符号は、限定的であると見なされるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】