IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウェストチャイナホスピタル、スーチョワンユニバーシティの特許一覧 ▶ スーチュワン ワンゴー アグリカルチュラル テクノロジー カンパニー リミテッドの特許一覧

特表2023-519453青銭柳葉フラボン抽出物の抗菌薬物および/または抗菌剤の製造における使用
<>
  • 特表-青銭柳葉フラボン抽出物の抗菌薬物および/または抗菌剤の製造における使用 図1
  • 特表-青銭柳葉フラボン抽出物の抗菌薬物および/または抗菌剤の製造における使用 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-11
(54)【発明の名称】青銭柳葉フラボン抽出物の抗菌薬物および/または抗菌剤の製造における使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/52 20060101AFI20230501BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
A61K36/52
A61P31/04
A61K31/352
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560359
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(85)【翻訳文提出日】2021-10-18
(86)【国際出願番号】 CN2020110253
(87)【国際公開番号】W WO2021196505
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】202010239271.8
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516175537
【氏名又は名称】ウェストチャイナホスピタル、スーチョワンユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】521440828
【氏名又は名称】スーチュワン ワンゴー アグリカルチュラル テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スン メイリン
(72)【発明者】
【氏名】リウ ジエ
(72)【発明者】
【氏名】リアオ ウェン
(72)【発明者】
【氏名】リアオ ミンジュン
【テーマコード(参考)】
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB35
4C088AB12
4C088BA09
4C088BA14
4C088CA05
4C088NA14
4C088ZB35
(57)【要約】
本発明は、青銭柳葉フラボン抽出物の抗菌薬物および/または抗菌剤の製造における使用を提供し、前記菌は薬剤耐性菌である。実験により、青銭柳葉フラボン抽出物はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌株に対して著しい殺菌効果を有し、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌株がほとんどの抗菌薬物に対して耐性を有するという問題を解決することが証明された。青銭柳葉フラボン抽出物は、薬剤耐性菌に対する抗菌薬物または抗菌剤に製造することができ、薬剤耐性菌への感染という世界的な難題を解決する上で大変有望である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
青銭柳葉フラボン抽出物の抗菌薬物および/または抗菌剤の製造における使用であって、前記菌が薬剤耐性菌であることを特徴とする、青銭柳葉フラボン抽出物の抗菌薬物および/または抗菌剤の製造における使用。
【請求項2】
前記薬剤耐性菌が薬剤耐性グラム陽性菌であり、好ましくは薬剤耐性黄色ブドウ球菌であり、より好ましくはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記青銭柳葉フラボン抽出物において、青銭柳葉フラボンの含有量が50wt.%以上であり、好ましくは67.3581wt.%以上であることを特徴とする、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記青銭柳葉フラボン抽出物は、青銭柳葉を用意し、溶剤を加えて抽出し、抽出液を保留し、濃縮または乾燥させて得る、という方法により製造されることを特徴とする、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記青銭柳葉が乾燥した青銭柳葉の粉末であり、および/または、前記溶剤が水であり、溶剤と青銭柳葉の質量比が(5~15):1であり、好ましくは10:1であり、および/または、前記抽出の温度が70~110℃であり、抽出の回数が1~5回であり、抽出の時間が1回あたり30~120minであり、好ましくは、前記抽出の温度が90℃であり、抽出の回数が2回であり、抽出の時間が毎回90minであることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記抽出液を濃縮または乾燥させる前に、さらに精製プロセスを含み、前記精製プロセスが、得られた系におけるエタノールの体積分率が50%~70%になるように抽出液にエタノールを加え、均一に混合した後、遠心分離し、上澄み液を保留するというステップを含み、好ましくは、前記系におけるエタノールの体積分率が60%であることを特徴とする、請求項4または5に記載の使用。
【請求項7】
前記精製プロセスが、請求項6に記載の上澄み液中のエタノールを除去した後、ポリアミド樹脂カラムで溶出を行い、溶出液を収集するステップをさらに含み、溶出に用いる溶離液は水、60%エタノールの順であり、ここで、水の使用量は5BVであり、60%エタノールの使用量は5BVであることを特徴とする、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
請求項3~7のいずれか1項に記載の青銭柳葉フラボン抽出物であることを特徴とする、青銭柳葉フラボン抽出物。
【請求項9】
請求項8に記載の青銭柳葉フラボン抽出物を活性成分とし、薬学的に許容可能な補助材料を加えて製造されることを特徴とする、抗菌薬物。
【請求項10】
請求項8に記載の青銭柳葉フラボン抽出物を活性成分とし、製剤分野で常用される補助材料を加えて製造されることを特徴とする、抗菌剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬物の分野に属し、具体的には、青銭柳葉フラボン抽出物の薬剤耐性菌に対する抗菌薬物および/または抗菌剤の製造における使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
細菌の薬剤耐性が世界的に公衆衛生上の大きな問題となっていること、および、抗生物質の乱用が細菌の薬剤耐性の重要な原因になっていることは、よく知られている。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus、略称「MRSA」)は、多剤耐性を有するとともに、高い発病率と高い死亡率をともない、壊死性肺炎や重度の敗血症、壊死性筋膜炎等の疾病を引き起こす重要な病原菌であり、また、院内感染および市中感染における重要な病原菌の一つであって、臨床治療を非常に難しくしている。MRSAは、ほとんどの抗菌薬物または製剤に対して耐性があり、現在、臨床において薬剤耐性菌に最も有効とされるバンコマイシンに対しても耐性を持ち始めている。MRSAが、バンコマイシンに対して普遍的に耐性を持つようになれば、MRSAに感染した患者は治療不能という危機的状況に陥ってしまう。そのため、細菌の薬剤耐性が日増しに深刻になる状況において、薬剤耐性菌の活性に対抗し、抗生物質に対して増感作用を有する薬物を開発することは急務であり、一刻の猶予もない。
【0003】
青銭柳(セイセンリュウ)、Cyclocarya paliurus(Batal.)ljinskajaは、青銭李、揺銭樹、甜茶樹などの別名があり、クルミ科青銭柳属植物固有の単一種で、我が国の固有種であり、絶滅危惧種である。青銭柳は背が高く成長が早い広葉樹で、その姿は柳に似て、コインのような円形の実がなり、青く枝垂れることから、「青銭柳」という名が付けられた。『中国中薬資源誌要』によると、この青銭柳の葉は、熱を冷まし、腫れを引かせ、痛みを止める効能があり、頑癬の治療に用いることができる、と記されている。民間では、青銭柳の葉は茶として長く飲用されており、茶には解熱、暑気除去、血糖降下、血圧降下、長寿といった効果がある。
【0004】
現時点では、青銭柳抽出物が薬剤耐性菌に対する薬物または製剤とされた報告はなく、さらに、青銭柳抽出物がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌に対する薬物または製剤とされたという報告もない。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、青銭柳葉フラボン抽出物の薬剤耐性菌に対する抗菌薬物および/または抗菌剤の製造における使用を提供することである。
【0006】
本発明は、青銭柳葉フラボン抽出物の抗菌薬物および/または抗菌剤の製造における使用を提供し、前記菌は薬剤耐性菌である。
【0007】
さらに、前記薬剤耐性菌が薬剤耐性グラム陽性菌であり、好ましくは薬剤耐性黄色ブドウ球菌であり、より好ましくはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌である。
【0008】
さらに、前記青銭柳葉フラボン抽出物において、青銭柳葉フラボンの含有量が50wt.%以上であり、好ましくは67.3581wt.%以上である。
【0009】
さらに、前記青銭柳葉フラボン抽出物は、青銭柳葉を用意し、溶剤を加えて抽出し、抽出液を保留し、濃縮または乾燥させて得る、という方法により製造される。
【0010】
さらに、前記青銭柳葉が乾燥した青銭柳葉の粉末であり、および/または、前記溶剤が水であり、溶剤と青銭柳葉の質量比が(5~15):1であり、好ましくは10:1であり、および/または、前記抽出の温度が70~110℃であり、抽出の回数が1~5回であり、抽出の時間が1回あたり30~120minであり、好ましくは、前記抽出の温度が90℃であり、抽出の回数が2回であり、抽出の時間が毎回90minである。
【0011】
さらに、前記抽出液を濃縮または乾燥させる前に、さらに精製プロセスを含み、前記精製プロセスが、得られた系におけるエタノールの体積分率が50%~70%になるように抽出液にエタノールを加え、均一に混合した後、遠心分離し、上澄み液を保留するというステップを含み、好ましくは、前記系におけるエタノールの体積分率が60%である。
【0012】
さらに、前記精製プロセスが、上記に記載の上澄み液中のエタノールを除去した後、ポリアミド樹脂カラムで溶出を行い、溶出液を収集するステップをさらに含み、溶出に用いる溶離液は水、60%エタノールの順であり、ここで、水の使用量は5BVであり、60%エタノールの使用量は5BVである。
【0013】
本発明はまた、上記のような青銭柳葉フラボン抽出物を提供する。
【0014】
本発明はまた、上記の青銭柳葉フラボン抽出物を活性成分とし、薬学的に許容可能な補助材料を加えて製造される抗菌薬物を提供する。
【0015】
本発明はまた、上記の青銭柳葉フラボン抽出物を活性成分とし、製剤分野で常用される補助材料を加えて製造される抗菌剤を提供する。
【0016】
実験の結果は、青銭柳葉フラボン抽出物がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌株に対して著しい殺菌効果を有し、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌株がほとんどの抗菌薬物に対して耐性を有するという問題を解決することを示している。青銭柳葉フラボン抽出物は、薬剤耐性菌に対する抗菌薬物または抗菌剤に製造することができ、薬剤耐性菌への感染という世界的な難題を解決する上で大変有望である。
【0017】
抗菌薬物とは、殺菌または静菌活性を有する薬物を意味する。
【0018】
抗菌剤とは、殺菌または静菌活性を有する製剤を意味し、一般的には疾患の治療に使用することはできない。
【0019】
青銭柳葉フラボン抽出物とは、青銭柳の葉から抽出されたフラボン系化合物を含む抽出物を意味し、青銭柳葉フラボンとは、青銭柳葉から抽出されたフラボン系化合物を意味し、フラボン系化合物とは、2-フェニルクロモン(flavone)構造を有する化合物の総称である。
【0020】
当然ながら、本発明の上記内容に基づき、当分野の一般的な技術的知識や慣用的手段に照らし、本発明の上記基本的な技術的思想を逸脱しないという前提において、他の様々な形態の修正、置換または変更を行うことができる。
【0021】
以下、実施例という形の具体的な実施形態によって、本発明の上記内容をさらに詳細に説明する。但し、これをもって、本発明の上記主題の範囲が以下の実施例に限定されると理解してはならない。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、いずれも本発明の範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、16S RNAおよびmecA遺伝子の検出結果である。
図2図2は、青銭柳葉フラボンの各菌株に対する殺菌効果曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に使用される原料および機器はすべて従来の製品であり、市販の製品を購入したものである。
【0024】
実施例1 本発明の青銭柳葉フラボン抽出物の製造
室温で陰干しした青銭柳葉を500g秤量し、粉砕した後に10倍(g/g)量の水を加え、90℃で2回抽出し、1回の抽出は90minとして、濃縮、遠心分離した後、上澄み液を取り、さらに濃縮した。次に、系中のエタノールの最終濃度が65%(v/v)になるまでエタノールを加え、均一に混合した後、4800r/minで遠心分離し、上澄み液を取り、液体にアルコール臭がなくなるまでエタノールを除去した。次いで、ポリアミド樹脂カラム(充填剤はポリアミド樹脂100g)で液体の溶出を行った。まず5BVの水で洗浄し、次に5BVの60%エタノールで溶出して、溶出液を収集した。収集した溶出液が流エキス状になるまでエタノールを回収し、50℃で24時間真空乾燥させ、粉末状の固体即ち青銭柳葉フラボン抽出物を得た。これを秤量し、使用に備えて保存した。
【0025】
紫外可視分光光度法(『中国薬典』2015年版通則0401)を用い、ルチンを対照として測定したところ、上記青銭柳葉フラボン抽出物中の青銭柳葉フラボン含有量は67.3581wt.%であった。
【0026】
以下、本発明の有益な効果を、実験例によって証明する。
【0027】
実験例1 青銭柳葉フラボンのメチシリン耐性黄色ブドウ球菌に対する殺菌効果の試験
1.菌株および薬物:
菌株:(1)一般的な黄色ブドウ球菌(ATCC25923)をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection,ATCC)より購入した。(2)メチシリン耐性黄色ブドウ球菌株(Methicillin-Resistant Staphylococcus Aureus,MRSA)は、すべて四川大学華西医院から分離した菌株であり、臨床微生物室より提供された。MRSA-1(臨床番号:1911101191)、MRSA-2(臨床番号:1911081137)、MRSA-3(臨床番号:1911051296)、MRSA-4(臨床番号:1911051125)、MRSA-5(臨床番号:1911081165)。
【0028】
薬物:実施例1で得られた青銭柳葉フラボン抽出物の粉末、ペニシリンGナトリウムおよびオキサシリンナトリウム(市販の製品を購入)。
【0029】
2.細菌の培養
培地:一般的な黄色ブドウ球菌(ATCC25923)、MRSA-1、MRSA-2、MRSA-3、MRSA-4およびMRSA-5の培地は、いずれもMHB(Mueller-Hinton Broth)培地とした。
【0030】
培養条件:37℃、150rpmでの振とう培養。
【0031】
3.実験方法
3.1 mecA遺伝子の同定
mecA遺伝子は、MRSA特有の薬剤耐性遺伝子であり、MRSAの薬剤耐性について決定的な働きをするものである。本実験では、PCR法を用いて各菌株にmecA遺伝子が存在するか否かを検証した。具体的な方法は以下のとおりである。
【0032】
細菌ゲノムDNA抽出キットを用いて、各菌株のゲノムDNAを抽出した。抽出ステップはキットの説明に示すとおりである。各菌株のゲノムDNAをそれぞれテンプレートとし、多重PCR技術を用いて16S RNAおよびmecA遺伝子449bpの断片を増幅した。用いたプライマー配列は以下のとおりである。16S RNA上流プライマー5’-AGAGTTTGATCCTGGCTCAG-3’(SEQ ID NO.1)および下流プライマー5’-GGTTACCTTGTTACGACTT-3’(SEQ ID NO.2);mecA上流プライマー5’-CTCAGGTACTGCTATCCACC-3’(SEQ ID NO.3)および下流プライマー5’-CACTTGGTATATCTTCACC-3’(SEQ ID NO.4)。PCRの増幅手順は以下のとおりである。94℃ 3min、94℃ 45s、50℃ 45s、72℃ 1min30s、30サイクル、72℃ 5min。
【0033】
3.2 各菌株のペニシリンGナトリウム、オキサシリンナトリウムおよび青銭柳葉フラボンに対する感受性試験
各菌株の薬物に対する耐性は、アメリカ臨床検査標準委員会(Clinical and Laboratory Standards Institute,CLSI)の抗菌薬物感受性試験に関する方法および基準を参照して検証した。本試験に用いたMHB培地はいずれも2%NaCl(w/v)を含有する。
【0034】
試験菌の調製:各菌をそれぞれ5mlのMHB培地に接種し、37℃の振とう機で一晩培養し、菌液のマクファーランド濁度を0.5マクファーランドに調整した後、菌液を100倍に希釈して使用に備えた。最終細菌濃度は5×105cfu/mlであった。
【0035】
青銭柳葉フラボンの応用液の調製:実施例1で得られた青銭柳葉フラボン抽出物の粉末79.8mg(青銭柳葉フラボンの含有量が67.3581wt.%であることから、粉末中に青銭柳葉フラボン53.75mgが含有されると計算した)を正確に秤量し、0.32mlのDMSOに溶解させた後、3.68mlのMHB培地を加えて希釈し、青銭柳葉フラボンの濃度が13.44mg/mである青銭柳葉フラボンの応用液を得た。
【0036】
ペニシリンGナトリウムおよびオキサシリンナトリウムの母液の調製:100mgのペニシリンGナトリウムまたはオキサシリンナトリウムを正確に秤量して1mlの脱イオン水に溶解させ、0.22μmの濾過除菌を経て、ペニシリンGナトリウムまたはオキサシリンナトリウムの母液を得た。10.24μlのペニシリンGナトリウムまたはオキサシリンナトリウムの母液を吸い取って3.98976mlのMHB培地に添加し、256μg/mlのペニシリンGナトリウムまたはオキサシリンナトリウムの応用液を得た。
【0037】
青銭柳葉フラボン、ペニシリンGナトリウムおよびオキサシリンナトリウムの薬物濃度の段階的調製:薬物原濃度の応用液100μlを96ウェルプレートにおける第1および第2ウェルに添加した。第2ウェルから培地100μlの添加を開始し、第9ウェルまで2倍連続希釈を行った。第10ウェルを培地対照とした。第1から第9ウェルまでの、青銭柳葉フラボン系化合物の濃度をそれぞれ6720μg/ml、3360μg/ml、1680μg/ml、840μg/ml、420μg/ml、210μg/ml、105μg/ml、52.5μg/ml、26.25μg/mlとし、ペニシリンGナトリウムまたはオキサシリンナトリウムの濃度をそれぞれ128μg/ml、64μg/ml、32μg/ml、16μg/ml、8μg/ml、4μg/ml、2μg/ml、1μg/ml、0.5μg/mlとした。
【0038】
感受性試験:各濃度の薬物ウェルおよび培地対照ウェルそれぞれに、上記調製した菌液100μlを添加した。培養ウェルプレートを湿潤箱内に入れ、34℃で24時間インキュベートした。各菌液を20μlずつ取り、培地で50倍希釈した後、100μl取って培養プレートに塗布し、37℃で一晩インキュベートした。コロニーの増殖が見られない最低薬物濃度を最小発育阻止濃度(minimal inhibit concentration,MIC)と判定した。
【0039】
3.3 青銭柳葉フラボンの殺菌効果の試験:
本試験に用いたMHB培地はいずれもNaClを添加していない。
【0040】
試験菌の調製:3.2の記載と同じ。
【0041】
青銭柳葉フラボンの応用液の調製は3.2の記載と同じ。
【0042】
青銭柳葉フラボンの濃度の段階的調製:3.2の記載と同じ。
【0043】
殺菌効果の試験:各濃度の青銭柳葉フラボンウェルおよび培地対照ウェルに、上記調製した菌液を100μl加えた。十分に混合した後、湿潤箱内に入れ、37℃で一晩インキュベートした。各ウェルの菌液を20μlずつ取り、MHB培地で10倍希釈して、100μlを培養プレートに塗布し、37℃で一晩インキュベートして、コロニー数をカウントした。
【0044】
殺菌率=(1-薬物群コロニー数/培地対照群コロニー数)×100%
薬物の最小殺菌濃度(minimum bactericidal concentration,MBC)は、GraphPad Prism(Version7.04)により非線形回帰分析を用いて計算した。MBC50は、殺菌効果が50%に達する最低濃度である。
【0045】
4.実験結果
4.1 mecA遺伝子の検出
図1から分かるように、16S rRNAおよびmecAの発現は、各MRSA菌株(MRSA-1、MRSA-2、MRSA-3、MRSA-4およびMRSA-5)では検出できたが、一般的な黄色ブドウ球菌(ATCC25923)では16S rRNAの発現のみが検出できた。上記結果により、本実験で用いたMRSA臨床分離株はいずれもメチシリン耐性黄色ブドウ球菌株であり、一般的な黄色ブドウ球菌(ATCC25923)はβ-ラクタム系薬物感受性株であることが証明された。
【0046】
4.2 各菌株のペニシリンGナトリウム、オキサシリンナトリウムおよび青銭柳葉フラボンに対する感受性の比較
表1から分かるように、各MRSA菌株のペニシリンGナトリウムおよびオキサシリンナトリウムに対する感受性は、いずれも一般的な黄色ブドウ球菌標準菌株(ATCC25923)よりも低く、MRSA菌株のMICは、一般的な黄色ブドウ球菌標準菌株(ATCC25923)の4~32倍、もしくはさらに高い。一方、各MRSA菌株の青銭柳葉フラボンに対する感受性は、一般的な黄色ブドウ球菌標準株(ATCC25923)と一致するか、またはより感受性を有する。上記結果は、MRSAが青銭柳葉フラボンの殺菌効果に対して薬剤耐性がないことを示している。
【0047】
【表1】
【0048】
4.3 青銭柳葉フラボンの殺菌効果
図2および表2から分かるように、青銭柳葉フラボンは、一般的な黄色ブドウ球菌標準株(ATCC25923)に対して殺菌効果を有するだけでなく、各種のMRSAに対しても顕著な殺菌効果があり、且つ殺菌能力の大小は以下の順であった。MRSA-4>MRSA-5>黄色ブドウ球菌ATCC25923>MRSA-2>MRSA-1>MRSA-3。
【0049】
従って、本発明によって調製された青銭柳葉フラボンは、MRSAを効果的に殺菌することができる。
【0050】
【表2】
【0051】
以上のように、本発明は青銭柳葉フラボン抽出物を提供し、該青銭柳葉フラボン抽出物はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌株に対して著しい殺菌効果を有し、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌株がほとんどの抗菌薬物に対して耐性を有するという問題を解決する。青銭柳葉フラボン抽出物は、薬剤耐性菌に対する抗菌薬物または抗菌剤に製造することができ、薬剤耐性菌への感染という世界的な難題を解決する上で大変有望である。
図1
図2
【配列表】
2023519453000001.app
【国際調査報告】