(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】カソード材料及びプロセス
(51)【国際特許分類】
C01G 51/00 20060101AFI20230428BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20230428BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230428BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
C01G51/00 A
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558313
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(85)【翻訳文提出日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 GB2021050729
(87)【国際公開番号】W WO2021191616
(87)【国際公開日】2021-09-30
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522306561
【氏名又は名称】イーブイ・メタルズ・ユーケイ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EV Metals UK Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,ジョアンナ ヘレン
(72)【発明者】
【氏名】ダイアモンド,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ハマー,エバ-マリア
(72)【発明者】
【氏名】ウェール,オリビア ローズ
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB02
4G048AB04
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
4G048AE07
5H050AA07
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB12
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
(57)【要約】
本発明は、リチウム二次電池のカソード材料として有用な改良された粒子状リチウムニッケル酸化物材料に関する。本発明はまた、このようなリチウムニッケル酸化物材料を調製するプロセス、ならびに同材料を含む電極及びセルを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、前記コアの表面に濃縮表面層とを有する粒子を含む表面修飾された粒子状リチウムニッケル酸化物材料であって、前記濃縮表面層が、0.9~1.5wt%のコバルトを含み、前記粒子状リチウムニッケル酸化物が、0.3wt%以下の表面Li
2CO
3を含む、前記表面修飾された粒子状リチウムニッケル酸化物材料。
【請求項2】
前記表面濃縮層が、1.4wt%以下のコバルトを含む、請求項1に記載の粒子状リチウムニッケル酸化物材料。
【請求項3】
前記粒子が式Iを有し、
【化1】
式中、
0.8≦a≦1.2
0.8≦x<1
0<y≦0.5
0.005≦z≦0.1
0≦p≦0.01
0≦q≦0.2、及び
-0.2≦b≦0.2
ここで、Mは、Mn、V、Ti、B、Zr、Sr、Ca、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、W、Mo、Ta、Y、Sc、Nb、Pb、Ru、Rh、及びZn、ならびに、これらの組み合わせから選択される、請求項1または請求項2に記載の表面修飾された粒子状リチウムニッケル酸化物材料。
【請求項4】
0.035≦y≦0.1である、請求項3に記載の粒子状リチウムニッケル酸化物材料。
【請求項5】
0.015≦z≦0.03である、請求項3または請求項4に記載の粒子状リチウムニッケル酸化物材料。
【請求項6】
0.004≦p≦0.008である、請求項3~5のいずれか1項に記載の粒子状リチウムニッケル酸化物材料。
【請求項7】
4μm~20μm、例えば5μm~15μmの範囲のD50粒径を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の粒子状リチウムニッケル酸化物材料。
【請求項8】
0.5~1.5wt%のコバルトを含む濃縮表面層を粒子の表面に形成することによって、前記粒子を含む粒子状リチウムニッケル酸化物材料中での表面Li
2CO
3の前記形成を減少させるためのコバルト含有化合物の使用。
【請求項9】
粒子を含む粒子状リチウムニッケル酸化物材料中での表面Li
2CO
3の前記形成を減少させるための濃縮表面層の使用であって、前記濃縮表面層が0.5~1.5wt%のコバルトを含む、前記使用。
【請求項10】
前記粒子状リチウムニッケル酸化物材料酸化物が、0.3wt%以下の表面Li
2CO
3を含む、請求項8または請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記粒子状リチウムニッケル酸化物材料が、式Iを有する粒子を含み、
【化2】
式中、
0.8≦a≦1.2
0.8≦x<1
0<y≦0.5
0.005≦z≦0.1
0≦p≦0.01
0≦q≦0.2、及び、
-0.2≦b≦0.2
ここで、Mは、Mn、V、Ti、B、Zr、Sr、Ca、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、W、Mo、Ta、Y、Sc、Nb、Pb、Ru、Rh、及びZn、ならびに、これらの組み合わせから選択される、請求項8~10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
式Iを有する粒子状リチウムニッケル酸化物材料を調製するためのプロセスであって、
【化3】
式中、
0.8≦a≦1.2
0.8≦x<1
0<y≦0.5
0.005≦z≦0.1
0≦p≦0.01
0≦q≦0.2、及び
-0.2≦b≦0.2、
ここで、Mは、Mn、V、Ti、B、Zr、Sr、Ca、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、W、Mo、Ta、Y、Sc、Nb、Pb、Ru、Rh、及びZn、ならびに、これらの組み合わせから選択され、
前記プロセスは、
リチウム含有化合物を、ニッケル含有化合物、コバルト含有化合物、マグネシウム含有化合物、及び、オプションで、M含有化合物、及び/またはアルミニウム含有化合物と混合するステップであって、単一化合物が、オプションで、Ni、Co、Mg、Al及びMの2つ以上を含み得る、混合物を取得するための前記混合するステップと、
前記混合物を焼成して、焼成材料を取得するステップと、
表面修飾ステップにおいて、前記第1の焼成材料を、コバルト含有化合物、ならびにオプションで、アルミニウム含有化合物、リチウム含有化合物、及びM含有化合物の1つまたは複数と接触させて、前記第1の焼成材料上に濃縮表面層を形成するステップであって、その結果、前記表面濃縮層が、0.9~1.5wt%のコバルトを含み、前記粒子状リチウムニッケル酸化物が、0.3wt%以下の表面Li
2CO
3を含む、前記形成するステップと
を含む、前記プロセス。
【請求項13】
請求項1~7のいずれか1項に記載の前記粒子状リチウムニッケル酸化物材料を含むカソード。
【請求項14】
請求項13に記載の前記カソードを含むリチウム二次セルまたは電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池のカソード材料として有用な改良された粒子状リチウムニッケル酸化物材料に関する。本発明はまた、このようなリチウムニッケル酸化物材料を調製するプロセス、ならびに同材料を含む電極及びセルを提供する。
【背景技術】
【0002】
式LiMO2を有し、Mは一般的に1つまたは複数の遷移金属を含むリチウム遷移金属酸化物材料は、リチウムイオン電池のカソード材料として有用である。例には、LiNiO2及びLiCoO2が含まれる。
【0003】
US6921609B2には、実験式LixM’zNi1-yM”yO2を有するコア組成と、コアよりCoのNiに対する比が大きいコア上のコーティングとを含むリチウム電池のカソード材料としての使用に適した組成物が記載されている。
【0004】
WO2013/025328A1には、層状のα-NaFeO2型構造を有する第1の組成物を含む複数の微結晶を含む粒子が記載されている。粒子は、隣り合う微結晶の間に粒界を含み、粒界のコバルトの濃度は、微結晶中のコバルトの濃度より高い。コバルト濃縮は、粒子をLiNO3及びCo(NO3)2溶液で処理し、その後、噴霧乾燥及び焼成を行うことで達成される。
【0005】
電気自動車(EV)などの高性能用途でのリチウムイオン電池の需要の増加に伴い、許容可能な比容量を提供するだけでなく、多数の充電サイクルにわたってその容量の保持にすぐれ、それによって、その耐用期間中、各充電後の車両の走行距離が、可能な限り一貫しているカソード材料を使用することが必要不可欠である。容量保持率は一般的に、電池の「サイクル特性」と簡単に呼ばれることもある。
【0006】
したがって、改良されたリチウム遷移金属酸化物材料と、その製造プロセスに対するニーズがある。特に、リチウム二次電池のカソード材料として使用されるとき、リチウム遷移金属酸化物材料の容量保持率の改善に対するニーズがある。
【発明の概要】
【0007】
リチウムニッケル酸化物電池材料は、通常、その表面にいくらかの炭酸リチウムを形成する。炭酸リチウムは不動態化する、つまり炭酸リチウムの存在により比容量が本質的に減少するため、炭酸リチウムの形成は望ましくない。さらに、炭酸リチウムの存在により、電池で望ましくない副反応が生じる可能性があり、特に、より大量の表面の炭酸リチウムを含有する材料には、(ガス処理として知られる)サイクル中にCO2ガスを放出するより強い傾向がある。
【0008】
したがって、表面の炭酸リチウム不純物が低レベルの材料を提供するニーズがある。本発明者らは、表面が強化された層にコバルトを含めることにより、表面の炭酸リチウムの形成が減少することを発見した。しかしながら、コバルトは(その高い相対的な費用及び過去の価格の変動性により)材料費に大きく寄与する場合があるので、及び倫理的理由からコバルト含有量を減少させることが好ましい場合があるため、リチウムニッケル酸化物電池材料に含まれるコバルトの量を減少させることも望ましい。
【0009】
本発明者らは、強化された表面層が少なくとも0.9wt%のコバルトを含む場合に、特に低レベルの表面の炭酸リチウムが達成されることを発見した。しかしながら、表面強化層のコバルトの量が約1.5wt%増加するときに、低レベルの炭酸リチウム不純物は著しく減少しない。したがって、表面強化層に0.9~1.5wt%のコバルトを含めることは特に有利である。これは、強化表面層に添加されるコバルトの量を最小限に抑えながら、表面の炭酸リチウムの形成を抑制することが可能になるためである。
【0010】
したがって、本発明の第1の態様は、コアと、コアの表面に濃縮表面層とを有する粒子を含む表面修飾された粒子状リチウムニッケル酸化物材料であり、濃縮表面層は、0.9~1.5wt%のコバルトを含み、粒子状リチウムニッケル酸化物は、0.3wt%以下の表面Li2CO3を含む。
【0011】
第2の態様では、本発明は式Iを有する粒子状リチウムニッケル酸化物材料を調製するためのプロセスを提供し、
【化1】
式中、
0.8≦a≦1.2
0.8≦x<1
0<y≦0.5
0.005≦z≦0.1
0≦p≦0.01
0≦q≦0.2、及び
-0.2≦b≦0.2、
ここで、Mは、Mn、V、Ti、B、Zr、Sr、Ca、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、W、Mo、Ta、Y、Sc、Nb、Pb、Ru、Rh、及びZn、ならびに、これらの組み合わせから選択され、
プロセスは、
(i)リチウム含有化合物を、ニッケル含有化合物、コバルト含有化合物、マグネシウム含有化合物、及び、オプションで、M含有化合物、及び/またはアルミニウム含有化合物と混合するステップであって、単一化合物は、オプションで、Ni、Co、Mg、Al及びMの2つ以上を含み得る、混合物を取得するために混合するステップと、
(ii)その混合物を焼成して、焼成材料を取得するステップと、
(iii)表面修飾ステップにおいて、第1の焼成材料を、コバルト含有化合物、及びオプションで、アルミニウム含有化合物、リチウム含有化合物、及びM含有化合物の1つまたは複数と接触させて、第1の焼成材料上に濃縮表面層を形成するステップであって、その結果、表面濃縮層は、0.9~1.5wt%のコバルトを含み、粒子状リチウムニッケル酸化物は、0.3wt%以下の表面Li
2CO
3を含む、形成するステップと
を含む。
【0012】
第3の態様では、本発明は、0.5~1.5wt%のコバルトを含む濃縮表面層を粒子の表面に形成することによって、粒子を含む粒子状リチウムニッケル酸化物材料中での表面Li2CO3の形成を減少させるためのコバルト含有化合物の使用を提供する。使用は、第2の態様のプロセスのステップ(iii)によるプロセス修飾ステップにおいて、式II(以下に定義)に従ってコバルト含有化合物をコア材料と接触させることを含むことが好ましい場合がある。第3の態様の使用は、本明細書に記載される第2の態様のプロセスの任意の他の特徴を含み得る。例えば、プロセス修飾ステップの後に、本明細書に記載される焼成ステップが続き得る。
【0013】
第4の態様では、本発明は、粒子を含む粒子状リチウムニッケル酸化物材料中での表面Li2CO3の形成を減少させるための濃縮表面層の使用を提供し、濃縮表面層は、粒子の総重量に基づいて0.5~1.5wt%のコバルトを含む。
【0014】
本発明の第5の態様は、本明細書に記載のプロセスによって取得されたまたは取得可能な粒子状リチウムニッケル酸化物を提供する。
【0015】
本発明の第6の態様は、第1の態様による粒子状リチウムニッケル酸化物材料を含むリチウム二次電池のためのカソード材料を提供する。
【0016】
本発明の第7の態様は、第1の態様による粒子状リチウムニッケル酸化物材料を含むカソードを提供する。
【0017】
本発明の第8の態様は、第5の態様によるカソードを含むリチウム二次セルまたは電池(例えば、二次リチウムイオン電池)を提供する。この電池は一般的に、アノード及び電解質をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例で決定されるように、濃縮表面層における炭酸リチウム含有量対コバルト含有量のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで、本発明の好ましい及び/またはオプションの特徴を記載する。本発明のいずれの態様も、文脈により別段の要求が無い限り、本発明の任意の他の態様と組み合わせられてよい。任意の態様の好ましい及び/またはオプションの特徴のいずれも、文脈により別段の要求が無い限り、個々に、または、一緒に、本発明の任意の態様と組み合わせられてよい。範囲の上限及び下限は独立して組み合わせ可能であり、a、b、x、y、z、p、及びqについて与えられた様々な範囲及び値は、互いと、及び本明細書に記載される他の特徴と組み合わせ可能であることが意図される。
【0020】
本明細書に記載の組成物は、以下の実施例の項に記載するように誘導結合プラズマ(ICP)分析によって決定されてよい。本明細書に記載の組成物はICP組成物であることが好ましい場合がある。同様に、粒子状リチウムニッケル酸化物材料の元素のwt%含有量は、ICP分析を用いて決定されてよい。本明細書に記載のwt%値は、(以下で別個に定義されるwt%炭酸リチウムを除いて)分析される粒子の総重量に対してICPによって決定される。
【0021】
粒子状リチウムニッケル酸化物材料は、一般的にリチウム、ニッケル、コバルト、及び酸素を含む。粒子状リチウムニッケル酸化物材料は、リチウム、ニッケル、コバルト、酸素、アルミニウム、及びマグネシウムを含んでもよい。粒子状リチウムニッケル酸化物材料は、式Iによる組成物を有し得、
【化2】
式中、
0.8≦a≦1.2
0.8≦x<1
0<y≦0.5
0.005≦z≦0.1
0≦p≦0.01
0≦q≦0.2、及び
-0.2≦b≦0.2
ここで、Mは、Mn、V、Ti、B、Zr、Sr、Ca、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、W、Mo、Ta、Y、Sc、Nb、Pb、Ru、Rh、及びZn、ならびに、これらの組み合わせから選択される。
【0022】
式Iにおいて、0.8≦a≦1.2である。一部の実施形態では、aは、0.9、0.95、0.99、または1.0以上である。一部の実施形態では、aは、1.1以下、または1.05以下である。一部の実施形態では、0.90≦a≦1.10、例えば、0.95≦a≦1.05である。一部の実施形態では、0.99≦a≦1.05、または、1.0≦a≦1.05である。0.95≦a≦1.05が特に好ましい場合がある。
【0023】
式Iにおいて、0.8≦x<1である。一部の実施形態では、0.85≦x<1、または0.9≦x<1である。一部の実施形態では、xは、0.99、0.98、0.97、0.96、または0.95以下である。一部の実施形態では、xは、0.85、0.9、または0.95以上である。一部の実施形態では、0.8≦x≦0.99、例えば、0.85≦x≦0.98、0.85≦x≦0.98、0.85≦x≦0.97、0.85≦x≦0.96、または0.90≦x≦0.95である。0.85≦x≦0.98が特に好ましい場合がある。
【0024】
式Iにおいて、0<y≦0.5である。一部の実施形態では、yは、0.01、0.02、0.03、0.035、0.04、または0.045以上である。一部の実施形態では、yは、0.4、0.3、0.2、0.15、0.12、0.10、0.098、0.09、0.08、0.07、0.065、0.063、0.060、または0.055以下である。例えば、0.035≦y≦0.1または0.04≦y≦0.0.063である。
【0025】
式Iにおいて、0.005≦z≦0.1である。zが0.005、0.008、0.010、または0.015以上であることが好ましい場合がある。zが0.05、0.04、0.035、0.003、または0.025以下であることが好ましい場合がある。例えば、0.015≦z≦0.03である。
【0026】
式Iにおいて、0.004≦p≦0.01である。一部の実施形態では、pは、0.0090、0.0080、0.0075、または0.0070以下である。一部の実施形態では、pは、0.005、0.0055、または0.0060以上である。一部の実施形態では、0.004≦p≦0.0090、0.005≦p≦0.008、0.0055≦p≦0.0075、または0.006≦p≦0.007である。0.0055≦p≦0.0075または0.0055≦p≦0.0080であることが特に好ましい場合がある。
【0027】
式Iにおいて、-0.2≦b≦0.2である。一部の実施形態では、bは、-0.1以上である。一部の実施形態では、bは、0.1以下である。一部の実施形態では、-0.1≦b≦0.1である。一部の実施形態では、bは、0または約0である。一部の実施形態では、bは0である。
【0028】
式Iにおいて、Mは、Mn、V、Ti、B、Zr、Sr、Ca、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、W、Mo、Ta、Y、Sc、Nb、Pb、Ru、Rh、及びZnから選択された1つまたは複数である。一部の実施形態では、Mは、Mn、V、Ti、B、Zr、Sr、Ca、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、及びZnから選択された1つまたは複数である。一部の実施形態では、MはMnである。一部の実施形態では、Mは、粒子のコア内に存在するが、濃縮表面層内には存在しないドーパントを表す。
【0029】
式Iにおいて、0≦q≦0.2である。一部の実施形態では、0≦q≦0.15である。一部の実施形態では、0≦q≦0.10である。一部の実施形態では、0≦q≦0.05である。一部の実施形態では、0≦q≦0.04である。一部の実施形態では、0≦q≦0.03である。一部の実施形態では、0≦q≦0.02である。一部の実施形態では、0≦q≦0.01である。一部の実施形態では、qは0である。
【0030】
一部の実施形態では、
0.95≦a≦1.05
0.85≦x<1
0.04≦y≦0.075
0.015≦z≦0.03
0.0055≦p≦0.0080
0≦q≦0.2、及び
-0.2≦b≦0.2、
ここで、Mは、Al、Mn、V、Ti、B、Zr、Sr、Ca、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、W、Mo、Ta、Y、Sc、Nb、Pb、Ru、Rh、及びZn、ならびに、これらの組み合わせから選択される。
【0031】
一部の実施形態では、
0.95≦a≦1.05
0.85≦x<1
0.04≦y≦0.075
0.015≦z≦0.03
0.0055≦p≦0.0080
q=0、及び
b=0
である。
【0032】
一部の実施形態では、粒子状リチウムニッケル酸化物材料は、結晶状の(または、ほぼ結晶状の)材料である。これは、α-NaFeO2型構造を有してよい。これは、リチウムニッケル酸化物材料の各粒子が凝集した複数の微結晶(結晶粒または一次粒子としても知られる)からなることを意味する多結晶材料であってよい。結晶粒は一般的に、粒界によって分けられている。粒子状リチウムニッケル酸化物が多結晶である場合、当然ながら、複数の結晶を含むリチウムニッケル酸化物の粒子は二次粒子である。
【0033】
式Iの粒子状リチウムニッケル酸化物材料は、濃縮表面を含む、すなわち、表面修飾されて(表面修飾プロセスを受けて)濃縮表面層を形成したコア材料を含む。一部の実施形態では、表面修飾は、コア材料を1つまたは複数の追加の金属を含む化合物と接触させることと、その後、オプションで、材料の焼成を実行することによって生じる。化合物は、溶液中にあってよく、本明細書のそのような文脈では、「化合物」という用語は、対応する溶存種を指す。明確にするために、本明細書の式Iに従った組成物に関する記載は、表面修飾された粒子の文脈では、粒子全体、すなわち、濃縮表面層を含む粒子に関する。
【0034】
本明細書において、「表面修飾された」、「濃縮された表面」、及び「濃縮表面層」は、粒子の表面またはその近くのコバルトの濃度を高めるための表面修飾または表面濃縮プロセスを経たコア材料を含む粒子材料を指す。したがって、「濃縮表面層」という用語は、粒子の残りの材料、すなわち、粒子のコアより高い濃度のコバルトを含む粒子表面またはその近くの材料の層を指す。
【0035】
一部の実施形態では、粒子はコアより濃縮表面層において高い濃度のAlを含む。一部の実施形態では、粒子内のAlの全てまたは実質的に全ては、濃縮表面層にある。一部の実施形態では、コアは、Alを含まない、または、粒子の総重量に基づいて、例えば、0.01wt%未満のAlなど、実質的にAlを含まない。本明細書で使用される場合、表面濃縮層の所与の元素の含有量は、表面濃縮の前の粒子状リチウムニッケル酸化物材料(第1の焼成材料またはコア材料と呼ばれることもある)のその元素のwt%をICPによって決定して、値Aを取得することと、表面濃縮(及び、オプションの追加の焼成)後の最終的な粒子状リチウムニッケル酸化物材料のその元素のwt%をICPによって決定して、値Bを取得することと、値Bから値Aを減算することとによって計算される。同様に、コアの所与の元素の含有量は、表面濃縮の前の粒子状リチウムニッケル酸化物材料(第1の焼成材料またはコア材料と呼ばれることもある)のその元素のwt%をICPによって決定することによって決定されてよい。
【0036】
当業者は理解するように、元素は、材料の調製、保管、または使用中にコアと表面層の間を移動する場合がある。本明細書では、ある元素が、コアに存在(または、無い、または一定の量存在する)と記載される場合、これは、その元素がコアに意図的に追加される(または、から取り除かれる、または、特定の量、追加される)ことを指し、元素の分布が調製、保管、または使用中に移動することによって変わる保護材料の範囲から取り除くことを意図してはいないと理解されたい。同様に、ある元素が、表面濃縮層に存在(または、無い、または一定の量存在する)と記載される場合、これは、その元素が表面濃縮層に意図的に追加される(または、から取り除かれる、または、特定の量、追加される)ことを指し、元素の分布が調製、保管、または使用中に移動することによって変わる保護材料の範囲から取り除くことを意図してはいないと理解されたい。例えば、粒子内のAlの全てまたは実質的に全てが濃縮表面層にある場合、これは、Alの全てまたは実質的に全てが表面濃縮ステップで追加されるが、表面濃縮ステップで追加されたAlの一部がコアに移動した材料を除外しないことを意味する。
【0037】
一部の実施形態では、濃縮表面層はCoを含み、オプションでLi及びAlの1つまたは複数を含む。
【0038】
濃縮表面層は、0.9~1.5wt%のコバルトを含む。例えば、濃縮表面層は、1.0wt%以上、例えば、1.1wt%以上のコバルトを含み得る。濃縮表面層は、1.4wt%以下、例えば、1.3wt%以下のコバルトを含み得る。
【0039】
コバルトの少なくとも15、25、28、30、または35%が濃縮表面層内にあることが好ましい場合がある。コバルトの70%以下、例えば、60%、50%、または45%以下が表面濃縮層内にあることが好ましい場合がある。濃縮表面層内のコバルトの割合は、表面濃縮層内のコバルトのwt%をコア内のコバルトのwt%で除算することによって決定され得る(その値は、上述のように決定され得る)。
【0040】
一部の実施形態では、表面修飾は、(例えば、コバルト含有化合物の形態の)コバルト種を含む溶液への浸漬、それに続いて、表面修飾材料の乾燥、及び、オプションで、焼成を含む。溶液は、さらに(例えば、アルミニウム含有化合物の形態の)アルミニウム種、及び/または(例えば、リチウム含有化合物の形態の)リチウム種を含む場合がある。一部の実施形態では、溶液は、例えば、少なくとも50℃、例えば、少なくとも55℃または少なくとも60℃の温度まで加熱される。一部の実施形態では、表面修飾材料は、溶液と接触後、噴霧乾燥される。一部の実施形態では、表面修飾材料は、噴霧乾燥後、焼成される。
【0041】
粒子状リチウムニッケル酸化物材料は一般的に、少なくとも4μm、例えば、少なくとも5μm、少なくとも5.5μm、少なくとも6.0μm、または少なくとも6.5μmのD50粒径を有する。リチウムニッケル酸化物の粒子(例えば、二次粒子)は一般的に、20μm以下、例えば、15μm以下、または12μm以下のD50粒径を有する。一部の実施形態では、D50粒径は、約5μm~約20μm、例えば、約5μm~約19μm、例えば、約5μm~約18μm、例えば、約5μm~約17μm、例えば、約5μm~約16μm、例えば、約5μm~約15μm、例えば、約5μm~約12μm、例えば、約5.5μm~約12μm、例えば、約6μm~約12μm、例えば、約6.5μm~約12μm、例えば、約7μm~約12μm、例えば、約7.5μm~約12μmである。本明細書に別段の記載の無い限り、D50粒径は、Dv50(体積中位径)を指し、例えば、Malvern Mastersizer3000を用いて、ミー散乱近似で、ASTM B822 2017に設定された方法を使用することによって決定されてよい。
【0042】
一部の実施形態では、材料のD10粒径は、約0.1μm~約10μm、例えば、約1μm~約10μm、約2μm~約8μm、または約5μm~約7μmである。本明細書に別段の記載の無い限り、D10粒径は、Dv10(累積体積分布の10%径)を指し、例えば、Malvern Mastersizer3000を用いて、ミー散乱近似で、ASTM B822 2017に設定された方法を使用することによって決定されてよい。
【0043】
一部の実施形態では、材料のD90粒径は、約10μm~約40μm、例えば、約12μm~約35μm、約12μm~約30μm、約15μm~約25μm、または約16μm~約20μmである。本明細書に別段の記載の無い限り、D90粒径は、Dv90(累積体積分布において90%径)を指し、例えば、Malvern Mastersizer3000を用いて、ミー散乱近似で、ASTM B822 2017に設定された方法を使用することによって決定されてよい。
【0044】
一部の実施形態では、粒子状リチウムニッケル酸化物のタップ密度は、約1.9g/cm3~約2.8g/cm3、例えば、約1.9g/cm3~約2.4g/cm3である。
【0045】
材料のタップ密度は、メスシリンダに25mLの粉末を充填することによって、適切に測定することができる。粉末の質量を記録する。充填されたシリンダは、Copley Tapped Density Tester JV Seriesに移される。材料を2000回、タップし、体積を再測定する。再測定された体積を材料の質量で割ったものが、記録されるタップ密度である。
【0046】
粒子状リチウムニッケル酸化物は、0.3wt%以下の表面Li2CO3を含む。粒子状リチウムニッケル酸化物は、0.25wt%以下、例えば、0.2wt%または0.15wt%以下の表面Li2CO3を含み得る。粒子状リチウムニッケル酸化物は、0wt%の表面Li2CO3を有してよいが、一部の実施形態では、少なくとも0.01wt%、0.02wt%、0.04wt%、0.5wt%、または0.8wt%の表面Li2CO3があってよい。
【0047】
表面Li2CO3の量は、ブロモフェノールブルー指示薬を使用して、HClで滴定することによって決定されてよい。一般的に、HClとフェノールフタレイン指示薬とを用いた第1の滴定ステップが、ブロモフェノールブルー指示薬を用いた滴定の前に行われて、水酸化リチウムを取り除く。滴定プロトコルは、次のステップを含み得る。
・脱イオン水内で5分間、攪拌することによって粒子状リチウムニッケル酸化物材料の試料から表面の炭酸リチウムを抽出して、抽出物溶液を取得し、抽出物溶液を固形残留物から分離
・フェノールフタレイン指示薬を抽出物溶液に添加して、抽出物溶液が透明になる(LiOHが除去されたことを示す)まで、HCl溶液を使用して滴定
・ブロモフェノールブルー指示薬を抽出物溶液に添加して、抽出物溶液が黄色になるまでHCl溶液を使用して滴定(抽出物溶液中の炭酸リチウム量は、この滴定ステップから計算することができる)、そして、
・表面の炭酸リチウムの抽出物溶液中への100%抽出を想定して、粒子状リチウムニッケル酸化物材料の試料中の表面の炭酸リチウムのwt%を計算
【0048】
粒子状リチウムニッケル酸化物を調製するプロセスは一般的に、
リチウム含有化合物を、ニッケル含有化合物、コバルト含有化合物、マグネシウム含有化合物、及び、オプションで、M含有化合物、及び/またはアルミニウム含有化合物と混合するステップであって、単一化合物はオプションで、Ni、Co、Mg、Al、及びMの2つ以上を含み得る、混合物を取得するために混合するステップと、
その混合物を焼成して、第1の焼成材料を取得するステップと、
表面修飾ステップにおいて、第1の焼成材料を、コバルト含有化合物、及びオプションで、アルミニウム含有化合物、リチウム含有化合物、及びM含有化合物の1つまたは複数と接触させて、第1の焼成材料上に濃縮表面層を形成するステップと、を含み、
ここで、Mは、Mn、V、Ti、B、Zr、Sr、Ca、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、W、Mo、Ta、Y、Sc、Nb、Pb、Ru、Rh、及びZn、ならびに、これらの組み合わせから選択される。
【0049】
一部の実施形態では、第1の焼成材料は、式IIを有するコア材料であり、
【化3】
式中、
0.8≦a1≦1.2
0.8≦x1<1
0<y1≦0.5
0.005≦z1≦0.1
0≦p1≦0.01
0≦q1≦0.2、及び、
-0.2≦b1≦0.2
ここで、Mは、Mn、V、Ti、B、Zr、Sr、Ca、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、W、Mo、Ta、Y、Sc、Nb、Pb、Ru、Rh、及びZn、ならびに、これらの組み合わせから選択される。
【0050】
一部の実施形態では、p1=0であり、したがってコア材料は以下の式を有する。
【化4】
【0051】
一部の実施形態では、プロセスは、表面修飾ステップ後、追加の焼成ステップを含む。
【0052】
一部の実施形態では、q1=0である。
【0053】
リチウム含有化合物は、水酸化リチウム(例えば、LiOHまたはLiOH.H2O)、炭酸リチウム(Li2CO3)、及びそれらの水和物の形から選択されてよい。水酸化リチウムが特に好まれる場合がある。
【0054】
ニッケル含有化合物は、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、酸化ニッケル(NiO)、オキシ水酸化ニッケル(NiOOH)、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、及び、それらの水和物の形態から選択されてよい。水酸化ニッケルが特に好まれる場合がある。
【0055】
コバルト含有化合物は、水酸化コバルト(Co(OH)2)、酸化コバルト(CoO、Co2O3、Co3O4)、オキシ水酸化コバルト(CoOOH)、硫酸コバルト、硝酸コバルト、酢酸コバルト、及び、それらの水和物の形態から選択されてよい。水酸化コバルトが特に好まれる場合がある。
【0056】
マグネシウム含有化合物は、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、酸化マグネシウム(MgO)、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、及び、それらの水和物の形態から選択されてよい。水酸化マグネシウムが特に好まれる場合がある。
【0057】
M含有化合物は、水酸化M、酸化M、硝酸M、硫酸M、炭酸M、酢酸M、及び、それらの水和物の形態から選択されてよい。水酸化Mが特に好まれる場合がある。
【0058】
あるいは、ニッケル、コバルト、マグネシウム、及びオプションでMの2つ以上が、合金水酸化物、例えば、ニッケルコバルト混合水酸化物、またはニッケルコバルトM混合水酸化物として提供されてよい。合金水酸化物は、共沈水酸化物であってよい。合金水酸化物は、多結晶であってよい。
【0059】
合金水酸化物は、式IIIに従った組成を有してよい。
【化5】
式中、x、y、z、q、及びbは、本明細書では、それぞれ、別個に定義される。コバルト濃縮ステップが、(以下に記載のように)行われる場合、式IIIのyの値が、式Iのyの値より小さいことが好ましい場合がある。
【0060】
このような合金水酸化物は、当業者には周知の共沈法で調製されてよい。これらの方法は、例えば、アンモニアとNaOHなどの塩基の存在で、硫酸金属などの金属塩の溶液からの合金水酸化物の共沈を伴い得る。場合によっては、適切な合金水酸化物は、当業者に既知の商業的供給者から取得可能な場合がある。
【0061】
焼成ステップは、少なくとも400℃、少なくとも500℃、少なくとも600℃、または少なくとも650℃の温度で行われてよい。焼成ステップは、1000℃以下、900℃以下、800℃以下、または750℃以下の温度で行われてよい。焼成する材料は、少なくとも2時間、少なくとも5時間、少なくとも7時間、または少なくとも10時間、400℃、少なくとも500℃、少なくとも600℃、または少なくとも650℃の温度にあってよい。期間は、24時間未満であってよい。
【0062】
焼成ステップは、CO2の無い雰囲気下で行われてよい。例えば、CO2の無い空気が、焼成中、オプションで、冷却中、焼成する材料の上を流れてよい。CO2の無い空気は、例えば、酸素と窒素の混合であってよい。CO2の無い雰囲気は、酸素(例えば、純酸素)であってよい。好ましくは、雰囲気は、酸化雰囲気である。本明細書で使用される場合、「CO2が無い」という用語は、100ppm未満のCO2、例えば、50ppm未満のCO2、20ppm未満のCO2、または10ppm未満のCO2を含む雰囲気を含むことを意図している。これらのCO2レベルは、CO2スクラバを使用してCO2を除去することによって達成されてよい。
【0063】
一部の実施形態では、CO2の無い雰囲気は、O2とN2の混合物を含む。一部の実施形態では、この混合物は、O2より多くの量のN2を含む。一部の実施形態では、この混合物は、50:50~90:10、例えば、60:40~90:10、例えば、約80:20の比で、N2とO2を含む。
【0064】
一部の実施形態では、式Iの粒子状リチウムニッケル酸化物材料は、式IIを有するコア材料上に表面修飾ステップを行った結果として、コアと、コア表面の濃縮表面層とを含む表面修飾構造を含む。
【化6】
式中、
0.8≦a1≦1.2
0.8≦x1<1
0<y1≦0.5
0.005≦z1≦0.1
0≦p1≦0.01
0≦q1≦0.2、及び
-0.2≦b1≦0.2
ここで、Mは、Mn、V、Ti、B、Zr、Sr、Ca、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、W、Mo、Ta、Y、Sc、Nb、Pb、Ru、Rh、及びZn、ならびに、これらの組み合わせから選択される。
【0065】
表面修飾ステップは、コア材料を、アルミニウム含有化合物、及びオプションで、コバルト含有化合物、リチウム含有化合物、及びM含有化合物の1つまたは複数と接触させることを含み得る。アルミニウム含有化合物、ならびにオプションのコバルト含有化合物、リチウム含有化合物、及びM含有化合物は、溶液で、例えば、水溶液で提供されてよい。
【0066】
一部の実施形態では、p1=0であり、したがってコア材料は以下の式を有する。
【化7】
【0067】
一部の実施形態では、q1=0である。
【0068】
本発明のプロセスの表面修飾ステップ(本明細書では表面濃縮ステップとも呼ばれる)は、コア材料をコバルトと接触させて、粒界の、及び/または粒子の表面もしくはその近くのコバルトの濃度を増加させることを含む。一部の実施形態では、表面修飾ステップ(本明細書では表面濃縮ステップとも呼ばれる)は、コア材料を、アルミニウム、リチウム、及びMの1つまたは複数から選択された追加の金属と接触させて、粒界の、及び/または粒子の表面もしくはその近くのこのような金属の濃度を増加させることを含む。表面修飾は、コア材料を、コバルト含有化合物、及びオプションで、1つまたは複数の追加の金属含有化合物と接触させることによって行われてよい。例えば、化合物は、硝酸塩、硫酸塩、または酢酸塩から別々に選択されてよい。硝酸塩が特に好まれる場合がある。化合物は、溶液(例えば、水溶液)で提供されてよい。化合物は、水溶性であってよい。
【0069】
コア材料とコバルト含有化合物及びオプションで1つまたは複数の追加の金属含有化合物との混合物は、例えば、少なくとも50℃など、少なくとも40℃の温度に加熱されてよい。温度は、100℃未満または80℃未満であってよい。コバルト含有化合物及びオプションの1つまたは複数の追加の金属含有化合物が溶液で提供される場合、中間体を有する溶液の混合物は、例えば、溶媒の蒸発によって、または噴霧乾燥によって乾燥されてよい。
【0070】
コバルト含有化合物、及びオプションの1つまたは複数の追加の金属含有化合物は、本明細書では「表面修飾組成物」と称される組成物として提供されてよい。表面修飾組成物は、コバルト含有化合物、及びオプションの1つまたは複数の追加の金属含有化合物の溶液(例えば、水溶液)を含み得る。
【0071】
表面修飾組成物は、コバルト含有化合物と、オプションで、リチウム含有化合物、アルミニウム含有化合物、及びM含有化合物の1つまたは複数とを含み得る。
【0072】
表面修飾ステップで使用されるコバルト含有化合物、アルミニウム含有化合物、リチウム含有化合物、及びM含有化合物は、中間の(コア)材料の形成時に使用されるコバルト含有化合物、アルミニウム含有化合物、リチウム含有化合物、及びM含有化合物を参照して上記に定義した通りであってよい。コバルト含有化合物及び1つまたは複数の追加の金属含有化合物の各々は、金属含有硝酸塩であることが特に好ましい場合がある。アルミニウム含有化合物は、硝酸アルミニウムであることが特に好ましい場合がある。リチウム含有化合物は硝酸リチウムであることが特に好ましい場合がある。コバルト含有化合物が硝酸コバルトであることが特に好ましい場合がある。コバルト含有化合物、追加のアルミニウム含有化合物、及び追加のリチウム含有化合物は水溶性であることが好ましい場合がある。
【0073】
一部の実施形態では、表面修飾ステップは、コア材料を水溶液中で追加の金属含有化合物に接触させることを含む。コア材料が、水溶液に追加されて、スラリーまたは懸濁液を形成してよい。一部の実施形態では、スラリーは、攪拌される、またはかき混ぜられる。一部の実施形態では、コア材料を水溶液に加えた後のスラリー中のコア材料と水の重量比は、約1.5:1~約1:1.5、例えば、約1.4:1~約1:1.4、約1.3:1~約1:1.3、約1.2:1~約1:1.2、または約1.1:1~約1:1.1である。重量比は、約1:1であってよい。
【0074】
一般的に、表面修飾ステップは、上記の第1の焼成ステップの後に行われる。
【0075】
表面修飾ステップに第2の焼成ステップが続いてよい。第2の焼成ステップは、少なくとも400℃、少なくとも500℃、少なくとも600℃、または少なくとも650℃の温度で行われてよい。第2の焼成ステップは、1000℃以下、900℃以下、800℃以下、または750℃以下の温度で行われてよい。焼成する材料は、少なくとも30分、少なくとも1時間、または少なくとも2時間、400℃、少なくとも500℃、少なくとも600℃、または少なくとも650℃の温度にあってよい。期間は、24時間未満であってよい。第2の焼成ステップは、第1の焼成ステップより短くてよい。
【0076】
第2の焼成ステップは、第1の焼成ステップを参照して前述したようにCO2の無い雰囲気下で行われてよい。
【0077】
プロセスは、1つまたは複数のミリングステップを含んでよく、ミリングステップは、第1及び/または第2の焼成ステップ後に行われてよい。ミリング機器の性質は特に限定しない。例えば、ミリング機器は、ボールミル、プラネタリボールミル、またはローリングミル(rolling bed mill)であってよい。ミリングは、粒子(例えば、二次粒子)が所望のサイズに到達するまで、行われてよい。例えば、リチウムニッケル酸化物の粒子(例えば、二次粒子)は一般的に、少なくとも5μm、例えば、少なくとも5.5μm、少なくとも6μm、または少なくとも6.5μmのD50粒径を有するまでミリングされる。リチウムニッケル酸化物の粒子(例えば、二次粒子)は一般的に、15μm以下、例えば、14μm以下、または13μm以下のD50粒径を有するまで、ミリングされる。
【0078】
本発明のプロセスは、リチウムニッケル酸化物材料を含む電極(一般的にはカソード)を形成するステップをさらに含んでよい。一般的に、これは、粒子状リチウムニッケル酸化物のスラリーを形成することと、集電体(例えば、アルミニウム集電体)の表面にスラリーを塗布することと、オプションで、電極の密度を高めるための加工(例えば、カレンダ加工)によって行われる。スラリーは、溶媒、バインダ、炭素材料、及び追加の添加剤の1つまたは複数を含み得る。
【0079】
一般的に、本発明の電極は、少なくとも2.5g/cm3、少なくとも2.8g/cm3、または少なくとも3g/cm3の電極密度を有する。本発明の電極は、4.5g/cm3以下、または4g/cm3以下の電極密度を有してよい。電極密度は、電極の電極密度(質量/体積)で、電極が形成された集電体を含まない。したがって、電極密度は、活物質、あらゆる添加剤、あらゆる追加の炭素材料、及びあらゆる残りのバインダからの寄与を含む。
【0080】
本発明のプロセスは、リチウムニッケル酸化物を含む電極を含む電池または電気化学セルを構築することをさらに含み得る。電池またはセルは一般的に、アノード及び電解質をさらに含む。電池またはセルは一般的に、二次(再充電可能な)リチウム(例えば、リチウムイオン)電池であってよい。
【0081】
ここで、以下の実施例を参照して本発明を説明する。実施例は、本発明の理解を助けるために提供されており、本発明の範囲を制限することを意図していない。
【0082】
実施例
比較例1-基材の調製
比較例1A-基材1(Li1.030Ni0.953Co0.030Mg0.010O2)
100gのNi0.960Co0.031Mg0.099(OH)2と26.36gのLiOHを30分間、ポリプロピレン瓶で乾燥混合した。LiOHは、真空下200℃で24時間、予備乾燥し、乾燥N2で満ちたパージされたグローブボックスで乾燥状態を保った。
【0083】
粉末混合物は、99%+アルミナるつぼに充填され、N2:O2が80:20であるCO2の無い人工の混合空気下で焼成した。焼成は、450℃(5℃/分)まで行って2時間ホールドし、700℃(2℃/分)まで上昇させて6時間ホールドし、130℃まで自然に冷ました。人工の混合空気は、焼成及び冷却中を通して粉体層の上を流れていた。表題の化合物は、このようにして得られた。
【0084】
次に、試料を130℃で炉から取り除き、高アルミナライニングミルポットに移し、D50が12.0μmと12.5μmの間になるまで、ローリングミル(rolling bed mill)でミリングした。
【0085】
D50は、ミー散乱近似で、Malvern Mastersizer3000を用いて、ASTM B822 2017に従って測定され、9.5μmであることが分かった。材料の化学式は、ICP分析によってLi1.030Ni0.953Co0.030Mg0.010O2と決定した。
【0086】
比較例1B-基材2(Li1.019Ni0.949Co0.031Mg0.020O2)
26.21gのLiOHを100gのNi0.948Co0.031Mg0.021(OH)2と乾燥混合する以外は、比較例1Aの手順を繰り返した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、10.2μmであることが分かった。材料の化学式は、ICP分析によってLi1.019Ni0.949Co0.031Mg0.020O2と決定した。
【0087】
比較例1C-基材3(Li1.027Ni0.923Co0.049Mg0.029O2)
24.8gのLiOHを100gのNi0.917Co0.050Mg0.033(OH)2と乾燥混合する以外は、比較例1Aの手順を繰り返した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、9.65μmであることが分かった。材料の化学式は、ICP分析によってLi1.027Ni0.923Co0.049Mg0.029O2と決定した。
【0088】
比較例1D-基材4(Li1.007Ni0.923Co0.049Mg0.038O2)
25.92gのLiOHを100gのNi0.915Co0.049Mg0.036(OH)2と乾燥混合する以外は、比較例1Aの手順を繰り返した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、12.2μmであることが分かった。材料の化学式は、ICP分析によってLi1.007Ni0.923Co0.049Mg0.038O2と決定した。
【0089】
比較例1E-基材5(Li0.998Ni0.917Co0.049Mg0.052O2)
25.75gのLiOHを100gのNi0.903Co0.048Mg0.049(OH)2と乾燥混合する以外は、比較例1Aの手順を繰り返した。表題の化合物は、このようにして得られた。材料の化学式は、ICP分析によってLi0.998Ni0.917Co0.049Mg0.052O2と決定した。
【0090】
比較例1F-基材6(Li1.024Ni0.926Co0.045Mg0.037O2)
25.94gのLiOHを100gのNi0.918Co0.045Mg0.037(OH)2と乾燥混合する以外は比較例1Aの手順を繰り返した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、9.0μmであることが分かった。材料の化学式は、ICP分析によってLi1.024Ni0.926Co0.045Mg0.037O2と決定した。
【0091】
比較例1G-基材7(Li1.003Ni0.956Co0.030Mg0.020O2)
26.20gのLiOHを100gのNi0.952Co0.029Mg0.019(OH)2と乾燥混合する以外は、比較例1Aの手順を繰り返した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、9.6μmであることが分かった。材料の化学式は、ICP分析によってLi1.003Ni0.956Co0.030Mg0.020O2と決定した。
【0092】
比較例1H-基材8(Li1.009Ni0.957Co0.030Mg0.015O2)
26.29gのLiOHを100gのNi0.957Co0.029Mg0.014(OH)2と乾燥混合する以外は、比較例1Aの手順を繰り返した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、9.3μmであることが分かった。材料の化学式は、ICP分析によってLi1.009Ni0.957Co0.030Mg0.015O2と決定した。
【0093】
比較例1J-基材9(Li1.005Ni0.944Co0.029Mg0.038O2)
25.96gのLiOHを100gのNi0.935Co0.029Mg0.037(OH)2と乾燥混合する以外は比較例1Aの手順を繰り返した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、10.7μmであることが分かった。材料の化学式は、ICP分析によってLi1.005Ni0.944Co0.029Mg0.038O2と決定した。
【0094】
比較例1K-基材10(Li0.996Ni0.914Co0.053Mg0.051O2)
25.75gのLiOHを100gのNi0.900Co0.053Mg0.048(OH)2と乾燥混合する以外は、比較例1Aの手順を繰り返した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、9.49μmであることが分かった。材料の化学式は、ICP分析によってLi0.996Ni0.914Co0.053Mg0.051O2と決定した。
【0095】
以下の表3に列挙する基材12~20は、基材1~10と類似のプロセスによって製造された。
【0096】
実施例1-表面修飾材料の調製
実施例1A-化合物1(Li1.018Ni0.930Co0.049Mg0.010Al0.006O2)
比較例1Aの生成物を53μmのふるいにかけ、N2パージされたグローブボックスに移した。100mLの水に5.91gのCo(NO3)2.6H2O、0.47gのLiNO3、及び2.44gのAl(NO3)3.9H2Oを含む水溶液を60℃と65℃の間に加熱した。ふるいにかけた粉末100gを、激しくかき混ぜながら素早く追加した。スラリーを60℃と65℃の間の温度で、上澄みが無色になるまでかきまぜた。次に、スラリーを噴霧乾燥した。
【0097】
噴霧乾燥後、粉末は、99%+アルミナるつぼに充填され、N2:O2が80:20であるCO2の無い人工の混合空気下で焼成した。焼成は、130℃(5℃/分)まで上昇させて、5.5時間ホールドし、450℃(5℃/分)まで上昇させて1時間ホールドし、700℃(2℃/分)まで上昇させて2時間ホールドし、130℃まで自然に冷ました。人工の混合空気は、焼成及び冷却中を通して粉体層の上を流れていた。表題の化合物は、このようにして得られた。
【0098】
次に、試料を130℃で炉から取り除き、パージされたN2で満たされたグローブボックスに移した。
【0099】
試料は、ローリングミル(rolling bed mill)上の高アルミナライニングミルポットでミリングされた。ミリングの目標エンドポイントは、D50が10μmと11μmの間であった。D50がミリング後に測定され、9.5μmであることが分かった。試料を53μmのふるいにかけ、パージされたN2で満たされたグローブボックスに保管した。材料の水分量は0.18wt%であった。材料の化学式は、ICP分析によってLi1.018Ni0.930Co0.049Mg0.010Al0.006O2と決定した。
【0100】
実施例1B-化合物2(Li1.002Ni0.927Co0.053Mg0.020Al0.0065O2)
水溶液が5.90gのCo(NO3)2.6H2O、0.47gのLiNO3、及び2.43gのAl(NO3)3.9H2Oを100mLの水に含む以外は、比較例1Bの生成物は、実施例1Aで記載された手順を経験した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、8.5μmであることが分かった。材料の水分量は0.28wt%であった。材料の化学式は、ICP分析によってLi1.002Ni0.927Co0.053Mg0.020Al0.0065O2と決定した。
【0101】
実施例1C-化合物3(Li0.995Ni0.909Co0.068Mg0.027Al0.0065O2)
水溶液が5.89gのCo(NO3)2.6H2O、0.46gのLiNO3、及び2.43gのAl(NO3)3.9H2Oを100mLの水に含む以外は、比較例1Cの生成物は、実施例1Aで記載された手順を経験した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、7.61μmであることが分かった。材料の水分量は0.2wt%であった。材料の化学式は、ICP分析によってLi0.995Ni0.909Co0.068Mg0.027Al0.0065O2と決定した。
【0102】
実施例1D-化合物4(Li0.985Ni0.913Co0.061Mg0.037Al0.0069O2)
水溶液が3.94gのCo(NO3)2.6H2Oと2.43gのAl(NO3)3.9H2Oを100mLの水に含むが、LiNO3を含まないという以外は、比較例1Dの生成物は、実施例1Aに記載された手順を経験した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、11.7μmであることが分かった。材料の水分量は0.26wt%であった。材料の化学式は、ICP分析によってLi0.985Ni0.913Co0.061Mg0.037Al0.0069O2と決定した。
【0103】
実施例1E-化合物5(Li0.980Ni0.905Co0.061Mg0.051Al0.0065O2)
水溶液が3.93gのCo(NO3)2.6H2Oと2.42gのAl(NO3)3.9H2Oを100mLの水に含むが、LiNO3を含まないという以外は、比較例1Eの生成物は、実施例1Aに記載された手順を経験した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、10.7μmであることが分かった。材料の水分量は0.09wt%であった。材料の化学式は、ICP分析によってLi0.980Ni0.905Co0.061Mg0.051Al0.0065O2と決定した。
【0104】
実施例1F-化合物6(Li1.003Ni0.923Co0.045Mg0.038Al0.0062O2)
水溶液が2.43gのAl(NO3)3.9H2Oを100mLの水に含むが、Co(NO3)2.6H2OもLiNO3も含まないということを除いては、比較例1Fの生成物は、実施例1Aで記載された手順を経験した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、7.5μmであることが分かった。材料の水分量は0.18wt%であった。材料の化学式は、ICP分析によってLi1.003Ni0.923Co0.045Mg0.038Al0.0062O2と決定した。
【0105】
実施例1G-化合物7(Li0.997Ni0.952Co0.029Mg0.019Al0.0065O2)
水溶液が2.44gのAl(NO3)3.9H2Oを100mLの水に含むが、Co(NO3)2.6H2OもLiNO3も含まないということを除いては、比較例1Gの生成物は、実施例1Aで記載された手順を経験した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、7.9μmであることが分かった。材料の水分量は0.29wt%であった。材料の化学式は、ICP分析によってLi0.997Ni0.952Co0.029Mg0.019Al0.0065O2と決定した。
【0106】
実施例1H-比較化合物8(Li1.002Ni0.919Co0.064Mg0.014Al0.0062O2)
水溶液が11.82gのCo(NO3)2.6H2O、1.88gのLiNO3、及び2.44gのAl(NO3)3.9H2Oを100mLの水に含む以外は、比較例1Hの生成物は、実施例1Aで記載された手順を経験した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、8.2μmであることが分かった。材料の水分量は0.29wt%であった。材料の化学式は、ICP分析によってLi1.002Ni0.919Co0.064Mg0.014Al0.0062O2と決定した。
【0107】
実施例1J-化合物9(Li0.980Ni0.909Co0.066Mg0.037Al0.0066O2)
水溶液が11.77gのCo(NO3)2.6H2O、1.87gのLiNO3、及び2.44gのAl(NO3)3.9H2Oを100mLの水に含む以外は、比較例1Jの生成物は、実施例1Aで記載された手順を経験した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、10.0μmであることが分かった。材料の水分量は0.08wt%であった。材料の化学式は、ICP分析によってLi0.980Ni0.909Co0.066Mg0.037Al0.0066O2と決定した。
【0108】
実施例1K-化合物10(Li0.987Ni0.900Co0.064Mg0.051Al0.0065O2)
水溶液が3.93gのCo(NO3)2.6H2Oと2.42gのAl(NO3)3.9H2Oを100mLの水に含むが、LiNO3を含まないという以外は、比較例1Kの生成物は、実施例1Aに記載された手順を経験した。表題の化合物は、このようにして得られた。D50は、9.4μmであることが分かった。材料の水分量は0.17wt%であった。材料の化学式は、ICP分析によってLi0.987Ni0.90Co0.064Mg0.051Al0.0065O2と決定した。
【0109】
実施例1L-化合物11(Li0.984Ni0.877Co0.115Mg0.010Al0.0066O2)
100gのNi0.905Co0.084Mg0.010(OH)2と26.33gのLiOHを1時間、ポリプロピレン瓶で乾燥混合した。LiOHは、真空下200℃で24時間、予備乾燥し、乾燥N2でパージされたグローブボックスで乾燥状態を保った。
【0110】
粉末混合物は、99%+アルミナるつぼに充填され、N2:O2が80:20であるCO2の無い人工の混合空気下で焼成した。焼成は、450℃(5℃/分)まで行って2時間ホールドし、700℃(2℃/分)まで上昇させて6時間ホールドし、130℃まで自然に冷ました。人工の混合空気は、焼成及び冷却中を通して粉体層の上を流れていた。
【0111】
次に、試料を130℃で炉から取り除き、パージされたN2で満たされたグローブボックスに移した。試料を高アルミナライニングミルポットに移し、D50が12.0μm~12.5μmの間になるまでローリングミル(rolling bed mill)でミリングした。
【0112】
ミリング後、生成物を53μmのふるいにかけ、パージされたN2で満たされたグローブボックスに移した。100mLの水に11.83gのCo(NO3)2.6H2O、1.88gのLiNO3、及び2.44gのAl(NO3)3.9H2Oを含む水溶液を60℃と65℃の間に加熱した。ふるいにかけた粉末100gを、激しくかき混ぜながら素早く追加した。スラリーを60℃と65℃の間の温度で、上澄みが無色になるまでかきまぜた。次に、スラリーを噴霧乾燥した。
【0113】
噴霧乾燥後、粉末は、99%+アルミナるつぼに充填され、N2:O2が80:20であるCO2の無い人工の混合空気下で焼成した。焼成は、130℃(5℃/分)まで上昇させて、5.5時間ホールドし、450℃(5℃/分)まで上昇させて1時間ホールドし、700℃(2℃/分)まで上昇させて2時間ホールドし、130℃まで自然に冷ました。人工の混合空気は、焼成及び冷却中を通して粉体層の上を流れていた。表題の化合物は、このようにして得られた。
【0114】
次に、試料を130℃で炉から取り除き、N2で満たされたグローブボックスに移した。
【0115】
試料をローリングミル(rolling bed mill)上の高アルミナライニングミルポットでミリングした。ミリングのエンドポイントは、D50が10μmと11μmの間であった。D50がミリング後に測定され、8.8μmであることが分かった。試料を53μmのふるいにかけ、パージされたN2で満たされたグローブボックスに保管した。
【0116】
材料の水分量は0.4wt%であった。材料の化学式は、ICP分析によってLi0.984Ni0.877Co0.115Mg0.010Al0.0066O2と決定した。
【0117】
下記の表3に列挙する化合物12~20は、化合物1~10と類似のプロセスによって以下の基材を使用して製造された。
【0118】
【0119】
Li
2
CO
3
含有量
試料の表面のLi2CO3含有量は、フェノールフタレインとブロモフェノールブルーによる2段階の滴定を使用して決定した。滴定に関しては、脱イオン水中で5分間攪拌することによって、表面の炭酸リチウムを各材料の試料から抽出して、抽出物溶液を提供し、抽出物溶液を固形残留物から分離した。フェノールフタレイン指示薬を抽出物溶液に添加して、抽出物溶液が透明になる(LiOHが除去されたことを示す)まで、HCl溶液を使用して滴定した。ブロモフェノールブルー指示薬を抽出物溶液に添加して、抽出物溶液が黄色に変わるまで、HCl溶液を使用して滴定した。抽出物溶液中の炭酸リチウムの量を、このブロモフェノール滴定ステップから計算し、表面の炭酸リチウムが抽出物溶液内に100%抽出されたと想定して、各試料の表面の炭酸リチウムのwt%を計算した。
【0120】
テストした材料の結果は、表2の通りである。
【0121】
【0122】
濃縮表面層のコバルト含有量と表面Li
2CO
3含有量との間の関係性を示すプロットが
図1に示されている。
【0123】
組成分析
比較材料と発明の材料におけるマグネシウムとコバルトの総含有量(粒子の総重量に基づいた重量%)をICPによって決定して下記の表3に記載した。
【0124】
表面のコバルト含有量を、基材のICPによるCoのwt%を最終材料のICPによるCoのwt%から減算することによって計算した。コアのコバルト含有量は、基材のICPによるCoのwt%とみなされる。
【0125】
ICP(誘導結合プラズマ)
化合物の元素組成をICP-OESによって測定した。このために、材料の0.1gを~130℃で100mLまで作成された王水(塩酸と硝酸の比が3:1)で溶かした。マトリクスマッチング較正基準と内部標準としてのイットリウムとを用いてAgilent5110でICP-OES分析を行った。使用したラインと較正基準は、機器が推奨したものである。
【0126】
電気化学的試験
電極は、65%固体のインクを用いて、活物質:カーボン:バインダが94:3:3の処方で製作した。SuperC65カーボン0.6gをN-メチルピロリドン(NMP)5.25gとThinky(登録商標)ミキサで混合した。活物質18.80gを加えて、Thinky(登録商標)ミキサを使用してさらに混ぜ合わせた。最後に、Solef(登録商標)5130バインダ溶液6.00g(NMPで10wt%)を加えて、Thinkyミキサで混ぜ合わせた。結果として生じるインクは、125μmの固定刃塗布装置(fixed blade coater)を用いてアルミニウムホイル上に流し、120℃で60分乾燥させた。乾燥すると、電極シートを密度3g/cm3になるようにMTIカレンダでカレンダ加工した。個々の電極を切断して、真空下で一晩乾燥させ、アルゴンを満たしたグローブボックスに移した。リチウムアノードと1MのLiPF6を用いて、EC(エチレンカーボネート):EMC(エチルメチルカーボネート):DMC(ジメチルカーボネート)+1wt%のVC(ビニレンカーボネート)電解質の比が1:1:1でコイン電池を構築した。選択された電極は、ローディング9.0mg/cm2と、密度3g/cm3を有した。電気化学的測定値は、23℃で、3.0~4.3Vの電圧窓を用いて3つのセルの平均から取得した。
【0127】
評価した電気化学的特性は、第1のサイクル効率(FCE)、0.1C比容量、1.0C比容量、容量保持率、及び10sパルスを用いたDCIR成長を含む。
【0128】
容量保持率及びDCIR成長は、1Cで50サイクル後の性能に基づいて決定した。
【0129】
下記の表3は、テストした材料の詳細を含む。
【0130】
【表3-1】
【表3-2】
【表4-1】
【表4-2】
【国際調査報告】