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特表2023-519301オブジェクトから不要な材料を除去するための組成物およびその組成物の使用方法
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  • 特表-オブジェクトから不要な材料を除去するための組成物およびその組成物の使用方法 図1
  • 特表-オブジェクトから不要な材料を除去するための組成物およびその組成物の使用方法 図2A
  • 特表-オブジェクトから不要な材料を除去するための組成物およびその組成物の使用方法 図2B
  • 特表-オブジェクトから不要な材料を除去するための組成物およびその組成物の使用方法 図3A
  • 特表-オブジェクトから不要な材料を除去するための組成物およびその組成物の使用方法 図3B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】オブジェクトから不要な材料を除去するための組成物およびその組成物の使用方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/35 20170101AFI20230428BHJP
   B29C 64/124 20170101ALI20230428BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20230428BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230428BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230428BHJP
   B08B 3/10 20060101ALI20230428BHJP
   B08B 3/12 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
B29C64/35
B29C64/124
B33Y40/20
B33Y10/00
B33Y30/00
B08B3/10
B08B3/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558037
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(85)【翻訳文提出日】2022-10-21
(86)【国際出願番号】 US2021024062
(87)【国際公開番号】W WO2021195320
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】63/000,670
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519127340
【氏名又は名称】ポストプロセス テクノロジーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ノーブル,マシュー,ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ハッチンソン,ダニエル
【テーマコード(参考)】
3B201
4F213
【Fターム(参考)】
3B201AA46
3B201BB02
3B201BB82
3B201BB83
3B201BB87
3B201BB95
3B201CC01
3B201CC11
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL12
4F213WL55
4F213WW02
4F213WW31
4F213WW38
(57)【要約】
【課題】3D印刷オブジェクトの不要な材料または樹脂を除去することのできる組成物およびその使用方法に関する。
【解決手段】不要な材料を除去する化合物または仕上げ溶液に関する。不要な材料または樹脂は、3D印刷の過程で生成される。一実施例では、仕上げ溶液は第1のグリコールエーテルと、第2のグリコールエーテル、および/または高引火点の炭化水素を含む。仕上げ溶液の引火点は、少なくとも93.3℃である。他の実施形態では、仕上げ溶液は第3のグリコールエーテルと、高引火点のアルコールと、および/またはグリコールエーテルアセテートと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のグリコールエーテルと、少なくとも93.3℃の引火点を有している第2のグリコールエーテル、および/または高引火点の炭化水素と、を備え、
前記オブジェクトの表面から不要な材料を除去するように構成されている、仕上げ溶液。
【請求項2】
20-60重量%の前記第1のグリコールエーテルと、20-60重量%の前記第2のグリコールエーテルと、20-60重量%の前記高引火点の炭化水素と、を有している、請求項1に記載の仕上げ溶液。
【請求項3】
第3のグリコールエーテルをさらに備える、請求項1に記載の仕上げ溶液。
【請求項4】
20-60重量%の前記第1のグリコールエーテルと、20-60重量%の前記第2のグリコールエーテルと、20-60重量%の前記第3のグリコールエーテルとを有する、請求項3に記載の仕上げ溶液。
【請求項5】
前記第3のグリコールエーテルは、トリエチレングリコールジメチルエーテルまたはテトラエチレングリコールジメチルエーテルである、請求項3に記載の仕上げ溶液。
【請求項6】
前記第2のグリコールエーテルは、トリプロピレングリコールメチルエーテルまたはトリエチレングリコールモノメチルエーテルである、請求項1に記載の仕上げ溶液。
【請求項7】
高引火点のエステルをさらに備える、請求項1に記載の仕上げ溶液。。
【請求項8】
前記高引火点のエステルを1~20重量%有している、請求項7に記載の仕上げ溶液。
【請求項9】
前記高引火点のエステルは、アジピン酸ジメチルである、請求項7に記載の仕上げ溶液。
【請求項10】
高引火点のアルコールをさらに備える、請求項1に記載の仕上げ溶液。
【請求項11】
20-60重量%の前記第1のグリコールエーテルと、20-60重量%の前記高引火点の炭化水素と、20-60重量%の前記高引火点のアルコールとを有する、請求項10に記載の仕上げ溶液。
【請求項12】
前記高引火点のアルコールは、ベンジルアルコールである、請求項10に記載の仕上げ溶液。
【請求項13】
前記第1のグリコールエーテルは、ブチルカルビトール(別名:2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール)、メチルカルビトール(別名:2-(2-メトキシエトキシ)エタノール)、またはエチルカルビトール(別名:2-(2-エトキシエトキシ)エタノール)からなる群のいずれかである、請求項1に記載の仕上げ溶液。
【請求項14】
前記高引火点の炭化水素は、ネオデン-14(別名:1-テトラデセン)である、請求項1に記載の仕上げ溶液。
【請求項15】
前記オブジェクトは、3次元(3D)印刷オブジェクトであり、
前記不要な材料は、前記3D印刷オブジェクトの表面上にある未硬化樹脂を含む、請求項1に記載の仕上げ溶液。
【請求項16】
前記オブジェクトを10分間イソプロピルアルコールに浸漬後に前記オブジェクトの表面から除去される不要な材料の量と比較して、前記オブジェクトを前記仕上げ溶液中へ10分間浸漬した後に前記オブジェクトの表面から除去される不要な材料の量は、少なくとも2倍である、請求項1に記載の仕上げ溶液。
【請求項17】
前記オブジェクトを10分間イソプロピルアルコールに浸漬後に前記オブジェクトの表面から除去される不要な材料の量と比較して、前記オブジェクトを前記仕上げ溶液中へ10分間浸漬した後に前記オブジェクトの表面から除去される不要な材料の量は、少なくとも5倍である、請求項1に記載の仕上げ溶液。
【請求項18】
第1のグリコールエーテルと、第2のグリコールエーテルと、および/または高引火点の炭化水素とを有し、少なくとも93.3℃の引火点を有する仕上げ溶液を提供する工程と、
オブジェクトを仕上げ溶液に浸漬する工程と、
前記オブジェクトが前記仕上げ溶液に浸漬されている間にオブジェクトを撹拌する工程と、
オブジェクトの表面から除去された不要な材料が仕上げ溶液内に残っており、かつオブジェクトを仕上げ溶液中から取り出す工程と、を備える、
オブジェクトの表面から不要な材料を除去する方法。
【請求項19】
前記仕上げ溶液から前記オブジェクトを取り出して、洗浄するおよび/または乾燥させる工程をさらに備える、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記オブジェクトが仕上げ溶液に浸漬されている間、オブジェクトを加温する工程をさらに備える、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記オブジェクトは、ステレオリソグラフィ(SLA)プリンタによって印刷された部分硬化オブジェクトであり、紫外線(UV)チャンバ内で部分硬化オブジェクトを硬化させ、その後、仕上げ溶液から部分硬化オブジェクトを除去する工程をさらに備える、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記オブジェクトは、3次元(3D)印刷オブジェクトであり、前記不要な材料は、前記3D印刷オブジェクトの表面上の未硬化樹脂を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記オブジェクトを前記仕上げ溶液に浸漬し、1~60分間撹拌する、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記仕上げ溶液が20-60重量%の第1のグリコールエーテルと、20-60重量%の第2のグリコールエーテルと、20-60重量%の高引火点の炭化水素と、を有する、請求項18に記載の装置。
【請求項25】
前記仕上げ溶液が、20-60重量%の第1のグリコールエーテルと、20-60重量%の第2のグリコールエーテルと、20-60重量%の第3のグリコールエーテルと、を有する、請求項18に記載の装置。
【請求項26】
前記仕上げ溶液が、1~20重量%の高引火点のエステルをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記仕上げ溶液が20-60重量%の第1のグリコールエーテルと、20-60重量%の高引火点の炭化水素と、20-60重量%の高引火点アルコールと、を有する、請求項18に記載の装置。
【請求項28】
前記仕上げ溶液は、イソプロピルアルコール中に前記オブジェクトを10分間浸漬した後の前記オブジェクトの表面から除去される不要な材料の量と比較して、前記仕上げ溶液に前記オブジェクトを10分間浸漬した後の方が、前記オブジェクトの表面から少なくとも2倍量の不要な材料を除去する、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
前記仕上げ溶液は、イソプロピルアルコール中に前記オブジェクトを10分間浸漬した後の前記オブジェクトの表面から除去される不要な材料の量と比較して、前記仕上げ溶液中に前記オブジェクトを10分間浸漬した後の方が、前記オブジェクトの表面から少なくとも5倍量の不要な材料を除去する、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
部分的に硬化され、洗浄されたオブジェクトの表面から除去される不要な材料を有するオブジェクトであって、
前記部分的に硬化され、洗浄されたオブジェクトは、下記の工程により形成される:
第1のグリコールエーテル、第2のグリコールエーテル、および/または高引火点の炭化水素を有する仕上げ溶液であって、少なくとも93.3℃の引火点を有する仕上げ溶液を提供する工程と、
仕上げ溶液中に、部分硬化オブジェクトの表面上に不要な材料を有する部分硬化オブジェクトを浸漬する工程と、
部分硬化オブジェクトが仕上げ溶液に浸漬されている間の部分硬化オブジェクトを撹拌し、前記不要な材料が部分硬化オブジェクトの表面から除去されて仕上げ溶液内に留まり、前記仕上げ溶液中に部分硬化及び洗浄されたオブジェクトを形成する工程と、
仕上げ溶液から部分硬化オブジェクトを取り出す工程と、を備え、
前記不要な材料は、前記部分的に硬化されたオブジェクトの表面から除去されて前記仕上げ溶液内に留まることで形成される、部分的に硬化され、洗浄されたオブジェクトの形成方法。
【請求項31】
前記部分的に硬化されたオブジェクトは、三次元(3D)印刷オブジェクトであり、前記不要な材料は、前記3D印刷オブジェクトの表面上に未硬化の樹脂を含む、請求項30に記載の部分的に硬化され、洗浄されたオブジェクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、オブジェクトの表面から不要な材料を除去するための組成物に関する。特に、本開示は三次元(3D)印刷のような付加製造技術によって作製されたオブジェクトの表面から、未硬化材料および/または樹脂などの不要な材料を除去するための組成物に関する。本開示はまた、オブジェクトの表面から未硬化材料または樹脂などの不要な材料を除去する際に使用される組成物または溶液の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は2020年3月27日に出願された米国仮特許出願第63/000,670号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
三次元印刷のような3Dプリント工程(たとえばレーザ焼結(SLS)、ステレオリソグラフィ(SLA)、溶融堆積モデリング(FDM)、材料噴射(MJ)、電子ビーム(eビーム)など)は、多くの用途に対し優れた利点を提供する。3Dプリント工程は、従来の製造技術による製造が難しい複雑な形状を有する部品の製造を可能にする。また、3Dプリント工程は、少量の部品の効率的な製造を可能にする。しかしながら、いくつかの3Dプリント工程は、未硬化材料または樹脂などの不要な材料の除去を必要とする部品を製造する。不要な材料は、3Dプリント工程中の複数の印刷部の間に生成され、印刷中の部分を支えるために必要とされることがある。印刷中であった部分の印刷工程完了後、部品が意図する目的で使用される前に、不要な材料を除去しなければならない。
【0004】
不要な材料は、それ自身で複雑な幾何学形状を有し、かつオブジェクトの複数個所を支えるように設けられることがある。そのため、不要な材料は、オブジェクトの広範囲に及ぶことがある。加えて、3Dプリントは、オブジェクトを個別の層ごとに印刷するため、オブジェクトの表面仕上げが粗くなる場合がある。これは、各層のエッジが互いに正確に整列せず、粗く隆起した外表面を作り出してしまうことに因る。この外表面は、見た目が良くなかったり、応力集中または不規則性を有している場合があり、試験または使用前に除去する必要がある。
【0005】
ここで、3Dプリント部品の仕上げ溶液として一般的には有機系溶剤が使用され、引火点は低い。一例として、仕上げ溶液はイソプロパノール(IPA)である。これらの溶液は、作業時に予防措置が必要な場合がある。このような制限を克服できる化学仕上げ溶液が、長年に亘って必要とされている。
【0006】
本開示は、3Dプリント技術によって作製されたオブジェクトの表面などから、不要な材料(例えば、未硬化材料および/または樹脂)を除去するための組成物または仕上げ溶液、および方法を提供する。本開示は、洗浄されたオブジェクトを提供するために仕上げ溶液が使用され、不要な材料がオブジェクトの表面から除去された製品をさらに提供する。
【0007】
一実施形態では、仕上げ溶液が第1のグリコールエーテル、第2のグリコールエーテル、および/または高引火点の炭化水素を含み、仕上げ溶液は少なくとも93.3℃(200°F)の引火点を有する。他の実施形態では、仕上げ溶液はまた、第3のグリコールエーテル、高引火点のアルコール、および/またはグリコールエーテルの酢酸塩を含んでもよい。
【0008】
別の実施形態では、オブジェクト(例えば3Dプリントオブジェクト)の表面から不要な材料を除去する方法が提供される。本実施の形態に係る方法は、第1のグリコールエーテル、第2のグリコールエーテルおよび/または高引火点の炭化水素を含み、仕上げ溶液の引火点が少なくとも93.3℃(200°F)である、仕上げ溶液を提供する。すなわち、仕上げ溶液中にオブジェクトを浸漬する工程と、仕上げ溶液中にオブジェクトが浸漬されている間にオブジェクトを撹拌する工程と、仕上げ溶液からオブジェクトを取り出す工程とを備える。これにより、不要な材料がオブジェクト表面から除去されて仕上げ溶液中に残ることになる。
【0009】
さらなる実施形態では、部分的に硬化され、洗浄されたオブジェクトの表面から除去された不要な樹脂を有するオブジェクトが提供される。部分的に硬化され、洗浄されたオブジェクトは、以下の工程により形成される。すなわち、第1のグリコールエーテル、第2のグリコールエーテル、および/または高引火点の炭化水素を有する仕上げ溶液であって、引火点が少なくとも93.3℃(200°F)である仕上げ溶液を提供する工程と、表面に不要な材料を有している部分的に硬化されたオブジェクトを仕上げ溶液中に浸漬する工程と、仕上げ溶液中に浸漬されている間に部分的に硬化されたオブジェクトを撹拌する工程と、仕上げ溶液から部分的に硬化されたオブジェクトを取り出す工程とを備える。これにより、オブジェクトの表面から除去された不要な材料が仕上げ溶液中に残り、部分的に硬化され、洗浄されたオブジェクトが形成される。
【0010】
上記したサマリは、以下の発明の詳細な説明においてさらに説明される、選択された概念をさらに簡易に説明するために提供される。上記サマリは、特許請求の範囲の主な特徴または本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲を決定する際の助力として使用されることを意図するものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
例示的な実施形態は、以下の図面を参照ながら本明細書に記載される。
図1図1は、仕上げ溶液を使用する例示的な方法を示すフローチャートである。
図2A図2Aは、本実施の形態に係る3Dプリントされたオブジェクトを仕上げ溶液で仕上げる際に使用される装置を示す斜視図である。
図2B図2Bは、図2Aに示す装置の正面視模式断面図である。
図3A図3Aは、樹脂を有するステレオリソグラフィ(SLA)によって作製されたオブジェクト(チェスの駒の一種であるルーク)の写真であり、仕上げ溶液を塗布する前のオブジェクトを示す。
図3B図3Bは、図3Aに示すオブジェクトを仕上げ溶液に浸漬した後の洗浄されたオブジェクトを示す。
図4図4は、溶液中に未硬化オブジェクトが浸漬されている間における、溶液によってオブジェクトから除去された不要な材料(不要な樹脂)の量を示すグラフである(溶液中の樹脂を重量%として示している)。グラフは、本実施の形態における実施例(すなわち、実施例1、2、および5)と、3つの比較例とを対比する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
開示された組成物および方法は、様々な実施形態の代表例であるが、特定の実施形態が図示され(および以下に記載され)ている。つまり、本開示は例示であり、特許請求の範囲を本明細書に記載および図示された特定の実施形態に限定することは意図していないことを理解されたい。
【0013】
上記したように、3D印刷ポリマー、樹脂、プラスチック材料、および部品から、不要な材料を除去するために、イソプロパノール(IPA)などの市販されている仕上げ溶液を用いて作業する際には、いくつかの対処すべき考慮事項がある。例えば、従来の仕上げ溶液のいくつかは、引火点が低く、安全上の予防措置を必要とする。加えてまたは代替的に、従来の仕上げ溶液のいくつかは、高い蒸気圧を有していたり、高価であったり、一定量の不要な材料を除去するわりには多量の材料を必要としたり、不要な材料を除去するのに時間を要するといった課題を有している。あるいは、それらの課題の組合せを有している。したがって、このような制限を克服する化学的仕上げ溶液が、長い間必要とされてきた。
【0014】
本明細書には、改善された組成物または仕上げ溶液、ならびにそれらの製造および使用方法について開示される。
【0015】
本開示は特定の実施形態に関して説明するが、本明細書に記載された利点および特徴のすべてを提供しない実施形態を含む他の実施形態についても、本開示の範囲内であることは勿論である。本開示の範囲から逸脱しない限り、様々な構造的、論理的、および工程の変更を行うことができる。
【0016】
本開示は、3D印刷により製造されたポリマー、樹脂、プラスチック材料、または部品から不要な材料を除去するように構成された、1つ以上の組成物または仕上げ溶液として実施されてもよい。たとえば、除去された樹脂と関連する、3D印刷ステレオリソグラフィ(SLA)オブジェクトおよび/または脆い材料で形成された樹脂などである。一実施例として、SLAなどは、樹脂が印刷工程中にレーザを用いた硬化工程が行われる。このような3D印刷工程では、いくつかの未硬化または不要な材料が、印刷されたオブジェクトの表面上に残ってしまうことがある。たとえば3D印刷などで形成されたオブジェクトの表面の未硬化又は不要な材料の量は、使用される印刷工程のタイプ、または形成されるオブジェクトのタイプや構造に基づいて変化する。一実施例では、未硬化または不要な樹脂が、本開示の実施形態に係る仕上げ溶液を使用することでオブジェクトの表面から除去される。これにより、洗浄されたオブジェクト、あるいは一実施例で少なくとも部分的に硬化されたオブジェクトを提供することができる。
【0017】
オブジェクトの表面から不要な材料(例えば、未硬化樹脂)を除去した後、UVオーブンを使用することでオブジェクトの「後硬化工程」を行うことができる。換言すれば、不要な材料は、オブジェクトが最終硬化のために紫外線(UV)硬化チャンバ内に配置される前に、本実施の形態の仕上げ溶液によって溶解されることとしてもよい。
【0018】
最終硬化前の不要な又は未硬化の材料を除去することは、印刷されたオブジェクトが通常通りに(例えば、予想又は設定された時間内で)硬化することができる、という利点を有している。
【0019】
(定義)
本明細書で使用する用語「オブジェクト」は、所望する最終形態でない3D印刷オブジェクト(例えば、3D印刷SLAオブジェクト)を指すこともできる。
【0020】
本明細書で使用する用語「仕上げ」は、3D印刷により製造されたオブジェクト(例えば、3D印刷オブジェクト)の表面から不要な材料を除去して、仕上げが完了した部品、または仕上げが未完了な(半仕上げ)部品が製造されることを指すことができる。仕上げ工程は、1つまたは複数の工程を含むことができ、未硬化材料の除去、不要な樹脂の除去、不要な金属粉末の除去、不要な印刷材料の除去、および/または不要な支持材料の除去を含むが、これらに限定されない。3D印刷業界において、仕上げ(finishing)は、「クリーニング」と呼ばれることもある。
【0021】
本明細書で使用する用語「不要な材料」は、未硬化材料又は不要な樹脂(例えば、3D印刷オブジェクトの表面上にある)を含むことができる。不要な材料は、製造されるオブジェクトと同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
【0022】
仕上げ溶液に除去される材料は特に限定されないが、たとえば、Accura 25、Accura 48HTR、Acurra 60、Accura ABS、Accura Bluestone、Accura ClearVue、Accura Extreme、Accura SL 5530、e-Stone、Figure 4 ELAST-BLK、Figure 4 ELAST-BLK 10、Figure 4 TOUGH-BLK 20、Figure 4 TOUGH-GRY 10、VisiJet Clear、VisiJet Flex、FORMLABS(登録商標)(たとえばClear, White, Tough, Castable, Flexible, Dental SGなど)、感光性樹脂、炭素(CE, DPR 10, EPU 40, EPU 41, EPX, RPU 70, UMA 90, PR 25)、Somos 9120 、Somos Element、Somos EvoLVe、Somos PerForm、Somos ProtoGen18420、Somos ProtoTerm、Somos Taurus、Somos Watershed、Water Clear Ultra、Somos NeXtなどである。
【0023】
本明細書で使用する用語「撹拌された」は、外力によってもたらされる運動を指すことができる。仕上げ溶液に関して、「撹拌する」の非限定的な例としては、ポンプを用いて仕上げ溶液を移動させること、かき混ぜること、超音波の縦波を使用すること、またはそれらの組合せなどが挙げられる。
【0024】
(組成物または仕上げ溶液)
不要または未硬化材料の後処理除去のために改良された組成物または仕上げ溶液は、第1のグリコールエーテルを含むことができる。特定の例において、第1のグリコールエーテルは第2のグリコールエーテルおよび第3のグリコールエーテルと溶液中で組み合わされてもよく、この際、第1、第2、および第3のグリコールエーテル化合物は互いに異なっている。
【0025】
いくつかの例では、仕上げ溶液は高引火点のエステルをさらに含むこととしてもよい。本明細書で使用される場合、高引火点のエステルは、少なくとも93.3℃(200°F)の引火点を有するエステル化合物を指すことができる。
【0026】
ある実施例において、第1のグリコールエーテルは、異なる第2のグリコールエーテルおよび高引火点のエステルと、溶液中で混合される。ある実施例では、そのような仕上げ溶液が(a)20~60重量%の第1のグリコールエーテル、(b)20~60重量%の第2のグリコールエーテル、および(c)1~20重量%の高引火点のエステルを含むことができる。その結果、第1のグリコールエーテル、第2のグリコールエーテル、および高引火点のエステルの総重量パーセントは、合計で100%になる。すなわち、この構成の総重量パーセントでは、仕上げ溶液中に存在する任意の追加の化合物または不純物を無視することができる。
【0027】
ある実施例における仕上げ溶液は、(a)20~60重量%の第1のグリコールエーテル、(b)20~60重量%の第2のグリコールエーテル、(c)20~60重量%の第3のグリコールエーテル、および(d)0~20重量%の高引火点のエステルを含むことができる。その結果、第1のグリコールエーテル、第2のグリコールエーテル、第3のグリコールエーテル、および(任意の)高引火点のエステルの総重量は、100%になる。すなわち、これら構成の総重量パーセントでは、仕上げ溶液中に存在する任意の追加の化合物または不純物を無視することができる。
【0028】
他の実施例では、第1のグリコールエーテルが、第2の異なるグリコールエーテル、高引火点の炭化水素またはアルコール、および(任意の)高引火点のエステルと溶液中に混合されてもよい。本明細書で使用される場合、高引火点の炭化水素またはアルコールは、少なくとも93.3℃(200°F)の引火点を有する炭化水素またはアルコールを指すことができる。
【0029】
一実施例では、そのような仕上げ溶液が(a)20~60重量%の第1のグリコールエーテル、(b)20~60重量%の高引火点の炭化水素またはアルコール、および(c)20~60重量%の高引火点のエステルを含むことができる。その結果、第1のグリコールエーテル、高引火点の炭化水素またはアルコール、および高引火点のエステルの総重量は、合計で100%になる。すなわち、これら構成の総重量パーセントは、仕上げ溶液中に存在する任意の追加の化合物または不純物を無視することができる。
【0030】
さらに別の実施例では、第1のグリコールエーテルは、高引火点の炭化水素と、高引火点のアルコールまたはグリコールエステルのアセテートと、溶液中で混合することができる。本明細書で使用される際、プロピレングリコールエステルの高引火点のアセテートは、少なくとも93.3℃(200°F)の引火点を有するプロピレングリコールエステルのアセテートを指すことができる。
【0031】
ある実施例では、そのような仕上げ溶液が、(a)第1のグリコールエーテルの20~60重量%、(b)高引火点の炭化水素の20~60重量%、および(c)第1のグリコールエーテル、高引火点の炭化水素、およびグリコールエステルの高引火点のアルコールまたは酢酸との合計重量が100%になるように、グリコールエステルの高引火点のアルコールまたは酢酸の20~60重量%を含むことができる。すなわち、これら構成の総重量パーセントは、仕上げ溶液中に存在する任意の追加の化合物または不純物を無視することができる。
【0032】
グリコールエーテル(すなわち、第1、第2、第3のグリコールエーテル)の例としては、以下に示すグリコールエーテルやグリコールエーテルアセテートを挙げることができるが、これらに限定されない。2-ブトキシエタノール(EB)、ジプロピルグリコールモノメチルエーテル(DPM)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(DPMA)、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(別名:2-(ヘキシルオキシ)エタノール、2-ヘキソキシエタノール、HEX)、メチルカルビトール(別名:2-(2-メトキシエトキシ)エタノール、MC)、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル(DPnP)、エチルカルビトール(別名:2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、EC)、ブチルカルビトール(別名:2-(2-プロポキシエトキシ)エタノール、PC)、ジプロピレングリコールブチルエーテル(DPnB)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(別名:1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン)、2-(2-エトキシエトキシ)酢酸エチル(ECA)、 2-(2-ブトキシエトキシ)酢酸エチル(BCA)、ジブチルカルビトール(別名:ジエチレングリコールジブチルエーテル、DC)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(TM)、トリプロピレングリコールメチルエーテル(TPM)、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル(TPnB)、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(TEGM)、DPG(ジプロピレングリコール)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TTGD)、および/またはトリエチレングリコールモノブチルエーテル(別名:ブトキシトリグリコール)。
【0033】
一実施例において、高引火点の炭化水素またはアルコールは、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、および炭素数C20~C24、C24~C30、またはC20~C30の範囲内の高級オレフィン混合物などの、高級線状アルファオレフィンまたは内部オレフィンを含むことができる。付加的または代替的に、高引火点の炭化水素またはアルコール化合物は、ヘキサデカン、2-フェノキシエタノール、および/またはベンジルアルコールを含むことができる。
【0034】
一実施例において、高引火点のエステルは、安息香酸エチル(EBZ)、安息香酸プロピル(PBZ)、アジピン酸ジメチル(DMA)、プロパンジオン酸ジメチル、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、および/または安息香酸ブチルを含むことができる。一実施例において、高引火点のエステルは、高引火点のメチルエステルである。
【0035】
特定の例において、グリコールエステルの高引火点の酢酸塩は、例えばジプロピレングリコールメチルエーテル酢酸塩、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、2-(2-エトキシエトキシ)酢酸エチル(別名:エトキシカルビトールアセテート)、および/または2-(2-ブトキシエトキシ)酢酸エチル(別名:ブチルカルビトールアセテート)などを含むことができる。
【0036】
(組成物/仕上げ溶液の特性)
一実施例において、本明細書に記載される仕上げ溶液は、少なくとも93.3℃(200°F)、98.9℃(210°F)、または104.4℃(220°F)の引火点を有している。また、いくつかの実施形態において、200℃(392°F)、150℃(302°F)、または120℃(248°F)以下の引火点を有している。
【0037】
一実施例において、仕上げ溶液は、引火点が93.3°C(200°F)~200°C(392°F)、93.3°C(200°F)~150°C(302°F)、93.3°C(200°F)~120°C(248°F)、98.9°C(210°F)~200°C(392°F)、98.9°C(210°F)~150°C(302°F)、98.9℃(210°F)~120°C(248°F)、104.4°C(220°F)~200°C(392°F)、220°F~150°C(302°F)、または104.4°C(220°F)~120°C(248°F)の範囲内となるように指定される。これは、イソプロパノールアルコール(IPA)などの市販の組成物と比較して、不要な材料を除去するために仕上げ溶液を使用する際に、設備または安全プロトコルの量を減らすことを可能にする点において有利である。加えて、そのような引火点の仕上げ溶液であれば、本明細書に記載されるような噴霧形態で使用するように構成されることもできる。
【0038】
一実施例において、仕上げ溶液はIPAなどの特定の商業的仕上げ溶液と比較して製品寿命が改善されている。ここで、不要な樹脂または材料の多くは、本明細書に記載の一定量の仕上げ溶液が飽和する前に除去される(同量の商業的仕上げ溶液であるIPAなどを用いた場合と比較)。また、仕上げ溶液は、再使用のために必要なリサイクルを行うことができる。
【0039】
例えば、本明細書に記載の仕上げ溶液は、従来から市販される仕上げ溶液であるIPAなどと比較して、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍の不要な樹脂または材料を溶解することができる(例えば、時間、温度、および/または撹拌などの各種条件は、従来と類似の条件下で行うこととする)。
【0040】
一実施例における仕上げ溶液は、従来のIPAと比較して、不要な材料または樹脂を、より素早く除去することができる。これにより、より多くの樹脂または不要な材料を除去することができる(除去量は、たとえば体積%または重量%で測定される)。また、本明細書中に記載された仕上げ溶液は、一定時間内における従来の商業的仕上げ溶液と比較した場合に、より多くの樹脂又は不要な材料を除去することができる。あるいは、より短時間で一定量(体積%または重量%)の不要な材料を除去することができるとして記載してもよい。
【0041】
一実施例では、仕上げ溶液がIPAなどの市販の溶液と比較して、改善された臭い(または無臭)とすることができる。
【0042】
一実施例では、仕上げ溶液は非細胞毒性である。
【0043】
一実施例では、仕上げ溶液がIPAなどの市販の溶液と比較して、使用コストが低い。
【0044】
(使用方法)
本実施の形態にかかる仕上げ溶液の使用方法では、未完成のオブジェクト(例えば、3D印刷オブジェクト)は、不要な材料を除去することで完成された部品を提供するための工程に供される。
【0045】
一実施形態にかかる使用方法では、オブジェクトは仕上げ溶液が充填された(例えば少なくとも部分的に充填された)タンク内に配置される。換言すれば、オブジェクトは仕上げ溶液中に浸漬される。
【0046】
オブジェクトが仕上げ溶液中に存在する間(例えば仕上げ溶液中に浸漬されている間)、オブジェクトは不要な樹脂を除去するために、撹拌、摩耗、および/または加熱などの機械的エネルギーに晒されることがある。機械的エネルギーである「撹拌」は、仕上げ溶液を(例えばポンプを介して)移動させることによって、および/または超音波を使用することによって、引き起こされる。
【0047】
また、この工程の他の形態としては、オブジェクトに仕上げ溶液を噴霧することもできる。この工程では、オブジェクトはチャンバ内に配置され、仕上げ溶液は、1つ以上のノズルを介して、液体を押しだす力を加えるポンプを使用して、たとえば噴霧される。仕上げ溶液はオブジェクトに塗布され、オブジェクトは機械的に撹拌される。浸漬および噴霧工程では、液体が不要な材料を溶解することで、完成または略完成したオブジェクトを作り出すために、化学溶媒を含むことができる。
【0048】
仕上げ溶液は、熱源からの熱を使用して、所望の温度に維持されることができる。このような条件下において、不要な材料は、熱的に、化学的に、機械的に、またはこれらの方法のうちの2つ以上の組合せを介して、除去されることができる。
【0049】
図1は、一実施例における仕上げ溶液の使用方法を示すフローチャートである。本実施の形態の使用方法の各ステップは、3D印刷されたオブジェクト、作成プレート、または作成トレイから、不要な材料を除去するのに十分である。図1に示す方法を参照して、ステップ1では、オブジェクト全体又はその一部に、仕上げ溶液を塗布(例えばオブジェクトを浸漬)する。
【0050】
仕上げ溶液の塗布は、仕上げたいオブジェクトの全部または一部を仕上げ溶液に浸漬することによって達成することができる。本明細書で使用する「浸漬された」という用語は、仕上げ溶液で仕上げたいオブジェクトの全部または一部を浸すのに十分な深さで浸漬される状況を指す。
【0051】
仕上げ溶液は、管路/容器/タンク内に貯蔵されることができる。管路/容器/タンクの材料としては、ステンレス鋼、ガラス、高密度ポリエチレン、テフロン(登録商標)、カルレッツ(登録商標)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
図1のステップ2において、仕上げ溶液には、少なくともオブジェクトの一部分が、浸漬および/または撹拌される。撹拌および/または振動する方法については特に限定されないが、たとえば超音波処理(例えば、超音波の縦波を仕上げ溶液に送りこむ超音波トランスデューサを介して)、ポンプ(例えば、流体の動きをもたらすために使用する)、撹拌、またはそれらの組合せ、などの方法によって引き起こされる。
【0053】
超音波処理は、1750W以下の電力であればよく、1750W以下かつ0.1W単位で定められた電力で、実行することができる。超音波処理時の電力は、一時的に変化してもよい。この際の周波数は、20~100kHzの周波数で実行される。また、周波数は、100kHz以下かつ0.1kHz単位で定められた周波数である。好ましくは、周波数は40kHzである。
【0054】
仕上げ溶液を超音波処理することで、仕上げ溶液が別個の相に分離しないように、および/またはオブジェクトに力が加えられるように、または仕上げ溶液がかき混ぜられるように、仕上げ溶液を撹拌することができる。オブジェクトに力を加えることで、不要な材料を除去及び/又は溶解し易くすることができる。
【0055】
本実施の形態の仕上げ溶液は、0~60分間撹拌されることができる。撹拌時間は、オブジェクトが浸漬される前および/または浸漬されている間の時間であり、1秒単位で定めることができ、例えば、1~60分、10~30分、1~15分、15~30分、30~60分などである。
【0056】
超音波は、溶液撹拌のために選択された第1の周波数を提供することができる。第1の周波数によって(仕上げ溶液が)撹拌されると、超音波の反射波の振幅がセンサに検出され、反射波の振幅が測定される。測定された振幅に基づいて、第2の周波数の超音波が、例えばデータベースに基づいて選択される。次いで、選択された第2の周波数を有する超音波が、オブジェクトに向けられる。このようにして、第2の周波数の超音波は、仕上げ溶液が最適に撹拌されるように選択される。
【0057】
本工程は、検出された振幅が不要な材料の共振周波数に達したことを示すまで繰り返すことができる(例えば、センサフィードバックを介して示す)。不要な材料が除去されるにつれて、残りの材料の共振周波数は変化する可能性がある。したがって、超音波撹拌のための周波数を選択する工程は、時々繰り返される必要がある。
【0058】
所望の実行時間(run time)に達したとき、オブジェクトはタンクから取り除かれ、追加で作業を実行する必要があるかどうかを決定するために検査されることがある。オブジェクトが「粘着性」であるか粗すぎる場合、追加の作業時間(run time)が必要となる。
【0059】
図2Aおよび2Bを参照して、ポンプによる撹拌は、オブジェクトを収容するタンク28内に仕上げ溶液をポンピング(pumping)することを含んでいてもよい。例えば、仕上げ溶液は、1~20ガロン/分の速度でタンク28内にポンプを介して送り込まれることができ、0.1ガロン/分単位で定めることができる。仕上げ溶液をタンク28内にポンピングにより圧送すると、タンク内に送り込まれた仕上げ溶液と等量の仕上げ溶液がタンク28から流出し、堰20を超えて投入タンク18内に流入する。投入タンク18内に流入した溶液は、フィルタを介してドレンに流出し、ポンプの入口に戻ってくる。
【0060】
仕上げ溶液がタンク28内に圧送されると、新たにタンク内に送り込まれた溶液は、既にタンク内にあった仕上げ溶液と混合される。仕上げ溶液は、オブジェクトが浸漬される前、および/または浸漬されている間の0~60分間撹拌される。撹拌時間は、1秒単位で定めることができ、たとえば1~60分、10~30分、1~15分、15~30分、30~60分などである。オブジェクトが浸漬される前に撹拌することで、仕上げ溶液は混合しやすくなる。
【0061】
オブジェクトが浸漬された後、撹拌することで、不要な材料を除去し易くする。上記したような撹拌(例えば、超音波発生器70によって誘発されるものなど)を引き起こすのに好適な任意の方法で、流体移動は引き起こされる。
【0062】
仕上げ溶液の攪拌は、羽根車、機械的攪拌機、攪拌棒等を用いて行うことができる。仕上げ溶液は、オブジェクトが浸漬される前、および/または浸漬されている間の0~60分間撹拌される。撹拌時間は、1秒単位で定めることができ、たとえば1~60分、10~30分、1~15分、15~30分、30~60分などである。
【0063】
オブジェクトは、仕上げ溶液中に浸漬され、浸漬した溶液の少なくとも一部分が撹拌されていてもよい。オブジェクトは、不要な樹脂を除去するのに十分な時間だけ浸漬される。オブジェクトが浸漬されている間、仕上げ溶液は、浸漬されている時間の全て、あるいは一部の時間だけ撹拌されることができる。浸漬時間は、0~60分の範囲内であれば1秒単位で設定することができ、たとえば1~60分、10~30分、1~15分、15~30分、30~60分などである。
【0064】
オブジェクトから不要な材料を除去するのに必要な時間は、オブジェクトの形状に依存する。たとえば、より複雑な形状であれば、追加の浸漬時間を必要とする場合がある。多くの場合、オブジェクトは1~30分に亘って浸漬されることにより、適切に仕上げられる(浸漬時間は、1秒単位で定めることができる)。仕上げ溶液は、浸漬されている間の全時間あるいは一部の時間に撹拌されることとしてもよい。
【0065】
撹拌、ポンプ、および/または他の方法によって引き起こされる仕上げ溶液の撹拌は、仕上げ溶液と仕上げ工程中のオブジェクトとの間に摩擦を生じさせる。これにより、不要な材料の除去をしやすくすることができる。不要な材料の除去は、タンク内に配置された超音波トランスデューサによって強化されてもよい。この結果、仕上げ溶液が振動しながらオブジェクトに付与されることになる。
【0066】
一実施例において、超音波トランスデューサはタンクの側面に配置され、タンク内の仕上げ溶液の回転流に対して接線方向に配向されてもよい。超音波トランスデューサをこのように配置することで、仕上げ溶液および浸漬されたオブジェクトの効率的な撹拌を達成することができる。超音波トランスデューサによって引き起こされる超音波は、不要な材料の表面にキャビテーションを引き起こし、除去しやすくすることができる。すなわち、キャビテーションによって引き起こされる機械的撹拌は、不要な材料を除去する。このように、キャビテーションは、不要な材料の除去効率を高める点において有利である。
【0067】
仕上げ溶液は、不要な樹脂の可溶化率を高めるために、所望の温度まで加温されるか、所望の温度に維持されることとしてもよい。例えば、仕上げ溶液は、オブジェクトが浸漬される前及び/又は浸漬されている間、55°C(131°F)までの温度に維持されることができる。仕上げ溶液の温度は、20°C(68°F)~55°C(131°F)の範囲内で、0.1°C(0.1°F)単位で定めることができる。また、たとえば55°C(131°F)を超える高温の場合、適切に取扱うために注意する必要がある。
【0068】
仕上げ溶液は、仕上げ操作が終了した後に回収することができる。仕上げ溶液を回収する工程は、オブジェクトに付着した仕上げ溶液含有液媒を、タンクに滴下するようにして回収することとしてもよい。オブジェクトは、水または他の適切な溶媒ですすがれてもよい。そのようなすすぎ工程は、オブジェクト表面に残る仕上げ溶液を除去するために必要である。
【0069】
仕上げ溶液塗布後のオブジェクトは、粗く、粘着性であってもよい。粘着性は、オブジェクト表面に残る未硬化樹脂に由来する。粗さおよび/または粘着性についてのそのような決定は、個人/操作者の好みに基づいて決定される。また、このような決定は、個人/操作者が関与して行うことができる。操作者が、オブジェクトがあまりにも粗いか、またはあまりにも粘着性であると判断した場合、本明細書に記載されるような方法を、所望の粗さおよび/または粘着性を獲得するまで繰り返すことができる。オブジェクトが所望の粘着性および粗さを有している場合(あるいは粘着性を有していない場合)、操作者は、オブジェクトに追加の仕上げを必要としないと判定することができる。
【0070】
図1を再度参照して、工程3において、オブジェクトは仕上げ溶液から除去されて、(例えば部分的に硬化された)洗浄されたオブジェクトを提供することができる。任意の工程4において、洗浄されたオブジェクトは、追加的にすすぎ又は乾燥されてもよい。
【0071】
他の実施形態における方法では、オブジェクト(またはオブジェクトの一部)に仕上げ溶液を噴霧し、次いで、仕上げ溶液をオブジェクトから除去することができる。
【0072】
図2Aは、本明細書に記載の一実施形態にかかる仕上げ溶液の使用方法のために構成された、3Dプリントされたオブジェクトを仕上げるための装置の例を示す。図2Bは、図2Aに示す装置の正面視断面図である。
【0073】
図2Aおよび2Bは、部分仕上げ機100、制御パネル12、カバードア10、フロントパネル8、仕上げ溶液(本明細書に記載の)を保持するように構成されたタンク28、堰20、コンピュータ13、入力タンク18、液面センサ19、壁36、超音波発生器70、タンクマニホールド14、および超音波トランスデューサ22を示す。
【0074】
部品仕上げ機100は、3D印刷オブジェクトに以下の工程を施すことで仕上げる。すなわち、(a)機械100のタンク28に仕上げ溶液を加える工程(たとえば、機械100は3D印刷オブジェクトを仕上げるために用いられる)と、(b)タンク28内に配置されたヒータを使用して、仕上げ溶液を所望の温度に加温する工程と、(c)ポンプを使用して、タンク内の仕上げ溶液を動かす工程と、(d)タンクに対して配置された超音波トランスデューサ22を使用して、タンク内に超音波縦波および/またはキャビテーションを提供して、仕上げ溶液を撹拌する工程と、(e)オブジェクトから不要な材料を除去するために、オブジェクトを所望の時間仕上げ溶液に接触させる工程と、を行うことでオブジェクトを仕上げる。
【0075】
仕上げ溶液中への浸漬は、不要な樹脂の溶解を促進するとともに、不要な材料を実質的に弱める。流体の流れおよび超音波撹拌は、弱められた不要な材料を緩めるための機械的な力を提供する一方で、不要な材料(例えば、未硬化の材料および/または樹脂)の溶解も容易にする。
【0076】
一実施例では、仕上げ溶液を使用する方法が、ポストプロセステクノロジーズ社(PostProcess Technologies、Inc.)によって製造された機械を使用することによって達成される。そのような機械の実施例としては、DEMI(図1はDEMIの簡略図を示す)、CENTI、およびFORTIが含まれる。3D印刷オブジェクトから不要な材料を除去するために仕上げ溶液を使用する機械の実施形態は、2016年6月1日に出願された米国特許出願公開第2017/0348910号に開示されており、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0077】
ポンプなどで追加の撹拌を行うことで、不要な材料を除去するのに要する時間を削減できる。このような機械を使用することは、下記の方法を含むことができる。(a)蓋(あるいは図2A、2Bに示すカバードア10のような、タンク28を覆うのに適切な他の機構)を持ち上げて、仕上げ溶液をタンク28に直接注ぐことによって、機械100の上部から仕上げ溶液を加えること。(b)仕上げ溶液を十分に混合する(例えば、ポンプおよび/または超音波攪拌によって混合する)ことで、仕上げ溶液の分離を防ぐこと。(c)タンク内に配置された水中ヒーターを介して仕上げ溶液を加温することで、仕上げ溶液を所望の温度にまで加温すること。(d)仕上げ溶液がタンク内を動くように、タンク下方に配置されたポンプを使用して仕上げ溶液をポンピングし、溶液および/またはオブジェクトを攪拌すること。
【0078】
機械は、ポンプおよびリザーバを有する自動充填機構を使用して、仕上げ溶液で充填される。液体レベルセンサ19は、タンク28または入力タンク18内に配置されてもよい。液体レベルセンサからの信号が、液体レベルが低すぎることを示す場合、ポンプは、流体をリザーバからタンク28に移動させる。仕上げ溶液は、リザーバに添加する前に、予め混合されることとしてもよい。さらに、仕上げ溶液は成分の分離を防止するために、仕上げ溶液がタンク28に添加された後に混合される必要がある。
【0079】
不要な材料を除去する方法は、例えば図2Aに示される機械のタンク内に3D印刷オブジェクトを配置することを含む。所望の実行時間が決定および/または選択されると、本方法は、仕上げ溶液がポンプによってタンク内を循環するように、ポンプを稼働させることができる。本方法は、(a)仕上げ溶液中にオブジェクトを配置すること、(b)タンク28を通過するように仕上げ溶液を循環させて、オブジェクトを仕上げ溶液中で回転させること、および(c)仕上げ溶液中のオブジェクトに超音波エネルギー波を向けさせて撹拌および/またはキャビテーションを提供させること、を含む。
【0080】
他の実施例では、オブジェクト上に仕上げ溶液が噴霧されることによって、オブジェクトに塗布されてもよい。噴霧は、オブジェクトに噴霧することができる機械を用いることによって、または噴霧ボトル(例えば、噴霧ノズルを有するボトル)を使用することによって、達成される。3D印刷オブジェクトから不要な材料を除去するために仕上げ溶液を使用する機械の実施形態については、2017年12月17日に出願された米国特許出願公開第2019/0202126号に開示されている。また、その開示全体が、参照により本明細書に組み込まれている。
【0081】
別の実施例では、オブジェクトの仕上げ工程は、仕上げ溶液(および仕上げ工程中のオブジェクト)を保持するために、ミキサー(例えば、撹拌プレート、磁気撹拌棒、または機械的撹拌機)およびタンク(例えば、フラスコまたはビーカー)を使用して、ベンチトップ上で行われる。オブジェクトは、仕上げ溶液を保持するタンク内に配置されてもよい。オブジェクトがその仕上げ溶液中にある間、ミキサーは仕上げ溶液に力を加える。その結果、仕上げ溶液はタンク内でかき混ぜられ、またオブジェクトに力を加える。これにより、不要な材料がオブジェクトから離れる。
【0082】
図3A、3Bは、仕上げ溶液が、部分的に硬化・洗浄されたオブジェクトを提供するために、3D印刷オブジェクトから不要な材料がどのように除去されるのかを示す図である。具体的には、図は樹脂を用いたステレオリソグラフィ(SLA)によって作製されたオブジェクト(チェスの駒の一種であるルーク)の写真を示す。図3Aは、仕上げ溶液を塗布する前のオブジェクトを示す。図3Bは、仕上げ溶液中に浸漬した後のオブジェクトを示す。浸漬後のオブジェクトは、不要な材料(例えば、未硬化樹脂)が除去され、部分的に硬化され、洗浄された3D印刷オブジェクトである。
【0083】
(実施例)
本明細書には、様々な仕上げ溶液の例が開示されている。さらに、現在市販されている仕上げ溶液を表す3つの比較例も、参照および比較のために本明細書に開示している。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】

【0093】
図4は、本明細書内に開示される仕上げ溶液(すなわち、実施例1、2、および5)と、商業的形態の比較例(すなわち、比較例1、2、および3)とを比較するグラフを示す。具体的には、図4は、各仕上げ溶液における、仕上げ工程の経過時間と、仕上げ溶液によって除去された樹脂量(溶液中の樹脂の重量%)との関係を示すグラフである。
【0094】
図4に示されるように、実施例1、2、5の実施形態は全て、比較例1,2,3の市販の形態よりも、同じまたはより短時間(すなわち、10分間で溶液中に>30%の樹脂を洗浄する)で、3D印刷オブジェクトの表面からより多くの不要な樹脂を除去することができた。図4に示すように、実施例1、2、5の実施形態では、仕上げ溶液/洗剤中で10分間オブジェクトを浸漬・撹拌した後、仕上げ溶液中に約30%~40%の量の不要な樹脂が含まれる溶液を有することができた。これに対し比較例では、仕上げ溶液中に存在する不要な樹脂は5~15%のみであり、同時間比でより少ない材料しか除去できなかった。したがって、同じ操作条件で10分間浸漬・撹拌された後、本明細書に開示される実施形態では、比較例1~3における市販の仕上げ溶液と比較して、少なくとも2倍、3倍、4倍、または5倍の不要な樹脂または材料を溶解することができた。
【0095】
さらに、実施例1、2、および5に示す実施形態はすべて、市販の比較例と比べて、溶液が飽和する前により多くの樹脂を除去することができる。
【0096】
本明細書に開示される1つまたは複数の実施形態は、「発明」という用語によって、便宜的に個々および/またはまとめて言及される。また、本明細書の範囲は、任意の特定の発明または発明概念によって自発的に限定されることを意図するものではない。さらに、本明細書では特定の実施形態を例示し説明してきたが、同じまたは同様の目的を達成するように設計された任意の後続の構成を、示された特定の実施形態に置き換えることができることを理解されたい。本開示は、様々な実施形態の任意のおよびすべての後続の適応または変形を網羅することが意図される。上記の実施形態や、本明細書に具体的に記載されていない他の実施形態を組み合わせることが可能であることは、明細書の内容を検討する当業者にとって明らかである。
【0097】
本明細書で使用される、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに別段の指示をしない限り、複数形の指示対象も含む。
【0098】
本明細書で使用される、「例えば」「そのような」または「含む」という用語は、一般的な主題について、さらに明確にする例を導入することを意味する。特に明記しない限り、そのような例は、本明細書に例示的に開示される実施形態を理解するための補助としてのみ提供され、いかなる形態に限定されることを意図するものではない。これらの語句は、開示された実施形態に対するあらゆる種類の好みを示すものではない。
【0099】
本明細書の要約は、37 C.F.R§1.72(b)に準拠するために提供され、特許請求の範囲やその意味について解釈または限定するために使用されないと理解されたうえで提示される。さらに、前述した発明の詳細な説明では、本開示を簡素化する目的で、様々な特徴をまとめてグループ化したり、単一の実施形態として説明することができる。本開示は、請求項に係る発明が、各請求項に明示的に列挙されるよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、発明の主題は、開示された実施形態のいずれかの特徴の全てよりも少ないものを対象とすることができる。したがって、以下の特許請求の範囲は詳細な説明に組み込まれ、各請求項は、別々に請求される主題を定義するものとして独立している。
【0100】
前述の詳細な説明は、限定的ではなく例示的であると見做されることが意図される。また、以下の特許請求の範囲は、同等の構成を含み、本開示の範囲を定義することが意図される、と理解されたい。特許請求の範囲は、その旨が記載されない限り、記載された順序または要素に限定されると解釈されるべきではない。したがって、すべての実施形態は、以下の特許請求の範囲およびその均等物の範囲および趣旨に含まれるすべての実施形態は、開示をもって請求される。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
【国際調査報告】