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特表2023-519369ヘムペルオキシダーゼを生産するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】ヘムペルオキシダーゼを生産するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/08 20060101AFI20230428BHJP
   C12N 15/53 20060101ALN20230428BHJP
【FI】
C12N9/08 ZNA
C12N15/53
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558377
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2021057532
(87)【国際公開番号】W WO2021191253
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】20165131.2
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20167716.8
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20177549.1
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Linux
2.UNIX
(71)【出願人】
【識別番号】517047651
【氏名又は名称】テヒニッシュ・ウニベルズィテート・ウイーン
【氏名又は名称原語表記】Technische Universitat Wien
【住所又は居所原語表記】Karlsplatz 13, 1040 Wien, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フーマー、ディアナ
(72)【発明者】
【氏名】スパディウト、オリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】エブナー、ユリアン
【テーマコード(参考)】
4B050
【Fターム(参考)】
4B050CC03
4B050DD13
4B050FF01
4B050GG10
4B050KK03
4B050LL05
(57)【要約】
本発明は、封入体(IB)からヘムペルオキシダーゼを生産するための方法であって:前記ヘムペルオキシダーゼをIBの形態で提供する工程、前記IBを可溶化する工程、前記可溶化されたIBをリフォールディング緩衝液中に移してリフォールディングミックスを得る工程、前記リフォールディングミックスにヘム補因子を添加する工程を含み、前記リフォールディングミックスへの前記ヘム補因子の添加が、少なくとも1時間の期間にわたって配分される、前記方法を提供する。本発明は、ヘムペルオキシダーゼ製品を生産するための方法をさらに提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
封入体(IB)からヘムペルオキシダーゼを生産するための方法であって:
-前記ヘムペルオキシダーゼをIBの形態で提供する工程;
-前記IBを可溶化する工程;
-前記可溶化されたIBをリフォールディング緩衝液中に移してリフォールディングミックスを得る工程;
-前記リフォールディングミックスにヘム補因子を添加する工程、
を含み、
前記リフォールディングミックスへの前記ヘム補因子の添加が、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間、より好ましくは少なくとも3時間、なおより好ましくは少なくとも6時間、特に少なくとも10時間の期間にわたって配分される、前記方法。
【請求項2】
前記ヘム補因子が、連続フィードとして前記リフォールディングミックスに添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リフォールディングミックスが、前記ヘム補因子の添加の前に少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間、なおより好ましくは少なくとも4時間、特に少なくとも8時間インキュベートされる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヘムペルオキシダーゼが、クラスII又はクラスIIIのヘムペルオキシダーゼ、好ましくはクラスIIIのヘムペルオキシダーゼ、特にセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ヘムペルオキシダーゼが、配列番号3と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、なおより好ましくは少なくとも90%、なおより好ましくは少なくとも95%、さらになおより好ましくは少なくとも98%、さらになおより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、特に、前記ヘムペルオキシダーゼが、配列番号3に記載されているアミノ酸配列を含み、最も好ましくは、前記ヘムペルオキシダーゼが、配列番号4に記載されているアミノ酸配列からなる、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ヘム補因子が、ヘミンである、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記のIBの形態のヘムペルオキシダーゼが:
-前記ヘムペルオキシダーゼをコードする遺伝子を発現する宿主細胞を培養する工程;及び
-前記宿主細胞からIBを得る工程、
によって提供され、好ましくは、前記宿主細胞が、原核細胞、好ましくは大腸菌細胞である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記可溶化が、可溶化緩衝液において前記IBをインキュベートすることを含み、好ましくは、前記可溶化緩衝液が、8~12.5、好ましくは8.5~11.5、より好ましくは9~11、なおより好ましくは9.5~10.5のpHを有する、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記可溶化緩衝液が、1~50mmol/L、好ましくは2~25mmol/L、より好ましくは4~15mmol/L、特に6~8mmol/Lのジチオスレイトール(DTT)濃度に相当する還元状態を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ヘム補因子が前記リフォールディングミックスに添加された後に、リフォールディングされたヘムペルオキシダーゼを精製する工程をさらに含み、好ましくは、前記方法が、リフォールディングされたヘムペルオキシダーゼから不純物を除去するための遠心分離工程をさらに含み、及び/又は、前記ヘムペルオキシダーゼが、疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)によって精製される、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の方法によってヘムペルオキシダーゼを生産することを含む、ヘムペルオキシダーゼ製品を生産するための方法。
【請求項12】
ヘムペルオキシダーゼコンジュゲートを得るためのコンジュゲーション反応をさらに含み、好ましくは、前記ヘムペルオキシダーゼが、結合物質にコンジュゲートされ、好ましくは、前記ヘムペルオキシダーゼが、抗体、抗体断片、抗体模倣体、抗体結合タンパク質、又はストレプトアビジンにコンジュゲートされる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ヘムペルオキシダーゼ又は前記ヘムペルオキシダーゼコンジュゲートを精製する、凍結する、及び/又は凍結乾燥する工程をさらに含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記ヘムペルオキシダーゼ又はヘムペルオキシダーゼコンジュゲートを固体担体に固定化する工程をさらに含み、好ましくは、前記固体担体が、ナノ粒子、カーボン/ポリビニル材料、又は膜である、請求項11~請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ヘムペルオキシダーゼ又は前記ヘムペルオキシダーゼコンジュゲートをキットにパッケージングする工程をさらに含む、請求項11~請求項14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘムペルオキシダーゼを生産するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘムペルオキシダーゼは、免疫アッセイ、診断キット、ELISA、EMSA、ウエスタンブロッティング及びサザンブロッティングなどのプローブベースのアッセイ技術、廃液処理、有機合成における試薬として、並びに潜在的な治療用途を含め、広範な用途を有する産業的に重要なクラスの酵素である。このクラスのヘムペルオキシダーゼのよく知られたメンバーとして、研究及び産業において一般的に使用されているセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)がある。
【0003】
これまで、ヘムペルオキシダーゼはしばしば植物から生産されており、例えば、HRPは、セイヨウワサビ(Armoracia rusticana)の毛状根培養物からの抽出により主に生産されている。しかし、これは非効率で時間のかかるプロセスである。欠点として、低い収率、長い培養時間、季節的にしか利用可能でないこと、不均質なイソ酵素組成(調製物ごとに生化学的特性が異なる)、根の成長中の条件への依存、及び、ヒトに対して免疫原性で結果として医療用に非適格となり得る植物グリコシル化パターンが挙げられる。
【0004】
ヘムペルオキシダーゼの組換え生産は、規定された酵素調製物の安定供給を高品質で保障するより有望な製造方式であるため、望ましい代替案である。特に、大腸菌(E.coli)における組換え生産は、グリコシル化及びこれによる免疫原性を欠きながら、安定な生化学的特性を有する単一のアイソフォームの規定された調製物を得ることを可能にし得る。
【0005】
しかしながら、天然のヘムペルオキシダーゼの組換え生産は難易度が高い。例えば、HRPは8つのアスパラギン残基におけるグリコシル化を含んでおり、組換え生産を困難にしている。大腸菌から生産される野生型HRPは、植物由来酵素と比較して低い安定性を示す。
【0006】
様々な宿主(哺乳類細胞、昆虫細胞、酵母(ピキア・パストリス及びサッカロマイセス・セレビシエ)、他の植物(ニコチアナ・タバカム、ニコチアナ・ベンサミアナ、アルモラシア・ラファチフォリア)、並びに大腸菌)においてヘムペルオキシダーゼを組換え生産するための数多くの試みがなされている。しかし、これらの生産戦略は、結果として、非常に低い収率、並びに/又は酵素活性及び安定性の減少に終わっている。大腸菌における生産では、これは、大腸菌細胞質内の還元条件による封入体形成を引き起こす、タンパク質の細胞内生産に起因して生じる。したがって、この下流のプロセスは、例えば酵母におけるよりも複雑である。上記の酵素はシグナル配列を付加することによってペリプラズムに移行させることもできるが、この場合、収率はさらに低く、移行タグの付加によって酵素の活性及び安定性が損なわれる可能性がある。また、大腸菌は翻訳後修飾を行えないため、酵素がグリコシルされず、結果としてタンパク質の安定性の低減を引き起こす。
【0007】
組換え生産されたHRPの特性を改良する目的で過去にいくつかの研究が実施されている。変異によってHRP特性を改良するための試みの概要は、Humer and Spadiut ("Improving the performance of horseradish peroxidase by site-directed mutagenesis." International Journal of Molecular Sciences 20.4 (2019): 916)に提供されており、安定性及び/又は酵素活性に対する多数の変異の影響が開示されている。
【発明の概要】
【0008】
しかしながら、これらの努力の全てにかかわらず、ヘムペルオキシダーゼを生産する新しい改良された方法がまだ存在しない。特に、好適な宿主、特に大腸菌においてヘムペルオキシダーゼを組換え生産し精製するための方法が必要とされる。本発明の目的は、かかる方法を提供することである。
【0009】
したがって、本発明は、封入体(IB;inclusion body)からヘムペルオキシダーゼを生産するための方法であって:
-前記ヘムペルオキシダーゼをIBの形態で提供する工程;
-前記IBを可溶化する工程;
-前記可溶化されたIBをリフォールディング緩衝液中に移してリフォールディングミックスを得る工程;
-前記リフォールディングミックスにヘム補因子を添加する工程
を含み、前記リフォールディングミックスへの前記ヘム補因子の添加が、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間、より好ましくは少なくとも3時間、なおより好ましくは少なくとも6時間、特に少なくとも10時間の期間にわたって配分される、前記方法を提供する。
【0010】
加えて、本発明は、本発明によるヘムペルオキシダーゼを生産することを含む、ヘムペルオキシダーゼ製品を生産するための方法を提供する。
【0011】
本発明に関して、驚くべきことに、ヘムペルオキシダーゼのリフォールディングプロセスは、前記リフォールディングミックスへの前記ヘム補因子の添加がある特定の期間にわたって配分されるときに、強力に改良され得ることが見出された(実施例3、特に、表5及び表6の比較を参照されたい)。特定の理論に拘束されないが、本発明者らは、この有益な効果は前記ヘム補因子の疎水性の性質に起因すると推測する。この補因子はホロ酵素を形成する必要があるため、リフォールディング収率はリフォールディング後の正確にフォールディングされたヘムペルオキシダーゼへの組み込みに利用可能な遊離ヘム補因子に左右される。前記補因子の疎水性の性質に起因して、1回の工程で添加されると組み込みに利用可能でない凝集体を形成する可能性がある。
【0012】
本明細書においてより詳細に以下に記載されているように、前記リフォールディングミックスが、前記ヘム補因子を添加する前のある特定の期間にわたってインキュベートされるとき(特に、図1を参照されたい)、ある特定のレドックス特性及びpH値を有する可溶化緩衝液及びリフォールディング緩衝液が使用されるとき(実施例2~5を参照されたい)、リフォールディング後にある特定の塩濃度を用いた析出工程が含まれているとき(実施例4、表9を参照されたい)、並びに、タンパク質が、疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC;hydrophobic interaction chromatography)によってさらに精製されるとき(実施例4を参照されたい)、さらに有利な効果が観察された。重要なことに、これらの個々の特徴の全てが互いに独立に有利な効果を有し得る。また、これらのいくつか、又は、特にこれらの全てが組み合わされるときに、高度に最適化された効率的なプロセスが得られる(特に実施例5を参照されたい)。
【0013】
この新しい改良された生産プロセスに加えて、本明細書では、野生型HRP及び公知のHRP変異体を超えて改良された熱安定性及び反応速度パラメータを提供するだけでなく、特に本発明による方法を用いた、細菌における組換え生産に特によく適している新しいHRP変異体を開示する。これにより、強力に改良されたヘムペルオキシダーゼ及び高度に効率的な生産プロセスの組み合わせが可能になる。
【0014】
タンパク質発現及びIBからのリフォールディングのための技術は確立されており、当該分野において一般的に使用されている。かかる技術の概説は、例えば、Cabrita and Bottomley ("Protein expression and refolding - A practical guide to getting the most out of inclusion bodies." Biotechnology Annual Review 10 (2004): 31-50)、及び、Yamaguchi and Miyazaki ("Refolding techniques for recovering biologically active recombinant proteins from inclusion bodies. " Biomolecules 4.1 (2014): 235-251)に提供されている。大腸菌などの細菌における組換えタンパク質の過剰発現は、多くの場合、結果として、非天然コンホメーションを有するタンパク質凝集体であるIBの形成を引き起こす。用語「封入体」(IB)は、形質転換した宿主細胞の細胞質に存在する異種ポリペプチド(例えば、前記ヘムペルオキシダーゼ)を含有する不溶性凝集体を指す。これらは、典型的には顕微鏡下で明るいスポットとして現れ、細胞質の分離により回収できる。かかる封入体は、通常は比較的純粋且つ無傷のタンパク質を含有する;しかしながら、前記封入体は可溶化する必要があり、前記タンパク質はこれらの天然の構造にリフォールディングされる必要がある。
【0015】
典型的には、IBは、尿素、塩化グアニジニウム(GdnHCl)などの変性剤、又はN-ラウロイルサルコシンなどのイオン性界面活性剤を含有する可溶化緩衝液中で可溶化される。多くの場合、非天然の分子内及び分子間ジスルフィド結合を還元し、システインを還元状態で保つために、2-メルカプトエタノール(β-ME)、ジチオスレイトール(DTT)又は1-モノチオグリセロール(MTG)などの還元剤が添加される。用語「可溶化」又は「可溶化すること」は、最小の分子内及び分子間相互作用によるポリペプチドの単分子分散を結果として引き起こすことを目的として、前記IBを溶解するために必要なプロセスを指す。「可溶化緩衝液」は、前記IBを可溶化する目的で好適である緩衝液、すなわち、典型的には、可溶化されるIBにとって十分に変性的である状態の緩衝液である。
【0016】
変性タンパク質(可溶化されたIB)から活性タンパク質(フォールディングされた形態)へのリフォールディングは、典型的には、変性剤の除去によって起こり、かかるタンパク質の効率的な回収において重要な工程である。用語「リフォールディング」は、変性タンパク質がその天然の又は活性なコンホメーションを得る際の機構を指す。リフォールディングのためのいくつかのアプローチが当該分野において知られている。希釈によるリフォールディングは、その簡潔さにより、特に生産スケールにおいて、1つの好ましい方法である。タンパク質濃度及び変性剤濃度が単一の工程で減少され、分子間相互作用による凝集が防止される。本明細書で使用される場合、「リフォールディング緩衝液」は、リフォールディングの目的で好適である緩衝液、すなわち、変性タンパク質がその天然の又は活性なコンホメーションを得ることを可能にする状態を提供する緩衝液を指す。リフォールディングされたタンパク質のリフォールディング効率(収率)は、酵素活性などの生物学的活性によって見積もることができる。
【0017】
封入体からヘムペルオキシダーゼを生産及び精製するための多くの方法が、当該分野において説明されている。かかる技術の概説は、Eggenreich et al. (“Production strategies for active heme-containing peroxidases from E. coli inclusion bodies - a review.” Biotechnology Reports 10 (2016): 75-83)に提供されている。このようなプロセスは、広範なヘムペルオキシダーゼの生産について説明されており、これらの全てについて、上記で概説されているものと同様の基本的なプロセスが使用され得る(IB生産、可溶化、リフォールディング)。例として、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(Smith et al. “Expression of a synthetic gene for horseradish peroxidase C in Escherichia coli and folding and activation of the recombinant enzyme with Ca2+and heme.” Journal of Biological Chemistry 265.22 (1990): 13335-13343)、真菌の染料脱色ペルオキシダーゼ(Linde et al. “Heterologous expression and physicochemical characterization of a fungal dye-decolorizing peroxidase from Auricularia auricula-judae.” Protein Expression and Purification 103 (2014): 28-37)、カチオン性細胞壁ペルオキシダーゼ(Kim et al. “Optimized refolding and characterization of S-peroxidase (CWPO_C of Populus alba) expressed in E. coli.” Protein Expression and Purification 80.2 (2011): 268-273)、シロイヌナズナペルオキシダーゼ(Shigeto et al. “Catalytic profile of Arabidopsis peroxidases, AtPrx-2, 25 and 71, contributing to stem lignification.” PLoS One 9.8 (2014))、アニオン性タバコペルオキシダーゼ(Zakharova et al. “High-yield reactivation of anionic tobacco peroxidase overexpressed in Escherichia coli.” Protein Expression and Purification 113 (2015): 85-93)などが挙げられる。
【0018】
WO2014/128726A2は、IBから組換えタンパク質をリフォールディングするプロセスを記載している;しかしながら、これは、ペルオキシダーゼ又はヘム補因子と無関係である。
【0019】
Lin et al. (“High yield production of fungal manganese peroxidases by E. coli through soluble expression, and examination of the activities.” Protein expression and purification 145 (2018): 45-52)は、大腸菌における可溶性形態での真菌マンガンペルオキシダーゼの発現を記載している。IBからのリフォールディングとは完全に無関係に、細胞へのヘミンの取り込みを増加させるため、及びタンパク質発現の間の適当な細胞活性の妨害を回避するために、ヘミンが細菌細胞培養物に連続的に添加される方法が記載されている。
【0020】
ヘムペルオキシダーゼは、過酸化水素を電子受容体として使用して酸化反応を触媒することができるヘム含有酵素である。本発明に関して、前記ヘムペルオキシダーゼは、好ましくはEC1.11.1.7(酵素番号)の酵素である。本発明に関してまた好ましい、ヘムペルオキシダーゼの主なスーパーファミリーは、植物、菌類及び細菌類ペルオキシダーゼのスーパーファミリーである(Welinder “Superfamily of plant, fungal and bacterial peroxidases.” Current Opinion in Structural Biology 2.3 (1992): 388-393を参照されたい)。このスーパーファミリーは、多くの場合、3の主なクラスからなると見られている:クラスIは、細胞内ペルオキシダーゼであり、クラスIIは、分泌性の真菌ペルオキシダーゼからなり、クラスIIIは、分泌性の植物ペルオキシダーゼからなる。クラスII及びIIIは、これらのメンバーが、典型的には、ヘム基、4つのジスルフィド架橋を有し、2のCa2+イオンを結合することにおいて類似している。また、両クラスのメンバーは、通常は天然の状態でグリコシル化されており、大腸菌において発現するには難易度が高い。本発明の方法に関して、ある特定の期間にわたって前記ヘム補因子の添加を配分する有利な効果は、とりわけ、この補因子の性質の結果であるため、本発明の方法は、全てのヘムペルオキシダーゼのリフォールディングに有利に使用され得る。しかしながら、クラスII及びクラスIIIのヘムペルオキシダーゼは、組換え発現するのに特に難易度が高いため、これらのクラスは特に好ましい。したがって、好ましい実施形態において、前記ヘムペルオキシダーゼはクラスII又はクラスIIIのヘムペルオキシダーゼ、特にクラスIIIのヘムペルオキシダーゼである。
【0021】
本発明に関して使用されるヘム補因子は、ヘム自体、又はアポペルオキシダーゼに組み込まれている任意のヘム前駆体若しくは誘導体であり得る。例えば、ヘミン(ヘムの塩化第二鉄種;CAS[16009-13-5])は、ヘム補因子として頻繁に使用される(上記で本明細書において列挙している、封入体からヘムペルオキシダーゼを生産及び精製するための方法に関連する文献を参照されたい)。本発明の好ましい実施形態において、前記ヘム補因子は、したがってヘミンである。
【0022】
本発明に関して、前記ヘムペルオキシダーゼがセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)であるとき特に好ましい。前記HRPが、大腸菌における組換え発現について最適化されていて、並びに/又は、改良された熱安定性及び/若しくは改良された触媒特性などの改良された特性を有する変異体HRPであるとき特に好ましい。
【0023】
HRPの特性は、野生型HRPのプロリン-146位(P146)及び/又はアスパラギン-275位(N275)において変異を導入することによって改良され得ることが、驚くべきことに見出された。特に、かかるHRP変異体は、高い収率(特に本発明による方法を使用して)及び良好な純度で大腸菌において組換え生産され得、驚くほど良好な熱安定性(実施例7を参照されたい)及び驚くほど高い酵素活性(実施例8を参照されたい)を示すことが見出された。HRPの多くの変異が研究されているが(Humer and Spadiut, “Improving the performance of horseradish peroxidase by site-directed mutagenesis.” International Journal of Molecular Sciences 20.4 (2019): 916を参照されたい)、上記のアミノ酸P146及び/又はN275の置換は、従来技術には記載されていない。
【0024】
野生型HRPの配列は、例えば、Gajhede et al (“Crystal structure of horseradish peroxidase C at 2.15 Å resolution.” Nature Structural Biology 4.12 (1997): 1032-1038, Protein Data Bank PDB ID 1ATJ)又はUniProtエントリーP00433により、当該分野において知られている。別途特定されない限り、本明細書において使用されている残基ナンバリングは、配列番号1に記載されている野生型HRPの配列を参照する(P146位及びN275位が太字で以下に示されている)。
【0025】
(野生型HRP(配列番号1):)
【化1】
【0026】
植物由来酵素は、翻訳後修飾を経て、結果として、とりわけ、付加されたメチオニンを有さない遊離N末端を生じさせる。しかしながら、例えば、大腸菌において組換え生産されるときには、開始コドンから得られるN末端メチオニン残基を伴って典型的には生産される。したがって、組換え生産された野生型HRPは典型的には以下の配列を有する:
【0027】
(組換え生産された野生型HRP(配列番号2):)
【化2】
【0028】
本発明の実施形態において、前記ヘムペルオキシダーゼは、配列番号1に記載されているアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。なおより好ましくは、前記ヘムペルオキシダーゼは、配列番号2に記載されているアミノ酸配列からなるポリペプチドである。前記ヘムペルオキシダーゼが、配列番号1と比較して少なくとも2つのアミノ酸交換を含むアミノ酸配列を含むポリペプチドであるとき、特に良好な結果が得られ、前記少なくとも2つのアミノ酸交換は、配列番号1のアミノ酸P146及びN275の交換である。実施例7に提供されている実験結果から分かるように、(HRP N13D/N57S/P146Q/N175S/N255D/N268D/N275Kにおける)P146及びN275の両方のアミノ酸交換の組み合わせは、単一の位置の交換(HRP N13D/N57S/P146Q/N175S/N255D/N268D又はHRP N13D/N57S/N175S/N255D/N268D/N275K)よりも予想外に高い熱安定性につながり得る。
【0029】
本発明に関して、前記ヘムペルオキシダーゼが、配列番号1と比較して少なくとも1つのアミノ酸交換を含むアミノ酸配列を含むとき、特に好ましく、前記少なくとも1つのアミノ酸交換は、P146Q、P146A、P146R、P146V、P146E、N275K、N275R、N275D、N275S、N275Q、N275A及びN275Eからなる群より選択される。P146Q及びN275Kが特に好ましい。
【0030】
前記アミノ酸配列が、配列番号1と比較して、P146Q、P146A、P146R、P146V及びP146Eからなる群より選択されるアミノ酸交換、特にP146Qを含むとき、さらに好ましい。前記アミノ酸配列が、配列番号1と比較して、N275K、N275R、N275D、N275S、N275Q、N275A及びN275Eからなる群より選択されるアミノ酸交換、好ましくはN275Kを含むとき、さらに好ましい。P146について好ましい前記のアミノ酸交換の1つ(特にP146Q)及びN275について好ましい前記アミノ酸交換の1つ(特にN275K)が組み合わされるとき、最も好ましい。実施例7及び8に提供されている実験結果から分かるように、かかる組み合わせは、高い熱安定性(HRP N13D/N57S/P146Q/N175S/N255D/N268D又はHRP N13D/N57S/N175S/N255D/N268D/N275Kと比較したとき、HRP N13D/N57S/P146Q/N175S/N255D/N268D/N275において)、及び高い酵素活性(HRP N13D/N57S/N175S/N255D/N268Dと比較したとき、HRP N13D/N57S/P146Q/N175S/N255D/N268D/N275において)の両方につながり得る。本発明に関して、特に良好な結果は、ポリペプチドが配列番号3に記載されているアミノ酸配列を含むときに観察された。前記配列は、配列番号1に対して、アミノ酸交換P146Q及びN275K、並びにアミノ酸交換N13D、N57S、N175S、N255D及びN268D(全て以下において太字でマークされている)を含む。
【0031】
(HRP N13D/N57S/P146Q/N175S/N255D/N268D/N275K(配列番号3):)
【化3】
【0032】
野生型HRPについて上記に記載されているように、例えば大腸菌において、組換え生産されるときには、変異体HRPは、開始コドンから得られるN末端メチオニン残基を伴って典型的には生産される。したがって、上記に記載されているHRP変異体は以下の配列を有するタンパク質として典型的には組換え生産される:
【0033】
(組換え生産されたHRP N13D/N57S/P146Q/N175S/N255D/N268D/N275K(配列番号4):)
【0034】
【化4】
【0035】
上記で言及されているように、典型的には、本発明に関して使用される変異体はN末端メチオニンを含む。しかしながら、全ての場合において、本発明によって使用されるアミノ酸ナンバリングは、N末端メチオニンを欠く野生型配列(配列番号1)に従って適用され、すなわち、このナンバリングは、対応してN末端メチオニンを含む変異体に適用される。つまり、例えば配列番号4において、変異N13Dが(絶対)第14位などにあることを意味する。このことは、欠失又は挿入を持つさらなる変異体の実施形態にも適用可能である。
【0036】
本発明に関して、前記ヘムペルオキシダーゼは、好ましくは、ペルオキシダーゼ活性を有し、且つ配列番号3と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、前記アミノ酸配列が、配列番号1と比較して少なくとも1つのアミノ酸交換を含み、前記少なくとも1つのアミノ酸交換が、配列番号1のアミノ酸P146又はアミノ酸N275の交換である。
【0037】
好ましい実施形態において、前記ヘムペルオキシダーゼは、配列番号3と少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、なおより好ましくは少なくとも90%、さらになおより好ましくは少なくとも95%、特に少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好ましさを増加させる順に、前記アミノ酸配列は、配列番号3と少なくとも70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%の配列同一性を有する。前記アミノ酸配列が配列番号3に記載されている配列であるとき、特に好ましい。前記ヘムペルオキシダーゼが配列番号4に記載されているアミノ酸配列からなるとき、最も好ましい。
【0038】
前記アミノ酸配列が、配列番号1と比較して、N13D、N57S、N175S、N255D、及びN268Dからなる群より選択される少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、なおより好ましくは少なくとも4つ、特に5つのアミノ酸交換をさらに含むとき、さらに好ましい。
【0039】
変異N13D、N57S、N255D及びN268Dは、Capone et al. (“Glyco-variant library of the versatile enzyme horseradish peroxidase.” Glycobiology 24.9 (2014): 852-863)、及びHumer and Spadiut (“Improving the performance of horseradish peroxidase by site-directed mutagenesis.” International Journal of Molecular Sciences 20.4 (2019): 916)に開示されている。これとは関係なく、酵母における発現にのみ関して、変異N175Sが、Morawski et al. (“Functional expression and stabilization of horseradish peroxidase by directed evolution in Saccharomyces cerevisiae.” Biotechnology and Bioengineering 76.2 (2001): 99-107)に開示されている。
【0040】
配列番号1に関する全ての上記変異N13D、N57S、P146Q、N175S、N255D、N268D及びN275Kが、本発明に関して、個々及び互いとの組み合わせの両方において好ましい。5つの変異N13D、N57S、N175S、N255D及びN268Dの組み合わせが、特に高い熱安定性につながることが驚くべきことに見出された(実施例6を参照されたい))。また、これまで完全に未知であった変異P146Q及びN275Kのさらなる組み合わせが、酵素活性の顕著な向上につながった(実施例3;配列番号4を参照されたい)。
【0041】
天然のHRPのいくつかのさらなる変異が、当該分野において知られており、これらも、本発明に関して好ましい。例えば、Ryan et al. (“Effects of single mutations on the stability of horseradish peroxidase to hydrogen peroxide.” Biochimie 89.8 (2007): 1029-1032)は、変異K232N及びT110Vの有益な効果を記載している。好ましい実施形態において、前記アミノ酸配列は、したがって、配列番号1と比較して、アミノ酸交換T110V又はK232Nをさらに含む。
【0042】
本発明に関して、「ペルオキシダーゼ活性」は、基質3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)、2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS)、又は過酸化水素(H)のうちの少なくとも1つに対する活性を好ましくは意味する。好ましくは、pH5及び30℃において1mMのHを含有する50mMのリン酸-クエン酸緩衝液中で測定されるとき、前記ヘムペルオキシダーゼは、少なくとも0.01mM-1-1、好ましくは少なくとも0.1mM-1-1、より好ましくは少なくとも1mM-1-1、なおより好ましくは少なくとも10mM-1-1、なおより好ましくは少なくとも20mM-1-1、なおより好ましくは少なくとも100mM-1-1、さらになおより好ましくは少なくとも1000mM-1-1、さらになおより好ましくは少なくとも10000mM-1-1、特に少なくとも20000mM-1-1の基質TMBのkcat/Km値に相当するペルオキシダーゼ活性を有する。別の好ましい実施形態において、pH5及び30℃において1mMのHを含有する50mMのリン酸-クエン酸緩衝液中で測定されるとき、前記ヘムペルオキシダーゼは、前記基質ABTSのkcat/Km値に相当するペルオキシダーゼ活性が、少なくとも0.1mM-1-1、好ましくは少なくとも1mM-1-1、より好ましくは少なくとも10mM-1-1、なおより好ましくは少なくとも100mM-1-1、最も好ましくは少なくとも250mM-1-1である。さらに別の好ましい実施形態において、pH5及び30℃において10mMのABTSを含有する50mMのリン酸-クエン酸緩衝液中で測定されるとき、前記ヘムペルオキシダーゼは、前記基質Hのkcat/Km値に相当するペルオキシダーゼ活性が、少なくとも1mM-1-1、好ましくは少なくとも10mM-1-1、より好ましくは少なくとも100mM-1-1、なおより好ましくは少なくとも1000mM-1-1、最も好ましくは少なくとも2500mM-1-1である。好ましくは、前記ペルオキシダーゼ活性は、実施例6に記載されているように測定される。50mMのリン酸-クエン酸緩衝液は、25.7mlの0.2M二塩基性リン酸ナトリウム及び24.3mlの0.1Mクエン酸を50mLの脱イオン水に添加することによって得ることができる。
【0043】
特に同じ条件下で生産及び測定される場合、前記ヘムペルオキシダーゼのペルオキシダーゼ活性は、野生型HRPの、特に、配列番号1又は配列番号2、好ましくは配列番号2に記載されているアミノ酸配列からなるポリペプチドのペルオキシダーゼ活性の、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも50%であることがさらに好ましい。
【0044】
前記ヘムペルオキシダーゼが、野生型HRPに対して増加した熱安定性を有するとき、さらに好ましい。上記に定義されているように配列番号3とある特定の配列同一性(%)を有する前記アミノ酸配列について、かかるアミノ酸配列からなるポリペプチドが、配列番号1又は配列番号2、好ましくは配列番号2に記載されているアミノ酸配列からなるポリペプチドに対して増加した熱安定性を有するとき、好ましい。大腸菌において組換え生産され得るように、配列番号3とある特定の配列同一性(%)を有する前記アミノ酸配列のN末端にメチオニン残基が付加され得る。すなわち、N末端メチオニンと引き続く上述のアミノ酸配列からなるポリペプチドが、配列番号2に記載されているアミノ酸配列からなるポリペプチドに対して増加した熱安定性を有するとき、好ましい。このような2つのポリペプチドの熱安定性を比較するために、前記ポリペプチドは同じ条件下で生産及び測定されてよい。「増加した熱安定性」は、20mMのBisTris/HCl(pH7)、7%のグリセロール及び500mMのNaClからなる緩衝液中60℃でインキュベートされるとき、半減期がより長いことを好ましくは意味する。上述のアミノ酸配列からなるポリペプチドの(及び/又は前記アミノ酸配列を含む前記ヘムペルオキシダーゼの)半減期は、配列番号1又は配列番号2、好ましくは配列番号2に記載されているアミノ酸配列からなるポリペプチドに対して、少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも3倍、より好ましくは少なくとも6倍、なおより好ましくは少なくとも12倍高いことが好ましい。好ましくは、前記半減期は、異なる時点において、pH5及び30℃において1mMのHを含有する50mMのリン酸-クエン酸緩衝液中7mMのABTSを用いて残存ペルオキシダーゼ活性を測定することによって求められる。半減期測定では、前記ポリペプチドの濃度が2.86μMであることが好ましい。好ましくは、前記半減期は、実施例6に記載されているように求められる。
【0045】
好ましい実施形態において、上記に定義されているように配列番号3とある特定の配列同一性(%)を有する前記アミノ酸配列からなる前記ヘムペルオキシダーゼ及び/又はポリペプチドは、pH5及び30℃において1mMのHを含有する50mMのリン酸-クエン酸緩衝液中7mMのABTSを用いて残存ペルオキシダーゼ活性によって測定される、20mMのBisTris/HCl(pH7)、7%のグリセロール及び500mMのNaClからなる緩衝液中の60℃における半減期が、少なくとも0.5時間、好ましくは少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも2時間、なおより好ましくは少なくとも4時間、最も好ましくは少なくとも6時間である。
【0046】
前記ヘムペルオキシダーゼを生産するための本発明の方法に関して、驚くべきことに、ある特定の期間にわたって前記リフォールディングミックスへの前記ヘム補因子の添加を配分することが、1つのバッチで一度に全ての前記補因子を添加することと比較して優れた結果につながることが見出された(実施例3;表5及び6の比較を参照されたい)。概して、前記ヘム補因子をゆっくり添加するほど好ましい。前記リフォールディングミックスへの前記ヘム補因子の添加は、好ましくは、少なくとも1時間の期間にわたって配分されるが、さらに長い期間がさらにより好ましい。より好ましくなる順序では、前記期間は、少なくとも2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、特に少なくとも10時間である。これに関して、「少なくとも1時間の期間にわたって配分され(distributed)」は、前記ヘム補因子の一定(constant)のフィードが少なくとも1時間の期間で適用されること、又は、ヘム補因子の合計量が、数個のより少ない用量、例えば、数時間の期間において、10分毎又は1時間毎に1用量となるように分割されることを意味し得る。同じことが、対応して他の期間に適用される(例えば、前記添加が、少なくとも10時間の期間にわたって配分される好ましい実施形態において、前記補因子の一部が、少なくとも10時間の期間にわたって1時間に1回、又は少なくとも10時間にわたって一定のフィードとして、添加され得る)。前記ヘム補因子の添加は、少なくとも2回(しかし、好ましくは少なくとも3回、より好ましくは少なくとも4回、なおより好ましくは少なくとも6回、最も好ましくは少なくとも10回)の、ヘム補因子濃度の増加を含むことが好ましく、最初及び最後の増加が、上記で指定されている期間分少なくとも離れている(例えば、少なくとも1時間分、好ましくは少なくとも4時間分、特に少なくとも10時間分離れている、少なくとも2回のヘム補因子濃度の増加)。これは、複数の別々のヘム補因子濃度増加工程(ヘム補因子の合計添加量が、複数のより少ない用量に分割される)若しくはヘム補因子の連続供給のいずれによっても、又はこれらの2つの組み合わせによって、達成され得る。前記リフォールディングミックスに添加されるヘム補因子の合計量が均等に配分されているとき、特に有利である。したがって、1時間未満の期間に添加されるのが、前記リフォールディングミックスに添加されるヘム補因子の合計量の80%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、なおより好ましくは50%以下、なおより好ましくは40%以下、なおより好ましくは30%以下、さらになおより好ましくは20%以下、最も好ましくは10%以下であるとき、好ましい。
【0047】
前記ヘム補因子が連続フィードとして前記リフォールディングミックスに添加されるとき、特に好ましい、なぜなら、これにより、前記ヘム補因子の特にゆっくりで且つよく配分された添加が可能になるからである。前記ヘム補因子フィードとして供給される前記ヘム補因子の濃度が経時的に一定であるとき、特に有利である。
【0048】
本発明の方法の好ましい実施形態において、前記ヘム補因子は、0.1~10μmol/L/時間、好ましくは0.2~5μmol/L/時間、なおより好ましくは0.5~3μmol/L/時間、さらになおより好ましくは1~2.5μmol/L/時間、特に1.4~1.8μmol/L/時間の速度で前記リフォールディングミックスに添加される。前記リフォールディングミックスに存在する前記ヘムペルオキシダーゼに対して、前記ヘム補因子が、0.01~1モル当量/時間、好ましくは0.02~0.5モル当量/時間、より好ましくは0.05~0.2モル当量/時間の速度で添加されることが好ましい。前記速度は、好ましくは平均速度であり、すなわち、前記ヘム補因子が、ある特定の期間にわたって別々の工程において適用されるとき、前記平均速度は、ヘム補因子の合計量を最初の工程と最後の工程との間の期間によって除算することによって算出できる。
【0049】
本発明に関して、結果は、前記ヘム補因子が前記リフォールディングミックスに直ちに添加されないとき、特に、前記リフォールディング緩衝液中に既に存在していないとき、なおさらに改良され得ることが見出された。そのかわりに、前記ヘム補因子が、前記リフォールディングミックスをある特定の期間インキュベートした後に初めて添加されるときに有利であることが見出された(特に、実施例2、DoE4及び図1を参照されたい)。したがって、前記リフォールディングは、前記ヘム補因子の非存在下で少なくともある特定の期間進行し得るときに有利であることが見出された。本発明の好ましい実施形態において、前記リフォールディングミックスは、したがって、前記ヘム補因子の添加の前に少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間、なおより好ましくは少なくとも4時間、特に少なくとも8時間インキュベートされる。このことは、しかしながら、このインキュベーション時間の間にヘム補因子が全く存在し得ないことを意味しているのではない;この実施形態に関して、単に、ヘム補因子が、指定されている期間の後に前記リフォールディングミックスに添加されることが必要とされるに過ぎない。好ましくは、しかし、前記期間の間に、リフォールディングミックスに存在する前記ヘム補因子は、10μM未満、好ましくは2μM未満、なおより好ましくは0.5μM未満、最も好ましくは0.1μM未満である。
【0050】
好ましい実施形態において、少なくとも1μmol/L、好ましくは少なくとも4μmol/L、なおより好ましくは少なくとも10μmol/L、特に少なくとも20μmol/Lの前記ヘム補因子が、前記リフォールディングミックスに添加される。好ましくは、1μmol/L~200μmol/L、より好ましくは4μmol/L~100μmol/L、なおより好ましくは10μmol/L~50μmol/L、特に15μmol/L~25μmol/Lの前記ヘム補因子が、前記リフォールディングミックスに添加される。前記ヘムペルオキシダーゼに対して少なくとも0.25モル当量、好ましくは少なくとも0.5モル当量、なおより好ましくは少なくとも1モル当量、特に少なくとも2モル当量の前記ヘム補因子が前記リフォールディングミックスに添加されるとき、特に好ましい。特に、前記ヘムペルオキシダーゼに対して0.25~10モル当量、好ましくは0.5~5モル当量、なおより好ましくは1~4モル当量、特に1~2モル当量の前記ヘム補因子が、前記リフォールディングミックスに添加されてよい。
【0051】
本発明による方法に使用される前記IBを得るために、当該分野において知られている標準技術が使用され得る。当業者は、好適な宿主細胞、例えば、大腸菌において、ある特定のヘムペルオキシダーゼを組換え発現させて、前記ヘムペルオキシダーゼを含有するIBを得る方法を熟知している。好ましくは、IBの形態の前記ヘムペルオキシダーゼは:前記ヘムペルオキシダーゼをコードする遺伝子を発現する宿主細胞を培養する工程;及び前記宿主細胞からIBを得る工程;によって提供される。前記宿主細胞は、原核細胞、好ましくは大腸菌細胞であることが好ましい。
【0052】
本発明による方法は、その有利な特性に起因して、ヘムペルオキシダーゼを大量に生産するのによく適している。本明細書に記載されている実施例において実証されているように、本発明の方法は、より大きな培養体積、故に、より多量のヘムペルオキシダーゼ生産に拡大可能である。好ましい実施形態において、前記の細胞は、したがって、少なくとも2L、好ましくは少なくとも5L、より好ましくは少なくとも20L、なおより好ましくは少なくとも50L、特に少なくとも100Lの体積で培養される。
【0053】
本発明の過程において、前記ヘムペルオキシダーゼを生産するための方法が、可溶化緩衝液及びリフォールディング緩衝液の特定の組成を使用することによってなおさらに改良され得るという結果となった(実施例2~5を参照されたい)。好ましくは、前記IBを可溶化することは、前記IBを可溶化緩衝液においてインキュベートすることを含む。実施例に記載されているように、前記可溶化緩衝液のある特定のpHが、特に有利な結果につながることが見出された(特に実施例2、表3、並びに図2及び3を参照されたい)。特に、前記可溶化緩衝液が、少なくとも8、好ましくは少なくとも8.5、より好ましくは少なくとも9.0、なおより好ましくは少なくとも9.5のpHを有するとき、好ましい。前記可溶化緩衝液が、8~12.5、好ましくは8.5~11.5、より好ましくは9~11、なおより好ましくは9.5~10.5のpHを有するとき、さらに好ましい。
【0054】
好ましくは、前記IBを可溶化するのに使用される前記可溶化緩衝液は、還元剤を含有する。本発明に関して、ある特定の還元剤濃度が、特に有利な結果につながることが見出された(特に、実施例2、DoE1~3;実施例3、リアクターラン1~4を参照されたい)。好ましくは、前記還元剤は、DTTである。しかし、他の還元剤も同じく使用され得る。当業者は、IB可溶化に一般的に使用される他の還元剤、例えば、β-ME、TCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)、システインなどを熟知している。これらの還元剤の全てもまた、本発明の方法に関して好ましい。前記可溶化緩衝液におけるレドックス状態が、1~50mmol/LのDTT、好ましくは2~25mmol/L、より好ましくは4~15mmol/L、特に6~8mmol/LのDTT濃度に相当することが好ましい。これに関して、用語「レドックス状態」は、還元電位を指し、「に相当する」は、DTTが、示されている量で存在すること、又は、別の還元剤(例えば、β-ME、TCEP又はシステインなど)が、水中の50mMのグリシン、6Mの尿素の溶液(pH10)において25℃で測定されるとき、同じ還元電位となる濃度で存在することのいずれかを意味する。好ましくは、前記可溶化緩衝液の還元電位は、-150mV~-500mV、好ましくは-200mV~-450mV、より好ましくは-250mV~-400mV、なおより好ましくは-280mV~-370mV、さらになおより好ましくは-300mV~-340mV、最も好ましくは-310mV~-330mVである。前記還元電位は、25℃の温度及び101.300Paの圧力で好ましくは測定される。当業者は、前記還元電位を測定する方法を熟知している。好ましくは、前記還元電位の測定は、好ましくは実施例3に記載されているように、Lucullusプロセスシステムに接続されたEasyFerm Plus ORP Arc425を用いて実施される。代替的には、当該測定は、標準ASTM D1498-14に記載されているように実施され得る(“Standard Test Method for Oxidation-Reduction Potential of Water”, ASTM International, West Conshohocken, PA, 2014, www.astm.org)。
【0055】
別の好ましい実施形態において、前記還元剤は、チオール基を含有する。好ましくは、前記可溶化緩衝液におけるチオール基の濃度は、2~100mmol/L、好ましくは4~50mmol/L、より好ましくは8~30mmol/L、特に12~16mmol/Lである。前記可溶化緩衝液におけるチオール基の濃度は、好ましくは、前記可溶化緩衝液に添加されるチオール含有物質の濃度に基づいて求められる(例えば、DTTは、1分子当たり2のチオール基を含有する;1mmol/LのDTTの濃度は、したがって、2mmol/Lのチオール基の濃度に相当する)。代替的には、チオール基の濃度はまた、実験的に求められてもよい。好ましくは、前記可溶化緩衝液におけるチオール基の濃度は、エルマン試薬を使用して測定される。エルマン試薬(5,5’-ジチオビス-(2-ニトロ安息香酸)、又はDTNB)は、サンプルにおけるチオール基の数又は濃度を定量化するのに使用される化学物質である。当業者は、エルマン試薬を使用して測定を実施する方法を熟知している。好ましくは、当該測定は、Simpson (“Estimation of Free Thiols and Disulfide Bonds Using Ellman’s Reagent.” CSH Protocols 2008 (2008): pdb-prot4699)に記載されているように実施される。
【0056】
前記還元剤に加えて、前記可溶化緩衝液は、変性剤を典型的には含有する。当業者は、好適な変性剤、例えば、尿素又はGdnHClを熟知している。好ましくは、前記可溶化緩衝液は、好ましくは少なくとも4mol/L、より好ましくは少なくとも5mol/L、なおより好ましくは少なくとも6mol/Lの濃度で尿素を含有する。好ましくは、前記可溶化緩衝液は、4mol/L~8mol/L、好ましくは5mol/L~7mol/L、特に5.5~6.5mol/Lの尿素を含有する。
【0057】
前記IBを可溶化するために、前記IBが、前記可溶化緩衝液において、少なくとも5分、好ましくは少なくとも10分、より好ましくは少なくとも15分、特に少なくとも30分インキュベートされるとき、好ましい。好ましくは、前記IBは、4℃~40℃、好ましくは10℃~35℃、なおより好ましくは20℃~25℃の温度で前記可溶化緩衝液においてインキュベートされる。
【0058】
前記可溶化されたIBが、前記リフォールディング緩衝液と、1:5v/v~1:250(可溶化されたIB:リフォールディング緩衝液)、好ましくは1:10~1:100、なおより好ましくは1:20~1:80、特に1:30~1:60の比率で混合されるとき、有利な結果が得られ得る。上記のように、本発明の方法は、前記ヘムペルオキシダーゼを多量に生産するのに特によく適している。したがって、前記リフォールディングは、好ましくは少なくとも5L、好ましくは少なくとも10L、より好ましくは少なくとも25L、なおより好ましくは少なくとも100Lの体積で実施される。このことは、前記リフォールディングミックスが、好ましくは少なくとも5L、好ましくは少なくとも10L、より好ましくは少なくとも25L、なおより好ましくは少なくとも100Lの体積を有することを意味する。
【0059】
前記可溶化緩衝液の場合と同様に、前記リフォールディング緩衝液のある特定のpH範囲について有利な効果が見出された(特に、表3、7及び14、並びに図2及び3を参照されたい)。したがって、前記リフォールディング緩衝液が、少なくとも8、好ましくは少なくとも8.5、より好ましくは少なくとも9、なおより好ましくは少なくとも9.5のpHを有するとき、好ましい。特に、前記リフォールディング緩衝液が、8~12.5、好ましくは8.5~11.5、より好ましくは9~11、なおより好ましくは9.5~10.5のpHを有するとき、好ましい。前記可溶化緩衝液と前記リフォールディング緩衝液との間のpHの差が、2未満のpH増分、好ましくは1未満のpH増分、より好ましくは0.5未満のpH増分、なおより好ましくは0.2未満のpH増分、特に0.1未満のpH増分であるとき、特に好ましい。このことは、例えば、前記可溶化緩衝液のpHが10であるとき、前記リフォールディング緩衝液のpHが、好ましくは9~11(すなわち、前記差が1未満のpH増分である)、より好ましくは9.5~10.5(前記差が0.5未満のpH増分である)などであることを意味する。
【0060】
好ましくは、本発明方法に関して使用される前記リフォールディング緩衝液は、酸化剤を含有する。当業者は、リフォールディング緩衝液において一般的に使用されている酸化剤、例えば、グルタチオンジスルフィド(GSSG)又はシスチンを熟知しており、これらは、全てが本発明の方法に関して好ましい。実施例において本明細書において実証されているように(例えば、表1、3及び7、並びに図2及び3を参照されたい)、有利な効果が、ある特定の酸化剤濃度によって観察された。好ましくは、前記リフォールディング緩衝液が、0.2~6mMのGSSG、好ましくは0.4~4mMのGSSG、より好ましくは0.8~2.5mMのGSSG、特に1.1~1.6mMのGSSGのGSSG濃度に相当するレドックス状態を有する。これに関連して、用語「レドックス状態」は、還元電位を指し、「に相当する」は、GSSGが、示されている量で存在すること、又は、別の酸化剤(シスチンなど)が、20mMのグリシン、2mMのCaCl、2Mの尿素、7%v/vのグリセロール(pH10)の溶液において25℃で測定されるとき、同じ還元電位となる濃度で存在することのいずれかを意味する。好ましくは、前記リフォールディング緩衝液は、50mV~110mV、好ましくは60mV~100mV、より好ましくは65mV~95mV、最も好ましくは70mV~90mVの還元電位を有する。好ましくは、前記還元電位は、前記可溶化緩衝液に関して上記で記載されているように測定される。
【0061】
前記リフォールディング緩衝液は、変性剤を含有することがさらに好ましい。濃度はより低いものの、前記可溶化緩衝液のためのものと同じ変性剤が好ましい。好ましくは、前記リフォールディング緩衝液は、0.5~3mol/L、好ましくは1mol/L~2.7mol/L、なおより好ましくは1.5mol/L~2.4mol/L、特に1.8~2.2mol/Lの尿素を含有する。
【0062】
前記リフォールディングミックスがDTT及びGSSGの両方を含有するとき、特に好ましい。好ましくは、前記リフォールディングミックスにおけるDTTとGSSGとの間のモル比は、1:2(DTT:GSSG)~1:30、好ましくは1:3~1:20、なおより好ましくは1:4~1:15、特に1:6~1:8である。これらの比は、前記可溶化緩衝液及び前記リフォールディング緩衝液に添加されるDTT及びGSSGの初期量に基づいて算出され、DTT及び/又はGSSGの消費は、考慮されるべきではないことは理解されるべきである。
【0063】
好ましくは、前記リフォールディングミックスは、-105mV~135mV、好ましくは-90mV~105mV、なおより好ましくは-80mV~80mV、さらになおより好ましくは-70mV~60mV、最も好ましくは-60mV~50mVの還元電位を有する。好ましくは、前記還元電位は、前記可溶化緩衝液に関して上記に記載されているように測定される。好ましくは、前記還元電位は、前記ヘム補因子の添加の前に、前記可溶化緩衝液及び前記リフォールディング緩衝液を混合次第直ちに測定される。
【0064】
本発明に関して、リフォールディング後に高い塩濃度を伴う析出工程が含まれるときに有利であることが見出された(実施例4、表9を参照されたい)。驚くべきことに、この方法により、相当量の前記ヘムペルオキシダーゼが析出することなく、不純物が有効に除去され得ることが見出された。したがって、本発明の方法は、塩を前記リフォールディングミックスに添加する工程を好ましくはさらに含む。好ましい実施形態において、前記塩が、2mol/L~12mol/L、好ましくは4mol/L~10mol/L、なおより好ましくは4.5mol/L~8mol/Lである。前記塩が、好ましくは0.5~6mol/L、より好ましくは1.5~5.5mol/L、なおより好ましくは2.5~5mol/L、特に3.5~4.5mol/Lの濃度の塩化ナトリウムであるとき、特に良好な結果が得られた。良好な結果が得られた別の好ましい実施形態において、前記塩は、好ましくは0.25~1.5mol/L、好ましくは0.5~1.4mol/L、なおより好ましくは0.8~1.2mol/Lの濃度の硫酸アンモニウムである。タンパク質を塩析するのに一般的に使用される任意の塩が、本発明方法に関して使用され得る。当業者は、かかる塩、例えば、KCl、KCO、CaCl、NHCl、NaSO、又はNaOAcを熟知している。かかる代替の塩の最適濃度は、得られる溶液のイオン強度を基準にし得る(I=0.5Σ(c )として定義され、cは、各イオンのモル濃度であり、zは、当該イオンの電荷数である;前記塩に含有される全てのイオンで総計を取る;例えば、1mol/L(NHSOでは、前記イオン強度は、I=0.5(2mol/L+1mol/L)=3mol/Lとなる)。好ましくは、前記塩は、0.5~6mol/L、好ましくは1.5~5mol/L、なおより好ましくは2.5~4.5mol/L、特に3.5~4.5mol/Lのイオン強度となるまで、前記リフォールディングミックスに添加される。
【0065】
具体的な塩の塩析強度はまた、いわゆるホフマイスターシリーズ(「離液順列」とも呼ばれる)における位置によって求めることもできる。ホフマイスターシリーズは、イオンがタンパク質を塩析する又はこれに塩を加える能力の順での分類である(塩析強度が減少する順での例示的なアニオンは、SO 2->HPO 2->OAc>Cl>NO >I>SCNであり;カチオンでも同じように:NH >K>Na>Li>Mg2+>Ca2+>グアニジニウムである)。本発明に関して、前記塩が、ホフマイスターシリーズにおけるその位置によって求められる、硫酸アンモニウムと塩化ナトリウムとの間の塩析強度を有するとき好ましく、好ましくは、前記塩の濃度が、1.25~6mol/L、より好ましくは0.5~5mol/L、なおより好ましくは1.0~4.5mol/L、最も好ましくは1.5~4mol/Lである。さらに好ましい実施形態において、前記塩は、ホフマイスターシリーズにおけるその位置によって求められる、塩化ナトリウムよりも弱い塩析強度を有し、好ましくは、前記塩の濃度が、少なくとも2mol/L、好ましくは少なくとも4mol/L、より好ましくは少なくとも4.5mol/Lである。本明細書において使用されているとき、第1の塩のカチオン及びアニオンの両方が、ホフマイスターシリーズによって求められる第2の塩のカチオン及びアニオンよりも高い/低い塩析濃度を有するとき、第1の塩は第2の塩よりも高い/低い塩析濃度を有するとみなされる。
【0066】
好ましくは、本発明方法は、リフォールディングされたヘムペルオキシダーゼから不純物を除去するための遠心分離工程をさらに含む。代替的には又はこれに加えて、本発明方法は、リフォールディングされたヘムペルオキシダーゼから不純物を除去するためのろ過工程をさらに含んでいてよい。これらの実施形態は、不純物が析出されるが前記ヘムペルオキシダーゼ(の大部分)が溶液中に残存するように塩が前記リフォールディングミックスに添加されるとき、特に有利である。
【0067】
好ましくは、本発明による方法は、リフォールディングされたヘムペルオキシダーゼを精製する工程をさらに含む。前記ヘムペルオキシダーゼが精製の際にホロ型であるとき、特に有利であることが見出され、好ましくは、前記ヘムペルオキシダーゼは、したがって、前記ヘム補因子が前記リフォールディングミックスに添加された後に精製される。
【0068】
精製の目的で、ポリヒスチジンタグなどの精製タグ(典型的には、多くの場合、タンパク質N又はC末端に付加される、いくつかの、例えば、6~10のヒスチジン残基からなる)が、当該分野において頻繁に使用される。かかるタグもまた、本発明に関して使用され得る。しかし、前記ヘムペルオキシダーゼは、精製タグを含まないとき、好ましい。特に、前記ヘムペルオキシダーゼは、ポリヒスチジンタグを含まないとき、好ましい。
【0069】
本発明の方法に関して、前記ヘムペルオキシダーゼが、クロマトグラフィによって、特に疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)によって精製されることが好ましい。実施例によって実証されているように、このタイプの精製は、驚くべきことに良好な結果、特に、高い最終濃度、優れた純度及び高い活性につながる(実施例4を参照されたい)。HICは典型的に高い塩濃度による結合条件を伴うため、HICは、上記で本明細書に記載されているように、不純物を除去するための塩析工程との組み合わせに特によく適している。したがって、かかる高い塩濃度は不純物及び過剰のヘム補因子を析出させ得るが、正確にフォールディングされたヘムペルオキシダーゼは溶液に残存し、HIC用のロード(load)として直接使用され得る。当業者は、HICを実施する方法を熟知している。好ましくは、実施例4に記載されているように実施される。固定相がブチルセファロース樹脂であるとき、特に好ましい。
【0070】
本明細書において使用されているとき、「ヘムペルオキシダーゼ製品」は、本発明による方法によって生産されるヘムペルオキシダーゼから得られる任意の製品、例えば、前記ヘムペルオキシダーゼの別の分子(例えば、タンパク質)とのコンジュゲート、又はその他の方法で修飾若しくは誘導体化されたヘムペルオキシダーゼ(例えば、固体担体に連結したヘムペルオキシダーゼ)であり得る。「ヘムペルオキシダーゼ製品」はまた、ヘムペルオキシダーゼ(又は修飾された/誘導体化された/コンジュゲートされたヘムペルオキシダーゼ)を含有する任意のタイプの市販の製品、例えば、かかるヘムペルオキシダーゼを(例えば、溶液において若しくは凍結乾燥された形態で)含有する組成物、又はかかる組成物を含有する容器、又はかかる容器を含有するキットなどの任意のタイプのパッケージングされた製品であることもできる。
【0071】
多くの用途において、HRPなどのヘムペルオキシダーゼは、他の分子とのコンジュゲートとして使用される。かかるコンジュゲートは、例えば、ウエスタンブロット、ELISA及び免疫組織化学などの技術において有用である。広く使用されているコンジュゲートの1つの種類は、抗体又は別の結合タンパク質とのコンジュゲートである。この場合、HRPの基質を添加することによって、結合タンパク質がその標的に結合する部位において、検出可能なシグナルを発生させることができる。頻繁に使用される他のHRPコンジュゲートには、HRP-ストレプトアビジンコンジュゲート(例えば、ビオチン化抗体を検出するためのサンドイッチELISA用途における使用のため)、又はHRP-タンパク質A、G若しくはLコンジュゲート(タンパク質A、G及びLは、免疫グロブリンに結合するため、例えば、ELISA、ELISPOT、IHC、又はウエスタンブロッティングにおいて、一次抗体を検出するのに有用である)が含まれる。
【0072】
多くの商業的供給者が、HRPなどのヘムペルオキシダーゼを対象のタンパク質にコンジュゲートするためのキット(例えば、Abcam社からのHRP Conjugation Kit/HRP Labeling Kit ab102890、Bio-Rad社からのLYNX Rapid HRP Antibody Conjugation Kit(製品コードLNK001P)、又はThermo Fisher Scientific社からのEZ-Link Plus Activated Peroxidase Kit(カタログ番号31489))を提供している。かかるキットの目的は、典型的には、ユーザが、前記ペルオキシダーゼを対象の任意のタンパク質、例えば、抗体にコンジュゲートすることを可能にすることである。かかるキットは、前記ヘムペルオキシダーゼを活性化形態(別のタンパク質との直接反応のため)で含んでいてよく、又は、当該キットは、前記ヘムペルオキシダーゼ、及びユーザによるコンジュゲーションに好適な架橋剤を含んでいてよい。
【0073】
そのため、好ましい実施形態において、本発明の方法は、前記ヘムペルオキシダーゼをコンジュゲーション反応用に活性化する工程をさらに含む。好ましくは、前記ヘムペルオキシダーゼを、前記ヘムペルオキシダーゼを別の分子、好ましくは別のタンパク質にコンジュゲートするのに好適な架橋剤と反応させる。コンジュゲーションに好適な技術、及び好適な架橋剤は、当業者に公知であり、例えば、書籍Hermanson, Greg T. Bioconjugate Techniques. Academic press, 2013に見出され得る。好ましくは、前記架橋剤は、前記ヘムペルオキシダーゼとの共有結合を形成する。好ましくは、前記架橋剤は、NHSエステル、スクシンイミジルエステル、イミドエステル、ジフルオロ、ハロアセチル、マレイミド、ピリジルジチオール及びヒドラジドからなる群より選択される1つ、特に2つの反応性基を含む。例えば、前記架橋剤は、マレイミド基及び活性エステル基を有する二官能性PEGリンカー、例えば、マレイミド-PEG-スクシンイミジルエステル(CAS番号756525-93-6、例えば、Sigma-Aldrichから市販されており、カタログ番号746207)であってよい。
【0074】
好ましくは、前記ヘムペルオキシダーゼが、「コンジュゲーションのために活性化される」とき、このことは、前記ヘムペルオキシダーゼが、別のタンパク質との、好ましくは結合タンパク質との、特に抗体との、共有結合を形成することができる反応性基を含むことを意味する。前記ヘムペルオキシダーゼは、上記に記載されているように化学架橋剤に共有結合的に連結していて、特に、当該架橋剤の少なくとも1つの反応性基が、別の分子、好ましくは別のタンパク質との反応に利用可能であることが特に好ましい。このことは、前記の共有結合的連結を形成するために、例えば、前記架橋剤のさらなる反応性基を前記ヘムペルオキシダーゼと反応させることによって達成され得る。
【0075】
前記ヘムペルオキシダーゼ製品は、凍結乾燥された形態で又は溶液で、好適な容器、例えば、バイアルにパッケージングされた、コンジュゲーションのために活性化されたヘムペルオキシダーゼからなっていてよい。しかし、前記ヘムペルオキシダーゼ及び前記架橋剤はまた、別々に提供されてもよい。前記ヘムペルオキシダーゼ製品は、したがって、前記ヘムペルオキシダーゼ及び前記架橋剤を含むキットであってよい。前記ヘムペルオキシダーゼ製品を生産するための方法は、したがって、前記ヘムペルオキシダーゼや上記で言及されている架橋剤をキットにパッケージングすることをさらに含んでいてよい。好ましくは、前記架橋剤は、ポリペプチドを別のタンパク質、好ましくは結合タンパク質にコンジュゲートするのに好適である。
【0076】
本発明の方法によって生産されるヘムペルオキシダーゼは、配列番号4に記載されているアミノ酸配列からなるポリペプチドであってよい。しかし、前記ヘムペルオキシダーゼは、上記で本明細書において定義されているペルオキシダーゼ活性を有し、且つ、さらなるタンパク質のアミノ酸配列をさらに含むポリペプチドであってもよい。融合タンパク質は、公知の方法によって、例えば、遺伝子融合を作製する(前記ヘムペルオキシダーゼをコードする核酸配列を、前記さらなるタンパク質をコードする核酸配列に、好ましくはかかる2つのタンパク質間のリンカー配列を含ませることによって、接続させる)ことによって得られ得る。前記さらなるタンパク質は、ストレプトアビジンであってよい。別の好ましい実施形態において、前記さらなるタンパク質は、抗体結合タンパク質、好ましくはタンパク質A、タンパク質G又はタンパク質Lである。特に好ましい実施形態において、本発明の方法によって生産されるヘムペルオキシダーゼは、結合タンパク質のアミノ酸配列を含む。前記結合タンパク質は、(例えば、特定のタンパク質又は別の分子を検出するために)対象の分子に結合するための物質として作用し得る任意のタンパク質であってよい。好ましくは、前記結合タンパク質は、抗体である。さらに好ましい実施形態において、前記結合タンパク質は、抗体断片、好ましくは一本鎖可変領域フラグメント(scFv)又は抗原結合断片(Fab)である。さらに好ましい実施形態において、前記結合タンパク質は、好ましくは、アドネクチン、アフィボディ、アンティカリン、DARPin、改変Kunitz型阻害剤、及びモノボディからなる群より選択される抗体模倣体である。多くのかかる好適な結合タンパク質が、当該分野から、例えば、Gebauer and Skerra (“Engineered protein scaffolds as next-generation antibody therapeutics.” Current opinion in chemical biology 13.3 (2009): 245-255)から公知である。
【0077】
本発明のヘムペルオキシダーゼ製品を生産するための方法の好ましい実施形態において、前記方法は、ヘムペルオキシダーゼコンジュゲートを得るためのコンジュゲーション反応をさらに含む。好ましくは、前記ヘムペルオキシダーゼは、結合物質、好ましくは抗体、にコンジュゲートされる。さらに好ましい実施形態において、前記結合物質は、結合タンパク質、好ましくは、上記に列挙されているいずれかの結合タンパク質である。前記ヘムペルオキシダーゼが抗体断片、好ましくは一本鎖可変領域フラグメント(scFv)又は抗原結合断片(Fab)にコンジュゲートされるとき、特に好ましい。前記ヘムペルオキシダーゼは、好ましくは、アドネクチン、アフィボディ、アンティカリン、DARPin、改変Kunitz型阻害剤、及びモノボディからなる群より選択される抗体模倣体にコンジュゲートされるとき、さらに好ましい。別の好ましい実施形態において、前記ヘムペルオキシダーゼは、抗体結合タンパク質、好ましくはタンパク質A、タンパク質G、又はタンパク質Lにコンジュゲートされる。さらに別の好ましい実施形態において、前記ヘムペルオキシダーゼは、さらなるタンパク質、好ましくはストレプトアビジンにコンジュゲートされる。
【0078】
ヘムペルオキシダーゼと他のタンパク質との間のコンジュゲートは、当業者に公知であるコンジュゲーション反応によって、例えば、化学架橋によって得られ得る。この目的のために、前記ヘムペルオキシダーゼ及び前記他のタンパク質は、かかる2分子間の安定な、好ましくは共有結合的な連結を形成する化学架橋剤によって共に連結され得る。かかる方法は、多くの場合、バイオコンジュゲーションと称され、当該分野において知られている。多くの好適な方法が、例えば、書籍Hermanson, Greg T. Bioconjugate Techniques. Academic press, 2013に見出され得る。
【0079】
前記ヘムペルオキシダーゼ製品を生産するための本発明方法は、前記ヘムペルオキシダーゼの精製、濃縮、又は他の加工をさらに含んでいてよい。好ましくは、前記方法は、前記ヘムペルオキシダーゼ又は前記ヘムペルオキシダーゼコンジュゲートを精製する工程をさらに含む。前記ヘムペルオキシダーゼは、これに関して、既に誘導体化又はその他の方法で修飾されていてよい。好ましい実施形態において、前記方法は、前記ヘムペルオキシダーゼ又は前記ヘムペルオキシダーゼコンジュゲートを凍結する工程をさらに含む。上記実施形態の代替的には又はこれと組み合わせて、前記方法は、前記ヘムペルオキシダーゼ又は前記ヘムペルオキシダーゼコンジュゲートを凍結乾燥する工程を好ましくはさらに含む。
【0080】
前記ヘムペルオキシダーゼ製品はまた、本発明による方法によって生産されたヘムペルオキシダーゼを含む組成物、又は前記組成物を含む製品(例えば、容器)であってもよい。好ましくは、1又は複数の添加剤が、前記組成物に添加される。かかる添加剤は、例えば、貯蔵時の前記ヘムペルオキシダーゼの安定性をさらに増加させたり、さらに長い保存期間及び安定な生物学的活性レベルを確保したりすることができる。好ましい添加剤として、pH緩衝剤、安定剤、増量剤、張度調整剤などが挙げられる。凍結乾燥に関しての使用に好適である添加剤が特に好ましい。
【0081】
好適な添加剤は、当業者に公知である。例えば、前記組成物は、グリシン、ヒスチジン、グルタメート、スクシネート、ホスフェート、アセテート、及びアスパルテートからなる群より好ましくは選択されるpH緩衝剤を好ましくは含有する。前記組成物は、マンニトール、グリシン、スクロース、デキストラン、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ラクトース、ソルビトール、トレハロース、又はキシリトールからなる群より好ましくは選択される増量剤を含むことがさらに好ましい。前記組成物は、スクロース、トレハロース、マンノース、マルトース、ラクトース、グルコース、ラフィノース、セロビオース、ゲンチオビオース、イソマルトース、アラビノース、グルコサミン、フルクトース、マンニトール、ソルビトール、グリシン、アルギニンHCL、並びに、デキストラン、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、シクロデキストリン、N-メチルピロリデン、セルロース及びヒアルロン酸などの多糖類を含めたポリヒドロキシ化合物、並びに、塩化ナトリウムからなる群より選択される安定剤を好ましくは含む。前記組成物は、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホン酸ナトリウム、ケノデオキシコール酸、N-ラウロイルサルコシンナトリウム塩、硫酸ドデシルリチウム、1-オクタンスルホン酸ナトリウム塩、コール酸ナトリウム水和物、デオキシコール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム塩、塩化ベンザルコニウム又は塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム一水和物、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、CHAPS、CHAPSO、SB3-10、SB3-12、ジギトニン、TritonX-100、TritonX-114、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ひまし油10、40、50及び60、モノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート20、40、60、65及び80、ダイズレシチン、DOPC、DMPG、DMPC、及びDOPG;スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースからなる群より好ましくは選択される界面活性剤をさらに含んでいてよい。
【0082】
有利には、前記組成物は、少なくとも0.01mg、好ましくは少なくとも0.1mg、より好ましくは少なくとも1mg、なおより好ましくは少なくとも5mg、特に少なくとも10mgの、本発明によって生産されるヘムペルオキシダーゼを含む。前記組成物が、前記ヘムペルオキシダーゼを、少なくとも0.0001%(重量/重量、w/w)、好ましくは少なくとも0.001%w/w、より好ましくは少なくとも0.01%w/w、なおより好ましくは少なくとも0.1%w/w、さらになおより好ましくは少なくとも1%w/w、特に少なくとも10%w/wの濃度で含有するとき、さらに好ましい。
【0083】
有利には、前記組成物は、固体組成物(25℃で及び大気圧で)、好ましくは凍結乾燥された組成物である。別の好ましい実施形態において、前記組成物は、液体組成物(25℃で及び大気圧で)である。有利には、前記組成物は、本発明によって生産されるヘムペルオキシダーゼを、少なくとも0.001mg/mL、好ましくは少なくとも0.01mg/mL、より好ましくは少なくとも0.1mg/mL、さらになおより好ましくは少なくとも0.5mg/mL、最も好ましくは少なくとも2mg/mLの濃度で含有する。
【0084】
前記組成物は、DNA、特にdsDNAを実質的に含まないことがさらに好ましい。好ましくは、前記組成物が含有するDNAは1μg/g未満、好ましくは100ng/g未満、より好ましくは10ng/g未満、最も好ましくは1ng/g未満である。このDNA濃度は、染料SYBR GreenI(N’,N’-ジメチル-N-[4-[(E)-(3-メチル-1,3-ベンゾチアゾール-2-イリデン)メチル]-1-フェニルキノリン-1-イウム-2-イル]-N-プロピルプロパン-1,3-ジアミン)を使用してフローメトリーによって求められ得る。当業者は、フローメトリーを使用したDNA濃度の測定を熟知している。当該測定は、Rengarajan, Kalpana, et al. (“Technical Brief Quantifying DNA concentrations using fluorometry: A comparison of fluorophores.” Molecular Vision 8 (2002): 416-421)に記載されているように実施され得る。
【0085】
前記ヘムペルオキシダーゼ製品は、様々な治療用途における、例えば、標的化したがん治療における、使用を見出すことができる。好ましい実施形態において、前記ヘムペルオキシダーゼ製品は、したがって、個体、特に哺乳類、特にヒトへの投与に薬学的に許容可能である1又は複数の添加剤を好ましくは含む医薬組成物である。好適な添加剤は、当業者に公知であり、例えば、水(特に注射用水)、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、緩衝液、ハンクス液、ベシクル形成化合物(例えば、脂質)、固定油、オレイン酸エチル、生理食塩水中5%のデキストロース、等張性及び化学的安定性を向上させる物質、緩衝液、並びに保存料である。他の好適な添加剤として、患者に投与されたときに当該患者に有害である抗体の生産を誘発しない任意の化合物が挙げられる。例は、良好に耐容性のタンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマー性アミノ酸及びアミノ酸コポリマーである。この医薬組成物は、好ましくは非経口投与、特に、静脈内投与に好適である。当該医薬組成物は、上記で定義されている薬学的に許容可能な添加剤と併せて製剤化された、注射可能な単位剤形、例えば、溶液、懸濁液又はエマルジョンとして提供されてよい。概して前記組成物について上記に列挙されている全ての好ましい実施形態(特に、前記ヘムペルオキシダーゼの濃度及び量に関係する)は、前記ヘムペルオキシダーゼ製品が医薬組成物であるときもまた好ましい。
【0086】
治療用途に関して、前記ヘムペルオキシダーゼは、酵素-プロドラッグシステムの一部であってよい。HRPなどのヘムペルオキシダーゼを含む酵素-プロドラッグシステムが、特にがんの処置について、当該分野において知られている(例えば、Tupper et al. “In vivo characterization of horseradish peroxidase with indole-3-acetic acid and 5-bromoindole-3-acetic acid for gene therapy of cancer.” Cancer Gene Therapy 17.6 (2010): 420-428を参照されたい)。例えば、標的化したがん処置は、HRPをインドール酢酸(IAA)と共に含む酵素-プロドラッグシステムを含み得、HRPはインドール酢酸(IAA)を酸化して、がん細胞の生存能力を減少させる。上記のプロドラッグIAAもHRPも単独で細胞毒性でなく、これらの2つの物質を純粋な形態で、並びにヒトに調和可能及び非免疫原性な形態で組み合わせて所望の細胞毒性効果を得ることが必要であることを示している。別の研究では、HRPがパラセタモールを強力な細胞毒素に転換し得ることを示している(Tupper et al. “Use of horseradish peroxidase for gene-directed enzyme prodrug therapy with paracetamol.” British Journal of Cancer 90.9 (2004): 1858-1862)。しかし、この著者らは、植物からの市販のHRP調製物が、かかる転換反応においてあまり有効でなかったことを見出し、故にこの研究をさらに追及しなかった。
【0087】
本発明によって生産されるヘムペルオキシダーゼ製品は、抗体指向性酵素プロドラッグ療法(ADEPT;antibody directed enzyme prodrug therapy)における使用を特に見出すことができる(例えば、Bagshawe “Antibody-directed enzyme prodrug therapy (ADEPT) for cancer.” Expert Review of Anticancer Therapy 6.10 (2006): 1421-1431を参照されたい)。ADEPTの原理は、典型的には、腫瘍関連抗原を指向する抗体を使用して酵素(例えば、HRPなど)を腫瘍部位に局在化させることである。部位特位的に活性種に転換されるプロドラッグを患者に与えることができる。前記ヘムペルオキシダーゼをコードする核酸分子もまた、療法、特に遺伝子指向性酵素プロドラッグ療法(GDEPT;gene-directed enzyme prodrug therapy)などの遺伝子療法における使用を見出すことができる。
【0088】
多くの用途、特に排水処理などの産業用途(例えば、クロロフェノールの除去)では、前記ヘムペルオキシダーゼが、固体担体に固定化されているとき、有利であり得る。したがって、前記ヘムペルオキシダーゼ製品が、固体担体に固定化されているヘムペルオキシダーゼを含むとき、好ましい。したがって、本発明の方法は、前記ヘムペルオキシダーゼ又はヘムペルオキシダーゼコンジュゲートを固体担体に固定化する工程を好ましくはさらに含む。
【0089】
他の利点の中でも、酵素固定化は、特に高い貯蔵安定性、再利用性の向上、操作プロセスコストの低減などを可能にする。固体担体に固定化されたヘムペルオキシダーゼ及びこれらの産業用途は、当該分野において知られており、例えば、Tatsumi, et al. (“Removal of chlorophenols from wastewater by immobilized horseradish peroxidase.” Biotechnology and Bioengineering 51.1 (1996): 126-130)、及びSarno and Iuliano ("Immobilization of Horseradish Peroxidase on Fe3O4/Au_GO Nanoparticles to Remove 4-chlorophenols from Waste Water." Chemical Engineering Transactions 73 (2019): 217-222)を参照されたい。当業者は、例えば、Andreescu, et al.(“Chapter 7 - Nanostructured materials for enzyme immobilization and biosensors.” The New Frontiers of Organic and Composite Nanotechnology. Elsevier, 2008, 355-394)に記載されているように、酵素を固体担体に固定化する方法を熟知している。
【0090】
ナノ材料は、その比表面積及び有効酵素負荷に起因して、固体担体として特に好適である。この実施形態に関して、したがって、前記固体担体がナノ粒子であるとき、好ましい。「ナノ粒子」は、本明細書において使用されているとき、好ましくは、全ての三次元寸法が1×10-12~1×10-6mの範囲、なおより好ましくは1×10-9~1×10-7mの範囲内の任意の形状の粒子である。前記ナノ粒子は、例えば、マグネタイト(Fe)ナノ粒子又は金ナノ粒子であってよい。磁界を印加することによって分離を容易にするというさらなる利点を提供することから、磁性ナノ粒子が特に好ましい。固体担体のさらに好ましい例は、ナノファイバ、カーボン/ポリビニル材料、カーボンナノチューブ、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノ結晶、メソ多孔性シリカ及び複合材料である。
【0091】
さらに好ましい実施形態において、前記固体担体は、膜、特に、ポリマー性膜などの合成膜である。固定化されたヘムペルオキシダーゼを含む膜、かかる膜を製造する方法、及びかかる膜の用途(例えば、廃液処理における)は、例えば、Vasileva et al. (“Application of immobilized horseradish peroxidase onto modified acrylonitrile copolymer membrane in removing of phenol from water.” International journal of biological macromolecules 44.2 (2009): 190-194)から、当該分野において知られている。
【0092】
さらに好ましい実施形態において、前記ヘムペルオキシダーゼ製品は、キットである。本発明方法は、したがって、前記ヘムペルオキシダーゼ又は前記ヘムペルオキシダーゼコンジュゲートをキットにパッケージングする工程を好ましくはさらに含む。緩衝液、試薬、指示マニュアルから選択されるさらなる構成要素がキットに追加されるとき、好ましい。前記ヘムペルオキシダーゼ又は前記ヘムペルオキシダーゼコンジュゲートは、凍結乾燥された形態で前記キットにおいて提供されてよい。代替の好ましい実施形態において、前記ヘムペルオキシダーゼ又は前記ヘムペルオキシダーゼコンジュゲートは、溶液中で提供される。
【0093】
本発明方法によって生産されるヘムペルオキシダーゼは、結合酵素アッセイ用の反応物としての使用をさらに見出すことができる。かかるアッセイにおいて、対象の酵素(例えば、グルコースオキシダーゼ)はHを生産し、次いでこれが前記ヘムペルオキシダーゼによって利用され得る(例えば、Aumiller et al. “Coupled enzyme reactions performed in heterogeneous reaction media: experiments and modeling for glucose oxidase and horseradish peroxidase in a PEG/citrate aqueous two-phase system.” The Journal of Physical Chemistry B 118.9 (2014): 2506-2517を参照されたい)。したがって、好ましい実施形態において、Hを生産する酵素がキットに追加される。
【0094】
本発明によって生産されるヘムペルオキシダーゼは、さらに、ポリマー架橋のための反応物として使用されてよい。例えば、HRPは、ヒドロゲルの調製のためのデキストラン-チラミンコンジュゲートの酵素的架橋のために、例えば軟骨組織エンジニアリング用途のための3D足場として、当分野において成功裏に使用されてきた(Jin et al. “Enzymatically crosslinked dextran-tyramine hydrogels as injectable scaffolds for cartilage tissue engineering.” Tissue Engineering Part A 16.8 (2010): 2429-2440)。
【0095】
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語を以下に定義する。本明細書において定義されている用語は、本発明に関しての当業者によって一般的に理解されている意味を有する。「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」などの用語は、単数の存在のみを指すことは意図されておらず、説明目的のためにその特定の例が使用されうる一般的なクラスを含む。本明細書における用語は、本発明の具体的な実施形態を記載するのに使用されているが、これらの使用は、特許請求の範囲において概説されているものを除き、本発明の境界を定めるものではない。
【0096】
参照のポリペプチド又はタンパク質配列に関しての「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」、「X%の配列同一性」又は「X%同一の」(「70%の配列同一性」又は「70%同一の」など)は、配列をアラインメントして必要に応じてギャップを導入し、最大のパーセント配列同一性を達成した後、且つ、いずれの保存的置換も当該配列同一性の一部として見なさずに、上記の参照のポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である、候補の配列におけるアミノ酸残基の百分率として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を求める目的でのアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2、Megalign(DNASTAR)、又は、EMBOSSソフトウエアパッケージの「needle」 pairwise alignmentアプリケーションなどの公的に入手可能コンピュータソフトウエアを使用して、当該分野における能力の範囲内にある様々な方式で達成され得る。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大アラインメントを達成するのに必要とされる任意のアルゴリズムを含めた、配列をアラインメントするのに適切なパラメータを決定することができる。しかし、本明細書における目的のために、アミノ酸配列同一性(%)値は、EMBOSSソフトウエアパッケージのコンピュータプログラム「needle」の配列アラインメントを使用して算出される(European Molecular Biology Laboratoryから公的に入手可能;Rice et al., EMBOSS: the European Molecular Biology Open Software Suite, Trends Genet. 2000 Jun;16(6):276-7, PMID: 10827456)。
【0097】
前記needleプログラムは、ウエブサイトhttp://www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_needle/でアクセス可能であり、又はhttp://emboss.sourceforge.net/からEMBOSSパッケージの一部としてローカルインストールによりダウンロードできる。これは、Linuxなどの、多くの広く使用されているUNIXオペレーティングシステムで動作する。
【0098】
2のタンパク質配列をアラインメントするために、前記needleプログラムを以下のパラメータによって好ましくは実行する:
コマンドライン:needle -auto -stdout -asequence SEQUENCE_FILE_A-bsequence SEQUENCE_FILE_B -datafile EBLOSUM62 -gapopen 10.0 -gapextend 0.5 -endopen 10.0 -endextend 0.5 -aformat3 pair -sprotein1 -sprotein2(Align_format: pair Report_file:stdout)
【0099】
所与のアミノ酸配列Bに対する(to)、これとの(with)、又はこれに対抗する(against)、所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性(%)(代替的に、所与のアミノ酸配列Bに対する、これとの、又はこれに対抗する、ある特定のアミノ酸配列同一性(%)を有する又は含む所与のアミノ酸配列Aと表現され得る)は、以下のように算出される:
【0100】
割合(X/Y)×100、
ここで、Xは、配列アラインメントプログラム「needle」によって、そのプログラムのAとBのアラインメントにおいて完全一致としてスコアリングされたアミノ酸残基数であり、Yは、Bにおける合計アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合には、Bに対するAのアミノ酸配列同一性(%)が、Aに対するBのアミノ酸配列同一性(%)と等しくならないことが理解されよう。「Aの配列がBの全配列とN%を超えて同一である」場合には、Yは、Bの全配列長さ(すなわち、Bにおける全アミノ酸残基数)である。別途特に記述されていない限り、本明細書において使用される全てのアミノ酸配列同一性(%)値は、needleコンピュータプログラムを使用して、直前の項に記載されるように得られる。
【0101】
別途特定されない限り、本明細書において使用されている全てのパラメータは、IUPAC SATP条件(Standard Ambient Temperature and Pressure;「標準環境温度と圧力」)、特に、25℃の温度及び101.300Paの圧力におけるパラメータに相当する。
【0102】
本明細書において使用されている百分率(%)は、重量/重量(w/w)又は別の方法で特定されない限り、重量/体積(w/v)に相当する。
【0103】
本発明は、以下の好ましい実施形態に関する:
実施形態1.封入体(IB)からヘムペルオキシダーゼを生産するための方法であって:
-前記ヘムペルオキシダーゼをIBの形態で提供する工程;
-前記IBを可溶化する工程;
-前記可溶化されたIBをリフォールディング緩衝液中に移してリフォールディングミックスを得る工程;
-前記リフォールディングミックスにヘム補因子を添加する工程、
を含み、
前記リフォールディングミックスへの前記ヘム補因子の添加が、少なくとも1時間の期間にわたって配分される、前記方法。
【0104】
実施形態2.前記リフォールディングミックスへの前記ヘム補因子の添加が、少なくとも2時間、好ましくは少なくとも3時間、より好ましくは少なくとも6時間、なおより好ましくは少なくとも8時間、特に少なくとも10時間の期間にわたって配分される、実施形態1に記載の方法。
【0105】
実施形態3.前記ヘム補因子が、連続フィードとして前記リフォールディングミックスに添加される、実施形態1又は実施形態2に記載の方法。
【0106】
実施形態4.前記ヘム補因子が、0.1~10μmol/L/時間、好ましくは0.2~5μmol/L/時間、なおより好ましくは0.5~3μmol/L/時間、さらになおより好ましくは1~2.5μmol/L/時間、特に1.4~1.8μmol/L/時間の速度で前記リフォールディングミックスに添加される、実施形態1~実施形態3のいずれか1つに記載の方法。
【0107】
実施形態5.前記リフォールディングミックスが、前記ヘム補因子の添加の前に少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間、なおより好ましくは少なくとも4時間、特に少なくとも8時間インキュベートされる、実施形態1~実施形態4のいずれか1つに記載の方法。
【0108】
実施形態6.少なくとも1μmol/L、好ましくは少なくとも4μmol/L、なおより好ましくは少なくとも10μmol/L、特に少なくとも20μmol/Lの前記ヘム補因子が、前記リフォールディングミックスに添加される、実施形態1~実施形態5のいずれか1つに記載の方法。
【0109】
実施形態7.1μmol/L~200μmol/L、好ましくは4μmol/L~100μmol/L、なおより好ましくは10μmol/L~50μmol/L、特に15μmol/L~25μmol/Lの前記ヘム補因子が、前記リフォールディングミックスに添加される、実施形態1~実施形態6のいずれか1つに記載の方法。
【0110】
実施形態8.前記ヘムペルオキシダーゼに対して少なくとも0.25モル当量、好ましくは少なくとも0.5モル当量、なおより好ましくは少なくとも1モル当量、特に少なくとも2モル当量の前記ヘム補因子が前記リフォールディングミックスに添加される、実施形態1~実施形態7のいずれか1つに記載の方法。
【0111】
実施形態9.前記ヘムペルオキシダーゼに対して0.25~10モル当量、好ましくは0.5~5モル当量、なおより好ましくは1~4モル当量、特に1~2モル当量の前記ヘム補因子が前記リフォールディングミックスに添加される、実施形態1~実施形態8のいずれか1つに記載の方法。
【0112】
実施形態10.前記ヘムペルオキシダーゼが、クラスII又はクラスIIIのヘムペルオキシダーゼ、好ましくはクラスIIIのヘムペルオキシダーゼである、実施形態1~実施形態9のいずれか1つに記載の方法。
【0113】
実施形態11.前記ヘムペルオキシダーゼが、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)である、実施形態1~実施形態10のいずれか1つに記載の方法。
【0114】
実施形態12.前記ヘムペルオキシダーゼが、精製タグ、特にポリヒスチジンタグを含まない、実施形態1~実施形態11のいずれか1つに記載の方法。
【0115】
実施形態13.前記ヘムペルオキシダーゼが、配列番号3と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、なおより好ましくは少なくとも90%、なおより好ましくは少なくとも95%、さらになおより好ましくは少なくとも98%、特に少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1~実施形態12のいずれか1つに記載の方法。
【0116】
実施形態14.前記ヘムペルオキシダーゼが、配列番号3に記載されているアミノ酸配列を含む、実施形態1~実施形態13のいずれか1つに記載の方法。
【0117】
実施形態15.前記ヘムペルオキシダーゼが、配列番号4に記載されているアミノ酸配列からなる、実施形態1~実施形態14のいずれか1つに記載の方法。
【0118】
実施形態16.前記ヘム補因子が、ヘミンである、実施形態1~実施形態15のいずれか1つに記載の方法。
【0119】
実施形態17.前記のIBの形態のヘムペルオキシダーゼが:
-前記ヘムペルオキシダーゼをコードする遺伝子を発現する宿主細胞を培養する工程;及び
-前記宿主細胞からIBを得る工程
によって提供される、実施形態1~実施形態16のいずれか1つに記載の方法。
【0120】
実施形態18.前記宿主細胞が、原核細胞、好ましくは大腸菌細胞である、実施形態17に記載の方法。
【0121】
実施形態19.前記宿主細胞が、少なくとも2L、好ましくは少なくとも5L、より好ましくは少なくとも20L、さらには50L、特に少なくとも100Lの体積で培養される、実施形態17又は実施形態18に記載の方法。
【0122】
実施形態20.前記可溶化が、可溶化緩衝液において前記IBをインキュベートすることを含む、実施形態1~実施形態19のいずれか1つに記載の方法。
【0123】
実施形態21.前記可溶化緩衝液が、少なくとも8、好ましくは少なくとも8.5、より好ましくは少なくとも9.0、なおより好ましくは少なくとも9.5のpHを有する、実施形態20に記載の方法。
【0124】
実施形態22.前記可溶化緩衝液が、8~12.5、好ましくは8.5~11.5、より好ましくは9~11、なおより好ましくは9.5~10.5のpHを有する、実施形態20又は実施形態21に記載の方法。
【0125】
実施形態23.前記可溶化緩衝液が、還元剤を含有する、実施形態20~実施形態22のいずれか1つに記載の方法。
【0126】
実施形態24.前記可溶化緩衝液が、1~50mmol/L、好ましくは2~25mmol/L、より好ましくは4~15mmol/L、特に6~8mmol/Lのジチオスレイトール(DTT)濃度に相当するレドックス状態を有する、実施形態20~実施形態23のいずれか1つに記載の方法。
【0127】
実施形態25.前記可溶化緩衝液が、好ましくは少なくとも4mol/L、より好ましくは少なくとも5mol/L、なおより好ましくは少なくとも6mol/Lの濃度で尿素を含有する、実施形態20~実施形態24のいずれか1つに記載の方法。
【0128】
実施形態26.前記可溶化緩衝液が、4mol/L~8mol/L、好ましくは5mol/L~7mol/L、特に5.5~6.5mol/Lの尿素を含有する、実施形態20~実施形態25のいずれか1つに記載の方法。
【0129】
実施形態27.前記IBが、前記可溶化緩衝液において、少なくとも5分、好ましくは少なくとも10分、より好ましくは少なくとも15分、特に少なくとも30分間インキュベートされる、実施形態20~実施形態26のいずれか1つに記載の方法。
【0130】
実施形態28.前記IBが、4℃~40℃、好ましくは10℃~35℃、なおより好ましくは20℃~25℃の温度で前記可溶化緩衝液においてインキュベートされる、実施形態20~実施形態27のいずれか1つに記載の方法。
【0131】
実施形態29.前記可溶化されたIBが、前記リフォールディング緩衝液と、1:5v/v~1:250(可溶化されたIB:リフォールディング緩衝液)、好ましくは1:10~1:100、なおより好ましくは1:20~1:80、特に1:25~1:60、最も好ましくは1:30~1:50の比率で混合される、実施形態1~実施形態28のいずれか1つに記載の方法。
【0132】
実施形態30.前記リフォールディングが、少なくとも5L、好ましくは少なくとも10L、より好ましくは少なくとも25L、なおより好ましくは少なくとも100Lの体積で実施される、実施形態1~実施形態29のいずれか1つに記載の方法。
【0133】
実施形態31.前記リフォールディング緩衝液が、少なくとも8、好ましくは少なくとも8.5、より好ましくは少なくとも9、なおより好ましくは少なくとも9.5のpHを有する、実施形態1~実施形態30のいずれか1つに記載の方法。
【0134】
実施形態32.前記リフォールディング緩衝液が、8~12.5、好ましくは8.5~11.5、より好ましくは9~11、なおより好ましくは9.5~10.5のpHを有する、実施形態1~実施形態31のいずれか1つに記載の方法。
【0135】
実施形態33.前記可溶化緩衝液と前記リフォールディング緩衝液との間のpHの差が、2未満のpH増分、好ましくは1未満のpH増分、より好ましくは0.5未満のpH増分、なおより好ましくは0.2未満のpH増分、特に0.1未満のpH増分である、実施形態1~実施形態32のいずれか1つに記載の方法。
【0136】
実施形態34.前記リフォールディング緩衝液が、酸化剤を含有する、実施形態1~実施形態33のいずれか1つに記載の方法。
【0137】
実施形態35.前記リフォールディング緩衝液が、0.2~6mMのGSSG、好ましくは0.4~4mMのGSSG、より好ましくは0.8~2.5mMのGSSG、特に1.1~1.6mMのGSSGのグルタチオンジスルフィド(GSSG)濃度に相当するレドックス状態を有する、実施形態1~実施形態34のいずれか1つに記載の方法。
【0138】
実施形態36.前記リフォールディング緩衝液が、0.5~3mol/L、好ましくは1mol/L~2.7mol/L、なおより好ましくは1.5mol/L~2.4mol/L、特に1.8~2.2mol/Lの尿素を含有する、実施形態1~実施形態35のいずれか1つに記載の方法。
【0139】
実施形態37.前記リフォールディングミックスにおけるDTTとGSSGとの間のモル比が、1:2(DTT:GSSG)~1:30、好ましくは1:3~1:20、なおより好ましくは1:4~1:15、特に1:6~1:8である、実施形態1~実施形態36のいずれか1つに記載の方法。
【0140】
実施形態38.前記リフォールディングミックスが、-105mV~135mV、好ましくは-90mV~105mV、なおより好ましくは-80mV~80mV、さらになおより好ましくは-70mV~60mV、最も好ましくは-60mV~50mVの還元電位を有する、実施形態1~実施形態37のいずれか1つに記載の方法。
【0141】
実施形態39.前記リフォールディングミックスに塩を添加する工程をさらに含む、実施形態1~実施形態38のいずれか1つに記載の方法。
【0142】
実施形態40.前記塩が、0.5~6mol/L、好ましくは1.5~5mol/L、なおより好ましくは2.5~4.5mol/L、特に3.5~4.5mol/Lのイオン強度となるまで前記リフォールディングミックスに添加される、実施形態39に記載の方法。
【0143】
実施形態41.前記塩が、好ましくは0.5~6mol/L、より好ましくは1.5~5.5mol/L、なおより好ましくは2.5~5mol/L、特に3.5~4.5mol/Lの濃度の塩化ナトリウムである、実施形態39又は実施形態40に記載の方法。
【0144】
実施形態42.前記塩が、好ましくは0.25~1.5mol/L、好ましくは0.5~1.4mol/L、なおより好ましくは0.8~1.2mol/Lの濃度の硫酸アンモニウムである、実施形態39~実施形態41のいずれか1つに記載の方法。
【0145】
実施形態43.前記塩が、ホフマイスターシリーズにおけるその位置によって求められる、硫酸アンモニウムと塩化ナトリウムとの間の塩析強度を有し、好ましくは、前記塩の濃度が、1.25~6mol/L、より好ましくは0.5~5mol/L、なおより好ましくは1.0~4.5mol/L、最も好ましくは1.5~4mol/Lである、実施形態39~実施形態42のいずれか1つに記載の方法。
【0146】
実施形態44.前記塩が、ホフマイスターシリーズにおけるその位置によって求められる、塩化ナトリウムよりも弱い塩析強度を有し、好ましくは前記塩の濃度が、少なくとも2mol/L、好ましくは少なくとも4mol/L、より好ましくは少なくとも4.5mol/Lである、実施形態39~実施形態43のいずれか1つに記載の方法。
【0147】
実施形態45.前記塩の濃度が、2mol/L~12mol/L、好ましくは4mol/L~10mol/L、なおより好ましくは4.5mol/L~8mol/Lである、実施形態44に記載の方法。
【0148】
実施形態46.リフォールディングされたヘムペルオキシダーゼから不純物を除去するための遠心分離工程をさらに含む、実施形態1~実施形態45のいずれか1つに記載の方法。
【0149】
実施形態47.リフォールディングされたヘムペルオキシダーゼから不純物を除去するためのろ過工程をさらに含む、実施形態1~実施形態46のいずれか1つに記載の方法。
【0150】
実施形態48.リフォールディングされたヘムペルオキシダーゼを精製する工程をさらに含む、実施形態1~実施形態47のいずれか1つに記載の方法。
【0151】
実施形態49.前記ヘム補因子が前記リフォールディングミックスに添加された後に前記ヘムペルオキシダーゼが精製される、実施形態48に記載の方法。
【0152】
実施形態50.前記ヘムペルオキシダーゼが、クロマトグラフィによって精製される、実施形態48又は実施形態49に記載の方法。
【0153】
実施形態51.前記ヘムペルオキシダーゼが、疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)によって精製される、実施形態48~実施形態50のいずれか1つに記載の方法。
【0154】
実施形態52.固定相がブチルセファロース樹脂である、実施形態51に記載の方法。
【0155】
実施形態53.実施形態1~実施形態52のいずれか1つに記載の方法によってヘムペルオキシダーゼを生産することを含む、ヘムペルオキシダーゼ製品を生産するための方法。
【0156】
実施形態54.前記ヘムペルオキシダーゼをコンジュゲーション反応用に活性化する工程をさらに含む、実施形態53に記載の方法。
【0157】
実施形態55.ヘムペルオキシダーゼコンジュゲートを得るためのコンジュゲーション反応をさらに含む、実施形態53又は実施形態54に記載の方法。
【0158】
実施形態56.前記ヘムペルオキシダーゼが、結合物質(binding agent)、好ましくは抗体にコンジュゲートされる、実施形態55に記載の方法。
【0159】
実施形態57.前記ヘムペルオキシダーゼが、抗体断片、好ましくは一本鎖可変領域フラグメント(scFv)又は抗原結合断片(Fab)にコンジュゲートされる、実施形態55に記載の方法。
【0160】
実施形態58.前記ヘムペルオキシダーゼが、抗体模倣体、好ましくは、アドネクチン、アフィボディ、アンティカリン、DARPin、改変Kunitz型阻害剤、及びモノボディからなる群より選択される抗体模倣体にコンジュゲートされる、実施形態55に記載の方法。
【0161】
実施形態59.前記ヘムペルオキシダーゼが、抗体結合タンパク質、好ましくはタンパク質A、タンパク質G、又はタンパク質Lにコンジュゲートされる、実施形態55に記載の方法。
【0162】
実施形態60.前記ヘムペルオキシダーゼが、さらなるタンパク質、好ましくはストレプトアビジンにコンジュゲートされる、実施形態55に記載の方法。
【0163】
実施形態61.前記ヘムペルオキシダーゼ又は前記ヘムペルオキシダーゼコンジュゲートを精製する工程をさらに含む、実施形態53~実施形態60のいずれか1つに記載の方法。
【0164】
実施形態62.前記ヘムペルオキシダーゼ又は前記ヘムペルオキシダーゼコンジュゲートを凍結する工程をさらに含む、実施形態53~実施形態61のいずれか1つに記載の方法。
【0165】
実施形態63.前記ヘムペルオキシダーゼ又は前記ヘムペルオキシダーゼコンジュゲートを凍結乾燥する工程をさらに含む、実施形態53~実施形態62のいずれか1つに記載の方法。
【0166】
実施形態64.前記ヘムペルオキシダーゼ又はヘムペルオキシダーゼコンジュゲートを固体担体に固定化する工程をさらに含む、実施形態53~実施形態63のいずれか1つに記載の方法。
【0167】
実施形態65.前記固体担体が、ナノ粒子、好ましくは磁性ナノ粒子又はナノファイバである、実施形態64に記載の方法。
【0168】
実施形態66.前記固体担体が、カーボン/ポリビニル材料である、実施形態64に記載の方法。
【0169】
実施形態67.前記固体担体が、膜である、実施形態64に記載の方法。
【0170】
実施形態68.前記ヘムペルオキシダーゼ又は前記ヘムペルオキシダーゼコンジュゲートをキットにパッケージングする工程をさらに含む、実施形態53~実施形態67のいずれか1つに記載の方法。
【0171】
実施形態69.緩衝液、試薬、指示マニュアルから選択されるさらなる構成要素がキットに追加される、実施形態68に記載の方法。
【0172】
実施形態70.Hを生産する酵素がキットに追加される、実施形態69に記載の方法。
【0173】
本発明は、以下の図及び例によってさらに説明されるが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0174】
図1A】異なるヘム補因子濃度、及びリフォールディングミックスへの異なる添加時間の、体積活性への影響、それぞれリフォールディング収率。
図1B】異なるヘム補因子添加時間及びヘム補因子濃度をファクターとして、体積活性[U/mL]をレスポンスとした、レスポンス等高線プロット(DoE4)。
図2】可溶化ミックス中のDTT濃度及びリフォールディング緩衝液中のGSSG濃度に依存する体積活性[U/mL]についてのレスポンス等高線プロット(DoE1)。
図3】DoE3についての、異なるDTT及びGSSG濃度(両方ともmM)でのpH8.5、pH9.25及びpH10でのレスポンス等高線プロット。
図4】リアクター実験2でのレドックス電位及び体積活性(アットライン(at-line)サンプリング)。リフォールディング開始20時間後に20μMのヘミンを添加し、この時点でレドックスシグナルが急激な上昇を示す。
図5】リアクター実験5でのレドックス電位及び体積活性。ヘミンフィードの終了の前に、サンプルを2時間毎に抜き出し、測定前に20μMの最終ヘミン濃度でインキュベートした(丸)。前記ヘミンフィードの開始後、サンプルを2時間毎に抜き出し、体積活性を直ちに測定した(四角)。
図6】段階勾配を使用するHIC1での活性HRP及び不純物の溶出。活性HRPは、120から125mLの間で溶出するが(75%の緩衝液B)、疎水性不純物は、131mLから開始して溶出する(100%の緩衝液B)。
図7】線形勾配を使用するHIC2での活性HRP及び不純物の溶出。活性HRPは、125mLから135mLの間で溶出するが、疎水性不純物は、145mLから開始して溶出する。
図8】線形勾配を使用するHIC3での活性HRP及び不純物の溶出。活性HRPは、当該勾配において遅くに溶出して(90%の緩衝液B付近)、100%の緩衝液Bで溶出する疎水性不純物の溶出と重なる。
図9】段階勾配を使用するHIC4での活性HRP及び不純物の溶出。90%の緩衝液Bを使用して疎水性不純物からの活性HRPの分離が可能であるが、これは活性HRPピークの強いテーリング(tailing)につながり、結果として、活性HRPのより低い濃度とより乏しい回収との間の判断となる。
図10】段階勾配を使用するHIC5での活性HRP及び不純物の溶出。活性HRPは、1250から1400mLの間で溶出するが(75%の緩衝液B)、疎水性不純物は、1400mL出しはじめる(100%の緩衝液B)。
図11】pH8.5におけるリフォールディングによるHICランのクロマトグラム。純粋なHRPは75%の緩衝液Bで溶出する一方で、疎水性不純物は100%の緩衝液Bで溶出する。
図12】pH10におけるリフォールディングによるHICランのクロマトグラム。純粋なHRPは75%の緩衝液Bで溶出する一方で、疎水性不純物は100%の緩衝液Bで溶出する。
図13】組換え野生型HRP(rHRP、配列番号2)及び植物由来HRP(pHRP)と比較したHRP N13D/N57S/P146Q/N175S/N255D/N268D/N275K(mHRP、配列番号4)の残存活性。2.9μMの濃度を有する150μlのpHRP(三角)、mHRP(四角)及びrHRP(丸)を、50mMのBisTris/HCl(pH7)、0.5MのNaCl、7%のグリセロール中で、60℃で最大10時間インキュベートした。実施例1に記載されているように初期酵素活性及び残存酵素活性をABTSによって測定し、インキュベーション時間に対しての%でプロットする。mHRPは、rHRPよりも13倍を超えて向上した熱安定性、及び、前記植物由来(すなわち、グリコシル化された)pHRPに対しても1.7倍向上した熱安定性を示した。
図14】3の異なるリフォールディング実験から得られた酵素活性。「バッチ添加」:ヘム補因子を20時間のリフォールディング時間の後にバッチで添加した(第1カラム)。「ヘミンフィード10時間」:ヘム補因子をリフォールディング開始後8時間で10時間のフィードとして添加した(第2カラム)。「ヘミンフィード1時間」:ヘム補因子をリフォールディング開始後8時間で1時間のフィードとして添加した;測定は、フィードの終了後(最終カラム)、及び10時間のさらなるインキュベーション後(第3カラム)すぐに行った。
【発明を実施するための形態】
【0175】
実施例1.材料及び方法
(化学物質)
酸化型L-グルタチオン(GSSG)及び2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS)は、AppliChem社からのものであった。ヘミンはSigma社から購入した(ウシ由来のヘミン、≧90%)。ジチオスレイトール(DTT)及び全ての他の化学物質はRoth社から購入した。
【0176】
(細菌株及び増殖条件)
HRPバリアントC1aをコードするhrp遺伝子を大腸菌についてコドン最適化し、Genscript USA社(米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)から得た。プラスミドpET21d+を細胞質におけるHRP封入体生産に使用した。タンパク質がいずれのタグも伴わずに生産されるように停止コドンを導入した。HRPを、10LのBiostat Cplusステンレス鋼バイオリアクター(ドイツ、Satorius社)中で大腸菌BL21(DE3)において生産させた。DeLisa培地を使用してフィードバッチ培養において12時間、0.5mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を用いてHRP生産を誘導した。バイオマスを遠心分離によって採取し、湿潤バイオマスをさらなる処理まで-20℃で保存した。
【0177】
(ホモジナイズ及び洗浄)
IKA T10ベーシックULTRA-TURRAXを使用して、3~5mLの緩衝液A/g湿潤バイオマス(緩衝液A:50mMのTRIS/HCl;pH8;500mMのNaCl;1.5mMのEDTA)でバイオマスを再懸濁し、(GEA Niro Soavi Panda PLUSを使用して)ホモジナイズした(>1300バール、3通路、冷却)。当該ホモジナイズした懸濁液を遠心分離し(15650g;20分、4℃)、上清を廃棄して細胞残屑を10mLの緩衝液B/g湿潤細胞残屑(緩衝液B:50mMのTRIS/HCl;pH8;500mMのNaCl;2Mの尿素)で再懸濁し、再び遠心分離した(15650g;20分、4℃)。緩衝液Bを使用した洗浄工程を1回繰り返した。その後、IB/細胞残屑を水(5mLの水/g湿潤細胞残屑)に再懸濁し、当該懸濁液を、予め秤量した50mLの反応管に分配し(aliquoted)、遠心分離し(15650g;20分、4℃)、ペレットをさらなる使用まで-20℃で保存した。
【0178】
(可溶化)
可溶化のために、凍結したIBのアリコートを解凍し、湿潤封入体(wIB)重量を算出するために秤量し、適切な可溶化緩衝液(可溶化緩衝液1:50mMのTRIS/HCl;pH8;6Mの尿素/可溶化緩衝液2:50mMのグリシン;pH10;6Mの尿素)に再懸濁して、100g/LのwIB濃度とした。再懸濁後、DTTを添加し(1MのDTT原液を使用)、可溶化ミックス中の1mM~28.44mMのDTTの間で振った最終濃度とし、当該可溶化ミックスをインキュベートし(室温;0.5時間;弱く攪拌)、続いて遠心分離した(20379g;20分;4℃)。上清を直ちにリフォールディングに使用し、ペレットは廃棄した。
【0179】
実施例2.小スケールのリフォールディング実験
(分析方法)
(ブラッドフォード):タンパク質濃度は、室温での10分間のインキュベーション後に、Genesys20 Photometer(Thermo Scientific社)を使用して595nmで吸光を測定し、ブラッドフォードアッセイを用いて求めた。スタンダードとしてウシ血清アルブミンを使用した。
【0180】
(酵素活性測定):平底ポリスチレン96ウエルプレートを使用してTecan Infinite M200PROによってHRP酵素活性を測定した。正確にフォールディングされたHRPの濃度に応じて、サンプルを希釈緩衝液(希釈緩衝液:20mMのBis-Tris(pH7);7%v/vのグリセロール)において1:50~1:200に希釈した。上記のウエルにおいて170μLのABTS溶液(50mMのKHPO(pH5)中5mMのABTS)を10μLの希釈サンプルと混合し、その後、20μLのH(10mMのH)を添加して反応を開始した。直後に、2分にわたって420nmにおける吸光の変化を(30℃で)記録した。体積酵素活性を、以下の式を使用して算出した:
【0181】
【数1】
【0182】
total ・・・キュベットにおける総体積[μl]
ΔA/min ・・・吸光の変化[Δ吸収(420nm)/分]
dilution・・・サンプルの希釈
sample ・・・サンプルの体積[μl]
d・・・反応を通してのビーム路の長さ(d=0.58cm)
ε・・・吸光係数(ε420=36mM-1cm-1)。
【0183】
(SEC-HPLC):HICによる捕捉工程の後の活性HRP画分の純度を、SEC-HPLCを使用して測定した。このために、XBridge Protein BEH SEC カラム、200Å、3.5μm、7.8mm×150mm(Waters)を使用した。この方法を100%の緩衝液A(緩衝液A:80mMのリン酸塩(pH6.8);250mMのKCl)を用いて0.5mL/分で18分間行った。前記カラムを25℃の一定温度で保ち、214nm、280nm及び404nmを測定した。
【0184】
(Reinheitszahl(RZ)):Reinheitszahlを280nmに対する404nmの吸光度比として測定した。吸光度測定は、Hitachi Double Beam Spectrophotometer U-2900を使用して行った。
【0185】
(MODDE10):実験計画法(DoE)の計画及び分析は、Umetrics MODDE10を使用して行った。
【0186】
(実験の設定)
全般的な材料及び方法は、実施例1に記載されている通りとした。小スケールのリフォールディング実験は全て2mLの反応管を使用して行った。溶解物(solubilizate)を適切なリフォールディング緩衝液で1:40で希釈し(リフォールディング緩衝液1:20mMのTRIS/HCl;pH8.5;2Mの尿素;2mMのCaCl;7%v/vのグリセロール;変化させたGSSG濃度/リフォールディング緩衝液2:20mMのグリシン;pH10;2Mの尿素;2mMのCaCl;7%v/vのグリセロール;変化させたGSSG濃度)、続いて、4℃で48時間、弱く攪拌しながらインキュベートした。全ての実験に使用した1mMのヘミン原液溶液は、100mMのKOH中で調製した。
【0187】
(DoE1):第1のDoE(実験計画法)では、可溶化のためのDTT濃度(可溶化緩衝液1;pH8)及びリフォールディング緩衝液(リフォールディング緩衝液1;pH8.5)中のGSSG濃度を変動させ(表1を参照されたい)、ヘミン添加は20時間後20μMで一定に保った。リフォールディング後の体積活性をレスポンスとして用いるCCF(central composite face-centered design;中心複合計画)を使用した。
【0188】
【表1】
【0189】
(DoE2):第2のDoEでは、可溶化のためのDTT濃度(可溶化緩衝液1;pH8)、リフォールディング緩衝液(リフォールディング緩衝液1;pH8.5)中のGSSG濃度、及びリフォールディングミックスにおけるタンパク質濃度を変動させ(表2を参照されたい)、ヘミン添加は、20時間後20μMで一定に保った。リフォールディング後の体積活性及び比活性をレスポンスとして用いるCCF(中心複合計画)を使用した。
【0190】
【表2】
【0191】
(DoE3):第3のDoEでは、可溶化のためのDTT濃度、リフォールディング緩衝液におけるGSSG濃度、並びに可溶化緩衝液及びリフォールディング緩衝液のpHを変動させた(表3を参照されたい)。pH8.5では、可溶化及びリフォールディング緩衝液1を使用し、pH10では、可溶化及びリフォールディング緩衝液2を使用した。ヘミン添加は、20時間後20μMで一定に保った。リフォールディング後の体積活性をレスポンスとして用いるCCF(中心複合計画)を使用した。
【0192】
【表3】
【0193】
(DoE4):このDoEでは、ヘミン添加の時間及び濃度を、それぞれ、リフォールディング開始後0時間~24時間、及び6μM~80μMのヘミンの間で変動させた。使用した正確なファクターを表4に示す。全ての実験で可溶化緩衝液1(pH8)及びリフォールディング緩衝液1(pH8.5)を使用した。両ファクターを最適化するために、体積活性をレスポンスとして使用した。
【0194】
【表4】
【0195】
(結果:ヘミン添加)
リフォールディング開始後のヘミンの最適濃度及び最適な添加時間を評価するために、体積活性をレスポンスとして用いた小スケール実験で、いくつかの異なる条件をスクリーニングした。結果を図1に提示する。リフォールディング開始後0時間でのヘミン添加では、リフォールディング収率はヘミン濃度に強い依存性を示し、より高いヘミン濃度は、最適化された条件と比較して、10倍を超える低減につながった。さらに、前記リフォールディング収率は、最低のヘミン濃度(6μM)であっても60%まで低減する。この影響は、ヘミン添加時間がより遅いと低減され、24時間後の添加ではヘミン濃度の影響は殆どみられなかった。さらなる実験のために、20μMを選択した。
【0196】
(結果:レドックスシステム)
第1工程において、可溶化及びリフォールディングの際の最適なレドックスシステムを得るために、DTT及びGSSG濃度を使用する実験計画法を実施した(DoE1)。このアプローチは、2の単位操作である可溶化及びリフォールディングに及んでおり、且つリフォールディング収率(体積活性)をレスポンスとして使用するという利点を有する。これにより、例えば単一の単位操作を最適化するために可溶化収率をレスポンスとして使用する場合と比べて、このプロセスの最終収率が最大化される。図2は、実施したDoE1についての等高線プロットを示し、MODDE最適化機能を使用した算出により、可溶化の際の7.11mMのDTT(緩衝液1;pH8)及び1.27mMのGSSG(緩衝液1;pH8.5)で最大のリフォールディング収率が得られている。使用した1:40の希釈では(リフォールディング緩衝液中の可溶化ミックス)、これは7:1のGSSG:DTT比に等しい。
【0197】
レドックス対DTT/GSSGのpH依存性をカバーするために、pH(7;8.5;10)をさらなるファクターとしたことを除き、DoE1と同様のDoEを実施した。pH7におけるリフォールディングでは、DTT及びGSSGの全ての組み合わせで、より低い結果が得られ、このことはモデルに大きく影響する。これは、pH8.5及び10でのDTT及びGSSGについての悪い予測につながる。したがって、pH7をモデルから除外した。図3は、体積活性をレスポンスとして用いる最終モデルについての4D等高線プロットを示す。pH10では、最高収率は、6.7mMのDTT及び1.26mMのGSSGで達成される。
【0198】
実施例3.リフォールディングリアクター実験
全般的な材料及び方法は、別途特定されない限り、実施例1に記載されている通りであった。分析方法は実施例2に記載されているように使用した。
【0199】
(リアクターの設定)
より大スケールでのリフォールディングでは、3.6Lの容器体積を有するInfors Labfors5を使用した。全てのデータ収集及びプロセス制御は、Lucullus PIMSを使用して行った。温度は、ガラス容器の二重ジャケットに接続されたLauda Alpha R8サーモスタットを使用して、リフォールディング中10℃で一定に保った。温度は、前記Infors Labfors5に接続させた温度センサを使用してモニタリングした。加えて、pH、dO2及びレドックス電位をモニタリングした。前記pH及びdO2を、前記Infors Labfors5に接続したそれぞれのプローブによって測定した。前記レドックス電位を、Lucullusプロセスシステムに接続されたHamilton EasyFerm Plus ORP Arc425を使用してモニタリングした。ヘミンフィードは、Sartorius Entrisスケールと組み合わせたLAMBDA PRECIFLOW蠕動液体ポンプを使用して適用し、Lucullusを使用したPID-フィードフォワード制御を可能にした。
【0200】
前記容器の最終リフォールディング体積を1.2Lで一定に保った(30mLの溶解物の使用及び1:40の希釈において生じる)。前記小スケール実験について言及したものと同じ緩衝液組成物(実施例2;リフォールディング緩衝液1又はリフォールディング緩衝液2)を使用した。
【0201】
(リアクターラン)
(リアクター実験1):この実験では、可溶化ミックスは1mMのDTTを含有し、リフォールディング緩衝液は0.35mMのGSSGを含有した。可溶化緩衝液1(pH8)及びリフォールディング緩衝液1(pH8.5)を使用した。ヘミンをリフォールディング開始20時間後に添加して最終濃度を20μMとした。
【0202】
(リアクター実験2):この実験では、可溶化ミックスは7.11mMのDTTを含有し、リフォールディング緩衝液は1.27mMのGSSGを含有した。可溶化緩衝液1(pH8)及びリフォールディング緩衝液1(pH8.5)を使用した。ヘミンをリフォールディング開始20時間後に添加して最終濃度を20μMとした。サンプル(反応管において2mL)を2時間毎に採取し、ヘミンを添加して20μMの最終濃度とし(ヘミン添加前に採取したサンプルについてのみ;ヘミン添加後のサンプルは既に20μMを含有していた)、インキュベートし(2時間;4℃、弱く攪拌)、次いで酵素活性を測定した。
【0203】
(リアクター実験3):この実験では、可溶化ミックスは1mMのDTTを含有し、リフォールディング緩衝液は0.35mMのGSSGを含有した。可溶化緩衝液2(pH10)及びリフォールディング緩衝液2(pH10)を使用した。ヘミンをリフォールディング開始20時間後に添加して最終濃度を20μMとした。
【0204】
(リアクター実験4):この実験では、可溶化ミックスは7.11mMのDTTを含有し、リフォールディング緩衝液は1.27mMのGSSGを含有した。可溶化緩衝液2(pH10)及びリフォールディング緩衝液2(pH10)を使用した。ヘミンをリフォールディング開始20時間後に添加して最終濃度を20μMとした。
【0205】
(リアクター実験5):この実験では、可溶化ミックスは7.11mMのDTTを含有し、リフォールディング緩衝液は1.27mMのGSSGを含有した。可溶化緩衝液1(pH8)及びリフォールディング緩衝液1(pH8.5)を使用した。一定のフィード(2mL、1mMのヘミン/時;最終濃度:20μMのヘミン)を、リフォールディング開始8時間後から20時間後まで(12時間のフィード時間)適用した。リアクター2については、サンプルを2時間毎に抜き出し、活性を測定した。上記のヘミンフィードの開始後、サンプルを、直接(当該ヘミンフィードの開始時に低ヘミン濃度で)、並びに20μMのヘミン最終濃度となるまでのヘミン添加及び2時間のインキュベーションの後に加えての両方で測定した。
【0206】
(結果:ヘミン添加時間)
小スケールの最適化(実施例2)に基づいて、リフォールディング開始から20時間後の最終濃度20μMのヘミン添加をリアクター実験2に使用した。ヘミンの添加の前(すなわち、最初の20時間)、サンプルを2時間毎に採取して活性をat-lineで測定した(図4)。リフォールディングの成功と相関する体積活性を測定するために、サンプリング直後に20μMのヘミンを各サンプルに添加し、2時間のインキュベーション後に前記活性を測定した。リアクターへのヘミンの添加後(すなわち、20時間後)は、サンプルを2時間毎にさらに採取したが、さらなるヘミンは添加しなかった。さらに、前記サンプルを前述と同じ条件下でインキュベートした(測定前2時間)。at-line活性測定について分かるように、リフォールディングは、およそ10時間後に完了し、その後、前記活性は、ヘミンが添加されるまで停滞している。リアクターへのヘミン添加後の活性上昇は、恐らく、より良好な表面対体積比及びより良好な混合などの、リアクターでの良好な条件に起因するものである。
【0207】
【表5】
【0208】
これらの実験は、驚くべきことに、リフォールディングミックスをヘム補因子の添加の前の期間でインキュベートすることが有利であることを実証している。ヘミンの疎水性の性質が、リフォールディングプロセスの際に凝集を促進したと見られる。小スケールの実験を使用して示されるように、より高濃度のヘミンは早期に添加されるとリフォールディング収率を顕著に低減させ、これは添加が遅い場合には存在しない効果である。反応において疎水性物質(この場合、ヘミン)を早期に添加することにより、タンパク質凝集を促進して、より低いリフォールディング収率につながっている可能性がある。しかし、フォールディング反応が完了した後では(HRPでは使用した条件で約10時間)、ヘミンの添加は、ヘミンの取り込みがホロ酵素形成における最後の工程であるため、(試験した全ての濃度について)凝集につながらない。
【0209】
(結果:線形ヘミンフィード)
リアクター実験5では、リフォールディングの開始8時間後に、12時間の合計フィード継続時間で線形ヘミンフィードを適用した。サンプルはリアクター実験2について記載されているサンプリング手順にしたがって(2時間毎)抜き出した。前記ヘミンフィードの開始後、サンプルを、さらなるヘミン添加をすることなく1回(すなわち、ヘミンフィードの開始時における低いヘミン濃度で;表6におけるサンプルb1~b10)、及び20μMのヘミン最終濃度となるようにヘミンを添加してさらに2時間インキュベーションした後に1回(表6におけるサンプルa1~a9)の両方で測定した。
【0210】
【表6】
【0211】
1回のバッチ添加に対する、ある特定の期間にわたって配分されるヘミン添加の有益な効果は、リアクター実験2及び5の比較から明らかである。実験2、サンプル4及び実験5、サンプルa4はいずれも、リフォールディングの開始6時間後の20μMのヘミンのバッチ添加、及びさらに2時間後の測定に基づいている。結果として、観察された体積活性は、非常に類似している(31.97±0.52対33.10±1.49)。このことは、サンプルの結果がこれらの実験間で比較され得ることを実証している。バッチ添加とより長い期間にわたる添加との間の差は、実験2、サンプル10(18時間後の20μMのヘミンのバッチ添加、20時間後に測定:35.44±0.86)及び実験5、サンプルb6(リフォールディング後8時間~20時間で線形フィードとして20μMのヘミンを添加、20.5時間後に測定:62.40±2.10)の比較から明らかである。これらの2のサンプル間の差はヘミン添加の継続時間のみであり(バッチとして一度に又は12時間にわたって配分)、より長期間にわたってのヘミン添加の配分が、優れた結果につながることを明らかに実証している。
【0212】
図5は、レドックス電位、及び測定した体積活性を示す。リアクター実験2と比較して(図4)、リフォールディングの最初は、両方の実験で非常に類似しており、8時間後に達成された体積活性は、実験2で32.0、実験5で33.1である。しかし、実験5に適用した線形ヘミンフィードは、ヘミン添加後の実験2と比較してリフォールディング収率の25%の増加につながる。
【0213】
(結果:レドックスシステム)
小スケールの実験(実施例2)を使用して得られた結果を確認するために、4つのリアクター実験を実施した。条件及び最終比活性を表7に列挙する。概して、これらの結果は、前記小スケールの実験を使用して得られた結果とよく一致しており、pH10での最適化されたDTT/GSSG濃度が最も高いリフォールディング収率を示している。
【0214】
【表7】
【0215】
実施例4.リフォールディング後の捕捉
全般的な材料及び方法は、実施例1において記載されている通りとした。分析方法は、実施例2に記載されているように使用した。
【0216】
この例において、リフォールディング後の捕捉工程として疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)を使用した。これは、結合条件が、過剰のヘミン、凝集体及び不純物などの不純物を析出させる高い塩濃度を必要とする一方、正確にフォールディングされたHRPが高い塩濃度まで安定である、という利点を有する。このことは、捕捉工程に使用されるロードからこれらの不純物が分離されて、より高い結合能をもたらし、クロマトグラフィ樹脂のより容易な洗浄及び再生をもたらすという利点を有する。
【0217】
(小スケール析出実験)
HIC(疎水性相互作用クロマトグラフィ)を使用した捕捉工程での最も良好な塩濃度を見出すために、異なる濃度の(NHSO及びNaClを2mLの反応管で試験した。適切な量の塩(表8を参照されたい)を2mLの反応管において秤量し、(リフォールディングが完了した後)1mLのリフォールディングミックスを添加した。前記塩を溶解するために前記反応管を混ぜ、室温で弱く攪拌しながら30分間インキュベートした。遠心分離(20379g;20分;4℃)後、上清をブラッドフォード及び活性測定に使用した。次いで最も良好な条件を使用して、より大きい体積を使用して、様々なHIC実験のロードを調製した。そのため、前記塩を10分以内に連続攪拌下でゆっくり添加し、次いで溶液を室温で20分間攪拌しながらインキュベートし、次いで遠心分離した(20379g;20分;22℃)。
【0218】
【表8】
【0219】
AKTA Pureシステム(GE Healthcare社)を記載されているクロマトグラフィ工程の全てに使用した。3波長(214nm、280nm及び404nm)及び伝導率をモニタリングした。
【0220】
2つの異なる塩、すなわち(NHSO及びNaClを析出工程について試験した。最適な塩濃度を見出すために、いくつかの塩濃度の両方の塩を2mLの反応管において試験した。結果を表9及び表10に列挙する。通常は、HIC樹脂において結合する標的タンパク質に必要とされる最も低い塩濃度をロードの調製に使用する。これは、この濃度で不純物の結合が最も低い量となるからである。しかし、ここでは、活性HRPが析出しない最も高い量を選択した。1つには、これにより、確実に、多量の不純物が析出することになった(表9における精製係数(purification factor)を参照されたい)。他方で、これらの条件において前記樹脂に結合したほとんど全ての不純物が、より疎水性であり、したがって、より低い塩濃度においても結合し得た。加えて、結合強度の差が、これらの不純物から活性HRPを分離することを容易にした。この理由で、1Mの(NHSO又は4MのNaClをロードの調製に選択した。
【0221】
【表9】
【0222】
【表10】
【0223】
小スケールの実験について得られた結果を、表11に列挙する、150mLの体積によるベンチスケールの実験を使用して検証した。選択した塩濃度についての体積活性の回収は、それぞれ、(NHSO及びNaClについて96%及び95%であった。比活性は、(NHSOでは2.5倍、NaClでは4.5倍増加し、引き続くHIC工程でのロードとして有利な条件をもたらした。
【0224】
【表11】
【0225】
(HIC実験1(HIC1))
267gのNaCl/1Lのリフォールディングミックスを添加することによって、上記に記載されているようにロードを調製した。1mLのHiTrap Butyl FF(GE Healthcare社)を0.5mL/分の流量で使用した(75cm/時間;0.5CV/分;CV=カラム体積)。このカラムを緩衝液A(緩衝液A:20mMのBis-Tris(pH7);7%のグリセロール;4MのNaCl)によって平衡化し、平衡化の際に全てのシグナルが一定になった後に49mLのロードをアプライした。これらのロードの後、緩衝液Aによる洗浄工程(8mL;8CV)を実施した。その後、段階溶出を25%の緩衝液B(緩衝液B:20mMのBis-Tris(pH7);7%のグリセロール/8mL;8CV)、75%の緩衝液B(10mL;10CV)及び100%(17mL;17CV)緩衝液Bによって実施し、活性HRPが75%の緩衝液Bにおいて溶出した。体積酵素活性[U/mL]及びタンパク質濃度を全ての画分について測定した。活性プールの純度を、SEC-HPLC及びReinheitszahlを使用して求めた。
【0226】
この捕捉工程は、リフォールディング後のHRPの精製及び捕捉のための最適化された方法を提示する。図6は、この実験で使用した段階溶出を示し、表12は、対応する分析結果を示す。活性HRPをクロマトグラフィ工程のため約9倍に濃縮して0.5g/Lとし、これは、スケールアップの際にさらに改良することが期待される。より疎水性の不純物は100%の緩衝液Bで溶出し、この方法に関する良好な分離能につながる。280nmシグナルに対する404nmシグナルの比は、活性画分についての高い純度を示唆する。このことは、SEC-HPLCによってさらに確認された(純度≧98%)。したがって、これは、大腸菌封入体から生産される、純粋な、正確にフォールディングされた、且つ、完全に活性なHRPを得る方法を提示している。
【0227】
【表12】
【0228】
(HIC実験2(HIC2))
132gの(NHSO/1Lのリフォールディングミックスを添加することによって、上記に記載されているようにロードを調製した。1mLのHiTrap Octyl FF(GE Healthcare社)を1mL/分の流量で使用した(150cm/時間;1CV/分)。このカラムを緩衝液Aによって平衡化し(緩衝液A:20mMのTris(pH8.5);7%のグリセロール;1Mの(NHSO)、平衡化の際に全てのシグナルが一定になった後に50mLのロードをアプライした。これらのロードの後、緩衝液Aによる洗浄工程(16mL;16CV)を実施した。その後、線形勾配溶出を0~100%Bによって(緩衝液B:20mMのBis-Tris(pH7);7%のグリセロール)30mLで実施した(30分;30CV)。体積酵素活性[U/mL]を全ての画分について測定した。ここまでで、活性HRPの最も高い割合がフロースルーに見出されたため、さらなる分析は適用しなかった。
【0229】
この捕捉工程では、疎水性が低い樹脂であるHiTrap Octyl FF(1mL)(GE Healthcare社)を使用した。選択した塩濃度(1Mの(NHSO)では、活性HRPの75%が前記カラムに結合せず、フロースルーに見られた(図7及び表13を参照されたい)。これは、より高い塩濃度を使用して改良され得たが、小スケールの実験では、1Mの(NHSOよりも高い塩濃度では回収が減少することが示された。したがって、上記の樹脂は、リフォールディング後の活性HRPの捕捉工程にはあまり有利でないことが結論付けられた。前記カラムの疎水性は結合リガンドの密度に依存するため、これは、より高いリガンド密度を有するオクチル樹脂が使用されれば改良される可能性がある。Octyl Sepharose 4 Fast Flow(5μmol/mL樹脂)についてのリガンド密度は、HIC1で使用したButyl Sepharose 4 Fast Flow(50μmol/mL樹脂)よりも約10倍低い。
【0230】
【表13】
【0231】
(HIC実験3及び4(HIC3及びHIC4))
HIC実験3では、267gのNaCl/1Lのリフォールディングミックスを添加することによって、上記に記載されているようにロードを調製した。HiTrap Phenyl FF(High Sub)1mL(GE Healthcare社)を1mL/分の流量で使用した(150cm/時間;1CV/分)。このカラムを緩衝液Aによって平衡化し(緩衝液A:20mMのTris(pH8.5);7%のグリセロール;4MのNaCl)、平衡化の際に全てのシグナルが一定になった後に50mLのロードをアプライした。これらのロードの後、緩衝液Aによる洗浄工程(9mL;9CV)を実施した。その後、線形勾配溶出を30mL中0~100%Bによって(緩衝液B:20mMのBis-Tris(pH7);7%のグリセロール)実施した(30分;30CV)。体積酵素活性[U/mL]を全ての画分について測定した。活性HRPを含有する画分はより低い濃度を示し、不純物からの良好な分離が示されなかったため、さらなる分析は適用しなかった。
【0232】
HIC実験4では、267gのNaCl/1Lのリフォールディングミックスを添加することによって、上記に記載されているようにロードを調製した。1mLのHiTrap Phenyl FF(High Sub)(GE Healthcare社)を0.5mL/分の流量で使用した(75cm/時間;0.5CV/分)。このカラムを緩衝液Aによって平衡化し(緩衝液A:20mMのTris(pH8.5);7%のグリセロール;4MのNaCl)、平衡化の際に全てのシグナルが一定になった後に50mLのロードをアプライした。これらのロードの後、緩衝液Aによる洗浄工程(10mL;10CV)を実施した。その後、段階溶出を60%の緩衝液B(緩衝液B:20mMのBis-Tris(pH7);7%のグリセロール/9mL;9CV)、90%の緩衝液B(26mL;26CV)及び100%(32mL;32CV)緩衝液Bによって実施し、活性HRPが90%の緩衝液Bで溶出した。体積酵素活性[U/mL]を全ての画分について測定した。活性HRPを含有する画分はより低い濃度を示し、不純物からの良好な分離が示されなかったため、さらなる分析は適用しなかった。
【0233】
HIC3及びHIC4では、HIC1より高い疎水性を有する樹脂を使用した(HiTrap Phenyl FF(High Sub))。HIC3では、勾配溶出を使用したが、図8に示すように、活性HRPとより疎水性の不純物との分離により乏しかった。前記樹脂の高い疎水性に起因して、両方の画分が互いに非常に近くで溶出し、活性HRPは90%の緩衝液B付近で、不純物は100%の緩衝液Bで溶出した。したがって、図9に示すHIC4で段階溶出を試験した。分離は改善した一方、強いテーリングが示されたことから、90%の緩衝液Bで溶出する活性HRP画分についての溶出体積も増加した。
【0234】
(HIC実験5(HIC5))
リアクター実験4(実施例3)で仕上がったリフォールディングミックスを、この捕捉工程の材料として使用した。pHを2MのHClによって攪拌下で8.5に調整した。その後、267gのNaCl/1Lのリフォールディングミックスを添加することによって、上記に記載されているようにロードを調製した。Butyl Sepharose 4 Fast Flow(GE Healthcare社)で充填され、80mlの体積を有するカラムを8mL/分(90cm/時間)の流量で使用した。このカラムを緩衝液Aによって平衡化し(緩衝液A:20mMのBis-Tris(pH7);4MのNaCl)、平衡化の際に全てのシグナルが一定になった後に751mLのロードをアプライした。このロードの後、20%の緩衝液Bによる洗浄工程(緩衝液B:20mMのBis-Tris(pH7)/1.5CV)を実施した。その後、75%の緩衝液B(3CV)及び100%(3CV)緩衝液Bによって段階溶出を実施し、活性HRPが75%の緩衝液Bにおいて溶出した。体積酵素活性[U/mL]及びタンパク質濃度を全ての画分について測定した。活性プールの純度を、Reinheitszahlを使用して求めた。
【0235】
後の捕捉工程によるpH10におけるリフォールディングの適合性を確認するために、リアクター実験4のリフォールディングミックスを当該HICのロードとして使用した。結合挙動の変化を防止するために、前記リフォールディングミックスのpHを塩析の前に8.5に調整した。図10は、活性HRP画分、及び不純物の溶出を示す。活性HRPは最終濃度0.95g/L及び最終体積活性1500U/mLにまで濃縮され、Reinheitszahlは植物HRPのそれに匹敵した(2.72)。これらの結果は、1mLのカラム体積からのスケールアップが、HIC1で議論されているように、より高い濃度につながるという予測を裏付けた。さらに、HIC1で議論されている捕捉工程は、スケールアップ可能であり、pH10におけるリフォールディングプロセスに適用可能であることが示された。これは前記pHを、活性HRPを損失することなく8.5に調整可能であるからである。したがって、塩析に4MのNaClを使用する捕捉工程、及び引き続く疎水性相互作用クロマトグラフィは特に有利であることが証明された。
【0236】
実施例5.全プロセス
(分析方法)
以下の差異点/追加点以外は実施例2に記載されているように分析方法を使用した。
(タンパク質濃度):タンパク質濃度をブラッドフォードによる方法を使用して求めた(Bradford, M.M., A rapid and sensitive method for the quantitation of microgram quantities of protein utilizing the principle of protein-dye binding. Analytical biochemistry, 1976. 72(1-2): p. 248-254)。200μlのブラッドフォード溶液を5μlのサンプルと混合し、595nmにおける吸光度の変化を、Tecan Infinite M200 PRO機器を使用して10分にわたって測定した。
【0237】
(逆相HPLC):PolyPhenyl BioResolve-RP-mAb(2.7μm、3.0×100mm)カラムを使用したRP HPLCによってサンプル中のHRP濃度を測定した。この方法を、10分間、以下のプログラムで実行した:
1.2ml/分の流量で、25%のBを0.5分間、55%のBを線形勾配において8分間、55%のBを0.5分間、及び次いで25%のBを1分間(A=0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含むMilliQ水;B=0.1%のTFAを含むアセトニトリル)。前記カラムを75℃の一定温度で保ち、214nm、280nm及び404nmを測定した。
【0238】
(サイズ排除HPLC):HICによる捕捉工程の後の活性HRP画分の純度を、SEC-HPLCを使用して測定した。このために、BEH200A SEC1.7μm、4.6×300mm、3.5μm(Waters社)カラムを使用した。この方法を100%の緩衝液A(緩衝液A:80mMのリン酸塩(pH6.8);250mMのKCl)によって0.3mL/分で18分間実行した。前記カラムを30℃の一定温度で保ち、214nm、280nm及び404nmを測定した。
【0239】
(プロセスラン)
細胞株及び増殖条件、並びにホモジナイズ及び封入体洗浄を、実施例1に記載されているように実施した。リフォールディングリアクターを、実施例3に記載されているように使用した。
【0240】
可溶化のために、凍結したIBのアリコートを解凍し、湿潤封入体(wIB)重量を算出するために秤量し、適切な可溶化緩衝液(可溶化緩衝液1:50mMのTRIS/HCl;pH8.5;6Mの尿素/可溶化緩衝液2:50mMのグリシン;pH10;6Mの尿素)に再懸濁して、100g/L(3.5gのIB=35mlの可溶化ミックス(遠心分離後に30mlの可溶化ミックスを結果として生じさせる)のwIB濃度とした。再懸濁後、可溶化ミックス中7.11mMのDTTの最終濃度となるようにDTTを添加し(1MのDTT原液を使用)、当該可溶化ミックスをインキュベートし(4℃;0.5時間;弱く攪拌)、続いて遠心分離した(20379g;20分;4℃)。上清をリフォールディング用に直ちに使用し、ペレットを廃棄した。
【0241】
リアクターランをpH8.5及びpH10において以下のように実施した。
【0242】
pH8.5では、容器の最終リフォールディング体積は1.2Lであった(30mLの溶解物の使用及び1:40の希釈において生じる)。リフォールディング緩衝液は、20mMのTRIS/HCl(pH8.5)、2Mの尿素、7%のグリセロール、2mMのCaCl、1.27mMのGSSGを含有した。一定のフィード(2.4mL、1mMのヘミン/時間;最終濃度20μMのヘミン)をリフォールディング開始8時間後から18時間後まで適用し(10時間のフィード時間)、前記リアクターランを19時間後に終了させた。塩析では、0.27gのNaCl/mlリフォールディングミックスを室温で攪拌しながら30分にわたって添加した。その後、Thermo Scientific LYNX Sorvall 6000遠心分離機で前記リフォールディングミックスを17,568g、4℃で30分間遠心分離した。上清をHICのロードとして使用し(塩添加後約1250~1300ml)、ペレットを廃棄した。
【0243】
pH10では、容器の最終リフォールディング体積は1.2Lであった(30mLの溶解物の使用及び1:40の希釈において生じる)。リフォールディング緩衝液は、20mMのグリシン(pH10)(HClで調整)、2Mの尿素、7%のグリセロール、2mMのCaCl、1.27mMのGSSGを含有した。一定のフィード(2.4mL、1mMのヘミン/時;最終濃度20μMのヘミン)をリフォールディング開始8時間後から18時間後まで適用し(10時間のフィード時間)、前記リアクターランを19時間後に終了させた。塩析の前に、pHをHClによってpH10からpH8.5に低下させた。次いで、0.27gのNaCl/mlリフォールディングミックスを室温で攪拌しながら30分にわたって添加した。その後、Thermo Scientific LYNX Sorvall 6000遠心分離機で前記リフォールディングミックスを17,568g、4℃で30分間遠心分離した。上清をHICのロードとして使用し(塩添加後約1250~1300ml)、ペレットを廃棄した。
【0244】
HICでは、Butyl Sepharose 4 Fast Flow(GE Healthcare社)で充填したベッドボリューム80mlのカラムを使用した。前記カラムを、全てのシグナルが一定になるまで113cm/時間の流量で緩衝液A(緩衝液A:20mMのBisTris(pH7);4MのNaCl)によって平衡化した。次いで、1250~1300mLのロードを、90cm/時間の流量でアプライした。これらのロードの後、20%の緩衝液B(緩衝液B:20mMのBis-Tris(pH7))による洗浄工程を2CVについて90cm/時間の流量で実施した。その後、段階溶出を75%の緩衝液B(79cm/時間)及び100%(90cm/時間)緩衝液Bによって実施し、活性HRPが75%の緩衝液Bにおいて溶出した。体積酵素活性[U/mL]及びタンパク質濃度を全ての画分について測定した。活性プールの純度を、Reinheitszahlを使用して求めた。
【0245】
(結果)
小スケールで実施した方法開発実験により、pH8.5よりもpH10がリフォールディングにより好適であることが見出された(実施例2を参照されたい)。したがって、同量のHRP湿潤封入体を用いて、pH8.5でリフォールディングを行うもの及びpH10でリフォールディングを行うものの2つのリアクターランを実施した。結果の概説を表14に見ることができる。pH8.5でのリフォールディング収率(44%)と比較すると、pH10でのリフォールディングは大きく増加したリフォールディング収率(74%)につながった。また、Reinheitszahlはより高く、純粋なHRPの合計収率はpH10において1.7倍増加する。このことは、小スケールDoEの結果を再確認するものである(実施例2)。図11及び12は、HICランのクロマトグラムを示す。ここで、pH10におけるリフォールディングが、疎水性不純物の顕著な低減及び75%の緩衝液Bでの大きくシャープなHRPピークにつながることが分かる。
【0246】
【表14】
【0247】
実施例6.HRP変異研究の材料及び方法
(HRP変異体の発現及び精製)
植物HRPタイプVI-A(カタログ番号:P6782)をSigma-Aldrich社(米国ミズーリ州セントルイス)から得た。大腸菌で生産された全てのHRPバリアントは、別途特定されない限り、示されている変異を有する配列番号2に記載されている配列からなった。
【0248】
発現宿主及びプラスミド
標準の分子クリーニング技術を、過去に記載されているように実施した(Humer and Spadiut. “Improving the performance of horseradish peroxidase by site-directed mutagenesis.” International Journal of Molecular Sciences 20.4 (2019): 916)。HRPバリアントC1A(野生型HRP;配列番号2)をコードするhrp遺伝子を大腸菌についてコドン最適化し、GenSript USA Inc.(米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)から得た。大腸菌株BL21(DE3)(Lucigen社、米国ウィスコンシン州ミドルトン)において、HRPを、pSF-T7-LacO-NH2-dsbA(OG4591)(Oxford Genetics Ltd.、英国オクスフォード)又はpET21d+(Novagen、米国カリフォルニア州サンディエゴ)から生産した。プラスミドpSFT7は、ペリプラズム内へのエクスポートのためのDsbタグをコードし、これは移行後に切断される。プラスミドpET21d+は細胞質内でのHRP封入体生産に使用した。タンパク質がいずれのタグも伴わずに生産されるように停止コドンを導入した。
【0249】
タンパク質発現及び封入体(IB)からの精製
いずれのN末端又はC末端タグも有さず、hrp遺伝子(若しくはそのバリアント)を有するベクターpET21d+を保有するBL21(DE3)細胞の培養に、SB培地(32gL-1トリプトン;20gL-1酵母抽出物;5gL-1NaCl;5mMのNaOH)を使用した。アンピシリンを100mgL-1の最終濃度となるように添加した。前培養物を50mLのSBAmp培地において振とうしながら(250rpm)37℃で一晩増殖させ、2.5LのUltra Yield Flasks(UYF)に接種して最終体積500mLのSBAmp培地において0.3の光学密度(OD600)となるようにした。細胞を0.5のOD600まで振とうしながら(250rpm)37℃で増殖させ、その後、0.1mMのイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加することによりhrp発現を誘導した。25℃及び250rpmで20時間の増殖の後、細胞を遠心分離により収集した(5000g、20分、4℃)。
【0250】
IKA T10ベーシックULTRA-TURRAXを使用して、3~5mLの緩衝液A/g湿潤バイオマス(緩衝液A:50mMのTRIS/HCl;pH8;500mMのNaCl;1.5mMのEDTA)でバイオマスを再懸濁し、(GEA Niro Soavi Panda PLUSを使用して)ホモジナイズした(>1300バール、3通路、冷却)。当該ホモジナイズされた懸濁液を遠心分離し(15650g;20分、4℃)、上清を廃棄して細胞残屑を10mLの緩衝液B/g湿潤細胞残屑(緩衝液B:50mMのTRIS/HCl;pH8;500mMのNaCl;2Mの尿素)で再懸濁し、再び遠心分離した(15650g;20分、4℃)。緩衝液Bを使用した洗浄工程を1回繰り返した。その後、IB/細胞残屑を水(5mLの水/g湿潤細胞残屑)に再懸濁し、当該懸濁液を、予め秤量した50mLの反応管に分配し(aliquoted)、遠心分離し(15650g;20分、4℃)、ペレットをさらなる使用まで-20℃で保存した。
【0251】
可溶化のために、凍結したIBのアリコートを解凍し、湿潤封入体(wIB)重量を算出するために秤量し、適切な可溶化緩衝液(50mMのTRIS/HCl;pH8.5;6Mの尿素)に再懸濁して、100g/LのwIB濃度とした。再懸濁後、可溶化ミックス中7.11mMのDTTの最終濃度となるようにDTTを添加し(1MのDTT原液を使用)、当該可溶化ミックスをインキュベートし(4℃;0.5時間;弱く攪拌)、続いて遠心分離した(20379g;20分;4℃)。上清をリフォールディング用に直ちに使用し、ペレットを廃棄した。
【0252】
溶解物を適切なリフォールディング緩衝液(例えば、20mMのTRIS/HCl(pH8.5)、2Mの尿素、7%のグリセロール、2mMのCaCl、1.27mMのGSSG)において1:40に希釈し、これにヘミンを20μMの最終濃度で添加して、リフォールディングを10℃で19時間実施した。
【0253】
タンパク質を疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)によってさらに精製した。Butyl Sepharose 4 Fast Flow(GE Healthcare社)で充填したベッドボリューム80mlのカラムを使用した。8mL/分(90cm/時間)。前記カラムを、全てのシグナルが一定になるまで113cm/時間の流量で緩衝液Aによって(緩衝液A:20mMのBisTris(pH7);4MのNaCl)平衡化した。次いで、1250~1300mLのロードを、90cm/時間の流量でアプライした。これらのロードの後、20%の緩衝液B(緩衝液B:20mMのBis-Tris(pH7))による洗浄工程を2CVについて90cm/時間の流量で実施した。その後、段階溶出を75%の緩衝液B(79cm/時間)及び100%(90cm/時間)緩衝液Bによって実施し、活性HRPが75%の緩衝液Bにおいて溶出した。
【0254】
いくつかの変異体については、代わりに、タンパク質生産及び精製を、実施例5に記載されている最も好ましい方法を使用して実施した(pH10)。
【0255】
(反応速度パラメータ)
酵素の反応速度パラメータを、Tecan Infinite M200 PRO機器(Tecan社、スイス、マンドルフ)を使用して96ウエルプレートアッセイで基質ABTS、TMB及び過酸化水素について求めた。
【0256】
3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を基質として用いる測定では、96ウエルプレートの各ウエルにおける反応混合物は、最終体積200μLの50mMのリン酸-クエン酸緩衝液(pH5)中、1mMという飽和性(saturating)の過酸化水素濃度、及び変動させたTMB濃度(20~550μM)を含有した。タンパク質サンプル(5μL)を175μlのTMB-緩衝液混合物と混合し、反応を20μlの過酸化水素溶液(10mM)によって開始した。吸光の増加を、Tecan Infinite M200PRO機器において30℃で60秒間、652nmで追跡した。反応速度パラメータを、Sigma Plotソフトウエア(Systat Software INC.、米国カリフォルニア州サンノゼ)及びε652の吸光係数=39mM-1cm-1(Josephy, et al. “The horseradish peroxidase-catalyzed oxidation of 3, 5, 3’, 5’-tetramethylbenzidine. Free radical and charge-transfer complex intermediates.” Journal of Biological Chemistry 257.7 (1982): 3669-3675を参照されたい)を使用して算出した。
【0257】
ABTSを基質として用いる測定では、96ウエルプレートの各ウエルにおける反応混合物は、最終体積200μLの50mMのリン酸-クエン酸緩衝液(pH5)中、1mMという飽和性(saturating)の過酸化水素濃度、及び変動させたABTS濃度(0.1~7mM)を含有した。タンパク質サンプル(5μL)を175μlのABTS-緩衝液混合物と混合し、反応を20μlの過酸化水素溶液(10mM)によって開始した。吸光の増加を、Tecan Infinite M200PRO機器において30℃で120秒間、420nmで追跡した。反応速度パラメータを、Sigma Plotソフトウエア(Systat Software INC.、米国カリフォルニア州サンノゼ)及びε420の吸光係数=36mM-1cm-1(Childs and Bardsley. “The steady-state kinetics of peroxidase with 2, 2′-azino-di-(3-ethyl-benzthiazoline-6-sulphonic acid) as chromogen.” Biochemical Journal 145.1 (1975): 93-103を参照されたい)を使用して算出した。
【0258】
過酸化水素を基質として用いる測定では、96ウエルプレートの各ウエルにおける反応混合物は、最終体積200μLの50mMのリン酸-クエン酸緩衝液(pH5)中、10mMという飽和性(saturating)のABTS、及び変動させた過酸化水素濃度(0.001~1mM)を含有した。タンパク質サンプル(5μL)を145μlの過酸化水素-緩衝液混合物と混合し、反応を50μlのABTS溶液(40mM)によって開始した。吸光の増加を、Tecan Infinite M200PRO機器において30℃で120秒間、420nmで追跡した。反応速度パラメータを、Sigma Plotソフトウエア(Systat Software INC.、米国カリフォルニア州サンノゼ)及びε420の吸光係数=36mM-1cm-1(Childs and Bardsley. “The steady-state kinetics of peroxidase with 2, 2′-azino-di-(3-ethyl-benzthiazoline-6-sulphonic acid) as chromogen.” Biochemical Journal 145.1 (1975): 93-103を参照されたい)を使用して算出した。
【0259】
(熱安定性)
酵素バリアントの熱安定性を50mMのBisTris/HCl(pH7)、7%のグリセロール、500mMのNaClにおいて60℃で評価した。ABTSによる酵素活性を、0、30、60、90及び120分後にHRP野生型(配列番号2)及びHRP N13D/N57S/N255D/N268Dについて測定し;0、90、180、300、420及び588分後にバリアントHRP N13D/N57S/N175S/N255D/N268D、HRP N13D/N57S/P146Q/N175S/N255D/N268D、HRP N13D/N57S/N175S/N255D/N268D/N275K、及びHRP N13D/N57S/P146Q/N175S/N255D/N268D/N275Kについて測定し;並びに、0、90、180、300及び420分後に植物HRPについて測定した。植物HRPを含めた全てのバリアントの酵素濃度は、熱処理の際に2.86μMであった。その後、これらのサンプルを氷上で5分間冷却し、その後、16162gで4℃で15分間遠心分離した。その後、残存活性を、Tecan Infinite M200PRO機器を用いて7mMのABTSによって測定した。反応混合物は、総体積200μlの50mMのリン酸-クエン酸緩衝液(pH5)中、5μLのタンパク質、1mMという飽和性(saturating)の過酸化水素濃度、及び7mMのABTSを含有した。吸光の増加を30℃で120秒間、420nmで追跡した。残存酵素活性をインキュベーション時間に対してプロットし、以下の式における不活性速度を使用して60℃における半減期を算出した:
【0260】
1/2=ln(2)/kin
式中、t1/2は半減期であり、kinは、対数残存活性の傾きである。
【0261】
実施例7.HRP変異体の熱安定性
HRPのいくつかの変異体を発現させて精製し、実施例6に記載されているように熱安定性を測定した。多くの変異が熱安定性を増加させたことが見出された。最も好ましい変異体HRP N13D/N57S/P146Q/N175S/N255D/N268D/N275K(配列番号4)は、野生型HRP(配列番号2)よりも13倍を超えて向上した熱安定性、及び、植物由来(すなわち、グリコシル化された)酵素に対してさえもこれより1.7倍向上した熱安定性を示した。重要なことに、変異P146Q及びN275Kの組み合わせ(HRP N13D/N57S/P146Q/N175S/N255D/N268D/N275K)では、変異P146Q(HRP N13D/N57S/P146Q/N175S/N255D/N268D)又はN275K(HRP N13D/N57S/N175S/N255D/N268D/N275K)単独のいずれかよりも、有意に高い熱安定性が観察された。
【0262】
【表15】
【0263】
実施例8.HRP変異体の反応速度パラメータ
HRPのいくつかの変異体を発現させて精製し、実施例6に記載されているように基質ABTS、TMB及び過酸化水素についての反応速度パラメータを求めた。HRP N13D/N57S/P146Q/N175S/N255D/N268D/N275K(配列番号4)は、基質TMB及び過酸化水素ではHRP N13D/N57S/N175S/N255D/N268Dより顕著に活性が高いことが見出された。変異P146Q及びN275Kは、酵素活性に対して強力な有益な効果を及ぼすことが見出された。
【0264】
【表16】
【0265】
【表17】
【0266】
【表18】
【0267】
実施例9.植物由来HRP及び野生型HRPとの比較
HRP N13D/N57S/P146Q/N175S/N255D/N268D/N275K(配列番号4)の反応速度パラメータ及び熱安定性を、野生型HRP(配列番号2)並びに植物由来HRP(pHRP)のものと比較した。反応速度パラメータ及び熱安定性を実施例6に記載されているように求めた。
【0268】
熱安定性の測定を図13に示す。本明細書において上記の実施例7に既に記載されているように、最も好ましい変異体HRP N13D/N57S/P146Q/N175S/N255D/N268D/N275K(mHRP、配列番号4)は、野生型HRP(rHRP、配列番号2)よりも13倍を超えて向上した熱安定性、及び植物由来(すなわち、グリコシル化された)pHRPよりもさらに1.7倍向上した熱安定性を示した(表15を参照されたい)。また、この強力に改良された熱安定性を有しながら、野生型HRP(rHRP、配列番号2)及び植物由来HRPのいずれとも類似の触媒効果が観察されたことが見出された(以下の表19及び20を参照されたい)。
【0269】
【表19】
【0270】
【表20】
【0271】
実施例10.146位及び275位の部位飽和変異誘発
P146位及びN275位の全ての可能性のあるアミノ酸交換の効果を試験するために、これらの位置の部位飽和変異誘発(site-saturation mutagenesis)を実施した。前記部位飽和変異誘発の開始点として、好ましい変異体HRP N13D/N57S/P146Q/N175S/N255D/N268D/N275K(配列番号3)を選択した。146位及び275位におけるアミノ酸交換の効果を個々に調べた。
【0272】
(ライブラリ生成)
以下のプラスミドを標準の分子クローニング技術によって構築した。部位飽和変異誘発によって146位及び275位でhrp遺伝子に変異を導入するために、pSF-T7におけるHRP N13D/N57S/P146Q/N175S/N255D/N268D/N275K(配列番号3)の全プラスミドPCR(whole-plasmid PCR)を使用した。6.3kb断片をそれぞれのオリゴヌクレオチドを用いて増幅して、部位飽和ライブラリを生成した(表21)。全てのオリゴヌクレオチドはMicrosynth社(スイス、バルガッハ)から購入した。前記オリゴヌクレオチドを、以下のプロトコルによってリン酸化した:300pmolのプライマーDNA、1×T4PNK緩衝液(NEB)、1mMのATP、5%のPEG、10単位のT4ポリヌクレオチドキナーゼ(PNK、NEB)。反応を37℃で45分間インキュベートした後、65℃で20分間熱不活化した。各PCR反応は、1×Q5反応緩衝液、200μMのdNTP Mix、200nMのフォワード及びリバースの両方のリン酸化されたプライマー、100ngのテンプレートベクターDNA、並びに1U Q5 High-Fidelity DNAポリメラーゼを含有した。New England Biolabs社(NEB、米国マサチューセッツ州イプスウィッチ)からのMonarch PCR & DNA Cleanup KitによってPCR産物を精製し、FastDigest DpnI(Thermo Scientific(商標)、米国マサチューセッツ州ウォルサム)消化によってテンプレートプラスミドDNAを除去した。2FDU(FastDigest単位)のDpnIをクローニングされたPCR産物に添加し、37℃で4時間インキュベートした。80℃で20分間の熱不活化後、プラスミドを平滑末端ライゲーションした:50ngのプラスミドDNA、1×T4DNAリガーゼ緩衝液(NEB)、400の付着端単位T4DNAリガーゼ(NEB)、16℃で一晩。65℃で20分間の熱不活化後に、前記プラスミドでBL21(DE3)を形質転換した。
【0273】
【表21】
【0274】
(スクリーニング)
形質転換陽性細胞を選択プレートから採集し、乾燥を防止するためのプラスチック箱内で、96ウエルプレートで200μlのSB培地(32gL-1トリプトン;20gL-1酵母抽出物;5gL-1のNaCl;5mMのNaOH;50mgL-1のカナマイシン)とともに16時間、37℃、250rpmで増殖させた。その後、90μlの75%のグリセロールをマスタープレートに添加した後、これらを-80℃で保存した。190μlのSB培地を含むスレーブプレートに10μlのマスタープレートを接種した。ここで、前記培地は、200μlの最終体積で、2mMのCaCl;6μMのヘミン、及び0.1mMのIPTGを含有した。前記細胞をプラスチック箱において25℃、250rpmで16時間増殖させ、Tecan Infinite M200PRO(Tecan社、スイス、マンドルフ)プレートリーダで595nmでの吸光を測定することにより細胞密度を求めた。次いで、上記プレートを、Thermo-Fisher Lynx Sorvall遠心分離機で、5000g、4℃で6分間遠心分離し、前記細胞を、5Uml-1のDNaseI及び1/2プロテアーゼインヒビターカクテル錠(コンプリート錠、EDTAフリー;Roche Diagnostics GmbH、ドイツ、マンハイム)並びに200mMのMgClを用いて、200μl/ウエルのB-PER細菌タンパク質抽出試薬(Thermo Scientific社、米国マサチューセッツ州ウォルサム)で完全に再懸濁させた。細胞溶解を室温で15分間実施した後、5000g、4℃で20分間遠心分離した。その後、総タンパク質含量をブラッドフォード法によって測定した。各ウエルの90μlを新たなプレートに移し、80℃で20分間(146位)又は80℃で15分間(275位)インキュベートし、その後、加熱したプレート及び対照プレートの両方を5000g、4℃で20分間遠心分離した。その後、200μlの総体積の、50mMのリン酸-クエン酸緩衝液(pH5)中の395μMのTMB(146位)又は406μMのTMB(275位)、1mMのH、及び10μlの細胞溶解液によって、酵素活性を測定した。測定を30℃で実施し、652nmにおける吸光度の増加(青色のTMBラジカルではε=3.9×10-1cm-1)をTecan Infinite M200 PROプレートリーダによって120秒間モニタリングした。総タンパク質濃度を用いて初期活性と残存活性を正規化し、熱安定性を初期活性に対する残存活性の割合として表示した。手順は上記に記載されているものと同じとした。予期される99%超のライブラリ完全性に相当する180コロニーを各位置についてスクリーニングした。各プレートは、陽性対照として、HRP N13D/N57S/P146Q/N175S/N255D/N268D/N275K(配列番号3に相当)の6つのコロニーを含んだ。
【0275】
(結果)
選択した変異体の結果を以下の表22(P146位)及び表23(N275位)に示す。本実施例は96ウエルプレートベースのスクリーニングアッセイを使用するため、ばらつき(標準偏差)は、本明細書において報告されている他のアッセイによるものよりも高い。したがって、各変異体についての結果は、測定した各プレート内でのみ比較されるべきである。
【0276】
表22及び23から分かるように、146位及び275位における複数の異なるアミノ酸交換が優れた熱安定性につながることが見出された。各位置におけるいくつかのアミノ酸交換が有利な結果を与えた。146位の場合、146A、146R、146V、146E、及び特に146Qが特に有利であることが見出された(いずれも、最も好ましい変異体146Qの標準偏差の範囲内)。275位の場合、275R、275D、275S、275Q、275A、275E及び特に275Kについて最も良好な結果が観察された(いずれも最も好ましい変異体275Kの標準偏差の範囲内)。
【0277】
【表22】
【0278】
【表23】
【0279】
実施例11.様々な期間にわたるヘム補因子添加の配分
(方法)
以下に示す違いを除き実施例5に記載されているようにプロセスランを実施した。細胞株及び増殖条件、並びにホモジナイゼーション及び封入体洗浄は実施例1に記載されているように実施した。リフォールディングリアクターは実施例3に記載されているように使用した。
【0280】
可溶化のために、凍結したIBのアリコートを解凍し、湿潤封入体(wIB)重量を算出するために秤量し、適切な可溶化緩衝液(可溶化緩衝液2:50mMのグリシン;pH10;6Mの尿素)に再懸濁して、100g/L(3.5gのIB=35mlの可溶化ミックス(遠心分離後に30mlの可溶化ミックスを結果として生じさせる))のwIB濃度とした。再懸濁後、可溶化ミックス中7.11mMのDTTの最終濃度となるようにDTTを添加し、当該可溶化ミックスをインキュベートし(4℃;0.5時間;弱く攪拌)、続いて遠心分離した(20379g;20分;4℃)。上清をリフォールディング用に直ちに使用し、ペレットを廃棄した。容器の最終リフォールディング体積は1.2Lであった(30mLの溶解物の使用及び1:40の希釈において生じる)。リフォールディング緩衝液は、20mMのグリシン(pH10)(HClで調整)、2Mの尿素、7%のグリセロール、2mMのCaCl、1.27mMのGSSGを含有した。
【0281】
3の異なるヘミン添加方式を比較した:(A)20時間のリフォールディング、引き続く20μMの最終濃度までヘミンのバッチ添加、及び測定前のさらなる5時間のインキュベーション;(B)8時間のリフォールディング、引き続く10時間のヘミンフィード添加(2.4mlの1mMのヘミン/時間;最終濃度20μMのヘミン)、及び測定前のさらなる1時間のインキュベーション;並びに、(C)8時間のリフォールディング、引き続く1時間のヘミンフィード添加(24mlの1mMのヘミン/時間;最終濃度20μMのヘミン)、及びさらなる10時間のインキュベーション。実験(C)では、上記のフィードの終了後すぐにサンプルを採取及び測定し、さらに10時間のインキュベーション後にさらなる測定を行った。
【0282】
タンパク質濃度及び酵素活性を、実施例2に記載されているように求めた。
【0283】
(結果)
得られた結果を図14に示す。1時間の期間にわたってヘム補因子添加を配分させる明らかな利益が見出された。1時間ヘミンフィードの終了後(すなわち、9時間の合計リフォールディング時間の後)すぐに測定したときでも、バッチ添加実験(合計リフォールディング時間は25時間であった)の場合よりも比活性が1.4倍高いことが見出された。1時間のフィード実験からのサンプルを、10時間のさらなるインキュベーション後(すなわち、19時間の合計リフォールディング時間の後)に測定したとき、バッチ添加からのもの場合よりも比活性は1.7倍も高かった。10時間のより長期間にわたる(実験(B);19時間の合計リフォールディング時間)ヘミン添加の配分は、バッチ添加に対して2倍もの比活性の増加につながった。
【0284】
実施例12.さらなるHRP変異体の反応速度パラメータ及び熱安定性
P146及びN275位における変異の有利な効果を、野生型HRP(配列番号2)、HRP N175S及びHRP N13D/N57S/N175S/N255D/N268Dに関して調査した。さらに、単一変異体及びこれらの組み合わせの有益な効果を調べた。これに関して、生化学的特性に対するP146及びN275位における変異の役割を60℃における比酵素活性及び熱安定性の測定によって決定した。
【0285】
(材料及び方法)
野生型HRP(配列番号2)の以下の変異体を作り出し、サンガーシーケンシングによって検証した:HRP P146Q、HRP N175S、HRP N275K、HRP P146Q/N275K、HRP P146Q/N175S、HRP N175S/N275K、HRP P146Q/N175S/N275K。実施例6に記載されているように精製を実施した。反応速度パラメータ及び熱安定性もまた実施例6に記載されているように求めた。
【0286】
(比酵素活性(ABTS))
全てのHRPバリアントの比活性(ユニット/mgタンパク質)を、Tecanプレートリーダにおいて基質ABTSによって試験した(表24)。HRP P146Qは、HRP野生型に対して1.4倍のより高い比活性を示した。興味深いことに、HRP N175Sは、より低い比活性を示した;しかし、HRP N13D/N57S/P146Q/N175S/N255D/N268D/N275K(配列番号4)は、この活性低減を弱めることができ、HRP野生型の値に戻した。
【0287】
【表24】
【0288】
(比酵素活性(H))
さらに、過酸化水素基質を用いて比活性(ユニット/mgタンパク質)を求めた。ここでは、ABTSについてのデータで観察されたとの同じ傾向があり、バリアントP146Qは比活性の増加につながり、N175Sの導入はより低い値につながった。これは、二重変異体P146Q/N175S及びN175S/N275K、並びに三重変異体P146Q/N175S/N275Kの場合にもそうであった。N175Sを欠いたとき又は配列番号4のさらなる変異が存在したとき、比活性は配列番号2と同様又はこれよりもさらに良好であった。
【0289】
【表25】
【0290】
(比酵素活性(TMB))
基質TMBに関しては、HRPバリアント間の比活性の差があまり顕著ではなかった。しかし、P146Qはここでも比酵素活性の顕著な増加を示した一方で、N175Sは、野生型と比較して最も低いU/mgを示した。
【0291】
【表26】
【0292】
(熱安定性)
60℃における酵素安定性を全てのHRP変異体について調査したところ、驚くべきことに、N175Sだけが高温での安定性の増加の原因ではなかった。HRP N13D/N57S/N255D/N268Dが酵素半減期を1.5倍増加させた一方で、HRP N175Sは安定性を7.7倍向上させ、これらを組み合わせると前記安定性がHRP野生型と比較して13倍上昇し、このことは相乗効果を示唆している(表27)。HRP N13D/N57S/N175S/N255D/N268D及びHRP N13D/N57S/P146Q/N175S/N255D/N268D/N275K(配列番号4)が同様の安定性を示したという事実から、N175Sと組み合わせた四重変異体がこの向上の原因となっていると推測できる可能性がある。
【0293】
P146Q及びN275Kでは、単一変異体及び二重変異体P146Q/N275Kの安定性は、HRP野生型と比較して僅かに低減した。しかし、三重変異体P146Q/N175S/N275KはN175S単独と同じ安定性を示した一方で、二重変異体P146Q/N175S及びN175S/N275Kは、より不安定であった。このことは、前記変異体のうちの1つだけがN175Sと組み合わされると安定性に好ましくない効果を示すが、これは、組み合わせれば軽減され、P146Q、N275K、及びN175S間の相乗効果を示唆している。HRP N13D/N57S/P146Q/N175S/N255D/N268D/N275K(配列番号4)と比較したときのHRP N13D/N57S/P146Q/N175S/N255D/N268D及びHRP N13D/N57S/N175S/N255D/N268D/N275Kについても同じ効果が見出される。
【0294】
【表27】
【0295】
(結論)
置換P146Qは自体は、試験した全ての基質についてHRP酵素活性の強力な増加につながったことが見出された。例えば、基質ABTSでは、当該増加は、野生型酵素(配列番号2)に対して1.4倍の増加に達し、HRP N175Sと比較すると2倍高い比活性に達した。
【0296】
置換N175Sは、HRPの熱安定性を強力に増加させることが見出された。この効果は、N175S自身において、さらにより強力には、変異したN-グリコシル化部位アミノ酸N13D/N57S/N255D/N268Dとの組み合わせにおいて観察され、相乗効果が観察された。単一変異P146Q又は単一変異N275KとN175Sとの組み合わせは、僅かな安定性の低減につながった。しかし、P146Q及びN275Kの両方をN175Sと組み合わせたときには当該低減が軽減され、P146Q、N275K、及びN175S間の相乗効果を示唆した。
【0297】
N175Sはいくつかの基質において酵素活性を低減させることが見出された。この効果は、しかし、N13D/N57S/P146Q/N175S/N255D/N268D/N275K(配列番号4)によって弱められた。そのため、この変異体が、高い熱安定性と最適な反応速度性能の組み合わせを提供する。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
2023519369000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
封入体(IB)からヘムペルオキシダーゼを生産するための方法であって:
-前記ヘムペルオキシダーゼをIBの形態で提供する工程;
-前記IBを可溶化する工程;
-前記可溶化されたIBをリフォールディング緩衝液中に移してリフォールディングミックスを得る工程;
-前記リフォールディングミックスにヘム補因子を添加する工程、
を含み、
前記リフォールディングミックスへの前記ヘム補因子の添加が、少なくとも1時間の期間にわたって配分される、前記方法。
【請求項2】
前記ヘム補因子が、連続フィードとして前記リフォールディングミックスに添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リフォールディングミックスが、前記ヘム補因子の添加の前に少なくとも1時間インキュベートされる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヘムペルオキシダーゼが、クラスII又はクラスIIIのヘムペルオキシダーゼである、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ヘムペルオキシダーゼが、配列番号3と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ヘム補因子が、ヘミンである、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記のIBの形態のヘムペルオキシダーゼが:
-前記ヘムペルオキシダーゼをコードする遺伝子を発現する宿主細胞を培養する工程;及び
-前記宿主細胞からIBを得る工程、
によって提供される、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記可溶化が、可溶化緩衝液において前記IBをインキュベートすることを含、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記可溶化緩衝液が、1~50mmol/Lのジチオスレイトール(DTT)濃度に相当する還元状態を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ヘム補因子が前記リフォールディングミックスに添加された後に、リフォールディングされたヘムペルオキシダーゼを精製する工程をさらに含、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の方法によってヘムペルオキシダーゼを生産することを含む、ヘムペルオキシダーゼ製品を生産するための方法。
【請求項12】
ヘムペルオキシダーゼコンジュゲートを得るためのコンジュゲーション反応をさらに含、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ヘムペルオキシダーゼ又は前記ヘムペルオキシダーゼのコンジュゲーション反応により得られたヘムペルオキシダーゼコンジュゲートを精製する、凍結する、及び/又は凍結乾燥する工程をさらに含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記ヘムペルオキシダーゼ又は前記ヘムペルオキシダーゼのコンジュゲーション反応により得られたヘムペルオキシダーゼコンジュゲートを固体担体に固定化する工程をさらに含、請求項11~請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ヘムペルオキシダーゼ又は前記ヘムペルオキシダーゼのコンジュゲーション反応により得られたヘムペルオキシダーゼコンジュゲートをキットにパッケージングする工程をさらに含む、請求項11~請求項14のいずれか1項に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0297
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0297】
N175Sはいくつかの基質において酵素活性を低減させることが見出された。この効果は、しかし、N13D/N57S/P146Q/N175S/N255D/N268D/N275K(配列番号4)によって弱められた。そのため、この変異体が、高い熱安定性と最適な反応速度性能の組み合わせを提供する。
(付記)
本開示は以下の態様を含む。
項1:
封入体(IB)からヘムペルオキシダーゼを生産するための方法であって:
-前記ヘムペルオキシダーゼをIBの形態で提供する工程;
-前記IBを可溶化する工程;
-前記可溶化されたIBをリフォールディング緩衝液中に移してリフォールディングミックスを得る工程;
-前記リフォールディングミックスにヘム補因子を添加する工程、
を含み、
前記リフォールディングミックスへの前記ヘム補因子の添加が、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間、より好ましくは少なくとも3時間、なおより好ましくは少なくとも6時間、特に少なくとも10時間の期間にわたって配分される、前記方法。
項2:
前記ヘム補因子が、連続フィードとして前記リフォールディングミックスに添加される、項1に記載の方法。
項3:
前記リフォールディングミックスが、前記ヘム補因子の添加の前に少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間、なおより好ましくは少なくとも4時間、特に少なくとも8時間インキュベートされる、項1又は2に記載の方法。
項4:
前記ヘムペルオキシダーゼが、クラスII又はクラスIIIのヘムペルオキシダーゼ、好ましくはクラスIIIのヘムペルオキシダーゼ、特にセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)である、項1~項3のいずれか1項に記載の方法。
項5:
前記ヘムペルオキシダーゼが、配列番号3と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、なおより好ましくは少なくとも90%、なおより好ましくは少なくとも95%、さらになおより好ましくは少なくとも98%、さらになおより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、特に、前記ヘムペルオキシダーゼが、配列番号3に記載されているアミノ酸配列を含み、最も好ましくは、前記ヘムペルオキシダーゼが、配列番号4に記載されているアミノ酸配列からなる、項1~項4のいずれか1項に記載の方法。
項6:
前記ヘム補因子が、ヘミンである、項1~項5のいずれか1項に記載の方法。
項7:
前記のIBの形態のヘムペルオキシダーゼが:
-前記ヘムペルオキシダーゼをコードする遺伝子を発現する宿主細胞を培養する工程;及び
-前記宿主細胞からIBを得る工程、
によって提供され、好ましくは、前記宿主細胞が、原核細胞、好ましくは大腸菌細胞である、項1~項6のいずれか1項に記載の方法。
項8:
前記可溶化が、可溶化緩衝液において前記IBをインキュベートすることを含み、好ましくは、前記可溶化緩衝液が、8~12.5、好ましくは8.5~11.5、より好ましくは9~11、なおより好ましくは9.5~10.5のpHを有する、項1~項7のいずれか1項に記載の方法。
項9:
前記可溶化緩衝液が、1~50mmol/L、好ましくは2~25mmol/L、より好ましくは4~15mmol/L、特に6~8mmol/Lのジチオスレイトール(DTT)濃度に相当する還元状態を有する、項8に記載の方法。
項10:
前記ヘム補因子が前記リフォールディングミックスに添加された後に、リフォールディングされたヘムペルオキシダーゼを精製する工程をさらに含み、好ましくは、前記方法が、リフォールディングされたヘムペルオキシダーゼから不純物を除去するための遠心分離工程をさらに含み、及び/又は、前記ヘムペルオキシダーゼが、疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)によって精製される、項1~項9のいずれか1項に記載の方法。
項11:
項1~項10のいずれか1項に記載の方法によってヘムペルオキシダーゼを生産することを含む、ヘムペルオキシダーゼ製品を生産するための方法。
項12:
ヘムペルオキシダーゼコンジュゲートを得るためのコンジュゲーション反応をさらに含み、好ましくは、前記ヘムペルオキシダーゼが、結合物質にコンジュゲートされ、好ましくは、前記ヘムペルオキシダーゼが、抗体、抗体断片、抗体模倣体、抗体結合タンパク質、又はストレプトアビジンにコンジュゲートされる、項11に記載の方法。
項13:
前記ヘムペルオキシダーゼ又は前記ヘムペルオキシダーゼコンジュゲートを精製する、凍結する、及び/又は凍結乾燥する工程をさらに含む、項11又は12に記載の方法。
項14:
前記ヘムペルオキシダーゼ又はヘムペルオキシダーゼコンジュゲートを固体担体に固定化する工程をさらに含み、好ましくは、前記固体担体が、ナノ粒子、カーボン/ポリビニル材料、又は膜である、項11~項13のいずれか1項に記載の方法。
項15:
前記ヘムペルオキシダーゼ又は前記ヘムペルオキシダーゼコンジュゲートをキットにパッケージングする工程をさらに含む、項11~項14のいずれか1項に記載の方法。
【国際調査報告】