(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】真核細胞への試薬のトランスフェクション及び/又は細胞内送達効率及び/又はタンパク質発現の向上のための装置並びにその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/87 20060101AFI20230428BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230428BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230428BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230428BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230428BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
C12N15/87 Z
C12M1/00 A
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558184
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(85)【翻訳文提出日】2022-11-14
(86)【国際出願番号】 GB2021050736
(87)【国際公開番号】W WO2021191623
(87)【国際公開日】2021-09-30
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522376380
【氏名又は名称】セントアンドルーズ ファーマシューティカル テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー、ウィリアム ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】モンタリ、アンナ
(72)【発明者】
【氏名】ボードン、ジーン-クリストフ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA24
4B029BB20
4B065AA91X
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA03
4B065CA44
4B065CA46
(57)【要約】
1つ以上の真核細胞におけるトランスフェクション効率及び/又は細胞内送達プロセスを向上させるための方法及び装置が提供される。本方法は、トランスフェクション及び/又は細胞内送達に好適な少なくとも1つのネイキッド試薬を提供するステップを含む。混合物又はトランスフェクション混合物を形成するために、少なくとも1つのネイキッド試薬を1つ以上の真核細胞に導入するステップ及び混合物又はトランスフェクション混合物がトランスフェクションプロセス又は細胞内送達プロセスを受けることを許容して1つ以上のトランスフェクトされた又は処理された真核細胞を形成するステップ。本方法はまた、所与の周波数のいずれか又はいずれかの組み合わせで、所与のパルス率で、又は所与の出力で供給されたパルス化電磁信号を、混合物又はトランスフェクション混合物を生み出す前にステップa)で少なくとも1つのネイキッド試薬に、ステップb)において混合物又はトランスフェクション混合物に、ステップc)において混合物又はトランスフェクション混合物に、及び/又はステップc)の後にトランスフェクトされた又は処理された細胞の混合物に指向させるステップも含む。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1つ以上の真核細胞におけるトランスフェクション及び/又は細胞内送達に好適な少なくとも1つのネイキッド試薬を提供するステップと、
b)混合物又はトランスフェクション混合物を形成するために、前記少なくとも1つのネイキッド試薬を1つ以上の真核細胞に導入するステップと、
c)1つ以上のトランスフェクトされた又は処理された真核細胞を形成するために、前記混合物又はトランスフェクション混合物がトランスフェクションプロセス又は細胞内送達プロセスを受けることを許容するステップと
を含む、真核細胞におけるトランスフェクション効率及び/又は細胞内送達を向上させる方法であって、
前記方法は、所与の周波数のいずれか又はいずれかの組み合わせで、所与のパルス率で、又は所与の出力で供給されたパルス化電磁信号を、前記混合物又はトランスフェクション混合物を生み出す前に前記ステップa)で前記少なくとも1つのネイキッド試薬に、前記ステップb)において前記混合物又はトランスフェクション混合物に、前記ステップc)において前記混合物又はトランスフェクション混合物に、及び/又は前記ステップc)の後に前記トランスフェクトされた又は処理された真核細胞に指向させるステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのネイキッド試薬は、トランスフェクション及び/又は細胞内送達に好適ないずれかの試薬、及び/又は核酸、医薬品用及び/又は治療用試薬又は化合物、治療的及び/又は医薬品的利益のある試薬、5キロダルトン未満の小分子又は小分子材料、5キロダルトン以上の大型分子又は大型分子材料、1つ以上のタンパク質、ワクチン、1つ以上の抗体、又は有機剤のいずれか又はいずれかの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記医薬品用試薬は、アントラサイクリン系薬剤又はドキソルビシンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記真核細胞は、溶液中に懸濁されている、及び/又は基質に付着している、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記真核細胞は不死細胞であるか、又は前記細胞は、ヒト及び/又は動物対象の組織から得られたものである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記真核細胞は、ヒト及び/又は動物対象から得られた細胞であり、T細胞、リンパ球、顆粒球、及び/又はマクロファージを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの試薬を1つ以上の担体試薬及び/又は可溶化試薬と混合するステップを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのネイキッド試薬は核酸であるか、又は核酸を含み、前記核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、DNAとRNAとの組み合わせ、mRNA、tRNA、siRNA、又はmiRNAである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのネイキッド試薬は、1つ以上の発現ベクターであるか、又は1つ以上の発現ベクターを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのネイキッド試薬が核酸であるか、又は該核酸を含むとき、前記トランスフェクションプロセスの結果、一過的発現が得られるか、又は前記少なくとも1つのネイキッド試薬が前記核酸であるか、又は該核酸を含む方法であって、該方法は、前記トランスフェクションプロセス後に前記真核細胞の1つ以上を分離するステップと、前記少なくとも1つのネイキッド試薬によってコードされる1つ以上のペプチドが前記1つ以上の分離した真核細胞又はその子孫において発現するレベルを試験するステップと、及び前記発現するレベルに基づき前記1つ以上の分離した真核細胞又はその子孫を選択するステップとを更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
パルス化電磁信号を指向させる前記ステップは、所与の期間にわたって行われる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記パルス化電磁信号が前記少なくとも1つのネイキッド試薬に指向されるとき、前記所与の期間は約15分であり、及び/又は前記パルス化電磁信号がトランスフェクション及び/又は細胞内送達の最中又はその後に前記混合物又はトランスフェクション混合物に指向されるとき、約1~4時間である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記パルス化電磁信号は、1つ以上の電子機器によって生成され、かつ、前記1つ以上の電子機器は、使用時に前記パルス化電磁信号を生成し及び/又はそこから伝送する、伝送手段又は1個以上の電子伝送チップを備える、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
各電子機器は単一の伝送手段又は電子伝送チップを備えるか、又は各電子機器は、複数の伝送手段又は電子伝送チップを備え、任意選択で前記電子機器は、複数の伝送手段又は電子伝送チップを備え、前記伝送手段又は電子伝送チップの各々は、互いにある空間距離を離して配置され、離れた前記距離は、前記パルス化電磁信号の波長のほぼ半分に等しく;又は前記電子機器は、前記機器の筐体の表面、又は使用時に前記電子機器の上に配置されることになる1つ以上の物品の表面の105~115cm
2当たり少なくとも1個の伝送手段又は電子伝送チップを備えるか;又は前記電子機器は6個の伝送手段又は電子伝送チップを備え、及び前記チップは、使用時にプレートが前記電子機器に、その上に接して、又はそれを基準にして位置するとき、1個の伝送手段又は電子伝送チップが24ウェルプレートの4つのウェルに指向するように前記機器に互いにある空間距離を離して配置される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記伝送手段と使用時に前記パルス化電磁信号を受信する1つ以上の物品との間の距離は、約25cm以下、約20cm以下、約15cm以下、約10cm以下、約5cm以下、又は約1cmに等しい若しくはほぼ等しいか又はそれ未満である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記パルス化電磁信号の前記所与の周波数は約2.45GHz±50MHzであり、約2.2~2.6GHzの間であり、約2.4GHz±50MHzであり、又は約2.45GHz±50MHzであり、
及び/又は
前記パルス化電磁信号の前記所与のパルス率は約50Hz以下、約25Hz以下、約15Hz以下であり、及び/又は2%未満のデューティサイクルを有し、
及び/又は
前記パルス化電磁信号の各パルスは約1ms~20msの間にわたって持続し、又は約1msであり、任意選択で前記パルス化電磁信号の各パルス間の休止期間は約66ms以下持続し、
及び/又は
各伝送手段又は電子伝送チップによって供給された前記所与の出力は約+2dBm~+4dBm、約1mW、約2mW又は約2.5119mWであり、
及び/又は
前記パルス化電磁信号は、0.45~0.55の間のガウス型周波数偏移変調(GFSK)を用いて伝送される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記パルス化電磁信号の前記所与の周波数は2.4GHz±50MHz又は2.45GHz±50MHzであり、前記所与のパルス率は15Hz以下であり、及び/又は2%未満のデューティサイクルを有し、及び前記所与の出力は+2dBm~+4dBm、約1mW、約2mW又は約2.5119mWであり、及び任意選択で前記少なくとも1つのネイキッド試薬は核酸であるか、又は核酸を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ以上の電子機器は、前記電子機器及び/又は伝送手段の操作及び/又は1つ以上のパラメーターを制御するための制御手段、使用時に前記1つ以上の機器に電力を供給する電力供給手段、1つ以上の回路基板、データを格納する記憶手段、ユーザーが前記機器の前記操作、1つ以上の条件及び/又は前記1つ以上のパラメーターを選択することを許容するユーザー選択手段、又は1つ以上の設定、若しくは設定のオプションを表示する表示手段のいずれか又はいずれかの組み合わせを備える、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
ユーザーが選択することのできる前記機器の前記1つ以上の条件又はパラメーターは、前記パルス化電磁信号の信号周波数、信号強度、信号又は伝送出力、各パルスの期間又は信号パルス間の休止期間、信号パルス率のいずれか又はいずれかの組み合わせを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
真核細胞におけるトランスフェクション効率及び/又は細胞内送達の向上を提供するための装置であって、前記装置は、筐体と、前記筐体に位置し、使用時に所与の周波数のいずれか又はいずれかの組み合わせで、所与のパルス率で、又は所与の出力で供給されたパルス化電磁信号を伝送するように配置された伝送手段と、使用時に少なくとも前記伝送手段の操作を制御するための制御手段と、使用時に前記伝送手段及び/又は制御手段に電力を供給するための電力供給手段とを備える、装置。
【請求項21】
1個以上の伝送手段又は電子伝送チップ、又は2個以上の伝送手段又は電子伝送チップを含む、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記機器の筐体の表面、又は使用時に前記装置の上に配置されることになる1つ以上の物品の表面の105~115cm
2当たり少なくとも1個の伝送手段又は電子伝送チップを含む、請求項20又は21に記載の装置。
【請求項23】
前記装置は複数の伝送手段又は電子伝送チップを含み、前記伝送手段又は電子伝送チップは、ある空間距離を離して配置され、離れた前記距離は、前記パルス化電磁信号の波長の約半分に等しくなる、請求項20~22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記パルス化電磁信号の前記所与の周波数は約2.2~2.6GHzの間であり、約2.4GHz±50MHzであり、又は約2.45GHz±50MHzであり、
及び/又は
前記パルス化電磁信号の前記所与のパルス率は約50Hz以下、約25Hz以下、約15Hz以下であり、及び/又は2%未満のデューティサイクルを有し、
及び/又は
前記パルス化電磁信号の各パルスは約1ms~20msの間にわたって持続し、又は約1msであり、
及び/又は
前記パルス化電磁信号の各パルス間の休止期間は約66ms以下持続し、
及び/又は
前記パルス化電磁信号を伝送する前記伝送手段の各々によって供給された前記所与の出力は、約+2dBm~+4dBm、約1mW、約2mW又は約2.5119mWであり、
及び/又は
前記パルス化電磁信号は、0.45~0.55の間のガウス型周波数偏移変調(GFSK)を用いて伝送される、請求項20~23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
前記パルス化電磁信号の前記所与の周波数は2.2~2.6GHzの間であり、又は2.4GHz±50MHzであり、又は2.45GHz±50MHzであり、前記所与のパルス率は約15Hz以下であり、及び/又は2%未満のデューティサイクルを有し、及び各伝送手段の前記所与の出力は+2dBm~+4dBm、約1mW、約2mW又は約2.5119mWである、請求項20~24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
使用時に前記装置をユーザーに及び/又はユーザーに隣接して直接又は間接的に着脱可能に取り付けることを許容する取付手段が提供される、請求項20~25のいずれか一項に記載の装置。
【請求項27】
前記取付手段は、1つ以上のストラップ、ひも、ネックレス、ペンダント、ベルト、ブレスレット、クリップ、キーリング、ランヤード、VELCRO(登録商標)(面ファスナ)、ホック、ボタン、ボタン穴、接着剤、絆創膏、縫合糸、クリップ及び/又は生体適合性接着剤のいずれか又はいずれかの組み合わせを含む、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記筐体は外装を含み、前記装置の少なくとも前記外装は、使用時に前記装置が身体の中又はユーザーの皮膚の下に埋込み可能であることを許容するための物質で被覆されている、及び/又はそれで形成されている、請求項20~27のいずれか一項に記載の装置。
【請求項29】
前記装置には、使用時に1つ以上の真核細胞又は人にトランスフェクトされることになる、及び/又は細胞内送達を受けることになる少なくとも1つのネイキッド試薬を保持する又は納めるための少なくとも1つの保持手段又はリザーバーが提供される、請求項20~28のいずれか一項に記載の装置。
【請求項30】
前記保持手段又はリザーバーは、使用時にトランスフェクトされることになる又は処理されることになる人の皮膚又は1つ以上の真核細胞上に及び/又はそれに隣接して位置することが可能であるように前記装置上に配置され、及び前記パルス化電磁信号は、身体の1つ以上の部位及び/又は真核細胞に指向させることが可能であって、使用時に前記試薬の吸収、送達及び/又はトランスフェクションを向上させる助けとなる、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
請求項1~19のいずれか一項に記載の方法により作製された細胞又はその子孫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真核細胞への試薬のトランスフェクション効率及び/又は細胞内送達効率の向上を実現するための装置並びにその使用方法に関する。本装置はまた、細胞のタンパク質発現を向上させるためにも使用することができ、及びその使用方法。
【0002】
以下の説明は、真核細胞への試薬のトランスフェクション及び/又は細胞内送達の向上を許容する装置をどのように治療的又は医学的処置の目的で使用することができるかについて言及するが、当業者によれば、例えば、ウイルスベクターの作製、遺伝子療法又は修飾、タンパク質発現、及び/又は自己細胞療法におけるなどの、1つ以上の真核細胞への試薬のトランスフェクション及び/又は細胞内送達が要求されるいかなる目的又は適用にも本発明を使用し得ることは理解されるであろう。また、本発明の装置及び方法は、インビトロ細胞、エキソビボ細胞及び/又はインビボ細胞に関して行われ得ることも理解されるであろう。
【背景技術】
【0003】
従来、その重症度の程度は様々であり得るものの、特定の医学的状態を処置するための医薬品用試薬及び/又は他の薬剤の送達においては、その医薬品用試薬及び/又は他の薬剤の経皮的適用(即ち、患者の皮膚による吸収及びそこへの通過)が許容されることが求められてきた。しかしながら、原理上は、かかる方法の利益は長い間広く認められているとはいえ、様々な患者に対して使用可能であるように、実際的で効率的な、かつ再現性のある形でこの技法を提供することが、長い間の課題となっている。
【0004】
問題のかなりの部分は、人の皮膚が、天然では障壁として働くような構造を持っていて、皮膚を通じた身体内への物質の透過を防ぎ、それに抵抗することである。結果として、現在のところ、経皮的に(即ち皮膚を通じて)送達することに成功し得る極めて強力な薬剤は、比較的狭い範囲に限られている。従来、こうした薬剤の送達は、人の皮膚の表面に適用されて、次にはそのままにしておかれることにより、皮膚を通じて人の身体内へと吸収されるゲル、クリーム及び/又はパッチ機器で実現されている。
【0005】
例えば、現在、フェンタニルなどのオピオイド薬の送達に、接着パッチが用いられている[1]。フェンタニルは極めて強力な薬剤であり、したがって、皮下空間にある患者の毛細血管系に十分な分量を提供するために、微量の薬剤が人の皮膚に通過するだけでよい。しかしながら、処置を実施するのに十分な分量の薬剤が患者の毛細血管系に送達されたとしても、パッチに提供される分量の薬剤が患者の身体に入ることはありそうにない。このため、現在の方法は非効率で無駄の多いものとなっている。
【0006】
更に、バイオ医薬抗体など、比較的大型の分子で形成される薬剤は、その大きさに起因して経皮的に送達することができず、ひいてはそうした薬剤は、人の皮膚を通過する能力がないものとなる。同様の問題は、例えば細胞傷害性薬剤など、他の医薬品用及び/又は治療用分子にも当てはまる。
【0007】
なおも更なる問題は、人の身体の一部分に指向した治療的処置の提供を自宅では容易に実現できないことである。そのため、患者は典型的には、その治療的処置を行うために、病院又は医師のいる施設へと、多くの場合に定期的に通院することが求められる。これは、時間がかかり得るとともに、職員、装置及び患者を予約の処置時間に利用可能とするための手配に多大な事務的労力を要する。代替策は、患者の自宅に好適な処置装置を提供することであるが、これは、その処置装置が次には1人の患者による使用にのみ利用可能であることを意味する。処置装置は典型的には高価であるため、多くの場合に在宅処置は実現不可能となる。更に、処置装置は多くの場合に大型で場所をとり、患者の自宅に入れるのは困難であり得る。
【0008】
トランスフェクションは、核酸を真核細胞に導入するプロセスである。トランスフェクションは、トランスフェクトされた核酸が発現し続けることができ、娘細胞へと受け継がれる点で、安定したものであり得る。或いは、トランスフェクションは、トランスフェクトされた核酸がトランスフェクション後に短期間のみ発現し、娘細胞に受け継がれない点で、一過性であり得る。遺伝子療法の分野では、いずれのタイプのトランスフェクションの使用も周知であり[2]、疾患の治療用薬剤として作用するような患者細胞への核酸の治療的送達の利用に焦点が置かれている。例えば、治療しなければ、患者が遺伝子に関連した及び遺伝性の病態に罹患することにつながる可能性のある患者の欠陥遺伝子を置き換えることが、目的となり得る。実験室セッティングでは、不死細胞株に外因性遺伝子が、典型的にはプラスミドの形態でトランスフェクトされることが多い。トランスフェクション後、トランスフェクションが成功した細胞は、その外因性遺伝子を発現することになる。
【0009】
一過性トランスフェクションでは、細胞の集団に対して外因性遺伝子(典型的には、ポリエチレンイミン(PEI)などの担体に封入される)が導入されることになる。これらの細胞の一部についてトランスフェクションが成功することになり、その外因性遺伝子を発現し始めることになる。短期間の後に発現レベルが下がり、その時点で細胞は典型的にはプロセシングされるか、又は他に何らか処分される。
【0010】
安定トランスフェクションでは、細胞が上記のとおりトランスフェクトされる。細胞の一部が、外因性遺伝子を安定的に組み込んでしまうことになる。安定にトランスフェクトされた細胞は、外因性遺伝子の発現に基づき細胞集団から分離し、選択することができ、これらの細胞を増殖させると、外因性遺伝子をより長期間にわたって発現する不死細胞株が作り出される。
【0011】
トランスフェクション効率(即ち、細胞への外因性遺伝子のトランスフェクションが成功する比率)は、先行技術の方法では典型的には低い。細胞株のトランスフェクション効率を高めようと試みて、複数の戦略が採用されている(例えば、電気穿孔、特殊化したトランスフェクション用試薬など)。必要とされているのは、いずれの所与のトランスフェクションプロトコルのトランスフェクション効率も向上させるための、トランスフェクションプロトコルを更に向上させる装置及び方法である。
【0012】
最近の展開は、患者自身の免疫細胞の遺伝子配列を操作して、患者の体内にある特定の癌性細胞を認識して攻撃するであろう細胞へとそれを形質転換するというものになっている[3]。患者の細胞が遺伝子操作される手法は、「遺伝子療法」として知られる。癌の治療に向けた遺伝子療法の一つの有望な手段は、T細胞が癌性組織の成長をより有効に標的化することを許容するキメラ抗原受容体を発現するようにT細胞を遺伝子操作することである。かかる細胞は、キメラ抗原受容体T細胞(「CAR-T細胞」)として公知であり、この療法は、「CAR-T細胞療法」として公知である。初めに患者の体から免疫細胞が取り出され、次にそれがエキソビボでトランスフェクションプロセスを受けると、その細胞が、癌を探し出すキラー細胞に変換される。トランスフェクトされた細胞は、次に患者に再投与され、その癌を治療する。こうした細胞のトランスフェクションは、典型的には、外因性遺伝子物質をナノ粒子又はリポソーム担体などの担体分子と会合させることが関わる手法を用いて実現される。
【0013】
従来のトランスフェクションプロセスの一例では、標的DNAをリン脂質二重層小胞又はリポソームに封入し、次にそれを真核細胞に投与するステップが含まれる[4]。リポソームはリン脂質で形成されているため、リポソームは、同様にリン脂質二重層を有する真核細胞膜に親和性を有し、そのためこれらの系の融合がある。したがって外部のDNAがこの融合機構を経て真核細胞の中へと移行し、細胞にとっての染色体外遺伝情報となることができる。単純な従来のトランスフェクションプロセスには、外因性核酸(例えば目的の遺伝子を納めるDNAプラスミド)をカチオン重合体(PEI)に封入することが関わる[6]。かかるプロセスには潜在的に大きな利点がある一方で、こうした従来プロセスは遅く、トランスフェクション効率が悪い。これらの方法は、そのトランスフェクション効率の低さのために無駄が多く、時間がかかり、ひいては高価なものとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
より低コストで、より標的を絞った効率的な方式による患者の皮膚を通じた試薬、薬剤及び/又は治療的処置の送達を許容する装置及び/又は使用方法を提供することが、本発明の目的である。
【0015】
本発明の更なる目的は、患者への試薬、薬剤及び/又は治療的処置の送達を提供するために使用することのできる、かつ携帯及び/又は患者の自宅での使用が容易な装置を許容する装置及び/又は使用方法を提供することである。
【0016】
本発明の更なる目的は、上述の問題を克服する真核細胞におけるトランスフェクション効率、細胞内送達効率及び/又はタンパク質発現を向上させる装置を提供することである。
【0017】
真核細胞におけるトランスフェクション効率、細胞内送達効率及び/又はタンパク質発現を向上させる方法を提供することが、本発明の更なる目的である。
【0018】
トランスフェクション及び/又は細胞内亢進装置を提供すること及び/又はその方法が、本発明の更なる目的である。
【0019】
動物又はヒトにおける遺伝子療法及び/又は治療的処置の有効性を向上させる装置を提供することが、本発明のなおも更なる目的である。
【0020】
動物又はヒトにおける遺伝子療法及び/又は治療的処置の有効性を向上させる方法を提供することが、本発明のなおも更なる目的である。
【0021】
ウイルスベクターの作製を向上させる装置及び/又はその使用方法を提供することが、本発明のなおも更なる目的である。
【0022】
ヒト及び/又は動物細胞のタンパク質発現を向上させる装置及び/又はその使用方法を提供することが、本発明のなおも更なる目的である。
【0023】
本発明の更なる目的は、トランスフェクション物質及び/又は細胞内送達物質の調製及び/又は適用速度の向上を許容することであり、なおも更なる目的は、トランスフェクトされた細胞の収率増加を許容することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の第1の態様によれば、
a)1つ以上の真核細胞におけるトランスフェクション及び/又は細胞内送達に好適な少なくとも1つのネイキッド試薬を提供するステップ;
b)混合物又はトランスフェクション混合物を形成するために、ネイキッド試薬を1つ以上の真核細胞に導入するステップ;
c)1つ以上のトランスフェクトされた又は処理された真核細胞を形成するために、混合物又はトランスフェクション混合物が細胞内送達プロセス又はトランスフェクションプロセスを受けることを許容するステップ
を含む、真核細胞におけるトランスフェクション効率及び/又は細胞内送達を向上させる方法であって、
本方法は、所与の周波数のいずれか又はいずれかの組み合わせで、所与のパルス率で、及び所与の出力で供給されたパルス化電磁信号を、混合物又はトランスフェクション混合物を生み出す前にステップa)で少なくとも1つのネイキッド試薬に、ステップb)において混合物又はトランスフェクション混合物に、ステップc)において混合物又はトランスフェクション混合物に、及び/又はトランスフェクションステップc)の後にトランスフェクトされた又は処理された真核細胞に指向させるステップを含むことを特徴とする、方法が提供される。
【0025】
本出願人らは、意外にも、トランスフェクション前、その最中及び/又はその後にパルス化電磁(PEM)信号を投与すると、トランスフェクション効率、細胞内送達効率及び/又はトランスフェクション及び/又は細胞内送達プロセスによって生み出されるタンパク質発現収率が有意に増加することを見出した。トランスフェクション率及び/又は細胞内送達率が有意に向上し、試薬及び/又は外因性核酸を納めるトランスフェクトされた又は処理された細胞の出現頻度の亢進を許容する。したがって、本発明は、細胞生存度、遺伝子導入、トランスフェクション率、細胞外環境から細胞内環境への1つ以上の試薬の細胞内送達及び/又はタンパク質産生を向上させる非侵襲性の非化学的な手法を提供する。本発明は、細胞にとって外部の環境から細胞の内側にある内部環境への細胞外(extra-cellar)物質又は試薬の輸送を亢進させる。
【0026】
本明細書で使用される用語「パルス化電磁信号」は、好ましくは、電磁スペクトル範囲でベースラインからより高い値又は低い値へと振幅が変化し、続いてベースラインに戻る又は実質的にベースラインに戻る信号の系列又はパターンとして定義される。更に好ましくは、信号振幅の変化は速く、過渡的であり、繰り返しの系列として現れる。一例において、ベースラインは、電磁信号源又は伝送手段が発する電磁信号がない状態に相当する。好ましくはベースラインは、細胞及び/又はパルス化電磁信号にとっての休止又は緩和期間と見なされる。
【0027】
好ましくは、本方法は、完全にインビトロで、又は完全にインビボで、又は部分的にインビトロで及び部分的にインビボで行われ得る。例えば、真核細胞はインビトロでトランスフェクトされ、又は処理され、1つ以上の目的又は適用にインビトロで使用される可能性がある。更なる例では、真核細胞は患者から抽出され、インビトロでトランスフェクトされ、又は処理され、次に患者に再導入して戻される可能性がある(これは、同義的に「エキソビボ」方法と称される)。或いは、少なくとも1つのネイキッド試薬、トランスフェクション混合物及び/又は混合物は患者に注入されるか、又は他の方法で運び込まれる可能性があり、患者の細胞がインビボでトランスフェクトされる、及び/又は処理される可能性がある。
【0028】
好ましくは、少なくとも1つのネイキッド試薬は、トランスフェクション及び/又は細胞内送達に好適ないずれかの試薬及び/又は核酸、医薬品用及び/又は治療用試薬又は化合物、治療的及び/又は医薬品的利益のある試薬、5キロダルトン未満の小分子又は小分子材料、5キロダルトン以上の大型分子又は大型分子材料、1つ以上のタンパク質、ワクチン、1つ以上の抗体、及び/又は1つ以上の有機剤などのいずれか又はいずれかの組み合わせである。
【0029】
用語「医薬品用及び/又は治療用試薬又は化合物」は、好ましくは、臨床に展開されている又は展開するために開発中の化合物であって、確かな薬効のあるものを指す。
【0030】
用語「治療的及び/又は医薬品的利益のある試薬」は、好ましくは、研究及び/又は臨床での使用のために開発された、及び/又はそこでの使用に向けて調査中である化合物を指す。これらの試薬又は化合物は、公知の作用機序を有し得るが、臨床的適合性及び関連性については実証又は調査が行われていないものであり得る。一部の実施形態において、これらの試薬又は化合物の作用機序は、まだ明らかになっていないものであり得る。それにも関わらず、本発明の根底にある機序は、これらの試薬又は化合物の優れた細胞内送達を許容する。
【0031】
一例において、医薬品用及び/又は治療用試薬は、アントラサイクリン系薬剤、例えばドキソルビシンなど;化学療法薬剤;抗癌薬剤;細胞傷害性薬剤、例えばシスプラチンなどである。
【0032】
好ましくは、本文書の定義の範囲内においてネイキッド試薬という用語は、両親媒性構造体と会合していない試薬を意味する(一部のトランスフェクションプロトコルでは、核酸分子は概して、両親媒性構造体であり得る担体又は構造体と会合されることに留意すべきである)。用語「会合していない」は、典型的には、少なくとも1つのネイキッド試薬が少なくとも1つの両親媒性構造体に提供されないこと、それが両親媒性構造体と複合体を形成しないこと、それが両親媒性構造体上に納められていないこと、及び/又は両親媒性構造体に結合していないことを意味する。
【0033】
本発明において、本方法及び装置は、1つ以上の真核細胞へのネイキッド試薬のトランスフェクションを、両親媒性構造体を使用することなく、先行技術の方法及び装置と比べて高い効率で許容する。
【0034】
一実施形態において、真核細胞は、付着細胞、懸濁細胞、血液細胞、T細胞、リンパ球、顆粒球、及び/又はマクロファージなどのいずれか又はいずれかの組み合わせを含む可能性がある。
【0035】
一部の実施形態において、真核細胞は、溶液中に懸濁されているか、基質に付着しているか、又は懸濁細胞と付着細胞との両方の混合物である。
【0036】
一部の実施形態において、真核細胞は、不死細胞又は不死細胞株から得られた細胞である。例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞、ヒト結腸腫瘍(HCT)116細胞、又はジャーカットE6細胞。
【0037】
一部の実施形態において、真核細胞は、ヒト又は動物対象(被検体)の組織にあるか、又はそこから得られた細胞である。例えば、細胞は対象から抽出されたものであってよく、トランスフェクトされ、次に対象に再導入されることになる。一部の実施形態において、真核細胞は、対象の血液から得られる。一部の実施形態において、真核細胞は、T細胞、リンパ球、顆粒球、マクロファージ及び/又は他の白血球細胞である。一部の実施形態において、T細胞は、ヘルパーT細胞又は細胞傷害性T細胞のいずれか又はいずれかの組み合わせである。一部の実施形態において、T細胞は、CD4+細胞傷害性Tリンパ球及び/又はCD8+細胞傷害性Tリンパ球を含む。
【0038】
本発明の装置及び方法の一つの例示的な使用は、いわゆる「CAR-T」細胞の作成が関わる養子T細胞療法(ACT)である。かかる技法では、対象から得られたT細胞に対して本装置及び/又は方法が使用される。
【0039】
この細胞が培養され、インビトロでトランスフェクトされるとキメラ抗原受容体を発現し、次にインビトロで拡大された後、患者に再導入される。本装置及び/又は方法はトランスフェクション効率を向上させるため、ひいてはCAR-T細胞のより高い収率をもたらす。
【0040】
一部の実施形態において、本方法は、ヒト又は動物の身体に実施される処置又は手術方法でなくてもよい。一部の実施形態において、本方法は、ヒトの生殖細胞系列の遺伝子アイデンティティを修飾するための方法でなくてもよい。
【0041】
一実施形態において、ステップa)は、ネイキッド試薬のみからなる(即ち、いずれの他の試薬、担体培地及び/又は組成物も除外される)。
【0042】
一実施形態において、本方法は、少なくとも1つのネイキッド試薬を1つ以上の他の試薬、担体試薬、溶媒、非両親媒性媒体、及び/又は可溶化試薬などと共に、それを1つ以上の真核細胞に導入する前に混合するステップを含む。例えば、1つ以上の他の担体試薬又は可溶化試薬には、水、緩衝溶液、トリス-EDTA、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、エタノール、及び/又は無極性又は非プロトン性試薬などのいずれか又はいずれかの組み合わせを含む可能性がある。担体試薬という用語は、少なくとも1つのネイキッド試薬がその中に溶解される、その中に懸濁される、及び/又はそれと混合されるなどする任意の試薬を意味し得る。
【0043】
好ましくは、少なくとも1つのネイキッド試薬は核酸であるか、又は核酸を含む。好ましくは、核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)であるか、又はDNAとRNAとの組み合わせ(例えば、DNA/RNAハイブリッドオリゴヌクレオチド)を含む。少なくとも1つのネイキッド試薬がRNAであるか、又はRNAを含むとき、それは好ましくは、mRNA、tRNA、siRNA、及び/又はmiRNAなどであり得る。
【0044】
一実施形態において、少なくとも1つのネイキッド試薬は、1つ以上の発現ベクターであるか、又は1つ以上の発現ベクターを含む。例えば、1つ以上の発現ベクターは、1つ以上の真核細胞での発現が意図される1つ以上の外因性遺伝子を含む1つ以上のDNAプラスミドである可能性がある。
【0045】
一実施形態において、少なくとも1つのネイキッド試薬が核酸であるか、又は核酸を含むとき、トランスフェクションプロセスの結果、トランスフェクトされた細胞内のトランスフェクトされた核酸が発現し続け、娘細胞に受け継がれる点で、安定発現が得られる。
【0046】
一実施形態において、少なくとも1つのネイキッド試薬が核酸であるか、又は核酸を含むとき、トランスフェクションプロセスの結果、一過的発現が得られ、トランスフェクトされた核酸が比較的短期間しか発現せず、娘細胞に受け継がれない。
【0047】
一実施形態において、少なくとも1つのネイキッド試薬が核酸であるか、又は核酸を含むとき、本方法は、トランスフェクションプロセス後に真核細胞の1つ以上を分離するステップと、少なくとも1つのネイキッド試薬によってコードされる1つ以上のペプチドが1つ以上の分離した真核細胞又はその子孫において発現するレベルを試験するステップと、発現レベルに基づき1つ以上の分離した真核細胞又はその子孫を選択するステップとを更に含む。
【0048】
好ましくは、パルス化電磁信号を指向させるステップは、室温(例えば20℃など)で行われるか、又は室温を上回る温度(例えば37℃など)に設定することができるインキュベーター(培養器)において行われる。
【0049】
一実施形態において、パルス化電磁信号を指向させるステップは、所与の期間にわたって行われる。一例において、細胞がパルス化電磁信号を受信する時間は、混合物又はトランスフェクション混合物を生み出す前にステップa)において少なくとも1つのネイキッド試薬に指向させるとき、約15分又は最長15分である。しかしながら、必要に応じてより長い又はより短い期間が用いられる可能性があることは理解されるであろう。
【0050】
一実施形態において、細胞がパルス化電磁信号を受信する所与の期間は、ステップc)においてトランスフェクトされた細胞及び/又は処理された細胞を形成するため混合物又はトランスフェクション混合物に指向させるとき、及び/又はトランスフェクション又は処理ステップの後、約1~4時間又はその間であり、更に好ましくは約3~4時間である。
【0051】
しかしながら、必要に応じてより長い又はより短い期間が用いられる可能性があることは理解されるであろう。例えば、一実施形態において所与の期間は、最長16時間、又は最長24時間であり得る。
【0052】
好ましくは、パルス化電磁信号は、1つ以上の電子機器によって生成される。
【0053】
好ましくは、1つ以上の電子機器は、使用時にパルス化電磁信号を生成し及び/又はそこから伝送する伝送手段を含む。
【0054】
好ましくは、伝送手段は、1個以上の電子伝送チップであって、使用時に1つ以上のパルス化電磁信号を生成する、発する、及び/又は伝送するように配置された1個以上の電子伝送チップを含む。
【0055】
一実施形態において、伝送手段又は1個以上の電子伝送チップへの言及には、1個以上の伝送機、少なくとも1個の伝送機及び少なくとも1個の受信機、又は1個以上の送受信機が含まれる可能性がある。したがって、一例において、パルス化電磁信号は、中心位置又はマスター伝送機から伝送される可能性があり、1個以上の遠隔及び/又はスレーブ受信機及び/又は送受信機によって受信され、続いてそこから再伝送され又は発せられる可能性がある。
【0056】
一実施形態において、電子機器は、単一の伝送手段又は電子伝送チップを有する。かかる単一の伝送手段又は電子伝送チップは、パルス化電磁信号を一例では組織培養プレートに提供するのに十分である。一例示的実施形態において、単一の伝送手段又は電子伝送チップは、1つ以上の懸濁細胞を納めるバイオリアクターに提供され、取り付けられ、又は組み込まれる。かかるバイオリアクターは、懸濁液をスターラーで撹拌することによって動作し、そのため、典型的には培地中にある、懸濁されている細胞が伝送手段又は電子伝送チップのそばを通過し、したがって本発明のパルス化電磁信号に曝されることになる。
【0057】
一実施形態において、電子機器は2個以上の伝送手段又は電子伝送チップを有する。好ましくは、2個以上の伝送手段又は電子伝送チップは、電子機器において互いに所与の空間距離を離して配置される。
【0058】
好ましくは、離される所与の空間距離は、電磁パルス化信号でパルスされる1つ以上の物品又は物質に、所望の効果(即ち、トランスフェクション及び/又は細胞内送達効率を増加させるという効果)を実現するのに十分な、及び/又は使用時に電磁放射線/信号の均等な若しくは実質的に均等な分布を提供するのに十分な信号強度を提供するようなものである。
【0059】
好ましくは、電子機器は、所与のパターン及び/又はアレイで配置された複数の伝送手段又は電子伝送チップを有する。
【0060】
単一の伝送手段又は電子伝送チップが本発明の有利な特性を提供するのに十分ではあるものの、複数の伝送手段又は電子伝送チップを有すると、最大限の効果をなおも維持しながら、より広い範囲の表面積にわたるパルス化電磁信号の送達を許容することが分かっている。本出願人らは、18.5cm2当たりに少なくとも1個のチップがあるような、均等に分布した伝送手段又は電子伝送チップを有することにより、最適な効果に十分な有効範囲が提供されることを見出した。
【0061】
一部の実施形態において、本装置は、1個以上の伝送手段又は電子伝送チップを含む。一部の実施形態において、本装置は、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個又はそれ以上の伝送手段又は電子伝送チップを含む。
【0062】
一部の実施形態において、装置の筐体の表面又は本明細書に定義するとおりの物品の表面の約105~115cm2当たり、及び好ましくは装置の筐体の表面又は本明細書に定義するとおりの物品の表面の約110cm2当たりに1個の伝送手段又は電子伝送チップがある。
【0063】
一部の実施形態において、装置の筐体の表面又は本明細書に定義するとおりの物品の表面の約50~60cm2当たり、及び好ましくは装置の筐体の表面又は本明細書に定義するとおりの物品の表面の約55cm2当たりに1個の伝送手段又は電子伝送チップがある。
【0064】
一部の実施形態において、装置の筐体の表面又は本明細書に定義するとおりの物品の表面の約25~30cm2当たり、及び好ましくは装置の筐体の表面又は本明細書に定義するとおりの物品の表面の約27.5cm2当たりに1個の伝送手段又は電子伝送チップがある。
【0065】
一部の実施形態において、装置の筐体の表面又は本明細書に定義するとおりの物品の表面の約15~20cm2当たり、及び好ましくは装置の筐体の表面又は本明細書に定義するとおりの物品の表面の約18.5cm2当たりに1個の伝送手段又は電子伝送チップがある。
【0066】
一部の実施形態において、装置の筐体の表面又は本明細書に定義するとおりの物品の表面の約10~15cm2当たり、及び好ましくは装置の筐体の表面又は本明細書に定義するとおりの物品の表面の約12.2cm2当たりに1個の伝送手段又は電子伝送チップがある。
【0067】
本明細書に定義するとおりの物品は、好ましくは、細胞培養プレート、フラスコ、ローラーボトル、及び当業者に公知の他の容器を含む。例えば、以下に定義するとおりの標準的な実験用マイクロプレート、T25、T75、T125、T175、T225、及びそれより大きい細胞培養プレート。1個以上の伝送手段又は電子伝送チップは、使用時に機器上に配置されるかかる容器の表面積に応じた、及び/又は装置の筐体の表面に基づく所与の間隔だけ離してセットされる。
【0068】
例示的実施形態において、本装置には6個の伝送手段又は電子伝送チップが提供され、装置の上には標準的な実験用マイクロプレートが位置する。これらの標準的な実験用マイクロプレートは、6ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、96ウェル、384ウェル、及び1536ウェルプレート(及びそれ以上)として提供される。これらのマイクロプレートは、概して標準化されたサイズであって、寸法が約128mm長さ×85mm幅であり、したがってプレートは約110cm2の表面積を与える。したがって、例示的実施形態において、6個の伝送手段又は電子伝送チップは、これらのプレートタイプのいずれかに本発明に係るパルス化電磁信号を提供するのに最適な所与の間隔を提供するように均等な間隔で置かれ得る。一例において、電子機器は6個の伝送手段又は電子伝送チップを含む。好ましくは、6個の伝送手段又は電子伝送チップは、使用時に電子機器に、その上に、又はそれに対して24ウェルプレートが位置するとき、各伝送手段又はチップがプレートの4つのウェルに十分な強度の電磁信号を発することが可能であるような、及び/又はそれを指向させるような所与の距離だけ互いに離して配置される。
【0069】
更に好ましくは、伝送手段又は伝送チップは、24ウェルプレートの4つのウェルの中心位置又は実質的に中心位置に隣接して位置する。
【0070】
一実施形態において、2個の以上の伝送手段又は電子伝送チップが必要となる場合、複数の伝送手段又は電子伝送チップの間隔が最適化されなければならない。各伝送手段又は電子伝送チップの間に最適な所与の間隔を実現するためには、伝送手段又は電子伝送チップは、用いられる電磁放射線周波数の波長の半分に等しい又は実質的に半分に等しい距離に位置しなければならない。好ましくは、この距離は、あらゆる向きの平面との関係で、又は2個以上の伝送手段又は電子伝送チップが装置の一部として共に使用されるものと考えなければならない。例えば、波長が12.4cmである場合、伝送チップは、使用時にあるとき最適な電磁場を生じるために約6.2cm離して配置されなければならない。
【0071】
一例において、所与の空間距離=波長/2。
【0072】
一例において、X軸及び/又はY軸の所与の空間距離は、均等な間隔の格子状にある各伝送手段又は電子伝送チップ間において波長の半分である。かかる配置により、破壊的干渉リスクが最小限となる。
【0073】
一実施形態において、電子機器は筐体を含み、1個以上の伝送手段又は伝送チップは前記筐体に位置する。
【0074】
好ましくは、筐体は、使用時にパルス化電磁信号を受信するもう1つの物品に対して筐体が安定して位置することを許容する少なくとも1つの平らな又は平面的な表面を含む。或いは、筐体は、使用時にパルス化電磁信号を受信する1つ以上の物品に対して筐体が安定して位置することを許容する1つ以上の湾曲した又は非平面的な表面を含むことができる。
【0075】
一例において、筐体の少なくとも1つの表面は、使用時にパルス化電磁信号を受信する1つ以上の物品が位置するための1つ以上の凹部を含む。
【0076】
一例において、電子機器は、実験室での使用向けのトランスフェクションプレートと称される。
【0077】
一実施形態において、筐体は、使用時に筐体が表面上に直接又は間接的に支持されることを許容する基面を含む。更に好ましくは、筐体は、基面の反対側の上面を含む。好ましくは、上面は、パルス化電磁信号を受信する1つ以上の物品が使用時にその上に位置し得る表面である。
【0078】
一例において、1つ以上の物品は、そこで真核細胞を培養し得る当業者に公知の細胞培養プレート又はフラスコであり得る。
【0079】
一実施形態において、電子機器及び/又は筐体は、容器、反応容器などの外面に取付可能である。例えば、電子機器及び/又は筐体は、1つ以上のねじ、ナット及びボルト、磁石、ひも、クリップ、ストラップ、相互係合部材、接着(粘着)剤、溶接などのいずれか又はいずれかの組み合わせを含む、1つ以上の取付手段又は装置によって取付可能であり得る。
【0080】
好ましくは、筐体の上面及び/又は使用時に筐体又は電子機器の上に、そこに又はそれに対して位置するときのパルス化電磁信号を受信する1つ以上の物品と伝送手段との間の距離は、約25cm以下、20cm以下、15cm以下、10cm以下又は5cm以下である。更に好ましくは、距離は約1cmである。
【0081】
好ましくは、パルス化電磁信号は、所与のパルス系列で提供される。
【0082】
一実施形態において、電子機器は、パルス化電磁信号を約2.2~2.6GHzの範囲の周波数で伝送するように配置され、更に好ましくは、パルス化電磁信号は、約2.4GHz±50MHz又はより好ましくは2.45GHz±50MHzの周波数で伝送される。
【0083】
一実施形態において、電子機器は、パルス化電磁信号を2.4~2.4835GHz、好ましくは2.45GHz±50MHzの工業、科学及び医療用無線周波数帯域幅(ISMバンド)の範囲内の周波数で伝送するように配置される。
【0084】
好ましくは、パルス化電磁信号は、約50Hz以下、更に好ましくは約25Hz以下、及びなおも更に好ましくは約15Hz以下の周波数でパルス化される。
【0085】
好ましくは、パルス化電磁信号の各パルスは約1ms~20msの間にわたって持続する。更に好ましくは、各パルスは約1ms持続する。
【0086】
好ましくは、パルス間の期間(「休止期間」又は「緩和期間」とも称される)は約66ms以下である。
【0087】
好ましくは、パルス化電磁信号のデューティサイクルは2%未満である。
【0088】
一実施形態において、電子機器の各伝送手段又はチップによって供給された伝送出力は、+2dBm~+4dBm、約1mW、約2mW又は約2.5119mWである。
【0089】
一実施形態において、パルス化電磁信号の所与の周波数は約2.2~2.6GHz、2.4GHz±50MHz又は2.45GHz±50MHzであり、所与のパルス率は約15Hz以下であり、及び/又は2%未満のデューティサイクルを有し、及び所与の出力は+2dBm~+4dBm、約1mW、約2mW又は約2.5119mWであり、及び更に任意選択で、少なくとも1つのネイキッド試薬が核酸であるか、又は核酸を含むとき。
【0090】
理論によって拘束されることを望むものではないが、本発明の装置又は方法において使用される電磁波又は電磁信号の使用は、比較的長い休止又は緩和期間でH2Oをその双極子の周りに周期的に回転させるのに十分であると考えられる。H2Oの周期的回転は、真核細胞のリン脂質二重層又は細胞膜の水素結合を遮断すると考えられる。したがって、細胞膜のこの周期的又は断続的な低エネルギーの摂動が、例えば、核酸又は試薬と細胞膜など、試薬、一部の分子及び/又は細胞膜及びそれらの環境との相互作用の増加を刺激すると考えられる。これが、細胞膜を越える試薬の輸送を亢進させて、1つ以上の真核細胞による核酸、ペプチド、小分子及び他の試薬などの1つ以上の試薬の取込みの増加につながると考えられる。したがって、本発明に係るトランスフェクション及び/又は細胞内送達プロセスは、超低エネルギー電磁波又は信号を使用して大きく向上し得ることが見て分かる。パルス化電磁信号のパルス間の比較的長い休止又は緩和期間は、細胞の完全性を維持するのに十分であると考えられる。したがって、本発明との関連において、パルス化電磁信号、電磁波、又は電磁場の使用は、細胞膜を越える分子の輸送の向上を提供し、上記に定義したとおりの試薬のより効率的なトランスフェクション及び/又は細胞内送達につながると考えられる。
【0091】
好ましくは、パルス化電磁信号は、0.45~0.55の間のガウス型周波数偏移変調(GFSK)を用いて伝送される。
【0092】
好ましくは、パルス化電磁信号は、無線周波数(RF)データ信号である。
【0093】
好ましくは、パルス化電磁信号は、パルス化電磁信号のデジタル系列である。
【0094】
好ましくは、無線周波数信号は、Bluetooth LE(BLE)プロトコルのアドバタイズ機能を利用する。好ましくは、アドバタイズRF信号は、それぞれ、周波数2402MHz、2426MHz、2480MHzに対応するチャンネル37、38及び39上にある。
【0095】
一実施形態において、パルス化電磁信号は、少なくとも1つのネイキッド試薬、混合物若しくはトランスフェクション混合物及び/又はトランスフェクション後若しくは処理後の混合物を含む水性媒体に指向される。
【0096】
一実施形態において、電子機器は、使用時に機器に電力を供給する電力供給手段を備える。好ましくは、電力供給手段には、主電源、1つ以上のバッテリー、電力セル、1つ以上の充電式バッテリー、発電機手段などが含まれる。
【0097】
一実施形態において、電子機器は、使用時に電子機器及び/又は伝送手段の操作を制御するための制御手段を備える。
【0098】
一実施形態において、電子機器は、1つ以上の回路基板を備える。好ましくは、典型的には集積回路の形態の1つ以上の回路基板上には伝送手段が提供されてもよく、及び/又は例えば記憶手段など、他の構成要素が位置する。
【0099】
一実施形態において、電子機器は、記憶装置、データ格納装置など記憶手段を備える。
【0100】
好ましくは、電子機器の他の構成要素には、パルス化電磁信号を発生させるための装置の選択的な操作、及び作動時におけるその制御された操作に必要な1つ以上の構成要素が含まれる。例えば、使用時に機器の1つ以上の条件、操作及び/又は1つ以上のパラメーターのユーザー選択を許容するユーザー選択手段;1つ以上の設定、選択オプションなどを表示する表示手段が機器上に提供されてもよい。
【0101】
一実施形態において、前記更なる構成要素又は電力供給手段は1つ以上の電力セルを備え、それらは全てが筐体内に納められてもよい。
【0102】
一実施形態において、電子機器の筐体は、使用時に電磁信号に曝されることになる物質及び/又は1つ以上の物品が位置する容器とそれが係合する、及び/又はそれに基づき位置することを許容する形態で提供される。
【0103】
一実施形態において、制御手段は、ユーザーが前記パルス化電磁信号の信号周波数、信号強度、信号出力、信号パルス率、信号のパルス発生期間などのいずれか又はいずれかの組み合わせを選択することを許容するオプションを含む。一実施形態において、周波数、強度、出力、パルス率、パルス発生期間、他のパラメーターなどの選択は、使用時にパルス化電磁信号に曝されることになる物質及び/又は1つ以上の物品の詳細な形態、前記物質の分量、使用に際して装置が位置する基準となる容器の寸法及び/又は他のパラメーターに基づき行われてもよい。
【0104】
本発明のもののようなパルス化信号に曝される細胞は、インビトロでのトランスフェクション又は治療時に、細胞の一様な又は実質的に一様な分布又は分散を提供することが分かっており、これは、パルス化されない技術が用いられる、細胞の凝集が観察されているトランスフェクション又は治療と対照的である[1]。
【0105】
本発明のある態様によれば、真核細胞におけるトランスフェクション効率及び/又は細胞内送達効率を向上させることを提供する装置が提供され、前記装置は、筐体と、前記筐体に位置し、使用時に所与の周波数のいずれか又はいずれかの組み合わせで、所与のパルス率で、又は所与の出力で供給されたパルス化電磁信号を伝送するように配置された伝送手段と、使用時に少なくとも伝送手段の操作を制御するための制御手段と、使用時に伝送手段及び/又は制御手段に電力を供給するための電力供給手段とを備える。
【0106】
好ましくは、本装置の1つ以上の所与のパラメーターは、装置の製造者によって事前に設定されてもよく、及び/又はユーザーの要求に応じてユーザー選択可能なものであってもよい。
【0107】
好ましくは、制御手段を使用して、ユーザー選択可能な所与のパラメーターのうちの1つ以上のユーザー選択が許容される。
【0108】
一実施形態において、本装置は、身体におけるトランスフェクション又は治療プロセスを向上させるために使用時に身体の一範囲へとパルス化電磁信号を指向させるのを許容するため、人の皮膚上に又はそれに隣接して直接又は間接的に装着されるように配置される。この実施形態において、本装置は好ましくは、ウェアラブル機器である。
【0109】
一実施形態において、身体で行われるトランスフェクション又は治療プロセスを向上させるため、ユーザーの皮膚又は身体の外部、使用時にユーザーが身に着ける衣服又は物品の内部及び/又は外部などへの、又はそれに対する着脱可能な取付けを許容する、装置上にある、及び/又は装置に付随する取付手段が提供されてもよい。
【0110】
例示的実施形態において、本装置はウェアラブル機器、例えばアームバンドであり、アームバンドは、患者に投与される例えばDNA又はRNAワクチンの注入(インジェクション)部位に直接配置される。
【0111】
例示的実施形態において、ワクチンの投与方法であって、対象にワクチンを注入すること、及び次に本発明の装置を注入部位に配置すること、及び本発明に係るパルス化電磁信号を注入部位に提供することを含む方法がある。
【0112】
好ましくは、装置及び/又は伝送手段若しくは1個以上の電子伝送チップは、使用時にパルス化電磁信号がユーザーの皮膚又は身体に指向されるように装置に配置される。例えば、パルス化電磁信号は、筐体の第1の表面を通して指向させることができ、前記第1の表面は、ユーザーの皮膚と直接又は間接的に接触した状態となるように配置される。
【0113】
一実施形態において、本装置は、身体又はユーザの皮下に埋込み可能であるように配置される。例えば、本装置は、治療を必要とする身体の部位に埋め込まれる可能性がある。この実施形態において、本装置は、好ましくはインプラント(埋込み)である。
【0114】
好ましくは本装置の少なくとも外装は、身体への埋込みに好適な物質で被覆されている、及び/又はそれで形成されている。
【0115】
好ましくは、取付手段は、1つ以上のストラップ、ひも、ネックレス、ペンダント、ベルト、ブレスレット、クリップ、キーリング、ランヤード、VELCRO(登録商標)(面ファスナ)、ホック、ボタン、ボタン穴、接着剤、絆創膏、縫合糸、クリップ、生体適合性接着剤などのいずれか又はいずれかの組み合わせを含む。
一実施形態において、本装置には、使用時に人にトランスフェクトされることになるトランスフェクション試薬を、それぞれ保持する又は納めるための少なくとも1つの保持手段又はリザーバーが提供される。
【0116】
好ましくは、保持手段又はリザーバーは、本装置上に、使用時にそれが人の皮膚上に、及び/又はそれに隣接して位置することが可能であるように配置される。パルス化電磁信号を身体の1つ以上の部位に指向させることにより、人の皮膚を通じた、及び人の1つ以上の細胞への試薬の吸収、送達及び/又はトランスフェクションの向上を助けることができる。
【0117】
一実施形態において、パルス化電磁信号をユーザーの皮膚に指向させると、ユーザーの皮膚の透過性が改良され、使用時に少なくとも1つのネイキッド試薬の取込みの増加及び/又は向上が許容されると考えられる。典型的には、皮膚の透過性の改良は、少なくともパルス化電磁信号がユーザーの皮膚に指向されている期間にわたって起こる。典型的には、パルス化電磁信号の発信が止まった後にもユーザーの皮膚の透過性の改良は続くが、時間が経つと減弱する。
【0118】
一実施形態において、パルス化電磁信号の強度及び範囲は、電子機器の筐体がユーザーの皮膚の一部分に基づいて位置するとき、パルス化電磁信号が皮膚を通過してユーザーの体内に入り、好ましくは、前記ユーザーの皮膚の一部分に直接隣接する内部範囲に少なくとも隣接するのに十分である。
【0119】
本発明の一態様によれば、真核細胞におけるトランスフェクション効率及び/若しくは細胞内送達効率を増加させる方法並びに/又は真核細胞におけるトランスフェクション効率及び/若しくは細胞内送達効率を増加させるための装置が提供される。
【0120】
本発明の更なる態様によれば、トランスフェクトされた若しくはトランスフェクトされていない真核細胞のタンパク質発現を増加させる方法、及び/又はトランスフェクトされた若しくはトランスフェクトされていない真核細胞のタンパク質発現を増加させるための装置が提供される。
【0121】
本発明の一態様によれば、
a)1つ以上の真核細胞におけるトランスフェクション及び/又は細胞内送達に好適な少なくとも1つのネイキッド試薬を提供するステップ;
b)少なくとも1つのネイキッド試薬を患者に導入又は注入するステップであって、それにより患者の1つ以上の細胞のインビボでの少なくとも1つのネイキッド試薬によるトランスフェクション又は処理を許容するステップ
を含む、インビボで遺伝子療法を提供する方法であって、
本方法は、所与の周波数のいずれか又はいずれかの組み合わせで、所与のパルス率で、及び所与の出力で供給されたパルス化電磁信号を、少なくとも1つのネイキッド試薬を指向させる又は注入する前にステップa)で少なくとも1つのネイキッド試薬に、ステップb)において少なくとも1つのネイキッド試薬を患者に指向させている又は注入している間に患者に、及び/又はトランスフェクション又は処理ステップb)の後に患者に指向させるステップを含むことを特徴とする、方法が提供される。
【0122】
好ましくは、少なくとも1つのネイキッド試薬を患者に導入する方法は、経口的に、経皮的に、及び/又は皮下になどを含む。
【0123】
本発明の一態様によれば、
a)1つ以上の真核細胞におけるトランスフェクション及び/又は細胞内送達に好適な少なくとも1つのネイキッド試薬を提供するステップ;
b)混合物又はトランスフェクション混合物を形成するために、本方法より前に患者から採取した1つ以上の真核細胞に少なくとも1つのネイキッド試薬を導入するステップ;
c)1つ以上のトランスフェクトされた又は処理された真核細胞を形成するために、混合物又はトランスフェクション混合物が細胞内送達プロセス又はトランスフェクションプロセスを受けることを許容するステップ
を含む、インビトロで遺伝子療法を提供する方法であって、
本方法は、所与の周波数のいずれか又はいずれかの組み合わせで、所与のパルス率で、及び所与の出力で供給されたパルス化電磁信号を、混合物又はトランスフェクション混合物を生み出す前にステップa)で少なくとも1つのネイキッド試薬に、ステップb)において混合物又はトランスフェクション混合物に、ステップc)において混合物又はトランスフェクション混合物に、及び/又はトランスフェクション又は処理ステップc)の後にトランスフェクトされた又は処理された細胞の混合物に指向させるステップを含むことを特徴とする、方法が提供される。
【0124】
本発明の更なる態様によれば、
a)トランスフェクション及び/又は細胞内送達に好適なネイキッド核酸又はアントラサイクリン系薬剤を提供するステップ;
b)混合物又はトランスフェクション混合物を形成するために、ネイキッド核酸又はアントラサイクリン系薬剤を1つ以上の真核細胞に加えるステップ;
c)1つ以上のトランスフェクトされた又は処理された真核細胞を形成するために、混合物又はトランスフェクション混合物がトランスフェクションプロセス又は細胞内送達プロセスを受けることを許容するステップ
を含む、真核細胞におけるトランスフェクション効率及び/又は細胞内送達を向上させる方法であって、
本方法は、所与の周波数のいずれか又はいずれかの組み合わせで、所与のパルス率で、及び所与の出力で供給されたパルス化電磁信号を、混合物又はトランスフェクション混合物を生み出す前にステップa)でネイキッド核酸又はアントラサイクリン系薬剤に、ステップb)において混合物又はトランスフェクション混合物に、ステップc)において混合物又はトランスフェクション混合物に、及び/又はトランスフェクション又は細胞内送達ステップc)の後にトランスフェクトされた又は処理された細胞の混合物に指向させるステップを含むことを特徴とする、方法が提供される。
【0125】
本方法により患者の細胞がトランスフェクトされたか又は処理された後、次に細胞は、任意選択で、必要に応じてその患者又は別の患者に再導入して戻すことができる。
【0126】
本発明のある態様によれば、真核細胞における遺伝子療法の提供を支援するための装置が提供され、前記装置は、筐体と、前記筐体に位置し、使用時に所与の周波数のいずれか又はいずれかの組み合わせで、所与のパルス率で、又は所与の出力で供給されたパルス化電磁信号を伝送するように配置された伝送手段と、使用時に少なくとも伝送手段の操作を制御するための制御手段と、使用時に伝送手段及び/又は制御手段に電力を供給するための電力供給手段とを備える。
【0127】
本発明の更なる態様によれば、
- 1つ以上の真核細胞を提供するステップ
を含む、遺伝子及び/又はタンパク質発現を変化させる方法であって、
本方法は、所与の周波数のいずれか又はいずれかの組み合わせで、所与のパルス率で、及び所与の出力で供給されたパルス化電磁信号を真核細胞に指向させるステップであって、それにより前記1つ以上の真核細胞における遺伝子発現及び/又はタンパク質発現を変化させるステップを含むことを特徴とする、方法が提供される。
【0128】
一実施形態において、本方法は癌細胞を死滅させて、健全な細胞及び組織におけるDNA修復を増加させる。
【0129】
一実施形態において、本装置は、例えば、癌性組織における又はそれに隣接する一領域など、患者に埋込み可能であり、それにより癌性組織を治療する。この方法は、癌性組織が患者の皮膚から一層遠く離れている場合に有用であり得る。
【0130】
一実施形態において、本装置は、患者によって患者の皮膚に又はそれに隣接して装着され、例えば、黒色腫など、皮下腫瘍の近くに位置するなどの癌性組織に1つ以上の医薬品用試薬又は薬剤を送達するために、及び/又はウイルスを治療するために使用される可能性がある。
【0131】
したがって、一実施形態では、本装置を使用して患者の皮膚を通じてパルス化電磁信号を送達することにより、細胞のDNAとの直接的な相互作用によって癌性細胞のアポトーシス、細胞を促進し、及び/又はDNA損傷が修復されるように健全な細胞を生み出すのを支援することができる。
【0132】
一実施形態では、本装置を使用して患者の皮膚を通じてパルス化電磁信号を送達することにより、抗ウイルス効果が提供される。
【0133】
本発明の一態様において、本明細書に定義される方法のいずれか1つを用いて作製された細胞又はその子孫が提供される。
【0134】
本明細書においてトランスフェクション及び/又は細胞内送達効率の向上と言うとき、それは、少なくとも1つのネイキッド試薬によってトランスフェクトされた又は処理された細胞の数の増加及びトランスフェクション及び/又は細胞内送達プロセス後の細胞生存度の増加又は維持を指すことに留意すべきである。
【0135】
本発明は実験室ベースの環境で使用することができ、又は産業レベルの環境で使用されるようにスケールアップできることは理解されるであろう。
【0136】
以下に、本発明の具体的な実施形態を添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【
図1a】本発明の一実施形態に係る装置の図を示す。
【
図1b】本発明の一実施形態に係る装置の図を示す。
【
図2a】本発明の第2の実施形態に係る装置の図を示す。
【
図2b】本発明の第2の実施形態に係る装置の図を示す。
【
図4a】本発明のなおも更なる実施形態の立面図を示す。
【
図4b】本発明のなおも更なる実施形態の立面図を示す。
【
図5a】一実施形態において本発明を利用する試行を示す。
【
図5b】一実施形態において本発明を利用する試行を示す。
【
図6】一例において電子機器と共に使用され得る24ウェルプレートの例と併せて、本発明の一実施形態に係る装置を示し、ここで電子機器は、6個の伝送機チップのアレイを備える。
【
図7】本発明に係る実験からのウエスタンブロットを示す。
【
図8】本発明に係る実験からの更なるウエスタンブロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0138】
本発明の第1の実施形態において、真核細胞における1つ以上の試薬のトランスフェクション効率及び/又は細胞内送達を向上させるため、患者に1つ以上の治療的処置方法を提供するため、患者への医薬品用及び/又は治療用試薬の送達を増加させるため、及び/又は遺伝子発現、タンパク質発現を増加及び/又は減少させるためなどに使用することのできる電子機器の形態の装置1が提供される。
【0139】
機器は、所与の周波数で、所与のパルス率で、所与の出力レベルで、及び所与の期間にわたってパルス化電磁信号を発する能力を有する。所与のパラメーターは、製造者によって事前に設定されてもよく、又は要求に応じてユーザー選択可能なものであってもよい。本装置に用いられる技術は、以下では「本発明に係るパルス化技術」と称する。
【0140】
装置1は筐体2を含み、これはパルス化信号伝送システムを含んでいる。詳細には、この例では、パルス化信号伝送システムは、典型的には集積回路の一部として提供される、電子伝送チップ4の形態の伝送手段を備える回路基板7を含み、伝送手段は、使用時に機器が操作可能な状態にあるときパルス化電磁信号の伝送を許容する。
【0141】
一例において、筐体は、基面3と、基面の反対側の上面11と、上面11と基面3との間に位置する1つ以上の側壁13とを備える実験用トランスフェクションプレートの形態であり得る。
【0142】
装置1の選択的な操作を許容するため、制御ユニット10の形態の制御手段が提供され得る。データ、1つ以上の操作パラメーター、及び/又はソフトウェアなどを格納して必要なときに検索を許容するため、記憶装置6が提供される。制御ユニットは、好ましくは、データの処理などを許容する超小型演算処理手段を含む。
【0143】
装置1はまた、装置に電力を供給する1つ以上の電力セル10も含む可能性がある。任意選択で、電力セルを交換しなければならないのでなく、むしろ遠隔電源から充電することが許容されるように、充電可能設備もまた提供することができる。
【0144】
筐体2は、その使用目的に好適な任意の形態で提供されてよく、例えば処理される細胞が位置する容器の内部又は外部と共にそれが位置することを許容する係合手段が提供され得ることが理解されるであろう。或いは、筐体は、処理される細胞が位置する容器の一部として形成されてもよい。或いは更に、上面11が平面的な又は平らな表面を提供してもよく、その上に、細胞が処理される又は位置することになる容器を配置することができる。まだなおも更には、筐体の上面11に、例えば、細胞培養フラスコ、ペトリ皿又は他の細胞培養容器の形態の容器の配置を安定に支持するための凹部が画成されて、筐体2が容器の下に位置し、かつ容器が凹部に支持されるようになる可能性もある。
【0145】
電子伝送チップ4は、使用時に装置1からパルス化電磁信号を1つ又は複数の特定の方向に発するように筐体2に配置される。パルス化電磁信号の伝送方向は、典型的には、装置1がどのような目的で使用されるものなのかに依存することになる。例えば、装置1が実験用トランスフェクションプレートとして使用されるものである場合、信号は典型的には、上面11を通り、使用時に前記上面に位置させることが可能な容器に向かって指向される。装置がユーザーによる装着用に使用されるものである場合、信号は典型的には、基面3を通ってユーザーに向かうように指向される。
【0146】
本発明の一実施形態において、電子伝送チップは、使用時にユーザーの皮膚又は細胞リザーバーと接触することになる筐体2の表面からの間隔が5cm未満、好ましくは約1cmとなるように筐体2に配置される。これは、使用時にチップが発する電磁信号を患者の又は細胞リザーバー内にある真核細胞へと指向させることを許容する。
【0147】
本発明の装置は、室温(即ち約20℃)で、例えば冷蔵ユニット内など、室温よりも低い温度の中で使用されるように設計され、及び/又は例えばインキュベーターユニット内、又は患者の体内など、室温を上回る温度で使用することができる。
【0148】
一実施形態において、制御ユニット10は、伝送チップがパルス化電磁信号を2.45GHz±50MHzの周波数で、15Hzのパルス化周波数で、かつ約2mWの出力で発することを許容するために伝送チップを制御するようにプログラムされる。パルス化電磁信号に関連するパラメーターは、必要に応じて調整されてもよく、及び/又はユーザー選択可能なものであってもよいことは理解されるであろう。例えば、必要であれば、パルス化電磁信号を発する時間をユーザーが選択することができる。加えて、出力を調整することができ、ただしこれは、使用時に容器16内に納められた細胞に過剰なエネルギーが供給されるのを回避するため、典型的にはミリワット範囲に保たれる。一例において、パルス化信号は1ms間持続し、信号間の休止期間は66msである。これは、2%未満のデューティサイクルを提供する。
【0149】
一例において、電磁信号は、Bluetooth LEプロトコルのアドバタイズ機能を使用したRF信号であり、0.45~0.55の間のGFSKを用いて伝送される。
【0150】
しかしながら、使用時に電子装置により、工業、医療及び科学用周波数帯域幅(即ち、2.4~2.4835GHz、好ましくは2.45GHz±50MHz)の任意の周波数伝送が可能であり得ることに留意しなければならない。
【0151】
図1aに示される例では、装置がユーザーの要求に従い構成されることを許容するため、パルスの特定のパルス系列、周波数、タイミング、及び/又は強度の選択を許容する選択手段5が提供される。
【0152】
図1a及び
図1bに示される実施形態において、装置1は、患者の皮膚12の表面に直接位置させるように例示される。この例では、装置1をユーザーの身体に着脱可能に取り付けるためのバンド14の形態の取付手段が提供される。より詳細には、バンド15が患者の腕又は肢に巻き付けられ、それにより筐体2が患者の皮膚の一部分に対して所要の位置に固定される。或いは、皮膚と接触することになる筐体の基面3には、それを患者の皮膚に所要の位置で付着させることを許容するように、その上に接着剤が提供されてもよい。使用時に装置1が操作されると、筐体2から発せられるパルス化電磁信号22が患者の皮膚の少なくとも一部分に入り込み、恐らくは患者の身体の組織24及び細胞に更に入り込む。
【0153】
本発明の別の実施形態において、
図2a及び
図2bに示されるとおり、装置筐体2は薬剤送達「パッチ」25(「経皮パッチ」と称されることもある)の上に位置し、次にはそれが、ユーザーの皮膚12の一部分に付着される。この実施形態において、パルス化電磁信号22は筐体2から発せられ、パッチ25に指向されてそこに入り、パッチのうち試薬又は薬剤26を含む部分を通って皮膚12に至る。薬剤は、ユーザーの皮膚を通過することによってユーザーの組織及び細胞24へと送達される。パルス化電磁信号を使用すると、ユーザーの皮膚を通じた薬剤の吸収及び取込みが亢進する。
【0154】
本発明の別の実施形態において、
図3に示されるとおり、本装置は、埋込み可能な機器として提供される。より詳細には、本装置の筐体2は、ユーザーの皮膚12の下及び/又はユーザーの組織24に皮下埋込みされる無菌外装を提供する。埋め込まれると、本装置はそこからパルス化電磁信号22を発する。このインプラントは、信号22を所望の方向に、例えば癌性腫瘍28に向かって発するように位置する。
【0155】
本発明のなおも更なる実施形態において、
図4a及び
図4bに示されるとおり、本装置はペンダント36の形態で提供される。この図では、ペンダントはチェーン37に装着され、ペンダントが患者又は人39の咽喉/胸郭上部38の高さに位置するように配置される。次にはパルス化電磁信号22が、
図4aの矢印41によって指示されるとおり、ペンダントから着用者の身体へと指向される。ペンダント36の表面43は、ペンダントが所要の位置で装着されたときに人の最も近くに位置することが可能であるように配置される。
【0156】
一例において、本発明の装置は、ウイルス増殖を最小限に抑えるために、及び着用者に一層高い免疫学的防御を提供する手段として装着される可能性がある。したがって、この実施形態において、ペンダント36が咽喉/胸郭上部の高さに装着されるとき、着用者のこの決定的に重要な呼吸領域の免疫が高められる。
【0157】
典型的には、いずれの実施形態においても、本発明の装置は、所与の位置に局所的及び集中的な治療を提供するように選択されたユーザーの皮膚の一部分に、又はそれに隣接して提供される。
【0158】
例えば、本装置の目的が患者の癌性腫瘍に対する治療を提供することである場合、本装置は、例えば肝臓、腎臓、乳房又は骨に存在し得るなどの、認識されている癌性腫瘍に近接して位置するか、又はそこに埋め込まれる。或いは、本装置が、治療的利益を実現するため、又は感染症の可能性を制限若しくは防止するために提供されることになる場合、本装置は、患者の体外に、患者又は人の咽喉領域など、治療的又は予防的効果が最も有益になると考えられる患者の身体の一部分に隣接して位置してもよい。
【0159】
したがって、装置が患者の皮膚12上に直接位置する場合、パルス化電磁信号は皮膚を通じて腫瘍の中へと発せられ、腫瘍細胞の状態の変化を提供する。本装置が、例えば
図2a及び
図2bに示されるとおりのものなど、パッチ又は他の薬剤担持物品と併せて使用されることになる場合、そのとき薬剤は、従来可能であろうよりも容易に患者の皮膚を通過することが可能になる。パルス化電磁信号は、皮膚の細孔の孔径を増加させて、薬剤がそこを通過するためのより大きな空間を許容すると考えられる。したがって、医薬品用薬剤又は他の試薬は、本発明を用いると、一層効率的、かつ有効に送達することができる。加えて、現在は経皮的に提供することができない医薬品用薬剤又は他の試薬も、本発明の方法を用いると、ここでは身体内へと供給することができる。本発明の装置が提供されることにより、皮膚透過性の増加によって薬剤の送達が亢進するとともに、直接処理する利益が提供される。
【0160】
図5aに例示する本発明の例では、細胞培養物と、パルス化電磁信号を生成するための本発明に係る装置1との「サンドイッチ」配置を含む実例の組立体を作製した。結腸癌細胞を納める500ml培養容器32を装置の筐体2の下に配置し、健全な細胞を納める500ml培養容器34を装置の上に配置した。
【0161】
培養容器の第2の同一の組立体を、
図5bに示されるとおり、ただし本発明の装置なしに作製し、これを対照(コントロール)として供した。
【0162】
この試験の実施においては、これらの2つの組立体、実例及び対照の、培養物の「積み重ね」を別々のインキュベーターに37℃で18時間配置し、実例の組立体では、少なくとも前記18時間を通じた期間にわたって装置1を動作させて両方の方向40、42に電磁信号22を生成し、両方の容器32、34に通過させた。
【0163】
次に結果を顕微鏡観察によって評価し、p53タンパク質発現をウエスタンブロット及び分光光度法によって分析した。
【0164】
顕微鏡検査では、細胞の数及びその状態の点で、実例培養物と対照培養物との間に特徴のある大きな違いが示された。実例の組立体における健全な細胞34は劇的な増殖を示し、組織を形成しようとして一体に集塊をなしていた一方、癌組織32では、細胞増殖は中断されていた。
【0165】
図6を参照すると、更なる実施形態に係るパルス化電磁信号を提供するための装置102の更なる例が示されている。本発明の一部の装置は、パルス化電磁信号を伝送するために単一の電子チップを含み得るが、
図6は、パルス化電磁信号を伝送するために6個の電子チップ104のアレイを有する装置102を示す。
図3は、電子チップ104を装置102の上にあるものとして示すが、これは単に明確にするためにこのように示されるに過ぎず、チップ104は実際には装置102の範囲内に納まっている。筐体204は、基部105と、基部105の反対側の上面107と、基部105と上面107との間に位置する側壁109(複数)とを含む。
【0166】
6個の電子チップ104は、ある空間距離を離して装置102に提供される。チップ間の間隔は任意の所要の距離であり得るが、一例では、チップは、使用時に24ウェルセルプレート106が装置の上面7に位置するとき、1個の伝送チップ104がウェルのうち4つの中心に位置するような間隔を離して置かれる。したがって、24ウェルセルプレートにつき各電子チップ102が4つのウェルにパルス化電磁信号を指向させる。装置102上にはオン/オフ操作スイッチ108が提供され、使用時に装置をオン状態とオフ状態との間で動かす。
【0167】
簡単な概要として、一例では、真核細胞とネイキッド核酸(DNA、RNA又はいずれかの小断片)とを合わせた分散体を含む物質が、一実施形態では102上に位置する培養容器、フラスコ又はディッシュなどの好適な容器に納められ、装置からパルス化電磁信号が発せられ、容器の壁を通じて物質内へと指向する。
【0168】
本発明のパルス化技術は、例えば核酸に対するなど、トランスフェクションが行われる前の1つ又は複数のネイキッド試薬に対して用いることができる。本発明のパルス化技術は、1つ又は複数のネイキッド試薬と真核細胞とを含む混合物又はトランスフェクション混合物に対してもまた用いることができ、又は代わりにそれに対して用いることができる。加えて、又は代わりになおも、本発明のパルス化技術は、トランスフェクション及び/又は細胞内送達が行われた後の細胞に対し、及び/又はトランスフェクション及び/又は細胞内送達を受けていない真核細胞に対し、そうした細胞のタンパク質発現を増加させるために用いることができる。
【0169】
本発明を例示するために用いられる以下の実験では、種々の真核細胞株と混合する前の1つ又は複数のネイキッド試薬に対して、及び/又はトランスフェクションプロセス及び/又は細胞内送達プロセス中に1つ又は複数のネイキッド試薬と混合した真核細胞株に対して、本発明の同じパルス化技術が用いられた。
【0170】
処理の24時間前に、2つのCELLSTAR(登録商標)6ウェルプレート(9.6cm2)にある5mLの最終容積のダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(Thermo Fisher、米国)+10%ウシ胎仔血清(FBS)(Hyclone、米国)にヒト結腸腫瘍(HCT)116細胞(付着細胞)(ATCC、米国-ATCC(登録商標)CCL-247(商標))を各ウェルにつき3×105細胞の密度で播種した。
【0171】
使用したネイキッド試薬は、無水エタノール中のドキソルビシン(0.25μM)(Sigma Aldrich)であり、これを1時間の処理期間にわたって細胞に与え、5%CO2にて37℃で培養した。
【0172】
処理後、培地を除去し、細胞に新鮮培地を加えた。プレートの一方は、5%CO2にて37℃で直接培養し、第2のプレートは別のインキュベーターに配置し、本発明のパルス化技術を用いて5%CO2にて37℃でパルス処理した。
【0173】
3時間、6時間、9時間、16時間又は24時間処理した時点でタンパク質抽出物を回収し、SDS-PAGEによる分析にかけた。
【0174】
参考文献[5]に、以下のウエスタンブロットプロトコルが提示される。
【0175】
<ウエスタンブロット用のタンパク質抽出物の調製>
1.タンパク質抽出のため、細胞を氷冷PBSで2回洗浄し、次に、1×Complete(商標)プロテアーゼ阻害薬カクテル(Roche、スイス)を補足したNP-40抽出緩衝液(50mMトリス pH7.5;10%グリセロール;0.1%「NP-40 Alternative」(Merck Millipore、米国);100mM NaCl;0.2mM EDTA)で溶解させた。抽出物を超音波処理し(20秒、20%振幅)、BCA(商標)タンパク質アッセイキット(ThermoFisher Scientific、米国)を製造者の推奨に従い使用してタンパク質濃度を決定した。
【0176】
<ウエスタンブロットプロトコル>
1.タンパク質抽出物(実験に応じて15/20μg)に、0.1Mジチオスレイトール(DTT)及び1×LDS緩衝液(Invitrogen、米国)を補足し、95℃で10分間加熱した後、NuPAGE 10%ビス-トリスポリアクリルアミドゲル(Invitrogen、米国)にロードした。
【0177】
2.1×MOPSランニング緩衝液を用いた電気泳動法(100V)によってタンパク質試料を分離した。20%メタノールを補足した1×転写緩衝液中でニトロセルロース膜(GE Healthcare、米国からのProtran 0.1μm)へのタンパク質の転写を12Vで一晩実施した。1×転写緩衝液は、144gのグリシン及び30gトリス塩基を含有する10×ウエスタンブロット溶液から1LミリQ水の最終容積で調製する。
【0178】
3.PBS-0.1%Tween20中に希釈した5%BSAで膜を30分間ブロックした後、一次抗体(マウスモノクローナル抗体DO1)と共に一晩培養した。PBS-Tween20で15分間洗浄した後、対応する二次抗体(HRPコンジュゲートロバ抗マウス)と共に膜を1時間培養した。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)がコンジュゲートされた二次抗体は全て、Jackson ImmunoResearch labから購入し、5%BSA-PBS-Tween20中1:10000/1:15000希釈(抗体に応じて)で使用した。
【0179】
培養終了時に膜をPBS-Tween20で15分間、2回洗浄し、続いてPBSで10分間、最終洗浄した。Hyperfilm(商標)ECL(Cytiva、米国)でAmersham ECLウエスタンブロッティング検出システム(Cytiva、米国)を用いて化学発光シグナルを検出した。
【0180】
結果
図7を参照すると、ウエスタンブロットから、本発明に係るパルス化技術による処理後にp53α - p53タンパク質の主要なアイソフォーム - が上方制御されたことが見て分かる。この効果は、薬剤を加えて3時間経つと間もなく認められ、処理の24時間後に最も明らかであった。p53の他のアイソフォーム、即ち、d133p53α、d133p53β及びd160p53βもまた、ドキソルビシン処理後に本発明に係るパルス化技術の効果を受けて更に上方制御された。
【0181】
ウエスタンブロットでは、γH2AXをマーカーとして使用することにより、何らかの効果が認められた場合に、それが電離放射線に起因して生じたのではないことを確実にした。γH2AXの発現は電離放射線が存在するとき変化し、本発明に係るパルス化技術と対照とのアーム間に認められる変化はないため、本発明のパルス化技術は電離放射線を発しなかったと結論付けた。
【0182】
Ku80をローディング対照として使用することにより、各ウェルに等濃度の各試料がロードされたことを確実にした。Ku80の濃度が等しいと、ウエスタンブロットで残りのバンドが同等になる。
【0183】
図8を参照すると、別の実験では、一部の細胞を本発明のパルス化技術によって処理し、一部の細胞は対照として本発明のパルス化技術を受けず、5日間ドキソルビシンを加えなかった。p53α発現の変化は認められなかった。細胞に0.25μMドキソルビシンを1時間加えたとき、本発明に係るパルス化技術の効果を受けている細胞は、16時間後に対照と比較してp53αの有意な過剰産生を示した。
【0184】
結論として、対照アームと比較してパルス化技術アームで様々なp53アイソフォームが一層上方制御されたとおり、本発明に係るパルス化技術で細胞を処理すると、細胞が培地からドキソルビシンを取り込む能力が増加するという明らかなエビデンスがある。パルス化技術アームと対照アームとの間で放射線マーカーgH2AXが変化しないままであったとおり、この効果は電離放射線によって生じるのではないと結論付けることができる。
【0185】
したがって、抗癌薬の送達亢進と、本発明に係るパルス化技術の直接的な処理との組み合わせ効果により、p53癌遺伝子を介した複製の調節が有益な影響を受け、癌の治療が向上する。更に、本発明のパルス化技術が健全な細胞の非突然変異型p53に及ぼす効果により、それらの細胞の修復が増加することになる。
【0186】
上記の例は、ドキソルビシンの形態のネイキッド試薬の細胞内送達が、HCT 116細胞の形態の真核細胞及びドキソルビシンを本発明のパルス化技術に曝すことに伴い有意に向上することのみを示しているが、本出願人らは、1つ以上の真核細胞(HCT 116細胞又は他の真核細胞を使用する)へのドキソルビシン以外の1つ以上のネイキッド試薬の細胞内送達が、それを本発明のパルス化技術に曝すと有意に向上するであろうことを全面的に期待し、予想している。本出願人らはまた、少なくとも1つのネイキッド試薬が、1つ以上の真核細胞と混合する前に(単独か、又は混合物若しくはトランスフェクション混合物を本発明のパルス化技術に曝すことに加えるかのいずれかで)、及び/又は細胞内送達及び/又はトランスフェクションステップが行われた後に本発明のパルス化技術に曝されたとき、1つ以上のネイキッド試薬の細胞内送達が更に有意に向上するであろうことも全面的に期待し、予想している。このような予想及び期待は、英国特許出願第2004412.9号明細書、同第2009296.1号明細書、同第2004411.1号明細書及び同第2009297.9号明細書(これらの内容は参照により本明細書に援用される)からの優先権を主張する本出願人らの同時係属出願において本出願人らが既に収集したデータに基づいており、これらの特許出願は、a)真核細胞を加える前のトランスフェクション混合物;b)トランスフェクション混合物と真核細胞とを含むトランスフェクション複合体、及び/又はc)トランスフェクションプロセスの最中及び/又はその後に本発明のパルス化技術に曝したとき、両親媒性構造体と会合した1つ以上のトランスフェクション試薬の真核細胞におけるトランスフェクション効率が有意に向上することを示すものである。本願の特許請求の範囲の広さについてサポートを示すため、これらの実験のデータを以下に再掲する。本出願人は、試薬を両親媒性構造体と会合したときのトランスフェクション効率及び/又は細胞内送達の向上について、「ネイキッド試薬」(即ち両親媒性構造体と会合していない)が使用されるときと同じ又は類似の機序を予想する。これは、本発明に係るパルス化した電磁波又は電磁信号が、比較的長い休止又は緩和期間でH2Oをその双極子の周りに周期的に回転させるのに十分であると考えられることが理由である。H2Oの周期的回転は、真核細胞のリン脂質二重層又は細胞膜の水素結合を遮断すると考えられる。したがって、細胞膜のこの周期的又は断続的な低エネルギーの摂動が、例えば、核酸又は試薬と細胞膜など、試薬、一部の分子及び/又は細胞膜及びそれらの環境との相互作用の増加を刺激すると考えられる。パルス化電磁信号のパルス間の比較的長い休止又は緩和期間は、細胞の完全性を維持するのに十分であると考えられる。
【0187】
本出願人の同時係属中の特許出願から引用する以下の実験では、種々の真核細胞株と混合する前のトランスフェクション混合物(トランスフェクション試薬+両親媒性構造体)に対して、及び/又はトランスフェクションプロセス中にトランスフェクション混合物と混合した真核細胞株に対して、本発明の同じパルス化技術が用いられた。
【0188】
実験で使用した核酸は、アルギニンバソプレシン(AVP)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーター、又はインスリン様成長因子結合保護(protection)3(IGFBP3)プロモーターを含むDNAプラスミド物質を含んだ。サイトメガロウイルス(Adluc)プラスミド、ルシフェラーゼ対照ベクター(Renilla)プラスミド又は緑色蛍光タンパク質(GFP)プラスミドもまた使用した。
【0189】
実験で使用した両親媒性構造体は、カチオン重合体(Turbofect(登録商標))(Thermo Fisher、米国)、ポリエチレンイミン(PEI)(Fisher Scientific、米国)、又はTransIT2020(Mirus Bio、米国)を含有するいずれかのトランスフェクション試薬であった。
【0190】
実験で使用した細胞株は、チャイニーズハムスター卵巣-K1(CHO)細胞(付着細胞)(ATCC、米国-ATCC(登録商標)CCL-61(商標))、ヒト胎児腎臓(HEK)293 freestyle細胞(懸濁細胞)(Thermo Fisher、米国)、ヒト結腸腫瘍(HCT)116細胞(付着細胞)(ATCC、米国-ATCC(登録商標)CCL-247(商標))又はジャーカットE6(懸濁T細胞)(ECACC)、英国)であった。
【0191】
上記の構成要素を用いて細胞トランスフェクションプロセス効率を決定するため、好適な装置を使用してルシフェラーゼ活性又は緑色蛍光タンパク質の量を測定した。
【0192】
選択したDNAプラスミド物質を公知の技法を用いて両親媒性構造体と複合体化することにより、トランスフェクション混合物を形成した。一部の実験では、このトランスフェクション混合物を本発明のパルス化技術に供した。次にトランスフェクション混合物(パルス化技術への曝露有り又は無し)を好適な細胞培養容器内にある哺乳類細胞株のうちの1つの分散液中に混合し、トランスフェクション複合体を形成した。次にこの細胞培養容器を本発明の装置筐体に配置し、所与の期間にわたって先述のとおりのパルス化技術に供した。次にパルス化電磁信号の発信を停止させて、物質を平衡に至らせた。加えて、同じ物質及び混合要件を用いて全く同様に、ただし本発明のパルス化技術の非存在下で、対照実験もまた行った。
【0193】
実験に用いた方法論の更に詳細な説明、結果及び知見を以下に提供する。
【実施例】
【0194】
<<方法論>>
<<実験1-Adluc及びRenillaプラスミドを使用した、及びPEI又はTurbofectのいずれかを両親媒性構造体として使用した付着CHO K1及びHCT116細胞のトランスフェクション>>
この実験は、PEI(Fisher Scientific、米国)又はTurbofect(Thermo Fisher、米国)のいずれかの両親媒性構造体中のAdluc及びRenillaプラスミドを使用した付着チャイニーズハムスター卵巣(CHO)K1細胞(ATCC、米国)及びHCT116(ヒト結腸癌細胞株)(ATCC、米国)におけるトランスフェクションのプロセスに本発明のパルス化技術が及ぼす効果を調べるために行った。パルス化技術は、a)トランスフェクションプロセス中の細胞及びトランスフェクション混合物(トランスフェクション複合体)のみ;及びb)細胞とのトランスフェクション複合体を形成する前のトランスフェクション混合物及び次にトランスフェクションプロセス中のトランスフェクション複合体に適用した。
【0195】
<消耗品>
Opti-MEM(商標)I低血清培地(Thermo Fisher、米国)
ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(Thermo Fisher、米国)
ウシ胎仔血清(FCS)(Hyclone、米国)
2×24ウェルプレートNunc(1.9cm2/ウェル)(Thermo Fisher、米国)
200ngのAdLucプラスミド/ウェル(ルシフェラーゼ発現プラスミド/DNA)(英国ダンディー大学が作製)
2ng Renillaプラスミド/ウェル(ルシフェラーゼ発現プラスミド/DNA)(英国ダンディー大学が作製)
Alfa Aesar(商標)ポリエチレンイミン、線状、分子量25,00(PEI)(Fisher Scientific、米国)
Turbofect(Thermo Fisher、米国)
【0196】
<方法ステップ>
<対照 - PEIを使用>
1.650μLのOpti-MEM培地を第1のチューブ内で2.6μgのAdLucプラスミド及び26ngのRenillaプラスミドと混合した;
2.650μLのOpti-MEM培地を第2のチューブ内で7.88μgのPEIと混合した;
3.Vortex-Genie2、モデルG560E、(Scientific Industries、米国)を使用して第2のチューブの内容物を第1のチューブに滴下する方式で穏やかにボルテックス(渦巻き)しながら混合し、1.3mLの最終容積の混合物を実現させた;
4.トランスフェクション混合物を室温(約20℃)で15分間培養した;
5.次に100μLのこの培養したトランスフェクション混合物を、2つの24ウェルプレート(プレート1及び2)の各々のA1~A6と名付けたウェルに分注した。これがトランスフェクション混合物を形成した。
【0197】
<発明 - トランスフェクション複合体が生み出される前のトランスフェクション混合物に対するパルス化技術有り、PEIを使用>
1.次に、上記のステップ1~3を繰り返し、ただし、ステップ4において-トランスフェクション混合物を形成する混合物は、第1のチューブを本発明に係るパルス化電磁信号機器上に位置させることにより、室温(約20℃)で15分間培養した。パルス化機器は、上記に記載したとおり動作する(即ち、パルス化機器は、2.45GHz±50MHzで、出力2mWで、15Hzのパルス化周波数を用いて動作させた)。
2.100μLのこの培養したパルス化トランスフェクション混合物を、2つの24ウェルプレート(プレート1及び2)の各々のB1~B6と名付けたウェルに分注した。
【0198】
<対照 - Turbofectを使用>
1.650μLのOpti-MEM培地を第1のチューブ内で2.6μgのAdLucプラスミド及び26ngのRenillaプラスミドと混合した;
2.13μLのTurbofectを加え、Vortex-Genie 2、モデルG560E、(Scientific Industries、米国)を使用してボルテックスすることにより混合した;
3.トランスフェクション混合物を室温(約20℃)で15分間培養した
4.100μLのこの培養したトランスフェクション混合物を、2つの24ウェルプレート(プレート1及び2)の各々のC1~C6と名付けたウェルに分注した。
【0199】
<発明-トランスフェクション複合体が生み出される前のトランスフェクション混合物に対するパルス化技術有り、Turbofectを使用>
1.Turbofect対照についての上記のステップ1~2を繰り返した。ステップ3において-トランスフェクション混合物は、第1のチューブを本発明に係るパルス化電磁信号機器上に位置させることにより、室温(約20℃)で15分間培養した。パルス化機器は、2.45GHz±50MHzで、出力2mWで、15Hzのパルス化周波数を用いて動作させた。
2.100μLのこの培養したパルス化トランスフェクション混合物を、2つの24ウェルプレート(プレート1及び2)の各々のD1~D6と名付けたウェルに分注した。
【0200】
<細胞株をプレート1及び2に加えた>
- プレート1及び2について、CHO K1細胞又はHCT116細胞のいずれかを2つの24ウェルプレートの各ウェルに2×104細胞/ウェルで加えることによりトランスフェクション複合体を生み出し、次に最終容積が600μLのダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)+10%ウシ胎仔血清(FCS)となるように構成した。詳細には、A1~A3,B1~B3、C1~C3及びD1~D3にCHO K1細胞が加えられた;A4~A6、B4~B6、C4~C6及びD4~D6にHCT 116細胞が加えられた;
- プレート1及び2をインキュベーターにおいて37℃、5%CO2で3時間培養した;
- プレート1では、3時間の培養段階にある間、トランスフェクション複合体にパルス化技術は与えられなかったが、一方、プレート2は、培養段階にある間、本発明に係るパルス化技術に3時間供された。
- 4時間後、Turbofectトランスフェクション試薬を含有するDMEMをウェルにいっぱいになるまでつぎ足した。
- 各実験条件について3つのウェルの平均値を測定し、記録した。
【0201】
場合によっては、上記の実験は、パルス化機器に単一の伝送機のみが提供される第1のタイプのパルス化技術を用いて行った(テクニック1パルス化技術)。場合によっては、上記の実験は、パルス化機器に複数の伝送機のアレイが使用される第2のタイプのパルス化技術を用いて行った(テクニック2パルス化技術)。詳細には、タイプ2のパルス化技術を用いた実験では、6個の伝送機が提供され、プレートがパルス化機器上に位置するときに各伝送機が24ウェルプレートの4つのウェルの中心に又は実質的に中心に配置された。
【0202】
<<ルシフェラーゼアッセイプロトコル - デュアルルシフェラーゼレポーターアッセイシステム(Promega、米国)を使用>>
<方法ステップ>
1.トランスフェクション実験を行った24時間後、細胞から培地を取り除いた。
2.細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄した。
3.100μLの1×受動的溶解緩衝液(Promega、米国)を細胞に加えた。
4.細胞をBelly Dancer(登録商標)オービタルシェーカー(Sigma、Aldrich)において穏やかに揺らしながら37℃で15分間培養した。
5.各ウェルから10μLの細胞を取り、白色96ウェルプレートに配置した。
6.細胞をマイクロプレートルミノメーターLB 96V(EG & G Berthold、独国)でデュアルルシフェラーゼアッセイシステムプロトコル(Promega、米国)を用いて分析した。
7.分析は、30μLルシフェラーゼアッセイ試薬II(Promega、米国)を注入してホタルルシフェラーゼ活性を測定し、次に30μL Stop&Glo(商標)試薬を注入してホタルルシフェラーゼをブロックし、ウミシイタケルシフェラーゼ活性を測定することにより行った。
8.次に、必要であればウエスタンブロットにかけるため、溶解させた抽出物を-20℃に保った。
9.細胞におけるトランスフェクション効率は、細胞をIncucyte(登録商標)生細胞分析システム(Essen Bioscience、米国)に72~96時間配置することにより行った。データはExcel(登録商標)に収集し、分析した。
【0203】
<<実験の結果1>>
表1は、テクニック1パルス化技術をTurbofect両親媒性構造体及び関連する方法論と共に用いたCHO K1細胞実験の結果を示す。
<表1(テクニック1パルス化技術)>
【表1】
対照と比較したパルス化技術における%増加率-178%
対照と比較したパルス化技術における平均増加倍数-1.8
t検定-0.024
【0204】
表2は、テクニック2パルス化技術をTurbofect両親媒性構造体及び関連する方法論と共に用いたCHO K1細胞実験の結果を示す。
<表2(テクニック2パルス化技術)>
【表2】
対照と比較したパルス化技術における%増加率-232.7%
対照と比較したパルス化技術における平均増加倍数-2.3
t検定-0.044
【0205】
表3は、パルス化技術をTurbofect両親媒性構造体及び関連する方法論と共に用いたHCT 116細胞実験の結果を示す。
<表3>
【表3】
対照と比較したパルス化技術における%増加率-138.5%
対照と比較したパルス化技術における平均増加倍数-1.4
t検定-0.044
【0206】
表1及び表2を参照すると、対照及び本発明に係るパルス化技術(Pulzar)について、Turbofect両親媒性構造体と会合したCHO K1細胞におけるトランスフェクション効率が示される。各条件につき3レプリケートが含まれる。全ての細胞について、ルシフェラーゼ活性(即ちトランスフェクション)の尺度として発光量を測定した。
【0207】
テクニック1パルス化技術を用いたCHO K1細胞におけるトランスフェクション効率は、対照細胞と比較して有意に向上したことが見て分かり、t検定値は0.024、平均増加倍数は1.8、そして%増加率は178.0であった。
【0208】
また、テクニック2パルス化技術を用いたCHO K1細胞におけるトランスフェクション効率が対照細胞と比較して有意に向上したことも見て分かり、t検定値は0.044、平均増加倍数は2.3、そして%増加率は232.7であった。
【0209】
更に、テクニック2パルス化技術(即ち6個の電子伝送機チップアレイ)で行われた実験では、テクニック1パルス化技術を用いて行われた実験よりも有意に良好な結果が生じたことが見て分かる。
【0210】
表3を参照すると、対照及び本発明に係るパルス化技術(Pulzar)について、Turbofect両親媒性構造体と会合したHCT 116細胞におけるトランスフェクション効率が示される。各条件につき3レプリケートが含まれる。全ての細胞について、ルシフェラーゼ活性の尺度として発光量を測定した。
【0211】
パルス化技術を用いたHCT 116細胞におけるトランスフェクション効率は、対照細胞と比較して有意に向上したことが見て分かり、t検定値は0.044、増加倍数は1.4、そして%増加率は138.5であった。
【0212】
したがって、本発明のパルス化技術により、パルス化技術を用いない場合と比較して、付着CHO K1細胞及びHCT 116細胞におけるトランスフェクション効率が有意に増加したと結論付けることができる。更に、6個の電子伝送機により、単一の電子伝送機のみを使用した場合と比較して、トランスフェクション効率の更なる増加が生じた。
【0213】
<<実験2-IGFBP3プロモーターを納めるプラスミド又はSV40プロモーターを納めるプラスミドのいずれか、及び両親媒性構造体としてPEIを使用した付着HCT細胞のトランスフェクション>>
実験2は、PEI(Fisher Scientific、米国)両親媒性構造体にIGFBP3プロモーター又はSV40プロモーターのいずれかを納めるAdluc及びRenillaプラスミドを使用した付着HCT116(ヒト結腸癌細胞株)(ATCC、米国)のトランスフェクションのプロセスに本発明のパルス化技術が及ぼす効果を調べるために行った。実験2については、実験1の方法論に従った。
【0214】
<<実験2の結果>>
<表4>
表4は、PEI両親媒性構造体及び関連する方法論を使用したIGFBP3プロモーターについてのHCT 116細胞実験の結果を示す。
【表4】
%増加倍数=168.4991974
t検定p<0.004154274
【0215】
<表5>
表5は、PEI両親媒性構造体及び関連する方法論を使用したSV40プロモーターについてのHCT 116細胞実験の結果を示す。
【表5】
%増加倍数=155.2371016
t検定p<0.026953884
【0216】
表4及び表5を参照すると、対照及び本発明に係るパルス化技術(Pulzar)について、IGFBP3プロモーター又はSV40プロモーターのいずれかを納める、かつPEI両親媒性構造体と会合したDNAプラスミドのHCT 116細胞におけるトランスフェクション効率が示される。3レプリケートの各条件につき2つの実験を行った。全ての細胞について、ルシフェラーゼ活性の尺度として発光量を測定した。
【0217】
パルス化技術を用いたHCT 116細胞におけるトランスフェクション効率(IGFBP3プロモーターによって示される)は、対照細胞と比較して有意に向上したことが見て分かり、t検定値は0.004、及び%増加率は168.5であった。
【0218】
パルス化技術を用いたHCT 116細胞におけるトランスフェクション効率(SV40プロモーターによって示される)は、対照細胞と比較して有意に向上したことが見て分かり、t検定値は0.027、及び%増加率は155.2であった。
【0219】
したがって、本発明のパルス化技術により、パルス化技術を用いない場合と比較して、付着HCT 116細胞におけるトランスフェクション効率が有意に増加したと結論付けることができる。
【0220】
<<実験3-GFPプラスミド及び両親媒性構造体としてPEIを使用した懸濁HEK 293Freestyle細胞のトランスフェクション>>
この実験は、PEI両親媒性構造体中の緑色蛍光タンパク質(GFP)プラスミドを使用したヒト胎児腎臓(HEK)懸濁細胞293Freestyleのトランスフェクションのプロセスに本発明のパルス化技術が及ぼす効果を調べるために行った。パルス化技術は、トランスフェクションプロセスの間の細胞及びトランスフェクション試薬のみに適用した。
【0221】
<消耗品>
Opti-MEM(商標)I低血清培地(Thermo Fisher、米国)
緑色蛍光タンパク質(GFP)プラスミド(英国ダンディー大学が作製)
293-Freestyle懸濁細胞(Thermo Fisher、米国)
293-Free発現培地(Sigma-Aldrich、米国)
Alfa Aesar(商標)ポリエチレンイミン、線状、分子量25,00(PEI)(Fisher Scientific、米国)
【0222】
<パルス化技術が試薬及び細胞混合物に対してのみ使用される場合の方法ステップ>
1.トランスフェクション前日に6×105~7×105個の293-F細胞/mLを播種する。
2.トランスフェクション当日に細胞数をカウントし、必要であれば密度が1×106細胞/mLとなるように細胞を希釈する。
3.15μgの緑色蛍光タンパク質(GFP)プラスミド/フラスコを30μLの293-Free発現培地/フラスコでトランスフェクトする。
4.1:2のDNA:PEI比を用いる。
5.製造者の指示に従い293-Free発現培地を用いる。(https://www.sigmaaldrich.com/content/dam/sigma-aldrich/docs/SAJ/Brochure/2TB5515.pdf)-ユーザープロトコルTB515 Rev.B 0411JN[4]
6.DNA-トランスフェクション混合物を調製するため:
- フラスコに2.4mLのOpti-MEMを加える。
- フラスコに30μgのGFPプラスミドを加える。
60μLの293-Free発現培地を加える。
- 得られた混合物容積を2つの125mLエルレンマイヤー(Erlennmeyer)フラスコに分割し、各々に28.8mLの293発現培地中1×106細胞/mLを納める;
- 2つのフラスコを2つの別個のインキュベーターにおいてBellydancerオービタルシェーカー(Sigma、Aldrich)上125rpmで8%CO2、37℃にて培養する。フラスコのうちの一方は、インキュベーターのうちの一方において本発明に係るパルス化技術を用いて3時間パルスし、他方のフラスコは、第2のインキュベーターにおいていかなるパルス化技術もなしに培養する。3時間後、両方のフラスコとも、いかなるパルス化技術もない同じインキュベーターに配置することにより、必要に応じた長さの時間(この実験の場合は120時間)にわたって時間の経過に伴うトランスフェクション効率の測定を許容する。
【0223】
<実験3 結果>
対照及び本発明に係るパルス化技術(Pulzar)について、HEK 293 Freestyle懸濁細胞におけるPEI両親媒性構造体と会合したGFPプラスミドのトランスフェクション効率を測定した。
【0224】
パルス化技術を用いたHEK 293 Freestyle懸濁細胞におけるトランスフェクション効率(平均緑色蛍光量の測定値によって示される)は、対照細胞と比較して有意に向上し、0.05未満のt検定値及び2.3倍高いGFP発現のピーク増加が認められた。
【0225】
パルス化技術を用いたHEK 293 Freestyle懸濁細胞におけるトランスフェクション効率(平均緑色蛍光量の測定値によって示される)は、対照細胞と比較して有意に向上し、0.05未満のt検定値及び50%を超えるGFP発現の増加が認められた。実験期間全体を通じてデルタを計算してGFP発現の%増加率をマークした。
【0226】
したがって、本発明のパルス化技術により、パルス化技術を用いない場合と比較して、HEK 293 Freestyle懸濁細胞におけるトランスフェクション効率が有意に増加したと結論付けることができる。
【0227】
<<実験4-Adluc及びRenillaプラスミドを使用した、かつPEI又はTransIT2020のいずれかを両親媒性構造体として使用した懸濁ジャーカットE6細胞のトランスフェクション>>
この実験は、PEI(Fisher Scientific、米国)又はTransIT2020(Mirus Bio、米国)のいずれかの両親媒性構造体中のAdluc及びRenillaプラスミドを用いたジャーカットE6細胞(ヒト白血病T細胞リンパ芽球細胞)(European Collection of Authenticated Cell Cultures(ECACC)、英国)におけるトランスフェクションのプロセスに本発明のパルス化技術が及ぼす効果を調べるために行った。パルス化技術は、a)トランスフェクションプロセス中の細胞及びトランスフェクション混合物(トランスフェクション複合体)のみ;及びb)細胞とのトランスフェクション複合体を形成する前のトランスフェクション混合物及び次にトランスフェクションプロセス中のトランスフェクション複合体に適用した。
【0228】
<消耗品>
Opti-MEM(商標)I低血清培地(Thermo Fisher、米国)
ウシ胎仔血清(FCS)(Hyclone、米国)
RPMI培地(Sigma-Aldrich、英国)
2×24ウェルプレートNunc(1.9cm2/ウェル)(Thermo Fisher、米国)
1μgのAdLucプラスミド/ウェル(ルシフェラーゼ発現プラスミド/DNA)(英国ダンディー大学が作製)
80ng Renillaプラスミド/ウェル(ルシフェラーゼ発現プラスミド/DNA)(英国ダンディー大学が作製)
Alfa Aesar(商標)ポリエチレンイミン、線状、分子量25,00(PEI)(Fisher Scientific、米国)
TransIT2020(Mirus Bio、米国)
【0229】
<方法ステップ>
<対照 - PEIを使用>
1.650μLのOpti-MEM培地を第1のチューブ内で13μgのAdLucプラスミド及び1μgのRenillaプラスミドと混合した;
2.650μLのOpti-MEM培地を第2のチューブ内で42μgのPEIと混合した;
3.Vortex-Genie2、モデルG560E、(Scientific Industries、米国)を使用して第2のチューブの内容物を第1のチューブに滴下する方式で穏やかにボルテックスしながら(渦を作りながら)混合し、1.3mLの最終容積の混合物を実現させた;
4.トランスフェクション混合物を室温(約20℃)で15分間培養した;
5.次に100μLのこの培養したトランスフェクション混合物を、2つの24ウェルプレート(プレート1及び2)の各々のA1~A6と名付けたウェルに分注した。これがトランスフェクション混合物を形成した。
【0230】
<発明 - トランスフェクション複合体が生み出される前のトランスフェクション混合物に対するパルス化技術有り、PEIを使用>
1.次に、上記のステップ1~3を繰り返し、ただしステップ4において-トランスフェクション混合物を形成する混合物は、第1のチューブを本発明に係るパルス化電磁信号機器上に位置させることにより、室温(約20℃)で15分間培養した。パルス化機器は、上記に記載したとおり動作する(即ち、パルス化機器は、2.45GHz±50MHzで、出力2mWで、15Hzのパルス化周波数を用いて動作させた)。
2.100μLのこの培養したパルス化トランスフェクション混合物を、2つの24ウェルプレート(プレート1及び2)の各々のB1~B6と名付けたウェルに分注した。
【0231】
<対照 - TransIT2020を使用>
5.700μLのOpti-MEM培地を第1のチューブ内で13μgのAdLucプラスミド及び1μgのRenillaプラスミドと混合した;
6.42μLのTransIT2020を加え、Vortex-Genie 2、モデルG560E、(Scientific Industries、米国)を使用してボルテックスすることにより混合した;
7.トランスフェクション混合物を室温(約20℃)で15分間培養した
8.50μLのこの培養したトランスフェクション混合物を、2つの24ウェルプレート(プレート1及び2)の各々のC1~C6と名付けたウェルに分注した。
【0232】
<発明 - トランスフェクション複合体が生み出される前のトランスフェクション混合物に対するパルス化技術有り、TransIT2020を使用>
3.TransIT2020対照についての上記のステップ1~2を繰り返した。ステップ3において-トランスフェクション混合物は、第1のチューブを本発明に係るパルス化電磁信号機器上に位置させることにより、室温(約20℃)で15分間培養した。パルス化機器は、2.45GHz±50MHzで、出力2mWで、15Hzのパルス化周波数を用いて動作させた。
4.50μLのこの培養したパルス化トランスフェクション混合物を、2つの24ウェルプレート(プレート1及び2)の各々のD1~D6と名付けたウェルに分注した。
【0233】
<細胞株をプレート1及び2に加えた>
- プレート1及び2について、RPMI及び10%FCS中のジャーカットE6細胞を2つの24ウェルプレートの各ウェルに2×105細胞/ウェルで加えることによりトランスフェクション複合体を生み出し、次に最終容積が600μLとなるように構成した。
- プレート1及び2をインキュベーターにおいて37℃、5%CO2で一晩培養した;
- プレート1では、一晩の培養段階にある間、トランスフェクション複合体にパルス化技術は与えられなかったが、一方、プレート2は、一晩の培養段階にある間、本発明に係るパルス化技術に3時間供された。
- 各実験条件について3つのウェルの平均値を測定し、記録した。
【0234】
<<ルシフェラーゼアッセイプロトコル-デュアルルシフェラーゼレポーターアッセイシステム(Promega、米国)を使用>>
<方法ステップ - 上記に説明したとおり>
<実験4の結果>
<表6>
表6は、PEI又はTransIT2020両親媒性構造体及び関連する方法論を使用したAdLuc及びRenillaプラスミドについてのジャーカットE6細胞実験の結果を示す。
【表6】
実験A - ここでは、パルス化技術がトランスフェクション複合体に対してのみ(即ち、トランスフェクション混合物を細胞に加え終えた後、培養中に)適用された。
実験B - ここでは、パルス化技術が(ジャーカットE6細胞を加える前の)トランスフェクション混合物に対してのみ適用された。
実験C - ここでは、パルス化技術が、ジャーカットE6細胞を加える前の)トランスフェクション混合物に対して適用され、次にトランスフェクション複合体に対してもまた(即ちトランスフェクション混合物を細胞に加え終えた後、培養中に)適用された。
【0235】
表6を参照すると、グラフの各棒が、3レプリケートの平均を表している。トランスフェクション複合体のみがパルス化技術を受けたとき、トランスフェクション効率の1.7倍の増加が認められた。トランスフェクション混合物のみがパルス化技術を受けたとき、トランスフェクション効率の2.0倍の増加が認められた。トランスフェクション混合物及びトランスフェクション複合体の両方がパルス化技術を受けたとき、トランスフェクション効率の2.3倍の増加が認められた。したがって、本発明に係るパルス化技術を用いると、トランスフェクション混合物又はトランスフェクション複合体単独に対して使用したときのいずれも、トランスフェクション効率が有意に増加したが、パルス化技術をトランスフェクション混合物及びトランスフェクション複合体の両方に適用したとき、トランスフェクション効率の更なる増加が認められたと結論付けることができる。
【0236】
<<参考文献>>
[1]“Transdermal patches:history,development and pharmacology”-Michael N Pastore et al;British Journal of Pharmacology(2015)172;2179-2209.
[2]- Gene Therapy-An Industry Coming Of Age-The Cell Culture Dish Inc.2020 pages 1-49
[3]- Global Manufacturing of CAR T Cell Therapy-Bruce Levine et al;Molecular Therapy:Methods and Clinical Development,Vol.4,March 207;92-101;2017 Novartis Pharmaceuticals Corp.
[4]Efficient Lipid-Mediated Transfection Of DNA Into Primary Rat Hepatocytes-Sheri L.Holmes et al;In Vitro Cell.Dev.Biol.30;347-351-May 1995-1995 Society for In Vitro Biology.
[5]Bourdon et al.,Genes Dev.2005,PMID 16131611.
[6]Longo PA,Kavran JM,Kim MS,Leahy DJ.“Transient Mammalian Cell Transfection With Polyethylenimine(PEI).Methods Enzymol.2013;529-227-240.Doi:10.1016/B978-0-12-418687-3.00018-5.
【国際調査報告】