(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】熱可塑性-熱硬化性ハイブリッド樹脂、方法、およびその使用
(51)【国際特許分類】
C08G 73/00 20060101AFI20230428BHJP
【FI】
C08G73/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557786
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(85)【翻訳文提出日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 IB2021020016
(87)【国際公開番号】W WO2021198793
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】クラン,サムエル
(72)【発明者】
【氏名】宮内 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,ティアンレイ
【テーマコード(参考)】
4J043
【Fターム(参考)】
4J043PA02
4J043PB01
4J043PB08
4J043PB13
4J043QB31
4J043RA35
4J043SA06
4J043SB01
4J043TA22
4J043TB01
4J043UA151
4J043UA152
4J043UB021
4J043UB022
4J043UB131
4J043UB132
4J043VA031
4J043VA032
4J043VA051
4J043XA16
4J043YB19
4J043YB29
4J043YB35
4J043ZA06
4J043ZA60
4J043ZB51
(57)【要約】
ハイブリッド熱可塑性-熱硬化性樹脂組成物は、熱可塑性単位から形成されたポリマー主鎖と、前記熱可塑性物質に結合した少なくとも1つの架橋性基と、を含み得る。ハイブリッド熱可塑性-熱硬化性樹脂組成物を形成する方法は、熱可塑性樹脂を反応させて架橋性基を導入し、前記熱可塑性-熱硬化性樹脂組成物を形成する工程を含み得る。ハイブリッド熱可塑性-熱硬化性樹脂を形成する方法は、熱可塑性単位から形成されたポリマー主鎖と、前記熱可塑性物質に結合した少なくとも1つの架橋性基と、を含むハイブリッド熱可塑性-熱硬化性樹脂組成物を準備する工程;および、外部刺激によって前記ハイブリッド熱可塑性-熱硬化性樹脂組成物を硬化させ、前記ハイブリッド熱可塑性-熱硬化性樹脂を形成する工程、を含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド熱可塑性-熱硬化性樹脂組成物であって:
熱可塑性単位から形成されたポリマー主鎖と、
前記熱可塑性単位に結合した少なくとも1つの架橋性基と、を含む、
樹脂組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの架橋性基は、前記熱可塑性単位上に少なくとも1つのエンドキャップを形成する、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの架橋性基は、熱可塑性単位を互いに架橋する、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂組成物は、500~400,000の分子量を有する、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性単位の分子量は、500~20,000である、
請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
熱可塑性単位それぞれの分子量は、500~20,000である、
請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性単位は、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアリールエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホンおよびポリアミド-イミドからなる群から選択される1種以上である、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記熱可塑性単位は、ポリイミドである、
請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの架橋性基は、エポキシ、ベンゾオキサジン、ニトリル、ビスマレイミド、シトラコンイミド、アクリル、メタクリル、シンナミック、アリルアジド、シアノアクリレート、イソシアネートおよびアルコキシシランからなる群から選択される、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つの架橋性基は、ベンゾオキサジンである、
請求項9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
UV硬化性またはマイクロ波硬化性官能基をさらに含む、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記UV硬化性またはマイクロ波硬化性官能基は、前記少なくとも1つの架橋性基である、
請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記UV硬化性またはマイクロ波硬化性基は、前記少なくとも1つの架橋性基と反応する、
請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
ハイブリッド熱可塑性-熱硬化性樹脂組成物を形成する方法であって:
熱可塑性物質を反応させて架橋性基を導入し、前記熱可塑性-熱硬化性樹脂組成物を形成する工程を含む、
方法。
【請求項15】
前記熱可塑性物質は、アミンまたはフェノール末端官能基を含み、ホルムアルデヒド、および前記熱可塑性物質と比較してアミンまたはフェノール反応物質のうちもう一方と反応する、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アミンまたはフェノール反応物質は、単官能性である、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アミンまたはフェノール反応物質は、二官能性である、
請求項15に記載の方法。
【請求項18】
UV硬化性またはマイクロ波硬化性官能基を含むように、前記熱可塑性物質を改質する工程をさらに含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項19】
ハイブリッド熱可塑性-熱硬化性樹脂を形成する方法であって:
請求項1に記載のハイブリッド熱可塑性-熱硬化性樹脂組成物を準備する工程;および、
外部刺激によって前記ハイブリッド熱可塑性-熱硬化性樹脂組成物を硬化させ、前記ハイブリッド熱可塑性-熱硬化性樹脂を形成する工程、を含む、
方法。
【請求項20】
前記外部刺激は、熱、紫外線照射、マイクロ波照射および水分からなる群から選択される、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ハイブリッド熱可塑性-熱硬化性樹脂組成物は、UV硬化性またはマイクロ波硬化性官能基をさらに含み、前記外部刺激は、紫外線照射またはマイクロ波照射を含む、
請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔背景〕
熱硬化性物質および熱可塑性物質は、異なる分類のポリマーであり、熱の存在下でのそれらの挙動に基づいて互いに区別される。具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの熱可塑性物質は、熱を加えると柔軟に、または成形可能になる(冷却すると固化する)一方、エポキシ、ベンゾオキサジンおよびビスマレイミドなどの熱硬化性物質は、硬化すると不可逆的に固まり、加熱しても溶融および再成形することができない。したがって、熱可塑性材料は、それらが流動し始める溶融温度(融点)を有する一方、熱硬化性製品は、一度硬化すると、それらの構造的な完全性を失うことなく、より高い温度に耐えることができる。
【0002】
熱可塑性物質は一般に、それらの機械的特性および/または熱的特性に基づいて3つのグループに分類される。1つ目は、PE、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)などに代表される汎用プラスチックであり、包装材、食品容器および家庭用品などの用途に広く用いられている。2つ目は、PC、ポリアミド(PA)、ポリオキシメチレンなどに代表されるエンジニアリングプラスチックであり、一般的に、汎用プラスチックよりも良好な熱的特性および機械的特性を示し、例えば、100℃を超える温度で、50MPaよりも高い引張強度および2.5GPaよりも高い曲げ弾性率を示す。3つ目は、PEEK、ポリエーテルイミドおよびポリフェニレンに代表されるスーパーエンジニアリングプラスチックであり、150℃を超える温度で継続的に使用することができる。スーパーエンジニアリングプラスチックは、硬質ポリマー主鎖ベースの芳香族環および安定な二次構造から生じる優れた機械的特定および熱的特性を示す。汎用熱可塑性物質は、製造において高い加工効率を有するが、スーパーエンジニアリングプラスチックは一般に、成形することが困難であり、良好な流動性を示すためには、それらの融点を超える極めて高い加工温度(>300℃)を必要とする。
【0003】
熱硬化性プラスチックは一般に、架橋(硬化)時に達成される結合の三次元網目構造に起因して、熱可塑性物質と比較して高い弾性率および優れた耐クリープ性を示す。これによって、熱可塑性物質よりもそれらの低い破断点伸び値がもたらされる。また、熱硬化性プラスチックは一般に、250℃程度の高温で長期間の硬化時間も必要とする。
【0004】
熱可塑性組成物および熱硬化性組成物の両方のブレンドから構成されるポリマーアロイ(ブレンドポリマー)は、両方のポリマータイプの望ましい特徴を提供しながら、あまり望ましくない特徴を軽減することができる。好ましくは、熱可塑性ポリマー鎖が硬化した熱硬化性成分の網目構造に浸透して、均質な半相互浸透構造を形成することができる。しかしながら、相分離に起因して、熱可塑性成分と熱硬化性成分との混和性が乏しいことがあり、これらの2つの材料を組み合わせて、より良好な熱的特性および/または機械的特性を有する安定なポリマーアロイを形成することは困難であることが証明されている。
【0005】
〔要約〕
本要約は、詳細な説明において以下でさらに説明されるコンセプトを選抜したものを紹介するために提供される。本要約は、特許請求される主題の重要な、または本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を限定する助けとして使用されることを意図するものでもない。
【0006】
一態様において、本明細書に開示される実施形態は、ハイブリッド熱可塑性-熱硬化性樹脂組成物に関し、当該樹脂組成物は、熱可塑性単位から形成されたポリマー主鎖と、前記熱可塑性物質に結合した少なくとも1つの架橋性基と、を含む。
【0007】
別の態様において、本明細書に開示される実施形態は、ハイブリッド熱可塑性-熱硬化性樹脂組成物を形成する方法に関し、当該方法は、熱可塑性物質を反応させて架橋性基を導入し、前記熱可塑性-熱硬化性樹脂組成物を形成する工程を含む。
【0008】
さらに別の態様において、本明細書に開示される実施形態は、ハイブリッド熱可塑性-熱硬化性樹脂を形成する方法に関し、当該方法は、熱可塑性単位から形成されたポリマー主鎖と、前記熱可塑性物質に結合した少なくとも1つの架橋性基と、を含むハイブリッド熱可塑性-熱硬化性樹脂組成物を準備する工程;および、外部刺激によって前記ハイブリッド熱可塑性-熱硬化性樹脂組成物を硬化させ、前記ハイブリッド熱可塑性-熱硬化性樹脂を形成する工程、を含む。
【0009】
特許請求される主題の他の態様および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0010】
〔図面の簡単な説明〕
図1~3は、本開示の実施形態に記載のベンゾオキサジン-熱可塑性樹脂の形成のための反応スキームを示す。
【0011】
図4は、本開示の1つ以上の実施形態に記載のポリマー改質ストラテジーの模式図である。
【0012】
図5は、本開示の1つ以上の実施形態に記載のポリマー合成ストラテジーの模式図である。
【0013】
図6A~6Bは、本開示の1つ以上の実施形態に記載のポリマー組成物の模式図である。
【0014】
図7A~7Bは、本開示の1つ以上の実施形態に記載のポリマー組成物の模式図である。
【0015】
図8は、成形された薄膜から測定された引張特性を示す。
【0016】
〔詳細な説明〕
本明細書に開示される実施形態は概して、ハイブリッド樹脂に関し、具体的には、熱、紫外線照射、マイクロ波照射、水分などから選択される外部刺激によって活性化される架橋性基および/または硬化性基を有する熱可塑性樹脂に関する。1つ以上の実施形態において、熱可塑性ポリマーが、ポリマー主鎖の少なくとも一部を形成してもよい。当該ポリマー主鎖は、1つのエンドキャップもしくは2つのエンドキャップ、または熱可塑性主鎖内に架橋性基を有するモノマー単位のうちいずれかとして、架橋性基を有してもよい。本開示のハイブリッド樹脂は、熱硬化性物質および熱可塑性物質が単独では達成できない特性の組み合わせを提供することができる。例えば、ハイブリッド樹脂中の架橋性基は、高温での重合によって架橋構造を形成することができる;しかしながら、そのような架橋以前には、ハイブリッド樹脂の特性は熱可塑性成分を大きく反映することができる(そして、溶融/成形および再溶融/再成形することができる)。有利には、1つ以上の実施形態において、ハイブリッド樹脂を成形するための溶融加工温度は、熱可塑性物質単独の溶融加工温度よりも低いことがあり、熱硬化性物質の硬化温度よりもまた低いことがあることが見出された。したがって、ハイブリッド樹脂は、その温度点では熱硬化性単位の架橋が誘発され得る高い架橋温度に達する前に、または外部刺激によって活性化される前に成形することができる温度範囲を有することがある。さらに、熱可塑性主鎖を含むことによって、架橋された物品は、熱可塑性物質と熱硬化性物質との間の1つ以上の特性であって、いずれか単独では達成できない特性を有することができるようになる。例えば、熱可塑性物質は、所定の熱可塑性物質に関する溶融加工温度を超える温度に曝されると、従来通りに軟化または再溶融し、そのようなポリマーを高温用途の物品には不適当なものにする。一方、ハイブリッド熱可塑性-熱硬化性樹脂は、物品を形成するときに架橋され得るため、熱可塑性物質に対して通常起こり得る軟化または再溶融を防止する。
【0017】
上述したように、本開示のハイブリッド樹脂は、ポリマー主鎖の少なくとも一部を形成する熱可塑性ポリマーを含んでもよい。本明細書で使用される場合、主鎖の少なくとも一部を形成することによって、鎖中に熱可塑性ポリマー(TP)を形成するモノマーの繰り返し単位が存在する。1つ以上の実施形態において、架橋性基は、熱可塑性物質上に1つのエンドキャップまたは2つのエンドキャップを形成してもよい。しかしながら、1つ以上の実施形態において、架橋性基が熱可塑性鎖(TP)を互いに架橋し得るため、熱可塑性物質は主鎖の少なくとも一部を形成する。
【0018】
1つ以上の実施形態において、ハイブリッド樹脂は、500~400,000の重量平均分子量を有してもよい。1つ以上の実施形態において、ハイブリッド樹脂は架橋性のエンドキャップを有してもよく、TP単位の分子量は500~20,000であってもよい。1つ以上の実施形態において、ハイブリッド樹脂は架橋性基によって架橋されたTP単位を有してもよく、ここで、TP単位は500~20,000の分子量を有してもよく、nは1~20であってもよい。ハイブリッド樹脂の間の選択は、例えば、所望の樹脂のレオロジー挙動、硬化時の架橋の程度、ならびに得られる引張特性、機械的特性および熱的特性に依存してもよい。
【0019】
〔熱可塑性物質〕
【0020】
熱可塑性物質の選択は、熱可塑性物質に対する所望の特性(および最終的な用途)に依存してもよく、例えば、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリスルホン(PSU)およびポリアミド-イミド(PAI)から選択されてもよい。PAEKとしては例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)およびポリエーテルケトンケトン(PEKK)が挙げられ得る。PSUとしては例えば、ポリ(アリーレンスルホン)(PAS)、ポリエーテルスルホン(PES)およびポリフェニレンスルホン(PPSU)が挙げられ得る。さらに、上記リストの熱可塑性物質は、高性能な熱可塑性物質と考えることができるが、コーティング、接着剤などの用途のために他の熱可塑性物質が選択され得ることも想定される。例えば、このような実施形態において、熱可塑性主鎖は、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリアクリレートまたはポリスチレンであってもよい。
【0021】
1つ以上の実施形態において、熱可塑性樹脂は、アミンまたはフェノール性末端官能基を有してもよく、または有するように改質されてもよい。以下に説明するように、アミンまたはフェノール性末端官能基は、ホルムアルデヒドおよびアミンもしくはフェノール(熱可塑性物質の末端官能基に応じて、もう一方がホルムアルデヒドと共に加えられる)と反応して、熱可塑性樹脂に結合したベンゾオキサジン基を形成することができる。
【0022】
1つ以上の特定の実施形態において、熱可塑性主鎖は、ポリイミド主鎖であってもよい。本開示に記載のポリイミド組成物は、標準的な重合条件下でのジアミンと二無水物との反応から調製される。いくつかの実施形態において、2種以上のジアミンを使用して、共重合することができる。いくつかの実施形態において、2種以上の二無水物を使用して、共重合することができる。いくつかの実施形態において、ポリイミド重合は、限定されるものではないが、以下のプロセス、ガンマ-ブチロラクトン、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミドなどの1つ以上の極性溶媒(または共溶媒)の存在下での反応、および、押出機、オーブン、ホットプレスまたはオートクレーブを使用する溶融状態反応によって、行うことができる。例えば、ポリイミド重合は、アルゴンまたは窒素ガスなどの不活性雰囲気下で行ってもよい。いくつかの実施形態において、少なくとも1種のジアミン成分および二無水物を極性溶媒に溶解または拡散させることによって、ポリアミック酸ポリマーの溶液を得ることができる。いくつかの実施形態において、少なくとも1種のジアミン成分および二無水物ジエステルを極性溶媒に溶解または拡散させることによって、ポリアミック酸ポリマーの溶液を得ることができる。ジアミンと二無水物との間、またはジアミンと二無水物ジエステルとの間の反応プロセス中、反応は、まずポリアミック酸中間体化合物を生成し、次いで、それが閉環して、水またはアルコールを排出して、対応するポリイミドを生成することができる。ポリイミド反応中またはその後に、反応溶媒は、対応するポリイミド構造に架橋性基を導入するさらなる反応のために、除去されてもよく、または除去されなくてもよい。
【0023】
ポリイミド形成反応は、ジアミン:二無水物が約1:1の比率に従って反応するが、比率は、意図される用途に応じて、この比率から外れてもよいことも想定される。さらに、特定の実施形態において、ジアミンが二無水物よりも多量に存在し、形成されたポリイミド上に末端アミン基をもたらしてもよい。1つ以上の実施形態において、ジアミンと二無水物との間の反応によって、イミド化によって形成される少なくとも2つのイミド基が存在する。このようなイミド化は、ベンゾオキサジン基の形成(および、その後のベンゾオキサジン基の開環)の前に起こる。
【0024】
1つ以上の実施形態において、二無水物としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、4,4’-ビスフェノールA二無水物(BPADA)、ビフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボキシル二無水物(BPDA)、2,2’ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(ESDA)、1,2ビス(トリメリテート)エタン二無水物(TMEG)などの、炭素数6~18の芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられ得る。他の二無水物としては、オキシジフタル二無水物(ODPA)、ベンゾフェノン-3,4,3’,4’-テトラカルボキシル二無水物(BTDA)、ジフェニルスルホン-3,4,3’,4-テトラカルボキシル二無水物(DSDA)、4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(フタル無水物)(6FDA)およびm(p)-terフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボキシル二無水物;ならびに、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシル二無水物および1-カルボキシメチル-2,3,5-シクロペンタントリカルボキシル-2,6:3,5-二無水物などの炭素数4~6の脂環式テトラカルボキシル二無水物が挙げられ得る。他の実施形態は、式(I)などの「ソフト」なアルキル主鎖を組み込む二無水物コモノマーを利用してもよい。式中、R
4はCH
2であり、nは1~5の整数である:
【化1】
【0025】
本開示に記載のジアミンとしては、炭素数6~27の芳香族ジアミン化合物、例えば、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS-m)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS-p)、1,4-ジアミノベンゼン(PPD)、1,3-ジアミノベンゼン(MPD)、2,4-ジアミノトルエン(2,4-TDA)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MDA)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DPE)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(TB)、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-TB)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(TFMB)、3,7-ジアミノ-ジメチルジベンゾチオフェン-5,5-ジオキシド(TSN)、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(4-アミノフェニル)スルフィド(ASD)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(ASN)、4,4’-ジアミノベンズアニリド(DABA)、1,n-ビス(4-アミノフェノキシ)アルカン(n=3、4または5、DAnMG)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-2,2-ジメチルプロパン(DANPG)、1,2-ビス[2-(4-アミノフェノキシ)エトキシ]エタン(DA3EG)、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン(DA5MG)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)プロパン(DA3MG)、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(FDA)、5(6)-アミノ-1-(4-アミノメチル)-1,3,3-トリメチルインダン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-QまたはAPB-144)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-RまたはAPB-134またはRODA)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APBまたはAPB-133)、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン(BAPP)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)、3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MBAA)、4,6-ジヒドロキシ-1,3-フェニレンジアミン(4,6-ジアミノレゾルシンとして知られる)、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル(HAB)および3,3’,4,4’-テトラアミノビフェニル(TAB);炭素数6~24の脂肪族または脂環式ジアミン化合物、例えば、1,6-ヘキサメチレンジアミン(HMD)、1,8-オクタメチレンジアミン(OMDA)、1,9-ノナメチレンジアミン、1,12-ドデカメチレンジアミン(DMDA)、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミンおよびシクロヘキサンジアミン;ならびに、シリコーン系ジアミン化合物、例えば、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンおよびポリジメチルシロキサン(PDMS)が挙げられ得る。他の実施形態は、芳香族ジアミン(II)または(III)(式中、それぞれのR
3は独立してH、CH
3またはハロゲンから選択され、nは1~7の整数である)、およびヘキサメチレンジアミン(IV)などのアルキルジアミンを含む、1つ以上のフレキシブルコモノマーを使用してもよい:
【化2】
【0026】
ジアミンおよび二無水物、ならびにポリイミドの大きさ(上述した分子量の範囲の熱可塑性単位として)およびイミド化の程度の選択は、例えば熱的特性および物理的特性を含む熱可塑性成分の所望の特徴に応じて、行うことができる。1つ以上の実施形態において、イミド化の程度は少なくとも90、95または99%であってもよい;しかしながら、本開示の範囲から逸脱することなしに、より低いイミド化の程度を使用することができることも理解される。例えば、特定の実施形態において、ポリイミド主鎖は、BPADAおよびRODAまたはBAPPおよびBPADAから形成されて、主鎖中に多数のエーテル基を備えてもよく、これにより、ハイブリッド樹脂に、低温(<250℃)で良好なメルトフローを持たせる。さらに、溶融粘度は、主鎖の長さを変えることによって増大または減少させることができる。
【0027】
〔架橋性基〕
【0028】
ハイブリッド樹脂は、1つのエンドキャップもしくは2つのエンドキャップとして、ポリマー主鎖の一部として、またはポリマー主鎖から生じるペンダント基として、架橋性基を含む。いくつかの実施形態において、これらの架橋性基は、樹脂の官能基と架橋性基を有する化合物との間の反応によってポリマー構造に導入することができる。いくつかの実施形態において、架橋性基を有する化合物は、樹脂を合成するときにモノマーの1種として使用することができる。架橋性基を導入する方法としては、限定されるものではないが、溶媒系反応、および押出機、オーブン、ホットプレスまたはオートクレーブを使用することによる溶融状態反応が挙げられ得る。いくつかの実施形態において、熱、紫外線照射、マイクロ波照射、水分などから選択される外部刺激によってこれらの架橋性基を互いに反応させて、重合構造を形成することができる。いくつかの実施形態において、これらの架橋性熱可塑性樹脂を硬化させるために、これらの外部刺激を単独で使用してもよい。いくつかの実施形態において、これらの架橋性熱可塑性樹脂を硬化させるために、同時に2種以上の刺激を使用してもよい。いくつかの実施形態において、架橋性熱可塑性樹脂の部分的に硬化された(予備硬化された)中間体を製造し、続いて完全に硬化させるために、2種以上の外部刺激を別々の時間に使用してもよい。いくつかの実施形態において、外部刺激によって反応し得る化合物を、架橋性熱可塑性樹脂と共に硬化させて、共に架橋させるために、使用してもよい。例えば、熱によって活性化される架橋性基としては、限定されるものではないが、エポキシ、ベンゾオキサジン、ニトリル、ビスマレイミド、シトラコンイミド、および、他の不飽和炭化水素基、例えばナジックイミド、フェニルエチニル、フェニルエチニルイミドなどが挙げられ得る。紫外線による架橋性基としては、限定されるものではないが、アクリル、メタクリル、シンナミック、アリルアジド、および他の不飽和炭化水素基が挙げられ得る。いくつかの実施形態において、これらの架橋性基を単独で使用することができる。他の実施形態において、2種以上の架橋性基を共に使用することができる。また、例えば、マイクロ波照射による架橋性基としては、限定するものではないが、エポキシおよび他の不飽和炭化水素基が挙げられる。これらの架橋性基は、単独で、または共に使用することができる。吸水による架橋性基としては、限定されるものではないが、シアノアクリレート、イソシアネート、およびアルコキシシランが挙げられ得る。これらの架橋性基は、硬化反応を促進するための触媒と共に使用してもよい。
【0029】
1つ以上の実施形態において、ハイブリッド樹脂は、下記式(V)~(VIII)に示すベンゾオキサジン架橋性基をその中に有してもよい。ベンゾオキサジンモノマーの開環重合を受けるポリ(ベンゾオキサジン)とは対照的に、ベンゾオキサジン構造単位(環構造)は、本開示のハイブリッド樹脂においてエンドキャップまたはモノマー単位として形成される。具体的には、ベンゾオキサジン架橋性基は、式(V)~(VIII)に示すハイブリッド樹脂の形成の後に、開環して、ハイブリッド樹脂のポリマー主鎖を架橋してもよい。
【化3】
【0030】
式(V)~(VIII)に示すベンゾオキサジン(BZ)架橋性単位を形成するために、アミンまたはフェノール末端官能基を有する熱可塑性ポリマーを、ホルムアルデヒド、およびアミンまたはフェノールのうちもう一方(熱可塑性物質の末端官能基に依存する)と反応させてもよい。(上記の式(V)および(VI)に示す)BZエンドキャップが所望される場合、アミンまたはフェノール反応物質は、単官能性であり得る一方、(式(VII)および(VIII)に示す)-(TP-BZ)n-高分子単位が所望される場合、アミンまたはフェノール反応物質は、二官能性(すなわち、ジアミンまたはジフェノール)であり得る。理解され得るように、アミンは(モノアミンであろうとジアミンであろうと)、BZ環を形成するように第1級アミンであり得る。
【0031】
式Vにおいて、R5は、水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、および官能基のうち1つ以上を表し得る。炭化水素基は分岐、直鎖、および/または環含有構造であり得、炭化水素基は飽和または不飽和であり得る。炭化水素基は、第1級、第2級、および/または第3級炭化水素であり得る。用語「置換炭化水素基」は、少なくとも1つの水素原子が水素ではない基で置き換えられて安定な化合物となった炭化水素基(上記で定義される)を指し得る。そのような置換基は、限定されるものではないが、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、オキソ、アルカノイル、アリールオキシ、アルカノイルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ、二置換アミン、アルカニルアミノ、アロイルアミノ、アラルカノイルアミノ、置換アルカノイルアミノ、置換アリールアミノ、置換アラルカノイルアミノ、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、アリールアルキルチオ、アルキルチオノ、アリールチオノ、アリアルキルチオノ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アリールアルキルスルホニル、スルホンアミド、置換スルホンアミド、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルバミル、アルコキシカルボニル、アリール、置換アリール、グアニジンおよびヘテロシクリル、ならびにそれらの混合物から選択され得る。官能基は、限定されるものではないが、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、オキソ、アミノ、アミド、チオール、アルキルチオ、スルホニル、アルキルスルホニル、スルホンアミド、置換スルホンアミド、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルバミルまたはアルコキシカルボニル基などから選択され得る。式Vは、フェノール(任意に、上述した基のうちいずれかで置換されている)を第1級アミン末端TP単位と反応させることによって、形成される。例えば、1つ以上の特定の実施形態において、R5は、アミンと反応するフェノール基上のメチル、メトキシ、アリルまたはナフトール置換基を表し得る。
【0032】
式VIにおいて、R6は、R5について言及した基のうちいずれかを表し得る。しかしながら、特定の用途のために熱安定性が所望される特定の実施形態においては、R6は、任意に置換されているフェニル基、ナフチル基、キシリル基またはチエニル基などの置換アリール基を含む、アリール基であり得る。例えば、1つ以上の実施形態において、R6は、アニリン、置換アニリン(トルイジン、メトキシアニリンなど)、ナフチルアミンなどの反応から形成され得る。しかしながら、他の低温の用途においては、R6は、アルキル、または、メチルアミン、イソプロピルアミン、アリルアミンもしくはアミノシランなどのシリルアミンの反応から生じる、アルキルまたはシリル基であり得る。
【0033】
式VIIにおいて、R7は、R5について上記で定義され、ビスフェノールから形成される、炭化水素基または置換炭化水素基を表し得る。1つ以上の実施形態のビスフェノールは、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールAF、ビスフェノールAP、ビスフェノールZ、ビスフェノールS、ビスフェノールMおよびそれらの置換誘導体からなる群のうちの1つ以上であり得る。
【0034】
式VIIIにおいて、R8は、R5に関して上記で定義され、ジアミンから形成される、炭化水素基または置換炭化水素基であり得る。ジアミンとしては、限定されるものではないが、芳香族ジアミン、シリコーン系ジアミン、アルキルジアミンおよびポリエーテルアミンなどの、ポリエーテルイミドを形成する際に上記で説明したものが挙げられる。特定の実施形態において、R8は、ベンゼン、ビベンジル、ジフェニルメタン、ナフタレン、アントラセン、ジフェニルエーテル、スチルベン、フェナントレン、フッ素およびそれらの置換変異体などであるがこれらに限定されない芳香族基を表し得る。
【0035】
式(V)および(VI)に至る反応スキームの一例を
図1に示す。式(VII)に至る反応スキームの一例を
図2に示す。式(VIII)に至る反応スキームの一例を
図3に示す。
図1は、ポリイミド化によってポリエーテルイミド(PEI)が得られる、ジアミンおよび二無水物(具体的にはRODAおよびBPADA)の反応を示す。PEIは、アミン(PEI-NH
2)またはフェノール末端官能基(PEI-OH)を用いて調製することができる。次いで、PEI-NH
2ポリイミドをパラホルムアルデヒドおよびフェノールと反応させると、ポリエーテルイミド-ベンゾオキサジン(PEI-BZ)ハイブリッド樹脂が得られる。ここで、BZ単位は具体的には、PEI鎖に対するエンドキャップの形態にある。示すように、このPEI-BZは、PEI-OHとパラホルムアルデヒドおよび第1級アミンとの反応によって同様に得ることができた。ここで
図2を参照すると、一例として同じPEI-NH
2ポリイミドを使用して、PEI-NH
2を、パラホルムアルデヒドの存在下でジフェノールと反応させて、PEI-BZ主鎖ハイブリッド樹脂を形成する。さらに、示すように、単官能性フェノール(またはアミン)を連鎖制限剤として導入して、得られるハイブリッド樹脂の分子量を制御することができる。当該ハイブリッド樹脂は、ハイブリッド樹脂の主鎖(main-chain)または主鎖(backbone)中にBZ架橋PEI単位を有する。ここで
図3を参照すると、フェノール末端官能基を有するポリイミド(PEI-OH)を、パラホルムアルデヒドの存在下でジアミンと反応させて、式(VII)に記載のPEI-BZ主鎖ハイブリッド樹脂を形成する。得られた樹脂を、連鎖制限剤としての単官能性アミンまたはフェノールと反応させることができる。
【0036】
いくつかの実施形態において、ベンゾオキサジンの形成は、限定されるものではないが、以下の方法、1つ以上の溶媒(または共溶媒)中での反応、押出機、オーブン、ホットプレスまたはオートクレーブを使用する溶融状態反応、によって起こすことができる。いくつかの実施形態において、ベンゾオキサジン形成は、50~150℃で1~200時間にわたって、起こすことができる。例えば、反応溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、1-4-ジオキサン、トルエン、酢酸エチル、エタノールおよび2-メトキシエタノールから選択することができる。特定の実施形態において、1,4-ジオキサンと2-メトキシエタノールとの組み合わせは良好な均一反応相を提供し、高い反応温度を維持しながら、トリアジンなどの望ましくない副生成物の形成を最小限に抑えることができる。1つ以上の実施形態において、所定の溶媒中のポリイミド反応後にPEI-OHを単離することなく、別の溶媒を添加することによって、続くベンゾオキサジン形成をポリイミド溶液中で連続的に行うことができる。
【0037】
1つ以上の実施形態において、エンドキャップされたPEI-BZハイブリッド樹脂のための、アミンまたはフェノール末端官能基のベンゾオキサジンへの転化率を変化させてもよい。BZ転化は、25~100%であってもよく、例えば所望の架橋密度、硬化後のTgまたは最終的なハイブリッド樹脂の予備硬化溶融挙動に依存し得る。
【0038】
ハイブリッドTP-BZ樹脂の形成の際には、ベンゾオキサジンは、硬化サイクル、溶液キャスティング、ホットメルトプレスなどを含むがこれらに限定されない様々な方法で、硬化(架橋)させることができる。硬化のメカニズムは、物品の種類、および、例えば含浸剤(プリプレグを形成するための複合繊維などにおいて)、複合材、接着材、被覆剤などとしてハイブリッド樹脂を使用する方法に応じて、選択することができる。例えば、硬化前に、ハイブリッド樹脂を予備硬化Tgより高く、硬化温度より低く上昇させて、ハイブリッド樹脂をその所望の形態に溶融加工し、次いで硬化させて樹脂を架橋し、固化させてもよい。
【0039】
1つ以上の実施形態において、硬化は、UVおよび/またはマイクロ波処理などの外部刺激によって誘発されてもよい。したがって、本開示の実施形態は、UVおよび/またはマイクロ波処理などの外部刺激を介して架橋され得る硬化性基を含む熱可塑性樹脂組成物にも関する。
【0040】
1つ以上の実施形態において、熱可塑性樹脂組成物は、UVおよび/またはマイクロ波処理を介して硬化(架橋)され得る官能基(本明細書では「硬化性官能基」と称する)を含んでもよい。好適な硬化性官能基は、マイクロ波および/またはUV硬化性である官能基を含む。これらは、UVおよび/またはマイクロ波放射に曝露されると、熱可塑性樹脂中で架橋が誘発されることを意味する。マイクロ波放射の場合、硬化性官能基は、架橋を誘発するために当該放射を吸収することができる。例えば、マイクロ波硬化性である化合物については、極性官能基を含んでもよい。したがって、このような官能基は放射を吸収し、放射を熱に変換して、熱可塑性樹脂組成物の硬化を誘発することができる。UV放射の場合、光開始剤は、UV放射を吸収し、硬化性官能基を攻撃し架橋を誘発するラジカルおよび/またはイオンを生成し得る。化合物がUV硬化性であるためには、化合物は、1つ以上の光開始剤によって生成されるラジカルおよび/またはイオンによって攻撃され得、他の官能基と共有結合を形成する官能基を含んでもよい。1つ以上の実施形態において、硬化は、熱可塑性樹脂組成物中に存在する他の官能基(硬化において開環し得るベンゾオキサジン環を含むが、これらに限定されない)の反応を伴い得る。当該反応は、硬化性官能基によって、または、光開始剤によって生成されるラジカルおよび/もしくはイオンによって、生成される熱によって誘発される。
【0041】
1つ以上の実施形態において、硬化性官能基は、マイクロ波放射を吸収することに適した極性基である。好適な極性官能基の種類の例としては、カルボン酸、アミド、アルコール、エステル、アルデヒドおよびケトンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
1つ以上の実施形態において、硬化性官能基は「UV感応性」である。これは、1つ以上の光開始剤によって生成されるラジカルおよび/またはイオンによって攻撃され得る官能基であることを意味する。このような官能基は、次いで他の官能基と共有結合(架橋)を形成し得る。UV感応性官能基の種類の例としては、アクリル基、メタクリル基、スチレン基およびビニルピロリドン基などの、活性化二重結合を有する官能基が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0043】
1つ以上の実施形態において、硬化性官能基は熱可塑性ポリマーに結合していてもよい。これは、このような硬化性官能基を有する硬化成分による熱可塑性ポリマーの改質によって、または、このような硬化性官能基を有するモノマーを重合することによって、すなわち、ポリマーの合成によって生じ得る。このような実施形態において、硬化性官能基は、内部成分であり、すなわち、ポリマーに共有結合している。さらに、ポリマーは、マイクロ波またはUV硬化によって誘発されるまでポリマーと反応しない外部硬化成分と組み合わせることができることも想定される。
【0044】
したがって、1つ以上の他の実施形態において、硬化成分(ポリマーとの反応前)は、硬化性官能基と、熱可塑性ポリマーに結合し得るように反応性である少なくとも1つの官能基とを含む、複数の官能基を含み得る。このような実施形態において、硬化成分(ポリマーとの反応前)は原料として機能して、内部硬化性官能基を有するポリマーを形成することができる。したがって、極性および/またはUV感応性官能基に加えて、硬化成分は、熱可塑性樹脂組成物に結合する少なくとも1つの反応性官能基も含み得る。さらに、マイクロ波誘発および/またはUV誘発硬化の前にポリマーに結合する官能基に加えて、硬化成分は、マイクロ波誘発および/またはUV誘発硬化に対して反応性である少なくとも1つの追加の反応性官能基も任意に含んでもよい。すなわち、少なくとも1つの追加の反応性官能基を含む1つ以上の実施形態において、原料として機能する硬化成分(ポリマーに結合する前、または硬化性官能基がポリマー合成機構によって組み込まれる場合にはモノマーに結合する前)は、少なくとも2つの反応性基を有してもよく、その結果、ポリマーまたはモノマーとの最初の反応の際に、少なくとも1つの反応性基が硬化性官能基中に残る。さらに、硬化性官能基はこのような追加の反応性官能基の1つを含み得るが、硬化性官能基は、そのような追加の反応性官能基が追加の架橋をもたらし得るように、そのような追加の反応性官能基のうち少なくとも2つを含み得ることも想定される。
【0045】
1つ以上の実施形態において、反応性官能基は、熱可塑性ポリマーに結合し、および/または架橋を起こし得るようなものである。反応性官能基としての使用に適した官能基の種類の例としては、フェノール、アミン、チオール、エーテル、エステル、アクリレート、オキシラン、カルバメート、ホスホリレート、糖脂質、ポリエトキシレート、ベンゾオキサジン、およびそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
さらに、マイクロ波放射を吸収するか、またはUV感応性である官能基はまた、反応性官能基であってもよく、その結果、放射によって誘発されると、当該基がポリマーを架橋することも理解される。
【0047】
放射は、硬化性官能基自体、および、放射を吸収せず、熱に変換しない他の官能基を含む反応の組み合わせを誘発し得ることも想定される。
【0048】
しかしながら、上述したように、硬化成分が2つの反応性官能基を含まない(およびポリマーに結合した硬化性官能基が少なくとも1つの反応性官能基も含まない)場合、ポリマーは、反応性エンドキャップなどの他の反応性基を含むことによって、依然として架橋することができる。その反応は、マイクロ波から生成される熱によって、または紫外線放射後に光開始剤によって放出されるラジカルおよび/またはイオンによって、誘発され得る。1つ以上の実施形態において、ポリマーは、硬化がUVまたはマイクロ波放射によって誘発され得るベンゾオキサジンエンドキャップを含んでもよい。さらに、樹脂組成物は、反応性エンドキャップ、および、反応性官能基を含有する硬化性官能基の両方を含み得ることも企図される。
【0049】
反応性官能基の例としては、エポキシド、チオール、アミンおよびカルボン酸が挙げられるが、これらに限定されない。このような反応性官能基を含む化合物の例としては、エピクロロヒドリン、セロキシド2021P(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン-4-イル2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン-4-イル)アセテート)、YDF-170(ジグリシジルエーテルビスフェノールAエポキシオリゴマー)、メタクリル酸無水物、および1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’-オキシジアニリンが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0050】
本開示の硬化性官能基は、様々な好適なストラテジーを用いて熱可塑性樹脂組成物に組み込むことができる。1つ以上の実施形態において、硬化性官能基は熱可塑性ポリマーに共有結合していてもよく、したがって、ポリマーは内部硬化性官能基を含む。他の実施形態において、硬化性官能基は熱可塑性ポリマーに共有結合しておらず、むしろ、ポリマーと混合され、特にはマイクロ波放射によって硬化性である外部硬化成分中に存在する。このような実施形態において、ポリマーは、硬化がマイクロ波またはUV放射によって誘発されるまで、外部硬化成分とは反応せず、または外部硬化成分に結合しない。さらに、内部硬化性官能基を有するポリマーは、外部硬化成分と組み合わされ、硬化され得ることも想定される。
【0051】
上述したように、ポリマーが硬化性官能基を有する実施形態においては、熱可塑性ポリマーに共有結合し(すなわち、内部硬化性官能基)、硬化性基は熱可塑性ポリマーに直接共有結合することによって、または、モノマー混合物における使用のために硬化性官能基を含む少なくとも1つのモノマーを選択することによって導入され得、次いで重合されて、熱可塑性ポリマーを形成する。
【0052】
UV放射によって誘発される実施形態において、少なくとも1つの光開始剤も一般に存在する。光開始剤は、UV放射をラジカルおよび/またはイオンの形態で化学エネルギーに変換し得る化合物である。光開始剤の種類としては、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α-ジアルコキシアセトフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、α-アミノアルキルフェノン、アシルホスフィンオキシド、ベンゾフェノン/アミン、チオキサントン/アミン、およびチタノセンが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0053】
ポリマーが内部硬化性官能基を含むように硬化性基をポリマーに結合させる実施形態の模式図を
図4に示す。
図4において、熱可塑性ポリマー102は、ポリマー主鎖104および任意のエンドキャップ106を含む。ポリマーは、硬化性官能基108が熱可塑性ポリマー102に共有結合するように改質され(矢印によって示される)、したがってポリマーは内部硬化性官能基を含む。
図1に示す実施形態において、硬化性官能基108は、ポリマー主鎖104に共有結合している。いくつかの実施形態において、硬化性基はエンドキャップに共有結合していてもよい。いくつかの実施形態において、硬化性基は、ポリマー主鎖およびエンドキャップに共有結合していてもよい。当業者によって理解され得るように、ポリマーに結合した内部硬化性基の量は、硬化したポリマーにおける架橋の量を調整するために、調整されてもよい。
【0054】
1つ以上の実施形態において、硬化性官能基が結合し得る熱可塑性ポリマーとして、ポリイミドポリマーが利用され得る。ポリイミド系において、エンドキャップは、硬化性官能基を有するように改質されていてもよい。1つ以上の実施形態において、エンドキャップとしてアミン基を有するポリイミドポリマーは、構造(IV)に示すように、硬化性官能基を含むように改質されていてもよい。
【化4】
【0055】
構造(IX)は、例えばメタクリル酸無水物またはエピクロロヒドリンなどの硬化成分で改質されて、本開示の1つ以上の実施形態に従って、内部硬化性基を含むポリマーを形成してもよい。構造(IX)に示すポリイミドがメタクリル酸無水物で改質される場合、メタクリル酸無水物は、アミン基エンドキャップと反応して、構造(X)を形成する。
【化5】
【0056】
構造(X)に示すポリマーは、硬化性官能基、特にUV感応性基の存在により、(光開始剤の存在下で)UV処理によって硬化され得る。示すように、これらの内部官能基は、エンドキャップに共有結合している。
【0057】
1つ以上の実施形態において、エンドキャップとしてヒドロキシル基を有するポリイミドポリマーは、構造(XI)に示すように、内部硬化性官能基を含むように改質されていてもよい。
【化6】
【0058】
構造(XI)のポリマーをエピクロロヒドリンで改質すると、エピクロロヒドリンがヒドロキシル基と反応して、構造(XII)を形成する。
【化7】
【0059】
構造(XII)に示すポリマーは、磁性の硬化性官能基の存在により、マイクロ波処理によって硬化され得る。示すように、これらの内部官能基は、エンドキャップに共有結合している。
【0060】
1つ以上の実施形態において、硬化性官能基は、モノマー混合物中で使用するための硬化性官能基を含む少なくとも1つのモノマーを選択することによって、熱可塑性樹脂組成物中に組み込まれ得、次いで重合されて、熱可塑性ポリマーを形成する。このストラテジーの模式図を
図5に示す。
図5に示す実施形態において、いくつかのモノマー204は、硬化性基208を含む。次いで、得られた混合物を重合させて(矢印で示す)、内部硬化性官能基として硬化性基208を含む熱可塑性ポリマー202を形成する。ポリマー202は、硬化性官能基である任意のエンドキャップ206を含む。
【0061】
1つ以上の実施形態において、硬化性官能基は、硬化性官能基を含む外部硬化成分を熱可塑性樹脂組成物とブレンドすることによって、熱可塑性組成物中に存在してもよい。このような実施形態において、硬化性官能基は、熱可塑性ポリマーに共有結合していないが、ポリマーと組み合わされた外部硬化成分上に存在している。代わりに、いくつかの実施形態において、外部硬化成分中の硬化性官能基は、マイクロ波放射を吸収し、ポリマーを加熱する。このような場合、硬化性基は反応性官能基も含有してもよく、マイクロ波放射によって発生する加熱によって、熱可塑性ポリマーもまた、硬化性官能基と架橋して、硬化(架橋)ポリマーを形成してもよい。1つ以上の実施形態において、硬化性基は、極性の非硬化性基によって置き換えられてもよい。このような場合、極性の非硬化性基は、マイクロ波放射を吸収し、それを熱に変換し、熱可塑性ポリマーの硬化を補助する。いくつかの実施形態において、光開始剤は、UV放射を吸収し、硬化成分上に存在する硬化性官能基を攻撃するラジカルおよび/またはイオンを生成し、当該硬化性官能基は、ポリマー中の他の官能基と共有結合する。
【0062】
内部硬化性基としてポリマーに共有結合した硬化性基を有する架橋性熱可塑性ポリマーの模式図を
図6Aに示す。ポリマー上の硬化性基は丸で示し、熱可塑性ポリマーは線で示す。
図6Aに示す組成物の硬化樹脂の模式図を
図6Bに示す。
【0063】
ポリマーに共有結合していない外部硬化性基を有する架橋性熱可塑性ポリマーの模式図を
図7Aに示す。硬化性基を含む硬化成分は丸で示し、熱可塑性ポリマーは線で示す。
図7Aに示す組成物の硬化樹脂の模式図を
図7Bに示す。
【0064】
本開示の組成物は、マイクロ波および/またはUV処理によって硬化させてもよい。当業者によって理解され得るように、マイクロ波およびUV処理のための好適な条件は、硬化される材料の特性に基づいて、および、硬化された材料の所望の特性に基づいて、選択され得る。
【0065】
本明細書に開示される組成物は、好適な時間、周波数および出力でのマイクロ波処理によって硬化させてもよい。1つ以上の実施形態において、マイクロ波処理時間は、1分~60分であってもよい。マイクロ波処理時間は、1分、5分、10分、15分および20分のうち1つの下限、ならびに、30分、45分、50分、55分および60分のうち1つの上限を有してもよい。ここで、任意の下限を、任意の数学的に矛盾しない上限と組み合わせてもよい。1つ以上の実施形態において、マイクロ波処理周波数は0.3~300GHzであってもよく、マイクロ波処理出力は100W~100kWであってもよい。
【0066】
本明細書に開示される組成物は、好適な時間、波長および出力でのUV処理によって硬化させてもよい。1つ以上の実施形態において、UV処理時間は、5秒~2時間であってもよい。UV処理時間は、5秒、10秒、30秒、60秒、90秒および5分の下限、ならびに10分、20分、30分、60分、90分および120分のうち1つの上限を有してもよい。ここで、任意の下限を、任意の数学的に矛盾しない上限と組にしてもよい。いくつかの実施形態において、UV処理波長は400nm未満である。1つ以上の実施形態において、UV処理出力は、10W~1kWであってもよい。そのような処理は、硬化性官能基によって決定される架橋構造をもたらし得る。
【0067】
本明細書に開示される組成物および方法は、UVおよびマイクロ波硬化が、組成物の加工におけるより短い硬化時間、硬化のためのより少ないエネルギー入力、およびより高い柔軟性を必要とすることができるため、樹脂の従来の熱硬化と比較して、特に有用であり得る。例えば、マイクロ波硬化は、独立した硬化後のストラテジーを可能にすることができ、UV硬化は、表面コーティングおよびUVパターニング用途における処理をより容易にすることができる。
【0068】
1つ以上の実施形態において、ハイブリッド樹脂は、添加剤、熱可塑性樹脂から製造される強化剤、熱硬化性樹脂、無機塩、有機化合物等と配合されてもよい。配合は、粉末乾燥混合、溶融混合、または溶液中での混合によって行うことができる。添加剤および強化剤の両方の形状は、例えば、板または繊維を含み得るがこれに限定されない粒子を含んでもよい。1つ以上の添加剤、強化剤および繊維を、ハイブリッド樹脂と共に配合してもよい。例えば、1つ以上の熱可塑性樹脂を、ハイブリッド樹脂と共に配合することができる。このような熱可塑性樹脂としては、PEEK、PPS、PEI、PC、ポリスルホンなどが挙げられるが、これらに限定されない。別の例においては、1つ以上の熱硬化性樹脂をハイブリッド樹脂と共に配合し、熱で共硬化させることができる。このような熱硬化性樹脂としては、エポキシ、ベンゾオキサジン、ビスマレイミド、シアネートエステルなどが挙げられ得るが、これらに限定されない。熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂を、本開示のハイブリッド樹脂と共に使用することができることも想定される。1つ以上の実施形態において、硬化温度を下げるために、無機塩、有機化合物、およびそれらの組み合わせをハイブリッド樹脂と共に使用してもよい。例えば、有機化合物は、アミノ基、イミダゾール基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、スルホニル基などを含むがこれらに限定されない官能基を含む。
【0069】
ハイブリッド樹脂の形状は、フィルム、チャンク、繊維などを含むがこれらに限定されない粉末を含んでもよい。フィルム、チャンクおよび/または繊維は、プレス成形またはキャスティング法を用いて、ハイブリッド樹脂の粉末またはその溶液を熱処理することによって作製することができる。ハイブリッド樹脂を硬化させること無しに、プレス成形法を用いた熱処理によって、成形品を熱的に再成形して形状を変化させることができる。成形品は、部分的に硬化したハイブリッド樹脂を使用する場合、キャスティングまたはプレス成形法によって再成形して形状を変化させることもできる。
【0070】
1つ以上の実施形態において、ハイブリッド樹脂は、100~200℃の硬化前Tg、および150~250℃の硬化後Tgを有してもよい。硬化前Tg値と硬化後Tg値との間に、少なくとも50~100℃の差が存在してもよい。この差により、樹脂を硬化させる前のハイブリッド樹脂の溶融加工が可能になることがある。1つ以上の実施形態において、ハイブリッド樹脂は150~260℃の温度範囲で熱硬化されてもよく;ハイブリッド樹脂は、所望の用途に基づいて、当該範囲の下端でより長い硬化時間に供されてもよく、当該範囲の上端でより短い時間に供されてもよい。
【0071】
硬化ハイブリッド樹脂の形状は、フィルム、チャンク、繊維などを含むがこれらに限定されない粉末を含んでもよい。ハイブリッド樹脂物品は、他のハイブリッド樹脂物品と共に、両方の表面で部分的または完全に硬化させることができる。ハイブリッド樹脂物品は、得られる物品の表面の片方または両方において、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ガラス板、繊維または金属などの他の物品と共に、部分的に、または完全に硬化させることができる。
【0072】
1つ以上の実施形態において、硬化ハイブリッド樹脂は、300℃を超える、好ましくは350℃を超える、より好ましくは400℃を超える5%分解温度Td5%を有してもよい。
【0073】
上述したように、ハイブリッド樹脂の溶融粘性は、例えば、熱可塑性モノマー(ポリイミドを形成するジアミンおよび二無水物など)の選択、熱可塑性物質(またはより特にはポリイミド)の大きさ、ならびに形成されるハイブリッド樹脂の種類(例えば、BZ基が、エンドキャップ(エンドキャップ転化の程度を含む)であるか、またはポリマー鎖に組み込まれているか)によって、変更され得る。したがって、例えば、210℃において、最低溶融粘性は、50Pa・sから、8000Pa・s超であってもよい。
【0074】
1つ以上の実施形態において、硬化ハイブリッド樹脂は、ASTM D1708に従って測定される、30~130MPaの引張強度を有してもよい。
【0075】
1つ以上の実施形態において、硬化ハイブリッド樹脂は、ASTM D1708に従って測定される、1~20%の伸びを有してもよい。
【0076】
上述したように、1つ以上の特定の実施形態において、本開示のハイブリッド樹脂は、プリプレグ、複合材料、接着剤、コーティングなどを形成するために使用され得る。特には、上述したハイブリッド樹脂組成物を強化繊維と組み合わせて、複合材料または構造体を形成してもよい。複合材料または構造体は、繊維の層または織物を含浸させることによって形成されるプリプレグを含む。樹脂フィルムは、例えば圧縮成形、押出し、溶融キャスティングまたはベルトキャスティングによって、硬化性樹脂組成物から形成してもよい。その後、このようなフィルムを、別の層の片方または両方の対向する面に積層させる。別の層は、例えば、比較的短い繊維の不織布、連続繊維の織布または一方向に整列した繊維の層(すなわち、同じ方向に沿って整列した繊維)の形態の強化繊維の層を含む。温度および圧力は、樹脂フィルムを流動させ、繊維に含浸させることに十分な温度および圧力である。代替的には、液体形態のハイブリッド樹脂組成物を準備し、液体樹脂組成物に繊維の層を通して、繊維の層に熱硬化性組成物を注入し、注入した繊維層から余分な樹脂を除去することによって、プリプレグが製造されてもよい。
【0077】
プリプレグから複合部品を製造するために、含浸された強化繊維の層を道具上に置き、加熱および加圧、例えばオートクレーブ、減圧または圧縮成形によって、または加熱ローラによって、共に積層する。温度は樹脂組成物の硬化温度範囲であり、圧力は特には1バールを超え、好ましくは1~10バールである。
【0078】
したがって、本開示の実施形態によれば、ハイブリッド樹脂は、プリプレグ、複合材、コーティング、接着層などを形成するように、ハイブリッド樹脂を塗布するために溶融加工されてもよい。そのような塗布の間またはその後に、ハイブリッド樹脂を硬化させることが所望される場合、ハイブリッド樹脂を硬化させて、ハイブリッド樹脂内の開環または架橋を誘発し、それによって熱硬化特性を誘発してもよい。
【0079】
コーティングまたは接着剤層の形成において、配合されたコーティングの塗布は、スプレー、ローラーコーティング、ディップコーティングなどの従来の方法によって行うことができ、次いで、コーティングされたシステムを焼成によって硬化させることができる。
【0080】
〔実施例〕
【0081】
〔方法〕
【0082】
示差走査熱量測定(DSC)は、TA Instruments製Q2000 DSCモデルを用いて、20~350℃で5℃/分の昇温速度、50mL/分のN2(窒素ガス)流中で、行った。ガラス転移温度(Tg)は、ベースラインシフト(変曲の前後の2つの接線の交点)の開始から測定した。重量損失測定(Td5%)は、TA Instruments製Q50 TGAモデルを用いて行った。分子量測定は、分離用Phenomenex Phenogel GPCカラムを備え、UVおよびRI検出能力を有する島津UFLC装置を用いて行った。測定は、10mMのLiBrを含有するNMP溶媒中、40℃で行い、ポリスチレン標準を基準とした。1H NMRスペクトルは、Varian Inova 500システムで、溶媒としてd6-DMSOを使用して収集し、BZ転化率を計算した。DMAおよびレオロジーデータはそれぞれ、TA Instruments製RSA G2モデルおよびDiscovery HR-2モデルで収集した。引張データは、ADMET製eXpert 4200引張試験機を使用して、ASTM D1708に従って測定した。
【0083】
THFへの溶解度は、約5mLのTHFに約25mgの試験材料を加えることによって、試験した。次いで、混合物を約5分間超音波処理した。
【0084】
UV硬化は、手持ち式ランプまたはUV硬化装置のいずれかを用いて行った。手持ち式UV硬化ランプはVWRから入手したものであり、波長365nm、電流0.16Amp、電圧110Vである。UV硬化装置は、Heraeus LC6B Lighthammerであり、波長200~400nmおよび出力467ワット/インチである。
【0085】
〔ポリイミド〕
【0086】
〔PI-1-OHポリイミドの合成〕
【0087】
PAP(6.003g、55.0mmol)、BAPP(11.289g、27.5mmol)および100gのジオキサン/メタノール(1:1w/w)溶媒混合物を入れた250mLのガラス瓶を、45℃の油浴に30分間入れて、透明溶液を得た。次いで、BPADA(28.627g、55mmol)を加え、45℃で4時間撹拌した後、室温で一晩撹拌した。溶液の固形分は32%である。得られたコーラブラウン色のワニスを濾過して、溶解していない不純物を除去し、急速に撹拌した水400mLにゆっくりと加えて、白色ポリアミック酸粉末を沈殿させた。粉末を空気対流式オーブンに入れ、200℃で2.5時間イミド化した。ポリイミドPI-1-OHの暗赤色フレークを収率75%で得た。Tg=153℃;Td5%=455℃(窒素);分子量=4,400Da。
【0088】
〔PI-1-NH2ポリイミドの合成〕
【0089】
BAPP(18.062g、44mmol)および90gの2-メトキシエタノール溶媒を250mLのガラス瓶に入れ、透明溶液を得た。次いで、BPADA(11.451g、22mmol)を加え、溶液を60℃で8時間撹拌した。溶液の固形分は25%であった。得られたコーラブラウン色のワニスを濾過して、溶解していない不純物を除去し、急速に撹拌した水500mLにゆっくりと加えて、白色ポリアミック酸粉末を沈殿させた。粉末を空気対流式オーブンに入れ、200℃で2.5時間イミド化した。ポリイミドPI-1-NH
2の暗赤色フレークを収率90%で得た。Tg=110℃;分子量=3,200Da。PI-1-NH
2の構造を構造(XIII)に示す。
【化8】
【0090】
〔PI-2-OHポリイミドの合成〕
【0091】
PI-2-OHと称されるポリイミドは、PI-1-OHと同様に調製したが、溶媒2-メトキシエタノール中でRODAジアミンとBPADA二無水物との組合せをPAPと共に使用した。暗赤色フレークを収率85%で得た;Tg=154℃;分子量=3,800Da。より高い分子量の第2サンプルを調製し、Tg=164℃、6,000Daを得た。より高い分子量の第3サンプルを調製し、Tg=176℃、9,500Daを得た。PI-2-OHの構造を構造(XIV)に示す。
【化9】
【0092】
〔PI-2-NH2の合成〕
【0093】
PI-2-NH2と称されるポリイミドは、PI-1-NH2と同様に調製したが、ジオキサン/メタノール(1:1w/w)溶媒混合物中でRODAジアミンとBPADA二無水物との組合せを使用した。赤褐色フレークを収率>90%で得た;Tg=168℃;分子量=17,400Da。
【0094】
〔PI-11-OHポリイミドの合成〕
【0095】
PI-11-OHと称されるこのポリイミドは、PI-1-OHと同様に調製したが、BAPPとDDSとの組合せをジアミン(75/25の比率)のために使用した。得られたポリイミドのTgは154℃であり、分子量は4,500Daであった。
【0096】
〔PI-1-MAの合成〕
【0097】
1gのPI-1-NH
2、0.52gのNaHCO3、2.36gの無水メタクリル酸および15mlのTHFをフラスコに加えた。室温で36時間反応させた。濾過およびロータリーエバポレーターでの溶媒除去によって、生成物を得た。PI-1-MAの構造を構造(XV)に示す。
【化10】
【0098】
〔PI-2-EPの合成〕
【0099】
PI-2-EPポリアミドオリゴマーは、水酸化ナトリウムの存在下でPI-2-OHをエピクロロヒドリンと反応させることによって合成した。1gのPI-2-OH、5mLのエピクロロヒドリン、81mgのNaOHおよび1mLの水をフラスコに加えた。50℃で24時間反応させた。ジクロロメタンによる抽出、続いてロータリーエバポレーターでの溶媒除去によって、生成物を得た。PI-2-EPの構造を構造(XVI)に示す。
【化11】
【0100】
〔PI-2-EP/THPE、PI-2-EP/ODA、PI-2-EP/YDF-170の合成〕
【0101】
いくつかの異なるマイクロ波活性化合物をPI-2-EPに加えた。具体的には、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(THPE)(10mg)、4,4’-オキシジアニリン(ODA)(10mg)、およびジグリシジルエーテルビスフェノールAエポキシオリゴマーYDF-170(22mg)を、PI-2-EP(50mg)に、それぞれ10:2、10:2、および10:4.4の重量比で加えた。混合物それぞれを1分間粉砕した。得られたブレンドを、それぞれPI-2-EP/THPE、PI-2-EP/ODA、およびPI-2-EP/YDF-170と称する。
【0102】
〔ポリイミド-ベンゾオキサジンハイブリッド樹脂〕
【0103】
〔PI-2-BZ-Eの合成〕
【0104】
PI-2-BZ-Eと称されるこのポリイミドエンドキャップベンゾオキサジンハイブリッド樹脂は、以下のように調製した:PI-2-OH(分子量=6,000Da、28.0g、0.0047mol)、パラホルムアルデヒド(7.44g、0.248mol)を500mLの丸底フラスコに入れ、ジオキサン(120mL)で処理した。ジオキサン(50mL)に溶解したアニリン(11.54g、0.124mol)をフラスコに加えた。PIの固形分は13%であった。混合物を110℃の油浴中で2日間還流させた。冷却後、暗赤色溶液が調製され、激しく撹拌したMeOH(650mL)にゆっくりと加えた。得られたベージュイエロー色の粉末を濾過し、脱イオン水で3回洗浄し、最後にMeOHで洗浄した。最終的な粉末を濾過により単離し、80℃で36時間乾燥させた。収率=80%。BZエンドキャップ含有量=45%(1H NMR);樹脂Tg=155℃;硬化Tg=200℃。第2サンプルを同じ固形分で5日間流し、BZエンドキャップ90%を得た;樹脂Tg=142℃;硬化Tg=208℃。分子量=3,800DaのPI-2-OHから開始したとき、第3サンプルを7日間流し、100%のBZエンドキャップを得た;樹脂Tg=120℃;硬化Tg=217℃。
【0105】
〔PI-1-BZ-Eの合成〕
【0106】
PI-1-BZ-Eと称されるこのポリイミドエンドキャップベンゾオキサジンハイブリッド樹脂は、上述したPI-2-BZ-Eと同様に調製したが、ポリイミドとしてPI-1-OHを用いて開始した。反応媒体中のPIの固形分22%で1日還流した後に100%のBZエンドキャップが認められた;樹脂Tg=110℃;硬化Tg=155℃。
【0107】
代替的には、PI-1-NH2ポリイミドから出発して、PI-1-BZ-Eを合成することができる。PI-1-NH2(分子量=3,200Da、1.0g、0.313mmol)、フェノール(0.720g、7.66mmol)およびパラホルムアルデヒド(0.460mg、15.3mmol)を入れたフラスコを、ジオキサン/2-メトキシエタノール(2:1の比率、w/w)からなる5.6gの溶剤混合物で処理した。110℃の油浴中で24時間還流すると暗赤色溶液が得られた。これをメタノールに加えると、ベージュイエロー色の生成物が得られた。ほぼ100%のBZエンドキャップが認められた。
【0108】
〔PI-1-BZ-Mの合成〕
【0109】
PI-1-BZ-Mと称されるこのポリイミド-ベンゾオキサジン主鎖型ハイブリッド樹脂は、以下のように調製した:PI-1-OHポリイミド(分子量=4,400Da、12.0g、0.0027mol)、パラホルムアルデヒド(0.800g、0.027mol)、およびODAジアミン(1.50g、0.0075)を250mLの丸底フラスコに入れ、ジオキサン/2-メトキシエタノール(35g;2:1w/w)で処理した。混合物を110℃の油浴中で5日間還流させた。冷却後、暗赤色溶液を追加のジオキサン(70g)で希釈し、濾過して、不溶性粒子を除去した。溶液を激しく撹拌したMeOH(400mL)にゆっくりと加え、続いてアセトンで洗浄し、MeOHで2回目の洗浄をすることにより、黄色の沈殿物を得た。粉末形態の生成物を濾過し、真空オーブン中、70℃で24時間乾燥させた。収率範囲:80~85%。分子量=37,000Da;樹脂Tg=190℃;硬化Tg=220℃。
【0110】
PI-1-BZ-Mの分子量は、アニリン(モノアミン)を、ODAジアミンに加えて使用することによって、制御することができる。前者は連鎖停止剤として作用することができる。上記と同様であるが以下の成分-PI-1-OHポリイミド(分子量=4,400Da、15.0g、0.0034mol)、パラホルムアルデヒド(1.200g、0.040mol)、ODAジアミン(1.76g、0.0088mol)、アニリン(0.110g、0.0012mol)-を用いて、3日間の反応期間にわたって実施した反応によって、最終生成物を得た;分子量=12,500Da;樹脂Tg=183℃;硬化Tg=224℃。
【0111】
〔PI-1-BZ-M2の合成〕
【0112】
PI-1-BZ-M2と称されるポリイミド-ベンゾオキサジン主鎖型ハイブリッド樹脂は、PI-1-BZ-Mと同様に調製したが、ODAの代わりにジアミンBAPPを使用して、3日間反応させた。分子量=8,300;樹脂Tg=173℃;硬化Tg=211℃。
【0113】
〔ハイブリッド樹脂の薄膜成形〕
【0114】
上記で合成したPI-BZハイブリッド樹脂粉末のいくつかを、約10cm×10cm×100μmの寸法の薄膜に成形した。最初に、粉末を焦げ付き防止の正方形の型の中心に置き、次いでこれをホットプラテン上に置き、樹脂溶融を開始させた。溶融を確認したら、樹脂を金型に完全にホットプレスし、昇温してベンゾオキサジンを硬化させ、樹脂の形状を固定した。例えば:PI-2-BZ-E粉末は、200℃の金型内で溶融を開始し、30分間プレスして金型の空間を完全に満たした。この工程の後、温度を230℃に上昇させ、ホットプレスしながら10分間保持した。240℃および250℃でさらに10分間保持することによって、完全な硬化を達成し、その後、フィルムを金型から剥離して、引張特性のさらなる分析に使用した。
【0115】
〔引張、熱および溶融粘度データ〕
【0116】
図8は、成形された薄膜から測定された引張特性を、その熱および硬化前樹脂溶融粘度データと共に示す。脆弱性を示す市販のMPDタイプ(式XVII)またはBis-Aタイプ(式XVIII)のBZ樹脂などの熱硬化性ベンゾオキサジン薄膜と比較して、ポリイミド-ベンゾオキサジンハイブリッドフィルムの改善された柔軟性が、破壊をもたらさないフィルムの折り畳みによって認められる。これは、伸び値にも反映されている。
【化12】
【0117】
〔PI-1-MA、VP、およびDMPAのUV硬化〕
【0118】
PI-1-MAをビニルピロリジン(VP)および2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMPA)と20:65:15の重量比率でブレンドし、混合物を約5分間超音波処理した。得られた混合物は室温で液体であった。液体に60分間、365nmのUV放射を行った。
【0119】
樹脂の溶解度を試験して、UV処理から生じた架橋の程度を決定した。固体はTHFに溶解せず、このことは、UV曝露による効果的な架橋を示している。
【0120】
〔PI-1-MAおよびDMPAのUV硬化〕
【0121】
追加のモノマーを含まないPI-1-MAのUV硬化性を、PI-1-MAをDMPAと95:5の重量比率でブレンドすることによって試験した。混合物をTHFと混合し、次いでTHFを蒸発させてペーストを得た。ペーストに10秒間、UV放射を行った。UV硬化後、サンプルは固体粉末であった。固体粉末はTHFにほとんど不溶性であり、このことは、架橋がUV硬化工程中に生じたことを示している。硬化PI-1-MAのTgはまた、未硬化サンプルと比較して、高まることが認められた。
【0122】
〔PI-2-EP/THPE、PI-2-EP/ODA、PI-2-EP/YDF-170のマイクロ波硬化〕
【0123】
樹脂混合物を900Wのマイクロ波で15分間硬化させた。比較サンプルは、マイクロ波硬化に供されず、DSC実験の間の加熱によってのみ硬化した。マイクロ波硬化の程度、硬化特性の変化、およびTg値を以下の表1に示す。
【表1】
【0124】
樹脂PI-2-EPは、それ自体はマイクロ波硬化を示さない。しかしながら、マイクロ波硬化性化合物を加えることにより、PI-2-EPの硬化性が改善される。PI-2-EP/YDF-170の場合、15分間のマイクロ波照射で、硬化の程度は67%にも達する。マイクロ波を受けたODAおよびYDF混合物の場合のより高い値への発熱硬化ピークのシフトは、マイクロ波によって達成される顕著な硬化の別の指標である。
【0125】
上記では、ほんのわずかな例示的な実施形態について詳述してきたが、当業者であれば、本発明から実質的に逸脱すること無しに、例示的な実施形態における多くの変形が可能であることを、容易に理解するであろう。したがって、すべてのそのような変形は、以下の特許請求の範囲に定義される本開示の範囲内に含まれることが意図される。特許請求の範囲において、ミーンズ-プラス-ファンクション節は、記載された機能を実行するものとして本明細書に記載された構造、および、構造的な等価物だけでなく、等価な構造体もカバーすることが意図されている。したがって、爪とネジとは、木製部品同士を固定するために、爪が円筒面を採用する一方でネジが螺旋面を採用する点においては、構造的に等価ではないかもしれないが、木製部品を締結するという条件においては、爪とネジとは等価な構造体であり得る。出願人の明示的な意図は、関連する機能と共に「するための手段」という語を請求項が明示的に使用するものを除いて、本願の請求項のいずれかの限定について、35 U.S.C§112、パラグラフ6を行使しないことである。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【
図1】
図1~3は、本開示の実施形態に記載のベンゾオキサジン-熱可塑性樹脂の形成のための反応スキームを示す。
【
図2】
図1~3は、本開示の実施形態に記載のベンゾオキサジン-熱可塑性樹脂の形成のための反応スキームを示す。
【
図3】
図1~3は、本開示の実施形態に記載のベンゾオキサジン-熱可塑性樹脂の形成のための反応スキームを示す。
【
図4】
図4は、本開示の1つ以上の実施形態に記載のポリマー改質ストラテジーの模式図である。
【
図5】
図5は、本開示の1つ以上の実施形態に記載のポリマー合成ストラテジーの模式図である。
【
図6A】
図6A~6Bは、本開示の1つ以上の実施形態に記載のポリマー組成物の模式図である。
【
図6B】
図6A~6Bは、本開示の1つ以上の実施形態に記載のポリマー組成物の模式図である。
【
図7A】
図7A~7Bは、本開示の1つ以上の実施形態に記載のポリマー組成物の模式図である。
【
図7B】
図7A~7Bは、本開示の1つ以上の実施形態に記載のポリマー組成物の模式図である。
【
図8】
図8は、成形された薄膜から測定された引張特性を示す。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド熱可塑性-熱硬化性樹脂組成物であって:
ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアリールエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリアミド-イミド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される熱可塑性単位から形成されたポリマー主鎖と、
前記熱可塑性単位に結合した少なくとも1つの架橋性
ベンゾオキサジン基と、を含む、
樹脂組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの架橋性
ベンゾオキサジン基は、前記熱可塑性単位上に少なくとも1つのエンドキャップを形成する、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの架橋性
ベンゾオキサジン基は、熱可塑性単位を互いに架橋する、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂組成物は、500~400,000の分子量を有する、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性単位の分子量は、500~20,000である、
請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
熱可塑性単位それぞれの分子量は、500~20,000である、
請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
UV硬化性またはマイクロ波硬化性官能基をさらに含む、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記UV硬化性またはマイクロ波硬化性官能基は、前記少なくとも1つの架橋性
ベンゾオキサジン基である、
請求項
7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記UV硬化性またはマイクロ波硬化性基は、前記少なくとも1つの架橋性
ベンゾオキサジン基と反応する、
請求項
7に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
ハイブリッド熱可塑性-熱硬化性樹脂組成物を形成する方法であって:
熱可塑性物質を反応させて架橋性
ベンゾオキサジン基を導入し、前記熱可塑性-熱硬化性樹脂組成物を形成する工程を含む、
方法。
【請求項11】
前記熱可塑性物質は、アミンまたはフェノール末端官能基を含み、ホルムアルデヒド、および前記熱可塑性物質と比較してアミンまたはフェノール反応物質のうちもう一方と反応する、
請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記アミンまたはフェノール反応物質は、単官能性である、
請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記アミンまたはフェノール反応物質は、二官能性である、
請求項
11に記載の方法。
【請求項14】
UV硬化性またはマイクロ波硬化性官能基を含むように、前記熱可塑性物質を改質する工程をさらに含む、
請求項
11に記載の方法。
【請求項15】
ハイブリッド熱可塑性-熱硬化性樹脂を形成する方法であって:
請求項1に記載のハイブリッド熱可塑性-熱硬化性樹脂組成物を準備する工程;および、
外部刺激によって前記ハイブリッド熱可塑性-熱硬化性樹脂組成物を硬化させ、前記ハイブリッド熱可塑性-熱硬化性樹脂を形成する工程、を含む、
方法。
【請求項16】
前記外部刺激は、熱、紫外線照射、マイクロ波照射および水分からなる群から選択される、
請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記ハイブリッド熱可塑性-熱硬化性樹脂組成物は、UV硬化性またはマイクロ波硬化性官能基をさらに含み、前記外部刺激は、紫外線照射またはマイクロ波照射を含む、
請求項
16に記載の方法。
【国際調査報告】