(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】ルテニウム系接触面材料を用いた基板上に構築されたMEMSデバイス
(51)【国際特許分類】
H01H 11/06 20060101AFI20230428BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20230428BHJP
B81B 7/00 20060101ALI20230428BHJP
H01H 1/023 20060101ALI20230428BHJP
H01H 59/00 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
H01H11/06 Z
B81C1/00
B81B7/00
H01H1/023 Z
H01H59/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558209
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(85)【翻訳文提出日】2022-11-21
(86)【国際出願番号】 US2021024382
(87)【国際公開番号】W WO2021195512
(87)【国際公開日】2021-09-30
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521371072
【氏名又は名称】メンロ・マイクロシステムズ・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MENLO MICROSYSTEMS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】ミニック・アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ケイメル・クリストファー・エフ
(72)【発明者】
【氏名】ヂュー・スー
【テーマコード(参考)】
3C081
5G023
5G050
【Fターム(参考)】
3C081AA01
3C081AA17
3C081BA30
3C081BA43
3C081BA48
3C081BA81
3C081CA02
3C081CA26
3C081CA28
3C081CA29
3C081CA32
3C081CA40
3C081CA43
3C081DA03
3C081DA05
3C081DA06
3C081DA08
3C081DA27
3C081DA30
3C081EA23
5G023AA02
5G023CA50
5G050AA39
5G050DA01
5G050EA20
(57)【要約】
【課題】
オーミック微小電気機械システム(MEMS)スイッチデバイスを作製およびパッケージングする方法を提供する。
【解決手段】
オーミック微小電気機械システム(MEMS)スイッチデバイスを作製およびパッケージングする方法は、スイッチデバイスを絶縁基板上に構築することを含み、スイッチデバイスは、白金族金属からなる接点を有し得る。本方法は、1つまたは複数の接点の各々の外表面に白金族金属の酸化層を形成することをさらに含み得る。本方法は、スイッチデバイスを密閉封止するために、絶縁キャップを絶縁基板に接合することをさらに含み得る。接合は、0.5%~30%の範囲内の酸素の割合を有する雰囲気中で行われてもよく、これにより、スイッチデバイスが密閉キャビティ内に密閉された後、密閉キャビティ内の雰囲気は、0.5%~30%の範囲内の酸素の割合を有する。白金族金属はルテニウムであってもよく、白金族金属の酸化層は二酸化ルテニウムであってもよい。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーミック微小電気機械システム(MEMS)スイッチデバイスを製造しパッケージングする方法であって、
基板上に前記オーミックMEMSスイッチデバイスを構築する過程であって、前記オーミックMEMSスイッチデバイスは、白金族金属からなる1つまたは複数の接点を有する、構築する過程と、
第1のチャンバー内で、前記1つまたは複数の接点のそれぞれの外表面に前記白金族金属の酸化層を形成する過程と、
第2のチャンバー内で、キャップを前記基板に接合する過程であって、この過程によって前記オーミックMEMSスイッチデバイスを前記キャップおよび前記基板によって形成された密閉キャビティ内に密閉封止し、この接合は、0.05%~30%の範囲内の比率の酸素を有する接合雰囲気中で行われ、それによって、前記オーミックMEMSスイッチデバイスが前記密閉キャビティ内に密閉封止された後において前記密閉キャビティ内のキャビティ雰囲気が0.05%~30%の前記範囲の比率の酸素を有する、接合する過程と、を備える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記基板および前記キャップはそれぞれ絶縁材料を含む、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記白金族金属がルテニウム(Ru)であり、前記白金族金属の前記酸化層が二酸化ルテニウム(RuO
2)である、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記オーミックMEMSスイッチデバイスを構築する過程が、薄膜微細加工プロセスを用いて前記基板上に前記オーミックMEMSスイッチデバイスを形成する過程をさらに含む、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、前記1つまたは複数の接点のそれぞれの前記外表面に前記白金族金属の前記酸化層を形成する過程が、前記オーミックMEMSスイッチデバイスに酸素プラズマアッシュ手順を実行する過程を含む、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、前記1つまたは複数の接点の外表面に前記白金族金属の前記酸化層を形成する過程の後に、前記オーミックMEMSスイッチデバイスに対して酸素プラズマアッシュ洗浄手順を実行して、前記1つまたは複数の接点の外表面における前記白金族金属の前記酸化層を強化する過程をさらに含む、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、前記接合雰囲気が、0.05%~30%の範囲内の比率の酸素を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、前記キャップを前記基板に接合する過程が、さらに、接合温度および接合力を時間に関して特徴付けるプロファイルに従って、前記キャップおよび前記基板を前記接合温度にさらす過程と、前記キャップおよび前記基板を併せて前記接合力で押圧する過程とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、前記基板は第1のウエハ上の複数の基板のうちの1つであり、前記キャップが第2のウエハ上の複数のキャップのうちの1つであり、前記キャップを前記基板に接合する過程が、さらに、接合温度および接合力を時間に関して特徴付けるプロファイルに従って、第1のウエハおよび第2のウエハを前記接合温度にさらす過程と、第1のウエハおよび第2のウエハを併せて前記接合力で押圧する過程とを含む、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、前記接合雰囲気が、(i)窒素(N
2)および(ii)不活性貴ガスのうちの一方または両方をさらに含む、方法。
【請求項11】
基板上に構築されたオーミック微小電気機械システム(MEMS)スイッチデバイスであって、白金族金属からなる1つまたは複数の接点を有するオーミックMEMSスイッチデバイスと、
前記1つまたは複数の接点のそれぞれの外表面に形成された前記白金族金属の酸化層と、
前記基板上に配置され且つ前記基板に接合されて前記オーミックMEMSスイッチデバイスを囲む密閉キャビティを形成するキャップと、を備えるスイッチング装置であって、
前記密閉キャビティ内のキャビティ雰囲気が、0.05%~30%の範囲内の比率の酸素を有する、スイッチング装置。
【請求項12】
請求項11に記載のスイッチング装置において、前記基板および前記キャップのそれぞれが絶縁材料を含む、スイッチング装置。
【請求項13】
請求項11に記載のスイッチング装置において、前記白金族金属がルテニウム(Ru)であり、前記白金族金属の前記酸化層が二酸化ルテニウム(RuO
2)である、スイッチング装置。
【請求項14】
請求項11に記載のスイッチング装置において、前記オーミックMEMSスイッチデバイスは、薄膜微細加工プロセスを用いて前記基板上に形成される、スイッチング装置。
【請求項15】
請求項11に記載のスイッチング装置において、前記1つまたは複数の接点のそれぞれの前記外表面上の前記白金族金属の前記酸化層は、前記オーミックMEMSスイッチデバイスへの酸素プラズマアッシュ手順を用いて形成される、スイッチング装置。
【請求項16】
請求項11に記載のスイッチング装置において、前記白金族金属の前記酸化層は、前記1つまたは複数の接点の前記外表面に前記白金族金属の前記酸化層が形成された後に、前記オーミックMEMSスイッチデバイスへの酸素プラズマアッシュ洗浄手順を用いて強化される、スイッチング装置。
【請求項17】
請求項11に記載のスイッチング装置において、前記密閉キャビティ内の前記キャビティ雰囲気は、0.05%~30%の範囲内の比率の酸素を有する、スイッチング装置。
【請求項18】
請求項11に記載のスイッチング装置において、前記キャップを前記基板に接合するために、接合温度および接合圧力を時間に対して特徴付けるプロファイルに従って、前記キャップおよび前記基板を前記接合温度にさらし、前記キャップおよび前記基板を併せて前記接合圧力で押圧する、スイッチング装置。
【請求項19】
請求項11に記載のスイッチング装置において、
前記絶縁基板は、第1の絶縁ウエハ上の複数の絶縁基板のうちの1つであり、
前記絶縁キャップは、第2の絶縁ウエハ上の複数の絶縁キャップのうちの1つであり、
前記絶縁キャップを前記絶縁基板に接合するために、接合温度と接合圧力を時間に関して特徴付けるプロファイルに従って、前記第1の絶縁ウエハと前記第2の絶縁ウエハが前記接合温度にさらされ、前記第1の絶縁ウエハと前記第2の絶縁ウエハが併せて前記接合圧力で押圧される、スイッチング装置。
【請求項20】
請求項11に記載のスイッチング装置において、前記キャビティ雰囲気は、さらに、(i)窒素(N
2)および(ii)不活性貴ガスのうちの一方または両方を含む、スイッチング装置。
【請求項21】
オーミック微小電気機械システム(MEMS)スイッチデバイスを製造しパッケージングする方法であって、
薄膜微細加工プロセスを用いて、溶融シリカ基板上に前記オーミックMEMSスイッチデバイスを構築する過程であって、前記オーミックMEMSスイッチデバイスは、ルテニウム(Ru)からなる1つまたは複数の接点を有する、構築する過程と、
第1のチャンバー内で、前記1つまたは複数の接点の外表面に二酸化ルテニウム(RuO
2)層を形成する過程と、
第2のチャンバー内で、溶融シリカキャップを前記溶融シリカ基板に接合する過程であって、それによって、前記キャップと前記基板とによって形成された密閉キャビティ内に前記オーミックMEMSスイッチデバイスを密封封止し、この接合は、酸素の割合が0.05%~30%の範囲内にある接合雰囲気中で行われ、前記オーミックMEMSスイッチデバイスが前記密閉キャビティ内に密閉された後において前記密閉キャビティ内のキャビティ雰囲気が、0.05%~30%の範囲内の比率の酸素を有する、接合する過程と、を備える、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、前記1つまたは複数の接点の前記外表面にRuO
2を形成した後に、前記オーミックMEMSスイッチデバイスに酸素プラズマアッシュ手順を実行して、前記1つまたは複数の接点の前記外表面のRuO
2を強化する過程をさらに含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2020年3月27日に出願された米国出願番号16/832,408の継続出願である。上記出願の全教示が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
微小電気機械システム(MEMS)スイッチのようなデバイスでは、マイクロスケールの構成を環境汚染から保護するためのパッケージがしばしば必要とされる。これらのパッケージは、通常、ディスクリートまたはウエハ接合プロセスで形成される。MEMSスイッチは、制御されていない動作環境条件に晒された場合、信頼性と安定性が損なわれ得る。水分や汚染は、初期性能の不足やデバイスの早期不良の増加の原因となる可能性がある。したがって、このようなデバイスは、少なくともある程度、デバイスの内部環境を外部環境から分離する保護パッケージ内に格納するのが一般的である。保護パッケージ内にデバイスを封入する工程は、信頼性が高く長寿命の密閉型スイッチデバイスを実現するために非常に重要である。
【0003】
シリコン基板上に構築され、密閉型パッケージに封入されたRuO2接点(コンタクト)を有する先行技術のMEMSスイッチの例は、例えば、米国特許第7,968,364号、8,124,436号、9,583,294号、9,784,048号、10,388,468号、及び米国特許出願公開第2007/0115082号に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,968,364号明細書
【特許文献2】米国特許第8,124,436号明細書
【特許文献3】米国特許第9,583,294号明細書
【特許文献4】米国特許第9,784,048号明細書
【特許文献5】米国特許第10,388,468号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2007/0115082号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、微小電気機械システム(MEMS)スイッチを含む密閉型接合ウエハスタックに向けられており、MEMSスイッチは、酸化ルテニウム(例えば、RuO2)接点を含み、これは、酸素を含むか、あるいは、酸素、窒素、および/または貴ガスの混合物を含む密閉隔離環境内に封入されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書の例示的な実施形態は、化学量論的ルチル型構造の二酸化ルテニウム(RuO2)を接触表面材料として基板上に構築されるMEMSスイッチデバイスを説明するものである。MEMSスイッチデバイスは、少数酸素(O2)と他の不活性ガス、例えばアルゴン(Ar)および/または窒素(N2)を含む環境下で、接合プロセス、例えば熱圧縮(TC)ウエハ接合プロセスによって気密封止される。接点材料は、Ru、またはRuを最上位および露出接点材料とする金属のスタック、またはRu合金であってもよい。例示的な実施形態は、さらに、ガラス基板の、接合前の酸素プラズマアッシュ洗浄工程で形成されるRuO2(導電性酸化物)接触表面を作成することに向けられたプロセスフローを記述している。プラズマによって生成され、励起された酸素イオンは、接点材料上面のRu原子と効果的に反応し、プラズマアッシュ洗浄時に生成される高品質の薄層RuO2を生成する。このようにして得られたRuO2接点により、MEMSスイッチデバイスは、数十億回のスイッチサイクルを通して低い接触抵抗値を維持することができる。
【0007】
例示的な実施形態は、さらに、いくつかのデバイス強化技術を記述する。1つの技術は、接点表面への有機汚染蓄積を緩和するためにキャビティ内に酸素を封入することに関し、これは製造歩留まりおよびスイッチデバイス寿命を向上させる。別の強化技術は、RuO2接点の厚さを増加させるための接合前の酸素熱処理である。さらにスイッチの寿命を向上させるために、密閉された環境に不活性ガスを追加することもある。
【0008】
例示的な実施形態では、MEMSスイッチデバイスは、ウエハベースの基板、例えば、シリコン、二酸化シリコン(SiO2)、溶融シリカ、シリカガラス、石英、ナトリウム添加ガラス、ホウケイ酸ガラス、サファイア、SOI等の上に構築してもよい。RuO2接点表面材料は、熱圧縮(TC)接合工程の前に、ガラス基板、および堆積Ru接点材料の酸素プラズマアッシュによって作成することができる。酸素プラズマアッシュによって典型的に期待されることは、接触面を含む基板上のあらゆる有機残留物を清浄化することである。清浄な化学量論的に酸化された接触面は、低く安定した接触抵抗につながる。接合前の温度上昇段階や機械的接合段階での酸素導入などの追加処理ステップにより、RuO2接点層はさらに固化され且つ厚くなる。
【0009】
一態様において、本発明は、基板上にオーミック微小電気機械システム(MEMS)スイッチデバイスを構築することを含む、オーミックMEMSスイッチデバイスの作製およびパッケージングの方法であってよい。オーミックMEMSスイッチデバイスは、白金族金属からなる1つまたは複数の接点を有していてもよい。本方法は、第1のチャンバー内で、1つまたは複数の接点の各々の外面に白金族金属の酸化層を形成することをさらに含んでもよい。本方法は、第2のチャンバー内で、キャップを基板に接合し、それによって、キャップと基板とによって形成される密閉型キャビティ内にオーミックMEMSスイッチデバイスを密閉封止することをさらに含んでもよい。接合は、0.05%~30%の範囲内の酸素の割合を有する接合雰囲気中で行われてもよく、これにより、オーミックMEMSスイッチデバイスが密閉型キャビティ内に密閉された後、密閉キャビティ内のキャビティ雰囲気は、0.05%~30%の範囲内の酸素の割合を有することになる。
【0010】
一実施形態において、基板およびキャップは、それぞれ絶縁材料から構成されてもよい。白金族金属はルテニウム(Ru)であってもよく、白金族金属の酸化層は二酸化ルテニウム(RuO2)であってもよい。オーミックMEMSスイッチデバイスを構築することは、薄膜微細加工プロセスを用いて基板上にオーミックMEMSスイッチデバイスを形成することをさらに含んでいてもよい。1つまたは複数の接点の各々の外面に白金族金属の酸化層を形成することは、オーミックMEMSスイッチデバイスに酸素プラズマアッシュ手順を実行することを含んでもよい。本方法は、1つまたは複数の接点の外表面に白金族金属の酸化層を形成した後、1つ以上の接点の外表面の白金族金属の酸化層を強化するために、オーミックMEMSスイッチデバイスに対して酸素プラズマアッシュ洗浄手順を実行することをさらに含んでいてもよい。
【0011】
接合雰囲気は、0.05%~30%の範囲内の酸素の比率を有していてもよい。キャップを基板に接合することは、接合温度と接合力を時間に関して特徴付けるプロファイルに従って、キャップと基板を接合温度にさらすことと、キャップと基板を接合力で押し付けることをさらに含んでいてもよい。
【0012】
基板は、第1のウエハ上の複数の基板のうちの1つであってもよく、キャップは、第2のウエハ上の複数のキャップのうちの1つであってもよい。キャップを基板に接合することは、接合温度と接合力を時間に対して特徴付けるプロファイルに従って、第1のウエハと第2のウエハを接合温度にさらすことと、第1のウエハと第2のウエハを併せて接合力で押圧することとをさらに含んでもよい。接合雰囲気は、さらに、(i)窒素(N2)及び(ii)不活性の貴ガスの一方又は両方を含んでいてもよい。
【0013】
別の態様では、本発明は、基板上に構築されたオーミック微小電気機械システム(MEMS)スイッチデバイスを含む、スイッチデバイスであってもよい。オーミックMEMSスイッチデバイスは、白金族金属からなる1つまたは複数の接点を有していてもよい。スイッチ装置は、1つまたは複数の接点のそれぞれの外表面に形成された白金族金属の酸化層と、基板上に配置され、基板に接着されたキャップとをさらに備え、オーミックMEMSスイッチデバイスを囲む密閉封止されたキャビティを形成してもよい。密閉されたキャビティ内のキャビティ雰囲気は、0.05%~30%の範囲内の酸素の比率を有していてもよい。
【0014】
基板およびキャップは、それぞれ絶縁材料を含んでもよい。白金族金属はルテニウム(Ru)であってもよく、白金族金属の酸化層は二酸化ルテニウム(RuO2)であってもよい。オーミックMEMSスイッチデバイスは、薄膜微細加工プロセスを用いて基板上に形成されてもよい。1つまたは複数の接点の各々の外面上の白金族金属の酸化層は、オーミックMEMSスイッチデバイス上で酸素プラズマアッシュ手順を用いて形成されてもよい。白金族金属の酸化層は、1つまたは複数の接点の外表面に白金族金属の酸化層を形成した後、オーミックMEMSスイッチデバイス上で酸素プラズマアッシュ洗浄手順を用いて強化されてもよい。
【0015】
密閉されたキャビティ内のキャビティ雰囲気は、0.05%~30%の範囲内の酸素の比率を有していてもよい。キャップを基板に接合するために、接合温度と接合圧力とを時間に対して特徴付けるプロファイルに従って、キャップと基板とを接合温度にさらし、キャップと基板とを併せて接合圧力で押圧してもよい。絶縁基板は、第1の絶縁ウエハ上に設けられた複数の絶縁基板のうちの1つであってもよく、絶縁キャップは、第2の絶縁ウエハ上に設けられた複数の絶縁キャップのうちの1つであってもよい。
【0016】
絶縁キャップを絶縁基板に接合するために、接合温度と接合圧力とを時間に対して特徴付けるプロファイルに従って、第1の絶縁ウエハと第2の絶縁ウエハとを接合温度に付し、第1の絶縁ウエハと第2の絶縁ウエハとを併せて接合圧力で押し付けても良い。キャビティ雰囲気は、さらに、(i)窒素(N2)および(ii)不活性の貴ガスのうちの一方または両方を含んでいてもよい。
【0017】
別の態様では、本発明は、薄膜微細加工プロセスを用いて溶融シリカ基板上にオーミックMEMSスイッチデバイスを構築することを含む、オーミック微小電気機械システム(MEMS)スイッチデバイスの製造及びパッケージングの方法であってよい。オーミックMEMSスイッチデバイスは、ルテニウム(Ru)からなる1つまたは複数の接点を有していてもよい。この方法は、第1のチャンバー内で、1つまたは複数の接点のそれぞれの外表面に二酸化ルテニウム(RuO2)の層を形成することと、第2のチャンバー内で、溶融シリカキャップを溶融シリカ基板に接合し、それによってキャップと基板によって形成される密封キャビティ内にオーミックMEMSスイッチデバイスを密閉封止することとをさらに含んでもよい。接合は、0.05%~30%の範囲内の酸素の割合を有する接合雰囲気中で行われてもよく、これにより、オーミックMEMSスイッチデバイスが密閉型キャビティ内に密閉された後、密閉キャビティ内のキャビティ雰囲気は、0.05%~30%の範囲内の酸素の割合を有することになる。この方法は、1つまたは複数の接点の外面上にRuO2を形成した後、1つまたは複数の接点の外面上のRuO2を強化するために、オーミックMEMSスイッチデバイスに酸素プラズマアッシュ手順を行うことをさらに含んでもよい。
【0018】
特許又は出願ファイルには、少なくとも1つのカラー図面が含まれている。この特許又は特許出願公開のカラー図面の写しは、請求と必要な手数料の支払によって、官庁から提供される。
【0019】
上記は、異なる図を通して同じ参照文字が同じ部品を指す添付図面に示される、例示的な実施形態のより詳細な説明から明らかになるであろう。図面は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに実施形態を示すことに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】本発明によるスイッチ装置の実施形態の一例の詳細な断面を示す図である。
【
図1B】
図1Aに示すスイッチデバイスの基板部分の分離図である。
【
図1C】
図1Aに示すスイッチデバイスのキャップ部分の分離図である。
【
図1D】
図1Aに示すスイッチデバイスの接点領域の拡大図である。
【
図2】MEMSスイッチを搭載したガラス基板ウエハとガラスキャップウエハを準備し接合するためのプロセスフローの一例を示す図である。
【
図3】本発明による熱圧着(TC)接合プロファイルの例示的な実施形態を示す図である。
【
図4A】本発明による接合チャンバーに酸素を含むガスを流すことからなる例示的な実施形態を示す図である。
【
図4B】本発明による接合チャンバーに窒素を含むガスを流すことからなる例示的な実施形態を示す図である。
【
図4C】本発明による接合チャンバーに不活性の貴ガスを含むガスを流すことからなる例示的な実施形態を示す図である。
【
図5A】本発明によるRuO
2接点層を形成するための前処理ステップに対処する例示的な実施形態を示す図である。
【
図5B】本発明によるRuO
2接点層を形成するための前処理ステップに対処する例示的な実施形態を示す図である。
【
図5C】本発明によるRuO
2接点層を形成するための前処理ステップに対処する例示的な実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態例について説明する。
【0022】
本書に引用されたすべての特許、公開された出願および参考文献の教示は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0023】
接点材料としてのルテニウム(Ru)は、接点表面材料として二酸化ルテニウム(RuO2)が、1960年代から様々なメカニカルリレーやリードスイッチ製品に採用されている。RuO2接点は、低く安定した接触抵抗のほか、極めて高い硬度、良好な耐腐食性、耐摩耗性など、望ましい機械的特性を示す。ホットスイッチング用途(すなわち、信号が伝達されている間にスイッチング接点を開閉する)において、RuO2は、高強度のアーク放電に耐える能力を示し、スティッキングやピッティングに対する耐性がある。本明細書の例示的な実施形態は、RuO2接点表面材料を有するRu接点を説明しているが、他の実施形態は、任意の白金族金属(例えば、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、またはPt)、および白金族金属の対応する酸化物層からなる接点を利用してもよい。
【0024】
Ruは、O2を含む環境にさらされると、ネイティブで自己抑制的な酸化物表面層を成長させる。酸化温度がある閾値以上(多くの文献では200℃以上)であれば、他のタイプのRu酸化物(例えば、RuO、RuO3およびRuO4)ではなく、定比二酸化ルテニウム(RuO2)層が形成される。定比RuO2は導電性の酸化物材料で、固有抵抗は約3.5~4.6×10-5Ω・cmである。この値は、Ruの固有抵抗6.71~7.16×10-6Ω・cmよりも大きいが、他の形態のRu酸化物よりもはるかに低い。室温・ガス環境下では、Ruの表面酸化プロセスは10Åまで自己限定的である。表面のRuO2は密な格子構造を持ち、その下にさらにRuO2を形成するためのO2の浸透が制限され、その結果、他のタイプのRu酸化物が形成される。不定比RuO2が支配的な接点は、定比RuO2と比較して5~10倍の接触抵抗を持ち、この抵抗はスイッチ動作時間と共に増加するが、定比RuO2は安定した低い接触抵抗を示すことが発見されている。
【0025】
RuO2を形成する他の方法としては、酸素プラズマ処理、Ar/O2混合環境でのRuO2の表面への直接スパッタリング、化学気相成長(CVD)、原子層堆積(ALD)などがある。スパッタリング法は、他の方法と比べて、より厚い酸化膜を得られる。このため、金、銀、銅、アルミニウムなどの高導電性金属ではなく、Ruを接点材料としてMEMSスイッチを製造することができる。
【0026】
MEMSスイッチは、歴史的にシリコンCMOSプロセス技術に由来するので、一般に半導体基板(例:シリコン)上に構築される。そのため、MEMSデバイスの製造インフラの大半は、シリコン基板を使用することを前提としている。したがって、今後、MEMSスイッチ技術の商業化は、主にシリコンベースの基板に実装されると予想/予測される。特殊な用途(マイクロ波技術など)に限り、MEMSスイッチデバイスはシリコン以外の基板で製造される。
【0027】
金(Au)製MEMSスイッチの接点にRuなどの硬質材料をコーティングして、スイッチの寿命を延ばすことができる。しかし、接点として採用される硬質材料そのものでは、スイッチのサイクル動作における早期故障(通常、数億サイクル以下)を防ぐことはできない。故障のメカニズムとしては、磨耗、マイクロ溶接、破砕による表面荒れ、有機・高分子汚染物の表面への蓄積などが考えられる。Ru接点表面の酸化、または接点材料としてのRuO2の直接蒸着は、MEMSスイッチの熱機械性能を大幅に改善し、接点表面への有機物蓄積を低減する可能性がある。MEMSスイッチデバイスは、一般的に、長寿命でのデバイス性能を保証するために、密封されたクリーンな環境でパッケージングされる。これは、スイッチ接点の湿気や汚染を避けるために、従来の機械スイッチやリレー製品で広く採用されているアプローチである。
【0028】
本明細書に記載された例示的な実施形態は、絶縁基板、例えば、二酸化ケイ素、溶融シリカ、シリカガラス、石英、ナトリウム添加ガラス、及びホウケイ酸ガラス上に構築され得るMEMSオーミック接点スイッチを提示するが、他の非絶縁基板材料(例えば、シリコン)が代替的に使用されてもよい。例示的な実施形態において、溶融シリカは、電気損失が極めて低いという特性のために、ベース基板材料として選択され得る。この特性は、RF及びマイクロ波用途のための優れた低挿入損失、並びに高出力DCおよび/またはRF又はマイクロ波スイッチとして使用するための優れた絶縁を有するスイッチデバイスを容易にする。例示的な実施形態では、RuO
2は上部および下部MEMSスイッチ接触面の両方に形成されてもよく、これにより、数十億サイクルを超えてスイッチ寿命を引き伸ばすことが容易になる。
図1Aは、本発明によるスイッチ装置100の実施形態の一例の詳細な断面を示す図である。
図1B、1Cおよび1Dは、
図1Aに描かれたスイッチ装置の特定の部分の詳細図を示している。
【0029】
図1Aを参照すると、例示的なスイッチ装置100は、
図1Bに分離して示される基板部分104と、
図1Cに分離して示されるキャップ部分106とを含む。スイッチ装置100のコンタクト領域102は、
図1Dに分離して拡大されて示されている。
【0030】
図1Bに描かれた例示的な実施形態を参照すると、スイッチ装置100の基板部分104は、基板(例えば、溶融シリカ)108を含んでいてもよい。電気絶縁材料層110は、絶縁体基板108の上面及び下面の一方又は両方に堆積されてもよい。第1の接合部位112及び第2の接合部位114の両方は、スイッチ装置基板104をその対応するキャップ106に機械的及び電気的に接続するために使用される接合金属を含む。様々な金属および金属スタックは、金属圧縮または金属共晶接合アプローチのいずれかのために用いられ得る。(金属スタックは、金属圧縮接合または金属共晶接合のためのものであり得る。)第1および第2の接合サイト112、114のボンディング接合金属は、絶縁材料層110上に堆積された接着層116上に形成されてもよい。第1および第2の接合サイト114、116は、本明細書に記載の接合手順の間、キャップ部分106上の対応する金属接合サイトと接合してもよい。このような接合は、スイッチ素子(例えば、本明細書で説明するビーム、ゲート、及びスイッチングコンタクト)の周りに、スイッチ装置100の外部の環境111bからスイッチ素子を分離するキャビティ111a(
図1A参照)を画定する。キャビティ111a内の環境は、接合されたスイッチ装置を取り囲む環境111bとは圧力及びガス組成が異なり得る。
【0031】
ビーム(梁)118の第1の端部は、接合サイト112と電気的に連絡し基板108と機械的に結合された導電性トレースに固定されてもよい。 第1の接点配置126は、ビーム118の第2の端部に配置されてもよい。第1の接点配置126は、ビーム118の下面に機械的に結合されビーム118と電気的に連絡するRu層130と、Ru層130の外面に形成されたRuO2層132を含んでもよい。第2の対応する接点配置134は、接合サイト(114)に電気的に連絡しており基板108に機械的に接着している導電性トレースの延長上に堆積されたRu層136と、Ru層136の外面に形成されたRuO2層138とから構成されてもよい。第2の接点134は、ビームがゲート電極140によって作動されて基板に向かって引っ張られると、第1と第2の接点面が接触して電気的に通信するように、ビームの下方に、第1の接点126と同様のX及びY座標で位置決めされることが好ましい。例示的な実施形態では、Ru層136は第2の接合サイト114の延長上に堆積されるが、他の実施形態では、接合サイト以外の部位にRu層を堆積させてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、追加の電気回路素子が第3の接点配置134と接合サイト114の間に位置してもよい。
【0032】
ゲート構造140は、絶縁体基板108上に堆積された導電性金属層142から構成されてもよい。ゲート構造140は、ビーム118上に起電力を生じさせるために使用されてもよく、これにより、第1の接点配置126のRuO2層132が第2の接点配置134のRuO2層138と電気的に接触するまでビームを撓ませることができる。
【0033】
図1Cを参照すると、スイッチ装置100のキャップ部106は、溶融シリカなどの絶縁材料からなる絶縁体キャップ150を含んでいてもよく、この絶縁体キャップは、当技術分野で知られている他のそのような絶縁材料から構成される。絶縁体キャップ150上に堆積された例えばタンタル(Ta)などの付着層156上に形成された、例えば金(Au)などの接合材料からなる第3の接合サイト152および第4の接合サイト154が、第1の結合サイト112および第2の接合サイト114との接合をもたらすような位置に形成されてもよい。少なくとも1つの導電性の密閉されたガラス貫通ビア(TGV)158が絶縁体キャップ150内に配置されてもよく、これにより、キャップ部分106が基板部分104に接合された後に形成されるキャビティ内に密閉されるスイッチ装置100のコンポーネントとの間で電気信号を伝導することが容易になる。
【0034】
ウエハ接合装置においてRu接触面を酸化するために酸素を用いたプロセスを用いるアプローチ、またはRuO2材料を直接スパッタするアプローチとは対照的に、説明した実施形態では、熱圧縮(TC)接合の前に、2つの目的のために酸素プラズマアッシュプロセスを採用している。酸素プラズマアッシュプロセスの第1の目的は、接触面上の有機物汚染を除去することである。酸素プラズマアッシュプロセスの第2の目的は、Ruの接触面を不活性化し、RuO2を形成することである。その後の接合工程は、0.05%~30%の割合の酸素を含む環境下で行われるが、例示した実施形態では、酸素の割合は20%を超えないことがある。他の実施形態では、接合環境は、酸素を、例えば窒素(N2)、および/またはアルゴン(Ar)などの不活性の貴ガスのような1つまたは複数の他のガスで補ってもよい。
【0035】
RuO2層は、酸素プラズマアッシュプロセス中に形成され、接合チャンバー内でキャップを基板に接合する前に形成されるので、キャップと基板の間に密閉され封止されたデバイス環境内に取り込まれた酸素は、接合プロセス中のRu接触酸化によっては実質的に減損されない。その結果、デバイス環境内に封入されたガスの酸素比率は、接合プロセス中に供給されるガス流の酸素比率と同等またはそれに近い比率となり得る。例示的な環境では、密閉されたデバイス環境内の酸素の割合は20%であってもよいが、他の環境では0.05%~30%の間の酸素の割合を示してもよい。
【0036】
図2は、1つまたは複数のMEMSスイッチを搭載することができる基板ウエハを準備し、キャップウエハと接合するためのプロセスフロー200の例示的な実施形態を示す。この例示的な実施形態は、ガラス基板ウエハ及びガラスキャップウエハの使用に向けられるが、他の実施形態は、他の絶縁又は非絶縁ウエハを利用してもよい。さらに、ウエハ接合プロセスにおいて基板部分への接合を容易にするために適切な合わせ面を有する任意のキャップが使用され得ることを理解されたい。
【0037】
プロセスフロー200は、ガラス基板(例えば、MEMSウエハ)上にデバイス(例えば、MEMSスイッチ)を形成202し、MEMSスイッチ構造を解放204し(すなわち、犠牲支持構造を排除して、可動するように意図されたスイッチ構成要素が自由に動けるようになり、それによってRu接触面を露出する)、酸素プラズマアッシュ洗浄手順を少なくとも1分間(例示実施形態では4分±0.1分)実施206することを含んでもよい。
【0038】
MEMSウエハは、対応するキャップウエハに接合されることで、デバイスが封入されて、酸素を含む環境下にデバイスを密封封止することが可能になる。キャップウエハは、一般的な微細加工プロセスによって作製され、電気的機能層または機械的層を含んでもよい。キャップウエハは、対応するMEMSデバイスウエハへの接合を容易にするための材料と機能を含み、これによりデバイスを密封封止することができる。
【0039】
基板部分104及びキャップ部分106は、位置合わせされ、熱圧縮(TC)接合チャンバーにロード208される。基板部分104及びキャップ部分106が接合チャンバーにロードされると、所望の組成のガスを接合チャンバーに所望の圧力まで流し210、チャンバー温度を上昇させ、特定の温度及び力で基板とキャップウエハを接合212することによって、プロセス200が継続される。所望のガスの流れ214は、温度が降下するように継続し、例示の接合プロセスを終了する。
【0040】
一実施形態では、ガス210を接合チャンバーに流して所望の圧力にし(本明細書でより詳細に説明される)、第1の接合力を加えて(典型的にはその後の第2の接合力の20%以下)ウエハを(互いに)接触させ、接合チャンバーの温度を上昇させ、第2の、より高い力(接合力)を加えて、それによりキャップ部分106を基板部分104に接合212する。接合チャンバーは、所望のガスをもってそれぞれの圧力で維持され、接合力は、第1の接合力(または同様の低い力)に減少し、接合チャンバー内の温度は下降される。
【0041】
プロセスフロー200において、MEMSウエハが熱圧縮接合装置にロードされる前に、酸素プラズマアッシュプロセスステップ206の間に導電性酸化物接触面(例えば、RuO
2)が形成されてもよい。本発明による例示的なTCプロファイルが
図3に示されており、チャンバー温度302(単位:℃)が、適用された接合力304(単位:kN)と共に示されている。
図3に描かれた温度及び圧力は、説明のためにのみ提示された例であり、限定することを意図していないことを理解されたい。一般に、接合温度及び圧力プロファイルは、本明細書に記載されるような基板とキャップとの間の接合を達成するのに適した範囲内に収まることができる。Ruの酸化を行わない通常の接合プロセスのものを超える、Ru接触面の酸化に対応するための特別な接合処理は、必要とされない。接合チャンバーを満たすために使用されるガスは、N
2/O
2混合物、または清浄乾燥空気(CDA)、または不活性ガス/O
2混合物、または単なる不活性ガス、若しくは、1つまたは複数の不活性の貴ガスと混合した、ここで述べた任意のガスであってもよい。
【0042】
酸素プラズマアッシュ処理中、定比酸化ルチル、RuO
2がRu接点の外表面に形成されてもよい。反応性の高いO
2原子は、バルクRuの表面に浸透するが、表面の下に不定比のRuOXを形成することがある(ここでXは正の実数である)。O
2を用いたアニールにより、このようなRuOXはRuO
2に変換される。その結果、O
2プラズマアッシュの後、ウエハ接合段階の前に、オプションの追加工程を行うことで、表面接触材料として、より厚く、より高い割合のRuO
2を得ることができる。これらのオプションは、例えば、
図5A、
図5B、および
図5Cに示されている。
【0043】
図4Aは、酸素プラズマアッシュステップが実行され、基板およびキャップ部分が接合チャンバーにロードされると、酸素(O
2)を含むガスを接合チャンバーに流すこと402を含む例示的な実施形態を示す。
図4Bは、酸素プラズマアッシュステップが実行され、基板およびキャップ部分が接合チャンバーにロードされると、酸素に加えて窒素(N
2)を含むガスを接合チャンバーに流すこと404を含む例示的な実施形態を示す。
図4Cは、酸素プラズマアッシュステップが実行され、基板およびキャップ部分が接合チャンバーにロードされると、不活性の貴ガスを含むガスを接合チャンバーに流すこと406を含む例示的な実施形態を示す。他の実施形態では、不活性ガスは、O
2、N
2、又はその両方と組み合わされてもよい。3つの実施形態(
図4A、4B、及び4C)すべてにおいて、示された最終ステップは、基板部分とキャップ部分との間を接合が形成される際に、それぞれステップ402、404、及び406で説明したガスの流れを継続させることに関係している。
【0044】
図5A、5B、及び5Cは、接合プロセスの前に、本明細書に記載のRuO
2接点層を形成するための前処理ステップを扱う例示的な実施形態を示す。RuO
2層は、酸素プラズマアッシュの間にRuO
2層を形成するのではなく、接合チャンバーとは別のチャンバー(例えば、オーブン)内で形成される。RuO
2層は、酸素プラズマアッシュの間に補強されてもよい。3つの実施形態(
図5A、5B、および5C)はすべて、MEMSデバイスをオーブンに装填した後、オーブンを酸素含有ガスで充填502し、デバイスを200℃超で少なくとも10分間アニーリングすることを示している。
図5A、
図5B、
図5Cは、接合チャンバー内で、それぞれ、酸素504、窒素506、または貴ガス508を流している様子を示している。
【0045】
例示的な実施形態が特に示され、説明されたが、添付の特許請求の範囲によって包含される実施形態の範囲から逸脱することなく、形態および詳細における種々の変更がそこでなされ得ることが当業者によって理解されるであろう。
【国際調査報告】