(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】歯科用器具のためのデジタルワクシング
(51)【国際特許分類】
A61C 7/08 20060101AFI20230428BHJP
【FI】
A61C7/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557796
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(85)【翻訳文提出日】2022-11-18
(86)【国際出願番号】 EP2021057790
(87)【国際公開番号】W WO2021191374
(87)【国際公開日】2021-09-30
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508158023
【氏名又は名称】3シェイプ アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】エーダム カーステン ストート
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ブレンストレーム
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052JJ10
(57)【要約】
患者の1つまたは複数の歯の最初の3Dデジタル表面表示を取得し、3Dデジタル表面表示の周囲の3D空間に多数の点を作成し、点のそれぞれから3Dデジタル表面表示までの最短距離を計算し、計算された距離を使用して、オブジェクトの表面を定義された値に拡張することにより、修正された3Dデジタル表面表示を生成し、修正された3Dデジタル表面表示を内側に侵食することによって、歯科用器具の、結果として得られる3Dデジタル表面表示を生成する、ことを含む歯科用器具を生成するためのコンピュータ実装方法が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用器具を生成するための、または歯科用器具を作成するためのモデルを生成するための、コンピュータ実装方法であって
患者の1つまたは複数の歯の最初の3Dデジタル表面表示を取得し、
前記3Dデジタル表面表示の周囲の3D空間に多数の点を作成し、
前記点のそれぞれから前記3Dデジタル表面表示までの最短距離を計算し、
計算された前記距離を使用して、オブジェクトの表面を定義された値に拡張することにより、修正された3Dデジタル表面表示を生成し、
前記修正された3Dデジタル表面表示を内側に侵食することにより、前記歯科用器具の、結果として得られる3Dデジタル表面表示、または前記歯科用器具を作成するためのモデルを生成する、
コンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記3Dデジタル表面表示のそれぞれは、メッシュモデルである、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記修正された3Dデジタル表面表示を生成することは、前記最初の3Dデジタル表面表示の前記表面から前記点までの前記距離を補間することをさらに含む、請求項1または2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記最初の3Dデジタル表面表示の周囲の3D空間における点の数は、規則的なグリッドに配置される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記歯科用器具がスプリントまたはナイトガードである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記1つまたは複数の歯の前記3Dデジタル表面表示の拡張および侵食は、前記大臼歯の凹状の特徴を最小化し、前記スプリントまたはナイトガードと前記患者の前記歯との間に唾液などの液体のための空間を作成する、請求項5に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
前記歯科用器具はアライナーである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
前記1つまたは複数の歯のそれぞれに上限を定義することをさらに含み、前記上限を超えると、前記1つまたは複数の歯の前記最初の3Dデジタル表面表示の拡張および侵食が実行されない、請求項7に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項9】
前記最初の3Dデジタル表面表示において、前記1つまたは複数の歯の咬合面側のランドマークを自動的に決定し、
決定された前記ランドマークを用いて、前記1つまたは複数の歯の前記咬合面側の溝の深さを決定し、
決定された前記溝の深さに基づいて、前記最初の3Dデジタル表面表示の拡張および/または侵食を制限する、
ことをさらに含む、請求項7または8に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項10】
前記最初の3Dデジタル表面表示と、前記結果として得られる3Dデジタル表面表示とを組み合わせることによって、組み合わせられた3Dデジタル表面表示を生成することをさらに含む、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項11】
歯科用器具を生成するためのコンピュータ実装方法であって、
患者の顎または顎の少なくとも一部の最初の3Dデジタル体積表示を取得し、
前記3Dデジタル体積表示の周囲の3D空間に多数の点を作成し、
前記点のそれぞれから前記3Dデジタル体積表示までの最短距離を計算し、
計算された前記距離を用いて、オブジェクトの表面を設定値に拡張することにより、修正された3Dデジタル体積表示を生成し、
前記修正された3Dデジタル体積表示を内側に侵食することによって、前記歯科用器具の、結果として得られる3Dデジタル体積表示を生成する、
ことを含むコンピュータ実装方法。
【請求項12】
前記歯科用器具が、骨支持型および/または歯牙支持型のサージカルガイドである、請求項11に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項13】
前記最初の3Dデジタル表面表示の浸食および拡張が、前記骨上の凹部を減少させることを含み、それによって、骨支持型および/または歯牙支持型のサージカルガイドのより良い適合を作り出す、請求項12に記載のコンピュータ実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広く、歯科用器具を生成および設計するためのシステムならびに方法に関する。特に、本発明は、歯科用器具を製造する前に、歯のモデルに余分な材料を手動で追加する必要なく、歯科用器具を生成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スプリント、ナイトガード、マウスガード、ブリーチングトレー、アライナー、サージカルガイドなど、適合性が高く快適な歯科用器具を設計するうえで最も時間がかかる部分の1つは、歯の縁と器具の間の間隔を確保することである。スプリントのような歯科用器具を作成する石膏または歯型では、位置決めや取り外しが可能なスプリントを作成するために、裂溝や隣接歯間の間隙もワックスで処理する必要がある。これは、時間のかかる手作業であり、通常、5~10分かかることがある。
【0003】
大量の手作業を必要とせずに、このような歯科用器具を設計するデジタル/コンピュータ実装方法を提供することは、非常に興味深い。以下に、そのような方法、特に、改善された器具設計を可能にするプロセスが開示される。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、歯科用器具を生成するための、または歯科用器具を作成するためのモデルを生成するための、コンピュータ実装方法であって、
患者の1つまたは複数の歯の最初の3Dデジタル表面表示を取得し、
3Dデジタル表面表示の周囲の3D空間内に多数の点を作成し、
点のそれぞれから3Dデジタル表面表示までの最短距離を計算し、
計算された距離を使用して、オブジェクトの表面を定義された値に拡張することにより、修正された3Dデジタル表面表示を生成し、
修正された3Dデジタル表面表示を内側に侵食することにより、結果として得られる歯科用器具の3Dデジタル表面表示、または歯科用器具を作成するためのモデルを生成する、
ことを含む方法が開示される。
【0005】
したがって、鋭いエッジ、アンダーカットなどの不要な特徴を除去または改善することができる、歯科用器具の表示、または歯科用器具を作成するためのモデルを作成することが可能である。場合によっては、歯と歯肉との間の縁の近傍や、大臼歯の咬合面の上方など、特定の領域において、より多くの点を配置することが有利な場合があり、これは、結果として得られる3Dデジタル表面表示の解像度を差分化することができるためである。拡張(dilation)の定義された値は、自動的に設定されてもよいし、ユーザが設定してもよい。例えば、どの歯科用器具が生成されるかに応じて、デフォルト値が指示されてもよい。また、グラフィカルユーザインタフェースがあってもよく、そこでは、ユーザは、例えば、mm単位で値を入力するか、または、スライダを動かすことによって、拡張値を設定することができる。
【0006】
いくつかの実施形態では、最初の3Dデジタル表面表示の外側の点までの距離に正の値が与えられ、最初の3Dデジタル表面表示の内側の点までの距離に負の値が与えられ、あるいは、その逆も同様である。
【0007】
このように距離の値を定義することで、3D空間において、どの点が表面の内側にあり、どの点が外側にあるかが常にわかるようになる。これにより、どの点が3Dデジタル表面の内側にあり、どの点が外側にあるかを判断することができる。距離の値を何らかの係数でオフセットするなど、距離を定義する他の方法も可能である。
【0008】
いくつかの実施形態では、3Dデジタル表面表示のそれぞれは、メッシュモデルである。
【0009】
3Dモデリングでは、ボクセルやメッシュなど、様々なグラフィック表示を扱うことができる。表面表示で作業する場合、メッシュで作業する方が好ましい場合がある。これには多くの利点がある。例えば、ボクセルモデルよりもメッシュモデルの方が必要なデータ量が少ないため、ボクセルモデルを扱うよりもメッシュモデルを扱う方が、一般的に処理能力と時間が少なくて済む。
【0010】
いくつかの実施形態では、修正された3Dデジタル表面表示を生成することは、最初の3Dデジタル表面表示の表面から点までの距離を補間することをさらに含む。
【0011】
点と点の間を補間することで、より正確な、修正された3Dデジタル表面表示が可能になるため、有利である。
【0012】
いくつかの実施形態では、最初の3Dデジタル表面表示の周囲の3D空間における点の数が、規則的なグリッドに配置される。
【0013】
3Dデジタル表面表示の周囲に規則的なグリッド、すなわち3次元的に均等に配置された点を配置することで、ランダムに点を配置した場合よりも作業しやすいデータ構造になる。
【0014】
前記歯科用器具がスプリントまたはナイトガードである、前記請求項のいずれかに記載のコンピュータ実装方法。
【0015】
本方法は、スプリントやナイトガードのような歯科用器具に特に有用であり、裂溝、歯間部の隙間、アンダーカットのような患者固有の問題は、患者の快適さのために解決すべきであり、配置と取り外しが可能なスプリントデザインを達成する必要がある。
【0016】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の歯の3Dデジタル表面表示の拡張および侵食は、スプリントまたはナイトガードと患者の歯との間に唾液などの液体のための空間を作り出すために、患者の大臼歯の凹状の特徴を最小化する。
【0017】
大臼歯にモルフォロジカルクロージングアルゴリズムを採用することにより、咬合面側の裂溝の凹状の特徴が平滑化される。多くの場合、圧縮できない唾液が、その裂溝に滞留する。このことを考慮せずにスプリントやナイトガードを設計すると、患者の歯へのスプリントのフィット感が損なわれるおそれがある。
【0018】
いくつかの実施形態では、歯科用器具は、アライナーである。
【0019】
クリアアライナーによる治療は、通常の歯列矯正装置に代わる矯正治療として、一般的になりつつある。アライナーは患者の歯にぴったりとフィットするように設計されているが、長時間快適に装着できる必要があるため、本方法はアライナーの設計に特に有効である。
【0020】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の歯のそれぞれの歯肉からの平面または距離が定義され、それ以上では、1つまたは複数の歯の最初の3Dデジタル表面表示の拡張および侵食が実行されない。
【0021】
平面は、例えば、患者の歯の咬合面に対して平行であるがオフセットで定義されてもよい。あるいは、歯肉からの距離は、それぞれの歯について個別に定義されてもよいし、歯の全てまたは部分集合についてまとめて定義されてもよい。拡張や侵食が行われないこの境界線を持つことによって、結果として得られる3Dデジタル表示の咬合面は変化しない。これは、歯に作用する力を正確に制御することが重要であるアライナー治療において利点となり得る。
【0022】
いくつかの実施形態において、本方法は、さらに、
最初の3Dデジタル表面表示において、1つまたは複数の歯の咬合面側のランドマークを自動的に決定し、
決定されたランドマークを用いて、1つまたは複数の歯の咬合面側の溝の深さを決定し、
決定された前記溝の深さに基づいて、前記最初の3Dデジタル表面表示の拡張および/または侵食を制限する、
ことを含む。
【0023】
大臼歯の咬頭などの目印を自動判定することで、咬合面の裂溝や溝の深さを判定することができる。このようにして、これらの領域のモルフォロジカルクロージングを制限することができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、本方法は、最初の3Dデジタル表面表示と、結果として得られる3Dデジタル表面表示とを組み合わせることによって、組み合わせ3Dデジタル表面表示を生成することをさらに含む。
【0025】
最初の3Dデジタル表面表示と、結果として得られる3Dデジタル表面表示との組み合わせは、例えば、表示の全部または一部に対して、ブール加算演算子を使用することによって達成され得る。最初の3Dデジタル表面表示と、結果として得られる3Dデジタル表面表示とを組み合わせることによって、そうでなければプロセス中に平滑化されてしまう特定の領域の特徴を維持することができる。場合によっては、プロセスで使用される点の数が少ないということは、結果として得られるメッシュの解像度は、患者の歯を表す最初の3Dメッシュよりも低くなることを意味する。したがって、最初の3Dデジタル表面表示と、結果として得られる3Dデジタル表面表示とを組み合わせることにより、関心のある特定の領域、例えば、歯の咬合面において、メッシュの高解像度を維持することが可能になる。
【0026】
いくつかの実施形態では、本方法は、歯科用器具を製造することをさらに含む。歯科用器具は、スプリント、ナイトガード、マウスガード、アライナー、リテーナー、漂白トレイのうちの1つであってよいが、これらには限定されない。
【0027】
いくつかの実施形態では、生成された3Dデジタル表面表示の石膏または歯型が、フライス加工、印刷、または他の方法で製造される。次いで、歯科用器具は、例えば、熱成形技術によって、この石膏または歯型の上に製造されてもよい。
【0028】
他の態様において、本明細書に開示されるのは、歯科用器具を生成するための、または、歯科用器具を上に作成するためのモデルを生成するための、コンピュータ実装方法であって、
患者の顎または顎の少なくとも一部の最初の3Dデジタル体積表示を取得し、
前記3Dデジタル体積表示の周囲の3D空間内に多数の点を作成し、
点のそれぞれから3Dデジタル体積表示までの最短距離を計算し、
計算された距離を用いて、オブジェクトの表面を設定値に拡張することにより、修正された3Dデジタル体積表示を生成し、
修正された3Dデジタル体積表示を内側に侵食することによって、結果として得られる歯科用器具の3Dデジタル体積表示、または歯科用器具を作成するためのモデルを生成する、
ことを含む。
【0029】
これにより、骨のスキャンやコーンビームコンピュータ断層撮影(CBCT)スキャンなどの体積表示においても、本開示を利用することができる。
【0030】
いくつかの実施形態において、歯科用器具は、骨支持型および/または歯牙支持型のサージカルガイドであり、骨上の凹部領域を減少させることをさらに含み、それによって、骨支持型および/または歯牙支持型のサージカルガイドのより良い適合性を創出する。
【0031】
骨支持型および/または歯牙支持型のサージカルガイドを設計するために、3Dデジタル体積表示を拡張および侵食する上記開示された方法を用いることにより、得られるサージカルガイドは、外科手術中の患者にとってより快適となる。また、結果として得られるサージカルガイドは、患者によりよく適合し、かつ/または適合するために患者の顎をあまり調整する必要がなくなる。
【0032】
いくつかの実施形態では、本方法は、最初の3Dデジタル体積表示と、結果として得られる3Dデジタル体積表示とを組み合わせることによって、組み合わせた3Dデジタル体積表示を生成することをさらに含む。
【0033】
最初の3Dデジタル体積表示と、結果として得られる3Dデジタル体積表示との組み合わせは、例えば、表示の全てまたは一部に対してブール加算演算子を使用することによって達成され得る。最初の3Dデジタル体積表示と、結果として得られる3Dデジタル体積表示とを組み合わせることによって、処理中に平滑化される特定の領域における特徴を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明の上記および/または追加の目的、特徴、および利点は、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態の以下の例示的かつ非限定的な詳細説明によってさらに説明される、。
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による方法のワークフローを視覚化したものである。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態による方法のフローチャートである。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態の結果を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の他の実施形態の結果を示す図である。
【
図5】
図5は、下顎のCBCTスキャンに対して実行された実施形態の結果を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の一実施形態によるシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下の説明において、本発明がどのように実施されるかを例示する添付の図を参照する。
【0036】
本明細書に開示される方法の一実施形態を
図1に示す。ステップ101において、3Dデジタル表面表示1の2D断面図が示されている。アルゴリズムは3Dで実行されるが、図は2Dのみを示すように簡略化されている。この場合、明確に定義された点群2が空間に追加される。点群は、ノードが点2のように機能する3Dグリッドとすることもできる。点2から3Dデジタル表面表示1までの最短距離3は、全ての点に対して定義される。ステップ102において、拡張距離が定義され、3からの既知の距離に基づく補間によって、新しい表面4が作成される。ステップ103において、新しい表面4が、拡張と同様の方法で3Dデジタル表面表示1の表面上に浸食されて戻される。凹状の特徴5が減少した領域は黒色でマークされ、凸状の特徴は操作されていない。
【0037】
図2は、本開示の実施形態のフローチャートである。本方法は、患者の歯の3Dデジタル表面表示201aを取り込むかまたは取得することによって開始される。ステップ201bにおいて、特定の解像度を有するグリッドまたは点のグループのいずれかを、3Dデジタル表面表示を有する空間に追加することができる。空間に追加される点の解像度および量は、結果に直接的な影響を与える。高解像度または大量の点は、より滑らかな新しい表面を作成するが、アルゴリズムの処理時間を増加させることになる。ステップ201cでは、グリッドのノードから、または点のそれぞれから3Dデジタル表面表示までの最短距離が計算される。ステップ202aにおいて、拡張のための距離が定義される。この距離が大きければ大きいほど、凹面形状の減少が大きくなる。ステップ202bでは、ステップ201cおよび202aからの値に基づく補間によって、新しい表面が作成される。ステップ203において、この新しい表面が浸食される。侵食距離は、以前に定義された拡張距離と同じにすることも、所望の結果に応じて異なる値にすることもできる。
【0038】
いくつかの実施形態では、浸食ステップ203は、拡張ステップ201b、201c、202a、および202bと同様のサブステップを含むことができる。新しい表面は、3Dデジタル表面表示201aと同じ3D空間内に作成されるため、拡張に使用されたのと同じ点/グリッドを浸食に使用することが可能である。あるいは、ステップ202bで作成された新しい表面を含む空間に、新しい点/グリッドのセットを追加することができる。グリッドのノード間の最短距離、または点のそれぞれから新しい3Dデジタル表面表示までの最短距離が計算される。次に、侵食の距離が定義される。これは、以前に使用された拡張距離と同じであってもよいし、所望の結果に応じて異なる値を有するものであってもよい。新しい3Dデジタル表面表示に浸食距離を適用することで、結果として得られる3Dデジタル表面表示が生成される。
【0039】
ステップ201bおよび202aの両者は、3Dデジタル表面表示の特定の領域に対して行うことができ、表面表示の異なる局所領域に対して異なる程度のモルフォロジカルクロージングが存在し得ることを意味する。
【0040】
図3および
図4は、
図1および
図2で説明した方法に基づいて作成できる様々な結果の例を示している。
図3のステップ301aにおいて、3Dデジタル表面表示1が示されている。ステップ303a-bおよび403c-eは、異なる表面が侵食され、凹状の特徴の減少が得られた後の結果を示す。
【0041】
ステップ303aおよび303bにおいて、利用するグリッドの解像度は同じであるが、拡張距離は異なる。303aにおいては、より小さなオフセット距離が使用され、303bにおいては、より大きなオフセット値を使用することによって、凹面形状がさらに減少している。ステップ403cにおいて、モルフォロジカルクロージングアルゴリズムは、3Dデジタル表面表示の異なる部分に対して異なる拡張値を有している。オフセット値は、3Dデジタル表面表示1の残りの部分が、より低く均一なオフセット値の影響を受ける一方で、欠損歯6の周りで局所的に高くなっている。患者が数本の歯を失っていたり、より高度な閉鎖を必要とするポンティックを持っていたりした場合、より高いオフセット値を有する複数の局所領域が作成される可能性がある。403dにおいて、アルゴリズムは制限され、3Dデジタル表面表示1のアンダーカット8にのみ影響を及ぼしている。この制限は、多くの方法で行うことができる。例えば、効果が望ましくない領域をユーザが手動で定義することも、3Dデジタル表面表示でランドマークを定義して溝がある領域を決定し、それらをアルゴリズムからブロックすることによって自動的に行うこともできる。アルゴリズムからブロックする領域を定義するために使用できる1つの手法は、3Dデジタル表面表示をセグメント化すること、すなわち、表面のどの部分が歯に属し、どれが歯肉に属するか等を決定することである。セグメンテーションは、本分野で知られている様々なセグメンテーション技術を使用して、手動および/または自動の両方で行うことができる。
【0042】
別の限定的な方法を403eに示す。このアルゴリズムは、歯の間11および歯と歯肉の間12に接点がある表面モデルの領域を検出する。表面のこれらの領域は、モルフォロジカルクロージングによって操作され、その結果、裂溝は影響を受けない。
【0043】
歯の欠損、ポンティック、深い溝を補正する他の方法は、グローバルオフセット値を用いて
図1のフローチャートを実行することである。表面を侵食した後、新たに操作された3Dデジタルファイルが作成される。操作されたファイルと元の3Dデジタル表示とを重ね合わせて、接触していない2つの表面の間の領域を決定することによって、減少した凹面領域を特定することができる。また、効果が望ましくない領域を選択して補正することもできる。
【0044】
403fにおいて、様々な方法が組み合わされている。欠損した歯6の周囲では、局所的に高いオフセット値が使用される。アンダーカットおよび近心領域8は低いオフセット値で埋められ、歯の咬合面の溝7は影響を受けない。
【0045】
図5は、患者の下顎骨のCBCTモデルを示す。この例では、下顎骨に3つの穴がある。オトガイ孔9からの2つと、もう1つは抜歯10による大きなソケットである。オフセット値に応じて、凹状の特徴が減少するか、完全に覆われる。新しいアルゴリズムでは、低解像度のCT画像やボクセルフィリングに起因する内向きの突起も減少する。CBCTモデルのボクセルは体積の平均硬度を持つため、例えば、実際の骨の表面が特定のボクセルの1/3の位置にある場合は閾値を下回っている可能性があり、2/3の位置にある場合は閾値を上回っている可能性がある。このシナリオでは、隣接する2つのボクセルは、1つのボクセルが表面を「過大評価」する一方で、第2のボクセルが表面を「過小評価」する結果となる。503aは、503bよりも低いオフセット値によって修正されている。
【0046】
図6は、本発明の一実施形態に係るシステムの概略図である。システム670は、コンピュータ可読媒体672およびマイクロプロセッサ673を備えるコンピュータ装置671を備える。本システムは、データを入力し、視覚表示ユニット676上に視覚化された仮想ボタンを作動させるための、視覚表示ユニット676、コンピュータキーボード674、およびコンピュータマウス675をさらに備えている。視覚表示ユニット676は、コンピュータ画面とすることができる。
【0047】
コンピュータ装置671は、患者の1つまたは複数の歯の3Dデジタル表面および/または体積表示を取得することができる。得られた3Dデジタル表示は、コンピュータ可読媒体672に格納し、プロセッサ673に提供することができる。コンピュータ装置671は、特許請求の範囲に記載された方法のステップを実行するように構成される。
【0048】
本システムは、得られた3Dデジタル表面および/または体積表示を、例えば、歯科用器具を製造するためのコンピュータ支援製造(CAM)装置679に送信し、あるいは、例えば、歯科用器具が製造される別の製造センターに位置する別のコンピュータシステムに送信するための、コンピュータ装置671とは、別でも、その一部でもよいユニット678を含む。送信するためのユニットは、有線接続または無線接続とすることができる。
【0049】
3Dスキャニング装置677を用いた患者の歯のセットの3Dスキャニングは、歯科医で行うことができ、一方、歯科用器具の設計は、歯科医または歯科技工所などの別の施設で行うことができる。そのような場合、患者の歯のセットの3Dデジタル表面および/または体積表示は、歯科医と歯科技工所との間のインターネット接続を介して、提供することができる。
【0050】
口腔内スキャナを用いて患者の歯をスキャンして最初の3Dデジタル表面表示を取得するのではなく、手動で患者の歯の従来の印象を取得することもできる。これらの印象は、その後、歯科技工所に送られ、そこで直接スキャンされるか、患者の歯列の石膏または歯型を流し込むために使用できる。このシナリオでは、3Dスキャニング装置677は、歯科技工所に設置されたデスクトップラボスキャナを使用することができ、その後、印象を直接スキャンするか、石膏または歯型をスキャンするかのいずれかによって、最初の3Dデジタル表面表示を取得することができる。
【0051】
システム670が3Dデジタル表面および/または体積表示を受信すると、請求された方法のステップがコンピュータ装置671で実行され、デジタル出力が視覚表示ユニット676に提示される。ユーザが満足しない場合、出力は、コンピュータキーボード674およびマウス675を使用して編集することができる。満足のいく結果が得られると、それは678を介してCAM装置679に送信され、物理的な器具が製造される。必要な出力は、必要な物理的器具のタイプによって異なる。
【0052】
スプリントが最終製品である場合、671からの出力は、結果として得られる3Dデジタル表面表示に基づいて作成される、歯のネガモデルになる可能性がある。歯のネガモデルは、その後、製造のために679に送られる。特許請求の範囲に記載された方法を実行した後、スプリント用の出力は、最初の3Dデジタル表面表示と、結果として得られる3Dデジタル表面表示とを組み合わせたものとすることができる。歯列弓の結合モデルは、その後、679上で製造されるスプリントを作成するために、コンピュータ装置671上で、例えば、3シェイプスプリントスタジオで使用することができる。
【0053】
アライナーの場合、678によってCAM装置679に送信される出力は、最初の3D表面表示と、結果として得られる3D表面表示とを組み合わせたものとすることができる。歯列弓の結合された表面表示は、679で印刷またはフライス加工され、アライナーを熱成形するために使用することができる。
【0054】
3Dデジタル体積表示からの出力は、例えば、3シェイプインプラントスタジオにおいて、骨支持型のサージカルガイドを作成するために、670を用いて、ユーザが使用し、その後、678を介してCAM装置679に送信される。
【0055】
いくつかの実施形態を詳細に説明して示したが、本発明はそれらに限定されず、特許請求の範囲で定義される主題の範囲内で他の方法で実施することもできる。特に、本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用することができ、構造的および機能的な変更を行うことができることを理解されたい。
【0056】
複数の手段を列挙している装置クレームにおいて、これらの手段のうちのいくつかは、ハードウェアの同一のアイテムによって具現化することができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているか、または異なる実施形態に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せが有利に使用できないことを示すものではない。
【0057】
請求項は、先行する請求項のいずれかを参照することができ、「いずれか」は、先行する請求項の「いずれか1つまたは複数」を意味すると理解される。
【0058】
本明細書で使用する「取得する」という用語は、例えば、医用画像処理装置を用いて医用画像を物理的に取得することを指す場合もあるが、例えば、以前に取得した画像やデジタル表示をコンピュータに読み込ませることを指す場合もある。
【0059】
本明細書で使用される場合、用語「comprises/comprising」は、記載された特徴、整数、ステップ、または成分の存在を特定するために使用されるが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、成分、またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではないことが強調されるべきである。
【0060】
上記および以下に説明する方法の特徴は、ソフトウェアで実装され、コンピュータで実行可能な命令の実行によって引き起こされるデータ処理システムまたは他の処理手段で実行されてもよい。命令は、記憶媒体から、またはコンピュータネットワークを介して他のコンピュータから、RAMなどのメモリにロードされたプログラムコード手段であってもよい。あるいは、説明した特徴は、ソフトウェアの代わりに、またはソフトウェアと組み合わせて、配線回路によって実装されてもよい。
【国際調査報告】