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特表2023-519435溶融水酸化物直接炭素型燃料電池およびそれを含む発電装置
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  • 特表-溶融水酸化物直接炭素型燃料電池およびそれを含む発電装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(54)【発明の名称】溶融水酸化物直接炭素型燃料電池およびそれを含む発電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/02 20160101AFI20230428BHJP
   H01M 8/083 20160101ALI20230428BHJP
【FI】
H01M8/02
H01M8/083
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559812
(86)(22)【出願日】2021-03-22
(85)【翻訳文提出日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 CN2021000048
(87)【国際公開番号】W WO2021196812
(87)【国際公開日】2021-10-07
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522384215
【氏名又は名称】内蒙古工業大学
【氏名又は名称原語表記】INNER MONGOLIA UNIVERSITY OF TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】No.49, Aimin Road(North), Xincheng District Hohhot, Inner Mongolia, 010051, China
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】高 艶芳
(72)【発明者】
【氏名】李 利軍
(72)【発明者】
【氏名】▲しん▼ 麗
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA01
5H126GG05
5H126JJ01
5H126JJ02
5H126JJ05
5H126JJ06
(57)【要約】
本発明は、カーボンスラリー貯留部、アノード室、カソード室、アノードコレクタ、カソードコレクタ、アノードコレクタリード、カソードコレクタリード、熱電対スリーブ、カーボンスラリー供給管、溶融水酸化物電解液、炭素燃料、カソード室酸素ガス供給装置を含む溶融水酸化物直接炭素型燃料電池において、前記カーボンスラリー貯留部、前記アノード室及び前記カソード室は、下面の位置が順に高くなり、かつ前記アノード室の上面が、前記カーボンスラリー貯留部の上面より高くかつ前記カソード室の上面より低くなるように設置されている溶融水酸化物直接炭素型燃料電池、およびそれを含む発電装置に関する。本発明の技術的効果は、新規な燃料連続供給型直接炭素型燃料電池の構造を提供することで、直接炭素型燃料電池における連続動作発電モードの欠如を補うことと、重力によって、電解液がカソード室からアノード室へと流れてイオン移動を達成し、アノード室とカソード室を揃わずに配置し、従来のカソード室とアノード室間におけるイオン交換膜が不用であることである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンスラリー貯留部、アノード室、カソード室、アノードコレクタ、カソードコレクタ、アノードコレクタリード、カソードコレクタリード、熱電対スリーブ、カーボンスラリー供給管、溶融水酸化物電解液、炭素燃料、カソード室酸素ガス供給装置を含む溶融水酸化物直接炭素型燃料電池において、前記カーボンスラリー貯留部、前記アノード室及び前記カソード室は、下面の位置が順に高くなり、かつ前記アノード室の上面が、前記カーボンスラリー貯留部の上面より高くかつ前記カソード室の上面より低くなるように設置されていることを特徴とする、溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
【請求項2】
前記アノード室の上部と前記カーボンスラリー貯留部の上部との間に、オーバーフロー部が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
【請求項3】
前記アノード室の上部と、前記カソード室の前記アノード室上面より高い部分との間に、カソード・アノード電解液移動通路が設けられていることで、重力によって、前記カソード室の酸素負イオンが電解液の流れに乗って前記カソード・アノード電解液移動通路を介して前記アノード室へ流入することを特徴とする、請求項1または2に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
【請求項4】
前記カソード室の下面が前記アノード室の上面と一部重なっており、前記カソード・アノード電解液移動通路が該重なり部分に設けられており、前記カソード・アノード電解液移動通路がカソード・アノード室貫通孔であることを特徴とする、請求項3に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
【請求項5】
カソード・アノードコレクタ固定ポストをさらに備えることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
【請求項6】
空気管路、空気圧縮ポンプをさらに備えることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
【請求項7】
ヒータを備えることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
【請求項8】
前記ヒータが、前記空気圧縮ポンプ以外の全ての電池部材を加熱することを特徴とする、請求項7に記載の電池。
【請求項9】
前記アノードコレクタおよびカソードコレクタがそれぞれ、アノード室およびカソード室に位置し、前記アノードコレクタリードおよびカソードコレクタリードがそれぞれ、アノードコレクタおよびカソードコレクタに位置し、前記熱電対が、カソード室を通過して電池内部に挿入されて電池動作時の温度を測定し、前記カソード室および前記アノード室のそれぞれに、前記カソードコレクタおよび前記アノードコレクタを固定する前記カソード・アノードコレクタ固定ポストが設けられていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
【請求項10】
前記カーボンスラリー貯留部が前記アノード室より低く配置され、前記アノード室が前記カソード室より低く配置されており、前記炭素燃料と前記水酸化物粉末とを混合して前記カーボンスラリー貯留部に入れ、前記空気圧縮ポンプにより前記アノード室に打ち込み、前記カソード室内にも水酸化物を入れておき、前記カーボンスラリー供給管がカーボンスラリー貯留部とアノード室の底部に位置していることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
【請求項11】
前記空気管路の一端が前記空気圧縮ポンプに接続されており、もう一端が前記カーボンスラリー供給管に接続されておりかつ前記カーボンスラリー供給管より低くなっており、前記カーボンスラリー供給管に入る空気が、前記アノード室の底部近傍まで遮断されることを特徴とする、請求項10に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
【請求項12】
カーボンスラリー貯留部における電解液と混合してカーボンスラリーを形成する炭素燃料は、粒径がミリメートル又はマイクロメートルオーダー、比表面積範囲が2~680m-1、導電性範囲が70~12900Sm-1、密度範囲が0.5~1.4gcm-3のカーボンであることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
【請求項13】
前記溶融水酸化物電解液が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムの1種または複数種の混合物であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
【請求項14】
前記炭素燃料と溶融水酸化物電解液混合液とからなるスラリー流体が、空気圧縮ポンプによって前記カーボンスラリー貯留部から前記アノード室へと連続的に供給されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
【請求項15】
請求項1~14に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池を備えるか、または、請求項1~14に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池を1種または複数種集積してなる発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融水酸化物直接炭素型燃料電池およびそれを含む発電装置に関し、より具体的に、燃料連続供給型溶融水酸化物直接炭素型燃料電池およびそれを含む発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気エネルギーは、我が国の国民経済の穏やかな発展につながる主なエネルギーであり、人々がソーシャル活動に関与する時の鍵となる動力でもある。従来の火力発電技術は、熱機関のカルノーサイクルの制限を受けるため、発電効率が低い上に、環境への汚染が深刻である。そのため、このような資源の無駄使いや環境への汚染を伴う発電技術に代えて、効率的でエコな新興発電技術が強く求められている。
【0003】
燃料電池は、燃料の化学エネルギーを電気エネルギーに直接、転換させる新興発電技術として、カルノーサイクルの制限を受けず、より効率的でエコな発電が可能となるため、世界各国の学者に広く注目されている。なかでも、固体炭素を燃料とする電池(単に直接炭素型燃料電池と言う)は、炭素燃料自体のエネルギー密度が高く、供給源が豊富であるとして、各国で重視されてきた。また、直接炭素型燃料電池では、理論上、熱力学的効率が100%と高く、保存や輸送が簡便であり、しかも、一部の廃棄物系バイオ炭が燃料として有用である。直接炭素型燃料電池は、その利点により、我が国のような石炭を主なエネルギー原料とする国において一層好適である。
【0004】
直接炭素型燃料電池は、溶融炭酸塩直接炭素型燃料電池、固体酸化物直接炭素型燃料電池、ハイブリッド直接炭素型燃料電池、溶融水酸化物直接炭素型燃料電池に分類される。最初の3種類の電池はいずれも、高い動作温度に起因して、電池内部でブードワ反応(Boudouard reaction)が発生し、固体炭素の利用効率を低下させ、かつ、高温で電池材料に要求が高い上に、製造の規模化に不向きである。また、最初の3種類の直接炭素型燃料電池はいずれも、セパレータによりアノード室とカソード室を分離するため、材料の無駄使いや洗浄・メンテナンスの困難さなどの欠陥がある。溶融水酸化物直接炭素型燃料電池は、動作温度が低く、ブードワ反応が発生せず、電池材料に要求が比較的低い等の利点で、世界各国の学者に重視されてきた。
【0005】
溶融水酸化物直接炭素型燃料電池の動作機序については、水酸化ナトリウムを電解液とする場合を例に以下の通り説明する。適切な温度条件下で、カソードにおける酸素ガスは還元反応して酸素負イオンを放出して、外部回路との電位差が生じ(式(1))、カソード室の酸素負イオンは電解液の流れに乗ってアノード室に移動する。アノードの炭素燃料は酸素負イオンと反応してCO2が生成し、電子を放出し(式(2))、失われた電子が外部回路を介してカソードへと流れる。上記イオンおよび電子の循環流動により発電する。電池全体の反応は式(3)で表記することができる。
カソード反応 O+2NaOH=2NaOOH - 2e (1)
アノード反応 C+2NaOOH =CO+2NaOH+2e (2)
全反応 C+O=CO (3)
【0006】
近年、クリーンな発電技術への世界各国の推進及び支持に伴い、溶融水酸化物直接炭素型燃料電池の研究が専門家や学者の中で盛んになっている。1896年、JACQUESが世界初の間欠運転溶融水酸化物直接炭素型燃料電池を製作して以来、学者らが採用した電池は全て、このような間欠運転モード型構造のものである。
【0007】
Zecevicらは、アノード及び燃料の両方として黒鉛棒を用い、電解液として溶融水酸化物を用いる電池についてその性能を考察した。電池運転時間が増加するにつれ、アノード燃料棒の直径が小さくなり、アノードとカソードの間隔が大きくなることで、電池のオーム分極が増加した。酸素輸送速度に制限されるカソード表面の酸素拡散は酸素ガスの還元反応及び電池性能を制約する主な原因である一方で、過剰な酸素ガスは電解液の導電性低下につながる。
【0008】
Hackettらは、当該電池性能への炭素燃料の相違の影響について考察した。当該電池において、比較的小さな比表面積の炭素を燃料とする場合、アノードと電解液との接触性能が劣化し、電池性能が低下した。
【0009】
Guoらは、燃料として、棒状燃料に代えて顆粒状カーボンを用いることで、種々の条件における当該電池性能について考察した。カソードガス分散手段を設けることで、電池の性能を格段と向上させることができた。電池は依然として、カソードの酸素ガスの輸送により制限される。アノード活性反応域はアノードと燃料と電解液の接触部に位置する。
【0010】
Kacprzakらは、反応前後における反応器の重量変化を考察することにより、材料の溶融高温条件下でのアルキル耐性を測り知った。ニッケルおよびニッケル基合金は、溶融水酸化物に対する耐食性が最も良い。モル比で50-50モル%のNaOH-KOH溶融電解液電池は、723Kの温度での開放電圧及び出力密度が最も高い。特性上異なる炭素を燃料とする場合、電池への各分極の寄与度が異なる。炭素含有量が高く、含酸素官能基が多く、比表面積が大きい炭素燃料では、電解液との接触がより良好であり、電池性能が向上する。
【0011】
上記文献で言及される溶融水酸化物直接炭素型燃料電池の研究ではいずれも欠陥が残っている。主な問題は、カソードの酸素輸送速度が不足することと、反応時間が長くなるにつれてアノードの活性反応領域が縮減することによって、電池性能を劣化させることにある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者は、従来技術における問題点を解決するために、鋭意検討を行った。カーボン性質を変化させて燃料供給状態を改善させることによって電池性能を向上させることができたというKacprzakやHackettらの結論に基づき、もし炭素燃料が直ちにアノード室に供給され、酸素負イオンがカソード室からアノード室へ絶えずに流れることが可能であれば、電池性能が向上することがわかった。
【0013】
また、従来技術では、燃料を連続的に供給する直接炭素型燃料電池の構造は未だ見出されておらず、直接炭素型燃料電池分野で、連続動作発電モードに関する記事はない。
【0014】
さらに、従来の直接炭素型燃料電池では、動作温度が高すぎ、一般に700℃以上の温度で動作することから、電池デバイスの材料に厳しい上に、電池の副反応が発生する可能性が高くなる。
【0015】
それに加え、従来の電池において、カソード室とアノード室の間にイオン交換膜が用いられるが、この膜を頻繁に交換する必要があり、製造コストや人件費が比較的高い。
【課題を解決するための手段】
【0016】
従来技術に存在する課題を解決するために、本発明は以下の発明を提供する。
【0017】
そこで、本発明は、如何にすれば、炭素燃料がアノードに連続的に供給され、アノード室へ十分なカソード酸素負イオンが流入することを達成するかを目的に、炭素燃料を連続的に供給し、かつ速度を制御可能な溶融水酸化物直接炭素型燃料電池を提供し、さらに、重力によって、カソード酸素負イオンが電解液の流れに乗ってカソード室からアノード室へと流れる移動方式を提供する。アノードに連続的に供給される燃料量を増加させ、アノードに速やかに供給されるカソード酸素負イオンの量を増加させる。
【0018】
これを実現するために、本発明は、以下の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池およびそれを含む発電装置を提供する。
1.カーボンスラリー貯留部、アノード室、カソード室、アノードコレクタ、カソードコレクタ、アノードコレクタリード、カソードコレクタリード、熱電対スリーブ、カーボンスラリー供給管、溶融水酸化物電解液、炭素燃料、カソード室酸素ガス供給装置を含む溶融水酸化物直接炭素型燃料電池において、前記カーボンスラリー貯留部、前記アノード室及び前記カソード室は、下面の位置が順に高くなり、かつ前記アノード室の上面が、前記カーボンスラリー貯留部の上面より高くかつ前記カソード室の上面より低くなるように設置されていることを特徴とする、溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
2.前記アノード室の上部と前記カーボンスラリー貯留部の上部との間に、オーバーフロー部が設けられていることを特徴とする、項目1に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
3.前記アノード室の上部と、前記カソード室の前記アノード室の上面より高い部分との間に、カソード・アノード電解液移動通路が設けられていることで、重力によって、前記カソード室の酸素負イオンが電解液の流れに乗って前記カソード・アノード電解液移動通路を介して前記アノード室へ流入することを特徴とする、項目1または2に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
4.前記カソード室の下面が前記アノード室の上面と一部重なっており、前記カソード・アノード電解液移動通路が該重なり部分に設けられており、前記カソード・アノード電解液移動通路がカソード・アノード室貫通孔であることを特徴とする、項目3に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
5.カソード・アノードコレクタ固定ポストをさらに備えることを特徴とする、項目1~4のいずれか1項に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
6.空気管路、空気圧縮ポンプをさらに備えることを特徴とする、項目1~5のいずれか1項に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
7.ヒータを備えることを特徴とする、項目1~6のいずれか1項に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
8.前記ヒータが、前記空気圧縮ポンプ以外の全ての電池部材を加熱することを特徴とする、項目7に記載の電池。
9.前記アノードコレクタおよびカソードコレクタがそれぞれ、アノード室およびカソード室に位置し、前記アノードコレクタリードおよびカソードコレクタリードがそれぞれ、アノードコレクタおよびカソードコレクタに位置し、前記熱電対が、カソード室を通過して電池内部に挿入されて電池動作時の温度を測定し、前記カソード室および前記アノード室のそれぞれに、前記カソードコレクタおよび前記アノードコレクタを固定する前記カソード・アノードコレクタ固定ポストが設けられていることを特徴とする、項目1~8のいずれか1項に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
10.前記カーボンスラリー貯留部が前記アノード室より低く配置され、前記アノード室が前記カソード室より低く配置されており、前記炭素燃料と前記水酸化物粉末とを混合して前記カーボンスラリー貯留部に入れ、前記空気圧縮ポンプにより前記アノード室に打ち込み、前記カソード室内にも水酸化物を入れておき、前記カーボンスラリー供給管がカーボンスラリー貯留部とアノード室の底部に位置していることを特徴とする、項目1~9のいずれか1項に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
11.前記空気管路の一端が前記空気圧縮ポンプに接続されており、もう一端が前記カーボンスラリー供給管に接続されておりかつ前記カーボンスラリー供給管より低くなっており、前記カーボンスラリー供給管に入る空気が、前記アノード室の底部近傍まで遮断されることを特徴とする、項目10に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
12.前記カーボンスラリー貯留部、前記アノード室及び前記カソード室が、ヒータ内に位置することを特徴とする、項目1~11のいずれか1項に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
13.カーボンスラリー貯留部における電解液と混合してカーボンスラリーを形成する炭素燃料は、粒径がミリメートル又はマイクロメートルオーダー、比表面積範囲が2~680m-1、導電性範囲が70~12900Sm-1、密度範囲が0.5~1.4gcm-3のカーボンであることを特徴とする、項目1~12のいずれか1項に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
14.前記溶融水酸化物電解液が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムの1種または複数種の混合物であることを特徴とする、項目1~13のいずれか1項に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
15.前記カーボンスラリー貯留部、前記アノード室、前記カソード室、前記アノードコレクタ、前記カソードコレクタ、前記アノードコレクタリード、前記カソードコレクタリード、前記熱電対スリーブ、前記カーボンスラリー供給管、前記カソード・アノード電解液移動通路、前記オーバーフロー部に用いられる材料が全て、銅ニッケルモネル合金であることを特徴とする、項目1~14のいずれか1項に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
16.前記ヒータに用いられる材料が316ステンレス鋼及び断熱コットンであることを特徴とする、項目12に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
17.前記空気圧縮ポンプの流速調整範囲が、10-5ms-1~10-1ms-1であることを特徴とする、項目1~16のいずれか1項に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
18.前記ヒータにおける電池動作温度範囲が、200~690℃、好ましくは240~650℃、さらに好ましくは350~550℃であることを特徴とする、項目1~17のいずれか1項に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
19.前記炭素燃料と溶融水酸化物電解液混合液とからなるスラリー流体が、空気圧縮ポンプによって前記カーボンスラリー貯留部から前記アノード室へと連続的に供給されることを特徴とする、項目1~18のいずれか1項に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
20.前記電池のカソード・アノード室の長さ、幅および高さがそれぞれ、145~150mm、15~20mm、55~60mmであり、カソード・アノードコレクタの長さ、幅および高さがそれぞれ、135~140mm、1.5~2mm、50~55mmであり、前記アノード室の入口管径が、5~6mmであることを特徴とする、項目1に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池。
21.項目1~20に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池を備えるか、または、項目1~20に記載の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池を1種または複数種集積してなる発電装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、従来技術に比べて下記の有利な効果がある。
(1)新規な燃料連続供給型直接炭素型燃料電池の構造を提供し、直接炭素型燃料電池における連続動作発電モードの欠如を補う。(2)従来の火力発電プラントの効率が30%程度しかないのに対し、当該直接炭素型燃料電池は、理論上、エネルギー変換効率が100%と高い。(3)当該直接炭素型燃料電池は、700℃未満の温度域で動作することが可能であり、ブードワ反応の発生を回避する。(4)アノードとカソードが揃わずに配置されており、重力によって、電解液がカソード室からアノード室へと流れることでイオン移動を達成し、従来のカソード室とアノード室間におけるイオン交換膜が不用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池の構成概念図である。
図2】カソード・アノード室貫通孔の所在位置の拡大図である。
図3】電池寿命期間における電流電圧特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池は、カーボンスラリー貯留部、アノード室、カソード室、アノードコレクタ、カソードコレクタ、アノードコレクタリード、カソードコレクタリード、熱電対スリーブ、カーボンスラリー供給管、溶融水酸化物電解液、炭素燃料、カソード室酸素ガス供給装置を含み、前記カーボンスラリー貯留部、前記アノード室及び前記カソード室は、下面の位置が順に高くなり、かつ前記アノード室の上面が、前記カーボンスラリー貯留部の上面より高くかつ前記カソード室の上面より低くなるように設置されている。
【0022】
前記炭素燃料としては、内蒙古の産炭地の石炭、及び/又は、他の炭素含有材料、例えば歴青炭、カーボンブラック、活性炭及び藁などのバイオ炭が用いられる。
【0023】
前記溶融水酸化物電解液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムのうちの1種又は複数種であってもよい。
【0024】
本発明は、アノード室を下方、カソード室を上方とした2室型燃料電池構造により、下方のアノード室内のカーボンスラリーがカソード室へと流れ込むのを回避しつつ、カソード室内の溶融水酸化イオンを異なる速度でアノード室に供給するように制御することができる。また、従来のカソード室とアノード室間におけるイオン交換膜が不用である。
【0025】
装置の加熱に先立ち、予め所定量の溶融水酸化物粉末と炭素燃料混合物(カーボンスラリー)を所定の割合でカーボンスラリー貯留部に入れ、所定量の水酸化物粉末をカソード室に入れる。
【0026】
溶融水酸化物粉末と炭素燃料との混合割合は、一般的に、3%~14%である。
【0027】
溶融水酸化物粉末と炭素燃料混合物(カーボンスラリー)の量は、特に制限されず、電池寸法やニーズに応じて設定する。
【0028】
本発明の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池の構造寸法は、特に制限されず、実際の需要に応じて設定するのがよい。
【0029】
電池動作温度範囲は、200~690℃、好ましくは240~650℃、さらに好ましくは350~550℃である。
【0030】
以下、図1を参照しながら本発明を詳細に説明するが、図1に示される発明は好ましい実施形態に過ぎず、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。
【0031】
図1に示すように、本発明の溶融水酸化物直接炭素型燃料電池は、カーボンスラリー貯留部1、アノードコレクタ2、アノード室3、カソードコレクタ4、カソード室5、アノードコレクタリード6、カソードコレクタリード7、熱電対スリーブ8、カソード・アノード室貫通孔9、オーバーフロー部10、カーボンスラリー供給管11、12、13、空気管路14、空気管路断面15、空気圧縮ポンプ16、ヒータ17、炭素燃料18、及び、溶融水酸化物電解液19を含む。
【0032】
前記アノード室3、アノードコレクタ2、アノードコレクタリード6、カソード室5、カソードコレクタ4、カソードコレクタリード6、熱電対スリーブ8、オーバーフロー部10、カーボンスラリー供給管11、12、13、空気管路14、炭素燃料18、溶融水酸化物電解液19、カソード・アノード室貫通孔9はヒータ17の内部に位置しており、カソード・アノード室貫通孔9は全て、カソード室底板とアノード室天板の重なり部に位置しており;前記アノードコレクタ2はアノード室3内に位置し、前記カソードコレクタ4はカソード室5内に位置し、前記熱電対スリーブ8は、カソード室5内に位置し、電池温度を検知する熱電対を保持しており、前記アノードコレクタリード6はアノード室3内に位置し、前記カソードコレクタリード7はカソード室5内に位置し、前記カーボンスラリー供給管11、12、13は、カーボンスラリー貯留部1から流出したカーボンスラリーがアノード室3内に打ち込まれるように、カーボンスラリー貯留部1及びアノード室3底部に接続されており、前記空気管路14は、ヒータ17外部の空気圧縮ポンプ16に接続されており、かつヒータ17内部のカーボンスラリー供給管12、13に接続されており、気体の圧力によってカーボンスラリーがアノード室3内に打ち込まれ、前記15は前記14空気管路の断面図であり、管内において気体いっぱいであることを示しており、前記カソード・アノード室貫通孔9は、カソード室5の酸素負イオン含有電解液が重力によってアノード室3へと流れるように設けられており、前記オーバーフロー部10は、アノード室3の頂部に位置し、カーボンスラリー貯留部1の上部に延びてカーボンスラリー流体を循環流出させるように設けられており、前記ヒータ17は、空気圧縮ポンプ以外の電池の関連部材を加熱する。
【0033】
上記カーボンスラリー貯留部1、カソード室5、アノード室3は、ヒータ17の内部に揃わずに配置されている。位置については、カーボンスラリー貯留部1が最も低く、アノード室3がそれに続き、カソード室5が最も高い。
【0034】
上記炭素燃料18は、活性比表面積、導電性及び密度が異なる炭素である。
【0035】
上記炭素燃料18は、粒径がミリメートル又はマイクロメートルオーダーである。
【0036】
上記溶融水酸化物電解液19は、NaOHである。
【0037】
上記ヒータにおける溶融水酸化物直接炭素型燃料電池の動作温度は、350~550℃である。
【0038】
本溶融水酸化物直接炭素型燃料電池の構造寸法については、前記電池のアノード室3およびカソード室5の長さ、幅および高さはそれぞれ、145~150mm、15~20mm、55~60mmであり、アノードコレクタ2およびカソードコレクタ4の長さ、幅および高さはそれぞれ、135~140mm、1.5~2mm、50~55mmであり、前記アノード室3の入口管径は、5~6mmであり、溶融NaOHを電解液とし、粒径がミリメートルまたはマイクロメートルオーダーの炭素を燃料とし、電池動作温度を350~550℃とする。本電池が動作する場合、まず、カーボンスラリー貯留部1内に、炭素燃料と溶融水酸化物とからなるカーボンスラリー混合物が貯留されており、カーボンスラリー供給管を通じて流出したカーボンスラリーが空気圧縮ポンプ16及び空気管路14によってアノード室3の内部に打ち込まれ、ここで、カーボンスラリーが連続的に供給されるため、炭素燃料18の電気化学反応の速度に応じて、アノード室3に過剰に供給されたカーボンスラリーがオーバーフロー部10を介してカーボンスラリー貯留部1に戻り、炭素燃料18が適切な温度で酸化反応を起こして電子を失い、失われた電子が外部回路へと流れる。重力によって、カソード室5内の酸素負イオンが、溶融水酸化物の流れに乗ってカソード・アノード室貫通孔9を介してアノード室3へ流れ込む。このような電子・イオンの循環流動により、電池が発電する。電池の550℃における電流が、約60mAであった。電池性能については、図3を参照する。
【0039】
本電池におけるアノードコレクタ2及びカソードコレクタ4は、炭素燃料の電気化学的酸化反応及び酸素の電気化学的還元反応において電子の流出及び流入路を提供する。本溶融水酸化物直接炭素型燃料電池の利点としては、(1)空気圧縮ポンプによって炭素燃料がアノード室へ連続的に供給され、炭素燃料と電解液とアノードとが直ちに接触することを達成し、(2)アノード室とカソード室とが揃わずに配置され、カソード室電解液中の酸素負イオンが重力によってアノード室へと流れ込み、従来の膜の使用が不要となるとともに、十分なイオン移動を確保し、(3)電池はスペースが小さくてコンパクトであり、メンテナンスが容易となり、規模化し易い。
【符号の説明】
【0040】
1:カーボンスラリー貯留部、
2:アノードコレクタ、
3:アノード室、
4:カソードコレクタ、
5:カソード室、
6:アノードコレクタリード、
7:カソードコレクタリード、
8:熱電対スリーブ、
9:カソード・アノード室貫通孔、
10:オーバーフロー部、
11、12、13:カーボンスラリー供給管、
14:空気管路、
15:空気管路断面、
16:空気圧縮ポンプ、
17:ヒータ、
18:炭素燃料、
19:溶融水酸化物電解液。
図1
図2
図3
【国際調査報告】