(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】リフトシステムのガイドレール上にナットを位置決めするための位置決め補助具
(51)【国際特許分類】
B66B 7/02 20060101AFI20230428BHJP
【FI】
B66B7/02 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559570
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(85)【翻訳文提出日】2022-10-19
(86)【国際出願番号】 EP2021057834
(87)【国際公開番号】W WO2021198039
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040729
【氏名又は名称】インベンテイオ・アクテイエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】INVENTIO AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダピース,アレサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ロ・ヤーコノ,ロメオ
(72)【発明者】
【氏名】メーリ,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ウルベン,アンドレアス
【テーマコード(参考)】
3F305
【Fターム(参考)】
3F305BD01
3F305BD08
3F305BD10
3F305DA09
3F305DA21
(57)【要約】
本発明は、エレベータシステム(100)のガイドレール(112)上にナット(302)を位置決めするための位置決め補助具(118)に関する。ガイドレール(112)は中空レール(114)として形成され、中空レール(114)は、ガイドレールホルダ(108)に締結されるために中空レール(114)の長手方向に前後に配置された複数の長穴(204)を有する。位置決め補助具(118)は、少なくとも1つのナット(302)が締結され、少なくとも1つのナット(302)とともに長穴(204のうちの1つを通過して中空レール(114)内を移動することができるように寸法決めされた、長尺の締結部分(300)を備える。位置決め補助具(118)はまた、締結部分(300)を保持するための保持部分(208)を備え、保持部分(208)は、締結部分(300)の一端に締結され、長穴(204)よりも広くなるように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータシステム(100)用の位置決めシステム(120)であって、位置決めシステム(120)は、
エレベータかご(104)を案内するためのガイドレール(112)であって、ガイドレール(112)は中空レール(114)として形成され、中空レール(114)は、ガイドレールホルダ(108)に締結されるための複数の長穴(204)を有する、ガイドレール(112)と、
エレベータシステム(100)のガイドレール(112)上にナット(302)を位置決めするための、少なくとも1つの位置決め補助具(118)であって、ガイドレール(112)は中空レール(114)として形成され、中空レール(114)は、ガイドレールホルダ(108)に締結されるために中空レール(114)の長手方向に前後に配置された複数の長穴(204)を有し、位置決め補助具(118)は、
長尺の締結部分(300)であって、少なくとも1つのナット(302)が締結され、少なくとも1つのナット(302)とともに長穴(204)のうちの1つを通過して中空レール(114)内を移動することができるように寸法決めされた、長尺の締結部分(300)と、
締結部分(300)を保持するための保持部分(208)であって、保持部分(208)は、締結部分(300)の一端に締結され、長穴(204)よりも広くなるように構成されている、保持部分(208)と、
を具備する、少なくとも1つの位置決め補助具(118)と、
を備え、
位置決め補助具(118)の締結部分(300)は、少なくとも1つのナット(302)とともに長穴(204)のうちの1つを通過して中空レール(114)内を移動することができるように寸法決めされ、位置決め補助具(118)の保持部分(208)は長穴(204)よりも広くなるように構成されている、位置決めシステム(120)。
【請求項2】
複数の長穴(204)は、中空レール(114)の長手方向に前後に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の位置決めシステム(120)。
【請求項3】
保持部分(208)は、ネック(306)を介して締結部分(300)に締結され、
ネック(306)は、保持部分(208)が、締結部分(300)が延在する平面を横断する方向に締結部分(300)から突出するようにねじれている、
請求項1または2に記載の位置決めシステム(120)。
【請求項4】
ネック(306)は、その長手方向に対して横方向に弾性であるように構成されている、
請求項3に記載の位置決めシステム(120)。
【請求項5】
ネック(306)は、その長手方向に延在する長手方向スロット(400)を有する、
請求項3または4に記載の位置決めシステム(120)。
【請求項6】
締結部分(300)、保持部分(208)、およびネック(306)は、金属ストリップ(308)のうちの互いに異なる部分である、
請求項3~5のいずれか一項に記載の位置決めシステム(120)。
【請求項7】
少なくとも1つのナット(302)は、締結部分(300)の凹部(304)に押し込まれる、
請求項1~6のいずれか一項に記載の位置決めシステム(120)。
【請求項8】
少なくとも2つのナット(302)が締結部分(300)に締結され、締結部分(300)の長手方向に前後に配置されている、
請求項1~7のいずれか一項に記載の位置決めシステム(120)。
【請求項9】
保持部分(208)は、ネック(306)を介して締結部分(300)に締結され、
ネック(306)は長穴(204)よりも小さな幅を有する、
請求項1~8のいずれか一項に記載の位置決めシステム(120)。
【請求項10】
保持部分(208)は、ネック(306)を介して締結部分(300)に締結され、
ネック(306)の幅は、ネック(306)が長穴(204)内にクランプ締めされ得るように選択される、
請求項1~8のいずれか一項に記載の位置決めシステム(120)。
【請求項11】
締結部分(300)は、長穴(204)よりも広くなるように構成されている、
請求項1~10のいずれか一項に記載の位置決めシステム(120)。
【請求項12】
エレベータシステム(100)用のガイドレールシステム(102)であって、ガイドレールシステム(102)は、
ガイドレールシステム(102)をエレベータシャフト(106)の壁(110)に固定するための少なくとも1つのガイドレールホルダ(108)と、
エレベータかご(104)を案内するための少なくとも1つのガイドレール(112)であって、ガイドレール(112)は中空レール(114)として形成され、中空レール(114)は、中空レール(114)の長手方向に、ガイドレールホルダ(108)に締結されるために前後に配置された複数の長穴(204)を有する、少なくとも1つのガイドレール(112)と、
請求項1~11のいずれか一項に記載の位置決めシステム(120)であって、ガイドレールホルダ(108)および中空レール(114)は、位置決めシステム(120)の少なくとも1つの位置決め補助具(118)の、少なくとも1つのナット(302)に係合する少なくとも1つのねじ(200)によって互いにねじ留めされる、位置決めシステム(120)と、
を備えるガイドレールシステム(102)。
【請求項13】
請求項12に記載のガイドレールシステム(102)を備えるエレベータシステム(100)であって、ガイドレールシステム(102)は、エレベータシステム(100)のエレベータシャフト(106)内に設置されている、エレベータシステム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータシステムのガイドレール上にナットを位置決めするための位置決め補助具、エレベータシステム用のガイドレールシステム、およびこのようなガイドレールシステムを有するエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
乗用エレベータまたは貨物用エレベータなどのエレベータシステムは、一般に、エレベータシャフトに沿ってエレベータかごを案内するための複数のガイドレールで構成されたガイドレールシステムを備える。複数のガイドレールホルダは、例えばガイドレールがねじ留めされることができる締結ブラケットの形態で、エレベータシャフトの側壁に締結されることが可能である。ガイドレールホルダは、例えば、側壁に固定されたCプロファイルレールに締結されることが可能である。
【0003】
エレベータシャフトにガイドレールシステムを設置するとき、より短い複数のガイドレールは通常、より長いガイドレールを形成するために互いに組み合わせられる。ガイドレールは、中空レールとして構成されることが可能である。ガイドレールホルダへの中空レールのねじ留めを容易にするために、中空レールは、複数の長穴を有することができる。
【0004】
例えば、国際公開第2011/117457号は、長尺の金属プロファイルを有するガイドレールを記載している。金属プロファイルは、それぞれのねじ頭でねじが吊下されることができる複数のスロット形状の凹部を有する。次いで、ナットは、金属プロファイルから突出しているねじのねじ山にねじ留めされることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
とりわけ、ガイドレールをガイドレールホルダに締結することをより簡単にする必要があるだろう。特に、外側からガイドレールの中空レール内にナットを迅速かつ便利に挿入し、これらを特定の位置に持って行き、これらをこの位置に保持することを可能にする、位置決め補助具を作成する必要があろう。さらに、相応に取り付けられたガイドレールシステムおよびこれが提供されたエレベータシステムの必要性もあろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この必要性は、独立請求項による位置決め補助具、ガイドレールシステム、およびエレベータシステムによって満たされることが可能である。有利な実施形態は、従属請求項および以下の説明において定義される。
【0008】
本発明の第1の態様は、エレベータシステムのガイドレール上にナットを位置決めするための位置決め補助具に関し、ガイドレールは中空レールとして形成され、中空レールは、ガイドレールホルダに締結されるために中空レールの長手方向に前後に配置された複数の長穴を有する。位置決め補助具は長尺の締結部分を備え、締結部分には少なくとも1つのナットが締結され、締結部分は、少なくとも1つのナットとともに長穴のうちの1つを通過して中空レール内を移動することができるように寸法決めされている。さらに、位置決め補助具は、締結部分を保持するための保持部分を備え、保持部分は、締結部分の一端に締結され、長穴よりも広くなるように構成されている。
【0009】
例えば、締結ブラケットまたは片持ち梁として構成されることが可能なガイドレールホルダは、例えば、エレベータシャフトの壁、またはその他の支持建築構造に締結されることが可能である。
【0010】
ガイドレールは、エレベータかご、すなわちエレベータケージを案内するための画定されたガイド表面を有するガイド側面と、エレベータシャフト内にガイドレールを設置するための設置側面とを備えることができる。長穴は、設置側面に配置されることが可能である。例えば、ガイドレールは、設置側面に長穴の2つまたは3つ以上の平行な列を有することもできる。
【0011】
中空レールは、閉じたまたは半開きの金属プロファイルであってもよい。ガイドレールは、その全長にわたる中空レールとして形成されることが可能である。あるいは、ガイドレールはまた、中空レールとして、その長手方向に部分的にのみ形成されることも可能である。
【0012】
長穴の対応する長手方向軸線は、中空レールの長手方向軸線と平行に位置合わせされることが可能である。中空レールの長手方向軸線は、ガイドレールの長手方向軸線と平行に位置合わせされることが可能である。
【0013】
位置決め補助具の締結部分は、例えば、ストリップの形態で構成されることが可能である。例えば、ナットは、締結部分の第1の末端または第1の端部に配置されることが可能である。対照的に、保持部分は、締結部分の第2の末端または第2の端部に配置されることが可能である。位置決め補助具の長手方向におけるナットと保持部分との間の距離は、長穴の所与の長さおよび/または中空レール内の2つの長穴の間の所与の距離に応じて便宜上選択されることが可能である。
【0014】
中空レールに対するガイドレールホルダの位置に応じて、より正確には中空レール内の長穴に対するガイドレールホルダ内のねじ穴の位置に応じて、締結部分は、例えば第1の長穴を介して中空レールに挿入され、ナットが第2の長穴、例えば隣接する長穴に対向するように載置されることが可能である。
【0015】
締結部分は、長穴よりも広くおよび/または長くてもよい。言い換えると、位置決め補助具が設置状態にあるとき、締結部分は、1つ以上の長穴の縁部を超えて両側で少なくとも1つの軸方向に突出することができる。したがって、ナットと中空レールとの間の締結部分は、例えばナット内にねじ込まれたねじによって、ナットに印加されることが可能な軸線方向締結力を吸収するための支持体を形成する。
【0016】
ナットは一般に、対応する雄ねじを受容するための雌ねじを有する接続要素、例えばボルトまたはねじであると理解されることが可能である。ナットは、例えば締結部分の対応する凹部に挿入される、例えば押し込まれる、ねじ込みインサートであってもよい。しかしながら、ナットはまた、締結部分が十分な厚さおよび強度を有することを条件として締結部分のねじ穴として構成されることも可能である。追加的または代替的に、ナットは、材料接続によって締結部分と一体に接合され、例えば溶接、はんだ付け、および/または接着されることが可能である。
【0017】
保持部分は、一方では位置決め補助具の容易な取り扱いに役立ち、他方では、位置決め例えば補助具が誤って解放された場合に位置決め補助具が中空レール内に落下するのを防止する、例えばタブ状、リング状、またはディスク状の要素の形態の、位置決め補助具の厚肉ヘッドとして理解されることが可能である。例えば、保持部分は、親指と人差し指で保持され得るように形成されることが可能である。加えて、保持部分は、ある種のフックまたは止め具として形成されることが可能である。これは、保持部分が長穴よりも大きな幅を有するように構成されるという点で、非常に容易に達成されることが可能である。この場合、幅は、対応する長手方向軸を横断する範囲であると理解されることが可能である。言い換えると、位置決め補助具が設置状態にあるとき、保持部分は、対応する長穴を超えて両側に突出することができる。したがって、位置決め補助具は、対応する長穴の中に吊下または懸架されることが可能である。
【0018】
位置決め補助具の容易な挿入および位置合わせを可能にするために、保持部分は、比較的薄いネックを介して締結部分に接続されることが可能である。この場合、ネックは、保持部分が締結部分からある角度で突出するように、わずかに湾曲していてもよい。言い換えると、保持部分は、締結部分が実質的に延在する平面を横断して、またはある角度で延びる平面内に実質的に延在することができる。
【0019】
このような位置決め補助具は、中空レール、すなわち中空レールが締結された(比較的重い)ガイドレールなしで中空レールの長穴に対してナットを位置決めすることを可能にし、ガイドレールホルダは互いに対して移動しなければならない。これは、ガイドレールの設置が迅速かつ便利に実行可能であることを意味する。
【0020】
加えて、長穴に加えて、ナットを挿入および位置決めするための中空レール内に、中空レールの安定性を妨げる可能性のある、さらなる開口部、例えば側方開口部が必要とされないことが有利である。
【0021】
本発明の第2の態様は、エレベータシステム用の位置決めシステムに関する。位置決めシステムは、エレベータかごを案内するためのガイドレールを備える。ガイドレールは中空レールとして形成され、中空レールは、ガイドレールホルダに締結されるために中空レールの長手方向に前後に配置された複数の長穴を有する。さらに、位置決めシステムは、本発明の第1の態様の一実施形態による少なくとも1つの位置決め補助具を備える。位置決め補助具の締結部分は、少なくとも1つのナットとともに長穴のうちの1つを通過して中空レール内を移動することができるように寸法決めされている。位置決め補助具の保持部分は、長穴よりも広くなるように構成されている。
【0022】
本発明の第3の態様は、エレベータシステム用のガイドレールシステムに関する。ガイドレールシステムは、ガイドレールシステムをエレベータシャフトの壁に固定するための少なくとも1つのガイドレールホルダと、エレベータかごを案内するための少なくとも1つのガイドレールと、本発明の第2の態様の一実施形態による位置決めシステムとを備える。ガイドレールは中空レールとして形成され、中空レールは、ガイドレールホルダに締結されるために中空レールの長手方向に前後に配置された複数の長穴を有する。ガイドレールホルダおよび中空レールは、位置決めシステムの少なくとも1つの位置決め補助具の少なくとも1つのナットに係合する少なくとも1つのねじによって、互いにねじ留めされる。
【0023】
本発明の第4の態様は、本発明の第3の態様の一実施形態によるエレベータシャフト内に設置されたガイドレールシステムを有するエレベータシステムに関する。
【0024】
本発明の実施形態の可能な特徴および利点は、特に、本発明を限定することなく、以下に記載される概念および所見に基づくと見なされることが可能である。
【0025】
一実施形態によれば、保持部分は、ネックを介して締結部分に締結される。ネックは、保持部分が、締結部分が延在する平面を横断する方向に、すなわち特定の傾斜角度で締結部分から突出するように、ねじれている。
【0026】
ネックは、締結部分および/または保持部分と比較して著しく小さい断面を有する部分であると理解されることが可能である。したがって、位置決め補助具は快適に保持されることが可能である。
【0027】
好適な実施形態によれば、ネックは、長穴よりも小さな幅を有する。言い換えると、設置状態の位置決め補助具は、中空レールの長穴に対して一定量の遊びを有することができる。したがって、位置決め補助具は、わずかな力で移動および正確に位置合わせされることが可能である。この目的のために、位置決め補助具を一カ所に保持するため、指で保持部分を押下することができる。指を動かすことにより、位置決め補助具は、ねじがねじ込み式にナットに挿入されるように、位置合わせされることが可能である。
【0028】
代替実施形態によれば、ネックの幅は、ネックが長穴内にクランプ締めされることができるように選択される。言い換えると、ネックは、位置決め補助具が設置状態において一定量の力でのみ移動されることができるように、長穴と同じ幅、または長穴よりもわずかに幅広にすることができる。したがって、設置状態では、ネックの横側面は、摩擦によって、重力に抗して長穴内に位置決め補助具を固定する非確動接続をもたらすように、長穴の領域内の中空レールの対向する側面に対して押しつけられる。これは、位置決め補助具が一旦内部に配置されると、解放されたとしても位置を保持するという利点を有する。したがって、例えば、位置決め補助具を同時に所定位置に保持する必要なく、ねじがナット内にねじ留めされることが可能である。
【0029】
ネックの設計に応じて、さらなる代替実施形態では、ネックは、長穴内の位置決め補助具の側方案内および/または位置合わせに使用されることが可能である。例えば、ネックの幅は、位置決め補助具が設置状態にあるとき、ネックが対応する長穴の縁部に対して一定の力で押しつけられるように選択されることが可能であり、前記力は、位置決め補助具に対する重力を打ち消し、位置決め補助具が解放されたときに位置決め補助具が摺動または脱落することを防止する。特に長穴に沿って延在する、ネックと長穴との間の接触領域は、ナットが長穴の背後の中央に配置されるように、位置決め補助具を平行に位置合わせする。前記ナットは、長穴の方向と平行に自身を位置合わせすることができる。これにより、ねじは容易にナットに挿入されることが可能である。
【0030】
一実施形態によれば、ネックは、その長手方向に対して横方向に弾性であるように構成される。特に、ネックは、ネックの長手方向に直交してネックの主延伸平面内に延在する方向に、弾性的に可撓性であるように構成されることが可能である。言い換えると、ネックは、位置決め補助具が設置状態にあるときに、対応する長穴の縁部に一定のばね力を印加するように構成されることが可能である。例えば、ネックは、この目的のためにリング状であるように、または別の適切な幾何学的形状を有するように構成されることが可能である。追加的または代替的に、ネックは、特定の状況下で締結部分および/または保持部分の材料から逸脱することができる、特に弾性の材料で作られることが可能である。このように、位置決め補助具は、摺動および/または脱落に対して固定されることが可能である。
【0031】
一実施形態によれば、ネックは、その長手方向に延在する長手方向スロットを有する。その結果、ネックの弾性変形能は、製造努力をほとんど伴わずに、その長手方向に対して横方向に増大されることができる。長手方向スロットは、ネックの全長の少なくとも一部にわたって、例えばネックの全長の少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%にわたって延在することができる。長手方向スロットは、ネックの全長に基づいて幾何学的中心に、またはその付近に配置されることが可能である。
【0032】
一実施形態によれば、締結部分、保持部分、およびネックは、全く同じ金属ストリップの異なる部分である。言い換えると、締結部分、保持部分、およびネックは、各々、単一の金属ストリップを使用して製造されることが可能な、共通の構成要素の一体部品とすることができる。例えば、金属ストリップは、金属薄板から打ち抜きまたは切断され、次いでネックで湾曲されることが可能である。ナットは、圧入および/または一体接合方式で金属ストリップに接続されることが可能である。あるいは、ナットは、金属ストリップのねじ穴として構成されることが可能である。このように、位置決め補助具は、コスト効率よく製造されることが可能である。
【0033】
一実施形態によれば、締結部分は、長穴よりも広くなるように構成されている。したがって、締結部分は、長穴に挿入された後、その横方向縁部を、長穴に隣接してこれに対して支持され得る中空レールの縁部の後にして、静止することができる。言い換えると、締結部分は、長穴の縁部の領域で中空レールの後に係合することができ、したがって、中空レール上に支持されることが可能である。したがって、締結部分は、中空レールに対する軸方向締め付け力を支持するために使用されることが可能である。
【0034】
一実施形態によれば、少なくとも1つのナットは、締結部分の凹部に押し込まれる。したがって、ナットは、例えば追加の溶接、はんだ付け、または接着プロセスを伴わず、製造努力をほとんど伴わずに締結部分に締結されることが可能である。加えて、標準として構成され、安価に製造されることが可能な、単純な構成要素がナットとして使用されることが可能である。
【0035】
一実施形態によれば、少なくとも2つのナットが締結部分に締結され、締結部分の長手方向に前後に配置される。これにより、中空レールがガイドレールホルダに確実にねじ留めされることを保証する。加えて、1つのみのナットを有する一実施形態と比較して、ガイドレールホルダのねじ穴の所与の位置に対する位置決め補助具の位置合わせが簡略化されることが可能である。
【0036】
本発明の可能な特徴および利点のいくつかは、一方では位置決め補助具の異なる実施形態を、他方ではガイドレールシステムまたはこれを備えたエレベータシステムを参照して本明細書に記載されていることに留意しなければならない。本発明のさらなる実施形態に到達するために、特徴が適切に組み合わせられ、適合され、または交換されることが可能であることを、当業者は認識するだろう。
【0037】
本発明の実施形態は、添付図面を参照して以下に記載される。図面も説明も、本発明を限定すると解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の一実施形態によるガイドレールシステムを有するエレベータシステムの一部を示す図である。
【
図2】
図1のガイドレールシステムの一部の拡大図である。
【
図3】本発明の一実施形態による位置決め補助具を示す図である。
【
図4】本発明のさらなる実施形態による位置決め補助具の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図面は単に概略的であり、縮尺通りではない。様々な図面において、同様の参照符号は同様のまたは同等の特徴を示す。
【0040】
図1は、エレベータシャフト106を通してエレベータかご104を案内するためのガイドレールシステム102を有する、エレベータシステム100の断面を示す。ガイドレールシステム102は、例えば締結ブラケットの形態の複数のガイドレールホルダ108を備え、複数のガイドレールホルダ108は、一方ではエレベータシャフト106の壁110に固定され、例えば壁110にコンクリートで固められたプロファイルレールにねじ留めされ、他方ではガイドレール112に各々ねじ留めされている。ガイドレール112は、エレベータかご104を案内する。ガイドレール112は、壁110に面する設置側面116上に複数の長穴(この場合は見えない)を有する中空レール114として構成されている。中空レール114は、ガイドレール112の長手方向に延在する。ガイドレールホルダ108は、各々中空レール114にねじ留めされている。この目的のために、ナット(図示せず)は、複数の位置決め補助具118によって中空レール114内に適切に位置決めされた。位置決め補助具118およびガイドレール112は、ガイドレールシステム102の位置決めシステム120の構成要素として構成されている。位置決め補助具118は各々、設置側面116にねじ留めするために使用される長穴を介して、すなわち中空レール114の前面を介して挿入された。ガイドレールシステム102は、以下でより詳細に説明される。
【0041】
図2は、
図1のガイドレールシステム102の拡大断面図、より正確には設置側面116の図を示す。図面は、2つのねじ200を介して中空レール114にねじ留めされたガイドレールホルダ108を示している。ねじ200は各々、ガイドレールホルダ108のねじ穴202を貫通している。ねじ穴202は、例えば長穴であってもよい。あるいは、ガイドレールホルダ108は、1つのねじ200のみを使用して中空レール114にねじ留めされることも可能である。
【0042】
設置側面116では、中空レール114は、中空レール114の長手方向軸線206の方向に前後に配置された複数の長穴204を有し、その対応する長手方向軸線は、中空レール114の長手方向軸線206と平行に位置合わせされる。ねじ200は各々、中空レール114内に位置決めされたナットにねじ込まれる。ナットは各々、位置決め補助具118によって中空レール114内に保持される。
【0043】
位置決め補助具118は各々、ガイドレールホルダ108の上下の少なくとも部分的に露出された長穴204を通じて挿入され、ねじ穴202と長穴204とが重なる重複領域にナットが各々面するように配置された。
【0044】
位置決め補助具118を、例えば親指と人差し指で保持するために、位置決め補助具118の各々は、対応する形状の保持部分208を有する。保持部分208は、長穴204に適合しないように、長穴204に対して幅広である。したがって、保持部分208は、位置決め補助具118が長穴204から脱落するのを防止し、場合によっては位置決め補助具118が中空レール114内に落下するのを防止する、ある種のフックまたは止め具として機能する。
【0045】
図3は、
図2の位置決め補助具118のうちの1つの拡大図を示す。位置決め補助具118は、2つのナット302が締結される、この場合はストリップの形態の長尺の締結部分300を備える。締結部分300はまた、1つのみのナット302または3つ以上のナット302を有することもできる。ナット302は、締結部分300の長手方向に一定の距離で前後に配置されることが可能である。例えば、ナット302は、締結部分300の対応する凹部304に押し込まれるねじ込みインサートとすることができる。しかしながら、任意の他の締結方法もまた可能である。
【0046】
その幅および長さなどの締結部分300の寸法は、長穴204を容易に通過し、例えば中空レール114の長手方向に、中空レール114内で十分な移動自由度で移動することができるように、または少なくともわずかにねじれることができるように、選択される。締結部分300の幅は、位置決め補助具118が設置状態にあるときに、締結部分300が両側で長穴204の対応する輪郭を超えて突出するように、長穴204の幅よりも大きくてもよい。
【0047】
保持部分208は、締結部分300の一端に締結される。保持部分208は、ネック306を介して締結部分300に接続されることが可能である。ネック306は、締結部分300および保持部分208よりも大幅に細くなるように構成されることが可能である。ネック306は、位置決め補助具118が長穴204内で容易に変位できるようにするために、長穴204よりも細くなるように構成されることも可能である。しかしながら、ネック306が長穴204と同じ(公称)幅、または長穴204よりもわずかに広い幅を有し、これにより、長穴204内のネック306の摩擦または傾斜を促進することも考えられる。このような摩擦または傾斜は、保持部分208が解放されたときに位置決め補助具118が意図せずに摺動することを防止するので、ある程度は望ましい可能性がある。
【0048】
加えて、位置決め補助具118は、保持部分208が締結部分300からわずかに突出し、したがって中空レール114から突出するように、ネック306でわずかに湾曲されることができる。
【0049】
締結部分300、ネック306、および保持部分208は、例えば、金属ストリップ308の異なる部分であってもよい。
【0050】
ネック306は、任意選択的に、その長手方向に対して横方向に弾性であるように構成されることが可能である。
図4に示されるように、ネック306は、例えば、(2つの矢印によって示される)その長手方向に対して横方向にネック306の弾性変形能を増大させる、長手方向スロット400を有して構成されることが可能である。ネック306の長手方向は、鎖線で示されている。
【0051】
ガイドレール112をガイドレールホルダ108に設置することは、以下の基本ステップを備えてもよい。中空レール114は、ガイドレールホルダ108のねじ穴202および中空レール114の長穴204が重複領域で重なるように、ガイドレールホルダ108に対して事前に位置決めされる。
【0052】
第1のステップにおいて、位置決め補助具118の締結部分300は、保持部分208によって中空レール114の少なくとも部分的に露出された長穴204を通過し、締結部分300に締結されたナット302(またはナット302のうちの1つ)が重複領域に面するように中空レール114内で位置合わせされる。
【0053】
第2のステップでは、ガイドレールホルダ108および中空レール114は、ねじ200をナット302にねじ込むことによって、互いにクランプ締めされる。
【0054】
最初に締結部分300の細い側を用いて、位置決め補助具118は、例えば長穴204に挿入され、次いで嵌合するようにねじ込まれることが可能である。次いで、ナット302は、位置決め補助具118を移動させることによって長穴204の長手方向に位置決めされることが可能である。
【0055】
最後に、「備える(comprising)」、「含む(including)」などの用語は他の要素またはステップを除外せず、「a」または「an」などの用語は複数を除外しないことに留意すべきである。さらに、上記の実施形態のうちの1つを参照して記載された特徴またはステップは、上述された他の実施形態の他の特徴またはステップと組み合わせて使用されてもよいことにも留意すべきである。請求項における参照符号は、限定的であると見なされるべきではない。
【国際調査報告】