(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】ポリウレタン発泡体用の酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒
(51)【国際特許分類】
C08G 18/18 20060101AFI20230428BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20230428BHJP
C08G 18/28 20060101ALI20230428BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20230428BHJP
【FI】
C08G18/18
C08G18/00 L
C08G18/28 015
C08G18/00 H
C08G101:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558233
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(85)【翻訳文提出日】2022-11-21
(86)【国際出願番号】 US2021022080
(87)【国際公開番号】W WO2021194766
(87)【国際公開日】2021-09-30
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505318547
【氏名又は名称】ハンツマン ペトロケミカル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Huntsman Petrochemical LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メレディス,マシュー・ティー
(72)【発明者】
【氏名】ファム,ディアン
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA08
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF16
4J034DF20
4J034DG03
4J034DG04
4J034DQ02
4J034DQ16
4J034HA01
4J034HA07
4J034HB07
4J034HC03
4J034HC06
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC45
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC54
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034KA01
4J034KB02
4J034KD02
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4J034KE02
4J034MA18
4J034MA24
4J034NA02
4J034NA03
4J034QC01
4J034RA03
(57)【要約】
本開示は、ポリウレタン配合物に使用するための酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒に関する。ポリウレタン配合物は、酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒と、イソシアナート官能基含有化合物と、活性水素含有化合物と、ハロゲン化オレフィン化合物と、を含むことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
(a)酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒であって、(i)式(1)又は(2)の少なくとも1種のアルキルアミノピリジン
【化1】
と(ii)鉱酸又は式(3)のカルボン酸のうち少なくとも1種
【化2】
を接触させることにより得られる、前記酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒であり、式中、各Rは、独立して、アルキル基、ヒドロキシエチル基、又はヒドロキシプロピル基であり、nは、1~2の整数であり、R
2は、水素、アルキル基、アルケニル基、シクロ脂肪族基、芳香族基、又はアルキル芳香族基であり、k及びmは、独立して、1~3の整数であるが、ただしk+m≧1であり、並びにk=1及びm=0の場合、Rは、芳香族基又はアルキル芳香族である、前記酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒と
(b)イソシアナート官能基含有化合物と、
(c)活性水素含有化合物と、
(d)ハロゲン化オレフィン化合物と、
を含む、ポリウレタン配合物。
【請求項2】
各Rは、独立して、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、プロピル、又はブチルである、請求項1に記載のポリウレタン配合物。
【請求項3】
各Rは、メチルである、請求項2に記載のポリウレタン配合物。
【請求項4】
さらに、少なくとも1つの第三級アミン基を有するアミン触媒、及び/又は非アミン触媒を含む、請求項1に記載のポリウレタン配合物。
【請求項5】
少なくとも1つの第三級アミン基を有する前記アミン触媒は、さらに、鉱酸又は式(3)のカルボン酸
【化3】
と接触させられ、
式中、R
2は、水素、アルキル基、アルケニル基、シクロ脂肪族基、芳香族基、又はアルキル芳香族基であり、k及びmは、独立して、1~3の整数であるが、ただしk+m≧1であり、並びにk=1及びm=0の場合、R
2は、芳香族基又はアルキル芳香族である、請求項4に記載のポリウレタン配合物。
【請求項6】
ポリウレタン材料の形成に使用するための触媒パッケージであって、以下:
(a)酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒であって、(i)式(1)又は(2)の少なくとも1種のアルキルアミノピリジン
【化4】
と(ii)鉱酸又は式(3)のカルボン酸うち少なくとも1種
【化5】
を接触させることにより得られる、前記酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒であり、式中、各Rは、独立して、アルキル基、ヒドロキシエチル基、又はヒドロキシプロピル基であり、nは、1~2の整数であり、R
2は、水素、アルキル基、アルケニル基、シクロ脂肪族基、芳香族基、又はアルキル芳香族基であり、k及びmは、独立して、1~3の整数であるが、ただしk+m≧1であり、並びにk=1及びm=0の場合、Rは、芳香族基又はアルキル芳香族である、前記酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒と
(b)ハロゲン化オレフィン化合物と
を含む、前記触媒パッケージ。
【請求項7】
さらに、少なくとも1つの第三級アミン基を有するアミン触媒を含む、請求項6に記載の触媒パッケージ。
【請求項8】
ポリウレタン材料の製造法であって、
(i)式(1)又は(2)の少なくとも1種のアルキルアミノピリジン
【化6】
と(ii)鉱酸又は式(3)のカルボン酸うち少なくとも1種
【化7】
を接触させることにより得られる、酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒であって、
式中、各Rは、独立して、アルキル基、ヒドロキシエチル基、又はヒドロキシプロピル基であり、nは、1~2の整数であり、R
2は、水素、アルキル基、アルケニル基、シクロ脂肪族基、芳香族基、又はアルキル芳香族基であり、k及びmは、独立して、1~3の整数であるが、ただしk+m≧1であり、並びにk=1及びm=0の場合、Rは、芳香族基又はアルキル芳香族である、前記酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒の少なくとも1種と、
(b)ハロゲン化オレフィン化合物と、の存在下、
イソシアナート官能基含有化合物、活性水素含有化合物、及び任意選択で補助成分を、接触させることを含む、前記方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法に従って製造される、ポリウレタン材料。
【請求項10】
前記ポリウレタン材料は、硬質発泡体、軟質発泡体、又はスプレー発泡体である、請求項9に記載のポリウレタン材料。
【請求項11】
プレコート、カーペット用裏張り材料、建築複合材料、断熱材、スプレー発泡体断熱材、ウレタン/ウレアハイブリッドエラストマー、自動車内の内装及び外装部品、軟質発泡体、インテグラルスキン発泡体、硬質スプレー発泡体、硬質現場注入発泡発泡体、コーティング、接着剤、シーラント、又はフィラメント巻きとして使用するための、請求項9に記載のポリウレタン材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮出願第63/000,897号、出願日2020年3月27日、の優先権を主張する。言及される出願(複数可)は、本明細書中参照として援用される。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究に関する記述
該当なし。
【0003】
分野
本開示は、概して、軟質及び硬質ポリウレタン発泡体並びに他のポリウレタン材料の製造に使用するための、酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
ポリウレタン発泡体は、自動車及び住宅産業など様々な用途で幅広く知られ使用されている。例えば、スプレー用(sprayable)ポリウレタン発泡体は、典型的には、イソシアナート(「A側(A-side)」)及びポリオール樹脂ブレンド(「B側(B-side)」)で構成され、これらの側は同時混合されて直ちに基材上にスプレーされ、基材は垂直壁又は天井であることが多い。B側は、ポリオール又はポリオール混合物に加えて、界面活性剤、難燃剤、物理的発泡剤、水、及び触媒も含むことができ、これらは、発泡体形成反応を加速し、従って、スプレー用ポリウレタン発泡体の性能に不可欠である。この微調整された混合物により、ポリウレタン混合物は、1分未満で、基材と接触し、発泡体形成し、及び固化することが可能になる。特に重要であるのは、反応の「初期段階」であり、これは、発泡体形成プロセスのクリーミング又は発泡部分(blowing
portion)としても知られる。A側とB側の混合物の粘度上昇を引き起こすことで壁から又は塗装装置へ(基材が天井の場合)滴り落ちるのを回避するため、クリーミングは、スプレーされる場合には、非常に迅速でなければならない。速いクリームタイムは、物理的又は化学的発泡いずれかを加速する触媒を用いて達成される。化学的発泡は、イソシアナートと水の反応からCO2ガスが発生する場合に起こり、物理的発泡は、揮発性液体(発泡剤)がポリウレタン反応の熱で気化する場合に起こる。実用的には、化学的発泡も物理的発泡も重要であり、安定したスプレー発泡体形成に寄与する。
【0005】
従来、速いクリームタイムを与えるために強力な第三級アミン触媒が使用されてきた。ジメチルアミノ基を高濃度で含有する第三級触媒は、よりアルカリ性寄りのpKa、ヘテロ原子間に2炭素分の間隔を有し、立体的な障害を受けず、従って、典型的には良好な発泡触媒である。そのような触媒の市販されている例としては、JEFFCAT(登録商標)ZF-20触媒、JEFFCAT(登録商標)ZF-10触媒、及びJEFFCAT(登録商標)PMDETA触媒(Huntsman Corporationより)がある。これらの触媒及び他の触媒は、長年にわたり強力な発泡触媒に要求される需要を満たしてきた。
【0006】
世界規模での新たな環境規制は、新たな「地球温暖化係数(GWP)の低い」発泡剤、すなわち環境中でこれまでより非常に速く分解し、前世代の発泡剤及び難燃剤がもたらすと知られていた温室効果又はオゾン層の破壊ほどには、目に付くような温室効果又はオゾン層の破壊をもたらさない発泡剤の使用を義務付けることになった。こうした望ましい環境特性が得られるのは、多数の水素原子及びハロゲン原子に加えて、発泡剤分子中に二重結合(複数可)が存在し、これらが環境中での迅速な分解を可能にすることによる。しか
しながら、こうした低GWP発泡剤、すなわちハイドロフルオロオレフィン(HFO)の使用が持つ不運な副作用として、これら発泡剤は、市販されているアミン発泡触媒の多くと接触した場合に分解する傾向にある。この不安定性は、HFO発泡剤を含有するポリオール樹脂ブレンドの貯蔵寿命を顕著に短縮する。
【0007】
アミン及びHFO発泡剤を含有するブレンドの貯蔵寿命を、合理的な速度でポリウレタン発泡体形成を触媒するそれらの能力に影響することなく、改善する様々な試みがなされてきた。そのような試みの大部分は、一つ又は別のやり方で不活性化された(すなわち、立体的に障害されているか電子求引基と結合してる)アミンを使用すること、又はアミンとHFO発泡剤の、例えば、カルボン酸との反応を阻止する追加添加剤を含めることを軸として展開している(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、及び特許文献8を参照)。しかしながら、そのような試みは、アミン及び標準的な非ハロゲン化発泡剤を含有するブレンドに匹敵する貯蔵安定性及び触媒活性を達成することが未だにできていない。すなわち、最新のHFO発泡剤と組み合わせて、現行の従来型アミン触媒/非ハロゲン化発泡剤ブレンドに勝る、条件を満たす触媒活性及び改善された貯蔵寿命を有するブレンドを形成することが可能な、硬質、軟質、又はスプレーポリウレタン発泡体及び他のポリウレタン材料の製造に使用するための新規アミン触媒の開発が引き続き必要とされている。
【0008】
アルキルアミノピリジン、例えば、N,N-ジメチル-4-アミノピリジンなどは、多くの有機合成反応に関して評価されてきた強力な求核アミンである(非特許文献1)。これら反応の中には、アルコール又はポリオールとイソシアナートの反応、いわゆる「ゲル化」反応がある(特許文献9、特許文献10、及び特許文献11)。こうした系に使用される場合、アルキルアミノピリジンは、非常に強力な触媒であり、トリエチレンジアミンに匹敵する。しかしながら、先行技術において、アルキルアミノピリジンは、その中性形で使用され、イソシアナートと水の間の発泡反応を促進しない。本発明者らは、アルキルアミノピリジンを酸ブロックした場合に、それらが、ポリウレタン発泡体配合物において迅速な発泡を促進することを、驚いたことに見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第10,023,681号
【特許文献2】米国特許公開第2015/0266994A1号
【特許文献3】米国特許公開第2016/0130416A1号
【特許文献4】米国特許第9,550,854号、
【特許文献5】米国特許第9,556,303号
【特許文献6】米国特許第10,308,783号
【特許文献7】米国特許第9,868,837号
【特許文献8】米国特許公開第2019/0177465A1号
【特許文献9】US3109825
【特許文献10】US3144452
【特許文献11】US3775376
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Angew. Chrm. Int. Ed. Engl. 17, 569-583(1978)
【発明の概要】
【0011】
概略
本開示は、酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒と、ハロゲン化オレフィン化合物と
、イソシアナート官能基を有する化合物と、活性水素含有化合物と、を含む、ポリウレタン配合物を提供する。
【0012】
別の実施形態に従って、提供されるのは、ポリウレタン材料の形成に使用するための触媒パッケージであり、本触媒パッケージは、酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒と、ハロゲン化オレフィン化合物と、を含む。
【0013】
さらに別の実施形態において、提供されるのはポリウレタン材料の形成方法であり、本方法は、イソシアナート官能基を有する化合物、活性水素含有化合物、及び任意選択の補助成分を、酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒及びハロゲン化オレフィン化合物の存在下で、接触せることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】ギ酸でブロックされた業界標準の触媒、並びにギ酸、酢酸、又は2-エチルヘキサン酸のいずれかでブロックされた本発明のアルキルアミノピリジン触媒を用いて生成させたポリウレタン発泡体の、クリームタイム及びトップオブカップタイムの変化%を示す;
【
図2】本発明の酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒を単独使用で又は酸ブロックした業界標準の触媒と併用してのいずれかで生成させたポリウレタン発泡体の反応プロファイルを示す;並びに
【
図3】本発明の酸ブロックアルキルアミノピリジンを含有する熱老化ポリオール樹脂ブレンドで作られたポリウレタン発泡の反応プロファイルの変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の用語は、以下の意味を有するものとする。
【0016】
「含む(comprising)」という用語及びその派生語は、どのような追加の構成要素、工程、又は手順であっても、それが本明細書中開示されているか否かに関わらず、その存在を排除することを意図しない。どのような疑問も回避する目的で言うと、「含む(comprising)」という用語の使用を通じて本明細書中特許請求される全ての組成物は、対立する記載がない限り、任意の追加の添加剤又は化合物を含むことができる。対照的に、「本質的に~からなる(consisting essentially
of)」は、本明細書中出現する場合、あらゆる後続の言及から、操作性に必須ではないものを除いてどのような他の構成要素、工程、又は手順も排除し、「~からなる(consisting of)」という用語は、使用される場合、具体的に記述又は列挙されていないどのような構成要素、工程、又は手順も除外する。「又は」という用語は、特に記載がない限り、列挙されるメンバーを、個別に並びに任意の組み合わせで指す。
【0017】
「a」及び「an」という冠詞は、本明細書中、その冠詞の文法上の目的語が1つのものであるとして、又は1つより多いものである(すなわち少なくとも1つ)として指すのに使用される。例として、「触媒(a catalyst)」は、1種の触媒又は1種より多い触媒を意味する。「1つの実施形態において」、「1つの実施形態に従って」などの語句は、概して、その語句に続く特定の特長、構造、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれているとともに、本開示の1つより多い実施形態にも含まれている可能性があることを意味する。重要なことは、そのような語句が、同じ態様を指す必要はないことである。本明細書において、ある成分又は特長が、含まれている若しくは特徴を有することを記述するのに「may」、「can」、「could」、又は「might」を使用する場合、その特定の成分又は特長が含まれていること若しくは特徴を有することは、必ずしも要求されない。
【0018】
「約」という用語は、本明細書中使用される場合、値又は範囲にある度合いの変動性を許容することができ、例えば、変動性は、記載される値又は記載される範囲限度の10%以内、5%以内、又は1%以内が可能である。
【0019】
範囲の形式であらわされる値は、範囲の限度として明白に言及されている数値を含むだけでなく、その範囲内に包含される個々の数値又はサブ範囲の全ても、それぞれの数値及びサブ範囲が明白に言及されているかのごとく含むように、柔軟なやりかたで解釈されなければならない。例えば1~6などの範囲は、1~3、2~4、3~6などのサブ範囲、並びに当該範囲内の個々の数、例えば1、2、3、4、5、及び6を有すると見なされなければならない。これは、範囲の幅に関わらず適用される。
【0020】
「好ましい」及び「好ましくは」という用語は、ある状況下である利益を与える可能性がある態様を指す。しかしながら、他の態様も、同じ又は他の状況下で好ましい可能性がある。そのうえさらに、1つ以上の好ましい態様に言及することは、他の態様が有用でないことを意味せず、他の態様を本開示の範囲から排除することを意図するものでもない。
【0021】
「実質的に含まない」という用語は、組成物中に特定の化合物又は部分が存在しているがその量はその組成物に対して材料効果を有していない、組成物を指す。実施形態によっては、「実質的に含まない」は、組成物中に、特定の化合物又は部分が存在し、その量は、その組成物の合計重量に基づいて2重量%未満、又は1重量%未満、又は0.5重量%未満、又は0.1重量%未満、又は0.05重量%未満、又はさらに0.01重量%未満の量である組成物、又はそれぞれの組成物中にその特定の化合物又は部分が存在しないことを指す場合がある。
【0022】
「鉱酸」という用語は、炭素を含まない酸を指す。鉱酸の例として、以下の酸が挙げられるが、これらに限定されない:塩酸、臭化水素酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウ酸、フッ化水素酸、及び過塩化物(perchloride)。
【0023】
置換基が、それらの通常の化学式により指定され、左から右へと書かれる場合、それらは、構造を右から左へと書くことから生じると思われる化学的に同一の置換基も等しく包含する。これは、例えば、-CH2O-が-OCH2-と同等ということである。
【0024】
「アルキル」という用語は、1~10個の炭素原子、又は1~8個の炭素原子、又は1~6個の炭素原子を有する、直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素基を示す。実施形態によっては、アルキル置換基は、低級アルキル基の場合がある。「低級」という用語は、アルキル基が1~6個の炭素原子を有することを指す。「低級アルキル基」の例として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、ブチル基、及びペンチル基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
「ハロゲン化オレフィン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を含むことができるオレフィン化合物又は部分を指す。
【0026】
「任意選択の」又は「任意選択で」という用語は、続いて記載される事象又は状況が、生じる可能性もあれば生じない可能性もあること、及びこの記載が、当該事象又は状況が起こる場合及び起こらない場合を含むことを意味する。
【0027】
本開示は、概して、新規酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒、及びポリウレタン配合物におけるそれらの使用に関し、このポリウレタン配合物は、イソシアナート官能基含有化合物と、活性水素含有化合物と、発泡剤としてのハロゲン化オレフィン化合物と、を含むことができる。本開示は、本明細書中記載されるとおりの酸ブロックアルキルアミノ
ピリジン触媒と、イソシアナート官能基含有化合物と、活性水素含有化合物と、発泡剤としてのハロゲン化オレフィン化合物と、を含む配合物から作られた、硬質、軟質、又はスプレーポリウレタン発泡体、あるいは他のポリウレタン材料にも関する。「ポリウレタン」という用語は、本明細書中使用される場合、純ポリウレタン、ポリウレタンポリウレア、及び純ポリウレアを包含すると理解される。ハロゲン化オレフィン化合物発泡剤と、本開示による酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒を組み合わせると、改善された初期段階安定性及び触媒活性を有するポリウレタン混合物がもたらされることが、驚いたことに見出された。
【0028】
1つの実施形態に従って、酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒は、(i)式(1)又は(2)の少なくとも1種のアルキルアミノピリジン
【化1】
と、(ii)鉱酸又は式(3)のカルボン酸うち少なくとも1種
【化2】
を接触させることにより得られる1種以上の触媒であり、
式中、各Rは、独立して、アルキル基、ヒドロキシエチル基、又はヒドロキシプロピル基であり、nは、1~2の整数であり、R
2は、水素、アルキル基、アルケニル基、シクロ脂肪族基、芳香族基、又はアルキル芳香族基であり、k及びmは、独立して、0~3の整数であるが、ただしk+m≧1であり、並びにk=1及びm=0の場合、Rは、芳香族基又はアルキル芳香族基である。
【0029】
1つの実施形態に従って、Rアルキル基として、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、及びブチルが挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態において、R2アルキル基として、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、プロピル、ブチル、iso-ブチル、n-アミル、n-デシル、又は2エチルヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
式(3)のカルボン酸として使用可能な特定の化合物として、ヒドロキシルカルボン酸、ジカルボン酸、ギ酸、酢酸、マロン酸、グルタル酸、マレイン酸、グリコール酸、乳酸、2-ヒドロキシ酪酸、クエン酸、AGS酸、フェノール、クレゾール、ヒドロキノン、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。AGS酸とは、アジピン酸製造プロセスにおいてシクロヘキサノール及び/又はシクロヘキサノンの酸化の副生
成物として得られる、ジカルボン酸(すなわち、アジピン酸、グルタル酸、及びコハク酸)の混合物である。式(3)のカルボン酸として使用可能な適切なAGS酸として、RHODIACID(登録商標)酸(Solvay S.A.から入手可能)、二塩基酸(Invista S.a.r.lから入手可能)、FLEXATRACTM-AGS-200酸(Ascend Performance Materials LLCから入手可能)、及びグルタル酸、工業用(AGS)(Lanxess A.G.から入手可能)が挙げられる。
【0031】
1つの実施形態において、酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒は、式(1)、(2)のアルキルアミノピリジンのうち少なくとも1種、及び鉱酸又は式(3)のカルボン酸のうち少なくとも1種を、ポリウレタン配合物に加えることにより、ポリウレタン配合物中でin situで調製することができ、一方他の実施形態において、上記酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒は、ポリウレタン配合物に加える前に、容器中で又はインラインミキサー中で、式(1)、(2)のアルキルアミノピリジンのうち少なくとも1種と、鉱酸又は式(3)のカルボン酸のうち少なくとも1種を接触させて、酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒を形成させることにより、調製することができ、次いで、酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒をポリウレタン配合物に加える。
【0032】
一部の実施形態に従って、酸ブロックアルキルアミノピリジンは、ポリウレタン発泡体又は材料の形成において唯一の触媒として使用される可能性がある。なお他の実施形態において、上記酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒は、ポリウレタン発泡体又は材料の形成において、少なくとも1つの第三級アミン基を有する別のアミン触媒及び/又は非アミン触媒と組み合わされる可能性があり、別のアミン触媒には、鉱酸又は式(3)のカルボン酸で酸ブロックされたアミン触媒も含めることができる。酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒を、少なくとも1つの第三級アミン基を有するアミン触媒(鉱酸又は式(3)のカルボン酸で酸ブロックされたアミン触媒も含む)及び/又は非アミン触媒と組み合わせる実施形態において、酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒対少なくとも1つのアミン基を有するアミン触媒及び/又は非アミン触媒の重量比は、少なくとも1:1であり、実施形態によっては、少なくとも1.5:1であり、なおも他の実施形態では、少なくとも2:1であり、さらなる実施形態において、少なくとも5:1であり、なおもさらなる実施形態において、少なくとも10:1である。なおも他の実施形態において、酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒対少なくとも1つのアミン基を有するアミン触媒及び/又は非アミン触媒の重量比は、0.1:99.9~99.9:0.1であり、なおも他の実施形態では、1:99~99:1であり、なおも他の実施形態では、5:95~95:5であり、さらなる実施形態において、10:90~90:10であり、なおもさらなる実施形態において、25:75~75:25であり、なおも他の実施形態では、35:65~65:35であり、なおも他の実施形態では、40:60~60:40である。
【0033】
少なくとも1つの第三級アミン基を有するアミン触媒の代表的なものとして、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(JEFFCAT(登録商標)ZF-20触媒)、N,N,N’-トリメチル-N’-ヒドロキシエチルビスアミノエチルエーテル(JEFFCAT(登録商標)ZF-10触媒)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N,N-ジイソプロパノールアミン(JEFFCAT(登録商標)DPA触媒)、N,N-ジメチルエタノールアミン(JEFFCAT(登録商標)DMEA触媒)、トリエチレンジアミン(JEFFCAT(登録商標)TEDA触媒)、N,N-ジメチルエタノールアミンエチレンジアミンのブレンド(例えば、JEFFCAT(登録商標)TD-20触媒など)、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン(JEFFCAT(登録商標)DMCHA触媒)、ベンジルジメチルアミン(JEFFCAT(登録商標)BDMA触媒)、ペンタメチルジエチレントリアミン(JEFFCAT(登録商標)PMDETA触媒)、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジプロピレントリアミン(JEFFCAT(登録商標
)ZR-40触媒)、N,N-ビス(3-ジメチルアミノプロピル)-N-イソプロパノールアミン(JEFFCAT(登録商標)ZR-50触媒)、N’-(3-(ジメチルアミノ)プロピル-N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(JEFFCAT(登録商標)Z-130触媒)、2-(2-ジメチルアミノエトキシ)エタノール(JEFFCAT(登録商標)ZR-70触媒)、N,N,N-トリメチルアミノエチル-エタノールアミン(JEFFCAT(登録商標)Z-110触媒)、N-エチルモルホリン(JEFFCAT(登録商標)NEM触媒)、N-メチルモルホリン(JEFFCAT(登録商標)NMM触媒)、4-メトキシエチルモルホリン、N,N’ジメチルピペラジン(JEFFCAT(登録商標)DMP触媒)、2,2’-ジモルホリノジエチルエーテル(JEFFCAT(登録商標)DMDEE触媒)、1,3,5-トリス(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-ヘキサヒドロ-s-トリアジン(JEFFCAT(登録商標)TR-90触媒)、1-プロパンアミン、3-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)、置換イミダゾール、例えば、1,2-ジメチルイミダゾール及び1-メチル-2-ヒドロキシエチルイミダゾールなど、N,N’-ジメチルピペラジン又はビス置換ピペラジン、例えば、アミノエチルピペラジン、N,N’,N’-トリメチルアミノエチルピペラジン、又はビス-(N-メチルピペラジン)尿素など、N-メチルピロリジン及び置換メチルピロリジン、例えば、2-アミノエチル-N-メチルピロリジン又はビス-(N-メチルピロリジン)エチル尿素など、3-ジメチルアミノプロピルアミン、N,N,N’’,N’’-テトラメチルジプロピレントリアミン、テトラメチルグアニジン、1,2-ビス-ジイソプロパノールが挙げられるが、これらに限定されない。アミン触媒の他の例として、N-アルキルモルホリン、例えば、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-ブチルモルホリン、及びジモルホリノジエチルエーテルなど、N,N’-ジメチルアミノエタノール、N,N-ジメチルアミノエトキシエタノール、ビス(ジメチルアミノプロピル)-アミノ-2-プロパノール、ビス(ジメチルアミノ)-2-プロパノール、ビス(N,N-ジメチルアミノ)エチルエーテル、N,N,N’-トリメチル-N’ヒドロキシエチル-ビス(アミノエチル)エーテル、N,N-ジメチルアミノエチル-N’-メチルアミノエタノール、並びにテトラメチルイミノビスプロピルアミンが挙げられる。上記のJEFFCAT(登録商標)触媒は、Huntsman Petrochemical LLC, The Woodlands, Texasから入手可能である。
【0034】
本開示で使用可能な他のアミン触媒は、Appendix D in “Dow Polyurethanes Forexible Foams” by Herrington et al. at pages D.1-D.23 (1997)で見つけることができ、これは本明細書中参照として援用される。さらなる例は、“JEFFCAT(Registered Mark) Amine Catalysts for the
Polyurethane Industry” version JCT-0910で見つけることができ、これは本明細書中参照として援用される。
【0035】
非アミン触媒は、イソシアナート基とポリオール又は水の反応に触媒活性を有する化合物(又はその混合物)であるが、上記のアミン触媒の説明に含まれる化合物ではない。そのような追加の非アミン触媒の例として、例えば、以下が挙げられる:
第三級ホスフィン、例えば、トリアルキルホスフィン及びジアルキルベンジルホスフィンなど;
各種金属のキレート体、例えば、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、アセト酢酸エチルなどを、Be、Mg、Zn、Cd、Pd、Ti、Zr、Sn、As、Bi、Cr、Mo、Mn、Fe、Co、及びNiなどの金属とともに用いて得ることができるものなど;
カルボン酸金属塩、例えば、酢酸カリウム及び酢酸ナトリウムなど;
強酸の酸性金属塩、例えば、塩化第二鉄、塩化第二スズ、塩化スズ、三塩化アンチモン、硝酸ビスマス、及び塩化ビスマスなど;
強塩基、例えば、アルカリ及びアルカリ土類金属の水酸化物、アルコキシド、並びにフェノキシド;
各種金属のアルコラート及びフェノラート、例えば、Ti(OR6)4、Sn(OR6)4、及びAl(OR6)3など、式中、R6は、アルキル又はアリールである、並びにアルコラートとカルボン酸、ベータ-ジケトン、及び2-(N,N-ジアルキルアミノ)アルコールの反応生成物;
アルカリ土類金属、Bi、Pb、Sn、又はAlのカルボン酸塩;及び四価スズ化合物、及び三価あるいは五価のビスマス、アンチモン、又はヒ素化合物。
【0036】
酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒は、硬質、軟質、又はスプレーポリウレタン発泡体、あるいは他のポリウレタン材料を作るための、イソシアナート官能基含有化合物と活性水素含有化合物の間の反応を触媒する、触媒的有効量で使用することができる。酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒の触媒的有効量は、活性水素含有化合物100部あたり約0.01~15部、実施形態によっては、活性水素含有化合物100部あたり約0.05~12.5部、なおさらなる実施形態において、活性水素含有化合物100部あたり約0.1~7.5部、さらになおさらなる実施形態において、活性水素含有化合物100部あたり約0.5~5部の範囲にある可能性がある。1つの特定の実施形態において、酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒の量は、活性水素含有化合物100部あたり約0.1~3部の範囲にある可能性がある。実施形態によっては、酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒は、硬質、軟質、又はスプレーポリウレタン発泡体を作るために使用される単独触媒である(すなわち、ポリウレタン発泡体配合物は、少なくとも1つの第三級アミン基を有するアミン触媒(鉱酸又は式(3)のカルボン酸で酸ブロックされたアミン触媒も含むことができる)及び非アミン触媒を実質的に含まない)。
【0037】
1つの実施形態において、イソシアナート官能基含有化合物は、ポリイソシアナート及び/又はイソシアナート末端プレポリマーである。
【0038】
ポリイソシアナートとして、一般式Q(NCO)aで表されるものが挙げられ、式中、aは、2~5の数字、例えば2~3であり、Qは、2~18個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5~10個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、8~13個の炭素原子を有する芳香脂肪族炭化水素基、又は6~15個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基である。
【0039】
ポリイソシアナートの例として,エチレンジイソシアナート;1,4-テトラメチレンジイソシアナート;1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート;1,12-ドデカンジイソシアナート;シクロブタン-1,3-ジイソシアナート;シクロヘキサン-1,3-及び1,4-ジイソシアナート,並びにこれら異性体の混合物;イソホロンジイソシアナート;2,4-及び2,6-ヘキサヒドロトルエンジイソシアナート並びにこれら異性体の混合物;ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアナート(水素化MDI,又はHMDI);1,3-及び1,4-フェニレンジイソシアナート;2,4-及び2,6-トルエンジイソシアナート並びにこれら異性体の混合物(TDI);ジフェニルメタン-2,4’-及び/又は-4,4’-ジイソシアナート(MDI);ナフチレン-1,5-ジイソシアナート;トリフェニルメタン-4,4’,4’-トリイソシアナート;アニリンとホルムアルデヒドを縮合させ、続いてホスゲン化することにより得ることができる種類のポリフェニル-ポリメチレン-ポリイソシアナート(粗MDI);ノルボルナンジイソシアナート;m-及びp-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアナート;過塩素化(perchlorinated)アリールポリイソシアナート;カルボジイミド基、ウレタン基、アロファネート(allophnate)基、イソシアヌラート基、尿素基、又はビウレット基を有する修飾ポリイソシアナート;テロメル化反応により得られるポリイソシアナート;エステル基を有するポリイソシアナート;並びに、ポリマー脂肪酸基を有
するポリイソシアナートが挙げられるが、これらに限定されない。当業者ならわかるだろうが、上記のポリイソシアナートの混合物を使用することも可能である。
【0040】
イソシアナート末端プレポリマーも、ポリウレタンの調製に使用することができる。イソシアナート末端プレポリマーは、過剰量のポリイソシアナート又はその混合物を、少量の活性水素含有化合物と反応させることにより調製可能であり、活性水素含有化合物は、周知のツエレビチノフ試験により特定されるとおりである。
【0041】
別の実施形態において、活性水素含有化合物は、ポリオールである。本開示で使用するのに適切なポリオールとして、ポリアルキレンエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、不燃性ポリオール、例えば、リン含有ポリオール又はハロゲン含有ポリオールなどが挙げられるが、これらに限定されない。そのようなポリオールは、単独でも、適切な組み合わせで混合物としても使用可能である。
【0042】
ポリアルキレンエーテルポリオールとして、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、例えば、ポリ(エチレンオキシド)及びポリプロピレンオキシド)ポリマーなど、並びにジオール及びトリオールを含む多価化合物由来の末端ヒドロキシル基を持つ共重合体が挙げられ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、グリセロール、ジグリセロール、トリメチロールプロパン、及び類似の低分子量ポリオールが挙げられる。
【0043】
ポリエステルポリオールとして、ジカルボン酸と過剰量のジオール、例えば、アジピン酸とエチレングリコール若しくはブタンジオールを反応させることにより、又はラクトンと過剰量のジオール、例えば、カプロラクトンとプロピレングリコールの反応により生成するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
ポリアルキレンエーテルポリオール及びポリエステルポリオールに加えて、ポリマーポリオールもまた、本開示での使用に適切である。ポリマーポリオールは、変形に対する耐性を上昇させるため、例えば、発泡体又は材料の耐荷重性を改善するため、ポリウレタン材料に使用される。ポリマーポリオールの例として、グラフトポリオール又はポリウレア修飾ポリオール(ポリ尿素(Polyharnstoff)分散ポリオール)が挙げられるが、これらに限定されない。グラフトポリオールは、ビニル単量体がグラフト共重合したトリオールを含む。適切なビニル単量体として、例えば、スチレン、又はアクリロニトリルが挙げられる。ポリウレア修飾ポリオールは、ポリオールの存在下でジアミンとジイソシアナートを反応させることにより形成されたポリウレア分散系含有ポリオールである。ポリウレア修飾ポリオールの改変形態に、ポリイソシアナートポリ付加(PIPA)ポリオールがあり、これは、ポリオール中でのイソシアナートとアルカノールアミンのin
situ反応により形成される。
【0045】
不燃性ポリオールは、例えば、リン酸化合物にアルキレンオキシドを付加することにより得ることが可能なリン含有ポリオールの場合がある。ハロゲン含有ポリオールは、例えば、エピクロロヒドリン又はトリクロロブチレンオキシドの開環重合により得ることが可能なものの場合がある。
【0046】
ポリウレタン配合物は、発泡剤として働く1種以上のハロゲン化オレフィン化合物も含有することができる。ハロゲン化オレフィン化合物は、3~4個の炭素原子及び少なくとも1つの炭素炭素二重結合を有する少なくとも1種のハロアルケン(例えば、フルオロアルケン又はクロロフルオロアルケン)を含む。適切な化合物として、ヒドロハロオレフィン、例えば、トリフルオロプロペン、テトラフルオロプロペン(例えば、テトラフルオロ
プロペン(1234))、ペンタフルオロプロペン(例えば、ペンタフルオロプロペン(1225))、クロロトリフルオロプロペン(例えば、クロロトリフルオロプロペン(1233))、クロロジフルオロプロペン、クロロトリフルオロプロペン、クロロテトラフルオロプロペン、ヘキサフルオロブテン(例えば、ヘキサフルオロブテン(1336))、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。ある特定の実施形態において、テトラフルオロプロペン化合物、ペンタフルオロプロペン化合物、及び/又はクロロトリフルオロプロペン化合物は、不飽和炭素鎖の末端炭素原子と結合したフッ素若しくは塩素置換基を1個以下しか有さない(例えば、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(1234ze)、1,1,3,3-テトラフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(1225ye)、1,1,1-トリフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロペン(1225zc)、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン(1225yc)、(Z)-1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロペン(1225yez)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd)、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-2-エン(1336mzzm)、又はそれらの組み合わせ)。
【0047】
上記のハロゲン化オレフィン化合物と組み合わせて使用可能な他の発泡剤として、空気、窒素、二酸化炭素、ハイドロフルオロカーボン(「HFC」)、アルカン、アルケン、モノカルボン酸塩、ケトン、エーテル、又はそれらの組み合わせが挙げられる。適切なHFCとして、1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC-365mfc)、又はそれらの組み合わせが挙げられる。適切なアルカン及びアルケンとして、n-ブタン、n-ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、1-ペンテン、又はそれらの組み合わせが挙げられる。適切なモノカルボン酸塩として、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、又はそれらの組み合わせが挙げられる。適切なケトン及びエーテルとして、アセトン、ジメチルエーテル、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0048】
また、ポリウレタン配合物は、任意選択で、1種以上の補助成分を含むことができる。補助成分の例として、気泡安定剤、界面活性剤、連鎖延長剤、顔料、充填剤、難燃剤、熱膨張性微小球、水、増粘剤、煙抑制剤、強化剤、酸化防止剤、UV安定剤、帯電防止剤、赤外線吸収剤、染料、離型剤、抗真菌剤、殺生物剤、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
気泡安定剤として、例えば、ケイ素界面活性剤又はアニオン性界面活性剤を挙げることができる。適切なケイ素界面活性剤の例として、ポリアルキルシロキサン、ポリオキシアルキレンポリオール修飾ジメチルポリシロキサン、アルキレングリコール修飾ジメチルポリシロキサン、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
適切な界面活性剤(又は界面活性化作用剤)として、乳化剤及び泡安定剤が挙げられ、例えば、当該分野で既知であるシリコーン界面活性剤、例えば、ポリシロキサンなど、並びに様々な脂肪酸アミン塩、例えば、ジエチルアミンオレアート又はジエタノールアミンステアラート、並びにリシンオレイン酸ナトリウム塩、などがある。
【0051】
連鎖延長剤の例として、ヒドロキシル又はアミノ官能基を有する化合物、例えば、グリコール、アミン、ジオール、及び水などが挙げられるが、これらに限定されない。連鎖延長剤の限定ではなくさらなる例として、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、エトキシ
化ヒドロキノン、1,4-シクロヘキサンジオール、N-メチルエタノールアミン、N-メチルイソプロパノールアミン、4-アミノシクロ-ヘキサノール、1,2-ジアミノエタン、又はそれらの任意の混合物が挙げられる。
【0052】
顔料は、製造中のポリウレタン材料を色分けする(color code)、製品の等級を特定する、又は黄変を隠すために使用される場合がある。顔料として、任意の適切な有機又は無機顔料を挙げることができる。例えば、有機顔料又は着色剤として、アゾ/ジアゾ染料、フタロシアニン、ジオキサジン、又はカーボンブラックが挙げられるが、これらに限定されない。無機顔料の例として、二酸化チタン、酸化鉄、又は酸化クロムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
充填剤は、ポリウレタン発泡体又は材料の密度及び耐荷重性を上昇させるために使用される場合がある。適切な充填剤として、硫酸バリウム、カーボンブラック、又は炭酸カルシウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
難燃剤は、燃焼性を低下させるために使用することができる。例えば、そのような難燃剤として、塩素化リン酸エステル、塩素化パラフィン、又はメラミン粉末が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
熱膨張性微小球として、(シクロ)脂肪族炭化水素を含有するものが挙げられる。そのような微小球は、一般に、乾燥した、未膨張又は部分的未膨張の微小球であって、典型的には10~15ミクロンの平均径を持つ小さな球面粒子からなる。球面は、防ガス(gas proof)ポリマーシェル(例えば、アクリロニトリル又はPVDCからなる)で形成されていて、(シクロ)脂肪族炭化水素、例えば液状イソブタンの小滴を封入している。こうした微小球が、熱可塑性シェルの軟化及びシェルに封入された(シクロ)脂肪族炭化水素の気化に十分な高温レベル(例えば150℃~200℃)で加熱に供されると、生じたガスは、シェルを膨張させ、微小球の体積を増加させる。膨張すると、微小球は、元来の直径よりも3.5~4倍大きい直径を有し、その結果、微小球の膨張体積は、未膨張状態の初期体積より約50~60倍大きくなる。そのような微小球の例としては、スウェーデンのAKZO Nobel Industriesが販売するEXPANCEL(登録商標)-DU微小球がある。
【0056】
本開示によるポリウレタン配合物からポリウレタン材料を製造する方法は、当業者に周知であり、例えば、米国特許第5,420,170号、同第5,648,447号、同第6,107,359号、同第6,552,100号、同第6,737,471号、及び同第6,790,872号に見つけることができる。これらの内容は、本明細書により参照として援用される。様々な種類のポリウレタン材料を作ることができ、種類としては、例えば、硬質発泡体、軟質発泡体、半軟質発泡体、微孔質(microcellular)エラストマー、繊維製品用裏張り、スプレー発泡体若しくはエラストマー、キャストエラストマー、ポリウレタン-イソシアヌラート発泡体、反応射出成形ポリマー、構造用反応射出成形ポリマーなどがある。
【0057】
酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒を含有する、密度15~150kg/m
3を有する一般的な軟質ポリウレタン発泡体配合物(例えば、自動車シート)の限定ではなく例として、これは、以下の成分を重量部(pbw)で以下のとおり含むことができる:
【表1】
【0058】
酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒を含有する、密度15~70kg/m
3を有する一般的な硬質ポリウレタン発泡体配合物の限定ではなく例として、これは、以下の成分を重量部(pbw)で以下のとおり含むことができる:
【表2】
【0059】
イソシアナート官能基含有化合物の量に制限はないが、一般的に、当業者に既知の範囲内に来る。上記に与えられる範囲の例は、イソシアナート指数を参照して示される。イソシアナート指数は、イソシアナート当量数を活性水素の合計当量数で割り、100倍した数として定義される。
【0060】
したがって、さらに別の実施形態において、本開示は、ポリウレタン材料の製造法を提供し、本方法は、イソシアナート官能基含有化合物、活性水素含有化合物、ハロゲン化オレフィン、及び任意選択で補助成分を、本開示に従う酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒の存在下、接触させることを含む。
【0061】
1つの特定の実施形態において、ポリウレタン材料は、酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒及びハロゲン化オレフィン化合物の存在下、少なくとも1種のポリオールと少なくとも1種のポリイソシアナートを混合して反応混合物を形成させ、この反応混合物を、ポリオールとポリイソシアナートの反応を引き起こすのに十分な条件に供することにより調製される、硬質、軟質、又はスプレー発泡体である。ポリオール、ポリイソシアナート、酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒、及びハロゲン化オレフィン化合物は、加熱してから、それらを混合して反応混合物を形成させる場合もある。他の実施形態において、ポリオール、ポリイソシアナート、酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒、及びハロゲン化オレフィン化合物は、周辺温度(例えば、約15℃~40℃)で混合し、反応混合物に対して、熱を加えることが可能であるが、実施形態によっては、加熱は必要ではない場合もある。ポリウレタン発泡体は、自由上昇(スラブストック)プロセスで作ことができ、このプロセスでは、発泡体は、垂直方向の制約がほとんど又は全くない中で自由に上昇できる。あるいは、反応混合物を閉鎖された金型中に導入し、金型内で混合物を発泡させ
ることにより、成形発泡体を作ることができる。得られる発泡体に望まれる特性を持つ特定のポリオール及びポリイソシアナートが選択される。ポリウレタン発泡体を作る上で有用な他の補助成分、例えば上記したものなども、特定の種類の発泡体を製造するために含めることができる。
【0062】
別の実施形態に従って、ポリウレタン材料は、一段階法で製造することができ、一段階法では、A側反応体がB側反応体と反応する。A側反応体は、ポリイソシアナートを含むことができ、一方でB側反応体は、ポリオール、酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒、及びハロゲン化オレフィン化合物を含むことができる。実施形態によっては、A側及び/又はB側は、任意選択で、他の補助成分、例えば上記したものなども含有することができる。
【0063】
製造されたポリウレタン材料は、様々な用途に使用することができ、用途としては、例えば、プレコート;カーペット用裏張り材料;建築複合材料;断熱材;スプレー発泡体断熱材;衝突混合スプレーガンの使用を必要とする用途;ウレタン/ウレアハイブリッドエラストマー;荷台、ダッシュボード、ドアパネル、及びハンドルなどの自動車の内装及び外装部品;軟質発泡体(家具発泡体及び自動車部品発泡体など);インテグラルスキン発泡体;硬質スプレー発泡体;硬質現場注入発泡発泡体;コーティング;接着剤;シーラント;フィラメント巻き;並びに他のポリウレタン複合材料、発泡体、エラストマー、樹脂、及び反応射出成形(RIM)用途などがある。
【0064】
ここから、本開示を以下の限定ではない実施例を参照して、さらに説明する。
【0065】
実施例
【実施例1】
【0066】
表1に示すとおりの標準独立気泡配合物を用いて、一連の実験を行った。
【表3】
【0067】
独立気泡硬質発泡体を作るため、カップ中で、この配合物(B側)50gを、Rubinate(登録商標)MポリマーMDI、50gと混合し、自由に上昇させた。各発泡体について、上昇プロファイルの様々な段階を、ストップウォッチで測定して記録した。典
型的には、酸でアミン触媒を「ブロックする」と、その反応性は大幅に低下して遅くなり、特に「初期段階」又は発泡反応でそうなった。例えば、非常に速い初期段階触媒は、JEFFCAT(登録商標)ZF-20触媒(Huntsman Corporation製)である。この触媒は、その中性の未ブロック型において、B側の4%の量で使用されてカップ中でイソシアナートと混合された場合、混合物がクリーミングするまでに2~3秒しか経過せず、発泡体がカップの頂部に到達する(「ToC」)まで6秒だったことがわかった。しかしながら、JEFFCAT(登録商標)ZF-20をギ酸でブロックし、当量で用いた場合、発泡体のクリームタイムは、5~6秒に落ち込みToC時間は20秒に落ち込むことがわかった。すなわち、このアミン触媒を酸ブロックすると、発泡反応の開始が劇的に遅くなった。この傾向は、
図1に示すとおり、他の従来型ポリウレタン触媒の大部分についても平等に一定して見られ、このことは、従来のJEFFCAT(登録商標)アミン触媒それぞれが、酸ブロックされた場合に相当遅くなることを示す。驚いたことに、
図1に示すとおり、ジメチルアミノピリジン(「DMAP」)を酸ブロックすると、クリームタイムを加速するだけでなく、ToC時間に対して事実上何の効果もなかったことがわかった。また、酸ブロックDMAP触媒と酸ブロックした従来型JEFFCAT(登録商標)ポリウレタン触媒を組み合わせると、クリームタイムの落ち込みを反転させることがわかった。これは、非常に珍しくかつ予期せぬ発見である。なぜなら、DMAPのpKaは、典型的なアミン触媒のものとそれほど異ならないからである。
【実施例2】
【0068】
実施例2では、実施例1と同じポリオール樹脂ブレンドを使用し、及びDMAP又はギ酸ブロック(FAB)DMAPを使用して、完全ギ酸ブロックした強力な発泡触媒、JEFFCAT(登録商標)LE-30Aを使用した場合に見られる反応性の低減を反転させた。
図2に示すとおり、ギ酸ブロックJEFFCAT(登録商標)LE-30Aは、かなり遅く、B側に2%で単独使用された場合、クリームタイムが16秒であった。反対に、DMAP触媒は、酸ブロックされいてもいなくても、これを使用することで、配合物に1%で添加された場合、市販されている酸ブロック触媒に対して強力な加速効果を有したことがわかる。これもまた驚くべき結果であり、酸ブロックDMAP触媒は、未ブロック型と同じぐらい高い反応触媒性をもたらしたことを示す。
【実施例3】
【0069】
酸ブロック触媒は、HFO発泡剤が使用される場合に、安定ポリオール樹脂ブレンドの生成において重要な役割を果たす可能性がある。アミン触媒の酸塩は、HFO発泡剤に対してほとんど反応性を持たず、系中での分解を低減させるが、典型的には、初期段階「クリーミング」反応も同様に低減させ、これは望ましくない。
図3は、熱老化ポリオール樹脂で作ったポリウレタン発泡体の反応プロファイルの変化を示し、この熱老化ポリオール樹脂は、ギ酸ブロックDMAPと、JEFFCAT(登録商標)Z-110触媒と、JEFFCAT(登録商標)DMDEE触媒と、1,2-ジメチルイミダゾールと、を含有する本発明の触媒ブレンドを含有する。ポリオール樹脂は、実施例1及び2で使用したものと同じ組成であったが、ただし、これは、50℃で6週間貯蔵されたものであり、発泡体プロファイル測定は、1週間に1回行った。一般に、配合されたB側ポリオール樹脂ブレンドに分解が生じている場合、反応の初期段階は、顕著に落ち込むことになり、50℃で6週間貯蔵している間に、クリームタイムは、元来のクリームタイムと比較した場合に2~4倍に増加する。しかしながら、
図3に示すとおり、及び一見したところ本発明の酸ブロックアルキルアミノピリジン触媒を使用した全ての場合において、反応の最終段階に変動(drift)があったとしても、クリームタイムは、変化しなかったか非常に小さな変化しか示さなかった。
【0070】
上記は、本開示の様々な実施形態に関するものであるものの、本開示の他の及びさらなる実施形態を、本開示の基本範囲から逸脱することなく考案することができ、本開示の範
囲は、以下の特許請求の範囲により定められる。
【国際調査報告】