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特表2023-519387溶媒を精製するためのシステム及び方法
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  • 特表-溶媒を精製するためのシステム及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】溶媒を精製するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 15/00 20060101AFI20230428BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20230428BHJP
   B01D 71/26 20060101ALI20230428BHJP
   B01D 71/56 20060101ALI20230428BHJP
   B01D 71/36 20060101ALI20230428BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20230428BHJP
   B01D 15/36 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
B01D15/00 L
B01D61/58
B01D71/26
B01D71/56
B01D71/36
B01D61/14 500
B01D15/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559289
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 US2021024282
(87)【国際公開番号】W WO2021195457
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】63/000,745
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514251329
【氏名又は名称】フジフイルム エレクトロニック マテリアルズ ユー.エス.エー., インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロメロ、エドゥアルド ラミレス
(72)【発明者】
【氏名】バリンジャー、デイヴィッド
【テーマコード(参考)】
4D006
4D017
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006KA01
4D006KA53
4D006KA55
4D006KA56
4D006KA57
4D006KA67
4D006KA72
4D006KB11
4D006KB12
4D006KB14
4D006KB18
4D006MC22
4D006MC23
4D006MC30
4D006MC54
4D006PA01
4D006PB13
4D017AA06
4D017BA01
4D017CA01
4D017CA03
4D017CA17
4D017CB01
4D017DA01
4D017EA01
(57)【要約】
本開示は、溶媒を精製する方法及びシステムを対象とする。精製された溶媒は、マルチステップ半導体製造プロセスにおいて半導体基板を洗浄するために用いることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒から不純物を除去する方法であって、
前記有機溶媒を吸着剤を含む少なくとも1つのカラムに通して、前記有機溶媒中の水分を除去すること、
前記有機溶媒を第1のフィルターユニットに通すこと、ここで、前記第1のフィルターユニットは第1の筐体及び前記第1の筐体内の少なくとも1つの第1のフィルターを含み、前記少なくとも1つの第1のフィルターはろ材を含む、並びに
前記有機溶媒を蒸留カラム中で蒸留して、精製された有機溶媒を得ること、
を含み、
前記第1のフィルターユニットは、前記蒸留カラムと、吸着剤を含む前記少なくとも1つのカラムとの間に位置する、前記方法。
【請求項2】
前記有機溶媒はアルコールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機溶媒はイソプロピルアルコールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記吸着剤は、分子篩、シリカゲル、活性アルミナ、活性炭、又はイオン交換樹脂を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第1のフィルターにおけるろ材は、ポリオレフィン、ポリアミド、フッ素ポリマー、又はそれらの共重合体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第1のフィルターにおけるろ材は、高密度ポリエチレン又はポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1のフィルターにおけるろ材は、約0.1μm~0.25μmの平均孔径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のフィルターユニットは、2個~5個の第1のフィルターを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のフィルターは互いに並列に接続されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第1のフィルターは粒子除去フィルターである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記蒸留カラムで前記有機溶媒を蒸留する前に、前記有機溶媒を再循環させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記再循環は、前記第1のフィルターユニットを出る有機溶媒を、吸着剤を含む前記少なくとも1つのカラムに移動させ、その後、前記有機溶媒を、吸着剤を含む前記少なくとも1つのカラム及び前記第1のフィルターユニットに通すことを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記有機溶媒を前記蒸留カラムの下流に位置する第2のフィルターユニットに通すことをさらに含み、ここで、前記第2のフィルターユニットは第2の筐体及び前記第2の筐体内の少なくとも1つの第2のフィルターを含み、前記少なくとも1つの第2のフィルターはろ材を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
精製された溶媒を格納(packaging)ステーションに移動させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記精製された有機溶媒は約99.99%以上の純度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記精製された有機溶媒は約100ppm以下の水分含有量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
吸着剤を含む少なくとも1つのカラム;
吸着剤を含む前記少なくとも1つのカラムの下流に位置し、前記少なくとも1つのカラムと流体連通している第1のフィルターユニット、ここで、前記第1のフィルターユニットは第1の筐体及び前記第1の筐体内の少なくとも1つの第1のフィルターを含み、前記第1のフィルターはろ材を含む;並びに
前記第1のフィルターユニットの下流に位置し、前記第1のフィルターユニットと流体連通している蒸留カラム、
を含むシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶媒(例えば有機溶媒)を精製するためのシステム及び方法に関する。特には、本開示は、非常に少量の有機不純物及び金属不純物を有する有機溶媒を得るために用いることができるシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願についての相互参照
本発明は、2020年3月27日に出願された米国仮出願番号63/000,745からの優先権を主張し、前記米国仮出願の内容は参照によりその全体が本開示に取り込まれる。
【0003】
半導体産業は電子部品の集積密度における急速な向上を達成し、このことは部品サイズの継続的な減少に由来する。究極的には、所定の面積に対してはより小さな部品であればより多くを集積することができる。これらの向上は、ほとんどが、新たな精密及び高解像度プロセシング技術の開発によるものである。
【0004】
高解像度集積回路(IC)の製造の際には、種々のプロセシング液がベアウェハ又は膜被覆ウェハと接触することになる。例えば、微細金属相互接続の作製は、典型的には、基材に複合液をコーティングしてレジスト膜を形成する前にプリウェット液を基材にコーティングする操作を含む。これらのプロセシング液は、独自成分(proprietary ingredients)及び種々の添加剤を含んでいるが、ICウェハの汚染源であることが知られている。
【0005】
ウェハプレウェット液又は現像液等のこれら化学液に夾雑物が微量でも混入すると、生じる回路パターンは欠陥を有しうると考えられる。例えば、非常に低レベルの金属不純物の存在は半導体デバイスの性能及び安定性を妨げうることが知られている。金属夾雑物の種類に応じて、酸化物の特性は悪化するおそれがあり、不正確なパターンが形成されるおそれがあり、半導体回路の電気的性能が損なわれるおそれがあり、これらのことは最終的には製造収率に悪影響を及ぼす。
【0006】
化学液の製造の種々のステージの間に、金属不純物、微粒子、有機不純物、水分、等々の不純物の混入が化学液中に意図せず導入されうる。例としては、原材料に見られる不純物、化学液が製造される際の生成した副生物若しくは残っている未反応の反応物、又は、製造装置の表面から、若しくは輸送、貯蔵、若しくは反応において用いられる容器設備、反応容器、等々から溶出若しくは抽出された異物が挙げられる。したがって、高精度かつ超微細半導体電子回路の製造に用いられるこれらの化学液から不溶性又は可溶性の夾雑物を減少又は除去することは、欠陥の無いICを製造する基本的な保証である。
【0007】
この点で、超微細かつ極めて高精度の半導体電子回路の作製に不可欠な高純度化学液を形成するために、化学液製造プロセス及びシステムの標準及び質を顕著に向上させ、そして厳密に制御することは極めて重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、高精度集積回路を形成するためには、超高純度化学液に対する要求、並びにこれらの液体の品質向上及び制御は非常に重要となる。品質向上及び制御のための鍵となる具体的なパラメータとしては、液体における及びウェハ上における金属の減少、液体における及びウェハ上における粒子カウントの減少、ウェハ上での欠陥減少、並びに有機夾雑物の減少が挙げられる。
【0009】
以上を考慮して、本開示は、半導体製造を指向した溶媒を調製するための精製システム及びそれを用いた溶媒(例えば有機溶媒)を精製する方法であって、溶媒中における金属不純物、有機不純物、及び残留水分の量が所定の範囲内に管理され、未知の物質及び望まれない物質の生成及び導入が無い、超高純度の溶媒が製造される、前記システム及び方法を提供する。したがって、残渣及び/又は粒子欠陥の発生は抑制され、半導体ウェハの収率は向上する。加えて、本願発明者らは、溶媒蒸留の前に、脱水(例えば、分子篩カラムを用いることによる)及びろ過(例えば、ある特定の孔径を有するフィルターを用いることによる)の両方を用いて有機溶媒を精製することで、有機不純物の量が非常に少ない(例えば約99.99%以上)及び/又は水分含量が非常に少ない(例えば、約100ppm以下)精製された有機溶媒を生じることができることを、予想外にも見出した。さらに、本願発明者は、溶媒蒸留後に2つの異なるタイプの負帯電イオン交換フィルター(例えば、Fe、Ni、Cr、Zn、又はCu等の重金属を除去可能であるものと、K、Na、又はCa等のアルカリ若しくはアルカリ土類金属を除去可能なもの)を用いて有機溶媒を精製することで、驚くほどに低い金属不純物総量(例えば約200ppt以下)を有する精製された有機溶媒を生じることができることを、予想外にも見出した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの態様では、本開示は、有機溶媒を精製する方法であって、(1)前記有機溶媒を吸着剤を含む少なくとも1つのカラムに通して、前記有機溶媒中の水分を除去すること、(2)前記有機溶媒を第1のフィルターユニットに通すこと、ここで、前記第1のフィルターユニットは第1の筐体及び前記第1の筐体内の少なくとも1つの第1のフィルターを含み、前記少なくとも1つの第1のフィルターはろ材を含む、並びに(3)前記有機溶媒を蒸留カラム中で蒸留して、精製された有機溶媒を得ること、を含む前記方法を1つの特色とする。前記第1のフィルターユニットは、前記蒸留カラムと、吸着剤を含む前記少なくとも1つのカラムとの間に位置する。
【0011】
別のある態様では、本開示は、(1)吸着剤を含む少なくとも1つのカラム、(2)吸着剤を含む前記少なくとも1つのカラムの下流に位置し、前記少なくとも1つのカラムと流体連通している第1のフィルターユニット、ここで、前記第1のフィルターユニットは第1の筐体及び前記第1の筐体内の少なくとも1つの第1のフィルターを含み、前記第1のフィルターはろ材を含む、(3)前記第1のフィルターユニットの下流に位置し、前記第1のフィルターユニットと流体連通している蒸留カラム、を含むシステムを1つの特色とする。
【0012】
別のある態様では、本開示は、有機溶媒を精製する方法であって、(1)蒸留カラムで前記有機溶媒を蒸留して、蒸留された有機溶媒を得ること、及び(2)前記蒸留された有機溶媒をイオン交換フィルターユニットに通して、精製された有機溶媒を得ること、を含む、有機溶媒を精製する方法を1つの特色とする。前記イオン交換フィルターユニットは、筐体、並びに前記筐体内の少なくとも1つの第1のイオン交換フィルター及び少なくとも1つの第2のイオン交換フィルターを含む。前記少なくとも1つの第1のイオン交換フィルター及び前記少なくとも1つの第2のイオン交換フィルターは、どちらも、負帯電イオン交換フィルターであって、直列に連結されている。前記少なくとも1つの第1のイオン交換フィルターは前記少なくとも1つの第2のイオン交換フィルターとは異なる。
【0013】
別のある態様では、本開示は、(1)蒸留カラム、及び(2)前記蒸留カラムの下流に位置し、前記蒸留カラムと流体連通したイオン交換フィルターユニット、を含むシステムを1つの特色とする。前記イオン交換フィルターユニットは、筐体、並びに前記筐体内の少なくとも1つの第1のイオン交換フィルター及び少なくとも1つの第2のイオン交換フィルターを含む。前記少なくとも1つの第1のイオン交換フィルター及び前記少なくとも1つの第2のイオン交換フィルターは、どちらも、負帯電イオン交換フィルターであって、直列に連結されている。前記少なくとも1つの第1のイオン交換フィルターは前記少なくとも1つの第2のイオン交換フィルターとは異なる。
【0014】
実施形態は、以下の特徴のうちの1つ又は複数を含んでもよい。
いくつかの実施形態では、前記有機溶媒はアルコール(例えば、イソプロピルアルコール)を含む。
いくつかの実施形態では、前記吸着剤は分子篩、シリカゲル、活性アルミナ、活性炭、又はイオン交換樹脂を含む。
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの第1のフィルター中のろ材はポリオレフィン(例えば、高密度ポリエチレン又はポリテトラフルオロエチレン)、ポリアミド、フッ素ポリマー、又はそれらの共重合体を含む。
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの第1のフィルター中のろ材は、約0.1μm~0.25μmの平均孔径を有する。
いくつかの実施形態では、前記第1のフィルターユニットは2~5個の第1のフィルターを含む。いくつかの実施形態では、前記第1のフィルター(複数)は並列に接続されている。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの第1のフィルターは粒子除去フィルターである。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記蒸留カラム中で有機溶媒を蒸留する前に有機溶媒を再循環させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記再循環は、前記第1のフィルターを出る有機溶媒を、吸着剤を含む前記少なくとも1つのカラムに移動させ、その後、該有機溶媒を、吸着剤を含む前記少なくとも1つのカラム及び前記第1のフィルターユニットに通すことを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記有機溶媒を、前記蒸留カラムの下流に位置する第2のフィルターユニットに通すことをさらに含み、ここで、前記第2のフィルターユニットは第2の筐体及び前記第2の筐体内の少なくとも1つの第2のフィルターを含み、前記少なくとも1つの第2のフィルターはろ材を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの第1又は第2のイオン交換フィルターは、ポリオレフィン、ポリアミド、フッ素ポリマー、又はそれらの共重合体を含むろ材を含む。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの第1又は第2のイオン交換フィルター中のろ材は、スルホナート基を有するポリエチレン若しくはスルホナート基を有するポリテトラフルオロエチレン、又はそれらの共重合体を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記イオン交換フィルターユニット(例えば、図1に表される第3のフィルターユニット124)は2個~5個の第1のイオン交換フィルターを含む。いくつかの実施形態では、第1のイオン交換フィルター(複数)は並列に接続されている。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの第1のイオン交換フィルターは、前記有機溶媒からFe、Ni、Cr、Zn、及び/又はCuの90重量%以上を除去できる。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記イオン交換フィルターユニット(例えば、図1に表される第3のフィルターユニット124)は、2個~5個のイオン交換フィルターを含んでいる。いくつかの実施形態では、第2のイオン交換フィルター(複数)は並列に接続されている。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの第2のイオン交換フィルターは、前記有機溶媒から、K、Na、及び/又はCaの70重量%以上を除去できる。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記蒸留カラム及び前記イオン交換フィルターユニット(例えば、図1に表される第3のフィルターユニット124)と流体連通し、かつ前記蒸留カラムと前記イオン交換フィルターユニットとの間に位置するフィルターユニット(例えば、図1に表される第2のフィルターユニット122)に前記有機溶媒を通すことをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記蒸留カラムと前記イオン交換フィルターユニットとの間の前記フィルターユニットは、筐体と、前記筐体内の少なくとも1つの粒子除去フィルターとを含む。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの粒子除去フィルターは、ポリオレフィン、ポリアミド、フッ素ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)、又はそれらの共重合体を含むろ材を含む。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの粒子除去フィルターは、約5nm~約50nmの平均孔径を有するろ材を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記イオン交換フィルターユニット(例えば、図1に表される第3のフィルターユニット124)の下流に位置し、前記イオン交換フィルターユニットと流体連通しているフィルターユニット(例えば、図1に表される第4のフィルターユニット126)に前記有機溶媒を通すことをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記イオン交換フィルターユニットの下流に位置する前記フィルターユニットは、筐体と、前記筐体内の少なくとも1つの粒子除去フィルターとを含む。いくつかの実施形態では、前記イオン交換フィルターユニットの下流に位置する前記フィルターユニット内の前記少なくとも1つの粒子除去フィルターは、ポリオレフィン、ポリアミド、フッ素ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)、又はそれらの共重合体を含むろ材を含む。いくつかの実施形態では、前記イオン交換フィルターユニットの下流に位置する前記フィルターユニット内の前記少なくとも1つの粒子除去フィルターは、約2nm~約10nmの平均孔径を有するろ材を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記イオン交換フィルターユニットの下流に位置する前記フィルターユニットを出る有機溶媒を再循環させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記再循環は、イオン交換フィルターユニットの下流に位置する前記フィルターユニットを出る有機溶媒を貯蔵タンクに移動させ、その後、前記貯蔵タンクからの有機溶媒を前記イオン交換フィルターユニットに通すことを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記方法は、精製された溶媒を格納(packaging)ステーションへと移動させることをさらに含む。
いくつかの実施形態では、精製された有機溶媒は、約99.99%以上の純度を有する。いくつかの実施形態では、精製された有機溶媒は、約100ppm以下の水分含有量を有する。いくつかの実施形態では、精製された有機溶媒は、精製された有機溶媒に対して約200ppt以下の総量の金属不純物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本開示のいくつかの実施形態に係る有機溶媒を精製する方法において採用された精製システムの例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示における定義では、特に断りの無い限り、記載された全てのパーセント値は、組成物の全重量に対する重量パーセントであると理解すべきである。特に断りの無い限り、周囲環境(ambient)温度は摂氏約16度(℃)~約27度(℃)であると定義される。本開示において記載される用語「溶媒」は、特に断りの無い限り、単一の溶媒、又は2種類以上の(例えば、3種類若しくは4種類の)溶媒の組み合わせ、を指す。本開示において、組成物の総重量を基準として、「ppm」は「百万分率」を、「ppb」は「十億分率」を、そして「ppt」は「一兆分率」を意味する。
【0026】
一般に、本開示は、溶媒(例えば有機溶媒)を精製するシステム及び方法を1つの特色とする。本開示に記載の溶媒は、ウェハ処理溶液(例えば、プレウェット液、現像液、リンス溶液、クリーニング溶液、若しくはストリッピング溶液)中で、又は任意の半導体製造プロセスにおいて使用される半導体材料用の溶媒中で、用いることができる。
【0027】
本開示の精製方法に供される前には、溶媒は望ましくない量の夾雑物及び不純物(例えば有機不純物、金属不純物、及び水分)を含みうる。溶媒が本開示の精製方法で処理された後では、相当な量の夾雑物及び不純物を溶媒から除去することができる。処理前の溶媒は本開示においては「未精製溶媒」とも称される。処理前の溶媒は、社内で合成してもよいし、またサプライヤーから購入することでも商業的に入手可能でありうる。処理後の溶媒は本開示においては「精製された溶媒」とも称される。「精製された溶媒」は、所定の範囲内に限定された不純物を含んでもよい。
【0028】
一般に、本開示で言及される溶媒は、アルコール、エーテル、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エステル、ケトン、又はカーボネート等の、少なくとも1種の(例えば、2種、3種、又は4種の)有機溶媒を含んでもよい。好適な有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、n-プロパノール、2-メチル-1-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、n-ヘキサノール、シクロヘキサノール、2-メチル-2-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-メチル-3-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-3-ペンタノール、4-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、2,2-ジメチル-3-ペンタノール、2,3-ジメチル-3-ペンタノール、2,4-ジメチル-3-ペンタノール、4,4-ジメチル-2-ペンタノール、3-エチル-3-ヘプタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、2-メチル-2-ヘキサノール、2-メチル-3-ヘキサノール、5-メチル-1-ヘキサノール、5-メチル-2-ヘキサノール、2-エチル-1-ヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、トリメチルシクロヘキサノール、4-メチル-3-ヘプタノール、6-メチル-2-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、3-オクタノール、2-プロピル-1-ペンタノール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、2-ノナノール、3,7-ジメチル-3-オクタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、ブチルエチルエーテル、ブチルプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、tert-ブチルエチルエーテル、tert-ブチルプロピルエーテル、ジ-tert-ブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジイソアミルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、ブロモメチルメチルエーテル、α,α-ジクロロメチルメチルエーテル、クロロメチルエチルエーテル、2-クロロエチルメチルエーテル、2-ブロモエチルメチルエーテル、2,2-ジクロロエチルメチルエーテル、2-クロロエチルエチルエーテル、2-ブロモエチルエチルエーテル、(±)-1,2-ジクロロエチルエチルエーテル、2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アリルエチルエーテル、アリルプロピルエーテル、アリルブチルエーテル、ジアリルエーテル、2-メトキシプロペン、エチル-1-プロペニルエーテル、cis-1-ブロモ-2-エトキシエチレン、2-クロロエチルビニルエーテル、アリル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、メチルシクロヘキサン、デカリン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、クメン、sec-ブチルベンゼン、シメン、ジペンテン、ピルビン酸メチル、モノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸n-ブチル、γ-ブチロラクトン、ジイソアミルエーテル、酢酸イソアミル、クロロホルム、ジクロロメタン、1,4-ジオキサン、ヘキシルアルコール、2-ヘプタノン、酢酸イソアミル、炭酸プロピレン、及びテトラヒドロフランが挙げられる。
【0029】
いくつかの実施形態では、前記溶媒はプレウェット液である。プレウェット液の例としては、シクロペンタノン(CyPe)、シクロヘキサノン(CyH)、モノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(PGMEA)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(PGPE)、及び乳酸エチル(EL)のうちの少なくとも1種が挙げられる。いくつかの実施形態では、溶媒は、酢酸n-ブチル等の現像液、又は4-メチル-2-ペンタノール(MIBC)等のリンス液であってもよい。いくつかの実施形態では、溶媒は、イソプロピルアルコール等のウェハ製造プロセスで用いられるリンス溶媒であってもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、処理前又は未精製有機溶媒は、約99%以下(例えば、約98%以下、約97%以下、約96%以下、又は約95%以下)の純度を有してもよい。いくつかの実施形態では、本開示に記載の方法から得られる処理後又は精製された有機溶媒は、約99.5%以上(例えば、約99.9%以上、約99.95%以上、約99.99%以上、約99.995%以上、約99.999%以上、約99.9995%以上、約99.9999%以上、又は100%)の純度を有してもよい。本開示においては、「純度」とは、液体の全重量中での溶媒の重量パーセントを指す。液体中における有機溶媒の含有量は、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)機器(例えば、加熱脱離(TD)GC-MS機器)を用いて測定することができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、半導体チップの製造収率を向上する点から、本開示に記載の溶媒の沸点は約200℃以下(例えば、約150℃以下)、あるいは約50℃以上(例えば、約100℃以上)である。例えば、溶媒がイソプロパノールである場合、その沸点は約82.5℃である。本開示においては、沸点とは1気圧(1atm)で測定した沸点を意味する。
【0032】
一般に、処理前の有機溶媒に含まれる不純物は、金属不純物、粒子、並びに有機不純物及び水分等のその他の不純物を含みうる。
【0033】
本開示においては、金属不純物は固体(例えば、金属単体、粒子状金属含有化合物、等々)の形態であってもよい。いくつかの実施形態では、金属不純物は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、典型金属(main group metals)、遷移金属、及びランタニド金属からなる群から選択される金属であってもよい。一般的な金属不純物の例としては、銅(Cu)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、鉛(Pb)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、及び鉛(Pb)等の重金属;並びに、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、及びカルシウム(Ca)等のアルカリ又はアルカリ土類金属、が挙げられる。金属の種類に応じて、金属不純物は酸化物の一体性を損ね、MOSゲートスタックを劣化させ、また、デバイスの寿命を減少させうる。いくつかの実施形態では、処理前の溶媒中における各金属成分の含有量は、約0.1~約1000ppt(例えば、約200~約1000ppt、又は約500~約1000ppt)の範囲である。
【0034】
本開示に記載の方法によって精製された有機溶媒中では、総微量金属含有量は、質量基準で、0以上(例えば、約1ppt以上、約5ppt以上、又は約10ppt以上)~約200ppt以下(例えば、約180ppt以下、約160ppt以下、約150ppt以下、約140ppt以下、約120ppt以下、約100ppt以下、約50ppt以下、又は約20ppt以下)という所定の範囲内であることが好ましく、また、各微量金属(例えば、Fe、Ni、Cr、Zn、Cu、K、Na、又はCa)の量は、質量基準で、0以上(例えば、約1ppt以上、約2ppt以上、又は約3ppt以上)~約50ppt以下(例えば、約40ppt以下、約30ppt以下、約20ppt以下、約15ppt以下、約10ppt以下、約8ppt以下、約6ppt以下、約5ppt以下、約4ppt以下、約3ppt以下、又は約2ppt以下)という所定の範囲内であることが好ましい。
【0035】
本開示においては、0.03μm以上のサイズを有する物質を「粒子」又は「粒子状物」と称する。粒子の例としては、塵、埃、有機固体物、及び無機固体物が挙げられる。粒子は、コロイダル化金属原子の不純物を含んでいてもよい。コロイダル化が容易な金属原子のタイプは特に限定されず、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Zn、及びPbからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含んでもよい。本開示に記載の方法によって精製された有機溶媒においては、0.03μm以上(例えば0.05μm以上)のサイズを有する粒子の総数は、溶媒1mlあたり100以下(例えば、80以下、60以下、50以下、40以下、20以下、約10以下、約5以下、約1以下、又は0)という所定の範囲内であることが好ましい。液体媒体中の「粒子」の数は、光散乱型液中粒子カウンターで計数でき、LPC(液中粒子カウント)と称される。
【0036】
本開示においては、有機不純物は前記有機溶媒とは異なり、前記有機溶媒及び有機不純物を含む液体の全質量に対して5000質量ppm以下の含有量で含まれる有機物のことを指す。有機不純物はクリーンルームの内部ですら周囲環境空気(ambient air)中に存在する揮発性有機化合物であってもよい。有機不純物のうちいくつかは輸送(shipping)及び貯蔵設備に由来し、またいくつかは原料中に最初から見られる。有機不純物の他の例としては、有機溶媒が合成された際に生成した副生物、及び/又は未反応反応物が挙げられる。有機不純物の例としては、脂肪族炭化水素(例えば、8以上の炭素を有する、C8~C24のアルカン又はアルケン)、芳香族炭化水素、エーテル、エステル、及びアルデヒドが挙げられる。
【0037】
精製された有機溶媒中における有機不純物の総含有量は特に限定されない。半導体デバイスの製造収率を向上させる点から、有機不純物の総含有量は、精製された有機溶媒に対して約1000ppb以下(例えば、約500ppb以下、約400ppb以下、約300ppb以下、約200ppb以下、約100ppb以下、約50ppb以下、約20ppb以下、約10ppb以下)、及び/又は約0.1ppb以上(約0.5ppb以上若しくは約1ppb以上)であってもよい。いくつかの実施形態では、前記有機溶媒はいかなる有機不純物も非含有である。本開示に記載の溶媒中における有機不純物の含有量は、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)機器(例えば、加熱脱離(TD)GC-MS機器)を用いて測定することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、水分又は水の含有量の総量は、精製された有機溶媒に対して約100ppm以下(例えば、約50ppm以下、約40ppm以下、約30ppm以下、約20ppm以下、約10ppm以下、約5ppm以下、約2ppm以下、約1ppm以下、約500ppb以下、約100ppb以下、若しくは約10ppb以下)及び/又は約1ppb以上(例えば、約1ppm以上若しくは約20ppm以上)であってもよい。いくつかの実施形態では、精製された有機溶媒は水を非含有である。本開示に記載の溶媒中における水分又は水の含有量は、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)機器を用いて測定できる。
【0039】
図1は、本開示のいくつかの実施形態に係る精製システムの構成を示す概略図である。図1に示されるように、精製システム10は、供給ユニット110、脱水カラム112a及び112b、第1のフィルターユニット114、蒸留カラム120、貯蔵タンク130、第2のフィルターユニット122、第3のフィルターユニット124、第4のフィルターユニット126、並びに格納ステーション140を含み、これらの全ては(例えば、1つ又は複数のパイプ又は導路により)互いに流体連通している。精製システム10は、供給ユニット110、脱水カラム112a及び112b、及び第1のフィルターユニット114を接続する任意に設けられる(optional)第1の再循環ループ150、並びに貯蔵タンク130、第2のフィルターユニット122、第3のフィルターユニット124、及び第4のフィルターユニット126を接続する任意に設けられる(optional)第2の再循環ループ160も含む。一般に、精製システム10は、図1に示されていない(ポンプ、温度制御ユニット、供給ポート、流出ポート、又はバルブ等の)他のコンポーネントを含んでもよい。
【0040】
一般に、供給ユニット110は、出発材料(例えば、処理前あるいは未処理の有機溶媒)を保持又は輸送するように構成されている。出発材料は精製システム10で処理されて、不要夾雑物(例えば、粒子状物、有機不純物、金属不純物、及び水分)の数が所定の範囲に制限された精製された有機溶媒を製造又は生産することができる。供給ユニット110のタイプは、それが精製システム10の他のコンポーネントに出発物質を連続的に又は間欠的に供給する限りは、特に限定されない。いくつかの実施形態では、供給ユニット110は、定置型タンク又は可動型タンク等のタンクであってもよい。いくつかの実施形態では、供給ユニット110は、材料受容タンク、(図示されない)レベル計等のセンサー、(図示されない)ポンプ、及び/又は(図示されない)出発物質の流れを制御するための(図示されない)バルブを含んでいてもよい。図1においては、精製システム10は、1つの供給ユニット110を含む。しかし、いくつかの実施形態においては、精製システム10による処理の対象となるそれぞれの種類の出発材料のために複数の供給ユニット110を(例えば、並列又は直列に)設けてもよい。
【0041】
精製システム10は、少なくとも1つの蒸留前ろ過システム20及び少なくとも1つの蒸留後ろ過システム30を含んでもよい。一般に、蒸留前ろ過システム20は、蒸留前に水分及び/又は大粒子を除去するために出発材料(例えば、未精製有機溶媒)の初期ろ過を行い、蒸留後ろ過システム30は、残っている不純物(例えば、金属不純物又は有機不純物)及び微粒子を除去して超高純度有機溶媒を得るために、蒸留後にろ過を行う。いくつかの実施形態では、蒸留前ろ過システム20及び蒸留後ろ過システム30はそれぞれ、(それぞれがフィルター筐体及び該フィルター筐体内の1つ又は複数のフィルター(例えば1~20個のフィルター)を含んでいてもよい)1つ又は複数のフィルターユニット、並びに特定の他の容器(例えば貯蔵タンク)及び(脱水カラム等の)不純物除去カラム、を含んでいてもよい。例えば、図1に表された蒸留前ろ過システム20は、供給ユニット110、脱水カラム112a/112b、及び第1のフィルターユニット114を含み、図1に示される蒸留後ろ過システム30は、貯蔵タンク130、第2のフィルターユニット122、第3のフィルターユニット124、及び第4のフィルターユニット126を含む。図1に示された蒸留カラム120は、一般に、有機不純物及び金属不純物並びに粒子の大半を除去するために用いられる。
【0042】
いくつかの実施形態では、精製システム10は、精製プロセスの特定の部分の間、有機溶媒が実質的に一定の温度に維持されるように、有機溶媒の温度を特定の温度範囲内に設定又は維持するための(図1に示されていない)1つ又は複数の温度制御ユニットを任意に(optionally)含んでもよい。本開示においては、温度制御ユニットとは、商用の再循環加熱/冷却ユニット、凝縮器、又は熱交換器を含むことができるがこれらに限定されず、また、これらは、例えば、蒸留カラム120に、又は蒸留システム10内の任意の適切な位置における導路に、設置されていてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、有機溶媒は周囲環境(ambient)温度で精製システム10によって精製されてもよい。そのような実施形態では、精製システム10は、蒸留カラム120のために必要となり得る温度制御ユニット以外は温度制御ユニットを必要としなくてもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、精製システム10は、未精製有機溶媒中の水分又は特定の他の不純物を除去するための吸着剤を含むカラム(例えば、脱水カラム)を少なくとも1つ(例えば2つ又は3つ)含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、そのようなカラムにおける吸着剤としては、分子篩(例えば、ゼオライト3A、ゼオライト4A、又はゼオライト5A)、シリカゲル、活性アルミナ、活性炭、又はイオン交換樹脂を挙げることができる。いくつかの実施形態では、吸着剤を含むカラムが1つでは有機溶媒中の水分を所望のレベル(例えば、約100ppm以下)に低下させるのに十分でない場合には、そのようなカラムを2つ又はそれ以上用いてもよい。例えば、図1は、精製システム10において2つの脱水カラム112a及び112bが用いられることを示している。そのような実施形態では、脱水カラム112a及び112bは互いに流体連通していてもよく、直列に連結されている。
【0045】
いくつかの実施形態では、精製システム10内の各フィルターユニットは、フィルター筐体及び該フィルター筐体内の1つ又は複数(例えば、2個、3個、4個、又は5個の)フィルターを含んでもよい。各フィルターは、適切な材料からなり、適切な平均孔径を有するろ材を含んでいてもよい。フィルターは、フィルター筐体内で並列に配置されても、直列に配置されていてもよい。使用の間、2つのフィルターが並列に配置される場合は、精製対象の溶媒はこれら2つのフィルターを並列に(つまり、実質的に同時に)通過する。一方、2つのフィルターが直列に配置されている場合、使用の間、精製対象の溶媒はこれら2つのフィルターを順々に通過する。いくつかの実施形態では、流量を増加させ生産性を向上させるために、いくつかのフィルターユニットがフィルター筐体内に複数のフィルターを並列に含んでいてもよい。
【0046】
例えば、図1に示される精製システム10は4つのフィルターユニット(つまり、ユニット114、122、124、及び126)を含み、これらはそれぞれ、フィルター筐体及び該フィルター筐体内の1つ又は複数のフィルターを含む。他の実施形態では、精製システム10は、図1に示された4つのフィルターユニットに加えて、他の精製モジュールも含んでいてもよい。
【0047】
図1を参照すると、フィルターユニット114、122、124、及び126は、機能性又は性質において異なっていてもよく、異なる精製処理を与えるものであってもよい。いくつかの実施形態では、各フィルターユニットは、独立に、粒子除去フィルター、イオン交換フィルター、及びイオン吸収フィルターからなる群から選択されてもよい。いくつかの実施形態では、フィルターユニット114、122、124、及び126の各々の中に収容されるフィルター(複数)は、同じ若しくは類似の精製機能、物理化学的性質、孔径、及び/又は構成材料を有していてもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、精製システム10は、脱水カラム112bと蒸留カラム120の間に位置し、カラム112b及び120と流体連通している少なくとも1つ(例えば2つ又は3つ)の第1のフィルターユニット114を含んでいてもよい。第1のフィルターユニット114は、フィルター筐体及び該フィルター筐体内の少なくとも1つ(例えば、2つ、3つ、4つ、又は5つ)のフィルターを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、第1のフィルターユニット114が2つ以上のフィルターを含む場合、これらのフィルターは、流量及び生産性を向上させるために並列に配置されてもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、第1のフィルターユニット114内のフィルターは、有機溶媒から比較的大きな粒子を除去するための粒子除去フィルターであってもよい。いくつかの実施形態では、第1のフィルターユニット114内のフィルターは、約0.25μmあるいは250nm以下(例えば、約240nm以下、約220nm以下、約200nm以下、約180nm以下、約160nm以下、若しくは約150nm以下)及び/又は約0.1μmあるいは100nm以上(例えば、約110nm以上、約120nm以上、約130nm以上、約140nm以上、若しくは約150nm以上)の平均孔径を有するろ材を含んでいてもよい。上記の範囲内で、第1のフィルターユニット114内のフィルターの詰まりを抑制しつつ有機溶媒に含まれる不純物又は凝集物等の異物を信頼性よく除去することが可能である。
【0050】
第1のフィルターユニット114内のフィルターにおけるろ材の適切な材料の例としては、フッ素ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカンポリマー(PFA)、又は修飾ポリテトラフルオロエチレン(MPTFE))、ナイロン(例えばナイロン6又はナイロン66)等のポリアミド、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)等の(高密度樹脂及び超高分子量樹脂を含め)ポリオレフィン、又はそれらの共重合体が挙げられる。例えば、粒子除去フィルターにおけるろ材は、ポリプロピレン(例えば、高密度ポリプロピレン)、ポリエチレン(例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)若しくは超高分子量ポリエチレン(UPE))、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、又はパーフルオロアルコキシアルカンポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーからなっていてもよい。上記の材料からなるフィルターは、残渣欠陥及び/又は粒子欠陥を生じる可能性が高い異物(例えば、高極性を有するもの)を効果的に除去することができ、そして、有機溶媒中の金属成分の含有量を効率的に減少させる。
【0051】
いくつかの実施形態では、第1のフィルターユニット114内においてフィルター(複数)のうちの少なくとも一部(例えば全て)が並列に配置され、第1のフィルターユニット114内の残りのフィルターが(もし存在するなら)直列に配置されていてもよい。いくつかの実施形態では、第1のフィルターユニット114は、並列に配置された2つ又は3つのフィルターを含み、約100nmの平均孔径を有し、そしてポリテトラフルオロエチレンからなるろ材を含むものであってもよい。
【0052】
理論に拘束されることを望むものではないが、精製システム10において脱水カラムと第1のフィルターユニットとの組み合わせを用いることによって、精製された有機溶媒中における粒子及びその他の不純物の量を増加させること無く、精製された有機溶媒の水分含有量を顕著に低下させることができると考えられる。例えば、精製システム10において脱水カラムと第1のフィルターユニットとの組み合わせを用いる場合、精製された有機溶媒は約100ppm以下(~約1ppm以上)の水分含有量を有していてもよい。さらに、理論に拘束されることを望むものではないが、脱水カラムは使用の間に夾雑物(例えば粒子)を放出する可能性があるが、第1のフィルターユニット114を用いることで精製された有機溶媒中におけるそのような夾雑物の量を顕著に減少させることができると考えられる。
【0053】
精製プロセスの間に、第1のフィルターユニット114を出る有機溶媒の純度レベルが所定の要件(例えば、約100ppm以下の水分含有量を有すること)を満たすならば、該有機溶媒を蒸留のために蒸留カラム120に移送してもよい。一方、第1のフィルターユニット114を出る有機溶媒の純度レベルが所定の要件を満たさないならば、該有機溶媒を任意に設けられる(optional)第1の再循環ループ150を通って供給ユニット110に戻し、脱水カラム112a/112b及び第1のフィルターユニット114によって再度精製してもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、精製システム10は、前ろ過システム20と蒸留後ろ過システム30との間に少なくとも1つ(例えば、2つ又は3つ)の蒸留カラム120を含む。図1に示されるように、蒸留カラム120は第1のフィルターユニット114と貯蔵タンク130との間に配置され、ユニット114及びタンク130と流体連通している。一般に、蒸留カラム120は当業界で知られた任意の適切な蒸留カラムであってよく、蒸留によって有機溶媒を精製して有機不純物及び金属不純物並びに粒子の大半を除去するために用いられる。
【0055】
いくつかの実施形態では、精製システム10は、蒸留カラム120と第2のフィルターユニット122との間に位置し、カラム120及びユニット122と流体連通している少なくとも1つ(例えば、2つ又は3つ)の貯蔵タンク130を含む。一般に、貯蔵タンク130は当業界で既知の任意の適切な貯蔵タンクであってよく、そして有機溶媒を貯蔵するために用いることができる。いくつかの実施形態では、貯蔵タンク130は、タンク内に貯蔵された溶媒の水分及び酸化を最小化するために窒素で満たされてもよい。精製プロセスの間、蒸留カラム120を出る有機溶媒は最初に貯蔵タンク130に移送されてもよく、それから不純物を除去するためにフィルターユニット122、124、及び126を通ってもよい。フィルターユニット126を出る有機溶媒の純度レベルが所定の要件(例えば、約99.99%以上の純度、約100ppm以下の水分含有量、及び/又は約200ppt以下の総量の金属不純物を有すること)を満たすならば、該有機溶媒を格納ステーション140に移送してもよい。一方、精製された有機溶媒の純度レベルが所定の要件を満たさないならば、該有機溶媒を任意に設けられる(optional)第2の再循環ループ160を通して貯蔵タンク130に戻し、フィルターユニット122、124、及び126により再度精製してもよい。
【0056】
一般に、貯蔵タンク130は、化学液体を貯蔵するための任意の適切な容器であってよい。いくつかの実施形態では、貯蔵タンク130は適切な容積を有する。例えば、貯蔵タンク130は、約1000リットル以上(例えば、約2000リットル以上、約3000リットル以上、若しくは約5000リットル以上)及び/又は約30,000リットル以下(例えば、約25,000リットル以下、約20,000リットル以下、約15,000リットル以下、若しくは約10,000リットル以下)の容積を有していてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、精製システム10は、貯蔵タンク130と第3のフィルターユニット124との間に位置し、タンク130及びユニット124と流体連通している少なくとも1つ(例えば2つ又は3つ)の第2のフィルターユニット122を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、第2のフィルターユニット122はフィルター筐体及び該フィルター筐体内の少なくとも1つ(例えば、2つ、3つ、4つ、又は5つ)のフィルターを含んでもよい。第2のフィルターユニット122内のフィルターは、有機溶媒から比較的小さい粒子を除去するための粒子除去フィルターであってもよい。いくつかの実施形態では、第2のフィルターユニット122内のフィルターは、約50nm以下(例えば、約45nm以下、約40nm以下、約35nm以下、約30nm以下、約25nm以下、若しくは約20nm以下)及び/又は約5nm以上(例えば、約10nm以上、約15nm以上、約20nm以上、約25nm以上、若しくは約30nm以上)の平均孔径を有するろ材を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、第2のフィルターユニット122内のフィルターにおけるろ材の平均孔径は、第1のフィルターユニット114内のフィルターにおけるろ材の平均孔径よりも小さくてもよい。そのような実施形態では、第2のフィルターユニット122は、第1のフィルターユニット114によって除去される粒子よりも小さい粒子を除去するのに用いることができる。
【0058】
第2のフィルターユニット122内のフィルターにおけるろ材の適切な材料の例としては、フッ素ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカンポリマー(PFA)、又は修飾ポリテトラフルオロエチレン(MPTFE))、ナイロン(例えばナイロン6又はナイロン66)等のポリアミド、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)等の(高密度樹脂及び超高分子量樹脂を含め)ポリオレフィン、又はそれらの共重合体が挙げられる。例えば、粒子除去フィルターにおけるろ材は、ポリプロピレン(例えば、高密度ポリプロピレン)、ポリエチレン(例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)若しくは超高分子量ポリエチレン(UPE))、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、又はパーフルオロアルコキシアルカンポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーからなっていてもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、第2のフィルターユニット122内においてフィルター(複数)のうちの少なくとも一部(例えば全て)が並列に配置され、第2のフィルターユニット122内の残りのフィルターが(もし存在するなら)直列に配置されていてもよい。いくつかの実施形態では、第2のフィルターユニット122は、並列に配置された2つ又は3つのフィルターを含み、約50nmの平均孔径を有し、そしてポリテトラフルオロエチレンからなるろ材を含むものであってもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、精製システム10は少なくとも1つ(例えば、2つ又は3つ)の第3のフィルターユニット124を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、第3のフィルターユニット124は、少なくとも1つ(例えば、2つ、3つ、4つ、又は5つ)の第1のイオン交換フィルター及び少なくとも1つ(例えば、2つ、3つ、4つ、又は5つ)の第2のイオン交換フィルターを筐体内に含むイオン交換フィルターユニットであってもよい。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの第1のイオン交換フィルター及び前記少なくとも1つの第2のイオン交換フィルターはどちらも負帯電イオン交換フィルターあるいはカチオン性イオン交換フィルター(つまり、負帯電イオン交換樹脂を含む1種又は複数種のろ材を含む)であり、直列に連結されている。第1のイオン交換フィルターが2つ以上存在する場合、該複数の第1のイオン交換フィルターは、流量及び生産性を増加させるために並列に接続されていてもよい。2つ以上の第2のイオン交換フィルターが存在する場合、該複数の第2のイオン交換フィルターは、流量及び生産性を増加させるために並列に接続されていてもよい。
【0061】
一般に、前記少なくとも1つの第1のイオン交換フィルターは、前記少なくとも1つの第2のイオン交換フィルターとは異なる(例えば、異なるろ材を含む)。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの第1のイオン交換フィルターは、重金属(例えば、Fe、Ni、Cr、Zn、又はCu)を主に除去することができるものであってもよく、一方、前記少なくとも1つの第2のイオン交換フィルターはアルカリ又はアルカリ土類金属(例えば、K、Na、又はCa)を主に除去することができるものであってもよい。いくつかの実施形態では、前記第1のイオン交換フィルターは、有機溶媒中の1種又は複数種の重金属を約90重量%以上(例えば、約92重量%以上若しくは約95重量%以上)、及び/又は1種若しくは複数種のアルカリ若しくはアルカリ土類金属を約10重量%以下(例えば、約8重量%以下若しくは約5重量%以下)除去可能であってもよい。いくつかの実施形態では、第2のイオン交換フィルターは、有機溶媒中の1種若しくは複数種のアルカリ若しくはアルカリ土類金属を約70重量%以上(例えば、約75重量%以上、約80重量%以上、約85重量%以上、若しくは約90重量%以上)、及び/又は1種又は複数種の重金属を約30重量%以下(例えば、約25重量%以下、約20重量%以下、約15重量%以下、若しくは約10重量%以下)除去可能であってもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの第2のイオン交換フィルターが前記少なくとも1つの第1のイオン交換フィルターの下流に配置されることが好ましい。理論に拘束されることを望むものではないが、そのような実施形態では、有機溶媒中の重金属を最初に除去することができ、このことは、アルカリ又はアルカリ土類金属の除去を容易化すると考えられる。なぜなら、有機溶媒中の残留重金属は、前記少なくとも1つの第2のイオン交換フィルターによるアルカリ又はアルカリ土類金属の除去を妨げるおそれがあるからである。いくつかの実施形態では、第3のフィルターユニット124内における前記少なくとも1つの第1及び第2のイオン交換フィルターの順序は逆転されていてもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、フィルターユニット124内の前記少なくとも1つの第1又は第2のイオン交換フィルターは、有機溶媒から正帯電粒子及び/又はカチオン性金属イオンを除去するために、1つ又は複数の負帯電イオン交換樹脂膜をろ剤として含んでいてもよい。本開示において用いられる負帯電イオン交換樹脂膜は特に限定されず、樹脂膜に固定化された適切なイオン交換基を有するイオン交換樹脂を含むフィルターを用いることができる。そのようなイオン交換樹脂膜の例としては、樹脂膜上へと化学的に修飾された(スルホン酸基又はスルホナート基等の)カチオン交換基を有する強酸性カチオン交換樹脂が挙げられる。好適な樹脂膜の例としては、セルロース、珪藻土、ポリアミド(例えばナイロン)、(ポリエチレン(例えば、高密度ポリエチレン若しくは超高分子量ポリエチレン)、ポリプロピレン、若しくはポリスチレン等の)ポリオレフィン、イミド基を有する樹脂、アミド基及びイミド基を有する樹脂、フッ素ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン若しくはパーフルオロアルコキシアルカンポリマー)、又はそれらの共重合体若しくは組み合わせ、を含む樹脂膜が挙げられる。いくつかの実施形態では、前記イオン交換樹脂膜は、粒子除去膜とイオン交換樹脂膜との一体化構造を有する膜であってもよい。膜上へと化学修飾されたカチオン交換基(例えば、スルホナート基)を有するポリアルキレン(例えば、PE、PP、又はPTFE)膜が好ましい。本開示において用いられるカチオン交換樹脂膜を有するフィルターは、金属イオン除去機能性を有する市販のフィルターであってもよい。そのようなカチオン交換フィルターの市販品の例としては、Pall Corporation(ニューヨーク州ポートワシントン)から入手可能なIonKleenフィルター、及びEntegris社(マサチューセッツ州ビレリカ)から入手可能なProtego Plusフィルターが挙げられる。これらのフィルターはイオン交換効率に基づいて選択することができ、約100nm~約500nmの範囲の推定孔径(estimated pore size)を有する。
【0064】
フィルターユニット124内の前記少なくとも1つの第1又は第2のイオン交換フィルターにおける膜材料の形状の例としては、プリーツ型(pleated type)、平膜型(flat membrane type)、中空繊維型、特開2003-112060号公報に記載の多孔体、等々が挙げられる。いくつかの実施形態では、イオン交換膜が多孔性を有している場合、有機溶媒中の微粒子の少なくとも一部を除去することも可能である。
【0065】
いくつかの実施形態では、フィルターユニット124内の前記少なくとも1つの第1のイオン交換フィルターは、重金属(例えば、Fe、Ni、Cr、Zn、又はCu)を主に除去することが可能な、スルホナート基を有するポリエチレン、スルホナート基を有するポリテトラフルオロエチレン、又はそれらの共重合体を含むろ剤を含んでもよい。そのようなフィルターの市販品のある例は、Pall Corporation(ニューヨーク州ポートワシントン)から入手可能な(IonKleen SLフィルター等の)IonKleenフィルターである。いくつかの実施形態では、フィルターユニット124は、生産性を増加させるために並列に接続された、2つ又は3つのそのような第1のイオン交換フィルターを含んでいてもよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、フィルターユニット124内の前記少なくとも1つの第2のイオン交換フィルターは、アルカリ又はアルカリ土類金属(例えば、K、Na、又はCa)を主に除去することが可能な、スルホナート基を有するポリエチレン、スルホナート基を有するポリテトラフルオロエチレン、又はそれらの共重合体を含むろ剤を含んでもよい。そのようなフィルターの市販品のある例は、Entegris社(マサチューセッツ州ビレリカ)から入手可能な(Protego Plus IPAフィルター等の)Protego Plusフィルター及びProtego At 5nm/lonex comboフィルターである。いくつかの実施形態では、第3のフィルターユニット124は、生産性を増加させるために並列に接続された、2つ又は3つのそのような第2のイオン交換フィルターを含んでいてもよい。
【0067】
理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、第3のフィルターユニット124内に2つの異なるタイプのイオン交換フィルターを含ませることで、1つのタイプのイオン交換フィルターのみが用いられるシステムと比べて、精製された有機溶媒中における金属不純物の量を顕著に(例えば、約200ppt以下の総量に)減少させることができることを驚くべきことに見出した。
【0068】
いくつかの実施形態では、精製システム10は、第3のフィルターユニット124と格納ステーション140との間に(つまり、ユニット124の下流に)位置し、ユニット124及びステーション140と流体連通している少なくとも1つ(例えば2つ又は3つ)の第4のフィルターユニット126を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、第4のフィルターユニット126はフィルター筐体及び該フィルター筐体内の少なくとも1つ(例えば、2つ、3つ、4つ、又は5つ)のフィルターを含んでもよい。第4のフィルターユニット126内のフィルターは、有機溶媒から比較的小さい粒子を除去するための粒子除去フィルターであってもよい。いくつかの実施形態では、第4のフィルターユニット126内のフィルターは、約10nm以下(例えば、約9nm以下、約8nm以下、約7nm以下、約6nm以下、約5nm以下、若しくは約4nm以下)及び/又は約2nm以上(例えば、約3nm以上、約4nm以上、若しくは約5nm以上)の平均孔径を有するろ材を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、第4のフィルターユニット126内のフィルターにおけるろ材の平均孔径は、第2のフィルターユニット122内のフィルターにおけるろ材の平均孔径よりも小さくてもよい。そのような実施形態では、第4のフィルターユニット126は、第2のフィルターユニット122によって除去される粒子よりも小さい粒子を除去するのに用いることができる。
【0069】
第4のフィルターユニット126内のフィルターにおけるろ材の適切な材料の例としては、フッ素ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカンポリマー(PFA)、又は修飾ポリテトラフルオロエチレン(MPTFE))、ナイロン(例えばナイロン6又はナイロン66)等のポリアミド、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)等の(高密度樹脂及び超高分子量樹脂を含め)ポリオレフィン、又はそれらの共重合体が挙げられる。例えば、粒子除去フィルターにおけるろ材は、ポリプロピレン(例えば、高密度ポリプロピレン)、ポリエチレン(例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)若しくは超高分子量ポリエチレン(UPE))、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、又はパーフルオロアルコキシアルカンポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーからなっていてもよい。上記の材料からなるフィルターは、残渣欠陥及び/又は粒子欠陥を生じる可能性が高い異物(例えば、高極性を有するもの)を効果的に除去することができ、そして、有機溶媒中の金属成分の含有量を効率的に減少させる。
【0070】
いくつかの実施形態では、第4のフィルターユニット126内においてフィルター(複数)のうちの少なくとも一部(例えば全て)が並列に配置され、第4のフィルターユニット126内の残りのフィルターが(もし存在するなら)直列に配置されていてもよい。いくつかの実施形態では、第4のフィルターユニット126は、並列に配置された2つ又は3つのフィルターを含み、約10nmの平均孔径を有し、そしてポリテトラフルオロエチレンからなるろ材を含むものであってもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、精製システム10は、部分的に精製された有機溶媒を供給ユニット110に戻すように再循環させるための第1の再循環ループ150を形成する再循環導路を任意に(optionally)含んでもよい。戻された部分精製有機溶媒は、脱水カラム112a/112b及び第1のフィルターユニット114によって再度精製することができる。いくつかの実施形態では、精製システム10は、部分的に精製された有機溶媒を貯蔵タンク130に戻すように再循環させるための第2の再循環ループ160を形成する再循環導路を任意に(optionally)含んでもよい。戻された部分精製有機溶媒は、フィルター122、124、及び126によって再度精製することができる。いくつかの実施形態では、部分的に精製された有機溶媒は、格納ステーション140に移送される前に、第1の再循環ループ150又は第2の再循環ループ160を通して2回以上(例えば、3回以上、4回以上、又は5回以上)再循環される。
【0072】
いくつかの実施形態では、精製システム110におけるフィルターユニット114、122、124、及び126はフィルター筐体を含んでいなくてもよく、フィルターユニット114、122、124、及び126内のフィルターは、精製システム10内において区画化される(compartmentalized)こと無く構成されていてもよい。例えば、精製システム10は、精製システム10の内部で一緒に連結された交換可能フィルター(例えば、フィルターユニット114、122、124、及び126における交換可能フィルター)を含む多段システムであってもよく、有機溶媒はこれらのフィルターを次々と通らせられ(caused to cascade through)てもよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、格納ステーション140は可動型貯蔵タンク(例えば、タンカー上のタンク)であっても、固定された貯蔵タンクであってもよい。いくつかの実施形態では、格納ステーション140はフッ素ポリマーをライニングした設備であってもよい(例えば、その内表面がPTFE等のフッ素ポリマーを含んでもよい)。いくつかの実施形態では、格納ステーション140は、約100リットル以上(例えば、約200リットル以上、約300リットル以上、若しくは約500リットル以上)及び/又は約1,500リットル以下(例えば、約1200リットル以下、約1000リットル以下、約900リットル以下、約800リットル以下、約700リットル以下、若しくは約600リットル以下)の体積を有していてもよい。
【0074】
本開示は、溶媒(例えば、イソプロピルアルコール等の有機溶媒)を精製する方法も1つの特色とする。該精製方法は、(1)前記有機溶媒を吸着剤を含む少なくとも1つのカラム(例えば、図1に示される脱水カラム112a/112b)に通して、前記有機溶媒中の残留水分を除去すること、(2)前記有機溶媒を第1のフィルターユニット(例えば、図1に示される第1のフィルターユニット114)に通すこと、ここで、前記第1のフィルターユニットは第1の筐体及び前記第1の筐体内の少なくとも1つのフィルターを含み、前記少なくとも1つのフィルターはろ材を含む、並びに(3)前記有機溶媒を蒸留カラム(例えば、図1に示される蒸留カラム120)中で蒸留して、精製された有機溶媒を得ること、を含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、前記精製方法は、(1)蒸留カラムで前記有機溶媒を蒸留して、蒸留された有機溶媒を得ること、及び(2)前記蒸留された有機溶媒をイオン交換フィルターユニット(例えば、図1に示された第3のフィルターユニット124)に通して、精製された有機溶媒を得ること、を含んでもよく、ここで、前記イオン交換フィルターユニットは、筐体、並びに前記筐体内の少なくとも1つの第1のイオン交換フィルター及び少なくとも1つの第2のイオン交換フィルターを含み;前記少なくとも1つの第1のイオン交換フィルター及び前記少なくとも1つの第2のイオン交換フィルターは、どちらも、負帯電イオン交換フィルターであって、直列に連結されており;前記少なくとも1つの第1のイオン交換フィルターは前記少なくとも1つの第2のイオン交換フィルターとは異なる。
【0076】
例えば、図1を参照すると、未精製又は処理前の溶媒(つまり、出発材料)は、供給ユニット110からの該溶媒を脱水カラム112a/112b及び第1のフィルターユニット114に通して蒸留カラム120へと送り、前記溶媒を蒸留カラム120において蒸留し、蒸留カラム120を出る溶媒を貯蔵タンク130に移送し、そして貯蔵タンク130からの前記溶媒をフィルターユニット122、124、及び126に通して格納ステーション140へと送ることにより、精製システム10によって精製することができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、本開示に記載の精製方法は、部分的に精製された溶媒を蒸留カラム120へと移送する前に、蒸留前ろ過システム20において溶媒を再循環ループ150を通して(例えば、供給ユニット110、脱水カラム112a/112b、及び第1のフィルターユニット114を通して)1回以上(例えば、2回又は3回)再循環させることを含んでいてもよい。例えば、前記再循環させることは、有機溶媒中の水分レベルが所定の範囲内になるまで、第1のフィルターユニット114を出る有機溶媒を供給ユニット110に移動させ、それから該有機溶媒を(吸着剤を含む)脱水カラム112a/112b及び第1のフィルターユニット114に通すことを1回又は複数回行うことを含んでいてもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、本開示に記載の精製方法は、精製された溶媒を格納ステーション140に移送させる前に、蒸留後ろ過システム30において溶媒を再循環ループ160を通して(例えば、フィルターユニット122、124、及び126、並びに貯蔵タンク130を通して)1回以上(例えば、2回又は3回)再循環させることを含んでいてもよい。例えば、前記再循環させることは、有機溶媒中の純度及び微量金属総量がそれぞれの所定範囲内になるまで、第4のフィルターユニット126を出る有機溶媒を貯蔵タンク130に移動させ、それから該有機溶媒を第2のフィルターユニット122、(2つの異なるタイプのイオン交換フィルターを含むイオン交換フィルターユニットであってもよい)第3のフィルターユニット124、及び第4のフィルターユニット126に通すことを1回又は複数回行うことを含んでいてもよい。
【0079】
精製プロセスの終わりにおける精製された溶媒から検出される粒子の数及び不純物の量がそれぞれの所定範囲内に制御される場合、超高純度溶媒(例えば、約99.99%以上の純度、約100ppm以下の水分含有量、及び/又は約200ppt以下の総量の金属不純物を有する)が製造される。その後、この超高純度溶媒は、貯蔵のために格納ステーション140に移送されても、半導体品を作製するために製造プロセスに移送されてもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、本開示に記載の方法及びシステムによって精製された溶媒は、ウェハ(例えば12インチウェハ)全体上におけるオンウェハ粒子カウントが約500以下(例えば、約450以下、約400以下、約350以下、約300以下、約250以下、約200以下、約150以下、約100以下、約50以下、若しくは約25以下)又は0であるフィルム又はコーティングを形成することができる。いくつかの実施形態では、本開示に記載の方法及びシステムによって精製された溶媒は、ウェハ(例えば12インチウェハ)全体上におけるオンウェハ金属カウント(例えば、総オンウェハ金属カウント、又はFe若しくはNi等の特定の金属のオンウェハ金属カウント)が約100以下(例えば、約90以下、約80以下、約70以下、約60以下、約50以下、約40以下、約30以下、約20以下、若しくは約10以下)又は0であるフィルム又はコーティングを形成することができる。いくつかの実施形態では、本開示に記載の方法及びシステムによって精製された溶媒は、ウェハ(例えば12インチウェハ)全体上における欠陥密度(つまり、オンウェハ金属及び粒子の総カウントに基づく)が平方センチメートルあたり約1.5以下(例えば、約1.4以下、約1.2以下、約1以下、約0.8以下、約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下、約0.2以下、約0.1以下、約0.07以下、約0.05以下、約0.03以下、約0.02以下、約0.01以下、約0.007以下、約0.005以下、約0.004以下、約0.003以下)又は0であるフィルム又はコーティングを形成することができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、本開示に記載の方法及びシステムによって溶媒は比較的高い流量で精製することができる。例えば、溶媒は、精製システム10を通して、約1L/分以上(例えば、約2L/分以上、約4L/分以上、約5L/分以上、約6L/分以上、約8L/分以上、約10L/分以上、若しくは約15L/分以上)及び/又は約50L/分以下(例えば、約45L/分以下、約40L/分以下、約35L/分以下、約30L/分以下、約25L/分以下、約20L/分以下、若しくは約15L/分以下)の流量で精製することができる。一般に、溶媒を精製するための流量は多くの因子に応じて変動し得、そのような因子としては、精製対象の溶媒の性質及び粘度、温度、フィルターの数(例えば、並列に配置されているフィルター(複数))、精製プロセスで用いられる他の設備の種類及び数、が挙げられる。理論に拘束されることを望むものではないが、ウェハ上の欠陥を最小化し、導路及び容器を腐食させるおそれがある導路又は容器の内表面における静電荷のビルドアップを最小化するためには、精製対象の溶媒の流量は高すぎてはならないと考えられる。
【0082】
本開示を以下の実施例を参照してより詳細に説明するが、これは例示目的のものであって、本開示の範囲を制限するものと解釈すべきでない。
【実施例
【0083】
微量金属測定の一般的説明
溶媒試料中の総微量金属濃度をICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS))を用いて試験した。富士フイルム社が開発した方法を用いて、各試料を、36の金属種の存在について試験した。検出限界は金属特異的であったが、典型的な検出限界は0.00010~0.030ppbの範囲であった。
【0084】
微量水分及び有機不純物測定の一般的説明
液体試料中の微量水分及び有機不純物を、加熱脱離ガスクロマトグラフィー/質量分析(TD-GC/MS)によって測定する。少量の液体試料を吸着剤を含む加熱脱離チューブに注入し、加熱脱離機の中に入れる。この試料を加熱し、それからGC/MSユニット内へと注入し、そこで試料混合物はその構成成分に分離され、構成成分は質量によって特定される。
【0085】
実施例1
図1に示す精製システムでイソプロピルアルコール(IPA)を精製した。試験結果を以下の表1にまとめる。
【0086】
【表1】

【0087】
「C6以上の総有機物」とは、6以上の炭素を有する有機不純物の総量を指す。
【0088】
表1に示されるように、精製システム10によって精製されたイソプロピルアルコール中の水分含有量、有機不純物の量、及び微量金属の量は、顕著に減少した。
【0089】
本発明をその特定の実施形態を参照して説明してきたが、改変及びバリエーションも、記載されまた特許請求された発明の精神及び範囲の範疇であることが理解されよう。


図1
【国際調査報告】