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特表2023-519280液相Pに存在するアクリル酸の望ましくないフリーラジカル重合を抑制する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】液相Pに存在するアクリル酸の望ましくないフリーラジカル重合を抑制する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/50 20060101AFI20230428BHJP
   C07C 57/075 20060101ALI20230428BHJP
   C07C 51/44 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
C07C51/50
C07C57/075
C07C51/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557961
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(85)【翻訳文提出日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2021056934
(87)【国際公開番号】W WO2021191042
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】20165913.3
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521037411
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・ズロウスキー
(72)【発明者】
【氏名】ティレ・ギースホフ
(72)【発明者】
【氏名】ニコル・ヤンセン
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AD11
4H006AD40
4H006BC50
4H006BC51
4H006BS10
(57)【要約】
液相Pに存在するアクリル酸の望ましくないフリーラジカル重合を抑制する方法であって、Pのアクリル酸含有量が少なくとも10質量%であり、Pに存在するアクリル酸の質量に対して、液相Pが25~1000ppmwの範囲のグリオキサールを含有し、液相Pが、Pに存在するアクリル酸の質量に対して0.5~100ppmwの範囲のプロトアネモニン含有量をもたらすような量のプロトアネモニンと混合される方法、及び液相Pであって、アクリル酸含有量が少なくとも10質量%であり、各場合において、Pに存在するアクリル酸の質量に対して、25~1000ppmwの範囲のグリオキサールと、0.5~100ppmwの範囲のプロトアネモニンとを含有する、液相P。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相Pに存在するアクリル酸の望ましくないフリーラジカル重合を抑制する方法であって、前記液相Pのアクリル酸含有量が少なくとも10質量%であり、各場合において、Pに存在するアクリル酸の質量に対して、液相Pが25~1000ppmwの範囲のグリオキサールを含み、液相Pが、0.5~100ppmwの範囲のプロトアネモニン含有量をもたらす量のプロトアネモニンと混合される、方法。
【請求項2】
前記液相Pのアクリル酸含有量が、少なくとも30質量%又は少なくとも50質量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液相Pが、Pに存在するアクリル酸の質量に対して少なくとも100ppmwのプロピオン酸を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記液相Pが、各場合において、Pに存在するアクリル酸の質量に対して、50~500ppmwの範囲のグリオキサール及び/又は1~50ppmwの範囲のプロトアネモニンを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記液相Pが、各場合において、Pに存在するアクリル酸の質量に対して、50~1000ppmwの範囲のフェノチアジン及び/又はメチルヒドロキノンを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記液相Pが、50℃~150℃の範囲の温度を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
アクリル酸の蒸留精製のためのカラムにおいて実施される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記液相Pに存在するアクリル酸が、アクリル酸のC3-前駆体化合物の不均一触媒部分酸化の生成物であり、部分酸化に使用されるC3-前駆体化合物を含む開始混合物が、その中に存在するC3-前駆体化合物のモル量に対して100~10000モルppmの範囲のモル総量のC2-化合物を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
液相Pであって、アクリル酸含有量が少なくとも10質量%であり、各場合において、Pに存在するアクリル酸の質量に対して、25~1000ppmwの範囲のグリオキサールと、0.5~100ppmwの範囲のプロトアネモニンとを含む、液相P。
【請求項10】
前記液相Pのアクリル酸含有量が少なくとも30質量%又は少なくとも50質量%である、請求項9に記載の液相P。
【請求項11】
Pに存在するアクリル酸の質量に対して少なくとも100ppmwのプロピオン酸を含む、請求項9又は10に記載の液相P。
【請求項12】
各場合において、Pに存在するアクリル酸の質量に対して、50~500ppmwの範囲のグリオキサール及び/又は1~50ppmwの範囲のプロトアネモニンを含む、請求項9から11のいずれか一項に記載の液相P。
【請求項13】
各場合において、Pに存在するアクリル酸の質量に対して、50~1000ppmwの範囲のフェノチアジン及び/又はメチルヒドロキノンを含む、請求項9から12のいずれか一項に記載の液相P。
【請求項14】
50℃~150℃の範囲の温度を有する、請求項9から13のいずれか一項に記載の液相P。
【請求項15】
アクリル酸の蒸留精製のためのカラム内にある、請求項9から14のいずれか一項に記載の液相P。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液相Pに存在するアクリル酸の望ましくないフリーラジカル重合を抑制する方法、及びその方法の実施中に生成される液相に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル酸は、それ自体で、その塩の形態で及び/又はそのエステル(例えばアルキルエステル)の形態で、例えば接着剤として、又は水に対して吸収性の材料として使用されるポリマーの製造に使用される重要なモノマーである(例えばWO 02/055469及びWO 03/078378を参照)。
【0003】
アクリル酸の製造は、例えば、気相中でのC3-前駆体化合物(例えばプロピレン、プロパン、アクロレイン、プロピオンアルデヒド、プロピオン酸、プロパノール及び/又はグリセロール)の不均一触媒部分酸化によって行うことができる(例えばWO 2010/012586、US 5,198,578、EP 1 710 227 A、EP 1 015 410 A、EP 1 484 303 A、EP 1 484 308 A、EP 1 484 309 A、US 2004/0242826、WO 2006/136336、DE 100 28 582 A及びWO 2007/074044を参照)。
【0004】
このような不均一触媒部分気相酸化では一般に、純粋なアクリル酸は得られず、むしろ、アクリル酸だけでなく、アクリル酸とは異なる構成要素も含むアクリル酸含有生成物ガス混合物が得られるに過ぎず、それからアクリル酸を分離しなければならない。
【0005】
生成物ガス混合物中のアクリル酸とは異なる構成要素の種類と量的割合はどちらも、C3-前駆体化合物の選択、採用した触媒、不均一触媒部分気相酸化が実施される反応条件、原料として採用されたC3-前駆体化合物中に存在するC3-前駆体化合物とは異なる不純物構成要素の種類と量、及び一般に反応ガス混合物中の反応物質を希釈する希釈ガスの選択によって影響を受ける(例えばDE 101 31 297 A、DE 10 2005 052917 A、WO 2007/074044及びDE 100 28 582 Aを参照)。
【0006】
C3-前駆体化合物の不均一触媒部分気相酸化の生成物ガス混合物からのアクリル酸の分離は、典型的には、アクリル酸のその後の目的の用途に適した純度を可能な限り経済的な方法で達成するために、様々な分離法の組み合わせを採用する。したがって、特定の場合において採用される組み合わせは、生成物ガス混合物中に存在するアクリル酸とは異なる構成要素の種類と量にとりわけに依存する。
【0007】
C3-前駆体化合物の不均一触媒部分気相酸化の生成物ガス混合物からアクリル酸を分離するための分離法の本質的に全ての可能な組み合わせに共通する特徴は、任意選択で前述の生成物ガス混合物を直接的及び/又は間接的に冷却した後に、生成物ガス混合物中に存在するアクリル酸を、主分離工程において凝縮相、殊に液相とすることである。
【0008】
これは、例えば、適切な溶媒(例えば水、高沸点有機溶媒、水溶液)への吸収により、及び/又は部分的若しくは実質的に完全な凝縮(例えば分別凝縮)により行われてもよい(この点に関しては、例えばEP 1 388 533 A、EP 1 388 532 A、DE 102 35 847 A、EP 0 792 867 A、WO 98/01415、US 7,332,624、US 6,888,025、US 7,109,372、EP 1 015 411 A、EP 1 015 410 A、WO 99/50219、WO 00/53560、WO 02/09839、DE 102 35 847 A、WO 03/041832、DE 102 23 058 A、DE 102 43 625 A、DE 103 36 386 A、EP 0 854 129 A、US 7,319,167、US 4,317,926、DE 102 47 240 A、EP 0 695 736 A、EP 0 982 287 A、EP 1 041 062 A、EP 0 117 146 A、DE 43 08 087 A、DE 43 35 172 A、DE 44 36 243 A、DE 199 24 532 A、DE 103 32 758 A及びDE 199 24 533 A明細書を参照)。アクリル酸の分離は、EP 0 982 287 A、EP 0 982 289 A、DE 103 36 386 A、DE 101 15 277 A、DE 196 06 877 A、DE 197 40 252 A、DE 196 27 847 A、EP 0 920 408 A、EP 1 068 174 A、EP 1 066 239 A、EP 1 066 240 A、WO 00/53560、WO 00/53561、DE 100 53 086 A及びEP 0 982 288 Aに記載されているように行うこともできる。分離の有利な態様としては、WO 2004/063138、WO 2008/090190、WO 2004/035514、DE 102 43 625 A及びDE 102 35 847 A明細書に記載された方法も挙げられる。
【0009】
不均一触媒部分気相酸化の生成物ガス混合物中に存在するアクリル酸とは異なる構成要素も通常、アクリル酸と共に凝縮相とされる。
【0010】
DE 10 2009 027401 A、DE 10 2008 041573 A、DE 10 2008 040799 A、EP 1 298 120 A及びEP 1 396 484 A明細書は、不均一触媒部分気相酸化の文脈において、C3-前駆体化合物のアクリル酸への不均一触媒部分気相酸化からの反応混合物が、C2-不純物、例えばエチレンを含む場合、副生成物としての多量のアルデヒド(単量体)グリオキサールが生成物ガス混合物中に一般に生じること、及び(単量体)グリオキサールは、典型的には、生成物ガス混合物からのアクリル酸の上記の主分離において、かなりの割合でアクリル酸と共に凝縮相とされることを開示する。
【0011】
C3-前駆体化合物(例えばプロピレン)の不均一触媒部分気相酸化からの反応ガス混合物が上記のC3-不純物とC2-不純物の両方を含む場合、記載した不均一触媒部分気相酸化からの生成物ガス混合物からのアクリル酸の主分離は通常、アクリル酸だけでなくグリオキサールも含む凝縮相を生成する。
【0012】
EP 0 770 592 Aから公知であるが、アクリル酸中に存在する例えばグリオキサールなどのアルデヒド系不純物は、たとえ少量でもアクリル酸の特性を著しく損ねてしまう。したがって、EP 0 770 592 Aの教示によれば、殊に例えば高吸水性ポリマー又は石油掘削泥水用の分散剤若しくは凝集剤として有効なポリマーの製造のためのフリーラジカル重合反応でそのようなアクリル酸を使用するという文脈において最適な製品品質を得るためには、アクリル酸における個々のアルデヒドの割合は1ppm未満とすべきである。
【0013】
記載した主分離の過程において得られ、目的の生成物であるアクリル酸と望ましくない副生成物であるグリオキサールとを含む液相から所望の純度でアクリル酸を分離するために採用すべき分離工程は、目的及び他の追加的に存在する望ましくない二次成分の種類と量に応じて、例えば吸着法、抽出法、脱着法、蒸留法、ストリッピング法、精留法、共沸蒸留法、共沸精留法及び結晶化法の非常に広い範囲の組み合わせとなり得る。
【0014】
目的の生成物であるアクリル酸と望ましくない副生成物であるグリオキサールを含む液相は、上記の分離法の過程においては、非常に多種多様な種類で、且つ様々な量的割合で得られる可能性があり、そのため、液相は、中間貯蔵及び/又は例えば加熱による熱応力の付加を必要とする。
【0015】
これは、長い滞留時間と熱応力が、液相に存在するアクリル酸の望ましくないフリーラジカル重合の確率を高めるため、不利である。
【0016】
後者は、アクリル酸と一部の二次成分との物理的類似性のために、非結晶化熱分離法を使用する場合、分離装置内での長い滞留時間を使用して相当な分離効果を達成する必要があり、単量体グリオキサールは、アクリル酸が望ましくないフリーラジカル重合を受ける傾向を他の可能性のある不純物よりも著しく高い程度にまで促進するため、一層当てはまる(DE 10 2008 041573 A、DE 10 2008 040799 A及びDE 10 2009 027401 Aを参照)。
【0017】
液相に存在するアクリル酸に抑制剤を添加すると、滞留時間及び熱応力が重合を促進する影響に対抗できることは周知である(例えば「Polymerisationsinhibierung von (Meth-)Acrylaten」[Inhibition of polymerization of (meth)acrylates]、thesis of Dipl.-Ing. Holger Becker、Technische Universitat Darmstadt、2003を参照)。
【0018】
この点に関して先行技術において推奨されている抑制剤の種類は多い(例えばこれらの抑制剤のごく一部を認めているEP 0 765 856 Aを参照)。
【0019】
しかし、EP 1 396 484 A(殊に第2欄の16及び17行目)によると、公知の抑制剤系はいずれも満足のいく結果とはならない。更に、EP 1 396 484 A(例えば第7欄、段落[0024]及び第1欄、40~44行目)によると、先行技術において推奨されている抑制剤の多様性は、特記すべき優先性を含まない。
【0020】
特に、EP 1 396 484 Aは、第3欄、5~10行目において、公知の抑制剤は、アクリル酸に対する熱応力による望ましくないフリーラジカル重合を比較的効果的に抑制できるものの、その中に存在するグリオキサールなどの不純物によるアクリル酸の望ましくないフリーラジカル重合の原因及び/又は促進に関しては、特に前記抑制剤の抑制作用は、不十分であることに注目している。
【0021】
記載した困難を克服する1つの方法は、アクリル酸を得るためのアクリル酸のC3-前駆体化合物(これらは、3個の炭素原子を有する前駆体化合物である)の不均一触媒部分気相酸化において、グリオキサールなどの望ましくない副生成物の形成を回避することである(例えば適切な触媒を選択(例えばJP H11-35519を参照)することにより、又は高純度のC3-前駆体原料を使用する(したがって、例えばC2-不純物もn-プロパンもシクロプロパンも含まない反応ガス混合物を生成する;DE 35 21 458 Aは、例えばn-プロパンから生成されたプロピレンを精製する可能性を記載し、WO 2004/018089 A及びWO 01/92190 A明細書は、例えばメタノールからのプロピレンの生成を記載する(変更原料ベース)ことにより)。しかし、これは、この点で必要とされる支出がアクリル酸製造の経済性を損なうため、不利である。
【0022】
WO 2012/045738は、アクリル酸含有量が少なくとも10質量%であり、存在するアクリル酸の質量に対して25~1000ppmwのグリオキサールを追加で含む液相Pに存在するアクリル酸の望ましくないフリーラジカル重合を抑制する方法を記載し、液相Pは、25~1000ppmwのフルフラールと混合される。
【0023】
WO 2020/020697は、アクリル酸含有量が少なくとも10質量%であり、存在するアクリル酸の質量に対して少なくとも100ppmwのプロピオン酸と少なくとも100ppmwのグリオキサールとを追加で含む液相Pに存在するアクリル酸の望ましくないフリーラジカル重合を抑制する方法を記載し、液相Pは、元素銅の少なくとも1種の化合物と混合される。
【0024】
WO 2018/185423、JP S47-17714、JP 2009-143875及びJP 2015-174851は、重合に対するプロトアネモニンの抑制又は遅延効果に言及する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】WO 02/055469
【特許文献2】WO 03/078378
【特許文献3】WO 2010/012586
【特許文献4】US 5,198,578
【特許文献5】EP 1 710 227 A
【特許文献6】EP 1 015 410 A
【特許文献7】EP 1 484 303 A
【特許文献8】EP 1 484 308 A
【特許文献9】EP 1 484 309 A
【特許文献10】US 2004/0242826
【特許文献11】WO 2006/136336
【特許文献12】DE 100 28 582 A
【特許文献13】WO 2007/074044
【特許文献14】DE 101 31 297 A
【特許文献15】DE 10 2005 052917 A
【特許文献16】EP 1 388 533 A
【特許文献17】EP 1 388 532 A
【特許文献18】DE 102 35 847 A
【特許文献19】EP 0 792 867 A
【特許文献20】WO 98/01415
【特許文献21】US 7,332,624
【特許文献22】US 6,888,025
【特許文献23】US 7,109,372
【特許文献24】EP 1 015 411 A
【特許文献25】WO 99/50219
【特許文献26】WO 00/53560
【特許文献27】WO 02/09839
【特許文献28】WO 03/041832
【特許文献29】DE 102 23 058 A
【特許文献30】DE 102 43 625 A
【特許文献31】DE 103 36 386 A
【特許文献32】EP 0 854 129 A
【特許文献33】US 7,319,167
【特許文献34】US 4,317,926
【特許文献35】DE 102 47 240 A
【特許文献36】EP 0 695 736 A
【特許文献37】EP 0 982 287 A
【特許文献38】EP 1 041 062 A
【特許文献39】EP 0 117 146 A
【特許文献40】DE 43 08 087 A
【特許文献41】DE 43 35 172 A
【特許文献42】DE 44 36 243 A
【特許文献43】DE 199 24 532 A
【特許文献44】DE 103 32 758 A
【特許文献45】DE 199 24 533 A
【特許文献46】EP 0 982 289 A
【特許文献47】DE 101 15 277 A
【特許文献48】DE 196 06 877 A
【特許文献49】DE 197 40 252 A
【特許文献50】DE 196 27 847 A
【特許文献51】EP 0 920 408 A
【特許文献52】EP 1 068 174 A
【特許文献53】EP 1 066 239 A
【特許文献54】EP 1 066 240 A
【特許文献55】WO 00/53561
【特許文献56】DE 100 53 086 A
【特許文献57】EP 0 982 288 A
【特許文献58】WO 2004/063138
【特許文献59】WO 2008/090190
【特許文献60】WO 2004/035514
【特許文献61】DE 10 2009 027401 A
【特許文献62】DE 10 2008 041573 A
【特許文献63】DE 10 2008 040799 A
【特許文献64】EP 1 298 120 A
【特許文献65】EP 1 396 484 A
【特許文献66】EP 0 770 592 A
【特許文献67】EP 0 765 856 A
【特許文献68】JP H11-35519
【特許文献69】DE 35 21 458 A
【特許文献70】WO 2004/018089 A
【特許文献71】WO 01/92190 A
【特許文献72】WO 2012/045738
【特許文献73】WO 2020/020697
【特許文献74】WO 2018/185423
【特許文献75】JP S47-17714
【特許文献76】JP 2009-143875
【特許文献77】JP 2015-174851
【特許文献78】EP 0 253 409 A
【特許文献79】WO 2007/074045
【特許文献80】DE 24 49 780 A
【特許文献81】DE 196 27 850 A
【特許文献82】DE 198 10 962 A
【特許文献83】EP 0 722 926 A
【特許文献84】WO 2006/002713 A
【特許文献85】WO 2008/090190 A
【特許文献86】DE 10 2007 004960 A
【特許文献87】WO 98/01414
【特許文献88】WO 2005/035478
【特許文献89】DE 197 34 171 A
【特許文献90】WO 2011/000808
【特許文献91】US 6,441,228
【特許文献92】US 6,966,973
【特許文献93】WO 2005/042459
【特許文献94】WO 2005/047224
【特許文献95】WO 2005/047226
【特許文献96】EP 0 608 838 A
【特許文献97】DE 198 35 247 A
【特許文献98】DE 102 45 585 A
【特許文献99】DE 102 46 119 A
【特許文献100】WO 2007/090991
【特許文献101】WO 2006/114506
【特許文献102】WO 2005/073160
【特許文献103】WO 2006/092272
【特許文献104】WO 076370
【特許文献105】WO 01/96271
【特許文献106】WO 03/011804
【特許文献107】WO 01/96270
【特許文献108】EP 0 778 255 A
【特許文献109】DE 10 2007 029053 A
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】「Polymerisationsinhibierung von (Meth-)Acrylaten」[Inhibition of polymerization of (meth)acrylates]、thesis of Dipl.-Ing. Holger Becker、Technische Universitat Darmstadt、2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明の目的は、液相Pに存在するアクリル酸の望ましくないフリーラジカル重合を抑制する改良方法を提供することである。方法は特に、実施が技術的に簡単であり、経済的なものとすべきであり、製品品質、即ち、アクリル酸の品質に悪影響を与えないものとすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
したがって、本発明者らは、液相Pに存在するアクリル酸の望ましくないフリーラジカル重合を抑制する方法であって、Pのアクリル酸含有量が少なくとも10質量%であり、各場合において、Pに存在するアクリル酸の質量に対して、液相Pが25~1000ppmwの範囲のグリオキサールを含み、液相Pが、0.5~100ppmwの範囲のプロトアネモニン含有量をもたらす量のプロトアネモニンと混合される、方法を見出した。
【0029】
本発明者らは、液相Pであって、Pのアクリル酸含有量が少なくとも10質量%であり、各場合において、Pに存在するアクリル酸の質量に対して、25~1000ppmwの範囲のグリオキサールと、0.5~100ppmwの範囲のプロトアネモニンとを含む液相Pを更に見出した。
【発明を実施するための形態】
【0030】
方法は、各場合において、Pに存在するアクリル酸の質量に対して、液相Pが50~500ppmwの範囲のグリオキサールを含む、及び/又は液相Pが1~50ppmwの範囲のプロトアネモニン含有量をもたらす量のプロトアネモニンと混合されるという、特定の特徴を有する。
【0031】
本発明による方法は、グリオキサールによって促進されるアクリル酸の望ましくないフリーラジカル重合をプロトアネモニンが効果的に抑制するという、先行技術の現在の知識と比較して驚くべき実験的知見に基づくものである。
【0032】
例えばヒドロキシル基を含む二次構成要素(例えば水、エタノールなどのアルコール等)との反応により、単量体グリオキサール
【0033】
【化1】
【0034】
は、ヘミアセタール及び/又はアセタールを形成することができる。そのようなヘミアセタール及び/又はアセタールは一般に、単量体グリオキサールに典型的な重合促進性をもはや呈しないか、いずれにしてもそれと比較して実質的に低減した程度にしか呈さない。
【0035】
しかし、グリオキサールのヘミアセタール/アセタールの場合、形成反応は多くの場合、容易に可逆反応であり、それが、高温の影響下にある場合や、対応する平衡からのグリオキサールの除去により、これらのヘミアセタール/アセタールが単量体グリオキサールを再形成し、次いでそれが望ましくないフリーラジカル重合に対して同様の影響を与える理由である。
【0036】
ヒドロキシル基を含む二次構成物質としての水の場合、下記の容易に可逆のアセタール形成反応が公知である(この場合、グリオキサールの水和物も参照できる):
【0037】
【化2】
【0038】
上記のグリオキサール水和物はどちらも、比較的穏やかな条件下(低温、限られた含水量で十分)であっても形成される。
【0039】
「単量体」グリオキサール一水和物及び「単量体」グリオキサール二水和物という用語は、ここでは「ポリグリオキサール」及び「オリゴグリオキサール」水和物から区別するために使用される。
【0040】
以下に例として示すのは、ジグリオキサール水和物及びトリグリオキサール水和物である:
【0041】
【化3】
【0042】
【化4】
【0043】
ポリグリオキサール水和物の形成は、中間体としての単量体グリオキサール二水和物を介して進行すると考えられる(DE 10 2008 041573 A、DE 10 2008 040799 A及びDE 10 2009 027401 Aも参照)。
【0044】
単量体グリオキサール水和物の形成とは対照的に、ポリグリオキサール水和物の形成は、高温(一般に、50℃を超える温度でのみ相当程度の形成が生じる)及び/又はより長い反応時間を必要とする。
【0045】
したがって、上記の理由から、本文献における「グリオキサール」という用語は、単量体グリオキサールだけでなく、例えば単量体グリオキサールのアセタール及び/又はヘミアセタールの形態で可逆的に化学結合しているグリオキサールも(明示的に断らない限り、且つ「グリオキサール」という用語が例えば「単量体」グリオキサール又は「ジ」グリオキサール「水和物」又は「単量体」グリオキサール「一水和物」などの少なくとも1つの追加の特徴を明示的に含まない限り)包含すると理解すべきである。
【0046】
したがって、本文献における「グリオキサール」という一般的用語は常に、単量体グリオキサールと可逆的に結合したグリオキサールとの総量を意味するものと理解すべきである。
【0047】
したがって、「質量%」及び「ppmw」単位で報告されるグリオキサールの含有量は、本文献においては常に、例えば単量体グリオキサール一水和物及び単量体グリオキサール二水和物などにおける、単量体グリオキサールと、可逆的に結合したグリオキサールとの存在する総量を意味するものと理解すべきであるが、常に「単量体グリオキサール」として計算される(即ち、それらは、H2C2O2単位の全体存在量の質量分率を指す)。
【0048】
これは、水が通常はアクリル酸を得るためのアクリル酸のC3-前駆体化合物の不均一触媒部分気相酸化の主たる副生成物であるため、本発明による方法の態様に特に関連することである。更に、水蒸気は、例えばその比較的高いモル熱容量のため、アクリル酸を得るためのC3-前駆体化合物の不均一触媒部分気相酸化用の反応ガス混合物における希釈ガスとして併用されることが多い(例えばEP 0 253 409 Aを参照)。したがって、アクリル酸を得るためのC3-前駆体化合物の不均一触媒部分気相酸化の生成物ガス混合物からのアクリル酸の主分離は、アクリル酸とグリオキサールだけでなく、水も含む液相を通過させることが多い。しかし、グリオキサール水和物は、原理的にはアクリル酸のC3-前駆体化合物の不均一触媒部分気相酸化の生成物ガス混合物中でも形成されることもある。
【0049】
更に、先行技術は多くの場合、C3-前駆体化合物の気相部分酸化の生成物ガス混合物からの吸収的主分離のための吸収剤としての水又は水溶液も推奨している(例えばEP 1 298 120 A及びUS 7,332,624を参照)。
【0050】
本発明の文脈において、本発明に従い処理される液相P(又は別の液相)におけるグリオキサールの含有量(即ち、単量体グリオキサールと、単量体グリオキサール一水和物及び単量体グリオキサール二水和物(例えば、単量体グリオキサールは、ヘミアセタール及び/又はアセタールをエタノールなどのアルコールと共に可逆的に形成することもできる)などの化合物において可逆的に結合したグリオキサールとの液相Pにおける総含有量)は、下記のように判定される:
【0051】
まず、誘導体化溶液Dを生成する。この目的のため、2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(製造元:Aldrich社、純度:97%以上)の50質量%溶液2.0gを、25℃の温度で37.0質量%の塩酸水溶液(製造元:Aldrich社、純度:99.999%以上)62mlに溶解させる。続いて、結果として得られる溶液を335gの蒸留水に(同様に25℃の温度で)撹拌しながら投入する。25℃で1時間撹拌した後、ろ過すると、結果として得られるろ液として誘導体化溶液Dが得られる。
【0052】
液相Pにおけるグリオキサールの含有量を判定するため、1gの誘導体化溶液D(この量は、必要な場合、相応に増やすことができる)を容量10mlのねじ蓋式ボトルに計り入れる。次いで、このように充填したねじ蓋式ボトルに液相Pのサンプルを計り入れ、サンプルの量は、0.15~2.0gの範囲とする。
【0053】
次いで、ねじ蓋式ボトルの全内容物を振とうにより混合し、次いで、25℃の温度で10分間静置する。この期間中、ねじ蓋式ボトル中に存在する単量体グリオキサールは、2,4-ジニトロフェニルヒドラジンとの化学反応を受け、単量体グリオキサールの対応するヒドラゾンHを形成する。しかし、この期間中、2,4-ジニトロフェニルヒドラジンは、ねじ蓋式ボトル中に存在する単量体グリオキサール一水和物及びグリオキサール二水和物から、そこにヒドラゾンHの形態で結合している単量体グリオキサールも除去する(対照的に、ねじ蓋式ボトル中に存在するポリグリオキサール水和物からの単量体グリオキサールの対応する除去は本質的に生じない)。
【0054】
続いて、ねじ蓋式ボトルに0.5gの氷酢酸(製造元:Aldrich社、純度:99.8%以上)を添加すると、既に生じていたヒドラゾン形成を凍結させる。酢酸の添加が固体沈殿物の形成を伴う場合、更なる酢酸を逐次添加して形成された沈殿物を再溶解させる(ただし、添加する酢酸の総量は、1.0gを超えてはならない)。許容される全酢酸添加量の上限(1.0g)に達しても形成された沈殿物が溶液に溶解しない場合は、0.5gのフタル酸ジメチルを計り入れる。この添加でも形成された沈殿物を溶解させることができない場合は、フタル酸ジメチルの添加量を逐次増加させて、この溶解を引き起こす(ただし、添加するフタル酸ジメチルの総量は、1.0gを超えてはならない)。許容される全フタル酸ジメチル添加量の上限(1.0g)に達しても形成された沈殿物が溶液に溶解しない場合は、9gのアセトニトリルと1gのフタル酸ジメチルで構成される混合物Gを2g添加する。この添加でも形成された沈殿物を溶解させることができない場合は、混合物Gの添加量を逐次増加させて、この溶解を引き起こす。沈殿物の溶解を引き起こすために添加される混合物Gの全体量は、通常5gを超えない(前述の溶解試験は全て、25℃で実施される)。
【0055】
記載したようにねじ蓋式ボトルにおいて生成されたヒドラゾンHの溶液は、続いて下記の操作条件を用いてそのヒドラゾン含有量についてHPLC(高圧液体クロマトグラフィー)により分析される(そのモル量は、液相Pに存在するグリオキサールのモル量を直接規定する):
使用するクロマトグラフィーカラム:Waters Symmetry C18、150×4.6mm、5μm(Waters Associates社、Milford、Massachusetts、USA);
分析する溶液の注入体積:50μl(時間t=0)
温度:40℃
溶離剤流量:1.5ml/分;
分析時間:17分;
平衡時間:8分;
溶離剤:t>0分~15分の期間では、30質量%のアセトニトリル、50質量%の水及び20質量%のテトラヒドロフランの混合物(全てHPLCグレード);
>15分~17分の期間では、65質量%のアセトニトリル、30質量%の水及び5質量%のテトラヒドロフランの混合物;
>17分~25分の期間では、30質量%のアセトニトリル、50質量%の水及び20質量%のテトラヒドロフランの混合物(次いでカラムは平衡化され、再び次の分析に備える)。
【0056】
ヒドラゾンHとしてのグリオキサールの保持時間は、前述の条件下では7.613分である。
【0057】
分析は、波長365nmの単色放射線を使用して行われる。
【0058】
採用される分析法は、吸収分光法である。
【0059】
溶出時間にわたって溶離剤を変化させることにより、高い分離効果が確保される(液相Pは一般に、グリオキサールだけでなく、2,4-ジニトロフェニルヒドラジンとそれぞれの対応するヒドラゾンを形成する他の副生成物アルデヒド及び/又は副生成物ケトンも含む)。
【0060】
HPLC法の有利な用途別較正は、有利には、50ppmwの単量体グリオキサールを含む単量体グリオキサールのメタノール溶液を使用して行われる(DE 10 2008 041573 A及びDE 10 2008 040799 Aを参照)。
【0061】
この目的のため、誘導体化溶液Dで本明細書に先に記載したように処理され、次いで、記載したHPLC分析に供される。
【0062】
プロトアネモニンは、5-メチレン-2(5H)-フラノン(CAS番号108-28-1)とも呼ばれ、二量化してアネモニンを得ることができる:
【0063】
【化5】
【0064】
この二量化は可逆的である。アネモニンは熱分解を受けてプロトアネモニンとなる。したがって、液相Pに存在するプロトアネモニンはアネモニンに変換され、逆も起こり得る。
【0065】
したがって、上記の理由から、「プロトアネモニン」という用語は、本明細書において、プロトアネモニンだけでなくアネモニンの形態で可逆的に結合したプロトアネモニンも包含すると理解すべきである。
【0066】
したがって、「プロトアネモニン」という用語自体は、本明細書において常にプロトアネモニン(単量体プロトアネモニン)とアネモニン(二量体プロトアネモニン)の総量を意味するものと理解すべきである。
【0067】
したがって、本明細書において、「質量%」又は「ppmw」単位で報告されるプロトアネモニンの含有量は、常に存在する単量体プロトアネモニンと可逆的に結合した二量体プロトアネモニンの総量を意味するものと理解すべきである。
【0068】
本発明に従い処理されるプロトアネモニンの液相P(又は別の液相)の含有量(即ち、単量体プロトアネモニンと可逆的に結合した二量体プロトアネモニンの液相Pの総含有量)は、本願の文脈において、GC(ガスクロマトグラフィー)により以下のように判定される:
使用するクロマトグラフィーカラム:Optima 35 MS 30m×0.25mm×0.25μm(Agilent Technologies社、Santa Clara、California、USA);
分析する溶液の注入体積:1μl(時間t=0);
インジェクター温度:280℃;
検出器温度:320℃;
検出器:FID;
スプリット:1:50;
流量:1ml/分;
圧力:12.7psi/80℃;
温度プログラム:15℃/分で60℃~320℃;320℃で10分;
内部標準:γ-バレロラクトン
【0069】
プロトアネモニン及び内部標準の保持時間は、選択した条件下ではそれぞれ4.5分及び約5分である。アネモニンは、インジェクター内で完全にプロトアネモニンに変換される。
【0070】
本発明によると、プロトアネモニンは、純粋な形態で、又は例えばアクリル酸などの適切な溶媒に溶解させた溶液として使用できる。例えば、アクリル酸溶媒中のプロトアネモニンの濃度は、0.1質量%~10質量%、特に1質量%~2質量%の範囲であってもよい。
【0071】
しかし、分離法、例えば吸着、抽出、脱着、蒸留、ストリッピング、精留、共沸蒸留、共沸精留及び結晶化を使用して、副生成物プロトアネモニンを含有する材料流をリサイクルすることで、液相Pにおけるプロトアネモニンの量を増加させることも可能である。
【0072】
本発明による方法において、液相Pは多くの場合、少なくとも10質量%、又は少なくとも20質量%、特に少なくとも30質量%、又は少なくとも40質量%、更に特に少なくとも50質量%、又は少なくとも60質量%、又は少なくとも70質量%、又は少なくとも80質量%、更に特に少なくとも90質量%、又は少なくとも95質量%、非常に特に少なくとも98質量%、又は少なくとも99質量%のアクリル酸(各場合において、液相Pの質量に対して)を含むことになる。
【0073】
アクリル酸含有量は、1H-NMR、ガスクロマトグラフィー又はHPLCにより判定できる。
【0074】
本発明による方法において、液相Pは多くの場合、水も含むことになる。本発明による方法において、液相Pの水含有量は、原理上は少なくとも1質量%、又は少なくとも5質量%、又は少なくとも10質量%、又は少なくとも20質量%、又は少なくとも30質量%、又は少なくとも40質量%、又は少なくとも60質量%、又は少なくとも80質量%であってもよい。
【0075】
しかし、本発明による方法は、殊に本発明に従い処理される液相Pが30質量%未満、例えば29質量%以下、又は27質量%以下、又は25質量%以下、又は20質量%以下、又は15質量%以下、又は10質量%以下、又は5質量%以下の水を含む場合にも関連する(水含有量が低いほどグリオキサール水和物の形成が減少する)。しかし、液相Pの水含有量は多くの場合、≧0.1質量%以上、又は0.5質量%以上、又は1質量%以上である(例えば、グリオキサール水和物の水含有量は、前述の報告された量に含まれる)。
【0076】
液相Pは多くの場合、例えばC3-前駆体化合物の不均一触媒部分気相酸化の生成物ガス混合物からのアクリル酸が吸収されている高沸点吸収媒体を含む(例えばDE 10 2009 027401 Aを参照)。
【0077】
本明細書において、高沸点吸収媒体は、標準圧力でアクリル酸の沸点を超える沸点を有する吸収媒体を意味するものと理解すべきである。標準圧力(1atm=約105Pa)での吸収媒体の沸点は通常、同じ圧力でのアクリル酸の沸点(1atmで141℃;これに対しプロピオン酸の沸点は同じ圧力で141.35℃;WO 2007/074045を参照)を少なくとも20℃、好ましくは少なくとも50℃、特に好ましくは少なくとも75℃、非常に特に好ましくは少なくとも100℃、又は少なくとも125℃上回るものである。標準圧力での前述の吸収媒体の沸点は多くの場合、400℃以下、多くの場合350℃以下、またしばしば300℃以下又は280℃以下である。吸収媒体の沸点が200℃~350℃(標準圧力に基づく)の範囲にあると、特に有利である。この種の考えられる吸収媒体には、例えば、DE 103 36 386 A、DE 24 49 780 A、DE 196 27 850 A、DE 198 10 962 A、DE 43 08 087 A、EP 0 722 926 A及びDE 44 36 243 A、更にDE 10 2009 027401 A明細書において推奨されているもの全てが含まれる。
【0078】
高沸点吸収媒体は一般に、有機液体である。有機液体は多くの場合、少なくとも70質量%の程度まで、外部活性極性基を含まず、そのため、例えば水素結合を形成することができない有機分子からなる。特に有利な吸収媒体としては、例えばジフェニルエーテル、ジフェニル(ビフェニル)、Diphyl(登録商標)として公知のジフェニルエーテル(70%~75質量%)とジフェニル(25%~30質量%)との混合物、更にフタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、及びDiphylとフタル酸ジメチルとの混合物、又はDiphylとフタル酸ジエチルとの混合物、又はDiphylとフタル酸ジメチルとフタル酸ジエチルとの混合物が挙げられる。吸収目的に非常に特に適した混合物の一群は、75%~99.9質量%のDiphylと0.1%~25質量%のフタル酸ジメチル及び/又はフタル酸ジエチルで構成されるものである。
【0079】
本明細書の文脈における高沸点吸収媒体はまた、イオン液体であってもよい。
【0080】
本発明による方法において、液相Pは、例えば少なくとも1質量%、又は少なくとも5質量%、又は少なくとも10質量%、又は少なくとも20質量%、又は少なくとも30質量%、又は少なくとも40質量%、又は少なくとも60質量%、又は少なくとも80質量%の高沸点吸収媒体を含んでもよい。
【0081】
本発明による方法の態様は、特に液相Pがそこに存在するアクリル酸の質量に対して25~1000ppmwの範囲、特に50~500ppmwの範囲のグリオキサールを含む場合にその有利な効果を呈する。
【0082】
前述の場合の全てにおいて、対応する基準での(存在するアクリル酸の質量に対して)液相Pにおけるプロピオン酸の含有量は、同時に100ppmw以上、又は150ppmw以上、又は200ppmw以上、又は250ppmw以上、又は300ppmw以上、又は400ppmw以上、又は500ppmw以上、又は600ppmw以上、又は700ppmw以上、又は800ppmw以上、又は1000ppmw以上、又は1500ppmw以上、又は2000ppmw以上、又は2500ppmw以上であってもよい。
【0083】
前述の場合の全てにおいて、前述の基準での液相Pのプロピオン酸含有量は、通常5質量%以下、しばしば4質量%以下、又は3質量%以下、多くの場合2質量%以下、又は1質量%以下である。
【0084】
液相Pのプロピオン酸含有量は一般に、ガスクロマトグラフィーにより判定される。
【0085】
当然のことながら、液相Pは、グリオキサール及びプロピオン酸だけでなく、更なる二次成分、及びアクリル酸を得るためのC3-前駆体化合物の不均一触媒部分気相酸化の典型的な副反応生成物として、ホルムアルデヒド、アクロレイン、フルフラール、クロトンアルデヒド、ベンズアルデヒド、プロピオンアルデヒド、プロトアネモニン、アクリル酸アリル、ギ酸、酢酸、マレイン酸、安息香酸及び/又は無水マレイン酸などの化合物も(例えばWO 2006/002713 A、WO 2008/090190 A、DE 10 2007 004960 A及びDE 10 2009 027401 Aに詳述されているような量的割合で、殊にそれらの実施例の様々な液体物質混合物に)含んでもよい。
【0086】
上述のように、本発明に従い処理される液相Pは多くの場合、長期間にわたって保存されることが必要である。この期間中、アクリル酸はそれ自体とある程度反応し、マイケル付加により限られた量のジアクリル酸を形成する(例えばWO 98/01414及びWO 2005/035478を参照)。
【0087】
したがって、本発明による方法は、液相Pに存在するアクリル酸の質量に対して、上記の量のグリオキサールとアクリル酸だけでなく、100ppmw以上、又は200ppmw以上、又は300ppmw以上、又は400ppmw以上、又は500ppmw以上、又は600ppmw以上、又は800ppmw以上、又は1000ppmw以上、又は1500ppmw以上、又は2000ppmw以上、又は3000ppmw以上、又は5000ppmw以上、又は7500ppmw以上、又は10000ppmw以上のジアクリル酸も含む液相Pにも適している。
【0088】
本発明に従い処理される液相Pにおけるジアクリル酸の含有量は、そこに存在するアクリル酸の質量に対して、一般に20質量%以下、多くの場合15質量%以下又は10質量%以下であり、しばしば5質量%以下である。
【0089】
液相Pのジアクリル酸含有量は、高分解能1H-NMRにより単純な方式で判定可能である(「Polymerisationsinhibierung von (Meth-)Acrylaten」[Inhibition of polymerization of (meth)acrylates]、thesis of Dipl.-Ing. Holger Becker、Technische Universitat Darmstadt、2003を参照)。この方法は、関連する1H共鳴線の具体的な信号形状及び信号位置、並びに信号面積を評価する。
【0090】
本発明による方法は、液相Pに存在するアクリル酸の望ましくないフリーラジカル重合を、その保存中、及びその方法に関連した取り扱い中の両方において抑制するのに適している。
【0091】
後者の場合は、殊に液相Pが熱分離法(関連する温度は一般に50℃以上、通常60℃若しくは70℃超、又は90℃若しくは110℃超で、好ましくは150℃以下)に供される場合に当てはまる。前記方法は一般に、分離内部を含む分離カラムにおいて、気体(上昇)流及び液体(下降)流、即ち、2つの流体流を向流させ、流体間に存在する勾配の結果として熱と物質の移動が起こり、そのため、最終的に分離カラムにおいて所望の分離効果がもたらされる熱分離法である。そのような非結晶化熱分離法の例は、精留、共沸精留、抽出、脱着、ストリッピング、蒸留、共沸蒸留及び吸着である。本発明に従い処理される液相Pは、とりわけアクリル酸を得るためのC3-前駆体化合物の不均一触媒部分気相酸化の生成物ガス混合物が、生成物ガス混合物からのアクリル酸の基本的除去のための吸収、又は分別凝縮、又は分縮に供されるときに形成されるため、本発明による方法は、そのような熱分離法の過程で生じる液相Pの重合の抑制にも適している。当然のことながら、本発明による重合を抑制する方法は、液相Pが別の分離法に供される場合にも適している。
【0092】
「熱分離法」という用語は、所望の分離効果を達成するために、系に熱が供給されなければならない、又は系から熱が除去されなければならないことを表現することが意図されている(DE 10 2008 041573 A及びDE 10 2008 040799 Aを参照)。
【0093】
処理により処理される液相Pは、熱分離法の開始の時点で本発明に従い添加されるプロトアネモニンを含んでもよい(即ち、プロトアネモニンは、本発明に従い既に処理された状態で熱処理に供給されてもよい)。しかし、当然のことながら、プロトアネモニンは、熱分離法の過程でのみ(例えば精留時に還流液に溶解させて、又は吸収時に吸収媒体に溶解させて、又は分別凝縮時に還流液に溶解させて、又はC3-前駆体化合物の不均一触媒部分気相酸化の生成物ガス混合物の直接冷却時に直接冷却に使用するクエンチ液に溶解させて)添加することもできる。
【0094】
当然のことながら、本発明に従い液相Pに添加されるプロトアネモニンは、液相Pに添加される唯一の抑制剤系である必要はない。それどころか、液相Pは、これに加えて、ニトロキシルラジカル(N-オキシルラジカルとしても公知である)(例えばDE 197 34 171 Aに開示されているもの、例えば4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン1-オキシル又は1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン)、フェノチアジン、例えばジベンゾ-1,4-チアジン(フェノチアジン)など、フェノール系化合物、例えばヒドロキノン、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール及びヒドロキノンモノメチルエーテル、分子状酸素、セリウム塩、例えばセリウム(III)塩、マンガン塩(例えばマンガン(III)塩、例えば酢酸マンガン(III)二水和物及びジ-n-ブチルジチオカルバミン酸マンガン(III))、p-フェニレンジアミン(例えばDE 197 34 171 Aに開示されているもの)、有機ニトロソ化合物、例えば4-ニトロソフェノール(及びDE 197 34 171 Aに開示されている他のもの)、メチレンブルー、並びに例えばEP 0 765 856 Aに開示されている他の全ての抑制剤を含む群からの1又は複数種の抑制剤を含んでもよい。前述の抑制剤は、適切な有効量で、即ち、例えば5~1000ppmwの範囲で(Pに存在するアクリル酸の質量に対して)液相Pに添加されてもよい。
【0095】
取り付けられた分離内部(例えば、ディアルフロートレイなどの分離トレイ)を含む分離カラムにおいて本発明に従い処理された液相Pに対して熱分離法を実施する場合、例えばDE 10 2009 027401 A又はDE 10 2007 004960 A等において実施されているように、分子状酸素源として空気又は窒素豊富空気(希薄空気)を分離カラム(例えば精留カラム又は吸収カラム)に通すことが追加の抑制手段として可能である。
【0096】
そのような熱分離法(例えばWO 2011/000808、DE 103 36 386 A、DE 199 24 532 A、DE 199 24 533 A、及びDE 10 2007 004960 Aに記載された全ての熱分離法)は、好ましくはUS 6,441,228及びUS 6,966,973の推奨に合致する装置において本発明に従い実施される。
【0097】
アクリル酸を生成するための不均一触媒部分気相酸化は、例えばその中に存在する採用されたC3-前駆体化合物(例えばプロパン、プロピレン、アクロレイン、プロピオン酸、プロピオンアルデヒド、プロパノール及び/又はグリセロール、好ましくはプロピレン及びアクロレイン)のモル量に対して、100モルppm以上、又は200モルppm以上、又は300モルppm以上、又は400モルppm以上、又は500モルppm以上、又は750モルppm以上、又は1000モルppm以上、又は2000モルppm以上、又は3000モルppm以上のC2-化合物(例えばエタン、エチレン、アセチレン、アセトアルデヒド、酢酸及び/又はエタノール)の総モル量を含む反応ガス出発混合物を採用してもよい。
【0098】
アクリル酸を得るためのC3-前駆体化合物の不均一触媒部分気相酸化の反応ガス開始混合物中の前述のC2-化合物の総モル量(同じ基準で)は一般に、10000モルppm以下である。
【0099】
加えて、アクリル酸を生成するための不均一触媒部分気相酸化に使用される反応ガス開始混合物は、例えばC3-前駆体化合物としてのプロピレン又はアクロレインの場合(n-プロパンとは異なる他のC3-前駆体化合物の場合も)、存在するプロピレン/アクロレイン(n-プロパンとは異なるC3-前駆体化合物)の質量に対して、0.05質量%以上のn-プロパン、又は0.2質量%以上のn-プロパン、又は0.5質量%以上のn-プロパン、又は1質量%以上のn-プロパン、又は3質量%以上のn-プロパン、又は5質量%以上のn-プロパン、又は10質量%以上のn-プロパン、又は20質量%以上のn-プロパンを含んでもよい。しかし、アクリル酸を得るためのプロピレン及び/又はアクロレイン(n-プロパンとは異なるC3-前駆体化合物)の不均一触媒部分気相酸化の反応ガス開始混合物は、典型的には80体積%以下、多くの場合70体積%以下、しばしば60体積%以下(ただし、通常は0.1体積%以上)のn-プロパンを含む。
【0100】
「反応ガス開始混合物」という用語は、前述の場合の全てにおいて、アクリル酸を得るためにその中に存在するC3-前駆体化合物の部分酸化を目的として触媒床に供給されるガス混合物を意味するものと理解すべきである。C3-前駆体化合物、望ましくない不純物及び酸化剤としての分子状酸素に加えて、反応ガス開始混合物は一般に、例えば窒素、二酸化炭素、水、希ガス、分子状水素等の不活性希釈ガスも含む。不活性希釈ガスのそれぞれは通常、不均一触媒部分酸化の過程でその開始量の少なくとも95mol%が変化しないままであるように構成される。
【0101】
反応ガス開始混合物におけるC3-前駆体化合物の割合は、例えば4体積%~20体積%、又は5体積%~15体積%、又は6体積%~12体積%の範囲であってもよい。
【0102】
アクリル酸を得るためのC3-前駆体化合物の部分酸化反応の化学量論を基準として、反応ガス開始混合物は通常、一般に酸化触媒を再度再酸化するための過剰量の分子状酸素を含む。
【0103】
後続の本発明による方法の態様を適用する場合、酸素の過剰の増加は一般に、望ましくないグリオキサール二次成分の形成の増加も伴うため、この過剰は、特に高く設定されてもよい。
【0104】
同様に、アクリル酸を得るためのC3-前駆体化合物の不均一触媒部分気相酸化において、部分酸化に続いて本発明による方法が採用される場合、触媒床における優勢な最高反応温度は、比較的高いレベルに設定されてもよい。これの理由の1つは、最高温度の上昇は一般に、望ましくないグリオキサール二次成分の形成の増加も伴うためである。しかし、上昇させた最高温度の使用は一般に、比較的低い活性を有する触媒の使用を可能とし、したがって、触媒の寿命延長の可能性を高める。しかし、比較的低活性の触媒を使用すると、C3-前駆体化合物の転換率の上昇は、その望ましくない完全燃焼を伴うことも多くなる。グリオキサールが、場合によっては同様に中間体として形成されることもある。
【0105】
本発明による方法の態様の文脈において、触媒床に対するC3-前駆体化合物の空間速度の選択において、より緩やかに進行させることも同様に可能である。
【0106】
グリオキサール副生成物の形成は、反応ガス混合物中の水蒸気含有量の上昇によって促進されることが見出された。したがって、本発明による方法は、とりわけC3-前駆体化合物の不均一触媒部分気相酸化に使用される反応ガス開始混合物が1質量%以上、又は3質量%以上、又は5質量%以上、又は9質量%以上、又は15質量%以上、又は20質量%以上の水蒸気を含む場合に関連する。しかし、反応ガス開始混合物の水蒸気含有量は一般に40質量%以下であり、多くの場合30質量%以下である。
【0107】
アクリル酸を生成するための不均一触媒部分気相酸化の方法は、他にも先行技術に記載されているようなそれ自体公知の方法で実施されてもよい。
【0108】
C3-前駆体化合物が例えばプロピレン及び/又はアクロレインである場合、不均一触媒部分気相酸化は、例えばWO 2005/042459、WO 2005/047224及びWO 2005/047226に記載されているように実施されてもよい。
【0109】
C3-前駆体化合物が例えばプロパンである場合、アクリル酸を生成するための不均一触媒部分気相酸化は、例えばEP 0 608 838 A、DE 198 35 247 A、DE 102 45 585 A及びDE 102 46 119 A明細書に記載されているように実施されてもよい。
【0110】
C3-前駆体化合物が例えばグリセロールである場合、アクリル酸を生成するための不均一触媒部分気相酸化は、例えばWO 2007/090991、WO 2006/114506、WO 2005/073160、WO 2006/114506、WO 2006/092272又はWO 2005/073160に記載されているように実施されてもよい。
【0111】
部分気相酸化の上流に配置されたプロパンの部分的脱水素化及び/又はオキシ脱水素化によってC3-前駆体化合物としてのプロピレンを得ることも以前に提案されている(例えばWO 076370、WO 01/96271、EP 0 117 146 A、WO 03/011804及びWO 01/96270)。
【0112】
本発明による方法は殊に、液相Pに存在するグリオキサールが、少なくとも20mol%程度、又は少なくとも30mol%程度、又は少なくとも50mol%程度、又は少なくとも70mol%程度、又は少なくとも90mol%程度、又は少なくとも95mol%程度まで単量体グリオキサール一水和物及び/又は単量体グリオキサール二水和物の形態で液相Pに存在する場合にも有利に採用可能である。
【0113】
本発明による方法は、本発明に従い処理される液相Pが、生成物ガス混合物中に存在するアクリル酸のモル量に対しして、25~1000ppmwの範囲のグリオキサール、特に50~500ppmwの範囲のグリオキサールを含む、アクリル酸のC3-前駆体の不均一触媒部分気相酸化からの生成物ガス混合物に由来する場合にとりわけ有利である(存在するアクリル酸のモル量に対する生成物ガス混合物の前述のグリオキサール含有量の判定は、後者、即ちそこに存在する少なくともアクリル酸、そこに存在するグリオキサールのヘミアセタール及び/又はアセタール、並びにそこに存在する単量体グリオキサールを冷却して凝縮相への変換を実施し、その生成後できるだけ早くそのグリオキサール及びアクリル酸の含有量について本文献において液相Pについて記載したように後者を分析することにより達成してもよい)。
【0114】
本発明に従い処理される液相Pは、多くの場合、その中に存在する水を分離するための共沸精留にも供される。この点で考えられる殊に適切な共留剤としては、ヘプタン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、エチルベンゼン、オクタン、クロロベンゼン、キシレン又はこれらの混合物(例えば60質量%のトルエンと40質量%のヘプタン)が挙げられる。しかし、メチルイソブチルケトン又は酢酸イソプロピルも、代替的な共留剤として採用できる。他にも、EP 0 778 255 A、EP 0 695 736 A及びUS 2004/0242826明細書に記載されるように進行させることが可能である。したがって、本発明に従い処理される液相Pは、殊に前述の共留剤のうちの少なくとも1種と水とを含む液相Pも含む。一般に、そのような液相Pの水含有量は少なくとも10質量%であり、共沸共留剤の含有量は、少なくとも1質量%、多くの場合少なくとも2質量%又は少なくとも5質量%である。
【0115】
本発明による方法は、本発明に従い処理された液相Pに存在するグリオキサールが、結晶化によってそこから分離される場合にもとりわけ関連し、その場合、グリオキサールが残留する母液中に豊富化され、アクリル酸が結晶化物中に豊富化されて、本発明に従い処理された液相PがC3-前駆体化合物の不均一触媒部分気相酸化からの生成物ガス混合物から得られた(生成された)方法工程のうちの少なくとも1つに、母液によってリサイクルされる。結晶化分離法は、DE 10 2008 041573 A、DE 10 2008 040799 A及びWO 2007/074044、更にDE 10 2007 029053 A明細書に記載されているのと同様な方式で実施することができる。
【0116】
特に明記しない限り、ppm値は、質量に対する。
【0117】
特に明記しない限り、%単位で報告される値は、質量に対する。
【0118】
特に明記しない限り、報告される値は、絶対圧力に基づく。
【0119】
本発明の実施例及び比較例
一般的実験手順:
100.0gのアクリル酸(適切な添加剤を含む)を250mlのガラスボトル(マグネチックスターラーバー)に充填する。次いで、窒素を30分間通過させる(約70l/時)。
【0120】
次いで、窒素の量を低減し(14~18l/時)、アクリル酸の上だけを通過させる。続いて、ガラスボトルの充填高さまで予め103℃に加熱した油槽にガラスボトルを浸漬する(内部温度100℃)。撹拌を100℃(内部温度)で2時間行う。次いで油槽を降下させる。内部温度50℃を達成した後、残留するアクリル酸を注ぎ移す。
【0121】
重合したアクリル酸の量を、初期の質量に基づき計算する。
【実施例
【0122】
アクリル酸(純度98質量%超)を用いた下記の実施例は、異なる量のプロトアネモニン/アネモニンとグリオキサールを使用して上記の実験手順と同様に行われたものである。各実験は2~6回繰り返し、得られた平均値が報告されている。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
【表3】
【国際調査報告】