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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】カソード材料及びプロセス
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20230428BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20230428BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230428BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
C01G53/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558306
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(85)【翻訳文提出日】2022-09-28
(86)【国際出願番号】 GB2021050725
(87)【国際公開番号】W WO2021191612
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】2004492.1
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522306561
【氏名又は名称】イーブイ・メタルズ・ユーケイ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EV Metals UK Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,ジョアンナ ヘレン
(72)【発明者】
【氏名】ダイアモンド,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ハマー,エバ-マリア
(72)【発明者】
【氏名】ウェール,オリビア ローズ
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB02
4G048AB04
4G048AC06
4G048AD04
4G048AE05
4G048AE07
5H050AA07
5H050AA12
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB12
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050GA28
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA13
5H050HA14
5H050HA17
5H050HA18
5H050HA19
(57)【要約】
本発明は、表面修飾された粒子状リチウムニッケル酸化物材料に関する。本発明はまた、粒子状リチウムニッケル酸化物材料を調製するプロセスに関する。本発明のさらなる態様は、上記粒子状リチウムニッケル酸化物材料を含むカソード、このようなカソードを含むリチウム二次セルまたは電池、及びリチウム二次セルまたは電池の容量保持率を改善するための粒子状リチウムニッケル酸化物の使用を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式Iを有する粒子を含む表面修飾された粒子状リチウムニッケル酸化物材料であって、
【化1】
式I
式中、
0.8≦a≦1.2
0.5≦x<1
0≦y≦0.5
0.035≦z≦0.1
0≦q≦0.2、及び、
-0.2≦b≦0.2
ここで、Mは、Al、Mn、V、Ti、B、Zr、Sr、Ca、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、W、Mo、Ta、Y、Sc、Nb、Pb、Ru、Rh、及びZn、ならびに、これらの組み合わせから選択され、
前記粒子は、コアと、前記コアの表面に濃縮表面層とを含む、
前記粒子状リチウムニッケル酸化物材料。
【請求項2】
0.04≦z≦0.06である、請求項1に記載の粒子状リチウムニッケル酸化物材料。
【請求項3】
0.8≦x<1である、請求項1または2に記載の粒子状リチウムニッケル酸化物材料。
【請求項4】
0≦y≦0.065である、請求項1~3のいずれか一項に記載の粒子状リチウムニッケル酸化物材料。
【請求項5】
0.04≦q≦0.08である、請求項1~4のいずれか一項に記載の粒子状リチウムニッケル酸化物材料。
【請求項6】
0.95≦a≦1.05、好ましくは、0.98≦a≦1.02である、請求項1~5のいずれか一項に記載の粒子状リチウムニッケル酸化物材料。
【請求項7】
MがAlである、請求項1~6のいずれか一項に記載の粒子状リチウムニッケル酸化物材料。
【請求項8】
前記濃縮表面層のコバルトの量が、1.0wt%未満である、請求項1~7のいずれか一項に記載の粒子状リチウムニッケル酸化物材料。
【請求項9】
前記粒子材料のマグネシウムの量が、前記粒子の総重量に基づいて、少なくとも0.6wt%、好ましくは、少なくとも0.7wt%である、請求項1~8のいずれか一項に記載の粒子状リチウムニッケル酸化物材料。
【請求項10】
前記濃縮表面層が、コバルトを実質的に含まない、請求項1~9のいずれか一項に記載の粒子状リチウムニッケル酸化物材料。
【請求項11】
前記材料内のH2→H3相転移中のc軸収縮が、ex-situ XRPDによる測定で、3.9%未満である、請求項1~10のいずれか一項に記載の粒子状リチウムニッケル酸化物材料。
【請求項12】
50サイクル後の前記粒子状リチウムニッケル酸化物材料の容量保持率は、半電池コイン電池vs Liセルにおいて、23℃で、1C充放電レート及び3.0~4.3Vの電圧窓で、電極ローディング9.0mg/cm及び電極密度3.0g/cmでテストすると、少なくとも93%である、及び/または、
50サイクル後の前記粒子状リチウムニッケル酸化物材料のDCIRの増加%は、半電池コイン電池vs Liセルにおいて、23℃で、1C充放電レート及び3.0~4.3Vの電圧窓で、電極ローディング9.0mg/cm及び電極密度3.0g/cmでテストすると、50%未満である、及び/または、
前記粒子状リチウムニッケル酸化物材料比容量は、半電池コイン電池 vs Liにおいて、23℃で、1C充放電レート及び3.0~4.3Vの電圧窓で、電極ローディング9.0mg/cm及び電極密度3.0g/cmでテストすると、少なくとも190mAh/gである、
請求項1~11のいずれか一項に記載の粒子状リチウムニッケル酸化物材料。
【請求項13】
式Iを有する粒子状リチウムニッケル酸化物材料を調製するプロセスであって、
【化2】
式I
式中、
0.8≦a≦1.2
0.5≦x<1
0≦y≦0.5
0.035≦z≦0.1
-0.2≦b≦0.2、及び、
0≦q≦0.2
ここで、Mは、Al、Mn、V、Ti、B、Zr、Sr、Ca、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、W、Mo、Ta、Y、Sc、Nb、Pb、Ru、Rh、及びZn、ならびに、これらの組み合わせから選択され、
前記プロセスは、
リチウム含有化合物を、ニッケル含有化合物、コバルト含有化合物、マグネシウム含有化合物、及び、オプションで、M含有化合物と混合するステップであって、単一化合物が、オプションで、Ni、Co、Mg、及びMの2つ以上を含み得る、混合物を取得するために前記混合するステップと、
前記混合物を焼成して、焼成材料を取得するステップと、
表面修飾ステップにおいて、前記第1の焼成材料を、コバルト含有化合物、リチウム含有化合物、及びM含有化合物の1つまたは複数と接触させて、前記第1の焼成材料上に濃縮表面層を形成するステップと、
を含み、
Mは、Al、Mn、V、Ti、B、Zr、Sr、Ca、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、W、Mo、Ta、Y、Sc、Nb、Pb、Ru、Rh、及びZn、ならびに、これらの組み合わせから選択される、
前記プロセス。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の粒子状リチウムニッケル酸化物材料を含むカソード。
【請求項15】
請求項14に記載のカソードを含むリチウム二次セルまたは電池。
【請求項16】
リチウム二次セルまたは電池の前記容量保持率を改善するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の粒子状リチウムニッケル酸化物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池のカソード材料として有用な改良された粒子状リチウムニッケル酸化物材料に関する。本発明はまた、このようなリチウムニッケル酸化物材料を調製するプロセス、ならびに同材料を含む電極及びセルを提供する。
【背景技術】
【0002】
式LiMOを有し、Mは一般的に1つまたは複数の遷移金属を含むリチウム遷移金属酸化物材料は、リチウムイオン電池のカソード材料として有用である。例には、LiNiO及びLiCoOが含まれる。
【0003】
US6921609B2には、実験式LiM’Ni1-yM”を有するコア組成と、コアよりCoのNiに対する比が大きいコア上のコーティングとを含むリチウム電池のカソード材料としての使用に適した組成物が記載されている。
【0004】
WO2013/025328A1には、層状のα-NaFeO型構造を有する第1の組成物を含む複数の微結晶を含む粒子が記載されている。粒子は、隣り合う微結晶の間に粒界を含み、粒界のコバルトの濃度は、微結晶中のコバルトの濃度より高い。コバルト濃縮は、粒子をLiNO及びCo(NO溶液で処理し、その後、噴霧乾燥及び焼成を行うことで達成される。
【0005】
LiNO及び類似の材料の研究によって、高電圧(約4.2V vs Li/Li)で生じる脱リチオ化中、すなわち、材料が著しく低減したリチウム含有量を有するとき、1つの六方相(H2)から別の六方相(H3)への相転移があることが分かった。この相転移は、c軸収縮によって引き起こされる単位セルの体積の突然の大きい低減を伴う。c軸収縮におけるこの低減は、サイクルによる容量減衰にリンクした材料への永続的な構造損傷をもたらす。
【0006】
電気自動車(EV)などの高性能用途でのリチウムイオン電池の需要の増加に伴い、許容可能な比容量を提供するだけでなく、多数の充電サイクルにわたって容量の保持にすぐれ、それによって、その耐用期間中、各充電後の車両の走行距離が、可能な限り一貫しているカソード材料を使用することが必要不可欠である。容量保持率は一般的に、電池の「サイクル特性」と簡単に呼ばれることもある。
【0007】
したがって、改良されたリチウム遷移金属酸化物材料と、その製造プロセスに対するニーズがある。特に、リチウム二次電池のカソード材料として使用されるとき、リチウム遷移金属酸化物材料の容量保持率の改善に対するニーズがある。
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、表面修飾されたリチウムニッケル酸化物材料に一定のレベルのマグネシウムがドーパントとして存在すると、これらの材料をリチウム二次電池のカソード材料として使用するとき、容量保持率が改善されることを発見した。
【0009】
理論に縛られたくはないが、本発明者らは、LiNiO型の材料内にある一定のレベルのマグネシウムをドーピングすると、材料に構造安定性を与え、H2→H3相転移中のC軸収縮の量を低減すると考える。結晶内のMO層とLi層の中間位置の4面体サイトは材料のLi含有量が低いとき、マグネシウムイオンに占められており、これは、構造を安定させ、H2→H3相転移中に生じるc軸の収縮を低減する「ピラー効果」を創造し、それによって、c軸収縮を軽減し、結果として、容量保持率の改善が観察されると、考えられる。
【0010】
したがって、本発明の第1の態様は、式Iを有する表面修飾された粒子状リチウムニッケル酸化物材料である。
【化1】
式I
式中、
0.8≦a≦1.2
0.5≦x<1
0≦y≦0.5
0.035≦z≦0.1
0≦q≦0.2、及び、
-0.2≦b≦0.2、
ここで、Mは、Al、Mn、V、Ti、B、Zr、Sr、Ca、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、W、Mo、Ta、Y、Sc、Nb、Pb、Ru、Rh、及びZn、ならびに、これらの組み合わせから選択され、
粒子は、コアと、コアの表面上の濃縮表面層とを含む。
【0011】
これらの粒子状リチウムニッケル酸化物材料は、リチウム二次セルまたは電池の電極材料として使用されるとき、改善された容量保持率を提供する。さらに、これらの材料は、経時的な直流内部抵抗(DCIR)の増加%の低下、及び/または容認できる程度に高いレベルの比容量などの他の重要な利益を提供し得る。したがって、これらの材料を使用して、改善された性能と強化された耐用期間のセルまたは電池を提供して、電気自動車などの高性能用途に特別な利点を提供し得る。
【0012】
本発明の第2の態様は、式Iを有する表面修飾された粒子状リチウムニッケル酸化物材料を調製するプロセスである。
【化2】
式I
式中、
0.8≦a≦1.2
0.5≦x<1
0≦y≦0.5
0.035≦z≦0.1
0≦q≦0.2、及び
-0.2≦b≦0.2
ここで、Mは、Al、Mn、V、Ti、B、Zr、Sr、Ca、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、W、Mo、Ta、Y、Sc、Nb、Pb、Ru、Rh、及びZn、ならびに、これらの組み合わせから選択され、
粒子は、コアと、コアの表面上の濃縮表面層とを含み、
プロセスは、
リチウム含有化合物を、ニッケル含有化合物、コバルト含有化合物、マグネシウム含有化合物、及び、オプションで、M含有化合物と混合するステップであって、単一化合物は、オプションで、Ni、Co、Mg、及びMの2つ以上を含み得る、混合物を取得するために混合するステップと、
その混合物を焼成して、第1の焼成材料を取得するステップと、
表面修飾ステップにおいて、第1の焼成材料を、コバルト含有化合物、リチウム含有化合物、及びM含有化合物の1つまたは複数と接触させて、第1の焼成材料上に濃縮表面層を形成するステップと
を含む。
【0013】
本発明の第3の態様は、本明細書に記載のプロセスによって取得されたまたは取得可能な粒子状リチウムニッケル酸化物を提供する。
【0014】
本発明の第4の態様は、第1の態様による粒子状リチウムニッケル酸化物材料を含むリチウム二次電池のためのカソード材料を提供する。
【0015】
本発明の第5の態様は、第1の態様による粒子状リチウムニッケル酸化物材料を含むカソードを提供する。
【0016】
本発明の第6の態様は、第5の態様によるカソードを含むリチウム二次セルまたは電池(例えば、二次リチウムイオン電池)を提供する。この電池は一般的に、アノード及び電解質をさらに含む。
【0017】
本発明の第7の態様は、二次リチウム電池(例えば、二次リチウムイオン電池)のカソードの調製のために、第1の態様による粒子状リチウムニッケル酸化物の使用を提供する。
【0018】
本発明の第8の態様は、リチウム二次セルまたは電池の容量保持率またはサイクル特性を改善するために、カソード材料として第1の態様による粒子状リチウムニッケル酸化物の使用を提供する。
【0019】
第9の態様は、リチウム二次セルまたは電池の容量保持率またはサイクル特性を改善する方法であって、セルまたは電池のカソード材料の使用を含み、このカソード材料は、第1の態様による粒子状リチウムニッケル酸化物材料を含む。
【0020】
本発明の第10の態様は、23℃及び1C充放電レートで50サイクル後のセルまたは電池の容量保持率が、少なくとも93%、例えば、少なくとも95%である、リチウム二次セルまたは電池である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の材料といくつかの比較材料に関する、23℃及び1C充放電レートで50サイクルにわたる容量保持率のプロットを示す。
図2】本発明の材料と1つの比較材料に関する、23℃及び1C充放電レートで50サイクルにわたる容量保持率のプロットを示す。
図3】いくつかの比較材料に関する、23℃及び1C充放電レートで50サイクルにわたる容量保持率のプロットを示す。
図4】いくつかの比較材料に関する、23℃及び1C充放電レートで50サイクルにわたる容量保持率のプロットを示す。
図5】材料のマグネシウム含有量に対してプロットされた、様々な材料の23℃及び1C充放電レートで50回目の充放電サイクル後の容量保持率を示す。
図6A】サイト無秩序なLi0.00Ni(1-x-y)CoMgの計算されたDFT構造を示す。
図6B】DFTによって計算された最も安定した構造に基づいたLiローディングに関する、Li-Ni-Co-Mg-O系の格子進化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ここで、本発明の好ましい及び/またはオプションの特徴を記載する。本発明のいずれの態様も、文脈により別段の要求が無い限り、本発明の任意の他の態様と組み合わせられてよい。任意の態様の好ましい及び/またはオプションの特徴のいずれも、文脈により別段の要求が無い限り、個々に、または、一緒に、本発明の任意の態様と組み合わせられてよい。
【0023】
粒子状リチウムニッケル酸化物材料は、上記に定義された式Iに従った組成を有する。本明細書に記載の組成物は、以下の実施例の項に記載するように誘導結合プラズマ(ICP)分析によって決定されてよい。本明細書に記載の組成物はICP組成物であることが好ましい場合がある。同様に、粒子状リチウムニッケル酸化物材料の元素のwt%含有量は、ICP分析を用いて決定されてよい。本明細書に記載のwt%値は、(以下で別個に定義されるwt%炭酸リチウムを除いて)分析される粒子の総重量に対してICPによって決定される。
【0024】
式Iにおいて、0.8≦a≦1.2である。一部の実施形態では、aは、0.9、0.95、0.99、または1.0以上である。一部の実施形態では、aは、1.1以下、または1.05以下である。一部の実施形態では、0.90≦a≦1.10、例えば、0.95≦a≦1.05である。一部の実施形態では、0.99≦a≦1.05、または、1.0≦a≦1.05である。0.95≦a≦1.05が特に好ましい場合がある。
【0025】
式Iにおいて、0.8≦x<1である。一部の実施形態では、0.85≦x<1、または0.9≦x<1である。一部の実施形態では、xは、0.99、0.98、0.97、0.96、または0.95以下である。一部の実施形態では、xは、0.85、0.9、または0.95以上である。一部の実施形態では、0.8≦x≦0.99、例えば、0.85≦x≦0.98、0.85≦x≦0.98、0.85≦x≦0.97、0.85≦x≦0.96、または0.90≦x≦0.95である。0.85≦x≦0.98が特に好ましい場合がある。
【0026】
式Iにおいて、0≦y≦0.5である。一部の実施形態では、0<y≦0.5である。一部の実施形態では、yは、0.01、0.02、または0.03以上である。一部の実施形態では、yは、0.4、0.3、0.2、0.15、0.1、または0.05以下である。
【0027】
一部の実施形態では、0.01≦y≦0.5である。一部の実施形態では、0.02≦y≦0.5である。一部の実施形態では、0.03≦y≦0.5である。一部の実施形態では、0.01≦y≦0.4である。一部の実施形態では、0.01≦y≦0.3である。一部の実施形態では、0.01≦y≦0.2である。一部の実施形態では、0.01≦y≦0.1である。一部の実施形態では、0.03≦y≦0.1である。
【0028】
一部の実施形態では、0≦y≦0.065、例えば、0.01≦y≦0.065、0.02≦y≦0.065、0.03≦y≦0.065、0.04≦y≦0.065、0.041≦y≦0.065、または0.042≦y≦0.065である。本明細書に定義したMgのレベルと組み合わせたCoのこのようなレベルは、優れた容量保持率を提供することが分かった。一部の実施形態では、0≦y≦0.050、例えば、0≦y≦0.049、0≦y≦0.048、0≦y≦0.047、0≦y≦0.046、または0≦y≦0.045である。特に有利なことに、本発明者らは、リチウムニッケル酸化物材料にドーパントとして一定のレベルのマグネシウムが存在すると、優れた容量保持率を維持しながら、材料中のコバルトのレベルの低減を可能にすることを発見した。コバルトは(高い相対コストと歴史的な価格変動によって)材料のコストに大きな影響を与え得るので、また、倫理的理由によりコバルト含有量を低減することが好ましい場合があるため、カソード材料内のコバルト量の低減は、産業上、非常に望ましい。一般的に、コバルト含有量の低減により、容量保持率も低減するので、許容可能な性能特性と低コバルトレベルを有する電池材料の提供は、難しかった。
【0029】
式Iにおいて、0.035≦z≦0.1である。一部の実施形態では、zは、0.0355、0.036、0.0365、0.037、または0.0375以上である。一部の実施形態では、zは、0.095、0.090、または0.085以下である。
【0030】
一部の実施形態では、0.035≦z≦0.095、0.0355≦z≦0.090、0.036≦z≦0.085、0.036≦z≦0.080、0.036≦z≦0.075、0.036≦z≦0.070、0.036≦z≦0.065、0.036≦z≦0.060、0.036≦z≦0.055、0.037≦z≦0.055、0.036≦z≦0.054、0.036≦z≦0.053、0.036≦z≦0.052、0.036≦z≦0.051、0.037<z≦0.052、または0.037≦z≦0.051である。
【0031】
一部の実施形態では、粒子状リチウムニッケル酸化物材料は、比較的高いレベルのニッケル及びマグネシウムを含む。一部の実施形態では、0.037≦z≦0.1、及び0.75≦x<1である。一部の実施形態では、0.037≦z≦0.1、及び0.80≦x<1である。一部の実施形態では、0.037≦z≦0.1、及び0.85≦x<1である。一部の実施形態では、0.037≦z≦0.1、及び0.90≦x<1である。一部の実施形態では、0.037≦z≦0.06、及び0.90≦x<1である。一部の実施形態では、0.037≦z≦0.055、及び0.90≦x<1である。一部の実施形態では、0.037≦z≦0.054、及び0.90≦x<1である。一部の実施形態では、0.037≦z≦0.053、及び0.90≦x<1である。
【0032】
高レベルのニッケルと高レベルのマグネシウムの組み合わせは、材料の容量保持率の著しい改善につながることが分かった。
【0033】
式Iにおいて、-0.2≦b≦0.2である。一部の実施形態では、bは、-0.1以上である。一部の実施形態では、bは、0.1以下である。一部の実施形態では、-0.1≦b≦0.1である。一部の実施形態では、bは、0または約0である。一部の実施形態では、b=0である。
【0034】
式Iにおいて、Mは、Al、Mn、V、Ti、B、Zr、Sr、Ca、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、W、Mo、Ta、Y、Sc、Nb、Pb、Ru、Rh、及びZnから選択された1つまたは複数である。一部の実施形態では、Mは、Al、Mn、V、Ti、B、Zr、Sr、Ca、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、及びZnから選択された1つまたは複数である。一部の実施形態では、MはAlである。一部の実施形態では、MはMnである。
【0035】
式Iにおいて、0≦q≦0.2である。一部の実施形態では、0≦q≦0.15である。一部の実施形態では、0≦q≦0.10である。一部の実施形態では、0≦q≦0.05である。一部の実施形態では、0≦q≦0.04である。一部の実施形態では、0≦q≦0.03である。一部の実施形態では、0≦q≦0.02である。一部の実施形態では、0≦q≦0.01である。
【0036】
一部の実施形態では、0.003≦q≦0.01、例えば、0.003≦q≦0.0095、0.0035≦q≦0.0095、0.004≦q≦0.009、0.004≦q≦0.0085、0.004≦q≦0.008、0.0045≦q≦0.008、0.005≦q≦0.008、0.005≦q≦0.0075、0.0055≦q≦0.0075、0.005≦q≦0.007、0.0055≦q≦0.007、または0.006≦q≦0.007である。一部の実施形態では、qは、このような値を取り、MはAlである。
【0037】
一部の実施形態では、qは0である。
【0038】
一部の実施形態では、
0.8≦a≦1.2
0.75≦x<1
0≦y≦0.5
0.035≦z≦0.1
0≦q≦0.2、及び
-0.2≦b≦0.2、
ここで、Mは、Al、Mn、V、Ti、B、Zr、Sr、Ca、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、W、Mo、Ta、Y、Sc、Nb、Pb、Ru、Rh、及びZn、ならびに、これらの組み合わせから選択される。
【0039】
一部の実施形態では、
0.8≦a≦1.2
0.75≦x<1
0≦y≦0.5
0.035≦z≦0.1
0≦q≦0.2、
-0.2≦b≦0.2、及び
MはAlである。
【0040】
一部の実施形態では、
0.8≦a≦1.2
0.85≦x<1
0≦y≦0.5
0.035≦z≦0.1
0≦q≦0.2、
-0.2≦b≦0.2、及び
MはAlである。
【0041】
一部の実施形態では、
0.8≦a≦1.2
0.85≦x<1
0≦y≦0.5
0.036≦z≦0.1
0≦q≦0.2
-0.2≦b≦0.2、及び
MはAlである。
【0042】
一部の実施形態では、
0.8≦a≦1.2
0.85≦x<1
0≦y≦0.5
0.037≦z≦0.06
0≦q≦0.2
-0.2≦b≦0.2、及び
MはAlである。
【0043】
一部の実施形態では、
0.8≦a≦1.2
0.85≦x<1
0≦y≦0.5
0.037≦z≦0.06
0.04≦q≦0.1
-0.2≦b≦0.2、及び
MはAlである。
【0044】
一部の実施形態では、
0.8≦a≦1.2
0.85≦x<1
0≦y≦0.5
0.037≦z≦0.06
0.06≦q≦0.07
-0.2≦b≦0.2、及び
MはAlである。
【0045】
一部の実施形態では、
0.8≦a≦1.2
0.85≦x<1
0≦y≦0.5
0.040≦z≦0.1
0.06≦q≦0.07
-0.2≦b≦0.2、及び
MはAlである。
【0046】
一部の実施形態では、
0.8≦a≦1.2
0.75≦x<1
0≦y≦0.065
0.035≦z≦0.1
0≦q≦0.2
-0.2≦b≦0.2、及び
MはAlである。
【0047】
一部の実施形態では、
0.8≦a≦1.2
0.75≦x<1
0≦y≦0.065
0.036≦z≦0.1
0≦q≦0.2
-0.2≦b≦0.2、及び
MはAlである。
【0048】
一部の実施形態では、
0.8≦a≦1.2
0.75≦x<1
0≦y≦0.050
0.036≦z≦0.1
0≦q≦0.2
-0.2≦b≦0.2、及び
MはAlである。
【0049】
一部の実施形態では、粒子状リチウムニッケル酸化物材料は、結晶(または、ほぼ結晶状の材料)である。これは、α-NaFeO型構造を有してよい。これは、リチウムニッケル酸化物材料の各粒子が凝集した複数の微結晶(結晶粒または一次粒子としても知られる)からなることを意味する多結晶材料であってよい。結晶粒は一般的に、粒界によって分けられている。粒子状リチウムニッケル酸化物が多結晶である場合、当然ながら、複数の結晶を含むリチウムニッケル酸化物の粒子は二次粒子である。
【0050】
式Iの粒子状リチウムニッケル酸化物材料は、濃縮表面を含む、すなわち、表面修飾されて(表面修飾プロセスを受けて)濃縮表面層を形成したコア材料を含む。一部の実施形態では、表面修飾は、コア材料を1つまたは複数の追加の金属を含む化合物と接触させることと、その後、オプションで、材料の焼成を実行することによって生じる。化合物は、溶液中にあってよく、本明細書の文脈では、「化合物」という用語は、対応する溶存種を指す。明確にするために、本明細書の式Iに従った組成物に関する記載は、表面修飾された粒子の文脈では、粒子全体、すなわち、濃縮表面層を含む粒子に関する。
【0051】
本発明の粒子材料は、表面修飾された粒子を含む。言い換えると、粒子は、コアと、コアの表面上の濃縮表面層とを含む。本明細書において、「表面修飾された」、「濃縮された表面」、及び「濃縮表面層」は、粒界の、及び/または、粒子の表面もしくはその近くの1つまたは複数の金属の濃度を高めるための表面修飾または表面濃縮プロセスを経たコア材料を含む粒子材料を指す。したがって、「濃縮表面層」という用語は、粒子の残りの材料、すなわち、粒子のコアより高い濃度の1つまたは複数の金属を含む粒界の、及び/または粒子表面もしくはその近くの材料の層を指す。
【0052】
一部の実施形態では、粒子は、Mを含み(すなわち、式Iにおいて、qはゼロでない)、コアより濃縮表面層において高い濃度のMを含む。一部の実施形態では、粒子内のMの全てまたは実質的に全ては、濃縮表面層にある。一部の実施形態では、コアは、Mを含まない、または、粒子の総重量に基づいて、例えば、0.01wt%未満のMなど、実質的にMを含まない。本明細書で使用される場合、表面濃縮層の所与の元素の含有量は、表面濃縮の前の粒子状リチウムニッケル酸化物材料(第1の焼成材料またはコア材料と呼ばれることもある)の元素のwt%をICPによって決定して、値Aを取得することと、表面濃縮(及び、オプションの追加の焼成)後の最終的な粒子状リチウムニッケル酸化物材料のその元素のwt%をICPによって決定して、値Bを取得することと、値Bから値Aを減算することとによって計算される。同様に、コアの所与の元素の含有量は、表面濃縮の前の粒子状リチウムニッケル酸化物材料(第1の焼成材料またはコア材料と呼ばれることもある)の元素のwt%をICPによって決定することによって決定されてよい。
【0053】
当業者は理解されるように、元素は、材料の調製、保管、または使用中にコアと表面層の間を移動する場合がある。本明細書では、ある元素が、コアに存在(または、無い、または一定の量存在する)と記載される場合、これは、その元素がコアに意図的に追加される(または、から取り除かれる、または、特定の量、追加される)ことを指し、元素の分布が調製、保管、または使用中に移動することによって変わる保護材料の範囲から取り除くことを意図してはいないと理解されたい。同様に、ある元素が、表面濃縮層に存在(または、無い、または一定の量存在する)と記載される場合、これは、その元素が表面濃縮層に意図的に追加される(または、から取り除かれる、または、特定の量、追加される)ことを指し、元素の分布が調製、保管、または使用中に移動することによって変わる保護材料の範囲から取り除くことを意図してはいないと理解されたい。例えば、粒子内のMの全てまたは実質的に全てが濃縮表面層にある場合、これは、Mの全てまたは実質的に全てが表面濃縮ステップで追加されるが、表面濃縮ステップで追加されたMの一部がコアに移動した材料を除外しないことを意味する。
【0054】
一部の実施形態では、粒子は、Alを含み、コアより濃縮表面層において高い濃度のAlを含む。一部の実施形態では、粒子内のAlの全てまたは実質的に全ては、濃縮表面層にある。一部の実施形態では、コアは、Alを含まない、または、粒子の総重量に基づいて、例えば、0.01wt%未満のAlなど、実質的にAlを含まない。
【0055】
発明者らは、マグネシウムドーピングに加えて、表面修飾剤としてのアルミニウムの存在が、容量保持率をさらに改善することを発見した。
【0056】
一部の実施形態では、粒子は、濃縮表面層にAlを含む。発明者らは、(例えば、コア材料上に表面修飾ステップを行うことによって)Alを含む表面修飾または濃縮表面層を含むことが、改善された容量保持率などの改善された特性を有する表面修飾材料を提供することを発見した。さらに、濃縮表面層にAlを備えることは、濃縮表面層のCo量を同時に低減することを可能にして、同等の電気化学特性を提供し、これは、より費用対効果が良い。
【0057】
一部の実施形態では、濃縮表面層は、Alを含み、オプションで、Li及びCoの1つまたは両方を含む。一部の実施形態では、濃縮表面層は、Al及びLiを含むが、Coを含まない、または、粒子の総重量に基づいて、例えば、0.01wt%未満のCoなど、実質的にCoを含まない。一部の実施形態では、濃縮表面層は、Alを含むが、LiもCoも含まない、または、粒子の総重量に基づいて、例えば、それぞれ、0.01wt%未満のLi及びCoなど、実質的にLiもCoも含まない。一部の実施形態では、濃縮表面層は、マグネシウムもニッケルも含まない、例えば、それぞれ、約0.01wt%未満のマグネシウム、ニッケルを含む。一部の実施形態では、濃縮表面層は、アルミニウムを含み、オプションで、コバルト及び/またはリチウムを含むが、例えば、それぞれ、約0.01wt%未満のマグネシウム、ニッケルなど、マグネシウムもニッケルも含まない。
【0058】
一部の実施形態では、粒子状リチウムニッケル酸化物材料は、粒子の総重量に基づいて、約0.80wt%~約1.50wt%、例えば、約0.80wt%~約1.45wt%、約0.80wt%~約1.40wt%、約0.85wt%~約1.35wt%、約0.90wt%~約1.35wt%、または約0.90wt%~約1.30wt%の量のマグネシウムを含む。一部の実施形態では、マグネシウムの全てまたは実質的に全ては、粒子のコアにある。一部の実施形態では、濃縮表面層は、マグネシウムを含まない、または、粒子の総重量に基づいて、例えば、0.01wt%未満のMgなど、マグネシウムを実質的に含まない。
【0059】
一部の実施形態では、粒子状リチウムニッケル酸化物材料は、粒子の総重量に基づいて、約1.50wt%~約7.0wt%の量のコバルトを含む。
【0060】
一部の実施形態では、粒子状リチウムニッケル酸化物材料は、粒子の総重量に基づいて、約0.10wt%~約0.50wt%、例えば、約0.10wt%~約0.45wt%、約0.10wt%~約0.40wt%、約0.10wt%~約0.35wt%、約0.10wt%~約0.30wt%、約0.10wt%~約0.25wt%、約0.10wt%~約0.20wt%、約0.11wt%~約0.20wt%、約0.12wt%~約0.20wt%、約0.13wt%~約0.20wt%、約0.13wt%~約0.19wt%、約0.13wt%~約0.18wt%、約0.14wt%~約0.18wt%、または約0.15wt%~約0.18wt%の量のMを含む。一部の実施形態では、粒子状リチウムニッケル酸化物材料の濃縮表面層は、このような量のMを含む。このような量のMを含む材料は、良好な容量保持率を含む良好な電気化学特性を有することが分かった。一部の実施形態では、MはAlである。表面濃縮層のM含有量は、上記のように計算される。
【0061】
一部の実施形態では、式Iの粒子状リチウムニッケル酸化物材料は、コアと、コアの表面に濃縮表面層とを含む表面修飾構造を含み、ここで、粒子状リチウムニッケル酸化物材料は、少なくとも約0.80wt%のマグネシウムを含み、材料の濃縮表面層は、粒子の総重量に基づいて、約1.0wt%未満のコバルトを含む。一部の実施形態では、マグネシウムは、材料のコアにある、すなわち、濃縮表面層は、マグネシウムを含まない(または、約0.01wt%未満のマグネシウムを含む)。発明者らは、コアにより高いレベル(例えば、少なくとも約0.80wt%)でドーピングされたマグネシウムでは、材料は安定し、表面のコバルトの量が低減されたとき、容量保持率の改善をもたらすことを発見した。一部の実施形態では、粒子状リチウムニッケル酸化物材料のコアは、少なくとも約0.80wt%、例えば、少なくとも約0.81wt%、0.82wt%、0.83wt%、0.84wt%、0.85wt%、0.86wt%、または0.90wt%のマグネシウムを含み、粒子状リチウムニッケル酸化物材料の濃縮表面層は、約1.0wt%未満、例えば、約0.9wt%、0.8wt%、0.7wt%、0.6wt%、または0.5wt%未満のコバルトを含む。一部の実施形態では、このようなマグネシウムレベルで、粒子状リチウムニッケル酸化物材料の濃縮表面層は、コバルトを含まない、または、例えば、0.01wt%未満のコバルトなど、コバルトを実質的に含まない。一部の実施形態では、0.035≦z≦0.06であり、濃縮表面層のコバルトの量は、粒子の総重量に基づいて、約1.0wt%未満、例えば、約0.9wt%、0.8wt%、0.7wt%、0.6wt%、または0.5wt%未満である。一部の実施形態では、
0.8≦a≦1.2
0.75≦x<1
0.03<y≦0.06
0.04≦z≦0.05
0.06≦q≦0.07
-0.2≦b≦0.2、及び、
MはAlである。
【0062】
表面濃縮層のコバルト含有量は、上記のように計算される。
【0063】
発明者らは、材料表面のコバルトの量は、材料の特性に有害な影響無く、低減することができることを発見して驚いた。コバルト含有量の低減は、倫理的理由のために、及び/またはコバルトの相対コストが高いために、好ましい場合がある。にもかかわらず、発明者らは濃縮表面層に少量のコバルトを保持することが、材料表面のLiCOのレベルを、例えば、0wt%~約1.5wt%のLiCOを提供するように低減することを含むいくつかの利益を提供し得ることも発見した。
【0064】
一部の実施形態では、濃縮表面層材料の質量のコア材料の質量に対する比は、0.01~0.04、例えば、0.01~0.03、0.01~0.025、または0.014~0.022である。
【0065】
一部の実施形態では、表面修飾された粒子状リチウムニッケル酸化物材料は、本明細書に記載の式Iに従った組成を有する。例えば、
【化3】
式I
式中、
0.8≦a≦1.2
0.5≦x<1
0≦y≦0.5
0.035≦z≦0.1
0≦q≦0.2、及び、
-0.2≦b≦0.2
ここで、Mは、Al、Mn、V、Ti、B、Zr、Sr、Ca、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、W、Mo、Ta、Y、Sc、Nb、Pb、Ru、Rh、及びZn、ならびに、これらの組み合わせから選択され、
表面修飾された粒子状リチウムニッケル酸化物材料は、表面修飾されたコア材料を含み、コア材料は、式IIに従った組成を有する。
【化4】
式II
式中、
0.8≦a1≦1.2
0.5≦x1<1
0≦y1≦0.5
0.035≦z1≦0.1
0≦q1≦0.2、及び、
-0.2≦b1≦0.2
ここで、Mは、Al、Mn、V、Ti、B、Zr、Sr、Ca、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、W、Mo、Ta、Y、Sc、Nb、Pb、Ru、Rh、及びZn、ならびに、これらの組み合わせから選択される。
【0066】
一部の実施形態では、表面修飾は、(例えば、金属含有化合物の形態の)金属種を含む溶液への浸漬、それに続いて、表面修飾材料の乾燥、及び、オプションで、焼成を含む。一部の実施形態では、溶液は、例えば、少なくとも50℃、例えば、少なくとも55℃または少なくとも60℃の温度まで加熱される。一部の実施形態では、表面修飾材料は、溶液と接触後、噴霧乾燥される。一部の実施形態では、表面修飾材料は、噴霧乾燥後、焼成される。
【0067】
粒子状リチウムニッケル酸化物材料は一般的に、少なくとも4μm、例えば、少なくとも5μm、少なくとも5.5μm、少なくとも6.0μm、または少なくとも6.5μmのD50粒径を有する。リチウムニッケル酸化物の粒子(例えば、二次粒子)は一般的に、20μm以下、例えば、15μm以下、または12μm以下のD50粒径を有する。一部の実施形態では、D50粒径は、約5μm~約20μm、例えば、約5μm~約19μm、例えば、約5μm~約18μm、例えば、約5μm~約17μm、例えば、約5μm~約16μm、例えば、約5μm~約15μm、例えば、約5μm~約12μm、例えば、約5.5μm~約12μm、例えば、約6μm~約12μm、例えば、約6.5μm~約12μm、例えば、約7μm~約12μm、例えば、約7.5μm~約12μmである。本明細書に別段の記載の無い限り、D50粒径は、Dv50(体積中位径)を指し、例えば、Malvern Mastersizer3000を用いて、ミー散乱近似で、ASTM B822 2017に設定された方法を使用することによって決定されてよい。
【0068】
一部の実施形態では、材料のD10粒径は、約0.1μm~約10μm、例えば、約1μm~約10μm、約2μm~約8μm、または約5μm~約7μmである。本明細書に別段の記載の無い限り、D10粒径は、Dv10(累積体積分布の10%径)を指し、例えば、Malvern Mastersizer3000を用いて、ミー散乱近似で、ASTM B822 2017に設定された方法を使用することによって決定されてよい。
【0069】
一部の実施形態では、材料のD90粒径は、約10μm~約40μm、例えば、約12μm~約35μm、約12μm~約30μm、約15μm~約25μm、または約16μm~約20μmである。本明細書に別段の記載の無い限り、D90粒径は、Dv90(累積体積分布において90%径)を指し、例えば、Malvern Mastersizer3000を用いて、ミー散乱近似で、ASTM B822 2017に設定された方法を使用することによって決定されてよい。
【0070】
一部の実施形態では、粒子状リチウムニッケル酸化物のタップ密度は、約1.9g/cm~約2.8g/cm、例えば、約1.9g/cm~約2.4g/cmである。
【0071】
材料のタップ密度は、メスシリンダに25mLの粉末を充填することによって、適切に測定することができる。粉末の質量を記録する。充填されたシリンダは、Copley Tapped Density Tester JV Seriesに移される。材料を2000回、タップし、体積を再測定する。再測定された体積を材料の質量で割ったものが、記録されるタップ密度である。
【0072】
粒子状リチウムニッケル酸化物は一般的に、1.5wt%未満の表面LiCOを含む。粒子状リチウムニッケル酸化物は、1.4wt%未満、例えば、1.3wt%未満、1.2wt%未満、1.1wt%未満、1.0wt%未満、0.9wt%未満、0.8wt%未満、0.7wt%未満、または0.6wt%未満の表面LiCOを含み得る。粒子状リチウムニッケル酸化物は、0wt%の表面LiCOを有してよいが、一部の実施形態では、少なくとも0.01wt%、0.02wt%、または0.04wt%の表面LiCOがあってよい。
【0073】
表面LiCOの量は、ブロモフェノールブルー指示薬を使用して、HClで滴定することによって決定されてよい。一般的に、HClとフェノールフタレイン指示薬とを用いた第1の滴定ステップが、ブロモフェノールブルー指示薬を用いた滴定の前に行われて、水酸化リチウムを取り除く。滴定プロトコルは、次のステップを含み得る。
・脱イオン水内で5分間、攪拌することによって粒子状リチウムニッケル酸化物材料の試料から表面の炭酸リチウムを抽出して、抽出物溶液を取得し、抽出物溶液を固形残留物から分離
・フェノールフタレイン指示薬を抽出物溶液に添加して、抽出物溶液が透明になる(LiOHが除去されたことを示す)まで、HCl溶液を使用して滴定
・ブロモフェノールブルー指示薬を抽出物溶液に添加して、抽出物溶液が黄色になるまでHCl溶液を使用して滴定(抽出物溶液中の炭酸リチウム量は、この滴定ステップから計算することができる)、そして、
・表面の炭酸リチウムの抽出物溶液中への100%抽出を想定して、粒子状リチウムニッケル酸化物材料の試料中の表面の炭酸リチウムのwt%を計算
【0074】
本発明の材料は、H2→H3相転移中の材料内のc軸収縮が小さいことを特徴とする。一部の実施形態では、H2→H3相転移中の材料内のc軸収縮は、4.4%未満である。
【0075】
一部の実施形態では、c軸収縮は、4.3%未満、例えば、4.2%未満、例えば、4.1%未満、例えば、4.0%未満、例えば、3.9%未満、例えば、3.8%未満、例えば、3.7%未満、例えば、3.6%未満、例えば、3.5%未満、例えば、3.4%未満、例えば、3.3%未満、例えば、3.2%未満、例えば、3.1%未満、例えば、3.0%未満、例えば、2.9%未満、例えば、2.8%未満、例えば、2.75%未満である。c軸収縮は、少なくとも1%、少なくとも1.5%、または少なくとも2%であってよい。c軸収縮は、実施例に記載の方法で測定されてよい。
【0076】
本発明の粒子状リチウムニッケル酸化物は、カソードとして材料を組み込むセルの容量保持率の改善、特に、50サイクル後の高い容量保持率を特徴とする。23℃の温度で、1Cの充放電レート、3.0~4.3Vの電圧窓で、電極ローディング9.0mg/cm及び電極密度3.0g/cmで決定すると、本発明の材料は、50サイクルの後、94%を超える容量保持率、場合によっては、約98%もの容量保持率を提供し得ることが分かった。50サイクル後の容量保持率%は、セルの最初の充電後のセルの最初の容量のパーセンテージとして、50回目のサイクル後のセルの容量として定義される。明確にするために、1サイクルは、セルの完全な充電と放電を含む。例えば、90%容量保持率は、50回目のサイクル後、セルの容量が最初の容量の90%であることを意味する。
【0077】
本発明の態様は、23℃、1C充放電レート、及び3.0~4.3Vの電圧窓で、50サイクル後のセルまたは電池の容量保持率が少なくとも93%である、リチウム二次セルまたは電池である。材料は、少なくとも93%の容量保持率を有し得る(半電池コイン電池 vs Liで50サイクル後、電極ローディング9.0mg/cm及び電極密度3.0g/cmで、23℃、1C充放電レート、及び3.0~4.3Vの電圧窓でテスト)。一部の実施形態では、容量保持率は、少なくとも94%、例えば、少なくとも95%、例えば、少なくとも96%、例えば、少なくとも97%である。
【0078】
本発明の材料はまた、驚くほど低い直流内部抵抗(DCIR)を特徴とする。DCIRは、二次セルまたは電池がサイクルを繰り返すと、経時的に増加する傾向がある。セルを、23℃の温度で、半電池コイン電池vsリチウムで、1Cの充放電レート及び3.0~4.3Vの電圧窓で、電極ローディング9.0mg/cm及び電極密度3.0g/cmでテストすると、本発明の材料は、50サイクル後のDCIRの増加%が50%未満であり、場合によっては、増加が24%と低いことが分かった。
【0079】
材料は、50%未満のDCIRの増加%を有し得る(半電池コイン電池vs Liで50サイクル後、電極ローディング9.0mg/cm及び電極密度3.0g/cmで、23℃、1C充放電レート、及び3.0~4.3Vの電圧窓でテストした)。
【0080】
一部の実施形態では、DCIRの増加%は、45%未満、例えば、40%未満、例えば、35%未満、例えば、30%未満、例えば、25%未満である。
【0081】
本発明の材料はまた、高い比容量を特徴とする。本発明の材料は、半電池コイン電池 vs Li金属で、23℃、1C放電レート、3.0~4.3Vの電圧窓のセルで、電極ローディング9.0mg/cm及び電極密度3.0g/cmでテストすると、少なくとも160mAh/gの比容量、場合によっては、190mAh/gもの高い比容量を提供することが分かった。この高い比容量は、サイクル時の高い容量保持率と組み合わせて、電気自動車などの高性能用途で有用な耐用期間が延びた性能が改善されたセルまたは電池を提供する。
【0082】
材料は、半電池コイン電池vs Li金属で、23℃、1C放電レート、3.0~4.3Vの電圧窓のセルで、電極ローディング9.0mg/cm及び電極密度3.0g/cmでテストすると、少なくとも180mAh/gの比容量を有し得る。一部の実施形態では、比容量は、少なくとも190mAh/g、例えば、少なくとも200mAh/gである。
【0083】
粒子状リチウムニッケル酸化物を調製するプロセスは一般的に、
リチウム含有化合物を、ニッケル含有化合物、コバルト含有化合物、マグネシウム含有化合物、及び、オプションで、M含有化合物と混合するステップであって、単一化合物はオプションで、Ni、Co、Mg、及びMの2つ以上を含み得る、混合物を取得するために混合するステップと、
その混合物を焼成して、第1の焼成材料を取得するステップと、
表面修飾ステップにおいて、第1の焼成材料を、コバルト含有化合物、リチウム含有化合物、及びM含有化合物の1つまたは複数と接触させて、第1の焼成材料上に濃縮表面層を形成するステップと、を含み、
ここで、Mは、Al、Mn、V、Ti、B、Zr、Sr、Ca、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、W、Mo、Ta、Y、Sc、Nb、Pb、Ru、Rh、及びZn、ならびに、これらの組み合わせから選択される。
【0084】
一部の実施形態では、第1の焼成材料は、式IIを有するコア材料である。
【化5】
式II
式中、
0.8≦a1≦1.2
0.5≦x1<1
0≦y1≦0.5
0.035≦z1≦0.1
0≦q1≦0.2、及び、
-0.2≦b1≦0.2
ここで、Mは、Al、Mn、V、Ti、B、Zr、Sr、Ca、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、W、Mo、Ta、Y、Sc、Nb、Pb、Ru、Rh、及びZn、ならびに、これらの組み合わせから選択される。
【0085】
一部の実施形態では、q1=0である。
【0086】
一部の実施形態では、プロセスは、表面修飾ステップ後、追加の焼成ステップを含む。
【0087】
リチウム含有化合物は、水酸化リチウム(例えば、LiOHまたはLiOH.HO)、炭酸リチウム(LiCO)、及びそれらの水和物の形から選択されてよい。水酸化リチウムが特に好まれる場合がある。
【0088】
ニッケル含有化合物は、水酸化ニッケル(Ni(OH))、酸化ニッケル(NiO)、オキシ水酸化ニッケル(NiOOH)、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、及び、それらの水和物の形態から選択されてよい。水酸化ニッケルが特に好まれる場合がある。
【0089】
コバルト含有化合物は、水酸化コバルト(Co(OH))、酸化コバルト(CoO、Co、Co)、オキシ水酸化コバルト(CoOOH)、硫酸コバルト、硝酸コバルト、酢酸コバルト、及び、それらの水和物の形態から選択されてよい。水酸化コバルトが特に好まれる場合がある。
【0090】
マグネシウム含有化合物は、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、酸化マグネシウム(MgO)、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、及び、それらの水和物の形態から選択されてよい。水酸化マグネシウムが特に好まれる場合がある。
【0091】
M含有化合物は、水酸化M、酸化M、硝酸M、硫酸M、炭酸M、酢酸M、及び、それらの水和物の形態から選択されてよい。水酸化Mが特に好まれる場合がある。
【0092】
あるいは、ニッケル、コバルト、マグネシウム、及びオプションでMの2つ以上が、合金水酸化物、例えば、ニッケルコバルト混合水酸化物、またはニッケルコバルトM混合水酸化物として提供されてよい。合金水酸化物は、共沈水酸化物であってよい。合金水酸化物は、多結晶であってよい。
【0093】
合金水酸化物は、式IIIに従った組成を有してよい。
【化6】
式III
式中、x、y、z、q、及びbは、本明細書では、それぞれ、別個に定義される。コバルト濃縮ステップが、(以下に記載のように)行われる場合、式IIIのyの値が、式Iのyの値より小さいことが好ましい場合がある。
【0094】
このような合金水酸化物は、当業者には周知の共沈法で調製されてよい。これらの方法は、例えば、アンモニアとNaOHなどの塩基の存在で、硫酸金属などの金属塩の溶液からの合金水酸化物の共沈を伴い得る。場合によっては、適切な合金水酸化物は、当業者に既知の商業的供給者から取得可能な場合がある。
【0095】
焼成ステップは、少なくとも400℃、少なくとも500℃、少なくとも600℃、または少なくとも650℃の温度で行われてよい。焼成ステップは、1000℃以下、900℃以下、800℃以下、または750℃以下の温度で行われてよい。焼成する材料は、少なくとも2時間、少なくとも5時間、少なくとも7時間、または少なくとも10時間、400℃、少なくとも500℃、少なくとも600℃、または少なくとも650℃の温度にあってよい。期間は、24時間未満であってよい。
【0096】
焼成ステップは、COの無い雰囲気下で行われてよい。例えば、COの無い空気が、焼成中、オプションで、冷却中、焼成する材料の上を流れてよい。COの無い空気は、例えば、酸素と窒素の混合であってよい。COの無い雰囲気は、酸素(例えば、純酸素)であってよい。好ましくは、雰囲気は、酸化雰囲気である。本明細書で使用される場合、「COが無い」という用語は、100ppm未満のCO、例えば、50ppm未満のCO、20ppm未満のCO、または10ppm未満のCOを含む雰囲気を含むことを意図している。これらのCO2レベルは、COスクラバを使用してCOを除去することによって達成されてよい。
【0097】
一部の実施形態では、CO2の無い雰囲気は、OとNの混合物を含む。一部の実施形態では、この混合物は、Oより多くの量のNを含む。一部の実施形態では、この混合物は、50:50~90:10、例えば、60:40~90:10、例えば、約80:20の比で、NとOを含む。
【0098】
一部の実施形態では、式Iの粒子状リチウムニッケル酸化物材料は、式IIを有するコア材料上に表面修飾ステップを行った結果として、コアと、コア表面の濃縮表面層とを含む表面修飾構造を含む。
【化7】
式II
式中、
0.8≦a1≦1.2
0.5≦x1<1
0≦y1≦0.5
0.035≦z1≦0.1
0≦q1≦0.2、及び、
-0.2≦b1≦0.2
ここで、Mは、Al、Mn、V、Ti、B、Zr、Sr、Ca、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、W、Mo、Ta、Y、Sc、Nb、Pb、Ru、Rh、及びZn、ならびに、これらの組み合わせから選択される。
【0099】
一部の実施形態では、q1=0である。
【0100】
表面修飾ステップ(本明細書では表面濃縮ステップとも呼ばれる)は、コア材料を、コバルト含有化合物、リチウム含有化合物、及びM含有化合物の1つまたは複数と接触させることを含み得る。化合物(複数可)は、溶液で、例えば、水溶液で提供されてよい。
【0101】
一般的に、本発明のプロセスの表面修飾ステップ(本明細書では表面濃縮ステップとも呼ばれる)は、コア材料を追加の金属化合物と接触させて、粒界の、及び/または粒子の表面もしくはその近くの金属の濃度を増加させることを含む。一部の実施形態では、表面修飾ステップ(本明細書では表面濃縮ステップとも呼ばれる)は、コア材料を、コバルト、リチウム、及びMの1つまたは複数から選択された追加の金属と接触させて、粒界の、及び/または粒子の表面もしくはその近くのこのような金属の濃度を増加させることを含む。表面修飾は、コア材料を、アルミニウム含有化合物、オプションで、1つまたは複数の追加の金属含有化合物と接触させることによって行われてよい。例えば、化合物は、硝酸塩、硫酸塩、または酢酸塩から別々に選択されてよい。硝酸塩が特に好まれる場合がある。化合物は、溶液(例えば、水溶液)で提供されてよい。化合物は、水溶性であってよい。
【0102】
コア材料と追加の金属含有化合物との混合物は、例えば、少なくとも50℃など、少なくとも40℃の温度に加熱されてよい。温度は、100℃未満または80℃未満であってよい。追加の金属含有化合物(複数可)が溶液で提供される場合、中間体を有する溶液の混合物は、例えば、溶媒の蒸発によって、または噴霧乾燥によって乾燥されてよい。
【0103】
追加の金属含有化合物は、本明細書では「表面修飾組成物」と称される組成物として提供されてよい。表面修飾組成物は、1つまたは複数の金属含有化合物の溶液(例えば、水溶液)を含み得る。
【0104】
表面修飾組成物は、アルミニウム含有化合物と、オプションで、リチウム含有化合物、コバルト含有化合物、及びM含有化合物の1つまたは複数とを含み得る。表面修飾組成物は、アルミニウム含有化合物と、オプションで、リチウム含有化合物及びコバルト含有化合物の1つまたは複数とを含み得る。表面修飾組成物は、アルミニウム含有化合物、コバルト含有化合物、及び、オプションで、リチウム含有化合物を含み得る。表面修飾組成物は、唯一の金属含有化合物として(すなわち、リチウム含有化合物及びコバルト含有化合物が欠けている)、アルミニウム含有化合物を含み得る。
【0105】
一部の実施形態では、表面修飾組成物内の金属含有化合物は、アルミニウム含有化合物と、オプションで、リチウム含有化合物及びコバルト含有化合物の1つまたは複数とからなる。一部の実施形態では、表面修飾組成物内の金属含有化合物は、アルミニウム含有化合物、リチウム含有化合物、及びコバルト含有化合物からなる。一部の実施形態では、表面修飾組成物内の金属含有化合物は、アルミニウム含有化合物と、オプションで、コバルト含有化合物とからなる。一部の実施形態では、表面修飾組成物内の金属含有化合物は、アルミニウム含有化合物からなる。
【0106】
表面修飾ステップで使用されるコバルト含有化合物、リチウム含有化合物、及びM含有化合物は、中間の(コア)材料の形成時に使用されるコバルト含有化合物、リチウム含有化合物、及びM含有化合物を参照して上記に定義した通りであってよい。1つまたは複数の追加の金属含有化合物の各々は、金属含有硝酸塩であることが特に好ましい場合がある。M含有化合物は硝酸M、例えば、硝酸アルミニウムであることが特に好ましい場合がある。リチウム含有化合物は硝酸リチウムであることが特に好ましい場合がある。コバルト含有化合物が硝酸コバルトであることが好ましい場合がある。追加のコバルト含有化合物、追加のM含有化合物、及び追加のリチウム含有化合物は水溶性であることが好ましい場合がある。
【0107】
一部の実施形態では、表面修飾ステップは、コア材料を水溶液中で追加の金属含有化合物に接触させることを含む。コア材料が、水溶液に追加されて、スラリーまたは懸濁液を形成してよい。一部の実施形態では、スラリーは、攪拌される、またはかき混ぜられる。一部の実施形態では、コア材料を水溶液に加えた後のスラリー中のコア材料と水の重量比は、約1.5:1~約1:1.5、例えば、約1.4:1~約1:1.4、約1.3:1~約1:1.3、約1.2:1~約1:1.2、または約1.1:1~約1:1.1である。重量比は、約1:1であってよい。
【0108】
一般的に、表面修飾ステップは、上記の第1の焼成ステップの後に行われる。
【0109】
表面修飾ステップに第2の焼成ステップが続いてよい。第2の焼成ステップは、少なくとも400℃、少なくとも500℃、少なくとも600℃、または少なくとも650℃の温度で行われてよい。第2の焼成ステップは、1000℃以下、900℃以下、800℃以下、または750℃以下の温度で行われてよい。焼成する材料は、少なくとも30分、少なくとも1時間、または少なくとも2時間、400℃、少なくとも500℃、少なくとも600℃、または少なくとも650℃の温度にあってよい。期間は、24時間未満であってよい。第2の焼成ステップは、第1の焼成ステップより短くてよい。
【0110】
第2の焼成ステップは、第1の焼成ステップを参照して前述したようにCOの無い雰囲気下で行われてよい。
【0111】
プロセスは、1つまたは複数のミリングステップを含んでよく、ミリングステップは、第1及び/または第2の焼成ステップ後に行われてよい。ミリング機器の性質は特に限定しない。例えば、ミリング機器は、ボールミル、プラネタリボールミル、またはローリングミル(rolling bed mill)であってよい。ミリングは、粒子(例えば、二次粒子)が所望のサイズに到達するまで、行われてよい。例えば、リチウムニッケル酸化物の粒子(例えば、二次粒子)は一般的に、少なくとも5μm、例えば、少なくとも5.5μm、少なくとも6μm、または少なくとも6.5μmのD50粒径を有するまでミリングされる。リチウムニッケル酸化物の粒子(例えば、二次粒子)は一般的に、15μm以下、例えば、14μm以下、または13μm以下のD50粒径を有するまで、ミリングされる。
【0112】
本発明のプロセスは、リチウムニッケル酸化物材料を含む電極(一般的にはカソード)を形成するステップをさらに含んでよい。一般的に、これは、粒子状リチウムニッケル酸化物のスラリーを形成することと、集電体(例えば、アルミニウム集電体)の表面にスラリーを塗布することと、オプションで、電極の密度を高めるための加工(例えば、カレンダ加工)によって行われる。スラリーは、溶媒、バインダ、炭素材料、及び追加の添加剤の1つまたは複数を含み得る。
【0113】
一般的に、本発明の電極は、少なくとも2.5g/cm、少なくとも2.8g/cm、または少なくとも3g/cmの電極密度を有する。本発明の電極は、4.5g/cm以下、または4g/cm以下の電極密度を有してよい。電極密度は、電極の電極密度(質量/体積)で、電極が形成された集電体を含まない。したがって、電極密度は、活物質、あらゆる添加剤、あらゆる追加の炭素材料、及びあらゆる残りのバインダからの寄与を含む。
【0114】
本発明のプロセスは、リチウムニッケル酸化物を含む電極を含む電池または電気化学セルを構築することをさらに含み得る。電池またはセルは一般的に、アノード及び電解質をさらに含む。電池またはセルは一般的に、二次(再充電可能な)リチウム(例えば、リチウムイオン)電池であってよい。
【0115】
ここで、以下の実施例を参照して本発明を説明する。実施例は、本発明の理解を助けるために提供されており、本発明の範囲を制限することを意図していない。
【0116】
実施例
比較例1-基材の調製
比較例1A-基材1(Li1.030Ni0.953Co0.030Mg0.010
100gのNi0.960Co0.031Mg0.099(OH)と26.36gのLiOHを30分間、ポリプロピレン瓶で乾燥混合した。LiOHは、真空下200℃で24時間、予備乾燥し、乾燥Nで満ちたパージされたグローブボックスで乾燥状態を保った。
【0117】
粉末混合物は、99%+アルミナるつぼに充填され、N:Oが80:20であるCO2の無い人工の混合空気下で焼成した。焼成は、450℃(5℃/分)まで行って2時間ホールドし、700℃(2℃/分)まで上昇させて6時間ホールドし、130℃まで自然に冷ました。人工の混合空気は、焼成及び冷却中を通して粉体層の上を流れていた。表題の化合物は、このようにして得られた。
【0118】
次に、試料を130℃で炉から取り除き、高アルミナライニングミルポットに移し、D50が12.0μmと12.5μmの間になるまで、ローリングミル(rolling bed mill)でミリングした。
【0119】
50は、ミー散乱近似で、Malvern Mastersizer3000を用いて、ASTM B822 2017に従って測定され、9.5μmであることが分かった。材料の化学式は、ICP分析によってLi1.030Ni0.953Co0.030Mg0.010と決定した。
【0120】
比較例1B-基材2(Li1.019Ni0.949Co0.031Mg0.020
26.21gのLiOHを100gのNi0.948Co0.031Mg0.021(OH)と乾燥混合する以外は、比較例1Aの手順を繰り返した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、10.2μmであることが分かった。材料の化学式は、ICP分析によってLi1.019Ni0.949Co0.031Mg0.020と決定した。
【0121】
比較例1C-基材3(Li1.027Ni0.923Co0.049Mg0.029
24.8gのLiOHを100gのNi0.917Co0.050Mg0.033(OH)と乾燥混合する以外は、比較例1Aの手順を繰り返した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、9.65μmであることが分かった。材料の化学式は、ICP分析によってLi1.027Ni0.923Co0.049Mg0.029と決定した。
【0122】
比較例1D-基材4(Li1.007Ni0.923Co0.049Mg0.038
25.92gのLiOHを100gのNi0.915Co0.049Mg0.036(OH)と乾燥混合する以外は、比較例1Aの手順を繰り返した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、12.2μmであることが分かった。材料の化学式は、ICP分析によってLi1.007Ni0.923Co0.049Mg0.038と決定した。
【0123】
比較例1E-基材5(Li0.998Ni0.917Co0.049Mg0.052
25.75gのLiOHを100gのNi0.903Co0.048Mg0.049(OH)と乾燥混合する以外は、比較例1Aの手順を繰り返した。表題の化合物は、このようにして得られた。材料の化学式は、ICP分析によってLi0.998Ni0.917Co0.049Mg0.052と決定した。
【0124】
比較例1F-基材6(Li1.024Ni0.926Co0.045Mg0.037)
25.94gのLiOHを100gのNi0.918Co0.045Mg0.037(OH)と乾燥混合する以外は比較例1Aの手順を繰り返した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、9.0μmであることが分かった。材料の化学式は、ICP分析によってLi1.024Ni0.926Co0.045Mg0.037と決定した。
【0125】
比較例1G-基材7(Li1.003Ni0.956Co0.030Mg0.020
26.20gのLiOHを100gのNi0.952Co0.029Mg0.019(OH)と乾燥混合する以外は、比較例1Aの手順を繰り返した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、9.6μmであることが分かった。材料の化学式は、ICP分析によってLi1.003Ni0.956Co0.030Mg0.02と決定した。
【0126】
比較例1H-基材8(Li1.009Ni0.957Co0.030Mg0.015
26.29gのLiOHを100gのNi0.957Co0.029Mg0.014(OH)と乾燥混合する以外は、比較例1Aの手順を繰り返した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、9.3μmであることが分かった。材料の化学式は、ICP分析によってLi1.009Ni0.957Co0.030Mg0.015と決定した。
【0127】
比較例1J-基材9(Li1.005Ni0.944Co0.029Mg0.038)
25.96gのLiOHを100gのNi0.935Co0.029Mg0.037(OH)と乾燥混合する以外は比較例1Aの手順を繰り返した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、10.7μmであることが分かった。材料の化学式は、ICP分析によってLi1.005Ni0.944Co0.029Mg0.038と決定した。
【0128】
比較例1K-基材10(Li0.996Ni0.914Co0.053Mg0.051
25.75gのLiOHを100gのNi0.900Co0.053Mg0.048(OH)と乾燥混合する以外は、比較例1Aの手順を繰り返した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、9.49μmであることが分かった。材料の化学式は、ICP分析によってLi0.996Ni0.914Co0.053Mg0.051と決定した。
【0129】
以下の表4に列挙する基材12~20は、基材1~10と類似のプロセスによって製造された。
【0130】
比較例2-比較表面修飾材料の調製
比較例2A-比較化合物1(Li1.018Ni0.930Co0.049Mg0.010Al0.0062)
比較例1Aの生成物を53μmのふるいにかけ、Nパージされたグローブボックスに移した。100mLの水に5.91gのCo(NO.6HO、0.47gのLiNO、及び2.44gのAl(NO.9HOを含む水溶液を60℃と65℃の間に加熱した。ふるいにかけた粉末100gを、激しくかき混ぜながら素早く追加した。スラリーを60℃と65℃の間の温度で、上澄みが無色になるまでかきまぜた。次に、スラリーを噴霧乾燥した。
【0131】
噴霧乾燥後、粉末は、99%+アルミナるつぼに充填され、N:Oが80:20であるCOの無い人工の混合空気下で焼成した。焼成は、130℃(5℃/分)まで上昇させて、5.5時間ホールドし、450℃(5℃/分)まで上昇させて1時間ホールドし、700℃(2℃/分)まで上昇させて2時間ホールドし、130℃まで自然に冷ました。人工の混合空気は、焼成及び冷却中を通して粉体層の上を流れていた。表題の化合物は、このようにして得られた。
【0132】
次に、試料を130℃で炉から取り除き、パージされたNで満たされたグローブボックスに移した。
【0133】
試料は、ローリングミル(rolling bed mill)上の高アルミナライニングミルポットでミリングされた。ミリングの目標エンドポイントは、D50が10μmと11μmの間であった。D50がミリング後に測定され、9.5μmであることが分かった。試料を53μmのふるいにかけ、パージされたNで満たされたグローブボックスに保管した。材料の水分量は0.18wt%であった。材料の化学式は、ICP分析によってLi1.018Ni0.930Co0.049Mg0.010Al0.006と決定した。
【0134】
比較例2B-比較化合物2(Li1.002Ni0.927Co0.053Mg0.020Al0.0065
水溶液が5.90gのCo(NO.6HO、0.47gのLiNO、及び2.43gのAl(NO.9HOを100mLの水に含む以外は、比較例1Bの生成物は、比較例2Aで記載された手順を経験した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、8.5μmであることが分かった。材料の水分量は0.28wt%であった。材料の化学式は、ICP分析によってLi1.002Ni0.927Co0.053Mg0.020Al0.0065と決定した。
【0135】
比較例2C-比較化合物3(Li0.995Ni0.909Co0.068Mg0.027Al0.0065
水溶液が5.89gのCo(NO.6HO、0.46gのLiNO、及び2.43gのAl(NO.9HOを100mLの水に含む以外は、比較例1Cの生成物は、比較例2Aで記載された手順を経験した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、7.61μmであることが分かった。材料の水分量は0.2wt%であった。材料の化学式は、ICP分析によってLi0.995Ni0.909Co0.068Mg0.027Al0.0065と決定した。
【0136】
比較例2G-比較化合物7(Li0.997Ni0.952Co0.029Mg0.019Al0.0065
水溶液が2.44gのAl(NO.9HOを100mLの水に含むが、Co(NO.6HOもLiNOも含まないということを除いては、比較例1Gの生成物は、比較例2Aで記載された手順を経験した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、7.9μmであることが分かった。材料の水分量は0.29wt%であった。材料の化学式は、ICP分析によってLi0.997Ni0.952Co0.029Mg0.019Al0.0065と決定した。
【0137】
比較例2H-比較化合物8(Li1.002Ni0.919Co0.064Mg0.014Al0.0062
水溶液が11.82gのCo(NO.6HO、1.88gのLiNO、及び2.44gのAl(NO.9HOを100mLの水に含む以外は、比較例1Hの生成物は、比較例2Aで記載された手順を経験した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、8.2μmであることが分かった。材料の水分量は0.29wt%であった。材料の化学式は、ICP分析によってLi1.002Ni0.919Co0.064Mg0.014Al0.0062と決定した。
【0138】
比較例2L-比較化合物11(Li0.984Ni0.877Co0.115Mg0.010Al0.0066
100gのNi0.905Co0.084Mg0.010(OH)と26.33gのLiOHを1時間、ポリプロピレン瓶で乾燥混合した。LiOHは、真空下200℃で24時間、予備乾燥し、乾燥Nでパージされたグローブボックスで乾燥状態を保った。
【0139】
粉末混合物は、99%+アルミナるつぼに充填され、N:Oが80:20であるCOの無い人工の混合空気下で焼成した。焼成は、450℃(5℃/分)まで行って2時間ホールドし、700℃(2℃/分)まで上昇させて6時間ホールドし、130℃まで自然に冷ました。人工の混合空気は、焼成及び冷却中を通して粉体層の上を流れていた。
【0140】
次に、試料を130℃で炉から取り除き、パージされたNで満たされたグローブボックスに移した。試料を高アルミナライニングミルポットに移し、D50が12.0μmから12.5μmの間になるまでローリングミル(rolling bed mill)でミリングした。
【0141】
ミリング後、生成物を53μmのふるいにかけ、パージされたNで満たされたグローブボックスに移した。100mLの水に11.83gのCo(NO.6HO、1.88gのLiNO、及び2.44gのAl(NO.9HOを含む水溶液を60℃と65℃の間に加熱した。ふるいにかけた粉末100gを、激しくかき混ぜながら素早く追加した。スラリーを60℃と65℃の間の温度で、上澄みが無色になるまでかきまぜた。次に、スラリーを噴霧乾燥した。
【0142】
噴霧乾燥後、粉末は、99%+アルミナるつぼに充填され、N:Oが80:20であるCOの無い人工の混合空気下で焼成した。焼成は、130℃(5℃/分)まで上昇させて、5.5時間ホールドし、450℃(5℃/分)まで上昇させて1時間ホールドし、700℃(2℃/分)まで上昇させて2時間ホールドし、130℃まで自然に冷ました。人工の混合空気は、焼成及び冷却中を通して粉体層の上を流れていた。表題の化合物は、このようにして得られた。
【0143】
次に、試料を130℃で炉から取り除き、Nで満たされたグローブボックスに移した。
【0144】
試料をローリングミル(rolling bed mill)上の高アルミナライニングミルポットでミリングした。ミリングのエンドポイントは、D50が10μmと11μmの間であった。D50がミリング後に測定され、8.8μmであることが分かった。試料を53μmのふるいにかけ、パージされたNで満たされたグローブボックスに保管した。
【0145】
材料の水分量は0.4wt%であった。材料の化学式は、ICP分析によってLi0.984Ni0.877Co0.115Mg0.010Al0.0066と決定した。
【0146】
比較化合物12、14、15、16、17a、17b、19、及び20(下記の表4に列挙)は、比較化合物1、2、3、7、8、及び11と類似のプロセスによって以下の基材を使用して製造された
【0147】
【表1】
【0148】
実施例1-表面修飾材料の調製
実施例1D-化合物4(Li0.985Ni0.913Co0.061Mg0.037Al0.0069
水溶液が3.94gのCo(NO.6HOと2.43gのAl(NO.9HOを100mLの水に含むが、LiNOを含まないという以外は、比較例1Dの生成物は、比較例2Aに記載された手順を経験した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、11.7μmであることが分かった。材料の水分量は0.26wt%であった。材料の化学式は、ICP分析によってLi0.985Ni0.913Co0.061Mg0.037Al0.0069と決定した。
【0149】
実施例1E-化合物5(Li0.980Ni0.905Co0.061Mg0.051Al0.0065
水溶液が3.93gのCo(NO.6HOと2.42gのAl(NO.9HOを100mLの水に含むが、LiNOを含まないという以外は、比較例1Eの生成物は、比較例2Aに記載された手順を経験した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、10.7μmであることが分かった。材料の水分量は0.09wt%であった。材料の化学式は、ICP分析によってLi0.980Ni0.905Co0.061Mg0.051Al0.0065と決定した。
【0150】
実施例1F-化合物6(Li1.003Ni0.923Co0.045Mg0.038Al0.0062
水溶液が2.43gのAl(NO.9HOを100mLの水に含むが、Co(NO.6HOもLiNOも含まないということを除いては、比較例1Fの生成物は、比較例2Aで記載された手順を経験した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、7.5μmであることが分かった。材料の水分量は0.18wt%であった。材料の化学式は、ICP分析によってLi1.003Ni0.923Co0.045Mg0.038Al0.0062と決定した。
【0151】
実施例1J-化合物9(Li0.980Ni0.909Co0.066Mg0.037Al0.0066
水溶液が11.77gのCo(NO.6HO、1.87gのLiNO、及び2.44gのAl(NO.9HOを100mLの水に含む以外は、比較例1Jの生成物は、比較例2Aで記載された手順を経験した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、10.0μmであることが分かった。材料の水分量は0.08wt%であった。材料の化学式は、ICP分析によってLi0.980Ni0.909Co0.066Mg0.037Al0.0066と決定した。
【0152】
実施例1K-化合物10(Li0.987Ni0.900Co0.064Mg0.051Al0.0065
水溶液が3.93gのCo(NO.6HOと2.42gのAl(NO.9HOを100mLの水に含むが、LiNOを含まないという以外は、比較例1Jの生成物は、比較例2Aに記載された手順を経験した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、9.4μmであることが分かった。材料の水分量は0.17wt%であった。材料の化学式は、ICP分析によってLi0.987Ni0.90Co0.064Mg0.051Al0.0065と決定した。
【0153】
化合物13、18a、及び18b(下記の表4に列挙)は、化合物4、5、6、9、及び10と類似のプロセスによって以下の基材を使用して製造された。
【0154】
【表2】
【0155】
Li CO 含有量
試料の表面のLiCO含有量は、フェノールフタレインとブロモフェノールブルーによる2段階の滴定を使用して決定した。滴定に関しては、脱イオン水中で5分間攪拌することによって、表面の炭酸リチウムを各材料の試料から抽出して、抽出物溶液を提供し、抽出物溶液を固形残留物から分離した。フェノールフタレイン指示薬を抽出物溶液に添加して、抽出物溶液が透明になる(LiOHが除去されたことを示す)まで、HCl溶液を使用して滴定した。ブロモフェノールブルー指示薬を抽出物溶液に添加して、抽出物溶液が黄色に変わるまで、HCl溶液を使用して滴定した。抽出物溶液中の炭酸リチウムの量を、このブロモフェノール滴定ステップから計算し、表面の炭酸リチウムが抽出物溶液内に100%抽出されたと想定して、各試料の表面の炭酸リチウムのwt%を計算した。
【0156】
テストした材料の結果は、表3の通りである。
【表3】
【0157】
組成分析
比較材料と発明の材料におけるマグネシウムとコバルトの総含有量(粒子の総重量に基づいた重量%)をICPによって決定して下記の表1に記載した。
【0158】
表面のコバルト含有量を、基材のICPによるCoのwt%を最終材料のICPによるCoのwt%から減算することによって計算した。コアのコバルト含有量は、基材のICPによるCoのwt%とみなされる。
【0159】
ICP(誘導結合プラズマ)
化合物の元素組成をICP-OESによって測定した。このために、材料の0.1gを~130℃で100mLまで作成された王水(塩酸と硝酸の比が3:1)で溶かした。マトリクスマッチング較正基準と内部標準としてのイットリウムとを用いてAgilent5110でICP-OES分析を行った。使用したラインと較正基準は、機器が推奨したものである。
【0160】
電気化学的試験
電極は、65%固体のインクを用いて、活物質:カーボン:バインダが94:3:3の処方で製作した。SuperC65カーボン0.6gをN-メチルピロリドン(NMP)5.25gとThinky(登録商標)ミキサで混合した。活物質18.80gを加えて、Thinky(登録商標)ミキサを使用してさらに混ぜ合わせた。最後に、Solef(登録商標)5130バインダ溶液6.00g(NMPで10wt%)を加えて、Thinkyミキサで混ぜ合わせた。結果として生じるインクは、125μmの固定刃塗布装置(fixed blade coater)を用いてアルミニウムホイル上に流し、120℃で60分乾燥させた。乾燥すると、電極シートを密度3g/cmになるようにMTIカレンダでカレンダ加工した。個々の電極を切断して、真空下で一晩乾燥させ、アルゴンを満たしたグローブボックスに移した。リチウムアノードと1MのLiPFを用いて、EC(エチレンカーボネート):EMC(エチルメチルカーボネート):DMC(ジメチルカーボネート)+1wt%のVC(ビニレンカーボネート)電解質の比が1:1:1でコイン電池を構築した。選択された電極は、ローディング9.0mg/cmと、密度3g/cmを有した。電気化学的測定値は、23℃で、3.0~4.3Vの電圧窓を用いて3つのセルの平均から取得した。
【0161】
評価した電気化学的特性は、第1のサイクル効率(FCE)、0.1C比容量、1.0C比容量、容量保持率、及び10sパルスを用いたDCIR成長を含む。
【0162】
容量保持率及びDCIR成長は、1Cで50サイクル後の性能に基づいて決定した。
【0163】
下記の表4は、テストした材料の詳細を含む。
【0164】
【表4-1】














【表4-2】
【表5-1】
【表5-2】
【表6】
【0165】
実験アプローチの設計
従来、他の因子を一定にしたまま、一度に1つの因子を変更する実験が計画されてきた。代替アプローチは、「実験の設計」であり、この場合、複数の変数を一度に変更して、比較的少ない数の実験点を使用して、大きな実験空間をカバーするのが可能になる。次に、コンピュータベースの統計分析を適用して、主要な相互作用を確実にする。
【0166】
上記の実施例で製造された化合物は、実験の設計アプローチに従って調製及び分析された。統計的分析によって、容量保持率を増加させることがMg含有量を増加させることに最も強く関連し、表面濃縮層及びコアのCo含有量を増加させることとの関連の程度はより少ないと、判断した。相関関係は、下記のp値を有した。
Mg含有量:<0.0001
コアのCo:0.0204
表面層のCo:0.0086
p値は、結果の統計的有意性を示し、<0.05のp値は、統計的に有意な結果を意味する。容量保持率がCo含有量よりもMg含有量に強く依存することは、優れた容量保持率は、CoではなくMgを増加させることによって達成し得ることを示す。これは、Coに依存せずに容量保持率の増加を可能にするので、非常に望ましい。本明細書で論じたように、大量のCoを材料に含むことは望ましくない。
【0167】
さらなる考察
データは以下の追加の考察を可能にする。
図1は、本発明の様々な材料と比較材料に関する、50サイクルにわたる容量保持率のプロットを示す。プロットは、アルミニウム濃縮表面を含む材料の容量保持率の明らかな改善を表す。例えば、アルミニウムで強化された表面を有する式Li0.99Ni0.92Co0.05Mg0.02Al0.0061.99の比較化合物2は、式Li1.01Ni0.95Co0.03Mg0.021.99のドーピングされていない基材2より優位に大きい容量保持率を有する。同様に、比較化合物7は、基材7より改善した容量保持率を有する。同様に、化合物6は、基材6より改善した容量保持率を有する。
【0168】
図2は、本発明の様々な材料の50サイクルにわたる容量保持率のプロットを示す。プロットは、材料中のマグネシウムのレベルが容量保持率に明らかな効果を有することを表す。0.24wt%のMgだけを含む比較化合物11は、それぞれ、0.92wt%、1.26wt%、及び1.26wt%のMgを含む、化合物4、5、及び10より小さい容量保持率を有する。さらに、化合物5及び10の各々より低いレベルのMgを含む化合物4は、30サイクル後、化合物5及び10のどちらよりも、容量保持率のより顕著な低下を示す。
【0169】
図3は、いくつかの比較材料の50サイクルにわたる容量保持率のプロットを示す。プロットは、基材2の比較的低い容量保持率を示し、これも、組成にアルミニウムを含む有益な効果を示している。興味深いことに、比較化合物2及び11の容量保持率は、類似のレベルのAlで同等である。これは、組成物中のマグネシウムレベルを増加させ、同時に、コバルトの総量を減少させることによって、容量保持率を維持することが可能であることを表す(比較化合物2は、比較化合物11の約2倍のマグネシウムレベルを含み、コバルトレベルは約半分である)。
【0170】
図4は、2つの材料(比較化合物2及び比較化合物7)の容量保持率のプロットである。2つの材料は、同レベルのマグネシウムと同レベルのコバルトをコアに含む。違いは、比較化合物2は、いくらかのコバルト表面濃縮を含み、比較化合物7は、含まないことである。これは、材料の濃縮表面層に少量のコバルトが存在することによって、容量保持率の改善につながり得ることを表す。
【0171】
図5は、基材(点線)と表面濃縮材料(実線)との容量保持率に対する材料のマグネシウム含有量をプロットしている。比較化合物11は、プロットに別個に示されている。一般的な傾向は基材及び濃縮材料の両方でマグネシウム含有量と共に容量保持率が増加している。濃縮材料(アルミニウムを含む)は、同等のマグネシウム含有量を有する対応する基材より高い容量保持率を有する。-比較化合物1は、基材1より高い容量保持率を有し、比較化合物8は、基材8より高い容量保持率を有する等である。
【0172】
比較化合物1及び比較化合物11によって例示される、材料の基材の低レベルのマグネシウムで、材料の総コバルト量の増加は、容量保持率の増加につながる。したがって、少ない総コバルト量(1.8wt%)を含む比較化合物1は、類似のマグネシウムレベルを含むが、総コバルト量の多い(4.66wt%)比較化合物11より低い容量保持率を有する。これは、(表面にコバルトを含まず、基材に2.7wt%のみのコバルトを含む化合物6によって表されるように)コバルトの安定効果が、代わりに、高レベルのマグネシウムによって提供できることを示す。
【0173】
材料の基材に中間レベルのマグネシウムを表す基材2及び基材7は、類似の組成(類似のMg及びCoレベル)を有し、予測されたように、類似の容量保持率を有する。しかしながら、基材7(比較化合物7)の対応する表面修飾材料の容量保持率は、基材2(比較化合物2)の表面修飾から生じる材料よりも著しく低い容量保持率を有する。比較化合物7の濃縮表面層はコバルトを含まず、比較化合物2の濃縮表面層はコバルトを含む。これは、中程度のマグネシウムレベルで、濃縮表面層からコバルトを完全に除去すると、材料に許容可能な容量保持率を提供するが、濃縮表面層に少量のコバルトが存在すると、改善された容量保持率を提供できることを示す。
【0174】
基材6及び化合物6と基材9及び化合物9とを比較すると、高レベルのマグネシウムで、濃縮表面層へのコバルトの添加は、必ずしも容量保持率を改善しないことを示す。化合物6及び9は、同様に、高レベルのマグネシウム(0.92~0.93wt%)を含む。コバルト表面濃縮を含む化合物9は、アルミニウムのみを含有する濃縮表面層を含む化合物6より低い容量保持率を有する。したがって、表面修飾材料のコアに高レベルのマグネシウムが存在すると、濃縮表面層にコバルトを少量含む、または全く含まない材料を安定させる方法を提供することが可能な場合がある。したがって、コアのマグネシウムレベルを高めることは、濃縮表面層に必要なコバルトレベルを低減させる方法を提供し得る。
【0175】
c軸収縮の分析
本発明の粒子状リチウムニッケル酸化物は、約4.2V vs Li/Liで生じるH2→H3相転移中のc軸の収縮を明らかに低減させることを特徴とする。c軸の長さは、サイクルされた電極でex-situのX線粉末回折(XRPD)によって測定することができる。これは、H2相とH3相の材料について測定することができ、これらの比較を使用して、c軸収縮を決定することができる。LiNi(1-x-y)CoMg構造へのMgドーパントの効果を理解するために、サイト無秩序欠陥構造をいくつかの低リチオ化状態で計算した。サイト交換の欠陥は、2つの陽イオン(または、陽イオンとサイトの空孔)の位置交換によって構築された。欠陥エネルギーは、低リチウムローディングで、Mgの陽イオンが通常の8面体サイト(遷移金属サイト)から遷移金属酸化物層とLi層の間の途中の4面体サイトに移動するサイト無秩序構造が好ましいことを示す。計算はまた、Liは遷移金属酸化物層の他方の側の等価の4面体サイトに移動する傾向を有し得ることを示す。この無秩序構造は、欠陥の無い構造より大幅に安定しており、低いLiローディングで観察される格子収縮がピラー効果により減少する。
【0176】
下記の表5は、それぞれ、4V及び4.3Vにサイクルされた電極のex situのXRPD測定値に基づいて、本発明の一部の材料のc軸変化を示す。
【0177】
【表7】
【0178】
図6Aは、サイト無秩序なLi0.00Ni(1-x-y)CoMgのDFT計算された構造600を示す。構造は、ニッケル原子601、コバルト原子602、マグネシウム原子603、及び酸素原子604を含む。
【0179】
図6Bは、DFT計算から導出された最も安定した構造を考慮してLiローディングに関する、Li-Ni-Co-Mg-O系の格子進化を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】