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特表2023-519346養子細胞療法の有効性を増強するための白血病由来の改変細胞のエクスビボ(EX VIVO)使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】養子細胞療法の有効性を増強するための白血病由来の改変細胞のエクスビボ(EX VIVO)使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230428BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230428BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230428BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230428BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230428BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230428BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230428BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N5/10
C12N5/0783
C12N15/13
C12N15/12
A61P35/00
A61K35/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558289
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(85)【翻訳文提出日】2022-11-25
(86)【国際出願番号】 IB2021052542
(87)【国際公開番号】W WO2021191870
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】63/001,189
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/110,003
(32)【優先日】2020-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521022691
【氏名又は名称】メンドゥス・ベスローテン・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】MENDUS B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100218268
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】マンティング,エリック ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ローフェルス,イェルン
(72)【発明者】
【氏名】シン,サトウィンダー カウア
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA04
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB26
(57)【要約】
本開示は、養子細胞療法の有効性を増強するために白血病由来の改変細胞を使用するエクスビボ法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫細胞の集団を活性化する、刺激する、および/または増やすための方法であって、
免疫細胞を含む細胞の集団を得ること;
細胞の集団を白血病由来の改変細胞と接触させることであって、改変細胞が成熟樹状細胞表現型を含み、非増殖性であること;ならびに
細胞の集団および白血病由来の改変細胞を、免疫細胞の増殖を刺激するために好適な条件下で同時培養し、それにより免疫細胞の集団を活性化し、増やすこと
を含む方法。
【請求項2】
メモリーT細胞の集団を生成するための方法であって、
免疫細胞を含む細胞の集団を得ること;
細胞の集団を白血病由来の改変細胞と接触させることであって、改変細胞が成熟樹状細胞表現型を含み、非増殖性であること;ならびに
細胞の集団および白血病由来の改変細胞を、免疫細胞の増殖を刺激するために好適な条件下で同時培養し、それによりメモリーT細胞の集団を生成すること
を含む方法。
【請求項3】
細胞の集団が、操作された免疫受容体を含む免疫細胞を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
操作された免疫受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
活性化状態が増強された自家T細胞の集団を生成するための方法であって、
がんに罹患している患者から自家T細胞の集団を得ること;
自家T細胞の集団を、患者における腫瘍抗原に結合するキメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)から選択される操作された免疫受容体を発現するように改変すること;
改変自家T細胞の集団を白血病由来の改変細胞と接触させることであって、改変細胞が成熟樹状細胞表現型を含み、非増殖性であること;ならびに
改変自家T細胞の集団および白血病由来の改変細胞を、改変自家T細胞の増殖を刺激するために好適な条件下で同時培養し、それにより活性化状態が増強された自家T細胞の集団を生成すること
を含む方法。
【請求項6】
がんに罹患している患者を処置するための方法であり、活性化状態が増強された自家細胞の集団をがんに罹患している患者に投与することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
抗腫瘍抗原特異性を含む自家T細胞の集団を増やすための方法であって、
がんに罹患している患者から自家T細胞の集団を得ること;
自家T細胞の集団を、患者における腫瘍細胞上の腫瘍抗原に結合するキメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)から選択される操作された免疫受容体を発現するように改変すること;
改変自家T細胞の集団を白血病由来の改変細胞と接触させることであって、改変細胞が成熟樹状細胞表現型を含み、非増殖性であること;ならびに
改変自家T細胞の集団および白血病由来の改変細胞を、改変自家T細胞の増殖を増やし、刺激するために好適な条件下で同時培養し、それにより抗腫瘍抗原特異性を含む改変自家T細胞の集団を生成すること含み、抗腫瘍抗原特異性を含む改変自家T細胞の集団が患者の腫瘍細胞と反応することができる、方法。
【請求項8】
改変自家細胞の集団が、操作された免疫受容体が結合する腫瘍抗原を発現しない患者の腫瘍細胞と反応することができる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
改変細胞が、WT-1、RHAMM、PRAME、MUC-1、p53およびサバイビンからなる群から選択される少なくとも1つの腫瘍抗原を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
免疫細胞が、白血病由来の改変細胞によって表される内在性細胞への曝露後に活性化される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
改変細胞が、CD34陽性、CD1a陽性、CD83陽性およびCD14陰性である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
改変細胞が、DC-SIGN、ランゲリン、CD40、CD70、CD80、CD83、CD86およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される細胞表面マーカーをさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
さらに、改変細胞が、CD40陽性、CD80陽性およびCD86陽性である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
改変細胞が、共刺激分子を含み、適宜、共刺激分子がCD70である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
改変細胞が、MHCクラスI分子を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
改変細胞が、MHCクラスII分子を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
改変細胞に、外来性抗原またはそのペプチド断片が負荷される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
外来性抗原が、腫瘍関連抗原(TAA)または非腫瘍関連抗原である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
改変細胞が、外来性抗原を発現することができる、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
改変細胞が、外来性抗原を発現することができない、請求項17または18に記載の方法。
【請求項21】
外来性抗原が、ペプチド、ヌクレオチド配列、全タンパク質または腫瘍可溶化液の形態で提供される、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
外来性抗原が、操作された免疫受容体が結合する抗原に適合する、請求項17~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
外来性抗原が、操作された免疫受容体が結合する抗原とは異なる、請求項17~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
白血病由来の改変細胞に、成熟樹状細胞表現型を提示する前に外来性抗原またはそのペプチド断片が負荷される、請求項17~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
白血病由来の改変細胞に、白血病由来の改変細胞の成熟樹状細胞表現型への移行の際に外来性抗原またはそのペプチド断片が負荷される、請求項17~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
白血病由来の改変細胞に、白血病由来の改変細胞が成熟樹状細胞表現型を提示する前、後に、外来性抗原またはそのペプチド断片が負荷される、請求項17~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
改変細胞が、染色体11p15.5と11p12との間に遺伝子異常を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
遺伝子異常が、約16Mbのゲノム領域を包含する、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
改変細胞が照射されている、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
免疫細胞または自家T細胞の増殖を刺激するために好適な条件が、シグナル-1を免疫細胞に提供することを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
シグナル-1が、改変細胞によって提供される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
シグナル-1が、TCR/CD3複合体の活性化を含む、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
免疫細胞または自家T細胞の増殖を刺激するために好適な条件が、シグナル-2を免疫細胞に提供することを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
シグナル-2が、改変細胞によって提供される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
シグナル-2が、共刺激分子の活性化を含む、請求項32または33に記載の方法。
【請求項36】
共刺激分子が、CD70である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
細胞または自家T細胞の集団が、ヒト由来である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
細胞または自家T細胞の集団が、CD4+細胞およびCD8+細胞の両方を含み、CD4+細胞およびCD8+細胞の両方の複合刺激を生じる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
細胞または自家T細胞の集団が、CD4+細胞およびCD8+細胞の両方を含み、CD4+細胞のCD8+細胞に対する比の増加を生じる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
細胞または自家T細胞の集団が、刺激されていないT細胞を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
細胞または自家T細胞の集団が、機能性内在性TCRレパートリーを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
細胞または自家T細胞の集団が、白血病由来の改変免疫細胞の外来性抗原を標的化するように操作されている、請求項17~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
細胞または自家T細胞の集団が、白血病由来の改変細胞の同じ腫瘍関連抗原(TAA)を標的化するように操作されている、請求項18~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
細胞または自家T細胞の集団が、白血病由来の改変免疫細胞によって提示される非腫瘍由来抗原と交差反応性である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
非腫瘍由来抗原が、ウイルス性またはワクチン由来リコール抗原である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
操作された免疫細胞が、エプスタイン・バーウイルス(EBV)特異的T細胞である、請求項44または45に記載の方法。
【請求項47】
CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインならびに、共刺激ドメインおよび一次シグナル伝達ドメインを含む細胞内ドメインを含む、請求項4~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
抗原結合ドメインが、全長抗体もしくはその抗原結合性断片、Fab、単鎖可変断片(scFv)または単一ドメイン抗体を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
抗原結合ドメインが、腫瘍関連抗原(TAA)または非腫瘍関連抗原に対して特異的である、請求項47または48に記載の方法。
【請求項50】
改変細胞が、外来性抗原またはそのペプチド断片を含み、抗原結合ドメインが、外来性抗原とは異なる、腫瘍関連抗原(TAA)または非腫瘍関連抗原に対して特異的である、請求項47~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
改変細胞が、外来性抗原またはそのペプチド断片を含み、抗原結合ドメインが、外来性抗原と同じである、腫瘍関連抗原(TAA)または非腫瘍関連抗原に対して特異的である、請求項47~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
CARが、ヒンジ領域をさらに含む、請求項47~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
ヒンジ領域が、抗体のFc断片、抗体のヒンジ領域、抗体のCH2領域、抗体のCH3領域、人工ヒンジドメイン、CD8のアミノ酸配列を含むヒンジまたはこれらの任意の組合せからなる群から選択されるヒンジドメインである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
膜貫通ドメインが、人工疎水性配列、I型膜貫通タンパク質の膜貫通ドメイン、T細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖もしくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、ICOS(CD278)またはCD154およびキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)由来膜貫通ドメインからなる群から選択される、請求項47~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
細胞内ドメインが、共刺激シグナル伝達ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む、請求項47~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
共刺激シグナル伝達ドメインが、TNFRスーパーファミリー内のタンパク質、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、PD-1、CD7、LIGHT、CD83L、DAP10、DAP12、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-I、TNFR-II、Fas、CD30、CD40、ICOS(CD278)、NKG2C、B7-H3(CD276)およびキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)由来細胞内ドメインまたはこれらのバリアントからなる群から選択されるタンパク質の1つまたは複数の共刺激ドメインを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
細胞内シグナル伝達ドメインが、ヒトCD3ゼータ鎖(CD3ζ)の細胞質シグナル伝達ドメイン、FcγRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質側末端、細胞質受容体を保有する免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、TCRゼータ、FcRガンマ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79bおよびCD66d、またはこれらのバリアントからなる群から選択される細胞内ドメインを含む、請求項55または56に記載の方法。
【請求項58】
TCRが、免疫細胞または自家T細胞に対して内在性である、請求項4~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
TCRが、免疫細胞または自家T細胞に対して外来性である、請求項4~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
TCRが、TCRアルファ鎖およびTCRベータ鎖を含む、請求項4~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
TCRが、野生型TCR、高親和性TCRおよびキメラTCRからなる群から選択される、請求項4~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
TCRが、全長TCR、二量体TCRおよび単鎖TCRからなる群から選択される、請求項4~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
改変細胞が、外来性抗原またはそのペプチド断片を含み、TCRが、外来性抗原とは異なる、腫瘍関連抗原(TAA)または非腫瘍関連抗原に対して特異的である、請求項4~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
改変細胞が、外来性抗原またはそのペプチド断片を含み、TCRが、外来性抗原と同じである、腫瘍関連抗原(TAA)または非腫瘍関連抗原に対して特異的である、請求項4~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
免疫細胞を白血病由来の改変細胞と接触させることによって抗原特異的免疫細胞の生成を誘導することを含む、抗原特異的免疫細胞を生成するための方法であって、改変細胞が成熟樹状細胞表現型を含み、非増殖性である、方法。
【請求項66】
改変細胞が、標的抗原を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
標的抗原が、改変細胞に対して内在性であり、WT-1、RHAMM、PRAME、MUC-1、p53、サバイビンおよびこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
標的抗原が、改変細胞に対して外来性である、請求項66または67に記載の方法。
【請求項69】
標的抗原が、腫瘍関連抗原(TAA)または非腫瘍関連抗原である、請求項66~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
改変細胞が、CD34陽性、CD1a陽性、CD83陽性およびCD14陰性である、請求項65~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
改変細胞が、DC-SIGN、ランゲリン、CD40、CD70、CD80、CD83、CD86およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される細胞表面マーカーをさらに含む、請求項65~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
さらに、改変細胞が、CD40陽性、CD80陽性およびCD86陽性である、請求項65~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
改変細胞が、共刺激分子を含み、適宜、共刺激分子がCD70である、請求項65~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
改変細胞が、MHCクラスI分子を含む、請求項65~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
改変細胞が、MHCクラスII分子を含む、請求項65~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
改変細胞が、染色体11p15.5と11p12との間に遺伝子異常を含む、請求項65~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
遺伝子異常が、約16Mbのゲノム領域を包含する、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
改変細胞が照射されている、請求項65~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
改変免疫細胞の集団を増やすための方法であって、
改変免疫細胞の集団を得ることであって、改変免疫細胞が免疫受容体を含むこと;
細胞の集団を白血病由来の改変細胞と接触させることであって、改変細胞が成熟樹状細胞表現型を含み、非増殖性であること;および
改変免疫細胞の集団を改変免疫細胞の増殖を刺激するために好適な条件下で培養し、それにより改変免疫細胞の集団を増やすこと
を含む方法。
【請求項80】
改変細胞が、標的抗原を含む、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
標的抗原が、改変細胞に対して内在性であり、WT-1、RHAMM、PRAME、MUC-1、p53、サバイビンおよびこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
標的抗原が、改変細胞に対して外来性である、請求項80に記載の方法。
【請求項83】
標的抗原が、腫瘍関連抗原(TAA)または非腫瘍関連抗原である、請求項80~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
改変細胞が、CD34陽性、CD1a陽性、CD83陽性およびCD14陰性である、請求項79~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
改変細胞が、DC-SIGN、ランゲリン、CD40、CD70、CD80、CD83、CD86およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される細胞表面マーカーをさらに含む、請求項79~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
さらに、改変細胞がCD40陽性、CD80陽性およびCD86陽性である、請求項79~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
改変細胞が、共刺激分子を含み、適宜、共刺激分子がCD70である、請求項79~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
改変細胞が、MHCクラスI分子を含む、請求項79~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
改変細胞が、MHCクラスII分子を含む、請求項79~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
改変細胞が、染色体11p15.5と11p12との間に遺伝子異常を含む、請求項79~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
遺伝子異常が、約16Mbのゲノム領域を包含する、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
改変細胞が照射されている、請求項79~91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
免疫細胞の増殖を刺激するために好適な条件が、シグナル-1を免疫細胞に提供することを含む、請求項79~92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
シグナル-1が、改変細胞によって提供される、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
シグナル-1が、TCR/CD3複合体の活性化を含む、請求項93または94に記載の方法。
【請求項96】
免疫細胞の増殖を刺激するために好適な条件が、シグナル-2を免疫細胞に提供することを含む、請求項79~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
シグナル-2が、改変細胞によって提供される、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
シグナル-2が、共刺激分子の活性化を含む、請求項96または97に記載の方法。
【請求項99】
共刺激分子が、CD70である、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
それを必要とする対象において疾患または障害を処置するための方法であって、
対象に、前記請求項に記載の方法のいずれか1つによって産生された改変免疫細胞を投与すること
を含む方法。
【請求項101】
疾患または障害が、がんである、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
改変細胞が、がんに罹患している患者由来の自家細胞である、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
がんが、腫瘍である、請求項100または101に記載の方法。
【請求項104】
腫瘍が、液性腫瘍である、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
腫瘍が、固形腫瘍である、請求項103に記載の方法。
【請求項106】
それを必要とする対象において腫瘍を処置するための方法であって、
対象に、前記請求項に記載の方法のいずれか1つによって産生された改変免疫細胞を投与すること
を含む方法。
【請求項107】
免疫細胞が、外来性抗原またはそのペプチド断片に対する特異性を含む、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
免疫細胞が、外来性抗原またはそのペプチド断片に対する特異性を含む操作された免疫受容体を含む、請求項106または107に記載の方法。
【請求項109】
操作された免疫受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)である、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
対象の腫瘍部位に組成物を投与することを含む腫瘍マーキング工程をさらに含み、組成物が外来性抗原またはそのペプチド断片を含む、請求項106~109のいずれか一項に記載の方法。
【請求項111】
外来性抗原が、腫瘍関連抗原(TAA)または非腫瘍関連抗原である、請求項106~110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項112】
腫瘍マーキング工程が、腫瘍または腫瘍の近位に組成物を投与することを含む、請求項110または111に記載の方法。
【請求項113】
腫瘍マーキング工程が、改変免疫細胞が投与された後に実施される、請求項110~112のいずれか一項に記載の方法。
【請求項114】
腫瘍マーキング工程が、改変免疫細胞が投与される前に実施される、請求項110~112のいずれか一項に記載の方法。
【請求項115】
免疫細胞が、T細胞である、請求項106~114のいずれか一項に記載の方法。
【請求項116】
免疫細胞が、自家T細胞である、請求項106~115のいずれか一項に記載の方法。
【請求項117】
非腫瘍関連抗原が、ウイルス由来、細菌由来または真菌由来のものである、請求項18~64、69~78および83~116のいずれか一項に記載の方法。
【請求項118】
非腫瘍関連抗原が、アレルゲン、毒素または毒である、請求項18~64、69~78および83~116のいずれか一項に記載の方法。
【請求項119】
非腫瘍関連抗原が、アレルゲン、毒素または毒である、請求項18~64、69~78および83~116のいずれか一項に記載の方法。
【請求項120】
非腫瘍関連抗原が、ジフテリア毒素またはその無毒バリアントである、請求項18~64、69~78および83~116のいずれか一項に記載の方法。
【請求項121】
非腫瘍関連抗原が、CRM197またはそのバリアントである、請求項18~64、69~78および83~116のいずれか一項に記載の方法。
【請求項122】
非腫瘍関連抗原が、サイトメガロウイルス(CMV)由来ペプチドである、請求項18~64、69~78および83~116のいずれか一項に記載の方法。
【請求項123】
非腫瘍関連抗原が、pp65ペプチドである、請求項18~64、69~78および83~116のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その開示全体がこれにより参照により本明細書に組み込まれる、米国仮特許出願第63/001,189号、2020年3月27日出願および第63/110,003号、2020年11月5日出願の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
キメラ抗原受容体(CAR)およびT細胞受容体(TCR)が操作されたT細胞の使用は、近年多くの前臨床研究および臨床研究の研究対象になっている。これらの遺伝子改変されたT細胞は、基礎的な免疫学の原理を免疫療法における最新の進歩と組み合わせ、がんなどの疾患を攻撃するために身体自身の免疫系を利用するための有望なアプローチを提供する。一般に養子細胞療法は、患者自身の免疫細胞の収集、エクスビボ増大および腫瘍抗原特異的受容体をコードするための免疫細胞の遺伝子改変を含む。一部の場合では、免疫細胞は、同種の供給源から得ることができる。遺伝子改変された免疫細胞は、患者に注入して戻され、有効な腫瘍クリアランスを生じる。エクスビボで増やされた免疫細胞の注入に基づく現在の免疫療法は、がん処置において、特に血液悪性腫瘍において顕著な成功を示している。例えば、CD19特異的CAR T細胞を用いて処置された、進行型B細胞白血病およびリンパ腫を有する患者における臨床試験は、成人および小児において永続性の寛解を誘導した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
患者に注入して戻された遺伝子改変された免疫細胞(特に、自家細胞)は、主に高分化型であり、腫瘍に対する持続性のメモリー応答をしばしば維持できない。さらに、優れた臨床有効性にもかかわらず養子細胞療法は、永続性の臨床応答が、処置後の操作された細胞の不適切なインビボ(in vivo)増大、生存およびの長期間の持続によって影響されることから、課題に直面している。1つの課題は、最適以下のエフェクター機能の発生、阻害性受容体の発現の増加および機能性エフェクターまたはメモリーT細胞のものとは異なる発現プロファイルの発生によって定義される現象である、T細胞が疲弊する性質において生じる。T細胞の疲弊は、疾患原因細胞に対する細胞傷害性およびサイトカイン発現などのエフェクター機能の低減をもたらす。
【0004】
機能および治療効果が改善された遺伝子改変された免疫細胞、および同物を作製するための方法に対する必要性が当技術分野においてある。本開示は、この必要性に対処し、満たす。
【0005】
概要
本開示は、白血病由来のある特定の細胞が、養子細胞療法において使用されるある特定の改変免疫細胞(例えば、自家患者由来CAR-T細胞)の増大、有効性および/または機能を、これらの細胞がエクスビボで共に組み合わされる場合に改善できるとの発見に少なくとも一部基づいている。ある特定の実施形態では、白血病由来の細胞の存在下で増やされ、同時培養される免疫細胞は、続く養子細胞移行による患者への投与後に、増大および持続性の改善を示す。他の実施形態では、白血病由来改変細胞に曝露された免疫細胞は、CD4ヘルプの改善を、例えば、CD4表現型およびCD4/CD8比に基づいて実証する。さらに他の態様では、いかなる特定の理論にも束縛されることなく、「バックグラウンド」抗腫瘍免疫への曝露は、注入後のT細胞活性化および改変免疫細胞の生存の延長を可能にすると考えられる。ある特定の実施形態では、改変免疫細胞を、改変免疫細胞が患者において標的化するように設計されたものと同じ腫瘍抗原を発現する白血病由来の細胞とエクスビボで同時培養することにより、改変免疫細胞は、注入後の生存の延長を示し得る。したがって、本開示の方法は、CAR-Tおよび他の養子T細胞療法における主な障壁の1つ、すなわちT細胞、特に患者由来自家T細胞の増大能力の限定に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある特定の態様では、免疫細胞の集団を活性化する、刺激する、および/または増やすための方法であって、免疫細胞を含む細胞の集団を得ること;細胞の集団を白血病由来の改変細胞と接触させることであって、改変細胞が成熟樹状細胞表現型を含み、非増殖性であること;ならびに細胞の集団および白血病由来の改変細胞を、免疫細胞の増殖を刺激するために好適な条件下で同時培養し、それにより免疫細胞の集団を活性化し、増やすことを含む、方法が提供される。
【0007】
他の態様では、メモリーT細胞の集団を生成するための方法であって、免疫細胞を含む細胞の集団を得ること;細胞の集団を白血病由来の改変細胞と接触させることであって、改変細胞が成熟樹状細胞表現型を含み、非増殖性であること;ならびに細胞の集団および白血病由来の改変細胞を、免疫細胞の増殖を刺激するために好適な条件下で同時培養し、それによりメモリーT細胞の集団を生成することを含む、方法が提供される。
【0008】
ある特定の例示的実施形態では、細胞の集団は、操作された免疫受容体を含む免疫細胞を含む。ある特定の例示的実施形態では、操作された免疫受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)である。
【0009】
他の態様では、活性化状態が増強された自家T細胞の集団を生成するための方法であって、がんに罹患している患者から自家T細胞の集団を得ること;自家T細胞の集団を、患者における腫瘍抗原に結合するキメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)から選択される操作された免疫受容体を発現するように改変すること;改変自家T細胞の集団を白血病由来の改変細胞と接触させることであって、改変細胞が成熟樹状細胞表現型を含み、非増殖性であること;ならびに改変自家T細胞の集団および白血病由来の改変細胞を、改変自家T細胞の増殖を刺激するために好適な条件下で同時培養し、それにより活性化状態が増強された自家T細胞の集団を生成することを含む、方法が提供される。
【0010】
ある特定の例示的実施形態では、方法は、がんに罹患している患者を処置するためであり、活性化状態が増強された自家細胞の集団をがんに罹患している患者に投与することをさらに含む。
【0011】
他の態様では、抗腫瘍抗原特異性を含む自家T細胞の集団を増やすための方法であって、がんに罹患している患者から自家T細胞の集団を得ること;自家T細胞の集団を、患者における腫瘍細胞上の腫瘍抗原に結合するキメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)から選択される操作された免疫受容体を発現するように改変すること;改変自家T細胞の集団を白血病由来の改変細胞と接触させることであって、改変細胞が成熟樹状細胞表現型を含み、非増殖性であること;ならびに改変自家T細胞の集団および白血病由来の改変細胞を、改変自家T細胞の集団を増やし、刺激するために好適な条件下で同時培養し、それにより抗腫瘍抗原特異性を含む改変自家T細胞の集団を生成することを含み、抗腫瘍抗原特異性を含む改変自家T細胞の集団が患者の腫瘍細胞と反応することができる、方法。
【0012】
ある特定の例示的実施形態では、改変自家細胞の集団は、操作された免疫受容体が結合する腫瘍抗原を発現しない患者の腫瘍細胞と反応することができる。
【0013】
ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、WT-1、RHAMM、PRAME、MUC-1、p53およびサバイビンからなる群から選択される少なくとも1つの腫瘍抗原を含む。
【0014】
ある特定の例示的実施形態では、免疫細胞は、白血病由来の改変細胞によって表される内在性細胞への曝露後に活性化される。
【0015】
ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、CD34陽性、CD1a陽性、CD83陽性およびCD14陰性である。ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、DC-SIGN、ランゲリン(Langerin)、CD40、CD70、CD80、CD83、CD86およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される細胞表面マーカーをさらに含む。ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、さらに:CD40陽性、CD80陽性およびCD86陽性である。ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、共刺激分子を含む。ある特定の例示的実施形態では、共刺激分子は、CD70である。ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、MHCクラスI分子を含む。ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、MHCクラスII分子を含む。
【0016】
ある特定の例示的実施形態では、改変細胞に、外来性抗原またはそのペプチド断片が負荷される。ある特定の例示的実施形態では、外来性抗原は、腫瘍関連抗原(TAA)または非腫瘍関連抗原である。ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、外来性抗原を発現することができる。ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、外来性抗原を発現することができない。ある特定の例示的実施形態では、外来性抗原は、ペプチド、ヌクレオチド配列、全タンパク質または腫瘍可溶化液の形態で提供される。ある特定の例示的実施形態では、外来性抗原は、操作された免疫受容体が結合する抗原に適合する。ある特定の例示的実施形態では、外来性抗原は、操作された免疫受容体が結合する抗原とは異なる。
【0017】
ある特定の例示的実施形態では、白血病由来の改変細胞に、成熟樹状細胞表現型を提示する前に外来性抗原またはそのペプチド断片が負荷される。ある特定の例示的実施形態では、白血病由来の改変細胞に、白血病由来の改変細胞の成熟樹状細胞表現型への移行の際に外来性抗原またはそのペプチド断片が負荷される。ある特定の例示的実施形態では、白血病由来の改変細胞に、白血病由来の改変細胞が成熟樹状細胞表現型を提示する前、後に、外来性抗原またはそのペプチド断片が負荷される。
【0018】
ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、染色体11p15.5と11p12との間に遺伝子異常を含む。ある特定の例示的実施形態では、遺伝子異常は、約16Mbのゲノム領域を包含する。
【0019】
ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は照射されている。
【0020】
ある特定の例示的実施形態では、免疫細胞または自家T細胞の増殖を刺激するために好適な条件は、シグナル-1を免疫細胞に提供することを含む。ある特定の例示的実施形態では、シグナル-1は、改変細胞によって提供される。ある特定の例示的実施形態では、シグナル-1は、TCR/CD3複合体の活性化を含む。
【0021】
ある特定の例示的実施形態では、免疫細胞または自家T細胞の増殖を刺激するために好適な条件は、シグナル-2を免疫細胞に提供することを含む。ある特定の例示的実施形態では、シグナル-2は、改変細胞によって提供される。ある特定の例示的実施形態では、シグナル-2は、共刺激分子の活性化を含む。ある特定の例示的実施形態では、共刺激分子は、CD70である。
【0022】
ある特定の例示的実施形態では、細胞または自家T細胞の集団は、ヒト由来である。ある特定の例示的実施形態では、細胞または自家T細胞の集団は、CD4+細胞およびCD8+細胞の両方を含み、方法は、CD4+細胞およびCD8+細胞の両方の複合刺激を生じる。ある特定の例示的実施形態では、細胞または自家T細胞の集団は、CD4+細胞およびCD8+細胞の両方を含み、方法は、CD4+細胞のCD8+細胞に対する比の増加を生じる。ある特定の例示的実施形態では、細胞または自家T細胞の集団は、刺激されていないT細胞を含む。
【0023】
ある特定の例示的実施形態では、細胞または自家T細胞の集団が、機能性内在性TCRレパートリーを含む。
【0024】
ある特定の例示的実施形態では、細胞または自家T細胞の集団は、白血病由来の改変免疫細胞の外来性抗原を標的化するように操作されている。
【0025】
ある特定の例示的実施形態では、細胞または自家T細胞の集団は、白血病由来の改変細胞の同じ腫瘍関連抗原(TAA)を標的化するように操作されている。
【0026】
ある特定の例示的実施形態では、細胞または自家T細胞の集団は、白血病由来の改変免疫細胞によって提示される非腫瘍由来抗原と交差反応性である。
【0027】
ある特定の例示的実施形態では、非腫瘍由来抗原は、ウイルス性またはワクチン由来リコール抗原である。
【0028】
ある特定の例示的実施形態では、操作された免疫細胞は、エプスタイン・バーウイルス(Epstein Barr Virus)(EBV)特異的T細胞である。
【0029】
ある特定の例示的実施形態では、CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインならびに、共刺激ドメインおよび一次シグナル伝達ドメインを含む細胞内ドメインを含む。ある特定の例示的実施形態では、抗原結合ドメインは、全長抗体もしくはその抗原結合性断片、Fab、単鎖可変断片(scFv)または単一ドメイン抗体を含む。ある特定の例示的実施形態では、抗原結合ドメインは、腫瘍関連抗原(TAA)または非腫瘍関連抗原に対して特異的である。
【0030】
ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、外来性抗原またはそのペプチド断片を含み、抗原結合ドメインは、外来性抗原とは異なる、腫瘍関連抗原(TAA)または非腫瘍関連抗原に対して特異的である。
【0031】
ある特定の例示的実施形態では、CARは、ヒンジ領域をさらに含む。ある特定の例示的実施形態では、ヒンジ領域は、抗体のFc断片、抗体のヒンジ領域、抗体のCH2領域、抗体のCH3領域、人工ヒンジドメイン、CD8のアミノ酸配列を含むヒンジまたはこれらの任意の組合せからなる群から選択されるヒンジドメインである。ある特定の例示的実施形態では、膜貫通ドメインは、人工疎水性配列、I型膜貫通タンパク質の膜貫通ドメイン、T細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖もしくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、ICOS(CD278)またはCD154およびキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)由来膜貫通ドメインからなる群から選択される。ある特定の例示的実施形態では、細胞内ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む。ある特定の例示的実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、TNFRスーパーファミリー内のタンパク質、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、PD-1、CD7、LIGHT、CD83L、DAP10、DAP12、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-I、TNFR-II、Fas、CD30、CD40、ICOS(CD278)、NKG2C、B7-H3(CD276)およびキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)由来細胞内ドメインまたはこれらの変異体からなる群から選択されるタンパク質の1つまたは複数の共刺激ドメインを含む。ある特定の例示的実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ゼータ鎖(CD3ζ)の細胞質シグナル伝達ドメイン、FcγRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質側末端、細胞質受容体を保有する免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、TCRゼータ、FcRガンマ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79bおよびCD66d、またはこれらの変異体からなる群から選択される細胞内ドメインを含む。
【0032】
ある特定の例示的実施形態では、TCRは、免疫細胞または自家T細胞に対して内在性である。ある特定の例示的実施形態では、TCRは、免疫細胞または自家T細胞に対して外来性である。ある特定の例示的実施形態では、TCRは、TCRアルファ鎖およびTCRベータ鎖を含む。ある特定の例示的実施形態では、TCRは、野生型TCR、高親和性TCRおよびキメラTCRからなる群から選択される。ある特定の例示的実施形態では、TCRは、全長TCR、二量体TCRおよび単鎖TCRからなる群から選択される。
【0033】
ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、外来性抗原またはそのペプチド断片を含み、TCRは、外来性抗原とは異なる、腫瘍関連抗原(TAA)または非腫瘍関連抗原に対して特異的である。ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、外来性抗原またはそのペプチド断片を含み、TCRは、外来性抗原と同じである、腫瘍関連抗原(TAA)または非腫瘍関連抗原に対して特異的である。
【0034】
他の態様では、免疫細胞を白血病由来の改変細胞と接触させることによって抗原特異的免疫細胞の生成を誘導することを含む、抗原特異的免疫細胞を生成するための方法であって、改変細胞が成熟樹状細胞表現型を含み、非増殖性である、方法が提供される。
【0035】
ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、標的抗原を含む。ある特定の例示的実施形態では、標的抗原は、改変細胞に対して内在性であり、WT-1、RHAMM、PRAME、MUC-1、p53、サバイビンおよびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。ある特定の例示的実施形態では、標的抗原は、改変細胞に対して外来性である。ある特定の例示的実施形態では、標的抗原は、腫瘍関連抗原(TAA)または非腫瘍関連抗原である。
【0036】
ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、CD34陽性、CD1a陽性、CD83陽性およびCD14陰性である。ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、DC-SIGN、ランゲリン、CD40、CD70、CD80、CD83、CD86およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される細胞表面マーカーをさらに含む。ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、さらに:CD40陽性、CD80陽性およびCD86陽性である。ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、共刺激分子を含む。ある特定の例示的実施形態では、共刺激分子は、CD70である。ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、MHCクラスI分子を含む。ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、MHCクラスII分子を含む。ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、染色体11p15.5と11p12との間に遺伝子異常を含む。ある特定の例示的実施形態では、遺伝子異常は、約16Mbのゲノム領域を包含する。
【0037】
ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は照射されている。
【0038】
他の態様では、改変免疫細胞の集団を増やすための方法であって、改変免疫細胞の集団を得ることであって、改変免疫細胞が免疫受容体を含むこと;細胞の集団を白血病由来の改変細胞と接触させることであって、改変細胞が成熟樹状細胞表現型を含み、非増殖性であること;および改変免疫細胞の集団を改変免疫細胞の増殖を刺激するために好適な条件下で培養し、それにより改変免疫細胞の集団を増やすことを含む、方法が提供される。
【0039】
ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、標的抗原を含む。ある特定の例示的実施形態では、標的抗原は、改変細胞に対して内在性であり、WT-1、RHAMM、PRAME、MUC-1、p53、サバイビンおよびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。ある特定の例示的実施形態では、標的抗原は、改変細胞に対して外来性である。ある特定の例示的実施形態では、標的抗原は、腫瘍関連抗原(TAA)または非腫瘍関連抗原である。
【0040】
ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、CD34陽性、CD1a陽性、CD83陽性およびCD14陰性である。ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、DC-SIGN、ランゲリン、CD40、CD70、CD80、CD83、CD86およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される細胞表面マーカーをさらに含む。ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、さらに:CD40陽性、CD80陽性およびCD86陽性である。ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、共刺激分子を含む。ある特定の例示的実施形態では、共刺激分子は、CD70である。ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、MHCクラスI分子を含む。ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、MHCクラスII分子を含む。ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、染色体11p15.5と11p12との間に遺伝子異常を含む。ある特定の例示的実施形態では、遺伝子異常は、約16Mbのゲノム領域を包含する。
【0041】
ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は照射されている。
【0042】
ある特定の例示的実施形態では、免疫細胞の増殖を刺激するために好適な条件は、シグナル-1を免疫細胞に提供することを含む。ある特定の例示的実施形態では、シグナル-1は、改変細胞によって提供される。ある特定の例示的実施形態では、シグナル-1は、TCR/CD3複合体の活性化を含む。
【0043】
ある特定の例示的実施形態では、免疫細胞の増殖を刺激するために好適な条件は、シグナル-2を免疫細胞に提供することを含む。ある特定の例示的実施形態では、シグナル-2は、改変細胞によって提供される。ある特定の例示的実施形態では、シグナル-2は、共刺激分子の活性化を含む。ある特定の例示的実施形態では、共刺激分子は、CD70である。
【0044】
他の態様では、それを必要とする対象において疾患または障害を処置するための方法であって、対象に、前記請求項に記載の方法のいずれか1つによって産生された改変免疫細胞を投与することを含む、方法が提供される。
【0045】
ある特定の例示的実施形態では、疾患または障害はがんである。
【0046】
ある特定の例示的実施形態では、改変細胞は、がんに罹患している患者由来の自家細胞である。
【0047】
ある特定の例示的実施形態では、がんは腫瘍である。ある特定の例示的実施形態では、腫瘍は、液性腫瘍である。ある特定の例示的実施形態では、腫瘍は、固形腫瘍である。
【0048】
他の態様では、それを必要とする対象において腫瘍を処置するための方法であって、対象に、前記方法のいずれか1つによって産生された改変免疫細胞を投与することを含む、方法が提供される。
【0049】
ある特定の例示的実施形態では、免疫細胞は、外来性抗原またはそのペプチド断片に対する特異性を含む。ある特定の例示的実施形態では、免疫細胞は、外来性抗原またはそのペプチド断片に対する特異性を含む操作された免疫受容体を含む。ある特定の例示的実施形態では、操作された免疫受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)である。
【0050】
ある特定の例示的実施形態では、方法は、対象の腫瘍部位に組成物を投与することを含む腫瘍マーキング工程をさらに含み、ここで組成物は、外来性抗原またはそのペプチド断片を含む。
【0051】
ある特定の例示的実施形態では、外来性抗原は、腫瘍関連抗原(TAA)または非腫瘍関連抗原である。
【0052】
ある特定の例示的実施形態では、腫瘍マーキング工程は、腫瘍または腫瘍の近位に組成物を投与することを含む。ある特定の例示的実施形態では、腫瘍マーキング工程は、改変免疫細胞が投与された後に実施される。ある特定の例示的実施形態では、腫瘍マーキング工程は、改変免疫細胞が投与される前に実施される。
【0053】
ある特定の例示的実施形態では、免疫細胞は、T細胞である。ある特定の例示的実施形態では、免疫細胞は、自家T細胞である。
【0054】
ある特定の例示的実施形態では、非腫瘍関連抗原は、ウイルス由来、細菌由来または真菌由来のものである。ある特定の例示的実施形態では、非腫瘍関連抗原は、アレルゲン、毒素または毒である。ある特定の例示的実施形態では、非腫瘍関連抗原は、アレルゲン、毒素または毒である。ある特定の例示的実施形態では、非腫瘍関連抗原は、ジフテリア毒素またはその無毒変異体である。ある特定の例示的実施形態では、非腫瘍関連抗原は、CRM197またはその変異体である。ある特定の例示的実施形態では、非腫瘍関連抗原は、サイトメガロウイルス(CMV)由来ペプチドである。ある特定の例示的実施形態では、非腫瘍関連抗原は、pp65ペプチドである。
【0055】
他の実施形態は、続く詳細な記載、図面および添付の特許請求の範囲の検討から明らかになるであろう。
【0056】
本開示の上記および他の特色および利点は、附属の図面と共に、以下の例示的な実施形態の詳細な説明からより完全に理解される。本特許のファイルは、色を施した少なくとも1つの図面/写真を含有する。カラー図面/写真を伴う本特許の複製物は、請求および必要な手数料の支払いに際して事務局により提供される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1A図1Aは、1)T細胞(メモリー表現型)の富化および活性化状態を改善するため;2)養子T細胞プールにおいて追加の腫瘍標的化特異性を誘導する(内在性もしくは外来性抗原に基づいて)ため;ならびに/またはCAR発現T細胞の増量(expansion)を改善する(表現型、生存率およびCAR発現レベル)ために、DCOne mDCが、CAR T製造プロセスの2つの異なる工程において添加され得ることを示す。
図1B図1Bは、本開示の実施形態によるDCOne mDCの使用を表す概略図である。
図1C図1Cは、本開示の実施形態によるDCOne mDCの使用を表す概略図である。
図2図2は、DCOneプロジェニター(progenitor)および成熟樹状細胞表現型を有するDCOne細胞(mDC)の発現プロファイルを示すプロットを表す。
図3図3は、DCOneプロジェニターまたはDCOne mDCの添加から生ずる増殖細胞のパーセンテージを示すグラフを表す。
図4図4A~4Gは、DCP-001により刺激されたPBMCにおける炎症性サイトカインおよびエフェクターサイトカインの放出を実証するプロットを表す。特に、プロットは、IL-1β(図4A)、GM-CSF(図4B)、IFNγ(図4C)、IL-2(図4D)、TNFα(図4E)、IL-8(図4F)およびRANTES(図4G)の放出を表す。
図5図5A~5Cは、DCP-001が、健康なドナーおよび卵巣がん患者PBMCにおいてCD3 T細胞(図5A)、CD4+T細胞(図5B)およびCD8+T細胞(図5C)のT細胞増殖を刺激したことを実証するプロットを表す。
図6図6A~6Dは、DCOne mDC(DCP-001)が発現する抗原に対する抗原特異的T細胞クローンの応答を実証するプロットを表す。図6Aは、DCP-001へのPRAME T細胞クローンの応答を示し;図6Bは、DCP-001へのWT-1 T細胞クローンの応答を示し;図6Cは、DCP-001へのMUC-1 T細胞クローンの応答を示し、図6Dは、DCP-001へのRHAMM T細胞クローンの応答を示す。
図7図7A~7Bは、外来性抗原を負荷したDCOne mDCは、IFNγ発現により測定される通り、インビトロ(in vitro)において抗原特異的T細胞の強力な刺激剤であったことを実証するグラフを表す。図7Aは、適合外来性抗原(WT-1)を含む外来性抗原を負荷したDCOne mDCによるWT-1特異的T細胞の刺激を示す。図7Bは、適合外来性抗原(NY-ESO-1)を含む外来性抗原を負荷したDCOne mDCによるNY-ESO-1特異的T細胞の刺激を示す。IFN応答は、NY-ESO-1特異的T細胞への応答におけるIFNγの誘導である。
図8図8A~8Dは、DCP-001によるPBMCのインビトロ刺激が、卵巣がん患者(OC患者;図8Aおよび図8C)ならびに健康なドナー(図8Bおよび図8D)の両方からのPBMCにおいてCD45RO発現の増大をもたらすことを示すグラフを表す。
図9図9A~9Dは、DCP-001によるPBMCのインビトロ刺激が、卵巣がん患者(OC患者;図9Aおよび図9C)ならびに健康なドナー(図9Bおよび図9D)の両方からのPBMCにおいてCD4+/CD8+比の増加を誘発したことを示すグラフを表す。
図10図10A~10Bは、DCOne RNA取り込み(図10A)およびグランザイムB死滅(図10B)により測定される通り、DCP001が、多発性骨髄腫(MM)患者のPBMCにおいてT細胞活性化および骨髄腫特異的免疫を誘導したことを示すグラフを表す。
図11図11は、DCOneによるPBMCのインビトロ刺激が、様々な白血病がん細胞系への細胞傷害性T細胞応答を誘導したことを示すグラフを表す。
図12図12は、DCOne mDCが、卵巣がん患者からのSKOV卵巣がん細胞系への細胞傷害性T細胞応答を誘導したことを示すグラフを表す。
図13図13は、インビボ(in vivo)においてDCP-001と養子細胞療法とを組み合わせるための治療原理を示すグラフを表す。
図14図14は、CMVpp65-FITCまたはCRM197-CMVpp65-FITCペプチドの、DCOne mDC細胞における取り込みパーセントを示すプロットである。
図15図15は、示される通りに負荷したDCOne mDCの培地中において検出されたIFN-γのレベルを示すプロットである。
図16図16A~16Cは、OVCAR3(図16A)、OV90(図16B)およびU87MG(図16C)細胞におけるCMVpp65-FITCまたはCRM197-CMVpp65-FITCペプチドの取り込みパーセントを示すプロットである。
図17A図17A~17Cは、5:1のエフェクター:標的(E:T)比において、CRM197-CMVpp65コンジュゲート/ペプチドによりマーキングしたHLA-A2+U87-MG腫瘍細胞とインキュベートした、CRM-CMVpp65コンジュゲートによりパルス刺激したDCOne mDCを伴ってまたは伴わずに刺激したCMVpp65 T細胞クローン、およびELISAにより上清中において分析されたエフェクターサイトカインIFNγを示すプロットである(図17A)。CMVpp65ペプチドによりマーキングした腫瘍細胞によるCMVpp65特異的CD8 T細胞の刺激は、CD107a発現(図17B)および腫瘍細胞の溶解(図17C)における増大をもたらす。
図17B図17A~17Cは、5:1のエフェクター:標的(E:T)比において、CRM197-CMVpp65コンジュゲート/ペプチドによりマーキングしたHLA-A2+U87-MG腫瘍細胞とインキュベートした、CRM-CMVpp65コンジュゲートによりパルス刺激したDCOne mDCを伴ってまたは伴わずに刺激したCMVpp65 T細胞クローン、およびELISAにより上清中において分析されたエフェクターサイトカインIFNγを示すプロットである(図17A)。CMVpp65ペプチドによりマーキングした腫瘍細胞によるCMVpp65特異的CD8 T細胞の刺激は、CD107a発現(図17B)および腫瘍細胞の溶解(図17C)における増大をもたらす。
図17C図17A~17Cは、5:1のエフェクター:標的(E:T)比において、CRM197-CMVpp65コンジュゲート/ペプチドによりマーキングしたHLA-A2+U87-MG腫瘍細胞とインキュベートした、CRM-CMVpp65コンジュゲートによりパルス刺激したDCOne mDCを伴ってまたは伴わずに刺激したCMVpp65 T細胞クローン、およびELISAにより上清中において分析されたエフェクターサイトカインIFNγを示すプロットである(図17A)。CMVpp65ペプチドによりマーキングした腫瘍細胞によるCMVpp65特異的CD8 T細胞の刺激は、CD107a発現(図17B)および腫瘍細胞の溶解(図17C)における増大をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0058】
詳細な記載
免疫細胞の刺激および増大を改善するための方法、ならびに抗原特異的免疫細胞およびメモリー表現型の免疫細胞を生成するための方法が本明細書において提供される。遺伝子改変された免疫細胞の効果を増強するための方法も提供される。ある特定の実施形態では、方法は、細胞(例えば、免疫細胞を含む)の集団を白血病由来の改変細胞と接触させることを含む。疾患または障害を処置するための方法も提供され、白血病由来の非増殖性改変細胞の養子細胞療法を受けている対象への投与を含む。かかる方法は、養子細胞療法後に、遺伝子改変された免疫細胞の臨床効果の持続期間を延長できる、および/または対象を安定化させるように機能できる。ある特定の実施形態では、白血病由来の改変細胞は、非増殖性(例えば、照射を介して)である。ある特定の実施形態では、白血病由来の非増殖性改変細胞は、非増殖性DCOne由来細胞である。
【0059】
本明細書において記載される方法は、本明細書において開示される特定の方法および実験条件に、そのような方法および条件が変動する場合があることから、限定されないことは理解される。本明細書において使用される専門用語は、具体的な実施形態を記載する目的のためのみであり、限定することを意図しないことも理解される。本明細書において記載される方法は、当業者の技術の範囲内である従来の分子および細胞生物学的技術ならびに免疫学的技術を使用する。かかる技術は、当業者に十分周知であり、科学文献において説明されている。
【0060】
A.定義
他に定義されない限り、本明細書において使用される科学的および技術的な用語は、当業者によって一般に理解される意味を有する。なんらかの潜在的な曖昧性がある場合には、本明細書によって提供される定義は、いかなる辞書的定義または外的定義より先行する。文脈によって必要とされない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形の用語は単数を含むものとする。「または」の使用は、他に明記しない限り「および/または」を意味する。用語「含んでいる(including)」ならびに他の形、例えば「含む(includes)」および「含んだ(included)」の使用は、非限定的である。
【0061】
一般に、本明細書において記載される細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学ならびにタンパク質および核酸化学ならびにハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法は、当技術分野において十分周知であり、一般に使用されている。本明細書において提供される方法および技術は、当技術分野において十分周知の従来の方法に従ってならびに、他に示さない限り、本明細書全体を通じて引用され、考察される種々の一般的なおよびさらに詳細な参考文献に記載のとおり一般に実施される。当技術分野において一般に達成されるとおり、または本明細書に記載のとおり、酵素反応および精製技術は、製造者の仕様書に従って実施される。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学ならびに医薬品化学および製薬化学に関連して使用される命名法、ならびにその検査手技および技術は、当技術分野において十分周知であり、一般に使用されるものである。標準的技術は、化学合成、化学分析、医薬品、製剤およびデリバリーならびに患者の処置のために使用される。
【0062】
選択語は下に定義され、本開示はさらに容易に理解され得る。
【0063】
冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法的対象の1つまたは1つより多い(すなわち、少なくとも1つ)を指して本明細書において使用される。例として「要素(an element)」は、1つの要素または1つより多い要素を意味する。
【0064】
量、時間的な持続期間などの測定可能な値を参照して本明細書で使用される場合、「約」は、明示される値からの±20%または±10%、例えば、±5%、±1%または±0.1%の変動を包含することを意味し、かかる変動は開示される方法を実施するために妥当である。
【0065】
「活性化」は、本明細書で使用される場合、検出可能な細胞増殖を誘導するように十分に刺激されているT細胞の状態を指す。活性化は、サイトカイン産生の誘導および検出可能なエフェクター機能とも関連し得る。用語「活性化T細胞」は、細胞分裂しているT細胞をとりわけ指す。
【0066】
本明細書で使用される場合、疾患を「軽減する」は、疾患の1つまたは複数の症状の重症度を低減することを意味する。
【0067】
用語「抗原」は、本明細書で使用される場合、免疫応答を誘発する分子として定義される。この免疫応答は、抗体産生もしくは特定の免疫学的に適格な細胞の活性化または両方に関与し得る。当業者は、実質的にすべてのタンパク質またはペプチドを含む任意の高分子が、抗原として役立ち得ることを理解する。
【0068】
用語「抗原」または「抗原性」は、本明細書に記載されるポリペプチドに関連して使用される場合、T細胞受容体、抗体または、特異的な液性免疫および/もしくは細胞性免疫の他の要素によって特異的に認識される少なくとも1つのエピトープを含有する生体分子を一般に指す。全分子が、または分子の1つまたは複数の部分が、例えばMHCペプチド抗原複合体へのポリペプチドの細胞内プロセシングおよび続く抗原提示後に認識され得る。用語「抗原性ポリペプチド」は、「ポリペプチド抗原」と互換的である。この専門用語は、例えば、ポリペプチドの細胞内プロセシング後に産生された、およびMHCペプチド抗原複合体の文脈において、前記ポリペプチドの抗原性部分を含む。用語「抗原」または「抗原性」は、本明細書に記載されるポリペプチドの少なくとも1つ、またはそれを超える抗原性エピトープへの言及を含む。ある特定の実施形態では、「非腫瘍抗原」は、本明細書において、腫瘍由来ではない抗原を指す。例えば、ある特定の実施形態では、非腫瘍抗原は、異種抗原(foreign antigen)であり得る。
【0069】
「腫瘍非依存性抗原(tumor-independent antigen)」は、本明細書において、対象が現在罹患している腫瘍由来ではない抗原を指す。例えば、ある特定の実施形態では、腫瘍非依存性抗原は、異種抗原であり得る。腫瘍非依存性抗原は、ヒトまたは非ヒトであってよい。ある特定の実施形態では、腫瘍非依存性抗原を有するヒト対象の腫瘍をマーキングする文脈において、腫瘍非依存性抗原は、ヒト由来ではないものであり得る。ある特定の実施形態では、腫瘍非依存性抗原を有する宿主対象の腫瘍をマーキングする文脈において、腫瘍非依存性抗原は、宿主由来ではないものであり得る。ある特定の実施形態では、腫瘍非依存性抗原は、対象が現在罹患している腫瘍によって発現されない抗原であり得る。例えば、対象が現在膵がんに罹患している場合、腫瘍非依存性抗原は、膵がん非依存性抗原である。かかる例では、膵がん非依存性抗原は、膵がんによって発現されない非膵がん由来の抗原、例えば、膵がんによって発現されない卵巣がん抗原であり得る。同様に、ある特定の抗原が、ある特定の腫瘍の種類において強い免疫応答と関連する場合、かかる抗原は、かかる抗原を発現しない同じ種類の腫瘍に導入され得る。これは、例えば、卵巣がんにおける精巣関連抗原様NY-ESO-1についての場合であり得る。
【0070】
腫瘍非依存性抗原は、リコール抗原であり得る。用語「リコール抗原」は、本明細書で使用される場合、それ以前(例えば、対象における腫瘍の発生前、または腫瘍マーキング工程の前)に、対象が遭遇したことがある抗原(例えば、抗原性ポリペプチド)を指す。リコール抗原は、対象が以前遭遇したことがあり、それに対して対象において既にメモリーリンパ球(例えば、メモリーT細胞および/またはメモリーB細胞)が存在するものである。ある特定の実施形態では、リコール抗原は、それに対して既にメモリーリンパ球が、例えば、先行する感染またはワクチン接種の結果として対象に存在する抗原(例えば、抗原性ポリペプチド)を指す。ある特定の実施形態では、リコール抗原は、ワクチン接種を介して対象が既に遭遇したことがある抗原性ポリペプチドを指す。ある特定の実施形態では、リコール抗原は、前記対象においてそれに対する免疫性が既に存在する抗原性ポリペプチドである。
【0071】
さらに抗原は、組換えまたはゲノムDNA由来であり得る。当業者は、免疫応答を誘発するタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分ヌクレオチド配列を含む任意のDNAが、それにより、本明細書において使用される用語「抗原」をコードすることを理解する。さらに当業者は、抗原が遺伝子の全長ヌクレオチド配列によって単独でコードされる必要はないことを理解する。本開示が、これだけに限定されないが、1つより多い遺伝子の部分ヌクレオチド配列の使用を含み、これらのヌクレオチド配列が所望の免疫応答を誘発するために種々の組合せで配置されることは容易に明らかである。さらに当業者は抗原が「遺伝子」によってコードされる必要が全くないことを理解する。抗原が生成され、合成され得ること、または生体試料に由来し得ることは容易に明らかである。かかる生体試料として、これだけに限定されないが、組織試料、腫瘍試料、細胞または生体液が挙げられる。
【0072】
本明細書で使用される場合、用語「自家」は、後に個体に再度導入される、同じ個体由来の任意の材料を指して意味する。
【0073】
「共刺激リガンド」は、T細胞上の同族共刺激分子に特異的に結合し、それにより例えば、TCR/CD3複合体の、ペプチドが負荷されたMHC分子との結合によってもたらされる一次シグナルに加えてシグナルを提供し、これだけに限らないが、増殖活性化、分化などが挙げられるT細胞応答を媒介する、抗原提示細胞上の分子を指す。共刺激リガンドとして、これだけに限らないが、CD7、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、PD-L1、PD-L2、4-1BBL、OX40L、誘導性共刺激リガンド(ICOS-L)、細胞間接着分子(ICAM、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA-G、MICA、M1CB、HVEM、リンホトキシンベータ受容体、3/TR6、ILT3、ILT4、Tollリガンド受容体に結合するアゴニストまたは抗体およびB7-H3に特異的に結合するリガンドが挙げられる。共刺激リガンドは、これだけに限らないが、CD27、CD28、4-IBB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LTGHT、NKG2C、B7-H3およびCD83に特異的に結合するリガンドなどの、T細胞上に存在する共刺激分子に特異的に結合する抗体も、とりわけ包含する。
【0074】
「共刺激分子」は、共刺激リガンドに特異的に結合し、それにより、これだけに限らないが増殖などの細胞による共刺激応答を媒介するT細胞上の同族結合パートナーを指す。共刺激分子として、これだけに限らないが、MHCクラスI分子、BTLAおよびTollリガンド受容体が挙げられる。共刺激分子の例として、CD27、CD28、CD8、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83に特異的に結合するリガンドなどが挙げられる。
【0075】
本明細書で使用される場合、「共刺激シグナル」は、一次シグナル、例えばTCR/CD3ライゲーションとの組み合わせで、T細胞増殖および/または鍵分子の上方制御もしくは下方制御をもたらすシグナルを指す。ある特定の例示的実施形態では、共刺激シグナルはCD70である。
【0076】
「疾患」は、動物がホメオスタシスを維持できず、疾患が回復しない場合に動物の健康が悪化し続ける動物の健康の状態である。対照的に動物における「障害」は、動物がホメオスタシスを維持することができるが、動物の健康の状態が障害がない場合よりもあまり良くない健康の状態である。処置しないままでも、障害は、動物の健康の状態のさらなる低下を必ずしも生じない。
【0077】
「有効量」または「治療有効量」は、本明細書において互換的に使用され、特定の生物学的結果を達成するために有効な、または治療的もしくは予防的利益を提供する、本明細書に記載される化合物、製剤、材料または組成物の量を指す。かかる結果として、これだけに限らないが、哺乳動物に投与される場合に、本開示の組成物の非存在で検出される免疫応答と比較して検出可能なレベルの免疫抑制またはトレランスを生じる量が挙げられる。免疫応答は、当技術分野において認められている多数の方法によって容易に評価され得る。当業者は、本明細書において投与される組成物の量は変動し、処置される疾患または状態、処置される哺乳動物の年齢ならびに健康および身体の状態、疾患の重症度、投与される具体的な化合物などの多数の要因に基づいて容易に決定され得ることを理解する。
【0078】
「コードする」は、生物学的プロセスにおいて他のポリマーおよび高分子の合成のための鋳型として役立ち、ヌクレオチドの定義された配列(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)またはアミノ酸の定義された配列およびそれから生じる生物学的特性を有する、ポリヌクレオチド、例えば、遺伝子、cDNAまたはmRNA中のヌクレオチドの特定の配列の固有の特性を指す。したがって、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が、細胞または他の生物システムにおいてタンパク質を産生する場合に、遺伝子は、タンパク質をコードしている。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常配列表に示されるコード鎖、および遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として使用される非コード鎖の両方が、タンパク質またはその遺伝子もしくはcDNAの他の産生物をコードすると称され得る。
【0079】
本明細書で使用される場合、「内在性」は、生物、細胞、組織またはシステムの内部由来のまたは内部で産生される任意の材料を指す。
【0080】
本明細書で使用される場合、用語「外来性」は、生物、細胞、組織またはシステムの外部由来のまたは外部で産生される任意の材料を指す。
【0081】
用語「増やす」は、本明細書で使用される場合、T細胞の数の増加などの数の増加を指す。一実施形態では、エクスビボで増やされるT細胞は、培養物中で元々存在する数と比較して数が増加する。別の実施形態では、エクスビボで増やされるT細胞は、培養物中の他の種類の細胞と比較して数が増加する。用語「エクスビボ」は、本明細書で使用される場合、生きている生物(例えば、ヒト)から取り出され、生物の外(例えば、培養皿、試験管またはバイオリアクター中)で増殖(propagated)された細胞を指す。
【0082】
用語「発現」は、本明細書で使用される場合、そのプロモーターによって駆動される特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳として定義される。
【0083】
「発現ベクター」は、発現されるヌクレオチド配列に作動可能に連結された発現調節配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現のための十分なcis作用エレメントを含み;発現のための他のエレメントは、宿主細胞によって、またはインビトロ発現系において供給され得る。発現ベクターは、当技術分野において周知のすべてのもの、例えばコスミド、プラスミド(例えば、ネイキッドまたはリポソームに含有されている)および、組換えポリヌクレオチドを組み込むウイルス(例えば、センダイウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)を含む。
【0084】
用語「免疫応答」は、本明細書で使用される場合、T細胞媒介および/またはB細胞媒介免疫応答を含む。T細胞の例示的免疫機能として、例えば、サイトカイン産生および他の細胞における細胞傷害性の誘導が挙げられる。B細胞機能として、抗体産生が挙げられる。加えて用語は、T細胞活性化によって間接的に影響を受ける免疫応答、例えば抗体産生およびサイトカイン応答性細胞、例えばマクロファージの活性化を含む。免疫応答に関与する免疫細胞として、リンパ球、例えばB細胞およびT細胞(CD4細胞およびCD8細胞);抗原提示細胞(例えば、専門の抗原提示細胞、例えば、樹状細胞、マクロファージ、Bリンパ球、ランゲルハンス細胞および他の非専門の抗原提示細胞、例えばケラチノサイト、内皮細胞、アストロサイト、線維芽細胞、オリゴデンドロサイト);ナチュラルキラー細胞;骨髄性細胞、例えば、マクロファージ、好酸球、マスト細胞、好塩基球および顆粒細胞が挙げられる。ある特定の実施形態では、用語は、T細胞媒介免疫応答を指す。一部の実施形態では、免疫応答は、T細胞依存性免疫応答であり得る。当業者は、句「腫瘍に対する免疫応答」が、(i)前記ポリペプチドが負荷された自家もしくは同種異系間樹状細胞を含む樹状細胞、または(ii)前記ポリペプチドをコードする核酸を含むウイルスの腫瘍内投与などの、腫瘍内投与によって腫瘍微小環境に導入される非ヒト抗原性ポリペプチドに対する免疫応答も含むことを理解する。
【0085】
用語「T細胞依存性免疫応答」は、本明細書で使用される場合、T細胞、B細胞のいずれかまたはT細胞およびB細胞集団の両方が活性化され、T細胞がT細胞およびB細胞をさらに支援し、他の免疫細胞がそれらの機能を実行している免疫応答を指す。
【0086】
用語「免疫抑制性」は、全体的な免疫応答を低減することを指して本明細書において使用される。
【0087】
一般に「インデル」と略される「挿入/欠失」は、ゲノムにおいて特定のヌクレオチド配列が存在する(挿入)または欠いている(欠失)遺伝子多型の一種である。
【0088】
「単離」されたは、天然の状態から変更されたまたは除去されたことを意味する。例えば、生きている動物に天然に存在する核酸またはペプチドは、「単離」されていないが、その天然の状態の共存物質から部分的にまたは完全に分離された同じ核酸またはペプチドは、「単離」されている。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在してよい、または例えば、宿主細胞などの非天然環境において存在してよい。
【0089】
「レンチウイルス」は、本明細書で使用される場合、レトロウイルス科の属を指す。レンチウイルスは、非分裂細胞に感染できることにおいてレトロウイルス内で独特である。それらは、宿主細胞のDNAに顕著な量の遺伝情報をデリバリーでき、そのためそれらは、遺伝子デリバリーベクターの最も効率的な方法の1つである。HIV、SIVおよびFIVは、すべてレンチウイルスの例である。レンチウイルス由来のベクターは、インビボでの顕著なレベルの遺伝子トランスファーを達成するための手段を提供する。
【0090】
用語「改変」によって、本明細書で使用される場合、本開示の分子または細胞の状態または構造の変化が意味される。分子は、化学的、構造的および機能的が挙げられる多数の方法において改変され得る。細胞は、核酸の導入を通じて改変され得る。
【0091】
用語「調節する」によって、本明細書で使用される場合、処置もしくは化合物の非存在における対象での応答のレベルと比較して、および/または他は同一であるが未処置の対象における応答のレベルと比較して対象における応答のレベルにおける検出可能な増加または減少を媒介することが意味される。用語は、天然シグナルまたは応答を乱す、および/またはそれに影響を与え、それにより対象、例えば、ヒトにおける有益な治療応答を媒介することを包含する。
【0092】
他に指定されない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いの縮重バージョンである、および同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列を含む。句、タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、一部のバージョンでイントロン(複数可)を含有し得る程度に、イントロンも含み得る。
【0093】
免疫原性組成物の「非経口」投与として、例えば、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、皮内、腹腔内または胸骨内注射または注入技術が挙げられる。
【0094】
用語「ポリヌクレオチド」は、本明細書で使用される場合、ヌクレオチドの鎖として定義される。さらに核酸は、ヌクレオチドのポリマーである。したがって、核酸およびポリヌクレオチドは、本明細書で使用される場合、互換的である。当業者は、核酸がポリヌクレオチドであり、単量体「ヌクレオチド」に加水分解され得るとの一般知識を有する。単量体ヌクレオチドは、ヌクレオシドに加水分解され得る。本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドとして、限定されることなく、組換え手段、すなわち、通常のクローニング技術およびPCRを使用する組換えライブラリーまたは細胞ゲノムからの核酸配列のクローニングを含む当技術分野において利用可能な任意の手段によって、ならびに合成手段によって得られるすべての核酸配列をこれだけに限らないが含む。
【0095】
本明細書で使用される場合、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は、互換的に使用され、ペプチド結合による共有結合で連結されたアミノ酸残基からなる化合物を指す。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含まなければならず、タンパク質の配列またはペプチドの配列を含み得るアミノ酸の最大数に制限は置かれない。ポリペプチドは、ペプチド結合によって相互に繋がれた2つ以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質を含む。本明細書で使用される場合、用語は、例えば、ペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーとしても当技術分野において一般に言及される短い鎖、および多数の種類があるタンパク質として一般に当技術分野において言及される長い鎖の両方を指す。「ポリペプチド」として、例えば、生物学的に活性な断片、実質的に相同性のポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドの変異体、改変ポリペプチド、誘導体、アナログ、融合タンパク質がとりわけ挙げられる。ポリペプチドとして、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチドまたはこれらの組合せが挙げられる。
【0096】
用語「特異的に結合する」は、抗体に関して本明細書で使用される場合、特定の抗原を認識するが、試料中の他の分子を実質的に認識せず、結合しない抗体を意味する。例えば、1つの種由来の抗原に特異的に結合する抗体は、1つまたは複数の種由来のその抗原にも結合する場合がある。しかし、そのような異種間反応性それ自体は、特異的としての抗体の分類を変更しない。別の例では、抗原に特異的に結合する抗体は、抗原の異なるアレル形態にも結合する場合がある。しかし、かかる交差反応性それ自体は、特異的としての抗体の分類を変更しない。一部の場合では、用語「特異的結合」または「特異的な結合」は、抗体、タンパク質またはペプチドの第2の化学種との相互作用を参照して、相互作用が、化学種上の特定の構造(例えば、抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存することを意味して使用され得る。例えば、抗体は、タンパク質一般よりも特定のタンパク質構造を認識し、結合する。抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、標識化「A」および抗体を含有する反応におけるエピトープA(または遊離の、非標識A)を含有する分子の存在は、抗体に結合する標識化Aの量を低減する。
【0097】
用語「刺激」によって、刺激性分子(例えば、TCR/CD3複合体)のその同族リガンドとの結合、それによるシグナル伝達事象、例えばこれだけに限らないが、TCR/CD3複合体を介するシグナル伝達の媒介によって誘導される一次応答が意味される。刺激は、TGF-ベータの下方制御および/または細胞骨格構造の再構築などの、ある特定の分子の発現の変化を媒介できる。
【0098】
用語が本明細書で使用される場合「刺激性分子」は、抗原提示細胞上に存在する同族刺激性リガンドに特異的に結合するT細胞上の分子を意味する。
【0099】
「刺激性リガンド」は、本明細書で使用される場合、抗原提示細胞(例えば、APC、樹状細胞、B細胞など)上に存在する場合に、T細胞上の同族結合パートナー(本明細書において「刺激性分子」と言及される)に特異的に結合でき、それにより、これだけに限らないが、活性化、免疫応答の開始、増殖などのT細胞による一次応答を媒介するリガンドを意味する。刺激性リガンドは、当技術分野において十分周知であり、とりわけ、ペプチドが負荷されたMHCクラスI分子、抗CD3抗体、スーパーアゴニスト抗CD28抗体およびスーパーアゴニスト抗CD2抗体を包含する。
【0100】
用語、「対象」は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載される方法のレシピエント、すなわち、細胞性免疫応答を開始でき、哺乳動物であるレシピエントを指す。ある特定の実施形態では、対象は、ヒトである。ある特定の実施形態では、対象は、家畜、例えば、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネコなどである。用語「患者」および「対象」は、互換的に使用され得る。ある特定の実施形態では、対象は、腫瘍(例えば、固形腫瘍)に罹患しているヒトである。ある特定の実施形態では、対象は、腫瘍(例えば、固形腫瘍)に罹患している家畜である。
【0101】
本明細書で使用される場合、用語「T細胞受容体」または「TCR」は抗原の提示への応答におけるT細胞の活性化に関与する膜タンパク質の複合体を指す。TCRは、主要組織適合性複合体分子に結合した抗原を認識することに関与する。TCRは、アルファ(α)およびベータ(β)鎖のヘテロ二量体から構成されるが、一部の細胞ではTCRはガンマおよびデルタ(γ/δ)鎖からなる。TCRは、構造的に似ているが、異なる解剖学的な位置および機能を有するアルファ/ベータ型およびガンマ/デルタ型で存在し得る。各鎖は、2つの細胞外ドメイン、可変および定常ドメインから構成される。一部の実施形態では、TCRは、例えば、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラーT細胞およびガンマデルタT細胞が挙げられるTCRを含む任意の細胞で改変され得る。
【0102】
用語「治療的」は、本明細書で使用される場合、処置および/または予防を意味する。治療効果は、疾患状態の抑制、寛解または根絶によって得られる。
【0103】
用語「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」は、本明細書で使用される場合、外来性核酸が宿主細胞に移行されるか、または導入されるプロセスを指す。「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」細胞は、外来性核酸をトランスフェクトされた、形質転換されたまたは形質導入されたものである。細胞は、初代対象細胞およびその後代を含む。
【0104】
用語が本明細書において使用される場合、疾患を「処置する」は、対象によって経験される疾患または障害の少なくとも1つの徴候または症状の頻度または重症度を低減することを意味する。
【0105】
用語「腫瘍」は、本明細書で使用される場合、異常に高い速度で増殖する細胞物質、例えば、組織に言及することを含む。新生物細胞を含む生育は、「腫瘍」としても周知である新生物であり、対象の身体内で異なる組織腫瘤を一般に形成する。腫瘍は、正常組織との構造的構成および機能調和の部分的または全体的な欠如を示す場合がある。本明細書で使用される場合、腫瘍は、造血性腫瘍および固形腫瘍を包含することを意図する。ある特定の実施形態では、腫瘍は固形腫瘍である。用語「腫瘍」は、本明細書で使用される場合、腫瘍微小環境または腫瘍部位、すなわち、腫瘍内の領域および腫瘍性組織のすぐ外側の領域に言及することを含む。ある特定の実施形態では、腫瘍微小環境または腫瘍部位は、腫瘍組織の境界内の領域を含む。ある特定の実施形態では、腫瘍微小環境または腫瘍部位は、本明細書において、新生物細胞の細胞膜と新たに形成された新生血管の血管壁との間に挿入されているすべてものとして定義される、腫瘍の腫瘍間質性コンパートメントを含む。本明細書で使用される場合、用語「腫瘍微小環境」または「腫瘍部位」は、腫瘍を直接囲む領域を含む、腫瘍が存在する対象内の位置を指す。
【0106】
腫瘍は、良性(例えば、良性腫瘍)または悪性(例えば、悪性腫瘍もしくはがん)である場合がある。悪性腫瘍は、3つの主な種類に大きく分類され得る:上皮構造から生じるものは癌腫と呼ばれ、筋肉、軟骨、脂肪または骨などの結合組織に由来するものは肉腫と呼ばれ、免疫系の構成成分を含む造血性構造(血液細胞の形成に関与する構造)を冒すものは白血病またはリンパ腫と呼ばれる。他の腫瘍として、これだけに限らないが、神経線維腫症が挙げられる。ある特定の例示的実施形態では、腫瘍は、神経膠芽腫である。ある特定の例示的実施形態では、腫瘍は、卵巣がん(例えば、漿液性、明細胞、類内膜、粘液性または混合上皮性卵巣がんにさらにサブタイプ化され得る卵巣上皮がん)である。
【0107】
固形腫瘍は、良性または悪性であり得る組織の異常な腫瘤である。ある特定の実施形態では、固形腫瘍は、それらを形成する細胞の種類について名付けられる(例えば、肉腫、癌腫およびリンパ腫)。固形腫瘍の例、例えば、肉腫および癌腫は、これだけに限らないが、脂肪肉腫、線維肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、粘液肉腫および他の肉腫、中皮腫、滑膜腫、平滑筋肉腫、ユーイング腫瘍、結腸癌、横紋筋肉腫、膵がん、リンパ系腫瘍、肺がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、肝細胞癌、腺癌、基底細胞癌、汗腺癌、扁平上皮癌、甲状腺髄様癌、褐色細胞腫、皮脂腺癌、甲状腺乳頭癌、乳頭状腺癌、乳頭癌、髄様癌、気管支原性肺癌、肝細胞腫、腎細胞癌、胆管癌、ウィルムス腫瘍、絨毛癌、子宮頸がん、セミノーマ、精巣腫瘍、膀胱癌、黒色腫、CNS腫瘍[例えば、神経膠腫、例えば、脳幹神経膠腫および混合膠腫、神経膠芽腫(例えば、多形神経膠芽腫)、胚細胞腫、星状細胞腫、頭蓋咽頭腫、髄芽腫、上衣腫、シュワン腫、CNSリンパ腫、聴神経腫瘍、松果体腫、血管芽腫、髄膜腫、乏突起神経膠腫、網膜芽細胞腫、神経芽細胞腫および脳転移]などが挙げられる。
【0108】
本明細書に開示される方法による治療に適し得る癌腫として、これだけに限らないが、扁平上皮癌(種々の組織)、基底細胞癌(皮膚がんの一形態)、食道癌、移行上皮癌(膀胱の悪性新生物)を含む膀胱癌、肝細胞癌、結腸直腸癌、気管支原性肺癌、肺の小細胞癌および非小細胞癌を含む肺癌、結腸癌、甲状腺癌、胃癌、乳癌、卵巣癌、副腎皮質癌、膵癌、汗腺癌、前立腺癌、乳頭癌、腺癌、皮脂腺癌、髄様癌、乳頭状腺癌、非浸潤性乳管がんまたは胆管癌、嚢胞腺癌、腎細胞癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、セミノーマ、胚性癌腫、子宮頸癌、精巣癌、上咽頭癌、骨原性癌(osteogenic carcinoma)、上皮癌、子宮癌などが挙げられる。
【0109】
本明細書に開示される方法による治療に適している肉腫として、これだけに限らないが、粘液肉腫、軟骨肉腫、脊索腫、骨肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、血管肉腫、リンパ管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、骨肉腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜腫および他の軟部組織肉腫が挙げられる。
【0110】
「ベクター」は、単離された核酸を含み、単離された核酸を細胞の内部にデリバリーするために使用され得る物質の組成物である。多数のベクターが当技術分野において周知であり、これだけに限らないが、線状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物と会合したポリヌクレオチド、プラスミドおよびウイルスが挙げられる。したがって、用語「ベクター」は、自律的に複製するプラスミドまたはウイルスを含む。用語は、核酸の細胞への移行を促進する、例えば、ポリリジン化合物、リポソームなどの非プラスミドおよび非ウイルス化合物を含むとも解釈されるべきである。ウイルスベクターの例として、これだけに限らないが、センダイウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどが挙げられる。
【0111】
用語「免疫原性組成物」は、本明細書で使用される場合、免疫源に対する免疫応答が必要である対象において前記免疫源に対して特異的な免疫応答を誘導する物質を指す。組成物は、アジュバントおよび、適宜1つまたは複数の薬学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈剤を含んでもよい。免疫原性組成物は、時間的に隔てられた少なくとも2回、3回、4回または少なくとも5回の免疫化などのプライム-ブーストワクチン接種において使用され得る。免疫原性組成物は、前記免疫源を含む(同種)樹状細胞であってよい。
【0112】
用語「免疫源」は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載される抗原性ポリペプチドに対して特異的に方向付けられている免疫応答を誘発することができるポリペプチドなどの化合物を指す。免疫源は、抗原、すなわち抗原性ポリペプチドでもある。対照的に、抗原は、必ずしも免疫源ではない。ある特定の実施形態では、免疫源は、ワクチン接種のために使用され(ワクチン組成物などの免疫原性組成物中で)、腫瘍内デリバリーのために調製された抗原性ポリペプチドは、対象において、励起される免疫応答のための標的として、または既に誘発された免疫応答のための標的として、腫瘍をマーキングするために代わりに使用される。用語「免疫源」は、本明細書に記載される非ヒト抗原性ポリペプチドをコードする核酸を指しても使用される。加えて、抗原性ポリペプチドを記載する実施形態も本明細書に記載される免疫源に適用される。
【0113】
用語「非ヒト」は、抗原性ポリペプチドの文脈において本明細書で使用される場合、細菌性ポリペプチド、古細菌ドメインの生物のポリペプチド、真菌ポリペプチドおよびウイルスポリペプチドを含むヒト由来ではないポリペプチドを含む。植物ポリペプチドおよび非ヒト哺乳動物ポリペプチド、例えば、非ヒト霊長類、げっ歯類(例えば、マウスおよびラット)、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタ、ウマおよびロバならびにトリ(例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウなど)のポリペプチドも同様に含まれる。カタツムリまたは、メガスラ・クレヌラータ(Megathura crenulata)を含む他の軟体動物のポリペプチドも同様に含まれる。用語「非ヒト」は、合成ポリペプチド、すなわち、天然に存在せず、天然でいまだ同定されていないヒトによって設計された人工配列を有するポリペプチドも包含する。加えて用語は、天然配列からのアミノ酸変更、ヒト対象における免疫原性を与える変更を含むヒトポリペプチドを含む。
【0114】
用語「腫瘍内」は、本明細書で使用される場合、抗原性ポリペプチドまたは前記ポリペプチドをコードする核酸の腫瘍へのデリバリーまたは輸送を指す。本明細書に記載される抗原性ポリペプチドの腫瘍内デリバリーまたは輸送の一例は、当技術分野において公知の投与の経路、腫瘍内投与によってである。腫瘍内投与についての代替的経路として、抗原は、腫瘍に遺伝子配列をデリバリーするために広範に開発された、腫瘍溶解性ウイルスまたは遺伝子治療ベクターなどの腫瘍特異的担体を介して腫瘍にデリバリーされ得る。かかるビヒクルの使用は、腫瘍内投与に加えて、静脈内または腹腔内投与によるなどの投与の複数の経路を可能にし、続いて前記ポリペプチドをコードする核酸の腫瘍へのデリバリーをもたらす[Lundstrom, Diseases, 6(2):42 (2018);Alemany, Biomedicines, 2, p.36-49 (2014);Twumasi-Boateng et al., Nature Reviews Cancer 18, p.419-432 (2018)。
【0115】
句「腫瘍内デリバリーのために調製」は、本明細書で使用される場合、腫瘍内デリバリーに適用される、および/または腫瘍内デリバリーを可能にする製剤中にある、本明細書に記載される抗原性ポリペプチド、または本明細書に記載される前記ポリペプチドをコードする核酸を指す。腫瘍内デリバリーのために使用される調製物は、免疫系と腫瘍との間の相互作用において有益な効果を有するように構成され得る。例えば、自家または同種異系間樹状細胞などの樹状細胞は、前記ポリペプチドが負荷されてよく、腫瘍内投与において、腫瘍に侵入するT細胞との直接相互作用を介して、および/またはバイスタンダー抗原提示細胞をリクルートすることによって間接的に、追加的免疫刺激を提供できる[Laurell et al., Journal for Immunotherapy of Cancer, 5:52 (2017);Wallgren et al., Scandinavian Journal of Immunology, 62, p.234-242 (2005)。かかる調製物の別の例は、本明細書に記載されるポリペプチドまたは核酸が、腫瘍細胞に感染し、(i)腫瘍細胞における前記核酸の発現、ならびに(ii)(続いて)前記腫瘍細胞による前記(発現された)ポリペプチドの細胞内プロセシングおよび抗原提示(MHC)を可能にする、腫瘍溶解性ウイルス(または、腫瘍細胞中で選択的に複製する任意の他のウイルス)などの腫瘍特異的ウイルスを含む腫瘍標的化ビヒクルなどの腫瘍デリバリービヒクルに含まれ得ることである。当業者は、腫瘍内デリバリーのためにポリペプチドまたは前記ポリペプチドをコードする核酸を調製するための他の方法および手段を十分認識している。例えば当業者は、前記ポリペプチドまたは核酸を腫瘍にデリバリーするために、例えば腫瘍特異的ナノ粒子などの他の腫瘍標的化デリバリービヒクルを応用できる、または腫瘍内注射を通じた腫瘍内投与を適用できる。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される腫瘍内デリバリーのために調製されたポリペプチドまたは核酸は、腫瘍標的化ビヒクルに含まれる。
【0116】
本明細書で使用される場合、用語「腫瘍外」は、例えば、腫瘍および直接囲む(例えば、腫瘍微小環境を作り得る)組織から離れている(例えば、遠位の)対象の身体内の位置を指す。
【0117】
本明細書に記載される使用のための組成物は、対象において腫瘍に対して特異的に方向付けられた免疫応答を誘発する。当業者は、「特異的に方向付けられる」が腫瘍に対して特異的である免疫応答を指すことを理解する。特異性は、非ヒト抗原性ポリペプチドを有する腫瘍を免疫応答のための標的としてマーキングする工程によって、および前記非ヒト抗原性ポリペプチド(すなわち、標的)の抗原性部分に対する免疫応答を誘発することによって導入される。したがって、ある特定の実施形態では、本明細書に記載される使用のための組成物は、前記免疫応答のための標的としてマーキングされた腫瘍に対する免疫応答を誘発することにおける使用のためである。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される使用のための組成物は、前記免疫応答のための標的としてマーキングされた腫瘍に対する免疫応答を誘発することにおける使用のためであり、前記標的は、本明細書に記載される非ヒト抗原性ポリペプチドである。
【0118】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される腫瘍内デリバリーのために調製された、非ヒト抗原性ポリペプチドまた前記ポリペプチドをコードする核酸は、免疫応答のための標的としての腫瘍のマーキングの目的を果たす(腫瘍をマーキングするためのポリペプチド/核酸)。したがって、ある特定の実施形態では、腫瘍内デリバリーのために調製された前記ポリペプチドまたは前記核酸は、腫瘍内デリバリー後の免疫応答のための標的として腫瘍をマーキングする。
【0119】
本明細書で使用される場合、用語「ワクチン接種工程」は、本明細書に記載される方法(ワクチン接種戦略)における工程を指し、ここで、抗原性ポリペプチド(例えば、非腫瘍抗原)または抗原性ポリペプチドをコードする核酸を含む組成物は、腫瘍部位に遠位の部位で対象に投与される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法のワクチン接種工程において、組成物は、腫瘍が存在する部位ではない(例えば、腫瘍部位でない)部位に投与される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法のワクチン接種工程では、組成物は、腫瘍外部位に投与される。
【0120】
本明細書で使用される場合、用語「ブースター工程」は、本明細書に記載される方法(ワクチン接種戦略)における工程を指し、ここで、抗原性ポリペプチド(例えば、非腫瘍抗原)または抗原性ポリペプチドをコードする核酸を含むブースター組成物は、腫瘍部位に遠位の部位で対象に投与される。ある特定の実施形態では、ブースター工程は、ワクチン接種工程後に実施され、ワクチン接種工程は、抗原に対する免疫応答を生じ、ブースター工程は、抗原に対する免疫応答を増強する。ある特定の実施形態では、ブースター工程は、例えば、抗原性ポリペプチド(例えば、非腫瘍抗原)に対して既に存在する免疫を有する対象において免疫応答の増強をもたらす。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法におけるワクチン接種工程は、例えば、対象が、例えば、非腫瘍リコール抗原に対して既に存在する免疫を有する場合はブースター工程である。
【0121】
用語「マーキング」、「マーキングする」または「マーキングされた」は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載される抗原性ポリペプチドまたは前記ポリペプチドをコードする核酸の腫瘍内デリバリーによる腫瘍の抗原性状態の能動的操作を指す。これは、前記腫瘍細胞による前記ポリペプチドの細胞内デリバリーおよび続くプロセシングおよび提示を通じた腫瘍細胞の直接標識化を提供する、または:(i)前記腫瘍中の非腫瘍細胞による前記ポリペプチドの細胞内デリバリーならびに続くプロセシングおよび提示;または(ii)前記抗原性ポリペプチドの前記腫瘍への細胞外(すなわち、マーキング前に前記腫瘍に存在する細胞の細胞外)デリバリー、例えば、前記ポリペプチドをコードする核酸を含む、または前記抗原性ポリペプチドが負荷された樹状細胞を使用することによる、を介して腫瘍の間接標識化を提供する。本明細書で使用される場合、用語「腫瘍マーキング工程」は、本明細書に記載される方法(例えば、ワクチン接種戦略)における工程を指し、ここで抗原性ポリペプチド(例えば、非腫瘍抗原)または抗原性ポリペプチドをコードする核酸を含む組成物は、腫瘍部位で対象に投与される。
【0122】
用語「白血病由来の改変細胞」は、本明細書で使用される場合、抗原性ポリペプチドなどの抗原を細胞に取り込むことができ、抗原またはその免疫原性部分をMHCクラスI複合体もしくはMHCクラスII複合体と共に提示する細胞を指す。ある特定の実施形態では、白血病由来の改変細胞は、2012年11月15日に受託番号DSMZ ACC3189でDSMZにブタペスト条約の条件下で寄託された細胞系DCOne由来の細胞である。寄託されたDCOne細胞系から成熟細胞を得るためのプロセスは、例えばEP2931878B1に記載されている。
【0123】
範囲:本開示全体を通じて、本開示の種々の態様は、範囲の形式で示される場合がある。範囲の形式での記載は、単に利便性および簡潔さのためであり、本開示の範囲への変更できない限定として解釈されるべきでないことは理解されるべきである。したがって、範囲の記載は、範囲内のすべての可能な部分的な範囲および個々の数値を具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、1から6などの範囲の記載は、1から3、1から4、1から5、2から4、2から6、3から6などの部分的な範囲および範囲内の個々の数値、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3および6を具体的に開示したと見なされるべきである。これは、範囲の幅にかかわらず適用される。
【0124】
B.白血病由来の改変細胞
免疫細胞を刺激する、および増やすため、抗原特異的免疫細胞を生成するため、ならびに処置方法のための白血病由来の改変細胞の使用を含む方法が、本明細書において提供される。本明細書で使用される場合、「白血病由来の改変細胞」という用語は、抗原性ポリペプチドなどの抗原を取り込むことができ、かつMHCクラスI複合体またはMHCクラスII複合体と共に、抗原またはその免疫原性部分を提示することができる細胞を指す。本明細書で提供される白血病由来の改変細胞は、成熟樹状細胞表現型を含む。「樹状細胞」という用語は、本明細書で使用される場合、抗原性ポリペプチドなどの抗原をその細胞へ取り込むことができ、かつMHCクラスI複合体またはMHCクラスII複合体と共に、抗原またはその免疫原性部分を提示する特殊化抗原提示細胞(APC)を指す。成熟樹状細胞表現型を有することは、白血病由来の改変細胞が、成熟樹状細胞の機能と同様の機能を実施することができることを意味する。この用語は、成熟度によって、未熟な樹状細胞(「imDC」)および成熟樹状細胞(「mDC」)の両方を含む。
【0125】
ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、白血病細胞に由来する。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、白血病を有する患者に由来する。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、白血病を有する患者の末梢血に由来する。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、急性骨髄性白血病を有する患者の末梢血に由来する。派生した白血病由来の改変細胞が本明細書で開示される特徴を含むならば、白血病由来の改変細胞は、いかなる患者から得られる末梢血に由来してもよく、患者はいかなる種類の白血病も有することを、当業者は認識する。
【0126】
ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、CD34陽性、CD1a陽性およびCD83陽性である。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、CD14、DC-SIGN、ランゲリン、CD40、CD70、CD80、CD83、CD86およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される細胞表面マーカーを含む。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、MHCクラスI分子を含む。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、MHCクラスII分子を含む。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、CD34陽性、CD1a陽性、CD83陽性およびCD14陰性である。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、CD40陽性、CD80陽性およびCD86陽性である。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、CD34陽性、CD1a陽性、CD83陽性、CD40陽性、CD80陽性、CD86陽性およびCD14陰性である。
【0127】
ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、染色体11p15.5と11p12との間に遺伝子異常を含む。ある特定の実施形態において、遺伝子異常は、約16Mbのゲノム領域(例えば約20.7Mb~約36.6Mb)を包含する。ある特定の実施形態において、遺伝子異常は、約60個の公知および未知の遺伝子の喪失を含有する。
【0128】
ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、共刺激分子を含む。ある特定の実施形態において、共刺激分子には、MHCクラスI分子、BTLAおよびTollリガンド受容体が含まれるが、これらに限定されない。共刺激分子の例には、CD70、CD80、CD86、4-1BBL(CD137リガンド)、OX40L、CD30L、CD40、PD-L1、ICOSL、ICAM-1、リンパ球機能関連抗原3[LFA3(CD58)]、K12/SECTM1、LIGHT、HLA-E、B7-H3およびCD83が含まれる。
【0129】
ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、少なくとも1つの内在性抗原を含む。改変細胞の白血病起源によって、白血病由来の改変細胞は、白血病起源に特異的な少なくとも1つの公知の内在性抗原を含み得る。ある特定の実施形態において、内在性抗原は、腫瘍関連抗原である。ある特定の実施形態において、内在性腫瘍関連抗原は、WT-1、RHAMM、PRAME、p53、サバイビンおよびMUC-1からなる群から選択され得る。
【0130】
ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、外来性抗原またはそのペプチド断片を含む。そのような外来性抗原は、様々な抗原負荷法により、白血病由来の改変細胞に提供することができる。例えば、白血病由来の改変細胞に負荷するための方法は、合成長鎖ペプチドの使用、mRNA負荷、ペプチドパルシング、タンパク質負荷、腫瘍可溶化液負荷、腫瘍細胞との同時培養、RNA/DNAトランスフェクションまたはウイルス形質導入を含み得るが、これらに限定されない。白血病由来の改変細胞に負荷するための他の方法は、当業者に公知であり、白血病由来の改変細胞に外来性抗原を負荷するために使用され得る。一般的に、白血病由来の改変細胞は、特定の分子を介して、例えばMHC IまたはMHC IIを介して、外来性抗原をプロセスする。そのため、白血病由来の改変細胞に含まれる外来性抗原は、MHCクラスI抗原またはMHCクラスII抗原であり得る。ある特定の実施形態において、外来性抗原は、腫瘍関連抗原である。例えば、ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、NY-ESO-1ペプチドおよび/もしくはWT-1ペプチド、またはCMVpp65などの腫瘍独立抗原を負荷される。ある特定の実施形態において、外来性抗原は、疾患または障害、例えば非がん関連疾患または障害と関連付けられる。任意の腫瘍関連抗原、または疾患もしくは障害と関連付けられる抗原が、本明細書で説明される白血病由来の改変細胞に提供され得ることを当業者は理解する。そのため、ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、当業者により企図される、任意の腫瘍関連抗原、または疾患もしくは障害と関連付けられる抗原を含む。
【0131】
ある特定の実施形態において、外来性抗原は、非腫瘍関連抗原(すなわち、腫瘍独立抗原)である。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、腫瘍独立抗原、すなわち、腫瘍と関連していない抗原を負荷される。例えば、好適な腫瘍独立抗原には、ウイルス、細菌、真菌起源のタンパク質;アレルゲン、毒素および毒液、または様々な供給源のモデル抗原、例えば鶏卵卵白アルブミン、およびジャイアントキーホールリンペット、メガツラ・クレニュラータ(Megathura crenulata)からのキーホールリンペットヘモシアニンが含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、好適な腫瘍独立抗原は、細菌起源の腫瘍独立抗原である。ある特定の実施形態において、好適な腫瘍独立抗原は、ジフテリア毒素である。ある特定の実施形態において、好適な腫瘍独立抗原は、ジフテリア毒素の無毒変異型(variant)である。例えば、ある特定の実施形態において、好適な腫瘍独立抗原は、CRM197またはその変異型である。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、CRM197またはその変異型を含む。ある特定の実施形態において、好適な腫瘍独立抗原は、ウイルス起源の腫瘍独立抗原である。ある特定の実施形態において、好適な腫瘍独立抗原は、サイトメガロウイルス(CMV)に由来するペプチド、例えばCMV内部マトリックスタンパク質pp65に由来するペプチドである。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、pp65ペプチドを含む。任意の腫瘍独立抗原が、本明細書で説明される白血病由来の改変細胞に提供され得ることが、当業者により理解される。そのため、ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、当業者により企図される任意の腫瘍独立抗原を含む。
【0132】
ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞に外来性抗原またはそのペプチド断片を負荷することは、光化学プロセス(例えば光化学内部移行)の使用を含む。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞に外来性抗原またはそのペプチド断片を負荷することは、光化学内部移行の使用により達成される。ある特定の実施形態において、光化学内部移行は、抗原またはそのペプチド断片[例えば抗原性ポリペプチド(例えば非腫瘍抗原)、または抗原性ポリペプチドをコードする核酸]の、白血病由来の改変細胞へのデリバリーを向上させるために使用され得る。
【0133】
光化学内部移行とは、それを使用しなければ膜不透過性である分子を標的細胞の細胞質ゾルへ導入するための、光および光感作剤の使用を含むが、必ずしも標的細胞の破壊または死滅をもたらさないデリバリー方法を指す。この方法において、内部移行されるまたは移行される分子は、光感作剤と組み合わせて細胞に適用される。細胞の、好適な波長の光への曝露は、光感作剤を活性化し、それは、今度は細胞内区画膜の破壊および次なる細胞質ゾルへの分子の放出をもたらす。光化学内部移行において、光感作剤と光との間の相互作用は、分子の細胞内取り込みが改善されるように細胞に影響を及ぼすために使用される。光化学内部移行および様々な光感作剤は、PCT公開公報WO第96/07432号、同第00/54708号、同第01/18636号、同第02/44396号、同第02/44395号および同第03/020309号、米国特許第6,680,301号、同第5,876,989号において説明されており、当該公開公報および特許の開示は、それらを全体として参照により本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態において、光化学内部移行は、抗原を腫瘍細胞の細胞質ゾルへデリバリーするために使用される。ある特定の実施形態において、光化学内部移行は、抗原の、腫瘍細胞の細胞質ゾルへのデリバリーを向上させるために使用される。
【0134】
白血病由来の改変細胞に外来性抗原またはそのペプチド断片を負荷することは、いつでも実施することができる。当業者は、自らの要求に最もよく適するように白血病由来の改変細胞の負荷の特定のタイミングを決定し、行うことができる。例えば、ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、それが成熟樹状細胞表現型を呈する前に、外来性抗原またはそのペプチド断片を負荷される。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、白血病由来の改変細胞の、成熟樹状細胞表現型への移行中に、外来性抗原またはそのペプチド断片を負荷される。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、白血病由来の改変細胞が成熟樹状細胞表現型を呈した後に、外来性抗原またはそのペプチド断片を負荷される。
【0135】
ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、PCT公開公報WO第2014/006058号および同第2014/090795号において説明される細胞系DCOneの細胞であり、当該公開公報の開示は、それらを全体として参照により本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、細胞系DCOneの細胞であり、CD34陽性、CD1a陽性およびCD83陽性である成熟樹状細胞表現型を含む。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、細胞系DCOneの細胞であり、CD34陽性、CD1a陽性およびCD83陽性である。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、細胞系DCOneの細胞であり、CD14、DC-SIGN、ランゲリン、CD80、CD86、CD40、CD70およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される細胞表面マーカーを含む。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、細胞系DCOneの細胞であり、MHCクラスIを含む。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、細胞系DCOneの細胞であり、MHCクラスIIを含む。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、細胞系DCOneの細胞であり、CD34陽性、CD1a陽性、CD83陽性およびCD14陰性である。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、細胞系DCOneの細胞であり、CD40陽性、CD80陽性およびCD86陽性である。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、細胞系DCOneの細胞であり、CD34陽性、CD1a陽性、CD83陽性、CD40陽性、CD80陽性、CD86陽性およびCD14陰性である。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、細胞系DCOneの細胞であり、染色体11p15.5と11p12との間に遺伝子異常を含む。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、細胞系DCOneの細胞であり、約16Mbのゲノム領域(例えば約20.7Mb~約36.6Mb)を包含する遺伝子異常を含む。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、細胞系DCOneの細胞であり、約60個の公知および未知の遺伝子の喪失を含有する遺伝子異常を含む。
【0136】
本明細書で提供される通り、ある特定の方法は、白血病由来の改変細胞の使用を対象とし、改変細胞は、非増殖性である。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、照射されている。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、本明細書で開示される方法におけるその使用前に、照射されている。照射は、例えば、標準の照射デバイス(Gammacellまたは相当物)を使用する30~150Gy、例えば100Gyにおける1~3時間の期間のガンマ照射によって達成することができる。照射は、白血病由来の改変細胞を含む組成物中の任意の残留のプロジェニター細胞、例えばCD34陽性細胞が、分裂し続けることができないことを確実にする。細胞は、例えば、ワクチンとして使用される場合患者への注射前に、または培養を停止した直後に、照射され得る。ある特定の実施形態において、細胞は、それらの免疫刺激能を維持しながら、それらの増殖する能力および/または増える能力を阻害するために照射される。
【0137】
C.免疫細胞の刺激および増大
T細胞受容体(TCR)を通じたシグナル伝達は、シグナル-1と一般に称されるものを提供し、適切なT細胞活性化のためには不十分である。共刺激分子は、一般にシグナル-2と称され、増殖、生存および分化のために不可欠なシグナルを提供する。シグナル-1およびシグナル-2の両方が、完全なT細胞活性化のために必要であり、これらのシグナルの強度は、生じるT細胞集団のサイズ(例えば、T細胞の数)に影響を及ぼす。実際、シグナル2を伴わずにシグナル1だけを受けるナイーブT細胞は、非応答性である、および/またはアポトーシスを通じて死ぬ。
【0138】
免疫受容体(例えば、T細胞受容体またはキメラ抗原受容体)を発現するための細胞の改変の前か後かにかかわらず、細胞は、例えば、米国特許第6,352,694号;第6,534,055号;第6,905,680号;第6,692,964号;第5,858,358号;第6,887,466号;第6,905,681号;第7,144,575号;第7,067,318号;第7,172,869号;第7,232,566号;第7,175,843号;第5,883,223号;第6,905,874号;第6,797,514号;第6,867,041号;および米国特許公開第20060121005号において記載される方法を使用して活性化され得る、数において増やされ得る。一般に、本開示の免疫細胞(例えば、T細胞、メモリーT細胞)は、シグナル-1およびシグナル-2の供給を組み込むことによって増やされ得る。ある特定の実施形態では、これらのシグナルは免疫細胞を、CD3/TCR複合体関連シグナル(すなわち、シグナル-1)を刺激する薬剤および免疫細胞の表面上の共刺激分子を刺激するリガンド(すなわち、シグナル-2)が結合した表面に接触させることによって提供される。例えば、カルシウムイオノフォアA23187、ホルボール12-ミリスチン酸13-アセテート(PMA)、またはフィトヘマグルチニン(PHA)のような分裂促進性レクチンは、免疫細胞のための活性化シグナルを創出するために使用され得る。
【0139】
免疫細胞集団(例えば、T細胞集団)は、抗CD3抗体もしくはその抗原結合性断片と、または表面に固定された抗CD28抗体との接触によって、あるいはカルシウムイオノフォアと合わせたタンパク質キナーゼC活性化因子(例えば、ブリオスタチン)との接触によってインビトロ(例えば、エクスビボ)で刺激され得る。免疫細胞(例えば、T細胞)の表面上のアクセサリー分子の同時刺激のために、アクセサリー分子に結合するリガンドが使用され得る。例えば、免疫細胞(例えば、T細胞)の集団は、免疫細胞の増殖を刺激するために適切な条件下で抗CD3抗体および抗CD28抗体と接触され得る。例えば、各シグナルをもたらす薬剤は、溶液中であってよい、または表面にカップルされていてよい。当業者が容易に理解できるように、粒子の細胞に対する比は、標的細胞と比較した粒子サイズに依存し得る。ある特定の実施形態では、免疫細胞(例えば、T細胞)は、薬剤コートビーズ(例えば、磁気ビーズ)と組み合わされ、ビーズおよび細胞は次に分離され、次いで細胞は培養される。ある特定の実施形態では、培養の前に薬剤コートビーズおよび細胞は、分離されず、合わせて培養される。
【0140】
ある特定の例示的実施形態では、免疫細胞(例えば、T細胞)を刺激するおよび増やすための前述の条件は、本明細書に記載される白血病由来の改変細胞によって提供され得る。したがって、免疫細胞(例えば、T細胞)の集団を活性化する、および増やすための方法であって、免疫細胞を含む細胞の集団を得ること;細胞の集団を白血病由来の改変細胞と接触させること;および細胞の集団を、免疫細胞の増殖を刺激するために好適な条件下で培養し、それにより免疫細胞の集団を活性化し、増やすことを含む、方法が本明細書で提供される。
【0141】
白血病由来の改変細胞の性質のために、白血病由来の改変細胞を利用する方法は、免疫細胞のある特定のサブセットの生成の増強を生じる。当技術分野において周知のとおり、従来の適応性T細胞サブタイプとして、ヘルパーCD4+T細胞、細胞傷害性CD8+T細胞、メモリーT細胞および制御性T細胞が挙げられる。ある特定の実施形態では、メモリー免疫細胞(例えば、メモリーT細胞)の集団を生成するための方法が本明細書で提供される。したがって、メモリー免疫細胞(例えば、メモリーT細胞)の集団を生成するための方法であって、免疫細胞(例えば、T細胞)を含む細胞の集団を得ること;細胞の集団を白血病由来の改変細胞と接触させること;および細胞の集団を、免疫細胞の増殖を刺激するために好適な条件下で培養し、それによりメモリー免疫細胞の集団を生成することを含む、方法が本明細書で提供される。ある特定の実施形態では、メモリー免疫細胞(例えば、メモリーT細胞)の集団を生成するための方法が本明細書で提供される。したがって、本明細書において、メモリーT細胞の集団を生成するための方法であって、免疫細胞(例えば、T細胞)を含む細胞の集団を得ること;細胞の集団を白血病由来の改変細胞と接触させること;および細胞の集団を、免疫細胞の増殖を刺激するために好適な条件下で培養し、それによりメモリーT細胞の集団を生成することを含む、方法が本明細書で提供される。そのため、本明細書で提供される方法は、供給源、例えば末梢血からメモリーT細胞集団を濃縮するために使用され得る。メモリーT細胞は、長寿命であり、同族抗原への曝露で多数のエフェクターT細胞に急速に増えることができる。これらの特徴を通じて、メモリーT細胞は、以前遭遇した抗原に対するメモリー機能を有する免疫系を提供できる。一般にメモリーT細胞は、CD4+またはCD8+およびCD45ROが挙げられるある特定の細胞表面マーカーの存在、適宜CD45RAの発現の欠如によって特徴付けられる。種々のメモリーT細胞サブセットが同定されており、細胞表面マーカーのそれら自体の識別セットによってそれぞれ同定される。メモリーT細胞サブセットとして、非限定的に、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、組織常在性メモリーT細胞、バーチャルメモリーT細胞および幹細胞メモリーT細胞(stem memory T cell)が挙げられる。種々のメモリーT細胞サブセットへのメモリーT細胞のさらなる分化のための方法は、当業者に周知であり、そのように得られたメモリーT細胞の集団をさらに精製するための本明細書で提供される方法における追加的工程として認められる。
【0142】
CD4+T細胞は、他のリンパ球を、例えば、細胞傷害性T細胞およびマクロファージの活性化において支援する。CD4+T細胞は、CD4の細胞表面発現によって特徴付けられ、ナイーブT細胞がMHCクラスII分子(例えば、本明細書で提供される白血病由来の改変細胞に含まれるMHCクラスI分子)と相互作用する場合に活性化される。CD4+T細胞サブセットは、当技術分野において周知であり、非限定的に、Th1細胞、Th2細胞、Th17細胞、Th9細胞およびTfh細胞が挙げられ、産生されるサイトカインの種類によって主に特徴付けられる。例えば、Th1細胞はIFNγを産生し、Th2細胞はIL-4を産生する。細胞傷害性CD8+T細胞は、CD8の細胞表面発現および同族抗原を発現する標的を攻撃する機能によって特徴付けられる。CD8+T細胞として、例えば、Tc細胞、細胞傷害性T-リンパ球、T-キラー細胞およびキラーT細胞が挙げられる。CD8+T細胞は、MHCクラスI分子(例えば、本明細書で提供される白血病由来の改変細胞に含まれるMHCクラスI分子)と会合した短いペプチドに結合することによって、それらの標的を認識する。CD8+T細胞は、IL-2およびIFNγなどの重要なサイトカインを産生することが周知である。
【0143】
したがって、CD4+免疫細胞およびCD8+免疫細胞(例えば、T細胞)集団の複合刺激のための方法が本明細書で提供される。ある特定の実施形態では、CD4+T細胞およびCD8+T細胞の集団を生成するための方法であって、免疫細胞(例えば、T細胞)を含む細胞の集団を得ること;細胞の集団を白血病由来の改変細胞と接触させること;および細胞の集団を、免疫細胞の増殖を刺激するために好適な条件下で培養し、それによりCD4+T細胞およびCD8+T細胞の集団を生成することを含む、方法が本明細書で提供される。ある特定の実施形態では、CD4+T細胞の集団を生成するための方法であって、免疫細胞(例えば、T細胞)を含む細胞の集団を得ること;細胞の集団を白血病由来の改変細胞と接触させること;および細胞の集団を、免疫細胞の増殖を刺激するために好適な条件下で培養し、それによりCD4+T細胞の集団を生成することを含む、方法が本明細書で提供される。ある特定の実施形態では、CD8+T細胞の集団を生成するための方法であって、免疫細胞(例えば、T細胞)を含む細胞の集団を得ること;細胞の集団を白血病由来の改変細胞と接触させること;および細胞の集団を、免疫細胞の増殖を刺激するために好適な条件下で培養し、それによりCD8+T細胞の集団を生成することを含む、方法が本明細書で提供される。種々のT細胞サブセットへのCD4+T細胞および/またはCD8+T細胞のさらなる分化のための方法は、当業者に周知であり、そのように得られたCD4+T細胞および/またはCD8+T細胞の集団をさらに精製するための本明細書で提供される方法における追加的工程として認識される。
【0144】
免疫細胞を刺激するおよび増やすために本明細書で提供される種々の方法において、免疫細胞の増殖を刺激するために好適な条件は、シグナル-1およびシグナル-2を免疫細胞に与えることを含む。ある特定の実施形態では、シグナル-1は、TCR/CD3複合体の活性化を含む。ある特定の実施形態では、シグナル-2は、共刺激分子の活性化を含む。本明細書に記載される白血病由来の改変細胞がシグナル-1およびシグナル-2の両方を免疫細胞に与えることができ、それにより免疫細胞を刺激および増やすために好適な条件を与えると考えられる。
【0145】
ある特定の実施形態では、提供される種々の方法は、成熟樹状細胞表現型を含む白血病由来の改変細胞を利用する。ある特定の例示的実施形態では、白血病由来の改変細胞は、非増殖性である(例えば、照射を介して)。
【0146】
免疫細胞(例えば、T細胞)は、生育を支持するために必要な条件下、例えば、適切な温度(例えば、37℃)および空気(例えば、大気に加えて5%CO)で維持される。多様な刺激時間で曝露された免疫細胞(例えば、T細胞)は、異なる特徴を示す場合がある。
【0147】
本明細書に開示される方法によって生成された免疫細胞(例えば、T細胞、メモリーT細胞、CD4+T細胞/CD8+T細胞)の集団は、約10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1000倍、2000倍、3000倍、4000倍、5000倍、6000倍、7000倍、8000倍、9000倍、10,000倍、100,000倍、1,000,000倍、10,000,000倍またはこれを超えて、およびこれらの間の任意のおよびすべての整数または部分整数(partial integer)で、増殖(multiply)され得る。一実施形態では、免疫細胞は、約20倍から約50倍の範囲で増える。
【0148】
培養後、免疫細胞(例えば、T細胞)は、別の培養装置に細胞を継代する前に、一定期間または最適な継代のための集密度もしくは高い細胞密度に細胞が達するまで培養装置中の細胞培地においてインキュベートされ得る。培養装置は、インビトロで細胞を培養するために一般に使用される任意の培養装置であってよい。ある特定の例示的実施形態では、コンフルエンスのレベルは、別の培養装置に細胞を継代する前に70%以上である。ある特定の例示的実施形態では、コンフルエンスのレベルは、90%以上である。期間は、インビトロでの細胞の培養のために好適な任意の期間であってよい。細胞培地は、免疫細胞の培養の際の任意の時期に交換され得る。ある特定の例示的実施形態では、細胞培地は、約2から3日ごとに交換される。
【0149】
次に、免疫細胞は培養装置から回収されて、免疫細胞は直ちに使用され得る、または後の使用のために保存するために凍結保存され得る。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される方法は、得られた免疫細胞集団を凍結保存することをさらに含む。刺激されたおよび増やされた免疫細胞が下流の改変における使用のためである実施形態では、新鮮または凍結保存免疫細胞は、免疫細胞への遺伝子材料(例えば、免疫受容体、例えばTCRまたはCARをコードする核酸)の導入のために調製される。ある特定の実施形態では、凍結保存免疫細胞は、遺伝子材料の導入の前に解凍される。ある特定の実施形態では、新鮮または凍結保存免疫細胞は、免疫受容体(例えば、TCRまたはCAR)をコードするRNAでの電気穿孔のために調製される。
【0150】
免疫細胞のエクスビボ増大のための別の手順は、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,199,942号に記載されている。免疫細胞を増やすおよび活性化させるための方法も、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,754,482号、第8,722,400号および第9,555,105号に見出すことができる。かかる当技術分野において認められる増大および活性化法は、本明細書に記載される方法に代替的または追加的であり得る。
【0151】
培養工程(例えば、本明細書に記載される白血病由来の改変細胞との接触)は、短時間、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22または23時間などの24時間未満であってよい。培養工程(例えば、本明細書に記載される白血病由来の改変細胞との接触)は、長時間、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日間またはこれを超える日数であってよい。
【0152】
ある特定の実施形態では、細胞は、数時間(約3時間)から約14日間またはその間の任意の整数値の時間について培養され得る。免疫細胞(例えば、T細胞)培養のために適切な条件として、血清(例えば、ウシ胎児またはヒト血清)、インスリン、IFNγ、インターロイキン-2(IL-2)、IL-4、IL-7、IL-10、IL-15、GM-CSF、TGFβおよびTNF-αまたは細胞の生育のための当業者に周知の任意の他の添加物が挙げられる増殖および生存のために必要な要素を含有し得る適切な培地[例えば、最小必須培地またはRPMI Media 1640またはX-vivo 15(Lonza)]が挙げられる。例えば、他の添加物として、非限定的に、界面活性物質、プラスマネート(plasmanate)ならびに、N-アセチル-システインおよび2-メルカプトエタノールなどの還元剤が挙げられる。培地として、アミノ酸、ピルビン酸ナトリウムおよびビタミンを添加された、無血清または適切な量の血清(もしくは血漿)または規定のセットのホルモンならびに/または免疫細胞の生育および増大のために十分な量のサイトカイン(複数可)を補充されたRPMI 1640、AIM-V、DMEM、MEM、a-MEM、F-12、X-Vivo 10およびX-Vivo 20、Optimizerが挙げられる。抗生物質、例えば、ペニシリンおよびストレプトマイシンは、実験用培養においてだけ含まれ、対象に注入されるものである細胞の培養には含まれない。
【0153】
D.抗原特異的免疫細胞
抗原特異的免疫細胞を生成するための方法も本明細書で提供される。かかる方法は、本明細書に記載される白血病由来の改変細胞を利用する。したがって、免疫細胞を白血病由来の改変細胞と接触させることによって抗原特異的免疫細胞の生成を誘導することを含む、抗原特異的免疫細胞を生成するための方法が本明細書で提供される。
【0154】
本明細書に記載される方法によって生成された免疫細胞の抗原特異性は、白血病由来の改変細胞に対して内在性である抗原に方向付けられ得る。ある特定の実施形態では、白血病由来の改変細胞は、WT-1、RHAMM、PRAME、MUC-1、p53、サバイビンおよびこれらの任意の組合せからなる群から選択される内在性抗原を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法によって生成された免疫細胞の抗原特異性は、白血病由来の改変細胞に対して外来性である抗原に方向付けられ得る。白血病由来の改変細胞に対して外来性の抗原は、腫瘍関連抗原(TAA)または非腫瘍関連抗原であり得る。かかる実施形態では、抗原特異的免疫細胞を生成するための方法は、免疫細胞を外来性抗原またはそのペプチド断片を含む白血病由来の改変細胞と接触させることによって、抗原特異的免疫細胞の生成を誘導することを含み得る。ある特定の実施形態では、抗原特異的免疫細胞を生成するための方法は、免疫細胞を白血病由来の改変細胞と接触させることによって、抗原特異的免疫細胞の生成を誘導することを含み、ここで白血病由来の改変細胞は、外来性抗原またはそのペプチド断片が負荷されている。ある特定の実施形態では、白血病由来の改変細胞に対して外来性の抗原は、非腫瘍関連抗原(例えば、腫瘍非依存性抗原)である。リコール抗原などの腫瘍非依存性抗原は、本明細書にさらに記載され、例えば、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第63/110,046号、2020年11月5日出願にも記載されている。
【0155】
ある特定の実施形態では、抗原特異的免疫細胞の特異性は、少なくとも一部は抗原特異的免疫受容体によるものであり得る。抗原特異的免疫受容体は、内在性(例えば、内在性T細胞受容体レパートリー由来の抗原特異的T細胞受容体)、または外来性(例えば、抗原に対して特異的なキメラ抗原受容体)である場合があり、本明細書に記載される白血病由来の改変細胞に含まれる抗原に特異的である。例えば免疫受容体を含むように免疫細胞を改変する種々の方法は、当技術分野において周知である。ある特定の実施形態では、免疫受容体を含むための免疫細胞の改変は、トランスポゾンまたはウイルスベクターによって媒介される。トランスポゾンに基づく方法は、例えば、その開示はそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第10,513,686号;米国特許公開第US20180002397A1号;およびPCT公開第WO2020014366A1号;第WO2019046815A1号;および第WO2019173636A1号に記載されている。
【0156】
ある特定の実施形態では、抗原は、例えば、本明細書に記載される腫瘍マーキング工程を介して、腫瘍細胞に導入され得る。
【0157】
E.T細胞受容体
免疫受容体を含む改変免疫細胞またはその前駆体(例えば、改変T細胞)についての組成物および方法が本明細書において提供され、ここで免疫受容体は、T細胞受容体(TCR)、例えば、外来性TCRである。それにより一部の実施形態では、細胞は、特定のT細胞受容体(TCR)遺伝子(例えば、アルファ/ベータTCRをコードする核酸)を含有するように変更される。TCRまたはその抗原結合性部分は、腫瘍の抗原、ウイルス性または自己免疫性タンパク質などの標的ポリペプチドのペプチドエピトープまたはT細胞エピトープを認識するものを含む。ある特定の実施形態では、TCRは、非腫瘍関連抗原に対する結合特異性を有する。ある特定の実施形態では、TCRは、腫瘍関連抗原(TAA)に対する結合特異性を有する。ある特定の実施形態では、TCRが特異的である、または適合する抗原、腫瘍細胞によって含まれる抗原。
【0158】
TCRは、抗原への応答において免疫細胞(例えば、T細胞)の活性化に関与する6個の異なる膜結合鎖から構成されるジスルフィドで連結されたヘテロ二量体タンパク質である。アルファ/ベータTCRおよびガンマ/デルタTCRが周知である。アルファ/ベータTCRは、TCRアルファ鎖およびTCRベータ鎖を含む。TCRアルファ鎖およびTCRベータ鎖を含むTCRを発現するT細胞は、一般に、アルファ/ベータT細胞と称される。ガンマ/デルタTCRは、TCRガンマ鎖およびTCRデルタ鎖を含む。TCRガンマ鎖およびTCRデルタ鎖を含むTCRを発現するT細胞は、一般にガンマ/デルタT細胞と称される。
【0159】
TCRアルファ鎖およびTCRベータ鎖は、2つの細胞外ドメイン、可変領域および定常領域からそれぞれ構成される。TCRアルファ鎖可変領域およびTCRベータ鎖可変領域は、標的抗原(例えば、TAAまたは非腫瘍関連抗原)へのTCRの親和性のために必要である。各可変領域は、標的抗原への結合をもたらす3つの高頻度可変または相補性決定領域(CDR)を含む。TCRアルファ鎖の定常領域およびTCRベータ鎖の定常領域は、細胞膜の近傍にある。TCRは、膜貫通領域および短い細胞質側末端をさらに含む。CD3分子は、TCRヘテロ二量体と共にアセンブルされる。CD3分子は、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)として周知であるチロシンリン酸化のための特徴的な配列モチーフを含む。近位シグナル伝達事象は、CD3分子を通じて媒介され、それによりTCR-CD3複合体相互作用は、細胞認識事象の媒介において重要な役割を果たしている。
【0160】
TCRの刺激は、抗原ペプチドをT細胞に提示し、一連の細胞内シグナル伝達カスケードを誘導するようにTCRと相互作用する抗原提示細胞上の主要組織適合性複合体分子(MHC)によって引き起こされる。TCRの関与は、陽性および陰性シグナル伝達カスケードの両方を開始し、細胞増殖、サイトカイン産生および/または活性化誘導細胞死を生じる。
【0161】
TCRは、野生型TCR、高親和性TCRおよび/またはキメラTCRであり得る。高親和性TCRは、野生型TCRと比較して標的抗原に対するより高い親和性を付与する野生型TCRへの改変の結果であり得る。高親和性TCRは、親和性成熟TCRであり得る。ある特定の実施形態では、野生型TCRと比較して低親和性のTCRを得ることが望ましい場合がある。かかる低親和性TCRは、親和性調整TCRとも称される。TCRを改変するための方法、および/またはTCRの親和性成熟/親和性調整は、当業者に周知である。TCRを操作するおよび発現するための技術として、これだけに限らないが、各サブユニットを繋ぐ天然のジスルフィド架橋を含むTCRヘテロ二量体の産生が挙げられる[Garboczi, et al., (1996), Nature 384(6605): 134-41;Garboczi, et al., (1996), J Immunol 157(12): 5403-10;Chang et al., (1994), PNAS USA 91: 11408-11412;Davodeau et al., (1993), J. Biol. Chem. 268(21): 15455-15460;Golden et al., (1997), J. Imm. Meth. 206: 163-169;米国特許第6,080,840号]。
【0162】
ある特定の実施形態では、外来性TCRは、全長TCRまたはその抗原結合性断片である。ある特定の実施形態では、TCRは、αβ型またはγδ型にあるTCRを含むインタクトまたは全長TCRである。ある特定の実施形態では、TCRは、全長TCR未満だが、MHCペプチド複合体に結合するなどのMHC分子中の特定のペプチド結合に結合する抗原結合性部分である。ある特定の実施形態では、TCRの抗原結合性部分または断片は、全長またはインタクトTCRの構造ドメインの一部だけを含有する場合があるが、全長TCRが結合するMHC-ペプチド複合体などのペプチドエピトープにいまだ結合することができる。ある特定の実施形態では、抗原結合性部分は、特定のMHC-ペプチド複合体に結合するための結合部位を形成するために十分なTCRの可変α鎖および可変β鎖などのTCRの可変ドメインを含有する。一般に、TCRの可変鎖は、ペプチド、MHCおよび/またはMHC-ペプチド複合体の認識に関与する相補性決定領域(CDR)を含有する。
【0163】
ある特定の実施形態では、TCRの可変ドメインは、高頻度可変ループまたは、一般に抗原認識および結合能力および特異性についての主な寄与体であるCDRを含有する。ある特定の実施形態では、TCRまたはその組み合わせのCDRは、所与のTCR分子のすべてまたは実質的にすべての抗原結合部位を形成する。TCR鎖の可変領域内の種々のCDRは、一般にCDRと比較してTCR分子内であまり可変性を示さないフレームワーク領域(FR)によって分けられている(例えば、Jores et al, Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 87:9138, 1990;Chothia et al., EMBO J. 7:3745, 1988を参照されたい;同様にLefranc et al., Dev. Comp. Immunol. 27:55, 2003も参照されたい)。ある特定の実施形態では、CDR3は、抗原結合もしくは特異性に関与する主なCDRである、または抗原認識のためおよび/もしくはペプチド-MHC複合体のプロセシングされたペプチド部分との相互作用のために、所与のTCR可変領域での3個のCDRのうちで最も重要である。ある特定の実施形態では、アルファ鎖のCDR1は、ある特定の抗原性ペプチドのN末端部分と相互作用できる。ある特定の実施形態では、ベータ鎖のCDR1は、ペプチドのC末端部分と相互作用できる。ある特定の実施形態では、CDR2は、MHC-ペプチド複合体のMHC部分との相互作用またはその認識のために最も強く寄与する、またはそれに関与する主なCDRである。ある特定の実施形態では、β鎖の可変領域は、一般に、スーパー抗原結合に関与し、抗原認識に関与しないさらなる高頻度可変領域(CDR4またはHVR4)を含有できる[Kotb (1995) Clinical Microbiology Reviews, 8:411-426]。
【0164】
ある特定の実施形態では、TCRは、可変アルファドメイン(Vα)および/もしくは可変ベータドメイン(Vβ)またはこれらの抗原結合性断片を含有する。ある特定の実施形態では、TCRのα鎖および/またはβ鎖も定常ドメイン、膜貫通ドメインおよび/または短い細胞質側末端を含有する(例えば、Janeway et al., Immunobiology: The Immune System in Health and Disease, 3 Ed., Current Biology Publications, p. 4:33, 1997を参照されたい)。ある特定の実施形態では、α鎖定常ドメインは、TRAC遺伝子(IMGT命名法)によってコードされる、またはその変異体である。ある特定の実施形態では、β鎖定常領域は、TRBC1もしくはTRBC2遺伝子(IMGT命名法)によってコードされる、またはその変異体である。ある特定の実施形態では、定常ドメインは、細胞膜に隣接している。例えば、ある特定の実施形態では、2本の鎖によって形成されるTCRの細胞外部分は、2つの膜近傍定常ドメインおよび2つの膜遠位可変ドメインを含有し、その可変ドメインはそれぞれCDRを含有する。
【0165】
TCRの種々のドメインまたは領域を決定または同定することは、当業者のレベルの範囲内である。ある特定の実施形態では、TCRの残基は、周知である、またはthe International Immunogenetics Information System(IMGT)番号付けシステムに従って同定され得る[例えば、www.imgt.orgを参照されたい;同様に、Lefranc et al. (2003) Developmental and Comparative Immunology, 2&;55-77;およびThe T Cell Factsbook 2nd Edition, Lefranc and LeFranc Academic Press 2001も参照されたい]。当業者に周知の他の番号付けシステムがあり、TCRの種々のドメインまたは領域を同定するために利用可能ないずれの番号付けシステムを使用することも当業者のレベルの範囲内であることからIMGT番号付けシステムは、いかなる方法においても限定として解釈されるべきでない。
【0166】
ある特定の実施形態では、TCRは、1つまたは複数のジスルフィド結合によってなどの連結された2本の鎖αおよびβ(または適宜γおよびδ)のヘテロ二量体であり得る。ある特定の実施形態では、TCRの定常ドメインは、システイン残基がジスルフィド結合を形成し、それによりTCRの2本の鎖を連結している短い繋ぎ配列を含有し得る。ある特定の実施形態では、TCRは、TCRが定常ドメインに2つのジスルフィド結合を含有するようにαおよびβ鎖のそれぞれに追加的なシステイン残基を有し得る。ある特定の実施形態では、定常ドメインおよび可変ドメインのそれぞれは、システイン残基によって形成されたジスルフィド結合を含有する。
【0167】
ある特定の実施形態では、TCRは、実質的に全長コード配列が容易に利用可能である、Vα、β鎖の配列などの周知のTCR配列(複数可)から生成されるものである。細胞供給源からV鎖配列を含む全長TCR配列を得るための方法は、十分周知である。ある特定の実施形態では、TCRをコードする核酸は、所与の1つもしくは複数の細胞内のもしくはそれから単離されたTCRコード核酸のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅によってなど種々の供給源から、または公的に入手可能なTCR DNA配列の合成から得ることができる。ある特定の実施形態では、TCRは、細胞から、例えばT細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、T細胞ハイブリドーマまたは他の公的に入手可能な供給源からなどの生物学的供給源から得ることができる。ある特定の実施形態では、T細胞は、インビボで単離された細胞から得ることができる。ある特定の実施形態では、T細胞は培養されたT細胞ハイブリドーマまたはクローンから得ることができる。ある特定の実施形態では、TCRまたはその抗原結合性部分は、TCRの配列の知識から合成で生成され得る。ある特定の実施形態では、標的抗原(例えば、がん抗原)に対する高親和性T細胞クローンは、同定され、患者から単離され、細胞に導入される。ある特定の実施形態では、標的抗原に対するTCRクローンは、ヒト免疫系遺伝子(例えば、ヒト白血球抗原系またはHLA)を用いて操作されたトランスジェニックマウスにおいて生成された。例えば、腫瘍抗原[例えば、Parkhurst et al. (2009) Clin Cancer Res. 15: 169-180およびCohen et al. (2005) J Immunol. 175:5799-5808を参照されたい]を参照されたい。ある特定の実施形態では、ファージディスプレイは、標的抗原に対するTCRを単離するために使用される[例えば、Varela-Rohena et al. (2008) Nat Med. 14: 1390-1395およびLi (2005) Nat Biotechnol. 23:349-354を参照されたい]。
【0168】
ある特定の実施形態では、TCRまたはその抗原結合性部分は、改変されたまたは操作されたものである。ある特定の実施形態では、定向進化法は、特定のMHC-ペプチド複合体に対する高親和性を有するように特性が変更されたTCRを生成するために使用される。ある特定の実施形態では、定向進化は、これだけに限らないが、酵母ディスプレイ[Holler et al. (2003) Nat Immunol, 4, 55-62;Holler et al. (2000) Proc Natl Acad Sci U S A, 97, 5387-92]、ファージディスプレイ[Li et al. (2005) Nat Biotechnol, 23, 349-54]またはT細胞ディスプレイ[Chervin et al. (2008) J Immunol Methods, 339, 175-84]を含むディスプレイ法によって達成される。ある特定の実施形態では、ディスプレイアプローチは、周知の、親または参照TCRを操作するかまたは改変することを含む。例えば一部の場合では、野生型TCRは、CDRの1つまたは複数の残基が突然変異されている突然変異誘発されたTCRを産生するための鋳型として使用されてよく、所望の標的抗原に対する高親和性などの、所望の変更された特性を有する突然変異体は、選択される。
【0169】
ある特定の実施形態では、TCRは、1つまたは複数の導入されたジスルフィド結合を含有し得る。ある特定の実施形態では、天然のジスルフィド結合は存在しない。ある特定の実施形態では、天然の鎖間ジスルフィド結合を形成する1つまたは複数の天然のシステイン(例えば、α鎖およびβ鎖の定常ドメイン中)は、セリンまたはアラニンを用いてなど別の残基を用いて置換される。ある特定の実施形態では、導入されたジスルフィド結合は、α鎖およびβ鎖の定常ドメイン中などの、アルファおよびベータ鎖上の非システイン残基をシステインに突然変異導入することによって形成され得る。TCRの例示的な非天然ジスルフィド結合は、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれるPCT公開第WO2006/000830号および第WO2006/037960号に記載されている。ある特定の実施形態では、システインは、α鎖のThr48およびβ鎖のSer57の残基に、α鎖のThr45およびβ鎖のSer77の残基に、α鎖のTyr10およびβ鎖のSerl7残基に、α鎖のThr45およびβ鎖のAsp59残基に、ならびに/またはα鎖のSerl5およびβ鎖のGlul5残基に導入され得る。ある特定の実施形態では、組換えTCR中の非天然システイン残基の存在(例えば、1つまたは複数の非天然ジスルフィド結合を生じる)は、天然TCR鎖を含有するミスマッチTCR対の過発現が導入された細胞における所望の組換えTCRの産生に好都合である場合がある。
【0170】
ある特定の実施形態では、TCR鎖は、膜貫通ドメインを含有する。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、正に荷電している。ある特定の実施形態では、TCR鎖は、細胞質側末端を含有する。ある特定の実施形態では、TCRの各鎖(例えば、アルファまたはベータ)は、1つのN末端免疫グロブリン可変ドメイン、1つの免疫グロブリン定常ドメイン、膜貫通領域およびC末端に短い細胞質側末端を有し得る。ある特定の実施形態では、TCRは、例えば細胞質側末端を介して、シグナル伝達の媒介に関与するCD3複合体の不変異体タンパク質と会合する。ある特定の実施形態では、構造は、TCRがCD3およびそのサブユニットなどの他の分子と会合できるようにする。例えば、膜貫通領域を含む定常ドメインを含有するTCRは、タンパク質を細胞膜に固着でき、CD3シグナル伝達装置または複合体の不変異体サブユニットと会合し得る。CD3シグナル伝達サブユニット(例えば、CD3y、CD35、CD3およびCD3ζ鎖)の細胞内テールは、1つまたは複数の免疫受容体チロシンベース活性化モチーフまたは、TCR複合体のシグナル伝達能力に関与するITAMを含有する。
【0171】
ある特定の実施形態では、TCRは全長TCRである。ある特定の実施形態では、TCRは抗原結合性部分である。ある特定の実施形態では、TCRは二量体TCR(dTCR)である。ある特定の実施形態では、TCRは単鎖TCR(sc-TCR)である。TCRは、細胞結合型または可溶型であり得る。ある特定の実施形態では、TCRは、細胞の表面から発現される細胞結合型である。ある特定の実施形態では、dTCRは、TCRα鎖可変領域配列に対応する配列がTCRα鎖定常領域細胞外配列に対応する配列のN末端に融合されている第1のポリペプチド、およびTCRβ鎖可変領域配列に対応する配列がTCRβ鎖定常領域細胞外配列に対応するN末端配列に融合されている第2のポリペプチドを含有し、第1のおよび第2のポリペプチドはジスルフィド結合によって連結されている。ある特定の実施形態では、結合は、天然二量体αβTCRに存在する天然鎖間ジスルフィド結合に対応し得る。ある特定の実施形態では、鎖間ジスルフィド結合は、天然TCRには存在しない。例えば、ある特定の実施形態では、1つまたは複数のシステインは、dTCRポリペプチド対の定常領域細胞外配列に組み込まれ得る。ある特定の実施形態では、天然および非天然ジスルフィド結合の両方が望ましい場合がある。ある特定の実施形態では、TCRは、膜に固着するための膜貫通配列を含有する。ある特定の実施形態では、dTCRは、可変αドメイン、定常αドメインおよび定常αドメインのC末端に結合された第1の二量体化モチーフを含有するTCRα鎖、ならびに可変βドメイン、定常βドメインおよび定常βドメインのC末端に結合された第1の二量体化モチーフを含むTCRβ鎖を含有し、ここで第1のおよび第2の二量体化モチーフは、第1の二量体化モチーフにおけるアミノ酸と第2の二量体化モチーフおけるアミノ酸との間に、TCRα鎖とTCRβ鎖とを合わせて連結する共有結合を形成するように容易に相互作用する。
【0172】
ある特定の実施形態では、TCRは、MHC-ペプチド複合体に結合することができるα鎖およびβ鎖を含有する単一アミノ酸鎖であるscTCRである。典型的には、scTCRは、当業者に周知の方法を使用して生成され得る、例えば、PCT公開第WO96/13593号、第WO96/18105号、第WO99/18129号、第WO04/033685号、第WO2006/037960号、第WO2011/044186号;米国特許第7,569,664号;およびSchlueter, C. J. et al. J. Mol. Biol. 256, 859 (1996)を参照されたい。ある特定の実施形態では、scTCRは、TCRα鎖可変領域に対応するアミノ酸配列によって構成される第1のセグメント、TCRβ鎖定常ドメイン細胞外配列に対応するアミノ酸配列のN末端に融合されたTCRβ鎖可変領域配列に対応するアミノ酸配列によって構成される第2のセグメント、および第1のセグメントのC末端を第2のセグメントのN末端に連結するリンカー配列を含有する。ある特定の実施形態では、scTCRは、TCRβ鎖可変領域に対応するアミノ酸配列によって構成される第1のセグメント、TCRα鎖定常ドメイン細胞外配列に対応するアミノ酸配列のN末端に融合されたTCRα鎖可変領域配列に対応するアミノ酸配列によって構成される第2のセグメント、および第1のセグメントのC末端を第2のセグメントのN末端に連結するリンカー配列を含有する。ある特定の実施形態では、scTCRは、α鎖細胞外定常ドメイン配列のN末端に融合されたα鎖可変領域配列によって構成される第1のセグメント、ならびに配列β鎖細胞外定常のN末端に融合されたβ鎖可変領域配列および膜貫通配列によって構成される第2のセグメント、ならびに適宜、第1のセグメントのC末端を第2のセグメントのN末端に連結するリンカー配列、を含有する。ある特定の実施形態では、scTCRは、β鎖細胞外定常ドメイン配列のN末端に融合されたTCRβ鎖可変領域配列によって構成される第1のセグメント、ならびにα鎖細胞外定常ドメイン配列を含む配列のN末端に融合されたα鎖可変領域配列および膜貫通配列によって構成される第2のセグメント、ならびに適宜、第1のセグメントのC末端を第2のセグメントN末端のに連結するリンカー配列を含有する。ある特定の実施形態では、scTCRがMHC-ペプチド複合体に結合するために、aおよびβ鎖は、その可変領域配列がかかる結合に方向を合わせるように対合されなければならない。scTCRにおいてαおよびβの対合を促進する種々の方法は、当技術分野において十分周知である。ある特定の実施形態では、単一のポリペプチド鎖を形成するようにα鎖およびβ鎖を連結するリンカー配列が含まれる。ある特定の実施形態では、リンカーは、リンカー長がscTCRの標的ペプチド-MHC複合体への結合を遮断または低減するほどには長くないことを確実にしながら、α鎖のC末端とβ鎖のN末端との間の距離にわたるような十分な長さを有するべきである、または逆も同様である。ある特定の実施形態では、第1のおよび第2のTCRセグメントを連結するscTCRのリンカーは、TCR結合特異性を維持しながら単一のポリペプチド鎖を形成することができる任意のリンカーであってよい。ある特定の実施形態では、リンカー配列は、例えば式-P-AA-P-を有してよく、式中Pはプロリンであり、AAは、アミノ酸がグリシンおよびセリンであるアミノ酸配列を表す。ある特定の実施形態では、第1のおよび第2のセグメントは、それらの可変領域配列がかかる結合に方向を合わせるように対合する。ある特定の実施形態では、リンカーは、約10から45アミノ酸、例えば、10から30アミノ酸または26から41アミノ酸残基、例えば29、30、31または32アミノ酸を含有し得る。ある特定の実施形態では、scTCRは、一部の場合では、単鎖分子のα領域とβ領域との間の対合の安定性を促進できる単一のアミノ酸鎖の残基間のジスルフィド結合を含有する(例えば、米国特許第7,569,664号を参照されたい)。ある特定の実施形態では、scTCRは、単鎖分子のα鎖の定常ドメインの免疫グロブリン領域の残基を、β鎖の定常ドメインの免疫グロブリン領域の残基に連結する共有結合ジスルフィド結合連結を含有する。ある特定の実施形態では、ジスルフィド結合は、天然TCRに存在する天然ジスルフィド結合に対応する。ある特定の実施形態では、天然TCR中にジスルフィド結合は存在しない。ある特定の実施形態では、ジスルフィド結合は、例えば、1つまたは複数のシステインをscTCRポリペプチドの第1のおよび第2の鎖領域の定常領域細胞外配列に組み込むことによって導入された非天然ジスルフィド結合である。例示的なシステイン突然変異は、任意の上に記載されるものを含む。一部の場合では、天然および非天然の両方のジスルフィド結合が存在し得る。
【0173】
ある特定の実施形態では、dTCRまたはscTCRを含むいずれのTCRもT細胞の表面に活性TCRをもたらすシグナル伝達ドメインに連結され得る。ある特定の実施形態では、TCRは、細胞の表面に発現される。ある特定の実施形態では、TCRは、膜貫通配列に対応する配列を含有する。ある特定の実施形態では、膜貫通ドメインは、CaまたはCP膜貫通ドメインであり得る。ある特定の実施形態では、膜貫通ドメインは、非TCR由来、例えば、CD3z、CD28またはB7.1由来膜貫通領域であってよい。ある特定の実施形態では、TCRは、細胞質配列に対応する配列を含有する。ある特定の実施形態では、TCRは、CD3zシグナル伝達ドメインを含有する。ある特定の実施形態では、TCRは、CD3とTCR複合体を形成することができる。ある特定の実施形態では、TCRまたはその抗原結合性部分は、組換えで産生された天然タンパク質または、その1つまたは複数の特性、例えば結合特徴が変更されたその突然変異形態であり得る。ある特定の実施形態では、TCRは、種々の動物種、例えば、ヒト、マウス、ラットまたは他の哺乳動物の1つ由来であり得る。
【0174】
ある特定の実施形態では、TCRは、標的細胞上の標的抗原に対する親和性を有する。標的抗原として、標的細胞に関連する任意の種類のタンパク質またはそのエピトープが挙げられる。例えば、TCRは、標的細胞の特定の疾患状態を示す標的細胞上の標的抗原に対する親和性を備え得る。ある特定の実施形態では、標的抗原は、プロセシングされ、MHCによって提示される。
【0175】
ある特定の実施形態では、免疫受容体(例えば、TCR)は、免疫細胞に標的抗原に対する特異性を与える。ある特定の実施形態では、TCR(例えば、外来性TCR)は、免疫細胞が特異的である標的抗原と同じである標的抗原特異性を与える。かかる実施形態では、TCR特異性は、免疫細胞の内在性特異性に適合すると述べられる。ある特定の実施形態では、TCR(例えば、外来性TCR)は、免疫細胞が特異的である標的抗原とは異なる標的抗原特異性を提供する。かかる実施形態では、TCR特異性は、免疫細胞の内在性特異性に適合しないと述べられる。このように、免疫細胞の内在性特異性に適合しない特異性を有するTCRは、多特異性(例えば、二重特異性)免疫細胞を生じる。
【0176】
F.キメラ抗原受容体
免疫受容体を含む改変免疫細胞またはその前駆体(例えば、改変T細胞)を含む組成物および使用するための方法が本明細書において提供され、ここで、免疫受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)である。それにより、ある特定の実施形態では、免疫細胞は、CARを発現するように遺伝子改変されている。本開示のCARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含む。
【0177】
抗原結合ドメインは、細胞における発現のために両方とも本明細書他所に記載されている膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインなどのCARの別のドメインに作動可能に連結され得る。ある特定の実施形態では、抗原結合ドメインをコードする第1の核酸配列は、膜貫通ドメインをコードする第2の核酸に作動可能に連結され、細胞内ドメインをコードする第3の核酸配列にさらに作動可能に連結される。本明細書に記載される抗原結合ドメインは、本明細書に記載される任意の膜貫通ドメイン、本明細書に記載される任意の細胞内ドメインもしくは細胞質ドメイン、またはCARに含まれ得る本明細書に記載される任意の他のドメインと組み合わされ得る。ある特定の実施形態では、CARは、本明細書に記載されるヒンジドメインも含み得る。ある特定の実施形態では、CARは本明細書に記載されるスペーサードメインも含み得る。ある特定の実施形態では、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインのそれぞれは、リンカーによって分けられている。
【0178】
抗原結合ドメイン
CARの抗原結合ドメインは、タンパク質、炭水化物および糖脂質を含む特定の標的抗原への結合のためのCARの細胞外領域である。ある特定の実施形態では、CARは、標的細胞上の標的抗原に対して親和性を有する。標的抗原として、標的細胞と関連する任意の種類のタンパク質またはそのエピトープが挙げられる。例えば、CARは、標的細胞の特定の疾患状態を示す標的細胞上の標的抗原に対して親和性を有し得る。
【0179】
標的化される所望の抗原に応じて、CARは、所望の抗原標的に対して特異的である適切な抗原結合ドメインを含むように操作され得る。ある特定の実施形態では、かかる抗原は、腫瘍細胞に、例えば、本明細書に記載される腫瘍マーキング工程を介して導入され得る。ある特定の実施形態では、標的細胞抗原は腫瘍関連抗原(TAA)である。ある特定の実施形態では、標的細胞抗原は非腫瘍関連抗原(非TAA、例えば、腫瘍非依存性抗原)である。任意の標的抗原に対する特異性を有するCARは、本明細書において提供される方法における使用のために好適である。ある特定の実施形態では、CARが特異的である抗原は、腫瘍細胞によって発現される抗原に適合する。
【0180】
ある特定の実施形態では、免疫受容体(例えば、CAR)は、標的抗原に対する免疫細胞に特異性を与える。ある特定の実施形態では、CARが与える標的抗原特異性は、免疫細胞が特異的である標的抗原と同じである。かかる実施形態では、CAR特異性は、免疫細胞の内在性特異性と適合すると呼ばれる。ある特定の実施形態では、CARが与える標的抗原特異性は、免疫細胞が特異的である標的抗原とは異なる。かかる実施形態では、CAR特異性は、免疫細胞の内在性特異性と非適合と呼ばれる。このように、免疫細胞の内在性特異性に非適合特異性を有するCARは、多特異性(例えば、二重特異性)免疫細胞を生じさせる。
【0181】
本明細書に記載されるとおり、標的細胞上の特定の標的抗原に対して親和性を有するCARは、標的特異的結合ドメインを含み得る。ある特定の実施形態では、標的特異的結合ドメインは、マウス標的特異的結合ドメインである、例えば、標的特異的結合ドメインは、マウス由来のものである。ある特定の実施形態では、標的特異的結合ドメインは、ヒト標的特異的結合ドメインである、例えば、標的特異的結合ドメインは、ヒト由来のものである。
【0182】
ある特定の実施形態では、CARは、1つまたは複数の標的細胞上の1つまたは複数の標的抗原に対する親和性を有し得る。ある特定の実施形態では、CARは、標的細胞上の1つまたは複数の標的抗原に対する親和性を有し得る。かかる実施形態では、CARは、二重特異性CARまたは多特異性CARである。ある特定の実施形態では、CARは、1つまたは複数の標的抗原に対する親和性を付与する1つまたは複数の標的特異的結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、CARは、同じ標的抗原に対する親和性を付与する1つまたは複数の標的特異的結合ドメインを含む。例えば、同じ標的抗原に対する親和性を有する1つまたは複数の標的特異的結合ドメインを含むCARは、標的抗原の異なるエピトープに結合できる。複数の標的特異的結合ドメインがCARに存在する場合、結合ドメインは、直列に配置されてよく、リンカーペプチドによって分けられてよい。例えば、2つの標的特異的結合ドメインを含むCARにおいて、結合ドメインは、オリゴリンカーまたはポリペプチドリンカー、Fcヒンジ領域または膜ヒンジ領域を通じて単一のポリペプチド鎖上で互いに共有結合で繋がれている。
【0183】
ある特定の実施形態では、抗原結合ドメインは、抗体、抗原結合性断片(Fab)および単鎖可変断片(scFv)からなる群から選択される。抗原結合ドメインは、抗原に結合する任意のドメインを含み、これだけに限らないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、合成抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、非ヒト抗体およびそれらの任意の断片が挙げられる。一部の実施形態では、抗原結合ドメイン部分は、哺乳動物抗体またはその断片を含む。抗原結合ドメインの選択は、標的細胞の表面上に存在する抗原の種類および数に依存する場合がある。
【0184】
本明細書で使用される場合、用語「単鎖可変断片」または「scFv」は、VH::VLヘテロ二量体を形成するように共有結合で連結された免疫グロブリン(例えば、マウスまたはヒト)の重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。重鎖(VH)および軽鎖(VL)は、直接繋がれている、またはVHのN末端をVLのC末端に、またはVHのC末端をVLのN末端に繋ぐペプチドコードリンカーによって繋がれている。ある特定の実施形態では、抗原結合ドメイン(例えば、PSCA結合ドメイン)は、N末端からC末端に、VH-リンカー-VLの立体配置を有するscFvを含む。ある特定の実施形態では、抗原結合ドメインは、N末端からC末端に、VL-リンカー-VHの立体配置を有するscFvを含む。当業者は、本開示における使用のために適切な立体配置を選択することができる。
【0185】
通常、リンカーは、可動性のためにグリシンが、および溶解性のためにセリンまたはスレオニンが豊富である。リンカーは、細胞外抗原結合ドメインの重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを連結できる。リンカーの非限定的例は、その内容はその全体がこれにより参照により本明細書に組み込まれるShen et al.、Anal. Chem. 80(6):1910-1917 (2008)およびWO2014/087010に開示されている。種々のリンカー配列が当技術分野において周知であり、非限定的に、グリシンおよびセリン(GS)リンカーが挙げられる。当業者は、本開示における使用のための適切なリンカー配列を選択することができる。ある特定の実施形態では、本開示の抗原結合ドメインは、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、ここでVHとVLとはGSリンカー配列によって分けられている。
【0186】
定常領域の除去およびリンカーの挿入にもかかわらず、scFvタンパク質は、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。Huston, et al. (Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 85:5879-5883, 1988)によって記載されるとおり、単鎖Fvポリペプチド抗体は、VH-およびVL-をコードする配列を含む核酸から発現され得る。同様に、米国特許第5,091,513号、第5,132,405号および第4,956,778号;ならびに米国特許公開第20050196754号および第20050196754号も参照されたい。阻害活性を有するアンタゴニストのscFvsは、記載されている[例えば、Zhao et al., Hybridoma (Larchmt) 2008 27(6):455-51;Peter et al., J Cachexia Sarcopenia Muscle 2012 August 12;Shieh et al., J Immunol 2009 183(4):2277-85;Giomarelli et al., Thromb Haemost 2007 97(6):955-63;Fife eta., J Clin Invst 2006 116(8):2252-61;Brocks et al., Immunotechnology 1997 3(3):173-84;Moosmayer et al., Ther Immunol 1995 2(10:31-40)を参照されたい。刺激活性を有するアゴニストのscFvsは、記載されている[例えば、Peter et al., J Bioi Chem 2003 25278(38):36740-7;Xie et al., Nat Biotech 1997 15(8):768-71;Ledbetter et al., Crit Rev Immunol 1997 17(5-6):427-55;Ho et al., BioChim Biophys Acta 2003 1638(3):257-66を参照されたい]。
【0187】
本明細書で使用される場合「Fab」は、抗原に結合するが、一価であり、Fc部分を有さない抗体構造の断片を指し、例えば、酵素パパインによって消化された抗体は、2つのFab断片および1つのFc断片[例えば、重(H)鎖定常領域;抗原に結合しないFc領域]を生じる。
【0188】
本明細書で使用される場合、「F(ab’)2」は、全IgG抗体のペプシン消化によって生成される抗体断片を指し、この断片は、2つの抗原結合(ab’)(二価)領域を有し、各(ab’)領域は、2つの別々のアミノ酸鎖、抗原に結合するためのS-S結合によって連結されたH鎖の一部および軽(L)鎖を含み、残りのH鎖部分は、互いに連結されている。「F(ab’)2」断片は、2つの個別のFab’断片に分けられる。
【0189】
ある特定の実施形態では、抗原結合ドメインは、免疫細胞が投与されるのと同じ種由来であってよい。例えば、ヒトにおける使用のために、CARの抗原結合ドメインは、ヒト抗体またはその断片を含み得る。ある特定の実施形態では、抗原結合ドメインは、免疫細胞が投与されるのとは別の種由来であってよい。例えば、ヒトにおける使用のために、CARの抗原結合ドメインは、マウス抗体またはその断片を含み得る。
【0190】
膜貫通ドメイン
CARは、CARの抗原結合ドメインをCARの細胞内ドメインに繋ぐ膜貫通ドメインを含み得る。CARの膜貫通ドメインは、細胞(例えば、免疫細胞またはその前駆体)の細胞膜にわたることができる領域である。膜貫通ドメインは、細胞膜、例えば、真核生物細胞膜への挿入のためである。ある特定の実施形態では、膜貫通ドメインは、CARの抗原結合ドメインと細胞内ドメインとの間に挿入される。
【0191】
ある特定の実施形態では、膜貫通ドメインは、CAR中の1つまたは複数のドメインと天然で会合している。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、受容体複合体の他の膜との相互作用を最小化するために、かかるドメインの同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへの結合を回避するように、選択されるかまたは1つもしくは複数のアミノ酸置換によって改変され得る。
【0192】
膜貫通ドメインは、天然または合成供給源のいずれか由来であってもよい。供給源が天然である場合、ドメインは、任意の膜結合または膜貫通タンパク質、例えば、I型膜貫通タンパク質由来であり得る。供給源が合成である場合、膜貫通ドメインは、CARの細胞膜への挿入を促進する任意の人工配列、例えば、人工疎水性配列であってよい。本開示における具体的な使用の膜貫通ドメインの例として、非限定的に、T細胞受容体のアルファ、ベータまたはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD7、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134(OX-40)、CD137(4-1BB)、CD154(CD40L)、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8およびTLR9由来の膜貫通ドメイン[すなわち、その少なくとも膜貫通領域(複数可)を含む]が挙げられる。ある特定の実施形態では、膜貫通ドメインは、合成であってよく、その場合、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を主に含む。ある特定の例示的実施形態では、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンのトリプレットは、合成膜貫通ドメインの各末端で見出される。
【0193】
本明細書に記載される膜貫通ドメインは、本明細書に記載される任意の抗原結合ドメイン、本明細書に記載される任意の細胞内ドメインまたはCARに含まれ得る本明細書に記載される任意の他のドメインと組み合わされ得る。
【0194】
ある特定の実施形態では、膜貫通ドメインは、ヒンジ領域をさらに含む。ある特定の実施形態では、CARはヒンジ領域も含み得る。CARのヒンジ領域は、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に位置付けられた親水性領域である。ある特定の実施形態では、このドメインは、CARのための適切なタンパク質フォールディングを促進する。ヒンジ領域は、CARのための任意の構成成分であってよい。ヒンジ領域は、抗体のFc断片、抗体のヒンジ領域、抗体のCH2領域、抗体のCH3領域、人工ヒンジ配列またはこれらの組合せから選択されるドメインを含み得る。ヒンジ領域の例として、非限定的に、CD8aヒンジ、3個のグリシン(Gly)ほどに小さい場合があるポリペプチドから作られた人工ヒンジならびにIgG(例えば、ヒトIgG4)のCH1およびCH3ドメインが挙げられる。
【0195】
ある特定の実施形態では、CARは、抗原結合ドメインを膜貫通ドメインに繋ぎ、次に細胞内ドメインに繋ぐヒンジ領域を含む。ヒンジ領域は、標的細胞上の標的抗原を認識および結合する抗原結合ドメインを典型的には支持することができる[例えば、Hudecek et al., Cancer Immunol. Res. (2015) 3(2): 125-135を参照されたい]。ある特定の実施形態では、ヒンジ領域は、可動性ドメインであり、抗原結合ドメインが、腫瘍細胞などの細胞上の標的抗原の特定の構造および密度を最適に認識する構造を持てるようにする。同文献。ヒンジ領域の可動性は、ヒンジ領域が多数の異なる立体構造を取り入れられるようにする。
【0196】
ある特定の実施形態では、ヒンジ領域は、免疫グロブリン重鎖ヒンジ領域である。ある特定の実施形態では、ヒンジ領域は、受容体由来のヒンジ領域ポリペプチドである(例えば、CD8由来ヒンジ領域)。
【0197】
ヒンジ領域は、約4アミノ酸(aa)から約50アミノ酸(aa)、例えば、約4aaから約10aa、約10aaから約15aa、約15aaから約20aa、約20aaから約25aa、約25aaから約30aa、約30aaから約40aaまたは約40aaから約50aaの長さを有し得る。一部の実施形態では、ヒンジ領域は、5aaを超える、10aaを超える、15aaを超える、20aaを超える、25aaを超える、30aaを超える、35aaを超える、40aaを超える、45aaを超える、50aaを超える、55aaまたはこれを超える長さを有し得る。
【0198】
好適なヒンジ領域は、容易に選択でき、4アミノ酸から10アミノ酸、5アミノ酸から9アミノ酸、6アミノ酸から8アミノ酸または7アミノ酸から8アミノ酸を含む、1アミノ酸(例えば、Gly)から20アミノ酸、2アミノ酸から15アミノ酸、3アミノから12アミノ酸などの多数の好適な長さいずれであってもよく、1、2、3、4、5、6または7アミノ酸であってもよい。好適なヒンジ領域は、20アミノ酸を超える長さを有し得る(例えば、30、40、50、60またはこれを超えるアミノ酸)。
【0199】
例えば、ヒンジ領域は、グリシンポリマー、グリシン-セリンポリマー、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマーおよび当技術分野において周知の他の可動性リンカーを含む。グリシンおよびグリシン-セリンポリマーは、使用され得る;GlyおよびSerの両方は、比較的構造不定であり、そのため構成成分間の中性のテザー(tether)として役立ち得る。グリシンポリマーは使用され得る;グリシンは、アラニンよりもさらに顕著にファイ-プサイ空間に接近し、長い側鎖を有する残基よりも制限されていない[例えば、Scheraga, Rev. Computational. Chem. (1992) 2: 73-142を参照されたい]。
【0200】
ある特定の実施形態では、ヒンジ領域は免疫グロブリン重鎖ヒンジ領域である。免疫グロブリンヒンジ領域アミノ酸配列は、当技術分野において周知である;例えば、Tan et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1990) 87(1):162-166;およびHuck et al., Nucleic Acids Res. (1986) 14(4): 1779-1789を参照されたい。
【0201】
ヒンジ領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4ヒンジ領域のアミノ酸配列を含み得る。一実施形態では、ヒンジ領域は、野生型(天然に存在する)ヒンジ領域と比較して1つまたは複数のアミノ酸置換および/または挿入および/または欠失を含み得る。例えば、Yan et al., J. Biol. Chem. (2012) 287: 5891-5897を参照されたい。
【0202】
細胞内シグナル伝達ドメイン
また、CARは、細胞内シグナル伝達ドメインを含む。「細胞内シグナル伝達ドメイン」および「細胞内ドメイン」という用語は、本明細書で互換的に使用される。CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CARを発現する細胞(例えば免疫細胞)のエフェクター機能のうちの少なくとも1つの活性化の原因である。細胞内シグナル伝達ドメインは、エフェクター機能シグナルを伝達し、細胞(例えば免疫細胞)をその特殊化機能、例えば標的細胞の傷害および/または破壊を実施するように方向付ける。
【0203】
本開示における使用のための細胞内ドメインの例には、表面受容体の細胞質部分、共刺激分子、およびT細胞においてシグナル伝達を開始するのに呼応して作用する任意の分子、ならびにこれらの要素の任意の誘導体または変異型、および同じ機能性を有する任意の合成配列が含まれるが、これらに限定されない。
【0204】
細胞内シグナル伝達ドメインの例には、T細胞受容体複合体のζ鎖またはそのホモログのうちのいずれか、例えばη鎖、FcsRIγおよびβ鎖、MB1(Iga)鎖、B29(Ig)鎖など、ヒトCD3ゼータ鎖、CD3ポリペプチド(Δ、δおよびε)、sykファミリーチロシンキナーゼ(Syk、ZAP70など)、srcファミリーチロシンキナーゼ(Lck、Fyn、Lynなど)、ならびにT細胞伝達に関与する他の分子、例えばCD2、CD5およびCD28が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ゼータ鎖、FcyRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質尾部、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)保有細胞質受容体およびこれらの組合せであり得る。
【0205】
ある特定の実施形態において、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、1つまたは複数の共刺激分子の任意の部分、例えばCD2、CD3、CD8、CD27、CD28、ICOS、4-1BB、PD-1からの少なくとも1つのシグナル伝達ドメイン、これらの任意の誘導体または変異型、同じ機能性を有するこれらの任意の合成配列、およびこれらの任意の組合せを含む。
【0206】
細胞内ドメインの他の例には、非限定的に、TCR、CD3ゼータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD86、共通FcRガンマ、FcRベータ(FcイプシロンRIb)、CD79a、CD79b、FcγRIIa、DAP10、DAP12、T細胞受容体(TCR)、CD8、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX9、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、KIRファミリータンパク質、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83に特異的に結合するリガンド、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD127、CD160、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CDlib、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、本明細書で説明される他の共刺激分子を含む1つまたは複数の分子または受容体からの断片またはドメイン、これらの任意の誘導体、変異型または断片、同じ機能性を有する共刺激分子の任意の合成配列、およびこれらの任意の組合せが含まれる。
【0207】
細胞内ドメインの追加の例には、非限定的に、CD3、B7ファミリー共刺激性および腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリー受容体を含む第1、第2および第3世代T細胞シグナル伝達タンパク質を含む、いくつかの種類の様々な他の免疫シグナル伝達受容体の細胞内シグナル伝達ドメインが含まれるが、これらに限定されない[例えば、Park and Brentjens, J. Clin. Oncol. (2015) 33(6): 651-653を参照されたい]。加えて、細胞内シグナル伝達ドメインは、NKおよびNKT細胞によって使用されるシグナル伝達ドメイン[例えば、Hermanson and Kaufman, Front. Immunol. (2015) 6: 195を参照されたい]、例えばNKp30のシグナル伝達ドメイン(B7-H6)[例えば、Zhang et al., J. Immunol. (2012) 189(5): 2290-2299を参照されたい]、ならびにDAP12[例えば、Topfer et al., J. Immunol. (2015) 194(7): 3201-3212を参照されたい]、NKG2D、NKp44、NKp46、DAP10およびCD3zを含み得る。
【0208】
本開示の主題のCARにおける使用に好適な細胞内シグナル伝達ドメインは、CARの活性化に応答して(すなわち、抗原および二量体化剤によって活性化されて)、明確かつ検出可能なシグナル(例えば、細胞による1つまたは複数のサイトカインの産生の増大;標的遺伝子の転写の変化;タンパク質の活性の変化;細胞のふるまい、例えば細胞死の変化;細胞増殖;細胞分化;細胞生存;細胞シグナル伝達応答のモジュレーションなど)を提供する任意の所望のシグナル伝達ドメインを含む。ある特定の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、以下に説明される少なくとも1つの(例えば、1、2、3、4、5、6などの)ITAMモチーフを含む。ある特定の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、DAP10/CD28タイプのシグナル伝達鎖を含む。ある特定の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、膜結合CARに共有結合していないが、その代わりに細胞質内に拡散している。
【0209】
本開示の主題のCARにおける使用に好適な細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)含有細胞内シグナル伝達ポリペプチドを含む。ある特定の実施形態において、ITAMモチーフは、細胞内シグナル伝達ドメインにおいて2回反復され、ここでITAMモチーフの第1の事例と第2の事例とは、6~8個のアミノ酸分互いに分離している。ある特定の実施形態において、主題のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、3つのITAMモチーフを含む。
【0210】
ある特定の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、非限定的に、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIC、FcγRIIIAおよびFcRL5などの、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含有するヒト免疫グロブリン受容体のシグナル伝達ドメインを含む[例えば、Gillis et al., Front. Immunol. (2014) 5:254を参照されたい]。
【0211】
好適な細胞内シグナル伝達ドメインは、ITAMモチーフを含有するポリペプチドに由来するITAMモチーフ含有部分であり得る。例えば、好適な細胞内シグナル伝達ドメインは、任意のITAMモチーフ含有タンパク質からのITAMモチーフ含有ドメインであり得る。したがって、好適な細胞内シグナル伝達ドメインは、それが由来するタンパク質全体の配列全体を含有する必要はない。好適なITAMモチーフ含有ポリペプチドの例には、DAP12、FCER1G(Fcイプシロン受容体Iガンマ鎖)、CD3D(CD3デルタ)、CD3E(CD3イプシロン)、CD3G(CD3ガンマ)、CD3Z(CD3ゼータ)およびCD79A(抗原受容体複合体関連タンパク質アルファ鎖)が含まれるが、これらに限定されない。
【0212】
ある特定の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、DAP12(TYROBP;TYROタンパク質チロシンキナーゼ結合タンパク質;KARAP;PLOSL;DNAX活性化タンパク質12;KAR関連タンパク質;TYROタンパク質チロシンキナーゼ-結合タンパク質;キラー活性化受容体関連タンパク質;キラー-活性化受容体-関連タンパク質などとしても公知)に由来する。ある特定の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、FCER1G(FCRG;Fcイプシロン受容体Iガンマ鎖;Fc受容体ガンマ鎖;fcイプシロンRIガンマ;fcRγ;fceRlγ;高親和性免疫グロブリンイプシロン受容体サブユニットガンマ;免疫グロブリンE受容体高親和性ガンマ鎖などとしても公知)に由来する。ある特定の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD3デルタ鎖[CD3D;CD3-DELTA;T3D;CD3抗原デルタサブユニット;CD3デルタ;CD3d抗原、デルタポリペプチド(TiT3複合体);OKT3、デルタ鎖;T細胞受容体T3デルタ鎖;T細胞表面糖タンパク質CD3デルタ鎖などとしても公知]に由来する。ある特定の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD3イプシロン鎖(CD3e、T細胞表面抗原T3/Leu-4イプシロン鎖、T細胞表面糖タンパク質CD3イプシロン鎖、AI504783、CD3、CD3イプシロン、T3eなどとしても公知)に由来する。ある特定の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD3ガンマ鎖[CD3G、T細胞受容体T3ガンマ鎖、CD3-GAMMA、T3G、ガンマポリペプチド(TiT3複合体)などとしても公知]に由来する。ある特定の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD3ゼータ鎖(CD3Z、T細胞受容体T3ゼータ鎖、CD247、CD3-ZETA、CD3H、CD3Q、T3Z、TCRZなどとしても公知)に由来する。ある特定の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD79A[B細胞抗原受容体複合体関連タンパク質アルファ鎖;CD79a抗原(免疫グロブリン関連アルファ);MB-1膜糖タンパク質;ig-アルファ;膜結合免疫グロブリン関連タンパク質;表面IgM関連タンパク質などとしても公知]に由来する。ある特定の実施形態において、本開示のFN3 CARにおける使用に好適な細胞内シグナル伝達ドメインは、DAP10/CD28タイプのシグナル伝達鎖を含む。ある特定の実施形態において、本開示のFN3 CARにおける使用に好適な細胞内シグナル伝達ドメインは、ZAP70ポリペプチドを含む。ある特定の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79bまたはCD66dの細胞質シグナル伝達ドメインを含む。ある特定の実施形態において、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ゼータの細胞質シグナル伝達ドメインを含む。
【0213】
通常、細胞内シグナル伝達ドメイン全体を用いることができるが、多くの場合、鎖全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの短縮部分が使用される範囲内において、そのような短縮部分は、それがエフェクター機能シグナルを伝達する限り、インタクトな鎖の代わりに使用することができる。細胞内シグナル伝達ドメインは、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な、細胞内シグナル伝達ドメインの任意の短縮部分を含む。
【0214】
本明細書で説明される細胞内シグナル伝達ドメインは、本明細書で説明される抗原結合ドメインのうちのいずれか、本明細書で説明される膜貫通ドメインのうちのいずれか、またはCARに含まれ得る本明細書で説明される他のドメインのうちのいずれかと組み合わせることができる。
【0215】
G.改変免疫細胞およびそれを産生する方法
免疫受容体(例えばTCRまたはCAR)を含む改変免疫細胞またはその前駆体(precursor)(例えばT細胞)を増やすための方法が、本明細書で提供される。したがって、そのような改変細胞は、そこで発現されるTCRおよび/またはCARによって方向付けられる特異性を、適宜免疫細胞によって提供される内在的特異性に加えて、所有する。
【0216】
また、改変免疫細胞またはその前駆体(例えばT細胞)を産生または生成するための方法が、提供される。細胞は、一般的に、免疫受容体(例えばTCRおよび/またはCAR)をコードする1つまたは複数の遺伝子操作された核酸を導入することによって操作される。
【0217】
ある特定の実施形態において、免疫受容体(例えばTCRおよび/またはCAR)は、発現ベクターによって細胞へ導入される。TCRおよび/またはCARをコードする核酸配列を含む発現ベクターは、当該技術分野において公知である。好適な発現ベクターには、非限定的に、Sleeping Beauty、piggyBacなどのトランスポゾン媒介ベクター、およびPhi31などのインテグラーゼを含む、レンチウイルスベクター、ガンマレトロウイルスベクター、フォーミーウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、操作されたハイブリッドウイルス、ネイキッドDNAが含まれる。一部の他の好適な発現ベクターには、単純ヘルペスウイルス(HSV)およびレトロウイルス発現ベクターが含まれる。
【0218】
ある特定の実施形態において、免疫受容体をコードする核酸は、ウイルス形質導入を介して細胞へ導入される。ある特定の実施形態において、ウイルス形質導入は、免疫細胞または前駆細胞を、免疫受容体をコードする核酸を含むウイルスベクターと接触させることを含む。
【0219】
アデノウイルス発現ベクターは、ゲノムDNAへの組込みについては低い能力を有するが、宿主細胞をトランスフェクトすることについては高効率を有するアデノウイルスに基づく。アデノウイルス発現ベクターは、(a)発現ベクターのパッケージングを支持するのに十分な、および(b)宿主細胞において免疫受容体を最終的に発現するのに十分なアデノウイルス配列を含有する。ある特定の実施形態において、アデノウイルスゲノムは、36kbの直鎖状二本鎖DNAであり、ここで、本開示の発現ベクターを作製するために、異質性(foreign)DNA配列(例えば外来性TCRおよび/またはCARをコードする核酸)を挿入して、アデノウイルスDNAの大部分を置換してもよい[例えば、Danthinne and Imperiale, Gene Therapy (2000) 7(20): 1707-1714を参照されたい]。
【0220】
別の発現ベクターは、アデノウイルス連結システムを利用するアデノ随伴ウイルス(AAV)に基づく。このAAV発現ベクターは、宿主ゲノムへの高頻度の組込みを有する。このAAV発現ベクターは、非分裂細胞に感染することができ、したがって、そのためそれは、遺伝子の、例えば組織培養中またはインビボの、哺乳動物細胞へのデリバリーに有用である。AAVベクターは、感染力について広範な宿主範囲を有する。AAVベクターの生成および使用に関する詳細は、米国特許第5,139,941号および同第4,797,368号において説明されている。
【0221】
レトロウイルス発現ベクターは、宿主ゲノムへ組み込まれること、大量の異質性遺伝物質をデリバリーすること、広範なスペクトルの種および細胞種に感染すること、ならびに特別な細胞系においてパッケージングされることが可能である。レトロウイルスベクターは、複製欠損であるウイルスを産生するために、核酸(例えば外来性TCRおよび/またはCARをコードする核酸)をウイルスゲノムのある特定の場所へ挿入することによって構築される。レトロウイルスベクターは多様な細胞種に感染することができるが、TCRおよび/またはCARの組込みおよび安定な発現は、宿主細胞の分裂を必要とする。
【0222】
レンチウイルスベクターは、共通のレトロウイルス遺伝子gag、polおよびenvに加えて、調節機能または構造機能を有する他の遺伝子を含有する複雑なレトロウイルスであるレンチウイルスに由来する(例えば、米国特許第6,013,516号および同第5,994,136号を参照されたい)。レンチウイルスの一部の例には、ヒト免疫不全ウイルス(例えばHIV-1、HIV-2)およびサル免疫不全ウイルス(SIV)が含まれる。レンチウイルスベクターは、HIV病原性遺伝子を何倍にも減弱することによって生成されており、例えば、遺伝子env、vif、vpr、vpuおよびnefは、ベクターを生物学的に安全にするために欠失されている。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞に感染することができ、例えばTCRおよび/またはCARをコードする核酸の、インビボおよびエクスビボ(ex vivo)遺伝子移行および発現の両方について使用することができる(例えば米国特許第5,994,136号を参照されたい)。
【0223】
発現ベクターは、当業者に公知の任意の手段によって宿主細胞へ導入され得る。発現ベクターは、所望の場合、トランスフェクションのためのウイルス配列を含み得る。あるいは、発現ベクターは、融合、電気穿孔、微粒子銃、トランスフェクション、リポフェクションその他によって導入され得る。宿主細胞は、培養において増殖すること、および増やすことができ、その後、発現ベクターが導入され、続いて、ベクターの導入および組込みのための適切な処置がなされる。その後、宿主細胞を増やし、ベクターに存在するマーカーによってスクリーニングしてもよい。使用され得る様々なマーカーは、当該技術分野において公知であり、hprt、ネオマイシン抵抗性、チミジンキナーゼ、ハイグロマイシン抵抗性などを含み得る。本明細書で使用される場合、「細胞」、「細胞系」および「細胞培養物」という用語は、互換的に使用され得る。一部の実施形態において、宿主細胞は、免疫細胞またはその前駆体、例えばT細胞、NK細胞またはNKT細胞である。
【0224】
ある特定の実施形態において、改変免疫細胞は、治療的に関連する子孫を生ずることができる遺伝子操作されたTリンパ球(T細胞)、ナイーブT細胞、メモリーT細胞[例えば中枢メモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリー細胞(TEM)]、メモリーB細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)およびマクロファージである。ある特定の実施形態において、遺伝子操作された細胞は自家細胞である。
【0225】
改変免疫細胞(例えばTCRおよび/またはCARを含む)は、宿主細胞に、本開示の核酸を含む発現ベクターを安定にトランスフェクトすることによって産生することができる。本開示の改変細胞を生成するための追加の方法には、化学形質転換法(例えば、リン酸カルシウム、デンドリマー、リポソームおよび/もしくはカチオン性ポリマーを使用する)、非化学形質転換法(例えば、電気穿孔、光学形質転換、遺伝子エレクトロトランスファーおよび/もしくは水力学デリバリー)ならびに/または粒子ベースの方法[例えば、遺伝子銃を使用するインペイルフェクション(impalefection)、および/もしくはマグネトフェクション(magnetofection)]が含まれるが、これらに限定されない。免疫受容体を発現するトランスフェクトされた細胞は、エクスビボにおいて増やすことができる。
【0226】
発現ベクターを宿主細胞へ導入するための物理的方法には、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子ボンバードメント(particle bombardment)、マイクロインジェクション、電気穿孔などが含まれる。ベクターおよび/または外来性核酸を含む細胞を産生するための方法は、当該技術分野において周知である。例えば、Sambrook et al. (2001), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New Yorkを参照されたい。発現ベクターを宿主細胞へ導入するための化学法には、高分子複合体などのコロイド分散系、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、ならびに水中油エマルション、ミセル、混合ミセルおよびリポソームを含む脂質ベースの系が含まれる。
【0227】
使用に好適な脂質は、市販物から得ることができる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)は、Sigma、St. Louis、MOから得ることができ;ジセチルホスフェート(「DCP」)は、K & K Laboratories(Plainview、NY)から得ることができ;コレステロール(「Choi」)は、Calbiochem-Behringから得ることができ;ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)および他の脂質は、Avanti Polar Lipids, Inc.(Birmingham、AL)から得ることができる。クロロホルムまたはクロロホルム/メタノール中の脂質のストック液は、約-20℃において保存され得る。クロロホルムは、メタノールよりも容易に蒸発するので、クロロホルムは、唯一の溶媒として使用してもよい。「リポソーム」は、囲い込まれた脂質二重層または凝集物の生成によって形成される様々な単層および多層脂質媒体を包含する総称である。リポソームは、リン脂質二重膜および内部の水性媒体を有する小胞構造を有することで特徴付けることができる。多層リポソームは、水性媒体によって分離される多数の脂質層を有する。リン脂質が過剰な水溶液中に懸濁されたとき、それらは自発的に形成する。脂質成分は、自己再配置を経て、その後、閉鎖構造を形成し、脂質二重層の間に水および溶解された溶質を封入する(Ghosh et al., 1991 Glycobiology 5: 505-10)。正常な小胞構造とは異なる溶液中の構造を有する組成物もまた包含される。例えば、脂質は、ミセル構造と推定されてもよく、単に脂質分子の不均一な凝集物として存在してもよい。また、リポフェクタミン-核酸複合体が、企図される。
【0228】
外来性核酸を宿主細胞へ導入するために使用される方法にかかわらず、宿主細胞における核酸の存在を確認するために、様々なアッセイを実施してもよい。そのようなアッセイは、例えば、当業者に周知の分子生物学アッセイ、例えばサザンブロッティングおよびノザンブロッティング、RT-PCRおよびPCR;生化学アッセイ、例えば免疫学的手段(ELISAおよびウェスタンブロット)によってまたは本明細書で説明されるアッセイによって特定のペプチドの存在または非存在を検出して本開示の範囲内に入る薬剤を特定することを含む。
【0229】
一実施形態において、宿主細胞へ導入される核酸は、RNAである。別の実施形態において、RNAは、インビトロで転写されたRNAまたは合成RNAを含むmRNAである。RNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成鋳型を使用してインビトロ転写によって産生され得る。任意の供給源からの目的のDNAは、PCRによって、適切なプライマーおよびRNAポリメラーゼを使用してインビトロmRNA合成のための鋳型へ直接的に変換され得る。DNAの供給源は、例えば、ゲノムDNA、プラスミドDNA、ファージDNA、cDNA、合成DNA配列またはDNAの他の任意の適切な供給源であり得る。
【0230】
PCRを使用して、mRNAのインビトロ転写のための鋳型を生成してもよく、そのmRNAは、その後細胞へ導入される。PCRを実施するための方法は、当該技術分野において周知である。PCRにおける使用のためのプライマーは、PCRのための鋳型として使用されるDNAの領域に実質的に相補的な領域を有するように設計される。「実質的に相補的な」とは、本明細書で使用される場合、プライマー配列中の塩基の大部分またはすべてが相補的であるヌクレオチド配列を指す。実質的に相補的な配列は、PCRに使用されるアニーリング条件下において、意図されるDNA標的とアニールまたはハイブリダイズすることができる。プライマーは、DNA鋳型の任意の部分と実質的に相補的であるように設計され得る。例えば、プライマーは、5’および3’UTRを含む、細胞において通常転写される遺伝子の部分(オープンリーディングフレーム)を増幅するように設計され得る。また、プライマーは、特定の目的のドメインをコードする、遺伝子の一部を増幅するように設計してもよい。一実施形態において、プライマーは、5’および3’UTRのすべてまたは部分を含む、ヒトcDNAのコード領域を増幅するように設計される。PCRに有用なプライマーは、当該技術分野において周知の合成方法によって生成される。「フォワードプライマー」は、増幅されるDNA配列の上流の、DNA鋳型のヌクレオチドに実質的に相補的なヌクレオチド領域を含有するプライマーである。「上流」は、コード鎖に対して、増幅されるDNA配列へ5の位置を指すために本明細書で使用される。「リバースプライマー」とは、増幅されるDNA配列の下流の、二本鎖DNA鋳型に実質的に相補的なヌクレオチド領域を含有するプライマーである。「下流」は、コード鎖に対して、増幅されるDNA配列へ3’の位置を指すために本明細書で使用される。
【0231】
また、RNAの安定性および/または翻訳効率を促進する能力を有する化学構造を使用してもよい。RNAは、典型的に、5’および3’UTRを有する。一実施形態において、5’UTRは、0~3000ヌクレオチドの長さである。コード領域に付加される5’および3’UTR配列の長さは、非限定的に、UTRの異なる領域にアニールする、PCRのためのプライマーを設計することを含む、様々な方法によって変化することができる。この手法を使用して、当業者は、転写されたRNAのトランスフェクション後に最適翻訳効率を達成するのに必要な5’および3’UTRの長さを改変することができる。
【0232】
5’および3’UTRは、目的の遺伝子についての天然に存在する内在性5’および3’UTRであり得る。あるいは、目的の遺伝子にとって内在性ではないUTR配列は、UTR配列をフォワードおよびリバースプライマーに組み込むことによって、または鋳型の他の任意の改変によって付加することができる。目的の遺伝子にとって内在性ではないUTR配列の使用は、RNAの安定性および/または翻訳効率を改変するために有用であり得る。例えば、3’UTR配列内のAUリッチエレメントは、mRNAの安定性を減少し得ることが公知である。それゆえ、3’UTRは、当該技術分野において周知であるUTRの特性に基づいて、転写されたRNAの安定性を増大させるように選択または設計され得る。
【0233】
一実施形態において、5’UTRは、内在性遺伝子のKozak配列を含有し得る。あるいは、目的の遺伝子にとって内在性ではない5’UTRが上記に説明されるようにPCRによって付加されている場合、コンセンサスKozak配列は、5’UTR配列を付加することによって再設計され得る。Kozak配列は、一部のRNA転写物の翻訳効率を増大させ得るが、効率的な翻訳を可能にするためにすべてのRNAにとって必要であるようには見えない。多くのmRNAについてのKozak配列の必要性は、当該技術分野において公知である。他の実施形態において、5’UTRは、RNAゲノムが細胞内において安定であるRNAウイルスに由来し得る。他の実施形態において、mRNAのエキソヌクレアーゼ分解を妨げるために、様々なヌクレオチドアナログが3’または5’UTRにおいて使用され得る。
【0234】
遺伝子クローニングの必要なく、DNA鋳型からのRNAの合成を可能にするために、転写プロモーターを、DNA鋳型の転写される配列の上流に結合すべきである。RNAポリメラーゼのためのプロモーターとして機能する配列がフォワードプライマーの5’末端に付加された場合、RNAポリメラーゼプロモーターは、PCR産物の転写されるオープンリーディングフレームの上流に組み込まれる。一実施形態において、プロモーターは、本明細書中の他の箇所で説明される通り、T7ポリメラーゼプロモーターである。他の有用なプロモーターには、T3およびSP6 RNAポリメラーゼプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。T7、T3およびSP6プロモーターについてのコンセンサスヌクレオチド配列は、当該技術分野において公知である。
【0235】
一実施形態において、mRNAは、リボソーム結合、翻訳開始および細胞内におけるmRNA安定性を決定する5’末端のcapおよび3’ポリ(A)尾部の両方を有する。環状DNA鋳型、例えばプラスミドDNAにおいて、RNAポリメラーゼは、真核細胞における発現に好適ではない長いコンカテマー生成物を産生する。3’UTRの末端において直鎖状にされたプラスミドDNAの転写は、正常なサイズのmRNAを生じ、このmRNAが転写後にポリアデニル化された場合でさえも、それは真核生物トランスフェクションにおいて有効ではない。
【0236】
直鎖状DNA鋳型において、ファージT7 RNAポリメラーゼは、鋳型の最後の塩基を超えて転写物の3’末端を伸長することができる[Schenborn and Mierendorf, Nuc Acids Res., 13:6223-36 (1985);Nacheva and Berzal-Herranz, Eur. J. Biochem., 270:1485-65 (2003)]。
【0237】
転写DNA鋳型のポリA/Tセグメントは、100T尾部などのポリT尾部(サイズは、50~5000個のTであり得る)を含有するリバースプライマーを使用することによってPCR中に、または非限定的にDNAライゲーションもしくはインビトロ組換えを含む他の任意の方法によってPCR後に産生することができる。また、ポリ(A)尾部は、RNAに安定性を提供し、それらの分解を低減する。一般的に、ポリ(A)尾部の長さは、転写されたRNAの安定性と正に相関する。一実施形態において、ポリ(A)尾部は、100~5000個のアデノシンである。
【0238】
RNAのポリ(A)尾部は、大腸菌(E. coli)ポリAポリメラーゼ(E-PAP)などのポリ(A)ポリメラーゼの使用によりインビトロ転写後にさらに伸長してもよい。一実施形態において、ポリ(A)尾部の長さを100ヌクレオチドから300~400ヌクレオチドまで増大させると、RNAの翻訳効率における約2倍の増大が得られる。加えて、3’末端への様々な化学基の結合は、mRNA安定性を増大し得る。そのような結合は、改変された/人工的なヌクレオチド、アプタマーおよび他の化合物を含有し得る。例えば、ATPアナログは、ポリ(A)ポリメラーゼを使用してポリ(A)尾部に組み込むことができる。ATPアナログは、RNAの安定性をさらに増大させることができる。
【0239】
また、5’capは、RNA分子に安定性を提供する。好ましい実施形態において、本明細書で開示される方法によって産生されるRNAは、5’capを含む。5’capは、当該技術分野において公知のおよび本明細書で説明される技法を使用して提供される[Cougot, et al., Trends in Biochem. Sci., 29:436-444 (2001);Stepinski, et al., RNA, 7:1468-95 (2001);Elango, et al., Biochim. Biophys. Res. Commun., 330:958-966 (2005)]。
【0240】
ある特定の実施形態において、インビトロで転写されたRNAなどのRNAは、細胞に電気穿孔される。糖、ペプチド、脂質、タンパク質、抗酸化物質および界面活性剤などの細胞透過性および生存率を促進する因子を含有し得る、細胞電気穿孔に好適な任意の溶質が含まれ得る。
【0241】
一部の実施形態において、免疫受容体をコードする核酸は、RNA、例えばインビトロで合成されたRNAである。RNAのインビトロ合成のための方法は、当該技術分野において公知であり;任意の公知の方法は、免疫受容体(例えばTCRおよび/またはCAR)をコードする配列を含むRNAを合成するために使用することができる。RNAを宿主細胞へ導入するための方法は、当該技術分野において公知である。例えば、Zhao et al. Cancer Res. (2010) 15: 9053を参照されたい。TCRおよび/またはCARをコードするヌクレオチド配列を含むRNAの、宿主細胞への導入は、インビトロ、エクスビボまたはインビボで行われ得る。例えば、宿主細胞(例えばNK細胞、細胞傷害性Tリンパ球など)は、インビトロまたはエクスビボで、TCRおよび/またはCARをコードするヌクレオチド配列を含むRNAを伴って電気穿孔され得る。
【0242】
開示される方法は、遺伝子改変されたT細胞の標的がん細胞を死滅させる能力の評価を含む、がん、幹細胞、急性および慢性感染ならびに自己免疫疾患の分野における、基礎研究および治療でのT細胞活性のモジュレーションに適用することができる。
【0243】
また、方法は、例えばプロモーターまたは入力RNA量を変化させて、発現レベルを個々に調節することを可能にすることによって、広い範囲にわたり発現レベルを制御する能力を提供する。さらに、mRNA産生のPCRベースの技法は、様々な構造およびそれらのドメインの組合せを有するmRNAの設計を大いに促進する。
【0244】
本開示のRNAトランスフェクション法の1つの利点は、RNAトランスフェクションが、本質的に一過性でありかつベクターを介さないことである。RNA導入遺伝子は、任意の追加のウイルス配列を必要としない最小限の発現カセットとして、短時間のインビトロ細胞活性化後にリンパ球へデリバリーされ、その中で発現され得る。これらの条件下において、宿主細胞ゲノムへの導入遺伝子の組込みは、起こりにくい。RNAのトランスフェクション効率およびリンパ球集団全体を均一に改変するその能力のために、細胞のクローニングは必要ではない。
【0245】
インビトロで転写されたRNA(IVT-RNA)によるT細胞の遺伝子改変は、2つの異なる方法を利用し、これらの方法の両方とも、様々な動物モデルにおいて試験されて成功している。細胞に、リポフェクションまたは電気穿孔の手段によって、インビトロで転写されたRNAをトランスフェクトする。移行されたIVT-RNAの発現の延長を達成するために、様々な改変を使用してIVT-RNAを安定化することは望ましい。
【0246】
インビトロ転写のための鋳型として標準化様式において利用され、安定化RNA転写物が産生されるような方法において遺伝子改変されている一部のIVTベクターが、文献において公知である。当該技術分野において使用される現在のプロトコールは、以下の構造:RNA転写を可能にする5’RNAポリメラーゼプロモーター、次に3’および/または5’の両側に非翻訳領域(UTR)を有する目的の遺伝子、ならびに50~70個のAヌクレオチドを含有する3’ポリアデニルカセットを有するプラスミドベクターに基づく。インビトロ転写の前に、環状プラスミドは、II型制限酵素によってポリアデニルカセットの下流において直鎖状にされる(認識配列は、切断部位に対応する)。したがって、ポリアデニルカセットは、転写物内の後のポリ(A)配列に対応する。この手技の結果として、一部のヌクレオチドは、直鎖状にされた後、酵素切断部位の部分として残り、3’末端においてポリ(A)配列を伸長または被覆する。この非生理学的オーバーハングが、そのようなコンストラクトから細胞内で産生されるタンパク質の量に影響を及ぼすかどうかは明らかではない。
【0247】
別の態様において、RNAコンストラクトは、電気穿孔によって細胞へデリバリーされる。例えば、米国第2004/0014645号、同第2005/0052630A1号、同第2005/0070841A1号、同第2004/0059285A1号、同第2004/0092907A1号において教示される、核酸コンストラクトの哺乳動物細胞への電気穿孔の製剤および方法を参照されたい。任意の公知の細胞種の電気穿孔に必要とされる電場強度を含む様々なパラメーターは、一般的に、関連研究文献ならびに本分野の多くの特許および出願において公知である。例えば、米国特許第6,678,556号、同第7,171,264号および同第7,173,116号を参照されたい。電気穿孔の治療適用のための装置は、市販されており[例えばMedPulser(商標)DNA Electroporation Therapy System(Inovio/Genetronics、San Diego、Calif.)]、米国特許第6,567,694号、同第6,516,223号、同第5,993,434号、同第6,181,964号、同第6,241,701号および同第6,233,482号などの特許において説明されており;また、電気穿孔は、例えば米国第20070128708A1号において説明される通りインビトロにおける細胞のトランスフェクションに使用してもよい。また、電気穿孔は、インビトロにおいて核酸を細胞へデリバリーするために利用され得る。したがって、当業者に公知の多くの利用可能なデバイスおよび電気穿孔システムのいずれかを利用する、発現コンストラクトを含む核酸の細胞への電気穿孔媒介投与は、目的のRNAを標的細胞へデリバリーするための劇的な新しい手段である。
【0248】
ある特定の実施形態において、免疫細胞(例えばT細胞)は、免疫受容体(例えばTCRおよび/またはCAR)をコードする核酸分子を導入する前、中および/または後にインキュベートまたは培養され得る。細胞(例えばT細胞)は、免疫受容体をコードする核酸分子の導入の前、中または後に、例えば免疫受容体をコードするウイルスベクター(例えばレンチウイルスベクター)による細胞の形質導入の前、中または後にインキュベートまたは培養され得る。ある特定の実施形態において、方法は、免疫受容体をコードする核酸分子を導入する前に、細胞を刺激剤または活性化剤(例えば白血病由来の改変細胞)により活性化または刺激することを含む。ある特定の実施形態において、方法は、免疫受容体をコードする核酸分子を導入した後に、細胞を刺激剤または活性化剤(例えば白血病由来の改変細胞)により活性化または刺激することを含む。
【0249】
H.処置方法
ある特定の実施形態において、本開示の方法により得た免疫細胞は、続いて養子細胞療法において用いられ得る。養子細胞療法は、がんなどの疾患と戦うために免疫細胞(例えばT細胞)が対象へ与えられる免疫療法である。一般的に、T細胞は、対象自身の末梢血または腫瘍組織から得られ、本開示の方法によりエクスビボにおいて刺激されおよび増やされ、その後対象へ投与して戻され得る[すなわち、自家適応細胞療法(autologous adaptive cell therapy)]。他の実施形態において、T細胞は、第1の対象から(例えば第1の対象の末梢血または腫瘍組織から)得られ、本開示の方法によりエクスビボにおいて刺激されおよび増やされ、その後第2の対象へ投与され得る[すなわち、同種異系間適応細胞療法(allogeneic adaptive cell therapy)]。
【0250】
ある特定の実施形態において、T細胞は、エクスビボにおいてさらに改変されて(例えば遺伝子改変されて)、免疫受容体(例えばTCRおよび/またはCAR)を発現し得る。「養子細胞療法」という用語は、遺伝子改変を伴わないT細胞療法、および遺伝子改変、例えば免疫受容体を発現するための遺伝子改変を伴うT細胞療法の両方を指す。
【0251】
そのため、ある特定の実施形態において、それを必要とする対象において疾患または障害を処置するための方法であって、本開示の改変免疫細胞を含む組成物を投与することを含み、改変免疫細胞が、免疫受容体を含む、方法が、本明細書で提供される。ある特定の実施形態において、免疫受容体は、本明細書中の他の箇所で説明されるTCRおよび/またはCARである。
【0252】
ある特定の実施形態において、疾患または障害は、がんである。ある特定の実施形態において、がんは、腫瘍である。ある特定の実施形態において、がんは、液性腫瘍または固形腫瘍である。
【0253】
他の態様において、それを必要とする対象において腫瘍を処置するための方法であって、対象に、本明細書で説明される方法のいずれかによって産生される改変免疫細胞を投与することを含む方法が、本明細書で提供される。
【0254】
ある特定の実施形態において、外来性抗原を含む白血病由来の改変細胞は、改変免疫細胞の特異性を外来性抗原へと方向付ける。ある特定の実施形態において、これは、改変免疫細胞に含まれる免疫受容体(例えば操作された免疫受容体)の特異性を再び方向付けることによって達成される。ある特定の実施形態において、免疫受容体は、外来性受容体、例えば外来性抗原に特異的な抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体、または外来性抗原に方向付けられた外来性T細胞受容体(TCR)であり得る。ある特定の実施形態において、免疫受容体は、内在性受容体、例えば天然受容体、例えば天然および/または内在性TCRレパートリーに由来するT細胞受容体であり得る。
【0255】
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される腫瘍を処置するための方法は、腫瘍マーキング工程をさらに含む。ある特定の実施形態において、腫瘍マーキング工程は、改変免疫細胞を腫瘍部位へ再び方向付ける(例えば動員する)ために、腫瘍を外来性抗原でマーキングするようにはたらく。ある特定の実施形態において、腫瘍マーキング工程は、腫瘍部位において外来性抗原を含む組成物を投与することを含む。ある特定の実施形態において、腫瘍部位において組成物を投与することは、腫瘍内または腫瘍周囲の投与を含む。ある特定の実施形態において、腫瘍部位において組成物を投与することは、腫瘍または腫瘍の近位への投与を含む。腫瘍をマーキングする様々な方法が、当業者に公知である。腫瘍内デリバリーに加えて、外来性抗原は、遺伝子配列を腫瘍へデリバリーするために広範に開発されている腫瘍溶解性ウイルスまたは遺伝子療法ベクターなどの腫瘍特異的担体を介して腫瘍へデリバリーされ得る。そのような媒体の使用は、腫瘍内投与に加えて、静脈内または腹腔内投与による投与経路などの多数の投与経路を可能にし、続いて前記ポリペプチドをコードする核酸の、腫瘍へのデリバリーをもたらす。また、腫瘍をマーキングする方法は、PCT出願PCT/IB第2020/053898号および同PCT/NL第19/50451号において説明されており、当該出願の開示は、それらを全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0256】
ある特定の実施形態において、腫瘍マーキング工程は、改変免疫細胞が投与される前に実施される。したがって、それを必要とする対象において腫瘍を処置するための方法であって、以下の逐次的工程:(1)対象へ、本明細書で説明される方法のうちのいずれかによって産生された改変免疫細胞を投与する工程;および(2)対象の腫瘍部位へ組成物を投与することを含む腫瘍マーキング工程であって、組成物が、外来性抗原またはそのペプチド断片を含む、工程を含む方法が、本明細書で提供される。
【0257】
ある特定の実施形態において、腫瘍マーキング工程は、改変免疫細胞が投与された後に実施される。したがって、それを必要とする対象において腫瘍を処置するための方法であって、以下の逐次的工程:(1)対象の腫瘍部位へ組成物を投与することを含む腫瘍マーキング工程であって、組成物が、外来性抗原またはそのペプチド断片を含む、工程;および(2)対象へ、本明細書で説明される方法のうちのいずれかによって産生された改変免疫細胞を投与する工程を含む方法が、本明細書で提供される。
【0258】
ある特定の実施形態において、腫瘍マーキング工程において投与される組成物は、改変免疫細胞の特異性を方向付けるために使用される白血病由来の改変細胞を含む。例えば、腫瘍マーキング工程は、対象の腫瘍部位へ組成物を投与することを含み、組成物は、白血病由来の改変細胞を含み、改変細胞は、非増殖性であり、改変細胞は、外来性抗原またはそのペプチド断片を含む。
【0259】
ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、PCT公開公報WO第2014/006058号および同第2014/090795号において説明されている細胞系DCOneの細胞であり、当該公開公報の開示は、それらを全体として参照により本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞は、細胞系DCOneの細胞であり、成熟樹状細胞表現型(DCOne mDC)を含む。
【0260】
図1Aは、1)T細胞(メモリー表現型)の富化および活性化状態を改善するため;2)養子T細胞プールにおいて追加の腫瘍標的化特異性を誘導する(内在性もしくは外来性抗原に基づいて)ため;ならびに/または3)CAR発現T細胞の増量を改善する(表現型、生存率およびCAR発現レベル)ために、DCOne mDCが、CAR T製造プロセスの2つの異なる工程において添加され得ることを示す。
【0261】
図1Bにおいて例示されるように、ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞(例えばDCOne mDC)は、免疫細胞(例えばT細胞)と同時培養される。免疫細胞は、末梢血単核球(PBMC)集団内に含まれ得る。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞(例えばDCOne mDC)は、T細胞と同時培養される。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞を免疫細胞と同時培養することは、免疫細胞増殖(例えばT細胞増殖)を刺激する。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞をT細胞と同時培養することは、T細胞増殖を刺激する。白血病由来の改変細胞を免疫細胞と同時培養することは、特性が改善した免疫細胞をもたらす。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞をT細胞と同時培養することは、特性が改善したT細胞をもたらす。例えば、ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞をT細胞と同時培養することは、CD4+T細胞のCD8+T細胞に対する比を増加させる。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞を免疫細胞と同時培養することは、免疫細胞を活性化する。ある特定の実施形態において、白血病由来の改変細胞をT細胞と同時培養することは、T細胞を活性化する。免疫受容体(例えばCARおよび/またはTCR)をそのような特性が改善した免疫細胞へ導入することは、改善した改変免疫細胞(例えば、改善したCAR-T細胞または改善したTCR-T細胞)をもたらす。そのような改善した改変免疫細胞は、養子細胞療法において使用を見出し、改善した養子細胞療法をもたらす。ある特定の実施形態において、DCOneベースのワクチン(例えばDCP-001再発ワクチン)は、本明細書で説明される改善した養子細胞療法を受容する対象へ投与され得る。DCP-001は、例えば免疫学的記憶を構築することまたは任意の残留の疾患に対するより広範な免疫制御をブーストすることによって、CAR-T機能および生存をさらに改善することができる。
【0262】
ある特定の実施形態において、疾患または障害(例えばがん)を処置する方法は、図1Bで例示される工程を含む。例えば、がん(例えば固形腫瘍)を処置する方法は、患者からT細胞を含むPBMCを単離すること;単離したPBMCを白血病由来の改変細胞(例えばDCOne mDC)と同時培養し、少なくとも1)T細胞増殖の刺激、2)CD4+T細胞のCD8+T細胞に対する比の増加、および/または3)活性化T細胞集団をもたらすこと;免疫受容体(例えばCARまたはTCR)をT細胞へ導入して改善したCAR-T細胞またはTCR-T細胞を生成すること;改善したCAR-T細胞またはTCR-T細胞を患者へ投与すること;ならびにCAR-TもしくはTCR-T機能および生存を改善することによる養子細胞療法有効性の改善、免疫学的記憶の改善ならびに/または残留の疾患に対する免疫制御の改善を提供するDCOneベースのワクチン(例えばDCP-001再発ワクチン接種)を患者へ同時にまたは続いて投与することを含む。
【0263】
図1Cは、本開示の別の実施形態を例示する。示される通り、ある特定の実施形態において、抗原を負荷した白血病由来の改変細胞(例えばDCOne mDC)を、免疫細胞(例えばT細胞)と同時培養する。免疫細胞は、末梢血単核球(PBMC)の集団内に含まれ得る。ある特定の実施形態において、抗原を負荷した白血病由来の改変細胞(例えばDCOne mDC)を、T細胞と同時培養する。ある特定の実施形態において、抗原を負荷した白血病由来の改変細胞を免疫細胞と同時培養することは、免疫細胞増殖(例えばT細胞増殖)を刺激する。ある特定の実施形態において、抗原を負荷した白血病由来の改変細胞をT細胞と同時培養することは、T細胞増殖を刺激する。
【0264】
抗原を負荷した白血病由来の改変細胞を免疫細胞と同時培養することは、特性が改善した免疫細胞をもたらす。ある特定の実施形態において、抗原を負荷した白血病由来の改変細胞をT細胞と同時培養することは、特性が改善したT細胞をもたらす。例えば、ある特定の実施形態において、抗原を負荷した白血病由来の改変細胞をT細胞と同時培養することは、CD4+T細胞のCD8+T細胞に対する比を増加させる。ある特定の実施形態において、抗原を負荷した白血病由来の改変細胞を免疫細胞と同時培養することは、免疫細胞を活性化する。ある特定の実施形態において、抗原を負荷した白血病由来の改変細胞をT細胞と同時培養することは、T細胞を活性化する。抗原を負荷した白血病由来の改変細胞(例えば抗原を負荷したDCOne mDC)の使用は、免疫細胞と同時培養された場合、免疫細胞へ追加の改善した品質を提供する。例えば、ある特定の実施形態において、免疫細胞を、抗原を負荷した白血病由来の改変細胞と同時培養することは、抗原特異的免疫細胞について富化する。ある特定の実施形態において、T細胞を、抗原を負荷した白血病由来の改変細胞と同時培養することは、抗原特異的T細胞について富化する。
【0265】
抗原を負荷した白血病由来の改変細胞は、任意の抗原を含み得ることが当業者によって容易に理解される。例えば、本明細書で説明される方法における使用のための抗原を負荷した白血病由来の改変細胞は、腫瘍関連抗原、非腫瘍関連抗原、一般ウイルス抗原[例えばエプスタイン・バーウイルス(EBV)に由来する抗原もしくはサイトメガロウイルス(CMV)に由来する抗原]または他のリコール抗原(例えばCRM197)を含み得るが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、本明細書で説明される方法における使用のための抗原を負荷した白血病由来の改変細胞は、EBV由来抗原を含む。ある特定の実施形態において、本明細書で説明される方法における使用のための抗原を負荷した白血病由来の改変細胞は、CMV由来抗原を含む。ある特定の実施形態において、本明細書で説明される方法における使用のための抗原を負荷した白血病由来の改変細胞は、CRM197を含む。ある特定の実施形態において、本明細書で説明される方法における使用のための抗原を負荷した白血病由来の改変細胞は、リコール抗原を含む。リコール抗原とは、宿主対象が以前に遭遇しており、かつ宿主においてそれについての既存のメモリーリンパ球(例えばメモリーT細胞および/またはメモリーB細胞)が存在する抗原である。ある特定の実施形態において、リコール抗原は、宿主においてそれについての既存のメモリーリンパ球が存在する腫瘍独立抗原を指す。リコール抗原への既存の免疫応答は、以前の感染またはワクチン接種の結果として存在し得る。ある特定の実施形態において、腫瘍独立リコール抗原への既存の免疫は、以前の感染、例えばウイルス感染の結果として発達する。例えば、サイトメガロウイルス(CMV)は、健康な人においてはめったに問題を引き起こさないので、一般に、対象が気付くことなくそれに罹患する。以前のCMV感染を有した対象は、CMVに対する強力な免疫応答を発達し、結果としてCMVに対して熟練した免疫系を有する。そのため、CMVに由来する腫瘍独立抗原は、以前のCMV感染を有した対象を処置する方法において使用される場合、リコール抗原であり得る。ある特定の実施形態において、腫瘍独立リコール抗原への既存の免疫は、ワクチン接種の結果として発達する。例えば、CRM197は、コンジュゲートワクチンにおいて免疫原性アジュバントとして広く使用されている。CRM197が免疫原性アジュバントとして使用される、以前のワクチン接種を有した対象は、CRM197に対する免疫応答を発達し、結果としてCRM197に対して熟練した免疫系を有する。さらに、例えばジフテリアに対する、CRM197がそれ自体ワクチンとして使用される、以前のワクチン接種を有した対象は、CRM197に対する免疫応答を発達し、結果としてCRM197に対して熟練した免疫系を有する。他のリコール抗原、例えば、非限定的に、担体タンパク質、免疫原性アジュバントおよびワクチン分野において公知の免疫原、ならびに遭遇されるウイルス、細菌および真菌感染は、当業者に公知である。本明細書で使用される場合、「担体」という用語は、免疫原性アジュバントおよび/または担体媒体を指す。例えば、コンジュゲートワクチンに関して、担体とは、抗原がそれに共有結合的にコンジュゲートされている担体タンパク質を指す。これに関して、担体は、抗原への免疫応答を増強および/またはモジュレートするように作用する免疫原性アジュバントである。また、担体は、抗原がデリバリーされる媒体を指し得る。例えば、本明細書で説明されるある特定の実施形態において、抗原は、腫瘍溶解性ウイルスまたは遺伝子療法ベクターなどの腫瘍特異的担体を介してデリバリーされる。
【0266】
ある特定の実施形態において、抗原を負荷した白血病由来の改変細胞は、免疫細胞の抗原への特異性を再び方向付ける。ある特定の実施形態において、免疫細胞の特異性の再方向付けは、抗原へ方向付けられた内在性TCRを有する免疫細胞の産生を誘導することまたはそのような免疫細胞を富化することによって達成される。そのため、ある特定の実施形態において、抗原を負荷した白血病由来の改変細胞を免疫細胞と同時培養することは、抗原についての特異性を有する内在性TCRを含む免疫細胞をもたらす。
【0267】
ある特定の実施形態において、免疫受容体(例えばCARおよび/またはTCR)を、抗原を負荷した白血病由来の改変細胞と同時培養した免疫細胞へ導入することは、改善した改変免疫細胞(例えば改善したCAR-T細胞または改善したTCR-T細胞)をもたらす。そのような改善した改変免疫細胞は、抗原を負荷した白血病由来の改変細胞に応答して産生された内在性TCR、および免疫細胞へ導入された免疫受容体の両方を含み得る。そのような場合、改善した改変免疫細胞は、1つまたは複数の抗原についての特異性を有し得る。例えば、改善した改変免疫細胞は、内在性TCR(抗原を負荷した白血病由来の改変細胞に応答して産生された)によって方向付けられる第1の特異性、および免疫受容体(免疫細胞へ導入された免疫受容体、例えばCARおよびまたはTCR)によって方向付けられる第2の特異性を有し得る。ある特定の実施形態において、本明細書で開示される処置方法における抗原を負荷した白血病由来の改変細胞の使用は、リコール抗原特異的メモリーT細胞をもたらし得る。ある特定の実施形態において、本明細書で開示される処置方法における抗原を負荷した白血病由来の改変細胞の使用は、リコール抗原特異的メモリーB細胞をもたらし得る。ある特定の実施形態において、本明細書で開示される処置方法における抗原を負荷した白血病由来の改変細胞の使用は、ウイルス特異的メモリーT細胞をもたらし得る。腫瘍免疫療法のためのウイルス特異的メモリーT細胞の使用は、説明されており、例えばRosato et al., Nature Communications (2019) 10:567を参照されたい。ある特定の実施形態において、本明細書で開示される処置方法における抗原を負荷した白血病由来の改変細胞の使用は、ウイルス特異的メモリーB細胞をもたらし得る。
【0268】
そのような実施形態は、有効性が改善した養子細胞療法を提供する。ある特定の実施形態において、ワクチン接種(例えばDCOneベースのワクチン、例えばDCP-001再発ワクチン)は、改善した改変免疫細胞の有効性をブーストするために、本明細書で説明される改善した養子細胞療法を受容する対象へ投与され得る。改善した改変免疫細胞の有効性をブーストすることは、少なくとも以下の様式:1)内在性TCRが方向付けられる抗原へ適合された免疫原を提供するワクチン接種が、内在性TCRを介して、改善した改変免疫細胞を刺激し得る様式;2)免疫受容体(例えばCAR)が方向付けられる抗原へ適合された免疫原を提供するワクチン接種が、免疫受容体を介して、改善した改変免疫細胞を刺激し得る様式;および3)ワクチン接種(例えばDCOneベースのワクチン)が、例えば免疫学的記憶を構築することまたは任意の残留の疾患に対するより広範な免疫制御をブーストすることによって、改善された改変免疫細胞の機能をさらに改善し得る様式において達成され得る。
【0269】
ある特定の実施形態において、改善された改変免疫細胞は、「より強い」免疫受容体および「より弱い」免疫受容体を含む。より強いおよびより弱いという用語の使用は、免疫受容体の実際の強度を認定するとは意図されず、単に以下の概念を例示することを意図する。「より強い」免疫受容体、例えばCARは、活性化された場合(すなわち、その同族抗原と接触した場合)、強いT細胞応答、例えば強い増殖応答、強い細胞傷害性応答などをもたらし得る。このため、CARを含むT細胞は、迅速なT細胞枯渇(T細胞機能の進行性の喪失)をもたらすことがあり、最終的にはアポトーシス調節因子とホメオスタシス調節因子との間の平衡におけるシフトを介してT細胞の破壊をもたらし得る。他方で、「より弱い」免疫受容体は、ある特定の実施形態において、リコール抗原(例えば、感染またはワクチン接種を介してCMVまたはEBVに以前に遭遇した患者におけるCMV由来抗原またはEBV由来抗原)によって活性化される。そのため、リコール抗原を負荷した白血病由来の改変細胞を使用する本開示の方法は、リコール抗原に応答することができるある特定のT細胞集団、例えばリコール抗原に応答して発達した内在性TCRを含むある特定のT細胞集団を富化する。そのようなT細胞集団は、リコール抗原の存在のために以前に発達しており、最適免疫プロファイルを含み、天然に存立可能な集団であるので、それらは熟練したT細胞集団である。ある特定の実施形態において、そのようなT細胞集団は、例えば慢性感染によって、天然に維持されている。ある特定の実施形態において、抗原を負荷した白血病由来の改変細胞(例えばリコール抗原を負荷した白血病由来の改変細胞)と同時培養した改善した改変免疫細胞の使用は、抗原を負荷した白血病由来の改変細胞と同時培養していない改変免疫細胞の使用と比較した場合、より強い抗腫瘍効果を提供する。
【0270】
ある特定の実施形態において、疾患または障害(例えばがん)を処置する方法は、図1Cにおいて例示される工程を含む。例えば、がん(例えば固形腫瘍)を処置する方法は、患者からT細胞を含むPBMCを単離すること;単離したPBMCを、抗原を負荷した白血病由来の改変細胞(例えば抗原を負荷したDCOne mDC、リコール抗原を負荷したDCOne mDC)と同時培養し、少なくとも1)T細胞増殖の刺激、2)CD4+T細胞のCD8+T細胞に対する比の増加、3)活性化T細胞集団、および/または4)抗原特異的T細胞(例えばリコール抗原特異的T細胞)についての富化をもたらすこと;免疫受容体(例えばCARまたはTCR)をT細胞へ導入して改善したCAR-T細胞またはTCR-T細胞を生成すること;改善したCAR-T細胞またはTCR-T細胞を患者へ投与すること;ならびにCAR-TもしくはTCR-T機能および生存を改善することによる養子細胞療法有効性の改善、免疫学的記憶の改善ならびに/または残留の疾患に対する免疫制御の改善を提供するワクチン接種(例えばDCOneベースのワクチン、DCP-001再発ワクチン接種)を患者へ同時にまたは続いて投与することを含む。
【0271】
ある特定の実施形態において、抗原を負荷した白血病由来の改変細胞(例えば腫瘍独立抗原を負荷したDCOne mDC)の使用は、本明細書で説明される様々な方法(例えば腫瘍マーキング方法)のいずれかに関連する。
【0272】
ある特定の実施形態において、腫瘍独立抗原特異的免疫細胞は、光化学プロセス(例えば光化学内部移行)の使用を介して免疫細胞へ腫瘍独立抗原またはその断片を導入することによって生成される。ある特定の実施形態において、免疫細胞へ腫瘍独立抗原またはその断片を導入することは、光化学内部移行の使用により達成される。ある特定の実施形態において、光化学内部移行は、抗原またはそのペプチド断片[例えば抗原性ポリペプチド(例えば非腫瘍抗原)、または抗原性ポリペプチドをコードする核酸]の、白血病由来の改変細胞へのデリバリーを向上させるために使用され得る。
【0273】
光化学内部移行とは、それを使用しなければ膜不透過性である分子を標的細胞の細胞質ゾルへ導入するための、光および光感作剤の使用を含むが、必ずしも標的細胞の破壊または死滅をもたらさないデリバリー方法を指す。この方法において、内部移行されるまたは移行される分子は、光感作剤と組み合わせて細胞に適用される。好適な波長の光への細胞の曝露は、光感作剤を活性化し、それは、今度は細胞内区画膜の破壊および次なる、細胞質ゾルへの分子の放出をもたらす。光化学内部移行において、光感作剤と光との間の相互作用は、分子の細胞内取り込みが改善されるように細胞に影響を及ぼすために使用される。光化学内部移行および様々な光感作剤は、PCT公開公報WO第96/07432号、同第00/54708号、同第01/18636号、同第02/44396号、同第02/44395号および同第03/020309号、米国特許第6,680,301号、同第5,876,989号において説明されており、当該公開公報および特許の開示は、それらを全体として参照により本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態において、光化学内部移行は、腫瘍独立抗原を腫瘍細胞の細胞質ゾルへデリバリーするために使用される。ある特定の実施形態において、光化学内部移行は、腫瘍独立抗原の、腫瘍細胞の細胞質ゾルへのデリバリーを向上させるために使用される。
【0274】
養子細胞療法についての免疫細胞の投与のための方法は、公知であり、提供される方法および組成物に関して使用され得る。例えば、養子T細胞療法は、例えば、Gruenbergらの米国特許出願公開公報第2003/0170238号;Rosenbergの米国特許第4,690,915号;Rosenberg (2011) Nat Rev Clin Oncol. 8(10):577-85)において説明されている。例えば、Themeli et al. (2013) Nat Biotechnol. 31(10): 928-933;Tsukahara et al. (2013) Biochem Biophys Res Commun 438(1): 84-9;Davila et al. (2013) PLoS ONE 8(4): e61338を参照されたい。ある特定の実施形態において、細胞療法、例えば養子T細胞療法は、細胞が、細胞療法を受容する予定である対象から、またはそのような対象に由来する試料から単離および/または別の方法で調製される自家移行によって行われる。したがって、ある特定の実施形態において、細胞は、処置を必要とする対象、例えば患者に由来し、細胞は、単離および加工後に、同じ対象へ投与される。
【0275】
ある特定の実施形態において、細胞療法、例えば養子T細胞療法は、細胞が、細胞療法を受容する予定であるか、または細胞療法を最終的に受容する対象以外の対象、例えば第1の対象から単離および/または別の方法で調製される同種異系間移行によって行われる。そのような実施形態において、細胞は、その後、同じ種の異なる対象、例えば第2の対象へ投与される。ある特定の実施形態において、第1および第2の対象は、遺伝的に同一である。ある特定の実施形態において、第1および第2の対象は、遺伝的に類似している。ある特定の実施形態において、第2の対象は、第1の対象と同じHLAクラスまたはスーパータイプを発現する。
【0276】
ある特定の実施形態において、対象は、細胞または細胞を含有する組成物の投与前に、疾患または状態、例えば腫瘍を標的化する治療剤により処置されている。ある特定の実施形態において、対象は、他の治療剤に不応性または非応答性である。ある特定の実施形態において、対象は、例えば、化学療法、照射および/または造血幹細胞移植(HSCT)、例えば同種異系間HSCTを含む別の治療介入による処置後に、遷延性の疾患または再発した疾患を有する。ある特定の実施形態において、投与は、対象が別の治療に抵抗性になっていたことにかかわらず、対象を有効に処置する。
【0277】
ある特定の実施形態において、対象は、他の治療剤に応答性であり、治療剤による処置は、疾患量を低減する。ある特定の実施形態において、対象は、初期に治療剤に応答性であるが、経時的に疾患または状態の再発を呈する。ある特定の実施形態において、対象は、再発していない。そのような実施形態において、対象は、再発の高リスクを有することなどの、再発についてのリスクを有することを決定され、したがって、細胞は、例えば再発の可能性を低減するかまたは再発を防止するために、予防的に投与される。ある特定の実施形態において、対象は、別の治療剤による事前処置を受容していない。
【0278】
ある特定の実施形態において、対象は、例えば化学療法、照射および/または造血幹細胞移植(HSCT)、例えば同種異系間HSCTを含む別の治療介入による処置後に、遷延性の疾患または再発した疾患を有する。ある特定の実施形態において、投与は、対象が別の治療に抵抗性になっていたことにかかわらず、対象を有効に処置する。
【0279】
白血病由来の改変細胞および/または免疫受容体を含む改変免疫細胞は、疾患または障害、例えばがんを処置するために、動物、例えば哺乳動物、例えばヒトに投与され得る。加えて、本開示の細胞は、疾患を処置または緩和することが望ましい、がんに関連する任意の状態の処置、とりわけ腫瘍細胞に対する細胞媒介免疫応答のために使用され得る。本明細書で開示される方法を使用して処置されるがんの種類は、非固形腫瘍(例えば血液腫瘍)または固形腫瘍であり得る。また、成人腫瘍/がんおよび小児腫瘍/がんが含まれる。ある特定の実施形態において、がんは、固形腫瘍または血液腫瘍である。ある特定の実施形態において、がんは、癌腫である。ある特定の実施形態において、がんは、肉腫である。ある特定の実施形態において、がんは、白血病である。ある特定の実施形態において、がんは、固形腫瘍である。
【0280】
固形腫瘍は、通常嚢胞または液体領域を含有しない組織の異常な塊である。固形腫瘍は、良性または悪性であり得る。様々な種類の固形腫瘍が、それらを形成する細胞の種類について命名されている(例えば肉腫、癌腫およびリンパ腫)。
【0281】
細胞(例えば白血病由来の改変細胞および/または免疫受容体を含む改変免疫細胞)の投与は、当業者に公知の任意の便利な様式において行われ得る。細胞は、エアロゾル吸入、注射、摂取、輸注、埋め込みまたは移植によって対象へ投与され得る。本明細書で説明される組成物は、患者へ、経動脈で、皮下に、皮内に、腫瘍内に、節間に、髄内に、筋内に、静脈内(i.v.)注射により、または腹腔内に投与され得る。ある特定の実施形態において、本開示の細胞は、対象の炎症部位、対象の局所疾患部位、リンパ節、臓器、腫瘍などへ直接的に注射される。
【0282】
ある特定の実施形態において、細胞は、一部の態様において所望の用量もしくは数の細胞もしくは細胞種および/または所望の比の細胞種を含む所望の投与量において投与される。したがって、一部の実施形態における細胞の投与量は、免疫細胞投与のための細胞の総数(または体重1kg当たりの数)および個々の集団またはサブタイプの所望の比、例えばCD4+のCD8+に対する比に基づく。ある特定の実施形態において、細胞の投与量は、個々の集団における細胞のまたは個々の細胞種の、所望の総数(または体重1kg当たりの数)に基づく。ある特定の実施形態において、投与量は、全細胞の所望の数、所望の比、および個々の集団内の細胞の所望の総数などの特色の組合せに基づく。
【0283】
ある特定の実施形態において、免疫細胞の投与のために、CD8およびCD4T細胞などの、細胞の集団またはサブタイプは、全細胞の所望の用量、例えばT細胞の所望の用量の許容差においてまたは許容差内において投与される。
【0284】
ある特定の実施形態において、所望の用量は、細胞の所望の数、または細胞が投与される対象の体重の単位当たりの細胞の所望の数、例えば細胞/kgである。ある特定の実施形態において、所望の用量は、細胞の最小数、または体重の単位当たりの細胞の最小数であるか、またはそれを超える。ある特定の実施形態において、所望の用量において投与される、全細胞の中で、個々の集団またはサブタイプは、所望の出力比(例えばCD4のCD8に対する比)においてまたはその近辺において、例えばそのような比のある特定の許容差または誤差内において存在する。
【0285】
ある特定の実施形態において、細胞は、細胞の個々の集団またはサブタイプのうちの1つまたは複数の所望の用量、例えばCD4+細胞の所望の用量および/またはCD8+細胞の所望の用量の許容差においてまたは許容差内においてに投与される。ある特定の実施形態において、所望の用量は、サブタイプもしくは集団の細胞の所望の数、または細胞が投与される対象の体重の単位当たりのそのような細胞の所望の数、例えば細胞/kgである。ある特定の実施形態において、所望の用量は、集団もしくはサブタイプの細胞の最小数、または体重の単位当たりの集団もしくはサブタイプの細胞の最小数であるか、またはそれを超える。したがって、ある特定の実施形態において、投与量は、全細胞の所望の固定用量および所望の比に基づき、ならびに/または個々のサブタイプもしくはサブ集団のうちの1つもしくは複数、例えば各々の所望の固定用量に基づく。したがって、ある特定の実施形態において、投与量は、T細胞の所望の固定用量もしくは最小用量、およびCD4細胞のCD8細胞に対する所望の比に基づき、ならびに/またはCD4細胞および/もしくはCD8細胞の所望の固定用量もしくは最小用量に基づく。
【0286】
ある特定の実施形態において、細胞(例えば白血病由来の改変細胞および/もしくは免疫受容体を含む免疫細胞)、または細胞のサブタイプの個々の集団は、細胞約100万~約1000億個、例えば細胞100万~約500億個の範囲(例えば細胞約500万個、細胞約2500万個、細胞約5億個、細胞約10億個、細胞約50億個、細胞約200億個、細胞約300億個、細胞約400億個、細胞約5000万個または上記値のうちのいずれか2つによって規定される範囲)、例えば細胞約1000万~約1000億個(例えば細胞約2000万個、細胞約3000万個、細胞約4000万個、細胞約6000万個、細胞約7000万個、細胞約8000万個、細胞約9000万個、細胞約100億個、細胞約250億個、細胞約500億個、細胞約750億個、細胞約900億個または上記値のうちのいずれか2つによって規定される範囲)、および一部の場合、細胞約1億~細胞約500億個(例えば細胞約1億2000万個、細胞約2億5000万個、細胞約3億5000万個、細胞約4億5000万個、細胞約6億5000万個、細胞約8億個、細胞約9億個、細胞約30億個、細胞約300億個、細胞約450億個)またはこれらの範囲の間の任意の値において対象へ投与される。
【0287】
ある特定の実施形態において、全細胞(例えば白血病由来の改変細胞および/もしくは免疫受容体を含む免疫細胞)の用量、ならびに/または細胞の個々のサブ集団の用量は、細胞ちょうどまたは約1×10個/kg~細胞約1×1011個/kg、細胞10個~ちょうどまたは約1011個/体重キログラム(kg)、例えば細胞10~10個/体重kgの範囲内、例えば細胞ちょうどまたは約1×10個/kg、細胞1.5×10個/kg、細胞2×10個/kg、または細胞1×10個/体重kgである。例えば、ある特定の実施形態において、細胞は、T細胞ちょうどまたは約10~ちょうどまたは約10個/体重キログラム(kg)、例えばT細胞10~10個/体重kg、例えばT細胞ちょうどまたは約1×10個/kg、T細胞1.5×10個/kg、T細胞2×10個/kgまたはT細胞1×10個/体重kgの誤差のある特定の範囲においてまたは範囲内において、投与される。ある特定の実施形態において、本明細書で提供される方法における使用のための細胞の好適な投与量範囲は、非限定的に、細胞約1×10個/kg~細胞約1×10個/kg、細胞約1×10個/kg~細胞約1×10個/kg、細胞約1×10個/kg~細胞約1×10個/kg、細胞約1×10個/kg~細胞約1×10個/kg、細胞約1×10個/kg~細胞約1×1010個/kg、細胞約1×1010個/kg~細胞約1×1011個/kgを含む。
【0288】
ある特定の実施形態において、細胞(例えば免疫受容体を含む免疫細胞)は、CD4および/またはCD8細胞ちょうどまたは約10~ちょうどまたは約10個/体重キログラム(kg)、例えばCD4および/またはCD8細胞10~10個/体重kg、例えばCD4および/もしくはCD8細胞ちょうどもしくは約1×10個/kg、CD4および/もしくはCD8細胞1.5×10個/kg、CD4および/もしくはCD8細胞2×10個/kg、またはCD4および/もしくはCD8細胞1×10個/体重kgの誤差のある特定の範囲においてまたは範囲内において投与される。ある特定の実施形態において、細胞は、以下の値を超えるおよび/または少なくともCD4細胞約1×10個、約2.5×10個、約5×10個、約7.5×10個もしくは約9×10個、および/または少なくともCD8+細胞約1×10個、約2.5×10個、約5×10個、約7.5×10個もしくは約9×10個、および/または少なくともT細胞約1×10個、約2.5×10個、約5×10個、約7.5×10個もしくは約9×10個の誤差のある特定の範囲においてまたは範囲内において投与される。ある特定の実施形態において、細胞は、T細胞約10~1012個もしくは約1010~1011個、CD4細胞約10~1012個もしくは約1010~1011個、および/またはCD8細胞約10~1012個もしくは約1010~1011個の誤差のある特定の範囲においてまたは範囲内において投与される。
【0289】
ある特定の実施形態において、免疫細胞(例えば免疫受容体を含む免疫細胞)の投与のために、細胞は、多数の細胞集団またはサブタイプ、例えばCD4+細胞およびCD8+細胞またはサブタイプの所望の出力比の許容範囲においてまたは許容範囲内において投与される。ある特定の実施形態において、所望の比は、特定の比であってもよく、比の範囲であってもよく、例えば、一部の実施形態において、所望の比(例えばCD4細胞のCD8細胞に対する比)は、ちょうどもしくは約5:1~ちょうどもしくは約5:1(または約1:5超~約5:1未満)、またはちょうどもしくは約1:3~ちょうどもしくは約3:1(または約1:3超~約3:1未満)、例えばちょうどもしくは約2:1~ちょうどもしくは約1:5(または約1:5超~約2:1未満、例えばちょうどもしくは約5:1、4.5:1、4:1、3.5:1、3:1、2.5:1、2:1、1.9:1、1.8:1、1.7:1、1.6:1、1.5:1、1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9、1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5もしくは1:5)である。ある特定の実施形態において、許容差は、所望の比の約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%以内、およびこれらの範囲の間の任意の値である。
【0290】
ある特定の実施形態において、免疫細胞の用量は、単一の用量または多数の用量において、それを必要とする対象へ投与される。ある特定の実施形態において、細胞の用量は、多数の用量において、例えば1週間に1回または7日毎、2週毎に1回または14日毎、3週毎に1回または21日毎、4週毎に1回または28日毎に投与される。
【0291】
疾患の防止または処置のために、適切な投与量は、処置される疾患の種類、細胞または組換え受容体の種類、疾患の重症度および過程、細胞が防止目的のために投与されるか治療目的のために投与されるか、以前の治療、対象の臨床歴および細胞への応答、ならびに主治医の裁量に依存し得る。組成物および細胞は、一部の実施形態において、一度にまたは一連の処置にわたり対象へ好適に投与される。
【0292】
ある特定の実施形態において、細胞は、組合せ処置の部分として、例えば別の治療介入、例えば抗体または操作した細胞または受容体または薬剤、例えば細胞傷害剤もしくは治療剤と同時にまたは逐次的に任意の順序において投与される。ある特定の実施形態における細胞は、1つもしくは複数の追加の治療剤と共に、または別の治療介入と関連して、同時にまたは逐次的に任意の順序において同時投与される。ある特定の実施形態において、細胞は、細胞集団が1つまたは複数の追加の治療剤の効果を向上させるか、逆もまた同様であるように時間的に十分に近接して、別の治療と同時投与される。ある特定の実施形態において、細胞は、1つまたは複数の追加の治療剤の前に投与される。ある特定の実施形態において、細胞は、1つまたは複数の追加の治療剤の後に投与される。ある特定の実施形態において、1つまたは複数の追加の薬剤は、例えば持続性を向上させるために、サイトカイン、例えばIL-2を含む。ある特定の実施形態において、方法は、化学療法剤の投与を含む。
【0293】
細胞の投与後、一部の実施形態における操作した細胞集団の生物活性を、例えばいくつかの公知の方法のいずれかによって、測定する。評価するパラメーターには、インビボでの、例えばイメージングによる、またはエクスビボでの、例えばELISAもしくはフローサイトメトリーによる、改変もしくは天然T細胞または他の免疫細胞の抗原への特異的結合が含まれる。ある特定の実施形態において、改変免疫細胞の標的細胞を破壊する能力は、当該技術分野において公知の任意の好適な方法、例えば、例えばKochenderfer et al., J. Immunotherapy, 32(7): 689-702 (2009)およびHerman et al. J. Immunological Methods, 285(1): 25-40 (2004)において説明される細胞傷害性アッセイを使用して測定することができる。ある特定の実施形態において、細胞の生物活性は、1つまたは複数のサイトカイン、例えばCD 107a、IFNγ、IL-2およびTNFの発現および/または分泌をアッセイすることによって測定される。ある特定の実施形態において、生物活性は、臨床アウトカム、例えば腫瘍量(tumor burden)もしくは負荷における低減、または再発の発生における低減を評価することによって測定される。
【0294】
ある特定の実施形態において、対象は、二次的処置を提供される。二次的処置には、化学療法、照射、手術および薬物治療が含まれるが、これらに限定されない。
【0295】
ある特定の実施形態において、対象は、養子細胞療法の前に前処置療法を投与され得る。ある特定の実施形態において、前処置療法は、有効量のシクロホスファミドを対象へ投与することを含む。ある特定の実施形態において、前処置療法は、有効量のフルダラビンを対象へ投与することを含む。ある特定の実施形態において、前処置療法は、有効量のシクロホスファミドとフルダラビンとの組合せを対象へ投与することを含む。養子細胞療法の前の前処置療法の投与は、養子細胞療法の有効性を増大させ得る。養子細胞療法のために患者を前処置する方法は、米国特許第9,855,298号において説明されており、当該特許は、それらを全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0296】
本開示の細胞は、適切な前臨床ならびに臨床実験ならびに試験において決定される投与量および経路においてならびに時間において投与され得る。細胞組成物は、これらの範囲内の投与量において多数回投与され得る。本開示の細胞の投与は、当業者によって決定される、所望の疾患または状態を処置するために有用な他の方法と組み合わせてもよい。
【0297】
CAR T細胞の注入(infusion)後の有害効果のうちの1つは、サイトカイン放出症候群(CRS)として公知の免疫活性化の開始であることが当該技術分野において公知である。CRSは、炎症性サイトカインの上昇をもたらす免疫活性化である。CRSは、公知のオンターゲット毒性であり、その発達は、有効性と相関するようである。臨床および研究測定は、軽度のCRS(全身症状および/または2等級の臓器毒性)~重度のCRS(sCRS;3等級以上の臓器毒性、積極的臨床介入および/または潜在的に生命を脅かす)に及ぶ。臨床特色には、高熱、倦怠感、疲労、筋肉痛、悪心、食欲不振、頻脈/低血圧、毛細管漏出、心機能不全、腎機能障害、肝不全および播種性血管内凝固が含まれる。インターフェロンガンマ、顆粒細胞マクロファージコロニー刺激因子、IL-10およびIL-6を含むサイトカインの劇的な上昇は、CAR T細胞注入後に示されている。1つのCRSシグネチャは、IL-6(重度の上昇)、IFN-ガンマ、TNF-アルファ(中程度)およびIL-2(軽度)を含むサイトカインの上昇である。また、フェリチンおよびC反応性タンパク質(CRP)を含む、臨床的に使用可能な炎症マーカーにおける上昇は、CRS症候群と相関することが観察されている。CRSの存在は、一般的に、養子性に移行した細胞の増量および進行性免疫活性化と相関する。高腫瘍量を有する患者は、よりsCRSを経験するので、CRS重症度の程度は、注入時の疾患量によって規定されることが実証されている。
【0298】
したがって、本開示は、CRSの診断後、操作された細胞(例えばCAR T細胞)の抗腫瘍有効性を弱めることなく、無制御の炎症の生理学的症状を軽減するための適切なCRS管理法を提供する。CRS管理法は、当該技術分野において公知である。例えば、全身性副腎皮質ステロイドを投与して、初期抗腫瘍応答を損なうことなく、sCRS(例えば3等級CRS)の症状を迅速に逆進させ得る。
【0299】
一部の実施形態において、抗IL-6R抗体を、投与してもよい。抗IL-6R抗体の例は、アトリズマブとしても公知の、米食品医薬品局承認のモノクローナル抗体トシリズマブである(ActemraまたはRoActemraとして市販されている)。トシリズマブは、インターロイキン-6受容体(IL-6R)に対するヒト化モノクローナル抗体である。トシリズマブの投与は、CRSの即時に近い逆進を実証した。
【0300】
CRSは、一般的に、観察された症候群の重症度に基づいて管理され、介入はそれ自体適合される。CRS管理決定は、単に検査値のみでなく、臨床徴候および症状ならびに介入への応答に基づき得る。
【0301】
軽度~中程度の症例は、一般的に、十分な症状緩和に必要とされる輸液療法、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)および抗ヒスタミン薬による症状管理により処置される。より重度の症例は、任意の程度の血行動態不安定を有する患者を含む。任意の血行動態不安定では、トシリズマブの投与が、典型的に推奨される。CRSの第1選択の管理は、トシリズマブである場合があり、一部の実施形態において、60分間にわたる(800mg/用量を超えないように)8mg/kg IVの標識化した用量のトシリズマブであり得る。トシリズマブ処置は、反復Q8時間であり得る。トシリズマブの第1の用量後に、最適以下の応答が達成された場合、トシリズマブの追加の用量が考慮され得る。トシリズマブは、単独で、または副腎皮質ステロイド療法と組み合わせて投与され得る。12~18時間で臨床改善が不十分な、またはトシリズマブへの応答が乏しい、継続性または進行性CRS症状を有する患者は、高用量の副腎皮質ステロイド療法、一般的にヒドロコルチゾン100mg IVまたはメチルプレドニゾロン1~2mg/kgにより処置され得る。より重度の血行動態不安定またはより重度の呼吸器症状を有する患者において、患者は、CRSの過程の早期に高用量の副腎皮質ステロイド療法を投与され得る。CRS管理のガイダンスは、公開された標準法に基づき得る[Lee et al. (2019) Biol Blood Marrow Transplant, doi.org/10.1016/j.bbmt.2018.12.758;Neelapu et al. (2018) Nat Rev Clin Oncology, 15:47;Teachey et al. (2016) Cancer Discov, 6(6):664-679]。
【0302】
マクロファージ活性化症候群(MAS)または血球貪食性リンパ組織球症(HLH)と一致する特色が、CRSの臨床所見と同時に、CAR-T療法により処置された患者において観察されている(Henter, 2007)。MASは、CRSから生ずる免疫活性化への反応であるように見え、それゆえ、CRSの所見と考えるべきである。MASは、HLH(これもまた、免疫刺激への反応)と類似する。MASの臨床症候群は、高度の非弛張熱(non-remitting fever)、3つの系統のうちの少なくとも2つに影響を及ぼす血球減少、および肝脾腫によって特徴付けられる。それは、高血清フェリチン、可溶性インターロイキン-2受容体およびトリグリセリド、ならびに循環ナチュラルキラー(NK)活性の減少と関連付けられる。
【0303】
I.免疫細胞の供給源
増量前に、エクスビボ操作のために対象から免疫細胞の供給源を得る。また、エクスビボ操作のための標的細胞の供給源は、例えば自家または異種ドナー血液、臍帯血または骨髄を含み得る。例えば、免疫細胞の供給源は、本開示の改変免疫細胞により処置される対象からの供給源、例えば対象の血液、対象の臍帯血または対象の骨髄であり得る。対象の非限定的例には、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラットおよびそれらのトランスジェニック種が含まれる。ある特定の例示的な実施形態において、対象は、ヒトである。
【0304】
免疫細胞は、血液、末梢血単核球、骨髄、リンパ節組織、脾臓組織、臍帯、リンパまたはリンパ系臓器を含むいくつかの供給源から得ることができる。免疫細胞は、免疫系の細胞、例えば自然免疫または適応免疫の細胞、例えば、リンパ球、典型的にT細胞および/またはNK細胞を含む、骨髄性細胞またはリンパ球系細胞である。他の例示的な細胞には、幹細胞、例えば、人工多能性幹細胞(iPSC)を含む、複能性幹細胞および多能性幹細胞が含まれる。ある特定の実施形態において、細胞は、ヒト細胞である。処置される対象について、細胞は、同種異系および/または自家であり得る。細胞は、典型的に、初代細胞、例えば対象から直接的に単離された初代細胞および/または対象から単離され凍結された初代細胞である。
【0305】
ある特定の実施形態において、免疫細胞は、T細胞、例えばCD8+T細胞(例えばCD8+ナイーブT細胞、中枢メモリーT細胞もしくはエフェクターメモリーT細胞)、CD4+T細胞、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)、制御性T細胞(Treg)、幹細胞メモリーT細胞、リンパ系プロジェニター細胞、造血幹細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)または樹状細胞である。ある特定の実施形態において、細胞は、単球または顆粒細胞、例えば骨髄性細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、マスト細胞、好酸球および/または好塩基球である。ある特定の実施形態において、標的細胞は、人工多能性幹(iPS)細胞、またはiPS細胞に由来する細胞、例えば1つもしくは複数の標的遺伝子を変更する(例えば標的遺伝子において変異を誘導する)かまたは1つもしくは複数の標的遺伝子の発現を操作するように操作され、例えばT細胞、例えばCD8+T細胞(例えばCD8+ナイーブT細胞、中枢メモリーT細胞もしくはエフェクターメモリーT細胞)、CD4+T細胞、幹細胞メモリーT細胞、リンパ系プロジェニター細胞または造血幹細胞に分化した、対象から生成したiPS細胞である。
【0306】
ある特定の実施形態において、細胞は、T細胞または他の細胞種のうちの1つまたは複数のサブセット、例えば全T細胞集団、CD4+細胞、CD8+細胞ならびにそれらのサブ集団、例えば機能;活性化状態、;成熟度;分化、増量、再循環、局在性および/もしくは残留能の可能性;抗原特異性;抗原受容体の種類;特定の臓器もしくは区画における存在;マーカーもしくはサイトカイン分泌プロファイル;ならびに/または分化の程度によって定義されるサブ集団を含む。T細胞ならびに/またはCD4+T細胞および/もしくはCD8+T細胞のサブタイプならびにサブ集団には、ナイーブT(TN)細胞、エフェクターT細胞(TEFF)、メモリーT細胞およびそのサブタイプ、例えば幹細胞メモリーT(TSCM)、中枢メモリーT(TCM)、エフェクターメモリーT(TEM)または高分化エフェクターメモリーT細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未成熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、天然に存在するおよび適応制御性T(Treg)細胞、ヘルパーT細胞、例えばTh1細胞、Th2細胞、Th3細胞、Th17細胞、Th9細胞、Th22細胞、濾胞性ヘルパーT細胞、アルファ/ベータT細胞ならびにデルタ/ガンマT細胞がある。ある特定の実施形態において、当該技術分野において使用可能な任意の数のT細胞系が使用され得る。
【0307】
ある特定の実施形態において、方法は、対象から免疫細胞を単離し、それらを調製、加工、培養および/または操作することを含む。ある特定の実施形態において、操作した細胞の調製は、1つまたは複数の培養および/または調製工程を含む。説明される操作のための細胞は、試料、例えば生体試料、例えば対象から得られた試料または対象に由来する試料から単離され得る。ある特定の実施形態において、細胞が単離される対象は、疾患もしくは状態を有する対象、または細胞療法を必要とする対象、または細胞療法が投与される対象である。一部の実施形態における対象は、特定の治療介入、例えば細胞がそのために単離、加工および/または操作される養子細胞療法を必要とするヒトである。したがって、一部の実施形態における細胞は、初代細胞、例えばヒト初代細胞である。試料は、組織、流体および対象から直接的に採取された他の試料、ならびに1つまたは複数の加工工程、例えば分離、遠心分離、遺伝子操作(例えばウイルスベクターによる形質導入)、洗浄および/またはインキュベーションから得られる試料を含む。生体試料は、生物源から直接的に得られた試料、または加工された試料であり得る。生体試料には、体液、例えば血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿および汗、組織および臓器試料ならびにそれらに由来する加工試料が含まれるが、これらに限定されない。
【0308】
ある特定の実施形態において、細胞が由来するかまたは単離される試料は、血液もしくは血液由来試料であるか、またはアフェレーシスもしくは白血球アフェレーシス産物であるかもしくはそれらに由来する。例示的な試料には、全血、末梢血単核球(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、組織生検、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸管関連リンパ系組織、粘膜関連リンパ系組織、脾臓、他のリンパ系組織、肝臓、肺、胃、腸、結腸、腎臓、膵臓、乳房、骨、前立腺、子宮頸部、精巣、卵巣、扁桃腺もしくは他の臓器、および/またはそれらに由来する細胞が含まれる。試料は、細胞療法、例えば養子細胞療法に関して、自家または同種異系源からの試料を含む。
【0309】
ある特定の実施形態において、細胞は、細胞系、例えばT細胞系に由来する。ある特定の実施形態における細胞は、異種源から、例えばマウス、ラット、非ヒト霊長類およびブタから得られる。一部の実施形態において、細胞の単離は、1回または複数回の調製および/または非親和性ベースの細胞分離工程を含む。一部の例において、細胞は、例えば望ましくない構成成分を除去するか、所望の構成成分について富化するか、特定の試薬に感受性の細胞を溶解または除去するために、1つまたは複数の試薬の存在下において洗浄、遠心分離および/またはインキュベートされる。一部の例において、細胞は、1つまたは複数の特性、例えば密度、接着特性、大きさ、特定の構成成分に対する感度および/または抵抗性に基づいて分離される。
【0310】
ある特定の実施形態において、対象の循環血からの細胞は、例えばアフェレーシスまたは白血球アフェレーシスによって得られる。試料は、一部の態様において、T細胞を含むリンパ球、単球、顆粒細胞、B細胞、他の有核白血球、赤血球および/または血小板を含有し、一部の態様において、赤血球および血小板以外の細胞を含有する。ある特定の実施形態において、対象から収集した血液細胞は、例えば血漿画分を除去するため、および次の加工工程のために細胞を適切な緩衝剤または媒体中に入れるために、洗浄される。一部の実施形態において、細胞は、リン酸緩衝食塩水(PBS)により洗浄される。ある特定の実施形態において、洗浄工程は、製造業者の使用説明書に従って接線流濾過(TFF)によって達成される。ある特定の実施形態において、細胞は、洗浄後、様々な生体適合緩衝剤中に再懸濁される。ある特定の実施形態において、血液細胞試料の構成成分は除去され、細胞は培養培地中に直接的に再懸濁される。ある特定の実施形態において、方法は、密度ベースの細胞分離法、例えば赤血球の溶解およびパーコールまたはフィコール勾配を通した遠心分離による、末梢血からの白血球の調製を含む。
【0311】
ある特定の実施形態において、免疫細胞は、アフェレーシスまたは白血球アフェレーシスによって得られた、個体の循環血から得られた細胞である。アフェレーシス産物は、典型的に、T細胞を含むリンパ球、単球、顆粒細胞、B細胞、他の有核白血球、赤血球および血小板を含有する。アフェレーシスによって収集された細胞は、血漿画分を除去するため、および次の加工工程のために、細胞を適切な緩衝剤もしくは媒体、例えばリン酸緩衝食塩水(PBS)中に入れるために洗浄してもよく、または洗浄溶液は、カルシウムを欠き、マグネシウムを欠いていてもよく、もしくはすべてでなければ多くの二価カチオンを欠いていてもよい。洗浄後、細胞は、様々な生体適合緩衝剤、例えば、Ca非含有、Mg非含有PBS中に再懸濁され得る。あるいは、アフェレーシス試料の望ましくない構成成分を除去し、細胞を培養培地中に直接的に再懸濁してもよい。
【0312】
ある特定の実施形態において、単離法は、1つまたは複数の特定の分子、例えば表面マーカー、例えば表面タンパク質、細胞内マーカーまたは核酸の、細胞における発現または存在に基づく、様々な細胞種の分離を含む。ある特定の実施形態において、そのようなマーカーに基づく分離のための任意の公知の方法を使用することができる。ある特定の実施形態において、分離は、親和性または免疫親和性ベースの分離である。例えば、ある特定の実施形態における単離は、例えばマーカーに特異的に結合する抗体または結合パートナーとのインキュベーション、ならびに一般的にそれに続く、洗浄工程、および抗体または結合パートナーに結合していない細胞からの、抗体または結合パートナーに結合した細胞の分離による、1つまたは複数のマーカー、典型的に細胞表面マーカーの、細胞の発現または発現レベルに基づく、細胞および細胞集団の分離を含む。
【0313】
そのような分離工程は、試薬に結合した細胞がさらなる使用のために保持される陽性選択、および/または抗体もしくは結合パートナーに結合していない細胞が保持される陰性選択に基づき得る。ある特定の実施形態において、両方の画分は、さらなる使用のために保持される。ある特定の実施形態において、異種性の集団において細胞種を特異的に特定する抗体が使用可能でない場合、陰性選択は特に有用である場合があり、そのため、分離は、所望の集団以外の細胞によって発現されるマーカーに基づいて最もよく行われる。分離は、特定のマーカーを発現する特定の細胞集団または細胞の100%富化または除去をもたらす必要はない。例えば、特定の種類の細胞、例えばマーカーを発現する細胞についての陽性選択または富化とは、そのような細胞の数またはパーセンテージを増大させることを指すが、そのマーカーを発現しない細胞の完全な非存在をもたらす必要はない。同様に、特定の種類の細胞、例えばマーカーを発現する細胞の陰性選択、除去または枯渇とは、そのような細胞の数またはパーセンテージを減少させることを指すが、すべてのそのような細胞の完全な除去をもたらす必要はない。
【0314】
ある特定の実施形態において、1工程からの陽性または陰性選択画分が、別の分離工程、例えば次の陽性または陰性選択に供される、多ラウンドの分離工程が行われる。ある特定の実施形態において、単一の分離工程は、細胞を、各々が陰性選択のために標的化されるマーカーについて特異的な複数の抗体または結合パートナーとインキュベートすることなどによって、多数のマーカーを発現する細胞を同時に枯渇させることができる。同様に、多数の細胞種は、細胞を、様々な細胞種上に発現する複数の抗体または結合パートナーとインキュベートすることによって、同時に陽性選択することができる。
【0315】
ある特定の実施形態において、T細胞集団のうちの1つまたは複数は、1つもしくは複数の特定のマーカー、例えば表面マーカーについて陽性であるか(マーカー+)または高レベルの1つもしくは複数のマーカーを発現する(マーカー)細胞、または1つもしくは複数のマーカーについて陰性であるか(マーカー-)または比較的低レベルの1つもしくは複数のマーカーを発現する(マーカー)細胞について富化または枯渇される。例えば、ある特定の実施形態において、T細胞の特定のサブ集団、例えば1つもしくは複数の表面マーカーについて陽性であるかまたは高レベルの1つもしくは複数の表面マーカーを発現する細胞、例えばCD28+、CD62L+、CCR7+、CD27+、CD127+、CD4+、CD8+、CD45RA+および/またはCD45RO+T細胞は、陽性または陰性選択技法によって単離される。ある特定の実施形態において、そのようなマーカーは、T細胞のある特定の集団(例えば非メモリー細胞)上で非存在であるか、または比較的低レベルにおいて発現するが、T細胞のある特定の他の集団(例えばメモリー細胞)上で存在するか、または比較的高レベルにおいて発現するマーカーである。一実施形態において、細胞(例えばCD8+細胞またはT細胞、例えばCD3+細胞)は、CD45RO、CCR7、CD28、CD27、CD44、CD127および/もしくはCD62Lについて陽性であるかもしくは高表面レベルのこれらを発現する細胞について富化され(すなわち、そのような細胞について陽性選択され)、ならびに/またはCD45RAについて陽性であるかもしくは高表面レベルのCD45RAを発現する細胞について枯渇される(例えばそのような細胞について陰性選択される)。ある特定の実施形態において、細胞は、CD122、CD95、CD25、CD27および/またはIL7-Ra(CD127)について陽性であるかまたは高表面レベルのこれらを発現する細胞について富化または枯渇される。ある特定の実施形態において、CD8+T細胞は、CD45ROについて陽性(またはCD45RAについて陰性)およびCD62Lについて陽性である細胞について富化される。例えば、CD3+、CD28+T細胞は、CD3/CD28コンジュゲート磁気ビーズ[例えばDYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 T Cell Expander]を使用して陽性選択することができる。
【0316】
ある特定の実施形態において、T細胞は、非T細胞、例えばB細胞、単球または他の白血球上で発現するマーカー、例えばCD14の陰性選択によってPBMC試料から分離される。ある特定の実施形態において、CD4+またはCD8+選択工程は、CD4+ヘルパーT細胞およびCD8+細胞傷害性T細胞を分離するために使用される。そのようなCD4+およびCD8+集団は、1つまたは複数のナイーブ、メモリーおよび/またはエフェクターT細胞サブ集団上で発現するかまたは比較的高度に発現するマーカーについての陽性または陰性選択によって、サブ集団にさらに分類することができる。ある特定の実施形態において、CD8+細胞は、各々のサブ集団と関連付けられる表面抗原に基づく陽性または陰性選択などによって、ナイーブ、中枢メモリー、エフェクターメモリーおよび/または中枢メモリー幹細胞についてさらに富化または枯渇される。ある特定の実施形態において、中枢メモリーT(Tcm)細胞についての富化は、一部の態様においてそのようなサブ集団において特に堅牢である有効性を増大させるために、例えば長期生存、増量および/または投与後の生着を改善するために行われる。ある特定の実施形態において、Tcm富化CD8+T細胞とCD4+T細胞とを組み合わせることは、有効性をさらに向上させる。
【0317】
ある特定の実施形態において、メモリーT細胞は、CD8+末梢血リンパ球のCD62L+サブセットおよびCD62L-サブセットの両方において存在する。PBMCは、抗CD8抗体および抗CD62L抗体などを使用して、CD62L-CD8+および/またはCD62L+CD8+画分について富化または枯渇してもよい。ある特定の実施形態において、CD4+T細胞集団およびCD8+T細胞サブ集団、例えば中枢メモリー(Tcm)細胞について富化したサブ集団。ある特定の実施形態において、中枢メモリーT(Tcm)細胞についての富化は、CD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD3および/またはCD127の陽性またはこれらの高表面発現に基づき;一部の態様において、それは、CD45RAおよび/またはグランザイムBを発現または高発現する細胞についての陰性選択に基づく。ある特定の実施形態において、TCM細胞について富化したCD8+集団の単離は、CD4、CD14、CD45RAを発現する細胞の枯渇、およびCD62Lを発現する細胞についての陽性選択または富化によって行われる。ある特定の実施形態において、中枢メモリーT(Tcm)細胞についての富化は、CD4発現に基づいて選択した細胞の陰性画分により開始して行われ、その陰性画分は、CD14およびCD45RAの発現に基づく陰性選択、ならびにCD62Lに基づく陽性選択を受ける。ある特定の実施形態におけるそのような選択は同時に行われ、他の態様において逐次的にいずれの順序でも行われる。ある特定の実施形態において、また、CD8+細胞集団またはサブ集団の調製において使用されるのと同じCD4発現ベースの選択工程は、CD4+細胞集団またはサブ集団を生成するために使用されて、CD4ベースの分離からの陽性および陰性画分の両方が保持され、適宜、1つまたは複数のさらなる陽性または陰性選択工程後に、方法の次の工程において使用される。
【0318】
細胞表面抗原を有する細胞集団を特定することによって、CD4+ヘルパーT細胞を、ナイーブ、中枢メモリーおよびエフェクター細胞に分類する。CD4+リンパ球は、標準法によって得ることができる。ある特定の実施形態において、ナイーブCD4+Tリンパ球は、CD45RO-、CD45RA+、CD62L+、CD4+T細胞である。ある特定の実施形態において、中枢メモリーCD4+細胞は、CD62L+およびCD45RO+である。ある特定の実施形態において、エフェクターCD4+細胞は、CD62L-およびCD45ROである。一例において、陰性選択によってCD4+細胞について富化するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的に、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DRおよびCD8に対する抗体を含む。ある特定の実施形態において、抗体または結合パートナーは、陽性および/または陰性選択のための細胞の分離を可能にするために、固体支持体またはマトリックス、例えば磁気ビーズまたは常磁性ビーズに結合している。
【0319】
ある特定の実施形態において、細胞は、遺伝子操作の前にまたはそれと関連してインキュベートおよび/または培養される。インキュベーション工程は、培養(culture)、培養(cultivation)、刺激、活性化および/または繁殖を含み得る。ある特定の実施形態において、組成物または細胞は、刺激条件または刺激剤の存在下においてインキュベートされる。そのような条件は、集団において細胞の増殖、増量、活性化および/もしくは生存を誘導するように、抗原曝露を模倣するように、ならびに/または遺伝子操作のために、例えば組換え抗原受容体の導入のために細胞を予備刺激するように設計された条件を含む。条件は、特定の培地、温度、酸素含量、二酸化炭素含量、時間、薬剤、例えば栄養素、アミノ酸、抗生物質、イオンおよび/または刺激因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、抗原、結合パートナー、融合タンパク質、組換え可溶性受容体ならびに細胞を活性化するように設計された他の任意の薬剤を含み得る。ある特定の実施形態において、刺激剤は、IL-2、IL-7、IL-15および/またはIL-21、例えば少なくとも約10単位/mLのIL-2濃度を含む。
【0320】
ある特定の実施形態において、T細胞は、赤血球を溶解し、単球を枯渇させることによって、例えばPERCOLL(商標)勾配を通した遠心分離によって、末梢血から単離される。あるいは、T細胞は、臍帯から単離され得る。任意の事象において、T細胞の特定のサブ集団は、陽性または陰性選択技法によってさらに単離され得る。
【0321】
そのように単離された臍帯血単核球は、非限定的に、CD34、CD8、CD14、CD19およびCD56を含む、ある特定の抗原を発現する細胞を枯渇させてもよい。これらの細胞の枯渇は、単離された抗体、抗体を含む生体試料、例えば腹水、物理的支持体に結合した抗体および細胞に結合した抗体を使用して達成することができる。
【0322】
陰性選択によるT細胞集団の富化は、陰性選択される細胞に独特な表面マーカーに方向付けられた抗体の組合せを使用して達成することができる。好ましい方法は、陰性選択される細胞上に存在する細胞表面マーカーに方向付けられたモノクローナル抗体のカクテルを使用する負磁気免疫付着(negative magnetic immunoadherence)またはフローサイトメトリーを介した細胞選別および/または選択である。例えば、陰性選択によってCD4細胞について富化するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的に、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DRおよびCD8に対する抗体を含む。
【0323】
陽性または陰性選択による所望の細胞集団の単離のために、細胞および表面(例えば粒子、例えばビーズ)の濃度は、変動してもよい。ある特定の実施形態において、ビーズと細胞とを共に混合する体積を顕著に減少させて(すなわち、細胞の濃度を増加させて)、細胞とビーズとの最大接触を確実にすることが望ましい場合がある。例えば、ある特定の実施形態において、細胞20億個/mlの濃度が使用される。一実施形態において、細胞10億個/mlの濃度が使用される。さらなる実施形態において、細胞1億個/ml超が使用される。さらなる実施形態において、細胞1000万、1500万、2000万、2500万、3000万、3500万、4000万、4500万または5000万個/mlの細胞濃度が使用される。また別の実施形態において、細胞7500万、8000万、8500万、9000万、9500万または1億個/mlからの細胞濃度が使用される。さらなる実施形態において、細胞1億2500万または1億5000万個/mlの濃度を使用することができる。高濃度を使用することは、細胞収率、細胞活性化および細胞増量の増大をもたらし得る。
【0324】
また、T細胞は、単球除去工程を必要としない洗浄工程後に凍結してもよい。理論に束縛されるものではないが、凍結および次の融解工程は、細胞集団中の顆粒細胞およびある程度まで単球を除去することによって、より均一な生成物を提供する。血漿および血小板を除去する洗浄工程後、細胞は、凍結液中に懸濁され得る。多くの凍結液およびパラメーターは当該技術分野において公知であり、非限定的な例におけるこの関係において有用であるが、ある方法は、20%DMSOおよび8%ヒト血清アルブミンを含有するPBS、または他の好適な細胞凍結媒体を使用することを含む。その後、細胞を、1分間当たり1℃の速度において-80℃まで凍結し、液体窒素保存タンクの気相中に保存する。他の管理凍結法、および-20℃におけるまたは液体窒素における即座の非管理凍結を使用してもよい。
【0325】
ある特定の実施形態において、免疫細胞(例えばT細胞)の集団は、細胞、例えば末梢血単核球、臍帯血細胞、精製T細胞集団およびT細胞系内に含まれる。ある特定の実施形態において、末梢血単核球は、T細胞集団を含む。また別の実施形態において、精製T細胞は、T細胞集団を含む。
【0326】
ある特定の実施形態において、制御性T細胞(Treg)は、試料から単離することができる。試料には、臍帯血または末梢血が含まれ得るが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、Tregは、フローサイトメトリー選別によって単離される。試料は、当該技術分野において公知の任意の手段によって単離前にTregについて富化してもよい。単離されたTregは、凍結保存され、および/または使用前に増やされ得る。Tregを単離するための方法は、米国特許第7,754,482号、同第8,722,400号および同第9,555,105号、ならびに米国特許出願第13/639,927号において説明されており、当該特許および出願の内容は、それらを全体として本明細書に組み込まれる。
【0327】
J.医薬組成物および製剤
また、医薬組成物および製剤、例えば所与の用量またはその画分中に投与のためのいくつかの細胞を含む単位用量形態組成物を含む、投与のための細胞を含む組成物が提供される。医薬組成物および製剤は、一般的に、1つまたは複数の適宜の薬学的に許容される担体または賦形剤を含む。ある特定の実施形態において、組成物は、少なくとも1つの追加の治療剤を含む。
【0328】
「医薬製剤」という用語は、その中に含有される有効成分の生物活性を有効にすることを可能にするような形態であり、製剤が投与され得る対象にとって許容できないほど毒性である追加の構成成分を含有しない調製物を指す。「薬学的に許容される担体」とは、対象にとって非毒性である、有効成分以外の、医薬製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体には、緩衝剤、賦形剤、安定剤または保存剤が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、担体の選択は、一部には、特定の細胞によっておよび/または投与方法によって決定される。したがって、様々な好適な製剤が存在する。例えば、医薬組成物は、保存剤を含有し得る。好適な保存剤は、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウムおよび塩化ベンザルコニウムを含み得る。ある特定の実施形態において、2つまたはそれ以上の保存剤の混合物が使用される。保存剤またはその混合物は、典型的に、組成物全体の約0.0001重量%~約2重量%の量において存在する。担体は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)によって説明されている。薬学的に許容される担体は、一般的に、用いられる投与量および濃度においてレシピエントに非毒性であり、緩衝剤、例えば、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化物質;保存剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド;ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルもしくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリシン;グルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む単糖、二糖および他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖、例えばスクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属複合体(例えばZn-タンパク質複合体);ならびに/または非イオン性界面活性剤、例えばポリエチレングリコール(PEG)を含むが、これらに限定されない。
【0329】
ある特定の実施形態において緩衝用剤(buffering agent)が、組成物中に含まれる。好適な緩衝用剤には、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウムおよび様々な他の酸および塩が含まれる。ある特定の実施形態において、2つまたはそれ以上の緩衝用剤の混合物が使用される。緩衝用剤またはその混合物は、典型的に、組成物全体の約0.001重量%~約4重量%の量において存在する。投与可能な医薬組成物を調製するための方法は、公知である。例示的な方法は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams & Wilkins; 21st ed. (May 1, 2005)においてより詳細に説明されている。
【0330】
製剤は、水溶液を含み得る。また、製剤または組成物は、細胞により処置される特定の適応症、疾患または状態に有用な2つ以上の有効成分、例えば細胞にとって補完的な活性を有する有効成分であって、各々の活性が互いに有害に影響を及ぼさない有効成分を含有し得る。そのような有効成分は、好適に、意図される目的に有効な量の組合せにおいて存在する。したがって、一部の実施形態において、医薬組成物は、他の薬学的に活性な薬剤または薬物、例えば化学療法剤、例えばアスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メトトレキセート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチンおよび/またはビンクリスチンをさらに含む。一部の実施形態における医薬組成物は、疾患または状態を処置または防止するために有効な量、例えば治療有効量または予防有効量において細胞を含有する。一部の実施形態における治療または予防有効性は、処置される対象の定期的評価によってモニターされる。所望の投与量は、細胞の単一のボーラス投与によって、細胞の多数のボーラス投与によって、または細胞の連続注入投与によってデリバリーすることができる。
【0331】
製剤は、経口、静脈内、腹腔内、皮下、肺、経皮、筋内、鼻内、口腔、舌下または坐薬投与のための製剤を含む。ある特定の実施形態において、細胞集団は、非経口で投与される。「非経口」という用語は、本明細書で使用される場合、静脈内、筋内、皮下、直腸、膣および腹腔内投与を含む。ある特定の実施形態において、細胞は、静脈内、腹腔内または皮下注射による末梢系デリバリーを使用して対象へ投与される。ある特定の実施形態における組成物は、一部の態様において選択されるpHに緩衝してもよい滅菌液体調製物、例えば等張水溶液、懸濁液、エマルション、分散液または粘性組成物として提供される。液体調製物は、普通、ゲル、他の粘性組成物および固形組成物よりも調製が容易である。加えて、液体組成物は、投与するのに、とりわけ注射により投与するのにいくらかより便利である。他方で、粘性組成物は、適切な粘性範囲内で製剤化されて、特定の組織とのより長い接触期間を提供することができる。液体または粘性組成物は、担体を含んでもよく、担体は、例えば水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)およびそれらの好適な混合物を含有する溶媒または分散媒体であり得る。
【0332】
滅菌注射用溶液は、細胞を溶媒中へ、例えば好適な担体、希釈剤または賦形剤、例えば滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロース、その他と混合して、組み込むことによって調製することができる。組成物は、所望の投与経路および調製によって、補助物質、例えば湿潤、分散もしくは乳化剤(例えばメチルセルロース)、pH緩衝用剤、ゲル化もしくは粘性向上添加物、保存剤、香味剤および/または着色料を含有し得る。一部の態様において、標準のテキストを、好適な調製物を調製するために参照してもよい。
【0333】
抗菌保存剤、抗酸化物質、キレート剤および緩衝剤を含む、組成物の安定性および無菌性を向上させる様々な添加物を添加してもよい。微生物の作用の防止は、様々な抗細菌および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールおよびソルビン酸によって確実にすることができる。注射用医薬形態の吸収の延長は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によってもたらすことができる。
【0334】
インビボ投与に使用される製剤は、一般的に、無菌である。無菌性は、例えば滅菌濾過膜を通した濾過によって、容易に達成することができる。
【0335】
本明細書で列挙または引用される論文、特許および特許出願ならびにすべての他の文献および電子的に入手可能な情報の内容は、各個々の出版物が具体的かつ個々に参照により組み込まれることが示されているのと同様に、それらを全体として参照により本明細書に組み込まれる。出願人は、本出願に、任意のそのような論文、特許、特許出願または他の物理的および電子的文献からの任意およびすべての資料および情報を物理的に組み込む権利を保有している。
【0336】
本開示は、その特定の実施形態を参照して説明されているが、本開示の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更を行ってもよく、同等物は置換してもよいことを、当業者は理解すべきである。本明細書で説明される方法の他の好適な改変および適合は、本明細書で開示される実施形態の範囲から逸脱することなく、好適な同等物を使用して行ってもよいことが、当業者に容易に明らかである。加えて、多くの改変は、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセス工程または工程を、本開示の目的、趣旨および範囲に適合するように行われ得る。すべてのそのような改変は、本明細書に附属する特許請求の範囲内であると意図される。ここである特定の実施形態を詳細に説明したので、これらは以下の実施例を参照してより明らかに理解され、実施例は、例示の目的のためにのみ含まれ、限定されるものではない。
【0337】
K.追加的実施形態
本開示は、以下の実施形態によっても記載される。
【0338】
実施形態1.免疫細胞の集団を活性化する、刺激する、および/または増やすための方法であって、免疫細胞を含む細胞の集団を得ること;細胞の集団を白血病由来の改変細胞と接触させることであって、改変細胞が成熟樹状細胞表現型を含み、非増殖性であること;および細胞の集団を、免疫細胞の増殖を刺激するために好適な条件下で培養し、それにより免疫細胞の集団を活性化し、増やすことを含む、方法。
【0339】
実施形態2.メモリーT細胞の集団を生成するための方法であって、免疫細胞を含む細胞の集団を得ること;細胞の集団を白血病由来の改変細胞と接触させることであって、改変細胞が成熟樹状細胞表現型を含み、非増殖性であること;および細胞の集団を、免疫細胞の増殖を刺激するために好適な条件下で培養し、それによりメモリーT細胞の集団を生成することを含む、方法。
【0340】
実施形態3.自家T細胞の集団の活性化状態の増強のための方法であって、がんに罹患している患者から自家T細胞の集団を得ること;自家T細胞の集団を、患者における腫瘍抗原に結合するキメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)から選択される操作された免疫受容体を発現するように改変すること;改変自家T細胞の集団を白血病由来の改変細胞と接触させることであって、改変細胞が成熟樹状細胞表現型を含み、非増殖性であること;ならびに改変免疫細胞の集団および白血病由来の改変細胞を、免疫細胞の増殖を刺激するために好適な条件下で同時培養し、それにより活性化状態が増強された自家細胞の集団を生成することを含む、方法。
【0341】
実施形態4.自家T細胞の集団の抗腫瘍特異性を発展させるための方法であって、がんに罹患している患者から自家T細胞の集団を得ること;自家T細胞の集団を、患者における腫瘍細胞上の腫瘍抗原に結合するキメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)から選択される操作された免疫受容体を発現するように改変すること;改変自家T細胞の集団を白血病由来の改変細胞と接触させることであって、改変細胞が成熟樹状細胞表現型を含み、非増殖性であること;ならびに改変免疫細胞の集団および白血病由来の改変細胞を、改変免疫細胞の抗腫瘍抗原特異性を発展させるために好適な条件下で同時培養し、それにより操作された受容体が結合する腫瘍抗原を発現しない患者の腫瘍細胞と反応することができる自家細胞の集団を生成することを含む、方法。
【0342】
実施形態5.活性化状態が増強された自家細胞の集団をがんに罹患している患者に投与することをさらに含む、先行する実施形態のいずれかの方法。
【0343】
実施形態6.改変細胞が、WT-1、RHAMM、PRAME、MUC-1、p53およびサバイビンからなる群から選択される少なくとも1つの腫瘍抗原を含む、前記実施形態のいずれかの方法。
【0344】
実施形態7.免疫細胞が、白血病由来の改変細胞によって表される内在性細胞への曝露後に活性化される、前記方法。
【0345】
実施形態8.改変細胞が、CD34陽性、CD1a陽性およびCD83陽性である、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0346】
実施形態9.改変細胞が、CD14、DC-SIGN、ランゲリン、CD40、CD70、CD80、CD83、CD86およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される細胞表面マーカーを含む、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0347】
実施形態10.改変細胞が、共刺激分子を含む、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0348】
実施形態11.共刺激分子が、CD70である、実施形態10の方法。
【0349】
実施形態12.改変細胞が、MHCクラスI分子を含む、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0350】
実施形態13.改変細胞が、MHCクラスII分子を含む、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0351】
実施形態14.改変細胞に、外来性抗原またはそのペプチド断片が負荷される、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0352】
実施形態15.外来性抗原が、腫瘍関連抗原(TAA)または非腫瘍関連抗原である、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0353】
実施形態16.改変細胞が、外来性抗原を発現することができる、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0354】
実施形態17.改変細胞が、外来性抗原を発現することができない、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0355】
実施形態18.外来性抗原が、ペプチド、ヌクレオチド配列、全タンパク質または腫瘍可溶化液の形態で提供される、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0356】
実施形態19.外来性抗原が、操作された免疫受容体が結合する抗原に適合する、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0357】
実施形態20.外来性抗原が、操作された免疫受容体が結合する抗原とは異なる、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0358】
実施形態21.白血病由来の改変細胞に、成熟樹状細胞表現型を提示する前に外来性抗原またはそのペプチド断片が負荷される、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0359】
実施形態22.白血病由来の改変細胞に、白血病由来の改変細胞の成熟樹状細胞表現型への移行の際に外来性抗原またはそのペプチド断片が負荷される、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0360】
実施形態23.白血病由来の改変細胞に、白血病由来の改変細胞が成熟樹状細胞表現型を提示する前、後に、外来性抗原またはそのペプチド断片が負荷される、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0361】
実施形態24.改変細胞が、染色体11p15.5と11p12との間に遺伝子異常を含む、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0362】
実施形態25.遺伝子異常が、約16Mbのゲノム領域を包含する、実施形態24の方法。
【0363】
実施形態26.改変細胞が照射されている、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0364】
実施形態27.免疫細胞の増殖を刺激するために好適な条件が、シグナル-1を免疫細胞に提供することを含む、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0365】
実施形態28.シグナル-1が、改変細胞によって提供される、実施形態27の方法。
【0366】
実施形態29.シグナル-1が、TCR/CD3複合体の活性化を含む、実施形態27または28の方法。
【0367】
実施形態30.免疫細胞の増殖を刺激するために好適な条件が、シグナル-2を免疫細胞に提供することを含む、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0368】
実施形態31.シグナル-2が、改変細胞によって提供される、実施形態30の方法。
【0369】
実施形態32.シグナル-2が、共刺激分子の活性化を含む、実施形態29または30の方法。
【0370】
実施形態33.共刺激分子が、CD70である、実施形態32の方法。
【0371】
実施形態34.細胞の集団が、ヒト由来である、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0372】
実施形態35.細胞の集団が、T細胞を含む、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0373】
実施形態36.T細胞が、CD4+細胞およびCD8+細胞の両方を含み、CD4+細胞およびCD8+細胞の両方の複合刺激を生じる、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0374】
実施形態37.T細胞が、CD4+細胞およびCD8+細胞の両方を含み、CD4+細胞のCD8+細胞に対する比の増加を生じる、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0375】
実施形態38.細胞の集団が、刺激されていないT細胞を含む、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0376】
実施形態39.改変免疫細胞が、がんに罹患している患者由来の自家細胞である、先行する実施形態のいずれか1つの方法。
【0377】
実施形態40.改変免疫細胞が、機能性内在性TCRレパートリーを含む、先行する実施形態のいずれか1つの方法。
【0378】
実施形態41.免疫細胞が、白血病由来の改変免疫細胞の外来性抗原を標的化するように操作されている、先行する実施形態のいずれか1つの方法。
【0379】
実施形態42.免疫細胞が、白血病由来の改変細胞の同じ腫瘍関連抗原(TAA)を標的化するように操作されている、先行する実施形態のいずれか1つの方法。
【0380】
実施形態43.免疫細胞が、白血病由来の改変免疫細胞によって提示される非腫瘍由来抗原と交差反応性である、先行する実施形態のいずれか1つの方法。
【0381】
実施形態44.非腫瘍由来抗原が、ウイルス性またはワクチン由来リコール抗原である、先行する実施形態のいずれか1つの方法。
【0382】
実施形態45.操作された免疫細胞が、エプスタイン・バーウイルス(EBV)特異的T細胞である、先行する実施形態のいずれか1つの方法。
【0383】
実施形態46.免疫細胞が、免疫受容体を含む、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0384】
実施形態47.免疫受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)である、実施形態46の方法。
【0385】
実施形態48.CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインならびに、共刺激ドメインおよび一次シグナル伝達ドメインを含む細胞内ドメインを含む、実施形態47の方法。
【0386】
実施形態49.抗原結合ドメインが、全長抗体もしくはその抗原結合性断片、Fab、単鎖可変断片(scFv)または単一ドメイン抗体を含む、実施形態48の方法。
【0387】
実施形態50.抗原結合ドメインが、腫瘍関連抗原(TAA)または非腫瘍関連抗原に対して特異的である、施形態48または49の方法。
【0388】
実施形態51.抗原結合ドメインが、外来性抗原とは異なる、腫瘍関連抗原(TAA)または非腫瘍関連抗原に対して特異的である、実施形態50の方法。
【0389】
実施形態52.抗原結合ドメインが、外来性抗原と同じである、腫瘍関連抗原(TAA)または非腫瘍関連抗原に対して特異的である、実施形態50の方法。
【0390】
実施形態53.CARが、ヒンジ領域をさらに含む、実施形態48~52のいずれか1つの方法。
【0391】
実施形態54.ヒンジ領域が、抗体のFc断片、抗体のヒンジ領域、抗体のCH2領域、抗体のCH3領域、人工ヒンジドメイン、CD8のアミノ酸配列を含むヒンジまたはこれらの任意の組合せからなる群から選択されるヒンジドメインである、実施形態53の方法。
【0392】
実施形態55.膜貫通ドメインが、人工疎水性配列、I型膜貫通タンパク質の膜貫通ドメイン、T細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖もしくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、ICOS(CD278)またはCD154およびキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)由来膜貫通ドメインからなる群から選択される、実施形態48~54のいずれか1つの方法。
【0393】
実施形態56.細胞内ドメインが、共刺激シグナル伝達ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む、実施形態48~55のいずれか1つの方法。
【0394】
実施形態57.共刺激シグナル伝達ドメインが、TNFRスーパーファミリー内のタンパク質、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、PD-1、CD7、LIGHT、CD83L、DAP10、DAP12、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-I、TNFR-II、Fas、CD30、CD40、ICOS(CD278)、NKG2C、B7-H3(CD276)およびキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)由来細胞内ドメインまたはこれらの変異体からなる群から選択されるタンパク質の1つまたは複数の共刺激ドメインを含む、実施形態56の方法。
【0395】
実施形態58.細胞内シグナル伝達ドメインが、ヒトCD3ゼータ鎖(CD3ζ)の細胞質シグナル伝達ドメイン、FcγRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質側末端、細胞質受容体を保有する免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、TCRゼータ、FcRガンマ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79bおよびCD66d、またはこれらの変異体からなる群から選択される細胞内ドメインを含む、実施形態56または57の方法。
【0396】
実施形態59.TCRが、免疫細胞に対して内在性である、実施形態47の方法。
【0397】
実施形態60.TCRが、免疫細胞に対して外来性である、実施形態47の方法。
【0398】
実施形態61.TCRが、TCRアルファ鎖およびTCRベータ鎖を含む、実施形態47の方法。
【0399】
実施形態62.TCRが、野生型TCR、高親和性TCRおよびキメラTCRからなる群から選択される、実施形態47の方法。
【0400】
実施形態63.TCRが、全長TCR、二量体TCRおよび単鎖TCRからなる群から選択される、実施形態47の方法。
【0401】
実施形態64.TCRが、外来性抗原とは異なる、腫瘍関連抗原(TAA)または非腫瘍関連抗原に対して特異的である、実施形態47または59~63のいずれか1つの方法。
【0402】
実施形態65.TCRが、外来性抗原と同じである、腫瘍関連抗原(TAA)または非腫瘍関連抗原に対して特異的である、実施形態47または59~63のいずれか1つの方法。
【0403】
実施形態66.免疫細胞を白血病由来の改変細胞と接触させることによって抗原特異的免疫細胞の生成を誘導することを含む、抗原特異的免疫細胞を生成するための方法であって、改変細胞が成熟樹状細胞表現型を含み、非増殖性である、方法。
【0404】
実施形態67.改変細胞が、標的抗原を含む、実施形態66の方法。
【0405】
実施形態68.標的抗原が、改変細胞に対して内在性であり、WT-1、RHAMM、PRAME、MUC-1、p53、サバイビンおよびこれらの任意の組合せからなる群から選択される、実施形態67の方法。
【0406】
実施形態69.標的抗原が、改変細胞に対して外来性である、実施形態66~68のいずれか1つの方法。
【0407】
実施形態70.標的抗原が、腫瘍関連抗原(TAA)または非腫瘍関連抗原である、実施形態66~69のいずれか1つの方法。
【0408】
実施形態71.改変細胞が、CD34陽性、CD1a陽性およびCD83陽性である、実施形態66~70のいずれか1つの方法。
【0409】
実施形態72.改変細胞が、CD14、DC-SIGN、ランゲリン、CD40、CD70、CD80、CD83、CD86およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される細胞表面マーカーを含む、実施形態66~671のいずれか1つの方法。
【0410】
実施形態73.改変細胞が、共刺激分子を含む、実施形態66~62のいずれか1つの方法。
【0411】
実施形態74.共刺激分子が、CD70である、実施形態73の方法。
【0412】
実施形態75.改変細胞が、MHCクラスI分子を含む、実施形態66~74のいずれか1つの方法。
【0413】
実施形態76.改変細胞が、MHCクラスII分子を含む、実施形態66~75のいずれか1つの方法。
【0414】
実施形態77.改変細胞が、染色体11p15.5と11p12との間に遺伝子異常を含む、実施形態66~76のいずれか1つの方法。
【0415】
実施形態78.遺伝子異常が、約16Mbのゲノム領域を包含する、実施形態77の方法。
【0416】
実施形態79.改変細胞が照射されている、実施形態66~78のいずれか1つの方法。
【0417】
実施形態80.改変免疫細胞の集団を増やすための方法であって、改変免疫細胞の集団を得ることであって、改変免疫細胞が免疫受容体を含むこと;細胞の集団を白血病由来の改変細胞と接触させることであって、改変細胞が成熟樹状細胞表現型を含み、非増殖性であること;および改変免疫細胞の集団を改変免疫細胞の増殖を刺激するために好適な条件下で培養し、それにより改変免疫細胞の集団を増やすことを含む、方法。
【0418】
実施形態81.改変細胞が、標的抗原を含む、実施形態80の方法。
【0419】
実施形態82.標的抗原が、改変細胞に対して内在性であり、WT-1、RHAMM、PRAME、MUC-1、p53、サバイビンおよびこれらの任意の組合せからなる群から選択される、実施形態81の方法。
【0420】
実施形態83.標的抗原が、改変細胞に対して外来性である、実施形態80の方法。
【0421】
実施形態84.標的抗原が、腫瘍関連抗原(TAA)または非腫瘍関連抗原である、実施形態80の方法。
【0422】
実施形態85.改変細胞が、CD34陽性、CD1a陽性およびCD83陽性である、実施形態80~84のいずれか1つの方法。
【0423】
実施形態86.改変細胞が、CD14、DC-SIGN、ランゲリン、CD40、CD70、CD80、CD83、CD86およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される細胞表面マーカーを含む、実施形態80~85のいずれか1つの方法。
【0424】
実施形態87.改変細胞が、共刺激分子を含む、実施形態80~86のいずれか1つの方法。
【0425】
実施形態88.共刺激分子が、CD70である、実施形態87の方法。
【0426】
実施形態89.改変細胞が、MHCクラスI分子を含む、実施形態80~88のいずれか1つの方法。
【0427】
実施形態90.改変細胞が、MHCクラスII分子を含む、実施形態80~88のいずれか1つの方法。
【0428】
実施形態91.改変細胞が、染色体11p15.5と11p12との間に遺伝子異常を含む、実施形態80~90のいずれか1つの方法。
【0429】
実施形態92.遺伝子異常が、約16Mbのゲノム領域を包含する、実施形態91の方法。
【0430】
実施形態93.改変細胞が照射されている、実施形態80~92のいずれか1つの方法
【0431】
実施形態94.免疫細胞の増殖を刺激するために好適な条件が、シグナル-1を免疫細胞に提供することを含む、実施形態80~93のいずれか1つの方法。
【0432】
実施形態95.シグナル-1が、改変細胞によって提供される、実施形態94の方法。
【0433】
実施形態96.シグナル-1が、TCR/CD3複合体の活性化を含む、実施形態94または95の方法。
【0434】
実施形態97.免疫細胞の増殖を刺激するために好適な条件が、シグナル-2を免疫細胞に提供することを含む、実施形態80~97のいずれか1つの方法。
【0435】
実施形態98.シグナル-2が、改変細胞によって提供される、実施形態97の方法。
【0436】
実施形態99.シグナル-2が、共刺激分子の活性化を含む、実施形態98の方法。
【0437】
実施形態100.共刺激分子が、CD70である、実施形態99の方法。
【0438】
実施形態101.それを必要とする対象において疾患または障害を処置するための方法であって、対象に、前記実施形態の方法のいずれか1つによって産生された改変免疫細胞を投与することを含む、方法。
【0439】
実施形態102.疾患または障害ががんである、実施形態101の方法。
【0440】
実施形態103.がんが、腫瘍である、実施形態102の方法。
【0441】
実施形態104.腫瘍が、液性腫瘍である、実施形態103の方法。
【0442】
実施形態105.腫瘍が、固形腫瘍である、実施形態103の方法。
【0443】
実施形態106.改変細胞が、がんに罹患している患者由来の自家細胞である、実施形態101の方法。
【0444】
L.実験例
以下の実施例は、当業者に、本発明において特色とされる方法および組成物をどのように製造および使用するかの完全な開示および説明を提供するために示され、本発明者らが自らの発明であるとみなすものの範囲を限定するとは意図されない。使用される数字(例えば量、温度など)について正確さを確実にする努力がなされたが、一部の実験的誤差および逸脱は、含意されるべきである。別に示さない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧または大気圧近辺である。
【実施例
【0445】
[実施例1]
DCOne細胞は、成熟DC表現型(mDC)へ移行することができ、T細胞増殖の強力な刺激剤として使用することができた
図2は、DCOneプロジェニター細胞の、成熟樹状細胞(mDC)表現型を有する細胞への分化に際しての、発現プロファイルにおける移行を示す。図2において示される通り、mDCへの分化に際して、CD70+、CD80+、CD86+、CD40+またはCD83+であるmDCの数は、同じ発現プロファイルについてアッセイしたDCOneプロジェニター細胞と比較して有意に高かった。
【0446】
照射したDCOne由来mDC(DCP001)は、T細胞増殖の強力な刺激剤であることが見出された(図3)。図3において示される通り、mDCは、DCOneプロジェニターの能力と比較して、用量依存的様式において増殖細胞の数を有意に上昇させた。さらに、DCP001細胞は、PBMCにおいて炎症性サイトカインおよびエフェクターサイトカインの放出を誘発することが見出された(図4A~4G)。DCP-001(「DCP-001+PBMC」)はPBMCに対して強い免疫刺激効果を有したが、一方、DCOne(登録商標)プロジェニター細胞(「prog+PBMC」)はこの免疫刺激能を欠いている。さらに、DCP-001は、DC活性化に関与する免疫刺激性サイトカインであるIL-1βを産生することが見出された(図4A)。DCP-001は、GM-CSF(図4B)、IFNγ(図4C)、IL-2(図4D)、TNFα(図4E)、IL-8(図4F)およびRANTES(図4G)の放出を誘発することが見出された。
【0447】
最後に、健康なドナーおよび卵巣がん患者からのPBMCを、増加する量のDCP-001と同時培養した。T細胞増殖を、6日間MLRアッセイを使用して分析した。図5A~5Cは、DCP-001が、健康なドナーおよび卵巣がん患者のPBMCにおいてT細胞増殖を刺激することを実証するプロットを示す。CD3 T細胞(図5A)、CD4+T細胞(図5B)およびCD8+T細胞(図5C)すべては、DCP-001に応答して増殖した。示されるデータは、平均値±SDを表す。HCは、健康な対照(健康なドナー)のPBMCから収集したデータを表し、OCは、卵巣がん患者のPBMCから収集したデータを表す。
[実施例2]
【0448】
DCP-001(DCOne由来mDC)は、エクスビボにおいて内在性抗原および外来性抗原の両方に対して方向付けられたT細胞を刺激することができた
DCOne mDCは、DCOne細胞系によって発現される内在性抗原に対して方向付けられた抗原特異的T細胞クローンを刺激することが見出された(図6A~6D)。図6Aは、PRAME T細胞クローンの、DCP-001への応答を示す。図6Aにおいて示される通り、DCP-001は、DSK3、AAV46およびAAV54 PRAME T細胞クローンを刺激することが見出されたが、pp65 CMV抗原を認識する対照T細胞クローンは刺激しないことが見出された。図6Bは、WT-1 T細胞クローンの、DCP-001への応答を示し;図6Cは、MUC-1 T細胞クローンの、DCP-001への応答を示し、図6Dは、RHAMM T細胞クローンの、DCP-001への応答を示す。
【0449】
図6Aにおいて、照射したDCOneプロジェニターまたはDCP-001を、丸底96ウェル培養プレートにおいて、3種のPRAME特異的T細胞クローンおよび1種のCMV pp65特異的T細胞クローンと、5:1の刺激剤:レスポンダー比において18時間インキュベートした。ELISAを用いて、培養上清においてIFNγ産生を分析した。DCOne由来細胞を伴わないT細胞クローンのみを、陰性対照として使用した。示されるデータは、3種の異なるDCOne由来細胞バッチからのデータであり、各々は二重で実施された。IFNγレベル(pg/mL)は、平均値±SDとして示される。一元配置分散分析多重比較を使用して、p値を計算した。*=p<0.05。
【0450】
図6Bにおいて、照射したDCOneプロジェニターまたはDCP-001細胞を、丸底96ウェル培養プレートにおいて、WT[126~134]について特異的なHLA-A2限定CD8+T細胞クローンと、1:5の刺激剤:レスポンダー比において24時間インキュベートした。ELISAを用いて、培養上清においてIFNγ産生を分析した。DCOne由来細胞を伴わないT細胞クローンのみを、陰性対照として使用した。水平線は、n=8の実験からの平均値±SDを示す。一元配置分散分析多重比較を使用して、p値を計算した。***=p<0.0005。
【0451】
図6Cにおいて、照射したDCOneプロジェニターまたはDCP-001細胞を、丸底96ウェル培養プレートにおいて、MUC-1[950~958]について特異的なHLA-A2限定CD8+T細胞クローンと、1:5の刺激剤:レスポンダー比において24時間インキュベートした。ELISAを用いて、培養上清においてIFNγ産生を分析した。DCP-001を伴わないT細胞クローンのみを、陰性対照として使用した。示されるデータは、4種の異なるDCP-001バッチからのデータであり、各々は三重で実施された。一元配置分散分析多重比較を使用して、p値を計算した。*=p<0.05。
【0452】
図6Dにおいて、照射したDCP-001細胞を、丸底96ウェル培養プレートにおいて、RHAMM[165~173]について特異的なHLA-A2限定CD8+T細胞クローンと、1:5の刺激剤:レスポンダー比において24時間インキュベートした。ELISAを用いて、培養上清においてIFNγ産生を分析した。DCP-001を伴わないT細胞クローンのみを、陰性対照として使用した。示されるデータは、3種の異なるDCP-001バッチからのデータであり、各々は三重で実施された。一元配置分散分析多重比較を使用して、p値を計算した。*=p<0.05。
【0453】
さらに、DCOne mDCは、DCOne細胞系によって発現されないが、抗原特異的T細胞クローンによって標的化される腫瘍上に存在する外来性抗原に対して方向付けられた抗原特異的T細胞クローンを刺激することが見出された(図7A~7B)。特に、DCOne細胞は、腫瘍特異的抗原WT-1またはNY-ESO-1を発現しなかった。外来性WT-1抗原(図7A)またはNY-ESO-1ペプチド(図7B)を負荷されたDCOne細胞は、卵巣がん患者に由来するWT-1特異的(図7A)またはNY-ESO-1特異的(図7B)T細胞の強力かつ特異的な刺激剤であることが見出された。
[実施例3]
【0454】
DCOne由来mDCは、エクスビボにおいてがん患者からの自家細胞への抗腫瘍応答を刺激した
図8A~8Dは、PBMCの、DCP-001(DCOne mDC)によるインビトロでの刺激は、T細胞活性化およびメモリー形成についての重要なマーカーであるCD45RO発現の増加をもたらすことを示す。HCは、健康な対照(健康なドナー;図8Bおよび図8D)を表し、OCは、卵巣がん患者(図8Aおよび図8C)を表す。図8Aおよび8Bは、それぞれ、卵巣がん患者および健康な患者における、CD4+T細胞のCD45ROの刺激を示す。図8Cおよび8Dは、それぞれ、卵巣がん患者および健康な患者における、CD8+T細胞のCD45ROの刺激を示す。図8A~8Dにおいて、*は、一元配置分散分析によって計算される統計的有意性を示し、p<0.05;**p<0.005;***p<0.001;および****p<0.0001である。
【0455】
図9A~9Dは、DCOneが、健康なドナーおよび卵巣がん患者からのPBMCにおいてCD4+およびCD8+T細胞活性化およびメモリー形成を誘発し、CD4+/CD8+比の増加をもたらすことを示す。CD4+/CD8+比の増加は、一般的に、CAR-T生成に使用されるT細胞プールの質を改善し、インビボにおいてCAR-T細胞療法の有効性を改善し得る[例えばSommermeyer et al., Leukemia volume 30, 492-500(2016);Garfall et al., Blood Advances Volume 30, number 19 (2019)を参照されたい]。HCは、健康な対照(健康なドナー;図9Bおよび9D)を表し、OCは、卵巣がん患者(図9Aおよび9C)を表す。図9Aおよび9Bは、それぞれ、卵巣がん患者および健康な患者における、CD4+T細胞のパーセンテージの変化を示す。図9Cおよび9Dは、それぞれ、卵巣がん患者および健康な患者における、CD8+T細胞のパーセンテージの変化を示す。図9A~9Dにおいて、*は、一元配置分散分析によって計算される統計的有意性を示し、p<0.05;**p<0.005;***p<0.001;および****p<0.0001である。
【0456】
図10A~10Bは、DCP-001が、多発性骨髄腫(MM)患者のPBMCにおいてT細胞活性化および骨髄腫特異的免疫を誘導したことを示す。図10Aは、RNA染料を摂取したDCP-001が、MM患者のPBMCによって取り込まれたことを示す。図10Bは、DCP-001により活性化したMM患者からのPBMCは、グランザイムB活性の検出によって示されるように自家MM腫瘍細胞を死滅させることができたが、健康なB細胞は死滅させなかったことを示す(図10B)。図10Aおよび図10Bにおいて、*は、対応t検定によって計算される統計的有意性を示し、p<0.05である。
【0457】
図11は、PBMCの、DCP-001によるインビトロでの刺激は、様々な白血病がん細胞系に対するT細胞応答を誘導することを示すグラフを示す。DCP-001により活性化したPBMCの細胞傷害能を、グランザイムB活性を検出するGranToxiLux細胞ベース蛍光発生細胞傷害性アッセイを使用して、腫瘍標的細胞K562-A2(慢性骨髄性白血病腫瘍細胞系)およびMV4-11(急性骨髄性白血病腫瘍細胞系)との同時培養において決定した。PBMCを、DCOne mDC細胞と6日間同時培養し、腫瘍細胞への細胞傷害性を、DCOne mDCにより刺激したPBMC(エフェクター細胞)と腫瘍細胞(標的細胞)との1:5および1:10の標的:エフェクター比における1時間のインキュベーションによって測定した。5回の独立実験からのデータを示し;各点は、1人の個々のドナーからのPBMCを使用して得られた結果の平均値を表す。
【0458】
図12は、DCOne mDCが、卵巣がん患者からのPBMCにおいてSKOV3卵巣がん細胞系への細胞傷害性T細胞応答を誘導したことを示すグラフを示す。DCP-001により活性化したPBMCの細胞傷害能を、卵巣がん標的細胞SKOV3との同時培養において決定した。卵巣がん患者(OC;n=8)または健康な対照(HC;n=7)からのPBMCを、媒体またはDCP-001と21日間同時培養し、腫瘍細胞への細胞傷害性を、媒体またはDCP-001により刺激したPBMC(エフェクター細胞)と腫瘍細胞(標的細胞)との1:10の標的:エフェクター比における、抗CD107a抗体(細胞傷害性についてのマーカー)の存在下での5~6時間のインキュベーションによって測定した。その後、細胞をT細胞表面マーカーについて染色し、続いて細胞内IFNg染色を行い、フローサイトメトリーによって測定した。5回の独立実験からのデータを示し;各点は、1人の個々のドナーからのPBMCを使用して得られた結果の平均値を表す。HCは、健康な対照(健康なドナー)を表し、OCは、卵巣がん患者を表す。
【0459】
上記実施例は、DCOneにより刺激したPBMCを様々な起源の腫瘍細胞系へ曝露することによって測定される通り、多数の内在性抗原に対して方向付けられた、かつ様々な腫瘍タイプに反応性のT細胞応答の誘導は、治療の追加の抗腫瘍活性をもたらすことを実証する。これらの発見は、DCOne細胞のより広くかつ継続する免疫原性刺激の結果としての、抗原エスケープのリスクの低減、およびCAR-T生存/残留性の増大を支持する。
【0460】
これらの結果は、内在性T細胞受容体レパートリーがインタクトなままである自家CAR-T細胞においてとりわけ明白であった。この点において、DCOne刺激は、CAR-T細胞の組換えキメラ抗原受容体(CAR)の抗腫瘍特異性と相乗的に作用し、腫瘍制御の改善、CAR-Tの機能性の増大および生存性の増大をもたらした。したがって、本開示の方法は、CAR-Tおよび他の養子T細胞療法における主要な支障のうちの1つ、つまり、T細胞、特に患者由来自家T細胞の増量能の限界に取り組むものである。
[実施例4]
【0461】
インビボにおけるDCOne再発ワクチン接種は、CAR-T療法の有効性を拡張する可能性を有する
本明細書で示される通り、CAR-T療法は、がん患者を寛解させる効力を有する。しかしながら、臨床応答は、CAR-Tおよび他の細胞療法の寿命の限界の結果として、持続期間が限定されている。それゆえ、任意の残留腫瘍組織は、再発をもたらし得る。
【0462】
図13は、DCP-001は、CAR-T療法への臨床応答を延長するために、インビボにおいて再発ワクチンとして使用することもできることを示す概略図である。例えば、CAR-T療法のDCP-001への曝露は、CAR-T機能および生存を改善するか、免疫学的メモリーを構築するか、または残留の疾患に対するより広い免疫制御をブーストすることができる。別の例において、白血病由来の改変細胞(例えばDCP-001)によるワクチン接種は、CAR-T療法への臨床応答を深め、延長し、抗腫瘍免疫を広げることができる。したがって、DCP-001をCAR-T療法と組み合わせて相乗結果を得ることができる。
[実施例5]
【0463】
腫瘍抗原独立抗腫瘍応答をブーストするための異質性抗原特異的T細胞の生成
研究用等級の既製の、異質性抗原特異的TCRを発現する操作したT細胞、または異質性抗原についての特異性を有するCAR-T細胞は入手不可能であるため、CMV特異的T細胞クローンを、異質性抗原特異的T細胞が、異質性抗原により標識化した腫瘍に対するエフェクターT細胞応答を誘導する有効性について取り組むためのツールとして使用した。
【0464】
材料および方法
CRM197とCMVpp65 495~503とのカップリング(FITC-NLVPMVATV-GGC):
CMVpp65 495~503ペプチドは、C末端GGCおよびN末端FITCを有する。CRM197-マレイミドへのカップリングは、遊離システインを介して起こる。最適カップリングについての様々な条件、およびCRM197-マレイミドとCMVpp65ペプチドとの様々な比を評価した。カップリング後、Sephadex G25Mカラムを使用したサイズ排除クロマトグラフィーを実施して、カップリングしていないFITC-NLVPMVATVからカップリングしたCRM197-FITC-NLVPMVATV-GGCを分離した。カップリングQCを、ウェスタンブロットを介してモニターした。
【0465】
CMVpp65 T細胞クローンによる、CRM197-CMVpp65ペプチドによりマーキングしたHLA-A2+腫瘍細胞の死滅:
CMVpp65 T細胞クローンと腫瘍細胞とを5:1のE:T比において培養することによって、腫瘍死滅を評価した。
【0466】
GranToxiLuxアッセイ(OncoImmunin)を使用して、活性化CMVpp65特異的T細胞による腫瘍細胞の死滅を、60分間のインキュベーション時間後に査定した。このアッセイは、腫瘍細胞内の細胞溶解性酵素グランザイムB(GrzB)の活性量を可視化し;腫瘍細胞内の活性GrzBへの蛍光色素標識化基質(TFL4)の結合は、フローサイトメトリーによって可視化された。TFL4により標識化し、CMVpp65特異的T細胞の非存在下においてインキュベートした腫瘍標的細胞を、陰性対照として使用した。細胞溶解の必要条件であるCD8 T細胞脱顆粒についてのマーカーであるCD107a発現の評価を、フローサイトメトリーを使用して実施した。BD FACSVerseを使用してフローサイトメトリー分析を実施した。データを、FlowJo(BD Biosciences)を使用して解析した。
【0467】
実験
CRM197にカップリングしたCMVpp65抗原の、DCOne mDC媒介内部移行
DCOne mDCを培養し、CMVpp65-FITCまたはCRM197-CMVpp65-FITCペプチドを、4時間および24時間負荷した。細胞を回収、洗浄し、トリパンブルー(TB)を伴ってまたは伴わずにフローサイトメトリーによって評価した。トリパンブルーは、抗原の細胞外結合を消し、表面結合した抗原と内部移行した抗原とを区別することを可能にする。図14は、CMVpp65-FITCまたはCRM197-CMVpp65-FITCペプチドの、DCOne mDC細胞における取り込みパーセントを示すプロットである。任意の理論に束縛されるものではないが、DCOne mDC上のHB-EGF受容体は、コンジュゲートされたCRM197リガンドを介してCMVpp65ペプチドの取り込みを促進した。
【0468】
DCOne mDCは、CRM197-CMVpp65のプロセッシングおよびCMVpp65特異的T細胞クローンへの提示を媒介した:
DCOne mDCを培養し、CRM197-CMVpp65コンジュゲート、CRM197またはCMVpp65短鎖ペプチド(SP)を5時間負荷した。負荷後、負荷したDCOne mDCを、CMVpp65-T細胞と24時間同時インキュベートし、培地へ分泌されたIFN-γを、ELISAによって評価した。図15は、示される通りに負荷したDCOne mDCの培地において検出されたIFN-γのレベルを示すプロットである。
【0469】
腫瘍細胞系による、CRM197にカップリングしたCMVpp65抗原の内部移行
OVCAR3、OV90およびU87MG細胞を含む様々な腫瘍細胞の標識化における効率を、様々な腫瘍細胞を、CMVpp65-FITCペプチドおよびCRM197-CMVpp65-FITCペプチドと4時間および24時間インキュベートすることによって評価した。細胞を回収、洗浄し、トリパンブルー(TB)を伴ってまたは伴わずにフローサイトメトリーによって評価した。図16A~16Cは、OVCAR3(図16A)、OV90(図16B)およびU87MG(図16C)細胞におけるCMVpp65-FITCまたはCRM197-CMVpp65-FITCペプチドの取り込みパーセントを示すプロットである。
【0470】
CMVpp65 T細胞クローンの、CRM197-CMVpp65コンジュゲート/ペプチドによりマーキングしたHLA-A2+腫瘍細胞を死滅させる細胞傷害能の査定:
異質性抗原特異的T細胞の細胞傷害能を研究するために、CRM-CMVpp65コンジュゲートによりパルス刺激したDCOne mDCにより刺激したまたはそのようなDCOne mDCを伴わないCMVpp65 T細胞クローンを、CRM197-CMVpp65コンジュゲート/ペプチドによりマーキングしたHLA-A2+ U87-MG腫瘍細胞と、5:1のエフェクター:標的(E:T)比においてインキュベートし、上清中のエフェクターサイトカインIFN-γを、ELISAによって分析する(図17A)。
【0471】
別の実験において、CMVpp65ペプチドによりマーキングした腫瘍細胞系によるCMVpp65特異的CD8+T細胞の刺激は、CD107a発現の増加をもたらすことが見出された(図17B)。CMVpp65特異的CD8+T細胞を、CRM197-CMVpp65ペプチドコンジュゲートを負荷した腫瘍細胞系の存在下または非存在下において24時間培養し、次に、フローサイトメトリーを使用してCD107aの発現を測定することによって細胞内細胞溶解顆粒について分析した。HLA欠損細胞系K562を、陰性対照として使用した。図17Bにおいて、示されるデータは、媒体対照と比較した倍増である。データは、3~4回の独立実験からの平均値±SEMとして示される。
【0472】
腫瘍細胞の死滅をアッセイするために、3種の異なる腫瘍細胞系に、CRM197-CMVpp65ペプチドコンジュゲートを一晩負荷した。活性化CMVpp65特異的T細胞による腫瘍細胞の死滅を、GranToxiLuxアッセイ(OncoImmunin)を使用して60分間のインキュベーション時間後に査定した。このアッセイは、腫瘍細胞内の細胞溶解性酵素グランザイムB(GrzB)の活性量を可視化し;腫瘍細胞内の活性GrzBへの蛍光色素標識化基質(TFL4)の結合は、フローサイトメトリーによって可視化される。
【0473】
腫瘍細胞系を、蛍光細胞リンカー染料TFL4により標識化し、CMVpp65特異的CD8+T細胞と5:1のエフェクター:標的比において蛍光発生グランザイムB基質の存在下において1時間同時インキュベートした。図17Cにおいて示される通り、CMVpp65特異的CD8+T細胞との同時インキュベーションは、マルチチャネルフローサイトメトリーによって検出される通り、腫瘍における蛍光の検出の増大をもたらした。グランザイムB基質の切断後の標的腫瘍細胞における蛍光発生グランザイムB活性を、GranToxiLux(商標)キット(OncoImmunin, Inc.、MD)を使用することによって測定した。HLA欠損細胞系K562を、陰性対照として使用した。図17Cにおいて、示されるデータは、媒体対照と比較した倍増である。データは、4回の独立実験からの平均値±SDとして示される。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図17C
【国際調査報告】