(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】ビタミンD欠乏およびそれに伴う障害の処置方法における、菌株、その組成物、およびその使用。
(51)【国際特許分類】
A61K 35/747 20150101AFI20230428BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20230428BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230428BHJP
A61K 31/593 20060101ALI20230428BHJP
A61K 31/592 20060101ALI20230428BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230428BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20230428BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230428BHJP
A61P 5/50 20060101ALI20230428BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230428BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20230428BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230428BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20230428BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20230428BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20230428BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230428BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230428BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230428BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230428BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20230428BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20230428BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230428BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230428BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20230428BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20230428BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230428BHJP
A61P 5/16 20060101ALI20230428BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20230428BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20230428BHJP
【FI】
A61K35/747
A61P3/02 102
A61P43/00 121
A61K31/593
A61K31/592
A61P9/00
A61P9/04
A61P9/10
A61P5/50
A61P3/04
A61P9/12
A61P3/10
A61P3/06
A61P3/00
A61P1/00
A61P13/12
A61P35/00
A61P37/02
A61P37/06
A61P25/24
A61P25/18
A61P25/00
A61P25/28
A61P19/08
A61P19/10
A61P19/02
A61P3/02 101
A61P5/16
A61P7/00
C12N1/20 E ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557788
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(85)【翻訳文提出日】2022-10-27
(86)【国際出願番号】 IB2021052523
(87)【国際公開番号】W WO2021191855
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】102020000006448
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516067302
【氏名又は名称】ソファル ソチエタ ペル アツィオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】ビッフィ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】フィオーレ,ヴァルテル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA30X
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4B065CA44
4C086AA01
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4C087ZC21
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4C087ZC33
4C087ZC35
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明は、ビタミンDの欠乏および/または不足および/またはそれに伴う疾患、症状および/または障害の処置における使用のための菌株に関する。さらに、本発明は、上記のビタミンDの欠乏および/または不足および/またはそれに伴う疾患、症状または障害の処置における、上記菌株の少なくとも1つ、および少なくとも1つのビタミンD、好ましくはビタミンD3を含む組成物ならびにその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンDの欠乏および/または不足(ビタミンD欠乏症)および/または上記のビタミンDの欠乏、好ましくはビタミンD3の欠乏に伴う疾患、症状および/または障害の予防的または治療的処置方法における使用のための菌株であって、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイに再分類されたラクトバチルス・パラカゼイ種に属する菌株。
【請求項2】
ラクトバチルス・パラカゼイに属する菌株が、以下:
-ラクトバチルス・パラカゼイ DG
(登録商標)として特定され、且つNational Collection of Cultures of Microorganisms of the Pasteur Institute in Parisに受託番号CNCM I-1572およびラクトバチルス・カゼイDG
(登録商標)亜種カゼイ(Lactobacillus casei DG
(登録商標)sub.casei)の名称で寄託された、ラクトバチルス・パラカゼイ種に属する菌株
-ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01
(登録商標)として特定され、且つDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に受託番号DSM 26760で寄託された、ラクトバチルス・パラカゼイ種に属する菌株、
およびその混合物、
を含むかまたはそれからなる群から選択される、請求項1に記載の使用のための菌株。
【請求項3】
ビタミンDの欠乏がビタミンD3(コレカルシフェロール)および/またはビタミンD2(エルゴカルシフェロール)、好ましくはビタミンD3の欠乏および/または不足である、請求項1または2に記載の使用のための菌株。
【請求項4】
菌株がビタミンD、好ましくはビタミンD3と一緒に/組み合わせて投与され、ここで菌株およびビタミンDの投与が同時に、または時間的に遅れて行われる、請求項1~3の何れか1項に記載の使用のための菌株。
【請求項5】
-少なくとも1つのビタミンD、および
-ラクトバチルス・パラカゼイ種に属する少なくとも1つの菌株、
を含むかまたはそれからなる混合物Mを含む組成物であって、任意には、
-少なくとも1つの許容できる薬学的または食品グレードの添加物および/または賦形剤を含む、組成物。
【請求項6】
ラクトバチルス・パラカゼイ種に属する少なくとも1つの菌株が、以下:
-ラクトバチルス・パラカゼイ DG
(登録商標)として特定され、且つNational Collection of Cultures of Microorganisms of the Pasteur Institute in Parisに受託番号CNCM I-1572およびラクトバチルス・カゼイDG
(登録商標)亜種カゼイの名称で寄託された、ラクトバチルス・パラカゼイ種に属する菌株
-ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01
(登録商標)として特定され、且つDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に受託番号DSM 26760で寄託された、ラクトバチルス・パラカゼイ種に属する菌株、および
-その混合物、
を含むかまたはそれからなる群より選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1つのビタミンDが、ビタミンD3(コレカルシフェロール)および/またはビタミンD2(エルゴカルシフェロール)、好ましくはビタミンD3である、請求項5または6に記載の組成物。
【請求項8】
混合物Mが、
-菌株ラクトバチルス・パラカゼイ DG
(登録商標)CNCM I-1572および/または菌株ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01
(登録商標) DSM 26760;ならびに
-少なくとも1つのビタミンD、好ましくはビタミンD3(コレカルシフェロール)、
を含むかまたはそれからなる、請求項6または7に記載の組成物。
【請求項9】
混合物Mが、
-菌株ラクトバチルス・パラカゼイ DG
(登録商標)CNCM I-1572および/または菌株ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01
(登録商標) DSM 26760、および、以下:
-ビフィドバクテリウム・ブレーベ BbIBS01として特定され、且つDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に寄託番号 DSM 33231で寄託された、ビフィドバクテリウム・ブレーベ種に属する菌株
-ビフィドバクテリウム・ブレーベ BbIBS02として特定され、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に寄託番号 DSM33232で寄託された、ビフィドバクテリウム・ブレーベ種に属する菌株
-ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス BlIBS01として特定され、且つDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に寄託番号 DSM 33233で寄託された、ビフィドバクテリウム・アニマリス種に属する菌株
-ラクトバチルス・プランタラム LpIBS01として特定され、且つDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に寄託番号 DSM 33234で寄託された、ラクトバチルス・プランタラム種に属する菌株
-ビフィドバクテリウム・ビフィダム BbfIBS01として特定され、且つDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に寄託番号 DSM 32708で寄託された、ビフィドバクテリウム・ビフィダム種に属する菌株、およびその混合物;からなる群より選択されるさらなる少なくとも1つの菌株、ならびに
-少なくとも1つのビタミンD、好ましくはビタミンD3(コレカルシフェロール)、をさらに含むかまたはそれからなる、請求項6~8の何れか1項に記載の組成物。
【請求項10】
医薬として使用するための、請求項5~9の何れか1項に記載の組成物。
【請求項11】
必要とする対象におけるビタミンDの欠乏および/またはビタミンDの欠乏に伴う疾患、症状および/または障害の予防的および/または治療的処置における使用のための組成物であって、好ましくはここで、ビタミンDがビタミンD3(コレカルシフェロール)および/またはビタミンD2(エルゴカルシフェロール)であり、より好ましくはビタミンD3である、請求項10に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
疾患、症状および/または障害が、以下:心血管障害、または心不全、心筋梗塞、心臓突然死、脳卒中、心房細動および末梢血管疾患から選択される疾患;肥満、インスリン抵抗性、高血圧および糖尿病;糖尿病、脂質異常症、メタボリックシンドローム、高血圧、腎機能障害、消化管の急性および/または慢性炎症、免疫系の変化、がん、結腸がん、乳がん、皮膚がん、肺がんおよび前立腺がん、自己免疫疾患、季節性うつ病およびその他の精神障害、アルツハイマー病、多発性硬化症、から選択される、請求項1~4の何れか1項に記載の使用のための菌株、または請求項10または11に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
疾患、症状および/または障害が、以下:くる病、もろい骨、骨変形、骨粗鬆症、骨軟化症、骨痛、関節痛、骨脆弱性、低カルシウム血症、低リン血症、脱灰障害による骨の異常、から選択される、請求項1~4の何れか1項に記載の使用のための菌株、または請求項10または11に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
疾患、症状および/または障害が、以下:筋力低下、集中困難、反復性疲労、認知障害、精神および情動障害、二次性副甲状腺機能亢進症、手汗、から選択される、請求項1~4の何れか1項に記載の使用のための菌株、または請求項10または11に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
必要とする対象が小児対象である、前述の請求項の何れか1項に記載の菌株、または前述の請求項の何れか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンDの欠乏および/または不足(またはビタミンD欠乏症(hypovitaminosis D))および/または上記のビタミンDの欠乏および/または不足に伴う疾患、症状および/または障害の処置方法における使用のための菌株に関する。さらに、本発明は、上記のビタミンDの欠乏および/または不足および/またはそれに伴う疾患、症状または障害の処置方法における、上記菌株の少なくとも1つおよび少なくとも1つのビタミンD、好ましくはビタミンD3および/またはビタミンD2を含む組成物ならびにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンDは、ビタミンD1、D2、D3、D4およびD5の5つの異なるビタミンからなる脂溶性プロホルモンの群である。ビタミンDに見られる2つの最も重要な形態はビタミンD2およびビタミンD3である、両者は類似の生物学的活性を有している。食物から吸収されるほかに、ビタミンDは皮膚レベルで生成される。このメカニズムによってはビタミンD3のみが生成され、植物においてのみ生成されるビタミンD2は生成されず、ヒトはこれを食物を通じてのみ摂取し得る。事実として、コレステロールに由来するコレカルシフェロール(D3)は動物体において合成される一方で、エルゴカルシフェロール(D2)は植物性である。
【0003】
ビタミンDの吸収は、その他の脂溶性ビタミンが受けるものと同様の過程に従う。事実として、ビタミンDは、加水分解された脂質が胆汁と会合する事によって形成されるミセルに組み込まれ、腸の上皮に入り、カイロミクロンに組み込まれてリンパ循環に入る。日光への曝露または食品を通じて得られるビタミンD3(コレカルシフェロール)は、生物学的に不活性型で食物および食品補助剤に存在しており、生物学的に活性な形態、カルシトリオール(1,25(OH)2Dと略される)に変換されるためには2つの水酸化反応を経る必要がある。コレカルシフェロールが様々な組織において水酸化反応を受けることで、25-ヒドロキシコレカルシフェロール(25(OH)2Dと略される)が生成され、これは全身の循環器系に入り、特異的なキャリアタンパク質(ビタミンD結合タンパク質、DBP)と結合する。25(OH)2D型は不活性な中間体であり、その生物学的活性を発揮するためには続く水酸化による活性化を必要とする。腎臓に到達すると、カルシフェジオール(25(OH)2D)は、酵素25(OH)D-1α-ヒドロキシラーゼによって触媒される水酸化反応を受け、ビタミンD3の活性型であるカルシトリオール(1,25-ジヒドロキシコレカルシフェロール、1,25(OH)2Dと省略される)を生じる。
【0004】
カルシフェジオール(25(OH)2D)の血清濃度の測定は、ビタミンDに関して患者の状態を評価するための診断ツールである。ビタミンD3(25(OH)2D型)の血中レベルは、通常nmol/リットルまたはng/ml血清で表現される。ヒトにおいて、25(OH)2Dの値が20ng/ml血清より低いと欠乏状態であると特定され、20~30の範囲の値であればいずれにしても不足していると考えられる。
【0005】
ビタミンDの活性型、1,25(OH)2D、は体内のカルシウム調節に重要なホルモンであり、カルシウムおよび骨の恒常性の維持に不可欠である。これは核内受容体スーパーファミリーに属するビタミンD受容体(VDR)に結合することで作用する。ビタミンDの欠乏や、ビタミンD活性化酵素25-ヒドロキシビタミンD 1α-ヒドロキシラーゼまたはビタミンD受容体(VDR)における遺伝子異常を含むビタミンDの機能障害による種々の障害は、低カルシウム血症、低リン血症、二次性副甲状腺機能亢進症および脱灰障害による骨の異常に特徴付けられる、くる病、または骨軟化症をもたらす。さらに、ビタミンD受容体はカルシウムおよび骨の代謝に関連しない広範な組織において発現される事が知られており、その結果、ビタミンDはin vitroにおいて、種々の細胞株の増殖、分化および生存といった基本的な細胞プロセスを調節する事が示されている。
【0006】
ほとんどの場合、活性型の1,25(OH)2Dは、ビタミンD受容体制御系において「オン」スイッチとして働き、不活性型25(OH)2Dは「オフ」スイッチとして機能するが、このメカニズムはまだビタミンD受容体が存在する全ての組織および臓器については解明されていない。核内ビタミンD受容体(VDR)の活性化は、一定数の内因性ホルモンの濃度間の微妙なバランスによって達成されているように思われる。事実として、身体は自然免疫応答を制御するために1,25(OH)2Dの産生を増加または減少させる。病変への曝露および感染は、1,25(OH)2Dの産生を増加させ、抗微生物ペプチドの創出およびTLR2の活性化をもたらす。しかし、生物が1,25(OH)2Dの産生を、VDRの十分な転写活性化のために必要な産生量へと制限できるいくつかのフィードバックメカニズムもまた存在する。VDRが活性化された際には、CYP24A1酵素遺伝子を転写し、これは1,25(OH)2Dの不活型代謝産物への変換を増加させる。活性化VDRはまた、25(OH)2Dを1,25(OH)2Dへと変換するCYP27B1遺伝子の転写を制限することによって1,25(OH)2Dの濃度を制御する。
【0007】
ビタミンD欠乏症は、生物を骨粗鬆症、心血管疾患、糖尿病およびがんの発症リスクの増加に晒し得る。この欠乏状態は、食事による欠乏だけでなくビタミンD吸収の低下による欠乏にも関連している。例えば、血中コレステロールレベルを低下させる治療は、その他のステロールの吸収の低下をもたらし、およびそのためビタミンD3を含む脂溶性ビタミンの吸収の低下をもたらし得る。
【0008】
最近の科学的な証拠によって、腸内の恒常性の維持および微生物と宿主間の相互作用において、ビタミンDおよびその正しい吸収の重要性が確かめられた。腸内細菌叢の初期構成は免疫系の発達に顕著に影響し得る。幼児の腸内においてダイナミックな変化が起こる時期にこの過程の初期変化が起こると、健康に長期間の影響を及ぼし得る。ビタミンDの欠乏が腸内細菌叢の構成に影響し得るか否か、およびどのように影響し得るかは知られていない。一方ではビタミンD摂取量の低下は糞便の細菌叢の構成の違いと関連しており、もう一方では、制御性T細胞および樹状細胞の発達と機能におけるビタミンDの役割を考慮すると、宿主のビタミンDの状態は、腸内細菌叢がもたらす免疫系への効果を変化させ得る可能性がある。よって、出てきている証拠は、ビタミンD経路が腸内フローラによる炎症性疾患における効果の潜在的に重要な調節因子である事を示唆する。例えば、ビタミンD受容体(VDR)を持たないマウスは、消化管における慢性的な軽度の炎症を有する。さらに、VDRの欠如は、通常は非病原性の常在細菌叢に応答してさらなる炎症をもたらす。腸のVDRが細菌誘導性NF-κB活性化の抑制に直接的に関与し得る事もまた示されている。共生細菌のコロニー形成は、腸上皮細胞におけるVDRの分布と発現の両者に影響を及ぼし、菌株と上記の受容体間のダイナミックな相互作用を示唆する。
【0009】
現在のところ、ビタミンDの欠乏および/または不足の処置のために採択可能な治療法は、主にビタミンD、好ましくはコレカルシフェロールの形態のビタミンD3の投与、ビタミンDに富んだ食物の摂取、ならびに身体活動および日光への曝露などの生活習慣に基づく。しかし、前述の処置は、しばしば、ビタミンDの欠乏および/または不足および関連する障害の効率的および/または急速な回復を可能にはしない。さらに血中のコレステロールレベルを低下させる治療はまた、例えばD群のビタミンなどの脂溶性ビタミンといったその他のステロールの吸収の低下をもたらし得る事が示されている。
【0010】
よって、必要とする対象におけるビタミンDの欠乏および/または不足および上記の欠乏および/または不足に伴う/関連する障害を処置するための、製品の投与と効果(すなわち発現(onset))間の遅延時間を可能な限り減らした、効果的、有用且つ有利な解決策の提供、およびしたがって、上記の対象におけるビタミンD、特にビタミンD3および/またはビタミンD2の血液吸収および/またはバイオアベイラビリティを向上させる新規の治療アプローチの提供、を可能にする事への高い必要性が依然存在している。特に、ステロールの吸収に問題がある対象、例えば血中コレステロールレベルを低下させる治療を投与される対象におけるビタミンDの欠乏および/または不足の処置のための効果的、有用および有利な解決策を提供する必要性が感じられる。最後に、血中コレステロールレベルの増加をもたらす事なく、ビタミンD、特にビタミンD3および/またはビタミンD2の血液吸収および/またはバイオアベイラビリティを増加させる治療アプローチの必要性もまた生じている。
【0011】
Mitchell L. Jones et al(J. Clinical Endocrinology and Metabolism, vol. 98、 no. 7, 1 July 2013)による文献には、25-ヒドロキシビタミン D(D3)のレベルを増加させるために、プロバイオティック株Lactobacillus reuteri NCIMB 30242を使用する事が記載されているが、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)種に属する菌株を使用する事は記載されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
広範な研究開発活動に続き、本出願人は、必要とする対象におけるビタミンD、特にビタミンD3および/またはビタミンD2の血液吸収および/またはバイオアベイラビリティを-効果的におよび/または最小化のおよび減少した発現時間でもって-増加させることが可能な、ラクトバチルス・パラカゼイ(ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ(Lacticaseibacillus paracasei)に再分類された)種に属する特異的な単離された菌株を提供することによって、前述の必要性に取り組み、解決する。さらに、前述の特異的な単離された菌株によって、本出願人は、本願明細書および添付の特許請求の範囲において記載するように、前述の菌株の内の少なくとも1つ、および少なくとも1つのビタミンD、好ましくはビタミンD3および/またはビタミンD2を含むかまたはそれからなる混合物を含む組成物を開発、改良した。
【0013】
有利には、本発明の目的である、前述の特異的な単離された菌株、好ましくはラクトバチルス・パラカゼイ種に属する菌株、および同じものを含む組成物は、顕著な副作用を有さず、およびそのため、全ての対象、特に小児対象、高齢、高コレステロール血症の対象および妊婦に対しても投与し得る。
【0014】
最後に、本発明の組成物は効果的であり、調製が容易であり、且つ費用対効果に優れている。
【0015】
以下の発明の詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明らかになるこれらのおよびその他の目的は、本発明の目的である、単離された菌株、好ましくはラクトバチルス・パラカゼイ種に属する菌株、上記の単離された菌株を含む混合物および組成物によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図面の説明
【
図1-1】
図1は、実験部分(A.2)で報告されるin vivo実験において定量されたビタミンD3の血清レベルの定量についてのデータ分布(パネルA)および各評価群の定量値の平均(パネルB)のチャートである。
【0017】
【
図1-2】
図1-2は、実験部分(A.2)で報告されるin vivo実験におけるビタミンD3血清レベルの定量についてのチャートである。統計は対応のないスチューデントのt検定(unpaired Student’s t-test)に基づく(
****,P <0.0001;
***,P <0.001;
**,P <0.01;
*,P <0.05)。
【0018】
【
図2】
図2:実験部分(A.2)で報告されるin vivo実験において測定されたビタミンDに対するビタミンD受容体の回腸粘膜における発現レベル。
【0019】
【
図3】
図3は、臨床試験デザイン(実験部分(B))の模式図である。
【0020】
【
図4】
図4は、in vitroの実験部分(A.1)において報告される、ラクトバチルス属に属するプロバイオティックな菌株を用いた、ビタミンD(コレカルシフェロール)の乳化特性を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
本明細書において使用される場合、「バイオアベイラビリティ」という表現は、非修飾および/または修飾される様式で血液循環系(血中レベルまたは血清レベル)に到達する投与された分子(例えば、ビタミンD)の量を示すために使用される。
【0022】
本発明の文脈において、「ビタミンD」という表現は、全てのD群のビタミン種、例えばビタミンD1、D2、D3、D4およびD5、を示すために使用され、好ましくはビタミンD2および/またはビタミンD3であり、より好ましくはビタミンD3である。
【0023】
「ビタミンD2」という表現はビタミンD2の全てのアイソフォームを示すために使用され、エルゴカルシフェロール(別名:(3β,5Z,7E,22E)-9,10-セコエルゴスタ-5,7,10(19),22-テトラエン-3-オール)およびエルゴステロール(エルゴステロールが紫外線の作用によってエルゴカルシフェロールに変換されることを考慮すると、エルゴカルシフェロールの生物学的な前駆体である)を含む;好ましくは対象に投与されるビタミンD2はエルゴカルシフェロールの形態のビタミンD2である。
【0024】
「ビタミンD3」という表現はその全てのアイソフォームにおけるビタミンD3を示すために使用され、コレカルシフェロール(別名:コレカルシフェロールまたはビタミンD3)、カルシフェジオール(別名:カルシジオール、25-ヒドロキシコレカルシフェロール、または25-ヒドロキシビタミンD、25(OH)2Dと略される)、カルシトリオール(1A,25-ジヒドロキシコレカルシフェロールまたは1α,25-ジヒドロキシビタミンD、1,25(OH)2Dと略される)および7-デヒドロコレステロール(7-デヒドロコレステロールが紫外線への曝露後にコレカルシフェロールへと変換されることを考慮すると、コレカルシフェロールの生物学的な前駆体である)を含む;好ましくは、対象に投与されるビタミンD3はコレカルシフェロールの形態のビタミンD3である。
【0025】
本明細書において使用される場合、「国際単位(IU)」という表現は、決められた国際的に認知された生物学的効果を引き起こす物質の量の測定単位を示すために使用される。
【0026】
本発明の文脈において、「対象」という表現は、ヒトまたは動物対象、好ましくは哺乳類(例えばイヌ、ネコ、ウマ、ヒツジまたはウシなどのペット)を示すために使用される。好ましくは、本発明の組成物は、ヒト対象の処置方法における使用のためのものである。
【0027】
「治療有効量」という表現は、当業者によって求められ、且つ定義される、組織、系または対象において生物学的または薬学的応答を引き起こす混合物または成分または製剤または菌株の量を示すために使用される。
【0028】
発明の詳細な記載
本発明の目的を形成するものは、(I)必要とする対象における、ビタミンD、好ましくはビタミンD2および/またはビタミンD3、より好ましくはビタミンD3の欠乏および/または不足(またはビタミンD欠乏症)および/または上記ビタミンDの欠乏に伴う疾患、症状および/または障害の予防的および/または治療的処置における使用のためのラクトバチルス属に属する種に属する単離された菌株またはその誘導体(略して、本発明の使用のための菌株または(I))であって、ここで上記の種は、以下:ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ラムノースス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・アミロバクテス(Lactobacillus amylolyticus)、ラクトバチルス・アミロボラス(Lactobacillus amylovorus)、ラクトバチルス・アリメンタリウス(Lactobacillus alimentarius)、ラクトバチルス・アビルス(Lactobacillus aviaries)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ブチネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・セロビオサス(Lactobacillus cellobiosus)、ラクトバチルス・コリニフォルミス(Lactobacillus coryniformis)、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・クルバトゥス(Lactobacillus curvatus)、ラクトバチルス・デルブルエッキー(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・ファーシミニス(Lactobacillus farciminis)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ガリナラム(Lactobacillus gallinarum)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・ヒルガルディ(Lactobacillus hilgardii)、ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・ケフィラノファシエンス(Lactobacillus kefiranofaciens)、ラクトバチルス・ケフィリ(Lactobacillus kefiri)、ラクトバチルス・ムコサエ(Lactobacillus mucosae)、ラクトバチルス・パニス(Lactobacillus panis)、ラクトバチルス・コリノイデス(Lactobacillus collinoides)、ラクトバチルス・パラプランタルム(Lactobacillus paraplantarum)、ラクトバチルス・ペントサス(Lactobacillus pentosus)、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ポンティス(Lactobacillus pontis)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius) およびラクトバチルス・サンフランシスケンシス(Lactobacillus sanfranciscensis)を含むかまたはそれからなる群より選択される、菌株;好ましくはラクトバチルス・パラカゼイおよびラクトバチルス・プランタラムを含むかまたはそれからなる群より選択される種に属する菌株であり;さらに好ましくはラクトバチルス・パラカゼイ種に属する菌株である。
【0029】
Zheng et al.Int.(J.Syst.Evol.Microbiol.,70(4):2782-2858,2020)の論文において報告されるように、ラクトバチルス属に属する種は再分類され、例えば、パラカゼイ種はラクチカゼイバチルス・パラカゼイに、およびラクチコバチルス・プランタラム(Lacticobacillus plantarum)種は、ラクチプランチバチルス・プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)に再分類された。
【0030】
本明細書の文脈では、前述の再分類の前に、ラクトバチルス属に属する菌株の種の名称は、再分類後にその種を特定する名称と同等であり、互換的に使用される。例えば、ラクチコバチルス・パラカゼイおよびラクチカゼイバチルス・パラカゼイ、またはラクチコバチルス・プランタラムおよびラクチプランチバチルス・プランタラムは互いに同等であり、互換的に使用される。
【0031】
本発明の目的を形成するものは、(I)必要とする対象における、ビタミンD、好ましくはビタミンD2および/またはビタミンD3、より好ましくはビタミンD3の欠乏および/または不足(またはビタミンD欠乏症)および/または上記ビタミンDの欠乏に伴う疾患、症状および/または障害の予防的および/または治療的処置における使用のためのビフィドバクテリウム属に属する種に属する単離された菌株またはその誘導体(略して、本発明の使用のための菌株または(I))であって、ここで上記の種は、以下:ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム(Bifidobacterium catenulatum)、ビフィドバクテリウム・アングラータム(Bifidobacterium angulatum)、ビフィドバクテリウム・アステロイデスBifidobacterium asteroides)、ビフィドバクテリウム・ブーム(Bifidobacterium boum)、ビフィドバクテリウム・チョエリヌム(Bifidobacterium choerinum)、ビフィドバクテリウム・コリネフォルム(Bifidobacterium coryneforme)、ビフィドバクテリウム・クニクリー(Bifidobacterium cuniculi)、ビフィドバクテリウム・デンティコレンス(Bifidobacterium denticolens)、ビフィドバクテリウム・デンティウム(Bifidobacterium dentium)、ビフィドバクテリウム・ガリカム(Bifidobacterium gallicum)、ビフィドバクテリウム・ガリナラム(Bifidobacterium gallinarum)、ビフィドバクテリウム・インディカム(Bifidobacterium indicum)、ビフィドバクテリウム・イノピナトゥム(Bifidobacterium inopinatum)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウム・マグナム(Bifidobacterium magnum)、ビフィドバクテリウム・メリシカム(Bifidobacterium merycicum)、ビフィドバクテリウム・ミニマム(Bifidobacterium minimum)、ビフィドバクテリウム・シュードカテニュレータム(Bifidobacterium pseudocatenulatum)、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム(Bifidobacterium pseudolongum)、ビフィドバクテリウム・プルオルム(Bifidobacterium pullorum)、ビフィドバクテリウム・ルミナンティウム(Bifidobacterium ruminantium)、ビフィドバクテリウム・サエクレア(Bifidobacterium saeculare)、ビフィドバクテリウム サブタイル(Bifidobacterium subtile)、ビフィドバクテリウム・サーマシドフィルム(Bifidobacterium thermacidophilum)、ビフィドバクテリウム・サーモフィラム(Bifidobacterium thermophilum)およびビフィドバクテリウム・ツルミエンセ(Bifidobacterium tsurumiense)を含むかまたはそれからなる群より選択される、菌株;好ましくはビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスおよびビフィドバクテリウム・ビフィダムを含むかまたはそれからなる群より選択される種に属する菌株であり;より好ましくはビフィドバクテリウム・ビフィダム種に属する菌株である。
【0032】
特に、本発明の目的を形成するものは、(I)必要とする対象における、ビタミンD、好ましくはビタミンD2および/またはビタミンD3、より好ましくはビタミンD3の欠乏および/または不足(またはビタミンD欠乏症)および/または上記ビタミンDの欠乏に伴う疾患、症状および/または障害の予防的および/または治療的処置における使用のための、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・プランタラム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダムおよびその混合物(好ましくは、ラクトバチルス・パラカゼイ種)を含むかまたはそれからなる群より選択される種に属する単離された菌株またはその誘導体(略して、本発明の使用のための菌株または(I))。
【0033】
「単離された菌株」という用語は、当業者に知られる標準的な技術および装置にしたがって単離された菌株を示すために使用される。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、上記のビタミンDの欠乏および/または不足の処置方法における使用のための、上記(I)本発明の菌株またはその誘導体は少なくとも以下:
-(I.i)ラクトバチルス・パラカゼイ DG(登録商標)(SOFAR S.p.A.により登録された商標)として特定され、且つ、National Collection of Cultures of Microorganisms of the Pasteur Institute in Parisに1995年5月5日にSOFAR S.p.A.によって受託番号CNCM I-1572で寄託されたラクトバチルス・パラカゼイ種に属する単離された菌株(略して、DG(登録商標)またはL.パラカゼイ DG(登録商標)CNCM I-1572または(I.i));上記の株は最初ラクトバチルス・カゼイDG(登録商標亜種カゼイと命名され、その後ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ DG(登録商標)CNCM I-1572に再分類された。ラクトバチルス・カゼイDG(登録商標)またはラクトバチルス・パラカゼイ DG(登録商標)の名称に関係なく依然として排他的に同じ菌株であることが観察されるはずである;
-(I.ii)ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01(登録商標)として特定され、且つ、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に、2013年1月11日(DSMZへの申請の提出日:2012年11月20日;元の寄託からブタペスト条約に基づく寄託への変換の申請日:2017年5月15日)にSOFAR S.p.Aによって受託番号DSM 26760で寄託された、ラクトバチルス・パラカゼイ種に属する単離された菌株(略してLPC-S01(登録商標)またはL.パラカゼイ LPC-S01(登録商標) DSM 26760または(I.ii));
-(I.iii)ビフィドバクテリウム・ブレーベ BbIBS01として特定され、且つ、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に受託番号33231で寄託された(Sofar S.p.Aによって2019年7月31日に寄託された)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ種に属する単離された菌株;
-(I.iv)ビフィドバクテリウム・ブレーベ BbIBS02として特定され、且つ、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に受託番号33232で寄託された(Sofar S.p.A.によって2019年7月31日に寄託された)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ種に属する単離された菌株;
-(I.v)ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス BlIBS01として特定され、且つ、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に受託番号33233で寄託された(Sofar S.p.A.によって2019年7月31日に寄託された)、ビフィドバクテリウム・アニマリス種に属する単離された菌株;
-(I.vi)ラクトバチルス・プランタラム LpIBS01として特定され、且つ、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に受託番号33234で寄託された(Sofar S.p.Aによって2019年7月31日に寄託された)、ラクトバチルス・プランタラム種に属する単離された菌株;
-(I.vii)ビフィドバクテリウム・ビフィダム MIMBb23sg=BbfIBS01として特定され、Sofar S.p.Aによって2017年12月4日にDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に受託番号DSM32708で寄託された、ビフィドバクテリウム・ビフィダム種に属する単離された菌株;
およびその混合物、
を含むかまたはそれからなる群より選択される。
【0035】
本発明の好ましい実施形態では、上記のビタミンDの欠乏および/または不足の処置方法における使用のための、上記(I)本発明の菌株またはその誘導体は少なくとも以下:(I.i)ラクトバチルス・パラカゼイ DG(登録商標)CNCM I-1572株(I.ii)ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01(登録商標) DSM 26760株およびその混合物を含むかまたはそれからなる群より選択される;好ましくは(I.i)ラクトバチルス・パラカゼイ DG(登録商標)CNCM I-1572株である。
【0036】
本発明において言及する全ての菌株は、ブタペスト条約に基づく規定に従って寄託されたものである。本特許出願に記載される、または請求される菌株の寄託者およびその所有者は、当初から、本特許権の全期間にわたって上記すべての菌株を利用可能にすることに同意していることを表明するものである。
【0037】
有利には、本発明に従って使用するための菌株またはその誘導体(個別に考慮しても)(I.i-I.vii、好ましくはI.iおよび/またはI.ii)は、必要とする対象に、一日の用量として、1x106CFU/gまたはmlから1x1012CFU/gまたはml、好ましくは1x108CFU/gまたはmlから1x1010CFU/gまたはmlの範囲に含まれる濃度(または量)で、より好ましくは約1x109CFU/gまたはmlから約10x109CFU/gまたはml(AFU/gまたはml)に含まれる濃度で投与される(CFU:コロニー形成単位)。
【0038】
ある実施形態では、本発明の菌株(I.i-I.vii)またはその誘導体、好ましくは(I.i)および/または(I.ii)は、対象に投与された際に、上記の対象が1つ以上のD群のビタミンを投与されるかどうかに関わらず、吸収、好ましくは腸内レベルでの吸収を促進する、および/または血清中のビタミンDレベル(例えば、25(OH)2Dの形態のビタミンD3のレベルとして測定される)のバイオアベイラビリティの増加を促進する。
【0039】
好ましい実施形態では、本発明の菌株(I.i-I.vii)またはその誘導体、好ましくはI.iおよび/またはI.iiは、ビタミンD、好ましくはビタミンD3および/またはビタミンD2、より好ましくはビタミンD3(コレカルシフェロール)と一緒に/組み合わせて(associated/combined)投与されたときに、吸収、好ましくは腸内レベルでの吸収を促進する、および/または血清中のビタミンDレベル(例えば、25(OH)2Dの形態のビタミンD3のレベルとして測定される)のバイオアベイラビリティの増加を促進し、ここで本発明の少なくとも1つの菌株(I)およびビタミンD(II)の投与は同時であるか、または時間的に遅れて行われ、好ましくは時間的に同時に行われる。
【0040】
本発明の文脈において、(I)および(ii)の「時間的に同時」の投与とは、(I)および(II)が、単一の組成物または2つの別々の組成物で、1日のおおよそ同じ時間枠に、または5分から60分の範囲に含まれる時間的距離において必要とする対象に投与される事を意味する。
【0041】
本発明の文脈において、(I)および(ii)の「時間的に遅れた」投与とは、(I)および(II)が、それぞれ2つの別々の組成物によって、互いに時間的距離をとって、例えば1時間から24時間、または2日から14日若しくは30日の範囲に含まれる時間的距離をとって必要とする対象に投与される事を意味する。例えば、上記の菌株(I)が毎日投与される一方で、少なくとも一つのビタミンD(II)は週に1回若しくは2回、または2週に1回、または月に1回投与されてもよい。
【0042】
本発明の目的を形成するものは、以下:
-(I)ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・プランタラム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダムおよびその混合物(好ましくは、ラクトバチルス・パラカゼイ種)から選択される種に属する少なくとも1つの菌株であって、好ましくは以下;
-(I.i)ラクトバチルス・パラカゼイ DG(登録商標)CNCM I-1572またはその誘導体、
-(I.ii)ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01(登録商標) DSM 26760またはその誘導体、
-(I.iii)ビフィドバクテリウム・ブレーベ BbIBS01 DSM 33231またはその誘導体、
-(I.iv)ビフィドバクテリウム・ブレーベ BbIBS02 DSM 33232またはその誘導体、
-(I.v)ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス BlIBS01 DSM 33233またはその誘導体、
-(I.vi)ラクトバチルス・プランタラム LpIBS01 DSM 33234またはその誘導体、
-(I.vii)ビフィドバクテリウム・ビフィダム MIMBb23sg=BbfIBS01またはその誘導体、および
-その混合物;
を含むかまたはそれからなる菌株の群から選択される菌株、ならびに
-(II)少なくとも1つのビタミンD、好ましくはビタミンD3(コレカルシフェロール)および/またはビタミンD2(エルゴカルシフェロール)、より好ましくはビタミンD3;
を含むかまたはそれからなる混合物M(略して本発明の混合物M)を含む組成物(略して、本発明の組成物)であって、および任意には、上記の組成物は少なくとも1つの許容できる薬学的または食品グレードの添加物および/または賦形剤を含む。
【0043】
混合物Mのバリエーションに基づく本発明の組成物の実施形態の例を以下に記載する。
【0044】
上記の本発明の混合物Mは、以下:
-(I.i)菌株ラクトバチルス・パラカゼイ DG(登録商標)CNCM I-1572、またはその誘導体;および
-(II)少なくとも1つのビタミンDまたはD3、好ましくはコレカルシフェロールの形態、を含むかまたはそれからなり得る
【0045】
上記の本発明の混合物Mは、以下:
-(I.ii)菌株ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01(登録商標) DSM 26760、またはその誘導体;および
-(II)少なくとも1つのビタミンDまたはD3、好ましくはコレカルシフェロールの形態、を含むかまたはそれからなり得る。
【0046】
上記の本発明の混合物Mは、以下:
-(I.i)菌株ラクトバチルス・パラカゼイ DG(登録商標)CNCM I-1572および(I.ii)菌株ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01 DSM26760、またはその誘導体;ならびに
-(II)少なくとも1つのビタミンDまたはD3、好ましくはコレカルシフェロールの形態、を含むかまたはそれからなり得る。
【0047】
上記の本発明の混合物Mは、以下:
-(I.i)ラクトバチルス・パラカゼイ DG(登録商標)CNCM I-1572、またはその誘導体、および以下を含む菌株のさらなる混合物:(I.iii)ビフィドバクテリウム・ブレーベ BbIBS01 DSM 33231、(I.iv)ビフィドバクテリウム・ブレーベ BbIBS02 DSM 33232、(I.v)ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス BlIBS01 DSM 33233、(I.vi)ラクトバチルス・プランタラム LpIBS01 DSM 33234、および任意には(I.vii)ビフィドバクテリウム・ビフィダム MIMBb23sg=BbfIBS01 DSM 32708、またはその誘導体
;ならびに
-(II)少なくとも1つのビタミンDまたはD3、好ましくはコレカルシフェロールの形態、を含むかまたはそれからなり得る。
【0048】
上記の本発明の混合物Mは、以下:
-(I.i)ラクトバチルス・パラカゼイ DG(登録商標)CNCM I-1572、またはその誘導体、および(I.ii)ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760、またはその誘導体、および以下を含む菌株のさらなる混合物:(I.iii)ビフィドバクテリウム・ブレーベ BbIBS01 DSM 33231、(I.iv)ビフィドバクテリウム・ブレーベ BbIBS02 DSM 33232、(I.v)ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス BlIBS01 DSM 33233、(I.vi)ラクトバチルス・プランタラム LpIBS01 DSM 33234および、任意には、(I.vii)ビフィドバクテリウム・ビフィダム MIMBb23sg=BbfIBS01 DSM 32708、またはその誘導体;および
-(II)少なくとも1つのビタミンDまたはD3、好ましくはコレカルシフェロールの形態、を含むかまたはそれからなり得る。
【0049】
上記の本発明の混合物Mは、以下:
-(I.i)ラクトバチルス・パラカゼイ DG(登録商標)CNCM I-1572、またはその誘導体、および、以下から選択されるさらなる少なくとも1つの菌株(または その誘導体):(I.iii)ビフィドバクテリウム・ブレーベ BbIBS01 DSM 33231、(I.iv)ビフィドバクテリウム・ブレーベ BbIBS02 DSM 33232、(I.v)ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス BlIBS01 DSM 33233、(I.vi)ラクトバチルス・プランタラム LpIBS01 DSM 33234、(I.vii)ビフィドバクテリウム・ビフィダム MIMBb23sg=BbfIBS01 DSM 32708およびその混合物;ならびに
-(II)少なくとも1つのビタミンDまたはD3、好ましくはコレカルシフェロールの形態、を含むかまたはそれからなり得る。
【0050】
上記の本発明の混合物Mは、以下:
-(I.i)ラクトバチルス・パラカゼイ DG(登録商標)CNCM I-1572、またはその誘導体、および(I.ii)ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760、またはその誘導体、および以下から選択されるさらなる少なくとも1つの菌株(またはその誘導体):(I.iii)ビフィドバクテリウム・ブレーベ BbIBS01 DSM 33231、(I.iv)ビフィドバクテリウム・ブレーベ BbIBS02 DSM 33232、(I.v)ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス BlIBS01 DSM 33233、(I.vi)ラクトバチルス・プランタラム LpIBS01 DSM 33234、(I.vii)ビフィドバクテリウム・ビフィダム MIMBb23sg=BbfIBS01 DSM 32708およびその混合物(またはその誘導体);ならびに
-(II)少なくとも1つのビタミンDまたはD3、好ましくはコレカルシフェロールの形態、を含むかまたはそれからなり得る。
【0051】
有利には、上記の本発明の組成物(I)および(II)および任意には添加物中において、好ましくは(I.i)および/または(I.ii)および/またはビタミンD3中において、上記の少なくとも1つの菌株、好ましくはラクトバチルス・パラカゼイ種、は1x106CFU/gまたはmlから1x1012CFU/gまたはml組成物に含まれる濃度で存在する(組成物中に存在する各菌株についての量);好ましくは1x108CFU/gまたはmlから1x1010CFU/gまたはml組成物に含まれる濃度、より好ましくは約1x109CFU/gまたはml(またはAFU/gまたはml)組成物の濃度で存在する。(CFU:コロニー形成単位)。本発明の組成物は2、3、4、5、6または7種の異なる本発明の菌株(例えば菌株(I.i)、(I.ii)、(I.iii)、(I.iv)、(I.v)、(I.vi)および(I.vii))を含み得る;好ましくは上記の菌株は、本発明の組成物中に約1:1、1:1:1、1:1:1:1、1:1:1:1:1、1:1:1:1:1:1または1:1:1:1:1:1:1のCFU比で含まれる。
【0052】
有利には、(I)および(II)、好ましくは(I.i)および/または(I.ii)および/またはビタミンD3を含む上記の本発明の組成物中において、上記のビタミンD(II)は、40IUから1.5x106UI、好ましくは500IUから1x106UI、より好ましくは1,000IUから1x105IUまたは1,000IUから3,000UI、例えば、約1,600-2,000UIの範囲に含まれる量で存在する。
【0053】
ビタミンDの上記の量は、国際単位である「IU」で表され、1IUのビタミンDは0.025μgに等しく、よって1μgは40IUに等しい。
【0054】
好ましくは、上記の(I)の本発明の菌株(I.i-I.vii)またはその誘導体、両者とも「それ自体」(as suchまたはper se)で本発明に含まれる、好ましくは(I.i)および(I.ii)は、例えば、プロバイオティクス製品または生きた生物学的製剤(略してLBP、例えば、生菌株を含む医薬製品)に存在する生菌株のような生菌株(プロバイオティクス)である。
【0055】
「プロバイオティクス」とは、十分量投与された場合に宿主の健康に利益をもたらす、生きた微生物(すなわち、菌株)である(FAOおよびWHOの定義)。
【0056】
本発明の文脈において、本発明の菌株の「誘導体」という表現は、チンダル化もしくは不活化された菌株または菌株の溶解物もしくは抽出物(パラプロバイオティクス)、または菌株の任意の誘導体および/もしくは成分、好ましくは菌体外多糖、頭頂部画分、菌株によって生成された代謝物または代謝生物産物(ポストバイオティクス)、および/または任意のその他の菌株由来産物を示すために使用される。好ましくは、本発明の菌株の「誘導体」という表現は、チンダル化または不活化された菌株を示すために使用される。
【0057】
言い換えると、本発明の文脈において、プロバイオティックな生菌株の「誘導体」という表現は、実質的にはパラプロバイオティクスまたはポストバイオティクスを示すために使用される。
【0058】
本発明の文脈において、「パラプロバイオティクス」(Taverniti et al.,“The immunomodulatory properties of probiotic microorganisms beyond their viability(ghost probiotics:proposal of paraprobiotic concept)”、Genes Nutr(2011)6:261-274)という表現は、細菌細胞(無傷または破壊されたもの)または粗細胞抽出物であって、十分量が投与(経口または局所経路により)された場合に(それらの元となる生存および培養可能な菌株と同様に)宿主の健康に利益をもたらすものを示すために使用される。パラプロバイオティクスの例は、熱不活化菌株(例えば、チンダル化菌株)、ソニケーション(超音波)、または菌株の溶解物または菌株の抽出物である。
【0059】
本発明の文脈において、「ポストバイオティクス」という用語は、プロバイオティックな生菌株の代謝活動によって放出または産生される何れかの物質を示すために使用され、ここで、上記のポストバイオティクスは、十分量が投与(経口または局所経路により)された場合に(それらの元となる生存および培養可能な菌株と同様に)宿主の健康に利益をもたらす。ポストバイオティクスの例は、菌体外多糖、頭頂部画分、代謝産物または代謝生物産物である。
【0060】
(I)および(II)、好ましくは(I.i)および/または(I.ii)および/またはビタミンD3を含むかまたはそれからなる上記の混合物Mを含む本発明の組成物は、任意には上記の少なくとも1つの薬学的または食品グレードの添加物および/または賦形剤、すなわち、薬学的または食品用途に好適な治療活性の無い物質をさらに含み得る。本発明の文脈において、薬学的または食品用途に許容可能な添加物および/または賦形剤は、固形、半固形または液体状の組成物を調製するための当業者に知られる全ての補助物質を含み、例えば、希釈剤、溶媒(水、グリセリン、エチルアルコールを含む)、可溶化剤、酸性化剤、増粘剤、甘味料、風味増強剤、着色料、甘味料、潤滑剤、界面活性剤、保存料、安定化剤、pH安定化緩衝剤およびその混合物を含み、例えば、クエン酸、ソルビン酸カリウムおよび/または安息香酸ナトリウムなどを含む。
【0061】
ある態様によると、(I)および(II)を含む本発明の上記の混合物Mの他に、本発明の組成物は、以下:その他の生存および/またはパラプロバイオティクスおよび/またはポストバイオティクスおよび/または溶解および/またはチンダル化および/または不活化菌株、酵素、直接的または間接的な制酸作用を持つ物質、プレバイオティクス、酵母または細菌ファミリーに属するプロバイオティクス、免疫刺激剤、抗炎症性物質、下痢止め物質、栄養素、ビタミン、好ましくはA、B、C、E群のビタミン、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、塩素、セレン、亜鉛の有機および/または無機塩、メラトニン、植物抽出物(ボタニカル)、例えばバレリアン(valerian)、パッションフラワー(passion flower)、レモンバーム(lemon balm)、サンザシ(hawthorn)、カモミール(chamomile)およびホップ(hop)等の植物抽出物、グルタチオンなどの抗酸化物質、レスベラトロールおよびトランス-レスベラトロールなどのポリフェノール、コエンザイムQ10、アスタキサンチン、リコピン、抗ラジカル剤、腸内の透過性に作用する物質、PEA(パルミトイルエタノールアミド)、膜の完全性(membrane integrity)に作用する物質、グリコサミノグリカン(例えば、好ましくはヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸)、コラーゲン、を含むかまたはそれからなる群より選択される少なくとも1つのさらなる活性成分を含み得る。
【0062】
例えば、(I)および(II)および、任意には添加物、好ましくは(I.i)および/または(I.ii)および/またはビタミンD3を含むかまたはそれからなる上記の混合物Mを含む本発明の組成物は、好ましくは以下:イヌリン、フラクトオリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)およびその混合物、から選択される少なくとも1つのプレバイオティクスをさらに含み得る。
【0063】
本発明の目的を形成するものは、医薬として使用するための、本発明の任意の実施形態の(I)および(II)、好ましくは(I.i)および/または(I.ii)および/またはビタミンD3を含む、上記の本発明の組成物である。
【0064】
本発明の目的を形成するものは、ビタミンD、好ましくはビタミンD2および/またはビタミンD3、より好ましくはビタミンD3の欠乏および/または不足(またはビタミンD欠乏)および/または上記ビタミンDの欠乏に関連する疾患、症状および/または障害の予防的および/または治療的処置における使用のための、本発明の任意の実施形態に記載の(I)および(II)、好ましくは(I.i)および/または(I.ii)および/またはビタミンD3を含む、上記の本発明の組成物である。
【0065】
本発明の文脈において、ビタミンDの吸収および/またはバイオアベイラビリティの増加とは、本発明の使用のための菌株または本発明の組成物が投与される対象における、ビタミンDの血中レベル(血清レベル)の増加を示すために使用される。
【0066】
好ましくは、本発明の文脈において、ビタミンDの吸収および/またはバイオアベイラビリティは、ビタミンD3、特に25(OH)2D形態のビタミンD3の血中レベルとして評価される。
【0067】
25(OH)2D形態のビタミンD3の血中レベルを評価する事は、生体におけるビタミンDの備蓄(reserve)を決定する上で、現在のところ最も正確な方法である。ビタミンDの血中レベルは通常、nmol/リットルまたはng/mlで表され、例えば、25(OH)2Dの形態のビタミンD3が血清1ml中に何ng含まれているかで示される。ビタミンDの血中レベルは専門的な技術者に知られる分析方法および装置を使用して評価される。例えば、上記の分析方法は間接的な方法か、または直接的な方法である。間接的な方法は、例えば、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)および放射免疫測定(RIA)(radioimmunological assay)法、などの免疫化学的または免疫酵素学的な方法である。直接的な方法は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、又は質量分析技術であり、例えば液体クロマトグラフィーと質量分析を組み合わせた方法(LC-MS)、液体クロマトグラフィーとタンデム質量分析を組み合わせた方法(LC-MS/MS)、ガスクロマトグラフィーと質量分析を組み合わせた方法(GC-MS)等である。
【0068】
好ましくは、本発明において、健康なヒト対象は好ましくは30ng/mlから80ng/mlに含まれる25(OH)2Dの血中値を有し、一方で不足の値を有するヒト対象は30ng/mlより低い、好ましくは10から30ng/mlの間に含まれる25(OH)2Dの血中値を有し、また25(OH)2Dが欠乏している対象は10ng/ml(血清1ml当たりの25(OH)2D形態であるビタミンD3のng)より低い値を示す。
【0069】
ある実施形態では、本発明の使用のための上記の(I)菌株(I.i-I.viiまたはその誘導体)、好ましくは(I.i)および/または(I.ii)、ならびに/または、上記の本発明の組成物であって、(I)および(II)、好ましくは(I.i)および/または(I.ii)および/またはビタミンD3を含む組成物は、くる病(rickets)、もろい骨(fragile bones)、骨変形(bone deformation)、骨粗鬆症(osteoporosis)、骨軟化症(osteomalacia)、骨痛、関節痛、骨脆弱性(bone fragility)、低カルシウム血症、低リン血症、脱灰障害による骨の異常(bone abnormalities due to demineralisation defects)、から選択される、ビタミンD、好ましくはビタミンD3および/またはD2の欠乏および/または不足に伴う疾患、症状および/または障害の処置を可能にする。
【0070】
ある実施形態では、本発明の使用のための上記の(I)菌株(I.i-I.viiまたはその誘導体)、好ましくは(I.i)および/または(I.ii)、ならびに/または、上記の本発明の組成物であって(I)および(II)、好ましくは(I.i)および/または(I.ii)および/またはビタミンD3を含む組成物は、筋力低下、集中困難、反復性疲労(recurrent fatigue)、認知障害、精神および情動障害、二次性副甲状腺機能亢進症(secondary hyperparathyroidism)、手汗、から選択される、ビタミンD、好ましくはビタミンD3および/またはD2の欠乏および/または不足に伴う疾患、症状および/または障害の処置を可能にする。
【0071】
ある実施形態では、本発明の使用のための上記の(I)菌株(I.i-I.viiまたはその誘導体)、好ましくは(I.i)および/または(I.ii)、ならびに/または、上記の本発明の組成物であって(I)および(II)、好ましくは(I.i)および/または(I.ii)および/またはビタミンD3を含む組成物は、心血管疾患または以下:心不全(heart failure)、心筋梗塞(myocardial infarction)、心臓突然死、脳卒中、心房性細動(atrial fibrillation)および末梢血管疾患;肥満、インスリン抵抗性、高血圧および糖尿病;糖尿病、脂質異常症、メタボリックシンドローム、高血圧、腎機能障害、消化管の急性および/または慢性炎症、免疫系の変化、がん(好ましくは結腸がん、乳がん、皮膚がん、肺がんおよび前立腺がん)、自己免疫疾患、季節性うつ病およびその他の精神障害、アルツハイマー病、多発性硬化症、呼吸器系の感染症および/または炎症(例えば、コロナウイルスによる)、から選択される疾患、から選択される、ビタミンD、好ましくはビタミンD3および/またはD2の欠乏および/または不足に伴う疾患、症状および/または障害の処置を可能にする。
【0072】
ビタミンDの低いレベルは、炎症性サイトカインの増加ならびに肺炎(pneumonia)および上気道(upper respiratory tract)のウイルス感染のリスクの顕著な増加と関連する。ビタミンDの欠乏は、SARS-CoV-2感染症(COVID-19疾患)においてしばしば観察される、血栓性エピソードの増加と関連する。
【0073】
本発明の上記の(I)菌株(I.i-I.viiまたはその誘導体)、好ましくは(I.i)および/または(I.ii)、ならびに/または、上記の本発明の組成物であって(I)および(II)、好ましくは(I.i)および/または(I.ii)および/またはビタミンD3を含む組成物は、本発明において定義される以下における使用のためのものである:
-ビタミンD、好ましくはビタミンD3および/またはD2の欠乏および/または不足を患う対象における使用、または
-小児対象(約0歳から3歳、および/または3歳から12歳)、好ましくはビタミンD、好ましくはビタミンD3および/またはD2の欠乏および/または不足を患う小児対象おける使用、または
-妊婦対象、好ましくはビタミンD、好ましくはビタミンD3および/またはD2の欠乏および/または不足を患う妊婦対象おける使用、または
-脂溶性ビタミン、例えばビタミンD、好ましくはビタミンD3および/またはビタミンD2、より好ましくはビタミンD3の吸収の低下をもたらし得る治療法が投与される対象であって、例えば、血中コレステロールレベルを低下させるために、ビタミンDなどの脂溶性ビタミンを含むステロールの吸収の低下をもたらす治療法が投与される対象おける使用。
【0074】
本発明の使用のための上記の(I)菌株ならびに/または、(I)および(II)を含む上記の本発明の組成物は、錠剤、チュアブル錠、カプセル、トローチ(lozenge)、顆粒、口内で溶けやすい顆粒、トローチ(Pastilles)、フレークまたは粉末、サシェ(sachet)、バーなどの固形、ソフトゲル、クリームなどの半固形、または溶液、懸濁液、分散液、乳化液またはシロップなどの液体状、またはヨーグルト、チーズ、フルーツジュースなどの食品に製剤化され得る。
【0075】
本発明の使用のための上記の(I)菌株ならびに/または、(I)および(II)を含む上記の本発明の組成物は、経口(または胃腸)、舌下(または頬)、経粘膜、直腸、皮膚、吸入、(または鼻または口腔)、非経口使用(または投与)用に製剤化されてよく、有利には、経口用に製剤化される。
【0076】
(I)および(II)、好ましくは(I.i)および/または(I.ii)および/またはビタミンD3を含むかまたはそれからなる上記の混合物Mを含む本発明の組成物は、医薬組成物(または生きた生物学的製剤)、医療機器組成物(medical device composition)、栄養補助食品(dietary supplement)、食品または新規食品またはプロバイオティクス、特定医療用食品(food for special medical purposes composition)、または例えば皮膚に適用するための化粧品組成物であり得る。
【0077】
本発明の文脈において、「医療機器」という表現は、1997年2月24日付のイタリア政令第46号で定められた又は新しい医療デバイス規則(EU)2017/745(MDR)に従った意味に従って使用される。
【0078】
本発明の使用のための上記の(I)菌株(I.i-I.viiまたはその誘導体)、好ましくは(I.i)および/または(I.ii)、ならびに/または、上記の本発明の組成物であって(I)および(II)、好ましくは(I.i)および/または(I.ii)および/またはビタミンD3を含む組成物はさらには、ビタミンD、好ましくはビタミンD3および/またはD2の欠乏およびそれに伴う疾患、症状および/または障害の処置を目的として、好ましくは薬理学的または食品タイプの、さらなる治療アプローチのアジュバントとしての医薬としての使用のためのものであり得る。
【0079】
本発明の目的を形成するものは、ビタミンD、好ましくはビタミンD3および/またはD2の欠乏および/または不足、およびそれに伴う疾患、症状および/または障害の予防的または治療的処置のための方法であって、最小治療量(または医師の知識による、治療有効量)の、本発明の少なくとも1つの菌株(I.i-I.vii)、好ましくは(I.i)および/もしくは(I.ii)、または本発明の組成物であって、(I)および(II)を含む、好ましくは(I.i)および/または(I.ii)および/またはビタミンD3を含む組成物を必要とする対象へと投与する事を提供する。
【0080】
明確にするために、本発明の目的を達成することを目的として、本発明の混合物(M)の成分(または有効成分)(I)および(II)、例えば少なくとも1つの菌株(I)は、同時にまたは別々に(好ましくは5分~60分の範囲の時間間隔内で)かつ任意の順序で投与されてよい;好ましくは、(I)および(II)は対象に同時に投与され、より好ましくは、より即効を得、投与しやすくするように単一組成物で投与される。本発明の混合物(M)の成分(I)および(II)は、単一組成物で投与される場合、前記単一組成物は、本発明の組成物に相当する。
【0081】
別段の特定が無い限り、組成物または混合物またはその他が、ある成分を「xからyの範囲に含まれる」量で含む、という表現は、上記の成分が組成物または混合物またはその他中に上記の範囲に存在する全部の量で存在し得る事を示すために使用され、特定されない場合でもその範囲の端も含む。
【0082】
実験部分において説明されるように、ビタミンDおよび本発明の菌株(I、i-I.viiまたはその誘導体)、好ましくは(I.i)ラクトバチルス・パラカゼイ DG(登録商標)CNCM I-1572および/または(I.ii)ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760などのラクトバチルス・パラカゼイ種に属する菌株、の対象への投与は相乗的に、または相加/増強的に、対象におけるビタミンDの血清レベルを増加させる。
【0083】
さらに、上記のビタミンDおよび菌株の投与は、ビタミンD受容体、VDRの発現を腸内レベルで調節する事ができる。
【0084】
本発明の実施形態(FR-An)を以下に記載する
【0085】
FR-A1.
ビタミンDの欠乏および/または不足(ビタミンD欠乏症)および/または上記のビタミンDの欠乏に伴う疾患、症状および/または障害の予防的または治療的処置方法における使用のための菌株であって、
該菌株は以下:
- ラクトバチルス・パラカゼイ DG(登録商標)CNCM I-1572株
-ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760株、
-ビフィドバクテリウム・ブレーベ BbIBS01 DSM 33231株、
-ビフィドバクテリウム・ブレーベ BbIBS02 DSM 33232株、
-ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス BlIBS01 DSM 33233株、
-ラクトバチルス・プランタラム LpIBS01 DSM 33234株、
-ビフィドバクテリウム・ビフィダム BbfIBS01 DSM 32708株、
およびその混合物、を含むかまたはそれからなる群より選択される。
【0086】
FR-A2.
ビタミンDの欠乏が、ビタミンD3(コレカルシフェロール)および/またはビタミンD2(エルゴカルシフェロール)、好ましくはビタミンD3の欠乏および/または不足である、FR-A1に記載の使用のための菌株。
【0087】
FR-A3.
菌株がビタミンD、好ましくはビタミンD3と一緒に/組み合わせて投与され、菌株とビタミンDの投与が同時に、または時間的に遅れて行われる、FR-A1またはFR-A2に記載の使用のための菌株。
【0088】
FR-A4.
-少なくとも1つのビタミンD、ならびに以下:
-ラクトバチルス・パラカゼイ DG(登録商標)CNCM I-1572株
-ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760株、
-ビフィドバクテリウム・ブレーベ BbIBS01 DSM 33231株、
-ビフィドバクテリウム・ブレーベ BbIBS02 DSM 33232株、
-ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス BlIBS01 DSM 33233株、
-ラクトバチルス・プランタラム LpIBS01 DSM 33234株、
-ビフィドバクテリウム・ビフィダム BbfIBS01 DSM 32708株、およびその混合物を含むかまたはそれからなる群より選択される少なくとも1つの菌株、を含むかまたはそれからなる混合物Mを含む組成物であって、任意には少なくとも1つの許容できる薬学的または食品グレードの添加剤および/または賦形剤を含む、組成物。
【0089】
FR-A5.
少なくとも1つのビタミンDがビタミンD3(コレカルシフェロール)および/またはビタミンD2(エルゴカルシフェロール)、好ましくはビタミンD3である、FR-A4に記載の組成物。
【0090】
FR-A6.
混合物Mが、
-菌株ラクトバチルス・パラカゼイ DG(登録商標)CNCM I-1572および/または菌株ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760;および
-ビタミンD3(コレカルシフェロール)、を含むかまたはそれからなる、FR-A5に記載の使用のための組成物。
【0091】
FR-A7.
混合物Mが、
-菌株ラクトバチルス・パラカゼイ DG(登録商標)CNCM I-1572および/または菌株ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760、ならびに以下:ビフィドバクテリウム・ブレーベ BbIBS01 DSM 33231、ビフィドバクテリウム・ブレーベ BbIBS02 DSM 33232、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス BlIBS01 DSM 33233、ラクトバチルス・プランタラム LpIBS01 DSM 33234、ビフィドバクテリウム・ビフィダム BbfIBS01 DSM 32708およびその混合物、から選択されるさらなる少なくとも1つの菌株;ならびに
-ビタミンD3(コレカルシフェロール)、を含むかまたはそれからなる、FR-A5に記載の使用のための組成物。
【0092】
FR-A8.
組成物が医薬として使用するためのものである、FR-A4~FR-A7の何れか1つに記載の組成物。
【0093】
FR-A9.
組成物が、ビタミンDの欠乏および/または不足、および/または上記のビタミンDの欠乏に伴う疾患、症状および/または障害の予防的または治療的処置方法における使用のためのものである、FR-F8に記載の使用のための組成物。
【0094】
FR-A10.
疾患、症状および/または障害が、以下:心血管障害または、心不全、心筋梗塞、心臓突然死、脳卒中、心房細動および末梢血管疾患から選択される疾患;肥満、インスリン抵抗性、高血圧および糖尿病、脂質異常症、メタボリックシンドローム、高血圧、腎機能障害、消化管の急性および/または慢性炎症、免疫系の変化、がん、結腸癌、乳がん、皮膚がん、肺がんおよび前立腺がん、自己免疫疾患、季節性うつ病およびその他の精神障害、アルツハイマー病、多発性硬化症、から選択される、FR-A1に記載の使用のための菌株、またはFR-A9に記載の使用のための組成物。
【0095】
本発明のさらなる実施形態(FR-Bn)を以下に記載する:
【0096】
FR-B1.
ビタミンDの欠乏および/または不足(ビタミンD欠乏症)および/または上記のビタミンDの欠乏、好ましくはビタミンD3の欠乏に伴う疾患、症状および/または障害の予防的または治療的処置方法における使用のための菌株であって、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイに再分類されたラクトバチルス・パラカゼイ種に属する菌株。
【0097】
FR-B2.
ラクトバチルス・パラカゼイに属する菌株が、以下:
-ラクトバチルス・パラカゼイ DG(登録商標)として特定され、且つNational Collection of Cultures of Microorganisms of the Pasteur Institute in Parisに受託番号CNCM I-1572で、およびラクトバチルス・カゼイDG(登録商標)亜種カゼイ(ラクトバチルス・カゼイ DG(登録商標)亜種カゼイ)の名称で寄託された、ラクトバチルス・パラカゼイ種に属する菌株
-ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01(登録商標)として特定され、且つDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に受託番号DSM 26760で寄託された、ラクトバチルス・パラカゼイ種に属する菌株、
およびその混合物、
を含むかまたはそれからなる群から選択される、FR-B1に記載の使用のための菌株。
【0098】
FR-B3.
ビタミンDの欠乏がビタミンD3(コレカルシフェロール)および/またはビタミンD2(エルゴカルシフェロール)、好ましくはビタミンD3の欠乏および/または不足である、FR-B1またはFR-B2に記載の使用のための菌株。
【0099】
FR-B4.
菌株が、ビタミンD、好ましくはビタミンD3と一緒に/組み合わせて投与され、ここで菌株およびビタミンDの投与が同時に、または時間的に遅れて行われる、FR-B1~FR-B3の何れか1つに記載の使用のための菌株。
【0100】
FR-B5.
-少なくとも1つのビタミンD、および
-ラクトバチルス・パラカゼイ種に属する少なくとも1つの菌株、
を含むかまたはそれからなる混合物Mを含む組成物であって、任意には、
-少なくとも1つの許容できる薬学的または食品グレードの添加物および/または賦形剤を含む、組成物。
【0101】
FR-B6.
ラクトバチルス・パラカゼイ種に属する少なくとも1つの菌株が、以下:
-ラクトバチルス・パラカゼイ DG(登録商標)として特定され、且つNational Collection of Cultures of Microorganisms of the Pasteur Institute in Parisに受託番号CNCM I-1572で、およびラクトバチルス・カゼイDG(登録商標)亜種カゼイの名称で寄託された、ラクトバチルス・パラカゼイ種に属する菌株
-ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01(登録商標)として特定され、且つDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に受託番号DSM 26760で寄託された、ラクトバチルス・パラカゼイ種に属する菌株、および
-その混合物、
を含むかまたはそれからなる群から選択される、FR-B5に記載の組成物。
【0102】
FR-B7.
少なくとも1つのビタミンDが、ビタミンD3(コレカルシフェロール)および/またはビタミンD2(エルゴカルシフェロール)、好ましくはビタミンD3である、FR-B5またはFR-B6に記載の組成物。
【0103】
FR-B8.
混合物Mが、
-菌株ラクトバチルス・パラカゼイ DG(登録商標)CNCM I-1572および/または菌株ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01(登録商標) DSM 26760;および
-少なくとも1つのビタミンD、好ましくはビタミンD3(コレカルシフェロール)、
を含むかまたはそれからなるFR-B6またはFR-B7に記載の組成物。
【0104】
FR-B9.
混合物Mが、
-菌株ラクトバチルス・パラカゼイ DG(登録商標)CNCM I-1572および/または菌株ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01(登録商標) DSM 26760、ならびに以下からなる群より選択されるさらなる少なくとも1つの菌株:
-ビフィドバクテリウム・ブレーベ BbIBS01として特定され、且つDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に寄託番号 DSM 33231で寄託された、ビフィドバクテリウム・ブレーベ種に属する菌株
-ビフィドバクテリウム・ブレーベ BbIBS02として特定され、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に寄託番号 DSM33232で寄託された、ビフィドバクテリウム・ブレーベ種に属する菌株
-ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス BlIBS01として特定され、且つDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に寄託番号 DSM 33233で寄託された、ビフィドバクテリウム・アニマリス種に属する菌株
-ラクトバチルス・プランタラム LpIBS01として特定され、且つDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に寄託番号 DSM 33234で寄託された、ラクトバチルス・プランタラム種に属する菌株
-ビフィドバクテリウム・ビフィダム BbfIBS01として特定され、且つDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に寄託番号 DSM 32708で寄託された、ビフィドバクテリウム・ビフィダム種に属する菌株、およびその混合物;ならびに
-少なくとも1つのビタミンD、好ましくはビタミンD3(コレカルシフェロール)、
を含むかまたはそれからなる、FR-B6~FR-B8の何れか1つに記載の組成物
【0105】
FR-B10.
医薬として使用するための、FR-B5~FR-B9の何れか1つに記載の組成物。
【0106】
FR-B11.
必要とする対象におけるビタミンDの欠乏、および/またはビタミンDの欠乏に伴う疾患、症状および/または障害の予防的および/または治療的処置における使用のための組成物であって、好ましくはここでビタミンDがビタミンD3(コレカルシフェロール)および/またはビタミンD2(エルゴカルシフェロール)であり、より好ましくはビタミンD3である、FR-B10に記載の組成物。
【0107】
FR-B12.
疾患、症状および/または障害が、以下:心血管障害または心不全、心筋梗塞、心臓突然死、脳卒中、心房細動および末梢血管疾患から選択される疾患;肥満、インスリン抵抗性、高血圧および糖尿病;糖尿病、脂質異常症、メタボリックシンドローム、高血圧、腎機能障害、消化管の急性および/または慢性炎症、免疫系の変化、がん、結腸癌、乳がん、皮膚がん、肺がんおよび前立腺がん、自己免疫疾患、季節性うつ病およびその他の精神障害、アルツハイマー病、多発性硬化症、から選択される、FR-B1~FR-B4の何れか1つに記載の菌株、またはFR-B10またはFR-B11に記載の組成物。
【0108】
FR-B13.
疾患、症状および/または障害が、以下:くる病、もろい骨、骨変形、骨粗鬆症、骨軟化症、骨痛、関節痛、骨脆弱性、低カルシウム血症、低リン血症、脱灰障害による骨の異常、から選択される、FR-B1~FR-B4の何れか1つに記載の菌株、またはFR-B10またはFR-B11に記載の組成物。
【0109】
FR-B14.
疾患、症状および/または障害が、以下:筋力低下、集中困難、反復性疲労、認知障害、精神および情動障害、二次性副甲状腺機能亢進症、手汗、から選択される、FR-B1~FR-B4の何れか1つに記載の菌株、またはFR-B10またはFR-B11に記載の組成物。
【0110】
FR-B15.
必要とする対象が、小児対象である、FR-B1~FR-B14の何れか1つに記載の菌株、またはFR-B10~FR-B14の何れか1つに記載の組成物。
【実施例】
【0111】
実験部分
(A.1.)IN VITRO研究
1.目的
ビタミンDの吸収は脂質の吸収と似たものであるように見える事を考慮すると、腸内においてよりよく乳化されることで、腸細胞を通じたビタミンDの透過が促進され得る。同時に、コレカルシフェロール(ビタミンD3)溶解性を有する微生物はビタミンDの血清レベルの増加をもたらす可能性がある。この目的のため、以下の4つのプロバイオティックな菌株を、水に対するビタミンD3の安定な乳化液を生成する能力についてのスクリーニングの対象とした:ラクトバチルス・パラカゼイ DG(登録商標)CNCM I-1572(ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ DG(登録商標)CNCM I-1572に名称変更)、ラクトバチルス・ラムノースス GG(ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ GGに名称変更)、ラクトバチルス・ロイテリ DSM 17938(リモシラクトバチルス・ロイテリ(Limosilactobacillus reuteri) DSM 17938に名称変更)およびラクトバチルス・アシドフィルス LA5。
【0112】
2.材料および方法
2.1 菌株および培養条件
ラクトバチルス属(ラクトバシラス科(family Lactobacillaceae))に属する以下の4つの菌株を試験した:ラクトバチルス・パラカゼイCNCM I-1572(L.カゼイ DG(登録商標);Enterolactis(登録商標)、SOFAR S.p.A.)、ラクトバチルス・ラムノースス ATCC 53103(ceppo GG)、ラクトバチルス・ロイテリ DSM 17938、ラクトバチルス・アシドフィルス DSM13241(LA5株)。
【0113】
すべての菌株は、de Man Rogosa Sharpeブロス(MRS;Difco)を用いて37℃で一晩培養した.
【0114】
2.2 プロバイオティックな細菌細胞によるビタミンD3の乳化のin vitro評価
ブロス培養から遠心分離によって回収した細胞のペレットをリン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS、pH 7.3)で2回洗浄し、OD600nm=5となるようにPBSで再懸濁した。そして、2000IU(2.5μg)のコレカルシフェロールに相当する100μlのdi DIBASE(オリーブオイル中に50,000IU/2.5mlのコレカルシフェロール、Abiogen Pharma、Italy)を1mlの細菌懸濁液に分散させ、磁気攪拌下(500rpm)で45分間インキュベートした。続いて、穏やかな遠心分離(2000rpm、2分間)の後、油相の下にある水相400μlを滅菌シリンジの針を使用して得た。続いて、以下の方法を使用して水相サンプルからコレカルシフェロール(ビタミンD3)を抽出した。サンプルに400μlのメタノールを加え、混合液を倍量のヘキサンを用いて単回抽出した。遠心分離(13000rpm、3分)の後に得られたヘキサン相を窒素下で蒸発乾固(evaporated to dryness)し、および乾燥残渣を150μlのHPLC移動相に溶解した。100μlの容量をHPLC分析に使用した。
【0115】
2.3 HPLC分析
コレカルシフェロール(ビタミンD3)を、Porosshell 120EC-C184.6×100mm、2.7μmカラムを用いて、分離モジュールAgilent(自動サンプラー付き1260 infinity IIポンプ)および1260 infinity II可変波長検出器(265nmでビタミンDを検出)を含むHPLCシステムで分離した。クロマトグラフィープロトコルは、Goncalves et al.[Molecular Nutrition&food research 2011、55 Suppl 2、S303-311]に従った。略述すると、移動相は60%アセトニトリル、38%メタノール、2%水であった。流速は1ml/分、カラムは一定温度(40℃)に維持された。コレカルシフェロールは、スペクトル分析および/または純粋な標準物質に対する保持および共注入時間によって同定された。定量化は、HPLC Open Lab Agilentソフトウェアを用いて、ピーク面積を標準参照曲線と比較して行った。
【0116】
2.6 統計解析
データは、平均±標準偏差(平均±SD)で示した。統計解析は対応の無いスチューデントのt検定(unpaired Student’s t-test)を使用して行った。差は、p<0.05で有意とした。
【0117】
3.結果
4つの乳酸菌株を、水へのビタミンD3の安定な乳化液を生成するその潜在的な能力について試験した。この目的のために、PBS中の菌株を、精製オリーブオイル中のビタミンD溶液と混合した(10:1v/v)。そして水相のアリコートをHPLCによって分析し、コレカルシフェロールの水への溶解を定量した。得られた結果から、L.パラカゼイ DG
(登録商標)CNCM I-1572株では水相中のコレカルシフェロールが顕著に増加しており、この株は、その他の菌株に比べて、コレカルシフェロールを水に効率的に乳化させる優れた能力を示した(
図4)。統計は対応の無いスチューデントのt検定基づく(n=3、
***p<0.001;
**p<0.01;
*p<0.05)。
【0118】
4.結論
多くの食物の微生物叢の優占種であるラクトバシラス科の数種は、洗浄(detergent)、乳化、発泡または分散活性を有し得る異なる化学的性質の両親媒性分子(例えば糖脂質、リン脂質、リポペプチドおよびその他ポリマー)である、バイオサーファクタントを生成する事が示されている。したがって、一旦腸内には入ると、バイオサーファクタント産生微生物は、ビタミンDの乳化に貢献し、その上皮との接触を容易にし、およびよってその吸収を容易にし得ると推測され得る。バイオサーファクタントの産生は、プロバイオティクスとして一般に使用される微生物、特にラクトバシラス科のメンバーであって、例えばL.カゼイ/パラカゼイ、L.ラムノーススおよびL.アシドフィルス等によっても行われる。本研究では、よく報告されているプロバイオティックな性質を持つ4つのラクトバシラス科の株を選択し、水に対してコレカルシフェロールを溶解するその能力についてin vitroで試験した。
【0119】
行った実験によって、試験した細菌と、L.パラカゼイ DG(登録商標)CNCM I-1572株との間に顕著な差があり、L.パラカゼイ DG(登録商標)CNCM I-1572株が水相中のコレカルシフェロールの量を顕著に増加させる事が明らかになった。特に、L.パラカゼイ DG(登録商標)CNCM I-1572株の能力はL.ラムノーススGGの約2倍である。
【0120】
L.パラカゼイ DG(登録商標)CNCM I-1572株の乳化能を決定する分子は知られていないが、L.パラカゼイ DG(登録商標)CNCM I-1572が細胞外表面に蓄積する、排他的にラムノースに富むヘテロ菌体外多糖(HePS)が顕著に寄与していると推測できる。事実として、HePSの菌体高分子(bacterial macromolecules)は、原油および炭化水素などの種々の疎水性分子に対して効率的な乳化特性を発揮し得る。
【0121】
(A.2)IN VIVO研究
ラクトバチルス・パラカゼイ種の菌株によるビタミンDのバイオアベイラビリティに対する効果を評価するためのマウスモデルにおけるin vivo研究
【0122】
動物および試験物質の調製
マウス(8週齢、成体雄、Cd1)を囲いに馴化させ、および通常の食餌で飼育した。マウスをケージに収容し、温度制御環境(22±2℃)で、12時間の明/暗サイクルで飼育し、通常の固形飼料と水道水を自由に摂取させた。1週間の馴化後、動物を無作為に6匹ずつの6つの実験群に分け、各群をスケジュールされた処置群の内の1つに無作為に割りあてた(表1)。
【表1】
【0123】
ラクトバチルス・パラカゼイ DG(登録商標)CNCM I-1572(略してL.パラカゼイ DG(登録商標))株を、MRS寒天で前培養し、単一コロニーを培養ブロスに移植し、および37℃、微好気性環境下で18時間インキュベートした。得られた培養物を遠心分離し、滅菌生理食塩水溶液で2回洗浄し、および細胞のペレットを適切な用量の20%スクロース+10%グリセロール(w/vol)水溶液で再懸濁した。そして光学密度(OD600nm)を測定し、懸濁液をOD=1.00となるように希釈した。そして懸濁液を150μlずつのアリコートに分け、アリコートを、パドヴァ大学分子医学部にドライアイスで配送するまで-20℃で凍結した。選択培地上でアリコートを10進法で数える事により、1.6x109CFU/ml懸濁液(2.4x108CFU/アリコート)に等しい生細胞濃度を定量する事ができた。同時に、AAT研究所はSigma Aldrichから購入したビタミンD3(コレカルシフェロール)のアリコートを調製した。
【0124】
各動物は胃プローブ(gastric probe)を用いて特定の処置を受けた。
【0125】
先行文献に基づいて、10,000IU/Kg体重に等しい精製オリーブオイル中のビタミンD3(DIBASE 50,000IU/2.5ml)をマウスに投与することに決めた。マウスの平均体重を約50gと考え、それぞれ500IUのビタミンを含む25μlのビタミンD3のアリコートを調製した。これらのアリコートを1回投与(one-shot administration)および1週間にわたる毎日の投与に使用した。プロバイオティックな菌株を受けるマウスは、108CFUのL.パラカゼイDG(登録商標)を1週間毎日、単回投与された。
【0126】
L.パラカゼイ DG(登録商標)およびビタミンD3の単回アリコートは適切な温度でパドヴァ大学において保存し、マウスに投与する際に毎日使用し、L.パラカゼイ DG(登録商標)のアリコートは100μlを取って残留物を除去し、およびビタミンD3のアリコートは全量を取った。
【0127】
処置動物
投与終了の3時間後に、フルオラン麻酔を行った後でマウスをサクリファイスし、および続いて心臓穿刺および回腸末端の摘出により血液を回収した。血液を遠心分離する事で血清を分離し、これは続く25-ヒドロキシビタミンD形態のビタミンD3(25(OH)2Dまたは25(OH)Dと略される)の投与まで冷凍した。回腸末端を初めにPBSで洗浄した後、粘膜を採取し、その後液体窒素で冷凍した。粘膜レベルでのビタミンD受容体の発現の定量のためにmRNAを抽出した。
【0128】
血清中へのビタミンの投与-方法
25(OH)Dは、ELISAアッセイ(25OH Vitamin D total ELISA、Gentaur、Bergamo、IT)によって、処置したマウスおよびコントロールの血清中に投与された。この測定により、動物体におけるビタミンDの充足(備蓄)状態を正確に予測する事ができる。血中レベルは通常、nmol/リットル血清、またはng/ml血清で表される。ヒトでは、25(OH)Dの値が20ng/ml血清より低いと欠乏状態であると同定され、20~30の範囲の値であればいずれにせよ不足していると考えられる。
【0129】
データは、平均±標準偏差で示した。統計解析は対応の無いスチューデントのt検定を使用して行った。差は、p<0.05で有意とした。
【0130】
粘膜における受容体の定量-方法
回腸末端を始めにPBSで洗浄した後、粘膜を採取し、その後液体窒素で冷凍した。そして粘膜レベルでのビタミンD受容体の発現の定量のためにmRNAを抽出した。操作的な観点から、粘膜からの全RNA抽出を初めに行い、そして全RNAの30ngのアリコートをcDNAへと逆転写し、ビタミンD受容体、VDRに対するプライマー(Wu et al.2010に記載)を用いた定量PCRの対象とした。以下はプライマー配列のまとめである:
-hVDR F 5′-GGACTGCCGCATCACCAA-3′(配列番号1)
-hVDR R 5′-TCATCTCCCGCTTCCTCT-3′(配列番号2)
RT-PCR解析はまた、「完全な」ネガティブコントロールおよび得られた結果を正規化するためのハウスキーピング遺伝子(例えば、β-アクチン)を使用して行った。
【0131】
ビタミンD3の投与-結果
図1(AおよびB)および
図1-2に示すように、ELISAアッセイによる25(OH)Dの投与は、文献において得られるデータに一致する血清ビタミン濃度の値を示した。
【0132】
通常の固形試料を与えたCD-1コントロールマウス(群1)では、25(OH)Dの血清レベルは、36~71ng/mlの間(平均±標準偏差58±13ng/ml;
図1-2)に含まれていた。
【0133】
ビタミンD3の1回投与(群2)は、これはL.パラカゼイ DG(登録商標)の同時投与無しおよび有り(群4)の両方において、これらの場合に検出された濃度がコントロール群(処置なし)で検出されたレベルに比して統計的に有意に異なるものではなかったため、、25(OH)D(25ヒドロキシビタミンD)の血清レベルに顕著な変化をもたらさなかった。同様にL.パラカゼイ DG(登録商標)株のみの投与も顕著な変化をもたらさず(群3)、これはL.パラカゼイ DG(登録商標)株それ自体は試験条件下においてビタミンD3のバイオアベイラビリティに効果を及ぼさない事を示す。一方、ビタミンD3とL.パラカゼイ DG(登録商標)株を約2.0x10^8CFU/日の用量で7日間連日投与した場合、ビタミンD3血清レベルの統計的に有意な増加が観察された。この観察は、おそらく粘膜レベルでの、菌株がビタミンのバイオアベイラビリティの増加を促進する相乗作用を実証する。この仮説は、1週間ビタミンD3のみを投与したコントロール群(群6)の結果からも補強されており、25(OH)Dの血清濃度には統計的に有意な変化が見られなかった。一方、L.パラカゼイ DG(登録商標)株とビタミンD3を1週間連日投与したマウス群では、バイオアベイラビリティにおいて統計的に有意な変化が検出された。
【0134】
詳細には、ビタミンD3の単回投与(群2;67±4ng/ml)後において、ビタミンD3の1週間連続補給(群6;54±6ng/ml)、菌株L.パラカゼイ DG
(登録商標)の投与(群3;56±10ng/ml)およびビタミンD3+L.パラカゼイ DG
(登録商標)の単回投与(群4;57±6ng ml)に比べてわずかに、しかし有意に25(OH)Dの血清レベルは高くなった(
図1-2)。全体として、群1、2、3、4および6における、マウスの25(OD)Dの血清レベルは全て35~74ng/mlの範囲内であった(58±10ng/ml)。一方で、10
8CFUのL.パラカゼイ DG
(登録商標)を、1週間連日のビタミンD3の補給と組み合わせて投与すると25(OH)Dの血清濃度は、84~89ng/mlの範囲であり(群5;88±2ng/ml)(
図1-2)、これはコントロール群に対して約50%の増加に相当する。
【0135】
ビタミンD受容体の発現-結果
図2に示すように、研究対象のマウス群の粘膜におけるビタミンD受容体メッセンジャーRNAの定量は、L.パラカゼイ DG
(登録商標)のみを1週間投与しても、処置無しのコントロール群と比べて受容体の発現レベルに変化がない事を示す。一方で、ビタミンD3の単回投与は、統計的に有意に回腸粘膜レベルにおける受容体レベルを低下させた(群2)。ビタミンD3をL.パラカゼイ DG
(登録商標)株の処置の終わりに単回投与する(群4)か、またはL.パラカゼイ DG
(登録商標)株と組み合わせて1週間連続で投与する(群5)かに関わらずビタミンD3をL.パラカゼイ DG
(登録商標)と同時投与した際に、およびビタミンD3のみを1週間連続で投与した際(群6)に、より顕著な低下が観察された。
【0136】
データの最初の解析および利用可能な処置群の評価によって、ビタミンD3の投与とL.パラカゼイ DG(登録商標)の投与との間に相乗効果が観察され、両者の処置の投与がビタミンD3単独の投与ですでに観察された受容体被覆/抑制効果(covering/quenching effect)を「増強」することが示された。以前の段落において既に報告されているように、このような観察は、より高いビタミンのバイオアベイラビリティをもたらす、菌株L.パラカゼイ DG(登録商標)とビタミンD3の相乗効果を示す。この仮説を検証するために、ビタミンD3のみで7日間処置する群6においても受容体発現を検証した。この試験はネガティブな結果であり、L.パラカゼイ DG(登録商標)株とビタミンD3間の相乗効果の仮説を補強するものである。
【0137】
結論
ビタミンD3(25(OH)D)の血中レベルは通常nmol/リットルまたはng/mlまたはng/ml血清で表される。ヒトでは、25(OH)Dの値が20ng/ml血清より低いと欠乏状態であると同定され、20~30の範囲の値であればいずれにせよ不足していると考えられる。
【0138】
マウスモデルでは、入手可能な文献によると、特別な食事介入によって誘導されたビタミンD3欠乏である動物において、ビタミンDの顕著な血清レベルを得るためには4週間以上の長期の処置が必要である。
【0139】
本発明の結果に基づいて、ビタミンD3およびL.パラカゼイ DG(登録商標)株の同時投与に関連する相乗効果が観察され、宿主に対して以下のような有利な効果がもたらされ得る事が観察された:
A-ビタミンDのバイオアベイラビリティの増加に関連する直接的な効果であって、これはビタミンD3単独で処置された動物に比して、処置期間に関係なく、同時投与処置を受けた動物の血清におけるビタミンDレベルの増加として表される;
B-回腸粘膜レベルにおけるビタミンD受容体の発現動態の調節に関連する間接的な効果、例えば腸内レベルにおけるビタミンDのより早い回復をもたらす事。
【0140】
ビタミンD3のみを少なくとも1週間受ける処置群6を導入した事によって得られた、活性の補足として得られた結果に照らして、血清レベルでのビタミンDのバイオアベイラビリティを増加させる有効な手段として、ビタミンD3とL.パラカゼイ DG(登録商標)株の同時投与を導く仮定Aに傾き得る。
【0141】
(B)臨床研究
1.研究の目的
本二重盲検、探索的、無作為化、対照、単施設臨床試験の目的は、ビタミンD(25(OH)2D)のベースライン血清レベルが10ng/ml以上、20ng/ml以下の3歳から12歳の間の小児対象において、ビタミンDの腸内吸収の促進および増加におけるL.カゼイDG(登録商標)(ラクトバチルス・パラカゼイCNCM-I1572)の働きについて評価する事である。以下は臨床研究の目的である。
【0142】
主要目的
ビタミンD(Vit.D)をL.カゼイ DG(登録商標)を含むプロバイオティクスと組み合わせた補給により処置した対象と、ビタミンDの補給のみで処置した対象におけるビタミンDの吸収の違いを評価する。
【0143】
副次的目的
以下を評価する事:
-対象の日誌から再整理されたデータを通じて便の硬さおよび毎日の排便頻度(daily defecation rate);
-糞便中のL.カゼイ DG(登録商標)(ラクトバチルス・パラカゼイCNCM-I 1572)株の回収量。
【0144】
探索的目的
-腸内細菌叢の調節;
-短鎖脂肪酸(SCFA)を含む関連代謝産物の調節
【0145】
2.有効性評価
固定の補給用量のVit.DにL.カゼイ DG(登録商標)を含むプロバイオティクスを加える事の有効性の評価は、主に前述の主要目的に基づいて決定される。
【0146】
主要目的は、以下の主要評価項目を通じて評価される:
-L.カゼイ DG(登録商標)を含む経口プロバイオティクスとVit.Dの経口製剤を併用して6週間毎日補給する事で処置した小児におけるVit.Dの血清レベルの変化であって、研究の処置期間全体にわたって、同様の特徴を持ち、同じビタミンDの毎日の補給用量で6週間処置した小児と比較した変化。
【0147】
副次的に、その他の有効性評価はとして以下の副次的評価項目を評価する:
副次的評価項目:
-処置期間中の被験者の日誌に記録されたデータによる、排便頻度および便の硬さ(ブリストル便性状スケール(Bristol Stool Scale)に基づいて評価する)の各群内および処置群間での変化。
-処置期間終了時における、ベースラインと比較した糞便中のL.カゼイ DG(登録商標)の回収量。
【0148】
糞便中のL.カゼイ DG(登録商標)の回収量は、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって評価した。
【0149】
探索的評価項目
-2つの試験群間のアルファおよびベータ多様性指数および分類学的存在量の変化の評価;
-2つの試験群間でのSCFAを含む代謝産物変化の評価。
【0150】
3.実験デザイン
本試験は二重盲検、探索的、無作為化、対照、単施設臨床試験である。本試験の目的は、Vit.D(25(OH)2D)の血清レベルが10ng/ml以上、20ng/ml以下の3歳から12歳の間の小児対象において、Vit.Dの腸内吸収の促進および増加におけるL.カゼイDG(登録商標)(ラクトバチルス・パラカゼイCNCM-I1572)の働きについて評価する事である。本試験は、L.カゼイDG(登録商標)を含む経口プロバイオティクスと併用してVit.Dの経口製剤を毎日投与された3歳から12歳の間の年齢の対象と、同様の特徴を有し、同じ年齢の群に属し、同じビタミンDの経口製剤を同じ毎日の用量で投与される(現行のガイドラインに基づき投与)対象の群におけるVit.D吸収の違いを評価するために主にデザインされる。Vit.Dの吸収は、規定の来院日における25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)2D)の血清レベルを評価する事によって決定される。本試験は、Vit.Dの血清レベルが10ng/ml以上20ng/ml以下である、3歳から12歳の間の男女(男性および女性)の約46人の適格な対象を募集する必要がある。
【0151】
被験者は以下の2つの処置群の内の1つに無作為に割り当てられる:
・試験処置群:1800IU(45μg)のVit.D+80億個のL.カゼイDG(登録商標)(ラクトバチルス・パラカゼイCNCM-I 1572)のプロバイオティック株の生細胞、を含む飲用可能なバイアルによる補給。試験製品を上記の用量で6週間毎日(一日あたり1つの飲用可能バイアル)投与する(9.6章、製品数を参照);
・コントロール群:1800IU(45μg)のビタミンDのみの補給を含む飲用可能なバイアルからなる対照薬製品の補給。対照薬製品を6週間毎日(一日あたり1つの飲用可能バイアル)投与する。
【0152】
試験製品および対照薬製品は、同一の包装、色、重さ、匂いおよび味を持つ飲用可能なバイアルで処方される。治験責任医師(investigator)および親/法的保護者は彼らの小児が割り当てられた処置群を知らない。治験責任医師は、被験者およびその親/法的保護者に対して試験目的、処置の特徴および投与についての情報を提供するものとする。
【0153】
両者の試験処置(試験製品および比較対象製品)は、空腹時、食事の30~60分前に、1つの飲用可能なバイアルを毎日、6週間投与する。
【0154】
夏場(イタリアにおいてはおおよそ5月下旬から9月下旬)には対象が日光に曝される事によって、ビタミンDの内因性生産が強く増加する事を考慮して、対象の募集期間を冬季から春季(12月~4月中旬)のみに限定した。よって、4月中旬に募集された適格な被験者は6週間にわたって、5月の終わりまで処置される。本方法においては、被験者の夏場の日光への曝露のリスクが最小化されるので、Vit.Dの血清レベルの臨床的な誤認識の偏りを可能な限り減らす事ができる。
【0155】
本研究における募集に適格な、可能性のある各対象には、その年齢に適切な様式の言語を用いて、治験責任医師から正式に説明が行われる。同時に、治験責任医師は小児の両親/法的保護者にインフォームドコンセント文書を提供し、小児の本試験への包含を評価するための何れのスクリーニング手続きを小児に受けさせる前に、署名させる。
【0156】
全体として、本試験デザインは4回の来院を含む(
図3):
・V-1(スクリーニング来院)。本試験の初回来院であって、本試験の次の来院(ベースライン来院)の前の7日間の何れかの日に行われる。この来院中に、治験責任医師は対象が全ての包含/除外基準を満たしている事を確認する:対象から血液を採取し、Vit.D血清レベルおよびその他の血液パラメーターを検査し、および客観的評価を行う(段落10.1 V-1スクリーニング来院および試験手順、を参照)。
・V0(ベースライン来院)。この来院は対象の本試験への登録後に、以前の来院(スクリーニング来院)に基づいて予定された全ての手続きの終了後に行われる。これは処置を開始する各対象を上記の処置に割り当てる、無作為化するための来院である(段落10.2 V0ベースライン来院および無作為化手順、を参照)。
・V1(3週±3日)。これはベースラインの約3週間後に行われる中間の試験来院である。来院V-1(スクリーニング来院)に記載されるものと同じ臨床検査および臨床評価が本来院で行われる(段落10.3、V1および中間手順、を参照)。
・V2(6週±3日)。本試験の最後の来院であり、試験処置の終了である(ベースラインから6週間後)。来院V-1(スクリーニング来院)に記載されるものと同じ臨床検査および臨床評価が本来院で行われる(段落10.3、V2および試験終了時の手順、を参照)。
【0157】
安全性、忍容性、併用薬の使用および/または医療処置を、試験を通してモニターする。加えて、親/法的保護者は患者の日誌にいかなる有害事象も記録する事が要求される。
【0158】
4.患者集団
本研究は、Vit.D(25(OH)2D)の血清レベルが10ng/ml以上、20ng/ml以下である、3歳から12歳の間の任意の人種の男女(男性および女性)の小児を対象とする。
【0159】
5.包含基準
-3歳以上12歳以下の(研究に包含された時点で12歳を超えない)小児は適格とみなされる。
-スクリーニング時にVit.Dの血清レベルが10ng以上20ng以下である;
-患者からの本試験への同意および両親/保護者によって提出された本試験への参加についての署名付きのインフォームドコンセント。
【0160】
6.試験処置
-試験処置:L.カゼイDG(登録商標)(L.パラカゼイCNCM I-1572)+ビタミンD、保健省(Ministry of Health)の栄養補助食品の登録品目に含まれる製品(商品名:Enterolactis D)
クラス:栄養補助食品
説明:リザーバーキャップを有する単回用量の飲用可能バイアル。本製品は液相に混合されなければならない。
主成分:
・L.カゼイDG(登録商標)(L.パラカゼイCNCM I-1572)
・ビタミンD
各飲用可能バイアルは以下の組成を有する:
固相成分:L.カゼイDG(登録商標)(L.パラカゼイCNCM I-1572);粉末コレカルシフェロール(ビタミンD3、中鎖トリグリセリド、アラビアガム(アカシアガム)(E414)、スクロース、スターチ、アルファ-トコフェロール(E307)、リン酸三カルシウム(E341 iii))。
1日用量(1バイアル)
L.カゼイDG 8bln.CFU
ビタミンD3 45,000mcg/1800I.U.
液相成分:精製水;フルクトース;酸味料:クエン酸(E330);風味増強剤;保存料:ソルビン酸カリウム(E202);保存料:安息香酸ナトリウム
【0161】
-対照薬処置
ビタミンD-保健省の栄養補助食品の登録品目に含まれる製品(商品名:ビタミンD)
クラス:栄養補助食品
説明:リザーバーキャップを有する単回用量の飲用可能バイアル。本製品は液相に混合されなければならない。
主成分:
・ビタミンD
各飲用可能バイアルは以下の組成を有する:
固相成分:マンニトール;イヌリン-フラクトオリゴ糖;甘味料:マルチトール(E965);粉末コレカルシフェロール(ビタミンD3、中鎖トリグリセリド、アラビアガム(アカシアガム)(E414)、スクロース、スターチ、アルファ-トコフェロール(E307)、リン酸三カルシウム(E341 iii))。
1日用量(1バイアル)
ビタミンD3 45,000mcg/1800I.U.
液相成分:精製水;フルクトース;酸味料:クエン酸(E330);風味増強剤;保存料:ソルビン酸カリウム(E202);保存料:安息香酸ナトリウム
【0162】
統計解析
データは記述統計を用いて提示される。一般に、カテゴリー変数は数と割合で提示され、連続変数は、コルモゴロフ-スミルノフ検定を適用して正規性(normality)を評価した後、必要に応じて平均値、標準偏差(SD)又は四分位範囲の中央値で提示される。
【配列表】
【国際調査報告】