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特表2023-519272エクソソームなどの脂質小胞を用いてコロナウイルスを標的にするための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】エクソソームなどの脂質小胞を用いてコロナウイルスを標的にするための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/76 20150101AFI20230428BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20230428BHJP
   A61K 35/22 20150101ALI20230428BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230428BHJP
   A61K 39/145 20060101ALI20230428BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230428BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230428BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230428BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20230428BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
A61K35/76
A61K35/28
A61K35/22
A61K39/00 H
A61K39/145
A61P31/14
A61P43/00 111
A61P43/00 105
A61K45/00
A61K31/7105
A61K31/713
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557813
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(85)【翻訳文提出日】2022-10-31
(86)【国際出願番号】 US2021023731
(87)【国際公開番号】W WO2021195113
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】62/993,424
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】カルーリ ラグ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA24
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB211
4C084ZB332
4C084ZC411
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA55
4C085CC08
4C085EE01
4C085EE03
4C085FF02
4C085FF11
4C085GG03
4C085GG10
4C086AA01
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA24
4C086MA56
4C086MA59
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZB21
4C086ZB33
4C086ZC41
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB41
4C087BB44
4C087BB64
4C087BC83
4C087CA04
4C087CA08
4C087MA02
4C087MA24
4C087MA56
4C087MA59
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB21
4C087ZB33
4C087ZC41
(57)【要約】
本開示は、コロナウイルス感染症の治療および予防のための組成物ならびに方法を提供する。特定の局面は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質またはその一部もしくは変異体を含む脂質小胞に指向している。さらなる局面は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質またはACE2などの治療用タンパク質を含む脂質小胞を提供する工程を含む、コロナウイルス感染症の治療または予防のための方法を包含する。いくつかの態様では、開示された脂質小胞は、抗ウイルス治療薬の標的送達に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜貫通ドメインと外部ドメインとを含むSARS-CoV-2スパイクタンパク質またはその一部もしくは変異体を含む脂質小胞であって、前記外部ドメインが前記脂質小胞の外表面に存在する、前記脂質小胞。
【請求項2】
前記外部ドメインがS1ドメインを含む、請求項1に記載の脂質小胞。
【請求項3】
前記外部ドメインがS2ドメインを含む、請求項1に記載の脂質小胞。
【請求項4】
前記外部ドメインがS1ドメインとS2ドメインとを含む、請求項1に記載の脂質小胞。
【請求項5】
リポソームである、請求項1~4のいずれか一項に記載の脂質小胞。
【請求項6】
エクソソームである、請求項1~4のいずれか一項に記載の脂質小胞。
【請求項7】
抗ウイルス治療薬をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の脂質小胞。
【請求項8】
前記抗ウイルス治療薬が核酸である、請求項7に記載の脂質小胞。
【請求項9】
抗ウイルス核酸が低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項8に記載の脂質小胞。
【請求項10】
前記抗ウイルス核酸が、宿主タンパク質を標的にしてその発現を低下させるように構成されており、前記宿主タンパク質がACE2、TMPRSS2、3CLpro、ALpro、またはAT2である、請求項8または9に記載の脂質小胞。
【請求項11】
前記宿主タンパク質がACE2である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記抗ウイルス核酸が、ウイルスタンパク質を標的にしてその発現を低下させるように構成されており、前記ウイルスタンパク質が、スパイクタンパク質、エンベロープタンパク質、膜糖タンパク質、ヌクレオカプシドタンパク質、RNA依存性RNAポリメラーゼ、レプリカーゼ、またはヘリカーゼである、請求項8または9に記載の脂質小胞。
【請求項13】
前記抗ウイルス治療薬が抗ウイルス化合物である、請求項7に記載の脂質小胞。
【請求項14】
前記抗ウイルス化合物が、RNAポリメラーゼ阻害物質、レプリカーゼ阻害物質、またはヘリカーゼ阻害物質である、請求項13に記載の脂質小胞。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の脂質小胞を産生するように構成された細胞。
【請求項16】
間葉系幹細胞である、請求項15に記載の細胞。
【請求項17】
哺乳動物細胞株由来のものである、請求項15に記載の細胞。
【請求項18】
293T細胞である、請求項17に記載の細胞。
【請求項19】
293F細胞である、請求項17に記載の細胞。
【請求項20】
SARS-CoV-2感染症を予防または軽減するための方法であって、請求項1~14のいずれか一項に記載の脂質小胞または請求項15~18のいずれか一項に記載の細胞を含む組成物の有効量を、対象に提供する工程を含む、前記方法。
【請求項21】
前記対象が前記SARS-CoV-2感染症のリスクを有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物がワクチンアジュバントをさらに含む、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記ワクチンアジュバントが、アルミニウム、または脂質ベースのアジュバントである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物が鼻腔内投与により前記対象に提供される、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物が腹腔内投与により前記対象に提供される、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物が筋肉内投与により前記対象に提供される、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記対象が前記SARS-CoV-2に感染している、請求項20~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
コロナウイルス感染症を治療または予防するための方法であって、膜貫通ドメインと外部ドメインとを含む治療用タンパク質を含む脂質小胞を含む組成物の有効量を、対象に提供する工程を含み、前記外部ドメインが前記脂質小胞の外表面に存在する、前記方法。
【請求項29】
前記コロナウイルスがβコロナウイルスである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記コロナウイルスがSARS-CoV-2である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記治療用タンパク質がコロナウイルスのスパイクタンパク質またはその一部もしくは変異体である、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記外部ドメインがS1ドメインを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記外部ドメインがS2ドメインを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記外部ドメインがS1ドメインとS2ドメインとを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記治療用タンパク質がアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)タンパク質またはその一部もしくは変異体である、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記外部ドメインがPDドメインを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記外部ドメインがCLDドメインを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記外部ドメインがPDドメインとCLDドメインとを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記対象が前記コロナウイルス感染症のリスクを有する、請求項28~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記組成物がワクチンアジュバントをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記ワクチンアジュバントが、アルミニウム、または脂質ベースのアジュバントである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記対象が前記コロナウイルスに感染している、請求項28~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記組成物が鼻腔内投与により前記対象に提供される、請求項28~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記組成物が腹腔内投与により前記対象に提供される、請求項28~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記組成物が筋肉内投与により前記対象に提供される、請求項28~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記脂質小胞がリポソームである、請求項28~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記脂質小胞がエクソソームである、請求項28~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記脂質小胞が抗ウイルス治療薬をさらに含む、請求項28~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記抗ウイルス治療薬が核酸である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
抗ウイルス核酸が、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記抗ウイルス核酸が、宿主タンパク質を標的にしてその発現を低下させることができ、前記宿主タンパク質がACE2、TMPRSS2、3CLpro、ALpro、またはAT2である、請求項49または50に記載の方法。
【請求項52】
前記抗ウイルス核酸が、ACE2を標的にしてその発現を低下させることができる、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記抗ウイルス核酸が、ウイルスタンパク質を標的にしてその発現を低下させることができ、前記ウイルスタンパク質が、スパイクタンパク質、エンベロープタンパク質、膜糖タンパク質、ヌクレオカプシドタンパク質、RNA依存性RNAポリメラーゼ、レプリカーゼ、またはヘリカーゼである、請求項49または50に記載の方法。
【請求項54】
前記抗ウイルス治療薬が抗ウイルス化合物である、請求項48に記載の方法。
【請求項55】
前記抗ウイルス化合物が、RNAポリメラーゼ阻害物質、レプリカーゼ阻害物質、またはヘリカーゼ阻害物質である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記脂質小胞を産生するように構成された細胞を提供する工程を含む、請求項28~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記細胞が間葉系幹細胞である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記細胞が哺乳動物細胞株由来のものである、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記細胞が293T細胞である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記細胞が293F細胞である、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
SARS-CoV-2感染症を治療または予防するための方法であって、ACE2またはその一部もしくは変異体を含む脂質小胞を含む組成物の有効量を、対象に提供する工程を含む、前記方法。
【請求項62】
前記脂質小胞がACE2の一部を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記ACE2の一部がPDドメインを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記ACE2の一部がCLDドメインを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記外部ドメインがPDドメインとCLDドメインとを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項66】
前記脂質小胞がACE2を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項67】
SARS-CoV-2感染症を治療するための方法であって、SARS-CoV-2スパイクタンパク質またはその一部もしくは変異体を含む脂質小胞を含む組成物の有効量を、対象に提供する工程を含む、前記方法。
【請求項68】
前記対象がSARS-CoV-2感染症と診断されている、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記脂質小胞が前記SARS-CoV-2スパイクタンパク質の一部を含む、請求項67または68に記載の方法。
【請求項70】
前記SARS-CoV-2スパイクタンパク質の一部がRBDドメインを含む、請求項69に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本出願は、2020年3月23日に出願された米国特許仮出願第62/993,424号の優先権の恩典を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
I. 発明の分野
本発明の局面は、免疫学、ウイルス学、および分子生物学の分野に関するものである。
【背景技術】
【0003】
II. 背景
COVID-19と呼ばれる疾患は、新型コロナウイルスSARS-CoV-2(2019-nCoVともいう)によって引き起こされ、発熱、重症呼吸器疾患、および肺炎を伴うものである。このウイルス病原体は、βコロナウイルス属の新しいメンバーであり、SARSコロナウイルス(SARS-CoV)と高度の相同性を示す。SARS-CoV-2は、そのゲノムとしてプラスセンス一本鎖RNA(+ssRNA)を有するRNAウイルスで、約30,000塩基の長さである。各SARS-CoV-2は直径50~200nmである。SARS-CoV-2には、ウイルス構造/粒子全体を構成する4つの構造タンパク質がある。ヌクレオカプシドタンパク質(Nタンパク質)はRNAゲノムと相互作用し、RNAゲノムの足場を提供している。スパイク(S)、膜(M)、およびエンベロープ(E)の糖タンパク質は、ウイルスエンベロープの構造的基礎を提供している。S糖タンパク質は、肺の呼吸器細胞などの宿主ヒト細胞の膜に結合することに関与しており、ウイルスの付着と、受容体介在エンドサイトーシスによる細胞侵入を促進している。
【0004】
SARS-CoV-2ウイルスの表面にあるS糖タンパク質に結合する宿主ヒト細胞上の受容体は、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)として知られている。この高親和性結合は、細胞内へのウイルスの侵入につながる。S糖タンパク質のS1ドメインは細胞表面上のACE2のペプチダーゼドメインに結合し、S糖タンパク質のS2ドメインは膜結合を可能にする。ACE2は、肺、消化管、腎臓、および心臓に発現されるI型膜貫通タンパク質受容体である。ACE2がアンジオテンシンを切断すると、血管収縮をコントロールしかつ血圧を調節する活性ペプチドが生成される。
【0005】
SARS-CoV-2感染症を治療および予防するための方法ならびに組成物が緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示の局面は、コロナウイルス(例えば、SARS-CoV2コロナウイルス)感染症を治療または予防するための1つまたは複数の治療用タンパク質を含む、脂質小胞、例えばエクソソームに指向している。本開示の脂質小胞は、その表面に発現された治療用タンパク質を含む。治療用タンパク質は、膜貫通ドメインと細胞外ドメインとを含むことができる。いくつかの態様では、脂質小胞は、コロナウイルスのスパイクタンパク質またはその一部(例えば、S1ドメイン、S2ドメイン)を含む。いくつかの態様では、脂質小胞は、細胞へのコロナウイルス侵入を促進するタンパク質、例えばアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)またはその一部(例えば、PDドメイン、CLDドメイン)を含む。
【0007】
本開示の態様には、以下が含まれる:脂質小胞;リポソーム;エクソソーム;抗ウイルス治療薬;脂質小胞を産生するように構成された細胞;リポソームを産生するように構成された細胞;エクソソームを産生するように構成された細胞;ワクチン組成物;脂質小胞を含むワクチン組成物;リポソームを含むワクチン組成物;エクソソームを含むワクチン組成物;脂質小胞を産生するように構成された細胞を含むワクチン組成物;リポソームを産生するように構成された細胞を含むワクチン組成物;エクソソームを産生するように構成された細胞を含むワクチン組成物;治療用タンパク質;コロナウイルスのスパイクタンパク質;アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)タンパク質;治療用タンパク質を含む脂質小胞;治療用タンパク質を含むリポソーム;治療用タンパク質を含むエクソソーム;治療用タンパク質を含む脂質小胞を産生するよう構成された細胞;治療用タンパク質を含むリポソームを産生するように構成された細胞;治療用タンパク質を含むエクソソームを産生するように構成された細胞;治療用タンパク質を含む脂質小胞を含むワクチン組成物;治療用タンパク質を含むリポソームを含むワクチン組成物;治療用タンパク質を含むエクソソームを含むワクチン組成物;治療用タンパク質を含む脂質小胞を産生するように構成された細胞を含むワクチン組成物;治療用タンパク質を含むリポソームを産生するように構成された細胞を含むワクチン組成物;治療用タンパク質を含むエクソソームを産生するように構成された細胞を含むワクチン組成物;コロナウイルスのスパイクタンパク質を含む脂質小胞;コロナウイルスのスパイクタンパク質を含むリポソーム;コロナウイルスのスパイクタンパク質を含むエクソソーム;コロナウイルスのスパイクタンパク質を含む脂質小胞を産生するように構成された細胞;コロナウイルスのスパイクタンパク質を含むリポソームを産生するように構成された細胞;コロナウイルスのスパイクタンパク質を含むエクソソームを産生するように構成された細胞;コロナウイルスのスパイクタンパク質を含む脂質小胞を含むワクチン組成物;コロナウイルスのスパイクタンパク質を含むリポソームを含むワクチン組成物;コロナウイルスのスパイクタンパク質を含むエクソソームを含むワクチン組成物;コロナウイルスのスパイクタンパク質を含む脂質小胞を産生するように構成された細胞を含むワクチン組成物;コロナウイルスのスパイクタンパク質を含むリポソームを産生するように構成された細胞を含むワクチン組成物;コロナウイルスのスパイクタンパク質を含むエクソソームを産生するように構成された細胞を含むワクチン組成物;ACE2タンパク質を含む脂質小胞;ACE2タンパク質を含むリポソーム;ACE2タンパク質を含むエクソソーム;ACE2タンパク質を含む脂質小胞を産生するように構成された細胞;ACE2タンパク質を含むリポソームを産生するように構成された細胞;ACE2タンパク質を含むエクソソームを産生するように構成された細胞;ACE2タンパク質を含む脂質小胞を含むワクチン組成物;ACE2タンパク質を含むリポソームを含むワクチン組成物;ACE2タンパク質を含むエクソソームを含むワクチン組成物;ACE2タンパク質を含む脂質小胞を産生するように構成された細胞を含むワクチン組成物;ACE2タンパク質を含むリポソームを産生するように構成された細胞を含むワクチン組成物;ACE2タンパク質を含むエクソソームを産生するように構成された細胞を含むワクチン組成物;コロナウイルス感染症の治療のための方法;SARS-CoV-2感染症の治療のための方法;コロナウイルス感染症の予防のための方法;SARS-CoV-2感染症の予防のための方法;コロナウイルス感染症の重症度を軽減するための方法;SARS-CoV-2感染症の重症度を軽減するための方法;コロナウイルス感染症の発症を遅らせるための方法;SARS-CoV-2感染症の発症を遅らせるための方法;コロナウイルスの細胞への侵入を阻止するための方法;SARS-CoV-2ウイルスの細胞への侵入を阻止するための方法;コロナウイルスのスパイクタンパク質と宿主細胞膜との相互作用を阻害するための方法;SARS-CoV-2のスパイクタンパク質と宿主細胞膜との相互作用を阻害するための方法;薬学的組成物;およびキット。SARS-CoV-2ウイルスはCOVID-19を引き起こすので、SARS-CoV-2の文脈において論じられる態様はどれも、COVID-19に関して実行に移すことが可能である。
【0008】
本開示の方法は、以下の工程のうちの1、2、3、4、5、6つ、またはそれ以上を含むことができる:脂質小胞を対象に投与する工程;リポソームを対象に投与する工程;エクソソームを対象に投与する工程;抗ウイルス治療薬を対象に投与する工程;コロナウイルス感染症を有するとして対象を診断する工程;SARS-CoV-2感染症を有するとして対象を診断する工程;コロナウイルス感染症の症状を有するとして対象を診断する工程;SARS-CoV-2感染症の症状を有するとして対象を診断する工程;コロナウイルス感染症を有するリスクを有するとして対象を診断する工程;SARS-CoV-2感染症を有するリスクを有するとして対象を診断する工程;対象からサンプルを取得する工程;サンプル中のコロナウイルスを検出する工程;サンプル中のSARS-CoV-2ウイルスを検出する工程;および対象に2種類またはそれ以上の抗ウイルス治療を提供する工程。本開示の特定の態様は、前述の要素および/または工程のうちの1つまたは複数を除外してもよい。
【0009】
本開示の組成物は、以下の構成成分の少なくとも1、2、3、4、5つ、またはそれ以上を含むことができる:脂質小胞;リポソーム;エクソソーム;抗ウイルス治療薬;脂質小胞を産生するように構成された細胞;リポソームを産生するように構成された細胞;エクソソームを産生するように構成された細胞;ワクチン組成物;脂質小胞を含むワクチン組成物;リポソームを含むワクチン組成物;エクソソームを含むワクチン組成物;脂質小胞を産生するように構成された細胞を含むワクチン組成物;リポソームを産生するように構成された細胞を含むワクチン組成物;エクソソームを産生するように構成された細胞を含むワクチン組成物;治療用タンパク質;コロナウイルスのスパイクタンパク質;アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)タンパク質;治療用タンパク質を含む脂質小胞;治療用タンパク質を含むリポソーム;治療用タンパク質を含むエクソソーム;治療用タンパク質を含む脂質小胞を産生するように構成された細胞;治療用タンパク質を含むリポソームを産生するように構成された細胞;治療用タンパク質を含むエクソソームを産生するように構成された細胞;薬学的に許容される担体;および賦形剤。これらの構成成分の1つまたは複数は、特定の態様から特別に除外されてもよい。
【0010】
本明細書で開示されるものは、いくつかの態様では、膜貫通ドメインと外部ドメインとを含むSARS-CoV-2スパイクタンパク質またはその一部もしくは変異体を含む脂質小胞であって、外部ドメインが脂質小胞の外表面にある、脂質小胞である。いくつかの態様では、外部ドメインは、S1ドメインおよび/またはS2ドメインを含む。いくつかの態様では、脂質小胞はリポソームである。いくつかの態様では、脂質小胞はエクソソームである。
【0011】
また、本明細書では、本開示の脂質小胞を産生するように構成された細胞も開示される。いくつかの態様では、前記細胞は間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell)である。さらに、SARS-CoV-2感染症を予防または軽減するための方法が開示され、前記方法は、本開示の脂質小胞を含む組成物の有効量を、対象に提供する工程を含む。
【0012】
また、本明細書で開示されるものは、いくつかの態様では、コロナウイルス感染症を治療または予防するための方法であり、前記方法は、膜貫通ドメインと外部ドメインとを含む治療用タンパク質を含む脂質小胞を含む組成物の有効量を、対象に提供する工程を含み、ここで、前記外部ドメインは脂質小胞の外表面に存在する。いくつかの態様では、コロナウイルスはβコロナウイルスである。いくつかの態様では、コロナウイルスはSARS-CoV-2である。いくつかの態様では、治療用タンパク質は、コロナウイルスのスパイクタンパク質、またはその一部もしくは変異体である。いくつかの態様では、治療用タンパク質は、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)タンパク質、またはその一部もしくは変異体である。いくつかの態様では、外部ドメインは、PDドメインおよび/またはCLDドメインを含む。いくつかの態様では、前記方法は、対象において治療用タンパク質に対する抗体を生成させる工程を含む。いくつかの態様では、対象がコロナウイルスに感染している。
【0013】
いくつかの態様では、対象は、SARS-CoV-2感染症のリスクを有する。いくつかの態様では、前記組成物はワクチンアジュバントをさらに含有し、前記アジュバントは脂質ベースのアジュバントのアルミニウムであってよい。いくつかの態様では、前記組成物は、鼻腔内、腹腔内、または筋肉内投与によって提供される。いくつかの態様では、対象がSARS-CoV-2に感染している。
【0014】
いくつかの態様では、脂質小胞は抗ウイルス治療薬をさらに含む。いくつかの態様では、抗ウイルス治療薬は核酸であり、それは、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。いくつかの態様では、抗ウイルス核酸は、宿主タンパク質を標的にしてその発現を低下させるように構成されており、ここで、宿主タンパク質は、ACE2、TMPRSS2、3CLpro、ALpro、またはAT2である。いくつかの態様では、宿主タンパク質はACE2である。いくつかの態様では、抗ウイルス核酸は、ウイルスタンパク質を標的にしてその発現を低下させるように構成されており、ここで、ウイルスタンパク質は、スパイクタンパク質、エンベロープタンパク質、膜糖タンパク質、ヌクレオカプシドタンパク質、RNA依存性RNAポリメラーゼ、レプリカーゼ、またはヘリカーゼである。いくつかの態様では、抗ウイルス治療薬は、抗ウイルス化合物である。いくつかの態様では、抗ウイルス化合物は、RNAポリメラーゼ阻害物質、レプリカーゼ阻害物質、またはヘリカーゼ阻害物質である。いくつかの態様では、脂質小胞は、抗ウイルス治療薬を含まない。
【0015】
いくつかの態様では、前記方法は、脂質小胞を産生するように構成された細胞を提供する工程を含む。いくつかの態様では、前記細胞は間葉系幹細胞である。いくつかの態様では、前記細胞は哺乳動物細胞株由来のものである。いくつかの態様では、前記細胞は293T細胞である。いくつかの態様では、前記細胞は293F細胞である。
【0016】
また、本明細書で開示されるものは、いくつかの態様では、SARS-CoV-2感染症を治療または予防するための方法であり、前記方法は、ACE2またはその一部もしくは変異体を含む脂質小胞を含む組成物の有効量を、対象に提供する工程を含む。いくつかの態様では、脂質小胞はACE2の一部を含む。いくつかの態様では、ACE2の一部はPDドメインを含む。いくつかの態様では、ACE2の一部はCLDドメインを含む。いくつかの態様では、外部ドメインは、PDドメインとCLDドメインとを含む。いくつかの態様では、脂質小胞はACE2を含む。
【0017】
本出願を通して、用語「約」は、ある値が測定法または定量法に関する固有の誤差の変動を含むことを示すために使用される。
【0018】
単語「1つの(a)」または「1つの(an)」の使用は、用語「を含む(comprising)」と共に使用される場合、「1つ」を意味することもあるが、「1つまたは複数(one or more)」、「少なくとも1つ(at least one)」、「1つまたは2つ以上(one or more than one)」の意味とも合致している。
【0019】
語句「および/または」は、「および」または「または」を意味する。例示すると、A、B、および/またはCは、A単独、B単独、C単独、AとBの組み合わせ、AとCの組み合わせ、BとCの組み合わせ、またはAとBとCの組み合わせを含む。言い換えれば、「および/または」は、包含的な「または」として機能する。
【0020】
単語「を含む(comprising)」(およびを含む(comprising)の任意の形、例えば「を含む(comprise)」、「を含む(comprises)」など)、「を有する(having)」(およびを有する(having)の任意の形、例えば「を有する(have)」、「を有する(has)」など)、「を含む(including)」(およびを含む(including)の任意の形、例えば「を含む(includes)」、「を含む(include)」など)または「を含む(containing)」(およびを含む(containing)の任意の形、例えば「を含む(contains)」、「を含む(contain)」など)は、包括的またはオープンエンド(open-ended)であり、列挙されていない追加の要素または方法工程を除外しない。
【0021】
組成物およびその使用方法は、本明細書を通して開示された成分または工程のいずれかを「を含む(comprise)」、「から本質的になる(consist essentially of)」、または「からなる(consist of)」ことができる。開示された成分または工程のいずれか「から本質的になる」組成物および方法は、クレームの範囲を、クレームされた発明の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を与えない特定の材料または工程に限定している。
【0022】
1つまたは複数の配列または組成物の使用は、本明細書に記載された方法のいずれかに基づいて使用され得る。他の態様は、本出願を通して説明される。本開示の一局面に関して説明された任意の態様は、本開示の他の局面にも当てはまり、逆もまた同様である。例えば、本明細書に記載された方法の任意の工程は、任意の他の方法に適用することができる。さらに、本明細書に記載された任意の方法は、任意の工程または工程の組み合わせを除外することができる。実施例のセクションにおける態様は、本明細書に記載された技術のあらゆる局面に適用できる態様であると理解される。
【0023】
治療上、診断上、または生理学上の目的または効果の文脈の中での任意の方法は、記載された治療上、診断上、または生理学上の目的または効果を達成または実施するために本明細書で説明された任意の化合物、組成物、または作用物質「の使用」などの、「使用」クレームの言語で記載することも可能である。
【0024】
本明細書で説明された任意の態様は、本発明の任意の方法または組成物に関して実施され、その逆も同様であると考えられる。さらに、本発明の組成物は、本発明の方法を達成するために使用され得る。
【0025】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明および具体的な実施例は、本発明の特定の態様を示しているが、例示としてのみ与えられていることを理解すべきである;本発明の精神および範囲に含まれる様々な変更および修正が、この詳細な説明から当業者には明らかになるからである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
以下の図面は、本明細書の一部を構成し、本発明の特定の局面をさらに実証するために含まれる。本発明は、本明細書に提示された特定の態様の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面の1つ以上を参照することによって、よりよく理解することができる。
図1】特定のウイルス膜タンパク質を含む、SARS-CoV-2コロナウイルスの模式図を示す。
図2】コロナウイルスのスパイクタンパク質(Sタンパク質)を表面に含む、例示的な脂質小胞の模式図を示す。
図3】アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を表面に含む、例示的な脂質小胞の模式図を示す。
図4】Exo2019 nCoV Sタンパク質の2つのバージョンの模式図を示す。上:主なドメイン(RBDを含む)が示されるSARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質を表す。左下:全長Sタンパク質を発現しているExo-SC2Sエクソソームを表す。右下:VSV-G提示タンパク質上のSARS-CoV-2のRBDを発現しているExo-SC2S-RBDエクソソームを表す。
図5図5A~5Bは、Exo2019 nCoV Sタンパク質の産生を示す。図5A:エクソソーム、全長Sタンパク質を発現するExo-SC2Sエクソソーム、およびVSV-G提示タンパク質上のSARS-CoV-2のRBDを発現するExo-SC2S-RBDの濃度対サイズ(nm)を示すナノサイト(nanosight)データ。挿入図は、エクソソームおよび全長Sタンパク質を発現するExo-SC2Sエクソソームの代表的な電子顕微鏡画像である。図5B:エクソソーム、全長Sタンパク質を発現するExo-SC2Sエクソソーム、およびVSV-G提示タンパク質上のSARS-CoV-2のRBDを発現するExo-SC2S-RBDエクソソームのエクソソーム産生を、それらを産生する細胞の数に対して正規化されたエクソソーム濃度のナノサイト測定(左;エクソソーム/細胞)として、および100万個の細胞に対して正規化されたタンパク質測定(右;細胞106個あたりのエクソソームタンパク質)として示す。
図6図6A~6Bは、Exo-SC2SエクソソームによるSタンパク質発現の検証を示す。図6A:エクソソームおよびSC2Sを発現するExo-SC2SエクソソームにおけるSタンパク質を検出するためのウェスタンブロット解析;CD81:ローディング対照。図6B:エクソソームおよびSC2Sを発現するExo-SC2SエクソソームのSタンパク質とエクソソームマーカーCD9、CD63、CD81についてのフローサイトメトリー解析。
図7】全長Sタンパク質を発現する操作されたExo-SC2Sエクソソーム、およびVSV-G提示タンパク質上のSARS-CoV-2のRBDを発現する操作されたExo-SC2S-RBDエクソソームにおけるスパイクタンパク質レベルを定量化するために使用されるELISAアッセイの模式図を示す。
図8図8A~8Cは、Exo-SC2Sエクソソームによる基質結合の検証を示す。図8A~8B:増加するRBD基質(図8A)またはExo-SC2S基質の濃度に対する用量反応結合を示すELISAアッセイからの結果。図8C:増加する濃度のExo-SC2Sエクソソーム(μg)によって発現されるSタンパク質の濃度(μg)。
図9図9A~9Cは、Exo-SC2S-RBDエクソソームによる基質結合の検証を示す。図9A~9B:増加するRBD基質(図9A)またはExo-SC2S-RBD基質の濃度に対する用量反応結合を示すELISAアッセイからの結果。図9C:増加する濃度のExo-SC2S-RBDエクソソーム(μg)によって発現されるSタンパク質の濃度(μg)。
図10図10A~10Bは、Exo2019 nCoV Sタンパク質をマウスに投与するための実験的時系列の模式図(図10A)、および対照(PBS)、エクソソーム、Exo-SC2S、Exo-SC2S-RBD、または1μgもしくは10μgのSC2Sを投与されたマウスにおける体重変化パーセント(図10B)を示す。
図11図11A~11Bは、Exo2019 nCoV Sタンパク質による筋肉内ワクチン接種後の、マウスにおけるSARS-CoV-2スパイクタンパク質RBDに対する抗体生成を示す。筋肉内ワクチン接種後のマウスの血液中のIgM(図11A)およびIgG(図11B)抗体産生のELISAベースの検出。Exo-SC2SおよびExo-SC2S-RBDエクソソームは抗体産生をもたらす。Exo-SC2Sエクソソームにより誘導された抗体産生は、対照のエクソソームにより誘導された抗体産生と比較して有意であった。
図12図12A~12Bは、Exo-SC2Sワクチン接種マウスで生成された抗体が中和性であることを示す。図12A:Exo-SC2Sワクチン接種の結果として産生された抗体が中和性であるかどうかを判定するための、シュードウイルス(pseudovirus)を用いたアッセイの模式図。図12B:中和アッセイからの結果は、Exo-SC2S筋肉内ワクチン接種後のマウスの血液中の抗体が中和活性を持つことを示している。
図13図13A~13Bは、293F細胞によるExo-SC2SおよびExo-SC2S-RBDエクソソームの生成を示す。GMP製造には、293F細胞を使用する。Exo-SC2S Exo2019 nCoV Sタンパク質およびExo-SC2S-RBD Exo2019 nCoV Sタンパク質を産生するように、293F細胞を操作した。Sタンパク質(Exo-SC2S Exo2019 nCoV Sタンパク質図13A)およびRBD(Exo-SC2S-RBD Exo2019 nCoV Sタンパク質図13B)の検出を示すウェスタンブロット解析。CD81:ローディング対照。
図14】293T細胞のウェスタンブロット解析による、293T細胞によるExo-ACE2エクソソーム生成の検証を示す。β-アクチン:ローディング対照。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
本開示は、SARS-CoV-2などのコロナウイルスの感染症を治療および予防するための方法ならびに組成物を提供する。特定の局面は、コロナウイルスの感染または伝播を防ぐことができる1つまたは複数の治療用タンパク質を表面に発現する脂質小胞、例えばエクソソームに指向している。コロナウイルス感染症の治療に有用な治療用タンパク質の例としては、コロナウイルスのスパイク(S)タンパク質およびアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)が挙げられる。本開示の脂質小胞は、例えば、コロナウイルス感染症を予防もしくは軽減するためのワクチンとして、または進行中のコロナウイルス感染症を治療するための治療薬として有用である。例えば、コロナウイルスのスパイクタンパク質を発現する脂質小胞は、ワクチンとして、および/またはACE2発現細胞に結合するためのデコイとして使用され、それによって、コロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)の侵入を防止することができる。他の例では、ACE2タンパク質を発現する脂質小胞は、コロナウイルスに結合してその侵入を防ぐためのデコイ受容体として使用することができる。いくつかの例では、コロナウイルスのスパイクタンパク質(例えば、SARS-CoV-2スパイクタンパク質)を発現する脂質小胞を用いて、抗ウイルス治療薬を細胞に送達する方法が開示される。
【0028】
I. ウイルス
本開示の局面は、ウイルスの治療または予防に関する。いくつかの態様では、ウイルス感染症の治療または予防のための方法が開示される。いくつかの態様では、1つまたは複数の抗ウイルス薬を含む組成物が開示される。
【0029】
特定の態様では、ウイルスはコロナウイルス科(Coronaviridae)のものである。コロナウイルス科は、エンベロープを持つ、プラスセンスの一本鎖RNAウイルスのファミリーである。コロナウイルスとは、コロナウイルス科とオルトコロナウイルス亜科(Orthocoronavirinae)(コロナウイルス亜科(Coronavirinae)ともいう)の通称である。コロナウイルス科は、2亜科、5属、23亜属、約40種で構成されている。それらは、プラスセンス一本鎖RNAゲノムと、らせん対称を示すヌクレオカプシドとを持つエンベロープウイルスである。
【0030】
いくつかのコロナウイルスは、動物をそれらの一次宿主として用い、かつ、ヒトに感染するように進化している。コロナウイルスには、α、β、γ、δと呼ばれる4つの主なサブグループがあり、人に感染する可能性のあるコロナウイルスは7種類存在する。最も一般的な4種類のコロナウイルスは、ヒトを自然宿主として用いており、229E(αコロナウイルス)、NL63(αコロナウイルス)、OC43(βコロナウイルス)、HKU1(βコロナウイルス)が含まれる。他の3種類のヒトコロナウイルスは、MERS-CoV(MERSの原因となるβコロナウイルス)、SARS-CoV(SARSの原因となるβコロナウイルス)、およびSARS-CoV-2(コロナウイルス感染症2019またはCOVID-19の原因となる新型コロナウイルス)である。
【0031】
コロナウイルスは、その表面から突き出た特徴的なこん棒形(club-shaped)のスパイクを有し、電子顕微鏡写真では、その名前の由来となった太陽コロナを連想させる画像をもたらす。ウイルス粒子の平均直径は約120nm(0.12μm)である。エンベロープの直径は約80nm(0.08μm)で、スパイクの長さは約20nm(0.02μm)である。このウイルスのスパイクがある外面の下には、ウイルスエンベロープに包まれた丸いコアがある。そのコアには、細胞に感染するためにウイルスが細胞に注入することのできる遺伝物質が含まれている。
【0032】
ウイルスのエンベロープは脂質二重層からなり、そこには膜(M)、エンベロープ(E)、およびスパイク(S)構造タンパク質が固定されている。エンベロープの内側には、複数コピーのヌクレオカプシド(N)タンパク質が、プラスセンスの一本鎖RNAゲノムに連続したビーズ・オン・ア・ストリング(beads-on-a-string)型のコンフォメーションで結合されている、らせん対称性のヌクレオカプシドが存在する。コロナウイルスのゲノムサイズは、約26~32キロベースの範囲である。コロナウイルスのゲノム構成は、5'-リーダー-UTR-レプリカーゼ/トランスクリプターゼ-スパイク(S)-エンベロープ(E)-膜(M)-ヌクレオカプシド(N)-3'UTR-ポリ(A)テールとなっている。ゲノムの最初の3分の2を占めるオープンリーディングフレーム1aおよび1bは、レプリカーゼ/トランスクリプターゼポリプロテインをコードしている。レプリカーゼ/トランスクリプターゼポリプロテインは自己切断して非構造タンパク質を形成する。後続のリーディングフレームは、スパイク、エンベロープ、膜、ヌクレオカプシドという4つの主要な構造タンパク質をコードしている。これらのリーディングフレームの間には、アクセサリータンパク質のリーディングフレームが散在している。アクセサリータンパク質の数とそれらの機能は、特定のコロナウイルスごとにユニークである。
【0033】
脂質二重層のエンベロープ、膜タンパク質、およびヌクレオカプシドは、ウイルスが宿主細胞の外にあるときにウイルスを保護している。スパイクタンパク質はコア内部からウイルス表面まで伸びており、ウイルスが体内の特定の細胞を認識して、それに結合できるようにする。スパイクが宿主細胞の受容体に結合すると、カスケードが誘発され、その結果、ウイルスと細胞の合体(merger)が起こり、ウイルスがその遺伝物質を放出し、細胞のプロセスに取って代わって新しいウイルスを作り出すようになる。
【0034】
ウイルスのスパイク(S)糖タンパク質がその相補的な宿主細胞受容体に結合すると、感染が始まる。結合後、宿主細胞のプロテアーゼが受容体に結合したスパイクタンパク質を切断して活性化する。使用可能な宿主細胞のプロテアーゼに応じて、切断と活性化は、エンドサイトーシスまたはウイルスエンベロープと宿主膜との直接融合により、ウイルスが宿主細胞に侵入することを可能にする。宿主細胞に侵入すると、ウイルス粒子はアンコーティング(脱殻)され、そのゲノムは細胞質に入り込む。コロナウイルスのRNAゲノムは、5'メチル化キャップと3'ポリアデニル化テールを持ち、これにより、RNAは翻訳のために宿主細胞のリボソームに結合することができる。宿主のリボソームは、ウイルスゲノムの最初の重複するオープンリーディングフレームを翻訳し、長いポリプロテインを形成する。そのポリプロテインには独自のプロテアーゼ類があって、それらがポリプロテインを複数の非構造タンパク質へと切断する。
【0035】
ウイルスの侵入に続いて、ウイルスの複製が起こる。いくつかの非構造タンパク質が合体して、マルチプロテインのレプリカーゼ-トランスクリプターゼ複合体(RTC)を形成する。主なレプリカーゼ-トランスクリプターゼタンパク質は、RNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)である。これは、RNA鎖からのRNAの複製と転写に直接関与している。前記複合体の他の非構造タンパク質は、複製および転写プロセスに役立っている。例えば、エキソリボヌクレアーゼ非構造タンパク質は、RNA依存性RNAポリメラーゼには欠けている校正機能(proofreading function)を提供することで、複製にさらなる忠実度を与えている。前記複合体の主な機能の一つは、ウイルスゲノムを複製することである。RdRpは、プラスセンスゲノムRNAからのマイナスセンスゲノムRNAの合成を直接仲介する。この後に、マイナスセンスゲノムRNAからのプラスセンスゲノムRNAの複製が続く。前記複合体の他の重要な機能は、ウイルスゲノムを転写することである。RdRpは、プラスセンスゲノムRNAからのマイナスセンスサブゲノム(subgenomic)RNA分子の合成を直接仲介する。これに続いて、これらのマイナスセンスサブゲノムRNA分子が対応するプラスセンスmRNAに転写される。
【0036】
複製されたプラスセンスゲノムRNAは、子孫ウイルスのゲノムになる。前記mRNAは、ウイルスゲノムの最初の重複リーディングフレームの後の最後の3分の1の遺伝子転写物である。これらのmRNAは、宿主のリボソームによって、構造タンパク質といくつかのアクセサリータンパク質に翻訳される。RNAの翻訳は小胞体内部で行われる。ウイルスの構造タンパク質S、E、およびMは、分泌経路に沿ってゴルジ体中間区画(Golgi intermediate compartment)に移動する。そこで、Mタンパク質は、ヌクレオカプシドへのその結合に続いてウイルスの組み立てに必要なタンパク質-タンパク質相互作用のほとんどを指令する。その後、子孫ウイルスが、分泌小胞を介したエキソサイトーシスにより、宿主細胞から放出される。
【0037】
コロナウイルスのスパイクタンパク質とその相補体である宿主細胞受容体との相互作用は、ウイルスの組織親和性、感染性、および種の範囲を決定する上で中心的な役割を担っている。コロナウイルスは主に上皮細胞の受容体を標的にする。それらは、例えば、エアロゾル、媒介物(fomite)、または糞口(fecal-oral)経路により伝播することができる。ヒトのコロナウイルスは呼吸器系の上皮細胞に感染し、一方、動物のコロナウイルスは一般に消化器系の上皮細胞に感染する。例えば、SARS-CoV-2などのコロナウイルスは、スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)が細胞表面のアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体に結合することによって、エアロゾル経路を介して、ヒト肺の上皮細胞に感染することができる。
【0038】
WHOは、コロナウイルス感染症および/またはコロナウイルス感染後症候群による重症化のリスクが最も高い2つのグループは、65歳以上の成人と、慢性肺疾患、重い心臓病、重度の肥満、免疫システムの低下、糖尿病などの他の基礎疾患を有する人であると報告している。ヒトでは、コロナウイルスは通常、軽度から重度のインフルエンザ様症状を伴う呼吸器感染症を引き起こすが、正確な症状はコロナウイルスのタイプによって変わる。4種類の一般的なヒトコロナウイルスは、人々に鼻水、頭痛、咳、喉の痛み、および発熱を引き起こすことがある。心肺疾患があるかまたは免疫システムが弱体化しているような、一部の対象では、ウイルス感染が、肺炎または気管支炎などの、より深刻な下気道感染に進行する可能性がある。それに比べて、重症のMERSおよびSARS感染症は肺炎に移行することが多い。MERSのその他の症状には発熱、咳、息切れなどがあり、SARSは発熱、悪寒、体の痛みを引き起こすことがある。
【0039】
コロナウイルスは様々な症状を引き起こし、ほとんどの患者に発熱、咳、息切れをもたらす。より稀な症状には、めまい、疲労感、痛み、悪寒、喉の痛み、嗅覚消失、味覚消失、頭痛、吐き気、嘔吐、下痢などがある。緊急措置を要する兆候または症状には、呼吸困難、持続的な胸の痛みや圧迫感、新たな精神混乱(new confusion)、および/または青ざめた唇や顔などがある。コロナウイルス感染症の合併症としては、肺炎、臓器不全、呼吸不全、血栓、心筋症などの心疾患、急性腎障害、ならびに/または他のウイルスおよび細菌感染症が挙げられる。
【0040】
本開示は、コロナウイルス科の任意のウイルスの感染症を治療または予防することを包含する。特定の態様では、本開示は、α、β、γ、およびδコロナウイルス属の4属を含む、コロナウイルス亜科の任意のウイルスの感染症を治療または予防することを包含する。特定の態様では、本開示は、サルベコウイルス(Sarbecovirus)亜属および重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルスの種;エンベコウィルス(Embecovirus)亜属およびヒトコロナウイルスHKU1の種;ならびにβコロナウイルス1の種を含めて、βコロナウイルス属の任意のウイルスの感染症を治療または予防することを包含する。特定の態様では、本開示は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2;COVID-19の原因となるウイルス)などの、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルスの種の任意のウイルスの感染症を治療または予防することを包含する。本開示は、少なくともSARS-CoV-2を含む、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルスの任意の分離株、株、タイプ(タイプA、タイプB、タイプCなど;Forster et al., 2020, PNAS;World Wide Webでdoi.org/10.1073/pnas.2004999117にて入手可能)、クラスター、もしくはサブクラスターの感染症を治療または予防することを包含する。特定の態様では、前記ウイルスは、ゲノムの長さが29000~30000、29100~29900、29200~29900、29300~29900、29400~29900、29500~29900、29600~29900、29700~29900、29800~29900、または29780~29900塩基対の長さである。
【0041】
II. 抗ウイルス治療
本明細書に記載の組成物(例えば、脂質小胞、リポソーム、またはエクソソーム;脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームを含む細胞;脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームを含むワクチン組成物;脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームを含む細胞を含むワクチン組成物)または方法は、宿主タンパク質および/またはウイルスタンパク質を標的にすることが治療上有益であり得る疾患を有する任意の対象に、投与することができる。宿主タンパク質および/またはウイルスタンパク質を標的にすることが治療上有益であり得る疾患には、例えば、ウイルス粒子の細胞への結合およびウイルス粒子の細胞への侵入に関連する疾患が含まれる。このような疾患としては、例えば、コロナウイルス感染症が挙げられる。
【0042】
本明細書で使用する「コロナウイルス感染症」とは、コロナウイルス科のいずれかのメンバーによって引き起こされる感染症を指す。例えば、コロナウイルス感染症には、SARS-CoV-2感染症が含まれるが、これに限定されない。したがって、本開示の局面は、コロナウイルス感染症に罹っているか、その疑いがあるか、それを発症するリスクを有する対象を治療する工程を含む、方法に指向している。いくつかの態様では、コロナウイルス感染症は、SARS-CoV-2感染症である。
【0043】
特定の態様では、前記方法および組成物は、膜貫通ドメインと外部ドメインとを含むSARS-CoV-2スパイクタンパク質またはその一部もしくは変異体を含む脂質小胞の有効量を投与することによって、それを必要とする対象におけるコロナウイルス感染症を治療する、予防する、その発症を遅らせる、かつ/またはその重症度を軽減することを含み、ここで、前記外部ドメインは脂質小胞の外表面に存在する。特定の態様では、前記方法および組成物は、膜貫通ドメインと外部ドメインとを含むSARS-CoV-2スパイクタンパク質またはその一部もしくは変異体を含む脂質小胞を産生するように構成された細胞の有効量を投与することによって、それを必要とする対象におけるコロナウイルス感染症を治療する、予防する、その発症を遅らせる、かつ/またはその重症度を軽減することを含み、ここで、前記外部ドメインは脂質小胞の外表面に存在する。特定の態様では、前記方法および組成物は、膜貫通ドメインと外部ドメインとを含む治療用タンパク質を含む脂質小胞の有効量を投与することによって、それを必要とする対象におけるコロナウイルス感染症を治療する、予防する、その発症を遅らせる、かつ/またはその重症度を軽減することを含み、ここで、前記外部ドメインは脂質小胞の外表面に存在する。特定の態様では、前記方法および組成物は、膜貫通ドメインと外部ドメインとを含む治療用タンパク質を含む脂質小胞の有効量を産生するように構成された細胞を投与することによって、それを必要とする対象におけるコロナウイルス感染症を治療する、予防する、その発症を遅らせる、かつ/またはその重症度を軽減することを含み、ここで、前記外部ドメインは脂質小胞の外表面に存在する。
【0044】
特定の態様では、有効量は、対象におけるコロナウイルス感染症を治療する、予防する、その発症を遅らせる、および/またはその重症度を軽減するのに有効な量である。特定の態様では、前記方法および組成物は、コロナウイルスに感染した対象の生存率を高めることをさらに含む。特定の態様では、前記方法および組成物は、コロナウイルスに感染した対象の回復期間を短縮することをさらに含む。特定の態様では、前記方法および組成物は、対象におけるコロナウイルス感染症の症状を治療する、予防する、その発症を遅らせる、および/またはその重症度を軽減することをさらに含む。特定の態様では、前記方法および組成物は、対象におけるコロナウイルス感染症によって引き起こされる細胞、組織、臓器、またはシステムの損傷を治療する、予防する、その発症を遅らせる、および/またはその重症度を軽減することをさらに含む。
【0045】
それを必要とする対象とは、SARS-CoV-2などのコロナウイルス科のウイルスによる感染症の1つまたは複数の症状を有する対象であり得る。SARS-CoV-2の一般的な初期兆候および症状には、発熱、咳、息切れ、呼吸困難、疲労感、痛み、悪寒、喉の痛み、嗅覚消失、味覚消失、頭痛、下痢、嘔吐などが含まれる。ウイルスの感染症が進行すると、肺炎または急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を発症することがある。
【0046】
特定の態様では、対象は、ウイルス感染症の症状の発現に基づいて、および/または進行中のウイルス感染に関する生物学的検査が陽性であることに基づいて、ウイルス感染症と診断され得る。特定の態様では、進行中のウイルス感染に関する生物学的検査は、ウイルスについてのアッセイである。特定の態様では、対象は、ウイルス感染症の症状発現から経過した時間、解熱剤を使用せずに発熱しないで経過した時間、およびウイルス感染症の他の症状の改善に基づいて;かつ/または少なくとも一定期間をおいて行われた最新のウイルス感染に関する連続した2回の生物学的検査が陰性であることに基づいて、ウイルス感染症から回復したとみなすことができる。特定の態様では、対象は、コロナウイルス感染症の症状が最初に現れてから少なくとも10日間が経過し、解熱剤を使用せずに発熱しないで少なくとも24時間が経過し、コロナウイルス感染症の他の症状が改善している場合に;かつ/または少なくとも24時間おいて行われた最新のコロナウイルス感染に関する2回の生物学的検査が両方とも陰性である場合に、コロナウイルス感染症から回復したとみなすことができる。特定の態様では、対象は、過去のウイルス感染に関する生物学的検査に基づいて、以前のウイルス感染を確認することができる。特定の態様では、過去のウイルス感染に関する生物学的検査は、ウイルス抗体についてのアッセイである。特定の態様では、過去のコロナウイルス感染に関する生物学的検査は、コロナウイルス科のウイルス抗体についてのアッセイである。特定の態様では、ウイルス感染症から回復したとみなされた対象は、ウイルス感染症の持続的な症状および/またはウイルス感染に起因する細胞、組織、臓器、もしくはシステムの損傷の慢性的な影響に基づいて、ウイルス感染後症候群と診断される可能性がある。特定の態様では、コロナウイルス感染症の持続的な症状および/またはコロナウイルス感染に起因する細胞、組織、臓器、もしくはシステムの損傷の慢性的な影響には、持続的な発熱、咳、息切れ、呼吸困難、疲労感、痛み、悪寒、喉の痛み、嗅覚消失、味覚消失、頭痛、下痢、嘔吐、肺炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、めまい、気分障害、認知障害、筋力低下、神経障害、関節痛、胸痛、動悸、発疹、脱毛、生活の質(QOL)の悪化、肺障害、心臓障害、心臓肥大、腎障害、または肝障害が含まれる。特定の態様では、それを必要とする対象は、SARS-CoV-2などのコロナウイルス感染症の1つ以上の持続的な症状、および/またはSARS-CoV-2などのコロナウイルス感染に起因する細胞、組織、臓器、もしくはシステムの損傷の慢性的な影響を有する対象であってよい。SARS-CoV、SARS-CoV-2、MERS-CoVなどのコロナウイルス感染症の一般的な持続的症状、および/またはSARS-CoV-2などのコロナウイルス感染に起因する細胞、組織、臓器、もしくはシステムの損傷の慢性的な影響には、持続的な発熱、咳、息切れ、呼吸困難、疲労感、痛み、悪寒、喉の痛み、嗅覚消失、味覚消失、頭痛、下痢、嘔吐、肺炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、めまい、気分障害、認知障害、筋力低下、神経障害、関節痛、胸痛、動悸、発疹、脱毛、QOLの悪化、肺障害、心臓障害、心臓肥大、腎障害、または肝障害が含まれる。
【0047】
本明細書に開示された方法のいくつかの態様では、対象は、コロナウイルス感染の高いリスクにさらされている。いくつかの態様では、対象は、コロナウイルス感染症に罹っていないか、またはコロナウイルス感染の検査で陰性になっている。いくつかの態様では、対象は、コロナウイルスに感染していると診断された。いくつかの態様では、対象は、コロナウイルス感染症の症状があると診断される。いくつかの態様では、対象は、コロナウイルスに感染するリスクを有すると診断される。いくつかの態様では、対象は、重症急性呼吸器症候群(SARS)または呼吸器感染症を有する。いくつかの態様では、対象は、COVID-19を有する。
【0048】
「治療」または「治療する」という用語は、哺乳動物における疾患の任意の治療を意味し、以下が含まれる:(i)疾患を予防すること、すなわち、疾患の誘導前に防護用組成物を投与することにより、疾患の臨床症状を発現させないようにすること;(ii)疾患を抑制すること、すなわち、誘導事象の後であるが、疾患の臨床的出現または再出現の前に防護用組成物を投与することにより、疾患の臨床症状を発現させないようにすること;(iii)疾患を阻止すること、すなわち、臨床症状の最初の出現後に防護用組成物を投与することにより臨床症状の進行を阻止すること;および/または(iv)疾患を軽減すること、すなわち、臨床症状の最初の出現後に防護用組成物を投与することにより臨床症状の退行を引き起こすこと。
【0049】
本明細書で提供される治療法は、治療薬(例えば、脂質小胞、リポソーム、またはエクソソーム;脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームを含む細胞;脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームを含むワクチン組成物;脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームを含む細胞を含むワクチン組成物)を含む組成物の投与を含んでもよい。いくつかの態様では、本明細書で提供される治療法は、脂質小胞、リポソーム、またはエクソソーム、および薬学的に許容される賦形剤の投与を含む。いくつかの態様では、本明細書で提供される治療法は、脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームを含む細胞、および薬学的に許容される賦形剤の投与を含む。いくつかの態様では、本明細書で提供される治療法は、脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームと、薬学的に許容される賦形剤とを含むワクチン組成物の投与を含む。いくつかの態様では、本明細書で提供される治療法は、脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームを含む細胞と、薬学的に許容される賦形剤とを含むワクチン組成物の投与を含む。
【0050】
いくつかの態様では、開示された方法は、コロナウイルス感染症、例えばSARS-CoV-2感染症に罹っている対象を、脂質小胞、リポソーム、またはエクソソーム;脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームを含む細胞;脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームを含むワクチン組成物;あるいは脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームを含む細胞を含むワクチン組成物で治療する工程を含む。脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームは、宿主またはウイルスのタンパク質を過剰発現するように操作され得る。いくつかの態様では、脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームは、ウイルススパイクタンパク質を過剰発現するように操作される。いくつかの態様では、脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームは、ACE2タンパク質を過剰発現するように操作される。本明細書に開示されるように、脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームがウイルススパイクタンパク質を過剰発現するように操作される場合、その脂質小胞、リポソーム、またはエクソソーム;脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームを含む細胞;脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームを含むワクチン組成物;あるいは脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームを含む細胞を含むワクチン組成物を投与することは、ACE2のデコイとして機能し、それによって、SARS CoV-2ウイルス上のSタンパク質とACE2との結合を妨げて、ウイルスの内在化とその後の増殖を抑制することが可能である。したがって、いくつかの態様では、コロナウイルス感染症を治療または予防するための方法が開示され、前記方法は、膜貫通ドメインと外部ドメインとを含む治療用タンパク質を含む脂質小胞を含む組成物の有効量を、対象に提供する工程を含み、ここで、前記外部ドメインは脂質小胞の外表面に存在する。いくつかの態様では、コロナウイルスはβコロナウイルスである。いくつかの態様では、コロナウイルスはSARS-CoV-2である。いくつかの態様では、治療用タンパク質は、コロナウイルスのスパイクタンパク質またはその一部もしくは変異体であり、その外部ドメインは、S1ドメインを含むか、S2ドメインを含むか、またはS1ドメインとS2ドメインとを含む。他の態様では、治療用タンパク質は、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)タンパク質またはその一部もしくは変異体であり、その外部ドメインは、PDドメインを含むか、CLDドメインを含むか、またはPDドメインとCLDドメインとを含む。
【0051】
また、本明細書に開示されるように、脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームがウイルススパイクタンパク質を過剰発現するように操作される場合、その脂質小胞、リポソーム、またはエクソソーム;脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームを含む細胞;脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームを含むワクチン組成物;あるいは脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームを含む細胞を含むワクチン組成物を投与することは、ウイルススパイクタンパク質を発現している細胞へのACE2の結合を可能にし、それによって、エクソソームの内在化が可能になるため、ウイルスの複製と組み立てを妨害しかつ/またはウイルスの伝播を支援する宿主タンパク質を無効にし得る薬物ペイロードの送達が可能になる。したがって、いくつかの態様では、コロナウイルス感染症を治療または予防するための方法が開示され、前記方法は、治療用タンパク質と抗ウイルス治療薬とを含む脂質小胞を含む組成物の有効量を、対象に提供する工程を含む。いくつかの態様では、抗ウイルス治療薬は、核酸、例えば、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、抗ウイルス核酸は、宿主タンパク質および/またはウイルスタンパク質を標的にしてその発現を低下させることが可能である。いくつかの態様では、宿主タンパク質は、ACE2、TMPRSS2、3CLpro、ALpro、またはAT2である。いくつかの態様では、抗ウイルス核酸は、ACE2を標的にしてその発現を低下させることができる。いくつかの態様では、ウイルスタンパク質は、スパイクタンパク質、エンベロープタンパク質、膜糖タンパク質、ヌクレオカプシドタンパク質、RNA依存性RNAポリメラーゼ、レプリカーゼ、またはヘリカーゼである。他の態様では、抗ウイルス治療薬は抗ウイルス化合物であり、抗ウイルス化合物はRNAポリメラーゼ阻害物質、レプリカーゼ阻害物質、またはヘリカーゼ阻害物質である。
【0052】
いくつかの態様では、本明細書で提供される治療法は、脂質小胞、リポソーム、またはエクソソーム;脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームを含む細胞;脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームを含むワクチン組成物;脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームを含む細胞を含むワクチン組成物などの、治療薬の組み合わせを投与する工程を含み、ここで、脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームは、宿主またはウイルスタンパク質を過剰発現するように操作され得る。いくつかの態様では、追加の治療薬は、ウイルス感染症、例えばSARS-CoV-2感染症を治療するための薬剤を含み、限定するものではないが、以下が含まれる:ステロイド、亜鉛、ビタミンC、レムデシビル、トシリズマブ、アナキンラ、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン、アジスロマイシン、AC-55541、アピシジン、AZ3451、AZ8838、バフィロマイシンA1、CCT 365623、ダウノルビシン、E-52862、エンタカポン、GB110、H-89、ハロペリドール、インドメタシン、JQ1、ロラタジン、メリメポディブ、メトホルミン、ミドスタウリン、ミガラスタット、ミコフェノール酸、PB28、PD-144418、ポナチニブ、リバビリン、RS-PPCC、ルキソリチニブ、RVX-208、S-ベラパミル、シルミタセルチブ、TMCB、UCPH-101、バルプロ酸、XL413、ZINC1775962367、ZINC4326719、ZINC4511851、ZINC95559591、4E2RCat、ABBV-744、カモスタット、カプトプリル、CB5083、クロラムフェニコール、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、CPI-0610、ダブラフェニブ、DBeQ、dBET6、IHVR-19029、リネゾリド、リシノプリル、ミノキシジル、ML240、MZ1、ナファモスタット、ペボネディスタット、PS3061、ラパマイシン(シロリムス)、サングリフェリンA、サパニセルチブ(INK128/MlN128)、FK-506(タクロリムス)、テルナチン4(DA3)、チゲサイクリン、トミボセルチブ(eFT-508)、Verdinexor、WDB002、ゾタチフィン(eFT226)、またはこれらの組み合わせ。
【0053】
A. 治療用組成物
本開示の局面は、脂質小胞を含む。脂質小胞は人工脂質小胞(例えば、リポソーム)であり得る。人工小胞の例には、マルチラメラ小胞およびユニラメラ小胞がある。脂質小胞は、細胞から得られた、または細胞に由来する小胞(例えば、エクソソーム)であってもよい。いくつかの態様では、本開示の脂質小胞はエクソソームである。細胞は、1つまたは複数の治療用タンパク質を発現するエクソソームを含めて、本開示のエクソソームを産生するように操作され得る。いくつかの態様では、そのようなエクソソームを産生するように操作される細胞は、間葉系幹細胞である。いくつかの態様では、そのようなエクソソームを産生するように操作される細胞は、哺乳動物細胞培養物からの細胞(例えば、293T細胞または293F細胞)である。
【0054】
いくつかの局面では、開示された脂質小胞は、1つまたは複数の治療用タンパク質を含む。本明細書に開示される治療用タンパク質とは、コロナウイルス感染症の治療または予防を直接的または間接的に促進することができるタンパク質を表す。治療用タンパク質は、膜貫通ドメインを含むことができる。治療用タンパク質の膜貫通ドメインは、脂質小胞の脂質(例えば、リン脂質)領域に前記タンパク質を挿入するために使用され得る。治療用タンパク質は、外部ドメインを含むことができる。本明細書に記載される外部ドメインとは、細胞または脂質小胞の外表面など、脂質膜の外部に発現または提供されるタンパク質ドメインを指す。外部ドメインは、脂質小胞の内表面に存在してもよい。
【0055】
いくつかの態様では、治療用タンパク質は、コロナウイルスのスパイクタンパク質(「Sタンパク質」、「スパイク糖タンパク質」または「S糖タンパク質」ともいう)である。いくつかの態様では、コロナウイルスのスパイクタンパク質は、βコロナウイルスのスパイクタンパク質である。いくつかの態様では、コロナウイルスのスパイクタンパク質は、SARS-CoVのスパイクタンパク質である。いくつかの態様では、コロナウイルスのスパイクタンパク質は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質である。図2は、SARS-CoV-2のSタンパク質またはその一部を表面に発現している脂質小胞の模式図である。この例では、脂質小胞が肺胞細胞上のACE2タンパク質に結合し、それによって、SARS-CoV-2ウイルスが肺胞細胞に結合するのを防止している。
【0056】
いくつかの態様では、治療用タンパク質は、コロナウイルスの細胞への侵入を促進することができるタンパク質である。コロナウイルス侵入タンパク質の例としては、インテグリン、アミノペプチダーゼN、癌胎児性抗原関連細胞接着分子1(CEACAM1)、およびACE2が挙げられる。いくつかの態様では、治療用タンパク質はACE2である。図3は、ACE2タンパク質またはその一部を表面に発現している脂質小胞の模式図である。この例では、脂質小胞がSARS-CoV-2コロナウイルス粒子に結合し、デコイ受容体として機能して、ウイルス粒子が肺胞細胞に結合するのを防止している。
【0057】
いくつかの局面では、開示された脂質小胞は、1つまたは複数の抗ウイルス治療薬を含む。このような場合、脂質小胞は、関心対象の細胞への抗ウイルス治療薬の送達に有用であり得る。例えば、コロナウイルスのスパイクタンパク質を含む脂質小胞は、ウイルス感染細胞に抗ウイルス分子を送達するために使用することができる。いくつかの態様では、抗ウイルス治療薬は核酸である。抗ウイルス核酸の例には、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。抗ウイルス核酸は、宿主タンパク質を標的にしてその発現を低下させるように構成することができる。例えば、抗ウイルス核酸は、細胞におけるACE2タンパク質を標的にしてその発現を低下させるように構成され、それによって、SARS-CoV-2コロナウイルスによる細胞の感染を防止することができる。標的にされ得る宿主タンパク質のさらなる例には、TMPRSS2およびAT2が含まれる。宿主タンパク質は、宿主タンパク質の発現の低下または排除が宿主細胞の破壊をもたらすような任意の宿主タンパク質(例えば、タンパク質合成、エンドソーム輸送、ゴルジ体機能、および/または小胞輸送などの細胞プロセスに必須のタンパク質)であってよい。抗ウイルス核酸は、ウイルスタンパク質を標的にしてその発現を低下させるように構成することができる。抗ウイルス核酸は、例えば、スパイクタンパク質、エンベロープタンパク質、膜糖タンパク質、ヌクレオカプシドタンパク質、RNA依存性RNAポリメラーゼ、レプリカーゼ、またはヘリカーゼを含めて、任意のウイルスタンパク質を標的にするように構成され得る。標的にされ得るウイルスタンパク質の具体例には、ヌクレオプロテインN、3CLproおよびALproが含まれる。いくつかの態様では、抗ウイルス治療薬は抗ウイルス化合物(例えば、小分子)である。抗ウイルス化合物は、ウイルス酵素の阻害物質であり得る。抗ウイルス化合物は、例えば、RNAポリメラーゼ阻害物質、レプリカーゼ阻害物質、またはヘリカーゼ阻害物質であってよい。
【0058】
本開示の態様は、ワクチンとして使用するために製剤化された脂質小胞に関する。例えば、いくつかの態様では、コロナウイルスのスパイクタンパク質を発現する脂質小胞は、コロナウイルス感染症を予防または軽減するワクチンとして使用するために製剤化される。本開示の脂質小胞は、1つまたは複数のアジュバントを用いて製剤化することができる。当技術分野では、様々なワクチンアジュバントが知られており、例えば、アルミニウム、および脂質ベースのアジュバントが含まれる。
【0059】
1. 阻害性オリゴヌクレオチド
いくつかの局面では、本開示は、ウイルス侵入タンパク質、例えばACE2、の遺伝子発現を阻害する阻害性オリゴヌクレオチドに関する。阻害性オリゴヌクレオチドの例としては、siRNA(低分子干渉RNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、二本鎖RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、およびこれらのいずれかをコードするオリゴヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。阻害性オリゴヌクレオチドは、細胞内で遺伝子の転写を阻害したり、遺伝子転写産物の翻訳を妨害したりすることができる。阻害性オリゴヌクレオチドは、16~1000ヌクレオチド長であり得、特定の態様では18~100ヌクレオチド長である。前記オリゴヌクレオチドは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、40、50、60、70、80、もしくは90(またはその中において導き出せる任意の範囲もしくは値)個のヌクレオチドを有してもよいか、または最大で上記数のヌクレオチドを有してもよい。前記オリゴヌクレオチドは、DNA、RNA、または阻害性RNAをコードするcDNAであり得る。
【0060】
本明細書で使用する「単離された」とは、ヒトの介入によって自然の状態から改変または分離されたことを意味する。例えば、生存している動物に自然界で存在しているsiRNAは「単離された」ものではないが、合成siRNA、またはその自然の状態の共存物質から一部または完全に分離されたsiRNAは「単離された」ものである。単離されたsiRNAは、実質的に精製された形態で存在してもよいか、または、例えば、siRNAが送達された細胞もしくはsiRNAが封入された脂質小胞などの、非自然環境に存在してもよい。
【0061】
阻害性オリゴヌクレオチドは、当技術分野で周知である。例えば、siRNAおよび二本鎖RNAは、米国特許第6,506,559号および同第6,573,099号、ならびに米国特許出願公開第2003/0051263号、同2003/0055020号、同2004/0265839号、同2002/0168707号、同2003/0159161号、および同2004/0064842号に記載されており、これらは全てその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0062】
特に、阻害性オリゴヌクレオチドは、ウイルス侵入タンパク質、例えばACE2の発現を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、95%、99%、もしくはそれ以上、またはこれらの間の任意の範囲もしくは値だけ低下させることができる可能性がある。
【0063】
さらなる態様では、ウイルス侵入タンパク質(例えば、ACE2)の阻害物質である合成オリゴヌクレオチドが存在する。阻害物質は、17~25ヌクレオチド長であってよく、成熟ウイルス侵入タンパク質(例えば、ACE2)mRNAの5'から3'の方向の配列に対して少なくとも90%相補的な5'から3'の配列を含む。特定の態様では、阻害物質分子は、17、18、19、20、21、22、23、24、もしくは25ヌクレオチド長、またはその中において導き出せる任意の範囲である。さらに、阻害物質分子は、成熟ウイルス侵入タンパク質(例えば、ACE2)mRNA、特に天然に存在する成熟mRNAの5'から3'の配列に対して90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、99.9、もしくは100%、またはその中において導き出せる任意の範囲、相補的であるか、または少なくとも上記%相補的である配列(5'から3'の方向)を有する。当業者であれば、成熟mRNAの配列に相補的なプローブ配列の一部を、mRNA阻害物質の配列として使用できるであろう。さらに、プローブ配列のその一部分は、成熟mRNAの配列に対してなおも90%相補的であるように改変することが可能である。
【0064】
いくつかの態様では、阻害性オリゴヌクレオチドはアナログであり、修飾を含んでもよく、特に、ヌクレアーゼ耐性を高め、結合親和性を向上させ、かつ/または結合特異性を改善する修飾を含むことができる。例えば、ヌクレオシドまたはヌクレオチドの糖部が炭素環部分で置き換えられると、それはもはや糖ではない。さらに、他の置換、例えば、糖間ホスホジエステル結合の置換を行うと、得られる物質はもはや真の核酸種ではない。このような化合物は全て、アナログとみなされる。本明細書を通して、核酸種の糖部への言及は、真の糖、または野生型核酸の糖の構造上の代わりをする種のいずれかを指すと理解される。さらに、糖間結合への言及は、野生型核酸の様式で糖部または糖アナログ部を結合するのに役立つ部分を含むと解釈される。
【0065】
本開示は、修飾されたオリゴヌクレオチド、すなわち、オリゴヌクレオチドアナログまたはオリゴヌクレオシド、および修飾を行うための方法に関する。これらの修飾オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドアナログは、それらの天然に存在する対応物と比較して、増大した化学的および/または酵素的安定性を示す可能性がある。細胞外および細胞内ヌクレアーゼは一般に、バックボーン(主鎖)修飾化合物を認識せず、その結果としてそれに結合しない。プロトン化した酸の形で存在する場合には、負に帯電したバックボーンがないため、細胞透過が促進される可能性がある。
【0066】
修飾されたヌクレオシド間結合は、天然に存在するホスホジエステル-5'-メチレン結合を4原子連結基で置き換えて、得られる化合物にヌクレアーゼ耐性と向上した細胞取り込みを付与することが意図される。
【0067】
修飾は、手動で操作できる固体支持体を用いて、またはDNA合成装置の分野の当業者によく知られた方法論によりDNA合成装置と連結して使用できる固体支持体を用いて、達成することができる。一般に、この手順は、所定の配列において互いに隣接している2つのヌクレオシドの糖部分を官能化することを含む。5'から3'のセンス鎖では、構造Hなどの「上流」シントン(synthon)がその末端3'部位で修飾され、構造H1などの「下流」シントンがその末端5'部位で修飾される。
【0068】
ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、および他の連結基で連結されたオリゴヌクレオシドは、5'-ヒドロキシルでジメトキシトリチル基により保護され、3'-ヒドロキシルでカップリングするためにシアノエチルジイソプロピル-ホスファイト部分により活性化され得る。これらの化合物は、標準的な固相自動DNA合成技術によって、任意の所望の配列に挿入することができる。最も普及しているプロセスの一つは、ホスホロアミダイト技法である。均一なバックボーン結合を含むオリゴヌクレオチドは、CPG固体支持体と、Applied Biosystems社製380Bおよび394、Milligen/Biosearch社製7500および8800sなどの標準的な核酸合成装置を用いて合成することができる。最初のヌクレオチド(3'末端の1番のヌクレオチド)は、多孔質ガラス(controlled pore glass:CPG)などの固体支持体に結合される。配列に特有の順序で、手動操作または自動合成システムのいずれかによって、それぞれの新しいヌクレオチドが結合される。
【0069】
遊離アミノ基は、例えば酢酸中のアセトンとシアノ水素化ホウ素ナトリウムを用いて、アルキル化することができる。アルキル化工程は、巨大分子上に他の有用な機能性分子を導入するために使用され得る。そのような有用な機能性分子には、レポーター分子、RNAを切断する分子群、オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善する分子群、およびオリゴヌクレオチドの薬力学的特性を改善する分子群が含まれるが、これらに限定されない。そのような分子は、バックボーン連鎖中の窒素原子への結合を介して、巨大分子に結合またはコンジュゲートさせることができる。あるいは、そのような分子は、1つまたは複数のヌクレオチドの糖部分のヒドロキシル基から伸びるペンダント基に結合させることもできる。そのような他の有用な官能基の例は、参照により本明細書に組み入れられるWO1993007883、および上記の特許出願の他のものにより提供される。
【0070】
固体支持体には、ポリヌクレオチド合成のために当技術分野で知られた支持体がどれも含まれ、例えば、多孔質ガラス(CPG)、オキサリル多孔質ガラス、TentaGel Support(アミノポリエチレングリコール誘導体化支持体)、またはPoros(ポリスチレン/ジビニルベンゼンのコポリマー)などがある。ヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドの結合と切断は、標準的な手法で行うことができる。本明細書で使用する固体支持体という用語は、成長するオリゴヌクレオシドをCPGなどの固定相に結合するために使用される任意のリンカー(例えば、長鎖アルキルアミンおよびスクシニル残基)をさらに含む。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドは、1つまたは複数のロックド(locked)ヌクレオチド、エチレン架橋ヌクレオチド、ペプチド核酸、または5'(E)-ビニルホスホネート(VP)修飾を有するとしてさらに定義され得る。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドは、1つまたは複数のホスホロチオエート化DNAまたはRNA塩基を有する。
【0071】
B. 細胞療法
本開示の局面には、細胞療法が含まれる。いくつかの態様では、細胞療法は、本明細書の他の箇所に開示されるように、1つまたは複数の治療用タンパク質を含む脂質小胞を生成するように操作された細胞を含む。いくつかの態様では、間葉系幹細胞が、1つまたは複数の治療用タンパク質(例えば、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、ACE2)を発現するエクソソームを生成するように操作され、コロナウイルス感染症を治療または予防するために対象に提供される。間葉系幹細胞は、対象に由来しても、異なる対象に由来してもよい。
【0072】
1. 細胞培養
いくつかの態様では、細胞は、少なくとも約10日~約40日間、少なくとも約15日~約35日間、少なくとも約15日~21日間、例えば、少なくとも約15、16、17、18、19または21日間培養され得る。いくつかの態様では、本開示の細胞は、60日間以内、または50日間以内、または45日間以内培養され得る。前記細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40日間培養され得る。前記細胞は、液体培養培地の存在下で培養することができる。通常、培地は、当技術分野で知られるような基礎培地処方物を含み得る。多くの基礎培地処方物を本明細書での細胞培養に使用することができ、例えば、イーグル最小必須培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、α改変最小必須培地(αMEM)、Basal Medium Essential(BME)、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、BGJb培地、F-12 Nutrient Mixture(Ham)、ライボビッツ(Liebovitz)L-15、DMEM/F-12、必須改変イーグル培地(Essential Modified Eagle's Medium:EMEM)、RPMI-1640、ならびにこれらの改変培地および/または組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。上記の基礎培地の組成は一般に当技術分野で公知であり、培養する細胞に必要とされるように培地および/または培地サプリメントを変更し、その濃度を調節することは当業者の技術の範囲内である。いくつかの態様では、培養培地処方物は、10%ウシ胎児血清(FBS)、100U/mlのペニシリンG、100μg/mlのストレプトマイシンおよび2mmol/LのL-グルタミンを添加したIMDMからなる外植片培地(CEM)であり得る。他の態様では、上記のものから選択されるような、さらなる基礎培地処方物を用いてもよい。
【0073】
細胞の培養には、インビトロで細胞を支持することができる培地であれば、どれを使用してもよい。細胞の増殖を支持できる培地処方物には、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、α改変最小必須培地(αMEM)、ロズウェルパーク記念研究所培地1640(RPMI培地1640)などが含まれるが、これらに限定されない。通常、細胞の増殖を支持するために、上記培地に最大20%のウシ胎児血清(FBS)または1~20%のウマ血清が加えられる。しかし、細胞の培養に必要な増殖因子、サイトカイン、およびホルモンが適切な濃度で培地に提供されるのであれば、規定培地(defined medium)を使用することも可能である。本開示の方法に有用な培地は、細胞の培養に有用な抗生物質、有糸分裂促進化合物、または分化化合物を含むがこれらに限定されない、1つまたは複数の関心対象の化合物を含んでもよい。細胞は27℃~40℃、例えば31℃~37℃の温度で培養することができ、加湿インキュベーターに入れてもよい。二酸化炭素の含有量は2%~10%に維持され、酸素の含有量は1%~22%に維持され得る。しかし、本開示は、細胞を分離して培養するためのいずれか1つの方法に限定されると決して解釈されるべきではない。むしろ、細胞を分離して培養するいかなる方法も、本開示に含まれると解釈されるべきである。
【0074】
細胞培養で使用するために、培地には、1つまたは複数のさらなる成分を供給することができる。例えば、最適な成長および増殖拡大に必要な微量元素と物質を細胞に供給するために、追加のサプリメントが使用される。そのようなサプリメントには、インスリン、トランスフェリン、セレニウム塩、およびこれらの組み合わせが含まれる。これらの成分は、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)、アール塩溶液(Earle's Salt Solution)などであるがこれらに限定されない塩溶液に含めることができる。さらに、酸化防止剤サプリメント、例えばβ-メルカプトエタノールを加えてもよい。多くの培地はすでにアミノ酸類を含んでいるが、一部のアミノ酸、例えば、溶液中では安定性が低いことが知られているL-グルタミンは、後で補充することができる。培地には、抗生物質および/または抗真菌化合物、例えば、一般的に、ペニシリンとストレプトマイシンの混合物、および/または以下に例示されるがそれらに限定されない他の化合物をさらに供給してもよい:アムホテリシン、アンピシリン、ゲンタマイシン、ブレオマイシン、ハイグロマイシン、カナマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ナリジクス酸、ネオマイシン、ナイスタチン、パロモマイシン、ポリミキシン、ピューロマイシン、リファンピシン、スペクチノマイシン、テトラサイクリン、タイロシン、およびゼオシン。また、細胞培養培地に哺乳動物の血漿または血清を補充することも考えられる。血漿または血清は、多くの場合、生存と増殖拡大に必要な細胞因子および成分を含む。適切な血清代替品の使用も考えられる。
【0075】
特定の緩衝液、培地、試薬、細胞、培養条件など、またはそれらのサブクラスへの言及は、限定することを意図したものではなく、その話題が提示される特定の文脈において、当業者が関心または価値があると認識する全てのそのような関連材料を含むと解釈されるべきである。例えば、多くの場合、ある緩衝系または培地を別のものに置き換えることが可能であり、こうして、異なっているが知られた方法を使用して、提案された方法、材料または組成物の使用が指示された目標と同じ目標を達成することができる。特定の態様では、細胞は、細胞培地を含む細胞培養システム、好ましくは培養容器で培養され、特に、細胞をインビトロ老化から保護しかつ/または非特異的もしくは特異的なリプログラミング(reprogramming)を誘導するのに適すると判定された物質を添加した細胞培地で培養される。
【0076】
III. 治療用組成物の投与
本開示の態様は、治療用タンパク質および/または抗ウイルス治療薬を含み得る、脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームなどの治療用組成物を含む、組成物ならびに方法に関する。
【0077】
いくつかの態様では、前記治療法は、治療用タンパク質および/または抗ウイルス治療薬を含み得る脂質小胞を含む。いくつかの態様では、前記治療法は、治療用タンパク質および/または抗ウイルス治療薬を含み得るリポソームを含む。いくつかの態様では、前記治療法は、治療用タンパク質および/または抗ウイルス治療薬を含み得るエクソソームを含む。いくつかの態様では、前記治療法は、治療用タンパク質および/または抗ウイルス治療薬を含み得る脂質小胞を産生するように構成された細胞を含む。いくつかの態様では、前記治療法は、治療用タンパク質および/または抗ウイルス治療薬を含み得るリポソームを産生するように構成された細胞を含む。いくつかの態様では、前記治療法は、治療用タンパク質および/または抗ウイルス治療薬を含み得るエクソソームを産生するように構成された細胞を含む。いくつかの態様では、前記治療法は、治療用タンパク質および/または抗ウイルス治療薬を含み得る脂質小胞を含むワクチン組成物を含む。いくつかの態様では、前記治療法は、治療用タンパク質および/または抗ウイルス治療薬を含み得るリポソームを含むワクチン組成物を含む。いくつかの態様では、前記治療法は、治療用タンパク質および/または抗ウイルス治療薬を含み得るエクソソームを含むワクチン組成物を含む。いくつかの態様では、前記治療法は、治療用タンパク質および/または抗ウイルス治療薬を含み得る脂質小胞を産生するように構成された細胞を含むワクチン組成物を含む。いくつかの態様では、前記治療法は、治療用タンパク質および/または抗ウイルス治療薬を含み得るリポソームを産生するように構成された細胞を含むワクチン組成物を含む。いくつかの態様では、前記治療法は、治療用タンパク質および/または抗ウイルス治療薬を含み得るエクソソームを産生するように構成された細胞を含むワクチン組成物を含む。これらの疾患治療法のいずれかが除外されてもよい。また、これらの治療法の組み合わせが投与されてもよい。
【0078】
本明細書で提供される治療法は、治療用組成物の組み合わせの投与を含むことができ、例えば、第1の疾患治療法(例えば、治療用タンパク質および/または抗ウイルス治療薬を含んでもよい、脂質小胞)と、1つまたは複数の追加の疾患治療法(例えば、抗ウイルス治療薬)を含み得る。これらの治療法は、当技術分野で知られている任意の適切な方法で投与することができる。例えば、前記治療法を、順次(異なる時間に)または同時に(concurrently)(同じ時間にもしくはほぼ同じ時間に;また、「同時に(simultaneously)」もしくは「実質的に同時に」)投与し得る。異なる治療法を1つの組成物で投与してもよいか、または1つより多い組成物、例えば、2つの組成物、3つの組成物、もしくは4つの組成物で投与してもよい。作用物質の様々な組み合わせが採用され得る。
【0079】
いくつかの態様では、治療用タンパク質および/または抗ウイルス治療薬を含み得る脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームを含む組成物は、対象に1回だけ送達される。いくつかの態様では、治療用タンパク質および/または抗ウイルス治療薬を含み得る脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームを含む組成物は、対象に複数回送達され、例えば、1日に1回、1日に2回以上、週に1回、週に2回以上、月に1回、月に2回以上、年に1回、または年に2回以上送達される。いくつかの態様では、治療用タンパク質および/または抗ウイルス治療薬を含み得る脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームは、対象に複数回投与される。いくつかの態様では、治療用タンパク質および/または抗ウイルス治療薬を含み得る脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームは、対象に1回だけ投与される。複数回の治療では、製剤および/または投与経路が同じであってもよいか、または同じでなくてもよい。
【0080】
いくつかの態様では、治療用タンパク質および/または抗ウイルス治療薬を含み得る脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームを含む組成物は、疾患、例えばコロナウイルス感染症、の発症後に送達される。いくつかの態様では、治療用タンパク質および/または抗ウイルス治療薬を含み得る脂質小胞、リポソーム、またはエクソソームを含む組成物は、疾患、例えばコロナウイルス感染症、の発症前に送達される。
【0081】
本開示の治療薬は、同じ投与経路で、または異なる投与経路で投与することができる。いくつかの態様では、前記治療薬は、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内に、移植により、吸入により、髄腔内、脳室内、または鼻腔内に投与される。いくつかの態様では、抗生物質は、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内に、移植により、吸入により、髄腔内、脳室内、または鼻腔内に投与される。適切な投与量は、治療すべき疾患のタイプ、疾患の重症度および経過、個体の臨床状態、個体の病歴および治療に対する応答、ならびに主治医の裁量に基づいて決定され得る。
【0082】
いくつかの態様では、前記組成物は、非経口経路を介して投与され得る。本明細書で使用する用語「非経口」には、消化管を迂回する経路が含まれる。具体的には、本明細書に開示される薬学的組成物は、例えば、眼窩後、脳内、頭蓋内、静脈内、皮内、筋肉内、動脈内、髄腔内、皮下、または腹腔内に投与することができるが、これらに限定されない;米国特許第6,7537,514号、同第6,613,308号、同第5,466,468号、同第5,543,158号、同第5,641,515号、および同第5,399,363号(それぞれその全体が参照により本明細書に具体的に組み入れられる)。
【0083】
遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合した水中に調製され得る。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物、ならびに油中に調製することもできる。通常の保管および使用条件下では、これらの製剤は微生物の増殖を防止する防腐剤を含有する。注射用に適した薬学的形態には、無菌水性溶液または分散液、および無菌注射用溶液または分散液の即時調製のための無菌粉末が含まれる(例えば、米国特許第5,466,468号参照;その全体が参照により本明細書に具体的に組み入れられる)。いずれの場合も、前記形態は無菌でなければならず、また、容易に注射できる程度に流動性でなければならない。それは製造および保管の条件下で安定でなければならず、また、細菌、真菌などの微生物の汚染作用から保護されねばならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(すなわち、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、および/または植物油を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用により、分散液の場合は必要な粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされる。多くの場合には、等張剤、例えば糖類または塩化ナトリウム、を含めることが好ましい。注射用組成物の長期にわたる吸収は、吸収を遅らせる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン、を組成物中で使用することによってもたらされる。
【0084】
例えば、水溶液で非経口投与する場合、前記溶液を必要に応じて適切に緩衝化する必要があり、最初に液体希釈剤を十分な生理食塩水またはグルコースで等張にする。こうした特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内投与に特に適している。これに関連して、採用できる無菌水性媒体は、本開示に照らして当業者に知られている。例えば、1回分の投与量を等張NaCl溶液に溶解して、予定された注入部位に注射することができる(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」第15版、1035~1038頁および1570~1580頁参照)。治療すべき対象の状態に応じて、投与量の若干の変動が必然的に発生するだろう。いずれにしても、投与の責任者が、個々の対象に適切な用量を決定することになる。さらに、ヒトに投与する場合、製剤はFDAの生物製剤部(Office of Biologics)の基準により要求される無菌性、発熱性、一般安全性および純度の基準を満たす必要がある。
【0085】
無菌注射液を調製するには、必要な量の活性化合物を、必要に応じて上記の種々の他の成分を含む適切な溶媒中に混入し、その後、例えば滅菌ろ過する。一般的に、分散液を調製するには、様々な滅菌した活性成分を、基本的な分散媒と上記の成分から必要とされる他の成分を含む無菌ビヒクル中に混入する。無菌注射液調製用の無菌粉末の場合、好適な調製方法は、前もって滅菌ろ過した溶液から活性成分と追加の所望成分との粉末をもたらす、真空乾燥および凍結乾燥の技術である。粉末組成物は、場合によっては安定剤を含む、例えば水または生理食塩水などの、液体担体と混ぜ合わされる。
【0086】
他の態様では、薬学的組成物は、点眼薬、鼻腔内スプレー、吸入、および/または他のエアロゾル送達ビヒクルによって送達され得る。鼻用エアロゾルスプレーを介して肺に組成物を直接送達するための方法は、例えば、米国特許第5,756,353号および同第5,804,212号(それぞれその全体が参照により本明細書に具体的に組み入れられる)に記載されている。同様に、鼻腔内微粒子樹脂(例えば、Takenaga et al., 1998参照)およびリゾホスファチジルグリセロール化合物(例えば、米国特許第5,725,871号参照;その全体が参照により本明細書に具体的に組み入れられる)を用いた薬物の送達もまた、薬学分野において周知である。同様に、ポリテトラフルオロエチレン支持マトリックスの形態での経粘膜薬物送達は、例えば、米国特許第5,780,045号(その全体が参照により本明細書に具体的に組み入れられる)に記載されている。
【0087】
エアロゾルという用語は、液化または加圧したガス推進剤中に分散された微細な固体または液体粒子のコロイド系を指す。本開示の典型的な吸入用エアロゾルは、液体推進剤中または液体推進剤と適切な溶媒の混合物中の活性成分の懸濁液からなる。適切な推進剤には、炭化水素および炭化水素エーテルが含まれる。適切な容器は、推進剤の圧力要件によって異なる。エアロゾルの投与は、対象の年齢、体重、症状の重症度および応答に応じて変化する。
【0088】
治療には、様々な「単位用量」が含まれ得る。単位用量は、治療用組成物の所定量を含むと定義される。投与される量、ならびに特定の経路および製剤は、臨床分野の当業者が決定できる技術の範囲内である。単位用量は、単回注射として投与する必要はなく、一定期間にわたる持続注入(静注)を含んでもよい。いくつかの態様では、単位用量は単回の投与可能用量を含む。
【0089】
投与される量は、治療回数と単位用量の両方に従って、希望する治療効果に依存する。有効用量は、特定の効果を達成するのに必要な量を指すと理解される。特定の態様での実施では、10mg/kg~200mg/kgの範囲の用量が、これらの作用物質の防護能力に影響を及ぼし得ると考えられる。したがって、用量は、約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、および200、300、400、500、1000μg/kg、mg/kg、μg/日、もしくはmg/日、またはその中において導き出せる任意の範囲の用量を含むと考えられる。さらに、このような用量は、1日のうちに複数回、かつ/または何日にも、何週にも、何ヶ月にもわたって、投与することができる。
【0090】
特定の態様では、薬学的組成物の有効用量は、約1μM~150μMの血中レベルを提供することができるものである。別の態様では、有効用量は、約4μM~100μM;または約1μM~100μM;または約1μM~50μM;または約1μM~40μM;または約1μM~30μM;または約1μM~20μM;または約1μM~10μM;または約10μM~150μM;または約10μM~100μM;または約10μM~50μM;または約25μM~150μM;または約25μM~100μM;または約25μM~50μM;または約50μM~150μM;または約50μM~100μM(またはその中において導き出せる任意の範囲)の血中レベルを提供する。他の態様では、前記用量は、治療薬を対象に投与した結果として生じる、治療薬の以下の血中レベルをもたらすことができる:約、少なくとも約、または最大で約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100μM、またはその中において導き出せる任意の範囲。特定の態様では、対象に投与された治療薬は、体内で代謝されて、代謝型の治療薬となる;その場合、血中レベルはその代謝型の治療薬の量を指してもよい。あるいは、治療薬が対象によって代謝されない場合、本明細書で論じる血中レベルは、その代謝されない治療薬を指してもよい。
【0091】
治療用組成物の正確な量はまた、開業医の判断に任せられており、各個体に特有のものである。用量に影響を与える要因には、患者の身体的および臨床的状態、投与経路、意図する治療目標(症状の緩和か治癒か)、特定の治療物質の効力、安定性および毒性、対象が受けている他の治療法などがある。
【0092】
μg/kg体重またはmg/kg体重の投与量単位は、4μM~100μMのような、μg/mlまたはmM(血中レベル)の匹敵する濃度単位に変換して表現できることが、当業者には理解され、認識されよう。また、取り込みは種および臓器/組織に依存することも理解されよう。取り込みおよび濃度測定に関して行われる適用可能な変換係数および生理学的仮説(physiological assumption)はよく知られており、当業者であれば、ある濃度測定を別のものに変換し、本明細書に記載された用量、効力、および結果に関して妥当な比較をして結論を下すことができるだろう。
【0093】
IV. キット
本発明の特定の局面はまた、本発明の組成物または本発明の方法を実施するための組成物を含むキットに関する。いくつかの態様では、キットは、対象またはサンプルにおけるコロナウイルスを中和するために使用され得る。特定の態様では、キットは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、100、500、1,000種類、もしくはそれ以上の、または少なくとも上記数の、または最大で上記数の、プローブ、プライマー、もしくはプライマーセット、合成分子、もしくは阻害物質、またはその中において導き出せる任意の値もしくは範囲および組み合わせを含有する。いくつかの態様では、キットは、1つまたは複数のコロナウイルススパイクタンパク質に結合するように構成された治療用タンパク質、またはその一部もしくは変異体を含む1つまたは複数の脂質小胞、例えば本明細書に開示された脂質小胞、を含有する。いくつかの態様では、キットは、ACE2タンパク質、またはその一部もしくは変異体を含む1つまたは複数の脂質小胞を含有する。例えば、キットは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10種類、またはそれ以上の、コロナウイルススパイクタンパク質と相互作用してそれを中和する本明細書に開示された脂質小胞を含んでもよい。
【0094】
キットは、チューブ、ボトル、バイアル、シリンジなどの容器、または他の適切な容器手段に個別に包装または配置され得る構成成分を含むことができる。
【0095】
個々の構成成分はまた、濃縮された量でキットに提供され得る;いくつかの態様では、ある構成成分は、それが他の成分を含む溶液中にあるのと同じ濃度で個別に提供される。構成成分の濃度は、1倍、2倍、5倍、10倍、20倍またはそれ以上として提供することができる。
【0096】
本開示のプローブ、合成核酸、非合成核酸、および/または阻害物質を予測的または診断的適用に使用するためのキットは、本開示の一部として含まれる。具体的には、本明細書で同定されたバイオマーカーに対応するそのような分子が考えられ、それらには、バイオマーカーの全部もしくは一部と同一であるかまたは相補的である核酸プライマー/プライマーセットおよびプローブが含まれ、それらは、バイオマーカーのコード配列だけでなく、バイオマーカーの非コード配列をも含むことができる。
【0097】
キットは、使用説明書をさらに含むことができる。例えば、いくつかの態様では、キットは、対象またはサンプルにおけるコロナウイルス抗体を検出するための説明書を含む。いくつかの態様では、キットは、対象またはサンプルにおけるコロナウイルスを中和するための説明書を含む。
【0098】
本明細書に記載される任意の方法または組成物は、本明細書に記載の他の任意の方法または組成物に対して実施することができ、異なる態様を組み合わせることができると考えられる。最初に提出された請求項は、提出された請求項または提出された請求項の組み合わせに多重に依存している請求項をカバーすることが意図される。
【実施例
【0099】
以下の実施例は、本発明の特定の態様を実証するために含められる。以下の実施例に開示された技術は、本発明を実施する際に十分に機能することが本発明者により見出された技術を表しており、それゆえ、その実施のための特定の形態を構成しているとみなされることを当業者は理解すべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示された特定の態様において多くの変更を行うことができ、それでもなお、本発明の精神および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果が得られることを理解すべきである。
【0100】
実施例1 - コロナウイルススパイクタンパク質を含むエクソソームの、コロナウイルス感染症の予防用ワクチンとしての使用
SARS-CoV-2ウイルスとサイズが類似し、かつSARS-CoV-2スパイクタンパク質(Exo-SC2S)またはSARS-CoV-2スパイクタンパク質のRBD(Exo-SC2S-RBD)を表面に発現するエクソソーム(図4図5)を293F細胞において生成させた(図13)。前記エクソソームを培養培地から分離し、Sタンパク質の発現をウェスタンブロット(図6A)およびフローサイトメトリー(図6B)で確認した。ELISAアッセイ(図7)を用いて、Exo-SC2SおよびExo-SC2S-RBDエクソソームによってそれぞれ発現されたSタンパク質(Exo-SC2Sエクソソーム、図8)またはSタンパク質RBD(Exo-SC2S-RBD、図9)のレベルを定量化した。これらのELISAアッセイの結果は、Exo-SC2SおよびExo-SC2S-RBDエクソソームのSARS-CoV-2 RBDに対する特異性を示している。
【0101】
これらのExo-SC2SおよびExo-SC2S-RBDエクソソーム(50μg)をワクチン組成物に製剤化した(図10A);このワクチン組成物は、水中油型ナノエマルションのワクチンアジュバントAddavaxをも含有する。さらに、PBS、Sタンパク質発現を欠くエクソソーム(エクソソーム)、またはSタンパク質(SC2S)を含むワクチン組成物も対照として投与した(図10A)。このワクチン組成物をマウスに3回、0日目と14日目と28日目に筋肉内投与した(図10A)。ワクチン組成物の投与は、有意な体重変化パーセントをもたらさなかった(図10B)。
【0102】
Exo-SC2SおよびExo-SC2S-RBDエクソソームのいずれかを含むワクチン組成物を筋肉内接種した後に、SARS-CoV-2スパイクタンパク質RBDに対するIgM(図11A)およびIgG(図11B)抗体がマウスにおいて生成された;Exo-SC2Sエクソソームのワクチン組成物は、Sタンパク質発現を欠くエクソソームを含むワクチン組成物と比較して、有意に増大した抗体産生をもたらした。次に、本発明者らは、Exo-SC2SおよびExo-SC2S-RBDエクソソームのワクチン組成物の接種後に産生された抗体が、SARS-CoV-2ウイルスに対して中和性であるかどうかを確認しようとした。SARS-CoV-2 Sタンパク質を表面に発現するVSVシュードウイルスまたはVSVのみのシュードウイルス(陰性対照)を用いて(図12A)、本発明者らは、Exo-SC2S筋肉内ワクチン接種後のマウスの血中の抗体が中和活性を示すことを明らかにした(図12B)。また、これらのワクチン組成物をSARS-CoV-2感染症のリスクを有するヒト対象に提供することによって、前記対象においてSARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する抗体を生成させることも可能である。
【0103】
実施例2 - コロナウイルススパイクタンパク質を含むエクソソームの、肺胞細胞におけるACE2発現を低下させるための使用
293T細胞は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質またはSARS-CoV-2スパイクタンパク質のRBDを表面に発現するエクソソームを生成し、かつアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を標的にするsiRNAを内部に含むように操作される。SARS-CoV-2ウイルスと同様のサイズのエクソソームを培養培地から分離する。そのような操作されたエクソソーム(ExoSARS-CoV-2 Sタンパク質)を薬学的組成物に製剤化する。薬学的組成物をSARS-CoV-2感染症の対象に鼻腔内投与し、それによって、ACE2発現肺胞細胞にsiRNAを送達して、これらの細胞におけるACE2発現を低下させる。
【0104】
実施例3 - ACE2を含むエクソソームの、コロナウイルス感染症の治療のための治療薬としての使用
293T細胞は、SARS-CoV-2ウイルスと同様のサイズで、表面にACE2を発現するエクソソームを生成するように操作した(図14)。前記エクソソームを培養培地から分離し、ACE2タンパク質の発現をウェスタンブロットで確認した(図14)。そのような操作されたエクソソーム(ExoACE2)は、薬学的に許容される治療用組成物に製剤化することができる。
【0105】
実施例4 - コロナウイルススパイクタンパク質を含むエクソソームを生成するように操作された間葉系幹細胞の、コロナウイルス感染症の治療のための治療薬としての使用
間葉系幹細胞は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質またはSARS-CoV-2スパイクタンパク質のRBDを表面に発現するエクソソームを生成するように操作される。前記エクソソームを分離して、薬学的に許容される治療用組成物に製剤化する。SARS-CoV-2感染症を有する対象に治療用組成物を提供し、それによって、前記感染症の症状の重症度を軽減させる。
【0106】
実施例5 - コロナウイルススパイクタンパク質を含むエクソソームを生成するように操作された293F細胞の、コロナウイルス感染症の治療のための治療薬としての使用
293F細胞は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質またはSARS-CoV-2スパイクタンパク質のRBDを表面に発現するエクソソームを生成するように操作される。前記エクソソームを分離して、薬学的に許容される治療用組成物に製剤化する。SARS-CoV-2感染症を有する対象に治療用組成物を提供し、それによって、前記感染症の症状の重症度を軽減させる。
【0107】
実施例6 - コロナウイルススパイクタンパク質を含むエクソソームを生成するように操作された間葉系幹細胞の、肺胞細胞におけるACE2発現を低下させるための使用
間葉系幹細胞は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質またはSARS-CoV-2スパイクタンパク質のRBDを表面に発現するエクソソームを生成し、かつアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を標的にするsiRNAを内部に含むように操作される。前記エクソソームを分離して、薬学的に許容される治療用組成物に製剤化する。SARS-CoV-2感染症を有する対象に治療用組成物を提供し、それによって、前記感染症の症状の重症度を軽減させる。
【0108】
実施例7 - コロナウイルススパイクタンパク質を含むエクソソームを生成するように操作された293T細胞の、肺胞細胞におけるACE2発現を低下させるための使用
293T細胞は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質またはSARS-CoV-2スパイクタンパク質のRBDを表面に発現するエクソソームを生成し、かつアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を標的にするsiRNAを内部に含むように操作される。前記エクソソームを分離して、薬学的に許容される治療用組成物に製剤化する。SARS-CoV-2感染症を有する対象に治療用組成物を提供し、それによって、前記感染症の症状の重症度を軽減させる。
【0109】
実施例8 - ACE2を含むエクソソームを生成するように操作された間葉系幹細胞の、コロナウイルス感染症の治療のための治療薬としての使用
間葉系幹細胞は、ACE2を表面に発現するエクソソームを生成するように操作される。前記エクソソームを分離して、薬学的に許容される治療用組成物に製剤化する。SARS-CoV-2感染症を有する対象に治療用組成物を提供し、それによって、前記感染症の症状の重症度を軽減させる。
【0110】
実施例9 - ACE2を含むエクソソームを生成するように操作された293T細胞の、コロナウイルス感染症の治療のための治療薬としての使用
293T細胞は、ACE2を表面に発現するエクソソームを生成するように操作される。前記エクソソームを分離して、薬学的に許容される治療用組成物に製剤化する。SARS-CoV-2感染症を有する対象に治療用組成物を提供し、それによって、前記感染症の症状の重症度を軽減させる。
【0111】
本明細書に開示され、請求された方法はどれも、本開示に照らして、過度の実験をすることなく実施および遂行することができる。本発明の組成物および方法は特定の態様に関して説明されてきたが、当業者には、本発明の概念、精神、および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された方法および方法の工程または工程の順序に変形形態を適用できることが明らかであろう。より具体的には、化学的にも生理学的にも関連する特定の作用物質を、本明細書に記載された作用物質の代わりに使用することができるが、同じまたは同様の結果が達成されることは明白であろう。当業者に明らかな、全てのそのような類似の代用物および変更は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神、範囲および概念に含まれるとみなされる。
図1
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【国際調査報告】