(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】免疫調節機能を有するCpG ODN及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/117 20100101AFI20230428BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230428BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230428BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230428BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230428BHJP
A61K 31/7115 20060101ALI20230428BHJP
A61K 31/712 20060101ALI20230428BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20230428BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20230428BHJP
A61K 39/205 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
C12N15/117 Z ZNA
A61P35/00
A61P31/00
A61P37/08
A61P37/02
A61K31/7115
A61K31/712
A61K31/7125
A61K39/39
A61K39/205
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559536
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 CN2021084467
(87)【国際公開番号】W WO2021197381
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】202010253089.8
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522383115
【氏名又は名称】パル・バイオテクノロジー・(ホーペイ)・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PARR BIOTECHNOLOGY (HEBEI) CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ワン,リーゴン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,ヤン
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA64
4C085EE06
4C085FF14
4C085GG02
4C085GG03
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB05
4C086ZB09
4C086ZB13
4C086ZB26
4C086ZB32
4C086ZC61
(57)【要約】
一般式Iに示される構造で化学修飾された免疫調節性CpG ODN及びその使用を提供する。前記CpG ODNは、免疫刺激活性を有し、B細胞の増殖を刺激でき、特異的サイトカインを産生できる。上記CpG ODNは、ワクチンアジュバントとして単独で使用してもよく、他のアジュバントと組み合わせて相乗作用を発揮してもよく、腫瘍、感染、アレルギーを予防又は治療するための薬物の調製にも使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1~6から選択されるヌクレオチド配列を含むか又は配列番号1~6から選択されるヌクレオチド配列からなる免疫調節性CpG ODNであって、前記ヌクレオチド配列中の少なくとも1つのヌクレオチドは、一般式Iに示される構造を有する化学修飾されたヌクレオチドである、免疫調節性CpG ODN:
【化1】
(式中、Yは、S又はOであり、Rは、H又は正に帯電した対イオンであり、Bは、独立して未修飾の又は修飾された核酸塩基であり、R
1は、H、F、Cl、OH、OMe、Me、O-エチルオキシメチルである)。
【請求項2】
Yは、Sである、請求項1に記載の免疫調節性CpG ODN。
【請求項3】
前記CpG ODNのヌクレオチド配列中の全てのヌクレオチドは、一般式Iに示される構造を有する化学修飾されたヌクレオチドである、請求項1又は2に記載の免疫調節性CpG ODN。
【請求項4】
前記免疫調節性CpG ODNの配列は、配列番号1~6であり、好ましくは、全てホスホロチオエート化された配列番号1~6であり、より好ましくは、全てホスホロチオエート化された配列番号3又は6である、請求項3に記載の免疫調節性CpG ODN。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の免疫調節性CpG ODNと薬学的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物。
【請求項6】
ワクチンアジュバントの調製における、請求項1~4のいずれか一項に記載の免疫調節性CpG ODNの使用。
【請求項7】
前記ワクチンは、狂犬病ワクチンであり、好ましくは、CpG ODNの量は、0.01μg~1000μg/mlであり、より好ましくは1~10μg/mlであり、例えば、1、3、又は10μg/mlである、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記ワクチンは、SARS-COV-2ワクチンであり、好ましくは、不活化SARS-COV-2ワクチンであり、CpG ODNの量は、0.01μg~1000μg/mlである、請求項6に記載の使用。
【請求項9】
前記ワクチンアジュバントは、前記免疫調節性CpG ODNと共同で作用する1つ又は複数の他のアジュバント、例えば不溶性アルミニウム塩コロイド、油水エマルジョン、微生物及び代謝産物、核酸及びその類似体、サイトカイン、免疫刺激複合体、プロポリス、及びリポソームをさらに含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
対象の腫瘍、微生物感染又はアレルギーを予防又は治療するための医薬の調製における、請求項1~4のいずれか一項に記載の免疫調節性CpG ODN又は請求項5に記載の医薬組成物の使用。
【請求項11】
前記対象は、人、又は動物、例えばマウス、ラット、飼育動物、例えば犬、豚、牛、馬、家禽、例えば鶏、アヒル、ガチョウである、請求項9に記載の使用。
【請求項12】
請求項1~4のいずれか一項に記載の免疫調節性CpG ODN及び抗原を含むワクチンであって、前記抗原は、狂犬病抗原又はSARS-COV-2抗原である、ワクチン。
【請求項13】
前記ワクチンは、ヒト用又は動物用のワクチンであり、前記免疫調節性CpG ODNは、全てホスホロチオエート化された配列番号3に示される免疫調節性CpG ODNであり、前記CpG ODNの量は、0.01μg~1000μg/mlであり、より好ましくは1~10μg/mlであり、例えば、1、3、又は10μg/mlである、請求項12に記載のワクチン。
【請求項14】
前記ワクチンは、SARS-COV-2ワクチンであり、好ましくは不活化SARS-COV-2ワクチンであり、前記ワクチンは、アルミニウムアジュバント、例えば水酸化アルミニウムアジュバントをさらに含む、請求項12に記載のワクチン。
【請求項15】
前記免疫調節性CpG ODNは、全てホスホロチオエート化された配列番号6に示される免疫調節性CpG ODNである、請求項14に記載のワクチン。
【請求項16】
前記抗原の含有量は、1~10μg/mLであり、例えば2、4又は8μg/mLであり、前記水酸化アルミニウムの含有量は、1~1000μg/mLであり、好ましくは300~500μg/mLであり、前記免疫調節性CpG ODNの含有量は、1~1000μg/mLであり、好ましくは2~500μg/mLであり、例えば5μg/mL、20μg/mL、40μg/mL、80μg/mL、又は400μg/mLである、請求項15に記載のワクチン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫調節機能を有するCpG ODN及びその使用に関する。前記CpG ODNは、良好な免疫刺激活性を有し、B細胞の増殖を刺激でき、サイトカインを産生できる。それは、ワクチンアジュバントとして単独で使用することも、他のアジュバントと組み合わせて使用して相乗効果を発揮することもでき、また、腫瘍、感染、及びアレルギーを予防又は治療するための薬物の調製に使用することもできる。
【背景技術】
【0002】
1984年に、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)の核酸成分がマウス腫瘍保持モデルにおいて抗腫瘍作用を有することが発見され、それをヒト腫瘍の治療に使用することに成功した(Tokunaga T、Yamamoto H、Shimada S、et al.Antitumor activity of deoxyribonucleic acid fraction from mycobacterium bovis BCG.I.Isolation,physicochemical characterization,and antitumor activity.J Natl Cancer Inst、1984、72(4):955-962)。リボヌクレアーゼとデオキシリボヌクレアーゼを用いて分解分析後、本当に作用する成分は細菌中のデオキシリボ核酸であることが証明された(Tokunaga T、Yamamoto S、Namba K.A synthetic single stranded DNA,Poly(dG、dC),induces interferon-alpha/beta and gamma,augments natural killer activity,and suppresses tumor growth.Jpn J Cancer Res、1988、79(6):682-686;Tokunaga T、Yano O、Kuramoto E、et a1.Synthetic oligonucleotides with particular base sequences from the cDNA encoding proteins of mycobacterium bovis BCG induce interferon and activate natural killer cells.Microbiol Immunol、1992、36(1):55-66)。配列分析により、免疫活性を有するオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)が配列中に少なくとも1つ又は複数のCGジヌクレオチドを含み、CGはリン(p)でつながっていることが示された。したがって、オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)は、免疫活性化配列(ISS)としても知られているCpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)と総称された。
【0003】
CpG ODNの免疫刺激活性は、それ自体の構造に影響を受ける。細菌などの病原性微生物のゲノムにはCGジヌクレオチドが多く存在する。しかしながら、ヒトや脊椎動物のゲノムには、CGジヌクレオチドがほとんど見出されず、たとえヒトや脊椎動物のゲノムにCGジヌクレオチドが存在しても、その中のシトシンやグアニンのヌクレオチドは、通常メチル化されている。CpGジヌクレオチドの欠失、逆転及びメチル化は、その活性の喪失を招く可能性があり、これは、CpG ODN中の非メチル化CpGジヌクレオチドの存在が免疫刺激活性の基礎であることを示している(凌世淦.免疫活性オリゴデオキシヌクレオチドCpGの研究進捗[J].Chinese Journal of Microbiology and Immunology、2008、28(6):571-576)。CpG ODNでは、複数のデオキシヌクレオチドは、多様な組み合わせで規則的に配列されている。しかしながら、異なる配列構造特徴のCpG ODNの免疫活性は顕著に異なっており、配列中の1つ又はいくつかのヌクレオチドの改変は、その免疫活性に大きな影響を与える可能性がある。そのため、構造と活性との関係を理解し、把握することは、我々が免疫活性を有するより多くの配列を設計することに役立つ。
【0004】
マウスにおいてBリンパ球を刺激する活性を有するCpG ODNについては、その塩基配列は一般に以下のルールを有する:CpGジヌクレオチドの5’末端に近い2つの塩基は一般的にプリン、好ましくはGpAであり、3’末端に近い2つの塩基は一般的にピリミジン、好ましくはTpC又はTpTである(Krieg A M、Yi AK、Matson S、et a1.CpG motifs in bacterial DNA trigger direct B-cell activation[J].Nature、1995、374(6522):546-549)。CpGジヌクレオチドの5’末端近くのC又はGは、マウスにおけるNKリンパ球の刺激におけるCpG ODNの活性を顕著に阻害し得るが、3’末端近くのCは、活性に対する影響がほとんどない。5’末端にGAを有するGACGTT/Cは、マウスに対して強い作用を有するCpGモチーフであるが、5’末端のGAをGCやGGに置き換えることによって得られるGCCGTT/C又はGGCGTT/Cモチーフの免疫活性は低下することが分かり得る。ヒト末梢血単核細胞は、「GTCGTT」、「TTCGTT」、又は「AACGTT」を含むモチーフで活性化することができ、作用が最も強いモチーフはGTCGTTである(Ballas ZK、Rasmussen W L、Krieg AM.Induction of NK activity in murine and human cells by CpG motifs in oligodeoxynucleotides and bacterial DNA[J].J Immunol、1996、157(5):1840-1845)。複数のTCG反復配列は、ヒトB細胞とNK細胞に対するCpG ODNの刺激作用を増強するのに役立つ(Hartmann G、Krieg AM.Mechanism and function of a newly identified CpG DNA motif in human primary B cells[J].J Immunol、2000、164(2):944-953)。複数のTCG反復配列を含むT7とT8は、ヒトPBMCに対しても良好な免疫刺激活性を有する。複数のTCG反復配列は、GTCGTCモチーフを形成し、これは、CpGジヌクレオチドの3’末端がTpCである時に形成されたGTCGTCモチーフも、ヒトに対して強い免疫刺激活性を有することを示している(許洪林、王四清、王世峰.2つのCpGモチーフはヒト免疫細胞を高度に活性化する[J].Chinese Journal of Microbiology and Immunology、2001、21(5):471-475)。CpG ODN配列には5’-NTCGTT-3’モチーフの2つ以上のコピーが存在し、これは長さが15~35個のヌクレオチドであり、ここで、NはA又はGを表さない。そのようなCpG ODNは、インビトロでヒト及びマウスの免疫細胞に対して良好な免疫刺激活性を有する(許洪林.免疫刺激活性を有するチオリゴデオキシヌクレオチド及びその使用、CN 101492672 A)。CpG ODNのコア配列は、一般式:5’-X1-X2-CG-Y1-Y2-3’を有する6-ヌクレチシドモチーフであり、ここで、X1は、プリン塩基ヌクレオチドであり、X2もプリン又はチミン(T)であり、Y1及びY2はいずれもピリミジンである。さらに、この6-ヌクレオチドモチーフに加えて、周辺配列や複数のCpG間の配列もCpG ODNの活性に影響を持つ(Krieg AM、Hartmann G、Yi AK.Mechanism of action of CpG DN A.Curt Top Microbiol、2000.247(1):1-21)。CpGの2つの側面に隣接する塩基の配列は、ほとんど5’PurPurCGPyrPyr3’のルール、すなわち5’末端が2つのプリン、3’末端が2つのピリミジンに従うことが、他の研究により見出された(G.Mutwiri、R.Pontarollo、S.BaBIUK.Bological activity of immunostimulatory CpG ODN motif in domestic animals.Veterinary Immunopathology、2003、91:89-103)。
【0005】
TLR9は、Toll様受容体(TLR)ファミリーのメンバーの1つであり、これは主に細菌DNA中のCpGモチーフを認識する。CpG ODNは、TLR9依存の方式で個体の先天的免疫応答を刺激することができる。ウイルスや細菌のゲノムにおけるCpG ODNは、TLR9の天然のアゴニストである。したがって、細胞が細菌に感染するか又は細菌が細胞中に摂取されると、TLR9は、Th1ドミナント免疫応答を開始する(AHLERS J D、BELYAKOV I M.Memories that last forever: Strategies for optimizing vaccine T-cell memory[J]Blood、2010、115(9);1678-1689)。
【0006】
CpG ODNは、TLR9分子を発現する細胞を刺激し、免疫調節カスケードを引き起こし、最終的に炎症促進性のサイトカインとケモカインを産生するだけでなく、また樹状細胞、単球及びマクロファージの抗原提示機能を改善し、B細胞の増殖を誘導し、NK細胞の免疫保護活性を刺激し、生体内免疫応答反応を誘導する。したがって、CpG ODNは、高効率及び低毒性の免疫アジュバントであり、疾患の治療に高い価値がある(SUN S Q、ZHANG X H、TOUGH D F.Type I interferon-mediated stimulation of T cells by CpG DNA[J]J.Exp Med、1998、188(12):2335-2342)。
【0007】
CpG ODNのワクチンアジュバント活性は、予防的及び治療的ワクチンについての大量の動物実験で実証されている。マウスモデルにおいて、CpG ODNは、パピローマウイルス、B型肝炎ウイルス、ブルセラ菌、クラミジア、HIV、アスペルギルス、マイコバクテリア、トリパノソーマ、ミクソウイルス、C型肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス、デングウイルス、狂犬病ウイルス、インフルエンザウイルスなどの各種のワクチンと併用される。2000年以来、20種類以上のCpG ODNをアジュバントとして有するワクチンが臨床的に研究されている(KRIEG AM.Therapeutic potential of Toll-like receptor 9 activation[J].Nat Rev Drug Discov、2006、5(6):471-484; Dennis M Klinman.CpG DNA as a vaccine adjuvant[J].Expert Rev Vaccines、2003、2(2):305-315; KRIEG AM.CpG still rocks! Update on an accidental drug[J].Nucleic Acid Ther.2012、22(2):77-89)。B型CpG ODNは、実験の主な研究対象であり、それはワクチンアジュバントとして感染性疾患の予防及び治療に用いられている。DynavaxによるHEPLISAV-B B型肝炎ワクチンは、2017年11月にFDAに承認されている。
【0008】
ウイルスに対するCpG ODNの阻害作用は、呼吸器合胞体ウイルス、肝炎ウイルス、HIVなどでの実験で実証されている(Liu S、Sun W、Cao Y. Study on anti-HBV effects by antisense oligodeoxynucleotides in vitro.China Journal of Preventive Medicine、2001、35(5)、338-340; Lund OS、Hansen JE.Inhibition of HIV-1 replication by chimeric phosphorothioate oligodeoxynucleotides applied in free solution.Intervirology、1998、41(2-3)、63-68)。
【0009】
CpG ODNは、多くのマウスモデルで抗腫瘍活性を有し、腫瘍が相対的に小さい場合には、CpG ODN単独で、T細胞が媒介する腫瘍拒絶反応を効果的に誘導することができる。しかし、大きい腫瘍に対しては、CpG ODNは、他の処置、例えばモノクローナル抗体、放射線療法、手術、化学療法と組み合わせる必要があり、強い相乗効果を有する。CpG ODNが媒介する腫瘍消退は、T細胞依存性及びNK細胞非依存性であってもよいし、又はNK細胞依存性及びT細胞非依存性であってもよい。メラノーマポリペプチド抗原ワクチンのアジュバントとして、CpG 7909は、腫瘍を有する患者の生存を顕著に改善することができ、強いメラノーマタンパク質抗原特異的CD8+T細胞反応を誘導することができる(van Ojik,H.et al Phase I/II study with CPG 7909 as adjuvant to vaccination with MAGA-3 Protein in Patients with MAGA-3 Positive tumors.Ann Oncol 2002、13、157; Speiser、D.E.et al.Rapid and strong human CD8(+) T cell responses to vaccination with peptide,IFA,and CPG oligodeoxynucleotide 7909.J Clin Invest、2005、115、739-746)。
【0010】
単独で又は抗腫瘍抗体と組み合わせてCpG ODNはいずれも、Th1サイトカイン分泌を誘導し、ADCC作用を増強することができる(Hartmann,E.et al.Identification and functional analysis of tumor-infiltrating plasmacytoid dendritic cells in head and neck cancer.Cancer Res 2003:63、6478-6487)。B型1018 ISSとリツキシマブとの組み合わせは、非ホジキンリンパ腫の治療において非常に効果があり、臨床試験に入っている(Friedberg,J.W.et al.Combination immunotherapy with a CPG oligonucleotide(1018 ISS) and rituximab in Patients with non-Hodgkin’s lymphoma-Hodgkin lymphoma: increased interferon-α/β-inducible gene expression, without significant toxicity.Blood 2005:105、489-495)。
【0011】
臨床試験では、腫瘍周囲にCpG ODNを注射した後に放射線治療を行った再発性膠芽腫の一部の患者において、癌細胞の増殖と転移が一定の程度まで阻害された(Senti G、Johansen P、Haug S、et al.Use of A-type CpG oligodeoxynucleotides as an adjuvant in allergen-specific immunotherapy in humans: a phase I/IIa clinical trial[J].Clinic Experim Allergy、2009、39(4):562-570;Carpentier A、Laigle-Donadey F、Zohar S、et al.Phase 1 trial of a CpG oligodeoxynucleotide for patients with recurrent glioblastoma[J].Neuro-Oncol、2006,8(1):60-66)。他の臨床試験により、腫瘍内にCpG 7909を注射することでメラノーマ腫瘍の完全消退が達成されたが、5例の転移性メラノーマ患者の遠隔部の腫瘍を阻止できなかったことが示された(Pashenkov M、Goess G、Wagner C、et al.Phase II trial of a toll-like receptor 9-activating oligonucleotide in patients with metastatic melanoma[J].Clinical Oncol Official J American Society Clinic Oncol、2006.24(36):5716-5724)。CpG 7909の2つの第3相臨床試験のデータは、単独の化学療法と比較して臨床結果を改善できなかったことを示した。本分野では、新規な免疫調節性ポリヌクレオチドの発見を継続する必要がある。
【0012】
CpG ODNは、高効率及び低毒性の免疫アジュバントであり、感染性疾患、免疫不全性疾患、腫瘍、及びアレルギー性疾患の治療に強大な潜在的価値がある。しかし、現在の実際の使用は限られており、より多くの深い研究が、より多くの効果的な配列構造を設計し、それらが、その潜在能力をより広く発揮でき、より安全で効率的に臨床で使用できるようにする必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、免疫調節機能を有する一連のCpG ODNを提供する。これらのCpG ODNの構造は新規で、それらはマウスとヒトの両方に対して免疫刺激作用があるため、大きな臨床上の価値がある。具体的には、本発明は、以下の技術的解決手段によって本分野における課題を解決する:
【課題を解決するための手段】
【0014】
1.配列番号1~6から選択されるヌクレオチド配列を含むか又は配列番号1~6から選択されるヌクレオチド配列からなる免疫調節性CpG ODNであって、前記ヌクレオチド配列中の少なくとも1つのヌクレオチドは、一般式Iに示される構造を有する化学修飾されたヌクレオチドである、免疫調節性CpG ODN:
【化1】
(式中、Yは、S又はOであり、Rは、H又は正に帯電した対イオンであり、Bは、独立して未修飾の又は修飾された核酸塩基であり、R
1は、H、F、Cl、OH、OMe、Me、O-エチルオキシメチルである)。
【0015】
2.Yは、Sである、項目1に記載の免疫調節性CpG ODN。
【0016】
3.前記CpG ODNのヌクレオチド配列中の全てのヌクレオチドは、一般式Iに示される構造を有する化学修飾されたヌクレオチドである、項目1又は2に記載の免疫調節性CpG ODN。
【0017】
4.免疫調節性CpG ODNの配列は、配列番号1~6から選択され、好ましくは、全てホスホロチオエート化された配列番号1~6であり、より好ましくは、全てホスホロチオエート化された配列番号3又は6である、項目3に記載の免疫調節性CpG ODN。
【0018】
5.項目1~4のいずれか一項に記載の免疫調節性CpG ODNと薬学的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物。
【0019】
6.ワクチンアジュバントの調製における、項目1~4のいずれか一項に記載の免疫調節性CpG ODNの使用。
【0020】
7.前記ワクチンは、狂犬病ワクチンであり、好ましくは、CpG ODNの量は、0.01μg~1000μg/mlであり、より好ましくは1~10μg/mlであり、例えば、1、3、又は10μg/mlである、項目6に記載の使用。
【0021】
8.前記ワクチンは、SARS-COV-2ワクチンであり、好ましくは、SARS-COV-2不活化ワクチンであり、CpG ODNの量は、0.01μg~1000μg/mlである、項目6に記載の使用。
【0022】
9.前記ワクチンアジュバントは、前記免疫調節性CpG ODNと共同で作用する1つ又は複数の他のアジュバント、例えば不溶性アルミニウム塩コロイド、油水エマルジョン、微生物及び代謝産物、核酸及びその類似体、サイトカイン、免疫刺激複合体、プロポリス、及びリポソームをさらに含む、項目6~8のいずれか一項に記載の使用。
【0023】
10.対象の腫瘍、微生物感染又はアレルギーを予防又は治療するための医薬の調製における、項目1~4のいずれか一項に記載の免疫調節性CpG ODN又は項目5に記載の医薬組成物の使用。
【0024】
11.前記対象は、人、又は動物、例えばマウス、ラット、飼育動物、例えば犬、豚、牛、馬、家禽、例えば鶏、アヒル、ガチョウである、項目9に記載の使用。
【0025】
12.項目1~4のいずれか一項に記載の免疫調節性CpG ODN及び抗原を含むワクチンであって、前記抗原は、狂犬病抗原又はSARS-COV-2抗原である、ワクチン。
【0026】
13.前記ワクチンは、ヒト用又は動物用のワクチンであり、前記免疫調節性CpG ODNは、全てホスホロチオエート化された配列番号3に示される免疫調節性CpG ODNであり、前記CpG ODNの量は、0.01μg~1000μg/mlであり、より好ましくは1~10μg/mlであり、例えば、1、3、又は10μg/mlである、項目12に記載のワクチン。
【0027】
14.前記ワクチンは、SARS-COV-2ワクチンであり、好ましくはSARS-COV-2不活化ワクチンであり、前記ワクチンは、アルミニウムアジュバント、例えば水酸化アルミニウムアジュバントをさらに含む、項目12に記載のワクチン。
【0028】
15.前記免疫調節性CpG ODNは、全てホスホロチオエート化された配列番号6に示される免疫調節性CpG ODNである、項目14に記載のワクチン。
【0029】
16.前記抗原の含有量は、1~10μg/mLであり、例えば2、4又は8μg/mLであり、前記水酸化アルミニウムの含有量は、1~1000μg/mLであり、好ましくは300~500μg/mLであり、前記免疫調節性CpG ODNの含有量は、1~1000μg/mLであり、好ましくは2~500μg/mLであり、例えば5μg/mL、20μg/mL、40μg/mL、80μg/mL、又は400μg/mLである、項目15に記載のワクチン。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、マウス脾臓T及びB細胞の増殖に対するCpG ODNの作用を示す。
【
図2】
図2は、CpG ODNがマウス脾細胞を刺激してサイトカインIFN-αを産生させる作用を示す。
【
図3】
図3は、CpG ODNがマウス脾細胞を刺激してサイトカインIL-6を産生させる作用を示す。
【
図4】
図4は、CpG ODNがマウス脾細胞を刺激してサイトカインTNF-αを産生させる作用を示す。
【
図5】
図5は、ヒトPBMC T及びB細胞の増殖に対するCpG ODNの作用を示す。
【
図6】
図6は、CpG ODNがヒトPBMCにおいてIFN-αの分泌を刺激する作用を示す。
【
図7】
図7は、CpG ODNがヒトPBMCにおいてIL-6の分泌を刺激する作用を示す。
【
図8】
図8は、CpG ODNがヒトPBMCにおいてTNF-αの分泌を刺激する作用を示す。
【
図9】
図9は、CpGがHEK-Blue hTLR9細胞を刺激する検出結果を示す。
【
図10】
図10は、CpGがHEK-Blue mTLR9細胞を刺激する検出結果を示す。
【
図11】
図11は、CpGがRamos-Blue細胞を刺激する検出結果を示す。
【
図12】
図12は、ODN3の狂犬病ウイルス中和抗体価に対する影響を示す。
【
図13】
図13は、狂犬病ワクチンと組み合わせた異なる投薬量のODN3の免疫増強効果を示す。
【
図14】
図14は、ODN3と組み合わせた異なる投薬量の狂犬病ワクチンの免疫増強効果を示す。
【
図15】
図15は、異なるCpG ODNと狂犬病ワクチンとの組み合わせの、狂犬病ウイルス中和抗体価に対する影響を示す。
【
図16】
図16は、不活化SARS-COV-2ワクチンと組み合わせたODN6の、D6~28でのマウス抗SARS-CoV-2 Sタンパク質特異的IgG抗体価に対する影響を示す。
【
図17】
図17は、不活化SARS-COV-2ワクチンと組み合わせたODN6の、D28でのマウス抗SARS-CoV-2 Sタンパク質特異的IgG抗体価に対する影響を示す。
【
図18】
図18は、不活化SARS-COV-2ワクチンと組み合わせたODN6の、マウス抗SARS-CoV-2中和抗体価に対する影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
定義
CpG ODN
【0032】
本発明におけるCpG ODNは、ホスホジエステル結合で連結された非メチル化ジヌクレオチドであり、免疫刺激作用を有する。CpG ODNは、B細胞の増殖及び分化並びにIL-6の分泌を促進することができ、それにより、抗体の分泌を誘導し、単球、マクロファージ及び樹状細胞等の提示細胞を活性化して種々のサイトカイン(例えば、IL-12、IL-6、TNF-α、IFN-α及びIFN-β等)を分泌する。サイトカインは、キラーT細胞(CTL)とナチュラルキラー細胞(NK細胞)の活性を間接的に促進し、細胞内病原体による細胞性免疫を誘導し、NK細胞とT細胞からIFN-γの分泌を誘導する。天然免疫反応の誘導に加えて、CpG ODNは、抗原特異的反応を以下の理由により増強することもできる:(1)B細胞抗原受容体により開始される信号伝達経路とCpGにより開始されるB細胞信号伝達経路との間に強い相乗効果が存在し、(2)CpG ODNは、抗原特異的TヘルパーTh1様サイトカインを増加させることができ、それにより、B細胞とT細胞の抗原特異的反応を増強し、(3)細胞反応は、補助的刺激分子によるポジティブな制御を必要とする。
【0033】
早くも1890年代に、癌患者に細菌抽出物を注射することが病状を顕著に軽減できたことが発見された。その後の研究により、細菌DNAは直接的な免疫刺激作用と抗腫瘍作用を持っていたことが示された。合成オリゴデオキシヌクレオチドでの実験研究により、細菌DNAの免疫刺激作用がその中の非メチル化CpGジヌクレオチドに関連することが発見された。
【0034】
免疫刺激活性を有するCpG ODNは、以下の基本的な構造特徴を有する:
【0035】
a.CpGモチーフは、CpG ODNが免疫刺激作用を産生する基本的な構造であり、CpGジヌクレオチド及びその5’末端と3’末端の2つの塩基から構成される。
【0036】
b.CpGの両側のプリンとピリミジン及びCpGの間隔は、CpG ODNの免疫刺激活性及び作用の特徴に影響を与え得る。
【0037】
c.ODNに含まれるCpGモチーフの数に関して、2~4つのCpGモチーフが通常最適であり、CpGモチーフ間の間隔は、通常少なくとも2つの塩基(好ましくはチミン)である。
【0038】
d.poly-G配列(3つ以上のグアニンから構成される)を含むCpG ODNは、形質細胞様樹状細胞(pDC)を刺激してインターフェロン-αを産生させることに対して強い作用を有する。全てチオ修飾されたCpG ODNが、最も安定的で、B細胞に対して最も良好な刺激作用を有するが、全てチオ修飾されたCpG ODNがpDCを刺激してIFN-αを産生させる作用は、部分的にチオ修飾されたCpG ODNよりも弱い。
【0039】
機能的特徴に基づき、CpG ODNは、3つのタイプに分けることができる(Tomoki Ito、et al.、Blood、2006、Vol 107、Num 6:2423-2431):
【0040】
(1)A型CpG ODN。これは、骨格の5’末端と3’末端がホスホロチオエートであり、中間CpG領域がリン酸ジエステルであるキメラ骨格によって合成される。これらのODNは、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)と形質細胞様樹状細胞(pDC細胞)をよく活性化してIFN-αを大量に産生させることができるが、B細胞を限定的な程度まで活性化できるのみである。
【0041】
(2)B型CpG ODN。これは、ヌクレアーゼ耐性のホスホロチオエート骨格を介して合成され、B細胞とpDC細胞をよく活性化し、IL-12を産生させて抗体分泌を誘導するが、NK細胞を限定的な程度まで活性化できるのみである。B型CpG ODNは、通常、ワクチンアジュバントとして有効である。
【0042】
(3)C型CpG ODN。これは、ホスホロチオエート骨格を介して合成され、A型CpG ODNの刺激活性とB型CpG ODNの刺激活性との間の刺激活性を有し、例えば、それは、B細胞をよく活性化することができるが、NK細胞及びpDC細胞もよく活性化することができる。
【0043】
本発明で使用される免疫調節性CpG ODNは、配列番号1~6から選択されるヌクレオチド配列を含むか又は配列番号1~6から選択されるヌクレオチド配列からなり、前記ヌクレオチド配列中の少なくとも1つのヌクレオチドは、一般式Iに示される構造を有する化学修飾されたヌクレオチドである:
【化2】
(式中、Yは、S又はOであり、特にSであり、Rは、H又は正に帯電した対イオンであり、Bは、独立して未修飾の又は修飾された核酸塩基であり、R
1は、H、F、Cl、OH、OMe、Me、O-エチルオキシメチルである。ここでMeは、メチルを表す)。
【0044】
本発明のCpG ODNにおける塩基は、未修飾であってもよく、又は部分的に修飾されていてもよく、又は完全に修飾された核酸塩基であってもよい(ここで、天然の核酸塩基は、アデニン、グアニン、シトシン及びチミンを含む)。CpG ODN骨格の修飾は、本発明のCpG ODN中の塩基の部分的又は完全なホスホロチオエート化修飾を含み得る。前記修飾は、オリゴヌクレオチドの合成中又は合成後に行うことができ、前記修飾は、ヌクレオシドの間のホスホジエステル架橋上、リボース単位上及び/又は天然核酸塩基(すなわち、アデニン、グアニン、シトシン及びチミン)上で生じ得る。オリゴヌクレオチドの合成中に修飾する時、修飾された塩基は、オリゴヌクレオチド中に又はオリゴヌクレオチドの末端に組み込むことができる。オリゴヌクレオチドの合成後に修飾する時、修飾は、活性基を用いることによって、例えば、アミノ基修飾部分によって、3’又は5’ヒドロキシル基によって、又はリン酸基によって、行うことができる。
【0045】
本発明における化学修飾は、核酸分子の安定な糖リン酸骨格であり、該骨格において、ヌクレオチド間の少なくとも1つの結合上に、非架橋のリン酸の酸素を硫黄が置換するか、又は、それぞれ又は1つおきのヌクレオチド間の結合上に、非架橋のリン酸の酸素を硫黄が置換する、本発明のCpG ODN中の骨格の修飾を含んでもよく、これは、ホスホロチオエートで骨格を修飾してホスホロチオエート化骨格を得ることを含むが、それに限定されない。オリゴヌクレオチド骨格に対して他の修飾を行うこともでき、例えば、非イオン性DNA類似体、例えば、リン酸アルキル及びリン酸アリールを用いることによってオリゴヌクレオチド骨格を修飾することができ、ここで、電荷を持つリン酸中の酸素はアルキル基又はアリール基で置換されているか、又は、ホスホジエステル及びアルキルホスホトリエステルを用いて骨格を修飾し、ここで、電荷を持つ酸素がアルキル化される。
【0046】
本発明の免疫調節性CpG ODNは、新規な配列構造を有し、それはマウス及びヒトの両方に対して免疫刺激作用があるため、大きな臨床上の価値がある。
【0047】
ある特定の実施形態では、本発明の免疫調節性CpG ODNの配列は、ODN3又はODN6であり、それは、一般式Iに示される構造を有する化学修飾された少なくとも1つのヌクレオチドを含み、ここで一般式I中の置換基は、上で定義したとおりである。
【0048】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載の免疫調節性CpG ODNと薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物も提供する。「薬学的に許容可能な担体」は、対象に毒性のない、医薬製剤中の活性成分以外の成分を指す。薬学的に許容可能な担体は、緩衝剤、賦形剤、安定剤又は保存剤を含むが、それらに限定されない。
【0049】
対象
【0050】
本発明で使用される用語「対象」は、霊長類(例えば、ヒト)、牛、ヒツジ、ヤギ、馬、犬、豚、猫、ウサギ、ラット、マウス、魚、鳥、家禽、例えば鶏、アヒル、ガチョウ等を含むが、それらに限定されない動物を指す。好ましくは、動物は、哺乳動物である。好ましい実施形態では、対象は、ヒトである。
【0051】
免疫細胞
【0052】
本発明における免疫細胞は、免疫応答に関与し、免疫応答に関連する全ての細胞及びその前駆細胞を指す。免疫細胞は、T細胞(例えば、CD4+細胞、CD8+細胞及び様々な他のT細胞サブタイプ)、B細胞(例えばCD19)、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、マクロファージ、単球、樹状細胞及び好中球を含む。
【0053】
特異的抗原受容体を発現する特異的Tリンパ球と特異的Bリンパ球は、獲得免疫応の媒介に関与する。抗原特異的刺激後、Bリンパ球は、活性化し、増殖し、形質細胞に分化し、特異的抗体を産生し、体液性免疫応答を媒介することができる。抗原特異的刺激後、Tリンパ球は、活性化し、増殖し、エフェクターT細胞に分化し、細胞性免疫応答を媒介し、体液性免疫応答を補助することができる。加えて、獲得性免疫応答の開始段階で、樹状細胞や単核マクロファージ等の専任APCが関与して、抗原を提示してT細胞を活性化する。獲得性免疫応答のエフェクター段階で、単核マクロファージ、NK細胞等が関与して、T細胞、抗体等と協同して抗原を除去する役割を果たす。
【0054】
先天性免疫応答に関与する細胞は、主に、単核マクロファージ、顆粒球、樹状細胞、NK細胞、内皮細胞、肥満細胞、赤血球、血小板等、及び少数のT及びBリンパ球サブグループを含む。NK細胞は、3番目のタイプのリンパ球であり、これは、非特異的細胞毒活性を有し、ウイルス感染及び腫瘍に対する先天性免疫応答で重要な役割を果たす。単核マクロファージ、顆粒球等は、強い食作用及び殺機能を有し、多数の活性産物を放出することによって炎症反応に関与する。
【0055】
抗原と本発明のCpG ODNとの相乗効果は、体液性免疫応答と細胞性免疫応答の両方を誘導し、Th1型T細胞の免疫機能を増強し、T細胞の免疫反応を大幅に増強する。
【0056】
ワクチン
【0057】
本発明における「ワクチン」は、当業者に周知のワクチンであり、一般的には、注射又は粘膜経路で接種した後に、個体において特定の病原体に対する特異的抗体及び/又は細胞性免疫の産生を誘導することにより、個体に該病原体を保護又は消滅する能力を与えることができる任意の生物学的調製物を指し、タンパク質、多糖類、核酸、生きたベクター又は感染剤などを含む。ワクチンは、人工的に弱毒化し、不活化し又は遺伝子工学及びその他の方法によって、病原性微生物(例えば細菌、リケッチア、ウイルス等)及びその代謝産物から調製される感染性疾患の予防のための自己免疫型の調製物である。ワクチンは、動物体の免疫系を刺激する病原性細菌の特性を保持している。動物がこのような無害の病原体に曝露されると、免疫系は、いくらかの保護物質、例えば免疫ホルモン、活性生理物質、特別な抗体などを産生し、動物が再びそのような病原体に曝露された時に、動物の免疫系は、その元の記憶に従い、病原性細菌の傷害を阻止するためにより多くの保護物質を産生する。
【0058】
本明細書に記載の「ワクチン」は、抗原に対する免疫反応を誘導するように設計された製剤を指す。ワクチンは、免疫反応を増強するか又は特定方向の反応を駆動するように処置中に投与される治療的なものであってもよく、又は疾患を発症する前又は発症した直後に投与される予防的なものであってもよい。ワクチンは、すでに発症した疾患を治療し、将来再発する疾患を予防することにおいて、同時に治療的及び予防的の両方なものであってもよい。ワクチンは、本分野における従来の投与方法によって対象に投与できる。本明細書で使用される用語「投与」又は「投与する」は、患者に物質を提供するすべての適切な手段を含む。従来の経路は、経口、舌下、経粘膜、経皮、直腸、膣、皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、髄腔内、カテーテルを介した投与、インプラントを介した投与などを含む。
【0059】
本発明の抗原は、対象において抗原に対する免疫反応を誘導するための医薬を調製するために用いることができる。一実施形態では、本発明の抗原は、狂犬病ワクチンを調製するために用いることができる。本発明の好ましい実施形態では、本発明の抗原は、動物及びヒト用の狂犬病ワクチンを調製するために用いることができる。動物用の狂犬病ワクチンは、不活化ワクチン、弱毒化ワクチン及び遺伝子操作されたワクチンを含む。ヒト用の狂犬病ワクチンは、神経組織由来ワクチン、トリ胚培養ワクチン、細胞培養ワクチン、サブユニット及び精製ワクチン、遺伝子操作されたワクチンを含む。一実施形態では、本発明の抗原は、SARS-COV-2ワクチンを調製するために用いることができる。
【0060】
ワクチンアジュバント
【0061】
本発明における「ワクチンアジュバント」又は「アジュバント」は、当業者に周知のワクチンアジュバントを指す。「アジュバント」という語は、ラテン語の「Aduvare」に由来し、これは、補助又は増強の意味である。ワクチンアジュバントは、ワクチンの添加剤である。それが抗原注入より先に又は抗原と混合された後に体に注入されると、それは、抗原に対する免疫応答を増強するか又は免疫反応のタイプを変化させることができ、それは、非特異的免疫増強剤であり、それ自体は抗原性がない。
【0062】
現在では、国際的にアジュバントの分類には統一基準がなく、一般に使用されるアジュバントは、主に、不溶性アルミニウム塩コロイド、油水エマルジョン、微生物及びそれらの代謝物、核酸及びそれらの類似体、サイトカイン、免疫刺激複合体、プロポリス、リポソームなどを含む。本発明の免疫調節性CpG ODNは、ワクチンアジュバントとして使用することもでき、優れたアジュバント機能を発揮することができる。本発明の免疫調節性CpG ODNは、ワクチン(例えば狂犬病ワクチン又はSARS-COV-2ワクチン)のアジュバントとして単独で使用することもできるし、又はワクチン(例えば狂犬病ワクチン又はSARS-COV-2ワクチン)のアジュバントとして他の一般に使用されるアジュバントと組み合わせて使用することもできる。免疫調節性CpG ODN及びこれらの一般的に使用されるアジュバントは、付加的効果又は相乗的効果を発揮して、抗原の免疫原性を向上させることにより、ワクチンの用量を減少し又はワクチン効果を向上させることができる(例えばワクチンの用量の減少又はワクチン投与回数の減少)。そのため、一実施形態では、本発明はまた、ワクチンアジュバントの調製における、免疫調節性CpG ODNの使用を提供し、好ましくは、ワクチンは、狂犬病ワクチン又はSARS-COV-2ワクチンである。一実施形態では、本明細書におけるワクチンアジュバントは、免疫調節性CpG ODNと相乗的に機能する1つ又は複数の他の物質をさらに含む。狂犬病ワクチン又はSARS-COV-2ワクチンのアジュバントとして使用する場合、本明細書に記載の免疫調節性CpG ODNの有効量は、慣用の実験を通して当業者により決定でき、例えば、有効量は、0.01μg~1000μg/mlワクチンであってもよく、これには、0.01μg~1000μg/mlの範囲内の任意の値、例えば、0.1μg/ml、0.2μg/ml、0.3μg/ml、0.4μg/ml、0.5μg/ml、0.6μg/ml、0.7μg/ml、0.8μg/ml、0.9μg/ml、1.0μg/ml、1.1μg/ml、1.2μg/ml、1.3μg/ml、1.4μg/ml、1.5μg/ml、1.6μg/ml、1.7μg/ml、1.8μg/ml、1.9μg/ml、2.0μg/ml、3.0μg/ml、4.0μg/ml、5.0μg/ml、6.0μg/ml、7.0μg/ml、8.0μg/ml、9.0μg/ml、10.0μg/ml、20.0μg/ml、30.0μg/ml、40.0μg/ml、50.0μg/ml、60.0μg/ml、70.0μg/ml、80.0μg/ml、90.0μg/ml、100.0μg/ml、200.0μg/ml、300.0μg/ml、400.0μg/ml、500.0μg/ml、600.0μg/ml、700.0μg/ml、800.0μg/ml、900.0μg/ml、1000.0μg/mlワクチンが含まれる。
【0063】
医薬
【0064】
用語「医薬」又は「医薬製剤」は、それに含まれる活性成分の生物学的活性が有効であることを可能にするような形態の製剤を指し、それは、製剤が投与される対象に対して許容できない毒性がある追加の成分を含まない。一実施形態では、本発明は、対象における腫瘍、微生物感染又はアレルギーを予防又は治療するための医薬の調製における、免疫調節性CpG ODN又は医薬組成物の使用に関する。対象は、人、又は動物、例えばマウス、ラット、飼育動物、例えば犬、豚、牛、馬、家禽、例えば鶏、アヒル、ガチョウである。当業者は、通常の方法にしたがって、医薬又は医薬製剤における免疫調節性CpG ODNの有効量を決定でき、通常の方法にしたがって、医薬の投与方法を決定できる。
【0065】
[発明の詳細な説明]
本発明の目的、技術的解決手段及び利点をより明確にするために、具体的な実施例及び図面を参照しながら、本発明を以下に詳細にさらに説明する。以下の実施例は、説明の目的のためだけのものであり、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲に基づくものである。
【実施例】
【0066】
材料と方法
【0067】
全てのCpG ODNは、蘇州瑞博生物科学技術有限公司、中国により合成され、これらには、ODN1(5’-tcgcgacgttcgcgggacgttcccta-3’、配列番号1)、ODN2(5’-tcgcgacgttcgcgcgacgttcgcta-3’、配列番号2)、ODN3(5’-tcgcgacgttcgccgacgttcgta-3’、配列番号3)、ODN4(5’-tggacgttcgtcgttcgtccttc-3’、配列番号4)、ODN5(5’-tcgtcgttcgtcgttcgacgttc-3’、配列番号5)、ODN6(5’-tcgaggttcgtcgttcctcgttc-3’、配列番号6)等が含まれ、ここでODN1、ODN2、ODN3、ODN4、ODN5、ODN6は、いずれも全てホスホロチオエート化された配列である。HP3004は、陽性対照CpG ODN(5’-tgactgtgaacgttcgagatga-3’、配列番号7、全てホスホロチオエート化された)であり、HP0000は、陰性対照CpG ODN(5’-tggccaagcttgggccccttgcaagggcc-3’、配列番号8、全てホスホロチオエート化された)であった。全てのCpG ODNを無菌/エンドトキシンフリー水(InvivoGen、米国)に溶解し、使用用に-40℃で保存した。狂犬病ワクチンは、長春生物製品所、中国(Vero細胞狂犬病ワクチン)/成都康華生物製品有限公司、中国(ヒト二倍体細胞狂犬病ワクチン)から得た。不活化SARS-CoV-2ワクチンは、浙江天元生物薬業有限公司、中国により提供された。
【0068】
ヒト末梢血濃縮白血球と実験動物:
【0069】
ヒト末梢血濃縮白血球を、長春市中心血液ステーション、中国から購入した。6~8週齢の雌性BALB/cマウスを、長春生物製品研究所有限責任公司、中国から購入した。
【0070】
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)の単離と培養:
【0071】
ヒト末梢血由来の濃縮白血球を、2倍体積の生理食塩水で希釈して、プラスチック遠心管中のFicoll分離液(Corning、米国)の表面に1:1で添加し、2800rpmで20分間遠心し(8増加、0減少)、単核細胞層の懸濁液を収集した。懸濁液を、1×PBSで3回洗浄し、1500rpmで5分間遠心し、上清を廃棄し、10%のウシ胎児血清(Clark、米国)、1%のPenicillin/Streptomycin(Hyclone、米国)及び1%のHEPES(Invivogen、米国)を添加したRPMI-1640(Corning、米国)完全培地により細胞を懸濁し、2×105/ウェルにて96ウェルU型プレートに播種し、異なる濃度(0.03、0.1、0.3、1及び3μM)のCpGをそれぞれ添加し、37℃、5%CO2でインキュベーター中で培養した。
【0072】
サイトカイン分泌アッセイ:
【0073】
ヒトPBMCs(2×105/ウェル)及びマウス脾臓細胞(1×106/ウェル)を96ウェルU型プレートに播種し、異なる濃度のCpG(0.03、0.1、0.3、1及び3μM)をそれぞれ添加し、37℃、5%CO2のインキュベーター中で16時間培養した後、上清を収集し、次いで、ELISAキットの説明書に従って、上清中のヒトIFN-α(Mabtech、スウェーデン)、マウスIFN-α(eBioscience、オーストラリア)、マウスIL-6(Mabtech、スウェーデン)及びマウスTNF-α(Mabtech、スウェーデン)のレベルを検出した。
【0074】
実施例1 CpG ODNの調製
【0075】
脱保護、活性化、チオ化、及びキャッピングの工程による固相ホスホロアミダイトトリエステル法を介して、自動化DNA合成装置によって、CpG ODNを合成した。合成したオリゴヌクレオチドを濃縮アンモニアで脱保護し、次いで、精製し、脱塩した。精製したオリゴヌクレオチドを、使用前に、ナトリウム塩の形態で凍結乾燥し、MSにより定性化した。その後、純度が>90%のCpG ODN配列を得た。ODN1、ODN2、ODN3、ODN4、ODN5及びODN6で示されるCpG ODNを、その後の実験に用いた。
【0076】
5’-DMT dA、dG、dC、dT及びその他のホスホロアミダイトモノマーは、上海兆維科学技術発展有限公司から購入した。対応するベクターは、Chemgenes(Wilmington、MA)から購入した。2’-置換リボヌクレオシドホスホロアミダイトは、上海兆維科学技術発展有限公司、Promega(Obispo、CA)から購入した。
【0077】
実施例2 マウス脾臓T及びB細胞の増殖に対するCpG ODNの作用
【0078】
マウス脾臓細胞の単離と培養:
【0079】
無菌条件下でマウス脾臓を単離し、研磨及び濾過後にBALB/cマウス脾臓細胞懸濁液を調製した。RPMI-1640完全培地中に細胞を懸濁し、5×105又は1×106細胞/ウェルにて96ウェルU型プレートに播種し、異なる濃度のCpG(0.03、0.1、0.3、1及び3μM)をそれぞれ添加し、37℃、5%CO2のインキュベーター中で培養した。
【0080】
16時間培養した後、細胞を収集し、1×PBSで2回洗浄し、1500rpmで5分間遠心した。1×PBSで細胞を再懸濁し、細胞懸濁液に、抗CD4、抗CD8及び抗CD19抗体(BD、米国)を添加し、次いで、暗所で4℃で30分間インキュベートした。細胞を、1×PBSで2回洗浄し、1500rpmで5分間遠心し、1×PBSに再懸濁し、BD LSRFortessa(商標)フローサイトメーター(BD、米国)を用いて、フローサイトメトリーにより分析した。
【0081】
ELISA分析のために、上清を収集した。サンドイッチELISAによって、上清中のCD4、CD8及びCD19のレベルを測定し、マウス脾臓T及びB細胞の増殖に対するCpG ODNの作用を得た。結果を
図1に示す。
【0082】
結論:CpG ODNは、マウス脾臓B細胞の活性化を大きく刺激し(CD19レベルにより示される)、マウス脾臓B細胞の増殖を誘導し、次いで、共刺激分子の発現とサイトカイン(例えばIL-6、TNF-α)の分泌をアップレギュレートできる。
【0083】
実施例3 マウス脾細胞培養物におけるサイトカイン誘導
【0084】
4~8週齢のC57BL/6由来の脾細胞を調製し、RPMI完全培地で培養した。マウス脾細胞を5×10
6細胞/mlにて24ウェルペトリ皿に播種した。細胞培養物にPBS緩衝液中のCpG ODNを最終濃度がそれぞれ0.03、0.1、0.3、1及び3μMになるまで添加した。その後に、細胞を37℃で24時間インキュベートし、ELISA分析のために上清を収集した。サンドイッチELISAによって、上清中のIFN-α、IL-6及びTNF-αのレベルを決定した。サイトカイン、抗体及び標準品を含む実施例で使用した試薬は、BD PharMingenから購入した。結果を
図2、3、及び4に示した。
図2は、異なるCpG ODNがpDCによるIFN-αno分泌を効果的に刺激したことを示し、ここでHP3004は、陽性対照であった。
図3は、異なるCpG ODNがB細胞によるIL-6の分泌を刺激したことを示し、ここでHP3004は、陽性対照であった。
図4は、異なるCpG ODNがB細胞によるTNF-αの産生を刺激したことを示し、ここでHP3004は、陽性対照であった。
【0085】
結論:異なるCpG ODN配列は、サイトカインIL-6及びTNF-αの分泌をアップレギュレートし、刺激した。
【0086】
実施例4 ヒトPBMCにより誘導されるT及びB細胞の増殖に対するCpG ODNの作用
【0087】
分析に使用した培地は、1.5mMのグルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、0.1mMの非必須アミノ酸、50μMの2-メルカプトエタノール、100IU/mlのペニシリン-ストレプトマイシン混合物及び10%の熱不活化ウシ胎児血清を補充した、RPMI1640培地であった。合計1ml当たり0.5×10
6個のB細胞(すなわち0.1×10
6/200μl/ウェル)を、96ウェル平底プレートで三連で、異なる濃度の試験すべきCpG ODN(0.03、0.1、0.3、1及び3μM)で、72時間刺激した。66時間後、1ウェルあたり20μlのRPMI1640培地(無血清)中の0.75μCiの[
3H]-チミジン(1Ci=37GBq、Perkin Elmer Life Science)で、細胞をパルスし、次いで、8時間後に回収した。セルハーベスターを使用してプレートを回収し、標準的な液体シンチレーション技術を使用して、放射活性の導入を決定した。結果を、平均cpm+/-SD又は増殖指数(cpm処理群/cpm培地対照)として示した。結果を
図5に示し、ここでHP3004は、陽性対照であった。
【0088】
結論:CpG ODNは、ヒトPBMC細胞を活性化させ、B細胞の増殖を誘導し、次いで、共刺激分子の発現及びサイトカイン(例えばIL-6、TNF-α)の分泌をアップレギュレートできる。
【0089】
実施例5 PBMC培養物におけるCpG ODNによるサイトカイン誘導
【0090】
ヒトPBMCを5×10
6細胞/mlにて96ウェルプレートに播種した。細胞培養物にリン酸緩衝化生理食塩水(PBS、pH7.4、Mediatech)中のCpG ODNを最終濃度が10.0μg/mlになるまで添加した。その後、細胞を37℃で24時間インキュベートし、ELISA分析のために上清を収集した。各実験は、三連で行った。サンドイッチELISAによって、IFN-α、IL-6及びTNF-αのレベルを決定した。サイトカイン、抗体及び標準品を含む実施例で使用した試薬は、PharMingenから購入した。結果を
図6~8に示した。
【0091】
結論:CpG ODN配列は、IL-6及びTNF-αのレベルを顕著に向上できる。
【0092】
実施例6:HEK-BLUE検出
【0093】
細胞継代
【0094】
10μg/mlのBlasticidin及び100μg/mlのZeocin(商標)が補充した増殖培地で、細胞を維持し継代培養した。
【0095】
増殖培地:DMEM、4.5g/Lのブドウ糖、10%(v/v)のウシ胎児血清、50U/mlのペニシリン、50U/mlのストレプトマイシン、100μg/mlのNormocin(商標)、2mMのグルタミン。
【0096】
【0097】
70~80%の密度に達した後、細胞を、継代し、元の培地をPBSで置換した後、アンプルをタッピングするか又はセルスクレーパーを用いることによって、分離すべきである。分離した細胞を収集し、5分間遠心した。細胞をカウントし、96ウェルプレートに2~4×104個の細胞を播種し、次いで、2~3日間後に処理した。
【0098】
陽性対照(HP3004)、陰性対照(HP0000)及びCpG ODNの所定の最終濃度は、いずれも0.003、0.01、0.03、0.1、0.3、1、3、10、30、及び100μg/mlであり、培地の濃度は、90%超である。対応のウェルに、10μlの陰性対照、陽性対照及び試験物質を加えた。5%CO
2のインキュベーターで24時間、細胞をインキュベートした。培地を250mlの細首フラスコに注入し、100mlの水を加え、均一に撹拌し、37℃で30分間加熱した。細胞上清50μlを取り、5分間遠心した。20μlのサンプルを上清に添加し、180μlのQUANTI-Blueを96ウェルプレートの各ウェルに加え、37℃で6時間インキュベートした。波長655nmでの吸光度をマイクロプレートリーダーで測定した。
図9~11を参照のこと。
【0099】
結果:
図9~11から理解できるように、HEK-Blue hTLR9細胞、HEK-Blue mTLR9細胞及びRamos-Blue細胞の活性に対して、CpG ODNは良好な効果があった。
【0100】
実施例7 マウスにおける抗狂犬病ウイルス中和抗体価に対する、ODN3と狂犬病ワクチンとの組み合わせの効果
【0101】
マウスを各群8匹ずつ8群に分けた。免疫の2日間前に、各群のマウスのバックグラウンド血清を収集した。ワクチンを、0日目、3日目、及び7日目に注射(筋肉内注射)した。4日目、6日目、8日目、10日目、14日目、28日目、及び56日目に、眼球を取り出し、血液を収集し、血清を分離した。RFFIT法を用いて、マウス血清中の抗狂犬病ウイルス中和抗体の力価を1匹ずつ決定した。結果を
図12に示した。
【0102】
【0103】
結果:
図12から理解できるように、狂犬病ワクチンと異なる用量のODN3との組み合わせの群では、産生された抗体レベルは、経時変化したが、全体的なトレンドは増加傾向を呈した。狂犬病ワクチン+1μg ODN3群(RV+1)、狂犬病ワクチン+3μg ODN3群(RV+3)、及び狂犬病ワクチン+10μg ODN3群(RV+10)における抗体レベルは、アジュバントなしのワクチン群(RV)におけるものより高かった。免疫14日後、4群(狂犬病ワクチン、狂犬病ワクチン+1μg ODN3、狂犬病ワクチン+3μg ODN3、及び狂犬病ワクチン+10μg ODN3)の抗体レベルはピークに達し、その後、反落した。これらのなかでも、狂犬病ワクチン+10μg ODN3群は、全ての検出時間内で、最も高い抗体レベルを有した。中和抗体産生時間、ピーク及び中和抗体の継続性に基づけば、10μg ODN3群の実験結果は、その他の用量群よりも優れていた。
【0104】
実施例8 狂犬病ワクチンが抗体産生を誘導する効果を増強する、異なる用量のODN3の比較
【0105】
マウス112匹(56匹雌性及び56匹雄性、体重18~22グラム/マウス)、狂犬病ワクチン(1ml/用量)(2.5IUを含む)、及びODN3を実施例で使用した。マウスを各群8匹(4匹雄性及び4匹雌性)に分けた。ワクチン群:狂犬病ワクチン、狂犬病ワクチン+0.3μg ODN3、狂犬病ワクチン+1μg ODN3、狂犬病ワクチン+3μg ODN3、及び狂犬病ワクチン+10μg ODN3。狂犬病ワクチン及びCpG ODNを、いずれもPBSに溶解した。0日目、3日目、7日目、14日目、及び28日目に、異なる群に従い、それぞれマウスを免疫した。免疫は、腹腔内注射により行った。免疫4、6、及び8日間後、マウスの尾静脈から血液を収集し、血清を分離した。狂犬病ワクチン用の迅速蛍光フォーカス抑制試験(RFFIT)により、マウスの血清中の狂犬病ワクチン抗体価を検出した。免疫2日間前に、マウスの尾静脈から血液を集め、得られた血清を陰性対照として使用した。
【0106】
結果:各群における狂犬病ワクチンの免疫効果は、経時的に増強された。ODN3の増加に伴い、狂犬病ワクチンの免疫効果は増強された。結果を
図13に示した。
【0107】
結論:ODN3は、狂犬病ワクチンの免疫効果を顕著に増強できる。
【0108】
実施例9 狂犬病ワクチンの投薬量を低減するための狂犬病ワクチンアジュバントとして、ODN3を使用する
【0109】
マウス128匹(64匹雌性及び64匹雄性、体重18~22グラム/マウス)、狂犬病ワクチン(1ml/用量)(2.5IUを含む)を用いた。マウスを各群8匹(4匹雄性及び4匹雌性)に分けた。ワクチン群:狂犬病ワクチン、狂犬病ワクチン+1μg ODN3、1/2狂犬病ワクチン+1μg ODN3、1/4狂犬病ワクチン1μg ODN3、及び1/8狂犬病ワクチン+1μg ODN3。
【0110】
狂犬病ワクチン及びODN3を、いずれもPBSに溶解した。マウスの免疫:0日目、3日目、7日目、14日目、及び21日目に、異なる群に従いそれぞれマウスを免疫した。免疫は、腹腔内注射により行った。28日目にマウスの尾静脈から血液を収集し、血清を分離した。狂犬病ワクチン用の迅速蛍光フォーカス抑制試験(RFFIT)により、マウスの血清中の狂犬病ワクチン抗体価を検出した。免疫2日間前に、マウスの尾静脈から血液を収集し、得られた血清を陰性対照として使用した。
【0111】
結果:減量した投薬量の狂犬病ワクチンとODN3との組み合わせは、依然としてマウスを刺激して高いレベルの狂犬病ウイルス特異的抗体を産生させることができる、狂犬病ワクチン+1μg ODN3、1/2狂犬病ワクチン+1μg ODN3、1/4狂犬病ワクチン1μg ODN3、1/8狂犬病ワクチン+1μg ODN3の群における抗体価(GMT)は、いずれも狂犬病ワクチンを単独で使用した場合のものよりも高いレベルを達成でき、これは、CpG ODNが狂犬病ワクチンの投薬量を低減できることを示している。結果を
図14に示す。
【0112】
結論:ODN3は、狂犬病ワクチンの投薬量を低減できる。
【0113】
実施例10 狂犬病ワクチンアジュバントとして使用される異なるCpG ODN配列
【0114】
BALB/cマウスを8つの群にランダムに分けた:ヒト狂犬病ワクチン群、ヒト狂犬病ワクチン+ODN1(10μg/マウス)群、ヒト狂犬病ワクチン+ODN2(10μg/マウス)群、ヒト狂犬病ワクチン+ODN3(10μg/マウス)群、ヒト狂犬病ワクチン+ODN4(10μg/マウス)群、ヒト狂犬病ワクチン+ODN5(10μg/マウス)群、ヒト狂犬病ワクチン+ODN6(10μg/マウス)群、ヒト狂犬病ワクチン+HP0000(10μg/マウス)群。後肢筋肉を経てそれぞれ0、7、21日目に3回、各群を免疫し、各免疫の投薬量は、0.2ml/マウスであった。免疫後14日目、28日目、及び56日目に眼球を取り出し、血液を収集し、血清を分離し、血清中の抗狂犬病ウイルス抗体の含有量を検出し、中和抗体価を
図15に示した。
【0115】
結論:CpG ODNは、抗体価のレベルを向上できる。
【0116】
実施例11:マウスにおける抗SARS-CoV-2 Sタンパク質特異的IgG及びウイルス中和抗体の抗体価に対する、不活化SARS-CoV-2ワクチンと組み合わせたODN6の効果
【0117】
18~20gのBALB/cマウスを選び、各群9又は10匹(雌雄半分ずつ)のマウスに分けた。各群を、設計された免疫プログラムに従って、D0とD14に、各注射0.5mlで腹腔内注射により免疫した。設計時間に従って、D0、D6、D13、D21及びD28に血液を収集して、血清を分離し、全ての血清を、Sタンパク質特異的IgG及びウイルス中和抗体について試験した。各群の血清IgG及びウイルス中和抗体の幾何学的平均力価を、統計学的に計算した。結果を
図16~18に示した。
【0118】
【0119】
結果:
図16~18から理解できるように、抗原特異的S1抗体は、D28のダブルアジュバント対照群ではほとんど検出されなかった。2μg/mL抗原+450μg/mL水酸化アルミニウムアジュバント群、及び2μg/mL抗原+450μg/mL水酸化アルミニウムアジュバント+400μg/mL CpG群においてS1抗体レベルが相対的に低かった以外、他の群は、より高いS1抗体価を誘導した。各群におけるマウスの血清中の中和抗体価の結果から理解できるように、2μg/mL抗原+450μg/mL水酸化アルミニウムアジュバント群、2μg/mL抗原+450μg/mL水酸化アルミニウムアジュバント+400μg/mL CpG群、及び4μg/mL抗原+450μg/mL水酸化アルミニウムアジュバント+80μg/mL CpG群において中和抗体レベルが相対的に低かった以外、他の群は、より高い中和抗体価を誘導した。
【0120】
結論:不活化SARS-CoV-2ワクチンとODN6及びアルミニウムアジュバントとの組み合わせは、SARS-CoV-2 Sタンパク質特異的IgG及びウイルス中和抗体のより高い抗体価を誘導できる。D28には、4μg/mL抗原+450μg/mL水酸化アルミニウムアジュバント+40μg/mL CpG群は、最も高いS1抗体価を誘導した。8μg/mL抗原+450μg/mL水酸化アルミニウムアジュバント+400μg/mL CpG群は、最も高い中和抗体価を誘導した。
【0121】
等価の技術的解決手段
【0122】
上に記載した具体的な実施例は、本発明の目的、技術的解決手段及び有益な効果について、詳細にさらに記載するものであるが、これらは、発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。発明の精神及び範囲内で当業者によりなされる任意の修正、等価的置換、及び改良は、本発明の保護範囲内に含まれるべきものであることに留意すべきである。
【配列表】
【国際調査報告】