(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】インプリント装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20230428BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20230428BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20230428BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20230428BHJP
C08G 77/04 20060101ALI20230428BHJP
C08G 77/44 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B05D7/24 302Y
B05D7/00 K
B05D3/12 C
C08G77/04
C08G77/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558252
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 US2021023649
(87)【国際公開番号】W WO2021195063
(87)【国際公開日】2021-09-30
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500358711
【氏名又は名称】イルミナ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・ジェイ・メルケル
(72)【発明者】
【氏名】ルイボ・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ライト
(72)【発明者】
【氏名】ダニー・ユアン・チャン
(72)【発明者】
【氏名】アヴィシェク・アイヤール
(72)【発明者】
【氏名】タンメイ・ゴンジ
(72)【発明者】
【氏名】ニール・ブラフマー
(72)【発明者】
【氏名】アーサー・ピテラ
【テーマコード(参考)】
4D075
4J246
5F146
【Fターム(参考)】
4D075AC64
4D075BB26Z
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(57)【要約】
インプリント装置は、シリコンマスター及びシリコンマスターをコーティングする固着防止層を含む。シリコンマスターは、約425nm未満の平均ピッチで配置された複数のフィーチャを含み、複数のフィーチャのそれぞれは、その最大開口寸法が約300nm未満である開口を有するくぼみを含む。固着防止層は、架橋シランポリマーネットワークを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約425nm未満の平均ピッチで配置された複数のフィーチャを含むシリコンマスターであって、複数のフィーチャのそれぞれが、その最大開口寸法が約300nm未満である開口を有するくぼみを含む、シリコンマスター、及び
シリコンマスターの表面をコーティングする固着防止層であって、架橋シランポリマーネットワークを含む固着防止層
を備える、インプリント装置。
【請求項2】
複数のフィーチャの総数の約0.15%未満が膜欠陥を有する、請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
固着防止層が、第1のシランモノマー:
【化1】
;及び
配合物中に存在するシランの総量に対して約1.4wt%未満の、加水分解性塩化物基を含む第2のシランモノマー
を含む配合物を用いて生成される、請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項4】
固着防止層が、開口をキャッピングすることなく、又はくぼみを完全に満たすことなく、くぼみのそれぞれの壁をコーティングする、請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項5】
複数のフィーチャのそれぞれの最大開口寸法が約170nm~約290nmの範囲である、請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項6】
複数のフィーチャのそれぞれの最大開口寸法が約200nm~約250nmの範囲である、請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項7】
平均ピッチが約340nm~約410nmの範囲である、請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項8】
平均ピッチが約350nm~約400nmの範囲である、請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項9】
約425nm未満の平均ピッチで配置された複数のフィーチャを含むシリコンマスターの表面に配合物を塗布する工程であって、複数のフィーチャのそれぞれが約300nm未満である最大開口寸法を有し、配合物が、
第1のシランモノマー:
【化2】
;及び
配合物中に存在するシランの総量に対して約1.4wt%未満の、加水分解性塩化物基を含む第2のシランモノマーを含む、工程、並びに
塗布された配合物を硬化させ、それにより固着防止層を形成する工程
を含む、方法。
【請求項10】
第2のシランモノマーが
【化3】
である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
配合物が、約0.28wt%~約1.1wt%の第2のシランモノマーを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
配合物が、
i)第1のシランモノマーの2つの結合単位を含むダイマー、
ii)第1のシランモノマーの3つの結合単位を含むトリマー、
iii)第1のシランモノマーの3つより多くの結合単位を含む高分子種、
iv)少なくとも1つの加水分解エトキシ基を有する第1のシランモノマー、又は
v)i)、ii)、iii)及びiv)の任意の組合せ
を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
硬化する工程が、
インキュベーションプロセス、
インキュベーションプロセス後のすすぎプロセス、及び
すすぎプロセス後の加熱プロセスを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
インキュベーションプロセス及び加熱プロセスが、約20℃~約250℃の範囲の温度で、約1分~約30分の範囲の時間にわたって独立して行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第1及び第2のシランモノマーを含む純シラン材料を第1の溶媒で希釈して、前駆体溶液を形成すること、
前駆体溶液を塩基性水溶液に曝露して、水性相及び有機相を生成することであって、有機相が第1の溶媒を含む、生成すること
水性相を除去すること、
有機相から第1の溶媒を除去して、精製シラン材料を得ること、並びに
精製シラン材料を第2の溶媒で希釈すること
によって配合物を生成する工程を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
第2の溶媒が、i)精製シラン材料を溶媒和し、ii)約50℃~約250℃の範囲の沸点を有する、非プロトン性溶媒である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
精製シラン材料が約1wt%~約20wt%の範囲の量で配合物中に存在する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
配合物を塗布する工程がスピンコーティングを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
配合物が無溶媒であるか、又は
配合物が約1wt%~約20wt%の第1のシランモノマーを含むか
のうちの1つである、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
約425nm未満の平均ピッチで配置された複数のフィーチャを含むシリコンマスター上に配合物を堆積させる工程であって、複数のフィーチャのそれぞれが約300nm未満の最大開口寸法を有し、配合物が、第1のシランモノマー
【化4】
;及び
配合物中に存在するシランの総量に対して1.4wt%未満の、加水分解性塩化物基を含む第2のシランモノマーを含む、工程、並びに
配合物を硬化させ、それによりシリコンマスター上に固着防止層を形成する工程、
インプリント装置の固着防止層上にシリコンベースの加工スタンプ材料を堆積させる工程、
シリコンベースの加工スタンプ材料を硬化させ、複数のフィーチャのネガティブレプリカを含む加工スタンプを形成する工程、並びに
加工スタンプをインプリント装置から剥離する工程
によってインプリント装置を形成する工程を含む、方法。
【請求項21】
配合物を硬化させる工程が、
インキュベーションプロセス、
インキュベーションプロセス後のすすぎプロセス、及び
すすぎプロセス後の加熱プロセスを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
インキュベーション及び加熱プロセスが、約20℃~約250℃の範囲の温度で、約1分~約30分の範囲の時間にわたって独立して行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
シリコンベースの加工スタンプ材料がシリコンアクリレートモノマーを含む、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる、2020年3月27日出願の米国仮出願第63/000,964号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
ナノインプリント技術は、ナノ構造の経済的かつ有効な製造を可能にすることができる。ナノインプリントリソグラフィーは、ナノ構造を有するスタンプによるレジスト材料の直接的な機械的変形を用いる。レジスト材料は、スタンプが所定位置にある間に硬化されて、ナノ構造の形状をレジスト材料に固定する。
【0003】
ナノインプリントリソグラフィーは、様々な用途で使用され得るパターン化基板を製造するために使用されてきた。一部のパターン化基板は、流体チャネル及び離散的なウェル又はくぼみを含む。これらのパターン化基板は、フローセルに組み込まれる場合もある。一部のフローセルでは、活性表面化学物質が離散的なくぼみに導入され、一方で離散的なくぼみを囲む間隙領域は不活性のままである。これらのフローセルは、広範囲の分子(例えば、デオキシリボ核酸(DNA))、分子のファミリー、遺伝子発現レベル、又は一塩基多型の検出及び評価に特に有用となり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様では、インプリント装置は、約425nm未満の平均ピッチで配置された複数のフィーチャを含むシリコンマスターであって、複数のフィーチャのそれぞれが、その最大開口寸法が約300nm未満である開口を有するくぼみを含む、シリコンマスター、及びシリコンマスターの表面をコーティングする固着防止層であって、架橋シランポリマーネットワークを含む、固着防止層を備える。
【0005】
第1の態様の例では、複数のフィーチャの総数の約0.15%未満が膜欠陥を有する。
【0006】
第1の態様の例では、固着防止層は、第1のシランモノマー:
【0007】
【0008】
及び配合物中に存在するシランの総量に対して約1.4wt%未満の、加水分解性塩化物基を含む第2のシランモノマーを含む配合物を用いて生成される。
【0009】
第1の態様の例では、固着防止層は、開口をキャッピングすることなく、又はくぼみを完全に満たすことなく、くぼみのそれぞれの壁をコーティングする。
【0010】
第1の態様の例では、複数のフィーチャのそれぞれの最大開口寸法は、約170nm~約290nmの範囲である。
【0011】
第1の態様の例では、複数のフィーチャのそれぞれの最大開口寸法は、約200nm~約250nmの範囲である。
【0012】
第1の態様の例では、平均ピッチは約340nm~約410nmの範囲である。
【0013】
第1の態様の例では、平均ピッチは約350nm~約400nmの範囲である。
【0014】
本明細書に開示されるインプリント装置の任意の特徴は、任意の望ましい様式及び/又は構成で一緒に組み合わせて、例えば、インプリント装置を使用して作製される加工スタンプに小さな高解像度フィーチャを生成すること、及び/又はインプリント装置から作製される加工スタンプの清浄な剥離を容易にすることを含む、本開示に記載の利点を達成し得ることを理解すべきである。
【0015】
第2の態様では、方法は、約425nm未満の平均ピッチで配置された複数のフィーチャを含むシリコンマスターに配合物を塗布する工程であって、複数のフィーチャのそれぞれが約300nm未満である最大開口寸法を有し、配合物が、第1のシランモノマー
【0016】
【0017】
及び配合物中に存在するシランの総量に対して約1.4wt%未満の、加水分解性塩化物基を含む第2のシランモノマーを含む、工程、並びに塗布された配合物を硬化させ、それにより固着防止層を形成する工程を含む。
【0018】
第2の態様の例では、第2のシランモノマーは
【0019】
【0020】
である。これらの例の一部では、配合物は、約0.28wt%~約1.1wt%の第2のシランモノマーを含む。
【0021】
第2の態様の例では、配合物は、i)第1のシランモノマーの2つの結合単位を含むダイマー、ii)第1のシランモノマーの3つの結合単位を含むトリマー、iii)第1のシランモノマーの3つより多くの結合単位を含む高分子種、iv)少なくとも1つの加水分解エトキシ基を有する第1のシランモノマー、又はv)i、ii、iii及びivの任意の組合せを更に含む。
【0022】
第2の態様の例では、硬化する工程は、インキュベーションプロセス、インキュベーションプロセス後のすすぎプロセス、及びすすぎプロセス後の加熱プロセスを含む。これらの例の一部では、インキュベーションプロセス及び加熱プロセスは、約20℃~約250℃の範囲の温度で、約1分~約30分の範囲の時間にわたって独立して行われる。
【0023】
第2の態様の例は、第1及び第2のシランモノマーを含む純シラン材料を第1の溶媒で希釈して前駆体溶液を形成すること、前駆体溶液を塩基性水溶液に曝露して水性相及び有機相を生成することであって、有機相が第1の溶媒を含む、生成すること、水性相を除去すること、有機相から第1の溶媒を除去して精製シラン材料を得ること、並びに精製シラン材料を第2の溶媒で希釈することによって、配合物を生成する工程を更に含む。これらの例の一部では、第2の溶媒は、i)精製シラン材料を溶媒和し、ii)約50℃~約250℃の範囲の沸点を有する非プロトン性溶媒である。これらの例の一部では、精製シラン材料は、約1wt%~約20wt%の範囲の量で配合物中に存在する。
【0024】
第2の態様の例では、配合物を塗布する工程が、スピンコーティングを含む。
【0025】
第2の態様の例では、配合物が、無溶媒であるか、又は約1wt%~約20wt%の第1のシランモノマーを含むかのうちの1つである。
【0026】
本方法の任意の特徴は、任意の望ましい様式で一緒に組み合わせ得ることを理解すべきである。更に、この方法及び/又はインプリント装置の特徴の任意の組合せは、本明細書に開示される例のいずれかと一緒に使用する及び/又は組み合わせて、例えばインプリント装置を使用して作製されるインプリントスタンプ及び/若しくは加工スタンプに小さな高解像度フィーチャを生成すること、並びに/又はインプリント装置から作製される加工スタンプの清浄な剥離を容易にすることを含む、本開示に記載の利点を達成し得ることを理解すべきである。
【0027】
第3の態様では、別の方法は、約425nm未満の平均ピッチで配置された複数のフィーチャを含むシリコンマスター上に配合物を堆積させる工程であって、複数のフィーチャのそれぞれが約300nm未満の最大開口寸法を有し、配合物が、第1のシランモノマー:
【0028】
【0029】
及び配合物中に存在するシランの総量に対して1.4wt%未満の、加水分解性塩化物基を含む第2のシランモノマーを含む、工程、並びに配合物を硬化させ、それによりシリコンマスター上に固着防止層を形成する工程、インプリント装置の固着防止層上にシリコンベースの加工スタンプ材料を堆積させる工程、シリコンベースの加工スタンプ材料を硬化させ、複数のフィーチャのネガティブレプリカを含む加工スタンプを形成する工程、並びに加工スタンプをインプリント装置から剥離する工程によって、インプリント装置を形成する工程を含む。
【0030】
第3の態様の例では、配合物を硬化させる工程は、インキュベーションプロセス、インキュベーションプロセス後のすすぎプロセス、及びすすぎプロセス後の加熱プロセスを含む。これらの例の一部では、インキュベーション及び加熱プロセスは、約20℃~約250℃の範囲の温度で、約1分~約30分の範囲の時間にわたって独立して行われる。
【0031】
第3の態様の例では、シリコンベースの加工スタンプ材料は、シリコンアクリレートモノマーを含む。
【0032】
本方法の任意の特徴は、任意の望ましい様式で一緒に組み合わせ得ることを理解すべきである。更に、本方法及び/又は他の方法及び/又はインプリント装置の特徴の任意の組合せは、本明細書に開示される例のいずれかと一緒に使用する及び/又は組み合わせて、例えばインプリント装置を使用して作製されるインプリントスタンプ及び/若しくは加工スタンプに小さな高解像度フィーチャを生成すること、並びに/又はインプリント装置から作製される加工スタンプの清浄な剥離を容易にすることを含む、本開示に記載の利点を達成し得ることを理解すべきである。
【0033】
また更に、方法のいずれか及び/若しくはインプリント装置のいずれかの任意の特徴は、任意の望ましい様式で一緒に組み合わせ、並びに/又は本明細書に開示される例のいずれかと組み合わせて、本明細書に記載される利点を少なくとも達成し得ることを理解すべきである。
【0034】
本開示の例の特徴は、以下の詳細な説明及び図面を参照することによって明らかになり、同様の参照数字は、おそらく同一ではないが同様の構成要素に対応する。簡潔性のために、先述の機能を有する参照数字又は特徴は、それらが現われる他の図面に関連して説明されてもされなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本明細書に開示されるインプリント装置の一例の断面図である。
【
図2A】単一のシリコンマスターを含むインプリント装置の一例の上面図である。
【
図2B】複数のシリコンマスターを含むインプリント装置の別の例の上面図である。
【
図4A】本明細書に開示される方法の別の例を示す。
【
図4B】本明細書に開示される方法の別の例を示す。
【
図4C】本明細書に開示される方法の別の例を示す。
【
図4D】本明細書に開示される方法の別の例を示す。
【
図5A】大きな膜欠陥で覆われた多くのフィーチャを含むエリアの上面図の、元々着色されていた原子間力顕微鏡(AFM)画像の白黒複写である。
【
図5B】
図5Aのフィーチャのうちの1つの断面図、及びフィーチャの開口における膜欠陥の一部の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【
図6A】異なるレベルの加水分解性塩化物を有する配合物を使用して形成された固着防止層を有するインプリント装置から創出された各加工スタンプを使用して形成された、インプリントの明視野顕微鏡画像である。
【
図6B】異なるレベルの加水分解性塩化物を有する配合物を使用して形成された固着防止層を有するインプリント装置から創出された各加工スタンプを使用して形成された、インプリントの明視野顕微鏡画像である。
【
図6C】異なるレベルの加水分解性塩化物を有する配合物を使用して形成された固着防止層を有するインプリント装置から創出された各加工スタンプを使用して形成された、インプリントの明視野顕微鏡画像である。
【
図6D】異なるレベルの加水分解性塩化物を有する配合物を使用して形成された固着防止層を有するインプリント装置から創出された各加工スタンプを使用して形成された、インプリントの明視野顕微鏡画像である。
【
図7】3つのグラフを含み、上は、固着防止層の膜欠陥のパーセンテージ対固着防止層の生成に使用された配合物中の加水分解性塩化物を示し、中央は、固着防止層の膜欠陥の平均数対固着防止層の生成に使用された配合物中の加水分解性塩化物を示し、下は、固着防止層の膜欠陥の平均画素サイズ対固着防止層の生成に使用された配合物中の加水分解性塩化物を示す。
【
図8A】未熟成配合物を用いて生成された固着防止層を有するインプリント装置から創出された加工スタンプを使用して形成された、インプリントの画像である。
【
図8B】未熟成配合物を用いて生成された固着防止層を有するインプリント装置から創出された加工スタンプを使用して形成された、インプリントの画像である。
【
図8C】未熟成配合物を用いて生成された固着防止層を有するインプリント装置から創出された加工スタンプを使用して形成された、インプリントの画像である。
【
図9A】熟成配合物を用いて生成された固着防止層を有するインプリント装置から創出された加工スタンプを使用して形成された、インプリントの画像である。
【
図9B】熟成配合物を用いて生成された固着防止層を有するインプリント装置から創出された加工スタンプを使用して形成された、インプリントの画像である。
【
図9C】熟成配合物を用いて生成された固着防止層を有するインプリント装置から創出された加工スタンプを使用して形成された、インプリントの画像である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
パターン化技術は、フローセル表面に個々のくぼみを創出するために使用されてきた。くぼみは、例えば捕捉プライマーで機能化してもよい。機能化されたくぼみのそれぞれの中で、アンプリコンのモノクローナル集団(局所的かつ独立したクラスター)をそれぞれの遺伝子オリゴヌクレオチド断片から生成することができる。くぼみの寸法が小さく、ピッチ(例えば、1つのくぼみの中心から隣接する若しくは最も近接するくぼみの中心までの間隔、又は1つのくぼみの端から隣接する若しくは最も近接するくぼみの端までの間隔)が小さい場合、より高いクラスター密度を得ることができる。クラスター密度が高いほど、所与の単位面積からより多くの塩基を読み取ることができ、それによりパターン化されたフローセルからの遺伝子収量が増加することを意味する。
【0037】
ナノインプリントリソグラフィー(NIL)は、例えば、光子又は電子を使用するパターン化技術よりも高精度及び低コストを可能にする高スループットパターン化技術の一例である。NILは、加工スタンプを利用して、インプリント可能な材料(例えば、硬化性樹脂)にフィーチャ(例えば、フローセルのくぼみ)を創出する。加工スタンプのパターンは、形成すべき所望のフィーチャのネガティブレプリカである。加工スタンプは、所望のフィーチャのパターンを有するマスターテンプレートから創出してもよい。一部のマスターテンプレートは、固着防止層を有することにより、パターンを加工スタンプ材料に清浄に転写し、加工スタンプをマスターテンプレートから清浄に剥離するのを補助する。
【0038】
一部の固着防止層は、マスターテンプレートの表面に純シラン材料を含む配合物を堆積させる及び硬化させることによって生成される。本発明者らは、一部の純シラン材料が、フィーチャ開口寸法が約300nm未満であり、ピッチが約425nm未満である場合、フィーチャ及び/又はマスターテンプレートのフィーチャ開口に望ましくない欠陥を生成し得ることを発見した。欠陥は、加熱中に形成される場合があり、すすぎによって容易に除去できない場合があるフィルム又は膜である。この欠陥は、本明細書で「膜欠陥」と称する。膜欠陥は、フィーチャを詰まらせる(満たす)か、又はフィーチャ開口をキャッピングする可能性がある。固着防止層は、フィーチャの壁をコーティングする、例えば一つの場合におけるようにコンフォーマルにコーティングすることができ、したがってフィーチャと同じ形状をとり、フィーチャ開口の一部の空間を占めることができる。しかし、キャッピングは、固着防止層が残りのフィーチャ開口上に広がり、少なくとも部分的に(例えば、部分的に又は完全に)フィーチャ開口を塞ぐように、コンフォーマルコーティングを超えて広がる場合を指す。詰まった又はキャッピングされたフィーチャは、加工スタンプ製作中にこれらのフィーチャの複製を部分的に又は完全に妨害する。
【0039】
任意の特定の理論に束縛されることなく、本発明者らは、これらの膜欠陥の形成は、純シラン材料中の特定のシランモノマーの存在に少なくとも部分的に起因すると考えている。この特定のシランモノマーは、加水分解性塩化物基(例えば、Si-Cl)を含む。加水分解性塩化物基は、純シラン材料を含む配合物の溶液及び堆積特性に影響を与える可能性がある。Si-Cl基の加水分解速度は、純シラン材料中の所望のシランモノマーに存在するSi-OCH2CH3基のものより速い。したがって、Si-Cl基は、配合物調製時に導入される水に対する配合物の感度を増大する可能性がある。加水分解は、シランのダイマー、トリマー、その他の高分子量種、及び高度に架橋した無限ポリマーネットワーク(後者は硬化した固着防止層を構成する)等の高分子量種への重合に向けた最初の工程である。Si-Cl基は、シラノール及び酸(例えば、塩酸(HCl))副生成物を急速に形成する。加水分解反応及びそれに続く近接する反応性基との反応は、酸によって触媒し得るため、溶液の安定性を更に低減させ、高分子量種の形成の速度を増加させる。乾燥により、緩く結合したダイマー、トリマー及び/又は高分子量種が濃縮する場合があり、これらは急速に重合及び架橋を継続する。液滴の端が後退することにより、マスターテンプレートのフィーチャ(例えば、くぼみ)内又はその上にフィルム又は膜が残り、それにより膜欠陥が生じる可能性がある。
【0040】
本明細書に開示される例では、固着防止層を生成するために堆積及び硬化される配合物は、第1のシランモノマー:
【0041】
【0042】
(重合速度の遅いSi-OCH2CH3基を含む)、及び配合物中に存在するシランの総量に対して約1.4wt%以下の、加水分解性塩化物基を含む第2のシランモノマーを含む。得られた固着防止層は、i)反応した第1のシランモノマー及びその高分子量付加物、並びにii)最小量の反応した第2のシランモノマーから形成される架橋シランポリマーネットワークを含む。依然として可溶性の未反応のモノマー、ダイマー、トリマー及び高分子量種は、すべて洗い流され、したがって架橋シランポリマーネットワークの一部ではない。固着防止層を生成するために使用される配合物は、存在するシランの総量に対して約1.4wt%以下の第2のシランモノマーを有するため、膜欠陥は最小限か又は全く形成されない。一部の場合では、固着防止層は膜欠陥を有さず、したがって無欠陥とみなすことができる。他の場合では、固着防止層は最小限の膜欠陥を含んでもよく、例えばくぼみの0.15%未満が膜欠陥を有する。一部の場合では、0.14%未満、又は0.13%未満、又は0.12%未満、又は0.11%未満、又は0.10%未満、又は0.09%未満、又は0.08%未満、又は0.07%未満等である。これらの例のいずれにおいても、下限値はゼロよりも大きい。これらの場合では、固着防止層は実質的に無欠陥とみなすことができる。「少なくとも実質的に無欠陥」という語句は、固着防止層が無欠陥又は実質的に無欠陥であることを意味する。
【0043】
本明細書に開示されるインプリント装置の少なくとも実質的に無欠陥の固着防止層は、加工スタンプ材料へのフィーチャのパターンの清浄な転写に寄与する。加工スタンプは、ひいては小さな寸法を有し、狭い(小さい)ピッチで配置されるフィーチャの制御された形成をもたらす。言及した通り、これは、パターン化されたフローセルからの遺伝子収量が増加し得るので、フローセルのくぼみにとって特に望ましい可能性がある。
【0044】
定義
本明細書で使用される用語は、別段指定されない限り、関連技術におけるその通常の意味をとることを理解すべきである。本明細書で使用される一部の用語及びそれらの意味を以下に示す。
【0045】
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が明らかに別様に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0046】
含む(comprising)、含む(including)、含有するという用語、及びこれらの用語の様々な形態は、互いに同義であり、同様に広範であることを意図する。
【0047】
本明細書では、フローセル及び/又はフローセルの様々な構成要素を説明するために、上、下、下部、上部、上に等の用語が使用される。これらの方向性の用語は、特定の配向を意味するものではなく、構成要素間の相対的な配向を指定するために使用されることを理解すべきである。方向性の用語の使用は、本明細書に開示される例を任意の特定の配向に限定すると解釈するべきではない。
【0048】
本明細書で使用される「固着防止層」という用語は、架橋シランポリマーネットワークを含むフィルムを指す。重合して架橋し、架橋シランポリマーネットワークを形成するモノマー及びその高分子量付加物(ダイマー、トリマー等)は、本明細書で第1のシランモノマーと称する(以下の構造を参照されたい)。固着防止層を生成する際に使用される配合物は、本明細書で第2のシランモノマーと称するものも少量含んでもよい(以下の構造を参照されたい)。第2のシランモノマーは、重合して架橋し、架橋シランポリマーネットワークの小さな部分を形成してもよい。配合物又は洗浄溶媒に可溶性のままである未反応のモノマー及び緩く結合した高分子量種はすべて、処理中に除去されるため、固着防止層には存在しない。また、固着防止層は、下地の基板に結合することが可能である。
【0049】
「膜欠陥」という用語は、インプリント装置のフィーチャを満たし、したがって詰まらせるか、又はフィーチャ開口の一部又は全部の上に配置され、したがってキャッピングする固着防止層の薄いフィルム又は膜を指す。
【0050】
本明細書で使用される「堆積する」という用語は、手動又は自動であってもよく、一部の場合では表面特性の改変をもたらす、任意の好適な塗布技術を指す。一般に、堆積は、蒸着技術、コーティング技術、グラフト化技術等を使用して実施することができる。一部の具体例として、化学蒸着(CVD)、スプレーコーティング(例えば、超音波スプレーコーティング)、スピンコーティング、ダンク又はディップコーティング、ドクターブレードコーティング、パドルディスペンシング、フロースルーコーティング、エアロゾル印刷、スクリーン印刷、マイクロコンタクト印刷、インクジェット印刷等が挙げられる。
【0051】
本明細書で使用される場合、「くぼみ」という用語は、基板、樹脂等の間隙領域によって少なくとも部分的に囲まれた表面開口を有する、基板、パターン化樹脂等の離散的な凹形状フィーチャを指す。くぼみは、例として丸形、楕円形、正方形、多角形、星形(任意の数の頂点を有する)等を含む、表面におけるその開口の様々な形状のいずれかを有することができる。表面と直交してとられたくぼみの断面は、曲線、正方形、多角形、双曲線、円錐形、角形等であってもよい。
【0052】
用語「各」は、項目の集合に言及して使用される場合、集合内の個々の項目を特定することを意図するが、必ずしも集合内のすべての項目を指すわけではない。明示的な開示又は文脈が明らかに別様に指示する場合、例外が生じてもよい。
【0053】
本明細書で使用される「フィーチャ」は、相対的な位置に応じて他の点又はエリアと区別することができるパターン内の点又はエリアを指す。例示的なフィーチャは、基板内のくぼみ、基板からの突起、基板上の隆起等を含む。一例では、インプリント装置の複数のフィーチャのそれぞれがくぼみである。
【0054】
「第1のシランモノマー」は、
【0055】
【0056】
を指す。また、固着防止層の生成に使用される配合物は、エトキシ基の1つ又は複数が加水分解された、第1のシランモノマーの加水分解形態を含んでもよい(CH3CH20-Si→HO-Si)。この中間モノマーは、第1のシランモノマーの高分子量の架橋ポリマーネットワークへの重合に利用される。
【0057】
本明細書では、固着防止層及びその前駆体配合物を参照して、「から形成される」及び「を用いて生成される」という語句が使用される場合がある。一例として、固着防止層は、配合物から形成されてもよい。別の例として、固着防止層は、配合物を用いて生成されてもよい。いずれの場合でも、「から形成される」又は「を用いて生成される」は、固着防止層を創出するための処理中に配合物が使用されることを意味するものである。これらの用語は、配合物成分のすべてが固着防止層の成分になることを意味するものではない。例えば、配合物中に存在する場合がある配合物又は洗浄液に可溶性のままである溶媒、未反応モノマー、及び高分子量種は、最終的な固着防止層の一部ではない。
【0058】
本明細書で使用される場合、「フローセル」という用語は、反応を行うことができるチャンバ(例えば、流路)、チャンバに試薬を送達するための入口、及びチャンバから試薬を除去するための出口を有する容器を意味するものである。一部の例では、チャンバは、チャンバ内で生じる反応の検出を可能にする。例えば、チャンバ/流路は、くぼみでのアレイ、光学的に標識された分子等の光学的検出を可能にする1つ又は複数の透明な表面を含んでもよい。
【0059】
「高分子量種又は付加物」は、3つより多くの結合したモノマー単位を含むポリマー単位である。「ダイマー」は、特に2つの結合したモノマー単位を有するポリマー種を指す。「トリマー」は、特に3つの結合したモノマー単位を有するポリマー種を指す。一部のダイマー、トリマー及び高分子量種は、重合して架橋し、架橋シランポリマーネットワークを形成する。他のダイマー、トリマー及び高分子量種は、配合物中又は洗浄液中で可溶性のままであってもよく、したがって架橋シランポリマーネットワークに組み込まれない。
【0060】
「インプリント欠陥」という用語は、インプリント装置に存在する膜欠陥により、インプリント装置からフィーチャがそこに転写されたインプリント樹脂又は材料の部分を指す。
【0061】
本明細書で使用される場合、用語「間隙領域」は、フィーチャを分離する表面(例えば、基板、パターン化樹脂等の)のエリアを指す。例えば、間隙領域は、アレイの1つのフィーチャを、アレイ又はパターンの別のフィーチャから分離することができる。互いに分離された2つのフィーチャは、離散的、すなわち互いに物理的な接触を欠いてもよい。別の例では、間隙領域は、フィーチャの第1の部分をフィーチャの第2の部分から分離することができる。多くの例では、間隙領域は連続的であるのに対し、フィーチャは例えば、そうでなければ連続的な表面に画定される複数のくぼみの場合のように離散的である。間隙領域によってもたらされる分離は、部分的又は完全な分離であってもよい。間隙領域は、表面に画定されたフィーチャの表面材料とは異なる表面材料を有してもよい。例えば、フローセルアレイのフィーチャは、間隙領域に存在する量又は濃度を超えるポリマーコーティング及びプライマーの量又は濃度を有することができる。一部の例では、ポリマーコーティング及びプライマーは、間隙領域に存在しなくてもよい。
【0062】
本明細書で使用される場合、「純シラン材料」という用語は、いかなる溶媒、触媒、開始剤又は他の添加成分を含まないシランモノマー、及び一部の場合では、その高分子量種又は付加物を指す。一部の例では、純シラン材料は、第1のシランモノマー、及び純シラン材料に存在するシランの総量に対して約1.4wt%未満の第2のシランモノマーからなってもよい。他の例では、純シラン材料は、第1のシランモノマー、第1のシランモノマーの加水分解形態、及び純シラン材料中に存在するシランの総量に対して約1.4wt%未満の第2のシランモノマーからなってもよい。第1のシランモノマーに加えて、純シラン材料の一部の例は、第1のシランモノマーのダイマー、トリマー及び/又は他の高分子量種若しくは付加物も含むことができる。一例では、純シラン材料は、約65wt%~約100wt%の第1のシランモノマー、並びに約0wt%~約35wt%の第1のシランモノマーのダイマー、トリマー及び/又は他の高分子量種若しくは付加物を含む。純シラン材料中に存在するシランの総量に対する第2のシランモノマーの量は、少なくてもよい。例えば、この量は、約2wt%未満、例えば約1.5wt%未満、約1.4wt%、約1.3wt%、約1.2wt%、約1.1wt%、約1wt%、約0.9wt%、約0.8wt%、約0.7wt%、約0.6wt%、約0.5wt%、約0.4wt%、約0.3wt%、約0.2wt%、約0.1wt%、約0.05wt%、約0.02wt%、約0.01wt%、約0.005wt%、約0.002wt%、約0.001wt%以下であってもよい。一部の例では、純シラン材料は、0wt%~約1.25wt%の第2のシランモノマー、又は約0.001wt%~約1wt%の第2のシランモノマーを含む。
【0063】
本明細書で使用される場合、「ピッチ」という用語は、フィーチャの間隔を指す。一例では、ピッチは、1つのフィーチャの中心から隣接する又は最も近接するフィーチャの中心までの間隔を指す。このピッチは、中心間間隔と称してもよい。別の例では、ピッチは、1つのフィーチャの右端から隣接する又は最も近接するフィーチャの左端までの間隔を指す。このピッチは、端間間隔と称してもよい。一例では、フィーチャがくぼみ(例えば、ナノウェル等のウェル)である場合、「ピッチ」は、2つの隣接するくぼみの間の中心間間隔を指す。
【0064】
本明細書で使用される場合、「プライマー」は、一本鎖核酸配列(例えば、一本鎖DNA)として定義される。増幅プライマーと称し得る一部のプライマーは、鋳型増幅及びクラスター生成のための出発点として機能する。配列決定プライマーと称し得る他のプライマーは、DNA合成の出発点として機能する。プライマーの5'末端は、ポリマーコーティングの官能基とのカップリング反応を可能にするように修飾してもよい。プライマーの長さは、任意の数の塩基長であってもよく、様々な非天然ヌクレオチドを含んでもよい。一例では、配列決定プライマーは、10~60塩基、又は20~40塩基の範囲の短鎖である。
【0065】
「第2のシランモノマー」は、少なくとも1つの加水分解性塩化物基を有するシクロシロキサンを指す。一例では、第2のシランモノマーは
【0066】
【0067】
である。
【0068】
インプリント装置
インプリント装置10の一例が
図1に示される。インプリント装置10は、425nm未満の平均ピッチP
1又はP
2で配置された複数のフィーチャ14を含むシリコンマスター12であって、複数のフィーチャ14のそれぞれが、その最大開口寸法Dが約300nm未満である開口を有するくぼみを含むシリコンマスター12、及びシリコンマスター12をコーティングする固着防止層16であって、架橋シランポリマーネットワークを含む固着防止層16を含む。一部の例では、複数のフィーチャ14の総数の0.15%未満が膜欠陥を有する。
【0069】
シリコンマスター12は、フィーチャ14のパターンがそこに画定された基板13である。フィーチャ14は、エッチングによって画定してもよい。このパターンは、フローセル等の最終製品におけるフィーチャ14の所望のパターンを代表するものである。シリコンマスター12は、1つの加工スタンプ又はそれぞれがパターンのネガティブレプリカを有する複数の加工スタンプを創出するためのマスターモールドとして機能し、したがって最終製品を創出するために使用することができる。
【0070】
一部の場合では、シリコンマスター12の基板13は、フィーチャ14によって完全にパターン化されている。これらの場合では、1つの基板13は、そこに画定されたパターンのフィーチャ14のすべてを有してもよい。このインプリント装置10の一例の上面図が
図2Aに示される。このインプリント装置10は、単一の加工スタンプを創出するために使用してもよい。他の場合では、シリコンマスター12の基板13は、複数の別個の離散的なパターン化エリア15でパターン化される。これらの場合では、各別個の離散的なパターン化エリア15は、一組のフィーチャ14を含む。これらの場合では、基板13は、そこに画定されたフィーチャ14のそれぞれのセットを有し、フィーチャ14の各それぞれのセットは、基板13の特定の位置に画定されている。このインプリント装置10'の一例の上面図が
図2Bに示される。示されるように、各パターン化エリア15のフィーチャ14は、ウェハを横切るそれぞれの位置に画定される。このインプリント装置10'は、複数の加工スタンプを創出するために使用してもよい。
【0071】
シリコンマスター12の基板13は、シリコン、二酸化ケイ素(Si02)、又はそれらの任意の組合せの層を含んでもよい。
【0072】
言及したように、シリコンマスター12は、基板13に画定されたフィーチャ14を含む。本明細書に開示される例では、フィーチャ14はくぼみである。
【0073】
本明細書に開示される例では、フィーチャ14は、約425nm未満の平均ピッチP
1又はP
2で配置される。一部の場合では、フィーチャ14は、約430nm未満、約425nm、約420nm、約415nm以下の平均ピッチP
1又はP
2で配置される。
図1におけるピッチP
1は、中心間間隔を示す。
図1のピッチP
2は、端間間隔を示す。本明細書に開示される配合物は、本明細書に記載される詰まり又はキャッピング膜欠陥を生成することなく、これらの狭いピッチでフィーチャ14を有するシリコンマスター12の表面に固着防止層16を生成する硬化プロセスに晒される。したがって、配合物は、本明細書に開示される狭いピッチ範囲に特に好適である。一部の例では、平均ピッチP
1又はP
2は、約340nm~約410nmの範囲である。一部の他の例では、平均ピッチP
1又はP
2は、約350nm~約400nmの範囲である。
【0074】
シリコンマスター12の所与のパターン(例えば、パターン化エリア15)のフィーチャ14は、最終製品のための任意の望ましいレイアウトを有してもよい。レイアウトは、規則的、繰り返し、又は非規則的パターンであってもよい。一例では、フィーチャ14は、密な充填及び密度の向上のために、六角形のグリッドに並べられる。他のレイアウトは、例えば直線(すなわち、長方形)レイアウト(例えば、線又は溝)、三角形レイアウト等を含んでもよい。一部の例では、レイアウト又はパターンは、行及び列になっているフィーチャ14のx-y形式であってもよい。一部の他の例では、レイアウト又はパターンは、フィーチャ14及び/又は間隙領域18の繰り返し配置であってもよい。更に他の例では、レイアウト又はパターンは、フィーチャ14及び/又は間隙領域18のランダム配置であってもよい。パターンは、ストライプ、渦、線、三角形、長方形、円形、円弧、チェック、対角線、矢印、正方形等を含むことができる。
【0075】
本明細書に開示される例では、各フィーチャ14は、開口20を有するくぼみ14'である。くぼみ14'は、例として丸形、楕円形、正方形、多角形等を含む、シリコンマスター12の表面のその開口20における様々な形状のうちのいずれかを有することができる。開口20の最大寸法は、開口20の形状に依存してもよい。例えば、開口20が円形又は長円形である場合、最大寸法Dは、それぞれ直径又は長軸である。別の例として、開口20が正方形又は長方形である場合、最大寸法Dは長さである。最大開口寸法Dは、約300nm未満である。一部の場合では、最大開口寸法Dは、約310nm未満、約305nm、約300nm、約295nm以下である。一部の例では、最大開口寸法Dは、約170nm~約290nmの範囲である。一部の他の例では、最大開口寸法Dは、約180nm~約270nm、又は約200nm~約250nmの範囲である。
【0076】
くぼみ14'内の三次元形状は、円柱、立方体、直方体、円錐等に類似してもよい。
【0077】
各フィーチャ14(例えば、くぼみ14')はまた、その体積及び/又は深さによって規定してもよい。
【0078】
最小又は最大フィーチャ体積は、インプリント装置10又は10'を使用して形成される加工スタンプを使用して形成される最終製品に基づいて選択してもよい。例えば、最終製品がフローセルである場合、シリコンマスター12のフィーチャ14の体積は、最終的なフローセルのくぼみがフローセルの下流用途に予測されるスループット(例えば多重度)、解像度、ヌクレオチド、又は分析物の反応性に対応できるように選択してもよい。例えば、体積は、少なくとも約1×10-3μm3、約1×102μm3、約0.1μm3、約1μm3、約10μm3、約100μm3、又はそれ以上、又はそれ以下であってもよい。
【0079】
同様に、フィーチャ深さは、インプリント装置10又は10'を使用して形成される加工スタンプを使用して形成される最終製品に基づいて選択してもよい。例えば、最終製品がフローセルである場合、シリコンマスター12のフィーチャ14の深さは、最終的なフローセルのくぼみがポリマーヒドロゲル及びプライマーを収容できるように選択してもよい。一例では、深さは、約0.1μm、約0.5μm、約1μm、約10μm、約100μm、又はそれ以上、又はそれ以下であってもよい。一部の例では、深さは約0.2μm又は0.4μmである。各フィーチャ14の深さは、上記で指定された値よりも大きい、小さい又はその間であってもよい。
【0080】
固着防止層16は、シリコンマスター12をコーティングする。
図1に示されるように、固着防止層16は、フィーチャ14(例えば、くぼみ14')の壁に沿って及び間質領域18上を含む、シリコンマスター12の露出表面をコンフォーマルにコーティングする。一部の例では、固着防止層16は、くぼみ14'のそれぞれの壁を、上に延びることなく、したがって開口20をキャッピングすることなく、又はくぼみ14'を満たすことなくコンフォーマルにコーティングする(したがってくぼみ14'の形状をとる)。これらの例では、固着防止層16は、フィーチャ14/くぼみ14'を詰まらせず、開口20の少なくとも一部を覆うキャッピング膜を形成しない。本明細書に開示されるすべての例では、複数のフィーチャ14(例えば、くぼみ14')の総数の0.15%未満が膜欠陥を有する。言い換えると、複数のフィーチャ14の総数の0.15%未満が、膜欠陥によって詰まるか又はキャッピングされる。一部の場合では、複数のフィーチャ14の総数の0.2%未満が、膜欠陥によって詰まるか又はキャッピングされる。一部の場合では、複数のフィーチャ14の総数の0.15%未満が、膜欠陥によって詰まるか又はキャッピングされる。一部の場合では、複数のフィーチャ14の総数の0.13%未満が、膜欠陥によって詰まるか又はキャッピングされる。一部の場合では、複数のフィーチャ14の総数の0.12%未満が、膜欠陥によって詰まるか又はキャッピングされる。一部の場合では、複数のフィーチャ14の総数の0.11%未満が、膜欠陥によって詰まるか又はキャッピングされる。一部の場合では、複数のフィーチャ14の総数の0.1%未満が、膜欠陥によって詰まるか又はキャッピングされる。他の場合では、複数のフィーチャ14の総数の0.05%未満が、膜欠陥によって詰まるか又はキャッピングされる。膜欠陥のパーセンテージが高いと、インプリント装置10から加工スタンプに、又は加工スタンプからインプリント樹脂に転写できないフィーチャ14のパーセンテージが高くなる。インプリント樹脂におけるフィーチャの数の低減は、配列決定反応を行うことができるくぼみの数の低減につながり、配列決定ワークフロー及び/又は結果に有害な影響を与える可能性がある。一部の場合では、最終的なインプリント樹脂が非常に多くの使用不可能なくぼみを有す
る場合があるため、0.15%の膜欠陥でさえ望ましくない(例えば、実施例2及び
図6Dを参照されたい)。多くの場合、0.15%未満(例えば、0.1%未満、0.05%未満等)の膜欠陥が望ましい。
【0081】
固着防止層16は、i)第1のシランモノマー及びその高分子量付加物、並びに存在する場合にはii)最小量の第2のシランモノマー及びその高分子量付加物の重合及び架橋によって生成された架橋シランポリマーネットワークを含む。固着防止層16は、固着防止層16を生成するために使用される配合物の一部となり得る未反応モノマー、ダイマー、トリマー及びオリゴマーを含まない。これらの未反応モノマー、ダイマー、トリマー及び高分子量種は、配合物中又は洗浄液中で可溶性のままである可能性があり、架橋シランポリマーネットワークに組み込まれない。
【0082】
また、固着防止層16は、インプリント装置10、10'上の薄フィルムへの加工スタンプ材料の安定した湿潤を支持するのに適した表面エネルギーを有する。一例では、固着防止層16の表面エネルギーは、水接触角によって規定され、これは約70°~約90°、又は約75°~約85°の範囲であってもよい。
【0083】
配合物及びインプリント装置の作製方法
本明細書に開示される例では、固着防止層16は、第1のシランモノマー
【0084】
【0085】
及び配合物中に存在するシランの総量に対して約1.4wt%未満の、加水分解性塩化物基を含む第2のシランモノマーを含む配合物から形成される。これらの例では、加水分解性塩化物は、約500ppm未満の量で存在してもよい。一部の例では、配合物は、第2のシランモノマーを全く含まない。他の例では、配合物は、配合物中に存在するシランの総量に対して約0.28wt%~約1.1wt%の第2のシランモノマーを含む。これらの例では、加水分解性塩化物は、約100ppm~約400ppmの範囲の量で存在してもよい。更に他の例では、配合物は、配合物中に存在するシランの総量に対して約0.1wt%~約1wt%の第2のシランモノマーを含む。
【0086】
第1のシランモノマー及び第2のシランモノマーは、純シラン材料中に存在してもよい。一部の例では、純シラン材料は、第1のシランモノマー及び第2のシランモノマーからなる。他の例では、純シラン材料は、第1のシランモノマーの他の種を含んでもよい。例えば、純シラン材料中の第1のシランモノマーの一部は、加水分解を経ていてもよく、したがって第1のシランモノマーの一部は、加水分解エトキシ基を含んでもよい。別の例では、純シラン材料中の第1のシランモノマーの一部は、初期重合を経ていてもよく、したがって一部のダイマー、トリマー、又は他の高分子量種が形成中に存在する場合がある。一例では、配合物は、i)第1のシランモノマーの2つの結合単位を含むダイマー、ii)第1のシランモノマーの3つの結合単位を含むトリマー、iii)第1のシランモノマーの3つより多くの結合単位を含む高分子種、iv)少なくとも1つの加水分解エトキシ基を有する第1のシランモノマー、又はv)i)、ii)、iii)及びiv)の任意の組合せを更に含む。更に他の例では、純シラン材料は、第1のシランモノマー、第1のシランモノマーの他の種のいずれか1種又は複数、第2のシランモノマー、及び第2のシランモノマーの1種又は複数の他の種を含んでもよい。純シラン材料中の第2のシランモノマーの他の種は、ダイマー、トリマー及び高分子量種、並びに/又は第2のシランモノマーの加水分解副生成物及び/若しくは第2のシランモノマーの酸副生成物を含んでもよい。
【0087】
純シラン材料は、第1のシランモノマーを用いて、且つ第2のシランモノマーを用いずに、又は望ましい低レベルの第2のシランモノマーを用いて配合してもよい。一部の例では、この純シラン材料は、配合物として適用してもよい。これらの例の配合物は、無溶媒である。他の例では、この純シラン材料は、溶媒で希釈してもよい。好適な溶媒の例には、i)純シラン材料を溶媒和し、ii)約50℃~約250℃の範囲の沸点を有する任意の非プロトン性溶媒が含まれる。沸点は、加熱中に容易な除去を促進するのに十分低いが、配合物を堆積させるのに使用される塗布プロセスが、塗布された配合物の急速な乾燥をもたらさないように十分高くなくてはならない。好適な非プロトン性溶媒の例には、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(MeTHF)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、トルエン等が含まれる。溶媒は、約1wt%~約20wt%の第1のシランモノマーを含む配合物をもたらす任意の好適な量で使用してもよい。
【0088】
配合物が望ましい低レベルの第2のシランモノマーを用いて調製される場合、固着防止層16を形成するために塗布する前に、配合物を一定期間保存することが望ましい場合もある。配合物を熟成させると、コーティング前に第1のシランモノマーの加水分解が開始されることに部分的に起因して、配合物のコーティング性を向上させることができる。一例では、配合物は、室温条件(例えば、18℃~約22℃)で約2日間~約14日間保存し得る。
【0089】
純シラン材料は、代替的に第1のシランモノマー、及び約1.4wt%未満の望ましい低レベルよりも高いレベルの第2のシランモノマーを用いて配合してもよい。これらの例では、純シラン材料は、配合物に組み込まれる前に処理してもよい。処理によって加水分解を介してSi-ClをSiOHに変換することができ、酸副生成物(HCl)を除去することができる。配合物中では、第1及び第2のシランモノマーの両方がある程度加水分解され、基材表面に反応して架橋することができるため、配合物の生成前にSi-Clを変換し、HCl副生成物を除去することが望ましい場合がある。処理により、第2のシランモノマーの量を約1.4wt%未満(純配合物中に存在するシランの総量に対して)に低減させることができる。
【0090】
これらの例では、配合物を生成する工程は、第1及び第2のシランモノマーを含む純シラン材料を第1の溶媒で希釈して前駆体溶液を形成すること、前駆体溶液を塩基性水溶液に曝露して水性相及び有機相を生成することであって、有機相が第1の溶媒を含む、生成すること、水性相を除去すること、有機相から第1の溶媒を除去して精製シラン材料を得ること、並びに精製シラン材料を第2の溶媒で希釈することを含んでもよい。
【0091】
言及したように、純シラン材料が第1のシランモノマー、及び望ましくないほど高いレベルの第2のシランを含む場合、純シラン材料を第1の溶媒で希釈して前駆体溶液を形成してもよい。シランを可溶化し、水と非混和性である任意の非プロトン性溶媒を第1の溶媒として使用することができる。第1の溶媒の例は、酢酸エチルである。
【0092】
次いで、前駆体溶液を塩基性水溶液に曝露して、水性相及び有機相(第1のシランモノマーを含む)を生成する。塩基性水溶液の例は、飽和重炭酸ナトリウム溶液である。混合物は、Si-Clの加水分解を可能にするのに好適な時間にわたって撹拌又は他の方法で混合してもよく、その後水性相及び有機相を分離するのに十分な時間にわたって沈降させてもよい。一例では、激しい混合が約10分間行われる。加水分解性塩化物基は、塩基と反応して水溶性塩を形成し、これは、例えば洗浄することによって有機相から除去される。有機相は、第1のシランモノマー及び第1の溶媒を含む。
【0093】
水性相は、有機相から除去し得る。水性相及び有機相は、より重い方が容器の底に沈降するため、重量的に分離する。より重い相は、底から排出される。
【0094】
有機相を洗浄するために、追加の水を添加してもよい。全プロセスを複数回(例えば、2~4回)繰り返してもよい。
【0095】
有機相から第1の溶媒を除去する前に、例えば無水硫酸マグネシウム等の乾燥剤を使用して有機相を乾燥させ得る。有機相は、任意の好適な時間、例えば約10分~約30分乾燥させ得る。乾燥剤は、有機相を更なる処理に晒す前に濾過し得る。
【0096】
次いで、第1の溶媒を有機相から除去して精製シラン材料を得ることができる。第1の溶媒の除去は、有機相に対するロータリーエバポレーターの使用を含んでもよい。一部の例では、精製されたシラン材料は無色の液体である。
【0097】
精製シラン材料は、第1のシランモノマーを含み、且つ第2のシランモノマーを全く含まないか、又は望ましくは低レベルの第2のシランモノマーを含む。この例では、精製シラン材料を第2の溶媒で希釈して配合物を生成してもよい。第2の溶媒は、i)純シラン材料を溶媒和し、ii)約50℃~約250℃の範囲の沸点を有する任意の非プロトン性溶媒であってもよい。例として、THF、メチルTHF、トルエン等の本明細書で言及するものが挙げられる。第2の溶媒は、精製シラン材料が約1wt%~約20wt%の範囲の量で配合物中に存在するようになる任意の好適な量で使用してもよい。他の例では、精製シラン材料は、約5wt%~約15wt%、例えば約2wt%~約10wt%の範囲の量で配合物中に存在してもよい。
【0098】
配合物の任意の例は、阻害剤も含んでもよい。1つの例示的な阻害剤は、THFが溶媒である場合に使用することができるブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含む。他の阻害剤は、他の溶媒により適している場合がある。阻害剤の量は、約100ppm~約500ppmの範囲であってもよい。他の例では、阻害剤の量は、約150ppm~約450ppm、例えば約125ppm~約475ppmの範囲であってもよい。
【0099】
配合物の任意の例を使用して、固着防止層16、及びしたがってインプリント装置10、10'の任意の例を生成することができる。インプリント装置10、10'の作製方法の一例は、約425nm未満の平均ピッチで配置された複数のフィーチャ14を含むシリコンマスター12に配合物を塗布する工程であって、複数のフィーチャ14のそれぞれが約300nmの最大開口寸法を有し、配合物が、第1のシランモノマー:
【0100】
【0101】
;及び
配合物中に存在するシランの総量に対して1.4wt%未満の、加水分解性塩化物基を含む第2のシランモノマーを含む、工程、及び塗布された配合物を硬化させ、それにより固着防止層16を形成する工程を含む。この例示的な方法は、
図3Aから
図3Dに示される。
【0102】
図3Aは、フィーチャ14がそこに画定された基板13を含むシリコンマスター12を示す。
【0103】
方法で使用される配合物は、入手してもよく(例えば、供給業者、製造業者等から)、又は本明細書に記載されるように調製してもよい。本明細書に記載されるように、配合物は無溶媒であるか、又は約1wt%~約20wt%の第1のシランモノマーを含む。溶媒が含まれる場合、第1のシランモノマーは、25wt%以下(例えば、24wt%、23wt%、22wt%、21wt%、20wt%以下)の量で存在してもよい。他の例では、配合物は、約2.5wt%~約15wt%の第1のシランモノマー、又は約5wt%~約10wt%の第1のシランモノマーを含む。例示的な配合物のいずれかにおいて、第2のシランモノマーは、配合物中に存在するシランの総量の約2.0wt%以下、例えば約1.5wt%、約1.4wt%、約1.2wt%以下の量で存在する。一部の例では、配合物は、約0.25wt%~約1wt%の第2のシランモノマーを含む。
【0104】
図3Bは、シリコンマスター12に塗布された配合物22を示す。配合物22は、任意の好適な堆積技術を使用してシリコンマスター12に塗布してもよい。一例では、配合物の塗布はスピンコーティングを含む。スピンコーティングは、限定された期間にわたって(例えば、30秒まで)インキュベートされる配合物22のパドルを導入するために、遅い段階を含んでもよい。水(例えば、シリコンマスター12の洗浄ステップから、空気から等)がその塗布の間に配合物に導入されてもよい。
【0105】
塗布された配合物を硬化する工程は、1つ又は複数のプロセスを含む。一例では、硬化する工程は、インキュベーションプロセス、インキュベーションプロセス後のすすぎプロセス、及びすすぎプロセス後の加熱プロセスを含む。
【0106】
図3Cは、インキュベーションプロセスを示す。いかなる理論にも拘束されることなく、第1のシランモノマー(及び配合物中に存在し得る任意のダイマー、トリマー、及び高分子量種)の重合及び架橋は、インキュベーションプロセス中に開始される。
図3Cに示されるように、固着防止層16が形成され始める。生じ得る反応の1つには、第1のシランモノマーのエトキシR基が関与し、これはシリコンマスター12の表面基(例えば、シラノール)と反応し、固着防止層16をシリコンマスター12に付着させることができる。代替的に又は追加的に、モノマー上にシラノールが形成し、これらのシラノールがシリコンマスター12のシラノールと縮合する。生じ得る反応のもう一つは、CH
3CH
20-Si基の加水分解であり、これによりシランの高分子量種、例えばダイマー、トリマー、高分子量種及び高架橋シランポリマーネットワークへの縮合及び重合が生じる。架橋は、モノマー上のシラノールと他のモノマーシラノール、又はエトキシ基との縮合を含んでもよい。
【0107】
この加熱プロセスは、第1のシランモノマーの重合及び架橋が生じるのに適した温度で、適した時間にわたって行われる。
【0108】
インキュベーション工程の後、すすぎが行われてもよい。すすぎは、モノマー、ダイマー、トリマー及び高分子量種を溶媒和する任意の溶媒で行われてもよい。したがって、すすぎは、あらゆる未反応のモノマー、ダイマー、トリマー及び/又は高分子量種を洗い流し、架橋シランポリマーネットワーク、すなわち固着防止層16を残す。すすぎ後のインプリント装置10が
図3Dに示される。
【0109】
次に、インプリント装置10(その上に固着防止層16を有するシリコンマスター12)は、第2の加熱プロセスに晒してもよい。この加熱プロセスは、固着防止層16を乾燥させ、したがって残存する水、溶媒等を除去するために行うことができる。しかし、この第2の加熱プロセスの間、架橋が継続し得ることを理解すべきである。
【0110】
第1及び第2の加熱プロセスは、約18℃~約260℃の範囲の温度で、約60分までの時間にわたって独立して行われる。一例では、第1及び第2の加熱プロセスは、約20℃~約250℃の範囲の温度で、約1分~約30分の範囲の時間にわたって独立して行われる。一例では、インキュベーションプロセスは、室温(例えば、約20℃~約25℃)で約30分間達成される。別の例では、インキュベーションプロセスは、約100℃~約250℃、又は約130℃~約250℃の範囲の温度で、約10分~約20分の範囲の時間にわたって達成される。更に別の例では、第2の加熱プロセスは、約100℃~約250℃、又は約110℃~約150℃、又は約130℃~約250℃の範囲の温度で、約1分~約5分の範囲の時間にわたって達成される。
【0111】
第1のシランモノマーからの高分子量種の形成の速度は、すすぎ及びその後の加熱(乾燥)プロセスにより、未反応モノマー並びに緩く結合したダイマー、トリマー及び/又は高分子量種が重合及び架橋できる前に除去されるように比較的遅くてもよい。したがって、配合物22の液滴がフィーチャ14から後退する際、フィーチャ14内及び/又はフィーチャ開口20上に膜欠陥は形成されない。
【0112】
インプリント装置の使用方法
インプリント装置10、10'を使用して加工スタンプを形成してもよい。この方法の一例は、約340nm~約410nmの範囲の平均ピッチで配置された複数のフィーチャ14を含むシリコンマスター12上に配合物22を堆積させる工程であって、複数のフィーチャのそれぞれが約170nm~約290nmの範囲の最大開口寸法を有し、配合物22が、第1のシランモノマー:
【0113】
【0114】
及び配合物中に存在するシランの総量に対して1.4wt%未満の、加水分解性塩化物基を含む第2のシランモノマーを含む、工程、並びに配合物22を硬化させ、それによりシリコンマスター12上に固着防止層16を形成する工程、インプリント装置10、10'の固着防止層16上にシリコンベースの加工スタンプ材料を堆積させる工程、シリコンベースの加工スタンプ材料を硬化させ、複数のフィーチャ14のネガティブレプリカを含む加工スタンプを形成する工程、並びに加工スタンプをインプリント装置10、10'から剥離する工程により、インプリント装置10、10'を形成することを含む。この例示的な方法は、
図4Aから
図4Dに示される。
【0115】
図4Aは、インプリント装置10、10'を示す。インプリント装置10、10'の任意の例を使用してもよく、インプリント装置10、10'の任意の作製方法を使用してもよい。
【0116】
図4Bは、シリコンベースの加工スタンプ(WS)材料24の適用を示す。「シリコンベース」材料は、材料が少なくとも約50mol%のシリコン含有分子(繰り返しモノマー単位)から構成されることを意味する。一例では、シリコン系WS材料24は、約100mol%のシリコン含有分子(繰り返しモノマー単位)から構成される。更なる例では、WS材料24は、「シリコン含有ポリマー」(すなわち、約50mol%未満のシリコン含有分子を有するポリマー)であってもよい。他の例では、WS材料24は、重合されたシリコンアクリレート又はメタクリレートモノマーを含む。他の例では、WS材料24は、少なくとも1種の光開始剤も含む。
【0117】
任意の好適な堆積方法を使用し得ることを理解すべきである。好適な堆積技術の例には、スプレーコーティング、スピンコーティング、ダンク又はディップコーティング、パドルディスペンシング等が含まれる。一例では、WS材料24は、インプリント装置10、10'上にスピンコーティングされる。
【0118】
方法は、WS材料24を硬化させ、それによりインプリント装置10、10'上の固着防止層16と接触(例えば、直接、物理的に接触)した複数のフィーチャ14のネガティブレプリカを含む加工スタンプ28を形成する工程を更に含む(
図4C)。一例では、WS材料24は、紫外線(UV)照射によって硬化される。別の例では、WS材料24は熱硬化される。一部の例では、熱硬化は、約60℃~約300℃の範囲の温度で行われてもよい。
【0119】
図4Cに示すように、方法は、バックプレーン26を加工スタンプ28に取り付けることを更に含んでもよい。一例では、接着剤材料(図示せず)を含むポリマーフィルムは、接着剤がWS材料24に接触するように、硬化前にWS材料24に(例えば、ロールコーティングによって)塗布し得る。その後、UV照射に曝露されると、WS材料24と接着剤材料との両方が硬化し、それにより加工スタンプ28をバックプレーン26に接着させる。バックプレーン26は、任意の好適なポリマー材料から形成し得ることを理解すべきである。一例では、バックプレーン26は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである。バックプレーン26の他の例は、ポリ(塩化ビニル)(PVC)及びプロピレンオキシド(PO)を含む。一部の態様では、バックプレーン材料は可撓性である。接着剤材料は、任意の好適なUV硬化性材料であってもよいことを更に理解すべきである。
【0120】
図4Dに示されるように、方法は、インプリント装置10、10'から加工スタンプ28を剥離することを更に含む。一例では、剥離は、インプリント装置10、10'から硬化した加工スタンプ28を引き出す/剥がすことによるものである。他の除去技術も使用することができる。
【0121】
剥離された加工スタンプ28は、99.9%より多くのフィーチャ14が清浄に転写され(インプリント装置10、10'に膜欠陥がないため)、固着防止層16の材料を少なくとも実質的に含まない(すなわち、含まない又は実質的に含まない)。いかなる理論によっても束縛されることなく、未反応のモノマー、ダイマー、トリマー及び/又は高分子量種のいずれの過剰も、固着防止層16の製作前に洗い流されたはずなので、固着防止層16材料の転写は、加工スタンプ28の製作プロセス中に全く発生しないはずであると考えられる。固着防止層16材料のいずれかが転写する場合、それは多くとも百万分の一(ppm)レベルであり、したがって加工スタンプ28は、固着防止層16材料を実質的に含まないと考えられる。
【0122】
本開示を更に説明するために、実施例が本明細書に示される。これらの実施例は、例示のために示され、本開示の範囲を限定すると解釈すべきではないことを理解すべきである。
【実施例】
【0123】
非限定的な実施例
【0124】
(実施例1)
膜欠陥を調べるために、第1のシランモノマー(Si-OCH2CH3基を有する)と約5質量%~約10質量%の第2のシランモノマー(少なくとも1つのSi-Cl基を含む)との両方を含む純シラン材料を用いて配合物を調製した。配合物は、純シラン材料を無水テトラヒドロフラン(THF)で希釈して、約10wt%の第1のシランモノマーを含む溶液を得ることによって調製した。阻害剤であるブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を添加した。
【0125】
配合物を、フィーチャがそこに画定されたシリコンマスターにスピンコーティングした。フィーチャは、約220nmの直径及び約350nmの平均ピッチを有していた。スピンコーティングは、最初に非常に低いRPMで配合物を分配し、次いで約30秒のインキュベーションを行い、その後より高速のスピンを行って過剰な配合物を除去することを含んだ。
【0126】
コーティングされたシリコンマスターを約130℃で約10分間加熱に曝露し、次いで、溶媒ですすぎ、その後約130℃で約2分間、更なる加熱に曝露した。
【0127】
処理後、複数のフィーチャを含むコーティングされたシリコンマスターの大きなエリアの画像を撮影した。
図5Aは、複数のフィーチャを覆う1つの膜欠陥を示す。膜欠陥の中央のより暗い部分は、その部分により多くの材料が堆積されたことを示していた。
図5Bの断面図は、膜欠陥で覆われたフィーチャの1つを示す。示されるように、膜欠陥の一部である蓄積材料がフィーチャを完全に塞いでいた。これらの結果から、純材料中の第2のシランモノマー(特に塩化物)の量が5%以上である場合に、膜欠陥の形成が検出された。
【0128】
(実施例2)
塩化物含有量の膜欠陥の形成に対する影響を調べるために、異なる量の第2のシランモノマーを含む配合物を調製した。
【0129】
4種類の異なる配合物を調製した。これらの配合物を調製するために、2種類の純シラン材料を使用した。第1の純シラン材料は、第1のシランモノマー(Si-OCH2CH3基を含む)及び合計約50ppmの加水分解性塩化物をもたらす約0.14wt%の第2のシランモノマー(少なくとも1つのSi-Cl基を含む)を含んだ。第2の純シラン材料は、第1のシランモノマー(Si-OCH2CH3基を含む)及び合計約4000ppmの加水分解性塩化物をもたらす約10wt%の第2のシランモノマー(少なくとも1つのSi-Cl基を含む)を含んだ。第1及び第2の純シラン材料を組み合わせて、約100ppmの加水分解性塩化物を含む純材料A(約0.28wt%の第2のシランモノマー)、約200ppmの加水分解性塩化物を含む純材料B(約0.56wt%の第2のシランモノマー)、約500ppmの加水分解性塩化物を含む純材料C(約1.4wt%の第2のシランモノマー)、及び約1000ppmの加水分解性塩化物を含む純材料D(約2.8wt%の第2のシランモノマー)を生成した。各純材料について望ましいパーセンテージが得られたら、それぞれの純材料を無水THFで希釈し、それぞれが約10wt%の第1のシランモノマーを含むシラン溶液(純材料Aを用いて作製した溶液A、純材料Bを用いて作製した溶液B、純材料Cを用いて作製した溶液C、及び純材料Dを用いて作製した溶液D)を処方した。
【0130】
溶液A~Dをそれぞれのシリコンマスターにコーティングし、実施例1に記載のプロセスを使用して硬化させ、それぞれのインプリントデバイスA~Dを形成した。
【0131】
各インプリント装置A~Dからそれぞれの加工スタンプを生成し、加工スタンプA~Dを使用してそれぞれのインプリントA~Dを生成した。インプリント装置で膜欠陥が生成される場合、覆われた又は満たされたフィーチャは、加工スタンプ又は最終インプリントに転写可能ではない。インプリントで観察されるあらゆる欠陥(例えば、インプリント欠陥)は、インプリント装置に存在する膜欠陥を示す。
【0132】
キーエンス社製共焦点顕微鏡を使用してインプリントA~Dを撮像し、これらの画像を、
図6A(インプリントデバイスAから生成された加工スタンプAを使用して形成されたインプリントA)、
図6B(インプリントデバイスBから生成された加工スタンプBを使用して形成されたインプリントB)、
図6C(インプリントデバイスCから生成された加工スタンプCを使用して形成されたインプリントC)、及び
図6D(インプリントデバイスDから生成された加工スタンプDを使用して形成されたインプリントD)に示す。
図6A及び
図6Bに示されるように、インプリントデバイスA及びBをそれぞれ使用して調製された加工スタンプA及びBから生成されたインプリントA及びBには、インプリント欠陥が観察されず、インプリントデバイスA及びBの固着防止層は、それぞれ100ppm及び200ppmのレベルの加水分解性塩化物を有する配合物を用いて調製された。これらの画像は、インプリントデバイスA及びBに膜欠陥が存在しないことを示す。インプリントC(インプリントデバイスCを使用して調製された加工スタンプCから生成され、インプリントデバイスCの固着防止層は、500ppmの加水分解性塩化物を有する溶液Cを用いて調製された)では、
図6Cのより薄い点によって示されるように、いくつかのインプリント欠陥が観察された。この画像は、インプリントデバイスCにいくつかの膜欠陥が存在したことを示す。
図6Dに示されるように、インプリントD(インプリントデバイスDを使用して調製された加工スタンプDから生成され、インプリントデバイスDの固着防止層は、1000ppmの加水分解性塩化物のレベルを有する溶液Dを用いて調製された)では、更に複数のインプリント欠陥が観察された。この画像は、インプリントデバイスDに更に複数の膜欠陥が存在したことを示す。
【0133】
画像解析スクリプトによってインプリント欠陥を定量化した。インプリント欠陥は、溶液A~Dを用いて形成されたインプリントデバイスの固着防止層の膜欠陥に相関する。膜欠陥を反映する相関結果が
図7に示される。
図7は、3セットの定量結果を示す。
【0134】
図7の上のグラフは、固着防止層に生成された膜欠陥のパーセンテージ対固着防止層の生成に使用された配合物中の加水分解性塩化物レベル(ppm)を示す。パーセンテージは、インプリント装置におけるフィーチャの総数に関するものである。示されるように、100ppm及び200ppmの配合物(それぞれ溶液A及び溶液B)では0%の膜欠陥が生成され、500ppmの配合物(溶液C)ではわずかにより高いパーセンテージが観察されたが、このパーセンテージでさえ0.05%未満であった。1000ppmの配合物(溶液D)では、0.1%を超える膜欠陥が生成された。
【0135】
図7の中央のグラフは、固着防止層に生成された膜欠陥の平均数対固着防止層の生成に使用された配合物中の加水分解性塩化物レベル(ppm)を示す。
図7の中央のグラフの各データ点について、8個の十字形状試料の平均を取った。示されるように、膜欠陥の平均数は、100ppm及び200ppmの配合物(それぞれ溶液A及び溶液B)でゼロであった(それぞれ溶液A及び溶液B)。500ppmの配合物(溶液C)では、膜欠陥の平均数は1.5未満であった。その一方、1000ppmの配合物(溶液D)では、膜欠陥の平均数は10を超えた。
【0136】
図7の下のグラフは、固着防止層に生成された膜欠陥の平均画素対固着防止層の生成に使用された配合物中の加水分解性塩化物レベル(ppm)を示す。100ppm及び200ppmの配合物(それぞれ溶液A及び溶液B)では膜欠陥が形成されなかったため、平均画素はゼロであった。500ppmの配合物(溶液C)で生成された膜欠陥の平均画素は、10~15であった。その一方、1000ppmの配合物(溶液D)で生成された膜欠陥の平均画素は40を超えた。
【0137】
これらの結果から、配合物中の加水分解性塩化物の含有量が1000ppmまで増加するにつれ、膜欠陥がより容易に形成され、より大きくなったことが確認された。
【0138】
(実施例3)
この実施例では、2種類の配合物を調製した。第1のシランモノマー(Si-OCH2CH3基を含む)と約0.14wt%の第2のシランモノマー(少なくとも1つのSi-Cl基を含む)との両方を含む純シラン材料を用いて配合物を調製した。配合物は、純シラン材料を無水テトラヒドロフラン(THF)で希釈して、約10wt%の第1のシランモノマーを含む溶液を得ることによって調製した。阻害剤であるブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を添加した。
【0139】
第1の溶液は、配合物生成から1日以内にインプリント装置Yを生成するために使用され、したがって熟成されていない。未熟成配合物を、実施例1に記載のようにスピンコート及び硬化した。インプリント装置Yから加工スタンプを生成し、加工スタンプを使用して25個のインプリントを生成した。1番目、10番目及び25番目のインプリントの画像を、それぞれ
図8A、
図8B及び
図8Cに示す。これらの画像は、高レベルの脱離欠陥、又はウェハの底における損失パターン化エリアを示す。損失パターン化エリアは、図のそれぞれにおいて丸で囲まれる。このような脱離欠陥は、インプリント装置の生成時における、シリコンマスターへの配合物のコーティング不良の特徴である。
【0140】
第2の溶液を室温保存で8日間保持し、その後インプリント装置Zを生成するために使用した。この配合物も、実施例1に記載のようにスピンコートして硬化させた。インプリント装置Zから別の加工スタンプを生成し、加工スタンプを使用して25個のインプリントを生成した。1番目、10番目及び25番目のインプリントの画像を、それぞれ
図9A、
図9B及び
図9Cに示す。これらの画像は、はるかに低いレベルの脱離欠陥、又はウェハの底における損失パターン化エリアを示す。これらの結果は、本実施例では、望ましい低レベルの加水分解性塩化物を含む純シラン材料を使用して配合物を生成した場合、配合物の熟成が、配合物のコーティング性の改善に役立ったことを示す。
【0141】
(実施例4)
本実施例では、第1のシランモノマー(Si-OCH2CH3基を含む)と、約4500ppmの加水分解性塩化物をもたらす約10wt%の第2のシランモノマー(少なくとも1つのSi-Cl基を含む)との両方を含む出発純シラン材料を使用した。この純シラン材料を酢酸エチルで希釈した。等量の重炭酸ナトリウム溶液を添加し、合わせた溶液を約10分間混合した。水性相のpHは約9であることがpH紙で確認された。その後、水性相を除去した。残存する有機相を無水硫酸マグネシウムで約20分間乾燥させた。無水硫酸マグネシウムを濾過し、あらゆる残存する酢酸エチルをロータリーエバポレーションによって除去した。その結果、無色の液体が得られた。この液体を滴定して、残存する加水分解性塩化物のパーセンテージを決定した。加水分解性塩化物のレベルが約160ppmになるまでこのプロセスを繰り返した。溶液を無水THFで希釈して、約10wt%の第1のシランモノマーを含む溶液を配合した。配合物を、実施例1に記載のようにスピンコートして硬化させた。コーティングの欠陥は観察されなかった。
【0142】
付記
前述の概念と、以下でより詳細に考察される更なる概念のすべての組合せ(そのような概念が相互に矛盾しないことを条件とする)は、本明細書に開示される本発明の主題の一部であると企図していることを理解すべきである。特に、本開示の最後に現われる特許請求される主題のすべての組合せは、本明細書に開示される本発明の主題の一部であると企図している。また、本明細書で明示的に用いられ、参照により組み込まれる任意の開示にも現われ得る専門用語は、本明細書に開示される特定の概念と最も一致する意味を付与すべきであることを理解すべきである。
【0143】
本明細書を通した「一例」、「別の例」、「ある例」等への言及は、例に関連して記載される特定の要素(例えば、特徴、構造及び/又は特性)が本明細書に記載される少なくとも1つの例に含まれ、他の例には存在してもしなくてもよいことを意味する。加えて、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、任意の例に関して記載された要素は、様々な例において任意の好適な様式で組み合わせてもよいことを理解すべきである。
【0144】
本明細書に示す範囲は、記載された範囲及び記載された範囲内の任意の値又は部分範囲を、あたかもそのような値又は部分範囲が明示的に言及されているかのように含むことを理解すべきである。例えば、約350nm~約400nmの範囲は、約350nm~約400nmの明示的に言及された限界値だけでなく、約358nm、約375.5nm等の個々の値、及び約355nm~約395nm、約350nm~約375nm等の部分範囲も含むと解釈すべきである。更に、「約」及び/又は「実質的に」が値を説明するために利用される場合、それらは、記載された値からのわずかな変動(最大±10%)を包含することを意図する。
【0145】
一部の例を詳細に記載したが、開示される例は改変可能であることを理解すべきである。したがって、前述の記載は非限定的であるとみなされる。
【符号の説明】
【0146】
10 インプリント装置
10' インプリント装置
12 シリコンマスター
13 基板
14 フィーチャ
14' くぼみ
15 パターン化エリア
16 固着防止層
18 間隙領域
20 開口
22 配合物
24 WS材料
26 バックプレーン
28 加工スタンプ
【国際調査報告】