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特表2023-519261抗PSMA抗体-エキサテカン類似体複合体及びその医薬用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】抗PSMA抗体-エキサテカン類似体複合体及びその医薬用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20230428BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230428BHJP
   C07K 1/13 20060101ALI20230428BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230428BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230428BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230428BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230428BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230428BHJP
【FI】
A61K47/68
C07K16/28 ZNA
C07K1/13
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 L
C07K16/46
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557789
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(85)【翻訳文提出日】2022-11-17
(86)【国際出願番号】 CN2021082857
(87)【国際公開番号】W WO2021190583
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】202010218297.4
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516174219
【氏名又は名称】江蘇恒瑞医薬股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】516174208
【氏名又は名称】上海恒瑞医薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENGRUI PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】NO. 279 WENJING ROAD, MINHANG DISTRICT, SHANGHAI 200245, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】応 華
(72)【発明者】
【氏名】張 小敏
(72)【発明者】
【氏名】楊 篠瑩
(72)【発明者】
【氏名】陶 維康
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C085AA27
4C085BB11
4C085BB31
4C085DD35
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA50
4H045BA09
4H045BA50
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA22
(57)【要約】
本開示は、抗PSMA抗体-エキサテカン類似体複合体及びその医薬用途を提供する。具体的には、一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗PSMA抗体-薬物複合体を提供し、そのうち、Pcは、抗PSMA抗体又はその抗原結合断片である。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、
【化1】
そのうち、
Yは、-O-(CR-CR-C(O)-、-O-CR-(CR-、-O-CR-、-NH-(CR-CR-C(O)-及び-S-(CR-CR-C(O)-から選ばれ、
とRは同一又は異なり、且つそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル基、ハロアルキル基、重水素化アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシアルキル基、シクロアルキル基及びヘテロシクリル基から選ばれ、
或いは、RとRは、それらに連結された炭素原子と共にシクロアルキル基又はヘテロシクリル基を形成し、
は、ハロゲン、ハロアルキル基、重水素化アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アルコキシアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれ、
は、水素原子、ハロゲン、ハロアルキル基、重水素化アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アルコキシアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれ、
或いは、RとRは、それらに連結された炭素原子と共にシクロアルキル基又はヘテロシクリル基を形成し、
或いは、RとRは、それらに連結された炭素原子と共にシクロアルキル基又はヘテロシクリル基を形成し、
mは、0~4の整数であり、
nは1~10で、nは小数又は整数であり、
Lは、リンカーユニットであり、
Pcは抗PSMA抗体又はその抗原結合断片である、
抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
前記抗PSMA抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、そのうち、
前記重鎖可変領域は、それぞれ配列番号3、配列番号4と配列番号5で示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号6、配列番号7と配列番号8で示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含む、
請求項1に記載の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
前記抗PSMA抗体は、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体である、請求項1又は2の何れか一項に記載の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
前記抗PSMA抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1で示される重鎖可変領域と配列番号2で示される軽鎖可変領域を含む、請求項1~3の何れか一項に記載の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
前記抗PSMA抗体は、抗体重鎖定常領域と軽鎖定常領域を含み、好ましくは、前記重鎖定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3とIgG4の定常領域及びその通常の変異体から選ばれ、前記軽鎖定常領域はヒト抗体κとλ鎖の定常領域及びその通常の変異体から選ばれ、より好ましくは、前記抗PSMA抗体は配列番号9で示される重鎖と配列番号10で示される軽鎖を含む、請求項1~4の何れか一項に記載の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
nは1~8であり、好ましくは3~8であり、nは小数又は整数である、請求項1~5の何れか一項に記載の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
Yは、-O-(CR-CR-C(O)-であり、
とRは同一又は異なり、且つそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン及びC1-6アルキル基から選ばれ、
は、ハロアルキル基又はC3-6シクロアルキル基であり、
は、水素原子、ハロアルキル基及びC3-6シクロアルキル基から選ばれ、
或いは、RとRは、それらに連結された炭素原子と共にC3-6シクロアルキル基を形成し、
mは、0又は1である、
請求項1~6の何れか一項に記載の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
Yは、
【化2】
から選ばれ、
そのうち、YのO末端は、リンカーユニットLに連結される、請求項1~7の何れか一項に記載の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
リンカーユニット-L-は、-L-L-L-L-であり、
は、-(スクシンイミド-3-イル-N)-W-C(O)-、-CH-C(O)-NR-W-C(O)-及び-C(O)-W-C(O)-から選ばれ、そのうち、Wは、C1-8アルキル基、C1-8アルキル基-シクロアルキル基及び1~8個の原子の直鎖ヘテロアルキル基から選ばれ、前記ヘテロアルキル基は、N、O及びSから選ばれる1~3個のヘテロ原子を含み、そのうち、前記C1-8アルキル基、C1-8アルキル基-シクロアルキル基及び直鎖ヘテロアルキル基は、それぞれ独立的に、任意選択的に更にハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、アルキル基、クロロアルキル基、重水素化アルキル基、アルコキシ基及びシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
は-NR(CHCHO)pCHCHC(O)-、-NR(CHCHO)pCHC(O)-、-S(CH)pC(O)-及び化学結合から選ばれ、そのうち、pは1~20の整数であり、
は、2~7個のアミノ酸残基からなるペプチド残基であり、そのうち、前記アミノ酸残基はフェニルアラニン、グリシン、バリン、リジン、シトルリン、セリン、グルタミン酸及びアスパラギン酸のうちのアミノ酸からなるアミノ酸残基から選ばれ、且つ任意選択的に更にハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、アルキル基、クロロアルキル基、重水素化アルキル基、アルコキシ基及びシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
は、-NR(CR-、-C(O)NR、-C(O)NR(CH-及び化学結合から選ばれ、そのうち、tは1~6の整数であり、
、R及びRは同一又は異なり、且つそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、重水素化アルキル基及びヒドロキシアルキル基から選ばれ、
とRは同一又は異なり、且つそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン、アルキル基、ハロアルキル基、重水素化アルキル基及びヒドロキシアルキル基から選ばれる、
請求項1~8の何れか一項に記載の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
リンカーユニット-L-は、-L-L-L-L-であり、

【化3】
であり、sは2~8の整数であり、
は化学結合であり、
は、テトラペプチド残基であり、好ましくは、LはGGFGのテトラペプチド残基であり、
は、-NR(CR-であり、R、R又はRは同一又は異なり、且つそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基であり、tは1又は2であり、
そのうち、前記L末端はPcに連結され、L末端はYに連結される、
請求項1~9の何れか一項に記載の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
-L-は、
【化4】
である、
請求項1~10の何れか一項に記載の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
-L-Y-は、任意選択的に
【化5】
から選ばれる、
請求項1~11の何れか一項に記載の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であり、
【化6】
そのうち、
Pcは抗PSMA抗体又はその抗原結合断片であり、
mは、0~4の整数であり、
nは1~10で、nは小数又は整数であり、
は、ハロゲン、ハロアルキル基、重水素化アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アルコキシアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれ、
は、水素原子、ハロゲン、ハロアルキル基、重水素化アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アルコキシアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれ、
或いは、RとRは、それらに連結された炭素原子と共にシクロアルキル基又はヘテロシクリル基を形成し、
Wは、C1-8アルキル基、C1-8アルキル基-シクロアルキル基及び1~8個の原子の直鎖ヘテロアルキル基から選ばれ、前記ヘテロアルキル基は、N、O及びSから選ばれる1~3個のヘテロ原子を含み、そのうち、前記C1-8アルキル基、C1-8アルキル基-シクロアルキル基及び直鎖ヘテロアルキル基は、それぞれ独立的に、任意選択的に更にハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、アルキル基、クロロアルキル基、重水素化アルキル基、アルコキシ基及びシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
は-NR(CHCHO)pCHCHC(O)-、-NR(CHCHO)pCHC(O)-、-S(CH)pC(O)-及び化学結合から選ばれ、そのうち、pは1~20の整数であり、
は、2~7個のアミノ酸残基からなるペプチド残基であり、そのうち、前記アミノ酸残基はフェニルアラニン、グリシン、バリン、リジン、シトルリン、セリン、グルタミン酸及びアスパラギン酸のうちのアミノ酸からなるアミノ酸残基から選ばれ、且つ任意選択的に更にハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、アルキル基、クロロアルキル基、重水素化アルキル基、アルコキシ基及びシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
は水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、重水素化アルキル基及びヒドロキシアルキル基から選ばれ、
とRは同一又は異なり、且つそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン、アルキル基、ハロアルキル基、重水素化アルキル基及びヒドロキシアルキル基から選ばれる、
請求項1~10の何れか一項に記載の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項14】
一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であり、
【化7】
そのうち、
は、2~8の整数であり、
Pc、R、R、R、R及びR、mとnは請求項13に定義された通りである、
請求項1~10、13の何れか一項に記載の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項15】
前記抗体-薬物複合体は、
【化8】
から選ばれ、そのうち、
Pcは抗PSMA抗体又はその抗原結合断片であり、
nは1~10で、nは小数又は整数である、
請求項1~14の何れか一項に記載の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項16】
前記抗体-薬物複合体は、
【化9】
であり、そのうち、
nは1~8、好ましくは3~8であり、nは小数又は整数であり、
PMは抗PSMA抗体であり、それは配列番号9で示される重鎖と配列番号10で示される軽鎖を含む、
請求項1~15の何れか一項に記載の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項17】
一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩を調製する方法であって、
【化10】
Pc’を一般式(L-Y-D)で示される化合物とカップリング反応させ、一般式(Pc-L-Y-D)で示される化合物を得るステップを含み、
そのうち、
Pcは、抗PSMA抗体又はその抗原結合断片であり、好ましくは、Pcは請求項2~5の何れか一項に記載の抗PSMA抗体又はその抗原結合断片であり、Pc’は、Pcを還元して得られ、
n、m、W、L、L、R、R、R、R及びRは請求項13に定義された通りである、
方法。
【請求項18】
請求項1~16の何れか一項に記載の抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩と、1種又は複数種の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又はベクターとを含む、医薬組成物。
【請求項19】
請求項1~16の何れか一項に記載の抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩、或いは請求項18に記載の医薬組成物の、PSMAにより仲介された疾患又は病状を治療するための薬剤の調製における用途。
【請求項20】
請求項1~16の何れか一項に記載の抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩、或いは請求項18に記載の医薬組成物の、腫瘍及びがんを治療及び/又は予防する薬剤の調製における用途であって、前記腫瘍及びがんは、頭頸部扁平上皮がん、頭頸部がん、脳がん、神経膠腫、多形性膠芽腫、神経芽細胞腫、中枢神経系がん、神経内分泌腫瘍、咽頭がん、鼻咽頭がん、食道がん、甲状腺がん、悪性胸膜中皮腫、肺がん、乳がん、肝がん、肝細胞腫、肝胆がん、膵臓がん、胃がん、消化管がん、腸がん、結腸がん、結腸直腸がん、腎がん、透明細胞腎細胞がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がん、皮膚がん、黒色腫、白血病、リンパ腫、骨がん、軟骨肉腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、クルッケンベルグ腫瘍、骨髄増殖性腫瘍、扁平上皮がん、ユーイング肉腫、尿路上皮がん及びメルケル細胞がんが好ましく、好ましくは、前記リンパ腫は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、T細胞/組織球に富む大細胞型B細胞リンパ腫及びリンパ形質細胞性リンパ腫から選ばれ、前記肺がんは、非小細胞肺がん及び小細胞肺がんから選ばれ、前記白血病は、慢性骨髄細胞性白血病、急性骨髄細胞性白血病、リンパ球白血病、リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病及び骨髄細胞白血病から選ばれる、用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年3月25日に提出された中国特許出願(出願番号CN 202010218297.4)の優先権を主張する。
【0002】
本開示は抗PSMA抗体、抗PSMA抗体-エキサテカン類似体複合体、その調製方法、それらを含む医薬組成物、及びそのPSMAにより仲介された疾患又は病状を治療する薬剤の調製における用途、特に、抗がん剤の調製における用途に関する。
【背景技術】
【0003】
ここでの記載は、必ずしも従来技術を構成するものではなく、本開示に関連する背景情報のみを提供する。
【0004】
米国がん協会の2019年の統計データによると、米国の男性の新規癌症例数には、前立腺がんが174650例で、ランキングで1位になっている(CA CANCER J CLIN 2019; 69: 7-34)。臨床的局所性疾患には、一般的に手術と放射治療が選択される。局所的進行性又は転移性疾患には、一般的に、まず、手術又は化学方式でアンドロゲン(ADT)を除去する治療が採用される。去勢抵抗(CRPC)の初期は、Sipuleucel-T細胞免疫療法が選択可能であり、転移性去勢抵抗段階(mCRPC)の患者は、場合に応じてアンドロゲン阻害薬、アンドロゲン受容体拮抗薬、骨転移に対する放射線療法薬及び微小管に作用する化学療法薬などの薬物治療が選択可能である。しかし、何れの治療法も数カ月の生存期間しか延長できず、効果的な治療法を求めなければならない(European Urology, 66(6), 1190-1193; Journal of Nuclear Medicine, 59(2), 177-182.)。
【0005】
前立腺特異的膜抗原(PSMA)は、前立腺上皮細胞により発現される以外、非前立腺組織、例えば、小腸、腎近位尿細管や唾液腺により発現されてもよいが、そのレベルが前立腺組織よりもはるかに低い。ところで、PSMAは、前立腺がん細胞に高発現され、特に転移性疾患、ホルモン抵抗性疾患及び高度病変における発現が最も高い。また、PSMAは更に、全ての固形腫瘍の新生血管の内皮細胞に高発現されるが、正常血管には発現されないので、固形腫瘍治療の標的ともされる(Clinical Cancer Research, Vol. 3, 81-85, January 1997; Urologic Oncology: Seminars and Original Investigations, 1(1), 18-28.; Clin Cancer Res. 2010 November 15; 16(22): 5414-5423.)。アンドロゲンの除去又はアンドロゲン受容体拮抗薬による治療は、何れも前立腺特異的膜抗原(PSMA)の発現を引き上げることができ(J Nucl Med 2017; 58:81-84)、これにより、標的療法と伝統的なホルモン療法との併用治療のベースが提供される。
【0006】
PSMAは、グルタミン酸カルボキシペプチダーゼII(Glutamate carboxypeptidase II、GCPII)に属し、神経系においては、NAALDaseとして、NAAGを酵素分解してグルタミン酸を生成し、グルタミン酸の神経伝達に関連している。小腸においては、FOLH1として、葉酸-ポリ-γ-グルタミン酸(folyl-poly-γ-glutamate、FPGn)を分解して葉酸を生成し、葉酸の代謝に関連している(Curr Med Chem. 2012; 19(6): 856-870.)。しかし、前立腺においては、PSMAとして上皮細胞に発現され、前立腺がんの発生に関連している。PSMAは、細胞内における19個、膜貫通領域における24個、細胞外における707個という750個のアミノ酸からなる。結晶の結果によると、細胞外部分は、それぞれプロテアーゼ様ドメイン、先端ドメイン及びC末端ドメインという3つのドメインから構成される。三者とも基質との結合に関与し、前の両者は基質と直接結合するが、C末端ドメインは、PSMAの二量体への形成において機能する(The EMBO Journal (2006) 25, 1375-1384)。グルタミン酸カルボキシペプチダーゼII(GCPII)及びそのスプライス変異体、パラログの研究には、限りがある。PSM’を代表とするスプライス変異体のほとんどは、正常な前立腺組織細胞の内部に存在する。最も深く研究されたGCPIIホモログであるGCPIII又はNAALADase IIは、それ自体が有効である薬物標的として、正常なGCPII酵素活性の欠乏を補うことができ、GCPIIと68%の配列類似性を有する(Current Medicinal Chemistry, 2012, 19, 1316-1322; Frontiers in Bioscience, Landmark, 24, 648-687, March 1, 2019)。
【0007】
抗体-薬物複合体(antibody drug conjugate、ADC)は、モノクローナル抗体又は抗体断片をリンカー化合物により生物活性を有する細胞毒素に連結し、抗体の正常細胞及び腫瘍細胞表面抗原に対する結合の特異性及び細胞毒性物質の高効率が活用されると共に、抗体の治療効果が比較的に小さいこと、及び毒性物質の毒性や副作用が大きすぎることといった欠陥が回避される。これはつまり、従来の化学療法薬と比べて、抗体-薬物複合体は腫瘍細胞をより正確に殺し、正常細胞への影響を低減させることができる。
【0008】
現在、臨床又は臨床研究に適用されたADC薬物が複数種あり、例えば、Kadcylaは、Her2を標的とするトラスツズマブとDM1からなるADC薬剤である。同時に、臨床治療研究に適用された、PSMAを標的とするADC薬物もある。Cytogen社のPSMA-ADCは、第2相臨床試験段階にあり、MedImmune社のMEDI-3726及びBZL Biologics Inc社のMLN-2704は、第1相臨床試験の終了後、効果不良のために研究を中止した。異なる対策による新規のADC薬物の開発は、広い見通しを持っている。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、抗PSMA抗体-ADC及びその用途に関し、抗PSMA抗体又は抗原結合断片と細胞毒性物質であるエキサテカン類似体とを複合したADC薬物を提供する。
【0010】
本開示は、一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩を提供し、
【化1】
そのうち、
Yは、-O-(CR-CR-C(O)-、-O-CR-(CR-、-O-CR-、-NH-(CR-CR-C(O)-及び-S-(CR-CR-C(O)-から選ばれ、
とRは同一又は異なり、且つそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル基、ハロアルキル基、重水素化アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシアルキル基、シクロアルキル基及びヘテロシクリル基から選ばれ、或いは、RとRは、それらに連結された炭素原子と共にシクロアルキル基又はヘテロシクリル基を形成し、
は、ハロゲン、ハロアルキル基、重水素化アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アルコキシアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれ、Rは、水素原子、ハロゲン、ハロアルキル基、重水素化アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アルコキシアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれ、或いは、RとRは、それらに連結された炭素原子と共にシクロアルキル基又はヘテロシクリル基を形成し、
或いは、RとRは、それらに連結された炭素原子と共にシクロアルキル基又はヘテロシクリル基を形成し、
mは0~4の整数であり、非限定的な実例として、例えば、mは0、1、2、3及び4から選ばれ、
nは1~10で、nは小数又は整数であり、好ましくは、nは1~8、より好ましくは3~8、更に好ましくは3~7、最も好ましくは6~7である。
Lは、リンカーユニットであり、
Pcは、抗PSMA抗体又はその抗原結合断片であり、好ましくは、上記抗PSMA抗体又はその抗原結合断片は、PSMA細胞外ドメインに特異的に結合する。
【0011】
幾つかの実施形態において、上記の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、上記抗PSMA抗体又はその抗原結合断片は重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、そのうち、上記重鎖可変領域は配列番号1で示される重鎖可変領域と同じ配列であるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、上記軽鎖可変領域は配列番号2で示される軽鎖可変領域と同じ配列であるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含む。
【0012】
幾つかの実施形態において、上記の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、上記抗PSMA抗体又はその抗原結合断片は重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、そのうち、上記重鎖可変領域はそれぞれ配列番号3、配列番号4と配列番号5で示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、上記軽鎖可変領域はそれぞれ配列番号6、配列番号7と配列番号8で示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含む。
【0013】
幾つかの実施形態において、上記の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、上記抗PSMA抗体はマウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体である。
【0014】
幾つかの実施形態において、上記の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、上記抗PSMA抗体又はその抗原結合断片は重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、そのうち、上記重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号1で示され、又はそれと少なくとも90%~100%の配列同一性を有し、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は少なくとも100%の配列同一性を含むが、これらに限定されず、及び上記軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号2で示され、又はそれと少なくとも90%~100%の配列同一性を有し、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は少なくとも100%の配列同一性を含むが、これらに限定されない。
【0015】
幾つかの実施形態において、上記の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、上記抗PSMA抗体又はその抗原結合断片は、配列が配列番号1で示される重鎖可変領域と配列が配列番号2で示される軽鎖可変領域を含む。
【0016】
幾つかの実施形態において、上記の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、上記抗PSMA抗体は、抗体重鎖定常領域と軽鎖定常領域を含み、好ましくは、上記重鎖定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3とIgG4の定常領域及びその通常の変異体から選ばれ、上記軽鎖定常領域はヒト抗体κとλ鎖の定常領域及びその通常の変異体から選ばれる。
【0017】
幾つかの実施形態において、上記の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、上記抗PSMA抗体は配列番号9で示される重鎖と配列番号10で示される軽鎖を含む。
【0018】
幾つかの実施形態において、上記の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、nは1~8、好ましくは3~8、より好ましくは3~7であり、nは小数又は整数である。
【0019】
幾つかの実施形態において、上記の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、
そのうち、
Yは、-O-(CR-CR-C(O)-であり、
とRは同一又は異なり、且つそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン及びC1-6アルキル基から選ばれ、
は、ハロアルキル基又はC3-6シクロアルキル基であり、
は、水素原子、ハロアルキル基及びC3-6シクロアルキル基から選ばれ、
或いは、RとRは、それらに連結された炭素原子と共にC3-6シクロアルキル基を形成し、
mは、0又は1である。
【0020】
幾つかの実施形態において、上記の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、Yは、
【化2】
から選ばれ、
そのうち、YのO末端は、リンカーユニットLに連結される。
【0021】
幾つかの実施形態において、上記の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、リンカーユニット-L-は-L-L-L-L-であり、
は-(スクシンイミド-3-イル-N)-W-C(O)-、-CH-C(O)-NR-W-C(O)-又は-C(O)-W-C(O)-から選ばれ、そのうち、WはC1-8アルキル基、C1-8アルキル基-シクロアルキル基及び1~8個の原子の直鎖ヘテロアルキル基から選ばれ、上記ヘテロアルキル基はN、O及びSから選ばれる1~3個のヘテロ原子を含み、そのうち、上記C1-8アルキレン基、C1-8アルキル基-シクロアルキル基及び直鎖ヘテロアルキル基は、それぞれ独立的に、任意選択的に更にハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、アルキル基、クロロアルキル基、重水素化アルキル基、アルコキシ基及びシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
は-NR(CHCHO)pCHCHC(O)-、-NR(CHCHO)pCHC(O)-、-S(CH)pC(O)-及び化学結合から選ばれ、そのうち、pは1~20の整数であり、
は、2~7個のアミノ酸残基からなるペプチド残基であり、そのうち、上記アミノ酸はフェニルアラニン(F)、グリシン(G)、バリン(V)、リジン(K)、シトルリン、セリン(S)、グルタミン酸(E)及びアスパラギン酸(D)のうちのアミノ酸からなるアミノ酸残基から選ばれ、且つ任意選択的に更にハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、アルキル基、クロロアルキル基、重水素化アルキル基、アルコキシ基及びシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
は、-NR(CR-、-C(O)NR、-C(O)NR(CH-及び化学結合から選ばれ、そのうち、tは1~6の整数であり、
、R及びRは同一又は異なり、且つそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、重水素化アルキル基及びヒドロキシアルキル基から選ばれ、
とRは同一又は異なり、且つそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン、アルキル基、ハロアルキル基、重水素化アルキル基及びヒドロキシアルキル基から選ばれる。
【0022】
幾つかの実施形態において、上記の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、リンカーユニット-L-は-L-L-L-L-であり、

【化3】
であり、sは2~8の整数であり、
は化学結合であり、
はテトラペプチド残基であり、好ましくは、LはGGFG(配列番号13)(グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシン)のテトラペプチド残基であり、
は、-NR(CR-であり、R、R又はRは同一又は異なり、且つそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基であり、tは1又は2であり、
そのうち、上記L末端はPcに連結され、L末端はYに連結される。
【0023】
幾つかの実施形態において、上記の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、-L-は、
【化4】
である。
【0024】
幾つかの実施形態において、上記の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、-L-Y-は、任意選択的に
【化5】
から選ばれる。
【0025】
幾つかの実施形態において、上記の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、それは、一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であり、
【化6】
そのうち、
W、L、L、R、R、Rは、上記のリンカーユニット-L-に定義された通りであり、
Pc、n、R、R、mは、一般式(Pc-L-Y-D)に定義された通りであり、
具体的に、Pcは抗PSMA抗体又はその抗原結合断片であり、
mは0~4の整数であり、非限定的な実例として、例えば、mは0、1、2、3及び4から選ばれ、
nは1~10で、nは小数又は整数であり、好ましくは、nは1~8、より好ましくは3~8、更に好ましくは3~7、最も好ましくは6~7であり、
は、ハロゲン、ハロアルキル基、重水素化アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アルコキシアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれ、Rは、水素原子、ハロゲン、ハロアルキル基、重水素化アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アルコキシアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれ、或いは、RとRは、それらに連結された炭素原子と共にシクロアルキル基又はヘテロシクリル基を形成し、
Wは、C1-8アルキル基、C1-8アルキル基-シクロアルキル基又は1~8個の原子の直鎖ヘテロアルキル基から選ばれ、上記ヘテロアルキル基は、N、O及びSから選ばれる1~3個のヘテロ原子を含み、そのうち、上記C1-8アルキル基、シクロアルキル基及び直鎖ヘテロアルキル基は、それぞれ独立的に、任意選択的に更にハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、アルキル基、クロロアルキル基、重水素化アルキル基、アルコキシ基及びシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
は-NR(CHCHO)pCHCHC(O)-、-NR(CHCHO)pCHC(O)-、-S(CH)pC(O)-及び化学結合から選ばれ、そのうち、pは1~20の整数であり、
は、2~7個のアミノ酸残基からなるペプチド残基であり、そのうち、上記アミノ酸残基はフェニルアラニン(F)、グリシン(G)、バリン(V)、リジン(K)、シトルリン、セリン(S)、グルタミン酸(E)及びアスパラギン酸(D)のうちのアミノ酸からなるアミノ酸残基から選ばれ、且つ任意選択的に更にハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、アルキル基、クロロアルキル基、重水素化アルキル基、アルコキシ基及びシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
は水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、重水素化アルキル基及びヒドロキシアルキル基から選ばれ、
とRは同一又は異なり、且つそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン、アルキル基、ハロアルキル基、重水素化アルキル基及びヒドロキシアルキル基から選ばれる。
【0026】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、それは、一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であり、
【化7】
そのうち、
は、2~8の整数であり、
Pc、R、R、R、R、R、m及びnは、一般式(Pc-L-Y-D)に定義された通りである。
【0027】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、上記抗体-薬物複合体は、
【化8】
から選ばれ、そのうち、Pcとnは、一般式(Pc-L-Y-D)に定義された通りであリ、具体的に、Pcは抗PSMA抗体又はその抗原結合断片、又は上記の何れか一項に記載の抗PSMA抗体であり、
nは1~10で、nは小数又は整数であり、好ましくは、nは1~8、より好ましくは3~8、最も好ましくは3~7、最も好ましくは6~7である。
【0028】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、上記抗体-薬物複合体は、
【化9】
であり、そのうち、
nは1~8、好ましくは3~8であり、nは小数又は整数であり、
PMは抗PSMA抗体であり、それは配列番号9で示される重鎖と配列番号10で示される軽鎖を含む。
【0029】
本開示は、一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩を調製する方法を更に提供し、それは、
【化10】
還元されたPcであるPc’を、一般式(L-Y-D)で示される化合物とカップリング反応させ、一般式(Pc-L-Y-D)で示される化合物を得るステップを含み、
そのうち、
Pcは抗PSMA抗体又はその抗原結合断片であり、
n、m、W、L、L、R、R、R、R及びRは、上記の一般式(Pc-L-Y-D)に定義された通りである。
【0030】
本開示は、一般式(Pc-L’-D)で示される抗体薬物複合体を調製する方法を更に提供し、それは、
【化11】
上記の反応において、Pc’を式(L’-D)で示される化合物とカップリング反応させ、一般式(Pc-L’-D)で示される化合物を得るステップを含み、そのうち、
Pcは、上記の抗PSMA抗体又はその抗原結合断片であり、Pc’は還元されたPcであり、
nは、一般式(Pc-L-Y-D)に定義された通りである。
【0031】
本開示は、PM-9-Aで示される抗体薬物複合体を調製する方法を更に提供し、それは、
【化12】
PM’を式9-Aで示される化合物とカップリング反応させ、一般式(PM-9-A)で示される化合物を得るステップを含み、そのうち、
nは1~8、好ましくは3~8であり、nは小数又は整数であり、
PMは抗PSMA抗体であり、それは配列番号9で示される重鎖と配列番号10で示される軽鎖を含み、
PM’は、PMを還元して得られる。
【0032】
幾つかの実施形態において、nは抗体-薬物複合体の薬物負荷量を示し、DAR値と呼ばれてもよく、通常の方法、例えば、UV/可視分光法、質量分析、ELISA試験とHPLCにより測定可能であり、幾つかの実施形態において、nは0~10、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、又は2~8、又は2~7、又は2~4、又は3~8、又は3~7、又は3~6、又は4~7、又は4~6、又は4~5の平均値であり、幾つかの実施形態において、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10の平均値である。
【0033】
別の態様において、本開示は、本開示に係る抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩と、1種又は複数種の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又はベクターとを含む医薬組成物を提供する。幾つかの実施形態において、上記単位用量の医薬組成物は、0.1 mg~3000 mg又は1 mg~1000 mgの上記抗PSMA抗体又は上記抗体薬物複合体を含む。
【0034】
別の態様において、本開示は、本開示に係る抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩、或いはそれらを含む医薬組成物の薬剤としての用途を提供する。
【0035】
別の態様において、本開示は、本開示に係る抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩或いはそれらを含む医薬組成物の、PSMAにより仲介された疾患又は病状を治療するための薬剤の調製における用途を提供し、上記PSMAにより仲介された疾患又は病状は、PSMA高発現がん、PSMA中等発現がん又はPSMA低発現がんが好ましい。
【0036】
別の態様において、本開示は、本開示に係る抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩、或いはそれらを含む医薬組成物の、がんを治療又は予防するための薬剤の調製における用途を提供し、上記がんは、頭頸部扁平上皮がん、頭頸部がん、脳がん、神経膠腫、多形性膠芽腫、神経芽細胞腫、中枢神経系がん、神経内分泌腫瘍、咽頭がん、鼻咽頭がん、食道がん、甲状腺がん、悪性胸膜中皮腫、肺がん、乳がん、肝がん、肝細胞腫、肝細胞がん、肝胆がん、膵臓がん、胃がん、消化管がん、腸がん、結腸がん、結腸直腸がん、腎がん、透明細胞腎細胞がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がん、皮膚がん、黒色腫、白血病、リンパ腫、骨がん、軟骨肉腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、クルッケンベルグ腫瘍、骨髄増殖性腫瘍、扁平上皮がん、ユーイング肉腫、尿路上皮がん及びメルケル細胞がんが好ましく、好ましくは前立腺がんであり、より好ましくは、上記リンパ腫は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、T細胞/組織球に富む大細胞型B細胞リンパ腫及びリンパ形質細胞性リンパ腫から選ばれ、上記肺がんは、非小細胞肺がんと小細胞肺がんから選ばれ、上記白血病は、慢性骨髄細胞性白血病、急性骨髄細胞性白血病、リンパ球白血病、リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病及び骨髄細胞白血病から選ばれる。
【0037】
別の態様において、本開示は更に、腫瘍を治療及び/又は予防するための方法に関し、当該方法は、それを必要とする被験者に治療有効量の本開示に係る抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩或いはそれらを含む医薬組成物を投与することを含み、好ましくは、上記腫瘍は、PSMAの高発現に関連するがん、PSMA中等発現がん又はPSMA低発現がんである。
【0038】
別の態様において、本開示は更に、腫瘍又はがんを治療又は予防するための方法に関し、当該方法は、それを必要とする被験者に治療有効量の本開示に係る抗体薬物複合体又はその薬学的に許容される塩或いはそれらを含む医薬組成物を投与することを含み、上記腫瘍及びがんは、頭頸部扁平上皮がん、頭頸部がん、脳がん、神経膠腫、多形性膠芽腫、神経芽細胞腫、中枢神経系がん、神経内分泌腫瘍、咽頭がん、鼻咽頭がん、食道がん、甲状腺がん、悪性胸膜中皮腫、肺がん、乳がん、肝がん、肝細胞腫、肝細胞がん、肝胆がん、膵臓がん、胃がん、消化管がん、腸がん、結腸がん、結腸直腸がん、腎がん、透明細胞腎細胞がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がん、皮膚がん、黒色腫、白血病、リンパ腫、骨がん、軟骨肉腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、クルッケンベルグ腫瘍、骨髄増殖性腫瘍、扁平上皮がん、ユーイング肉腫、尿路上皮がん及びメルケル細胞がんが好ましく、好ましくは前立腺がんであり、より好ましくは、上記リンパ腫は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、T細胞/組織球に富む大細胞型B細胞リンパ腫及びリンパ形質細胞性リンパ腫から選ばれ、上記肺がんは、非小細胞肺がん及び小細胞肺がんから選ばれ、上記白血病は、慢性骨髄細胞性白血病、急性骨髄細胞性白血病、リンパ球白血病、リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病及び骨髄細胞白血病から選ばれる。
【0039】
別の態様において、本開示は、上記抗PSMA抗体又はその抗体-薬物複合体を薬剤、好ましくは、がん又は腫瘍を治療する薬剤、より好ましくは、PSMAにより仲介されたがんを治療する薬剤とすることを更に提供する。
【0040】
活性化合物(例えば、本開示に係るリガンド-薬物複合体、又はその薬学的に許容される塩)を任意の適切な経路による投与に適する形態にすることができ、活性化合物は単位用量の形態、又は被験者が単剤で自己投与可能な形態であることが好ましい。本開示に係る活性化合物又は組成物の単位用量の形態はトローチ剤、カプセル、カシェ剤、瓶詰めの薬液、ドラッグパウダー、顆粒剤、錠剤、坐剤、再生粉末又は液体製剤であってもよい。
【0041】
本開示に係る治療方法に使用される活性化合物又は組成物の投与量は、一般的に、疾患の重症度、被験者の体重及び活性化合物の相対効能によって変化される。一般的な目安として、好適な単位用量は0.1 mg~1000 mgであってもよい。
【0042】
本開示に係る医薬組成物は、活性化合物の他に、1種又は複数種の添加物を含んでもよく、上記添加物は充填剤、希釈剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤又は賦形剤などの成分から選ばれる。組成物は、投与方法によって、0.1~99重量%の活性化合物を含んでもよい。
【0043】
本開示により提供されるPSMA抗体及び抗体薬物複合体は、細胞表面抗原との良好な親和性、良好な細胞によるエンドサイトーシス効率及び強力な腫瘍阻害効率を有する共に、薬物応用範囲がより広く、腫瘍阻害効果と治療活性がより強く、安全性、薬物動態特性と創薬可能性(例えば、安定性)もより優れておりより、薬剤の臨床応用にはより適する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1A】本開示に係るADC又は抗体の細胞MDAPCaとの体外結合能力である。
図1B】本開示に係るADC又は抗体の細胞LNCaPとの体外結合能力である。
図1C】本開示に係るADC又は抗体の細胞22Rv1との体外結合能力である。
図1D】本開示に係るADC又は抗体の細胞PC-3との体外結合能力である。
図1E】本開示に係るADC又は抗体の細胞DU 145との体外結合能力である。
図2A】抗体PMのLNCaP細胞における体外エンドサイトーシス実験であり、2 Kの細胞、10%U-L IgG FBSである。
図2B】抗体PMの22Rv1細胞における体外エンドサイトーシス実験であり、2 Kの細胞、10%U-L IgG FBSである。
図3A】本開示に係る異なるADCによるLNCaP細胞に対する傷害作用であり、2 Kの細胞、4.5%のFBSが用いられた。
図3B】本開示における毒素(化合物2-B)によるLNCaP細胞に対する傷害作用であり、2 Kの細胞、4.5%のFBSが用いられた。
図3C】本開示に係る異なるADCによる22Rv1細胞に対する傷害作用であり、4 Kの細胞、4.5%のFBSが用いられた。
図3D】本開示における毒素(化合物2-B)による22Rv1細胞に対する傷害作用であり、4 Kの細胞、4.5%のFBSが用いられた。
図3E】本開示に係る異なるADCによるPC-3細胞に対する傷害作用であり、4 Kの細胞、4.5%のFBSが用いられた。
図3F】本開示における毒素(化合物2-B)によるPC-3細胞に対する傷害作用であり、2 Kの細胞、4.5%のFBSが用いられた。
図4A】本開示に係る異なる用量のADCによるヒト前立腺がん細胞22Rv1ヌードマウス移植腫瘍への阻害活性である。
図4B】本開示に係る異なる用量のADCによるヒト前立腺がん細胞22Rv1ヌードマウス移植腫瘍への阻害活性試験でのマウスの体重変化である。
図5A】本開示に係る異なる用量のADCによるヒト前立腺がん細胞22Rv1ヌードマウス移植腫瘍への阻害活性である。
図5B】本開示に係る異なる用量のADCによるヒト前立腺がん細胞22Rv1ヌードマウス移植腫瘍への阻害活性試験でのマウスの体重変化である。
図6A】本開示に係る異なる用量のADCによるヒト前立腺がん細胞LNCapのSCID Beigheマウスにおける移植腫瘍への阻害活性である。
図6B】本開示に係る異なる用量のADCによるヒト前立腺がん細胞LNCapのSCID Beigheマウスにおける移植腫瘍への阻害活性試験でのマウスの体重変化である。
図7】本開示に係るADC-2の薬物動態安定性であり、ここで、ADCの濃度は100 μg/mLである。
図8】本開示に係るADC-5の血漿安定性であり、ここで、ADCの濃度は100 μg/mLである。
図9】ADCの投与による担腫瘍ヌードマウスの22Rv1移植腫瘍への治療効果である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
用語
別途に制限のない限り、本願に使用される技術と科学用語の全ては、当業者により一般的に理解されているものと一致している。本願中の記載と類似又は同等の任意の方法と材料により本開示を実施又は試験することができるが、本願には、好ましい方法と材料が記載されている。本開示の記載及び特許請求の時に、次の定義に従って下記用語が使用されている。
【0046】
本開示において商品名が使用される場合は、当該商品名の製品の製剤、当該商品名の製品の薬剤及び活性薬物部分を含むことが意図されている。
【0047】
特に逆の説明がない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用される用語は、下記の意味を有する。
【0048】
「薬剤」又は「毒素」という用語は、腫瘍細胞内にその正常な増殖を比較的強く破壊する化学分子を有することができる細胞毒性薬剤を指す。細胞毒性薬剤は、原則的に、十分に高い濃度であれば、細胞を死滅させることができるが、特異性が欠けているため、腫瘍細胞を傷害すると同時に、正常細胞のアポトーシスも招き、重篤な副作用を引き起こす。当該用語は細菌、真菌、植物又は動物由来の小分子毒素又は酵素活性毒素、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位体)、化学療法薬、抗生物質及び核酸分解酵素を含む。
【0049】
「リンカーユニット」、「リンカー」、「連結ユニット」又は「連結断片」という用語は、一端がリガンド(本開示では抗体)に連結され、他端が薬物に連結される化学構造断片又は結合であり、その他のリンカーに連結されてからリガンド又は薬物に連結されてもよい。
【0050】
リンカーは、1種又は複数種のリンカー要素を含んでもよい。例示的なリンカー要素は、6-マレイミドカプロイル(「MC」)、マレイミドプロピオニル(「MP」)、バリン-シトルリン(「val-cit」又は「vc」)、アラニン-フェニルアラニン(「ala-phe」)、p-アミノベンジルオキシカルボニル(「PAB」)、N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(「SPP」)、N-スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1カルボキシレート(「SMCC」、本明細書では、「MCC」とも呼ばれる)及びN-スクシンイミジル(4-ヨード-アセチル)アミノベンゾエート(「SIAB」)を含む。リンカーは、伸長体、スペーサー及びアミノ酸ユニットという要素のうちの1つ又は複数或いはそれらの組み合わせを含んでもよく、例えば、US2005-0238649A1に記載された方法のようなこの分野での既知の方法により合成することができる。リンカーは、細胞において薬物を放出しやすくする「切断可能リンカー」であってもよい。例えば、酸不安定性リンカー(例えば、ヒドラゾン)、プロテアーゼ感受性(例えば、ペプチダーゼ感受性)リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー、又はジスルフィド含有リンカー(Chari et al.、Cancer Research 52:127-131(1992)、米国特許No.5,208,020)を使用してもよい。
【0051】
リンカー要素は、下記のものを含むが、これらに限定されない:
次のような構造を持つ、MC=6-マレイミドカプロイル:
【化13】
Val-Cit又は「vc」=バリン-シトルリン(プロテアーゼ切断可能リンカーにおける例示的なジペプチド)、
シトルリン=2-アミノ-5-ウレイドペンタン酸、
PAB=p-アミノベンジルオキシカルボニル(「自己犠牲」リンカー要素の例)、
Me-Val-Cit=N-メチル-バリン-シトルリン(そのうち、リンカーペプチド結合は、カテプシンBにより切断されないように修飾された)、
MC(PEG)6-OH=マレイミドカプロイル-ポリエチレングリコール(抗体システインに付着可能)、
SPP=N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエ一卜、
SPDP=N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート、
SMCC=スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート、
IT=イミノチオラン。
IT=イミノチオラン。
【0052】
「抗体薬物複合体」という用語は、抗体が連結ユニットにより生物活性を有する薬物に連結されたものを指す。本開示における「抗体薬物複合体」(antibody drug conjugate、ADC)は、モノクローナル抗体又は抗体断片を連結ユニットにより生物活性を有する毒性薬物に連結したものを指す。抗体は、直接的に、又はリンカーを介して薬物に複合されてもよい。nは各抗体の平均薬物モジュール数であり、整数でも小数でもよく、その範囲として、例えば、各抗体に対して約0~約20個の薬物モジュールであってもよく、幾つかの実施形態において、各抗体に対して1個~約10個の薬物モジュールであり、幾つかの実施形態において、各抗体に対して1個~約8個の薬物モジュールであり、例えば、2、3、4、5、6、7、8個の薬物モジュールである。本開示に係る抗体-薬物複合体の混合物の組成物において、各抗体の平均薬物負荷は約1個~約10個であり、約3個~約7個、約3個~約6個、約3個~約5個、約1個~約9個、約7個又は約4個を含むが、これらに限定されない。
【0053】
本開示に使用されるアミノ酸の3文字コードと1文字コードは、J. biol. chem, 243, p3558(1968)に記載された通りである。
【0054】
「抗体」という用語は、免疫グロブリンを指し、完全な抗体は、2本の同じ重鎖と2本の同じ軽鎖が鎖間ジスルフィド結合で連結してなるテトラペプチド鎖構造である。免疫グロブリンは、免疫グロブリン重鎖定常領域のアミノ酸組成と配列順序によって、5種類、つまりIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEという免疫グロブリンの5つのアイソタイプに分けられ、その対応する重鎖は、それぞれμ鎖、δ鎖、γ鎖、α鎖及びε鎖である。同一種類のIgは、そのヒンジ領域のアミノ酸組成及び重鎖ジスルフィド結合の数と位置の差によって、更に異なるサブクラスに分けることができ、例えば、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4に分けられてもよい。軽鎖は、定常領域によって、κ鎖又はλ鎖に分けられる。5種類のIgのそれぞれは、κ鎖又はλ鎖を有してもよい。
【0055】
全長抗体重鎖及び軽鎖は、N末端に近い約110個のアミノ酸の配列の変化が大きくて、可変領域(Fv領域)となり、C末端に近い残りのアミノ酸配列が比較的に安定的で、定常領域となる。可変領域は、3つの超可変領域(HVR)と、4つの配列が比較的に保存的なフレームワーク領域(FR)とを含む。3つの超可変領域は、抗体の特異性を決定し、相補性決定領域(CDR)とも称される。それぞれの軽鎖可変領域(LCVR)及び重鎖可変領域(HCVR)は、3つのCDR領域と、4つのFR領域とからなり、アミノ基末端からカルボキシ基末端へ、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配列されている。軽鎖の3つのCDR領域は、LCDR1、LCDR2とLCDR3であり、重鎖の3つのCDR領域は、HCDR1、HCDR2とHCDR3である。
【0056】
「完全ヒト化抗体」、「完全ヒト抗体」、「ヒト抗体」又は「全ヒト抗体」という用語は、「全ヒト化モノクローナル抗体」とも称され、その抗体の可変領域と定常領域は何れも免疫原性及び毒性や副作用が除去されたヒト由来のものである。全ヒト抗体の調製に関連する技術は、主に、ヒトハイブリドーマ技術、EBV形質転換Bリンパ球技術、ファージディスプレイ技術(phage display)、トランスジェニックマウス抗体調製技術(transgenic mouse)及び単一B細胞抗体調製技術などがある。
【0057】
「抗原結合断片」という用語は、抗原に特異的結合する能力を保持する抗体の1つ又は複数の断片を指す。全長抗体の断片により抗体の抗原結合機能を果たすことができる。「抗原結合断片」に含まれる結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、単鎖抗体(scFv)、二量化のV領域(二重抗体)、ジスルフィド結合安定化のV領域(dsFv)及びCDRを含むペプチドの抗原結合断片から選ばれ、例としては、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる1価断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含む2価断片であるF(ab’)断片、(iii)VHとCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体のシングルアームのVHとVLドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなる単一ドメイン又はdAb断片(Ward et al., (1989)Nature341:544-546)、及び(vi)分離した相補性決定領域(CDR)又は(vii)合成されたリンカーにより任意選択的に連結された2つ以上の分離したCDRの組合せ、を含む。なお、Fv断片の2つのドメインVL及びVHは、分離した遺伝子でコードされるが、その中のVL及びVH領域がペアになって1価分子を形成する単一のタンパク質鎖(単鎖Fv(scFv)と呼ばれ、例えば、Bird et al. (1988)Science242: 423-426、及びHuston et al. (1988)Proc. Natl. Acad. Sci USA85: 5879-5883を参照)を生成することができるように、組換え法により、合成されたリンカーでそれらを連結することができる。このような単鎖抗体も、抗体の「抗原結合断片」という用語に含まれることが意図される。このような抗体断片は、当業者に知られている通常の技術により得られ、また、完全な抗体と同じように、断片が機能性によってスクリーニングされる。抗原結合部分は、組換えDNA技術により、又は、完全な免疫グロブリンを酵素的若しくは化学的に切断することにより産生することができる。抗体は、例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4アイソフォーム)、IgA1、IgA2、IgD、IgE又はIgM抗体のような異なるアイソタイプの抗体であってもよい。
【0058】
通常、Fabは、プロテアーゼであるパパインプロテアーゼ(例えば、H鎖を切断する224位のアミノ酸残基)でIgG抗体分子を処理することにより得られた断片における、約50,000の分子量を有して抗原結合活性を有する抗体断片であり、そのうち、H鎖のN末端側の部分とL鎖は、ジスルフィド結合により一緒に結合される。
【0059】
通常、F(ab’)2は、酵素であるペプシンでIgGヒンジ領域におけるジスルフィド結合の下方部分を消化することにより得られた、分子量が約100,000で、抗原結合活性を有し、ヒンジ部位にて連結された2つのFab領域を含む抗体断片である。
【0060】
通常、Fab’は、上記F(ab’)2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することで得られた、分子量が約50,000で抗原結合活性を有する抗体断片である。
【0061】
また、Fab’断片をコードするDNAを、原核生物発現ベクター又は真核生物発現ベクターに挿入し、そしてベクターを原核生物又は真核生物に導入することにより、Fab’を発現して上記Fab’を産生することができる。
【0062】
「単鎖抗体」、「単鎖Fv」又は「scFv」という用語は、リンカーにより連結された抗体重鎖可変ドメイン(又はVH)と抗体軽鎖可変ドメイン(又はVL)を含む分子である。このようなscFv分子は、NH-VL-リンカー-VH-COOH又はNH-VH-リンカー-VL-COOHという一般的な構造を有してもよい。好適な従来技術のリンカーは、反復のGGGGSアミノ酸配列又はその変異体からなり、例えば、1~4個の反復変異体が用いられる(Holliger et al. (1993), Proc. Natl. Acad. Sci. USA90: 6444-6448)。本開示に使用可能な他のリンカーは、Alfthan et al.(1995), Protein Eng. 8:725-731、Choi et al.(2001), Eur.J.Immuno l. 31:94-106、Hu et al.(1996), Cancer Res. 56:3055-3061、Kipriyanov et al.(1999), J.Mol.Biol. 293:41-56及びRoovers et al.(2001), Cancer Immunol.により記載されている。
【0063】
「CDR」という用語は、抗体の可変ドメインにおいて抗原結合を促進する6つの主な超可変領域の1つである。通常、それぞれの重鎖可変領域には3つのCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3)があり、それぞれの軽鎖可変領域には3つのCDR(LCDR1、LCDR2、LCDR3)がある。CDRのアミノ酸配列境界は、「Kabat」番号付け規則(Kabat et al. (1991), 「Sequences of Proteins of Immunological Interest」, 第5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MDを参照)、「Chothia」番号付け規則(Al-Lazikani et al. , (1997)JMB 273:927-948を参照)及びImMunoGenTics(IMGT)番号付け規則(Lefranc M. P. , Immunologist, 7, 132-136(1999)、Lefranc、M. P. et al. , Dev. Comp. Immunol. , 27, 55-77(2003)などを含む種々の公知方案の何れか1つによって決定することができる。例えば、典型的な書式では、Kabat規則によれば、上記重鎖可変領域(VH)におけるCDRアミノ酸残基の番号は31~35(HCDR1)、50~65(HCDR2)及び95~102(HCDR3)で、軽鎖可変領域(VL)におけるCDRアミノ酸残基の番号は24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)及び89~97(LCDR3)である。Chothia規則によれば、VHにおけるCDRアミノ酸の番号は26~32(HCDR1)、52~56(HCDR2)及び95~102(HCDR3)で、VLにおけるアミノ酸残基の番号は26~32(LCDR1)、50~52(LCDR2)及び91~96(LCDR3)である。KabatとChothiaの両方を組み合わせたCDR定義によって、CDRは、ヒトVHにおけるアミノ酸残基である26~35(HCDR1)、50~65(HCDR2)と95~102(HCDR3)及びヒトVLにおけるアミノ酸残基である24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)と89~97(LCDR3)により構成される。IMGT規則によれば、VHにおけるCDRアミノ酸残基の番号は大体、26~35(CDR1)、51~57(CDR2)及び93~102(CDR3)で、VLにおけるCDRアミノ酸残基の番号は大体、27~32(CDR1)、50~52(CDR2)及び89~97(CDR3)である。IMGT規則によれば、抗体のCDR領域は、プログラムIMGT/DomainGap Alignによって決定することができる。特に説明のない限り、本開示に記載の6つのCDRは何れも、Kabat番号付け規則によって得られる。((Kabat E.A. et al.,(1991) Sequences of proteins of immunological interest. NIH Publication 91-3242))。例えば、Kabat規則によれば、上記重鎖可変領域(VH)におけるCDRアミノ酸残基の番号は31~35(HCDR1)、50~65(HCDR2)及び95~102(HCDR3)で、軽鎖可変領域(VL)におけるCDRアミノ酸残基の番号は24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)及び89~97(LCDR3)である。この分野における他の番号付け規則はChothia、IMGTなどである。
【0064】
「抗体フレームワーク領域」という用語は、可変ドメインVL又はVHの一部を指し、当該可変ドメインの抗原結合ループ(CDR)のステントとして用いられる。実質的に、それは、CDRを有しない可変ドメインである。
【0065】
「エピトープ」又は「抗原決定基」という用語は、抗原上の免疫グロブリン又は抗体によって結合される部位である。エピトープは通常、独特な空間配座で少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個の連続的又は非連続的なアミノ酸を含む。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular B iology, 第66巻, G.E.Morris, Ed. (1996)を参照する。
【0066】
「特異的結合」、「選択的結合」、「選択的に結合」及び「特異的に結合」という用語は、抗体又は抗原結合断片の、予め決定された抗原におけるエピトープに対する結合を指す。通常、抗体又は抗原結合断片は、約10-7 M未満、例えば、約10-8 M、10-9 M若しくは10-10 M未満又はそれ以下の親和性(KD)で結合される。
【0067】
「KD」という用語は、抗体ー抗原が互いに作用する解離平衡定数を指す。一般的に、本開示の抗体又は抗原結合断片は、約10-7 M未満、例えば、約10-8 M又は10-9 M未満の解離平衡定数(KD)でPSMA又はそのエピトープと結合し、例えば、本開示において、抗体と細胞表面抗原との親和性は、FACS法でKD値を測定することで得られる。
【0068】
「核酸分子」という用語は、DNA分子又はRNA分子を指す。核酸分子は、単鎖又は二重鎖であってもよいが、好ましくは二重鎖DNAである。核酸が別の核酸配列と共に機能的関係に置かれる場合、核酸は「効果的に連結されている」。例えば、プロモーター又はエンハンサーがコード配列の転写に影響を与えると、プロモーター又はエンハンサーは、上記コード配列に効果的に連結されている。
【0069】
アミノ酸配列の「配列同一性」は、アミノ酸配列のアラインメント過程において、最も大きい配列同一性の百分率が達成されるように、必要に応じてギャップを導入し、且つ、何れの保存的置換も配列同一性の一部とは見なさない、第1配列における第2配列中のアミノ酸残基と同様のアミノ酸残基の百分率を指す。アミノ酸の配列同一性の百分率を測定するために、アラインメントは、この分野の技術的範囲における種々の方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に取得可能なコンピュータソフトウェアにより、実現することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大アラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、測定アラインメントに適用されるパラメータを決定することができる。
【0070】
「発現ベクター」という用語は、それに連結された別の核酸を輸送可能な核酸分子を指す。一実施形態において、ベクターは、他のDNAセグメントをそれに連結可能な環状二本鎖DNA環を指す「プラスミド」である。別の実施形態において、ベクターは、他のDNAセグメントをウイルスゲノムに連結可能なウイルスベクターである。本願に開示されるベクターは、それらを導入した宿主細胞において自己複製することができ(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム性哺乳動物ベクター)、又は、宿主細胞に導入された後、宿主細胞のゲノムに整合されることで、宿主ゲノムと共に複製することができる(例えば、非エピソーム性哺乳動物ベクター)。
【0071】
「宿主細胞」という用語は、その中に発現ベクターが導入された細胞を指す。宿主細胞は、微生物(例えば、細菌)、植物又は動物細胞を含んでもよい。形質転換しやすい細菌は、大腸菌(Escherichia coli)やサルモネラ菌(Salmonella)の菌株などの腸内細菌科(enterobacteriaceae)のメンバー、枯草菌(Bacillus subtilis)などのバシラス科(Bacillaceae)、肺炎球菌(Pneumococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)及びインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)を含む。好適な微生物は、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)及びピキア酵母(Pichia pastoris)を含む。好適な動物宿主細胞系は、CHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞系)及びNS0細胞を含む。
【0072】
本開示の工学的な抗体又は抗原結合断片は、通常の方法により調製及び精製することができる。例えば、重鎖及び軽鎖をコードするcDNA配列は、クローンニングしてGS発現ベクターに組換えることができる。組換えた免疫グロブリン発現ベクターは、CHO細胞を安定してトランスフェクションすることができる。更に好ましい従来技術の一つとして、哺乳動物発現系は、特にFc領域の高度に保存的なN末端部位において、抗体のグリコシル化を引き起こすことになる。陽性クローンは、バイオリアクターの無血清培地において培養を拡大することで、抗体を産生する。抗体が分泌された培養液は、通常の技術により精製することができる。例えば、調整された緩衝液を含むA又はG Sepharose FFカラムで精製が行われる。非特異的に結合した成分を洗い流す。更に、pH勾配法により結合した抗体を溶離し、SDS-PAGEで抗体断片を検出し、収集する。抗体は、通常の方法によりろ過濃縮することができる。可溶性の混合物及び多量体は、分子ふるい、イオン交換などの通常の方法により除去されてもよい。得られた生成物は、直ちに例えば、-70℃で冷凍し、又は凍結乾燥しなければならない。
【0073】
「ペプチド」という用語は、2個以上のアミノ酸分子がペプチド結合により互いに連結されてなる分子を指し、タンパク質の構造及び機能的断片である。
【0074】
「アルキル基」という用語は、飽和脂肪族炭化水素基であり、1~20個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖基であり、1~12個(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11及び12個)の炭素原子を含むアルキル基が好ましく、1~10個の炭素原子を含むアルキル基がより好ましく、1~6個の炭素原子を含む(1個、2個、3個、4個、5個又は6個の炭素原子を含む)アルキル基が最も好ましい。その非限定的な例は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、n-ヘキシル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、n-オクチル基、2,3-ジメチルヘキシル基、2,4-ジメチルヘキシル基、2,5-ジメチルヘキシル基、2,2-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、4,4-ジメチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、2-メチル-2-エチルペンチル基、2-メチル-3-エチルペンチル基、n-ノニル基、2-メチル-2-エチルヘキシル基、2-メチル-3-エチルヘキシル基、2,2-ジエチルペンチル基、n-デシル基、3,3-ジエチルヘキシル基、2,2-ジエチルヘキシル基、及びその種々の分岐鎖異性体などを含む。より好ましくは1~6個の炭素原子を含む低級アルキル基であり、その非限定的な実施例はメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、n-ヘキシル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、2,3-ジメチルブチル基などを含む。アルキル基は、置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合に、置換基は任意の利用可能な連結部位で置換されてもよく、上記置換基は、独立的に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、メルカプト基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基及びオキソ基から選ばれる1つ又は複数の基であることが好ましい。
【0075】
「ヘテロアルキル基」という用語は、N、O又はSから選ばれる1つ又は複数のヘテロ原子を含むアルキル基であり、そのうち、アルキル基は、上記に定義された通りである。
【0076】
「アルキレン基」という用語は、アルカン母体の同じ炭素原子又は2つの異なる炭素原子から2つの水素原子を除去して誘導された2つの残基を有する飽和の直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基を指し、1~20個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖基であり、好ましくは1~12個(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11及び12個)の炭素原子を含み、より好ましくは1~6個の炭素原子を含む(1個、2個、3個、4個、5個又は6個の炭素原子を含む)アルキレン基である。アルキレン基の非限定的な例は、メチレン(-CH-)、1,1-エチリデン(-CH(CH)-)、1,2-エチリデン(-CHCH)-、1,1-プロピリデン(-CH(CHCH)-)、1,2-プロピリデン(-CHCH(CH)-)、1,3-プロピリデン(-CHCHCH-)、1,4-ブチリデン(-CHCHCHCH-)及び1,5-ブチリデン(-CHCHCHCHCH-)などを含むが、これらに限定されない。アルキレン基は、置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合に、置換基は任意の利用可能な連結部位で置換されてもよく、上記置換基は、独立的に、任意選択的にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、メルカプト基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基及びオキソ基から選ばれる1つ又は複数の基で置換されることが好ましい。
【0077】
「アルコキシ基」という用語は、-O-(アルキル基)及び-O-(非置換のシクロアルキル基)であり、そのうち、アルキル基又はシクロアルキル基の定義は上記の通りである。アルコキシ基の非限定的な例は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基を含む。アルコキシ基は、任意選択的に置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合に、置換基は、独立的に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、メルカプト基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基及びヘテロシクロアルキルチオ基から選ばれる1つ又は複数の基であることが好ましい。
【0078】
「シクロアルキル基」という用語は、飽和又は部分的に不飽和の単環式又は多環式の環状炭化水素置換基を指し、シクロアルキル環は3~20個の炭素原子を含み、好ましくは3~12個の炭素原子を含み、より好ましくは3~8個の炭素原子を含み、さらに好ましくは3~6個の炭素原子を含む。単環式シクロアルキル基の非限定的な例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロヘプチル基、シクロヘプタトリエニル基、シクロオクチル基などを含み、多環式シクロアルキル基は、スピロ環、縮合環及び架橋環のシクロアルキル基を含む。
【0079】
上記シクロアルキル環は、上記のシクロアルキル基(単環式環、スピロ環、縮合環及び架橋環を含む)がアリール基、ヘテロアリール基又はヘテロシクロアルキル環に縮合されており、そのうち、母体構造に連結された環がシクロアルキル基であるものを含み、その非限定的な実例は、インダニル基、テトラヒドロナフチル基及びベンゾシクロヘプタニル基などを含み、好ましくはベンゾシクロペンチル基及びテトラヒドロナフチル基である。
【0080】
シクロアルキル基は置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合、置換基は任意の利用可能な連結部位で置換されてもよく、上記置換基は、独立的に、任意選択的に水素原子、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換されることが好ましい。
【0081】
「ヘテロシクリル基」という用語は、3~20個の環原子を含む飽和又は部分的に不飽和の単環式又は多環式環状炭化水素置換基を指し、そのうち、1つ又は複数の環原子は、窒素、酸素又はS(O)(そのうち、pは0~2の整数である)から選ばれるヘテロ原子であるが、-O-O-、-O-S-又は-S-S-の環部分を含まず、残りの環原子は炭素である。好ましくは、1~4個がヘテロ原子である3~12個の環原子を含み、より好ましくは、1~3個がヘテロ原子である3~8個の環原子を含み、更に好ましくは、1~3個がヘテロ原子である3~6個の環原子を含み、最も好ましくは、1~3個がヘテロ原子である5又は6個の環原子を含む。単環式ヘテロシクリル基の非限定的な例は、ピロリジニル基、テトラヒドロピラニル基、1,2,3,6-テトラヒドロピリジル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基及びホモピペラジニル基などを含む。多環式ヘテロシクリル基は、スピロ環、縮合環及び架橋環のヘテロシクリル基を含む。
【0082】
上記ヘテロシクリル環は、上記のヘテロシクリル基(単環、スピロヘテロ環、縮合ヘテロ環及び架橋ヘテロ環を含む)がアリール基、ヘテロアリール基又はシクロアルキル環に縮合されており、そのうち、母体構造に連結された環がヘテロシクリル基であるものを含み、その非限定的な例は、
【化14】
を含む。
【0083】
ヘテロシクリル基は置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合、置換基は任意の利用可能な連結部位で置換されてもよく、上記置換基は、独立的に、任意選択的に水素原子、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換されることが好ましい。
【0084】
「アリール基」という用語は、共役したπ電子系を有する6~14員の全炭素単環式又は縮合多環式(つまり、隣接する炭素原子対を共有する環)の基であり、好ましくは6~10員であり、例えば、フェニル基及びナフチル基である。上記アリール環は、上記のアリール環がヘテロアリール基、ヘテロシクリル基又はシクロアルキル環に縮合されており、そのうち、母体構造に連結された環がアリール環であるものを含み、その非限定的な例は、
【化15】
を含む。
【0085】
アリール基は置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合、置換基は任意の利用可能な連結部位で置換されてもよく、上記置換基は、独立的に、任意選択的に水素原子、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換されることが好ましい。
【0086】
「ヘテロアリール基」という用語は、1~4個のヘテロ原子、5~14個の環原子を含む複素芳香族系を指し、そのうち、ヘテロ原子は酸素、硫黄及び窒素から選ばれる。ヘテロアリール基は、5~10員であることが好ましく、5員又は6員であることがより好ましく、例えば、フラニル基、チエニル基、ピリジル基、ピロリル基、N-アルキルピロリル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基などである。上記ヘテロアリール環は、上記のヘテロアリール基がアリール基、ヘテロシクリル基又はシクロアルキル環に縮合されており、そのうち、母体構造に連結された環がヘテロアリール環であるものを含み、その非限定的な例は、
【化16】
を含む。
【0087】
ヘテロアリール基は置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合、置換基は任意の利用可能な連結部位で置換されてもよく、上記置換基は、独立的に、任意選択的に水素原子、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換されることが好ましい。
【0088】
「ハロアルキル基」という用語は、アルキル基上の水素が1つ又は複数のハロゲンで置換されたものを指し、そのうち、アルキル基は、上記に定義された通りである。
【0089】
「重水素化アルキル基」という用語は、アルキル基上の水素が1つ又は複数の重水素原子で置換されたものを指し、そのうち、アルキル基は、上記に定義された通りである。
【0090】
「ヒドロキシアルキル基」という用語は、アルキル基上の水素が1つ又は複数のヒドロキシ基で置換されたものを指し、そのうち、アルキル基は、上記に定義された通りである。
【0091】
「ヒドロキシ基」という用語は、-OH基を指す。
【0092】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を指す。
【0093】
「アミノ基」という用語は、-NHを指す。
【0094】
「ニトロ基」という用語は、-NOを指す。
【0095】
「シアノ基」という用語は、-CNを指す。
【0096】
「任意選択的」又は「任意選択的に」は、その後に説明される事象又は状況が生じてもよいが、生じなくてもよいことを意味し、この説明は、当該事象又は状況が生じる場合と生じない場合を含む。例えば、「任意選択的にアルキル基で置換されたヘテロシクリル基」とは、アルキル基が存在してもよいが、必ずしもそうとは限らないことを意味し、この説明は、ヘテロシクリル基がアルキル基で置換された場合と、ヘテロシクリル基がアルキル基で置換されていない場合とを含む。
【0097】
「置換される」とは、基における1つ又は複数の水素原子、好ましくは多くとも5個、より好ましくは1個、2個又は3個の水素原子が、互いに独立的に置換基で置換されることを指す。置換基は、それらの化学的に可能な位置にしか位置せず、当業者は、過度の努力をすることなく(実験又は理論により)可能又は不可能な置換を決定することができる。例えば、遊離水素を有するアミノ基又はヒドロキシ基は不飽和(例えば、オレフィン)結合を有する炭素原子と結合する場合、不安定になる可能性がある。
【0098】
「医薬組成物」という用語は、1種又は複数種の本願に記載の化合物又はその生理学的に/薬学的に許容される塩又はプロドラッグと他の化学成分の混合物と、例えば生理学的に/薬学的に許容されるベクター及び賦形剤などの他の成分とを含むものを示す。医薬組成物は、生体への投与を促進し、活性成分の吸収に寄与して更に生物活性を発揮するためである。
【0099】
「薬学的に許容される塩」又は「薬学的に利用可能な塩」という用語は、本開示に係る抗体薬物複合体の塩を指し、このような塩は、被験者の体内に用いられる場合、安全性と有效性を有すると共に、所望の生物活性を有し、本開示に係る抗体薬物複合体は、少なくとも1つのアミノ基を含むため、酸と一緒に塩を形成することができ、薬学的に許容される塩の非限定的な例は、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、クエン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、アスコルビン酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、ソルビン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、サリチル酸塩、クエン酸水素塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩及びp-トルエンスルホン酸塩を含む。
【0100】
「薬物負荷量」又は「平均薬物負荷」は、薬物抗体比(Drug-to-Antibody Ratio、DAR)とも呼ばれ、即ち、ADC中のそれぞれの抗体に複合された薬物の平均数量である。それは、例えば、それぞれの抗体が約1~約10個の薬物に複合される範囲内であってもよく、また、ある実施例において、それぞれの抗体が約1~約8個の薬物に複合される範囲内であり、好ましくは2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、3~4、3~5、5~6、5~7、5~8と6~8の範囲から選ばれる。例示的に、薬物負荷量は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10の平均値であってもよい。本開示に係るADCの一般式は、上記一定の薬物負荷量の範囲内での抗体薬物複合体の集合を含む。本開示の実施形態において、薬物負荷量はnで示され、DAR値と称されてもよく、例示的に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10の平均値である。UV/可視分光法、質量分析、ELISA試験とHPLCなどの通常の方法により、薬物負荷量を測定することができる。
【0101】
リガンド薬物複合体の負荷量は、
(1)連結試薬とモノクローナル抗体とのモル比を制御することと、
(2)反応時間と温度を制御することと、
(3)異なる反応試薬を選択することと、
を含む非限定的な方法で制御することができる。
【0102】
通常の医薬組成物の調製は、中国薬典に示されている。
【0103】
「ベクター」という用語は、本開示の薬物に利用されるものとして、薬物の人体への入り方と体内での分布を変更し、薬物の放出速度を制御し、薬物を標的器官に輸送することができる系である。薬物ベクターの放出と標的系により、薬物の分解と損失を低減し、副作用を低下させ、生物学的利用能を向上させることができる。例えば、ベクターとしての高分子界面活性剤は、その独特な両親媒性構造のため、自己集合して様々な形態の凝集体を形成することができ、好ましい例は、例えば、ミセル、マイクロエマルジョン、ゲル、液晶、ベシクルなどである。これらの凝集体は、薬物分子を封入する能力を有すると共に、膜に対して良好な透過性を有し、良い薬物ベクターとすることができる。
【0104】
「賦形剤」という用語は、薬物製剤における主薬以外の付加物であり、添加物と呼ばれてもよい。例えば、トローチ剤中の結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、半固体製剤である軟膏剤やクリーム剤中の基質部分、液体製剤中の防腐剤、酸化防止剤、矯味剤、芳香剤、共溶剤、乳化剤、可溶化剤、浸透圧調整剤、着色剤などは何れも、賦形剤と呼ぶことができる。
【0105】
「希釈剤」という用語は充填剤とも呼ばれ、トローチ剤の重量及び体積を増加させることがその主な用途である。希釈剤の加入により、一定の体積の大きさが確保されるだけでなく、主成分の用量偏差が低減され、薬剤の圧縮成形性などが改善される。トローチ剤の薬物に油性成分が含まれる場合、「乾燥」状態を維持してトローチ剤の調製に寄与するために、吸収剤を加えて油性物質を吸収する必要がある。例えば、澱粉、乳糖、カルシウムの無機塩、微結晶セルロースなどである。
【0106】
医薬組成物は、滅菌注射用水溶液の形態であってもよい。使用される許容可能な溶媒と溶剤には、水、リンゲル液及び等張塩化ナトリウム溶液があってもよい。滅菌注射用製剤は、その中の活性成分が油相に溶解された滅菌注射用水中油型マイクロエマルジョンであってもよい。例えば、活性成分を大豆油とレシチンの混合物に溶解する。次に、油溶液を水とグリセリンの混合物に入れて処理してマイクロエマルジョンを形成する。局所で大量に注射することにより、注射液又はマイクロエマルジョンを被験者の血流に注入することができる。又は、本開示に係る化合物の一定のサイクル濃度を維持可能な方式で、溶液及びマイクロエマルジョンを投与することが好ましい。このような一定の濃度を維持するために、連続静脈内投与装置を使用することができる。このような装置の例は、Deltec CADD-PLUS. TM. 5400型の静脈注射ポンプである。
【0107】
医薬組成物は、筋肉内及び皮下投与に使用される滅菌注射水又は油懸濁液の形態であってもよい。当該懸濁液は、既知の技術に従って、上記の適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて調製することができる。滅菌注射用製剤は、無毒の胃腸外に許容可能な希釈剤又は溶剤において調製された滅菌注射溶液又は懸濁液、例えば、1,3-ブタンジオールにおいて調製された溶液であってもよい。また、滅菌固定油を溶剤又は懸濁媒体として便利に用いることができる。このために、合成されたモノグリセリド又はジグリセリドを含む任意の配合用固定油を用いることができる。また、油酸などの脂肪酸も、注射剤を調製することができる。
【0108】
合成方法
合成の目的を達成するために、以下の合成技術案を採用する。
一般式(PM-9-A)で示される化合物の調製方法であって、それは、
【化17】
PMを還元した後にPM’を得て、PM’を一般式(9-A)とカップリング反応させ、一般式(PM-9-A)で示される化合物を得るステップを含み、還元剤はTCEPが好ましく、特に、抗体におけるジスルフィド結合を還元することが好ましく、
そのうち、
PMは抗PSMA抗体又はその抗原結合断片であり、
nは1~10で、nは小数又は整数である。
【0109】
上記の明細書には、本開示の1つ又は複数種の実施形態の詳細が提出されている。本願の記載と類似又は同様の任意の方法と材料により本開示を実施又は試験することができるが、以下、好ましい方法と材料を説明する。明細書と特許請求の範囲により、本開示の他の特徴、目的及び利点は明らかになる。明細書と特許請求の範囲において、文脈で特に明記しない限り、単数形は複数の指示対象のことをも含む。特に定義しない限り、本願に使用される技術と科学用語の全ては、当業者により理解されている一般的な意味を持っている。明細書に引用される特許と出版物の全ては、引用により組み込まれている。以下の実施例は、本開示の好ましい実施形態を更に全面的に説明するために提出される。これらの実施例は、何れかの方式で、本開示の範囲を限定するものと理解すべきではなく、本開示の範囲は、特許請求の範囲により限定される。
【0110】
本開示の実施例又は試験例において具体的な条件が明記されていない実験方法は、一般的に通常の条件、又は原料や商品のメーカーにより推奨された条件に従う。Sambrookら、分子クローニング、実験室マニュアル、冷泉港実験室、及び現代分子生物学方法、Ausubelら著、Greene出版協会、Wiley Interscience、NYを参照する。具体的な供給源が明記されていない試薬は、市販される通常の試薬である。

実施例1. 抗体の調製
(一)PSMA抗体の調製
【0111】
1.1 抗体配列
本開示の抗体は、WO2003034903A2を参照して調製され、ここで、AB-PG1-XG1-006可変領域のアミノ酸配列は下記の通りである。
【0112】
AB-PG1-XG1-006重鎖可変領域:
【化18】

AB-PG1-XG1-006軽鎖可変領域:
【化19】
注:下線部分はKabat番号付け規則に従って決められたCDR領域である。
【0113】
【表1】
【0114】
1.2 全長抗体の構築
以上の配列に従って、プライマーPCRを設計してVH/VK遺伝子断片を構築して取得し、可変領域を得た。
【0115】
抗体可変領域は更に、定常領域遺伝子(CH1-Fc/CL)断片と相同組換えを行い、完全な抗体VH-CH1-Fc/VK-CLを構築した。
【0116】
構築された完全な全長抗体PM配列は下記の通りである。
【0117】
重鎖(IgG1)アミノ酸配列:
【化20】

軽鎖(Kappa)アミノ酸配列:
【化21】
【0118】
1.3 全長抗体の発現と精製
抗体の軽・重鎖をそれぞれ発現したプラスミドをHEK293E細胞にトランスフェクションし、6日後に発現上清を収集し、高速遠心分離により不純物を除去し、Protein Aカラムで精製した。A280読取値が基線に低減されるまで、PBSでカラムを洗い流した。pH3.0~pH3.5の酸性溶離液で目的タンパク質を溶離し、1 MのTris-HClで、pH8.0~9.0に中和した。溶離試料を適当に濃縮した後、PBSで平衡されたゲルクロマトグラフィーSuperdex200(GE)により更に精製することで、量体を除去し、単体ピークを収集し、分注して使用に備えた。
(二)対照抗体Lmabの調製
【0119】
対照抗体labetuzumab(Lmabと略称)は、WHO Drug Information Vol. 30, No. 1, 2016を参照して調製され、そのうち、重鎖と軽鎖アミノ酸配列は下記の通りである。
【0120】
>抗体重鎖配列Lmab-HC
【化22】

>抗体軽鎖配列Lmab-LC
【化23】

実施例2. 化合物の調製
【0121】
本開示の実施例において具体的な条件が明記されていない実験方法は、一般的に、通常の条件に従い、又は原料や商品のメーカーにより勧められた条件に従う。具体的な供給源が明記されていない試薬は、市販される通常の試薬である。
【0122】
化合物の構造は、核磁気共鳴(NMR)又は質量分析(MS)によって決定された。NMRの測定には、核磁気装置Bruker AVANCE-400が利用され、測定溶剤が重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)、重水素化クロロホルム(CDCl)、重水素化メタノール(CDOD)であり、内部標準がテトラメチルシラン(TMS)であり、化学シフトが10-6(ppm)単位で示された。
【0123】
MSの測定には、質量分析計FINNIGAN LCQAd(ESI)(メーカー:Thermo、型番:Finnigan LCQ advantage MAX)が使用された。
【0124】
UPLCの測定には、液体クロマトグラフ質量分析計Waters Acquity UPLC SQDが利用された。
【0125】
HPLCの測定には、高速液体クロマトグラフAgilent 1200DAD(Sunfire C18 150×4.6 mmカラム)及び高速液体クロマトグラフWaters 2695-2996(Gimini C18 150×4.6 mmカラム)が利用された。
【0126】
UV-HPLCの測定には、紫外線分光光度計Thermo NanoDrop 2000が利用された。
【0127】
増殖阻害率及びIC50値の測定には、マイクロプレートリーダーPHERA starFS(独BMG社)が利用された。
【0128】
薄層クロマトグラフィー用シリカゲルプレートとしては、煙台黄海HSGF254又は青島GF254シリカゲルプレートが使用され、薄層クロマトグラフィー(TLC)に使用されたシリカゲルプレートの仕様は0.15 mm~0.2 mmであり、薄層クロマトグラフィーによる製品の分離精製用のシリカゲルプレートの仕様は、0.4 mm~0.5 mmである。
【0129】
カラムクロマトグラフィーは、一般的に、煙台黄海200~300メッシュのシリカゲルをベクターとして利用した。
【0130】
本開示に係る既知の出発原料は、この分野での既知の方法を採用して又はそれに従って合成してもよく、又はABCR GmbH & Co.KG、Acros Organnics、Aldrich Chemical Company、韶遠化学科技(Accela ChemBio Inc)、達瑞化学品などの会社から購入してもよい。
【0131】
実施例において、特に断りのない限り、反応は、何れもアルゴン雰囲気又は窒素雰囲気で行われた。
【0132】
アルゴン雰囲気又は窒素雰囲気は、反応フラスコに容量が約1 Lのアルゴン又は窒素バルーンが連結されていることを指す。
【0133】
水素雰囲気は、反応フラスコに容量が約1 Lの水素バルーンが連結されていることを指す。
【0134】
加圧水素化反応には、Parr 3916EKX型水素化装置及び清藍QL-500型水素発生器又はHC2-SS型水素化装置が使用された。
【0135】
水素化反応は、一般的に、真空引きして水素を充填する操作を3回繰り返した。
【0136】
マイクロ波反応には、CEM Discover-S 908860型マイクロ波反応器が使用された。
【0137】
実施例において、特に断りのない限り、反応中の溶液は、水溶液を指す。
【0138】
実施例において、特に断りのない限り、反応の温度は、室温である。
【0139】
室温は最適な反応温度であり、温度範囲が20℃~30℃である。
【0140】
実施例におけるpH=6.5のPBS緩衝液の調製:8.5 gのKHPO、8.56 gのKHPO.3HO、5.85 gのNaCl、1.5 gのEDTAを取ってフラスコに入れ、2 Lに定容し、超音波でそれを完全に溶解させ、振り混ぜると得た。
【0141】
化合物の精製に利用されたカラムクロマトグラフィーの溶離剤の系及び薄層クロマトグラフィーの展開溶媒の系は、A:ジクロロメタンとイソプロピルアルコール系、B:ジクロロメタンとメタノール系、及びC:石油エーテルと酢酸エチル系を含み、溶剤の体積比は、化合物の極性によって調整してもよく、少量のトリエチルアミンと酸性又は塩基性試薬などを加えて調整してもよい。
【0142】
本開示の化合物の一部は、Q-TOF LC/MSによって特徴付けられている。Q-TOF LC/MSは、精密質量数四重極-飛行時間型質量分析計Agilent 6530及び超高速液体クロマトグラフAgilent 1290-Infinity(Agilent Poroshell 300SB-C8 5 μm、2.1×75 mmカラム)が利用された。
【0143】
本開示に係る抗体薬物複合体のY-D薬物部分については、PCT/CN2019/107873が参照され、関連する化合物の合成及び試験は本特許に引用されている。その中の非限定的な実施例の合成は、以下のように引用されている。
【0144】
実施例2-1
N-((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)-1-ヒドロキシシクロプロパン-1-カルボキサミド 1
【化24】
エキサテカンメシル酸塩1b(2.0 mg、3.76 μmol、特許出願「EP0737686A1」に開示された方法で調製された)に1 mLのN,N-ジメチルホルムアミドを加え、氷水浴で0~5℃に冷却し、1滴のトリエチルアミンを滴下し、反応液が清澄になるまで撹拌した。反応液に1-ヒドロキシシクロプロピルギ酸1a(1.4 mg、3.7 μmol、「Tetrahedron Letters, 25(12), 1269-72; 1984」という公知の方法で調製された)及び4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(3.8 mg、13.7 μmol)を順に加え、加入完了後、0~5℃で2時間撹拌しながら反応させた。反応液に水5 mLを加えて反応をクエンチし、反応液を酢酸エチル(8 mL×3)で抽出し、有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム溶液(5 mL×2)で洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、ろ液を減圧濃縮し、得られた残留物を薄層クロマトグラフィーにより展開溶媒系Bで精製し、表題生成物1(1.6 mg、収率:82.1%)を得た。
MS m/z (ESI): 520.2 [M+1]
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 7.90-7.84 (m, 1H), 7.80-7.68(m, 1H), 5.80-5.70 (m, 1H), 5.62-5.54(m, 2H), 5.44-5.32 (m, 2H), 5.28-5.10(m, 2H), 3.40-3.15 (m, 3H), 2.44 (s, 3H), 2.23(t, 1H), 2.06-1.75 (m, 2H), 1.68-1.56 (m, 1H), 1.22-1.18 (m, 2H), 1.04-0.98 (m, 2H), 0.89 (t, 3H).
【0145】
実施例2-2
(S)-2-シクロプロピル-N-((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)-2-ヒドロキシアセトアミド 2-A
(R)-2-シクロプロピル-N-((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)-2-ヒドロキシアセトアミド 2-B
【化25】
1b(4 mg、7.53 μmol)に2 mLのエタノール及び0.4 mLのN,N-ジメチルホルムアミドを加え、アルゴンガスで3回置換し、氷水浴で0~5℃に冷却し、0.3 mLのN-メチルモルホリンを滴下し、清澄になるまで反応液を撹拌した。反応液に2-シクロプロピル-2-ヒドロキシ酢酸2a(2.3 mg、19.8 μmol、特許出願「WO2013106717」に開示された方法で調製された)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(3 mg、22.4 μmol)及び1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(4.3 mg、22.4 μmol)を順に加え、加入完了後、0~5℃で1時間撹拌しながら反応させた。氷水浴を撤去し、30℃に加熱して2時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、得られた粗製品である化合物2を高速液体クロマトグラフィーで精製し(分離条件:カラム:XBridge Prep C18 OBD 5 μm 19*250 mm、移動相:A-水(10 mmol NHOAc)、B-アセトニトリル、勾配溶離、流速:18 mL/分)、その対応する成分を収集し、減圧濃縮して表題生成物(2-A:1.5 mg、2-B:1.5 mg)を得た。
MS m/z (ESI): 534.0 [M+1]。
単一配置の化合物2-B(比較的短い保持時間)
UPLC分析:保持時間:1.06分間、純度:88%(カラム:ACQUITY UPLC BEHC18 1.7 μm 2.1*50 mm、移動相:A-水(5 mmol NHOAc)、B-アセトニトリル)。
H NMR (400 MHz, DMSO-d): δ 8.37 (d, 1H), 7.76 (d, 1H), 7.30 (s, 1H), 6.51 (s, 1H), 5.58-5.56 (m, 1H), 5.48 (d, 1H), 5.41 (s, 2H), 5.32-5.29 (m, 2H), 3.60 (t, 1H), 3.19-3.13 (m, 1H), 2.38 (s, 3H), 2.20-2.14 (m, 1H), 1.98 (q, 2H), 1.87-1.83 (m, 1H), 1.50-1.40 (m, 1H), 1.34-1.28 (m, 1H), 0.86 (t, 3H), 0.50-0.39 (m, 4H)。
単一配置の化合物2-A(比較的長い保持時間)
UPLC分析:保持時間:1.10分間、純度:86%(カラム:ACQUITY UPLC BEHC18 1.7 μm 2.1*50 mm、移動相:A-水(5 mmol NHOAc)、B-アセトニトリル)。
H NMR (400 MHz, DMSO-d): δ 8.35 (d, 1H), 7.78 (d, 1H), 7.31 (s, 1H), 6.52 (s, 1H), 5.58-5.53 (m, 1H), 5.42 (s, 2H), 5.37 (d, 1H), 5.32 (t, 1H), 3.62 (t, 1H), 3.20-3.15 (m, 2H), 2.40 (s, 3H), 2.25-2.16 (m, 1H), 1.98 (q, 2H), 1.87-1.82 (m, 1H), 1.50-1.40 (m, 1H), 1.21-1.14 (m, 1H), 0.87 (t, 3H), 0.47-0.35 (m, 4H)。
【0146】
実施例2-3
(S)-N-((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパンアミド 3-A
(R)-N-((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパンアミド 3-B
【化26】
1b(5.0 mg、9.41 μmol)に2 mLのエタノール及び0.4 mLのN,N-ジメチルホルムアミドを加え、氷水浴で0~5℃に冷却し、0.3 mLのN-メチルモルホリンを滴下し、反応液が清澄になるまで撹拌した。反応液に3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロピオン酸3a(4.1 mg、28.4 μmol、供給元:Alfa)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(3.8 mg、28.1 μmol)及び1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(5.4 mg、28.2 μmol)を順に加え、加入完了後、0~5℃で10分間撹拌しながら反応させた。氷水浴を撤去し、30℃に加熱して8時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、得られた粗製品である化合物3を高速液体クロマトグラフィーで精製し(分離条件:カラム:XBridge Prep C18 OBD 5 μm 19*250 mm、移動相:A-水(10 mmol NHOAc)、B-アセトニトリル、勾配溶離、流速:18 mL/分)、その対応する成分を収集し、減圧濃縮して表題生成物(1.5 mg、1.5 mg)を得た。
MS m/z (ESI): 561.9 [M+1]。
単一配置の化合物(比較的短い保持時間)
UPLC分析:保持時間:1.11分間、純度:88%(カラム:ACQUITY UPLC BEHC18 1.7 μm 2.1*50 mm、移動相:A-水(5 mmol NHOAc)、B-アセトニトリル)。
H NMR (400 MHz, DMSO-d): δ 8.94 (d, 1H), 7.80 (d, 1H), 7.32 (s, 1H), 7.20 (d, 1H), 6.53 (s, 1H), 5.61-5.55 (m, 1H), 5.45-5.23 (m, 3H), 5.15-5.06 (m, 1H), 4.66-4.57 (m, 1H), 3.18-3.12 (m, 1H), 2.40 (s, 3H), 2.26-2.20 (m, 1H), 2.16-2.08 (m, 1H), 2.02-1.94 (m, 1H), 1.89-1.82 (m, 1H), 1.50-1.40 (m, 1H), 0.87 (t, 3H)。
単一配置の化合物(比較的長い保持時間)
UPLC分析:保持時間:1.19分間、純度:90%(カラム:ACQUITY UPLC BEHC18 1.7 μm 2.1*50 mm、移動相:A-水(5 mmol NHOAc)、B-アセトニトリル)。
H NMR (400 MHz, DMSO-d): δ 8.97 (d, 1H), 7.80 (d, 1H), 7.31 (s, 1H), 7.16 (d, 1H), 6.53 (s, 1H), 5.63-5.55 (m, 1H), 5.45-5.20 (m, 3H), 5.16-5.07 (m, 1H), 4.66-4.57 (m, 1H), 3.18-3.12 (m, 1H), 2.40 (s, 3H), 2.22-2.14 (m, 1H), 2.04-1.95 (m, 2H), 1.89-1.82 (m, 1H), 1.50-1.40 (m, 1H), 0.87 (t, 3H)。
【0147】
実施例2-4
N-((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)-1-ヒドロキシシクロペンタン-1-カルボキサミド 4
【化27】
1b(3.0 mg、5.64 μmol)に1 mLのN,N-ジメチルホルムアミドを加え、氷水浴で0~5℃に冷却し、1滴のトリエチルアミンを滴下し、反応液が清澄になるまで撹拌した。反応液に1-ヒドロキシ-シクロペンタンギ酸4a(2.2 mg、16.9 μmol、特許出願「WO2013106717」に開示された方法で調製された)及び4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(4.7 mg、16.9 μmol)を順に加え、加入完了後、0~5℃で1時間撹拌しながら反応させた。反応液に水5 mLを加えて反応をクエンチし、反応液を酢酸エチル(10 mL×3)で抽出し、有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム溶液(5 mL×2)で洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、ろ液を減圧濃縮し、得られた残留物を薄層クロマトグラフィーにより展開溶媒系Bで精製し、表題生成物4(2.5 mg、収率:80.9%)を得た。
MS m/z (ESI): 548.0 [M+1]。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 7.73-7.62 (m, 2H), 5.75-5.62 (m, 1H), 5.46-5.32 (m, 2H), 5.26-5.10 (m, 1H), 3.30-3.10 (m, 1H), 2.43 (s, 3H), 2.28-2.20 (m, 2H), 2.08-1.84 (m, 8H), 1.69-1.58 (m, 2H), 1.04-1.00 (m, 2H), 0.89 (t, 3H)。
【0148】
実施例2-5
N-((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)-1-(ヒドロキシメチル)シクロプロパン-1-カルボキサミド 5
【化28】
1b(2.0 mg、3.76 μmol)に1 mLのN,N-ジメチルホルムアミドを加え、氷水浴で0~5℃に冷却し、1滴のトリエチルアミンを滴下し、反応液が清澄になるまで撹拌した。反応液に1-(ヒドロキシメチル)-シクロペンタンギ酸5a(0.87 mg、7.5 μmol、特許出願「WO201396771」に開示された方法で調製された)及び4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(2 mg、7.24 μmol)を順に加え、加入完了後、0~5℃で2時間撹拌しながら反応させた。反応液に水5 mLを加えて反応をクエンチし、反応液を酢酸エチル(8 mL×3)で抽出し、有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム溶液(5 mL×2)で洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、ろ液を減圧濃縮し、得られた残留物を薄層クロマトグラフィーにより展開溶媒系Bで精製し、表題生成物5(1.0 mg、収率:50%)を得た。
MS m/z (ESI): 533.9 [M+1]。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 8.07 (s, 1H), 7.23-7.18 (m, 2H), 6.71-6.64 (m, 1H), 6.55-6.51 (m, 1H), 5.36-5.27 (m, 2H), 4.67-4.61 (m, 2H), 3.53-3.48 (m, 1H), 3.30-3.22 (m, 2H), 3.18-3.13 (m, 1H), 2.71-2.61 (m, 2H), 2.35-2.28 (m, 1H), 2.04-1.91 (m, 4H), 1.53-1.40 (m, 3H), 0.91-0.75 (m, 4H)。
【0149】
実施例2-6
N-((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)-1-(ヒドロキシメチル)シクロブタン-1-カルボキサミド 6
【化29】
1b(3.0 mg、5.64 μmol)に1 mLのN,N-ジメチルホルムアミドを加え、氷水浴で0~5℃に冷却し、1滴のトリエチルアミンを滴下し、反応液が清澄になるまで撹拌した。反応液に1-(ヒドロキシメチル)シクロブタン-1-ギ酸6a(2.2 mg、16.9 μmol、「Journal of the American Chemical Society, 2014, vol.136, #22, p.8138-8142」という文献に開示された方法で調製された)及び4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(4.7 mg、16.9 μmol)を順に加え、加入完了後、0~5℃で1時間撹拌しながら反応させた。反応液に水5 mLを加えて反応をクエンチし、反応液を酢酸エチル(10 mL×3)で抽出し、有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム溶液(5 mL×2)で洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、ろ液を減圧濃縮し、得られた残留物を薄層クロマトグラフィーにより展開溶媒系Bで精製し、表題生成物6(2.1 mg、収率:67.9%)を得た。
MS m/z (ESI): 548.0 [M+1]。
H NMR (400 MHz, DMSO-d): δ 7.85-7.62 (m, 1H), 6.88 (br,1H), 5.87-5.48 (m,2H), 5.47-5.33 (m,1H), 5.31-5.06 (m,1H), 4.25-3.91 (m, 2H), 3.25 (br, 1H), 2.60-2.32 (m, 3H), 2.23 (t, 1H), 2.15-1.95 (m, 3H), 1.70-1.56 (m, 2H), 1.41-1.17 (m, 9H), 1.03 (s, 1H), 0.95-0.80 (m, 2H)。
【0150】
実施例2-7
N-((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)-1-ヒドロキシシクロブタン-1-カルボキサミド 7
【化30】
1b(3.0 mg、5.64 μmol)に2 mLのエタノール及び0.4 mLのN,N-ジメチルホルムアミドを加え、氷水浴で0~5℃に冷却し、0.3 mLのN-メチルモルホリンを滴下し、反応液が清澄になるまで撹拌した。反応液に1-ヒドロキシシクロブタンギ酸7a(2.0 mg、17.22 μmol、供給元:薬石)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(2.3 mg、17.0 μmol)及び1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(3.2 mg、16.7 μmol)を順に加え、加入完了後、0~5℃で10分間撹拌しながら反応させた。氷水浴を撤去し、室温で2時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、得られた残留物を薄層クロマトグラフィーにより展開溶媒系Bで精製し、表題生成物7(2.5 mg、収率:83.1%)を得た。
MS m/z (ESI): 534.0 [M+1]。
H NMR (400 MHz, DMSO-d): δ 8.28 (d, 1H), 7.75 (d, 1H), 7.29 (s, 1H), 6.51 (s, 1H), 6.12 (s, 1H), 5.59-5.51 (m, 1H), 5.41 (s, 2H), 5.20-5.01 (m, 2H), 3.27-3.17 (m, 1H), 3.15-3.05 (m, 1H), 2.71-2.63 (m, 1H), 2.37 (s, 3H), 2.12-2.05 (m, 1H), 2.03-1.94 (m, 2H), 1.92-1.78 (m, 4H), 1.50-1.42 (m, 1H), 0.90-0.83 (m, 4H)。
【0151】
実施例2-8
1-(((S)-7-ベンジル-20-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-3,6,9,12,15-ペンタオキソ-2,5,8,11,14-ペンタアザイコシル)オキシ)-N-((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)シクロプロパン-1-カルボキサミド 8
【化31】

ステップ1
1-((2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)アセチルアミノ)メトキシ)シクロプロパン-1-カルボン酸ベンジル 8c
1-ヒドロキシシクロプロパン-1-カルボン酸ベンジル8a(104 mg、0.54 mmol、特許出願「US2005/20645」に開示された方法で調製された)及び(2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)アセチルアミノ)メチル酢酸エステル8b(100 mg、0.27 mmol、特許出願「CN105829346A」に開示された方法で調製された)を反応フラスコに加え、5 mLのテトラヒドロフランを加え、アルゴンガスで3回置換し、氷水浴で0~5℃に降温し、カリウムtert-ブトキシド(61 mg、0.54 mmol)を加え、氷浴を撤去し、室温まで昇温して10分間撹拌し、氷水20 mLを加え、酢酸エチル(5 mL×2)及びクロロホルム(5 mL×5)で抽出し、有機相を合わせて濃縮した。得られた残留物を3 mLの1,4-ジオキサンに溶解し、水0.6 mLを加え、炭酸水素ナトリウム(27 mg、0.32 mmol)及びクロロギ酸-9-フルオレニルメチル(70 mg、0.27 mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。水20 mLを加え、酢酸エチル(8 mL×3)で抽出し、有機相を飽和塩化ナトリウム溶液(20 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、ろ液を減圧濃縮し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより展開溶媒系Bで精製し、表題生成物8c(100 mg、収率:73.6%)を得た。
MS m/z (ESI): 501.0 [M+1]。
【0152】
ステップ2
1-((2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)アセチルアミノ)メトキシ)シクロプロパン-1-カルボン酸 8d
8c(50 mg、0.10 mmol)をテトラヒドロフランと酢酸エチル(V:V=2:1)の混合溶媒3 mLに溶解し、パラジウム炭素(25 mg、含有量10%)を加え、水素ガスで3回置換し、室温で1時間撹拌しながら反応させた。反応液を珪藻土でろ過し、ろ過ケーキをテトラヒドロフランですすぎ、ろ液を濃縮して表題生成物8d(41 mg、収率:100%)を得た。
MS m/z (ESI): 411.0 [M+1]。
【0153】
ステップ3
(9H-フルオレン-9-イル)メチル(2-(((1-(((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)アミノカルボニル)シクロプロポキシ)メチル)アミノ)-2-オキソエチル)カルバメート 8e
1b(7 mg、0.013 mmol)を反応フラスコに加え、1 mLのN,N-ジメチルホルムアミドを加え、アルゴンガスで3回置換し、氷水浴で0~5℃に降温し、1滴のトリエチルアミンを滴下し、8d(7 mg、0.017 mmol)の0.5 mLのN,N-ジメチルホルムアミド溶液を加え、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(7 mg、0.026 mmol)を加え、氷浴で35分間撹拌しながら反応させた。10 mLの水を加え、酢酸エチル(5 mL×3)で抽出し、有機相を飽和塩化ナトリウム溶液(10 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、ろ液を減圧濃縮し、得られた残留物を薄層クロマトグラフィーにより展開溶媒系Bで精製し、表題生成物8e(8.5 mg、収率:78.0%)を得た。
MS m/z (ESI): 828.0 [M+1]。
【0154】
ステップ4
1-((2-アミノアセチルアミノ)メトキシ)-N-((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)シクロプロパン-1-カルボキサミド 8f
8e(4 mg、4.84 μmol)を0.2 mLのジクロロメタンに溶解し、0.1 mLのジエチルアミンを加え、室温で2時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、2 mLのトルエンを加えて減圧濃縮することを2回繰り返し、3 mLのn-ヘキサンを加えてスラリー化し、上層のn-ヘキサンを注ぎ出すことを3回繰り返し、減圧濃縮して粗製品である表題生成物8f(2.9 mg)を得て、生成物を精製せずにそのまま次のステップの反応に使用した。
MS m/z (ESI): 606.0 [M+1]。
【0155】
ステップ5
1-(((S)-7-ベンジル-20-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-3,6,9,12,15-ペンタオキソ-2,5,8,11,14-ペンタアザイコシル)オキシ)-N-((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)シクロプロパン-1-カルボキサミド 8
粗製品8f(2.9 mg、4.84 μmol)を0.5 mLのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、アルゴンガスで3回置換し、氷水浴で0~5℃に降温し、(S)-2-(-2-(-2-(6-(-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサンアミノ)アセチルアミノ)アセチルアミノ)-3-フェニルプロピオン酸8g(2.7 mg、5.80 μmol、特許出願「EP2907824」に開示された方法で調製された)の0.3 mLのN,N-ジメチルホルムアミド溶液を加え、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(2.7 mg、9.67 μmol)を加え、氷浴で30分間撹拌しながら反応させ、氷浴を撤去し、室温まで昇温して15分間撹拌した。反応液を高速液体クロマトグラフィーで精製し(分離条件:カラム:XBridge Prep C18 OBD 5 μm 19*250 mm、移動相:A-水(10 mmol NHOAc)、B-アセトニトリル、勾配溶離、流速:18 mL/min)、その対応する成分を収集し、減圧濃縮して表題生成物8(2 mg、収率:39.0%)を得た。
MS m/z (ESI): 1060.0 [M+1]。
H NMR (400 MHz, DMSO-d): δ 9.01 (d, 1H), 8.77 (t, 1H), 8.21 (t, 1H), 8.08-7.92 (m, 2H), 7.73 (d, 1H), 7.28 (s, 1H), 7.24-7.07 (m, 4H), 6.98 (s, 1H), 6.50 (s, 1H), 5.61 (q, 1H), 5.40 (s, 2H), 5.32 (t, 1H), 5.12 (q, 2H), 4.62 (t, 1H), 4.52 (t, 1H), 4.40-4.32 (m, 1H), 3.73-3.47 (m, 8H), 3.16-3.04 (m, 2H), 2.89 (dd, 1H), 2.69-2.55 (m, 2H), 2.37-2.23 (m, 4H), 2.12-1.93 (m, 4H), 1.90-1.74 (m, 2H), 1.52-1.38 (m, 4H), 1.33-1.11 (m, 5H), 0.91-0.81 (m, 4H)。
【0156】
実施例2-9
N-((2R,10S)-10-ベンジル-2-シクロプロピル-1-(((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)アミノ)-1,6,9,12,15-ペンタオキソ-3-オキサ-5,8,11,14-テトラアザヘキサデカン-16-イル)-6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサンアミド 9-A
N-((2S,10S)-10-ベンジル-2-シクロプロピル-1-(((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)アミノ)-1,6,9,12,15-ペンタオキソ-3-オキサ-5,8,11,14-テトラアザヘキサデカン-16-イル)-6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサンアミド 9-B
【化32】

ステップ1
2-シクロプロピル-2-ヒドロキシ酢酸ベンジル 9a
2a(1.3 g、11.2 mmol、特許出願「WO2013/106717」に開示された方法で調製された)を50 mLのアセトニトリルに溶解し、炭酸カリウム(6.18 g、44.8 mmol)、臭化ベンジル(1.33 mL、11.2 mmol)及びテトラブチルヨウ化アンモニウム(413 mg、1.1 mmol)を順に加えた。反応液を室温で48時間撹拌し、珪藻土でろ過し、ろ過ケーキを酢酸エチル(10 mL)ですすぎ、ろ液を合わせて減圧濃縮し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより展開溶媒系Cで精製し、表題生成物9a(2 g、収率:86.9%)を得た。
【0157】
ステップ2
10-シクロプロピル-1-(9H-フルオレン-9-イル)-3,6-ジオキソ-2,9-ジオキサ-4,7-ジアザウンデカン-11-酸ベンジル 9b
9a(120.9 mg、0.586 mmol)及び8b(180 mg、0.489 mmol)を反応フラスコに加え、4 mLのテトラヒドロフランを加え、アルゴンガスで3回置換し、氷水浴で0~5℃に降温し、カリウムtert-ブトキシド(109 mg、0.98 mmol)を加え、氷水浴を撤去し、室温まで昇温して40分間撹拌し、10 mLの氷水を加え、酢酸エチル(20 mL×2)及びクロロホルム(10 mL×5)で抽出し、有機相を合わせて濃縮した。得られた残留物を4 mLのジオキサンに溶解し、水2 mLを加え、炭酸水素ナトリウム(49.2 mg、0.586 mmol)及びクロロギ酸-9-フルオレニルメチル(126 mg、0.49 mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。水20 mLを加え、酢酸エチル(10 mL×3)で抽出し、有機相を飽和塩化ナトリウム溶液(20 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、ろ液を減圧濃縮した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより展開溶媒系Cで精製し、表題生成物9b(48 mg、収率:19%)を得た。
MS m/z (ESI): 515.0 [M+1]。
【0158】
ステップ3
10-シクロプロピル-1-(9H-フルオレン-9-イル)-3,6-ジオキソ-2,9-ジオキサ-4,7-ジアザウンデカン-11-酸 9c
9b(20 mg、0.038 mmol)をテトラヒドロフランと酢酸エチル(V:V=2:1)の混合溶媒4.5 mLに溶解し、パラジウム炭素(12 mg、含有量10%、乾燥型)を加え、水素ガスで3回置換し、室温で1時間撹拌しながら反応させた。反応液を珪藻土でろ過し、ろ過ケーキを酢酸エチルですすぎ、ろ液を濃縮して粗製品である表題生成物9c(13 mg)を得て、生成物を精製せずにそのまま次のステップの反応を行った。
MS m/z (ESI): 424.9 [M+1]。
【0159】
ステップ4
(9H-フルオレン-9-イル)メチル(2-(((1-シクロプロピル-2-(((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)アミノ)-2-オキソエトキシ)メチル)アミノ)-2-オキソエチル)カルバメート 9d
1b(10 mg、18.8 μmol)を反応フラスコに入れ、1 mLのN,N-ジメチルホルムアミドを加え、アルゴンガスで3回置換し、氷水浴で0~5℃に降温し、1滴のトリエチルアミンを滴下し、粗製品9c(13 mg、30.6 μmol)を加え、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(16.9 mg、61.2 μmol)を加え、氷浴で40分間撹拌しながら反応させた。10 mLの水を加え、酢酸エチル(10 mL×3)で抽出し、有機相を合わせた。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液(10 mL×2)で洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、ろ液を減圧濃縮した。得られた残留物を薄層クロマトグラフィーにより展開溶媒系Bで精製し、表題生成物9d(19 mg、収率:73.6%)を得た。
MS m/z (ESI): 842.1[M+1]。
【0160】
ステップ5
2-((2-アミノアセチルアミノ)メトキシ)-2-シクロプロピル-N-((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)アセトアミド 9e
9d(19 mg、22.6 μmol)を2 mLのジクロロメタンに溶解し、1 mLのジエチルアミンを加え、室温で2時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、1 mLのトルエンを加えて減圧濃縮することを2回繰り返した。残留物に3 mLのn-ヘキサンを加えてスラリー化し、静置後に上清液を注ぎ出し、固体を保留した。固体残留物を減圧濃縮し、オイルポンプにより乾燥させて粗製品である表題生成物9e(17 mg)を得て、生成物を精製せずにそのまま次のステップの反応に使用した。
MS m/z (ESI): 638.0[M+18]。
【0161】
ステップ6
N-((2R,10S)-10-ベンジル-2-シクロプロピル-1-(((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)アミノ)-1,6,9,12,15-ペンタオキソ-3-オキサ-5,8,11,14-テトラアザヘキサデカン-16-イル)-6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサンアミド 9-A
N-((2S,10S)-10-ベンジル-2-シクロプロピル-1-(((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)アミノ)-1,6,9,12,15-ペンタオキソ-3-オキサ-5,8,11,14-テトラアザヘキサデカン-16-イル)-6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサンアミド 9-B
粗製品9e(13.9 mg、22.4 μmol)を0.6 mLのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、アルゴンガスで3回置換し、氷水浴で0~5℃に降温し、8g(21.2 mg、44.8 μmol)の0.3 mLのN,N-ジメチルホルムアミド溶液を加え、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(18.5 mg、67.3 μmol)を加え、氷浴で10分間撹拌しながら反応させ、氷浴を撤去し、室温まで昇温して1時間撹拌し、反応させて化合物9を生成した。反応液を高速液体クロマトグラフィーで精製し(分離条件:カラム:XBridge Prep C18 OBD 5 μm 19*250 mm、移動相:A-水(10 mmol NHOAc)、B-アセトニトリル、勾配溶離、流速:18 mL/min)、その対応する成分を収集し、減圧濃縮して表題生成物(9-A:2.4 mg、9-B:1.7 mg)を得た。
MS m/z (ESI): 1074.4 [M+1]。
単一配置の化合物9-A(比較的短い保持時間)
UPLC分析:保持時間:1.14分間、純度:85%(カラム:ACQUITY UPLC BEHC18 1.7 μm 2.1*50 mm、移動相:A-水(5 mmol NHOAc)、B-アセトニトリル)。
H NMR (400 MHz, DMSO-d): δ 8.60 (t, 1H), 8.51-8.49 (d, 1H), 8.32-8.24 (m, 1H), 8.13-8.02 (m, 2H), 8.02-7.96 (m, 1H), 7.82-7.75 (m, 1H), 7.31 (s, 1H), 7.26-7.15 (m, 4H), 6.99 (s, 1H), 6.55-6.48 (m, 1H), 5.65-5.54 (m, 1H), 5.41 (s, 2H), 5.35-5.15 (m, 3H), 4.74-4.62 (m, 1H), 4.54-4.40 (m, 2H), 3.76-3.64 (m,4H), 3.62-3.48 (m, 2H), 3.20-3.07 (m, 2H), 3.04-2.94 (m, 1H), 2.80-2.62 (m, 1H), 2.45-2.30 (m, 3H), 2.25-2.15 (m, 2H), 2.15-2.04 (m, 2H), 1.93-1.78 (m, 2H), 1.52-1.39 (m, 3H), 1.34-1.12 (m, 5H), 0.87 (t, 3H), 0.64-0.38 (m, 4H)。
単一配置の化合物9-B(比較的長い保持時間)
UPLC分析:保持時間:1.16分間、純度:89%(カラム:ACQUITY UPLC BEHC18 1.7 μm 2.1*50 mm、移動相:A-水(5 mmol NHOAc)、B-アセトニトリル)。
H NMR (400 MHz, DMSO-d): δ 8.68-8.60 (m, 1H), 8.58-8.50 (m, 1H), 8.32-8.24 (m, 1H), 8.13-8.02 (m, 2H), 8.02-7.94 (m, 1H), 7.82-7.75 (m, 1H), 7.31 (s, 1H), 7.26-7.13 (m, 3H), 6.99 (s, 1H), 6.55-6.48 (m, 1H), 5.60-5.50 (m, 1H), 5.41 (s, 2H), 5.35-5.15 (m, 2H), 4.78-4.68 (m, 1H), 4.60-4.40 (m, 2H), 3.76-3.58 (m, 4H), 3.58-3.48 (m, 1H), 3.20-3.10 (m, 2H), 3.08-2.97 (m, 2H), 2.80-2.72 (m, 2H), 2.45-2.30 (m, 3H), 2.25-2.13 (m, 2H), 2.13-2.04 (m, 2H), 2.03-1.94 (m, 2H), 1.91-1.78 (m, 2H), 1.52-1.39 (m, 3H), 1.34-1.12 (m, 4H), 0.91-0.79 (m, 3H), 0.53-0.34 (m, 4H)。
【0162】
実施例3. ADCの調製
ADC薬物負荷量の分析
実験の目的及び原理
紫外線分光光度法(UV-Vis)によりADC負荷量を測定した。機器:紫外線分光光度計Thermo NanoDrop 2000。その原理は、ある波長でのADCの全吸光値が、薬物とモノクローナル抗体の当該波長での吸光値の累積に等しいことである。
【0163】
実験の方法
コハク酸ナトリウム緩衝液が入ったキュベットを、参照吸収セル及び試料測定吸収セルにそれぞれ置いてから、溶媒ブランクを差し引いた後、供試品溶液が入ったキュベットを試料測定吸収セルに置き、280 nm及び370 nmでの吸光度を測定した。
【0164】
結果の算出:
(1) A280nm=εmab-280bCmab+εDrug-280bCDrug
εDrug-280:薬物の280 nmでの平均モル吸光係数が5100であり、
Drug:薬物の濃度、
εmab-280:モノクローナル抗体の280 nmでの平均モル吸光係数は214600であり、
mab:モノクローナル抗体の濃度、
b:光路長は1 cmである。
同様に、試料の370 nmでの全吸光値方程式を得ることができる:
(2) A370nm=εmab-370bCmab+εDrug-370bCDrug
εDrug-370:薬物の370 nmでの平均モル吸光係数が19000であり、
Drug:薬物の濃度、
εmab-370:モノクローナル抗体の370 nmでの吸光係数は0であり、
mab:モノクローナル抗体の濃度、
b:光路長は1 cmである。
【0165】
(1)と(2)の2つの方程式により、モノクローナル抗体及び薬物の2つの検出波長での吸光係数及び濃度のデータと合わせてADCにおける薬物の負荷量を算出することができる。
薬物負荷量=CDrug/Cmab
【0166】
異なるDAR値であるPSMA抗体-薬物複合体PM-9-Aの調製の実施例
下記の実施例は、本開示に係るADCの調製プロセスである。そのうち、実施例3-4、実施例3-5、実施例3-7、実施例3-11では、抗体PMは、システインにおけるメルカプト基を介して連結ユニットを持つ薬物9-Aに複合して反応し、抗体薬物複合PM-9-A (DAR=約3~4)を調製し、実施例3-1~実施例3-3及び実施例3-6では、抗体PMは、システインにおけるメルカプト基を介して連結ユニットを持つ薬物9-Aに複合して反応し、PSMA ADC分子PM-9-A(DAR=約6-7)を調製し、実施例3-8~実施例3-10では、抗体PMは、システインにおけるメルカプト基を介して連結ユニットを持つ薬物VcMMAE(瀚香生物科技、CAS 646502-53-6)と反応して複合体分子PM-VcMMAEを対照として調製した。
【0167】
抗体と薬物の割合、反応量の規模、及びその他の条件の調整により、異なるDAR値(n)である抗体薬物複合体を得ることができ、好ましいDAR値は1~8、より好ましくは3~8、最も好ましくは3~7である。
【0168】
(一)異なるDAR値である抗体薬物複合PM-9-Aの調製
【化33】
【0169】
実施例3-1 ADC-1
37℃の条件下で、抗体PMのPBS緩衝水溶液(pH=6.5の0.05 MのPBS緩衝水溶液、10.0 mg/mL、0.27 mL、18 nmol)に、調製されたトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の水溶液(10 mM、9.8 μL、98 nmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とう反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0170】
化合物9-A(0.3 mg、277 nmol)を20 μLのジメチルスルホキシドに溶解し、上記反応液に加え、水浴振とう機に置き、25℃で3時間振とう反応させ、反応を止めた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05 MのPBS緩衝水溶液、0.001 MのEDTA含有)、式PM-9-Aで示される複合体の例示的な生成物ADC-1のPBS緩衝液(0.18 mg/mL、11 mL)を得て、4℃で貯蔵した。
UV-Visにより平均値を算出した:n=6.31。
【0171】
実施例3-2 ADC-2
37℃の条件下で、抗体PMのPBS緩衝水溶液(pH=6.5の0.05 MのPBS緩衝水溶液、10.0 mg/mL、3.6 mL、243 nmol)に、調製されたトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の水溶液(10 mM、128.9 μL、1289 nmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とう反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0172】
化合物9-A(3.93 mg、3649 nmol)を200 μLのジメチルスルホキシドに溶解し、上記反応液に加え、水浴振とう機に置き、25℃で3時間振とう反応させ、反応を止めた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05 MのPBS緩衝水溶液、0.001 MのEDTA含有)、式PM-9-Aで示される複合体の例示的な生成物ADC-2のPBS緩衝液(1.93 mg/mL、15.4 mL)を得て、4℃で貯蔵した。
UV-Visにより平均値を算出した:n=6.63。
【0173】
実施例3-3 ADC-3
37℃の条件下で、抗体PMのPBS緩衝水溶液(pH=6.5の0.05 MのPBS緩衝水溶液、10.0 mg/mL、10 mL、676 nmol)に、調製されたトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の水溶液(10 mM、358.1 μL、3581 nmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とう反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0174】
化合物9-A(10.91 mg、10135 nmol)を480 μLのジメチルスルホキシドに溶解し、上記反応液に加え、水浴振とう機に置き、25℃で3時間振とう反応させ、反応を止めた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05 MのPBS緩衝水溶液、0.001 MのEDTA含有)、式PM-9-Aで示される複合体の例示的な生成物ADC-3のPBS緩衝液(3.47 mg/mL、25 mL)を得て、4℃で貯蔵した。
UV-Visにより平均値を算出した:n=6.9。
【0175】
実施例3-4 ADC-4
37℃の条件下で、抗体PMのPBS緩衝水溶液(pH=6.5の0.05 MのPBS緩衝水溶液、10.0 mg/mL、0.21 mL、14 nmol)に、調製されたトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の水溶液(10 mM、3.5 μL、35 nmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とう反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0176】
化合物9-A(0.15mg、139 nmol)を20 μLのジメチルスルホキシドに溶解し、上記反応液に加え、水浴振とう機に置き、25℃で3時間振とう反応させ、反応を止めた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05 MのPBS緩衝水溶液、0.001 MのEDTA含有)、式PM-9-Aで示される複合体の例示的な生成物ADC-4のPBS緩衝液(0.28 mg/mL、4.6 mL)を得て、4℃で貯蔵した。
UV-Visにより平均値を算出した:n=3.68。
【0177】
実施例3-5 ADC-5
37℃の条件下で、抗体PMのPBS緩衝水溶液(pH=6.5の0.05 MのPBS緩衝水溶液、10.0 mg/mL、5.23 mL、353 nmol)に、調製されたトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の水溶液(10 mM、84.8 μL、848 nmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とう反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0178】
化合物9-A(3.8 mg、3534 nmol)を260 μLのジメチルスルホキシドに溶解し、上記反応液に加え、水浴振とう機に置き、25℃で3時間振とう反応させ、反応を止めた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05 MのPBS緩衝水溶液、0.001 MのEDTA含有)、式PM-9-Aで示される複合体の例示的な生成物ADC-5のPBS緩衝液(2.48 mg/mL、18.2 mL)を得て、4℃で貯蔵した。
UV-Visにより平均値を算出した:n=3.89。
【0179】
実施例3-6 ADC-6
37℃の条件下で、抗体PMのPBS緩衝水溶液(pH=6.5の0.05 MのPBS緩衝水溶液、10.0 mg/mL、3.5 mL、236 nmol)に、調製されたトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の水溶液(10 mM、125.3 μL、1253 nmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とう反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0180】
化合物9-A(3.82 mg、3547 nmol)を150 μLのジメチルスルホキシドに溶解し、上記反応液に加え、水浴振とう機に置き、25℃で3時間振とう反応させ、反応を止めた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05 MのPBS緩衝水溶液、0.001 MのEDTA含有)、式PM-9-Aで示される複合体の例示的な生成物ADC-6のPBS緩衝液(1.83 mg/mL、14 mL)を得て、4℃で貯蔵した。
UV-Visにより平均値を算出した:n=6.61。
【0181】
実施例3-7 ADC-7
37℃の条件下で、抗体PMのPBS緩衝水溶液(pH=6.5の0.05 MのPBS緩衝水溶液、10.0 mg/mL、14.68 mL、992 nmol)に、調製されたトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の水溶液(10 mM、238.1 μL、2381 nmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とう反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0182】
化合物9-A(10.67 mg、9919 nmol)を420 μLのジメチルスルホキシドに溶解し、上記反応液に加え、水浴振とう機に置き、25℃で3時間振とう反応させ、反応を止めた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05 MのPBS緩衝水溶液、0.001 MのEDTA含有)、式PM-9-Aで示される複合体の例示的な生成物ADC-7のPBS緩衝液(3.61 mg/mL、37 mL)を得て、4℃で貯蔵した。
UV-Visにより平均値を算出した:n=3.93。
【0183】
(二)対照抗体薬物複合PM-VcMMAEの調製(特許WO2007002222A2を参照)
【化34】

実施例3-8 ADC-8
37℃の条件下で、抗体PMのPBS緩衝水溶液(pH=6.5の0.05 MのPBS緩衝水溶液、10.0 mg/mL、2.5 mL、169 nmol)に、調製されたトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の水溶液(10 mM、42.2 μL、422 nmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とう反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0184】
化合物VcMMAE(2.22 mg、1689 nmol)を100 μLのジメチルスルホキシドに溶解し、上記反応液に加え、水浴振とう機に置き、25℃で3時間振とう反応させ、反応を止めた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05 MのPBS緩衝水溶液、0.001 MのEDTA含有)、式PM-VcMMAEで示される複合体の例示的な生成物ADC-8のPBS緩衝液(1.76 mg/mL、12 mL)を得て、4℃で貯蔵した。
CE-SDSにより平均値を算出した:n=4.47。
【0185】
実施例3-9 ADC-9
37℃の条件下で、抗体PMのPBS緩衝水溶液(pH=6.5の0.05 MのPBS緩衝水溶液、10.0 mg/mL、3.3 mL、223 nmol)に、調製されたトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の水溶液(10 mM、55.7 μL、557 nmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とう反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0186】
化合物VcMMAE(2.93 mg、2230 nmol)を200 μLのジメチルスルホキシドに溶解し、上記反応液に加え、水浴振とう機に置き、25℃で3時間振とう反応させ、反応を止めた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05 MのPBS緩衝水溶液、0.001 MのEDTA含有)、式PM-VcMMAEで示される複合体の例示的な生成物ADC-9のPBS緩衝液(2.05 mg/mL、17 mL)を得て、4℃で貯蔵した。
CE-SDSにより平均値を算出した:n=4.23。
【0187】
実施例3-10 ADC-10
37℃の条件下で、抗体PMのPBS緩衝水溶液(pH=6.5の0.05 MのPBS緩衝水溶液、10.0 mg/mL、2.5 mL、169 nmol)に、調製されたトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の水溶液(10 mM、42.2 μL、422 nmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とう反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0188】
化合物VcMMAE(2.22 mg、1689 nmol)を150 μLのジメチルスルホキシドに溶解し、上記反応液に加え、水浴振とう機に置き、25℃で3時間振とう反応させ、反応を止めた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05 MのPBS緩衝水溶液、0.001 MのEDTA含有)、式PM-VcMMAEで示される複合体の例示的な生成物ADC-10のPBS緩衝液(2.2 mg/mL、13 mL)を得て、4℃で貯蔵した。
CE-SDSにより平均値を算出した:n=3.92。
【0189】
実施例3-11 ADC-11
37℃の条件下で、抗体PMのPBS緩衝水溶液(pH=6.5の0.05 MのPBS緩衝水溶液、10.0 mg/mL、2.4 mL、160 nmol)に、調製されたトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の水溶液(10 mM、42.2 μL、422 nmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とう反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0190】
化合物9-A(1.75 mg、1629 nmol)を100 μLのジメチルスルホキシドに溶解し、上記反応液に加え、水浴振とう機に置き、25℃で3時間振とう反応させ、反応を止めた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05 MのPBS緩衝水溶液、0.001 MのEDTA含有)、式PM-9-Aで示される複合体の例示的な生成物ADC-11のPBS緩衝液(1.34 mg/mL、15.5 mL)を得て、4℃で貯蔵した。
UV-Visにより平均値を算出した:n=4.19。
【0191】
実施例3-12 ADC-12
【化35】

37℃の条件下で、抗体PMのPBS緩衝水溶液(pH=6.5の0.05 MのPBS緩衝水溶液、10.0 mg/mL、2.4 mL、160 nmol)に、調製されたトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の水溶液(10 mM、42.2 μL、422 nmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とう反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0192】
化合物58(特許「CN104755494Aの第163ページの実施例58を参照して調製され、1.68 mg、1624 nmol)を100 μLのジメチルスルホキシドに溶解し、上記反応液に加え、水浴振とう機に置き、25℃で3時間発振反応させて、反応を停止させた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05 MのPBS緩衝水溶液、0.001 MのEDTA含有)、式PM-58で示される複合体の例示的な生成物ADC-12のPBS緩衝液(1.45 mg/mL、14.8 mL)を得て、4℃で貯蔵した。
UV-Visにより平均値を算出した:n=4.16。
【0193】
(三)対照抗体薬物複合Lmab-9-Aの調製
【化36】
37℃の条件下で、抗体LmabのPBS緩衝水溶液(pH=6.5の0.05 MのPBS緩衝水溶液、10.0 mg/mL、2.15 mL、145 nmol)に、調製されたトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の水溶液(10 mM、74.1 μL、741 nmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とう反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0194】
化合物9-A(3.20 mg、2179 nmol)を155 μLのジメチルスルホキシドに溶解し、上記反応液に加え、水浴振とう機に置き、25℃で3時間振とう反応させ、反応を止めた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05 MのPBS緩衝水溶液、0.001 MのEDTA含有)、表題生成物Lmab-9-AのPBS緩衝液(0.99 mg/mL、15 mL)を得て、4℃で貯蔵した。
UV-Visにより平均値を算出した:n=7.07。
【0195】
以下、生化学試験方法により本開示の抗体の活性を検証した
試験例1:体外細胞結合実験
本実験は、細胞表面抗体の蛍光シグナルを検出することで、蛍光シグナルの強さによって抗体の結合を評価した。調製されたADC-2、ADC-10、対照ADC Lmab-9-A及び抗体PMは、一緒に体外結合検出に用いられた。
【0196】
勾配希釈されたADC-2、ADC-10及び抗体PMと1×10個の細胞(ATCC、MDA PCa 2b/CRL-2422、LNCaP/CRL-1740、22Rv1/CRL-2505、PC-3/CRL-1435、DU 145/HTB-81)を4℃で60分間インキュベートした後に、不要のADC又は抗体を洗い流した。細胞及びFITCで標識されたヤギ抗ヒトIgG(H+L)二次抗体(Jackson Immuno Research、109-095-003)を4℃で30分間インキュベートし、不要の抗体を洗い流した後、BD CantoIIにより細胞表面の蛍光シグナルを読み出した(結果は、表2、図1A図1B図1C図1D図1Eに示される通りである)。
【0197】
【表2】
【0198】
検出用細胞の抗原PSMAの発現レベルは、MDA PCa 2b>LNCaP>22Rv1で、PC-3とDU 145はPSMAを発現しない。
【0199】
結果から明らかなように、ADC-2、ADC-10、対照ADCLmab-9-A及び抗体PMは、異なるPSMA抗原発現レベルの細胞と、相応する強い又は弱い結合能力を持っている。EC50が小さいほど、結合能力は強くなる。
【0200】
試験例2:体外細胞エンドサイトーシス実験
DT3C、70 kdは、組換え発現の融合タンパク質であり、ジフテリア毒素のFragment A(毒素部分のみ)とG群連鎖球菌の3C断片(IgG結合部分)が融合してなるものであり、当該タンパク質は、抗体のIgG部分と高度に親和でき、抗体においてエンドサイトーシスが発生した時に一緒に細胞に侵入し、細胞内フーリンの作用下で、毒性を有するDTを放出し、DTはEF2-ADPリボシル化の活性を阻害し、タンパク質の翻訳プロセスを遮断して、最終的に細胞の死亡を引き起こすことができる。細胞に侵入していないDT3Cは、細胞を傷害する活性を有しない。細胞傷害状況によって抗体のエンドサイトーシス活性を評価した。
【0201】
滅菌ろ過されたDT3C(70KD、SB HRS3A、MEI3AU0803)と抗体PM抗体(DT3Cモル濃度が抗体モル濃度の6倍である)を1:1の体積で均一に混合し、室温で静置して30分間インキュベートした後、無血清培地で勾配希釈し、前日に用意した、20%のlow IgG FBS含有の培地で培養された細胞(ATCC、LNCaP/CRL-1740、22Rv1/CRL-2505)の中(2000個の細胞/ウェル)に入れ、5%の二酸化炭素インキュベーターにおいて37℃で3日間インキュベートした。CellTiter-Glo(Promega、G7573)を加え、室温で暗所で10分間インキュベートし、Victor3で化学発光を読み出した(結果は、表3、図2A図2Bに示される通りである)。
【0202】
【表3】
【0203】
結果から明らかなように、抗体PMは、PSMA抗原を陽性発現した細胞においてエンドサイトーシス能力を持っている。
【0204】
試験例3:細胞増殖阻害実験
本実験は、細胞内ATP含有量を検出することで、IC50の大きさによってPSMA ADCの細胞(ATCC、LNCaP/CRL-1740、22Rv1/CRL-2505、PC-3/CRL-1435)増殖に対する阻害効果を評価した。
【0205】
検出待ちの試料:ADC-2、ADC-4、対照ADC Lmab-9-A
1、LNCaP細胞増殖への阻害効果
LNCaP細胞を10%FBS含有のRPMI-1640培地において培養し、週に2~3回継代し、継代割合が1:3又は1:6であった。継代時に、培地を吸引除去し、5 mLの0.25%のトリプシンで細胞層をすすいだ後、トリプシンを吸引除去し、細胞をインキュベーターに入れて3~5分間消化し、新鮮な培地を加えて細胞を再懸濁した。96ウェルの細胞培養プレートに2×10細胞/ウェルで180 μLの細胞懸濁液を加え、培地が4.5%のFBSを含むRPMI-1640培地であり、96ウェルプレートの外周に培地のみを加えた。培養プレートをインキュベーターで24時間培養した(37℃、5%のCO)。
【0206】
検出待ちのADC(ADC-2、ADC-4、Lmab-9-A)を初期濃度に配合し、PBSにより1:6で9つのポイントにて勾配希釈し、更に0濃度ポイントを加えた。20 μLを取って上記細胞プレートに入れ、インキュベーターにおいて5日間インキュベートした(37℃、5%のCO)。化合物2-B(即ち、9-Aの遊離毒素)に対して、まず、DSMOで母液に希釈し、且つPBSで200 μMが初期濃度になるように配合し、そしてPBSで1:6で9つのポイントにて勾配希釈し、更に0濃度ポイントを加え、1 μLを取って20 μLのRPMI-1640に入れて96ウェル細胞培養プレートに転移し、インキュベーターにおいて5日間インキュベートした(37℃、5%のCO)。96ウェル細胞培養プレートにおいて、各ウェルに80 μLのCellTiter-Glo試薬を入れ、室温で暗所で10~15分間放置し、Victor3で化学発光シグナル値を読み取り、データをGraphPadソフトウェアで処理した。(結果は表4、図3A図3Bに示される通りである)。
【0207】
2、22Rv1細胞増殖への阻害効果
22Rv1細胞を10%FBS含有のRPMI-1640培地において培養し、週に2回継代し、継代割合が1:3又は1:6であった。継代時に、培地を吸引除去し、5 mLの0.25%のトリプシンで細胞層をすすいだ後、トリプシンを吸引除去し、細胞をインキュベーターに入れて3~5分間消化し、新鮮な培地を加えて細胞を再懸濁した。96ウェルの細胞培養プレートに4×10細胞/ウェルで180 μLの細胞懸濁液を加え、培地が4.5%のFBSを含むRPMI-1640であり、96ウェルプレートの外周に培地のみを加えた。培養プレートをインキュベーターで24時間培養した(37℃、5%のCO)。検出待ちのADCと化合物2-Bの調製及び実験の方法は、上記と同様である。(結果は表4、図3C図3Dに示される通りである)。
【0208】
3、PC-3細胞増殖への阻害効果
PC-3細胞を10%FBS含有のF-12K培地において培養し、週に2~3回継代し、継代割合が1:3又は1:6であった。継代時に、培地を吸引除去し、5 mLの0.25%のトリプシンで細胞層をすすいだ後、トリプシンを吸引除去し、細胞をインキュベーターに入れて3~5分間消化し、新鮮な培地を加えて細胞を再懸濁した。96ウェルの細胞培養プレートに4×10細胞/ウェルで180 μLの細胞懸濁液を加え、培地が4.5%のFBSを含むF-12Kであり、96ウェルプレートの外周に培地のみを加えた。培養プレートをインキュベーターで24時間培養した(37℃、5%のCO)。検出待ちのADCと化合物2-Bの調製及び実験の方法は、上記と同様である。(結果は、表4、図3E図3Fに示される通りでる。)
【0209】
【表4】
【0210】
結論:PSMA ADCは、LNCaP及び22RV1細胞において傷害作用を有する。化合物2-B(即ち、9-Aの遊離毒素)は、膜透過傷害作用を有する。
【0211】
試験例4:ADC薬物によるヒト前立腺がん細胞22Rv1ヌードマウス移植腫瘍への治療効果の評価
一、試験の方法
雄で6~8週齢の実験用nu/nuヌードマウスは、北京維通利華実験動物技術有限公司から購入された(合格証明書番号:1908120082)。飼育環境:SPF級。ヌードマウスの皮下にヒト前立腺がん細胞22Rv1(中国科学院)を接種し、腫瘍平均体積が220 mmになると、動物をランダムに群分けし(D0)、1群当たり6匹であり、腹腔内に2回/週で注射投与し始め、合計5回投与し、腫瘍体積と体重を週に2回検出し、データを記録した。
【0212】
腫瘍体積V=1/2×a×bで、そのうち、a、bはそれぞれ長さ、幅を示す。
【0213】
相対腫瘍増殖率T/C(%)=(T-T0)/(C-C0)×100で、そのうち、T、Cは、実験終了時の治療群と対照群の腫瘍体積であり、T0、C0は実験開始時の腫瘍体積である。
【0214】
腫瘍阻害率TGI(%)=1-T/C(%)。
【0215】
二、試験の対象
ADC-10:3 mpk、10 mpk、
ADC-2:3 mpk、10 mpk、
ブランク対照群:pH7.4のPBS緩衝液。
【0216】
三、抗体ADCの腫瘍阻害効果
投与開始後の17日目(D17)に観察した時、陽性ADC-10の10 mpkと3 mpkの腫瘍阻害率はそれぞれ48.9%と10.0%であり、ADC-2の10 mpkと3 mpkの腫瘍阻害率はそれぞれ>100%と91.5%で、ブランク対照群と陽性ADC群より顕著に優れ、且つ良好な用量依存関係を示している(表5、図4A)。
【0217】
投与中に、マウスの体重は安定しており、ADC-2の各投与量に明らかな毒性や副作用がないことが示されている(図4B)。
【0218】
【表5】
【0219】
試験例5:ADC薬物によるヒト前立腺がん細胞22Rv1ヌードマウス移植腫瘍への治療効果の評価
一、試験の方法
雄で6~8週齢の実験用nu/nuヌードマウスは、北京維通利華実験動物技術有限公司から購入された(合格証明書番号:1908120082)。飼育環境:SPF級。ヌードマウスの皮下にヒト前立腺がん細胞22Rv1(中国科学院)を接種し、腫瘍平均体積が210 mmになると、動物をランダムに群分けし(D0)、1群当たり8匹であり、腹腔内に2回/週で注射投与し始め、合計6回投与し、腫瘍体積と体重を週に2回検出し、データを記録した。
【0220】
腫瘍体積V=1/2×a×bで、そのうち、a、bはそれぞれ長さ、幅を示す。
【0221】
相対腫瘍増殖率T/C(%)=(T-T0)/(C-C0)×100で、そのうち、T、Cは、実験終了時の治療群と対照群の腫瘍体積であり、T0、C0は実験開始時の腫瘍体積である。
【0222】
腫瘍阻害率TGI(%)=1-T/C(%)。
【0223】
二、試験の対象
ADC-8:10 mpk、
ADC-6:3 mpk、6 mpk、
ADC-7:3 mpk、6 mpk、10 mpk、
ブランク対照群:pH7.4のPBS緩衝液。
【0224】
三、抗体ADCの腫瘍阻害効果
投与開始後の14日目(D14)に観察した時、陽性ADC-8の10 mpkの腫瘍阻害率は81.6%であり、被験ADC-6の6 mpkと3 mpkの腫瘍阻害率はそれぞれ>100%と97.8%で、もう1つの被験ADC-7の10 mpk、6 mpkと3 mpkの腫瘍阻害率はそれぞれ>100%、88.4%と80.5%であり、投与群は何れも対照群より顕著に優れ、被験ADC-6は同等な用量で被験ADC-7より顕著に優れ、2つの被験ADCは共に良好な用量依存関係を示している(表6、図5A)。
【0225】
投与中に、マウスの体重は安定しており、各被験抗体の各投与量に明らかな毒性や副作用がないことが示されている(図5B)。
【0226】
【表6】
【0227】
試験例6:ADC薬物によるヒト前立腺がん細胞LNCapのSCID Beigheマウスにおける移植腫瘍への治療効果の評価
一、試験の方法
雄で6~8週齢の実験用SCID Beigeマウスは、北京維通利華実験動物技術有限公司から購入された(合格証明書番号:1908120082)。飼育環境:SPF級。マウスの皮下にヒト前立腺がん細胞LNCap(ATCC)を接種し、腫瘍平均体積が160 mmになると、動物をランダムに群分けし(D0)、1群当たり7匹であり、D0とD4に腹腔内に2回注射投与し、腫瘍体積と体重を週に2回検出し、データを記録した。
【0228】
腫瘍体積V=1/2×a×bで、そのうち、a、bはそれぞれ長さ、幅を示す。
【0229】
相対腫瘍増殖率T/C(%)=(T-T0)/(C-C0)×100で、そのうち、T、Cは、実験終了時の治療群と対照群の腫瘍体積であり、T0、C0は実験開始時の腫瘍体積である。
【0230】
腫瘍阻害率TGI(%)=1-T/C(%)。
【0231】
二、試験の対象
ADC-9:10 mpk、
ADC-3:3 mpk、10 mpk、
ADC-5:3 mpk、6 mpk、10 mpk、
ブランク対照群:pH7.4のPBS緩衝液。
【0232】
三、抗体ADCの腫瘍阻害効果
全ての投与群腫瘍は、D0とD4の2回投与後に直ちに退縮され始め、且つその薬効が実験のエンドポイントであるD18まで維持された。被験ADC-3とADC-5は共に一定の用量依存関係を示しているが、それらの間に有意差がなかった(表7、図6A)。
【0233】
投与中に、マウスの体重は安定しており、各被験抗体の各投与量に明らかな毒性や副作用がないことが示されている(図6B)。
【0234】
【表7】
【0235】
試験例7:PMSA ADC SDラットT1/2評価
雄のSDラット9匹を3群に分け、1群当たり3匹で、12/12時間の明/暗周期で調節し、温度を20~26℃のままにし、湿度40~70%で、水や餌を自由に摂取させた。浙江維通利華実験動物技術有限公司から購入した。実験当日に、雄の各SDラットの尾静脈に被験薬ADC-2、ADC-5、ADC-10を注射し、投与用量が3 mg/kgで、注射体積が5 mL/kgである。
【0236】
採血時点は、初日投与後の5分間、8時間、24時間(2日目)、3日目、5日目、8日目、11日目、15日目、22日目と29日目であり、ラットの眼底静脈から採血し、毎回300 μL(血清150 μLの採取に相当する)で、収集された血液試料を凝集になるまで室温で30分間放置し、そして4℃で1000×gを15分間遠心分離し、上清(血清)をEP管に転移してから、直ちに-80℃で貯蔵した。ELISA法によりSDラット血清中のPSMA抗体ADCの濃度を検出した。
【0237】
試験の方法:
全抗体(Total antibody)の検出:
1.ELISAプレート(cornning)において1ウェルごとに1 μg/mLのヤギ抗ヒトlgG FC(abcam)100 μLを入れ、4℃で一晩インキュベートした。
2. プレート洗浄液PBSTで3回洗浄した(1×PBS、0.5%のtween-20(生工)。
3. 1ウェルごとに200 μLのブロッキング液(5%のミルク、碧雲天)を入れ、37℃で1~3時間インキュベートした。
4. プレート洗浄液PBSTで3回洗浄した。
5. 100 μLの標準試料、品質管理試料及び検出試料を加え、37℃で1~3時間インキュベートした。
6. プレート洗浄液で3回洗浄した。
7. マウスに予備吸着されたヤギ抗ヒトlgG軽/重鎖HRP(1:5000、abcam)100 μLを加え、37℃で1~1.5時間インキュベートした。
8. プレート洗浄液で3回洗浄した。
9. 100 μLのTMB(KPL)を加え、常温で暗所で10分間インキュベートした。
10. 1 Mの希硫酸(国薬グループ)100 μLを加えて中止し、450 nmの波長でプレートの読み取りを行った(molecular device、flexstation 3)。
【0238】
完全なADC(Intact ADC)の検出:
1.ELISAプレート(cornning)において1ウェルごとに1 μg/mLのヤギ抗マウスlgG Fc 100 μLを入れ、4℃で一晩インキュベートした。
2.プレート洗浄液PBSTで3回洗浄した。
3.1ウェルごとに200 μLのブロッキング液を入れ、37℃で1~3時間インキュベートした。
4.プレート洗浄液で3回洗浄した。
5.1ウェルごとに0.2 μg/mL抗毒素抗体又はanti-pab-mmae(中科英沐、s-497-8)100 μLを入れ、37℃で1~1.5時間インキュベートした。
6.プレート洗浄液で3回洗浄した。
7.100 μLの標準試料、品質管理試料及び検出試料を加え、37℃で1~3時間インキュベートした。
8.プレート洗浄液で3回洗浄した。
9.マウスに予備吸着されたヤギ抗ヒトlgG軽/重鎖HRP(1:5000)100 μLを加え、37℃で1~1.5時間インキュベートした。
10.プレート洗浄液で3回洗浄した。
11.100 μLのTMBを加え、常温で暗所で10分間インキュベートした。
12.1 Mの希硫酸100 μLを加えて中止し、450 nmの波長でプレートの読み取りを行った。
【0239】
検出と分析結果:
ELISAにより血清中のPSMA抗体ADCの濃度を検出し、PK分析を行った(結果は表8に示されている)。
【0240】
【表8】
【0241】
結果から明らかなように、ラットの静脈に3 mg/kgの被験抗体複合体ADC-10、ADC-2、ADC-5を投与した後、全抗体(ADCにおける複合した抗体と血清における遊離した抗体)のラット体内での半減期が約219.8時間(9.2日)、171.2時間(7.1日)、172.5時間(7.2日)で、完全なADCのラット体内での半衰期が約76.7時間(3.2日)、153.9時間(6.4日)、137.9時間(5.7日)である。ADC-2及びADC-5のT1/2はADC-10よりも優れている。
【0242】
試験例8:PSMA ADCの安定性研究(遊離毒素検出)
1. ラット薬物動態試料におけるADC-2の安定性
特定の濃度条件下での試料の安定性を反映するために、液体クロマトグラフ質量分析技術により、試料の静脈投与による雄のラット体内での28日間の化合物2-B(9-Aの遊離毒素)の経時的な放出量をモニターした。28日間の異なる時点(5分間、8時間、1日間、2日間、4日間、7日間、10日間、14日間、21日間、28日間)でのラット血漿中の化合物2-Bの含有量を測定したところ、ADC-2は良好な安定性を示し、結果は表9に示される通りである。
【0243】
結果から明らかなように、ADC-2は、雄のラットの体内で28日間にわたって全て良好な安定性を示していた。
【0244】
【表9】
【0245】
2. PSMA ADCの血漿安定性研究
特定の濃度(100 μg/mL)条件下での試料の安定性を反映するために、液体クロマトグラフ質量分析技術により、試料ADC-2(100 μg/mL)のそれぞれ(ヒト、サル、イヌ、ラット、マウスという5つの種の血漿(ヘパリンで抗凝固した)及び対照としての1%のBSA-PBS)における、それぞれ(37℃ & 5%のCOのインキュベーターにおいて、0日、7日、14日、21日間置いた)異なる時間での化合物2-Bの経時的な放出量をモニターした。異なる時点での化合物2-Bの含有量を測定することにより、ADC-2は、良好な安定性を示し、結果は図7と表10に示される通りである。
【0246】
結果から明らかなように、ADC-2は異なる種の血漿において、一定の温度、一定の時間で良好な安定性を示している。
【0247】
注:試験操作は滅菌実験室において行われ、ブランク血漿は0.22 μmのマイクロウェルろ過膜でろ過除菌された。
【表10】
【0248】
3. PSMA ADCの血漿安定性研究
特定の濃度(100 μg/mL)条件下での試料の安定性を反映するために、液体クロマトグラフ質量分析技術により、試料ADC-5のそれぞれ(ヒト、サル、イヌ、ラット、マウスという5つの種の血漿(ヘパリンで抗凝固した)及び対照としての1%のBSA-PBS)における、それぞれ(37℃ & 5%のCOのインキュベーターにおいて、0日、7日、14日、23日間置いた)異なる時間での化合物2-Bの経時的な低下量をモニターした。異なる時点での化合物2-Bの含有量を測定することにより、ADC-5は、良好な安定性を示し、結果は表11と図8に示される通りである。
【0249】
結果から明らかなように、ADC-5は異なる種の血漿において、一定の温度、一定の時間で良好な安定性を示している。
【0250】
注:試験操作は滅菌実験室において行われ、ブランク血漿は0.22 μmのマイクロウェルろ過膜でろ過除菌された。
【0251】
【表11】
【0252】
試験例9:ADC薬物によるヒト前立腺がん細胞22Rv1ヌードマウス移植腫瘍への治療効果の評価
一、試験の方法
雄で6~8週齢の実験用nu/nuヌードマウスは、北京維通利華実験動物技術有限公司から購入された(合格証明書番号:1908120082)。飼育環境:SPF級。ヌードマウスの皮下にヒト前立腺がん細胞22Rv1(中国科学院)を接種し、腫瘍平均体積が190 mmになると、動物をランダムに群分けし(D0)、1群当たり8匹であり、腹腔内に2回/週で注射投与し始め、合計4回投与し、腫瘍体積と体重を週に2回検出し、データを記録した。
【0253】
腫瘍体積(V)の計算式は、V=1/2×a×bで、そのうち、a、bはそれぞれ長さ、幅を示す。
【0254】
相対腫瘍増殖率T/C(%)=(T-T)/(C-C)×100で、そのうち、T、Cは実験終了時の治療群及び対照群の腫瘍体積であり、T、Cは実験開始時の腫瘍体積である。
【0255】
腫瘍阻害率TGI(%)=1-T/C(%)。
【0256】
二、試験の対象
ADC-11:5 mpk
ADC-12:5 mpk
ブランク対照群:pH7.4のPBS緩衝液
【0257】
三、抗体ADCの腫瘍阻害効果
投与開始後の13日目(D13)に観察した時に、ADC-11とADC-12は、5 mpkの用量での腫瘍阻害率がそれぞれ87.63%と79.82%であり、何れも対照群より顕著に優れている。ADC-11とADC-12の間に有意差がない(表12、図9)。
【0258】
投与中に、マウスの体重は安定しており、各被験抗体に明らかな毒性や副作用がないことが示されている。
【0259】
【表12】
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
【配列表】
2023519261000001.app
【国際調査報告】