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特表2023-519323無症候性横隔膜刺激を送達するための埋め込み型医療システム、デバイス及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】無症候性横隔膜刺激を送達するための埋め込み型医療システム、デバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/05 20060101AFI20230428BHJP
   A61N 1/362 20060101ALI20230428BHJP
   A61N 1/365 20060101ALI20230428BHJP
   A61N 1/368 20060101ALI20230428BHJP
   A61N 1/375 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
A61N1/05
A61N1/362
A61N1/365
A61N1/368
A61N1/375
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558203
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(85)【翻訳文提出日】2022-11-15
(86)【国際出願番号】 US2021023147
(87)【国際公開番号】W WO2021194874
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】63/000,961
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516238935
【氏名又は名称】ヴィスカルディア インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バウアー, ピーター ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ハリス, グレグ
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053CC02
4C053JJ23
4C053KK02
4C053KK04
4C053KK07
(57)【要約】
経心臓横隔膜刺激は、横隔膜に近接する心臓の領域中又は上に配置された心臓イベントセンサを介して感知されたシグナルに基づいて心臓イベントを検出すること、及び心臓の収縮を誘導することなく横隔膜の収縮を誘導するために、心臓の領域に近接して配置されたADS治療機構を介してADS治療を送達することを含む。心臓イベントセンサは、a)横隔膜に当接する心臓壁の内面、又は2)心臓壁と横隔膜との間の心臓の外面に配置することができる。ADS治療機構は、a)横隔膜に当接する心臓壁の内面、2)心臓壁に当接する横隔膜の上面、又は3)心臓に当接する横隔膜の領域における横隔膜の下面に配置されてもよい。
【選択図】図9A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経心臓横隔膜刺激の方法であって、
横隔膜に近接する心臓の領域の中又は上に配置された心臓イベントセンサを介して感知されたシグナルに基づいて心臓イベントを検出すること;及び
心臓の収縮を誘導することなく横隔膜の収縮を誘導するために、心臓の領域に近接して配置された無症候性横隔膜刺激(ADS)治療機構を介してADS治療を送達すること;
を含む方法。
【請求項2】
心臓の領域が、
心臓の心室と横隔膜との間、又は
心膜によって隔てられた心臓の心房と横隔膜との間
のいずれか1つの接触面である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
横隔膜の収縮を確認することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
横隔膜の収縮が、無症候性収縮、一過性の収縮、及び部分収縮のうちの1又は複数である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ADS治療の送達が、心臓イベントに関連する心臓の不応期中に、横隔膜刺激パルスをADS治療機構に出力することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
横隔膜刺激パルスが、心臓イベントの発生からタイミングを合わせて遅延期間の終わりに出力される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
横隔膜刺激パルスが、横隔膜の筋肉を捕捉すること、又は横隔神経を捕捉することの少なくとも一方を行うように構成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
心臓イベントが、内因性心室イベント、心室ペーシングスパイク、誘発性心室イベント、内因性心房イベント、心房ペーシングスパイク、誘発性心房イベント、及び機械的イベントのうちの1つに対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
心臓イベントセンサ及びADS治療機構がそれぞれ、心臓の内腔と関連付けられたリードに含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
リードが右心室及び冠静脈洞のうちの1つに埋め込まれ、心臓イベントが心室イベントに対応する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
心調律管理(CRM)治療を、CRM治療機構を介して心臓の不応期外に送達して、心臓に影響を誘導することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
CRM治療を送達することが、
CRM治療に対応し、右心室又は左心室を捕捉するのに十分である心臓ペーシングパルスを、心室ペーシング治療に従ってCRM治療機構に出力することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
リードが右心房及び冠静脈洞のうちの1つに埋め込まれ、心臓イベントが心房イベントに対応する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
心調律管理(CRM)治療を、CRM治療機構を介して心臓の不応期外に送達して、心臓に影響を誘導することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
CRM治療を送達することが、
CRM治療に対応し、右心房又は左心房を捕捉するのに十分である心臓ペーシングパルスを、心房ペーシング治療に従ってCRM治療機構に出力することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
心臓イベントセンサ及びADS治療機構がそれぞれ、右心房又は右心室の一方に埋め込まれたリードに含まれ、心臓壁を通り、横隔膜を通って腹腔内に延びる部分を有する遠位端構造を有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項17】
ADS治療機構が、心臓壁を通り、横隔膜を通って腹腔内に延び、心臓に近接する横隔膜の領域の中又は上に位置する部分と関連付けられる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
心調律管理(CRM)治療を、CRM治療機構を介して心臓の不応期外に送達して、心臓に影響を誘導することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
CRM治療を送達することが、
CRM治療に対応し、右心室又は右心房を捕捉するのに十分である心臓ペーシングパルスを、ペーシング治療に従ってCRM治療機構に出力することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
心臓イベントセンサ及びADS治療機構がそれぞれ、1)心房壁と横隔膜との間、及び2)心室壁と横隔膜との間、のうちの1つに埋め込まれたリードレスデバイスに含まれる、
請求項1に記載の方法。
【請求項21】
心調律管理(CRM)治療を、CRM治療機構を介して心臓の不応期外に送達して、心臓に影響を誘導することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
CRM治療を送達することが、
CRM治療に対応し、右心室又は右心房を捕捉するのに十分である心臓ペーシングパルスを、ペーシング治療に従ってCRM治療機構に出力することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
埋め込み型医療デバイスであって、
横隔膜に近接する心臓の領域中又は上に配置されるように構成された心臓イベントセンサと、
心臓の領域に近接して配置されるように構成された無症候性横隔膜刺激(ADS)治療機構と、
心臓イベントセンサ及びADS治療機構に結合され、
心臓イベントセンサを介して感知されたシグナルに基づいて心臓イベントを検出し、
ADS治療機構を介して横隔膜にADS治療を送達する
ように構成されたADSコントローラと、
を含み、
ADS治療が、横隔膜の収縮を誘導するように構成され、心臓の収縮の誘導を回避するために、心臓イベントに関連する心臓の不応期中に送達されるデバイス。
【請求項24】
ADSコントローラが、心臓イベントの発生からタイミングを合わせて遅延期間の終わりに、横隔膜の横隔膜筋又は横隔神経を捕捉するのに十分である横隔膜刺激パルスをADS治療機構に出力するように構成された、請求項23に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項25】
心臓イベントセンサが、第1の電極対又は運動センサのいずれかを含み、
ADS治療機構が、第2の電極対又は機械的トランスデューサのいずれかを含み、
ADS治療が、電気刺激又は機械的刺激のいずれかを含む、
請求項23に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項26】
第1の電極対及び第2の電極対が同じ電極対である、請求項25に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項27】
第1の電極対及び第2の電極対が異なる電極対である、請求項25に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項28】
機械的トランスデューサが、横隔膜の運動に対応するシグナルを提供するように構成される、請求項25に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項29】
ADS治療機構が、横隔膜の運動に対応するシグナルを提供するように構成された運動センサをさらに含む、請求項25に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項30】
心臓イベントセンサ及びADS治療機構を含み、心臓の内腔と関連付けられるように構成されるリードをさらに含む、請求項23に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項31】
リードが、右心室、右心房、及び冠静脈洞のうちの1つに埋め込まれるように構成された心内膜リードを含む、請求項30に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項32】
リードが、心膜腔及び右心室、右心房、左心室のうちの1つ以上に埋め込まれるように構成された心外膜リードを含む、請求項30に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項33】
リードが、右心室及び少なくとも部分的に心臓壁を通って横隔膜に埋め込まれるように構成された経心臓リードを含む、請求項30に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項34】
経心臓リードが、
遠位端と近位端とを有するリード体と、
遠位端と関連付けられ、心臓壁を通って横隔膜に延び、遠位部分が第1の断面直径を有する非展開状態から、遠位部分が第1の断面直径よりも大きい第2の断面直径を有する展開状態に移行するように構成された遠位部分を有する遠位端構造と、
遠位部分と関連付けられた少なくとも1つの電極と、
を含む、請求項33に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項35】
心臓イベントセンサ、ADS治療機構、及びADSコントローラを含むリードレスデバイスをさらに含み、リードレスデバイスが、
心房壁と横隔膜との間、及び
心室壁と横隔膜との間のうちの1つに埋め込まれるように構成される、請求項23に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項36】
リードレスデバイスが、第1の側面と、第1の側面の反対側の第2の側面とを有するハウジングを含み、
心臓イベントセンサが第1の側面と関連付けられており、
ADS治療機構が、第2の側面と関連付けられている、
請求項35に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項37】
ADS治療機構が、電気刺激を送達するように構成された少なくとも1つの電極、及び機械的刺激を送達するように構成された機械的トランスデューサのうちの1又は複数を含む、請求項23に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項38】
ADS治療機構が、横隔膜の運動を表すシグナルを提供するように構成された運動センサをさらに含み、ADSコントローラが、運動センサからのシグナルに基づいて横隔膜の運動を監視して、横隔膜の収縮を確認するようにさらに構成される、請求項23に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項39】
心臓の領域中又は上に配置されるように構成された心調律管理(CRM)治療機構と、
CRM治療機構に結合されており、CRM治療に対応し心臓を捕捉するのに十分である心臓ペーシングパルスを、ペーシング治療に従ってCRM治療機構に出力するように構成されたCRMコントローラと、
をさらに含む、請求項23に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項40】
CRM治療機構が、心臓イベントセンサ又はADS治療機構のうちの1つに対応する、請求項39に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項41】
CRM治療機構が、心臓イベントセンサ及びADS治療機構とは独立した一対の電極を含む、請求項39に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項42】
遠位端と近位端とを有するリード体と、
遠位端と関連付けられ、心臓壁を通って横隔膜に延び、遠位部分が第1の断面直径を有
する非展開状態から、遠位部分が第1の断面直径よりも大きい第2の断面直径を有する展
開状態に移行するように構成された遠位部分を有する遠位端構造と、
遠位部分と関連付けられた少なくとも1つの電極と、
近位端と関連付けられ、リード体を介して延びるリードワイヤによって電気的に結合さ
れた少なくとも1つの電極を有するコネクタ
を含むリード。
【請求項43】
遠位部分が、拡張するように構成されたワイヤメッシュ構造を含む、請求項42に記載のリード。
【請求項44】
遠位部分と関連付けられた少なくとも1つの電極が、ワイヤメッシュ構造の全体、ワイヤメッシュ構造の一部、又はワイヤメッシュ構造に固定された導電性構造に対応する、請求項43に記載のリード。
【請求項45】
遠位端構造が、遠位部分が第1の断面直径を有する非展開状態から、遠位部分が第1の断面直径よりも大きい第2の断面直径を有する展開状態に移行するように構成された近位部分をさらに含む、請求項42に記載のリード。
【請求項46】
近位部分と関連付けられた少なくとも1つの電極をさらに備える、請求項45に記載のリード。
【請求項47】
近位部分が、拡張するように構成されたワイヤメッシュ構造を含む、請求項46に記載のリード。
【請求項48】
近位部分と関連付けられた少なくとも1つの電極が、ワイヤメッシュ構造の全体、ワイヤメッシュ構造の一部、又はワイヤメッシュ構造に固定された導電性構造に対応する、請求項47に記載のリード。
【請求項49】
遠位部分と関連付けられた少なくとも1つの電極と近位部分と関連付けられた少なくとも1つの電極とが、それぞれのワイヤメッシュ構造の拡張時に、電極が互いに対向するように配置される、請求項47に記載のリード。
【請求項50】
遠位端構造が、遠位部分と近位部分との間に位置するシール構造をさらに含む、請求項45に記載のリード。
【請求項51】
シール構造が拡張して、リードの埋め込み及び遠位端構造の展開時に、身体の第1の解剖学的空洞と第2の解剖学的空洞との間に気密シールを形成するように構成されている、請求項50に記載のリード。
【請求項52】
第1の解剖学的空洞が腹腔に対応し、第2の解剖学的空洞が胸腔に対応する、請求項51に記載のリード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全開示が参照により本明細書に組み込まれる「Implantable Medical Systems,Devices and Methods for Delivering Asymptomatic Diaphragmatic Stimulation,」についての、2020年3月27日に出願された米国仮特許出願第63/000,961号の利益及び優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、全般に、心機能に影響を及ぼすための系、デバイス、及び方法に関し、より詳細には、無症候性横隔膜刺激を送達し、それによって心血管機能に影響を及ぼす埋め込み型医療システム、デバイス、及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
横隔膜は、胸腔と腹腔とを分離するドーム形状の骨格筋構造である。これは、吸気中の収縮時に下方に偏向することによって機械的呼吸運動を担う主要な筋肉器官である。横隔神経は横隔膜を神経支配し、収縮をシグナル伝達する神経興奮の主要な方法として作用する。外肋間筋及び内肋間筋はまた、肋骨を上昇させ、胸腔の前後径を増加させる。吸気中、横隔膜及び肋間筋が胸郭の大きさを増大させるため、横隔膜の動きは、胸腔内の拡張及び陰圧をもたらす。胸郭が拡張すると、胸腔内圧が大気圧より低下し、空気が肺に移動する。呼気中、吸気筋は弛緩し、肺組織の弾性反跳は、胸腔内圧の上昇と相まって、空気を肺から移動させる。
【0004】
横隔膜収縮及び胸郭拡張からの胸腔内圧の変化は、胸腔内構造、すなわち心臓、心膜、大動脈及び大静脈に伝達され得る。自発吸気は、心房充満(前負荷)及び心室排出に対する抵抗(後負荷)を含む心血管機能に影響を及ぼす負の胸膜腔内圧を生じる。この影響は、横隔膜収縮が吸気を引き起こすのに十分な持続時間、強度、及び拡張性であり、患者が閉鎖した声門に対して横隔膜筋を使用して強制的に吸気又は呼気し、胸腔圧の急速な変化を引き起こすVasalva及びMueller技法中の臨床診療で使用される場合、正常機能中の心血管血行動態パラメータで観察することができる。これらの技法は、胸腔内圧の顕著な急速急激な変化をもたらし、その変化は、次に心内腔及び血管に関連する圧力勾配を変化させて、心充満及び心拍出量を含む心機能に影響を及ぼす。
【0005】
心臓の全身性能に対する胸腔内圧の影響は複雑である。胸腔内圧の急速な低下を引き起こす急速な部分的横隔膜収縮に起因するしゃっくりは、心臓及び全身性の性能の効果の特徴を明らかにするために以前から使用されてきた。動物対象及びヒト対象の両方の研究により、全体的な心室拡張期圧及び収縮期圧、心拍出量を含む血行動態パラメータの変化、並びに大動脈拡張及び血管抵抗を含む全身性の測定値の変化が実証された。これらの研究はまた、急速な胸腔内圧効果の変化が心周期に対するタイミングに非常に敏感であり、心室拡張期、収縮期、又は拡張期-収縮期移行中にしゃっくりが発生した場合に異なる効果が観察されることを実証した。
【0006】
無症候性横隔膜刺激(ADS)治療は、胸腔内圧を調節するための横隔膜筋組織の心周期のゲート刺激に基づく。ADS治療の現在の実施態様は、横隔膜上又はそれに隣接して配置されたADS治療機構、例えば電極を有する心外リード又はデバイスを介した横隔膜刺激の送達を中心としている。リード又はデバイスの配置は、内視鏡(腹腔鏡検査法、胸腔鏡検査法)手術又は腹部/胸部(開腹術/開胸術)手術のいずれかによって容易になる。これらの現在の実施態様は、例えば、「Mechanical,Anatomical Heart-Pumping Assist,」と題された米国特許第7,994,655号、及び「Hemodynamic Performance Enhancement Through Asymptomatic Diaphragm Stimulation,」と題された米国特許第10,315,035号、及び「Systems,Devices,and Methods for Improving Hemodynamic Performance Through Asymptomatic Diaphragm Stimulation,」と題された米国特許第10,335,592号、及び「Implantable Medical Devices,Systems,and Methods for Selection of Optimal Diaphragmatic Stimulation Parameters to Affect Pressures Within the Intrathoracic Cavity.」と題された米国特許第10,493,271号に記載されている。
【発明の概要】
【0007】
本明細書では、横隔神経の遠距離場刺激、横隔膜筋の遠距離場刺激、及び/又は横隔膜筋の直接刺激のうちの1又は複数によって無症候性の横隔膜の動きを開始する無症候性横隔膜刺激(ADS)治療の送達のための異なるプラットフォーム又は経路を提供する方法及びデバイスが開示される。
【0008】
一構成では、ADS治療のための経路は、右心房、右心室などの心内位置、及び/又は左心室又は左心房の領域内で冠静脈洞に埋め込まれるように構成された経静脈心内膜リードによって担持されたADS治療機構、例えば電極を介する。ADS治療のエネルギーは、心臓壁を通過又は横断して、横隔神経及び/又は横隔膜筋を刺激して、横隔膜の無症候性の一過性の動きを引き起こすのに十分な強度である。心内膜リードはまた、徐脈ペーシング、抗頻脈ペーシング、電気除細動ショック又は除細動ショックなどの1又は複数の心臓治療の送達を可能にする心調律管理(CRM)治療機構、例えば電極を含み得る。
【0009】
別の構成では、ADS治療のための経路は、心外の位置、例えば心膜腔の心臓の外面に埋め込まれるように構成された心外膜リードによって担持されたADS治療機構、例えば電極を介する。ADS治療のエネルギーは、心臓周囲の組織及び膜を通過又は横断して、横隔神経及び/又は横隔膜筋を刺激するのに十分な強度である。心外膜リードはまた、徐脈ペーシング、抗頻脈ペーシング、電気除細動ショック又は除細動ショックなどの1又は複数の心臓治療の送達を可能にする心調律管理(CRM)治療機構、例えば電極を含み得る。
【0010】
別の構成では、ADS治療のための経路は、例えば、右心室又は右心房などの心内位置に埋め込まれるように構成された経静脈心内膜リードによって担持されたADS治療機構、例えば電極を介し、部分的にはADS治療機構が横隔膜に直接接触するように配置されて心臓壁を介する。この特別に構成された心内膜リードは、本明細書では「経心臓リード」と呼ばれる。ADS治療のエネルギーは、横隔膜筋を直接刺激するのに十分な強度である。経心臓リードはまた、徐脈ペーシング、抗頻脈ペーシング、電気除細動ショック又は除細動ショックなどの1又は複数の心臓治療の送達を可能にする、心内位置に配置されたリード上に位置する心調律管理(CRM)治療機構、例えば電極を含み得る。
【0011】
別の構成では、ADS治療のための経路は、ADS治療機構が横隔膜と直接又は近接して接触するように配置された、心臓の壁と横隔膜との間の心外位置に埋め込まれるように構成されたリードレスデバイスによって担持されたADS治療機構、例えば電極を介する。ADS治療のエネルギーは、横隔膜筋を直接刺激するのに十分なエネルギーである。このデバイスはまた、徐脈ペーシング、抗頻脈ペーシング、電気除細動ショック又は除細動ショックなどの1又は複数の心臓治療の送達を可能にするために、心臓と直接又は近接して接触するように配置されたデバイス上に位置する心調律管理(CRM)治療機構、例えば電極を含み得る。
【0012】
様々なプラットフォーム又は経路を介してADS治療を送達するためのデバイス及び方法の様々な態様を、添付の図面を参照して、限定ではなく例として詳細な説明に提示する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A図1Aは、心臓の心内位置又は心臓の表面上の心外位置のいずれか、及び横隔膜又は横隔神経との接触面における、無症候性横隔膜刺激(ADS)治療機構及び心臓イベントセンサを含む埋め込み型医療デバイス(IMD)の様々な配置を示す概略図である。
図1B図1Bは、心臓と横隔膜との間の心外位置における、ADS治療機構及び心臓イベントセンサを含むIMDの様々な配置を示す概略図である。
図2A図2Aは、呼気終了時及び吸気終了時のそれぞれにおける、心臓、横隔膜、及び心臓と横隔膜との接触面に位置するADS治療機構の相対位置を示す図1Aの拡大部分である。
図2B図2Bは、下側からの横隔膜の図であり、心臓と横隔膜の左半球との接触面において横隔膜の上側に配置されたADS治療機構の位置を示す。
図3A図3Aは、電子機器を収容する缶と、ADS治療機構を担持する少なくとも1つの副構造、例えば経静脈リードとを含むマルチピース埋め込み型医療デバイスの図である。
図3B図3Bは、心臓に埋め込まれた図3Aの経静脈リードの図である。
図4図4は、ADS治療機構を横隔膜と接触させ、心調律管理(CRM)治療機構を心臓と接触させるように配置された、心臓の壁を通って腹腔に埋め込まれた遠位領域を有する、図3Aの経静脈リードの1つの図である。
図5図5は、図4に示すリードの遠位端領域のための埋め込み領域の図である。
図6A-6B】図6A及び図6Bは、ADS治療機構及びCRM治療機構を担持する埋め込み型医療デバイスのシングルピース実施形態の図である。
図7A図7Aは、ADS治療機構を介して横隔膜刺激を送達するように構成されたADSコントローラと、CRM治療機構を介して心臓治療を送達するように構成された任意選択のCRMコントローラとを有する埋め込み型医療デバイスの全体ブロック図である。
図7B図7Bは、図7AのADSコントローラの詳細を示すブロック図である。
図7C図7Cは、図7Aの任意選択のCRMコントローラの詳細を示すブロック図である。
図8図8は、右心室壁と横隔膜との接触面にADS治療機構を配置するように右心室に埋め込まれた経静脈リードの概略図、並びに感知された心臓イベントと横隔膜刺激の送達との間のタイミング関係を示す図である。
図9A図9Aは、右心室壁と横隔膜との接触面にADS治療機構を配置し、右心室壁に隣接してCRM治療機構を配置するように右心室に埋め込まれた経静脈リードの概略図、並びに感知された心臓イベント、ペーシングされた心臓イベントと横隔膜刺激の送達との間のタイミング関係を示す図である。
図9B図9Bは、右心房壁と横隔膜との接触面にADS治療機構を配置し、右心房壁に隣接してCRM治療機構を配置するように右心房に埋め込まれた経静脈リードの概略図、並びに感知された心臓イベント、ペーシングされた心臓イベントと横隔膜刺激の送達との間のタイミング関係を示す図である。
図9C図9Cは、右心室壁と横隔膜との接触面にADS治療機構及びCRM治療機構を配置するように右心室に埋め込まれた経静脈リードと、心房壁に隣接してCRM治療機構を配置するように右心房に埋め込まれた経静脈リードとの概略図、並びに感知された心臓イベント、ペーシングされた心臓イベントと横隔膜刺激の送達との間のタイミング関係を示す図である。
図10図10は、図3A図3B図4図6A、及び図6Bの埋め込み型医療デバイスのいずれかで実施され得る経心臓無症候性横隔膜刺激の方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
横隔膜への電気刺激は、一過性の部分的な無症候性横隔膜収縮を誘導し、それが次に胸腔内圧の変化を誘導する。適切なタイミングで構成された横隔膜刺激は、心血管機能及び心機能を改善し、それによって心不全を管理することができる。例えば、心室収縮期などの周期的な心臓イベントの発生と同期した、又はその発生にタイミングを合わせた横隔膜刺激は、左心室充満中の負の胸腔内圧(吸引)を加速して充満量を増加させ、次いで正の胸腔内圧(圧迫)を加速して左心室によって生成される収縮期収縮力を増強することができる。
【0015】
心不全の管理は複雑であり、医師は心臓と血管との間の多数の様々な相互依存的な生理学的効果を最適化する必要があるため、本明細書に開示される治療の目的は、誘発性横隔膜収縮を利用して、患者の全体的な状態を改善するために心臓及び血管の動作中の胸腔内圧状態を最適化することである。これらには、胸腔内の心血管系の1又は複数の内腔への血液量、拍出量の変化を引き起こす(スターリング)、心内血流(拡張期冠動脈灌流)及び動作機構(効率)を媒介する、又は心充満に関与する血管(大静脈及び右心房)のコンプライアンスを低下させるための、又は心臓の動作能力によく適合するように心臓血管のコンプライアンスを変更する(インピーダンスマッチング又は最適化)ための拡張末期圧(前負荷)が含まれる。これらの間接的な生理学的機構は、心臓の機械力を機械的に増強し、心拍出量に対する血管抵抗を低下させる直接的な生理学的機構を増強する。
【0016】
無症候性横隔膜刺激
図1Aは、心臓104の心内位置又は心臓の表面上の心外位置のいずれかにおける、無症候性横隔膜刺激(ADS)治療機構100及び心臓イベントセンサ103を含む埋め込み型医療デバイス(IMD)の様々な配置を示す概略図である。一実施形態では、ADS治療機構100及び心臓イベントセンサ103は、右心室(RV)と横隔膜106との接触面領域102で心臓104の右心室中又は上に埋め込まれる。別の実施形態では、ADS治療機構100及び心臓イベントセンサ103は、右心房(RA)と横隔膜106との接触面領域130で心臓104の右心房中又は上に埋め込まれる。別の実施形態では、ADS治療機構100及び心臓イベントセンサ103は、心臓104の左心房(LA)と横隔神経124との接触面領域126に埋め込まれる。別の実施形態では、ADS治療機構100及び心臓イベントセンサ103は、心臓104の左心室(LV)と横隔神経124との接触面領域128に埋め込まれる。
【0017】
図1Bは、心臓104と横隔膜106との間の心外位置における、ADS治療機構100及び心臓イベントセンサ103を含むIMDの様々な配置を示す概略図である。右心房(RA)及び右心室(RV)は、横隔膜106に密接に接触することに留意されたい。左心室(LV)は、横隔膜とも接触し、その一部は右心室の背後に位置する。一実施形態では、ADS治療機構100及び心臓イベントセンサ103は、心臓104の右心室(RV)と横隔膜106との間に埋め込まれる。別の実施形態では、ADS治療機構100及び心臓イベントセンサ103は、心臓104の右心房と横隔膜106との間に埋め込まれる。
【0018】
各実施形態では、ADS治療機構100は、横隔膜106の「一過性の」収縮を誘導する刺激パルスを送達するように構成される。刺激パルスは、横隔膜刺激プログラムに従って、横隔膜106の筋肉、横隔神経124、又は横隔膜の筋肉及び横隔神経に送達することができる。横隔膜の「一過性の」収縮を誘導するための横隔膜の筋肉の刺激及び横隔膜の「一過性の」収縮を誘導するための横隔神経の刺激は、本明細書では両方とも「横隔膜刺激」と呼ばれる。ADS治療機構100は、心臓104の中若しくは上、又は横隔膜106の上若しくは近くに配置されるように構成された1又は複数の電極であってもよい。本明細書で使用される場合、横隔膜の「一過性の」収縮は、60~180ミリ秒の範囲で続く、典型的には約100ミリ秒の、横隔膜の短い単収縮の、尾側、それに続く頭蓋運動である。横隔膜の「部分」収縮は、「一過性の」収縮を示す横隔膜の一部(横隔膜全体よりも小さい)である。
【0019】
各実施形態では、心臓イベントセンサ103は、心臓イベントを検出するためにIMDによって使用される心臓活動を感知するように構成される。感知された心臓活動は、心臓の脱分極に対応する電気的活動、又は心臓の収縮に対応する機械的活動であり得る。
【0020】
本明細書に開示されるように、ADS治療機構100及び心臓イベントセンサ103の各々は、1)単独で、又は心臓への心臓治療の送達と組み合わせて、心臓壁を通して、又は心臓周囲の組織若しくは膜を通して、又は横隔膜との直接接触を通して横隔膜刺激を送達する、心臓の中又は上に部分的に配置されたマルチピースIMDの一部、又は2)単独で、又は心臓への心臓治療の送達と組み合わせて、横隔膜との直接接触を通して横隔膜刺激を送達する、心臓と横隔膜との間に配置されたシングルピースIMDであり得る。
【0021】
図1Aを続けると、胸腔内及び縦隔とも呼ばれる胸腔は、様々な接続構造によって形成された密封された腔である。これらの構造は、横隔膜106、胸郭側壁108a、108b、及び気管114及び心臓104の近くの上部層状壁110、112を含む。
【0022】
横隔膜106は、胸腔と腹腔118とを隔てる、肺116a、116bの下方に位置するドーム形状の骨格筋構造である。横隔膜106は、胸腔の下端を画定し、機械的呼吸運動を担う主要な筋肉器官である。胸郭側壁108a、108bは、肋骨120と、肋骨間の空間を埋める膜122とで形成され、胸腔の側壁を画定する。上部層状壁110、112は、胸腔の上部にシールを形成するために互いに重なり合う様々な膜及び血管から形成される。
【0023】
機械的呼吸運動は、吸気又は吸入段階及び呼気又は呼息段階を含む。前述のように、横隔膜106は、機械的呼吸運動を担う主要な筋肉器官である。横隔神経124は、横隔膜106を神経支配し、シグナルを横隔膜に送信して吸気及び呼気を制御する。これらのシグナルは、神経興奮を介して横隔膜の収縮を開始するための主要な機構として作用する。痛覚に関与する神経終末は横隔膜内に存在しないため、治療出力の制限は、他の近くの神経支配された胸腔筋肉組織内に含まれる痛覚神経の電場刺激の可能性を最小限に抑えながら、同時に心血管系に所望の血行動態効果を提供するものである。
【0024】
図2Aは、呼気終了時(実線)及び吸気終了時(破線)のそれぞれにおける、心臓104、横隔膜106、及び心臓104の右心室と横隔膜との接触面領域102に埋め込まれたADS治療機構100の相対位置を示す図1Aの胸腔の拡大部分である。吸気中、横隔膜106は収縮し、例えば平らになり、肺116a、116bから離れる方向に下方に撓む一方で、肋骨120は上昇する。横隔膜及び肋間筋が胸郭の大きさを増大させるため、横隔膜106及び肋骨120の動きは、胸腔内の拡張及び陰圧をもたらす。胸郭が拡張すると、胸腔の開放空間内の圧力、すなわち、胸腔内圧が大気圧より低下する。圧力が低下すると、外気が肺116a、116bの中に移動する。
【0025】
呼気中、横隔膜106は拡張し、肺116a、116bの方向に上方に撓む。横隔膜106は、肺116a、116bの周囲の外肋間筋及び内肋間筋と共に弛緩する。横隔膜106は拡張し、例えばドーム形状を再開し、肋骨120は下降し、それによって胸腔の前後径が低減し、胸腔内圧力が大気圧よりも上昇する。肺組織の弾性反跳と組み合わせた胸腔内圧の上昇は、空気を肺から外に移動させる。
【0026】
横隔膜収縮及び胸腔拡張、並びに横隔膜拡張及び胸腔収縮による胸腔の開放空間内の圧力、すなわち胸腔内圧の変化は、心臓104、心膜、大動脈及び大静脈などの胸腔内構造に関連する圧力を含む、胸腔内の他の圧力の変化をもたらす。例えば、右心房(RA)圧、右心室(RV)圧、左心室(LV)圧、及び大動脈(AO)圧などの心血管圧の変化は、胸腔内圧の変化から生じる。
【0027】
心機能を改善するために胸腔内の他の圧力に望ましい変化をもたらすために、ADS治療機構100を介した横隔膜刺激の制御された送達を通して胸腔内圧を操作することができる。適切にタイミングを合わせた刺激治療を横隔膜106に送達することにより、横隔膜の一過性の無症候性部分収縮が、心周期の特定の部分である1又は複数の心臓イベントと同期して、又はほぼ同期して誘導され、ADS治療が送達される。心臓イベントに対するこれらの一過性の無症候性部分収縮の発生のタイミングは、胸腔内圧の変化をもたらし、これは次に、心臓104、心膜、大動脈及び大静脈に関連する圧力を上昇及び/又は低下させ、それによって心臓の血行動態機能が改善される。
【0028】
上述のように、横隔膜の「一過性の」収縮は、60~180ミリ秒の範囲で続く、典型的には約100ミリ秒の、横隔膜の短い単収縮の、尾側、それに続く頭蓋運動である。横隔膜の「部分」収縮は、「一過性の」収縮を示す横隔膜の一部(横隔膜全体よりも小さい)である。例えば、図2Bを参照すると、心臓と横隔膜の左半球202との間の接触面で、横隔膜の上側に配置されたADS治療機構100を介して送達される横隔膜刺激パルスは、左半球の全体よりも小さい左半球の一部204の収縮をもたらす。
【0029】
胸腔内圧自体を含む胸腔内の圧力、及び心血管圧力などの他の圧力を示すシグナルを監視して、ADS治療を調整するためのフィードバック機構として使用することができる。この目的のために、ADS治療を規定する1又は複数のパラメータを変更して、心臓、心膜、大動脈及び大静脈に関連する圧力の所望の上昇及び/又は低下を得ることができる。例えば、電気刺激治療の場合、電気刺激パルスが送達されるタイミング、パルス波形タイプ、パルス振幅、パルス持続時間、及びパルス極性の1又は複数を調整又は変更することができる。例えば、「Hemodynamic Performance Enhancement Through Asymptomatic Diaphragm Stimulation,」と題された米国特許第10,315,035号、及び「Systems,Devices,and Methods for Improving Hemodynamic Performance Through Asymptomatic Diaphragm Stimulation,」と題された米国特許第10,335,592号、及び「Implantable Medical Devices,Systems,and Methods for Selection of Optimal Diaphragmatic Stimulation Parameters to Affect Pressures Within the Intrathoracic Cavity,」と題された米国特許第10,493,271号を参照されたく、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
心音などの胸腔内の圧力を示す他のシグナルも監視して、横隔膜刺激治療を調整するためのフィードバック機構として使用することができる。例えば、心音シグナルを使用して、心臓イベントの発生間のタイミングを決定することができる。横隔膜刺激治療を規定する1又は複数のパラメータを変更して、これらのタイミングの所望の延長及び/又は短縮を得ることができる。
【0031】
ADS治療のためのデバイス及び系
前記のように、ADS治療機構100は、1)単独で、又は心臓への心臓治療の送達と組み合わせて、心臓壁を通して、又は心臓周囲の組織若しくは膜を通して、又は横隔膜との直接接触を通して横隔膜刺激を送達する、心臓の中又は上に部分的に配置されたマルチピースIMDの一部、又は2)単独で、又は心臓への心臓治療の送達と組み合わせて、横隔膜との直接接触を通して横隔膜刺激を送達する、心臓と横隔膜との間に配置されたシングルピースIMDであり得る。
【0032】
マルチピースIMD
図3A及び図3Bを参照すると、マルチピースIMD 300は、電子機器を収容する缶又はハウジング302と、その遠位端にADS治療機構100及び心臓イベントセンサ103を含む少なくとも1つのサブ構造体304a、304b、306、308、例えばリードとを含む。リード304a、304b、306、308はまた、CRM治療機構101を含むことができる。リード304a、304b、306、308の各々は、鎖骨下静脈を通って心臓に埋め込まれるように構成される。ハウジング302は、標準的なペースメーカー埋め込み手順に従って、鎖骨下胸部領域に外科的に形成されたポケットにおいて皮下に埋め込むことができる。ハウジング302内の電子機器は、単独で、又は心臓治療と組み合わせてADS治療を送達するように構成されてもよい。
【0033】
一実施形態では、ADS治療機構100及び心臓イベントセンサ103を含むリード304aは、心臓の右心室に埋め込まれるように構成された心内膜リードである。この実施形態では、ADS治療機構100は、横隔膜の筋肉へ横隔膜刺激パルスを送達可能にする1又は複数の電極310、312を含む。いくつかの構成では、これらの同じ電極310、312はまた、心臓の電気的活動の感知を可能にし、それによって心臓イベントセンサ103として機能する。他の構成では、心臓イベントセンサ103は、ADS治療機構100の電極とは異なる電極を含んでもよい。
【0034】
ADS治療機構100はまた、横隔膜の筋肉へ横隔膜機械的パルスを送達可能にする機械的トランスデューサ314を含んでもよい。機械的トランスデューサ314はまた、リードの動き/加速度を監視し、それによってADS治療の効率を確認するために使用できるシグナルを提供するために、機械的な運動/加速度を感知するように機能することができる。換言すれば、リードの動き/加速度を示すシグナルを使用して、送達されたADS治療が横隔膜を捕捉したこと、すなわち、横隔膜の部分的な一過性の収縮をもたらしたことを確認することができる。あるいは、ADS治療機構は、リードの動き/加速度を監視するために、機械的な運動/加速度を感知する別個の機械的トランスデューサ、例えば運動センサ(図示せず)を含んでもよい。これらの構成要素、例えば、電極、機械的トランスデューサ、運動センサは、リード体318aを通って延びるワイヤを介してリードの近位端316でコネクタ(図示せず)に電気的に結合される。
【0035】
マルチピースIMD 300が心臓に心臓治療を送達するように構成されている場合、リード304aはまた、CRM治療機構101を含む。CRM治療機構101は、1又は複数の電極を含んでいてもよい。いくつかの構成では、CRM治療機構101の電極は、ADS治療機構100の電極310、312であってもよい。他の構成では、CRM治療機構101の電極は、心臓イベントセンサ103の電極であってもよい。他の構成では、CRM治療機構101の電極は、ADS治療機構100の電極及び心臓イベントセンサ103の電極とは異なる電極であってもよい。いずれの場合も、CRM治療機構101の電極は、徐脈ペーシング、抗頻脈ペーシングなどの心臓治療を送達するように構成される。これらの電極は、電気除細動ショック又は除細動ショックを送達するように構成されたRVコイル電極320などの追加の電極を含んでもよい。
【0036】
図4をさらに参照すると、別の実施形態では、ADS治療機構100及び心臓イベントセンサ103を含む経心臓リード304bは、右心室などの心臓の内腔に、少なくとも部分的に心臓104の心壁を通り、横隔膜106を通って、腹腔に埋め込まれるように構成された経心臓リードである。この実施形態では、経心臓リード304bは、シール構造328によって分離された遠位部分324及び近位部分326を有する遠位端構造322を含む。遠位部分324及び近位部分326は、リード体の軸線402に沿って近位方向に引っ張る力Fが印加されると拡張するように構成された拡張可能な金属メッシュ構造体で構成されている。
【0037】
拡張状態では、遠位部分324及び近位部分326は、断面寸法によって特徴を明らかにされる幾何学的形状をとる。例えば、遠位部分324及び近位部分326は、直径を有する円形のディスク形状をとることができる。図4に示すようないくつかの実施形態では、遠位部分324の断面寸法は、近位部分326の断面寸法よりも大きい。遠位部分324のより大きな断面は、展開後、拍動する心臓104によってリードに印加される上向きの力Fに対する抵抗を増加させることによって遠位端構造322を所定の位置に保持するのに役立ち、そうでなければ遠位端構造322は移動し、例えば遠位部分324が心臓の内腔に引き込まれ得る。
【0038】
その拡張状態では、遠位部分324は、遠位側の腹腔に面する側面414と、近位側の横隔膜に面する側面416とによって特徴を明らかにされる。同様に、その拡張状態では、近位部分326は、遠位側の心臓壁に面する側面418と、近位側の内腔に面する側面420とによって特徴を明らかにされる。
【0039】
シール構造328は、a)展開後に心臓組織404と横隔膜筋406との間の電気的絶縁を確実にし、b)リードの展開中及び展開後に心腔408、胸腔410、及び腹腔118が互いに密封されることを確実にするように構成される。シール構造328はシリコン製であってもよく、リード体318bの軸線402に沿って近位方向に引っ張る力Fが印加されると、シール構造はリード体の軸線に沿って圧縮され、それによってリード体の軸線から半径方向外側に平坦になって拡張し、リード体の軸線に対してほぼ垂直に広がる。
【0040】
この実施形態では、ADS治療機構100は、横隔膜の筋肉406へ横隔膜刺激パルスを送達可能にする、遠位部分324と関連付けられた1又は複数の遠位電極を含む。いくつかの実施形態では、遠位部分324を形成する金属構造は導電性であってもよく、1又は複数の遠位電極は、遠位部分を形成する金属構造の全体に対応してもよい。いくつかの実施形態では、1又は複数の遠位電極は、遠位部分324を形成する金属構造の一部に対応してもよい。例えば、遠位部分324の近位側の、横隔膜に面する側面416を形成する金属構造は導電性であってもよく、1又は複数の電極は、近位側の、横隔膜に面する側面に対応してもよい。いくつかの実施形態では、1又は複数の遠位電極は、遠位部分324の近位側の、横隔膜に面する側面416に固定された別個の電極422に対応してもよい。
【0041】
遠位部分324はまた、横隔膜の無症候性の部分的な一過性の収縮を誘導する横隔膜機械的パルスを、横隔膜106の筋肉406へ送達可能にする機械的トランスデューサ325を含むことができる。機械的トランスデューサ325は、遠位部分324の横隔膜に面する側面416に配置されてもよい。同じ機械的トランスデューサ325はまた、経心臓リード304bの動き/加速度を監視し、それによってADS治療の間の横隔膜106の捕捉を確認するために使用可能なシグナルを提供するために、機械的な運動/加速度を感知するように機能することができる。あるいは、ADS治療機構100は、ADS治療の間の横隔膜106の捕捉を確認するために、機械的な運動/加速度を感知する機械的トランスデューサ325とは別個に動作する第2の機械的トランスデューサ、例えば運動センサ(図示せず)を含むことができる。
【0042】
この実施形態では、心臓イベントセンサ103は、心臓組織404を介した心臓の電気的活動の感知を可能にする近位部分326と関連付けられた1又は複数の近位電極を含む。いくつかの実施形態では、近位部分326を形成する金属構造は導電性であってもよく、1又は複数の近位電極は、近位部分を形成する金属構造の全体に対応してもよい。いくつかの実施形態では、1又は複数の近位電極は、近位部分326を形成する金属構造の一部に対応してもよい。例えば、近位部分326の遠位側の、心臓壁に面する側面418を形成する金属構造は導電性であってもよく、1又は複数の電極は、遠位側の、心臓壁に面する側面に対応してもよい。1又は複数の近位電極は、近位部分326の遠位側の、心臓壁に面する側面418に固定された別個の電極424に対応してもよい。
【0043】
これらの構成要素、例えば、電極422、424、機械的トランスデューサ325、運動センサ(図示せず)は、リード体318bを通って延びるワイヤを介してリードの近位端316でコネクタ(図示せず)に電気的に結合される。シール構造328によって提供される心臓組織404と横隔膜筋406との間の電気的絶縁は、a)近位部分326の電極によって心筋から感知される電気シグナル及び遠位部分324の電極によって横隔膜から感知される電気シグナルの独立した位置合わせ、並びにb)近位部分326の電極によるペーシング刺激パルスの心筋への独立した送達及び遠位部分324の電極による横隔膜刺激パルスの横隔膜への送達を可能にする。
【0044】
マルチピースIMD300が心臓に心臓治療を送達するように構成されている場合、経心臓リード304bはまた、CRM治療機構101を含む。CRM治療機構101は、1又は複数の電極を含んでいてもよい。いくつかの構成では、CRM治療機構101の電極は、心臓イベントセンサ103の電極であってもよい。他の構成では、CRM治療機構101の電極は、心臓イベントセンサ103の電極とは異なる電極であってもよい。いずれの場合も、CRM治療機構101の電極は、徐脈ペーシング、抗頻脈ペーシングなどの心臓治療を送達するように構成される。これらの電極は、心臓活動を感知し、遠位端構造322の近位部分326と関連付けられた1又は複数の近位電極と併せて心臓治療を送達するように構成された近位電極330などの追加の電極を含むことができる。近位部分326と関連付けられた1又は複数の近位電極は、電気除細動ショック又は除細動ショックを送達するように構成されてもよい。例えば、遠位端構造322の近位部分326を形成する金属構造の全体に対応する近位電極を使用して、電気除細動ショック又は除細動ショックを送達することができる。
【0045】
経心臓リード304bは、右心室などの心臓内の標的位置へのリードの案内を可能にするオーバーザワイヤリードとして構成されてもよい。図5を参照すると、リード304bの遠位端構造322を配置するための位置は、横隔膜106と、心臓104の右心室の下壁504との間の接触面である。好ましい位置は、右心室の心尖506である。
【0046】
経心臓リード304bは、右心室への埋め込みを参照して示され、説明されているが、リードは、横隔膜106に隣接する任意の心内腔に埋め込むことができる。例えば、図1Bを参照すると、経心臓リード304bは、右心房又は左心室に埋め込まれてもよく、それぞれが横隔膜106と密接に接触している。図3B及び図4を参照すると、経心臓リード304bは、心臓組織404の壁及び横隔膜106を貫通することを容易にする機構426をリードの遠位端に含むことができる。機構426は、ねじ又はパンチ機構であってもよい。経心臓リード304bは、図3Aに示す収縮状態から図4に示す拡張状態に遠位端構造322を移行させ、拡張状態で遠位端構造をロックするように構成された、例えばプルワイヤなどの機構428をさらに含む。
【0047】
図3Aに戻ると、別の実施形態では、ADS治療機構100及び心臓イベントセンサ103を含むリード306は、心臓の右心房に埋め込まれるように構成された心内膜リードである。この実施形態では、ADS治療機構100は、横隔膜の筋肉へ横隔膜刺激パルスを送達可能にする1又は複数の電極332、334を含む。いくつかの構成では、これらの同じ電極332、334はまた、心臓の電気的活動の感知を可能にし、それによって心臓イベントセンサ103として機能する。他の構成では、心臓イベントセンサ103は、ADS治療機構100の電極とは異なる電極を含んでもよい。
【0048】
ADS治療機構100はまた、横隔膜へ横隔膜機械的パルスを送達可能にする機械的トランスデューサ336を含んでもよい。機械的トランスデューサ336はまた、リードの動き/加速度を監視し、それによってADS治療の横隔膜を捕捉する効率を確認するために使用できるシグナルを提供するために、機械的な運動/加速度を感知するように機能することができる。あるいは、ADS治療機構100は、リードの動き/加速度を監視するために、機械的な運動/加速度を感知する別個の機械的トランスデューサ、例えば運動センサ(図示せず)を含んでもよい。これらの構成要素、例えば、電極、機械的トランスデューサ、運動センサは、リード体340を通って延びるワイヤを介してリードの近位端338でコネクタ(図示せず)に電気的に接続される。
【0049】
マルチピースIMD 300が心臓に心臓治療を送達するように構成されている場合、心内膜リード306はまた、CRM治療機構101を含む。CRM治療機構101は、1又は複数の電極を含んでいてもよい。いくつかの構成では、CRM治療機構101の電極は、ADS治療機構100の電極332、334であってもよい。他の構成では、CRM治療機構101の電極は、心臓イベントセンサ103の電極であってもよい。他の構成では、CRM治療機構101の電極は、ADS治療機構100の電極及び心臓イベントセンサ103の電極とは異なる電極であってもよい。いずれの場合も、CRM治療機構101の電極は、徐脈ペーシング、抗頻脈ペーシングなどの心臓治療を送達するように構成される。
【0050】
図3Aを続けると、別の実施形態では、ADS治療機構100及び心臓イベントセンサ103を含むリード308は、心臓の冠静脈洞に埋め込まれるように構成された心内膜リードである。この実施形態では、ADS治療機構100は、横隔膜の筋肉へ横隔膜刺激パルスを送達可能にする、又は横隔膜の動きを誘導する横隔神経へ遠距離場刺激を送達可能にする1又は複数の電極342、344、346を含む。いくつかの構成では、これらの同じ電極342、344はまた、心臓の電気的活動の感知を可能にし、それによって心臓イベントセンサ103として機能する。他の構成では、心臓イベントセンサ103は、ADS治療機構100の電極とは異なる電極を含んでもよい。
【0051】
ADS治療機構100はまた、横隔膜へ横隔膜機械的パルスを送達可能にする機械的トランスデューサ348を含んでもよい。機械的トランスデューサ348はまた、リードの動き/加速度を監視し、それによってADS治療の横隔膜を捕捉する効率を確認するために使用できるシグナルを提供するために、機械的な運動/加速度を感知するように機能することができる。あるいは、ADS治療機構は、リードの動き/加速度を監視するために、機械的な運動/加速度を感知する別個の機械的トランスデューサ、例えば運動センサ(図示せず)を含んでもよい。これらの構成要素、例えば、電極、機械的トランスデューサ、運動センサは、リード体352を通って延びるワイヤを介して心内膜リード308の近位端350でコネクタ(図示せず)に電気的に結合される。
【0052】
マルチピースIMD 300が心臓に心臓治療を送達するように構成されている場合、心内膜リード308はまた、CRM治療機構101を含む。CRM治療機構101は、1又は複数の電極を含んでいてもよい。いくつかの構成では、CRM治療機構101の電極は、ADS治療機構100の同じ電極342、344、346であってもよい。他の構成では、CRM治療機構101の電極は、心臓イベントセンサ103の電極であってもよい。他の構成では、CRM治療機構101の電極は、ADS治療機構100の電極及び心臓イベントセンサ103の電極とは異なる電極であってもよい。いずれの場合も、CRM治療機構101の電極は、徐脈ペーシング、抗頻脈ペーシングなどの心臓治療を送達するように構成される。
【0053】
図3Bを参照すると、図3Aのリード304a、306、308は、心臓活動を感知し、電気除細動、除細動及びペーシング刺激を含む多内腔心臓治療を送達するのに適したIMD 300の一部として心臓に埋め込まれて示されている。IMD 300は、心臓ペースメーカー、ICD、除細動器、ペースメーカーと組み合わせたICD、心臓再同期治療(CRT)ペースメーカー、心臓再同期治療除細動器(CRT-D)などであり得る。
【0054】
IMD 300は、右心房(RA)心内膜リード306及び右心室(RV)心内膜リード304aによって患者の心臓104の右側と電気的に連通して配置されるように構成される。RA心内膜リード306は、右心房に配置されるように設計され、この例示的な実施態様では、典型的には患者の右心耳に埋め込まれる心房先端電極332と、心房リング電極334とを含む。したがって、RAリード306は、電気心臓シグナルを感知し、心臓の右側、特に右心房にペーシング治療の形態で刺激を送達することができる。
【0055】
RVリード304aは、この例示的な実施態様では、RV先端電極312、RVリング電極310、RVコイル電極320、及び上大静脈(SVC)コイル電極354を含む。典型的には、RVリード304aは、心臓104内に経静脈的に挿入されて、RV先端電極312を右心室の心尖部に配置し、RVコイル電極320を右心室に配置し、SVCコイル電極354を上大静脈に配置するように設計される。したがって、RVリード304aは、電気心臓シグナルを感知し、心臓の右側、特に右心室にペーシング及びショック治療の形態で刺激を送達することができる。
【0056】
IMD 300は、冠静脈洞(CS)領域に配置するように設計された冠静脈洞リード308を介して患者の心臓104の左側と電気的に連通している。本明細書で使用される場合、冠静脈洞領域とは、冠静脈洞の任意の部分、大心臓静脈、左辺縁静脈、左後心室静脈、中心臓静脈、及び/又は小心臓静脈、又は冠静脈洞によってアクセス可能な任意の他の心臓静脈を含む左心室の静脈脈管構造を指す。
【0057】
CS心内膜リード308は、この例示的な実施態様では、左心室(LV)先端電極342、左心房(LA)リング電極344、及びLAコイル電極346を含む。典型的には、CSリード308は、左心室に隣接してLV先端電極342、左心房に隣接してLAリング電極344及びLAコイル電極346を配置するように、心臓104に経静脈的に挿入して冠静脈洞領域にアクセスするように設計される。したがって、CS心内膜リード308は、電気心臓シグナルを感知し、心臓の左側にペーシング及びショック治療の形態で刺激を送達することができる。
【0058】
図3Bには3つのリードが示されているが、ペーシング刺激、電気除細動及び/又は除細動を効率的かつ効果的に提供するために、(1又は複数のペーシング、感知、及び/又はショック電極を有する)より少ない又はより多いリードが使用されてもよい。さらに、個々のリードは、追加の電極を含んでもよい。例えば、CS心内膜リード308は、LV先端電極342とLAコイル電極346との間に離間した追加のリング電極を含むことができる。
【0059】
シングルピース埋め込み型医療デバイス
図6A及び図6Bは、シングルピースIMD 600を例示する。図1Aを参照すると、IMD 600は、心臓104の右心室と横隔膜106との接触面領域102に埋め込まれるように構成することができる。IMD 600は、ADS治療機構100及び心臓イベントセンサ103を含む。IMD 600は、ハウジングの第1の表面606と関連付けられた第1の複数の離間電極604a~604dと、ハウジングの第2の表面610と関連付けられた第2の複数の離間電極608a~608dとを有するハウジング602を含む。
【0060】
シングルピースIMD 600は、一方の複数の電極604a~604dが心臓104に隣接して配置され、他方の複数の電極608a~608dが横隔膜106に隣接して配置され得るように構成される。心臓104に隣接する電極604a~604dは、一対の電極間の心臓の電気的活動の双極感知を可能にする心臓イベントセンサ103を形成する。横隔膜106に隣接する電極608a~608dは、一対の電極を介して横隔膜106に直接横隔膜刺激を送達可能にするADS治療機構100を形成する。心臓感知及び横隔膜ペーシングのための様々な電極構成は、シングルピースIMD 600の埋め込みの際に試験され、必要に応じてデバイスプログラミングを介して後で変更することができる。
【0061】
シングルピースIMD 600が心臓へ心臓治療を送達するように構成される場合、IMDはCRM治療機構101もさらに含む。CRM治療機構101は、徐脈ペーシング、抗頻脈ペーシングなどの心臓治療を送達するように構成された1又は複数のペーシング電極を含むことができる。これらのペーシング電極は、心臓104に隣接して配置された複数の電極604a~604dのうちの1又は複数であってもよい。これらのペーシング電極は、追加の電極を含んでもよい。
【0062】
図6A及び図6Bに示すIMD 600は細長いディスクの形状に形成されているが、IMDは、例えばチューブを含む他のフォームファクタを有してもよい。リードレスIMD 600は、長さ約1.25インチ、幅約0.5インチ、及び厚さ約0.125インチを有することができる。
【0063】
IMD 600は、ハウジング602を心臓及び横隔膜に対して定位置に固定するように構成された固定機構を含むことができる。この目的のために、第1の複数の離間機械要素612はハウジングの第1の表面606と関連付けられ、第2の複数の離間機械要素614はハウジングの第2の表面610と関連付けられる。機械要素612、614は、心臓に隣接する表面及び横隔膜に隣接する表面の一方又は両方へのIMD 600の迅速な展開及び縫合糸なしの固定を容易にするように構成される。例えば、ハウジング602の第1の表面606上の機械要素612は、心臓の心膜内に延在するように構成されたバネ式又は他の機械的に作動されるワイヤ/ピン/フックを含んでもよい。同様に、ハウジング602の第2の表面610上の機械要素614は、横隔膜の上面内に延在するように構成されたバネ式又は他の機械的に作動されるワイヤ/ピン/フックを含んでもよい。
【0064】
イントロデューサツールは、心臓104の右心室と横隔膜106との間の位置にIMD 600を挿入して容易に展開することを可能にし、好ましい埋め込み位置は心臓の下部の右心室の下中隔/心尖部にある。ツールは、準剣状突起下又は他の適切なアクセスに合わせて調整されたトロカール又はシリンジ状構造と、安全な突出、デバイスの挿入及び固定を容易にする内蔵カメラ/照明系とを含むことができる。
【0065】
ADS治療を含む埋め込み型医療デバイス
図7A図7B及び図7Cは、単独で、又は心臓治療と組み合わせて、ADS治療の送達を通して胸腔内の圧力に影響を及ぼすように構成されたIMD 700のブロック図である。IMD 700は、コントローラ702、心臓イベントセンサ103、圧力測定センサ708、ADS治療機構100、及び任意選択のCRM治療機構101を含み、それらの各々は、有線接続又は無線接続のいずれかを介してコントローラと相互作用するために結合され得る。コントローラ702は、ADSコントローラ703を含み、CRMコントローラ705を含んでもよい。
【0066】
図7Bを参照すると、ADSコントローラ703は、心臓シグナルモジュール728、圧力シグナルモジュール730、治療モジュール740、及び様々な他のモジュールを含む。心臓イベントセンサ103は、心臓イベントを表すシグナルをコントローラ702に提供するように構成される。例えば、心臓イベントセンサ103は、電極が心臓構造、例えば心臓、心膜、大動脈及び大静脈の中又は上に配置されて、心臓イベントを表す電気シグナルを感知して該シグナルをADSコントローラ703に提供するように、心臓の中又は上に埋め込まれるように構成されたリードと関連付けられた1又は複数の電極712、714であってもよい。あるいは、心臓イベントセンサ103は、電極が心臓構造、例えば心臓、心膜、大動脈及び大静脈の上又はそれに隣接して配置されて、心臓イベントを表す電気シグナルを感知して該シグナルをADSコントローラ703に提供するように、心臓と横隔膜との間の位置に埋め込まれるように構成されたシングルピースデバイスと関連付けられた1又は複数の電極712、714であってもよい。
【0067】
心臓イベントセンサ103はまた、運動センサが心臓構造、例えば心臓、心膜、大動脈及び大静脈の中又は上に配置されて、心臓の運動を感知する、又は心音を感知する、及びそのような運動を表す電気シグナルを出力するように、心臓の中又は上に埋め込まれるように構成されたリードと関連付けられた運動センサ716であってもよい。あるいは、運動センサ716は、運動センサが心臓構造、例えば心臓、心膜、大動脈及び大静脈の上又はそれに隣接して配置されて、心臓の運動を感知する、又は心音を感知する、及びそのような運動を表す電気シグナルを出力するように、心臓と横隔膜との間の位置に埋め込まれるように構成されたシングルピースデバイスと関連付けられてもよい。運動センサ716は、例えば、心臓の動きに関連するシグナルを提供する加速度計(例えば、多軸の、例えば三次元の加速度計)、又は心音に関連するシグナルを提供する音響トランスデューサであってもよい。
【0068】
圧力測定センサ708は、胸腔内の1又は複数の圧力を表すシグナルをコントローラ702に提供するように構成される。「胸腔内の圧力」は、胸腔内の開放空間に、並びに任意の胸腔内構造、例えば心臓、心膜、腔内の大動脈及び大静脈の外側に配置された圧力センサを介して直接得られる胸腔内圧を含み得る。「胸腔内の圧力」はまた、例えば、胸腔内圧を示す、又はそれと相関する測定値を提供する胸腔内の外側に配置された加速度計を介して間接的に得られる胸腔内圧の測定値を含み得る。「胸腔内の圧力」はまた、心臓、心膜、大動脈及び大静脈などの胸腔内構造に関連する圧力を含み得る。例えば、これらの「胸腔内の圧力」は、右心房圧、右心室圧、左心室圧、及び大動脈圧を含み得る。
【0069】
圧力測定センサ708は、胸腔内の開放空間内、又は胸腔内構造、例えば心臓、心膜、腔内の大動脈及び大静脈の中、上、若しくはそれに隣接して配置されるように構成され、圧力を表す電気シグナルを出力するように構成された、1又は複数の圧力センサ718であってもよい。これらの目的のために、1又は複数の圧力センサ718は、運動センサが心臓構造、例えば心臓、心膜、大動脈及び大静脈の中又は上に配置されて、1又は複数の圧力センサによって感知されたシグナルをADSコントローラ703に提供するように、心臓の中又は上に埋め込まれるように構成されたリードと関連付けられてもよい。例えば、圧力センサ718は、1)右心房の圧力シグナルを取得するために右心房に、2)右心室の圧力を取得するために右心室に、3)肺動脈の圧力の代用値を取得するために右心室に、又は4)肺動脈自体の中に埋め込まれるように構成されたデバイスに含まれてもよい。あるいは、圧力測定センサ708は、圧力測定センサが心臓構造、例えば心臓、心膜、大動脈及び大静脈の上又はそれに隣接して配置されて、1又は複数の圧力センサによって感知されたシグナルをADSコントローラ703に提供するように、心臓と横隔膜との間の位置に埋め込まれるように構成されたシングルピースデバイスと関連付けられてもよい。
【0070】
圧力測定センサ708はまた、胸腔内圧を示す、又はそれに相関するシグナルを提供するように構成された運動センサ720であってもよい。例えば、運動センサ720は、横隔膜の運動を感知し、そのような運動を表す電気シグナルをコントローラ702に出力するために、横隔膜の上又は近くに配置されるように構成された加速度計であってもよい。運動センサ720はまた、心機能に関連する音を感知してそのような音を表す電気シグナルを出力するために患者内に配置されるように構成された加速度計又は音響トランスデューサであってもよい。これらの電気シグナルの変動は、呼吸サイクルに関連する胸腔内圧の変化と相関する。あるいは、運動センサ720は、横隔膜中又は上に配置され、横隔膜組織のインピーダンス又はコンダクタンスを表す電気シグナルを出力するように構成された一対の電極の形態のインピーダンス/コンダクタンスセンサであってもよい。インピーダンス又はコンダクタンスの変動は、横隔膜の拡張及び収縮の変化に相関し、これは次に呼吸サイクルに関連する胸腔内圧の変化に相関する。
【0071】
ADS治療機構100は、横隔膜に直接又は横隔神経の遠距離場刺激を介してのいずれかの横隔膜刺激を適用して、横隔膜の無症候性の一過性の部分収縮を引き起こすように構成される。前述のように、横隔膜の「一過性の」収縮は、60~180ミリ秒の範囲で続く、典型的には約100ミリ秒の、横隔膜の短い単収縮の、尾側、それに続く頭蓋運動である。横隔膜の「部分」収縮は、「一過性の」収縮を示す横隔膜の一部(横隔膜全体よりも小さい)である。刺激は、呼吸に影響を及ぼさない横隔膜の部分収縮を誘導する刺激パラメータのセットによって特徴を明らかにされる。より具体的には、刺激は、横隔膜が吸気を誘導するレベルまで収縮しないように構成される。
【0072】
ADS治療機構100は、電極が心臓構造、例えば心臓、心膜、大動脈及び大静脈の中又は上に配置されて、横隔膜刺激を電気刺激パルスの形態で送達するように、心臓の中又は上に埋め込まれるように構成されたリードと関連付けられた1又は複数の電極722、724であってもよい。例えば、図3Bを参照すると、1又は複数の電極722、724は、心内膜リード304a、306、308と関連付けられてもよい。あるいは、1又は複数の電極722、724は、電極が横隔膜の中又は上に配置されて横隔膜刺激を送達するように、心臓の中又は上に埋め込まれるように構成されたリードと関連付けられてもよい。例えば、図4を参照すると、1又は複数の電極722、724は、経心臓リード304bと関連付けられてもよい。あるいは、1又は複数の電極722、724は、電極が横隔膜の上又はそれに隣接して配置されて横隔膜刺激を送達するように、心臓と横隔膜との間の位置に埋め込まれるように構成されたデバイスと関連付けられてもよい。例えば、図6を参照すると、1又は複数の電極722、724は、シングルピースIMD 600と関連付けられてもよい。
【0073】
ADS治療機構100は、横隔膜機械的パルスを横隔膜の筋肉へ送達可能にする機械的トランスデューサ726を含んでもよい。機械的トランスデューサ726は、例えば、横隔膜の上又はその近くに配置されるように構成された音響トランスデューサであってもよい。機械的トランスデューサ726は、横隔膜の一過性の動きを引き起こす機械的エネルギーを横隔膜に出力するように構成されてもよい。機械的トランスデューサ726はまた、横隔膜の運動を感知して、そのような運動を表す電気シグナルをADSコントローラ703に出力するように構成されてもよい。このシグナルは、ADS治療が横隔膜を効果的に捕捉したことを確認するためのフィードバックシグナルとして使用することができる。あるいは、ADS治療機構は、横隔膜の感知運動を感知し、横隔膜捕捉確認を提供する別個の運動センサ758、例えば加速度計を含んでもよい。
【0074】
機械的トランスデューサ726及び運動センサ758は、電極が心臓構造、例えば心臓、心膜、大動脈及び大静脈の中又は上に配置されて、横隔膜刺激を電気刺激パルスの形態で送達するように、心臓の中又は上に埋め込まれるように構成されたリードと関連付けられてもよい。例えば、図3Bを参照すると、機械的トランスデューサ726及び運動センサ758は、心内膜リード304a、306、308と関連付けられてもよい。あるいは、機械的トランスデューサ726及び運動センサ758は、電極が横隔膜の中又は上に配置されて横隔膜刺激を送達するように、心臓の中又は上に埋め込まれるように構成されたリードと関連付けられてもよい。例えば、図4を参照すると、機械的トランスデューサ726及び運動センサ758は、経心臓リード304bと関連付けられてもよい。あるいは、機械的トランスデューサ726及び運動センサ758は、電極が横隔膜の上又はそれに隣接して配置されて横隔膜刺激を送達するように、心臓と横隔膜との間の位置に埋め込まれるように構成されたデバイスと関連付けられてもよい。例えば、図6を参照すると、機械的トランスデューサ726及び運動センサ758は、シングルピースIMD 600と関連付けられてもよい。
【0075】
IMD 700の物理的構造に関して、IMDの前述の機能的説明は、心臓イベントセンサ103及びADS治療機構100とそれぞれ関連付けられた別個の電極対712、714及び722、724を記載しているが、IMDの構成は、二重機能を実行するように構成された単一の電極対を含むことができる。すなわち、IMD 700は、心臓の電気的活動の感知、及び電気的横隔膜刺激の送達の両方を行うように構成された単一の電極対を含むことができる。この構成では、コントローラ702は、必要に応じて心臓イベントセンサ103とADS治療機構100との間の電極の接続を切り替えるように構成された電極インターフェースを含むことができる。電極インターフェースはまた、限定するものではないが、電極と横隔膜組織との間の適切な接触面に必要な増幅、分離、及び電荷平衡機能を含む他の特徴、能力、又は態様を提供することができる。
【0076】
同様に、心臓イベントセンサ103、圧力測定センサ708、及びADS治療機構100に関して参照される別個の運動センサ716、720、758及び機械的トランスデューサ726のそれぞれの機能は、共通の運動センサによって提供されてもよい。この構成では、ADSコントローラ703は、必要に応じて心臓イベントセンサ103、圧力測定センサ708及びADS治療機構100の間の共通のセンサの接続を切り替えるように構成されたセンサインターフェースを含むことができる。センサインターフェースはまた、限定するものではないが、センサと横隔膜組織との間の適切な接触面に必要な増幅、分離を含む他の特徴、能力、又は態様を提供することができる。
【0077】
ADSコントローラ703をより詳細に考慮すると、コントローラの心臓シグナルモジュール728は、心臓イベントセンサ103からシグナルを受信し、シグナルを処理して対象の心臓イベントを検出するように構成される。例えば、心臓シグナルモジュール728は、内因性心室脱分極、心室ペーシングスパイク、誘発性心室脱分極、内因性心房脱分極、心房ペーシングスパイク、誘発性心房脱分極などの電気的心臓イベント、及び2)S1音によって表される心室収縮などの機械的心臓イベントのうちの1又は複数を検出するように構成され得る。検出された心臓イベントに対応する情報は治療モジュール740に提供され、治療モジュールは次いで、心臓イベントの情報を処理して、刺激治療の1又は複数のパラメータを決定又は調整し、横隔膜刺激の送達を誘発する。
【0078】
電気的心臓イベントに関して、心臓シグナルモジュール728は、心臓イベントセンサ103の電極712、714から電気シグナルを受信し、電気シグナルを処理して対象の心臓イベントを検出するように適合された電位図(EGM)分析モジュール732を含むことができる。EGM分析モジュール732は、心臓電気活動シグナル、例えばEGMシグナルを処理して、P波などの心房イベント、又はR波、QRS群、若しくはT波などの心室イベントに対応する心臓イベントを検出するように構成され得る。
【0079】
機械的心臓イベントに関して、心臓シグナルモジュール728は、心臓の機械的運動を分析するための心臓運動/心音分析モジュール734を含むことができる。心臓運動/心音分析モジュール734は、心臓イベントセンサ103の運動センサ716からシグナルを受信し、対象の心臓イベントを検出するように適合される。前述のように、運動センサ716は、例えば、横隔膜の運動及び心音などの様々な機械的及び音の活動を感知するように構成された加速度計又は音響トランスデューサであってもよい。加速度計を介して得られた心音シグナルは、心臓運動/心音分析モジュール734によって処理され、心臓イベントを検出することができる。
【0080】
ADSコントローラ703の圧力シグナルモジュール730は、圧力測定センサ708からシグナルを受信し、対象の圧力イベントを検出する、又は対象の圧力測定値を導出する目的でシグナルを処理するように構成される。例えば、対象の測定値に関して、圧力シグナルモジュール730は、圧力センサ718からのシグナルを処理して、異なる治療条件下で、例えば、横隔膜刺激がオンである、及び横隔膜刺激がオフである、又は異なる刺激設定の下で圧力測定値を決定することができる。圧力シグナルモジュール730はまた、圧力センサ718からのシグナルを処理して、異なる時間、例えば刺激パルスの送達時又は送達付近、及び特定の心臓イベントの発生時又は発生付近で圧力測定値を決定することができる。対象のイベントに関して、圧力シグナルモジュール730は、運動センサ720からのシグナルを処理して呼気サイクルを検出し、吸気終了などのサイクル内の対象の1又は複数のイベントを識別することができる。検出された対象のイベント及び対象の測定値に対応する情報は、まとめて圧力情報と呼ばれ、治療モジュール740に提供される。次いで、治療モジュール740は、圧力情報を処理して、刺激治療の1又は複数のパラメータに対する調整が必要かどうかを判定する。
【0081】
圧力センサ718からのシグナルの処理に関して、圧力シグナルモジュール730は、胸腔内の圧力を分析するための圧力測定モジュール736を含むことができる。圧力測定モジュール736は、圧力測定センサ708の圧力センサ718からシグナルを受信するように適合されている。前記のように、圧力センサ718は、胸腔内の開放空間に、並びに任意の胸腔内構造、例えば心臓、心膜、腔内の大動脈及び大静脈の外側に配置され、それによって、胸腔内圧を表すシグナルを提供するように構成されてもよい。あるいは、圧力センサ718は、胸腔内構造、例えば心臓、心膜、腔内の大動脈及び大静脈の中、上、又はそれに隣接して配置されるように構成されてもよい。例えば、圧力センサ718は、右心房、右心室、左心室、大動脈、及び肺動脈のうちの1つの中、上又はそれに隣接して配置され、それによって右心房圧、右心室圧、左心室圧、大動脈圧、又は肺動脈圧を提示する対応するシグナルを提供するように構成されてもよい。
【0082】
圧力測定モジュール736は、圧力センサ718から得られたシグナルを処理して、対象の圧力測定値を導出するようにさらに適合される。圧力測定値は治療モジュール740に提供され、そこでさらに処理されて、より望ましい結果を提供するために刺激治療が改善されているかどうかが判定される。例えば、刺激パラメータ値の異なるセットによってそれぞれ規定される、異なる刺激治療に対する異なる胸腔内圧の測定値を取得して、どの刺激パラメータのセットが胸部内圧の最良の測定値を提供するかを決定することができる。別の例では、胸腔内圧の測定値を所定の閾値と比較して、刺激パラメータの1又は複数を、閾値を得るように調整すべきか、又は少なくとも閾値により近づけるように調整すべきかどうかを判定することができる。
【0083】
運動センサ720からのシグナルの処理に関して、圧力シグナルモジュール730は、横隔膜運動及び心臓に関連する音のうちの1又は複数を分析するための、横隔膜運動及び心音分析モジュール738を含むことができる。横隔膜運動及び心音分析モジュール738は、圧力測定センサ708の運動センサ720からシグナルを受信し、対象の圧力イベントを検出するように適合される。前記のように、運動センサ720は、横隔膜の運動を感知するために横隔膜の上又はその近くに配置されるように構成された加速度計であってもよい。運動センサ720はまた、患者内に配置されて、心機能に関連する音を感知してそのような音を表す電気シグナルを出力するように構成された加速度計又は音響トランスデューサであってもよい。あるいは、運動センサ720は、横隔膜の中又は上に配置されるように構成された一対の電極の形態のインピーダンス/コンダクタンスセンサであってもよい。
【0084】
治療モジュール740に関して、それは、心臓イベント分析モジュール742、圧力分析モジュール744、パルス発生器746、及び横隔膜運動分析モジュール756を含む。パルス発生器746は、刺激治療をADS治療機構100に出力するように構成される。刺激治療は電気刺激の形態であってもよく、その場合、治療は電極722、724を介して送達されてもよい。刺激治療は機械的刺激の形態であってもよく、その場合、治療は機械的トランスデューサ726を介して送達されてもよい。
【0085】
パルス発生器746によって出力される刺激治療は、1又は複数の刺激パラメータによって規定される。電気刺激の場合、パラメータは、1)横隔膜の一過性の部分収縮を誘導する刺激パルスを規定するように選択された値又は設定を有する1又は複数のパルスパラメータ、及び2)1又は複数の刺激パルスの送達のタイミングを制御するタイミングパラメータを含むことができる。パルスパラメータは、例えば、パルス波形タイプ、パルス振幅、パルス持続時間、及びパルス極性を含むことができる。タイミングパラメータは、検出された心臓イベントと電気刺激パルスの送達との間の時間を規定する1又は複数のオフセット期間又は遅延期間を含むことができる。機械的刺激の場合、パラメータは、例えば、機械的パルス波形タイプ、機械的パルス振幅、機械的パルス持続時間を含むことができる。タイミングパラメータは、検出された心臓イベントと機械的パルスの送達との間の時間を規定する1又は複数のオフセット期間又は遅延期間を含むことができる。
【0086】
パルスパラメータに関して、横隔膜の一過性の部分収縮は、典型的には、横隔膜の非常に短い(わずか数十ミリ秒の)パルス状の二相性の(単一尾側に続く単一頭側の)無症候性の運動を伴う。特に治療モジュール740を含むIMD 700は、横隔膜の非常に短い二相性の無症候性運動をもたらす刺激パルスを生成するように構成される。この目的のために、治療モジュール740は、パルス波形タイプに関して矩形波、正弦波、三角波、又はのこぎり波の設定を選択して、パルス極性に対して正又は負の設定を選択するように構成することができる。治療モジュール740は、0.1ボルト~10.0ボルトの間のパルス振幅の値を選択し、0.1ミリ秒~5ミリ秒であるパルス持続時間の値を選択するようにさらに構成することができる。
【0087】
横隔膜の一過性の収縮を引き起こすために横隔神経の遠距離場刺激が使用される場合、横隔神経を捕捉するのに十分なエネルギーの刺激パルスを生成するために、パルスパラメータはそれぞれの範囲の上端に向かって設定されてもよい。例えば、パルス振幅は、5.0ボルト~10.0ボルトの間など、0.1ボルト~10.0ボルトの範囲の上端の値に設定されてもよく、パルス持続時間は、2.5ミリ秒~5ミリ秒の間など、0.1ミリ秒~5ミリ秒の範囲の上端の値に設定されてもよい。
【0088】
横隔膜の一過性の収縮を引き起こすために横隔膜の筋肉の遠距離場刺激が使用される場合、横隔神経の刺激を避けながら横隔膜を捕捉するのに十分なエネルギーの刺激パルスを生成するために、パルスパラメータはそれぞれの範囲の中央に向かって設定されてもよい。例えば、パルス振幅は、3ボルト~6ボルトの間など、0.1ボルト~10.0ボルトの範囲の中央の値に設定されてもよく、パルス持続時間は、1.5ミリ秒~3.0ミリ秒の間など、0.1ミリ秒~5ミリ秒の範囲の中央の値に設定されてもよい。
【0089】
横隔膜の一過性の収縮を引き起こすために横隔膜の筋肉の直接刺激が使用される場合、横隔膜を捕捉するのに十分なエネルギーの刺激パルスを生成するために、パルスパラメータはそれぞれの範囲の下端に向かって設定されてもよい。例えば、パルス振幅は、0.1ボルト~2.5ボルトの間など、0.1ボルト~10.0ボルトの範囲の下端の値に設定されてもよく、パルス持続時間は、0.1ミリ秒~2.0ミリ秒の間など、0.1ミリ秒~5ミリ秒の範囲の下端の値に設定されてもよい。
【0090】
タイミングパラメータに関して、治療モジュール740は、1又は複数のオフセット期間又は遅延期間を決定するように構成されてもよい。遅延期間は、連続して検出された心臓イベントの間の時間に基づいてもよい。例えば、心臓シグナルモジュール728のEGM分析モジュール732は、心室イベント、例えばR波を検出し、そのような検出を治療モジュール740に出力するように構成することができる。心臓イベント分析モジュール742は、検出された心室イベントを処理して、連続する心室イベントのいくつかの対の間の時間の統計的尺度を決定することができる。次いで、心臓イベント分析モジュール742は、統計的尺度に基づく遅延期間及び統計的尺度に対するオフセットを決定し、決定されたオフセット期間又は遅延期間に基づいてADSパルスを出力するようにパルス発生器746を制御することができる。
【0091】
治療モジュール740によるパルスパラメータの設定及び値並びにタイミングパラメータの初期選択は、外部デバイス、例えばプログラム装置を介して医師によって実行されてもよい。この場合、外部デバイスは、無線通信リンクを介して治療モジュール740に選択コマンドを提供し、治療モジュールは、コマンドに従ってパルスパラメータ及びタイミングパラメータを選択する。あるいは、治療モジュール740によるパルスパラメータの設定及び値並びにタイミングパラメータの選択を自動化することができる。
【0092】
タイミングパラメータ及びパルスパラメータを含む刺激パラメータのうちの1又は複数は、治療モジュール740によって調整することができる。タイミングパラメータに関して、電気刺激の速度は、患者の心拍数の変化に応じて調整することができる。したがって、電気刺激パルスの送達速度は、例えば、毎分30パルス(ppm)~180ppmの範囲、典型的には約60 ppmの速度であり得る。同様に、検出された心臓イベントと電気刺激パルスの送達との間の遅延期間は、検出された心臓イベントの間の時間間隔の移動平均に基づいて調整することができる。パルスパラメータに関して、パルス振幅は0.1ボルト~10.0ボルトの値に設定されてもよく、パルス幅は0.1ミリ秒~5ミリ秒の値に設定されてもよい。振幅は、例えば、0.1ボルト~0.5ボルトの増分で調整することができ、パルス幅は、0.1ミリ秒~1.5ミリ秒の増分で調整することができる。極性は、正極性と負極性との間で変更することができ、波形タイプは、単相から二相に、又は矩形波から三角波、正弦波又はのこぎり波の波形に変更することができる。
【0093】
心臓イベント分析モジュール742は、心臓シグナルモジュール728から心臓イベント情報を受信し、この情報を処理してタイミングパラメータを決定するように構成される。この目的のために、一構成では、心臓イベント分析モジュール742は、検出された心臓イベントに対して、刺激パルスを横隔膜に送達する時間を決定する。遅延期間と呼ばれる決定された時間は、刺激パルスが心臓イベントの次の予想される発生の直前に送達されるように選択されてもよい。
【0094】
オフセット期間又は遅延期間は、連続して検出された心臓イベントの間の時間に基づいてもよい。例えば、心臓シグナルモジュール728のEGM分析モジュール732は、心室イベント、例えばR波を検出し、そのような検出を治療モジュール740に出力するように構成することができる。心臓イベント分析モジュール742は、検出された心室イベントを処理して、連続する心室イベントのいくつかの対の間の時間の統計的尺度を決定することができる。次いで、心臓イベント分析モジュール742は、統計的尺度に基づいて1又は複数のオフセット期間又は遅延期間を決定し、決定されたオフセット期間又は遅延期間に基づいて刺激パルスを出力するようにパルス発生器746を制御することができる。
【0095】
治療モジュール740の圧力分析モジュール744は、圧力シグナルモジュール730から、対象の尺度、例えば圧力測定値、又は対象のイベント、例えば呼吸サイクルの吸気終了のうちの1又は複数を含む圧力情報を受信するように構成される。圧力分析モジュール744は、受信した圧力情報を処理して、刺激パラメータの調整が必要かどうかを判定するようにさらに構成される。
【0096】
一構成では、圧力分析モジュール744は、対象の測定値に対応する圧力情報を受信することができ、対象のベースライン測定値に対して対象の測定値を評価することができる。例えば、受信された対象の測定値は、基準点での胸腔内圧、RA圧力、RV圧力、Ao圧力、又はLV圧力の測定値であり得る。圧力分析モジュール744は、受信した対象の測定値をベースラインと比較して、比較結果が許容可能であるかどうかを判定することができる。比較結果が許容可能でない場合、治療モジュール740は、将来の刺激治療のための1又は複数の刺激パラメータを調整して、最終的に許容可能な結果をもたらす刺激治療に到達することができる。
【0097】
別の構成では、圧力分析モジュール744は、対象の圧力イベントの発生に対応する圧力情報を受信することができる。対象の圧力イベントは、例えば、患者の呼吸サイクルに関連してもよく、呼吸サイクル内の吸気終了点であってもよい。そのような圧力情報の受信に応答して、圧力分析モジュール744は、刺激治療を保留するか、又は1若しくは複数の刺激パラメータを変更することを決定することができる。
【0098】
治療モジュール740の横隔膜運動分析モジュール756は、横隔膜の運動を検出するように構成される。横隔膜運動分析モジュール756は、機械的トランスデューサ726又は運動センサ758からシグナルを受信し、このシグナルに基づいて横隔膜の一過性の動きを検出するように適合されている。横隔膜の一過性の動きの検出は、有効なADS治療送達の確認として役立つ。前記のように、機械的トランスデューサ726及び運動センサ758は、横隔膜の運動を感知するために横隔膜の上又はその近くに配置されるように構成された加速度計又は音響トランスデューサであってもよい。
【0099】
図7Cを参照すると、IMD 700のCRMコントローラ 705は、IMDが、電気除細動、除細動、及びペーシング刺激を含む刺激治療を用いて、速い不整脈及び遅い不整脈の両方を感知及び治療することを可能にする心臓シグナルモジュール760及び治療モジュール762を含む。これらの目的のために、1又は複数の心臓イベントセンサ103は、心臓の電気的活動に対応するシグナルをCRMコントローラ705に提供するように構成することができる。例えば、心臓イベントセンサ103は、電極が心臓構造、例えば心臓、心膜、大動脈及び大静脈の中又は上に配置されて、心臓イベントを表す電気シグナルを感知して該シグナルをCRMコントローラ705に提供するように、心臓の中又は上に埋め込まれるように構成されたリードと関連付けられた1又は複数の電極712、714であってもよい。あるいは、1又は複数の電極712、714は、電極が心臓構造、例えば心臓、心膜、大動脈及び大静脈の上に、又はそれらに隣接して配置されて、心臓イベントを表す電気シグナルを感知して該シグナルをCRMコントローラ705に提供するように、心臓と横隔膜との間の位置に埋め込まれるように構成されたデバイスと関連付けられてもよい。
【0100】
図3Aをさらに参照すると、マルチピースIMD 300は、右心房に埋め込まれるように構成されたRA心内膜リード306と関連付けられた心臓イベントセンサ103、例えば電極332、334を介して右心房感知を支援することができる。左心房及び左心室の感知を支援するために、心臓イベントセンサ103、例えば電極342、344、346は、冠静脈洞に埋め込まれるように構成されたCS心内膜リード308と関連付けられてもよい。右心室の感知を支援するために、心臓イベントセンサ103、例えば電極310、312、320は、右心室に埋め込まれるように構成された右心室心内膜リード304aと関連付けられてもよい。図6Aを参照すると、シングルピースIMD 600は、右心室の領域内で心臓に隣接して配置されるように構成されたハウジング表面と関連付けられた心臓イベントセンサ103、例えば電極608a~608dを介して右心室感知を支援することができる。
【0101】
心臓シグナルモジュール760は、1又は複数の心臓イベントセンサ103に結合された感知回路を含む。この感知回路は、心房感知回路764及び心室感知回路766を含むことができ、それぞれが心臓イベントセンサ103を介して電気的心臓活動を感知するように構成される。したがって、心房感知回路764及び心室感知回路766は、専用の感知増幅器、多重化増幅器、又は共有増幅器を含むことができる。各感知回路764、766は、好ましくは、対象の心臓シグナルを選択的に感知するために、当該技術分野で公知の、プログラマブルゲイン及び/又は自動ゲイン制御を有する1又は複数の低出力精密増幅器、バンドパスフィルタリング、及び閾値検出回路を用いる。心房及び心室感知回路764、766の出力は、治療モジュール762に接続され、治療モジュールは、心臓の適切な心腔における心臓活動の有無に応じて、治療モジュール762による心臓治療の送達を必要に応じて誘発又は阻害することができる。
【0102】
心臓シグナルモジュール760は、感知された心臓活動を処理して不整脈を検出する1又は複数のアルゴリズムを使用する不整脈検出器モジュール768を含むことができる。検出された不整脈に応じて、不整脈検出器モジュール768は、1又は複数の刺激治療の投与を要求することができる。不整脈検出のために、CRMコントローラ705は、心房及び心室感知回路764、766を利用して心臓シグナルを感知し、律動が生理学的であるか病的であるかを判定することができる。不整脈に関して、本明細書で使用される場合、「感知」は、電気シグナルに注目するか又はデータ(情報)を取得するために留保され、「検出」は、これらの感知されたシグナルの処理(分析)であり、不整脈、又は不整脈の差し迫った発症のリスク又は可能性を示し得る前駆体又は他の要因の存在に注目する。
【0103】
不整脈検出器モジュール768は、感知されたイベント(例えば、P波、R波、及び「F波」又は「Fib波」と呼ばれることもある細動に関連する脱分極シグナル)の間のタイミング間隔を使用して、所定のレートゾーン制限(すなわち、徐脈、正常、低レートVT、高レートVT、及び細動レートゾーン)及び/又は様々な他の特性(例えば、突然の発症、安定性、生理学的センサ、及び形態など)との1又は複数の比較を実行し、所望又は必要とされる治療のタイプ(例えば、まとめて「段階的治療」と呼ばれる徐脈ペーシング、抗頻脈ペーシング、電気除細動ショック又は除細動ショック)を判定する。心房チャネルに同様の規則を適用して、適切な分類及び介入で心房頻脈性不整脈又は心房細動があるかどうかを判定することができる。心臓シグナルモジュール760は、感知回路764、766から出力された情報を分析して、組織の捕捉が発生したかどうか、及びどの程度発生したかを判定又は検出し、そのような判定に応答して(1又は複数の)パルスをプログラムすることができる捕捉検出器770をさらに含む。
【0104】
治療モジュール762は、CRM治療機構101による送達のためのペーシング刺激パルスを生成するように構成された心房パルス発生器772及び心室パルス発生器774を含む。CRM治療機構101は、電極が心臓構造、例えば心臓、心膜、大動脈及び大静脈の中又は上に配置されて、横隔膜刺激を電気刺激パルスの形態で送達するように、心臓の中又は上に埋め込まれるように構成されたリードと関連付けられた1又は複数の電極722、724であってもよい。あるいは、1又は複数の電極722、724は、電極が心筋の中又は上に配置されて心臓治療刺激を送達するように、心臓の中又は上に埋め込まれるように構成されたリードと関連付けられてもよい。あるいは、1又は複数の電極712、714は、電極が心臓の上又はそれに隣接して配置されて心臓治療刺激を送達するように、心臓と横隔膜との間の位置に埋め込まれるように構成されたデバイスと関連付けられてもよい。
【0105】
図3Aをさらに参照すると、マルチピースIMD 300は、右心房に埋め込まれるように構成された右心房(RA)心内膜リード306と関連付けられたCRM治療機構101、例えば電極332、334を介して右心房ペーシングを支援することができる。左心房及び左心室のペーシングを支援するために、CRM治療機構101、例えば電極342、344、346は、冠静脈洞に埋め込まれるように構成されたCS心内膜リード308と関連付けられてもよい。右心室のペーシングを支援するために、CRM治療機構101、例えば電極310、312、320は、右心室に埋め込まれるように構成された右心室心内膜リード304aと関連付けられてもよい。図6Aを参照すると、シングルピースIMD 600は、右心室の領域内で心臓に隣接して配置されるように構成されたハウジング表面と関連付けられたCRM治療機構101、例えば電極604a~604dを介して右心室のペーシングを支援することができる。
【0106】
治療モジュール762はまた、刺激パルス(例えば、ペーシング速度、房室(AV)遅延、心房間伝導(A-A)遅延、又は心室間伝導(V-V)遅延など)のタイミングを制御し、並びに不応期、ブランキング間隔、ノイズ検出ウィンドウ、誘発性応答ウィンドウ、警告間隔、マーカチャネルタイミングなどのタイミングを追跡しつづけるように動作するタイミング制御回路776を含み、これらはすべて当該技術分野で周知である。
【0107】
IMD 700が埋め込み型電気除細動器/除細動器(ICD)デバイスとして動作することを意図している場合、それは不整脈の発生を検出し、検出された不整脈を終了させることを目的として心臓に適切な治療を自動的に適用する。電気除細動レベルのショックは、一般に、(患者が感じる痛みを最小限に抑えるために)低~中程度のエネルギーレベルであり、及び/又はR波と同期しており、及び/又は頻拍の治療に関係していると考えられる。除細動ショックは、一般に、中~高エネルギーレベル(例えば、約5J~40Jの範囲の閾値に対応する)であり、非同期的に送達され(R波が乱されすぎる可能性があるため)、もっぱら細動の治療に関係する。
【0108】
この目的のために、治療モジュール762は、低エネルギー(例えば、最大0.5J)、中エネルギー(例えば、0.5J~10J)、又は高エネルギー(例えば、11J~40J)のショックパルスを生成するように構成されたショック回路778をさらに含む。図3Bを参照すると、このようなショックパルスは、LAコイル電極346、RVコイル電極320、及び/又はSVCコイル電極354から選択される少なくとも2つのショック電極を介して患者の心臓104に適用することができる。ハウジング302は、RVコイル電極320と組み合わせて活性電極として、又はSVCコイル電極354若しくはLAコイル電極346を使用した分割電気ベクトルの一部として(すなわち、RV電極を共通電極として使用して)作用することができる。
【0109】
図7Aに戻って、コントローラ702は、メモリサブシステム748を含む。メモリサブシステム748は、ADSコントローラ703及びCRMコントローラ705に結合され、感知されたEGM、感知された胸腔内圧力、心音、及び感知された心血管圧力、例えば、右心室圧、左心室圧、右心房圧、及び大動脈圧を表すデータを受信及び格納することができる。メモリサブシステム748はまた、それらの関連する刺激パラメータのセット及び送達時間を含む、送達された刺激治療を表すデータを受信及び格納することができる。
【0110】
コントローラ702はまた、コントローラと他のデバイスとの間の通信を可能にする通信サブシステム750を含む。通信サブシステム750は、誘導結合を介して外部装置との、又はそれからのシグナルの送受信を可能にするテレメトリコイルを含むことができる。通信サブシステム750の代替実施形態は、刺激IMDの感知電極によって検出される、RFリンク用のアンテナ、又は筋肉又は神経の活性化を不正に引き起こさないセンサによって放射される一連の低振幅高周波電気パルスを使用することができる。コントローラ702はまた、コントローラの各モジュールに必要な電圧及び電流を供給する電源752と、モジュールに任意のクロック及びタイミングシグナルを供給するクロック供給部754とを含む。電源は充電式であってもよい。
【0111】
ADS治療送達
図8は、スタンドアロンADS治療デバイス、例えば、ADS治療のみを送達するデバイスに対応するIMDと関連付けられた経静脈心内膜リード802の概略図である。リードは、横隔膜の筋肉を介して横隔膜刺激を送達する目的で右心室壁806と横隔膜808との接触面にADS治療機構800と心臓イベントセンサ803とを配置して、右心室804に埋め込まれるように構成されたRV心内膜リード802である。経静脈リード802は、心臓の電気的活動の感知を可能にするために、心臓組織内、心臓組織上、又は心臓組織に隣接して配置されるように構成された心臓イベントセンサ803をさらに含む。
【0112】
図8の様々な時間整合グラフは、感知された心臓イベント812と、ADS治療デバイスによって可能となる横隔膜刺激パルス814の送達との間の関係を示す。この実施形態では、IMDは、心臓イベントセンサ803を介して有効なRVイベント812を感知し、各イベントは、内因性の自然伝導性心室脱分極から生じる心電図のR波816又はQ波などの内因性の心室イベントに対応する。あるいは、IMDは、リードの機械的センサを介して有効な心室イベントを感知することができる。例えば、加速度計又は音響センサを使用して、心臓の収縮を表す心音シグナルを検出することができる。
【0113】
RVイベント812を感知すると、IMDは、遅延期間818の終わりに、ADS治療機構800を介して横隔膜刺激パルス814を送達する。横隔膜刺激パルス814は、横隔膜の筋肉を捕捉し、横隔膜の一過性の動きを引き起こすのに十分なエネルギーを有する。遅延期間818は、心室の不応期820(及び心房の不応期)中に横隔膜刺激パルス814の送達を行うように計算される。したがって、横隔膜刺激パルス814は、心臓での誘発性応答、例えば脱分極を誘導せず、横隔膜の一過性の収縮のみを誘導する。
【0114】
スタンドアロンADS治療デバイスを介したADS治療の方法は、心内膜又は経心臓ペーシング/感知リード(複数可)を右心房、右心室又は左心室(冠静脈洞)のいずれかに配置することと、横隔膜及び/又は横隔神経に近接することを可能にするリードと関連付けられたADS治療機構の配置位置を決定することとを含む。一実施形態では、位置は、横隔膜の近位及び横隔神経の遠位の右心室内である。本方法は、リードを、それらのリード位置から心臓活動を感知することができるコントローラ702に結合することをさらに含む。
【0115】
本方法は、心臓の収縮を(電気センサ又は機械センサのいずれかを介して)検出することによって一過性の横隔膜筋収縮を開始するのに十分なエネルギーを送達すること;プログラムされた及び/又は計算された時間遅延を利用して、心臓の心房及び心室が不応であることを確実にすること;並びに有効なADS治療を支援して、横隔膜筋を捕捉するのに十分な計算された/プログラムされた遅延の終わりにエネルギーパルスを送達すること、をさらに含む。
【0116】
図9Aは、VVIモードで作動し、ADS治療能力を有するシングルチャンバーペースメーカーに対応するIMDと関連付けられた経静脈心内膜リード902の概略図である。VVIモードは、心室がペーシング及び感知される心室需要ペーシングに対応し、デバイスのパルス発生器は、感知された心室イベントに応答してペーシング出力を抑制する。リードは、横隔膜の筋肉を介して横隔膜刺激を送達する目的で右心室壁906と横隔膜908との接触面にADS治療機構900を配置し、及び心室イベントを感知して、必要に応じて心室ペーシングパルスを送達する目的で右心室壁に隣接してCRM治療機構901を配置して、右心室904に埋め込まれるように構成されたRV心内膜リード902である。RV心内膜リード902は、心臓の電気的活動の感知を可能にするために、心臓組織内、心臓組織上、又は心臓組織に隣接して配置されるように構成された心臓イベントセンサ903をさらに含む。
【0117】
図9Aの様々な時間整合グラフは、感知された心臓イベント912、913と、ペースメーカーによって可能となる横隔膜刺激パルス914の送達との間の関係を示す。この実施形態では、IMDは、心臓イベントセンサ903を介して有効なRVイベント912、913を感知する。感知された右心室イベント912は、内因性自然伝導性心室脱分極から生じる心電図の内因性心室イベント、例えばR波916又はQ波に対応し得る。感知された右心室イベント913は、CRM治療機構901を介した心室ペーシング刺激の送達により生じる心電図の心室ペーシングスパイク917、又は心室ペーシングパルスの送達により生じ、それに続く心電図の誘発性心室脱分極919に対応し得る。
【0118】
右心室912、913を感知すると、IMDは、遅延期間918の終わりに、ADS治療機構900を介して横隔膜刺激パルス914を送達する。遅延期間918は、心室の不応期920中に横隔膜刺激パルス914の送達を行うように計算される。したがって、横隔膜刺激パルス914は、心臓での誘発性応答、例えば脱分極を誘導せず、横隔膜の一過性の収縮のみを誘導する。
【0119】
図9Bは、AAIモードで作動し、ADS治療能力を有するシングルチャンバーペースメーカーに対応するIMDと関連付けられた経静脈心内膜リード932の概略図である。AAIモードは、心房がペーシング及び感知される心房需要ペーシングに対応し、デバイスのパルス発生器は、感知された心房イベントに応答してペーシング出力を抑制する。リードは、横隔膜の筋肉を介して横隔膜刺激を送達する目的で右心房壁936と横隔膜908との接触面にADS治療機構900を配置し、及び心房イベントを感知して、必要に応じて心房ペーシングパルスを送達する目的で右心房壁に隣接してCRM治療機構901を配置して、右心房934に埋め込まれたRA心内膜リード932である。右心房リード932は、心臓の電気的活動の感知を可能にするために、心臓組織内、心臓組織上、又は心臓組織に隣接して配置されるように構成された心臓イベントセンサ903をさらに含む。
【0120】
図9Bの様々な時間整合グラフは、感知された心臓イベント942、943と、ペースメーカーによって可能となる横隔膜刺激パルス944の送達との間の関係を示す。この実施形態では、IMDは、心臓イベントセンサ903を介して有効なRAイベント942、943を感知する。感知されたRAイベント942は、内因性自然伝導性心房脱分極から生じる心電図の内因性心房イベント、例えばP波937に対応し得る。感知された右心房イベント943は、CRM治療機構901を介した心房ペーシング刺激の送達により生じる心電図の心房ペーシングスパイク947、又は心房ペーシングパルスの送達により生じ、それに続く心電図の誘発性心房脱分極949に対応し得る。
【0121】
RAイベント942、943を感知すると、IMDは、遅延期間948の終わりに、ADS治療機構900を介して横隔膜刺激パルス944を送達する。遅延期間948は、心室の不応期940中に横隔膜刺激パルス944の送達を行うように計算される。したがって、横隔膜刺激パルス944は、心臓での誘発性応答、例えば脱分極を誘導せず、横隔膜の一過性の収縮のみを誘導する。
【0122】
図9Cは、DDDモードで作動し、ADS治療能力を有するデュアルチャンバーペースメーカーに対応するIMDと関連付けられた一対の経静脈心内膜リード952、962の概略図である。DDDモードは、心室と心房の両方がペーシング及び感知され得るデュアルチャンバーペーシングに対応し、デバイスのパルス発生器は、感知された心室イベントに応答した心室ペーシング出力及び感知された心房イベントに応答した心房ペーシング出力を抑制する。リードのうちの1つは、横隔膜の筋肉を介して横隔膜刺激を送達する目的で右心室壁906と横隔膜908との接触面にADS治療機構900を配置し、及び心室イベントを感知して、必要に応じて心室ペーシングパルスを送達する目的で右心室壁に隣接してCRM治療機構901を配置して、右心室904に埋め込まれたRV心内膜リード952である。
【0123】
他のリードは、心房イベントを感知し、必要に応じて心房ペーシングパルスを送達する目的で右心房壁に隣接してCRM治療機構901を配置して、右心房934に埋め込まれたRA心内膜リード962である。RA心内膜リード962はまた、RV心内膜リード952のADS治療機構100によって横隔膜の筋肉を介して横隔膜刺激を送達する代わりに、横隔神経の刺激を介して横隔膜刺激を送達する目的で、右心房壁936と横隔神経(図示せず)との接触面にADS治療機構900を配置することができる。これらのリード952、962は、心臓の電気的活動の感知を可能にするために、心臓組織内、心臓組織上、又は心臓組織に隣接して配置されるように構成された心臓イベントセンサ903をさらに含む。
【0124】
図9Cの様々な時間整合グラフは、感知された心臓イベント972、973と、ペースメーカーによって可能となる横隔膜刺激パルス974の送達との間の関係を示す。この実施形態では、IMDは、RV心内膜リード952の心臓イベントセンサ903を介して有効なRVイベント972、973を感知する。感知されたRVイベント972は、内因性自然伝導性心室脱分極から生じる心電図の内因性心室イベント、例えばR波916又はQ波に対応し得る。感知された右心室イベント973は、CRM治療機構901を介した心室ペーシング刺激の送達により生じる心電図の心室ペーシングスパイク977、又は心室ペーシングパルスの送達により生じ、それに続く心電図の誘発性心室脱分極979に対応し得る。IMDはまた、RA心内膜リード962の心臓イベントセンサ903を介してRAイベント982、983を感知する。感知されたRAイベント(RA vent)982は、内因性自然伝導性心房脱分極から生じる心電図の内因性心房イベント、例えばP波986に対応し得る。感知されたRAイベント983は、CRM治療機構901を介した心房ペーシング刺激の送達により生じる心電図の心房ペーシングスパイク987、又は心房ペーシングパルスの送達により生じ、それに続く心電図の誘発性心房脱分極989に対応し得る。
【0125】
RVイベント972、973を感知すると、IMDは、遅延期間978の終わりに、ADS治療機構900を介して横隔膜刺激パルス974を送達する。遅延期間978は、心室の不応期990中に横隔膜刺激パルス974の送達を行うように計算される。したがって、横隔膜刺激パルス974は、心臓での誘発性応答、例えば脱分極を誘導せず、横隔膜の一過性の収縮のみを誘導する。
【0126】
図10を参照すると、経心臓横隔膜刺激の方法は、本明細書に開示されるIMDの実施形態のいずれかによって実行することができる。
【0127】
ブロック1002において、心臓イベントは、横隔膜106に近接する心臓104の領域中又は上に配置された心臓イベントセンサ103を介して感知されたシグナルに基づいてIMD 300、600によって検出される。本方法を実行するIMD 300、600の実施形態に応じて、心臓イベントセンサ103が位置する心臓の領域は、心臓104の心室と横隔膜106との間の接触面であってもよく、又は心膜によって隔てられた、心臓104の心房と横隔膜との間の接触面であってもよい。さらに、心臓イベントセンサ103によって感知される心臓イベントは、IMD 300、600の実施形態に応じて変化し得る。いずれの場合でも、心臓イベントは、内因性心室イベント、心室ペーシングスパイク、誘発性心室イベント、内因性心房イベント、心房ペーシングスパイク、誘発性心房イベント、及び機械的イベントのうちの1つに対応し得る。
【0128】
ブロック1004において、ADS治療は、心臓104の領域に近接して配置されたADS治療機構100を介してIMD 300、600によって送達される。ADS治療は、横隔膜の筋肉を捕捉することによって、又は横隔神経124を捕捉することによって、横隔膜106の収縮を誘導するように構成される。いくつかの実施形態では、ADS治療によって誘導される横隔膜106の収縮は、無症候性、一過性、及び部分的のうちの1又は複数である。ADS治療は、ADS治療が心臓104の収縮を誘導しないように送達のタイミングを合わせる。この目的のために、ADS治療の送達は、心臓イベントに関連する心臓104の不応期中に、横隔膜刺激パルスをADS治療機構100に出力することを含む。例えば、図8及び図9A図9Cを参照して上述したように、横隔膜刺激パルス814、914、944、974は、ADS治療のタイミングを不応期820、920、940、990内に置く心臓イベントの発生からタイミングを合わせた遅延期間の終わりに出力することができる。
【0129】
図3A及び図3Bを参照すると、図10の経心臓横隔膜刺激の方法は、心臓の心腔と関連付けられた心内膜リード304a、306、308を有する、埋め込まれたIMD 300によって可能となり得る。
【0130】
いくつかの実施形態では、心臓イベントセンサ103及びADS治療機構100を有する心内膜リード304aは、右心室イベントに対応する心臓イベントの感知、及びそのようなイベントにタイミングを合わせたADS治療の送達を可能にするために右心室に埋め込まれてもよい。あるいは、心臓イベントセンサ103及びADS治療機構100を有する心内膜リード308は、左心室イベントに対応する心臓イベントの感知、及びそのようなイベントにタイミングを合わせたADS治療の送達を可能にするために冠静脈洞に埋め込まれてもよい。
【0131】
ADS治療を送達することに加えて、心内膜リード304a、308を有する埋め込まれたIMD 300はまた、CRM治療を送達するためのCRM治療機構101を有することができる。したがって、図10を参照すると、ブロック1006において、CRM治療を送達して、心臓に影響、例えば心室脱分極を誘導することができる。この目的のために、右心室又は左心室を捕捉するのに十分な心臓ペーシングパルスの形態のCRM治療は、心室ペーシング治療に従って、IMDのCRMコントローラ705によってCRM治療機構101に出力される。CRM治療機構101は、心臓イベントセンサ103及びADS治療機構100が配置されている心臓の領域に近接して配置されてもよい。CRM治療は、心臓の捕捉を確実にするために心臓の不応期外に送達される。
【0132】
いくつかの実施形態では、心臓イベントセンサ103及びADS治療機構100を有する心内膜リード306は、心房イベントに対応する心臓イベントの感知、及びそのようなイベントにタイミングを合わせたADS治療の送達を可能にするために右心房に埋め込まれてもよい。
【0133】
ADS治療を送達することに加えて、心内膜リード306を有する埋め込まれたIMD 300はまた、CRM治療を送達するためのCRM治療機構101を有することができる。したがって、図10を参照すると、ブロック1006において、CRM治療を送達して、心臓に影響、例えば心房脱分極を誘導することができる。この目的のために、右心房又は左心房を捕捉するのに十分な心臓ペーシングパルスの形態のCRM治療は、心房ペーシング治療に従って、IMDのCRMコントローラ705によってCRM治療機構101に出力される。CRM治療機構101は、心臓イベントセンサ103及びADS治療機構100が配置されている心臓の領域に近接して配置されてもよい。CRM治療は、心臓の捕捉を確実にするために心臓の不応期外に送達される。
【0134】
図3A及び図3Bの参照を続けると、図10の経心臓横隔膜刺激の方法は、心臓の心腔及び腹腔と関連付けられた経心臓リード304bを有する、埋め込まれたIMD 300によって可能となり得る。
【0135】
いくつかの実施形態では、心臓イベントセンサ103及びADS治療機構100を有する経心臓リード304bは、右心房及び右心室の一方に、部分的に心臓壁を通り横隔膜を通って腹腔に埋め込まれてもよい。経心臓リード304bは、心臓内に心臓イベントセンサ103を配置し、横隔膜の表面に隣接する腹腔内にADS治療機構100を配置するように埋め込まれ、それによって心房イベント又は心室イベントに対応する心臓イベントの感知、及びそのようなイベントにタイミングを合わせたADS治療の送達を可能にする。
【0136】
ADS治療を送達することに加えて、経心臓リード304bを有する埋め込まれたIMD 300はまた、CRM治療を送達するためのCRM治療機構101を有することができる。したがって、図10を参照すると、ブロック1006において、CRM治療を送達して、心臓に影響、例えば心房脱分極又は心室脱分極を誘導することができる。この目的のために、右心房又は右心房を捕捉するのに十分な心臓ペーシングパルスの形態のCRM治療は、心房又は心室ペーシング治療に従って、IMDのCRMコントローラ705によってCRM治療機構101に出力される。CRM治療機構101は、心臓イベントセンサ103及びADS治療機構100が配置されている心臓の領域に近接して配置されてもよい。CRM治療は、心臓の捕捉を確実にするために心臓の不応期外に送達される。
【0137】
図6A及び図6Bを参照すると、図10の経心臓横隔膜刺激の方法は、心臓イベントセンサ103及びADS治療機構100を有する埋め込まれたリードレスIMD 600によって可能となり得る。
【0138】
リードレスIMD 600は、1)心房壁と横隔膜との間、及び2)心室壁と横隔膜との間のうちの1つに埋め込むことができる。リードレスIMD 600は、心臓104の心臓壁に隣接して心臓イベントセンサ103を配置し、横隔膜106に隣接してADS治療機構100を配置するように埋め込まれ、それによって心房イベント又は心室イベントに対応する心臓イベントの感知、及びそのようなイベントにタイミングを合わせたADS治療の送達を可能にする。
【0139】
ADS治療を送達することに加えて、リードレスIMD 600はまた、CRM治療を送達するためのCRM治療機構101を有することができる。したがって、図10を参照すると、ブロック1006において、CRM治療を送達して、心臓に影響、例えば心房脱分極又は心室脱分極を誘導することができる。この目的のために、右心房又は右心房を捕捉するのに十分な心臓ペーシングパルスの形態のCRM治療は、心房又は心室ペーシング治療に従って、IMDのCRMコントローラ705によってCRM治療機構101に出力される。CRM治療は、心臓の捕捉を確実にするために心臓の不応期外に送達される。
【0140】
したがって、本明細書において、横隔膜に近接する心臓の領域中又は上に配置された心臓イベントセンサを介して感知されたシグナルに基づいて心臓イベントを検出すること、及び心臓の収縮を誘導することなく横隔膜の収縮を誘導するために、心臓の領域に近接して配置されたADS治療機構を介してADS治療を送達することを含む経心臓横隔膜刺激が開示される。心臓イベントセンサは、a)横隔膜に当接する心臓壁の内面、又は2)心臓壁と横隔膜との間の心臓の外面に配置することができる。ADS治療機構は、a)横隔膜に当接する心臓壁の内面、2)心臓壁に当接する横隔膜の上面、又は3)心臓に当接する横隔膜の領域における横隔膜の下面に配置されてもよい。
【0141】
また、本明細書において、心内膜/心外膜感知リードから心臓活動を感知し、示されたペーシング治療、例えば、抗徐脈/心臓再同期治療を支援して、心臓刺激パルスを送達することができる、CRMデバイスを介したADS治療の方法も開示される。この目的のために、心内膜及び/又は経心臓ペーシング/感知リード(複数可)が、示されたペーシング治療を支援して右心房及び/又は右心室及び/又は左心室(冠静脈洞リード、心外膜リード)のいずれかに配置される。ADS治療機構は、横隔膜及び/又は横隔神経に近接することを可能にするように配置される。いくつかの実施形態では、CRMデバイスのペーシングリードはADS治療機構と呼ばれ、ADS治療を送達する。ペーシングリードは、示されたペーシング治療を送達するためにCRMデバイスによって使用される心内膜/心外膜リード、又はペーシング治療及びADS治療の両方の送達を支援するように調整された設計を有する経心臓リードのいずれかであり得る。指定されたリードは、右心室リード、右心房リード、左心腔(冠静脈洞)リード、又は経心臓リードのうちの1つであり得る。
【0142】
この方法はまた、指定されたリードと関連付けられた心腔の電気的(又は機械的)活動を感知することと、その心腔が収縮しており、その細胞が脱分極してさらなる電気刺激に不応な時を記録することとを含む。そのような記録は、感知された電気シグナルのエビデンス、例えば心内/心外電位図を記録してP波又はR波を検出することを介して、又は示されたペーシング治療の一部として心腔に送達されるペーシングパルスの開始を介してかのいずれかであり得る。本方法は、心腔収縮に対応する心臓イベントが検出されると、遅延タイマー(タイムアウトしたときに心臓の心房及び心室が不応であり、ADSパルス送達が有効であることを保証するようにプログラムされた又は計算された値)を始動させることと、計算された/プログラムされた遅延の最後に、横隔膜筋を捕捉し、ADS治療を支援して横隔膜の一過性の部分収縮を引き起こすのに十分なエネルギーパルスを送達することとをさらに含む。
【0143】
本開示の様々な態様は、当業者が本発明を実施可能にするために提供される。本開示を通して提示される例示的な実施形態に対する様々な変更は、当業者には容易に明らかであり、本明細書に開示される概念は、他の磁気記憶デバイスに拡張されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本開示の様々な態様に限定されることを意図するものではなく、特許請求の範囲の文言と一致する全範囲が与えられるべきである。当業者に公知である、又は後に当業者に公知となる、本開示を通して説明される例示的な実施形態の様々な構成要素に対するすべての構造的及び機能的同等物は、参照により本明細書に明示的に組み込まれ、特許請求の範囲に包含されることが意図される。さらに、本明細書に開示されたものは、そのような開示が特許請求の範囲に明示的に記載されているかどうかにかかわらず、公衆に専用であることを意図していない。請求項のいかなる要素も、要素が「のための手段(means for)」という語句を使用して明示的に列挙されていないか、又は方法請求項の場合、要素が「のためのステップ(step for)」という語句を使用して列挙されていない限り、35 U.S.C.§112の第6パラグラフの条項の下で解釈されるべきではない。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図9C
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-01-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋め込み型医療デバイスであって、
横隔膜に近接する心臓の領域中又は上に配置されるように構成された心臓イベントセンサと、
心臓の領域に近接して配置されるように構成された無症候性横隔膜刺激(ADS)治療機構と、
心臓イベントセンサ及びADS治療機構に結合され、
心臓イベントセンサを介して感知されたシグナルに基づいて心臓イベントを検出し、
ADS治療機構を介して横隔膜にADS治療を送達する
ように構成されたADSコントローラと、
を含み、
ADS治療が、横隔膜の収縮を誘導するように構成され、心臓の収縮の誘導を回避するために、心臓イベントに関連する心臓の不応期中に送達される、埋め込み型医療デバイス。
【請求項2】
ADSコントローラが、心臓イベントの発生から計測した遅延期間の終わりに、横隔膜の横隔膜筋又は横隔神経を捕捉するのに十分である横隔膜刺激パルスをADS治療機構に出力するように構成された、請求項に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項3】
心臓イベントセンサが、第1の電極対又は運動センサのいずれかを含み、
ADS治療機構が、第2の電極対又は機械的トランスデューサのいずれかを含み、
ADS治療が、電気刺激又は機械的刺激のいずれかを含む、
請求項に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項4】
第1の電極対及び第2の電極対が同じ電極対である、請求項に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項5】
第1の電極対及び第2の電極対が異なる電極対である、請求項に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項6】
機械的トランスデューサが、横隔膜の運動に対応するシグナルを提供するように構成される、請求項に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項7】
ADS治療機構が、横隔膜の運動に対応するシグナルを提供するように構成された運動センサをさらに含む、請求項に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項8】
心臓イベントセンサ及びADS治療機構を含み、心臓の内腔と関連付けられるように構成されるリードをさらに含む、請求項に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項9】
リードが、右心室、右心房、及び冠静脈洞のうちの1つに埋め込まれるように構成された心内膜リードを含む、請求項に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項10】
リードが、心膜腔及び右心室、右心房、左心室のうちの1つ以上に埋め込まれるように構成された心外膜リードを含む、請求項に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項11】
リードが、右心室及び少なくとも部分的に心臓壁を通って横隔膜に埋め込まれるように構成された経心臓リードを含む、請求項に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項12】
経心臓リードが、
遠位端と近位端とを有するリード体と、
遠位端と関連付けられた遠位端構造であって、心臓壁を通って横隔膜に延びるように且つ、遠位部分が第1の断面直径を有する非展開状態から、遠位部分が第1の断面直径よりも大きい第2の断面直径を有する展開状態に移行するように構成された遠位部分を有する遠位端構造と、
遠位部分と関連付けられた少なくとも1つの電極と、
を含む、請求項11に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項13】
心臓イベントセンサ、ADS治療機構、及びADSコントローラを含むリードレスデバイスをさらに含み、リードレスデバイスが、
心房壁と横隔膜との間、及び
心室壁と横隔膜との間のうちの1つに埋め込まれるように構成される、請求項に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項14】
リードレスデバイスが、第1の側面と、第1の側面の反対側の第2の側面とを有するハウジングを含み、
心臓イベントセンサが第1の側面と関連付けられており、
ADS治療機構が、第2の側面と関連付けられている、
請求項13に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項15】
ADS治療機構が、電気刺激を送達するように構成された少なくとも1つの電極、及び機械的刺激を送達するように構成された機械的トランスデューサのうちの1又は複数を含む、請求項に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項16】
ADS治療機構が、横隔膜の運動を表すシグナルを提供するように構成された運動センサをさらに含み、ADSコントローラが、運動センサからのシグナルに基づいて横隔膜の運動を監視して、横隔膜の収縮を確認するようにさらに構成される、請求項に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項17】
心臓の領域中又は上に配置されるように構成された心調律管理(CRM)治療機構と、
CRM治療機構に結合されており、CRM治療に対応し心臓を捕捉するのに十分である心臓ペーシングパルスを、ペーシング治療に従ってCRM治療機構に出力するように構成されたCRMコントローラと、
をさらに含む、請求項に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項18】
CRM治療機構が、心臓イベントセンサ又はADS治療機構のうちの1つに対応する、請求項17に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項19】
CRM治療機構が、心臓イベントセンサ及びADS治療機構とは独立した一対の電極を含む、請求項17に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項20】
遠位端と近位端とを有するリード体と、
遠位端と関連付けられた遠位端構造であって、心臓壁を通って横隔膜に延びるように且つ遠位部分が第1の断面直径を有する非展開状態から、遠位部分が第1の断面直径よりも大きい第2の断面直径を有する展開状態に移行するように構成された遠位部分を有する遠位端構造と、
遠位部分と関連付けられた少なくとも1つの電極と、
近位端と関連付けられ、リード体を介して延びるリードワイヤによって電気的に結合された少なくとも1つの電極を有するコネクタ
を含むリード。
【請求項21】
遠位部分が、拡張するように構成されたワイヤメッシュ構造を含む、請求項20に記載のリード。
【請求項22】
遠位部分と関連付けられた少なくとも1つの電極が、ワイヤメッシュ構造の全体、ワイヤメッシュ構造の一部、又はワイヤメッシュ構造に固定された導電性構造に対応する、請求項21に記載のリード。
【請求項23】
遠位端構造が、遠位部分が第1の断面直径を有する非展開状態から、遠位部分が第1の断面直径よりも大きい第2の断面直径を有する展開状態に移行するように構成された近位部分をさらに含む、請求項20に記載のリード。
【請求項24】
近位部分と関連付けられた少なくとも1つの電極をさらに備える、請求項23に記載のリード。
【請求項25】
近位部分が、拡張するように構成されたワイヤメッシュ構造を含む、請求項24に記載のリード。
【請求項26】
近位部分と関連付けられた少なくとも1つの電極が、ワイヤメッシュ構造の全体、ワイヤメッシュ構造の一部、又はワイヤメッシュ構造に固定された導電性構造に対応する、請求項25に記載のリード。
【請求項27】
遠位部分と関連付けられた少なくとも1つの電極と近位部分と関連付けられた少なくとも1つの電極とが、それぞれのワイヤメッシュ構造の拡張時に、互いに対向するように配置される、請求項25に記載のリード。
【請求項28】
遠位端構造が、遠位部分と近位部分との間に位置するシール構造をさらに含む、請求項23に記載のリード。
【請求項29】
シール構造が拡張して、リードの埋め込み及び遠位端構造の展開時に、身体の第1の解剖学的空洞と第2の解剖学的空洞との間に気密シールを形成するように構成されている、請求項28に記載のリード。
【請求項30】
第1の解剖学的空洞が腹腔に対応し、第2の解剖学的空洞が胸腔に対応する、請求項29に記載のリード。
【国際調査報告】