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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】較正デバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/00 20060101AFI20230428BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20230428BHJP
   B23Q 5/40 20060101ALN20230428BHJP
【FI】
G01B5/00 P
B23Q17/00 Z
B23Q5/40 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558005
(86)(22)【出願日】2021-03-17
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 GB2021050671
(87)【国際公開番号】W WO2021191589
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】2004192.7
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391002306
【氏名又は名称】レニショウ パブリック リミテッド カンパニー
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェーン パーキンス
【テーマコード(参考)】
2F062
3C029
【Fターム(参考)】
2F062AA01
2F062BB09
2F062DD23
2F062EE01
2F062FF02
2F062FF12
2F062GG24
2F062HH01
2F062MM10
3C029EE02
(57)【要約】
工作機械などの座標位置決め機械用の較正装置について説明する。 装置(200)は、ベース(30;130;202)、較正アーチファクト(34;134)、および較正アーチファクト(34;134)をベース(30;130;202)に取り付ける偏向機構(32)を備え、外力を加えることによって、較正アーチファクト(34;134)をベース(30;130;202)に対して移動させることができる。 デバイスは、ロックされると、ベース(30;130;202)に対して較正アーチファクト(34;134)を固定する解除可能なロックをさらに備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座標位置決め機械のための較正デバイスであって、
ベースと、
較正アーチファクトと、
前記較正アーチファクトを前記ベースに取り付け、外力の印加によって前記較正アーチファクトが前記ベースに対して移動することを可能にする、偏向機構と、を備え、
前記デバイスが、ロックされると、前記較正アーチファクトを前記ベースに対して固定する解放可能なロックをさらに備えたことを特徴とする、較正デバイス。
【請求項2】
前記偏向機構が、前記解放可能なロックが解除されると、前記較正アーチファクトを直線軸に沿って直線的に前後に移動するようにガイドするガイドを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記較正アーチファクトは前記直線軸上にある、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記偏向機構が、前記較正アーチファクトを静止位置に向けてバイアスするためのバイアスを備えた、請求項1-3のいずれかに記載のデバイス。
【請求項5】
前記解放可能なロックが、手動で作動するロック部材を備えた、請求項1-4のいずれかに記載のデバイス。
【請求項6】
前記手動で作動するロック部材は、ロックレバーまたはツイストロック部材を備えた、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記ロックが、遠隔操作可能なロックを備えた、請求項1から4のいずれかに記載のデバイス。
【請求項8】
前記較正アーチファクトが較正球を備えた、請求項1から7のいずれかに記載のデバイス。
【請求項9】
前記偏向機構が、前記較正アーチファクトを前記ベースに取り付ける細長いステムを備えた、請求項1から8のいずれかに記載のデバイス。
【請求項10】
前記ベースが、前記ベースを前記座標位置決め機械の金属表面に解放可能に固定するための磁気取付デバイスを備えた、請求項1から9のいずれかに記載のデバイス。
【請求項11】
工作機械を備えた前記座標位置決め機械に取り付けるように構成される、請求項1から10のいずれかに記載のデバイス。
【請求項12】
請求項1-11のいずれかに記載の較正デバイスを備えた工作機械。
【請求項13】
座標位置決め機械を較正する方法であって、
(i)前記座標位置決め機械に較正されたツールおよび較正アーチファクトを取り付けるステップと、
(ii)前記座標位置決め機械を使用して、前記較正アーチファクトが初期位置から偏向位置に移動するように、前記較正されたツールを移動させ、較正アーチファクトと係合させるステップと、
(iii)前記較正されたツールとの係合を解除した後、較正アーチファクトが前記偏向位置に維持されるように、較正アーチファクトを前記偏向位置にロックするステップと、を備える方法。
【請求項14】
(iv)前記座標位置決め機械を使用して測定プローブを動かし、前記較正アーチファクトの表面上の複数の点の位置を測定するステップを備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記較正アーチファクトが球体を備え、前記球体の中心位置を使用して、前記座標位置決め機械のローカル座標系における基準位置を画定する、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1-12のいずれかに記載の較正デバイスが前記較正アーチファクトを提供し、ステップ(iii)が前記デバイスの解放可能なロックをロックすることを備える、請求項13-15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
座標位置決め機械の較正デバイスであって、
ベースと、
較正アーチファクトと、および
前記較正アーチファクトを前記ベースに取り付けるロック可能機構と、を備え、
前記ロック可能機構は、外力の適用によって前記較正アーチファクトが前記ベースに対して移動可能なロック解除状態と、前記較正アーチファクトの位置が前記ベースに対してロックされるロック状態と、を採用することができる、較正デバイス。
【請求項18】
前記較正アーチファクトは、前記ロック解除状態にあるとき、静止位置に向かってバイアスされる、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記較正アーチファクトは、既知の半径を有する較正球である、請求項17に記載のデバイス。
【請求項20】
前記ロック可能機構が、前記ロック状態と前記ロック解除状態との間で変化するための手動作動部材を備えた、請求項17に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械等の座標位置決め装置と共に使用するための較正デバイスに関する。特に、本発明は、低減された複雑性の較正デバイスおよびそのようなデバイスの使用に関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な座標位置決め装置が知られている。例えば、数値制御工作機械は、車両、航空機などの金属部品などの部品を切断するために製造業で広く使用されている。高精度(例えば数ミクロン以内)で特徴を切断するためには、そのような工作機械の測定プローブを較正する必要がある。これは、切断手順中に切断ツールに対する部品の向きが変化する1つ以上の回転軸を有する工作機械(例えば、ミルターンまたは5軸工作機械)を使用する場合に特に当てはまる。
【0003】
特に少なくとも1つの回転軸を有する工作機械についての典型的な較正手順の重要な部分は、工作機械の基準位置に対するリングゲージ、較正球等の中心の位置を確立することである。確立されると、中心は、その後のすべての測定および較正手順が基づく、作業座標システムにおける機械データム点として機能することができる。
【0004】
工作機械のスピンドルに取り付けられたダイヤルテストインジケータまたはタッチプローブを使用して、工作機械ベッドに平行な平面(典型的にはXY平面と呼ばれる)に球体の中心位置を確立することが知られている。工作機械ベッドに垂直な軸に沿った球体中心位置(典型的にはZ軸と呼ばれる)を測定することは、より複雑であり、これまで典型的には、様々な手動手順を使用して実施されてきた。例えば、Z軸に沿って、手動制御の下で較正球に向かって既知の長さの基準ツールを移動させることが知られている。基準ツールは、既知の厚さのゲージブロックが基準ツールと球との間で「挟まれる」まで、球に向かって前進する。このような手動手順は不正確である可能性があり、較正の結果はオペレータによって異なることが見つかっている。
【0005】
国際特許公開第WO2017/121990号には、工作機械の基準位置に対して較正球の中心を確立することを可能にする較正デバイスが記載されている。デバイスは、デバイスのベースに対して既知で反復可能な静止位置にバイアスされるが、十分に高い力がそれに加えられると(例えば、較正された長さのバーによって)静止位置から離れることができる較正アーチファクトを含む。センサは、(例えば、機械のZ軸に沿って)静止位置から離れた偏向(deflection)の大きさを測定するためにデバイス内に設けられ、それによって、外挿技術(extrapolationtechnique)を使用して、較正デバイスの位置(例えば、Z軸内)を高いレベルの精度で決定することが可能になる。WO2017/121990のデバイスは、球位置の非常に正確かつ完全に自動化された測定を行うことを可能にするが、本発明者らは、較正デバイスが製造および使用するために比較的高価であることを見出した。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、座標位置決め機械のための較正デバイスであって、
ベースと、
較正アーチファクトと、
較正アーチファクトをベースに取り付け、外力の印加によって較正アーチファクトがベースに対して移動することを可能にする、偏向機構と、を備え、
デバイスが、ロックされると、較正アーチファクトをベースに対して固定する解放可能なロックをさらに備えることを特徴とする、較正デバイスが提供される。
【0007】
したがって、工作機械、座標測定機(CMM)、ロボット等の座標位置決め機械を較正する際に使用するのに適した較正デバイスが提供される。較正デバイスは、好ましくは、座標位置決め機械の一部に解放可能に取り付け可能なベースを備える。例えば、ベースは、工作機械のベッドに磁気的に取り付け可能であり得る。較正デバイスはまた、較正球(例えば、トレース可能な測定基準に正確に測定された半径を有する球)、部分球、ドーム面、リングゲージ、または偏向機構を介してベースに取り付けられた平面などの較正アーチファクトを備える。
【0008】
偏向機構は、較正アーチファクトがベースに対して移動することを可能にするが、デバイスはまた、必要に応じてそのような相対運動を防止することを可能にするロックを備えることを特徴とする。言い換えると、偏向機構は、「ロック解除」されることができ、それによって、較正アーチファクトがベースに対して移動することを可能にするか、または「ロック」されることができ、それによって、較正アーチファクトがベースに対して移動することを防止する。この構成は、ロック解除されたときに外部力を加えることによって、較正アーチファクトをベースに対して偏向位置に移動させることを可能にする。例えば、機械のスピンドルに担持された既知の長さのバーまたは基準ツールは、較正アーチファクトをベースに対して係合し、移動させ得る。一度そのような偏向位置に移動すると、長さバーまたは基準ツールが外れるときでさえも、較正アーチファクトがその偏向位置に残るように、ロックを作動させる(すなわち、ロックする)ことができる。したがって、較正アーチファクトは、ベースに対して固定化され、較正アーチファクトの位置は、偏向された位置が、座標位置決め機械の座標系内の既知の位置を有する基準ツール(例えば、長さバー、既知の長さのツールなど)を使用して設定される場合、既知である。次いで、較正アーチファクトは、所定の位置にロック(固定)されたままであり得、さらなる較正タスクに使用され得る。
【0009】
したがって、本発明の較正デバイスは、機械座標系内に既知の位置(例えば、1次元、2次元または3次元)を有する較正アーチファクトを提供することができるが、較正アーチファクトと接触したときに感知する必要がなく、較正アーチファクトの偏向の量を測定する必要がなくても行うことができるという利点を有する。代わりに、本発明者らは、任意の位置が工作機械座標系において決定されることができる限り、較正アーチファクトが任意の位置に移動することができることを認識する。したがって、本発明の較正デバイスは、従来の特許公開WO2017/121990に記載されているものなどの従来技術のデバイスよりも複雑さが少なく、したがって製造コストが低く、一方、既知の厚さのゲージブロックを基準との間で挟むという主観的な要素も排除される。較正デバイスをロックするステップが必要だが、これを手動で行う場合でも、マシンの動きが停止した後にのみ行うことができる。すなわち、機械が動いているときに、安全インターロックなどをオーバーライドすることによって較正デバイスにアクセスする必要はない。
【0010】
偏向機構は、ロック解除されると、較正アーチファクトの動きをある程度制限し得る(例えば、動きは、1つ以上の軸に沿った並進に制限され得る)。一実施形態では、偏向機構は、解放可能なロックがロック解除されたときに、較正アーチファクトの線形並進を提供するガイドを便利に含み得る。言い換えれば、偏向機構は、解放可能なロックがロック解除されたときに、較正アーチファクトを前後に直線的に(すなわち、直線軸に沿って)移動するようにガイドするガイドを含み得る。偏向機構は、較正アーチファクトの回転を防止し得る。一例では、較正アーチファクトの直線運動は、偏向機構の可動シャフトと平行な軸に沿って許容される。較正アーチファクトのこの直線運動軸は、使用中に、基準ツールの長手方向軸とほぼ一致するように整列され得る。そのような基準ツールは次いで、較正アーチファクトが直線運動軸に沿って偏向されるように、較正アーチファクトの長手方向軸に沿って較正アーチファクトと係合するように移動され得る。基準ツールの長さは、定義により、既知であり、したがって、較正アーチファクトの軸に沿った較正アーチファクトの位置が既知である。
【0011】
偏向機構が、較正アーチファクトが特定の軸(例えば、並進の直線軸)に沿ってのみ移動することを制限する場合、アーチファクトによって画定される関連する基準点は、軸上または軸の近傍に位置するように配置され得る。言い換えると、較正アーチファクトは、直線軸上に便利に配置され得る。例えば、較正球の中心は、実質的に直線並進軸上にあり、したがって直線並進軸に沿って前後に並進するように配置され得る。これは、(すなわち、較正アーチファクトが移動したときに)偏向機構に適用される任意の外力が、デバイスの軸外運動または偏向(変形)を引き起こすことを防止または低減する。これは、次に、解放可能なロックがロックされると、偏向力が除去されるとき(例えば、基準ツールが係合解除されるとき)、較正アーチファクトが実質的に位置を変更しないことを確実にするのに役立つ。
【0012】
有利には、偏向機構は、バイアスを備える。バイアスは、較正アーチファクトを静止位置に向かってバイアスし得る。バイアスは、1つまたは複数のばね(例えば、コイルばね)によって提供され得る。バイアスによって加えられる力は、ロックによって加えられるロック力を克服するのに不十分であることが好ましい。したがって、バイアスは、ロックがロック解除状態にあるときのみ較正アーチファクトの動きをもたらす。言い換えれば、ロックがロックされているとき、バイアスはロック力を克服するのに不十分であり、したがって、較正アーチファクトは、ベースに対して固定される。較正アーチファクトがバイアスされる静止位置は、繰り返し画定する必要はない(すなわち、較正アーチファクトによって採用される静止位置は、較正の精度に影響を与えない)。
【0013】
解放可能なロックは、様々な方法で実装され得る。解放可能なロックは、遠隔で作動可能なロックであり得る。例えば、解放可能なロックは、適切なコマンドをデバイスに送信することによって(例えば、ワイヤまたは空気圧ラインを介して)、自動的に(非手動で)ロック/ロック解除されることができる、電気的または空気圧で作動されるロックであり得る。好ましくは、解放可能なロックは、手動で作動される(すなわち、オペレータ/ユーザによって手動で作動される)。したがって、解放可能なロックは、手動で作動されるロック部材を便利に備える。ロック部材は好ましくはロックレバーである。代替的に、ロック部材は、ツイストロック部材であり得る。
【0014】
較正デバイスは、任意の適切な較正アーチファクトを備え得る。したがって、較正アーチファクトは、既知の寸法(例えば、既知のサイズのアーチファクト)を有する任意のアイテムであり得る。較正アーチファクトは、平坦な表面を備え得る。較正アーチファクトは、ドーム状の表面(例えば、大きな直径の球の曲率を有する表面)を備え得る。アーチファクトの1つ以上の寸法は、較正された(追跡可能な)標準に対する事前の測定によって知られ得る。例えば、アーチファクトの1つまたは複数の寸法は、関連する(国内または国際的な)較正基準に対して較正される座標測定機(CMM)で以前に測定され得る。較正アーチファクトは、リングゲージ、キューブ、ディスク(例えば、既知の半径を有する)などを備え得る。便利には、較正アーチファクトは、球体を備える。球体は既知の半径を有し得る。球面上の複数の点の位置を測定することによって、球面中心の位置(例えば、x、y、z座標における)を決定することが可能であるため、単純さおよび正確さのために、既知の半径の球体が好ましい。較正球は、完全球または部分球であり得る(例えば、球のセグメントのみを備え得、またはステムに取り付けるための平坦領域または凹部を含み得る)。
【0015】
較正アーチファクトは、1つ、2つ、または3つ全ての寸法で作業座標系にデータム点を提供し得る。例えば、較正球は、3次元のデータム点(例えば、球中心)を提供し得る。リングゲージは、2次元のデータム点(例えば、特定の平面内のリングの中心点)を提供し得る。平坦な表面は、1次元データム点(例えば、表面を備える平面の位置)を提供し得る。較正デバイスは、(移動可能/ロック可能な)較正アーチファクトおよび追加の較正アーチファクトの両方を含み得る。例えば、デバイスは、(可動/ロック可能な)平面またはドーム状の表面、および可動ではない追加のアーチファクト(例えば、デバイスのベースに固定的に取り付けられるリングゲージまたは球体)を含み得る。このようにして、(可動/ロック可能な)較正アーチファクトおよび追加の較正アーチファクトの両方の特徴を使用して、作業座標系内のデータム点を3次元で定義することができる。
【0016】
較正デバイスは、ベースに取り付けられた、またはベースの一部として形成されたハウジングを含み得る。偏向機構は、ハウジング内に部分的にまたは完全に収容され得る。偏向機構は、較正アーチファクトをベースに取り付ける細長いステムを備え得る。較正アーチファクトは、ステムに直接取り付けられ得、またはさらなる構成要素(例えば、角度付きウェッジ、延長ピースなど)は、較正アーチファクトをステムに取り付け得る。したがって、較正アーチファクトおよび取り付けられるステムの向きは、必要に応じて(例えば、較正デバイスの垂直方向および/または水平方向の取り付けを可能にするために)選択され得る。
【0017】
ベースは、いくつかの方法で機械に取り付けられ得る。たとえば、機械ベッドにボルトで固定され得る。有利には、ベースは、座標位置決め機械の金属表面(例えば、工作機械のベッド)にベースを解放可能に固定するための磁気取り付けデバイスを備え得る。言い換えれば、デバイスを金属表面に解放可能に取り付けることができる磁気ベースが使用され得る。これは、デバイスをしっかりと保持するが、簡単に取り外すことを可能にする。
【0018】
較正デバイスは、任意の座標位置決め機械に取り付けるように構成され得る。有利には、較正デバイスは、工作機械を備える座標位置決め機械に取り付けるように構成される。工作機械は、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つの運動軸を有し得る。工作機械は、少なくとも1つの回転軸を有し得る。工作機械は、少なくとも2つの回転軸を有し得る。工作機械は、旋削機械、旋盤、またはミルターン機械であり得る。較正デバイスは、工具保持スピンドルに対して移動することができる工作機械ベッドに取り付け可能であり得る。本発明はまた、較正デバイスを備える座標位置決め機械にも及ぶ。例えば、較正デバイスを備える工作機械が提供され得る。
【0019】
本発明の第2の態様によれば、座標位置決め機械(例えば、工作機械)を較正する方法も提供される。この方法は、(i)較正されたツール(例えば、既知の長さの長さのバーまたはツール)および較正アーチファクト(例えば、較正球)を座標位置決め機械に取り付けるステップと、(ii)較正アーチファクトが初期位置から偏向位置に移動されるように、座標位置決め機械を使用して較正されたツールを移動させ、較正アーチファクトと係合させる、ステップと、(iii)較正アーチファクトが較正されたツールとの離脱後に偏向位置に維持されるように、較正アーチファクトを偏向位置にロックするステップと、を備える。
【0020】
次いで、(iv)座標位置決め機械を使用して、測定プローブを移動させて、較正アーチファクトの表面上の複数の点の位置を測定するさらなるステップが実行され得る。測定プローブは、アーチファクトに接触するためのスタイラス、例えば、タッチトリガ測定プローブまたはアナログ(走査)プローブを有する触覚測定プローブであり得る。代替的に、測定プローブは非接触測定プローブであり得る。測定プローブは、機械のスピンドルで運ばれ得る。したがって、測定プローブを使用して、較正アーチファクトの位置を測定し得る。例えば、較正球のxy座標は、測定プローブを使用して見出され得、較正ツールを使用して較正アーチファクトを静止位置に配置することによって知られる球中心のZ座標と組み合わせて使用され得る。
【0021】
有利には、較正アーチファクトは、球体を備える。次いで、球の中心位置は、座標位置決め機械の局所座標系における基準位置を画定するために使用され得る。この球体中心(基準)位置は、機械座標系で決定され、さらなる較正手順に使用され得る。
【0022】
好ましい実施形態では、本発明の第1の態様に係る較正デバイスは、本発明の第2の態様の方法で使用される。次いで、較正デバイスは、較正アーチファクトを提供し得、方法のステップ(iii)は、デバイスの解放可能なロックをロックすることを備え得る。
【0023】
本発明のさらなる態様は、ベース、較正アーチファクト、および較正アーチファクトをベースに取り付けるロック可能な機構を備える、座標位置決め機械のための較正デバイスを提供し、ロック可能な機構は、外部力の印加によって較正アーチファクトがベースに対して移動可能であるロック解除状態、および較正アーチファクトの位置がベースに対してロックされるロック状態を採用することができる。較正アーチファクトは、ロック解除状態にあるときに静止位置に向かってバイアスされ得る。較正アーチファクトは、既知の半径を有する較正球を備え得る。ロック可能な機構は、ロック状態とロック解除状態との間を変更するための手動作動部材を備え得る。ベースは、工作機械のベッドへの取り付けを可能にする磁石を備え得る。
【0024】
本明細書には、較正デバイスも記載されている。較正デバイスは、座標位置決め機械のためのものであり得る。較正デバイスは、ベースを備え得る。較正デバイスは、較正アーチファクトを備え得る。較正デバイスは、偏向機構を備え得る。偏向機構は、較正アーチファクトをベースに取り付け得る。偏向機構は、外部力を加えることによって、較正アーチファクトをベースに対して移動させることを可能にし得る。デバイスは、(解放可能な)ロックをさらに備え得る。ロックされると、ロックは、ベースに対して較正アーチファクトを固定し得る。デバイスは、上述の特徴のいずれかを含み得、および/または上述の方法のいずれかで使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
ここで、添付の図面を参照して、単に一例として本発明を説明する;
図1図1は、多軸工作機械を示す。
図2図2は、較正球を使用する従来技術の較正技術を示す。
図3a図3aは、ロック解除およびロック状態のロックレバーをそれぞれ備える本発明の較正デバイスを示す。
図3b図3bは、ロック解除およびロック状態のロックレバーをそれぞれ備える本発明の較正デバイスを示す。
図4図4は、図3aおよび図3bのデバイスの様々な内部部分をより詳細に示す。
図5図5は、ツイストロック機構を備える本発明のさらなる較正デバイスを示す。
図6図6は、図5のデバイスの様々な内部部品をより詳細に示す。
図7a図7aは、工作機械の較正を補助するために較正デバイスを使用することができる方法を示す。
図7b図7bは、工作機械の較正を補助するために較正デバイスを使用することができる方法を示す。
図7c図7cは、工作機械の較正を補助するために較正デバイスを使用することができる方法を示す。
図8図8は、較正デバイスの代替的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、多軸工作機械を示す。工作機械は、典型的にはS軸と呼ばれるものの周りで中心に高速で回転させることができるスピンドル2を備える。スピンドル2は、切断ツール4のテーパシャンクまたは測定プローブなどの他のアクセサリを受容するためのテーパマウント6を備え、これにより、必要に応じて、ツールおよびアクセサリをスピンドル2に装填することができる。スピンドル2は、3つの直線軸に沿って工作機械によって空間内で移動することができる。これらの工作機械軸は、典型的には、X軸、Y軸、およびZ軸と呼ばれる。工作物12が取り付けられているテーブル10が設けられている。テーブル10は、A軸の周りに傾けられ、B軸の周りに回転することもできる。
【0027】
切断中、切断ツール4は、S軸を中心に高速で回転され、工作機械コントローラは、切断プログラムで定義された命令のリストに従い、工作物12に対して所望の切断経路に沿って工具4を移動させる。切断経路は、X軸、Y軸、およびZ軸に沿ったスピンドルの並進運動、ならびにA軸およびB軸を中心とした回転運動を含むことができる。工作物から必要な材料を除去するためには、A軸とB軸を中心とした回転運動が発生した場合でも、工作物に対するツール先端の位置を正確に知る必要がある。したがって、そのような較正を実行するために、様々な技術およびデバイスが長年にわたって開発されてきた。
【0028】
当業者に周知であろうように、多くの自動工作機械較正技術は、スピンドルに取り付けられた測定プローブを使用して、工作機械ベッドに取り付けられた較正球(すなわち、既知の半径の球)の様々な測定を行うことを含む。これらの測定は、通常、工作機械の基準位置(例えば、x、y、z工作機械座標系の原点)に対する較正球の中心の位置を高い精度で把握することに依存する。したがって、球の中心位置を正確に測定するための様々な技術が長年にわたって開発されてきた。測定されると、その後のオンマシン測定(例えば、較正のため、工作物測定、またはツール測定の目的など)は、球体中心位置に結び付けられ得る。
【0029】
図2を参照すると、工作機械のベッドに固定的に(不動的に)取り付けられている較正球20の中心の位置が決定されることを可能にする従来技術の技術が説明される。球は、通常、工作物が配置される工作機械内のベースまたは別の構造に固定され得る。したがって、球は、工作機械の1つ以上の回転軸を備え得る工作機械の工作面に取り付けられ得る。
【0030】
まず、較正球のXY位置を高精度に確立することを可能にするいくつかの技術が知られていることに留意されたい。例えば、ダイヤルテストインジケータ(DTI)は、工作機械のスピンドルに取り付けられ、球の赤道付近で較正球20の直径を「クロック」するために使用され得る。これは通常、スピンドルを回転させたときにダイヤルインジケータが偏向しなくなるまで、XとYの位置をジョギング(つまり、手動制御で移動)することによって行われる。これが達成された場合、スピンドルのXY位置は球体の中心位置である。
【0031】
工作機械のスピンドルに取り付けられたタッチトリガープローブを使用して、球のXY中心位置を測定することも知られている。スピンドルの回転位置(すなわち、S軸を中心とした回転角)はゼロ度に向き、球体中心が測定され、球中心のXY位置が記録される。
【0032】
次に、スピンドルを180°回転させ、球体中心のXY位置を再測定される。2つの測定されたXY球の中心位置の間の平均が中心位置として使用される。すなわち、スピンドルの回転中心に対するタッチプローブ球状スタイラスの偏心取り付けによる任意のエラーが排除される。
【0033】
上述の技術は、XY球中心位置を見出すことを可能にするが、それらは通常、1つ以上の回転軸を有する工作機械に対して十分な精度で球のZ位置を確立することができない。したがって、球のZ位置を決定するためのいくつかの別個の技術が知られている。
【0034】
最も一般的に使用される技術は、図2に例示され、いわゆるフィーラーゲージブロック24の使用を含む。これは、既知の(例えば、較正された)厚さのブロックまたは材料シートであり得る。既知の、較正された長さの基準ツール22は、工作機械のスピンドルにロードされる。スピンドルは、基準ツール22が球20の上死点(topdeadcentre)の上に配置されるように移動される。フィーラーゲージまたはゲージブロック24は、基準ツール22の端部と球20との間に配置される。工作機械の手動「ジョグ」機能を使用して、ツールは、ゲージブロック24が基準ツール22と球20との間で「挟まれる」だけになるまで、手動で下に移動される。この手動プロセスは、ゲージが自由に動くときをエンジニアが「感じる」ことを必要とするが、プレイ(play)やクリアランスギャップはない。これが現在の機械位置で達成されると、ツールの長さと較正された球の半径は、球の中心Z位置を計算するために使用される。
【0035】
Z位置を設定するために別注の長さ設定デバイスを使用することも知られている。Base―Masterと呼ばれる装置は、日本のBigDaishowa社製で製造され、MetrologySoftwareProductsLimited,Alnwick,UKから供給され、繰り返し可能な一方向インジケータを備える。インジケータは工作機械のスピンドルに取り付けられ、固定球のXY中心上に配置される。工作機械のジョグ制御は、Base―Masterがちょうど球の上部に接触するまで、スピンドルを下に動かすために使用される。そのような接触は、Base―Masterデバイスに取り付けられたLEDによって示される。次に、Base―Masterの(既知の)長さ、現在のZ位置、および球の半径を使用して、Z軸内の球の中心を計算される。
【0036】
上述したように、WO2017/121990は、自動化された方法で、工作機械の基準位置に対して較正球の中心を確立することを可能にする較正デバイスを説明する。デバイスは、比較的高いばね力によって、そのベースに対して既知の繰り返し可能な静止位置にバイアスされる較正アーチファクト(例えば、較正球)を含む。工作機械のスピンドルに運ばれる較正された長さバー(または他の基準ツール)によって十分に高い力が加わると、較正球は静止位置から離れて移動する。アナログセンサは、静止位置から離れた偏向の大きさを測定するために較正デバイス内に提供される。較正球を偏向させるために長さバーが移動するときのスピンドルの位置(すなわち、長さバーを保持する)の測定値は、アナログセンサによって測定された較正球の測定値と組み合わせられる。次に、外挿技術を使用して、較正球が静止位置にあるときの較正球の位置を正確に決定する。このプロセスは、WO2017/121990にさらに詳細に記載されている。
【0037】
WO2017/121990のデバイスは、完全に自動化された方法で高精度の位置情報を提供するが、デバイス自体は複雑であり、製造に費用がかかる可能性がある。たとえば、較正アーチファクトで採用されている静止位置は非常に繰り返し可能でなければならず、アナログ測定センサは正確な位置測定を提供しなければならない。また、別個のコンピュータが、工作機械および較正デバイスからのデータを組み合わせて、較正アーチファクトの静止位置を確立するために必要である。これにより、装置のセットアップと操作が比較的高価で複雑になる。
【0038】
本発明は、較正アーチファクト(例えば、較正球)が工作機械内の所定の位置に固定された後にのみ、較正アーチファクトの位置を測定する必要がないことを認識する本発明者から生じる。代わりに、較正球は、基準ツール(例えば、較正された長さバー)によってZ軸に沿って移動されることによって、任意の(しかし既知の)位置に移動されることができる。較正された長さバーとの係合が解除される前に(すなわち、その長さバーが後退されるように)、較正球が所定の位置にロックされている限り(例えば、取り付けられている工作機械ベッドに対して固定されている)、較正球は、工作機械座標系内の既知の基準位置を提供することができる。これにより、長さバーと較正球の間の接触を感知、および較正球の偏向量を測定の必要がなくなる。したがって、より低コストで簡単なデバイスが提供される。ここで、本発明の装置およびそれをどのように較正目的に使用することができるかについて説明する。
【0039】
図3aおよび3bは、磁気ベース30、偏向機構32、および較正球34を備える本発明の較正デバイスの第1の実施形態を示す。
【0040】
磁気ベース30は、約800Nの保持力で金属工作機械台に取り付けることができる、日本のMisumiGroupによって製造された市販の磁気ベースである。磁気ベース30は、「オフ」位置から「オン」位置へのノブ36の回転によって、工作機械ベッドにしっかりと固定され得るが、解放可能である。以下に述べるように、磁気ベースまたは異なるタイプの取り付け機構(例えば、ボルト、ネジなど)の他の設計を使用して、デバイスを工作機械にしっかりと固定することができる。
【0041】
偏向機構32は、磁気ベース30の上部に固定されたハウジング38と、較正球34が間接的に取り付けられる可動シャフト40とを備える。較正球34は、45度のくさび要素44を介して可動シャフト40に順に取り付けられる、さらなるシャフト42に取り付けられる。この構成は、較正球を異なる方向から測定することを可能にし、それによって較正装置を水平、垂直、または傾斜した表面に取り付けることを可能にする。様々な異なる方法で、較正球34を可動シャフト40に取り付けることが可能であろう。この例では、可動シャフト40は、矢印41によって示される方向(すなわち、可動シャフト40の長手方向軸に平行)で前後に並進することができる。
【0042】
較正デバイスは、ハウジング38内に含まれるロックをさらに含み、このロックの構造および動作は、図4を参照して以下により詳細に説明される。操作者がレバー46を動かすことによって手で作動させることができるロックは、ハウジング38に対する可動シャフト40の位置をロックする。ロックは、ロック状態にあるとき、したがって、ハウジング38に対して可動シャフト40を固定する。ロック状態を図3bに示す。しかし、可動シャフト40は、ロックがロック解除状態にあるときに、依然として前後に(すなわち、指示された方向41に沿って)並進することができる。ロック解除状態を図3aに示す。以下に説明されるように、スプリング(図示せず)もまたハウジング内に提供され、ロック解除状態にあるときに、可動シャフト40をハウジング38から離れてバイアスする(すなわち、シャフトは、デバイスが図3aに示される配向にあるときに、スプリングによって上方にバイアスされる)。
【0043】
したがって、較正デバイスは、較正球が磁気ベース30に対して固定位置を有するロック状態(すなわち、ロックされた構成)と、較正アーチファクトがハウジングに対して移動することができない(すなわち、固定される)ロック解除状態(すなわち、ロックされていない構成)とを採用することができる。可動シャフトがハウジングに対して任意の位置に移動されたとき(すなわち、そのような移動はロック解除状態で可能である)、ロックを作動させる(すなわち、ロックされる)ことができることに留意することが重要である。以下に説明するように、これは、較正球を所定の位置に移動させ、その位置にロックして、その後の測定を行うことを可能にする。デバイスがロックされると、ベースに対する較正球の移動が防止される。
【0044】
図4は、図3aおよび3bに示される較正デバイスの内部偏向機構およびロックのさらなる詳細を示す。したがって、同様の特徴は、同様の参照番号を割り当てられる。
【0045】
上述のように、較正デバイスは、可動シャフト40を備え、これは、ハウジング32に組み込まれ、個々のアイテムとして図4に示される。可動シャフト40は、概して円筒形であるが、その長さの中央部分に沿って走るV字形の凹部60を含む。可動シャフト40の第1の端部62は、較正球34を保持するくさび要素44が取り付けられたねじ穴を含む。可動シャフト40の第2の端部64は、コイルスプリング66を受容するための開口部を有する拡大部分を含む。デバイス内に組み立てられるとき、可動シャフト40の第2の端部64は、コイルスプリング66と係合し、それによって可動シャフト40を上方(すなわち、図4に示される配向にあるときに上方)にバイアスする。
【0046】
ロックは、ハウジング内のスロット内に保持された摺動可能なインサート72の第1の端部と係合するボール70を備えるロック機構によって提供される。特に、ボール70は、インサート72内に保持された複数のディスクスプリング74によって、可動シャフト40のV字形の凹部60と接触するように押される。摺動可能なインサート72の第2の端部は、カムシャフト76と係合する。カムシャフト76は、概して細長いシリンダであるが、摺動可能なインサート72の第2の端部と係合するための平坦領域78(すなわち、小さな直径)を有する。また、半径方向に突出するロックレバー46をカムシャフト76に取り付けることを可能にするために、ねじ穴80がカムシャフト76に設けられている。図4は、カムシャフト76が個々の構成要素としてデバイス内に取り付けられたときを示す。
【0047】
レバー46の移動(例えば、図3aおよび3bに上記に示される位置の間)は、カムシャフト76を回転させ、それによって、可動シャフト40に対して摺動可能なインサートを半径方向に移動させる。したがって、レバー46の移動は、カムシャフト76を回転させ、それによってボール70を介して可動シャフト40に印加される保持力を増加または減少させる。配置は、レバー46がロック状態とロック解除状態との間で移動できるように構成される。ロック解除状態では、ボール70は、軽い力で可動シャフト40内に押し込まれるのみであり、それによって、可動シャフト40がハウジングのチャネル内で前後に並進することを可能にする。ロック解除状態および印加された外力がない場合、可動シャフト40は、コイルスプリング66によって(上方に)押され、それによってハウジング32から完全に延びる。ロック解除状態では、ボール70は依然として可動シャフト40のV字形の凹部60内に位置し、それによって可動シャフトの軸方向の移動範囲を制限する(すなわち、スプリングが可動シャフト40をハウジングから押し出すのを防止する)ことに留意されたい。コイルばね66のばね力は、例えば、工作機械スピンドルに保持された基準ツール(例えば、較正された長さバー)によって係合されるときに、可動シャフト40の軸方向の偏向を可能にするように選択される。ロック状態では、ボール70は、ハウジング32に対してそのシャフト40を固定するのに十分な力で可動シャフト40と係合するように促される。ロック解除状態からロック状態に移動すると、その現在の位置(例えば、外部力の印加によってそれが偏向された位置であり得る)で較正球をロック(固定)する。
【0048】
図5および6を参照すると、異なるロック機構を含む上記の較正デバイスの変形例が説明される。
【0049】
図5は、上述のデバイスと同様に、ハウジング132に取り付けられた磁気ベース130を備える較正デバイスを示す。較正球134はまた、可動シャフト140に取り付けられる。ロックリング146を備えるロックも提供される。可動シャフト140は、ロックリング146がロック解除状態になるように回転するときに、ハウジング132に対して軸方向に移動することができる。しかしながら、ロックリング146がロックされた構成になるように回転されるとき、可動シャフト140(したがって、較正球134)は磁気ベース134に対して固定される。ハウジング132およびロックリング146上のマーキングは、ロックがロックされているか、またはロックされていないかを示し得る。したがって、図5のデバイスは、図3a、3bおよび4を参照して上述したデバイスと同じ機能を提供するが、ロックを実装する異なる機構を含む。
【0050】
図6を参照すると、図5を参照して説明される較正デバイスのロック機構のさらなる詳細が示される。図3a、3bおよび4の配置と共通して、可動シャフト140は、インサート172によってボール170が押し込まれる凹部を含む。しかしながら、インサート172は、ロックリング146内に形成された内面凹部182とローリング係合している回転可能ディスク180によって可動シャフト140に向かって押し出される。ロックリング146の凹部182は、半径が変化するため、リングの回転により、回転可能ディスク180は、インサートを移動可能シャフト140に向かって移動させるか、または移動可能シャフト140から離れて移動させ、それによってボール170を介して異なる量の力を加える。特に、この構成は、可動シャフト140がハウジング132に対して固定されるロック状態と、可動シャフト140が前後に移動することができるロック解除状態とを提供するように構成される。ロック解除状態にあるときに、可動シャフト140の遠位端をハウジングから離すように促すためのばね(図示せず)も提供される。
【0051】
次に、図7a-7cを参照して、本発明の較正デバイスが工作機械の較正にどのように使用され得るかの例を説明する。
【0052】
図7aは、工作機械のベッド204に(例えば、磁石またはボルト等によって)しっかりと固定されたベース202を有する較正デバイス200を概略的に示す。較正デバイス200は、細長いシャフト208によってベース202に取り付けられた較正球206を備える。デバイスは、シャフトがベース202に対してZ方向に移動することを可能にするロック解除状態と、較正球206がケース202に対して固定されるロック状態と、に配置することができるロック機構を含む。ロック解除状態では、細長いシャフト208は、正のZ方向に、示されている静止位置にバイアスされる。手動アクチュエータ210は、ユーザが必要に応じて、ロック(L)状態とロック解除(U)状態との間でデバイスを変更することを可能にする。
【0053】
図7aでは、工作機械(図示せず)のスピンドルに保持された較正された長さバー212も、較正球206に向かって負のZ方向に移動されるように図示される。長さバー212の端部の位置は、機械座標系において正確に知られている(すなわち、定義により、スピンドルの基準点に対する既知の長さを有するため)。
【0054】
図7bは、較正された長さバー212が較正球206と接触した後の同じ配置を示す。接触の方法は、長さバー212の端部を較正球206と係合させるように、工作機械を制御する(例えば、ジョグホイールを使用する)ことによって手動で実行される。長さバー212と較正球206との間の係合後、相対運動が短い距離継続され、それによって較正球206を図7bに示される偏向位置に偏向(移動)する。機械の動きが停止した後、ユーザは、工作機械の筐体を開き、アクチュエータ210を使用して手動で較正デバイスをロック状態に切り替え得る。次いで、Z軸における較正球の中心の位置(既知の半径を有する)は、機械座標系において既知である(すなわち、較正長さバーの端部の対応する位置が既知であるため)。
【0055】
図7cに示されるように、較正された長さバー212は、較正球206から引き出されることができるが、その球206の位置は、任意の有意な距離を移動しない(すなわち、較正デバイスが現在ロックされているため)。次に、スピンドルプローブ218を工作機械プローブのスピンドルに装填し、既知の方法で使用して、x-y平面内の球中心の位置を正確に確立し得る。次いで、較正デバイスは、工作機械(x、y、z)座標系内の高精度に既知の位置を有する較正球を提供する。次いで、球体中心は、(例えば、較正手順等のための)すべての後続のプローブ測定値のベースとなる機械データム点として機能することができる。
【0056】
図8を参照すると、本発明の代替の較正デバイス300が示されている。デバイスは、工作機械のベッドに取り付け可能なベース302を含む。較正フラット306(すなわち、平坦な表面を有する較正アーチファクト)は、ロック可能な偏向機構を介してベース302に取り付けられる。上記の例に従って、較正された長さバー312は、較正フラット306を偏向させ得、較正フラット306は、次いで、手動アクチュエータ310を使用して所定の位置にロックされ得る。したがって、較正フラット306の位置は、Z軸において既知である(すなわち、Z軸データム位置を画定する)。ベースに固定的に取り付けられた追加の較正球320(これは代替的に工作機械に別の場所に固定され得ることに留意されたい)を使用して、x軸およびy軸における基準位置を提供し得る。このようにして、データム位置は、座標系において3次元で定義することができる。
【0057】
図8に示される較正フラット306は、較正アーチファクト、またはフラットではなくドーム状の接触面を有するディスクによって置き換えられ得る。例えば、較正ディスクは、大きな(仮想)球面上にある曲率半径を有する最上部表面を有し得る。これは、較正された長さバー312および較正ディスクが接触されたときに(例えば、図8に示されるようにいずれかがZ軸と整列されていない場合に)、較正された長さバー312および較正ディスクの角度のずれがあった場合に生じ得る長さ誤差を低減する。このドーム型ディスク構成は、わずかな角度のずれがあっても、平坦端の較正された長さバー312がドーム型表面の最も高い部分に接触することを確実にする。このような構成は、平坦端ツールの測定に特に適している。
【0058】
上述の実施形態は、本発明の一例にすぎない。本発明を実施するために、代替のロック機構、較正人工物、ハウジング、ベースなどを使用することも可能であろう。上述の多軸工作機械は、多軸フライス盤であるが、この技術は、任意の種類の工作機械(例えば、旋盤、ミルターンマシンなど)で使用することができる。同様に、デバイスは、工作機械以外の座標位置決め機械(例えば、専用の座標測定機械またはロボット)上で使用され、幅広い測定および/または較正手順を実装することができる。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図8
【国際調査報告】