IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴェナートア・ジャーマニー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特表2023-519433ZnSをベースとする光触媒活性粒子状材料、それの製造方法及びそれの使用
<>
  • 特表-ZnSをベースとする光触媒活性粒子状材料、それの製造方法及びそれの使用 図1
  • 特表-ZnSをベースとする光触媒活性粒子状材料、それの製造方法及びそれの使用 図2
  • 特表-ZnSをベースとする光触媒活性粒子状材料、それの製造方法及びそれの使用 図3
  • 特表-ZnSをベースとする光触媒活性粒子状材料、それの製造方法及びそれの使用 図4
  • 特表-ZnSをベースとする光触媒活性粒子状材料、それの製造方法及びそれの使用 図5
  • 特表-ZnSをベースとする光触媒活性粒子状材料、それの製造方法及びそれの使用 図6
  • 特表-ZnSをベースとする光触媒活性粒子状材料、それの製造方法及びそれの使用 図7
  • 特表-ZnSをベースとする光触媒活性粒子状材料、それの製造方法及びそれの使用 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】ZnSをベースとする光触媒活性粒子状材料、それの製造方法及びそれの使用
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20230428BHJP
   C09C 1/00 20060101ALI20230428BHJP
   B01J 35/08 20060101ALI20230428BHJP
   C01G 9/08 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
B01J35/02 J
C09C1/00
B01J35/08 B
C01G9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559804
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(85)【翻訳文提出日】2022-11-22
(86)【国際出願番号】 EP2021057958
(87)【国際公開番号】W WO2021198079
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】20167600.4
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518432551
【氏名又は名称】ヴェナートア・ジャーマニー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ランゲ・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ローエ・マルクス
【テーマコード(参考)】
4G169
4J037
【Fターム(参考)】
4G169BB09A
4G169BB09B
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BC31A
4G169BC32A
4G169BC33A
4G169BC33B
4G169BC35A
4G169BC35B
4G169BC50A
4G169BC72A
4G169BC75A
4G169BD02A
4G169BD02B
4G169BD05A
4G169BD08A
4G169BD08B
4G169EE01
4G169HA01
4G169HE05
4J037AA30
4J037CA03
4J037CA09
4J037CA12
4J037CA24
4J037DD05
4J037EE03
4J037EE43
4J037FF30
(57)【要約】
本発明は、光腐食性自己分解に対して安定している、ZnSをベースとする光触媒活性粒子状材料、それの製造方法及びそれの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-ZnSからなる粒子コア、
-前記粒子コア上の、Au、Ag、Pt、Pd、Cuまたはこれらの合金から選択されるナノスケール金属からなる粒子の負荷物、及び
-前記負荷された粒子コア周りの、Al、SiO、TiOまたはこれらの混合物からなる層、
を備えた、光触媒活性粒子状材料。
【請求項2】
300~500nm、特に300~450nm、とりわけ380~450nmの範囲の粒子コアの粒度d50を有する、請求項1に記載の光触媒活性粒子状材料。
【請求項3】
光触媒活性粒子状材料の総重量を基準にして0.5~1.5重量%、特に0.8~1.2重量%の、Au、Ag、Pt、Pd、Cuまたはこれらの合金から選択されるナノスケール粒子の負荷物を有する、請求項1または2に記載の光触媒活性粒子状材料。
【請求項4】
Au、Ag、Pt、Pd、Cuまたはこれらの合金から選択されるナノスケール金属の粒度が、4~10nm、特に5~8nmである、請求項1、2または3に記載の光触媒活性粒子状材料。
【請求項5】
前記負荷された粒子コア周りのAl、SiO、TiOまたはこれらの混合物からなる層が、光触媒活性粒子状材料の総重量を基準にして及び金属として計算して少なくとも1.2重量%、特に少なくとも1.4重量%である、請求項1~4のいずれか一つに記載の光触媒活性粒子状材料。
【請求項6】
前記負荷された粒子コア周りのAl、SiO、TiOまたはこれらの混合物からなる層の厚さが、少なくとも2nm、特に少なくとも4nmである、請求項1~5のいずれか一つに記載の光触媒活性粒子状材料。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一つに記載の光触媒活性粒子状材料を製造するための方法であって、ZnSからなる粒子を、Au、Ag、Pt、Pd、Cuまたはこれらの合金から選択されるナノスケール金属からなる粒子で水性相中で処理し、そして得られた粒子をAl、SiO、TiOまたはこれらの混合物でコーティングする、前記方法。
【請求項8】
請求項7に記載の光触媒活性粒子状材料の製造方法であって、水溶液中でのパルスレーザーアブレーションによりまたは湿式化学的合成により製造された、Au、Ag、Pt、Pd及びCu、これらの合金から選択されるナノスケール金属からなる粒子を使用する、前記方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の光触媒活性粒子状材料の製造方法であって、前記負荷された粒子コア周りのAl、SiO、TiOまたはこれらの混合物からなる層を、サイクルプロセスでの原子層堆積法によるコーティングを用いて生成し、この際、殊に、少なくとも5サイクル、特に少なくとも12サイクルを実施する、前記方法。
【請求項10】
請求項7、8または9のいずれか一つに記載の光触媒活性粒子状材料の製造方法であって、得られた光触媒活性粒子状材料を、400~600℃の温度範囲で、少なくとも2時間の期間にわたって、か焼に付す、前記方法。
【請求項11】
プラスチック中の顔料としての、請求項1~6のいずれか一つに記載の光触媒活性粒子状材料の使用。
【請求項12】
光触媒としての、請求項1~6のいずれか一つに記載の光触媒活性粒子状材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光腐食性自己分解に対して安定している、ZnSをベースとする光触媒活性粒子状材料、それの製造方法及びそれの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
純粋なZnSの光腐食は、多くの分野でのそれの使用、例えば顔料の用途における、光触媒反応におけるまたはUVセンサーとしての、LEDとしての並びに発色団としてのそれの使用に決定的に悪影響を与える。光腐食は、熱力学的に強く促進される分解プロセスであり、これは、水(例えば空気中の湿気の形の水)及びUV光が同時に存在することにより引き起こされる。ZnSでは、Zn、S、ZnSO、ZnO、Zn(OH)及びHなどの腐食性生物が生じる。
【0003】
ZnSは、それの低いモース硬度の故に、中でも、ポリマー添加剤として重要な白色顔料であり、そのため、腐食の時に生じる元素状亜鉛及びそれにと伴って起こる黒ずみ(Vergrauung)が問題となる。更に、ZnSは、光触媒プロセスにとって有望な材料として見なされている。というのも、これは、電荷担体形成における高い効率を示し、光生成された電荷担体の長い寿命を有し、及びバンドエッジ電位の位置によって、高い還元-及び酸化力を有するためである。しかし、熱力学的により促進される光腐食が、所望の光触媒プロセス、例えば水還元または排水中の有害物質の分解に対して競合し、これは、光触媒としての使用に非常に強く悪影響を及ぼす、というのも、ZnSは反応条件下に常に自己分解するからである。
【0004】
UV安定性のZnS顔料を得るためには、顔料工業における従来技術では、ほぼ100年前から、Co、NiまたはFeなどの少量の遷移金属をZnS格子中に組み込むことが慣行となっている。これらの遷移金属は光生成した電荷担体にとって一種の「バッファー」として機能し、それ故、これらの電荷担体の数が大きくまたは完全に減少し、その結果、硫化亜鉛のフォトルミネセンスが大きく弱化すると推定される。それ故、光腐食も抑制される、なぜならば、光腐食が起こるであろうZnS粒子の表面に電荷担体が僅かにしか到達しないかまたは到達しないからである。しかし、所望の目的の反応のためには、粒子表面上の光発生した電荷担体が必要であるため、光化学的用途にとっては、この方策は目的にかなっていない。
【0005】
従来技術では、ZnS粒子のドーピングまたはコーティングに関する他の刊行物が知られている。すなわち、Yuanは、Nanotechnology 2007,95607(非特許文献1)において、ZnSからなるコアと、Ag及びClでのドーピングとを有する粒子を開示しており、ここで、塩素及び銀イオンは、完全ZnS格子中にしっかりと組み込まれており、及びこの粒子は、SiOからなる層で覆われている。
【0006】
WO2013/185753(特許文献1)には、ZnS粒子の湿式化学的コーティングが報告されており、その表面は、予めCo2+イオンで処理されている。それ故、これは、Co2+イオンがZnS表面に施用される含侵処理である。これらのCo2+イオンは、次いで無機層を介して固定され、そしてその中にしっかりと組み込まれる。
【0007】
US2014/174906(特許文献2)は、コロイダルナノクリスタルを記載しており、これは、光触媒として使用できる。そのためには、前記ナノクリスタルは、それの表面が酸化または還元触媒でコーティングされる。しかし、これらの「無機キャッピング剤」は、担体粒子の表面を部分的にのみ覆い、保護層としては機能しない。
【0008】
科学的な研究においてZnSを光触媒として使用できるようにするためには、ZnSと比べて熱力学的により有利な酸化電位を有する、いわゆる犠牲試薬(Opferreagentien)(例えば、NaS及びNaSO)が使用される。それ故、光生成した孔はNaS及びNaSOをスルフェートに酸化し、そして光生成した電子は、例えば水還元(H形成)を引き起こす。しかし、NaS及びNaSOの消費のために、H形成のためのこの方策は、大規模工業的な実現にとっては商業的に意味がない、というのも、この場合、これらの犠牲試薬を莫大な量で使用する必要があるからである。
【0009】
光腐食を抑えるための更なる可能性の一つは、水とZnS表面との間の接触を防ぐために、ZnS粒子を無機材料でコーティングすることである。従来技術では、気候及び光安定性を高めるためまたはバインダーの分解を回避するためにZnS粒子をコーティングすることを対象とする、数多くの特許出願が知られている。ここでは、例として、US2885366(特許文献2)、DE1151892(特許文献4)、DE102013105794A1(特許文献5)、DE1178963B(特許文献6)並びにCN102942922A(特許文献7)が挙げられる。
【0010】
しかし、湿式化学的合成経路を介したZnS粒子の無機コーティングでは、生成される層の不均一性が時折問題となる。このような層は、完全な気候または光安定性を保障するためにできるだけ緻密である必要があり、そして上記の研究では、ほとんどの場合、完全な安定性ではなく、向上した安定性しか達成されなかった。
【0011】
更に、気相プロセス(例えば、原子層堆積法-ALD)を介して、より制御された層の成長を得ようとすることが知られている。このようなALD法は、ハンドブック「Atomic Layer Deposition: Principles,Characteristics, and Nanotechnology Applications」;Wiley;2013(非特許文献2)に記載されている。
【0012】
Cheng及びMaoは、約10nm厚のAl層が、硫化物粒子(ZnSコア/シェルシステム)をO雰囲気中で光腐食から十分に保護できることを示した。しかし、この粒子の使用は、電荷担体の再結合が粒子内部で起こって、それが発光をもたらすLEDの分野に制限される。それ故、この場合は、電荷担体は、保護層をすり抜ける必要はない。
【0013】
しかし、光触媒プロセスでは、電荷担体が、吸着された分子とレドックス反応を起こし、それ故、光発生した電荷担体が絶縁層をすり抜けなければならないことが不可欠である。それ故、ZnSのための保護層は、光触媒反応の分野では、電荷移動がトンネルプロセスを介して可能となるように、かなり薄いものである必要がある。応じて、2nmまでの層厚を有する薄い層が上記の研究で使用されたが、しかし、この場合には、このような薄層は、確かに向上した光安定性は保障するが、完全な光安定性は保証せず、そのため、このような光触媒の長期使用は可能ではないという問題を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】WO2013/185753
【特許文献2】US20141/174906
【特許文献3】US2885366
【特許文献4】DE1151892
【特許文献5】DE102013105794A1
【特許文献6】DE1178963B
【特許文献7】CN102942922A
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Yuan,Nanotechnology 2007,95607
【非特許文献2】「Atomic Layer Deposition: Principles, Characteristics, and Nanotechnology Applications」;Wiley;2013
【非特許文献3】Chem.Rev.2017,117,3990-4103
【非特許文献4】Photonik 43(2011),No.1,pp.50-53
【非特許文献5】J.Am.Chem.Soc.2006,128,3,917-924
【非特許文献6】Phys.Chem.Chem.Phys.,2011,13,2457-2487
【非特許文献7】Crit Rev Solid State,38:203-233,2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
それ故、ZnS及び金属からなる粒子の使用は当業者にはよく知られているが、光触媒的特性を得つつも光腐食を同時に抑制することは困難な課題であり、この課題は、従来技術ではこれまで解決されておらず、そして本発明の枠内において本発明者らによって初めて解決策が見出されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記の従来技術から出発して、本発明者らは、球形のコバルト不含硫化亜鉛粒子(400nmオーダーの数平均d50)を、その粒子表面において、先ず、レーザーで生成した球形金ナノ粒子(Au-NP 約5~8nm)で、それ故、光触媒活性粒子状材料の総重量を基準にして約0.5~1.5重量%、特に0.8~1.2重量%、とりわけ約1重量%のAuで変性し、次いでALDプロセスを介して、AlによるZnS-Au粒子のコーティング(約2~5nm厚)を実施する解決法を追及した。これは、本発明の第一の実施形態である。
【0018】
本発明の特徴は、先ず、同時になおも光触媒反応に活性を示す光安定性のZnS材料を得ることにある。
【0019】
【化1】
より、一般的に、本発明は、
-ZnSからなる粒子コア、
-前記の粒子コア上の、Au、Ag、Pt、Pd、Cuまたはこれらの合金から選択されるナノスケール金属からなる粒子の負荷物、及び
-前記の負荷された粒子コア周りのAl、SiO、TiOまたはこれらの混合物からなる層、
を有する、光触媒活性粒子状材料に関する。
【0020】
「ナノ粒子」または「ナノスケール粒子」とは、本発明の意味では、直径が20nm未満の粒子のことと解される。
【0021】
この際、本発明による粒子状材料は、特に、300~500nm、特に300nm~450nm、とりわけ380~450nmの範囲の粒子コアの粒度(数平均)d50を有する。
【0022】
光触媒活性粒子状材料は、通常は、光触媒活性粒子状材料の総重量を基準にして0.5~1.5重量%、特に0.8~1.2重量%の、Au、Ag、Pt、Pd、Cuまたはこれらの合金から選択されるナノスケール金属の負荷物を有する。
【0023】
この際、Au、Ag、Pt、Pd、Cuまたはこれらの合金から選択されるナノスケール金属の数平均粒度(d50)は、殊に4~10nm、特に5~8nmである。
【0024】
本発明によれば、Al、SiO、TiOまたはこれらの混合物からなる層は、光触媒活性粒子状材料の総重量をベースに金属として計算して、少なくとも1.2重量%、特に少なくとも1.4重量%の量で、負荷された粒子コア周りに存在する。それ故、層厚は、粒度に依存して、少なくとも2nm、特に少なくとも3nm、とりわけ少なくとも4nmとなる。この際、層厚は、粒子コア上のAu、Ag、Pt、Pd、Cuまたはこれらの合金から選択されるナノスケール金属の粒子が、Al、SiO、TiOまたはこれらの混合物からなる層から「突出」し、そして粒子コアから、コーティングされた粒子の表面への電荷伝導を保障するように、選択される。負荷された粒子コア上の及びナノスケール金属からなる粒子周りの、Al、SiO、TiOまたはこれらの混合物からなる層の厚さは、通常、前記粒度よりは小さく選択され、それ故、最大の粒度よりも薄い。例えば、Al、SiO、TiOまたはこれらの混合物からなる層の厚さは、約2~5nmであり、そしてナノスケール金属の粒度(d50)は、4~10nm、特に5~8nmの上記の範囲内である。
【0025】
また本発明は、光触媒活性粒子状材料の製造方法であって、ZnSからなる粒子を、Au、Ag、Pt、Pd、Cuまたはこれらの合金から選択されるナノスケール金属からなる粒子で、水性相中で処理し、そして得られた粒子を、Al、SiO、TiOまたはこれらの混合物でコーティングする方法にも関する。
【0026】
本発明による方法では、殊に、Au、Ag、Pt、Pd及びCuまたはこれらの合金から選択されるナノスケール金属からなる粒子が使用され、これらは、それぞれ、好ましい方法では水溶液中でパルスレーザーアブレーションを介して、または湿式化学的方法を介して製造される。水溶液中でのパルスレーザーアブレーションは、本発明では例えば、Chem.Rev.2017,117,3990-4103(非特許文献3)またはPhotonik 43(2011),No.1,pp.50-53(非特許文献4)中の開示に従って、高エネルギーパルスレーザービームが、Au、Ag、Pt、PdまたはCuあるいはこれらの合金からなる、水溶液中に存在するシート上にフォーカスされるように、行われる。レーザービームによって、金属シートの表面が除去され、それによって、ナノ粒子が形成され、水性相中に得られる。
【0027】
湿式化学的方法は、本発明では、金属ナノ粒子を、水性相または有機相中で、還元剤、例えばクエン酸ナトリウム、水素または水素化ホウ素ナトリウムを用いて、対応する金属塩を還元することによって製造するようにして行うことができる。これらの方法は、例えば、次の刊行物、すなわちJ.Am.Chem.Soc.2006,128,3,917-924(非特許文献5)またはPhys.Chem.Chem.Phys.,2011,13,2457-2487(非特許文献6)に記載されている。
【0028】
負荷された粒子コア周りのAl、SiO、TiOまたはこれらの混合物からなる層は、好ましくは、サイクルプロセスにおいて原子層堆積によるコーティングを用いて形成され、この際、好ましくは、少なくとも5回のサイクル、特に少なくとも12回のサイクルが行われる。
【0029】
次いで、得られた光触媒活性粒子状材料は、400~600℃の温度範囲で、少なくとも2時間の期間にわたって、か焼に付すことができる。
【0030】
該光触媒活性粒子状材料は、特に、樹脂中の顔料としてまたは光触媒として適している。
【0031】
ZnS粒子は、本発明では、標準的な方法を用いて、NaSO+ZnSOを沈降させ、次いで、か焼することによって製造することができる。
【0032】
Au-NPは、本発明では、水溶液中でのレーザーアブレーション(PLAL:液中パルスレーザーアブレーション)により得ることができる。湿式化学的に合成されたNPとは異なり、PLALにより製造された粒子は、「より純粋な」表面を有する、というのも、前駆体及び配位子は使用しなくてよいからである。Au-NP粒子は、Chem.Rev.2017,117,3990-4103(非特許文献3)またはPhotonik 43(2011),No.1,pp.50-53(非特許文献4)中の開示に従い生成することができる。
【0033】
原子層堆積(ALD)は、本発明では、前駆体としてのトリメチルアルミニウム(TMA)及びHOを使用して、150℃の温度で実施することができる。サイクル数は5と50との間で変化させ、この際、0.6と5.8重量%のAlが堆積した。望ましい場合には、Al@ZnS-Au粒子は、その後に更にか焼することができ(T 約500℃)、これは、光安定性を更に向上する。
【0034】
本発明を、添付の図面に基づいて更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】堆積したAl含有率及び計算された層厚を関数とした、40分間のUV処理後の正規化されたフォトルミネセンス-強度(PL-強度)(正規化は、それぞれ時点tでのPL発光バンドの積分に関して行った)。三つの画像には、UV作用後の照射面を示し;90%超えると、黒ずみは確認されない。
図2】堆積されたAl含有率を関数とした、40分間のUV照射中の正規化PL強度の時間的経緯。90毎に発光スペクトルを記録し、これを積分し、次いで時点tでの積分をベースに正規化した。
図3】純粋なコバルト不含ZnS(図3A)及びSachtolith L(図3B)のUV照射前及び後のPLスペクトル、並びに照射面の画像。
図4】純粋なコバルト不含ZnS及びZnS@Alの光安定性に対する、Nまたは周囲空気(O)中でのか焼の効果。
図5】様々なAl含有率(重量%)を有するコーティングされたZnS試料についての、Agイオンとの反応によるZnSの損失。
図6】ZnS-Au原料及びコーティングされた試料の写真画像(6A)。選択された試料のREM画像(図6B)。様々なコーティングされたZnSまたはZnS-Au試料の固形UV/Visスペクトル(図6C)。
図7】ZnS、ZnS-Au及びZnS-Au@Al粒子の40分間UV照射後の正規化された相対PL強度。
図8】UV照射(100W Hg-Xeランプ)下でのメチルオレンジの光誘発分解。表示されるエラーバーは、各々二つの照射実験から生じる。
【0036】
AlによるZnSのコーティングについて図1~4から示されるように、このコーティングは粒子の光安定性の向上をもたらす。
【0037】
これらの図では、Au NP無しのコーティングされた硫化亜鉛の結果を示す(ZnS@Al粒子)。光安定性を評価するために、光腐食性Zn形成を、フォトルミネセンス分光分析(PL)を用いて調べた。この目的のために、強力なUV照射中の各々の試料(ZnSペーストの形)のフォトルミネセンス強度の低下を追跡した(図1参照)。未処理のZnSは極めて強く黒ずみ、従って、UV照射の後のPL強度はわずか約15%である。Alでコーティングした後は、Al含有率の増加を伴い、光安定性の向上を達成できる。1.4重量%を超えるAl含有率は、2nmの算出層厚に相当するが、それにより、UV照射の後にPL強度のほぼ完全な維持が達成され(90~100%の強度)、この場合、表面の黒ずみはもはや確認できない。
【0038】
参照材料としてのコバルト安定化ZnS(Sachtolith L)との、PL強度に関しての光安定性の比較は、むしろ問題である、というのも、コバルトは、光発生電荷担体のバッファーとして働き、それ故、フォトルミネセンスに関していわゆる「キラー」として機能するからである(図3参照;比較として、左側に純粋なコバルト不含ZnSが示されている)。しかし、照射前と後の画像に基づくと、参照材料であるSachtolith Lさえも、強力なUVの作用によって、非常に簡単に黒ずむことが分かる。それ故、Alコーティングによってでも、コバルトドーピングと比べてより高い光安定性を達成できる、なぜならば、その場合、2nmの算出層厚に相当する1.4重量%超のAlにおいては、照射した面の黒ずみはもはや確認されないからである(図1及び2参照)。
【0039】
加えて、周囲空気または窒素雰囲気中での500℃でのコーティングされた試料のか焼によって更に有利な効果が示される。図4から確認できるように、光安定性は、500℃でのか焼によって若干向上する。これに対して、900℃でのか焼は、光安定性を低下させる。
【0040】
コーティングされた試料が、なおも硫化物性表面を有するかまたは密なAl層が存在するかを評価するために、表面とAgイオンとの反応を検証した。ZnSの硫化物性表面はAgイオンと反応してAgSとなり、この際、この表面は褐色に変色し、そして銀イオンの相当する消費量を介して、ZnSの損失量を定量化できる(図5参照)。図5は、1.4重量%のAl超で、硫化物性表面はもはや存在せず(Agイオンの消費がない)、それ故、ZnS母体は、コーティングの枠内において、酸化アルミニウムで完全に覆われたことを示す。
【0041】
図6~8には、AlによるZnS-Au粒子のコーティング(ZnS-Au@Al粒子)の結果を示す。これは、Au-NPが表面上に施用(1重量%)されたZnS粒子であり、その後に、ALDによるコーティングを行った(図6A;5、12及び50サイクル、これは、0.6、1.4及び5.8重量%の算出Al含有率に相当する)。図6Bには、選択されたREM画像を示し、それから、Au-NPの均一な分布は明らかである。更に、図6は、(約530nmでの)Au-NPの表面プラズモン共鳴の維持を示し、これは、対応する固形UV/Visスペクトルに確認できる。
【0042】
図7は、原料のZnS及びZnS-Auの、並びに5、12及び50サイクルで原子層堆積法でコーティングされたZnS-Au粒子の光安定性を示す。ここでは、コーティングされていないZnS-Auは、純粋なZnSよりもいくらか光に対し敏感であることが分かる。しかし、12回のALDサイクル(約1.4重量%Al)を超えると、十分な光安定性を達成できる。
【0043】
光安定性試料の光活性の評価は、メチルオレンジの光誘発脱色を介して行い、この際、光発生した電荷担体は、色素の分解を引き起こした。Au-NPの効果を調べるために、同じAl含有率(約1.4重量%)を有するコーティングされたZnS試料を、Auありの場合と無しの場合とで調べた。更に、図1及び図7の比較は、両試料が同じ光安定性(UV照射の後のPL強度:約90%)を有することを示す。
【0044】
図8には、照射時間(0~140分間)に対するメチルオレンジの分解(転化率[%])がプロットされている。-60~0分間のタイムスパンでは、起こり得る吸着効果を排除するために、照射は行わなかった。しかし、Al層を有するZnSは、Auナノ粒子が無いと、光誘発色素分解において低い活性を有し、この際、色素の16%が140分後に脱色したことが分かる。これに対し、Alコーティングの前に、Au-NPをZnS表面に堆積した場合には、ほぼ三倍の色素分解が達成される(140分後に45%)。空測定(触媒無しでの照射)は、140分後に1.7%の脱色しか示さず、従って無視することができる。
【0045】
それ故、記載したデータは、Alコーティングを用いて光安定性のZnS母体を製造することができるが、これは、色素分解において僅かな光誘発活性しか示さないことを示す。
【0046】
これに対して、Au-NPとAlコーティングとの本発明による組み合わせは、活性の明らかな向上をもたらし、これは、ZnS母体とAu-NPとの間の電荷担体に関連する相互作用を裏付けている。
【0047】
レーザー生成Auナノ粒子の例示的な使用の他に、本発明によるシステムは、同様に、類似の方法でパルスレーザーアブレーションを介して製造できる(Chem.Rev.2017,117,3990-4103(非特許文献3)参照)、Ag、Pt、Pd、Cu及びこれらの合金などの他の伝導性ナノ粒子を用いても製造することができる。
【0048】
加えて、例示的にAlについて示した、粒子表面を保護するための不活性無機シェルの本発明による使用は、SiO及びTiO材料の場合にも適用でき、これらも原子層堆積の枠内で同様に通例の材料である(Crit Rev Solid State,38:203-233,2013(非特許文献7))。
【0049】
方法及び材料
方法
光腐食の決定
フォトルミネセンス-分光分析を介して光安定性を検証するために、先ず、各々300~400mgの試料を乳鉢ですりつぶし、そして150~200mgの脱塩水と混合した。得られたペーストを、樹脂性サポート上に置き、石英ガラス板で覆い、そして堀場社製のフルオレセンス分光分析器Fluorolog(登録商標)-3中に挿入した。次いで、試料を、330±2nmの励起波長で40.5分間照射した。この際、90秒ごとに、350~650nmの発光スペクトル(検出器までのスリット幅 1nm)を記録した。各々の発光バンドを積分し、次いで時点tでの積分をベースに正規化することによって、フォトルミネセンス強度の相対的な経時的減少を決定した。これは、光腐食性黒ずみに対する敏感さの目安となる。
【0050】
Al含有率の決定
堆積したAl含有率を定量化するために、各試料300mgを、250mL二つ首フラスコ中に入れ、そして100mLの2N HClと混合した。次いで、分散液を90℃に加熱し、3時間攪拌した。その間、生じるHSを追い出すために、反応溶液は持続的にNでパージする(2L/h)。次いで、透明な溶液を、ICP質量分析によりAl3+濃度に関して調べた。
【0051】
AgNOを用いた層厚の検証
50mgの粉末状試料を、44mLの脱塩水中に入れ、そして2分間、超音波浴中で分散した。次いで、この分散液を、攪拌しながら、6mLの0.1M硝酸銀溶液と混合した。一時間後、この分散液を、5000RPMで20分間遠心分離し、透明な上澄みを除去した。次いで、上澄みのAg濃度を、ZnS表面と反応していない銀イオンの量を定量化するためにフォルハルト法による滴定を用いて求めた。この目的のために、10mLの上澄みを、蒸留水を用いて100mLにメスアップした。次いで、溶液の褐色が消失するまで予め濃硝酸と混合した数滴の硫酸アンモニウム鉄(III)溶液(0.1M)を指示薬として加えた。標準液としては、0.01Mのチオシアン酸アンモニウム溶液を使用した。
【0052】
ここで、上澄みのAg濃度を介して、ZnSの相対損失量を計算できる:
【0053】
【数1】
(Ag)=Agイオンの初期物質量[モル]
(Ag)=滴定中のAgイオンの消費された物質量[モル]
n(ZnS)=ZnSの物質量[モル]
【0054】
REM検証
REM測定は、日立製走査電子顕微鏡SU-70を用いて行った。準備として、先ず粉末試料をエタノール中に加え、そして超音波浴中で1分間分散した。この懸濁液から、二、三滴をグラファイトウェハ上に垂らし、これを次いで真空乾燥棚中で50℃で乾燥した。
【0055】
UV/Vis分光分析
固形物試料を、バリアン社製の分光分析器Cary400を用いて測定した。波長範囲は、解像能が1nmで400~800nmを含み、この際、スペクトラロンを白色標準として使用した。
【0056】
粒度決定
粒度決定は、CPSインストロメンツ社の分析用ディスク遠心分離機(モデルDC24000)を用いて行った。キャリブレーションは、PCV粒子(d=0.237μm;標準)を用いて行い、この際、検出波長は405nmであった。質量累積サイズ分布を介して、数平均粒径(d50)を求めた。
【0057】
層厚決定
施用された層の厚さ(d)は、ZnS母体のBET表面積、Al、TiまたはSi種の密度、及びAl、SiまたはTiの堆積した物質量割合に基づいて、以下の式を用いて計算することができる。
【0058】
【数2】
:堆積した層の体積[m
BET:ZnS母体のBET表面積(4.8m/g)
d:層の厚さ[m]
Al:Al(Si、Ti)の物質量[モル]
ρmolar:体積した層のモル密度(ρAl:5.134×10モル/m;ρTi:5.297×10モル/m;ρSi:4.411×10モル/m
【0059】
色素分解
光誘発色素分解を検証するために、先ず、21mgの粉末状試料を、84mLのメチルオレンジ溶液(18mg/L)中で、超音波浴中で1分間分散し、そして石英ガラス製反応器中に入れた。その後、この分散液を、吸着-脱着バランスを調節できるように、60分間暗所に保存した。次いで、ニュートラル・デンシティフィルタ(50%)を前に備えた200WHe(Hg)アークランプによって照射を行った。この場合、反応体積を連続的に攪拌し、及び合成空気(5mL/分)でパージした。0、5、15、30、45、60、80、100及び140分の時点で、それぞれ、約1.5mLの体積を取り出し、そして触媒材料を沈降させるために、15000RPMで10分間遠心分離した。次いで、上澄みを、メチルオレンジの濃度に関して、サーモ・サイエンティフィク社製のUV/VIS分光分析器Evolution201により検証し、そしてメチルオレンジの分解を以下の式により決定した:
【0060】
【数3】
またはE:時点0またはtの時の吸光度[無次元量]X:転化率[無次元量]
またはc:時点0またはtでの濃度[モル/L]
【0061】
製造例
使用した化学品:
トリメチルアルミニウム溶液(97%;シグマ・アルドリッヒ)
金シート(99.9%;1mm厚;アレグマイネ・ゴルト-ウントズィルバーシャイデアンシュタルトAG)
水酸化ナトリウムペレット(≧98%、シグマ・アルドリッヒ)
硝酸銀粉末(≧99%、シグマ・アルドリッヒ)
硫酸アンモニウム鉄(III)溶液(0.1N;ベルント・クラフト)
0.01Mチオシアン酸アンモニウム溶液(0.1Nヨーロッパ薬局方準拠試薬);ベルント・クラフト)
メチルオレンジパウダー(ACS試薬、色素含有率85%;シグマ・アルドリッヒ)
2N塩酸(欧州薬局方準拠試薬;フルカ・アナリティカル)
窒素(99.999%、Alphagaz エア・リキード)
合成空気(99.999%、Alphagaz エア・リキード)
【0062】
合成:
ZnS粒子の合成
硫化亜鉛の製造は、工場から回収したZnSO及びNaS溶液を用いて連続的沈降により行った。沈降のためには、先ず両溶液を65℃に加熱し、その後に続いて、両原料の混合を反応容器中で行った。然るべき攪拌機(400回転/分)により反応の間の十分な混合を達成した。沈降後、得られた反応混合物を攪拌しながら、pH値が7~7.5になるまで更なるNaS溶液と混合した。その後、ZnSを、ブフナー漏斗を用いて溶液から分離し、そしてフィルターケーキを、乾燥棚中130℃で8時間乾燥した。その後、こうして得られたZnSを電気式管状炉中で周囲空気下にか焼した。か焼後、か焼した試料を直ぐに約1000mLの水中で急冷し、そして分散し(約6400回転/分、10分)、洗浄し、そしてブフナー漏斗で固形物を分離した。次いで、得られたフィルターケーキを、乾燥棚中130℃で約1時間攪拌し、次いでIKAラボラトリー・ミルを用いて1分間粉砕した。
【0063】
Auナノ粒子の合成及びZnS上へのそれの堆積
レーザー生成したAuナノ粒子を担持させるために、水溶液中でのパルスレーザーアブレーション(PLAL:Pulsed Laser Ablation in Liquid)により製造したコロイドを使用した。Auナノ粒子の合成は、エッジウェーブ社製ナノセカンドNd:YAGレーザーIS400-1を用いて行った。この目的のために、Auターゲット(厚さ1mmのAuシート)をフローチャンバー中に固定し、この際、0.5mM NaOH溶液を、100mL/分の流量でアブレーションチャンバ中にポンプで流通させた。フローチャンバー内にある石英ガラス窓を通して、Auターゲットを、矩形の移動パターンでレーザー光(波長1064nm)により走査し、これは、リノスFシータレンズ(焦点距離100mm)を備えたスキャナーシステム(Sunny S-8210D、スキャン速度2ms-1)により行った。パルスレーザービームのためには、5kHzの繰り返し率及び54Aのポンプ電流を使用した。こうして製造されたAuコロイドを、後続の収集容器中に集めた。硫化亜鉛にAuナノ粒子を担持させるために、16gのZnSを1Lの蒸留水中に入れ、そして超音波浴中で攪拌しながら1分間分散した。次いで、攪拌しながら、1.5Lの予め製造した前記Auコロイド(Au濃度:107.7mg/L)を、25mL/分の流速で前記ZnS懸濁液に滴下した。これは、1.0重量%の質量負荷に相当する。これらの分散液をその後60分間攪拌した。次いで、粒子を濾別し、それぞれ500mLの蒸留水で二度洗浄し、そして乾燥棚中100℃で30分間乾燥した。
【0064】
Auナノ粒子の使用の他、該レーザーアブレーションは、Ag、Pt、Pd、Cu及びそれらの合金などの他の材料にも適用できる(Chem.Rev.2017,117,3990-4103(非特許文献3))。このためには、目的の材料のターゲットをレーザーアブレーションの枠内で使用するだけである。それ故、ここに記載の「IGEL粒子」は、Auナノ粒子だけに限定されるものではなく、ナノスケールAg、Pt、Pd、Cu及びそれらの合金も用いても使用できる。
【0065】
Alでのコーティング
Alの原子層堆積(atomic layer deposition、ALD)は、商業的に入手できるビーコ社のSavannah(登録商標)システムを用いて行った。先ず、2gのZnSまたはZnS-Au粉末を、回転ドラム反応器中に入れ、システムを換気し、そして反応空間を150℃に加熱した。次いで、回転ドラム反応器の回転数を、1分間あたり4回転に調節した。ここで、物理吸着した水を除去するために、45分間の乾燥ステップを20sccmのAr流(キャリアガス)で行った。次いで、二つの前駆体のトリメチルアルミニウム(TMA)及び完全に脱塩した水を交互に続けた。これらは、(25℃に加熱した)カートリッジを介してガス状でALDシステムに導入することができる。以下の図表には、個々の堆積サイクルの経緯を詳細に記す。
【0066】
【表1】
【0067】
実験的作業の枠内において、堆積すべきアルミニウム種の量を変えるために、堆積サイクルの数は5回と50回との間で変えた。コーティングの完了後、反応空間中の圧力を、Ar流を用いてゆっくりと周囲レベルまで高め、そして試料材料を取り出した。
【0068】
Alでのコーティングの他、この方法は、SiOまたはTiOからなる層の形成にも転用可能である。このためには、前駆体、例えばチタンテトラエタノラート、チタンテトラメタノラート、3-アミノプロピルトリエトキシシランまたはテトラクロロシランを使用することができる。それ故、ここに記載の「IGEL粒子」は、Alシェルだけに限られるのではなく、SiOまたはTiOでも同様にコーティングすることができる。
【0069】
コーティングされた試料のか焼
選択された試料を、ALDコーティングの後に合成空気中でまたは窒素雰囲気下にか焼した。このためには、それぞれ800mgの試料を、石英ガラス製のカップに移し、そしてカーボライト社製のコンパクト管状炉の灼熱管(石英ガラス)中に挿入した。二つのガス引き込み管を介して然るべきガスをこれに流通させることができる(体積流量:8L/時間)。か焼を開始する前に、各々のガスを用いた12時間のパージ期間を常に行った。次いで、温度を、5℃/分の加熱速度で500または900℃に高め、そして2時間維持した。炉が室温まで冷えた後、試料材料を取り出した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】