(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-11
(54)【発明の名称】管状ストランドの温度を求める装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01J 5/00 20220101AFI20230501BHJP
G01B 15/02 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
G01J5/00 101E
G01B15/02 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536827
(86)(22)【出願日】2021-01-11
(85)【翻訳文提出日】2022-07-11
(86)【国際出願番号】 EP2021050382
(87)【国際公開番号】W WO2021148269
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】102020101724.3
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511082609
【氏名又は名称】シコラ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】シコラ ハラルド
(72)【発明者】
【氏名】フランク クリスチャン
【テーマコード(参考)】
2F067
2G066
【Fターム(参考)】
2F067AA26
2F067AA27
2F067CC06
2F067FF06
2F067HH01
2F067JJ01
2G066AC16
2G066BA01
2G066BC15
2G066CA11
2G066CA15
2G066CA16
(57)【要約】
本発明は、押出装置(10)から搬送される管状ストランド(12)の温度を求める装置であって、前記管状ストランド(12)の第1の位置において該管状ストランド(12)の外側の第1の温度を測定する第1の温度センサ(30)が設けられ、かつ前記第1の温度と、前記管状ストランド(12)の搬送方向(14)において前記第1の位置から離間した前記管状ストランド(12)の第2の位置における前記管状ストランド(12)の外側の第2の温度とを比較するとともに、前記第1の温度及び前記第2の温度の比較から、前記管状ストランド(12)の或る位置における該管状ストランド(12)内及び/又は該管状ストランド(12)の内部の温度を求めるように設計されている評価機構(28)が設けられる装置に関する。また、本発明は、それに対応する方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出装置(10)から搬送される管状ストランド(12)の温度を求める装置であって、前記管状ストランド(12)の第1の位置において該管状ストランド(12)の外側の第1の温度を測定する第1の温度センサ(30)が設けられること、並びに、前記第1の温度と、前記管状ストランド(12)の搬送方向(14)において前記第1の位置から離間した前記管状ストランド(12)の第2の位置における前記管状ストランド(12)の外側の第2の温度とを比較するとともに、前記第1の温度及び前記第2の温度の比較から、前記管状ストランド(12)の或る位置における該管状ストランド(12)内及び/又は該管状ストランド(12)の内部の温度を求めるように設計されている評価機構(28)が設けられることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記第2の温度を測定する第2の温度センサ(30)が設けられることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の温度センサ(30)は、前記第2の温度を測定するようにも設計されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
少なくとも前記第1の温度センサ(30)は、非接触温度センサ、特に焦電センサであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
少なくとも前記第1の温度センサ(30)は、前記管状ストランド(12)が前記押出装置(10)の下流に配置される冷却セクション(16)を通過した後で前記第1の温度が測定されるように配置されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記評価機構(28)は、前記管状ストランド(12)内及び/又は該管状ストランド(12)の内部の温度を、有限要素法を用いて、前記第1の温度及び前記第2の温度の比較から求めるように設計されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記第1の温度センサ(30)は、前記第1の位置において前記管状ストランド(12)の外周にわたって分散される複数の位置における前記第1の温度を測定すること、及び、前記評価機構(28)は、前記管状ストランド(12)の外周にわたって分散される複数の位置において測定された前記温度と、前記第2の位置において前記管状ストランド(12)の外周にわたって分散される複数の位置における前記第2の温度とを比較するとともに、該比較から、前記管状ストランド(12)の位置において該管状ストランド(12)の外周にわたって分散される複数の位置における前記管状ストランド(12)内及び/又は該管状ストランド(12)の内部の温度を求めるように設計されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
少なくとも前記第1の温度センサ(30)は、少なくとも前記管状ストランド(12)の外周にわたる部分において回転可能であることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記評価機構(28)は、前記管状ストランド(12)内及び/又は該管状ストランド(12)の内部の温度が求められる前記管状ストランド(12)の位置において、該管状ストランド(12)内の複数の位置において該管状ストランド(12)の温度を求めるようにも設計されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記管状ストランド(12)の前記第1の位置及び/又は前記第2の位置において前記管状ストランド(12)の直径及び/又は肉厚を測定する直径及び/又は肉厚測定機構(20)も設けられることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記評価機構(28)は、前記管状ストランド(12)内及び/若しくは該管状ストランド(12)の内部の温度を求めるときに、前記測定された直径及び/若しくは前記測定された肉厚を考慮するように設計されていること、並びに/又は、前記評価機構(28)は、前記直径及び/若しくは前記肉厚を求めるときに、前記管状ストランド(12)内及び/若しくは該管状ストランド(12)の内部の温度を考慮するように設計されていることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記直径及び/又は肉厚測定機構(20)はテラヘルツ波測定機構を備えることを特徴とする、請求項10又は11に記載の装置。
【請求項13】
前記評価機構(28)は、前記管状ストランド(12)内及び/又は該管状ストランド(12)の内部の温度が求められる前記管状ストランド(12)の位置から開始して、該管状ストランド(12)の最終的な形状に達するまで、該管状ストランド(12)の材料の温度に依存する膨張係数に基づいて、前記管状ストランド(12)の予期される収縮を確かめるようにも設計されていることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記評価機構(28)は、前記管状ストランドの、その最終的な形状に達した後の直径及び/又は肉厚を、前記管状ストランド(12)の前記第1の位置及び/若しくは前記第2の位置において測定される前記直径、並びに/又は、前記管状ストランド(12)の測定される前記肉厚を考慮して、また、確かめられる予期される収縮を考慮して確かめるようにも設計されていることを特徴とする、請求項10及び13に記載の装置。
【請求項15】
前記評価機構(28)は、求められた前記温度に基づいて前記管状ストランド(12)の材料の屈折率を求めるようにも設計されていることを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記管状ストランド(12)内及び/又は該管状ストランド(12)の内部の求められた前記温度に基づいて、前記押出装置(10)を制御及び/又は調節する制御及び/又は調節機構(42)も設けられることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
押出装置(10)から搬送される管状ストランド(12)の温度を求める方法であって、前記管状ストランド(12)の第1の位置において該管状ストランド(12)の外側の第1の温度を測定すること、前記第1の温度を、前記管状ストランド(12)の搬送方向(14)において前記第1の位置から離間した前記管状ストランド(12)の第2の位置における前記管状ストランド(12)の外側の第2の温度と比較すること、並びに、前記第1の温度及び前記第2の温度の比較から、前記管状ストランド(12)の或る位置における該管状ストランド(12)内及び/又は該管状ストランド(12)の内部の温度を求めることを特徴とする、方法。
【請求項18】
前記第2の温度も測定することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも前記第1の温度を非接触で測定することを特徴とする、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも前記第1の温度を、前記管状ストランドが前記押出装置(10)の下流に配置される冷却セクション(16)を通過した後で測定することを特徴とする、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記管状ストランド(12)内及び/又は該管状ストランド(12)の内部の温度を、有限要素法を用いて、前記第1の温度及び前記第2の温度の比較から求めることを特徴とする、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の温度を、前記第1の位置において前記管状ストランド(12)の外周にわたって分散される複数の位置において測定すること、及び、前記管状ストランド(12)の外周にわたって分散される複数の位置において測定した前記温度を、前記第2の位置において前記管状ストランド(12)の外周にわたって分散される複数の位置における前記第2の温度とも比較すること、並びに、該比較から、前記管状ストランド(12)の位置において該管状ストランド(12)の外周にわたって分散される複数の位置における前記管状ストランド(12)内及び/又は該管状ストランド(12)の内部の温度を求めることを特徴とする、請求項17~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記管状ストランド(12)の温度を、該管状ストランド(12)内及び/又は該管状ストランド(12)の内部の温度が求められる前記管状ストランド(12)の位置において、該管状ストランド(12)内の複数の位置において求めることを特徴とする、請求項17~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記管状ストランド(12)の前記第1の位置及び/又は前記第2の位置において前記管状ストランド(12)の直径及び/又は肉厚も測定することを特徴とする、請求項17~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記管状ストランド(12)内及び/若しくは該管状ストランド(12)の内部の温度を求めるときに、前記測定された直径及び/若しくは前記測定された肉厚を考慮すること、並びに/又は、前記直径及び/若しくは前記肉厚を求めるときに、前記管状ストランド内及び/若しくは該管状ストランドの内部の温度を考慮することを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記管状ストランド(12)内及び/又は該管状ストランド(12)の内部の温度が求められる前記管状ストランド(12)の位置から開始して、該管状ストランド(12)の最終的な形状に達するまで、該管状ストランド(12)の材料の温度に依存する膨張係数に基づいて、前記管状ストランド(12)の予期される収縮を確かめることを特徴とする、請求項17~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記管状ストランドの、その最終的な形状に達した後の直径及び/又は肉厚を、前記管状ストランド(12)の前記第1の位置及び/若しくは前記第2の位置において測定される前記直径、並びに/又は、前記管状ストランド(12)の測定される前記肉厚を考慮して、また、確かめられる予期される収縮を考慮して確かめることを特徴とする、請求項24及び26に記載の方法。
【請求項28】
求められた前記温度に基づいて前記管状ストランド(12)の材料の屈折率を求めることを特徴とする、請求項17~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記管状ストランド(12)内及び/又は該管状ストランド(12)の内部の求められた前記温度に基づいて、前記押出装置(10)を制御及び/又は調節することを特徴とする、請求項17~28のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出装置から搬送される管状ストランドの温度を求める装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
押出装置においては、例えばプラスチックチューブが押し出される。プラスチックチューブは、押出装置を出た後で、通常は、例えば金属製の較正スリーブを有する較正機構を通過し、較正スリーブの内面に対してプラスチックチューブが押圧され、例えば吸引され、外形を規定する。通常、プラスチックチューブは、較正機構に続いて、チューブを冷却するためにチューブの外側に冷却水等の冷却液がスプレーされる1つ又は複数の冷却セクションも通過する。
【0003】
管状ストランドを製造する押出プロセスの基本的な目的は、最小限のたるみ、つまり、完成したストランドの、その外周にわたる最小限の肉厚の逸脱、最小限のエネルギー入力、及び、押出されるストランドの最大限の搬送速度を達成することである。製造プロセスの正確な知識は、これらのパラメータを最適化するために極めて重要である。例えば、種々の形状パラメータ、例えば、管状ストランドの肉厚の測定が、特許文献1から既知である。この場合、10GHz~3THzの範囲のテラヘルツ波が、測定されるストランドに対して放射され、ストランドの境界面から反射したテラヘルツ波が再び受信される。例えば、移動時間測定を使用して、境界面への距離、並びに、これから、直径及び肉厚等の形状パラメータを確実に求めることができる。このように測定される形状パラメータに加えて、管状ストランドの温度も、重要なプロセスのパラメータである。表面温度の非接触測定に関して、焦電センサ(PIRセンサ)が既知である。例えば、特許文献2においては、押出装置に直接的に追従する、管状ストランドの内側にガイドされる測定機構によって、管状ストランドの内周上の温度を測定することが提案されている。しかし、管状ストランドの内部にセンサを挿入することは簡単ではない。加えて、これは基本的に、押出装置に直接的に追従して専ら可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/139155号
【特許文献2】国際公開第2019/166420号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
説明した従来技術から開始して、本発明の目的は、特に管状ストランドの温度についてのより正確な情報を得て、製造プロセスを最適化することができる装置及び方法を提供することである。特に、本発明の目的はまた、測定位置における管状ストランドの直径及び/又は肉厚、並びに、その長さ、その肉厚、及び、管状ストランドの冷却後のその直径の計算中の、測定精度を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、独立項1及び17によってこの目的を達成する。有利な実施形態は、従属項、明細書及び図面において開示されている。
【0007】
上述したタイプの装置に関して、本発明は、管状ストランドの第1の位置において管状ストランドの外側の第1の温度を測定する第1の温度センサが設けられ、また、第1の温度と、管状ストランドの搬送方向において第1の位置から離間した管状ストランドの第2の位置における管状ストランドの外側の第2の温度とを比較するとともに、第1の温度及び第2の温度の比較から、管状ストランドの位置における管状ストランド内及び/又は管状ストランドの内部の温度を求めるように設計されている評価機構が設けられるという点において、目的を達成する。
【0008】
上述したタイプの方法に関して、本発明は、管状ストランドの第1の位置において管状ストランドの外側の第1の温度を測定し、第1の温度と、管状ストランドの搬送方向において第1の位置から離間した管状ストランドの第2の位置における管状ストランドの外側の第2の温度とを比較し、また、第1の温度及び第2の温度の比較から、管状ストランドの位置における管状ストランド内及び/又は管状ストランドの内部の温度を求めるという点において、目的を達成する。
【0009】
本発明による装置は、押出装置、及び/又は、管状ストランドを搬送する搬送機構を備えることができる。本発明による装置は、管状ストランドも備えることができる。管状ストランドは、例えば、プラスチックチューブであるものとすることができる。しかし、管状ストランドは、例えば、ガラス繊維チューブ又は別のストランドであることもできる。本発明による装置は、1つ又は複数の冷却セクションを備えることができ、冷却セクションを、押出後の管状ストランドが通過し、また、冷却セクションにおいては、例えば、冷却のためにストランドの外側に冷却液がスプレーされる。本発明による装置は、較正機構も備えることができ、これは、例えば、押出装置を出た後に、管状ストランドが内部に押圧され、例えば吸引される、例えば金属製の較正スリーブを備える。任意の冷却セクションを、特に較正機構の下流に位置付けることができる。
【0010】
本発明によると、管状ストランドの外側の第1の温度は、第1の温度センサによって、管状ストランドの第1の位置において測定される。測定された第1の温度は、管状ストランドの第2の位置における管状ストランドの外側の第2の温度と比較され、ここで、第2の位置は、管状ストランドの搬送方向において第1の位置から離間している。第1の位置及び第2の位置は、ストランドの搬送方向に沿う位置である。これらの位置は、ストランドの長手方向において互いから離間している。第2の位置は、例えば、ストランドの搬送方向において第1の位置の上流に配置することができる。しかし、第2の位置は、搬送方向において第1の位置の下流に配置することもできる。第1の位置及び第2の位置における温度は、特に同時に測定するか又はそれぞれ求めることができる。しかし、これは必須ではない。むしろ、第1の温度及び第2の温度を異なる時点で測定するか又はそれぞれ求め、それによって、例えば、ストランドの搬送速度を考慮して、同じストランド領域が測定されることも可能である。
【0011】
第2の温度は、既知のように測定若しくは推定するか又はそれぞれ別の方法で求めることができる。例えば、ストランドが押圧されてその外形を画定する較正スリーブの温度を、較正機構の出口において、この位置におけるストランドの外側の温度として推定することができる。ストランドは、押出後に冷却する。冷却は通常、ストランドが通過する1つ又は複数の冷却セクションによって強化されるか又はそれぞれ制御される。冷却セクションは通常、ストランドの外側に影響を与え、材料に強制冷却を導入する。その結果、特に冷却セクションを通過した直後に、ストランドは最初、その外側において、冷却によって直接的に影響を受けないその内側、特にその内部におけるよりも低い温度を有する。外側の冷却の終わりに、つまり、冷却セクションを出た後で、強制冷却の終わりに、ストランドの内側において優勢なより高い温度が、外方に再び広がる。その結果、ストランドの外側の温度は、冷却後に最初に再び上昇する。ストランドの、その内側、特にその内部の温度は、この温度上昇のレベルから推測することができる。管状ストランド内及び/又は管状ストランドの内部の温度を求めるために、特にストランドの搬送速度、熱伝導率及びストランド材料の熱容量、並びに、管状ストランドの肉厚が、比較される第1の温度及び第2の温度の位置に加えて、計算から分かる。これらのパラメータに基づいて、ストランドの外側とストランドの内部との温度差、したがって、ストランドの内部及びまた内側における温度を、温度の比較から推測することができる。周囲への管状ストランドのいずれのエネルギー出力も、ここでは無視することができる。このように、ストランドの内側の温度を、実施が簡単で自由度が高い、ストランドの外側の温度測定によって、ストランドの内側、したがって押出装置のはるか下流にもセンサを配置することさえなく、確実に確かめることができる。さらに、製造プロセスについての有益な情報をここから得て、プロセスの制御又は調節変数として使用することができる。したがって、最小限のたるみ、最小限のエネルギー入力及びチューブの最大限の搬送速度という、上述したパラメータの最適化がより容易に可能である。膨張係数が分かっている場合、管状ストランドの、その冷却後の予期される寸法も、より正確に求めることができる。管状ストランドの肉厚における温度が分かっている場合、肉厚及び直径値の分析においてテラヘルツ波のその温度に依存する減衰、並びに、屈折率の変化も考慮することができる。
【0012】
管状ストランド内及び/又は管状ストランドの内部の温度を求める位置は、管状ストランドの搬送方向において第1の位置及び第2の位置から離間している第3の位置であってもよい。しかし、計算評価に関して、管状ストランド内及び/又は管状ストランドの内部の温度を求める位置が第1の位置と同じであるか又は第2の位置と同じである場合に、より簡単であるものとすることができる。この位置は、例えば、ストランドの搬送方向において押出装置のより近くに配置される、第1の位置及び第2の位置のうちの一方と同じであるものとすることができる。
【0013】
一実施形態によると、第2の温度も測定することができる。このために第2の温度センサを設けることができる。同様に行われる第2の温度の測定によって、内側の温度を特に確実に求めることが可能である。
【0014】
別の実施形態によると、第1の温度センサが第2の温度を測定するように設計されることも可能である。この場合、特に好ましいやり方では、1つのみの温度センサが必要である。1つのみの温度センサの使用は、測定の確実性に関しても有利であるものとすることができ、これは、温度センサにおける異なる特性又はそれぞれ変化に起因する測定結果の改ざんが予期されないためである。
【0015】
少なくとも第1の温度センサは、非接触温度センサ、特に焦電センサ(PIRセンサ)であるものとすることができる。第2の温度センサも設けられる場合、これも非接触温度センサ、特に焦電センサであるものとすることができる。そのようなセンサは、測定される物体が非常に高温である場合であっても、簡単かつ確実な非接触測定を提供する。加えて、このセンサ技術によって、1つのみの温度センサを用いた種々の位置における温度測定が簡単に可能であり、これはこの場合、種々の角度においてストランドの外面の熱放射を検出する。温度センサが同一角度において、つまり対称的にストランド表面の熱放射を吸収する場合に特に有利である。その結果、異なる検出角度に起因する測定結果の改ざんが回避される。
【0016】
別の実施形態によると、管状ストランドが押出装置の下流に配置される冷却セクションを通過した後で第1の温度が測定されるように、少なくとも第1の温度センサを配置することができる。第2の温度センサも存在する場合、管状ストランドが押出装置の下流に配置される冷却セクションを通過した後で第2の温度が同様に測定されるように、第2の温度センサを配置することができる。説明したように、ストランドの外側には、冷却セクションにおける冷却のために、例えば冷却水である冷却液がスプレーされる。特に、管状ストランドが押出装置の下流に配置される第1の冷却セクションを通過した後、かつ、管状ストランドが第1の冷却セクションの下流に配置される第2の冷却セクションを通過する前に、第1の温度又はそれぞれ第2の温度が測定されるように、第1の温度センサ、及び、妥当な場合に第2の温度センサを配置することができる。したがって、この場合、2つの冷却セクション間の測定が行われる。上記で説明したように、本発明による測定方法は、特にストランドの外側の(第1の)冷却の完了後に、冷却の完了後に生じるストランドの外側の再加熱に基づいて、ストランドの内側の温度を確実に求めることを可能にする。
【0017】
特に実用的な実施形態によると、評価機構は、特に有限要素反復法を使用して、第1の温度及び第2の温度の比較から、管状ストランド内及び/又は管状ストランドの内部の温度を求めるように設計することができる。それ自体が当業者には既知であるそのような有限要素法は、この場合は管状ストランドである、計算対象の本体が有限数の小区域に分割される、数値計算法を表す。有限要素と称されるこれらの物理的挙動は、それらの規則的に単純な幾何学的形状に起因して、既知の試験関数によって良好に計算することができる。ここでは管状ストランドの外側へのより高い内側の温度の広がりである、本体全体の物理的挙動を、このように良好にモデリングすることができる。管状ストランドの直径と比較した小さい肉厚の場合、管状ストランドの内部と外側との間の直線的な温度曲線を、良好な近似で推定することができる。これは、内側の温度を計算によって求めることを単純化する。内側の温度を計算するための反復計算法として、内側の温度は、例えば、第1のステップにおいて推定することができ、この内側の温度が測定された外側の温度に一致するか否かを、有限要素法を使用して計算することができる。これが当てはまらない場合、推定される内側の温度は変化し、計算によるチェックが再びなされる。このように、実際の内側の温度を反復して求めることができる。
【0018】
別の実施形態によると、第1の温度センサが、第1の位置において管状ストランドの外周にわたって分散される複数の位置における第1の温度を測定すること、及び、評価機構が、管状ストランドの外周にわたって分散される複数の位置において測定された温度と、第2の位置において管状ストランドの外周にわたって分散される複数の位置における第2の温度とを比較するとともに、その比較から、管状ストランドの位置において管状ストランドの外周にわたって分散される複数の位置における管状ストランド内及び/又は管状ストランドの内部の温度を求めるように設計されていることを提供することができる。第2の温度も、第1の温度センサ又は場合によっては設けられる第2の温度センサのいずれかによって、第2の位置において管状ストランドの外周にわたって分散される複数の位置において測定することができる。外周にわたる温度を測定して求めることによって、製造プロセスについての付加的な重要な情報、特に、外周にわたる不均一な温度分布を得ることができ、これは、一方では、管状ストランドのたるみの程度の指示を与え、また他方では、チューブの外周の個別の領域における不十分な冷却を示唆する。
【0019】
少なくとも第1の温度センサを回転させることができるか、又はそれぞれ、少なくとも管状ストランドの外周にわたる部分において回転させることも提供することができる。第2の温度センサも設けられる場合、第2の温度センサは、管状ストランドの外周にわたって回転可能であるか又は回転されることもできる。しかし、例えば、1つの温度センサが回転可能であるように設計されており、他の温度センサが固定されていることも可能である。第1の温度センサ及び/又は第2の温度センサの回転可能性又はそれぞれ回転は、当然ながら、外周全体にわたって存在するか又はそれぞれ生じることができる。第1の温度及び/又は第2の温度は、外周にわたる個別の位置において又は基本的には外周にわたって連続的に測定することができる。管状ストランドの外周にわたる温度を求めることによって、最小限のたるみ、つまり、上側壁部分と下側壁部分との間の最小限の不所望の肉厚の逸脱、最小限のエネルギー入力、及び、ストランドの最大限の搬送速度という上述した因子をより良く最適化することができる。
【0020】
別の実施形態によると、評価機構は、管状ストランド内及び/又は管状ストランドの内部の温度が求められる管状ストランドの位置において、管状ストランド内の複数の位置において管状ストランドの温度を求めるように設計することができる。したがって、ストランドの径方向における温度プロファイルを求めることができ、ここから、製造プロセスについての付加的な重要な情報を得ることができる。管状ストランドの内側の温度を求めることは、ここでは、説明したように、有限要素法によって特に実用的に数値的に計算することができ、この理由は、この方法では、管状ストランドが例えば径方向に複数の小区域に何らかの方法で分割されるためである。次に、これらの個々の小区域に関して、管状ストランドの温度、及びしたがって径方向の温度プロファイルを求めることができる。
【0021】
別の実施形態によると、管状ストランドの第1の位置及び/又は第2の位置において管状ストランドの直径及び/又は肉厚を測定する直径及び/又は肉厚測定機構を設けることができる。この場合、評価機構は、管状ストランド内及び/又は管状ストランドの内部の温度を求めるときに、測定された直径及び/又は測定された肉厚を考慮するように設計することができる。評価機構は、直径及び/又は肉厚を求めるときに、管状ストランド内及び/又は管状ストランドの内部の温度、並びに、妥当な場合に、第1の位置及び/又は第2の位置における管状ストランドの外側の温度を考慮するように設計することもできる。したがって、ストランド材料の温度がストランドの形状パラメータを求めるために重要な値である。例えば、ストランド材料の屈折率は温度に依存する。同時に、屈折率は、ストランドの肉厚を、例えばテラヘルツ波測定機構によって求めるときに重要なパラメータである。特に実用的な実施形態によると、直径及び/又は肉厚測定機構は、テラヘルツ波測定機構を備えることができる。上記で説明したように、直径及び肉厚は、製造プロセスの重要なパラメータである。加えて、直径又はそれぞれ肉厚が正確に分かっていることは、管状ストランド内又は管状ストランドの内部の温度を正確に求めるために重要であるものとすることができ、これは、直径、及び特に肉厚が、ストランドのより高い内側の温度が外側に広がる程度に影響するためである。直径及び/又は肉厚は、原則として、計算のためのパラメータとして既知であるものと推定することができる。しかし、上述した実施形態の場合、実際の直径又はそれぞれ実際の肉厚が測定され、したがって、予期される直径又はそれぞれ予期される肉厚からのいずれの逸脱も考慮されるため、温度を求めることの正確さが高まる。直径及び/又は肉厚の測定は、例えば、ストランドの境界面、特に、ストランドの外側及び内部から反射するテラヘルツ波の移動時間測定として行うことができる。このために、テラヘルツ波測定機構は、例えばテラヘルツトランシーバを備えることができ、これはしたがって、テラヘルツ送信器及びテラヘルツ受信器を備える。テラヘルツ波測定機構は、ストランドを中心に回転させることができ、それによって、直径又はそれぞれ肉厚を、ストランドの外周にわたって分散して配置される複数の位置において求めることができる。特に単純な方法では、第1の温度センサ及び/又は第2の温度センサを、テラヘルツ波測定機構に一体化することができる。この場合、妥当であれば、第1の温度センサ及び/又は第2の温度センサは、テラヘルツ波測定機構とともに回転させることもできる。したがって、直径又はそれぞれ肉厚及び温度を、ストランドの外周にわたる同じ位置において測定されるという特に単純な方法で求めることができる。直径及び/又は肉厚測定機構は、例えば、特許文献1において説明されているように設計することができる。
【0022】
別の実施形態によると、評価機構は、管状ストランド内及び/又は管状ストランドの内部の温度が求められる管状ストランドの位置から開始して、管状ストランドの最終的な形状に達するまで、管状ストランドの材料の温度に依存する膨張係数に基づいて、管状ストランドの予期される収縮を確かめるように設計することもできる。ストランド材料は、例えばストランドが室温に達したときに、その最終的な形状に達するまで、その冷却の過程において収縮する。ストランド材料の温度に依存する膨張係数が分かっている場合、ストランドの最終的な形状に達するまでに予期される収縮を、上述した実施形態に従って、つまり、管状ストランド内及び/又は管状ストランドの内部の、本発明に従って確かめられるストランドの温度に基づいて、また妥当な場合には、外側における測定された温度も考慮して、求めることができる。これは、さらに、ストランドの、その最終的な形状に達した後の特定の形状パラメータを予測するために有利に使用することができる。したがって、別の実施形態によると、評価機構は、管状ストランドの、その最終的な形状に達した後の直径及び/又は肉厚を、管状ストランドの第1の位置及び/若しくは第2の位置において測定される直径、並びに/又は、管状ストランドの測定される肉厚を考慮して、また、確かめられる予期される収縮を考慮して確かめるように設計することもできる。
【0023】
別の実施形態によると、評価機構は、求められた温度に基づいて管状ストランドの材料の屈折率を求めるように設計することができる。屈折率は温度に依存することが分かっている。これは、温度を求める位置又はそれぞれの場所におけるストランド材料の屈折率を、温度測定から推察することができることを意味する。これは、例えば、屈折率をパラメータとして使用する肉厚測定の間に考慮されることができる。肉厚測定は、結果としてより正確な範囲まで可能である。例えば、屈折率は、ストランドの肉厚にわたって分散される複数の位置において求めることができる。したがって、屈折率の分布を確かめることができる。屈折率は、ストランドの外周にわたって分散される複数の位置において確かめることもでき、ここから、屈折率の分布を確かめることもできる。製造プロセスに関する付加的な有益な情報、例えば、材料の組成及び製造プロセスにわたるその稠度を、これらの屈折率の分布から得ることができる。加えて、テラヘルツ波の温度に依存する吸収を求めることができ、逆に、予期される吸収の予測を、平均チューブ温度の測定によって導出することができる。吸収が温度に強く依存して上昇する材料からチューブが作製される場合、材料の温度を測定及び制限することによって、確実な肉厚及び直径の測定値を生成することができることを確実にすることができる。材料の温度に依存する膨張係数が分かっていることにより、材料のより高い室温における、その最終的な冷却までの、測定位置からのその収縮が予期される程度を導出することもできる。
【0024】
別の実施形態によると、装置は、管状ストランド内及び/又は管状ストランドの内部の求められた温度に基づいて、押出装置を制御及び/又は調節する制御及び/又は調節機構も備えることができる。このように、プロセス、特に押出装置の改善された制御又はそれぞれの調節が、本発明によって得られる情報に基づいて可能である。
【0025】
本発明による装置は、本発明による方法を行うように設計することができる。本発明による方法は、それに従って、本発明による装置によって行うことができる。
【0026】
本発明の例示的な実施形態を、図面に基づいて以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明による装置を側面図で概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図面に示されている装置は、搬送機構を有する押出装置10を備える。押出装置10から出る、本発明の場合はプラスチックチューブ12である管状ストランド12は、搬送方向14においてその長手方向軸に沿って搬送される。その際に、ストランド12は、第1の冷却セクション16及び第2の冷却セクション18を通過し、第1の冷却セクション16及び第2の冷却セクション18のそれぞれにおいて、冷却のために冷却液がストランド12の外側にスプレーされる。押出装置10と第1の冷却セクション16との間に、例えば金属製の較正スリーブを有する較正機構(図示せず)を配置することができ、この内壁に対して、外面の成形のためにストランド12が押圧され、例えば吸引される。第1の冷却セクション16と第2の冷却セクション18との間の領域においては、ストランド12は外側からアクセス可能である。この領域には、破線で描かれている直径及び/又は肉厚測定機構20が設けられており、これは、図面において矢印24で見られるように、テラヘルツ波を管状ストランド12に対して放射するテラヘルツトランシーバ22を備える。テラヘルツ波は管状ストランド12を貫通し、ストランド12の境界面、特にその外面及び内部において反射される。反射されたテラヘルツ波はさらに、テラヘルツトランシーバ22によって受信される。測定機構20は、データ接続部26を介して評価機構28と接続されている。評価機構28は、反射されたテラヘルツ波に基づいて、少なくとも、ストランド12の、テラヘルツトランシーバ22に面する壁の肉厚、及びまた妥当な場合には、ストランド12の、テラヘルツトランシーバ22とは反対側の壁の肉厚だけではなくその直径も求める。
【0029】
測定機構20は、本発明の例では焦電温度センサ30である第1の温度センサ30も備える。第1の温度センサ30は、矢印32及び34によって示されている方向に沿って、ストランド12から出る熱放射を測定し、これによって、ストランド12の長手方向の第1の位置36におけるストランド12の外側の第1の温度、並びに、ストランド12の長手方向の第2の位置38におけるストランド12の外側の第2の温度を測定する。図面において見えるように、第1の温度センサ30は、ストランドの表面に対して同じ角度で対称的に方向32及び34に沿って第1の温度及び第2の温度を測定する。第1の温度及び第2の温度の測定値も、接続部26を介して評価機構28に提供される。評価機構28は、測定された第1の温度及び第2の温度の比較から、ストランド12の搬送速度、ストランド材料の熱容量及び熱伝導率、並びに、ストランド12の測定された肉厚及び直径を考慮して、例えば管状ストランド12の第2の位置38における、管状ストランド12内及び/又は管状ストランド12の内部の温度を計算する。この計算は、説明したように有限要素反復法に基づいて行うことができる。
【0030】
例えば、管状ストランド12の、例えば温度センサ30に面する壁部分にわたる径方向の温度プロファイルを求めることが可能である。トランシーバ22及び温度センサ30をストランド12の長手方向軸を中心に回転させることも可能であり、それによって、第1の位置又はそれぞれ第2の位置における、ストランド12の外周にわたって分散される複数の位置における肉厚測定並びに第1の温度及び第2の温度の測定の双方を行うことができる。このように、ストランド12の温度プロファイルを、ストランド12の外周にわたって内側又はその内部において計算することもできる。
【0031】
ストランド12の内側又はそれぞれその内部において確かめられた温度値に基づいて、温度に依存することが分かっている屈折率、吸収及びストランド材料の収縮を、より正確に求めることができる。言及した特性がより良く分かることにより、大幅により正確な肉厚及び直径の値を生成することができ、これらはともに、測定位置における高温の値に関するものであり、また、例えば室温へのその冷却後のものも予測される。
【0032】
評価機構28によって確かめられる肉厚及び温度の値は、図示の例では、装置の制御及び/又は調節機構42のデータ接続部40を介して提供される。これに基づいて、制御及び/又は調節機構42は、別のデータ接続部44を介して押出装置10を、及び例えば、押出装置10が備える、ストランド12の搬送機構を制御及び/又は調節することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 押出装置
12 管状ストランド
14 搬送方向
16 第1の冷却セクション
18 第2の冷却セクション
20 直径及び/又は肉厚測定機構
22 テラヘルツトランシーバ
24 テラヘルツ波
26 データ接続部
28 評価機構
30 温度センサ
32 温度測定方向
34 温度測定方向
36 第1の位置
38 第2の位置
40 データ接続部
42 制御及び/又は調節機構
44 データ接続部
【国際調査報告】